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特表2024-518981多孔質金属又はセラミック部品の製造方法及びその方法を用いて製造された部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】多孔質金属又はセラミック部品の製造方法及びその方法を用いて製造された部品
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/08 20060101AFI20240426BHJP
   C04B 38/06 20060101ALI20240426BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C22C1/08 C
C04B38/06 B
B22F3/11 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570101
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022062633
(87)【国際公開番号】W WO2022238399
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021204741.6
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(71)【出願人】
【識別番号】523427191
【氏名又は名称】ホロメット・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・フッセル
(72)【発明者】
【氏名】ギーゼラ・スタントケ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ・ハーゼ
(72)【発明者】
【氏名】ヨルグ・アドラー
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ・ヴァーク
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018BA13
4K018KA22
(57)【要約】
本方法では、開孔ポリマー発泡体に、金属コーティング又は発泡体の壁体の表面のコーティングを施す。半製品において、金属粒子又はセラミック粒子で形成され、その中に気泡が更に存在する懸濁液を、発泡体の表面と表面領域において接触させ、所定の形状にする。この懸濁液の一部は、発泡体の開気泡に浸透する。その後、熱処理を行い、その間に液体が排出され、ポリマー成分が除去され、その後、焼結プロセスを行う。懸濁液に由来する金属又はセラミックによって、より低い気孔率を有する第1の体積領域が形成される。同様に多孔質であり、懸濁液の金属又はセラミックと、半製品の壁体のコーティングからの金属又はセラミックとで形成された第2の体積領域が、この第1の体積領域に隣接して形成される。第2の体積領域は、コーティングされた発泡体から得られる第3の体積領域に接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる気孔率を有する少なくとも3つの互いに隣接する体積領域を含む多孔質金属及び/又はセラミック部品を製造する方法であって、
ポリマー材料で形成される開孔発泡体に、前記発泡体の壁体の表面において、開孔ベース構造が維持されるように、金属コーティング又は金属粒子若しくはセラミック粒子で形成されたコーティングを施し、
金属粒子又はセラミック粒子、液体及びポリマー結合剤で形成され、更にその中に事前に形成された気泡が存在する懸濁液を、半製品として機能する前記発泡体の表面と接触させ、次いで、このようにして得られた前記半製品の所定の表面領域で所定の形状にし、この懸濁液の一部が、端部層領域で、前記半製品として機能する前記発泡体の開気孔に浸透し、
その後、熱処理を用いる乾燥プロセスを実施し、その間に、前記懸濁液に含まれる液体が排出され、ポリマー成分が除去され、その後、焼結プロセスを実施し、
焼結中に、前記懸濁液中に存在する気泡の結果として専ら得られたより小さい気孔率を有する第1の体積領域が、前記懸濁液に由来する前記金属又は前記セラミック材料によって形成され、この第1の体積領域に隣接して、同様に多孔質である第2の体積領域が形成され、前記第2の体積領域が、前記半製品の壁体のコーティングからの前記金属又は前記セラミックと、前記懸濁液の前記金属又は前記セラミックとで形成されており、これらの金属及び/又はセラミックが、前記第2の体積領域内で一体的に、かつフォームロックされた方法で互いに接合されており、それにより、前記コーティングされた発泡体から得られ、前記第1の体積領域よりも大きな気孔率を有する、開孔された第3の体積領域の前記金属又はセラミックの開孔構造に前記第2の体積領域が接合される、
