(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】多孔質電極
(51)【国際特許分類】
C25B 11/032 20210101AFI20240426BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240426BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20240426BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240426BHJP
C25B 11/061 20210101ALI20240426BHJP
C25B 11/075 20210101ALI20240426BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240426BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C25B11/032
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B11/052
C25B11/061
C25B11/075
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572836
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2022063929
(87)【国際公開番号】W WO2022248416
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(71)【出願人】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】プランケンシュタイナー,ニーナ
(72)【発明者】
【氏名】シン,スクヴィンデル
(72)【発明者】
【氏名】フェレーケン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】メース,マールテン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォダルツ,ジークフリート
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
【Fターム(参考)】
4K011AA11
4K011AA20
4K011AA22
4K011AA49
4K011DA01
4K011DA11
4K021AA01
4K021BA02
5H018AA04
5H018AA08
5H018BB08
5H018EE02
5H018EE04
5H018HH02
5H018HH03
5H018HH04
(57)【要約】
多孔質電極(1)であって、a.相互接続されたワイヤからなる導電性多孔質ネットワーク(2)と、b.導電性支持構造体(3)とを含み、ネットワーク(2)は、支持構造体(3)と直接物理的および電気的に接触しており、ネットワーク(2)は、2m2/cm3~90m2/cm3の体積表面積および50%~90%の気孔率を有し、支持構造体(3)の表面は、ネットワーク(2)から離れる方向に面して、その表面積の2%~90%を占める開口部(5)を有し、開口部(5)はネットワーク(2)の孔に流体
連通する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質電極(1)であって、
a.相互接続されたワイヤの導電性多孔質ネットワーク(2)、および、
b.導電性支持構造体(3)、を含み、
ネットワーク(2)は、支持構造体(3)と直接物理的および電気的に接触しており、ネットワーク(2)は、2m
2/cm
3~90m
2/cm
3の体積表面積および50%~90%の気孔率を有し、
支持構造体(3)の表面は、ネットワーク(2)から離れる方向に面しており、その表面積の2%~90%を占める開口部(5)を有し、開口部(5)は、ネットワーク(2)の孔に流体連通している電極(1)。
【請求項2】
相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)は、Niを含む請求項1に記載の電極(1)。
【請求項3】
相互接続されたワイヤの導電性多孔質ネットワーク(2)は、1~100μm、好ましくは4~10μmの総膜厚を有する請求項1または2に記載の電極(1)。
【請求項4】
導電性支持構造体(3)は、NiまたはCuを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項5】
ワイヤは、10~200nmの厚さ、好ましくは30~60nmの厚さである請求項1~4のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項6】
ガス拡散電極(1)である請求項1~5のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の多孔性電極(1)の形成方法であって、
a.相互接続されたチャネルのネットワーク(2)を含む第1の型(6)を形成する工程であって、第1の型(6)は、2m
2/cm
3~90m
2/cm
3の体積表面積および50%~90%の気孔率を有する相互接続されたワイヤのネットワーク(2)の形成に適した第1の型(6)を形成する工程、
b.第1の型(6)の上に第2の型(7)を形成する工程であって、第2の型(7)は、相互接続されたワイヤのネットワーク(2)から離れる方向に面した面を有し、その表面積の2~90%を占める開口部(5)を有し、開口部(5)は相互接続されたワイヤのネットワーク(2)の孔に流体連通している支持構造体(3)を成形するのに適した第2の型(7)を形成する工程、
c.第1の型(6)に第1の導電性材料を充填する工程、
d.第2の型(7)に第2の導電性材料を少なくとも部分的に充填する工程、を含み、
工程bは、工程aの後であって、工程cの前、または工程cの後で工程dの前のいずれかに実行され、
第1の導電性材料と第2の導電性材料は異なるか同じである多孔性電極(1)の形成方法。
【請求項8】
第1の型(6)を形成する工程は、金属層を陽極酸化する工程を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の型(7)を形成する工程は、第1の型(6)上に第2の型(7)を印刷する工程を含む請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
