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特表2024-519064圧力変動吸着を用いたアンモニアからの水素の製造方法
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  • 特表-圧力変動吸着を用いたアンモニアからの水素の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】圧力変動吸着を用いたアンモニアからの水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20240426BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01D53/047
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571617
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 KR2022017598
(87)【国際公開番号】W WO2023090752
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158745
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】アン、 チ-キュ
(72)【発明者】
【氏名】リ、 チャン-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 グク-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 マン-ス
(72)【発明者】
【氏名】パク、 ヒ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ボム-シク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ソン-ミン
【テーマコード(参考)】
4D012
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA04
4D012CA07
4D012CB12
4D012CD07
4D012CE03
4D012CF03
4D012CF04
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG03
(57)【要約】
圧力変動吸着を用いたアンモニアからの水素の製造方法が提供される。
本発明の水素製造方法は、触媒を用いた高温反応を介してアンモニアガスから水素と窒素を生成する工程;上記高温反応工程を介して供給され冷却された低純度水素と窒素、そして未分解アンモニアを含有したガスの中から、未分解アンモニアガスを選択的に吸着、精製する工程;及び上記低純度水素と窒素で構成されたガスから高純度水素を分離、精製する工程;を含むアンモニアから水素を製造する方法であって、上記未分解アンモニアガスをCMS(Carbon Molecular Sieve)吸着剤を用いて圧力循環吸着方式(PSA)で脱着、精製することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を用いた高温反応を介してアンモニアガスから水素と窒素を生成する工程;前記高温反応工程を介して供給され冷却された低純度水素と窒素、そして未分解アンモニアを含有したガスの中から、未分解アンモニアガスを選択的に吸着、精製する工程;及び前記低純度水素と窒素で構成されたガスから高純度水素を分離、精製する工程;を含むアンモニアから水素を製造する方法であって、
前記未分解アンモニアガスをCMS(Carbon Molecular Sieve)吸着剤を用いて圧力循環吸着方式(PSA)で脱着、精製する、アンモニアから水素を製造する方法。
【請求項2】
前記吸着剤として金属塩化物(metal halide)が担持されたCMSを用いる、請求項1に記載のアンモニアから水素を製造する方法。
【請求項3】
前記金属塩化物は、MgCl、CaCl、SrCl、MgBr、CaBr及びSrBrから選択された1種以上である、請求項2に記載のアンモニアから水素を製造する方法。
【請求項4】
前記吸着剤を、アンモニア分解率80~99%、未分解アンモニア濃度0.5~11%、3bar_g~9bar_gの圧力及び20~50℃の温度を有する未分解アンモニアに適用する、請求項1に記載のアンモニアから水素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアから水素を製造する方法に関するものであり、より詳細には、吸着剤CMS(Carbon Molecular Sieve)を用いて圧力変動吸着方式で未分解アンモニアを除去可能である、アンモニアから水素を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアンモニア除去工程は、ハーバーボッシュ(Haber-Bosch)法の性能向上のためのアンモニア回収工程と大気中への排出防止のためのアンモニア除去工程に主に用いられてきた。
