(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】航空機の電力分配ネットワークにおける電気的故障隔離
(51)【国際特許分類】
B64D 27/35 20240101AFI20240426BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20240426BHJP
B64D 25/00 20060101ALI20240426BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B64D27/35
B64D45/00 Z
B64D25/00
H02J3/00 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571693
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2022062636
(87)【国際公開番号】W WO2022243112
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523315441
【氏名又は名称】リリウム ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】LILIUM GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カルピン エド
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラー マーティン
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AB02
5G066HB09
(57)【要約】
航空機の電力システム(300)の電力分配ネットワーク(306)は、それが電力源(A,B,C,D)にわたる、電気負荷(AA,BB,CC,DD)に関する負荷分散をもたらすような、少なくとも1つの通常動作モードで動作され、電力分配ネットワーク(306)は、電気的故障の場合に、電気的故障を有する電力分配ネットワーク(306)のネットワーク部が、電力分配ネットワークの少なくとも1つの他のネットワーク部から隔離されるような、電気的故障隔離をもたらす少なくとも1つの電気的故障緩和動作モードで動作される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気負荷(304)と、複数の電力源(302)と、前記電力源を前記電気負荷に接続するように構成される電力分配ネットワーク(306)とを、各電気負荷が、前記電力分配ネットワークの少なくとも1つの関連する電力レーン(308)を介して少なくとも1つの関連する電力源によって駆動され得るように備える、航空機(200)のための電力システム(300)であって、
前記電力分配ネットワーク(306)は、複数の切替可能または遮断可能な電力リンク(310,316)を備える回路保護装置及び回路切替装置のうちの少なくとも1つを備え、
各電力リンクは、2つの接続ポートを有し、各電力リンクは、第1動作モードにおいて、前記接続ポートの1つに接続される駆動電力レーンまたは駆動電力レーン部から、前記接続ポートの他の1つに接続される被駆動電力レーンまたは被駆動電力レーン部へ電力を伝送するために、前記接続ポートを接続するように構成され、第2動作モードにおいて、前記駆動電力レーンまたは前記駆動電力レーン部と、前記被駆動電力レーンまたは前記被駆動電力レーン部との間の電力の伝送を阻止するために、前記接続ポート間の接続を遮断するように構成され、
前記電力分配ネットワーク(306)は、少なくとも1つの通常動作モードで、また少なくとも1つの電気的故障緩和動作モードで動作するように構成され、
前記電力分配ネットワーク(306)は、前記通常動作モードにおいて、前記複数の電力源の少なくとも1つの電力源グループ(A,B,C,D)が、前記複数の電気負荷の少なくとも1つの関連する電気負荷グループ(AA,BB,CC,DD)を、それに関連する電力レーン(308,314)または電力レーン部、及び、それに関連し、前記第1動作モードである少なくとも1つの電力リンク、を介して、共通して駆動するような、電力源(A,B,C,D)にわたる負荷分散をもたらし、
前記電力分配ネットワーク(306)は、前記電気的故障緩和モードにおいて、電気的故障を有する前記電力分配ネットワークのネットワーク部が、前記第2動作モードである少なくとも1つの電力リンク(314)によって前記電力分配ネットワークの少なくとも1つの他のネットワーク部から隔離されるような、電気的故障隔離をもたらす、
電力システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電力システムであって、前記電力分配ネットワーク(306)は、前記複数の電力源の全ての電力源が、前記複数の電気負荷の全ての電気負荷(AA,BB,CC,DD)を、それぞれの電力レーン(308,314)または電力レーン部、及び前記第1動作モードであるそれぞれの電力リンク(310,314)を介して共通して駆動するような、全ての電力源(A,B,C,D)にわたる負荷分散を、前記通常動作モードにおいてもたらすように構成され、
前記電力分配ネットワーク(306)は、電気的故障によって影響を受けない複数または全ての電力源が、電気的故障によって影響を受けない複数または全ての電気負荷を駆動することを可能とするように、電力源または電気負荷で発生している電気的故障が隔離され得るような態様で、前記電気的故障緩和動作モードを担うように構成される、電力システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力システムであって、前記電力分配ネットワーク(306)は、複数の第1種の電力レーン(308)を備え、
各前記第1種の電力レーンは、別の前記第1種の電力レーンと関連付けられていない、少なくとも1つの関連する電力源(A;B;C;D)と関連し、各前記第1種の電力レーンは、別の前記第1種の電力レーンと関連付けられていない、少なくとも1つの電気負荷(AA;BB;CC;DD)と関連することで、少なくとも1つの関連する前記電力源が、それぞれの前記第1種の電力レーンを介して、少なくとも1つの関連する前記電気負荷と接続されるか、または接続可能であり、必ずしも別の前記第1種の電力レーンを介する駆動を伴うことなく、少なくとも1つの前記電力源が、それぞれの前記第1種の電力レーンを介して少なくとも1つの前記電気負荷を駆動することを可能とする、電力システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電力システムであって、複数の前記第1種の電力レーン(308)は、前記電力分配ネットワークの接続レーン装置を介して接続されるか、または接続可能であり、前記接続レーン装置は、1つまたは複数の第2種の電力レーン(314)を含み、少なくとも1つの前記第2種の電力レーンを介して、これらの前記第1種の電力レーン間で電力を伝送することによって、前記第1種の電力レーンの少なくとも1つのグループと関連付けられるか、または全ての前記第1種の電力レーンと関連付けられる電力源(A,B,C,D)にわたる、これらの前記第1種の電力レーンと関連付けられる電気負荷(AA,BB,CC,DD)に関する負荷分散を可能にする、電力システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電力システムであって、前記第1種の電力レーン(308)は、それぞれ第1種の電力リンク(310)を備え、その前記第1動作モードにおいて、この前記第1種の電力リンクを介した、関連する少なくとも1つの前記電力源(A;B;C;D)から関連する少なくとも1つの前記電気負荷(AA;BB;CC;DD)への電力の伝送を可能にし、その前記第2動作モードにおいて、この前記第1種の電力リンクを介した、関連する少なくとも1つの前記電力源から関連する少なくとも1つの前記電気負荷への電力の伝送を阻止し、各前記第1種の電力リンクは、好ましくは、電気的故障を示す少なくとも1つの予め設定された、または予め設定可能な電気的トリップ条件に応答して、第1の大きさのオーダーのトリップ時間間隔内に、前記第1動作モードから前記第2動作モードへ、その動作モードを変更するように構成される、電力システム。
【請求項6】
請求項4及び場合により請求項5に記載の電力システムであって、前記第2種の電力レーン(314)は、それぞれ第2種の電力リンク(316)を備え、その第1動作モードにおいて、この前記第2種の電力リンクを介した、前記第1種の電力レーン(310)間の電力の伝送を可能にし、その第2動作モードにおいて、この前記第2種の電力リンクを介した、前記第1種の電力レーン(310)間の電力の伝送を阻止し、各前記第2種の電力リンクは、好ましくは、電気的故障を示す少なくとも1つの予め設定された、または予め設定可能な電気的トリップ条件に応答して、第2の大きさのオーダーのトリップ時間間隔内に、前記第1動作モードから前記第2動作モードへ、その動作モードを変更するように構成される、電力システム。
【請求項7】
請求項5及び6に記載の電力システムであって、前記第1種の電力リンク(310)の前記第1の大きさのオーダーのトリップ時間間隔は、前記第2種の電力リンク(316)の前記第2の大きさのオーダーのトリップ時間間隔を大幅に上回る、電力システム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電力システムであって、各前記第2種の電力リンク(316)は、前記電力分配ネットワークの関連するソリッドステート電力コントローラによって設けられ、これはマイクロコントローラと、前記第2種の電力リンクを形成する少なくとも1つの負荷チャネルと、前記負荷チャネルに含まれ、前記マイクロコントローラの制御下で動作可能な少なくとも1つのソリッドステートスイッチと、を備え、前記マイクロコントローラは、前記ソリッドステートスイッチを、前記第2種の電力リンクの前記第1動作モードに対応する導通状態と、前記第2種の電力リンクの前記第2動作モードに対応する非導通状態との間で切り替えるように構成され、前記ソリッドステートスイッチを前記導通状態から前記非導通状態に切り替えることによって前記電気的トリップ条件の発生に応答するために、前記負荷チャネルの少なくとも1つの現在の電気的状態を監視するように構成される、電力システム。
【請求項9】
請求項1~8のうちの1項に記載の電力システムであって、前記電力分配ネットワーク(306)は、電気的故障の発生に応答して前記通常動作モードから前記電気的故障緩和モードに切り替わるとき、少なくとも3つの故障隔離段階をその後担うことによって電気的故障隔離をもたらすように構成され、
第1故障隔離段階は、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わる少なくとも1つの電力リンク(316)によって、電力レーン(308)の互いからの分離をもたらし、
後続の第2故障隔離段階は、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わる電力リンク(310)によって、電気的故障によって未だ影響を受ける電力レーン(308a;308b;308c;308d)内の故障隔離をもたらし、
後続の第3故障隔離段階は、その第2動作モードからその第1動作モードに切り替わり、前記第2動作モードである少なくとも1つの他の電力リンク(316)によって電気的故障から隔離される少なくとも1つの電力リンク(316)によって、電気的故障によって影響を受けない電力源にわたる、電気的故障によって影響を受けない電気負荷に関する負荷分散の部分的回復をもたらす、
電力システム。
【請求項10】
複数の電気負荷(304)と、複数の電力源(302)と、前記電力源を前記電気負荷に接続するように構成される電力分配ネットワーク(306)とを、各電気負荷が、前記電力分配ネットワークの少なくとも1つの関連する電力レーンを介して、少なくとも1つの関連する電力源によって駆動され得るように備える、航空機(200)の電力システム(300)を動作させる方法であって、前記電力分配ネットワーク(306)は、複数の切替可能な、または遮断可能な電力リンク(310,316)を備え、それぞれは、前記電力リンクの第1動作モードにおいて、それぞれの前記電力レーンを介した電力の伝送を可能にするために、また前記電力リンクの第2動作モードにおいて、それぞれの前記電力レーンを介した電力の伝送を阻止するために、前記電力分配ネットワークのそれぞれの電力レーン内に設けられ、
前記方法は、前記電力分配ネットワーク(306)を少なくとも1つの通常動作モードで動作させることを含み、これは、前記複数の電力源の少なくとも1つの電力源グループ(A,B,C,D)が、前記第1動作モードである電力リンクを備える少なくとも1つの電力レーンを含むそれぞれの電力レーン(308,314)を介して、前記複数の電気負荷の少なくとも1つの関連する電気負荷グループ(AA,BB,CC,DD)を共通して駆動するような、電力源(A,B,C,D)にわたる負荷分散をもたらし、
前記方法は、前記電力分配ネットワーク(306)を少なくとも1つの電気的故障緩和動作モードで動作させることをさらに含み、これは、電気的故障を有する前記電力分配ネットワークのネットワーク部が、前記第2動作モードである少なくとも1つの電力リンクによって、前記電力分配ネットワークの少なくとも1つの他のネットワーク部から隔離されるような、電気的故障隔離をもたらす、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記電力分配ネットワーク(306)は、それぞれが、それぞれの第1種の電力リンク(310)を備えている第1種の電力レーン(308)を備え、前記電力分配ネットワーク(306)は、それぞれが、それぞれの第2種の電力リンク(316)を備えている1つまたは複数の第2種の電力レーン(314)を備え、
各前記第1種の電力レーン(308)は、少なくとも1つの関連する電力源(302)を、少なくとも1つの関連する電気負荷(304)に接続することで、別の前記第1種の電力レーンを介する駆動を必ずしも伴うことなく、少なくとも1つの関連する前記電力源が、少なくとも1つの関連する前記電気負荷を駆動することを可能とし、
各前記第2種の電力レーン(314)は、少なくとも2つの関連する前記第1種の電力レーン(310)と接続されるか、または接続可能であることにより、前記第1種の電力レーンの間の電力の伝送を可能として、これらの前記第1種の電力レーンに関連付けられる前記電力源(A,B,C,D)にわたる、これらの前記第1種の電力レーンに関連付けられる前記電気負荷(AA,BB,CC,DD)に関する負荷分散を達成可能とし、
前記方法は、前記電気的故障緩和モードにおいて電気的故障を隔離するために、1つまたは複数の前記第2種の電力リンク(316)の動作モードを、前記第1動作モードから前記第2動作モードに変更することを含み、
