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特表2024-518990浸水環境で機能する外科用機器セットのための磁気カップリング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】浸水環境で機能する外科用機器セットのための磁気カップリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20240426BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20240426BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/32
F16H49/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570261
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022062969
(87)【国際公開番号】W WO2022238541
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021112609.6
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク レンツェンヒューバー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ バーク
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ シャーツ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL01
4C160LL04
4C160LL09
4C160LL24
4C160LL26
4C160LL28
(57)【要約】
本発明は、外科用機器セット(1)に関するものであり、近位接続部(10)を介して電力が供給される外科用手持ち機器(2)と、接続部に取り外し可能に接続され、エフェクタ(4)を有する外科用ツール(3)と、を備え、外科用手持ち機器(2)の駆動部からツールシャンク(14;39)およびそれに固定されたエフェクタ(4)への力の伝達は、磁気カップリングによって行われ、これにより、外科用手持ち機器(2)を完全に又は少なくとも部分的に、すなわち、少なくとも電力供給される駆動部の部品は、ツール(3)から液密にシールすることができる。このため、機器セット(1)は、完全に浸水した施術領域での使用に適しており、手持ち機器(2)は再利用することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動の外科用手持ち機器(2)のための、又は外科用手持ち機器(2)の、ツールシャフト(14)を備える外科用ツール(3)であって、
その遠位端部分に、好ましくはフライスカッター、ヤスリ又はドリルの形態のエフェクタ(4)が配置又は形成され、その近位端部には、好ましくはリング状又は円筒形の、ツール側の磁石キャリア(13;22;32)が設けられるか又は配置されており、
複数の永久磁石(18;33;42)が、前記磁石キャリア(13;22;32)内又は前記磁石キャリア(13;22;32)上に、好ましくは互いに均一な円周方向距離で固定され、それぞれ、円周方向に隣接する前記永久磁石(18;33;42)に対して反対の極性の向きで固定されている、外科用ツール(3)。
【請求項2】
好ましくは、前記手持ち機器(2)から取り外し可能であり、かつ前記手持ち機器(2)に取り付け可能である機器シャフト(5)を備え、
前記ツールシャフト(14)が前記手持ち機器(2)に回転可能に取り付けられ、前記磁石キャリア(13;22;32)は、前記機器シャフト(5)の近位端から軸方向に突出するか、又は前記機器シャフト(5)の近位端から軸方向に離間される、請求項1に記載の外科用ツール(3)。
【請求項3】
好ましくは固定的に、前記機器シャフト(5)の近位端部に取り付けられる取付ハンドルスリーブ(6)を備え、
前記取付ハンドルスリーブ(6)が、前記磁石キャリア(13;32)を円周方向に取り囲み、前記磁石キャリア(13;32)を越えて近位方向に軸方向に突出して、それによって形成される突出部分で、前記機器シャフト(5)を前記外科用手持ち機器(2)の遠位カップリング部(8)に連結するための機械的カップリング部を形成する、請求項2に記載の外科用ツール(3)。
【請求項4】
前記磁石キャリア(13;32)と前記取付ハンドルスリーブ(6)との間にリングギャップが形成されている、請求項3に記載の外科用ツール(3)。
【請求項5】
前記永久磁石(18;33)が前記磁石キャリア(13;32)の前面及び/又は側面上に配置されている、請求項3又は4に記載の外科用ツール。
【請求項6】
前記永久磁石(18;33)は、前記ツール側磁石キャリア(13;32)上及び/又は前記ツール側磁石キャリア(13;32)内にNS極性を有して配置され、前記磁石キャリア(13;32)上で半径方向かつ円周方向にすぐ隣の前記永久磁石(18;33)に対して交互に反対の極性でそれぞれ配置されている、請求項5に記載の外科用ツール。
【請求項7】
前記機器シャフト(5)の近位端部に好ましくは固定的に保持される取付ハンドルスリーブ(6)を備え、前記磁石キャリア(22)は、前記取付ハンドルスリーブ(6)から近位方向に、軸方向に離間されて配置され、電気モータ(19)のロータ(22)を形成する、請求項2に記載の外科用ツール(3)。
【請求項8】
前記永久磁石(18;33)が、前記磁石キャリア(13;32)の中心軸から半径方向に距離をおいて、衛星状に円軌道を描いて配置されている、請求項1~6のいずれかに記載の外科用ツール(3)。
【請求項9】
モータ駆動式の外科用手持ち機器(2)であって、
中央ハンドル部(9)と、
少なくとも電気リード線、又はバッテリーのような自給式電源を接続するための近位接続部(10)と、
コイルキャリア(21)であって、その上又はそこに多数の電気コイルが搭載され、前記電気リード線又は前記電源に接続可能であり、電気モータ(19)の一部を形成する、コイルキャリア(21)と、
好ましくは請求項1~8のいずれかに記載の外科用ツールを機械的に結合するための遠位カップリング部(8)と、
流体バリア(11;30;40)であって、少なくとも前記多数の電気コイルを、結合された前記ツールから液密に分離する流体バリア(11;30;40)と、
を備え、
前記コイルキャリア(21)内に回転可能に取り付けられ、前記遠位カップリング部内に突出するモータ出力軸(20;39)を有するロータ(22)を備え、
前記ロータ(22)の好ましくは遠位端部分において、好ましくは機器側の磁石キャリア(12;22;31)が配置又は形成され、その中に又はその上に、複数の永久磁石(18;33;42)が、互いに均一な円周方向距離で固定され、円周方向に隣接するそれぞれの前記永久磁石(18;33;42)に対して反対の極性の向きで固定されている、モータ駆動式外科用手持ち機器(2)。
【請求項10】
NS極性を有する前記永久磁石(18;33;42)が、それぞれ、前記磁石キャリア(12;22;31)上で半径方向かつ円周方向にすぐ隣の前記永久磁石(18;33;42)に対して交互に反対の極性を有し、前記手持ち機器側磁石キャリア(12;22;31)上及び/又は前記手持ち機器側磁石キャリア(12;22;31)内に配置されている、請求項9に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項11】
前記磁石キャリア(31)が全周ディスク又は全周円筒として構成され、前記永久磁石(33)が前記磁石キャリア(31)の前側に挿入されている、請求項10に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項12】
前記流体バリア(30)が、前記磁石キャリア(31)をその前面および円周面の実質的に全体にわたって取り囲んで中間ギャップ(35)、好ましくはエアギャップ(35)を形成し、前記遠位カップリング部(8)の外周側に液密に接続されている、請求項11に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項13】
前記磁石キャリア(12)が、遠位方向に開口し、近位前底部を有するスリーブ又はカップとして形成され、前記永久磁石(18)が、前記スリーブ又は前記カップの内周において、又は前記スリーブ又は前記カップの内周に沿って、配置されている、請求項10に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項14】
