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特表2024-519055植え込み型電極を配置して睡眠時無呼吸を治療する技術、及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】植え込み型電極を配置して睡眠時無呼吸を治療する技術、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240426BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240426BHJP
   A61N 1/372 20060101ALI20240426BHJP
   A61N 1/375 20060101ALI20240426BHJP
   A61N 1/378 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
A61N1/372
A61N1/375
A61N1/378
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571554
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022030131
(87)【国際公開番号】W WO2022246129
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/220,355
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/191,240
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523169305
【氏名又は名称】インヴィクタ メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】オコナー リチャード ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】フェイラム ティモシー エー
(72)【発明者】
【氏名】ボーリング カール ランス
(72)【発明者】
【氏名】リー チャン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ポッツ デニス
(72)【発明者】
【氏名】パスパ ポール
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ24
4C053KK04
(57)【要約】
睡眠時無呼吸を治療するために植え込み型電極を配置する技術、並びに関連装置、システム、及び方法が明細書に開示される。代表的な方法は、1つ以上の信号送出装置を各々、患者の体内のそれぞれ対応したターゲット信号送出場所のところに又はその近くに経皮的に植え込むステップを含む。各信号送出装置は、1つ以上の電極を有するのがよく、個々の電極は、患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされるのがよい。代表的な方法は、ウェアラブル電源からの電力を電極のうちの1つ以上に提供して該電極が電気信号をそれぞれ対応のターゲット信号送出場所に送り、それにより正味正の突出運動反応を生じさせるようにするステップをさらに含むのがよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を治療する方法であって
針を前記患者の舌下神経の内側枝に向かって軌道沿いに前記患者の体内に経皮的に挿入するステップを含み、
前記針を前記内側枝と整列させるステップを含み、
信号送出装置を前記針により定められた前記軌道経由で前記内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、前記信号送出装置は、電極を有し、前記電極は、前記患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされ、
前記電極は、前記内側枝の下にかつ前記内側枝から延びるレトルーザの下に位置決めされ、かつ/或いは
前記レトルーザは、第1の領域内で前記内側枝から遠ざかって延び、前記電極は、電気刺激を前記第1の領域とは反対側の第2の領域に送り出すよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から前記電極に提供して前記患者の睡眠障害を治療するステップを含む、方法において、
前記針を経皮的に挿入する前記ステップは、前記針を前記患者の体内へ顎下の場所又は口腔内の場所に方向づけるステップ及び第1の電気信号を前記針経由で前記患者に送出するステップを含み、
前記電力を提供する前記ステップは、電力をRFリンク経由で前記電極に送るステップ及び、前記電極が
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの第1の周波数範囲内の第1の周波数
のうちの少なくとも1つを有する第2の電気信号を送出するようにするステップを含み、
前記電力を前記RFリンク経由で送る前記ステップは、前記電力を400MHzから2.5GHzまでの第2の周波数範囲内の第2の周波数で送るステップを含む、方法。
【請求項2】
前記信号送出装置は、第1の信号送出装置であり、前記方法は、第1の信号送出装置をターゲット場所の近くに経皮的に植え込むステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ターゲット場所は、前記患者のもう1つ舌下神経、前記患者の頸神経ワナ、前記患者のオトガイ舌筋、及び/又は前記患者のオトガイ舌骨筋を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記患者の舌下神経の前記内側枝は、前記患者の左舌下神経の内側枝であり、前記第2の信号送出装置を前記ターゲット場所の近くに経皮的に植え込む前記ステップは、前記第2の信号送出装置を前記患者の右舌下神経の内側枝の近くに経皮的に植え込むステップを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記正味正の突出運動反応は、後退反応及び前記後退反応よりも大きい突出反応を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記電力を前記電極に提供する前記ステップは、前記電極が前記患者のどのレトルーザも作動させることなく前記第2の電気信号を送出するようにするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記患者の舌の前記正味正の突出運動反応を生じさせる前記ステップは、前記患者の舌が前記患者の気道から前方に遠ざかるようにするステップ、又は前記患者の舌骨及び/又は甲状軟骨の尾方牽引を生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記患者の舌の前記正味正の突出運動反応を生じさせる前記ステップは、前記第2の電気信号の送出に応答して前記患者の気道が開き又はさらに開くようにするステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
患者を治療する方法であって、
信号送出装置を患者の体内のターゲット信号送出場所に経皮的に植え込むステップを含み、前記信号送出装置は、電極を有し、前記電極は、前記患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から電極に供給して、前記電極が電気信号を前記ターゲット信号送出場所に送出し、それにより前記正味正の突出運動反応を生じさせるステップを含む、方法。
【請求項10】
前記信号送出装置を経皮的に植え込む前記ステップは、前記信号送出装置を前記患者の舌下神経の内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、前記内側枝の下にかつ前記内側枝から延びる少なくとも1つのレトルーザの下に位置決めされる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記信号送出装置を経皮的に植え込む前記ステップは、前記信号送出装置を前記患者の舌下神経の内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、前記内側枝は、第1の領域内で前記内側枝から遠ざかって延び、前記電極は、電気刺激を前記第1の領域とは反対側の第2の領域に送り出すよう位置決めされている、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記正味正の突出運動反応は、後退反応及び前記後退反応よりも大きい突出反応を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記電力を前記電極に提供する前記ステップは、前記電極が前記患者のどのレトルーザも活性化させることなく前記電気信号を送出するようにするステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記患者の舌の前記正味正の突出運動反応を生じさせる前記ステップは、前記患者の舌が前記患者の気道から前方に遠ざかるようにするステップ、又は前記患者の舌骨及び/又は甲状軟骨の尾方牽引を生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含む、請求項9記載の方法。
【請求項15】
前記ターゲット信号送出場所は、前記患者の舌下神経、頸神経ワナ、オトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、及び/又は胸骨甲状筋を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
前記患者の舌の前記正味正の突出運動反応を生じさせる前記ステップは、前記電気信号の送出に応答して前記患者の気道が開き又はさらに開くようにするステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項17】
前記信号送出装置は、第1の信号送出装置であり、前記ターゲット信号送出場所は、第1のターゲット信号送出場所であり、前記方法は、第2のターゲット信号送出装置を第2のターゲット信号送出場所の近くに経皮的に植え込むステップをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項18】
前記電力を提供する前記ステップは、電力をRFリンク経由で前記電極に送るステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項19】
前記電力を前記RFリンク経由で送る前記ステップは、前記電力を400MHzから2.5GHzまでの周波数範囲内の周波数で送るステップを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記電力を送る前記ステップは、前記電力を900MHzから1.2GHzまでの周波数範囲内の周波数で送るステップを含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記電力を前記電極に提供する前記ステップは、前記電極が
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの周波数範囲内の周波数
のうちの少なくとも1つを有する電気信号を送出するようにするステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項22】
前記電極は、複数の円周方向セグメントを有し、前記電力を前記電極に提供する前記ステップは、前記電極が前記電気信号を前記電極の個々の前記円周方向セグメント経由で送出するステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項23】
前記信号送出装置を植え込む前に、針を前記患者の舌下神経の内側枝に向かって軌道に沿って前記患者の体内に経皮的に挿入するステップと、
前記針を前記内側枝と整列させるステップとをさらに含み、前記信号送出装置を植え込む前記ステップは、前記信号送出装置を前記針の前記軌道に沿って方向づけるステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項24】
前記電気信号は、第1の電気信号であり、前記方法は、前記信号送出装置を位置決めするのを助けるために第2の電気信号を前記針経由で前記患者に送出するステップをさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記第1の電気信号は、前記第1の信号送出パラメータを有し、前記第2の電気信号は、前記第1の信号送出パラメータとは異なる第2の信号送出パラメータを有する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記信号送出装置を経皮的に植え込む前記ステップは、経皮的挿入器具を前記患者の体内へ第1の場所のところに方向づけるステップを含む、請求項9記載の方法。
【請求項27】
前記経皮的挿入器具を前記患者の体内へ前記第1の場所のところに方向づける前記ステップは、前記経皮的挿入器具を患者の体内へ顎下場所のところに方向づけるステップを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記経皮的挿入器具を患者の体内へ前記第1の場所のところに方向づける前記ステップは、前記経皮的挿入器具を前記患者の体内へ口腔内場所のところに方向づけるステップを含む、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記経皮的挿入器具を患者の体内へ前記口腔内場所のところに方向づける前記ステップは、前記経皮的挿入器具を患者の体内へ舌下場所のところに方向づけるステップを含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記信号送出装置を経皮的に植え込む前記ステップは、前記経皮的挿入器具を患者の体内から第2の場所のところに方向づけるステップをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記経皮的挿入器具装置を患者の体内から前記第2の場所のところに方向づける前記ステップは、前記経皮的挿入器具を患者の体内から口腔内場所のところに方向づけるステップを含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記経皮的挿入器具を患者の体内から前記第2の場所のところに方向づける前記ステップは、前記経皮的挿入器具を患者の体内から顎下場所のところに方向づけるステップを含む、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記ターゲット信号送出場所は、前記患者の舌下神経、前記舌下神経の内側枝、頸神経ワナ、オトガイ舌筋、及び/又はオトガイ舌骨筋を含む、請求項9記載の方法。
【請求項34】
第1の縫合糸を前記信号送出装置の第1の端部に結合するステップと、
前記第2の縫合糸を前記信号送出装置の第2の端部に結合するステップと、をさらに含む、
前記信号送出装置を経皮的に植え込む前記ステップは、前記第1の縫合糸又は前記第2の縫合糸のうちの少なくとも一方を選択的に引いて、前記信号送出装置を前記ターゲット信号送出場所のところに位置決めするステップをさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項35】
信号送出装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に位置決めされていて、かつワイヤレス電力信号をウェアラブル電源経由で受け取るよう構成されたアンテナと、
前記ハウジング内に位置決めされていて、かつ前記アンテナに動作可能に結合された信号発生器と、
前記ハウジングによって担持されていて、かつ前記信号発生器に動作可能に結合された電極と、を有し、前記電極は、(1)前記信号発生器の少なくとも一部分、又は(2)前記アンテナの少なくとも一部分のうちの少なくとも一方周りに少なくとも部分的に延びている、信号送出装置。
【請求項36】
前記ハウジングは、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分を含み、前記電極は、前記第1のハウジング部分の外面のところに位置決めされ、前記信号発生器は、前記第1のハウジング部分内に位置決めされ、前記アンテナは、前記第2のハウジング部分内に位置決めされている、請求項35記載の信号送出装置。