前記方法は、前記通常動作モードにおける電力源(A,B,C,D)にわたる負荷分散のために、または/及び、前記電気的故障緩和モードにおける電力源にわたる部分的負荷分散の回復のために、1つまたは複数の前記第2種の電力リンク(316)を前記第1動作モードに維持することを含み、または/かつ、1つまたは複数の前記第2種の電力リンク(316)の動作モードを、前記第2動作モードから前記第1動作モードに変更することを含む、
方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法であって、
-少なくとも1つの電力リンク(316)を、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替えることにより、電力レーン(314a,314b,314c,314d)の互いからの分離をもたらす、第1故障隔離ステップと、
-電力リンク(310)を、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替えることにより、電気的故障によって未だ影響を受ける電力レーン(314a;314b;314c;314d)内の故障隔離をもたらす、後続の第2故障隔離ステップと、
-前記第2動作モードである少なくとも1つの他の電力リンク(316)によって電気的故障から隔離される少なくとも1つの電力リンク(316)を、その第2動作モードからその第1動作モードに切り替えることによって、電気的故障によって影響を受けない前記電力源にわたる、電気的故障によって影響を受けない電気負荷に関する負荷分散の部分的回復をもたらす、後続の第3故障隔離ステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1~9のうちの1項に記載の電力システム(300)を備える航空機(200)であって、好ましくは、一人乗り用の航空機、垂直離着陸能力を有する航空機、及び先尾翼型の航空機のうちの少なくとも1つである、航空機(200)。
【請求項14】
請求項13に記載の航空機であって、電力システム(300)は、前記航空機の安全運航の維持に重大な関連性を有する航空機装置の形態の共通のタイプの電気負荷の少なくとも1つのグループを備え、前記航空機装置は、前記航空機の胴体(203)及び前記航空機の翼(202,204,206,208)のうちの一方、または両方に、少なくとも2つの共通のタイプの前記航空機装置をそれぞれ有する複数の前記航空機装置の様々なサブグループが、前記航空機の飛行性能及び可制御性を危うくすることなく故障し得るように、故障に対する回復力を達成するための数及び構成で配置される、航空機。
【請求項15】
請求項14に記載の航空機であって、前記サブグループの、または各それぞれのサブグループの前記航空機装置は、前記電力システム(300)の前記電力分配ネットワーク(306)の1つの特定の共通の電力レーン(308)と関連付けられ、この共通の電力レーンを介して共通に駆動可能となり、前記サブグループの、または各それぞれのサブグループの前記航空機装置は、前記航空機の胴体(203)及び前記航空機の翼(202,204,206,208)の一方または両方に、対称的に分布して配置されて設けられることにより、前記共通の電力レーンに直接、または間接的に影響を及ぼし、このサブグループの前記航空機装置の故障をもたらす電気的故障が、前記航空機の飛行性能及び可制御性を危うくしないようにする、航空機。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、概して、航空機のための電力システムに関し、そのような電力システムを備える航空機に関する。例えば、航空機は、前翼または先尾翼に沿って、また後翼または主翼に沿って分布する多数の揚力/推力ユニットを備える先尾翼型の航空機であってもよい。電力システムは、多数の揚力/推力ユニット及び多数のフラップアクチュエータのうちの少なくとも一方などの複数の電気負荷、多数の蓄電池または電池ユニットなどの複数の電力源、及び電力源を電気負荷に接続するように構成される電力分配ネットワークを、各電気負荷が、電力分配ネットワークの少なくとも1つの関連する電力レーンを介して、少なくとも1つの関連する電力源によって駆動され得るように備える。本発明は、さらに、航空機の電力システムを動作させるための方法に関する。
[背景]
航空機は、概して、固定翼型と回転翼型とに分類され得る。固定翼航空機は、通常、制御可能に配置される場合に1つの目的地から別の目的地への航空機の移動を案内する複数の動翼を備える。航空機が備える動翼の数及び種類は様々であり得る。一次操縦翼面は、通常、ピッチ、ヨー、及びロール軸に関する航空機の運動を制御するために用いられるものである。二次操縦翼面は、通常、航空機のリフトまたはドラッグ(または両方)に影響を与えるために用いられるものである。通常、一次操縦翼面は、エレベータ、エルロン及びラダーを含み、通常二次操縦翼面は、複数のフラップ、スラット、スピードブレーキ、及びスポイラを含む。
【0002】
例えばヘリコプタなどの回転翼航空機は、通常、揚力を生成するエアフォイルから分離された動翼を備えていないが、回転翼を構成するエアフォイルは、ピッチ及びロールのためのサイクリック制御、及び揚力のためのコレクティブ制御を行う。
【0003】
さらに、推進エンジンに基づく垂直離着陸能力を有する航空機が周知であり、推進エンジンは、航空機の左右軸またはピッチ軸に対して回転可能に取り付けられる。推進エンジンは、巡航飛行位置と、離陸/着陸位置との間で制御可能に移動可能である。巡航位置において、エンジンは前方への推力をもたらし、空気中を通る航空機の移動は、適切な動翼によって制御される。離陸/着陸位置において、推進エンジンは、エンジンによってもたらされる推力に基づいて垂直離陸または着陸を可能にするために、下方に角度が付けられる。
【0004】
垂直離着陸能力を有し、推進エンジンとして電動のダクトプロペラを備えるこのような型の航空機は、US2016/0023754A1及びUS2016/0311522A1及び同一のパテントファミリーのさらなる公報により、本出願人リリウムイーエアクラフト(Lilium eAircraft)GmbHによって提案されてきた。本出願人は、その一方でリリウムジェットと称される航空機を開発しており、これは先尾翼型の航空機であり、電動のダクトプロペラの形態の複数の左前方エンジン、複数の右前方エンジン、複数の左後方エンジン、及び複数の右後方エンジンを備え、これらは、先尾翼型の航空機の前方の左及び右先尾翼、及び左及び右後翼または主翼のそれぞれのフラップに取り付けられる。このリリウムジェットの最初の試験飛行は、2019年10月1日に実施された。
【0005】
垂直離着陸能力を有し、電気で動作する別の型の航空機は、US2020/0010187A1で周知である。航空機は、それぞれが、2つの独立した巻線を備え、それにより電気モータはデュアル供給型である、電気モータを備える複数の推進アセンブリを備える。複数の蓄電池ユニットは、各電気モータの第1巻線が蓄電池ユニットのうちの1つに基づいて駆動でき、各電気モータの第2巻線が別の蓄電池ユニットに基づいて駆動し得るように、電気モータに2つを組にして関連付けられる。耐故障性を実現することを目的とする様々な電力システムアーキテクチャが開示される。第1実施形態によれば、6つの電気モータ及び6つの蓄電池ユニットは、各蓄電池ユニットが2つの電気モータに電力を供給し、各電気モータが2つの電池ユニットから電力を受けるように、リングアーキテクチャで配置される。第2実施形態によれば、6つの電気モータ及び4つの蓄電池ユニットは、各蓄電池ユニットが3つの電気モータに電力を供給し、各電気モータが、2つの電池ユニットから電力を受けるように、二重アーキテクチャ(doublet architecture)で配置される。第3実施形態によれば、6つの電気モータ及び6つの蓄電池ユニットは、各蓄電池ユニットが2つのモータに電力を供給し、各電気モータが2つの電池ユニットから電力を受けるように、ヘキサグラムアーキテクチャで配置される。第4実施形態によれば、6つの電気モータ及び4つの蓄電池ユニットは、各蓄電池ユニットが3つの電気モータに電力を供給し、各電気モータが2つの電池ユニットから電力を受けるようにスターアーキテクチャで配置される。第5の実施形態によれば、6つの電気モータ及び4つの蓄電池ユニットは、各蓄電池ユニットが3つの電気モータに電力を供給し、各電気モータが2つの電池ユニットから電力を受けるようにスターアーキテクチャで配置される。第6実施形態によれば、6つの電気モータ及び4つの蓄電池ユニットは、各蓄電池ユニットが3つの電気モータに電力を供給し、各電気モータが、2つの電池ユニットから電力を受けるように、メッシュアーキテクチャで配置される。メッシュアーキテクチャによれば、第1組の蓄電池ユニットは、共通して関連する第1電気モータの両方の巻線を駆動し、第2組の蓄電池ユニットは、共通して関連する第2電気モータの両方の巻線を駆動する。
【0006】
あらゆるこのような種類の航空機、及びあらゆる他の型の航空機にとって、機械的な故障に対する回復力は最も重要な側面のうちの1つであり、これは航空機の電力分配ネットワークにも大いに関係する。
【0007】
航空機などの安全性重視のアプリケーションのための電力分配ネットワークは全て内在する矛盾を抱えており、つまり、分離は故障伝播を阻止するが、統合は電力源にわたる効率的な負荷分散を可能にする。典型的なアプローチは、1つのレーンに電気的故障を含む分離された「電力レーン」を含むが、電力源にわたる負荷分散による利益は得ない。電気的故障がネットワーク全体にわたって伝播し、一時的な、または定常的な停電を引き起こすので、統合を用いるあらゆるアプローチは内在的に安全でないと考えられている。それゆえに、安全性重視のアプリケーションのための典型的な電力分配ネットワークは、分離の方向に厳格に従い、それゆえに統合の利益を得る機会を逃す。
【0008】
従来のアプローチによれば、ある特定の統合が、故障の発生に応答して、この故障を補償するために導入されることがある。例えば、従来型の航空機電気システムは、統合をもたらすために電気機械式リレーを用いることがあるが、安全許容値の低下を伴い、それゆえに次のシステム故障が展開されるのみである。
【0009】
現在の状況及び必要性に応じて電力分配ネットワークの関連する部分の間での送電を可能にし、禁止するために、電力分配ネットワークにおいて、ソリッドステート及び電気機械式の切替装置を用いることが知られている。
【0010】
さらに、短絡が発生したときに、電気配線及び下流の電気負荷を保護するために、電力分配ネットワークにおいて、ソリッドステート及び電気機械式の回路遮断器などのソリッドステート及び電気機械式の回路保護装置(SPD)を用いることが知られている。また、いわゆる「ソリッドステート電力コントローラ」または「半導体電力コントローラ」を用いることもまた周知であり、これらは、航空機の電力分配ネットワークを含む電力分配ネットワークにおける回路保護装置として、共通して「SSPC」と称され、従来の電気機械式の回路遮断器またはさらに「旧式の」ヒューズと置き換わる。
【0011】
ソリッドステート電力コントローラ(SSPC)は、ヒューズまたは別の種類の回路遮断器のような回路保護装置であり、それゆえに、短絡が発生したときに、電気配線及び下流の電気負荷を保護することを目的とする。従来の電気機械式の装置(ヒューズ及び回路遮断器)と比較すると、SSPCは、短絡が発生したときにより高速で開放する、より軽量にすることができ、より小さな体積を使用し得る、ソフトウェアでリセット可能である(メンテナンスのために手作業で接触する、または予備のヒューズを運ぶ必要が無い)、電流及び電圧トリップ定格に関して非常に柔軟である、潜在的な故障を回避するためにセルフテストをし得る、電気システムの健全性に関するデータを記録し得る、そして切替装置の機能を含むさらなる機能を実行し得る、などの多数の利点を有する。この目的のために、SSPCは、マイクロコントローラ、上位の制御エンティティとデータ通信するための通信用インタフェース、各負荷チャネルの少なくとも1つの電気的状態を監視するための監視機能を有する1つまたは複数の負荷チャネル、及び、例えば少なくとも1つの金属酸化膜電界効果トランジスタ(MOSFET)、少なくとも1つのバイポーラトランジスタ(BJT)、シリコン制御整流器(SCR)及びトライアックのような各負荷チャネル内のソリッドステートスイッチ、を含む。マイクロコントローラは、それぞれの負荷チャネルを通ってそれぞれの負荷へと流れる電流を含む少なくとも1つの電気的状態を監視し、例えば検出された電流がある閾値を超過するといった電気トリップ条件が発生した場合に、ソリッドステートスイッチに開放するように命令する。複数の電気トリップ条件が、異なる種類の電気的故障を解決するために設定されてもよい。
【0012】
例えば、少なくとも1つの電気システムコントローラ(ESC)を有する乗り物管理システム(VMS)から、より多くのSSPC(例えば、>40SPP)の集中制御向けに最適化される階層的アーキテクチャなどの様々なSSPC分配アーキテクチャが周知である。制御は、ソリッドステート電力マネージャ(SSPM)を介して達成され、これらは2次電力分配ユニット(SPDU)内の関連するSSPCと共にグループ化される。同様に周知のより少ない階層アーキテクチャは、通常、乗り物管理システム(VMS)からのより少ない数のSSPC(例えば、<40SPP)の集中制御のために用いられる。SSPCは、1次電力分配ユニット(PPDU)内でグループ化される。SSPC分配アーキテクチャは、乗り物管理システム(VMS)内に少なくとも2つの電気システムコントローラ(ESC)を有し、各2次電力分配ユニット(SPDU)内に少なくとも2つのソリッドステート電力マネージャ(SSPM)を備えることによって、冗長性をもたらしてもよい。
【0013】
様々な電気負荷または航空機装置に電力を供給するための蓄電池または蓄電池ユニットの形態の複数の電力源を有する電動航空機の電力システムにとって、これらの電力源の不均衡な放電は好ましくなく、問題を引き起こし得る。加えて、蓄電池の不均衡な放電によって航続距離が悪影響を受け得る。航空機の高い性能を実現するためには、揚力/推力ユニットに対する駆動力の増加を必要とする飛行操縦などの少なくともある特定の状況において、複数の揚力/推力ユニットのそれぞれなどの電気負荷または航空機装置のそれぞれが、複数の独立した電力源によって駆動され得るとすれば好ましい。
【0014】
上述を考慮して、本発明の目的は、電気的故障に対して、効率的な方法で十分な回復力を実現することを可能にする、航空機のための電力システム及び対応する動作方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、実現可能な航続距離と共に駆動力の増加も必要とする飛行操縦に関して高い航空機性能を可能にする、航空機のための電力システム及び対応する動作方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、蓄電池または蓄電池ユニットの形態の電力源の均一な放電を実現することを可能にする、航空機のための電力システム及び対応する動作方法を提供することである。