印刷は、インクジェット印刷である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第2の型(7)は、ワックスから形成される請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の多孔質電極(1)を含む電気化学デバイスであって、電気化学デバイスは、電解槽、燃料電池、および電池から選択される電気化学デバイス。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載のアノードおよびカソードを含む請求項12に記載の電解槽。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載のアノードおよびカソードを含む請求項12に記載の燃料電池。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか1項に記載のアノードおよびカソードを含むレドックスフロー電池である請求項12に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質電極の分野に関し、特に、電解槽および他の電気化学デバイスに使用される多孔質電極の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張表面積と機械的堅牢性を有する高多孔質材料は、触媒作用、エネルギ変換、および貯蔵を含む広範な用途にとって魅力的である。残念ながら、金属発泡体、脱合金、またはラネー金属のような最先端の材料は、一般に、高表面積、多孔性、および機械的安定性の間のトレードオフを示す。これら3つの特性の望ましい組み合わせを満たす材料の例は、S. Zankowski et al., ACS Appl. Mater. Interfaces、10(2018)44634-44644、およびS.Zankowski et al., J. Electrochem. Soc., 166 (2019) D227-D235に記載されている。「ナノメッシュ(nanomesh)」と呼ばれるこれらの材料は、3次元酸化アルミニウムテンプレート内で電気化学めっきによって作製される、相互接続された金属ナノワイヤを含む。作製手順の最適化により、75%の気孔率と、ナノメッシュの厚さ1μmあたり~30cm2という高い体積表面積を併せ持つ剛性ナノメッシュが得られた。Zankowskiらによって説明されたナノメッシュは、ニッケル発泡体のような他の最先端の多孔性ナノ構造材料よりもはるかに優れていることが示されている。例えば、ニッケルナノメッシュは、H2の電極触媒生産においてニッケル発泡体と比較され、4.5μmのナノメッシュが、300倍の厚さ(mm厚)のニッケル発泡体よりも優れていることが示された。これは、高い表面積(10倍に対して130倍)と、非常に多孔質のμm厚のナノメッシュ電極を介した物質輸送の改善によるものと考えられる。
【0003】
現在のところ、数μmの薄さのナノメッシュは、支持体(Siウエハのような剛体または閉じた金属箔のいずれか)なしでは作製できず、支持体なしでは、セルの組み立て中や加工中でさえ取り扱えるような機械的堅牢性がない。しかしながら、支持体の存在は、気体や液体が電極を完全に通過することで大きな恩恵を受ける多くの用途において、ナノメッシュを電極として適さないものにしてしまう。
【0004】
従って、この技術分野では、上述の欠点に悩まされることなく、表面積を拡大し、機械的堅牢性を有する新しい高多孔性材料に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、良好な多孔性電極、それを製造する方法、およびそれを含む電気化学デバイスを提供することである。
【0006】
上記目的は、本発明による多孔質電極、その製造方法、および電気化学デバイスによって達成される。
【0007】
第1の態様において、本発明は、
a.相互接続されたワイヤの導電性多孔質ネットワーク、および、
b.導電性支持構造体、
を含む多孔性電極に関し、
ネットワークは、支持構造と直接物理的および電気的に接触しており(例えば、「モノリシック」構造を形成してもよい)、ネットワークは、2m2/cm3~90m2/cm3の体積表面積、および50%~90%の気孔率を有し、
支持構造体の表面は、ネットワークから離れる方向に面し、その表面積の2%~90%を占める開口部を有し、開口部はネットワークの孔に流体連通している。
【0008】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の任意の実施形態にかかる多孔性電極の製造方法に関し、以下の工程:
a.相互接続されたチャネルのネットワークを含む第1の型を形成する工程であって、第1の型は、2m2/cm3~90m2/cm3の体積表面積、および50%~90%の気孔率を有する相互接続されたワイヤのネットワークを形成するのに適している工程、および、
b.第1の型の上に第2の型を形成する工程であって、第2の型は、相互接続されたワイヤのネットワークから離れる方向に面した表面を有し、その表面積の2%~90%、好ましくは50%~70%を占める開口部を有し、開口部は相互接続されたワイヤのネットワークの孔に流体連通している支持構造体を成形するのに適している工程、
c.第1の型に第1の導電性材料を充填する工程、
d.第2の型に少なくとも部分的に第2の導電性材料を充填する工程、
を含み、
工程bは、工程aの後であって、工程cの前、または工程cの後で工程dの前、のいずれかに実行され、
第1の導電性材料と第2の導電性材料は異なるかまたは同じである。
【0009】
第3の態様において、本発明は、第1の態様の任意の実施形態にかかる多孔質電極を含む電気化学デバイスに関し、電気化学デバイスは、電解槽(例えば、水の電気分解、CO2還元、N2還元、O2還元、または有機合成用)、燃料電池、および電池(例えば、レドックスフロー電池)から選択される。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、フィルタとしての第1の態様の任意の実施形態にかかる電極の使用に関する。
【0011】
良好な機械的安定性を有することは、第1の態様の実施形態の利点である。
【0012】
ネットワークへの、およびネットワークからの流体輸送を可能にすることは、第1の態様の実施形態の利点である。
【0013】
多孔質電極が高い電気化学的表面積を有することは、第1の態様の実施形態の利点である。
【0014】
流体アクセス性と機械的安定性との間のバランスを特定の用途に容易に適合させることができることは、本発明の第2の態様の実施形態の利点である。
【0015】
本発明の特に好ましい態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載されている。従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴および他の従属請求項の特徴と適宜組み合わせることができ、単に特許請求の範囲に明示的に記載されているだけではない。
【0016】
この分野のデバイスには絶え間ない改良、変化、および進化があったが、本概念は、先行実施からの逸脱を含む実質的に新規かつ新規な改良を表すと考えられ、その結果、より効率的、安定的、および信頼性の高いこの性質のデバイスが提供される。
【0017】
