IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェロノヴァ プロプライエタリー リミテッドの特許一覧 ▶ パーデュー リサーチ ファウンデーションの特許一覧

<>
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図1
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図2
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図3
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図4
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図5
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図6
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図7
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図8
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図9
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図10
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図11
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図12
  • 特表-ナノ粒子のマッピング 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】ナノ粒子のマッピング
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240426BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240426BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K9/16
A61K47/30
A61K47/34
A61K47/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K51/10
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572139
(86)(22)【出願日】2022-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 AU2022050450
(87)【国際公開番号】W WO2022241506
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2021901499
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522198885
【氏名又は名称】フェロノヴァ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FERRONOVA PTY LTD
【住所又は居所原語表記】BDO Advisory,Level 7,420 King William Road,Adelaide,South Australia,5000 Australia
(71)【出願人】
【識別番号】523008417
【氏名又は名称】パーデュー リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】Purdue Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,メラニー ルース マリア
(72)【発明者】
【氏名】ミラノヴァ,ヴァレンティナ
(72)【発明者】
【氏名】ディモコウスカ,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ティ ハン グエン
(72)【発明者】
【氏名】ホケット,ブライアン スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】ムッカマラ,ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,フィリップ スチュワート
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC27
4C076DD29
4C076EE01
4C076EE23
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB06
4C085BB11
4C085HH11
4C085KA03
4C085LL18
(57)【要約】
対象への投与に適したナノ粒子材料であって、その表面に、(a)ナノ粒子材料の液体中での分散を促進するコポリマー立体安定剤であり、(i)コポリマー立体安定剤をナノ粒子材料に結合させる1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメントおよび(ii)固定化ポリマーセグメントとは異なる立体安定化ポリマーセグメント、を含むコポリマー立体安定剤と、(b)コポリマーマッピング部分であり、(i)コポリマーマッピング部分をナノ粒子材料に結合する1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメント、(ii)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する薬剤を含む1個以上のマッピング基および(iii)前記固定化ポリマーセグメントとは異なるカップリングポリマーセグメントであり、前記固定化ポリマーセグメントを前記1個以上のマッピング基に結合するカップリングポリマーセグメント、を含むコポリマーマッピング部分と、を結合させている、ナノ粒子材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象への投与に適したナノ粒子材料であって、その表面に、(a)前記ナノ粒子材料の液体中での分散を促進するコポリマー立体安定剤であり、(i)前記コポリマー立体安定剤を前記ナノ粒子材料に結合させる1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメントおよび(ii)前記固定化ポリマーセグメントとは異なる立体安定化ポリマーセグメント、を含むコポリマー立体安定剤と、(b)コポリマーマッピング部分であり、(i)前記コポリマーマッピング部分を前記ナノ粒子材料に結合する1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメント、(ii)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する薬剤を含む1個以上のマッピング基および(iii)前記固定化ポリマーセグメントとは異なるカップリングポリマーセグメントであり、前記固定化ポリマーセグメントを前記1個以上のマッピング基に結合するカップリングポリマーセグメント、を含むコポリマーマッピング部分と、を結合させている、ナノ粒子材料。
【請求項2】
請求項1に記載のナノ粒子材料であって、その表面に、(c)コポリマー発光部分であり、(i)前記ポリマー発光部分を前記ナノ粒子材料に結合する1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメントと、(ii)前記ナノ粒子材料の生体内での位置の可視化を可能にする、光または光に応答して音響信号を放出するための1個以上の発光基と、(iii)前記固定化ポリマーセグメントとは異なるカップリングポリマーセグメントであり、前記固定化ポリマーセグメントを前記1個以上の発光基に結合する、カップリングポリマーセグメントと、を含むコポリマー発光部分を結合させている、ナノ粒子材料。
【請求項3】
前記1個以上の発光基が、インドシアニングリーン、sulfo-Cy3、sulfo-Cy5およびsulfo-Cy7から選択される、請求項2に記載のナノ粒子材料。
【請求項4】
前記立体安定化ポリマーセグメントが、ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー(a polyacrylamide-co-polyalkylene oxide block copolymer)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノ粒子材料。
【請求項5】
前記ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーが、約8個~約60個の重合アクリルアミド単位および約2個~約10個の重合アルキレンオキシド単位を含む、請求項4に記載のナノ粒子材料。
【請求項6】
前記カップリングポリマーセグメントが、ポリアクリルアミドから構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のナノ粒子材料。
【請求項7】
前記立体安定化ポリマーセグメントが、10個~70個の重合モノマー残基単位を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のナノ粒子材料。
【請求項8】
前記カップリングポリマーセグメントが、15個~100個の重合モノマー残基単位を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のナノ粒子材料。
【請求項9】
前記カップリングポリマーセグメントが、前記立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの重合モノマー残基単位(more polymerised monomer residue units)を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のナノ粒子材料。
【請求項10】
前記ナノ粒子材料が磁性ナノ粒子材料である、請求項1から8のいずれか1項に記載のナノ粒子材料。
【請求項11】
前記磁性ナノ粒子材料が、鉄(Fe)、磁赤鉄鉱(γ-Fe)、磁鉄鉱(Fe)またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載のナノ粒子材料。
【請求項12】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と特異的に結合する前記薬剤が、低分子阻害剤および抗体またはその抗原結合性フラグメントから選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載のナノ粒子材料。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ粒子材料を薬理学的に許容される液体担体中に含む、対象への投与に適した組成物。
【請求項14】
対象における腫瘍辺縁をマッピングするための方法であって、前記方法が、
a.請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ粒子材料または請求項13に記載の組成物を前記対象に投与するステップと、
b.前記ナノ粒子材料を検出するステップと、
を含み、
前記ナノ粒子材料が腫瘍微小環境に蓄積し、それによって前記腫瘍辺縁をマッピングする、方法。
【請求項15】
がんを診断するための方法であって、前記方法が、
a.請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ粒子材料または請求項13に記載の組成物を対象に投与するステップと、
b.前記ナノ粒子材料を検出するステップと、
を含み、
前記対象の組織中に蓄積したナノ粒子材料の前記検出が、前記対象ががんを有することを示す、方法。
【請求項16】
がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療のための方法であって、前記方法が、
a.請求項1から12のいずれか一項に記載のナノ粒子材料または請求項13に記載の組成物を前記対象に投与するステップと、
b.前記対象における前記ナノ粒子材料が蓄積する部位を検出するステップと、
c.ステップ(b)におけるナノ粒子材料検出の前記部位に前記がんに対する有効量の治療を投与するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に、ナノ粒子、それを含む組成物、ならびにマッピング、診断および治療用途におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的腫瘍切除は、特に疾患が単一の固形腫瘍に局在する場合、多くのがんの標準治療である。しかしながら、手術は侵襲的であり、残留新生物組織を特定することができないと、切除断端陽性をもたらす可能性があり、これは局所再発および患者転帰不良と互いに関係がある。さらに、腫瘍辺縁の正確な同定は、外部ビーム放射線療法、密封小線源療法およびフォーカルセラピーなどの、それぞれが腫瘍の位置および範囲(例えば、体積)の可能な限り最善の性状診断が必要とされる非外科的治療様式の有効性にとって重要である。
【0003】
例えば、根治的前立腺摘除術は、急速進行型および中程度の前立腺がんに対する標準治療である。しかしながら、この外科的介入後、患者の約20%が尿失禁を起こし、患者の約70%が勃起不全を起こす。これらの深刻な副作用のために、余命が限られており、進行の遅い、低リスク疾患を有する男性は、手術を受ける前に「経過観察(watch and wait)」することがしばしば推奨される。あるいは、一部の患者には、根治的前立腺摘除術の前に、外部ビーム放射線療法、密封小線源療法およびフォーカルセラピーなどの治療法が提供される。そのような治療法は副作用の減少には関連するが、外科的な腫瘍の部分切除術または完全切除術ほど効果的ではない。これらの代替治療様式の有効性の低下の要因は、原発腫瘍の境界および辺縁を識別する上で十分な空間分解能を提供し得ない既存の医用画像の制約である。例えば、前立腺特異的膜抗原陽電子放出断層撮影/コンピュータ断層撮影(PET-PSMA)は腫瘍体積を9~15%過小評価する可能性があり、マルチパラメトリック核磁気共鳴画像法(mpMRI)は腫瘍体積を11~20%過小評価する可能性がある。画像上の欠点のために、フォーカルセラピーのガイドラインでは、同定された病変を取り囲む切除領域の辺縁を最大10mmまで拡大することが必要とされる。しかし、切除領域を拡大しても、20~40%の断端再発率が報告されている。器官の保存および正常な組織毒性の制限が重要な、例えば、グリア芽細胞腫および膵臓がんを含むがこれらに限定されない他のがんでも同様の問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改善された術前および/もしくは術中ガイダンスを提供することによって外科的切除を改善するために、または、より低侵襲性の治療様式、例えば、クライオアブレーション、焦点レーザーアブレーションおよび高周波数超音波アブレーションなどのフォーカルセラピー、光線力学的療法、高線量率および低線量率の密封小線源療法、プロトンおよび炭素イオン線療法などの粒子線療法、ならびに強度変調放射線療法(IMRT)、画像誘導放射線療法(IGRT)、少分割放射線療法および超高線量率放射線療法などの外部ビーム放射線療法が、腫瘍の全体積をより正確に標的とすることができ、非標的組織の暴露を低減することができるような、固形腫瘍の辺縁を正確に同定する新しい材料および組成物を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明によるナノ粒子材料は、腫瘍微小環境内に選択的に蓄積し、それによって固形腫瘍の辺縁をマッピングすることが見出された。理論によって制限されることを望むものではないが、コポリマー立体安定剤とコポリマーマッピング部分との機能を組み合わせることで、本明細書に記載のナノ粒子材料が、腫瘍微小環境内の細胞、例えば腫瘍関連間質細胞によって発現される線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に選択的に結合することが少なくとも部分的に可能になる。
【0006】
したがって、本明細書に記載の一態様では、対象への投与に適したナノ粒子材料であって、その表面に、(a)液体中での前記ナノ粒子材料の分散を促進するコポリマー立体安定剤であり、(i)前記コポリマー立体安定剤を前記ナノ粒子材料に結合させる1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメントおよび(ii)前記固定化ポリマーセグメントとは異なる立体安定化ポリマーセグメントを含むコポリマー立体安定剤と、(b)コポリマーマッピング部分であり、(i)前記コポリマーマッピング部分を前記ナノ粒子材料に結合させる1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメント、(ii)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する薬剤を含む1個以上のマッピング基および(iii)前記固定化ポリマーセグメントとは異なるカップリングポリマーセグメントで、前記固定化ポリマーセグメントを前記1個以上のマッピング基にカップリングするカップリングポリマーセグメントを含むコポリマーマッピング部分と、を結合させている、ナノ粒子材料が提供される。
