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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】神経変性状態の治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/569 20060101AFI20240426BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K31/569
A61P25/00
A61P25/16
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/198
A61P25/14
A61P25/28
A61K47/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571820
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022027294
(87)【国際公開番号】W WO2022245532
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/189,880
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523436171
【氏名又は名称】バイオビー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クラレンス・ナサニエル・アレム
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・エル・リーディング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD57
4C076FF04
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA161
4C084ZA162
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA56
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZA02
4C206ZC75
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、17-エチニル-10R、13S-ジメチル2、3、4、7、8R、9S、10、11、12、13、14S、15、16、17-ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3R、7R、17S-トリオールの固体状態形態を含む医薬組成物である。本明細書で更に開示されるのは、パーキンソン病を含む神経変性状態に関連する状態の治療のための固体状態形態を使用するための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性状態を治療するための方法であって、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを含む医薬組成物の有効量、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記神経変性状態は、パーキンソン病である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1種の追加の医薬を前記患者に投与する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記追加の医薬が、少なくとも1種のドパミンアゴニストを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記追加の医薬が、少なくとも1種のドパミン前駆体を含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記追加の医薬がL-ドパを含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記追加の医薬が、前記組成物の第1の投与後、遅延時間で投与される、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記遅延時間が2年以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の運動症状及び/又は少なくとも1種の運動合併症が、前記患者において発症する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記運動症状が、四肢における振戦及び/又は震え、動作の緩慢化(動作緩慢)、筋硬直、強剛、不動(すくみ)、筋痙攣、姿勢及び/又はバランス障害、転倒、めまい、まばたき又はほほえみ等の自動運動の喪失、言語能力及び/又は書く能力の変化、運動変動、ジストニア、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記運動合併症は、ウェアリングオフ、用量不足、用量悪化の開始、服用停止後の反跳、予測不可能なオフ期、すくみ歩行、オン期不良、急性無動症、ジスキネジア、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記運動症状及び/又は運動合併症が、前記追加の医薬が投与された後2年以上の時間で発症する、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールが、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態が、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの結晶性溶媒和物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記結晶性溶媒和物が、結晶性メタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶性溶媒和物が、結晶性エタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶性溶媒和物が、結晶性水和物17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記結晶性溶媒和物が、III型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記結晶性溶媒和物が、IV型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記結晶性溶媒和物が、V型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態が、非晶質17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記医薬組成物が、約3質量%未満の不純物を含有する、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者がヒト又は哺乳類である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
神経変性状態の治療における使用のための、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオール、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項25】
神経変性状態を治療するための、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオール、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物の使用。
【請求項26】
神経変性状態を治療するための医薬の製造における17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの使用であって、前記医薬が、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む、使用。
【請求項27】
前記神経変性状態がパーキンソン病である、請求項24に記載の医薬組成物、又は請求項25若しくは26に記載の使用。
【請求項28】
前記組成物又は前記使用が、少なくとも1種の追加の医薬を含む、請求項24若しくは27に記載の医薬組成物、又は請求項25から27に記載の使用。
【請求項29】
前記追加の医薬が、L-ドパを含む、請求項24若しくは27から28に記載の医薬組成物、又は請求項25から28に記載の使用。
【請求項30】
前記追加の医薬が、前記医薬組成物の使用が始まった後の遅延時間で使用される、請求項24若しくは27から29に記載の医薬組成物、又は請求項25から29に記載の使用。
【請求項31】
前記遅延時間が2年以上である、請求項24若しくは27から30に記載の医薬組成物、又は請求項25から30に記載の使用。
【請求項32】
少なくとも1種の運動症状及び/又は少なくとも1種の運動合併症の発症が起こる、請求項24若しくは27から31に記載の医薬組成物、又は請求項25から31に記載の使用。
【請求項33】
前記運動症状が、四肢における振戦及び/又は震え、動作の緩慢化(動作緩慢)、筋硬直、強剛、不動(すくみ)、筋痙攣、姿勢及び/又はバランス障害、転倒、めまい、まばたき又はほほえみ等の自動運動の喪失、言語能力及び/又は書く能力の変化、運動変動、ジストニア、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される、請求項24若しくは27から32に記載の医薬組成物、又は請求項25から32に記載の使用。
【請求項34】
前記運動合併症が、ウェアリングオフ、用量不足、用量悪化の開始、服用停止後の反跳、予測不可能なオフ期、すくみ歩行、オン期不良、急性無動症、ジスキネジア、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される、請求項24若しくは27から33に記載の医薬組成物、又は請求項25から33に記載の使用。
【請求項35】
前記運動症状及び/又は前記運動合併症が、前記医薬組成物の使用が始まった後2年以上の時間で発症する、請求項24若しくは27から34に記載の医薬組成物、又は請求項25から34に記載の使用。
【請求項36】
前記運動症状及び/又は前記運動合併症が、前記追加の医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する、請求項24若しくは27から35に記載の医薬組成物、又は請求項25から35に記載の使用。
【請求項37】
前記17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールが、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態である、請求項24若しくは27から36に記載の医薬組成物、又は請求項25から36に記載の使用。
