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特表2024-518983C1からC3アルキルオキシメチル側鎖を有するポリ(エチレングリコール)、其のバイオコンジュゲート、其の調製の為のプロセス、及び其の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】C1からC3アルキルオキシメチル側鎖を有するポリ(エチレングリコール)、其のバイオコンジュゲート、其の調製の為のプロセス、及び其の使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20240426BHJP
   C08G 65/24 20060101ALI20240426BHJP
   C08G 65/331 20060101ALI20240426BHJP
   C08G 65/333 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240426BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240426BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C08G65/28
C08G65/24
C08G65/331
C08G65/333
A61K45/00
A61K47/60
A61P31/14
A61K9/51
A61K47/44
A61K38/02
A61K31/7088
A61P37/04
A61K39/215
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570124
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022062896
(87)【国際公開番号】W WO2022238532
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21173944.6
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】312016078
【氏名又は名称】ヨハネス、グーテンベルク-ウニフェルジテート、マインツ
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】フレイ,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】マッテス,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ドライエル,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4J005
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076CC06
4C076CC41
4C076EE23
4C076EE51
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA17
4C084BA03
4C084BA34
4C084BA42
4C084MA05
4C084MA38
4C084NA06
4C084ZB09
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA38
4C086NA06
4C086ZB09
4C086ZB33
4J005AA05
4J005AA10
4J005AA12
4J005BB04
4J005BD02
4J005BD03
4J005BD05
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 本発明は、次式[I]に依って表されるポリエーテルポリマーに関する:-(CH2CHR-O-)m[I];式中、残基Rの10から90%は水素であり、残基Rの10%から90%は互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される;残基Rの1から100%はメトキシメチルである;残基Rの最高で50%はエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択され得る;mは10から1000の範囲の範囲に在り、分散度は1.15以下である。本発明は、更に、其れ等の調製の為のプロセス、其れ等のコンジュゲート、及び其れ等の使用に関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式[I]に依って表されるポリエーテルポリマーであって:
-(CHCHR-O-)- [I]
式中、
- 残基Rの10から90%は水素であり、残基Rの10%から90%は互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される;
- 残基Rの1から100%はメトキシメチルである;
- 残基Rの最高で50%はエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択され得る;
- 且つ
-mは10から1000の範囲に在り、
PEG標準に依るキャリブレーションに依って、DMF中のサイズ排除クロマトグラフィーに依って測定される分散度が1.15以下であるという事を特徴とする、ポリエーテルポリマー。
【請求項2】
ポリエーテルがポリ(グリシジルメチルエーテル-co-エチレンオキシド)コポリマーであるという事を特徴とする、請求項1に記載のポリエーテルポリマー。
【請求項3】
残基Rの30から70%が水素であり、残りの残基Rがメトキシメチルであるという事を特徴とする、請求項1及び2の何れか1項に記載のポリエーテルポリマー。
【請求項4】
ポリマーがランダムコポリマー又は統計コポリマーであるという事を特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のポリエーテルポリマー。
【請求項5】
次式[II]に依って表される請求項1~4の何れか1項に記載のポリエーテルポリマーであって:
X-(CHCHR-O-)CHCHR-Y [II]
式中、Xは、水素、アルキル、ヒドロキシ、スルファニル、C1-C10アルコキシ、C1-C10チオアルコキシ、アミノ、アミノ-C1-C10アルコキシ、ジベンジルアミノ-C1-C10アルコキシ、アミド、N複素環式カルベン、及びN複素環式オレフィンから成る群から選択される;
Yは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、Rが上で定義されている通りである-CH-C(=O)-R、-CHO、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシ(alkyoxy)カルボニルオキシ、アミン、C1-C10アルキルアミン、カルボキサミド、アジド、ハロゲン、スルファニル、チオアルコキシ、N-スクシンイミジルカーボネート、及びスルホネートから成る群から選択される;
X及び/又はYは、低分子量薬物、ナノキャリア、リポソーム構造、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、糖蛋白質、ポリヌクレオチド、多糖、脂質構造、リポソーム、表面、及び界面から成る群からもまた選択され得て、此れ等は直接的に共有結合に依って又はスペーサーに依ってポリマーに結合され、
mは9から999の範囲に在り、
PEG標準に依るキャリブレーションに依って、DMF中のサイズ排除クロマトグラフィーに依って測定される分散度が1.15以下であるという事を特徴とする、ポリエーテルポリマー。
【請求項6】
Xがアルコキシであり、Yがヒドロキシであるという事を特徴とする、請求項5に記載のポリエーテルポリマー。
【請求項7】
X及びYが其々がヒドロキシであるという事を特徴とする、請求項5に記載のポリエーテルポリマー。
【請求項8】
次式[II]に依って表される請求項1~4に記載のポリエーテルポリマーであって:
X-(CHCHR-O-)CHCHR-Y [II]
式中、Xは水素又はX’から成る群から選択され、
式中、X’は以下から成る群から選択される:
【化1】
式中、R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、
p=1、2、3、4、又は5であり、
k=5~500である;
【化2】
式中、R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、
p=1、2、3、4、又は5であり、
k=5~500である;
【化3】
式中、R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、
q=3、4、又は5であり、
k=5~500である;
並びに
【化4】
式中、k=5~500である;
式中、YはZ-Wであり、詰まり、共有結合に依って連結された置換基Z及びWから組成され、
式中、
Zは-O-R’-O-であり、
Wは-R-CHCH-(O-CHRCH2-)-Vである;
式中、VはX又はX’である;
式中、R’は以下から成る群から選択される:
【化5】
式中、
R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、
s=0~20であり、
t=0~20である;
更なるR’は以下から選択される:
【化6】
式中、
mは9から999の範囲に在り、
PEG標準に依るキャリブレーションに依って、DMF中のサイズ排除クロマトグラフィーに依って測定される分散度が1.15以下であるという事を特徴とする、ポリエーテルポリマー。
【請求項8】
ポリマーの末端基忠実度が基Xに就いて及び/又は基Yに就いて少なくとも95%であるという事を特徴とする、請求項5又は8の何れか1項に記載のポリエーテルポリマー。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のポリエーテルポリマーと基質とを含むという事を特徴とする、コンジュゲート。
【請求項10】
基質が低分子量薬物、ナノキャリア、リポソーム構造、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、糖蛋白質、ポリヌクレオチド、多糖、脂質構造、リポソーム、表面、及び界面から成る群から選択されるという事を特徴とする、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
以下のステップを含むアニオン開環共重合に依る、請求項1~10の何れか1項に記載のポリエーテルポリマーの調製の為のプロセスであって:
- アニオンAnを提供する事、
- 式
【化7】
の少なくとも1つのモノマーを追加し、式中、Rは請求項1~8の何れか1項に記載の通りである事、
- -10から90℃の範囲の温度で重合が進む事を許す事、
モノマーが1wt%未満のエピクロロヒドリンを含むという事を特徴とする、ポリエーテルポリマーの調製の為のプロセス。
【請求項12】
少なくとも1つのモノマーを追加するステップ及び重合が進む事を許すステップが少なくとも1回繰り返され、其れに依って少なくとも1つの1回目とは異なるモノマーが使用されるという事を特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
Anアニオンに対する対イオンが、Na、K、及びCsから成る群から選択されるという事を特徴とする、請求項11又は12の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
生物活性な化合物とのポリマーのコンジュゲートの調製の為の、請求項1~8の何れか1項に記載のポリエーテルポリマーの使用。
【請求項15】
具体的には脂質ナノ粒子に基づく、此れ等のナノ粒子が好ましくはCOVID-19に対して使用されるナノ粒子であるという事を特徴とする、ワクチンに於ける使用の為のコンジュゲート化脂質の調製の為の請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次式[I]に依って表されるポリエーテルポリマーに関する。
-(CHCHR-O-)- [I]
式中、残基Rの10から90%は水素であり、残基Rの10%から90%は互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される;残基Rの1から100%はメトキシメチルである;残基Rの最高で50%はエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択され得る;mは10から1000の範囲に在り、分散度は1.15以下である。
【0002】
本発明は、更に、其れ等の調製の為のプロセス、其れ等のコンジュゲート、及び其れ等の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
