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特表2024-519022位置決め装置およびそのような位置決め装置を動作させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】位置決め装置およびそのような位置決め装置を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20240426BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240426BHJP
   H10N 30/857 20230101ALI20240426BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240426BHJP
【FI】
G01N29/265
H10N30/853
H10N30/857
H10N30/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571203
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 DE2022100369
(87)【国際公開番号】W WO2022242798
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021112809.9
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505257752
【氏名又は名称】フィジック インストゥルメント(ピーアイ)ゲーエムベーハー アンド ツェーオー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【弁理士】
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】ヴィシュネフスキー、アレクセイ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047CA01
2G047GA06
2G047GF21
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの圧電アクチュエータ(4)を有する位置決めユニット(2)と、位置決めされる要素(6)に結合される駆動要素(5)と、コントローラ(3)とを備えた位置決め装置(1)に関する。位置決め装置は、位置決めユニット(2)内の欠陥を検出するための欠陥分析装置(16)を有し、アクチュエータ(4)または複数のアクチュエータは、駆動要素(5)の駆動装置として機能することに加えて、超音波の発生器(12)または受信器(13)として機能し、欠陥分析装置(16)は、発生器(12)を励起するための正弦波電圧を生成する測定信号発生器(22)と、受信器(13)によって生成された電気信号を分析する共振分析器(24)とを備える。本発明はまた、位置決めユニット(2)内の欠陥を検出するために、そのような位置決め装置を動作させるための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電アクチュエータ(4)を備えた位置決めユニット(2)と、前記アクチュエータ(4)によって移動可能で、位置決めされる要素(6)に結合するために設けられた駆動要素(5)と、コントローラ(3)とを備えた位置決め装置(1)であって、
前記位置決め装置(1)は、前記位置決めユニット(2)の欠陥を検出するための欠陥分析装置(16)を備え、前記位置決めユニット(2)が単一のアクチュエータ(4)を備える場合、前記アクチュエータ(4)は、音響超音波の発生器(12)および受信器(13)を備え、前記位置決めユニット(2)が複数のアクチュエータ(4)を備える場合、前記複数のアクチュエータ(4)のうち少なくとも1つは、少なくとも1つの超音波発生器(12)を備え、前記複数のアクチュエータ(4)のうち少なくとも別の1つは、少なくとも1つの超音波受信器(13)を備え、前記欠陥分析装置(16)は、前記発生器(12)または発生器(12)を励起するための電圧を生成するための測定信号発生器(22)と、前記受信器(13)または受信器(13)によって生成された電気信号を分析するための共振分析器(24)とを備えることを特徴とする位置決め装置(1)。
【請求項2】
前記測定信号発生器(22)は、電気正弦波電圧の周波数を周期的に初期値から最終値まで変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置(1)。
【請求項3】
前記欠陥分析装置(16)は、広帯域リニアまたはクロック出力の電圧または電流増幅器(17)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の位置決め装置(1)。
【請求項4】
前記コントローラ(3)は、前記位置決めユニット(2)を駆動するための出力段(15)を備え、同じ前記出力段(15)は、前記測定信号発生器(20)に電気を供給する役割も果たすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項5】
前記欠陥分析装置(16)は、ホワイトノイズ発生器を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項6】
前記コントローラ(3)は、位置コントローラ(18)と、軌道および信号発生器(19)とを備え、
前記位置コントローラ(18)または前記軌道および信号発生器(19)は、集積回路によって実現され、前記測定信号発生器(22)および前記共振分析器(24)は、同じ前記集積回路内のプログラムモジュールとして実現されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項7】
前記共振分析器(24)は、共振画像を視覚的に制御するための表示画面へのデータインターフェースを備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項8】
前記欠陥分析装置(16)は、受信器(13)によって生成された電気信号を検出するための電流センサ(23)を備え、
電流を検出するために、抵抗器、トランジスタ、変換器、オプトカプラ、または演算増幅器が使用されることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項9】
アクチュエータ(4)は、積層圧電アクチュエータとして構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項10】
アクチュエータ(4)は、複数の固体ジョイント(9)の間に配置され、前記駆動要素(5)への前記アクチュエータ(4)の撓みの伝達は、摩擦なしで前記複数の固体ジョイント(9)の弾性変形によって実現されることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項11】
発生器(12)または受信器(13)は、アクチュエータ(4)の一部を形成し、作動機能を持たないことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項12】
発生器(12)または受信器(13)を形成するアクチュエータ(4)の一部は、低い音響抵抗を有する音響接続によって同じ前記アクチュエータ(4)の残りの部分に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の位置決め装置(1)。
【請求項13】
発生器(12)は1つのアクチュエータ(4)において形成され、受信器(13)は別の離間したアクチュエータにおいて形成されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)を動作させる方法であって、
発生器(12)には、交流電圧の形で測定信号発生器(22)の電気測定信号が周期的に供給され、前記位置決めユニット(2)の機械的共振は、受信器(13)で周期的に検出され、前記位置決めユニット(2)の欠陥を予測または検出するために、前記共振分析器(24)を用いて新しい共振の出現または以前存在した共振の消失または変化が検出および分析されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記測定信号の周波数を初期値から最終値まで変化させ、それにより受信器(13)を流れる電流値および電流と電圧との間の位相角値が前記周波数依存の形で測定され且つ前記電圧と共に記録され、共振を検出するための一連の測定値から、インピーダンス|Z|の関数が前記周波数から形成され、前記インピーダンスから、新しい機械的共振の存在または以前検出された機械的共振の変化または不在が判定されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記位相角と共に、前記周波数からの前記インピーダンス量|Z|の関数がナイキスト線図で表され、そこから前記新しい機械的共振の存在または前記以前検出した機械的共振の変化または不在を判定することを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記測定信号の初期周波数値は、アクチュエータ(4)の検出可能な最低共振周波数値に等しく、前記測定信号の最終周波数値は、アクチュエータ(4)の測定可能な最高共振周波数値に等しく、前記最低共振周波数値および前記最高共振周波数