【請求項38】
前記固体状態形態が、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの結晶性溶媒和物である、請求項24若しくは27から37に記載の医薬組成物、又は請求項25から37に記載の使用。
【請求項39】
前記結晶性溶媒和物が、結晶性メタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から38に記載の医薬組成物、又は請求項25から38に記載の使用。
【請求項40】
前記結晶性溶媒和物が、結晶性エタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から39に記載の医薬組成物、又は請求項25から39に記載の使用。
【請求項41】
前記結晶性溶媒和物が、結晶性水和物17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から40に記載の医薬組成物、又は請求項25から40に記載の使用。
【請求項42】
前記結晶性溶媒和物が、III型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から41に記載の医薬組成物、又は請求項25から41に記載の使用。
【請求項43】
前記結晶性溶媒和物が、IV型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から42に記載の医薬組成物、又は請求項25から42に記載の使用。
【請求項44】
前記結晶性溶媒和物が、V型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から43に記載の医薬組成物、又は請求項25から43に記載の使用。
【請求項45】
前記固体状態形態が、非晶質17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである、請求項24若しくは27から44に記載の医薬組成物、又は請求項25から44に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
任意の優先出願への参照による引用
外国又は国内の優先権の主張がPCT願書において本願とともに出願されると認識される、ありとあらゆる出願は、参照により本明細書によって引用される。
【0002】
背景技術
本開示の分野
本開示は一般に、化合物、17-エチニル-10R,13S-ジメチル2,3,4,7,8R,9S,10,11,12,13,14S,15,16,17-ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3R,7R,17S-トリオール、化合物の固体状態形態、並びに化合物及び固体状態形態を使用するための方法に関する。
【0003】
本開示は、固体及び液体の製剤を調製する際の、多形形態及び擬多形形態を含む、化合物及び固体状態形態の医薬組成物、並びに化合物及び固体状態形態を使用するための方法に関する。
【0004】
本開示は、パーキンソン病を含む神経変性状態に関連する状態の治療のための、化合物、固体状態形態、医薬組成物、並びに固体及び液体の製剤を使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0005】
従来技術の説明
レボドパ(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)はL-ドパとしても知られ、パーキンソン病(PD)によって引き起こされる運動症状を緩和するための最も効果的な治療であるが、疾患進行を遅らせない。レボドパ治療は、中枢神経系(CNS)への大型中性アミノ酸トランスポーターによる外因性レボドパの能動輸送に依拠しており、そこで、レボドパは芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼによって脱炭酸されてドパミンが産生される。極めて重要なことに、ドパミンは血液脳関門を超えてCNSに入ることができず、末梢での外因性レボドパの代謝により、血流中に使用不可能なドパミンが作り出される。外因性レボドパの半減期は約90分と短く、CNSにおけるドパミン作動性末端でのドパミンの貯蔵容量が限定されているため、PDの運動症状の緩和に効果的であるためには、レボドパは頻繁に投与されなければならない。
【0006】
レボドパ治療が最初に開始される際、PD患者は典型的に、スムース且つ持続的に応答し、運動症状はなく、副作用はほとんどない。しかしながら、PDが進行するにしたがい、ドパミン作動性ニューロンの変性により、レボドパの貯蔵及び放出の効率が悪くなり、投薬の3~4時間後に有益な効果が弱まり始める。次の計画された服用前の、有効性のそのような低減は、「ウェアリングオフ」と呼ばれる。より大きい投与量のレボドパが投与されるにしたがって、運動合併症等の様々な副作用が経時的に頻繁に現れる。レボドパ治療に関連付けられる運動合併症は、使用の最初の5年の間に患者の30~40パーセントで、10年までに患者の少なくとも60パーセントで起こる。
【0007】
レボドパ併用治療では、末梢でのレボドパ代謝を遅らせる第2の医薬が投与され、より少量のレボドパの投与が可能となり、運動合併症の開始の遅延という恩恵がある。レボドパ併用治療のために使用される医薬の1つのクラスは、カルビドパ(L-アルファ-(3,4-ジヒドロキシベンジル)-アルファ-ヒドラジノプロピオン酸)等の、血液脳関門を超えることができないデカルボキシラーゼ阻害薬である。しかしながら、レボドパ・カルビドパ併用治療は、めまい、食欲不振、下痢、口渇、口及び喉の痛み、便秘、味覚の変化、健忘、又は錯乱を含み得る、多数の副作用を含む。
【0008】
レボドパ代謝は、ドパミン作動性ニューロンにおける酸化ストレスを増大させ、これがPD進行の速度を増大させることが示唆されてきた。しかしながら、最近の出版物によれば、レボドパによる疾患の加速に関する決定的な証拠はないことが示されている。パーキンソン病患者の大多数において、長期的な拍動性のレボドパ暴露により、ドパミン作動性及びセロトニン作動性ニューロンにおいて適応応答、並びにドパミンに対する過敏性、及びレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)と呼ばれる異常不随意運動をもたらす他の適応を生じる。LIDの病態生理学は複雑であり、レボドパ薬力学と比べて兆候は患者間で様々であり得る。時間に応じたLID重症度の増大は一般的なことであり、LID発現は患者にとってパーキンソン病それ自体と同じくらい問題となり得る。炎症性細胞外シグナル調節キナーゼ1及び2(ERK1/2、ERK)は、動物モデルにおいてLID発現に結びつけられているが、炎症をLIDに結びつける具体的な機序は完全には明らかにされていない。げっ歯類モデルにおいてLIDを低減させる抗炎症戦略が報告されているが、非ヒト霊長類モデルの類似の出版物は不足している。
【0009】
LIDを促進する可能性が低い運動治療を提供する、様々なドパミン受容体アゴニスト及びドパミン代謝の阻害薬(モノアミンオキシダーゼ阻害薬、MAOI)が開発されている。これらのレボドパ代替物は、ほとんどの患者にとってLIDに至ると予測できる進路を開始するレボドパの開始を、患者が遅延させることができる重要な選択肢を与えるが、最近の査読ではレボドパ暴露とLIDまでの時間との間の関連に疑念を投げかけている。都合の悪いことに、多くのドパミン受容体アゴニストは、望ましくない副作用、又はレボドパよりも促進的でない活性を有し、それに対し、MAOIの促進活性は疾患の初期にのみ単剤治療として有用である。
【0010】
LIDのための治療を開発する努力は、選択的ドパミン受容体拮抗作用及び非拍動性のレボドパ投与戦略に大きく基づいている。医薬品化学者と働く神経薬理学者は、LID発現を低下させる高度に選択的なドパミン受容体アンタゴニストを開発したが、これらの治療はまた、一般に、促進的なドパミン作動性シグナル伝達を低下させる。レボドパ経口投与の拍動性を低減させる戦略は、緩慢で連続的な放出の経口製剤、及びL-ドパ連続的空腸注入(L-dopa continuous jejununal infusion)を含み、L-ドパ連続的空腸注入は、著しく高いLID感受性を有する患者において最も高い有用性を有する。これらの治療の選択肢にもかかわらず、PD患者の大多数にとって、LIDは一般的な治療パラダイムにおいて未解決の問題のままである。レボドパ治療がLIDを誘発する蓋然性が高いことは、レボドパの、非ドパミン作動性治療用代替物の開発の根拠を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第8,252,947号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PDの治療のための非ドパミン作動性治療組成物への需要がある。また、運動症状を減少させ、運動合併症の開始を遅らせ、より少ない副作用を呈示することができる、レボドパ併用治療における使用のための非ドパミン作動性治療組成物への需要がある。LIDの治療のための非ドパミン作動性治療組成物への需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書で開示されるのは、神経変性状態を治療するための方法であって、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを含む医薬組成物の有効量、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を、それを必要とする患者に投与する工程を含む方法である。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。
【0014】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1種の追加の医薬を患者に投与する工程を更に含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、少なくとも1種のドパミンアゴニストを含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、少なくとも1種のドパミン前駆体を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬はL-ドパを含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、追加の医薬は、組成物の第1の投与後、遅延時間で投与される。いくつかの実施形態において、遅延時間は2年以上である。いくつかの実施形態において、遅延時間は、2、3、又は4年である。いくつかの実施形態において、遅延時間は5年である。いくつかの実施形態において、遅延時間は5年超である。