【0007】
本発明によるナノ粒子材料は、有利なことに、改善された血中半減期循環を示して全身注射を支持し、および/または生体内で実質的に分解しない。
【0008】
理論によって制限されることを望むものではないが、ナノ粒子材料は、少なくともその表面に結合したコポリマー成分を介してそのような有利な特性を示すと考えられる。これらのコポリマー成分は、コポリマーマッピング部分と併用されるコポリマー立体安定剤を含む。コポリマー立体安定剤およびコポリマーマッピング部分の両方は、それぞれの実体をナノ粒子材料に結合させる固定化ポリマーセグメントを含む。固定化ポリマーセグメントは、有利なことに、例えば、生体内液体環境中にある場合、ナノ粒子材料に固定されたコポリマーマッピング部分およびコポリマー立体安定剤の両方を維持する上で非常に有効であることが分かった。これにより、生体内液体環境中にナノ粒子材料を分散した形態で維持することが容易になる。当業者であれば、生体内液体環境におけるナノ粒子材料の凝集が診断および治療用途において弊害をもたらす可能性があることを理解するであろう。
【0009】
やはり理論によって制限されることを望むものではないが、コポリマーマッピング部分は、生体内液体環境等における分散改善の付与効果と相乗的に作用することで、腫瘍微小環境における粒子材料の蓄積を改善することを可能にすると考えられる。目的とする用途に応じて、ナノ粒子材料は、それがコポリマーマッピング部分に結合することによって同様に本質的に腫瘍微小環境内に蓄積するが、所定のタスクを実行する上で有利に選択され得る。例えば、ナノ粒子材料は、磁性粒子イメージング法(MPI)ならびに核磁気共鳴画像法(MRI)、例えば、低磁場MRI、MRI誘導外部ビーム放射線療法、MRI誘導フォーカルアブレーション、MRI/超音波融合フォーカルアブレーション、MRI誘導生検、MRI/超音波融合誘導生検、MRI誘導手術、MRI誘導密封小線源療法、MRI誘導赤外線カメラ誘導生検または治療および光音響誘導生検または治療などの用途に使用するための磁性ナノ粒子材料の形態で提供することができる。
【0010】
したがって、本発明によるナノ粒子材料は、対象の腫瘍辺縁をマッピングし、腫瘍病変の位置および範囲(例えば、体積)を決定するための従来の方法および治療適用を向上する上で特に有効であることが分かった。
【0011】
当業者であれば、生体内での標的化ナノ粒子材料の適用が、不要タンパク質吸着による弊害を受けて、いわゆるタンパク質コロナを生じさせる可能性があり、標的部位での結合効率の低下をきたし得ることを理解するであろう。そのようなタンパク質吸着は結合効率を低下させる可能性があるだけでなく、標的部位でのナノ粒子材料の蓄積をも結果として減少させる可能性がある。驚くべきことに、コポリマー立体安定剤とコポリマーマッピングを組み合わせて使用すると、有害なタンパク質吸着の影響を有利に低減することもでき、それによって腫瘍微小環境内のナノ粒子材料の蓄積効率を改善することが見出された。
【0012】
一実施形態では、ナノ粒子材料は、その表面に、(c)コポリマー発光部分であって、(i)ポリマー発光部分をナノ粒子材料に結合する1個以上の結合基を有する固定化ポリマーセグメントと、(ii)ナノ粒子材料の生体内での位置の可視化を可能にする、光または光に応答する音響信号を放出するための1個以上の発光基と、(iii)固定化ポリマーセグメントとは異なるカップリングポリマーセグメントであり、固定化ポリマーセグメントを1個以上の発光基にカップリングするカップリングポリマーセグメントと、を含むコポリマー発光部分を結合させている。
【0013】
一実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマー(a polyacrylamide-co-polyalkylene oxide block copolymer)を含む。
【0014】
別の実施形態において、カップリングポリマーセグメントは、ポリアクリルアミドから構成される。
【0015】
さらなる実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含み、カップリングポリマーセグメントは、ポリアクリルアミドから構成される。
【0016】
一実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、10個~70個の重合モノマー残基単位を有する。
【0017】
別の実施形態において、カップリングポリマーセグメントは、15個~100個の重合モノマー残基単位を有する。
【0018】
さらなる実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、10個~70個の重合モノマー残基単位を有し、カップリングポリマーセグメントは、15個~100個の重合モノマー残基単位を有する。
【0019】
一実施形態では、ナノ粒子材料は磁性ナノ粒子材料である。
【0020】
本明細書の他の箇所に記載されるように、ナノ粒子材料は、腫瘍微小環境内の細胞によって発現される線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に選択的に結合する。
【0021】
一実施形態では、腫瘍微小環境内の細胞は腫瘍関連間質細胞である。
【0022】
さらなる実施形態では、腫瘍関連間質細胞は、線維芽細胞、周皮細胞、脂肪細胞、間葉系間質細胞(MSC)、内皮細胞およびそれらの組合せから選択される。別の実施形態では、腫瘍関連間質細胞は、周皮細胞、内皮細胞およびそれらの組合せから選択される。
【0023】
一実施形態において、FAPに特異的に結合する薬剤は、低分子阻害剤および抗体またはその抗原結合性フラグメントから選択される。別の実施形態において、低分子阻害剤はFAP阻害剤である。
【0024】
さらなる実施形態において、1つ以上の発光基は、化学発光基、電界発光基、光ルミネセンス基、放射線ルミネセンス基および熱ルミネセンス基から選択される。
【0025】
本明細書に開示される別の態様において、対象への投与に適した組成物であって、本発明によるナノ粒子材料を含む組成物が提供される。
【0026】
一実施形態において、組成物は、薬理学的に許容される液体担体を含む。
【0027】
本明細書に開示される別の態様において、対象に治療的または診断的応用を実施する際の本発明によるナノ粒子材料または組成物の使用が提供される。
【0028】
適切な治療的または診断的応用の例として、磁性粒子イメージング法(MPI)、核磁気共鳴画像法(MRI)、MRI誘導外部ビーム放射線療法、MRI誘導フォーカルアブレーション、MRI/超音波融合フォーカルアブレーション、MRI誘導生検、MRI/超音波融合誘導生検、MRI誘導手術、MRI誘導密封小線源療法、MRI誘導赤外線カメラ誘導生検または治療および光音響誘導生検または治療が挙示される。
【0029】
本発明によるナノ粒子材料または組成物は、超音波、MRI/超音波、X線、光学イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および核磁気共鳴画像法(MRI)を含むがこれらに限定されない生体内画像診断技術と組み合わせて使用することができる。
【0030】
本明細書に開示される別の態様では、生体内撮像のための、本発明によるナノ粒子材料または組成物の使用が提供される。
【0031】
本明細書に開示される別の態様では、生体内撮像に使用するための、本発明によるナノ粒子材料または組成物が提供される。
【0032】
本明細書に開示される別の態様では、がんを検出するための、本発明によるナノ粒子材料または組成物の使用が提供される。
【0033】
本明細書に開示される別の態様では、がんの検出に使用するための、本発明によるナノ粒子材料または組成物が提供される。
【0034】
一実施形態では、がんは、前立腺がん、多形性グリア芽細胞腫、グリオーマ、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、頭頸部がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、肉腫および肺がんから選択される。別の実施形態では、がんは前立腺がんである。
【0035】
本明細書に開示される別の態様では、腫瘍微小環境をマッピングするための、本発明によるナノ粒子材料または組成物の使用が提供される。
【0036】
本明細書に開示される別の態様では、腫瘍微小環境のマッピングに使用するための、本発明によるナノ粒子材料または組成物が提供される。
【0037】
本明細書に開示される一態様では、
a.本発明によるナノ粒子材料または組成物を対象に投与するステップと、
b.ナノ粒子材料を検出するステップと、
を含む、対象の腫瘍辺縁をマッピングする方法であって、ナノ粒子材料が腫瘍微小環境に蓄積し、それによって腫瘍辺縁をマッピングする、方法が提供される。
【0038】
一実施形態では、腫瘍辺縁をイン・サイチュでマッピングする。腫瘍は、腫瘍組織切除の前または後にイン・サイチュでマッピングされ得る。
【0039】
一実施形態では、本方法は、治療を施す前に臨床標的体積(CTV)および/または肉眼的標的体積(GTV)を決定することをさらに含む。
【0040】
本明細書に開示される一態様では、がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療のための方法であって、
a.本発明によるナノ粒子材料または組成物を対象に投与するステップと、
b.ナノ粒子材料が蓄積している部位を検出するステップと、
c.ステップ(b)におけるナノ粒子材料検出の部位に前記がんの治療の有効量を投与するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0041】
一実施形態では、治療は、外科手術、放射線療法、密封小線源療法、光線力学的療法、光温熱療法、(冷凍アブレーション、焦点レーザーアブレーションおよび高周波数超音波アブレーションなどの)フォーカルアブレーション療法、化学療法、免疫療法およびそれらの組合せから選択される。
【0042】
一実施形態では、ナノ粒子材料は、核磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、X線、光学イメージング、蛍光イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)および蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)から選択される画像診断技術を使用して検出される。
【0043】
一実施形態では、本方法はさらに、ステップ(c)による治療を施す前に臨床標的体積(CTV)および/または肉眼的標的体積(GTV)を決定することを含む。
【0044】
本明細書に開示される一態様において、
a.本発明によるナノ粒子材料または組成物を対象に投与するステップと、
b.ナノ粒子材料を検出するステップと、
を含む、がんを診断するための方法であって、
対象の(血管組織などの)組織内に蓄積したナノ粒子材料の検出が、対象ががんを有することを示す、方法が提供される。
【0045】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下においてより詳細に概説および議論される。
【0046】
本開示の実施形態は、添付の非限定的な図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、本発明によるナノ粒子材料を示す概略図である。
図2図2は、本発明による「長い」コポリマー立体安定剤の化学構造を示す図である。
図3図3は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)標的化基を表面に結合させた分散ナノ粒子材料の動的光散乱(DLS)測定の結果を示す図である。
図4図4は、本発明による「長い」コポリマーマッピング部分の化学構造を示す図である。
図5図5は、線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤(FAPI)標的化基を表面に結合させた分散ナノ粒子材料の動的光散乱(DLS)測定の結果を示す図である。
図6図6は、同所性前立腺腫瘍切除標本の3T-MRI応答を示す図であり、図5に示す比較ナノ粒子材料からの弱いMRI応答に対して、本発明によるナノ粒子材料が強いMRI応答を有することを明示している。
図7図7は、同所性腫瘍切除標本からの病理スライドを示す図であり、本発明によるナノ粒子材料が腫瘍表面に強いプルシアンブルー鉄染色を有するのに対して、図5に示す比較ナノ粒子材料が有する鉄ブルー染色が呈する腫瘍表面のナノ粒子は、本発明によるナノ粒子材料よりもはるかに少ないことを明示している。
図8図8は、マウス全身の14.7T-MRIを示す図であり、本発明によるナノ粒子材料の陰性コントラストを同所性前立腺モデルの表面に有している。
図9図9は、本発明による「短い」コポリマーマッピング部分の化学構造を示す図である。
図10図10は、本発明による「短い」コポリマー立体安定剤の化学構造を示す図である。
図11図11は、は、FAP発現細胞株における微小FAPマッピング磁性ナノ粒子(磁赤鉄鉱)と非標的化微小磁性ナノ粒子との細胞取り込みの比較を示す図である。
図12図12は、ウシ胎児血清(FBS)の存在下および非存在下でのFAP発現細胞株における、微小コポリマーFAPマッピング磁性ナノ粒子(磁赤鉄鉱)と単一ポリマーFAPマッピング磁性ナノ粒子との細胞取り込みの比較を示す図である。
図13図13は、FAP発現細胞株における微小FAPマッピング磁性ナノ粒子(磁鉄鉱)と非標的化微小磁性ナノ粒子(磁鉄鉱)との細胞取り込みの比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書では、当業者に周知の用語がいくつか使用される。しかしながら、明確にするために、用語のいくつかを定義する。
【0049】
「対象」という用語は、動物またはヒト対象のいずれかを意味する。「動物」とは、霊長類、家畜動物(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタおよびヤギなど)、コンパニオンアニマル(イヌ、ネコ、ウサギおよびモルモットなど)ならびに捕獲野生動物(動物園環境で飼育されているものを含む)を意味する。ウサギ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターなどの実験動物もまた、重宝な試験系を提供し得るので企図される。一部の実施形態において、対象はヒト対象である。
【0050】
本発明によるナノ粒子材料または組成物が対象に投与する上で「好適」である、とは、組成物の対象への投与によって、アレルゲン反応および疾患状態などの許容できない毒性をもたらさないことを意味する。
【0051】
ナノ粒子材料または組成物の対象への「投与」とは、ナノ粒子材料または組成物が、ナノ粒子材料が対象に移行され得るように提供されることを意味する。投与様式には特に制限はないが、これは一般に、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、脳内、鼻腔内、髄腔内および脊髄内など)、吸入(噴霧など)、局所、直腸ならびに膣様式によるものである。ナノ粒子材料または組成物はまた、腫瘍内および/もしくは腫瘍の1つ以上のセグメントに隣接する組織内に直接投与されてもよく、または血管内に直接投与されてもよい。
【0052】
「薬理学的に許容される」とは、対象への投与に適していることを意味する。すなわち、関連物質の対象への投与は、アレルゲン反応および疾患状態などの許容できない毒性をもたらしてはいけない。
【0053】
単なる指針ではあるが、当業者は、「薬理学的に許容される」を、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認された実体、または米国薬局方もしくは動物、より具体的にはヒトにおける使用のための他の一般的に認められている薬局方に列挙された実体と考えてもよい。
【0054】
とはいえ、当業者であれば、本発明によるナノ粒子材料または組成物の対象への投与に対する適合性、およびそれまたはその構成成分が薬理学的に許容されると考えられるか否かは、選択された投与様式にある程度依存することを理解するであろう。したがって、組成物またはその構成成分が対象への投与に適しているか否か、または薬理学的に許容されるか否かを評価する場合、投与様式を考慮する必要があり得る。
【0055】
ナノ粒子材料が液体担体「全体に分散」しているとは、ナノ粒子材料が、粒子材料に対してそれ自体が連続液体媒質または相として存在する液体担体全体にわたって、分散相として存在することを意味する。すなわち、本発明による組成物は、ナノ粒子材料の液体担体全体にわたる懸濁または分散を含むものとして説明できるだろう。
【0056】