方法。
【請求項2】
前記半製品を形成するための、前記ポリマー材料で形成された発泡体が、その壁体において、CVD法、PVD法、ガルバニック法によって金属で、又は金属粒子若しくはセラミック粒子を含む懸濁液でコーティングされ、懸濁液によるコーティングによって得られた前記半製品が、前記第1及び第2の体積領域を形成するために前記懸濁液をそれに適用させる前に乾燥され、それによって、前記コーティングされた壁体が、気泡を含む懸濁液に表面領域が接触させられるときに損傷を回避するのに十分な強度を有するように、十分に高いグリーン強度が達成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半製品の壁体が、前記第1及び第2の体積領域を形成するための前記懸濁液を形成するために使用されたのと同じ金属又は同じセラミックでコーティングされることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも0.1mPasの粘度を有する懸濁液、及び/又は、前記懸濁液の総体積の少なくとも5%から最大50%までの体積割合を有する気泡が存在する懸濁液が、前記第1及び第2の体積領域を形成するために使用されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液が、前記第1及び第2の体積領域を形成するために、前記半製品上に形成される少なくとも1つの凹部、窪み、又は穿孔に、及び/又は、特定の前記半製品に取り付け可能な成形用具の内部に添加されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記半製品表面からの、前記半製品の細孔への前記懸濁液の浸透深さが、外部から作用する力によって影響されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記半製品それ自体、又はそれに取り付けられた成形用具を有する半製品が、振動させられること、及び/又は、プロセス中で前記懸濁液に圧力が加えられることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
60%~95%の範囲の気孔率を有する半製品が使用されること、及び/又は、0%~55%の範囲の気孔率を有する前記部品において前記懸濁液で第1及び/又は第2の体積領域が形成されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
使用される前記金属がFeCrAl合金であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法を用いて製造される部品であって、第1の体積領域が、前記懸濁液に由来する前記金属又は前記セラミック材料で形成され、前記第1の体積領域が、前記懸濁液中に存在する気泡の結果として専ら得られたより小さい気孔率を有し、この第1の体積領域に隣接して、同様に多孔質であるか又は緻密である第2の体積領域が形成され、前記第2の体積領域が、前記半製品の壁体のコーティングからの前記金属及び/又は前記セラミックと、前記懸濁液の前記金属及び/又は前記セラミックとで形成され、これらの金属及び/又はセラミックが、一体的に、かつフォームロックされた方法で互いに接合され、それにより、前記第2の体積領域が、前記第1の体積領域よりも大きな気孔率を有する前記半製品の前記金属又はセラミックの開孔構造に接合されることを特徴とする、部品。
【請求項11】
前記第3の体積領域が、少なくとも65%の気孔率を有し、前記第1及び第3の体積領域の間に配置される前記第2の体積領域の気孔率が、前記部品の前記第1及び第3の体積領域におけるものよりも小さいことを特徴とする、請求項10に記載の部品。
【請求項12】
少なくとも前記第1の体積領域で、電気エネルギーのための、又は外部からアクセス可能な、前記部品への及び/若しくは前記部品からの媒体の供給及び/若しくは除去のための、少なくとも1つの接続部が形成されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の部品。
