(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】医療デバイスへの抗微生物剤の移動のための超薄膜
(51)【国際特許分類】
A61L 27/34 20060101AFI20240426BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20240426BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20240426BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
A61L27/34
A61L27/54
A61L27/50
A61L27/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572591
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 IB2022054855
(87)【国際公開番号】W WO2022249064
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】フロレク・チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】アームブラスター・デビッド・エイ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB36
4C081BA02
4C081BA14
4C081BA16
4C081CA172
4C081CE01
4C081DC03
(57)【要約】
抗微生物剤を含有する生分解性ポリマー薄膜を含む、整形外科用インプラント、並びに整形外科用インプラントを含有するシステム及びキットが提供され、インプラントは、インプラントの表面の周縁の周りに有効抑制ゾーンを生成し、連結するインプラント構成要素間の解放トルクの損失を生成しない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術部位において微生物増殖を低減させるための整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素であって、
本体外側表面を画定する本体と、
前記本体外側表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、
前記生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm
2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm
2の表面積濃度を有するか、又は
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素。
【請求項2】
前記生分解性ポリマー薄膜の前記表面積コーティング重量が、前記本体の前記表面の前記面積に対して、約60~230μg/cm
2である、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項3】
前記生分解性ポリマー薄膜が、ポリ(α-ヒドロキシエステル)ポリマーを含む、請求項1又は2に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項4】
前記生分解性ポリマー薄膜が、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、又はこれらの任意のコポリマー若しくは混合物を含む、請求項3に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項5】
前記生分解性ポリマー薄膜が、ポリ(l-乳酸)(PLLA)、ポリ(d-乳酸)(PDLA)、ポリ(d,l-乳酸)(PDLLA)、又はこれらの任意のコポリマー若しくは混合物を含む、請求項3に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項6】
前記抗微生物剤が、約45~55μg/cm
2の表面積濃度を有する、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項7】
前記気化可能な抗微生物剤が、ハロゲン化ヒドロキシルエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項8】
前記気化可能な抗微生物剤が、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)を含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項9】
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から約0.5~4mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項10】
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から約1~2mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項11】
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記整形外科用インプラント又は構成要素のヒト対象への植え込み後、最長約6、12、18、24、36、48、又は72時間、前記有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項12】
前記生分解性ポリマー薄膜が、前記本体の各表面上に存在する、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項13】
前記本体が、金属、ポリマー、又はその両方を含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項14】
前記本体外側表面が、金属、ポリマー、又はその両方を含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項15】
前記本体外側表面が、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアルケン、金属若しくは金属合金、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項16】
前記本体外側表面が、金属又は金属合金を含む、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項17】
前記金属が、チタン、ステンレス鋼、又はチタン若しくは鋼を含有する合金である、請求項16に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項18】
前記本体外側表面が、PAEKを含み、前記PAEKが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はそのコポリマーである、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項19】
前記本体外側表面が、ポリアルケンを含み、前記ポリアルケンが、ポリエチレン又はそのコポリマーである、請求項1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【請求項20】
手術部位において微生物増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための方法であって、
前記インプラント又はインプラントの構成要素の表面上に生分解性ポリマー薄膜を適用することと、
気化可能な抗微生物剤を前記薄膜に組み込むことと、を含み、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm
2の表面積濃度を有するか、又は
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、方法。
【請求項21】
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm
2の表面積コーティング重量を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記薄膜が、前記インプラント又はインプラントの構成要素を、前記生分解性ポリマーを含むコーティング溶液に浸漬することによって、前記インプラント又はインプラントの構成要素の前記表面に適用される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗微生物剤が、前記抗微生物剤の供給源からの蒸気移動によって前記薄膜に組み込まれる、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
整形外科用インプラントの手術部位における微生物感染を低減させるためのシステムであって、
外側インプラント表面を画定する整形外科用インプラント本体であって、前記外側表面から前記インプラント本体を通って延在し、骨締結具を受容するように構成された1つ又は2つ以上の開口部を更に画定する、整形外科用インプラント本体と、
前記整形外科用インプラント本体を骨に固定するために前記1つ又は2つ以上の開口部内に配設されるように構成された骨締結具であって、外側締結具表面を画定する、骨締結具と、
前記外側インプラント表面又は前記外側締結具表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、
前記生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm
2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm
2の表面積濃度を有するか、
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、
又は、
対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、前記整形外科用インプラント本体の対応する開口部から前記締結具を解放するために必要とされる前記トルクが、前記対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間にわたって、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされる前記トルクの約90%以上である、システム。
