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  • 特表-直接還元鉄を製造するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】直接還元鉄を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/00 20060101AFI20240426BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C21B13/00
F27D17/00 104G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571579
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 IB2021054259
(87)【国際公開番号】W WO2022243726
(87)【国際公開日】2022-11-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツビク,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ブラーノフ,ドミトリー
(72)【発明者】
【氏名】レイエス・ロドリゲス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カリエ,オディール
(72)【発明者】
【氏名】サラメ,サラ
(72)【発明者】
【氏名】バロス・ロレンソ,ホセ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレード,マルセロ
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,デニス
【テーマコード(参考)】
4K012
4K056
【Fターム(参考)】
4K012DC03
4K012DC06
4K012DC07
4K012DC08
4K056AA01
4K056CA02
4K056CA07
4K056DB04
4K056DB11
(57)【要約】
直接還元鉄を製造するための方法であって、酸化鉄が、還元性ガスによって直接還元炉内で還元され、前記酸化鉄が、最初にバイオチャーと混合されて固体化合物を形成し、前記固体化合物が、前記直接還元炉に装入される、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接還元鉄を製造するための方法であって、酸化鉄が、還元性ガスによって直接還元炉内で還元され、前記酸化鉄が、最初にバイオチャーと混合されて固体化合物を形成し、前記固体化合物が、前記直接還元炉に装入される、方法。
【請求項2】
前記バイオチャーが、バイオマスの熱分解によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体化合物が、ブリケット及び/又はペレットである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
還元性ガスが、体積で50%を超える水素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
還元性ガスが、体積で99%を超える水素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
還元性ガスの水素が、電気分解によって少なくとも部分的に生成される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気分解が、再生可能エネルギーによって動力供給される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
頂部還元ガスが、直接還元炉の出口で捕捉され、CO2リッチガスとH2リッチガスとの間で分割されるように少なくとも1つの分離ステップに供され、前記H2リッチガスが、還元ガスとして少なくとも部分的に使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記CO2リッチガスが、メタン化ステップに供される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接還元鉄(DRI)を製造するための方法及びDRI製造設備に関する
【背景技術】
【0002】
現在、鋼は、2つの主要な製造経路を通じて生成することができる。今日、最も一般的に使用されている生成経路は、酸化鉄を還元するために還元剤、主にコークスを使用して高炉で銑鉄を生成することにある。この方法では、銑鉄1メートルトン当たり約450~600kgのコークスが消費され、この方法は、コークス化プラントにおける石炭からのコークスの生成及び銑鉄の生成の両方において、大量のCO2を放出する。
【0003】
