(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】キャリア箔付き極薄銅箔及びこれを用いたエンベデッド基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20240426BHJP
C25D 5/14 20060101ALI20240426BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C25D7/06 A
C25D5/14
H05K3/46 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571218
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2022009123
(87)【国際公開番号】W WO2023054850
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130381
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515059290
【氏名又は名称】ロッテエナジーマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チャン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ボム、ウォン チン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キトク
【テーマコード(参考)】
4K024
5E316
【Fターム(参考)】
4K024AA03
4K024AA09
4K024AA14
4K024AB04
4K024BA09
4K024BB11
4K024BC02
4K024CA01
4K024CA03
4K024CA04
4K024CA06
4K024DB03
4K024GA16
5E316AA02
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5E316GG17
5E316GG22
5E316GG28
5E316HH21
(57)【要約】
本発明は、キャリア箔付き極薄銅箔及びこれを用いたエンベデッド基板の製造方法に関し、本発明のキャリア箔付き極薄銅箔は、キャリア箔、前記キャリア箔上の無エッチング剥離層、前記無エッチング剥離層上の第1極薄銅箔層、前記第1極薄銅箔層上のエッチング停止層、及び前記エッチング停止層上の第2極薄銅箔層を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア箔;
前記キャリア箔上の無エッチング剥離層;
前記無エッチング剥離層上の第1極薄銅箔層;
前記第1極薄銅箔層上のエッチング停止層;及び
前記エッチング停止層上の第2極薄銅箔層を含むキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項2】
前記エッチング停止層の平均粗度Rzが1.5μm以下である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項3】
前記エッチング停止層の平均粗度Rzが0.5μm以下である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項4】
前記第2極薄銅箔層の平均粗度Rzが1.5μm以下である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項5】
前記第2極薄銅箔層の平均粗度Rzが0.6μm以下である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項6】
前記エッチング停止層は、ニッケル又はニッケル合金層である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項7】
前記第1極薄銅箔層の厚さは5μm以下であり、
前記エッチング停止層の厚さは1μm以下であり、
前記第2極薄銅箔層のそれぞれの厚さは5μm以下である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項8】
前記エッチング停止層は、前記第2極薄銅箔層のエッチング液に対して不活性である、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項9】
前記無エッチング剥離層は無機金属又は有機物を含む、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項10】