脂肪族ポリエーテルのポリ(エチレングリコール)(PEG)は、製薬、医学、及び薬物送達に於いて最も広く用いられるポリマーである。PEG化、即ちペプチド薬物に対するPEGの取り付けは1970年代に導入され、其れ以来、数々の高度に効率的な薬物に至っている。PEG化は、或る形態のコンジュゲート化、即ち、共有結合に依る分子に対するポリマーの取り付けである。PEG鎖の取り付けの主な効果は所謂「ステルス効果」であり、此れは免疫系に依る近いアプローチ及び認識と肝臓に於ける細網内皮系(RES)に依る爾後の結合及び除去とを妨げる。より単純には、薬物送達のナノキャリアの表面に取り付けられた時に、PEG取り付けは蛋白質に依るオプソニン化をもまた妨げる。PEGに依る蛋白質吸着の阻害は、ホワイトサイズ(Whitesides)に依って導出された撥蛋白質表面の為の規則の実現に依って更に強調される(非特許文献1)。PEG化は、長い循環時間を有する「ステルスリポソーム」、低分子量薬物、及び脂質ナノ粒子にもまた使用される。斯かる構造はmRNAの輸送及び送達に用いられる。此処では、其々のPEGに基づく脂質は、COVID-19パンデミックに対するワクチン接種に重要な役割を果たし、細胞へのmRNAの輸送を可能化し、望まれない分解プロセスを回避する。モデルナ(Moderna)Inc.及びファイザー(Pfizer)Inc.-ビオンテック(BioNTech)SEからの最近承認されたmRNAワクチンは、脂質に基づくナノ粒子中のmRNAの安定性を保証する為にPEG化脂質を要求する。PEG化は水系に於けるリポソーム及び類似の構造の合一をもまた妨げる。普通は、2から40kg/molの範囲の分子量が薬物又はナノキャリアのPEG化には好ましい。合計すると、PEGは、具体的には癌、慢性疾患の治療に於ける膨大な種々の医学的な及び薬学的な使用に就いて、並びに最近ではRNA送達基剤に就いても又、水溶性の医療用ポリマーの標準に成っている。PEGの奏功は幾つかの理由を有し得る。其れ等の中には、エチレンオキシドのアニオン開環重合からの十分な品質且つモル質量の広い範囲での市販性、並びに其の極端に低い毒性及び高い生体適合性が在る。更に、PEGは狭い分子量分布で調製され得る。
【0004】
然し乍ら、増大して行く数の研究は、人口の大きい且つ絶えず増加して行く一部に存在する所謂抗PEG抗体(APA)の存在に関する懸念を要約している。斯かる抗体は、血流からのPEG化薬物の加速されたクリアランス、即ち治療奏功に肝要であるステルス効果の喪失、アレルギー反応、及び極端な且つ稀なケースでは可能性として致死的なアナフィラキシーショックにさえ至り得る。此の望まれない効果は、PEG化ペプチド薬物、PEG化リポソーム、並びに他のPEG化ナノキャリア及びPEG化低分子薬物に就いて両方で観察される。抗PEG抗体は、例えばCOVID-19ワクチンの文脈に於いて、RNA輸送脂質ナノ粒子のPEG化脂質に就いてもまた問題が在る。PEG抗体は、多くの場合に、可能性としてのPEG代替物の文脈に於いて、PEG以外に代替物を探す動機として言及される。概算として、人口の凡そ10%は、PEG化製剤に依って処置された時にアレルギー反応を経験する。つい最近、PEG及び抗PEG抗体の間の結合の性質がライ等(Lai et al)に依って研究されている(非特許文献2)。其れ等は、PEGの結合が、APAに依って捕捉されたPEGの開環構造を原因とすると結論した。Fabの内側及び外側パラトープと相互作用するPEGポリマーのモノマーリピートの数を計数する事に依って、其れ等は、PEG抗原エピトープのサイズが~700g/molであり、16個のモノマーサブユニットに相当する事を見出した。其れ故に、少なくとも16個のエチレングリコール単位がAPAに依る結合に要求される。他の研究は、PEGのより短い規則的な鎖のセグメント及びmPEG(α-メトキシポリ(エチレングリコール))構造のメトキシ末端基もまた認識に重要な役割を果たすという事を示唆している。因って、特許文献1はPEG鎖の末端基改変に基づくPEGコンジュゲートの調製の為の方法を開示している。PEGの末端基のバリエーションが開示され、例えば抗PEG抗体とのメトキシ末端基の相互作用を最小化する事を狙っている。著者等はコンジュゲートを開示しており、前記の純粋なコンジュゲートの遠位のポリアルキレングリコール末端の全てにはヒドロキシル基が存在し、前記のコンジュゲートはmPEG-蛋白質コンジュゲートと比較して縮減された抗原性を見せる。PEG-OHに依って誘起される抗体は類似の親和性をmPEG及びPEG-OH両方に対して有し、mPEGに依って誘導される抗体はPEG-OHよりも有効にmPEGを認識するという事が報告されている(非特許文献3;非特許文献4)。此れ等の結果は競合ELISAを使用する事に依って得られており、PEG-OH-蛋白質に依って誘起される抗PEG抗体はPEGのバックボーンを指向し(バックボーン特異的)、mPEG-蛋白質コンジュゲートに依って誘導される抗体はメトキシ基特異的であるという事を暗示している。抗PEG抗体に依る認識及び免疫原反応を達成する為には、少なくとも4~5から16個の規則的に並んだエチレングリコール単位の規則的なセグメントが要求されると結論され得る。最近の臨床業務は、PEGに対する抗体の存在が、ペグアスパラガーゼアレルギー反応及び再投与無効を予測する事を可能にするという事を実証し、此のケースでは白血病の処置の奏功に就いての抗PEG抗体の臨床的重要性を強調した(非特許文献5)。
【0005】
PEG化治療薬の望まれないAPA相互作用を相殺する為のPEG構造の改変の為の3つの戦略が開発されている。mPEGのメトキシ末端基をヒドロキシル基に依って置き換える事は、抗PEG抗体に対する親和性の大幅な減少に至った。此れは競合ELISA試験に依って実証された。然し乍ら、大スケールの商業的用途では、末端に於けるヒドロキシル基の存在は、保護された官能性開始剤を要求するであろうという事が明らかであり、此れは既存の合成プロトコールを複雑化する。第2の最近の戦略は特許文献2に開示され、PEG-ボトルブラシ構造、即ち、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)バックボーンに付加された小さいPEG構造に依拠する。発明者は、此の型のPEGアーキテクチャは抗PEG抗原性を最小化し乍ら、表面コーティングの為の所望のステルス特性を保全するという事を申し立てている。然し乍ら、齎されるPEGグラフト化コポリマーはかなり幅広い多峰性の分子量分布を見せ、此れ等は、医学的用途の為の承認及びペプチド又は脂質とのPEG化に似たバイオコンジュゲート化への主要な障害物を表す。狭い分布(Mw/Mn<1.15)は、専ら、コスト及び時間消費的な分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行う事に依って実現可能であった。
【0006】
別の戦略は、PEGを直鎖ポリエーテルポリグリセロールに交換して、リポソームの血中循環時間を増大させる事及び加速された血中クリアランスを回避する事である(非特許文献6参照)。然し乍ら、ポリグリセロールの利用は、リポソームへの多数のヒドロキシル官能基の導入をもまた齎す。此れはホワイトサイズ(Whitesides)の前述の規則とは対照的であり、血流中のペプチドの複雑な非特異的認識を齎す。因って、コンジュゲート化薬物又はリポソームの標的化された使用はポリグリセロールでは可能ではない。
【0007】
PEG化治療薬は、多くの場合に、癌治療の様に、慢性の又は多くのケースでは別様に致死的な疾患に使用されるので、多くのケースでは、繰り返しの用量が長期間に渡って投与されなければならない。PEGは非生分解性のポリマーであり、腎臓に依って体から排出されなければならない。PEG化薬物の腎臓濾過の研究では、腎臓に於けるPEGの望ましくない蓄積及び腎臓系の関連する病理学的変化が実証され得た(例えば非特許文献7参照)。因って、ポリエチレンが結晶化する傾向は腎臓に於ける沈着に至り得る。腎臓に依る排出は、医学的な治療薬の為のPEGの分子量を腎臓のカットオフサイズにもまた限定する。此れは球状蛋白質では凡そ50から60kDaである。
【0008】
本発明者は、2014年に、モノマー活性化法並びに開始剤としてのテトラオクチルアンモニウムブロミド及びトリスイソブチルアルミニウムの使用に依るグリシジルメチルエーテル(GME)とのエチレンオキシドの共重合に就いて報告した(非特許文献8参照)。かなり幅広い分子量分布が得られた(1.21から1.5の範囲の分散度)。此れ等は明瞭に医学的用途に好適ではない。其の時に論じられた通り、従来のアニオン開環法では、最高で3000g/mol迄のみの分子量と高い分散度とがGMEの重合に就いて報告されている。GMEからポリ(グリシジルメチルエーテル)(PGME)へのホモ重合に就いての以前の研究では、一般的に、重合は困難を引き起こし、医療用PEGに用いられるアニオン開環重合に依っては分子量のコントロールは達成され得ないという事が申し立てられた(非特許文献9)。今日迄のGME重合に就いての全ての入手可能な報告では、ホスファゼン塩基が触媒として使用されたか、又はアルミニウム化合物が「モノマー活性化重合」の遣り方で追加されなければならなかったか何方かである。同じ事は、ポリグリシジルエーテルの合成の為にモノマー活性化開環重合を使用するラベ等(Labbe et al.)に依って発表された反応に適用される(非特許文献10)。此の技術は図11に記載されている普通の副反応を被る。ヒドリドの望まれない移動は更なる開始種に至り、因って、要求される高い末端基忠実度を限定する。加えて、モノマー活性化開環重合に依るイソプロピルに依る開始の生起も又、文献、例えば非特許文献11及び非特許文献12に報告されている。此れ等のポリマー又はコポリマーの何れも、幾つかの理由から医学的用途には好適ではない:(i)微量のホスファゼン塩基が毒性に至り、除去され得ない;(ii)分散度は1.1を超過し、此れは殆どの医学的用途では禁制である;(iii)方法に由来するポリマーの末端基忠実度は、バイオコンジュゲート化に依るペプチド、薬物、又は脂質への取り付けには不十分である。因って、PGMEホモポリマーもGMEのコポリマーもPEG化型用途では今日迄考慮されていない。
【0009】
良く定義されたポリマー末端基の形成及び保持(末端基忠実度)は、鎖伸長及び全てのポスト重合反応の重大なツールである。バイオ分子が末端基に依って接続されている薬学的用途の為のバイオコンジュゲートに於けるポリマーの使用に就いても又、末端基忠実度は決定的な因子である。低い末端基忠実度を有するポリマーは、過度の経費無しには混合物から除去され得ない、バイオ分子に結合されていない大量の高分子を含む。形成されたコンジュゲートは要求される純度を有さない。因って、末端基の喪失は望ましくないが、完全には回避され得ない。末端基忠実度はポリマーの調製の反応条件に依存して多大に変動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第8,129,330号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0015520号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ヤロフスキー等(Yarovsky et al.)著,「機械学習を使用した蛋白質抵抗性の表面コーティングの定量的な設計規則(Quantitative design rules for protein-resistant surface coatings using machine learning)」,サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports),2019年,第9巻,p.265
【非特許文献2】ライ等(Lai et al)著,「抗PEG抗体の構造は、高度にフレキシブルなPEGポリマーを捕捉する開環を明らかにする(Structure of an anti-PEG antibody reveals an open ring that captures highly flexible PEG polymers)」,コミュニケーションズ・ケミストリー(Communications Chemistry),2020年,第3巻,p.124
【非特許文献3】シャーマン等(Sherman et al)著,「mPEG-蛋白質コンジュゲートに対する免疫応答に於けるメトキシ基の役割(Role of the methoxy group in immune responses to mPEG-protein conjugates)」,バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate Chemistry),2012年,第23巻(3),p.485-499
【非特許文献4】シャーマン等(Sherman et al)著,「メトキシPEG-蛋白質に依って誘導される抗PEG抗体に対するPEG及びPEG様オリゴマーの結合の選択性(Selectivity of binding of PEGs and PEG-like oligomers to anti-PEG antibodies induced by methoxyPEG-proteins)」,モレキュラー・イミュノロジー(Molecular Immunology),2014年,第57巻(2),p.236-246.
【非特許文献5】リウ等(Liu et al)著,「抗体はペグアスパラガーゼアレルギー反応及び再投与無効を予測する(Antibodies Predict Pegasparagase Allergic Reactions and Failure of Rechallenge)」,ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー(Journal of Clinical Oncology),2019年,第37巻,p.2051
【非特許文献6】アブリラ等(Abu Lila et al)著,「ポリエチレングリコール(PEG)の代わりにポリグリセロール(PG)の使用は、繰り返し投与に依る長く循環するリポソームに対する加速された血中クリアランス現象の誘導を妨げる(Use of polyglycerol (PG), instead of polyethylene glycol (PEG), prevents induction of the accelerated blood clearance phenomenon against long-circulating liposomes upon repeated administration)」,インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス(International Journal of Pharmaceutics),第456巻(2013年)p.235-242