前記流体バリア(11)が、前記磁石キャリア(12)をその外周側および内周側ならびに前記前底部の内側にわたって実質的に取り囲み、前記遠位カップリング部(8)の前記外周側に液密に接続されている、請求項13に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項15】
前記流体バリア(40)が、前記コイルキャリア(21)の少なくとも半径方向内側を囲み、好ましくは前記コイルキャリアの近位前側を閉じ、それによって、好ましくは請求項7によるツール側ロータ(22)のための半径方向および近位方向の液密なレセプタクルを形成する、請求項9に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項16】
前記永久磁石(18;33)が、前記磁石キャリア(12;31)の中心軸から半径方向に距離をおいて、衛星状に円軌道を描いて配置されている、請求項9~14のいずれかに記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)。
【請求項17】
請求項1~8のいずれかに記載の外科用ツール(3)と、請求項9~16のいずれかに記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)とを備える、外科用機器セット(1)。
【請求項18】
請求項1~6又は8のいずれかに記載の外科用ツール(3)と、請求項9~14又は16のいずれかに記載のモータ駆動式外科用手持ち機器(2)とを備えた請求項17に記載の外科用機器セット(1)であって、前記手持ち機器(2)上に前記機器シャフト(5)が結合した状態において、前記ツール側磁石キャリア(13;32)と前記手持ち機器側磁石キャリア(12;31)との間にギャップ、好ましくはエアギャップ(27,28;35,36)が残り、前記流体バリア(11;30)を介在させて、モータ出力電力が前記手持ち機器側磁石キャリア(12;31)内の前記永久磁石(18;33)と前記ツール側磁石キャリア(13;32)内の前記永久磁石(18;33)との間の磁気相互作用のみを介して非接触で前記ツール(3)に伝達されるようにする、外科用機器セット(1)。
【請求項19】
請求項7に記載の外科用ツール(3)と、請求項15に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器(2)とを備え、前記手持ち機器(2)上に前記機器シャフト(5)が結合した状態において、前記ツール側磁石キャリア(22)は、前記ステータ(21)内の前記流体バリア(40)によって形成された前記液密レセプタクル内にロータ(22)として突出しており、これにより、モータ出力電力は、ツール側磁石キャリア(22)内の前記永久磁石(42)と、電流を印加可能な前記コイルとの間の磁気相互作用のみを介して、非接触で前記ツール(3)に直接伝達される、請求項17に記載の外科用機器セット(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、外科用ツール、そのような外科用ツールのための外科用手持ち機器、および少なくとも1つの外科用ツールと1つの外科用手持ち機器とを含む外科用機器セットに関する。ツール、手持ち機器、および結果として得られる機器セットは、それぞれ、広義には、好ましくは交換可能な外科用エフェクタ、特に、カッター、ドリル、研磨ヘッド、又は同様の機器などの回転可能な外科用エフェクタを受け入れ、駆動するのに役立つ。
【背景技術】
【0002】
現代の低侵襲手術では、このようなツール/機器および関連する機器ハンドピース/手持ち機器は、例えば、関節鏡手術、脊椎手術および同様の整形外科/外科治療における骨や軟骨の処理、ならびに神経外科手術における有機物質の処理に使用される。ツール/機器は、ハンドル部と、場合によっては、カッター、回転ナイフ、研磨ヘッドなどの交換可能なエフェクタを有する。エフェクタは、ツール/機器のシャフトにその遠位端で取り付けられ、場合によっては回転駆動される。使用目的および意図されるツール速度に応じて、油圧、空気圧又は電気モータ駆動部がツール駆動部として提供され、これは、ツール及び/又は手持ち機器内のトルク伝達トレーンを介してツールヘッド(エフェクタ)に作動的に接続される。駆動部は、ツール内及び/又は手持ち機器内に一体化されていてもよいし、電力供給ライン又はトルク伝達ラインを介してツール又は手持ち機器に結合される外部駆動ユニットとして構成されていてもよい。
【0003】
ドイツ特許出願公開公報第10 2013 111 194号は、手持ち機器/ハンドピースと、その中に受入れられた回転駆動ツールとを備えたこのような外科用機器を開示している。この(手持ち機器と連結される)ツールは、患者の体から離れる方を向いた近位端において、接続された機器/ツールシャフトを有するスリーブ状のハンドル部を有し、患者の体の方を向いた遠位端には、機器/ツールシャフトに回転可能に取り付けられ、モータ出力シャフトを介して駆動されるエフェクタが存在する。ツールは、ツールの駆動部が配置されている手持ち機器に、スリーブ状のハンドル部分を介して、例えば形状適合又は力嵌めトを介して接続することができる。駆動部にエネルギーを供給する接続部は、手持ち機器の近位端に位置する。
【0004】
特に日本では頻繁に使用される脊椎手術の新しい外科的技術の過程では、施術領域は完全に浸水している。外科医は、作業用チャネル、洗浄用チャネル、吸引用チャネルを備えた内視鏡を用いて手術を行う。施術領域は膝関節鏡視下手術と同様に生理食塩水で完全に浸水する。ハンドピースによるフライス加工は、内視鏡の作業チャネルを介して行われる。この作業方法は、視認性、熱分布、特に骨からの熱の迅速な放散、骨片の連続的な除去という点で大きな利点がある。
【0005】
先行技術であるドイツ特許出願公開公報第10 2013 111 194号から公知の手持ち機器の設計に基づく以前の外科用手持ち機器は、その構造上、水中又は流体の影響下での作業には適しておらず、少なくとも手術での使用後はコンタミネーションにより再利用できない。施術領域に圧力が過度にかかることにより、流体は、エフェクタ、例えばフライスカッターを通り、機器/ツールシャフトを通り、モータを通って流れ、ツールリリース(ツールと手持ち機器との連結点)およびモータケーブルへの接続部から流出する。汚れた液体や切除された組織の粒子も流れ出る。粒子は、ボールベアリング、ツールカップリングなどの内部部品を損傷する可能性があり、ハンドピースは意図された耐用年数を達成できない可能性がある。
【0006】
従って、先行技術には、完全に浸水した外科的作業環境においてツールの機能が確保されないという欠点がある。さらに、外科手術で頻繁に使用される生理食塩水は、強い腐食の影響があり、手術後に長時間そのままにされると、ボールベアリングやツールカップリングのような機械部品に大きな損傷を引き起こす可能性がある。更なる手術中、コンタミネーションの結果、ハンドピースの故障がいつでも起こりうる。また、手術領域の外部や周辺が水に浸かり汚れることも望ましくない。
【発明の概要】
【0007】
上述した従来技術およびその欠点に基づいて、本開示の目的は、エフェクタ、特に回転可能に駆動されるエフェクタ、および外科用ツールを、特に回転可能に駆動される態様で、受け入れるための外科用手持ち機器を備えた外科用ツールを提供することであり、これらは、手術室における完全に浸水し、加圧された作業領域において、確実に、例外なく、完全な機能性を有し、損傷することなく、機器セットとして組み合わせて操作することができる。機器セットの個々の部品の期待耐用年数もまた明確に定義可能であるべきであり、少なくとも外科用手持ち機器は、取得コストおよび保守コストを低減できるように、繰り返しの使用に適していなければならない。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の結合可能な別個の外科用ツール、ツールと結合可能な請求項8に記載の別個の外科用手持ち機器、および請求項16に記載の外科用機器セットによって解決される。有利なさらなる展開は、従属請求項の主題である。
【0009】
本開示の基本的な考え方は、別個の、結合可能な外科用手持ち機器を、ツールに取り外し可能に接続するために、手持ち機器―内部トルクトレーン又は駆動部と、それに結合可能な外部ツールシャフトとの間のトルク伝達に、好ましくはカップリング部位/カップリング部の領域において、非接触で磁気的に(専ら1つ又は複数の磁界を介して、かつ磁気的付着の結果としてではなく)、影響を与えることであり、外科用手持ち機器において、ツールシャフトとトルクトレーンとの間にこうして残されたギャップに流体バリアを統合するために、すなわちより具体的には、駆動部全体又は駆動装置の少なくとも一部、好ましくはコイルキャリアおよびそれに接続された電源が、流体バリアを介して包囲されシールされている。この接続は液密かつ取り外し可能に結合可能であり、手持ち機器の駆動部から回転可能に取り付けられた外科用ツールのツールシャフトへの力の伝達は、非接触で、磁気カップリングを介して流体バリアを超えて行われ、それにより、流体の影響を受けやすい駆動部の部品が動作環境からの流体に浸って汚れ、機器セットの機能が損なわれることなく、ツールを使用中に浸水させることができる。