[発明の概要]
これらの目的のうちの少なくとも1つを実現するために、本発明は、複数の電気負荷、複数の電力源、及び電力源を電気負荷と接続するように構成される電力分配ネットワークを、各電気負荷が、電力分配ネットワークの少なくとも1つの関連する電力レーンを介して少なくとも1つの関連する電力源によって駆動され得るように備える、航空機のための電力システムを提供する。
【0017】
電力分配ネットワークは、複数の切替可能な、または遮断可能な電力リンクを備える回路保護装置及び回路切替装置のうちの少なくとも1つを備え、各電力リンクは、2つの接続ポートを有し、各電力リンクは、第1動作モードにおいて、電力を、接続ポートの1つに接続される駆動電力レーンまたは駆動電力レーン部から接続ポートの他の1つに接続される被駆動電力レーンまたは被駆動電力レーン部へ伝送するために、接続ポートを接続するように構成され、第2動作モードにおいて、駆動電力レーンまたは駆動電力レーン部と、被駆動電力レーンまたは被駆動電力レーン部との間の電力の伝送を阻止するために、接続ポート間の接続を遮断するように構成される。
【0018】
電力分配ネットワークは、少なくとも1つの通常動作モード及び少なくとも1つの電気的故障緩和動作モードで動作するように構成される。
【0019】
電力分配ネットワークは、通常動作モードにおいて、上記複数の電力源の少なくとも1つの電力源グループが、上記複数の電気負荷の少なくとも1つの関連する電気負荷グループを、それと関連する電力レーンまたは電力レーン部、及びそれと関連し、第1動作モードである少なくとも1つの電力リンクを介して共通して駆動するような、電力源にわたる負荷分散をもたらす。
【0020】
電力分配ネットワークは、電気的故障緩和モードにおいて、電気的故障を有する電力分配ネットワークのネットワーク部が、第2動作モードである少なくとも1つの電力リンクによって、電力分配ネットワークの少なくとも1つの他のネットワーク部から隔離されるような電気的故障隔離をもたらす。
【0021】
提案される電力システムは、分離された電気的ネットワークの利点と共に、統合された電気的ネットワークの利点をも結び付けることを可能にする。航空機の通常運航において想定される通常動作モードにおいて、ネットワークの電力レーンの間の統合は、電力源にわたる効率的な負荷分散を可能にする。電気的故障が発生した場合に、電力分配ネットワークは電気的故障緩和動作モードを担い、これは、関係する電力レーンの間の分離と、それと共に電気的故障の隔離をもたらす。
【0022】
このような統合は、従来のアプローチによれば、飛行のような安全重視のアプリケーションにとって安全でないと考えられるが、本発明によれば、統合された電気的ネットワークは、航空機の通常動作のために、統合に起因する全てのその利点と共に実現され得る。
【0023】
それと共に、本発明の電力システムは、航空機の通常動作において、分離された電力レーンの使用を通して、所定の電力源に変更不可で割り当てられる所定の電気負荷を備える、航空機の従来の電力分配ネットワークとは実質的に区別される。この割り当ては、電力源に関する不均一な電力需要をもたらし、これは、特に電池式の電動の乗り物/電動航空機アプリケーションのために最適ではない。次に、電力レーンの故障に続いて、電気負荷への供給の継続性をもたらすために、分離は、ある程度の統合を導入することによって中断されなければならない。この分離の喪失は、安全マージンの低下をもたらす。
【0024】
本発明によれば、完全に異なるアプローチが追及される。複数または全ての電力源、及び複数または全ての電気負荷が、通常動作において、統合されるかまたは共に接続され、これは、電力源にわたる負荷分散のために、及びそれと共に、電力源に対する均一な電力需要のために最適である。電力源として機能する蓄電池が均一に放電される。あらゆる電気的故障は、それらが伝播し得る前に安全に隔離され、その後故障が消滅した後で、統合が安全に再構築されることができ、ネットワークは通常動作に戻る。この電気的故障隔離は、ソリッドステート電力コントローラ(SSPC)などの適切な技術的要素を用いることによって極めて高速な態様でなされることができ、これは、故障した電力源または故障した負荷を隔離する目的ではなく、電気的故障を緩和するために意図的に分離を導入する目的で、本発明による第1段階の即時隔離として用いられてもよい。
【0025】
標準的な統合されたネットワークと比較すると、意図的な分離による故障隔離は、その故障を容易且つ迅速に消滅させることが可能である。標準的な統合されたネットワークにおける場合には当てはまるであろう多数の電力源に反して、1つまたは限定された数の電力源のみが故障に供給するとき、分離された、または部分的に分離された電力分配ネットワークにおいて故障を消滅させることはより容易であるためである。
【0026】
電力分配ネットワークは、電力分配ネットワークによって連続的に採用される、複数の異なる部分的負荷分散モードに従い、時間変化する態様で、電力源にわたる、関連する電気負荷に関する部分的負荷分散をもたらして、上記複数の電力源の複数の電力源グループと、上記複数の電気負荷の複数の関連する電気負荷グループが設けられ、少なくとも1つの関連する電気負荷グループを共通して駆動するために、ある時点でアクティブである電力源のそれぞれの1つまたは複数のグループが、連続的に、好ましくは周期的に変化するように構成されてもよい。しかしながら、本開示との関連で、通常動作モードにおける電力源にわたる永続的で連続的な負荷分散がより好ましい。
【0027】
有利にするために、電力分配ネットワークは、上記電力源グループの電力源で発生する電気的故障が、上記電力源グループの少なくとも1つの他の電力源から、また上記電気負荷グループの少なくとも1つの電気負荷から隔離され得るような、また上記電気負荷グループの電気負荷で発生する電気的故障が、上記電力源グループの少なくとも1つの電力源、及び上記電気負荷グループの少なくとも1つの他の電気負荷から隔離され得るような態様で、電気的故障緩和動作モードを担うように構成されることで、電気的故障によって影響を受けず、上記電力源グループに属する少なくとも1つの電力源が、電気的故障によって影響を受けず、上記電気負荷グループに属する少なくとも1つの電気負荷を駆動することを可能としてもよく、電気的故障の隔離は、その動作モードを、第1動作モードから第2動作モードに変更する少なくとも1つの電力リンクによって達成される。
【0028】
必要に応じて、複数の同じ種類の電気負荷が、電気負荷グループを形成してもよい。代替として、複数の異なる種類の電気負荷が、電気負荷グループを形成してもよい。そのような種類の複数の異なるグループが設けられてもよい。
【0029】
好適な実施形態によれば、電力分配ネットワークは、上記複数の電力源の全ての電力源が、それぞれの電力レーンまたは電力レーン部、及び第1動作モードであるそれぞれの電力リンクを介して、上記複数の電気負荷の全ての電気負荷を共通して駆動するような、全ての電力源にわたる負荷分散を、通常動作モードにおいてもたらすように構成され、電力分配ネットワークは、電気的故障によって影響を受けない複数または全ての電力源が、電気的故障によって影響を受けない複数または全ての電気負荷を駆動することを可能とするような、電力源で、または電気負荷で発生する電気的故障が隔離され得るような方法で、電気的故障緩和動作モードを担うように構成される。
【0030】
電力分配ネットワーク及びその電力レーンの配置のアーキテクチャ及び構造に関する制限は無い。好適なアプローチによれば、電力分配ネットワークは、複数の第1種の電力レーンを備えてもよく、各第1種の電力レーンは、別の第1種の電力レーンと関連付けられていない、関連する少なくとも1つの関連する電力源を有し、各第1種の電力レーンは、別の第1種の電力レーンと関連付けられていない、関連する少なくとも1つの電気負荷を有することにより、少なくとも1つの関連する電力源が、それぞれの第1種の電力レーンを介して少なくとも1つの関連する電気負荷と接続されるか、または接続可能であるようにすることで、必ずしも別の第1種の電力レーンを介する駆動を伴うことなく、少なくとも1つの電力源が、それぞれの第1種の電力レーンを介して少なくとも1つの電気負荷を駆動することを可能にする。先に言及された従来のアプローチによれば、これらの第1種の電力レーンは、常に、または航空機の通常動作中に、互いから分離されるであろう。
【0031】
複数の第1種の電力レーン間の統合は、第1種の電力レーンに加えて設けられる別の種類の電力レーンによって実現されてもよい。この点において、複数の第1種の電力レーンは、電力分配ネットワークの接続レーン装置を介して接続されるか、または接続可能であり、接続レーン装置は、1つまたは複数の第2種の電力レーンを含み、少なくとも1つの第2種の電力レーンを介して、これらの第1種の電力レーン間で電力を伝送することによって、少なくとも1つの第1種の電力レーングループと関連付けられるか、または全ての第1種の電力レーンと関連付けられる電力源にわたる、これらの第1種の電力レーンと関連付けられる電気負荷に関する負荷分散を可能にすることが提案される。
【0032】
接続レーン装置は、第1種の電力レーンのそれぞれと関連付けられるそれぞれの第2種の電力レーンを介して接続レーンに接続されるか、または接続可能である、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの第1種の電力レーンと関連付けられる少なくとも1つの接続レーンを有利に含んでもよい。
【0033】
接続レーン装置は、好ましくは、1つまたは複数の第2種の電力レーンを含んでもよく、2つの第1種の電力レーンが、第2種の電力レーンを介して接続されるか、または接続可能であるように、各第2種の電力レーンは、関連する2つの第1種の電力レーンを有し、それにより、第2種の電力レーンを介して2つの第1種の電力レーンの間で電力を伝送することによって、2つの第1種の電力レーンに関連付けられる電力源にわたる、2つの第1種の電力レーンに関連付けられる電気負荷に関する負荷分散を可能にする。この点において、第2種の電力レーンを介する2つの第1種の電力レーン間の電力の伝送は、必ずしも、別の第2種の電力レーンを介する電力の伝送に関与しないことが好ましい。
【0034】
第1種及び第2種の電力レーンが、様々な異なる方法で、または様々なトポロジーに従って配置されてもよい。概して、電力分配ネットワークが、そのような態様で複数の第1種の電力レーンと関連付けられる、2つ、3つ、またはそれより多くの第2種の電力レーンを備える場合に、上記の複数の第1種の電力レーンのそれぞれは、それぞれの第2種の電力レーンを介して、第1種の電力レーンの他の少なくとも1つに接続されるか、または接続可能であることが適切であろう。
【0035】
この点において、第1実施アプローチによれば、上記複数の第1種の電力レーン、または上記複数の第1種の電力レーンのサブグループのそれぞれは、それぞれの第2種の電力レーンを介して、上記複数の第1種の電力レーン、または上記第1種の電力レーンのサブグループの他の2つと接続されるか、または接続可能であることにより、リング型トポロジーにおける電気負荷にわたる負荷分散を可能とすることがさらに提案される。
【0036】
追加で、または代替として実施される第2実施アプローチによれば、上記複数の第1種の電力レーン、または上記複数の第1種の電力レーンのサブグループのうちの2つの電力レーンが、それぞれの第2種の電力レーンを介して、上記複数の第1種の電力レーン、または上記第1種の電力レーンのサブグループのうちのただ1つの他の電力レーンと、または互いに、接続されるか、または接続可能であり、上記複数の第1種の電力レーン、または上記複数の第1種の電力レーンの上記サブグループのそれぞれの他の電力レーンは、1つまたは複数のそのような他の電力レーンが設けられる場合に、それぞれの第2種の電力レーンを介して、上記複数の第1種の電力レーン、または上記第1種の電力レーンのサブグループのうちの2つの他の電力レーンと接続されるか、または接続可能であることにより、全てのこれらの第2種の電力レーンに沿ったライン型トポロジーにおける電気負荷にわたる負荷分散を可能とすることが提案される。これは、2つの第1種の電力レーンのみが設けられる場合も含み、これらは、第2種の電力レーンを介して互いに接続されるか、または接続可能である。
【0037】
第1及び第2実施アプローチの代替として、または第1及び第2実施アプローチの一方または両方と一緒に実施される第3実施アプローチによれば、上記複数の第1種の電力レーン、または上記複数の第1種の電力レーンのサブグループのうちの1つの電力レーンが、それぞれの第2種の電力レーンを介して、上記複数の第1種の電力レーン、または上記第1種の電力レーンのサブグループのうちの少なくとも3つの他の電力レーンと接続されるか、または接続可能であることにより、スター型トポロジーにおける電気負荷にわたる負荷分散を可能とすることが提案される。これらの少なくとも3つの他の電力レーンのそれぞれは、必要に応じて、上述のライン型トポロジーに従って、複数の電力レーンを含む電力レーンラインの出発点となる電力レーンであってもよい。
【0038】
第3実施アプローチの好適な変形によれば、接続レーン装置の接続レーンが、それぞれの第2種の電力レーンを介して、上記複数の第1種の電力レーン、または上記複数の第1種の電力レーンのサブグループのうちの少なくとも3つの電力レーンと接続されるか、または接続可能であることにより、スター型トポロジーにおける電気負荷にわたる負荷分散を可能とすることが提案される。これらの少なくとも3つの他の電力レーンのそれぞれは、この場合もまた、必要に応じて、上述のライン型トポロジーに従って、複数の電力レーンを含む電力レーンラインの出発点となる電力レーンであってもよい。
【0039】
第3実施アプローチの変形は、第1種の電力レーンの代わりの接続レーンが、スター型トポロジーのハブまたは中心として機能するといった大きな利点を有し、それにより、このハブまたは中心が電気的故障によって直接影響を受け得る可能性は極めて低い。このハブまたは中心は、関連する第1種の電力レーンの何れもから、それと共に、ここで発生する可能性のあるあらゆる電気的故障から、それぞれの第2種の電力リンクによって遮断されてもよい。これは、第1種の電力レーンの何れか1つに直接影響を及ぼす電気的故障が発生したとしても、部分的負荷分散を維持することを可能にする。
【0040】
好ましくは、第1種の電力レーンは、それぞれ第1種の電力リンクを備え、これは、その第1動作モードにおいて、この第1種の電力リンクを介した、関連する少なくとも1つの電力源から関連する少なくとも1つの電気負荷への電力の伝送を可能にし、その第2動作モードにおいて、この第1種の電力リンクを介した、関連する少なくとも1つの電力源から関連する少なくとも1つの電気負荷への電力の伝送を阻止する。
【0041】
