(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】抗ウイルス剤としての新規アザインドール誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240426BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240426BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20240426BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240426BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240426BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
C07D471/04 CSP
A61P31/12
A61K31/437
A61K45/00
A61P31/14
A61P31/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572556
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 FR2022050977
(87)【国際公開番号】W WO2022243648
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】521240402
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブリアン,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】クロップ,カミーユ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA082
4C084ZA212
4C084ZB072
4C084ZB082
4C084ZB332
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための式(I)の化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはその混合物。
【化1】
(式中、
Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、
Yは、-CH
2OH、-CH=NOH、-CH
2NH
2、任意に一置換又は多置換されたアリール、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリール、及び-L-(CH
2)p-Wから選択され、
-Lは-C(O)NH-、-CH2NH-、-CH=N-、-NHC(O)-、又は-CH2N=CH-を表し、
-pは0~2の整数であり、
-Lが-CH
2NH-、-CH=N-、又は-CH
2N=CH-を表す場合、Wは、
●C
1~C
6アルキル、好ましくはメチル、
●C
6~C
10アリール、好ましくは、有利には以下から独立して選択される1個又は2個の基で任意に一置換又は多置換されたフェニル、及び
(○ハロゲン原子、
○ヒドロキシル、
○C
1~C
6アルコキシル、好ましくはメトキシ、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC
1~C
6アルキル、好ましくはトリフルオロメチル、及び
○N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール、特に、N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール基、例えばトリアゾール、好ましくは1,2,4-トリアゾール)、
●N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール、例えばフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール、ベンゾイミダゾール(前記ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ハロゲン原子、
○オキソ基、
○ヒドロキシル、
○C
1~C
6アルコキシル、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC
1~C
6アルキル、及び
○ハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリール、好ましくは、フルオロフェニル(特に4-フルオロフェニル)、又はメチルなどのC
1~C
6アルキルで置換されたテラゾールから独立して選択される1~4個の基で任意に置換されている)から選択され、
-Lが-C(O)NH-又は-NHC(O)-を表す場合、Wは、
●任意に一置換又は多置換され、有利には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、C
1~C
6アルキル、又はC
1~C
6アルコキシル、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル、メトキシ又はトリフルオロメチル、更により好ましくはヒドロキシルで任意に置換されたC
6~C
10アリール、
●N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール、例えばフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール、ベンゾイミダゾール(前記ヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ハロゲン原子、
○ヒドロキシル、
○オキソ基、
○C
1~C
6アルコキシル、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC
1~C
6アルキル、及び
○ハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリール、好ましくはフルオロフェニル(特に4-フルオロフェニル)から独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換されている)、及び
●C(O)NHR又はNHC(O)R基で任意に置換されたC
3~C
6シクロアルキル(式中、Rは、ハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリールを表す)、特にハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたフェニル、好ましくはハロゲン原子で任意に置換されたフェニル、特に式
【化2】
を有する置換シクロプロピルから選択され、
Cyは、フェニル、又はN、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールを表し、前記ヘテロアリールはオキソ基で任意に置換されている)。
【請求項2】
式(Ia)のものであり、
【化3】
式中、X、Y及びCyは、請求項1で定義した通りである、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
Cyがフェニル、チオフェン、フラン、ピリジン又はピリミジン基、特にフェニル又はチオフェンを表すことを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
Xがハロゲン、特にフッ素を表すことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
YがL-(CH
2)
p-Wを表し、LがCH2NHを表し、pが0~2の整数であり、Wが
-臭素原子、フッ素原子、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、又はトリアゾール基から独立して選択される1個又は2個の基で任意に置換されたフェニル、及び
-フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンズイミダゾールから選択されるヘテロアリール(前記ヘテロアリールは、ハロゲン原子(特にフッ素又は臭素)、ヒドロキシル、オキソ基、メトキシ、メチル、トリフルオロメチル、フェニル及びフルオロフェニルから独立して選択される1~4個の基で任意に置換されている)から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
Wがイミダゾールであることを特徴とする、請求項5に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
YがNHC(O)-Wを表し、Wが、
-ハロゲン原子で任意に置換されたC
6~C
10アリール、好ましくはフルオロフェニル、特に4-フルオロフェニル、及びメチルから独立して選択される1~2個の置換基で任意に置換された2(1H)-ピリジノン、及び
--C(O)NHR又は-NHC(O)R基で任意に置換されたC
3~C
6シクロアルキル(式中、Rは、C
6~C
10アリールを表す)、特にハロゲン原子で任意に置換されたフェニル、特に式
【化4】
の置換シクロプロピルから選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
【化5】
から選択される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
有効成分としての請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための医薬組成物。
【請求項10】
抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、免疫不全疾患の治療剤、及び疼痛治療剤から選択される追加の治療剤を更に含む、請求項9に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記ウイルス感染は、フラビウイルス属(デング熱ウイルス、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、クンジンウイルスなど)、アルファウイルス属(チクングニアウイルス、マヤロウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、東部馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスなど)、フィロウイルス属(エボラウイルス、マールブルグ熱ウイルスなど)、アレナウイルス属(ラッサ熱ウイルス、フニンウイルス、アマパリウイルスなど)、ピコルナウイルス属(水疱性口内炎ウイルスなど)、
パラミクソウイルス属(インフルエンザウイルスなど)、又はコロナウイルス属(SARS-COV2など)によるものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のための化合物、又は請求項9若しくは10に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス感染治療用のAXLキナーゼ阻害剤として有用な7-アザインドール由来の化合物に関する。本発明はまた、それらの調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
AXLは、TYRO-3、AXL、MERからなるTAMファミリーに属する受容体チロシンキナーゼ(Receptor Tyrosine Kinase、RTK)である。AXLは、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)を患う患者で最初に発見され実証され、デング熱、ジカウイルス、チクングニア熱、エボラ熱などのウイルス感染におけるAXL受容体の関与は文献に記載されている(Chen,J.et al.Nature Microbiology,2018,3,pp.302-309、Fedeli,C.et al.Journal of Virology,2018,92:e01613-17、Hastings,A.K.et al.,iScience,2019,13pp.339-350、Meertens,L.et al.,Cell Reports,2017,18,3,pp.324-333)。この受容体は、Gas6アダプターを介してウイルスエンベロープに存在するホスファチジルセリンと相互作用することにより、エンベロープウイルスの細胞標的への付着を促進する。したがって、AXLは、細胞標的におけるエンベロープウイルスのエンドサイトーシスを刺激する。この相互作用中のAXLの関与は、AXL細胞質内ドメインのリン酸化を刺激し、関連するシグナル伝達経路を活性化する。これらのシグナルは、インターフェロンの産生及び関連する抗ウイルス応答を中和し、これらのウイルスが宿主の免疫制御から逃れることを促進する。
【0003】
現在まで、AXLに対していくつかの活性キナーゼ阻害剤が存在するが(Myer et al.,J.Med.Chem.(2015),59(8):3593-3608)、このキナーゼに対して真の選択性又は特異性を持つものはない。ほとんどの場合、これらのRTK間の配列の類似性により、AXLでの活性はMET又はMERでの所望の主要活性に対して二次的である。これは、すでに市販されている多標的キナーゼ阻害剤又はMTKIであるボスチニブ若しくはカボザンチニブ、又はBMS777607(現在臨床第2相試験中)の場合に特に当てはまる。これは、AXL/DDR1/FLT3/KIT/MEK/MET/ROS1及びTIE1などの多数のキナーゼを阻害することにより、比較的幅広い阻害プロファイルを有する7-アザインドール誘導体NPS-1034の場合にも当てはまる。
【0004】
【0005】
もう1つのAXLキナーゼ阻害剤はR428(BGB324とも呼ばれる)であり、現
在臨床段階にある。この化合物は、現在市販されているキナーゼ阻害剤とは構造が大きく異なるが、ABL/KIT/JAK2-3/LCK/PDGFRB/TIE2などの他のキナーゼに対しても活性であることが明らかにされている。
【0006】
【0007】
したがって、ウイルス感染に関してより選択的かつ効果的な新規のAXL阻害剤化合物が必要とされている。
【0008】
したがって、本発明は、抗ウイルス剤として使用するための、AXLキナーゼを強力に阻害する新規7-アザインドール誘導体を提案する。
【0009】
このタイプの構造に対する非常に特異的かつユニークな阻害プロファイルのおかげで、これらの化合物は、AXL受容体を使用して増殖するウイルスによって引き起こされる感染の治療に使用することができる。ウイルス感染と闘うために、AXLのリン酸化を阻害することによって、これらの化合物は細胞標的におけるエンベロープウイルスのエンドサイトーシスを阻害することと、AXLによって制御される細胞内シグナルを中和することの両方で作用し、インターフェロンの産生及び宿主の抗ウイルス応答を阻害する。したがって、本発明の阻害剤は、AXLが関与する疾患、特にウイルス感染、特に細胞へのウイルス侵入の治療に使用することができる。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明はウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはその混合物に関し、
【0011】
【化3】
式中、
Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、
Yは、-CH
2OH、-CH=NOH、-CH
2NH
2、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリールアリール、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリール、及び-L-(CH
2)p-Wから選択され、
-Lは-C(O)NH-、-CH
2NH-、-CH=N-、-NHC(O)-、又は-CH
2N=CH-を表し、
-pは0~2の整数であり、
-Lが-CH
2NH-、-CH=N-、又は-CH
2N=CH-を表す場合、Wは、
●C
1~C
6アルキル、
●任意に一置換又は多置換されたC
6~C
10アリール、及び
●N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール(このヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換されている)から選択され、
-Lが-C(O)NH-又は-NHC(O)-を表す場合、Wは、
●任意に一置換又は多置換されたC
6~C
10アリール、
●N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール(このヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換されている)、及び
●C(O)NHR又はNHC(O)R基で任意に置換されたC
3~C
6シクロアルキル(式中、Rは、ハロゲン原子及び/又はC1~C6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリールを表す)、特に以下の基から選択され、
【0012】
【0013】
Cyは、フェニル基、又はN、O若しくはSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール基を表し、このヘテロアリールは、オキソ基で任意に置換されている。
【0014】
本発明はまた、有効成分としての本発明による化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するため医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
原則として、以下の用語及び定義を使用する。
【0016】
本発明における「ペプチドカップリング」という表現は、アミド-NH-C(O)-結合を形成する反応を指す。この反応で使用される技術はペプチド合成に共通であり、すなわち、カルボン酸を活性化してアミンと反応させることである。したがって、本発明で使用されるペプチドカップリング反応はペプチド合成に由来し、本発明の主題に直接適用で
きる。
【0017】
ペプチドカップリング反応は当業者に周知であり、特に、カップリング試薬、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又は1-エチル-3-(3’-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、又はN-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボジイミド)、又はベンゾトリアゾール(例えば、O-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム(TBTU)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,2,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-テトラメチルテトラフルオロボレート(TBTU))、又はN-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)/EDCI混合物を用いて、溶媒、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジノン(NMP)中で、好ましくは20℃~150℃の温度で実施することができる。
【0018】