値の両方は、異なるタイプの超音波に属することを特徴とする請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記測定信号の初期周波数値は、前記アクチュエータ(4)の長さによって決定されるアクチュエータ(4)の最低共振周波数値に等しく、前記測定信号の最終周波数値は、前記アクチュエータの長さの半分によって決定される共振周波数値の2倍に等しいことを特徴とする請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記測定信号の周波数は、前記初期値から前記最終値まで対数的に変化することを特徴とする請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記測定信号はホワイトノイズであり、受信器(13)を流れる電流が測定および記録され、新たに出現する共振または消失した共振を検出するために、測定結果はフーリエ変換、離散フーリエ変換、または高速フーリエ変換されることを特徴とする請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記測定信号の周波数値は、アクチュエータ(4)の測定可能な共振周波数値に等しく、前記共振周波数は、様々なタイプの超音波に属し、前記共振周波数で発生器(12)を短時間励起した後、前記位置決めユニット(2)の減衰が受信器(13)を用いて記録され、その後、共振の変化を検出するために、記録された前記減衰の曲線が以前に記録された減衰曲線と比較されることを特徴とする請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記測定信号の周波数値は、前記位置決めユニット(2)の測定可能な共振周波数値に等しく、発生器(12)を短時間励起した後、共振の変化を検出するために、前記位置決めユニット(2)の減衰挙動が記録され、以前に記録された減衰挙動と比較されることを特徴とする請求項14~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記測定信号の周波数値は、前記位置決めユニット(2)の少なくとも1つの測定可能な共振周波数値に等しく、発生器(12)の励起中に、少なくとも1つの共振変化を検出するために、前記位置決めユニット(2)の内部抵抗R=U/IArが決定され、以前に記録された前記位置決めユニット(2)の前記内部抵抗の値と比較されることを特徴とする請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記測定信号の前記周波数値は、前記位置決めユニット(2)の測定可能な共振周波数値に実質的に等しく、発生器(12)の短時間の励起中または励起後、反射パルスが受信器(13)によって検出され、前記反射パルスの複数のパラメータが共振変化を検出するために記録され、以前に記録された複数のパラメータと比較されることを特徴とする請求項14~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記共振の検出および前記欠陥の分析は、前記位置決めユニット(2)の通常動作モードで行われることを特徴とする請求項14~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
記録された共振画像の分析は、オペレータによって視覚的に行われることを特徴とする請求項14~25のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の位置決め装置および請求項14に記載のそのような位置決め装置を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電駆動の位置決め装置により、数10分の1ピコメートルから数センチメートルの範囲での微細な位置決めが可能になる。特に、圧電積層アクチュエータは、これらの機械システムの調整部材として使用される。圧電アクチュエータは、電気機械エネルギー変換器であり、その動作原理は、電場の影響下での特定の結晶の形状の変化に基づいている。アクチュエータは、圧電単結晶、圧電単結晶セラミック、または圧電ポリマー複合材料で構成されている。
【0003】
圧電駆動の位置決め装置は、中でも、リソグラフィー装置や光学星望遠鏡など、非常に複雑な、よってコストがかかる装置に使用される。積層アクチュエータは主に準静的に、つまり、システムの最低共振をはるかに下回って動作するが、それにもかかわらず、そのような位置決め装置で通常使用される固体ジョイント(Festkoerpergelenke)と同様に、一定の機械的応力にさらされ、駆動される要素の変位はそれらの弾性変形によって実現される。アクチュエータの収縮および膨張、または固体ジョイントの曲げは、動作中に、1秒あたり最大20,000回発生する可能性がある。動作時間が増加すると、微小位置決め装置のアクチュエータ、ガイド、ジョイント、または他の構成要素に微小亀裂、短絡、層間剥離、または他の欠陥が発生する可能性があり、完全な故障に至るまでの、装置の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。位置決め装置の突然の故障は、通常、高額なコストを引き起こす。
【0004】
前述の欠陥のほとんどは、通常は突然発生するものではなく、僅かな初期欠陥から始まり、時間の経過とともに発展し、伝播する。全ての機械システムには特定の共振パターンがあり、これは、個々のシステム構成要素の形状、幾何学的寸法、材料特性などに依存する。欠陥はシステムの共振パターンに変化を引き起こす。以前には存在しなかった共振の出現、またはシステム内に以前に存在していた共振の変化または除去は、欠陥の出現を示す。
【0005】
超音波を用いて物体の材料特性を非破壊的に測定するための方法が、特許文献1から知られている。この目的のために、送信器を使用して超音波を検査対象に誘導し、受信器を使用してその伝播時間を測定する。物体内の超音波の伝播を分析することにより、その材料特性に関する結論が得られる。
【0006】
非特許文献1(科学論文)には、積層圧電セラミックコンデンサの亀裂、層間剥離、または他の欠陥を非破壊的に検出するための方法が記載されている。この方法は、コンデンサ内の定在超音波の励起に基づいている。コンデンサのインピーダンスは、実験室用インピーダンス分析器HP モデル4192Aを使用して記録される。積層コンデンサのインピーダンス像の変化は、コンデンサの内部欠陥の証拠であることが示されている。
【0007】
非特許文献2(科学論文)から、積層圧電アクチュエータの亀裂、層間剥離、または他の欠陥を非破壊的に検出するための方法が知られている。内部欠陥によるアクチュエータの共振パターンの変化を調査する。この目的のために、アクチュエータのインピーダンススペクトルが光学顕微鏡およびスキャナー電子顕微鏡を使用した直接測定と比較される。インピーダンスは、実験室用インピーダンス分析器(Solartron 1260)を使用して、アクチュエータの共振の下から上まで記録される。積層圧電アクチュエータのインピーダンスを検査することで、アクチュエータ内の欠陥を迅速かつ非破壊的に検出できることが確認されている。
【0008】
特許文献2には、例えばタービン、モータ、ロボットなどのさまざまな機械における不要な振動を分析して抑制するためのシステムが記載されている。このシステムは、多数の圧電振動センサと、振動を生成するためのアクチュエータと、センサおよびアクチュエータに接続されたコントローラとを備える。測定された振動は、フィードバックループによってコントローラに送信され、アクチュエータの駆動信号を動的に変化させる。不要な振動を抑制するために、コントローラは、振動抑制アルゴリズムに従ってアクチュエータを駆動する。
【0009】
構造的損傷を非破壊的に検出するための装置が特許文献3から知られている。この装置は、圧電センサとアクチュエータとを備える。アクチュエータは、検査対象の構造内に音波を生成する。センサは、構造から反射した波を受信する。センサ信号を評価すると、構造的損傷の存在が示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3720098号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0013352号明細書
【特許文献3】欧州特許第1735586号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】O.ボーザー(O.Boser)、P.ケラウォン(P.Kellawon)、R.ガイヤー(R.Geyer)、「Rapid Nondestructive Testing of Ceramic Multilayer Capacitors」、IEEE Transactions on Components,Hybrids and Manufacturing Technology、第12巻、第I号(1989年)
【非特許文献2】C.R.ボーエン(C.R.Bowen)、M.ロペス‐プリエト(M.Lopez‐Prieto)、S.マーン(S.Mahon)、F.ラウリー(F.Lowrie)、「Impedance Spectroscopy of Piezoelectric Actuators、Scripta mater」、第42巻、813~818ページ(2000年)