【請求項25】
キットであって、
外側インプラント表面を画定する少なくとも1つの整形外科用インプラント本体であって、前記外側表面から前記インプラント本体を通って延在し、骨締結具を受容するように構成された1つ又は2つ以上の開口部を更に画定する、整形外科用インプラント本体と、
前記整形外科用インプラント本体を骨に固定するために、前記整形外科用インプラント本体のうちの少なくとも1つの開口部内に配設されるように構成された複数の骨締結具であって、前記骨締結具の各々が、外側締結具表面をそれぞれ画定する、複数の骨締結具と、
前記整形外科用インプラント本体の各々の前記外側インプラント表面の少なくとも一部分に沿って配設されるか、前記骨締結具の各々の前記外側締結具表面の少なくとも一部分に沿って配設されるか、又はその両方である生分解性ポリマー薄膜と、
前記生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm
2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm
2の表面積濃度を有するか、
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、又は
対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、前記整形外科用インプラント本体のうちの1つの対応する開口部から前記締結具のうちの1つを解放するために必要とされる前記トルクが、前記対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間にわたって、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされる前記トルクの約90%以上である、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月24日出願の米国仮特許出願公開第63/192,339号の利益を主張するものであり、その内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、抗菌特性を有する整形外科用植え込みに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの個人が、整形外科的外傷又は関節置換処置の結果として、整形外科的植え込みを毎年受けている。米国では、American Academy of Orthopedic Surgeonsによれば、毎年600,000を超える人工膝プロテーゼ及び300,000を超える人工股関節プロテーゼが植え込みされている。毎年100万人を超える患者が、折れた骨の治療のために金属植え込みを受ける。インプラント関連感染は、整形外科用インプラントに関連する最も重篤な潜在的合併症のうちの1つであり、いくつかの高リスク処置及び患者群において10%を超える感染率を有する。処置は、多くの場合、感染したインプラントの外科的除去及び抗生物質による長期処置を必要とするので、インプラント関連感染を処置する費用は多大である。
【0004】
インプラント関連感染は、細菌が外科的創傷部位を汚染し、外科用インプラントに付着し、及び増殖し始めるときに引き起こされる。インプラント表面上で増殖する細菌は、多くの場合、バイオ膜を形成し、ここで細菌は、保護的な細胞外マトリックスを分泌し、細菌の代謝活性は、有意に低減する。このバイオ膜表現型は、患者の免疫系及び全身性抗生物質から細菌を保護し、これは、インプラント関連感染の治療を非常に困難かつ高価なものにする。
【0005】
インプラント関連感染を防止するための1つの解決策は、細菌増殖及び付着を防止するように外科用インプラントの表面を処理することである。外科的創傷部位又はインプラント表面上の細菌を、細菌がインプラントに付着し、かつ増殖し得る前に死滅させるために、抗生物質又は抗微生物化合物でコーティングされた外科用インプラントが開発されている。例としては、抗菌コーティングされたペースメーカーパウチ(TYRX(商標)Absorbable Antimicrobial Envelope)、整形外科用インプラント(ETN PROtect)、外科用グラフト材料(XenMatrix(商標)AB Surgical Graft)、及び縫合糸(VICRYL(登録商標)Plus Antimicrobial Suture)が挙げられる。
【0006】
デバイスを、抗微生物剤源を有する内側パッケージ内に配置することと、内側パッケージを外側パッケージで覆うことと、デバイス及びパッケージを抗微生物剤源からデバイスに抗微生物剤を蒸気移動させるのに十分な時間、温度、及び圧力条件にさらすことと、によって、縫合糸などの医療デバイスに気化可能な抗微生物剤を蒸気移動させるための方法が開示されている(例えば、米国特許第7,513,093号、同第8,112,973号、同第8,133,437号、同第8,156,718号、同第8,668,867号、同第8,960,422号、同第9,044,531号、同第9,149,273号、同第9,474,524号、同第9,597,067号、同第9,597,072号)。この蒸気移動プロセスは、抗微生物剤をポリマー又は紙材料(例えば、外科用縫合糸又はパッケージ材料)に移動させることに成功したことを実証する。
【0007】
整形外科用植え込みに適用される場合、ゲンタマイシンなどの抗生物質を有するコーティングは、植え込み及びコーティングの分解後に、(骨締結具を連結する骨プレートなどの)構成要素を連結して、互いに確実に接続されたままにする能力を妨げる可能性がある。例えば、粒子状ゲンタマイシンを含有するPLGAコーティングは、骨締結具で固定される外傷プレートの係止機能を妨げ、プレートから締結具を解放するために必要とされるトルクの量における有意な低減を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
整形外科用インプラント及びその構成要素に、かかるデバイスの連結機能を妨げることなく、抗菌特性を付与するシステム及び技術が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、手術部位における微生物増殖を低減させるための整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素が提供され、本体外側表面を画定する本体と、本体外側表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、以下のうちの1つ又は2つ以上が適用される:生分解性ポリマー薄膜は、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有するか、気化可能な抗微生物剤は、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、又は、抗微生物剤の表面積濃度は、外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である。
【0010】
手術部位での微生物増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための方法も本明細書で提供される。
【0011】
本開示はまた、整形外科用インプラント手術部位における微生物感染を低減させるためのシステム、少なくとも1つの整形外科用インプラント本体、及び整形外科用インプラント手術部位における微生物感染をそれぞれ低減させる複数の骨締結具を備えるキット、並びに整形外科用インプラントシステムの抗菌処理から生じる解放トルクの損失を低減させるための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】ポリマーペレットを用いてステンレス鋼整形外科用インプラント構成要素をタンブリングして、かかる構成要素の表面をコーティングする能力の評価の結果を提供する。
【
図1B】ポリマーペレットを用いてステンレス鋼整形外科用インプラント構成要素をタンブリングして、かかる構成要素の表面をコーティングする能力の評価の結果を提供する。
【
図1C】ポリマーペレットを用いてステンレス鋼整形外科用インプラント構成要素をタンブリングして、かかる構成要素の表面をコーティングする能力の評価の結果を提供する。
【
図2A】コーティングされた構成要素に関して臨床的に有効抑制ゾーンを与えるために、抗微生物剤を保持することができるポリマーコーティングを生成するためのタンブリング及び浸漬コーティングの能力の評価の結果を提供する。
【
図2B】コーティングされた構成要素に関して臨床的に有効抑制ゾーンを与えるために、抗微生物剤を保持することができるポリマーコーティングを生成するためのタンブリング及び浸漬コーティングの能力の評価の結果を提供する。
【
図2C】コーティングされた構成要素に関して臨床的に有効抑制ゾーンを与えるために、抗微生物剤を保持することができるポリマーコーティングを生成するためのタンブリング及び浸漬コーティングの能力の評価の結果を提供する。
【
図3A】それぞれ、粒子状ゲンタマイシンを有する従来のポリマーコーティング及びトリクロサンを含有する本発明の生分解性ポリマー薄膜の使用後の開放トルクの評価の結果を例解する。
【
図3B】それぞれ、粒子状ゲンタマイシンを有する従来のポリマーコーティング及びトリクロサンを含有する本発明の生分解性ポリマー薄膜の使用後の開放トルクの評価の結果を例解する。
【
図4】付着及び増殖細菌コロニー形成研究を実施するためのフローチャートを提供する。
【
図5】全金属製容器中、130℃における極薄ポリ(L-ラクチド)膜コーティングされたステンレス鋼係止圧縮プレートへのトリクロサンの移動を例解する。
【
