(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測装置および予測方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/88 20060101AFI20240426BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240426BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B60T8/88
B60T13/74 D
B60T8/171 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571215
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022062948
(87)【国際公開番号】W WO2022243170
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021205091.3
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ゼウツィウス,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB01
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH66
3D048RR01
3D048RR02
3D048RR13
3D048RR16
3D048RR29
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA13A
3D246HA38A
3D246HA44A
3D246HA81A
3D246HA86A
3D246HA93A
3D246HB02A
3D246HB07A
3D246HB21A
3D246LA15Z
3D246MA01
(57)【要約】
本発明は、車両の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中にそれぞれ検知された値を有する、かつ一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、ならびに同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量(Fおよびa)をそれぞれ含む値群を検知すること(S1)、検知された値群を、座標系であって、座標系の各々がブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、もしくはブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、ブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、もしくはブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または車両反応量(Fおよびa)、もしくは車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する少なくとも2つの軸を有する、座標系にプロットすること(S3)、ならびに座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定すること(S4)による、車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)のための予測装置および予測方法に関する。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(32)のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)のための予測装置(30)であって、
電子機器(36)を備え、前記電子機器が、
-前記車両(32)の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中にそれぞれ検知された値を有する、かつ一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、ならびに同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)をそれぞれ含む、前記電子機器(36)に提供される値群(34)であって、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)が、前記車両(32)の運転者によるブレーキペダルの操作、および/または前記車両(32)の制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定をそれぞれ表し、前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)が、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)に対する前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)の反応、または前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)における状態をそれぞれ表し、前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)が、前記ブレーキシステムにより制動される前記車両(32)の物理量を表す、値群を、座標系であって、前記座標系の各々が、前記ブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、もしくは前記ブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、前記ブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、もしくは前記ブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または前記車両反応量(F、α、rおよびa)、もしくは前記車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する少なくとも2つの軸を有する、座標系にプロットするように、かつ
-前記座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定するように、
設計および/またはプログラミングされている、予測装置。
【請求項2】
前記電子機器(36)は、前記プロットされた値群を有する前記座標系を前記予測装置(30)の記憶機器に記憶するように設計および/またはプログラミングされており、前記電子機器(36)は、さらに、前記車両(32)の別の運転者起因の、および/または自律的な制動中に検知された値群(34)を、前記記憶機器に記憶された前記座標系と比較するように設計および/またはプログラミングされ、それにより、前記比較をもとにして、それぞれ前記車両(32)により現在実行される制動のブレーキ操作が、前記座標系の前記値群の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかを検知し、前記比較ブレーキ操作から逸脱する前記車両(32)により現在実行される制動の前記ブレーキ操作の検知された頻度を追加的に考慮して、少なくとも前記所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定する、請求項1に記載の予測装置(30)。
【請求項3】
前記予測装置(30)が前記車両(32)に組み付け可能である、請求項1または2に記載の予測装置(30)。
【請求項4】
前記予測装置(30)は、前記車両(32)のデータ送信機器(40)により送信された値群(34)を受信するように設計されている通信機器(38)を備える、請求項1または2に記載の予測装置(30)。
【請求項5】
車両(32)のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)のための予測方法であって、
-前記車両(32)の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中に検知された値をそれぞれ有する、かつ一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、ならびに同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)をそれぞれ含む値群(34)であって、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)が、前記車両の運転者によるブレーキペダルの操作、および/または前記車両の制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定をそれぞれ表し、前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)が、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)に対する前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)の反応、または前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)における状態をそれぞれ表し、前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)が、前記ブレーキシステムにより制動される前記車両(32)の物理量を表す、値群を検知するステップ(S1)と、