【非特許文献7】ベンデル(Bendele),A.;シーリー(Seely),J.;リッチー(Richey),C.;セネロ(Sennello),G.;ショップ(Shopp),G.著,「短報:ポリエチレングリコールコンジュゲート化蛋白質に依って処置された動物に於ける腎尿細管空胞化(Short Communication: Renal Tubular Vacuolation in Animals Treated with Polyethylene-Glycol-Conjugated Proteins)」,トキシコロジカル・サイエンシズ(Toxicological Sciences),1998年,第42巻,p.152-157
【非特許文献8】フレイ等(Frey et al)著,「チャレンジングなコモノマーペア:エチレンオキシド及びグリシジルメチルエーテルから温度応答性ポリエーテルへの共重合(A Challenging Comonomer Pair: Copolymerization of Ethylene Oxide and Glycidyl Methyl Ether to Thermoresponsive Polyethers)」,マクロモレキュールズ(Macromolecules),2014年,第47巻,p.5492-5500
【非特許文献9】フレイ等(Frey et al.)著,バイオマクロモレキュールズ(Biomacromolecules),2014年,第15巻,p.1935-1954
【非特許文献10】マクロモレキュラー・シンポジア(Macromolecular Symposia),2007年,第249-250巻,p.392-397
【非特許文献11】ビルアール(Billouard),C.;カルロッティ(Carlotti),S.;デボワ(Desbois),P.;デフュー(Deffieux),A.著,「アルカリ金属アルコキシド/トリアルキルアルミニウム系に依って開始されるプロピレンオキシドの“コントロールされた”高速アニオン重合(“Controlled” High-Speed Anionic Polymerization of Propylene Oxide Initiated by Alkali Metal Alkoxide/Trialkylaluminum Systems)」,マクロモレキュールズ(Macromolecules),2004年,第37巻(11),p.4038-4043.DOI:10.1021/ma035768t
【非特許文献12】ヘルツベルガー(Herzberger),J.;ニーデラー(Niederer),K.;ポーリット(Pohlit),H.;ザイヴェルト(Seiwert),J.;ヴォーム(Worm),M.;ヴルム(Wurm),F.R.;フレイ(Frey)H.著,「エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び他のアルキレンオキシドの重合:合成、新規ポリマーアーキテクチャ、及びバイオコンジュゲーション(Polymerization of Ethylene Oxide, Propylene Oxide, and Other Alkylene Oxides: Synthesis, Novel Polymer Architectures, and Bioconjugation)」,ケミカル・レビューズ(Chemical reviews),2016年,第116巻(4),p.2170-2243.DOI:10.1021/acs.chemrev.5b00441
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
其の用途に於いてPEGを置き換える事が出来る且つPEGの前述の欠点の少なくとも幾つかを緩和し得る代替的なポリマーを提供する事が、本発明の目的である。代替的なポリマーは、薬学的用途に於いてPEGを置き換える為に特に適しているべきである。更に、低い分散度を有するポリマーを提供する事が目的である。更なる目的は、高い末端基忠実度を有するポリマーを提供する事である。斯かるポリマーの調製を単純な且つ商業的に実現可能な遣り方で許すプロセスを提供する事もまた望まれる。代替的なポリマーは、抗PEG抗体(APA)に対する低い親和性を有するべきである。更なるゴールは、低い免疫原性を有するポリマーを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、C1からC3アルキルオキシメチル側鎖を有するポリ(エチレングリコール)に関する。本発明は、次式[I]に依って表されるポリエーテルポリマーに関する:
-(CHCHR-O-)- [I]
式中、残基Rの10から90%は水素であり、残基Rの10から90%は互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される;残基Rの1から100%はメトキシメチルである;残基Rの最高で50%はエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択され得る;但し、少なくとも1つの残基Rがエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される場合に、少なくとも1つの残基Rは水素である;mは10から1000の範囲に在り、PEG標準に依るキャリブレーションに依って、DMF中のサイズ排除クロマトグラフィーに依って測定される分散度が1.15以下であるという事を特徴とする。本明細書に於いて、残基Rのパーセンテージは全ての残基Rの合計に、即ちmに基づく。此れ等の新たなポリエーテルポリマーは、抗PEG抗体(APA)に対する親和性に就いてPEGとは非常に異なって挙動する新たな型の材料であり、低い免疫原性を有する。其れ等は低い結晶化度から非晶質の構造迄をもまた有し得る。だが、本発明のポリエーテルポリマーは、水溶性、水和、細胞の生存率、及び生体適合性を包含する薬学的用途に重要である種々の特徴に就いてPEGに非常に類似に挙動する。
【0014】
APAとの縮減された相互作用の鍵はPEGバックボーン上の置換基の使用である。前記のPEGコポリマーの増大した空間的要件は、特異的な「鍵と鍵穴の原理」に従う抗PEG抗体との相互作用を妨害又は不可能化する。立体構造的なインパクトの他に、ポリマーバックボーン上の置換基のランダムな若しくは統計的な分布及び/又は置換基のランダムな若しくは統計的な立体構造的な向きは、更に其の上、特異的な抗ポリマー抗体の発生及び形成を不可能化する。
【0015】
PEG及び本発明のポリマーの特徴の類似性の鍵は、アルコキシメチル側鎖の使用である。此れはPEGから考えて水溶性及び他の特性を維持する。Rがメトキシメチル基である本ポリマーの繰り返し基、即ち(-CH-CH(-CH-OCH)-O)-は、PEGの2つの繰り返し単位(-CH-CH-O)-と同じ分子式Cを有し、因って、PEGの2つの主鎖繰り返し単位の構造異性体である。其れは同じ数の原子及び非常に類似の官能基を含む。此れは類似の特性に、特に類似の水溶性に至り、此れは生物学的な系に於ける用途に重要である。ヒドロキシ、アミノ等の様な側鎖上の反応性の官能基の欠如は、生物学的な系との望まれない相互作用を縮減する。
【0016】
エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルは、ポリマーの特性、例えば其れ等の可溶性、脂質との相互作用、生体膜の通過に就いての特性等を更に調整する為に、残基Rとして使用され得る。然し乍ら、此れ等の残基は縮減された水溶性に至る。斯かる置換基の選び方は、他の特性に就いてのPEGの挙動からの逸脱にもまた至る。此の理由から、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される残基を有する繰り返し単位の量は、式(I)のポリマーの全ての残基Rの50%に限定される。又、ポリマーの残基Rの少なくとも10%がエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される本発明の実施形態に於いて、少なくとも10%は水素であり、より好ましいのは、少なくとも25%は水素である。更に好ましい実施形態に於いて、残基Rの最高で20%はエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択され得て、更により好ましいのは、残基Rの最高で50%のみが此の群から選択され得る。此れ等の残基は、薬学的用途に於ける本発明のポリマーの使用の幾つかでは要求されない。此の理由から、Rが水素及びメトキシメチルから成る群から選択される本発明のポリマーが好ましい。明らかに、本発明のポリマーのエチレンオキシド繰り返し単位は、PEGと類似の特性にもまた至る。因って、此の選択は、挙動がPEGに最も近いポリマーを提供する。
【0017】
メトキシメチルのより高次の同族体、即ちRがC4アルコキシメチル及びより高次である所では、増大して行く低い水溶性及び他の不利益な特性に至り、因って、一般的には回避されるべきである。然し乍ら、其れ等は、要求される時には小さい数量で、水素、メトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される全ての残基Rの合計に;即ちmに基づいて、好ましくは10%以下の量で、より好ましくは3%以下の量で、最も好ましいのは1%以下の量で使用され得る。本発明のポリエーテルがメトキシメチルのより高次の同族体を含む場合には、RがC4アルコキシメチル又はより高次である所では、水素の存在に就いての同じ条件が同じ好ましい量で適用される。種々の他のコモノマーも又、必要な場合には、式[I]のポリマーの重量平均分子量に基づいて、少量、即ち好ましくは3wt%未満、より好ましくは1wt%未満で、最も好ましいのは0.1wt%未満で使用され得る。其れ等は、例えば、官能基又は側鎖をポリマー上に導入する為に使用され得る。然し乍ら、式(I)の繰り返し単位のみを含む本発明のポリマーが、通常は薬学的用途に於ける使用に最も良く適している。
【0018】
前に言及されている通り、エチレンオキシド繰り返し単位と、グリシジルメチルエーテル、即ちRがメトキシメチルである繰り返し単位とは、非常に類似の特性を有するポリマーを提供する。非常に類似の特性故に、PEGのバックボーン上のエチレンオキシド繰り返し単位は、メトキシメチルに依って置換された繰り返し単位に依って完全に置換され得る。即ち、残基Rの100%はメトキシメチル基から選択され得て、此れがグリシジルメチルエーテルのホモポリマーを構成する。然し乍ら、此れは好ましくない。残基Rの少なくとも幾つかが水素である様に選択される時に、依然として、本発明のポリマーの特性はPEGの特性により近い。更に其の上、グリシジルメチルエーテルのホモポリマーと比較して、コポリマーの免疫原性は縮減されるであろう。何故なら、其れ等は側基の向きのみならず、側基其れ等自体もまた異なるからである。因って、コポリマーであるポリマーが本発明に好ましい。側基間の最も大きい違い、因って最も低い免疫原性は、繰り返し単位の幾つかが側基を有さない、即ちRが水素であるポリマーに依って提供される。
【0019】
此れはより低い免疫原性を保証するであろう。好ましいのは、残基Rの10から90%は水素であり、残基Rの10から90%は互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される。更により好ましいのは、残基Rの20から80%は水素であり、残基Rの20から80%は互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択されるという事である。全てのエチレンオキシド繰り返し単位の約50%がアルキルグリシジルエーテルに依って置換されている本発明のポリマーは、最も低い免疫原性を提供する。此の理由から、残基Rの30から70%が水素であり、残基Rの30から70%が互いから独立してメトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択されるポリマーが好ましく、より好ましいのは、40から60%である。ポリエーテルがポリ(グリシジルメチルエーテル-co-エチレンオキシド)コポリマーである、即ち残基Rが水素及びメトキシメチルから成る群から選択される本発明のポリエーテルポリマーが、薬学的用途に於いて特に有用である。同じ好ましい範囲は、Rが水素及びメトキシメチルから成る群から選択される、即ちポリエーテルがポリ(グリシジルメチルエーテル-co-エチレンオキシド)コポリマーである実施形態に適用される。
【0020】
残基Rの30から70%が水素であり、残りの残基Rがメトキシメチルである本発明のポリエーテルポリマーが特に好ましい。Rが水素である繰り返し単位を含む此れ等のコポリマーは、前述の有利な特性の殆どを組み合わせている。其れ等は低い免疫原性、良好な水溶性、低い結晶化度を有し、然も無ければ、非常にPEGに類似である。
【0021】
