(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】航空機エンジン用一体型オルタネータ
(51)【国際特許分類】
B64D 41/00 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
B64D41/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572079
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022029972
(87)【国際公開番号】W WO2022246028
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523437662
【氏名又は名称】アヴコ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AVCO CORPORATION
【住所又は居所原語表記】920 Westport Parkway Haslet, Texas 76177 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】グリュックスマン、マイケル グリン
(57)【要約】
航空機のエンジンから電力を生成する技術は、航空機のエンジンとプロペラとの間にオルタネータディスク構造(ADS)を設けることを含む。ADSは、プロペラを駆動するエンジンドライブシャフトと同心に配置され、ステータを有する第1の領域とロータを有する第2の領域との少なくとも2つの同心領域を含む。第1の領域はエンジンと相対的に回転可能に固定され、第2の領域はエンジンのドライブシャフトに結合されている。エンジンがドライブシャフトを回転させると、第2の領域に配置されたロータが第1の領域に配置されたステータと相対的に同心円状に回転し、それによってステータの巻線に電流が誘導される。こうしてロータとステータは協働して電力を発生し、この電力はステータから航空機の電気サブシステムや制御装置に伝達される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、プロペラと、前記エンジンと前記プロペラとの間に結合されたドライブシャフトとを有する航空機において電力を発生させるための装置であって、
前記エンジンと前記プロペラとの間に配置されたオルタネータディスク構造(ADS)であって、前記ADSは内側領域と外側領域とを含み、
前記エンジンと相対的に回転可能に固定されステータを含む前記ADSの前記内側領域であって、前記ステータは巻線を有し、
前記内側領域と相対的に自由に回転する前記ADSの前記外側領域であって、前記外側領域は前記ドライブシャフトに結合され、ロータを含み、
前記外側領域の前記ロータは、前記エンジンによる前記ドライブシャフトの回転に応じて、前記内側領域の前記ステータと相対的に回転するように構成および配置され、それによって前記ステータの前記巻線に電流を誘導することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ADSの前記外側領域は、電気スタータに結合されたスタータリングギアサポート(SRGS)の一部であり、前記SRGSは、前記エンジンを始動するために前記ドライブシャフトを回転させるように構成および配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ADSが、前記航空機のカウリング内に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ADSは前記エンジンの任意のオイル充填部分の外側に配置されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記外側領域は、カップリングを介して前記ドライブシャフトに結合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ロータは、一定の角度間隔で均一に配置された複数の永久磁石を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ADSが複数の構成で提供され、その前記構成は、前記ロータが比較的低出力の用途に適した比較的小さい直径を有する第1の構成と、前記ロータが比較的高出力の用途に適した比較的大きい直径を有する第2の構成とを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記ロータは、前記第2の構成において前記第1の構成よりも多数の磁石を有し、前記ステータは、前記第2の構成において前記第1の構成よりも多数のコイルを有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ロータは、前記第2の構成において前記第1の構成よりも強力な磁石を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