【0010】
本開示の第1の態様によれば、モータ駆動の外科用手持ち機器のための外科用ツール、又は外科用手持ち機器の外科用ツールは、ツールシャフトを備え/ツールシャフトが形成され、その遠位端部分に、好ましくはフライスカッター、ヤスリ又はドリルの形態のエフェクタが配置又は形成され、その近位端部分には、好ましくはリング状又は円筒形の、ツール側の磁石キャリアが設けられるか又は配置され、複数の永久磁石が、磁石キャリア内又は磁石キャリア上に、好ましくは互いから均一な円周方向距離で固定され、それぞれ、円周方向に隣接するそれぞれの永久磁石に対して反対の極性の向きで固定されている。換言すれば、外科用ツールの円周方向に離間されて配置された永久磁石は、好ましくは(円周方向に隣接する)交互のNS極性となっている。その結果、交互のNS極性で磁界が形成され、以下に詳述するように、一種の磁気係合歯として作用する。
【0011】
永久磁石は、立方体の平らな磁石又はNS極性を持つ円筒形磁石として構成することができ、任意の数と配置で磁石キャリアに取り付けることができるが、8個の平らな磁石又は6個の円筒形磁石が好ましい。これには、異なる磁石形状を使用して異なる設計条件に対応し、磁石キャリアの好ましい領域に均一な磁場を発生させることができるという利点がある。
【0012】
さらに、本開示の一態様によれば、外科用ツールは、好ましくは、手持ち機器から取り外し可能であり、かつ手持ち機器に取り付け可能である機器シャフトを有してもよい。磁石キャリアが、その近位端において機器シャフトから軸方向に突出するか、又は機器シャフトの近位端から軸方向に離間されて、ツールシャフトが回転可能に取り付けられている。
【0013】
外科用ツールが取り外し可能であることは、機器シャフトを好ましくは使い捨てシャフトとして構成することができる。このことは、汚れがひどい場合でも、ボールベアリングのようなシャフト部品の耐用年数に悪影響を及ぼさないという利点を有する。さらに、使い捨てシャフトは、内部が洗浄可能である必要はなく、一体型ツールは、フライスカッターカップリングのような複雑なエフェクタカップリングを必要としないので、シャフトの製造がはるかに簡単で安価になる。
【0014】
磁石キャリアが軸方向に突出していること又は機器シャフトの近位端から磁石キャリアが軸方向に離間されていることは、力伝達トレーンの結合を、ツールと手持ち機器との間の接続領域において、あるいは完全に手持ち機器内で行うことができるという利点を有する。
【0015】
好ましくは、外科用ツールは取付ハンドルスリーブを備えてもよい。取付ハンドルスリーブは、磁石キャリアを円周方向に取り囲み、磁石キャリアを越えて近位方向に軸方向に突出して、それによって形成される突出部分で、機器シャフトを外科用手持ち機器の遠位カップリング部に連結するための機械的カップリング部を形成するように、機器シャフトの近位端部分に、好ましくは固定的に、取り付けられる。
【0016】
追加の又は他の態様によれば、外科用ツールは、磁石キャリアと取付ハンドルスリーブとの間にリングギャップを形成してもよい。
【0017】
外科用ツールは、好ましくは、磁石キャリアの前面及び/又は側面上に配置され得るそのような永久磁石をさらに備える/有する。磁石キャリアの前面及び/又は側面上への永久磁石のこの配置は、磁気カップリングの種類の様々な変形、好ましくは半径方向の磁気連結及び/又は前面/軸方向の磁気連結を可能にし得る。
【0018】
さらに、本開示のさらなる/他の態様によれば、永久磁石が、ツール側の磁石キャリア上及び/又はツール側の磁石キャリア内にNS極性でそれぞれ配置され、磁石キャリア上で半径方向かつ円周方向にすぐ隣の永久磁石に対して交互に反対の極性で各々配置されるように、外科用ツールを配置することができることが提供される。機器側において永久磁石が同等に配置されている場合、2つの磁石配置が実質的に(上記で簡単に示したように)互いにかみ合うという利点が達成され、それにより、反対極性の反対の磁界に対する引力と、同極性の反発する磁界を相殺する同時反発とによって、空転に対する抑制と、より高いトルクの伝達とが増大する。
【0019】
別の態様によれば、外科用ツールは、機器シャフトの近位端部分に、好ましくは固定的に保持される取付ハンドルスリーブを備えていてもよい。磁石キャリアは、取付ハンドルスリーブから近位方向に軸方向に離間されて配置され、電気モータのロータを形成する。磁石キャリア、好ましくは電動モータのロータが、取付ハンドルスリーブから軸方向かつ近位方向に離間されることにより、磁石キャリアが、取付ハンドルスリーブのような突出した部品によって見えにくくなることがないため、手でアクセスすることが容易になる。磁石キャリア、好ましくは、ロータは、その有利なアクセス性により、機器シャフトに取り外し可能に取り付けることもでき、欠陥や損傷があってもロータを容易に交換することができる。
【0020】
外科用機器の別の有利な態様によれば、永久磁石が、磁石キャリアの中心軸から半径方向に距離をおいて、衛星状に円軌道を描いて配置されていてもよい。
【0021】
本開示のさらなる態様において、モータ駆動式外科用手持ち機器は、中央ハンドル部と、少なくとも電気リード線又はバッテリーのような自給式電源を接続するための近位接続部と、コイルキャリアであって、その上又はそこに多数の電気コイルが搭載され、電気リード線又は電源に接続可能であり、電気モータの一部を形成する、コイルキャリアと、好ましくは前述の態様の1つによる外科用ツールを機械的に結合するための遠位カップリング部と、流体バリアであって、少なくとも多数の電気コイルを、結合されたツールから液密に分離する流体バリアと、コイルキャリア内に回転可能に取り付けられ、遠位カップリング部内に突出するモータ出力軸を有するロータと、を備え、その好ましくは遠位端部分において、好ましくは機器側磁石キャリアが配置又は形成され、その中に、又はその上に、複数の永久磁石が、互いから均一な円周方向距離で固定され、それぞれ、円周方向に隣接するそれぞれの永久磁石に対して反対の極性の向きである。
【0022】
特に、有利な実施形態では、ロータが同時に磁石キャリアであってもよく、磁石キャリアとしてのロータが、互いに円周方向に一定の間隔をあける複数の永久磁石を有していてもよく、それぞれ、円周方向に隣接するそれぞれの永久磁石と反対の極性の向きであってもよいことが強調されるべきである。換言すれば、ロータは、ロータの長手軸の円周方向に配置され、それぞれの円周方向に隣接する永久磁石に対して反対の極性の向きにそれぞれが配置された、複数の永久磁石を備えていてもよい。
【0023】
外科用手持ち機器の前述の流体バリアは、磁気効果パートナー間の力の伝達は許容するが、腐食性流体のような有害な流体が手持ち機器の駆動領域に侵入するのを完全に防止するか、又は、好ましくはステータ又はコイルキャリアのような、電気エネルギーが供給される部品を流体から少なくとも完全に密封してシールするという利点を有する。
【0024】
モータ出力軸の遠位カップリング部は、力の伝達が手持ち機器の外部で行われ得るという利点を有し、それにより、モータ全体と手持ち機器を流体からシールすることが可能であり、また、ツールと外科用手持ち機器との間の移行領域が手持ち機器の内部の外にあることにより、構成的に製造が複雑でない。
【0025】
さらに、モータ駆動式外科用手持ち機器は、全周ディスク又は全周円筒として構成される、磁石キャリアを有していてもよく、永久磁石は磁石キャリアの前側に挿入されている。有利なことには、全周ディスク又は全周円筒は、円錐形状又は円錐台形状を有することができ、それにより、より大きな表面積が、ツールシャフト上に配置された磁気結合のパートナーに向かって、外科用手持ち機器の遠位方向に向けられる。磁石キャリアの円錐形状は、結合領域における有効磁気面積を増加させる一方で、直径を、手持ち機器の近位に向かう方向に中心軸に沿って小さくすることによって、カップリング部から遠ざかる方向を向く側の材料および重量を節約することができる。
【0026】
さらに、モータ駆動式外科用手持ち機器は、(先に簡潔に言及した)永久磁石が、それぞれ、NS極性を有して、手持ち機器側磁石キャリア上及び/又は手持ち機器側磁石キャリア内に配置され、それぞれが、磁気キャリア上の半径方向かつ円周方向にすぐ隣の永久磁石に対して交互に反対の極性を有して配置されるように構成されてもよい。上述した機器側の特徴の利点により、反対極性の反対磁界への引力と、同極性の反対極性の磁界への同時反発とによって、空転に対する抑制と、より高いトルクの伝達とを増大させるためである。