【請求項37】
前記信号発生器は、回路部及び/又はチャージポンプを有し、前記電極は、前記回路部及び/又は前記チャージポンプ周りに少なくとも部分的に延びている、請求項35記載の信号送出装置。
【請求項38】
前記電極は、患者の舌下神経の内側枝の下かつ前記内側枝から延びる少なくとも1つのレトルーザの下に位置決めされるよう構成されている、請求項35記載の信号送出装置。
【請求項39】
前記信号発生器は、前記電極が電気信号を送出するように構成され、前記電気信号は、
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの周波数範囲内の周波数
を含む信号送出パラメータを有する、請求項35記載の信号送出装置。
【請求項40】
前記電極は、患者のどのレトルーザも刺激することなく、電気信号を前記患者のターゲット場所に印加するよう構成されている、請求項35記載の信号送出装置。
【請求項41】
1つの前記電極は、円周方向にマスキングされ、又は円周方向にセグメント化されている、請求項35記載の信号送出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、一般に、睡眠時無呼吸を治療するために遠隔給電(パワーデリバリ)器具にワイヤレス結合された植え込み型電極を配置する技術、並びに関連システム及び装置に関する。代表的なパワーデリバリ装置は、マウスピース、カラー又は他の頸部衣類の形状因子で着用される器具、及び/又は接着剤皮膚取り付け器具を含む。
【0002】
〔関連出願の引照〕
本願は、2021年7月9日に出願された米国特許仮出願第63/220,335号及び2021年5月20日に出願された米国特許仮出願第63/191,240号の優先権主張出願であり、これら米国特許仮出願を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中に患者の上気道が繰り返し閉塞(不完全又は完全閉塞)状態になって覚醒が引き起こされる病態である。上気道の閉塞の繰り返しは、睡眠の断片化を引き起こす場合があり、その結果、睡眠不足、昼間疲労感、及び/又は倦怠感が生じる場合がある。OSAのより深刻な場合として、患者が脳卒中、心不整脈、高血圧、及び/又はその他の障害を引き起こす恐れが高くなる場合がある。
【0004】
OSAは、睡眠中に、上気道の軟組織が落ち込む又は虚脱する傾向があり、それによって上気道が閉塞するという特徴がある。OSAは、典型的には、患者の上気道中への軟口蓋の虚脱、口腔咽頭の虚脱、舌の虚脱、喉頭蓋の虚脱、又はこれらの組み合わせを原因としており、それにより正常な呼吸が妨げられると共に/或いは睡眠状態からの覚醒が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OSAに適応の幾つかの治療法があり、かかる治療法としては、例えば、外科手術、持続的気道陽圧(CPAP)器械や上気道と関連していて舌(又は他の上気道組織)を動かす筋肉の電気刺激が挙げられる。手術手技としては、患者の舌及び/又は軟口蓋の一部を切除する手術、及び舌が咽頭の奥に落ち込むのを阻止しようとする他の手技が挙げられる。これらの手術手技は、極めて侵襲的である。CPAP器械は、患者の鼻及び口のところに陽空気圧を加えて、上気道を開存状態に維持しようとするものである。しかし、これらの器械は、不快感をもたらし、扱いにくく、しかも着用順守率が低い場合がある。
【0006】
電気刺激法の中には、睡眠中、舌が前方(例えば、前方向)に突き出るようにするともに/或いは扁平になるようにすることによって舌が咽頭の奥に落ち込むのを阻止しようとするものである。しかしながら、患者の口腔の神経を電気的に刺激する既存の技術は、侵襲性が強すぎかつ/或いは十分に効能がないという欠点がある。かくして、OSA及び他の睡眠障害のための改良型低侵襲治療が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、患者を治療する方法であって
針を患者の舌下神経の内側枝に向かって軌道沿いに患者の体内に経皮的に挿入するステップを含み、
針を内側枝と整列させるステップを含み、
信号送出装置を針により定められた軌道経由で内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、信号送出装置は、電極を有し、電極は、患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされ、
電極は、内側枝の下にかつ内側枝から延びるレトルーザ(retruser)の下に位置決めされ、かつ/或いは
レトルーザは、第1の領域内で内側枝から遠ざかって延び、電極は、電気刺激を第1の領域とは反対側の第2の領域に送り出すよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から電極に提供して患者の睡眠障害を治療するステップを含む、方法において、
針を経皮的に挿入するステップは、針を患者の体内へ顎下の場所又は口腔内の場所に方向づけるステップ及び第1の電気信号を針経由で患者に送出するステップを含み、
電力を提供するステップは、電力をRFリンク経由で電極に送るステップ及び、電極が
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの第1の周波数範囲内の第1の周波数
のうちの少なくとも1つを有する第2の電気信号を送出するようにするステップを含み、
電力をRFリンク経由で送るステップは、電力を400MHzから2.5GHzまでの第2の周波数範囲内の第2の周波数で送るステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0008】
本発明の別の観点によれば、患者を治療する方法であって、
信号送出装置を患者の体内のターゲット信号送出場所に経皮的に植え込むステップを含み、信号送出装置は、電極を有し、電極は、患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から電極に供給して、電極が電気信号をターゲット信号送出場所に送出し、それにより正味正の突出運動反応を生じさせるステップを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の観点によれば、信号送出装置であって、
ハウジングと、
ハウジング内に位置決めされていて、かつワイヤレス電力信号をウェアラブル電源経由で受け取るよう構成されたアンテナと、
ハウジング内に位置決めされていて、かつアンテナに動作可能に結合された信号発生器と、
ハウジングによって担持されていて、かつ信号発生器に動作可能に結合された電極とを有し、電極は、(1)信号発生器の少なくとも一部分、又は(2)アンテナの少なくとも一部分のうちの少なくとも一方周りに少なくとも部分的に延びている、ことを特徴とする信号送出装置が提供される。
【0010】
本技術の代表的な実施形態が、例示として示されており、これらは、図によって制限されることはなく、図中、同一の参照符号は、一般に図全体を通じて対応の部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】患者の上気道を示す側断面図である。
図2】患者の上気道の部分概略側面断面図であり、本技術の実施形態に従って睡眠障害を治療するためのシステムのコンポーネントを示す図である。
図3A】本技術の実施形態に従って代表的な信号送出ターゲットを示す患者の頭蓋の側面図である。
図3B】患者の頭蓋を下から見た図であり、舌下神経、及び本発明の実施形態に従って代表的な電極配置場所を示す図である。
図3C】舌下神経の内側枝、及び本技術の実施形態に従って位置決めされた関連の信号送出装置の等角図及び端面図である。
図3D】舌下神経の内側枝、及び本技術の実施形態に従って位置決めされた関連の信号送出装置の等角図及び端面図である。
図4A】本技術の実施形態に従って信号送出装置を植え込むやり方を示す図である。
図4B】本技術の実施形態に従って信号送出装置を植え込むやり方を示す図である。
図4C】本技術の実施形態に従って信号送出装置を植え込むやり方を示す図である。
図4D】本技術の実施形態に従って信号送出装置を植え込むやり方を示す図である。
図4E】本技術の実施形態に従って信号送出装置を植え込むやり方を示す図である。
図5A】頸神経ワナ、舌骨舌筋、関連筋系、及び本技術の実施形態に従って位置決めされた関連信号送出装置の部分略図である。
図5B】頸神経ワナ、舌骨舌筋、関連筋系、及び本技術の実施形態に従って位置決めされた関連信号送出装置の部分略図である。
図6A】本技術の実施形態に従って構成された信号送出装置の部分略図である。
図6B】本技術の実施形態に従って構成された信号送出装置の部分略図である。
図6C】本技術の実施形態に従って構成された信号送出装置の部分略図である。
図7A】本技術の実施形態に従って選択された波形パラメータを有する波形の代表的な例を示す図である。
図7B】本技術の実施形態に従って活動期間及び休止期間を有する波形の代表的な例を示す図である。
図8】本技術の代表的な実施形態に従って信号送出装置を植え込んだり及び取り出したりするための代表的なプロセスを示す流れ図である。
図9図8に示すプロセスを実施するために用いられる代表的な機器を示す表の図である。
図10A】本技術の代表的な実施形態に従って代表的な超音波プローブ、及び関連の画像を示す図である。
図10B】本技術の代表的な実施形態に従って代表的な超音波プローブ、及び関連の画像を示す図である。
図11A】本技術の実施形態に従って代表的な超音波プローブ、及び関連の画像を示す図である。
図11B】本技術の実施形態に従って代表的な超音波プローブ、及び関連の画像を示す図である。
図12】本技術に従ってプロセスのために用いられる代表的な超音波プローブの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本技術については、読みやすくするために以下の見出しのもとで説明する。
見出し1:「導入」
見出し2:「全体的な患者の生理学特徴についての説明」(図1に焦点を合わせている)
見出し3:「全体的システム」(図2に焦点を合わせている)
見出し4:「代表的な刺激ターゲット及びインプラント技術」(図3A図5Bに焦点を合わせている)
見出し5:「代表的な信号送出装置」(図6A図6Cに焦点を合わせている)
見出し6:「代表的な波形」(図7A及び図7Bに焦点を合わせている)
見出し7:「別のインプラント技術」(図8図12に焦点を合わせている)
【0013】
本技術の実施形態を上述の選択された見出しの下で説明するが、本技術の他の実施形態は、多数の見出し下において説明したコンポーネントを含むことができる。したがって、一実施形態について特定の見出しの下で説明することができるということにより、必ずしも当該実施形態が当該見出し下で説明したコンポーネントにのみ限定されるわけではない。
【0014】
1.導入部
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のための電気的刺激にあたり、代表的には、神経及び/又は筋を状態調節する電流を流して、舌及び/又は他の軟組織が動くようにする。したがって、電気的刺激は、上気道の閉塞を除くことができ、舌又は他の軟組織が潰れ又は軌道を閉塞するのを阻止することができる。本明細書で用いられる「状態調節」及び「刺激」という用語は、1つ以上の運動機能、例えば、呼吸関連の運動機能に対する作用効果、例えば、かかる運動機能に対する影響を呈する神経に対する作用効果を示すことを意味するよう互換的に用いられる。
【0015】
呼吸障害、例えばOSAの発症率及び/又は重症度を減少させる代表的な方法及び装置を本明細書において開示する。代表的な実施形態によれば、低侵襲信号送出装置が患者の口腔、軟口蓋、口腔咽頭、及び/又は喉頭蓋を神経支配する神経の近くに又はこれに隣接して植え込まれる。代表的な神経としては、口腔に隣接すると共に/或いは口腔の周りに又は頸部内に位置する舌下神経、頸神経ワナの枝及び/又は迷走神経が挙げられる。信号送出装置は、経皮注入により患者の体内に植え込まれるのがよい。例えば、1つ以上のマウスピース部分、カラー部分、あご紐部分、ピロー部分、マットレスオーバーレイ部分、他の適当な「ウェアラブル」、及び/又は1つ以上の粘着剤皮膚取り付け型器具を含む非植え込み型電源が電力を植え込み済みの信号送出装置にワイヤレス提供するのがよい。信号送出装置は、正確にターゲットした電気信号(例えば、パルス)を放出し、かかる電気信号は、睡眠時無呼吸を治療するために患者の上気道開存性を改善すると共に/或いは口内腔の組織の緊張度を改善する。信号送出装置によって送り出された電流は、上気道と関連した患者の舌下神経及び/又は他の神経の少なくとも一部分を刺激することができる。舌を前方に動かすことによって、かつ/或いは舌及び/又は軟組織が患者の咽頭の奥上にかつ/或いは上気道上に虚脱するのを阻止することによって、本明細書において開示する器具及び関連方法は、例えば、上気道/咽頭内の潜在的に閉塞性の組織を下に動かすことによって、患者の睡眠の質を向上させることができる。具体的に説明すると、電気信号を舌下神経の内側枝に印加することにより、舌を前(前方)に動かすことができ、また、電気信号を頸神経ワナに印加することにより、舌骨、甲状腺(例えば、甲状軟骨)、及び/又は喉頭下(下方又は尾方)に動かすことができ、かかる運動は、一般に、尾方牽引と呼ばれる。
【0016】
以下に説明する技術の多くの実施形態は、プログラマブルコンピュータ又はコントローラによって実行されるルーチンを含む、コンピュータ実行可能又は機械実行可能又はコントローラ実行可能命令の形態をとるのがよい。当業者であれば理解されるように、本技術を図示すると共に以下に説明するコンピュータ/コントローラシステム以外のコンピュータ/コントローラシステムで実施できる。本技術は、以下に説明するコンピュータ実行可能命令のうちの1つ以上を実行するよう特別にプログラムされ、構成され又は設定された特殊目的のコンピュータ、コントローラ又はデータプロセッサで具体化できる。したがって、本明細書において一般的に用いる「コンピュータ」及び「コントローラ」は、任意適当なデータプロセッサを意味しており、これらの用語は、インターネットアプリケーション及び手持ち型器具(パームトップコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、タブレット、携帯電話、モバイルフォン、マルチプロセッサシステム、プロセッサ利用コンシューマーエレクトロニクス、プログラマブルコンシューマーエレクトロニクス、ネットワークコンピュータ、ミニコンピュータなど)を含む場合がある。これらのコンピュータによって取り扱われる情報を任意適当なディスプレイ媒体で提示でき、かかるディスプレイ媒体としては、液晶ディスプレイ(LCD)が挙げられる。
【0017】
本技術はまた、分散環境で実施でき、この分散環境では、タスク又はモジュールは、通信ネットワークを介して互いにリンクされた遠隔処理装置によって実施される。分散型コンピューティング環境では、プログラムモジュール又はサブルーチンは、ローカル記憶装置やリモート記憶装置内に実装できる。以下に説明する技術の諸観点を1つ以上のASIC(例えば、アドレス指定可能メモリ付き)を含む任意適当なコンピュータ可読媒体上に記憶させることができ、又は分散させることができ、また、ネットワークにより電子的に分散させることができる。本技術の諸観点に特有のデータ構造及びデータの伝送もまた、本技術の実施形態の範囲に含まれる。
【0018】
2.代表的な患者の生理学的特徴
本明細書において説明する代表的な実施形態は、1以上の電流を1つ以上の特定のターゲット配置場所、例えば、特定の神経及び/又は神経に沿う特定の位置に流すよう位置決めされるのがよい電極を有する信号送出装置を含む。図1は、患者の口腔の一般的な解剖学的構造を示しており、後の図は、特定のターゲット存在場所を示している。かかる存在場所としては、舌以外の気道の筋(例えば、口蓋筋、口腔咽頭筋、喉頭筋、肩甲舌骨筋、胸骨舌骨筋、及び/又は胸骨甲状筋)を神経支配する神経のような患者の舌下神経、頸神経ワナの枝、及び/又は迷走神経に沿う場所が挙げられる。ターゲット存在場所を内在筋、外来筋、関連神経枝、及び/又は他の生理学的特徴部のうちの任意のもの、又はこれらの任意の組み合わせに対して特定することができる。かかるターゲット場所及び/又は位置はまた、疼痛及び/又は他の望ましくない効果を生じさせないようにするために、唾液腺(例えば、舌下唾液腺の内側に位置する)及び/又は他の構造から遠くに位置しているのがよい。
【0019】