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、位置決めユニット内で発生する欠陥を予測または検出することができる位置決め装置を提供すること、および位置決めユニット内の欠陥を予測または検出するために、そのような位置決め装置を動作させるための方法を提供することである。これにより、特に、最悪の場合、完全に故障することになる前に位置決めユニットの対応する構成要素をタイムリーに交換することができる。
【0013】
本発明に係る位置決め装置は、位置決めユニットおよびコントローラを備える。次に、位置決めユニットは、駆動要素を移動させる役割を果たす少なくとも1つの圧電、かつ、好ましくは積層アクチュエータを備え、駆動要素の動きは、少なくとも1つのアクチュエータの目標とする機械的変形によって引き起こされ、駆動要素の動きは、位置決めされる要素を駆動または位置決めするために提供される。
【0014】
駆動要素と位置決めされる要素との結合は、駆動要素の動きを位置決めされる要素に伝達するために設けられる。この結合は、駆動要素の動きを位置決めされる要素に直接変換するように、例えば、剛性の機械的接続とすることができる。しかしながら、結合は、場合により、摩擦接触として、とりわけ、駆動要素と位置決めされる要素との間の断続的な摩擦接触として実現することもできる。つまり、駆動ステップ中に、駆動要素と位置決めされる要素との間に摩擦または摩擦接触が存在し、摩擦または摩擦接触を介する機械的結合は、この時間間隔の間存在する。それぞれの駆動ステップの後には、駆動要素が初期位置に戻る段階が時間的に続き、それにより、次のステップが準備される。
【0015】
位置決めユニットが単一のアクチュエータから成る場合、このアクチュエータは、その駆動機能に加えて、音響超音波の発生器および受信器の両方として作用または機能するように構成または配置される。位置決めユニットがいくつかの、つまり少なくとも2つのアクチュエータを有する場合、アクチュエータのうち少なくとも1つは、少なくとも音響超音波の発生器として作用または機能するように構成され、アクチュエータのうち少なくとももう1つのアクチュエータは、少なくとも音響超音波の受信器として作用または機能するように構成される。
【0016】
換言すれば、本発明に係る位置決め装置またはその位置決めユニットは、圧電、かつ、好ましくは積層アクチュエータを1つのみ有し、駆動要素を移動させる機能に加えて、同時に音響超音波の発生器および受信器として機能し、よってそれ自体で駆動装置、発生器、および受信器としての機能を組み合わせるか、位置決め装置または位置決めユニットがいくつかの、つまり少なくとも2つの圧電、かつ、好ましくは積層アクチュエータを有し、そのうちのどちらか1つのみ、いくつか、または全ては、駆動要素を移動させる機能に加えて、同時に音響超音波の発生器および受信器として機能する。さらに、位置決め装置または位置決めユニットがいくつかのアクチュエータを備える場合、1つまたは複数のアクチュエータは、駆動機能に加えて、音響超音波の発生器としてのみ機能し、別のアクチュエータまたはいくつかの他のアクチュエータは、駆動機能に加えて、音響超音波の受信器としてのみ機能するため、駆動装置と発生器および駆動装置と受信器の機能が少なくとも2つの異なる空間的に離れたアクチュエータ間で分割されている。
【0017】
明細書や特許請求の範囲の後続の部分が、「アクチュエータ」または「前記アクチュエータ」(すなわち、単数形)に言及している場合、これは単一のアクチュエータに限定して理解されるべきではない。むしろ、用語「アクチュエータ」(つまり、「アクチュエータ」または「前記アクチュエータ」)に関連して単数形を使用することは、アクチュエータに関する特徴が単一のアクチュエータにのみ適用されるか、複数のアクチュエータの場合には、全て、そのうちの一部のみ、またはそのうちの1つのみに適用されることを意味すると理解または解釈されるべきである。例えば、アクチュエータの構成について記載されている場合、この構成についての記載は、単一のアクチュエータが存在する場合には、まさにこの単一のアクチュエータに適用され、いくつかのアクチュエータが存在する場合には、アクチュエータのうちの1つ、全てのアクチュエータ、アクチュエータの一部のみ、またはアクチュエータのうちの1つのみに適用される。前述の内容は、本明細書での「発生器」および「受信器」という用語の使用にも等しく適用される。
【0018】
本明細書で使用される「または」という用語は、特に明記されていない限り、包括的論理和、つまり非排他的論理和として理解されるべきである。これに関連して、例えば、「アクチュエータは発生器または受信器の機能を有する」という表現は、本明細書では、アクチュエータが発生器の機能または受信器の機能を有するか、アクチュエータが発生器と受信器の機能を有することを意味すると理解されるべきである。
【0019】
位置決めユニットの機械的調整部材の機能は、アクチュエータまたは複数のアクチュエータによって実行され、それにより、使用されるアクチュエータの数は主に用途によって決定される。調整部材の機能に加えて、単一のアクチュエータが存在する場合、その駆動機能に加えて、音響超音波の発生器の機能と受信器の機能の両方を有する。この場合、つまり単一のアクチュエータが存在する場合、超音波の発生器と受信器の両方を備える。発生器の機能は超音波を生成することであり、受信器の機能は、超音波を受信することである。
【0020】
アクチュエータは、例えば、複数の固体ジョイントの間に配置され、それらを介して駆動要素に接続または結合される。アクチュエータの動きまたは変形は、複数の固体ジョイントの弾性変形によって駆動要素に伝達される。
【0021】
積層アクチュエータの場合、アクチュエータはいくつかの層から構成され、各層は2つの電極と、それらの間に配置された分極した圧電材料とから成る。これに関連して、積層アクチュエータについても言及される。
【0022】
コントローラは、アクチュエータまたは位置決めユニットの制御調整コントローラと、音響超音波の発生器を励起して、音響超音波の受信器の信号を記憶および分析する欠陥分析装置と、任意選択で整流子とから成る。任意選択の整流子では、発生器としてのまたは受信器としてのアクチュエータ動作(つまり、アクチュエータの動きまたは変形を発生させること)とアクチュエータのセンサ動作との間でスイッチングが行われる。さらに、コントローラは、人が視覚的に欠陥分析を実行することができる表示画面を有するコンピュータとインターフェースしてもよい。
【0023】
制御調整コントローラは、アクチュエータのための電力出力段と、軌道および信号発生器と、位置決めユニットの位置および任意選択で速度または加速度を制御するための位置コントローラとを備える。
【0024】
欠陥分析装置は、アクチュエータまたは位置決めユニットを制御して調整または制御もしくは調整する機能、測定信号で超音波の発生器を励起する機能、および超音波の受信器から来る信号を処理する機能を有する。欠陥分析装置は、電気正弦波電圧を発生させるための少なくとも1つの測定信号発生器と、受信器として作用するアクチュエータによって生成された信号を分析するための共振分析器とから成る。
【0025】
アクチュエータの圧電材料は、単結晶の圧電材料、多結晶の圧電セラミック、圧電高分子材料、または他の圧電材料または電歪材料であってもよい。位置決めユニットは、1つまたは複数のアクチュエータ、好ましくは積層アクチュエータを備えていてもよい。固体ジョイントが位置決めユニットに使用される場合、それらは曲げジョイントまたはねじりジョイント(Biege- oder Torsionsgelenke)であってもよい。
【0026】
アクチュエータは、発生器を励起し、音響超音波の受信器から受信する信号を処理するためにコントローラに接続される。
位置決めユニット内でアクチュエータを調整部材としてだけなく音響超音波の発生器または受信器として使用することにより、位置決めユニットに定性的に全く新しい特性が与えられる。これにより、コストのかかる追加の別個の送信器および受信器の設置が回避される。追加のシステム構成要素が存在しないため、位置決めユニットまたは位置決め装置が故障する可能性が高くなる。
【0027】
共振分析器は、電流センサからの信号を処理し、その信号と測定信号発生器からの信号を保存し、記録された2つの共振信号または共振スペクトルを相互に比較または分析する。効率的に比較または分析するために、適切なニューラルネットワークアルゴリズムが使用される。分析した共振画像(共振イメージ)に規定の逸脱が検出されると、視覚的または他の警告が発せられる。データはまた、共振分析器から任意選択のインターフェースを介してコンピュータの画面にも送信される。操作者またはオペレータは、必要に応じて測定の視覚的な分析または検査を行うことができる。
【0028】
本発明に係る位置決め装置の有利な実施形態は、測定信号発生器が周期的な周波数掃引で電気正弦波電圧を発生させるように設計されていることを提供する。これにより、位置決めユニットを特定の範囲で周期的に励起することができ、その結果、規定の周波数範囲で共振画像が生成され、かかる共振画像を分析することができる。
【0029】
本発明に係る位置決め装置の別の有利な実施形態は、欠陥分析装置が、必要な周波数範囲で発生器を励起するために測定信号発生器によって生成された信号を適切に増幅する、リニアまたはクロック(linearen oder getakteten)広帯域出力の電圧または電流増幅器を備えることを提供する。さらに、欠陥分析装置が、制御調整コントローラからアクチュエータを駆動するために使用するのと同じ電力出力段を測定信号発生器の出力電圧または電流増幅器として使用することが有利である場合がある。
