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特表2024-519053薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップを生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240426BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240426BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01M7/00 F
A01M1/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571526
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022063385
(87)【国際公開番号】W WO2022243350
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174746.4
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521508254
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ アグロ トレードマークス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タッケンバーグ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヨーネン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ファビアン ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2B121
5L050
【Fターム(参考)】
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC04
2B121CC05
2B121EA26
2B121FA20
5L050CC01
(57)【要約】
薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップ(8)を生成する方法を提供する。本方法は、薬剤推奨モデル(PRM)(2)及び生物物理学的パラメータモデル(BPM)(3)を含むハイパーモデル(1)を提供することを含んでいる。本方法は更に、薬剤推奨モデル(2)にPRM入力パラメータ(4)を提供することと、薬剤推奨モデル(2)によりPRM出力(5)を生成することとを含んでいる。本方法はまた、生物物理学的パラメータモデル(3)にBPM入力パラメータ(6)を提供することと、生物物理学的パラメータモデル(3)によりBPM出力(7)を生成することとを含んでいる。最後に、本方法は、PRM出力(5)の少なくとも一部及びBPM出力(7)の一部を用いて、ハイパーモデル(1)により区域固有散布マップ(8)を生成することを含んでいる。更に、区域固有散布マップ(8)を生成するシステム(19)、コンピュータプログラム要素、区域固有散布マップ(8)の使用、及び農業設備(23)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップ(8)を生成する方法であって、
薬剤推奨モデル、PRM(2)及び、
生物物理学的パラメータモデル、BPM(3)を含む
ハイパーモデル(1)を提供することと、
前記薬剤推奨モデル(2)にPRM入力パラメータ(4)を提供して前記薬剤推奨モデル(2)によりPRM出力(5)を生成することと、
前記生物物理学的パラメータモデル(3)にBPM入力パラメータ(6)を提供して前記生物物理学的パラメータモデル(3)によりBPM出力(7)を生成することと、
前記PRM出力(5)の少なくとも一部及び前記BPM出力(7)の一部を用いて前記ハイパーモデル(1)により前記区域固有散布マップ(8)を生成することとを含む方法。
【請求項2】
前記ハイパーモデル(1)が更に成長段階モデル、GSM(9)を含み、
前記方法が更に、前記成長段階モデル(9)にGSM入力パラメータ(10)を提供して前記成長段階モデル(9)によりGSM出力(11)を生成することを含み、
前記PRM入力パラメータ(4)が任意選択的に前記GSM出力(11)の少なくとも一部を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ハイパーモデル(1)が更に疾病感染リスクモデル、DIRM(12)を含み、
前記方法が更に、前記GSM出力(11)の少なくとも一部を含むDIRM入力パラメータ(13)を前記疾病感染リスクモデル(12)に提供して前記疾病感染リスクモデル(12)によりDIRM出力(14)を生成することを含み、
前記PRM入力パラメータ(4)が前記DIRM出力(14)の少なくとも一部を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記区域固有散布マップ(8)が、圃場向けに複数の選択された薬剤及び区域(18)毎の薬剤量を含み、前記区域(18)が特に多角形のセル、より具体的には正方形のセルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤が、化学品、生物学的薬剤、肥料、栄養素及び水からなるグループのうち少なくとも1個を含んでいる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記GSM入力パラメータ(10)が、作物、品種、品種特性、未加工気象データ、播種日、及び成長段階観察からなるグループのうち少なくとも1個を含み、
前記GSM出力(11)が季節を通じた成長段階の分布を特に日次の解像度で含み、
前記DIRM入力パラメータ(13)が、作物、先行作物、品種、品種特性、未加工気象データ、播種日、感染ルール、耕起、及び疾病観察からなるグループのうち少なくとも1個を含み、
前記DIRM出力(14)が、疾病と感染のデータ、特に疾病と感染のリスク、疾病と感染の事象、特に過去、現在、未来のデータを含み、
前記PRM入力パラメータ(4)が、作物、品種、品種特性、適応症、薬剤登録、薬剤の有効性要件、及び観察データからなるグループのうちの少なくとも1個を含み、
前記PRM出力(5)が、複数の選択された薬剤及び薬剤量を含み、
前記BPM入力パラメータ(6)が、特に衛星、航空機、及び/又はドローンにより提供される前記圃場の遠隔画像データ、特にマルチスペクトル画像データを含み、及び/又は