あるいは、ペプチドカップリングは、まず塩化アシル(特に塩化チオニル又は塩化アセチルの存在下)又は対応する無水物(例えば、無水酢酸又はイソプロピルの存在下)に変換することによってカルボン酸を活性化し、次に、好ましくは反応中に放出される酸(特に塩化アシルの場合はHCl)を中和する塩基の存在下で、所望のアミンと反応させることによって行われる。
【0019】
C(O)という用語は「C=O」と同等である。
【0020】
本発明における「アルキル基」又は「アルキル」という表現は、別段の定義がない限り、1~6個の炭素原子を含む飽和直鎖又は分岐脂肪族基を意味する。本発明の主題によって包含されるアルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、イソプロピル基である。
【0021】
いくつかの実施形態では、アルキル基の1つ以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されることが指定される。この場合、好ましくは、最大でも1~3個の水素原子が影響を受ける。その一例はCH2CF3基である。
【0022】
本発明における「アリール基」又は「アリール」という表現は、6~10個の炭素原子を含む(単環式又は多環式)環式芳香族基を意味する。本発明の主題によって包含されるアリール基の例は、フェニル基、ナフチル基、好ましくはフェニル基である。
【0023】
本発明における「ヘテロアリール基」又は「ヘテロアリール」という表現は、2~9個の炭素原子と、窒素、酸素、又は硫黄から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員(単環式又は多環式)芳香族環式基を意味する。ヘテロアリール基の例は、フラン基、ピロール基、チオフェン基、チアゾール基、イソチアゾール基、イミダゾール基、オキサゾール基、イソオキサゾール基、ピラゾール基、ピリジン基、ピラジン基、ピリダジン基、ピリミジン基、キノリン基、インドール基、キノキサリン基、ベンゾフラン基、ジヒドロベンゾフラン基、ベンゾジオキソール基、ベンゾトリアゾール基、ベンゾイミダゾール基であり、好ましくは、ピロール、イミダゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンゾイミダゾールから選択される。
【0024】
「シクロアルキル」又は「シクロアルキル基」という表現は、別段の定義がない限り、3~6個の炭素原子を含む環式飽和脂肪族基を意味する。本発明の主題によって包含されるシクロアルキル基の例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基である。好ましくは、シクロプロピルである。
【0025】
本発明における「ハロゲン原子」という表現は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を意味する。好ましくは、臭素又はフッ素、特にフッ素である。
【0026】
本発明における「アルコキシル基」又は「アルコキシル」という表現は、酸素結合アルキル基を意味する。アルコキシル基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基である。好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基である。
【0027】
本発明における「アリールオキシ基」という表現は、酸素原子に結合したアリール基を意味する。アリールオキシ基の例は、フェニルオキシ基である。
【0028】
本発明における「ヒドロキシル基」又は「ヒドロキシル」という表現は、OHを指す。
【0029】
「オキソ基」という表現は、置換基:=Oを意味する。
【0030】
本発明における「任意に置換されたアリール基又はヘテロアリール基」という表現は、ハロゲン原子、ニトロ基-(NO2)、シアノ(CN)基、C1~C6アルコキシル、C5~C10アリールオキシ、1個以上の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC1~C6アルキル、ヘテロアリール、ヒドロキシル、C1~C6-CONH-アルキル基、C1~C6-NHCOアルキル基、及びNR2R3基(式中、R2及びR3は独立してC1~C6アルキル基、又はハロゲン原子及び/又はC1~C6アルキルで任意に置換されたC6~C10アリール基を表す)から独立して選択される1つ以上(好ましくは1~4個、更により好ましくは1~2個)の置換基で任意に置換されたアリール又はヘテロアリールを指す。
【0031】
好ましくは、置換基は、
○ハロゲン原子、特にフッ素又は塩素、
○オキソ基、
○ヒドロキシル、
○C1~C6アルコキシル、特にメトキシ、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC1~C6アルキル、好ましくはメチル基又はCH2CF3、及び
○ハロゲン原子(特にフッ素又は塩素)及び/又はアルキルC1~C6で任意に置換されたC6~C10アリール、例えばフルオロフェニル(好ましくは4-フルオロフェニル)又はメチルフルオロフェニル(例えば、4-フルオロ-2-メチルフェニル)から選択される。
【0032】
本発明における「7-アザインドール」という表現は、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンを指す。
【0033】
【0034】
本発明において、「薬学的に許容される」とは、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にもその他の点でも望ましくないものではなく、人間の医薬品用途だけでなく、獣医学的用途にも許容される医薬組成物の調製に有用なものを指す。
【0035】
本発明において、「医薬組成物」という表現は、有効量の少なくとも1種の本発明の化合物及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤からなる任意の組成物を指す。このような賦形剤は、医薬品形態及び所望の投与方法に応じて、当業者に通常知られている賦形剤から選択される。
【0036】
化合物の「薬学的に許容される塩」は、本明細書で定義した薬学的に許容され、かつ親化合物の所望の薬理活性を有する塩を指す。そのような塩は、以下を含む。
(1)水和物及び溶媒和物、
(2)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの薬学的に許容される無機酸、又は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2-ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、ジベンゾイル-L-酒石酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸、トリフルオロ酢酸などの薬学的に許容される有機酸と形成された薬学的に許容される酸付加塩、あるいは
(3)親化合物中に存在する酸プロトンが金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオンで置換されるか、又は、薬学的に許容される有機塩基若しくは無機塩基と配位したときに形成される薬学的に許容される塩基付加塩。許容される有機塩基としては、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N-メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが挙げられる。許容される無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、及び水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0037】
本発明における「エナンチオマー混合物」という表現は、エナンチオマーの任意の混合物を指す。この混合物は、ラセミ体、すなわち、各エナンチオマーが50/50重量(w/w)であってもよく、又は、例えば95%以上、好ましくは98%以上、更により好ましくは99%以上のエナンチオマー過剰率を得るためにエナンチオマーの一方又は他方が豊富な非ラセミ体であってもよい。
【0038】
本発明における「ジアステレオマー混合物」という表現は、比率に関係なく、ジアステレオマーの任意の混合物を指す。
【0039】
「治療」という表現はあらゆる種類の動物、好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトに適用される。ヒト以外の動物の治療の場合、この表現は獣医学的治療を指す。
【0040】
したがって、本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはその混合物に関し、
【0041】
【化6】
式中、
Xは水素原子又はハロゲン原子を表し、
Yは、-CH
2OH、-CH=NOH、-CH
2NH
2、任意に一置換又は多置換されたアリール、任意に一置換又は多置換されたヘテロアリール、及び-L-(CH
2)p-Wから選択され、
-Lは-C(O)NH-、-CH
2NH-、-CH=N-、-NHC(O)-、又は-CH
2N=CH-を表し、
-pは0~2の整数であり、
-Lが-CH
2NH-、-CH=N-、又は-CH
2N=CH-を表す場合、Wは、
●C
1~C
6アルキル、好ましくはメチル、
●C
6~C
10アリール、好ましくは、有利には以下から独立して選択される1個又は2個の基で任意に一置換又は多置換されたフェニル、及び
○ハロゲン原子、
○ヒドロキシル、
○C
1~C
6アルコキシル、好ましくはメトキシ、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC
1~C
6アルキル、好ましくはトリフルオロメチル、及び
