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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/18 20230101AFI20240426BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240426BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240426BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240426BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240426BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240426BHJP
   H10K 71/10 20230101ALI20240426BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240426BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240426BHJP
【FI】
H10K50/18
H10K50/15
H10K50/17 171
H10K50/16
H10K85/60
H10K85/10
H10K71/10
H10K101:30
H10K101:40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572856
(86)(22)【出願日】2023-01-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 CN2023073315
(87)【国際公開番号】W WO2023143434
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210101537.1
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210102931.7
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513065550
【氏名又は名称】中国科学院理化技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王鷹
(72)【発明者】
【氏名】劉冠豪
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC45
3K107DD72
3K107DD75
3K107DD78
3K107DD84
3K107FF15
3K107FF19
(57)【要約】
本発明は、有機電界発光素子に関し、特に、電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子及び超厚の有機電界発光素子に関する。本発明の電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子は、有機電界発光素子中の電荷不均衡による素子の安定性低下という問題を明らかに改善することができ、これに基づき、正孔輸送層の厚さを増加させることができ、より厚い素子は、基板の凹凸や残留物が素子の性能に与える影響を低減するのに有利であり、工業上のOLEDパネル及び照明の歩留まり向上に重要な意味を有する。本発明は、注入効果がより良いオーミックコンタクト法を用いて従来の厚さが100 nm~200 nmの有機電界発光素子をミクロンレベルの厚さに向上させることができ、より厚い素子は、基板の凹凸や残留物が素子の性能に与える影響を低減するのに有利であり、これにより、特に現在製造が困難な大型パネルの分野において、工業上のOLED製造の歩留まり問題を改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陽極修飾層、有機界面層及び正孔輸送層を含み、前記陽極修飾層は、陽極の表面上に配置され、前記陽極修飾層、有機界面層及び正孔輸送層は、順次接続して配置され、
前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、
そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、
前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である、有機電界発光素子。
【請求項2】
前記有機電界発光素子は、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極を更に備え、前記電子阻止層は、正孔輸送層上に配置され、前記電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極は順次接続して配置される、請求項1に記載の有機電界発光素子。
【請求項3】
正孔輸送層、電子捕獲層及び電子阻止層を含み、前記正孔輸送層、電子捕獲層、及び電子阻止層は、順次接続して配置され、
前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記電子捕獲層は電子捕獲材料を含み、前記電子阻止層は電子阻止材料を含み、
前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVであり、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と電子阻止材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVである、有機電界発光素子。
【請求項4】
前記有機電界発光素子は陽極と正孔注入層を更に備え、前記正孔注入層は正孔輸送層上に配置され、前記陽極は正孔注入層上に配置され、
及び/又は、前記有機電界発光素子は、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極を更に備え、前記発光層は、電子阻止層上に配置され、前記発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極は順次接続して配置される、請求項3に記載の有機電界発光素子。
【請求項5】
前記電子捕獲層は電子捕獲層材料を含み、前記電子捕獲層材料は、CN、F、Clの強い電子吸引基を含む有機材料又はアルカロイドから選ばれ、
及び/又は、前記電子捕獲層の厚さは1 nm~100 nmである、請求項3に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記正孔注入層は陽極修飾層及び有機界面層を含み、前記陽極修飾層は陽極の表面上に配置され、前記有機界面層は正孔輸送層の表面上に配置され、
前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、
そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、
前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記有機電界発光素子の厚さは50 nm~3000 nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記正孔輸送材料はカルバゾール基、トリフェニルアミン基、フルオレニル基、及びチオフェン基のうちの少なくとも1つの基を含む正孔輸送能力を有する材料から選ばれ、
及び/又は、前記正孔輸送層の厚さは50 nm~1800 nmであり、又は、前記正孔輸送層の厚さは50 nm~3000 nmであり、
及び/又は、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記金属酸化物は、MoO3、WoO3、V2O5のうちの少なくとも1つから選ばれ、
及び/又は、前記陽極修飾層の厚さは、5 nm~100 nmであり、
及び/又は、前記有機界面層の厚さは、1 nm~20 nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
