(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】組織のマイクロ波治療
(51)【国際特許分類】
A61K 41/00 20200101AFI20240426BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240426BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240426BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240426BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K41/00
C12N1/00 Z
C12N5/071
A61P43/00 111
A61P17/00
A61B18/18 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572210
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 GB2022051280
(87)【国際公開番号】W WO2022243702
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512129882
【氏名又は名称】エンブレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EMBLATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ビール、 ゲリー
(72)【発明者】
【氏名】マカリーン、 エイモン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ、 シャイレッシュ
(72)【発明者】
【氏名】キッド、 マシュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C160
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BD50
4B065CA44
4C084AA11
4C084MA70
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZC02
4C160JK01
(57)【要約】
本開示は、マイクロ波エネルギーを使用して特定の遺伝子の発現を調節、例えば上方または下方制御し得るという発見に基づいている。例えば、疾患または状態が特定の1つまたは複数の遺伝子の異常な発現と関連している場合、マイクロ波エネルギーを使用してそれらの遺伝子の発現を調節し、それによって疾患または状態の1つ以上の症状を解消および/または改善し得る。1つ以上の遺伝子の発現を調節する方法に使用されるためのマイクロ波システムまたはマイクロ波発生装置が開示される。組織、組織サンプルおよび生検における1つ以上の遺伝子の発現を調節するためのマイクロ波エネルギーの使用も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の遺伝子の発現を調節するための、マイクロ波エネルギーまたはマイクロ波システムもしくはマイクロ波発生装置の使用。
【請求項2】
前記マイクロ波システムもしくはマイクロ波発生装置が、
マイクロ波発生器;
選択された動作周波数または周波数範囲を持つマイクロ波エネルギーを発生するように前記マイクロ波発生器を制御するように構成されたコントローラ;
マイクロ波エネルギー導管ケーブルであって、前記マイクロ波エネルギー導管ケーブルの遠位端から延在するまたは前記遠位端に結合されたマイクロ波アンテナにマイクロ波エネルギーを送達するように構成されたマイクロ波エネルギー導管ケーブル;および
マイクロ波アンテナ。
を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記マイクロ波システムもしくはマイクロ波発生装置が、組織、生検または疾患組織にマイクロ波エネルギーを送達または投与するために使用される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記疾患組織、生検または疾患組織が、疾患上皮組織を含む、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記マイクロ波エネルギーが、
約300 MHz~約300 GHz;または
約900 MHz~約200 GHz;または
約900 MHz~約15GHz;または
約14GHz;または
約13GHz;または
約12GHz;または
約11GHz;または
約10GHz;または
約9GHz;または
約7.5GHz~約8.5GHz;または
約8.5GHz;または
約8GHz;または
約7.5GHz;または
約7GHz;または
約6 GHz;または
約5.8 GHz;または
約2.45 GHz
の周波数で使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記マイクロ波エネルギーは、約1~5秒間、または約2~8秒間、または約3~10秒間、約1秒間、約2秒間、約5秒間、約10秒間、約30秒間、約60秒間、約2分間、約5分間、または約10分間にわたり使用される、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記マイクロ波エネルギーが、非常に低いエネルギーレベルのエネルギーにて、または10~50J、もしくは30~80J、もしくは50J~100Jにて使用される、請求項5または6に記載の使用。
【請求項8】
前記マイクロ波エネルギーが、0.1W~50W、約1W、約2W、約5W、約8W、約10W、約15W、約20W、約25W、約30Wまたは約40Wで使用される、請求項5~7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記マイクロ波エネルギーが複数の異なる電力で使用され、および/または、前記マイクロ波エネルギーが異なる電力で使用されかつ異なる電力間で0.1Wの増分で調整される、請求項5~8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記マイクロ波エネルギーが反復用量として使用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記マイクロ波エネルギーが、2、5、10または15回の個別の用量のマイクロ波エネルギーとして使用される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
各用量の期間は、同じまたは異なる長さであり得る、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
各用量の間に休止がある、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
各用量の間の休止の期間は、同じまたは異なる長さであり得る、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記休止の期間は、約1秒、5秒、10秒、20秒、60秒の間、典型的には5秒~20秒であり得る、請求項13または14に記載の使用。
【請求項16】
前記マイクロ波エネルギーが、
組織;または
組織サンプル;または
対象によって提供された、もしくは対象から得られた組織;または
生検
に適用される、請求項5~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記組織が、
(a) 上皮組織;
(b) 単純な扁平上皮;
(c) 単純な立方上皮;
(d) 単純な円柱上皮;
(e) 偽重層上皮;
(f) 重層扁平上皮;
(g) 非角化;
(h) 角化;
(i) 重層立方上皮;
(j) 重層円柱上皮;
(k) 移行上皮;および
(l) 胚性の単純な扁平乃至立方上皮
から成る群から選択される、請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記マイクロ波エネルギーが、組織に熱的効果を送達または投与するために使用される、請求項16または17記載の使用。
【請求項19】
前記使用がin vitro使用である、および/または前記マイクロ波エネルギーがin vitroで組織もしくは生検に適用または投与される、請求項1~18のいずれかに記載の使用。
【請求項20】
前記マイクロ波エネルギーが、組織内の温度を第一の温度から第二の温度に上昇させるために使用される、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
前記第一の温度は、未処置組織の温度と同等であり得、前記第二の温度は、前記第一の温度よりも高い、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記第一の温度は、約35℃、36℃、37℃、38℃、39℃または約40℃であり、前記第二の温度は約39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃または59℃、60℃または約61℃である、請求項20または21に記載の使用。
【請求項23】
前記第二の温度は60℃に達しない温度であり得る、請求項20~22のいずれか一項に記載の使用。
【請求項24】
前記マイクロ波エネルギーが、組織中の温度を約37℃から約59℃に上昇させるために使用される、請求項20~23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記第二の温度が、約1秒~30分、約1分、約5分、約10分、約15分、約20分または約25分の期間にわたり維持される、請求項20~24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記組織の温度が、マイクロ波に基づく処置の適用前の前記組織の温度と等しい第一の温度から、約43℃の第二の温度まで上昇される、請求項20~25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記マイクロ波エネルギーが、一連の交互の高マイクロ波出力および低マイクロ波出力のパルスとして使用される、請求項20~26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記マイクロ波エネルギーが、組織の温度を第一の温度から第二の温度に上昇させるために、20Wで10秒間にわたり使用される、請求項20~27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記第二の温度が43℃である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記第二の温度が、2Wでのマイクロ波エネルギーを用いて維持される、請求項28または29に記載の使用。
【請求項31】
対象または組織における遺伝子発現を調節する方法であって、前記方法は、前記対象または組織をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む、方法。
【請求項32】
前記対象がヒトまたは動物の対象である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が炎症性の疾患または状態に罹患している、または罹患しやすい/罹患の素因を有する対象である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が、
IL8遺伝子;および/または
SOCS3遺伝子;および/または
EGR1遺伝子;および/または
CD79A遺伝子;および/または
IL1B遺伝子;および/または
TNFRSF13C遺伝子