本発明の上記および他の特徴、性質、および利点は、本発明の原理を例示的に示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明から明らかになるであろう。この説明は、本発明の範囲を限定することなく、例示のためにのみ与えられる。以下に引用する参照図は、添付の図面を指す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の態様の実施形態にかかる多孔質電極の概略図である。
【
図2】本発明の第1の態様の実施形態にかかる2つの多孔質電極を含む電解槽を通る垂直断面の概略図である。
【
図3】本発明の第2の態様の実施形態にかかる製造スキームの一例を示す図である。
【
図4】2つの比較の電解槽(右上および中央)と、本発明にかかる電解槽(左上)と、対応する電流-電圧曲線(下)とを概略的に示す。
【0019】
異なる図において、同じ参照符号は同一または類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。記載された図面は概略的なものであり、非限定的なものである。図面において、いくつかの要素の大きさは、例示の目的で誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法および相対寸法は、本発明の実施に対する実際の縮小に対応するものではない。
【0021】
さらに、本明細書および特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、類似の要素を区別するために使用されるものであり、必ずしも、時間的、空間的、順位的、またはその他の方法で、順序を記述するために使用されるものではない。このように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示される以外の順序で動作可能であることを理解されたい。
【0022】
さらに、本明細書および特許請求の範囲における上、下、上に、下になどの用語は、説明の目的で使用されており、必ずしも相対的な位置を説明するためのものではない。このように使用された用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示された以外の向きでも動作可能であることを理解されたい。
【0023】
特許請求の範囲において使用される用語「含む(comprising)」は、その後に列挙される手段に限定されるものとして解釈されるべきではなく、他の要素または工程を排除するものではないことに留意されたい。従って、この用語は、言及された記載された特徴、整数、工程または構成要素の存在を特定するものとして解釈されるべきであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程または構成要素、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。従って、「含む(comprising)」という用語は、記載された特徴のみが存在する場合(従って、記載された特徴に範囲を限定するために、常に「からなる(consisting of)」と置き換えることができる)と、これらの特徴および1つ以上の他の特徴が存在する場合を含む。従って、本発明による「含む(comprising)」という用語は、さらなる構成要素が存在しないことも一実施形態として含む。このように、「手段AおよびBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなる装置に限定して解釈されるべきではない。本発明に関して、デバイスに単に関連する構成要素がAとBであることを意味する。
【0024】
本明細書全体を通して「一実施形態(one embodiment)」または「ある実施形態(an embodiment)」に言及することは、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて様々な箇所で「一実施形態において(in one embodiment)」または「ある実施形態において(in an embodiment)」という表現が現れるのは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではないが、その可能性はある。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかであるように、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0025】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、本発明の様々な特徴が、開示を合理化し、様々な発明の態様の1つまたは複数の理解を助ける目的で、単一の実施形態、図、またはその説明においてグループ化されることがあることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求される発明が、各請求項に明示的に記載されている以上の特徴を必要とするという意図を反映していると解釈されるべきものではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明的態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴よりも少ない特徴にある。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、各請求項がこの発明の別個の実施形態としてそれ自体で成立することにより、この詳細な説明に明示的に組み込まれる。
【0026】
さらに、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含み、他の特徴は含まないが、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることを意味し、当業者に理解されるように、異なる実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、特許請求される実施形態のいずれかを任意の組み合わせで使用することができる。
【0027】
さらに、実施形態のいくつかは、コンピュータシステムのプロセッサまたは機能を実行する他の手段によって実施することができる方法または方法の要素の組み合わせとして本明細書に記載されている。従って、このような方法または方法の要素を実施するために必要な命令を有するプロセッサは、方法または方法の要素を実施するための手段を形成する。さらに、装置の実施形態の本明細書に記載される要素は、本発明を実施する目的で要素によって実行される機能を遂行するための手段の一例である。
【0028】
本明細書で提供される説明において、多数の具体的な詳細が規定される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることが理解される。他の例では、本明細書の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造および技術は詳細に示されていない。
