(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】負極用バインダー組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240426BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240426BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240426BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240426BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/587
H01M4/485
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01G11/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570308
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022028903
(87)【国際公開番号】W WO2022241067
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジンバオ・カオ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンチュン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・アミン-サナイェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ティー・クー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-マルク・スオウ
(72)【発明者】
【氏名】マリン・デューバー
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA11
5E078AB06
5E078BA47
5E078BA53
5E078FA04
5E078FA12
5E078FA13
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA23
5H050FA17
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
二次エネルギー貯蔵装置の負極用のポリマーバインダーを含む組成物が提供される。ポリマーバインダーは、活物質及び導電性材料を含む粒子状電極形成材料のためのマトリックスを提供する。ポリマーバインダーは酸官能基を含む。ポリマーバインダーは、他の官能性モノマーも含み、これらも負極におけるポリマーバインダーの性能に寄与し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質を含むエネルギー貯蔵装置内の集電体上の電極として使用するための組成物であって、以下を含む組成物:
a)少なくとも1つの粒子状電極形成材料;及び
b)重合モノマーとして以下を含むポリマーバインダー:
i)ポリマーバインダーの0.1~50重量%の、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、及び/又はその酸、及び/又は塩、及び/又は無水物から選択される少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和イオン性モノマー;
ii)ポリマーバインダーの10~99重量%の、少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマー;
iii)ポリマーバインダーの0~5重量%の、N-メチロールアミド、N-アルキロールアミド、ヒドロキシル基、エポキシ、シラン、ケト、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー;
iv)ポリマーバインダーの0~5重量%の、少なくとも2つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマー;
v)ポリマーバインダーの0~30重量%の、シラン、ウレイド、アミン、ヒドロキシル基、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー;及び
vi)ポリマーバインダーの0~30重量%の、エチレン性不飽和を有し、水素又はアリール又はアルキル鎖(疎水性であってもよい)で終端され、以下の式を有する少なくとも1つのオキシアルキル化モノマー:
【化1】
式中、
m及びpは、0~150のアルキレンオキシド単位の数を表し、
nは5~150のエチレンオキシド単位の数を表し、
qは少なくとも1に等しい整数を表し、5≦(m+n+p)q≦150、好ましくは15≦(m+n+p)q≦120、
R
1及びR
2はメチル又はエチルを表し、
Rは、少なくとも1つの重合可能なオレフィン性不飽和を含む基を表し、好ましくは、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルウレタン、メタクリルウレタン、ビニル、アリル、メタリル、イソプレニル、不飽和ウレタン基から選択される基、特にアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α-α’-ジメチル-イソプロペニル-ベンジルウレタン、アリルウレタンであり、より好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルウレタン、メタクリルウレタン、ビニル、アリル、メタリル及びイソプレニル、マレイン酸のエステル、イタコン酸のエステル、クロトン酸のエステルから選択される基であり、さらにより好ましくは、メタクリレート基及びそれらの混合物であり、
R’は、水素、炭素数5~60のアリール鎖、又は炭素数1~60のアルキル鎖末端を表し、
ここで、成分b)i)~b)vi)の合計は、最大でポリマーバインダーb)の100重量%となり、
ポリマーバインダーb)は、55℃以下のTg及び/又は25℃以下の最低フィルム形成温度を有する;
c)ポリマーバインダーの0~40重量%の、ポリマーバインダーb)と反応することができる少なくとも1種の架橋剤;
d)ポリマーバインダーの0~10重量%の1つ又は複数の湿潤剤;
e)ポリマーバインダーの0~10重量%の1つ又は複数の分散剤;
f)ポリマーバインダーの0~10重量%の、1つ又は複数の揮発性有機化合物(VOC)、及び/又は接着促進剤、及び/又は合体剤;
g)ポリマーバインダーの0~200重量%の1つ又は複数のレオロジー調整剤添加剤;及び
h)ポリマーバインダーの0~10重量%の、硬化防止剤、界面活性剤、及びそれらの混合物の少なくとも1つを含む、1つ又は複数の添加剤。
【請求項2】
モノマーiii)は、N-アルキロール(メタ)アクリルアミド、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、及びそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの架橋剤c)は、エポキシ、アミン、アルコール、ブロックイソシアネート、カルボジイミド、多官能性アジリジン、シラン、及びそれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマーバインダーb)は、30~500nmの体積平均粒子径を有するか、又は30~500nmのさまざまな粒子径の混合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
i)少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和イオン性モノマーは、以下の少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物:(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、2-ポリカルボキシエチルアクリレート、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、4-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートリン酸エステル、ポリアルキレングリコールアリルエーテルリン酸エステル、ビニルホスホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホン酸;及び/又は酸、及び/又はその塩、及び/又は無水物;及びそれらの混合物。
【請求項6】
ii)少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーは、以下の少なくとも1つを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物:C1~C12アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びその誘導体、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体、ジイソブチレン、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、又はそれらの混合物。
【請求項7】
iv)少なくとも2つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーは、以下の少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物:ポリオールから得られたアリルエーテル;ポリオールから得られたアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;ジビニルナフタレン;トリビニルベンゼン;1,2,4-トリビニルシクロヘキサン;トリアリルペンタエリスリトール;ジアリルペンタエリスリトール;ジアリルスクロース;トリメチロールプロパンジアリルエーテル;1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート;アリル(メタ)アクリレート;イタコン酸ジアリル;フマル酸ジアリル;マレイン酸ジアリル;ブタンジオールジメタクリレート;エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;メチレンビス(メタ)アクリルアミド;トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート;ジビニルベンゼン又はそれらの混合物。
【請求項8】
v)シラン、ウレイドアミン、ヒドロキシル基、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーは、以下の少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物:(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、置換尿素の(メタ)アクリル酸エステル、置換尿素の(メタ)アクリルアミド、置換尿素のアリルエーテル、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物。