【0030】
欠陥分析装置がホワイトノイズ発生器を備えることが有利である場合があり、測定信号発生器がこのホワイトノイズを発生させるのに適していることが特に有利である場合がある。ホワイトノイズには、規定の周波数範囲で一定のパワー密度スペクトルを有する広域スペクトルの周波数が含まれる。この信号は、共振画像を取得するために位置決めユニットの広帯域かつ効率的な励起として有利に使用してもよい。
【0031】
さらに、位置コントローラまたはコントローラの軌道および信号発生器が、例えばデジタル信号プロセッサ(DSP : digital signal processor)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA : field programmable gate array)の形態の集積回路を用いて実装され、測定信号発生器および共振分析器が同じ集積回路内でプログラムモジュールとして実装されることが有利である場合がある。特に、コスト重視の用途では、位置決めユニットの制御または調整タスクにすでに使用されているのと同じ集積回路に欠陥分析装置の機能を備えることが有利である。
【0032】
さらに、共振分析器が、共振画像を視覚的に検査するためのモニタへのデータインターフェースを備えることが有利である場合がある。この場合、データは共振分析器からインターフェースを介してコンピュータのモニタに送信される。オペレータは、必要に応じて測定データの視覚的な分析または検査を行うことができる。
【0033】
さらに、欠陥分析装置が、アクチュエータまたは受信器によって生成された信号を検出するための電流センサを備えることが有利である場合がある。アクチュエータまたは受信器を流れる電流には、位置決めユニットまたは位置決め装置の共振画像に関する情報が含まれる。電流センサは、受信器によって生成された電流を電圧U’iに変換し、それを増幅して、共振分析器で利用できるようにする。電流の変換は、その後に続く増幅を伴って抵抗器を用いて行うか、トランジスタ、変圧器、または演算増幅器によって行うことができる。この目的のために、オプトカプラも有利に使用することができる。オプトカプラまたは変圧器を使用する場合、アクチュエータは、有利にも欠陥分析装置から直流的に絶縁される。
【0034】
さらに、複数の固体ジョイントの間に位置する少なくとも1つの発生器または受信器を有することが有利である場合がある。曲げジョイント、ねじりジョイント、または曲げジョイントガイドなどの複数の固体ジョイントの間に音響超音波の発生器および受信器を配置することにより、より良好な音響振動(akustische Flalterung)が可能になる。超音波の励起または受信中、発生器および受信器は、周囲の機械部品側で応力が軽減される。したがって、超音波範囲でのそれらの振動はあまり影響を受けない。したがって、これらの機械的発振回路の機械的品質は向上し、発生器の励起に必要な電力が少なくなる。その結果、受信器の感度も向上する。
【0035】
ここで、駆動手段の動きが、発生器または受信器が間に配置される複数の固体ジョイントによって、または位置決めユニットの追加の固体ジョイントによって案内されることが有利である場合がある。
【0036】
さらに、位置決めされる要素への駆動要素の結合が固定接続または摩擦接触を介して実現されることが有利であり得る。アクチュエータの動きまたは変形が摩擦接触によって駆動要素を介して位置決めされる要素へ伝達される位置決めユニットは、位置決めユニットの摩擦接触の定性的な制御を可能にする。したがって、摩擦のペアの汚れによる摩擦接触の劣化は、音響分析によって直接検出することができる。同様に、駆動要素が摩擦接触するかまたは摩擦接触するようになる、位置決めされる要素の摩擦レールの層間剥離を検出することができる。駆動要素と位置決めされる要素とが固定接続されている場合、駆動要素の動きは、位置決めされる要素に直接伝達され、これは、非常に正確かつ高分解能で行われるが、アクチュエータの変形が限られているため、比較的短い移動距離が可能である。
【0037】
さらに、発生器または受信器がアクチュエータの少なくとも一部から形成されることが有利である場合がある。積層アクチュエータの場合、アクチュエータの複数の層の少なくとも一部が発生器または受信器を形成する。圧電材料に部分的または局所的に応力を加えるか、圧電材料を発生器または受信器に使用することによって、機械的環境に対する超音波のより良好な音響整合が達成できる。積層アクチュエータの場合、例えば、1つの層のみ、または全ての層のうち約半分を発生器または受信器に使用することができる。この場合、これらの層は、それに応じて電気的に接続され、これに関連する電気配線は、位置決めユニットから引き出される。アクチュエータと発生器の起動および受信器からの信号の伝達はコントローラ内で行われる。
【0038】
この点に関して、アクチュエータの少なくとも一部によって形成される発生器または受信器が作動機能を持たず、つまり変形または動きを引き起こす機能を持たず、低い音響抵抗を有する音響接続によってアクチュエータの残りの部分に接続されることが有利であることが判明する場合がある。結果として発生器または受信器が音響超音波から分離されることで、アクチュエータの機能とは独立して使用できる構造を実現することができる。
【0039】
位置決めユニットの欠陥を検出するために、あるアクチュエータの発生器と別のアクチュエータの受信器とを使用することもまた有利である場合がある。したがって、積層アクチュエータを備えた位置決めユニットでは、あるアクチュエータの音響超音波の発生器と、別のアクチュエータの受信器とを使用することができる。これによって与えられる音響超音波の発生器と受信器との空間的分離、つまり間隔によって、音響測定信号パルスの伝搬時間測定を実現することができる。音響信号の飛行時間測定は、位置決めユニットの共振または欠陥を検出するための別の方法を示す。
【0040】
本発明はまた、位置決め装置またはその位置決めユニットに生じる欠陥を予測または検出するために、上述の位置決め装置を動作させる方法にも関する。
位置決めユニットの各構成要素は、寸法、材料特性、および設置方法によって決定される共振を有する機械振動子を表す。位置決めユニットの構成要素の亀裂、積層アクチュエータの積層構造の層間剥離、固体ジョイントの材料疲労、および位置決めユニットの他の欠陥は音像の変化につながる。新しい共振が引き起こされ、既存の共振は変化したり、消失したりさえする。
【0041】
本発明に係る方法は、アクチュエータが、調整部材として機能すること、つまりアクチュエータの変形によって位置決めされる要素を位置決めする役割を果たす駆動要素の動きを生成することに加えて、位置決めユニットの欠陥を検出するために使用される超音波の発生器または受信器として機能するよう使用または操作されることを提供する。
【0042】
この目的のために、欠陥分析装置の測定信号発生器からの電気測定信号がアクチュエータに周期的に印加される。測定信号は、AC電圧またはAC電流であってもよい。アクチュエータまたは発生器は、位置決めユニット全体で音響超音波を励起し、それらは位置決めユニット全体およびアクチュエータ自体の機械的共振としてアクチュエータまたは受信器によって周期的に記録され、共振分析器で処理できるようにされる。共振分析器は、任意選択の電流センサからの信号を処理し、測定信号発生器からの信号と同様に保存する。
【0043】
さらなるステップでは、共振分析器は、位置決めユニットの2つの記録された信号または共振スペクトルを相互に比較または分析する。この比較の間、以前は存在し、現在は消失または変化した共振が検出され、新しく生じた共振が記録される。比較または分析には、適切で効率的なニューラルネットワークアルゴリズムが使用される。分析された共振画像に規定の逸脱が検出されると、視覚的または他の警告が発せられる。
【0044】
本発明に係る位置決めユニットおよびその構成要素の欠陥を予測し検出するための本発明に係る方法は、位置決めユニットの状態の自動監視と、欠陥が生じた時の適時の交換またはメンテナンスを可能にする。位置決めユニットに圧電アクチュエータを調整部材としてだけでなく超音波の発生器または受信器としても使用することにより、位置決めユニットに定性的で全く新しい特性が与えられる。本発明に係る位置決め装置または本発明に係る対応する方法は、特に、コストのかかる追加の別個の送信器および受信器の設置を省く。
【0045】
この方法では、DC電圧または低周波AC電圧が電力出力段によってアクチュエータに印加されるか、高周波AC電圧が増幅器によってアクチュエータに印加される。この文脈では、低周波とは、周波数が位置決めユニットの最低共振周波数より少なくとも3倍低い電圧を意味する。この文脈では、高周波とは、電圧の周波数が位置決めユニットの最低共振周波数とほぼ等しいかそれより高いことを意味する。電圧がアクチュエータの圧電材料に印加されると、アクチュエータは、電圧の符号に応じて膨張または収縮し、それにより位置決め機能を実行する。つまり、アクチュエータは、この膨張または収縮をそれに接続された駆動手段に伝達し、駆動手段は、位置決めされる要素との結合のために設けられ、この結合を介して、位置決めされる要素の位置決め移動を達成することができる。
【0046】
調整部材の機能に加えて、アクチュエータまたはその一部は超音波の発生器または受信器の機能を有する。増幅器からの測定信号が発生器に印加されると、超音波がその近傍または位置決めユニット内で励起され、受信器によって受信されて電流に変換される。アクチュエータを流れる電流は、任意選択の電流センサに到達し、それによって電圧Uiに変換され、さらに共振分析器によって処理される。