正孔輸送層への正孔注入能力を向上させることができる方法であって、前記方法は、以下のステップを含む:
陽極の表面上に陽極修飾層を配置し、陽極修飾層上に有機界面層及び正孔輸送層を順次配置され、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、
そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、
前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である、方法。
【請求項10】
厚膜有機電界発光素子における電子の蓄積を抑制できる方法であって、前記方法は以下のステップを含む:
正孔輸送層と電子阻止層との間に電子捕獲層を挿入し、
前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記電子捕獲層は電子捕獲材料を含み、前記電子阻止層は電子阻止材料を含み、
前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVであり、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と電子阻止材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVである、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2022年1月27日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が2022101015371で、発明名称が「有機電界発光素子」である先行出願の優先権を主張する。本願は、2022年1月27日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が2022101029317で、発明名称が「電子を効果的に阻止する有機電界発光素子」である先行出願の優先権を主張する。上記2件の先行出願は、その全体が引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、有機電界発光素子の分野に属し、具体的には、有機電界発光素子に関し、特に正孔輸送層への正孔注入を改善できる有機電界発光素子、及び電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子に関する。
【0003】
〔背景技術〕
有機電界発光の現象は、1963年にアントラセン結晶の両側に数百ボルトの電圧を印加することでPope教授によって初めて発見された。1987年までに、米国コダック社の▲デン▼青雲らは真空蒸着法により二層型の素子を製造し、これにより素子の輝度が1000 cd/m2の時の動作電圧は10 V未満になり、有機電界発光素子の商業的利用が可能であることが実証された。有機電界発光素子は、自己発光、広視野角、応答速度が速く、フレキシブル性を実現できる等の多くの利点有するため、多くの科学研究機関が有機発光ダイオード(OLED)の研究に注目している。
【0004】
有機電界発光素子は30年以上の発展を経て商業生産を既に実現し、ディスプレイ及び照明業界での市場シェアは年々増加している。従来のOLED素子は輸送層として有機材料を使用し、有機材料は通常、比較的低い電荷移動度を有するため、より多くの電荷を注入し、電子と正孔のバランスを維持するために、OLED素子の厚さは通常100 nm~200 nmであり、極めて薄い厚さは、基板の凹凸による影響を受け易く、特に、大面積で製造される素子において、製品の歩留まりを低下させる。通常の解決策は、正孔輸送層の厚さを増加させて基板上の残留物が発光層に与える影響を低減することであるが、その結果、生じる電荷の不均衡は、素子の安定性の低下につながり、その原因は、主に正孔輸送が遅く、余分な電子が正孔輸送層に漏れて正孔と励起子を形成し、正孔輸送層の材料が化学分解を引き起こす可能性があるからである。厚膜素子における電荷の不均衡によって引き起こされる素子の安定性の低下という問題を解決することは、OLED素子の歩留まりを向上させる上で重要な促進効果を有する。
【0005】
OLED素子の厚さは、通常100 nm~200 nmである。一方で、OLEDに使用される有機材料は連続的なエネルギーバンドがないため、電子は共役構造を持つ基の間でジャンプの方式によってのみ移動できるため、比較的低い移動度を有し、更に一方で、OLEDにおける電荷注入のエネルギー障壁の存在により、電流の大きさが制限され、このような薄い素子の工業的生産は、特に大面積の製造プロセスにおいて、基板の不潔による歩留まりの低下という問題がある。従って、より厚い有機電界発光素子を製造することは、基板残留物による素子への影響を解決する有効な方法であり、現在検討する必要がある問題でもある。
【0006】
〔発明の概要〕
従来技術の欠点を改善するために、本発明は、有機電界発光素子、特に正孔輸送層への正孔注入を改善できる有機電界発光素子を提供し、前記有機電界発光素子は、陽極、陽極修飾層、有機界面層及び正孔輸送層を含み、前記陽極修飾層は、陽極の表面上に配置され、前記陽極修飾層、有機界面層及び正孔輸送層は、順次接続して配置され、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である。
【0007】
従来技術の欠点を改善するために、本発明は、有機電界発光素子、特に電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子を提供し、前記有機電界発光素子は、正孔輸送層、電子捕獲層及び電子阻止層を含み、前記正孔輸送層、電子捕獲層、及び電子阻止層は、順次接続して配置され、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記電子捕獲層は電子捕獲材料を含み、前記電子阻止層は電子阻止材料を含み、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVであり、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と電子阻止材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVである。
【0008】
有益な効果:
(1)本発明は、有機電界発光素子、特に、超厚の、正孔輸送層への正孔注入を向上させることができる有機電界発光素子を提供する。本発明に使用されるオーミックコンタクト法は、正孔輸送層への正孔注入能力を顕著に向上させることができ、従来の正孔注入層と比較して、オーミックコンタクト法はより良い注入効果を有し、本発明は、注入効果がより良いオーミックコンタクト法を用いて従来の厚さが100 nm~200 nmの有機電界発光素子をミクロンレベルの厚さに向上させることができ、より厚い素子は、基板の凹凸や残留物が素子の性能に与える影響を低減するのに有利であり、これにより、特に現在製造が困難な大型パネルの分野において、工業上のOLED製造の歩留まり問題を改善することができる。
【0009】
(2)本発明は、有機電界発光素子、特に電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子を提供する。本発明は、有機電界発光素子中の電荷不均衡による素子の安定性の低下という問題を明らかに改善することができ、これに基づき、正孔輸送層の厚さを増加させることができ、従来の厚さが100 nm~200 nmの有機電界発光素子をミクロンレベルの厚さに向上させることができ、より厚い素子は、基板の凹凸や残留物が素子の性能に与える影響を低減するのに有利であり、工業上のOLEDパネル及び照明の歩留まり向上に重要な意味を有する。
【0010】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明の効果的に電子を阻止できる有機電界発光素子の構造図である。そのうち、HILは正孔注入層、HTLは正孔輸送層、EBLは電子阻止層、EMLは発光層、HBLは正孔阻止層、ETLは電子輸送層、Liqは電子注入層である。
【0011】
図2は、正孔シングルキャリア素子に対する電子捕獲層の影響を示す図である。
【0012】
図3は、電子シングルキャリア素子に対する電子捕獲層の影響を示す図である。
【0013】