○N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール、特に、N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5員ヘテロアリール基、例えばトリアゾール、好ましくは1,2,4-トリアゾール)、
●N、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール、例えばフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール、ベンゾイミダゾール(このヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ハロゲン原子、
○オキソ基、
○ヒドロキシル、
○C
1~C
6アルコキシル、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC
1~C
6アルキル、及び
○ハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリール、好ましくは、フルオロフェニル(特に4-フルオロフェニル)、又はメチルなどのC
1~C
6アルキルで置換されたテラゾールから独立して選択される1~4個の基で任意に置換されている)から選択され、
-Lが-C(O)NH-又は-NHC(O)-を表す場合、Wは、
●任意に一置換又は多置換され、有利には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、C
1~C
6アルキル、又はC
1~C
6アルコキシル、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル、メトキシ又はトリフルオロメチル、更により好ましくはヒドロキシルで任意に置換されたC
6~C
10アリール、
●N、O及びSから独立して選択される1~2個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリール、例えばフラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール、ベンゾイミダゾール(このヘテロアリールは、任意に一置換又は多置換され、有利には、
○ハロゲン原子、
○ヒドロキシル、
○オキソ基、
○C
1~C
6アルコキシル、
○1個又は数個の水素原子がフッ素原子で任意に置換されたC
1~C
6アルキル、及び
○ハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリール、好ましくはフルオロフェニル(特に4-フルオロフェニル)から独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換されている)、及び
●C(O)NHR又はNHC(O)R基で任意に置換されたC
3~C
6シクロアルキル(式中、Rは、ハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたC
6~C
10アリールを表す)、特にハロゲン原子及び/又はC
1~C
6アルキルで任意に置換されたフェニル、好ましくはハロゲン原子で任意に置換されたフェニル、特に以下の式を有する置換シクロプロピルから選択され、
【0042】
【化7】
Cyは、フェニル、又はN、O及びSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~10員ヘテロアリールを表し、このヘテロアリールはオキソ基で任意に置換されている。
【0043】
本発明による式(I)の化合物は、互変異性体、エナンチオマー又はジアステレオ異性体などの立体異性体又は立体異性体の混合物の形態であってもよい。
【0044】
本発明の特定の実施形態において、本発明の化合物は、式(Ia)のものであり、
【0045】
【化8】
式中、X、Y及びCyは、上記及び下記で定義する通りである。
【0046】
特定の実施形態では、Xはハロゲン、特にフッ素を表す。
【0047】
特定の実施形態では、Xは水素を表す。
【0048】
Cyは、好ましくは、フェニル、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール、チオフェン、ピリジン、2(1H)-ピリジノン、4(1H)-ピリジノン、ピリミジン、ピリミジン-2,4-ジオン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール又はベンズイミダゾールを表す。いくつかの実施形態では、Cyは、フェニル、又はN、O若しくはSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む単環式5~7員ヘテロアリールを表す。したがって、更により好ましくは、Cyは、フェニル、チオフェン、フラン、ピリジン又はピリミジンを表す。更により好ましくは、Cyはフェニル、チオフェン、ピリジン又はピリミジンを表す。特に、Cyはフェニル又はチオフェンを表す。
【0049】
特定の実施形態では、Yは、-CH=NOH、CH2NH2、任意に一置換又は多置換されたアリール又はヘテロアリールを表す。
【0050】
別の特定の実施形態では、Yは-CH2OHを表す。
【0051】
別の特定の実施形態では、Yは-L-(CH2)p-Wを表し、L、p及びWは上記又は下記で定義する通りである。
【0052】
例えば、Lが-CH2NH-、-CH=N-、又は-CH2N=CH-、好ましくは-CH2NH-を表す場合、pは0~2であり、好ましくは1又は2に等しく、好ましくは1であり、Wは有利には、以下から選択される:
●臭素原子、フッ素原子、ヒドロキシル、メトキシ、トリフルオロメチル、及びトリアゾール、好ましくは臭素原子、フッ素原子、ヒドロキシル、メトキシ及び1,2,4-トリアゾールから独立して選択される1又は2個の基で任意に置換されたフェニル、及び
●フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンズイミダゾール、好ましくは、インドール、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール及びピラゾールから選択されるヘテロアリール(このヘテロアリールは、ハロゲン原子(特にフッ素又は臭素)、オキソ基、ヒドロキシル、メトキシ、メチル、トリフルオロメチル、フェニル及びフルオロフェニル、特にメチル、フェニル及び4-フルオロフェニルから独立して選択される1~4個の基で任意に置換されている)。
【0053】
特に、本実施形態では、Wは、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3-オ
キソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール、チオフェン、ピリジン、2(1H)-ピリジノン、4(1H)-ピリジノン、ピリミジン、ピリミジン-2,4-ジオン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール、及びベンゾイミダゾールから選択することができ、メチル、フェニル及び4-フルオロフェニルから独立して選択される1~4個の基で任意に置換されている。
【0054】
特に、LがCH2NH、CH=N又はCH2N=CH、好ましくはCH2NHを表す場合、pは好ましくは1又は2、特に1に等しく、その場合、Wは好ましくは以下から選択される。
【0055】
【0056】
更により好ましくは、Wはイミダゾール、特に非置換イミダゾールである。
【0057】
Lが-CH2NH-、-CH=N-、又は-CH2N=CH-、好ましくは-CH2NH-を表す実施形態では、Xは好ましくはハロゲン、特にフッ素を表し、Cyは有利には、フェニル、又はN、O若しくはSから独立して選択される1~3個のヘテロ原子を含む単環式5~7員ヘテロアリール、特にチオフェンを表す。
【0058】
更に、Lが-C(O)NH-又は-NHC(O)、好ましくは-NHC(O)-を表す場合、pは0~2であり、好ましくは0又は1、特に0に等しく、Wは有利には以下から選択される:
●有利には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、C1~C6アルキル、又はC1~C6アルコキシル、好ましくはフッ素原子、ヒドロキシル、メトキシ又はトリフルオロメチル、更により好ましくはヒドロキシルで任意に一置換又は多置換されたフェニル又はナフタレン、
●フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール及びベンズイミダゾールから選択されるヘテロアリール(このヘテロアリールは、
○ハロゲン原子、特にフッ素、
○ヒドロキシル、
○オキソ基、
○メトキシ、
○メチル又はトリフルオロメチル、及び
○ハロゲン原子及び/又はC1~C6アルキルで任意に置換されたC6~C10アリール、好ましくはフルオロフェニル(特に4-フルオロフェニル)から独立して選択される1~4個の置換基で任意に置換されている)、及び
●-C(O)NHR又は-NHC(O)R基で任意に置換されたC3~C6シクロアルキル(式中、Rは、ハロゲン原子及び/又はC1~C6アルキルで任意に置換されたC6~C10アリールを表す)、特に以下の式を有する置換シクロプロピル。
【0059】
【0060】
特に、本実施形態では、Wは、フラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール、チオフェン、ピリジン、2(1H)-ピリジノン、4(1H)-ピリジノン、ピリミジン、ピリミジン-2,4-ジオン、ベンゾフラン、ベンゾジオキソール、インドール、及びベンゾイミダゾールから選択することができ、
○ハロゲン原子、特にフッ素、
○メチル、及び
○ハロゲン原子で任意に置換されたC6~C10アリール、好ましくはフルオロフェニル、特に4-フルオロフェニルから独立して選択される1~4個の基で任意に置換されている。
【0061】
