(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/44 20060101AFI20240426BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20240426BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240426BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
C12P7/44 ZNA
C08G63/91
C12N9/16
C12N15/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571273
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022063796
(87)【国際公開番号】W WO2022243545
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514245373
【氏名又は名称】キャルビオス
【氏名又は名称原語表記】CARBIOS
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】マルティ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ボーセンベルジェ,ヴァンシアーヌ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルニエ,ヴァンサン
【テーマコード(参考)】
4B064
4J029
【Fターム(参考)】
4B064AD21
4B064CB03
4B064CC06
4B064CC07
4B064CD16
4B064DA16
4J029AB07
4J029CB06A
4J029KD02
4J029KD15
4J029KE13
4J029KG01
4J029KG03
(57)【要約】
本発明は、大部分が塩の形態にある規定量の可溶性当量テレフタル酸を含有する反応媒体中において、pH4~6の酸性条件で行われる酵素的脱重合工程を含む、プラスチック製品を分解するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、
pH4~6で行われる前記少なくとも1種のポリエステルの酵素的脱重合の主工程を含み、
ここで、前記酵素的脱重合工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度は、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kgであり、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にある、
方法。
【請求項2】
酵素的脱重合の主工程を反応媒体中で行い、ここで、該反応媒体の液相中の当量TA濃度が、20g/kg~80g/kg、好ましくは、30g/kg~70g/kgに含まれ、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも95%、好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%が、塩の形態にある、請求項1記載の方法。
【請求項3】
主酵素的脱重合工程のpHをレギュレーションしない、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
主酵素的脱重合工程を4~5.5、好ましくは、4.5~5.5、より好ましくは、5~5.5のpHで行いかつ/またはここで、主酵素的脱重合工程を40℃~80℃、好ましくは、50℃~72℃、より好ましくは、50℃~65℃の温度で行う、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
主酵素的脱重合工程を5.0~5.5のpHで行い、ここで、該反応媒体の液相中の当量TA濃度が、5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kgに含まれる、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
主酵素的脱重合工程を、該反応媒体中のプラスチック製品と前記少なくとも1種のポリエステルを分解可能な酵素、例えば、デポリメラーゼ、好ましくは、エステラーゼ、より好ましくは、リパーゼまたはクチナーゼとを接触させることにより行う、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
前記反応媒体が、主酵素的脱重合工程の前に、予備脱重合工程を行うことにより得られ、前記予備脱重合工程を、初期反応媒体中のプラスチック製品と化学的及び/又は生物学的脱重合剤から選択される脱重合剤、好ましくは、前記ポリエステルを分解可能な少なくとも酵素とを接触させることにより行い、前記予備脱重合工程を6.5~10の所定のpHで行う、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
予備脱重合工程を、初期反応媒体中のプラスチック製品とプラスチック製品の前記ポリエステルを分解可能な酵素、好ましくは、デポリメラーゼ、より好ましくは、エステラーゼ、さらにより好ましくは、リパーゼ又はクチナーゼとを少なくとも接触させることにより行い、ここで、pHが、該反応媒体への塩基の添加により、7.00~9.50、好ましくは、7.50~8.50の所定のpHにレギュレーションされかつ/又はここで、温度が、50℃~80℃、好ましくは、60℃~72℃に含まれる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
予備脱重合工程のpHが、該反応媒体の液相中の当量TA濃度が5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kgに含まれるまで、所定のpHにレギュレーションされ、ここで、主脱重合工程を5~5.5のpHで行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
両脱重合工程を、プラスチック製品とpH4~9でポリエステル分解活性を示す少なくとも1種の酵素並びに/又は少なくとも2種の酵素、好ましくは、少なくとも1種のPETase及び少なくとも1種のMHETaseとを接触させることにより行う、請求項7~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
プラスチック製品とPETase及びMHETaseとを同時に接触させる、請求項10記載の方法。
【請求項12】
PETase及びMHETaseが、多酵素系、特に、2酵素系に含まれる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
プラスチック製品を最初に、PETaseと接触させ、MHETaseをPETaseの後に、該反応媒体中に導入する、請求項10記載の方法。
【請求項14】
以下:
a. 7.5~8.5にレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で行われる予備酵素的脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHがレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で行われる主脱重合工程とを含み、
ここで、各脱重合工程が、プラスチック製品と少なくとも1種のポリエステルを分解可能な酵素とを少なくとも接触させることを含み、ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kg、より好ましくは、30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する、請求項7~13のいずれか一項記載のテレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法。
【請求項15】
以下:
a. 7.5~8.5でレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で、プラスチック製品と少なくとも1種のPETaseとを接触させることにより行われる予備脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHがレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で、プラスチック製品と少なくとも1種のPETase及び場合により、少なくとも1種のMHETaseとを接触させることにより行われる主脱重合工程とを含み、
ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する、請求項14記載のテレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法。
【請求項16】
以下:
a. 7.5~8.5にレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で、プラスチック製品と少なくとも1種のPETase及び少なくとも1種のMHETaseとを接触させることにより行われる予備脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHがレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で行われる主脱重合工程とを含み、
ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~95g/kgに含まれるように停止し、ここで、請求項14記載のテレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法。
【請求項17】
少なくとも1つの追加量のPETase及び/又はMHETaseを主脱重合工程(b)の間に該反応媒体に1回又は複数回加える、請求項14又は16記載のテレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法。
【請求項18】
反応媒体中の当量TA濃度が、好ましくは、該反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、10g/kg~80g/kgに達するまで、主脱重合工程の前の反応媒体にTA塩及び/もしくはオリゴマー塩を添加することによりかつ/又はその酸の形態にあるTA及び塩基を添加することにより得られ、ここで、該液相中の当量TAのうちの少なくとも90%が塩の形態にあり、ここで、主脱重合工程を5~5.5のpHで行う、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
主脱重合工程の前又は予備脱重合工程の前に、該反応媒体中に導入されるポリエステルの濃度が、該反応媒体の総重量に基づいて、150g/kg超、好ましくは、200g/kg超、より好ましくは、300g/kg超である、請求項1~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
ポリエステルが、PET、PTT、PBT、PEIT、PBAT、PCT、PETG、PBST及びPBSTIL、好ましくは、PETから選択される、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
ポリエステルを主脱重合工程の前又は予備脱重合工程の前に、非晶質化工程及び/又は発泡工程に供しかつ/又は該方法が、前記ポリエステルの脱重合により生じるオリゴマー及び/又はモノマーを回収し、場合により、精製する工程をさらに含み、ここで、該精製を好ましくは、溶媒、例えば、水、DMF、NMP、DMSO、DMACを使用して行う、請求項1~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
予備脱重合工程及び/又は主脱重合工程に使用されるPETaseが、配列番号:1に示される全長アミノ酸配列及び/又は配列番号:3に示される全長アミノ酸配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する酵素から選択される、請求項1~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
予備脱重合工程及び/又は主脱重合工程に使用されるMHETaseが、配列番号:2に示される全長アミノ酸配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する酵素から選択される、請求項1~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1種のTAモノマーを有する少なくとも1種のポリエステルを含有するプラスチック物品からTAを製造する方法であって、
該プラスチック物品を4~6のpHで行われる主酵素的脱重合工程に供することと、モノマー及び/又はオリゴマーを回収し、場合により、精製することとを含み、