図1は、x軸が前方向-後方向の方向を示し、y軸が上方向-下方向の方向を示し、z軸が内側-外側の方向を示す座標系に対して患者Pを示している。患者Pは、舌Tの上に位置していて、口腔OC(例えば、口)のルーフを形成する硬口蓋HPを有する。硬口蓋HPは、骨支持体BS有し、かくして、通常、呼吸中に変形しない。軟組織、例えば、膜、線維質、脂肪組織、筋組織で作られている軟口蓋SPは、硬口蓋HPから咽頭PHRの奥に向かって後方(例えば、後方向)に延びている。より具体的には、軟口蓋SPの前端AEは、硬口蓋HPの後端に固定され、軟口蓋SPの後端PEは、非固定である。軟口蓋SPは、骨又は硬い軟骨を含んでいないので、軟口蓋SPは、撓むことができ、そして咽頭PHRの奥に虚脱すると共に/或いは前後にバタつく場合がある(例えば、特に睡眠中)。
【0020】
咽頭PHRは、口腔OC及び鼻腔NCから気管TRに空気を送るもので、鼻腔NCの下(下方)、口腔OCの後方(背後)、かつ食道ESの上方(上)に位置する喉の一部である。咽頭PHRは、両側を舌Tの付け根に向けて下方に延びる、口蓋舌弓PGAによって口腔OCから分離されている。簡略化のために図示していないが、咽頭PHRは鼻咽頭、中咽頭、及び咽喉頭を含んでいる。鼻咽頭は軟口蓋SPの上面と喉の壁(すなわち、口腔OCの上方)との間に位置している。中咽頭は口腔OC背後に位置し、口蓋垂Uから舌骨HBの高さに延びている。中咽頭は前方に向けて口腔OCに開放している。中咽頭の横壁は口蓋扁桃から成り、口蓋舌弓PGAと口蓋咽頭弓との間に位置している。中咽頭の前壁は舌Tの付け根及び喉頭蓋谷から成っている。食物と空気の両方が咽頭PHRを通過するため、食物が飲み込まれたとき、喉頭蓋EPと呼ばれる結合組織の蓋が声門(簡略化のために図示せず)を覆って誤嚥を防止する。咽喉頭は食道ESにつながる喉の一部であり、喉頭蓋EPの下方に位置している。舌Tの下には、下の顎すなわち下顎M及びオトガイ舌骨筋GHが存在し、オトガイ舌骨筋は、舌Tの動きを制御する筋のうちの1つである。オトガイ舌筋は、これまた舌の運動を制御し、そして、現時点において開示する治療法の特定のターゲットであり、以下、図4Bを参照してかかるオトガイ舌筋について説明する。
【0021】
3.全体的システム
図2は、図1を参照して上述した図と同様な視点において、患者の解剖学的構造との関連で示すシステム100の部分概略等角図である。代表的な実施形態では、システム100は、植え込まれたコンポーネントと外部のコンポーネントの両方を含む。植え込まれたコンポーネントは、1つ以上の植え込み型器具120を含むのがよい。各植え込み型器具120は、ターゲット神経及び/又は筋構造に隣接して位置決めされた信号送出装置130を有するのがよい。信号送出装置130は、縫合糸及び/又は他の器具、例えばアンカーにより定位置に固定されるのがよい。信号送出装置用アンカーとしては、例えば、1つ以上の歯、螺旋体、メッシュ覆い、拡張型ステント及びその他が挙げられる。信号送出装置130は、信号発生器110に動作可能に結合されている。幾つかの実施形態では、信号発生機能は全て、植え込み型器具120によって実行され、他の実施形態では、幾つかの信号発生機能は、外部コンポーネントによって実行可能である。信号発生機能及び信号送出機能は、単一の植え込み型器具120によって実行されてもよく、多数の器具によって実行されてもよい。
【0022】
システム100は、電源109を備えたウェアラブル装置101をさらに含むのがよい。例示の目的で、ウェアラブル装置101は、口腔内装置123、例えばマウスピースを含むものとして図2に示されており、この口腔内装置は、電源109を担持している。上述したように、ウェアラブル装置101は、他の実施形態では、他の適当な形態(例えばとりわけ、カラー、あご紐、ピロー、マットレスオーバーレイ)を有することができる。電源109は、電力を信号発生器110に提供し、信号発生器110は、信号(例えば、治療信号)を生じさせてこれら信号を信号送出装置130によって担持された1つ以上の電極131に方向づける。信号送出装置130は、低侵襲技術を用いて、例えば皮下注射針を用いて、ターゲット神経、例えば患者の舌下神経HGNのところ又はその近くに植え込まれるのがよく、これについては、以下において見出し4のもとで説明する。電源109は、電力をワイヤレス電力伝送リンク114、例えば、以下において見出し5のもとで説明する周波数及び/又は周波数範囲のうちの任意の周波数、及び/又は任意他の適当な周波数/周波数範囲で電力をワイヤレスで提供するよう構成されたRF伝送リンク経由で電力を信号発生器110に提供する。
【0023】
ウェアラブル装置101によって担持された諸要素及び(直接的に又は間接的に)植え込み型器具120は、ワイヤレスプログラマリンク161経由でプログラマ160によって制御されるのがよい。加うるに、プログラマ160は、クラウド162及び/又は他のコンピュータサービスと通信して、患者Pから受け取ったデータをアップロードすると共に/或いは、情報をウェアラブル装置101及び/又は植え込み型器具120にダウンロードするのがよい。ダウンロードされたデータは、適当な治療に関する命令及び/又は他のデータ(例えば、他の同様の状態にある患者からの)、ウェアラブル装置101及び/又は植え込み型器具120によって担持された回路部に対して実行されるソフトウェアについてのアップデート、及び/又は他の有用な情報を含むのがよい。他の実施形態では、植え込み型器具120及び/又はウェアラブル装置101は、アップデートできない状態機械コンポーネントを含む。患者から受け取った代表的なダウンロードデータは、呼吸数、心拍数、音声信号(可聴いびき、呼吸低下イベント、及び/又は無呼吸イベントに対応している)、体温、頭の向き/位置、飽和血中酸素レベル、空気流量レベル、甲状腺運動、及び/又は舌の運動を含むのがよい。上記実施形態のうちの任意のものに関し、ウェアラブル装置101は、電力を1つ以上の送電リンク114経由で植え込み型器具120に送り、そして、充電器121から電力を受け取る(例えば、間欠方式で)。したがって充電器121は、従来型誘導結合方式(例えば、Qi標準充電方式)及び/又は従来型ワイヤード接続方式のものを含むのがよい。
【0024】
快適な装用のため、ウェアラブル器具101(口内器具123であれ他形式のウェアラブルであれいずれにせよ)は、患者にカスタムフィットさせることができ、又は種々のサイズで利用可能に作られているのがよく、かつ/或いは個々の患者に合うように部分的に構成可能であるのがよい。口内器具123は、関連する信号送出装置130が、口腔内のターゲット神経集団(例えば、HGN)のところに又はこれらの近くに位置決めされたときに最適である。代表的な口内器具が2021年11月3日に出願された係属中の米国特許出願第17/518,414号に開示されており、この米国特許出願を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。ウェアラブル器具がマウスピースの形状因子を有するにせよ別の適当な形状因子を有するにせよいずれにせよ、ウェアラブル器具がHGN以外のかつ/或いはこれに加えて神経集団、例えば、迷走神経及び/又は顎神経ワナの枝をターゲットにするために用いられる場合であっても、電力を植え込み型器具120に提供することができる。さらに別の実施形態では、電源109は、接着剤により患者の皮膚に取り付けることができるが、接着剤を避けることが患者にとってより望ましく/効果的であることが予想される。
【0025】
図2に示す特定の実施形態を参照すると、口内器具123は、上マウスピース部分111と下マウスピース部分112の両方を有するのがよい。2つのマウスピース部分111,112は、コネクタ113により互いに結合されるのがよい。コネクタ113は、2つのマウスピース部分相互間にワイヤード通信リンクをもたらすことができ、かつ/或いはコネクタ113は、下マウスピース部分112を上マウスピース部分111に対して機械的に位置決めすることができる(かつ/或いはその位置を維持し又は安定化することができる)。このやり方を用いると、例えば、患者の下の顎又は下顎Mを、図2の骨構造BSによって指示されている患者の上顎に対して前進させることができる。例えば、本技術の諸実施形態は、ウェアラブル器具によって電力供給される電気刺激に加えて、ウェアラブル器具101の物理的要素を用いて、顎弛緩(患者の口がぽかんと開いた状態)を避け又は少なくとも軽減する。例えば、カラー及び/又はあご紐を備えたウェアラブル器具は、患者の顎をターゲット位置に機械的に安定化することができる。
【0026】
電源109は、充電器121から電力を受け取り、そして電力を信号植え込み型器具120に伝送可能に蓄える1つ以上の電荷貯蔵装置116(例えば、1つ以上のバッテリ)を含むのがよい。したがって、電源109は、電荷貯蔵装置116から電力を受け取り、この電力を調整し(例えば、電力をDCからRF波形に変換し)、そしてこの電力を送電アンテナ118に伝送する回路部115(例えば、第1の回路部)を有するのがよい。送電アンテナ118は、電力をワイヤレス送電リンク114(例えば、RF送信リンク)及び信号送出装置130によって担持された電極受信機アンテナ133経由で植え込み型器具120に伝送する。
【0027】
口内器具123は、プログラマ160からデータを受け取ると共に/或いはプログラマ160にデータを伝送するデータ送受信機アンテナをさらに有するのがよい。プログラマ160に伝送されるデータは、1つ以上のセンサ119から得られたセンサデータを含むのがよい。したがって、口内器具123は、電力を信号送出装置130に方向づけるのに必要な機能要素/コンポーネントを担持するのがよく、また、患者にとって効果的な治療を提供するようプログラマ160と通信するのがよい。
【0028】
4.代表的な刺激ターゲット及び植え込み技術
図3A図5を参照して、幾つかの刺激ターゲット及び植え込み技術について説明すると共に/或いは例示する。説明を分かりやすくするために、これら刺激ターゲット及び植え込み技術は、患者Pの解剖学的構造の左側又は右側、例えば、患者Pの左舌下神経の左内側枝に関して図示されている。しかしながら、理解されるように、図3A図5を参照して説明すると共に/或いは例示する刺激ターゲット及び/又は植え込み技術のうちの少なくとも幾つか又は全ては、患者の解剖学的構造のもう1つの側、例えば、患者Pの右舌下神経の右内側枝への適用にも同様に適している。加うるに、刺激ターゲット及び/又は植え込み技術のうちの少なくとも幾つかは、両側信号送出に用いることができ、例えば、患者Pの第1の側の第1の刺激ターゲットに第1の電気信号を印加すると共に、患者Pの異なる側の第2の刺激ターゲットに第2の電気信号を印加するよう使用できる。幾つかの実施形態では、第1及び第2の刺激ターゲットは、患者の解剖学的構造の対応の左及び右部分、例えば左及び右舌下神経の左及び右内側枝であるのがよい。他の実施形態では、第1と第2の刺激ターゲットは、互いに異なっていてもよく、例えば、患者の左舌下神経の左内側枝と右頸神経ワナであってもよい。
【0029】
図3Aは、患者Pの頸部領域(野)及び下頭部領域の部分概略部分切除矢状図である。図3Aは、この領域の代表的な神経構造を示しており、この構造は、舌下神経HGN(及びその内側枝180)及び頸神経ワナACを含む。図3Aはまた、治療信号をターゲット神経に方向づける電極を位置決めするプロセスを助けるために使用される代表的な超音波プローブ199を示している。
【0030】
図3Bは、下顎Mに向かって上方に見た患者の頭蓋の部分概略等角図である。図3Bはまた、患者の舌T(図1)を制御する筋を神経支配する舌下神経HGNを示している。代表的な実施形態では、1つ以上の電極131が、内側枝によって定められた電極平面132内において舌下神経HGNに沿って、特に、HGNの内側枝180のところに位置決めされている。電極131をこの平面132内に、かつ舌下神経HGNに隣接して正確に位置決めすることによって、本技術の実施形態に係るシステムは、不快感、及び/又は他の望ましくない効果を生じさせることなく、かつ/或いは効果的な治療信号を生じさせるのに必要な電力量を減少させる仕方で患者の気道開存性を一層効果的に制御することができる。本明細書におけるどこか他の場所で説明するように、他の代表的なターゲット神経としては、頸神経ワナ及び迷走神経、並びに/或いはこれら神経によって支配される筋のうちの1つ以上が挙げられる。さらに別の代表的なターゲットとしては、図3Aに示す脳神経(例えば、舌咽神経)及び口蓋舌筋、並びに左及び/又は右横隔神経が挙げられる。
【0031】
図3Cは、本発明の諸実施形態に従って位置決めされた内側枝180、及び関連信号送出装置130の部分略図である。内側枝180は、神経軸線181に沿って延びて、口腔筋、例えば、オトガイ舌筋及びオトガイ舌骨筋を支配しており、これら筋は、舌を前へ(前方に)引く傾向があり、かくして、口蓋の軟組織が患者の気道中に脱出する傾向が軽減される。しかしながら、内側枝180は、例えば、茎突舌筋や舌骨舌筋のような筋を支配するレトルーザ(retruser)182をさらに含み、これら筋は、軟組織を後ろへ(後方に)引く傾向があり、かつ/或いは、舌を口腔内で左又は右に巻こうとする場合がある―両方は、患者の気道を閉塞する場合のある運動反応である。したがって、内側枝180を電極131により正味の正の突出効果又は正味の突出運動反応を結果的にもたらす仕方で刺激することが有利である。これは、例えば、内側枝180を刺激してレトルーザ182全体の活性化を回避することを含む場合がある。追加的に又は代替的に、正味正の突出効果は、電気信号に対する突出反応が電気信号に対する後退反応よりも大きく、又は違ったやり方でこれに対抗したときに得ることが可能である。これは、例えば、電気信号を患者の神経及び/又は筋のうちの1つ以上に送って、電気信号に応答して、電気信号が送り出されない場合よりも患者の気道がより開くと共に/或いは多量の空気量の実現を可能にするようになっていることを含む場合がある。正味正の突出効果を得る一方式は、電極131をこれら電極がレトルーザ182を刺激することなく(又は、著しく刺激することなく)、内側枝180を優先的に刺激するよう位置決めすることである。
【0032】
図3Cに示すように、レトルーザ182は、一般に、内側枝180の神経軸線181に平行に又は少なくとも部分的に平行に延びる第1の部分183aを有する。レトルーザ182は、神経軸線181から遠ざかるように曲がっている第2の部分183bをさらに有する。したがって、レトルーザ182の刺激を回避し減少させる一方式は、電極131を軸方向に位置決めしてこれら電極が生じさせる電場が、レトルーザ182を活性化する傾向が低いものであるようになっている。図3Cに示すように、電極131は、電極対をなして配置され、かかる電極対は、第1の対(第1及び第2の電極131a、131bから成る)と第2の対(第3及び第4の電極131c、131dから成る)を含む。他の実施形態は、これよりも多い又は少ない電極及び/又は電極対を含むことができる。各電極対は、電場Eを発生させ、電場Eは、漸減電場強さ矢印171によって示されているように、電極131から遠ざかる方向に強度が減少している。電場Eは、電場に平行な神経組織よりも電場に対して横方向に延びる神経組織を優先的に活性化させる。したがって、信号送出装置130の装置軸線141が内側枝180の神経軸線181にほぼ平行な状態では、電場Eは、内側枝180を優先的に活性化させる。しかしながら、電場Eがレトルーザ182の第1の部分183a(これらもまた、神経軸線181に平行であり又はほぼ平行である)に近接して位置決めされた場合、電場Eは、レトルーザ182もまた活性化させる場合がある。この結果を回避する一方式は、電極131を、レトルーザ182の第1の部分183aに対して神経軸線181に沿ってオフセットした状態に位置決めすることにある。このようにすると、電場Eは、第1の部分183aのところでレトルーザ182を活性化させる可能性が低くなる。レトルーザ182の第2の部分183bが電場に対して横方向である(したがって、電場の影響を潜在的に受けやすい)が、第2の部分183bのところの電場は、極めて弱いのでレトルーザ182に対する大きな影響を及ぼすことはないと見込まれる。これらの実施形態及び他の実施形態では、電極131のうちの1つ以上は、マスキングされ(例えば、円周方向にマスキングされ)、セグメント化され(例えば、円周方向にセグメント化され、個々にアドレス指定可能であり)、方向性があり、少なくとも部分的に覆われ、かつ/或いは違ったやり方で電場を特定の方向に方向づけるように構成され、レトルーザ182を刺激する恐れを一段と減少させることができる。
【0033】