のうちの一つまたは複数の異常な発現に起因および/または関連する疾患または状態に罹患している、または罹患しやすい/罹患の素因を有する対象である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
マイクロ波エネルギーが、当該遺伝子の発現を調節するのに十分な用量で使用または投与される、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、組織における1つ以上の遺伝子の発現を調節するために使用される、請求項31~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記方法が、遺伝子の発現を回復するために使用される、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
IL8遺伝子の異常発現
SOCS3遺伝子の異常発現
EGR1遺伝子の異常発現
CD79A遺伝子の異常発現
IL1B遺伝子の異常発現
TNFRSF13C遺伝子の異常発現
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、治療を必要とする対象にマイクロ波エネルギーを投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記マイクロ波エネルギーが、当該遺伝子の発現を調節するのに十分な用量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
以下の遺伝子:
KIT遺伝子;および/または
BAD遺伝子;および/または
ID4遺伝子;および/または
RUNX1T1遺伝子;および/または
AKT3遺伝子;
のうちの1つ以上の発現を上方調節する方法であって、当該遺伝子をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む、方法。
【請求項41】
以下の遺伝子:
IL8遺伝子;および/または
SOCS 3遺伝子;および/または
EGR1遺伝子;および/または
CD79A遺伝子;および/または
IL1B遺伝子;および/または
TNFRSF13C遺伝子;および/または
GADD45B遺伝子;および/または
Notch3遺伝子;および/または
CCND2遺伝子;および/または
WNT5A遺伝子;
のうちの1つ以上の発現を下方制御する方法またはin vitro方法であって、当該遺伝子をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む、方法。
【請求項42】
前記方法は、組織または単離された組織サンプルに適用される、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
KIT遺伝子の下方制御された発現;および/または
BAD遺伝子の下方制御された発現;および/または
ID4遺伝子の下方制御された発現;および/または
RUNX1T1遺伝子の下方制御された発現;および/または
AKT3遺伝子の下方制御された発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法またはin vitro方法であって、かかる疾患に罹患している、またはかかる疾患の素因/感受性を有する対象にマイクロ波エネルギーを投与することを含む、方法。
【請求項44】
前記マイクロ波エネルギーが、当該遺伝子の発現を上方制御および/または回復するのに十分な用量で投与され、前記上方制御/回復された発現が正常または健康な対象/組織における同じ遺伝子の発現と一致する程度まで、前記遺伝子の発現が上方制御および/または回復される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
IL8遺伝子の上方制御された発現;および/または
SOCS3遺伝子の上方制御された発現;および/または
EGR1遺伝子の上方制御された発現;および/または
CD79A遺伝子の上方制御された発現;および/または
IL1B遺伝子の上方制御された発現;および/または
TNFRSF13C遺伝子の上方制御された発現;および/または
GADD45B遺伝子の上方制御された発現;および/または
Notch3遺伝子の上方制御された発現;および/または
CCND2遺伝子の上方制御された発現;および/または
WNT5A遺伝子の上方制御された発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、かかる疾患に罹患している、またはかかる疾患の素因/感受性を有する対象にマイクロ波エネルギーを投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記マイクロ波エネルギーは、当該遺伝子の発現を下方制御および/または回復するのに十分な用量で投与され、前記下方制御/回復された発現が正常または健康な組織における同じ遺伝子の発現と一致する程度まで、前記遺伝子の発現が下方制御および/または回復される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
遺伝子発現を調節するin vitroの方法であって、前記遺伝子をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む、方法。
【請求項48】
PI3K経路;および/または
RAS経路;および/または
MAPK経路;および/または
Notch経路;および/または
Wnt経路;および/または
Transcriptional Regulation (KEGG) 経路;および/または
JAK/STAT経路;および/または
TGF-B経路;および/または
Hedgehog経路;
を調節する方法であって、当該経路の発現を調節するのに十分な用量で前記経路をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む、方法。
【請求項49】
PI3K経路の異常発現;および/または
RAS経路の異常発現;および/または
MAPK経路の異常発現;および/または
Notch経路の異常発現;および/または
Wnt経路の異常発現;および/または
Transcriptional Regulation (KEGG) 経路の異常発現;および/または
JAK/STAT経路の異常発現;および/または
TGF-B経路の異常発現;および/または
Hedgehog経路の異常発現;および/または
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、治療を必要とする対象に、当該経路の発現を調節するのに十分な用量でマイクロ波エネルギーを投与することを含む、方法。
【請求項50】
以下の遺伝子:
KIT遺伝子;および/または
BAD遺伝子;および/または
ID4遺伝子;および/または
RUNX1T1遺伝子;および/または
AKT3遺伝子
のうちの1つ以上の発現を上方制御するためのマイクロ波エネルギーの使用。
【請求項51】
以上の遺伝子:
IL8遺伝子;および/または
SOCS 3遺伝子;および/または
EGR1遺伝子;および/または
CD79A遺伝子;および/または
IL1B遺伝子;および/または
TNFRSF13C遺伝子;および/または
GADD45B遺伝子;および/または
Notch3遺伝子;および/または
CCND2遺伝子;および/または
WNT5A遺伝子;
のうちの1つの発現を下方制御するためのマイクロ波エネルギーの使用であって、当該遺伝子をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む、方法。
【請求項52】
前記マイクロ波エネルギーが、必要に応じて当該遺伝子の発現を上方または下方に制御するために、組織、単離組織、生検または組織サンプルに適用される、請求項50または51記載の使用。
【請求項53】
前記マイクロ波エネルギーが、請求項5~15および18~30のいずれか一項に記載の周波数、期間、出力または用量で適用または投与される、請求項50~52のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遺伝子発現を修飾し、疾患組織を治療するためのマイクロ波発生装置、システムおよび方法を提供する。開示された方法は、上皮組織などの調節不全組織の遺伝子発現を回復することにより、組織調節不全を是正し、調節不全の内因性および外因性経路をリセットし、組織ホメオスタシスを回復する。開示された方法は、組織修復、治癒および再生も促進させ得る。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波エネルギーを含む電磁エネルギーシステムを用いて疾患組織を治療するためのシステムと方法をここに記述する。前記システムと方法は、炎症組織中の異常に上方制御または下方制御された遺伝子を健康組織のもののような正常なベースラインレベルに回復することにより、組織炎症を改善し、組織調節不全を是正し、調節不全の内因性および外因性経路をリセットし、組織ホメオスタシスを回復して、組織修復、組織治癒および組織再生を促進する。
【0003】
炎症は多くの癌タイプの発癌および腫瘍進行における重要な要素と広く考えられている。長引く炎症はしばしば、調節不全上皮組織に由来する悪性新生物であり扁平上皮癌、移行上皮癌、腎細胞癌および腺癌のような全癌タイプのほぼ90%を占める癌腫につながる。例えば、潰瘍性大腸炎 (UC) のようなIBD (炎症性腸疾患) における腸粘膜の持続的炎症は、しばしば転移性結腸直腸癌につながる。他の例としては、卵巣癌につながる卵巣上皮の制御不能な炎症、膵臓癌につながる慢性膵炎、または膀胱の扁平上皮癌に発展する尿路上皮裏層の持続的炎症が挙げられる [1] [2] [3] [4] [5] 。
【0004】
炎症は、悪性形質転換細胞の増殖と生存を維持させることが知られており、血管新生と転移プロセスを促進することができる。炎症と癌の間の関連は、内因性および外因性経路に依存する。炎症の慢性段階ではほとんどの場合、PI3K(ホスファチジルイノシトール3'‐キナーゼ(PI3K)‐Akt)、MAPK(マイトジェン活性化蛋白質キナーゼ)、Notch、TGF‐B(形質転換成長因子ベータ)、HedgeHog、JAK/STAT(Janus kinase/signal transducers and activators of transcription)などの、重要な癌経路に関与する鍵となるバイオマーカーは、調節不全すなわち異常な上方制御または下方制御になっている。調節不全の経路は、腫瘍の増殖、進行および転移の拡大を促進する一因となる[3][6]。
【0005】
炎症状態を治療する一般的な方法には、ステロイド、酵素、生物学的薬剤、アミノサリチレート、抗生物質および免疫調節薬を含む抗炎症剤が含まれ、これらは通常、組織の炎症を減少させることを目的としているが、疾患の長期寛解に対処することはできない。しかし、持続性炎症は治療薬の有効性を変化させる可能性があり、これらの保守的療法はしばしば重大な副作用を伴う。最終的にそれらの失敗は侵襲的手術につながり、より衰弱性の合併症につながり得る。
【0006】
炎症状態は典型的には炎症細胞の蓄積だけでなく、より重要なことに上皮層の重度の損傷によって特徴づけられ、上皮治癒がこのような疾患の長期寛解における最も重要な予後因子であることを示唆している。健康な人では、上皮細胞は2~3日ごとに古い細胞が剥がれ落ちることと新しい細胞が生成されることにより刷新される。損傷の際にはこのバランスが乱され、再生よりも剥がれ落ちることの方が多くなり、より多くの上皮ギャップとバリア機能障害を引き起こす。上皮への繰り返しのダメージと損傷は、慢性炎症に、そして最終的には転移性癌腫につながる。このような炎症状態では、上皮組織は炎症性サイトカイン、サイトカインストーム、酸化ストレス、リンパ球数、転写因子などの高レベルでしばしば測定される炎症活性の増加を示す [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13]。
