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特表2024-519007NSSCパルプを含むフルーティングまたはライナー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】NSSCパルプを含むフルーティングまたはライナー
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/06 20060101AFI20240426BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
D21H11/06
D21H27/30 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570466
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 IB2022054480
(87)【国際公開番号】W WO2022243820
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2150621-7
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
(72)【発明者】
【氏名】カンクネン, ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】シッパス, トゥオモ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA03
4L055AC05
4L055AC09
4L055AG05
4L055AG27
4L055AG40
4L055AG41
4L055AG45
4L055AG50
4L055AG96
4L055AH11
4L055AH18
4L055AJ01
4L055CD01
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA10
4L055EA13
4L055EA27
4L055EA32
4L055EA34
4L055FA11
4L055FA13
4L055FA19
4L055FA21
4L055FA22
4L055GA06
(57)【要約】
本発明は中性亜硫酸塩セミケミカル(NSSC)パルプを含む段ボール用のフルーティングまたはライナーであって、前記NSSCパルプはISO規格1762:2019に従って決定して1.8wt%未満の灰分含有量を有する、フルーティングまたはライナーに関する。本発明はさらにフルーティングおよび/またはライナーを含む段ボールに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性亜硫酸塩セミケミカル(NSSC)パルプを含む段ボールのためのフルーティングまたはライナーであって、前記NSSCパルプはISO規格1762:2019に従って決定して1.8wt%未満の灰分含有量を有する、フルーティングまたはライナー。
【請求項2】
前記NSSCパルプが灰分含有量を低下させるために洗浄に供されている、請求項1に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項3】
前記NSSCパルプがISO規格1762:2019に従って決定して1.6wt%未満、好ましくは1.4wt%未満、より好ましくは1.2wt%未満または1.0wt%未満または0.9wt%未満の灰分含有量を有する、請求項1または2に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項4】
前記NSSCパルプがISO 6587に従って決定して5mS/cm未満、好ましくは10mS/cm未満、より好ましくは8mS/cm未満の熱水抽出物導電率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項5】
フルーティングまたはライナーが少なくとも1つの内添サイズ剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項6】
内添サイズ剤がアルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジンサイズ、およびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは内添サイズ剤がアルキルケテンダイマー(AKD)である、請求項5に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項7】
フルーティングまたはライナー内の内添サイズ剤の量が乾燥重量に基づいて0.5~6kg/tnの範囲、好ましくは0.8~4kg/tnの範囲、より好ましくは1~3kg/tnの範囲である、請求項5または6に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項8】