このような、第1種の電力リンクは、本質的に、ヒューズのような従来の回路遮断器、または電気機械式またはソリッドステート回路保護装置に対応し、これは回路の短絡が発生したときに、電気配線及び下流の電気負荷を保護する働きをする。それゆえに、各第1種の電力リンクは、電気的故障を示す、少なくとも1つの予め設定された、または予め設定可能な電気的トリップ条件に応答して、第1の大きさのオーダー(桁、規模、程度)のトリップ時間間隔内に第1動作モードから第2動作モードへ、その動作モードを変更するように構成されてもよい。
【0042】
第1種の電力リンクは、1つまたは複数の予め定められた電気的トリップ条件に従いトリップするように構成されてもよい。当該技術において周知の任意の適切な電気的トリップ条件が実施されてもよい。この実施は、従来のヒューズ及び回路遮断器のようなハードウェアで実施されてもよく、それらは製造業者によって実施された予め規定された一連のトリップ曲線などの予め規定された電気的トリップ条件を有し、それにより、装置にトリップ曲線を変更するように命令するとき、装置の品番を変更しなければならないであろう。
【0043】
例えば、少なくとも1つの予め定められた電気的トリップ条件が、i)第1種の電力リンクを介して伝送され、予め定められた電流トリップ閾値を超過する電流、ii)予め定められた基準時間間隔内で第1種の電力リンクを介して浪費され、予め定められた電気的i2tトリップ閾値を超過する電気的エネルギを表すi2t量、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0044】
好適な実施によれば、各第1種の電力リンクは、例えば、電気機械式またはソリッドステート回路遮断器によるなど、電力分配ネットワークの電気機械式またはソリッドステート回路保護装置によって設けられる。ソリッドステート装置が好ましい。第1種の電力リンクが、電力分配ネットワークの1つまたは複数のソリッドステート電力コントローラ(SSPC)によって実現されることは排除されない。
【0045】
電力分配ネットワークが、統合をもたらす構成、及び分離をもたらす構成を担い得ることを可能にするために、それぞれが第2種の電力リンクを備える第2種の電力レーンが提案され、それは、その第1動作モードにおいて、この第2種の電力リンクを介した、第1種の電力レーンの間の電力の伝送を可能にし、その第2動作モードにおいて、この第2種の電力リンクを介した、第1種の電力レーンの間の電力の伝送を阻止する。
【0046】
各第2種の電力リンクは、電気的故障を示す、少なくとも1つの予め設定された、または予め設定可能な電気的トリップ条件に応答して、第2の大きさのオーダーのトリップ時間間隔内に第1動作モードから第2動作モードへ、その動作モードを変更するように構成されてもよい。電力分配ネットワークが、故障隔離のために必要とされる分離を導入するために、電気的故障に対して十分に高速で応答することを可能とするために、第1種の電力リンクの第1の大きさのオーダーのトリップ時間間隔は、第2種の電力リンクの第2の大きさのオーダーのトリップ時間間隔を大幅に上回ることが提案される。それと共に、1つまたは複数の第2種の電力リンクのみがトリップし、第2動作モードに切り替わるが、1つまたは複数の第2種の電力リンクのトリップ前の時間間隔内では、第1種の電力リンクは何れもトリップせず、第2動作モードに切り替わらないことを実現し得る。故障隔離の達成の後、その後にのみ、通常、分離または部分的分離の後でも未だ電気的故障によって影響を受けるただ1つの特定の第1種の電力リンクがトリップするであろう。
【0047】
当技術分野で周知の様々な適切な電気的トリップ条件が、1つまたは複数の第2種の電力リンクの対応する構成によって実施されてもよい。この点において、少なくとも1つの予め定められた電気的トリップ条件は、i)第2種の電力リンクを介して伝送され、予め定められた電流トリップ閾値を超過する電流、ii)予め定められた基準時間間隔内で第2種の電力リンクを介して浪費され、予め定められた電気的i2tトリップ閾値を超過する電気的エネルギを表すi2t量、iii)予め定められた基準時間間隔内に電力システムの関連する部品に蓄積されていると、熱モデルに基づいて、電力分配ネットワークのコントローラによって判断され、予め定められた熱エネルギトリップ閾値を超過する熱エネルギ、のうちの少なくとも1つを含むことが提案される。
【0048】
十分に高速にするために、各第2種の電力リンクは、典型的には、電力分配ネットワークの関連するソリッドステート回路保護装置によって、例えばソリッドステート回路遮断器によって設けられるべきである。従って、十分に高速の従来のソリッドステート回路遮断器が、第2種の電力リンクに関して本発明を実施するために用いられてもよく、これは、第1種の電力リンクの何れかがトリップし、第2動作モードに切り替わる前に、第1種の電力レーン間の分離を達成する。
【0049】
しかしながら、特定の好適なアプローチによれば、各第2種の電力リンクは、電力分配ネットワークの関連するソリッドステート電力コントローラによって設けられ、これは、マイクロコントローラと、第2種の電力リンクを形成する少なくとも1つの負荷チャネルと、負荷チャネルに含まれ、マイクロコントローラの制御下で動作可能な少なくとも1つのソリッドステートスイッチと、を備え、マイクロコントローラは、ソリッドステートスイッチを、第2種の電力リンクの第1動作モードに対応する導通状態と、第2種の電力リンクの第2動作モードに対応する非導通状態との間で切り替えるように構成され、負荷チャネルの少なくとも1つの現在の電気的状態を監視して、ソリッドステートスイッチを導通状態から非導通状態に切り替えることによって電気的トリップ条件の発生に応答するように構成される。1つまたは複数のソリッドステート電力コントローラを用いて第2種の電力リンクを実現することによって、大きな利点が達成される。
【0050】
電力リンクとしてソリッドステート電力コントローラを用いることによって特に好ましい態様で実現され得る特に好適な実施形態によれば、電力分配ネットワークは、電気的故障の発生に応答して通常動作モードから電気的故障緩和モードに切り替わるとき、その後少なくとも3つの故障隔離段階を担うことによって電気的故障隔離をもたらすように構成され、第1故障隔離段階は、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わる少なくとも1つの電力リンクによって、電力レーンの互いからの分離をもたらし、後続の第2故障隔離段階は、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わる電力リンクによって、電気的故障によって未だ影響を受ける電力レーン内の故障隔離をもたらし、後続の第3故障隔離段階は、その第2動作モードからその第1動作モードに切り替わり、第2動作モードである少なくとも1つの他の電力リンクによって電気的故障から隔離される少なくとも1つの電力リンクによって、電気的故障によって影響を受けない電力源にわたる、電気的故障によって影響を受けない電気負荷に関する負荷分散の部分的回復をもたらす。
【0051】
第1故障隔離段階は、それぞれの第2種の電力レーンに含まれ、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わる、少なくとも1つの第2種の電力リンクによって、第1種の電力レーンの互いからの分離を好ましくはもたらしてもよい。
【0052】
第2故障隔離段階は、第1種の電力レーン内の故障隔離を、この第1種の電力レーンに含まれ、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わる第1種の電力リンクによって、好ましくはもたらしてもよい。
【0053】
第3故障隔離段階は、それぞれの第2種の電力レーンに含まれ、その第2動作モードからその第1動作モードに切り替わり、第2動作モードであることを継続する少なくとも1つの他の電力リンクによって電気的故障から隔離される、少なくとも1つの第2種の電力リンクによって、電気的故障によって影響を受けない電力源にわたる、電気的故障によって影響を受けない電気負荷に関する負荷分散の部分的回復を好ましくはもたらしてもよい。
【0054】
第3故障隔離段階は、複数の第2種の電力リンクに加え、電気的故障箇所と直接ではなく、1つまたは複数の他の第2種の電力リンクを介してのみ接続されていた1つまたは複数の電力リンクも、トリップし、第2動作モードに切り替わっている可能性があるため、特に有益である。故障隔離の達成後、このような第2種の電力リンクは、部分的統合を再導入して電力源にわたる負荷分散を部分的に回復させるために、それらの第1動作モードに再度切り替わってもよい。
【0055】
従って、第2動作モードであることを継続し、電気的故障から1つまたは複数の第2種の電力リンクを隔離する少なくとも1つの他の電力リンクは、それぞれの第2種の電力レーンに含まれる少なくとも1つの第2種の電力リンクを含んでもよい。しかしながら、第2動作モードであることを継続し、電気的故障から1つまたは複数の第2種の電力リンクを隔離する少なくとも1つの他の電力リンクは、第2故障隔離段階に従い、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替わった第1種の電力リンクを含むこともまた可能である。
【0056】
電力分配ネットワークは、好ましくは、少なくとも1つのコントローラを備えてもよく、これは、第1故障隔離段階に従い、その第1動作モードからその第2動作モードへ切り替わった複数の第2種の電力リンクの何れが、第2動作モードである少なくとも1つの他の電力リンクによって電気的故障から隔離され、そのため、負荷分散の部分的回復のために第1動作モードに再度切り替わるべきであるかを、1つの測定された電気量、複数の測定された電気量、及び1つまたは複数の電力リンクの現在の動作モードのうちの少なくとも1つに基づいて特定するように構成されることで、第3故障隔離段階による電力源にわたる負荷分散の部分的回復を制御するように構成される。
【0057】
この点において、負荷分散の部分的回復の局所制御をもたらしてもよい。例えば、第2種の電力リンクが、電力分配ネットワークの1つまたは複数のソリッドステート電力コントローラの負荷チャネルによって形成される場合に、各それぞれのソリッドステート電力コントローラのマイクロコントローラは、そのソリッドステートスイッチが非導通状態であるそれぞれの負荷チャネルの少なくとも1つの現在の電気的状態、好ましくは、ソリッドステートスイッチの負荷チャネルの両側の少なくとも1つのそれぞれの現在の電気的状態を監視して、負荷チャネルが、第2動作モードである少なくとも1つの他の電力リンクによって電気的故障から隔離され、そのために、負荷分散を部分的に回復する導通状態に再度切り替わるべきかどうかを判断するように構成されることで、第3故障隔離段階による電力源にわたる負荷分散の部分的回復を制御するように、好ましくは構成されてもよい。
【0058】
別の好ましいアプローチによれば、電力分配ネットワークの少なくとも1つの上位のコントローラ、例えば、いわゆる2次電力分配ユニット(SPDU)のソリッドステート電力マネージャ(SSPM)、または対応するSSPC分配アーキテクチャを実施する場合の乗り物管理コンピュータ(VMC)の電気システムコントローラ(ESC)、または航空機の飛行制御コンピュータシステムは、1つまたは複数の回路保護装置または/及び1つまたは複数のソリッドステート電力コントローラから状態データまたは状態信号を受信するように構成されることで、または/及び、電力分配ネットワークの電力レーンまたは電力レーン部の現在の電気的状態を監視するように構成されることで、また、現在第2動作モードである複数の第2種の電力リンクの何れが、負荷分散の部分的回復のために第1動作モードに再度切り替わるように命令されるべきかを、これらの状態データ及びこれらの監視のうちの一方または両方に基づいて判断するように構成されることで、第3故障隔離段階による電力源にわたる負荷分散の部分的回復を制御するように構成されてもよい。
【0059】
少なくとも1つの上述の目的を実現するために、本発明はさらに、複数の電気負荷と、複数の電力源と、電力源を電気負荷と接続するように構成される電力分配ネットワークとを、各電気負荷が、電力分配ネットワークの少なくとも1つの関連する電力レーンを介して、少なくとも1つの関連する電力源によって駆動され得るように備える、航空機の電力システムを動作させる方法を提供する。電力分配ネットワークは、複数の切替可能な、または遮断可能な電力リンクを備え、それぞれは電力分配ネットワークのそれぞれの電力レーン内に設けられ、電力リンクの第1動作モードにおいて、それぞれの電力レーンを介した電力の伝送を可能にするために、また電力リンクの第2動作モードにおいて、それぞれの電力レーンを介した電力の伝送を阻止する。
【0060】
本方法は、電力分配ネットワークを少なくとも1つの通常動作モードで動作させることを含み、これは、上記複数の電力源の少なくとも1つの電力源グループが、第1動作モードである電力リンクを備える少なくとも1つの電力レーンを含むそれぞれの電力レーンを介して、上記複数の電気負荷の少なくとも1つの関連する電気負荷グループを共通して駆動するような、電力源にわたる負荷分散をもたらす。
【0061】
本方法は、電力分配ネットワークを少なくとも1つの電気的故障緩和動作モードで動作させることをさらに含み、これは、電気的故障を有する電力分配ネットワークのネットワーク部が、第2動作モードである少なくとも1つの電力リンクによって、電力分配ネットワークの少なくとも1つの他のネットワーク部から隔離されるような電気的故障隔離をもたらす。
【0062】
本発明の方法は、本発明の電力システムに関して上述したように、重大な故障に対して安全性を損なうことなく、従来の分離アプローチの利点と、従来の統合アプローチの利点とを組み合わせることをもたらす。
【0063】
電力システムの電力分配ネットワークは、それぞれが、それぞれの第1種の電力リンクを備えている第1種の電力レーンを備えてもよい。さらに、電力システムの電力分配ネットワークは、それぞれが、それぞれの第2種の電力リンクを備えている1つまたは複数の第2種の電力レーンを備えてもよい。各第1種の電力レーンは、少なくとも1つの関連する電力源を、少なくとも1つの関連する電気負荷と接続することで、別の第1種の電力レーンを介する駆動を必ずしも伴うことなく、少なくとも1つの関連する電力源が、少なくとも1つの関連する電気負荷を駆動することを可能にしてもよい。さらに、各第2種の電力レーンは、少なくとも2つの関連する第1種の電力レーンと接続されるか、または接続可能とされて、第1種の電力レーン間の電力の伝送を可能にすることにより、これらの第1種の電力レーンに関連付けられる電力源にわたる、これらの第1種の電力レーンに関連付けられる電気負荷に関する負荷分散が実現され得るようにしてもよい。
【0064】