【0003】
アンモニアを用いた水素生産工程は、アンモニアが高温の条件下で触媒によって下記反応式1のように窒素と水素に分解され、分解率に応じて未分解されたアンモニアが分解ガス(N、H)に含まれており、これを除去する工程を介して高純度の水素を生産する工程である。
[反応式1]
2NH→N+3H
【0004】
このために、従来適用された工程としては吸着剤を用いてアンモニアを吸着除去した後、吸着が完了した吸着剤の温度を上げて脱着/再生する温度変動吸着方式(TSA、Temperature Swing Adsorption)の方式が主に用いられてきた。この方式の場合、脱着時に吸着塔の内部の温度を均一に維持し、この後、吸着過程を用意するために吸着塔の内部を冷却する必要があるなどの問題が発生して、実際の工程で用いるためには解決すべき問題が多様に存在していた。
【0005】
そこで、最近、圧力変動方式(PSA、Pressure Swing Adsorption)のアンモニア吸着/再生工程が提示され、低い濃度レベルである数千ppmレベルにおいて実験室規模で可能性を確認する程度の研究がなされている。低い濃度のアンモニアを除去するための実験室的な研究があったが、最近、清浄水素を生成するためにアンモニア分解水素生産工程が提案されている。この工程で発生する可能性がある未分解アンモニアの除去のために、PSA方式のアンモニア吸/脱着工程の吸着剤及び当該工程を提示した事例はない。
【0006】
通常、水素生産のためのアンモニアの分解反応は、常圧~9bar_gで進行するようになり、後段の水素精製工程の効果的な運営のために、圧力が加わった状態で分解を進行しようとする研究が多くあり、このような加圧条件で分解を進行する場合、分解工程の後段に位置するアンモニア除去工程及び水素を精製するための工程をPSA方式で実現することができ、工程構成が単純になるという利点を有している。しかし、加圧状態でアンモニアを分解する場合には、アンモニアの分解率が低くなるにつれて未分解アンモニアが%濃度レベルでも残留するようになり、これを除去しない場合、水素精製設備の負荷が高くなり、最終生産される水素にアンモニアが含まれる可能性が高くて、水素の品質を満たせないなどの問題を起こすことがある。
【0007】
このために、従来の研究はアンモニアを除去するために様々な吸着剤を用いており、その一例としてゼオライト、アルミナ、シリカゲル、活性炭を主に用いるか(AIChE Journal、2000、46(8))、吸着性能を高めるためにmetal halide(MgCl、CaCl、SrCl、MgBr、CaBr、SrBr)などを用いた研究(ACS Sustainable Chem.Eng、2018.6(5))があった。
【0008】
AIChE Journalでは様々な吸着剤に対する研究を行ったが、アンモニアの吸着データ(等温吸着曲線)のみ活用が可能であって、吸着されたアンモニアの除去(吸着剤の再生)工程に適用可能であるかに対する追加データがなくて、PSAとして適用可能であるか否かを判断するのは難しい。特に、吸着剤の場合、吸着曲線と脱着曲線の様相が異なるヒステリシス(hysteresis)も観察されるため、等温吸着曲線のみでPSAの適用可能有無を判断することは困難である。また、ACS Sustainable Chem.Engでは、高い温度(150℃)で運転され、TSA(温度変動吸着)工程適用のために適用され、PSA方式とは異なる運転方式も適用した。
【0009】
一方、最近では、圧力変動吸着(PSA)の適用のための吸着剤及び吸着剤の改善に関する研究も一部あったが、比較的低濃度のアンモニア濃度領域(<1000ppm)でのみ制限的に適用し、アンモニア分解水素生産工程で生産され得る未分解アンモニア濃度領域(%濃度レベル)でのPSA方式を用いた未分解アンモニア除去工程の適用は行われなかった。また、アンモニア吸/脱着サイクルによるworking capacityとして活用することができる部分が低くて、従来の研究がPSAを目標とした研究であったかを判断し難い実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許KR10-2247199B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、水素社会実現のための水素生産及び水素の移送に関する多様な要求が発生していることを考慮して、最近注目を集めている水素の移送及び生産手段としてのアンモニアに注目したものであり、アンモニアを分解して水素を生産する工程で未分解アンモニアを除去しようとした。具体的には、本発明は、触媒を用いたアンモニア分解水素抽出工程の主要工程であるアンモニアの分解、未分解アンモニアの除去及び水素分離/精製の工程でPSA(圧力変動吸着)方式で上記未分解アンモニアを除去することができるアンモニアから水素を製造する方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明で解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に限定されず、言及されていないまた他の技術的課題は、以下の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の一側面は、