【0016】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の運動症状が、患者において発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、四肢における振戦及び/又は震え、動作の緩慢化(動作緩慢)、筋硬直、強剛、不動(すくみ)、筋痙攣、姿勢及び/又はバランス障害、転倒、めまい、まばたき又はほほえみ等の自動運動の喪失、言語能力及び/又は書く能力の変化、運動変動、ジストニア、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の運動合併症が、患者において発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、ウェアリングオフ、用量不足、用量悪化の開始、服用停止後の反跳、予測不可能なオフ期、すくみ歩行、オン期不良、急性無動症、ジスキネジア、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、運動症状は、追加の医薬が投与された後、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5年以上の時間で発症する。
【0019】
いくつかの実施形態において、運動合併症は、追加の医薬が投与された後、2、2.5、3、3.5、4、4.5、又は5年以上の時間で発症する。
【0020】
いくつかの実施形態において、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールは、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態である。いくつかの実施形態において、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態は、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの結晶性溶媒和物である。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、結晶性メタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、結晶性エタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、結晶性水和物17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、III型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、IV型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、V型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態は、非晶質17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。
【0021】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、約3質量%未満の不純物を含有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、患者は、ヒト又は哺乳類である。
【0023】
更に本明細書で開示されるのは、神経変性状態の治療における使用のための、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを含む医薬組成物である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。
【0024】
更に本明細書で開示されるのは、神経変性状態を治療するための、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを含む医薬組成物の使用である。いくつかの実施形態において、使用は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。
【0025】
更に本明細書で開示されるのは、神経変性状態を治療するための医薬の製造における17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの使用である。いくつかの実施形態において、医薬は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の実施形態に従う医薬組成物で治療される試験被験体の不動スコアを示す。
図2】本開示の実施形態に従う医薬組成物で治療される試験被験体の異常不随意運動のスコアを示す。
図3】本開示の実施形態に従う医薬組成物で治療される試験被験体の残存ニューロンの百分率を示す。
図4】本開示の実施形態に従う医薬組成物で治療される試験被験体の体重を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明は、文脈及び例を提供するが、本明細書において後述される、又は本明細書への優先権を主張する任意の他の出願における特許請求の範囲によって包含される、本開示の範囲を限定するように、解釈されるべきではない。いかなる単一構成要素又は構成要素の集合も、不可欠でも必須でもない。例えば、いくつかの実施形態において、Y又はY及びQ等の1又は複数の変数は省略されることがある。本明細書の任意の実施形態において説明される且つ/又は例示される、任意の特徴、構造、成分、材料、工程、又は方法は、本明細書の任意の他の実施形態において説明される且つ/又は例示される、任意の特徴、構造、成分、材料、工程、又は方法とともに、又はそれらの代わりに、使用することができる。
【0028】
定義
本明細書で使用されるような「ドパミンアゴニスト」という用語は、摂取された場合、ドパミンの作用を模倣することができる物質又は医薬である。これらの物質は、被験体におけるドパミンの不十分なレベルに関連する症状を改善することができる。
【0029】
本明細書で使用されるような「ドパミン前駆体」という用語は、体内でドパミンに変換される物質又は医薬である。これらの物質は、脳に入り、枯渇したドパミンのレベルを回復することができる。
【0030】
本明細書で使用されるように、「被験体」、「宿主」、「患者」、及び「個体」は、交換可能に使用され、当該技術分野における通常の意味が与えられ、またがん及び/又は白血病を有する生物を指すものとする。これには哺乳類、例えばヒト、非ヒト霊長類、有蹄動物、イヌ科の動物、ネコ科の動物、ウマ科の動物、マウス、及びラット等が含まれる。「哺乳類」という用語は、ヒト及び非ヒト哺乳類の両方を含む。
【0031】
「治療上有効な量」及び「有効量」という用語は、望ましい薬理学的結果を与えるのに必要な活性医薬成分の量を指す。実際には、治療上有効な量は、病状の重症度、被験体の年齢、及び望ましい治療効果によって大きく異なる。
【0032】
「治療」、「治療する(treating)」、及び「治療する(treat)」という用語は、それらの通常の意味が与えられ、また、本明細書において、一般に望ましい薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指すことを含むものとする。効果は、それらの疾患又は症状を完全に若しくは部分的に予防する観点から予防的であってもよい、且つ/又は部分的若しくは完全な安定化の観点から治療的であっても、又は疾患及び/若しくは疾患に帰因する有害作用を治癒してもよい。本明細書で使用されるような「治療」という用語は、その通常の意味が与えられ、また、哺乳類、特にヒトにおける疾患のいかなる治療も包含するものとし、(a)疾患又は症状の素因を持つ可能性があるが、まだそれを有すると診断されていない被験体において、疾患又は症状が起こることを予防すること、(b)疾患症状を阻害すること、例えば、その発症を阻止すること、及び/又は(c)疾患症状を軽減すること、例えば、疾患又は症状の退行を引き起こすことを含む。
【0033】
特許、特許出願、論文、書籍、論説、及びインターネットウェブページを含むがこれらに限定されない、本願において記載されるすべての文献及び同様の資料は、任意の目的のために、それらの全体を参照により明白に引用される。引用される参考文献の用語の定義が、本教示において提供される定義と異なると思われる場合、本教示において提供される定義が適用されるものとする。非常に小さいわずかの逸脱が本明細書における教示の範囲内にあるような、本教示において論じられる温度、濃度、時間等に先立つ黙示的な「約」があることが認識されるであろう。本願において、別段に具体的に言明されていない限り単数形の使用は複数形を含む。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」の使用は、限定的であることを意図するものではない。一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的且つ説明的でしかなく、制限的ではないことが理解されるべきである。「及び/又は」という用語は、提供される可能性が、一緒に使用され得るか、又は代替で使用され得ることを表す。したがって、「及び/又は」という用語は、一組の可能性に関して両方の選択肢が存在することを表す。
【0034】
本願において、特に添付の特許請求の範囲において使用される用語及び語句、及びそれらの変形例は、別段に明白に言明されない限り、限定的であるのとは対照的に無制限的であるものとして解釈されるべきである。前述の例としては、「含む(including)」という用語は、「特に限定されず含む」又は「含むが特に限定されない」等を意味するように解釈されるべきである;本明細書で使用されるような「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「によって特徴付けられる(characterized by)」と同義であり、包括的又は無制限的であり、追加的な記載されていない要素又は方法工程を除外しない;「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきである;「含むincludes」という用語は、「含むが特に限定されない」と解釈されるべきである;「例」という用語は、議論される項目の網羅的又は限定的な列挙ではなく、それらの例示的な事例を提供するために使用され;「好ましくは」、「好ましい」、「望ましい(desired)」、又は「望ましい(desirable)」等の用語、及び同様の意味の単語の使用は、ある特定の特徴が、本発明の構造又は機能に対して極めて重要、不可欠、又は更に重要であることが示唆されていると理解されるべきではなく、しかし代わりに、本開示の特定の実施形態において利用されてもされなくてもよい代替又は追加の特徴を強調することを単に意図すると理解されるべきである。加えて、「含む(comprising)」という用語は、「少なくとも有する」又は「少なくとも含む(including at least)」という語句と同義であると解釈されるべきである。プロセスの文脈において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、プロセスが、少なくとも記載される工程を含むが、追加の工程を含んでもよいことを意味する。化合物、組成物、又は装置の文脈において使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、化合物、組成物、又は装置が、少なくとも記載される特徴又は構成要素を含むが、追加の特徴又は構成要素も含んでもよいことを意味する。同様に、接続詞「及び」で連結される項目のグループは、グループ分けにおいてそれらの項目の1つ1つの存在が必要であると読み取られるべきではなく、むしろ、別段に明記されない限り、「及び/又は」と読み取られるべきである。同様に、接続詞「又は」で連結される項目のグループは、そのグループの中で相互排他性が必要であると読み取られるべきではなく、むしろ、別段に明記されない限り、「及び/又は」と読み取られるべきである。