-前記検知された値群(34)を、座標系であって、前記座標系の各々が、前記ブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、もしくは前記ブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、前記ブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、もしくは前記ブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または前記車両反応量(F、α、rおよびa)、もしくは前記車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する少なくとも2つの軸を有する、座標系にプロットするステップ(S3)と、
-前記座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定するステップ(S4)と、
を包含する方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)として、前記ブレーキペダルに結合された入力ロッドのロッドストローク(x)、前記入力ロッドの調整速度(v
x)、前記制動もしくは運転制御自動装置により要求される前記ブレーキシステムのモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)のモータの目標モータ電流強度(I
0)、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの目標動作電圧、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの目標モータトルク、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの目標消費電力、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の少なくとも1つの調整可能なピストンの目標調整ストローク、および/または前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記ブレーキシステムに設置された少なくとも1つのポンプ(14)の目標ポンプレートが検知される(S1a)、請求項5に記載の予測方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)として、前記ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ(12)におけるマスタブレーキシリンダ圧(p
12)、前記ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(16)における少なくとも1つのブレーキ圧(p
16)、前記ブレーキシステムの前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータのモータ電流強度(I)、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの動作電圧、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータのモータトルク、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの消費電力、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の少なくとも1つの調整可能なピストンの調整ストローク、場合によって実行されるブレーキ圧コントロールもしくは場合によって実行されるビークルダイナミクスコントロールに関するコントローラ状態情報、少なくとも前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)における少なくとも1つの温度、前記ブレーキシステムに設置された前記少なくとも1つのポンプ(14)のポンプレート、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)に結合された前記ブレーキシステムの伝動装置の伝達効率、および/または前記ブレーキシステムの少なくとも1つのバルブの少なくとも1つの切換状態が検知される(S1b、S1c)、請求項5または6に記載の予測方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)として、前記ブレーキシステムにより前記車両(32)にもたらされるブレーキ力(F)、前記ブレーキシステムにより前記車両(32)にもたらされるブレーキトルク、前記車両の舵角(α)、前記車両(32)のヨーレート(r)、前記ブレーキシステムにより前記車両(32)にもたらされる車両減速度(a)、前記車両(32)の縦方向速度、前記車両(32)の横方向速度、前記車両(32)の横方向加速度、および/または前記車両(32)の車両電気システムの電気システム電圧が検知される(S1d)、請求項5から7までのいずれか1項に記載の予測方法。
【請求項9】
前記割り当てられた値群(34)の各時点に検知された前記各値群(34)の前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)ならびに同時点に検知された前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)に加えて、同時点に、前記車両(32)の現在周囲環境に関する少なくとも1つの周囲環境パラメータ(μ)が検知され、前記各値群(34)に付加され(S1e)、前記値群(34)は少なくとも1つの別の座標系にプロットされ、前記別の座標系において前記周囲環境パラメータ(μ)または前記周囲環境パラメータのうちの少なくとも1つがそれぞれ別の座標系の軸により、または前記それぞれ別の座標系の2つの軸のうちの1つに形成される平面におけるセクタにより表示され、前記少なくとも1つの別の座標系を追加的に考慮して、少なくとも前記所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される、請求項5から8までのいずれか1項に記載の予測方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの周囲環境パラメータ(μ)として、道路摩擦(μ)、道路傾斜角度、ウインドシールドワイパステータスおよび/または外部温度が検知される(S1e)、請求項9に記載の予測方法。
【請求項11】
前記プロットされた値群(34)を有する座標系が記憶装置に記憶され、前記車両(32)の別の運転者起因の、および/または自律的な制動中に検知された値群(34)が前記記憶装置に記憶された座標系と比較され、前記比較をもとにして、それぞれ前記車両(32)により現在実行される制動のブレーキ操作が前記座標系の前記値群(34)の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかが検知され、前記比較ブレーキ操作から逸脱する前記車両(32)により現在実行される制動の前記ブレーキ操作の検知された頻度を追加的に考慮して、少なくとも前記所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される(S10~S16)、請求項5から10までのいずれか1項に記載の予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測装置に関する。本発明は、車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を監視する方法は従来技術から知られている。例えば特許文献1には、特に、自動車を停止状態に移すために形成された少なくとも1つのエネルギー消費機器に供給するエネルギー貯蔵器が監視される、自動走行機能を有する自動車を監視する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017218446号明細書
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測装置、請求項5の特徴を有する車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの監視だけでなく、早期診断の有利な可能性も提供する。特に、本発明により、ブレーキシステム全体に対して早期診断を行うことができる。したがって、本発明は、各ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのすでに生じた故障の認識だけでなく、ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの将来の機能能力および将来の動作挙動に関する予想も可能にする。以下にさらに詳しく説明するように、多数の様々なブレーキシステムコンポーネント、例えば各ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式ブレーキ倍力装置および/または各ブレーキシステムに一体化されたモータ駆動式プランジャ装置(特にIPB(integrated Power Brake)などの)について、それらの将来の機能能力を本発明により確実に予測することができる。本発明を利用することにより、各ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの将来の機能障害または将来の故障を早期に予測できるため、本発明は、有利にも各ブレーキシステムを搭載した車両の自律的な走行を安全にするためにも適している。