ここで、前記酵素的脱重合工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度が、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kgであり、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも99%は、塩の形態にある、
方法。
【請求項25】
テレフタル酸(TA)の少なくとも1種のモノマーを含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品の分解方法に使用するのに適した反応媒体であって、
該反応媒体の液相中に、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kg 当量TA(ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも99%が塩の形態にある)と、場合により、ポリエステルを分解可能な少なくとも1種の酵素とを含む、
反応媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、工業的又は半工業的規模でポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための方法であって、前記プラスチック製品が少なくともテレフタル酸モノマーを含むポリエステルを含むプラスチック及び/又は織物から選択される、方法に関する。本発明の方法は、特に、大部分が塩の形態にある規定量の可溶性当量テレフタル酸を含有する反応媒体中において、pH4~6の酸性条件で行われる酵素的脱重合工程を含む。好ましくは、脱重合工程に先立って、6.5~10に含まれる所定のレギュレーションされたpHで行われる予備酵素的脱重合工程を行う。本発明の方法は、ポリエチレンテレフタラートを含むプラスチック製品を分解するのに特に有用である。また、本発明は、少なくとも1種のテレフタル酸モノマーを含むポリエステルを含むプラスチック製品から、モノマー及び/又はオリゴマーを製造するための方法に関する。
【0002】
背景
プラスチックは安価で、耐久性のある材料であり、幅広い用途(食品包装、繊維製品等)での使用が見出される各種の製品の製造に使用することができる。したがって、プラスチックの生産量は、ここ数十年で劇的に増加した。さらに、そのほとんどが、使い捨ての用途、例えば、包装、農業用フィルム、使い捨て消費財又は製造から1年以内に廃棄される短命製品に使用されている。含まれるポリマーの耐久性のために、大量のプラスチックが、世界中の埋立地及び自然生息地に堆積し、環境問題が深刻化している。例えば、近年、テレフタル酸とエチレングリコールとから製造される芳香族ポリエステルであるポリエチレンテレフタラート(PET)は、人間が消費する幾つかの製品、例えば、食品及び飲料の包装(例:ボトル、都合の良いサイズのソフトドリンク、栄養食品用パウチ)又は繊維製品、布地、敷物、カーペット等の製造に広く使用されている。
【0003】
プラスチック廃棄物の蓄積に関連する環境的及び経済的影響を軽減するために、プラスチック分解からプラスチックリサイクルまで、種々の解決策が研究されてきた。機械的リサイクル技術は、依然として最も使用されている技術であるが、幾つかの欠点がある。実際、機械的リサイクル技術には、大規模かつコストのかかる選別が必要であり、プロセス中に分子量が全体的に低下し、リサイクル製品中に添加剤が無秩序に存在するため、用途のグレードダウンにつながる。また、現在のリサイクル技術は高価である。その結果、再生プラスチック製品は、一般的には、未使用プラスチックと比較して競争力がない。
【0004】
近年、プラスチック製品の酵素的リサイクルの革新的な方法が開発され、記載されている(例えば、WO第2014/079844号、同第2015/097104号、同第2015/173265号、同第2017/198786号、同第2020/094661号及び同第2020/094646号)。伝統的なリサイクル技術とは対照的に、このような酵素的脱重合プロセスでは、高価な選別の必要性を取り除かれ、ポリマーの化学成分(すなわち、モノマー及び/又はオリゴマー)の回収が可能となる。得られたモノマー/オリゴマーを回収し、精製し、未使用プラスチック製品と同等の品質を有するプラスチック製品を再製造するのに使用することができる。このため、このような方法により、プラスチックの無限のリサイクルがもたらされる。これらの方法は、PETを含むプラスチック製品からテレフタル酸及びエチレングリコールを回収するのに特に有用である。これらの方法において、前記モノマー及び/又はオリゴマーの製造並びに特に、テレフタル酸の製造では、反応媒体のpHが低下し、これは、分解酵素活性に有害である場合がある。pHを維持し、それにより、最適な酵素活性を維持するために、塩基が、大量に使用される。しかしながら、テレフタル酸を沈殿により回収するためには、強酸が使用され、ほとんど価値のない塩が大量に生成される。加えて、塩基及び酸の使用並びに塩の無価値化は、これらの方法のコストに大きく影響を及ぼす。
【0005】
この問題に取り組むことにより、本発明者らは、このようなプラスチック製品の最適化された酵素的分解方法を開発した。このような方法では、経済的及び工業的観点から満足のいく脱重合収率を維持しながら、プロセスにおける塩基及び酸の添加量を少なくする(かつ塩の形成を少なくする)必要がある。
【0006】
発明の概要
本発明者らは、ポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための方法の改善に取り組むことにより、反応媒体中において、大部分が塩の形態にある可溶性の当量テレフタル酸(TA)の飽和濃度にある(又はそれを超える)間に、酸性条件下で脱重合工程を行うことが可能であることを発見した。このような反応媒体を使用することにより、オペレーターは酸性での脱重合工程の間にpHをレギュレーションする必要がない。
【0007】
このため、工業的規模で許容し得る塩基消費量と脱重合収率との良好なバランスを可能にする特定の条件を決定したことが、本発明者らの長所である。特に、本発明者らは、酸性での脱重合工程の前に到達すべき当量TAの飽和濃度を決定し、前記酸性での脱重合工程中での酸pHを4~6に確保した。これにより、有利なことに、酸性での脱重合工程の間のpHレギュレーションが全く必要なくなり、したがって、塩基の消費もなくなる。
【0008】
この点に関して、本発明の目的は、テレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための方法であって、pH4~6で行われる前記少なくとも1種のポリエステルの酵素的脱重合の主工程を含み、ここで、酵素的脱重合の前記主工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kgであり、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも99%が塩の形態にある、方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、反応媒体中において、テレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、前記少なくとも1種のポリエステルの予備酵素的脱重合工程、好ましくは、6.5~10の所定のpHで行われる予備酵素的脱重合工程と、4~6のpHで行われる酵素的脱重合の主工程とを含む、方法を提供することでもある。
【0010】
好ましくは、予備脱重合工程のpHを塩基の添加により前記所定のpHにレギュレーションし、pHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも5g/kg、好ましくは、少なくとも15g/kg、より好ましくは、少なくとも25g/kgかつ好ましくは、多くとも110g/kg、より好ましくは、多くとも100g/kgに達した時に停止する。
【0011】
好ましくは、本発明の方法は、以下:
a. 7.5~8.5にレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で行われる予備酵素的脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHがレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で行われる主脱重合工程と
を含み、ここで、各脱重合工程は、プラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な酵素とを少なくとも接触させることを含み、ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kg、より好ましくは、30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する。
【0012】
本発明の別の目的は、テレフタル酸(TA)の少なくとも1種のモノマーを含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品の分解方法に使用するのに適した反応媒体であって、該反応媒体の液相中に、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kg 当量TA(ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも99%が塩の形態にある)と、場合により、ポリエステルを分解可能な少なくとも1種の酵素とを含む、反応媒体を提供することである。
【0013】
発明の詳細な説明
定義
本発明の文脈において、「ポリエステル含有材料」又は「ポリエステル含有製品」は、結晶性、半結晶性又は全体が非晶質の形態にある少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品等の製品を指す。特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のプラスチック材料製の任意の品目、例えば、プラスチックシート、チューブ、ロッド、プロファイル、型、フィルム、塊状ブロック、繊維等を指す。これらは、少なくとも1種のポリエステル及び場合により、他の物質又は添加剤、例えば、可塑剤、鉱物もしくは有機充填剤を含有する。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、プラスチック製品を製造するのに適した、溶融状態又は固体状態にあるプラスチックコンパウンド又はプラスチック配合物を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステルを含む繊維製品、布地又は繊維を指す。別の特定の実施態様では、ポリエステル含有材料は、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック廃棄物又は繊維廃棄物を指す。特に、ポリエステル含有材料は、プラスチック製品である。
【0014】
本発明の文脈において、「プラスチック物品」又は「プラスチック製品」という用語は、少なくとも1種のポリマーを含む任意の品目又は製品、例えば、プラスチックシート、チューブ、ロッド、プロファイル、型、塊状ブロック、繊維等を指すのに使用される。好ましくは、プラスチック物品は、製造品、例えば、硬質又は軟質包装(ボトル、トレイ、カップ等)、農業用フィルム、バッグ及びサック、使い捨て品目等、カーペットくず、布地、繊維製品等である。プラスチック物品は、追加の物質又は添加剤、例えば、可塑剤、鉱物、有機充填剤又は染料を含有する場合がある。本発明の文脈において、プラスチック物品は、半結晶性及び/もしくは非晶質ポリマー並びに/又は添加剤の混合物を含む場合がある。
【0015】
「ポリマー」は、その構造が共有化学結合により連結された複数の繰り返し単位(すなわち、「モノマー」)で構成されている化合物又は化合物の混合物を指す。本発明の文脈において、「ポリマー」という用語は、プラスチック製品の組成に使用されるこのような化合物を指す。
【0016】
「ポリエステル」という用語は、主鎖にエステル官能基を含有するポリマーを指す。エステル官能基は、3つの他の原子に結合した炭素:炭素に単結合、酸素に二重結合及び酸素に単結合を特徴とする。単結合した酸素は、別の炭素に結合している。主鎖の組成に応じて、ポリエステルは、脂肪族、芳香族又は半芳香族となる場合がある。ポリエステルは、ホモポリマー又はコポリマーである場合がある。例として、ポリエチレンテレフタラートは、2つのモノマー:テレフタル酸及びエチレングリコールで構成される半芳香族コポリマーである。
【0017】
「脱重合」という用語は、ポリマー又はポリマーを含有するプラスチック物品に関連して、ポリマー又は前記プラスチック物品の少なくとも1種のポリマーが脱重合されかつ/又は分解されて、より小さな分子、例えば、モノマー及び/もしくはオリゴマー並びに/又は任意の分解生成物になるプロセスを指す。
【0018】
本発明によれば、「オリゴマー」は、2~約20のモノマー単位を含有する分子を指す。例として、PETから回収されるオリゴマーは、メチル-2-ヒドロキシエチルテレフタラート(MHET)並びに/又はビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)並びに/又は1-(2-ヒドロキシエチル)及び/もしくは4-メチルテレフタラート(HEMT)並びに/又はジメチルテレフタラート(DMT)を含む。