前記無エッチング剥離層は、剥離性を有する第1金属と前記第1金属のメッキがし易くなるように補助する少なくとも1種以上の金属とを含む合金からなる、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項11】
前記無エッチング剥離層は、Ni、Co、Fe、Cr、Mo、W、Al及びPからなる群から選ばれる一つ以上の元素が含まれた拡散防止層又は酸化防止層をさらに含む、請求項1に記載のキャリア箔付き極薄銅箔。
【請求項12】
キャリア箔上に無エッチング剥離層、第1極薄銅箔層、エッチング停止層及び第2極薄銅箔層が順次積層された構造物における前記第2極薄銅箔層上に第1金属パターンを形成する段階;
前記第1金属パターンの間に露出された前記第2極薄銅箔層をエッチングする段階;
前記第1金属パターン上に第1誘電体層を形成する段階;
前記第1誘電体層が形成された構造物から前記無エッチング剥離層及びキャリア箔を除去する段階;
前記無エッチング剥離層及びキャリア薄の除去によって露出された第1極薄銅箔層をエッチングして除去する段階;及び
第1極薄銅箔層の除去後に露出された前記エッチング停止層をエッチングして除去する段階を含むエンベデッド基板の製造方法。
【請求項13】
前記第1極薄銅箔層の除去段階は、
前記第1極薄銅箔層に対して高いエッチング選択比を有するエッチング液を使用する、請求項12に記載のエンベデッド基板の製造方法。
【請求項14】
前記エッチング停止層の除去段階は、
前記エッチング停止層に対して高いエッチング選択比を有するエッチング液を使用する、請求項12に記載のエンベデッド基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア箔付き極薄銅箔及びこれを用いて製造されるエンベデッド基板に関し、特に、ETS(Embedded Trace Substrate)工法のための低い粗度(roughness)の優れた平滑な極薄銅箔を提供するキャリア箔付き極薄銅箔及びこれを用いたエンベデッド基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンベデッド基板用キャリア箔付き極薄銅箔は、通常、キャリア箔上に形成された剥離層と極薄銅箔を有する構造となっている。
【0003】
図1は、従来のキャリア箔付き極薄銅箔を用いたエンベデッド基板の製造工程を説明するための図である。
【0004】
図1を参照すると、従来のETS(Embedded Trace Substrate)工法においてキャリア箔付き極薄銅箔を用いたエンベデッド基板の製造において、基材10上に剥離層20及び極薄銅箔30が形成された構造物を用いるとき、金属パターン40を形成する過程で表面粗度(粗さ)が十分でないため不所望の突起45が発生することがある。プレプレグ(prepreg;PPG)50を形成し、その上に他の金属パターン60をさらに形成することも可能である。しかし、金属パターン40を形成し、プレプレグ50を形成した後に基材10と剥離層20を除去する過程で、突起45のような不良要素をなくすためには特に剥離層20のエッチングが十分になされる必要があるが、この時、精巧なエッチング制御がし難いためプレプレグ50の内側に金属パターン40が形成され、リセスデプス(Recess depth)90不良を引き起こしてしまい、これは、回路金属パターンの断線、短絡などの原因になる問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2009-0081909号公報(2009.09.01.)
【特許文献2】韓国特許出願第10-2020-7001958号公報(2018.10.18.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、2層の極薄銅箔層の間に選択的エッチングが可能なNiエッチング停止層を含むキャリア箔付き極薄銅箔を用いることにより、エンベデッド基板の製造工程においてシード極薄銅箔層が低粗度であるシード極薄銅箔層を提供して突起形成を抑制できるキャリア箔付き極薄銅箔を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、エンベデッド基板の製造時にNiエッチング停止層を除去する剥離工程で終了し、エッチング停止層のエッチングは精巧なエッチングが可能であるので、金属パターン面とプレプレグのような絶縁層間のリセスデプス(Recess depth)が発生しなく、剥離面も低粗度の優れた平滑な面とし得るエンベデッド基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を達成するために、本発明は、キャリア箔;前記キャリア箔上の無エッチング剥離層;前記無エッチング剥離層上の第1極薄銅箔層;前記第1極薄銅箔層上のエッチング停止層;及び、前記エッチング停止層上の第2極薄銅箔層を含むキャリア箔付き極薄銅箔を提供する。