【0006】
予測装置の有利な実施形態において、電子機器は、プロットされた値群を有する座標系を予測装置の記憶装置に記憶するように設計および/またはプログラミングされており、電子機器は、さらに、車両の別の運転者起因の、および/または自律的な制動中に検知された値群を記憶装置に記憶された座標系と比較するように設計および/またはプログラミングされ、それにより、比較をもとにして、それぞれ車両により現在実行される制動のブレーキ操作が座標系の値群の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかを検知し、比較ブレーキ操作から逸脱する車両により現在実行される制動のブレーキ操作の検知された頻度を追加的に考慮して、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定する。本発明により全「カスケード」を検査することにより、各ブレーキシステムのどの1つのブレーキシステムコンポーネントまたはどの複数のブレーキシステムコンポーネントに欠陥または故障が発生するのかを確実に認識できる。さらに詳しく後述するように、ここに記載される予測装置の実施形態により実行される車両の少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測はさらに改良されている。特に、ここに記載される予測装置の実施形態により、考えられる最大走行可能距離(Fahr-Reichweite)を推定することができる。
【0007】
例えば、予測装置は車両に組み付け可能である。したがって、車両はそれ自身の予測装置を搭載している/することができる。
【0008】
代替的に、予測装置は、車両のデータ送信機器により送信された値群を受信するように設計されている通信機器を備えることができる。この場合、予測装置を車両に組み付ける必要はない。その理由で、ここに記載される予測装置の実施形態は、比較的大きい体積および/または比較的大きい重量で問題なく形成することができる。さらに、ここに記載される予測装置の実施形態は、複数の車両のデータ送信機器により送信された値群を複数の車両により受信することもでき、それにより車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントを監視および早期診断するために利用することができる。
【0009】
上記の利点は、車両のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための対応する予測方法を実行する場合にも保証されている。
【0010】
予測方法の有利な実施形態において、少なくとも1つのブレーキ要求設定量(Bremswunschvorgabegroesse)として、ブレーキペダルに結合された入力ロッドのロッドストローク、入力ロッドの調整速度、制動もしくは運転制御自動装置により要求されるブレーキシステムのモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標モータ電流強度、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標動作電圧、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標モータトルク、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標消費電力、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置の少なくとも1つの調整可能なピストンの目標調整ストローク、および/または制動もしくは走行制御自動装置により要求されるブレーキシステムに設置された少なくとも1つのポンプの目標ポンプレートが検知される。ここに列挙される少なくとも1つのブレーキ要求設定量の例は、従来どおり各車両タイプにすでに設置されているセンサ系により測定することができ、または制動もしくは走行制御自動装置の少なくとも1つの信号から確実に読み取ることができる。
【0011】
代替的または補足的に、少なくとも1つのブレーキシステム反応量として、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダにおけるマスタブレーキシリンダ圧、ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダにおける少なくとも1つのブレーキ圧、ブレーキシステムのモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータのモータ電流強度、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの動作電圧、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータのモータトルク、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの消費電力、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置の少なくとも1つの調整可能なピストンの調整ストローク、場合によって実行されるブレーキ圧コントロールもしくは場合によって実行されるビークルダイナミクスコントロールに関するコントローラ状態情報、少なくともモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置における少なくとも1つの温度、ブレーキシステムに設置された少なくとも1つのポンプのポンプレート、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置に結合されたブレーキシステムの伝動装置の伝達効率、および/またはブレーキシステムの少なくとも1つのバルブの少なくとも1つの切換状態を検知することができる。したがって、ここに記載される予測方法の実施形態は、従来どおりすでに車両に組み込まれたセンサ系を拡張することなく実行することができる。
【0012】
少なくとも1つの車両反応量として、ブレーキシステムにより車両にもたらされるブレーキ力、ブレーキシステムにより車両にもたらされるブレーキトルク、車両の舵角、車両のヨーレート、ブレーキシステムにより車両にもたらされる車両減速度、車両の縦方向速度、車両の横方向速度、車両の横方向加速度、および/または車両の車両電気システムの電気システム電圧を検知することもできる。ここに列挙される少なくとも1つの車両反応量の例も、通常、従来どおりすでに車両に組み込まれたセンサ系を拡張することなく決定することができる。
【0013】
予測方法の有利な発展形態では、割り当てられた値群の各時点に検知された各値群の少なくとも1つのブレーキ要求設定量、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量および同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量に加えて、同時点に、車両の現在周囲環境に関する少なくとも1つの周囲環境パラメータが検知され、各値群に付加され、値群は少なくとも1つの別の座標系にプロットされ、別の座標系において、周囲環境パラメータまたは周囲環境パラメータのうちの少なくとも1つがそれぞれ別の座標系の軸により、またはそれぞれ別の座標系の2つの軸のうちの1つに形成される平面におけるセクタにより表示され、少なくとも1つの別の座標系を追加的に考慮して、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される。したがって、ここに記載される予測方法の実施形態によりもたらされる予測に周囲環境条件も合わせて考慮することができる。
【0014】
例えば、少なくとも1つの周囲環境パラメータとして、道路摩擦、道路傾斜角度、ウインドシールドワイパステータスおよび/または外部温度を検知することができる。車両の制動挙動は、そのような周囲環境条件により妨げられることが多いため、ここに列挙される周囲環境パラメータのうちの少なくとも1つを合わせて考慮することにより予測を向上させることができる。
【0015】
さらに、プロットされた値群を有する座標系を記憶装置に記憶することができ、車両の別の運転者起因の、および/または自律的な制動中に検知された値群が記憶装置に記憶された座標系と比較され、比較をもとにして、それぞれ車両により現在実行される制動のブレーキ操作が座標系の値群の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかが検知され、比較ブレーキ操作から逸脱する車両により現在実行される制動のブレーキ操作の検知された頻度を追加的に考慮して、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される。ここに記載される予測方法の実施形態の利点について以下にさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】予測方法の第1の実施形態を説明するためのフローチャートの図である。
【
図1b】予測方法の第1の実施形態を説明するための座標系の図である。
【
図1c】予測方法の第1の実施形態を説明するための座標系の図である。
【
図1d】予測方法の第1の実施形態を説明するための座標系の図である。
【