図4は、本発明の超厚の有機電界発光素子の構造図である。そのうち、ITOは陽極、MoO3は陽極修飾層、Interlayerは有機界面層、HTLは正孔輸送層、EBLは電子阻止層、EMLは発光層、HBLは正孔阻止層、ETLは電子輸送層、Liqは電子注入層、Alは陰極である。
【0014】
図5は、実施例7の異なる正孔注入層による正孔注入の比較である。
【0015】
〔発明を実施するための形態〕
<有機電界発光素子、特に、超厚の、正孔輸送層への正孔注入を向上させることができる有機電界発光素子>
本発明は、その総厚さがミクロンレベルに達することができる有機電界発光素子を提供する。本発明は、金属酸化物を陽極修飾層として用い、陽極修飾層と正孔輸送層との間に有機界面層を挿入することにより、陽極と正孔輸送層とがオーミックコンタクトを実現し(既存の正孔注入層を陽極修飾層と有機界面層に置き換える)、このような構造設置により、正孔注入能力を増加させる。更に、本発明は、正孔輸送層の厚さを増加させることにより、ミクロンレベルの厚さを有する有機電界発光素子を製造し、この超厚型の有機電界発光素子(素子の厚さはミクロンレベルである)は、薄層の有機電界発光素子(素子の厚さは100 nm~200 nmである)と同じ素子性能を維持でき、及び非常に安定した素子寿命を有し、従って、本発明は、有機電界発光素子の性能に影響を与えることなく素子の厚さを増加させることができ、当該超厚型の有機電界発光素子は、更に発光層に対する基板残留物の影響を低減し、有機電界発光素子の製造歩留まりを向上させることができる。
【0016】
本発明の一実施形態は、有機電界発光素子、特に超厚の有機電界発光素子を提供し、前記有機電界発光素子は、陽極、陽極修飾層、有機界面層及び正孔輸送層を含み、前記陽極修飾層は、陽極の表面上に配置され、前記陽極修飾層、有機界面層及び正孔輸送層は、順次接続して配置され、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV、0.3 eV、0.4 eV、0.5 eV、0.6 eV、0.7 eV等以上である。
【0018】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子において陽極修飾層及び有機界面層の配置により、陽極と正孔輸送層とのオーミックコンタクトを実現することができる。
【0019】
具体的には、前記金属酸化物の仕事関数が6 eV~7 eVであり、前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差が0.2 eV以上である時、陽極修飾層と正孔輸送層との間に挿入された有機界面層は、陽極と正孔輸送層における正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位をマッチさせ、且つ有機界面層の厚さがとても薄いため、正孔はトンネル効果により正孔輸送層に移動し、即ち陽極から正孔輸送層への正孔注入の障壁を除去し、即ち陽極と正孔輸送層とのオーミックコンタクトを実現して正孔注入能力を向上させ、正孔輸送層の厚さを増加させても、優れた素子性能及び安定性を維持することができる。
【0020】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子は、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極を更に備え、前記電子阻止層は、正孔輸送層上に配置され、前記電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極は順次接続して配置される。
【0021】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子は、順次接続して配置される陽極、陽極修飾層、有機界面層(Interlayer)、正孔輸送層(HTL)、電子阻止層(EBL)、発光層(EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層及び陰極を含む。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記正孔輸送材料はカルバゾール基、トリフェニルアミン基、フルオレニル基、及びチオフェン基のうちの少なくとも1つの基を含む正孔輸送能力を有する材料から選ばれる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、前記正孔輸送層の厚さは50 nm~3000 nmであり、好ましくは50 nm~1800 nmであり、例えば50 nm、100 nm、200 nm、300 nm、400 nm、500 nm、600 nm、700 nm、800 nm、900 nm、1000 nm、1200 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nm、2000 nm、2200 nm、2500 nm、2800 nm又は3000 nmである。
【0024】
<有機電界発光素子、特に電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子>
本発明は、正孔と電子輸送の不均衡による素子安定性の低下という問題を効果的に解決することができる有機電界発光素子を提供する。本発明は、有機電界発光素子中の正孔輸送層と電子阻止層との間に電子捕獲層を挿入し、当該電子捕獲層は比較的深いLUMOエネルギー準位を有し、且つそのLUMOエネルギー準位は正孔輸送層と電子阻止層のHOMOエネルギー準位とマッチする(エネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVであってもよい)。本発明で挿入された電子捕獲層は、正孔の輸送に対しては抑制作用がなく、正孔輸送層への余分な電子のLUMOに対しては明らかな抑制作用を有する。本発明は、余分な電子を効果的に捕獲することにより、それが正孔輸送層のLUMOエネルギー準位に輸送できないようにし、キャリアの不均衡により正孔輸送層上に励起子が形成される可能性があるという問題を効果的に回避し、有機電界発光素子の安定性を明らかに改善する。本発明は、これに基づき、正孔輸送層の厚さを増加させて超厚素子を製造することができ、且つ依然として優れた素子性能及び安定性を得ることができる。
【0025】
本発明の一実施形態は、有機電界発光素子、特に電子を効果的に阻止できる有機電界発光素子を提供し、前記有機電界発光素子は、正孔輸送層、電子捕獲層及び電子阻止層を含み、前記正孔輸送層、電子捕獲層、及び電子阻止層は、順次接続して配置され、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記電子捕獲層は電子捕獲材料を含み、前記電子阻止層は電子阻止材料を含み、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVであり、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と電子阻止材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVである。
【0026】
本発明の実施形態によれば、電子捕獲層のLUMOエネルギー準位を正孔輸送層のHOMOエネルギー準位及び電子阻止層のHOMOエネルギー準位とマッチさせることにより、前記電子捕獲層は、電子阻止層から正孔輸送層への電子の輸送を効果的に抑制することができ、即ち、前記電子捕獲層は、素子内の余分な電子を効果的に捕獲でき、電子が正孔輸送層に漏れて正孔と励起子を形成し、正孔輸送層を化学分解させると同時に、正孔輸送層から電子阻止層への正孔の輸送にも影響を与えない。
【0027】
前記電子捕獲層が正孔輸送層と電子阻止層より比較的深いLUMOエネルギー準位を有するため、電子阻止層上の余分な電子を効果的に阻止し、電子が正孔輸送層のLUMOに輸送されるのを防止することができる。
【0028】