記内側領域の前記巻線は複数のグループに分かれて設けられ、各グループ内の前記巻線は互いに電気的に接続されているが、他のグループの前記巻線とは電気的に絶縁されている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記内側領域は外周を有し、前記内側領域の前記巻線は、前記外周に沿って均一に分布しないように、前記外周に沿ってクラスター状に配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記内側領域に一体化された少なくとも1つのAC-DCコンバータをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記内側領域に一体化された少なくとも1つのAC-ACコンバータをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記ステータに結合された電子制御回路をさらに備え、前記電子制御回路は、前記ステータの前記巻線をバックドライブするように構成および配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記ステータの前記巻線をバックドライブするように構成および配置された前記電子制御回路が、前記エンジンを始動するようにさらに構成および配置されている、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ステータの前記巻線をバックドライブするように構成および配置された前記電子制御回路が、燃料-電気ハイブリッド配置で前記プロペラを回転させるための電力を供給するようにさらに構成および配置されている、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
航空機に電力を発生させる方法であって、
ドライブシャフトを介してプロペラを回転させるために、前記航空機のエンジンを作動させること、
前記エンジンと相対的に回転可能に固定された第1のディスク領域を提供し、前記第1のディスク領域はステータを含むこと、
第2のディスク領域を提供し、前記第1のディスク領域と前記第2のディスク領域はそれぞれ前記ドライブシャフトと同心であり、前記第2のディスク領域はロータを含むこと、
前記ロータの磁石のアレイが前記ドライブシャフトとともに回転するように、前記ドライブシャフトを前記第2のディスク領域に結合させること、
前記磁石のアレイが回転すると、前記ステータの巻線内に電流が流れるようにすること、
を備える、方法。
【請求項18】
前記ロータが比較的低出力の用途に適した比較的小さい直径を有する第1の構成を提供すること、
前記ロータが比較的高出力の用途に適した比較的大きな直径を有する第2の構成を提供すること、
をさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ドライブシャフトを持つエンジンと、
前記ドライブシャフトに結合されたプロペラと、
前記エンジンと相対的に回転可能に固定され、ステータを含む第1のディスク領域であって、前記ステータは巻線を有する、と、
前記ドライブシャフトに結合され、ロータを含む第2のディスク領域と、
を備え、
前記第1のディスク領域と前記第2のディスク領域は、それぞれ前記ドライブシャフトと同心であり、および、
前記第2のディスク領域は、前記ドライブシャフトの回転に応じて前記第1のディスク領域と相対的に回転するように構成および配置され、それによって前記ロータを前記ステータと相対的に回転させ、前記ステータの前記巻線に電流を誘導する、
航空機。
【請求項20】
外側領域が、電気スタータに結合されたスタータリングギアサポート(SRGS)の一部であり、前記SRGSは、前記エンジンを始動させるために前記ドライブシャフトを回転させるように構成および配置されている、請求項19に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
飛行機、ヘリコプター、UAV(無人航空機)などのプロペラ駆動の航空機は、一般に、様々なサブシステムや制御装置を動かすための電力を生成する。このような電力は一般にオルタネータによって供給される。一般的な配置では、オルタネータはベルトを介してエンジンのドライブトレインに結合されている。エンジンが回転すると、エンジンからの電力の一部がオルタネータに伝達され、オルタネータはケーブルを介して様々なサブシステムに電力を分配する。
【0002】
図1Aおよび
図1Bはそれぞれ、先行設計例の正面図および背面図である。図示のように、エンジン100は、プロペラ120に結合されたドライブシャフト110を有する。オルタネータ130がベルト140を介してドライブトレインに結合され、アイドラプーリ―150が所望のベルト張力を達成するように調整可能であってもよい。エンジン100がプロペラ120を回転させると、ベルト140はオルタネータ130内のロータをステータと相対的に回転させる。ステータに対するロータの相対回転は電力を発生させる。