図1e】予測方法の第1の実施形態を説明するための座標系の図である。
【
図1f】予測方法の第1の実施形態を説明するための座標系の図である。
【
図1g】予測方法の第1の実施形態を説明するための座標系の図である。
【
図2】予測方法の第2の実施形態を説明するためのフローチャートの図である。
【
図3】予測方法の第3の実施形態を説明するためのフローチャートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図をもとにして本発明の他の特徴および利点を説明する。
【0018】
図1a~
図1gは、予測方法の第1の実施形態を説明するためのフローチャートおよび座標系を示す。
【0019】
以下に記載される予測方法は、多数の様々なタイプのブレーキシステムに対して実行可能である。以下に記載される予測方法は、ブレーキ・バイ・ワイヤブレーキシステムに対しても実行することができる。予測方法の実行可能性が各ブレーキシステムを搭載した車両/自動車の特定の車両タイプ/自動車タイプに限定されないことに明示的に言及しておく。
【0020】
予測方法の方法ステップS1において、車両の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中に値の値群が検知される。方法ステップS1において(完全に)検知された値群の各々は、一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、vxおよびI0、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16、ならびに同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量F、α、rおよびaをそれぞれ含む。
【0021】
図1a~
図1gの実施形態では、方法ステップS1が部分ステップS1a~S1eに分割されている。部分ステップS1aにおいて、少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、v
xおよびI
0は、割り当てられた値群の各時点に決定される。少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、v
xおよびI
0は、それぞれ、車両の運転者によるブレーキペダルの操作および/または車両の制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定(Bremswunschvorgabe)を表す量と理解することができる。制動または走行制御自動装置は、例えば、特に車間距離制御テンポマート(ACCシステム、アダプティブクルーズコントロールシステム)、非常ブレーキシステムおよび/または車両の自律的な走行のために使用される自動装置などの運転者支援システムを含むことができる。制動または走行制御自動装置のブレーキ要求設定は、車両の自律的な制動または自律的な走行を制御するために用いられる少なくとも1つの信号であり得る。
【0022】
例示的に、部分ステップS1aにおいて、ブレーキペダルに結合された入力ロッドのロッドストロークxおよび入力ロッドの調整速度vxが、運転者によるブレーキペダルの操作を表す少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、vxおよびI0として検知される。さらに、制動または走行制御自動装置により要求されるブレーキシステムのモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置として用いられる、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ12に前置された電気機械式ブレーキ倍力装置10のモータの目標モータ電流強度I0が検知される。電気機械式ブレーキ倍力装置10のモータの目標モータ電流強度I0は、例えば制動または走行制御自動装置のブレーキ要求設定から読み取ることができる。
【0023】
この場合も、目標モータ電流強度I0は、単に制動または走行制御自動装置のブレーキ要求設定を表すブレーキ要求設定量x、vxおよびI0の例と解釈されるべきであることに言及しておく。目標モータ電流強度I0の代わり、または補足として、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標動作電圧、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標モータトルク、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの目標消費電力、制動もしくは走行制御自動装置により要求されるモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置の少なくとも1つの調整可能なピストンの目標調整ストローク、および/または制動もしくは走行制御自動装置により要求されるブレーキシステムに設置された少なくとも1つのポンプ14の目標ポンプレートを少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、vxおよびI0として検知することもできる。電気機械式ブレーキ倍力装置10をモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置として使用することも、単に例示的と解釈されるべきである。代替的または補足的に、一体化されたプランジャ装置(特にIPB(integrated Power Brake)などの)もモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置として(一緒に)使用することができる。
【0024】
部分ステップS1bおよびS1cにおいて、割り当てられた値群の各時点に、少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、vxおよびI0、または少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントにおける状態に対するブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの反応をそれぞれ表す少なくとも1つのブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16が検知される。例示的に、部分ステップS1bにおいて、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ12におけるマスタブレーキシリンダ圧p12、およびモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置として用いられる電気機械式ブレーキ倍力装置10のモータのモータ電流強度Iが少なくとも1つのブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16として決定される。モータ電流強度Iの代わり、または補足として、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの動作電圧、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータのモータトルク、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの消費電力(運転者起因の制動中も)、およびモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置の少なくとも1つの調整可能なピストンの調整ストロークを少なくとも1つのブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16として検知することもできる。
【0025】
部分ステップS1cにおいて、さらに、ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ16における少なくとも1つのブレーキ圧p16、および例えばアンチロックブレーキシステムコントロールなどの場合によって実行されるブレーキ圧コントロールまたは場合によって実行されるビークルダイナミクスコントロールに関するコントローラ状態情報が決定される。選択的に、少なくともモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置における少なくとも1つの温度、ブレーキシステムに設置された少なくとも1つのポンプ14のポンプレート、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置に結合されたブレーキシステムの伝動装置の伝達効率、ならびに/またはブレーキシステムの少なくとも1つのバルブの少なくとも1つの切換状態を少なくとも1つのブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16としてさらに検知することができる。
【0026】
部分ステップS1dも、割り当てられた値群の各時点に実行される。部分ステップS1dは、ブレーキシステムにより制動される車両の物理量を表す少なくとも1つの車両反応量F、α、rおよびaを検知するために用いられる。単に例示的に、
図1a~
図1gの実施形態では、ブレーキシステムにより車両にもたらされるブレーキ力F、車両の舵角α、車両のヨーレートr、ブレーキシステムにより車両にもたらされる車両減速度aが少なくとも1つの車両反応量F、α、rおよびaとして検知される。代替的または補足的に、ブレーキシステムにより車両にもたらされるブレーキトルク、車両の縦方向速度、車両の横方向速度、車両の横方向加速度、および/または車両の車両電気システムの電気システム電圧を少なくとも1つの車両反応量F、α、rおよびaとして決定することもできる。