【0009】
本発明において、前記エッチング停止層の平均粗度Rzは、1.5μm以下であるか、0.5μm以下であってよい。
【0010】
本発明において、前記第2極薄銅箔層の平均粗度Rzは、1.5μm以下であるか、0.6μm以下であってよい。
【0011】
本発明において、前記エッチング停止層は、ニッケル又はニッケル合金層であってよい。
【0012】
本発明において、前記第1極薄銅箔層の厚さは5μm以下であり、前記エッチング停止層の厚さは1μm以下であり、前記第2極薄銅箔層のそれぞれの厚さは5μm以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記エッチング停止層は、前記第2極薄銅箔層のエッチング液に対して不活性であることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記無エッチング剥離層は無機金属又は有機物を含んでよい。
【0015】
また、前記無エッチング剥離層は、剥離性を有する第1金属と、前記第1金属のメッキがし易くなるように補助する少なくとも1種以上の金属とを含む合金であってよい。このとき、前記無エッチング剥離層は、Ni、Co、Fe、Cr、Mo、W、Al及びPからなる群から選ばれる一つ以上の元素が含まれた拡散防止層又は酸化防止層をさらに含んでよい。
【0016】
上記の他の技術的課題を達成するために、本発明は、キャリア箔上に無エッチング剥離層、第1極薄銅箔層、エッチング停止層及び第2極薄銅箔層が順次積層された構造物における前記第2極薄銅箔層上に第1金属パターンを形成する段階;前記第1金属パターンの間に露出された前記第2極薄銅箔層をエッチングする段階;前記第1金属パターン上に第1誘電体層を形成する段階;前記第1誘電体層が形成された構造物から前記無エッチング剥離層及びキャリア箔を除去する段階;前記無エッチング剥離層及びキャリア薄の除去によって露出された第1極薄銅箔層をエッチングして除去する段階;及び、第1極薄銅箔層の除去後に露出された前記エッチング停止層をエッチングして除去する段階を含むエンベデッド基板の製造方法を提供する。
【0017】
本発明において、前記第1極薄銅箔層の除去段階において、前記第1極薄銅箔層に対して高いエッチング選択比を有するエッチング液が使用されてよい。
【0018】
また、前記エッチング停止層の除去段階において、前記エッチング停止層に対して高いエッチング選択比を有するエッチング液が使用されてよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るキャリア箔付き極薄銅箔及びこれを用いたエンベデッド基板の製造方法によれば、2層の極薄銅箔層の間に選択的エッチングが可能なNiエッチング停止層を含むキャリア箔付き極薄銅箔を提供でき、これにより、エンベデッド基板の製造工程においてシード極薄銅箔層が低粗度のシード極薄銅箔層を提供して突起形成を抑制させることができる。したがって、エンベデッド基板の製造時に接着強度、耐熱接着強度、耐薬品性、及びエッチング性などの銅箔としての要求特性に全般的に優れ、微細回路基板用銅箔として非常に適するキャリア箔付き極薄銅箔を提供することができる。
【0020】
また、本発明に係るキャリア箔付き極薄銅箔及びこれを用いたエンベデッド基板の製造方法によれば、エンベデッド基板の製造時に、Niエッチング停止層を除去する剥離工程で終了し、エッチング停止層のエッチングは精巧なエッチングが可能であるので、金属パターン面とプレプレグような絶縁層間のリセスデプス(Recess depth)が発生しなく、剥離面も低粗度の優れた平滑な面とすることができる。これにより、回路パターンの断線、短絡などの不良原因を除去し、優れた回路形成が図られる。
【0021】
本発明に関する理解を助けるために詳細な説明の一部として含まれる添付の図面は、本発明に関する実施例を提供し、詳細な説明と一緒に本発明の技術的思想を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来のキャリア箔付き極薄銅箔を用いたエンベデッド基板の製造工程を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔を説明するための図である。
【
図3】本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔を用いてエンベデッド基板を製造する方法を説明するための工程順序図である。
【
図4A】本発明の一実施例によって製造されたサンプルの製造過程でのメッキ表面を観察したSEM写真である。