前記BPM出力(7)が、生物物理学的パラメータ、特に葉面積指数及び/又は樹冠密度の区域固有分布を含んでいる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記成長段階モデル(9)がプロセスモデル又は機械学習モデルであり、
前記疾病感染リスクモデル(12)がプロセスモデル又は機械学習モデルであり、
前記薬剤推奨モデル(2)が、プロセスモデル又は機械学習モデルであり、
前記生物物理学的パラメータモデル(3)がプロセスモデル又は機械学習モデルである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記GSM出力(11)の少なくとも一部を前記BPM入力パラメータ(6)の一部として用いることと、
前記DIRM出力(14)の少なくとも一部を前記GSM入力パラメータ(10)の一部として用いることと、
前記DIRM出力(14)の少なくとも一部を前記BPM入力パラメータ(6)の一部として用いることと、
前記PRM出力(5)の少なくとも一部を前記GSM入力パラメータ(10)の一部として用いることと、
前記PRM出力(5)の少なくとも一部を前記DIRM入力パラメータ(13)の一部として用いることと、
前記PRM出力(5)の少なくとも一部を前記BPM入力パラメータ(6)の一部として用いることとからなるグループのうち少なくとも1個を更に含んでいる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ハイパーモデル(1)が更に別のモデル(15)、特に気象モデルを含んでいる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤を前記圃場に散布する農業設備の制御に用いられるべく構成された区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップを生成することを更に含んでいる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイパーモデル(1)により前記圃場向けの薬剤の一つの共通な処方を決定することを更に含み、前記区域固有散布マップ(8)が、前記圃場の区域(18)毎に散布される前記共通な処方の単位面積当たりの量を指定する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行すべく構成された区域固有散布マップ(8)を生成するシステムであって、
前記GSM入力パラメータ(10)、前記DIRM入力パラメータ(13)、前記PRM入力パラメータ(4)及び前記BPM入力パラメータ(6)からなるグループのうちの少なくとも1個を含む入力パラメータを提供する少なくとも1個の入力インターフェース(20)と、
前記区域固有散布マップ(8)を生成すべく構成された少なくとも1個の処理ユニット(21)と、
前記区域固有散布マップ(8)、区域固有制御データ、及び前記区域固有制御マップからなるグループのうち少なくとも1個を出力するための少なくとも1個の出力インターフェース(22)とを含むシステム。
【請求項13】
請求項12に記載のシステム(19)内のプロセッサにより実行されたならば請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行すべく構成されているコンピュータプログラム要素。
【請求項14】
圃場に薬剤を散布する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法に従い生成された区域固有散布マップ(8)、区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップの使用。
【請求項15】
圃場に薬剤を散布すべく装備され、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法により提供される区域固有散布マップ(8)、区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップにより制御されるべく構成されている農業設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル農業に関する。特に、本発明は、薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップを生成する方法、及び区域固有散布マップを生成するシステムに関する。本発明は更に、コンピュータプログラム要素、区域固有散布マップ、区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップ並びに農業設備の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
殺菌剤、除草剤、殺虫剤、殺ダニ剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、殺鳥剤、殺魚剤、殺鼠剤、忌避剤、抗菌剤、殺生物剤、毒性緩和剤、植物成長調節剤、ウレアーゼ阻害剤、硝化阻害剤及び/又は脱窒阻害剤等の薬剤による圃場の処理は、圃場の収量を増加させるべく一般的に行われている。また、圃場に散布する薬剤の最適な種類及び量を決定すべく様々なモデルが開発されてきた。しかし、これらのモデルは圃場内の地域差を考慮しない。たとえ圃場の全ての区域が同じ量又は種類の散布する薬剤を必要としてなくても、これは依然としてモデルに含まれていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、地域差を考慮した薬剤散布マップの生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決され、更に複数の実施形態が従属請求項に組み込まれている。
【0005】
本発明の第1の態様に従い、薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップを生成する方法を提供する。
【0006】