さらに微小粒子保持補助システム、好ましくは多成分微小粒子保持補助システムを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項9】
微小粒子保持補助システムの微小粒子がシリカ微小粒子、ベントナイト微小粒子およびセルロースナノ粒子からなる群から選択される、請求項8に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項10】
微小粒子保持補助システムが水溶性ポリマー、好ましくはカチオン性ポリマーを含む、請求項8または9に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項11】
フルーティングまたはライナーの少なくとも1つの面がISO規格535に従って決定して40gsm未満、好ましくは35gsm未満、さらにより好ましくは30gsm未満のCobb(60s)値を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項12】
前記フルーティングまたはライナーが10wt%未満、好ましくは5wt%未満、より好ましくは2wt%未満の再生繊維を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項13】
前記フルーティングまたはライナーがISO 6587に従って決定して15mS/cm未満、好ましくは10mS/cm未満、より好ましくは8mS/cm未満の熱水抽出物導電率を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項14】
前記フルーティングがISO規格287に従って決定して50%RHで10wt%未満、好ましくは8wt%未満の平衡水分含有量(EMC)を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項15】
前記フルーティングまたはライナーがISO規格1924-3に従って決定して1.8より大きい、好ましくは1.9より大きい、より好ましくは2.0より大きいcd/md伸び値を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項16】
前記フルーティングが規格ASTMD 1894-63に従って決定して0.5未満、好ましくは0.45未満、より好ましくは0.4未満の動摩擦を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のフルーティングまたはライナー。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のフルーティングおよび/またはライナーを含む段ボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中性亜硫酸塩セミケミカル(NSSC)パルプを含むフルーティングまたはライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボール(ときには段ボール(corrugated cardboard)または段ボール(corrugated fiberboard)といわれることがある)は、様々な種類の梱包解決策に変換することができる包装材料である。段ボールは、バージンまたは使用後の段ボールもしくは他の材料に由来する再生されたセルロース繊維製の繊維基材である。
【0003】
段ボールは、中芯(フルーティング)および中芯の表面に接着された少なくとも平面原紙(ライナーまたはライナーボード)を含む。たとえば、段ボールは2つの層のライナーの間に接着されたフルーティングの層からなってサンドイッチ構造を形成し得る。サンドイッチ構造は、たとえばKirwan M.,J.,Paper and Paperboard.Packaging Technology,Blackwell Publishing 2005に記載されているように単一、二重、および三重壁のような様々な形式で形成することができる。
【0004】
段ボールを生産するときの1つの難題はライナーとフルーティングの接着である。接着が低過ぎると層間剥離を起こし、接着が充分であることを確保するために多過ぎる接着剤を添加すると段ボールの洗濯板症状およびカールを引き起こす可能性がある。添加した膠のライナーおよび/または中芯への吸着が最適であることが重要である。接着剤がフルーティング/ライナーに吸着しないと層間剥離が起こり、フルーティング/ライナーに多く吸着し過ぎても同じことが起こる。
【0005】
異なる種類のライナーの例はクラフトライナーおよびテストライナーである。クラフトライナーは通例漂白されているかまたは漂白されてないことができるクラフトパルプから生産され、1つ以上の層/プライを含み得、ここで一番上の層/プライは良好な印刷面および良好な耐湿性を提供するように最適化されていることが多い。テストライナーは主としてリサイクルされた段ボールから生産され、普通2つの層/プライで製造される。再生繊維の存在に起因して、テストライナーは通例クラフトライナーより低い機械的強度、特により低い破裂強度を有し得る。クラフトライナーは強度特性に関する要望がより高い包装箱に使用されることが多い。