【0047】
新たに生じた共振、または以前に存在した共振の消失または変化の検出は、位置決めユニットの電気インピーダンス|Z|の大きさを周波数の関数として形成することによって実行されることが有利である場合がある。この目的のために、測定信号電圧UMGの周波数を初期値fから最終値fまで周波数掃引に応じて変化させ、受信器を流れる電流値Iおよび電流と電圧U間の位相角値φを周波数の関数として測定し、電圧と共に記録する。共振を検出するために、一連の測定値から、周波数の関数としてのインピーダンス値の変化|Z|=U/Iが形成される。そして、共振分析器は、インピーダンスの変化Z(|Z|=f(f))と変化φ(f)から、新しい機械的共振の存在または以前存在した機械的共振の不在を判断する。
【0048】
位置決めユニットのすべての共振は、インピーダンス曲線に含まれる。位置決めユニットのシステム構成要素に欠陥が生じると、位置決めユニット内に新しい共振が出現するか、以前存在した共振パターンが変化する。これらの変化は、インピーダンス曲線で簡単に認識できる。それらは、パターン認識ニューラルネットワークアルゴリズムを使用して共振分析器で有利に識別できる。
【0049】
周波数掃引中に、受信器を流れる電流値および電流と電圧との間の位相角値は、周波数依存の形で測定され、電圧と共に記録されることも有利であり得る。それにより、共振検出のための一連の測定値から、インピーダンスの大きさ|Z|および位相角fがナイキスト線図で表される。ナイキスト線図により、位相角と共にインピーダンスの大きさを同時に表現できるため、位置決めユニットの周波数画像(周波数イメージ)を特に有利に表現できる。
【0050】
さらに、周波数掃引では、測定信号の初期周波数値は、アクチュエータの測定可能な最低共振周波数値に等しいかそれより僅かに小さく、測定信号の最終共振周波数値は、アクチュエータの測定可能な最高共振周波数値に等しいかそれより僅かに大きく、最低共振周波数値と最高共振周波数値の両方は、例えば、アクチュエータの縦方向、屈曲、放射状、せん断、または他の振動モードといった種類の異なる超音波に属していてもよい。
【0051】
好ましくは積層の圧電アクチュエータは、位置決め装置の位置決めユニットの必須の構成要素である。アクチュエータには、特定の固有モードおよび関連する固有共振がある。アクチュエータの固有共振は、位置決めユニットに取り付ける前に特定することができる。固有共振は、取り付け後、励起された時に位置決めユニットの共振画像に含まれ、特定することもできる。アクチュエータの共振周波数の周波数範囲で位置決めユニットを励起することにより、このアクチュエータの欠陥は特異的に検出される。
【0052】
さらに、周波数掃引では、測定信号の初期周波数値が、アクチュエータの長さによって決定されるアクチュエータの最低共振周波数値に等しく、測定信号の最終周波数値が、アクチュエータの長さの半分によって決定される共振周波数値の2倍に等しいことが有利である場合がある。
【0053】
アクチュエータは、通常、動作中に特に強い縦方向の膨張を受ける。この種の応力は、積層アクチュエータの場合には、個々の層間に亀裂や層間剥離を引き起こす。アクチュエータの縦振動モードおよび屈曲振動モードの周波数範囲における位置決めユニットの励起および共振分析は、この種の欠陥を特異的に検出するために使用されることができる。
【0054】
さらに、周波数掃引では、電気測定電圧の周波数を対数的にまたは別の便宜的な関数に従って初期値から最終値まで変化させることが有利である場合がある。これにより、位置決めユニットの迅速な欠陥テストを実行したり、特定の音像を用いて位置決めユニットの共振の検出を調整したりすることができる。
【0055】
さらに、測定信号がホワイトノイズであり、アクチュエータを流れる電流が測定され記録されることが有利である場合がある。そして、共振を検出する目的で、一連の測定値は、フーリエ変換、離散フーリエ変換(DFT : discrete Fourier transformation)、または高速フーリエ変換(FFT : fast Fourier transformation)される。新しく生じた共振、消失した共振、または変化した共振が検出される。フーリエ変換は、DSPまたはFPGA内で効率的に実現され、迅速な分析の実行が可能になる。フーリエ変換の結果、共振は振幅として簡単に認識できるため、位置決めユニットの共振画像の変化を効率的に検出することもできる。
【0056】
さらに、測定信号の周波数値がアクチュエータの測定可能な共振周波数値に等しく、共振は、例えばアクチュエータの縦方向、屈曲、放射状、せん断、または他の振動モードといった様々な種類の超音波に属していてもよく、この共振周波数で発生器を短時間励起した後、位置決めユニットの減衰が受信器によって記録され、さらに、共振変化を検出するために、記録された減衰曲線が以前に記録された減衰曲線と比較されることが有利である場合がある。
【0057】
圧電アクチュエータによって駆動される位置決めユニットの電流は、アクチュエータが押されるか共振で励起されると、関数I=IEXP(-λt)sin(ωt)にほぼ従って減衰する。ここでは、Iは電流、Iは初期電流、λは減衰定数、ωは角周波数、tは時間である。欠陥によって共振の1つが変化すると、この変化は減衰挙動によって、または振幅減衰関数A=IEXP(-λt)、減衰時間、または減衰振動周波数の変化で検出することができる。振動の減衰時間および減衰関数は、マイクロプロセッサベースの測定装置によって迅速かつ容易に記録できる。アクチュエータで発生する欠陥は減衰曲線を比較することで検出することができる。
【0058】
測定信号の周波数値が位置決めユニットの測定可能な共振周波数値に等しく、発生器を短時間励起した後、共振変化を検出するために、位置決めユニットの減衰挙動が記録され、以前に記録された減衰挙動と比較されることが有利である場合がある。位置決めユニットの固有の共振の変化を観察することで、構成要素または構造部品の欠陥を検出することができる。
【0059】
測定信号の周波数値が位置決めユニットの測定可能な共振周波数値に等しく、共振変化を検出するために、発生器を励起している間、位置決めユニットの内部抵抗RF=U/IArが決定され、以前記録された内部抵抗と比較されることも有利である場合がある。
【0060】
位置決めユニットで欠陥が生じると、以前存在した共振の一部が変化する。機械振動子の共振曲線は、その損失抵抗R(ここでは内部抵抗Rと称する)によって特徴付けられる。位置決めユニットの各共振は、内部抵抗Rを有する振動子を表す。Rは欠陥が生じることによって変化する。内部抵抗Rは、アクチュエータUArの電圧および規定の共振周波数fでアクチュエータrを流れる電流を記録することで決定することができる。電圧UArおよび電流IArの記録は、マイクロコントローラベースの測定装置によって容易に実現でき、迅速に分析できる。
【0061】
測定信号の周波数値が位置決めユニットの測定可能な共振周波数値に等しく、共振変化を検出するために発生器を励起している間または励起した後、反射パルスが受信器によって受信され、そのパラメータが以前受信された反射パルスのパラメータと比較されることはさらに有利である場合がある。
【0062】
反射パルスの伝搬時間、振幅、または形状を使用して欠陥を検出してもよい。超音波パルスは、あるアクチュエータの発生器によって送信され、別のアクチュエータの受信器によって受信することができる。短パルスを励起して反射パルスのパラメータを評価することにより位置決めユニットの共振変化を検出することで、位置決めユニットの欠陥を迅速に特定できる。この場合、測定信号にはいくつかのパルスが含まれる可能性がある。パルスはまた、振幅または位相変調することができる。
【0063】
共振の検出および欠陥の分析は、位置決めユニットの通常の動作モードで行われることも有利である場合がある。この場合、位置決めユニットの共振画像は、初期起動中に一度記録され、その後、さらに、通常動作中に周期的にまたは繰り返し記録される。測定の記録は、最初の記録と比較され分析される。これにより、位置決めユニットの状態をその動作を中断することなく観測することができる。
【0064】
さらに、記録された共振画像の分析をオペレータによって視覚的に行うことができるのが有利である場合がある。このように、固有ではない共振画像が発生した場合に、人による介入を可能にしたり、欠陥のある位置決めユニットまたはその欠陥のある構成要素の交換を開始したりすることができる。この目的のために、本発明に係る装置は、画面またはモニタを備えたコンピュータを含んでいても良い。
【0065】
本発明のさらなる詳細、利点、および特徴は、以下の説明および図面から明らかになるであろうが、本文中に記載されていないすべての詳細については明示的に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】本発明に係る位置決め装置の概略図である。
図2】超音波の発生器および受信器を備えた位置決めユニットの圧電積層アクチュエータの一実施形態の概略図である。
図3】a)は、可変周波数を有する測定信号発生器UMGの電圧であり、b)は、図3a)による測定信号によって励起された、層構造の層間剥離を伴う積層アクチュエータのFEMモデルであり、c)は、図3a)による測定信号によって励起された、周波数fの関数としての、無傷のアクチュエータの電気インピーダンスの例示的な曲線であり、d)は、図3a)による測定信号によって励起された、周波数fの関数としての、層間剥離を伴うアクチュエータの電気インピーダンスの例示的な曲線である。