【0027】
別の好ましい実施形態によれば、モータ駆動式外科用手持ち機器は流体バリアを含んでいてもよく、流体バリアは、磁石キャリアをその前面および円周面の実質的に全体にわたって取り囲んで中間ギャップを形成し、遠位-カップリング部の外周側に液密に接続されている。
【0028】
カップリング部に流体バリアを配置することにより、その構造上、駆動部と外科用手持ち機器をより容易にシールできるという利点が得られる。さらに、磁石キャリアと流体バリアとの間の中間ギャップは、有利には摩擦のない力の伝達を可能にし、望ましくない温度上昇を防ぐ。このことは、30,000~100,000rpmの回転数を伝達しなければならない高速駆動部にとって特に重要である。もう一つの利点は、中間ギャップの寸法によっては、モータ出力軸の同心度にわずかなずれがあっても、回転する磁石キャリアが流体バリアに触れることなく補正できることである。
【0029】
さらに、モータ駆動式外科用手持ち機器の磁石キャリアが、遠位方向に開口し、近位前底部を有するスリーブ又はカップとして形成されてもよく、永久磁石が、スリーブ又はカップの内周において、又はスリーブ又はカップの内周に沿って配置される。有利には、スリーブ形状又はカップ形状の形成により、磁気効果パートナー又は円筒形磁石をそれぞれ遠位方向から受け入れて取り囲み、それによって磁気リングカップリングを形成することができる。言い換えれば、周囲の磁気効果パートナーと内側の磁気効果パートナーによって半径方向の磁気カップリングが形成される。
【0030】
リングカップリングの利点の1つは、リングカップリングの内側磁石キャリアが、カップ形状の磁石、すなわちリングカップリングの外側リング内でセンタリングされるため、非常に優れた同心特性を達成できることである。半径方向のセンタリングにより軸方向の力を排除し、ボールベアリングに良い影響を与える。リングカップリングのもう一つの利点は、軸方向の公差が力の伝達にほとんど影響しないことであり、これは外科用ツールとツールカップリングがよりシンプルな設計となることを意味する。さらに、リングカップリングは、モータからツールシャフトへのトルク伝達が摩擦、摩耗、発熱なしに行われるという利点がある。さらに、許容トルクを超えた場合でも、リングカップリングは過負荷保護を提供する。
【0031】
本開示の別の態様において、モータ駆動式外科用手持ち機器の流体バリアが、磁石キャリアをその外周側、内周側および前底部の内側にわたって取り囲み、遠位カップリング部の外周側に液密に接続されることができる。
【0032】
好ましくは、モータ駆動式外科用手持ち機器の流体バリアは、コイルキャリアの少なくとも半径方向内側を取り囲み、好ましくはコイルキャリアの近位前側を閉じることができ、それによって、半径方向および近位方向に液密な、ツール側ロータ用のレセプタクルを形成する。この流体バリアの利点は、外科用手持ち機器における配置により、ツールシャフトの遠位端に位置するロータとコイルキャリアとの間の磁気結合が可能になることであり、これにより、モータからツールシャフトへの力伝達における更なるカップリング要素のような部品を節約することが可能になり、従って、駆動部の効率を向上させることができる。
【0033】
本発明の外科用手持ち機器のさらに有利な態様によれば、永久磁石が、モータ出力シャフトに配置された磁石キャリアの中心軸から半径方向に距離をおいて、衛星状に円軌道を描いて配置されていてもよい。すなわち、この場合、磁石が中心軸において互いに面し又は接触するようなプロペラ形状を永久磁石は形成せず、その代わりに、円周方向において、中心軸から半径方向外側に互いから間隔をあける磁気領域を形成する。
【0034】
好ましくは、プラグ-ソケット原理又は送信機-受信機原理に類似する本発明の外科用機器セットは、先述の態様の1つによる外科用ツールと、先述の態様の1つによるモータ駆動式の外科用手持ち機器を備え、これらは構造的および機能的に相互に依存し、相互作用する。
【0035】
好ましくは、外科用ツールとモータ駆動式外科用手持ち機器とからなる外科用機器セットは、手持ち機器上に機器シャフトが結合された状態において、ツール側と手持ち機器側磁石キャリアとの間にギャップが残り、流体バリアを介在させて、モータ出力電力がツール側磁石キャリア内の永久磁石とツール側磁石キャリア内の永久磁石との間の磁気相互作用のみを介して非接触でツールに伝達されるようにするように構成されてもよい。
【0036】
言い換えれば、この有利な設計により、手元機器からツールへの効果的な力の伝達が、形状適合や力嵌めによる接触なしに可能となり、摩耗や発熱が回避される。同時に、非接触の力伝達は、カップリング効果パートナー同士を空間的に分離できるようにし、これは、液密なシールがはるかにシンプルに、確実かつコスト効率よく作り出すことができることを意味する。さらに、ツール側と磁気磁石キャリアの間の磁気カップリングは、許容トルクを超えた場合に一定の過負荷保護を提供する。
【0037】
別の態様では、外科用ツールとモータ駆動式外科用手持ち機器とを備える外科用機器セットは、手持ち機器上に機器シャフトが結合された状態において、ツール側磁石キャリアは、ステータ内の流体バリアによって形成された液密レセプタクル内にロータとして突出しており、これにより、モータ出力電力は、ツール側磁石キャリア内の永久磁石と電流を印加可能なコイルとの間の磁気相互作用のみを介して、非接触でツールに直接伝達されるように構成されてもよい。
【0038】
このような実施形態の利点は、手持ち機器からツールへの力伝達トレーン用の別のカップリングなどの中間要素が少なくて済むことであり、これにより駆動部の効率を向上させることができる。
【0039】
言い換えれば、第一の好ましい実施形態の開示は、完全に囲われた密閉モータと、取り外し可能な手持ち機器又はハンドピースシャフトに基づいている。機器シャフトは、モータにねじ込み接続か、又はプラグ接続され、磁気カップリングを介してモータに回転可能に結合される。さらに、モータと機器シャフト間の接続部は一体型シールを有する。
【0040】
モータの回転運動は、流体/液体バリアを介して、磁力のみを介して、機器シャフトおよびエフェクタ、好ましくはフライスカッターに伝達される。好ましくは、機器シャフトは使い捨てシャフトとして構成される。これは、汚れがひどい場合でも、ボールベアリングの耐用年数に悪影響を及ぼさない。また、使い捨てシャフトは内側が洗浄可能である必要もない。一体型ツールのため、エフェクタークラッチ(好ましくはフライスカッタークラッチ)が不要であり、外科用ツールの製造が大幅に安価になる。
【0041】
磁気リングカップリングは、内側磁石キャリアと外側磁石キャリアで構成され、それぞれがSN極性に対応する極性を持つ8つの平らなマグネット・ペアを有し、最適なトルク伝達のためにリング状に配置されている。
【0042】
さらに、手持ち機器に配置された磁石キャリアは、流体バリアとして機能する周囲の密閉カバーを備えている。内側の磁石キャリアと周囲カバーの間、および外側の磁石キャリアと周囲のカバーの間にはエアギャップがある。エアギャップの助けにより、磁気カップリングは摩擦なしにモータから機器シャフト又はツールにトルクを伝達することができる。このため、カップリングは特に高速駆動部に適しており、摩耗や発熱を防ぐ。
【0043】
さらに、磁気リングカップリングは、許容トルクを超えた場合にある程度の過負荷保護を提供する。磁気カップリングを有するこの設計のもう一つの大きな利点は、磁力が軸方向に作用しないことである。機器シャフトの磁石キャリア又は磁気ロータは、モータの磁気リング内で実質的に自動的に自らをセンタリングする。もう一つの特に有利な特徴は、軸方向の公差が力の伝達にほとんど影響しないことである。つまり、機器シャフトと機器シャフトカップリングは、よりシンプルな設計にすることができる。
【0044】
第2の好ましい実施形態では、外形は第一の実施形態と完全に同一である。ツールアタッチメントと密閉型モータも同等であり、機器シャフトも、一体型シールを有するねじ式又はプッシュオン式コネクタのいずれかでモータに接続する使い捨てシャフトである。第1の実施形態と第2の実施形態の違いは、第2の実施形態では、カップリング内の磁石キャリアとマグネットの形状および配置が異なることである。この実施形態では、磁石はターンテーブル上に配置されている。従って、力の結合は軸方向に行われる。このように作用する力は、適切な寸法のボールベアリングによって吸収される。アンギュラ玉軸受や追加のスラスト軸受を使用するのが有利であり得る。第2の実施形態の磁気ディスクカップリングは、最適なトルク伝達のために、ツール側磁気ディスクと手持ち機器側磁気ディスクの両方に、対応するNS極性を有する6対の円筒形マグネットを円形に配置することができる。