【0035】
本明細書における、実質的にいかなる複数形の及び/又は単数形の用語の使用に関して、文脈及び/又は用途に適切であるように、当業者は、複数形から単数形且つ/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、明確さのために、本明細書において明白に述べられることがある。不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。特定の方策が相互に異なる従属項において記載されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせを有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0036】
治療の方法
本開示の実施形態は、神経変性状態を治療するための方法に関する。いくつかの実施形態において、方法は、医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、式1によって表される17-エチニル-10R,13S-ジメチル2,3,4,7,8R,9S,10,11,12,13,14S,15,16,17-ヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3R,7R,17S-トリオールを含む。以後、式1の化合物は、化合物1又は17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールとも呼ばれる。
【0037】
【化1】
【0038】
いくつかの実施形態において、神経変性状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、又は筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、又は前述のものの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、特発性パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、及び血管性パーキンソニズム、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。
【0039】
いくつかの実施形態において、患者は、ヒト又は哺乳類である。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0040】
いくつかの実施形態において、方法は、1又は複数のドパミンアゴニストを患者に投与することを遅延させる。いくつかの実施形態において、方法は、L-ドパを患者に投与することを遅延させる。
【0041】
いくつかの実施形態において、方法は、1又は複数のドパミンアゴニストによって引き起こされる、患者における運動合併症の発症を遅延させる。いくつかの実施形態において、方法は、L-ドパによって引き起こされる、患者における運動合併症の発症を遅延させる。
【0042】
いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも1種の追加の医薬を患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、少なくとも1種のドパミンアゴニストを含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、エルゴリンドパミンアゴニスト、非エルゴリンドパミンアゴニスト、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。好適なドパミンアゴニストの非限定的な例としては、ブロモクリプチン、カベルゴリン、アポモルフィン、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、APOKYN、KYNMOBI、MIRAPEX、NEUPRO、PARLODEL、及びREQUIPが挙げられる。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、少なくとも1種のドパミン前駆体を含む。好適なドパミン前駆体の非限定的な例としては、カルビドパ、L-ドパ(即ち、レボドパ)、エンタカポン、COMTAN、DUOPA、INBRIJA、RYTARY、SINEMET、SINEMET CR、及びSTALEVOが挙げられる。いくつかの実施形態において、追加の医薬はL-ドパを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、追加の医薬は、組成物の第1の投与後、遅延時間で投与される。いくつかの実施形態において、第1の投与は、毎日、毎週、毎月、又は前述のものの任意の組み合わせである投与計画を用いて行われてもよい。いくつかの実施形態において、第1の投与の投与計画は、組成物の1、2、3回以上の1日投与量を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の投与の投与計画は、組成物の1、2、3回以上の1週投与量を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の投与の投与計画は、組成物の1、2、3回以上の1か月投与量を含んでもよい。いくつかの実施形態において、遅延時間は、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年以上、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、遅延時間は2年以上である。いくつかの実施形態において、遅延時間はゼロであり、追加の医薬は、組成物の第1の投与と同時に投与される。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、毎日、毎週、毎月、又は前述のものの任意の組み合わせである投与計画を用いて投与される。いくつかの実施形態において、追加の医薬の投与計画は、組成物の1、2、3回以上の1日投与量を含んでもよい。いくつかの実施形態において、追加の医薬の投与計画は、組成物の1、2、3回以上の1週投与量を含んでもよい。いくつかの実施形態において、追加の医薬の投与計画は、組成物の1、2、3回以上の1か月投与量を含んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の運動症状が、患者において発症する。本明細書で使用されるような「運動症状」という用語は、四肢における振戦及び/又は震え、動作の緩慢化(動作緩慢)、筋硬直、強剛、不動(すくみ)、筋痙攣、姿勢及び/又はバランス障害、転倒、めまい、まばたき又はほほえみ等の自動運動の喪失、言語能力及び/又は書く能力の変化、運動変動、及びジストニアのうちの1又は複数である。本明細書で使用されるような「ジストニア」という用語は、筋痙縮及び姿勢異常をもたらす筋緊張異常状態である。
【0045】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の運動合併症が、患者において発症する。本明細書で使用されるような「運動合併症」という用語は、オン期とオフ期の繰り返しであり得る。本明細書で使用されるような「オン期」という用語は、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせに対する陽性応答の状態である。オン期は、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、又は前述のものの任意の組み合わせに関連する症状の不在又は減少によって特徴付けられる。本明細書で使用されるような「オフ期」という用語は、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせに対する応答がない状態である。オフ期は、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、又は前述のものの任意の組み合わせに関連する症状の存在によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、パーキンソン病、パーキンソニズム、及び/又はパーキンソン症候群に関連する症状は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種の運動症状を含んでもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、運動合併症は、ウェアリングオフ、用量不足、用量悪化の開始、服用停止後の反跳、予測不可能なオフ期、すくみ歩行、オン期不良、急性無動症、又は前述のものの組み合わせを含み得る。本明細書で使用されるような「ウェアリングオフ」という用語は、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの代謝が完了する際に起こる、パーキンソン病に関連する症状の再発である。「予測不可能なオフ期」という用語は、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの投与と相関しないオフ期である。本明細書で使用されるような「すくみ歩行」という用語は、前進が停止する、又は著しく低減される状態である。本明細書で使用されるような「オン期不良」という用語は、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの投与後のオン期の不在である。本明細書で使用されるような「急性無動症」という用語は、数日間続き、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの投与に応答しない無動状態を含むパーキンソン病に関連する症状の、突然の且つ/又は著しい増大である。
【0047】