このような電力分配ネットワークに関して、本方法は、好ましくは、電気的故障緩和モードにおいて電気的故障を隔離するために、1つまたは複数の第2種の電力リンクの動作モードを、第1動作モードから第2動作モードに変更することを含んでもよい。
【0065】
本方法は、通常動作モードにおける電力源にわたる負荷分散のために、または/及び電気的故障緩和モードにおける電力源にわたる部分的負荷分散の回復のために、好ましくは、1つまたは複数の第2種の電力リンクを第1動作モードに維持することをさらに含んでもよく、または/及び1つまたは複数の第2種の電力リンクの動作モードを、第2動作モードから第1動作モードに変更することをさらに含んでもよい。
【0066】
有利にするために、本発明の方法は、概して、i)少なくとも1つの電力リンクを、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替えることにより、電力レーンの互いからの分離をもたらす、第1故障隔離ステップと、ii)電力リンクをその第1動作モードからその第2動作モードに切り替えることにより、電気的故障によって未だ影響を受ける電力レーン内の故障隔離をもたらす、後続の第2故障隔離ステップと、iii)第2動作モードである少なくとも1つの他の電力リンクによって電気的故障から隔離される少なくとも1つの電力リンクを、その第2動作モードからその第1動作モードに切り替えることによって、電気的故障によって影響を受けない電力源にわたる、電気的故障によって影響を受けない電気負荷に関する負荷分散の部分的回復をもたらす、後続の第3故障隔離ステップと、を含んでもよい。
【0067】
第1及び第2種の電力レーン、及び第1及び第2種の電力リンクが設けられる場合、本方法は、好ましくは、i)少なくとも1つの第2種の電力リンクを、その第1動作モードからその第2動作モードに切り替えることにより、第1種の電力レーンの互いからの分離をもたらす、第1故障隔離ステップと、ii)電気的故障によって未だ影響を受ける第1種の電力レーン内の故障隔離を、この電力レーンに含まれる第1種の電力リンクをその第1動作モードからその第2動作モードに切り替えることによりもたらす、後続の第2故障隔離ステップと、iii)少なくとも1つの他の第2種の電力リンクによって電気的故障から隔離され、第2動作モードである、少なくとも1つの第2種の電力リンクを、その第2動作モードからその第1動作モードに切り替えることによって、電気的故障によって影響を受けない電力源にわたる、電気的故障によって影響を受けない電気負荷に関する負荷分散の部分的回復をもたらす、後続の第3故障隔離ステップと、を含んでもよい。
【0068】
第1、第2及び第3故障隔離段階を続けて担うことによって、電気的故障隔離をもたらすように構成される本発明の電力システムに関して上述したように、大きな利点が実現される。
【0069】
以上を考慮して、本発明は、電力分配ネットワークにおいて、電気的故障、特に短絡を安全に隔離する方法を提供し、これは、異なる速度で動作する2つ以上の段階の回路保護装置を使用する。有利にするために、ソリッドステート電力コントローラ(SSPC)の独特に高速な隔離時間、及びリセット可能な性質が、電気的故障の伝播を阻止しながら安全な負荷分散を可能にするために利用されてもよい。
【0070】
本発明は、航空機のための一般的な電力システムをさらに提供し、これは、本発明の方法に従い動作するように構成されることによって特徴づけられる。
【0071】
本発明の電力システム及び電力システムを動作させるための方法は、原理的に、あらゆる種類の航空機に適用されるか、またはその内部に設けられてもよい。それゆえに、本発明は、上述したような電力システムを備える、または上述したような本発明の方法に従い動作するように構成される電力システムを備える航空機を提供する。この航空機は、好ましくは、一人乗り用の航空機、及び垂直離着陸能力を有する航空機、及び先尾翼型の航空機のうちの少なくとも1つである。さらに、航空機は、好ましくは上述の考察の通り、電動航空機である。
【0072】
好適な実施形態によれば、電力システムは、航空機の安全運航の維持に重大な関連性を有する航空機装置の形態の共通のタイプの電気負荷の少なくとも1つのグループを備えてもよく、航空機装置は、航空機の胴体及び航空機の翼の一方、または両方に、少なくとも2つの共通のタイプの航空機装置をそれぞれ有する複数の航空機装置の様々なサブグループが、航空機の飛行性能及び可制御性を危うくすることなく故障し得るように、故障に対する回復力を実現するための数及び構成で配置される。共通のタイプの航空機装置は、航空機の電動の揚力/推力ユニットであってもよい。
【0073】
有利にするために、サブグループの、または各それぞれのサブグループの航空機装置は、電力システムの電力分配ネットワークの1つの特定の共通の電力レーンと関連付けられ、この共通の電力レーンを介して共通に駆動可能となり、サブグループの、または各それぞれのサブグループの航空機装置は、航空機の胴体及び航空機の翼の一方、または両方に対称的に分布して配置されて設けられることにより、共通の電力レーンに直接、または間接的に影響を及ぼし、このサブグループの航空機装置の故障をもたらす電気的故障が、航空機の飛行性能及び可制御性を危うくしないようにする。
【0074】
電力分配ネットワークのそれぞれの特定の共通の電力レーンは、先に考察されたように第1種の電力レーンであってもよい。複数または全てのサブグループにわたる負荷分散は、先に考察されたように、第2種の電力リンクによって可能とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】パイロットのためのユーザインタフェース、冗長的な飛行制御コンピュータシステム、航空機装置を飛行制御コンピュータシステムと接続する電子的または光電子的なバスシステム、を備える航空機の飛行制御システムを概略的に示し、航空機装置は、航空機の電力システム(図示無し)に属する。
【
図2】第1変形例の先尾翼型航空機を上から見下ろした概略図であり、第1変形例は、VTOL機能を有する一人乗り用航空機として実現されてもよく、本発明による航空機装置と、航空機装置に電力を供給する電力源を備える電力システムが設けられてもよい。
【
図3】第2変形例の先尾翼型航空機を上から見下ろした概略図であり、第2変形例は、VTOL機能を有する一人乗り用航空機として実現されてもよく、本発明による電力システムが設けられてもよい。
【
図4】
図4a)に示されるように、フラップに取り付けられるか、またはフラップと一体にされる3つの推進エンジンを備えるか、または
図4b)に示されるようにフラップに取り付けられるか、またはフラップと一体にされる1つの推進エンジンを備える2種類の揚力/推力ユニットを、サブ
図4a)及びサブ
図4b)に概略的に示す。
【
図5】
図4の揚力/推力ユニットを、それぞれの航空機翼と共に、翼に対して4つの異なるフラップの偏向角(deflection angle)で、サブ
図5a)、5b)、5c)及び5d)に側面図で示す。
【
図6】航空機の一般的な電力システムを概略的に示す。
【
図7】第1の従来のアプローチを例示する電力分配ネットワークを備える航空機の電力システムを概略的に示す。
【
図8】第2及び第3の従来のアプローチを例示する電力分配ネットワークを備える航空機の電力システムを概略的に示す。
【
図9】
図8の従来のアプローチに対する変形例を例示する航空機の電力システムを概略的に示す。
【
図10】本発明が実施され得る航空機の電力システムの電力分配ネットワークに適したライン型トポロジーを概略的に例示する。
【
図11】
図10によるネットワークトポロジーの第1変形例を概略的に例示する。
【
図12】
図10によるネットワークトポロジーの第2変形例を概略的に例示する。
【
図13】航空機の電力システムの電力分配ネットワークに適したリング型トポロジーを概略的に例示し、本発明はこれに基づいて実施されてもよい。
【
図14】航空機の電力システムの電力分配ネットワークに適したスター型トポロジーを概略的に例示し、本発明はこれに基づいて実施されてもよい。
【
図15】航空機の電力システムの電力分配ネットワークに適したスター型トポロジーを概略的に例示し、これは特に好適であり、本発明はこれに基づいて実施されてもよい。
【
図16】
図2による先尾翼型航空機の簡略版をサブ
図16a)に概略的に示し、航空機の電力システムの好ましくない構成をサブ
図16b)に、航空機の電力システムの好ましい構成をサブ
図16c)に例示する。
【発明を実施するための形態】
【0076】
[詳細な説明]
以下に、従来の電力ネットワーク統合の主要な利点と共に従来の電力ネットワーク分離の主要な利点をも、好適且つ相乗的な方法で実現するための「第1アプローチ」及び「第2アプローチ」が説明され、これらは両方とも本発明のアプローチであり、それにより、2つのアプローチを実施するために与えられる例は全て、本発明の限定されない例示的な実施形態である。しかしながら、本開示との関連で、「第1アプローチ」は「第2アプローチ」よりも好ましい。
【0077】
図1~5は、航空機の限定されない例を図示し、これは本発明による電力システムを備えるように設計されてもよい。
【0078】
図1は、航空機の飛行制御システム10の限定されない例を概略的に示し、説明する。飛行制御システムは、飛行制御コンピュータシステム12を備え、これは従来の概念、特に冗長性をもたらす概念に従って実現されてもよい。例は、3つの冗長飛行制御コンピュータ12a、12b、及び12cを備えるそのような従来の3重アーキテクチャ(triplex architecture)であり、冗長飛行制御コンピュータは、一方ではパイロットユーザインタフェースと、他方では、パイロットの指令に基づいて制御される航空機の要素及び装置と冗長的に接続されてもよい。従来の冗長性の概念の例として、US7,337,044B2、US8,935,015B2及びUS8,818,575B2が参照されてもよい。
【0079】
図1において、航空機の様々な部品が、要素14~20によって概略的に表され、これらは、センサ、アクチュエータ(例えばフラップなどの動翼を制御可能に動作させるためのアクチュエータなど)、推進エンジンなどを表してもよく、これらは、適切な制御バスシステム、例えばCANバスシステム22を介して飛行制御コンピュータシステム12によって制御され、監視されてもよい。
【0080】
飛行制御システム10は、左サイドスティック装置30a及び右サイドスティック装置30bを備え得るパイロットユーザインタフェースをさらに備え、左サイドスティック装置は、サイドスティックセンサアセンブリ38aを有する左サイドスティック32aを備え、右サイドスティック装置は、サイドスティックセンサアセンブリ38aを有する右サイドスティック32bを備える。飛行制御コンピュータシステム12は、電子的または光学的結合リンク42a及び42bを介してパイロットユーザインタフェースから制御信号を受信してもよい。
【0081】
図2及び3は、2つの先尾翼型航空機を限定されない例として示し、本発明がそれに適用されてもよく、また
図1に図示されるような飛行制御システム10を備えてもよい。先尾翼型航空機200は、航空機の胴体203の後方部に、固定左後翼または固定左主翼202、及び固定右後翼または固定右主翼204を有し、航空機の胴体の前方部に、固定左前翼、または固定左先尾翼206、及び固定右前翼、または固定右先尾翼208を有する。各翼には、複数のフラップ210、212、214及び216のアレイがそれぞれ設けられる。例えば、前翼または先尾翼毎に少なくとも6つのフラップ、後翼または主翼毎に少なくとも12のフラップが設けられ得る。
【0082】
図2に示される実施形態は、前翼または先尾翼毎に2つのフラップ、後翼または主翼毎に4つのフラップを有し、
図3に示される実施形態は、前翼または先尾翼毎に6つのフラップ、後翼または主翼毎に12のフラップを有する。
【0083】
両方の実施形態のフラップは、それぞれの翼に対して枢動可能または動作可能に取り付けられ、それぞれの電気アクチュエータ装置によって、好ましくは各フラップ毎に互いに独立して、枢動軸周りに枢動され得るか、または枢動部品で動作され得る。各フラップは、上方第1動作位置と下方第2動作位置との間で枢動され得る。各フラップは、航空機の長手方向軸に対して、傾きが最小または無視できるほどの位置、場合によっては上方第1動作位置をとってもよく、航空機の長手方向軸に対して下方への傾きが最大となる位置、場合によっては下方第2動作位置、をとってもよい。しかしながら、下方への傾きが最大となる位置がフラップの垂直方向と一致する場合には、下方第2動作位置は、フラップ点がわずかに前方となるように、代替として、下方への傾きが最大となる位置を超える位置としてもよい。
【0084】
これらのフラップのそれぞれに対して、電動のダクトプロペラの形態の少なくとも1つの推進エンジンが取り付けられる。ダクトプロペラは、好ましくは、それぞれのフラップの上面に取り付けられる。代替として、推進エンジンは、それぞれのダクトプロペラがその中で回転する、それぞれの推進エンジンの空気チャネルが、それぞれの前翼または後翼の上面の上方に位置し、上面と整列するような方法でそれぞれのフラップと一体にされてもよい。
【0085】
好ましくは、フラップは、下方第2動作位置、またはダクトプロペラが、航空機に垂直離着陸(VTOL)能力を与える下方への垂直推力のみをもたらす、第1及び第2動作位置の間の別の動作位置と一致する位置をとってもよい。上方第1動作位置、またはフラップが、その長手方向に、または航空機の長手方向に対して最小の角度で延在する、第1及び第2動作位置の間の別の動作位置において、動作するダクトプロペラは、航空機に最大の前方への推力をもたらす。フラップは、推進エンジンまたは推進モジュールの推力方向を制御するためだけでなく、通常の空気力学の原理に基づく空気中の航空機の動作に影響を及ぼす動翼としても動作する。
【0086】
図2に示される実施形態において、フラップには、ダクトプロペラの形態の複数の推進エンジンが一体にされる推進モジュールが設けられる。例えば、そのような推進モジュールは、3つのそのような推進エンジンを備えてもよく、それにより、各フラップには、それぞれダクトプロペラの形態の3つの推進エンジンが設けられる。この場合において、航空機には、全体で36の推進エンジンが設けられる。
【0087】
図4a)は、3つの推進エンジン232a、232b、及び232cのアレイを備え、フラップ234に取り付けられる、そのような推進モジュール230の概略図を示し、フラップ234は、
図2に示されるフラップ210、212、214及び216の何れか1つであってもよい。
【0088】
図3に示される実施形態において、各フラップには、それぞれ1つのダクトプロペラの形態の推進エンジンが設けられる。従って、航空機には、全体で36の推進エンジンが設けられる。
【0089】
図4b)は、そのようなフラップ234を、それに取り付けられた推進エンジン232と共に概略的に示す。フラップ234は、
図3のフラップ210、212、214、及び216の何れかで1つであってもよい。
【0090】