【0045】
さらに、手持ち機器内に位置する磁気ディスクは、手持ち機器が液密になるように、液体バリアとして機能する円周カバーによって密閉されている。手持ち機器に配置された磁気ディスクの遠位前側とカバーの間、および機器シャフトに配置された磁気ディスクの近位前側の間にはエアギャップがある。エアギャップの助けにより、マグネットカップリングは摩擦なしにモータから機器シャフト又はツールにトルクを伝達することができる。このため、このカップリングは特に高速駆動部に適しており、摩耗や発熱を防ぐことができる。さらに、磁気軸方向カップリングは、許容トルクを超えた場合に一定の過負荷保護を提供する。
【0046】
第3の好ましい実施形態では、外形も第1および第2の実施形態と完全に同一であるが、この実施形態では、機器シャフトはロータに直接接続され、追加の半径方向又は軸方向の磁気カップリングは使用されない。ロータは、NS極性を有し、手持ち機器の遠位方向に開口している円筒形の位置決めボアに受け入れられるように、機器シャフトの取付ハンドルスリーブから近位方向に軸方向に突出している。
【0047】
機器シャフト内及び取付ハンドルスリーブ内に位置し、その近位端には突出ロータが位置するツールシャフトは、取付ハンドルスリーブの領域において、スリーブ内に位置する2つの大きなラジアルボールベアリングを有する挿入又はねじ込みスリーブによって支えられる。最初の2つの実施形態と同様に、取付ハンドルスリーブと、ツールシャフトが取り付けられるかねじ込み接続される手持ち機器との間のカップリング部は、シール、好ましくはOリングで密封される。
【0048】
機器シャフトが手持ち機器に取り付けられた状態で、ロータは手持ち機器の位置決めボア内に突出し,所定の作動位置にある。作動位置では、ロータとコイルキャリア、好ましくは手持ち機器のステータとの間の直接結合が、手持ち機器とエフェクタとの間の力伝達トレーンにさらなる結合要素を必要とすることなく可能である。ステータは鋳造され密閉され、位置決めボアの壁の後方に位置し、ロータを取り囲んでいる。位置決めボアの近位前面も液密に密封されているため、コイルキャリアとその電源、および手持ち機器の電気接続部の両方が流体から保護されている。
【0049】
第3の実施形態のさらなる態様では、ロータをモータや手持ち機器と同様に再利用できるように、ロータを機器シャフト、好ましくは使い捨てシャフトから結合解除可能にしてもよい。ロータの結合を解除できることにより、コストと資源を節約することができる。この場合、ロータと機器シャフトとの結合は、ラッチ機構、ねじ込み接続、好ましくは逆回転ねじ山を使用するねじ込み接続、又はロータの磁気特性を利用することによって達成することができる。
【0050】
本発明は、添付の図を参照しながら、好ましい実施形態を通して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本開示による外科用機器セットの透視図であり、外科用ツールが外科用手持ち機器に結合されている。
図2】本開示の第1の実施形態による外科用機器セットの透視図であり、結合が解除された外科用ツールと外科用手持ち機器を備える。
図3】取付ハンドルスリーブ内に配置された磁石キャリア上に、半径方向かつ円周方向に配置された永久磁石を有する、第1の実施形態による外科用ツールの透視図である。
図4図2の第1の実施形態による手持ち機器の遠位接続部の部分透視図であり、前側の接続カバーは、接続スリーブ内に位置する環状に配置された永久磁石を示すために、手持ち機器の長手方向軸に対して直交するように切断されている。
図5】第1の実施形態による外科用機器セットの長手方向軸を通る断面図であり、印をつけられたカップリング部の拡大された領域は、図6において詳細に示される。
図6】第1の実施形態によるカップリング部をより詳細に示す、図5において印を付けた領域の拡大図である。
図7】第2の実施形態による、外科用ツールと外科用手持ち機器を備える、結合が解除された外科用機器セットの透視図である。
図8】第2の実施形態による外科用ツールの透視図であって、前側から突出する磁石キャリアに埋め込まれた円筒形磁石を有し、磁石キャリアは、取付ハンドルスリーブ内に配置されている。
図9図7の第2の実施形態による手持ち機器の遠位接続部の部分透視図であり、接続部内に位置する磁石キャリアと、その中で凹む円筒形磁石を示すために、前側の接続カバーは、手持ち機器の長手方向軸に対して直交するように切断されている。
図10】第2の実施形態による外科用機器セットの長手方向軸を通る断面図であり、印をつけられたカップリング部の拡大された領域は、図11においてより詳細に示される。
図11図10に印を付した領域の拡大図であり、第2の実施形態によるカップリング部をより近くで示している。
図12】本開示の第3の実施形態による外科用機器セットの透視図であり、結合が解除された外科用ツールと外科用手持ち機器を備える。
図13】取付ハンドルスリーブから突出しているロータを有する、第3の実施形態による外科用ツールの透視図である。
図14】第3の実施形態による外科用ツールから突出したロータを受容するために、第3の実施形態による外科用手持ち機器に設けられた位置決めボアの遠位方向からの透視図である。
図15】第3の実施形態による外科用機器セットの長手方向軸を通る断面図であり、印をつけられたカップリング部の拡大された領域は、図16においてより詳細に示される。
図16図15において印をつけた領域の拡大図であり、第3の実施形態によるカップリング部をより詳細に示す。
図17】第3の実施形態による外科用機器セットの長手方向軸に沿った分解図であり、近位端にロータを取り外し可能に取り付けることができる外科用ツールと、ロータを受け入れるための遠位方向の位置決めボアを有する外科用手持ち機器とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本開示の構成例を添付の図に基づいて以下に説明する。同一の要素には同一の参照符号を付している。個々の構成例の特徴は互いに入れ替えてもよい。
【0053】
図1は、本開示による外科用機器セット1の第1の実施形態を示す。外科用機器セット1は、外科用手持ち機器/機器ハンドピース2と、外科用(シャフト)ツール3とを有する。外科用ツール3は、その遠位端にエフェクタ4を有し、このエフェクタ4は、機器シャフト5に(相対的に回転可能に)動作可能に接続されており、機器シャフト5は、ツール3の外側のスリーブ5として形成されている。
【0054】
エフェクタ4は、特に、穴あけヘッド、フライス加工ヘッド、研削ヘッド又は研磨ヘッドであってもよい。外科用ツール3の(患者の身体から遠ざかる方を向く)近位端には、(円錐形の)取付ハンドルスリーブ6が、機器シャフト5上又は外側スリーブ5上に配置され、この取付ハンドルスリーブ6は、好ましくは外側スリーブ5にしっかりと接続され、エフェクタ4に向かって遠位方向にテーパ状になっている。取付ハンドルスリーブ6は、手持ち機器2に、形状適合接続及び/又は力嵌め接続、特にねじ込み接続又はプラグ接続を介して接続することができる。さらに、取付ハンドルスリーブ6は、例えばノブ又は溝を有するプロファイル加工されたハンドル部7を有し、ハンドル部7のプロファイル加工は、半径方向および軸方向の窪みを含み、その間に突起が形成される。
【0055】
外科用手持ち機器2は、その(患者の体に面する)遠位端に遠位カップリング部8を有し、これに外科用ツール3を取り付け又は螺合することができる。外科用機器セット1の駆動部が配置された中央ハンドル部9が、遠位カップリング部8の近位側に接続されている。近位端において、外科用手持ち機器2は、電源ユニットなどに接続される近位接続部10を有する。
【0056】
図2において、外科用ツール3と外科用手持ち機器2は分離され、連結が解除された状態にあり、これにより遠位カップリング部8をより詳細に見ることができる。遠位カップリング部8の遠位側に隣接して、スリーブ状の流体バリア11があり、その中に、外科用ツール3に非接触で磁気結合するためのカップ形の磁石キャリア12がある。言い換えれば、カップ形とは、磁石キャリア12が、底部が閉じており、細長く円筒形で一方に開口した凹部を有することを意味する。
【0057】
スリーブ状の流体バリア11は、カップ形の磁石キャリア12を円周方向に覆い、液体が外科用手持ち機器2に侵入するのを防ぐ密閉された液体バリアを形成する。
【0058】
連結が解除された外科用ツール3は、ツール側の円筒形磁石キャリア13が見えるように、図3において近位方向から示されている。円筒形磁石キャリア13は、外側スリーブ(機器シャフト)5に回転可能に支えられたツールシャフト14の近位端に回転可能に固定されている。円筒形磁石キャリア13と取付ハンドルスリーブ6との間には、円周方向のリングギャップ15が配置されている。リングギャップ15は、スリーブ状の流体バリア11を取付ハンドルスリーブ6に係合させると同時に、外科用ツール3と外科用手持ち機器2が一緒に接続されたときに、円筒形磁石キャリア13を包囲する役割を果たす。