有利には、Lが-C(O)NH-又は-NHC(O)、好ましくは-NHC(O)-を表す場合、pは好ましくは0又は1、特に0に等しく、Wは有利には以下から選択される:
●以下から独立して選択される1~4個、特に1~2個の置換基で任意に置換された2(1H)-ピリジノン、
○ハロゲン原子で任意に置換されたC6~C10アリール、好ましくはフルオロフェニル、特に4-フルオロフェニル、及び
○メチル、
●-C(O)NHR又は-NHC(O)R基で任意に置換されたC3~C6シクロアルキル(式中、RはC6~C10アリール)、特にハロゲン原子で任意に置換されたフェニル、特に以下の式の置換シクロプロピル。
【0062】
【0063】
特に、LがC(O)NH-又は-NHC(O)-、好ましくは-NHC(O)-)を表す場合、pは好ましくは0又は1、特に0に等しく、Wは有利には、
【0064】
【0065】
Lが-C(O)NH-又は-NHC(O)、好ましくは-NHC(O)を表す実施形態において、Xは水素原子又はハロゲン原子、特にフッ素を表し、Cyは有利にはフェニルを表す。
【0066】
好ましくは、化合物は、
【0067】
【0068】
【0069】
組成物及び治療用途
本発明の化合物は、AXL受容体を阻害する。AXLは多くの生物学的プロセスに関与し、治療的に検証された標的であるため、本発明の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩、又は以下に定義する本発明の組成物は、特に感染サイクルがAXL及び関連するシグナル伝達に依存するウイルス感染の治療において薬剤として有用である。
【0070】
本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための、上記で定義した式(I)の化合物に関する。
【0071】
より具体的には、この化合物は、活性成分としての少なくとも1種の上記の式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を調製するために使用することができる。したがって、本発明は、有効成分としての本発明による式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、ウイルス感染の予防及び/又は治療に使用するための医薬組成物に関する。上記賦形剤は、所望の医薬品形態及び投与様式に従って当業者に周知の通常の賦形剤から選択される。
【0072】
本発明による医薬組成物は、典型的には抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、免疫不全疾患の治療剤、及び疼痛治療剤から選択される追加の治療剤を更に含んでもよい。特に、それはウイルス感染に対する治療に有用な薬剤である。
【0073】
したがって、本発明の1つの目的は、ウイルス感染の予防及び/又は治療における、上記で定義した式(I)の化合物又は上記で定義した医薬組成物の用途に関する。
【0074】
換言すれば、本発明は、ウイルス感染の予防及び/又は治療用の薬剤を調製するための、上記で定義した式(I)の化合物又は上記で定義した医薬組成物の用途に関する。
【0075】
本発明による式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は本発明による医薬組成物は、フラビウイルス属(デング熱ウイルス、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、クンジンウイルスなど)、アルファウイルス属(チクングニアウイルス、マヤロウイルス、セムリキ森林ウイルス、シンドビスウイルス、東部馬脳炎ウイルス、西部馬脳炎ウイルス、ベネズエラ馬脳炎ウイルスなど)、フィロウイルス属(エボラウイルス、マールブルグ熱ウイルスなど)、アレナウイルス属(ラッサ熱ウイルス、フニンウイルス、アマパリウイルスなど)、ピコルナウイルス属(水疱性口内炎ウイルスなど)、パラミクソウイルス属(インフルエンザウイルスなど)、又はコロナウイルス属(SARS-COV2など)によるウイルス感染の予防及び/又は治療に特に有用である。
【0076】
特定の実施形態では、本発明は、コロナウイルス、特にSARS-Cov2によるウイルス感染の予防及び/又は治療における、上記で定義した式(I)の化合物又は上記で定義した医薬組成物に関する。
【0077】
本発明はまた、
a)有効成分としての本発明による化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される賦形剤を含む第1組成物と、
b)典型的には抗ウイルス剤、抗炎症剤、免疫調節剤又は免疫抑制剤、免疫不全疾患の治療剤、及び疼痛治療剤から選択される追加の治療剤、好ましくは、ウイルス感染に対する治療に有用な薬剤を含む第2組成物(別個使用、同時使用、又は連続使用のための組み合わせ製品として)とを含むキットにも関する。
【0078】
上記キットは、特にウイルス感染、特に上記で定義したウイルス感染の予防及び/又は治療のための薬剤として有用である。
【0079】
本発明による医薬組成物は、静脈内若しくは皮内経路などの非経口的に、局所的に、経口的に、又は経鼻的に投与することができる。
【0080】
非経口的に投与できる形態には、薬理学的に相溶性のある分散剤及び/又は湿潤剤を含み得る水性懸濁液、等張食塩水又は滅菌注射可能溶液が含まれる。経口的に投与できる形態には、錠剤、軟ゲルカプセル又は硬ゲルカプセル、粉末、顆粒、経口溶液及び懸濁液が含まれる。経鼻的に投与できる形態には、エアロゾルが含まれる。局所的に投与できる形態には、パッチ、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、スプレー、及び点眼薬が含まれる。
【0081】
好ましくは、本発明の化合物又は組成物は、経口又は非経口に(特に静脈内)投与される。
【0082】
本発明の化合物の有効量は、例えば、選択された投与経路、体重、年齢、性別、治療す
べき病状の進行状態、及び治療すべき個体の感受性など、多数のパラメータに応じて変化する。
【0083】
本発明はまた、その別の態様によれば、上記の病状を予防及び/又は治療するための方法に関し、この方法は、予防及び/又は治療を必要とする患者に、有効量の本発明による化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は本発明による組成物を、好ましくは非経口(特に静脈内)又は経口的に投与することを含む。
【0084】
本発明の化合物の調製方法
本発明はまた、特に5-ブロモ-3-ヨード-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(II)から上記化合物を調製する方法にも関する。
【0085】
第1実施形態によれば、本発明に係る方法が図式1に示される。
【0086】
【0087】
図式1
式中、X及びCyは上記で定義した通りであり、Yは-CHO、-CN、-CH2OH、-CO2H又は-NO2からの基である。
【0088】
この方法は少なくとも以下のステップを含む:
a)水素化ナトリウムなどの塩基の存在下で、5-ブロモ-3-ヨード-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(II)を、例えばトルエン-4-スルホニルクロリドを用いてトシル化して、中間体(III)を得る。
b)パラジウムジクロロ[1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン](Pd(dppf)Cl2)のようなパラジウム触媒の存在下で、式(IV)(式中、Uはボ
ロン酸又はそのピナコールエステルを表す)の中間体との鈴木-宮浦カップリング反応により、式(V)の化合物を得る。
c)パラジウムジクロロ[1,1′-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン](Pd(dppf)Cl2)のようなパラジウム触媒の存在下で、式(VI)(式中、U’はボロン酸又はそのピナコールエステルを表す)の中間体との鈴木-宮浦カップリング反応により、式(VII)の中間体を得る。
d)塩基、好ましくは水酸化ナトリウム又は炭酸セシウムによるトシル基の加水分解により、式(I)の化合物を得る。
【0089】
中間体アミン化合物(VIII)の一般的な合成を図式2に示す。
【0090】
【0091】
図式2
式中、Xは上記で定義した通りであり、Yはシアノ又はニトロ基であり、nは0又は1に等しい。
【0092】
この方法は少なくとも以下のステップを含む:
e)触媒、例えばパラジウムラネーニッケル又はパラジウム炭素、及び例えば水素圧下での水素又はマイクロ波照射下でギ酸アンモニウムによってその場で放出される水素の存在下でニトロ又はシアノ官能基に接触水素化を施す。
【0093】
当業者であれば、当然、これらのタイプの化合物を合成するために、適切に記載され既知である他のすべての合成技術を適用するであろう。
【0094】
式(I)(YがL-(CH2)p-W基を表し、Lがアミド基-NHCO-を表す)の化合物は、例えば、図式3に示すアミノ-7-アザインドール誘導体から合成方法によって得られる。
【0095】
【0096】
図式3
式中、W、X、及びpは上記で定義した通りである。
【0097】
図式3の方法は、特に2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N-テトラメチルウロニウム(HATU)のような少なくとも1種の活性化剤及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA)のような塩基の存在下で、式W-(CH2)p-C(O)OHの酸と上記で定義した式(VIII)のアミノ中間体との間のペプチドカップリングの反応の少なくとも1つのステップを含む。
【0098】
当業者であれば、当然、他のすべての周知の合成技術を適用して、これらのタイプのアミド化合物を得るであろう。
【0099】