図1Aおよび
図1Bの配置は、第2のオルタネータ160をさらに含んでもよい。第2のオルタネータ160は、冗長性のため、および/または追加の電力源として提供されてもよい。
【発明の概要】
【0003】
残念ながら、上述の配置は理想的なものではない。例えば、
図1Aおよび
図1Bのベルト駆動式オルタネータは重く非効率的な傾向がある。オルタネータ130および160は、それぞれ数キログラムの重さがあり、通常、電力効率は65%を超えない。また、ベルトが磨耗し、定期的な張り直しと最終的な交換が必要となるため、入念なメンテナンスが必要となる。ベルト駆動式オルタネータ130および160はまた、大きなスペース、特にドライブシャフトの側方のスペースを消費する傾向がある。飛行機やUAVでは、このようなスペース要件により、航空機のカウリングがそうでない場合よりも広くなり、その結果、空力設計が、そもそも可能であるはずの範囲よりも小さくなる可能性がある。フロントプロペラの配置(例えば「トラクター」)でもリアプロペラの配置(例えば「プッシャー」)でも、空力は同様に制約を受ける可能性がある。必要なのは、より効率的なオルタネータ設計である。
【0004】
上述の先行アプローチとは対照的に、航空機のエンジンから電力を生成するための改良された技術は、航空機のエンジンとプロペラとの間にオルタネータディスク構造(ADS)を設けることを含む。ADSは、プロペラを駆動するドライブシャフトと同心に配置され、ステータを有する第1の領域とロータを有する第2の領域との少なくとも2つの同心領域を含む。第1の領域はエンジンと相対的に回転可能に固定され、第2の領域はエンジンのドライブシャフトに結合されている。エンジンがドライブシャフトを回転させると、第2の領域に配置されたロータが第1の領域に配置されたステータと相対的に同心円状に回転し、それによってステータの巻線に電流が誘導される。こうして、ロータとステータは協働して電力を発生し、この電力はステータから航空機の電気サブシステムや制御装置に伝達される。
【0005】
有利なことに、改良された技術は、同じ外部ハードウェアを必要とせずにオルタネータの機能を提供する。重量要件は大幅に低減される。ベルト、テンショナー、または外部オルタネータを保持するためのブラケットは必要ない。さらに、エンジン側面のスペース要件が大幅に減少し、より空気力学的な航空機設計が可能になる。
【0006】
改良された技術は、電気効率の面でも利点をもたらす可能性がある。ベルト損失は完全に回避され、外部オルタネータのものと比較してADSのラジアル形状が大きいため、さらなる効率上の利点が得られる可能性がある。
【0007】
特定の実施形態は、エンジンと、プロペラと、エンジンとプロペラとの間に結合されたドライブシャフトとを有する航空機において電力を生成するための装置に向けられる。この装置は、エンジンとプロペラとの間に配置されたオルタネータディスク構造(ADS)を含み、ADSは、内側領域と外側領域とを含む。ADSの内側領域は、エンジンと相対的に回転可能に固定され、ステータを含み、ステータは巻線を有する。ADSの外側領域は、内側領域と相対的に自由に回転する。外側領域はドライブシャフトに結合され、磁石を有するロータを含む。外側領域のロータは、エンジンによるドライブシャフトの回転に応じて、内側領域のステータと相対的に回転するように構成および配置され、それによりステータの巻線に電流を誘導する。
【0008】
いくつかの実施形態では、ADSの外側領域は、電気スタータに結合されたスタータリングギヤサポート(SRGS)の一部である。SRGSは、エンジンを始動するためのドライブシャフトを回転させるように構成され、配置されている。
【0009】
いくつかの例では、ADSは、航空機のカウリング内に配置される。
【0010】
いくつかの例では、ADSはエンジンの任意のオイル充填部分の外側に配置される。
【0011】
いくつかの例では、外側領域は、カップリングを介してドライブシャフトに結合される。
【0012】
いくつかの例では、ロータは、一定の角度間隔で均一に配置された複数の永久磁石を含む。
【0013】
いくつかの例では、ADSは複数の構成で提供され、その構成は、ロータが比較的低出力の用途に適した比較的小さい直径を有する第1の構成と、ロータが比較的高出力の用途に適した比較的大きい直径を有する第2の構成とを含む。
【0014】
いくつかの例では、ロータは、第2の構成において第1の構成よりも多数の磁石を有し、ステータは、第2の構成において第1の構成よりも多数のコイルを有する。
【0015】
いくつかの例では、ロータは、第2の構成において第1の構成よりも強力な磁石を有する。
【0016】
いくつかの例では、内側領域の巻線は複数のグループで提供され、各グループ内の巻線は一緒に電気的に接続されているが、他のグループの巻線とは電気的に絶縁されている。
【0017】
いくつかの例では、内側領域は外周を有し、内側領域の巻線は、巻線が外周に沿って均一に分布しないように、外周に沿ってクラスター状に配置される。
【0018】