【0007】
正常な上皮回復プロセスは、治癒の3つのメカニズムによって導かれる。すなわち、1) 上皮復元(epithelial restitution)、2) 上皮細胞増殖、および3) 上皮細胞分化である。損傷の急性期には、隣接する健康な上皮細胞、例えば粘膜上皮の腸上皮細胞 (IEC) が、損傷領域を覆うように移動し、上皮層の完全性を再確立し、腸内腔と粘膜下層の間のバリアを再構築するが、これは上皮復元として知られるプロセスである。治癒の後期段階では、上皮細胞の増殖が取って代わって、減少した細胞数を補充し、
その後、上皮細胞の成熟と分化の第3段階が続く。これらの3つの段階は重複することもある。より深い病変または穿通性損傷の場合、炎症プロセスおよび非上皮細胞が関わる追加的な修復機序が治癒プロセスをサポートする [11]。
【0008】
上皮の炎症とその治癒、修復および再生は、成長因子、サイトカイン、蛋白質、調節ペプチド、ペプチド成長因子、インターロイキン、インターフェロンなどの広範な調節因子によって調節されている。これらの調節因子は上皮細胞の機能を調節する複雑なカスケードにおいて重要な役割を果たし、上皮の正常な恒常性と完全性を維持する。疾患状態では、これらの調節因子をコードする遺伝子が調節不全、すなわち異常な上方制御または下方制御になり、従って上皮の正常な機能を調節不全にする。従って、このような複数の調節因子の異常な遺伝子カウントを、健康な組織のもののような正常なベースラインレベルに回復させることが治療の方法となる。さらに、上皮組織のような組織における炎症シグナルと再生シグナルの間のクロストークを維持することは、炎症状態を効果的に治療することにおいて鍵となる因子である。
【0009】
炎症状態を治療する最新の治療および療法は、典型的には1つまたは複数のバイオマーカーを標的とすることによって炎症を減少させることに向けられており、疾患の長期寛解においては限られた成功を示している。一連の研究レビューは、上皮層の完全な治癒、修復および再生が、内視鏡および顕微鏡レベルの両方で炎症状態の長期寛解についての共通の予後因子であることを示している [7] [8] [14] [15] [16]。
【0010】
したがって、患者をより効果的に治療するためには、組織の調節不全を是正し、異常調節された内因性および外因性経路をリセットし、正常な組織ホメオスタシスを回復して上皮修復を促進し、組織の治癒および再生に導くことにフォーカスすることにより、炎症状態および上皮の調節不全を治療する効果的なアプローチが必要である。本発明は、組織の異常調節を是正し、異常調節された内因性および外因性経路をリセットして正常な組織ホメオスタシスを回復することにより、ゲノムレベルでの免疫調節および治療効果を介して、組織修復、特に治癒、上皮組織修復、治癒および再生を促進するために、エネルギーベースの処置療法を用いることにより、このようなアプローチを提供する。本発明は、異常な調節不全となった疾患組織中の遺伝子バイオマーカーのレベルを正常レベルに回復するためのシステムおよび方法を提供し、ここで、正常レベルは、疾患のない健康組織中の遺伝子カウントに対応する。
【0011】
消化管増殖因子 (GIPF)(US7951381B2)[17]、紫色非硫黄細菌(US9737573B2)[18]、TGF‐p 3(AU 2006268091 C1)[19]、抗MET抗体(US20190315873A1)[20]、単離ポリペプチド(US9855313B2)[21]、 HGF肝細胞増殖因子(US5972887A)[22]、17β‐エストラジオール(WO2020/245277A1)[23]およびRspo1剤(US9827290B2)[24]などの薬理学的化合物を単独または併用投与することにより炎症状態の治療において上皮細胞の増殖および再生を刺激する方法が記述されている。薬理学的薬剤はまた、Wntシグナル伝達経路を介した消化管上皮増殖の調節においても有益であることを示している(US 20050169995A1)[25]]。炎症性疾患の治療において、Clorfl06のような腸遺伝子の発現を変化させることによって腸上皮の完全性を調節するために、CRISPRのような遺伝子編集システムを用いて調節剤を投与する方法が知られている(WO 2019018410 A1)[26]。
【0012】
創傷治癒を促進することのような他の再生的アプリケーションにおいて、組織の温度を選択的に上昇させることによる、例えばマイクロ波温熱療法のための電磁システムのような、エネルギーベースのデバイスおよび方法を含む発明が過去に示されている(AU 2007330615 B2)[27] および(US7967839B2)[28]。しかしながら、これらの発明は、組織凝固および破壊的な熱損傷を引き起こすことに基づいており、創傷閉鎖または創傷封止ならびに組織およびインプラントの固定または融合を促進することに限定されている。
【0013】
Hezi-Yamitらは、65℃で破壊的な熱アブレーションを行って標的部位またはその付近でIL-10発現レベルを増加させ、IBDのような炎症状態を治療する、エネルギーベースの方法を教示している(US 2015/0126978 A1)[29]。
【0014】
さらに、電気エネルギーおよびマイクロ波エネルギーを使用して、60°~90°Cで腸管のような組織をアブレーションすることのような、エネルギーベースのシステムおよび方法が提供されている(US 2015/0141987 A1)[30]、US 10349998 B2 [31]、(WO 2017/087191 A1)[32]。炎症状態を患う患者に潜在的な治療上の利益を提供するとされているこれらの方法は有望ではあるが、60°Cを超えるアブレーション性かつ壊死性の温度はリスクを伴い、組織の深部に実質的な伝導熱拡散を伴って損傷を与える可能性があって瘢痕化の副作用を含み得、そのことが疾患を悪化させる可能性がある。
【0015】
これらの治療の破壊的性質はまた、疾患病変を囲む健康な上皮組織のかなりの量を破壊する可能性もあり、それは慢性炎症の改善に不可欠な免疫応答を損なわせる。
【0016】
さらに、これらの記述された方法は、組織の完全性を回復し組織の調節不全を是正することができないが、そのことこそが炎症状態の長期寛解に不可欠であり、さもなくば組織の調節不全と転移がもたらされる。
【0017】
本発明は、炎症状態、特に上皮組織に関連する炎症状態を治療し予防するためのエネルギーベースのシステムおよび方法を提供する。本明細書に提示されるシステムおよび方法は、免疫調節的治療効果を提供して組織の調節不全を是正し、調節不全の内因性および外因性経路をリセットして、組織ホメオスタシスを回復する。前記システムおよび方法は、例えば上皮組織の組織修復、治癒および再生をゲノムレベルで促進する。本明細書に提供されるシステムおよび方法は、慢性炎症が発癌および転移癌へと進展することを防止する。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、マイクロ波エネルギーが、特定の遺伝子の発現を調節、例えば上方制御または下方制御するために使用され得るという発見に基づいている。例えば、疾患または状態が特定の遺伝子または遺伝子群の異常な発現と関連している場合、マイクロ波エネルギーを使用してこれらの遺伝子の発現を調節し、それによって疾患または状態の1つ以上の症状を解決および/または改善することができる。
【0019】
第1の態様において、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する方法における使用のためのマイクロ波システムまたはマイクロ波発生装置が提供される。
【0020】
本開示はさらに、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する方法における使用のためのマイクロ波エネルギーを提供する。
【0021】
また、1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する方法が提供され、この方法は、それを必要とする対象(subject)にマイクロ波エネルギーを投与することを含む。
【0022】
本開示のマイクロ波発生器またはシステムは、マイクロ波発生器と;選択された動作周波数または周波数範囲を有するマイクロ波エネルギーを発生するようにマイクロ波発生器を制御するように構成された制御装置と;マイクロ波エネルギー導管ケーブルであって、そのマイクロ波エネルギー導管ケーブルの遠位端から延在するまたは該遠位端に結合されたマイクロ波アンテナにマイクロ波エネルギーを送達するように構成されたマイクロ波エネルギー導管ケーブルと;マイクロ波アンテナとを含む。
【0023】
本開示のマイクロ波発生器またはシステムは、疾患組織、例えば疾患上皮組織に、マイクロ波エネルギーを投与するために使用することができる。記載されているように、これは、1つまたは複数の遺伝子の変調された発現をもたらすだけでなく、組織内で熱的および非熱的効果をももたらし得る。
【0024】
対象は、あらゆるヒトまたは動物の対象であり得る。
【0025】
対象は、炎症性の疾患または状態に罹患している(または罹患しやすい/罹患の素因を有する)対象であり得る。
【0026】
対象は、1つまたは複数の疾患の症状を示す疾患組織を保有し得る。疾患組織は、炎症状態に特徴的な症状を示し得る。疾患組織は、1つ以上の調節不全の遺伝子および/または経路を含み得る。そのような場合、本開示のマイクロ波ベースの方法を用いて、これらの調節不全の遺伝子および/または経路をリセットすることができる。
【0027】
対象は、損傷した、負傷した、または傷ついた組織を有し得る。本開示のマイクロ波ベースの方法は、組織の修復、治癒および再生を促進することができる。
【0028】
対象は、以下の表1に記載されている1つまたは複数の遺伝子の異常な発現に起因および/または関連する疾患または状態に罹患している(または罹患しやすい/罹患の素因を有する)対象であり得る。
【0029】
表1:マイクロ波エネルギーによって発現を調節できる遺伝子
【表1】
【0030】
上記を考慮して、本開示は以下のもの:
IL8遺伝子を調節する方法;
SOCS3遺伝子を調節する方法;
EGR1遺伝子を調節する方法;
CD79A遺伝子を調節する方法;
IL1B遺伝子を調節する方法;
TNFRSF13C遺伝子を調節する方法;
であって、上記遺伝子をマイクロ波エネルギーに曝すことを含む方法を提供する。1つの教示において、方法は、関連する遺伝子の発現を調節、例えば上方または下方調節するのに十分な量または用量のマイクロ波エネルギーに上記の遺伝子(複数可)のいずれかを曝すことを含み得る。このタイプの方法は、組織における遺伝子発現の調節に適用することができ、そのような場合、方法は、1つまたは複数の遺伝子の異常な発現を示す組織を、該組織における1つまたは複数の遺伝子の発現を調節するのに十分な用量のマイクロ波エネルギーに曝すことを含み得る。組織は、疾患組織であり得る。このタイプの方法は、本明細書に記載される遺伝子(複数可)のいずれかの発現を回復するために使用され得る。
【0031】
さらに、本開示は、以下のもの:
IL8遺伝子の異常発現
SOCS3遺伝子の異常発現
EGR1遺伝子の異常発現
CD79A遺伝子の異常発現
IL1B遺伝子の異常発現
TNFRSF13C遺伝子の異常発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法であって、治療を必要とする対象にマイクロ波エネルギーを投与することを含む、方法を提供する。マイクロ波エネルギーは、関連する遺伝子の発現を調節する(すなわち、発現を上方制御もしくは下方制御および/または回復する)のに十分な用量で対象に投与することができる。
【0032】
特定の疾患または状態が遺伝子の上方制御と関連している場合、その遺伝子の発現を下方制御するためにマイクロ波エネルギーが使用され得ることが理解されるべきである。
【0033】