式(I)(YがL-(CH2)p-W基を表し、Lが-CONH-基を表す)の化合物は、例えば、とりわけ2つの方法に従って、図式4に示す式(IX)のカルボン酸7-アザインドール誘導体から合成方法によって得られる。
【0100】
【0101】
図式4
式中、W及びpは上記で定義した通りである。
【0102】
有利には、図式4の方法は、カップリングによる、又は塩化チオニルの事前作用による塩化アシルのその場生成による、式(IX)の酸と式W-(CH2)p-NH2のアミンとの間のペプチドカップリング反応の少なくとも1つのステップを含む。
【0103】
当業者であれば、当然、他のすべての周知の合成技術を適用して、これらのタイプのアミド化合物を得るであろう。
【0104】
別の実施形態によれば、本発明の第二級イミン又はアミン化合物、すなわち式(I)の化合物(式中、Yは基L-(CH2)p-Wを表し、Lは基-CH=N-又は-CH2NH-を表す)の合成方法に関して、とりわけ3つの方法が図式5に示される。
【0105】
【0106】
図式5
式中、W、X、Cy、及びpは上記で定義した通りである。
【0107】
有利には、図式5の方法は、式(VIII)(式中、nは1に等しい)の化合物と式W-CHOのアルデヒドとの間、又は式(X)の7-アザインドールアルデヒドと式W-(CH2)p-NH2のアミンとの間の還元的アミノ化の少なくとも1つのステップを含む。
【0108】
図式5の方法はまた、式(X)の7-アジンドールアルデヒド化合物と式W-(CH2)p-NH2のアミンとの間の縮合反応により式(XI)のイミン化合物を形成することを含む。
【0109】
式W-CHOのアルデヒド及び式W-(CH2)p-NH2のアミンは、特に市販されているか、又は当業者に周知の調製方法に従って容易に得られる。
【0110】
当業者であれば、当然、他のすべての周知の合成技術を適用して、これらのタイプのイミン及びアミン化合物を得るであろう。
【0111】
本発明によるフェノール化合物の合成方法を以下の図式6に示す。
【0112】
【0113】
図式6
有利には、この方法は少なくとも以下のステップを含む:
j)三臭化ホウ素(BBr3)の存在下でメトキシフェニル化合物を脱メチル化して、所望のヒドロキシフェニルを形成する。
【0114】
当業者であれば、当然、他のすべての周知の合成技術を適用して、所望のヒドロキシフェニルを合成するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【
図1】化合物4の抗ZIKV活性。細胞を、示された濃度(0.1、0.2、0.4、0.5、1μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、ウイルス株ZIKV BeH8(MOI=0.1)に感染させ、化合物の存在下で24時間培養し続けた。細胞内に存在するウイルスゲノムRNAをqRT-PCRで定量化することによって残留ウイルス複製を測定する。値は、化合物の希釈溶媒であるDMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られた対照条件で検出した感染のパーセンテージとして表される。値は3連の平均値+標準偏差である:a)ヒストグラム表現、b)対数表現。
【
図2】化合物4及び15の抗KUNV活性。細胞を、示された濃度(0.001、0.1、0.5、1及び2.5μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、その後、KUNV-ルシフェラーゼレポーターウイルス(MOI=0.1)に感染させた。細胞を化合物の存在下で24時間培養し続けた。試薬Genofax A(Yelen)を使用して細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を定量化することによって測定した残留ウイルス複製は、化合物の希釈溶媒であるDMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られた対照条件で検出した感染のパーセンテージとして表される。値は3連の平均値+標準偏差である。
【
図3】化合物4の抗CHIKV活性。細胞を、示された濃度(0.001、0.1、0.25、0.5、1及び1.5μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、その後、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を含むウイルス株CHIKV LR-OPY1(MOI=0.1)に感染させた。細胞を化合物の存在下で24時間培養し続けた。細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を定量化する(試薬Genofax Yelen)ことによって測定した残留ウイルス複製は、化合物の希釈溶媒であるDMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られた対照条件で検出した感染のパーセンテージとして表される。値は3連の平均値+標準偏差である。
【
図4】化合物4の抗MAYV活性。細胞を、示された濃度(0.25、0.5、1及び1.5μM)の化合物とともに1時間プレインキュベートし、その後、ウイルス株TRVL4576-luc(MOI=0.1)に感染させた。細胞を化合物の存在下で24時間培養し続けた。細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を定量化する(試薬Genofax A、Yelen)ことによって測定した残留ウイルス複製は、化合物の希釈溶媒であるDMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られた対照条件で検出した感染のパーセンテージとして表される。値は3連の平均値+標準偏差である。
【
図5】VeroE6系統で測定した化合物5の抗SARS-CoV2活性。細胞を、1.25μMの濃度の化合物5とともに1時間プレインキュベートし、その後、ウイルス株(MOI=0.1)を感染させた。細胞を化合物の存在下で24時間培養し続けた。細胞培養物中のウイルスRNAをqRT-PCRで定量化することによって残留ウイルス複製を測定する。対照条件は、DMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって得られる。R428/ベムセンチニブを並行して評価する。値は3連の平均値+標準偏差である。
【実施例】
【0116】
以下の実施例を読めば本発明をよりよく理解するであろうが、これらの実施例は単に例示として示されており、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0117】
実施例1.合成
材料
合成及び分析を以下の条件で実施した。
【0118】
磁気核共鳴1H及び13C:
装置:Bruker Avance 400(400MHz)Bruker Avance 300(300MHz)
【0119】
使用条件:周囲温度、100万分の1(ppm)で表される化学シフト、小文字で示されるシグナルの多重度(一重項s、二重項d、三重項t、四重項q、多重項m)、重水素化溶媒としてのジメチルスルホキシドd6、メタノールd4、クロロホルムd1。
【0120】
高圧液体クロマトグラフィー(High-Pressure Liquid Chromatography、HPLC):
装置:Agilent Technology 1260 Infinity
【0121】
使用条件:Zorbax SB-C18カラム又はEclipse plus(2.1X50mm)、1.8μm。温度:30℃、流量:方法X及びYでは0.5mL/min、方法Zでは0.4mL/min、溶出勾配:水(A)/アセトニトリル(B)/ギ酸0.1%(時間(分)/%B)。
●方法X:0/10、0.3/10、5.7/100、6.0/100
●方法Y:0/10、1/50、6/100、8/100
●方法X:0/10、11/100、15/100
【0122】
質量分析(Mass Spectrometry、MS):
装置:Quadripole Agilent Technologies 6120
使用条件:ポジティブモード及び/又はネガティブモードのエレクトロスプレー(ESI)。
【0123】
計量:
器具:Denver Instrument TP214(精度0.1mg)
使用条件:ミリグラム単位で計量する。
【0124】
圧力反応:
装置:Autoclave Parr 300mL。
使用条件:20バールの水素下での水素化。
【0125】
マイクロ波照射下での反応:
器具:CEM Discover SP(登録商標)
使用条件:出力200ワット、平均撹拌速度
【0126】
以下では、次の略語を使用する。
【0127】
【0128】
3,5-ジアリール-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(I)中間体の一般的な合成
第1ステップ、5-ブロモ-3-ヨード-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(III)の合成
3gの5-ブロモ-3-ヨード-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(II)を、アルゴン下、60mLの無水THF中で希釈し、氷浴中で冷却する。558mg(1.5eq)の水素化ナトリウム(60%)をゆっくりと加え、培地を0℃で20分間撹拌する。次に、塩化トシル(2.11g、1.2eq)を加え、培地をRTで5時間撹拌する。溶媒を蒸発させる。得られた残渣を最小限の石油エーテルに懸濁し、濾過する。沈殿物を2M水酸化ナトリウム溶液で2回洗浄し、次に真空下で一晩乾燥させる。
RMN 1H(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm)8.52(d,J=1.9,1H),8.22(s,1H),8.01(m,3H),7.44(d,J=8.2,2H),2.51(s,3H).