いくつかの実施形態において、運動合併症は、ジスキネジアを含み得る。本明細書で使用されるような「ジスキネジア」という用語は、随意運動及び/又は姿勢の異常又は障害である。いくつかの実施形態において、運動合併症は、L-ドパ誘発性ジスキネジア、舞踏病、ジストニア、バリスム、ミオクローヌス、ピーク用量ジスキネジア、二相性ジスキネジア、ウェアリングオフジスキネジア、ウェアリングオフジストニア、又は前述のものの組み合わせから選択されるジスキネジアを含む。本明細書で使用されるような「ピーク用量ジスキネジア」という用語は、オン期中に出現し、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの投与後、約30~90分で始まる。本明細書で使用されるような「二相性ジスキネジア」という用語は、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの投与後の不随意運動の、2つの別々の期間を含む。第1のものはオン期の開始時に起こり、第2のものはオフ期の開始時に起こる。本明細書で使用されるような「ウェアリングオフジスキネジア」という用語は、あまり一般的ではなく、大振幅運動によって特徴付けられることがある。本明細書で使用されるような「ウェアリングオフジストニア」という用語は、オフ期中のジストニアとして現れ、通常、手足に関係するが、顔、頸、又は胴体に関係することがある。いくつかの実施形態において、ジスキネジアは、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせの投与との関連で様々な時期に発生する。
【0048】
いくつかの実施形態において、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせが完全に代謝された場合、運動症状は起こる。いくつかの実施形態において、組成物が完全に代謝された場合、運動症状は起こる。いくつかの実施形態において、追加の医薬が完全に代謝された場合、運動症状は起こる。いくつかの実施形態において、ドパミンアゴニストが完全に代謝された場合、運動症状は起こる。いくつかの実施形態において、ドパミン前駆体が完全に代謝された場合、運動症状は起こる。いくつかの実施形態において、L-ドパが完全に代謝された場合、運動症状は起こる。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物、追加の医薬、又はそれらの組み合わせが完全に代謝された場合、運動合併症は起こる。いくつかの実施形態において、組成物が完全に代謝された場合、運動合併症は起こる。いくつかの実施形態において、追加の医薬が完全に代謝された場合、運動合併症は起こる。いくつかの実施形態において、ドパミンアゴニストが完全に代謝された場合、運動合併症は起こる。いくつかの実施形態において、ドパミン前駆体が完全に代謝された場合、運動合併症は起こる。いくつかの実施形態において、L-ドパが完全に代謝された場合、運動合併症は起こる。
【0050】
いくつかの実施形態において、運動症状は、組成物が投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、追加の医薬が投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、ドパミン前駆体が投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、L-ドパが投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。
【0051】
いくつかの実施形態において、運動合併症は、組成物が投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、追加の医薬が投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、ドパミン前駆体が投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、L-ドパが投与された後、約0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は30年以上の時間で発症する。
【0052】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態を含む。いくつかの実施形態において、固体状態形態は、結晶性17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、固体状態形態は、非晶質形態の17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを実質的に含まない結晶性17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。
【0053】
いくつかの実施形態において、固体状態形態は、結晶性溶媒和物17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、結晶性メタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、結晶性エタノラート17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、結晶性水和物17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。
【0054】
いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、III型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、IV型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、結晶性溶媒和物は、V型17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。
【0055】
いくつかの実施形態において、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの固体状態形態は、非晶質17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールである。いくつかの実施形態において、非晶質17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールは、固体状態形態の17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを実質的に含まない。
【0056】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。組成物における使用のために好適な薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例としては、充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑剤、及び/又は滑沢剤が挙げられる。組成物における使用のために好適な他の薬学的に許容される賦形剤は、吸収促進剤、酸性化剤、徐放化剤、アルカリ化剤、酸化防止剤、緩衝剤、キレート剤、着色剤、錯化剤、乳化剤、香料、保湿剤、湿度調整剤、pH調整剤、保存料、可溶化剤、安定剤、界面活性剤、懸濁化剤、甘味剤、矯味剤、湿潤剤を含む。
【0057】
組成物における使用のために好適な充填剤の非限定的な例としては、ラクトース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、及び他のセルロース誘導体、スクロース、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプン、又は加工デンプン(ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、及び米デンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば、塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、及びコラーゲンが挙げられる。
【0058】
組成物における使用のために好適な希釈剤の非限定的な例としては、例えば、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、ブドウ糖、果糖、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、スクロース、及び糖が挙げられる。
【0059】
組成物における使用のために好適な崩壊剤の非限定的な例としては、アルギン酸又はアルギン酸塩、微結晶性セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及び他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、アルファ化デンプン、及びカルボキシメチルデンプンが挙げられる。
【0060】
組成物における使用のために好適な結合剤の非限定的な例としては、アカシア、アルギン酸、寒天、カルシウムカラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グァーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG、ポリエチレンオキシド、ポビドン、及びアルファ化デンプンが挙げられる。
【0061】
組成物における使用のために好適な滑剤及び/又は滑沢剤の非限定的な例としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、又は他の金属ステアリン酸、タルク、ワックス、及びグリセリド、軽鉱油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイダルシリカ、水素添加植物油、コーンスターチ、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、硫酸アルキル、安息香酸ナトリウム、及び酢酸ナトリウムが挙げられる。
【0062】
組成物における使用のために好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールヘミスクシネート、及びトコフェロールの誘導体が挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、ドデシル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、及び前述のものの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤はドデシル硫酸ナトリウムである。
【0064】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口剤形に製剤化される。いくつかの実施形態において、剤形はカプセル剤及び錠剤を含み得る。いくつかの実施形態において、剤形は、シーラント(sealant)及び/又は腸溶性層から選択される1又は複数の異なるタイプの遅延放出層を含み得る。例えば、異なる放出速度特徴を有する遅延放出層は、異なる全体的な薬物放出特徴を有する剤形を提供することができる。いくつかのそのような実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は界面活性剤である。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、室温で30min後、水への医薬組成物の90%溶解を提供するのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、カプセル剤又は錠剤である。