本発明のポリマーの更なる態様は、同じ特性を保持し乍ら、結晶化度、即ち結晶化の度合いが、PEGと比較して縮減されるという事である。ポリマーの幾つかは具体的な組成に依存して非晶質構造を有する。GME又は他のグリシジルエーテルとのEOの統計コポリマーは、PEGの結晶化を系として縮減又は完全に不可能化し得る。PEGの結晶化の度合い及び関係する融点(表5)は、例えば薬物の座剤又は固体分散体等の数々の薬学的用途に重要な役割を果たす。他の用途では、例えば、他の目的の中でも創傷ドレッシングに使用される高度に親水性の且つ生体適合性のポリウレタンソフトフォームでは、結晶化は望まれず、完全非晶質のPEGが要求される。側鎖のランダムな組み込みを原因として、25%超のグリシジルエーテルモノマーが組み込まれる場合には、本発明の前記のコポリマーは、完全非晶質のPEGコポリマー構造を得る事を可能にする。トリブロック及びマルチブロック構造に基づく、例えばポリエーテルを生分解性のポリラクチドブロックと組み合わせるバイオマテリアルでは、此の特徴は妥当する。
【0022】
mは10から1000の範囲に在る;mは好ましくは20から900の範囲に在り、より好ましくは30から800の範囲に在る。最も好ましくは、mは30から700の範囲に在る。此れ等の範囲は、医学的用途に最も適している、且つPEGの既存の医学的用途に使用されるPEGのポリマー重量に対応する。更に其の上、本発明のポリマーは、好ましくは、500から50.000g/molの範囲の、より好ましくは1.000から50.000g/molの範囲の、最も好ましくは1.000から30.000g/molの範囲の、MALDI-TOF-MSに依って決定される分子量Mを有する。此れ等の範囲は本発明の全ての実施形態に適用される。
【0023】
本発明のコポリマーはランダムコポリマー又は統計コポリマーであり得る。其れ等は抗体に就いての免疫系の為の青写真を提供しないので、斯かるコポリマーは最も低い免疫原性を提供する。其れ等は免疫応答に対して本来的に抵抗性であり、因って、本発明の好ましい実施形態である。此れ等のポリマーは、下で論じられる本発明のプロセスに依って調製され得る。
【0024】
本発明の1つの実施形態に於いて、本発明のポリマーはブロックコポリマーであり得るか、或いはブロック様構造又はテーパード若しくはグラジエント構造を有し得る。斯かるポリマーを調製する為の方法は当業者には公知である。斯かる実施形態に於いては、ポリマーの高分子の5%超が、15個超のエチレンオキシド繰り返し単位を有するブロックを含む事は無いという事、より好ましくは、ポリマーの高分子の5%超が、8つ超のエチレンオキシド繰り返し単位を有するブロックを含む事は無いという事が好ましい。此れは免疫原性を縮減する。
【0025】
上で論じられている通り、PEGに対する類似性は本発明のポリマーの重要な特徴である。此れはポリマーの末端基に特に当て嵌まる。薬学分野に於ける使用の為のPEGの加工には、通例では末端基の改変が関わる。此の目的では、PEGに使用される事が公知の何れかの末端基は本ポリマーにもまた使用され得る。此れは、PEGの為の全ての公知の末端基の使用のみならず、其れ等の改変をもまた包含し、改変の種類及び改変のプロセスを包含する。必要な場合には、本ポリマーが此れに就いてPEGと類似に又は実際に同一に機能する事を許す為に、本ポリマーは、式[Ia]から[Ic]で表現される通り、エチレンオキシド繰り返し単位をポリマーの何方かの端又は両端に提供され得る。此れ等は本発明の好ましい実施形態である。
-(CHCH-O-)-(CHCHR-O-)- [Ia]
-(CHCHR-O-)-(CHCH-O-)- [Ib]
-(CHCH-O-)-(CHCHR-O-)-(CHCH-O-)- [Ic]
【0026】
此れ等の式に於いて、部分式-(CHCHR-O-)-は本明細書に記載される本発明のポリマーを表現し、aは何れかの数であり得るが、1から10の範囲の数が好ましく、より好ましくは1から3の範囲の数である。式[Ia]から[Ic]に従うポリマーは、正にPEGが公知のプロセスに於いて、特に現在の産業プロセスに於いて改変される通りの、本ポリマーの末端の改変を許す。此れは、PEGから本発明のポリマーへの確立されたプロセスの円滑な移行を許す。下で論じられるであろう通り、斯かる物は然程の追加の労力無しに調製され得る。
【0027】
本発明の更なる実施形態は、次式[II]及び[IIa]から[IIc]の何れかに依って表されるポリエーテルポリマーである:
X-(CHCHR-O-)-CHCHR-Y [II]
X-(CHCH-O-)-(CHCHR-O-)-CHCHR-Y [IIa]
X-(CHCHR-O-)-(CHCH-O-)-CHCH-Y [IIb]
X-(CHCH-O-)-(CHCHR-O-)-(CHCH-O-)-CHCH-Y [IIc]
式中、mは19から999であり、Rは式[I]で定義されている通りであり、aは式[Ia]から[Ic]の何れかで定義されている通りである。Xは反応の開始剤に由来する末端基且つα末端基(アルファ末端基)であり、Yはω末端基(オメガ末端基)である。
【0028】
X若しくはY又は両方は、PEGに於ける使用が公知の何れかの末端基から選ばれ得る。同じ末端基が式[Ia]から[Ic]のポリマーにもまた提供され得る。
【0029】
X及びYは、互いから独立して又は両方共、以下から成る群から選択される1つ以上の官能基を含み得る:アセタール(ジアルコキシ)、アルデヒド(ホルミル)、アミド(カルボキサミド)、アジド、カーボネート(アルコキシカルボニル)オキシ)、カルボキシル(カルボキシ)、カルボン酸無水物、エステル(アルコキシカルボニル)、エーテル、ハロ、ハロホルミル(カルボノハロリドイル)、ヘミアセタール(アルコキシオール)、ヘミケタール(アルコキシオール)、ヒドロキシ、イミド(imide)(イミド(imido))、イミン(イミノ)、ケタール(ジアルコキシ)、ケトン(オイル)、オルトエステル(トリアルコキシ)、第1級、第2級、第3級アミノ基、第1級、第2級、及び第3級アルコキシ基、スルフヒドリル(スルファニル、H-S-)、チオエーテル、並びに其れ等の組み合わせ。好ましい実施形態に於いて、X又はYは、アルキル、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、スルファニル、フタルイミド、アミド、アミン、及び其れ等の組み合わせから成る群から選択され得る。X若しくはY又は両方は、Rが直鎖、分枝、若しくは環式アルキル又はフェニルであり、nが1から20に等しい式R-CH-O-の選択される第1級アルコキシ基であり得る。メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デカノキシ、3-エチル-ブトキシ、2,3-ジアルコキシプロポキシ、及び其れ等の組み合わせから成る群から選択されるX若しくはY又は両方が好ましい。X若しくはY又は両方は次式のアルコールのアルコキシ残基でもまたあり得る:
【化1】
式中、Rは水素、或いは直鎖、分枝、若しくは環式アルキル又はフェニルである。X若しくはY又は両方は、式:
【化2】
の何れかから選択される第2級アルコールのアルコキシ残基であり得る。
式中、R及びR’は互いから独立して水素、或いは直鎖、分枝、若しくは環式アルキル又はフェニルである。其れ等の中で、2-プロポキシ、2-ブトキシ、2-ペントキシ、3-ペントキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシ、2-ヘプトキシ、3-ヘプトキシ、4-ヘプトキシ、及びシクロヘキシルオキシから成る群から選択される第2級アルコキシ基が好ましい。
【0030】
X若しくはY又は両方は、直鎖、分枝、又は環式であり得る第1級アルケニルオキシ基からもまた選択され得る。X若しくはY又は両方は次式のアルコールのアルコキシ残基でもまたあり得る:
【化3】
式中、Rは水素、或いは直鎖、分枝、若しくは環式アルキル又はフェニルである。其れ等の中で、2-プロペノキシ(アリルオキシ)、3-ブテノキシ、2-ブテノキシ、3-メチル-2-ブテノキシ、4-ペンテノキシ、3-ペンテノキシ、2-ペンテノキシ、及び3,5-ヘキサジエノキシから成る群から選択される第1級アルケニルオキシ基が好ましい。
【0031】
X若しくはY又は両方は、更に、分枝又は環式であり得る第2級アルケニルオキシ基から選択され得る。X若しくはY又は両方は次式の何れかのアルコキシ残基であり得る:
【化4】
式中、R及びR’は、互いから独立して、水素、或いは直鎖、分枝、若しくは環式アルキル又はフェニルである。第2級アルケニルオキシ基は、式4-ペンテン-2-オキシ、3-ペンテン-2-オキシ、5-ヘキセン-2-オキシ、4-ヘキセン-2-オキシ、3-ヘキセン-2-オキシ、4,6-ヘプタジエン-2-オキシ、1,4-ペンタジエン-3-オキシの何れかであり得る。
【0032】
X若しくはY又は両方は更にアリールオキシ及びヘテロアリールオキシ基から選択され得る。ベンジルオキシ基が特に好ましい。X若しくはY又は両方は、次式の何れかのアルコールのアリールオキシ又はベンジルオキシ残基であり得る:
【化5】
式中、R、R”、R’”、R””、R’””、及びR”””は、互いから独立して、水素、或いは直鎖、分枝、若しくは環式アルキル又はフェニルである。X若しくはY又は両方は、好ましくは、ベンジルオキシ、フェニルオキシ、及びナフチルオキシから成る群から選択される。
【0033】
X若しくはY又は両方は多重官能性のアルコキシ基であり得る。即ち、式[II]又は[IIa]から[IIc]に従う本発明のポリマーの複数の高分子のα又はω位に多数のエーテル結合を有し得る。因って、何れかの好適なポリオールが選択され得る。X若しくはY又は両方は、特に、炭水化物の、特にリボースのポリエーテル、1,1,1-トリメチロールプロパンのポリエーテル、グリセロールのポリエーテル、糖又は水素化糖のポリエーテルから成る群から選択され得る。
【0034】
更に、Yは、アクリルアミド、アクリレート、アルデヒド、アルキン、アミン、アミノオキシ、アジド、ベンゾトリアゾールカーボネート、カルボン酸、クロロホルマート、シアヌル酸クロリド、ジチオエステル、エポキシド、フルオレセイン、ヒドラジド、イミダゾイルホルメート、イミノエステル、イソシアネート、マレイミド、メシレート、メタクリレート、NHSエステル、ニトロベンゾエート、ニトロフェニルカーボネート、スクシンイミジル活性エステル、スクシンイミジルカーボネート、N-スクシンイミジルカーボネート、コハク酸スクシンイミジル、チオカーボネート、チオール、チオールカルボン酸、トシラート、トリフラート、ビニルスルホン、及びキサンテートから成る群から選択され得る。
【0035】
Xは、水素、アルキル、ヒドロキシ、スルファニル、C1-C10アルコキシ、C1-C10チオアルコキシ、アミノ、アミノ-C1-C10アルコキシ、ジベンジルアミノ-C1-C10アルコキシ、アミド、N複素環式カルベン、及びN複素環式オレフィンから成る群から選択されるという事が特に好ましい。Yは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、Rが上で定義されている通りである-CH-C(=O)-R、-CHO、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシ(alkyoxy)カルボニルオキシ、アミン、アルキルアミン、カルボキサミド、アジド、ハロゲン、スルファニル、チオアルコキシ、及びスルホネートから成る群から選択されるという事もまた特に好ましい。加えて、残基Xに就いて本明細書に於いて定義される何れかのアルコキシ基(rest)では、対応するチオアルコキシ残基が使用され得る。即ち、此処では、硫黄原子が酸素原子の代わりに存在する。
【0036】
X及び/又はYが低分子量薬物、ナノキャリア、リポソーム構造、ペプチド、ポリペプチド、糖蛋白質、ポリヌクレオチド、多糖、脂質構造、リポソーム、表面、及び界面から成る群から選択され、此れ等が直接的に共有結合に依って又はスペーサーに依ってポリマーに結合される本発明のポリマーが最も好ましい。本発明に使用可能なナノキャリアは、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、デンドリマー、金ナノロッド、脂質ナノ粒子(nanoparticels)、リポソーム、ミセル、ナノ結晶、ニオソーム、ポリマーナノ粒子(PNP)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、及びウイルスに基づくナノ粒子(VNP)から成る群から選択される。
【0037】
本発明のポリマーは1.15以下の分散度を有する。本発明の分散度は、例に於いてより詳細に記載される通り、PEG標準に依るキャリブレーションに依って、DMF中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して決定された。其れ等は、例えば薬学的、医学的、及び生物学的用途の様に低い分散度が要求される用途に好適である。ポリマーの分散度は薬学的、医学的、及び生物学的用途に於いて多大に重要である。何故なら、異なる分子量の高分子は生物学的な系に於いて異なって挙動し得るからである。其れ等は例えば水溶性、膜透過性、結晶化度、及び腎臓クリアランスが異なり得る。全ての分子の均一な挙動が医学的用途では望まれるので、低い分散度が多くの場合に要求される。因って、1.10以下の分散度を有する本発明のポリマーが最も好ましい。此れは本発明の全ての実施形態に適用される。殆どの医学的及び薬学的用途では、1.10以下の分散度が要求される。1.08よりも低い分散度を有する本発明のポリマーが最も好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は、次式[II]に依って表されるポリエーテルポリマーである:
X-(CHCHR-O-)CHCHR-Y [II]
