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特表2024-519056膵疾患及び肝疾患を治療するための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】膵疾患及び肝疾患を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240426BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/26 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P1/18
A61P3/06
A61P35/00
A61P1/16
A61K39/395 D
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K31/713
A61K38/02
A61P43/00 121
A61K31/357
A61K31/198
A61K31/416
A61K31/4196
A61K31/26
A61K31/496
A61P3/00
A61P3/04
A61P1/14
A61P29/00
A61P1/08
A61P1/00
A61P17/00
A61P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571559
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 US2022029388
(87)【国際公開番号】W WO2022245698
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,207
(32)【優先日】2021-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523432748
【氏名又は名称】メタノイア バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ツザロヴァ-トゥラジコヴスカ,スラヴィカ
(72)【発明者】
【氏名】グリーフ,オッペル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ウィク,アブラハム
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA03
4C084BA44
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA071
4C084ZA072
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA701
4C084ZA702
4C084ZA711
4C084ZA712
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC331
4C084ZC332
4C084ZC412
4C084ZC751
4C085AA13
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA15
4C086BC37
4C086BC60
4C086BC71
4C086EA16
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA59
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA07
4C086ZA08
4C086ZA53
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA71
4C086ZA75
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
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4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206MA75
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4C206MA79
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZA53
4C206ZA66
4C206ZA70
4C206ZA71
4C206ZA75
4C206ZA89
4C206ZB26
4C206ZC02
4C206ZC21
4C206ZC33
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は、膵疾患及び肝疾患、例えば、膵脂肪症、膵癌、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎、及び肝癌を治療するための方法及び組成物を提供する。提供される方法は、膵疾患及び/または肝疾患を患っているかまたは患うリスクがある対象に、有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与することを含む。提供される方法は、膵疾患及び/または肝疾患を患っているかまたは患うリスクがある対象に、有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与することを含む。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵脂肪症を治療することを必要とする対象おける前記膵脂肪症を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、を含み、
前記PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
【請求項2】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤及び有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記PFKFB3阻害剤を投与されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記HIF1-α経路阻害剤を投与されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1(a)~1(c)のいずれか1つに記載の方法は、前記膵脂肪症の予防的治療として投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象は、前記膵脂肪症を患っているか、または前記膵脂肪症を患うリスクがある、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象は、前記膵脂肪症を患っているか、または前記膵脂肪症を患っていると診断されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記膵脂肪症は、前記膵臓の脂肪浸潤、膵臓炎症を伴う前記膵臓の脂肪浸潤、または膵臓線維症の発生を伴う前記膵臓の脂肪浸潤に関連している、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記膵脂肪症は、前記膵臓の脂肪の浸潤に関連している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記膵脂肪症は、膵臓炎症を伴う前記膵臓の脂肪浸潤に関連している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記膵脂肪症は、膵臓線維症の発症を伴う前記膵臓の脂肪浸潤に関連している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記膵脂肪症は、膵臓炎症を伴い、膵臓線維症の発症を伴う前記膵臓の脂肪浸潤に関連している、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤はHIF1-α阻害剤である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記対象に共投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記HIF1-α経路阻害剤及び/または前記PFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記膵脂肪症の1つ以上の症状の発症前に投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記膵脂肪症を治療することは、前記膵脂肪症の発症を遅延させることを含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記膵脂肪症の1つ以上の症状の発症後に投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法により、結果として、治療前の前記対象と比較して、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤を投与された前記対象において前記膵脂肪症の1つ以上の症状が軽減される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記膵脂肪症の1つ以上の症状の軽減は、前記膵臓の脂肪含有量の25%未満への減少、腹痛の軽減、悪心の軽減、食欲増加、体重増加、黄疸の軽減、浮腫の軽減;及び疲労、精神錯乱または脱力感の軽減;膵臓の炎症の軽減、膵炎の軽減、前記膵臓の細胞の線維化の軽減、及び膵脂肪症バイオマーカーまたは炎症促進性サイトカイン(例えば、TNFα、IL-1β、IL6、MCP1、IL8、PAF)のレベルの低下によって示される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記軽減した症状の前記1つ以上は、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、前記対象における脂肪含量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の減少である、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1、2、3、4または5つの膵脂肪症バイオマーカーの血清レベルは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも20%減少する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記バイオマーカー:TNFα、IL-1β、IL6、MCP1、IL8及び/またはPAFの少なくとも1、2、3、4または5つの血清レベルは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも20%減少する、請求項27~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
追加の治療剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
膵癌を治療することを必要とする対象おける前記膵癌を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、を含み、
前記PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
【請求項34】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤及び有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記PFKFB3阻害剤を投与されている、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象は、有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記HIF1-α経路阻害剤を投与されている、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
請求項33(a)~33(c)のいずれか一項に記載の方法は、前記膵癌の予防的治療として投与される、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記対象は、前記膵癌を患っているか、または前記膵癌を患うリスクがある、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象は、前記膵癌を患っているか、または前記膵癌を患っていると診断されている、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記膵癌は、外分泌膵癌または神経内分泌膵癌である、請求項33~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記膵癌は、外分泌膵癌(例えば、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、または膠様癌)である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記膵癌は、膵管腺癌(PDAC)である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記膵癌は、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、または膠様癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記膵癌は、神経内分泌膵癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、請求項33~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、請求項33~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、請求項33~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤はHIF1-α阻害剤である、請求項33~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、請求項33~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、請求項33~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、請求項33~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記対象に共投与される、請求項33~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記HIF1-α経路阻害剤及び/または前記PFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、請求項33~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記膵癌の1つ以上の症状の発症前に投与される、請求項33~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記膵癌を治療することは、前記膵癌の発症を遅延させることを含む、請求項33~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記膵癌の1つ以上の症状の発症後に投与される、請求項33~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記方法により、結果として、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤を投与される前と比較して、前記対象において前記膵癌の1つ以上の症状が軽減される、請求項33~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記膵癌の前記1つ以上の症状の軽減は、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制もしくは低下、新たな腫瘍の形成なし、新たな腫瘍形成の減少、生存または無憎悪生存率の増加、転移なし、治療の選択肢の増加、手術から再発までの時間の遅延、黄疸の軽減、肝臓への浸潤の抑制、痛みの軽減、食欲の改善、消化の改善、胆嚢のサイズの減少、及び血栓の発生率の減少によって示される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記膵癌の前記1つ以上の症状は、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項59または60に記載の方法。
【請求項62】
前記バイオマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリンのうちの少なくとも1つは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、減少する、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
(a)前記対象の前記バイオマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリンのうちの少なくとも1、2、3、4、5つ以上は、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%改善するか、または、
(b)前記対象の腫瘍サイズは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、
請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
追加の治療薬を前記対象に投与することを更に含む、請求項33~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を治療することを必要とする対象における、前記非アルコール性脂肪性肝疾患を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、を含み、
前記PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
【請求項66】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤及び有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記PFKFB3阻害剤を投与されている、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記対象は、有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記HIF1-α経路阻害剤を投与されている、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
請求項65(a)~65(c)のいずれか1つに記載の方法は、前記非アルコール性脂肪性疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)の予防的治療として投与される、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)を患っているかまたは患うリスクがある、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、NAFL、NASH、またはNAFLD関連肝線維症)を患っているかまたは患っていると診断されている、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、請求項65~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、請求項65~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、請求項65~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤はHIF1-α阻害剤である、請求項65~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、請求項75または76に記載の方法。
【請求項78】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、請求項65~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、請求項65~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、請求項65~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記対象に共投与される、請求項65~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記HIF1-α経路阻害剤及び/または前記PFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、請求項65~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維化)の1つ以上の症状の発症前に投与される、請求項65~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
非アルコール性脂肪肝疾患を治療することは、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)の発症を遅延させることを含む、請求項65~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維化)の1つ以上の症状の発症後に投与される、請求項65~84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
前記方法により、結果として、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤を投与される前と比較して、前記対象において非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状が軽減される、請求項65~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
前記非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状の軽減は、
(a)右上腹部の疲労、痛みまたは不快感の軽減、脾肥大の軽減、黄疸の軽減、浮腫の軽減、食欲増加、及び減少、
(b)NASの軽減、または、
(c)NAFLDバイオマーカー(例えば、TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21、oxLDL、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII、及びTIMP1)のレベルの低下
によって示される、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状は、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項86または87に記載の方法。
【請求項89】
(a)前記血漿NAFLDバイオマーカー(例えば、TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21、oxLDL、ALT、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII、及びTIMP1)の少なくとも1つは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、改善されるか、または、
(b)前記対象のNASスコアは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、1、2、3以上減少するか、または、
(c)治療した前記対象は、3ポイント未満のNASを有する、
請求項86~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21、oxLDL、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII、及びTIMP1から選択される少なくとも1、2、3、4または5つのバイオマーカーは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項86~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
追加の治療剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項65~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
肝細胞癌を治療することを必要とする対象における、前記肝細胞癌を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を前記対象に投与することであって、前記対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、前記対象に投与すること、を含み、
前記PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
【請求項93】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤及び有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記対象は、有効量の前記HIF1-α経路阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記PFKFB3阻害剤を投与されている、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記対象は、有効量の前記PFKFB3阻害剤を投与され、前記対象は、以前に前記HIF1-α経路阻害剤を投与されている、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