【
図4B】本発明の一実施例によって製造されたサンプルの製造過程でのメッキ表面を観察したSEM写真である。
【
図4C】本発明の一実施例によって製造されたサンプルの製造過程でのメッキ表面を観察したSEM写真である。
【
図5A】本発明の比較例によって製造されたサンプルの製造過程でのメッキ表面を観察したSEM写真である。
【
図5B】本発明の比較例によって製造されたサンプルの製造過程でのメッキ表面を観察したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、添付の図面を参照して本発明について詳しく説明する。図面中、同一の構成要素には可能な限り同一の符号を付する。また、既に公知の機能及び/又は構成に関する詳細な説明は省略する。以下に開示する内容は、様々な実施例に係る動作を理解する上で必要な部分を重点的に説明し、説明の要旨を曇らせ得る要素に関する説明は省略する。また、図面において一部の構成要素は誇張して、省略して、又は概略して示されてよい。各構成要素の大きさは実際の大きさを全的に反映するものではなく、したがって、各図に描かれた構成要素の相対的な大きさや間隔によってここに記載の内容が限定されるものではない。
【0024】
本発明の実施例を説明するに当たって、本発明と関連した公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にさせ得ると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。なお、後述される用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語で、これらは使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わってよい。したがって、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて下されるべきであろう。詳細な説明において使われる用語は、単に本発明の実施例を記述するためのもので、決して制限的であってはならない。特に断らない限り、単数形態の表現は複数形態の意味を含む。本説明において、「含む」又は「備える」のような表現は、ある特性、数字、段階、動作、要素、これらの一部又は組合せを示すためのものであり、述べられたもの以外に一つ又はそれ以上の他の特性、数字、段階、動作、要素、これらの一部又は組合せの存在又は可能性を排除するように解釈されてはならない。
【0025】
また、第1、第2などの用語は様々な構成要素を説明するために使われてよいが、これらの構成要素は前記用語によって限定されるものではなく、これらの用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使われるだけである。
【0026】
本発明の明細書において、積層(lamination)とは、少なくとも2枚の層を積み重ねることを意味する。例えば、第1層と第2層の積層は、第1層と第2層とが直接接触する他にも、前記第1層と第2層との間に第3層を挟んで積み重ねることも含む。
【0027】
図2は、本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔1000を説明するための図である。
【0028】
図2を参照すると、本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔1000は、キャリア箔100、キャリア箔100上の無エッチング剥離層250、無エッチング剥離層250上の第1極薄銅箔層500、第1極薄銅箔層500上のエッチング停止層600、エッチング停止層600上のシード層としての第2極薄銅箔層700を含む。
【0029】
本発明において、キャリア箔100の厚さは数十μm、例えば、10~100μmであってよい。キャリア箔100のマット面(M面)又は光沢面(S面)の粗度は、第2極薄銅箔層700に対して4.0倍以下であってよく、好ましくは0.5~4.0倍であってよい。第1極薄銅箔層500、エッチング停止層600、第2極薄銅箔層700のそれぞれの厚さは、0.1~3μm、0.1~3μm、0.1~5μmであることが好ましい。本発明において、キャリア箔100の下面には突起層(nodulation)800がさらに形成されてよい。
【0030】
本発明の明細書において、無エッチング剥離層250は、剥離層300単独の層であるか、剥離層300の上部又は下部の少なくとも一方に更なる層を含むもの、例えば、
図2に示す拡散防止層200及び酸化防止層400をさらに含むものであってよい。
【0031】