図6】ベア電解研磨ステンレス鋼表面又はアニールされた極薄ポリ(L-ラクチド)膜のいずれかを有する130℃トリクロサン蒸気移動処理外傷プレートから得られるS.aureusゾーンを示し、試料を、直ちに寒天培地注入プレートに設置するか、又はリン酸緩衝生理食塩水中で1、24、若しくは72時間インキュベーションした。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に開示されている発明的主題は、本開示の一部を形成する、添付の実施例に関連して解釈される以下の発明を実施するための形態を参照することにより、より容易に理解することができる。本発明は、本明細書に説明及び/又は図示される具体的な構成要素、方法、又はパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用される専門用語は、例として特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、請求した発明を制限することを意図するものではないことが理解されるものとする。
【0014】
本明細書に引用又は説明されている各特許、特許出願、及び刊行物の全開示は、本明細書に参考として組み込まれる。
【0015】
上記で使用されるとき、また本開示全体を通して、以下の用語及び略語は、特に指示のない限り、以下の意味を有するものと理解されたい。
【0016】
本開示では、特に明示しない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の言及を包含し、特定の数値への言及は、少なくともその特定の値を包含する。このため、例えば、「ポリマー」に対する参照は、1つ又は2つ以上のかかるポリマー及び当業者に既知であるその等価物等に対する参照である。更に、特定の要素が、X、Y、又はZで「あり得る」ことを示す場合、そのような使用は、あらゆる場合においてその要素に関する他の選択肢を除外することを意図するものではない。
【0017】
値が、先行詞「約」を用いて近似値として表現される場合、その特定の値は、別の実施形態を形成することが理解される。概して、「約」という用語の使用は、開示する発明主題によって得ようとしている所望の特性に依存して変動し得る近似値を示し、その機能に基づいて、それが使用される具体的な文脈において解釈されるべきである。いくつかの実施形態では、「約X」(Xは数値である)は、記載される値の±10%を包括的に指す。例えば、「約8」という語句は、包括的に7.2~8.8の値を指すことができる。この値は、「正確に8」を含み得る。存在する場合、全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、「1~5」の範囲を列挙するとき、列挙した範囲は「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などの範囲を任意選択的に含むと解釈すべきである。加えて、代替物のリストが明確に提供される場合、そのようなリストはまた、代替物のいずれかが除外され得る実施形態を含み得る。例えば、「1~5」の範囲が説明されている場合、そのような説明は、1、2、3、4、又は5のいずれかが除外される状況を支持することができる。したがって、「1~5」という記述は、「1及び3~5であるが、2ではない」又は単に「2は含まれない」を支持し得る。
【0018】
本明細書において使用される場合、「抑制ゾーン」(zone of inhibition、ZOI)とは、インプラントが、既知量のコロニー形成微生物を接種されたインビトロ環境内に設置されたとき、測定可能な微生物コロニー形成単位(例えば、微生物活性)が存在しないインプラントの周縁から測定された距離を意味する。特定の文献において、ZOIは、測定可能な微生物活性が存在せず、インプラントの寸法も同様に含み得る領域の全断面長さ(例えば、直径)として測定される。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「臨床的に有効抑制ゾーン」は、測定可能な細菌増殖がないインプラントの周囲の少なくとも0.5mmのZOI測定値を意味する。
【0020】
抗微生物剤などの化学化合物に関して使用されるとき、「気化可能」は、周囲圧力条件で50℃を上回る温度に曝露されたとき、蒸発することができる化合物を意味する。
【0021】
上で説明されたように、整形外科用インプラントは、微生物汚染を受けやすく、抗菌特性を付与するためのこれまでの努力は、植え込み後に(骨締結具を連結する骨プレートなどの)構成要素を連結させて、互いに確実に接続されたままにする能力の干渉につながっていた。多くの場合、整形外科用インプラントが適切な嵌合(例えば、IM釘が大腿骨の髄に入るなど)を達成するために特定の公差が存在し、このような場合、インプラントがかかる公差に適合しないようにするコーティングをインプラントが含むことは許容できない。後に分解する厚いコーティングのため、オーバーサイズのインプラント直径は、インプラントが緩んだり又は不安定になったりする結果となる。加えて、組織内殖のための空間を有するように構成されるインプラントは、それらの空間の一部又は全部を閉塞するより厚いコーティングと不適合であり、それによって、インプラントへの内殖を介した天然組織の再形成を妨げるであろう。このため、抗菌特性を付与するための任意の戦略が整形外科用インプラントの全ての意図された使用に適合することが必須である。
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、抗微生物剤を含浸させた極薄の生分解性コーティングを使用することにより、整形外科用インプラント及びその構成要素に、臨床的に有意な抑制ゾーン内で抗菌特性を付与することができる一方で、インプラントが手術部位に確実に位置したままである能力にとって必須である連結機能への干渉を回避し、インプラントが適合公差及び組織内殖と適合しなくなる状況を適宜回避することを発見した。
【0023】
したがって、本明細書において、手術部位における微生物増殖を低減させるための整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素が提供され、本体外側表面を画定する本体と、本体外側表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、以下のうちの1つ又は2つ以上が適用される:生分解性ポリマー薄膜は、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有するか、気化可能な抗微生物剤は、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、又は、抗微生物剤の表面積濃度は、外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である。
【0024】
任意の整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素が、本開示に従って使用され得る。整形外科用インプラントは、損傷した骨の修復を助けるか、又は骨を置換するために使用されるプロテーゼである植え込み可能な医療デバイスであると理解される。本開示による好適な整形外科用インプラントの例示的かつ非限定的なリストは、骨プレート、髄内釘、骨ねじ、ピン、脊椎ロッド、Kワイヤ、椎間板置換、金属圧縮ステープル(例えば、ニチノール)、頭蓋顎顔面用途で使用されるような金属メッシュ、外部固定ねじ又はピン(例えば、Schanzねじ及びSteinmannピン)、並びに寛骨臼カップ、大腿骨ステム、脛骨トレイ、人工膝蓋骨、及び大腿顆構成要素などの股関節、膝関節、及び肩関節置換手技で使用される関節置換構成要素を含むことができる。
【0025】
説明されるように、整形外科用インプラントは、外側表面を画定する。ある実施形態による外側表面は、金属若しくは金属合金、ポリアリールエーテルケトン(polyaryletherketone、PAEK)若しくはそのコポリマー、又はポリアルケン若しくはそのコポリマー、又は上記の材料の任意の組み合わせを含み得る。好適な金属としては、例えば、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、コバルト、クロム、及びこれらの金属合金を挙げることができる。好ましいポリアルケンは、ポリエチレン又はそのコポリマーである。好適な例としては、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、超高分子量ポリエチレン(ultrahigh molecular weight polyethylene、UHMWPE)、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、超低分子量ポリエチレン(ultra low molecular weight polyethylene、ULMWPE)、高分子量ポリエチレン(HMWPE)、高密度架橋ポリエチレン(high molecular weight polyethylene、HDXLPE)、架橋ポリエチレン(cross-linked polyethylene、PEX又はXLPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)、又は超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene、VLDPE)、並びにこれらのブレンド又はコポリマーが挙げられる。以下に更に説明されるようなある高温条件下で、当業者は、どのポリアルケン又はそのコポリマーが、例えば、熱分解又は他の所望されない影響を受けることなく、100℃超の高温を必要とする条件に耐えるために必要な化学特性を有するかを判定し得る。PAEKポリマーの好適な例としては、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)炭素強化PEEK、ポリエーテルケトンケトン(polyetherketoneketone、PEKK)、ポリエーテルケトン(polyetherketone、PEK)、若しくはポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(polyetherketoneetherketoneketone、PEKEKK)、又はこれらのブレンド若しくはコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
生分解性ポリマー薄膜は、下にある整形外科用インプラント又はその構成要素と一体的に効果的に形成され、それに取り付けられる。生分解性ポリマー薄膜の表面積コーティング重量は、約60~230μg/cm2であり得る。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマー薄膜の表面積コーティング重量は、約50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250μg/cm2である。