請求項92(a)~92(c)のいずれか1つに記載の方法は、肝細胞癌の予防的治療として投与される、請求項92~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記対象は肝細胞癌を患っているか、または肝細胞癌を患うリスクがある、請求項92~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記対象は肝細胞癌を患っているか、または肝細胞癌を患っていると診断されている、請求項92~95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、請求項92~98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、請求項92~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、請求項92~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
前記投与されるHIF1-α経路阻害剤はHIF1-α阻害剤である、請求項92~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
前記HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、請求項102または103に記載の方法。
【請求項105】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、請求項92~104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、請求項92~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、請求項92~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、前記対象に共投与される、請求項92~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記HIF1-α経路阻害剤及び/または前記PFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、請求項92~108のいずれか一項に記載の方法。
【請求項110】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症前に投与される、請求項92~109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
肝細胞癌を治療することは、肝細胞癌の発症を遅延させることを含む、請求項92~110のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤は、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症後に投与される、請求項92~111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記方法により、結果として、治療前の前記対象と比較して、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤を投与された前記対象において肝細胞癌の1つ以上の症状が軽減される、請求項92~112のいずれか一項に記載の方法。
【請求項114】
前記肝細胞癌の1つ以上の軽減された症状は、
(a)体重増加、食欲増加、発熱の減少、悪心の減少、疲労の減少、上腹部痛の減少、腹部及び下肢の腫脹の減少、皮膚の黄変(黄疸)の減少、または皮下出血の減少、
(b)HCCを有する対象における典型的に上昇する少なくとも1つのバイオマーカーの減少(例えば、EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、及びSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP、及びLAMP-2)、または
(c)腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制もしくは低下、新たな腫瘍の形成なし、新たな腫瘍形成の減少、生存もしくは無憎悪生存率の増加、転移なし、治療の選択肢の増加、または手術から再発までの時間の遅延
によって示される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
以下の症状:体重減少、食欲不振、発熱、悪心、疲労感、上腹部痛、腹部及び下肢の腫脹、皮膚の黄変(黄疸)、皮下出血または出血が生じやすい、及び肝不全のうちの少なくとも1つは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前と比較して前記対象において改善される、請求項113または114に記載の方法。
【請求項116】
EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、及びSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP、及びLAMP-2から選択される、少なくとも1、2、3、4または5つのバイオマーカーは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3による治療前の前記対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項113~115のいずれか一項に記載の方法。
【請求項117】
前記対象の腫瘍サイズは、前記HIF1-α経路阻害剤及び前記PFKFB3阻害剤による治療前の前記対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項113~116のいずれか一項に記載の方法。
【請求項118】
追加の治療剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項92~117のいずれか一項に記載の方法。
【請求項119】
GPR81阻害剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~118のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、膵疾患及び肝疾患、例えば、膵脂肪症、膵癌、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎、及び肝癌を治療するための方法及び組成物を提供する。提供される方法は、膵疾患及び/または肝疾患を患っているか、またはそれを患うリスクがある対象に、有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与することを含む。
【0002】
肥満及びメタボリックシンドローム(肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧及びインスリン抵抗性を含む)は、脂肪細胞による脂質の誤った取り扱い、ならびに膵臓及び肝臓の脂肪浸潤につながる代謝異常をもたらす。血行中、ならびに膵臓及び肝臓の微小環境におけるアディポサイトカインの不均衡により、慢性的な低度の炎症が引き起こされ、膵臓及び肝臓の機能障害がもたらされる。更に、これらのアディポサイトカインは、細胞増殖、分化、ならびに血管新生及びリンパ管の拡張を調節する。
【0003】
膵脂肪症は、膵臓の脂肪浸潤から膵臓の炎症、及び膵線維症の発生に至るまでの疾患を指す。膵臓の脂肪細胞浸潤の結果は、膵臓の機能障害を引き起こし、発がんを引き起こすと考えられており、膵臓上皮内腫瘍及び膵管腺癌(PDAC)を引き起こす。
【0004】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、肝細胞におけるトリグリセリドの肝蓄積の存在を指し、西欧諸国における慢性肝疾患の最も一般的な原因である。その臨床的組織学的表現型は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)から非アルコール性脂肪肝炎(NASH)まで及び、肝臓の炎症及び進行性線維化によって特徴付けられ、肝硬変及び末期肝疾患、ならびに肝細胞癌を引き起こす。NASH関連の肝硬変は、米国における肝臓移植の主な指標となっている。
【0005】
2型糖尿病(T2D)は、膵臓腺癌(PDAC)の十分に確立された危険因子であり、BMIのような人体測定因子を相関させるために調整した後でも、悪性度のリスクが1.5~2倍に上昇する。BMI一致の対照及び年齢一致の対照と比較した場合、T2Dを患う個体からの膵臓において、前腫瘍性膵臓上皮内病変(PanIN)はより頻繁に発生し、膵管腺(PDG)の複製は2倍に増加する。腺房から腺管への化生に加えて、PDGコンパートメントは、腫瘍発生の開始ニッチとしてPDACに関与しており、膵臓微小環境(炎症及び代謝)の変化に対して、意図的には、例えば、膵炎中の損傷後に管上皮を再生する試みの増殖の増加によって応答する可能性がある。PDGの慢性的な活性化は、PDGにおける全体的な腫瘍促進、またはPanINの進行をもたらす可能性がある。更に、非糖尿病患者と比較して、T2Dを患う脳死ドナーに由来する膵臓では、膵島-PanIN複合体が濃縮されており、このことは、T2Dの糖尿病膵島が、PanINに解剖学的に近接していることから、PanINに対して重大なパラクライン効果を及ぼし得ることを示している。
【0006】
膵疾患及び肝疾患、例えば、膵癌、肝癌、膵炎及び非アルコール性脂肪肝疾患の治療に利用できる治療法は限られており、欠点が付随する。膵疾患及び肝疾患を患う個体の数が増加し続け、それが世界的な規模で影響を及ぼしていることを考えると、膵疾患及び肝疾患を軽減または緩和する治療法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、膵疾患及び肝疾患、例えば膵脂肪症、膵癌、例えば膵管副腎癌、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎、及び肝癌、例えば肝細胞癌を治療するための方法及び組成物を提供する。提供される方法は、膵疾患及び/または肝疾患を患っているか、またはそれを患うリスクがある対象に、有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与することを含む。
【0008】
T2Dでは、膵外分泌部は、外分泌不全、腺房線維化及び腺房炎症、ならびに糖尿病β細胞のHIF-1α/PFKFB3シグナル伝達軸の活性化を含む様々な変化を受け、β細胞機能障害、炎症、膵島の代謝リモデリング、及び乳酸放出を引き起こす-これらは、微小環境に影響を及ぼすことができ、膵外分泌部における腫瘍促進の手がかりを提供することができる要因である。
【0009】
本発明者らは、驚くべきことに、HIF1-α/PFKFB3シグナル伝達軸のHIF1-α阻害剤とPFKFB3阻害剤の組み合わせが、膵臓癌及び肝癌の促進または進行に関連する事象を軽減することによって膵癌を治療できることを見出した。理論に束縛されるものではないが、開示された方法は、機能細胞の生存を促進する膵臓及び肝臓における細胞競合を活性化し、それにより、生存及び機能不全細胞を促進しかつ膵疾患及び肝疾患ならびに腫瘍増殖及び進行をもたらす、細胞の機能不全、炎症、代謝リモデリングならびに乳酸放出などの要因を軽減すると考えられる。
【0010】
また、本発明者らは、膵外分泌部の糖尿病膵島から分泌された乳酸が、近位の腺房細胞、膵管腺(PDG)及び既存のPanINでGPR81シグナル伝達を活性化することを見出した。乳酸の慢性的なHIF1-α-PFKFB3依存性放出は、膵外分泌部に対して腫瘍促進効果を発揮し、それにより、腫瘍増殖及び進行を促進する。GPR81受容体は、PDAC患者由来の全細胞株の98%で過剰発現している。GPR81の活性化は、脂肪分解の阻害、増殖の増加、移入、活性酸素種、及び(ROS)の解毒の後の細胞内脂質の蓄積と関連しており、複数の事象により膵臓内の前腫瘍性病変の増殖がもたらされる。
【0011】
いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、慢性膵疾患及び/または肝疾患を治療する。いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、急性膵疾患及び/または肝疾患を治療する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、以下を提供する。
[1]膵脂肪症を治療することを必要とする対象における膵脂肪症を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
[2]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される、[1]に記載の方法。
[3]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、[1]に記載の方法。
[4]対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、[1]に記載の方法。
[5]1(a)~1(c)のいずれか1つに記載の方法は、膵脂肪症(例えば、膵臓の脂肪浸潤、膵臓炎症を伴う膵臓の脂肪浸潤、及び膵臓線維症の発生を伴う膵臓の脂肪浸潤)の予防的治療として投与される、[1]~[4]のいずれか1つに記載の方法。
[6]対象は、膵脂肪症(例えば、膵臓の脂肪浸潤、膵臓炎症を伴う膵臓の脂肪浸潤、及び膵臓線維症の発生を伴う膵臓の脂肪浸潤)を患うか、またはそれを患うリスクがある、[1]~[4]のいずれか1つに記載の方法。
[7]対象は、膵脂肪症を患っているか、またはそれを患っていると診断されている、[1]~[4]のいずれか1つに記載の方法。
[8]膵脂肪症は、膵臓の脂肪浸潤、膵臓炎症を伴う膵臓の脂肪浸潤、または膵臓線維症の発生を伴う膵臓の脂肪浸潤に関連している、[1]~[7]のいずれか1つに記載の方法。
[9]膵脂肪症は、膵臓の脂肪の浸潤を伴う、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[10]膵脂肪症は、膵臓炎症を伴う膵臓の脂肪浸潤に関連している、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[11]膵脂肪症は、膵臓線維症の発症を伴う膵臓の脂肪浸潤に関連している、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[12]膵脂肪症は、膵臓炎症を伴い、膵臓線維症の発症を伴う膵臓の脂肪浸潤に関連している、[1]~[8]のいずれか1つに記載の方法。
[13]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、[1]~[12]のいずれか1つに記載の方法。
[14]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、[1]~[13]のいずれか1つに記載の方法。
[15]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、[1]~[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である、[1]~[15]のいずれか1つに記載の方法。
[17]HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、[16]に記載の方法。
[18]投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、[16]または[17]に記載の方法。
[19]投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、[1]~[18]のいずれか1つに記載の方法。
[20]投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、[1]~[19]のいずれか1つに記載の方法。
[21]投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、[1]~[20]のいずれか1つに記載の方法。
[22]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、対象に共投与される、[1]~[21]のいずれか1つに記載の方法。
[23]HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、[1]~[22]のいずれか1つに記載の方法。
[24]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、膵脂肪症の1つ以上の症状の発症前に投与される、[1]~[23]のいずれか1つに記載の方法。
[25]膵脂肪症を治療することは、膵脂肪症の発症を遅延させることを含む、[1]~[24]のいずれか1つに記載の方法。
[26]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、膵脂肪症の1つ以上の症状の発症後に投与される、[1]~[23]のいずれか1つに記載の方法。
[27]本方法により、結果として、治療前の対象と比較して、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を投与された対象において膵脂肪症の1つ以上の症状が軽減される、[26]に記載の方法。
[28]膵脂肪症の1つ以上の症状の軽減は、膵臓の脂肪含有量の25%未満への減少、腹痛の軽減、悪心の軽減、食欲増加、体重増加、黄疸の軽減、浮腫の軽減;及び疲労、精神錯乱または脱力感の軽減;膵臓の炎症の軽減、膵炎の軽減、膵臓の細胞の線維化の軽減、及び膵脂肪症バイオマーカーまたは炎症促進性サイトカイン(例えば、TNFα、IL-1β、IL6、MCP1、IL8、PAF)のレベルの低下によって示される、[27]に記載の方法。
[29]軽減した症状の1つ以上は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、対象における脂肪含量の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の減少である、[27]または[28]に記載の方法。
[30]少なくとも1、2、3、4または5つの膵脂肪症バイオマーカーの血清レベルは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも20%減少する、[27]~[29]のいずれか1つに記載の方法。
[31]バイオマーカー:TNFα、IL-1β、IL6、MCP1、IL8及び/またはPAFの少なくとも1、2、3、4または5つの血清レベルは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも20%減少する、[27]~[30]のいずれか1つに記載の方法。
[32]追加の治療剤を対象に投与することを更に含む、[1]~[31]のいずれか1つに記載の方法。
[33]膵癌を治療することを必要とする対象における膵癌を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
[34]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される、[33]に記載の方法。
[35]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、[33]に記載の方法。
[36]対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、[33]に記載の方法。
[37]1(a)~1(c)のいずれか1つに記載の方法は、膵癌の予防的治療として投与される、[33]~[36]のいずれか1つに記載の方法。
[38]対象は、膵癌を患っているか、またはそれを患うリスクがある、[33]~[36]のいずれか1つに記載の方法。
[39]対象は、膵癌を患っているか、または膵癌を患っていると診断されている、[33]~[36]のいずれか1つに記載の方法。
[40]膵癌は、外分泌膵癌または神経内分泌膵癌である、[33]~[39]のいずれか1つに記載の方法。
[41]膵癌は、外分泌膵癌(例えば、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、または膠様癌)である、[40]に記載の方法。
[42]膵癌は、膵管腺癌(PDAC)である、[40]に記載の方法。
[43]膵癌は、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、または膠様癌である、[40]に記載の方法。
[44]膵癌は、神経内分泌膵癌である、[40]に記載の方法。
[45]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、[33]~[44]のいずれか1つに記載の方法。
[46]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、[33]~[45]のいずれか1つに記載の方法。
[47]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、[33]~[45]のいずれか1つに記載の方法。
[48]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である、[33]~[47]のいずれか1つに記載の方法。
[49]HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、[48]に記載の方法。
[50]投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、[48]または[49]に記載の方法。
[51]投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、[33]~[50]のいずれか1つに記載の方法。
[52]投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、[33]~[51]のいずれか1つに記載の方法。
[53]投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、[33]~[51]のいずれか1つに記載の方法。
[54]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、対象に共投与される、[33]~[53]のいずれか1つに記載の方法。
[55]HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、[33]~[54]のいずれか1つに記載の方法。
[56]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、膵癌の1つ以上の症状の発症前に投与される、[33]~[55]のいずれか1つに記載の方法。
[57]膵癌を治療することは、膵癌の発症を遅延させることを含む、[33]~[56]のいずれか1つに記載の方法。
[58]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、膵癌の1つ以上の症状の発症後に投与される、[33]~[57]のいずれか1つに記載の方法。
[59]本方法により、結果として、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を投与される前と比較して、対象において膵癌の1つ以上の症状が軽減される、[33]~[58]のいずれか1つに記載の方法。
[60]膵癌の1つ以上の症状の軽減は、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制もしくは低下、新たな腫瘍の形成なし、新たな腫瘍形成の減少、生存または無憎悪生存率の増加、転移なし、治療の選択肢の増加、手術から再発までの時間の遅延、黄疸の軽減、肝臓への浸潤の抑制、痛みの軽減、食欲の改善、消化の改善、胆嚢のサイズの減少、及び血栓の発生率の減少によって示される、[59]に記載の方法。
[61]膵癌の1つ以上の症状は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される、[59]または[60]に記載の方法。
[62]バイオマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリンのうちの少なくとも1つは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、減少する、[59]~[61]のいずれか1つに記載の方法。
[63](a)対象のバイオマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリンのうちの少なくとも1、2、3、4、5つ以上は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%改善するか、または、
(b)対象の腫瘍サイズは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、
[59]~[62]のいずれか1つに記載の方法。
[64]追加の治療剤を対象に投与することを更に含む、[33]~[63]のいずれか1つに記載の方法。
[65]非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を治療することを必要とする対象における、非アルコール性脂肪性肝疾患を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
[66]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される、[65]に記載の方法。
[67]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、[65]に記載の方法。
[68]対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、[65]に記載の方法。
[69]1(a)~1(c)のいずれか1つに記載の方法は、非アルコール性脂肪性疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)の予防的治療として投与される、[65]~[68]のいずれか1つに記載の方法。
[70]対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)を患っているか、またはそれを患うリスクがある、[65]~[68]のいずれか1つに記載の方法。
[71]対象は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)を患っているか、またはそれを患っていると診断されている、[65]~[68]のいずれか1つに記載の方法。
[72]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、[65]~[71]のいずれか1つに記載の方法。
[73]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、[65]~[72]のいずれか1つに記載の方法。
[74]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、[65]~[72]のいずれか1つに記載の方法。
[75]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である、[65]~[72]のいずれか1つに記載の方法。
[76]HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、[75]に記載の方法。