【0065】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、約3質量%未満の不純物を含有する。
【0066】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの薬学的に許容される製剤を含む。
【0067】
本開示のいくつかの実施形態は、神経変性状態の治療における使用のための、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、又は筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、又は前述のものの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、特発性パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、及び血管性パーキンソニズム、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の追加の医薬とともに使用される。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種のドパミンアゴニストを含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種のドパミン前駆体を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬はL-ドパを含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、医薬組成物の使用が始まった後の遅延時間で使用される。いくつかの実施形態において、遅延時間は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年以上、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、遅延時間は2年以上である。
【0069】
いくつかの実施形態において、医薬組成物が使用されている間に、少なくとも1種の運動症状が発症し得る。そのような運動症状は、本明細書の他の箇所で説明される。いくつかの実施形態において、運動症状は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、医薬組成物の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、医薬組成物の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、追加の医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、追加の医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。
【0070】
いくつかの実施形態において、医薬組成物が使用されている間に、少なくとも1種の運動合併症が発症し得る。そのような運動合併症は、本明細書の他の箇所で説明される。いくつかの実施形態において、運動合併症は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、医薬組成物の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、医薬組成物の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、追加の医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、追加の医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。
【0071】
本開示のいくつかの実施形態は、神経変性状態を治療するための、17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールを含む医薬組成物の使用に関する。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、又は筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、又は前述のものの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、特発性パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、及び血管性パーキンソニズム、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、使用は、少なくとも1種の追加の医薬の使用と同時である。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種のドパミンアゴニストを含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種のドパミン前駆体を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬はL-ドパを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の追加の医薬の使用は、医薬組成物の使用が始まった後の遅延時間を含む。いくつかの実施形態において、遅延時間は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年以上、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、遅延時間は2年以上である。いくつかの実施形態において、使用は、少なくとも1種の運動合併症の発症を含む。そのような運動合併症は、本明細書の他の箇所で説明される。いくつかの実施形態において、運動合併症は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、医薬組成物の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、医薬組成物の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、追加の医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、追加の医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。
【0073】
本開示のいくつかの実施形態は、神経変性状態を治療するための医薬の製造における17α-エチニルアンドロスタ-5-エン-3β,7β,17β-トリオールの使用に関する。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、又は筋萎縮性側索硬化症である。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、パーキンソン病、パーキンソニズム、パーキンソン症候群、又は前述のものの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態において、神経変性状態は、特発性パーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、及び血管性パーキンソニズム、又は前述のものの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、神経変性状態はパーキンソン病である。いくつかの実施形態において、医薬は、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0074】
いくつかの実施形態において、医薬は、少なくとも1種の追加の医薬を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種のドパミンアゴニストを含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬は、本明細書の他の箇所で説明されるように、少なくとも1種のドパミン前駆体を含む。いくつかの実施形態において、追加の医薬はL-ドパを含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、使用は、医薬の使用が始まった後の遅延時間を含む。いくつかの実施形態において、遅延時間は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年以上、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である。いくつかの実施形態において、遅延時間は2年以上である。
【0076】
いくつかの実施形態において、使用は、少なくとも1種の運動症状の発症を含む。そのような運動症状は、本明細書の他の箇所で説明される。いくつかの実施形態において、運動症状は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、追加の医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動症状は、追加の医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。
【0077】
いくつかの実施形態において、使用は、少なくとも1種の運動合併症の発症を含む。そのような運動合併症は、本明細書の他の箇所で説明される。いくつかの実施形態において、運動合併症は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20年である、又は上述の値を含む且つ/又は上述の値にわたる範囲である、追加の医薬の使用が始まった後の時間で発症する。いくつかの実施形態において、運動合併症は、追加の医薬の使用が始まった後2年以上の時間で発症する。
【0078】
本願の主題は、2012年8月28日に発行された米国特許第8,252,947号において論じられる特徴を含み、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書において引用される。
【実施例
【0079】
(実施例1.PD進行に結びつけられる神経変性機序の炎症経路)