収率:97%;HPLC:99%;MS[M+1]:476.9-478.9
【0129】
第2ステップ、3-5-ビス-アリール-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジンの一般的な合成
方法1:アルゴン下のシュレンク中で、5-ブロモ-3-ヨード-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(100mg)、カップリングすべき最初のボロン酸(1eq)及びK2CO3(3eq)をジオキサン/水混合物(9/1、3mL)中に懸濁し、混合物をアルゴン下で20分間脱気する。Pd(dppf)Cl2(2%)を加え、混合物を還流下で5時間撹拌する。LC/MS分析によりカップリング反応の完了を確認した後、第2のボロン酸(1.2eq)及びK2CO3(3eq)を培地に加え、再びアルゴン下で20分間脱気する。次に、Pd(dppf)Cl2(2%)を加え、混合物を還流下で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解する。有機相をNaHCO3で飽和した水溶液、次に飽和NaCl水溶液で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発させる。培地をテトラヒドロフラン/メタノール(1/1、6mL)の混合物に溶解し、炭酸セシウム(3eq)とともにRTで3時間撹拌する。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3で飽和した水溶液、次にNaClで飽和した水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固し、次に1%トリフルオロ酢酸を用いて逆相シリカカラム(水/アセトニトリル)上で精製する。NaHCO3で中和した後、化合物を単離する。
【0130】
方法2:5-ブロモ-3-ヨード-1-(トルエン-4-スルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(III)(100mg)、カップリングすべき最初のボロン酸(IV)(1eq)、及び炭酸カリウム(3eq)をジオキサン/水(3/1、3mL)混合物中に懸濁し、混合物をアルゴン下で20分間脱気する。Pd(dppf)Cl2(2%)を加え、出発試薬が完全に消費されるまで、混合物をマイクロ波照射下、80℃で20分間、1~3回撹拌する。反応培地をNaHCO3で飽和した水溶液で洗浄し、酢酸
エチルで抽出する。溶媒を蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3で飽和した水溶液で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固し、次にシリカカラム上で精製する。次に、この化合物を、第2のボロン酸又はそのピナコールのエステル(VI)(1.2eq)及びK2CO3(3eq)の存在下で、ジオキサン/水(3/1、4mL)混合物に溶解する。培地を再びアルゴン下で20分間脱気し、次にPd(dppf)Cl2(0.025eq)を加え、混合物をマイクロ波照射下、120℃で45分間撹拌する。500μLの1M水酸化ナトリウム(3eq)を反応培地に加え、マイクロ波照射下、100℃で45分間撹拌する。反応培地をNaHCO3で飽和した水溶液で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、無水Na2SO4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固し、次に順相シリカカラム(ジクロロメタン/メタノール/アンモニア水)上で精製する。
【0131】
【0132】
アミンの合成
方法1:対応するニトロ化合物の還元によるアミンの合成。
【0133】
【化21】
プロトコル1:ニトロ誘導体をオートクレーブ中のメタノール200mLに入れる。1
0質量%の10%パラジウム炭素をアルゴン下で加える。オートクレーブを閉じ、アルゴンでパージし、30バールの水素下に置く。培地を室温で一晩撹拌する。次に、オートクレーブを空にし、アルゴンでパージする。培地をセライトを通して濾過し、次にメタノールで洗浄する。濾液を蒸発させ、酢酸エチルに溶解し、NaHCO3で飽和した水溶液で2回、NaClで飽和した水溶液で1回洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、綿上で濾過し、蒸発乾固して、所望のアミン誘導体を得る。
【0134】
プロトコル2:100mg(0.3mmol)のニトロ誘導体及び189mg(10eq)のギ酸アンモニウムをアルゴン下で3mLのメタノールに懸濁する。次に、パラジウム炭素15mgをメタノール1mLに溶かした懸濁液を加え、全体をマイクロ波照射下、130℃で30分間撹拌する。培地をセライトを通して濾過し、次にメタノールで洗浄する。濾液を蒸発乾固し、次に順相シリカカラム(溶離液:ジクロロメタン/メタノール97/3)上で精製する。
【0135】
【0136】
様々な非商業的カルボン酸の合成:
[Flynn et al.Organic Process Research&Development(2014),18(4),501-510]に記載の手順に従って1-(4-フルオロフェニル)-6-メチル-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-ピリジン-3-カルボン酸を得た(HPLC:97%、MS[M+1]:248.2)。
【0137】
[Zhan et al.Medicinal Chemistry Letters(2014),5(6),673-678]に記載の手順に従って1-(4-フルオロフェニルカルバモイル)-シクロプロパンカルボン酸を得た(HPLC:100%、MS[M+1]:224.1)。
【0138】
アミノ-7-アザインドールとカルボン酸化合物からのアミド化合物の一般的な合成。
【0139】
【化22】
カルボン酸(1eq)を無水DMFに溶解し、アルゴン雰囲気下で乾燥シュレンクに入れる。N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1eq)、次に誘導体アミノ-7-アザインドール(1eq)を加える。次に、培地を70℃で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させる。次に、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3で飽和した水溶液で2回、NaClで飽和した水溶液で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、綿上で濾過し、蒸発乾固し、1%トリフルオロ酢酸を用いて逆相シリカカラム上で精製して、所望のアミド誘導体を得る。
【0140】
【0141】
アミノアザインドールからの還元的アミノ化
【0142】
【化23】
アルデヒド誘導体(1eq)及びアミン誘導体(1eq)を丸底フラスコに入れ、メタノール/酢酸混合物(9/1)に溶解する。混合物を室温で3時間撹拌し、次にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(2eq)を加え、培地を室温で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させて除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3で飽和した水溶液で2回、NaClで飽和した水溶液で1回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、綿上で濾過し、蒸発乾固する。得られた残渣を、100%ジクロロメタンから90/10ジクロロメタン/メタノール-アンモニアの勾配でシリカカラム上で精製する。
【0143】
ホルミル-アザインドールからの還元的アミノ化
【0144】
【化24】
アルデヒド誘導体(1eq)及びアミン誘導体(1eq)をメタノール/酢酸混合物(9/1)に溶解する。混合物を室温で3時間撹拌し、次にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(2eq)を加え、培地を室温で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させて除去し、残渣を酢酸エチルに溶解し、NaHCO3で飽和した水溶液で2回、NaClで飽和した水溶液で1回洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、綿上で濾過し、蒸発乾固する。得られた残渣を、100%ジクロロメタンから90/10ジクロロメタン/メタノール-アンモニアの勾配でシリカカラム上で精製する。
【0145】
【0146】
実施例2.生物学的試験
感染性完全ウイルスの複製に対する分子の阻害効果を試験することにより、本発明の化合物を、インビトロでの抗ウイルス活性について評価した。選択した細胞系(HeLa、A549、A549-ACE2細胞)は、想定される感染モデルに関連しており、フローサイトメトリーでAxl分子の発現について検証されている。