【請求項13】
互いに間隔を空けて配置された複数の第1及び第2の体積領域が、部品に存在することを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の部品。
【請求項14】
前記第3の体積領域が、80%~93%の範囲の気孔率を有することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質金属又はセラミック部品の製造方法及びその方法を用いて製造される部品に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質部品は広範な技術領域で使用されている。多孔質部品は、濾過用、固体又は液体媒体の受入れ用、更には熱交換器としても使用される。また、断熱材や減衰部材として使用されることも多い。多くの用途では、開孔構造が望ましい。しかし、気孔が開いていると強度と安定性が損なわれるため、多くの用途では、より高い強度を確実にするものの、開孔発泡体との十分な持続強度と両立させることができないか、或いは大きな困難を伴わなければ両立させることができない、支持用の別個のフレーム構造を使用する必要がある。
【0003】
更に、例えば電気エネルギーを供給するための電気的接触を可能にしたり、例えば電気加熱要素又は熱交換器の場合に必要であるように、媒体、特に流体を供給及び/又は除去することを可能にしたりする、開孔体への接続オプションを設けることは問題である。
【0004】
開孔発泡体をフレーム又は他の要素にフォームロックされた(form-locked)方法で接続させることは公知である。しかし、恒久的な接合では、接続領域の壁体が機械的応力により破断する可能性があるため、問題が生じる。しかし、このような問題も、単一又は追加の一体型の接合を使用する場合には十分に考慮することができない。溶接、はんだ付け又は接着の結果として、接合部の破損をもたらす可能性のある弱い箇所又は界面が接合箇所に生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3090094号明細書
【特許文献2】米国特許第3111396号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102010039322号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、開孔部品の安定性を向上させるオプションを提供すること、及び/又は、媒体又はエネルギーの確実かつ恒久的な供給又は除去を達成することができる、開孔構造への接続オプションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明に従って、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。請求項10は、それに応じて製造される部品を定義する。本発明の有利な実施形態及び改良は、従属請求項に規定された特徴を用いて実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
異なる気孔率を有する少なくとも3つの互いに隣接する体積領域を含む、問題の開孔金属及び/又はセラミック部品が製造される場合、その手順は、まず、それ自体公知の方法で半製品が調製され、この半製品は、ポリマー材料からなる開孔発泡体を有する開孔構造を有する。発泡体の壁体の表面では、金属コーティング、又は金属粒子若しくはセラミック粒子で形成されたコーティングが、開孔ベース構造が維持されるように、ポリマー材料に施されている。これは、例えば、それ自体公知のCVD法もしくはPVD法、ガルバニック法、又は金属もしくはセラミック粒子を含むコーティングを壁体に施したいわゆるSchwartzwalder法によって達成することができる。Schwartzwalder法により得られる半製品は、十分なグリーン強度が達成される程度まで、更なる処理の前に乾燥させる必要がある。対応する公知の手順は、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されている。
【0009】
好ましくは、ポリマー材料で形成される開孔発泡体として、網状連続気泡ポリウレタン発泡体からの切り出しを使用する。この目的のために、使用されるセルサイズは、8ppi~100ppiの1インチ当たりの孔(pores per inch)(ASTM D3576-77による)に従って商業的に分類される網状発泡体の全範囲をカバーすることができるが、8ppi~30ppiの範囲の粗い発泡体が使用されると有利である。ppi値をmm単位の孔径に変換するには、フォトオプティカル法又はコンピュータトモグラフィー法を用いると容易である。