本明細書で使用される場合、液体担体の文脈における「液体」という用語は、媒体であって、その中にナノ粒子材料が全体に分散しており、本発明による組成物の意図された使用の温度では少なくとも液体状態にある媒体を意味することを意図している。一般的に、液体担体は、安定剤の非存在下で、担体全体に分散した粒子材料が担体からフロキュレーションまたは沈降して沈殿物を形成することができる場合、「液体」状態にあると考えられる。すなわち、粒子材料が媒体内で比較的自由に移動することができる場合、「液体」と考えられる。
【0057】
本発明により使用される液体担体は、1種以上の異なる液体で構成されてもよい。薬理学的に許容される適切な液体担体は、Martin編、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン(1990年)に記載されており、水や、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、鉱物または合成起源のものを含む油など、滅菌可能な液体が含まれるが、これらに限定されない。他の液体担体としては、メチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールが挙示される。水または可溶性生理食塩水ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、液体担体として、特に注射液用の液体担体として好ましく使用される。
【0058】
本発明による組成物は、当業者に公知の1種以上の薬理学的に許容される添加剤を含み得る。例えば、液体担体は、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、緩衝剤、電解質、防腐剤、着色剤、香味料および甘味料などの1種以上の添加剤を含み得る。
【0059】
液体担体および何らかの添加剤(存在する場合)の特定の性質は、組成物の意図する用途に部分的に依存する。当業者であれば、組成物の意図された用途に適した液体担体および添加剤(存在する場合)を選択することができるであろう。
【0060】
ナノ粒子材料は、適切な場合、治療または診断有効量で投与され得る。治療または診断有効量は、所望の投与計画に従って投与された場合、所望の治療効果または診断効果、例えば、治療および/または評価されている特定の状態の発症もしくは進行のことごとくに、その症状の緩和、その発症の予防もしくは遅延、その進行の阻害もしくは遅延、その診断、またはその停止もしくは逆転のうちの1つ以上を達成する量を含むことが意図される。
【0061】
これを達成するための適切な投与量および投与計画は、主治医によって決定することができ、治療または診断されている特定の状態、状態の重症度、ならびに対象の一般的な年齢、健康状態および体重に依存し得る。
【0062】
投与は、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月もしくは数年の間隔で、またはこれらの期間のいずれか1つにわたって連続的に行われ得る。粒子材料自体の適切な投与量は、1回の投与につき体重の1kg当たりで約0.1ng~体重の1kg当たりで1gの範囲内であり得る。投与量は、1回の投与につき体重の1kg当たりで1μg~1gの範囲内、例えば1回の投与につき体重の1kg当たりで1mg~1gの範囲内であり得る。一実施形態では、投与量は、1回の投与につき体重の1kg当たりで1mg~500mgの範囲内であり得る。別の実施形態では、投与量は、1回の投与につき体重の1kg当たりで1mg~250mgの範囲内であり得る。さらに別の実施形態では、投与量は、1回の投与につき体重の1kg当たりで1mg~100mgの範囲内、例えば1回の投与につき体重の1kg当たりで最大50mgであり得る。
【0063】
本発明によるナノ粒子材料または組成物は、単回投与または連続投与で投与され得る。
【0064】
本発明によるナノ粒子材料または組成物が非経口投与に適している場合、それらは一般に、酸化防止剤、緩衝剤、殺菌剤もしくは意図する対象の血液と組成物を等張にする溶質のうちの1種または複数種を含有し得る、水性または非水性の等張性滅菌注射液の形態である。そのような組成物は、単位投与または複数回投与の密封容器、例えばアンプルおよびバイアルで提供され得る。
【0065】
投与すると、本発明によるナノ粒子材料または組成物は、生体内で希釈され得る。例えば、希釈は、経口的または非経口的に投与された場合に起こり得る。その場合、組成物の液体担体は生体内で非常によく希釈され得るため、粒子材料が全体に分散される周囲の液体環境の方が元の液体担体よりも生体内液体(すなわち、対象内の生物学的液体/流体)を反映するようになる。例えば、非経口的に投与されると、ナノ粒子材料は、組成物の元の液体担体よりもむしろ、血液全体に分散すると説明する方がより適切だろう。そのような状況下では、ナノ粒子材料は生体内液体担体(すなわち、対象内の生物学的液体/流体)全体に分散しているとして言及することが好都合な場合がある。本発明による組成物の液体担体と生体内液体担体との組成の差を除いて、組成物の液体担体に関する本明細書に記載の事項は、一般に生体内液体担体にも適用される。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、「腫瘍微小環境」という表現は、腫瘍を取り囲んでいるおよび/または腫瘍に浸潤している非がん性細胞の異種集団のことを指し、これは腫瘍の機能性、生理学および転移に非常に重要である。当業者であれば、腫瘍微小環境が、腫瘍のサイズ、位置、タイプおよびステージに基づいて異なり得る様々な異なる細胞型を含み、その説明に役立つ実例としては、線維芽細胞、周皮細胞、脂肪細胞、間葉系間質細胞(MSC)、がん細胞および内皮細胞が挙示されることを理解するであろう。腫瘍微小環境の細胞は非がん性であるが、腫瘍はそのような細胞を動員および/または制御して、がんの成長を促進する上で都合がよい環境をもたらす。したがって、腫瘍微小環境内に含まれる細胞は、「がん関連」または「腫瘍関連」と呼ばれることがある。
【0067】
一実施形態では、本明細書に開示されるナノ粒子材料は、腫瘍微小環境内の細胞によって発現された線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に選択的に結合する。
【0068】
一実施形態では、腫瘍微小環境内の細胞は腫瘍関連間質細胞である。
【0069】
一実施形態では、腫瘍関連間質細胞は、線維芽細胞、周皮細胞、脂肪細胞、間葉系間質細胞(MSC)、がん細胞、内皮細胞およびそれらの組合せから選択される。別の実施形態では、腫瘍関連間質細胞は、周皮細胞、内皮細胞およびそれらの組合せから選択される。
【0070】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値に対する許容範囲内を意味し、これは値がどのように測定または決定されるか、例えば測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、所与の値の20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらにより好ましくは1%以下の範囲を意味することができる。あるいは、特に生物学的な系またはプロセスに関して、この用語は、ある値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値に対して許容可能な誤差範囲内、例えば±1~20%、好ましくは±1~10%、より好ましくは±1~5%を意味する。
【0071】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載値または介在値が本開示内に包含されることが理解される。これらのより狭い範囲の上限および下限は、より狭い範囲内に独立して含まれることができ、そしてまた本開示内に包含され、記載された範囲内の具体的に除外されたいずれかの限界の対象となる場合もある。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方または両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0072】
項目のリストの「少なくとも1つ」を指す語句は、それらの項目の任意の組合せを指し、単一のメンバを含む。一例として、「a、b、またはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-c、およびa-b-cを包含することを意図している。
【0073】
本発明によるナノ粒子材料の説明を助けるために、図1を参照する。図1は、本発明によるナノ粒子材料(10)の概略図である。ナノ粒子材料自体(20)は、酸化鉄ナノ粒子材料によって表されている。ナノ粒子材料(20)の表面には、(i)形体(30)、(40)および(50)によって総称して表されるコポリマーマッピング部分ならびに(ii)形体(30)および(60)によって総称して表されるコポリマー立体安定剤が結合している。コポリマーマッピング部分は、固定化ポリマーセグメント(30)およびカップリングポリマーセグメント(40)を含み、固定化ポリマーセグメントとカップリングポリマーセグメントは別物である。カップリングポリマーセグメント(40)は、それ自体に1個以上のマッピング基(50)をカップリングさせている。コポリマー立体安定剤は、立体安定化ポリマーセグメント(60)に結合した固定化ポリマーセグメント(30)を含み、固定化ポリマーセグメント(30)は、立体安定化ポリマーセグメント(60)とは別物である。カップリングポリマーセグメント(40)は、立体安定化ポリマーセグメント(60)よりも多くの重合モノマー残基単位(more polymerised monomer residue units)を含有し、それにより、立体安定化ポリマーセグメント(60)と比べて、1個以上のマッピング基(50)がナノ粒子材料(20)の表面からより長い距離延伸することが可能になる。
【0074】
粒子材料が「ナノ」粒子材料であるとは、その寸法の少なくとも1つが100nm未満、または約75nm未満、または約50nm未満、または約30nm未満であることを意味する。一実施形態では、ナノ粒子材料のすべての寸法は、100nm未満、または約75nm未満、または約50nm未満、または約30nm未満である。
【0075】
ナノ粒子材料は、一次粒子の形態、または一次粒子の凝集体の形態であり得る。一実施形態では、ナノ粒子材料は一次粒子の形態である。
【0076】
誤解を避けるために記すと、本明細書におけるナノ粒子材料の「サイズ」への言及は、所与の粒子の最大寸法に基づく粒子(個数基準で少なくとも約50%)の平均サイズを示すことを意図している。
【0077】
ナノ粒子材料自体のサイズは、本明細書では透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される。
【0078】
誤解を避けるために記すと、ナノ粒子材料が一次粒子の凝集体の形態である場合、そのような材料のサイズへの言及は、凝集体を形成する一次粒子ではなく、凝集体の最大寸法への言及であることを意図している。
【0079】
特定の実施形態では、ナノ粒子材料は、少なくとも1つの寸法またはすべての寸法で約50nm未満のサイズを有する。特定の実施形態では、ナノ粒子材料は、少なくとも1つの寸法またはすべての寸法で約5nm~約30nm、または約5nm~約20nm、または約8nm~約15nmの範囲内のサイズである。
【0080】
一実施形態では、ナノ粒子材料は、約6、8、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90または100nmのサイズである。
【0081】
ナノ粒子材料は、一般的に、その目的とする用途において通常暴露される温度で固体である外表面を少なくとも有する。目的とする用途における使用中および使用前の貯蔵中にナノ粒子材料または組成物が暴露され得る温度を考慮すると、ナノ粒子材料の少なくとも外表面は、一般に、少なくとも約40℃以下、好ましくは約50℃以下で固体状態にある。ナノ粒子材料は、当然のことながら、全体を通してそのような固体状態の組成物を有することができ、そして一部の実施形態では、全体を通してそのような固体状態の組成物を有する(すなわち、固体ナノ粒子材料である)。
【0082】
医薬的または診断的有用性を有することは別として、ナノ粒子材料の組成に特に制限はない。ナノ粒子材料は、有機組成物もしくは無機組成物またはそれらの組合せを有し得る。ナノ粒子材料は、薬学的に活性な化合物(例えば、薬物)、金属、合金、金属塩、金属錯体、金属酸化物、放射性同位体、発光化合物もしくは発光基および/またはそれらの組合せから選択されるか、あるいはそれらを含み得る。
【0083】
適切なナノ粒子材料は、金、銀およびその塩、それらの錯体または酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫化ビスマス、鉄、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、酸化マンガン、オキシ水酸化鉄、オキシ水酸化クロム、オキシ水酸化コバルト、オキシ水酸化マンガン、二酸化クロム、他の遷移金属酸化物、(オージェ電子放出体、アルファ放射体、陽電子放出体およびベータ放射体から選択される)放射性同位体、ならびにそれらの組合せを含み得る。
【0084】
オージェ電子放出体の例としては、51Cr、67Ga、71Ge、75Se、77Br、80mBr、99mTc、103Pd、103mRh、111In、113mIn、115mIn、117mSn、119Sb、123I、125I、131Cs、161Ho、165Er、193mPt、195mPt、201Tlおよび203Pbが挙示される。
【0085】
アルファ放射体の例としては、211Atおよび213Biが挙示される。
【0086】
ベータ放射体の例としては、191Os、35S、33P、45Ca、199Au、169Er、67Cu、47Sc、177Lu、161Tbおよび105Rhなどの低エネルギーβ放射体;131I、153Sm、77As、143Pr、198Au、159Gd、109Pd、186Re、111Agおよび149Pmなどの中エネルギーβ放射体;ならびに165Dy、89Sr、32P、166Ho、188Re、114mIn、142Pr、90Yおよび76Asなどの高エネルギーβ放射体が挙示される。
【0087】
放射線治療に使用され得る放射性同位体の例としては、32P、153mS、90Y、125I、192Ir、103Pd、111In、166Hoおよび213Biが挙示される。
【0088】
診断用薬として使用され得る放射性同位体の例としては、99mTc、67Ga、64Cu、89Zrおよび18Fが挙示される。
【0089】
診断用薬として使用され得る陽電子放出体の例としては、ガリウム68、銅64、ジルコニウム89、イットリウム86、ルビジウム82、スカンジウム44、銅の複数の同位体、テルビウム182、ガリウム66およびコバルト55が挙示される。
【0090】
放射性同位体が使用される場合、放射性核種は、ナノ粒子材料自体として使用されてもよく、または1種以上の他の適切なナノ粒子材料と組み合わされてもよい。換言すれば、ナノ粒子材料は、1種以上の放射性同位体を含んでもよい。例えば、67Gaを酸化鉄粒子材料と組み合わせた形態で用いてもよい。
【0091】
一部の実施形態では、ナノ粒子材料は磁性を示す。そのような磁性ナノ粒子材料は、強磁性、フェリ磁性または超常磁性の特性を呈し得る。
【0092】
一実施形態では、ナノ粒子材料は超常磁性を示す。
【0093】
ナノ粒子材料は、磁性材料から作製されてもよく、または磁性材料を含んでもよい。
【0094】
適切な磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ガドリニウム、マンガン、前述のいずれかの酸化物またはオキシ水酸化物、および前述のいずれかの混合物が挙示されるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、磁性ナノ粒子は、鉄および/またはその酸化物もしくはオキシ水酸化物を含む。好適な酸化鉄磁性材料としては、磁赤鉄鉱(γ-Fe)および磁鉄鉱(Fe)が挙示される。
【0095】
一実施形態では、磁性ナノ粒子材料は、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、ガドリニウム、マンガンおよびそれらの酸化物もしくはオキシ水酸化物のうちの1種または複数種を含む。
【0096】
別の実施形態では、磁性ナノ粒子材料は、鉄(Fe)、磁赤鉄鉱(γ-Fe)、磁鉄鉱(Fe)またはそれらの組合せを含む。
【0097】
一部の実施形態では、磁性ナノ粒子材料は、粒径が約30nm未満、例えば約1nm~約20nmの磁鉄鉱(Fe)もしくは磁赤鉄鉱(γ-Fe)であるか、またはそれを含む。
【0098】
磁性ナノ粒子材料は、コア材料周囲の磁赤鉄鉱(γ-Fe)シェルなどの磁性金属酸化物シェルに囲まれた鉄などの金属の形態であってもよい。
【0099】
一部の実施形態では、磁性ナノ粒子材料は、一般式MO・Fe(式中、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Cu、Zn、Pt、Gdなどの二価金属もしくはそれらの混合物である)のフェライト、または一般式MO・6Fe(式中、Mは、大きな二価イオン、金属鉄、コバルトもしくはニッケルである)の磁鉛鉱型酸化物であるか、あるいはそれらを含む。磁性ナノ粒子材料は、Fe、Zn、Ni、Cr、CoもしくはGd、またはそれらの酸化物もしくはオキシ水酸化物で構成されてもよい。あるいは、磁性ナノ粒子材料は、これらのいずれかの混合物であり得る。