この文脈において、「圃場」という用語は、生物、特に作物植物が生産、栽培、播種され、及び/又は生産、栽培、播種が計画されている任意の領域と理解されたい。用語「圃場」は、園芸圃場及び林業圃場も含まれる。好適な作物は、タマネギ(Allium cepa)、パイナップル(Ananas comosus)、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、アスパラガス(Asparagus officinalis)、エンバク(Avena sativa)、テンサイ(Beta vulgaris spec.altissima)、ラパ(Beta vulgaris spec.rapa)、セイヨウアブラナ(Brassica napus var.napus)、ルタバガ(Brassica napus var.napobrassica)、ブラシカラパシルベストリス(Brassica rapa var.silvestris)、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)、クロガラシ(Brassica nigra)、チャノキ(Camellia sinensis)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、ペカン(Carya illinoinensis)、レモン(Citrus limon)、オレンジ(Citrus sinensis)、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)(ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)、リベリカコーヒーノキ(Coffea liberica))、キュウリ(Cucumis sativus)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ノラニンジン(Daucus carota)、ギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)、ワイルドストロベリー(Fragaria vesca)、ダイズ(Glycine max)、アプランドワタ(Gossypium hirsutum)、(キダチワタ(Gossypium arboreum)、シロバナワタ(Gossypium herbaceum)、カイトウワタ(Gossypium vitifolium))、ヒマワリ(Helianthus annuus)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)、オオムギ(Hordeum vulgare)、ホップ(Humulus lupulus)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、シナノグルミ(Juglans regia)、ヒラマメ(Lens culinaris)、アマ(Linum usitatissimum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、リンゴ(Malus spec.)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)、バナナ(Musa spec.)、タバコ(Nicotiana tabacum)(マルバタバコ(N.rustica))、オリーブ(Olea europaea)、イネ(Oryza sativa)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、オウシュウトウヒ(Picea abies)、マツ(Pinus spec.)、ピスタチオ(Pistacia vera)、エンドウ(Pisum sativum)、セイヨウウミザクラ(Prunus avium)、モモ(Prunus persica)、セイヨウナシ(Pyrus communis)、アンズ(Prunus armeniaca)、スミミザクラ(Prunus cerasus)、アーモンド(Prunus dulcis)及びセイヨウスモモ(Prunus domestica)、フサスグリ(Ribes sylvestre)、ヒマ(Ricinus communis)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、シロガラシ(Sinapis alba)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、モロコシ(Sorghum bicolor(s.vulgare))、カカオ(Theobroma cacao)、アカツメクサ(Trifolium pratense)、パンコムギ(Triticum aestivum)、ライコムギ(Triticale)、デュラムコムギ(Triticum durum)、ソラマメ(Vicia faba)、ブドウ(Vitis vinifera)、トウモロコシ(Zea mays)である。最も好適な作物は、ラッカセイ(Arachis hypogaea)、テンサイ(Beta vulgaris spec.altissima)、セイヨウアブラナ(Brassica napus var.napus)、ヤセイカンラン(Brassica oleracea)、レモン(Citrus limon)、オレンジ(Citrus sinensis)、アラビカコーヒーノキ(Coffea arabica)、ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)、リベリカコーヒーノキ(Coffea liberica)、ギョウギシバ(Cynodon dactylon)、ダイズ(Glycine max)、ワタ(Gossypium hirsutum)、アオワタ(Gossypium arboreum)、シロバナワタ(Gossypium herbaceum)、カイトウワタ(Gossypium vitifolium)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、オオムギ(Hordeum vulgare)、カシグルミ(Juglans regia)、レンズマメ(Lens culinaris)、アマ(Linum usitatissimum)、トマト(Lycopersicon lycopersicum)、リンゴ(Malus spec.)、ムラサキウマゴヤシ(Medicago sativa)、タバコ(Nicotiana tabacum)(マルバタバコ((N.rustica))、オリーブ(Olea europaea)、イネ(Oryza sativa)、ライマメ(Phaseolus lunatus)、インゲンマメ(Phaseolus vulgaris)、ピスタチオ(Pistacia vera)、エンドウ(Pisum sativum)、アーモンド(Prunus dulcis)、サトウキビ(Saccharum officinarum)、ライムギ(Secale cereale)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ソルガム(Sorghum bicolor(s.グルガレ(s. vulgare))、ライコムギ(Triticale)、パンコムギ(Triticum aestivum)、デュラムコムギ(Triticum durum)、ソラマメ(Vicia faba)、ヨーロッパブドウ(Vitis vinifera)及びトウモロコシ(Zea mays)である。特に好適な作物は、穀類、トウモロコシ、ダイズ、イネ、ナタネ、ワタ、ジャガイモ、ピーナッツ又は永続型作物である。