【請求項9】
a)少なくとも1つの粒子状電極形成材料は、以下から選択される1つ又は複数の材料を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物:ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンカーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフト活性炭、カーボンブラック、グラフェン、メソポーラスカーボン、アモルファスシリコン、半結晶シリコン、酸化シリコン、シリコンナノワイヤ、錫、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、及びそれらの混合物又は複合物。
【請求項10】
乾燥形態の請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物で少なくとも1つの表面がコーティングされた導電性基板を含む、電極。
【請求項11】
請求項10に記載の電極を含み、非水系電池、キャパシタ、膜電極接合体からなる群より選択される装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を含むキットであって、
少なくとも1つの架橋剤c)とポリマーバインダーb)が組み合わせで、前記キットの第1のコンポーネントを形成し、
a)少なくとも1つの粒子状電極形成材料は、前記キットの第2のコンポーネントを構成する、キット。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を含むキットであって、
a)少なくとも1つの粒子状電極形成材料が前記キットの第1のコンポーネントを構成し;ポリマーバインダーb)は前記キットの第2のコンポーネントを構成し;少なくとも1つの架橋剤c)は前記キットの第3のコンポーネントを構成する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水二次電池の負極に有用なバインダー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量かつ高エネルギー密度の二次(充電式)バッテリー技術への関心が高まっている。リチウムイオン電池(LIB)は、家庭用電化製品、電気自動車、電動工具など、多くの機器の電源として広く使用されている。近年、ゼロエミッション電気自動車、特に長距離電気自動車の人気の高まりにより、エネルギー密度がさらに向上したLIB技術への需要が高まっている。バッテリーのエネルギー密度と全体的な性能を向上させるために、バッテリーのさまざまなコンポーネントが研究されている。これらのコンポーネントには、負極、正極、電解質、セパレータが含まれる。特に、改良されたバインダーがアノードに使用される場合、負極は電池エネルギー密度を高める可能性がある。
【0003】
米国特許出願公開第2013/0330622号明細書は、負極活物質、バインダー、及び水溶性ポリマーを含む二次電池用の負極を開示している。水溶性ポリマーは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマー単位15重量%~50重量%、(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位が30重量%~70重量%、及びフッ素含有(メタ)アクリル酸エステルモノマー単位を0.5重量%~10重量%含有する共重合体であり得る。
【0004】
米国特許第9,461,308号明細書は、リチウムイオン二次電池用の電極が開示している。電極は電極活物質と、芳香族ビニルモノマー単位1~30重量%、不飽和カルボン酸モノマー単位20~60重量%、架橋性モノマー単位0.1~5重量%を含む共重合体である水溶性ポリマーを含む。芳香族ビニルモノマーは、スチレン硫酸ナトリウムモノマーである。
【0005】
米国特許第10,224,549号明細書は、活物質用のバインダー溶液として従来のバインダーと組み合わせて使用される高酸含有水溶性アクリルポリマーを開示している。バインダー組成物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)などの粒子状バインダーと、少量(<5%)の高酸含有水溶性ポリマーとを含む。また、高酸含有水溶性ポリマーは、他の官能性モノマーを含まない。
【0006】
米国特許出願公開第2020/0203707号明細書は、以下を含む電着可能なコーティング組成物を開示している:架橋性モノマー及び/又はモノエチレン性不飽和アルキル化アルコキシレートモノマーの残基を含むpH依存性レオロジー調整剤を有するバインダー;電気化学的に活性な材料及び/又は導電剤;及び水性媒体。
【0007】
米国特許出願公開第2020/0203704号明細書は、フッ素ポリマー;電気化学的に活性な材料及び/又は導電剤;pH依存性のレオロジー調整剤;及び水を含む水性媒体を含む電着可能なコーティング組成物を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような二次電池の電極の製造においては、環境上の懸念から、水ベースのスラリーが溶媒ベースのスラリーよりも好まれることが多い。通常、これらの電極は、電極形成成分を水に分散させ、スラリー又はペーストを集電体上に薄膜としてキャストし、その後膜を乾燥させて電極を形成することによって製造される。ポリマーバインダーの機能は、電極形成微粒子を集電体上に結合することである。これらの二次リチウムイオン電池の負極(アノード)の電極形成微粒子は通常、リチウムイオンの電気化学反応(バッテリーの充電/放電)のための反応サイトを作成するために、リチウムイオンを可逆的に吸収及び放出又はホスト(インターカレート)できる活物質(炭素質材料など)、導電性添加剤、レオロジー調整剤、及びポリマーバインダーを含む。アノード活物質は、充電/放電サイクル中に電子を供与又は受容できる物質である。導電性添加剤は通常、負極(アノード)の導電性を向上させるために使用され、これによりバッテリーの内部抵抗が低減され、その結果バッテリーの出力が向上する。レオロジー調整剤は通常、電極製造キャストプロセスのスラリーレオロジーを調整するためにアノードスラリー配合物中に存在する。負極配合物に使用されるレオロジー調整剤の例には、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びポリアクリル酸(PAA)が含まれる。ポリマーバインダーの機能は、アノード成分を集電体上に結合することである。一般に、スチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックスが主なアノードバインダーである。
【0009】
リチウムイオン電池用途の水性スラリーの調製中に、アモルファスシリコン(Si)が酸化されてH2ガスが発生する可能性があることが報告されている[K.Hays et al; J.Phys.Chem.C2018,122,18,9746-9754]。二次電池におけるSiの使用は、Liイオン電池の負極のエネルギー密度を高める可能性があるため重要である。ただし、H2の生成は大規模なバッテリー製造時に安全上の懸念を引き起こす。
【0010】
電池エネルギー密度の向上とアノード活物質の進歩という現在進行中の産業傾向により、従来のポリマーバインダーに新たな課題が生じている。高いエネルギー密度、H2発生がなく、優れた耐用年数を有する二次電池を提供するアノードバインダーが依然として求められている。単に活物質と導電性材料を物理的に保持し、物理的な柔軟性を提供するだけでなく、アノードに機能的な利点を提供するバインダーが必要とされている。
【0011】
本発明の1つの目的は、電気化学的電気エネルギー貯蔵装置の負極用のポリマーバインダーを含む新規な組成物を提供することである。
【0012】
本発明では、驚くべきことに、特定の官能基を含む開示されたポリマーが負極配合物中のアノードバインダーとして、低い抵抗率、集電体基板への良好な接着性、及び低いVOC含有量を備えた負極を提供するために使用できることが見出された。得られた二次電池用のアノードバインダー及び負極は、集電体への良好な接着性を有するとともに、アノード、ひいては電池に機能的利点を提供する。
【0013】
予想外なことに、本発明のバインダーは、非晶質Si含有水性スラリーの調製中にH2ガスの発生を防止することもできる。これは、アノードの製造にとって利点である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、非水電解質を含む電気エネルギー貯蔵装置内の集電体上の負極として使用するための組成物を対象とする。本発明の組成物は、以下を含むか、本質的に以下からなるか、又は以下からなる:a)少なくとも1つの粒子状電極形成材料;b)ポリマーバインダー;c)ポリマーバインダーの0~40重量%の、ポリマーバインダーb)と反応することができる少なくとも1種の架橋剤。
【0015】
ポリマーバインダーb)は、重合モノマーとして以下のものを含むか、以下からなるか、又は本質的に以下からなる:
i)ポリマーバインダーの0.1~50重量%の、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩から選択される少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和イオン性モノマー。これらの官能基は、酸の形、及び/又は塩として、及び/又は無水物として存在することができる、
ii)ポリマーバインダーの10~99重量%%、少なくとも1つの非イオン性モノエチレン性不飽和モノマー、
iii)ポリマーバインダーの0~5重量%の、重合後の架橋反応を促進し得る少なくとも1つの官能基を含む少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー。少なくとも1つの官能基は、N-メチロールアミド、N-アルキロールアミド、ヒドロキシル基、エポキシ、シラン、ケト、又はそれらの組み合わせを含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなることができる、
iv)ポリマーバインダーの0~5重量%の、少なくとも2つのエチレン性不飽和を含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなる少なくとも1つのモノマー、
v)ポリマーバインダーの0~30重量%の、シラン、ウレイド、アミン、ヒドロキシル基、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの官能基を含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなる少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、