【0019】
「当量テレフタル酸」又は「当量TA」という用語は、テレフタル酸分子の任意の形態、すなわち、
-単独のテレフタル酸分子に対応するテレフタル酸の酸形態(TAH2)、すなわち、C8H6O4
-1つ以上のカチオン、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、ヒドロニウム(TAH-、TA2-)と会合して、テレフタル酸の塩(以下、「TA塩」)を形成しているテレフタル酸分子
-オリゴマー(及びそれにより他のモノマーと会合している)、例えば、MHETに含まれるテレフタル酸分子
を指定するのに使用される。前記オリゴマーは、塩の形態にある、すなわち、1つ以上のカチオンと会合している場合がある(以下、「オリゴマー塩」)。
【0020】
当量TAという用語は、該分解方法のポリマー対象物に含まれるTAモノマーを企図するものではない。
【0021】
本発明の実施態様では、当量TAは、完全に塩の形態にあり、すなわち、当量TAは、TA塩及び/又はオリゴマー塩に相当する。
【0022】
本発明によれば、反応媒体の液相中の「当量テレフタル酸濃度」又は「当量TA濃度」は、前記液相中で測定された可溶化当量TAの量を指し、可溶化当量TAは、例えば、可溶化TAH2;可溶性TA塩のTA部分(TAH-、TA2-)、可溶性MHETのTA部分又は他の可溶性オリゴマー(塩の形態にあるオリゴマーを含む)を含む。当量TA濃度を当業者に公知の任意の手段、特に、HPLCにより測定することができる。当量TA濃度は、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、1kg 該反応媒体の液相当たりのg 当量TA(g/kg)で表わされる。
【0023】
「反応媒体」という用語は、脱重合工程中に反応器に存在する全ての要素及び化合物(液体、酵素、ポリエステル、前記ポリエステルの脱重合により生じるモノマー及びオリゴマーを含む)を指し、反応器の内容物とも呼ばれる。
【0024】
本発明によれば、「反応媒体の液相」は、固体及び/又は懸濁粒子を何ら含まない反応媒体を指す。前記液相は、液体と、その中に溶解している全ての化合物(酵素、モノマー、塩等を含む)を含む。この液相を当業者に公知の手段、例えば、ろ過、デカンテーション、遠心分離等を使用して、該反応媒体の固相から分離し、回収することができる。本発明の文脈において、液相は、特に、残留ポリエステル(すなわち、非分解性及び不溶性のポリエステル)及び沈殿モノマーを含まない。
【0025】
本発明の方法
本発明者らは、プラスチック製品の酵素的分解方法の最適化に取り組むことにより、工業的性能に適合する酵素活性を維持しながら、塩基の消費を低減することにより、副生成物(塩)の生成を回避し、プラスチック製品の分解方法の経済的利益を改善することが可能であることを発見した。とりわけ、本発明者らは、ポリエステルの酵素的脱重合を反応媒体が既に一定量の塩の形態にある当量テレフタル酸を含有する場合、塩基を何ら加えることなく、酸性pHで行うことができることを発見した。このため、本発明者らは、酸性での酵素的脱重合工程を、主に塩の形態にある規定濃度の当量テレフタル酸を含む反応媒体中で行う方法を開発した。有利には、前記酸性脱重合工程を該反応媒体のpHを何らレギュレーションすることなく行う。有利には、前記方法は、酸性での脱重合工程の前に、該反応媒体中の当量テレフタル酸が前記規定濃度に到達することを可能にする予備工程を含む。
【0026】
このため、本発明の目的は、テレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための方法であって、pH4~6で行われる前記少なくとも1種のポリエステルの酵素的脱重合の主工程を含み、ここで、前記酵素的脱重合工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kgであり、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%が塩の形態にある、方法を提供ことである。
【0027】
好ましくは、前記反応媒体の液相中の当量TAの少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%が、塩の形態にある。
【0028】
主脱重合工程
本発明によれば、主脱重合工程(「酸性での脱重合工程」とも呼ばれる)をpH4~6で行う。
【0029】
主脱重合工程の反応媒体は、少なくとも1種のTAのモノマーを含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と、液体と、前記少なくとも1種のポリエステルを分解可能な少なくとも1種の酵素と、大部分が塩の形態にある液相中の規定濃度の当量TAとを少なくとも含む。
【0030】
有利には、主脱重合工程のpHは調節されない、すなわち、主脱重合工程中にpHを維持するために、塩基を該反応媒体に添加しない。
【0031】
実際、本発明者らは、該反応媒体の大部分が塩の形態にある当量TAが特定濃度に達すると、沈殿前の溶液中のその酸の形態(TAH2)にあるTAの最大濃度に関連する物理化学的平衡により、該反応媒体のpHが自動的に(すなわち、前記pHを維持するための特定の動作を何ら必要とすることなく)維持されることを発見した。該反応媒体の液相がTAで飽和しているこのような酸性条件では、任意の追加のテレフタル酸は沈殿し、このため、不溶性になる。その結果、酸性での脱重合工程の間、該反応媒体中で沈殿する生成されたテレフタル酸は、該反応媒体のpHに何ら影響を及ぼさない。
【0032】
本発明によれば、主脱重合工程を4~6のpHで行う。好ましくは、主脱重合工程を4~6に含まれる一定のpH又はターゲットpHを行う。本発明の文脈において、「一定のpH」は、所定のpH+/-0.2、好ましくは、所定のpH+/-0.1、より好ましくは、+/-0.05を指す。
【0033】
好ましくは、主脱重合工程を4~5.5のpH、より好ましくは、4.5~5.5のpH、さらにより好ましくは、5~5.5で行う。特に、主脱重合工程をpH5.2+/-0.2、好ましくは、pH5.2+/-0.1で行う。代替的には、主脱重合工程をpH5.3+/-0.2、好ましくは、pH5.3+/-0.1で行う。代替的には、主脱重合工程をpH5.4+/-0.1、代替的には、pH5.45+/-0.05で行う。
【0034】
本発明によれば、主脱重合工程を40℃~80℃、好ましくは、50℃~72℃、より好ましくは、50℃~65℃、さらにより好ましくは、50℃~60℃の温度で行う。実施態様において、主脱重合工程を55℃~60℃又は50℃~55℃で行う。別の実施態様では、主脱重合工程を55℃~65℃で行う。別の実施態様では、主脱重合工程を60℃~72℃、好ましくは、60℃~70℃で行う。実施態様において、主脱重合工程を60℃+/-1℃で行う。別の実施態様では、主脱重合工程を56℃+/-1℃で行う。実施態様において、主脱重合工程の温度は、目的のポリエステルのTg未満に維持される。本発明の文脈において、「目的のポリエステル」は、該分解方法のターゲットとなるテレフタル酸モノマー(TA)を少なくとも含むポリエステルを指す。有利には、温度は、所定の温度+/-1℃に維持される。
【0035】
実施態様において、主脱重合工程を5.0~5.5のpH及び50℃~65℃の温度で行う。
【0036】
本発明によれば、主な脱重合工程を、プラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な酵素(例えば、クラスEC:3.1.1に属する酵素)とを接触させることにより行う。好ましい実施態様では、該酵素は、デポリメラーゼ、より好ましくは、エステラーゼ、さらにより好ましくは、リパーゼ又はクチナーゼである。
【0037】
主脱重合工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度は、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kgかつ多くとも80g/kg、より好ましくは、多くとも70g/kgであり、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%は、塩の形態にある。
【0038】
実施態様において、主脱重合工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度は、20g/kg~80g/kg、好ましくは、30g/kg~80g/kg、より好ましくは、30g/kg~70g/kgに含まれ、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%は、塩の形態にある。
【0039】
該反応媒体の液相中の塩の形態にある当量TAを少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%に到達させるために、主脱重合工程を行う前に、塩基を該反応媒体に導入して、TA又はオリゴマーとTA塩(又はオリゴマー塩)を形成することができる。当業者に公知の任意の塩基を使用することができる。特に、塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)又はアンモニア(NH4OH)からなる群より選択される。有利には、塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)である。
【0040】
実施態様において、該反応媒体の液相中の当量TA濃度は、10g/kg~80g/kgに含まれ、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にあり、主脱重合工程を5~5.5に含まれるpHで行う。
【0041】
実施態様において、該反応媒体の液相中の当量TA濃度は、10g/kg~60g/kg、好ましくは、20g/kg~50g/kg、より好ましくは、30g/kg~50g/kgに含まれ、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にあり、主脱重合工程をpH5.25+/-0.1で行う。
【0042】
別の実施態様では、該反応媒体の液相中の当量TA濃度は、30g/kg~80g/kg、好ましくは、50g/kg~80g/kgに含まれ、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にあり、主脱重合工程をpH5.45+/-0.05で行う。
【0043】
実施態様において、主脱重合工程を5.0~5.5のpHで行い、該反応媒体の液相中の当量TA濃度は、5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kgに含まれ、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にある。特定の実施態様では、主脱重合工程を50℃~65℃の温度で行う。
【0044】
特定の実施態様では、追加のポリエステル及び/又は酵素を主脱重合工程の間に、1回又は数回、該反応媒体に加える。
【0045】
予備脱重合工程
実施態様において、主脱重合工程のための反応媒体は、主脱重合工程の前に、初期反応媒体中でプラスチック製品と脱重合剤とを接触させることにより6.5~10の所定のpHで行われる予備脱重合工程を行うことにより得られる。本発明によれば、予備工程は、プラスチック製品と化学的及び/又は生物学的脱重合剤から選択される脱重合剤とを接触させることを含む。したがって、初期反応媒体(すなわち、予備脱重合工程前の反応媒体)は、少なくとも1種のTAモノマーを含む少なくとも1種のポリエステルを含む少なくとも1種のプラスチックと、液体と、少なくとも1種の脱重合剤とを含む。有利には、前記初期反応媒体は、当量TAが除去されている。
【0046】
この予備分解工程の目的は、主脱重合工程を行うのに必要な反応媒体中の想定される当量TA濃度に到達するために、プラスチック製品のポリエステルを少なくとも部分的に分解して、TAモノマーを少なくとも含ませることである。
【0047】
実施態様において、前記予備分解工程に使用される脱重合剤は、生物学的脱重合剤である。
【0048】
好ましくは、予備脱重合工程は、プラスチック製品とプラスチック製品のポリエステルを分解可能な少なくとも1種の酵素とを接触させることにより行われる酵素的脱重合工程である。好ましくは、脱重合剤は、デポリメラーゼ、より好ましくは、エステラーゼ、さらにより好ましくは、リパーゼ又はクチナーゼである。
【0049】
前記予備脱重合工程の間、該反応媒体のpHは、塩基の添加により、所定のpH+/-0.5にレギュレーションされる。当業者に公知の任意の塩基を使用することができる。特に、pHを水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)又はアンモニア(NH4OH)からなる群より選択される塩基を該反応媒体に加えることによりレギュレーションすることができる。有利には、塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)である。好ましくは、pHは、所定のpH+/-0.1、好ましくは、±0.05にレギュレーションされる。すなわち、塩基は、前記所定のpH+/-0.1、好ましくは、+/-0.05を下回るpHへのどのような低下も防止するのに必要な量で、該反応媒体に加えられる。前記予備脱重合工程中のpHのレギュレーションにより、該反応媒体中でのTA塩及び/又はオリゴマー塩の生成がもたらされ、したがって、当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%が、塩の形態となる。