【0007】
用語「区域」は、当該圃場の下位区域又は一部である、すなわち圃場は空間的に2つ以上の区域に分割でき、各区域が異なる特性を有していてよいものと理解されたい。
【0008】
用語「散布マップ」は、圃場内の異なる区域に散布される薬剤の量、投与量、種類及び/又は形式の2次元空間分布を示すマップであると理解されたい。
【0009】
本方法に従い、ハイパーモデルを提供する。この文脈において、ハイパーモデルは、少なくとも2個の下位モデルを含み、且つ下位モデルを紐付けるモデルである。下位モデルの前記紐付けは、下位モデルの出力の紐付け及び/又は下位モデルの出力と下位モデルの入力の紐付けを含んでいてよい。特に、ハイパーモデルは、反復的プロシージャで下位モデルの相互依存性を制御することができる。この目的のため、ハイパーモデルは、所定値又は標準値等、下位モデルの初期入力パラメータを設定し、次いで下位モデルを反復的に実行し、下位モデルの出力を収集して、下位モデルの前記出力を次の反復での下位モデルの入力として用いるべく構成されていてよい。更に、ハイパーモデルは、所定の反復回数の後で、又は所定の精度に達した後で反復的プロシージャを停止すべく構成されていてよい。最後に、ハイパーモデルは、下位モデルの最終結果を収集し、任意選択的に変換して、結果を出力すべく構成されていてよい。
【0010】
ハイパーモデルは、薬剤推奨モデル(PRM)及び生物物理学的パラメータモデル(BPM)を含んでいる。薬剤推奨モデルに対し、PRM入力パラメータが提供される。前記PRM入力パラメータに基づいて、薬剤推奨モデルがPRM出力を生成する。同様に、生物物理学的パラメータモデルに対し、BPM入力パラメータが提供される。この文脈において、生物物理学的パラメータは、葉面積指数、樹冠密度、樹高、バイオマス又はクロロフィル含有量等の物理的に測定可能な作物植物の特性に関するパラメータである。前記BPM入力パラメータに基づいて、生物物理学的パラメータモデルはBPM出力を生成する。すなわち、薬剤推奨モデル及び生物物理学的パラメータモデルはハイパーモデルの一部として実行される。次いでPRM出力の少なくとも一部及びBPM出力の一部をハイパーモデルが用いて区域固有散布マップが生成される。特に、生物物理学的パラメータモデルから区域固有成分が得られる。区域固有散布マップに基づいて、圃場の各区域が、各々の区域毎に最適化された薬剤の量及び/又は薬剤の選択により処理されるように、薬剤により圃場を処理することができる。従って、圃場の収量を各々の区域毎に最適化することができ、各々の区域毎に適切な量の薬剤を選択することができる。必要な薬剤量が少ない圃場の区域はより少量の薬剤で処理されるため、薬剤の購入コストが節約されると共に薬剤の不要な過剰使用が防止されるため、環境により優しい。一方、より多くの薬剤を必要とする圃場がより多くの薬剤で処理される結果、少量の薬剤では実現できない特定の区画の収量が増加する。
【0011】
本方法は、コンピューティング装置、例えばタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ又はスーパーコンピュータで実行されてよい。特に、ハイパーモデルの各部分は別々のプロセッサ上で実行できるため、本方法の実行を並列化、従って高速化することができる。
【0012】
一実施形態によれば、ハイパーモデルは更に成長段階モデル(GSM)を含んでいる。この文脈において、成長段階は、発芽、萌芽、芽の発育、葉の発育、サイドシュートの形成、分げつ、茎伸長又はロゼット成長、シュートの発育、収穫可能な繁殖植物の部分の発育、抽だい、花序出現、ヘディング、開花、果実の発育、果実及び種子の熟成又は成熟、細胞老化及び休眠の開始を含んでいてよい。成長段階モデルに対し、GSM入力パラメータが提供されて成長段階モデルは前記GSM入力パラメータに基づいてGSM出力を生成する。成長段階モデルはまたハイパーモデルの一部として実行され、作物の成長段階に関する情報をハイパーモデルに追加する。
【0013】
GSM出力の少なくとも一部がPRMの入力パラメータとして用いられてよい。すなわち、薬剤推奨モデルは作物の成長段階に依存し得る。一例として、いくつかの薬剤の使用は作物の特定の成長段階に紐付けられており、例えばいくつかの薬剤は苗に散布された場合に最も効果的であるが、他の薬剤は開花した作物に散布された場合に最も効果的である。成長段階を入力として受信したならば、作物の現在の、又は予想される成長段階に最も良く適合する薬品を推奨することができる。
【0014】
一実施形態によれば、ハイパーモデルは更に疾病感染リスクモデル(DIRM)を含んでいる。疾病感染リスクモデルに対し、DIRM入力パラメータが提供される。前記DIRM入力パラメータに基づいて、疾病感染リスクモデルはDIRM出力を生成する。疾病感染リスクモデルはまた、ハイパーモデルの一部として実行されて、作物が疾病に感染するリスク及び/又は疾病が作物、従って圃場の収量に影響を及ぼすリスクに関する情報をハイパーモデルに追加する。
【0015】
DIRMの入力パラメータはGSM出力の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、疾病感染リスクモデルは作物の成長段階に依存する。このことは、作物の疾病感染に対する脆弱性が作物の成長段階により異なるため、疾病感染リスクモデルを向上させる。
【0016】
更に、PRM入力パラメータはDIRM出力の少なくとも一部を含んでいる。すなわち、薬剤推奨モデルは作物の疾病感染リスクに依存する。疾病感染リスクが異なれば圃場に散布すべき作物も異なるため、上記により薬剤推奨モデルが向上する。
【0017】
一実施形態によれば、区域固有散布マップは、圃場向けに複数の選択された薬剤及び一区域当たりの薬剤量を含んでいる。すなわち、圃場の区域毎に、当該区域を処理する1種類以上の薬剤、及び対応する薬剤量が区域固有散布マップにより提供される。薬剤量は、例えば単位面積当たりの薬剤の重量又は体積として与えられる。圃場は複数の区域を含み、各区域は圃場の多角形のセルであってよい。より具体的には、これらの区域は圃場の正方形のセルであってよい。一例として、各正方形は衛星画像のピクセルに対応していてよい。