いくつかの例では、本装置は、内側領域に一体化された少なくとも1つのAC-DCコンバータをさらに含む。
【0019】
いくつかの例では、本装置は、内側領域に一体化された少なくとも1つのAC-ACコンバータをさらに含む。
【0020】
いくつかの例では、装置はステータに結合された電子制御回路をさらに含み、電子制御回路はステータの巻線をバックドライブするように構成および配置される。
【0021】
いくつかの例では、ステータの巻線をバックドライブするように構成および配置された電子制御回路は、エンジンを始動するようにさらに構成および配置される。
【0022】
いくつかの例では、ステータの巻線をバックドライブするように構成および配置された電子制御回路は、燃料-電気ハイブリッド配置においてプロペラを回転させるための電力を供給するようにさらに構成および配置される。
【0023】
他の実施形態は、ドライブシャフトを有するエンジンと、ドライブシャフトに結合されたプロペラと、エンジンと相対的に回転可能に固定され、ステータを含む第1のディスク領域であって、ステータは巻線を有する第1のディスク領域と、ドライブシャフトに結合され、ロータを含む第2のディスク領域と、を含む航空機に向けられる。第1のディスク領域と第2のディスク領域は、それぞれドライブシャフトと同心である。第2の領域は、ドライブシャフトの回転に応じて第1の領域と相対的に回転するように構成および配置され、それによってロータをステータと相対的に回転させ、ステータの巻線に電流を誘導する。
【0024】
いくつかの例では、第2の領域は、電気スタータに結合されたスタータリングギヤサポート(SRGS)の一部である。SRGSは、エンジンを始動するためにドライブシャフトを回転させるように構成および配置されている。
【0025】
さらに他の実施形態は、航空機において電力を生成する方法に向けられる。本方法は、ドライブシャフトを介してプロペラを回転させるために、航空機のエンジンを作動させることを含む。本方法は、エンジンと相対的に回転可能に固定された第1のディスク領域を提供することをさらに含み、第1のディスク領域はステータを含み、第2のディスク領域を提供することをさらに含み、第1のディスク領域および第2のディスク領域はそれぞれドライブシャフトと同心であり、第2のディスク領域はロータを含む。本方法はさらに、ロータの磁石のアレイがドライブシャフトとともに回転するように、ドライブシャフトを第2のディスク領域に結合することを含む。本方法はさらに、磁石のアレイが回転する際に、ステータの巻線内に電流が流れるように誘導することを含む。
【0026】
いくつかの例では、この方法は、ロータが比較的低出力の用途に適した比較的小さい直径を有する第1の構成を提供することと、ロータが比較的高出力の用途に適した比較的大きい直径を有する第2の構成を提供することとをさらに含む。
【0027】
前述の概要は、本明細書に提示された例示的な特徴を読者が容易に把握できるようにするための例示目的で提示されたものであるが、この概要は、必須の要素を規定すること、または本明細書の実施形態を何らかの形で限定することを意図するものではない。上述の特徴は、技術的に理にかなった任意の方法で組み合わせることができ、そのような組み合わせが明示的に特定されるか否かにかかわらず、そのような組み合わせのすべてが本明細書に開示されることを意図していることを理解されたい。
【0028】
前述および他の特徴および利点は、添付図面に示される特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。ここで、同じような参照文字が、異なるビュー全体を通して同じまたは類似の部分を指す。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、様々な実施形態の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、電力を生成するための従来のオルタネータを含む航空エンジンの正面図および背面図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態によるオルタネータディスク構造の正面図である。
【
図4】
図4は、1つの実施例による断面側面図および断面正面図である。
【
図5】
図5は、別の実施例による断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、改良された技術の実施形態を説明する。このような実施形態は、特定の特徴および原理を説明するために例示として提供されるが、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0031】