vi)ポリマーバインダーの0~30重量%の、エチレン性不飽和を有し、水素又はアリール又はアルキル鎖(疎水性であってもよい)で終端され、以下の式を有する少なくとも1つのオキシアルキル化モノマー:
【化1】
式中、
m及びpは、0~150のアルキレンオキシド単位の数を表し、
nは5~150のエチレンオキシド単位の数を表し、
qは少なくとも1に等しい整数を表し、5≦(m+n+p)q≦150、好ましくは15≦(m+n+p)q≦120、
R
1及びR
2はメチル又はエチルを表し、
Rは、少なくとも1つの重合可能なオレフィン性不飽和を含む、それからなる、又は本質的にそれからなる基を表し、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルウレタン、メタクリルウレタン、ビニル、アリル、メタリル、イソプレニル、不飽和ウレタン基から選択される基、特にアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α-α’-ジメチル-イソプロペニル-ベンジルウレタン、アリルウレタンであり、より好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルウレタン、メタクリルウレタン、ビニル、アリル、メタリル及びイソプレニル、マレイン酸のエステル、イタコン酸のエステル、クロトン酸のエステルから選択される基であり、さらにより好ましくは、メタクリレート基及びそれらの混合物であり、
R’は、水素、炭素数5~60のアリール鎖、又は炭素数1~60のアルキル鎖末端を表す。
【0016】
成分b)i)~b)vi)の合計は、最大でポリマーバインダーb)の100重量%となる。
【0017】
ポリマーバインダーb)は、55℃以下のTg及び/又は25℃以下の最低フィルム形成温度を有する。
【0018】
組成物は、以下の任意成分も含み得る:
c)ポリマーバインダーの0~40重量%の、ポリマーバインダーb)と反応することができる少なくとも1種の架橋剤;
d)ポリマーバインダーの0~10重量%の1つ又は複数の湿潤剤、
e)ポリマーバインダーの0~10重量%の1つ又は複数の分散剤、
f)ポリマーバインダーの0~10重量%の、1つ又は複数の揮発性有機化合物(VOC)、及び/又は接着促進剤、及び/又は合体剤、
g)ポリマーバインダーの0~200重量%の1つ又は複数のレオロジー調整剤添加剤、
h)ポリマーバインダーの0~10重量%の、硬化防止剤、界面活性剤、及びそれらの混合物を含む、それらからなる、又はそれら本質的にからなる1つ又は複数の添加剤。
【0019】
本明細書に開示される電極として使用するための組成物は、溶液、分散液、又はペーストの形態であってもよいが、典型的にはスラリーとして調製される。電極の形成は、電極形成スラリー組成物の層を集電体に適用することによって行うことができる。次いで、導電層を乾燥させて、集電体に接着される電極材料の層、すなわち活物質層を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のバインダーは、典型的には活物質及び導電性材料を含む粒子状電極形成材料のためのマトリックスを提供する。
【0021】
本明細書で使用する場合、「電極」という用語は、集電体上にキャストされた電極形成スラリー組成物の乾燥層を指す。通常、電極は、分散した電極形成成分とバインダーのスラリー又はペーストを薄膜としてキャスティングし、次いでその膜を乾燥させて電極を形成することによって製造される。この乾燥した膜を電極と呼ぶ。
【0022】
本明細書で使用される場合、「電極アセンブリ」という用語は、集電体とその上で乾燥された乾燥電極との組み合わせである。分散された電極形成成分及びバインダーのスラリー又はペーストを、アルミニウム、銅又はニッケル箔などの集電体上にキャストして、電極アセンブリを形成することができる。電極集合体は、水に分散されたアルミナ及びバインダーなどのセパレータ形成スラリーでさらにコーティングすることができる。セパレータスラリーは、ウェットオンウェットプロセスでデュアルダイ又はマルチダイを使用した1ステッププロセスで電極スラリーと同時にキャストできる。あるいは、電極が乾燥した後、セパレータスラリーを電極上にキャストすることもできるし、あるいは自立型セパレータを電極表面に接着することもできる。したがって、電極アセンブリには、集電体、乾燥した電極フィルム、及び任意で電極の上面上のセパレータフィルムが含まれる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「スラリー」という用語は、水中に微細固体材料及びバインダーを含む自由流動性又は流動性及び/又はポンプ輸送可能な懸濁液を意味する。このような微細固体には、通常、二次電池用の電極を形成するのに必要な電気化学的活性材料及び導電性材料である固体粒子に加えて、とりわけポリマーバインダー粒子が含まれ得る。微細固体材料の分散品質を向上させるために使用される分散剤などの添加剤も水に溶解させることができる。
【0024】
電極として使用するための組成物は、当技術分野で知られている任意の方法によって堆積させることができる。このような適用方法の非限定的な例としては、スプレー、ローリング、ドローバー塗布、バードバー塗布、グラビア、スロットコーティング、又は他のコイルコーティング方法が挙げられる。組成物は、必要に応じて加熱して乾燥される。組成物のコーティングは、乾燥工程の前又は後に、水及び他の揮発性物質を除去するために、任意にカレンダー加工されてもよい。乾燥時間、温度、使用する真空を調整して、目的の乾燥を実現できる。
【0025】
集電体は、メッシュ、発泡体、フォイル、ロッド、又は集電体の機能を妨げない他の形態の構造的形態であってもよい。電極が正極か負極かによって集電体の材質が異なる。負極の最も一般的な集電体は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又はニッケル(Ni)金属のシート又は箔である。電極材料は、リチウムイオン電池の集電体の表面に適用され、付着しなければならない。
【0026】
異なる架橋官能基及び/又は反応性官能基を本発明のポリマーバインダーb)に組み込んで、機械的特性のバランスをとり、集電体基板に適用する際の膜形成を強化することができる。ポリマーバインダーb)中に存在し得る架橋官能基には2つのクラスがある。これらは、現場架橋官能基と重合後の架橋官能基である。現場架橋官能基は、重合中にポリマーバインダーb)を架橋する。重合後の架橋官能基は、b)負極フィルムの形成中及び形成後、ポリマーバインダーb)を含む組成物を集電体基板に塗布して電極を形成するときに、ポリマーバインダーを架橋する。
【0027】
したがって、非水電解質を含むエネルギー貯蔵装置内の集電体上の電極として使用するための組成物が提供される。組成物は以下を含む、からなる、又は本質的にからなる:a)少なくとも1つの粒子状電極形成材料、b)ポリマーバインダー、及び任意選択で、ポリマーバインダーの0~40重量%の、c)ポリマーバインダーb)と反応することができる1つ又は複数の任意の架橋剤。使用される架橋剤c)は、バインダーb)に含まれる後架橋モノマーの種類に依存する。バインダーb)に含まれる特定の後架橋官能基は、外部架橋剤c)を必要としない。
【0028】
粒子状電極形成材料a)
粒子状電極形成材料a)は、ポリマーバインダーb)によって(物理的及び/又は化学的に)一緒に保持される粒子状活物質及び導電性粒子を含む。活物質は、リチウムイオンを挿入することができる、すなわち、リチウムイオンを吸収/放出することができる材料である。このような活性材料は当技術分野で知られている。導電性粒子も当技術分野で知られており、電子を伝導することができる材料である。特定の材料は、電極内で両方の機能を実行できる。
【0029】
粒子状電極形成材料a)としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:導電性カーボン添加剤、カーボンナノチューブ(CNT)、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、活性炭、カーボンブラック、グラフェン、メソポーラスカーボン、アモルファスシリコン、半結晶シリコン、酸化ケイ素、シリコンナノワイヤ、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、チタン酸リチウム、前述の材料の混合物又は複合物、及び/又は当技術分野で知られている、若しくはリチウムイオン電池のアノードとして使用するのに適したものとして本明細書に記載されている他の材料。これらの微粒子には、活物質、すなわち、リチウムイオンを挿入(受容)できる物質、及び導電性物質が含まれてもよい。リチウムイオンキャパシタ及び/又はリチウムイオン電池の電極フィルムは、乾燥後、粒子状アノード形成材料a)を約80重量パーセント、好ましくは90又は94重量パーセントまで、より好ましくは98重量パーセントまで含むことができる。これらの電極形成材料a)は、典型的には固体粉末の形態である。
【0030】
カーボンブラックやグラファイト粉末などの導電性炭素材料は、電気化学システムの内部電気抵抗を下げるために正極と負極に広く使用されている。導電性カーボンの非限定的な例には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、CNT、微細黒鉛粉末、蒸着黒鉛繊維、及びケッチェンカーボンブラックが含まれ得る。電極形成材料a)中の活物質に対する導電性カーボンの典型的な添加レベルは、通常、粒子状電極形成材料a)の総量の0.1重量%~20重量%の範囲内であり、より好ましくは、0.5重量%~10重量%の範囲内である。
【0031】
電極形成組成物中に存在する粒子状電極形成材料a)(活物質と導電性カーボンの両方を含む)の量は、組成物の総乾燥重量の50重量%~99重量%であってもよく、好ましくは組成物の総乾燥重量の80~98重量%、最も好ましくは94~98重量%である。
【0032】
ポリマーバインダーb)
本発明におけるアノードは、ポリマーバインダーをさらに含む。バインダーは電極中に存在する。バインダーの機能の1つは、粒子状のアノード形成材料を結合して電極を形成することである。ポリマーバインダーは、電極を集電体に接着する役割も果たすことができる。ポリマーバインダーb)は、重合粒子の形態であってもよい。これらの粒子は、エマルション又はラテックスの形態で提供されてもよい。
【0033】
本発明者らは、驚くべきことに、開示されたポリマーバインダーb)のTgは特定の範囲内であることが好ましいことを発見した。Tgは、ポリマーの物理的特性が熱可塑性(例えば、可撓性、軟性、伸縮性)から、ポリマーバインダーb)の柔軟性と伸びを制限するガラス状態の物理的特性に変化する温度である。その結果、電極を曲げると、電極に亀裂(目に見える亀裂又は微小な亀裂)が形成され、電極の性能が低下する可能性がある。電極の取り扱いを容易にし、良好な電極性能を得るために、ポリマーバインダーb)のTgは、ほぼ室温、又は好ましくは室温未満、すなわち、特定の実施形態によれば、55℃未満、45℃未満、35℃未満、25℃未満、20℃未満、又は10℃未満であり得る。