【0006】
フルーティングは、熱、水分および圧力を用いコルゲーターを使用して波形をつけてある紙または板紙から形成される。
【0007】
フルーティングは中性亜硫酸塩セミケミカル(NSSC)パルプから調製されることが多い。通常硬材種製であるNSSCパルプは例外的な剛性および高い堅さが注目され、そのためフルーティングに使用するのに適している。中性亜硫酸塩セミケミカル(Neutral Sulfite Semi-Chemical)(NSSC)パルプ化は、紙パルプ化の分野で周知の古いプロセスである。NSSCパルプ化を使用する理由の1つは通例60%を超える高い収率である。NSSCパルプ化において、蒸解液はNaSOまたは(NHSOのような亜硫酸塩およびNaOHまたはNaCOのような塩基を含む。「中性」とは、NSSC蒸解液のpHが一般に6~10であることを意味する。パルプはバッチまたは連続蒸解機で蒸解することができる。通常、蒸解時間は5分~3時間であり、蒸解温度は160~200℃である。NSSCパルプは15~20%のような比較的に高い量の残留リグニンを含み、そのためNSSCパルプは硬い。NSSCパルプのKappa価は通例70を超える。NSSCパルプ化は、パルプの機械的リファイニングも含むという意味で「セミケミカル」である。リファイニングはたとえば蒸解釜圧力または大気圧でディスクリファイナーを用いて行い得る。
【0008】
現在のところ、フルーティングおよび中芯の強度および機械的特性は小量の化学パルプを機械パルプに加えることにより改良されている。通例、5~15%の化学パルプが加えられる。このため当然コストは増大するが脱水速度を低下させる。1つの可能性のある方法はNSSCのようなセミケミカルパルプを未漂白クラフトパルプと混合することであるが、これは望まれない光の斑点および色合いの変化、ならびに官能特性の変化を起こし得る。
【0009】
フルーティングおよびライナーは中芯とライナーの間に接着剤を配置することにより互いに貼り付けられる。ライナーは接着剤により中芯の少なくとも1つの表面に貼り付けられる。接着剤は好ましくは溝付きの中芯の少なくとも1つの表面に塗布され、その後ライナーが前記表面に貼り付けられる。当分野で慣用のあらゆる接着剤が使用できる。接着剤はたとえば、多種多様な植物から抽出することができるデンプンを主体とする膠であり得る。最も一般的な植物のいくつかはトウモロコシ、小麦、大麦、稲、ジャガイモ、タピオカおよびエンドウである。デンプンは好ましくは天然であり、すなわちデンプンの変性はされていない。接着剤は水、水酸化ナトリウムおよびホウ酸も含み得る。湿潤強度または接着剤結合強度を改良する添加剤のような他の添加剤を加えてもよい。また、たとえば耐湿性またはゲル化挙動を改良するために他の機能性化学品、たとえばホウ砂、グリオキサールまたはこれらの混合物を加えることもできる。
【0010】
中芯および段ボールを作成するときの1つの重要な課題は湿気に対する耐性である。段ボールが湿気に晒されると、水および水蒸気がライナーを通って拡散し、中芯を軟化させることがある。この問題に対する一般的な解決策はフルーティングおよび/またはライナーの坪量を増大することであるが、これはより少ない原材料を消費するより低い坪量の材料を要求する環境上の要請と矛盾する。
【0011】
もう1つ別の解決策はライナーにバリア層を設けて水および水蒸気の透過を低減することである。しかしながら、これは単に不完全な解決策でしかなく、その理由はそれでも湿気の拡散は反対側で、または端を介して起こり得、その結果として段ボールの機械的な安定性に影響を及ぼすからである。またバリア層はコストを増大し、通例材料のリサイクル可能性を低下させる。
【0012】
フルーティングまたは中芯はまた疎水化用薬剤で処理しても、またはコーティングしてもよいが、これは一般にコストを上昇させ、またフルーティングの機械的特性に負の影響を及ぼすこともある。高レベルの疎水化用薬剤はまたフルーティングとライナーの接着を損なうこともある。特に、NSSCパルプは、完成したフルーティングで必要とされるレベルの耐水性を得るために高いレベルの疎水化用薬剤を要求する。
【0013】
新しい機械概念および増大した機械速度は省資源に対する増大した要望と相まって改良された特性のパルプに対する必要性をさらに増大させた。
【0014】
強度、低い坪量、耐水/耐湿性、低い化学品消費量、低コスト、および/または高いリサイクル可能性を併せ持つ新しい改良されたフルーティングおよびライナー材料に対するニーズが残されている。
【発明の概要】
【0015】
本開示の目的は、上述の問題の少なくともいくつかを解決または改善するフルーティングまたはライナーを提供することである。
【0016】
本開示のさらなる目的は、完成したフルーティングまたはライナーで必要とされるレベルの耐水性を得るのに必要とされる疎水化内添サイズ剤の量を低減することができる改良された耐水特性を有するフルーティングまたはライナーを提供することである。
