(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】編み物を製造するためのシンカー、編み装置、および編み方法
(51)【国際特許分類】
D04B 15/06 20060101AFI20240426BHJP
【FI】
D04B15/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572964
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022061075
(87)【国際公開番号】W WO2022248143
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュティンゲル,ウーヴェ
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054KA23
(57)【要約】
全寿命にわたって均一なステッチ構造を有する編地を製造することを可能にするシンカー(1)を備えた編み装置(14)および方法は、少なくとも2つの部分要素(6、18)を含む作用対を含む。作用対により、シンカー高さ方向(H)の下向きの作用力(7)をシンカー(1)に加えることができる。この力(7)は、シンカー(1)のステッチ形成手段(3)に作用する編みモードにおけるステッチ形成力を打ち消すことができ、このようにして、製造される編地における不均一性、例えばシンカーラインを防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ 主にシンカー長手方向(L)に延びるシャンク(2)を有し、
・ シンカー長手方向(L)における前端部(5)において、シャンク(2)は、編みモードにおいて糸と接触し、ステッチ形成に関与する少なくとも1つのステッチ形成手段(3)を有し、
・ ステッチ形成手段(3)は、完成したばかりの編地を押さえるための押さえ縁(10)であり、
・ シャンク(2)は、少なくとも1つの基本摺動面(4)を有し、
・ 基本摺動面(4)は、シャンク(2)のシンカー長手方向(L)およびシンカー幅方向(B)に対して横方向に延び、シンカー長手方向(L)およびシンカー幅方向(B)に対して横方向に延びるシンカー高さ方向(H)におけるシャンク(2)の下方への延びを区切り、シンカー(1)が編みモードでその上を摺動することができるように調整され、
・ 編み方法において、ステッチを押さえる際に、ステッチ形成力がシンカー(1)の押さえ縁(10)に作用し、この力がシンカーの高さ方向(H)の上方に作用する、
編み機で使用されるシンカー(1)であって、
・ シンカー(1)のシンカー高さ方向(H)に作用する力(7)を及ぼすための作用対の第1部分要素(6)であって、作用対は、好ましくは少なくとも1つのばね要素(22)を含む、第1部分要素(6)、を含み、
・ 作用対の作用力(7)を有するシンカー(1)は、ステッチ形成力を補償するために、編み装置においてシンカー高さ方向(H)に偏らせることができる、
ことを特徴とするシンカー(1)。
【請求項2】
・ ステッチ形成手段(3)とシャンク(2)の前端(5)を含む引き上げ領域(8)が、
・ シャンク(2)の長手方向の10~50%、好ましくは25~40%を含み、
・ 作用対の第1部分要素(6)を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシンカー(1)。
【請求項3】
・ 引き上げ領域(8)に割り当てられた少なくとも1つの摺動面(9)が、
・ シャンク(2)のシンカー幅(B)およびシンカー長手方向(L)に沿って延び、
・ シャンク(2)のシンカー高さ方向(H)の面法線は、作用対が及ぼし得る力(7)と同じ方向を向いている、
ことを特徴とする請求項2に記載のシンカー(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの摺動面(9)は、第1部分要素(6)と少なくとも部分的に重なる、
ことを特徴とする請求項3に記載のシンカー(1)。
【請求項5】
第1部分要素(6)は、シャンク(2)の切り込み(12)によって形成される脚部(11)を含むる針(22)であり、切り込み(12)は、シンカー(1)のシンカー長手方向(L)およびシンカー高さ方向(H)に延在する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシンカー(1)。
【請求項6】
脚部(11)は、シャンク(2)のシンカー高さ方向(H)および/またはシンカー幅方向(B)に少なくとも1つのテーパー部(13)を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のシンカー(1)。
【請求項7】
・ 針キャリア(15)、好ましくは編み物用シリンダー、は、編みモードで少なくとも1本の編み針(16)を運び、
・ シンカーキャリア(17)、好ましくはシンカーリング、は、編みモードにおいて少なくとも1つのシンカー(1)を担持し、編みモードにおいて少なくとも1つの編み針(16)と協働し、そのシャンク(2)が実質的にシンカー長手方向(L)に延び、