【0027】
生分解性ポリマー薄膜は、ポリ(α-ヒドロキシエステル)ポリマーを含み得る。例えば、生分解性ポリマー薄膜は、ポリ(グリコール酸)(poly(glycolic acid)、PGA)、ポリ(乳酸)(poly(lactic acid)、PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(poly(lactic-co-glycolic acid)、PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(poly (ε-caprolactone)、PCL)、又はこれらの任意のコポリマー若しくは混合物を含み得る。ある実施形態では、生分解性ポリマー薄膜は、ポリ(l-乳酸)(poly(l-lactic acid)、PLLA)、ポリ(d-乳酸)(poly(d-lactic acid)、PDLA)、ポリ(d,l-乳酸)(poly(d, l-lactic acid)、PDLLA)、又はこれらの任意のコポリマー若しくは混合物を含む。
【0028】
ある実施形態では、気化可能な抗微生物剤は、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有する。例えば、抗微生物剤は、約45~55μg/cm2の表面積濃度を有し得る。いくつかの実施形態では、気化可能な抗微生物剤は、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、又は85μg/cm2の表面積濃度を有する。
【0029】
気化可能な抗微生物剤は、整形外科用インプラントの表面、好ましくはインプラント周囲の抑制ゾーン内での微生物コロニー形成単位の形成を低減させる能力を与える任意の化合物又は物質であり得る。ある実施形態では、気化可能な抗微生物剤は、ハロゲン化ヒドロキシルエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、又はこれらの組み合わせである。特に、抗微生物剤は、例えば、以下の式によって表現されるような、ハロゲン化2-ヒドロキシジフェニルエーテル及び/又はハロゲン化2-アシルオキシジフェニルエーテルであり得る:
【0030】
【0031】
上式において、各Halは同一の又は異なるハロゲン原子を表し、Zは水素又はアシル基を表し、wは1~5の範囲の正の自然数を表し、ベンゼン環の各々は、好ましくは環Aであるが、またハロゲン化され得る1種類以上の低級アルキル基、低級アルコキシ基、アリル基、シアノ基、アミノ基、又は低級アルカノイル基を含み得る。好ましくは、ベンゼン環の置換基として、有用な低級アルキル基及び低級アルコキシ基には、それぞれメチル基又はメトキシ基がある。ハロゲン化低級アルキル基、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0032】
また、上式のハロゲン-o-ヒドロキシ-ジフェニルエーテルに類似した抗菌活性が、実際に使用する条件下で部分的にあるいは完全に加水分解するそれらのO-アシル誘導体を使用して得られる。酢酸、クロル酢酸、メチル又はジメチルカルバミン酸、安息香酸、クロロ安息香酸、メチルスルホン酸、及びクロロメチルスルホン酸のエーテルが特に好適である。
【0033】
上記式の範囲内の1つの特に好ましい抗微生物剤は、一般に、トリクロサンと呼ばれる、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテルである。トリクロサンは、様々な製品において使用されている広域性抗微生物剤であり、一般にSSIに関連した多数の生物に対して効果的である。かかる微生物には、Staphylococcus属、Staphylococcus epidermidis属、Staphylococcus aureus属、メチシリン耐性Staphylococcus epidermidis、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
ある実施形態では、抗微生物剤の表面積濃度は、整形外科用インプラント又はその構成要素の外側表面の周縁から約0.5~4mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である。例えば、抗微生物剤の表面積濃度は、整形外科用インプラント又はその構成要素の外側表面の周縁から約0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、3.5、3.75、又は4mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であり得る。いくつかの実施形態では、抗微生物剤の表面積濃度は、インプラント又は構成要素の外側表面の周縁から約1~2mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である。抗微生物剤の表面積濃度は、整形外科用インプラント又は構成要素のヒト対象への植え込み後、最長約6、12、18、24、36、48、又は72時間、前述の実施形態による有効抑制ゾーンを生成するのに十分であり得る。
【0035】
生分解性ポリマー薄膜は、インプラント又はその構成要素の本体の外側表面の一部又は全部上に存在し得る。ある実施形態では、整形外科用インプラントは、締結具を受容するように構成される開口部を含み、開口部の表面は、生分解性ポリマー薄膜を含む。整形外科用インプラントの構成要素が、手術部位において植え込みされたときに整形外科用インプラントの開口部の表面に接触する頭部を含むねじ山付き締結具などの締結具であるとき、生分解性ポリマー薄膜は、例えば、締結具のねじ山付き部分の表面、頭部の表面、又は両方の上にあり得る。この様式で、インプラントが骨プレート又は骨締結具を含むとき、それぞれの部品が手術部位に植え込みされたときに互いに接触する骨プレートの表面及び骨締結具の表面の両方が、生分解性ポリマー薄膜を含む。本明細書でより完全に開示されるように、整形外科用インプラントのかかる表面上における本開示による生分解性ポリマー薄膜の使用は、互いに連結するように構成される構成要素の物理的相互作用を妨げない。
【0036】
また、本明細書において開示されるのは、手術部位における微生物増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための方法であって、インプラント又はインプラントの構成要素の表面上に生分解性ポリマー薄膜を適用することと、気化可能な抗微生物剤を薄膜に組み込むことと、を含み、気化可能な抗微生物剤は、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有し、生分解性ポリマー薄膜は、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有し、又は抗微生物剤の表面積濃度は、外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、方法である。
【0037】
インプラント又はインプラントの構成要素の表面上への生分解性ポリマー薄膜の適用は、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量などの、本開示による表面積コーティング重量を生成することが可能な任意の技術によって実施され得る。例えば、薄膜は、浸漬コーティングによってすなわち、インプラント又はインプラントの構成要素を、生分解性ポリマーを含むコーティング溶液に浸漬することによってインプラント又はインプラントの構成要素の表面に適用される。他の技術は、生分解性ポリマーを含むコーティング溶液をインプラント又は構成要素の表面上に噴霧することを含み得る。当業者は、生分解性ポリマー薄膜をインプラント又はインプラントの構成要素の表面上に適用するための他の許容可能なアプローチを容易に特定することができる。
【0038】
抗微生物剤は、抗微生物剤の供給源からの蒸気移動によって薄膜に組み込まれ得る。蒸気移動プロセス及び抗微生物剤の好適な供給源は、当業者の間で既知であり、蒸気移動を達成する任意の有効な様式が使用され得る。
【0039】
本方法によれば、整形外科用インプラント又はその構成要素、生分解性ポリマー薄膜、気化可能な抗微生物剤、抑制ゾーン、及び関連する特徴の特性は、手術部位での微生物増殖を低減させるための本開示の整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素に関連して上記に提供される説明に従い得る。
【0040】
外側インプラント表面を画定する整形外科用インプラント本体を備える、整形外科用インプラント手術部位における微生物感染を低減させるためのシステムもまた本明細書に開示され、整形外科用インプラント本体は、インプラント本体を通して外側表面から延在し、骨締結具を受容するように構成される、1つ又は2つ以上の開口部と、整形外科用インプラント本体を骨に固定するために1つ又は2つ以上の開口部内に配設されるように構成された骨締結具であって、外側締結具表面を画定する骨締結具と、外側インプラント表面又は外側締結具表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を更に画定し、生分解性ポリマー薄膜が、約50~250対象におけるμg/cm2の表面積コーティング重量を有し、気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有し、抗微生物剤の表面積濃度は、外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、又は対象における整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、整形外科用インプラント本体の対応する開口部から締結具を解放するために必要とされるトルクは、整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間、コーティングされていないが、それ以外の点では同一である整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一である締結具を解放するために必要とされるトルクの約90%以上である。
【0041】