本発明において、前記剥離層300は、極薄銅箔とキャリア箔を剥離する時に剥離性を向上させるための層であり、キャリア箔を綺麗に且つ容易に剥離させるために導入される。本発明において、前記剥離層は、剥離性を有する金属又は金属合金を含んでよい。剥離性金属は、モリブデン又はタングステンを含んでよい。
【0032】
本発明において、剥離層300が無機金属を含む場合に、剥離性を有する第1金属(例えば、Mo、Wなど)と前記第1金属のメッキがし易くなるように補助する少なくとも1種以上の金属(例えば、Fe、Co、Niなど)とを含む合金からなってよい。
【0033】
例えば、前記剥離層300は、Mo-Ni-Fe合金のメッキによって形成されてよく、このとき、メッキ付着量は50~10000μg/dm2が好ましい。
【0034】
また、剥離層300が有機物を含む場合に、剥離性を与えるために、含窒素有機化合物、含硫黄有機化合物及びカルボン酸(Carboxylic acid)の中から選ばれる1種又は2種以上の有機剤を用いて形成されてよい。含窒素有機化合物としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾールなどを使用し、含硫黄有機化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール、チオシアヌル酸などを使用することができる。また、カルボン酸としてはオレン酸、リノール酸などが使用されてよい。
【0035】
無エッチング剥離層250は、剥離層300の上部と下部にそれぞれ拡散防止層200又は酸化防止層400のいずれか1層以上をさらに含んでよい。
【0036】
本発明において、拡散防止層200及び酸化防止層400はメッキで形成されてよい。前記拡散防止層200及び酸化防止層400は、前記キャリア箔付き極薄銅箔を絶縁基板と高温でプレスするなどの高温工程において銅が剥離層に拡散することを抑制させる。剥離層への銅の拡散は、キャリア箔と極薄銅箔との金属結合を生成させ、両方間の強い結合力によってキャリア薄の剥離を困難にさせることがあるが、拡散防止層200及び酸化防止層400はこのような反応を抑制させることができる。前記拡散防止層200及び酸化防止層400は単一金属層であってもよく、2種以上の金属の合金層であってもよい。例えば、単一金属層を形成するメッキには、ニッケルメッキ、コバルトメッキ、鉄メッキ、アルミニウムメッキなどが用いられてよく、2元系合金層を形成するメッキには、ニッケル-コバルトメッキ、ニッケル-鉄メッキ、ニッケル-クロムメッキ、ニッケル-モリブデンメッキ、ニッケル-タングステンメッキ、ニッケル-銅メッキ、ニッケル-リンメッキ、コバルト-鉄メッキ、コバルト-クロムメッキ、コバルト-モリブデンメッキ、コバルト-タングステンメッキ、コバルト-銅メッキ、コバルト-リンメッキなどが用いられてよい。本発明において、例えば、前記拡散防止層200及び酸化防止層400は、Ni-Pメッキであってよい。
【0037】
本発明において、極薄銅箔は、第1極薄銅箔層500、エッチング停止層600及び第2極薄銅箔層700が順次積層された3層の積層構造を有する。本発明において、前記第1極薄銅箔層500、エッチング停止層600及び第2極薄銅箔層700を含む極薄銅箔の厚さは、2~14μmであってよい。好ましくは、前記極薄銅箔の厚さは10μm以下、8μm以下、又は6μm以下であってよい。
【0038】
本発明において、第1極薄銅箔層500は1~5μmの厚さを有してよい。好ましくは、前記第1極薄銅箔層500は1.5~2μmの厚さを有してよい。
【0039】
本発明において、エッチング停止層600は、低い平均粗度を有する。例えば、本発明において前記エッチング停止層600は、1μm以下、0.8μm以下、0.6μm以下、0.5μm以下の平均粗度(Rz)を有する。このようなエッチング停止層の低い平均粗度(Rz)はその上に形成される極薄銅箔の粗度を下げ、極薄銅箔表面の突起構造の形成を抑制させることができる。そのために、後述するような高い光沢度を有するNi又はNi合金メッキ工程が適用されてよい。
【0040】
また、本発明において、エッチング停止層600は、第1極薄銅箔層500及び第2極薄銅箔層700のエッチング液に対して不活性である金属又は金属合金、例えばニッケル(Ni)又はニッケル合金層からなってよい。これにより、第1極薄銅箔層500又は第2極薄銅箔層700のエッチング工程において第1極薄銅箔層500及び第2極薄銅箔層700はエッチング停止層600に比べて高いエッチング選択比を有し、逆に、エッチング停止層600のエッチング工程ではエッチング停止層600は、第1極薄銅箔層500及び第2極薄銅箔層700に対して高いエッチング選択比を有する。
【0041】
本発明において、前記エッチング停止層600は0.4~2μmの厚さを有してよい。好ましくは、前記エッチング停止層600は1μm以下、0.8μm以下、又は0.6μm以下の厚さを有してよい。