【0027】
したがって、ここに記載される部分ステップS1a~S1dは、運転者によるブレーキペダルの操作および/または制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定が、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの反応として、ブレーキシステムにより制動される車両に及ぼす作用を「カスケード状に」監視すること/さらに追跡することを可能にする。その場合、方法ステップS1は、モニタリング、電気の観察、および熱の観察から個々の監視結果を集めることに集中する。したがって、方法ステップS1は、運転者ブレーキ要求および/または制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定と、ブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのコンポーネント挙動と、車両の走行状態との間の関連を明らかにする。以下の記載をもとにして理解できるように、このようにしてブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測に利用することができる統合ブレーキモデルまたはブレーキ特性マップを作成することができる。
【0028】
ここに記載される実施形態では、方法ステップS1は、任意的な発展形態として部分ステップS1eをさらに含む。部分ステップS1eは、各値群の少なくとも1つのブレーキ要求設定量x、vxおよびI0、少なくとも1つのブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16、ならびに少なくとも1つの車両反応量F、α、rおよびaが検知される同時点に実行される。部分ステップS1eにおいて、車両の現在周囲環境に関する少なくとも1つの周囲環境パラメータμが、割り当てられた値群の各時点に検知され、各値群に付加される。例示的に、ここに記載される実施形態では、部分ステップS1eにおいて、少なくとも1つの周囲環境パラメータμとして道路摩擦μが検知される。代替的または補足的に、道路傾斜角度、ウインドシールドワイパステータスおよび/または外部温度を少なくとも1つの周囲環境パラメータμとして(一緒に)決定することもできる。
【0029】
ここで、共通の値群の値は、それぞれ同時点に検知されることに明示的に言及しておく。したがって、部分ステップS1a~S1d、またはS1a~S1eは、各値群について同時に実行され、多数の値群について相応の回数繰り返される。
【0030】
任意的な方法ステップS2において、方法ステップS1の後に(しかし方法ステップS3を実行する前に)、外部温度が所定の通常温度の範囲外にある場合、運転者により調整されるブレーキペダルの調整速度vxが所定の通常速度の範囲外にある場合、車両電気システムの電圧が所定の通常電圧の範囲外にある場合、データ提供機器の故障中、および/またはフェード現象中に検知される値群をフィルタリング除去することができる。この場合、以下に記載される方法ステップS3は、方法ステップS2においてフィルタリング除去された値群を一緒に使用せずに実行される。代替的に、「フィルタリング除去された」値群を「フィルタリング除去されない」値群から分離して以下に記載されるように評価することもできる。
【0031】
方法ステップS3において、検知された(およびフィルタリング除去されていない)値群が座標系にプロットされ、座標系の各々は、ブレーキ要求設定量x、vxおよびI0、もしくはブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、ブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16、もしくはブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または車両反応量F、α、rおよびa、もしくは車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する少なくとも2つの軸を有する。少なくとも1つの周囲環境パラメータμも方法ステップS1eとして一緒に検知されるならば、方法ステップS3において、値群を少なくとも1つの別の座標系にプロットすることもでき、別の座標系において周囲環境パラメータμまたは周囲環境パラメータのうちの少なくとも1つが各座標系の軸により、または各座標系の2つの軸のうちの1つに形成される平面におけるセクタにより表示される。少なくとも1つの別の座標系の少なくとも1つの別の軸は、ブレーキ要求設定量x、vxおよびI0、もしくはブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、ブレーキシステム反応量p12、Iおよびp16、もしくはブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または車両反応量F、α、rおよびa、もしくは車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する。
【0032】
図1b~
図1gは、方法ステップS3において作成された座標系の例を示す。
【0033】
図1bの座標系では、第1の軸がブレーキペダルの調整速度v
xを表し、第2の軸がマスタブレーキシリンダ圧p
12を表し、第3の軸が、調整速度v
xおよびマスタブレーキシリンダ圧p
12のそれぞれの値について検知された値群の頻度Nを表す。
図1bの座標系にプロットされた値群により、車両により運転者起因の、および/または自律的な制動中に実行されたブレーキ操作、例えば矢印18で示される「急速な制動」、矢印20で示される「ブレーキペダル操作のゆっくりとした引き戻し(langsames Zuruecknehmen)」、矢印22で示される「ゆっくりとした制動とブレーキペダル操作のゆっくりとした引き戻し」、マーキング24で示される高摩擦μでのABSコントロールプロセスが得られる。
【0034】
図1cの座標系でも、第1の軸がブレーキペダルの調整速度v
xを表示し、第2の軸がマスタブレーキシリンダ圧p
12を表示する。しかし、
図1cの座標系の第3の軸により、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置として用いられる電気機械式ブレーキ倍力装置10のモータのモータ電流強度Iが表される。
図1cの座標系の矢印26も、ブレーキ操作を表すが、ここでは詳しく説明されない。
【0035】
図1dの座標系により、ブレーキ操作がその間に実行されたコントロールを考慮して表され、第1の軸がブレーキペダルのロッドストロークxを表し、第2の軸がマスタブレーキシリンダ圧p
12を表し、第3の軸が頻度Nを表す。
図1dの座標系に認識できるように、第1の軸と第2の軸により形成される座標系の面積が複数のセクタC1~C3に分割され、これらはそれぞれ、低摩擦μでのABSコントロールプロセス(セクタC1)、中摩擦μでのABSコントロールプロセス(セクタC2)、および高摩擦μでのABSコントロールプロセス(セクタC3)を表示する。
【0036】
図1eの座標系において、第1の軸が車両減速度aを表し、第2の軸が舵角αを表し、第3の軸がヨーレートrを表す。
【0037】
図1fの座標系でも、第1の軸がブレーキペダルの調整速度v
xを表し、第2の軸がマスタブレーキシリンダ圧p
12を表し、第3の軸が、調整速度v
xおよびマスタブレーキシリンダ圧p
12のそれぞれの値について検知された値群の頻度Nを表す。
図1fの座標系にマーキングされたブレーキ操作は、矢印18で示される「急速な制動」、矢印28で示される「平均的な速度での制動(mittlerer Geschwindigkeit)」、矢印20で示される「ブレーキペダル操作のゆっくりとした引き戻し」、矢印22で示される「ゆっくりとした制動およびブレーキペダル操作のゆっくりとした引き戻し」、およびマーキング24で示される高摩擦μでのABSコントロールプロセスである。
【0038】
さらに、
図1gの座標系において、ブレーキペダルのロッドストロークxが第1の軸により表示され、マスタブレーキシリンダ圧p
12が第2の軸により表示され、頻度Nが第3の軸により表示されている。第1の軸と第2の軸により形成される座標系の面積は、すでに上述したセクタC1~C3に分割されている。
【0039】
方法ステップS3は、さらに、上述の座標系に図示されていなくても、各走行状態について現在の、および累積した負荷および負荷プロファイルの検出を可能にする。
【0040】
ここに記載される予測方法の次の方法ステップS4において、座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される。したがって、方法ステップS4は、座標系をもとにして、システム複合体における(および場合によっては周囲環境の影響を受ける複合体における)少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの挙動が、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの損傷または少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの摩耗に原因があるのかどうかを早期に認識できることを利用する。ここに記載される予測方法の実行は、ブレーキシステムにおける損傷または摩耗の出現を認識するために従来技術で一般的な検出する、およびより早く反応する可能性とは異なり、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの損傷または摩耗の早期診断または予防的な認識を可能にする。