【0100】
一部の用途では、超常磁性を示す磁性ナノ粒子材料を使用することが望ましい場合がある。本明細書で使用される場合、「超常磁性」という用語は、以下の特性、すなわち、(i)保磁力、(ii)残留磁気または(iii)印加磁場の変化率が準静的である場合のヒステリシスループを有さない磁性材料を意味することを意図している。
【0101】
一部の実施形態では、ナノ粒子材料は発光材料であるか、または発光材料を含む。
【0102】
そのような発光材料は、化学発光性(例えば、生物発光性、電気化学発光性、強熱発光性、溶解発光性)、電界発光性、光ルミネセンス性(例えば、蛍光性もしくは燐光性)、放射線ルミネセンス性または熱ルミネセンス性であり得る。そのような発光材料の例には、本明細書に記載の発光基が含まれる。
【0103】
発光材料は、ナノ特定材料(nano particular material)の全部または一部を形成し得る。例えば、発光材料は、ナノ粒子材料を形成するように別の材料内に封入されてもよい。
【0104】
本発明によるナノ粒子材料は、その表面に液体中のナノ粒子材料の分散を促進するコポリマー立体安定剤を結合させている。その液体は、本明細書に記載の担体液体または生体内液体であり得る。その文脈における「促進」とは、コポリマー立体安定剤の非存在下では、ナノ粒子材料がフロキュレーションしたり、凝集したり、または沈殿物として液体から沈降することを意味する。つまり、コポリマー立体安定剤は、液体内でナノ粒子材料を分散状態に維持するように機能する。
【0105】
コポリマー「立体」安定剤であるとは、液体中のナノ粒子材料の分散が、立体反発力の結果として起こることを意味する。そうは言うものの、コポリマー立体安定剤は、ナノ粒子材料の安定化を同様に促進する静電反発力を示し得る。しかるに、当業者であれば、このような静電気力は、比較的高いイオン強度を有する液体中では、安定化機能をほとんどもたらさないことを理解するであろう。したがって、本発明に従って使用されるコポリマー立体安定剤の立体安定化機能は、そのような液体中でナノ粒子材料が分散した状態で維持され、または安定した状態を保つことを可能にする重要な役割を果たす。
【0106】
本発明に従って使用されるコポリマー立体安定剤は、生体内液体環境におけるナノ粒子材料の分散を促進するのに特に有効であることが分かった。
【0107】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」または「ポリマーセグメント」などの用語は、モノマーの重合に由来するポリマー鎖への言及であることを意図している。したがって、ポリマー成分またはポリマーセグメントは、重合モノマー残基単位を含むか、またはそれから構成される。そのようなポリマー成分またはポリマーセグメントは、何らかの適切な重合技術によって調製することができる。一実施形態では、本明細書に記載の(例えば、固定化、立体安定化およびカップリング)ポリマーセグメントは、エチレン性不飽和モノマーの重合によって調製される。ポリマー鎖は、それらに共有結合している非ポリマー成分、例えばマッピング基または発光基を有することができ、(そしてポリマー鎖の一部は共有結合している非ポリマー成分を有する)。本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、組成の異なる2種類のポリマーセグメントを含むポリマー鎖を意味することを意図している。
【0108】
本発明に従って使用されるコポリマー立体安定剤は、立体安定化ポリマーセグメントを含む。
【0109】
当業者であれば、このようなポリマーを形成するために重合され得るモノマーに関して、立体安定化ポリマーセグメントとして使用され得る多様なポリマーを理解するであろう。立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO))、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリラート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリラート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルタート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリラート、ポリアスパルタート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸、もしくは上述の2種以上のコポリマーを含むことができ、またはそれらから構成され得る。したがって、立体安定化ポリマーセグメントを形成するために使用され得る好適なモノマーとしては、アクリルアミド、ビニルアルコール、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド)、ヒドロキシエチルアクリラート、N-イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノ-エチルメタクリラート、ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリルアミド、ビニルエステル、ビニルアミド、スルホン化ジビニルベンゼン、L-リジン、アスパルタート、乳酸、エチレンイミン、アルキルシアノアクリラート、アスパルタート、無水マレイン酸、マレイン酸、または上述の2種以上のコポリマーが挙示されるが、これらに限定されない。
【0110】
立体安定化ポリマーセグメントがポリアルキレンオキシドを含む場合、ポリアルキレンオキシドは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびそれらの誘導体から選択され得る。ポリアルキレンオキシドポリマーを、アルキル基を用いて末端を封止してもよい。アルキル基は、炭素数1~6のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基であってもよい。
【0111】
立体安定化ポリマーセグメントがコポリマー立体安定剤の一部のみを形成することを考慮すると、立体安定化ポリマーセグメントをその数平均分子量の観点から定義するよりも、その代わりに、セグメントを集合的に形成する重合モノマー単位の数に言及することの方が有用であり得る。立体安定化ポリマーセグメントを集合的に形成することのできるそのような単位の数に特に制限はないが、本発明の一部の実施形態では、立体安定化ポリマーセグメントがポリマーセグメント全体を構成する重合モノマー残基単位を約70個未満含むことが望ましい場合があり、そして、特定の実施形態では、ポリマーセグメント全体を構成する重合モノマー残基単位を約40個~約60個、例えば重合モノマー残基単位を約50個有する。
【0112】
一部の実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、重合モノマー残基単位を約10個~約70個含む。
【0113】
立体安定化ポリマーセグメントは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。
【0114】
一実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、ポリアクリルアミド-コ-ポリアルキレンオキシドブロックコポリマーを含むか、またはそれから構成される。そのブロックコポリマーは、約8個~約60個の重合アクリルアミド単位および約2個~約10個の重合アルキレンオキシド単位を含んでもよく、またはそれらから構成されてもよい。
【0115】
別の実施形態において、立体安定化ポリマーセグメントは、重合アルキレンオキシド単位を約10個~約13個含む。
【0116】
当業者であれば、重合アルキレンオキシド単位がポリアルキレンオキシドを生じさせることを理解するであろう。
【0117】
本発明に従って使用されるポリマー立体安定剤、ポリマーマッピング部分およびポリマー発光部分はそれぞれ、固定化ポリマーセグメントを含む。
【0118】
「固定化ポリマーセグメント」とは、ポリマー鎖であり、ナノ粒子材料の表面に対する親和性を有し、そして所与の実体を1個以上の結合基を介してナノ粒子材料に固定するように機能する、所与のポリマー実体(すなわち、ポリマー立体安定剤、ポリマーマッピング部分およびポリマー発光部分)のセグメントまたは領域を意味する。1個以上の結合基は、ポリマー鎖骨格の一部を形成してもよく、またはポリマー鎖骨格からの側鎖として存在してもよい。結合基は、ナノ粒子材料に対する結合親和性を有する何らかの元素または分子であり得る。例えば、結合基は、鉄または酸化鉄に対する結合親和性を有する何らかの元素または分子であり得る。使用することができる適切な結合基として、1個以上のリン(P)原子を含む基、1個以上の酸素(O)原子を含む基、1個以上の硫黄(S)原子を含む基、1個以上の窒素(N)原子を含む基、および前述の原子のいずれかを2個以上を含む基が挙示される。
【0119】
一実施形態では、固定化ポリマーセグメントは、リン酸基、ホスホナート基、ジメルカプトコハク酸(DMSA)基、硫酸基、スルホン酸基、カテコール基、カルボキシラート基、アミン基およびシラン基から選択される1個以上の結合基を含む。
【0120】
ポリマーセグメントであることにより、固定化ポリマーセグメントは重合モノマー残基を含むことが理解されるであろう。特に、セグメントは、ナノ粒子材料に対する必要とされる結合親和性を生じさせる重合モノマー残基を含む。固定化ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残基は、同じであっても異なっていてもよい。
【0121】
ナノ粒子材料との結合相互作用のための複数の部位を供与する固定化ポリマーセグメントの能力は、コポリマー立体安定剤によって提供される優れた安定化特性を少なくとも部分的に生じさせると考えられる。
【0122】
固定化ポリマーセグメントは、磁性ナノ粒子と結合するための部位をそれぞれ提供する重合モノマー残基を少なくとも2個、またはそのような重合モノマー残基を少なくとも3個、または少なくとも5個、または少なくとも7個、または少なくとも10個を有し得る。固定化ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残基のすべてがナノ粒子材料との結合相互作用をもたらす必要は必ずしもないが、一般に、固定化ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残基のすべてではないにしても大部分がナノ粒子材料との結合相互作用をもたらすことが好ましい。
【0123】
したがって、固定化ポリマーセグメントは、所与の実体をナノ粒子材料に集合的に固定または結合する複数の部位を有する、と説明することができる。
【0124】
所望の固定化効果をもたらすために、固定化ポリマーセグメントは、ナノ粒子材料に対する結合親和性を有する。固定化ポリマーセグメントがナノ粒子材料に結合する様式は、静電力、水素結合、イオン電荷、ファンデルワールス力またはそれらの任意の組合せによるものであるだろう。固定化ポリマーセグメントによってもたらされる特定の利点は、それがナノ粒子との結合相互作用のための複数の部位を提供することができることである。したがって、所与の結合部位のみがナノ粒子材料との比較的弱い相互作用を生み出す場合でも、セグメント内にそのような部位が複数存在することにより、全体としてナノ粒子材料に確実に結合することが可能になる。
【0125】
一実施形態では、固定化ポリマーセグメントは、ナノ粒子材料に共有結合していない。
【0126】
必要とされる固定化ポリマーセグメントは、一般に、それが結合するナノ粒子材料の性質によって決定される。当業者であれば、所与のナノ粒子材料の表面と結合する適切な固定化ポリマーセグメントを選択することができるであろう。
【0127】
固定化ポリマーセグメントとナノ粒子材料との相互作用を説明する場合、セグメントおよび粒子材料の親水性および疎水性について言及することが好都合であり得る。したがって、一般に、セグメントおよび粒子材料が同様の親水性または疎水性を有する場合、適切な結合相互作用が生じる。例えば、ナノ粒子材料が(例えば、その表面を水溶液で濡らすことができる)比較的親水性の表面を有する場合、親水性を有する固定化ポリマーセグメント(例えば、その単離された形態では、セグメントは水性媒質に可溶性である)を使用することで良好な結合が達成されることになる。そのような例は、粒子材料がその表面に電荷を形成することができるタイプのものである場合に実現できるだろう。その場合、セグメントと粒子材料との間のイオン結合を促進するように、セグメントは電荷を形成することもできるモノマーの重合残基(例えば、イオン化可能なモノマーの重合残基)を含むことが望ましいことがある。そのような荷電種の形成の促進は、安定剤および粒子材料が存在する液体担体のpHを調整することによって促進され得るだろう。
【0128】
「イオン化可能なモノマー」という表現は、モノマーが、溶液中でイオン化されてカチオン性基またはアニオン性基を形成することができる官能基を含むことを意味している。そのような官能基は、一般に、酸性または塩基性条件下でプロトンの減失または受容によってイオン化することができる。一般に、官能基は、酸性基または塩基性基(すなわち、それぞれH原子を供与または受容することができる基)である。例えば、カルボン酸官能基は塩基性条件下でカルボン酸アニオンを形成することができ、アミン官能基は酸性条件下で第4級アンモニウムカチオンを形成することができる。官能基はまた、イオン交換プロセスによってイオン化が可能な場合がある。
【0129】
当業者であれば、そのようなポリマーを形成するために重合され得るモノマーに関して、固定化ポリマーセグメントとして使用され得る様々なポリマーを理解するであろう。例えば、適切なポリマーには、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリイタコン酸、ポリ-p-スチレンカルボン酸、ポリ-p-スチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリモノアクリロキシエチルホスファート、ポリモノアクリロキシエチルホスホン酸、ポリ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファート、ポリ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホン酸、ポリエタクリル酸、ポリ-α-クロロアクリル酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸、ポリメサコン酸、ポリマレイン酸、ポリ-2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリラートおよびメタクリラート、対応するポリ-3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリラートおよびメタクリラート、ポリジメチルアミノエチルメタクリラートならびにそれらのコポリマーが挙示されるが、これらに限定されない。したがって、固定化ポリマーセグメントを形成するために使用され得る適切なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、モノアクリロキシエチルホスファート、モノアクリロキシエチルホスホン酸、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファート、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホン酸、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリラートおよびメタクリラート、対応する3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリラートおよびメタクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラートならびにそれらの組合せが挙示されるが、これらに限定されない。
【0130】
固定化ポリマーセグメントは、約1個~約20個のホスホナート基、例えば1個のホスホナート基、2個のホスホナート基、3個のホスホナート基、4個のホスホナート基、5個のホスホナート基、6個のホスホナート基、7個のホスホナート基、8個のホスホナート基、9個のホスホナート基または10個のホスホナート基、11個のホスホナート基、12個のホスホナート基、13個のホスホナート基、14個のホスホナート基、15個のホスホナート基、16個のホスホナート基、17個のホスホナート基、18個のホスホナート基、19個のホスホナート基または20個のホスホナート基を含み得る。一部の実施形態では、固定化ポリマーセグメントは、20個を超えるホスホナート基を含み得る。特定の実施形態では、固定化ポリマーセグメントは、5個のホスホナート基を含む。
【0131】
固定化ポリマーセグメントは、1種類のモノマーまたは2種類以上の異なるモノマーの組合せの重合によって形成され得る。したがって、固定化ポリマーセグメントは、ホモポリマーセグメントまたはコポリマーセグメントであり得る。
【0132】