【0029】
次に、本発明のいくつかの実施形態の詳細な説明によって本発明を説明する。本発明の技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識に従って本発明の他の実施形態を構成できることは明らかであり、本発明は添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定される。
【0030】
第1の態様において、本発明は多孔性電極(1)に関する。
【0031】
実施形態において、多孔性電極(1)は、ガス拡散電極(1)、すなわち、ガスがそれを横から横へと通過するのに適した電極(1)であってもよい。先行技術では、数マイクロメートルの薄い金属ネットワーク(ナノメッシュ)のような、拡張された表面積と機械的堅牢性を有する高多孔質材料は、非多孔質基材によって支持されたままであるか、またはオーバーメッキ工程によって形成された同様の厚さの金属非多孔質箔に付着していた。しかしながら、ナノメッシュを、気体および/または液体の電解質を使用するデバイス(例えば、水からH2およびO2を生成する電解槽、CO2還元から有機化合物を生成する電解槽、N2還元からアンモニアを生成する電解槽、またはH2酸化およびO2還元を伴う燃料電池)の電極として応用するためには、対向する両側で電極が開口していることが有利である。ギャップレス(ゼロギャップとも呼ばれる)電解槽の場合、すなわち電極がセパレータまたは膜に接触する場合、対向する両側に電極を開く必要がある。現在の先端技術では、数μmの薄さのナノメッシュは支持体なしでは作製できず、支持体なしではセルの組み立て時や加工時に扱うための機械的堅牢性がない。本発明の多孔性電極(1)は、開口部(5)を有する支持体構造(3)を含むことにより、電極を通過する気体/液体を使用するデバイスでの使用に適しており、同時に、高い気孔率と拡張された表面積を有する部分(ネットワーク(2))を表示すると共に、セル組立中および加工中の両方で取り扱える機械的堅牢性を全体的に有する。
【0032】
多孔性電極(1)は、相互接続されたワイヤの導電性多孔質ネットワーク(2)と導電性支持構造体(3)を含む。
【0033】
導電性多孔質ネットワーク(2)と導電性支持構造体(3)とは共に多孔質である。
【0034】
導電性支持構造体(3)の存在により、多孔性電極(1)は自立し、機械的完全性を失うことなく取り扱うことができる。
【0035】
ネットワーク(2)は、支持構造体(3)と直接物理的および電気的に接触している。好ましい実施形態では、これは、ネットワーク(2)と支持構造体(3)とを一体に形成することによって達成される。言い換えれば、ネットワーク(2)と支持構造体(3)はモノリシックに一体化されていてもよい。これらの実施形態において、ネットワーク(2)および支持構造体(3)は、典型的には同じ材料を含む。他の実施形態では、ネットワーク(2)と支持構造体(3)は同じ材料を含まない。ネットワーク(2)と支持構造体の材料が異なると、機械的特性と触媒特性を独立して調整するのに有利である。
【0036】
好ましくは、導電性ネットワーク(2)と導電性支持構造体(3)の両方が同じ材料を含み、最も好ましくはニッケル、ニッケル合金、銅を含む。しかし、例えば、銅の導電性ネットワーク(2)とニッケルの導電性支持構造体(3)のように、それらの材料組成が異なっていてもよい。
【0037】
ネットワーク(2)の体積表面積は2m2/cm3~90m2/cm3である。
【0038】
ネットワーク(2)の気孔率は50%~90%である。
【0039】
実施形態において、相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)は、金属を含んでもよい。
【0040】
実施形態において、相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)は、Ni、Ni合金、または銅を含んでもよい。好ましくは、相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)は、Niを含む。
【0041】
好ましくは、ワイヤは金属製であるか、または金属コアおよびその上のコーティングを有する。
【0042】
より好ましくは、ワイヤはNi(またはNi合金またはCu)から形成されているか、Ni(またはNi合金またはCuコア)とその上のコーティングを有する。
【0043】
最も好ましくは、ワイヤはNiから形成されているか、またはNiコアとその上のコーティングを有する。
【0044】
実施形態において、相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)は、1~100μm、好ましくは2~10μmの総厚を有することができる。
【0045】
実施形態において、相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)は、1~100μmの総厚さを有してもよく、ネットワークから離れる方向の支持構造の表面は、その表面積の51~90%を占める開口部(5)を有してもよい。これは、支持構造の開口部によって可能になる比較的高い流体の流れに耐えるのに十分な強度のネットワークを提供するので有利である。
【0046】
実施形態では、ワイヤの厚さは10~200nm、好ましくは30~60nmである。
【0047】
導電性支持構造体(3)の、ネットワーク(2)から離れる方向の表面は、その表面積の2~90%、好ましくは15~75%、より好ましくは50~70%を占める開口部(5)を有する。開口部(5)は、ネットワーク(2)の孔と流体連通している。換言すれば、これらの開口部は、ネットワーク(2)の内外への流体(液体および/または気体)の輸送を可能にする。
図1は、導電性多孔質ネットワーク(2)(黒)とその上の導電性支持構造体(3)(白)を含む、第1の態様にかかる多孔質電極(1)の概略図である。支持構造体(3)を介してネットワーク(2)を横切る流体(液体または気体)は、上の矢印で表されている。ネットワーク(2)を介して支持構造体(3)を横切る流体(液体または気体)は、下側の矢印で表されている。
【0048】
支持構造体(3)は、ネットワーク(2)の機械的補強材として機能する。
【0049】
実施形態において、導電性支持体(3)は金属を含んでも良い。
【0050】
実施形態において、導電性支持構造体(3)は、Ni、Ni合金、またはCu、好ましくはNiを含んでもよい。
【0051】
導電性支持構造体(3)は、どのような形態であってもよい。典型的には、パターンを形成する。
【0052】
実施形態では、導電性支持構造体(3)は、ハニカムグリッドのようなグリッドを形成してもよい。これは、高い機械的強度を得ることができるので有利である。
【0053】
実施形態において、導電性支持構造体(3)は、平行線の集合を形成してもよい。これは、特に良好な流れを可能にするので有利である。
【0054】