航空機のエンジンから電力を生成するための改良された技術は、航空機のエンジンとプロペラとの間にオルタネータディスク構造(ADS)を設けることを含む。ADSは、プロペラを駆動するドライブシャフトと同心に配置され、ステータを有する第1の領域とロータを有する第2の領域との少なくとも2つの同心領域を含む。第1の領域はエンジンと相対的に回転可能に固定され、第2の領域はエンジンのドライブシャフトに結合されている。エンジンがドライブシャフトを回転させると、第2の領域に配置されたロータが第1の領域に配置されたステータと相対的に同心円状に回転し、それによってステータの巻線に電流が誘導される。こうしてロータとステータは協働して電力を発生し、この電力はステータから航空機の電気サブシステムや制御装置に伝達される。
【0032】
いくつかの例では、第1の領域は内側領域であり、第2の領域は外側領域である。他の例では、第1の領域は外側の領域であり、第2の領域は内側の領域である。
【0033】
いくつかの例では、ディスクの第2部分は、本明細書ではスタータリングギヤサポート(SRGS)と呼ばれる既存の構造の一部である。SRGSは電気スタータに結合されており、エンジンを始動するためにドライブシャフトを回転させるように構成されている。
【0034】
いくつかの例では、ADSは航空機の端部(前部または後部)に配置され、点検、保守、整備のために容易にアクセスできるようになっている。例えば、ADSは航空機のカウリングの内側に配置され、ADSにアクセスするためにエンジン自体の任意のオイル含有部分を開ける必要はない。
【0035】
いくつかの例では、ADSは、スケーラブルな方法で広範囲の電力要件を満たす。例えば、異なる出力要件に適合するように、異なる数または構成のコイルを提供するようにステータ設計を変化させることができる。本明細書で使用する「コイル」とは、1つまたは複数の「巻線」、すなわちステータの磁気透過性コアの周囲にある導電性材料の巻線によって形成される導電経路を指す。個々のコイルは、単一のワイヤまたは他の細長い導体から形成することができる。低出力用途にはより少ない数のコイルを、高出力用途にはより多くの数のコイルを設けてもよい。ステータはドライブシャフトと一緒に回転しないので、ステータコイルは、重量バランスを気にすることなく、都合のよい方法で配線することができる。
【0036】
様々なロータ設計も提供され得る。例えば、より小さな直径のロータは、より低出力のアプリケーションに使用することができ、一方、より大きな直径のロータは、ハイブリッド(燃料-電気)駆動配置を含む、より高出力のアプリケーションに使用することができる。より大きな直径のロータは、ADSの外側リムまたはその近傍に配置された、より大きな磁石、および/または、より多数の磁石の使用を可能にし、(i)より大きな磁石、および/または、より多数の磁石、(ii)ステータのコイルに対するロータの磁石のより大きな線速度、の両方に基づいて、出力を効果的に倍増させる。
【0037】
いくつかの例では、ロータは永久磁石を採用しているため、電気的接続やブラシを必要としない。いくつかの例では、永久磁石はネオジム磁石である。しかし、電磁石や他の材料で作られた磁石など、他のタイプの磁石を使用してもよい。いくつかの例では、ロータの磁石は均一な角度間隔で等間隔に配置されている。
【0038】
いくつかの例では、ADSは、様々なサブシステムを実行するためにステータからのAC電力をDC電力に変換するためのAC-DCコンバータを含むか、またはAC-DCコンバータに結合される。任意の数のAC-DCコンバータを提供してもよい。そのようなAC-DCコンバータは、ステータと一体化されてもよいし、例えばエンジンの近くに配置された別個の回路基板上に別個に設けられてもよい。いくつかの例ではADSは、任意の数のAC-ACコンバータ(例えば変圧器)を含むか、または他の方法で結合することができる。
【0039】
いくつかの例によれば、ステータに結合された電子制御回路が、ステータの巻線をバックドライブするために提供される。このようなバックドライビングは、ロータの回転、ひいては航空機のドライブシャフトおよびプロペラの回転を誘導する効果を有し、したがって、別個のスタータモータの代替として適している場合がある。また、燃料と電気のハイブリッド配置などでは、電気駆動をサポートすることもできる。例えば、バックドライブ回路はバッテリーに接続され、電力を介してプロペラを直接駆動することができる。電気動力は離陸を補助し、エンジンの最大出力要件を相殺するのに役立つ場合がある。
【0040】
図2は、即時開示の実施形態による例示的なオルタネータディスク構造(ADS)202を示す。示されるように、ADS202は、外側領域210(例えば、第1の領域)および内側領域220(例えば、第2の領域)を含む。外側領域210はロータを収容し、内側領域220はステータを収容する。外側領域210は、ロータの磁石212、例えばネオジム磁石などの永久磁石を含む。このような磁石は軽量で高強度である。永久磁石の他の好適な例としては、フェライト、アルニコ、サマリウムコバルトなどを挙げることができる。別の方法として、電磁石のような他のタイプの磁石を使用することもできる。磁石212は、南北交互の極性を有し、例えば鋼または積層鋼からなる支持体に取り付けられてもよい。内側領域220はステータコイル222を含む。別個の部分として示されているが(図は断面図である)、ステータコイル222は、ステータのラミネートコア226の突起に巻き付く巻線224を含む。一例では、コアは電気鋼などの鋼鉄製であり、積層は渦電流損失を低減するために設けられる。ステータコイルは、隣接する巻線224または他の導電性部品との短絡を回避するために外部絶縁を有する任意の細長い導電性材料から構成することができる。非限定的な例としては、絶縁銅線またはアルミニウム線(例えば、円形、正方形、または任意の他の適切な断面形状)、絶縁金属箔などが挙げられる。ステータ、したがってステータコイル222は、エンジン100に対して静止している。したがって、ステータコイル222は、航空機内の電子機器に任意の便利な方法で配線することができる。