第2の主要経路は、いわゆる「直接還元法」を伴う。それらの中には、ブランドMIDREX、FINMET、ENERGIRON/HYL、COREX、FINEXなどによる方法があり、海綿鉄が、酸化鉄担体の直接還元からHDRI(高温直接還元鉄)、CDRI(低温直接還元鉄)又はHBI(高温ブリケット化鉄)の形態で生成される。HDRI、CDRI及びHBIの形態の海綿鉄は、通常、電気アーク炉でさらに加工される。
【0004】
低温DRI放電を伴う各直接還元シャフトには、頂部の還元ゾーン、中央の移行ゾーン、円錐形の底部の冷却ゾーンの3つのゾーンがある。高温放電DRIでは、この底部部分は、主に放電前の製品の均質化に使用される。
【0005】
酸化鉄の還元は、最大950℃の温度で炉の上部セクションで起こる。約30重量%の酸素を含有する酸化鉄鉱石及びペレットを直接還元シャフトの頂部に装入し、還元性ガスを通じて重力によって降下させる。この還元性ガスは、還元ゾーンの底部から炉に入り、帯電した酸化鉄と向流に流れる。鉱石及びペレットに含有される酸素は、ガスと酸化物との向流反応における酸化鉄の段階的な還元で除去される。ガスが炉の頂部に移動している間、ガスの酸化体含有量は、増加している。
【0006】
還元性ガスは、一般に、水素及び一酸化炭素(合成ガス)を含み、天然ガスの接触改質によって得られる。例えば、いわゆるMIDREX法では、第1のメタンは、以下の反応によって改質剤に変換され、合成ガス又は還元ガスを生成する:
CH4+CO2→2CO+2H2
酸化鉄は、例えば以下の反応に従って還元ガスと反応する:
3Fe203+CO/H2→2Fe3O4+CO2/H2O
Fe3O4+CO/H2→3FeO+CO2/H2O
FeO+CO/H2→Fe+CO2/H20
還元ゾーンの端部で、鉱石は、金属化される。
【0007】
移行セクションは、還元セクションの下に見られ、このセクションは、還元セクションを冷却セクションから分離するのに十分な長さであり、両方のセクションの独立した制御を可能にする。このセクションでは、金属化生成物の炭化が生じる。炭化は、以下の反応によって還元炉内部の金属化生成物の炭素含有量を増加させる工程である:
3Fe+CH4→Fe3C+2H2(吸熱)
3Fe+2CO→Fe3C+CO2(発熱)
3Fe+CO+H2→Fe3C+H2O(発熱)
【0008】
移行ゾーン内への天然ガスの注入は、移行ゾーン内の金属化生成物の顕熱を使用して、炭化水素クラッキング及び炭素堆積を促進する。酸化剤の濃度が比較的低いため、移行ゾーンの天然ガスは、H2及びCOへの改質よりも、H2及び炭素へクラッキングされる可能性が高い。天然ガスクラッキングは、DRI炭化のための炭素を提供し、同時にガスに還元剤(H2)を添加してガス還元電位を上昇させる。
【0009】
前世紀の始まりから大気中のCO2濃度の大幅な増加及びその後の温室効果を考慮すると、CO2が大量に生成される場所、したがって特に、DRI製造中にCO2の排出量を削減することが不可欠である。
【0010】
現在開発されている解決策の1つは、純粋な水素還元性ガスに達することを考慮して、還元性ガスへの水素含有量を漸進的に増加させることである。次いで、以下の還元反応が起こり:
Fe2O3+3H2=2Fe+3H2O
したがって、温室効果ガスCO2の代わりに無害なH2Oを放出する。
【0011】
しかしながら、これは、還元性ガス中の炭素の含有量が減少し、ある時点で、それ以上の炭素がシャフトに注入されないことを示唆する。上で説明したように、これは、炭素含有量がますます少なくなるDRI生成物に影響を及ぼす。
【0012】
DRI生成物中の炭素の含有量は、それにおける重要なパラメータであり、電気アーク炉でのスラグ発泡などの後続のステップに重要な役割を果たすが、DRI生成物の輸送性を改善するのにも役立つ。
【0013】
溶液は、生成物の炭素含有量を増加させることが既に知られており、それらは、主に炭化水素、通常はCH4、又はコークス炉ガスをシャフトに注入することからなる。しかし、これらのガスは、純粋なH2還元への切り替えと一致しないDRI工程のカーボンフットプリントの増加に寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
工程のカーボンフットプリントを低減しながら、DRI生成物中の炭素含有量を増加させることを可能にする方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この問題は、酸化鉄が還元性ガスによって直接還元炉内で還元され、前記酸化鉄が、最初にバイオチャーと混合されて固体化合物を形成し、前記固体化合物が、前記直接還元炉に装入される、本発明による方法によって解決される。
【0016】
本発明の方法はまた、別々に又はすべての可能な技術的組み合わせに従って考慮される以下の任意選択的な特徴を含み得る:
-バイオチャーは、バイオマスの熱分解によって生成され、
-固体化合物は、ブリケット及び/又はペレットであり、
-還元性ガスは、体積で50%を超える水素を含み、
-還元性ガスは、体積で99%を超える水素を含み、
-還元性ガスの水素は、電気分解によって少なくとも部分的に生成され、
-電気分解は、再生可能エネルギーによって動力供給され、