【0017】
本開示のさらなる目的は、改良されたフルーティングおよび/またはライナーを含む段ボールを提供することである。
【0018】
上述の目的、ならびに本開示に照らして当業者により理解される他の目的は本開示の様々な態様により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、フルーティングまたはライナーに使用されるNSSCパルプの灰分含有を低下させると、完成したフルーティングまたはライナーで必要とされるレベルの耐水性を得るのに必要とされる疎水化内添サイズ剤の量をかなり低減することができるという発明認識に基づいている。パルプの灰分含有量を低下させると、フルーティングまたはライナーにおける他のウェットエンドケミカル、たとえば濾水性向上/歩留り向上薬剤の必要とされる量も低減することが判明した。
【0020】
灰分含有量の低下はパルプの洗浄によって達成することができる。灰分含有量はまた、パルプ化プロセスに先立つ樹皮のより効率的な除去によって低下させることもできる。
【0021】
本明細書に示されている第1の態様に従って、中性亜硫酸塩セミケミカル(NSSC)パルプを含む段ボール用のフルーティングまたはライナーであって、前記NSSCパルプはISO規格1762:2019に従って決定して1.8wt%未満の灰分含有量を有する、フルーティングまたはライナーが提供される。
【0022】
「NSSCパルプ」は「NSSCパルプ化」により得られ、それ自体は背景技術の欄に定義されている。NSSCパルプは硬材パルプもしくは軟材パルプ、またはこれらの混合物であることができる。NSSCパルプは好ましくは硬材パルプまたは15wt%未満の軟材、好ましくは10wt%未満の軟材、より好ましくは5wt%未満の軟材を含む硬材/軟材パルプ混合物である。硬材はたとえばアスペン、ハンノキ、ポプラ、ユーカリ、カバノキ、アカシア、またはブナノキであり得る。NSSCパルプは好ましくは亜硫酸塩、好ましくはNaSOまたは(NHSOおよび塩基、好ましくはNaOHまたはNaCOを含む蒸解液を用いて蒸解調製される。いくつかの実施形態においてNSSCパルプ化からの収率は60%を超え、好ましくは65%を超え、好ましくは70%を超え、より好ましくは75%を超える。用語「中性」はNSSC蒸解液のpHが6~10の範囲であることを意味する。蒸解時間は好ましくは5分~3時間の範囲である。蒸解温度は好ましくは160~200℃の範囲である。NSSCパルプは15~20%のような比較的に高い量の残留リグニンを含み得る。NSSCパルプのKappa価は通例ISO 3260によると70を超え、好ましくは80を超え、好ましくは95を超え、より好ましくは100を超える。NSSCパルプ化は、パルプの機械的なリファイニングも含むという意味で「セミケミカル」である。リファイニングはたとえば、ディスクリファイナーを蒸解釜圧力または大気圧で用いて行い得る。リファイニングは1つ以上の工程で同じまたは異なるパルプ稠度で行うことができる。第1のリファイニング工程は好ましくは5~35%のようなより高い稠度で行い得、第2のリファイニング工程は好ましくはより低い稠度<5%で行い得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、フルーティングまたはライナー内の前記NSSCパルプは灰分含有量を低減するために洗浄に付されている。洗浄の目的はパルプを黒液から分離して、蒸解プロセスで生成したアルカリリグニンのような残留する物質を洗い流し、パルプを浄化することである。洗浄は、1以上の慣用のパルプ洗浄方法および限定されないが回転真空洗浄機、回転圧力洗浄機、圧力および大気拡散洗浄機、水平ベルト洗浄機および/または希釈/抽出機を始めとする洗浄機器を用いて行うことができる。洗浄はNSSCパルプを水で希釈し、その後希釈されたコロイド状の物質、塩、不純物、および微粉と水を共にワイヤによって除去することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、NSSCパルプは3wt%未満、2.5wt%未満、2wt%未満、または好ましくは1wt%未満もしくは0.8wt%未満の樹皮を含む木材から調製されている。
【0025】
灰分含有量の低下はISO規格1762:2019に従って灰分含有量を測定することにより測定することができる。いくつかの実施形態において、前記NSSCパルプはISO規格1762:2019に従って決定して1.6wt%未満、好ましくは1.4wt%未満、より好ましくは1.2wt%未満または1.0wt%未満または0.9wt%未満の灰分含有量を有する。いくつかの実施形態において、前記フルーティングまたはライナーはISO規格1762:2019に従って決定して1.6wt%未満、好ましくは1.4wt%未満、より好ましくは1.2wt%未満または1.0wt%未満または0.9wt%未満の灰分含有量を有する。
【0026】