触媒を用いた高温反応を介してアンモニアガスから水素と窒素を生成する工程;上記高温反応工程を介して供給されて冷却された低純度水素と窒素、そして未分解アンモニアを含有したガスの中から、未分解アンモニアガスを選択的に吸着、精製する工程;及び、上記低純度水素と窒素で構成されたガスから高純度水素を分離、精製する工程;を含むアンモニアから水素を製造する方法であって、
上記未分解アンモニアガスをCMS(Carbon Molecular Sieve)吸着剤を用いて圧力循環吸着方式(PSA)で脱着、精製することを特徴とするアンモニアから水素を製造する方法に関するものである。
【0014】
本発明では、上記吸着剤として金属塩化物(metal halide)が担持されたCMSを用いることができる。
【0015】
上記金属塩化物は、MgCl、CaCl、SrCl、MgBr、CaBr及びSrBrから選択された1種以上を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のような本発明によると、CMS(Carbon Molecular Sieve)吸着剤を用いて圧力循環吸着方式(PSA)で未分解アンモニアを除去することでアンモニアの吸着量を向上させると同時に、脱着性能も共に確保することによってアンモニア分解水素生産のための工程で発生する未分解アンモニア(0.5~11%濃度)を除去することに有用な効果がある。
【0017】
また、従来のTSAやScrubbing方式に比べてエネルギー消耗量が少なく簡単な構成でアンモニア分解水素生産工程に適用することができ、さらにアンモニアから水素を製造する工程で、未分解アンモニアガスを効果的に脱着除去してアンモニア分解水素生産工程の熱源として用いることで、全体的な水素生産製造工程の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例によるアンモニアから水素を生産する製造工程を概略的に示した工程図である。
図2】本発明の一実施例において吸着剤を用いて未反応アンモニアガスを吸脱着除去するように構成されたアンモニア吸/脱着試験装置に対する断面概略図である。
図3】本発明の一実施例において吸着剤としてCMSを用いて7barの圧力で5%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
図4】本発明の一実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて7barの圧力で2%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
図5】本発明の一実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて7barの圧力で5%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
図6】本発明の一実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて5barの圧力で2%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
図7】本発明の一実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて5barの圧力で5%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を説明する。
【0020】
本発明は、触媒を用いた高温、高圧反応を介してアンモニアから水素を抽出する工程において、従来のTSA方式の未分解アンモニア吸/脱着工程をPSA方式で適用可能な吸着剤を提示することを特徴とする。具体的には、本発明は、上記吸着剤としてCMS(Carbon Molecular Sieve)を用いてPSA方式で未分解アンモニアの除去に用い、さらに、MgClなどの金属塩化物が担持されたCMSを吸着剤として用いることで、PSA方式で未分解アンモニアの吸着性能を向上させることができる、アンモニアから水素を製造する方法を提供することを特徴とする。
【0021】
このような本発明のアンモニアから水素を製造する方法は、触媒を用いた高温反応を介してアンモニアガスから水素と窒素を生成する工程;上記高温反応工程を介して供給され冷却された低純度水素と窒素、そして未分解アンモニアを含有したガスの中から、未分解アンモニアガスを選択的に吸着、精製する工程;及び上記低純度水素と窒素で構成されたガスから高純度水素を分離、精製する工程;を含むアンモニアから水素を製造する方法において、上記未分解アンモニアガスをCMS(Carbon Molecular Sieve)吸着剤を用いて、圧力循環吸着方式(PSA)で脱着、精製することを特徴とする。
【0022】
図1は、本発明の一実施例によるアンモニアから水素を生産する製造工程を概略的に示した工程図である。