図4】a)は、図3a)による測定信号によって励起され、層構造の層間剥離を有するアクチュエータを備えた、本発明に係る位置決めユニットのFEMモデルであり、b)は、図3a)による測定信号によって励起され、fの関数としての、無傷のアクチュエータと亀裂を含むアクチュエータとを備えた、周波数の関数としての、位置決めユニットの電気インピーダンス|Z|の大きさの例示的な推移である。
図5】a)は、ホワイトノイズ信号であり、b)は、図5a)によるホワイトノイズ信号を用いて測定信号発生器によって励起された位置決めユニットの振幅スペクトルである。
図6】無傷のアクチュエータと層間剥離したアクチュエータとを備えた位置決めユニットの電流減衰曲線の例である。
図7】損失抵抗の測定を説明するための位置決めユニットの電流共振曲線である。
図8】a)~c)は、形態の異なる超音波パルスであり、d)は、超音波パルスのエコーである。
図9】本発明に係る位置決め装置の位置決めユニットのアクチュエータの通常動作と共振分析モードとを同時に実行する可能な回路実装の概略図であり、図9a)は、電力出力段と、電流または電圧増幅器の、それぞれインダクタとコンデンサを介するアクチュエータへの接続を示し、図9b)は、電力出力段の、変圧器を介するアクチュエータへの接続を示す。
図10】共通の電力段を備え、同じ集積回路内に測定信号発生器、共振分析器、および制御調整コントローラが同時に配置された位置決め装置である。
図11】a)~e)は、様々なバージョンの電流センサの原理構造である。
図12】駆動要素と位置決めされる要素との間の結合が摩擦接触を介して実現される、いくつかの積層アクチュエータを備えた位置決めユニットの概略図である。
図13】発生器および受信器を実現するために複数の層を領域ごとに利用するアクチュエータである。
図14】アクチュエータとして機能するのではなく、アクチュエータに接続された一部としての発生器または受信器を例示的に具体化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、アクチュエータ4によって駆動される位置決めユニット2の欠陥を検出するための本発明に係る位置決め装置1を概略的に示す。
位置決め装置1は、位置決めユニット2に加えて、コントローラ3を備える。位置決めユニット2は、移動または駆動機能に加えて、音響超音波(akustischer Ultraschallwellen)の発生器12および受信器13の機能を有するように設計された単一の圧電積層アクチュエータ4に加えて、固定接続によって位置決めされる要素6に結合される、アクチュエータ4によって移動または駆動される駆動要素5を備える。さらに、位置決めユニット2は、図1には示されていない位置センサを含む。
【0068】
アクチュエータ4は、その両端で保持要素21上に支持され、保持要素21は、固体ジョイント9を介してアクチュエータを取り囲むフレームに接続される。その結果、フレームに一体化された駆動要素5は、固体ジョイント9を介してアクチュエータ4に結合され、アクチュエータ4の動きまたは変形を駆動要素5に伝達することができる。
【0069】
圧電アクチュエータ4は、いくつかの層11から構成され、各層は2つの電極と、それらの間に配置された分極した圧電材料とから成る。個々の層の可能な分極方向は、図1の矢印Pで示されている。
【0070】
コントローラ3は、アクチュエータ4または位置決めユニット2を制御または調整し、測定信号で発生器12を励起し、受信器13からの信号を処理する機能を有し、制御調整コントローラ(Steuer-Regelcontroller)14と、発生器12を励起し、受信器13からの信号を記録して分析する欠陥分析装置16と、任意選択で整流子31とを備える。整流子31では、アクチュエータ4の作動動作と、アクチュエータまたはその一部がそれぞれ発生器12および受信器13としての役割を果たす検出動作との間でスイッチングが行われる。さらに、コントローラ3は、オペレータが視覚的に欠陥分析を行える表示画面を有するコンピュータ29とインターフェースしてもよい。
【0071】
制御調整コントローラ14は、アクチュエータ4のための電力出力段15と、軌道および信号発生器(Trajektorien- und Signalgenerator)19と、位置決めユニット2の位置および任意選択で速度および加速度のためのコントローラ18とを含む。
【0072】
欠陥分析装置16は、発生器12のための電流‐電圧増幅器17と、測定信号発生器22と、受信器13によって生成される信号のための電流センサ23と、共振分析器(Resonanzanalysator)24とを含む。
【0073】
図2は、発生器12および受信器13を備えた圧電アクチュエータ4の好ましい実施形態の概略図を示す。アクチュエータ4の複数の層11は、導電性の金属化表面(metallisierte Flaechen)と、それら表面の間に位置する分極した圧電材料によって形成される。複数の層11の電気分極の考えられる1つの変形例では、隣接する層の分極ベクトルが互いに反対方向に向けられている。電気分極のベクトルは、図2および対応する他の図において矢印Pで示される。複数の層11は、電気的に並列であり、機械的に直列に接続される。
【0074】
図3a)は、可変周波数を有する測定信号発生器の電圧UMGを示し、図3b)は、層構造の層間剥離を伴う積層アクチュエータ4のFEMモデルを示す。図3c)は、無傷のアクチュエータの電気インピーダンスの例示的な曲線を周波数fの関数として示す。ここでは、アクチュエータ4の3つの振動モード、すなわち、第1、第3、および第5縦モードの共振が見られる。図3d)は、層間剥離を伴うアクチュエータ4の電気インピーダンスの例示的な曲線を周波数fの関数として示す。ここでは、層間剥離により発生した追加の共振が見られる。
【0075】
図4a)は、層構造の層間剥離を有する、図1に係るアクチュエータ4を備えた位置決めユニット2のFEMモデルを示す。図4b)は、fの関数として、無傷のアクチュエータ4と亀裂のあるアクチュエータ4とを備えた位置決めユニット2の電気インピーダンスの大きさの例示的な曲線を周波数の関数として示す。アクチュエータ4の層間剥離により、インピーダンスの大きさの曲線は大幅に異なる。アクチュエータが無傷の時に存在した共振は消失し、層間剥離による新たな共振が追加されている。
【0076】
図5a)は、ホワイトノイズによって励起された位置決めユニットの振幅スペクトルを示し、図5b)は、フーリエ変換され、周波数の関数として記録された、アクチュエータ4および受信器13をそれぞれ流れる電流に対応する。
【0077】
図6は、無傷のアクチュエータと層間剥離したアクチュエータを備えた位置決めユニット2の例示的な電流減衰曲線を示す。振幅減衰関数Ai2を有する損傷したアクチュエータを備えた位置決めユニットの減衰曲線は、変化した共振周波数と減衰定数λとにより、無傷のアクチュエータを備えたAi1よりも速く減衰する。層間剥離により、振幅減衰関数Ai2の振動周期T2は、減少している。
【0078】
図7は、振幅UArの正弦波測定信号によってその複数の共振のうちの1つで励起される、図1に係る位置決めユニット2の電流共振曲線を示す。受信器13を流れる電流IArが測定される。欠陥分析装置によってR=U/IArが求められ、以前測定された値と比較される。規定の逸脱が生じると、警告が出力される。
【0079】
図8は、発生器12によって放出された超音波パルス、および位置決めユニット2によって反射され受信器13によって検出可能な超音波パルスの異なる形状を示す。図8a)によれば、超音波パルスは、指数関数的増加と指数関数的減衰とを有することができ、図8b)によれば、超音波パルスは、指数関数的減衰のみを有することができ、または図8c)によれば、超音波パルスは、異なる増加関数と減衰関数とを有することもできる。超音波パルスは、それらの振幅A、周波数f、持続時間τ、増加および減衰関数fAn、fAp、および実行時間tによって特徴付けられる。
【0080】
図9は、位置決め装置または位置決めユニットの通常動作と共振分析モードとを同時に実行する可能な回路実装の原理構造を示す。図9a)によれば、電力出力段15は、インダクタンスLを介してアクチュエータ4に接続される。電流または電圧増幅器17は、キャパシタンスCを介してアクチュエータ4または発生器12を励起する。他方、キャパシタンスCは、電力出力段15を増幅器17から直流的に絶縁する。他方、インダクタンスLは、増幅器17を電力出力段15から交流的に絶縁する。図9b)によれば、電力出力段15は、変圧器Tの二次巻線を介してアクチュエータ4に接続される。電流または電圧増幅器17は、変圧器Tの一次巻線を介して発生器12を励起する。変圧器Tは、電力出力段15を増幅器17から直流的に絶縁する。
【0081】
図10は、図1に係る位置決めユニット2を備えた位置決め装置1を示す。ここでは、制御調整コントローラによって積層アクチュエータを駆動するために使用されるのと同じ電力出力段15が、欠陥分析装置によって測定信号発生器22の出力電圧または電流増幅器として使用される。この場合、電力出力段15は、アクチュエータまたは発生器12によって超音波を生成するための複数の要件を満たすのに十分な帯域幅を有する。これにより、別個の増幅器を設置するコストとスペースが節約される。
【0082】
図10はさらに、測定信号発生器22および共振分析器24が制御調整コントローラ14と同じ集積回路30に収容されている位置決め装置1の一実施形態を示す。