【0034】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書に開示される電極形成組成物を使用して満足のいく電極の完全性を得るために、水相が蒸発すると、ポリマーバインダーb)を構成するポリマーバインダーb)ラテックスの形態の粒子(乳化粒子)が合体して、相互接続された電極ネットワーク内に活物質と導電性カーボンを保持できる連続ネットワークになる。ポリマーバインダーb)ラテックス粒子の最低フィルム形成温度(MFFT)は、水が蒸発して連続フィルムを形成するときにポリマー粒子の合体が起こる最低温度である。MFFTは、ポリマーバインダーb)粒子が合体して連続フィルムを形成する最低温度である。ポリマーバインダーb)は、室温付近又はそれ以下の温度、すなわち、特定の実施形態によれば、55℃未満、50℃未満、45℃未満、35℃未満、25℃未満、又は20℃未満の温度でMFFTを有することが有利である。
【0035】
本発明の電極形成用スラリー組成物の揮発性有機含有量(VOC)に寄与する合体剤を添加する必要はほとんど、あるいは全くない。一実施形態では、電極形成組成物は、0~5重量%未満、別の実施形態では0~1重量%未満、さらに別の実施形態では0~0.1重量%未満のVOC含有量を有する。
【0036】
以下により詳細に論じるように、ポリマーバインダーb)は、重合モノマーとして、多数のモノマーを含む。開示されたポリマーバインダーb)の重合方法の選択は、特に限定されない。開示されたバインダーを合成するには、任意の重合方法を使用することができる。非限定的な方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、フリーラジカル重合、制御重合、及びイオン重合が挙げられる。一実施形態では、ポリマーバインダーb)は、乳化重合を介したフリーラジカル重合によって調製される。
【0037】
開示されたバインダーの数平均分子量は、好ましくは1000g/モル以上、より好ましくは5000g/モル以上、さらにより好ましくは10,000g/モル以上である。本明細書で使用される数平均分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0038】
ポリマーバインダーb)は、30~500nmの体積平均粒子径を有してもよく、又は30~500nmの様々な粒子径の混合物であってもよい。粒子径は30~400nmの範囲内であることが好ましく、40~350nmの範囲内であることがより好ましく、50~300nmの範囲内であることがさらに好ましい。本明細書で使用される場合、体積平均粒子径は、動的光散乱(DLS)によって決定される。
【0039】
電極形成材料a)に対する組成物中のポリマーバインダーb)の配合量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、そして好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。ポリマーバインダーb)の配合量が前述の範囲内にある場合、それは良好な結合性能を提供することができる。
【0040】
エチレン性不飽和イオン性モノマーi)
ポリマーバインダーb)は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩から選択される少なくとも1つの官能基を酸及び/又は塩、及び/又は無水物の形態で含む、それからなる、又は本質的にそれらからなるモノエチレン性不飽和モノマーi)を一定の重量パーセントで含有する。
【0041】
特定の割合の官能基含有モノマーi)を含有する開示されたポリマーバインダーb)は、水溶液中で中和処理すると粘度が増加する可能性がある。したがって、開示されたポリマーバインダーb)は、アノードスラリー中で自己増粘バインダーとして機能する可能性がある。自己増粘バインダーは、本明細書に開示される組成物において、従来のレオロジー調整剤、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)の有無にかかわらず使用することができる。中和ステップは、機能的な自己増粘バインダーを提供するために重要であり得る。完全に又は部分的に中和されたバインダーは、水溶液中で膨潤して溶液の粘度を増加させるのに十分な溶解度を有していなければならない。モノマーi)として酸官能基を含むいくつかのポリマーバインダーb)の例は、pH調整時に調整可能な水溶液粘度を有し得る。ポリマーバインダーb)の調整可能な溶液レオロジーにより、従来のレオロジー調整剤の有無にかかわらず、それらがアノードスラリー中で自己増粘バインダーとして機能することが可能になる可能性がある。
【0042】
開示されたポリマーバインダーb)に含まれるモノエチレン性不飽和イオン性モノマーi)の重量パーセントは、好ましくはポリマーバインダーb)の0.1~50重量%の範囲内、より好ましくは1~45重量%の範囲内、特に好ましくは5~45重量%の範囲内である。モノエチレン性不飽和イオン性モノマーi)の選択は特に限定されない。非限定的な例としては、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、2-ポリカルボキシエチルアクリレート、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、4-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-スルホエチルメタクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールアリルエーテルホスフェート、ビニルホスホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホン酸、及びそれらの混合物のリン酸エステルが挙げられる。また、これらのモノマーのいずれかの酸形態、及び/又は塩形態及び/又は無水物形態(化学的に可能であれば)も適している。好ましくは0.1~50重量%、より好ましくは1~45重量%、最も好ましくは5~45重量%である。
【0043】
非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーii)
ポリマーバインダーb)は、1つ又は複数の非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーii)をさらに含む、それからなる、又は本質的にそれからなってもよい。非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーii)の選択は特に限定されない。非限定的な例としては、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル(例えばC1~C12アルキル(メタ)アクリレート、スチレン及びそれらの誘導体)、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体、ジイソブチレン、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム及びそれらの混合物が挙げられる。対応する低Tgポリマーを提供する非イオン性モノマーii)は、開示されたポリマーバインダーb)にとって好ましい。例えば、開示されたポリマーバインダーa)のTgを下げるには、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、及びアクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。開示されたポリマーバインダーb)中の非イオン性モノエチレン性不飽和モノマーii)の重量パーセントは、好ましくは10~99重量%の範囲内、より好ましくはポリマーバインダーb)の20~95重量%の範囲内、特に好ましくは30~90重量%の範囲内である。
【0044】
後架橋可能な官能基を含むエチレン性不飽和モノマーiii)
開示されたポリマーバインダーb)は、重合後の架橋反応を可能にし得る官能基を含む1つ又は複数の架橋性モノマーiii)をさらに含む、それからなる、又は本質的にそれからなることができる。複数の官能基が存在する場合、それらの官能基は同じであっても異なっていてもよい。重合後の架橋反応を可能にする適切な官能基は、N-メチロールアミド、N-アルキロールアミド、ヒドロキシル基、エポキシ、シラン、及びケト基の少なくとも1つから選択され得る。架橋性エチレン性不飽和モノマーiii)の選択は特に限定されない。重合後架橋性エチレン性不飽和モノマーiii)の非限定的な例は、以下を含むか、からなるか、又は本質的にからなることができる:N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アセトアエトキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン及びそれらの混合物。開示されたポリマーバインダーb)中の架橋性エチレン性不飽和モノマーiii)の重量パーセントは、好ましくはポリマーバインダーb)の0~5重量%、より好ましくは0.1~3重量%、最も好ましくはポリマーバインダーb)の0.2~2重量%の範囲内である。
【0045】
少なくとも2つのエチレン性不飽和を含むモノマーiv)
ポリマーバインダーb)はまた、少なくとも2つのエチレン性不飽和を含む少なくとも1つのモノマーiv)を含む、それからなる、又は本質的にそれからなってもよい。少なくとも2つのエチレン性不飽和を含むこれらのモノマーiv)は、ポリマーバインダーの現場架橋が可能であり、これはバインダーb)が重合中に架橋されることを意味する。これらのモノマーiv)の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ポリオールから得られたアリルエーテル;好ましくは、ポリオールから得られ、ペンタエリスリトール、ソルビトール、又はスクロースから選択されるアリルエーテル;ポリオールから得られたアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル、好ましくはポリオールから得られ、ペンタエリスリトール、ソルビトール、又はスクロースから選択されるアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル;ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、ジアリルスクロース、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルイタコネート、フマル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、ジメタクリル酸ブタンジオール、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルシアヌレート、フタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、及びそれらの混合物。より好ましいモノマーiv)は、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン及びそれらの混合物である。最も好ましいモノマーiv)は、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼンである。