レトルーザ182に対する電場の影響を減少させるもう1つの方式は、図3Dに示すように電極を円周方向に選択的に位置決めすることである。図3Dに示すように、レトルーザ182が内側枝180から一般的に上方向に出る傾向があるので、信号送出装置130を内側枝180の下に位置決めする。したがって、レトルーザ182が、ほぼ10時からほぼ2時(時計回りに測定して)の時計位置で、第1の領域142a内で内側枝180から遠ざかって延びる場合、信号送出装置130は、第1の領域142aから離れた(例えば、軸方向にオフセットし、反対側であるなど)第2の領域142b内に、すなわち、ほぼ2時~ほぼ10時(時計回りに測定して)の間、かつ/或いはかかる領域内の任意適当な部分領域(例えば、2時、3時、4時、5時、6時、7時、8時、9時、及び10時のうちの任意の時計位置相互間)に位置決めされるのがよい。レトルーザ182が内側枝180から全体として下の方向に延びている場合、信号送出装置130は、内側枝180の全体として上方に位置決めされるのがよい。
【0034】
レトルーザ182に対する電場の作用効果を減少させるさらにもう1つの方式は、電極をターゲット神経の運動終板のところ又はこの近くに、例えば、HGNが患者の舌を支配するところ及び/又はオトガイ舌筋のところ又はこの中に位置決めすることである。例えば、信号送出装置130は、患者のターゲット神経のブラキエーテッド(brachiated)部分に近接してかつ/或いはこれに隣接して位置決めされるのがよい。これについては、図4Dを参照してさらに詳細に説明する。信号送出装置130がこの位置にある状態で、信号送出装置130によって生じた電場Eは、レトルーザ182から間隔を置いて位置し、この電場は、弱すぎるのでレトルーザ182に対する大きな影響をもたらすことができないと見込まれる。幾つかの観点では、信号送出装置130をさらに前方に、例えば患者のターゲット神経のブラキエーテッド部分中にさらに奥へ位置決めすると、電場をターゲット神経に一層集中させることができ、かつ/或いは、レトルーザ182を刺激する恐れをさらに減少させることができる。上述の技術(軸方向の配置、円周方向「クロッキング」、及びブラキアル(brachial)位置決め)は、個別的にか組み合わせかのいずれかで使用でき、これら技術を組み合わせて用いることは、レトルーザ182を活性化する恐れをさらに減少させることが見込まれる。
【0035】
上記において示したように、電極を注意深く位置決めして、電気治療と関連した有益な作用効果を高め、そして有害な作用効果、例えば、レトルーザ182の活性化を減少させることが重要な場合がある。見出し7のもとで説明する実施例Aは、信号送出装置を超音波プローブの助けにより、単一のエントリー場所経由で経皮的に導入して位置決めする技術を開示している(図3Aに示す)。
【0036】
一方式では、スタイレットを用いて単一の穿刺部を患者の皮膚に形成する。穿刺部は、患者の後方顎下野に配置されるのがよい。信号送出装置130は、後方顎下穿刺部を通って経皮的に導入され(例えば、植え込まれ、注入され、かつ/或いはその他)、そして舌下神経HGNの内側枝180に近接して位置決めされるのがよい。
【0037】
もう1つの方式では、スタイレットを用いて単一の穿刺部を患者の口腔内に形成する。この穿刺部は、患者の口腔内舌下野、例えば、口腔底の舌下面の下、舌下小丘の後方、及び舌下神経の内側枝に向かって内側に角度をつけて配置されるのがよい。信号送出装置130は、口腔内舌下穿刺部を通って経皮的に導入されて、舌下神経HGNの内側枝180に近接して位置決めされるのがよい。
【0038】
図4A図4Cを参照して以下に説明するもう1つの方式は、信号送出装置130を位置決めするためにスタイレット及び患者の皮膚に開けた2つの穿刺部を用いる。スタイレットは、湾曲していてもよく真っ直ぐであってもよく、又は任意他の適当な形態をしていてもよい。特定の実施形態では、信号送出装置は、各端部のところに位置する縫合糸を有するのがよく、したがって、担当医は、一端を引くと共に/或いは他方の端を引いて信号送出装置(及びこれが担持している電極)をターゲット場所に正確に配置することができるようになっている。
【0039】
図4Aは、本技術の諸実施形態に従って植え込み型器具120を植え込むために用いられる代表的な1組のインプラントツール190を示している。植え込み型器具120は、信号送出装置130を有し、この信号送出装置130は、電気刺激をターゲット神経集団に提供する電極131を有する。例えば、図5A図6A、及び図6Bに示す幾つかの実施形態では、信号送出装置130は、電極131を担持したリード134を有する。例えば、図5B及び図6Cに示す他の実施形態では、リード134は、省かれてもよく、信号送出装置130は、「リードレス」であると共に/或いは、信号送出装置130の外面に設けられた電極131を担持することができ、その結果、信号送出装置130の1つ以上のコンポーネントを電極131のうちの1つ以上内に(例えば、当該電極から半径方向内方に、又は、当該電極の環状域内に)位置決めすることができるようになっている。植え込み型器具120の一端は、近位縫合糸193aに取り付けられ、反対側の端は、遠位縫合糸193b(ひとまとめに縫合糸193という)に取り付けられている。植え込み型器具120は、近位アンカー137aと遠位アンカー137bとして示されている1つ以上のアンカー137をさらに有するのがよい。少なくとも幾つかの実施形態では、植え込み型器具120が近位縫合糸193aと遠位縫合糸193bの両方を介して定位置に配置されているので、アンカー137を省くことができる。
【0040】
近位縫合糸193aは、湾曲針191に取り付けられている。植え込み型器具120の寸法形状に応じて、インプラントツールは、拡張器196、植え込み型器具120を患者の体内に位置決めすることができるように通すカニューレを含むのがよい導入器192、及び/又は植え込み型器具120を例えばセルディンガー法により針191により形成された開口部中に方向づけるのを容易にするよう構成された他の経皮的挿入器具をさらに有するのがよい。例えば、導入器192は、患者の皮膚を通る経皮的挿入経路を形成することができ、植え込み型器具120をこの経皮的挿入経路を通って経皮的に挿入し、植え込み、注入し、かつ/或いはその他のことを行うことができる。針191が湾曲している(図4Aに示すように)にせよ、真っ直ぐである(他の実施形態にあり得るように)にせよいずれにせよ、針は、20ゲージから10ゲージまでの範囲、又は特定の実施形態では18ゲージから12ゲージまでの範囲にある直径を有するのがよい。拡張器196の直径は、3フレンチから12フレンチまで(1mmから4mmまで)の範囲にあるのがよい。針191及び/又は導入器192は、当初、比較的急峻な軌道角(例えば、皮膚表面に対して60゜)をなして挿入されるのがよく、次に、皮膚に向かってより浅い角度(例えば、皮膚表面に対して20゜)まで下方におろして針をHGNと整列させるのがよい。針191の一部分がいったん経皮的に挿入されると、針191(及び/又は、他の経皮的挿入器具、例えば導入器192)の挿入軌道を調節することにより、針191が挿入軌道に沿って他の構造(例えば、下顎骨)に接触することを回避することができると共に/或いは、患者の解剖学的構造の他の非ターゲット部分(例えば、唾液腺、血管構造、神経、下顎骨など)を穿刺する恐れを減少させ又はなくすことができる。例えば、上述したように針191が湾曲している場合には侵入角度を変更する必要性を減少させ又はなくすことができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、針191及び/又は別の経皮的挿入器具は、挿入中、患者の組織を刺激するよう構成されているのがよい。例えば、図4Aに示すように、針191は、針191の末端198のところ又はその近くのところに位置決めされた1つ以上の電極197を有するのがよい。針の正確な存在場所を識別するには、電気的刺激を針経由で患者に送って患者の運動反応を観察するのがよい。担当医は、運動反応を誘発することに加えて、又はこれに代えて、超音波及び/又は別の適当な可視化技術を用いるのがよい。したがって、少なくとも幾つかの実施形態では、担当医は、視覚的ナビゲーションと刺激応答ナビゲーションの組み合わせを用いて、針をHGN(又は他のターゲット神経)に正確に位置合わせすることができ、その結果、植え込み型器具120が導入されると、植え込み型器具120は、HGNの近くに位置すると共に/或いはHGNとより厳格に整列することが見込まれる。幾つかの実施形態では、担当医は、刺激応答ナビゲーションを用いて、針191を見るのが困難な(例えば、超音波を用いて)患者の解剖学的構造の幾つかの部分、例えばHGNのブラキエーション(brachiation)の近く/内の部分内で動作するときに針の位置を識別することができる。
【0042】
実施形態に応じて、上述の要素を軸方向にずらすことができ、或いは、あらかじめ切れ目を入れて剥ぎ取ることができる。操作を説明すると、針191を第1の箇所で患者の組織中に方向づけ、第1の開口部を形成する。針は、患者の組織を第2の箇所のところで出ることができ、それにより第2の開口部を形成する。担当医は、次に、植え込み型器具120を針191により第1の開口部を通して引くのがよく、そして近位及び遠位縫合糸193a,193bを用いて、植え込み型器具120を患者の体内により正確に配置することができる。追加的に又は代替的に、針191は、中空であるのがよく、したがって、植え込み型器具120を針191中に挿入し、そして縫合糸193a,193bを使用して又は使用しないで、かつ/或いは単一の開口部経由で患者の体内に経皮的に挿入することによって植え込み型器具120を患者の体内に位置決めすることができるようになっている。これら実施形態及び他の実施形態では、1つ以上の他の経皮的挿入器具、例えば導入器192、拡張器196、及び/又はカニューレを針191に嵌めた状態でこれに沿って挿入して植え込み型器具120の経皮的挿入を助けることができる。例えば、針を用いて組織を刺激し、それにより植え込み部位を識別して、1つ以上の拡張器及び/又はカニューレを針にかぶせやすくすることができ、したがって、針を用いると、植え込み型器具を植え込み部位に送るよう構成されたカニューレを位置決めすることができるようになっている。これらの実施形態及び他の実施形態では、針191は、オプションとして、ルーメン及び/又は無傷性先端部を有するのがよい。少なくとも幾つかの実施形態では、針は、拡張器として働いてカニューレを直接送るよう構成されているのがよく、その結果、拡張器196を省くことができる。
【0043】
図4Bは、患者の下顎の拡大図であり、舌Tの縦筋及び横筋、並びにオトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、及び顎舌骨筋を示している。植え込み型器具120は、これがオトガイ舌骨筋とオトガイ舌筋の交差部のところでオトガイ舌筋の下に位置決めされるように針191(図4A)経由で患者Pの体内に挿入された後の状態で示されている。信号送出装置130もまた、概略的に破線示されている内側枝180に隣接して位置している。針191は、遠位開口部195bを形成することによって患者の体内に導入されていて、患者を近位開口部195aのところで出た状態になっている。他の実施形態では、針191を近位開口部195a経由で患者の体内に導入することができ、そして遠位開口部195b経由で患者を出ることができる。図4Bでは、近位開口部195aと遠位開口部195bの両方が患者の顎下腔内に形成されているものとして示されているが、他の実施形態では、近位開口部195a及び/又は遠位開口部195bは、口腔内に、舌下に、かつ/或いは任意他の適当な位置に形成することができる。少なくとも幾つかの実施形態では、例えば、針191を顎下開口部経由で患者の体内に導入することができ、この針は、口腔内舌下開口部経由で患者を出ることができる。
【0044】
針191及び任意の拡張器もしくは導入器を抜去した後、残りの近位縫合糸193a及び遠位縫合糸193bは、それぞれ、近位開口部195a及び遠位開口部195bのところで患者Pから外へ出る。担当医は、別法として、矢印Sで示すように縫合糸193a,193bの各々を交互に穏やかに引いて信号送出装置130を内側枝180(図4Bでは概略的に点線で示されている)に対して正確な配置場所に位置決めすることができる。担当医が引く(例えば、押すこととは逆に)ことによって、信号送出装置130を動かすことができるようにすることによって、担当医による内側枝180に対する信号送出装置の位置を調節できる精度を向上させることが期待される。これら正確な配置場所は、針191に関して上述したように、電気信号を信号送出装置に印加して患者の運動反応を観察することによって特定できる。担当医は、運動反応を誘発することに加えて、又はこれに代えて、超音波及び/又は別の適当な可視化技術を用いることができる。これら技術のうちの任意のものを繰り返し実施するのがよく、ついには、電極は、適正に位置決めされるようになる。例えば、代表的なプロセスでは、担当医は、超音波を用いて信号送出装置130をターゲット場所の近くに位置決めし、次に、信号送出装置を小刻みに動かすと共に患者の運動反応を観察しながら電気信号を繰り返し印加し、ついには、ターゲット場所が正確に特定されるようになる。
【0045】
次に図4Cを参照すると、信号送出装置130は、内側枝180に対してターゲット場所に位置決めされている。近位縫合糸193aは、近位縫合箇所194aのところで患者Pに取り付けられており、遠位縫合糸193bは、遠位縫合箇所194bのところで患者Pに取り付けられている。縫合箇所194a,194bは、開口部195a,195bから延びることがないよう短くされているのがよく、必要が生じた場合には容易に引き抜けるよう皮下であるが、患者の皮膚の近くに配置されるのがよく、かつ/或いは弾性であり、かつ/或いはいったん患者Pに取り付けられた信号送出装置130のわずかな動きを可能にするよう違ったやり方で構成されるのがよい。特定の実施形態では、縫合糸(例えば、縫合糸193a,193b、及び/又は他の縫合要素)は、蛍光透視検査及び/又は超音波下ではより見えるよう、蛍光透視検査及び/又は超音波下において放射線不透過性に又はエコー反射性に作られるのがよい。例えば、縫合糸は、蛍光透視Tバーで固定されるのがよく、蛍光透視Tバーは、当初、潰され、次に拡張されて適正な位置にあるときに隣接の組織中に入る。追加的に又は代替的に、縫合糸193a,193bのうちの一方又はこれら両方は、生分解性であるのがよい。これらの実施形態及び他の実施形態では、1つ以上のアンカー137(図4Aに示されている)は、植え込み型器具120を定位置に固定するよう配備されるのがよい。
【0046】
図4Dは、植え込み型器具120のもう1つの図であり、電場を信号送出装置130は、舌下神経HGNの内側枝180の方へ方向づけるよう位置決めされている。図4Cに示すように、信号送出装置130は、顎舌骨筋(これは、図4Dの紙面の外に位置している)、オトガイ舌筋及び舌骨舌筋により定められた平面相互間に位置決めされるのがよい。したがって、幾つかの実施形態では、信号送出装置130は、オトガイ舌筋中に侵入することなく、オトガイ舌筋の表面に当接し又はこの近くに位置するのがよい。他の実施形態では、信号送出装置130は、オトガイ舌筋中に侵入するのがよく、このことは、信号送出装置をそのターゲット場所で支持するのを助けることができる。信号送出装置130は、治療信号を内側枝180に方向づけるよう顎舌骨筋の前縁の前方に位置決めされてもよく(図4Dに示されている)、かつ/或いは他の適当な位置、例えば内側枝180の近くの位置(図3C及び図3Dに示されている)を有してもよい。幾つかの実施形態では、植え込み型器具120は、図4Dに示す位置に対して前方に位置決めされるのがよく、その結果、信号送出装置130は、電場をHGNの1つ以上の枝184a,184bに向かって、かつ/或いはHGN及び/又はHGNの枝184a,184bのうちの1つ以上が舌Tを支配する運動終板のところに又はこれに近接して方向づけるよう位置決めされることが可能である。例えば、植え込み型器具120を図示のように位置決めすることに加えて又はこれに代えて、第1の植え込み型器具120a(概略的に示されている)は、第1の信号送出装置130a(概略的に示されている)がHGNの第1の枝184aの方へ電場を方向づけるよう位置決めされるような位置に配置されるのがよく、かつ/或いは第2の植え込み型器具120b(概略的に示されている)は、第2の信号送出装置130b(概略的に示されている)がHGNの第2の枝184aの方へ電場を方向づけるよう位置決めされるような位置に配置されるのがよい。
【0047】
図4Eは、患者の口腔の冠状図であり、植え込み型器具120を代表的な位置で示している。器具120は、図4Eの紙面の内外に延びる断面で示されている。この位置では、器具120は、舌骨舌筋と顎舌骨の平面が交差する箇所のところ又はその近くで、舌骨舌筋のすぐ外側にかつ顎舌骨のすぐ内側に位置する。器具120は、HGNのすぐ下に位置決めされ、HGNもまた、図4Eの紙面の内外に延びる断面で示されている。