図4は、それぞれのフラップ234を、推進モジュール230または推進エンジン232と共に、航空機の後方から見て概略的に示す。
【0091】
図5は、
図2及び3の翼202、204、206及び208の何れか1つであってもよい、航空機のそれぞれの翼236、及びそれぞれのフラップ234の側面図を概略的に示し、それぞれの推進モジュール230またはそれぞれの推進エンジン232は、翼に対するフラップの異なる偏向角のために、それぞれのフラップ234に取り付けられる。例えば、
図5a)に図示されるような最小またはゼロ偏向角は、航空機に最大の前方への推力を与え、
図5d)に図示されるような最大偏向角または90度の偏向角は、航空機の垂直離着陸(VTOL)能力を実現するための下方への最大垂直推力または垂直推力のみを与える。最大偏向角は、さらに90度より大きくてもよく、それにより、下方成分及び後方成分を有する方向の推力がもたらされる。
【0092】
図5b)及び5c)に図示されるようなフラップの中間の偏向角は、それぞれの偏向角に従い、下方成分及び前方成分を有する方向の推力を与える。この偏向角は、好ましくは、最小偏向角と最大偏向角との間で連続的に変更され得る。それぞれの翼236とそれぞれのフラップ234との間で動作する適切なフラップアクチュエータまたはフラップアクチュエータ装置が、
図5に要素240で概略的に示される。フラップ234を翼236に枢動可能に連結する適切な枢動継手または枢動継手装置が、
図5に要素242で概略的に示される。
【0093】
図3において、それぞれが、
図4b)及び
図5に図示されるようなフラップ234及び推進エンジン232及びフラップアクチュエータまたはフラップアクチュエータ装置240を備える揚力/推力ユニットは、
図3の挿入に示される関連する識別番号を有し、これらは翼及び先尾翼と関連付けられる。先尾翼206の6つのフラップまたは揚力/推力ユニット214には、識別番号1.1~1.6が割り当てられている。先尾翼208の6つのフラップまたは揚力/推力ユニット214には、識別番号2.1~2.6が割り当てられている。主翼202の12のフラップまたは揚力/推力ユニット210には、識別番号3.1~3.12が割り当てられている。主翼204の12のフラップまたは揚力/推力ユニット212には、識別番号4.1~4.12が割り当てられている。
【0094】
識別番号1.1、2.1、3.1及び4.1は、それぞれ、胴体203に隣接する、またはその近傍の最も内側のフラップまたは揚力/推力ユニットを特定し、識別番号1.6、2.6、3.12及び4.12は、胴体203から最大の距離にある最も外側のフラップまたは揚力/推力ユニットを特定し、他のフラップまたは揚力/推力ユニット、及びそれぞれの翼または先尾翼に沿ったそれらの位置は、
図3の4つの識別番号の挿入によって対応して特定される。
【0095】
両方の実施形態において、翼202、204、206及び208に配置される推進エンジン232または推進モジュール230、及び複数のフラップ210、212、214及び216の4つのアレイのフラップ234に関連するフラップアクチュエータ240は、
図1の要素14、16、18及び20のような航空機装置であり、これらは、飛行制御コンピュータシステム12によって制御される。
【0096】
好適な実施形態によれば、全てのこれらの航空機装置は、電動の航空機装置であり、これらは、航空機の複数の蓄電池によって供給される電力によって駆動される。航空機装置は、航空機の電力システムの電気負荷であり、蓄電池は、航空機の電力システムの電力源である。電力システムは、電力分配ネットワークを備え、これは、各電気負荷または航空機装置が、電力分配ネットワークの少なくとも1つの関連する電力レーンを介して、少なくとも1つの関連する電力源または蓄電池によって駆動され得るように、電力源を電気負荷に接続するよう構成される。本発明は、例えば
図1~5の例示的な実施形態との関連で参照される電力システム及びその電力分配ネットワークなどの航空機のための電力システム及びその電力分配ネットワークに関する。
【0097】
図6は、本発明によって提供されるような、そのような電力システム300を概略的に示す。電力システムは、複数の、示される概略的な実施形態においては、電力源A、B、C及びDと個別に称される4つの電力源または蓄電池302と、本発明の場合においては、個別に負荷AA、BB、CC、DD1及びDD2と称される5つの電気負荷304であり、先に言及されたように通常は電動の航空機装置である、複数の電気負荷と、を備える。電力源302と電気負荷304とは、
図6に象徴的にのみ示される電力分配ネットワーク306を介して接続されるか、または接続可能である。電気負荷のそれぞれは、電力分配ネットワークを介して駆動される電気負荷DDを共に形成する電気負荷DD1及びDD2によって図示されるように、電力分配ネットワーク306と並列に接続される複数の電気負荷を表してもよい。
【0098】
従来のアプローチによれば、電力分配ネットワーク306は、独立した電力レーン、本例においては、各電力レーンが1つの特定の電力源を1つの特定の電気負荷と接続する、
図7に示されるような4つの独立した電力レーン308a、308b、308c及び308dを備える分離されたネットワークとして実現されたであろう。電力レーンのそれぞれには、一組の電力リンク310のそれぞれの電力リンクa、b、c及びdが設けられ、これらは通常「CPD」としても知られる回路保護装置であり、短絡が発生した場合に、それぞれの電力レーンの下流の配線及び下流の負荷を損傷から保護する。簡潔にするために、電力リンク310は、限定されない例という意味においてのみ、以下のように「CPD」と称される。このようなCPDは、保護されるべき配線または電力レーンにとって適切であるように当業者によって容易に選択され得る。保護されるべき特定の電力分配ネットワークの電力レーン及び特定の環境にとって適切であるように、例えば約10msのオーダーの通常のトリップ時間定数(tripping time constants)を有するCPDが用いられてもよい。
【0099】
電力分配ネットワークは個別の電力レーン308に分離され、それにより1つの電力レーンについての故障は、別の電力レーンに影響を及ぼすことはあり得ないので、分離されたネットワークは、ある程度までの耐障害性があるといった実質的な利点を有する。
図7に図示された例において、負荷BB上の電気的故障は、CPDbが電気的故障を隔離するまで、電力レーン308b上の電力の遮断を引き起こすであろう。他の電力レーンは影響を受けない。
【0100】
分離されたネットワークの欠点は、負荷分散が不可能なことである。負荷が同等の消費電力でないであろう場合に、その後電力源に不均一な需要が生じることになり、それにより蓄電池は不均一に放電されるであろう。これは、電動航空機の性能を制限し得る。
【0101】
分離よりもむしろ統合を利用するあらゆる代替のネットワークは、負荷分散のために有利であろう。対応する統合されたネットワークは、電力源A、B、電気負荷AA及びBB、及びCPDa及びbと共に電力レーン308a及び308bによって形成される左ネットワーク部によって
図8に概略的に図示される。これらの2つの電力レーンは、接続レーン312によって接続され、それにより、関連する電気負荷AA及びBBに対する電力源A及びBにわたる負荷分散が実現される。しかしながら、これらの電力レーンのうちの1つに対して発生するあらゆる電気的故障は、他の電力レーンにも影響を及ぼし、ネットワークを伝播することになり、その故障が隔離されるまで、電気的故障によって直接影響を受けるレーンに接続される全てのレーンについて電力の遮断を引き起こす。
【0102】
従って、示す例において、接続レーン312が、CPDa及びbの下流側に配置されるので、負荷BBの電気的故障は、電力レーン308aだけでなく電力レーン308bにも電力遮断を引き起こすことになり、隔離すらできないであろう。
図9に図示されるように、接続レーン312がCPDa及びbの上流側で電力レーン308aと308bとを接続するであろう場合に限り、負荷Dに想定される電気的故障は、その後負荷AAが、電力源A及びBから電力を供給され得るように、CPDbによって隔離され得る。
【0103】
電力分配ネットワーク全体にわたって同時電力遮断が起こることは、通常、航空機のためのこのようなネットワークのような安全な/重要な電力分配ネットワークとして許容できない。
【0104】
3つの他の欠点、つまりi)電気的故障が、電力源A及びBの両方より供給を受けているので、より多くのエネルギが放出されることになる、ii)電気的故障が、電力源A及びBの両方より供給を受けているので、CPDは、接続レーン312の下流側に設けられると、より高い故障電流で遮断しなければならない、iii)ネットワークの電力源の容量、CPDの応答時間に応じて、他のCPDも誤って隔離するかもしれず、このことは、負荷AAは故障していないにも関わらず、負荷BBだけでなく負荷AAへのエネルギ供給の損失にもつながることになる、という欠点がある。
【0105】
図8及び9は、統合ネットワークだけでなく、切替可能なネットワークも図示し、これは従来の航空宇宙技術で現在も採用される、ある種のハイブリッドな解決策である。このようなネットワークは、状況に応じて、分離だけでなく、統合をもたらすためにスイッチを使用する。
図8及び9によれば、電力レーン308cと308bとは、スイッチSWの形態の電力リンク316を備えている接続レーン314を介して接続され、電力リンク316は、
図8によれば、CPDc及びdの下流に配置され、
図9によれば、CPDc及びdの上流に配置される。
【0106】
スイッチSWが閉鎖されている間に発生する故障は、電力レーンの間を伝播することができるので、スイッチSWを閉鎖する動作は、安全マージンの大幅な低下をもたらす。それゆえに、従来の航空宇宙技術によれば、スイッチSWは、システムが縮退モードで動作しているときにのみ故障に続いて閉鎖され、それゆえに通常動作において、統合の利点は実現されない。このような故障に対応する統合の導入の例は、電力源Dの故障であり、それにより、負荷DDまたは負荷DD1及びDD2は、電力分配ネットワーク306の分離状態において、もはや電力レーン308dを介して、源Dから電力を受けることはないであろう。電力リンク316またはスイッチSWを閉鎖することによって、これらの負荷は、電力源Cから電力の供給を受けることができ、電力源Cはその後、負荷DDと共に負荷CCを駆動しなければならないであろう。
【0107】
ネットワーク統合と共に、ネットワーク分離の主要な利点は、
図10~15における実施例に示されるような例示的な限定されないネットワークトポロジーに基づいて以下に説明されるような、本明細書に提案され、「第1アプローチ」、「第2アプローチ」と称される2つの代替のアプローチに従って、好適な相乗効果のある方法で実現され得る。次の説明において以下の用語が用いられ、つまり、それぞれの電力源を、CPDのようなそれぞれの電力リンクを介してそれぞれの電気負荷に接続する電力レーン308、すなわち
図10の電力レーン308a、308b、308c及び308dは、「第1種の電力レーン」と称される。これらの第1種の電力レーンは、上述の電力リンク310のそれぞれのうちの1つ、すなわち、通常、説明されたようにCPDとして実現される、示される実施例における電力リンクa、b、c及びdのうちの1つを備えている。これらの電力リンク310は、「第1種の電力リンク」と称される。簡潔にするために、これらの電力リンクもまた、限定されない例という意味においてのみ、以下で「CPD」と称される。
【0108】
図10の実施例によれば、これらの第1種の電力レーンは、接続レーン314、すなわち個別の電力レーン314a、314b及び314cによって互いに組にして接続され、これらは、一組の電力リンク316のそれぞれの電力リンクab、bc及びcdをそれぞれ備えている。これらの接続レーン314または314a、314b及び314cは、「第2種の電力レーン」と称され、それらの電力リンクab、bc及びcdは、「第2種の電力リンク」と称される。
図10によれば、個別にab、bc及びcdと称されるこの第2種の電力リンク316は、電力リンクの上流側に設けられる。実施されるアプリケーション及びアプローチに応じて、これらの第2種の電力リンクは、CPD、スイッチ、SSPC(ソリッドステート電力コントローラ)などであってもよい。2つの提案されるアプローチに従う好適な実施形態は、第2種の電力リンクとしてSSPCまたはスイッチの何れかを使用し、そのため、以下において簡潔にするために、これらの第2種の電力リンクは、限定されない例という意味においてのみ、1つまたは複数の「SSPC/SW」(SWはスイッチを表す)と称される。
【0109】
図11は、代替の構成を示し、すなわち第2種の電力レーンまたはSSPC/SW316(ab、bc、cd)は、第1種の電力リンクまたはCPDa、b、c及びdの下流側に配置される。
【0110】
図12に図示されるように、関連する第1種の電力レーンのCPDの上流側に1つまたは複数のSSPC/SWを設けること、及び関連する第1種の電力レーンの第1種の電力リンクの下流側に、1つまたは複数の第2種の電力リンクを設けることも選択してもよい。第2種の電力レーン314a、314bは、それらのSSPC/SWab及びbcと共にCPDa、b及びcの上流側に配置され、第2種の電力レーン314cは、そのSSPC/SWcdと共にCPDc及びdの下流側に配置される。負荷が、第2種の電力レーン314a、314b及び314cによって形成されるある種の負荷分散接続ラインに含まれるSSPC/SWab、bc、cdを介して接続されるか、または接続可能であるので、
図10、11及び12のネットワークトポロジーは、ライン型トポロジーにおいて、電気負荷AA、BB、CC及びDDに関して、電力源A、B、C及びDにわたり負荷分散または部分的負荷分散を可能にする。
【0111】
さらにいっそう有利なのは、第2種の接続レーンとそれらのSSPC/SWとのリング構成での接続であり、それにより、負荷AA、BB、CC及びDDに関して、電力源A、B、C及びDにわたる負荷分散または部分的負荷分散が、
図13に図示されるようなリング型トポロジーで可能となる。CPDを備えるより多くの第1種の電力レーンが、第2種の電力レーンによって形成される負荷分散接続リングラインを介して、負荷分散または部分的負荷分散に設けられてもよく、含まれてもよいことを示すために、第1種の電力レーン308cと308dとの間の接続が、
図13において点線によって示される。これ以上の第1種の電力レーンが設けられず、それにより、SSPC/SWcdを備えている第2種の電力レーン314cも設けられない可能性もまた、
図13に示される。
【0112】
リングレーンは、SSPC/SWadを備える第2種の電力レーン314dによって閉鎖され、これは、第1種の電力レーン308aと308dとを接続する。
【0113】
別の可能性は、負荷分散または部分的負荷分散のためのある種のスター型トポロジーを形成するために、第1種の電力レーンをそれらのSSPC/SWと並列に接続することである。