灰分含有量の低下はまたISO 6587に従ってNSSCパルプの熱水抽出物導電率を測定することにより測定することもできる。いくつかの実施形態において、前記NSSCパルプはISO 6587に従って決定して15mS/cm未満、好ましくは10mS/cm未満、より好ましくは8mS/cm未満の熱水抽出物導電率を有する。いくつかの実施形態において、前記フルーティングまたはライナーはISO 6587に従って決定して15mS/cm未満、好ましくは10mS/cm未満、より好ましくは8mS/cm未満の熱水抽出物導電率を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、フルーティングまたはライナーに使用されるNSSCパルプの導電率は蒸留水中3.5wt%で崩壊したとき1200未満、1000未満、800未満、または600未満、より好ましくは500未満、450未満、400未満、350未満または300mS/m未満である。
【0028】
いくつかの実施形態において、NSSCパルプは2%未満、好ましくは1.8%未満、より好ましくは1.6%未満のPulmacシャイブ(スロットサイズ0.1mm)を含む。シャイブの量が低いパルプを使用するのが有利であることが判明した。
【0029】
灰分含有量の低下に加えて、洗浄はまたNSSCパルプ内のセルロース微粉の含有量の低下も引き起こし得る。本明細書で使用するセルロース微粉という用語は一般にセルロース繊維より大きさがかなり小さいセルロース粒子を意味する。いくつかの実施形態において、本明細書で使用する微細という用語は、慣用の実験室用分画装置の200メッシュスクリーン(相当穴直径76μm)を通過することができる微細なセルロース粒子を指す(SCAN-CM 66:05)。NSSCパルプ内の微粉の低減はたとえば0.1~10wt%の範囲、または0.5~7wt%の範囲であり得る。
【0030】
本発明者は、NSSCパルプの灰分含有量を低下させることにより、完成したフルーティングまたはライナーで必要とされるレベルの耐水性を得るのに必要とされる疎水化内添サイズ剤の量をかなり低減することができるということを見出した。
【0031】
したがって、NSSCパルプは段ボール用のフルーティングまたはライナーに使用されるパルプ組成物に使用され、ここでパルプ組成物はさらに少なくとも1種の内添サイズ剤を含む。用語「パルプ組成物」とは抄紙機で紙または板紙を作成するためのファニッシュとして使用されるセルロース繊維および非繊維質の添加剤の水性分散体をいう。
【0032】
フルーティングまたはライナーのパルプ組成物のパルプは好ましくは主としてNSSCパルプからなる。好ましくはパルプ組成物のパルプの乾燥重量に基づいて少なくとも50wt%がNSSCパルプである。他の例では、パルプの乾燥重量に基づいて少なくとも55wt%、60wt%、65wt%、70wt%、75wt%、80wt%、85wt%、90wt%、95wt%または98wt%がNSSCパルプである。
【0033】
パルプ組成物のパルプのNSSCパルプでない部分は硬材および/または軟材繊維のようなあらゆる種類の繊維を含み得、たとえば、化学パルプ、機械パルプ、サーモメカニカルパルプまたはケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)を含み得る。パルプ組成のNSSCパルプでない部分はまたたとえば再生繊維を含んでもよい。たとえば、本開示のパルプは本質的にNSSCパルプまたはNSSCパルプと再生繊維の混合物からなり得る。「再生繊維」とは、以前にある種の紙または板製品に組み込まれたことがある繊維材料を意味する。あるいは、または補足物として、NSSCパルプでないパルプ部分はたとえばリジェクトパルプを含み得る。たとえば、本開示のパルプは本質的にNSSCパルプおよびリジェクトパルプからなり得る。「リジェクトパルプ」はパルプ化プロセスからのスクリーンリジェクトをリファイニングすることにより調製されるパルプを意味する。
【0034】
いくつかの実施形態において、パルプ組成物のパルプは10wt%未満、好ましくは5wt%未満、より好ましくは2wt%未満の再生繊維を含む。高い量の無機物質は通例再生繊維を介して加えられるので、低い量の再生繊維が好ましい。いくつかの実施形態において、前記フルーティングは10wt%未満、好ましくは5wt%未満、より好ましくは2wt%未満の再生繊維を含む。
【0035】
フルーティングおよび/またはライナーはさらに内添サイズ剤を含み得る。内添サイズ剤は好ましくは疎水化サイズ剤である。いくつかの実施形態において、内添サイズ剤はアルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジンサイズ、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態において、内添サイズ剤はアルキルケテンダイマー(AKD)である。
【0036】
いくつかの実施形態において、フルーティングまたはライナー内の内添サイズ剤の量は乾燥重量に基づいて0.5~6kg/tnの範囲、好ましくは0.5~4kg/tnの範囲、好ましくは0.5~3kg/tnの範囲、より好ましくは1~2kg/tnの範囲である。結果として、フルーティングまたはライナー内のサイズ剤の量は極めて低い。