【0046】
これらのモノマーiv)は、ポリマーバインダーb)中に0~5重量%、好ましくは0.01~3重量%の範囲内、より好ましくは0.05~2重量%の範囲内、特に好ましくはポリマーバインダーb)の0.1~1重量%の範囲内で存在してもよい。
【0047】
官能基を含むエチレン性不飽和モノマーv)
本発明のポリマーバインダーb)は、バインダーと電極活物質との間の相互作用を改善し得る官能基を含む1つ又は複数のエチレン性不飽和モノマーv)をさらに含む、それからなり、又は本質的にそれからなってもよい。これらの官能基は、バインダーと電極導電性材料の間の相互作用も改善し得る。モノマーv)中の官能基は、シラン、ウレイド、アミン、ヒドロキシル基、及びそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなることができる。
【0048】
モノマーv)の選択は特に限定されない。例えば、モノマーv)は、シラン、ウレイド、アミン及びヒドロキシル基のうちの少なくとも1つを含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなる官能基を有するエチレン性不飽和モノマーであり得る。これらの官能基を含むモノマーの非限定的な例としては、以下が挙げられる:(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、置換尿素の(メタ)アクリル酸エステル、置換尿素の(メタ)アクリルアミド、置換尿素のアリルエーテル、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート。これらの官能性エチレン性不飽和モノマーv)は、電極におけるポリマーバインダーb)の性能を向上させるために、単独で又は組み合わせて任意に使用することができる。
【0049】
一実施形態によれば、モノマーv)は、以下の少なくとも1つから選択される:(メタ)アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、置換尿素の(メタ)アクリル酸エステル、置換尿素の(メタ)アクリルアミド、置換尿素のアリルエーテル、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物。
【0050】
別の実施形態によれば、モノマーv)は、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アミノアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物の少なくとも1つから選択される。
【0051】
エチレン性不飽和官能性モノマーv)の重量パーセントは、好ましくは0~30重量%の範囲内、好ましくは0.01~10重量%の範囲内、より好ましくはポリマーバインダーb)の0.05~7.5重量%の範囲内、さらにより好ましくは0.1~5重量%の範囲内である。
【0052】
特に、モノマーv)は、一部のモノマーiii)と同様に、シラン又はヒドロキシル基を含み得る。したがって、モノマーv)及びiii)の両方が1つ又は複数のシラン基及びヒドロキシル基を含む場合、重合性バインダーb)中にシラン又はヒドロキシル基又はエポキシ基を含むモノマーが、ポリマーバインダーb)の重量に対して35重量%まで存在し得る。
【0053】
エチレン性不飽和を有し、水素又はアリール又はアルキル鎖で末端を有するオキシアルキル化モノマーvi)
開示されたポリマーバインダーb)はさらに、エチレン性不飽和を有し、水素又は炭素原子数5~60のアリール鎖、又は炭素原子数1~60のアルキル鎖で終端され、以下の式を有するオキシアルキル化モノマー又は単数又は複数のエチレン性不飽和モノマーを含む、それからなる、又は本質的にそれからなることができる:
【化2】
式中、
m及びpは、0~150のアルキレンオキシド単位の数を表し、
nは5~150のエチレンオキシド単位の数を表し、
qは少なくとも1に等しい整数を表し、5≦(m+n+p)q≦150、好ましくは15≦(m+n+p)q≦120、
R
1及びR
2はメチル又はエチルを表し、
Rは、少なくとも1つの重合可能なオレフィン性不飽和を含む基を表し、好ましくは、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルウレタン、メタクリルウレタン、ビニル、アリル、メタリル、イソプレニル、不飽和ウレタン基から選択される基、特にアクリルウレタン、メタクリルウレタン、α-α’-ジメチル-イソプロペニル-ベンジルウレタン、アリルウレタンであり、より好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルウレタン、メタクリルウレタン、ビニル、アリル、メタリル及びイソプレニル、マレイン酸のエステル、イタコン酸のエステル、クロトン酸のエステルから選択される基であり、さらにより好ましくは、メタクリレート基及びそれらの混合物であり、
R’は、水素、炭素数5~60のアリール鎖、又は炭素数1~60のアルキル鎖末端を表す。開示されたポリマーバインダーb)中のオキシアルキル化モノマーvi)の重量パーセントは、好ましくはポリマーバインダーb)の0~30重量%の範囲内、より好ましくは0~20重量%の範囲内、特に好ましくは0.1~20重量%の範囲内である。
【0054】
架橋剤c)
開示された組成物はまた、任意の架橋剤c)を含む、それからなる、又は本質的にそれからなってもよい。架橋剤c)は、開示されたポリマーバインダーb)の官能基と反応し得る。例えば、モノマーiii)中の後架橋可能な官能基は、外部薬剤の有無にかかわらず架橋され得る。これは、後架橋可能な官能基の一部がそれ自体と反応して架橋する可能性があることを意味する。ただし、iii)の後架橋可能な官能基の一部は、架橋を行うために外部薬剤と反応する必要がある場合がある。本明細書で言及される架橋剤c)は、モノマーiii)中の後架橋可能な官能基の一部と反応することができる、ポリマーバインダーb)とは別の成分である。架橋剤c)は、バインダーの調製中にポリマーバインダーb)に添加することができる。架橋剤c)はまた、又はその代わりに、2液型バインダー組成物として電極の製造中に負極スラリーに添加されてもよい。架橋剤c)の選択は特に限定されない。開示されたポリマーバインダーb)又は負極中に存在する材料と反応できる2つ以上の官能基を含む任意の架橋剤を架橋剤c)として使用することができる。架橋剤c)内の反応性官能基の非限定的な例には、シラン、エポキシ、アミン、アルコール、ブロックイソシアネート、アジリジン、及びカルボジイミドが含まれる。適切な架橋剤c)には、以下の少なくとも1つが含まれるが、これらに限定されない:アルコキシシラン、アルコキシシラン誘導体、ジヒドラジド、多官能ヒドラジド、ジアミン、多官能アミン、ジエポキシ、多官能エポキシ、ジオール、ポリオール、多官能ブロックイソシアネート、多官能アジリジン、多官能カルボジイミド、及びそれらの混合物。
【0055】
一実施形態によれば、架橋剤c)は、以下の少なくとも1つから選択され得る:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、トリメトキシプロピルシラン、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、バリンジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、ポリビニルアルコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ブロックポリイソシアネート(例:CovestroのDesmodur(登録商標)BL3175SN)、ペンタエリスリトールトリス(3-(1-アジリジニル)プロピオネート)、ポリカルボジイミド架橋剤(例:CARBODILITE(商標)V-02、CARBODILITE(商標)V-02-L2、CARBODILITE(商標)SV-02、CARBODILITE(商標)V-10、CARBODILITE(商標)SW-12G、CARBODILITE(商標)E-02、CARBODILITE(商標)E-03A、CARBODILITE(商標)E-05、CARBODILITE(商標)E-07、日清紡製)及びそれらの組み合わせ。
【0056】
別の実施形態によれば、好ましい架橋剤c)は、以下の少なくとも1つから選択され得る:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、アジピン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、ポリビニルアルコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ブロックポリイソシアネート(例:CovestroのDesmodur(登録商標)BL3175SN)、ペンタエリスリトールトリス(3-(1-アジリジニル)プロピオネート)、ポリカルボジイミド架橋剤(例:CARBODILITE(商標)V-02、CARBODILITE(商標)V-02-L2、CARBODILITE(商標)SV-02、CARBODILITE(商標)V-10、CARBODILITE(商標)SW-12G、CARBODILITE(商標)E-02、CARBODILITE(商標)E-03A、CARBODILITE(商標)E-05、CARBODILITE(商標)E-07、日清紡製)及びそれらの組み合わせ。
【0057】
別の実施形態によれば、より好ましい架橋剤c)は、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、アジピン酸ジヒドラジド、ヘキサメチレンジアミン、ポリビニルアルコール、ポリカルボジイミド架橋剤(例:CARBODILITE(商標)V-02、CARBODILITE(商標)V-02-L2、CARBODILITE(商標)SV-02、CARBODILITE(商標)V-10、CARBODILITE(商標)SW-12G、CARBODILITE(商標)E-02、CARBODILITE(商標)E-03A、CARBODILITE(商標)E-05、CARBODILITE(商標)E-07、日清紡製)及びそれらの組み合わせである。
【0058】
非水電解質を含む電気エネルギー貯蔵装置内の集電体の電極として使用するための組成物に含まれるポリマーバインダーb)に対する架橋剤c)の重量パーセントは、ポリマーバインダーb)に対して、好ましくは0~40重量%の範囲、より好ましくは0.01~20重量%の範囲内、さらにより好ましくは0.05~10重量%の範囲内である。
【0059】
任意選択の成分/添加剤:
組成物は、以下の任意成分も含み得る:
d)ポリマーバインダーの0~10重量%の1つ又は複数の湿潤剤、
e)ポリマーバインダーの0~10重量%の1つ又は複数の分散剤、
f)ポリマーバインダーの0~10重量%の、1つ又は複数の揮発性有機化合物(VOC)、及び/又は接着促進剤、及び/又は合体剤、
g)ポリマーバインダーの0~200重量%の1つ又は複数のレオロジー調整剤添加剤、