[77]投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、[75]または[76]に記載の方法。
[78]投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、[65]~[77]のいずれか1つに記載の方法。
[79]投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、[65]~[78]のいずれか1つに記載の方法。
[80]投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、[65]~[78]のいずれか1つに記載の方法。
[81]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、対象に共投与される、[65]~[80]のいずれか1つに記載の方法。
[82]HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、[65]~[81]のいずれか1つに記載の方法。
[83]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維化)の1つ以上の症状の発症前に投与される、[65]~[82]のいずれか1つに記載の方法。
[84]非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を治療することは、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維症)の発症を遅延させることを含む、[65]~[83]のいずれか1つに記載の方法。
[85]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、非アルコール性脂肪肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、またはNAFLD関連肝線維化)の1つ以上の症状の発症後に投与される、[65]~[84]のいずれか1つに記載の方法。
[86]本方法により、結果として、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を投与される前と比較して、対象において非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状が軽減される、[65]~[85]のいずれか1つに記載の方法。
[87]非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状の軽減は、
(a)右上腹部の疲労、痛みまたは不快感の軽減、脾肥大の軽減、黄疸の軽減、浮腫の軽減、食欲増加、及び減少、
(b)NASの軽減、または、
(c)NAFLDバイオマーカー(例えば、TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21、oxLDL、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII、及びTIMP1)のレベルの低下
によって示される、[86]に記載の方法。
[88]非アルコール性脂肪肝疾患の1つ以上の症状は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、[86]または[87]に記載の方法。
[89](a)血漿NAFLDバイオマーカー(例えば、TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21、oxLDL、ALT、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII、及びTIMP1)の少なくとも1つは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、改善されるか、または、
(b)対象のNASスコアは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、1、2、3以上減少するか、または、
(c)治療した対象は、3ポイント未満のNASを有する、
[86]~[88]のいずれか1つに記載の方法。
[90]TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21、oxLDL、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII、及びTIMP1から選択される少なくとも1、2、3、4または5つのバイオマーカーは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、[86]~[89]のいずれか1つに記載の方法。
[91]追加の治療剤を対象に投与することを更に含む、[65]~[90]のいずれか1つに記載の方法。
[92]肝細胞癌を治療することを必要とする対象における、肝細胞癌を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法。
[93]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される、[92]に記載の方法。
[94]対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、[92]に記載の方法。
[95]対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、[92]に記載の方法。
[96][92(a)~(c)]のいずれか1つに記載の方法は、肝細胞癌の予防的治療として投与される、[92]~[95]のいずれか1つに記載の方法。
[97]対象は肝細胞癌を患っているか、または肝細胞癌を患うリスクがある、[92]~[95]のいずれか1つに記載の方法。
[98]対象は肝細胞癌を患っているか、または肝細胞癌を患っていると診断されている、[92]~[95]のいずれか1つに記載の方法。
[99]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である、[92]~[98]のいずれか1つに記載の方法。
[100]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である、[92]~[99]のいずれか1つに記載の方法。
[101]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である、[92]~[99]のいずれか1つに記載の方法。
[102]投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である、[92]~[99]のいずれか1つに記載の方法。
[103]HIF1-α阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である、[102]に記載の方法。
[104]投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである、[102]または[103]に記載の方法。
[105]投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、MiRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である、[92]~[104]のいずれか1つに記載の方法。
[106]投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である、[92]~[105]のいずれか1つに記載の方法。
[107]投与されるPFKFB3阻害剤は、(a)KAN0436151もしくはKAN0436067、もしくはそれらの塩である、(b)図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067、もしくはBrAcNHErOP、もしくはそれらの塩の構造を有する、(c)図1Eに示す、式AZ44~式AZ70もしくは式AZ71、もしくはそれらの塩の構造を有する、または(d)AZ67もしくはその塩である、[92]~[105]のいずれか1つに記載の方法。
[108]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、対象に共投与される、[92]~[107]のいずれか1つに記載の方法。
[109]HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口、非経口、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、腫瘍内、または静脈内である、[92]~[108]のいずれか1つに記載の方法。
[110]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症前に投与される、[92]~[109]のいずれか1つに記載の方法。
[111]肝細胞癌を治療することは、肝細胞癌の発症を遅延させることを含む、[92]~[110]のいずれか1つに記載の方法。
[112]HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症後に投与される、[92]~[111]のいずれか1つに記載の方法。
[113]本方法により、結果として、治療前の対象と比較して、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を投与された対象において肝細胞癌の1つ以上の症状が軽減される、[92]~[112]のいずれか1つに記載の方法。
[114]肝細胞癌の1つ以上の軽減された症状は、
(a)体重増加、食欲増加、発熱の減少、悪心の減少、疲労の減少、上腹部痛の減少、腹部及び下肢の腫脹の減少、皮膚の黄変(黄疸)の減少、または皮下出血の減少、
(b)HCC(例えば、EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、及びSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP、及びLAMP-2)を有する、対象における典型的に上昇する少なくとも1つのバイオマーカーの減少、または
(c)腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制もしくは低下、新たな腫瘍の形成なし、新たな腫瘍形成の減少、生存もしくは無憎悪生存率の増加、転移なし、治療の選択肢の増加、または手術から再発までの時間の遅延
によって示される、[113]に記載の方法。
[115]以下の症状:体重減少、食欲不振、発熱、悪心、疲労感、上腹部痛、腹部及び下肢の腫脹、皮膚の黄変(黄疸)、皮下出血または出血が生じやすい、及び肝不全のうちの少なくとも1つは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前と比較して対象において、改善される、[113]または[114]に記載の方法。
[116]EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、及びSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP、及びLAMP-2から選択される、少なくとも1、2、3、4または5つのバイオマーカーは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、[113]~[115]のいずれか1つに記載の方法。
[117]対象の腫瘍サイズは、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、[113]~[116]のいずれか1つに記載の方法。
[118]追加の治療剤を対象に投与することを更に含む、[92]~[117]のいずれか1つに記載の方法。
[119]GPR81阻害剤を対象に投与することを更に含む、[1]~[118]のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】例示的なPFKFB3小分子阻害剤を示す。
図1B】例示的なPFKFB3小分子阻害剤を示す。
図1C】例示的なPFKFB3小分子阻害剤を示す。
図1D】例示的なPFKFB3小分子阻害剤を示す。
図1E】例示的なPFKFB3小分子阻害剤を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
特に定義されない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様または同等の方法及び材料は、提供される組成物の実施または試験で使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書で言及される各刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。加えて、材料、方法、及び例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0015】
開示された方法及び組成物の他の特徴ならびに利点は、以下の開示、図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0016】
諸実施形態が「含む(comprising)」という語を用いて本明細書で説明されている場合は常に、「含有する(containing)」「からなる(consisting of)」及び/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という観点から説明されている別の類似の実施形態も提供されるものと理解されたい。ただし、特許請求の範囲内で移行句として使用される場合、それぞれを個別に、適切な法的及び事実的文脈の中で解釈する必要がある(例えば、特許請求の範囲内では、移行句「含む」は、よりオープンエンドな表現とみなされ、「からなる」はより排他的であり、「から本質的になる」は中間に位置する)。
【0017】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、そのような意図がないことが明示的に述べられていない限り、または文脈から明確に明らかでない限り、複数形を含む。単数形「a」、「an」及び「the」には、粒子集団内の粒子の統計的平均組成、特性、またはサイズ(例えば、平均ポリエチレングリコール分子量、平均リポソーム直径、平均リポソームゼータ電位)も含まれる。医薬組成物中のリポソームの平均粒径及びゼータ電位は、動的光散乱法などの当技術分野で公知の方法を使用して日常的に測定することができる。ナノ粒子組成物中の治療薬の平均量は、例えば、吸収分光法(例えば、紫外-可視分光法)を使用して日常的に測定され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、目的の1つ以上の値に適用される「およそ」または「約」という用語は、記述される参照値と類似する値を指す。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、別途記載のない限り、または別途文脈から明らかでない限り(そのような数が可能な値の100%を超え得る場合を除く)、述べられた基準値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に含まれる値の範囲を指す。例えば、ナノ粒子組成物の脂質成分中の所定の化合物の量との関連で使用される場合、「約」は、記載された値の+/-10%を意味し得る。例えば、所定の化合物を約40%有する脂質成分を含むナノ粒子組成物は、その化合物を30~50%含むことができる。
【0019】
「及び/または」という用語は、本明細書で「A及び/またはB」などの表現で使用される場合、A及びBの両方、AまたはB、A(単独)、ならびにB(単独)を含むように意図されている。同様に、「及び/または」という用語は、「A、B、及び/またはC」のような句で使用される場合、以下の実施形態:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)のそれぞれを包含するように意図されている。
【0020】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で別様が示されない限り、単に、範囲内に収まるそれぞれの別個の値を個々に指す速記方法としての役割を果たすことが意図され、それぞれの別個の値は、本明細書に個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。
【0021】
本開示の実施形態がマーカッシュ群またはその他の代替のグループに関して説明される場合、本開示の組成物または方法は、全体として挙げられたグループ全体を包含するだけでなく、グループの各メンバーも個別に包含し、メイングループのすべての可能なサブグループも包含し、更にグループメンバーの1つ以上不在のメイングループも包含する。また、本開示の方法及び組成物は、本開示の組成物または方法におけるグループメンバーのいずれかの1つ以上が明示的に除外されることも想定している。
【0022】
本明細書で使用される場合、「抗体」及び「抗原結合抗体断片」などの用語には、これらに限定されないが、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、またはその抗原結合部分などの、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含む任意のタンパク質またはペプチド含有分子が含まれる。
【0023】
「抗体」という用語にはまた、単鎖抗体、単一結合ドメイン抗体及び抗原結合抗体断片を含む、抗体またはその特定の断片もしくは一部分の構造及び/または機能を模倣する、抗体模倣物または抗体の一部分を含む、その断片、特定の部分及び変異体が含まれる。
【0024】
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部分、一般にはインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を指す。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖(scFv)及びFv断片、ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子;単一Fabアーム「ワンアーム」抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。抗体断片には、これらに限定されないが、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)もしくはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖定常領域、フレームワーク領域もしくはその任意の部分、または抗原もしくは抗原受容体もしくは結合タンパク質の少なくとも一部などの免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質またはペプチド含有分子が含まれ、これらは、本明細書で提供される抗体に組み込むことができる。
【0025】
抗体断片は、当技術分野で公知のように、酵素的切断、合成または組換え技術によって生成することができる。抗体は、1つ以上の終止コドンが天然の終止部位の上流に導入されている抗体遺伝子を使用して、様々な切断型で生成することもできる。例えば、F(ab’)2重鎖部分をコードする組み合わせ遺伝子は、重鎖のCH1ドメイン及び/またはヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。抗体の様々な部分は、従来の技術によって化学的に結合することも、遺伝子工学技術を使用して連続したタンパク質として調製することもできる。
【0026】
「核酸」または「オリゴヌクレオチド」という用語は、本明細書では互換的に使用され、共有結合で一緒に結合した少なくとも2つのヌクレオチドを指す。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤は、治療用核酸である。いくつかの実施形態では、投与される核酸は、ENMD-1198、shRNA、ダイサー基質(例えば、dsRNA)、miRNA、抗miRNA、アンチセンス分子、デコイ、もしくはアプタマー、またはENMD-1198、shRNA、ダイサー基質、miRNA、抗miRNA、アンチセンス分子、デコイ、もしくはアプタマーを発現させるプラスミドである。
【0027】
提供される方法に従って投与される核酸は、好ましくは一本鎖または二本鎖であり、一般にホスホジエステル結合を含むが、場合によっては、核酸/オリゴヌクレオチドアナログは、例えば、ホスホルアミド、ホスホロチオエート(phosphorathioate)、ホスホロジチオエート、O-メチルホスホロアミダイト結合、ならびにペプチド核酸骨格及び結合を含む、代替骨格を有するものが含まれる。他のアナログ核酸/オリゴヌクレオチドには、ポジティブ骨格、非イオン性骨格、及び非リボース骨格を有するものが含まれる。1つ以上の炭素環状糖を含む核酸/オリゴヌクレオチドも、核酸及びオリゴヌクレオチドの定義に含まれる。リボース-ホスフェート骨格のこれらの修飾は、例えば、標識などの付加部分の付加を容易にするため、または生理学的環境におけるそのような分子の安定性及び半減期を増加させるために行うことができる。提供される方法に従って使用されるオリゴヌクレオチドの核酸/オリゴヌクレオチド骨格は、約5ヌクレオチド~約750ヌクレオチドの範囲であり得る。好ましい核酸/オリゴヌクレオチド骨格は、長さが約5ヌクレオチド~約500ヌクレオチド、好ましくは約10ヌクレオチド~約100ヌクレオチドの範囲である。
【0028】
提供される方法に従って投与されるオリゴヌクレオチドは、核酸標的の少なくともある領域に特異的にハイブリダイズできるヌクレオシド及び/またはヌクレオチドモノマーのポリマー構造である。上記のように、提供される方法に従って使用される「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」には、天然に存在する塩基、糖及び糖間(骨格)連結を含む化合物、天然に存在する対応物と同様に機能する、天然に存在しない修飾モノマー、またはその一部(例えば、オリゴヌクレオチド類似体もしくは模倣体)、及びこれらの天然に存在するモノマーと天然に存在しないモノマーの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「修飾された」または「修飾」という用語は、核酸などの出発または天然オリゴマー化合物からの任意の置換及び/または任意の変更を含む。核酸への修飾は、本明細書に記載のもの及び別様に当技術分野で公知のもののような、ヌクレオシド間連結、糖部分、または塩基部分への置換または変更を包含する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「小分子」とは、従来の有機化学法(例えば、実験室における)によって合成されるか、または自然界で見出される有機化合物を指す。通常、小分子は、いくつかの炭素-炭素結合を含み、分子量が約1500グラム/モル未満であることを特徴とする。特定の実施形態では、小分子は約1000グラム/モル未満である。特定の実施形態では、小分子は約550グラム/モル未満である。特定の実施形態では、小分子は約200~約550グラム/モルである。特定の実施形態では、小分子には、ペプチド(例えば、ペプチジル結合によって結合された2つ以上のアミノ酸を含む化合物)が含まれない。特定の実施形態では、小分子には、核酸が含まれない。
【0030】
「状態」及び「疾患」という用語は、本明細書では互換的に使用され、細胞、組織もしくは器官の正常な機能を損傷、妨害、もしくは調節不全にする、任意の状態または障害を指す。
【0031】
「線維症」は、通常は炎症または他の損傷の結果として、線維状結合組織がいずれかの臓器(例えば膵臓及び肝臓)に侵入する病理学的状態である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「膵癌」という用語は、当技術分野で認識されている疾患を指し、膵臓を含む組織に由来するがんを含む。様々な実施形態では、膵癌は、外分泌膵癌、膵嚢胞腫瘍、または膵内分泌腫瘍である。「膵癌に罹患している」または「膵癌と診断された」対象は、資格を有する臨床医により臨床的にそのようながんと診断された対象、またはそのようながんの1つ以上の徴候もしくは症状(例えば、胃腸管洗浄液または糞便物質中の膵癌バイオマーカーのレベルの低下)を示し、その後、資格を有する医師により臨床的にがんと診断された対象である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「肝細胞癌」という用語は、当技術分野で認識されている疾患を指し、肝臓を含む組織に由来するがんを含む。「肝細胞癌に罹患している」または「肝細胞癌と診断された」対象は、資格を有する臨床医により臨床的にそのようながんと診断された対象、またはそのようながんの1つ以上の徴候もしくは症状(例えば、肝細胞癌バイオマーカーのレベルの低下)を示し、その後、資格を有する医師により臨床的にがんと診断された対象である。
【0034】
本明細書で使用される場合、膵癌または肝癌「バイオマーカー」という用語は、膵癌または肝癌を患っていない対象と比較して、膵癌もしくは肝癌を患っている対象の生物学的試料(例えば、胃腸管洗浄液または糞便物質)中に差次的に存在する、タンパク質または非タンパク質性物質を指す。特定の実施形態では、膵癌または肝癌バイオマーカーは、それぞれ、膵臓または肝臓に由来するタンパク質である。他の実施形態では、膵癌または肝癌バイオマーカーは、それぞれ、非膵臓または非肝臓源(例えば、胃腸管、例えば、腸管)に由来するタンパク質である。
【0035】
本明細書で使用される場合、膵癌または肝癌バイオマーカーの「レベル」とは、タンパク質または非タンパク質性物質のレベルを測定するための方法を用いて決定される、血清、消化管洗浄液または糞便物質などの生体試料中の膵癌または肝癌バイオマーカーのレベルを指す。そのような方法としては、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、超拡散クロマトグラフィー、流体またはゲル沈殿反応、吸収分光法、比色アッセイ、分光光度アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散法(シングルまたはダブル)、液相アッセイ、免疫電気泳動法、ウエスタンブロッティング、放射免疫測定法(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫蛍光測定法、及び電気化学発光免疫測定法などが挙げられる。好ましい実施形態では、レベルは、ELISA系アッセイを用いて決定される。
【0036】