式中、残基Rは互いから独立して水素、メトキシメチル、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される;残基Rの1から100%はメトキシメチルである;残基Rの最高で50%は、エトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択され得る;但し、少なくとも1つの残基Rがエトキシメチル、n-プロポキシメチル、及びイソプロポキシメチルから成る群から選択される場合に、少なくとも1つの残基Rは水素である;Xは、水素、アルキル、ヒドロキシ、スルファニル、C1-C10アルコキシ、C1-C10チオアルコキシ、アミノ、アミノ-C1-C10アルコキシ、ジベンジルアミノ-C1-C10アルコキシ、アミド、N複素環式カルベン、及びN複素環式オレフィンから成る群から選択される;Yは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、Rが上で定義されている通りである-CH-C(=O)-R、-CHO、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシ(alkyoxy)カルボニルオキシ、アミン、アルキルアミン、カルボキサミド、アジド、ハロゲン、スルファニル、チオアルコキシ、N-スクシンイミジルカーボネート、及びスルホネートから成る群から選択される;X及び/又はYは、低分子量薬物、ナノキャリア、リポソーム構造、ペプチド、ポリペプチド、糖蛋白質、ポリヌクレオチド、多糖、脂質構造、リポソーム、表面、及び界面から成る群からもまた選択され得て、此れ等は直接的に共有結合に依って又はスペーサーに依ってポリマーに結合され、mは19から999の範囲に在り、分散度は1.15以下であるという事を特徴とする。N-スクシンイミジルカーボネートが特に好ましい。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態は、Xがアルコキシであり、Yがヒドロキシである本発明のポリエーテルポリマーである。更に好ましくは、XはC1-C10アルコキシ基であり、Yはヒドロキシであり、更にはより好ましくは、XはC1-C3直鎖アルコキシ基であり、Yはヒドロキシである。此れ等の実施形態は市販のPEG誘導体に似ている。最も好ましいXはメトキシであり、YはOHであり、此れはmPEGに似ている。
【0040】
分散度に就いて論じられた通り、薬学的及び医学的用途に使用される薬物及び賦形剤では、全ての分子の統一化された挙動が好ましい。本発明のポリマーの末端基忠実度は、MALDI-TOF-MSに依って又はH-NMRとのMALDI-TOF-MSの組み合わせに依って、公知の方法に依って決定され得る。本発明のポリマーは、基Xに就いて好ましくは少なくとも95%の、より好ましくは少なくとも98%の末端基忠実度を有する。更なる実施形態に於いて、本発明のポリマーは、基Yに就いて好ましくは少なくとも95%の、より好ましくは少なくとも98%の末端基忠実度を有する。ポリマーの末端基忠実度が基X及び基Yに就いて少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%である本発明のポリエーテルポリマーが更により好ましい。ポリマーの末端基忠実度が基X及び基Yに就いて少なくとも95%であり、分散度が1.10以下である本発明のポリエーテルポリマーが特に好ましく、ポリマーの末端基忠実度が基X及び基Yに就いて少なくとも98%であり、分散度が1.10以下である本発明のポリエーテルポリマーが最も好ましい。
【0041】
本発明の別の実施形態に於いて、ポリエーテルポリマーは次式[II]に依って表されるポリエーテルポリマーである:
X-(CHCHR-O-)CHCHR-Y [II]
式中、Rは、[I]及び[II]の他の実施形態に於いて言及されている同じ意味を有し、式中、Xは、[I]及び[II]の他の実施形態に於いて言及されている基Xから、又は水素若しくはX’から成る群から選択され、
式中、X’は以下から成る群から選択される:
【化6】
式中、R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、好ましくは、
R”はアルキル、即ち
【化7】
又はアルケニル、即ち
【化8】
又はアリール、即ち
【化9】
又はアルコキシメチル、即ち
【化10】
又はアルケニルオキシメチル、即ち
【化11】
又はアリールオキシメチル、即ち
【化12】
又はアミノメチル、即ち
【化13】
であり、式中、
p=1、2、3、4、又は5であり、
k=5~500、好ましくは5~250、最も好ましくは10~200である;
並びに
【化14】
式中、R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、好ましくは、
R”はアルキル、即ち
【化15】
又はアルケニル、即ち
【化16】
又はアリール、即ち
【化17】
又はアルコキシメチル、即ち
【化18】
又はアルケニルオキシメチル、即ち
【化19】
又はアリールオキシメチル、即ち
【化20】
又はアミノメチル、即ち
【化21】
であり、式中、
p=1、2、3、4、又は5であり、
k=5~500;好ましくは5~250、最も好ましくは10~200である;
並びに
【化22】
式中、R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、好ましくは、
R”はアルキル、即ち
【化23】
又はアルケニル、即ち
【化24】
又はアリール、即ち
【化25】
又はアルコキシメチル、即ち
【化26】
又はアルケニルオキシメチル、即ち
【化27】
又はアリールオキシメチル、即ち
【化28】
又はアミノメチル、即ち
【化29】
であり、式中、
q=3、4、又は5であり、
k=5~500、好ましくは5~250、最も好ましくは10~200である;
並びに
【化30】
式中、k=5~500、好ましくは5~250、最も好ましくは10~200である;
式中、YはZ-Wであり、詰まり、共有結合に依って連結された置換基Z及びWから組成され、
式中、
Zは-O-R’-O-であり、
Wは-R-CHCH-(O-CHRCH2-)-Vである;
式中、VはX又はX’である;
式中、R’は以下から成る群から選択される:
【化31】
式中、
R”=H、又はアルキル、アルケニル、アリール、アルコキシメチル、アルケニルオキシメチル、アリールオキシメチル、アミノメチル、及びチオアルコキシメチルであり、好ましくは、
R”はアルキル、即ち
【化32】
又はアルケニル、即ち
【化33】
又はアリール、即ち
【化34】
又はアルコキシメチル、即ち
【化35】
又はアルケニルオキシメチル、即ち
【化36】
又はアリールオキシメチル、即ち
【化37】
又はアミノメチル、即ち
【化38】
であり、式中、
s=0~20であり、
t=0~20であり、
更なるR’は以下である:
【化39】
【0042】
別の実施形態に於いては、-O-CH3、-O-Bz、又は-OHをポリマー鎖の端に官能基として有するP(EG-co-GME)並びにポリ(L-乳酸(lactid acid))(PLLA)のブロックコポリマー、即ち、ジブロックポリマーMeO-P(EG-co-GME)-b-PLLA-OH、BzO-P(EG-co-GME)-b-PLLA-OH又はHO-P(EG-co-GME)-b-PLLA-OH、及びHO-P(EG-co-GME)-b-PLLA-OH、並びにトリブロックポリマー、例えばHO-PLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLA-OHが好ましい。
【0043】
本発明の全ての実施形態に於いて、mは9から999の範囲に在り、より好ましくは30から800の範囲に在る。最も好ましくは、mは30から700の範囲に在る。此れ等の範囲は、医学的用途に最も適している且つPEGの既存の医学的用途に使用されるPEGのポリマー重量に対応する。更に其の上、本発明のポリマーは、好ましくは、500から50.000g/molの範囲の、より好ましくは1.000から50.000g/molの範囲の、最も好ましくは1.000から30.000g/molの範囲の、MALDI-TOFに依って決定される分子量Mを有する。此れ等の範囲は本発明の全ての実施形態に適用される。
【0044】
PEG標準に依るキャリブレーションに依って、DMF中のサイズ排除クロマトグラフィーに依って測定される本発明の全ての化合物の分散度は、1.15以下である。ポリマーの末端基忠実度は基X及び基Yに就いて少なくとも95%であり、分散度は1.10以下である。最も好ましいのは、ポリマーの末端基忠実度は基X及び基Yに就いて少なくとも98%であり、分散度は1.10以下である。
【0045】
前述の通り、本発明のポリマーは特に生物学的な系に於いてPEGと類似の特性を有する。因って、本ポリマーは其の用途の殆どに於いてPEGを置換し得る。本発明のポリマーは薬学及び医学分野に於ける使用の為に特に設計されている。其れ等は、同じ利益で以て獣医学及び他の生物学的用途にもまた使用され得る。此れ等の分野に於いて、本発明のポリマーはPEGと同じ機能を実現し得るが、縮減された免疫原性及び抗原性を有し得る。其れ等の不規則的構造故に、其れ等は強い免疫応答を誘起しない。本発明のポリマーは、ELISA試験に依って立証される通り特に抗PEG抗体に対する低い応答を示す。薬物及び他の薬学的に活性な化合物をマスキングする為に使用されるコンジュゲートは、通常は、生理学的に活性な化合物又はアジュバントに加えてPEGを含む。本発明のポリマーは何れかの斯かる用途に於いてPEGの代わりに使用され得る。同時に、本ポリマーに依って誘起される免疫応答は弱いか又は存在せず、其れに依ってPEGの使用の主な問題の1つを解決するであろう。
【0046】
因って、本発明の更なる実施形態は、先行するクレームの何れかのポリエーテルポリマーと基質とを含むコンジュゲートである。本発明のコンジュゲートは、次に於いては、ポリエーテルコンジュゲート化基質又はポリマーコンジュゲート化基質ともまた呼称され得る。本発明のコンジュゲートでは、本発明のポリマーが基質に直接的に又は間接的に共有結合に依って結合される。本発明のポリマーは、間接的な結合を構成するスペーサーに依って基質に結合され得る。基質は、薬学的に活性な化合物、アジュバント、表面、及び界面から成る群から選択され得る。薬学的に活性な化合物は、好ましくは、低分子量薬物、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、糖蛋白質、ポリヌクレオチド、及び多糖から成る群から選択される。アジュバントは好ましくはベシクル又は担体であり、此れ等は好ましくは薬学的に活性な化合物を担持する為に使用される。アジュバントは、好ましくは、ナノキャリア、リポソーム構造、脂質構造、及びリポソームから成る群から選択される。本発明に使用可能なナノキャリアは、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、デンドリマー、金ナノロッド、脂質ナノ粒子、リポソーム、ミセル、ナノ結晶、ニオソーム、ポリマーナノ粒子(PNP)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、及びウイルスに基づくナノ粒子(VNP)から成る群から選択される。更に好ましい実施形態に於いて、基質は、低分子量薬物、ナノキャリア、リポソーム構造、ペプチド、ポリペプチド、蛋白質、糖蛋白質、ポリヌクレオチド、多糖、脂質構造、リポソーム、表面、及び界面から成る群から選択される。又、此れ等の実施形態に於いて、基質は直接的に共有結合に依って又はスペーサーに依ってポリマーに結合され得る。ウシ血清アルブミンとの本発明のコンジュゲートが特に好ましい。
【0047】
本発明のポリマーは、基質に直接的に共有結合に依って又は何れかの種類の(or)スペーサーに依って結合され得る。好ましくは、本発明のポリマーのω末端のヒドロキシ残基が、基質又はスペーサーをポリマーに結合する為に使用される。此れは最も経済的である。何故なら、Xが不活性な基であり且つYがOHである本発明のポリマーは最も容易に調製され得るからである(実施例参照)。PEGのω末端の端のOH基に対する基質のコンジュゲート化は良く確立されている。同じプロセスは本発明のポリマーに使用され得る。然し乍ら、基質はポリマーのα末端にもまた結合され得る。本発明のポリマーは1つ超の基質にもまた結合され得る。此れは、ポリマーのα末端及びω末端の使用に依って、並びに複数の基質に結合し得るポリマー又はスペーサーの官能性末端基を使用する事に依って為され得る。此れは、基質が結合され得る官能基を有するコモノマーの使用に依ってもまた達成され得る。本発明のポリマーと基質との間の結合は、PEGを基質に結合する為に現行で使用される何れかの手段に依って調製され得る。本発明のポリマーの複数の高分子を1つの基質に結合する事もまた可能である。此れは、リポソームを包含する全ての種類のベシクルに特に有用である。
【0048】
PEGコンジュゲートの典型例は、ビオンテック(BioNTech)SE及びファイザー(Pfizer)Inc.並びにモデルナ(Moderna)Inc.社のCovid-19に対するワクチンに必須である脂質ナノ粒子である。其れは脂質のPEGコンジュゲートを含み、脂質ナノ粒子(LNP)は、薬学的に活性な物質であるmRNAを封入及び保護する為に使用される。此れ等のコンジュゲートのPEGは、本発明のポリマーに依って置換され、其れに依って、コンジュゲートのPEGポリマーの効果を保持し、同時にコンジュゲートに対する免疫応答を縮減し得る。此の種類の更なるワクチンはキュアバック(Curevac)N.V.のCovid-19ワクチンである。PEGが本ポリマーに依って置換され得るPEGコンジュゲートを含む更なる薬物が次に列記される。
【0049】
【表1A】
【表1B】
【表1C】
【0050】
本発明の別の実施形態に於いて、本発明は、以下のステップを含むアニオン開環共重合(AROP)に依るポリエーテルポリマーの調製の為のプロセスに関する:
- アニオンAnを提供する事、
- 式
【化40】