逆に、特定の疾患または状態が遺伝子の下方制御と関連している場合、その遺伝子の発現を上方制御するためにマイクロ波エネルギーが使用され得る。
【0034】
さらに、本開示のマイクロ波エネルギーに基づく方法は、異常に調節不全となった遺伝子(複数可)の発現を回復または正常化することにより、特定の疾患または状態を治療または予防するために使用され得、ここで、回復または正常化の行為は、異常に発現されたまたは調節不全となった遺伝子を正常、健康またはベースラインレベルの発現の方に調節することを含む。遺伝子発現の正常、健康またはベースラインレベルは、健康な組織で観察される同遺伝子の発現レベルと同様のものであり得ることに留意すべきである。
【0035】
本開示に従ったマイクロ波ベースの治療を投与される対象は、1つまたは複数の細胞経路事象の異常な発現または機能に起因および/または関連する疾患または状態に罹患している(または罹患しやすい/罹患の素因を有する)対象であり得る。本発明者らは、マイクロ波エネルギーを使用してこれらの経路を調節できることを発見した。理論に縛られることなく、マイクロ波エネルギーは、これらの経路に関連する1つ以上の遺伝子の発現を調節し、したがって、関連する経路の発現および/または機能を回復または正常化するために使用できることが示唆される。*文書中で、復元と正常化という用語は互換され得る。
【0036】
上記の観点から、調節(modulate)という用語は、所与の遺伝子の上方制御または下方制御を意味する。本発明は、マイクロ波エネルギーを使用して特定の遺伝子の発現を調節できるという発見に基づいている。これらの遺伝子のいくつかの上方制御によって特徴付けられる疾患については、マイクロ波エネルギーを使用して発現を下方制御し、それによって疾患および/またはその症状を治療することができる。逆に、これらの遺伝子のいくつかの下方制御によって特徴付けられる疾患については、マイクロ波エネルギーを使用して発現を上方制御し、それによって疾患および/またはその症状を治療することができる。
【0037】
表2は、ある特定の遺伝子に対するマイクロ波エネルギーの特異的効果の指標を提供する。
【0038】
【0039】
上記の観点から、本開示は、
KIT遺伝子を上方制御する方法;
BAD遺伝子を上方制御する方法;
ID4遺伝子を上方制御する方法;
RUNX1T1遺伝子を上方制御する方法;
AKT3遺伝子を上方制御する方法;
であって、上記遺伝子の1つ以上をマイクロ波エネルギーに曝露することを含む方法を提供する。これら遺伝子は、本明細書に記載された量または用量でマイクロ波エネルギーに曝露され得る。1つの教示において、方法は、その遺伝子の発現を調節、例えば上方制御するのに十分な量または用量のマイクロ波エネルギーに遺伝子を曝露することを含み得る。このタイプの方法は、組織における遺伝子発現を上方制御するために適用することができ、そのような場合、方法は、組織における当該遺伝子の発現を上方制御するのに十分な用量のマイクロ波エネルギーに組織を曝露することを含み得る。組織は、疾患組織であり得る。このタイプの方法は、遺伝子の発現を回復するために使用され得る。遺伝子の発現は、上方制御された発現が正常または健康な組織における同じ遺伝子の発現と一致する程度まで上方制御され得る。
【0040】
さらに、本開示は、
KIT遺伝子の下方制御された発現;および/または
BAD遺伝子の下方制御された発現;および/または
ID4遺伝子の下方制御された発現;および/または
RUNX1T1遺伝子の下方制御された発現;および/または
AKT3遺伝子の下方制御された発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法を提供し、この方法は、治療を必要とする対象にマイクロ波エネルギーを投与することを含む。マイクロ波エネルギーは、本明細書に記載する用量での量で対象に投与され得る。マイクロ波エネルギーは、当該遺伝子の発現を上方制御および/または回復するのに十分な用量で投与することができる。遺伝子の発現は、上方制御/回復された発現が正常または健康な組織における同じ遺伝子の発現と一致する程度まで上方制御および/または回復され得ることに留意されたい。
【0041】
本開示はまた、
IL8遺伝子を下方制御する方法;
SOCS3遺伝子を下方制御する方法;
EGR1遺伝子を下方制御する方法;
CD79A遺伝子を下方制御する方法;
IL1B遺伝子を下方制御する方法;
TNFRSF13C遺伝子を下方制御する方法;
GADD45B遺伝子を下方制御する方法;
Notch3遺伝子を下方制御する方法;
CCND2遺伝子を下方制御する方法;
WNT5A遺伝子を下方制御する方法;
を提供し、上記方法は、マイクロ波エネルギーに上記遺伝子を曝露することを含む。遺伝子は、本明細書に記載された量または用量でマイクロ波エネルギーに曝露され得る。1つの教示において、方法は、当該遺伝子の発現を下方制御するのに十分な量または用量のマイクロ波エネルギーに遺伝子を曝露することを含み得る。このタイプの方法は、組織における遺伝子発現の下方制御に適用され得る。そのような場合、方法は、組織におけるその遺伝子の発現を下方制御するのに十分な用量で、組織をマイクロ波エネルギーに曝露することを含み得る。組織は、疾患組織であり得る。このタイプの方法は、遺伝子の発現を回復するために使用され得る。遺伝子の発現は、下方制御された発現が正常または健康な組織における同じ遺伝子の発現と一致する程度まで下方制御され得る。
【0042】
さらに、本開示は、
IL8遺伝子の上方制御された発現;
SOCS3遺伝子の上方制御された発現;
EGR1遺伝子の上方制御された発現;
CD79A遺伝子の上方制御された発現;
IL1B遺伝子の上方制御された発現;
TNFRSF13C遺伝子の上方制御された発現;
GADD45B遺伝子の上方制御された発現;
Notch3遺伝子の上方制御された発現;
CCND2遺伝子の上方制御された発現;
WNT5A遺伝子の上方制御された発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法を提供し、この方法は、治療を必要とする対象にマイクロ波エネルギーを投与することを含む。マイクロ波エネルギーは、当該遺伝子の発現を下方制御および/または回復するのに十分な用量で対象に投与され得る。遺伝子の発現は、下方制御/回復した発現が正常または健康な組織における同じ遺伝子の発現と一致する程度まで下方制御および/または回復され得ることに留意されたい。
【0043】
マイクロ波エネルギーによる遺伝子の発現の調節は、正常で健康な組織および/または疾患組織におけるその遺伝子の発現と比較して評価することができる。疾患組織では、特定の遺伝子の発現が正常で健康な組織よりも高いことがある。マイクロ波エネルギーを使用して、これらの遺伝子の発現を低下させ、正常、ベースライン、または健康なレベルに向けて発現のレベルを下げることができる。他のケースでは、疾患組織が、健康または正常な組織における同じ遺伝子の発現と比較して、特定の遺伝子のより低い発現を示すことがある。マイクロ波エネルギーを使用して、これらの遺伝子の発現を上昇させ、発現レベルを正常、ベースラインまたは健康レベルに向けて引き上げることができる。さらに、本開示は、例えば、癌に発展する可能性のある慢性炎症状態の症状を示す組織のような、疾患または調節不全の組織を治療する方法を提供する。そのような状態は、例えば、潰瘍性大腸炎または膵炎を含み得る。このタイプの方法は、主要な癌経路に関与する1つ以上の遺伝子の発現を調節および/または回復するためにマイクロ波エネルギーを投与することを含み得る。これは発癌を防止し得る。
【0044】
表3はマイクロ波エネルギーの投与により調節可能な癌経路関連遺伝子のリストを提供する。
【0045】
【0046】
表3で同定された遺伝子は経路関連遺伝子と呼ばれることもある。
【0047】
上記を考慮して、本開示は、
KIT遺伝子を調節する方法;
GADD45B遺伝子を調節する方法;
Notch3遺伝子を調節する方法;
CCND2遺伝子を調節する方法;
BAD遺伝子を調節する方法;
ID4遺伝子を調節する方法;
WNT5A遺伝子を調節する方法;
RUNX1T1遺伝子を調節する方法;および
AKT3遺伝子を調節する方法
を提供する。
【0048】
さらに、本開示は、
KIT遺伝子の異常発現;
GADD45B遺伝子の異常発現;
Notch3遺伝子の異常発現;
CCND2遺伝子の異常発現;
BAD遺伝子の異常発現;
ID4遺伝子の異常発現;
WNT5A遺伝子の異常発現;
RUNX1T1遺伝子の異常発現;
AKT3遺伝子の異常発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法を提供し、この方法は、治療を必要とする対象をマイクロ波エネルギーに接触させることを含む。マイクロ波エネルギーは、当該遺伝子の発現を調節(すなわち、発現の上方制御もしくは下方制御および/または回復)するのに十分な用量で対象に投与することができる。
【0049】
さらに、本開示は、
PI3K経路を調節する方法;
RAS経路を調節する方法;
MAPK経路を調節する方法;
Notch経路を調節する方法;
Wnt経路を調節する方法;
Transcriptional Regulation (KEGG) 経路を調節する方法
JAK/STAT経路を調節する方法;
TGF-B経路を調節する方法;および
Hedgehog経路を調節する方法
を提供する。
【0050】
さらに、本開示は、
PI3K経路の異常発現;
RAS経路の異常発現;
MAPK経路の異常発現;
Notch経路の異常発現;
Wnt経路の異常発現;
Transcriptional Regulation (KEGG) 経路の異常発現
JAK/STAT経路の異常発現;
TGF-B経路の異常発現;
Hedgehog経路の異常発現;
に起因および/または関連する疾患または状態を治療または予防する方法を提供し、この方法は、治療を必要とする対象をマイクロ波エネルギーに接触させることを含む。マイクロ波エネルギーは、当該経路の発現を調節(すなわち、発現の上方制御もしくは下方制御および/または回復)するのに十分な用量で対象に投与することができる。
【0051】
特定の疾患または状態が特定の経路の上方制御と関連する場合、マイクロ波エネルギーは、その経路の発現を下方制御するために使用することができることが理解されるべきである。
【0052】
逆に、特定の疾患または状態が特定の経路の下方制御と関連している場合、マイクロ波エネルギーは、その経路の発現を上方制御するために使用され得る。
【0053】
それに加えて、またはそれに代えて、特定の疾患または状態が特定の経路の調節不全と関連している場合、マイクロ波エネルギーは、その経路の発現を回復するために使用され得る。
【0054】
マイクロ波エネルギーは、上記の1つ以上の経路関連遺伝子の発現に対して調節効果を有するため、所与の経路の発現、機能または活性を調節するために使用され得ることに留意すべきである(理論に縛られることを望まない)。
【0055】
マイクロ波エネルギーは、マイクロ波発生器によって供給され、約300 MHz~約300 GHzの周波数で対象に投与され得る。一教示では、マイクロ波エネルギーは、約900 MHz~約200 GHzの周波数で対象に投与され得る。別の教示では、マイクロ波エネルギーは、約900 MHz~約15GHzの周波数で対象に投与され得る。例として、マイクロ波エネルギーは、約2.45 GHz、約5.8GHz、約6 GHz、約7GHz、約7.5GHz、約8GHz、約8.5GHz(例えば、約7.5GHz-約8.5GHz)、約9GHz、約10GHz、約11GHz、約12GHz、約13GHzまたは約14GHzで(マイクロ波エネルギー発生器を介して)投与され得る。マイクロ波周波数は、治療効果を十分有するが健康な組織には影響を及ぼさない周波数で投与することができる。例として、マイクロ波エネルギーは、8GHzで投与され得る―これは、疾患組織を治療することができるが、健康な組織にはおよび/または約5mmの深さを超えては浸透することはできない。