実施形態において、支持構造体(3)のパターンは、50~1000μmのリッジの高さに対して垂直に測定された幅を有するリッジで形成されてもよい。例えば、リッジは、ハニカムグリッドのようなグリッドを形成するために交差接続してもよく、グリッドを形成するために相互接続するリッジの幅は、50~1000μmであってもよい。別の例として、支持構造体(3)が一連の平行線を形成する場合、これらの線の幅は50~1000μmであってもよい。
【0055】
実施形態において、導電性支持構造体(3)は、1~100μm、好ましくは2~20μm、より好ましくは2μm~10μm、さらに好ましくは3μm~7μmの総厚さ(または高さ)を有することができる。
【0056】
実施形態において、多孔性電極は、気相からのCO2、N2またはO2還元のための、燃料電池のための、または有機合成のための、ガス拡散電極でもよい。
【0057】
第1の側面の任意の特徴は、他の側面の任意の実施形態において対応するように記載され得る。
【0058】
第2の態様において、本発明は、第1の態様の任意の実施形態にかかる多孔性電極(1)の形成方法に関する。この方法は、工程a、b、c、およびdを含む。先行技術のプロセスと比較して、本発明の方法は、流体(例えば、気体)を通過させるのに十分な多孔性を有する多孔性電極(1)を形成することを可能にする一方で、支持構造体(3)、例えばグリッド支持構造体(3)は、典型的にはμmの薄さであるネットワーク(2)のための「窓枠」として機能するのに十分な密度を有し、それにより、流体の通過を妨げることなく機械的支持を提供する。
【0059】
工程aは、相互接続されたチャネルのネットワーク(2)を含む第1の型を形成する工程を含み、この型は、第1の態様の任意の実施形態に記載されているような導電性ネットワーク(2)を成形するのに適している。例えば、型は、2m2/cm3~90m2/cm3の体積表面積、および50%~90%の気孔率を有する相互接続されたワイヤの導電性ネットワーク(2)を成形するのに適していてもよい。
【0060】
実施形態において、工程aは、金属層を陽極酸化する工程を含んでもよい。
【0061】
実施形態において、工程aは、AlとCuの合金の層を陽極酸化する工程を含んでもよい。
【0062】
好ましくは、AlとCuの合金は、
98.0~99.9at%のアルミニウム、および、
0.1~2.0at%の銅、
を含んでも良い。
【0063】
より好ましくは、AlとCuの合金は、
99.0~99.9at%のアルミニウム、および、
0.1~1.0at%の銅、
を含んでも良い。
【0064】
最も好ましくは、AlとCuの合金は、
99.5~99.9at%のアルミニウム、および、
0.1~0.5at%の銅、
を含んでも良い。
【0065】
これらのat%は、例えばラザフォード後方散乱分光法(RBS)によって測定することができる。
【0066】
実施形態において、この合金層は、基板上に支持され得る。実施形態において、基板は、その上にTiN層を有するSi基板を含んでもよく、合金層は、TiN層上にあってもよい。実施形態において、Al/Cu合金層を陽極酸化する工程は、Al/Cu合金層を10~250V、好ましくは30~85Vの電圧に供する工程を含んでよい。これは、好ましくは酸溶液中で行われる。
【0067】
適切な酸溶液の例は、シュウ酸溶液である。他の適切な酸溶液は、硫酸溶液およびリン酸溶液である。酸溶液の濃度は、例えば0.1~0.5M、好ましくは0.2~0.4Mとすることができる。酸溶液の温度は、例えば-5~50℃、好ましくは20~40℃とすることができる。
【0068】
電圧は、好ましくは型が得られるまで維持される。例えば、電流が下がり始めてから5分後まで電圧を維持する。
【0069】
様々なAl/Cu合金は、同様の電圧で同様のチャネル間距離を形成することにより、同様の挙動を示す。20~50nmの範囲の小さなチャネル間距離は、通常、10~約20Vの電圧下で(例えば、電解質としてH2SO4を使用することにより)得ることができる。約51~125nmのチャンネル間距離は、典型的には、21~約60Vの電圧下で(例えば、H2C2O4中で)達成することができる。より大きな126~225nmのチャンネル間距離は、通常、61~90Vの電圧で(例えば、H3PO4中で)達成され得る。さらに高い電圧では、より高いチャネル間距離が得られることに注意されたい。
【0070】
任意の2つの隣接チャンネル間の平均チャンネル間距離は、例えば、電圧を10V~90Vまで上げることによって(そして最終的には酸をそれに応じて適合させることによって)、約20nm~約225nmまで調整することができ、チャンネル間距離は印加されるセル電圧によって設定される。チャネル間距離は電圧とともに増加し、一般的にアルミニウムの純度や不純物の性質とは無関係である。
【0071】
TiN層が存在する場合、陽極酸化工程によってTiN層はTiO2層に変化する。陽極酸化工程の後、TiO2層を除去する工程を実施しても良い。この除去は、例えば、適切な液体エッチング液を用いて行うことができる。その例は、NH4OH、H2O2およびH2Oを含む溶液である。TiO2層を除去するには、通常、1分~5分(例えば、3分~4分)で十分である。好ましくは、工程aと工程bとの間に洗浄工程が実施される。実施形態において、この洗浄工程は、工程aから得られた構造体を脱塩水で濯ぐ工程を含んでも良い。
【0072】
工程bは、第1の型の上に第2の型を形成する工程を含み、第2の型は、第1の態様の任意の実施形態に記載の導電性支持構造体(3)を成形するのに適している。例えば、第2の型は、相互接続されたワイヤのネットワーク(2)から離れる方向に向いた表面を有し、その表面積の2~90%を占める開口部(5)を有し、相互接続されたワイヤのネットワーク(2)の孔に流体連通する開口部(5)を有する支持構造体(3)を成形するのに適していてもよい。
【0073】
好ましくは、第2の型はワックスを含む。好ましくは、第2の型を形成することは、第1の型上に第2の型を印刷する工程を含んでも良い。好ましくは、第2の型は、インクジェット印刷によって適用される。より好ましくは、第2の型はワックスを含み、インクジェット印刷によって適用される。実施形態において、インクジェット印刷の画素サイズは、30~60μm、好ましくは40~50μmであってもよい。実施形態において、第2の型は、複数のピラーまたはリッジを含んでもよい。好ましくは、ピラーは規則的なパターンで配置される。好ましくは、ピラーまたはリッジの平均高さ(すなわち、ピラーまたはリッジの上面に対して垂直に測定されたピラーまたはリッジの上面と底面との間の距離)は、5μm~200μm、好ましくは10μm~50μmである。好ましくは、ピラーまたはリッジの高さの相対標準偏差は10%以下、より好ましくは5%以下である。好ましくは、ピラーまたはリッジの平均幅、すなわち、ピラーまたはリッジの上面に沿って測定され、それに平行なそれらの最小寸法は、30~1000μm、好ましくは100~500μm、より好ましくは200~300μmである。好ましくは、ピラーまたはリッジの幅の相対標準偏差は10%以下、より好ましくは5%以下である。好ましくは、ピラーまたはリッジの頂部で測定された平均のピラーまたはリッジの幅は、ピラーまたはリッジの底部で測定された平均のピラーまたはリッジの幅の10%以内、より好ましくは5%以内である。ピラーの水平断面はどのような形状でもよい。好ましくは、ピラーの水平断面は六角形である。これにより、ハニカム形状を有する導電性構造体を形成することができ、支持構造体(3)の開口部(5)が占める割合が大きいことを保証しつつ、優れた機械的支持を与えることができる。パターンは2~90%の開口面積を含み、好ましくは15~90%の開口面積を含み、より好ましくは50~90%の開口面積を含み、さらに好ましくは65~90%の開口面積を含む。