【0023】
図1に示されたように、一般的にアンモニアから水素を抽出する方法は、まず、触媒を用いた高温反応を介してアンモニアガスから水素と窒素を生成する工程を含む。
【0024】
一般的に、アンモニアは高温反応を介して窒素と水素に分解され、分解条件によって未分解アンモニアの濃度が変わる。下記表1は、アンモニアの分解率による未分解アンモニアの濃度と、アンモニア分解のための圧力及び未分解アンモニアの除去のための温度を示している。
【0025】
下記表1に示されたように、代表的に90%レベルでアンモニアが分解された場合、約5.3%(53,000ppm)レベルのアンモニアが残留していることが分かる。そこで本発明では、アンモニア分解水素抽出工程で用いることができる転換率レベルを考慮して、0.5~11.1%の未分解アンモニア残留条件、40℃、3~9bar_gの条件で圧力変動吸着(PSA)工程に適用することができる吸着剤及びその吸着剤を用いた水素の製造方法を提供しようとする。
【0026】
【表1】
【0027】
次いで、本発明では、上記高温反応工程を介して供給されて冷却された低純度水素と窒素、そして未分解アンモニアを含有したガスの中から、未分解アンモニアガスを選択的に吸着、精製する。
【0028】
このとき、本発明では、アンモニア分解水素生産工程で発生した未分解アンモニアを除去するための技術であり、吸着剤CMS(carbon molecular sieve)を用いたPSA(圧力変動吸着)方式で未分解アンモニアを除去することを特徴とする。このようなCMSをアンモニア吸/脱着吸着剤として用いることにより、従来のPSA工程に比べてより高いレベルで未分解アンモニアの吸/脱着運転容量(working capacity)を確保することができる。
【0029】
そして、本発明のCMSを用いる未分解アンモニアを吸着除去のための工程条件で、アンモニア分解率80~99%、未分解アンモニア濃度0.5~11%、3bar_g~9bar_gの圧力及び20~50℃の温度を有する未分解アンモニアガスを利用することが好ましい。
【0030】
また好ましくは、金属塩化物(metal halide)が担持されたCMSを吸着剤として用いることである。これにより、金属塩化物が担持されていないCMSを吸着剤として用いる場合に比べてより優れた吸着性能を示すことができる。
【0031】
より好ましくは、上記金属塩化物として、MgCl、CaCl、SrCl、MgBr、CaBr及びSrBrから選択された1種以上を用いることである。
【0032】
一方、吸着剤として従来の活性炭を用いたアンモニア吸着/除去工程の運転容量は、温度、圧力条件によって吸着量が異なるが、TSA方式で適用する場合には、金属塩化物(metal halide)で前処理していない場合、0.6mmol/g、MgClで処理した場合には、2.1mmol/gレベルまでの運転容量(working capacity)を有することが知られている。しかし、本工程は、大容量のガス処理のためには、加熱及び冷却に必要な時間及び追加エネルギー使用により経済性が低くなって、大容量の処理が難しく、追加エネルギー使用による温室ガスの発生が増加する問題を抱えている。また、吸着剤として従来の活性炭を用いてPSA方式で未分解アンモニアの吸/脱着工程を適用した場合にも、金属塩化物で前処理していない活性炭では0.77mmol/gレベル、そしてMgClで前処理した場合には9bar_gの条件で1.57mmol/gの運転容量を有することも知られている[アンモニアの再生及び濃縮のための金属前駆体による金属貼着活性炭の吸着及び脱着特性に関する研究(Clean Technol.26(2)2020、137-144)]。
【0033】
このように、吸着剤として通常の活性炭を用いる場合、後述する本発明のCMS又は金属塩化物が担持されたCMSを吸着剤として用いる場合に比べて、吸着能が低下することが分かる。
【0034】
続いて、本発明では、上記低純度水素と窒素で構成されたガスから高純度水素を分離、精製することで、高純度の水素を生産することができる。このような高純度水素を精製する方法として様々な方法が提示されているが、本発明は特定の工程条件に制限されず、様々な工程を制限なく利用することができる。
【発明の実施のための形態】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0036】
(実施例)
CMS(carbon molecular sieve)を未分解アンモニアの除去のための工程に用いてアンモニアの吸/脱着テストを行った。そして、比較のためにMgClが担持されたCMSも未分解アンモニア除去のための吸/脱着テストを行った。ここで、MgClの担持はCMSに対して4wt%レベルになるようにMgClを入れた蒸留水とCMSを混合してMgCl溶液にCMSに完全に担持されるようにした後、混合しながら乾燥させ、次いで、追加的に残留水分を完全に除去するために、窒素雰囲気で200℃で1時間乾燥させた後、アンモニアの吸/脱着実験に用いた。
【0037】