【0048】
上述の方式の一利点は、担当医が患者に創を作る必要なく、信号送出装置130を前後に動かして正確なターゲット場所を見いだすことができるということである。その代わりに、信号送出装置を患者の体内に経皮的に導入し、このことは、例えば感染が広がる恐れを減少させることによって患者の転帰を改善することができる。加うるに、アンカー137(図4A)が信号送出装置130を定位置に固定するために用いられる場合があるが、少なくとも幾つかの実施形態では、縫合糸193a,193bは、これを行うのに十分である。さらに別の実施形態では、信号送出装置130は、顎舌骨筋、オトガイ舌筋、及び舌骨舌筋によって提供される力によって、又は上述したように縫合糸及び/又は他のアンカー器具で、オトガイ舌筋中に侵入することだけで定位置に保持できる。さらにまた、上記実施形態のうちの任意のものに関し、信号発生機能及び信号送出機能は、当初別々の要素によって実施でき、これら当初別々の要素は、図6Bを参照してさらに詳細に説明するように植え込みプロセス中に互いに接合される。
【0049】
信号送出装置130を植え込む本明細書に説明する技術のうちの任意のものは、1つ以上の追加の操作を含むのがよい。例えば、担当医は、顎下組織又は口腔内組織を圧迫し又は違ったやり方で操作して(例えば、担当医の指で)、信号送出装置の位置決めを容易にすることができる。これらの方法により、担当医は、所望の終点に向かう植え込み針の軌道を操作することができる。追加的な力は、信号送出装置の植え込み精度を向上させる一手法として、口腔内又は口腔外に加えられる手動圧力、及び/又は組織を動かすことを目的とした真空の形態とするのがよい。圧力及び/又は吸引力もまた、例えば腺のような構造を回避するよう使用できる。
【0050】
図3A図4Eを参照した上記説明は、信号を舌下神経内側枝180に送るよう位置決めされた電極に焦点を当てている。上述したように、信号を内側枝に印加することに加えて又はこれに代えて、電気信号を頸神経ワナに印加すると共に/或いは頸神経ワナによって支配される筋のうちの1つ以上に電気信号を直接印加することが有利であることが期待される。図5Aは、舌下神経及び頸神経ワナの部分略図であり、肩甲舌骨筋、胸骨甲状筋、及び胸骨舌骨筋を支配する頸神経ワナの3つの枝を示している。図5Aはまた、3つの代表的な信号送出装置130(装置130a,130b,130cとして示されている)を示しており、これら信号送出装置の各々は、電気信号を分岐神経の各々に対応して方向づけるよう位置決めされている。図示の実施形態では、各信号送出装置130は、信号を対応の神経に方向づけるよう位置決めされた電極を担持するリード本体134、及び電力を遠隔電源から受け取って、後で電極に供給される信号を発生させる要素を担持したハウジング135を有するのがよい。他の実施形態では、図4Aと関連して上述したように、リード本体134が省かれてもよく、電極がハウジング135によって担持されてもよく、これにより、植え込み型器具の全体的な寸法(例えば、長さ)を減少させることができ、担当医が信号送出装置130をターゲット神経のところ又はその近くに正確に位置決めする能力を向上させることができる。図4A図4Cを参照して上述した方式はまた、信号送出装置130を頸神経ワナの近くに位置決めするよう使用できる。上述の場所のうちの任意のものについて適した代表的な信号送出装置130のそれ以上の細部について図6A図6Cを参照して以下に説明する。
【0051】
幾つかの実施形態では、電気信号を多数の互いに異なるターゲットに印加することができる。例えば、図5Bは、2つの信号送出装置230(図6Cを参照して詳細に説明する個別的に第1の信号送出装置230aと第2の信号送出装置230bとして示されている)を示している。第1の信号送出装置230aは、第1の電気信号(第1の電場E1として概略的に示されている)を舌下神経HGNの内側枝180に送るよう位置決めされ、第2の信号送出装置230bは、第2の電気信号(第2の電場E2として概略的に示されている)を頸神経ワナACに送るよう位置決めされている。他の実施形態では、第1の信号送出装置230a及び/又は第2の信号送出装置230bは、筋のうちの1つ以上をこれらのそれぞれの対応の場所のところで又はその近くで直接刺激するよう位置決めされるのがよい。例えば、第1の信号送出装置130aは、第1の電気信号/電場E1を舌骨舌筋及び/又はオトガイ舌筋に送るよう位置決めされるのがよく、かつ/或いは第2の信号送出装置130bは、第2の電気信号/電場E2を甲状舌骨筋、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、及び/又は胸骨甲状筋に送るよう位置決めされるのがよい。図5Bに示す信号送出装置230は、リードレスであるが、他の実施形態では、リードあり信号送出装置、例えば信号送出装置130を図5Bに示すように位置決めすることができる。
【0052】
5.代表的な信号送出装置
図6Aは、本技術の代表的な実施形態に従って構成された要素を有する植え込み型器具120の部分概略側面図である。図6Aに示す実施形態では、単一の植え込み型器具120は、信号発生機能と信号送出機能の両方を実行する。したがって、植え込み型器具120は、植え込み型信号送出装置130と、植え込み型信号発生器110の両方を有する。スケール感を提供するための代表的な寸法が図6Aに示されているが、本技術は、明示の指定がない場合にこれらの寸法によって制限されることはない。信号送出装置130は、ほぼ可撓性であるのがよくかつ1つ以上の電極131を担持することができるリード本体134を有し、1つ以上の電極131は、幾つかの実施形態では、ほぼ剛性であり、他の実施形態では、可撓性であるのがよい。可撓性電極は、ターゲット神経の近くの曲がりくねった解剖学的構造/挿入経路に対応するようリード本体全体の可撓性を増大させる。説明の目的上、リード本体134は、図6Aにおいて4つの電極131を担持するものとして示されているが、他の実施形態では、リード本体134は、他の適当な数の電極、例えば2つの電極131を担持することができる。電極131は、アレイをなして、例えば一次元直線アレイをなして配列されるのがよい。電極131は、適当な生体適合性材料、例えば、白金/イリジウム、ステンレス鋼、MP35N及び/又は他の適当な導電性インプラント材料で作られた従来型リング形状又は円筒形の電極を含むのがよい。電極131は各々、リード本体134を貫通した個々の導体140、例えば、細いワイヤフィラメントに連結されるのがよい。各電極131は、図6Aに示すようにおよそ1.5mmの長さを有するのがよく、又は他の実施形態では別の適当な長さを有することができる。特定の実施形態では、電極の幾つかの部分は、電場をリード本体134の長手方向軸線回りに時計回りの方向又は反時計回りの方向により正確にターゲットにするよう方向性があり、円周方向にマスキングされ、かつ/或いはセグメント化されるのがよい。この技術を用いると、電場をレトルーザから遠ざかるよう(図3C及び図3Dを参照して上述したように)方向づけると共に/或いは、歯槽神経及び/又は近くの他の知覚神経を回避するよう使用できる。この方式では、電極131を回して(又は電極131の回転位置を維持して)、ターゲット神経集団に対して適正な時計位置を持つようにする。
【0053】
図6Aに示す実施形態では、リード本体134は、ハウジング135に接続されると共にこれによって担持され、ハウジング135は、信号発生器110及び電力を受け取るための回路素子を担持している。例えば、全体的ハウジング135は、アンテナハウジング又はハウジング部分135a及び回路ハウジング又は回路ハウジング部分135bを有するのがよい。アンテナハウジング135aは、可撓性であるのがよく、このアンテナハウジングは、ウェラブル器具101(図2)からワイヤレス伝送リンク114を介して電力を受け取る受信機アンテナ133(他の適当な電力受け取り装置)を担持するのがよい。回路ハウジング135bは、チタン、白金、白金イリジウム合金、セラミック、及び/又は別の適当な材料及び/又はこれらの組み合わせで作られた全体として円形の金属「缶」の形態をしているのがよい。信号発生器110は、受信機アンテナ133に結合されたチャージポンプ及び/又はDC-DC変換器139及び/又は回路部138(例えば、第2の回路部)を有するのがよい。幾つかの実施形態では、電極受信機アンテナ133は、受信した電力信号を(例えば、図2に示すRF送信リンク114経由で)DC電流に変換するよう構成されたAC-DC変換器に結合されるのがよい。回路部138は、対応の機械可読命令を含むのがよいASICを有するのがよい。命令は、電力伝送に加えてデータ伝送のために電極受信機アンテナ133を用いて、ワイヤレスでアップデートされるのがよい。例えば、データは、パルス幅変調(PWM)及び/又は他の適当な技術を用いて伝送されるのがよい。データはまた、例えば後方散乱及び/又は他の適当な技術を用いて逆方向に伝送可能である。例えば、植え込み型器具120は、電力を受け取ったということ及び電力がどれほどの大きさであるかを指示する受け取りを伝送するのがよい。この情報を用いると、信号発生器110の出力、例えば送信した信号及び相を自己調節する(上下に)ことができる。したがって、回路部138は、治療信号を患者に送出するためにプロセッサ及びメモリを有するのがよく、係るプロセッサ及びメモリとしては、予めプログラムされると共にアップデート可能な命令(例えば、ASICの形態をしている)が挙げられる。例えば、システムは、ブートローダ組み込み型ファームウェアを含むのがよい。さらに、システム全体は、RFID型送電認証法を用いて単一のウェラブル器具101によって電力供給されるのがよい多数の植え込み型器具を識別することができる。RFID及び/又は他の技術を用いると、異物により又は意図しない刺激が起こることがないようにするようにセキュリティ措置を具体化するのがよい。係る技術は、少なくとも幾つかの実施形態では、植え込み型器具120に実装された適当なハードウエア/ソフトウェアにより具体化できる。
【0054】
全体的ハウジング135は、ほぼ剛性であるベース136及び1つ以上のアンカー137をさらに有するのがよい。アンカー137は、植え込み型器具120を患者の組織に対して確実に位置決めするよう図4Cに示す縫合糸に加えて又はこれに代えて使用されるのがよい。代表的な実施形態では、アンカー137は、植え込み型器具120が患者の体内に注入され又は違ったやり方で植え込まれた時に外方にかつ患者の組織中に延びる1つ以上の歯を有する。他の実施形態では、植え込み型器具120は、他の適当なアンカーを有するのがよく、かつ/或いは繋留は、信号送出装置130の遠位区分及び/又は中間区分のところで起こるのがよい。他の適当なアンカーとしては、(a)電極アレイの長手方向長さにわたって延び、そして導入シースが引き抜かれた時に固定摩擦力を生じさせるよう曲がる弓形ばね(bow spring)、(b)ばね押しヒンジに設けられていて、電極アレイの長手方向長さに渡って延び、そして導入シースが引き抜かれた時に固定摩擦力を生じさせるよう撓る細いワイヤ、(c)回転時に拡径してまた対応のプッシュロッドがインプランタによって回されている時に摩擦固定作用を生じさせるカム及び/又は(d)回転時に拡径してまた対応のプッシュロッドがインプランタによって回されている時に摩擦固定作用を生じさせるねじりばね(torsion spring)が挙げられるが、これらには限定されない。
【0055】
他の適当な繋留技術は、リード本体134を曲げ又は変形させて、これを挿入針により形成されるチャネルの壁に接触状態になるよう付勢する技術を含む。リード本体は、挿入中真っ直ぐにされる(例えば、スタイレットを介して、又は、導入器もしくはカニューレ内に拘束されることによって)が、拘束が除かれると再生して繋留力を生じさせる曲がり部を有するのがよい。さらに別の技術では、リード本体134の遠位端部は、いったんターゲット場所に位置すると、腰折れする(軸方向又は柱方向に)。腰折れ動作は、リード本体の直径を局所的に拡張してこれが配置される組織に当たるようリード本体を拡張させる。器具が一時的に植え込まれる場合に関し、器具を導入するために用いられるスタイレットは、曲がり部又はキンクを有するのがよい。
【0056】
リード本体及び/又は他の植え込み型要素を固定するさらに別の技術は、メッシュの使用を含む。例えば、プラグ又はメッシュを、既に配備されたリード本体の少なくとも一部分上でこれに沿って挿入して、繋留具合を向上させるのがよい。したがって、プラグ又はメッシュは、リード本体が注入されるときにはリード本体134と一体ではなく、これとは異なり、リード本体が定位置に位置した後にリード本体を固定するように追加される。プラグ又はメッシュは、リード本体134を隣接の組織に対して固定する縫合糸スリーブのように半径方向に拡張されるのがよい。プラグ又はメッシュを一時的なアンカーとして取り付けてもよく、或いは、プラグ又はメッシュは、常在のアンカーの基礎とすることもできる。上述の他の要素のように、プラグ又はメッシュを注入により送り出すことができる。
【0057】
少なくとも幾つかの場合、上述のプラグ又はメッシュは、急性並びに長期間もしくは慢性用途(又は長期もしくは慢性用途に代えて)利用することができる。例えば、担当医が出血を誘発した場合、又はその後の感染が生じた場合、プラグ/メッシュを用いると、例えば出血を止めることによって、悪い後遺症を管理し又は最小限に抑えることができる。
【0058】
作用を説明すると、受信アンテナ133は、関連のウェラブル器具101(図2)によって担持された電源109からワイヤレスで電力を受け取る。少なくとも幾つかの実施形態では、受信機アンテナ133のところで受け取られた電力は、例えば、約400MHzから約2.5GHzまでの範囲、例えば約600MHzから約2.45GHzまでの範囲、又は約900MHzから約1.2GHzまでの範囲又はこれらの間の任意他の周波数又は周波数範囲にある無線周波数の状態にある。この周波数では、ワイヤレス送電リンク114の使用可能な範囲は、植え込み型信号送出装置130とウェラブル器具101との間の距離に及ぶのに足るほどの距離を優に超えて約10cmである。この範囲では、送電プロセスは、組織加熱を生じさせるものとは見込まれず、したがって、他の送電技術、例えば誘導型送電技術と比較して利点をもたらす。しかしながら、誘導型送電方式により生じる潜在的な加熱を適度に制御する実施形態では、誘電技術は、本明細書にて説明するミッドフィールド送電技術に代えて使用できる。
【0059】
受信機アンテナ133のところで受け取ったAC電力を整流してDCにし(例えば、AC-DC変換器経由で)、次にDC-DC変換器、チャージポンプ及び/又は変圧器139に伝送し、そして約10Hzから約500Hzまでの範囲、例えば約30Hz~約300Hzにあるパルスに変換する。他の実施形態では、パルスを高い周波数(例えば、10kHz以上)でかつ/或いはバーストの形態で送出するのがよい。信号の振幅は、電圧制御系では約1mV~約5V(特定の実施形態では、1V~2V)であるのがよく、或いは電流制御系では約1mA~約10mAであるのがよい。回路部138は、これら信号送出パラメータを制御し、そして結果として生じる電気信号をリード本体134内のワイヤフィラメント又は他の導体140経由で電極131に伝送する。したがって、回路部は、これが植え込み型器具120にワイヤレスで伝送された電力を受け取り、そして最終的には患者に送出される信号を発生させるという点で信号発生器110を形成する(少なくとも一部を形成する)。電流が電極131によって流された結果として生じる電場は、ターゲット神経のところで所望の効果(例えば、励起及び/又は抑制)を生じさせる。少なくとも幾つかの実施形態では、植え込み型器具120は、システムボリュームを減少させるために搭載型電力貯蔵素子(例えば、電力キャパシタ及び/又はバッテリ)を何ら備える必要がなく又は0.5秒超の貯蔵能力を備えた電力貯蔵要素を何ら備える必要がない。他の実施形態では、植え込み型器具120は、植え込み型器具120の全体的にコンパクトな形状と適合性がありかつ実施形態に応じて、1秒以下、30秒以下、1分以下、2分以下、又は5分以下の全電荷貯蔵能力を有する1つ以上の小型電荷貯蔵装置(例えば、キャパシタ、固体電池、及び/又はその他)を有するのがよい。
【0060】