本システムによれば、整形外科用インプラント及び締結具の表面上における本明細書において開示される特性を有する生分解性ポリマー薄膜の使用は、インプラントを手術部位内、例えば、対象の骨表面上に固定するために、かかる構成要素が互いに連結するように構成されるとき、かかる構成要素の物理的相互作用を妨げない。インプラント表面上のコーティングがかかる物理的相互作用を妨げるかどうかの重要な尺度は、対象における整形外科用インプラントの植え込みに好適な挿入トルクの使用後、それぞれの構成要素を互いから、例えば、締結具を整形外科用インプラント本体の対応する開口部から解放するために必要とされるトルクの量を保持するためのインプラントシステムの能力である。本システムのいくつかの実施形態では、対象における整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、整形外科用インプラント本体の対応する開口部から締結具を解放するために必要とされるトルクは、対象における整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間にわたって、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされるトルクの約90%以上である。例えば、整形外科用インプラント本体の対象内への植え込みに好適な挿入トルクの使用後、整形外科用インプラント本体の対応する開口部から締結具を解放するために必要とされるトルクは、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされるトルクの約91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%以上である。かかる解放トルクは、対象における整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間、例えば、最長6時間、12時間、18時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、108時間、又は120時間の期間にわたって必要とされ得る。
【0042】
本システムによれば、整形外科用インプラント又は締結具、生分解性ポリマー薄膜、気化可能な抗微生物剤、抑制ゾーン、及び他の関連する特徴の特性は、手術部位における細菌増殖を低減させるための本開示の整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素に関連して、及び手術部位における細菌増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための本開示の方法に関連して上記に提供される説明に従い得る。
【0043】
外側インプラント表面を画定する少なくとも1つの整形外科用インプラント本体を備えるキットもまた本明細書に開示され、整形外科用インプラント本体は、インプラント本体を通して外側表面から延在し、骨締結具を受容するように構成される、1つ又は2つ以上の開口部と、整形外科用インプラント本体を骨に固定するために、整形外科用インプラント本体のうちの少なくとも1つの開口部内に配設されるように構成された複数の骨締結具であって、骨締結具の各々は、外側締結具表面をそれぞれ画定する、複数の骨締結具と、整形外科用インプラント本体の各々の外側インプラント表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜、骨締結具の各々の外側締結具表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜、又はその両方と、生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を更に画定し、生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有し、気化可能な抗微生物剤が、約5~85対象におけるμg/cm2の表面積濃度を有し、抗微生物剤の表面積濃度は、外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、又は整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、整形外科用インプラント本体のうちの1つの対応する開口部から締結具のうちの1つを解放するために必要とされるトルクは、対象における整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するのに必要なトルクの約90%以上である。
【0044】
したがって、本キットは、骨締結具を受容するための開口部を含むことによって構成される1つ又は2つ以上の整形外科用インプラント本体、並びに整形外科用インプラント本体を骨に固定する際に使用するための複数の骨締結具を収容し、必要な程度に、キットは、それぞれ同じ又は異なるタイプの複数の整形外科用インプラント本体、並びに提供される整形外科用インプラント本体との適合性のために必要に応じて個々に異なる対応する骨締結具を含み得る。キットは、例えば、特定のインプラント処置を完了するために必要とされるインプラント構成要素の全てを含むように配置することができる。
【0045】
本キットによれば、整形外科用インプラント本体又は締結具、生分解性ポリマー薄膜、気化可能な抗微生物剤、抑制ゾーン、開放トルク特性、及び他の関連する特徴の特性は、手術部位における微生物増殖を低減させるための本開示の整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素に関連して、手術部位における微生物増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための本開示の方法に関連して、及び整形外科用インプラント手術部位における微生物増殖を低減させるための本開示のシステムに関連して、上記に提供される説明に従い得る。
【0046】
本開示はまた、外側インプラント表面を画定する整形外科用インプラント本体を含む、整形外科用植え込みシステムの抗微生物処置から結果として生じる開放トルクの損失を低減させるための方法を提供し、整形外科用インプラント本体は、インプラント本体を通して外側インプラント表面から延在し、骨締結具を受容するために構成された1つ又は2つ以上の開口部を更に画定し、骨締結具は、整形外科用インプラント本体を骨に固定するように1つ又は2つ以上の開口部内に配設されるように構成され、骨締結具は、外側締結具表面を画定し、本方法は、開口部、対応する外側締結具表面のうちの一方、又は両方に生分解性ポリマー薄膜を適用することと、気化可能な抗微生物剤を薄膜に組み込むことと、を含み、生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有し、気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有し、抗微生物剤の表面積濃度は、外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、又は対象における整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、整形外科用インプラント本体のうちの1つの対応する開口部から締結具のうちの1つを解放するために必要とされるトルクは、対象における整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するのに必要なトルクの約90%以上である。
【0047】
本方法によれば、整形外科用インプラント本体又は締結具、生分解性ポリマー薄膜、気化可能な抗微生物剤、抑制ゾーン、解放トルク特性、及び他の関連する特徴の特性は、手術部位における微生物増殖を低減させるための本開示の整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素に関連して、手術部位における微生物増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための本開示の方法に関連して、整形外科用インプラント手術部位における微生物感染を低減させるための本開示のシステムに関連して、及び本開示のキットに関連して、上記に提供される説明に従い得る。
【実施例】
【0048】
本発明を、以下の実施例で更に定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しつつ、単なる例解としてのみ与えられ、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。上の考察及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修正を行って、本発明を様々な用途及び条件に適合させることができる。
【0049】
実施例1-インプラント表面への抗微生物剤の従来の蒸気移動
米国特許第8,668,867号に説明されているプロセスに従って、金属整形外科用インプラント上へのトリクロサンの蒸気移動を試みて、説明されているプロセスがトリクロサンを金属表面上に効果的に付着させることができるかどうかを判定した。
【0050】
1)チタン合金(Ti-6Al-7Nb(TAN))、2)316Lステンレス鋼、及び3)約0.55mg/cm2 のポリ(D,L-ラクチド)(PLA)コーティングを有するTANピンを含む一連の金属ピン(およそ4mm×30mm)を試験した。
【0051】
トリクロサン(IRGACARE MPトリクロサンロット番号0013227542)を、高密度ポリエチレン(HDPE)のシートに2.56重量%で配合した。
【0052】
ピンを、0.62~0.66グラムのトリクロサン含浸HDPEシート(およそ16mgのトリクロサン)と共パッケージ化して、外側PET層、ポリエチレン層、ホイル防湿層、及び内側ポリエチレンヒートシール層を有し、ホイル層(防湿層)が2つの間に配設された状態のEO滅菌に好適な4層パッケージ材料にした。パッケージを、EO滅菌し、55℃で4時間、熱処理した。
【0053】
EO滅菌及び熱処理プロセスが完了した後、ピンの抗菌活性を測定した。3.03×109CFU/mLのS.aureusを、滅菌綿棒によって事前形成されたプレート上に広げ、ピンを広げたプレートの表面に穏やかに押圧したが、寒天培地を貫通しなかった。プレートを24時間インキュベーションし、次いで各ピンに関してZOIを測定した。
【0054】
総ゾーンをインプラントの幅(短軸)にわたって測定し、結果は以下の通りであった。ステンレス:増殖低減の最小観察ゾーン(ZOIなし)、TAN:増殖低減の最小観察ゾーン(ZOIなし)、TAN-PLA:12.4mmZOI。