パーキンソン病(PD)の大多数は特発性として特徴付けられ、少数は、最も頻繁には、神経タンパク質、アルファ-シヌクレイン(SNCA)、及びミトコンドリアホメオスタシスに関連付けられる遺伝子における変異に結びつけられる公知の遺伝的基盤を有する。SNCAの過剰産生、ミスフォールディング、及び凝集は、神経酸化ストレス及びエネルギーホメオスタシス不全の大きな要因である。ミスフォールディングされたSNCAはプリオンとして働き、中枢神経系(CNS)内での疾患拡散に関与していると考えられており、可能な疾患開始手段としての消化管からCNSへの伝播の証拠がある。広く支持されている見方は、疾患の運動症状は、主には神経伝達物質、ドパミンの低いレベル、副次的には黒質におけるドパミン作動性ニューロンの喪失から生じるというものである。このドパミン中心の見方では、疾患発現に対する炎症の極めて重要な寄与が低く評価される傾向がある。ドパミンレベルにおける50%~80%の低減の閾値は一般に、運動症状を引き起こすのに必要であると仮定されるが、神経炎症剤を用いて開始されたPDの動物モデルにおいて、神経変性が著しく小さいパーキンソン病行動が観察され得る。更に、ドパミン作動性治療を用いずに神経炎症及び酸化ストレスを低減させることにより、移動性を向上させ、動物モデル及びヒトにおける疾患の臨床徴候を減少させることができる。PDの抗炎症治療の考え方に重要なことは、薬学的に許容されることであり、これは、慢性使用に対する薬物候補の安全性、血液脳関門透過性、並びに疾患発現及び進行を駆動する炎症プロセスの極めて重要な側面を標的とする作用機序に及ぶ。
【0080】
炎症及び酸化ストレスは相互に誘発的であり、神経変性疾患において病態生理を駆動する。PDにおいて、ミスフォールディングされ、過剰発現され、凝集したSNCAは、分子パターン受容体、トール様受容体4(TLR4)、及び終末糖化産物(RAGE)のための受容体と相互作用して、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1b(IL-1b)、インターロイキン-6(IL-6)、及び他の炎症性サイトカイン産生を媒介する特定の細胞外シグナル調節キナーゼ-核因子カッパB(ERK-NFkB)含有足場によって制御される炎症シグナル伝達カスケードを活性化する。これらの炎症シグナル伝達機序は、細胞増殖、長期増強、及びインスリンのシグナル伝達を制御するNFkB-ERKホメオスタシスシグナル伝達経路(Ras/Raf/MEK/ERK等)に依存しない。
【0081】
炎症経路の活性化は、反応性窒素及び酸素種の形成を促進する誘発性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)の合成を引き起こし、反応性窒素及び酸素種は、ミトコンドリアチトクロム効率に影響を与えて、エネルギー産生を減少させ、カルシウム電流を増大させ、より多くの反応性酸素種を生成する。これらの酸化種は、フィードフォワードする傾向があるサイクルにおいて、NFkB及びカルモジュリンキナーゼを活性化し、慢性的な炎症及び酸化ストレスの状態を作り出す。様々な形態でのミトコンドリア機能不全は、PD病態生理の主な駆動因子である。活性化されたミクログリア及び星状細胞は、炎症性環境の維持によって、PD病理及び進行において顕著な役割を果たす。累積証拠により、反応性酸素種(ROS)及びミクログリアによって産生される炎症性促進サイトカイン(pro-inflammatory cytokine)は、PDにおける神経変性プロセスの誘発及び永続化に関与することが示される。
【0082】
ドパミン作動性ニューロンは、高エネルギーを必要とするため、ミトコンドリア機能不全の有害な効果に対して特に脆弱となる。タンパク質ホメオスタシスの維持は、エネルギー集約的プロセスである。新たに合成されたタンパク質フォールディングを適切に導びき、機能を保持し、凝集を予防するのに十分な低減力を細胞が持っていない場合、小胞体(ER)ストレスが結果として生じる。ERストレス条件下、SNCAは、分子パターン受容体及び炎症経路を活性化することに加えて、ミスフォールディングされ、ミトコンドリアには有毒であるオリゴマーシートに凝集され得る。
【0083】
インスリンのシグナル伝達は、神経エネルギーホメオスタシス及びニューロン残存において、不可欠な役割を果たす。マイトジェン関連タンパク質キナーゼ(MAPK)の炎症活性化は、インスリン受容体基質1及び2(IRS-1/2)上の様々なセリン残基のリン酸化によって、インスリンのシグナル伝達を阻害(インスリン抵抗性を誘発)し得、様々なセリン残基のリン酸化は、インスリン受容体チロシンリン酸化、又はIRS-1/2とインスリン受容体若しくはシグナル伝達複合体中の他のタンパク質との相互作用に干渉する。したがって、SNCAによって引き起こされる炎症は、インスリン抵抗性の一因となり得、インスリン抵抗性は、ミトコンドリア機能を妨害し、酸化及びERストレスを促進し、フィードフォワードしてSNCAホメオスタシス不全を増大させる。興味深いことに、PDにおいて鼻腔内インスリン投与は促進的な活性を有し、インスリン抵抗性はPD認知症状にも結びつけられてきた。60%~80%のPD被験体がインスリン抵抗性を有することが報告されている。いくつかの抗糖尿病薬は、PD患者への潜在的恩恵のために、臨床評価中である(clinicaltrials.gov:NCT04251585、NCT02953665、NCT04232969)。
【0084】
炎症性ケモカインは、PDにおける炎症性環境の一因となる、リンパ球及びマクロファージの浸潤を促進する。SNCAペプチドを認識するT細胞の適応免疫応答は、反応性星状細胞が、SNCA凝集の拡散を助長し得る抗原提示細胞として潜在的に働く神経変性プロセスの一因となる。したがって、浸潤するリンパ球は、複数の機序によってPD病態生理の一因となる可能性を有し、炎症性細胞の浸潤を減少させることは、疾患に著しい影響を与え得る。
【0085】
ERK媒介性神経炎症は、本明細書の他の箇所で説明されるようにレボドパ誘発性ジスキネジア(LID)に因果的に関連付けられ、げっ歯類モデルにおいて、ERK活性化の遺伝的及び薬理学的調節は、LIDを低減する。更に、炎症NFkB-ERKシグナル伝達によって媒介される炎症シグナルは、興奮毒性、及びPD進行に結びつけられる確立された神経変性機序に結びつけられる。PD患者におけるこの発病のエフェクター機序は、妥当な疾患モデルにおいて再現されており、1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)をマーモセットザル(Callithrix jacchus)に注入することによって引き出される。MPTPはドパミントランスポーターのための血液脳透過性基質であり、星状細胞におけるモノアミンオキシダーゼによって、ミトコンドリア毒素、1-メチル-4-フェニルピリジニウム(MPP+)へ代謝され、モノアミントランスポーターを介してニューロンによって選択的に取り入れられる。動物(及びヒト)へのMPTPの投与により、黒質緻密部(SNpc)におけるドパミン作動性細胞の喪失(神経変性)並びにその結果としての線条体ドパミン濃度の低下及び神経炎症から生じる、パーキンソン病様症状がもたらされる。MPTP中毒後のドパミン作動性(DA)細胞の選択的損傷のすぐ後に、損傷を受けたニューロンの周囲でミクログリアがクラスター化する。ミエロペルオキシダーゼ(MPO)が発現されたミクログリア及びH2O2と、アポシニン及びバニリン酸等の構造的に関連するオルト-メトキシ置換カテコールとの反応は、チオール遊離基に結合する反応性中間体を生成する。MPOは、PD患者の活性化された脳ミクログリア細胞において、及びMPTP誘発性動物モデルにおいてアップレギュレートされる。パーキンソン病(ヒトに特有である)と同様に、MPTP処理した動物にドパミン投与することにより、運動制御を著しく向上させることができるが、炎症性機序は低下させず、したがって、動物モデルにおいて疾患プロセスを改変させることも、進行を遅らせることもない。したがって、ミクログリアROS産生の選択的阻害薬又はERK活性の調節は、DAニューロン変性の緩和又は予防及びLIDの低減を目標とする、PDのための潜在的に効果的な医薬品となる。アポシニンを用いた実験により、この原理を用いて、MPTPマーモセットモデルにおいてNADPHオキシダーゼを生成するROSの構築及び活性化を予防できることが確かに示された。
【0086】
本明細書で説明される研究では、米国特許第8,252,947号で説明されている3β,7β-ビス-(トリメチルシロキシ)-5-アンドロステン-17-オンの固体製剤を使用した。
【0087】
(実施例2.マーモセットザルにおけるパーキンソン病のMPTPモデルにおける運動症状の治療)
ERKを標的とし、病的炎症カスケードを駆動する特定の炎症シグナル伝達足場におけるERK及びNFkB活性化を阻害することによって炎症シグナル伝達を減少させる作用の特有の機序を、3β,7β-ビス-(トリメチルシロキシ)-5-アンドロステン-17-オン(17-EAT)は有する。現在までのすべての実験的証拠は、17-EATがERK及びNFkBのホメオスタシス機能を阻害しないことを示唆している。17-EATは、血液脳関門透過性であり、TNF、IL-1b、IL-6、及び他の炎症性サイトカインの発現を減少させる。17-EATは、げっ歯類の全身性炎症モデル(2型糖尿病、COPD、関節リウマチ)において活性であり、げっ歯類のパーキンソン病、実験的自己免疫性脳脊髄炎、視神経炎、及び緑内障モデルにおいて抗神経炎症活性又は神経保護活性を有する。
【0088】
使用した1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)モデルは、線条体ドパミンレベルを正常対照の5%まで低下させることが可能である。MPTPモデルを使用して、6匹のマーモセットザル(Callithrix jacchus、約0.3~0.5kg、2~5歳)の一連の3つの独立したコホートでパーキンソン病様疾患症状を作製し、次いで3週間観察し、パーキンソン病行動と運動異常がないことを確認した。第4週の初めに17-EAT又はアマンタジンの単回用量を投与し、行動の副作用がないことを確認した。すべての被験体に、第5週の3日目、4日目、5日目、及び第6週の1日目と3日目に1~2mg/kgのMPTPを、合計6.5mg/kgのMPTPとなるように皮下注射し、更なる処理を与えずに第7週の終わりまで観察し、次いで処理のためにランダム化した。すべてのMPTP処理した被験体は、明らかなパーキンソン病行動を示した。
【0089】
第8週の初めに、ビヒクル、アマンタジン、又はアカシアシロップで製剤化した17-EATの治療の経口投与を始めた。ビヒクル対照には、アカシアシロップのみを与えた。アマンタジンHCl(Sigma Aldrich社、A1260-SG)を毎日1mg/kgの用量で投与した。17-EATを毎日30mg/kgの用量で投与した。第8週及び第9週には、毎日数回、臨床徴候(身づくろいの欠如、無気力、不動、筋強剛、及び振戦活動)への効果に関して、パーキンソン病行動に対する試験化合物の活性を観察し、0は正常であり、4は最も重度のスコアで、0~4の段階で不動スコアを付けた。処理について盲検化された研究職員によって評定を行った。第8週及び第9週におけるようなパーキンソン徴候に関して、及びLIDの発現に関して、被験体を観察した。