【0050】
実施態様において、予備酵素的脱重合工程の所定のpHは、6.50~10.00、好ましくは、7.00~9.50、より好ましくは、7.00~9.00、さらにより好ましくは、7.50~8.50である。好ましい実施態様では、所定のpHは、7.00超、好ましくは、7.50超、より好ましくは、pH8.00+/-0.1である。
【0051】
特定の実施態様では、予備脱重合工程を、少なくとも1種の分解酵素を使用することにより行い、所定のpHは、前記少なくとも1種の酵素の至適pH+/-0.5である。「酵素の至適pH」は、酵素が所定の温度条件及び所定の媒体で最高の分解率を示すpHを指す。有利には、酵素の至適pHは、初期反応媒体中での酵素の至適pHである。
【0052】
実施態様において、予備脱重合工程を50℃~80℃、好ましくは、55℃~75℃、55℃~72℃、60℃~72℃、より好ましくは、65℃+/-5℃、好ましくは、+/-2℃又は+/-1℃の温度で行う。実施態様において、温度は、55℃~70℃、55℃~65℃、好ましくは、60℃+/-5℃、好ましくは、+/-2℃又は+/-1℃に維持される。実施態様において、温度は、60℃~80℃、65℃~75℃、好ましくは、72℃+/-5℃、好ましくは、+/-2℃又は+/-1℃に維持される。実施態様において、予備脱重合工程を60℃+/-5℃、好ましくは、+/-2℃又は+/-1℃で行う。実施態様において、予備脱重合工程の温度は、目的のポリエステルのTg未満に維持される。有利には、温度は、所定の温度+/-1℃に維持される。
【0053】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品を分解するための方法であって、反応媒体中で実施され、以下:
a. 6.5~10+/-0.5にレギュレーションされた所定のpHで行われる、上記された予備脱重合工程と、
b. 4~6+/-0.5のpHで行われる、上記された主脱重合工程と
を含み、ここで、両脱重合工程がプラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な酵素とを少なくとも接触させることを含む、方法を提供することである。
【0054】
この実施態様によれば、予備脱重合工程から主脱重合工程への移行を、予備脱重合工程のpHレギュレーションを停止することにより行う。
【0055】
好ましくは、工程(a)のpHを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも5g/kg、好ましくは、少なくとも15g/kg、より好ましくは、少なくとも25g/kgになるまでレギュレーションする。好ましくは、工程(a)におけるpHレギュレーションを該反応媒体中の当量TA濃度が多くとも110g/kg、好ましくは、多くとも100g/kgに達した時に停止する。
【0056】
実施態様において、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が15g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kg、より好ましくは、30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する。特に、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~40g/kg、30g/kg~50g/kg、30g/kg~60g/kg、30g/kg~70g/kg、30g/kg~80g/kg、30g/kg~90g/kg、40g/kg~50g/kg、40g/kg~60g/kg、40g/kg~70g/kg、40g/kg~80g/kg、40g/kg~90g/kg、40g/kg~95g/kg、50g/kg~60g/kg、50g/kg~70g/kg、50g/kg~80g/kg、50g/kg~90g/kg、50g/kg~95g/kg、60g/kg~70g/kg、60g/kg~80g/kg、60g/kg~90g/kg、60g/kg~95g/kg、70g/kg~80g/kg、70g/kg~90g/kg、70g/kg~95g/kg、80g/kg~90g/kg、80g/kg~95g/kg、90g/kg~95g/kgに含まれるように停止する。
【0057】
該反応媒体中の当量TA濃度の測定又は監視に代えて、予備脱重合工程の間に、前記予備脱重合中に生成されたTAを中和し、それにより、pHをレギュレーションするために、該反応媒体に加えられる塩基の量をモニターすることが可能である。したがって、本発明によれば、前記反応媒体中の当量TA濃度の監視を予備脱重合工程中の該反応媒体への塩基添加の追跡調査に置き換えることができる。
【0058】
したがって、実施態様において、予備脱重合工程のpHを該反応媒体の液相に加えられる塩基の量が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも2g/kg、好ましくは、少なくとも12g/kgに達するまでレギュレーションする(例えば、塩基を予備脱重合工程中に添加する)。好ましくは、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられる塩基の量が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、多くとも65g/kg、好ましくは、多くとも53g/kgに達した時に停止する。実施態様において、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられる塩基の量が2g/kg~65g/kg、好ましくは、12g/kg~53g/kgに含まれた時に停止する。実施態様において、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられる塩基の量が12g/kg~15g/kg、12g/kg~20g/kg、12g/kg~30g/kg、12g/kg~40g/kg、12g/kg~50g/kg、12g/kg~60g/kg、15g/kg~20g/kg、15g/kg~30g/kg、15g/kg~40g/kg、15g/kg~50g/kg、15g/kg~53g/kg、15g/kg~60g/kg、15g/kg~65g/kg、20g/kg~30g/kg、20g/kg~40g/kg、20g/kg~50g/kg、20g/kg~53g/kg、20g/kg~60g/kg、20g/kg~65g/kg、30g/kg~40g/kg、30g/kg~50g/kg、30g/kg~53g/kg、30g/kg~60g/kg、30g/kg~65g/kg、40g/kg~50g/kg、40g/kg~53g/kg、40g/kg~60g/kg、40g/kg~65g/kg、45g/kg~53g/kg、45g/kg~60g/kg、45g/kg~65g/kg、50g/kg~53g/kg、50g/kg~60g/kg、50g/kg~65g/kg、53g/kg~60g/kg、53g/kg~65g/kgに含まれた時に停止する。特定の実施態様では、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~95g/kg、特に、30g/kg~40g/kg、30g/kg~50g/kg、30g/kg~60g/kg、30g/kg~70g/kg、30g/kg~80g/kg、30g/kg~90g/kg、40g/kg~50g/kg、40g/kg~60g/kg、40g/kg~70g/kg、40g/kg~80g/kg、40g/kg~90g/kg、40g/kg~95g/kg、50g/kg~60g/kg、50g/kg~70g/kg、50g/kg~80g/kg、50g/kg~90g/kg、50g/kg~95g/kg、60g/kg~70g/kg、60g/kg~80g/kg、60g/kg~90g/kg、60g/kg~95g/kg、70g/kg~80g/kg、70g/kg~90g/kg、70g/kg~95g/kg、80g/kg~90g/kg、80g/kg~95g/kg、90g/kg~95g/kgに含まれるようにかつ該反応媒体に加えられる塩基の量が12g/kg~53g/kg、12g/kg~45g/kg、12g/kg~38g/kg、特に、12g/kg~15g/kg、12g/kg~20g/kg、12kg~30g/kg、12kg~40g/kg、12kg~50g/kg、15kg~20g/kg、15kg~30g/kg、15g/kg~38g/kg、15g/kg~40g/kg、15g/kg~50g/kg、15g/kg~53g/kg、20g/kg~30g/kg、20g/kg~38g/kg、20g/kg~40g/kg、20g/kg~45g/kg、20g/kg~50g/kg、20g/kg~53g/kg、30g/kg~38g/kg、30g/kg~40g/kg、30g/kg~45g/kg、30g/kg~50g/kg、30g/kg~53g/kg、40g/kg~50g/kg、40g/kg~53g/kg、45g/kg~50g/kg、45g/kg~53g/kg、50g/kg~53g/kgに含まれた時に停止する。
【0059】
したがって、実施態様において、予備脱重合工程のpHを該反応媒体の液相に加えられるNaOHの量が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも2g/kg、より好ましくは、少なくとも12g/kgに達するまで、NaOHを加えることによりレギュレーションする。好ましくは、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられるNaOHの量が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、多くとも45g/kg、好ましくは、多くとも38g/kgに達した時に停止する。実施態様において、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられるNaOHの量が2g/kg~45g/kg、好ましくは、12g/kg~38g/kgに含まれた時に停止する。特に、pHレギュレーションに使用される塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)であり、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~95g/kgにふくまれるようにかつ該反応媒体に加えられるNaOHの量が12g/kg~38g/kgに含まれた時に停止する。
【0060】
代替的には、予備脱重合工程のpHを該反応媒体の液相に加えられるKOHの量が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも3g/kg、より好ましくは、少なくとも17g/kgに達するまで、KOHを加えることによりレギュレーションする。好ましくは、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられるKOHの量が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、多くとも65g/kg、好ましくは、多くとも53g/kgに達した時に停止する。実施態様において、予備脱重合工程のpHレギュレーションを該反応媒体に加えられるKOHの量が3g/kg~65g/kg、好ましくは、17g/kg~53g/kgに含まれた時に停止する。
【0061】
有利には、予備脱重合工程のpHレギュレーションを初期反応媒体に導入された目的のポリエステルのうちの少なくとも5%、好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%が脱重合された時に停止する。特に、予備脱重合工程のpHレギュレーションを初期反応媒体に導入された目的のポリエステルのうちの多くとも70%、好ましくは、多くとも60%がモノマー及び/又はオリゴマーに脱重合された時に停止する。別の実施態様では、予備脱重合工程のpHレギュレーションを初期反応媒体に導入された目的のポリエステルのうちの多くとも50%、好ましくは、多くとも40%、より好ましくは、多くとも30%が脱重合された時に停止する。特に、予備脱重合工程のpHレギュレーションを初期反応媒体に導入された目的のポリエステルのうちの20%~70%、好ましくは、40%~70%、より好ましくは、50%~60%が脱重合された時に停止する。
【0062】
実施態様において、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kgに含まれた時に停止し、後続の主脱重合工程を5.0~5.5のpHで行う。
【0063】
実施態様において、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が5g/kg~60g/kg、好ましくは、20g/kg~50g/kg、より好ましくは、30g/kg~50g/kgに含まれた時に停止し、主脱重合工程をpH5.25+/-0.10で行う。