【0041】
また、
図2には、エンジン100のドライブシャフト110に結合されたプロペラ120が描かれている。単に概略的な目的のために描かれているカップリング240は、ロータを含む外側領域210がドライブシャフト110とともに回転するように、外側領域210をドライブシャフト110に結合し、一方、内側領域220は静止したままである。エンジン100がプロペラ120を回転させると、外側領域210(ロータ)内の磁石212が、内側領域220(ステータ)内のステータコイル222の巻線224を通過して移動し、そこに電流が誘導され、航空機内の様々な負荷に分配され得る。
【0042】
図2に示す例では、ADS202は、スタータリングギヤサポート(SRGS)250の一部として設けられる。SRGS250は円盤状で、スタータモータ260の歯と噛み合うように配置されたスタータリングギヤ252を形成する外歯を有する。作動時、スタータモータ260はSRGS250を回転させ、エンジン100を始動させるためにドライブシャフト110を回転させる。
【0043】
ADS202をSRGS250の一部として提供することにより、設計は、典型的な航空機の一部として通常提供され得る既存のハードウェアを活用する。したがって、ADS202は、最小限の追加重量および追加部品で実装することができる。ただし、ADS202をSRGS250の一部として提供することは、単なる一例である。代替的に、ADS202は、それ自身の専用ディスクアセンブリ上など、どのSRGSとも別個に提供されてもよい。
【0044】
ADS202は、ベルト駆動式オルタネータに比べて多くの利点を提供する。ADS202はベルトを必要としないため、ベルトを張ったり交換したりする必要がない。また、いくつかの実施形態の永久磁石設計はブラシを必要としないため、保守や交換のためのブラシがない。したがって、ADS202は、故障のない長寿命が期待できる。
【0045】
図2の配置は、様々な動力要件に合わせて変化させてもよい。例えば、磁石212を外側領域210の外縁(例えば、歯車252が示されている場所)に近づけて配置してもよく、外側領域210自体をより大きな直径を有するように変更してもよい。ステータコイル222は、これに対応して外側に移動してもよい。磁石212およびコイル222を外側に移動させる効果は、コイル222を横切る磁石212の線速度(したがって発生電力)がラジアル距離とともに増加するため、出力を増加させることである。また、より外側に配置することで、より多くの磁石および/またはコイルを使用することが可能になり、出力がさらに増加する。
【0046】
図3Aおよび
図3Bは、ADS202の追加例(それぞれ正面図および側面図)を示す。エンジン100の追加部品がさらに示されている。
【0047】
図4は、第1の設計例を示す。ここで、ADS202は、2つの独立した専用出力を有するコイル222を有することができる。あるいは、コイル202の出力は、例えば、直列、並列、または他の適切な方法で接続することにより、組み合わせることができる。
図4は、ステータコイル222が360度全周に渡って延びる、完全実装の配置を示している。この配置は、より高い電力需要に適している。
【0048】
図4はさらに、カップリング240(
図2)の実施例を示しており、ここでは、SRGS250のカバーのようなドーム形状のカバーとして示されている。描かれているカバーは、カバーの外側の範囲が上述の外側領域210とみなすことができるように、外側領域210(ロータ)の磁石212と一体である。ドライブシャフト110が回転すると、カップリング/カバー240がドライブシャフト110とともに回転し、磁石212がエンジン100と相対的に回転可能に固定されたままのステータのコイル222を越えて移動する。例えば、
図4の右側に示すように、内側領域220(ステータ)を、クランクケース、エンジンブロック、または他のエンジン構造などのエンジン100の静止部分に取り付けるために、ブラケット410を設けることができる。
【0049】
図5は別の例を示す。ここでは、ステータ巻線(コイル)222は、部分的な円弧の長さのような内側領域220のほんの一部分にわたって設けられる。従って、
図5の配置は中出力の要求に適している。
図5の配置は、