【0018】
一実施形態によれば、薬剤は、化学品、生物学的製剤、肥料、栄養素及び水からなるグループの少なくとも1個を含んでいる。特に、薬剤及び/又は物質の組み合わせが用いられてよい。薬剤及び/又はその組み合わせは、ユーザー及び/又は農業設備が薬剤IDに基づいて前記薬剤及び/又は組み合わせを選択できるように薬剤IDによりラベル付けされてもよい。化学品は、防カビ剤、除草剤、殺虫剤、殺ダニ剤、軟体動物駆除剤、殺線虫剤、殺鳥剤、殺魚剤、殺鼠剤、忌避剤、抗菌剤、殺生物剤、毒性緩和剤、植物成長調節剤、ウレアーゼ阻害剤、硝化阻害剤、脱窒阻害剤、又はこれらの任意の組み合わせであってよい。生物学的製剤は、防カビ剤(バイオ防カビ剤)、除草剤(バイオ除草剤)、殺虫剤(バイオ殺虫剤)、殺ダニ剤(バイオ殺ダニ剤)、殺軟体動物剤(バイオ殺軟体動物剤)、殺線虫剤(バイオ殺線虫剤)、殺鳥剤、殺魚剤、殺鼠剤、忌避剤、殺細菌剤、殺生物剤、毒性緩和剤、植物成長調節剤、ウレアーゼ阻害剤、硝化阻害剤、脱窒阻害剤、又はこれらの任意の組み合わせとして有用な微生物であってよい。前記薬剤は、例えば疾病を予防することにより、及び/又は作物の成長を支援することにより、圃場の収量を増加させる。
【0019】
一実施形態によれば、GSM入力パラメータは、作物、品種、品種特性、未加工気象データ、播種日、及び成長段階観察からなるグループのうち少なくとも1個を含んでいる。品種は、作物の品種を指し、作物の品種識別子又は商標名として提供されてよい。品種特性は、作物品種の特定の特性を指し、例えば「基本」作物からの偏差として提供されてよい。未加工気象データは気温、土壌温度、降水量及び日照時間が含んでいてよい。成長段階観測は、圃場における作物の実際の成長段階の観測である。前記観測は、例えばユーザーが取得して手動で入力されても、又は圃場で自動的に観測されて取得されたものであってもよい。
【0020】
GSM出力は、季節を通じた成長段階の分布を特に日次の解像度で含んでいる。成長段階は、例えばBBCHスケールで提供することができる。BBCHスケールは、発芽、出芽、芽の発育、葉の発育、サイドシュートの形成、分げつ、茎伸長又はロゼット成長、シュートの発育、収穫可能な繁殖植物の部分、抽だい、花序出現、ヘディング、開花、果実の発育、果実及び種子の熟成又は成熟、及び細胞老化、休眠の開始等の作物の成長段階に対する数値コードを提供する。
【0021】
一例として、成長段階モデルは、作物及び播種日を入力パラメータとして、例えば参照テーブルに基づいて、成長段階を出力として生成することができる。無論、モデルがより精緻であって入力パラメータが多いほど、より正確な成長段階予測が可能になる。
【0022】
DIRM入力パラメータは、作物、先行作物、品種、品種特性、未加工気象データ、播種日、感染ルール、耕起及び疾病観察からなるグループのうち少なくとも1個を含んでいる。先行作物は、季節の初め又は前年に圃場に植えられた作物に関する。先行作物情報は、先行作物が圃場に植えられた日付を含んでいてよい。感染ルールは、例えば、作物の成長段階、気象及び/又は病原菌の発生を考慮に入れながら作物の感染を記述する任意の種類のルールを含んでいてよい。耕起は、圃場で行われた耕起の日付及び詳細事項等、任意の種類の耕起情報を含んでいてよい。疾病観測は、例えばユーザーにより手動で入力されたもの、又は例えば圃場で固定又は非固定カメラにより撮影された自動観測により得られたものであってよい。
【0023】
DIRM出力は、疾病感染データ、特に疾病感染リスク、及び特に過去、現在、未来における疾病感染事象を含んでいる。疾病感染リスク及び/又は事象は、疾病の種類、感染又は疾病の日付、並びに疾病及び/又は感染の重症度を含んでいる。
【0024】
一例として、疾病感染リスクモデルは、作物及び作物の成長段階を入力パラメータとして、少なくとも1個の疾病又は感染に対する疾病感染リスクを出力として生成することができる。この目的のために、複数の作物及びそれらの感染リスクを成長段階の関数として含む表を用いてよい。再び、モデルがより精緻であって入力パラメータが多いほど、より正確な疾病感染リスク予測が可能になる。
【0025】
PRM入力パラメータは、作物、品種、品種特性、指標、薬剤登録、薬剤の有効性要件、及び観察データからなるグループのうち少なくとも1個を含んでいる。指標は、薬物を使用する正当な理由を指し、特に、疾病の抑止又は作物の成長を促進させる特定の薬剤の有効性を含んでいる。薬剤登録は、薬剤の登録内容を指し、どのような条件下で薬剤を使用してよいかに関する情報が含まれる。薬剤の有効性要件には、作物の成長段階又は気象条件等、薬剤が効率的であるための更なる要件が含まれる
【0026】
PRM出力は、複数の選択された薬剤及び薬剤量を含んでいる。特に、PRM出力は、用いられ得る異なる代替物を提供することができる。好適には、PRM出力は更に、複数の選択された薬剤及び/又は薬剤量の生物物理学的パラメータへの依存性を含んでいる。生物物理学的パラメータに対する前記依存性を有するPRM出力をBPM出力と合わせて用いることにより、ハイパーモデルは、圃場の各区域毎に推奨される薬剤及び薬剤量を決定することができる。
【0027】
一例として、薬剤推奨モデルは、作物、成長段階、及び疾病感染リスクを入力パラメータとして、推奨薬剤を出力として生成することができる。簡単な実装例において、推奨薬剤の参照テーブルを用いて出力を生成することができる。再び、モデルがより精緻であって入力パラメータが多いほど、より正確な薬剤推奨が可能になる。
【0028】
BPM入力パラメータは、圃場の遠隔画像データを含んでいる。前記遠隔画像データは特にマルチスペクトル画像データである。遠隔画像データは、衛星、航空機及び/又はドローンにより提供されてよい。特に、遠隔画像データのピクセルは圃場の区域に対応していてよい。
【0029】
BPM出力は、生物物理学的パラメータ、特に葉面積指数及び/又は樹冠密度の区域固有分布を含んでいる。一例として、葉面積指数は、単位地表面積当たりの片側緑葉面積として定義することができる。別の例として、樹冠密度は、単位地表面積当たりの緑葉面積の投影として定義することができる。
【0030】
一例として、生物物理学的パラメータモデルは、マルチスペクトル画像データを入力として、葉面積指数を出力として生成することができる。ここで、葉面積指数はマルチスペクトル画像データから簡単な関数として計算することができる。再び、モデルがより精緻であって入力パラメータが多いほど、より正確な生物物理学的パラメータが得られる。