集合的に固定化ポリマーセグメントを形成する重合モノマー単位の個数に特に制限はないが、本発明の一部の実施形態では、固定化ポリマーセグメントは比較的低い数平均分子量を有することが望ましい場合がある。固定化ポリマーセグメントは、(セグメント全体を構成する)重合モノマー残基単位を約50個未満、または約40個未満、または約30個未満、または約5個~約25個、または約5個~約15個含み得る。
【0133】
一実施形態では、固定化ポリマーセグメントは、1個~約30個の重合モノマー残基単位を含む。
【0134】
一実施形態では、固定化ポリマーセグメントは、1個以上のエチレン性不飽和モノマーの重合残基から構成される。
【0135】
固定化ポリマーセグメントは、コポリマー立体安定剤、コポリマーマッピング部分またはコポリマー発光部分を形成するように、立体安定化ポリマーセグメントまたはカップリングポリマーセグメントのいずれかに共有結合している。
【0136】
固定化ポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントまたはカップリングポリマーセグメントのいずれとも異なり、それによって、コポリマー立体安定剤、コポリマーマッピング部分およびコポリマー発光部分のコポリマーの性質が得られる。
【0137】
ポリマーマッピング部分およびポリマー発光部分(使用される場合)は、カップリングポリマーセグメントを含む。カップリングポリマーセグメントは、固定化ポリマーセグメントに共有結合的にカップリングしている。「カップリング」ポリマーセグメントであるとは、本明細書に記載されるように、固定化ポリマーセグメントをマッピング基または発光基のいずれかに連結または結合するポリマー鎖であることを意味する。したがって、これらのマッピング基または発光基は、一般に、カップリングポリマーセグメントに共有結合的にカップリングしている。カップリングポリマーセグメントはまた、マッピング基および発光基をナノ粒子材料表面から離して移動させ、それによって、例えばマッピング基が標的部位上の受容体により利用可能となる場合において、マッピング基および発光基をより機能的にする役割を果たす。
【0138】
当業者であれば、このようなポリマーを形成するために重合され得るモノマーに関して、カップリングポリマーセグメントとして使用され得る様々なポリマーを理解するであろう。例えば、適切なポリマーとしては、ポリアクリルアミド(PA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシド(PPO))、ポリオキサマー、ポリヒドロキシエチルアクリラート、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノ-エチルメタクリラート、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリルアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルアミド、ポリスルホン化ジビニルベンゼン、ポリ-L-リジン、ポリアスパルタート、ポリ乳酸、ポリエチレンイミン、ポリアルキルシアノアクリラート、ポリアスパルタート、ポリ無水マレイン酸、ポリマレイン酸または前述のいずれかのコポリマーが挙示されるが、これらに限定されない。したがって、カップリングポリマーセグメントを形成するために使用され得る好適なモノマーとしては、アクリルアミド、ビニルアルコール、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド)、ヒドロキシエチルアクリラート、N-イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノ-エチルメタクリラート、ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリルアミド、ビニルエステル、ビニルアミド、スルホン化ジビニルベンゼン、L-リジン、アスパルタート、乳酸、エチレンイミン、アルキルシアノアクリラート、アスパルタート、無水マレイン酸、マレイン酸ならびにそれらの組合せが挙示されるが、これらに限定されない。
【0139】
特定の実施形態では、カップリングポリマーセグメントは、ポリマーセグメント全体を構成する重合モノマー残基単位を約100個未満有し、特定の実施形態では、ポリマーセグメント全体を構成する重合モノマー残基単位を約30個~約80個、または重合モノマー残基単位を約50個~約80個、例えば重合モノマー残基単位を約70個有する。
【0140】
一実施形態において、カップリングポリマーセグメントは、ポリアクリルアミドを含むか、またはポリアクリルアミドから構成される。
【0141】
別の実施形態において、カップリングポリマーセグメントは、約10個~約100個の重合モノマー残基単位を含むか、または約10個~約100個の重合モノマー残基単位から構成される。
【0142】
ポリマーマッピング部分および発光部分の一方または両方のカップリングポリマーセグメントのさらなる実施形態では、カップリングポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの重合モノマー残基単位(more polymerised monomer residue units)を有する。例えば、カップリングポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも少なくとも2個、または少なくとも4個、少なくとも6個、または少なくとも8個、少なくとも10個、または少なくとも12個、または少なくとも14個、または少なくとも16個、または少なくとも18個、または少なくとも20個多い重合モノマー残基単位を有し得る。カップリングポリマーセグメントは、立体安定化ポリマーセグメントよりも約5個~約70個、または約5個~約60個、または約5個~約40個、または約5個~約20個、または約40個~約70個、または約50個~約70個多い重合モノマー残基単位を有し得る。
【0143】
理論によって制限されることを望むものではないが、立体安定化ポリマーセグメントよりも多くの重合モノマー残基単位を有するカップリングポリマーセグメントを提供することは、タンパク質吸着およびその後のマクロファージにおける細胞取り込みが起こりにくい表面環境を形成する上での役割を担うと考えられる。その結果、腫瘍微小環境におけるナノ粒子材料の蓄積を改善すると考えられる。
【0144】
当業者であれば、所与のナノ粒子材料と併用するための立体安定化ポリマーセグメント、固定化ポリマーセグメントおよびカップリングポリマーセグメントの適切な組合せを、これらそれぞれのポリマーセグメントに必要とされる機能を提供するために選択することができるであろう。
【0145】
コポリマーマッピング部分およびコポリマー発光部分はそれぞれ、1個以上のマッピング基または1個以上の発光基をそれぞれ含む。これらのマッピング基および発光基は、一般に、それぞれの部分のカップリングポリマーセグメントに共有結合的にカップリングしている。
【0146】
本明細書に記載の1個以上のマッピング基は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する薬剤を含む。
【0147】
「線維芽細胞活性化タンパク質」すなわち「FAP」は、様々なホルモンおよび細胞外マトリックス成分に作用する細胞表面発現タンパク質分解酵素である。構造的には、FAPは、アミノ酸6個の細胞質尾部、アミノ酸20個の単一膜貫通ドメインおよびアミノ酸734個の細胞外ドメインから構成されている。
【0148】
FAPは成長期に発現され、健常成人組織ではごく稀である。対照的に、FAPは、多種多様ながんにおいて、また、腫瘍微小環境の細胞において高度に上方に調節される。
【0149】
したがって、FAPに特異的に結合する薬剤を含む1個以上のマッピング基は、コーティングされたナノ粒子の投与時に対象における腫瘍関連間質細胞に選択的に結合することができる。適切なマッピング基には、FAPを標的とする、線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤、ペプチド、タンパク質および抗体が挙示される。
【0150】
一実施形態では、薬剤は、低分子阻害剤および抗体からなる群またはその抗原結合性フラグメントから選択される。
【0151】
一実施形態では、薬剤は低分子阻害剤である。別の実施形態において、薬剤はFAP阻害剤である。
【0152】
好適なFAP阻害剤の例としては、下記の構造を有するものが挙示される。
【化1】
【0153】
式中、RおよびRは、同じかまたは異なっており、それぞれ独立して、水素、ハロゲンおよび炭素数1~4のアルキルからなる群から選択され、
【0154】
は、炭素数i~4のアルキル、ニトリルまたはイソニトリルであり、
【0155】
、RおよびRは、同じかまたは異なっており、それぞれ独立して、水素、ハロゲンおよび炭素数1~4のアルキルからなる群から選択される。
【0156】
式中、RおよびRはそれぞれハロゲンである。
【0157】
式中、RおよびRのそれぞれはフッ素である。
【0158】
式中、Rはニトリルである。
【0159】
式中、R、RおよびRのそれぞれは水素である。
【0160】
一実施形態では、薬剤は、抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0161】
他の好適なFAP阻害剤の例としては、国際公開第2013107820号パンフレット、米国特許出願公開第20200330624号明細書、欧州特許出願公開第3763726号明細書および米国特許第7399869号明細書に記載されるものが挙示されるが、これらに限定されない。
【0162】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、標的抗原に特異的に結合するか、または標的抗原と特異的に相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む何らかの抗原結合性分子または分子複合体を意味すると理解される。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含む完全長免疫グロブリン分子ならびにその多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR、VHまたはVと略されることがある)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は通常、3つのドメイン-C1、C2およびC3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVR、VL、VK、VまたはVと略されることがある)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は通常、1つのドメイン(C1)を含む。VおよびV領域はさらに、枠組み構造領域(FR)とも呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各VおよびVは通常、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序、すなわち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDRおよび4つのFRを含む。
【0163】
また、本明細書で使用される場合、「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では、クラスIgG、IgM、IgE、IgA、またはIgD(またはその任意のサブクラス)に属するタンパク質として定義され、すべての従来公知の抗体およびその機能的フラグメントを含む。抗体/免疫グロブリンの「機能的フラグメント」は、抗原結合領域を保持する抗体/免疫グロブリン(例えばIgGの可変領域)の断片として定義される。
【0164】
抗体の「抗原結合領域」または「抗原結合性フラグメント」は通常、抗体の1つ以上の超可変領域、すなわちCDR-1、CDR-2および/またはCDR-3領域に見られる。しかしながら、可変「枠組み構造」領域はまた、CDRのための足場を提供することなどによって、抗原結合において重要な役割を果たすことができる。「機能的フラグメント」には、F(ab’)フラグメント、Fabフラグメント、scFv、または単一免疫グロブリン可変ドメインもしくは単一ドメイン抗体ポリペプチド、例えば単一重鎖可変ドメインもしくは単一軽鎖可変ドメインを含む構築物のドメインが含まれる。F(ab’)またはFabを、CH1ドメインとCドメインとの間に生じる分子間ジスルフィド相互作用を最小化または完全に除去するように遺伝子組換え操作してもよい。
【0165】
1個以上の発光基は、何らかの形態の刺激後に所望の波長の電磁放射線または音響エネルギーを放出するいずれかの化学的実体であり得る。発光基は、化学発光性(例えば、生物発光性)、電界発光性、光ルミネセンス性、放射線ルミネセンス性または熱ルミネセンス性であり得る。特定の実施形態では、発光基は、光子の吸収後に特定の波長の光を放出する光ルミネセンス基である。光ルミネセンス基は、蛍光性または燐光性であり得る。
【0166】
特定の実施形態では、発光基は、シアニン色素の群に属する蛍光基である。適切な蛍光基としては、インドシアニングリーン(ICG;ナトリウム=4-[2-[(1E,3E,5E,7Z)-7-[1,1-ジメチル-3-(4-スルホナトブチル)ベンゾ[e]インドール-2-イリデン]ヘプタ-1,3,5-トリエニル]-1,1-ジメチルベンゾ[e]インドール-3-イウム-3-イル]ブタン-1-スルホナート)、IR染料、例えば、IRdye800、およびスルホシアニン染料、例えば、sulfo-Cy3、sulfo-Cy5およびsulfo-Cy7が挙示される。適切な染料は、例えば、Lumiprobe Corporation社(ハント・バレー、メリーランド州、米国)から市販されている。
【0167】
一実施形態では、発光基は、インドシアニングリーン、sulfo-Cy3、sulfo-Cy5およびsulfo-Cy7から選択される。
【0168】
特定の実施形態では、ナノ粒子材料は、その表面に少なくとも1つのコポリマー立体安定剤および少なくとも1つのコポリマーマッピング部分を結合させている。他の実施形態では、ナノ粒子材料は、その表面に少なくとも1つのコポリマー立体安定剤、少なくとも1つのコポリマー標的化部分および少なくとも1つのコポリマー発光部分を結合させている。
【0169】
本明細書で企図されるように、ナノ粒子材料またはナノ粒子材料を含む組成物は、マッピング、診断および/または治療用途に使用することができる。
【0170】
したがって、一実施形態では、
a.本発明によるナノ粒子材料または組成物を対象に投与するステップと、
b.ナノ粒子材料を検出するステップと、
を含む、対象における腫瘍辺縁をマッピングする方法であって、ナノ粒子材料が腫瘍微小環境に蓄積し、それによって腫瘍辺縁をマッピングする、方法が提供される。
【0171】
本明細書で使用される「マッピング」または「腫瘍マッピング」という用語は、がんの辺縁の決定を指す。一般的に、腫瘍マッピングは、腫瘍の位置および範囲を確証するためにがんの治療を施す前に行われる。
【0172】
本明細書で使用される「腫瘍」および「がん」という用語は、異常な細胞増殖に関連する何らかの状態を意味する。そのような状態は当業者には公知である。一実施形態では、腫瘍は原発腫瘍である。別の実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。
【0173】
一実施形態では、がんは、前立腺がん、多形性グリア芽細胞腫、グリオーマ、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がん、頭頸部がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、肉腫および肺がんから選択される。別の実施形態では、がんは前立腺がんである。
【0174】
一実施形態では、腫瘍をイン・サイチュでマッピングする。腫瘍は、腫瘍組織切除の前または後にイン・サイチュでマッピングされ得る。腫瘍組織切除後に腫瘍がマッピングされるという状況において、腫瘍組織切除によって対象からすべての腫瘍組織が完全に除去されたというわけではないことが、例えば従来の病理学によって、腫瘍組織切除後に確証されることは珍しくないことが理解されよう。本発明によるナノ粒子材料は、従来の病理検査を必要とせずに、すべての腫瘍組織が実際に切除されたことをリアルタイムで確認するために、腫瘍マッピングを腫瘍組織切除後にイン・サイチュで行うことを有利に可能にする。
【0175】
一実施形態では、ナノ粒子材料は、超音波、X線、光学イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および核磁気共鳴画像法(MRI)からなる群から選択される生体内画像診断技術を使用して検出される。
【0176】
別の実施形態では、本方法はさらに、治療を施す前に臨床標的体積(CTV)および/または肉眼的標的体積(GTV)を決定することを含む。
【0177】
「肉眼的腫瘍体積」すなわち「GTV」は、肉眼的腫瘍の位置および範囲、すなわち、視認され、触診され、または撮像され得る腫瘍塊を指す。
【0178】
「臨床標的体積」すなわち「CTV」は、GTV+亜臨床的疾患拡散に対する辺縁を含む腫瘍体積を指す。治癒を達成するためにCTVを十分に治療する必要があることが当技術分野では一般的に認められている。
【0179】