図14は、限定されない例を示す。ここで、第1種の電力レーン308aは、それぞれの第2種の電力レーンを介して他の示される第1種の電力レーンのそれぞれと、すなわち、第2種の電力レーン314aを介して第1種の電力レーン308bと、第2種の電力レーン314eを介して第1種の電力レーン308cと、第2種の電力レーン314fを介して第1種の電力レーンと、接続されるか、または接続可能である。これらの第2種の電力レーンは、ab、ac、及びadと称されるそれぞれのSSPC/SWをそれぞれ備えている。
【0114】
示される構成の不利な点は、第1種の電力レーン308aに直接影響を及ぼす故障が、全ての他の第1種の電力レーンにも影響を及ぼすことになり、この故障の隔離後、負荷分散または部分的負荷分散は、もはや不可能であろうということである。
【0115】
それゆえに、
図15に示されるようなスター型のような負荷分散構成が好ましく、これは、ハブまたはスター形構成の中心として第1種の電力レーンではなく、別の接続レーン320を用い、これは、それぞれが、それぞれのSSPC/SWax、bx、cx及びdxを備えている、それぞれの第2種の電力レーン314g、314h、314i及び314jを介して第1種の電力レーン308a、308b、308c及び308dのそれぞれに接続されるか、または接続可能である。
【0116】
全てのこれらの電力分配ネットワーク構成またはトポロジーは、限定されない例に過ぎない。全てのこれらのトポロジーは、電力分配ネットワークのそれぞれのネットワーク部の組み合わせで実現されてもよく、当業者に周知の他のトポロジーもまた、US2020/0010187A1で周知のそのようなトポロジー並びにメッシュ型トポロジーなどで実施されてもよい。
【0117】
今から、上述の好適な提案されるアプローチに従って、電力分配ネットワークの構成及び電力分配ネットワークの動作が説明される。
[第1アプローチ]
上述の第1アプローチによれば、通常動作のための統合された電力分配ネットワーク306が提供され、これは、電気的故障が発生した場合に、非常に高速な方法で、分離された、または部分的に分離された電力分配ネットワークに切り替え得る。この目的のために、第2種の電力リンク316は、非常に高速で動作するソリッドステートスイッチ、または非常に高速で動作するソリッドステートCPD、または類似のまたはより好ましい、ソリッドステート電力コントローラ(SSPC)、または電力分配ネットワークの1つまたは複数のソリッドステート電力コントローラ(SSPC)の負荷チャネルとして実現される。
【0118】
好ましくはSSPCであるこれらの第2種の電力リンクは、通常動作において導通状態になることができ、それにより負荷分散に関してトランスペアレント(透過的)であろう。しかしながら、これらの第2種の電力リンクは、電気的故障が検出された場合に、分離を導入するために、極めて高速に、例えば10~20μs以内で隔離するように構成される。以下において、これらの第2種の電力リンクは、限定されない例としてのみ「SSPC」と称される。概して、約100μs、より好ましくは100μs未満、及び最も好ましくは約10~20μsの隔離時間がSSPCによって実現されることが好ましい。しかしながら、例えば1msのオーダーのより長い隔離時間も除外されないであろう。
【0119】
SSPCは、1つまたは複数の導電チャネルまたは負荷チャネル、各負荷チャネルのための電流測定手段、及びある特定の電流閾値を超過した場合、または場合によって1つまたは複数の他のトリップ条件に応答して負荷チャネルがオフにされ得るように、ソフトウェアまたはハードウェアにて実施される論理手段からなる周知の電子装置である。このような電流閾値及びトリップ条件は、電力分配ネットワークの設計、及び電力源及び電気負荷の特性、及びそれゆえに故障の無い通常動作に期待される最大電流値及び他の電気的な状態、に基づいて当業者によって容易に選択されるか、または決定され得る。当業者は、適切な安全マージンを考慮するであろう。
【0120】
それにより、一方で統合を利用して負荷分散の利点から利益を得、他方で耐障害性があり安全でもある、電力分配ネットワークが実現される。
【0121】
例えば、
図10及び
図11の電力源A及びB、電気負荷AA及びBB、CPDa及びbを備える第1種の電力レーン308a及び308b、及びSSPCabを備える第2種の電力レーン314aを考えると、SSPCabは、電力レーン308aと308bとの間に並列に挿入される。ネットワークの通常動作状態において、このSSPCは、その導通状態にあり、それにより負荷AAは、源A及びBによって均等に供給を受けることができ、負荷BBもまた源A及びBによって均等に供給を受け得る。同じことが、
図10及び11による他の第1種の電力レーン及びそれらのSSPCを備える他の第2種の電力レーン、並びに、
図12~15による全ての対応する電力レーンにも適用され、このことは、電力分配ネットワークの通常動作における負荷分散を可能とするが、発生し得る電気的故障を、適切な分離を導入することによって非常に高速な方法で隔離する。
【0122】
好ましくは、故障隔離が、複数のその後の故障隔離段階、好ましくは3つの隔離段階に従って実現される。その理由は、発生した電気的故障が、故障隔離のために必要であるよりも多くのSSPCが、それらの導通状態からそれらの非導通状態に切り替わり得るといった結果を有し得ることである。
【0123】
第1故障隔離段階及び第2故障隔離段階は、例えば
図10及び11による、電力源A及びB、電気負荷AA、BB、それぞれのCPDa及びbを備えるそれらの関連する第1種の電力レーン308a及び308b、及びSSPCabを備える関連する第2種の電力レーン314aに基づいて、再度説明され、図示され得る。
【0124】
第1故障隔離段階は、第1種の電力レーンにこのネットワーク部の分離をもたらす。電気的故障が、負荷BBで発生した場合、その後、SSPCabは、電気的故障に供給する電力源Aによる電流の増加を確認し、その非導通状態に切り替わることによって極めて高速で隔離されるであろう。ここで、故障は、電力レーン308bに隔離され、電力レーン308aは、通常動作を継続し得る。負荷AAでは、ほとんど、または全く電力が遮断されない。
【0125】
ここで、電気的故障は、電力レーン308bに影響を及ぼすのみであり、それにより、このレーン内の故障隔離は、第2故障隔離段階によって実現され得る。電気的故障は、第1種の電力レーン308bにのみに影響を及ぼすので、故障隔離の緊急性は低下する。電気的故障は、電力源Bから電気的エネルギを供給されるのみであるので、より少ないエネルギが故障で放出され、CPDbは、故障電流を安全に遮断することができる。CPDbは、想定される短絡の形態の故障を安全に隔離し得る。
【0126】
提案されるアプローチの重要な利点は、CPDを正しい順序で隔離するように、多数のCPDを順番に電力源と負荷との間で調整するための「選択性」という従来の概念は関連がないか、または利用されないことである。
【0127】
第2種の電力リンク、好ましくはSSPCが、第1種の電力リンクまたは第1種の電力レーンのCPDがトリップし得る前に、それぞれのSSPCをトリップすることを可能にするのに十分に高速であるべきであることを除いては、1つのSSPCまたは複数のSSPCはどのような速度であってもよく、他のSSPC及びCPDとの調整は必要とされない。非常に高速の第2種の電力リンクを設けることはまた、それぞれの電力遮断の継続時間を制限するためにも有利である。第2種の電力リンクまたはSSPCは、負荷から自身の電力を隔離するのではなく、第1種の電力レーンを互いに分離するのみであり、それにより、第2種の電力リンクまたはSSPCの調整は、従来技術のアプローチによるネットワーク上の特定のCPDの調整ほど重要ではない。
【0128】
第3故障隔離段階は、電気的故障を隔離するために必要とされる一定の分離を維持することを除いて、ネットワーク統合の回復をもたらす。
【0129】
この故障隔離段階は、
図10~15に示される電力源A及びB、及び負荷AA及びBBとの関連で考察されるように、より多くの電力レーンを備えるより大きなネットワークに適している。
【0130】
このような拡張された電力分配ネットワーク306において、第1隔離段階で多数の第2種の電力リンクが、それらの非導通状態に切り替わる可能性が高い。このことは、それらの高感度に起因して、特にSSPCに当てはまる。こうしたことから、負荷分散は、健全な第1種の電力レーンの間でさえ失われていることもあり得る。
【0131】
例えば、
図10及び11のネットワーク306において、第1種の電力レーン308cではなく、第1種の電力レーン308bが電気的故障によって影響を受けるが、電力レーン308cと308dとの間のSSPCcdが非導通状態に切り替わることが起こり得る。この電気的故障を隔離するためには、SSPCab及びbcのみが非導通状態に切り替わらなければならず、そのため、SSPCcdは、SSPCbcが非導通状態に切り替わることによって、第1種の電力レーン308cが故障した第1種の電力レーン308bから分離されるとすぐに、再度導通状態に切り替わり得るか、切り替えられ得る。
【0132】
図10のネットワークトポロジーの場合において、電気的短絡が電気負荷BBで発生すると想定すると、他のSSPCab及びbcでさえも、第2故障隔離段階、すなわち、故障電流を遮断するこの電力レーンのCPDbのその非導通状態への切り替え、に従う第1種の電力レーン308b内の故障隔離の後に、その導通状態に戻ってもよい。
【0133】
第1種の電力リンクまたはCPDの上流側に、第2種の電力リンクまたはSSPCを有する第2種の電力レーンを備えることは、故障が電気負荷に発生する可能性を考慮すると、好ましいと考えられる。このような場合において、全ての電力源は、第3故障隔離段階による統合の回復の後に、電力の供給及び負荷分散への寄与を継続してもよい。
【0134】
第1種の電力リンクまたはCPDの下流側に、第2種の電力リンクまたはSSPCを有する第2種の電力レーンを備えることは、電力源が故障し得る可能性を考慮すると、好ましいと考えられる。このような場合において、全ての電気負荷は、第3故障隔離段階による統合の回復の後に、残りの電力源にわたる負荷分散に基づいて、継続して電力が供給され得る。
【0135】
これらの可能性は両方とも、それらの利点を有するので、
図12に図示されるような混合された構成が用いられてもよい。
【0136】
しかしながら、第2種のそれぞれの電力リンクを備える第2種の電力レーンが、第1種電力リンクの下流側だけでなく、上流側にも設けられることは、除外されない。さらに、提案される第1アプローチは、従来のハイブリッドアプローチと組み合わせることができ、すなわち、高速動作する第2種の電力リンク、特にSSPCを、上流側及び下流側のうちの一方に設け、通常動作においてはそれらの遮断状態にあり、第3故障隔離段階の間にそれらの導通状態に選択的に切り替えられる、
図8及び9に示される従来のスイッチSWまたは電力リンク314を、上流側及び下流側のうちの他方に設け得る。
【0137】
第3故障隔離段階は、個別のSSPCによって、それらの負荷チャネルの測定された電気的状態に基づくそれらのそれぞれの論理手段の制御下で、独立して実施されてもよい。代替として、電力分配ネットワークの集中コントローラは、例えば、CPD及びSSPCからの状態データ、及び場合によって測定されるネットワークの電気的状態に基づいて、第3故障隔離段階を実施するためにSSPCを制御してもよい。
【0138】
3つの故障隔離段階の上述の説明は、
図10~15の他のネットワークトポロジーに類似的に適用される。第2故障隔離段階の達成後、故障した第1種の電力レーンを除く全ての第1種の電力レーンの間の全てのSSPCは、負荷分散を再導入し、ネットワークをほぼ通常動作状態に変えるために、導通状態にリセットされ得る。達成された故障隔離に起因して、ネットワークのこの動作状態は、ネットワークの電気的故障緩和動作モードと称されてもよい。CPDの下流側または上流側のSSPCの位置に応じて、関係するそれぞれの第1種の電力レーン内の故障隔離を実施する1つのCPDまたは複数のCPDが、故障隔離に十分であるかもしれないことから、全てのSSPCが導通状態にリセットされ得ることさえ起こり得る。
【0139】
多数の電力源と、電気負荷として分散型の電気推力ユニット(EPU)または揚力/推力ユニットとを採用する、
図1~5との関連で参照される航空機のため、一般的にいわゆるeVTOLアプリケーションのために、電力レーンの損失は、乗り物の可制御性への影響を最小限にするように、EPUを、航空機のジオメトリに関して対称的に分布させて電力レーンに配置することは有利である。これは、上述した単一の第1種の電力レーンのようなネットワーク構成である場合に、単一の電力レーンが、隣接するEPUよりもむしろ十分に分布したEPUに供給することを確実にすることによって実現され得る。
【0140】
図16は、
図16aに、6つのEPUのみ、すなわち、前翼または先尾翼にEPU1及びEPU2、後翼にEPU3、EPU4、EPU5及びEPU6を備える
図2及び3に従う航空機の簡略化された概略版を示す。これらのEPUのそれぞれは、複数の推進エンジンを備えるユニットを表してもよい。
【0141】
図16bは、割り当てを概略的に示し、これは、1つの電力レーン上の故障が隣接するEPUに影響を及ぼし、乗り物のロール軸である対称軸に対して非対称のEPUに影響を及ぼすことから、望ましくない。EPU1、3、4またはEPU2、5、6の何れかが影響を受け、EPU1、3及び4は、乗り物右側の前翼及び後翼に配置され、EPU3及び4は、右後翼に互いに隣接して配置され、またEPU2、5、6は、乗り物左側の前翼及び後翼に配置され、EPU5及び6は、左後翼に互いに隣接して配置される。
【0142】
図16cは、割り当てを概略的に示し、これは、1つの第1種の電力レーン上の故障が、隣接するEPUに影響を及ぼさず、(乗り物のロール軸である対称軸に対して)故障したEPUのより良好な対称性をもたらすことから、望ましい。電力レーン308a及び308bのうちの1つが故障したとしても、左及び右前翼の2つのEPU1及び2のうちの1つのみが影響を受け、左及び右後翼上のただ1つの個別のEPU、すなわちEPU4及び5、またはEPU3及び6の何れかが影響を受けるであろう。
【0143】
図16及び16cに基づいて説明される概念は、
図2及び3の図示された実施形態のEPUまたは揚力/推力ユニットまたは推進エンジン、及び飛行アクチュエータに類似的に適用されてもよい。
【0144】
一般的に言えば、当業者は、十分な数の共通のタイプの航空機装置、特に揚力/推力ユニットを提供することができ、これらの航空機装置を適切な構成で航空機、特にその翼に配置することができ、これらの航空機装置を適切な方法で電力レーン、特に電力分配ネットワークの第1種の電力レーンに割り当てることができ、それにより一重の、あるいは多重の電気的故障に対してさえも所望の回復力が実現される。
【0145】
例えば、