【0056】
マイクロ波治療は、最低限の侵襲性であり得る。
【0057】
マイクロ波治療は、非熱的、穏やかに温熱的、またはサブアブレーション的(sub-ablative)な性質であり得る。
【0058】
マイクロ波治療はサブアブレーション的な熱刺激を提供し得る。
【0059】
マイクロ波治療は組織破壊や壊死を引き起こさないものであり得る。
【0060】
マイクロ波治療はアブレーション的なものとし得る。
【0061】
マイクロ波治療は、「非アブレーション的」、「穏やかにアブレーション的」、またはアブレーション的であるマイクロ波エネルギーを含むことができる。「非アブレーション的」治療は、ある治療時間のみ―おそらくは例えば約1~5秒またはそれ以上の治療時間のみを含み得る。「非アブレーション的」治療は、直接的な組織または皮膚損傷を引き起こさないように、10~50Jまたはそれ以上のような非常に低いエネルギーレベルのエネルギーでのマイクロ波エネルギーの使用を含み得る。理論に縛られることを望まないが、「非アブレーション的」治療は、非破壊的な熱メカニズム(高電場、細胞内シグナル伝達/イオンチャネルの中断または変調)を使用または利用し得る。
【0062】
マイクロ波エネルギーによる「穏やかにアブレーション的」な治療は、約2~8秒以上の治療時間を含み得る。使用される総エネルギー量は、直接的な損傷を引き起こさず、軽度から中等度の温度上昇のみを引き起こすように、30~80Jのような低いものであり得る。穏やかにアブレーション的な治療は、適度な熱的効果(熱ショック、DAMPsおよびNOSの上昇/発現、軽度の炎症等)を生じて処置組織内で(または処置組織の)アポトーシスを促進させ得る。
【0063】
「アブレーション的」治療は、50~100Jまたはそれ以上のような中程度から高レベルのマイクロ波エネルギーの使用を含む。マイクロ波エネルギーは、約3~10秒またはそれ以上の長時間使用され得る。これは、いくらかの直接的な組織損傷、中程度から高レベルの温度上昇(処置組織内で)、および潜在的にいくらかの直接的な組織損傷/壊死をもたらす可能性がある。
【0064】
有用な用量の詳細は、調節される遺伝子(複数可)、対象(年齢、体重、状態、病歴等)、治療される組織または臓器、および治療および/または予防される疾患または状態に応じて異なり得ることに留意すべきである。当業者は、併用される療法および特定の組み合わせ療法の効果を含め、臨床状況に適合するようにマイクロ波エネルギー用量の任意の側面を調整することができる。
【0065】
この点に関して、本明細書に記載されたマイクロ波ベースの治療は、他の薬物または治療戦略と併用され得、あるいは一緒に投与され得る。マイクロ波エネルギーは、任意の他のタイプの治療の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。
【0066】
本明細書に記載される様々な方法で使用するためのマイクロ波エネルギーは、0.1W~50Wの入力電力を含み得る。例えば、マイクロ波エネルギーは、約1W、約2W、約5W、約8W、約10W、約15W、約20W、約25W、約30W、約40 W、約50Wの電力で送達され得る。マイクロ波エネルギーは、単一の固定電力または異なる電力の範囲で投与され得る。マイクロ波エネルギーは、複数の異なる電力で投与され得る。1つの教示では、投与されるマイクロ波エネルギーは、0.1Wの増分で異なる電力間で調整され得る。
【0067】
入力電力は、約0.1秒から30分の間の任意の期間(duration)にわたって適用され得る。例えば、マイクロ波は、約1秒、2秒、5秒、10秒、30秒、60秒から約1分、2分、5分または10分の間の任意の期間にわたって適用され得る。
【0068】
マイクロ波エネルギーは、反復用量として投与され得る。例えば、マイクロ波エネルギーは、マイクロ波エネルギーの5回の個別用量として対象に投与され得る。各用量の期間は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、各用量は5秒間持続し得る。ユーザーは各用量の投与の間に一時停止し得る。各用量の間の一時停止の期間は、各処置の間の20秒の一時停止と同じでも異なってもよい。一時停止は、好ましくはユーザーインタフェースを用いて制御される、発生器からのマイクロ波放出を止めることを意味する。マイクロ波治療は、約2回または5回または10回または15回、典型的には3~6回の間の任意の回数にわたり適用され得る。一時停止は、約1秒、5秒、10秒、20秒、60秒、典型的には5秒~20秒の間の任意の長さであり得る。用量は、数日、数週間または数ヶ月の間隔を空けた多数の用量の送達からなる治療レジメンの一部として投与され得る。
【0069】
マイクロ波エネルギーは、対象またはその組織に熱的効果を送達または投与するために使用され得る。例えば、マイクロ波エネルギーは、対象 (またはその組織) の温度を第1の温度から第2の温度に上昇させるために使用され得る。第1の温度は、未処置の対象/組織の温度と同等であり得る。第2の温度は、第1の温度よりも高くなり得る。例えば、第1の温度は、約35°C、36°C、37°C、38°C、39°C、または40°Cであり得る。第2の温度は、約39°C、40°C、41°C、42°C、43°C、44°C、45°C、46°C、47°C、48°C、49°C、50°C、51°C、52°C、53°C、54°C、55°C、56°C、57°C、58°C、または59°C、60°Cまたは61°Cであり得る。ある教示では、第2の温度は60°Cに達しなくてもよい。マイクロ波エネルギーを使用して、対象またはその組織の温度を約37°Cから約59°Cに上昇させ得る。例えば、対象 (またはその組織) における温度を約42°Cから約48°Cに上昇させるようにマイクロ波エネルギーが対象に投与され得る。
【0070】
1つの教示において、温度は、第1の温度から2つ以上の異なる温度に上昇され得る。実際の温度上昇は、例えば疾患の重症度や複雑さによって異なる。
【0071】
一つの教示では、第2の温度が(約+/- 0.5℃の精度で)維持され得る。例えば、いったん所望の第2の温度に達すると、その温度が約1秒~30分の間の任意の時間維持され得る。例えば、第2の温度は、約1分、5分、10分、15分、20分または25分維持され得る。
【0072】
例えば、処置される組織の温度は、第1の温度 (例えば、マイクロ波ベースの処置を適用する前の組織の温度と等しい第1の温度) から上昇され、処置の全期間にわたり、例えば10分間にわたり、任意の適切な第2の温度、例えば43℃まで+/- 0.5℃以内で一定に保たれ得る。
【0073】
マイクロ波エネルギーは、一連の交互の高マイクロ波出力パルスおよび低マイクロ波出力パルスとして、または標的組織の温度を上昇させ+/- 0.5℃以内に維持することを意図した線量として、投与され得る。例えば、最初の高線量を使用して、組織の温度を第1の温度 (例えば、未処置組織の温度と等しい温度) からより高い第2の温度へと上昇させ得る。その後、組織内のその第2の温度を維持するために、より低い線量のマイクロ波エネルギー (第1の線量で使用されるより低い出力定格を有する) を投与することができる。第2の温度は任意の適切な時間にわたり維持することができる。実際、組織の温度上昇は、組織壊死を回避し、本明細書に記載された遺伝子のいずれか、免疫調節事象、および/または調節不全、異常発現および/または架橋経路のリセットに関連するメカニズムおよびプロセスを誘導するように制御および維持することができる。
【0074】
例えば、マイクロ波エネルギーは、組織の温度を第1の温度 (おそらく、未処置組織の温度と等しい第1の温度) から第2の温度、例えば43℃へと上昇させるために、20Wで10秒間投与され得る。これに続いて、組織の温度を43℃に維持するために、例えば約2Wの別の、より低い用量が投与され得る。より低い用量は、組織内で第2の温度を維持するために意図される長さだけ維持することができる。例えば、第2の用量は、最大で約300、400、500、600、700秒またはそれ以上の間、適用され得る。
【0075】
これらの方法は、生検に、(対象から提供された、または対象から得られた)サンプルに、およびin vitroで適用され得る。したがって、本開示は、1つ以上の遺伝子の発現を調節するin vitroの方法または使用を提供し、その方法または使用は、組織を(本明細書に記載された任意の用量または量での)マイクロ波エネルギーに曝露することを含む。
【0076】
本明細書に記載された方法はいずれも、ヒトまたは動物の対象およびそのあらゆる組織、器官または領域に適用または投与され得る。方法 (またはマイクロ波エネルギー) は、対象における、任意の形状および体内の任意の場所の組織、器官または領域に適用または投与され得る。処置されるヒトまたは動物対象は、例えば、炎症性の疾患または状態に対する素因および/または感受性を有する対象であり得る。(本明細書に記載されているように)マイクロ波エネルギーに基づく処置を投与される組織、器官または領域は、炎症状態の徴候および/または症状を示すものであり得る。
【0077】
本明細書に記載されているマイクロ波に基づく方法はいずれも、患部組織に適用または投与され得る。患部組織は、1つまたは複数の疾患に特徴的な徴候または症状を示す任意の組織であり得る。理論に縛られることを望まないが、患部組織は、その組織内の1つまたは複数の遺伝子の発現を調節する目的で、マイクロ波ベースの治療を受けることができる。調節される遺伝子は、本明細書に記載された遺伝子のいずれか1つまたは複数であり得、および/または、予防または治療すべき特定の疾患および/または状態と関連したものであり得る。
【0078】
1つの教示において、組織という用語は、上皮組織を包含し得る。「疾患組織」という用語は、疾患となった上皮組織を包含し得る。「処置された組織」という用語は、本開示のマイクロ波処置が施された組織に関連し得る。
【0079】
正常または健康な組織への言及は、疾患または状態の徴候または症状を示しておらず、創傷または損傷を受けておらず、および/または異常発現する遺伝子または細胞経路を含まない組織への言及である。
【0080】
このマイクロ波ベースの方法を施される組織は、皮膚あるいは疾患皮膚を含むことができる。疾患皮膚は、皮膚に関連する1つ以上の疾患および/または状態に特徴的な徴候または症状を示し得る。マイクロ波エネルギーを使用した処置から利益を得ることができる皮膚には、例えば、炎症を起こした皮膚、損傷した(裂けた、破れた、または切れた)皮膚などが含まれ得る。マイクロ波エネルギーは、1つ以上の瘢痕、びらんおよび/または病変を有する皮膚にも適用され得る。
【0081】
理論に縛られることを望まないが、マイクロ波エネルギーへの曝露後、組織(例えば皮膚を含む)内の1つ以上の遺伝子が、疾患または状態のある側面(例えば、1つ以上の症状)が改善または解消されるように調節され得ることが示唆されている。言い換えれば、マイクロ波エネルギーを使用して、1つ以上の遺伝子の発現を調節し、当該疾患または状態を特徴付ける1つ以上の症状または特徴を解消または改善し得る。
【0082】
本開示のマイクロ波ベースの方法を投与される組織は、本明細書に記載の方法を用いて治療される対象により/から誘導され、提供され、または取得されたものであり得る。従って、組織は、in situ組織、in vivo組織、またはex vivoサンプルの生検であり得る。
【0083】
多数の遺伝子の発現を調節するその能力に基づいて、マイクロ波エネルギー(本明細書に記載されるところのもの)は、多数の疾患および/または状態、特に異常および/または欠陥的遺伝子発現によって特徴付けられるそれらの治療および/または予防に適用され得る。異常および/または欠陥的遺伝子発現は、正常または健康な組織(すなわち、異常および/または欠陥的遺伝子発現に関連する疾患の徴候および/または症状を示さない組織)における遺伝子発現と比較して決定され得ることに留意すべきである。