【0147】
【0148】
1-ジカウイルスに対する抗ウイルス活性
96ウェルプレートで培養したHeLa株(子宮頸癌、ATCC#CCL-2)の2.5x104個の細胞を、化合物の濃度を増加させながら37℃で1時間プレインキュベートすることによって試験を実施する。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium、DMEM)中、5%CO2雰囲気下で培養する。次に細胞を、化合物の存在下でZIKV BeH8株(MOI=0.1)に1時間曝露する。
【0149】
次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を化合物の存在下で24時間維持する。Luna Universal One-Step RT-PCRキットを使用して、qRT-PCRで検出したウイルスRNAを定量化することにより、細胞の感染を測定する。値(DCT)を、GAPDHのmRNAの定量化に対して正規化する。示された値は3連の平均値+標準偏差である。
【0150】
対照条件は、試験した化合物の可溶化に使用した溶媒であるDMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって実施した。これらの条件下で使用したDMSOの体積は、試験条件下で化合物によって提供される体積に対応する。
【0151】
化合物4について得られた結果を
図1に示す。化合物4のIC50を、ソフトウェアGraphpad Prismを使用して測定した。
【0152】
これらの実験条件下では、100nM以上の濃度で使用される化合物4は、ZIKV BeH-8株によるHeLa細胞の感染を防止する。
【0153】
2-WNVウイルスKunjin株に対する抗ウイルス活性
96ウェルプレートで培養したHeLa株(ATCC#CCL-2)の4x104個の細胞を、化合物の濃度を増加させながら1時間プレインキュベートすることによって試験を実施する。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%CO2雰囲気下で培養する。次に、細胞を、化合物の存在下で、キャプシドタンパク質をコードする配列の上流にナノルシフェラーゼ遺伝子を発現するWNVウイルスKunjin株に1時間曝露する。次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で24時間維持する。
【0154】
細胞を、Passive loss Buffer(Promega)試薬を使用して溶解する。試薬Genofax A(Yelen)の存在下で、Infinite F200PRO(Tecan)蛍光光度計を使用して細胞溶解物中のナノルシフェラーゼ活性を定量化することによってウイルス感染を検出する。値を、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化し、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して562nmでの吸光度を測定することによって決定する。示された値は3連の平均値
+標準偏差である。対照条件は上記と同様である。
【0155】
化合物4及び15について得られた結果を
図2に示す。
【0156】
これらの実験条件下では、500nM以上の濃度で使用さ化合物4及び15は、WNV株KunjinによるHeLa細胞の感染を防止する。
【0157】
3-チクングニアウイルスに対する抗ウイルス活性
96ウェルプレートで培養したHeLa株(ATCC#CCL-2)の4x104個の細胞を、化合物の濃度を増加させながら1時間プレインキュベートすることによって試験を実施する。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%CO2雰囲気下で培養する。次に、細胞を、ルシフェラーゼ遺伝子、又はnsP3タンパク質をコードする配列の上流にGFPをコードする配列のいずれかを発現するCHIKVウイルスLR-OPY1株に曝露する。細胞を1時間インキュベートする。
【0158】
次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で24時間維持する。Passive lysis Buffer(Promega)試薬を用いて細胞を溶解した後、GFPの蛍光を直接定量化するか、又はGenofax A(Yelen)試薬の存在下で、Infinite F200PRO(Tecan)蛍光光度計を用いて細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を定量化することにより、ウイルス感染を測定する。値を、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化し、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して562nmでの吸光度を測定することによって決定する。どちらのプロトコルでも、値を、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化し、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して決定する。示された値は3連の平均値+標準偏差である。対照条件は上記と同様である。
【0159】
【0160】
これらの実験条件下では、100nM以上の濃度で使用される化合物4は、チクングニアウイルスによるHeLa細胞の感染を防止する。
【0161】
4-マヤロウイルスに対する抗ウイルス活性
96ウェルプレートで培養したHeLa株(ATCC#CCL-2)の4x104個の細胞を、化合物の濃度を増加させながら1時間プレインキュベートすることによって試験を実施する。細胞を、10%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%CO2雰囲気下で培養する。次に細胞を、nsP3タンパク質をコードする配列の上流にルシフェラーゼ遺伝子を発現するMAYVウイルスTRVL4576株に曝露する。細胞を1時間インキュベートする。次に、ウイルス接種材料を除去し、細胞を阻害剤の存在下で24時間維持する。
【0162】
細胞を、Passive loss Buffer(Promega)試薬を使用して溶解する。試薬Genofax A(Yelen)の存在下で、Infinite F200PRO(Tecan)蛍光光度計を使用して細胞溶解物中のルシフェラーゼ活性を定量化することによってウイルス感染を検出する。値を、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化し、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して562nmでの吸光度を測定することによって決定する。どちらのプロトコルでも、値を、細胞溶解物に含まれる総タンパク質の量に対して正規化し、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して決定する。示された値は3連の平均値+標準偏差である。対照条件は上記と同様である。
【0163】
【0164】
試験した感染モデルのそれぞれについて、ソフトウェアGraphpad Prismを使用して活性化合物のIC50を測定した。
【0165】
【0166】
6-SARS-CoV2コロナウイルスに対する抗ウイルス活性
SARS-CoV2感染に対する本発明の化合物の阻害活性を、ミドリザル系VeroE6(不死化腎上皮、ATCC#CRL-1586)に感染させることによりインビトロで評価した。
【0167】
VeroE6細胞における抗ウイルス活性の評価
96ウェルプレートで培養した4x104個のVeroE6細胞を、示された濃度の化合物とともに1時間プレインキュベートすることによって感染試験を実施する。細胞を、2%子ウシ血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%CO2雰囲気下で培養する。次に、細胞をSARS-CoV2ウイルス、BetaCoV/France/IDF0371/2020(MOI=0.01)に2時間曝露した後、接種材料を除去し、洗浄し、培養物中の細胞を再増殖させた。ウイルス攻撃の24時間後、Luna Universal One-Step RT-PCRキットを使用して、qRT-PCRでウイルスRNAを増幅することにより感染を定量化する。値(ΔCT)を、GAPDHのmRNAの定量化に対して正規化する。示された値は3連の平均値+標準偏差である。対照条件は、試験した化合物の可溶化に使用した溶媒であるDMSO(0)の存在下で細胞をインキュベートすることによって実施した。これらの条件下で使用したDMSOの体積は、試験条件下で化合物によって提供される体積に対応する。
【0168】
同じ実験条件下で、Bergenbio社が開発した臨床試験段階のAxl阻害剤であるR428/ベムセンチニブを用いて並行治療を実施した。
【0169】
【0170】
これらの実験条件下では、化合物5はSARS-CoV2ウイルスによる細胞の感染を減少させる。
【国際調査報告】