h)ポリマーバインダーの0~10重量%の、硬化防止剤、界面活性剤、及びそれらの混合物を含む、それらからなる、又はそれら本質的にからなる1つ又は複数の添加剤。
【0060】
界面活性剤及び/又は沈降防止剤は、水100部当たり0~10部、好ましくは0.1~10部、より好ましくは0.5~5部でバインダースラリー組成物に添加することができる。これらの沈降防止剤又は界面活性剤は、一般に保存安定性を改善し、スラリー調製中にさらなる安定化を提供するために、重合後にバインダー分散液に添加される。重合プロセスで残った組成物中には、いくらかの界面活性剤/沈降防止剤も存在する。有用な沈降防止剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン性界面活性剤(アルキル硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩など)、ホスホン酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなど)、及び部分的にフッ素化されたアルキル硫酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、ホスホネート(DuPontによってCAPSTONEブランド名で販売されているものなど)、及び非イオン界面活性剤(TRITONXシリーズ(Dow製)やPLURONICシリーズ(BASF製)など)。一実施形態では、アニオン性界面活性剤のみが使用される。重合プロセスからの残留界面活性剤、又は水性分散液の形成又は濃縮における重合後に添加されるフッ素化界面活性剤が組成物中に存在しないことが好ましい。
【0061】
湿潤剤は、水100部当たり0~5部、好ましくは0~3部で組成物中に組み込むことができる。界面活性剤は湿潤剤として機能するが、湿潤剤には非界面活性剤も含まれ得る。いくつかの実施形態では、湿潤剤は有機溶媒であり得る。任意の湿潤剤の存在により、粉末状無機材料をフッ化ビニリデンポリマーの水性分散液中に均一に分散させることができる。有用な湿潤剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イオン性及び非イオン性界面活性剤(TRITONシリーズ(ダウ社)やPLURONICシリーズ(BASF社)など)、水性分散液と相溶性のある有機液体(NMP、DMSO、アセトンが含まれるが、これらに限定されない)。
【0062】
増粘剤及びレオロジー調整剤は、水100部当たり0~10部、好ましくは0~5部の量でフルオロポリマーセパレーター組成物中に存在することができる。上記の分散液に水溶性増粘剤又はレオロジー調整剤を添加すると、コーティングプロセスに適切なスラリー粘度を提供しながら、無機粉末材料の沈降を防止又は遅らせることができる。有用な増粘剤には以下が含まれるが、これらに限定されない:ACRYSOLシリーズ(ダウケミカル社製)、Rheotechシリーズ(コーテックス社製)、Viscoatexシリーズ(Coatex社製)、部分的に中和されたポリ(アクリル酸)又はポリ(メタクリル酸)(Lubrizol社のCARBOPOL又はCoatex社のViscodis100Nなど)、及びカルボキシル化メチルセルロース(CMC)などのカルボキシル化アルキルセルロース。配合物のpHを調整すると、一部の増粘剤の有効性を向上させることができる。有機レオロジー調整剤に加えて、無機レオロジー調整剤も単独で又は組み合わせて使用することができる。有用な無機レオロジー調整剤には、以下が含まれるが、これらに限定されない:無機レオロジー調整剤(モンモリロナイトやベントナイトなどの天然粘土が含まれるが、これらに限定されない)、ラポナイトなどの人工粘土、シリカ、タルクなどのその他の粘土。
【0063】
任意の一時的接着促進剤は、本発明の組成物から形成されるコーティングに必要な相互接続性を生み出すのに役立つ。本明細書で使用される「一時的接着促進剤」とは、コーティング後の組成物の相互接続性を高める薬剤を意味する。次いで、一時的接着促進剤は、一般に蒸発(化学物質の場合)又は散逸(エネルギーの追加の場合)によって、形成された基板から除去することができる。
【0064】
一時的接着促進剤は、電極の形成中に水性組成物の成分の相互接続を引き起こすのに有効な量で使用される、化学物質、圧力と組み合わされたエネルギー源、又はその組み合わせであり得る。化学的一時的接着促進剤の場合、組成物は水100部当たり0~150部、好ましくは0~100部、より好ましくは0~30部の1以上の一時的接着促進剤を含む。好ましくは、これは、水に可溶性又は水混和性の有機液体である。この有機液体は、アクリル粒子を可塑剤又は合剤として作用し、アクリル粒子に粘着性を与え、乾燥ステップ中に個別の接着点として機能することができる。バインダー粒子は、乾燥段階で軟化し、流動し、粉末材料に付着することができるため、非可逆性の高い接続性を備えた電極が得られる。一実施形態では、有用な有機溶媒又は合体剤としては、以下の表にあるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
【0066】
一時的接着促進剤としてのエネルギーの場合、有用なエネルギー源としては、熱、IR放射、及び高周波(RF)が挙げられるが、これらに限定されない。熱のみの場合、電極の加工中の温度はアクリルバインダーのガラス転移点より約20~50℃高くなければならない。一時的接着促進剤としてエネルギーのみを使用する場合、良好な相互接続性、集電体への高い接着性、及び電極内での高い凝集性を得るために、カレンダー加工工程など、熱を圧力と組み合わせることが好ましい。
【0067】
用途:
本発明の電極用組成物は、二次電池装置などの非水電解質を含有する電気エネルギー貯蔵装置内の集電体上での使用に適している。このような装置には、アノード、カソード、アノードとカソードの間のセパレータ、及び電解質が含まれる。
【0068】
本明細書に開示される電気エネルギー貯蔵装置内の基板(すなわち集電体)上の電極として使用するための、乾燥形態の組成物を含むアノードなどの電極が提供される。このような電極は、アノードとして使用されることが好ましく、したがって、本明細書に開示される電極として使用するために開示される組成物は、銅から作られた導電性基板集電体に適用されることが最も好ましい。
【0069】
また、非水系電池、キャパシタ、膜電極接合体から選択される電気エネルギー貯蔵装置が提供される。これは、乾燥した形態で、本明細書に開示される電極として使用するための組成物で少なくとも1つの表面上にコーティングされた導電性基板を含む電極を組み込む。
【0070】
キット
非水電解質を含む電気エネルギー貯蔵装置内の集電体上の電極として使用するための組成物は、キットの形態で提供され得る。したがって、少なくとも1つの架橋剤c)をポリマーバインダーb)と組み合わせて、キットの第1のコンポーネントを形成することができる;そして、少なくとも1つの粒子状電極形成材料a)は、キットの第2のコンポーネントであり得る。
【0071】
キットの別の実施形態も提供される。この実施形態では、少なくとも1つの粒子状電極形成材料a)がキットの第1のコンポーネントであり得る;ポリマーバインダーb)はキットの第2のコンポーネントであり得る;そして、少なくとも1つの架橋剤c)は、キットの第3のコンポーネントであり得る。
【実施例】
【0072】
電極は、室温で非常に高圧でカレンダー処理され、所望の多孔度に達した。電極の空隙率は、その予想される(各成分の重量寄与)及び見掛け密度から逆計算され、見掛け密度は、マイクロメーター及び小数点5桁の天秤を使用して電極の重量及び体積を測定することによって得られた。
【0073】
体積平均粒子径は、MicrotracのNanotracUPA150を使用して動的光散乱によって測定した。
【0074】
例1:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、226.94gの脱イオン水及び1.12gのRhodacal(登録商標)A-246MBAからなる初期チャージを導入した。329.70gの2-エチルヘキシルアクリレート、293.17gのスチレン、28.91gのメチルメタクリレート、74.40gの4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを第1のガラスビーカーに秤量し、17.20gのRhodacal(登録商標)A-246MBA及び492.00gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルションを調製した。1.76gの過硫酸アンモニウムを第2のガラスビーカーに秤量し、12.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。0.80gの過硫酸アンモニウムを第3のビーカー中で25.60gの水に溶解して遅延開始剤を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。61.77gのモノマープレエマルション及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピークの後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、残りのモノマープレエマルション及び遅延開始剤を反応器に供給した。遅延開始剤溶液を260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルションを4段階にわたって反応器に供給した。293.4gのモノマープレエマルジョンを45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルジョンを、3段階にわたって同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。260分にわたる遅延開始剤供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調製中に、2.60gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び18.64gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。1.80gのBruggolite(登録商標)FF6M及び36.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調製後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を放冷し、濾過した。
【0075】
例2:バインダーの製造
バインダーは、モノマーの選択及び比率が異なることを除いて、実施例1と同様の方法で製造された。使用した各モノマーの重量パーセントを表1に示す。
【0076】
例3:バインダーの製造
バインダーは、モノマーの選択及び比率が異なることを除いて、実施例1と同様の方法で製造された。使用した各モノマーの重量パーセントを表1に示す。
【0077】
例4:バインダーの製造
バインダーは、モノマーの選択及び比率が異なることを除いて、実施例1と同様の方法で製造された。使用した各モノマーの重量パーセントを表1に示す。