【0031】
区域固有散布マップを生成すべく、ハイパーモデルは、一例として薬剤推奨モデルからの薬剤推奨と生物物理学的パラメータモデルからの葉面積指数を組み合わせて区域固有散布マップを生成することができる。簡単な実装例において、薬剤は薬剤推奨モデルから直接取得でき、一区域当たりの薬剤量は葉面積指数の関数として計算される。
【0032】
一実施形態によれば、成長段階モデルはプロセスモデルである。この文脈において、プロセスモデルは、パラメータの特定の関数及び/又はパラメータ間の依存関係をユーザーが提供するモデルである。これらの関数及び/又は依存関係は簡単な関数であってよく、且つ過去の観察に基づいていてよい。代替的又は追加的に、成長段階モデルは、決定木、コンピュータ実装されたニューラルネットワーク、人工ニューラルネットワーク又はこれらの任意の組み合わせ等の機械学習モデルであってよい。機械学習モデルを訓練すべく、訓練データは一方が訓練用、他方が試験用の2個の部分、例えばデータの90%が訓練用、10%を試験用に分割される。機械学習モデルを訓練及び試験する場合、評価指標として平均絶対誤差が用いられてよい。特に、平均絶対誤差は、所与の日のBBCHスケールでの誤差、又は所与のBBCHコードでの時間誤差を指す場合がある。
【0033】
一実施形態によれば、疾病感染リスクモデルはプロセスモデル又は機械学習モデルである。機械学習モデルの評価指標として用いられてよい平均絶対誤差は所与の日の疾病発生量を指す場合がある。
【0034】
一実施形態によれば、薬剤推奨モデルはプロセスモデル又は機械学習モデルである。機械学習モデルの評価指標として用いられてよい平均絶対誤差は圃場に散布される所与の薬剤の量を指す場合がある。
【0035】
一実施形態によれば、生物物理学的パラメータモデルはプロセスモデル又は機械学習モデルである。機械学習モデルの評価指標として用いられてよい平均絶対誤差は葉面積指数及び/又は樹冠密度を指す場合がある。
【0036】
一実施形態によれば、GSM出力の少なくとも一部がいくつかのBPM入力パラメータとして用いられ、例えばBBCHスケールでの成長段階がBPM入力パラメータとして用いられてよい。生物物理学的パラメータのモデリングは、成長段階予測を入力とすることにより向上する場合がある。
【0037】
一実施形態によれば、DIRM出力の少なくとも一部がいくつかのGSM入力パラメータとして用いられ、例えば予測された疾病感染事象がGSM入力パラメータとして用いられてよい。従って、圃場における作物の成長段階での疾病の影響が含まれている。
【0038】
一実施形態によれば、DIRM出力の少なくとも一部がいくつかのBPM入力パラメータとして用いられ、例えば予測された疾病又は感染事象がBPM入力パラメータとして用いられてよい。これは更に生物物理学的パラメータに対する疾病の影響を含んでいる。
【0039】
一実施形態によれば、PRM出力の少なくとも一部がいくつかのGSM入力パラメータとして用いられ、例えば推奨薬剤がGSM入力パラメータとして用いられてよい。従って、圃場への薬剤の散布を考慮しながら作物の成長段階をモデル化することができる。
【0040】
一実施形態によれば、PRM出力の少なくとも一部がいくつかのDIRM入力パラメータとして用いられ、例えば推奨薬剤がDIRM入力パラメータとして用いられてよい。従って、疾病の進行は、圃場への薬剤の散布を考慮しながらモデル化することができる。
【0041】
一実施形態によれば、PRM出力の少なくとも一部がいくつかのBPM入力パラメータとして用いられ、例えば推奨薬剤をBPM入力パラメータとして用いられてよい。これは、圃場への薬剤の散布が葉面積指数等の生物物理学的パラメータに及ぼす影響を考慮している。
【0042】
一実施形態によれば、ハイパーモデルは別のモデルを更に含んでいる。前記別のモデルに入力パラメータが提供され、前記別のモデルは前記入力パラメータに基づいて出力を生成する。GSM出力、DIRM出力、PRM出力及び/又はBPM出力が他方のモデルへのいくつかの入力パラメータとして用いられてよく、他方のモデルからの出力がいくつかのGSM、DIRM、PRM及び/又はBPM入力パラメータとして用いられてよい。このような他方のモデルの一例として気象モデルがあり、気象は生物物理学的パラメータだけでなく、成長段階、疾病感染リスク、薬剤推奨に影響を及ぼす。
【0043】
一実施形態によれば、本方法は更に、作物を圃場に散布する農業設備の制御に用いられるべく構成された区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップを生成することを含んでいる。区域固有制御マップは、例えば圃場の各区域に用いられるノズル圧を含んでいてよい。区域固有制御データは、例えば農業設備が辿ることを求められる所定の軌道上の距離に基づいて用いられるノズル圧を含んでいてよい。代替的に、農業設備は、区域固有散布マップに基づいて、圃場の処理、特に薬剤の散布用の制御信号を生成すべく構成されてもよい。薬剤は次いで区域固有散布マップに合わせて圃場に散布される。
【0044】
一実施形態によれば、本方法は更に、ハイパーモデルにより、圃場向けの複数の薬剤の一つの共通な処方を決定することを含んでいる。この文脈において、「一つの共通な処方」は、様々な散布量で圃場全体に散布される1種類の薬剤又は通常は薬剤の混合物であってよい。一つの共通な処方だけを用いることは、圃場の全ての区域毎に異なる薬剤又は前記薬剤の異なる処方を用いるよりも簡単な設備で行うことができる。共通な処方は、例えば圃場全体にわたる薬剤量又は濃度の平均値又は中央値として決定されてよい。前記共通な処方を用いて、区域固有散布マップは、圃場の区域毎に散布すべき共通な処方の単位面積当たりの量を指定する。共通な処方の前記単位面積当たりの量は最小値と最大値の間であってよい。また、共通な処方の単位面積当たりの量はゼロ、すなわち圃場の各区域には薬剤が一切散布されなくてもよい。
【0045】
本発明の別の態様に従い、区域固有散布マップを生成するシステムを提供する。前記システムは上述の方法を実行すべく構成されている。特に、本システムは、入力パラメータを提供するための少なくとも1個の入力インターフェースを含んでいる。前記入力パラメータは、GSM入力パラメータ、DIRM入力パラメータ、PRM入力パラメータ及びBPM入力パラメータを含んでいる。本システムは更に、区域固有散布マップを生成すべく構成された少なくとも1個の処理装置と、区域固有散布マップ、区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップを出力するための少なくとも1個の出力インターフェースとを含んでいる。前記出力インターフェースは、ハイパーモデル出力を農業設備にブロードキャストすべく適合されたネットワークインターフェースであってよい。