【0064】
実施態様において、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~110g/kg、好ましくは、50g/kg~110g/kg、より好ましくは、50g/kg~95g/kgに含まれた時に停止し、主脱重合工程をpH5.45+/-0.05で行う。
【0065】
実施態様において、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相に加えられるNaOHの量が2g/kg~45g/kgに含まれた時に停止し、後続の主脱重合工程を5.0~5.5のpHで行う。
【0066】
実施態様において、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相に加えられるNaOHの量が2g/kg~25g/kg、好ましくは、8g/kg~20g/kg、より好ましくは、12g/kg~20g/kgに含まれた時に停止し、主脱重合工程をpH5.25+/-0.10で行う。
【0067】
実施態様において、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相に加えられるNaOHの量が12g/kg~45g/kg、好ましくは、20g/kg~45g/kg、より好ましくは、20g/kg~38g/kgに含まれた時に停止し、主脱重合工程をpH5.45+/-0.05で行う。
【0068】
実施態様において、本発明の方法は、以下:
a. 7.5~8.5にレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で行われる予備脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHはレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で行われる主脱重合工程と
を含み、ここで、各脱重合工程は、プラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な酵素とを少なくとも接触させることを含み、ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が5g/kg~110g/kg、好ましくは、30g/kg~100g/kg、より好ましくは、30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する。代替的には、主脱重合工程を5.0~5.5のpH(ここで、pHはレギュレーションされない)及び65℃~72℃の温度で行う。好ましくは、予備脱重合工程(a)のpHレギュレーションをNaOHの添加により行い、前記pHレギュレーションを該反応媒体の液相に加えられるNaOHの量が2g/kg~45g/kg、好ましくは、5g/kg~40g/kg、より好ましくは、12g/kg~38g/kgに含まれた時に停止する。実施態様において、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~50g/kgに含まれるように停止し、工程(b)をpH5.25+/-0.1で行う。代替的には、工程(a)におけるpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が50g/kg~110g/kg、好ましくは、50g/kg~95g/kgに含まれた時に停止し、工程(b)をpH5.45+/-0.05で行う。
【0069】
特定の実施態様では、pHが、主脱重合工程の間にターゲットpHを下回った場合、pHをターゲットpHまで上昇させるために、塩基の添加を場合により行うことができる。前記ターゲットpHは、有利には、主脱重合工程の実行前に規定される。特に、ターゲットpHは、4~6+/-0.5、好ましくは、+/-0.2、+/-0.1に含まれる。
【0070】
特定の実施態様では、本発明の方法は、予備脱重合工程と主脱重合工程との間に、主脱重合工程のターゲットpHに到達するために、塩基又は酸を該反応媒体に加える工程を含む場合がある。
【0071】
代替的には又は加えて、予備脱重合工程の脱重合剤は、化学的脱重合剤であることができる。このような場合、pHレギュレーションは、予備脱重合工程中に必要なく、予備脱重合工程を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液体の総重量に基づいて、少なくとも5g/kg、好ましくは、少なくとも15g/kg、より好ましくは、少なくとも25g/kgに達するまで行う。
【0072】
本発明によれば、予備脱重合工程及び主脱重合工程を有利には、同じ温度で行う。実施態様において、両工程を60℃+/-5℃、好ましくは、+/-2℃又は+/-1℃で行う。別の実施態様では、両工程を56℃+/-5℃、好ましくは、+/-2℃又は+/-1℃で行う。
【0073】
TA塩の添加
別の実施態様では、主脱重合工程を、規定濃度の当量TA(主に、塩の形態にある)を含む反応媒体を使用することにより、すなわち、予備脱重合工程を行うことなく直接行う。当業者に公知の任意の手段を、規定濃度の当量TAを含む主脱重合工程の反応媒体を調製するのに使用することができ、前記当量TAは、大部分が塩の形態にある。
【0074】
実施態様において、該反応媒体中の大部分が塩の形態にある当量TA(TA塩及び/又はオリゴマー塩)の規定濃度には、塩の形態にあるTAを加えることにより、例えば、テレフタル酸二ナトリウムC8H4Na2O4、テレフタル酸二カリウムC8H4K2O4、テレフタル酸二アンモニウムC8H12N2O4、テレフタル酸一ナトリウムC8H5NaO4、テレフタル酸一カリウムC8H5KO4及び/又はテレフタル酸一アンモニウムC8H10NO4を主脱重合工程の前に該反応媒体に加えることにより到達することができる。
【0075】
代替的に又は加えて、該反応媒体中の大部分が塩の形態にある当量TAの規定濃度を、該反応媒体にその酸の形態にあるTAと塩基との両方を加えて、TA塩を生成することにより達成することができる。
【0076】
好ましくは、TA塩(及び/もしくはオリゴマー塩並びに/又はその酸の形態にあるTAと塩基との両方を別々に)を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が主脱重合工程前の該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kg、好ましくは、多くとも80g/kg、より好ましくは、多くとも70g/kgに達するように加え、ここで、液相中の当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にある。
【0077】
実施態様において、TA塩(及び/もしくはオリゴマー塩並びに/又はその酸の形態にあるTAと塩基との両方を別々に)を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が20g/kg~80g/kgに含まれ、好ましくは、30g/kg~80g/kgに含まれ、より好ましくは、30g/kg~70g/kgに含まれるように達するように加え、ここで、液相中の当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にある。
【0078】
実施態様において、TA塩(及び/もしくはオリゴマー塩並びに/又はその酸の形態にあるTAと塩基との両方を別々に)を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が10g/kg~80g/kgに含まれ、好ましくは、30g/kg~80g/kgに含まれるように達するように加え、ここで、液相中の当量TAのうちの少なくとも90%が、塩の形態にあり、主脱重合工程を5~5.5に含まれるpHで行う。
【0079】
実施態様において、TA塩(及び/もしくはオリゴマー塩並びに/又はその酸の形態にあるTAと塩基との両方を別々に)を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が10g/kg~60g/kg、好ましくは、20g/kg~50g/kg、より好ましくは、30g/kg~50g/kgに含まれるように達するように加え、ここで、液相中の当量TAのうちの少なくとも90%が、塩の形態にあり、主脱重合工程をpH5.25+/-0.1で行う。
【0080】
別の実施態様では、TA塩(及び/もしくはオリゴマー塩並びに/又はその酸の形態にあるTAと塩基との両方を別々に)を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~80g/kg、好ましくは、50g/kg~80g/kgに含まれるように達するように加え、ここで、液相中の当量TAのうちの少なくとも90%が、塩の形態にあり、主脱重合工程をpH5.45+/-0.05で行う。
【0081】
実施態様において、該反応媒体に加えられるTA塩及び/又はオリゴマー塩は、上記(又はWO第2020/094661号)において定義された先の化学的及び/又は酵素的脱重合工程から回収され、好ましくは、6.5~10のpHでの塩基の添加によりレギュレーションされる。TA塩を任意の精製法、例えば、WO第2020/094661号に記載されている方法を使用して回収し、主脱重合工程の反応媒体中に加えることができる。
【0082】
実施態様において、主脱重合工程の反応媒体は、該反応媒体に外来TA塩(及び/もしくはオリゴマー塩並びに/又はその酸の形態にあるTAと塩基との両方を別々に)に加えることと、該反応媒体中のターゲット当量TA濃度に達するようにTA塩を生成する上記された予備脱重合工程を行うこととの両方により調製され、ここで、液相中の当量TAのうちの少なくとも90%は、塩の形態にある。
【0083】
酵素及び微生物
本発明によれば、少なくとも主脱重合工程及び場合により、予備脱重合工程を、TAモノマーを少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な酵素とを少なくとも接触させることにより行う。実施態様において、酵素的脱重合工程を、TAモノマーを少なくとも含む少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な前記酵素を発現しかつ分泌する微生物とを少なくとも接触させることにより行う。
【0084】
実施態様において、前記少なくとも1種の酵素は、4~10、特に、4~9のpHでポリエステル分解活性を示す。別の実施態様では、前記少なくとも1種の酵素は、6.5~10、特に、6.5~9の至適pHを有し、さらに、4~6のpH、好ましくは、5~5.5のpH及び/又は主脱重合工程のpHにおいてなおポリエステル分解活性を示す。
【0085】
本発明の文脈において、「ポリエステル分解活性」を当業者に公知の任意の手段により評価することができる。特に、「ポリエステル分解活性」を、特定のポリエステルの脱重合活性率の測定、アガープレート中に分散させた固体ポリエステル化合物を分解する割合の測定、反応器中のポリエステルの脱重合活性率の測定、放出される脱重合生成物(EG、TA、MHET...)の量の測定、ポリエステルの質量測定により評価することができる。
【0086】
実施態様において、ポリエステル分解活性を示す酵素は、デポリメラーゼから選択され、好ましくは、エステラーゼから選択される。好ましい実施態様では、該酵素は、リパーゼ又はクチナーゼから選択される。
【0087】
特定の実施態様では、該酵素は、エステラーゼである。特に、エステラーゼは、クチナーゼ、好ましくは、Thermobifida cellulosityca、Thermobifida halotolerans、Thermobifida fusca、Thermobifida alba、Bacillus subtilis、Fusarium solani pisi、Humicola insolens、Sirococcus conigenus、Pseudomonas mendocina、Thielavia terrestris、Saccharomonospora viridis、Thermomonospora curvataから選択される微生物由来のクチナーゼ又はそれらの任意の機能的変異体である。別の実施態様では、クチナーゼは、メタゲノムライブラリー、例えば、Sulaiman et al., 2012に記載されているLC-クチナーゼもしくはEP第3517608号に記載されているエステラーゼ又はWO第2021/005198号、同第2018/011284号、同第2018/011281号、同第2020/021116号、同第2020/021117号もしくは同第2020/021118号に列記されているデポリメラーゼを含むその任意の機能的変異体から選択される。別の特定の実施態様では、エステラーゼは、好ましくは、Ideonella sakaiensis由来のリパーゼ又はWO第2021/005199号に記載されているリパーゼを含むその任意の機能的変異体である。別の特定の実施態様では、デポリメラーゼは、Humicola insolens由来のクチナーゼ、例えば、UniprotにおいてA0A075B5G4で言及されるもの又はその任意の機能的変異体である。別の実施態様では、デポリメラーゼは、市販の酵素、例えば、Novozym 51032又はその任意の機能的変異体から選択される。