【0059】
換言すれば、ツール3と手持ち機器2とが互いに接続されたとき、スリーブ状の流体バリア11は、円筒形磁石キャリア13と取付ハンドルスリーブ6との間のリングギャップ15によって形成されたクリアランスに位置し、円筒形の磁石キャリア13を円周方向および前方から包囲する。この配置は、図6により詳細に見られるように、円筒形の磁石キャリア13とカップ形の磁石キャリア12との間のラジアル磁気カップリング17を可能にする。
【0060】
図4では、連結が解除された、外科用手持ち機器2の遠位部分が、遠位カップリング部8およびスリーブ状の流体バリア11とともに示されている。ここで、図4において、スリーブ状流体バリア11は、スリーブ状流体バリア11内に位置するカップ形磁石キャリア12を見るために、外科用手持ち機器2の長手方向軸に対して直交するように切断されている。
【0061】
上述したように、スリーブ状流体バリア11は、図3に示す円筒形磁石キャリア13と係合し、円筒形磁石キャリア13は、外科用ツール3と外科用手持ち機器2とが接続されたときに、スリーブ状流体バリア11内の円筒形開口部16と係合する。外科用ツール3と外科用手持ち機器2との接続状態において、ラジアル磁気カップリングの磁気作動接続は、8個の平らな磁石18によって起こり、磁石18はそれぞれ、NS極性を有し、円筒形磁石キャリア13の外周とカップ形磁石キャリア12の内周との両方に等しく分布する。
【0062】
磁極性NSが、それぞれの磁石キャリア12,13において、永久磁石18から永久磁石18へ円周方向に交互に配置されていると特に有利である。これにより、一方では円筒形磁石キャリア13上に、他方ではカップ形磁石キャリア12上に配置された、対向し対応する永久磁石18の間の引力によって、また同時に、円筒形磁石キャリア13とカップ形磁石12との間でオフセットされ、同じ極性を有し、対向する永久磁石18の磁界の反発力によって、空転に対する抑制と、より高いトルクの伝達とが増大する。
【0063】
またさらに言い換えると、磁石キャリア13の外周に位置する永久磁石18は、円周方向において、それぞれのすぐ隣の永久磁石18に対してNS極性が交互に配置されており、外周においてN極性を有する永久磁石18に続いて、円周方向のすぐ隣にS極性を有する永久磁石18が外周に配置されている。すなわち、図3に示すように、外周においてN極性を有する永久磁石が、外周において、S極性を有するすぐ隣の永久磁石に円周方向両側から挟まれている。
【0064】
同様に、前述の極性の交互配置は、図4に示す磁石キャリア12上の永久磁石18でも起こる。磁極性が交互であることにより、円筒形磁石キャリア13とカップ形磁石キャリア12の間の、対向し対応する永久磁石は、互いに反対の磁極性を有して結合されたままであることが保証される。同時に、オフセットされた対向する同極の永久磁石18への結合は反発力によって抑制され、それによって永久磁石18はそれぞれ、他方の磁石キャリア上の対向する反対の極性効果パートナー/永久磁石18に安定的に結合されたままとなる。円周方向に配置された永久磁石18の交互の極性の方向と、その結果生じる磁石キャリア12、13間の交互の吸引磁界と反発磁界は、一種の磁気インターロックを作り出す。
【0065】
図5では、第1の実施形態による接続された機器セット1が、長手方向軸に沿った断面図で示されている。取付ハンドルスリーブ6の内側に位置する、図4で説明したラジアル磁気カップリング17は、拡大領域VIで強調され、図6で拡大して示されている。図5は、主として、機器セット1におけるエネルギーと力の流れの概観を提供することを意図している。近位接続部10によって供給される電気エネルギーは、外科用手持ち機器2内に概略的に示されている電動モータ19に伝達される。トルクは、電動モータ19からモータ出力シャフト20に伝達され、モータ出力シャフト20は、ラジアル磁気カップリング17を介してツールシャフト14にトルクを伝達し、それによってエフェクタ4を駆動する。
【0066】
図6は、カップリング領域と力伝達トレーンを詳細に示している。ステータ21とロータ22からなる電動モータ19はトルクを発生し、このトルクはロータ22を介してモータ出力シャフト20とカップ形磁石キャリア12に伝達される。ロータ22は、プラグイン接続又はねじ込み接続を介して、モータ出力シャフト20の近位の拡径されたシャフト端部23に接続することができる。言い換えれば、近位シャフト端部23は、回転可能な固定取り付け用の、ロータ22のための適切なレセプタクルを提供するために、より大きな外径を有する。
【0067】
カップ形磁石キャリア12は、その遠位端で、好ましくはしまり嵌めを介して、モータ出力シャフト20に回転可能に固定される。
【0068】
電動モータ19ならびにカップ形磁石キャリア12は、手持ち機器2の遠位端部において流体バリア11によって液密に包囲されており、これは、カップ形磁石キャリア12の外周側および内周側ならびに前底部の内周側を取り囲み、遠位カップリング部の外周側に接続されている。
【0069】
さらに、シール26が、取付ハンドルスリーブ6の近位端部に加え、流体バリア11と遠位カップリング部8との移行領域に配置されている。シール26は、例えば、Oリングとして構成することができ、機器シャフト5を介してツール側に侵入した流体が、ツール3と手持ち機器2との間の遠位カップリング部8で抜け出し、機器セット1を取り扱う際に操作者を制限すること、また手持ち機器2のハンドルを汚すことを防止する。
【0070】
ラジアル磁気カップリング17では、カップ形の磁石キャリア12の平らな磁石18が、円筒形の磁石キャリア13のそれぞれの反対の極性の平らな磁石18と磁気的に作動接続しており、これにより、スリーブ状流体バリア11を越える非接触の磁力伝達が可能になっている。さらに、カップ形の磁石キャリア12と円筒形の磁石キャリア13の摩擦のない回転運動を可能にするために、カップ形の磁石キャリア12とスリーブ状流体バリア11の間には第1のエアギャップ27が、円筒形の磁石キャリア13とスリーブ状流体バリア11の間には第2のエアギャップ28が、それぞれ設けられている。
【0071】
電動モータ19を介してモータ出力シャフト20およびスリーブ状磁石キャリア12に伝達された力は、スリーブ状流体バリア11を介してトルクとして半径方向内側に伝達され、ツールシャフト14に回転可能に固定された円筒形磁石キャリア12に伝達される。ツールシャフト14は、取付ハンドルスリーブ内に配置されたラジアルボールベアリング29によって回転可能に支えられており、ツールシャフト14がエフェクタ4にトルクを伝達できる。
【0072】
図7は、本発明の第2の実施形態による、連結が解除された機器セット1を示す。第1の実施形態と第2の実施形態との主な違いは、カップリング部の設計にある。第2の実施形態では、円筒形の流体バリア30が、手持ち装置2の遠位端に配置されており、これは、機器セット1の接続状態において、第1のディスク形磁石キャリア31と第2のディスク形磁石キャリア32との間に、軸方向に配置されている。
【0073】
図8では、ツール3が近位方向からの透視図で示されており、取付ハンドルスリーブ6内に配置された第2のディスク形磁石キャリア32を示している。第2のディスク形磁石キャリア32は、NS極性を有する6個の円筒形磁石33を有し、ツールシャフト14に回転可能に固定されている。円筒形磁石33は、ツールシャフト14を中心として互いに半径方向に等間隔に配置され、第2のディスク形磁石キャリア32の前面と面一になっている。第1の実施形態と同様に、NS磁気極性が永久磁石33から永久磁石33へと交互に変化すると特に有利である。これにより、第1のディスク形磁石キャリア31と第2のディスク形磁石キャリア32に配置された対向し対応する永久磁石33の間の引力と、同時に第1のディスク形磁石キャリア32と第2のディスク形磁石キャリア31の間に配置された同極の永久磁石33の磁界の反発力とにより、空転に対する抑制と、より高いトルクの伝達が増大する。
【0074】
図9では、連結が解除された外科用手持ち機器2の遠位部分が、遠位カップリング部8および円筒形流体バリア30とともに示されている。図9において、円筒形流体バリア30は、円筒形流体バリア30内に位置する第1のディスク形磁石キャリア31を見るために、外科用手持ち機器2の長手方向軸に対して直交するように切断されている。
【0075】
また、第1のディスク形磁石キャリア31は、NS極性の6個の円筒形磁石33を有し、モータ出力シャフト20に回転可能に固定されている。磁石33は、モータ出力シャフト20を中心として互いに等間隔に、半径方向に配置されている。