図6Bは、本技術の別の実施形態に従って構成された植え込み型器具120の部分略図である。この実施形態の1つの特徴は、全体的ハウジング135(信号発生器110を担持している)とリード本体134が当初別々の要素であるということにある。したがって、リード本体134を患者の体内に導入し、次に、ターゲット神経集団のところ又はその近くに位置決めし、次に、全体的ハウジング135に連結するのがよい。この方式の1つの利点は、担当医が、互いに異なる長さを有する互いに異なるリード本体134の中から選択し、すなわち、特定の患者が受けている治療に適当な長さ(及び/又は他の形態属性)を有するリード本体134を選ぶことができるということにある。もう1つの利点は、(小径の)リード本体134を挿入状態で位置決めするトンネルの直径がリード本体134だけを受け入れるに足るほど小さいままでいることができるが、(大径の)全体的ハウジング135についてはそうではないということにある。この方式は、組織に対する外傷を減少させることができ、それにより患者は、治療終点を達成することができる。また、他の技術を用いても、上記結果を得ることができる。例えば、信号発生器110及び/又は信号送出装置130をはめ込むトンネル(又はトンネルの少なくとも幾つかの部分)は、切断ではなく、組織拡張により形成されるのがよい。外傷性が低いということに加えて、この方式は、信号発生器110及び/又は信号送出装置130周りの組織圧迫を生じさせることができ、このことは、これらの要素が移動する傾向を少なくとも減少させることができる。
【0061】
全体的ハウジング135は、患者組織への入口開口部のところに又はこの極めて近くに位置決めされるのがよい。この方式は、受信器アンテナ133を含む全体的ハウジング135が患者の皮膚の近くに位置決めされ、それにより電力を患者の皮膚を通って信号送出装置130に送ることと関連した電力の損失を減少させるという追加の利点を有する。電力損失は一般的には熱を生じさせるので、この方式はまた、組織の加熱を減少させることができる。
【0062】
リード本体134は、その遠位端寄りに位置決めされた多数の電極131を有するのがよい。説明の目的上、4つの電極131が図6Bに示されているが、他の実施形態では、信号送出装置130は、別の個数の電極131を有することができる。各電極131は、対応の導体140(図6Bには見えない)経由で対応の第1の端子129aに結合されている。リード本体134は、多くの適当な所定/標準(又は非標準)の値のうちの任意のものを有する全体的長さLを有することができる。リード本体134は、例えば、リード本体134がスタイレットにより患者の体内に送り込まれる場合、軸方向のリード開口部128aを有するのがよい。次に、スタイレットを抜去し、その後、リード本体134を全体的ハウジング135に連結する。他の実施形態では、スタイレットは不要であり、その代わりに、リード本体134は、針、導入器、又はシースのルーメン内に収容され、次に、針、導入器、又はシースが患者から抜き出されると、患者の体内中に配備される。
【0063】
全体的ハウジング135は、アンテナハウジング135a及び回路ハウジング135bを有し、これらは、図6Aを参照して上述したものと少なくとも全体的に類似している。全体的ハウジング135は、コネクタハウジング135cをさらに有するのがよく、コネクタハウジング135cは、リード本体134の第1の端子129aを受け入れるよう形作られると共に位置決めされた第2の端子129bを収容している。コネクタハウジング135cは、部分的に又は全体的に可撓性であるのがよい。第2の端子129bは、部分的に剛性であるのがよく、第1の端子129aとの弾性的な物理的及び電気的接触を可能にする可撓性コンポーネント(例えば、ばね)を備えている。特定の実施形態では、第2の端子129bは、軸方向ハウジング開口部128bに沿って位置決めされたドーナツ形の端子を含むのがよい。代表的な第2の端子は、カリフォルニア州レイクフォレスト所在のバル・シール・エンジニアリング・インコーポレーテッド(Bal Seal Engineering, Inc.)社により製造されている。作用を説明すると、担当医は、リード本体134を全体的ハウジング135から別個に、例えばスタイレットを介して患者の体内に導入する。次に、リード本体134を矢印Bで示すようにハウジング軸方向開口部128b中に挿入することによって、リード本体134を全体的ハウジング135に連結する。リード本体134が先に定位置に固定されている場合、挿入動作のうちの全て又は大部分は、リード本体134ではなく全体的ハウジング135によって行われる。全体的ハウジング135を1つ以上のアンカー137、及び/又は縫合糸により定位置に固定するのがよい。リード本体134か全体的ハウジング135かのいずれかを交換する必要が起こりそうなイベントの場合、リード本体134を全体的ハウジング135から分離することによって、各々を他方から別々に交換することができる。
【0064】
リード本体134及び全体的ハウジング135の幾つかの部分が可撓性なので、分離可能であることに加えて、これらコンポーネントの各々は、患者の組織中に挿入された場合に異なる向きをとることができる。例えば、リード本体134は、浅い角度又は急な角度で患者の組織中に延びてターゲット神経に接近することができる。全体的ハウジングは、さらに浅い角度で(例えば、患者の皮膚表面と平行に)延びて、アンテナ133を良好な(例えば、最適な)電力受け取り可能に位置決めするのがよい。しかしながら、両方の要素を同一の開口部を通って患者の体内に導入することができ、かくして、植え込み手技の侵襲性を制限する。加うるに、全体的ハウジング135が開口部に近接していることにより、全体的ハウジング135をそのターゲット場所に位置決めするのに必要なシース及び/又は他の導入器の長さが短縮される。他の実施形態では、図4A図4Cを参照して上述したように、遠位開口部と近位開口部の両方を用いてリード本体134を送ることができ、また、遠位開口部195だけを介して全体的ハウジングを送ることができる。
【0065】
植え込み型器具120を単一ユニットとして植え込もうと、或いは当初は2つに分離されたユニットとして植え込もうと、いずれにせよ、植え込み型器具120の互いに異なる部分を、互いに異なる直径(上述したように)を有するトンネル中に配置する技術が有効であるといえる。この方式は、植え込み型器具120の各種要素を定位置によりしっかりと固定することができる。例えば、植え込みプロセスは、小径(たとえば、0.014インチ(0.356mm))のガイドワイヤをそれ以上の拡張なしで挿入して、遠位側が5~30mmのトンネルを形成するステップを含むのがよい。トンネルのこの部分は、(小径の)リード本体134をぴったりと受け入れることができる。(大径の)全体的ハウジング135をぴったりと受け入れるトンネルの部分は、これよりもわずかに大きい直径、例えば、7フレンチ(2.33mm)~8フレンチ(2.66mm)を有するのがよい。上記実施例では、リード本体134は3フレンチ(1mm)の直径を有するのがよく、全体的ハウジング135は、6フレンチ(2mm)の直径を有するのがよい。他の実施形態では、これらの直径は、互いに異なっていてもよく(大きい又は小さい)、トンネルの直径をそれに応じて調節するのがよい。この方式は、歯又は他のわずかに侵襲性のアンカーを不要にすることができる。上述したように、植え込み型器具120を受け入れる開口部は、組織の外傷を軽減すると共に/或いは器具の繋留具合を向上させるために主として拡張/拡大により形成できる。
【0066】
少なくとも幾つかの実施形態では、患者に送出された電気信号を電極131のうちの2つによって形成されるバイポールにより送出するのがよい。他の実施形態では、信号は、単極信号であるのがよく、ハウジング135(例えば、回路ハウジング部分135b)は、接地電極又は戻り電極を形成する。一般に、波形は、図7A及び図7Bを参照して以下に詳細に説明するように、二相性、電荷平衡波形を含む。
【0067】
図6Cは、本技術の諸実施形態に従って構成されたリードなし信号送出装置230を含む別の代表的な植え込み型器具220の側面図である。リードなし信号送出装置230の少なくとも幾つかの観点は、図6A及び/又は図6Bの信号送出装置130と構造及び/又は機能が全体として類似し又は同一であるのがよい。したがって、同一の名称及び/又は同様な参照符号(例えば、図6Cのハウジング235に対して図6Aのハウジング135)が全体として類似し又は同一のコンポーネントを示すために用いられている。リードなし信号送出装置230は、第1のハウジング部分235a、第2のハウジング部分235b、及びベース136を備えたハウジング235を有する。第1のハウジング部分235aは、アンテナハウジング135aと全体として類似しているのがよく、かつ/或いは、第1の外寸D1(例えば、第1の幅、第1の直径、第1の周長、及び/又はその他)を有するのがよい。第2のハウジング部分235bは、回路ハウジング135bと全体として類似しているのがよく、かつ/或いは、第2の外寸D2(例えば、第2の幅、第2の直径、第2の周長)を有するのがよい。図示の実施形態では、第1の外寸D1は、第2の外寸D2よりも小さい。他の実施形態では、第1の外寸D1は、第2の外寸D2以上であるのがよい。ベース136は、1つ以上のアンカー137を含むのがよい。
【0068】
リードなし信号送出装置230は、電極受信機アンテナ133、信号発生器110、回路部138、チャージポンプ139、及び1つ以上の電極131をさらに有するのがよい。図示の実施形態では、電極受信機アンテナ133は、第1のハウジング部分235a内に位置決めされ、信号発生器110、回路部138、及びチャージポンプ139は、第2のハウジング部分235b内に位置決めされ、電極131は、第2のハウジング部分235bによって担持されている。例えば、図6Cに示すように、電極131は、第2のハウジング部分235bの外面から露出するよう位置決めされており、その結果、個々の電極131は、第2のハウジング部分235bの周囲に沿って少なくとも部分的に延びている。したがって、電極131のうちの1つ以上は、リードなし信号送出装置230の内部コンポーネントのうちの1つ以上の周りに少なくとも部分的に又は完全に(例えば、円周方向に、軸方向回りになど)延びるのがよい。図示の実施形態では、信号発生器110、回路部138、及びチャージポンプ139は各々、電極131のうちの1つ以上が、信号発生器110、回路部138、及びチャージポンプ139の各々周りに少なくとも部分的に延びるよう、第2のハウジング部分235b内に位置決めされている。具体的に説明すると、図示の実施形態では、電極131及び/又は第2のハウジング部分235bは、信号発生器110、回路部138、及びチャージポンプ139の各々を収納する軸方向の空間又は容積部を画定する。追加的に又は代替的に、電極受信機アンテナ133は、電極131のうちの1つ以上が電極受信機アンテナ133周りに少なくとも部分的に延びることができるよう、第2のハウジング部分235b内に位置決めされるのがよい。かかる実施形態では、第2のハウジング部分235bは、電極受信機アンテナによる送電リンク114の受け入れにたいする妨害を軽減し又は阻止するよう構成されているのがよい。電極131及び/又は第2のハウジング部分235bは、電極受信機アンテナ133の動作を妨害することは予想されていない。追加的に又は代替的に、1つ以上の電極は、電極受信機アンテナ133周りに少なくとも部分的に延びるよう、第1のハウジング部分235a上に又は第1のハウジング部分235aのところに位置決めされてもよい。これらの実施形態及び他の実施形態では、信号発生器110、回路部138、及び/又はチャージポンプ139のうちの1つ以上は、第1のハウジング部分235a内に位置決めされるのがよく、かつ/或いは電極131及び/又は第2のハウジング部分235bによって画定された空間に対して外側にかつ/或いは横方向に違ったやり方で位置決めされてもよい。
【0069】
電極131の各々は、それぞれ対応の導体140により信号発生器110に結合されるのがよい。図示の実施形態では、導体140の各々は、第2のハウジング部分235b内に、例えば、信号発生器110と第2のハウジング部分235bの内面との間に位置決めされている。追加的に又は代替的に、1つ以上のフィードスルー143が、個々の導体140を信号発生器110に結合することができる。
【0070】
6.代表的な波形
上述した信号発生器及び送出装置は、種々の適当な電気刺激波形のうちの任意のものを発生させると共に送出することができ、それにより患者の神経及び/又は筋の動作を状態調節することができる。代表的な実施形態が、図7A及び図7Bに示されており、これら実施例は、図7A及び図7Bに特定されたような周期を有する刺激波サイクルを形成する一連の二相性刺激パルスを含む。波形パラメータは、活性サイクル及び休止サイクルを含むのがよい。各期間Pは、1つ以上のパルスを含む。図7Aに示す波形は、アノードパルス、次に相間遅延、次にカソードパルス、次にパルス間遅延を含む。したがって、期間P又はサイクル全般は、以下のパラメータ、すなわち、アノードパルス幅(PW1)、アノード振幅(例えば、電圧又は電流振幅VA)、相間遅延/デッドタイム、カソードパルス幅(PW2)、カソード振幅(例えば、電圧又は電流振幅VC)、パルス間遅延/アイドルタイム、及びピークピーク振幅(PP)を含む。パラメータは、信号を方向づける電極の同一性表示をさらに含むのがよい。幾つかの実施形態におけるアノードパルス幅(PW1)は、30μs~300μsである。幾つかの実施形態におけるアノード振幅(VA)は、1mVから5Vまでの範囲、又は1mAから10mAまでの範囲にある。代表的な実施形態における相間遅延は、10μs~100μsであるのがよい。幾つかの代表的な実施形態におけるカソードパルス幅(PW1)は、30μs~300μsである。代表的な実施形態では、アノード相及びカソード相は、電荷平衡が取られており、ただし、これらの相は、対称の形をしている必要はない。カソード振幅(VA)は、幾つかの代表的な実施形態では、0.3Vから5Vまでの範囲にわたる。代表的な実施形態ではアノード相及びカソード相は、チャージバランス(荷電平衡)状態であり、ただし、これらの相は、対称形である必要はない。幾つかの代表的な実施形態におけるパルス間遅延は、10μs~250μsであるのがよい。幾つかの代表的な実施形態におけるピークピーク振幅は、約2mA~12mAであるのがよい。代表的な周波数は、幾つかの実施形態では約10Hzから約500Hzまでの範囲、例えば約30Hzから約300Hzまでの範囲内にあり、他の実施形態では最高100kHz(例えば、10kHz)である。これらのパルスを連続的に送り出すことができ又はバースト状態で送り出すことができる。周波数、周波数範囲、振幅(例えば、ピークピーク振幅)、パルス間遅延、パルス幅、及び/又は他の信号送出パラメータは、信号送出装置130の植え込み場所及び/又は刺激ターゲットに少なくとも部分的に基づいて様々であってよい。幾つかの実施形態では、多数の信号送出装置は、患者の体内に植え込まれ、各信号送出装置は、1つ以上のそれぞれの信号送出パラメータを有するそれぞれの電気信号を送り出すよう構成されている。例えば、第1の場所に植え込まれた第1の信号送出装置が1つ以上の第1の信号送出パラメータを有する第1の電気信号を送り出すよう構成されるのがよく、第2の場所に植え込まれた第2の信号送出装置が1つ以上の第2の送出パラメータを有する第2の電気信号を送り出すよう構成されているのがよく、第1の信号送出パラメータの個々のもの(例えば、振幅、周波数など)は、第2の信号送出パラメータの個々のものと同一であってもよく、かつ/或いは異なっていてもよい。この実施例について続けて説明すると、第1の電気信号は、第1の周波数及び/又は第1の振幅を有するのがよく、第2の電気信号は、第2の周波数及び/又は第2の振幅を有するのがよく、第1の周波数は、第2の周波数と同一であってもよく又はこれとは異なっていてもよく、かつ/或いは第1の振幅は、第2の振幅と同一であってもよく又はこれとは異なっていてもよい。
【0071】
図7Bは、活性部分と休止部分を有する代表的な波形を示している。活性部分は、図7Aを参照して上述した特性を備える1つ以上の期間を含む。休止部分は、刺激パルスを含まない。幾つかの代表的な実施形態によれば、活性部分と休止部分の比は、1:1~1:9であるのがよい。代表的な実施例として、比が1:9でありかつ300の活性期間が存在する場合、2700の休止部分が存在すると言える。
【0072】
代表的な実施例では、刺激電圧は、各接点又は電極に独立して提供されるのがよい。正のパルスに関し、正の接点は、駆動電圧に引かれ、負の接点はアースに引かれる。負のパルスの場合、負の接点は、駆動電圧に引かれ、正の接点は、アースに引かれる。デッドタイム及びアイドルタイムに関し、両方の接点は、アースに駆動される。休止時間に関し、両方の接点は、高インピーダンスの状態にある。接点にDC電流が流れるのを阻止するため、各ハーフブリッジは、キャパシタ、例えば100μFキャパシタを介して接点に結合されるのがよい。加うるに、抵抗器が各キャパシタと直列に配置されるのがよく、それにより接点が短絡した場合に電流を制限することができる。治療波形サイクルのパルスは、対称であってもよく又は対称でなくてもよいが、一般に、接点前後の正味ゼロの電荷を提供するよう整形される。