【0055】
インプラント幅(約4.0mm)を説明し、2で割って、インプラントの各側面上のZOIを説明すると、各インプラントタイプに関する周囲のZOIは以下の通りであった。ステンレス:観察されず、TAN:観察されず、TAN-PLA:4.2mm。
【0056】
このため、結果は、ポリマーコーティングされたピン(TAN-PLA)のみが臨床的に有効なZOIを提供することができ、金属基材表面のみを有するピンは臨床的に有意な量のトリクロサンを保持することができなかったことを示した。
【0057】
実施例2-タンブリングによるインプラント表面へのポリマーの移動
ステンレス鋼材料とポリカプロラクトンペレットとの45~60℃の温度でのタンブリングを評価した。6つの直径4mm及び長さ30mmの316Lステンレス鋼ピン及び1つの4穴外傷プレート(DePuy Synthes224.541 長さ80mm×幅13.5mm×厚さおよそ5mm)を、245グラムのポリカプロラクトンペレット(Polysciences 26290-600、MW 80,000)とともにゴム製八角形タンブリングチャンバ内に設置した。温度を45、50、32、54、及び56℃で増加させ、各温度で1.5~2時間のタンブリング期間を設けた。タンブリング培地(322グラム)を添加し、加熱を続けた(56、58、及び60℃)。ポリカプロラクトン外観、金属部品外観、及び金属部品質量の観察を、各温度増分で観察した。
【0058】
ピン質量は、加熱の範囲にわたって感知できるほど変化しなかった(
図1A)。質量における変化は、バランスとして同じ分解能で10分の1ミリグラム単位である。しかしながら、外傷プレートの質量における低下傾向が観察された(
図1A)。ポリカプロラクトンの移動は、質量バランスによって測定することができなかった。しかしながら、ピン及びタンブリング培地の空気-水接触角は、有意に変化し、ポリカプロラクトンによる表面の修飾を示した。顕微鏡は、ピン(
図1B)及び外傷プレート(
図1C)の表面へのPCLの移動の証拠を実証したが、係止ねじ山へのPCLの付着は認められなかった(
図1C)。これは、外傷プレートの係止機構のポリマー汚染を回避するという利点を有する。
【0059】
実施例3-PCLタンブリング、超薄浸漬コーティング、及び整形外科用インプラントの従来のポリマーコーティングの間の比較
抗微生物活性を持続させることができる最小限のポリマーコーティングを評価する目的で、試料を作製した。試料は、54mm×12.5mmの316Lプレートであり、これは、「フラットプレート」と呼ばれる、抑制ゾーン研究に好適な外傷プレートの長方形表現であった。2つの特定のプロセスを使用した:4.5%wt/wtポリラクチド-エチルアセテート溶液中での手動浸漬コーティング、並びにポリカプロラクトンペレット(245グラムPolysciences 26290-500、MW 80,000)及びタンブリング培地(322グラム)中で、56℃、16時間のタンブリング。手動浸漬コーティングは、53μg/cm
2の平均コーティング重量をもたらした。ポリカプロラクトンタンブリングは、試料質量における増加を生成せず、むしろ、タンブリングプロセスは、316L試料から質量を除去した(15.7グラムの316Lプレートから28mg)。しかしながら、ポリカプロラクトンによる試料のコーティングは、顕微鏡観察及び空気-水接触角の増加によって確認された(
図2A)。
【0060】
PE-トリクロサンシート試験試料からのトリクロサン蒸気移動は、0.65±0.02グラムのトリクロサン含有PEシートを、処理される材料とともにホイル滅菌パウチに設置することによって実施した。パウチをヒートシールし、トリクロサンの移動を55℃、およそ4時間で完了した。
【0061】
以下の試料を同じバッチ内でトリクロサン処理した。
316Lステンレス鋼ピン直径4mm×長さ30mm、
316Lフラットプレート、
53μg/cm2ポリラクチドコーティングされた316Lプレート、
実施例#2から60℃でPCLタンブルされた316Lピン、
56℃でPCLタンブルされた316Lフラットプレート、
19mmPEEKディスク、
Rapidsorb85:15PLGAプレート(Synthes PN 851.421.01S)、
多孔性ポリエチレン(13mm×50mmに切断されたSynthes PN 08.510.130S)。
【0062】
実施例1からの3つの0.59mg/cm2ポリラクチドコーティングされたピンも含めた。これらの試料について、トリクロサン移動は、EO滅菌及び4時間、55℃オーブン処理の両方の間に行われた。
【0063】
トリクロサン移動処理試料の抗微生物活性を、リン酸緩衝インキュベーション期間後に実施した抑制ゾーン分析によって評価した(
図2C)。およそ10
8CFU/mLのS.aureusATCC 25923の培養物を、事前形成されたプレート上に滅菌綿棒によって広げ、試料を広げたプレートの表面に穏やかに押圧した。試料は、パウチから取り出し直接ZOI上に設置するか、又は試料を12mLのPBS中に15分間又は24時間設置した。PBSでインキュベーションされた試料を、ZOI皿上に設置する前に、12mLのPBSで更にすすぎした。PEストリップの反対側が細菌に面する状態で、ZOIを広げたプレート上に試料を設置するように注意した。これは、パウチ内のPEストリップからのトリクロサン移動に関する最悪の場合を提示する。24時間の細菌増殖後、ゾーン幅及び試料幅を測定した。抑制ゾーンは、(ゾーン幅-試料幅)/2として計算されるインプラントの縁部からのマージンとして測定した。
【0064】
表1は、金属ピン及びプレート並びに例示的なポリマー医療デバイス材料の周りの測定された抑制ゾーンを説明する。「影」は、増殖低減の最小観察領域(ZOIなし)を意味する。「局所的」とは、ゾーンが試料に隣接するいくつかの領域においてのみ観察されたこと、すなわち、一貫した抑制ゾーンが観察されなかったが、いくらかの活性が存在したことを意味する。
【0065】
【0066】
固体ポリマー試料は、S.aureusを広げたプレート上への即時配置で、又は配置がPBS中でのインキュベーションの15分後であった場合に、一貫して抑制ゾーンを生成した。固体ポリマー試料でPBS中で24時間インキュベーションした後、ゾーン又は局所的活性が存在した。ゾーンは、ステンレス鋼ピン又はプレートに隣接して観察されなかった、しかしながら、超薄コーティングは、PBS中でインキュベーション及びすすぎに対するゾーン耐久性を改善することができた。PCLタンブリングプロセスは、即座に抑制ゾーンを生成したが、PBSすすぎに耐えたものは生成しなかった。極薄の0.53μg/cm2のポリラクチドコーティングは、15分間のインキュベーションに耐えるゾーンを生成したが、24時間のインキュベーション後、局所化した活性のみであった。チタン合金ピン上の0.59mg/cm2のポリラクチドのより厚いコーティングは、24時間の事前溶出に耐える強固なゾーンを生成した。PBS中で24時間の事前インキュベーション後に抑制ゾーンを生成するための最小コーティング重量は、ポリエチレンストリップに2.56%で配合されたトリクロサンから55℃で4時間、実施されたトリクロサン移動について、53~590μg/cm2である。
【0067】
実施例4-製作及び抑制ゾーンの評価
エチルアセテート中5%のポリラクチド(Evonik Resomer 203S)及びエチルアセテート中8%のポリラクチドのポリラクチド浸漬コーティング溶液を調製し、7穴3.5 LCP 316L外傷プレート(DPS PN223.571 長さ98mm×幅11mm)を浸漬コーティングするために使用した。試料をステンレス鋼メッシュトレイ内に水平に固定し、各溶液に手動で浸漬した後、引き上げて、プレートを溶液でコーティングした。コーティング前及び一晩乾燥後に試料を秤量して、プレートの22.72cm2面積当たりのコーティング質量を計算した。エチルアセテート中5%のポリラクチド溶液は、102±5μg/cm2のコーティング重量を生成し、8%溶液は、229±14μg/cm2のコーティング重量を生成した。低粘度ポリマー溶液中のコーティングは、単一の方法によって多くの異なる部品サイズ又は形状をコーティングするという利点を有する。
【0068】
外傷プレートを、2.56%トリクロサンで配合した0.67±0.02グラムのポリエチレンシートとともにホイルパウチ内で共パッケージ化した。トリクロサン蒸気移動を、予熱した55℃のオーブン内で4時間31分実施した。冷却した試料を、パッケージから直接、又は15時間若しくは24時間のPBS中の事前溶出後のいずれかで、抑制ゾーンについて評価した。抑制ゾーン分析を、以下のような混釈平板法によって実施した。
・研究所内で作製されたTSB20mL中、109CFU/mLの濃度で、Staphylococcus aureusの細菌接種材を一晩、37℃のシェーカでインキュベーションすることによって調製する。
・一晩培養物の希釈ストックのOD600読み取り値を取得して、吸光度法でストック濃度を判定する。
・確実に血清ピペットで強制的に上下に吸引して、コロニーの塊を破壊するようにしながら、0.3%TSBを使用して、ストック濃度から細菌の濃度を、105CFU/mLに調整する。
・以下の希釈液を、TSA-Lプレート上に、3つ1組でプレーティングして、細胞の初期ストック濃度を判定する:102CFU/mL。
・TSAを調製し(500mLの超純水中に20gのトリプチックソイ寒天培地を121℃、30分でオートクレーブ処理する)、寒天培地を45℃の水浴で冷却する。寒天培地の温度が45℃に達したら、滅菌ペトリ皿を取る。ペトリ皿の中央に接種材(1.00E+05CFU/mL)を加え、次いで15mLのTSAをゆっくりと注ぐ。蓋を閉じ、ペトリ皿を旋回させて、接種材を寒天培地と混合する。気泡の作成を回避する。
・滅菌鉗子を用いてペトリ皿の中央に試験試料を設置する。
・寒天培地を完全にゲル化させるために、約10分間、波打ちした平穏な表面上にプレートを設置する。
・プレートを37℃で24時間、インキュベーションする。
・画像分析によって抑制ゾーンを測定する。
【0069】
以下の表2に示されるように、結果として得られたゾーンは、102及び229μg/cm2のポリラクチド(Resomer 203S)コーティングが、55℃及び4.5時間でトリクロサン移動を可能にして、少なくとも24時間耐える抑制ゾーンを生成することを示す。
【0070】
【0071】