【0076】
図10では、第2の実施形態による接続された機器セット1が、長手方向軸に沿った断面図で示されている。この実施形態は、ここでは、拡大領域XIで強調され、図11に拡大して示されているカップリング部においてのみ、第1の実施形態と異なっている。
【0077】
図11において、第1のディスク形磁石キャリア31と第2のディスク形磁石キャリア32は、機器セット1の長手方向に沿って、それぞれの前面が対向するように配置されている。第1のディスク形磁石キャリア31の円筒形磁石33は、磁力を介して、第2のディスク形磁石キャリア32の対向する円筒形磁石33と結合される。これにより、それぞれの磁石キャリアの磁石の極性が交互であることによって、半径方向のトルクを伝達することができる軸方向の磁気カップリング34が形成される。
【0078】
円筒形の流体バリア30は、第1のディスク形磁石キャリア31を、その前面および円周方向の実質的に全体にわたって取り囲み、外科用手持ち機器2の遠位端を液密に覆う。第1のディスク形磁石キャリア31と円筒形流体バリア30との間に第1のエアギャップ35が形成され、第2のディスク形磁石キャリア32と流体バリア30との間に第2のエアギャップ36が形成され、それにより、機器セット1の軸長手方向において、円筒形流体バリア30を越える第1のディスク形磁石キャリア31と第2のディスク形磁石キャリア32との間の摩擦のない非接触の力伝達が可能になる。このように、上述した要素によって、軸方向磁気カップリング34が可能になる。
【0079】
図12は、本発明による外科用機器セット1の第3の実施形態を示している。第3の実施形態は、力伝達トレーンのカップリング部および流体バリアが外科用手持ち機器2内に配置されている点で、最初の2つの実施形態と異なる。ロータ22は、取付ハンドルスリーブ6の近位端において、第3の実施形態の連結が解除されたツール3から突出し、機器セット1の接続状態において位置決めボア37に受容される。
【0080】
図13では、ツール3が近位方向からの透視図で示されており、これにより、取付ハンドルスリーブ6に取り付けられたボールベアリングスリーブ38によって回転可能に支えられているロータ22を見ることができる。
【0081】
図14では、外科用手持ち機器が遠位方向から示されており、位置決めボア37の内部を見ることができる。
【0082】
図15は、第3の実施形態による接続した機器セット1を長手方向に沿った断面図で示す。ここで、カップリング部だけでなく、外科用手持ち機器2の内部も、拡大領域XVIによって強調され、図16に拡大して示されている。
【0083】
図16に示すように、第3の実施形態の手持ち機器2では、力の伝達は、ステータ21からロータ22へのトルクの形態であり、これにより、ロータ22は、中間のカップリングなしに、外科用手持ち機器2内に突出し、回転可能に固定されたツールシャフト39に直接接続されている。ステータ21およびすべての電気供給ラインは、ボア開口部37の密閉シールされた内壁40によって液密に保護されている。言い換えれば、シールされた内壁40は、ツール3の機器シャフト5を介して手持ち機器2のボア開口部に入る流体を、動力部品から効果的に遮断することができる。同時に、ステータ21からロータ22およびツールシャフト39への磁力伝達が、追加のカップリング要素なしで可能になる。
【0084】
図16からさらにわかるように、ツールシャフト39は取付ハンドルスリーブ6から突出しており、ボールベアリングスリーブ38によって支えられている。ボールベアリングスリーブ38は、好ましくはねじ込み接続を介して、取付ハンドルスリーブ6の内側に接続されている。ボールベアリングスリーブの内部には2つのボールベアリング41があり、これらはスペーサスリーブ42によって間隔をあけて配置され、ツールシャフト39を回転可能に支える。さらに、前述した2つの実施形態と同様に、ツール3と手持ち機器2との間の移行領域は、シール26、好ましくはOリングによって液密に互いに接続されており、機器シャフト5を介してツール3の内部に侵入した流体が接続領域8で抜け出し、操作者の作業を制限することがないようになっている。
【0085】
図17は、第3実施形態の機器セット1を長手方向軸に沿って切断した分解図である。図17に示すように、ロータ22は、ラッチ機構、対向するねじ山によるねじ込み接続、又は回転可能に固定された磁気接続を介して、ツールシャフト39に取り外し可能に固定することもできる。
【符号の説明】
【0086】
1 機器セット
2 手持ち機器
3 ツール
4 エフェクタ
5 ツールシャフト
6 取付けハンドルスリーブ
7 ハンドル部
8 遠位カップリング部
9 中央ハンドル部
10 近位接続部
11 スリーブ形状流体バリア
12 カップ形の磁石キャリア
13 円筒形の磁石キャリア
14 ツールシャフト
15 リングギャップ
16 円筒形開口部
17 ラジアル磁石カップリング
18 キューブ形の永久磁石
19 電気モータ
20 モータ出力シャフト
21 ステータ
22 ロータ
23 拡径シャフト端部
24 シャフトシールリング
25 スプリング
26 シール
27 第1エアギャップ
28 第2エアギャップ
29 ラジアルボールベアリング
30 円筒形の流体バリア
31 第1ディスク形磁石キャリア
32 第2ディスク形磁石キャリア
33 円筒形の永久磁石
34 軸方向磁石カップリング
35 第1エアギャップ
36 第2エアギャップ
37 位置決めボア
38 ボールベアリングスリーブ
39 ツールシャフト
40 シールされた内壁
41 ラジアルボールベアリング
42 スペーサスリーブ
N 磁石N極
S 磁石S極
図1
図2
図3-4】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ駆動式の外科用手持ち機器のための、または前記外科用手持ち機器の、ツールシャフトを備える外科用ツールであって、
遠位端部分にエフェクタが配置または形成され、近位端部には、好ましくはリング状または円筒形の、ツール側磁石キャリアが設けられるかまたは配置され、
複数の永久磁石が、前記ツール側磁石キャリア内または前記ツール側磁石キャリア上に、好ましくは相互に均一な円周方向距離で、円周方向に隣接するそれぞれの前記永久磁石に対して反対の極性の向きで固定され、前記外科用手持ち機器と前記ツールシャフトとの間の力の伝達を可能にするために、前記外科用手持ち機器と前記ツールシャフトとの間の磁気カップリングを形成するように構成されており、
機器シャフトは、前記外科用手持ち機器から取り外し可能であり、かつ前記外科用手持ち機器に取り付け可能であり、
前記ツールシャフトが前記外科用手持ち機器に回転可能に取り付けられ、前記ツール側磁石キャリアは、前記機器シャフトの近位端から軸方向に突出するか、又は前記機器シャフトの近位端から軸方向に離間される、外科用ツール。
【請求項2】
前記機器シャフトの近位端部に取り付けられる取付ハンドルスリーブを備え、
前記取付ハンドルスリーブが、前記ツール側磁石キャリアを円周方向に取り囲み、前記ツール側磁石キャリアを越えて近位方向に軸方向に突出して、それによって形成される突出部分で、前記機器シャフトを前記外科用手持ち機器の遠位カップリング部に連結するための機械的カップリング部を形成する、請求項1に記載の外科用ツール。
【請求項3】
前記ツール側磁石キャリアと前記取付ハンドルスリーブとの間にリングギャップが形成されている、請求項に記載の外科用ツール。
【請求項4】
前記永久磁石が前記ツール側磁石キャリアの前面及び/又は側面上に配置されている、請求項に記載の外科用ツール。
【請求項5】
前記永久磁石は、前記ツール側磁石キャリア上及び/又は前記ツール側磁石キャリア内にNS極性を有して配置され、前記ツール側磁石キャリア上で半径方向かつ円周方向にすぐ隣の前記永久磁石に対して交互に反対の極性でそれぞれ配置されている、請求項に記載の外科用ツール。
【請求項6】
前記機器シャフトの近位端部に固定的に保持される取付ハンドルスリーブを備え、
前記ツール側磁石キャリアは、前記取付ハンドルスリーブから近位方向に、軸方向に離間して配置され、電気モータのロータを形成する、請求項に記載の外科用ツール。
【請求項7】
前記永久磁石が、前記ツール側磁石キャリアの中心軸から半径方向に距離をおいて、衛星状に円軌道を描いて配置されている、請求項に記載の外科用ツール。
【請求項8】
モータ駆動式の外科用手持ち機器であって、
中央ハンドル部と
少なくとも電気リード線、またはバッテリーのような自給式電源を接続するための近位接続部と、
コイルキャリアであって、その上またはそこに多数の電気コイルが搭載され、前記電気リード線または前記電源に接続可能であり、電気モータの一部を形成する、コイルキャリアと