【0084】
場合によっては、1つ以上の遺伝子の発現の増加によって疾患または状態が引き起こされ得る。このような状況では、マイクロ波エネルギーを使用して、例えば、過剰発現した遺伝子の発現を抑制、阻害および/または減少させることによって、遺伝子発現を正常化することができる。これにより、発現レベルを正常レベルに戻す、または正常レベルに近づけることが促進される。
【0085】
別の場合では、1つ以上の遺伝子の発現の減少によって疾患または状態が引き起こされ得る。このような状況では、マイクロ波エネルギーを用いて、例えば、発現が不十分な遺伝子の発現を促進、増加、刺激および/または増強することによって、遺伝子発現を正常化することができる。これにより、発現レベルを正常レベルに戻す、または正常レベルに近づけることが促進される。
【0086】
本開示は、組織内の1つまたは複数の遺伝子の調節不全によって特徴付けられるおよび/または引き起こされる疾患または状態を治療する方法を提供する。ある場合では、疾患または調節不全の組織は、同じ組織の健康または正常な形態と比較して、特定の遺伝子の異常に低い発現を示す。マイクロ波エネルギーによる治療は、疾患または調節不全の組織においてこれらの遺伝子の発現を回復または正常化(例えば上方制御によって)することができ、そこでは上記の遺伝子の発現が上方制御され(誘導され、促進され、または刺激され)、回復または正常化される。他の場合では、疾患または調節不全の組織は、同じ組織の健康な形態と比較して、特定の遺伝子の異常に高い発現を示す。これらの場合では、マイクロ波エネルギーの投与は、当該遺伝子の発現を下方制御し(抑制し、阻害し、または低減し)、回復または正常化(例えば、下方制御によって)することができる。
【0087】
理論に縛られることを望まないが、組織、例えば疾患組織における遺伝子発現の調節(例えば、回復および/または正常化)は、炎症および/または無制御の細胞増殖/分化によって特徴付けられる疾患および/または状態を治療および/または予防することができる。非限定的な例として、本明細書に開示される様々な遺伝子に対するマイクロ波エネルギーの効果は、慢性炎症の結果として発生する癌腫の予防および治療に適用することができる。
【0088】
組織内の1つまたは複数の遺伝子の調節不全によって特徴付けられるおよび/または引き起こされる疾患または状態を治療する方法は、それを必要とする対象にマイクロ波エネルギーを投与して、組織内の遺伝子発現を回復および/または正常化することを含み得る。
【0089】
いくつかの場合では、疾患または調節不全の組織は、同じ組織の健康な形態と比較して、特定の遺伝子の異常に低い発現を示す。これらの場合、前記マイクロ波システムで処置すると、疾患または調節不全の組織におけるこれらの同じ遺伝子の発現が上方調節され(誘導され、促進され、刺激され)、回復または正常化される。
【0090】
本開示は、調節不全の内因性および/または外因性経路により特徴付けられるおよび/または引き起こされる疾患または状態を治療する方法を提供する。そのような方法において、マイクロ波エネルギーの投与(本明細書に記載されるところのもの)は、調節不全の内因性および/または外因性経路を矯正およびリセットし得る。調節不全の内因性および/または外因性経路の矯正およびリセットは、その調節不全の内因性および/または外因性経路に関連する1つ以上の遺伝子の発現に対するマイクロ波エネルギーの調節効果を介して起こり得る。
【0091】
本開示は、異常および/または欠陥的ホメオスタシスにより特徴付けられるおよび/または引き起こされる疾患または状態を治療する方法を提供する。そのような方法において、マイクロ波エネルギーの投与(本明細書に記載されるところのもの)は、異常、調節不全および/または欠陥的ホメオスタシス事象を矯正し、回復することができる。調節不全および/または欠陥的ホメオスタシス事象の矯正および回復は、その調節不全および/または欠陥的ホメオスタシス事象に関連する遺伝子の1つ以上の発現に対するマイクロ波エネルギーの調節効果を介して起こり得る。
【0092】
本開示はまた、例えば上皮組織を含む、調節不全組織における遺伝子発現を回復する方法を提供する。そのような方法では、マイクロ波エネルギーの投与(本明細書に記載されるところのもの)は、組織(例えば上皮組織)における異常、調節不全または欠陥的遺伝子発現を是正することができる。組織(例えば上皮組織)における異常または欠陥的遺伝子発現の是正は、組織(例えば上皮組織)において異常にまたは欠陥的に発現されている1つ以上の遺伝子の発現に対するマイクロ波エネルギーの調節効果を介して起こり得る。
【0093】
さらに、本開示は、組織の修復、治癒および/または再生を刺激、促進および/または増強する方法を提供する。このような方法では、マイクロ波エネルギーの投与(本明細書に記載されるところのもの)は、組織の修復、治癒および/または再生を刺激し、促進し、および/または増強し得る。組織の修復、治癒および/または再生の刺激、促進および/または増強は、組織の修復、治癒および/または再生の刺激、促進および/または増強に関連する遺伝子の1つまたは複数の発現に対するマイクロ波エネルギーの調節効果を介して起こり得る。
【0094】
上記の観点から、ある疾患または状態が特定の遺伝子の発現レベルに関連していることが知られている場合、マイクロ波エネルギーは、その疾患または状態の治療および/または予防への新しい経路を表し得ることを当業者は理解するであろう。例として、マイクロ波エネルギーを使用して、疾患または状態に関連していることが知られている1つ以上の遺伝子の異常な発現を修復させ得る。
【0095】
マイクロ波エネルギーに曝露される組織(その組織内の1つ以上の遺伝子の発現を調節する目的のために)は、疾患または調節不全の組織(例えば、異常な(不十分なおよび/または過剰な)発現をした遺伝子を保有する組織)、例えば上皮組織を含み得る。
【0096】
治療またはマイクロ波エネルギー投与を受ける組織は、慢性炎症のような1つ以上の疾患に特徴的な徴候または症状を示す任意の組織であり得る。
【0097】
「疾患」 組織は、発癌を引き起こす可能性を有し得、および/または前癌状態への素因または感受性を有するものであり得る。
【0098】
マイクロ波エネルギーを投与される組織は、上皮組織であり得る。したがって、マイクロ波エネルギーを投与される組織は、疾患または調節不全の上皮組織を含み得る。前記組織は、1つ以上の疾患、例えば炎症状態に特徴的な徴候または症状を示すものであり得る。
【0099】
マイクロ波エネルギーを投与される組織 (例えば上皮組織) は、以下のもののような広範な組織の裏層を形成し得る。
a. 単純な扁平上皮:血管およびリンパ管、肺の気嚢、心臓の裏層
b. 単純な立方上皮:腎尿細管、膵臓、唾液腺、甲状腺
c. 単純な円柱上皮:消化管臓器 胃、小腸、結腸、子宮
d. 偽重層上皮:上気道、子宮管
e. 重層扁平上皮
a. 非角化:口腔、食道、喉頭、腟、肛門
b. 角化:皮膚
f. 重層立方上皮:汗腺、排出腺、乳腺
g. 重層円柱上皮:男性尿道、感覚器官
h. 移行上皮:膀胱、尿管等の膨張可能な器官
i. 胚性の単純な扁平乃至立方上皮:卵巣。
【0100】
本明細書に記載された方法を用いて治療される対象は、1つまたは複数の急性および/または慢性炎症状態に罹患している、またはその素因/感受性を有する対象であり得る。
【0101】
本開示の方法は、有益な熱的および非熱的効果を誘導し得る。
【0102】
例として、および一教示において、本明細書に記載された方法のいずれかは、円柱上皮を含む組織、例えばGI(胃腸)管の組織中または組織上で発生する状態を治療および/または予防するために使用され得る。
【0103】
マイクロ波エネルギーの投与によって治療、改善および/または予防することができる状態および/または疾患は、例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、短腸症候群、憩室炎、胃腸炎および消化性潰瘍を含む炎症性腸疾患 (IBD) を含み得る。本開示のマイクロ波ベースの方法は、調節不全 (上方調節または下方調節) になり、かつこれらの疾患に関連している、もしくはこれらの疾患のマーカーである遺伝子を、回復および/または正常化することによって、これらの状態のいずれかを治療、改善および/または予防することができる。
【0104】
本明細書に記載されるマイクロ波ベースの方法のいずれかは、組織内の慢性炎症を治療または予防し、関連する転移性癌腫のリスクを低減するために使用することができる。例として、慢性消化管炎症は結腸直腸癌につながる可能性がある;マイクロ波エネルギーを適用して (遺伝子調節によって) 初期の炎症事象を制御することは従って腸直腸癌のリスクを低減させ得る。理論に縛られることは望まないが、マイクロ波エネルギーを使用して異常発現および/または調節不全の遺伝子を正常化することで、組織のホメオスタシスが回復し、組織の調節不全が是正され得る。これにより、調節不全の内因性および外因性経路がリセットされて、組織修復、組織治癒、および/または組織再生を促進させ得る。
【0105】
別の教示では、マイクロ波エネルギーは、単純な立方上皮、例えば膵臓上皮の内層に影響を及ぼす疾患または状態を治療および/または予防するために使用することができる。そのような疾患または状態には、例えば、膵臓癌につながる可能性のある、膵炎のような膵臓上皮の急性および慢性炎症が含まれ得る。ここでもやはり、そして理論に縛られることは望まないが、マイクロ波ベースの治療は、組織の修復、治癒および再生を促進するための、調節不全の内因性および外因性遺伝子経路の調節(例えば正常化/リセット化)を通じた組織ホメオスタシスの回復を介して、このタイプの疾患または状態を治療または予防することができる。
【0106】
別の教示において、本開示のマイクロ波ベースの方法は、並進上皮を含む組織における疾患/状態を治療および/または予防するために使用され得る。そのような疾患および/または状態は、例えば、膀胱裏層の扁平上皮癌腫および転移性膀胱癌をもたらす膀胱の尿路上皮裏層の急性および慢性炎症を含み得る。ここでもやはり、そして理論に縛られることは望まないが、マイクロ波ベースの治療は、組織の修復、治癒および再生を促進するための、調節不全の内因性および外因性遺伝子経路の調節(例えば正常化/リセット化)を通じた組織ホメオスタシスの回復を介して、このタイプの疾患または状態を治療または予防することができる。
【0107】
本開示のマイクロ波ベースの方法は、複数のタイプの上皮、例えば卵巣の単純な扁平乃至立方上皮を含む胚性上皮層を含む組織における疾患または状態を治療または予防するためにも使用され得る。このタイプの疾患または状態は、卵巣癌をもたらす急性または慢性の卵巣上皮炎症を含み得る。理論に縛られることを望まないが、マイクロ波ベースの治療は、組織の修復、治癒および再生を促進するための、調節不全の内因性および外因性遺伝子経路の調節(例えば正常化/リセット化)を通じた組織ホメオスタシスの回復を介して、このタイプの疾患または状態を治療または予防することができる。
【0108】
別の実施形態では、本明細書に開示される方法およびシステムは、非角化重層扁平上皮を含む組織における疾患/状態の治療および/または予防のために投与される。このタイプの組織は口腔、口腔粘膜および/または生殖器組織に認められる。このタイプの疾患および/または状態は、扁平上皮癌腫をもたらし得る扁平苔癬、日光口唇炎、頸部上皮内新生物、膣上皮内新生物、外陰上皮内新生物などの1つまたは複数の炎症性疾患を含み得る。理論に縛られることを望まずに、マイクロ波ベースの治療は、組織の修復、治癒および再生を促進するための、調節不全の内因性および外因性遺伝子経路の調節(例えば正常化/リセット化)を通じた組織ホメオスタシスの回復を介して、このタイプの疾患または状態を治療または予防することができる。
【0109】