・ シンカーは、主にシンカー長手方向(L)に延びるシャンク(2)を含み、
・ シンカー長手方向(L)における前端(5)において、シャンク(2)は、編みモードにおいて糸と接触し、ステッチ形成に関与する少なくとも1つのステッチ形成手段(3)を有し、
・ 少なくとも1つのステッチ形成手段(3)は、完成したばかりの編地を押さえるための押さえ縁(10)であり、
・ 編み方法において、ステッチを押さえる際に、ステッチ形成力がシンカー(1)の押さえ縁(10)に作用し、この力がシンカーの高さ方向(H)の上方に作用する、
編み装置(14)であって、
・ シンカー長手方向(L)に直交するシンカー高さ方向(H)の下方に作用する力(7)をシンカー(1)に加えることができる少なくとも1つの作用対を含み、
・ 少なくとも1つの作用対は、シンカー(1)に割り当てられる少なくとも1つの第1部分要素(6)と、編み装置(14)の他の要素の1つに割り当てられる少なくとも1つの第2部分要素(18)とを含み、
・ 第1部分要素(6)および/または第2部分要素(18)は、好ましくは針(22)であり、
・ シンカー(1)は、ステッチ形成力を補償するために、編み方向(14)における作用対の付勢力(7)でシンカー高さ方向(H)に偏らせることができる、
ことを特徴とする編み装置(14)。
【請求項8】
第1部分要素(6)および/または第2部分要素(18)は、シンカー長手方向(L)との傾斜角度(20)を囲む接触面(31)を含み、接触面(31)の傾斜角度(20)は、シンカー長手方向(L)におけるその長手方向延長部の少なくとも1つの位置において0度よりも大きい、
ことを特徴とする請求項7に記載の編み装置(14)。
【請求項9】
接触面(31)の傾斜角度(20)は、0.5度から22度、好ましくは2度から10度、である、
ことを特徴とする請求項8に記載の編み装置(14)。
【請求項10】
シンカー(1)は、その編み動作中に、作用対からシンカー(1)に作用する力(7)が異なる少なくとも2つの位置をとることができる、
ことを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載の編み装置(14)。
【請求項11】
シンカー(1)の押さえつけ位置における力(7)は、40cNから100cN、好ましくは50cNから70cNであり、押さえつけ位置におけるシンカー(1)は、針キャリア(15)の方向に向かってシンカー長手方向(L)の最大幅だけ前方に持ち上げられる、
ことを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の編み装置(14)。
【請求項12】
第1部分要素(6)および/または第2部分要素(18)は、シンカー(1)の押さえつけ位置で最も強く弾性変形する針(22)である、
ことを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の編み装置(14)。
【請求項13】
少なくとも1つのシンカー(1)が係合するシンカーカム(33)であって、少なくとも1つのシンカー(1)をシンカー長手方向(L)に交互に編むように駆動するのに適したシンカーカム(33)を含み、
第2部分要素(18)は、シンカーカム(33)の一部であるか、またはシンカーカム(33)に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項7から12のいずれか1項に記載の編み装置(14)、
【請求項14】
・ 少なくとも1つの編み針(16)が、編み針(16)が針シャンク(23)に沿って延びる針長手方向(N)に沿って交互に移動する編み動作を実行し、
・ 少なくとも1つのシンカー(1)が、シャンク(2)の長手方向(L)(シンカー長手方向(L))に沿って交互に移動する編み動作を実行し、
・ シンカー長手方向(L)における前端(5)において、シャンク(2)は、編みモードで糸と接触し、ステッチ形成に関与する少なくとも1つのステッチ形成手段(3)を有し、
・ 少なくとも1つのステッチ形成手段(3)は、完成したばかりの編地を押さえるための押さえ縁(10)であり、
・ 押さえ縫い時に、ステッチ形成力がシンカー(1)の押さえ縁(10)に作用し、この力がシンカーの高さ方向(H)に作用する、
ことを含む編み方法であって、
・ 少なくとも1つのシンカー(1)は、編み動作の段階において、作用対の第1部分要素(6)と第2部分要素(18)との相互作用を通じて、シンカー長手方向(L)に直交するシンカー高さ方向(H)に下向きの作用力(7)を受け、
・ 第1部分要素(6)および/または第2部分要素(18)は、好ましくは針(22)であり、
・ シンカー(1)は、ステッチ形成力を補償するために、編み装置(14)内の作用対の印加力(7)でシンカー高さ方向(H)にバイアスされる、
ことを特徴とする編み方法。
【請求項15】
力(7)は、好ましくは少なくとも1つのステッチ形成手段(3)の方向に向けられた、少なくともシンカー(1)の編み運動の段階の間に増大する、
ことを特徴とする請求項14に記載の編み方法。
【請求項16】
第1部分要素(6)および/または第2部分要素(18)が、シンカー高さ方向(H)に弾性を有する針(22)であること、