【0046】
本発明の別の態様に従い、コンピュータプログラム要素を提供する。本コンピュータプログラム要素は、上述のシステム内のプロセッサにより実行された際に上述の方法を実行すべく構成されている。
【0047】
本発明の別の態様に従い、圃場に薬剤を散布するための区域固有散布マップ、区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップの使用を提供する。ここで、区域固有散布マップ、区域固有制御データ及び/又は区域固有制御マップは、上述の方法に従い生成されている。区域固有散布マップ、区域固有管理データ及び/又は区域固有管理マップに従い薬剤を散布することにより、最適な量の薬剤が圃場に散布される。特に、薬剤の種類及び量は、圃場に良好な収量をもたらすのに充分である。また、薬剤の量が過剰でないためコストが節約され、且つ環境に優しい。
【0048】
本発明の別の態様に従い、農業設備を提供する。前記農業設備は、圃場に薬剤を散布すべく装備され、区域固有散布マップ、区域固有制御データ及び/又は上述の方法により提供される区域固有制御マップにより制御されるべく構成されている。従って、薬剤の種類及び量は圃場の良好な収量をもたらすのに充分であり、薬剤の量が過剰でないためコストが節約され、且つ環境に優しい。
【0049】
本発明の上記及び他の態様は、以下に複数の例として記述する複数の実施形態を参照すると共に添付の図面を更に参照することにより明らかになり、且つ更に解明されよう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】ハイパーモデルの一実施形態のワークフローを示す。
図2】ハイパーモデルの別の実施形態のワークフローを示す。
図3】ハイパーモデルの更に別の実施形態のワークフローを示す。
図4】ハイパーモデルの更に別の実施形態のワークフローを示す。
図5】ハイパーモデルの更に別の実施形態のワークフローを示す。
図6】区域固有散布マップの一例を示す。
図7】区域固有散布マップ及び農業設備を生成するシステムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
これらの図は純粋に模式的であって定縮尺で描かれたものではないことに注意されたい。これらの図面において、既に記述した要素に対応する要素には同一の参照番号が付与されている場合がある。複数の例、実施形態又は任意の特徴は、非限定的として示されているか否かに依らず、請求項に記載された本発明を限定するものと理解すべきではない。
【0052】
図1に、薬剤による圃場処理のための区域固有散布マップを生成するハイパーモデル1の一実施形態のワークフローを示す。前記薬剤は、化学品、生物学的製剤、肥料、栄養素及び水であってよい。圃場の区域は圃場の下位圃場区域又は部分である、すなわち圃場を複数の前記区域に分割されているものと理解されたい。
【0053】
ハイパーモデルは、薬剤推奨モデル(PRM)2及び生物物理学的パラメータモデル(BPM)3を含んでいる。作物、品種、品種特性、指標、薬剤登録、薬剤の有効性要件、及び/又は観測データ等のPRM入力パラメータ4が薬剤推奨モデル2に提供される。前記PRM入力パラメータ4に基づいて、薬剤推奨モデル2が、例えば複数の選択された薬剤及び薬剤量を含むPRM出力5を生成する。好適には、前記PRM出力5は作物の生物物理学的パラメータに依存して提供される。
【0054】
BPM入力パラメータ6が生物物理学的パラメータモデル3に提供される。前記BPM入力パラメータ6は、圃場の遠隔画像データ、特にマルチスペクトル画像データを含んでいてよい。前記リモート画像データは、衛星、航空機、及び/又はドローンにより提供されてよい。特に、BPM入力パラメータ6は区域固有であり、すなわち遠隔画像データは少なくとも圃場の区域の大きさの解像度を有している。前記BPM入力パラメータ6に基づいて、生物物理学的パラメータモデルはBPM出力7を生成する。前記BPM出力7は、生物物理学的パラメータ、特に葉面積指数及び/又は樹冠密度の区域固有分布を含んでいてよい。
【0055】
PRM出力5及びBPM出力7に基づいて、ハイパーモデル1は区域固有散布マップ8を生成する。これを行うために、ハイパーモデル1は、PRM出力5の生物物理学的パラメータ依存性を利用して、BPM出力と組み合わせることができる。追加的又は代替的に、ハイパーモデル1は生物物理学的パラメータに対する散布率の一般的な依存性、例えば葉面積指数に対する線形依存性を用いて、PRM出力5及びBPM出力7から区域固有散布マップ8を生成することができる。
【0056】
ハイパーモデル1の別の実施形態を図2に示す。図1のハイパーモデル1に加え、このハイパーモデル1は成長段階モデル(GSM)9を含んでいる。作物、品種、品種特性、未加工気象データ、播種日及び成長段階観測等のGSM入力パラメータ10が成長段階モデル9に提供される。前記GSM入力パラメータ10に基づいて、成長段階モデル9はGSM出力11を生成する。前記GSM出力11は、季節を通じた成長段階の分布を特に日次の解像度で含んでいてよい。GSM出力11はまた、PRM入力パラメータ4の一部として用いられ、すなわち薬剤推奨モデル2は作物の成長段階に依存する。その結果、薬剤推奨モデル2は作物の実際の成長段階に最も適合する薬剤を推奨することができる。
【0057】
ハイパーモデル1の更に別の実施形態を図3に示す。図2のハイパーモデル1に加え、このハイパーモデル1は疾病感染リスクモデル(DIRM)12を含んでいる。作物、先行作物、品種、品種特性、未加工気象データ、播種日、感染ルール、耕起、疾病観測等のDIRM入力パラメータ13が疾病感染リスクモデル12に提供される。前記入力パラメータ13に基づいて、疾病感染リスクモデル12はDIRM出力14を生成する。前記DIRM出力14は、疾病感染データ、特に疾病感染リスク及び疾病感染事象を含んでいる。前記データは過去、現在、未来について提供されてよい。
【0058】
GSM出力11を図2のハイパーモデル1により与えられるPRM入力パラメータ4の一部とするのではなく、DIRM出力14は本実施形態ではPRM入力パラメータ4の一部として用いられ、すなわち薬剤推奨モデル2は作物の疾病感染リスクに依存するため、薬剤推奨モデル2が更に向上する。
【0059】
また、GSM出力11はDIRM入力パラメータ13の一部として用いられ、すなわち疾病感染リスクモデル12は作物の成長段階に依存するため、疾病感染リスクモデル12が更に向上する。