【0010】
しかし、ポリマーで形成された他の開孔構造体、例えば、不織布、又は付加的なプロセスによって製造された格子構造体を使用することも可能である。
【0011】
金属粒子又はセラミック粒子、液体及びポリマー結合剤で形成され、懸濁液中に予め形成されていた気泡が更に存在する懸濁液を、発泡体の表面と接触させ、その後、こうして得られた半製品上の所定の表面領域で所定の形状にする。このプロセスにおいて、この懸濁液の一部は、端部層領域において、半製品として機能する発泡体の開気孔に浸透する。
【0012】
その後、熱処理を用いた乾燥プロセスを実施し、その間に懸濁液に含まれる第1の液体が排出され、その後又は同時にポリマー成分、特に結合剤のポリマー成分及び発泡体のポリマー材料が除去され、続いて焼結プロセスを実施する。
【0013】
焼結中、懸濁液に由来する金属又はセラミック材料で第1の体積領域が形成され、この第1の体積領域は、懸濁液中に存在する気泡の結果として専ら得られた半製品の気孔率よりも小さい気孔率を有し、この第1の体積領域に隣接して、同様に多孔質であるか、又は多孔質であり得る第2の体積領域が形成され、第2の体積領域は、半製品の壁体のコーティングからの金属又はセラミックと、懸濁液の金属又はセラミックとで形成されており、これらの金属及び/又はセラミックは、第2の体積領域内で一体的に、かつフォームロックされた方法で互いに接合されている。その結果、第2の体積領域は、第2の体積領域を形成する第3の体積領域の端部層領域において、第1の体積領域を、第1の体積領域よりも大きな気孔率を有するコーティング発泡体から得られる開孔された第3の体積領域の金属又はセラミックの開孔構造に接合する。
【0014】
それによって部品の第1及び第2の体積領域が形成される懸濁液は、それ自体公知の方法で製造することができる。この目的のために、少なくとも1つのポリマー結合剤と、一定量の金属又はセラミックの粉末状固体とを含む、適切な液体を使用することができる。気泡は、機械的撹拌によって、又は別の方法、例えば特許文献3から公知である手順を使用して、懸濁液に挿入することができる。空気に加えて、不活性作用を示す他のガス又はガス混合物を使用することも可能であり、その結果、最終的にそれによって部品が形成される特定の金属又は特定のセラミックへの不利な影響は観察されない。
【0015】
通常、ポリビニルアルコール等、このような懸濁液に既に利用されている結合剤をポリマー結合剤として使用することができる。どのような場合でも、消泡剤は使用すべきではない。好ましくは、液体として水を使用することができる。しかし、好ましくは水よりも沸点が低い、他の液体も適している。
【0016】
好ましくは、少なくとも0.1mPasの粘度を有する懸濁液が、第1及び第2の体積領域を形成するために使用されるべきである。懸濁液は、好ましくは更に、明確な流動限界を有する剪断減粘性流動挙動を有するべきである。単独で又は追加として、気泡は、懸濁液の総体積の少なくとも5%から最大50%までの体積割合で懸濁液中に存在すべきである。
【0017】
有利には、半製品の壁体は、第1及び第2の体積領域を形成するための懸濁液の形成に使用されたのと同じ金属又は同じセラミックでコーティングされるべきである。これは、1つの化学元素の純金属であってもよいし、対応する合金であってもよい。合金が使用される場合、半製品のコーティングの合金組成は、懸濁液に使用される粒子の合金組成から逸脱し得る。
【0018】
しかし、半製品の壁体のコーティング用と、第1及び第2の体積領域を形成するための懸濁液用に、異なる材料を使用することも可能である。材料の膨張係数は類似した大きさであるべきであり、焼結温度の関数としての熱挙動も類似しているべきである。これは、例えばステンレス鋼と酸化ジルコニウムセラミックスを使用する場合に当てはまる。これに関連して、「類似した」という用語は、互いの差異が10%未満であることを意味すると理解されたい。第2の体積領域は、異なる材料の焼結温度及び熱膨張係数がこれを可能にする場合には、金属材料とセラミック材料とを組み合わせて形成することができる。
【0019】