【0037】
フルーティングまたはライナーの少なくとも1つの面は好ましくはISO規格535に従って決定して30未満、好ましくは25未満、より好ましくは22未満のCobb 30s値を有する。フルーティングまたはライナーの両面がISO規格535に従って決定して30未満、好ましくは25未満、より好ましくは22未満のCobb 30s値を有するのが好ましいであろう。驚くべきことに、ライナーまたはフルーティングのボトムまたはトッププライへのクリーンなNSSCパルプの添加はCobb値に負の影響を及ぼさないことが判明した。結果として、クリーンなNSSCパルプを含むライナーまたはフルーティングの面は好ましくはISO規格535に従って決定して30未満、好ましくは25未満、より好ましくは22未満のCobb 30s値を有する。NSSCパルプはフルーティングまたはライナーのバックプライに使用されることが多く、その結果フルーティングまたはライナーの裏面はISO規格535に従って決定して30未満、好ましくは25未満、より好ましくは22未満のCobb 30s値を有するのが好ましい。
【0038】
高い量のNSSCパルプのフルーティングまたはライナーのような良質の紙を高い機械速度で生産するためには無機充填剤および繊維微粉が有効に保持されつつ同時に高い脱水速度を達成することが重要である。これらの課題に対する対処を援助するために、通例アニオン性のコロイド状シリカおよび/またはクレイをベースとする粒子をカチオン性のポリマーと組み合わせて利用する微小粒子保持補助システムが開発された。概して微小粒子保持補助システムは古典的な単一または二元のポリマー保持補助システムと比較してより良好な保持および脱水性能を示す。いくつかの実施形態において、フルーティングまたはライナーはさらに微小粒子保持補助システム、好ましくは多成分微小粒子保持補助システムを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、微小粒子保持補助システムの微小粒子はシリカ微小粒子、ベントナイト微小粒子およびセルロースナノ粒子からなる群から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態において、微小粒子保持補助システムは水溶性ポリマー、好ましくはカチオン性ポリマーを含む。
【0041】
いくつかの実施形態において、フルーティングまたはライナー内の微小粒子保持補助システムの量は乾燥重量に基づいて50g/tn~5kg/tnの範囲、より好ましくは100g/tn~2kg/tnの範囲である。
【0042】
フルーティングまたはライナーはさらに天然デンプンもしくはデンプン誘導体、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)、セルロース誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、充填剤、歩留り向上および/または濾水性向上薬剤、凝集添加剤、解膠添加剤、乾燥強度添加剤、軟化剤、架橋助剤、サイズ剤、染料および着色剤、湿潤強度樹脂、固化剤、消泡助剤、微生物およびスライム制御助剤、またはこれらの混合物のようなフルーティングまたはライナー生産に普通使用される追加の成分を含み得る。
【0043】
フルーティングまたはライナーは通例単一プライ製品であるが、多層製品であってもよい。フルーティングまたはライナーは通例ギャップフォーマーで形成されるが、長網抄紙機型のフォーマーで形成されてもよい。プレスセクションは生産を最大化するためにシュープレスを備えてもよい。
【0044】
フルーティングまたはライナーの坪量は好ましくは80~300gsmの範囲であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記フルーティングまたはライナーはISO規格287に従って決定して50%RHで10wt%未満、好ましくは8wt%未満の平衡水分含有量(EMC)を有する。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記フルーティングまたはライナーはISO規格1924-3に従って決定して1.8より大きい、好ましくは1.9より大きい、より好ましくは2.0より大きいcd/md伸び値を有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記フルーティングまたはライナーは規格ASTMD 1894-63に従って決定して0.5未満、好ましくは0.45未満、より好ましくは0.4未満の動摩擦を有する。
【0048】
本明細書に示されている第2の態様に従って、第1の態様によるフルーティングおよび/またはライナーを含む段ボールが提供される。段ボールは波形をつけてないライナーの少なくとも1つの層、およびフルーティングの少なくとも1つの層を含む。通常の段ボール生産では、フルーティングに波形をつけた後ライナーボードに接着され。たとえば、段ボールはライナーの2つの層の間に挟まれたフルーティングの層からなり得る。