本明細書で使用する場合、「試料」という用語は、対象から単離した類似の流体、細胞または組織、ならびに対象内に存在する流体、細胞または組織の集合体を指す。好ましい実施形態では、試料は、膵癌または肝癌バイオマーカーを含む生物学的流体である。生物学的液体の例としては、消化管洗浄液、糞便物質、血液、血清及び漿液、血漿、精液、膵液、胆汁、リンパ液、尿、脳脊髄液、唾液、眼液、嚢胞液、涙液、痰、分泌組織及び臓器の粘膜分泌物、腟分泌物、婦人科液、非固形腫瘍に関連する腹水;胸膜、心膜、腹膜、腹腔及び他の体腔の液体;気管支洗浄などで採取された液体が挙げられる。特定の実施形態では、生体試料は、血清、胃腸管洗浄液または糞便物質である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「膵疾患の進行」または「肝疾患の進行」という用語は、時間と共に疾患が徐々に悪化し、それにより、症状及び神経化学的欠損は、ますます衰弱及び/または激しくなることを指す。
【0038】
本明細書で使用される場合、「膵疾患の進行を阻害する」または「肝疾患の進行を阻害する」という用語は、それぞれ、膵疾患または肝疾患の症状の進行を遅延及び/または停止させることを指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、膵脂肪症もしくは膵癌などの膵疾患、または非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)もしくは肝癌などの肝疾患の「発症を遅延させる」とは、患者の疾患が進行する速度を低下させること(例えば、患者を急速に進行する疾患からより緩徐に進行する疾患に移行させるため)を含む、疾患の1つ以上の症状の発現を遅延させる、妨げる、遅くする、抑制する、安定化させる、及び/または延期することを意味する。この遅延は、治療されている個体の病歴及び/または既往歴に応じて異なる長さの期間であり得る。当業者に明らかであるように、十分なまたは有意な遅延は、事実上、個体が検出可能な疾患を発症しないという点で予防を包含し得る。疾患の発症を「遅延」させる方法は、その方法を使用しないときと比較して、所与の時間枠内で疾患の程度を低減させる方法である。かかる比較は、典型的には、統計的に有意な数の対象を使用する臨床研究に基づくが、この知識は、事例証拠に基づくことができる。「発症の遅延」は、薬剤を投与しない場合と比較して、臨床症状の程度及び/または望ましくない臨床症状が軽減されること、及び/または進行の時間経過が遅くなるかもしくは延長されることを意味し得る。したがって、この用語はまた、検出可能であるか、または検出不能であるかに関わらず、症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の病態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行の遅延または減速、及び(部分的かまたは完全かに関わらず)緩解を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、膵疾患(例えば、膵脂肪症及び膵管副腎癌(PDAC)などの膵癌)、または肝疾患(例えば、NAFL、NASH、及び肝細胞癌(HCC)などの肝癌)に対する医学的に望ましい予防及び/または治療効果を提供するのに十分な薬剤の用量を指す。有効量は、所望の結果、治療される(または、予防される)特定の膵疾患または肝疾患、治療される対象の年齢及び身体状態、状態の重篤度、治療期間、同時治療または併用治療の性質(存在する場合)、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識と技能の範囲内の同様の要素によって異なる。「有効量」は、記載された目的に関連して、経験的にかつ日常的な方法で決定することができる。がんに関連する予防及び/または治療効果としては、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制もしくは低下、新たな腫瘍の形成なし、新たな腫瘍形成の減少、生存もしくは無憎悪生存率の増加、転移なし、治療の選択肢の増加、当該がんにおいて典型的に上昇するバイオマーカーの減少、及び手術から再発までの時間の遅延が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「対象」、「患者」、「個体」及び「動物」という用語は互換的に使用され、ヒト患者及び非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびにウサギ、ラット及びマウス及び他の実験動物などの実験用動物を指す。動物には、ニワトリ、両生類及び爬虫類などのすべての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物が含まれる。本明細書で使用される場合、「哺乳動物」とは、哺乳綱の任意のメンバーを指し、限定されないが、ヒト、及びチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類;牛、羊、豚、ヤギ及び馬などの家畜;犬及び猫などの家畜哺乳動物;マウス、ラット及びモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物;ならびに当技術分野で公知の哺乳綱の他のメンバーが含まれる。特定の実施形態では、患者はヒトである。
【0042】
「治療すること」もしくは「治療」、「治療する」、または「療法」などの用語は、(a)病的状態の症状を治癒、減速、減弱、緩和する、及び/またはその進行を停止させる治療手段と、(b)標的となる状態及び/またはその関連症状の発症を予防及び/または遅延させる予防的または防止的手段と、の両方を指す。
【0043】
したがって、治療が必要な対象には、膵疾患及び/または肝疾患を既に患っている対象、膵疾患及び/または肝疾患を患うリスクがある対象、ならびに膵疾患及び/または肝疾患を予防したい対象が含まれる。対象は、当技術分野で公知の医学及び診断技術を使用して、膵疾患及び/または肝疾患、または本明細書で言及される別の状態を「有するか、または有するリスクがある」と日常的に特定され得る。特定の実施形態では、対象が、例えば、状態に関連する少なくとも1つの症状の全体的、部分的、または一過性の寛解または消失を示す場合、対象は、提供される方法に従って順調に「治療」されている。
【0044】
他の実施形態では、「治療する」もしくは「治療」、「治療すること」または「療法」という用語は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)、生理的に(例えば、物理パラメーターの安定化)のいずれか、またはその両方で、膵疾患及び/または肝疾患の進行を阻害することを指す。他の実施形態では、「治療する」もしくは「治療」、「治療すること」または「療法」という用語は、症状の緩和の軽減、炎症の軽減、細胞機能の回復を指す。治療は、本明細書に開示されるHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤組成物を用いて、または1つ以上の追加の治療薬と更に組み合わせて行うことができる。
【0045】
「薬学的に許容される担体」という用語は、対象に対して非毒性である、活性成分以外の薬学的製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、限定されないが、緩衝剤、担体、賦形剤、安定剤、希釈剤または保存剤が挙げられる。薬学的に許容される担体には、例えば、ヒトまたは他の対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体もしくは液体の充填剤、希釈剤、またはカプセル化物質が含まれ得る。
【0046】
開示された方法及び組成物に従って使用される「治療薬(複数可)」には、対象の状態を治療するための任意の薬剤が更に含まれ得る。「治療薬」はまた、上述の薬剤の塩、酸、及び遊離塩基形態も指す。
【0047】
PFKFB3阻害剤
PFKFB3(6-ホスホフルクト-2-キナーゼ-フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ3)は、真核生物の解糖を制御する調節分子であるフルクトース-2,6-二リン酸の合成及び分解の両方に関与する、二機能性タンパク質であり、細胞周期の進行及びアポトーシスの予防に必要である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵疾患または肝疾患を治療することを必要とする対象における膵疾患または肝疾患を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法を提供する。
【0049】
提供される方法に従って使用することができるPFKFB3阻害剤は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくはPFKFB3結合抗体(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3阻害性結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である。
【0050】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、PFKFB3活性について、PFKFB3活性/機能のIC50が100μM以下の濃度である。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、少なくとももしくは最大もしくは約200、100、80、50、40、20、10、5もしくは1μM、または少なくとももしくは最大もしくは約100、10もしくは1nM以下(または、そこから導出される任意の範囲もしくは値)のIC50を有する。いくつかの実施形態では、PFKFB3阻害剤は、PFKFB3の発現を阻害する。化合物のPFKFB3活性を阻害する能力を決定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、PFKFB3活性または発現の阻害は、対照レベルまたは試料と比較した場合の減少である。いくつかの実施形態では、MTTアッセイ、細胞増殖アッセイ、BRDUもしくはKi67免疫蛍光アッセイ、アポトーシスアッセイまたは解糖アッセイなどの機能アッセイを使用し、PFKFB3活性を阻害する組成物の能力をアッセイする。
【0051】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体またはPFKFB3結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)である。特定の実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、ナノボディ(例えば、VHH)である。
【0052】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-A阻害剤は、治療用核酸である。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNAである。特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、EZN-4178である。
【0053】
ヒトPFKFB3コード配列の代表的な例は、GenBank受入番号NM_004566.3、NM_001145443.2、NP_001138915.1、NM_001282630.2、NM_001314063.1、NM_001323016.1、NM_001323017.1及びNM_001363545.2で提供される。これらのGenbank受入番号のそれぞれに関連する配列は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。PFKFB3活性を阻害する治療用核酸は、当技術分野で公知の方法を使用して、上記のヒトPFKFB3転写配列のそれぞれに基づいて日常的に設計及び調製することができる。
【0054】
提供される方法の特定の実施形態では、PFKFB3阻害性核酸の投与、または当技術分野で公知のPFKFB3の遺伝子発現を阻害する任意の方法が企図される。阻害性核酸の例には、低分子干渉RNA(SiRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、二本鎖RNA、及び任意の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンス核酸が含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書に記載の阻害剤のいずれかをコードするリボザイムまたは核酸も含まれる。阻害性核酸は、細胞におけるPFKFB3の転写を阻害するか、またはPFKFB3遺伝子転写物の翻訳を妨げ得る。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害性核酸は、長さが16~1000ヌクレオチドである。特定の実施形態では、投与されるPFKFB3阻害性核酸は、18~100ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、投与されるPFKFB3阻害性核酸は、少なくとももしくは最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、90ヌクレオチド、またはそこから導出される任意の範囲である。
【0055】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害性核酸は、PFKFB3の発現を少なくとも10%、20%、30%もしくは40%、より具体的には少なくとも50%、60%、もしくは70%、最も具体的には少なくとも75%、80%、90%、95%以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値で減少させることができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害性核酸は、長さが17~25ヌクレオチドであり、成熟PFKFB3 mRNA(例えば、GenBank受入番号NM_004566.3、NM_001145443.2、NM_001282630.2、NM_001314063.1、NM_001323016.1、NM_001323017.1及びNM_001363545.2のいずれか1つ以上に開示される配列)の5’~3’配列に対して少なくとも90%相補的な5’~3’配列を含む。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害性核酸は、長さが17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25ヌクレオチド、またはそこから導出される任意の範囲である。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害性核酸は、成熟PFKFB3 mRNA(例えば、GenBank受入番号NM_004566.3、NM_001145443.2、NM_001282630.2、NM_001314063.1、NM_001323016.1、NM_001323017.1及びNM_001363545.2のいずれか1つ以上に開示される配列)の対応する5’~3’配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的であるか、またはそこから導出される任意の範囲である配列(5’~3’)を有する。当業者であれば、成熟mRNAの配列に相補的なプローブ配列の一部を、mRNA阻害剤の配列として使用することができるであろう。更に、プローブ配列のその部分は、成熟mRNAの配列に対して依然として90%相補的であるように変更することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害性核酸は、miRNAである。更なる実施形態では、投与されるmiRNAは、hsa-mir-26b-5p(MIRT028775)、hsa-mir-330-3p(MIRT043840)、hsa-mir-6779-5p(MIRT454747)、hsa-mir-6780a-5p(MIRT454748)、hsa-mir-3689c(MIRT454749)、hsa-mir-3689b-3p(MIRT454750)、hsa-mir-3689a-3p(MIRT454751)、hsa-mir-30b-3p(MIRT454752)、hsa-mir-1273h-5p(MIRT454753)、hsa-mir-6778-5p(MIRT454754)、hsa-mir-1233-5p(MIRT454755)、hsa-mir-6799-5p(MIRT454756)、hsa-mir-7106-5p(MIRT454757)、hsa-mir-6775-3p(MIRT454758)、hsa-mir-1291(MIRT454759)、hsa-mir-765(MIRT454760)、hsa-mir-423-5p(MIRT454761)、hsa-mir-3184-5p(MIRT454762)、hsa-mir-6856-5p(MIRT454763)、hsa-mir-6758-5p(MIRT454764)、hsa-mir-3185(MIRT527973)、hsa-mir-6892-3p(MIRT527974)、hsa-mir-6840-5p(MIRT527975)、及びhsa-mir-6865-3p(MIRT527976)から選択されるメンバーである。
【0058】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、小分子である。投与される小分子PFKFB3阻害剤は、PFKFB3の機能または活性を阻害すると決定された任意の小分子であり得る。このような小分子は、in vitroまたはin vivoでの機能アッセイに基づいて決定することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤小分子は、米国特許公開第20130059879号、同第20120177749号、同第20100267815号、同第20100267815号、及び同第20090074884号に開示されている小分子PFKFB3阻害分子であり、それぞれの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0060】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、(1H-ベンゾ[g]インドール-2-イル)-フェニル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-フェニル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノンのHCl塩、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-3-イル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(5-メチル-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-フェニル-メタノン、フェニル-(7H-ピロロ[2,3-h]キノリン-8-イル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-クロロ-ピリジン-4-イル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(1-オキシ-ピリジン-4-イル)-メタノン、フェニル-(6,7,8,9-テトラヒドロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシルテニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ-フェニル)-メタノン、4-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-安息香酸メチルエステル、4-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-安息香酸、(4-アミノ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、5-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-2-ベンジルオキシ-安息香酸メチル、5-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-2-ベンジルオキシ-安息香酸メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(2-メトキシ-ピリジン-4-イル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メトキシ-フェニル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノン、(4-ベンジルオキシ-3-メトキシ-フェニル)-(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ヒドロキシ-3-メトキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-ヒドロキシメチル-フェニル)-メタノン、シクロヘキシル-(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(5-フルオロ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-フルオロ-4-ヒドロキシ-フェニル)-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-p-トリル-メタノン、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メトキシ-フェニル-メタノール、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-ピリジン-4-イル-メタノール、3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボン酸フェニルアミド、3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボン酸(3-メトキシ-フェニル)-アミド、(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(4-ジメチルアミノ-フェニル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(5-ヒドロキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、N-[4-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボニル)-フェニル]-メタンスルホンアミド、3H-ベンゾ[e]インドール-2-カルボン酸(4-アミノ-フェニル)-アミド、(4-アミノ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-フルオロ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-フルオロ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-メトキシ-フェニル)-(5-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-メトキシ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-メトキシ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-フルオロ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-フルオロ-フェニル)-(9-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-3-フルオロ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-フルオロ-フェニル)-(3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-フェニル)-(7-メトキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(4-アミノ-フェニル)-(5-ヒドロキシ-3-メチル-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、(7-アミノ-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-(3-メチル-ピリジン-4-イル)-メタノン、(5-アミノ-3H-ピロロ[3,2-f]イソキノリン-2-イル)-(3-メトキシ-ピリジン-4-イル)-メタノン、(4-アミノ-2-メチル-フェニル)-(9-ヒドロキシ-3H-ピロロ[2,3-c]キノリン-2-イル)-メタノン、及び(4-アミノ-フェニル)-(7-メタンスルホニル-3H-ベンゾ[e]インドール-2-イル)-メタノン、またはそれらの塩のうちの少なくとも1つである。
【0061】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、1-ピリジン-4-イル-3-キノリン-4-イル-プロペノン、1-ピリジン-4-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、1-ピリジン-3-イル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-ピリジン-3-イル-3-キノリン-4-イル-プロペノン、1-ピリジン-3-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、1-ナフタレン-2-イル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-ナフタレン-2-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、1-ピリジン-4-イル-3-キノリン-3-イル-プロペノン、3-(4-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(8-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-3-イル-プロペノン、3-キノリン-2-イル-1-p-トリル-プロペノン、3-(8-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(8-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-p-トリル-プロペノン、3-(4-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-p-トリル-プロペノン、1-フェニル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-ピリジン-2-イル-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(2-ヒドロキシ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(4-ヒドロキシ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(2-アミノ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、1-(4-アミノ-フェニル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、またはそれらの塩のうちの少なくとも1つである。