本開示のマイクロ波ベースの方法は、皮膚および/または角化重層扁平上皮を含む任意の組織に投与され得る。マイクロ波エネルギーは、例えば乾癬またはアトピー性皮膚炎のような、皮膚組織の持続性炎症の治療および/または予防のために投与され得る。開示された方法は、慢性皮膚炎症が扁平上皮癌 (SCC) および基底細胞癌 (BCC) に発展するのを防止するためにも使用され得る。さらに、開示された方法は、SCCおよびBCCのような上皮癌腫の治療に使用され得る。理論に縛られることを望まずに、マイクロ波ベースの治療は、組織の修復、治癒および再生を促進するための、調節不全の内因性および外因性遺伝子経路の調節(例えば正常化/リセット化)を通じた組織ホメオスタシスの回復を介して、このタイプの疾患または状態を治療または予防することができる。
【0110】
別の教示では、本開示のマイクロ波ベースの方法は、創傷治癒を促進するために投与され得る。例えば、皮膚または結腸等の身体の任意の場所に生じた創傷に本明細書に記載の方法を適用する。創傷治癒は、4つの重要な段階、すなわちホメオスタシス、炎症、増殖フェーズ、および成熟フェーズを含む。それぞれのフェーズが不可欠であるが、そのうちの1つの不均衡が慢性的または持続的な創傷を引き起こすことが非常に多い。例えば、炎症フェーズは創傷部位での過度の出血や感染からの保護をするため、極めて重要である。しかし、それが長期化または過剰になると重度の組織損傷を引き起こし、免疫機能不全を示す慢性炎症につながる。本マイクロ波法システムは、過剰または持続的な慢性炎症の可能性を制御または除去し、それにより組織の修復、治癒および再生を強化するために使用できる。前記方法は、組織の再構築および回復を助けるために、創傷治癒の増殖フェーズを補助し、促進することができる。
【0111】
記載された方法のいずれも、疾患および/または調節不全の組織における免疫調節バイオマーカーの遺伝子発現を調節および/または正常化するために使用することができる。これらの免疫調節マーカーは、例えば、治癒過程の様々な段階を促進する鍵となる免疫調節経路に関与し得る。本明細書に記載されたマイクロ波ベースの方法は、疾患および/または状態を改善する鍵となる免疫調節経路を標的とすることができる。免疫調節マーカーも重要な癌経路にも関与し得る。本明細書に記載される方法は、発癌への進行を防止するために、鍵となる癌経路を標的とすることができる。理論に縛られることなく、マイクロ波エネルギーは、組織のホメオスタシスを回復し、組織の修復、治癒および再生を促進するために、組織の調節不全を是正し、調節不全の内因性および外因性経路をリセットするように作用することができる。
【0112】
マイクロ波エネルギーによって調節される1つまたは複数の遺伝子は、1つまたは複数の組織に影響を及ぼす疾患または状態に直接または間接的に関連し得る。例えば、1つまたは複数の遺伝子は、上皮組織の疾患または状態に関連する1つまたは複数の免疫調節または癌の経路または機構に関与し得る。調節される遺伝子(複数可)は、宿主免疫系に関連する因子をコードまたは提供するものであり得る。例えば、調節される遺伝子(複数可)は、免疫調節性の因子をコードまたは提供するものであり得る。
【0113】
それに加えて、またはそれに代えて、調節される遺伝子(複数可)は、「癌」または「発癌性」遺伝子として分類されるものであり得る。すなわち、それらの発現は、1つ以上のタイプの癌に関連している。
【0114】
理論に縛られることを望まずに、組織へのマイクロ波エネルギーの適用は、その組織内で有益な熱的効果を誘発することができる。これらの効果は、局所的に、または組織内のより広い領域に誘発され得る。マイクロ波エネルギーの適用は、限定されるものではないが、誘電泳動効果、電気泳動効果、電気浸透効果、電気穿孔効果、高周波 (GHz) 機械的共鳴効果(ウイルス粒子の破砕に関連する)、タンパク質反応速度の増強、最適化された免疫調節シグナル伝達、改善された酵素安定性、細胞の取り込みと細胞機能の改善、および大きな分子の均一配向などの有益な非熱的効果を誘発し得る。
【0115】
詳細な説明
ここで、以下の図面を参照して本発明を説明する。
ここで、以下の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】実施形態によるマイクロ波処置システムの概略図。
【
図2】正常(Normal)、疾患(Diseased)、マイクロ波処置(MW treated)の上皮組織におけるIL8遺伝子カウント(Read counts)の例。
【
図3】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織におけるSOCS3遺伝子カウントの例。
【
図4】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織におけるEGR-1遺伝子カウントの例。
【
図5】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織におけるCD79A遺伝子カウントの例。
【
図6】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織におけるIL1B遺伝子カウントの例。
【
図7】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織におけるTNFRSF13C遺伝子カウントの例。
【
図8】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、PI3K経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図9】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、MAPK経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図10】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、Notch経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図11】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、Wnt経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図12】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、RAS経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図13】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、TGFb経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図14】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、Hedgehog経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図15】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、Transcriptional Regulation (KEGG) 経路に関与する遺伝子カウントの例。
【
図16】正常、疾患、およびマイクロ波処置の上皮組織についての、JAK-STAT経路に関与する遺伝子カウントの例。
【発明を実施するための形態】
【0117】
図面の詳細な説明
図1に、実施形態による典型的なマイクロ波処置システム11を示す。このシステムは、マイクロ波エネルギーを供給するためのマイクロ波源12を含む。マイクロ波源12は、エネルギー導管ケーブルのような補助マイクロ波コンポーネント15およびマイクロ波アプリケータ16に接続される。マイクロ波アプリケータ16は、マイクロ波アンテナに関連する。さらに、マイクロ波処置システム11は、ソース12によって提供されるマイクロ波放射の少なくとも一つの特性を制御するために使用されるシステムコントローラ13を使用する。例えば、システムコントローラ13は、ユーザがマイクロ波エネルギーの出力、時間、周波数、波長および/または振幅を調節および最適化することを可能にする。システム11はさらに、組織への効果的なマイクロ波放出送達を維持するようにエネルギーの送達をモニターするためのモニタリングシステム14を含む。
【0118】
本開示による使用のためのマイクロ波エネルギーは、約300 MHz~約300 GHzの周波数で印加され得る。いくつかの実施形態では、マイクロ波エネルギーの周波数は、約900 MHz~約15 GHz、好ましくは約2.45 GHz、約5.8GHz、約6 GHz、約7GHz、約7.5GHz、約8GHz、約8.5GHz(例えば、約7.5GHz~約8.5GHz)、約9GHz、約10GHz、約11GHz、約12GHz、約13GHzまたは約14GHzであり得る。本開示の実施形態によるマイクロ波周波数は、健康な組織内をさらに移動するマイクロ波エネルギーを制限する、例えば5 mm未満に制限するために十分高くあり得、例えば8.0 GHzとし得る。
【0119】
実施形態によるマイクロ波エネルギーは、約0.1Wから約50Wの間の任意の電力で送達され得る。例えば、マイクロ波エネルギーは、約1W、約2W、約5W、約8W、約10W、約15W、約20W、約25W、約30W、約40 W、約50Wの電力で送達され得る。マイクロ波エネルギーは、0.1W区切りの増量で送達され得る。マイクロ波エネルギーは、単一の固定電力でまたは異なる電力の範囲において送達され得る。
【0120】
マイクロ波エネルギーは、約0.1秒~30分の任意の時間を含め、適切な時間にわたり標的組織の温度を上昇させるために投与することができる。例えば、マイクロ波は、約1秒、2秒、5秒、10秒、30秒、60秒から約1分、2分、5分または10分までの任意の時間にわたり適用され得る。マイクロ波処置は、反復用量として投与され得る。例えば、マイクロ波は、それぞれ5秒間持続する5回で、各処置間に20秒の休止を挟んで、適用され得る。休止は、好ましくはユーザインターフェースを使用して制御される、発生器からのマイクロ波放出を無効にすることを表す。マイクロ波処置は、約2回または5回または10回または15回、典型的には3~6回の間の任意の回数だけ適用することができる。休止は、約1秒、5秒、10秒、20秒、60秒、典型的には5秒~20秒の間の任意の長さにわたり得る。
【0121】
マイクロ波放射は、エネルギーを適用して約37℃~約59℃の間に患部組織部分の温度を上昇させるような熱的効果を提供するために使用することができる。例えば、マイクロ波エネルギーを適用して、約42℃~約48℃の間のいずれかの温度に患部組織部分の温度を上昇させ得る。いくつかの実施形態では、代替的に、疾患の重症度および複雑さのような要因に応じて、2つ以上の異なる温度を利用することができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、組織の温度は、処置の全期間にわたり、例えば10分間、任意の適切な温度、例えば43℃に、上昇させて+/- 0.5℃内で一定に保たれ得る
【0123】
いくつかの実施態様において、マイクロ波エネルギーは、一連の交互の高出力および低出力マイクロ波パルスとして、またはプロファイルもしくは処置エンベロープとして投与され、標的組織の温度を上昇させて+/- 0.5℃内に維持させ得る。例えば、20Wを10秒間投与して組織の温度を43℃に上昇させ、次いで2Wを300秒間投与して組織の温度を43℃に維持する。
【実施例】
【0124】