の少なくとも1つのモノマーを追加し、式中、Rは、式[I]又は[II]の何れかに就いて記載されている通り定義される通りである事、
- -10から90℃の範囲の温度で重合が進む事を許す事、
モノマーは1wt%未満のエピクロロヒドリンを含む。
【0051】
本発明のプロセスに於いて、アニオンAnは、アニオン開環共重合(AROP)に好適なアニオンでなければならない。当業者は、此の目的の為の公知のアニオンの中から容易に選び得る。Anアニオンは、アルキルアニオン、ヒドリド、OH、アルコキシ、SH、チオアルコキシ、アミンアニオン、アミドアニオン、イミドアニオン、及び其れ等の組み合わせから成る群から選択され得る。アルキルアニオン及びヒドリドアニオンは、金属アルキル又は金属水素化物化合物の形態で提供され得る。アルコキシアニオン及びチオアルコキシアニオンは、残基Xに就いて本明細書に於いて定義されるアルコキシ基及びアリールオキシ基及びアラルコキシ基の何れかと同じ構造を有する対応するアニオンであり得る。然し乍ら、好ましくは、アルコキシアニオン及びチオアルコキシアニオンは第3級アルコキシアニオンではない。イミドアニオンは好ましくはフタルイミドアニオンである。式[Ia]、[Ic]、[IIa]、及び[IIc]のポリマーは、第1に、対応する量のエチレンオキシドをアニオンAnに追加する事と、エチレンオキシドの全てが消費される迄、-10から90℃の範囲の温度で重合が進む事を許す事とに依って調製され得る。爾後に、式
【化41】
の少なくとも(least)1つのモノマーを追加するステップと、-10から90℃の範囲の温度で重合が進む事を許すステップとが行われる。此の様式で、本発明のポリマーのα末端に隣接する繰り返し単位は、PEGと正に同じ構造を提供される。式[Ia]、[Ic]、[IIa]、及び[IIc]のポリマーは式X-(CHCH-O-) のアニオンの使用に依ってもまた調製され得て、式中、aは式[Ia]、[Ic]、[IIa]、及び[IIc]の何れかに就いて定義されている通りであり、XはXに就いて本明細書に於いて定義される何れかの残基である。X’はX’に就いて本明細書に於いて定義される何れかの残基である。此れは好ましい方法である。Xがアルキル、アルコキシ、ジアルキルアミンアニオン、又は(RCO)である式X-(CHCH-O-) の斯かるアニオンの使用が特に好ましい。MeOCHCH、MeO(CHCHO) 、ベンジルOCHCH、BzO(CHCHO) 、(Bz)N-CHCH、(Bz)N-(CHCHO) 、フタルイミド-CHCH、フタルイミド-(CHCHO) から成る群から選択されるアニオンの使用が更により好ましく、式中、Meはメチルであり、Bzはベンジルである。MeO(CHCHO) 、BzOCHCH、及び(Bz)N-CHCHが最も好ましい。
【0052】
加えて、ABAトリブロックコポリマーの合成を可能化する二官能性開始α,ω-OH-P(EG-co-GME)コポリマーを合成する為に、2つのヒドロキシル末端を持つP(EG-co-GME)が、環式ポリエステル、環式ジエステル、又は環式モノエステル、例えばL-ラクチド、D-ラクチド、メソラクチド、環式カーボネート、例えばトリメチレンカーボネート(TMC)、2,2-ジメチル-トリメチレンカーボネート(DTC)、5-ブチル-1,3-ジオキサン-2-オン、及び1,3-ジオキセパン-2-オン;グリコリド、他の環式エステル及びラクタム、N-カルボキシ無水物の開環重合の為の高分子開始剤として使用される。本発明の或る実施形態に於いて、反応はL-ラクチドを使用して行われ、例えばPLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLAの合成を可能化し、式中、PLLAは
【化42】
を意味し、式中、k=5~500、好ましくは5~250、最も好ましくは10~200である。
【0053】
重合は、ルイス酸、例えばトリエチルアルミニウム(AlEt)及びビス-(2-エチルヘキサン酸)錫(II)(Sn(Oct)2)又は有機塩基、例えばDBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)及びN-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンに依って触媒される。記載されている手続きはトリブロックコポリマーに限定されない。一官能性P(EG-co-GME)高分子開始剤の利用に依って、ジブロックコポリマー(P(EG-co-GME)-b-PLLA)が得られる。
【0054】
此れ等の実施形態に於いて、Anはアルコキシ、チオアルコキシ、及びアミンアニオンから成る群から選択され得る。
【0055】
更に、調製の最後のステップに於いては、治療薬実体に対する全ての確立されたカップリング戦略を経過し得るポリマーのω末端の第1級ヒドロキシル末端基を保証する為に、少量の純粋なEOの追加が可能である。此れは、式[Ib]、[Ic]、[IIb]、及び[IIc]を有する本発明のポリマーに至る。
【0056】
Anアニオンに対する対イオンは、好ましくは、Na、K、及びCsから成る群から選択される。アニオンAnは不活性な溶媒中で提供され得る。
【0057】
エポキシドのアニオン開環重合は、DMSOの様な非プロトン性溶媒又は他の極性の非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)、メチル-THF、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ベンゼン、トルエン、キシレン、HMPA、ジオキサン、ジグリム等の中で実施され得る。驚くべき事に、ランダムコポリマーは非プロトン性溶媒DMSOを使用する事に依って合成され得て、統計コポリマーは極性の非プロトン性溶媒、例えばトルエンを使用する事に依って合成され得るという事が見出された。此れは図9、10、14、及び15から分かる。
【0058】
溶媒は好ましくは非プロトン性溶媒、最も好ましくはジメチルスルホキシド(DMSO)である。又、好ましくは、反応は同じ溶媒中で行われる。
【0059】
アルキルグリシジルエーテルに依るアニオン開環重合は、次の通り、連鎖移動反応をより経過し易い:
【化43】
【0060】
此れ等の副反応は温度に依って増大する。因って、高分子量ポリマーは、反応温度が90℃よりも上ではない場合にのみ得られ得る。連鎖移動反応は、分子量の幅広い分布を、因って高い分散度を齎す。因って、より低い重合温度は、より低い分散度を有する本発明のポリマーをもまた提供する。他方で、アルキルグリシジルエーテルはアニオン開環重合に於いてエチレンオキシドと同じくらい反応性である。此の理由から、重合は-10℃程も低い温度で行われ得る。好ましくは、重合は、10から70℃の範囲の温度で、より好ましいのは10から60℃の範囲の温度で行われる。
【0061】
アニオン開環重合の更なる問題は、市販のアルキルグリシジルエーテルはエピクロロヒドリンから調製されるという事である。エピクロロヒドリンの一部はアルキルグリシジルエーテル中に残る。アルキルグリシジルエーテルの存在は次の通り停止反応に至る:
【化44】
【0062】
此れは、翻って、生成物の低い分子量及び高い分散度に至る。因って、本発明のポリマーは、-10から90℃以下の反応温度に依って、且つ1wt%未満のエピクロロヒドリンを含むアルキルグリシジルエーテルの使用に依ってのみアクセス可能である。好ましくは、アルキルグリシジルエーテルは、0.5wt%未満のエピクロロヒドリンを含み、より好ましくは0.1wt%未満を含む。最も好ましくは、アルキルグリシジルエーテルはエピクロロヒドリンを不含である。グリシジルメチルエーテル及びエピクロロヒドリンは類似の沸点、例えばエピクロロヒドリンは117.9℃、グリシジルメチルエーテルは110℃を有するので、必要な程度迄のグリシジルメチルエーテルからのエピクロロヒドリンの除去は不可能である。エピクロロヒドリン不含のアルキルグリシジルエーテルの調製の為の手続きは、本発明の例1で提供される。
【0063】
更に其の上、高い温度は出発アニオンAn又はリビングポリマーの基Xの副反応にもまた至る。因って、前述の範囲の温度の限定は、本発明のポリマーのα末端に於ける末端基忠実度をもまた改善し、X残基の95%以上の末端基忠実度を許す。アルキルグリシジルエーテルの重合の為の他の公知の方法は、本ポリマーに要求される低い分散度を提供しない。又、其れ等は同じ高い末端基忠実度を許さない。
【0064】
本発明の(or)ランダム又は統計コポリマーを提供する為には、少なくとも2つの異なる種類のモノマーをアニオンに追加する事が必要である。用いられる両方のアルキルグリシジルエーテル及びエチレンオキシドの反応性比は、0.7から1.3又は0.6から1.7の範囲に在る。グリシジルメチルエーテル及びエチレンオキシドでは、反応性比は、DMSO中の重合では0.98から1.02の範囲に在る。此れは殆ど理想的にランダムなコポリマーを齎す。他の形態の、即ちブロック構造、ブロック様構造、又はテーパード若しくはグラジエント構造を有するコポリマーは、公知の方法に従って調製され得る。ブロックコポリマーは、リビングポリマーへの異なるモノマーの爾後の追加に依って容易に調製され得る。因って、少なくとも1つのモノマーを追加するステップ及び重合が進む事を許すステップが少なくとも1回繰り返され、其れに依って少なくとも1つの1回目とは異なるモノマーが使用される本発明のプロセスが好ましい。
【0065】
本発明の更なる実施形態は、基質とのポリマーのコンジュゲートの調製の為の本発明のポリエーテルポリマーの使用である。基質は、本発明のコンジュゲートに就いて本明細書に於いて定義される通りである。基質は好ましくは生物活性な化合物である。PEGのコンジュゲートの調製の為の良く開発されたケミストリーが在り、此れは当業者には公知である。同じケミストリーが本発明のコンジュゲートの調製に使用され得る。具体的には脂質ナノ粒子に基づく、ワクチンに於ける使用の為のコンジュゲート化脂質の調製の為の本発明の使用が好ましい。此れ等のナノ粒子は、好ましくは、COVID-19に対して使用されるナノ粒子である。ウシ血清アルブミン(BSA)との本発明のポリマーのコンジュゲートが好ましい。ポリマーのy基がN-スクシンイミジルカーボネート基である本発明のポリマーとのコンジュゲートが特に好ましい。ウシ血清アルブミンが斯かる基Yに依って本発明のポリマーにコンジュゲート化される本ポリマーのコンジュゲートが更により好ましい。ウシ血清アルブミンに対するα-BzO-ω-N-スクシンイミジルカーボネート-P(EG-co-GME)のコンジュゲート化が最も好ましい。
【0066】
本発明の追加の実施形態は本発明のコンジュゲートの調製に関する。上で論じられている通り、コンジュゲートは、PEGのコンジュゲートの調製の為の何れかの公知のプロセスに依って調製され得る。加えて、本発明は、第1に本発明のポリマーの調製の為のプロセスが行われ、其れから基質がリビングポリマーに追加されるプロセスを提供し、基質は、リビングポリマーと反応してコンジュゲートを形成する官能基を有する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1図1は、本発明のポリマーの3つ及びmPEGのELISA試験の結果を示す。
図2】乃至
図4】此れ等の図は、DMSO中で合成された本発明のポリマーのSECトレースを示し、図4は、加えて市販のmPEGのSECトレースを示す。
図5図5はα-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)のH-NMRスペクトルを示す。
図6図6はα-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)のMALDI-TOFスペクトルを示す。
図7図7はα-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)の曇点を示す。
図8図8は、α-MeO-P(PEG0.88-b-PGME0.22)、即ち本発明のブロックコポリマーのMALDI-TOFスペクトルを示す。
図9図9は、本発明のポリマーの調製の間のモノマーの減少して行くH-NMRシグナルを示す。
図10図10は、アニオン開環重合に於けるエチレンオキシド及びグリシジルメチルエーテルの相対的反応性の研究の結果を示す。
図11図11は、低い末端基忠実度に至るトリイソブチルアルミニウムを使用するモノマー活性化開環重合のメカニズム及び副反応を示す。式中、a)はエポキシド活性化;b)は「アート」錯体の形成;c)は開始及び生長;d)は停止;e)は副反応を示す。
図12図12は、異なる温度に於いてトルエン中で合成されたEG-GMEコポリマーのSECトレースを示す。
図13図13は、25℃に於いてトルエン中で合成されたBnO-P(EG-co-GME)のMALDI-TOF-MSを示す。
図14図14は、共重合の異なる時間に於けるトルエン-d中のEO及びGMEの共重合のスタックNMRスペクトルを示す。
図15図15は、得られた反応性比に基づく組成プロファイルを示す。
図16図16は、一定濃度に於ける異なるmol%のGMEを有するP(EG-co-GME)の濁度測定を示す。
図17図17は、異なる末端基を有するP(EG-co-GME)の合成を示す。
図18図18は、異なる末端基を有するEO-GMEコポリマーのSECトレースを示す。
図19図19はα,ω-OH-P(EG-co-GME)及び2つのPLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLAのSECトレースを示す。
図20図20はPLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLAのH-NMRスペクトルを示す。