【0088】
別の特定の実施態様では、該酵素は、配列番号:1に示される全長アミノ酸配列及び/又は配列番号:3に示される全長アミノ酸配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、ポリエステル分解活性、特に、PET分解活性を示す酵素から選択される。
【0089】
実施態様において、該酵素は、PET分解活性を有する酵素(PETase)及び/又はMHET分解活性を有する酵素(MHETase)から選択される。
【0090】
本発明の文脈において、「MHET分解活性」を当業者に公知の任意の手段により評価することができる。例として、「MHET分解活性」を放出される脱重合生成物(エチレングリコールEG及びTA)の量の測定によるMHET分解活性率の測定により評価することができる。
【0091】
実施態様において、MHETaseをデポリメラーゼから選択することができ、好ましくは、エステラーゼから選択することができる。実施態様において、MHETaseは、リパーゼ又はクチナーゼから選択される。別の実施態様では、MHETaseは、クラスEC:3.1.1.102に属する酵素から選択される。
【0092】
特定の実施態様では、MHETaseは、Yoshida et al., 2016に開示されているような、Ideonella sakaiensisから単離されもしくはこれに由来するMHETase又はその任意の機能的変異体から選択される。別の特定の実施態様では、MHETaseは、配列番号:2に示される全長アミノ酸配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する酵素から選択される。
【0093】
特定の実施態様では、PETase及びMHETaseは、多酵素系、特に、2酵素系、例えば、Knott et al. 2020に開示されているIdeonella sakaiensisのPETase/MHETase系に含まれる。
【0094】
実施態様において、該酵素は、4~6の至適pHを有する酵素及び/又は4~6のpHでポリエステル分解活性を示す酵素から選択される。
【0095】
実施態様において、主脱重合工程及び予備酵素的脱重合工程を、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と少なくとも2種の酵素、好ましくは、前記ポリエステル分解活性を示す少なくとも2種の酵素とを接触させることにより行う、ここで、
-少なくとも第1の酵素は、6.5~10のpH、好ましくは、予備酵素的脱重合工程のpHで、前記ポリエステル分解活性を示し、
-少なくとも第2の酵素は、第1の酵素とは異なり、4~6のpH、好ましくは、主脱重合工程のpHで、前記ポリエステル分解活性を示す。
【0096】
実施態様において、両工程を、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と少なくとも2種の酵素、好ましくは、前記ポリエステル分解活性を示す少なくとも2種の酵素とを接触させることにより行い、ここで、
-少なくとも第1の酵素は、6.5~10のpH、好ましくは、予備酵素的脱重合工程のpHで、前記ポリエステル分解活性を示し、
少なくとも第2の酵素は、第1の酵素とは異なり、4~10のpHで前記活性を示す。
【0097】
特定の実施態様では、プラスチック製品は、PETを含み、両工程を、PETを少なくとも含むプラスチック製品と少なくとも2種の酵素、好ましくは、少なくとも1種のPETase及び少なくとも1種のMHETaseとを接触させることにより行う。実施態様において、予備脱重合工程を、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と少なくとも1種のPETaseと接触させることにより行い、主脱重合工程を、少なくとも1種のMHETaseと接触させることにより行う。実施態様において、予備脱重合工程を、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と少なくとも1種のPETaseとを接触させることにより行い、PETaseに加えて、少なくとも1種のMHETaseを主脱重合工程中に加える。特定の実施態様では、予備脱重合工程を、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品とPETaseとを少なくとも接触させることにより行い、PETaseに加えて、MHETaseを主脱重合工程中に加える。
【0098】
MHETaseをPETaseと同時に加えることができる。代替的に又は加えて、MHETaseをPETaseの後に、例えば、ポリエステルがPETaseにより少なくとも部分的に分解された後に加えることができる。
【0099】
実施態様において、プラスチック製品とPETase及びMHETaseとを同時に接触させる。別の実施態様では、プラスチック製品を最初にPETaseと接触させ、MHETaseをPETaseの後に該反応媒体に導入する。
【0100】
予備脱重合工程及び/又は主脱重合工程中でのPETase及びMHETaseの同時使用により、特定の実施態様では、相乗効果がもたらされ、その結果、PETase単独及びMHETase単独で得られる脱重合率の合計より高い脱重合率がもたらされる場合がある。
【0101】
実施態様において、予備脱重合工程及び/又は主脱重合工程に使用される酵素は、配列番号:1及び/又は配列番号:3に示される全長アミノ酸配列並びに配列番号:2のMHETaseに対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する酵素から選択される。
【0102】
該酵素は、可溶性の形態又は固相、例えば、粉末の形態であることができる。特に、それらを細胞膜もしくは脂質小胞又は例えば、ビーズ、カラム、プレート等の形態にある合成支持体、例えば、ガラス、プラスチック、ポリマー、フィルター、膜に結合させることができる。該酵素は、単離形態又は精製形態にあることができる。好ましくは、本発明の酵素は、微生物で発現され、微生物に由来し、微生物から分泌され、単離され又は精製される。該酵素を当技術分野においてそれ自体公知の技術により精製することができ、従来の技術下で保存することができる。該酵素を例えば、その安定性、活性及び/又はポリマーへの吸着性を改善するためにさらに修飾することができる。例えば、該酵素は、安定化及び/又は可溶化成分、例えば、水、グリセロール、ソルビトール、マルトデキストリン及び/又はシクロデキストリンを含むデキストリン、デンプン、プロパンジオール、塩等と共に配合される。
【0103】
別の実施態様では、脱重合の一方の工程又は両方の工程を、デポリメラーゼを発現しかつ分泌する少なくとも1種の微生物を使用して行う。本発明の文脈において、該酵素を培養培地中に分泌させ又は前記酵素を固定することができる微生物の細胞膜に向かわせることができる。前記微生物は、デポリメラーゼを天然に合成することができ又は前記微生物は、デポリメラーゼをコードするリコンビナントヌクレオチド配列が例えば、ベクターを使用して挿入されているリコンビナント微生物であることができる。例えば、目的のデポリメラーゼをコードするヌクレオチド分子が、ベクター、例えば、プラスミド、リコンビナントウイルス、ファージ、エピソーム、人工染色体等に挿入される。ホスト細胞のトランスフォーメーション及びホストに適した培養条件は、当業者に周知である。
【0104】
リコンビナント微生物を直接使用することができる。代替的に又は加えて、リコンビナント酵素を培養培地から精製することができる。任意の一般的に使用される分離/精製手段、例えば、塩析、ヒートショック、ゲルろ過、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーをこの目的で使用することができる。特定の実施態様では、目的のデポリメラーゼを合成しかつ分泌することが公知の微生物を使用することができる。
【0105】
本発明によれば、種々の脱重合工程の間に、複数の酵素及び/又は複数の微生物をまとめて又は連続して使用することができる。
【0106】
本発明によれば、該反応媒体中の酵素量は、0.1mg/g~15mg/g ターゲットとなるポリエステル、好ましくは、0.1mg/g~10mg/g、より好ましくは、0.1mg/g~5mg/g、さらにより好ましくは、0.5mg/g~4mg/gで含まれる。好ましくは、該反応媒体中の酵素量は、多くとも4mg/g、好ましくは、多くとも3mg/g、より好ましくは、多くとも2mg/g ターゲットとなるポリエステルである。少なくとも1種のPETase及び少なくとも1種のMHETaseが使用される場合、該反応媒体中のPETase量は、0.1mg/g~10mg/g、好ましくは、0.1mg/g~5mg/g、より好ましくは、0.5mg/g~4mg/g ターゲットとなるポリエステルで含まれ、該反応媒体中のMHETase量は、0.1mg/g~5mg/g、好ましくは、0.1mg/g~2mg/g ターゲットとなるポリエステルで含まれる。
【0107】
本発明の実施態様によれば、本発明の方法は、以下:
a. 7.5~8.5でレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で、プラスチック製品と少なくとも1種のPETaseとを接触させることにより行われる予備脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHはレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で、プラスチック製品と少なくとも1種のPETase及び場合により、少なくとも1種のMHETaseとを接触させることにより行われる主脱重合工程と
を含み、ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する。場合により、追加量の酵素(PETase及び/又はMHETase)を主脱重合工程の間に、該反応媒体に1回又は複数回加えることができる。
【0108】
本発明の実施態様によれば、本発明の方法は、以下:
a. 7.5~8.5でレギュレーションされた所定のpH及び60℃~72℃の温度で、プラスチック製品と少なくとも1種のPETase及び少なくとも1種のMHETaseとを同時に接触させることにより行われる予備脱重合工程と、
b. 5.0~5.5のpH(ここで、pHはレギュレーションされない)及び50℃~65℃の温度で行われる主脱重合工程と
を含み、ここで、工程(a)のpHレギュレーションを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が30g/kg~95g/kgに含まれるように停止する。場合により、追加量の酵素(PETase及び/又はMHETase)を主脱重合工程の間に、該反応媒体に1回又は複数回加えることができる。
【0109】
有利には、PETaseは、配列番号:1に示される全長アミノ酸配列及び/又は配列番号:3に示される全長アミノ酸配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、ポリエステル分解活性を示す酵素から選択され、MHETaseは、配列番号:2に示される全長アミノ酸配列に対して、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有する酵素から選択される。
【0110】
化学的脱重合剤
実施態様において、予備脱重合工程は、化学的脱重合工程を含むか又は同工程からなり、この化学的脱重合工程を、少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック製品と少なくとも1種の化学剤とを接触させることにより行う。
【0111】
実施態様において、化学剤は、触媒である。化学剤を、ターゲットとなるポリエステルを分解しかつ/又は脱重合する能力を有することについて、当業者に公知の任意の触媒から選択することができる。有利には、触媒は、金属触媒又は安定で毒性のないヒドロシラン(PMHS、TMDS)、例えば、市販のB(C6F5)3及び[PhC3