図2は、本発明の一実施例において吸着剤を用いて未反応アンモニアガスを吸、脱着除去するように構成されたアンモニア吸/脱着試験装置に対する断面概略図である。図2に示されたように、back pressure regulatorを介して吸着剤が入っている反応器内の圧力を調節して、目標圧力で持続的にアンモニアの吸着が起こるようにし、アンモニアが吸着されたガス内のアンモニア濃度をアンモニア分析器を用いて持続的に分析した。そして、吸着が完了した場合には、従来のgas lineのバルブを閉じ、下部のN flushing lineを開けて圧力を下げた後、上部にNを供給して脱着する過程を経た。脱着が完了した場合、再びアンモニアが含まれたガスを供給して吸着が行われるように実験装備を構成し、PSA(圧力変動吸着)工程適用時の吸着剤の吸/脱着性能を評価した。
【0038】
一方、この時、アンモニア分解水素生産工程に適用することができる温度、圧力、アンモニアの濃度に応じた様々な条件でのアンモニア吸/脱着試験を行い、その具体的な条件が下記表2に示されている。本実験で、吸着は下記表2の温度と圧力条件で行い、脱着は同じ運転条件または吸着温度よりやや高い条件で、圧力は常圧条件で窒素を流しながら吸着されたアンモニアを脱着させた。この後、アンモニアが完全に脱着された後に、再び下記表2の温度圧力条件でアンモニアを吸/脱着させる過程を3回繰り返した。そして、このような様々な条件でのアンモニア吸/脱着試験の結果も下記表2に示した。
【0039】
また、各条件での未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を図3~7に示した。
【0040】
図3は、本発明の実施例において吸着剤としてCMSを用いて7barの圧力で5%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
【0041】
図4は、本発明の実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて7barの圧力で2%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
【0042】
図5は、本発明の実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて7barの圧力で5%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
【0043】
図6は、本発明の実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて5barの圧力で2%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
【0044】
図7は、本発明の実施例において吸着剤として4wt%のMgClが担持されたCMSを用いて5barの圧力で5%濃度の未分解アンモニア(NH)ガスを吸着したときの回数(cycle)別のアンモニア吸着破過曲線を示す図である。
【0045】
【表2】
【0046】
上記表2及び図3~7に示されたように、吸着実験時に吸着カラムを通過したガス中のアンモニア濃度を測定した結果として、アンモニアの吸着が良好に行われる場合には、排出ガス中のアンモニアがほとんど測定されないことが分かる。
【0047】
通常、従来の活性炭にMgClを担持した場合、7bar_gの条件では1.4mmol/gレベルで吸/脱着運転容量を示したが、本発明の吸着剤であるCMSを用いる場合、MgClの担持がなくても活性炭-MgCl吸着剤と類似した吸着容量を示すことができた。さらに、CMSにMgClを担持する場合には、2倍程度の運転容量が画期的に向上することが分かるが、これは従来の活性炭-MgCl吸着剤で見られる最も高いレベルの運転容量よりも高いレベルの結果であった。
【0048】
一方、吸着曲線を検討してみると、最初の吸着cycleで最も高いレベルの吸着量を示したが、2番目、3番目では吸着量がやや低下することが分かる。これは、吸着剤に吸着された量の全体が脱着せず、吸着剤に残留し続けていることを意味する。
【0049】
この場合、吸着されたアンモニアを完全に除去するためには、TSA方式を適用すれば可能であるが、上述したようにTSA適用時に発生することがある問題点によりPSAを適用することが妥当である。特に、PSA方式で運営することによって追加エネルギーの所要量を最小化しながら、アンモニア分解水素生産工程で生産されるガス中の未分解アンモニアの除去に効果的に用いることができる。
【0050】
以上で説明したとおり、本発明の詳細な説明では、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の範囲から逸脱しない範囲内で様々な変形が可能であることはもちろんである。したがって、本発明の権利範囲は、説明された実施例に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、これと均等なものによって定められなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】