【0049】
様々な例示的実施形態を参照して本発明を記載して来たが、当業者には理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更をなし得、等価物をその要素と置き換え得る。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正をなし得る。したがって、本発明は、この発明を実施する上で考えられる最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されることなく、また本発明は添付の特許請求の範囲の範囲内に入るすべての実施形態を包含することが意図されている。
【実施例
【0050】
実施例は、洗浄したNSSCパルプが、シート作製に使用することができ、改良された機械的特性および液体吸収に対して異なる応答を提供することを示す。
【0051】
例1(比較)
NSSCブナパルプを乾燥形態で得、次いでファニッシュに分解し、長網抄紙機型パイロット抄紙機で150g/mの単一プライウェブに作成した。生産速度は45m/分であり、ファニッシュの温度は45℃であった。
【0052】
例2(比較)
例1で使用したようなNSSCブナパルプをより高いSR値にリファイニングし、例1と同様にしてウェブを調製した。リファイニングに起因して増大したSRは殊に引張指数(Geom)を増大させた。
【0053】
例3
例1で使用したようなNSSCブナパルプを、Eimcoベルト洗浄装置を用いて水(パルプ1トン当たり40mの淡水)で洗浄した。微粉の2.7%を、電解質を含めて液体相中のコロイド状物質および不純物と共に除去した。洗浄の結果として、パルプ懸濁液のpHが増大し、電解質の除去および灰分含有量の低下を裏付けた。例1と同様にしてウェブを調製した。引張強度と伸びの両方で小さな改良が認められた。
【0054】
例4
例1で使用したようなNSSCブナパルプを洗浄したNSSCカバノキ損紙パルプ(例3に記載したように洗浄した)と混合した。パルプは50-50の比で混合した。ウェブを例1と同様にして調製した。引張強度と伸びの両方でかなりの改良が観察された。
【0055】
例5
この例では、例4で使用したような洗浄したNSSCカバノキ損紙パルプを他の繊維なしで使用した。ウェブを例1と同様にして調製した。引張強度特性および伸びがさらに改良された。
【0056】
例6
この例では洗浄したNSSCパルプをライナーに加えた。洗浄したパルプは1.8wt%未満の灰分含有量を有する。
【0057】
比較として未洗浄のNSSCパルプを別のライナーに加えた。未洗浄NSSCパルプは1.8wt%より高い灰分含有量を有する。
【0058】
生成したすべてのライナーはNSSCパルプ添加ありまたはなしでトッププライに未漂白クラフトパルプ(100%)を、バックプライに再生繊維(RCF)パルプを含んでいた。
【0059】
これらの試験から、表3の試料3(S3)に示されているように、ライナー内にクリーンなNSSCパルプを使用すると、ライナーの裏面でも非常に良好なCobb値を有するライナーが提供されることが明らかである。Cobb値は基準試料と同じレベルである。試料1および試料2(S1およびS2)に見られるように、未洗浄のNSSCパルプの使用はライナーの高いCobb値をもたらすことが明白であり、これはこれらの試料がずっと低い耐水性を有することを意味している。結果として、本発明により、低い量の内添サイズ剤添加でも良好な(高い)耐水性をもつライナーを生産することが可能である。
【0060】
別途指定のない限り、本開示で論じた物理的特性は次の標準規格に従って決定される:
白色度C/2°+UV ISO 2470-1
L* C/2°+UV ISO 5631-1
a* C/2°+UV ISO 5631-1
b* C/2°+UV ISO 5631-1
坪量 ISO 536
厚さ、単一シート ISO 534
かさ、単一シート ISO 534
透気度G-H ISO 5636-5
Cobb 60s ISO 535
水分含量50%rh ISO 287
Scott-Bond TAPPI T569
引張強度 ISO 1924-3
引張指数 ISO 1924-3
引張強度md/cd ISO 1924-3
伸び ISO 1924-3
引張剛性 ISO 1924-3
引張剛性指数 ISO 1924-3
E-弾性率 ISO 1924-3
TEA ISO 1924-3
TEA指数 ISO 1924-3
TEA指数 ISO 1924-3
破壊靱性 ISO/TS 17958
破壊靱性指数 ISO/TS 17958
引裂抵抗 ISO 1974
引裂指数 ISO 1974
SCT ISO 9895
SCT指数 ISO 9895
RCT ISO 12192
RCT指数 ISO 12192
破裂指数 ISO 2759
破裂強度 ISO 2759
【0061】
別途指定のない限り、交差方向(cd)および縦方向(md)の両方で物理的および機械的特性を決定するのに標準の方法を適用することができる。
【国際調査報告】