および、針(22)が、シンカー長手方向(L)におけるシンカー(1)の編み運動を通じて、およびシンカー高さ方向(H)における第1部分要素(6)または第2部分要素(18)との接触を通じて、シンカー高さ方向(H)にばね力を発揮するように弾性変形すること、
を特徴とする請求項14または15に記載の編み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
編み物を製造するためのシンカー、編み装置、および編み方法。
【背景技術】
【0002】
編み装置または編み機で使用するシンカーは、何十年も前から知られている。シンカーに加えて、編み機は通常、複数の針、少なくとも1つの針キャリア(通常は編みシリンダー)、および少なくとも1つのシンカーキャリアを有する。編み機で使用されるシンカーは、編みモードにおいて糸と接触するステッチ形成手段を有する。このようなステッチ形成手段としては、ノックオーバーエッジと押さえ付けエッジが挙げられる。通常、編み機のシンカーは実質的に2つの仕事を果たす。まず、針が最も低い(引き込まれた)位置(ノックオーバー位置)に移動するとき、そのノックオーバーエッジでステッチの長さを形成する役割を果たし、他方、針が最も高い(上げられた)位置(押さえつけ位置)に移動するとき、その押さえつけエッジで製造された編地を押さえる。しかし、編み装置の設計によっては、シンカーがこれらのタスクの一方のみを果たすことも可能である。さまざまなタスクを実行するために、各シンカーは針の動きに合わせたシンカー長手方向の動きを実行する。針の動きは、通常シンカー長手方向と直交する針長手方向に動く。しかし、針の動き方向は、シンカー長手方向と90度以下または90度以上の角度をなすこともある。この場合、シンカーは通常、針キャリアの上側とシンカーキャリアの上側に配置され、シンカー長手方向に延びる溝に収容される。それらの壁は通常、溝壁によってシンカー幅方向に互いに間隔をあけて配置されている。先に述べた倒したり押さえたりする際に、シンカーにはシンカー長手方向と直交するシンカー高さ方向に働く力も作用する。この力は、押さえつけ時にはシンカー高さ方向の正の方向に上向きに作用し、ノックオーバー時にはシンカー高さ方向の負の方向に下向きに作用する。その結果、作用する力の方向によって符号が変化するシンカー高さ方向に、シンカーの望ましくない高さ移動が引き起こされる。このことは次のような欠点をもたらす。高さ移動の間、シンカーと編みシリンダーとの間に汚れの溜まりやすい隙間が形成される。一方では、その結果、編み機の動力要件が増加し、他方では、その結果、摩耗が多く発生する。下方向への高さ移動の結果、シンカーと編みシリンダーとの接触領域の摩耗も増加する。さらに、シンカー高さ方向に作用する力の結果、および摩耗の増加により、シンカー高さ方向におけるシンカーの位置に変動が生じ、その結果、製造される編地に不均一性が生じる。この不均一性は、編地中の線-シンカー線-として識別できることが多い。押さえエッジとノックオーバーエッジの両方を有する通常のシンカーの場合、製造された編地は、シンカーのノックオーバーエッジ上でシンカー高さ方向に調節可能な引き離し力で下方に引き離すことができる。この場合、編地との接触により、シンカー高さ方向の下方に作用する力がシンカーに作用し、シンカー高さ方向のシンカーの動きを打ち消す。従来技術では、追加の装置によって、編地の引き抜き方向を変化させることができ、したがって編地の引き抜きによって編地がシンカーに下向きに加える力も変化させることができる編み装置が知られている。このような装置の例としては、布の引き離し方向を変えるために高さを調節できる布の分流リングがある。比較的小さな引出し力で引出される編地の場合、生地の引出しによってシンカーにかかる力にもかかわらず、シンカーの高さ方向への移動が生じ、これが編地の不均一性(主にシンカーライン)を招くことがある。
【0003】
西独国特許出願公開第10015730号は、相対的な技術に従って動作するシンカーおよび編み機を開示している。シンカーは、ステッチを押さえるための押さえ縁を有し、編み装置のキャリア上に案内される。当業者にとって、編み針の引き上げ動作が、その引き抜き動作と正確に逆方向に行われることは明らかである。したがって、編み針の引き上げ中に、先に形成されたステッチがシンカーの押さえ縁に押さえつけられ、押さえ縁にステッチ形成力が作用し、このステッチ形成力は押さえ縁に対して垂直に作用することも明らかである-この場合、ステッチ形成力の作用方向は引き上げ動作の方向に対応する。
一実施形態では、シンカーは、キャリアとの協働によってシンカーに力を加えるバネから構成され、このばねは、編み針の上昇運動に対して垂直に作用する。シンカーに加えられる力により、製造公差が補正され、シンカーがクリア位置からノッキング位置に移動する際に、シンカーのキャリアへの確実なアバットメントが保証されなければならない。このようなシンカーは、編み工程でステッチ形成力の作用方向にたわみ、その結果、製品にシンカーラインが生じる望ましくない動きをすることがある。
【0004】