【0074】
工程bは、好ましくは50~200℃、好ましくは90~185℃、より好ましくは90~140℃、さらに好ましくは90~120℃の温度で、ワックスを用いて行われる。
【0075】
工程bの間、第1の型は好ましくは50℃以下の温度に保たれる。
【0076】
例えば、その温度は、室温(例えば、15~30℃または20~25℃の温度)に保つことができる。室温は、工程cの後に工程bを行う場合に有利である。実際、第1の型はすでに充填されているので、第2の型を形成することによって第1の型に望ましくない材料が混入する危険性はない。第1の型との接触によるワックスの固化は、室温で行うことができ、有利には維持が容易で安価である。
【0077】
実施形態では、第1の型を15℃以下の温度に保つこともできる。例えば、5℃以下または0℃以下に保つことができる。実際、第2の型が適用されるとき、第1の型はまだ充填されていないので、第2の型を形成する材料が第1の型と接触して固まることが有利である。これにより、第1の型に望ましくない材料が混入するリスクが低減する。
【0078】
工程cは、第1の型に第1の導電性材料を充填する工程を含む。実施形態では、工程cは、工程c1と工程c2の2つのサブ工程を含むことができる。工程c1では、第1の型の底部(典型的には、第1の型が存在する基板上、例えば、その上にTiN層を有するSi基板の場合はTiN層上)に銅層が形成される。銅層の厚さは、例えば10~1000nm、好ましくは30~100nm、より好ましくは50~80nmである。工程c1は、典型的には、銅の電着によって第1の型の底面に銅の層を形成する工程を含む。工程c1を実行するためには、任意の銅めっき浴が適している。実施形態では、工程c1は、酸性条件下でCu2+を含む溶液を用いて実施することができる。例えば、溶液はクエン酸ナトリウムまたは硫酸を含んでもよい。実施形態において、Cu2+の濃度は、0.001~1.0mol/lでもよい。例えば、0.5mol/lのCuSO4x5H2Oと1mol/lのクエン酸ナトリウムを含む溶液が適切である。硫酸が溶液中に存在する実施形態では、硫酸の濃度は、アルミナのエッチングを避けるために好ましくは低く保たれ、例えば、10mmol/l~30mmol/l、好ましくは15mmol/l~25mmol/lであり得る。
【0079】
Cu2+溶液を第1の型に接触させ、-2mA/cm2~-40mA/cm2(ガルバノ静電析出)、好ましくは-5mA/cm2~-15mA/cm2の電流密度にするか、または-0.2~-0.8V、好ましくは-0.3~-0.7Vの電位にする(電位静電析出)。実施形態では、電着時間は10秒~20分である。工程c1で使用される溶液の温度は、例えば15℃~40℃、例えば25℃~35℃でもよい。
【0080】
実施形態において、工程c2は、Niの電着によって第1の型の残りの部分を充填する工程を含む。この目的のために、スルファミン酸Ni、ホウ酸、およびNiCl2を含む溶液を使用することができる。スルファミン酸Ni中の濃度は、例えば、0.80~1.00mol/lであってよい。ホウ酸の濃度は、例えば、0.40~0.60mol/lであってよい。NiCl2中の濃度は、例えば、0.03~0.05mol/lであってもよい。溶液には1種類以上の添加剤を加えてもよい。例えば、湿潤剤または電気めっき増強剤を添加することができる。工程c2は通常、-2mA/cm2~-10mA/cm2、好ましくは-3mA/cm2~-7mA/cm2の電流密度を印加する。工程c2は、典型的には、第1の型が完全に充填されるまで行われる。これには通常20分~50分かかる。工程cが工程bの前に行われる場合、(工程c2の間に)型を過充填しないことが有利である。こうすることで、Niのオーバーレイヤが第1の型上およびその上に形成されない。実施形態では、充填された型、従って形成された支持構造体(3)は、1~100μm、好ましくは2~20μm、より好ましくは2μm~10μm、さらに好ましくは3μm~7μmの高さを有することができる。
【0081】
工程dは、第2の導電性材料を第2の型に少なくとも部分的に充填する工程を含む。型は、その底部および中間部において、次に頂部において、より規則的なエッジを有する傾向があるので、工程dの間、型を部分的にのみ充填することが有利である。例えば、工程dでは、第2の型の高さの10~90%、好ましくは15~75%を充填することができる。第1および第2の導電性材料は、異なっても、または同じでも良い。好ましくは、工程dは、Niの電着により第2の型を充填する工程を含む。例えば、使用される溶液は、工程c2の場合と同じでもよい。この目的のために、スルファミン酸Ni、ホウ酸、およびNiCl2を含む溶液を使用してもよい。スルファミン酸Niの濃度は、例えば0.80~1.00mol/lである。ホウ酸の濃度は、例えば0.40~0.60mol/lである。NiCl2の濃度は、例えば0.03~0.05mol/lである。溶液には1種類以上の添加剤を加えてもよい。例えば、湿潤剤または電気めっき増強剤を添加することができる。電流を流す前に、溶液は好ましくは2分間~8分間、より好ましくは3分間から7分間、第2のマスクと接触させたままにしておく。この時間により、第1の型の上部の酸化物のエッチングが可能になる。
【0082】
工程bは、工程aの後、工程cの前、または工程cの後で工程dの前に行われる。
【0083】
第2の型は第1の型の上に形成されるため、支持構造体(3)はネットワーク(2)構造上に直接作られる。これにより、支持構造体(3)をネットワーク(2)にシームレスに接続することができ、モノリシック構造を形成することができる。
【0084】
実施形態において、工程cおよび工程dは、めっきによって実施されてもよい。
【0085】
実施形態において、本方法は、導電性多孔質ネットワーク(2)および導電性支持構造体(3)からそれぞれ第1および第2の型を除去する工程をさらに含んでもよい。好ましくは、第1の型を除去する前に第2の型を除去することができる。これは、第2の型と共にネットワーク(2)の一部の除去を回避できるので有利である。また、好ましくは、基板(例えば、Si基板)から導電性ネットワーク(2)が剥離する前に、第2の型を除去することができる。
【0086】