図11は、電流または電圧の形で受信器13から来る電気信号の第1の処理のための可能性のある回路の原理構造を示す。図11a)によれば、受信器13から来る電流Iは、抵抗器を用いて電圧Uで表わすことができる。図11b)の回路を用いて、受信器13から来る電流Iは、トランジスタによって電圧U’に変換される。図11c)では、受信器13から来る電流Iは、オプトカプラを用いて電圧U’にマッピングされる。図11d)に示される回路配置では、受信器13から来る電流Iまたは電圧Uは、変圧器を用いて電圧U’に変換される。図11e)に示される回路配置は、演算増幅器を用いて、受信器13から来る電流Iまたは電圧Uを電圧Uに変換する。
【0083】
図1図7、および図10は、位置決めユニット2の概略図を示し、ここでは、発生器12および受信器13も形成する単一の積層圧電アクチュエータ4が複数の固体ジョイント9の間に配置されている。
【0084】
図12は、いくつかの、つまり合計4層の積層圧電アクチュエータ4を備えた位置決めユニット2の概略図を示し、各アクチュエータは、複数の固体ジョイント9内または複数の固体ジョイント9の間に配置されている。それぞれのアクチュエータ4の複数の端部は、複数の保持要素21に接している。アクチュエータ4の駆動要素5から位置決めされる要素6への運動の伝達は、摩擦接触を介して行われ、駆動要素5は、位置決めされる要素6の摩擦レール26に摩擦接触することになるか、または摩擦接触する。位置決めされる要素6は、ここでは、直線状に取り付けられ、ガイド装置20を介して案内される。位置センサ28は、位置決めされる要素6の位置を検出するために使用される。
【0085】
図13は、積層設計のアクチュエータ4を示し、一部の層11のみが発生器12および受信器13の実現のために使用される。発生器12を実現するために、受信器13を実現するために使用される層の数とは異なる複数の層を使用することが考えられる。整流子31の上方位置では、アクチュエータの複数の層が電力出力段15に接続される。アクチュエータは作動または駆動モードにある。下方位置に切り替えることにより、発生器の機能または受信器の機能を目的としたアクチュエータの複数の層は、電力出力段に接続され、それぞれ発生器12または受信器13を形成する。アクチュエータの電流は、電流センサ23によって電圧Uに変換され、共振分析器24によってさらに処理される。
【0086】
図14は、自身がアクチュエータとして作用する、つまり電圧が印加されると変形するのではなく、アクチュエータに接続される一部としての発生器12または受信器13の例示的な実現を示す。超音波の発生器12および受信器13の複数の層は、互いに逆向きの分極を有する。発生器12および受信器13は、超音波が境界層によって実質的に反射または減衰されないように、低い音響抵抗を有する音響接続によってアクチュエータの残りの部分と接続される。このような接続は、例えば、アクチュエータを発生器または受信器に焼結することにより実現することができる。同様に、容易に溶けるガラスまたは同様の硬い材料によって炉内の複数の構成要素を接続することができる。
【0087】
図1を参照して、本発明に係る位置決め装置1または本発明に係る方法の動作モードを説明する。第1のステップで、基準測定(Etalonmessung)が実行される。この目的のために、無傷の位置決めユニット2の初期起動中、その共振画像が欠陥分析装置16によって記録される。この工程では、圧電アクチュエータ4は、音響超音波の発生器12としての機能において、電気測定信号を用いて測定信号発生器22によって作用される。測定信号は、周波数fの電圧を表す。測定信号電圧は、電流‐電圧増幅器17によって増幅される。測定信号電圧は、電流‐電圧増幅器17によって増幅され、整流子31を介して発生器12に送られる。これにより、発生器12が励起され、位置決めユニットに放射される超音波を発生させる。超音波の伝播によって、位置決めユニットの複数の構成要素およびアクチュエータ自体に共振振動が励起される。これらの共振振動は次に、音響超音波を発生させ、これは反射超音波と共に受信器13に到達し、電流変化の形で受信器13によって検出される。
【0088】
受信器13からの電流Iは、欠陥分析装置の電流センサ23に到達し、それによって電圧Uに変換され、欠陥分析装置16に送られる。欠陥分析装置では、電流Iまたはその像(イメージ)、電圧U、測定信号発生器22から来る電圧UMS、および電流Iと電圧UMSとの間の位相角値φが記録、保存され、それらから位置決めユニットの共振画像(共振イメージ)が作成される。
【0089】
その後、位置決めユニットは、意図した複数の位置決めタスクを実行するために動作し始める。ここで、軌道および信号発生器19は、電力出力段15によって増幅されるか整流子31を介して伝導される制御信号を用いてアクチュエータ4を制御する。アクチュエータは、駆動要素5およびそれに結合された位置決めされる要素を位置決め移動させる。位置決めは、位置センサ28を用いてコントローラ18によって制御することができる。
【0090】
一定の動作時間の後、位置決めユニットの状態または欠陥診断が行われる。この目的のために、本発明に係る方法の第1のステップに従って、測定が行われる。測定信号発生器22によって、電気測定信号が発生器12に印加される。その結果、発生器12が励起されて、位置決めユニットに放射される超音波を発生させる。超音波の伝播の結果、共振振動が位置決めユニットの複数の構成要素およびアクチュエータ自体において励起される。これらの共振振動は次に、反射超音波と共に受信器13に到達する音響超音波を発生させ、電流変化の形で受信器によって検出される。
【0091】
受信器13からの電流Iは、欠陥分析装置の電流センサ23に到達し、それによって電圧Uに変換され、欠陥分析装置24に送られる。欠陥分析装置では、電流Iまたはその画像、電圧U、測定信号発生器22から来る電圧UMS、および電流Iと電圧UMSとの間の位相角値φが記録、保存され、それらから位置決めユニットの共振画像が作成される。
【0092】
次のプロセスステップで、共振分析器24は、位置決めユニットの現在作成された共振画像を無傷の位置決めユニットの共振画像と比較する。新しい機械的共振の存在、以前に存在していた機械的共振の変化または不在が判断される。この目的のために、適切なアルゴリズム、例えばニューラルネットワークのアルゴリズムが共振分析器に実装される。現在の測定において基準測定から規定の逸脱が検出された場合、これは位置決めユニットの差し迫った故障を示し、欠陥分析装置によって警告が発せられる。
【0093】
位置決めユニットの共振画像を作成するために、様々な有利な方法を使用することができる。例えば、位置決めユニット2には、測定信号発生器22から、可変周波数fの電圧を表す電気測定信号を供給することができる(図3および図4参照)。周波数fは、ここでは初期値から最終値まで変化する。共振分析器24では、受信器13を流れる電流Iまたはその像、電圧U、測定信号発生器22から来る電圧UMS、および電流Iと電圧UMSとの間の位相角値φが周波数fの関数として記録される。位置決めユニットの共振を検出する目的で、保存された一連の測定値から、周波数に関するインピーダンスの関数|Z|=UA/IAが形成される。インピーダンスの周波数依存の推移から、共振分析器は位置決めユニットの共振画像を作成し、欠陥の予測または診断を生成する。
【0094】
さらに、位置決めユニット2には、測定信号発生器22から、特定の周波数fの電圧を表す電気測定信号を供給することができる。個々の共振のパラメータに基づいて共振マッピングが実行される(図6および図7参照)。
【0095】
別の有利な方法では、測定信号発生器22は、持続期間が短く、少なくとも特定の周波数fの電気測定信号を位置決めユニット2に印加する。位置決めユニットの共振画像は、反射超音波のパラメータに基づいて作成される(図8参照)。その際、共振分析器は1つまたは複数の反射パルスの持続期間、振幅、伝搬時間、または形状を記録して分析する。
【0096】
位置決めユニットの共振画像を手動で作成し、視覚的に分析する際、データは、欠陥分析装置から表示画面を有するコンピュータ22に出力され、オペレータによって分析される。
【符号の説明】
【0097】
1 位置決め装置
2 位置決めユニット
3 コントローラ
4 アクチュエータ
5 駆動要素
6 位置決めされる要素
9 固体ジョイント
11 (アクチュエータ4の)圧電層
12 音響超音波の発生器
13 音響超音波の受信器
14 制御調整コントローラ
15 電力出力段
16 欠陥分析装置
17 電流または電圧増幅器
18 位置、速度、または加速度のコントローラ
19 軌道および信号発生器
20 ガイド装置
21 (アクチュエータ4の)保持要素
22 測定信号発生器
23 電流センサ
24 共振分析器
25 摩擦レール
26 位置センサ
29 コンピュータ
30 集積回路(例えば、FPGA、DSP)
31 電子整流子
32 超音波の発生器および受信器の層
33 アクチュエータと超音波の発生器および受信器との接続層
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図6
図7
図8
図9a)】
図9b)】
図10
図11a)】
図11b)】
図11c)】
図11d)】
図11e)】
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電アクチュエータ(4)を備えた位置決めユニット(2)と、前記アクチュエータ(4)によって移動可能で、位置決めされる要素(6)に結合するために設けられた駆動要素(5)と、コントローラ(3)とを備えた位置決め装置(1)であって、