【0078】
例5:バインダーの製造
バインダーは、モノマーの選択及び比率が異なることを除いて、実施例1と同様の方法で製造された。使用した各モノマーの重量パーセントを表1に示す。
【0079】
例6:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、435.00gの脱イオン水及び3.26gのREASOAP SR-1025からなる初期チャージを導入した。351.28gの2-エチルヘキシルアクリレート、268.31gのスチレン、31.43gのメチルメタクリレート、4.9gのジビニルベンゼン、25.22gのSipomer(登録商標)PAM600、39.62gのメタクリル酸、87.16gの4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを第1のガラスビーカーに秤量し、31.38gのREASOAP SR-1025及び480.00gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルションを調製した。1.91gの過硫酸アンモニウムを第2のガラスビーカーに秤量し、20.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。0.87gの過硫酸アンモニウムを第3のビーカー中で25.60gの水に溶解して遅延開始剤を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。65.96gのモノマープレエマルション及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピークの後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、残りのモノマープレエマルション及び遅延開始剤を反応器に供給した。遅延開始剤溶液を260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルションを4段階にわたって反応器に供給した。313.34gのモノマープレエマルジョンを45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルジョンを、3段階にわたって同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。260分にわたる遅延開始剤供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調製中に、2.83gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び18.64gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。1.96gのBruggolite(登録商標)FF6M及び36.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調製後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を放冷し、濾過した。
【0080】
例7:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、533.67gの脱イオン水及び1.40gのRhodacal(登録商標)A-246MBAからなる初期チャージを導入した。412.12gの2-エチルヘキシルアクリレート、411.71gのスチレン、36.14gのメチルメタクリレート、15.22gのアクリル酸、15.07gのメタクリル酸、15.53gの4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムを第1のガラスビーカーに秤量し、21.50gのRhodacal(登録商標)A-246MBA及び365.00gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルションを調製した。2.20gの過硫酸アンモニウムを第2のガラスビーカーに秤量し、15.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。1gの過硫酸アンモニウムを第3のビーカー中で32.00gの水に溶解して遅延開始剤を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。64.61gのモノマープレエマルション及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピークの後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、残りのモノマープレエマルション及び遅延開始剤を反応器に供給した。遅延開始剤溶液を260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルションを4段階にわたって反応器に供給した。306.90gのモノマープレエマルジョンを45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルジョンを、3段階にわたって同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。260分にわたる遅延開始剤供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調製中に、3.25gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び23.30gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。2.25gのBruggolite(登録商標)FF6M及び45.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調製後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を放冷し、濾過した。
【0081】
例8:バインダーの製造
バインダーは、モノマーの選択及び比率が異なることを除いて、実施例7と同様の方法で製造された。使用した各モノマーの重量パーセントを表1に示す。
【0082】
例9:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、533.67gの脱イオン水と0.90gのRhodacal(登録商標)A-246MBAからなる初期チャージを導入した。367.74gの2-エチルヘキシルアクリレート、434.33gのスチレン、36.14gのメチルメタクリレート、16.24gのSipomer(登録商標)PAM4000、32.48gのヒドロキシエチルアクリレート、18.04gの4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、2.26gのジビニルベンゼンを第1のガラスビーカー秤量し、21.50gのRhodacal(登録商標)A-246MBA及び365.00gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルションを調製した。2.20gの過硫酸アンモニウムを第2のガラスビーカーに秤量し、15.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。1.00gの過硫酸アンモニウムを第3のビーカー中で32.00gの水に溶解して遅延開始剤を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。63.91gのモノマープレエマルジョン及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピークの後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、残りのモノマープレエマルション及び遅延開始剤を反応器に供給した。遅延開始剤溶液を260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルションを4段階にわたって反応器に供給した。303.57gのモノマープレエマルジョンを45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルジョンを、3段階にわたって同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。260分にわたる遅延開始剤供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調製中に、3.90gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び23.30gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。2.70gのBruggolite(登録商標)FF6M及び45.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調製後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を放冷し、濾過した。
【0083】
例10:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、600.00gの脱イオン水、0.40gの水酸化アンモニウム及び1.26gのRhodacal(登録商標)A-246MBAからなる初期チャージを導入した。320.00gの2-エチルヘキシルアクリレート、197.26gのスチレン、24.37gのメチルメタクリレート、19.55gのSipomer(登録商標)PAM600、10.95gのジアセトンアクリルアミド、40.75gのアクリロニトリル、12.17gのAMPS(登録商標)2405を第1のガラスビーカー秤量し、3.65gのRhodacal(登録商標)A-246MBA及び273.75gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルション1を調製した。106.67gのアクリル酸2-エチルヘキシル、79.31gのスチレン、8.12gのメタクリル酸メチル、6.52gのSipomer(登録商標)PAM600、3.65gのジアセトンアクリルアミド、4.06gのAMPS(登録商標)2405を第2のガラスビーカーに秤量し、1.22のRhodacal(登録商標)A-246MBA及び91.25gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルション2を調製した。1.98gの過硫酸アンモニウムを第3のガラスビーカーに秤量し、15.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。0.90gの過硫酸アンモニウムを第4のビーカー中で40.00gの水に溶解させて遅延開始剤を調製した。