【0060】
ハイパーモデル1の更に別の実施形態を図4に示す。図3のハイパーモデル1に加え、このハイパーモデル1は別のモデル15、例えば気象モデルを含んでいる。本例において、他方のモデル15の入力パラメータ16、例えば、過去及び現在の気象データ並びに衛星画像が提供される。入力パラメータ16に基づいて他方のモデル15により生成される出力17は、本例において、過去の気象データ、実際の気象データ、特に気象予測を含んでいてよい。他方のモデル15の出力17は、成長段階モデル9、疾病感染リスクモデル12、薬剤推奨モデル2、生物物理学的パラメータモデル3の各々の入力パラメータ10、13、4、6の一部として用いられる。前記モデルは全て正確な気象データから利点を享受する。
【0061】
ハイパーモデル1の更に別の実施形態を図5に示す。図3のハイパーモデル1に加え、GSM出力11はPRM入力パラメータ4の一部及びBPM入力パラメータ6の一部として用いられる。更に、DIRM出力14はGSM入力パラメータ10及びBPM入力パラメータ6の一部として用いられる。また、PRM出力5は、GSM入力パラメータ10、DIRM入力パラメータ13、及びBPM入力パラメータ6の一部として用いられる。最後に、BPM出力7は、GSM入力パラメータ10、DIRM入力パラメータ13、及びPRM入力パラメータ4の一部として用いられる。前記モデルは全て他方のモデルの出力に少なくともある程度依存するため、ハイパーモデル1の精度を更に向上させる。異なるモデル間の前記相互依存は、異なるモデルを反復的に実行することにより実現することができる。一例として、1回目の実行ではモデル間の相互依存は用いられない。ここで、他方のモデルの出力に由来する入力パラメータは、何らかの標準又は所定値に設定されていてよい。次いで、2回目の実行では1回目の実行でのモデルの出力が入力パラメータとして用いられて新規のより正確な出力が生成される。このプロシージャは、例えば追加的な実行によっても結果が顕著に変わらないレベルに収束するまで繰り返されてよい。
【0062】
いくつか又は全部のモデル、すなわち薬剤推奨モデル2、生物物理学的パラメータモデル3、成長段階モデル9、疾病感染リスクモデル12及び/又は他方のモデル15は、プロセスモデルとして実装されていてよい。この文脈において、プロセスモデルは、パラメータ間の特定の関数及び/又は依存関係をユーザーが提供するモデルである。すなわち、これらのモデルは、入力パラメータを取得して出力パラメータを生成する複数のアルゴリズムを含んでいる。ここで、これらのアルゴリズムは、現象学的観察に基づいてプログラムされていても、及び/又はシミュレーションを含んでいてもよい。
【0063】
代替的又は追加的に、モデルのいくつか又は全部は機械学習モデルとして実装されていてよい。機械学習モデルの例として、決定木、コンピュータ実装されたニューラルネットワーク、人工ニューラルネットワーク、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。これらのモデルの訓練データは、過去の季節で得られた観測及び測定から取得されてよい。機械学習モデルを訓練すべく、訓練データは一方が訓練用、他方が試験用の2個の部分、例えばデータの90%が訓練用、10%を試験用に分割される。機械学習モデルを訓練及び試験する場合、評価指標として平均絶対誤差が用いられてよい。
【0064】
図6に、区域固有散布マップ8の一例を示す。圃場の複数の区域18.1~18.6が異なるハッチングで示されている。各区域18.1~18.6毎に、1種類の薬剤又は薬剤の組み合わせ及び当該特定の区域に散布する前記薬剤の量が示されている。代替的に、圃場に散布する一つの共通な処方がハイパーモデル1により決定されていてもよい。この場合、区域固有散布マップ8の区域18.1~18.6は、圃場に散布する前記共通な処方の量だけを示していてよい。
【0065】
図7に、区域固有散布マップ8を生成するシステム19を示す。前記システム19は、入力パラメータを提供するための入力インターフェース20を含んでいる。ここではGSM入力パラメータ10、DIRM入力パラメータ13、PRM入力パラメータ4、及びBPM入力パラメータ6が提供される。
【0066】
システム20の処理ユニット21は、上の記述に従い、ハイパーモデル1を用いて区域固有散布マップ8を生成すべく構成されている。区域固有散布マップ8は次いでシステム19の出力インターフェース22によりブロードキャストされる。当該ブロードキャストは、ネットワーク接続及び/又はインターネットを介して実行されてよい。区域固有散布マップ8は農業設備23により受信される。区域固有散布マップ8を用いて、農業設備は圃場に対し薬剤の区域18固有の散布を実行する。従って、薬剤の種類及び量は圃場に良好な収穫をもたらすのに充分であり、薬剤の量が過剰ではないためコストが節約され、且つ環境に優しい。
【0067】
本発明の複数の実施形態について異なる主題に言及しながら説明していることに注意されたい。特に、いくつかの実施形態は方法型の請求項に言及しながら説明しているのに対し、他の実施形態は、装置型の請求項に言及しながら説明している。しかし、当業者には、上記及び以下の説明から、別途注記されない限り、1種類の主題に属する複数の特徴の任意の組み合わせに加え、異なる主題に関係する特徴間の任意の組み合わせも本出願に開示されているものと推察されよう。しかし、全ての特徴を組み合わせることで当該特徴の単なる合算よりも多くの相乗効果が得られる可能性がある。
【0068】
本発明について図面及び上の記述において詳細に図示及び説明したが、そのような図示及び説明は図解的又は例示的であって限定を意図していない。本発明は開示する実施形態に限定されない。開示された実施形態に対する他の変形形態は、図面、本開示及び従属項の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解及び実行され得る。請求項において、用語「含んでいる(comprising)」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他の装置により請求項に記述された複数の項目の機能を実現することができる。特定の手段が互い異なる従属請求項で再び記述されているという事実だけでは、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。請求項に参照符号が存在したとしても、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】