図3に関して、電気的故障は、左主翼202の揚力/推力ユニット3.1と3.6、及び/または右主翼204の揚力/推力ユニット4.1と4.6の同時故障をもたらし得る。それと共に、胴体に隣接する1つまたは2つの揚力/推力ユニット、及び胴体にまだかなり近接する1つまたは2つの揚力/推力ユニットが影響を受け、それにより、横方向の均衡には、影響が生じないか、またはごくわずかな影響が生じるであろう。
【0146】
例えば、
図3に関して、電気的故障は、左先尾翼206の最も外側の揚力/推力ユニット1.6と右主翼204の最も外側の揚力/推力ユニット4.12、及び/または右先尾翼208の最も外側の揚力/推力ユニット2.6と左主翼202の最も外側の揚力/推力ユニット3.12の同時故障をもたらし得る。この場合も同様に、横方向の均衡は、影響を受けないか、またはあまり影響を受けないであろう。
【0147】
提案されるアプローチに基づく故障に対する回復力を実現する説明された原則は、
図2、
図3及び16a)に示される航空機以外の他の種類の航空機、また、そのような多数の揚力/推力ユニット、推進エンジン、フラップなどを備え、これらの全ての航空機エンジンが、航空機の飛行能力及び可制御性を維持するために必要とされるとは限らない、完全に異なる種類の航空機にも当然ながら適用され得る。一重、二重、または多重の電気的故障に対する回復力を実現するために、当業者は、本発明を実施するとき、そのような方法で、電力分配ネットワークの個別の電力レーンに様々な航空機エンジンを割り当てることができ、それにより、そのような一重、二重または多重のバスの故障の影響が最小化される。
[第2アプローチ]
上述の第2アプローチによれば、電力分配ネットワークの通常動作のため、また、好ましくはまた故障緩和動作モードのために、部分的に統合され、部分的に分離される電力分配ネットワーク306が提供される。このアプローチによれば、ネットワークは、複数の部分的負荷分散モードのそれぞれと関連する複数の異なる部分的負荷分散構成の間で連続して切り替わる。電力分配ネットワークは、時間変化する態様で連続的にこれらの部分的負荷分散モード、またそのための、それらの部分的負荷分散構成を担う。これらの異なる部分的負荷分散構成のそれぞれは、ネットワークの部分的な統合及び部分的な分離の異なる種類に対応する。電力源の均一な放電は、部分的負荷分散構成の間の、この連続的な、好ましくは周期的な切り替えによって実現され得る。
【0148】
この異なる部分的負荷分散構成の間の切り替えは、第2種の電力リンク316によって実施され、第2種の電力リンク316は、一般的な回路保護装置またはCPDのトリップ時間(tripping times)と比較して、さらにソリッドステート電力コントローラ(SSPC)の一般的なトリップ時間と比較して好ましくは比較的遅く、それらの導通状態とそれらの非導通状態との間で同期して切り替わる。例えば、第2種の電力リンク316の切り替えのために適切な時間スケールは、導通状態と非導通状態との間の1分の時間間隔での切り替えであり得る。それゆえに、導通状態と非導通状態との間の切り替えを可能とする他の部品も用いられ得るが、むしろ遅い電気機械式の、またはソリッドステートのスイッチが、第2種の電力リンク316を実現するために適切である。
【0149】
以下において、これらの第2種の電力リンクは、適切な1つのスイッチ、または適切な複数のスイッチを表すために、限定されない例としてのみ、1つまたは複数の「SW」と単に称される。
【0150】
さらに、上述された提案される第1アプローチによる場合のように、第1種の電力リンクは、適切な回路保護装置すなわち「CPD」であってもよい。以下において、これらの第1種の電力リンクは、この場合も同様に、限定されない例としてのみ、1つまたは複数の「CPD」と単に称される。
【0151】
電力分配ネットワークによって連続的に採用される複数の異なる部分的負荷分散モードに従い、時間変化する態様で関連する電気負荷に関して電力源にわたってもたらされる部分的負荷分散の実施例が、
図13のリング型トポロジーに基づいて与えられ得る。ここで、第1種の電力レーン308c及び第1種の電力レーン308dが、第2種の電力リンクcdとしてスイッチSWを備える第2種の電力レーン314cによって直接接続されることを前提とする。これに対応して、他の第2種の電力リンクad、ab、及びbcもスイッチであり、一方で電力リンクa、b、c及びdはCPDである。
【0152】
段階1及び2とされる適切な部分的負荷分散モードは、例えば以下のようである。
【0153】
【0154】
動作中に段階1と2とを周期的に交互にすることによって、電気的故障が、半分以上のレーンに決して影響を及ぼさないことが保障される。2つの段階1及び2によれば、各段階は、関連する電力源A、B、C及びD、それと共に対応する電気負荷AA、BB、CC、及びDDを、複数の分断負荷分散グループ、すなわち、段階1において分断部分的負荷分散グループ(A+B,AA+BB)及び分断部分的負荷分散グループ(C+D,CC+DD)、及び段階2において分断部分的負荷分散グループ(B+C,BB+CC)、及び分断部分的負荷分散グループ(A+D,AA+DD)と関連付けた。それぞれの段階のこれらのグループは、グループが共通の要素を有さないので、「分断グループ」と称される。
【0155】
全ての電力源は、直接的に、または提供される場合には別の電力源を介して、他の電力源と負荷分散するための統合の機会を有する。
【0156】
この解決策は、あらゆる数の電力レーンに拡張可能である。
【0157】
例えば以下に示されるような、電力源及び負荷の様々な段階への他の割り当ても可能である。
【0158】
【0159】
この実施例によれば、各段階は、電力源及び負荷を、それぞれの部分的共通負荷分散グループ、すなわち段階1において共通負荷分散グループ(A+B,AA+BB)、段階2において共通負荷分散グループ(B+C,BB+CC)、段階3において共通負荷分散グループ(C+D,CC+DD)及び段階4において共通負荷分散グループ(A+D,AA+DD)に割り当てた。
【0160】
しかしながら、第1実施例に対する特別な優位性は実現されないであろう。
【0161】
ネットワーク臨界(network criticality)が、ある時点におけるレーンの半分以上の損失を許容する場合、その後追加の段階が可能となり、そこで3つの第1種の電力レーンが、例えば以下のように負荷分散に同時に参加する。
【0162】
【0163】
この実施例によれば、各段階は、電力源及び負荷を、それぞれの部分的共通負荷分散グループ、すなわち段階1において共通負荷分散グループ(A+B+C,AA+BB+CC)、段階2において共通負荷分散グループ(B+C+D,BB+CC+DD)、段階3において共通負荷分散グループ(A+C+D,AA+CC+DD)、段階4において共通負荷分散グループ(A+B+D,AA+BB+DD)に再度割り当てた。
【0164】
電気的故障が発生した場合に、それぞれの第1種の電力レーンは、電気的故障を隔離するために、さらなる部分的負荷分散から除外されるであろう。ネットワークによって連続的に採用される複数の異なる部分的負荷分散モードによる部分的負荷分散は、それでもなお継続されてもよい。
【0165】
電力源Cまたは負荷CCが電気的故障を有するとすれば、例えば以下の段階がネットワークによって周期的に採用され得る。
【0166】
【0167】
上述の第2実施例の段階1及び4に対応するこれらの段階1’及び2’は、電力分配ネットワークの部分的故障隔離負荷分散モードに対応する。これらの段階は、上述の第2実施例の段階1~4の一部であり、段階1’は、その段階1に対応し、段階1’は、その段階4に対応する。
【0168】
代替として、電気的故障が隔離されなければならない場合に、電力分配ネットワークの電気的故障緩和動作モードにおいて、健全な第1種の電力レーンの電力源にわたる永続的な負荷分散をそれらの負荷に関して実施し得る。本実施例において、この場合もまた、電力源Cまたは負荷CCが電気的故障を有するとすれば、ネットワークによって採用され得る以下の故障緩和段階が、電気的故障が解決されるまで、故障隔離を永続的に採用する。
【0169】
【0170】
別の実施例が、
図15によるスター型トポロジーに基づいて与えられる。中心ノードとして機能する接続レーン320と、各第1種の電力レーンとの間の電力リンクax、bx、cx及びdxは、この場合もスイッチであると想定される。適切な部分的負荷分散モードまたは段階の実施例は、以下の段階1~6である。
【0171】
【0172】
他の実施例のように、この解決法は、あらゆる数の電力レーンに拡張可能であり、段階はあらゆる順番で移行され得る。ネットワーク臨界が、レーンの半分以上の損失を許容する場合、その後追加の段階が可能となり、そこで、例えば2つのみではなく3つのレーンが、それぞれの同時に行われる部分的負荷分散に参加する。
【0173】
電力レーン308cが、電力源Cまたは負荷CCの故障によって故障する場合において、以下の段階が、ネットワークの電気的故障緩和動作モードにおいて、周期的に担われ得る。
【0174】
【0175】
これらの段階1’、2’及び3’は、通常動作のために与えられる実施例の段階1~6の一部であり、段階1’はその段階1に対応し、段階2’はその段階3に対応し、段階3’は、その段階5に対応する。
【0176】
代替として、必要に応じて、電力分配ネットワークの電気的故障緩和動作モードにおいて、この場合もまた、健全な第1種の電力レーンの電力源にわたる永続的な負荷分散をそれらの負荷に関して実施し得る。
【0177】
それぞれの実施の様々な段階または部分的負荷分散モードの間の移行は、好ましくは現在閉鎖されているスイッチを最初に開放し、それから次の段階を実現するために閉鎖されるスイッチング(switching)を閉鎖することによって行われる。これは、段階移行が安全マージンのいかなる低下にも関与しないことを保障する。従って、段階の間の切り替えは、直接ではなく、電力源にわたる部分的負荷分散の無い中間段階の後にのみ行われることが好ましい。
【0178】
図16及び
図3を参照して考察及び説明されるように、回復力及び乗り物の可制御性の維持を実現するために、極めて重要な負荷が、第1種の電力レーン及び航空機の翼及び胴体に適切に分布され、対称的な状態で配置され得る。これはまた提案される第2アプローチとの関連でも適用される。
【0179】
有利にするために、部分的負荷分散モードまたは部分的負荷分散段階の、様々な部分的共通負荷分散グループまたは分断部分的負荷分散グループが、そのような態様で形成されることを提供してもよく、それにより、各それぞれの共通負荷分散グループまたは分断負荷分散グループの極めて重要なそれぞれの負荷または航空機装置が、航空機の翼及び/または胴体上に対称的に良好に分布され、それにより、これらのグループのうちの1つの故障は致命的ではなく、航空機の可制御性に支障を来さない。このような場合において、電力分配ネットワークが、電気的故障を隔離し、電気的故障緩和動作モードを担うために、電気的故障の発生に対して非常に高速で気付き、反応することはあまり重要でない。
【0180】
当業者が本開示の提案される概念及びアプローチをどのように詳細に実施し得るかは、多くの可能性がある。当業者はまた、例えば、1つのネットワーク部に関して、これらのアプローチのうちの1つ、また別のネットワーク部に関して、他のアプローチを適用することによって、航空機の電力分配ネットワークにおいて両方の提案されるアプローチを実施することを決定してもよい。さらに、第2種の電力リンクが適切に選択される場合に、電力分配ネットワークは、原則として、両方のアプローチに従って構成され得るか、または構成可能であり得る。
【0181】
上記で用いられる「電力源」、「電気負荷」、「電力レーン」、「第1種の電力レーン」、「第2種の電力レーン」、「電力リンク」、「第1種の電力リンク」、及び「第2種の電力リンク」のような用語は、本質的に、これらの機能を実現するために用いられる特定の構造及び特定の要素を必ずしも暗示することなく、任意の技術的背景における任意の機能を述べる一般名称である。そのために、複数の電力リンクが、1つのそれぞれの電力ネットワーク装置に組み込まれることが可能である。1つまたは複数の第1種の電力リンク、及び1つまたは複数の第2種の電力リンクでさえ、1つのそれぞれの電力ネットワーク装置に組み込まれ得る。電力ネットワーク装置に組み込まれるこのような電力リンクは、例えば、電力ネットワーク装置の1つの接続ポートが、同時に第1種の電力リンクの接続ポート及び第2種の電力リンクの接続ポートであるように、電力ネットワーク装置の接続ポートを共有し得る。このような電力ネットワーク装置はまた、この意味において、それぞれの電力リンクと共に装置に組み込まれるような電力レーンまたは電力レーン部も含んでもよい。
【0182】
航空機の電力システム(300)の電力分配ネットワーク(306)は、それが電力源(A,B,C,D)にわたる、電気負荷(AA,BB,CC,DD)に関する負荷分散をもたらすような、少なくとも1つの通常動作モードで動作され、電力分配ネットワーク(306)は、電気的故障の場合に、電気的故障を有する電力分配ネットワーク(306)のネットワーク部が、電力分配ネットワークの少なくとも1つの他のネットワーク部から隔離されるような、電気的故障隔離をもたらす少なくとも1つの電気的故障緩和動作モードで動作される。
【符号の説明】
【0183】
10…飛行制御システム、12…飛行制御コンピュータシステム、12a,12b,12c…飛行制御コンピュータ、14,16,18,20…航空機装置、22…制御バスシステム、30a,30b…左及び右サイドスティック装置、32a,32b…左及び右サイドスティック、38a,38b…センサアセンブリ、42a,42b…接続リンク、200…先尾翼型航空機、202…左後翼、203…胴体、204…右後翼、206…左前翼、208…右前翼、210,212,214,216;234…フラップ、230…推進モジュール、232,232a,232b,232c…推進エンジン、3.1~3.12…左後翼の揚力/推力ユニット、4.1~4.12…右後翼の揚力/推力ユニット、1.1~1.6…左前翼の揚力/推力ユニット、2.1~2.6…右前翼の揚力/推力ユニット、236…翼、240…フラップアクチュエータ、242…枢動継手、300…電力システム、302;A,B,C,D…電力源、304;AA,BB,CC,DD1,DD2,DD…電気負荷、306…電力分配ネットワーク、308;308a,308b,308c,308d…電力レーン、第1種の電力レーン、310;a,b,c,d…第1種の電力リンク、312,314…電力レーン、316;SW…電力リンク;スイッチ、314;314a,314b,314c,314d,314e、314f、314g,314h,314i,314j…第2種の電力レーン、316;ab,bc,cd,ad,ac,ad,ax,bx,cx,dx,312,314,314a…第2種の電力リンク、320…接続レーン、EPU1,EPU2,EPU3,EPU4,EPU5,EPU6…電気推進ユニット
【国際調査報告】