【0090】
第10週及び第11週の中頃まで、レボドパ単回漸増用量(5、7.5、10、及び12.5mg/kg)を、毎日継続でビヒクル、アマンタジン、又は17-EATと組み合わせて、レボドパ用量の間に1~2日観察しながら、すべての被験体に与えた。第11週~第13週には、ビヒクル、アマンタジン、又は17-EAT治療を継続しながら、12.5mg/kgのレボドパを毎日2回用いて、すべての被験体においてLIDを誘発させた。
【0091】
霊長類PDモデルに適合させた異常不随意運動スコア(AIMS)によって、LIDの重症度を測定した。項目は、四肢及び胴体の動き、表情、並びに唇、口周囲部、舌、及び顎の動きの評価を含む。これらの症状は、0(正常)、1(正常の端(extreme normal))、2(軽度)、3(中等度)、4(重度)の段階でスコア化した。前に説明したように、パーキンソン病行動の測定を継続した。第14週には、レボドパを用いずに治療を継続し、17-EAT治療の1時間後、被験体を安楽死させた(1日目、2日目、及び3日目に、3つの群のそれぞれから1匹の被験体)。アルファキサン(18mg/kg i.m.)を用いて、被験体を深麻酔下で失血死させた。その後すぐに、EUTHASOL(ペントバルビタールナトリウム、i.c.)を用いて、被験体を安楽死させた。免疫組織化学解析のために、各被験体の脳を除去し、凍結した。チロシンヒドロキシラーゼ免疫反応性(TH-IR)染色を用いて、DA陽性ニューロンの存在に関してSNpcを分析した。
【0092】
Table 1(表1)に示すように、ビヒクル、アマンタジン、及び17-EATで治療した被験体の、治療前(第7週)の平均不動スコアは、それぞれ、2.71、2.59、及び2.72であり、単剤治療の1週目(第8週)には、それぞれ、3.0、2.74、及び2.26であった。第8週及び第9週における17-EAT単剤治療の平均不動スコアはそれぞれ、2.26及び2.10であり、ビヒクル(3.0及び2.8)又はアマンタジン(2.74及び2.72)のいずれかでの単剤治療処理よりも有意に低かった。
【0093】
【表1】
【0094】
図1に示すように、5、7.5、10、12.5、又は25mg/kgのレボドパ投与量と組み合わせて、12.5mg/kgの17-EATを毎日2回投与した被験体の第9週における平均不動スコアは、17-EAT単剤治療と比較して向上した。レボドパを加えると、不動スコアは、第8週及び第9週において評価した単剤治療と比較して向上した(データは第9週の値に関して示されている)。
【0095】
12.5mg/kg BIDのレボドパ投与量を毎日2回投与すると、すべての被験体においてLID発現を誘発した。図2に示すように、5、7.5、10、12.5、又は25mg/kgのレボドパ投与量と組み合わせて、ビヒクル、アマンタジン、及び17-EATで治療した被験体の第12週における異常不随意運動スコア(AIMS)は、単剤治療と比較して向上した。10mg/kgのレボドパ投与量と組み合わせて、ビヒクル、アマンタジン、及び17-EATで治療した被験体の第12週におけるAIMSは、それぞれ、6.2、4.5、及び2.1であった。
【0096】
第14週には、すべての被験体を犠牲にし、黒質からの組織サンプルを評価して、残存チロシンヒドロキシラーゼ陽性ニューロンの数を測定した。図3に示すように、アマンタジン及び17-EATで治療した被験体の残存TH+ニューロンの数の増加は、40%及び75%であった。図4に示すように、17-EATで治療した被験体は、ビヒクル又はアマンタジンのいずれかと比較して、より高い平均体重を維持した。
【0097】
(実施例3.ドパミンアゴニスト治療を開始する必要の遅延及び運動合併症の減少)
本発明者の臨床経験に基づいて、対照研究を用いて以下の結果が予測される。
【0098】
35~80歳のパーキンソン病患者40人のコホートが、ドパミンアゴニスト治療を受けたことがなく、運動症状が最近進行し、それを減少させるために治療が必要なレベルであることが医師によって確認される。患者を、固体製剤を毎日2回経口で与える患者群(n=20;「SSF」)と、運動症状を制御するために必要に応じてL-ドパ治療を受ける第2の患者群(n=20;「LVD」)とに分ける。患者の症状は、3か月間隔で評価する。2年後、両方の群において、運動症状は十分に制御されている。4年後、SSF群では運動症状は十分に制御されており、LVD群の約20%において、運動症状は完全には制御されておらず、観察される運動合併症を伴う。6年後、SSF群における運動症状の制御には、十分な制御のために低用量のL-ドパの追加が必要となり、LVD群の患者の運動症状、運動合併症、及び/又はジスキネジアは、徐々に大きくなる、且つ統計学的に有意により大きい増大となった。
【0099】
(実施例4.運動合併症の遅延)
本発明者の臨床経験に基づいて、対照研究を用いて以下の結果が予測される。
【0100】
35~80歳のパーキンソン病患者40人のコホートが、医師によって確認される。各患者の詳細な検査報告書を作成し、症状とその重症度を示す。患者に共通する症状は、手、腕、脚、顎、頭の震え、手足及び胴体の硬直、動作の緩慢さ、バランス及び/又は協調運動障害を含む。この報告書により患者のベースラインが確立される。実験群の患者(n=20、「EXPT1」)には、固体製剤を毎日2回経口で与え、L-ドパを必要に応じて毎日与えて、疾患症状の治療を最も効果的にする。対照群の患者(n=20、「CONT」)には、プラセボを毎日2回与え、L-ドパを必要に応じて毎日与えて、疾患症状の治療を最も効果的にする。研究を1年間行い、医師によって1か月の間隔で患者転帰が測定される。EXPT1及びCONTを与えた患者は、1~4か月後、各症状の向上を報告している。研究を更に20年間行い、その間に、医師によって患者転帰が測定される。EXPT1を与えた患者の第1の半数は、研究期間中、元の症状の再発及び新たな症状の発症はなかったと報告している。EXPT1を与えた患者の第2の半数は、5~16年後、元の症状の再発、並びに運動変動を含む運動症状、並びにウェアリングオフ、すくみ歩行、及び急性無動症を含む運動合併症の発症はなかったと報告している。CONTを与えた患者の一部は、2~4年後に、運動変動を含む運動症状、並びにウェアリングオフ、すくみ歩行、及び急性無動症を含む運動合併症を徐々に発症したと報告している。EXPT1群対CONT群の運動症状の差異は統計的に有意であった。
【0101】
(実施例5.ジスキネジアの遅延)
本発明者の臨床経験に基づいて、対照研究を用いて以下の結果が予測される。
【0102】
35~80歳のパーキンソン病患者40人のコホートが、医師によって確認される。各患者の詳細な検査報告書を作成し、症状とその重症度を示す。患者に共通する症状は、手、腕、脚、顎、頭の震え、手足及び胴体の硬直、動作の緩慢さ、バランス及び/又は協調運動障害を含むが、著しい運動合併症又はL-ドパ誘発性ジスキネジアはない。この報告書により患者のベースラインが確立される。実験群の患者(n=20、「EXPT1」)には、固体製剤を毎日2回経口で与え、L-ドパを毎日必要に応じて与える。対照群の患者(n=20、「CONT」)には、プラセボを毎日2回経口で与え、L-ドパを毎日必要に応じて与える。研究を5年間行い、医師によって3か月の間隔で患者転帰が測定される。EXPT1及びCONTを与えた患者は、1~4か月後、各症状の向上を報告している。研究を更に20年間行い、その間に、医師によって患者転帰が測定される。EXPT1を与えた患者の第1の半数は、研究期間中、元の症状の再発及び新たな症状の発症はなかったと報告している。EXPT1を与えた患者の第2の半数は、5~16年後、元の症状の再発、並びに舞踏病、ジストニア、バリスム、及びミオクローヌスを含むジスキネジアの発症はなかったと報告している。CONTを与えた患者は、2~4年後、元の症状の再発、並びに舞踏病、ジストニア、バリスム、及びミオクローヌスを含むジスキネジアの発症はなかったと報告している。EXPT1群対CONT群のジスキネジアの差異は統計的に有意であった。
【0103】
様々な例証的な実施形態が上述されているが、特許請求の範囲に説明されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に多くの変更のうちの任意のものを行うことができる。例えば、説明される様々な方法工程が実行される順序は代替実施形態においてしばしば変更されることがあり、他の代替実施形態においては、1又は複数の方法工程が完全に省略されることがある。様々な装置及びシステムの実施形態の任意選択の特徴は、いくつかの実施形態には含まれ、他のものには含まれないことがある。したがって、前述の説明は、主に例示的な目的のために提供されるものであり、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0104】
本明細書に含まれる実施例及び例示は、例示としてであって限定ではなく、主題が実施され得る特定の実施形態を示す。前述のように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的及び論理的な置換及び変更を行うことができるように、他の実施形態を利用し、そこから派生させることができる。本発明主題のそのような実施形態は、本明細書において、単に便宜上、「発明」という用語によって個々に、又は集合的に言及されることがあり、1より多い発明が実際に開示されている場合、本願の範囲を任意の単一の発明又は発明概念に自発的に限定する意図はない。したがって、本明細書において特定の実施形態を例示し、説明してきたが、同じ目的を達成するように計算された任意の配置を、示される特定の実施形態に置き換えてもよい。本開示は、様々な実施形態のありとあらゆる適応又は変形を包含することを意図している。上述の実施形態の組み合わせ、及び本明細書で特に説明されていない他の実施形態は、上述の説明を検討すれば当業者には明らかであろう。
【0105】
本明細書中で言及されるすべての出版物、特許出願、交付済み特許、及びその他の文書(例えば、雑誌、論文、及び/又は教科書)は、各個々の出版物、特許出願、交付済み特許、又はその他の文書が、参照によりその全体が引用されることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に引用される。参照により引用される文章に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する限りにおいて除外される。
【0106】
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲において、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、記載されている。
【0107】
主題は、好ましい実施形態及び様々な代替実施形態を参照して詳細に示され、説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更が可能であることは、当業者には理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】