本発明の実施形態によれば、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記正孔輸送材料はカルバゾール基、トリフェニルアミン基、フルオレニル基、及びチオフェン基のうちの少なくとも1つの基を含む正孔輸送能力を有する材料から選ばれる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前記正孔輸送層の厚さは50 nm~1800 nmであり、例えば50 nm、100 nm、200 nm、300 nm、400 nm、500 nm、600 nm、700 nm、800 nm、900 nm、1000 nm、1200 nm、1300 nm、1500 nm又は1800 nmであり、前記正孔輸送層は、電子捕獲層の作用下で優れた素子性能と安定性を有する。
【0030】
本発明の実施形態によれば、前記電子捕獲層の導入は、正孔輸送層における過剰な電子の蓄積を効果的に抑制し、正孔輸送層における励起子の生成を効果的に抑制し、有機電界発光素子の安定性を大幅に改善することができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、前記電子捕獲層は電子捕獲層材料を含み、前記電子捕獲層材料はCN、F、Cl等の強い電子吸引基を含む有機材料又はアルカロイドから選ばれる。
本発明の実施形態によれば、前記電子捕獲層の厚さは1 nm~100 nmであり、好ましくは2 nm~10 nmであり、例えば1 nm、5 nm、10 nm、15 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm、50 nm、55 nm、60 nm、65 nm、70 nm、80 nm、90 nm又は100 nmである。
【0032】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子は陽極と正孔注入層を更に備え、前記正孔注入層は正孔輸送層上に配置され、前記陽極は正孔注入層上に配置される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、前記正孔注入層は正孔注入材料を含み、前記正孔注入材料は、有機電界発光素子に使用される当分野で知られている正孔注入材料である。前記正孔注入層の厚さは1 nm~50 nmであり、好ましくは5 nm~10 nmであり、例えば1 nm、2 nm、3 nm、4 nm、5 nm、6 nm、7 nm、8 nm、9 nm、10 nm、12 nm、15 nm、18 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm又は50 nmである。
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記正孔注入層は陽極修飾層及び有機界面層を含み、前記陽極修飾層は陽極の表面上に配置され、前記有機界面層は正孔輸送層の表面上に配置され、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子は、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極を更に備え、前記発光層は、電子阻止層上に配置され、前記発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、及び陰極は順次接続して配置される。
【0036】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子は、順次接続して配置される陽極、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子捕獲層(Interlayer)、電子阻止層(EBL)、発光層(EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)及び陰極を含む。
【0037】
<上記2つの有機電界発光素子における陽極修飾層>
本発明の実施形態によれば、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記金属酸化物はMoO3、WoO3、V2O5のうちの少なくとも1つから選ばれ、前記陽極修飾層の厚さは5 nm~100 nmであり、好ましくは5 nm~20 nmであり、例えば5 nm、10 nm、15 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm、50 nm、55 nm、60 nm、65 nm、70 nm、80 nm、90 nm又は100 nmである。
【0038】
<上記2つの有機電界発光素子における有機界面層>
本発明の実施形態によれば、前記有機界面層は有機界面材料を含み、前記有機界面材料の選択は主に正孔輸送層中の正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位によって決定され、前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は正孔輸送層中の正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である。
【0039】
本発明の実施形態によれば、前記有機界面層の厚さは1 nm~20 nmであり、好ましくは3 nm~4 nmであり、例えば、1 nm、2 nm、3 nm、4 nm、5 nm、6 nm、7 nm、8 nm、9 nm、10 nm、12 nm、15 nm、18 nm又は20 nmである。
【0040】
<上記2つの有機電界発光素子における電子阻止層>
本発明の実施形態によれば、前記電子阻止層は電子阻止材料を含み、前記電子阻止材料はカルバゾール、トリフェニルアミン、ジベンゾチオフェン、及びジベンゾフランのうちの少なくとも1つの基を含む正孔輸送及び電子阻止能力を有する材料から選ばれる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、前記電子阻止層の厚さは1 nm~50 nmであり、好ましくは1 nm~20 nmであり、例えば、1 nm、2 nm、3 nm、4 nm、5 nm、6 nm、7 nm、8 nm、9 nm、10 nm、12 nm、15 nm、18 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm又は50 nmである。
【0042】
<上記2つの有機電界発光素子における発光層>
本発明の実施形態によれば、前記発光層は発光材料を含み、前記発光材料は、有機電界発光素子に使用される当分野で知られている発光材料である。前記発光層の厚さは1 nm~50 nmであり、好ましくは5 nm~30 nmであり、例えば1 nm、2 nm、3 nm、4 nm、5 nm、6 nm、7 nm、8 nm、9 nm、10 nm、12 nm、15 nm、18 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm又は50 nmである。
【0043】
<上記2つの有機電界発光素子における正孔阻止層>
本発明の実施形態によれば、前記正孔阻止層は正孔阻止材料を含み、前記正孔阻止層は、有機電界発光素子に使用される当分野で知られている正孔阻止材料である。前記正孔阻止層の厚さは1 nm~50 nmであり、好ましくは5 nm~20 nmであり、例えば1 nm、2 nm、3 nm、4 nm、5 nm、6 nm、7 nm、8 nm、9 nm、10 nm、12 nm、15 nm、18 nm、20 nm、25 nm、30 nm、35 nm、40 nm、45 nm又は50 nmである。
【0044】
<上記2つの有機電界発光素子における電子輸送層>
本発明の実施形態によれば、前記電子輸送層は電子輸送材料を含み、前記電子輸送材料は、有機電界発光素子に使用される当分野で知られている電子輸送材料である。前記電子輸送層の厚さは20 nm~200 nmであり、好ましくは30 nm~50 nmであり、例えば20 nm、30 nm、40 nm、50 nm、60 nm、70 nm、80 nm、90 nm、100 nm、110 nm、120 nm、130 nm、140 nm、150 nm、160 nm、170 nm、180 nm、190 nm又は200 nmである。
【0045】
<上記2つの有機電界発光素子における電子注入層>
本発明の実施形態によれば、前記電子注入層は電子注入材料を含み、前記電子注入材料は、有機電界発光素子に使用される当分野で知られている電子注入材料である。前記電子注入層の厚さは1 nm~5 nmであり、好ましくは1 nm~2 nmであり、例えば1 nm、2 nm、3 nm、4 nm又は5 nmである。
【0046】