前記位置決め装置(1)は、前記位置決めユニット(2)の欠陥を検出するための欠陥分析装置(16)を備え、前記位置決めユニット(2)が単一のアクチュエータ(4)を備える場合、前記アクチュエータ(4)は、音響超音波の発生器(12)および受信器(13)を備え、前記位置決めユニット(2)が複数のアクチュエータ(4)を備える場合、前記複数のアクチュエータ(4)のうち少なくとも1つは、少なくとも1つの超音波発生器(12)を備え、前記複数のアクチュエータ(4)のうち少なくとも別の1つは、少なくとも1つの超音波受信器(13)を備え、前記欠陥分析装置(16)は、前記発生器(12)または発生器(12)を励起するための電圧を生成するための測定信号発生器(22)と、前記受信器(13)または受信器(13)によって生成された電気信号を分析するための共振分析器(24)とを備えることを特徴とする位置決め装置(1)。
【請求項2】
前記測定信号発生器(22)は、前記電気正弦波電圧の周波数を周期的に初期値から最終値まで変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置(1)。
【請求項3】
前記欠陥分析装置(16)は、広帯域リニアまたはクロック出力の電圧または電流増幅器(17)を備えることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項4】
前記コントローラ(3)は、前記位置決めユニット(2)を駆動するための出力段(15)を備え、同じ前記出力段(15)は、前記測定信号発生器(20)に電気を供給する役割も果たすことを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項5】
前記欠陥分析装置(16)は、ホワイトノイズ発生器を備えることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項6】
前記コントローラ(3)は、位置コントローラ(18)と、軌道および信号発生器(19)とを備え、
前記位置コントローラ(18)または前記軌道および信号発生器(19)は、集積回路によって実現され、前記測定信号発生器(22)および前記共振分析器(24)は、同じ前記集積回路内のプログラムモジュールとして実現されることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項7】
前記共振分析器(24)は、共振画像を視覚的に制御するための表示画面へのデータインターフェースを備えることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項8】
前記欠陥分析装置(16)は、受信器(13)によって生成された電気信号を検出するための電流センサ(23)を備え、
電流を検出するために、抵抗器、トランジスタ、変換器、オプトカプラ、または演算増幅器が使用されることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項9】
アクチュエータ(4)は、積層圧電アクチュエータとして構成されていることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項10】
アクチュエータ(4)は、複数の固体ジョイント(9)の間に配置され、前記駆動要素(5)への前記アクチュエータ(4)の撓みの伝達は、摩擦なしで前記複数の固体ジョイント(9)の弾性変形によって実現されることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項11】
発生器(12)または受信器(13)は、アクチュエータ(4)の一部を形成し、作動機能を持たないことを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項12】
発生器(12)または受信器(13)を形成するアクチュエータ(4)の一部は、低い音響抵抗を有する音響接続によって同じ前記アクチュエータ(4)の残りの部分に接続されていることを特徴とする請求項11に記載の位置決め装置(1)。
【請求項13】
発生器(12)は1つのアクチュエータ(4)において形成され、受信器(13)は別の離間したアクチュエータにおいて形成されることを特徴とする請求項に記載の位置決め装置(1)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の位置決め装置(1)を動作させる方法であって、
発生器(12)には、交流電圧の形で測定信号発生器(22)の電気測定信号が周期的に供給され、前記位置決めユニット(2)の機械的共振は、受信器(13)で周期的に検出され、前記位置決めユニット(2)の欠陥を予測または検出するために、前記共振分析器(24)を用いて新しい共振の出現または以前存在した共振の消失または変化が検出および分析されることを特徴とする方法。
【請求項15】
前記測定信号の周波数を初期値から最終値まで変化させ、それにより受信器(13)を流れる電流値および電流と電圧との間の位相角値が前記周波数依存する形で測定され且つ前記電圧と共に記録され、共振を検出するための一連の測定値から、前記周波数に依存するインピーダンス|Z|の関数が形成され、前記インピーダンス量|Z|から、新しい機械的共振の存在または以前検出された機械的共振の変化または不在が判定されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
相角と共に、前記周波数に依存する前記インピーダンス量|Z|の関数がナイキスト線図で表され、そこから前記新しい機械的共振の存在または前記以前検出した機械的共振の変化または不在を判定することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記測定信号の初期周波数値は、アクチュエータ(4)の検出可能な最低共振周波数値に等しく、前記測定信号の最終周波数値は、アクチュエータ(4)の測定可能な最高共振周波数値に等しく、前記最低共振周波数値および前記最高共振周波数値の両方は、異なるタイプの超音波に属することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記測定信号の初期周波数値は、前記アクチュエータ(4)の長さによって決定されるアクチュエータ(4)の最低共振周波数値に等しく、前記測定信号の最終周波数値は、前記アクチュエータの長さの半分によって決定される共振周波数値の2倍に等しいことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記測定信号の周波数は、前記初期値から前記最終値まで対数的に変化することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記測定信号はホワイトノイズであり、受信器(13)を流れる電流が測定および記録され、新たに出現する共振または消失した共振を検出するために、測定結果はフーリエ変換、離散フーリエ変換、または高速フーリエ変換されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記測定信号の周波数値は、アクチュエータ(4)の測定可能な共振周波数値に等しく、前記共振周波数は、様々なタイプの超音波に属し、前記共振周波数で発生器(12)を短時間励起した後、前記位置決めユニット(2)の減衰が受信器(13)を用いて記録され、その後、共振の変化を検出するために、記録された前記減衰の曲線が以前に記録された減衰曲線と比較されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記測定信号の周波数値は、前記位置決めユニット(2)の測定可能な共振周波数値に等しく、発生器(12)を短時間励起した後、共振の変化を検出するために、前記位置決めユニット(2)の減衰挙動が記録され、以前に記録された減衰挙動と比較されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記測定信号の周波数値は、前記位置決めユニット(2)の少なくとも1つの測定可能な共振周波数値に等しく、発生器(12)の励起中に、少なくとも1つの共振変化を検出するために、前記位置決めユニット(2)の内部抵抗R=U/IArが決定され、以前に記録された前記位置決めユニット(2)の前記内部抵抗の値と比較されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記測定信号の前記周波数値は、前記位置決めユニット(2)の測定可能な共振周波数値に実質的に等しく、発生器(12)の短時間の励起中または励起後、反射パルスが受信器(13)によって検出され、前記反射パルスの複数のパラメータが共振変化を検出するために記録され、以前に記録された複数のパラメータと比較されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記共振の検出および前記欠陥の分析は、前記位置決めユニット(2)の通常動作モードで行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項26】
記録された共振画像の分析は、オペレータによって視覚的に行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【国際調査報告】