CTVおよびGTVを計算するための方法は当業者に公知であり、その例示的な例には、Burnetらによって記載された方法が含まれる。(2004,Cancer Imaging,4(2):153-161)。
【0180】
本明細書に開示される別の態様では、がんの治療を必要とする対象におけるがんの治療のための方法であって、
a.本発明によるナノ粒子材料または組成物を対象に投与するステップと、
b.ナノ粒子材料が蓄積する対象の部位を検出するステップと、
c.ステップ(b)において検出されたナノ粒子材料の部位において前記がんに対する有効量の治療を投与するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0181】
がんの治療のための治療計画は、当業者によって決定することができ、一般的には、対象の年齢、体重および全般的な健康状態に加えて、腫瘍のタイプ、サイズ、ステージおよび受容体状態を含むがこれらに限定されない因子に依存する。別の決定因子は、再発性疾患を発症するリスクであり得る。例えば、再発性疾患を発症するリスクが高いもしくはリスクが比較的高いまたは発症していると特定された対象について、再発性疾患を発症するリスクが低いもしくはリスクが比較的低いと考えられる対象と比較して、より積極的な治療計画が処方されることがある。同様に、より進行したステージのがん、例えばステージIIIまたはIV疾患を有すると同定された対象について、あまり進行していないステージのがんを有する対象と比較して、より積極的な治療計画が処方されることがある。
【0182】
本明細書で使用される「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療すること(treating)」という用語は、どんなものであれ何らかの方法においても、がんまたは他の望ましくない症状の状態または症状を治療するか、あるいは発症または進行を何らかの形で予防、阻害、遅延、抑止または逆転させるあらゆるすべての用法を指す。したがって、「治療すること」などの用語は、可能な限りそれらの最も広い意味で考慮すべきである。例えば、治療は、完全に回復または治癒するまで対象を治療することを必ずしも意味しない。複数の症状を示すかまたは複数の症状を特徴とする状態では、治療は必ずしも前記症状のすべてを治療、予防、阻害、遅延、抑止または逆転するとは限らないが、前記症状のうちの1つ以上を治療、予防、阻害、遅延、抑止または逆転することができる。
【0183】
がんが治療される対象は、ヒトまたはヒトにとって経済的重要性および/または社会的重要性を有する哺乳動物、例えば、ヒト以外の肉食動物(例えば、ネコおよびイヌ)、ブタ(例えば、豚、成豚およびイノシシ)、反芻動物(例えば、ウシ、雄牛、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソンおよびラクダ)、ウマ、ならびに鳥類、例えば、絶滅危惧種の鳥類、動物園にいる鳥類および野禽を含む鳥類、より具体的には、それらもまた人間にとって経済的に重要であるため、飼育されている鳥類、例えば、シチメンチョウ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロチョウなどの家禽であり得る。「対象」という用語は、特定の年齢を示すものではない。したがって、成体、幼若および新生の対象を包含することが意図されている。
【0184】
「対象」、「個体」および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、本開示が適用可能であり得る任意の対象を指す。一実施形態では、対象は哺乳動物である。別の実施形態では、対象はヒトである。
【0185】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、がんの治療を必要とする対象、特にヒトなどの哺乳動物に投与または適用される、がんを治療するのに十分な治療の量または程度を意味する。投与または適用される治療の正確な量は、対象の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の範囲および状態の個体差を考慮して医師が決定することができる。
【0186】
一実施形態では、治療は、外科手術、放射線療法、密封小線源療法、光線力学的療法、光温熱療法、(冷凍アブレーション、焦点レーザーアブレーションおよび高周波数超音波アブレーションなどの)フォーカルアブレーション療法、化学療法、免疫療法およびそれらの組合せから選択される。
【0187】
一実施形態では、本方法はさらに、治療を施す前にCTVおよび/またはGTVを決定することを含む。
【0188】
本明細書に開示される別の態様では、
a.本発明によるナノ粒子材料または組成物を対象に投与するステップと、
b.対象におけるナノ粒子材料を検出するステップと、
を含む、がんを診断するための方法であって、対象の組織(血管組織など)中に蓄積したナノ粒子材料の検出が、対象ががんを有することを示す、方法が提供される。
【0189】
一実施形態では、対象の血管組織中に蓄積したナノ粒子材料の検出は、対象ががんを有することを示す。
【0190】
本発明は、マッピング、診断および/または治療用途に使用するための対象への投与に適した組成物であって、薬理学的に許容される液体担体中に分散した本発明によるナノ粒子材料を含む組成物を提供する。
【0191】
重量比%基準で、ナノ粒子材料は、その表面に様々な範囲のコポリマー立体安定剤およびコポリマーマッピング部分を結合させることができる。例えば、ナノ粒子材料は、その表面にコポリマー立体安定剤を10%~90%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を90%~10%(重量比)結合させることができる。特定の実施形態では、ナノ粒子材料は、その表面に、コポリマー立体安定剤を10%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を90%(重量比)、コポリマー立体安定剤を15%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を85%(重量比)、コポリマー立体安定剤を20%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を80%(重量比)、コポリマー立体安定剤を25%(重量比)およびポリマーマッピング部分を75%(重量比)、コポリマー立体安定剤を30%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を70%(重量比)、コポリマー立体安定剤を35%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を65%(重量比)、コポリマー立体安定剤を40%(重量比)およびポリマーマッピング部分を60%(重量比)、コポリマー立体安定剤を45%(重量比)およびポリマーマッピング部分を55%(重量比)、コポリマー立体安定剤を50%(重量比)およびポリマーマッピング部分を50%(重量比)、コポリマー立体安定剤を55%(重量比)およびポリマーマッピング部分を45%(重量比)、コポリマー立体安定剤を60%(重量比)およびポリマーマッピング部分を40%(重量比)、コポリマー立体安定剤を65%(重量比)およびポリマーマッピング部分を35%(重量比)、コポリマー立体安定剤を70%(重量比)およびポリマーマッピング部分を30%(重量比)、コポリマー立体安定剤を75%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を25%(重量比)、コポリマー立体安定剤を80%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を20%(重量比)、コポリマー立体安定剤を85%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を15%(重量比)、またはコポリマー立体安定剤を90%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を10%(重量比)結合させることができる。特定の特定の実施形態では、ナノ粒子材料は、その表面にコポリマー立体安定剤を70%(重量比)およびコポリマーマッピング部分を30%(重量比)結合させることができる。
【0192】
当業者であれば、本発明によるナノ粒子材料が、液体担体中に分散されたときに流体力学的直径を示すことを理解するであろう。流体力学的直径とは、ナノ粒子材料自体ならびにナノ粒子に会合または結合した少なくともコポリマー立体安定剤およびマッピング部分に由来する距離またはサイズである。したがって、分散ナノ粒子材料の流体力学的直径は、ナノ粒子材料自体と少なくともコポリマー立体安定剤およびマッピング部分との組合せによって得られる直径を表すことが分かる。分散ナノ粒子材料が対称的な形状を有さない場合、流体力学的直径は、分散ナノ粒子材料が提示する最大の流体力学的直径のものであると考えられる。
【0193】
一実施形態では、分散ナノ粒子材料の流体力学的直径は、約300nm未満、約250nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約25nm未満または約15nm未満である。
【0194】
さらなる実施形態では、分散ナノ粒子材料の流体力学的直径はおおよそ、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300nmである。
【0195】
誤解を避けるために記すと、本明細書における、分散ナノ粒子材料の「流体力学的直径」への言及は、分散したコーティングされたナノ粒子(個数基準で少なくとも約50%)の平均直径を示すことを意図している。分散したコーティングされたナノ粒子の流体力学的直径は、本明細書では動的光散乱法(DLS)によって決定される。
【0196】
本発明によるナノ粒子材料または組成物は、超音波、X線、光学イメージング、コンピュータ断層撮影(CT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)、陽電子放出断層撮影(PET)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)および核磁気共鳴画像法(MRI)を含むがこれらに限定されない生体内画像診断技術と組み合わせて使用することができる。
【0197】
1つの適用では、ナノ粒子材料は、FAP標的化基(例えば阻害剤)を含み、それらを含む組成物は、例えば、前立腺がん、グリア芽細胞腫、膵臓がん、結腸直腸がん、乳がんならびに肺がんなどの固形腫瘍に関連する腫瘍微小環境(例えば、腫瘍関連間質細胞およびがん細胞)内の細胞などのFAPを発現している細胞の検出を可能にする。腫瘍微小環境の細胞によって発現されるFAPに特異的に結合することによって、ナノ粒子材料は、がんに冒された組織の境界および辺縁の同定(すなわち、腫瘍マッピング)に有用である。また、ナノ粒子材料および組成物は、がんの検出(すなわち、診断)またはがんの治療の一部として有用であり得ることも本明細書において企図される。例えば、ナノ粒子材料は、フォーカルセラピー、放射線療法、陽子線療法または密封小線源療法などの治療の開始前に腫瘍マッピングに使用することができる。さらに、腫瘍微小環境の領域を含めて腫瘍を正確にマッピングすることにより、腫瘍の外科的切除をより正確に行うことができ、望ましくない副作用を制限し、腫瘍塊の準最適減量手術(suboptimal debulking)のリスクを最小限に抑えることができる。
【0198】
特に明記しない限り、本明細書で使用される「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、I、Br、ClおよびFを指す。
【0199】
本明細書では、「アルケニルオキシアルキル」、「アルキルチオ」、「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」などの複合語において、または単独で使用される「アルキル」という用語は、直鎖、分岐または環状アルキル、好ましくは炭素数1~20のアルキルまたはシクロアルキルを示す。直鎖および分岐アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、イソアミル、sec-アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、ヘプチル、5-メトキシヘキシル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、オクチル、6-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ノニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7-メチル-オクチル、1-、2-、3-、4-または5-エチルヘプチル、1-、2-または3-プロピルヘキシル、デシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-および8-メチルノニル、1-、2-、3-、4-、5-または6-エチルオクチル、1-、2-、3-または4-プロピルヘプチル、ウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-メチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7-エチルノニル、1-、2-、3-、4-または5-プロピルオクチル、1-、2-または3-ブチルヘプチル、1-ペンチルヘキシル、ドデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-または10-メチルウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-エチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-または6-プロピルノニル、1-、2-、3-または4-ブチルオクチル、1-2-ペンチルヘプチルなどが挙示される。環状アルキルの例としては、単環式または多環式アルキル基、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどが挙示される。
【実施例
【0200】
実施例1:磁性ナノ粒子の合成
パート(a):共沈法を用いて、大きな磁赤鉄鉱粒子を生成した。典型的な反応では、FeCl・4HO(20g)およびFeCl・6HO(27g)を0.4MのHCl(500mL)に溶解した。オーバーヘッド撹拌機で撹拌しながらアンモニア溶液(3M、500mL)を鉄塩溶液に加えた。形成された黒色磁鉄鉱ナノ粒子を磁気的に分離し、ミリQ水で洗浄した。次いで、(1M硝酸中0.34Mの)硝酸鉄(III)200mLの中で磁鉄鉱ナノ粒子を100℃で1時間加熱することによって磁赤鉄鉱に酸化した。形成された褐色磁赤鉄鉱ナノ粒子を磁気的に分離し、ミリQ水で洗浄した。粒子をミリQ水中に分散させ、14,000kDaの分子量カットオフ透析チューブを使用してミリQ水中で2~3日間透析して不純物を除去した。粒子を透過型電子顕微鏡によって解析したところ、16.8±3.3nmの平均直径を有することが分かった。
【0201】
パート(b):共沈法を用いて、微小磁赤鉄鉱粒子を生成した。典型的な反応では、FeCl・4HO(1.46g)およびFeCl・6HO(2.7g)を0.4MのHCl(50mL)に溶解した。オーバーヘッド撹拌機で撹拌しながら、シリンジポンプを用いてアンモニア溶液(3M、50mL)を鉄塩溶液に加えた。形成された黒色磁鉄鉱ナノ粒子を磁気的に分離し、ミリQ水で洗浄した。次いで、(1M硝酸中0.34Mの)硝酸鉄(III)20mLを用いて、撹拌しながら100℃で1時間かけて粒子を磁赤鉄鉱に酸化した。得られた褐色磁赤鉄鉱ナノ粒子を磁気的に分離し、ミリQ水で洗浄した。粒子をミリQ水中に分散させ、14,000kDaの分子量カットオフ透析チューブを使用してミリQ水中で透析して不純物を除去した。粒子を透過型電子顕微鏡によって解析したところ、12.4±3.2nmの平均直径を有することが分かった。粒子のZ平均直径をDLSによって測定したところ、44.5nmであることが分かった。
【0202】
パート(c):共沈法を用いて磁鉄鉱粒子を製造した。典型的な反応では、FeCl・4HO(1.46g)およびFeCl・6HO(2.7g)を2MのHCl(10mL)およびミリQ水(40mL)に溶解した。オーバーヘッド撹拌機で撹拌しながらシリンジポンプを用いて、アンモニア溶液(3M、50mL)を鉄塩溶液に加えた。形成された黒色磁鉄鉱ナノ粒子を磁気的に分離し、最終的な粒子分散液のpHが8.2に達するまでミリQ水(50mL)で5回洗浄した。粒子を透過型電子顕微鏡によって解析したところ、12.7±3.3nmの平均直径を有することが分かった。
【0203】
実施例2(比較例):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-(Glu-CO-Lys)ポリマーPSMA標的化部分およびポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)ポリマー立体安定剤が結合した磁性ナノ粒子(PSMA標的化ナノ粒子)の合成