<上記2つの有機電界発光素子>
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子の厚さは50 nm~3000 nmであり、例えば50 nm、100 nm、200 nm、300 nm、400 nm、500 nm、600 nm、700 nm、800 nm、900 nm、1000 nm、1200 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nm、2000 nm、2200 nm、2500 nm、2800 nm又は3000 nmであり、前記厚さの有機電界発光素子、特に厚さが200 nm~3000 nmの有機電界発光素子は、依然として優れた素子性能と安定性を維持することができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子は正置素子であってもよいし、倒置素子であってもよい。
【0048】
本発明の実施形態によれば、正置素子については、前記陽極は陽極材料を含み、前記陽極材料は、導電性酸化物(ITO、ZnO、TCO等)、銀ナノワイヤ、グラフェン薄膜、金属グリッド(Ni、Au、Pt、Mo、Al、Ag等)のうちの少なくとも1つから選ばれる。好ましくは、陽極材料は、光透過率が比較的高く、且つ導電性が良い金属又は金属酸化物、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(ITZ)、酸化亜鉛(ZnO)等を選択するができる。
【0049】
本発明の実施形態によれば、正置素子については、前記陰極は陰極材料を含み、前記陰極材料は、導電性に優れた金属材料から選ばれ、例示的に、前記陰極材料は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム銀合金、マグネシウムアルミニウム合金、アルミニウムリチウム合金、上記金属又は合金とフッ化リチウム、リチウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属との混合物から選ばれる。好ましくは、陰極材料は、導電性に優れた金属材料、例えば、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム又はストロンチウム金属等、マグネシウム銀合金、マグネシウムアルミニウム合金、アルミニウムリチウム合金等、上記金属又は合金とフッ化リチウム、リチウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属とからなる電極層から選ばれる。
【0050】
本発明の実施形態によれば、倒置素子については、陰極材料は、光透過率が比較的高く、且つ導電性が良い金属又は金属酸化物、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(ITZ)、酸化亜鉛(ZnO)等を選択するができる。
【0051】
本発明の実施形態によれば、倒置素子については、陽極材料は、導電性が良く且つ反射率が比較的高い金属、例えば、アルミニウム、銀、金等を選択することができる。
【0052】
本発明の実施形態によれば、前記有機電界発光素子の出光方式は、ボトムエミッション、トップエミッション、透過型エミッション等であってもよい。
【0053】
<上記有機電界発光素子の製造方法>
本発明は、蒸着法、フィルム延伸法、スピンコート法又はインクジェット印刷法により製造して得られる上記有機電界発光素子の製造方法を更に提供する。
【0054】
<正孔輸送層への正孔注入能力を向上させることができる方法>
本発明は、正孔輸送層への正孔注入能力を向上させることができる方法を更に提供し、前記方法は、以下のステップを含む:
陽極の表面上に陽極修飾層を配置し、陽極修飾層上に有機界面層及び正孔輸送層を順次配置し、前記陽極修飾層は金属酸化物を含み、前記有機界面層は有機界面材料を含み、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、そのうち、前記金属酸化物の仕事関数は6 eV~7 eVであり、
前記有機界面材料のHOMOエネルギー準位は、前記正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位より大きく、且つその差は0.2 eV以上である。
【0055】
<厚膜有機電界発光素子における電子の蓄積を抑制できる方法>
本発明は、厚膜有機電界発光素子における電子の蓄積を抑制できる方法を更に提供し、前記方法は以下のステップを含む:
正孔輸送層と電子阻止層との間に電子捕獲層を挿入し、前記正孔輸送層は正孔輸送材料を含み、前記電子捕獲層は電子捕獲材料を含み、前記電子阻止層は電子阻止材料を含み、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と正孔輸送材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVであり、前記電子捕獲材料のLUMOエネルギー準位と電子阻止材料のHOMOエネルギー準位の差は-0.5 eV~0.5 eVである。
【0056】
本発明により製造される有機電界発光素子は、正孔輸送層の厚さを厚くして基板上の残留物が発光層に与える影響を低減することができ、且つ優れた電子阻止能力により高効率の素子性能と安定性を維持することができる。
【0057】
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0058】
下記実施例で使用される実験方法は特別な説明がなければ、何れも従来の方法であり、下記実施例で使用される試薬、材料等は、特別な説明がなければ、何れも商業的に入手することができる。
【0059】
電子捕獲材料、正孔輸送材料、電子阻止材料、有機界面材料の実例を以下に挙げるが、これらの実例に限定されない。
【0060】
電子捕獲材料は以下のものを含む:
【0061】
【化1】
【0062】
正孔輸送材料は以下のものを含む:
【0063】
【化2】
【0064】
【化3】
【0065】
【化4】
【0066】
nはモノマーの重合度であり、1より大きい整数である。
【0067】
電子阻止材料は以下のものを含む:
【0068】
【化5】
【0069】
【化6】
【0070】
nはモノマーの重合度であり、1より大きい整数である。
【0071】
有機界面材料は以下のものを含む:
【0072】
【化7】
【0073】
【化8】
【0074】
【化9】
【0075】
nはモノマーの重合度であり、1より大きい整数である。
【0076】
以下の実施例1~6で使用される正孔シングルキャリア素子は、陽極、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子捕獲層(Interlayer)、電子阻止層(EBL)、正孔注入層(HIL)及び陰極から構成される。
【0077】
以下の実施例1~6で使用される電子シングルキャリア素子は、陽極、電子輸送層(ETL)、電子捕獲層(Interlayer)、電子阻止層(EBL)、発光層(EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)及び陰極から構成される。
【0078】
以下の実施例1~6で使用される有機電界発光素子は、陽極、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子捕獲層(Interlayer)、電子阻止層(EBL)、発光層(EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)及び陰極から構成される。
【0079】
以下の実施例7~12で使用される正孔シングルキャリア素子は、順次接続して配置される陽極、正孔注入層(陽極修飾層、有機界面層)、正孔輸送層(有機界面層、陽極修飾層)、正孔注入層及び陰極から構成される。
【0080】
以下の実施例7~12で使用される有機電界発光素子は、順次接続して配置される陽極、正孔注入層(陽極修飾層、有機界面層)、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層及び陰極から構成される。
【0081】
以下の実施例1~6における有機電界発光素子の製造方法は、次の通りである:
パターニングされたITO透明導電層がコーティングされたガラス基板を、市販の洗浄剤、脱イオン水、アセトン、エタノールを順に用いて、それぞれ10 min、2回超音波処理し、清潔な環境でオーブンにより基板を15 minベークし、オーブン温度を75℃に設定し、基板に対して10 min紫外光オゾン処理した後、基板を有機-金属真空蒸着チャンバーに入れ、チャンバー内の圧力が5×10-4 Pa未満になるまで真空引きした後、有機層(正孔注入層、正孔輸送層、電子捕獲層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層)を1~2 Å/Sの速度で順次蒸着し、Liqを0.05 Å/Sの速度で蒸着し、Al電極(陰極)を5 Å/Sの速度で蒸着する。
【0082】
以下の実施例7~12における有機電界発光素子の製造方法は、次の通りである:
パターニングされたITO透明導電層がコーティングされたガラス基板を、市販の洗浄剤、脱イオン水、アセトン、エタノールを順に用いて、それぞれ10 min、2回超音波処理し、清潔な環境でオーブンにより基板を15 minベークし、オーブン温度を75℃に設定し、基板に対して10 min紫外光オゾン処理した後、基板を有機-金属真空蒸着チャンバーに入れ、チャンバー内の圧力が5×10-4 Pa未満になるまで真空引きした後、正孔注入層(陽極修飾層、有機界面層)、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、任意選択に正孔阻止層、電子輸送層を1~12 Å/Sの速度で順次蒸着し、Liqを0.05 Å/Sの速度で蒸着し、Al電極を5 Å/Sの速度で蒸着し、製造して得られた有機電界発光素子の構造式は図4に示す通りである。
【0083】
以下の実施例1~12における有機電界発光素子の性能測定は、次の通りである:
(1)素子の膜厚は段差計を用いて測定する。
【0084】
(2)製造された素子電極の両側に順方向の直流電流を印加し、Keithley 2400デジタルソースメータを使用して電流-電圧特性を測定し、CS200を使用して素子の電流-輝度特性を測定し、PR650輝度計を使用して分光特性を測定し、M6000 OLED寿命試験機を使用して素子の安定性を試験する。
【0085】
〔実施例1〕
TAPC(4,4'-シクロヘキシルビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)アニリン])を正孔輸送層とし、MoO3/SimCP2(ビス[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジフェニルシラン)を正孔注入層とし、HAT-CN(2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン)を電子捕獲層とし、NHT210(N,N-ビス([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-3'-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)-[1,1'-ビフェニル]-4-アミン)を電子阻止層とし、Alを陰極とし、ITOを陽極とし、正孔シングルキャリア素子を製造する。
【0086】
正孔シングルキャリア素子aの具体的な構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(1000 nm)/NHT210(10 nm)/SimCP3(3 nm)/MoO3(10 nm)/Al(100 nm)。
【0087】
正孔シングルキャリア素子bの具体的な構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(1000 nm)/HAT-CN(4 nm)/NHT210(10 nm)/SimCP3(3 nm)/MoO3(10 nm)/Al(100 nm)。
【0088】
素子のJ-Vパラメータは次の通りである:駆動電圧が5 Vの場合、HAT-CNのない正孔シングルキャリア素子aの電流密度は30.6 mA/cm2であり、厚さ4 nmのHAT-CNを加えた正孔シングルキャリア素子bの電流密度は29.7 mA/cm2であり、図2に示す通りである。
【0089】
正孔シングルキャリア素子aと正孔シングルキャリア素子bとの比較から、HAT-CNは正孔の輸送に対して抑制作用が生じないことが分かる。
【0090】
〔実施例2〕
ITOを陽極とし、ET225(2-(3-(フェナントレン-9-イル)-5-(ピリジン-3-イル)フェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)を電子輸送層とし、HAT-CNを電子捕獲層として、NHT210を電子阻止層とし、BH513:4%BD348を発光層(発光層の本体はBH513(9-(ナフタレン-1-イル)-10-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)アントラセン)で、客体はBD348(N1,N1,N6,N6-テトラキス(4-メチル-[1,1'-ビフェニル]-3-イル)ピレン-1,6-ジアミン)である)とし、ET164(9,9'-(5-(6-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-フェニルピリミジン-4-イル)-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール))を正孔阻止層とし、Liq(8-ヒドロキシキノリノラトリチウム)を電子注入層とし、Alを陰極とし、電子シングルキャリア素子を製造する。
【0091】
電子シングルキャリア素子aの構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/ET225(30 nm)/NHT210(10 nm)/BH513:4%BD348(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0092】
電子シングルキャリア素子bの構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/ET225(30 nm)/HAT-CN(4 nm)/NHT210(10 nm)/BH513:4%BD348(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0093】
素子のJ-Vパラメータは次の通りである:駆動電圧が5 Vの場合、HAT-CNのない電子シングルキャリア素子aの電流密度は3.8 mA/cm2であり、4 nmのHAT-CNを加えた電子シングルキャリア素子bの電流密度は0.0009 mA/cm2であり、図3に示す通りである。
【0094】
電子シングルキャリア素子aと電子シングルキャリア素子bとの比較から、HAT-CNは電子の輸送に対して明らかな抑制作用が生じたことが分かる。
【0095】
〔実施例3〕
ITOを陽極とし、MoO3/SimCP2を正孔注入層とし、TAPCを正孔輸送層とし、HAT-CNを電子捕獲層とし、NHT210を電子阻止層とし、発光層の本体はBH513で、客体はBD348であり、ET164を正孔阻止層とし、ET225を電子輸送層とし、Liqを電子注入層とし、Alを陰極とし、有機電界発光素子を製造する。
【0096】
有機電界発光素子aの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/NHT210(10 nm)/BH513:4%BD348(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0097】
有機電界発光素子bの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/HAT-CN(4 nm)/NHT210(10 nm)/BH513:4%BD348(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0098】
実施例3の素子性能データは次の通りである:
【0099】
【表1】
【0100】
〔実施例4〕