【0073】
7.別のインプラント技術
図4A図4C及び関連の説明は、入口箇所と出口箇所の両方を備えた湾曲針を用いて電極を患者の皮膚内に植え込む技術に関する。以下の代表的な植え込み技術は、単一の穿刺部で実施される。
【0074】
7.1 手技
7.1.1 材料
図8は、全体的な手技の概略を示している。代表的な材料が以下にかつ図9に一覧表示されている。
・基本的な外科用機器(すなわち、鉗子、小刀など)。
・カラードップラ機能、12L超音波プローブ、及び超音波ゲルを含む超音波システム。
【0075】
7.1.2 手技の準備
・拡張器及び/又はシースを滅菌生理食塩水でフラッシングする。
・刺激針を拡張器中に通す。
・針及び拡張器を割りシース中に通す。針を滅菌生理食塩水でフラッシングする。
【0076】
7.1.3 患者の準備
・患者を仰臥位置に置き、頭をフォームリングで支持し、外科医がベッドの頭上側に位置する。患者に頭を左右に回転させて首を快適に伸ばすよう指示する。
【0077】
7.1.4 舌下神経の位置確認及び関連解剖学的構造の識別
・超音波プローブを舌骨と下顎の縁のほぼ中点との間に位置するよう配置し、顎舌骨筋と舌骨舌筋との間の舌下神経を矢状図で識別する(図10A図10B)。
・HGNの図を常時維持しながら、プローブを回して、最も長い長さを備えた神経の傍矢状図を画像化する。オトガイ舌筋中に潜り込む前に、舌骨舌筋の前縁及び神経の最も遠位側の部分を識別する(図11A図11B)。
・カラードップラ超音波を用いて当該野内の血管構造を識別する。
・顎下腺及び舌下唾液腺を超音波画像化で識別する。
・送出システム及び電極をできるだけ神経に平行な状態に近く配置することができる最適顎下腺及び/又は口腔内挿入箇所を識別する。
○外部針ガイドを用いて針挿入箇所を超音波画像と良好に整列させるのがよい。
○顎下又は口腔内組織を押し又は引くことにより、植え込みツール/リード経路とHGNとの間の平行整列状態を向上させたかどうかを調べる。かかる形態が存在する場合、利用可能なツールで必要な組織操作を施す。
・皮膚マーカーを用い、プローブの端部及び中心をマーキングすることによってプローブの位置をマーキングする(図12)。
【0078】
7.1.5 麻酔薬投与
・医師によって指示され、患者の同意を得た、意識下鎮静、全身麻酔、及び/又は局所麻酔を施す。
【0079】
7.1.6 電極挿入
ターゲット電極の位置確認
・拡張器及びシースをできるだけ近位側に保持し(通常、ハブのところで)、超音波誘導方式を利用して刺激針を挿入して針の軌道をできるだけHGNの近くに整列させる。舌骨舌筋の前縁及び目に見える舌下神経の最も遠位側の部分を針軌道に関する最も近位及び最も遠位の基準として用いるのがよい。角度を神経に沿ってできるだけ平行にするため、針を患者の皮膚/組織に垂直に又は大げさな角度をなして挿入するのがよく、次に所望の角度まで傾斜させるのがよく、これについては、図4Aを参照して上述した。
・より一般的に、植え込み型器具の植え込みに先立って刺激を加えることは、所望の反応を引き出すために正しい場所を識別し、常在インプラントの存在場所を突き止めるための重要なナビゲーション方法である。小径の刺激針が良好な超音波コントラストをもたらすので、この針は、信号送出装置を植え込む際にたどるべき経路を作る「ナビゲーションウェイポイント」としての役割を果たすことができる。この技術を用いると、多数の信号送出装置を単一の入口箇所か多数の入口箇所かのいずれか送り出すことができる。多数の信号送出装置は、1つ又は複数の治療場所を識別するという追加保証をもたらすことができる。
・針を神経のターゲット野の後方に挿入する場合、挿入箇所は、超音波プローブの中心平面と整列する必要があり、しかも超音波プローブの後方端部から5~30mm後方のところに位置すべきである。
・針を神経のターゲット野の前方に挿入する場合、挿入箇所は、超音波プローブの中心平面と整列する必要があり、しかも下顎骨の内縁の後方に位置すべきである。
・挿入手技を観察し、過剰な血流があるかどうかについてチェックする。
・刺激針を末梢神経刺激器に連結する。必要ならば滅菌カバーを用いる。
・刺激針を用いて電気的刺激を加える。代表的なパラメータは、1Hzから50Hzまでの周波数範囲、たとえば40Hzの周波数、1Hzから3Hzまでの周波数範囲、又は1Hzから2Hzまでの周波数範囲にある周波数、0.25~5ボルト、たとえば1.5ボルト、又は0.5~5mAの振幅、25~250μs、たとえば150μsのパルス幅を含む。
・刺激の振幅をゆっくりと増大させ、舌の突出(すなわち、オトガイ舌筋の活性化)及び口腔内舌の下方への最小レトルージョン又はディッピング(茎骨舌筋及び舌骨舌筋の活性化)を確認する。
・反応が見られず又は望ましくない反応がみられた場合、刺激を停止し、針を超音波誘導下でわずかに調節する。
・適当な刺激応答がいったん得られると、針を末梢神経刺激機器から切り離す。
【0080】
7.1.7 シースデリバリ
・針のハブを定位置に保持し、拡張器を超音波誘導下において刺激針上でこれに沿って前進させ、ついには、拡張器の遠位端が針の先端に当たるようにする。
・針ハブ及び拡張器を定位置に保持し、シースを超音波誘導下で前進させ、ついには、シースの遠位端が針及び拡張器の先端に当たるようにする。
・シースを定位置に残した状態で針及び拡張器を抜去する。
【0081】
7.1.8 植え込み型電極アレイ配置
・植え込み型電極アレイ(例えば、植え込み型器具120、信号送出装置130、リード本体によって担持された電極の直線状アレイなど)を、超音波誘導下でシース中に挿入し、ついには、植え込み型電極アレイが可視化されてシースの端から突出するようにする。
・電極アレイを定位置に保持した状態でシースを抜去する。
・可能ならば、超音波下において電極アレイが移動していないことを確認する。注記:電極アレイによって投じられた影のもとでは舌下神経を視認することが可能ではない場合がある。
・外部アンカーが入口場所のところで皮膚の表面上に設けられた状態で植え込み型電極リード本体を、舌の反応による動きのためのゆるみを考慮して入口場所の皮膚の表面上に設けられた外部アンカー、及び/又は植え込み型電極リード本体によって担持された内部アンカーで固定する。
・内部アンカーは、変形リード又はスタイレット、プラグ、歯、メッシュ、ばね、縫合糸端、螺旋体などを含むのがよく、これら内部アンカーを用いると、安定性を向上させることができる。
・電源を植え込み型電極アレイに接続する。これは、例えば、電源を植え込み型電極アレイの上方に/これに近接して配置することによって、電源に作動的に結合された送電アンテナを植え込み型電極アレイに作動的に結合された電極受信機アンテナと整列させるステップを含むのがよい。必要ならば滅菌カバーを用いる。
【0082】
7.1.9 刺激プロトコル
・滅菌技術を用い、電源を袋に入れる。
・電源が最小振幅/周波数に設定されているかどうかを確認する。電力を植え込み型電極アレイに供給し、刺激を開始する。
・刺激の大きさ及び/又は頻度を増大させ、ついには、刺激の生理学的反応が観察されるようにする。
・刺激に対する生理学的反応があるかどうかをチェックし、かかる生理学的反応としては、
○舌突出(挺舌)
○舌後退
○口腔内舌の下方ディッピング
○流量測定値、例えば患者の気道を通る空気流量
○他の観察した生理学的反応
・刺激を止める。
・必要ならば、他の電極構成について刺激プロトコルを繰り返す。
・所望の反応が検出されない場合、外部又は内部のアンカーをゆるめ/引っ込めるのがよく、リードを小刻みに引っ込め、再び固定し、そして再試験するのがよい。
・最終の刺激の大きさを設定する。
・創を縫合糸で閉じる。
・患者を回復させる。
【0083】
上記内容から、本技術の特定の実施形態を例示目的で本明細書において説明したが、本技術から逸脱することなく、種々の改造を行うことができることが理解されよう。例えば、電源及び関連ウェアラブルは、口内マウスピース以外のこれまた電力を1つ以上の植え込み済み電極にワイヤレスで送り出す構成を有することができる。代表的な構成としては、外部皮膚取り付け型器具や患者の首回りに着用される器具が挙げられ、これら器具は、頸神経ワナ、迷走神経及び/又はHGN以外の他の神経をターゲットにするのに適している場合がある。刺激のための他の代表的なターゲットとしては、舌口蓋刺激、脳神経刺激、直接舌口蓋筋刺激、鼻咽頭刺激及び/又は舌咽神経刺激が挙げられる。信号送出装置を定位置に固定するために用いられるアンカーは、配備可能な歯以外の形態を有することができ、かかる形態としては、組織内方成長を促進するS字形カーブ素子、螺旋及び/又は多孔性構造を含む。又は、上述したように、アンカーをなくしてもよく、或いはこれに代えて縫合糸を用いてもよい。ハウジング全体を形成する多数のハウジングを含む信号送出装置については上述した。他の実施形態では、多数のハウジングは、一体的ハウジング全体の部分であってよい。
【0084】
特定の実施形態と関連して説明した技術のある特定の観点を他の実施形態によって組み合わせることができ又は省略することができる。例えば、種々の適当な構成のうちの任意のものを有する信号送出装置を任意の1つの信号発生器と併用することができ、種々の適当な構成のうちの任意のものを有する信号発生器を任意の1つの信号送出装置と併用することができる。さらに、開示した技術のある特定の実施形態と関連した利点をこの実施形態と関連して説明したが、本技術の範囲に属する他の実施形態もまた、かかる利点を奏することができ、必ずしも全ての実施形態がかかる利点を奏する必要はない。したがって、本開示及び関連技術は、明示的に図示されていない本明細書において説明されていない他の実施形態を含むことができる。
【0085】
本明細書において用いられる例えば“A”及び/又は“B”のような語句「及び/又は」は、A単独、B単独、及びAとBの両方を意味している。参照により引用した資料であればどのようなものでも本開示と抵触する程度までは、本開示が優先する。
【0086】
参照により引用した資料であればどのようなものでも本開示と抵触する程度までは、本開示が優先する。
【0087】
以下の実施態様項は、本技術の追加の代表的な特徴を提供している。
実施態様項
〔実施態様項1〕 患者を治療する方法であって、
信号送出装置を患者の体内のターゲット信号送出場所に経皮的に植え込むステップを含み、上記信号送出装置は、電極を有し、上記電極は、上記患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から電極に供給して、上記電極が電気信号を上記ターゲット信号送出場所に送出し、それにより上記正味正の突出運動反応を生じさせるステップを含む、方法。
〔実施態様項2〕 上記信号送出装置を経皮的に植え込む上記ステップは、上記信号送出装置を上記患者の舌下神経の内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、上記信号送出装置は、電極を備え、上記電極は、上記内側枝の下にかつ上記内側枝から延びる少なくとも1つのレトルーザの下に位置決めされる、実施態様項1記載の方法。
〔実施態様項3〕 上記信号送出装置を経皮的に植え込む上記ステップは、上記信号送出装置を上記患者の舌下神経の内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、上記内側枝は、第1の領域内で上記内側枝から遠ざかって延びるレトルーザを有し、信号送出装置は、電気刺激を上記第1の領域とは反対側の第2の領域に送り出すよう位置決めされた電極を有する、実施態様項2記載の方法。
〔実施態様項4〕 上記正味正の突出運動反応は、後退反応及び上記後退反応よりも大きい突出反応を含む、実施態様項1~3のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項5〕 上記電力を上記電極に提供する上記ステップは、上記電極が上記患者のどのレトルーザも活性化させることなく上記電気信号を送出するようにするステップを含む、実施態様項1~4のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項6〕 上記患者の舌の上記正味正の突出運動反応を生じさせる上記ステップは、上記患者の舌が上記患者の気道から前方に遠ざかるようにするステップ、又は上記患者の舌骨及び/又は甲状軟骨の尾方牽引を生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含む、実施態様項1~5のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項7〕 上記ターゲット信号送出場所は、上記患者の舌下神経、頸神経ワナ、オトガイ舌筋、オトガイ舌骨筋、胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋、及び/又は胸骨甲状筋を含む、実施態様項1~6のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項8〕 上記患者の舌の上記正味正の突出運動反応を生じさせる上記ステップは、上記電気信号の送出に応答して上記患者の気道が開き又はさらに開くようにするステップを含む、実施態様項1~7のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項9〕 上記信号送出装置は、第1の信号送出装置であり、上記ターゲット信号送出場所は、第1のターゲット信号送出場所であり、上記方法は、第2のターゲット信号送出装置を第2のターゲット信号送出場所の近くに経皮的に植え込むステップをさらに含む、実施態様項1~8のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項10〕 上記電力を提供する上記ステップは、電力をRFリンク経由で上記電極に送るステップを含む、実施態様項1~9のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項11〕 上記電力を上記RFリンク経由で送る上記ステップは、上記電力を400MHzから2.5GHzまでの周波数範囲内の周波数で送るステップを含む、実施態様項10記載の方法。
〔実施態様項12〕 上記電力を送る上記ステップは、上記電力を900MHzから1.2GHzまでの周波数範囲内の周波数で送るステップを含む、実施態様項10又は11記載の方法。
〔実施態様項13〕 上記電力を上記電極に提供する上記ステップは、上記電極が
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの周波数範囲内の周波数
のうちの少なくとも1つを有する電気信号を送出するようにするステップを含む、実施態様項1~12のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項14〕 上記電極は、複数の円周方向セグメントを有し、上記電力を上記電極に提供する上記ステップは、上記電極が上記電気信号を上記電極の個々の上記円周方向セグメント経由で送出するステップを含む、実施態様項1~13のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項15〕 上記信号送出装置を植え込む前に、針を上記患者の舌下神経の内側枝に向かって軌道に沿って上記患者の体内に経皮的に挿入するステップと、
上記針を上記内側枝と整列させるステップとをさらに含み、上記信号送出装置を植え込む上記ステップは、上記信号送出装置を上記針の上記軌道に沿って方向づけるステップを含む、実施態様項1~14のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項16〕 上記電気信号は、第1の電気信号であり、上記方法は、上記信号送出装置を位置決めするのを助けるために第2の電気信号を上記針経由で上記患者に送出するステップをさらに含む、実施態様項15記載の方法。
〔実施態様項17〕 上記第1の電気信号は、上記第1の信号送出パラメータを有し、上記第2の電気信号は、上記第1の信号送出パラメータとは異なる第2の信号送出パラメータを有する、実施態様項16記載の方法。
〔実施態様項18〕 上記信号送出装置を経皮的に植え込む上記ステップは、経皮的挿入器具を上記患者の体内へ第1の場所のところに方向づけるステップを含む、実施態様項1~17のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項19〕 上記経皮的挿入器具を上記患者の体内へ上記第1の場所のところに方向づける上記ステップは、上記経皮的挿入器具を患者の体内へ顎下場所のところに方向づけるステップを含む、実施態様項18記載の方法。