【0062】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、4-(3-キノリン-2-イル-アクリロイル)-ベンズアミド、4-(3-キノリン-2-イル-アクリロイル)-安息香酸、3-(8-メチル-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、1-(2-フルオロ-ピリジン-4-イル)-3-キノリン-2-イル-プロペノン、3-(8-フルオロ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(6-ヒドロキシ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(8-メチルアミノ-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、3-(7-メチル-キノリン-2-イル)-1-ピリジン-4-イル-プロペノン、及び1-メチル-4-[3-(8-メチル-キノリン-2-イル)-アクリロイル]-ピリジニウム、またはそれらの塩のうちの少なくとも1つである。
【0063】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、(2S)-N-[4-[[3-シアノ-1-(2-メチル-プロピル)-1H-インドール-5-イル]オキシ]フェニル]-2-ピロリジン-カルボキサミド3PO(3-(3-ピリジニル)-1-(4-ピリジニル)-2-プロペン-1-オン)、(2S)-N-[4-[[3-シアノ-1-[(3,5-ジメチル-4-イソオキサゾリル)メチル]-1H-インドール-5-イル]オキシ]フェニル]-2-ピロリジン-カルボキサミド、及びエチル7-ヒドロキシ-2-オキソ-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボキシレート、またはそれらの塩のうちの少なくとも1つである。
【0064】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、PFK15またはその塩である。
【0065】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、PFK158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはその塩である。
【0066】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、またはその塩である。
【0067】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、AZ67またはその塩である。
【0068】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、図1A図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067もしくはBrAcNHErOP、またはそれらの塩の構造を有する、少なくとも1つのPFKFB3阻害剤である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、図1Eに示す、式AZ44~AZ70もしくはAZ71、またはそれらの塩の構造を有するPFKFB3阻害剤である。
【0069】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、KAN0436151またはその塩である。
【0070】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、KAN0436067またはその塩である。
【0071】
HIF1-α経路阻害剤
低酸素誘導因子1-α(HIF-1-α)は、低酸素に対する細胞及び発生応答のマスター転写制御因子であると考えられている、ヘテロ二量体転写因子低酸素誘導因子1(HIF-1)のサブユニットである。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵疾患及び/または肝疾患を治療することを必要とする対象における膵疾患または肝疾患を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤もしくはHIF1-α阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法を提供する。
【0073】
本明細書で使用される場合、「HIF1-α経路-α阻害剤」という用語は、HIF1-αを直接的に、もしくはHIF1-α経路の上流にあるPI3K/AKT/mTOR経路の1つ以上の活性を阻害することを介して間接的に、阻害または低減する組成物を指す。「HIF1-α阻害剤」という用語は、本明細書では、HIF1-αを直接阻害または低減する組成物を指すために使用される。したがって、例えば、テムシロリムス、エベロリムス及びシロリムスなどのmTOR経路阻害剤は、本明細書では「HIF1-α経路-α阻害剤」とみなされ、「HIF1-α阻害剤」とはみなされない。
【0074】
提供される方法に従って投与することができる「HIF1-α経路-α阻害剤」は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくはHIF1-α結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、ENMD-1198、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である。
【0075】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与される、投与されたHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α活性について、HIF1-α活性/機能のIC50が100μM以下の濃度である。いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤は、少なくとももしくは最大もしくは約200、100、80、50、40、20、10、5もしくは1μM、または少なくとももしくは最大もしくは約100、10もしくは1nM以下(または、そこから導出される任意の範囲もしくは値)のIC50を有する。いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤は、HIF1-αの発現を阻害する。HIF1-α活性を阻害する化合物の能力を決定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、HIF1-α活性または発現の阻害は、対照レベルまたは試料と比較した場合の減少である。いくつかの実施形態では、MTTアッセイ、細胞増殖アッセイ、BRDUもしくはKi67免疫蛍光アッセイ、アポトーシスアッセイまたは解糖アッセイなどの機能アッセイを使用し、HIF1-α活性を阻害する組成物の能力をアッセイする。
【0076】
提供される方法に従って投与することができるHIF1-α阻害剤は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、HIF-1α mRNA発現、HIF-1αタンパク質の翻訳または分解、HIF-1α/HIF-1β二量体化、HIF-1α-DNA結合(例えば、HIF-1α/HRE)、及び/またはHIF-1α転写活性(例えば、p300のCH-1/HIF-1αのC-TAD)のうちの1つ以上を調節する。
【0077】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、小分子である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、タンパク質またはポリペプチド(例えば、HIF1に結合する抗HIF1抗体または抗体断片)である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、治療用核酸(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、siRNA、miRNA、dsRNA、ssRNA、またはshRNA)である。
【0078】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α経路阻害剤(例えば、PI3K経路阻害剤、MAPK経路阻害剤、Akt経路阻害剤、及び/またはmTOR阻害剤);HIF翻訳阻害剤(例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管標的薬、強心配糖体、またはアンチセンスHIF-1a mRNA);HIFの安定性、核局在化または二量体化の阻害剤(例えば、アクリフラビンまたはHDAC阻害剤);HIFトランス活性化の阻害剤(例えば、HIF1コアクチベーター動員阻害剤またはHIF1 DNA結合阻害剤)である。
【0079】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIF1-α経路阻害剤(例えば、PI3K経路阻害剤、MAPK経路阻害剤、Akt経路阻害剤、及び/またはmTOR阻害剤)である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、PI3K経路阻害剤である。一実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、P3155、LY29、LY294002、ワートマニン、またはGDC-0941である。一実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、レスベラトロールである。別の実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、グリセオリンである。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、mTOR阻害剤である。一実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ラパマイシン、テムシロリムス(CC1-779)、エベロリムス、シロリムス、またはPP242である。
【0080】
特定の実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、シリビニンである。
【0081】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIF翻訳阻害剤である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、PX-478(S-2-アミノ-3-[4’-N,N-ビス(クロロエチル)[アミノ]フェニルプロピオン酸N-オキシド二塩酸塩)、NSC-64421、カンプトテシン(CPT)、SN38、イリノテカン、トポテカン、NSC-644221、シクロヘキシミド、もしくはアピゲニン、またはそれらの塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、アミノフラボン、KC7F2(N,N’-(ジスルファンジイルビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(2,5-ジクロロベンゼンスルホンアミド)、2-メトキシエストラ-ジオール(2ME2)、またはそれらの類似体もしくは塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、ENMD-1198、ENMD-1200、もしくはENMD-1237、またはそれらの塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、EZN-2208またはその塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、EZN-2968またはその塩である。
【0082】
特定の実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、PX-478またはその塩である。
【0083】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、強心配糖体である。一実施形態では、投与される強心配糖体は、ジゴキシンまたはその塩である。別の実施形態では、投与される強心配糖体は、ウアバインもしくはプロスシラリジンA、またはそれらの塩である。
【0084】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である。一実施形態では、投与されるトポイソメラーゼ阻害剤は、カンプトテシン(CPT)、SN38、イリノテカン、もしくはトポテカン(例えば、PEG-SN38)、またはそれらの塩である。
【0085】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、微小管標的薬である。一実施形態では、投与される微小管標的薬は、2メトキシエストラジオール(2ME2)、ENMD-1198、ENMD-1200、ENMD-1237、もしくはタキソテール、またはそれらの塩である。
【0086】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、治療用核酸である。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、siRNA、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNAである。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0087】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害剤は、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、EZN-2968である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、RX-0047である。
【0088】
ヒトHIF1-Αコード配列の代表的な例は、GenBank受入番号NM_004566.3、NM_001145443.2、NP_001138915.1、NM_001282630.2、NM_001314063.1、NM_001323016.1、NM_001323017.1及びNM_001363545.2で提供される。これらのGenbank受入番号のそれぞれに関連する配列は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。HIF1-Α活性を阻害する治療用核酸は、当技術分野で公知の方法を使用して、上記のヒトHIF1-Α転写配列のそれぞれに基づいて日常的に設計及び調製することができる。
【0089】
提供される方法の特定の実施形態では、HIF1-Α阻害性核酸の投与、または当技術分野で公知のHIF1-Αの遺伝子発現を阻害する任意の方法が企図される。阻害性(治療用)核酸の例には、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、二本鎖RNA、及び任意の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンス核酸が含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書に記載の阻害剤のいずれかをコードするリボザイムまたは核酸も含まれる。阻害性核酸は、細胞におけるHIF1-Αの転写を阻害するか、またはHIF1-Α遺伝子転写物の翻訳を妨げ得る。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、長さが16~1000ヌクレオチドである。特定の実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、18~100ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、少なくとももしくは最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、90ヌクレオチド、またはそこから導出される任意の範囲である。
【0090】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、HIF1-Αの発現を少なくとも10%、20%、30%もしくは40%、より具体的には少なくとも50%、60%、もしくは70%、最も具体的には少なくとも75%、80%、90%、95%以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値で減少させることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、長さが17~25ヌクレオチドであり、成熟HIF1-Α mRNA(例えば、GenBank受入番号NM_001530.4、NM_181054.3及びNM_001243084.2のいずれか1つ以上に開示される)の5’~3’配列に対して少なくとも90%相補的な5’~3’配列を含む。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、長さが17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25ヌクレオチド、またはそこから導出される任意の範囲である。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、成熟HIF1-Α mRNA(例えば、GenBank受入番号NM_001530.4、NM_181054.3及びNM_001243084.2のいずれか1つ以上に開示される)の対応する5’~3’配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的であるか、またはそこから導出される任意の範囲である配列(5’~3’)を有する。当業者であれば、成熟mRNAの配列に相補的なプローブ配列の一部を、mRNA阻害剤の配列として使用することができるであろう。更に、プローブ配列のその部分は、成熟mRNAの配列に対して依然として90%相補的であるように変更することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、miRNA模倣物である。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、miR-483模倣物である。
【0093】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIFの安定性、核局在化または二量体化の阻害剤である。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、HIFを不安定化する。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACI)である。更なる実施形態では、投与されるHDACIは、LW6/CAY10585、ボリノスタット、ロミデプシン(FK228)、パノビノスタット、ベリノスタット、トリコスタチンA(TSA)、LAQ824、もしくはフェネチルイソチオシアネート、またはそれらの塩である。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、PX-12/プレウロチン、HIF-1α阻害剤(CAS番号934593-90-5)、クリプトタンシノン、もしくはBAY87-2243(1-シクロプロピル-4-[4-[[5-メチル-3-[3-[4-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル]-1H-ピラゾール-1-イル]メチル]-2-ピリジニル]-ピペラジン)、またはそれらの塩である。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、IDF-11774、ビスフェノールA/ジメチルビスフェノールA、またはそれらの塩である。クリシン(5,7-ジヒドロキシ-フラボン)、もしくはSCH66336、またはそれらの塩。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、ゲルダナマイシンまたはその類似体、17-AAG(タネスピマイシン:アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)、17-DMAG(アルベスピマイシン)、17AG、ラジシコール、KF58333、ENMD-1198、ENMD-1237、もしくはガネテスピブ、またはそれらの塩である。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、HIF二量体化を妨げる。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、アクリフラビンまたはその塩である。一実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、TC-S7009、PT2385、もしくはTAT-シクロ-CLLFVY、またはそれらの塩である。
【0094】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、ガネテスピブまたはその塩である。
【0095】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与される阻害剤は、BAY87-2243である。
【0096】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDACI)である。一実施形態では、投与されるHDACIは、LW6/CAY10585(メチル3-(2-(4-(アダマンタン-1-イル)フェノキシ)アセトアミド)-4-ヒドロキシ-ベンゾエート)、ボリノスタット、ロミデプシン(FK228)、パノビノスタット、ベリノスタット、トリコスタチンA(TSA)、LAQ824、もしくはフェネチルイソチオシアネート、またはそれらの塩である。
【0097】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、熱ショックタンパク質阻害剤である。一実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HSP90阻害剤である。一実施形態では、投与されるHSP90阻害剤は、ゲルダナマイシンまたはその類似体、17-AAG(タネスピマイシン:アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン)、17-DMAG(アルベスピマイシン)、17AG、ラジシコール、KF58333、ENMD-1198、ENMD-1237、もしくはガネテスピブ、またはそれらの塩である。特定の実施形態では、投与される熱ショックタンパク質阻害剤は、ガネテスピブまたはその塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HSP70阻害剤である。一実施形態では、投与されるHSP70阻害剤は、トリプトライドまたはその塩である。
【0098】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIFトランス活性化阻害剤である。一実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIFコアクチベーターの動員を阻害する。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、ケトミン、YC-1もしくはKCN-1(3,4-ジメトキシ-N-[(2,2-ジメチル-2H-クロメン-6-イル)メチル]-N-フェニルベンゼンスルホンアミド)、またはその塩である。別の特定の実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、NSC607097またはその塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、プロテアソーム阻害剤である。更なる実施形態では、投与される阻害剤は、ボルテゾミブもしくはカルフィルゾミブ、またはそれらの塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、インデノピラゾール21、FM19G11、フラボピリドール、アンホテリシンB、アクチノマイシン、AJM290、もしくはAW464、またはそれらの塩である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、トリプトライドまたはその塩である。
【0099】
特定の実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、YC-1またはその塩である。
【0100】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIF1-αに結合する抗体またはHIF1-α結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、AG1-5 VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)である。特定の実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、VHHまたはナノボディである。一実施形態では、投与される抗体は、AGI-5である。一実施形態では、投与される抗体は、AHPCである。
【0101】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、HIF1 DNA結合阻害剤である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、エキノマイシン(NSC-13502)または化合物DJ12.162である。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、アントラサイクリンである。更なる実施形態では、投与される阻害剤は、ドキソルビシンまたはダウノルビシンである。一実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、ポリアミドである。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、HIF1-αに結合する抗体であるか、またはVHHもしくはナノボディなどのHIF1-α結合抗体断片である。