図4の配置よりも単純で軽量であり、ブラケット410が少なくて済む。図示の特定の例では、3つのコイル222が3相電力を供給し、これは、例えば3相ECU(電子制御ユニット)に電力を供給するのに適している可能性がある。
【0050】
図6Aおよび
図6Bは追加例を示す。
図6Aは、2つのサブシステムを駆動するのに適した2コイル単相ADS202の例を示している。
図6Aのコイル222は、同じステータ積層(コア226)とブラケット410を共有することができる。
図6Bも同様であるが、より軽量な配置を提供する。
図6Aおよび
図6Bの配置は、2つの独立した出力が望まれる場合と同様に、低電力用途に適している。
【0051】
図7は、航空機700内における上述のエンジン100とADS202の配置例を示している。図示のように、ADS202は、点検、保守、整備のために容易にアクセスできるように、エンジン100とプロペラ120の間に配置することができる。描かれている例はトラクタの配置を示しているが、同じ原理が、プロペラが飛行機の後部に配置されるプッシャーの配置にも適用される。
【0052】
特定の実施形態について説明したが、多数の代替的な実施形態または変形を行うことができる。例えば、いくつかの配置は、ロータが内側領域220に設けられ、ステータが外側領域210に設けられるように、ロータとステータの位置を入れ替えてもよい。また、ロータマグネットがステータコイルをラジアル方向ではなく軸方向に通過するような、例えばシングルディスクまたはデュアルディスク配置の実施形態を構成することもできる。
【0053】
さらに、上記に開示した実施形態は、単一のロータのみを有するADS202を示している。これは単なる例示であり、代替的な実施形態では、2つの別個のロータを設けることができる。例えば、ADSは、(上記に示したような)外部ロータだけでなく、内部ロータも含むことができる。この配置の2つのロータは、ドライブシャフトとともに回転するように結合される。この二重ロータ設計では、ロータがステータと相対的に回転する際に、内部ロータの磁石がそのようなステータコイルの近くを通過するように、別個のステータコイルをステータの内縁近くに設けることができる。
【0054】
さらに、本明細書で使用する「オルタネータ」という用語は、回転エネルギーを電気エネルギーに変換するあらゆる電気機械装置を対象とすることを意図していることを理解すべきである。したがって、「オルタネータ」のこの定義は、一般に「発電機」と呼ばれる装置だけでなく、一般に「オルタネータ」と呼ばれる装置も含むことができる。
【0055】
さらに、本明細書の特定の実施形態を参照して特徴を示し説明してきたが、そのような特徴は、開示された実施形態およびそれらの変形例のいずれにも含まれ得るし、本明細書にも含まれる。したがって、任意の実施形態に関連して開示された特徴は、他の任意の実施形態にも含まれることが分かる。
【0056】
本明細書全体を通して使用される場合、「備える」、「含む」、「含有する」、および「有する」という語は、オープンエンドな様式で何かの特定の項目、ステップ、要素、または態様を規定することを意図している。また、本明細書で使用される場合、特に反対の記述がない限り、「一組」という語は、1つまたは複数の何かを意味する。これは、「一組の」という語句の後に単数または複数の目的語が続くかどうかや、単数または複数の動詞が活用されるかどうかに関係なく、同様である。また、「一組の」要素は、存在するすべての要素よりも少ない数を表すこともある。したがって、その集合に含まれない同種の要素がさらに存在する可能性がある。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの序数的表現は、本明細書では識別の目的で形容詞として使用することがある。具体的に示されない限り、これらの序数的表現は、いかなる順序または順序を意味するものでもない。従って、例えば、「第2」の事象は、「第1」の事象の前または後に起こる可能性があり、また、第1の事象が発生しない場合であっても起こり得る。さらに、本明細書において、特定の要素、特徴、または行為を「第1の」そのような要素、特徴、または行為であると特定することは、「第2の」または他のそのような要素、特徴、または行為も存在しなければならないことを要求するものとして解釈されるべきではない。むしろ、「第1」の項目が唯一であってもよい。また、特に反対の記載がない限り、「~に基づく」は非排他的であることを意図している。したがって、「に基づく」は、特に断りのない限り、「に排他的に基づく」という意味ではなく、「に少なくとも部分的に基づく」という意味に解釈されるべきである。特定の実施形態が本明細書に開示されているが、これらは例示としてのみ提供されており、限定的なものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0057】
したがって、当業者であれば、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された実施形態に対して形態および細部の様々な変更を加えることができることを理解するであろう。
【国際調査報告】