-頂部還元ガスは、直接還元炉の出口で捕捉され、CO2リッチガスとH2リッチガスとの間で分割される少なくとも1つの分離ステップに供され、前記H2リッチガスは、還元ガスとして少なくとも部分的に使用され、
-CO2リッチガスは、メタン化ステップに供される。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、指示として以下に与えられ、決して限定的ではない本発明の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による方法を実行することを可能にする直接還元プラントのレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図中の要素は、例示であり、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0020】
図1は、本発明による方法を実行することを可能にする直接還元プラントのレイアウトを示す。前記方法では、直接還元炉(又はシャフト)1の頂部に、酸化鉄とバイオチャーとの混合物で作製された化合物10が装入される。前記化合物は、炉への装填を可能にする任意の好適な形状を有してもよく、ブリケット及び/又はペレットの形態で優先的に装入される。好ましい実施形態では、化合物10は、0.01~10重量%のバイオチャーを含む。バイオチャーとは、酸素の非存在下でバイオマスの熱分解によって生成される炭を意味する。
【0021】
バイオマスは、植物及び動物に由来する再生可能な有機材料である。エネルギーのためのバイオマス源には、木材及び木材加工廃棄物-まき、木材ペレット及び木材チップ、製材及び家具工場のおがくず及び廃棄物、並びにパルプ及び製紙工場からの黒液、農作物及び廃棄物-トウモロコシ、ダイズ、サトウキビ、スイッチグラス、木質植物及び藻類、並びに作物及び食品処理残渣、都市固形廃棄物中の生物起源物質-紙、綿及び羊毛製品、並びに食品、ヤード、並びに木材廃棄物及び動物の肥料及び人間の下水が含まれる。
【0022】
化合物10は、還元される酸化鉄及び金属化生成物を浸炭するのに必要な炭素源の両方を提供する。好ましい実施形態では、直接還元鉄の炭素含有量は、0.5~3重量%、好ましくは1~2重量%に設定され、これは、容易に取り扱うことができ、かつその将来の使用のために良好な燃焼ポテンシャルを維持する直接還元鉄を得ることを可能にする。
【0023】
前記化合物10は、炉内に注入され、かつ化合物10と向流に流れる還元性ガス11によって炉1内に還元される。還元鉄12は、その後の製鋼ステップで使用される前に、ブリケット化などのさらなる加工のために炉1の底部を出る。還元性ガスは、鉄を還元した後、炉の頂部で頂部還元ガス20(TRG)として出る。
【0024】
冷却ガス13は、炉の冷却ゾーンから捕捉され、スクラバなどの洗浄装置30への洗浄ステップに供され、圧縮機31内で圧縮され、次いでシャフト1の冷却ゾーンに送り戻され得る。
【0025】
好ましい実施形態では、還元性ガス11は、少なくとも50%vの水素、より優先的には99%vを超えるH2を含む。H2流40を供給して、電解プラントなどの専用のH2生成プラント9によって前記還元性ガス11を生成し得る。それは、水又は蒸気電解プラントであってもよい。それは、好ましくは、太陽光、風、雨、潮汐、波及び地熱のような発生源を含む人間のタイムスケールで自然に補充される再生可能資源から収集されるエネルギーとして定義される再生可能資源からの電気を特に含むCOニュートラル電気を使用して動作する。いくつかの実施形態では、生成されるCOを排出しないため、核源由来の電気の使用を使用することができる。
【0026】
別の実施形態では、H2流40を頂部還元ガス20の一部と混合して還元性ガス11を形成し得る。天然ガスで動作する場合、頂部還元ガス20は、通常、15~25%vのCO、12~20%vのCO2、35~55%vのH2、15~25%vのH2O、1~4%のN2を含む。それは、250~500℃の温度を有する。純粋な水素が還元性ガスとして使用される場合、前記頂部還元ガスの組成は、むしろ40~80%vのH2、20~50%vのH20及びシャフトのシールシステム由来か又は水素流40中に存在するいくつかの可能なガス不純物で構成される。還元性ガス中のH2量が変動し、化合物10が装入されると、頂部ガス20は、前述の2つの場合の間の中間組成を有する。
【0027】
本発明による方法の一実施形態では、スクラバ及びデミスタなどの洗浄装置5におけるダスト及びミスト除去ステップ後の頂部還元ガス20は、分離ユニット6に送られ、そこで2つの流れ22、23に分割される。第1の流れ22は、異なる化学工程で捕捉して使用することができるCO2リッチガスである。好ましい実施形態では、このCO2リッチガス22は、メタン化ステップに供される。第2の流れ23は、H2リッチガスであり、調製装置7に送られ、そこで他のガスと混合され、任意選択的に改質され、加熱されて還元性ガス11を生成する。好ましい実施形態では、調製装置7は、加熱器である。
【0028】
本発明による方法は、工程のCO2フットプリントを損なうことなく、十分な炭素含有量を有するDRI生成物を得ることを可能にする。
図1
【国際調査報告】