請求項1~のいずれかに記載の外科用ツールを機械的に結合するための遠位カップリング部と、
少なくとも前記多数の電気コイルを、結合された前記外科用ツールから液密に分離する流体バリアと、
前記コイルキャリア内に回転可能に取り付けられ、前記遠位カップリング部内に突出するモータ出力軸を有する、前記外科用手持ち機器のロータと、
を備え、
前記ロータの遠位端部分において、前記外科用手持ち機器側の磁石キャリアである機器側磁石キャリアが配置又は形成され、その中に又はその上に、複数の永久磁石が、互いに均一な円周方向距離で固定され、円周方向に隣接するそれぞれの前記永久磁石に対して反対の極性の向きで固定され、
前記流体バリアが、前記コイルキャリアの少なくとも半径方向内側を囲み、前記コイルキャリアの近位前側を閉じ、それによって、前記外科用ツール側のロータのための半径方向および近位方向の液密なレセプタクルを形成する、モータ駆動式の外科用手持ち機器。
【請求項9】
NS極性を有する前記永久磁石が、それぞれ、前記機器側磁石キャリア上で半径方向かつ円周方向にすぐ隣の前記永久磁石に対して交互に反対の極性を有し、前記機器側磁石キャリア上及び/又は前記機器側磁石キャリア内に配置されている、請求項に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器。
【請求項10】
請求項1~7のいずれかに記載の外科用ツールと、請求項8又は9に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器と、を備える、外科用機器セット。
【請求項11】
請求項に記載の外科用ツールと、請求項に記載のモータ駆動式の外科用手持ち機器とを備え、前記外科用手持ち機器上に前記機器シャフトが結合した状態において、前記外科用手持ち機器の前記ロータは、前記ステータ内の前記流体バリアによって形成された前記液密レセプタクル内に突出しており、これにより、モータ出力電力は、前記外科用手持ち機器の前記ロータ内の前記永久磁石と、電流を印加可能な前記電気コイルとの間の磁気相互作用のみを介して、非接触で前記外科用ツールに直接伝達される、請求項10に記載の外科用機器セット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
先行技術であるドイツ特許出願公開公報第10 2013 111 194号から公知の手持ち機器の設計に基づく以前の外科用手持ち機器は、その構造上、水中又は流体の影響下での作業には適しておらず、少なくとも手術での使用後はコンタミネーションにより再利用できない。施術領域に圧力が過度にかかることにより、流体は、エフェクタ、例えばフライスカッターを通り、機器/ツールシャフトを通り、モータを通って流れ、ツールリリース(ツールと手持ち機器との連結点)およびモータケーブルへの接続部から流出する。汚れた液体や切除された組織の粒子も流れ出る。粒子は、ボールベアリング、ツールカップリングなどの内部部品を損傷する可能性があり、ハンドピースは意図された耐用年数を達成できない可能性がある。さらなる先行技術は、PCT国際出願第2020/232413号、米国特許出願第2010/217245号、米国特許出願第2020/323542号、ならびに米国特許出願第2015/201918号から公知である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
この目的は、請求項1に記載の結合可能な別個の外科用ツール、ツールと結合可能な請求項8に記載の別個の外科用手持ち機器、および請求項10に記載の外科用機器セットによって解決される。有利なさらなる展開は、従属請求項の主題である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本開示の第1の態様によれば、モータ駆動の外科用手持ち機器のための外科用ツール、又は外科用手持ち機器の外科用ツールは、ツールシャフトを備え/ツールシャフトが形成され、その遠位端部分に、好ましくはフライスカッター、ヤスリ又はドリルの形態のエフェクタが配置又は形成され、その近位端部分には、好ましくはリング状又は円筒形の、ツール側の磁石キャリアが設けられるか又は配置され、複数の永久磁石が、磁石キャリア内又は磁石キャリア上に、好ましくは互いから均一な円周方向距離で固定され、それぞれ、円周方向に隣接するそれぞれの永久磁石に対して反対の極性の向きで固定されている。これは、外科用手持ち機器とツールシャフトとの間の力の伝達を可能にするために、手持ち機器とツールシャフトとの間の磁気カップリングを形成するように構成されている。換言すれば、外科用ツールの円周方向に離間されて配置された永久磁石は、好ましくは(円周方向に隣接する)交互のNS極性となっている。その結果、交互のNS極性で磁界が形成され、以下に詳述するように、一種の磁気係合歯として作用する。さらに、外科用ツールは、手持ち機器から好ましくは取り外し可能であり、かつ手持ち機器に取り付け可能な、機器シャフトを備え、ツールシャフトは、磁石キャリアが機器シャフトの近位端において軸方向に突出し、または、機器シャフトの近位端から軸方向に離間して、回転可能に取り付けられる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本開示のさらなる態様において、モータ駆動式外科用手持ち機器は、中央ハンドル部と、少なくとも電気リード線又はバッテリーのような自給式電源を接続するための近位接続部と、コイルキャリアであって、その上又はそこに多数の電気コイルが搭載され、電気リード線又は電源に接続可能であり、電気モータの一部を形成する、コイルキャリアと、前述の態様の1つによる外科用ツールを機械的に結合するための遠位カップリング部と、流体バリアであって、少なくとも多数の電気コイルを、結合されたツールから液密に分離する流体バリアと、コイルキャリア内に回転可能に取り付けられ、遠位カップリング部内に突出するモータ出力軸を有するロータと、を備え、その好ましくは遠位端部分において、好ましくは機器側磁石キャリアが配置又は形成され、その中に、又はその上に、複数の永久磁石が、互いから均一な円周方向距離で固定され、それぞれ、円周方向に隣接するそれぞれの永久磁石に対して反対の極性の向きである。流体バリアは、少なくともコイルキャリアの半径方向内側を囲み、好ましくはコイルキャリアの近位端側を閉じて、半径方向および近位方向に、手持ち機器のロータの液密なレセプタクルを形成するように設計されている。この流体バリアの利点は、外科用手持ち機器の配置がツールシャフトの遠位端に位置するロータとコイルキャリアとの間の磁気カップリングを可能にし、これによって、モータからツールシャフトへの力の伝達の際に、追加のカップリング要素等の部品を省略でき、駆動部の効率を改善できることである。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
好ましくは、外科用ツールとモータ駆動式外科用手持ち機器とからなる外科用機器セットは、手持ち機器上に機器シャフトが結合された状態において、ツール側と手持ち機器側磁石キャリアとの間にギャップが残り、流体バリアを介在させて、モータ出力電力がツール側磁石キャリア内の永久磁石と手持ち機器側磁石キャリア内の永久磁石との間の磁気相互作用のみを介して非接触でツールに伝達されるようにするように構成されてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
1 機器セット
2 手持ち機器
3 ツール
4 エフェクタ
5 ツールシャフト
6 取付けハンドルスリーブ
7 ハンドル部
8 遠位カップリング部
9 中央ハンドル部
10 近位接続部
11 スリーブ形状流体バリア
12 カップ形の磁石キャリア
13 円筒形の磁石キャリア
14 ツールシャフト
15 リングギャップ
16 円筒形開口部
17 ラジアル磁石カップリング
18 キューブ形の永久磁石
19 電気モータ
20 モータ出力シャフト
21 ステータ
22 ロータ
23 拡径シャフト端部
24 シャフトシールリング
25 スプリング
26 シール
27 第1エアギャップ
28 第2エアギャップ
29 ラジアルボールベアリング
30 円筒形の流体バリア
31 第1ディスク形磁石キャリア
32 第2ディスク形磁石キャリア
33 円筒形の永久磁石
34 軸方向磁石カップリング
35 第1エアギャップ
36 第2エアギャップ
37 位置決めボア
38 ボールベアリングスリーブ
39 ツールシャフト
40 シールされた内壁
41 ラジアルボールベアリング
42 スペーサスリーブ
43 永久磁石
N 磁石N極
S 磁石S極
【手続補正10】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図16
【補正方法】変更
【補正の内容】
図16
【国際調査報告】