【0102】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害剤は、治療用核酸である。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、ENMD-1198、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNAである。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、ENMD-1198またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0103】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害剤は、siRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害剤は、RX-0047である。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害剤は、EZN-2968である。
【0104】
ヒトHIF1-Αコード配列の代表的な例は、GenBank受入番号NM_004566.3、NM_001145443.2、NP_001138915.1、NM_001282630.2、NM_001314063.1、NM_001323016.1、NM_001323017.1及びNM_001363545.2で提供される。これらのGenbank受入番号のそれぞれに関連する配列は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。HIF1-Α活性を阻害する治療用核酸は、当技術分野で公知の方法を使用して、上記のヒトHIF1-Α転写配列のそれぞれに基づいて日常的に設計及び調製することができる。
【0105】
提供される方法の特定の実施形態では、HIF1-Α阻害性核酸の投与、または当技術分野で公知のHIF1-Αの遺伝子発現を阻害する任意の方法が企図される。阻害性核酸の例には、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、二本鎖RNA、及び任意の他のアンチセンスオリゴヌクレオチドなどのアンチセンス核酸が含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書に記載の阻害剤のいずれかをコードするリボザイムまたは核酸も含まれる。阻害性核酸は、細胞におけるHIF1-Αの転写を阻害するか、またはHIF1-Α遺伝子転写物の翻訳を妨げ得る。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、長さが16~1000ヌクレオチドである。特定の実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、18~100ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、少なくとももしくは最大2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、40、50、60、70、80、90ヌクレオチド、またはそこから導出される任意の範囲である。
【0106】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、HIF1-Αの発現を少なくとも10%、20%、30%もしくは40%、より具体的には少なくとも50%、60%、もしくは70%、最も具体的には少なくとも75%、80%、90%、95%以上、またはそれらの間の任意の範囲もしくは値で減少させることができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、長さが17~25ヌクレオチドであり、成熟HIF1-Α mRNA(例えば、GenBank受入番号NM_001530.4、NM_181054.3及びNM_001243084.2のいずれか1つ以上に開示される)の5’~3’配列に対して少なくとも90%相補的な5’~3’配列を含む。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、長さが17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25ヌクレオチド、またはそこから導出される任意の範囲である。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、成熟HIF1-Α mRNA(例えば、GenBank受入番号NM_001530.4、NM_181054.3及びNM_001243084.2のいずれか1つ以上に開示される)の対応する5’~3’配列に対して、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9もしくは100%相補的であるか、またはそこから導出される任意の範囲である配列(5’~3’)を有する。当業者であれば、成熟mRNAの配列に相補的なプローブ配列の一部を、mRNA阻害剤の配列として使用することができるであろう。更に、プローブ配列のその部分は、成熟mRNAの配列に対して依然として90%相補的であるように変更することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-Α阻害性核酸は、miRNA模倣物である。いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、miR-483模倣物である。
【0109】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるHIF1-α阻害剤は、治療用核酸である。いくつかの実施形態では、治療用核酸は、ENMD-1198分子、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0110】
GPR81阻害剤
乳酸受容体(Gタンパク質共役受容体81、GPR81、ヒドロキシ-カルボン酸受容体1及びHCA1としても知られている)は、Gタンパク質共役受容体であり、異常な組織リモデリング、ならびに癌誘発血管新生、免疫回避及び化学療法抵抗性の促進において中心的役割を果たすことが報告されている。本開示の文脈では、膵臓内の異常細胞からの乳酸の慢性的なHIF1α-PFKFB3依存性放出は、膵臓内の細胞の異常機能を促進し、膵臓癌の成長及び増殖を広める上で自己分泌の役割を果たす。
【0111】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵疾患及び/または肝疾患を治療することを必要とする対象における膵疾患及び/または肝疾患を治療する方法であって、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及び有効量のGPR81阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のPFKFB3経路阻害剤、及び有効量のGPR81阻害剤を対象に投与すること、
(c)有効量のHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、有効量のPFKFB3阻害剤、及び有効量のGPR81阻害剤を対象に投与すること、
(d)有効量のGPR81阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、
(e)有効量のGPR81阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(f)有効量のGPR81阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤またはHIF1-α阻害剤、及びPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法を提供する。
【0112】
本明細書で使用される場合、「GPR81阻害剤」という用語は、GPR81を、直接的に、またはGPR81シグナル伝達カスケードの1つ以上の活性を阻害することによって間接的に、阻害または低減する組成物を指す。
【0113】
提供される方法に従って投与することができる「GPR81阻害剤」は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、投与されるGPR81阻害剤は、抗体もしくはGPR81結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、ENMD-1198、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、または低分子である。
【0114】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるGPR81阻害剤は、GPR81活性について、GPR81活性/機能のIC50が100μM以下の濃度である。いくつかの実施形態では、GPR81阻害剤は、少なくとももしくは最大もしくは約200、100、80、50、40、20、10、5もしくは1μM、または少なくとももしくは最大もしくは約100、10もしくは1nM以下(または、そこから導出される任意の範囲もしくは値)のIC50を有する。いくつかの実施形態では、GPR81阻害剤は、GPR81の発現を阻害する。GPR81活性を阻害する化合物の能力を決定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、GPR81活性または発現の阻害は、対照レベルまたは試料と比較した場合の減少である。提供される方法に従って投与することができるGPR81阻害剤は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、GPR81阻害剤は、乳酸と結合するGPR81、GPR81シグナル伝達、GPR81 mRNA発現、GPR81タンパク質の翻訳または分解のうちの1つ以上を調節する。
【0115】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるGPR81阻害剤は、小分子である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるGPR81阻害剤は、タンパク質またはポリペプチド(例えば、GPR81に結合する抗GPR81抗体または抗体断片)である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って投与されるGPR81阻害剤は、治療用核酸(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、ダイサー基質、siRNA、miRNA、dsRNA、ssRNA、またはshRNA)である。
【0116】
ヒトGPR81コード配列の代表的な例は、GenBank受入番号NM_032554で提供される。これらのGenbank受入番号のそれぞれに関連する配列は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。GPR81活性を阻害する治療用核酸は、当技術分野で公知の方法を使用して、上述のヒトGPR81転写配列のそれぞれに基づいて日常的に設計及び調製することができる。
【0117】
活性剤の投与用キット
別の実施形態では、本開示は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤、及び/または他の治療剤及び送達剤を含む、キットを提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療法を調製及び/または投与するためのキットが提供され得る。キットは、医薬組成物、治療薬、及び/または他の治療薬及び送達剤のいずれかを含む1つ以上の密封バイアルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、キットは、脂質送達系を含む。いくつかの実施形態では、脂質は1つのバイアル内にあり、治療薬は別のバイアル内にある。キットには、例えば、少なくとも1つのPFKFB3発現/活性の阻害剤、少なくとも1つのHIF1-α発現/活性の阻害剤、及び、本明細書に記載の成分を調製、製剤化及び/または投与するための、または本方法の1つ以上の工程を実施するための、1つ以上の試薬が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、キットには、少なくとも1つのPFKFB3発現/活性の阻害剤、少なくとも1つのHIF1-α発現/活性の阻害剤、少なくとも1つのGPR81発現/活性の阻害剤が含まれる。いくつかの実施形態では、キットはまた、エッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、または管などのキットの構成要素と反応しない容器である、適切な容器手段を含んでもよい。容器は、プラスチックまたはガラスなどの滅菌可能な材料から作製され得る。
【0118】
キットは、本明細書に記載の方法の手順工程を概説する説明書を更に含んでもよく、本明細書に記載の手順または当業者に公知の手順と実質的に同じ手順に従う。指示情報は、コンピュータを使用して実行される場合に、薬学的に有効な量の治療薬を送達する実際の手順または仮想の手順を表示させる、機械可読指示を含むコンピュータ可読媒体中にあってもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、キットは、PFKFB3及び/またはHIF-α、または関連分子の発現を評価するために提供され得る。このようなキットは、容易に入手可能な材料及び試薬から調製することができる。例えば、そのようなキットは、以下の物質:酵素、反応管、緩衝液、界面活性剤、プライマー及びプローブ、核酸増幅、及び/またはハイブリダイゼーション剤のいずれか1つ以上を含むことができる。特定の実施形態では、これらのキットにより、医師は、血液、涙、精液、唾液、尿、組織、血清、便、結腸、直腸、痰、脳脊髄液、及び細胞溶解物からの上清の試料を取得することができる。別の実施形態では、これらのキットには、RNA抽出、RT-PCR、及びゲル電気泳動を実行するために必要な装置が含まれる。アッセイを実施するための説明書も、キットに含めることができる。
【0120】
キットは、管、ボトル、バイアル、シリンジ、もしくは他の適切な容器手段などの容器に個別に包装、または配置され得る、成分を含み得る。成分には、プローブ、プライマー、抗体、アレイ、陰性及び/または陽性対照が含まれ得る。個々の成分を、濃縮した量でキットに提供することもできる。いくつかの実施形態では、成分は、他の成分と共に溶液中に含まれるのと同じ濃度で個別に提供される。成分の濃度は、1×、2×、5×、10×、または20×以上として提供され得る。
【0121】
キットは、試料中のPFKFB3及び/またはHIF-1αを標識するための試薬を更に含むことができる。キットはまた、アミン修飾ヌクレオチド、ポリ(A)ポリメラーゼ、及びポリ(A)ポリメラーゼ緩衝液のうちの少なくとも1つを含む、標識試薬を含んでもよい。標識試薬には、アミン反応性色素または当技術分野で公知の任意の色素が含まれ得る。
【0122】
キットの成分は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかで包装され得る。キットの容器手段は一般に、成分を配置し、好ましくは適切に等量分割することができる少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含む。キット内に複数の成分がある場合(標識試薬及びラベルは、一緒に包装されていてもよい)、キットは一般に、追加の成分を別々に配置できる第2、第3、または他の追加の容器も含む。しかしながら、成分の様々な組み合わせがバイアル内に含まれてもよい。キットには、核酸、抗体、または他の試薬容器を商業販売用に密封して収容する手段も含まれ得る。このような容器には、所望のバイアルが保持される射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器が含まれ得る。
【0123】
キットの成分が1つ及び/または複数の溶液中に提供される場合、溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。あるいは、キットの成分は、乾燥粉末(複数可)として提供されてもよい。試薬及び/または成分が乾燥粉末として提供される場合、粉末は、適切な溶媒を添加することによって再構成され得る。溶媒は別の容器手段に提供されてもよいことが想定される。容器手段は一般に、核酸配合物を配置し、好ましくは適切に等量分割することができる少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ及び/または他の容器手段を含む。キットはまた、滅菌した薬学的に許容される緩衝液及び/または他の希釈剤を収容するための第2の容器手段を含んでもよい。
【0124】
キットは、例えば、所望のバイアルが保持される射出及び/またはブロー成形プラスチック容器などの商業販売用にバイアルを密封して収容する手段を含んでもよい。キットには、キットの成分を使用するための説明書、及びキットに含まれていない他の試薬の使用に関する説明書も含まれ得る。説明書には、実施可能なバリエーションが含まれ得る。
【0125】
投与方法
本明細書で提供される方法による投与レジメン(例えば、投与頻度と組み合わせた用量)は、一般に、所望の効果を提供する量及び頻度での投与、例えば、膵疾患及び/または肝疾患に関連する1つ以上の症状など対象における膵疾患及び/または肝疾患の1つ以上の症状の改善を提供するのに有効な量の投与を含む。各薬物の組み合わせ投与は、他の成分と組み合わせて患者の状態を緩和するか、または疾患または障害を効果的に治療するための薬物の濃度を高めることができる、任意の適切な手段によるものであり得る。可能な組成物には、経口、直腸、局所(経皮、経口及び舌下を含む)、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適したものが含まれる。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物は、単独で、または他の療法、医薬品、サプリメント及び/または特定の食事と組み合わせて、または賦形剤(複数可)もしくは他の薬学的に許容される担体と混合された医薬組成物として、患者に投与される。投与の目標(例えば、状態の重症度、治療期間など)に応じて、組成物(例えば、DMBなどの式Iの化合物を含む)を製剤化し、全身または局所に投与することができる。製剤化及び投与の技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版で見出せ得る。適切な経路には、例えば、経口または経粘膜投与、及び筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または鼻腔内投与を含む、非経口送達が含まれ得る。いくつかの実施形態では、式Iの化合物(例えば、DMB)は、錠剤、カプセル剤、錠剤、散剤、坐剤、溶液、エリキシル剤、シロップ剤、懸濁剤、クリーム剤、ロゼンジ剤、ペースト剤及びスプレー剤など、所望の治療プロファイルを提供するように適切に製剤化された固形剤、半固形剤または液剤の形態で投与することができる。当業者であれば認識するように、選択された投与経路に応じて、組成物の形態が選択される。
【0127】
本明細書で使用される場合、「非経口投与」及び「非経口的に投与された」という語句は、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、例えば、注射によるものであり、静脈内、筋肉内、胸膜内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、及び胸骨内の注射ならびに注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0128】
医薬組成物は、従来の製薬慣行に従って製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),Ed.AR Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds J.Swarbrick and JC Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照のこと)。
【0129】
経口投与に適した製剤は、それぞれが所定の量の活性成分を含むカプセル剤、カシェ剤、ロゼンジ剤もしくは錠剤などの分離した単位として;粉末もしくは顆粒として;水性液体もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として;または水中油型乳剤もしくは油中水型乳剤として提示されてもよい。このような製剤は、活性化合物と適切な担体(上記のような1つ以上の副成分を含み得る)を組み合わせる工程を含む、任意の適切な調剤方法によって調製することができる。一般に、本発明の製剤は、活性化合物を液体担体または微粉化固体担体またはその両方と均一かつ完全に混合し、次いで、必要に応じて、得られた混合物を成形することによって調製される。例えば、錠剤は、活性剤を含有する粉末もしくは顆粒を、任意選択で1つ以上の副成分と共に、圧縮または成形することにより調製することができる。圧縮された錠剤は、好適な機械内で、任意選択で結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤及び/または表面活性剤/分散剤(複数可)と混合された、粉末または顆粒としての自由流動形態の化合物を圧縮することより調製され得る。成形された錠剤は、好適な機械において、不活性液結合剤で加湿された粉末化化合物を成形することによって作成され得る。
【0130】
頬側(舌下)投与に適した製剤には、通常スクロース及びアカシアまたはトラガカントなどの風味付けされた基剤中に活性剤を含むロゼンジ剤;ならびにゼラチン及びグリセリン、またはスクロース及びアカシアなどの不活性基剤中に活性剤を含むトローチ剤が含まれる。
【0131】
非経口投与用の製剤は、活性剤の滅菌水性製剤が好都合であり、この製剤は、好ましくは、対象となるレシピエントの血液と等張である。これらの製剤は、皮下、静脈内、筋肉内、または皮内注射によって投与することができる。このような製剤は、化合物を水またはグリシン緩衝液と混合し、得られた溶液を滅菌かつ血液と等張にすることによって都合よく調製することができる。
【0132】
局所適用(例えば、口腔、鼻咽頭、または中咽頭中の)に適した製剤は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾール、またはオイルの形態をとる。使用できる担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮促進剤、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書で提供される組成物が1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与される治療方法を提供する。提供される組成物と治療薬(複数可)との組み合わせは、任意の従来の剤形で投与または共投与(例えば、連続的に、同時に、異なる時点で)することができる。本明細書における共投与とは、改善された臨床転帰を達成するための調整された治療の過程で、対象に複数の治療薬を投与することを指す。このような共投与は、同じ範囲に及ぶこともあり得、つまり、重複する期間中に行われることもあり得る。例えば、第1の治療薬は、第2の活性薬剤の投与前、投与と同時に、投与の前後に、または投与後に患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、治療薬は単一の組成物中に組み合わされ/製剤化され、したがって同時に対象に投与される。
【0134】
治療及び使用方法
膵脂肪症
肥満及びメタボリックシンドローム(肥満、高血糖、脂質異常症、高血圧及びインスリン抵抗性を含む)は、脂肪細胞による脂質の誤った取り扱い、ならびに膵臓の脂肪浸潤につながる代謝異常をもたらす。血行中、ならびに膵臓の微小環境におけるアディポサイトカインの不均衡により、慢性的な低度の炎症が引き起こされ、その結果、β細胞及び腺房細胞のアポトーシスが起こり、膵内分泌及び膵外分泌の機能不全がもたらされる。更に、これらのアディポサイトカインは、細胞増殖、分化、ならびに血管新生及びリンパ管の拡張を調節する。
【0135】
膵脂肪症は、膵臓の脂肪浸潤から膵臓の炎症、及び膵線維症の発生に至るまでの疾患を指す。膵臓の脂肪細胞浸潤の結果は、発がんを引き起こすと考えられており、膵臓上皮内腫瘍及び膵管腺癌を引き起こす。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵脂肪症(PS)を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵脂肪症を治療することを必要とする対象において膵脂肪症を治療するための方法及び組成物を提供し、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法及び組成物を提供する。
【0138】
一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される。一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている。一実施形態では、対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている。
【0139】
「膵脂肪症」及び脂肪膵という用語は、膵臓への脂肪の蓄積を指すために互換的に使用される。
【0140】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って治療されるPSは、非アルコール性脂肪膵疾患である。治療される非アルコール性脂肪膵疾患としては、非アルコール性脂肪膵炎、膵臓脂肪腫症、膵肪脂症、膵脂肪腫性仮性肥大、膵脂肪置換、及び膵脂肪浸潤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
特定の実施形態では、提供される方法に従って治療されるPSは、非アルコール性脂肪膵疾患(NASP)である。更なる実施形態では、治療されるPSは、肥満及びメタボリックシンドロームを含む、NAFPD非アルコール性脂肪膵疾患である。メタボリックシンドロームは、心疾患、糖尿病、脳卒中、及び他の健康問題を引き起こす可能性のある5つの症候群である。メタボリックシンドロームの病態としては、インスリン抵抗性を伴う糖尿病、動脈性高血圧、肥満、及び脂質異常症(高トリグリセリド血症、HDLコレステロールの低下)が挙げられる。
【0142】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って治療されるPSは、アルコール性脂肪膵疾患である。治療されるアルコール性脂肪膵疾患としては、アルコール性脂肪膵炎及びアルコール性膵炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
いくつかの実施形態では、対象は、PSを患うリスクがある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、上記(a)~(c)のいずれか)は、PSの予防的治療として行われる。
【0144】
いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、PSを発症するリスクがある対象、例えば、PSの発症に関連する1つ以上の危険因子を有する対象において、PSを予防する。いくつかの実施形態では、対象は、以下から選択される1つ以上の危険因子を有する:肥満、メタボリックシンドローム、動脈性高血圧、高トリグリセリド血症、HDLコレステロールの変化、糖尿病(例えば、MD-T2)、肝脂肪症、NAFLD、栄養障害;特定の薬剤、例えば、ロシグリタゾン、副腎皮質ステロイド、オクトレオチド及びゲムシタビンの服用;ヘモクロマトーシス、感染症(レオウイルスによるウイルス感染)、慢性B型肝炎感染;先天性疾患(シュワックマン-ダイアモンド症候群症候群、ヨハンソン-ブリザード症候群、嚢胞性線維症、ヘテロ接合性カルボキシルエステルリパーゼ変異症)の既往または家族歴;アルコール乱用(過度のアルコール消費量)、壊死性膵炎の既往、再発性急性膵炎の既往、慢性膵炎の家族歴。特定の実施形態では、危険因子は、肥満、またはメタボリックシンドロームの一部としての肥満である。
【0145】
いくつかの実施形態では、本開示は、PSの発症前、例えば、PSの1つ以上の症状の発症前に、提供される組成物を対象に投与することによって、PSの発症を予防、阻害、または遅延させる方法及び組成物を提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、PSの1つ以上の症状の発症前に投与される。いくつかの実施形態では、提供される方法は、PSを予防する。いくつかの実施形態では、提供される方法は、PSの発症を遅延させる。いくつかの実施形態では、提供される方法は、PSを発症するリスクがある対象に投与される。このような対象では、PSの予防は、PSの典型的な特徴の欠如によって監視され得る。例えば、有効量のHIF1-α阻害剤及びPFKFB3阻害剤が予防的に投与された対象は、以下の症状:25%を超える膵臓の脂肪含有量、腹痛(または、右上腹部の膨満感)、悪心、食欲不振または体重減少、黄疸(黄色がかった皮膚及び/または白眼)、浮腫(腹部及び/または下肢の膨張)、極度の疲労感または精神錯乱、ならびに脱力感のうちの1つ以上を経験しない可能性があるか、またはその発生率の低下を経験する可能性がある。
【0147】
いくつかの実施形態では、対象は、PSを患っていると診断されている。PSを日常的に診断及び監視するのに適した様々な方法は当技術分野で一般的に知られており、MRIプロトン密度脂肪分画、コンピュータ断層撮影、超音波内視鏡検査、超音波エラストグラフィー、及び膵柔組織エコー輝度と腎または肝エコー輝度とを比較する経腹腔超音波検査が含まれる。
【0148】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、PSの1つ以上の症状の発症後に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、以下:25%以上の膵臓の脂肪含有量、腹痛(または、右上腹部の膨満感)、悪心、食欲不振または体重減少、黄疸(黄色がかった皮膚及び/または白眼)、浮腫(腹部及び/または下肢の膨張)、極度の疲労感または精神錯乱、ならびに脱力感のうちの1つ以上を示す。いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、上記の症状の1つ以上の発生率、重症度、またはレベルを低下させることができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である。
【0150】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である。
【0151】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路を阻害しない。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である。
【0153】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である。
【0155】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である。
【0156】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、KAN0436151もしくはKAN0436067、またはそれらの塩である。
【0157】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、AZ67、またはその塩である。
【0158】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067もしくはBrAcNHErOP、またはそれらの塩の構造を有する。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1Eに示す、式AZ44~AZ70もしくはAZ71、またはそれらの塩の構造を有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、PSを治療するために本明細書に提供される方法は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を対象に共投与することによって行われる。
【0160】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口投与される。いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経粘膜投与、シロップ剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、直腸投与、頬側投与または経皮投与によって投与される。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従ってPSを治療することは、対照の対象またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤で治療する前の対象と比較して、対象におけるPSの1つ以上の症状を軽減することを含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、膵脂肪(例えば、脂肪症)の減少、例えば脂肪組織及び/または膵臓における線維増生の減少、脂肪細胞及び/または膵臓の機能の改善、脂肪組織及び/または膵臓における低酸素の減少、脂肪組織及び/または膵臓の炎症の減少、膵炎の減少、及び/または脂肪膵によって引き起こされる膵臓病変の減少がもたらされる。いくつかの実施形態では、提供される方法より、結果として、PSバイオマーカー(例えば、アンジオテンシンII(AngII)1型受容体(AT1)シグナル伝達及び/または炎症促進性サイトカイン、例えば、IL-1βに関連する)の低下がもたらされる。いくつかの実施形態では、PSの1つ以上の症状は、対照対象と比較して、またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0163】
いくつかの実施形態では、対象の膵脂肪は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0164】
いくつかの実施形態では、脂肪組織の炎症及び/または膵臓の炎症は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0165】
いくつかの実施形態では、膵炎は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0166】
追加の実施形態では、提供される方法は、追加の治療薬を対象に更に投与することを含む。
【0167】
膵癌
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における膵癌を治療するための方法及び組成物を提供する。膵癌は、主に膵管の細胞に発生する膵臓の悪性増殖である。この疾患は、がんの中で9番目に多い形態であるが、男性と女性のがんの死亡原因のそれぞれ4位と5位になっている。膵臓の癌はほとんど常に致命的であり、5年生存率は3%未満である。
【0168】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵癌を治療することを必要とする対象において膵癌を治療するための方法及び組成物を提供し、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法及び組成物を提供する。
【0169】
一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される。一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている。一実施形態では、対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている。
【0170】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って治療される膵癌は、外分泌膵癌または神経内分泌膵癌である。
【0171】
いくつかの実施形態では、膵癌は、外分泌膵癌である。いくつかの実施形態では、膵癌は、腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、及び膠様癌から選択される外分泌膵癌である。いくつかの実施形態では、膵癌は、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、または膠様癌である。特定の実施形態では、膵癌は、膵管腺癌(PDAC)である。
【0172】
いくつかの実施形態では、膵癌は、神経内分泌膵癌である。
【0173】
いくつかの実施形態では、対象は、膵癌(例えば、PDAC)を患うリスクがある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、上記(a)~(c)のいずれか)は、膵癌の予防的治療として行われる。
【0174】
いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、膵癌を発症するリスクがある対象、例えば、膵癌の発症に関連する1つ以上の危険因子を有する対象において、膵癌(例えば、PDAC)を予防する。いくつかの実施形態では、対象は、40歳を超えている、喫煙、過度のアルコール消費量、糖尿病(例えば、2型糖尿病)の既往、高齢での糖尿病の発症、肥満、慢性膵炎の既往、脂肪膵の既往、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、男性;慢性膵炎、膵癌、またはBRCA関連癌(例えば、乳癌)の家族歴;アフリカ系アメリカ人またはアシュケナジヤ系ユダヤ人、及びドライクリーニング業者及び金属加工業者が使用する化学物質に曝露されている;から選択される1つ以上の危険因子を有する。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示は、膵癌の発症前、例えば、膵癌の1つ以上の症状の発症前に、提供される組成物を対象に投与することによって、膵癌(例えば、PDAC)の発症を予防、阻害、または遅延させる方法及び組成物を提供する。
【0176】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、膵癌(例えば、PDAC)の1つ以上の症状の発症前に投与される。いくつかの実施形態では、提供される方法は、膵癌を予防する。いくつかの実施形態では、提供される方法は、膵癌(例えば、PDAC)の発症を遅延させる。
【0177】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、膵癌を発症するリスクがある対象に投与される。このような対象では、膵癌の予防は、膵癌の典型的な特徴の欠如によって監視され得る。例えば、有効量のHIF1-α阻害剤及びPFKFB3阻害剤が予防的に投与された対象は、以下の症状:膵炎、黄疸または眼及び皮膚の黄変、食欲不振、腹痛、便の変化、胆嚢の肥大、突然の原因不明の体重減少;皮膚、手のひらのかゆみ;糖尿病、及び味覚の変化のうちの1つ以上を経験しない可能性があるか、またはその発生率の低下を経験する可能性がある。
【0178】
いくつかの実施形態では、対象からの生体試料は、膵癌に一致する膵癌バイオマーカー(例えば、CA19-9)のレベルを有していない。対象の血清の膵癌バイオマーカーのレベルは、1つ以上の膵癌バイオマーカー(例えば、クレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリン)のレベルが上昇していない。
【0179】
いくつかの実施形態では、対象は、膵癌を患っていると診断されている。膵癌を診断及び監視するための現在の方法には、一般に、臨床症状、心電図検査(ECG)、及び末梢循環バイオマーカーの測定が含まれる。血管造影はまた、通常、不安定狭心症及び急性脂肪膵(APS)に伴う重度の胸痛にも使用される。膵癌患者は、首、顎、肩、または左腕もしくは両腕の内側に広がることが多い、締め付けられるような胸痛を感じることが多く、呼吸困難、発汗、動悸、思考の錯乱、吐き気の症状を伴う場合がある。心筋虚血は、Q波及びST部分の変化など、診断用ECGに変化を引き起こす可能性がある。対象の心筋酵素の血漿濃度の上昇は、重度の不安定狭心症及び脂肪膵に関連する心臓組織壊死の程度を反映している。
【0180】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、膵癌の1つ以上の症状の発症後に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、以下:膵炎、黄疸または眼及び皮膚の黄変、食欲不振、腹痛、便の変化、胆嚢の肥大、突然の原因不明の体重減少;皮膚、手のひらのかゆみ;糖尿病、及び味覚の変化のうちの少なくとも1つを示す。いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、上記の症状の1つ以上の発生率、重症度、またはレベルを低下させることができる。
【0181】
一実施形態では、膵癌は、ステージI、II、IIIまたはIVである。
【0182】
特定の実施形態では、膵癌は、膵管腺癌(PDAC)、腺扁平上皮癌、扁平上皮癌、巨細胞癌、腺房細胞癌、及び小細胞癌からなる群から選択される外分泌膵癌である。
【0183】
特定の一実施形態では、膵癌は、管腺癌、例えば、膵臓の外分泌成分内に生じる切除可能な膵管腺癌(PDAC)である。本明細書で使用される場合、「腺癌」とは、腺を形成する細胞(空隙を取り囲む細胞の集団)から構成される良性(非癌性)腫瘍を指す「腺腫」とは対照的ながん腫瘍を指す。本明細書で使用される場合、「膵管腺癌細胞」とは、膵臓の管腔内膜を形成する能力を有するか、またはそれに由来するがん細胞を指す。膵管腺癌細胞は、腺を形成する膵臓内に見られ得るか、または転移細胞として任意の臓器内に見られ得るか、またはリンパ系の血流内に見られ得る。本明細書で使用される場合、膵臓に関連する「管細胞」とは、膵臓内及び膵臓から出る管の管腔内膜を形成するか、またはそれを形成する能力を有するか、またはそれに由来する任意の細胞を指す。
【0184】
別の実施形態では、膵癌は、膵島細胞腫瘍としても知られる膵内分泌腫瘍、膵島細胞から生じる膵内分泌腫瘍(PET)及び膵神経内分泌腫瘍(PNET)である。特定の実施形態では、膵癌は、インスリノーマ(すなわち、インスリン産生細胞から生じる)、グルカゴノーマ(すなわち、グルカゴン産生細胞から生じる)、ソマトスタチノーマ(すなわち、ソマトスタチン産生細胞から生じる)、ガストリノーマ(すなわち、ガストリン産生細胞から生じる)、VlPomas(血管作動性腸管ペプチド産生細胞から生じる)及び膵臓の非分泌性膵島腫瘍からなる群から選択される内分泌膵癌である。
【0185】
一実施形態において、対象は、肝細胞癌、切除不能膵癌、局所進行膵癌、境界切除可能膵癌、局所進行膵管腺癌、境界切除可能膵管腺癌、転移性膵癌、化学療法抵抗性膵管癌、膵管腺癌、扁平上皮性膵癌、膵前駆細胞、免疫原性膵癌、異常分化内分泌外分泌(ADEX)腫瘍、外分泌膵癌、膵上皮内腫瘍、膵管内乳頭粘液性腫瘍、粘液性嚢胞腫瘍、粘液性膵癌、腺扁平上皮癌、印環細胞癌、肝様癌、膠様癌、未分化癌、破骨細胞様巨細胞を伴う未分化癌、膵嚢胞性腫瘍、膵島細胞腫瘍、膵内分泌腫瘍、または膵神経内分泌腫瘍のうちの1つ以上に罹患している。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である。
【0187】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である。
【0188】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路を阻害しない。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である。
【0190】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである。
【0191】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である。
【0192】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である。
【0193】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、KAN0436151もしくはKAN0436067、またはそれらの塩である。
【0194】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、AZ67、またはその塩である。
【0195】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067もしくはBrAcNHErOP、またはそれらの塩の構造を有する。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1Eに示す、式AZ44~AZ70もしくはAZ71、またはそれらの塩の構造を有する。
【0196】
いくつかの実施形態では、膵癌を治療するために本明細書に提供される方法は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を対象に共投与することによって行われる。
【0197】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口投与される。いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経粘膜投与、シロップ剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、直腸投与、頬側投与または経皮投与によって投与される。
【0198】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って膵癌を治療することは、対照の対象またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤で治療する前の対象と比較して、対象における膵癌の1つ以上の症状を軽減することを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の抑制もしくは低下、新たな腫瘍の形成なし、新たな腫瘍形成の減少、生存または無憎悪生存率の増加、転移なし、治療の選択肢の増加、手術から再発までの時間の遅延、黄疸の軽減、肝臓への浸潤の抑制、痛みの軽減、食欲の改善、消化の改善、胆嚢のサイズの減少、及び血栓の発生率の減少のうちの1つ以上がもたらされる。
【0199】
いくつかの実施形態では、提供された方法により、結果として、ECGの正常化(例えば、Q波及びST部分の変化を正常に戻す)、または心筋酵素もしくは他のバイオマーカー(例えば、クレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリン)の血漿中濃度のレベルの低下がもたらされる。いくつかの実施形態では、膵癌の1つ以上の症状は、対照対象と比較して、またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0200】
いくつかの実施形態では、対象の生体試料中の少なくとも1、2、3、4または5つ以上の膵癌バイオマーカー(例えば、クレアチンキナーゼ(CK-MB)、トロポニン、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド、α-1アンチトリプシン、C反応性タンパク質、アポリポタンパク質A1、アポリポタンパク質B、クレアチニン、アルカリホスファターゼ、及びトランスフェリン)は、対照対象と比較して、またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する。
【0201】
一実施形態では、対象は、完全奏功を達成する。一実施形態では、対象は、部分奏効を達成する。一実施形態では、対象は、疾患の安定状態を達成する。一実施形態では、対象は、疾患の緩慢な進行性状態を達成する。
【0202】
追加の実施形態では、提供される方法は、追加の治療薬を対象に更に投与することを含む。
【0203】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)
脂肪肝疾患は、肝臓でのトリグリセリドの過剰な沈着によって特徴付けられる慢性疾患である。これは複数の原因に起因する可能性があり、主な2つの形態は、過度のアルコール消費量、または過度のアルコール摂取がない場合の代謝調節不全に関連する。後者は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)と呼ばれる。
【0204】
NAFLDは、小葉内の炎症及び線維症を伴う肝細胞の脂肪化によって特徴付けられ、メタボリックシンドローム及びその個々の要素(肥満、2型糖尿病、脂質異常症及び高血圧)に一般的に関連している。
【0205】
NAFLDの領域は、非アルコール性脂肪肝(NAFL)とも呼ばれる孤立性脂肪肝から、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)までの範囲である。NASHは、一般的で、しばしば「無症候性」肝疾患である。3つの主な特徴がNASHを特徴付け、代謝起源の他の肝疾患と区別するものである:肝臓における異常な脂肪蓄積または沈着(肝脂肪症)、肝臓の炎症、及び肝損傷または肝組織損傷(線維症)。NASHは、末期肝疾患、肝硬変及び肝細胞癌に進行するかなりのリスクを伴う、潜在的に深刻な疾患である。肝硬変を発症した一部の患者は、肝不全のリスクがあり、最終的には肝移植が必要になる場合がある。
【0206】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0207】
いくつかの実施形態では、本開示は、NAFLDを治療することを必要とする対象においてNAFLDを治療するための方法及び組成物を提供し、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法及び組成物を提供する。
【0208】
一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される。一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている。一実施形態では、対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている。
【0209】
いくつかの実施形態では、提供される方法に従って治療されるNAFLDは、非アルコール性脂肪肝(NAFL)である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って治療されるNAFLDは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態では、提供される方法に従って治療されるNAFLDは、NAFLD関連肝線維症である。
【0210】
いくつかの実施形態では、対象は、NAFLDを患うリスクがある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、上記(a)~(c)のいずれか)は、NAFLDの予防的治療として行われる。いくつかの実施形態では、対象は、NAFLDを患うリスクがある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、上記(a)~(c)のいずれか)は、NASHの予防的治療として行われる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、上記(a)~(c)のいずれか)は、NAFLD関連肝線維症の予防的治療として行われる。
【0211】
いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、NAFLDを発症するリスクがある対象、例えば、NAFLDの発症に関連する1つ以上の危険因子を有する対象において、NAFLDを予防する。いくつかの実施形態では、対象は、肥満、メタボリックシンドローム、高トリグリセリド血症、2型糖尿病、睡眠時無呼吸、甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、多嚢胞性卵巣症候群から選択される1つ以上の危険因子を有する。NASHは、高齢者、糖尿病患者、及び腹部に体脂肪が集中している対象で発生する可能性が高い。
【0212】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法に従って治療される対象はまた、II型糖尿病、I型糖尿病、糖尿病前症、インスリン抵抗性、または肥満に罹患しており、肥満は、30以上の肥満度指数を有する患者として定義される。
【0213】
いくつかの実施形態では、本開示は、NAFL、NASH及び/またはNAFLD関連肝線維症の発症前に、提供される組成物を対象に投与することによって、NAFL、NASH及び/またはNAFLD関連肝線維症の発症を予防、阻害、または遅延させる方法及び組成物を提供する。
【0214】
いくつかの実施形態では、本開示は、NAFLの発症を予防、阻害、または遅延させる方法及び組成物を提供する。
【0215】
いくつかの実施形態では、本開示は、NASHの発症を予防、阻害、または遅延させる方法及び組成物を提供する。当技術分野におけるNASHと炎症を伴う脂肪症とを区別するための好ましい手段は、現在、いわゆる「NAFLD活性スコア」または「NAS」(Kleiner et al.,Hepatology 2005,vol.41,pp.1313-1321)を使用した肝生検の組織学的評価である。NAFLD及びその構成要素の重篤度を診断するために他のスコアリングシステムを使用することもできる。NAS。NASは、(i)脂肪症、(ii)小葉の炎症、及び(iii)肝細胞の肥大化についてのサブスコアの非加重合計として定義され、具体的には、短期的に可逆的であり得る活動性損傷の特徴を含む。各スコアは、以下の表に記載のように半定量的に等級付けされている。
【表1】
【0216】