【0041】
したがって、ここに記載される予測方法は、各ブレーキシステムにおける欠陥または機能障害を早期に認識するための非常に敏感な可能性である。有利にも、それぞれ作成された座標系をもとにして、ブレーキシステムのまだ機能するブレーキシステムコンポーネントが、近い将来、最良の場合でも機能能力が制限されることになるということを確実に予測することができる。特に、ブレーキシステムに「始まっている欠陥」を、それぞれ作成された座標系をもとにして認識/予測することができる。そのために実行される方法ステップS1およびS4は、比較的安価で比較的小さな体積のエレクトロニクス系により実行することができる。
【0042】
予測方法により、特に電気機械式ブレーキ倍力装置または一体化されたプランジャ装置の機能性全体を、その将来の使用可能性/機能能力の予測の観点で検査することもできる。特に、この手法により、従来の監視手法および従来技術によるセンサ、例えばモータ位置センサまたは差分センサによってでは予想することができない電気機械式ブレーキ倍力装置または一体化されたプランジャ装置の将来の故障を予想することもできる。したがって、ここに記載される予測方法は、特に車両のブレーキシステムの電気機械式ブレーキ倍力装置または一体化されたプランジャ装置のための有利な早期診断を可能にする。しかし、予測方法により、他のブレーキシステムコンポーネントも間近に迫る機能障害/将来の故障に関して検査できることに明示的に言及しておく。
【0043】
方法ステップS3において実行される現在の、および累積した負荷および負荷プロファイルの検出をもとにして逸脱を認識することができ、次いで、これが方法ステップS4において排除プロセス(Ausschlussverfahren)および妥当性検査プロセス(Plausibilisierungsverfahren)を経て有効とされる(bestaetigen)か、または無効とされる(entkraeftigen)。これらの逸脱は、摩耗または損傷にもとづく可能性がある。既知のパターンの逸脱は、特に、摩耗が緩慢に進行することの表れであり得る。方法ステップS4により、負荷プロファイル(Belastungsverlaeufe)を予想することもできる。
【0044】
特に、方法ステップS4において、予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があると予測/予想されるならば、任意的な方法ステップS5として、発光表示、音出力および/または映像表示により車両の運転者に対応する警告を伝達することができる。警告を伝達するために、車両の少なくとも1つの発光要素、車両の音出力機器、車両の映像表示機器、および/または運転者の携帯機器、特に携帯電話を用いることができる。したがって、修理工場へ行くように多様な仕方で運転者を促すことができる。代替的または補足的に、方法ステップS5において、予測に対応する修理情報を工場に送ることもできる。
【0045】
しかし方法ステップS4において、予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する恐れがないと予測/予想されるならば、任意的な方法ステップS6として、車両の自律的な走行の許可基準を出力することもできる。それに対応して、方法ステップS4において、予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があると予測/予想されるならば、車両の自律的な走行の許可基準をオフにすることができる。殊に、この場合、車両の自律的な走行のために使用される自動装置は、許可基準がある場合にのみ、車両の自律的な走行に適した動作モードに切り替えられるように形成されている。このようにして、少なくとも自律的な走行のほぼ確実な継続期間にブレーキシステムの機能障害を高い確率で不可能にできる場合にのみ車両を自律的な走行に移すことが確保されている。
【0046】
図2は、予測方法の第2の実施形態を説明するためのフローチャートを示す。
【0047】
図2の予測方法は、上述の実施形態の発展形態である。この予測方法の実行可能性は、特定のブレーキシステムタイプと特定の車両タイプのどちらにも限定されない。
【0048】
前述の実施形態の発展形態として、方法ステップS4の後に、値群がプロットされた座標系が記憶装置に記憶される方法ステップS10が実行される。その後、別の運転者起因の、および/または自律的な車両の制動中に検知された値群が記憶装置に記憶された座標系と比較される。これは方法ステップS11で表示される。その場合、比較をもとにして、それぞれ車両により現在実行される制動のブレーキ操作が座標系の値群の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかが検知される。車両により現在実行される制動のブレーキ操作が比較ブレーキ操作のうちの少なくとも1つに相当する場合、方法ステップS12において、それぞれのブレーキ操作について予測された走行中に座標系のうちの少なくとも1つに逸脱が生じるかどうかが検査される。生じない場合、方法ステップS13として、各制動がブレーキシステムの負荷にのみ加えられる。そうでない場合、つまり既知のブレーキ操作で逸脱が繰り返し生じるならば、すでに上述した方法ステップS5が実行される。
【0049】
しかし方法ステップS11において、それぞれ車両により現在実行される制動のブレーキ操作が比較ブレーキ操作から逸脱することが確認される場合、方法ステップS14として、各逸脱が特定の動作範囲内で生じるのかどうかが検査される。そうである場合、方法ステップS15として、それぞれ特定の動作範囲内でのこのブレーキ操作の繰り返す発生に対して、該当する座標系に各ブレーキ操作/パターンを記録することで反応する。そうでない場合、方法ステップS16として、車両により現在実行される制動のブレーキ操作が比較ブレーキ操作から逸脱する頻度が検知される。次に、検知された頻度をもとにして、方法ステップS16において、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される。その後、方法ステップS5を新たに実行することができる。
【0050】
図3は、予測方法の第3の実施形態を説明するためのフローチャートを示す。
【0051】
図3の予測方法も
図1の実施形態の発展形態である。その実行可能性は、特定のブレーキシステムタイプと特定の車両タイプのどちらにも限定されない。
【0052】
図3の予測方法では、方法ステップS4の後に、座標系のうちの少なくとも1つに少なくとも1つの損傷指標、ならびに/または少なくとも1つの摩耗指標および/もしくは摩擦指標を認識できるかどうかが検査される方法ステップS20が実行される。各損傷指標は、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの欠陥または故障が、例えば少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの衝撃負荷による少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの損傷に原因があることの表れである。各損傷指標は、多くの場合、ブレーキペダルのペダルダイナミクス、車両の走行プロファイルおよび/または少なくとも1つの機械的もしくは電気的量の少なくとも1つの勾配で認識できる。したがって、各摩耗指標および/または摩擦指標は、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの欠陥または故障が少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの摩耗、および/または少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに生じる摩擦に原因があることの表れである。各摩耗指標および/または摩擦指標は、多くの場合、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータのモータトルク、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置のモータの回転数、モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置の電気的もしくは機械的出力、および/または少なくとも1つの測定温度で確認することができる。
【0053】
方法ステップS20において座標系に少なくとも1つの損傷指標の存在が認識されるならば、方法ステップS21において、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに損傷が生じたことが決定される。場合によっては次に、すでに上述した方法ステップS5を実行することができる。しかし方法ステップS20において、少なくとも1つの摩耗指標および/または摩擦指標の存在が確認される場合、方法ステップS22として、少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの摩耗および/または少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに生じる摩擦が認識可能であることが決定される。この場合も次に、すでに上述した方法ステップS5を実行することができる。
【0054】
【0055】