パート(a):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70の合成
【0204】
2-(((ブチルチオ)カルボノチオイル)-チオ)-プロパン酸(0.5g)、アクリルアミド(10.4g)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)、ジオキサン(20g)および水(30g)を丸底フラスコ中で合わせた。混合物を窒素ガスでパージした後、70℃で3時間反応させた。溶液を室温に放冷し、[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸(2.0g)および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)を添加した。反応混合物を窒素ガスでパージし、4時間70℃に加熱した。得られたポリマーをアセトン中に沈殿させ、真空濾過によって回収した。ポリマーを水に溶解し、アセトンに沈殿させ、40℃の真空オーブン中で24時間乾燥させることによって再精製した。
【0205】
パート(b):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-(Glu-CO-Lys)の合成
【0206】
Glu-CO-Lysの調製。トリフルオロ酢酸(TFA)を20%含むジクロロメタン(DCM)にGlu-CO-Lys-(t-Bu)エステル40mgを溶解して、20mg/mLの濃度を得た。混合物に窒素ガスを室温で2時間バブリングした後、溶媒を真空中で除去した。残留物を20%酢酸水溶液2mLに溶解し、混合物をクロロホルムで3回洗浄し、高真空下で濃縮乾固して、脱保護Glu-CO-Lysを得た。生成物を氷酢酸に溶解し、凍結乾燥し、さらなる使用まで4℃で保存した。
【0207】
Glu-CO-Lysのポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70へのコンジュゲーション。パート(a)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70(250mg)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl、60mg)およびN-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS、12mg)をMES緩衝液(100mM、pH5.5~6.0)8mLに溶解した。混合物を超音波浴中で10分間超音波処理した後、アセトン10mL中でNHS活性化ポリマーを沈殿させた。3000×gで5分間の遠心分離によって沈殿物を回収した。Glu-CO-Lys(20mg)を10倍濃度のPBS緩衝液に溶解し、NHS活性化ポリマーに添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。Gly-CO-Lysコンジュゲートポリマーを、3kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して精製し、水で3回洗浄した。生成物を最終濃度50mg/mLに希釈し、さらなる使用のために4℃で保存した。
【0208】
パート(c):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)の合成
【0209】
丸底フラスコ中で、アクリルアミド(2.8g)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)、メトキシトリエチレングリコール変性2-{[ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸(1.0g)、ジオキサン(10g)および水(10g)の溶液を調製した。混合物を窒素ガスで15分間パージし、次いで、撹拌しながら2時間70℃に加熱した。混合物を室温に放冷し、[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸(2.6g)および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.050g)を添加した。反応混合物を窒素ガスで15分間パージし、4時間70℃に加熱した。得られたポリマーをアセトン中に沈殿させ、真空濾過によって回収した。ポリマーを水に溶解し、アセトンに沈殿させ、40℃の真空オーブン中で24時間乾燥させることによって再精製した。このポリマーの化学構造を図2に示す。
【0210】
パート(d):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-(Glu-CO-Lys)30%とポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)70%との混合物を使用した粒子安定化
【0211】
パート(c)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)(36mg)およびパート(b)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-(Glu-CO-Lys)(40mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いてpHを4に調整した。実施例1
【0212】
の磁性粒子(固形分7重量%、1g)を超音波処理中のポリマー混合物に添加した。10分後にpHを5.5に調整し、次いでさらに10分間超音波処理した後に7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、100kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、30mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0213】
懸濁媒質としての0.9%生理食塩水中の分散ナノ粒子をDLSによって測定したところ、z平均は64.2nmであった。粒子サイズの強度分布を図3に示す。
【0214】
実施例3:ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-FAPIコポリマーマッピング部分およびポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤が結合した磁性ナノ粒子(FAPマッピングナノ粒子)の合成。
パート(a):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-FAPIの合成。
【0215】
実施例2-パート(a)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70(50mg)、EDC・HCl(12mg)およびNHS(3mg)をMES緩衝液(100mM、pH5.5~6.0)2mLに溶解した。溶液を超音波浴中で10分間超音波処理した後、アセトン6mL中にNHS活性化ポリマーを沈殿させた。3000×gで5分間の遠心分離によって沈殿物を回収した。FAPI(3mg)をDMSO(50μL)に溶解し、10倍濃度のPBS緩衝液でさらに総体積2mLに希釈した後、NHS活性化ポリアクリルアミドポリマーに添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。FAPIコンジュゲートポリマーを、3kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して精製し、水で3回洗浄した。生成物を最終濃度50mg/mLに希釈し、さらなる使用のために4℃で保存した。このポリマーの化学構造を図4に示す。
【0216】
パート(b):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-FAPIコポリマーマッピング部分30%とポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤70%との混合物を使用した粒子安定化
【0217】
実施例2-パート(c)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)18mgおよびパート(a)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70-FAPI(20mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いて、pHを4に調整した。ポリマー混合物を実施例1パート(a)の磁性粒子(35mg)に超音波処理しつつ添加した。10分後にpHを5.5に調整し、次いでさらに10分間超音波処理した後に7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、100kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、30mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0218】
懸濁媒質としての0.9%生理食塩水中の分散ナノ粒子をDLSによって測定したところ、z平均は59.7nmであった。粒子サイズの強度分布を図5に示す。
【0219】
パート(c):ポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70コポリマー非標的化部分30%とポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤70%との混合物を用いる、対照として使用した非標的化粒子(非標的化ナノ粒子)の粒子安定化。
【0220】
実施例2パート(c)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)15-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)18mgと、実施例2パート(a)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)70(20mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いて、pHを4に調整した。ポリマー混合物を実施例1パート(a)の磁性粒子(35mg)に超音波処理しつつ添加した。10分後にpHを5.5に調整し、次いでさらに10分間超音波処理した後に7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、100kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、30mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0221】
実施例4:前立腺腫瘍の描写のためのトレーサを使用した動物試験
6~8週齢の雄のNODscidガンママウスに、ヒト前立腺がん細胞(LNCaP)を前立腺に直接注射した。4週間~6週間の腫瘍成長の後、マウスに、(実施例2-パート(d)および実施例3-パート(b)でそれぞれ調製した)PSMAもしくはFAP標的化部分を有する磁性ナノ粒子、または(実施例3-パート(c)で調製した)標的化部分を有しない磁性ナノ粒子の15mg/mlを40mg/kgで尾静脈に注射した。注射の24時間後、マウスを解体し、組織を分析のために回収した。切除した前立腺腫瘍を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、2mMのガドペンテト酸ジメグルミンを含む1%寒天ゲルにマウントし、シーメンス社の3.0T装置を使用してT2強調MRIを行った(図6)。腫瘍の平均シグナル強度の分析によって、マッピング部分を有しないナノ粒子と比較して、FAPマッピングナノ粒子がコントラストを71%増加させることが示された。PSMA標的化ナノ粒子は、標的化部分を有しないナノ粒子と比較して、コントラストを18%しか増加させなかった。
【0222】
10%中性緩衝ホルマリンで固定した切除前立腺腫瘍をパラフィンブロックにマウントした。厚さ5μmの切片を切り出し、プルシアンブルーで染色して、(図7に5倍の倍率で暗青染色によって示される)鉄ナノ粒子の存在を可視化した。PSMA標的化ナノ粒子またはFAPマッピングナノ粒子を注射したマウスは、鉄に対する染色が増加を示し、マッピング/標的化部分を含まないナノ粒子を注射したマウスが最小限の染色を示したのとは対照的であった。目視検査では、FAPマッピング粒子を注射したマウスの腫瘍は、鉄染色の増加を示し、PSMA標的化ナノ粒子とは対照的であった。FAPマッピングナノ粒子が特に腫瘍の境界付近および脈管構造に沿って取り込まれたことが観察された。
【0223】
24時間のナノ粒子取り込み期間後、マウスにペントバルビタールを腹腔内に注射し、10%中性緩衝ホルマリンで固定して経心腔的灌流した。固定マウス全体を、ブルカー社の14.1Tシステムを用いるT2強調MRIスキャンで検査した(図6)。FAPまたはPSMAベースのナノ粒子が注射されたマウスの腫瘍は、前立腺腫瘍、特に腫瘍周辺において低信号域/陰性コントラストの増加を示した(図8、白色矢印で示される腫瘍)。
【0224】
実施例5:実施例1のパート(b)からの微小磁赤鉄鉱コア粒子を用いる、短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPIコポリマーマッピング部分および短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤が結合した磁赤鉄鉱ナノ粒子(微小磁赤鉄鉱FAPマッピングナノ粒子)の合成。
パート(a):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30の合成
【0225】
2-(((ブチルチオ)カルボノチオイル)-チオ)-プロパン酸(0.2g)、アクリルアミド(1.8g)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.020g)、ジオキサン(3.6mL)および水(4mL)を丸底フラスコ中で合わせた。混合物を窒素ガスでパージした後、70℃で2.5時間反応させた。溶液を室温に放冷し、[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸(0.489g)および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.020g)を添加した。反応混合物を窒素ガスでパージし、2.5時間70℃に加熱した。得られたポリマーをアセトン中で沈殿させ、遠心分離によって回収した。ポリマーを水に溶解し、アセトンに沈殿させ、真空下で48時間乾燥させることによって再精製した。
【0226】
パート(b):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPIの合成
【0227】
パート(a)のポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30(150mg)、EDC・HCl(72mg)およびNHS(18mg)をMES緩衝液(100mM、pH5.5~6.0)8mLに溶解した。溶液を超音波浴中で10分間超音波処理した後、1kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して活性化溶液を除去した。FAPI(18mg)をDMSO(50μL)に溶解し、さらに10倍濃度のPBS緩衝液で総体積8mLに希釈した後、NHS活性化ポリアクリルアミドポリマーに添加した。反応混合物を室温で20時間撹拌した。短いFAPIコンジュゲートポリマーを、1kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して精製し、水で3回洗浄した。生成物を最終濃度50mg/mLに希釈し、さらなる使用のために4℃で保存した。このポリマーの化学構造を図9に示す。
【0228】
パート(c):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)の合成
【0229】
丸底フラスコ中で、アクリルアミド(0.93g)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.030g)、メトキシトリエチレングリコール変性2-{[ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸(0.5g)、ジオキサン(7mL)および水(4mL)の溶液を調製した。混合物を窒素ガスで15分間パージした後、撹拌しながら1.5時間70℃に加熱した。混合物を室温に放冷し、[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸(1.2g)および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.030g)を添加した。反応混合物を窒素ガスで15分間パージし、2時間70℃に加熱した。得られたポリマーをアセトン中で沈殿させ、遠心分離によって回収した。ポリマーを真空内で48時間かけて乾燥させた。このポリマーの化学構造を図10に示す。
【0230】