実施例5-ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コーティングされたプレート中の40%ゲンタマイシンサルフェートに対するポリラクチドコーティングされた外傷プレートの開放トルクの評価
係止された外傷プレーティング構造体は、植え込み後に係止されたままでなければならない。およそ3.5mg/cm2のコーティング重量で外傷プレート上にコーティングされた40%粒子状ゲンタマイシンサルフェートを有するポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を、実施例#04内で調製された蒸気移動トリクロサンを有する102μg/cm2及び229μg/cm2ポリラクチドの2つの極薄ポリラクチドコーティングに対して比較した。0.01Nmの精度を有する較正されたトルクセンサを使用して、係止ねじ頭部をプレートに挿入した。初期の研究では、2.50Nmの目標挿入トルクを、PLGA-ゲンタマイシンプレートで使用した。対象の研究では、1.50Nmの目標挿入トルクを、ポリラクチド-トリクロサンプレートに使用した。各研究は、それ自体のコーティングされていないプレート対照群を有した。PLGA-ゲンタマイシンプレートを、垂直に浸漬コーティングし、コーティングされた近位穴及びコーティングされた遠位穴についての結果は別々に表示され、コーティング重量は、コーティングされた遠位穴においてより大きく、コーティングプロセスにおいてより多くの懸濁液を保持した。開放トルクを、37℃で5日間、pH11緩衝液中、同日又はハイドレーション及びポリマーコーティングの分解後のいずれかで測定した。解放トルクを表にし、各研究群についての挿入に対する解放トルクからの%差を、以下の表3及び表4に提供する。
【0072】
【0073】
【0074】
図3A及び
図3Bに示されるように、PLGAの従来の抗菌コーティング中のおよそ3.5mg/cm
2の粒子状ゲンタマイシンは、外傷プレートの係止機能を妨げ、乾燥及びpH11の緩衝液中での5日間のインキュベーション後の両方で、開放トルクにおける有意な低減を引き起こした。102又は229μg/cm
2のポリラクチドコーティングは、外傷プレートの係止機能を妨げなかった。除去トルクの9~10%の減少が乾燥除去中に観察され、驚くべきことに、除去トルクは、pH11の緩衝液中で5日間インキュベーションすると増加した。
【0075】
実施例6-付着及び増殖のベンチマーク
トリクロサン蒸気移動を伴う90μg/cm
2のポリラクチドコーティングされたチタン合金(チタンアルミニウムニオブ)ピン(直径4mm×長さ30mm)の抗菌コロニー形成性能を、未処理TANピンと比較した。6つのコーティングされたTANピンを、2.56%のトリクロサンを配合した0.62~0.72グラムのポリエチレンを有するホイルパウチに設置した。これらを予熱したオーブンに55℃で4時間5分間設置して、トリクロサンをポリエチレンからポリラクチド-TANピンに蒸気移動させた。付着及び増殖細菌コロニー形成研究を、S.aureusATCC 25923を用いて、
図4に示すようなフローチャート内に描写されるように実施した。ヒト間質液の複雑さを反映するために、ウシ胎児血清を細菌ブロスの成分として使用し、0、2%及び20%のレベルを評価した。
【0076】
以下の表5は、評価の結果を提供する。PLA-トリクロサンでコーティングされたピンは、1時間でピンへの細菌の付着に対する効果を有していないにもかかわらず、24時間でのコロニー形成の低減において抗菌活性を実証した。抗菌効果は、液体培地培養条件において4-logより大きかったが、軟寒天培地における効果は、血清の非存在下での1.4log-低減から、2%血清での1.9log及び20%血清での2.4-logの範囲であった。いかなる特定の理論にも限定されるものではないが、トリクロサンを可溶化し、化合物のより高い組織濃度を作り出す能力の増加により、軟寒天培地中のトリクロサンの有効性が血清含量とともに増加した可能性がある。55℃で4時間のトリクロサン蒸気移動は、90μg/cm2のポリラクチドでコーティングされたTANピン上で実施された場合、抗菌効力を実証した。
【0077】
【0078】
実施例7-高い熱伝達及び超薄膜
更なる実験では、特に容器が金属又は他のトリクロサン非吸収性材料からなる場合、全金属製容器において実施されるトリクロサン移動が、金属インプラントに移動されるトリクロサンの量を増大させることが判定された。かかるアプローチを使用して、製品を同時に加熱滅菌し、標的デバイスに抗菌特性を付与することが可能である。この例で実証されるように、非吸収性パッケージを金属デバイス上の優先的吸収性コーティングと組み合わせることが特に有利である。
【0079】
乾熱滅菌及び同時に起こるトリクロサン蒸気移動に必要とされる加熱に耐えるために、ポリマーコーティングは、プロセス中に融解するか又は粘着してはならず、そのため、それは、その容器にとどまる。ポリ(L-ラクチド)、又は好ましくは、ポリ(L-ラクチド)と立体錯体化したポリ(D-ラクチド)は、関連する加熱滅菌温度で結晶性のままである候補である。この実施例では、ポリ(L-ラクチド)(Lactel B6002-2 IV:0.90-1.20)を、4、12、及び20mm/秒で、クロロホルム中2.5%溶液から7穴3.5 LCP 316L外傷プレート(DPS PN223.571 長さ98mm×幅11mm)上にコーティングした。7つの試料プレートを各速度でコーティングして、PBSインキュベーション又は1時間、24時間、又は72時間での事前溶出のない混釈平板によって、トリクロサン定量のための3つの試料及びZOIのための各1つの試料を収容した。浸漬コーティング及び空気乾燥後、外傷プレートを130℃でアニールして、ポリ(L-ラクチド)結晶領域の安定性を最大化した。
【0080】
トリクロサンの移動は、1.64±0.23mgのトリクロサンをエチルアセテートからの溶媒流延によって各アルミニウム管容器に堆積させることによって達成された。コーティングされた又はコーティングされていない標的外傷プレートを挿入し、アルミニウム管の端部をプライヤ及び万力で圧着して閉鎖し、次いでトリクロサン移動を130℃、4時間で完了した。試料を取り出し、トリクロサンを以下のようにUV吸光度によって定量化した。
1.10mgのトリクロサンを、10mlメスフラスコ(琥珀色)に秤量した。
2.次いで、10mLの溶媒を添加して、ボルテックスで混合することによって粉末を溶解した。これを第1のストック濃度(1000ppm)と指定した。
3.1000ppmのストック濃度のトリクロサンを使用して、以下のような溶媒でその後の希釈を実施した:
【0081】
【表6】
4.この後、各標準の試料1mLをプラスチックキュベットに移動させ、各試料の吸光度を280nmのUVで読み取った。
5.次いで、280nmでの吸光度対トリクロサン濃度をプロットすることによって、トリクロサンの標準曲線を作成した。
【0082】
試料調製
1.トリクロサンで処理したプレートを滅菌15mL遠心分離管内に配置した。
2.13mLのアセトニトリルを各管に追加した。管を、250rpmで必要な時間振盪した。
3.この後、ピンを別の無菌管に移動させた。試料溶液を分析するまで4℃で保存した。
4.分析のために、試料を含有する15ml遠心分離管を短時間ボルテックスした。
5.次いで、1mLの試料を、UVNanodrop機器を用いて280nmの波長で分析し、各試料の濃度を、作成した標準曲線から判定した。非常に高い初期吸光度を示した試料を、アセトニトリルで希釈した。
【0083】
図5は、全金属製容器中、130℃における極薄ポリ(L-ラクチド)膜コーティングされたステンレス鋼係止圧縮プレートへのトリクロサンの移動を例解する。移動の程度は、最も薄いコーティングを有する地金プレートに対して4.7倍増加し、堆積したトリクロサンの量は、コーティング重量の量に対して相対的に非感受性であった。
【0084】
以下の表6は、ポリ(L-ラクチド)コーティング重量、移動した平均トリクロサンン、及び乾熱滅菌及び同時蒸気移動を有する地金プレートに対するトリクロサン倍率を提供する。
【0085】
【0086】
外傷プレートを、77、131、及び222μg/cm
2のコーティング重量を有する地金表面又はポリ(L-ラクチド)膜を用いて調製した。外傷プレート上のトリクロサン用量は、ポリマーなし(0.24mg)からポリマーあり:77μg/cm
2ポリマー、4.7倍、131μg/cm
2、5.2倍、及び222μg/cm
2、5.6倍に増加した(
図5)。外傷プレート上のトリクロサンの量を各容器中の初期トリクロサンのパーセンテージとして表すとき、極薄ポリマーコーティングは、移動効率を、それぞれ、未処理プレートの12%から77μg/cm
2のコーティングされたプレートに関して76%、並びに131μg/cm
2及び222μg/cm
2極薄ポリマーコーティングに関して86%及び84%に増加させた。移動効率が高いため、外傷プレート上に堆積したトリクロサンの量は、外傷プレート上のポリマーの量に対して相対的に非感受性であった。これは、プレートからプレートへの平均コーティング重量における差が、乾熱滅菌及び同時蒸気移動の間にプレートに移動されるトリクロサン用量において大きい差をもたらさないため、浸漬コーティング工程に関連する低い製造コストを更に強固にする。コーティングされていない外傷プレートは、PBS中での24時間の事前溶出に耐える抑制ゾーンを実証したが、3つ全ての極薄ポリマーコーティングプレートは、72時間の事前溶出後の抑制ゾーンを実証した(
図6)。
【0087】
〔実施の態様〕
(1) 手術部位において微生物増殖を低減させるための整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素であって、
本体外側表面を画定する本体と、
前記本体外側表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、
前記生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、又は
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素。