以下に記載される予測装置30は、車両32のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのための予測、特に早期診断に利用可能である。以下に記載される予測装置30の使用可能性は、各ブレーキシステムを搭載した車両/自動車32の各ブレーキシステムの特別なブレーキシステムタイプと特定の車両タイプ/自動車タイプのどちらにも限定されない。
【0056】
予測装置30により、車両32のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントのために、予測、特に早期診断を行うことができる。そのために、値群34が予測装置30の電子機器36に提供される。値群34は、それぞれ車両32の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中に検知された値を有する。さらに、値群34は、一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量、および同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量をそれぞれ含む。すでに上述したように、少なくとも1つのブレーキ要求設定量は、それぞれ車両32の運転者によるブレーキペダルの操作、および/または車両32の制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定を表す。それに対応して、少なくとも1つのブレーキシステム反応量は、それぞれ、少なくとも1つのブレーキ要求設定量に対するブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントの反応、または少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントにおける状態を表示する。さらに、少なくとも1つの車両反応量は、ブレーキシステムにより制動される車両32の物理量を表す。少なくとも1つのブレーキ要求設定量、少なくとも1つのブレーキシステム反応量、および少なくとも1つの車両反応量の例は、すでに上記に列挙されている。
【0057】
電子機器36は、値群34を座標系にプロットするように設計および/またはプログラミングされ、座標系の各々は、ブレーキ要求設定量、もしくはブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、ブレーキシステム反応量、もしくはブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、および/または車両反応量、もしくは車両反応量のうちの少なくとも1つをそれぞれ表示する少なくとも2つの軸を有する。すでに上記に列挙したように、値群34が割り当てられた値群34の各時点に検知された少なくとも1つの周囲環境パラメータも有するならば、値群を対応する他の座標系にプロットすることもできる。
【0058】
さらに、電子機器36は、座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中にブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネントに少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定するようにも設計および/またはプログラミングされている。したがって、ここに記載される予測装置30は、前述の予測方法の利点をもたらす。予測装置30/予測装置の電子機器36は、特に、すでに上述した予測方法のすべての方法ステップを実行するように形成/プログラミングされ得る。
【0059】
予測装置30とは、車両32に組み付け可能/組み込み可能な予測装置30と理解することができる。しかし
図4に図示されるように、予測装置30は、車両32のデータ送信機器40により送信された値群34を、特にインターネット42を介して受信するように設計された通信機器38を含むこともできる。その場合、予測装置30/予測装置の電子機器36により決定される予測情報44を再び車両32に送信することができる。その場合、予測情報44は、車両32において、すでに上述した方法ステップS5およびS6を引き起こすことができる。
【0060】
したがって、予測装置30は、予測装置と車両32との距離が比較的大きい場合でもなお有利な予測/早期診断を実行することができる。したがって、予測装置30と車両32との協働は、車両32の重量を増すことも、車両32において利用可能な予測装置30のための取付スペースを必要とすることもない。これは、予測装置30の使用可能性を損なうことなく、比較的大きい体積のおよび/または比較的重い予測装置30の形成も可能にする。さらに、この場合、予測装置30と車両32の協働は、車両32の製造コストを上昇させることもなく可能である。
図4に図示されるように、通信機器38を搭載した予測装置30は、予測/早期診断を実行するために複数の車両32と協働することもできる。車両32は、通常、自身のデータ送信機器40を搭載しているため、予測装置30を様々に使用可能である。任意的に、このようにして、先ず車両レベルで予測が行われ、最後にクラウドの「より高いレベル」で複数/多数の車両32からなる車両群(Fahrzeugflotte)に関して相関されることにより早期診断を「2つのレベルで」を実行することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10 ブレーキ倍力装置
12 マスタブレーキシリンダ
14 ポンプ
16 ホイールブレーキシリンダ
18 矢印
20 矢印
22 矢印
24 マーキング
30 予測装置
32 車両
34 値群
36 電子機器
38 通信機器
40 データ送信機器
42 インターネット
44 予測情報
C1、C2、C3 セクタ
N 頻度
μ 摩擦
x、vx、I0 ブレーキ要求設定量
F、α、r、a 車両反応量
p12、I、p16 ブレーキシステム反応量
S1~S6、S10~S16、S20~S22 ステップ
S1a~S1e 部分ステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(32)のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)のための予測装置(30)であって、
電子機器(36)を備え、前記電子機器が、
-前記車両(32)の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中にそれぞれ検知された値を有する、かつ一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、ならびに同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)をそれぞれ含む、前記電子機器(36)に提供される値群(34)であって、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)が、前記車両(32)の運転者によるブレーキペダルの操作、および/または前記車両(32)の制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定をそれぞれ表し、前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)が、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)に対する前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)の反応、または前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)における状態をそれぞれ表し、前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)が、前記ブレーキシステムにより制動される前記車両(32)の物理量を表す、値群を、座標系であって、前記座標系の各々が、前記ブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、もしくは前記ブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、前記ブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、もしくは前記ブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または前記車両反応量(F、α、rおよびa)、もしくは前記車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する少なくとも2つの軸を有する、座標系にプロットするように、かつ
-前記座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定するように、
設計および/またはプログラミングされている、予測装置。
【請求項2】
前記電子機器(36)は、前記プロットされた値群を有する前記座標系を前記予測装置(30)の記憶機器に記憶するように設計および/またはプログラミングされており、前記電子機器(36)は、さらに、前記車両(32)の別の運転者起因の、および/または自律的な制動中に検知された値群(34)を、前記記憶機器に記憶された前記座標系と比較するように設計および/またはプログラミングされ、それにより、前記比較をもとにして、それぞれ前記車両(32)により現在実行される制動のブレーキ操作が、前記座標系の前記値群の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかを検知し、前記比較ブレーキ操作から逸脱する前記車両(32)により現在実行される制動の前記ブレーキ操作の検知された頻度を追加的に考慮して、少なくとも前記所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定する、請求項1に記載の予測装置(30)。