実施形態において、第2の型を除去することは、第1の型、ネットワーク(2)、および支持構造体(3)に関して特に第2の型を溶解する適切な溶媒(例えば、陽極酸化Al/Cu合金の第1の型、ワックスの第2の型、Ni支持構造体(3)、およびNiネットワーク(2)用のアセトン)に第2の型をさらす工程を含む場合がある。第2の型が除去されると、残りの構造体は脱イオン水で洗浄することができる。
【0087】
実施形態において、第1の型の少なくとも一部(例えば、工程c2で形成された部分)は、支持構造体(3)およびネットワーク(2)に関して選択的に除去されてもよい。この目的のために、Ni支持構造体(3)およびNiネットワーク(2)の場合、Niに関して選択的に第1の型を溶解することができる溶液を使用してもよい。第1の型が陽極酸化Al/Cu合金でできている場合、この溶液は水酸化アルカリ溶液であってもよい。好ましくは、0.5mol/l~2mol/lの濃度を有する水酸化物溶液である。より好ましくは、0.8mol/l~1.2mol/lの濃度である。好ましい水酸化物はKOHである。第1の型の溶液への暴露は、例えば20分~180分、好ましくは40分~120分、より好ましくは50分~90分とすることができる。
【0088】
実施形態において、工程c1が第1の型の底部に銅層の形成を伴う場合、この層は、最終的に、有機酸(例えば、酢酸)、H2O2、および水を含む溶液、または過硫酸アンモニウムもしくは過硫酸カリウムの溶液を用いて除去することができる。通常、1~20分で十分である。最後に、得られた多孔性電極(1)を脱イオン水に浸漬して洗浄することができる。実施形態では、その後、30~100℃の温度で乾燥させることができる。
【0089】
図3は、本発明の実施形態による製造スキームの一例を示す。まず、Si基板、Si基板上のTiN層、およびTiN層上のAl/Cu合金層を含むアセンブリが提供される。第1の型(6)は、Al/Cu合金(0.4~0.5重量%のCuドープAl)層を、1800rpmの機械的攪拌下、30℃の0.3Mシュウ酸溶液にさらし、溶液を通して40Vの電圧を印加することによって形成する。この電圧は、電流が低下し始めた後、200秒後まで維持され、その結果、合金層が過陽極酸化(over anodization)する。この工程(AAOテンプレート形成)の結果、相互接続されたチャネルのネットワーク(2)を含む第1の型(6)が形成され、第1の型(6)は、第1の態様の任意の実施形態に記載されているような導電性ネットワーク(2)を成形するのに適している。第1の型(6)の底部では、TiN層がTiO
2層に変化している。次いで、このTiO
2層を、NH
4OH、H
2O
2、およびH
2Oを含む溶液に3.5分間さらすことによって除去した。得られた構造体を脱塩水で5回洗浄した後、次の工程に進む。
【0090】
この段階で、工程cが行われた。第1に、第1の型(6)の底部にCu層を形成した。この目的のために、0.5mol/lのCuSO4x5H2Oと1mol/lのクエン酸ナトリウムを含む、30℃の溶液を使用した。この溶液に-10mA/cm2を50秒間印加し、第1の型(6)の底に500nmのCu層を形成した。このCu層形成工程の代替バージョンは、より希薄なCu溶液を使用することで実施できる。例えば、-0.6Vの印加電位で5mMのCuSO4と20mMのH2SO4を含む溶液を使用することができ、これによって、-6.4Cの全電荷を移動させる際に、より均質な厚さ70nmのCu層を形成することができる。第2に、Cu層上にNi層を形成し、これによって相互接続チャネルのネットワーク(2)の残りの部分を埋めた。この目的のために、0.91mol/lのNiスルファミン酸、0.49Mのホウ酸、0.04mol/lのNiCl2x6H2O、2.5ml/lの添加剤NikalPC-8、および2ml/lの湿潤剤を含む40℃の溶液を調製し、-5mA/cm2の電流を、相互接続チャネルのネットワーク(2)が完全に充填されるまで印加した。チャネルを充填しすぎないように注意した。こうすることで、相互接続チャネルのネットワーク(2)上およびその上にNiオーバーレイヤが形成されるのを回避した。この工程には、調製したばかりの溶液で30分~40分かかった。
【0091】
次に、工程bは、第1の型(6)の上に(従って、導電性ネットワーク(2)の上に)第2の型(7)を形成することによって実施され、第2の型(7)は、第1の態様の任意の実施形態に記載されているような導電性支持構造体(3)を成形するのに適している。本実施例では、第2の型(7)はワックスから形成され、第1の型(6)上にインクジェット印刷された。第1の型(6)は導電性ネットワーク(2)で予め充填されていたため、第2の型(7)の印刷は比較的平坦な表面で行うことができ、第1の型(6)にワックスが浸透することはないか、ほとんどなかった。第2の型(7)の長さは55mmであった。インクジェット印刷の画素サイズは31.25μmとした。第2の型(7)のパターンは、長さ250μm、ピッチ345μmの六角形の集合であった。このパターンは85.5%の開口面積を含む。Niを充填した第1の型(6)にワックスを適用するために、まずワックスを110℃に加熱し、Niを充填した第1の型(6)は室温に保った。印刷時間は60秒未満であった。
【0092】
次に、0.91mol/lのNiスルファミン酸、0.49mol/lのホウ酸、0.04mol/lのNiCl2*6H2O、2.5ml/lのニッケルPC-8、および2ml/lの湿潤剤NWを含む、40℃の溶液に第2の型(7)をさらすことによって工程dを行った。この溶液を第2の型(7)に接触させたまま5分間放置した後、そこに第1の電流を流した。この5分間によって、第1の型(6)の上部の酸化物のエッチングが可能になる。次に、導電性ネットワーク(2)の領域(第1の型の開放領域を使用)に-10mA/cm2の電流を500秒間印加し、続いて、ワックスマスクの開放領域に-5mA/cm2の電流を3200秒間印加した。その結果、Ni支持構造体(3)は5μmとなった。
【0093】
次に、第1の型(6)を除去する前に、および導電性ネットワーク(2)をSi基板から剥離する前に、第2の型(7)を除去した。これは、第2の型(7)とともにNiネットワーク(2)の一部が除去されるのを避けるために行った。この目的のために、工程dで得られた構造体を室温で新鮮なアセトンに5分間さらし、水ですすぎ、次に再び新鮮なアセトンに5分間さらした。次に、得られた構造体を脱イオン水で10回すすいだ。
【0094】
第1の型(6)を除去するために、1MのKOH水溶液に60分間接触させた。この時点で、モノリシック構造はすでに支持ウエハから剥離する可能性があるが、ほとんどの場合、これは次のエッチング工程で起こる。
【0095】
次に、酢酸、H2O2、H2Oを含むCuエッチング溶液に導電性ネットワーク(2)を3分間浸漬することにより、赤く輝く層として現れる底部Cu層をエッチングにより除去した。得られた多孔性電極(1)は支持ウエハから剥がれ、脱イオン水に浸漬して洗浄し、次いで80℃で乾燥した。
【0096】