第1及び第2の体積領域を形成するための懸濁液は、その間に部品を最終的に仕上げることができる熱処理を実施する前に、半製品に形成される少なくとも1つの凹部、窪み、又は穿孔に、及び/又は特定の半製品に取り付けることができる成形用具の内部に添加することができる。例えば、このようにして、特定の部品の特定の表面層領域又は端部層領域を補強することができ、又はそこに接続部を形成することができる。成形用具を半製品に一時的に接続させるか、又は半製品をフレーム状の成形用具に挿入することができ、それにより、懸濁液が半製品の開気孔に浸透する結果、そこに第1の体積領域を形成し、及びそれに直接隣接して第2の体積領域を形成できるように、気泡を含む懸濁液を半製品表面と特定の成形用具の内壁との間の少なくとも1つの間隙に添加することができる。
【0020】
成形用具は、この目的のために半製品を完全に囲むことができる。しかし、半製品の表面のサブ領域に成形用具を固定し、そこにある懸濁液を、半製品の表面と成形用具の内壁との間の間隙又は空洞に添加することでも十分な場合がある。このようにして、例えば、半製品を囲むことができる円形又は角形の断面を有する中空プロファイルを成形用具として使用することが可能である。しかし、このようなプロファイルの対応するセグメント、例えば円形セグメントを成形用具として使用することも可能である。
【0021】
脱型は、熱処理を行う前に行うことも、焼結が完了した後のみに行うことも可能である。
【0022】
半製品の細孔への懸濁液のそれぞれの浸透深さは、半製品の表面から始まり、外部から作用する力の影響を受ける可能性があり、それによって、次に、第2の体積領域を形成する端部層領域の厚さ又は幅が計画的に影響を受ける可能性がある。厚さ又は幅は、半製品の表面からその内部の方向に、少なくとも3mmであるべきである。既に述べたように、この厚さ又は幅は、より小さく又はより大きく選択することもできる。しかし、3つの体積領域を十分な強度で互いに接合でき、第1の体積領域と第3の体積領域との間の鋭い界面を可能な限り回避できる程度に大きくなければならない。そうするために必要な厚さ又は幅は、半製品のセル幅又は細孔径を基準とすることができ、半製品のセルサイズ又は細孔径の少なくとも3倍になるべきである。
【0023】
この目的のために、半製品自体、又は成形用具が取り付けられた半製品を振動させることができ、及び/又は、プロセス中に懸濁液に圧力を加えることができる。このようにして、周囲圧力と比較して高圧下の媒体(気体又は液体)を使用することができ、このとき、より高い圧力が懸濁液の表面に作用し、懸濁液が半製品の開気孔に押し込まれる。この目的に振動を利用するために、振動テーブルを使用することができ、その上に懸濁液を含む半製品と、場合によっては少なくとも1つの成形用具と、を置くことができる。振動の振幅と継続時間によって、第2の体積領域の幅又は厚さが影響を受ける可能性がある。これは、成形用具又は半製品に係合するバイブレータによって達成することもできる。
【0024】
60%~95%の範囲の気孔率を有する半製品を使用することが可能であり、及び/又は、0%~55%の範囲の気孔率を有する部品において、懸濁液で第1及び/又は第2の体積領域を形成することができる。
【0025】
有利には、金属として耐食性FeCrAl合金を使用することができる。セラミック材料としては、酸化物セラミック及び非酸化物セラミックの両方を使用することができる。
【0026】
本発明に従って製造される部品は、懸濁液に由来する金属又はセラミックで形成される第1の体積領域を含む。第1の体積領域は、半製品の金属又はセラミック壁体の開孔構造で形成される第3の体積領域よりも小さい気孔率を有し、第1の体積領域は、気泡が存在する懸濁液から得られた金属又はセラミックで専ら形成される。気孔率は、懸濁液中に存在する気泡の数とそれぞれの大きさによって決定される。第2の体積領域は、この第1の体積領域に隣接して形成され、この第2の体積領域も同様に多孔質であり得るが、緻密でもあり得る。第2の体積領域は、半製品の壁体のコーティングからの金属及び/又はセラミックと、懸濁液の金属又はセラミックとで形成され、これらの金属及び/又はセラミックは、一体的に、かつ、フォームロックされた方法で互いに接合される。その結果、第2の体積領域は、コーティングされた半製品から得られ、第1の体積領域よりも大きな気孔率を有する開孔された第3の体積領域の金属又はセラミックの開孔構造に接合される。
【0027】
第3の体積領域は、少なくとも65%の気孔率を有すべきであり、第1及び第3の体積領域の間に配置される第2の体積領域の気孔率は、部品の第1及び第3の体積領域よりも小さくあるべきである。
【0028】