【0042】
本発明において、第2極薄銅箔層700は1~5μmの厚さを有してよい。好ましくは、前記第2極薄銅箔層700は1~3μmの厚さを有してよい。
【0043】
このように、本発明は、2層の極薄銅箔層500,700の間に、湿式又は乾式エッチング工程において銅又は銅合金に対して高いエッチング選択比を有するNi/Ni合金エッチング停止層600を含む、キャリア箔付き極薄銅箔1000を提供する。本発明において第2極薄銅箔層700は、平均粗度(Rz)が1.5μm以下、1.3μm以下、1.1μm以下、0.9μm以下、0.7μm以下、又は0.6μm以下であってよい。
【0044】
したがって、エンベデッド基板の製造時にエッチング停止層600を精巧にエッチングできることにより、金属パターン面とプレプレグような絶縁層間のリセスデプス(Recess depth)が不必になり、低粗度の優れた平滑な面を提供することができる。本発明において、低粗度の第2極薄銅箔層700は、エンベデッド基板の製造時に突起形成(
図1参照)を抑制させることができる。これにより、回路形成時に回路パターンの断線、短絡などの不良原因を除去できる。
【0045】
本発明において、第2極薄銅箔層700の表面は、さらに表面処理されてよい。例えば、耐熱及び耐化学性処理、クロメート処理、シランカップリング処理のいずれか一つ又はこれらの組合せなどの表面処理がなされてよく、いずれの表面処理を実施するかは、以降の工程によって適切に選択されてよい。
【0046】
ここで、耐熱及び耐化学性処理は、例えば、ニッケル、スズ、亜鉛、クロム、モリブデン及びコバルトなどの金属のいずれか一つ又はこれらの合金をスパッタリング又は電気メッキ、無電解メッキによって金属箔上に薄膜形成することによってなされてよい。費用面において電気メッキが好ましい。
【0047】
また、クロメート処理には、6価~3価のクロムイオンを含む水溶液を用いることができる。クロメート処理は、単純な浸漬処理も可能であるが、好ましくは陰極処理で行うことができる。重クロム酸ナトリウム0.1~70g/L、pH 1~13、浴温度15~60℃、電流密度0.1~5A/dm2、電解時間0.1~100秒の条件で行うことが好ましい。また、クロメート処理は、防錆処理上で行うことが好ましく、これによって耐湿及び耐熱性をより向上させることができる。
【0048】
また、シランカップリング処理に使用されるシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ官能性シラン、アミノ官能性シラン、オレフィン官能性シラン、アクリル官能性シラン、メタクリル官能性シラン、メルカプト官能性シランなどを単独で用いることもでき、複数個を混合して用いることもできる。水などの溶媒に0.1~15g/Lの濃度で溶解させ、室温~70℃の温度で金属箔に塗布したり、電着させて吸着させる。シランカップリング処理後には、加熱、紫外線照射などによって安定した結合を形成する。加熱は、100~200℃の温度で2~60秒乾燥させることができる。
【0049】
図3は、本発明の一実施例に係るキャリア箔付き極薄銅箔1000を用いてエンベデッド基板を製造するETS(Embedded Trace Substrate)工法を説明するための工程順序図である。
【0050】
図3を参照すると、まず、エンベデッド基板製造のためのキャリア箔付き極薄銅箔1000を準備し、メッキ装備に投入する(S110)。ここで、キャリア箔付き極薄銅箔1000は基材10上に付着して投入される。例えば、前記基材は、接着性を有する基材が使用されてよい。図示のように、キャリア箔付き極薄銅箔1000は基材10の両面に付着してよい。キャリア箔付き極薄銅箔1000は、
図2に示しているように、キャリア箔100上に無エッチング剥離層250、第1極薄銅箔層500、エッチング停止層600及び第2極薄銅箔層700が順次積層された構造を有する。
【0051】
メッキ装備内に基材10と共にキャリア箔付き極薄銅箔が投入されると、第2極薄銅箔層700上にメッキによる第1金属パターン810を形成する(S120)詳述しないが、金属パターン810は様々な方法で形成されてよい。例えば、第2極薄銅箔層700上に所定のメッキレジストパターンを形成し、開口している部分にメッキ層を形成した後、メッキレジストパターンを除去することによって、メッキ層による第1金属パターン810が形成されてよい。
【0052】
続いて、第2極薄銅箔層700をエッチングしてパターニングする(S130)。この過程は様々な方法で行われてよい。一例として、エッチバック工程、すなわち、第1金属パターン810をエッチングマスクとして前記第2極薄銅箔層700を乾式エッチング又は湿式エッチングすることによって行われてよい。これにより、 第1金属パターン810の下部の第2極薄銅箔層700は残留し、露出された部分の第2極薄銅箔層700は除去される。本発明において、第2極薄銅箔層700のパターン工程は、