+,B(C6F5)4-]触媒から選択される。特に、触媒は、アルコキシド、カーボナート、アセタート、水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化鉄、酢酸亜鉛、ゼオライトから選択される。一部の実施態様では、触媒は、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アンチモン化合物、亜鉛化合物、カドミウム化合物、マンガン化合物、マグネシウム化合物、コバルト化合物、ケイ素化合物、スズ化合物、鉛化合物及びアルミニウム化合物のうちの少なくとも1種を含む。特に、触媒は、二酸化ゲルマニウム、酢酸コバルト、四塩化チタン、リン酸チタン、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ-n-プロポキシド、チタンテトラエトキシド、チタンテトラメトキシド、テトラキス(アセチルアセトナト)チタン錯体、テトラキス(2,4-ヘキサンジオナト)チタン錯体、テトラキス(3,5-ヘプタンジオナト)チタン錯体、ジメトキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジエトキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジ-n-プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジブトキシビス(アセチルアセトナト)チタン錯体、ジヒドロキシビスグリコラートチタン、ジヒドロキシビスグリコラートチタン、ジヒドロキシビスラクタートチタン、ジヒドロキシビス(2-ヒドロキシプロピオナート)チタン、ラクタートチタン、オクタンジオラートチタン、ジメトキシビストリエタノールアミナートチタン、ジエトキシビストリエタノールアミナートチタン、ジブトキシビストリエタノールアミナートチタン、ヘキサメチルジチタナート、ヘキサエチルジチタナート、ヘキサプロピルジチタナート、ヘキサブチルジチタナート、ヘキサフェニルジチタナート、オクタメチルトリチタナート、オクタエチルトリチタナート、オクタプロピルトリチタナート、オクタブチルトリチタナート、オクタフェニルトリチタナート、ヘキサアルコキシジチタナート、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、メチルシリカート、塩化亜鉛、酢酸鉛、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、ゼオライト、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化第二鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、三酸化アンチモン及び三酢酸アンチモンを含む。
【0112】
代替的に又は加えて、触媒は、ナノ粒子から選択される。
【0113】
代替的には、化学剤は、ポリマー結合、特に、エステル結合を切断可能な酸触媒又は塩基触媒である。特に、エステル結合の切断に関与する化学剤は、水酸化物とこの水酸化物を溶解することができるアルコールとの混合物である。水酸化物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物及び水酸化アンモニウムから選択され、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム、tetra-アルキルアンモニウムヒドロキシドから選択され、アルコールは、直鎖、分岐鎖、環状アルコール又はそれらの組み合わせ、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールから選択される直鎖C1~C4アルコールから選択される。
【0114】
特定の実施態様では、化学剤は、ポリエステルを膨潤させることが可能な非極性溶媒(すなわち、膨潤剤)とエステル結合を切断し又は加水分解することができる作用剤との混合物である。ここで、膨潤剤は、好ましくは、ジクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロホルム、テトラクロロメタン及びトリクロロエタンから選択される塩素化溶媒である。別の特定の実施態様では、化学剤は、エチレングリコール、塩酸、硫酸又はルイス酸から選択される酸である。
【0115】
ポリエステル
実施態様において、本発明の方法は、プラスチック廃棄回収物及び/又は産業廃棄物由来のプラスチック製品を使用して実施される。とりわけ、本発明の方法を家庭用プラスチック廃棄物の分解に使用することができる。家庭用プラスチック廃棄物は、プラスチックボトル、プラスチックトレイ、プラスチックバッグ、プラスチック包装、軟質プラスチック及び/又は硬質プラスチックを含み、食品残渣、界面活性剤等で汚れている場合がある。代替的に又は加えて、本発明の方法は、使用済みプラスチック繊維、例えば、布地、繊維製品及び/又は産業廃棄物から提供される繊維を分解するのに使用することができる。とりわけ、本発明の方法をPETプラスチック及び/又はPET繊維廃棄物、例えば、布地、繊維製品及び/又はタイヤから生じるPET繊維に使用することができる。
【0116】
本発明によれば、プラスチック製品は、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンイソソルビドテレフタラート(PEIT)、ポリブチレンアジパートテレフタラート(PBAT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラート(PCT)、グリコシル化ポリエチレンテレフタラート(PETG)、ポリ(ブチレンスクシナート-コ-テレフタラート)(PBST)、ポリ(ブチレンスクシナート/テレフタラート/イソフタラート)-コ-(ラクタート)(PBSTIL)から選択される少なくとも1種のポリエステル及びこれらのポリマーのブレンド/混合物を含み、好ましくは、ポリエチレンテレフタラート(PET)から選択される。
【0117】
実施態様において、プラスチック製品は、該分解方法のターゲットとなる少なくとも1種の非晶質ポリエステルを含む。
【0118】
実施態様において、プラスチック製品は、該分解方法のターゲットとなる少なくとも1種の結晶性ポリエステル及び/又は少なくとも1種の半結晶性ポリエステルを含む。本発明の文脈において、「半結晶性ポリエステル」は、結晶領域と非晶領域とが共存する部分結晶性ポリエステルを指す。半結晶性ポリエステルの結晶化度は、種々の分析法により推定することができ、典型的には、10~90%の範囲である。例えば、示差走査熱量測定(DSC)又はX線回折をポリマーの結晶化度を測定するのに使用することができる。
【0119】
実施態様において、プラスチック製品は、該分解方法のターゲットとなる結晶性ポリエステル及び/又は半結晶性ポリエステル並びに非晶質ポリエステルを含む。
【0120】
実施態様において、プラスチック物品を、ポリエステルと酵素との接触面積を大きくするためかつ/又は廃棄物由来の微生物の混入(charge)を減少させるために、その構造を物理的に変化させるように、主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)前処理することができる。前処理の例は、特許出願WO第2015/173265号に記載されている。
【0121】
本発明によれば、プラスチック製品のポリエステルを当業者に公知の任意の手段により、主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)非晶質化工程に供することが可能である。非晶質化プロセスの例は、特許出願WO第2017/198786号に記載されている。特定の実施態様では、ポリエステルを非晶質化プロセスに供し、続けて、任意の脱重合工程の前に、造粒及び/又は微粉化プロセスに供する。
【0122】
代替的には、プラスチック物品を当業者に公知の任意の手段により、主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)、発泡工程に供することが可能である。発泡前処理プロセスの例は、特許出願PCT/EP第2020/087209号に記載されている。
【0123】
好ましい実施態様では、プラスチック製品を主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)前処理し、プラスチック製品の目的のポリエステルは、主脱重合工程(又は予備脱重合工程)に供される前に、30%未満の結晶化度、好ましくは、25%未満、より好ましくは、20%未満の結晶化度を示す。
【0124】
反応器
本発明によれば、該方法を500mL超、1L超、好ましくは、2L、5L又は10L超の容積を有する任意の反応器中で実施することができる。特定の実施態様では、該方法を半工業的又は工業的規模で実施する。したがって、該方法を100L、150L、1000L、10000L、100000L、400000L超の容積を有する反応器中で実施することができる。
【0125】
本発明の文脈において、該反応器の総容積は、有利には、該反応媒体又は反応器の内容物の容積より少なくとも10%大きい。
【0126】
本発明によれば、該反応器の内容物は、該方法の間、撹拌下に維持される。攪拌速度は、該反応器中でプラスチック製品を懸濁させ、温度の均一性を保ちかつpHをレギュレーションする場合には、その精度を高めることを可能にするのに十分であるように、当業者によりレギュレーションされる。
【0127】
実施態様において、主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)導入されるポリエステルの濃度は、該反応媒体(又は初期反応媒体)の総重量に対して、150g/kg超、好ましくは、200g/kg超、より好ましくは、300g/kg超、さらにより好ましくは、400g/kg超である。
【0128】
特定の実施態様では、主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)導入されるポリエステルの濃度は、200g/kg~400g/kg、好ましくは、300g/kg~400g/kgに含まれる。代替的には、主脱重合工程の前に(又は予備脱重合工程がある場合には、その前に)導入されるポリエステルの濃度は、400g/kg~600g/kgに含まれる。
【0129】
好ましい実施態様では、該反応媒体は、液体として、水性溶媒、例えば、バッファー及び/又は水、好ましくは、水を含む。好ましい実施態様では、該反応媒体中の液体は、非水性溶媒、特に、無機溶媒を含まない。特定の実施態様では、該反応媒体中の液体は、水のみからなる。
【0130】
実施態様において、主脱重合工程の間に、追加量のポリエステル及び/又は酵素(例えば、PETase及び/又はMHETase)を該反応媒体に、連続的又は逐次的に加えることができる。特に、追加量のポリエステル及び/又は酵素を主脱重合工程の間に、1回又は複数回加えることができる。
【0131】
特に、ポリエステルを300g/kg~600g/kg ポリエステル、好ましくは、400g/kg~600g/kg、より好ましくは、500g/kg~600g/kgに含まれる、該反応媒体に導入されるポリエステルの最終濃度に達するように加えることができる。ポリエステルの最終濃度は、主脱重合工程前の反応媒体の総重量に基づいて又は初期反応媒体(すなわち、予備脱重合工程がある場合には、その前の媒体)の総重量に基づいて、全脱重合プロセスの間に、該反応媒体に導入されたポリエステルの総量に相当する。
【0132】
実施態様において、主脱重合工程の前に導入されるポリエステルの濃度は、該反応媒体の総重量に対して、300g/kg未満、好ましくは、200g/kg~300g/kgであり、追加のポリエステルを主脱重合工程の間に、該反応媒体に導入されるポリエステルの最終濃度が400g/kg超、より好ましくは、500g/kg超、さらにより好ましくは、500g/kg~600g/kgに達するように加える。このような実施態様では、主脱重合工程を好ましくは、pHが5~5.5であり、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の全重量に基づいて、30g/kg~70g/kgに含まれ、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも90%が塩の形態にある反応媒体中で行う。場合により、追加の酵素も主脱重合工程の間に加える。
【0133】
特定の実施態様では、反応媒体中で実施される本発明の方法は、以下:
a. 6.5~10、好ましくは、7.5~8.5にレギュレーションされた所定のpHで行われる予備脱重合工程と、
b. 5~5.5のpHで行われる主脱重合工程と
を含み、ここで、両脱重合工程は、プラスチック製品と前記ポリエステルを分解可能な酵素とを少なくとも接触させることを含む。ここで、予備脱重合工程の前に導入されるポリエステルの濃度は、初期反応媒体の総重量に対して、300g/kg未満、好ましくは、200g/kg~300g/kgであり、追加のポリエステルを主脱重合工程の間に、該反応媒体に導入されるポリエステルの最終濃度が初期反応媒体の総重量に基づいて、400g/kg超、より好ましくは、500g/kg超、さらにより好ましくは、500g/kg~600g/kgに達するように加え、ここで、工程(a)のpHを該反応媒体の液相中の当量TA濃度が該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも25g/kg、好ましくは、50g/kg~95g/kgになるまでレギュレーションする。
【0134】
場合により、追加の酵素も主脱重合工程の間に加える。
【0135】
また、本発明の目的は、本発明の分解方法の主脱重合工程を行うのに適した反応媒体を提供することでもあり、前記反応媒体は、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、該液相中に少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kg 当量TAを含み、ここで、前記当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%が、塩の形態にある。好ましくは、該反応媒体は、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、該液相中に多くとも80g/kg 当量TAを含む。
【0136】