NRAを用いて、少なくとも脂肪肝のスコア(「脂肪肝スコア」)が1である場合、対象は、本開示に従ってNAFLDと診断されるか、NAFLDに罹患しているとみなされる。NASHは、肝細胞の空胞化の存在(「空胞化スコア」)により、ある程度の炎症の有無(「炎症スコア」)を問わず、NAFLまたは単純な脂肪肝と区別できる。3未満のNASはNAFLDに対応し、3~4は境界線NASHに対応し、5超はNASHに対応する。この定義を表2に示した診断アルゴリズムに用いた。
【表2】
【0217】
NASはNAFL及びNASHの程度を決定するが(より高いスコアは、疾患活動性がより高いことを意味する)、Kleiner線維化スコアは線維化の進行の程度を決定するのに使用することができる。表3に、Kleiner線維化スコアの定義を示す。
【表3】
【0218】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、NAFLD(例えば、NASH)の1つ以上の症状の発症前に投与される。いくつかの実施形態では、提供される方法は、NAFLDを予防する。いくつかの実施形態では、提供される方法は、NAFLDの発症を遅延させる。いくつかの実施形態では、提供される方法は、NAFLD(例えば、NASH)を発症するリスクがある対象に投与される。このような対象では、NAFLDの予防は、NAFLD(例えば、NASH)の典型的な特徴の欠如によって監視され得る。例えば、有効量のHIF1-α阻害剤及びPFKFB3阻害剤が予防的に投与された対象は、以下の症状(例えば、NASH)のうちの1つ以上を経験しない可能性があるか、またはその発生率の低下を経験する可能性がある。
【0219】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、NAFLDの1つ以上の症状の発症後に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、以下:疲労、右上腹部の痛みまたは不快感、脾臓肥大、黄疸(黄色がかった皮膚及び/または白眼)、浮腫(腹部の膨張)、皮下出血または出血が生じやすい、食欲不振、及び悪心のうちの少なくとも1つを示す。いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、上記の症状の1つ以上の発生率、重症度、またはレベルを低下させることができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である。
【0221】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である。
【0222】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である。
【0223】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路を阻害しない。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である。
【0224】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である。
【0226】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である。
【0227】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、KAN0436151もしくはKAN0436067、またはそれらの塩である。
【0228】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、AZ67、またはその塩である。
【0229】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067もしくはBrAcNHErOP、またはそれらの塩の構造を有する。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1Eに示す、式AZ44~AZ70もしくはAZ71、またはそれらの塩の構造を有する。
【0230】
いくつかの実施形態では、NAFLDを治療するために本明細書に提供される方法は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を対象に共投与することによって行われる。
【0231】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口投与される。いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経粘膜投与、シロップ剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、直腸投与、頬側投与または経皮投与によって投与される。
【0232】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従ってNAFLDを治療することは、対照の対象またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤で治療する前の対象と比較して、対象におけるNAFLDの1つ以上の症状を軽減することを含む。
【0233】
いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、肝脂肪(例えば、脂肪症)の減少、例えば脂肪組織及び/または肝臓における線維症の減少、脂肪細胞及び/または肝臓の機能の改善、脂肪組織及び/または肝臓における低酸素の減少、脂肪組織及び/または肝臓の炎症の減少、肝炎の減少、アラニントランスアミナーゼ(ALT)及びインスリンレベルの減少、及び/または脂肪肝によって引き起こされる肝病変の減少がもたらされる。いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、NAFLDバイオマーカーの低下がもたらされる(例えば、NAFLDバイオマーカー-TNFα、IL-6、CRP、IL-1RA、PAI1、CXCL10、CK18、FGF21及びoxLDLの増加、ならびにADP及びレプチンの減少;NASHバイオマーカー-TNFα及びIL-6の増加、ならびにADP及びレプチンの減少;線維化バイオマーカー-ADPの減少、ならびにレプチン、ヒアルロン酸、ラミニン、プロコラーゲンII及びTIMP1の増加)。いくつかの実施形態では、NAFLDの1つ以上の症状は、対照対象と比較して、またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0234】
いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、(a)肝組織における脂肪肝、トリグリセリド含量、炎症及び/またはアポトーシス、(b)血清アミノトランスフェラーゼレベル、(c)インスリン抵抗性の低下、及び任意選択で、対象における耐糖性の改善がもたらされる。
【0235】
いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、対象におけるNASスコアの1、2、3またはそれ以上のポイントの低減がもたらされる。いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、3未満のNASを有する対象がもたらされる。
【0236】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、NASHに罹患している対象を治療する。このような対象は、NASHを患っている可能性がある、NASHと診断され得る、またはNASHの発症に遺伝的に素因を有し得る、または対象はメタボリックシンドローム、肥満、糖尿病または糖尿病前症に罹患しているためNASHの発症に素因を有し得る。更に他の実施形態では、NASHに罹患している患者は、患者がNASHの身体症状をまだ示さない場合でも、NASHに特徴的な臨床所見(肝臓への脂肪の異常蓄積、肝炎症及び肝線維症)を示すことが試験されかつ発見された患者である。場合によっては、NASHに罹患している患者は、まだ診断を下されていなくてもNASHの症状を示す。
【0237】
いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、対象のNASHから肝硬変への進行を遅らせるか、または停止させる。いくつかの実施形態では、治療により、結果として、NASHの少なくとも1つの測定可能な身体症状、例えば、体重減少、脱力感、または疲労の改善がもたらされる。他の実施形態では、治療により、結果として、少なくとも1つの臨床的パラメーターまたはNASHの所見、例えば、異常な肝脂肪蓄積、生検により決定される肝線維化、肝炎症、異常なレベルの肝酵素(例えば、ALT)、異常なレベルの炎症性サイトカインまたはNASスコアの寛解がもたらされる。他の実施形態では、治療により、結果として、物理的に、例えば、測定可能な症状もしくは症状のセット(例えば、疲労感、体重減少または脱力感)の安定化による、もしくは臨床的/生理学的に、例えば、測定可能なパラメーター、例えば、肝臓における異常な脂肪蓄積、異常なレベルの肝酵素、異常なレベルの肝炎症マーカー、肝生検における異常所見、NASスコアの安定化による、のいずれかもしくは両方のNASHの進行の軽減、抑制または減速がもたらされる。別の実施形態では、また、治療により、結果として、NASHの原因及び/または影響もしくは臨床症状、またはNASHの結果として発症する症状の1つを、疾患または障害が完全に発現する前に防ぐことももたらされる。いくつかの実施形態では、治療により、結果として、NASHを患う患者の生存率または生存期間の増加がもたらされる。いくつかの実施形態では、治療により、結果として、NASHを患う患者が肝移植を必要とする可能性の低下がもたらされる。他の実施形態では、治療により、結果として、NASH患者の肝移植を受ける必要性がなくなる。他の実施形態では、結果として、NASHを患う患者が肝硬変を発症する可能性の低下がもたらされる。他の実施形態では、結果として、組織学によって決定されるように、肝硬変への進行の予防がもたらされる。
【0238】
いくつかの実施形態では、対象の肝脂肪は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0239】
いくつかの実施形態では、脂肪組織の炎症及び/または肝臓の炎症は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0240】
いくつかの実施形態では、膵炎は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0241】
追加の実施形態では、提供される方法は、追加の治療薬を対象に更に投与することを含む。
【0242】
肝細胞癌
いくつかの実施形態では、本開示は、対象における肝細胞癌(HCC)を治療するための方法及び組成物を提供する。肝細胞癌は、慢性肝炎または肝硬変後の肝細胞の悪性化により発生する。
【0243】
いくつかの実施形態では、本開示は、肝細胞癌(HCC)を治療することを必要とする対象において肝細胞癌(HCC)を治療するための方法及び組成物を提供し、
(a)有効量のHIF1-α経路阻害剤、及び有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与すること、
(b)有効量のHIF1-α経路阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にPFKFB3阻害剤を投与されている、対象に投与すること、または
(c)有効量のPFKFB3阻害剤を対象に投与することであって、対象は以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている、対象に投与すること、を含み、
PFKFB3阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路またはHIF1-αを阻害しない、前記方法及び組成物を提供する。
【0244】
一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤及び有効量のPFKFB3阻害剤を投与される。一実施形態では、対象は、有効量のHIF1-α経路阻害剤を投与され、対象は、以前にPFKFB3阻害剤を投与されている。一実施形態では、対象は、有効量のPFKFB3阻害剤を投与され、対象は、以前にHIF1-α経路阻害剤を投与されている。
【0245】
いくつかの実施形態では、対象は、肝細胞癌を患うリスクがある。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法(例えば、上記(a)~(c)のいずれか)は、肝細胞癌の予防的治療として行われる。
【0246】
いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、肝細胞癌を発症するリスクがある対象、例えば、肝細胞癌の発症に関連する1つ以上の危険因子を有する対象において、肝細胞癌を予防する。いくつかの実施形態では、対象は、男性、55歳超、ウイルス性慢性肝炎(例えば、B型肝炎、C型肝炎)、自己免疫性肝炎、NAFLD、NASH、脂肪膵、喫煙、過度のアルコール消費量、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、肥満、慢性膵炎の既往、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、HCCの家族歴、遺伝性代謝疾患、遺伝性ヘモクロマトーシス、α1-アンチトリプシン欠乏症、ウィルソン病、及びアフラトキシンなどの特定の環境因子への曝露から選択される1つ以上の危険因子を有する。
【0247】
いくつかの実施形態では、本開示は、肝細胞癌の発症前、例えば、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症前に、提供される組成物を対象に投与することによって、肝細胞癌の発症を予防、阻害、または遅延させる方法及び組成物を提供する。
【0248】
HCCの症状は、がんの初期では現れないことが多い。その後、症状としては、体重減少、食欲不振、発熱、悪心、疲労感、上腹部痛、腹部及び下肢の腫脹、皮膚の黄変(黄疸)、皮下出血または出血が生じやすい、ならびに肝不全が挙げられる。
【0249】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症前に投与される。いくつかの実施形態では、提供される方法は、肝細胞癌を予防する。いくつかの実施形態では、提供される方法は、肝細胞癌の発症を遅延させる。
【0250】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、肝細胞癌を発症するリスクがある対象に投与される。このような対象では、肝細胞癌の予防は、肝細胞癌の典型的な特徴の欠如によって監視され得る。例えば、有効量のHIF1-α阻害剤及びPFKFB3阻害剤が予防的に投与された対象は、以下の症状:体重減少、食欲不振、発熱、悪心、疲労感、上腹部痛、腹部及び下肢の腫脹、皮膚の黄変(黄疸)、皮下出血または出血が生じやすい、ならびに肝不全のうちの1つ以上を経験しない可能性があるか、またはその発生率の低下を経験する可能性がある。
【0251】
いくつかの実施形態では、対象からの生体試料は、肝細胞癌と一致する肝細胞癌バイオマーカー(例えば、EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、ならびにSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP及びLAMP-2)のレベルを有しない。分析のための生体試料は、通常、患者からの血液、血漿、血清、粘膜、組織生検、腫瘍、腹水または脳脊髄液である。試料は、腫瘍の徴候について分析することができる。
【0252】
いくつかの実施形態では、対象は、肝細胞癌を患っていると診断されている。肝細胞癌を診断及び監視するための現在の方法には、一般に、臨床症状、コンピュータ断層撮影(CATスキャン)、磁気共鳴画像(MRI)、腹部超音波、凝固検査、動脈造影、または生検が含まれる。肝細胞癌を患う患者は、体重減少、食欲不振、発熱、悪心、疲労感、上腹部痛、腹部及び下肢の腫脹、皮膚の黄変(黄疸)、皮下出血または出血が生じやすい、ならびに肝不全を有することが多い。
【0253】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤は、肝細胞癌の1つ以上の症状の発症後に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、以下:体重減少、食欲不振、発熱、悪心、疲労感、上腹部痛、腹部及び下肢の腫脹、皮膚の黄変(黄疸)、皮下出血または出血が生じやすい、ならびに肝不全のうちの少なくとも1つを示す。いくつかの実施形態では、提供される方法及び組成物は、上記の症状の1つ以上の発生率、重症度、またはレベルを低下させることができる。
【0254】
一部の実施形態では、対象は、遺伝的素因または他の理由で(例えば、危険因子を有する)、HCCを発症しやすい。
【0255】
一実施形態では、肝細胞癌は、早期HCCである。一実施形態では、肝細胞癌は、非転移性HCCまたは原発性HCCである。一実施形態では、肝細胞癌は、進行性HCC、局所進行性HCCまたは転移性HCCである。一実施形態では、肝細胞癌は、寛解期のHCC、または再発性HCCである。いくつかの実施形態では、HCCは、切除可能な限局性である、切除不可能な限局性である、または切除不可能である(すなわち、腫瘍は肝臓の全葉を含む、及び/または広がって他の臓器(例えば、肺、リンパ節、骨)に及ぶ)。いくつかの実施形態では、HCCは、TNM分類によると、ステージI腫瘍(血管侵入を伴わない単一腫瘍)、ステージII腫瘍(血管侵入を伴う単一腫瘍、または複数の腫瘍、5cm未満)、ステージIII腫瘍(複数の腫瘍、5cm超、または門脈もしくは肝静脈の主要分枝に関与する腫瘍)、ステージIV腫瘍(胆嚢以外の隣接臓器へ直接浸潤、または内臓側腹膜穿孔している腫瘍)、N1腫瘍(局所リンパ節転移)またはM1腫瘍(遠隔転移)である。いくつかの実施形態では、HCCは、AJCC(American Joint Commission on Cancer)病期分類基準によると、ステージT1、T2、T3またはT4 HCCである。
【0256】
一実施形態では、対象は、肝細胞癌、HCCの線維層板型変異体、または混合型肝細胞胆管細胞癌に罹患している。
【0257】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α経路結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α経路阻害剤である。
【0258】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、シリビニン、PX-478もしくはYC-1、またはそれらの塩である。
【0259】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α経路阻害剤は、ガネテスピブ(ST-9090)、フェネチルイソチオシアネート(phenethyl isothocyanate)もしくはBAY-87-2243、またはそれらの塩である。
【0260】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるHIF1-α経路阻害剤は、HIF1-α阻害剤である。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、PI3K/AKT/mTOR経路を阻害しない。いくつかの実施形態では、HIF1-α阻害剤は、抗体もしくはその抗原結合断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体(例えば、VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、HIF1-α結合ポリペプチド、または低分子HIF1-α阻害剤である。
【0261】
いくつかの実施形態では、投与されるHIF1-α阻害剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチドEZN-2968、またはナノボディAG-1、AG-2、AG-3、AG-4、AG-5、VHH212もしくはAHPCである。
【0262】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って投与されるPFKFB3阻害剤は、抗体もしくは抗原結合抗体断片(例えば、単鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)断片、Fd断片、Fv断片、scFv、dAb断片、または別の改変分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、及び最小認識単位)、核酸分子(例えば、アプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、miRNA、dsRNA、ssRNA、及びshRNA)、ペプチボディ、ナノボディ、PFKFB3結合ポリペプチド、または低分子PFKFB3阻害剤である。
【0263】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、BrAcNHEtOP(N-ブロモアセチルエタノールアミンホスフェート)、PFK15(1-(4-ピリジニル)-3-(2-キノリニル)-2-プロペン-1-オン)、もしくはPFK-158((E)-1-(4-ピリジニル)-3-[7-(トリフルオロメチル)-2-キノリニル]-2-プロペン-1-オン)、またはそれらの塩である。
【0264】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、KAN0436151もしくはKAN0436067、またはそれらの塩である。
【0265】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、AZ67、またはその塩である。
【0266】
いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1A図1Cもしくは図1Dに示す、式1~式53もしくは式54、PQP、N4A、YN1、PK15、PFK-158、YZ29、化合物26、KAN0436151、KAN0436067もしくはBrAcNHErOP、またはそれらの塩の構造を有する。いくつかの実施形態では、投与されるPFKFB3阻害剤は、図1Eに示す、式AZ44~AZ70もしくはAZ71、またはそれらの塩の構造を有する。
【0267】
いくつかの実施形態では、肝細胞癌を治療するために本明細書に提供される方法は、HIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤を対象に共投与することによって行われる。
【0268】
いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経口投与される。いくつかの実施形態では、HIF1-α経路阻害剤及び/またはPFKFB3阻害剤の投与は、経粘膜投与、シロップ剤、局所投与、非経口投与、注射、皮下投与、直腸投与、頬側投与または経皮投与によって投与される。
【0269】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法に従って肝細胞癌を治療することは、対照の対象またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤で治療する前の対象と比較して、対象における肝細胞癌の1つ以上の症状を軽減することを含む。いくつかの実施形態では、提供される方法により、結果として、HCC細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、腫瘍増殖の阻害または低下、新たな腫瘍形成なし、新たな腫瘍形成の減少;HCC癌細胞の末梢器官への浸潤を阻害、遅延、ある程度の減速、及び好ましくは停止;転移なし、腫瘍増殖の阻害;腫瘍の発生及び/または再発の予防または遅延;HCCに関連する症状のうちの1つ以上のある程度の軽減;生存または無憎悪生存率の増加、及び/または治療の選択肢の増加、手術から再発までの時間の遅延、黄疸の軽減、肝臓への浸潤の抑制、痛みの軽減、食欲の改善、消化の改善、胆嚢のサイズの減少、及び血栓の発生率の減少がもたらされる。
【0270】
腫瘍またはがんの増殖または進行に関する「阻害」、「低減」、「減少」という用語は、当技術分野で公知の方法を用いて、腫瘍またはがんの増殖、広がり、転移を測定可能な量だけ阻害することを指す。腫瘍またはがんの増殖、進行または広がりは、腫瘍負荷が少なくとも約10%、20%、30%、50%、80%または100%減少している場合、阻害、低減、または減少される。
【0271】
いくつかの実施形態では、提供される方法は、HCCバイオマーカー(例えば、EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、及びSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP、及びLAMP-2)をもたらす。いくつかの実施形態では、肝細胞癌の1つ以上の症状は、対照対象と比較して、またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%軽減される。
【0272】
いくつかの実施形態では、対象の生体試料中の1、2、3、4、5つ以上の肝細胞癌バイオマーカー(例えば、EpCam、VEGF、EGFR、FLT1、テオフィリン、HCC-22-5、KRT23、AHSG、FTL、C16Cer、C16DHC、C18DHC、S1P、C24DHC、C24:1DHC、C18Cer、C20Cer、C24Cer、C24:1Cer、スフィンゴシン、及びSA1P、CTSD、HYOU1、PSAP、及びLAMP-2)のレベルは、対照対象と比較して、またはHIF1-α経路阻害剤及びPFKFB3阻害剤による治療前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する。
【0273】
一実施形態では、対象は、完全奏功を達成する。一実施形態では、対象は、部分奏効を達成する。一実施形態では、対象は、疾患の安定状態を達成する。一実施形態では、対象は、疾患の緩慢な進行性状態を達成する。
【0274】
追加の実施形態では、提供される方法は、追加の治療薬を対象に更に投与することを含む。
【0275】
それぞれ2021年5月16日出願の米国特許出願第63/189,204号、同第63/189,205号、同第63/189,206号、及び同第63/189,207号のそれぞれの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に引用されるすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により援用される。しかし、本明細書で引用される任意の参考文献、記事、出版物、特許、特許公報、及び特許出願の言及は、世界の任意の国で、それらが有効な先行技術を構成し、または共通の一般知識の一部を形成する、承認または任意の形式の提案ではなく、かつそう解釈されるべきではない。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
【国際調査報告】