マイクロ波のシステムおよび方法を用いて達成された疾患組織、マイクロ波処置組織および正常組織における遺伝子カウントの調節に関する例がここに提示される。ここでは、正常(normal)(三角形マーカーを用いて図示)は健康な上皮組織を指し、疾患(diseased)(円形マーカーを用いて図示)は疾患の上皮組織を指し、MW処置(MW treated)(菱形マーカーを用いて図示)は、提示されたマイクロ波のシステムおよび方法を用いて処置された上皮組織を指す。本開示は、鍵となる癌経路に関与する遺伝子の更なる例を提供し、開示されたマイクロ波エネルギー技術を用いたそれらの修復をここに提示する。
【0125】
図2において、組織、例として上皮組織における、マイクロ波処置前102およびマイクロ波処置後103のIL8 (インターロイキン8) 遺伝子のカウントが示され、正常組織101、例として健康な上皮組織と比較されている。マイクロ波処置組織は、疾患上皮組織(カウント=510.5)からのIL8遺伝子の異常に上方制御された発現を復元させ、0.05にて統計学的有意として、正常な健康な上皮組織(カウント=7)と同等になるように下方制御した(カウント=9)。IL8は、サイトカインシグナル伝達、宿主病原体相互作用、リンパ球活性化、NLRシグナル伝達、酸化ストレス、Th17分化、Th2分化、TNFファミリーシグナル伝達およびTLRシグナル伝達のような多くの重要な免疫調節経路に関与している。IL8は走化性サイトカイン(ケモカイン)であり、胃腸炎症および悪性腫瘍における炎症の増強および持続において中心的役割を果たす強力な炎症性走化性分子である。さらに、IL8は上皮から間葉様表現型への移行[epithelial-to-mesenchymal transition (EMT)] において重要な役割を果たしており、これは腫瘍細胞の運動性および浸潤性を誘導し、固形癌腫の転移を促進することが知られている[33][34]。
【0126】
同様に、
図3において、SOCS3(Suppressor of cytokine signaling 3)は、正常上皮組織101(カウント=123)と比較して、疾患上皮組織102(カウント=679)において異常に上方制御されている。マイクロ波処置により、遺伝子カウントは下方制御され、0.05にて統計学的有意として、復元された103(カウント=123)。SOCS3は適応免疫系、サイトカインシグナル伝達、宿主‐病原体相互作用、MHCクラスI抗原提示、TNFファミリーシグナル伝達、タイプIインターフェロンシグナル伝達、タイプIIインターフェロンシグナル伝達に関与する重要な免疫学的因子である。さらに、SOCSはサイトカイン媒介STAT3シグナル伝達の重要な生理的調節因子であり、炎症性サイトカインシグナルを核に伝達するうえで主要な役割を果たすことが示されている。例えば、STAT3シグナル伝達は、腸上皮細胞におけるIL‐22シグナル伝達を粘膜創傷治癒に結びつけ上皮修復を促進する[35]。
【0127】
EGR1 (Early growth response protein‐1) のmRNA発現の増加は、転写因子を増加させることが観察されており、上皮炎症状態において上昇することが見出されている[36]。
図4では、本開示で提示されたシステムおよび方法を用いて、疾患組織におけるEGR‐1カウントを0.05の統計学的に有意なレベルで正常化している。EGR‐1カウントは、正常組織121(カウント=49)と比較して疾患上皮組織122(カウント=143)で異常に上方制御されており、マイクロ波処置123(カウント=81)を受けて回復している。
【0128】
図5では、疾患組織におけるCD79A(Cluster of differentiation 79A、B細胞抗原受容体複合体関連タンパク質アルファ鎖およびMB-1膜糖タンパク質としても知られる)カウントが、0.05にて統計学的有意として、マイクロ波処置で回復することが示されている。CD79Aは、適応免疫系、 B細胞受容体シグナル伝達、リンパ球活性化などの様々な重要な免疫調節経路に関与している。CD79Aは、炎症状態の疾患上皮試料で過剰発現することが見出されている[37]。
図15において、疾患上皮組織132(カウント=231)におけるCD79Aカウントは、正常上皮組織131(カウント=33)と比較して異常に上方制御されている。マイクロ波処置により、遺伝子カウントは下方制御され回復している133(カウント=9)。
【0129】
IL1B(インターロイキン1、ベータ)などの炎症性サイトカインは、組織損傷を伴う炎症性上皮組織でしばしば上方制御され、タイトジャンクション蛋白質の誤局在化と発現低下によって特徴付けられる上皮破壊と相関することが示されている[38]。IL1Bの上昇は、腫瘍進行を促進する非小細胞肺癌におけるエピジェネティック修飾を介した上皮-間葉移行記憶表現型の調節にも広く関連付けられてきた[39]。IL1Bは、サイトカインシグナル伝達、宿主-病原体相互作用、自然免疫系、リンパ球活性化、NF-kBシグナル伝達、Th17分化、TNFファミリーシグナル伝達、TLRシグナル伝達などの重要な免疫調節経路に関与している。
図6において、疾患上皮組織142(カウント=60)におけるIL1Bカウントは、正常上皮組織141(カウント=5)と比較して異常に上方制御されている。マイクロ波処理により、遺伝子カウントは下方制御され、0.05の統計学的に有意なレベルで統計学的に有意なレベル0.05で回復されている143(カウント=27)。
【0130】
多面的サイトカインである腫瘍壊死因子 (TNF) は、サイトカイン産生のもう一つの鍵となる調節因子であることが知られており、IBD患者の血清と粘膜の両方で上昇することがしばしば観察されている[40][41]。さらに、TNFファミリーの発現は、上皮腫瘍細胞に由来するがん、例えば卵巣がんと腎がんからの生検で頻繁に検出される[42]。TNFRSF13Cは、サイトカインシグナル伝達、宿主-病原体相互作用、リンパ球活性化、NF-kBシグナル伝達、TNFシグナル伝達などの重要な免疫調節経路を調節する。
図7において、疾患上皮組織152(カウント=7)におけるTNFRSF13Cのカウントは、正常上皮組織151(カウント=119)と比較して異常に上方制御されている。マイクロ波処理により、遺伝子カウントは下方制御され回復されている153(カウント=63)。
【0131】
いくつかの遺伝子は、マイクロ波エネルギーで処置された場合に、より小さな発現変化を有するが、この変化の作用あるいは大きさは、例えば、マイクロ波エネルギー用量を増加させるなどの最適化によって調整できることが理解される。例えば、マイクロ波用量を20%~50%増加させることによって、所与の遺伝子の発現に対するマイクロ波エネルギーの作用を増加させることが可能である。
【0132】
さらに、
図8~
図16において、(マイクロ波処理による)重要な癌経路に関与する遺伝子の回復が示されている。これらの遺伝子は、炎症の慢性段階から発癌および転移への進行において鍵となる役割を果たす。例えば、
図8において、PI3K経路に関与するKIT(がん原遺伝子、受容体チロシンキナーゼ)は、健康な組織と比較して疾患組織で異常に下方制御され、マイクロ波処置により回復されている。同様に、
図9(GADD45B、Growth Arrest And DNA Damage Inducible Beta)、
図10(Notch3)、
図11(CCND2、サイクリンD2)、
図12(BAD、BCL2 Associated Agonist Of Cell Death)、
図13(ID4、Inhibitor Of DNA Binding 4, HLH Protein、HLHタンパク質)、
図14(WNT5A、Wnt Family Member 5A)、
図15(RUNX1T1、RUNX1 Partner Transcriptional Co-Repressor 1)、および
図16(AKT3、プロテインキナーゼB、PKB)は、それぞれ、鍵となる癌経路であるMAPK、NOTCH、APC(Wnt)、RAS、TGFb、Hedgehog、Transcriptional Regulation(KEGG)、およびJAK-STATに関与する遺伝子の回復を示している。病変組織における癌経路に関与する遺伝子の回復は、例えば、そのような組織が悪性癌に進展するのを防ぐことができる。
【0133】
一つの遺伝子が複数の癌経路に関与し、例えばAKT3、プロテインキナーゼB、PKBはPI3K、RAS、MAPKおよびJAK-STATに関与するが、容易にするために、各癌経路が単一の遺伝子例を用いて示されている。
【0134】
完全を期すために、マイクロ波で調節される遺伝子の1つ以上に関連する経路について簡単に説明する。
【0135】
PI3K:ホスファチジルイノシトール3'-キナーゼ (PI3K) -Aktシグナル伝達経路は、転写、翻訳、増殖、成長、アポトーシス、タンパク質合成、代謝 細胞周期および生存などの基本的な細胞機能を調節する。
【0136】
MAPK:mitogen-activated protein kinase(MAPK) カスケードは、細胞の増殖、分化および移動を含む様々な細胞機能に関与する高度に保存されたモジュールである。異常なMAPKシグナル伝達は、増加されたまたは制御不能な細胞増殖およびアポトーシスに対する抵抗性につながり得る。
【0137】
Notch:適切な胚発生に不可欠な細胞間シグナル伝達機構。Notch蛋白質は一回貫通型受容体であり、切断された状態で細胞膜に輸送される。Notch細胞内ドメイン (NICD) は核に移行し、そこでDNA結合蛋白質CSLと複合体を形成し、CSLからヒストンデアセチラーゼ(HDAC) ‐コリプレッサー (CoR) 複合体を切り離す。Notchシグナル伝達経路は発癌的または腫瘍抑制的のいずれかに作用し得る。
【0138】
APC (Wnt):Wnt蛋白質は、多くの異なる種および器官において、細胞運命の特定、前駆細胞増殖および非対称細胞分裂の制御などの基本的な発生過程に必要な分泌モルフォゲンである。
【0139】
RAS:Ras蛋白質は、細胞の増殖、生存、成長、移動、分化または細胞骨格動態を調節するシグナル伝達経路の分子スイッチとして機能するGTPアーゼである。
【0140】
TGF‐B:TGFベータ、アクチビンおよび骨形成蛋白質 (BMP) を含むtransforming growth factor-beta(TGFベータ)ファミリーメンバーは、構造的に関連した分泌サイトカインである。増殖、アポトーシス、分化および移動のような広範囲の細胞機能がTGFベータファミリーメンバーによって調節される。
【0141】
HedgeHog:分泌シグナル伝達蛋白質のHedgeHog (Hh) ファミリーは、発生において重要な役割を果たし、様々な組織および器官の形態形成を調節する。Hhシグナル伝達は成体組織における幹細胞増殖の制御にも関与しており、Hh経路の異常な活性化は複数のタイプのヒト癌と関連している。Hhファミリーのメンバーはpatched (ptc) に結合し、それによってsmoothened (smo) を放出してシグナルを伝達する。
【0142】
Transcriptional Regulation (KEGG):様々な癌において転写的に誤調節されることが知られている経路の集合。
【0143】
JAK/STAT:Janus kinase/signal transducers and activators of transcription (JAK/STAT) 経路は、動物における発生とホメオスタシスのための多数のシグナルを変換するのに用いられる多面的カスケードである。それは、さらなる転写因子の活性化につながる広範なサイトカインと成長因子の主要なシグナル伝達機構である。
【0144】
RAS:Ras蛋白質は、細胞の増殖、生存、成長、移動、分化または細胞骨格動態を調節するシグナル伝達経路の分子スイッチとして機能するGTPアーゼである。
【0145】
本明細書に記載されるシステムおよび方法は、表2に列記された1つまたは複数の遺伝子の発現を調節するために適用することができる。マイクロ波エネルギーは、免疫調節経路に関与する1つまたは複数の遺伝子の発現を回復するために使用することができる。
【0146】
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