精製
特定の実施態様では、ポリマー含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための方法は、脱重合工程により生じるモノマー及び/又はオリゴマー及び/又は分解生成物、好ましくは、テレフタル酸を回収し、場合により、精製する工程をさらに含む。脱重合により生じるモノマー及び/又はオリゴマー及び/又は分解生成物を連続的に又は逐次的に回収することができる。
【0137】
単一の種類のモノマー及び/もしくはオリゴマー又は複数の種類のモノマー及び/もしくはオリゴマーを回収することができる。回収されたモノマー及び/又はオリゴマー及び/又は分解生成物を、全ての適切な精製法を使用して精製し、場合により、再重合可能な形態に調整することができる。精製の例は、特許出願WO第1999/023055号に記載されている。特定の実施態様では、固体の形態下にあるTAの回収は、該反応媒体の液相から固相をろ過により分離することを含む。
【0138】
回収された固相を水、DMF、NMP、DMSO、DMAC又は可溶化TAに公知の任意の溶媒から選択される溶媒に溶解させかつ/又は分散させることができ、不純物を除去するためにろ過することができる。ついで、可溶化TAを当業者に公知の任意の手段により再結晶化することができる。
【0139】
該反応媒体の液相中に含まれるTA塩を、他の分解方法の該反応媒体の液相中の当量TAを規定濃度に到達させるために回収して、本発明の別の分解方法で再利用することができる。
【0140】
実施態様において、主脱重合工程の後に、MHETaseを、脱重合工程の間に生成されたMHETを加水分解して、TAを生成するために、精製プロセスの前に該反応媒体に加える。
【0141】
好ましい実施態様では、ついで、再重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを再利用して、ポリマーを合成することができる。当業者であれば、モノマー/オリゴマー及び合成されるポリマーに対するプロセスパラメーターを容易に適合させることができる。
【0142】
したがって、また、本発明の目的は、ポリエステル含有材料、例えば、少なくとも1種のTAモノマーを含む少なくとも1種のポリエステル、好ましくは、PETを含むプラスチック物品をリサイクルするための方法を提供すること並びに/又は少なくとも1種のTAモノマーを有する少なくとも1種のポリエステルを含むプラスチック物品からモノマー及び/もしくはオリゴマー及び/もしくは分解生成物、好ましくは、TAを製造する方法を提供することである。これらの方法は、プラスチック物品を4~6のpHで行われる主酵素的脱重合工程に供することと、モノマー及び/又はオリゴマーを回収し、場合により、精製することとを含み、ここで、前記酵素的脱重合工程を反応媒体中で行い、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TA濃度は、該反応媒体の液相の総重量に基づいて、少なくとも10g/kg、好ましくは、少なくとも20g/kg、より好ましくは、少なくとも30g/kgであり、ここで、前記反応媒体の液相中の当量TAのうちの少なくとも90%、好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも96%、97%、98%、99%は、塩の形態にある。
【0143】
ポリエステル含有材料、例えば、プラスチック製品を分解するための方法に関連して上記表わされた全ての特定の実施態様は、モノマー及び/又はオリゴマーを製造する方法並びにリサイクルする方法にも適用される。
【0144】
実施例
実施例1-酸性での主脱重合主工程と予備酵素的脱重合工程とを含む、PETを含むプラスチック製品の分解方法
27%の平均結晶化度を有するPETを98%含むボトル廃棄物から洗浄され、着色されたフレークを、このフレーク(押出機に導入された混合物の総重量に基づいて98.5重量%)を押出機に導入された混合物の総重量に基づいて1重量% クエン酸(Adeka製のOrgather exp 141/183)及び0.5重量% 水と共に、二軸押出機Leistritz ZSE 18 MAXXにおいて、250℃超の温度で押出に供することにより発泡させた。得られた押出物を、7%の結晶化度を有する、2~3mmの固形ペレットに造粒した(すなわち、発泡PET)。
【0145】
本発明の分解方法(予備脱重合工程及び主脱重合工程を含む)を500mLの反応器中において、LC-クチナーゼの変異体(Sulaiman et al., Appl Environ Microbiol. 2012 Mar)を使用して実施した。このような変異体(以下、「LCC-ICCIG」)は、配列番号:1と比較して、下記突然変異F208I+D203C+S248C+V170I+Y92Gを有する、配列番号:1の酵素に相当し、Trichoderma reeseiによりリコンビナントタンパク質として発現させた。
【0146】
該方法の開始時に、発泡PETを該反応器に、初期反応媒体の総重量に基づいて、200g/kgの濃度で加え、LCC-ICCIGを100mM リン酸バッファーpH8に、4mg/g PETで加えた(PET及び酵素を水に加えるRef-2を除く)。予備脱重合工程の間、温度を60℃にレギュレーションし、該反応媒体のpHを、NaOH溶液を25%(Ref-1、Ref-4、Ref-5)又は5%(Ref-2、Ref-3)で加えることにより、pH8±0.05にレギュレーションした。
【0147】
予備脱重合工程中のpHレギュレーション及び条件を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が、以下の表1(「脱重合率の切替」に連結付けられた「当量TA濃度の切替」)で参照される33~90g/kgの特定の値に達するまで維持した。ついで、塩基の添加を停止し(「NaOH添加量の切替」も表1で参照される)、温度を56℃に下げた。したがって、該反応媒体のpHを以下の表1でも参照されるように、主脱重合工程のためのターゲットpHに達するまで低下させた。
【0148】
予備な脱重合工程の間に、該液相中の当量TA濃度を定期的にサンプリングして測定した。該反応媒体からのサンプルを超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析し、生成された当量テレフタル酸の量を測定した。
【0149】
サンプルを100mM リン酸カリウムバッファーpH8で希釈した。サンプル又は希釈サンプル 1mLをメタノール 1mL及び6N HCl 100μLと混合した。ホモジナイズし、0.45μmのシリンジフィルターでろ過した後、サンプル 20μLをUHPLC、Ultimate 3000 UHPLCシステム(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)にインジェクションした。同システムは、ポンプモジュール、オートサンプラー、25℃でのカラムサーモスタット及び240nmでのUV検出器を含む。テレフタル酸分子とオリゴマー(MHET及びBHET)とをプレカラム(Supelco, Bellefonte, PA)を備えたHPLC Discovery HS C18カラム(150mm×4.6mm、5μm)により、1mM H2SO4中のメタノールの勾配(30%~90%)を使用して、1m/分で分離した。TA単独、MHET及びBHETを市販のTA及びBHET並びに社内で合成されたMHET(BHETの部分塩基触媒加水分解による)から作成された検量線に従って測定した。当量TAは、測定されたTA、MHET、BHETの合計である。
【0150】
主脱重合工程の間に、PET脱重合率を総当量TA生成量(可溶性TAと沈殿TAとの両方)の測定により決定した。この生成量を、予備脱重合工程について記載された方法(前記方法により、沈殿TAの溶解が可能となる)を使用して、全スラリー画分(液相を含み、さらに、この液相に懸濁した沈殿TAを含有する)中のTAを定量することにより決定した。
【0151】
140時間の反応後の脱重合率及び主脱重合工程の間の反応液のpHを以下の表1に開示する。また、表1では、予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを停止した当量TA濃度及び主脱重合工程前の該反応媒体中の当量TA濃度(及び該反応媒体に加えられた塩基濃度)にも言及されている。
【0152】
また、2つの対照も行った。
・「対照1」は、100mM リン酸バッファー中において、56℃で行われたプロセスに相当し、ここで、pHを、NaOH溶液を25%で加えることにより、8にレギュレーションした。
・「対照2」は、100mM リン酸バッファー中において、56℃で行われたプロセスに相当し、ここで、pHを、NaOH溶液を5%で加えることにより、5.2にレギュレーションした。
【0153】
140時間の反応後、理論的塩基消費量(Y塩基)を決定した。これは、沈殿TAを可溶化するために最終反応媒体に加えられる塩基量(又は全プロセスが同じ酵素を使用してpH8で行われたであろう場合に導入されるべき塩基量)に相当する。ついで、前記プロセス中の塩基消費節約量(%)を下記式:
【数1】
により決定した。
【0154】
【0155】
結果から、本発明の方法により、pH8にレギュレーションされたプロセス(対照1、塩基消費節約なし)又はpH5.2にレギュレーションされたプロセス(対照2、25%の塩基節約)と比較して、39%~47%の塩基節約が可能となることが示される。
【0156】
実施例2-予備酵素的脱重合工程、続けて、酸性での供給バッチ脱重合工程を含む、PETプラスチック製品の分解方法
本発明の方法を、実施例1のRef-5で使用された条件を使用して実施した。
【0157】
先に導入されたPETのうちの90%が加水分解された時(=136h)、下記表2に記載されているように、追加のPET及び酵素を加えられたPETの総量が(初期反応媒体の総重量に基づいて)400g/kgに達し、PET1g当たりに4mgの酵素濃度を維持するように加えた。ポリエステルの総当量濃度は、初期反応媒体の総重量との関係で与えられる。
【0158】
【0159】
350h後の脱重合率及び塩基消費節約量はそれぞれ、70%及び60%であった。
【0160】
実施例3-予備酵素的脱重合工程とPETase及びMHETaseを使用した主脱重合工程とを含む、PETプラスチック製品の分解方法
本発明の方法を実施例1に記載されたのと同様に開始した(すなわち、使用されたフレーク、酵素及びその量)。
【0161】
予備脱重合工程の間に、温度を60℃にレギュレーションし、該反応媒体のpHを、NaOH溶液を25%で加えることにより、pH8±0.05にレギュレーションした。
【0162】
予備脱重合工程中のpHレギュレーション及び条件を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が、49.3g/kgに達するまで(すなわち、9.1hの反応後)維持した。ついで、塩基の添加を停止し、温度を56℃に下げた。
【0163】
23.4hの反応後、E. coliにより発現された配列番号:2のIdeonella sakaiensisの、9.5mg 精製MHETaseを該反応媒体に加えた。
【0164】
予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを停止した時点での当量TA濃度、主脱重合工程前の該反応媒体中の当量TA濃度(及び該反応媒体に加えられた塩基濃度)及び70hの反応後の脱重合率及び主脱重合工程中の該反応媒体のpHを以下の表3に開示する。
【0165】
実施例1のRef-4を、MHETaseを加えなかった対照(対照3)とみなすことができる。
【0166】
【0167】
70h後、Ref-6の脱重合率及び塩基消費節約量はそれぞれ、pH8にレギュレーションされたプロセスと比較して、69%及び59%であった。
【0168】
これらの結果から、MHETaseの添加により、MHETaseを添加しない本発明の方法と比較して、脱重合率及び塩基消費節約量が改善されることがさらに示される。
【0169】
実施例4-予備酵素的脱重合工程とPETaseを使用した主脱重合工程とを含む、PETプラスチック製品の分解方法
本発明の分解方法(予備脱重合工程と主脱重合工程とを含む)を500mLの反応器中において、下記突然変異L210T+V172I+N213Mを含有し、E. coliによりリコンビナントタンパク質として発現された配列番号:3の酵素の精製変異体を使用して実施した。
【0170】
導入されたフレーク及び予備脱重合工程の条件(すなわち、pHレギュレーション、温度、酵素量)は、実施例3に記載されたものと同じとした。
【0171】
予備脱重合工程中のpHレギュレーション及び条件を該反応媒体の液相中の当量TA濃度が42g/kgに達するまで維持した。ついで、塩基の添加を停止し、温度を56℃に下げた。
【0172】
予備脱重合工程におけるpHレギュレーションを停止した時点での当量TA濃度、主脱重合工程前の該反応媒体中の当量TA濃度(及び該反応媒体に加えられた塩基濃度)及び30hの反応後の脱重合率及び主脱重合工程中の該反応媒体のpHを以下の表4に開示する。
【0173】
【0174】
pH8にプロセスをレギュレーションした場合と比較して、30h後の脱重合率及び塩基消費節約量はそれぞれ、35%及び23%であった。
【配列表】
【国際調査報告】