ITOを陽極とし、MoO3/SimCP2を正孔注入層とし、TAPCを正孔輸送層とし、HAT-CNを電子捕獲層とし、EBL012(N-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4-アミン)を電子阻止層とし、発光層の本体はRH(1-(3-([1,1'-ビフェニル]-3-イル)キノキサリン-2-イル)-1H-1-アザジベンゾ[g,ij]ナフト[2,1,8-cde]azulene)で、客体はRD354(ビス(1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-イソプロピルイソキノリン)(3,7-ジエチルノナン-4,6-ジケトナート)イリジウム(III))であり、ET225を電子輸送層とし、Liqを電子注入層とし、Alを陰極とし、有機電界発光素子を製造する。
【0101】
有機電界発光素子aの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/EBL012(10 nm)/RH:8%RD354(30 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0102】
有機電界発光素子bの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/HAT-CN(4 nm)/EBL012(10 nm)/RH:8%RD354(30 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0103】
実施例4の素子性能データは次の通りである:
【0104】
【表2】
【0105】
〔実施例5〕
ITOを陽極とし、MoO3/SimCP2を正孔注入層とし、TAPCを正孔輸送層とし、HAT-CNを電子捕獲層とし、EBL012を電子阻止層とし、発光層の本体はGH025(2-(9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)ジベンゾ[b,d]フラン-2-イル)-9-フェニル- 9H-カルバゾール)で、客体はGD617(ビス(2-フェニルピリジン)(2-(メチル-d3)-8-(ピリジン-2-イル)ベンゾフラン[2,3-b]ピリジン)イリジウム(III))であり、ET225を電子輸送層とし、Liqを電子注入層とし、Alを陰極とし、有機電界発光素子を製造する。
【0106】
有機電界発光素子aの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/EBL012(10 nm)/GH025:8%GD617(30 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0107】
有機電界発光素子bの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3nm)/TAPC(950 nm)/HAT-CN(4 nm)/EBL012(10 nm)/GH025:8%GD617(30 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0108】
実施例5の素子性能データは次の通りである:
【0109】
【表3】
【0110】
〔実施例6〕
ITOを陽極とし、MoO3/SimCP2を正孔注入層とし、TAPCを正孔輸送層とし、EBL012を電子阻止層とし、発光層の本体はGH025であり、客体はTXO-PhCzであり、ET164を正孔阻止層とし、ET225を電子輸送層とし、Liqを電子注入層とし、Alを陰極とし、有機電界発光素子を製造する。
【0111】
有機電界発光素子aの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/EBL012(10 nm)/GH025:10%TXO-PhCz(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0112】
有機電界発光素子bの構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(950 nm)/HAT-CN(4 nm)/EBL012(10 nm)/GH025:10%TXO-PhCz(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。
【0113】
実施例6の素子性能データは次の通りである:
【0114】
【表4】
【0115】
上記実施例3~6の性能試験結果から、電子捕獲層の導入は素子の性能に影響を与えないが、素子の安定性が明らかに向上することが分かる。
【0116】
〔実施例7〕
ITOを陽極とし、TAPC(4,4'-シクロヘキシルビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)アニリン])を正孔輸送層とし、HAT-CN(2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン)、MoO3/SimCP2(ビス[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジフェニルシラン)、又はMoO3を正孔注入層とし、Alを陰極とし、正孔シングルキャリア素子を製造し、そのうち、MoO3の仕事関数は6.7 eVであり、SimCP2のHOMOエネルギー準位は6.1 eVであり、TAPCのHOMOエネルギー準位は5.6 eVである。
【0117】
正孔シングルキャリア素子aの構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/MoO3(10 nm)/TAPC(500 nm)/SimCP2(3 nm)/MoO3(10 nm)/Al(100 nm)。
正孔シングルキャリア素子bの構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/HAT-CN(10 nm)/TAPC(500 nm)/SimCP2(3 nm)/MoO3(10 nm)/Al(100 nm)。
【0118】
正孔シングルキャリア素子cの構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(500 nm)/SimCP2(3 nm)/MoO3(10 nm)/Al(100 nm)。
【0119】
正孔シングルキャリア素子dの構造は次の通りである:
ITO(150 nm)/TAPC(500 nm)/SimCP2(3 nm)/MoO3(10 nm)/Al(100 nm)。
【0120】
素子のJ-Vパラメータは次の通りである:駆動電圧が7 Vの場合、MoO3により注入された正孔シングルキャリア素子aの電流密度は1.43 mA/cm2であり、MoO3/SimCP2により注入された正孔シングルキャリア素子cの電流密度は329.21 mA/cm2であり、HAT-CNにより注入された正孔シングルキャリア素子bの電流密度は70.75 mA/cm2であり、ITOにより直接注入された正孔シングルキャリア素子dの電流密度は93.71 mA/cm2図5に示す通りである。
【0121】
上記正孔シングルキャリア素子と比較して、MoO3/SimCP2は従来の正孔注入層に比べてより優れた正孔注入能力を有する。
【0122】
〔実施例8〕
陽極はITOであり、MoO3/SimCP2は正孔注入層(MoO3は陽極修飾層、SimCP2は有機界面層)であり、TAPCは正孔輸送層であり、電子阻止層はEBL012(N-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-N-(4-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)フェニル)-[1,1'-ビフェニル]-4-アミン)であり、発光層の本体はRH(1-(3-([1,1'-ビフェニル]-3-イル)キノキサリン-2-イル)-1H-1-アザジベンゾ[g,ij]ナフト[2,1,8-cde]azulene)であり、客体はRD354(ビス(1-(3,5-ジメチルフェニル)-6-イソプロピルイソキノリン)(3,7-ジエチルノナン-4,6-ジケトナート)イリジウム(III))であり、正孔阻止層はET164(9,9'-(5-(6-([1,1'-ビフェニル]-4-イル)-2-フェニルピリミジン-4-イル)-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール))であり、電子輸送層はET225(2-(3-(フェナントレン-9-イル)-5-(ピリジン-3-イル)フェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン)であり、電子注入層はLiq(8-ヒドロキシキノリノラトリチウム)であり、陰極はAlであり、有機電界発光素子を製造する。