図1と関連して説明したような極薄銅箔上の不所望の突起を除去できるという利点がある。
【0053】
次いで、形成された構造物上に絶縁性又は誘電性のプレプレグ層820を積層する(S140)。プレプレグ(prepreg;PPG)にはエポキシ樹脂、ポリイミド、フェノール、BT(Bismaleimide trianzine resin)などの素材が使用されてよい。続いて、プレプレグ層820上に第2金属パターン830をさらに形成することで、多層構造の基板を製造できる。図示してはいないが、第1金属パターン810と第2金属パターン830との間にはビア孔を通じて電気的に接続される部分が含まれてよい。多層構造基板のために、第2金属パターン830の他にもその上に別のプレプレグ層(図示せず)をさらに形成してよい。すなわち、プレプレグ層820上には、金属パターンとプレプレグ層を含む構造物が2回以上反復して形成されてよい。構造物の最後の層は誘電体層とすることもでき、最後の誘電体層上に他の金属パターンを形成することもできる。
【0054】
このようにプレプレグ層820を含む積層構造が形成されると、基材10が除去される。この過程は、無エッチング剥離層250を用いた物理的剥離法が適用されてよい。この分離工程において無エッチング剥離層250の除去と共に基材10及びキャリア箔100が除去されてよく、金属パターンとプレプレグを含む極薄銅箔構造物が分離される(S150)。
【0055】
次いで、露出された第1極薄銅箔層500を、例えば湿式エッチング方法でエッチングして除去する(S160)。第1極薄銅箔層500は、エッチング停止層600に対して高いエッチング選択比を有するエッチング液で除去されてよい。例えば、前記エッチング液は、フラッシュ(flash)エッチング液として使用される商用のCPE-800又はその希釈液が使用されてよい。
【0056】
次いで、第2極薄銅箔層700に対して高いエッチング選択比を有するエッチング液で湿式エッチングし、露出されたエッチング停止層600を除去することができる(S170)。これによって、エッチングは第2極薄銅箔700パターンの表面で停止し、第2極薄銅箔700パターンの表面とプレプレグ表面は同一平面上に位置する。例えば、前記エッチング液は、硫酸溶液や硫酸と硝酸との混合溶液が使用されてよい。
【0057】
このように本発明では、ETS(Embedded Trace Substrate)工法に、2層の極薄銅箔層500,700の間に極薄銅箔層に対して選択的エッチングが可能なNi/Ni合金エッチング停止層600を含むキャリア箔付き極薄銅箔1000を適用する。
【0058】
これにより、エンベデッド基板の製造時に、エッチング停止層600の使用によって第1極薄銅箔層500及び第2極薄銅箔層700の精巧なエッチングが可能であり、よって、最終的な金属パターンにリセスデプス(Recess depth)が不必になる。また、低粗度の第2極薄銅箔層700はエンベデッド基板の製造時に突起形成(
図1参照)を抑制させることができ、不所望に形成された第2極薄銅箔層700の表面の突起は、金属パターンのための第2極薄銅箔層700のパターニング工程(S130)で除去され得る。
【0059】
<実施例1>
次のような方法でキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。
【0060】
A.キャリア箔
表面粗度1.2μm、厚さ18μmの電解銅箔を使用した。
【0061】
B.拡散防止層
次のメッキ浴によってキャリア箔上に拡散防止層を形成した。
- Ni濃度10~20g/L、P濃度5~15g/L
- pH 4.0、温度30℃、電流密度1.5A/dm2、メッキ時間2秒
- 形成された拡散防止層200の付着量は、金属(Ni)付着量301μg/dm2
【0062】
C.剥離層
Mo-Ni-Feメッキ浴によって剥離層を形成した。
- Mo濃度10~30g/L、Ni濃度3~10g/L、Fe濃度1~5g/L、クエン酸ナトリウム100~200g/L
- pH 10.2(アンモニア水30ml/L添加)、温度30℃、電流密度10A/dm2、メッキ時間7秒
- 形成された剥離層300の付着量は1.01mg/dm2、剥離層の組成はMo 62.31重量%、Ni 30.8重量%、Fe 6.89重量%
【0063】
D.酸化防止層
次のメッキ浴によってNiメッキを形成した。
- Ni濃度10~20g/L、P濃度5~15g/L
- pH 4.0、温度30℃、電流密度0.5A/dm2、メッキ時間2秒