パート(d):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPIコポリマーマッピング部分30%と短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤70%との混合物を使用した磁赤鉄鉱ナノ粒子(トレーサ1、30%FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子)の安定化
【0231】
パート(c)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)44mgおよびパート(b)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPI(50mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いて、pHを4に調整した。ポリマー混合物を実施例1パート(b)の(30mg/mL)水中磁性粒子60mgに超音波処理しつつ添加した。10分後にpHを5.5に調整し、次いでさらに10分間超音波処理した後に7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、10kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子(トレーサ1)を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、20mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0232】
パート(e):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPIポリマーマッピング部分100%を使用した磁赤鉄鉱ナノ粒子(トレーサ2、100%FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子)の安定化。
【0233】
パート(c)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPI(50mg)を水で総体積2mLに希釈した。pHを測定したところ、6.9であった。ポリマーを実施例1パート(b)の(30mg/mL)水中磁性粒子30mgに超音波処理しつつ添加した。超音波処理工程後にpHを測定すると、5.8であった。その後、NaOH(0.1M)を用いて、超音波処理しつつpHを7.0に調整した。超音波処理を合計20分間継続した後、10kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子(トレーサ2)を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、20mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0234】
パート(f):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30コポリマー非標的化部分30%と短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤70%との混合物を用いた、対照として使用した非標的化磁赤鉄鉱ナノ粒子(トレーサ3、非標的化磁赤鉄鉱ナノ粒子)の安定化。
【0235】
パート(c)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)44mgおよびパート(a)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30(50mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いて、pHを4に調整した。ポリマー混合物を実施例1パート(b)の(30mg/mL)水中磁性粒子60mgに超音波処理しつつ添加した。10分後にpHを5.5に調整し、次いでさらに10分間超音波処理した後に7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、10kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子(トレーサ3)を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、20mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0236】
実施例6:微小FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子のFAPに対する結合のインビトロ試験
実施例5のパート(d)、(e)および(f)それぞれの30%FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子(トレーサ1)、100%FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子(トレーサ2)および非標的化磁赤鉄鉱ナノ粒子(トレーサ3)の線維芽細胞活性化タンパク質に対する結合親和性を、FAP発現メラノーマ細胞株C32におけるそれらの細胞取り込みを比較することによってインビトロで評価した。T75細胞培養フラスコ中で、ウシ胎児血清(FBS)10%およびペニシリン-ストレプトマイシン1%を追加したRPMI培地でC32細胞を培養し、37℃、CO5%インキュベーター内に保った。コンフルエンスが70~80%に達したら、細胞を継代した。細胞取り込みを測定し、ナノ粒子の結合親和性を試験するために、C32細胞を6ウェルプレートに3×10細胞/ウェルの密度で上記の完全細胞培養培地中に播種した。37℃、CO5%インキュベーター内にプレートを載置し、24時間付着させた。
【0237】
すべてのナノ粒子は、ペニシリン-ストレプトマイシン1%のみを追加した細胞培養培地中、0.150mgFe・mL-1の濃度で調製した。増殖細胞培養培地をプレートから除去し、トレーサ分散液と交換した。3つのレプリカを使用して各トレーサを試験した。C32細胞は、トレーサ分散液と共に37℃、CO5%インキュベーターにおいて24時間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシンを使用して剥離し、500×gで5分間遠心分離することで細胞ペレットを回収した。細胞ペレットをPBSでさらに2回洗浄し、最後に加熱ブロックを使用して60℃で一晩乾燥させた。乾燥した細胞ペレットを微量金属グレードの硝酸および塩酸(体積比1:1)で消化させ、試料を水で希釈して総体積を3mLにした。鉄濃度は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いて測定した。その結果から、図11に示されるように、C32細胞における細胞取り込みは、トレーサ1(30%FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子)やトレーサ2(100%FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子)よりも、トレーサ3(非標的化磁赤鉄鉱ナノ粒子)の方がはるかに少ないことが示された。
【0238】
実施例7:血清の存在下または非存在下における、微小コポリマーFAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子と単一ポリマー微小FAPマッピング磁赤鉄鉱ナノ粒子とを対比した結合活性のインビトロ試験
実施例5のパート(d)および(e)それぞれの30%FAPマッピング(トレーサ1)、100%FAPマッピング(トレーサ2)の線維芽細胞活性化タンパク質に対する結合活性を、それらのFAP発現メラノーマ細胞株C32への細胞取り込みを細胞増殖培地内の血清(FBS)の存在下または非存在下において比較することによってインビトロで評価した。C32細胞を実施例6に記載されるように培養した。C32細胞を、6ウェルプレートに3×10細胞/ウェルの密度で完全細胞培養培地中に播種した。37℃、CO5%インキュベーター内にプレートを載置し、24時間付着させた。
【0239】
24時間後、完全細胞培養培地を6ウェルプレートのうちの1つから除去し、ペニシリン-ストレプトマイシン1%のみを追加した培地と交換した。残りの6ウェルプレート中の細胞培養培地を除去し、ペニシリン-ストレプトマイシン1%およびFBS10%を追加した培地と交換した。実施例5のパート(d)および(e)のナノ粒子を、0.150mgFe・mL-1の最終濃度になるまで各ウェルに添加した。C32細胞は、トレーサ分散液と共に37℃、CO5%インキュベーターにおいて24時間インキュベートした。PBSで細胞を2回洗浄し、トリプシンを使用して剥離し、500×gで5分間遠心分離することで細胞ペレットを回収した。細胞ペレットをPBSでさらに2回洗浄し、最後に加熱ブロックを使用して60℃で一晩乾燥させた。乾燥した細胞ペレットを微量金属グレードの硝酸および塩酸(体積比1:1)で消化させ、試料を水で希釈して総体積を3mLにした。鉄濃度は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いて測定した。取得したデータを解析し、独立標本T検定を用いて有意性を検定した。図12に示される結果から、両方のトレーサについて、FBSの非存在下における結合よりも、FBSの存在下における結合の方が大幅に低下したことが示される。ただし、トレーサ1(30%FAPマッピングナノ粒子)の結合低下率は55%であり、トレーサ2(100%FAPマッピングナノ粒子)の結合低下率の63%よりも統計的に有意に小さかった(p<0.01)。FBSの非存在下での取り込みではトレーサ1とトレーサ2には有意差が認められなかった(p>0.05)。
【0240】
実施例8:実施例1のパート(c)からの微小磁鉄鉱コア粒子を使用した、短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPIコポリマーマッピング部分および短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤が結合した磁鉄鉱ナノ粒子(微小磁鉄鉱FAPマッピングナノ粒子)の合成。
パート(a):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPIコポリマーマッピング部分30%と短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤70%との混合物を使用した磁鉄鉱ナノ粒子(トレーサ4、FAPマッピング磁鉄鉱ナノ粒子30%)の安定化。
【0241】
実施例5パート(c)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)44mgおよび実施例5パート(b)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30-FAPI(50mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いて、pHを4に調整した。ポリマー混合物を、10分間の超音波処理中に、実施例1のパート(c)の(25mg/mL)水中磁性粒子50mgに添加した。ポリマー混合物を添加する前にナノ粒子のpHを測定したところ、7.8であった。超音波処理工程後にpHを測定すると、5.4であった。その後、NaOH(0.1M)を用い、超音波処理しつつpHを6.0および7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、10kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子(トレーサ4)を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、20mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0242】
パート(b):短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30コポリマー非標的化部分30%と短いポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)コポリマー立体安定剤70%との混合物を用いた、対照として使用した非標的化粒子用の磁鉄鉱ナノ粒子(トレーサ5、非標的化磁鉄鉱ナノ粒子)の安定化。
【0243】
実施例5パート(c)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)10-block-(トリエチレングリコールモノメチルエーテル)44mgおよび実施例5パート(a)で調製したポリ{[2-(メタクリロイルオキシ)-エチル]ホスホン酸}-block-ポリ(アクリルアミド)30(50mg)を水2mLに溶解した。NaOH(0.1M)を用いて、pHを4に調整した。ポリマー混合物を実施例1パート(c)の(30mg/mL)水中磁性粒子50mgに超音波処理しつつ添加した。ポリマー混合物を添加する前に、ナノ粒子のpHを測定したところ、7.8であった。超音波処理工程後にpHを測定すると、5.4であった。その後、NaOH(0.1M)を用い、超音波処理しつつpHを6.0および7.0に調整した。超音波処理を合計30分間継続した後、10kDaの分子量カットオフ膜を有する遠心フィルターを使用して未結合ポリマーを除去した。コーティングされたナノ粒子(トレーサ5)を水で3回洗浄し、生理食塩水で希釈して、20mgFe/mLの等張分散液を得た。
【0244】
実施例7:微小FAPマッピング磁鉄鉱ナノ粒子のFAPに対する結合のインビトロ試験。
30%FAPマッピング磁鉄鉱ナノ粒子(トレーサ4)に対する実施例8パート(a)および(b)の非標的化磁鉄鉱ナノ粒子(トレーサ5)の線維芽細胞活性化タンパク質への結合親和性を、それらの細胞のFAP発現メラノーマ細胞株C32における取り込みを比較することによってインビトロで評価した。C32細胞を実施例6に記載されるように培養した。細胞取り込みを測定し、ナノ粒子の結合親和性を試験するために、C32細胞を6ウェルプレートに3×10細胞/ウェルの密度で上記の完全細胞培養培地中に播種した。37℃、CO5%インキュベーター内にプレートを載置し、24時間付着させた。
【0245】
すべてのナノ粒子を、ペニシリン-ストレプトマイシン1%およびFBS10%を追加した細胞培養培地において0.150mgFe・mL-1の濃度で調製した。細胞培養培地をプレートから除去し、トレーサ分散液と交換した。4つのレプリカを使用して各トレーサを試験した。C32細胞は、トレーサ分散液と共に37℃、CO5%インキュベーターにおいて24時間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、トリプシンを使用して剥離し、500×gで5分間遠心分離することで細胞ペレットを回収した。細胞ペレットをPBSでさらに2回洗浄し、最後に加熱ブロックを使用して60℃で一晩乾燥させた。乾燥した細胞ペレットを微量金属グレードの硝酸および塩酸(体積比1:1)で消化させ、試料を水で希釈して総体積を3mLにした。鉄濃度は誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を用いて測定した。この結果から、図13に示されるように、C32細胞における細胞取り込みは、トレーサ5(非標的化磁鉄鉱ナノ粒子)の方がトレーサ4(30%FAPマッピング磁鉄鉱ナノ粒子)よりもはるかに少ないことが示された。
【0246】
本開示は、その使用において記載された特定の用途に限定されないことが当業者には理解されよう。本開示はまた、その好ましい実施形態において本明細書に記載または描写された特定の要素および/または特徴に関して制限されない。本開示は、開示された1つまたは複数の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって記載および定義される本開示の範囲から逸脱することなく、多数の再構成、変更および置換えが可能であることが理解されよう。
【0247】
以下の明細書および特許請求の範囲全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「含む(comprise)」および「含む(include)」という用語および「含む(comprising)」および「含む(including)」などの変化形は、記載された整数または整数群の包含を意味するが、他の整数または整数群の排除を意味しないと理解される。
【0248】
本明細書におけるいずれかの先行技術への言及は、そのような先行技術が共通の一般知識の一部を形成することを示唆する何らかの形態の承認ではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0249】
なお、以下の特許請求の範囲は、仮特許請求の範囲のみであり、可能性のある特許請求の範囲の一例として提示しており、本出願に基づく将来の特許出願において特許請求され得る範囲を限定することを意図するものではない。本発明をさらに定義または再定義するために、後日、例示的な特許請求の範囲に整数を追加または省略することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】