3.60gの水酸化アンモニウムを第5のビーカー内の29.00gの脱イオン水に溶解して、第3の流れの塩基供給物を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。60.46gのモノマープレエマルジョン1及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピーク後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、モノマープレエマルジョン1の残り、第3ストリーム塩基供給物及び遅延開始剤を反応器に供給した。第3の流れベースの供給材料及び遅延開始剤溶液を260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルション1を3段階にわたって反応器に供給した。280.80gのモノマープレエマルジョン1を45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルション1を、2段階にわたる同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。モノマープレエマルジョン1の供給と15分間の保持が完了した後、モノマープレエマルジョン2を45分かけて反応器に供給した。260分間にわたる遅延開始剤供給及び第3ストリーム塩基供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調理中に、4.60gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び25gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。3.20gのBruggolite(登録商標)FF6M及び40.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調理後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を室温まで放冷した。次いで、4.00gの水酸化アンモニウムと4.00gの脱イオン水の混合物を媒体に添加した。次いで、ラテックスを濾過した。
【0084】
例11:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、365.00gの脱イオン水、0.40gの水酸化アンモニウム及び1.40gのRhodacal(登録商標)A-246MBAからなる初期チャージを導入した。470.09gの2-エチルヘキシルアクリレート、346.56gのスチレン、36.14gのメチルメタクリレート、29.00gのSipomer(登録商標)PAM600、31.57gのAAEM、4.51gのシランA174を第1のガラスビーカーに秤量し、5.40gのRhodacal(登録商標)A-246MBA及び365.00gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルションを調製した。2.20gの過硫酸アンモニウムを第2のガラスビーカーに秤量し、15.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。1.00gの過硫酸アンモニウムを第3のビーカー中で32.00gの水に溶解して遅延開始剤を調製した。第4のビーカー中で4.00gの水酸化アンモニウムを29.00gの脱イオン水に溶解して、第3の流れの塩基供給物を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。60.46gのモノマープレエマルション及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピークの後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、残りのモノマープレエマルション、第3ストリーム塩基供給物及び遅延開始剤を反応器に供給した。遅延開始剤溶液及び第3ストリームベース溶液を260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルションを4段階にわたって反応器に供給した。280.8gのモノマープレエマルジョンを45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルジョンを、3段階にわたって同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。260分間にわたる遅延開始剤及び第3ストリーム塩基供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調製中に、4.60gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び25.00gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。3.20gのBruggolite(登録商標)FF6M及び40.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調製後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を放冷し、濾過した。
【0085】
比較例1:バインダーの製造
1ガロンの反応器に、533.67gの脱イオン水及び1.40gのRhodacal(登録商標)A-246MBAからなる初期チャージを導入した。434.77gの2-エチルヘキシルアクリレート、434.33gのスチレン、36.14gのメチルメタクリレートを第1のガラスビーカーに秤量し、21.50gのRhodacal(登録商標)A-246MBA及び410.00gの脱イオン水と混合して、モノマープレエマルションを調製した。2.20gの過硫酸アンモニウムを第2のガラスビーカーに秤量し、15.00gの脱イオン水に溶解して初期開始剤を調製した。1.00gの過硫酸アンモニウムを第3のビーカー中で32.00gの水に溶解して遅延開始剤を調製した。反応器の内容物を83±2℃の温度に加熱した。66.84gのモノマープレエマルション及び初期開始剤を最初に反応器に導入した。反応発熱のピークの後、反応器温度を90±2℃に維持しながら、残りのモノマープレエマルション、第3ストリーム塩基供給物及び遅延開始剤を反応器に供給した。遅延開始剤溶液及び第3ストリームベースを260分かけて反応器に供給した。モノマープレエマルションを4段階にわたって反応器に供給した。317.48gのモノマープレエマルションを45分かけて反応器に供給し、その後15分間供給を休止した。次いで、残りのモノマープレエマルジョンを、3段階にわたって同じ供給プロファイルに従って反応器に供給した。260分にわたる遅延開始剤供給の完了後、反応器内の内容物を30分間加熱し、その後媒体を70℃まで冷却した。30分間の調製中に、2.60gの70%t-ブチルヒドロペルオキシド及び23.30gの脱イオン水を含有する後酸化剤溶液をガラスビーカー内で調製した。1.80gのBruggolite(登録商標)FF6M及び45.00gの脱イオン水を含む後還元剤溶液もガラスビーカー中で調製した。次いで、30分間の調製後、後酸化剤及び後還元剤溶液を75分かけて反応器に供給した。媒体を放冷し、濾過した。
【0086】
負極スラリーの製造
シンキーARE-310の125mLポリエチレン容器に6.5mmジルコニアボールを7個入れた。0.25gのカーボンブラック(Timcal製のSuper P-Li)+水中固形分1.5%のカルボキシメチルセルロース(CMC)溶液(Ashland Chemicals製のBVH9)4.5g、及び9.1gのグラファイト(Imerys製のGHDR15-4)+2.5シリコンのグラム(NanoAmor製のアモルファスシリコン)を添加し、2000rpmで2分間混合した。次いで、1.0gのCMC溶液を連続的に添加し、2000rpmで2分間混合し、続いて別のCMC溶液を添加し、混合して合計CMC溶液添加量が10.0gに達した。次いで、固形分20重量%の上記実施例2.5gを添加し、2000rpmで2分間、2回混合した。
【0087】
電極の製造とテスト:
上で調製したスラリーを湿潤厚さ約110μmの銅箔上にキャストし、120℃の対流式オーブンに30分間入れた。次いで、電極をカレンダー加工して、約30体積%の多孔率に達した。接着力の測定は、ASTM-D903(2017)に従って幅1インチの電極試験片を使用し、クロスヘッド速度50mm/minで180度剥離を使用するInstronで実行された。
【0088】
【0089】
略語:
2EHA=アクリル酸2-エチルヘキシルii)
A174=3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレートiii)/vi)
AA=アクリル酸i)
AAEM=アセトアセトキシエチルメタクリレートiii)
ACN=アクリロニトリルii)
AMPS=2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸i)
CMC=カルボキシメチルセルロース
DAAM=ジアセトンアクリルアミドiii)
DAP=フタル酸ジアリルiv)
DVB=ジビニルベンゼンiv)
HEA=2-ヒドロキシエチルアクリレートiii)
MMA=メタクリル酸メチルii)
MAA=メタクリル酸i)
PAA=ポリアクリル酸
PAM4000=Sipomer(登録商標)PAM4000(メタクリル酸エチルのリン酸エステル)i)
PAM600=Sipomer(登録商標)PAM600(ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル)i)
SBR=スチレンブタジエンゴム
SSS=4-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムi)
Sty=スチレンii)
【0090】
表1のすべてのラテックス例は、スラリー調製及び電極接着におけるそれらの性能を比較するために、負極配合物中で評価された。スラリー調製ステップにおいて、本発明の実施例1~11のすべてを用いて安定なスラリーが調製された。しかしながら、比較例1ではスラリーの調製に失敗した。比較例1でスラリーを調製したとき、凝集固体が観察された。スラリー調製における本発明の実施例1~5と比較例との間の直接の比較は、イオン性モノマー(モノマーi)によってもたらされる改善を実証する。
【0091】
表1は、本発明の実施例1~11で製造された電極の剥離接着力を示す。剥離接着力は、電極におけるバインダーの結合能力の尺度である。剥離接着力が高いことは、電極の加工やバッテリーのサイクルに適している。一般に電極加工には10N/m以上が好ましい。すべての本発明の実施例の剥離接着力は10N/mより大きいことが分かる。比較例1の剥離接着力は、スラリーが不安定であるため利用できない。
【0092】
本明細書では、特定の実施形態を参照して本発明を図示し説明したが、本発明は、示された詳細に限定されることを意図したものではない。むしろ、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲及び均等物の範囲内で詳細に様々な変更を行うことができる。
【国際調査報告】