互いに間隔を空けて配置されたいくつかの第1及び第2の体積領域が、部品に存在することが可能である。
【0029】
少なくとも第1の体積領域で、外部からアクセス可能な、電気エネルギーのための、或いは部品への、及び/又は部品からの媒体の供給及び/又は除去のための、少なくとも1つの接続部が形成されていることが可能である。このようにして、これは、電気抵抗発熱体のための電気接点として機能する接続部を表すことができる。電気抵抗発熱体の場合、第1の体積領域が十分に高い強度を有することが有利である。第1の体積領域は、第2の体積領域を介して第3の体積領域に、フォームロックされた一体的な方法で接合されることができ、第3の体積領域は、特にその大きな比表面により、改善された加熱作用を可能にすることができる。
【0030】
第1及び第2の体積領域で、ねじ等の要素を固定するためのダボ機能を実行できる領域を部品上に形成することも可能である。
【0031】
第1の体積領域と第2の体積領域とが、周方向に、又は第3の体積領域の外縁の周囲に少なくとも部分的に周方向に形成される場合、フレームを形成することができ、この中で、開孔構造を、フォームロックされた一体的な方法で保持及び保護することができる。
【0032】
更に、本発明は、軽量構造、自動車工学、電気工学、及び航空宇宙分野で使用される部品の製造にも使用することができる。
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例
【0034】
実施例1
2つのコンパクトな長方形の直接発泡接点を含む金属発泡プレートを以下のように製造し、部品とした。この部品を製造するために、125mm×75mm×20mmの寸法を有する粗い長方形の金属発泡体の形状のプレートを半製品として使用した。125mm×125mm×20mmの寸法の完成部品の正方形の全体形状が得られるように、2つの第1の体積領域を対向する2辺に配置した。半完成品としての粗発泡体は、セル幅が約4.5mmで、密度が半製品の金属密度の約10%であった。懸濁液のみによって形成された2つの第1の体積領域は、約50%の焼結密度に達し、100μmから1500μmの間の平均孔径及び50%の気孔率がそこで達成された。
【0035】
粗発泡体は、スクィージング-カレンダリング(squeezing-calendaring)法(Schwartzwalder法)を用いて、対応するセル幅を有する連続気泡ポリマー発泡体をコーティングすることにより、成形法に従って半製品として製造した。この目的のために、まず、平均粒径7μmのFeCrAl金属粉末を、脱泡及びレオロジー特性の調整のため、ポリマー結合剤(例えば、Zschimmer&Schwarz社から市販されているポリビニル製剤)及び添加剤(例えば、Zschimmer&Schwarz社から市販されている脂肪アルコール製剤)とまず撹拌し、水と撹拌し、約86%の金属固形分を有する懸濁液を得た。発泡材料にこの懸濁液を含浸させ、発泡構造体の壁体表面の所望のローディング量が調整されるまで、カレンダリングによって発泡材料をスクィーズした。コーティングされ乾燥された発泡体は、半製品を形成し、その後更に第1の体積領域を形成すべき領域において、成形用具内壁と半製品表面との間に25mmの幅を有する端部が両側に残るように、分割可能な成形用具中央に挿入された。成形用具と半製品を振動プレート上に置いた。
【0036】
それにより第1及び第2の体積領域が形成される懸濁液は、バッチプロセスで別々に製造された。ベースは、金属粉末、有機結合剤、およびレオロジー添加剤からなる同じ懸濁液組成物によって形成されるが、今回は消泡剤を使用しない。
【0037】
その代わりに、5質量%までの界面活性剤(例えば、脂肪アルコール硫酸塩製剤、Zschimmer&Schwarz社)を発泡剤として添加した。混合物をビーカー中で1000rpmの回転速度で10分間かけて発泡させ、約50%の体積増加を求めた。
【0038】