〔実施態様項20〕 上記経皮的挿入器具を患者の体内へ上記第1の場所のところに方向づける上記ステップは、上記経皮的挿入器具を上記患者の体内へ口腔内場所のところに方向づけるステップを含む、実施態様項18記載の方法。
〔実施態様項21〕 上記経皮的挿入器具を患者の体内へ上記口腔内場所のところに方向づける上記ステップは、上記経皮的挿入器具を患者の体内へ舌下場所のところに方向づけるステップを含む、実施態様項20記載の方法。
〔実施態様項22〕 上記信号送出装置を経皮的に植え込む上記ステップは、上記経皮的挿入器具を患者の体内から第2の場所のところに方向づけるステップをさらに含む、実施態様項18~21のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項23〕 上記経皮的挿入器具装置を患者の体内から上記第2の場所のところに方向づける上記ステップは、上記経皮的挿入器具を患者の体内から口腔内場所のところに方向づけるステップを含む、実施態様項22記載の方法。
〔実施態様項24〕 上記経皮的挿入器具を患者の体内から上記第2の場所のところに方向づける上記ステップは、上記経皮的挿入器具を患者の体内から顎下場所のところに方向づけるステップを含む、実施態様項22記載の方法。
〔実施態様項25〕 上記ターゲット信号送出場所は、上記患者の舌下神経、上記舌下神経の内側枝、頸神経ワナ、オトガイ舌筋、及び/又はオトガイ舌骨筋を含む、実施態様項1~24のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項26〕 第1の縫合糸を上記信号送出装置の第1の端部に結合するステップと、
上記第2の縫合糸を上記信号送出装置の第2の端部に結合するステップとをさらに含む、
上記信号送出装置を経皮的に植え込む上記ステップは、上記第1の縫合糸又は上記第2の縫合糸のうちの少なくとも一方を選択的に引いて、上記信号送出装置を上記ターゲット信号送出場所のところに位置決めするステップをさらに含む、実施態様項1~25のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項27〕 患者を治療する方法であって、
信号送出装置を上記患者の舌下神経の内側枝と並行して経皮的に植え込むステップを含み、
上記信号荘周津装置は、電極を有し、上記電極は、上記内側枝の下にかつ上記内側枝から延びるレトルーザの下に位置決めされ、かつ/或いは
上記レトルーザは、第1の領域において上記内側枝から遠ざかって延び、上記電極は、上記第1の領域とは反対側の第2の領域に電気信号を送出するよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から上記電極に提供して上記患者の睡眠障害を治療するステップを含むことを特徴とする方法。
〔実施態様項28〕 上記電力を提供する上記ステップは、上記電力をRFリンク経由で上記電極に送るステップを含むことを特徴とする実施態様項27記載の方法。
〔実施態様項29〕 上記電力を上記RFリンク経由で送る上記ステップは、上記電力を400MHzから2.5GHzまでの周波数範囲内の周波数で送るステップを含む実施態様項28記載の方法。
〔実施態様項30〕 上記電力を送る上記ステップは、上記電力を900MHzから1.2GHzまでの周波数範囲内の周波数で送るステップを含む、実施態様項29記載の方法。
〔実施態様項31〕 上記電力を上記電極に提供する上記ステップは、上記電極が
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの周波数範囲内の周波数
のうちの少なくとも1つを有する電気信号を送出するようにするステップを含む、実施態様項27~30のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項32〕 上記電力を上記電極に提供する上記ステップは、上記電極が上記レトルーザを作動させないで電気信号を患者に送出するようにするステップを含むことを特徴とする実施態様項31記載の方法。
〔実施態様項33〕 上記信号送出装置を植え込む前に、針を上記患者の舌下神経の内側枝に向かって軌道に沿って上記患者の体内に経皮的に挿入するステップと、
上記針を上記内側枝と整列させるステップとをさらに含み、上記信号送出装置を植え込む上記ステップは、上記信号送出装置を上記針の上記軌道に沿って方向づけるステップを含む、実施態様項27~32のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項34〕 上記電気信号を上記針経由で上記患者に送出して上記信号送出装置を位置決めするのを助けるステップをさらに含むことを特徴とする実施態様項33記載の方法。
〔実施態様項35〕 上記信号送出装置を経皮的に植え込む上記ステップは、上記信号送出装置を上記患者の体内へ顎下の場所、口腔内の場所、又は舌下の場所のところに経皮的に注入するステップを含むことを特徴とする実施態様項27~34のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項36〕 上記信号送出装置は、第1の信号送出装置であり、上記方法は、第2の信号送出装置をターゲット場所の近くに経皮的に植え込むステップをさらに含むことを特徴とする実施態様項27~35のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項37〕 上記ターゲット場所は、上記患者のもう1つの舌下神経、舌下神経の内側枝、上記患者の頸神経ワナ、上記患者のオトガイ舌筋、及び/又は上記患者のオトガイ舌骨筋を含む、実施態様項36記載の方法。
〔実施態様項38〕 上記患者の舌下神経の上記内側枝は、上記患者の左舌下神経の内側枝であり、上記第2の信号送出装置を上記ターゲット場所の近くに経皮的に植え込む上記ステップは、上記第2の信号送出装置を上記患者の右舌下神経の内側枝の近くに経皮的に植え込むステップを含む、実施態様項36又は37記載の方法。
〔実施態様項39〕 上記電力を提供して前記睡眠障害を治療する前記ステップは、上記患者の舌の運動反応を生じさせるステップを含む、実施態様項27~38のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項40〕 上記患者の舌の上記運動反応を生じさせる上記ステップは、上記患者の舌が上記患者の気道から前方に遠ざかるようにするステップ、又は上記患者の舌骨及び/又は甲状軟骨の尾方牽引を生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含む、実施態様項39記載の方法。
〔実施態様項41〕 信号送出装置であって、
ハウジングと、
上記ハウジング内に位置決めされていて、かつワイヤレス電力信号をウェアラブル電源経由で受け取るよう構成されたアンテナと、
上記ハウジング内に位置決めされていて、かつ上記アンテナに動作可能に結合された信号発生器と、
上記ハウジングによって担持されていて、かつ上記信号発生器に動作可能に結合された電極とを有し、上記電極は、(1)上記信号発生器の少なくとも一部分、又は(2)上記アンテナの少なくとも一部分のうちの少なくとも一方周りに少なくとも部分的に延びている、信号送出装置。
〔実施態様項42〕
上記ハウジングは、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分を含み、上記電極は、上記第1のハウジング部分の外面のところに位置決めされ、上記信号発生器は、上記第1のハウジング部分内に位置決めされ、上記アンテナは、上記第2のハウジング部分内に位置決めされている、実施態様項41記載の信号送出装置。
〔実施態様項43〕 上記信号発生器は、回路部及び/又はチャージポンプを有し、上記電極は、上記回路部及び/又は上記チャージポンプ周りに少なくとも部分的に延びている、実施態様項41又は42記載の信号送出装置。
〔実施態様項44〕 上記電極は、患者の舌下神経の内側枝の下かつ上記内側枝から延びる少なくとも1つのレトルーザの下に位置決めされるよう構成されている、実施態様項41~43のうちいずれか一に記載の信号送出装置。
〔実施態様項45〕 上記信号発生器は、上記電極が電気信号を送出するように構成され、上記電気信号は、
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの周波数範囲内の周波数
を含む信号送出パラメータを有する、実施態様項41~44のうちいずれか一に記載の信号送出装置。
〔実施態様項46〕 上記電極は、患者のどのレトルーザも刺激することなく、電気信号を上記患者のターゲット場所に印加するよう構成されている、実施態様項41~45のうちいずれか一に記載の信号送出装置。
〔実施態様項47〕 1つの上記電極は、円周方向にマスキングされ、又は円周方向にセグメント化されている、実施態様項41~46のうちいずれか一に記載の信号送出装置。
〔実施態様項48〕 電気信号を患者に送出するシステムであって、上記システムは、
複数の電極を備えた経皮的に送達可能なリード本体を含み、個々の電極が上記リード本体によって担持された対応の第1の端子に接続され、
植え込み手技中、上記第1の端子と結合するよう位置決めされた第2の端子を有する別個の経皮的に送達可能なハウジングを含み、上記ハウジングは、上記第2の端子に結合されたパルス発生器、及び上記パルス発生器に結合された受電アンテナを有することを特徴とするシステム。
〔実施態様項49〕 上記経皮的に送達可能なリード本体は、上記複数の電極のうちの少なくとも1つが上記患者の舌下神経の内側枝の下にかつ上記内側枝から延びる少なくとも1つのレトルーザの下に位置するよう位置決めされるような構成になっていることを特徴とする実施態様項48記載のシステム。
〔実施態様項50〕 上記パルス発生器は、上記複数の電極のうちの1つ以上が、電気信を上記内側枝に送出するように構成され、上記第1の電気信号は、
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの周波数範囲内の周波数
を含む信号送出パラメータを有する、実施態様項48又は49記載のシステム。
〔実施態様項51〕 上記経皮的に送達可能なリード本体及び上記経皮的に送達可能なハウジングは、第1の植え込み型器具を有し、上記システムは、
上記患者のターゲット刺激場所の近くに位置決めされると共に、第2の電気信号を上記ターゲット刺激場所に送出するよう構成された第2の植え込み型器具をさらに含み、
上記ターゲット刺激場所は、上記患者のもう1つの舌下神経のもう1つの内側枝、上記患者の頸神経ワナ、上記患者のオトガイ舌筋、及び/又は上記患者のオトガイ舌骨筋を含むことを特徴とする実施態様項48~50のうちいずれか一に記載のシステム。
〔実施態様項52〕 上記第1の信号送出装置は、1つ以上の第1の信号送出パラメータを有する第1の電気信号を送出するよう構成され、上記第2の信号送出装置は、1つ以上の第2の信号送出パラメータを有する第2の電気信号を送出するよう構成されていることを特徴とする実施態様項51記載のシステム。
〔実施態様項53〕 上記1つ以上の第1の信号送出パラメータのうちの少なくとも1つは、上記1つ以上の第2の信号送出パラメータの対応の1つの第2の信号送出パラメータとは異なる値を有することを特徴とする実施態様項52記載のシステム。
〔実施態様項54〕 上記1つ以上の第1の信号送出パラメータは、第1の振幅を含み、上記1つ以上の第2の信号送出パラメータは、第2の振幅を含み、上記第2の振幅は、上記第1の振幅とは異なっていることを特徴とする実施態様項52又は53記載のシステム。
〔実施態様項55〕 上記複数の電極のうちの少なくとも1つは、上記患者の少なくとも1つのレトルーザを刺激することなく、電気信号を上記患者のターゲット場所に印加するよう構成されていることを特徴とする実施態様項48~54のうちいずれか一に記載のシステム。
〔実施態様項56〕 上記少なくとも1つの電極は、円周方向にマスキングされ、又は円周方向にセグメント化されていることを特徴とする実施態様項55記載のシステム。
〔実施態様項57〕 上記ハウジングは、コネクタハウジングを含み、上記コネクタハウジングは、上記第2の端子及び上記リード本体の上記第1の端子を挿通状態で解放可能に受け入れるよう構成された軸方向リード本体開口部を有し、
上記第1の端子は、上記リード本体の外面上に位置決めされると共に、上記軸方向リード本体開口部を介して上記第2の端子のうちの対応の1つの第2の端子内に位置決めされるよう構成され、
上記リード本体は、第1の外径を有し、
上記ハウジングは、上記第1の外径よりも大きな第2の外径を有し、
上記受電アンテナは、ウェアラブル電源からRF信号を受け取るよう構成されていることを特徴とする実施態様項48~56のうちいずれか一に記載のシステム。
〔実施態様項58〕 患者を治療する方法であって
針を上記患者の舌下神経の内側枝に向かって軌道沿いに上記患者の体内に経皮的に挿入するステップを含み、
上記針を上記内側枝と整列させるステップを含み、
信号送出装置を上記針により定められた上記軌道経由で上記内側枝と並行に経皮的に植え込むステップを含み、上記信号送出装置は、電極を有し、上記電極は、上記患者の舌の正味正の突出運動反応を生じさせるよう位置決めされ、
上記電極は、上記内側枝の下にかつ上記内側枝から延びるレトルーザの下に位置決めされ、かつ/或いは
上記レトルーザは、第1の領域内で上記内側枝から遠ざかって延び、上記電極は、電気刺激を上記第1の領域とは反対側の第2の領域に送り出すよう位置決めされ、
電力をウェアラブル電源から上記電極に提供して上記患者の睡眠障害を治療するステップを含む、方法において、
上記針を経皮的に挿入する上記ステップは、上記針を上記患者の体内へ顎下の場所又は口腔内の場所に方向づけるステップ及び第1の電気信号を上記針経由で上記患者に送出するステップを含み、
上記電力を提供する上記ステップは、電力をRFリンク経由で上記電極に送るステップ及び、上記電極が
10μs~250μsのパルス間遅延、
0.5mA~12mAのピークピーク振幅、又は
10Hzから500Hzまでの第1の周波数範囲内の第1の周波数
のうちの少なくとも1つを有する第2の電気信号を送出するようにするステップを含み、
上記電力を上記RFリンク経由で送る上記ステップは、上記電力を400MHzから2.5GHzまでの第2の周波数範囲内の第2の周波数で送るステップを含む、方法。
〔実施態様項59〕 上記信号送出装置は、第1の信号送出装置であり、上記方法は、第2の信号送出装置をターゲット刺激場所の近くに経皮的に植え込むステップをさらに含む、実施態様項58記載の方法。
〔実施態様項60〕 上記ターゲット刺激場所は、上記患者のもう1つ舌下神経、上記患者の頸神経ワナ、上記患者のオトガイ舌筋、及び/又は上記患者のオトガイ舌骨筋を含む、実施態様項59記載の方法。
〔実施態様項61〕 上記患者の舌下神経の上記内側枝は、上記患者の左舌下神経の内側枝であり、上記第2の信号送出装置を上記ターゲット刺激場所の近くに経皮的に植え込む上記ステップは、上記第2の信号送出装置を上記患者の右舌下神経の内側枝の近くに経皮的に植え込むステップを含む、実施態様項59又は60記載の方法。
〔実施態様項62〕 上記正味正の突出運動反応は、後退反応及び上記後退反応よりも大きい突出反応を含む、実施態様項58~61のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項63〕 上記電力を上記電極に提供する上記ステップは、上記電極が上記患者のどのレトルーザも作動させることなく上記電気信号を送出するようにするステップを含む、実施態様項58~62のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項64〕 上記患者の舌の上記正味正の突出運動反応を生じさせる上記ステップは、上記患者の舌が上記患者の気道から前方に遠ざかるようにするステップ、又は上記患者の舌骨及び/又は甲状軟骨の尾方牽引を生じさせるステップのうちの少なくとも一方を含む、実施態様項58~63のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項65〕 上記患者の舌の上記正味正の突出運動反応を生じさせる上記ステップは、上記電気信号の送出に応答して上記患者の気道が開き又はさらに開くようにするステップを含む、実施態様項58~64のうちいずれか一に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
【国際調査報告】