【0123】
有機電界発光素子の構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(x nm)/EBL012(10 nm)/RH:8%RD354(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(35 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。そのうち、TAPCの厚さは、それぞれ50 nm、300 nm、500 nm、700 nm、950 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nmである。
【0124】
実施例8の素子性能データは次の通りである:
【0125】
【表5】
【0126】
〔実施例9〕
陽極はITOであり、MoO3/SimCP2は正孔注入層(MoO3は陽極修飾層、SimCP2は有機界面層)であり、TAPCを正孔輸送層とし、電子阻止層はEBL012であり、発光層の本体はGH025(2-(9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)ジベンゾ[b,d]フラン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール)で、客体はGD617(ビス(2-フェニルピリジン)(2-(メチル-d3)-8-(ピリジン-2-イル)ベンゾフラン[2,3-b]ピリジン)イリジウム(III))であり、正孔阻止層はET164であり、電子輸送層はET225であり、電子注入層はLiqであり、陰極はAlであり、有機電界発光素子を製造する。
【0127】
有機電界発光素子の構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(x nm)/EBL012(10 nm)/GH025:8%GD617(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。そのうち、TAPCの厚さは、それぞれ50 nm、300 nm、500 nm、700 nm、950 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nmである。
【0128】
実施例9の素子性能データは次の通りである:
【0129】
【表6】
【0130】
〔実施例10〕
陽極はITOであり、MoO3/SimCP2は正孔注入層(MoO3は陽極修飾層、SimCP2は有機界面層)であり、TAPCを正孔輸送層とし、電子阻止層はNHT210であり、発光層の本体はBH513((9-ナフタレン-1-イル)-10-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)アントラセン)で、客体はBD348(N1,N1,N6,N6-テトラキス(4-メチル-[1,1'-ビフェニル]-3-イル)ピレン-1,6-ジアミン)であり、正孔阻止層はET164であり、電子輸送層はET225であり、電子注入層はLiqであり、陰極はAlであり、有機電界発光素子を製造する。
【0131】
有機電界発光素子の構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(x nm)/NHT210(10 nm)/BH513:4%BD348(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。そのうち、TAPCの厚さは、それぞれ50 nm、300 nm、500 nm、700 nm、950 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nmである。
【0132】
実施例10の素子性能データは次の通りである:
【0133】
【表7】
【0134】
〔実施例11〕
陽極はITOであり、MoO3/SimCP2は正孔注入層(MoO3は陽極修飾層、SimCP2は有機界面層)であり、TAPCを正孔輸送層とし、電子阻止層はEBL012であり、発光層の本体はGH025で、客体はTXO-PhCzであり、正孔阻止層はET164であり、電子輸送層はET225であり、電子注入層はLiqであり、陰極はAlであり、有機電界発光素子を製造する。
【0135】
有機電界発光素子の構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(x nm)/EBL012(10 nm)/GH025:10%TXO-PhCz(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。そのうち、TAPCの厚さは、それぞれ50 nm、300 nm、500 nm、700 nm、950 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nmである。
実施例11の素子性能データは次の通りである:
【0136】
【表8】
【0137】
〔実施例12〕
陽極はITOであり、MoO3/SimCP2は正孔注入層(MoO3は陽極修飾層、SimCP2は有機界面層)であり、TAPCを正孔輸送層とし、電子阻止層はEBL012であり、発光層の本体はGH025で、客体はTXO-TPAであり、正孔阻止層はET164であり、電子輸送層はET225であり、電子注入層はLiqであり、陰極はAlであり、有機電界発光素子を製造する。
【0138】
有機電界発光素子の構造は次の通りである:
ITO/MoO3(10 nm)/SimCP2(3 nm)/TAPC(x nm)/EBL012(10 nm)/GH025:10%TXO-TPA(30 nm)/ET164(10 nm)/ET225(30 nm)/Liq(1 nm)/Al(100 nm)。そのうち、TAPCの厚さは、それぞれ50 nm、300 nm、500 nm、700 nm、950 nm、1300 nm、1500 nm、1800 nmである。
【0139】
実施例12の素子性能データは次の通りである:
【0140】
【表9】
【0141】
上記実施例7から、駆動電圧が7 Vの場合、ITO、MoO3、HAT-CNからTAPCに注入された電流密度は、それぞれ93.71 mA/cm2、1.43 mA/cm2、70.75 mA/cm2であり、MoO3/SimCP2からTAPCに注入された電流密度は329.21 mA/cm2であり、オーミックコンタクトの方式はより優れた正孔注入能力を有するのを示していることが分かる。同時に、実施例8~12から、製造された異なる厚さの素子は、いずれも非常に良い素子性能を有することが分かり、素子の安定性を比較すると、素子の厚さが50 nmの場合、基板の粗さの影響により素子寿命が非常に短く、これに対して、素子の厚さを厚くした後、安定性が明らかに向上していることが分かる。
【0142】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明の精神及び原則を逸脱しない範囲で行われた修正、同等置換、改良等は、何れも本発明の請求範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
図1】本発明の効果的に電子を阻止できる有機電界発光素子の構造図である。そのうち、HILは正孔注入層、HTLは正孔輸送層、EBLは電子阻止層、EMLは発光層、HBLは正孔阻止層、ETLは電子輸送層、Liqは電子注入層である。
図2】正孔シングルキャリア素子に対する電子捕獲層の影響を示す図である。
図3】電子シングルキャリア素子に対する電子捕獲層の影響を示す図である。
図4】本発明の超厚の有機電界発光素子の構造図である。そのうち、ITOは陽極、MoO3は陽極修飾層、Interlayerは有機界面層、HTLは正孔輸送層、EBLは電子阻止層、EMLは発光層、HBLは正孔阻止層、ETLは電子輸送層、Liqは電子注入層、Alは陰極である。
図5】実施例7の異なる正孔注入層による正孔注入の比較である。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】