第3の態様において、本発明は電気化学デバイスに関する。電気化学デバイスは、第1の態様の任意の実施形態にかかる多孔性電極(1)を含む。電気化学デバイスは、電解槽、燃料電池、および電池(例えば、レドックスフロー電池)から選択される。電解槽の例としては、水からH2およびO2を生成するもの、CO2還元から有機化合物を生成するもの、N2還元からアンモニアを生成するもの、O2還元から水を生成するものが挙げられる。
【0097】
本発明の電解槽は、本発明にかかる2つの多孔性電極(1)を含むことができ、各電極(1)は膜(4)の異なる側に接触する。実施形態において、電解槽は、共に第1の態様の実施形態にかかるアノードおよびカソードを含んでもよい。実施形態において、膜(4)は、陰イオンまたは陽イオンの交換膜(4)でもよい。
【0098】
図2は、本発明の第1の態様にかかる2つの多孔質電極(1)を含む電解槽を示す。より詳細には、膜(4)によって分離された第1の態様にかかる2つの多孔性電極(1)を含むアルカリ電解槽が描かれている。両電極のネットワーク(2)は互いに向かい合い、一方、両電極(1)の支持体(3)は互いに離れている。電解槽の左側に描かれている多孔質電極(1)はカソードとして機能し、水が還元されてH
2と2OH
-が生成される。電解槽の左下には、電解液の注入口が描かれている。カソードで生成されたOH
-は膜(4)を通過し、電解槽の右側に描かれた多孔質電極(1)を含むアノードに到達する。電解槽の左上には、カソードで発生した水素ガスを電解槽から回収できる出口が描かれている。右下には、電解液が入る入口が描かれている。右上には出口が描かれており、アノードでヒドロキシルアニオンの酸化によって発生した酸素ガスを装置から回収することができる。
【0099】
この水電解槽の膜(4)-多孔質電極(1)アセンブリに金属ネットワーク(2)を適用した場合を例にとると、ネットワーク(2)が電解液に浸透できることは非常に有利である。これにより、分離膜(4)を介したカソード電極(1)とアノード電極(1)間のイオン交換につながる触媒反応が可能になる。さらに、ネットワーク(2)の内部で形成されたガス状生成物(H2およびO2)は、通常、開放された前面を通ってナノ構造から除去されるべきである。さらに、ネットワーク(2)は、通常、セルアセンブリ、高溶液流量、ガスバブル形成、および最終的に電解槽にかかる圧力によって引き起こされる機械的ストレスに耐える必要がある。これは導電性支持構造体(3)によって保証される。
【0100】
図2に概略的に示したような電解槽の触媒効率は、第1の態様にかかる多孔質電極(1)の高表面積ネットワーク(2)によって提供される、露出した活性サイトの多さから大きな恩恵を受ける。これにより、エネルギ貯蔵の一形態として、化学工業のために、または燃料電池で発電するために使用できる、低コストのグリーン水素の製造が可能になる。同様に、燃料電池では、多孔性電極(1)のネットワーク(2)の露出した活性サイトの数が多いことが有益である。
【0101】
以下の実験は、本発明の第1の態様にかかる多孔性電極(1)を用いて、第3の態様にかかる電解槽の性能を評価するために実施された。この目的のために、H-TEC Educationの1セル再生可能PEM電解槽キットが適用され、本発明の第1の態様にかかる電極(1)または比較電極が取り付けられた。電解槽キットは、プロトン交換膜と2つの電極を含む。すべての構成において、プロトン交換膜は、陰イオン交換膜(4)Fumasep FAB PK-130に置き換えられ、電極は以下のいずれか:厚さ1.6mmのRecemat BV社製のNi発泡体Ni-5763電極(第1の比較構成、
図4の三角形)、厚さ5μmのNi支持構造体(3)がその上に形成されたRecemat BV社製のNi発泡体Ni-5763電極(第2の比較構成、
図4の円板)、および導電性多孔質ネットワーク(2)が膜(4)と物理的に接触している本発明にかかる、多孔性電極(1)と物理的に接触しているRecemat BV社製の厚さ1.6mmのNi発泡体Ni-5763電極(実施形態、
図4の四角形)、により置き換えられた。必要ではないが、Ni発泡体は、接触プレートと膜(4)との間の良好な接触を確保するのに役立つ。実施形態では、本発明にかかる電極(1)の支持構造体(3)上に、発泡金属(例えば、Ni発泡金属)を存在させることができる。例えば、金属発泡体は、電極(1)と電解槽の接触板との間に存在することができる。本発明にかかる多孔性電極(1)は、相互接続されたワイヤからなる厚さ4μmのNi多孔質ネットワーク(2)と、厚さ5μmのNi支持構造体(3)とを含む。この多孔質電極(1)は、Ni支持構造体(3)の存在により、取り扱いが容易であった。Recemat BV社製のNi発泡体Ni-5763電極は、96%の気孔率を有する。厚さ5μmの支持構造体(3)には、上下の表面積の15%を占める開口部(5)があった。使用前に、陰イオン交換膜(4)をまず1M KOHに24時間浸した。デバイスは、電源の助けを借りて、脱イオン水から水素と酸素を発生させるために使用された。各構成において、電解液は20.3℃、流量は5ml/分、電極面積は16cm
2、アノードを作用電極、カソードを対極として各電位を5分間印加した。各電位工程において、3分後にインピーダンス測定を行い、iR補正のためのオーミック抵抗を決定した。
図4は、3つの構成(上)と対応する電流-電圧曲線(下)を模式的に示している。これらの曲線から容易にわかるように、本発明にかかる構成は、比較構成よりもはるかに低い過電位で高い電流密度を可能にする。
【0102】
本発明の電気化学デバイスとしてのガス拡散電極は、気相からのCO2、N2またはO2還元のための電極触媒システムでもよい。
【0103】
第3の態様にかかる電池の例は、レドックスフロー電池である。第1の態様にかかる多孔質電極(1)の使用は、アノードとカソードとの間の電解液の流れを可能にする。
【0104】
実施形態において、本発明にかかる電池は、両方とも本発明の第1の態様の任意の実施形態にかかるアノードおよびカソードを含んでも良い。例えば、電池は、アノードおよびカソードの両方を含むレドックスフロー電池であってもよい。
【0105】
本発明にかかる典型的な燃料電池は、H2酸化およびO2還元を伴う。
【0106】
実施形態において、燃料電池は、アノードとカソードを含んでもよく、両方とも本発明の第1の態様の任意の実施形態にかかるものである。
【0107】
さらなる態様において、本発明は、フィルタとしての第1の態様の任意の実施形態にかかる電極の使用に関する。この使用の実施形態において、ネットワークから離れる方向の支持構造の表面は、2~50%を表す開口部(5)を有する。
【0108】
本明細書では、本発明にかかるデバイスについて、材料と同様に、好ましい実施形態、特定の構造、および構成について論じてきたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更または修正を行うことができることを理解されたい。例えば、上記で与えられたいかなる式も、使用され得る手順の単なる代表である。ブロック図から機能を追加または削除してもよく、機能ブロック間で操作を入れ替えてもよい。また、本発明の範囲内で説明した方法に工程を追加または削除してもよい。
【国際調査報告】