図21図21はPLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLAのH-NMR-DOSYスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0068】
試薬:
別様に注意されない限り、化学薬品はTCIヨーロッパ(TCI EUROPE)N.V.、アクロスオーガニクス(Acros Organics)BVBA、カールルス(Carl Roth)GmbH、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)Co.LLC、及びハネウェルリサーチケミカルズ(Honeywell Research Chemicals)から購入した。エチレンオキシドはエア・リキード(Air Liquide)S.A.から得た。重水素化溶媒はデューテロ(Deutero)GmbHから購入した。THFは使う前に塩基性酸化アルミニウムに依ってフラッシュした。グリシジルメチルエーテルは重合前にCaHに依って乾燥し、クライオトランスファーした。
【0069】
測定:
H及び13C-NMRスペクトルはブルカーAvanceIII-HD300スペクトロメータに依って300MHzで記録し、重水素化溶媒の残留プロトンシグナルを内部参照した。H-DOSY-NMRのケースでは、スペクトルはブルカーAvanceIII-HD400スペクトロメータに依って400MHzで記録し、重水素化溶媒の残留プロトンシグナルを内部参照した。
【0070】
全てのサンプルのM、M、及び分散度(M/M=PDI)は、対応するサイズ排除クロマトグラムから決定した(屈折率(RI)検出器、DMF、PEG標準に依るキャリブレーション)。
【0071】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定は、ジメチルホルムアミド(1g/LのLiBrを有するDMF)を移動相(流量1mL/min)として、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)300/100/40カラムに依って50℃で行った。ポリマー濃度は1mg/mLであった。キャリブレーションはポリ(エチレングリコール)標準(ポリマースタンダーズサービス(Polymer Standards Service)GmbH、マインツ、ドイツから)を使用して実施した。
【0072】
示差走査熱量計法(DSC)測定は、-100から100℃の温度範囲に於いて10K/minの加熱速度でパーキンエルマーDSC8500で実施した。サンプルの温度履歴を2つの冷却及び2つの加熱サイクルに依って排除した。各サンプルに就いて、ガラス転移及び融解温度は第2の加熱の曲線から得た。
【0073】
MALDI-ToF-MS測定は、ブルカーautoflex-maX-MALDI-TOF/TOFで実施した。トリフルオロ酢酸のカリウム塩及びトランス-2-[3-(4-tert-ブチルフェニル)-2-メチル-2-プロペニリデン]マロノニトリル(DCTB)を、其々イオン化塩及びマトリックスとして利用した。
【0074】
例1:グリシジルメチルエーテル(GME)の合成
【化45】
【0075】
a)アリルメチルエーテル(10.0g、139mmol)を274mLジクロロメタン(DCM)に溶解し、m-クロロ過安息香酸(m-CPBA、70%、37.6g、153mmol(m-CPBAに基づく))を溶液に追加した。一晩の攪拌後に、溶液を濾過し、ゆっくり減圧濃縮した。クルードなグリシジルメチルエーテルをクライオトランスファーに依って固体不純物から分離した。残留ジクロロメタンのゆっくりとした真空蒸発は、純粋なグリシジルメチルエーテルを無色液体として与えた;収率41%。
【0076】
b)1-クロロ-3-メトキシ-プロパン-2-オール(3.00g、2.56mL、24.1mmol)及び無水硫酸ナトリウム(1.02g、7.23mmol)を、マグネチックスターラーを備えるフラスコに追加し、水浴に依って冷却した。粉砕された水酸化ナトリウム(1.25g、31.3mmol)を撹拌下で追加した。完全な反応(TLCコントロール)後に、クルードな生成物を真空下で反応フラスコからクライオトランスファーし、冷却下でCaH2に依って乾燥した。追加のクライオトランスファー後に、GMEを93%の収率で無色液体として得た。
【0077】
例2:ランダムコポリマーの調製の為の一般的な手続き
α-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)の合成
Ph-CH-O-CH-CH-O-[CH-CH-O-]0.51-[CHCH(CH-O-CH)-O-]0.49
水酸化セシウム一水和物(28.0mg、118μmol)をTHF-水混合物に溶解し、テフロン(登録商標)ストップコック及びセプタムを備える反応フラスコに移した。2-ベンジルオキシ-エタノール(20.0mg、18.7μL、131μmol)をベンゼンに溶解し、反応フラスコに追加した。溶媒のゆっくりとした蒸発後に、齎された固体を60℃で一晩高真空乾燥した。残渣をDMSO(5mL)に溶解し、溶液を-78℃に冷却した。GME(367mg、374μL、4.16mmol)をシリンジに依って追加し、EO(183mg、189μL、4.16mmol)を目盛り付きアンプルから反応フラスコにクライオトランスファーした。溶液を48hに渡って室温に於いて真空下で撹拌した。其の後に、溶液を過剰なクロロホルムに注加し、有機相を水(3回)及びブラインに対して抽出し、MgSOに依って乾燥し、濾過した。溶媒の蒸発及び高真空乾燥後に、P(EG0.51-co-GME0.49)を定量的な収率で粘性液体として得た。生成物のデータは表2及び3、項目eに見出され得る。
【0078】
例3:mPEG-b-PGMEの合成
Me-O-[CH-CH-O-]0.78-[CHCH(CH-O-CH)-O-]0.22
カリウムtert-ブトキシド(13.0mg、118μmol)をテトラヒドロフラン(THF)-水混合物に溶解し、テフロンストップコック及びセプタムを備える反応フラスコに移した。メトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG、M2kg/mol;250mg、125μmol)をベンゼンに溶解し、反応フラスコに追加した。ゆっくりとした蒸発後に、残渣を80℃で一晩高真空乾燥した。残渣をジメチルスルホキシド(DMSO、5mL)に溶解し、溶液を-78℃に冷却した。グリシジルメチルエーテル(253mg、258μL、2.88mmol)を反応フラスコにクライオトランスファーした。溶液を55℃に加熱し、24hに渡って真空下で攪拌した。其の後に、溶液を過剰なクロロホルムに注加し、有機相を水(3回)及びブラインに対して抽出し、MgSOに依って乾燥し、濾過した。氷冷ジエチルエーテルに依る沈殿後に、mPEG-b-PGME4kを無色固体として得た;定量的な収率。表2及び3、項目lは此のポリマーのデータを示す。
【0079】
例4:α-BzO-ω-N-スクシンイミジルカーボネート-P(EG-co-GME)の合成
【化46】
【0080】
N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(3.5mg、13.8μmol)を、乾燥したCHCN(1ml)中の例2からのα-BzO-P(EG-co-GME)(50.0mg、4.6μmol)の撹拌溶液に室温で18hに渡って追加する。反応混合物をジクロロメタンに溶解し、飽和NaHCO、水、及びブラインに依って抽出し、MgSOに依って乾燥し、濾過した。溶媒を減圧除去し、ポリマーを真空乾燥した。生成物を白色固体として得た;定量的な収率。
【0081】
例5:ウシ血清アルブミン(BSA)に対するα-BzO-ω-N-スクシンイミジルカーボネート-P(EG-co-GME)のコンジュゲート化。
【化47】
【0082】
ウシ血清アルブミン(5mg、0.07μmol)及び例4からのα-BzO-ω-N-スクシンイミジルカーボネート-P(EG-co-GME)(16.9mg、2.6μmol)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS緩衝液)中で1hに渡って撹拌した。未反応のポリマーを、25kDaメンブレンフィルターに依って脱イオン水中で透析除去した。其れから、コンジュゲートを凍結乾燥に依って乾燥し、定量的な収率で得た。此のコンジュゲートの調製では、外方のリジン基(30~35)をコンジュゲート化の為に標的化する。
【0083】
例6:競合酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
コポリマーサンプルの項目c、d、及びeの相互作用を、競合PEG-ELISAキットに依って、ネズミモノクローナル西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化抗PEG抗体(HRP抗PEG)(ライフダイアグノスティックス(Life diagnostics)Inc.、ウエストチェスター、PA、USA)を使用して評価した。0から4600μg・ml-1の範囲である濃度のサンプルを希釈緩衝液中に調製した。加えて、5000g・mol-1の分子量を有するmPEGを、比較の為の内部標準として利用した。50μlの各調製されたサンプルをPEGプレコーティング96ウェルプレートに分注し、50μlのHRP抗PEGを各ウェルに追加した。溶液を1hに渡って25℃でマイクロプレートシェーカーに依ってインキュベーションし、其れから、各ウェル当たり400μlの洗浄緩衝液に依って6回洗浄した。残留液滴の除去後に、100μlの3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジアミンを各ウェルに追加し、溶液をマイクロプレートシェーカー上で20minに渡って混合した。反応を100μlのストップ溶液の追加に依ってストップし、450nmの吸光度を5分以内に読んだ。
【0084】
ELISAデータの分析:決定された吸光度値を正規化して、最大の結合のパーセントを視覚化した。サンプル濃度をlog10の関数に変換した。次の等式を使用してシグモイドフィットを計算した。aは上、bは下限、cは変曲点、dはヒルスロープを表す。
y=a+(b-a)/1+10(c-x)*d
【0085】
例7:α-BzO-P(EG-co-GME)の合成の速度論
α-BzO-P(EG-co-GME)の合成を、完全重水素化DMSO中でオンラインの其の場H-NMR速度論測定の為に繰り返した。95mgグリシジルメチルエーテル(95μl、1.1μmol)及び32mgエチレンオキシド(33μl、7.1μmol)、即ち60%グリシジルメチルエーテル及び40%エチレンオキシドを、完全重水素化DMSOに溶解した。経時的なエチレンオキシド及びグリシジルメチルエーテルの消費をH-NMR分光法に依って測定した。エチレンオキシド濃度の尺度として、約2.6ppmに於けるエチレンオキシドのプロトンのシグナルを使用した。グリシジルメチルエーテルでは、約2.75及び3.1ppmに吸収を有するオキシラン環のプロトンのシグナルを使用した。図9は、経時的な2つのモノマーの選択されたH-NMRシグナルの減少を示す。図10は総変換率に対するモノマー消費Mx,t/Mx,t=0のプロットを示す。分かる通り、エチレンオキシド及びグリシジルメチルエーテルは正に同じ速度で消費される。此のデータは、本発明のコポリマーが殆ど理想的なランダムコポリマーであるという事を示している。
【0086】
更に、其の場H-NMR速度論を実施して、図14から分かる通り共重合速度論に対するDMSOからトルエンへの溶媒の変更の影響を検討した。加えて、共重合の間のモノマーシグナルの減少に基づいて、rEO=0.61及びrGME=1.65の共重合パラメータが得られ、EOと比べてGMEのより高い反応性を原因とする共重合の始まりに於けるEOと比べてGME繰り返し単位のやや好ましい組み込みを示し、図15から分かる通り、統計コポリマーに至った。
【0087】
例8:図17に従うmP(EG0.66-co-GME0.34)(1)の合成
mP(EG0.66-co-GME0.34)(1):ジエチレングリコールモノメチルエーテル(50.8mg、420μmol)をベンゼン(5mL)に溶解し、シリンジに依って、フレームドライされたフラスコに定常真空下で移した。カリウムtert-ブトキシド(42.7mg、380μmol)を安定剤不含THF(3mL)及び小さい数量のミリポア水に溶解し、フラスコに移した。高真空をフラスコに適用し、溶媒を高真空下で除去した。齎された開始剤塩を高真空下で60℃に於いて一晩乾燥し、最後に、乾燥したDMSO(5mL)に定常真空下で溶解した。齎された溶液を-90℃で凍結した後に、GME(1.03g、11.6mmol)をシリンジに依ってフラスコに追加した。EO(1.04g、1.00mL、23.6mmol)を、冷却浴を除去する前にクライオトランスファーに依ってフラスコに追加し、反応混合物が室温に温まる事を許した。反応が72hに渡って室温で撹拌する事を許した。爾後に、2MのHCl(500μL)及びMeOH(500μL)の混合物を追加して重合を停止した。
【0088】
反応混合物をクロロホルム(20mL)に追加し、ミリポア水(10mL)に依って3回、ブラインに依って1回洗浄した。溶媒を真空下で除去する前に、有機相をMgSO4に依って乾燥した。齎されたポリマーをMeOH(2kDaのMWCO)に対して24hに渡って透析し、高真空下で一晩フリーズドライして、1.82g(86%)の図17のポリマー(1)を淡黄色の粘性液体として与えた。生成物のデータは表2及び3、項目nに見出され得る。
【0089】