【請求項3】
前記予測装置(30)が前記車両(32)に組み付け可能である、請求項1または2に記載の予測装置(30)。
【請求項4】
前記予測装置(30)は、前記車両(32)のデータ送信機器(40)により送信された値群(34)を受信するように設計されている通信機器(38)を備える、請求項1または2に記載の予測装置(30)。
【請求項5】
車両(32)のブレーキシステムの少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)のための予測方法であって、
-前記車両(32)の運転者起因の、および/または自律的な複数の制動中に検知された値をそれぞれ有する、かつ一時点に検知された少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、ならびに同時点に検知された少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)をそれぞれ含む値群(34)であって、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)が、前記車両の運転者によるブレーキペダルの操作、および/または前記車両の制動もしくは走行制御自動装置のブレーキ要求設定をそれぞれ表し、前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)が、前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)に対する前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)の反応、または前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)における状態をそれぞれ表し、前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)が、前記ブレーキシステムにより制動される前記車両(32)の物理量を表す、値群を検知するステップ(S1)と、
-前記検知された値群(34)を、座標系であって、前記座標系の各々が、前記ブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、もしくは前記ブレーキ要求設定量のうちの少なくとも1つ、前記ブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)、もしくは前記ブレーキシステム反応量のうちの少なくとも1つ、ならびに/または前記車両反応量(F、α、rおよびa)、もしくは前記車両反応量のうちの少なくとも1つを表示する少なくとも2つの軸を有する、座標系にプロットするステップ(S3)と、
-前記座標系をもとにして、少なくとも所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかを推定するステップ(S4)と、
を包含する方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)として、前記ブレーキペダルに結合された入力ロッドのロッドストローク(x)、前記入力ロッドの調整速度(v
x)、前記制動もしくは運転制御自動装置により要求される前記ブレーキシステムのモータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)のモータの目標モータ電流強度(I
0)、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの目標動作電圧、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの目標モータトルク、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの目標消費電力、前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の少なくとも1つの調整可能なピストンの目標調整ストローク、および/または前記制動もしくは走行制御自動装置により要求される前記ブレーキシステムに設置された少なくとも1つのポンプ(14)の目標ポンプレートが検知される(S1a)、請求項5に記載の予測方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)として、前記ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ(12)におけるマスタブレーキシリンダ圧(p
12)、前記ブレーキシステムの少なくとも1つのホイールブレーキシリンダ(16)における少なくとも1つのブレーキ圧(p
16)、前記ブレーキシステムの前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータのモータ電流強度(I)、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの動作電圧、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータのモータトルク、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の前記モータの消費電力、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)の少なくとも1つの調整可能なピストンの調整ストローク、場合によって実行されるブレーキ圧コントロールもしくは場合によって実行されるビークルダイナミクスコントロールに関するコントローラ状態情報、少なくとも前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)における少なくとも1つの温度、前記ブレーキシステムに設置された前記少なくとも1つのポンプ(14)のポンプレート、前記モータ駆動式ブレーキ圧増圧装置(10)に結合された前記ブレーキシステムの伝動装置の伝達効率、および/または前記ブレーキシステムの少なくとも1つのバルブの少なくとも1つの切換状態が検知される(S1b、S1c)、請求項
6に記載の予測方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)として、前記ブレーキシステムにより前記車両(32)にもたらされるブレーキ力(F)、前記ブレーキシステムにより前記車両(32)にもたらされるブレーキトルク、前記車両の舵角(α)、前記車両(32)のヨーレート(r)、前記ブレーキシステムにより前記車両(32)にもたらされる車両減速度(a)、前記車両(32)の縦方向速度、前記車両(32)の横方向速度、前記車両(32)の横方向加速度、および/または前記車両(32)の車両電気システムの電気システム電圧が検知される(S1d)、請求項5
または6に記載の予測方法。
【請求項9】
前記割り当てられた値群(34)の各時点に検知された前記各値群(34)の前記少なくとも1つのブレーキ要求設定量(x、v
xおよびI
0)、同時点に検知された前記少なくとも1つのブレーキシステム反応量(p
12、Iおよびp
16)ならびに同時点に検知された前記少なくとも1つの車両反応量(F、α、rおよびa)に加えて、同時点に、前記車両(32)の現在周囲環境に関する少なくとも1つの周囲環境パラメータ(μ)が検知され、前記各値群(34)に付加され(S1e)、前記値群(34)は少なくとも1つの別の座標系にプロットされ、前記別の座標系において前記周囲環境パラメータ(μ)または前記周囲環境パラメータのうちの少なくとも1つがそれぞれ別の座標系の軸により、または前記それぞれ別の座標系の2つの軸のうちの1つに形成される平面におけるセクタにより表示され、前記少なくとも1つの別の座標系を追加的に考慮して、少なくとも前記所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される、請求項5
または6に記載の予測方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの周囲環境パラメータ(μ)として、道路摩擦(μ)、道路傾斜角度、ウインドシールドワイパステータスおよび/または外部温度が検知される(S1e)、請求項9に記載の予測方法。
【請求項11】
前記プロットされた値群(34)を有する座標系が記憶装置に記憶され、前記車両(32)の別の運転者起因の、および/または自律的な制動中に検知された値群(34)が前記記憶装置に記憶された座標系と比較され、前記比較をもとにして、それぞれ前記車両(32)により現在実行される制動のブレーキ操作が前記座標系の前記値群(34)の検知中に実行された制動の比較ブレーキ操作から逸脱するかどうかが検知され、前記比較ブレーキ操作から逸脱する前記車両(32)により現在実行される制動の前記ブレーキ操作の検知された頻度を追加的に考慮して、少なくとも前記所定の予測時間インターバル中に前記ブレーキシステムの前記少なくとも1つのブレーキシステムコンポーネント(10、12、14、16)に少なくとも1つの機能障害が発生する可能性があるかどうかが推定される(S10~S16)、請求項5
または6に記載の予測方法。
【国際調査報告】