気泡が懸濁液中にできるだけ均質に分布した発泡懸濁液を、その後、スパチュラを用いて成形用具内壁と半製品表面との間の自由端部領域に添加した。このようにして発泡させた懸濁液の流動挙動は、成形用具が振動プレートによって軽く振動させられると自由に流動し、外力の作用によって動かされないとその場に留まるように調整した。このようにして、気泡を含む懸濁液の、半製品を形成する粗金属発泡体の細孔への浸透を制御することができ、第2の体積領域として1~2セルレベル(約4.5mm~9mm)の組み合わせ部分を調整することができる。第2の体積領域が形成される半製品の端部領域を充填した後、約40℃で約24時間かけて乾燥プロセスを実施し、その後、成形用具を取り外すことができた。この目的のために、いくつかの分割可能な個別の部分で構成される成形用具を使用することが推奨され、一般に分割可能な成形用具が好ましい。乾燥プロセスの後、有機成分を除去するために脱脂工程を実施し、その後、金属を焼結した。対向する2つの側面のそれぞれに、外側に向けられた第1の体積領域を含み、その気孔率が、半製品の気孔率によって予め定義された第3の体積領域の気孔率よりも小さい部品を製造することが可能であった。第2の体積領域は、第1の体積領域と第3の体積領域との間に形成され、それにより第1の体積領域と第3の体積領域とがフォームロックされた一体的な方法で接合され、第2の体積領域は、気孔率がないか、又は第1の体積領域よりも気孔率が小さい。第1の体積領域と電気的に接触するための接続部を形成することが可能であった。3つの体積領域はすべて同じ金属を用いて形成した。
【0039】
実施例2
金属製の部品の代替として、同じ原理に従ってセラミック部品を製造することにした。この目的のために、水性セラミック懸濁液が調製される。この懸濁液は、0.8μmおよび3.0μmの平均粒径を有するSiC粉末を70:30の割合で混合して製造された二峰性のSiC粒度分布を有し、更に、焼結添加剤として0.6%のホウ素(炭化物)と11%の水溶性多糖類(熱分解後の4%の炭素に相当)を含む。懸濁液は固形分78%に調整される。
【0040】
発泡セラミックを製造するには、セル幅30ppi(pores per inch、1インチあたりの孔)のポリウレタン発泡材料を懸濁液で飽和させ、その後、遠心分離機を用いて余分な懸濁液を除去する。例として、200mm×250mm×10mmのプレートを挙げるが、このプレートは、外縁に20mm×50mmの長方形の凹部を左右対称に2つ有し、半製品として使用された。成形用具の内部に似た空洞を表すこの凹部に発泡懸濁液を加え、より強固な接触接続部を形成した。凹部は、例えばレーザー切断やウォータージェット切断によって発泡体に導入することができ、これは、その間に半製品が製造されるポリマー発泡体のコーティングプロセスの前に既に実施されることが好ましい。
【0041】
それ以外の点では、実施例1と少なくともほぼ同一の手順及び少なくともほぼ同一の半製品及び懸濁液の濃度に従った。実施例1で使用したような気泡を含む発泡懸濁液の製造とは対照的に、特許文献3に記載されているような装置を用いて、気泡状の空気を懸濁液に導入した。ポリマー発泡体の含浸に使用されるセラミック懸濁液を若干改質し、界面活性剤に加えて、それにより第1及び第2の体積領域が形成される懸濁液の加工特性を改善する可塑剤(例えば、高ポリマー多糖類、Zschimmer&Schwarz社)を添加した。この装置は、長さ182mm、外径70mm、肉厚2.9mmの鋼製中空シリンダーを含む。このシリンダーには、制御可能な圧縮空気供給用の接続部がある。チューブの端面には、同心ノズルを持つ金属ディスクがあり、ホース接続口としても機能することができる。チューブの後部も同様に、直径10mmの貫通孔を有する金属ディスクで閉じられている。2つの蓋の間にシールリングでクランプされた、外径約25mm、肉厚約2mmの多孔質中空シリンダーが鋼製シリンダー内に配置されている。ステンレス鋼製のチューブの気孔率は約43%である。直径約20mmのSMXシリーズ(Sulzer Chemtech AG社)のスタティックミキサーがチューブの中心部に設置されている。金属粉末懸濁液は、スタティックミキサーによってこの多孔質内管を通って導かれると同時に、圧縮空気によって約0.3MPaの圧力と、約600ml/分の空気体積流量が加えられる。その結果、懸濁液中に均一な気泡が生じる。
【0042】
このようにして発泡された懸濁液は、発泡装置のスイッチをオン・オフすることにより、半製品に予め形成された凹部に加えることができる。第2の体積領域を形成する端部領域の厚さは、焼結プロセス後に第2の体積領域と第3の体積領域との間のフォームロックされた一体的な接合を達成するために、約4mmであるべきである。
【0043】
その後、40℃の乾燥キャビネットで少なくとも12時間かけて穏やかに乾燥させる。乾燥後、体積1の壁体の内部のポリマー発泡体は、不活性ガス雰囲気下、800℃の温度で燃焼除去される。残りのSiC粉末足場は、アルゴン雰囲気下の減圧環境において、2100℃の温度で焼結され、これにより、本発明によるSiC製の部品が得られる。
【国際調査報告】