更に、変動する量のモノマーに依るα-BzO-P(EG-co-GME)を、其々55℃の重合温度及びジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりに開始剤としてのベンジルオキシエタノールに依って、同じ手続きに従って調製した(表2及び3の項目c及びd)。
【0090】
例9:図17に従うmP(EG0.66-co-GME0.34)-Ms(2)の合成
mP(EG0.66-co-GME0.34)-Ms(2):ポリマー(1)(600mg、120μmol)をベンゼン(5mL)に溶解し、フレームドライされたフラスコにアルゴンフロー下で追加した。ベンゼンを高真空下でゆっくり除去した。ポリマーを60℃に加熱し、一晩高真空乾燥した。アルゴンフロー下で、乾燥したポリマーを乾燥したDCM(10mL)に溶解し、トリエチルアミン(97.1mg、960μmol)及びメタンスルホニルクロリド(110mg、960μmol)を氷冷下で追加した。混合物が72hに渡って室温に於いてアルゴン下で撹拌する事を許した。其の後に、混合物をミリポア水に依って3回、ブラインに依って1回洗浄した。有機相をMgSO4に依って乾燥し、溶媒を高真空下で除去して、427mg(70%)のメシル化ポリマー(2)を暗黄色の粘性液体として与えた。生成物のデータは表2及び3、項目oに見出され得る。
【0091】
例10:図17に従うmP(EG0.66-co-GME0.34)-N(3)の合成
ポリマー(2)(400mg、80.0μg)をベンゼン(5mL)に溶解し、フレームドライされたフラスコにアルゴンフロー下で追加した。ベンゼンを高真空下で除去した。ポリマーを更に60℃に加熱し、高真空下で一晩乾燥した。爾後に、乾燥したポリマーを乾燥したDMF(8mL)に溶解し、アジ化ナトリウム(41.6mg、640μmol)を乾燥したDMF(2mL)中の懸濁液としてアルゴンフロー下で追加した。反応混合物を65℃で72hに渡って撹拌した。溶媒を高真空下で除去し、残渣をDCM(10mL)に懸濁し、超音波浴に依って20minに渡って処置した。残りの残渣を濾別し、濾液をミリポア水に依って3回、ブラインに依って1回洗浄した。有機相をMgSOに依って乾燥し、溶媒を除去して、284mg(71%)のポリマー(3)を暗黄色の粘性液体として与えた。生成物のデータは表2及び3、項目pに見出され得る。
【0092】
例11:図17に従うmP(EG0.66-co-GME0.34)-NH(4)
ポリマー(3)(180mg、40.0μg)をEtOH(10mL)に溶解した。触媒量のPd/C10wt%(13.8mg、10.0μmolのPd)を溶液に追加し、過剰なH2ガスを充填されたバルーンをフラスコに接続した。溶媒が蒸発し始める迄、真空をフラスコに適用し、フラスコを爾後にアルゴンに依ってフラッシュした。此のプロセスをもう2回繰り返した。其の後に、溶媒が蒸発し始める迄、真空を適用し、フラスコをH2ガスに依ってフラッシュした。最後のステップをもう2回繰り返した。反応が1atmのH2ガス下で48hに渡って撹拌する事を許した。24h後に、H2バルーンを再充填して、H2に依る雰囲気の飽和を保証した。48h後に、バルーンを除去し、触媒をゼオライトに依って濾別し、溶媒を高真空下で除去して、142mg(79%)のアミノを末端とするポリマー(4)を与えた。生成物のデータは表2及び3、項目qに見出され得る。
【0093】
例12:α,ω-OH-P(EG-co-GME)の合成
2,2’-((プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)(BHEPP)(123mg、389μmol)をベンゼン(5mL)に溶解し、シリンジに依って、フレームドライされたフラスコにアルゴン下で移した。カリウムtert-ブトキシド(43.6mg、389μmol)を安定剤不含THF(3mL)及び小さい数量のミリポア水に溶解し、フラスコに移した。高真空をフラスコに適用し、溶媒を高真空下で除去した。齎された開始剤塩を高真空下で70℃に於いて一晩乾燥し、最後に、乾燥したDMSO(5mL)に定常真空下で溶解した。齎された溶液を-78℃で凍結した後に、GME(873mg、890μL、9.91mmol)をシリンジに依ってフラスコに追加した。EO(1.46g、1.50mL、33.1mmol)を、冷却浴を除去する前にクライオトランスファーに依ってフラスコに追加し、反応混合物が室温に温まる事を許した。反応が22hに渡って55℃で撹拌する事を許した。フラスコをベントした後に、Dowex(登録商標)(30mg)及び水(4mL)を溶液に追加した。水に対する透析及び凍結乾燥の後に、ポリマーを粘性液体として得た(1.36g、57%)。生成物のデータは表2及び3、項目rに見出され得る。
【0094】
例13:PLLA69-b-P(EG-co-GME)-b-PLLA70の合成
グローブボックスに於いて、乾燥したα,ω-OH-P(EG-co-GME)(400mg、66.7μmol)及びL-ラクチド(577mg、4.00mmol)を乾燥したDCM(3mL)に溶解した。DCM(70.0μL)に溶解されたDBU(6.08mg、40.0μmol)を追加し、齎された溶液を30minに渡って撹拌した。DCM(3mL)中の安息香酸(24.4mg、200μmol)の追加後に、クルードなポリマーを冷ジエチルエーテルに依って沈殿させた。最後のステップを2回繰り返した。ブロックコポリマーがベンゼンからの凍結乾燥後に無色固体として得られた(79%)。
【0095】
例14:トルエン中のα-BzO-P(EG0.50-co-GME0.50)の合成
温度及び溶媒以外の他の共重合条件を例8と比較して一定の儘にして、共重合に対する温度及び溶媒の影響だけを検討した。検討された温度範囲(25~50℃)では、トルエン中のGME-EO共重合は、図12から分かる通り、低い分散度<1.10及び単峰性の狭い分子量分布を有する良く定義されたコポリマーを齎す。
【0096】
図13から分かる通り、α-BzO-P(EG0.50-co-GME0.50)(トルエン、25℃)のMALDI-ToF-MSは、理論的及び実験的M値の明瞭な重なりを示し(2kg・mol-1)、DMSO中の共重合から既知の例外的に高い末端基忠実度(>99%)を明らかにしている。
【0097】
生成物のデータは表2及び3、項目sからuに見出され得る。
【0098】
結果の考察
表2、3、4、及び5並びに図1から21は、調製されたポリマーの特性を示す。其れ等を次で論じる。
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
表4は其々の化合物の温度特性を示す。ポリマーを、例8に従って、其々変動する量のモノマー及びジエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりに開始剤としてのベンジルオキシエタノールに依って調製した。EO及びGMEのランダムコポリマーの曇点を、高い量(≧59mol%)のGMEを含有するコポリマーのタービディメーター測定に依って検討した。曇点は50%の透過率で定義された。DMSO中のアニオン開環重合(AROP)に依って合成されたベンジルオキシに依って開始されるコポリマーを、測定に使用した。
【0103】
コポリマーの曇点は、ポリマーバックボーン上のGMEの増大して行く量に依って減少する。増大して行くmol%のGMEに依る曇点の減少にも拘わらず、生理条件に於ける水溶性が全てのコポリマーに就いて保証される。
【0104】
免疫原性
表3から分かる通り、項目cからe及びlは、約同じ分子量、即ち約4から5kg/molのMを有するエチレンオキシド繰り返し単位及びグリシジルメチルエーテル繰り返し単位から成る本発明のコポリマーを示す。グリシジルメチルエーテル繰り返し単位の量はcからeで16%から49%に増大して行く(表2、項目cからe及びl参照)。図1は、ポリマーcからe及び市販のmPEGのELISA試験結果を示す。其れは、ml当たりのナノグラムに依るポリマー濃度のlog10関数に対して、450nmの波長に於ける正規化された吸収の関数を示し、因って、検討されたポリマー濃度に依る抗PEG抗体相互作用を例示している。ELISAデータは、アルキル側鎖の増大して行く濃度の強い影響が観察され得るという事を示している(x軸は対数スケールを有するという事に注意する事は重要である)。ポリエーテル構造上に組み込まれるGMEの増大して行く量では、コポリマーとAPAの間の相互作用を観察する為には、有意により高いポリマー濃度が必要である。特記すべき事に、49mol%のGMEでは、APAとコポリマーの間の相互作用は全く存在しない。此れは、其々のコポリマーがAPAに依って検出され得ない、即ち其れが免疫原性ではないという事を意味する。
【0105】
分散度
表3、項目cからe及びlから分かる通り、本発明の全てのポリマーは、非常に低い、即ち1.10又はより低い分散度を有する。視覚化の為に、此れ等のポリマーのSECトレースを図2から4及び12に示す。加えて、図4はmPEGのSECトレースを示す。本発明は非常に狭い分子量分布を有するポリマーを提供するという事が明瞭に分かる。
【0106】
本発明のポリマーの調製及び純度
図5は、α-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)、即ち例2のポリマーのH-NMRスペクトルを示す(表2及び3の項目e)。生成物は、更なる精製無しに、例2から得られた通りである。分かる通り、本方法は、狭い分子量分布のポリマーのみならず、面倒な精製ステップの必要無しの非常に純粋なポリマーをもまた提供する。此れは薬学的用途に於ける使用の為の重要な特徴である。
【0107】
二官能性開始α,ω-OH-P(EG-co-GME)コポリマーの合成は、ABAトリブロックコポリマーの合成を可能化する。此のケースでは、2つのヒドロキシル末端を持つP(EG-co-GME)(例12)をL-ラクチドの開環重合の為の高分子開始剤として使用し、PLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLAの合成を可能化した。式中、PLLAは
【化48】
である。重合は有機塩基DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)に依って触媒される。
【0108】
図19は、高分子開始剤α,ω-OH-P(EG-co-GME)(例12のポリマー)、並びに異なる重合度(k=46、47及び69、70)を有する2つのPLLA-b-P(EG-co-GME)-b-PLLA(PLLA46-b-P(EG-co-GME)-b-PLLA47は例13のポリマーである)のSECトレースの重なりを示し、高分子開始剤からの奏功した鎖伸長を確認している。
【0109】
図20は、L-ラクチドの奏功した重合を確認している例13の1H-NMRスペクトル(sprectrum)を示す。
【0110】
図21は、コポリマー上のブロックが共有結合に依って連結されているという事を確認しているH-DOSY-NMRを示す。
【0111】
末端基忠実度
表3から分かる通り、本発明の全てのポリマーの末端基忠実度は100%に近い。図6は、カリウム及びナトリウムカチオンを有するα-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)、即ち例2のポリマー(表2及び3の項目e)のMALDI-TOF質量スペクトルを示す。此処で見える唯一のピークは生成物分子のピークである。異なる末端基を有する高分子からのピークは無い。此れは、本発明のポリマーの末端基忠実度が非常に高いという事を示している。加えて、スペクトルは狭い分子量分布を確認している。
【0112】
可溶性
図7は、α-BzO-P(EG0.51-co-GME0.49)、即ち例2のポリマー(表2及び3の項目e)の曇点測定を示す。曇点は、水/水溶液中の非相溶性が加熱に依って観察される温度を決定する。例として、49%GMEを有するコポリマーでは、曇点は95℃で観察され得て、P(EG-co-GME)コポリマーの優良な水溶性を示す。ホモポリマーPEGはca.100℃の曇点を示す。26~49%GMEを有する本発明の全ての他のコポリマーは、PEGと此のコポリマーの間に在り、96~100℃の曇点を示す。25mol%及びより低いGME組み込みのコポリマーでは、曇点は0から99℃の範囲である温度の水中に於いては検出されなかった。其れ故に、GME共重合は水溶性に殆ど影響せず、此れはポリエチレングリコール及びメチルエチルエーテルの類似の構造の特徴である。此れは本発明のポリマーの重要な特徴である。何故なら、其れは、其れ等が相分離又は更には沈殿の問題を引き起こす事無しに水系に於いてPEGを置換し得るという事を示しているからである。
【0113】
mPEGの物との本発明のポリマーの末端基忠実度の分散度の比較
図8は、市販のmPEG及び本発明のブロックコポリマー(例3のポリマー(表2及び3の項目l)のMALDI-TOF質量スペクトルの重なりを示す。分かる通り、高分子開始剤mPEGと項目lの間の明瞭なシフトが観察され、奏功したブロックコポリマー合成を指示している。項目lのMALDI-ToF-MSに於ける高分子開始剤の不在は、定量的なブロックコポリマー形成を更に証明している。此れは44g・mol-1のシグナルの距離に依って更に証明される。
【0114】
結晶化度
表5は表2及び3のポリマーの幾つかの温度特性を示す:
【0115】
【表5】
【0116】
分かる通り、本発明のポリマーの結晶化度は低く、ポリマー構造上のGMEモノマーの組み込みに依って完全に断たれ得る。此れは例えば腎臓又は肝臓に於けるポリマーの蓄積を妨げる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図16
図17
図18
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図20
図21
【国際調査報告】