- 形成された拡散防止層の付着量は、金属(Ni)付着量30μg/dm2
【0064】
E.第1極薄銅箔層
次のメッキ浴によって極薄銅箔層を形成した。メッキの厚さは2μmにした。
- CuSO4-5H2O 300g/L、H2SO4 150g/L
- 温度35℃、電流密度20A/dm2、メッキ時間30秒
【0065】
F.エッチング停止層600
次のNiメッキ浴によってエッチング停止層を形成した。厚さは0.5μmにした。
- 硫酸ニッケル:300~500g/L、ホウ酸20~40g/L、サッカリン1~5g/L、アリル硫酸ナトリウム1~5g/Lを使用。
- 温度60℃、電流密度20A/dm2、メッキ時間9秒
【0066】
G.第2極薄銅箔層
次のメッキ浴によって極薄銅箔層を形成した。メッキの厚さは2μmにした。
- CuSO4-5H2O 300g/L、H2SO4 150g/L
- 温度35℃、電流密度20A/dm2、メッキ時間30秒
【0067】
H.表面処理
第2極薄銅箔層上に耐熱及び耐化学性処理、クロメート処理、シランカップリング処理をさらに実施した。
【0068】
キャリア箔付き極薄銅箔サンプルの製造過程において各層の形成後に表面粗度を測定したし、最終メッキ表面の突起個数を測定して下表1に示した。
【0069】
製造されたキャリア箔付き極薄銅箔サンプルの第2極薄銅箔層を、CPE-800エッチング液を1/10に希釈して選択エッチングし、続いて、露出されたエッチング停止層を550~650ml/lの特級硫酸溶液で選択エッチングした。エッチングの結果、エッチング停止層と極薄銅箔層間に優れた選択比が見られた。
【0070】
<実施例2>
剥離層として有機剥離層を使用した以外は、実施例1と同じ方法でキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。
【0071】
次のメッキ浴によって剥離層を形成した。
- カルボキシベンゾトリアゾール濃度1~5g/L、銅濃度5~15g/L、H2SO4濃度150g/L
- 温度40℃、浸漬時間30秒
【0072】
製造されたキャリア箔付き極薄銅箔サンプルの製造過程において各層の形成後に表面粗度を測定したし、最終メッキ表面の突起個数を測定して下表1に示した。
【0073】
<比較例1>
エッチング停止層の形成のためのメッキ浴条件を下記のようにした以外は、実施例1と同じ方法でキャリア箔付き極薄銅箔を製造した。エッチング停止層の厚さは0.5μmにした。
- スルファミン酸ニッケル60% 300~500g/L、ホウ酸20~40g/L
- 温度50℃、電流密度20A/dm2、メッキ時間9秒
【0074】
製造されたキャリア箔付き極薄銅箔サンプルの製造過程において各層の形成後に表面粗度を測定したし、最終メッキ表面の突起個数を測定して下表1に示した。
【0075】
<比較例2>
エッチング停止層を形成せず、酸化防止層上に単一の極薄銅箔層を形成した。このとき、極薄銅箔層の厚さは2μmにした。各メッキ条件は実施例1と同一である。
【0076】
下表1には、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で製造されたキャリア箔付き極薄銅箔の物性を測定した結果を示す。
【0077】
製造されたキャリア箔付き極薄銅箔サンプルの製造過程において各層の形成後に表面粗度を測定したし、最終メッキ表面の突起個数を測定して下表1に示した。
【0078】
【0079】
図4A~
図4Cはそれぞれ、実施例1において第1極薄銅箔層、エッチング停止層及び第2極薄銅箔層の形成後にメッキ表面を撮影したSEM写真である。
【0080】
同図に見られるように、第1極薄銅箔層の粗い表面状態(
図4A)がエッチング停止層の形成によってなめらかな表面状態(
図4B)に変化されることが分かり、これによって第2極薄銅箔層のなめらかな表面状態(
図4C)につながることが分かる。
【0081】
図5A及び
図5Bはそれぞれ、比較例1においてエッチング停止層及び第2極薄銅箔層の形成後にメッキ表面を観察したSEM写真である。
【0082】
同図に見られるように、表面粗度の高いエッチング停止層が形成された場合(
図5A)に、第2極薄銅箔層も粗い表面状態(
図5B)につながることが確認できる。
【0083】
以上、本発明を、具体的な構成要素などのような特定事項、限定された実施例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されただけで、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められてはならず、添付する特許請求の範囲、及びこの特許請求の範囲と均等又は等価の変形を有す如何なる技術思想も本発明の権利範囲に含まれるものと解釈できよう。
【国際調査報告】