(2) 前記生分解性ポリマー薄膜の前記表面積コーティング重量が、前記本体の前記表面の前記面積に対して、約60~230μg/cm2である、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(3) 前記生分解性ポリマー薄膜が、ポリ(α-ヒドロキシエステル)ポリマーを含む、実施態様1又は2に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(4) 前記生分解性ポリマー薄膜が、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、又はこれらの任意のコポリマー若しくは混合物を含む、実施態様3に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(5) 前記生分解性ポリマー薄膜が、ポリ(l-乳酸)(PLLA)、ポリ(d-乳酸)(PDLA)、ポリ(d,l-乳酸)(PDLLA)、又はこれらの任意のコポリマー若しくは混合物を含む、実施態様3に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【0088】
(6) 前記抗微生物剤が、約45~55μg/cm2の表面積濃度を有する、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(7) 前記気化可能な抗微生物剤が、ハロゲン化ヒドロキシルエーテル、アシルオキシジフェニルエーテル、又はこれらの組み合わせを含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(8) 前記気化可能な抗微生物剤が、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)を含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(9) 前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から約0.5~4mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(10) 前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から約1~2mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【0089】
(11) 前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記整形外科用インプラント又は構成要素のヒト対象への植え込み後、最長約6、12、18、24、36、48、又は72時間、前記有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(12) 前記生分解性ポリマー薄膜が、前記本体の各表面上に存在する、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(13) 前記本体が、金属、ポリマー、又はその両方を含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(14) 前記本体外側表面が、金属、ポリマー、又はその両方を含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(15) 前記本体外側表面が、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアルケン、金属若しくは金属合金、又はこれらの組み合わせを含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
【0090】
(16) 前記本体外側表面が、金属又は金属合金を含む、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(17) 前記金属が、チタン、ステンレス鋼、又はチタン若しくは鋼を含有する合金である、実施態様16に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(18) 前記本体外側表面が、PAEKを含み、前記PAEKが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はそのコポリマーである、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(19) 前記本体外側表面が、ポリアルケンを含み、前記ポリアルケンが、ポリエチレン又はそのコポリマーである、実施態様1に記載の整形外科用インプラント又は構成要素。
(20) 手術部位において微生物増殖を低減させる整形外科用インプラント又は整形外科用インプラントの構成要素を調製するための方法であって、
前記インプラント又はインプラントの構成要素の表面上に生分解性ポリマー薄膜を適用することと、
気化可能な抗微生物剤を前記薄膜に組み込むことと、を含み、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、又は
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分である、方法。
【0091】
(21) 前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有する、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記薄膜が、前記インプラント又はインプラントの構成要素を、前記生分解性ポリマーを含むコーティング溶液に浸漬することによって、前記インプラント又はインプラントの構成要素の前記表面に適用される、実施態様20又は21に記載の方法。
(23) 前記抗微生物剤が、前記抗微生物剤の供給源からの蒸気移動によって前記薄膜に組み込まれる、実施態様20に記載の方法。
(24) 整形外科用インプラントの手術部位における微生物感染を低減させるためのシステムであって、
外側インプラント表面を画定する整形外科用インプラント本体であって、前記外側表面から前記インプラント本体を通って延在し、骨締結具を受容するように構成された1つ又は2つ以上の開口部を更に画定する、整形外科用インプラント本体と、
前記整形外科用インプラント本体を骨に固定するために前記1つ又は2つ以上の開口部内に配設されるように構成された骨締結具であって、外側締結具表面を画定する、骨締結具と、
前記外側インプラント表面又は前記外側締結具表面の少なくとも一部分に沿って配設された生分解性ポリマー薄膜と、
前記生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、
又は、
対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、前記整形外科用インプラント本体の対応する開口部から前記締結具を解放するために必要とされる前記トルクが、前記対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間にわたって、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされる前記トルクの約90%以上である、システム。
(25) キットであって、
外側インプラント表面を画定する少なくとも1つの整形外科用インプラント本体であって、前記外側表面から前記インプラント本体を通って延在し、骨締結具を受容するように構成された1つ又は2つ以上の開口部を更に画定する、整形外科用インプラント本体と、
前記整形外科用インプラント本体を骨に固定するために、前記整形外科用インプラント本体のうちの少なくとも1つの開口部内に配設されるように構成された複数の骨締結具であって、前記骨締結具の各々が、外側締結具表面をそれぞれ画定する、複数の骨締結具と、
前記整形外科用インプラント本体の各々の前記外側インプラント表面の少なくとも一部分に沿って配設されるか、前記骨締結具の各々の前記外側締結具表面の少なくとも一部分に沿って配設されるか、又はその両方である生分解性ポリマー薄膜と、
前記生分解性ポリマー薄膜内に配設された気化可能な抗微生物剤と、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、又は
対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、前記整形外科用インプラント本体のうちの1つの対応する開口部から前記締結具のうちの1つを解放するために必要とされる前記トルクが、前記対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間にわたって、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされる前記トルクの約90%以上である、キット。
【0092】
(26) 整形外科用インプラントシステムの抗菌処理から結果として生じる解放トルクの損失を低減させるための方法であって、前記整形外科用インプラントシステムが、
外側インプラント表面を画定する整形外科用インプラント本体であって、前記外側インプラント表面から前記インプラント本体を通って延在し、骨締結具を受容するように構成された1つ又は2つ以上の開口部を更に画定する、整形外科用インプラント本体と、
前記整形外科用インプラント本体を骨に固定するために前記1つ又は2つ以上の開口部内に配設されるように構成された骨締結具であって、外側締結具表面を画定する、骨締結具と、を含み、
前記方法が、
前記開口部、前記対応する外側締結具表面のうちの一方、又は両方に、生分解性ポリマー薄膜を適用することと、
気化可能な抗微生物剤を前記薄膜に組み込むことと、を含み、
前記生分解性ポリマー薄膜が、約50~250μg/cm2の表面積コーティング重量を有するか、
前記気化可能な抗微生物剤が、約5~85μg/cm2の表面積濃度を有するか、
前記抗微生物剤の前記表面積濃度が、前記外側インプラント表面の周縁から少なくとも0.5mmの有効抑制ゾーンを生成するのに十分であるか、又は
対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込みに好適な挿入トルクの使用後、前記整形外科用インプラント本体のうちの1つの対応する開口部から前記締結具のうちの1つを解放するために必要とされる前記トルクが、前記対象における前記整形外科用インプラント本体の植え込み後、最長5日間にわたって、コーティングされていないが、それ以外の点では同一の整形外科用インプラント本体の対応する開口部から、コーティングされておらず、かつそれ以外の点では同一の締結具を解放するために必要とされる前記トルクの約90%以上である、方法。
【国際調査報告】