西独国特許出願公開第2154323号には、シンカーと丸編みシリンダーからなる丸編み機のステッチ形成装置が開示されている。西独国特許出願公開第2154323号の
図1には、シンカーがリングガイド(#12)に案内される下部脚部(#13)を有し、シンカーが丸編みシリンダーまたは丸編みシリンダーに連結されたシンカーキャリアからシンカーの移動に直交する方向に「浮き上がる」ことができないようになっていることがわかる。リングガイドに係合するのに適したこのような脚を持つシンカーも、例えば英国特許第349443号から知られている。しかし、このようなシンカーでは、特に運転時間が長くなるにつれて、製造される編地にシンカー線が頻繁に現れることが示されている。
【0005】
欧州特許第1057914号1は、制限要素によってシンカー高さ方向のシンカー移動を制限すべき丸編機を開示している。この目的のために、制限要素は、シンカー高さ方向において不動であるように、編みシリンダーの受け部に配置される。シンカーは、制限要素および編みシリンダーに対して水平方向に移動することができ、その際、制限要素は、シンカー高さ方向においてシンカーに積極的に係合し、制限要素とシンカーとの間に摺動接触が存在する。シンカーの高さ方向への移動は、積極的な係合によって制限されるはずである。しかしながら、前述の特徴を有するシンカーまたは編みシステムでは、編み物製品に不均一性が依然として生じることが示されている。これらの不均一性は、編みシステムの経年変化とともに増大することさえある。
【発明の概要】
【0006】
従って、本発明の目的は、編機の全寿命にわたって均一なステッチ構造を有する編地を実現することを可能にする編機用シンカーおよび編システムを提供することにある。
【0007】
この目的は、請求項1、8、および15によって達成される。編み機で使用するためのシンカーは、主としてシンカー長手方向に延びるシャンクを備え、そのシンカー長手方向の前端部において、シャンクは、編みモードにおいて糸と接触し、ステッチ形成に関与する少なくとも1つのステッチ形成手段を有し、少なくとも1つのステッチ形成手段は、完成したばかりの編地を押さえるための押さえ縁である。編みモードにおいて、編み針に接続されるステッチは、押さえ縁によって、編み針の針長手方向への引き上げ動作の間に針長手方向にも移動することが阻止される。ステッチは、その代わりに、押さえ縁部において針長手方向に固定された位置に保持される-ステッチは押さえられる。その際、編み針のシャンクはステッチに沿ってスライドし、ステッチは編み針のシャンクに「滑り込む」。編み工程では、ステッチを押さえる際に、シンカーの高さ方向上方に作用するステッチ形成力がシンカーの押さえ縁に作用する。シャンクは、少なくとも1つの基本摺動面を有し、この基本摺動面は、シンカー長手方向およびシンカー長手方向に対して横方向に延びるシンカー幅方向に延び、シンカー長手方向およびシンカー幅方向に対して横方向に延びるそのシンカー高さ方向におけるシャンクの下方への延びを区切り、編み立てモードにおいてシンカーがその上を摺動できるように調整されている。基本摺動面は、シンカー長手方向およびシンカー幅方向に対して横方向に延びるそのシンカー高さ方向におけるシャンクの延長を画定する。さらに、シンカーは、シンカー高さ方向に作用する力を発揮するための作用対の第1部分要素からなり、作用対は、好ましくは少なくとも1つの針からなり、作用対の発揮可能な力を有するシンカーは、ステッチ形成力を補償するために編み装置内でバイアスされ得る。作用可能な力は、シンカーの高さ方向においてシンカーに下向きに作用する。作用対によって及ぼし得る力は、シンカーの長手方向および/またはシンカーの幅方向にも方向成分を有し得る。好ましくは、シンカー高さ方向の力成分の大きさは、シンカー長手方向およびシンカー幅方向の力成分よりも大きい。作用対の発揮可能な力により、シンカーは、編み装置においてシンカー高さ方向に偏らせることができる。このようにして、編み工程で、例えばステッチを押さえるときに、シンカーの押え縁に作用する、シンカー高さ方向の上方に作用するステッチ形成力を補償して、シンカー高さ方向の望ましくない垂直方向のシンカーの動きを減少させるか、または完全に防止することができる。第1部分要素に加えて、作用対は、有利には、力を加えるために第1部分要素が機能的に協働する第2部分要素からなる(例えば接触によって)。編み装置において、この第2部分要素は、有利には、針キャリア、カムリング、シンカーキャリア-たとえばシンカーリング-またはシンカーカムの一部とすることができ、あるいはこの第2部分要素は、シンカーキャリア、シンカーリングまたはシンカーカムに固定することができる。公知の編み方と同様に、シンカーは通常、シンカーカムの駆動バットに係合し、このシンカーカムによって、シンカーがシンカー長手方向に沿って交互に移動する、シンカーの通常の編み動作に駆動される。これは逆に、シンカーカムの一部がシンカーに係合することも意味する。シンカーカムが、駆動バットとシンカーの上昇領域との間でシンカーに係合する編み装置も知られている。この場合、シンカー長手方向への編み動作中、駆動バットは、その一方の面がシンカー長手方向を向いた状態でのみシンカーカムと接触することができる。このことは、本特許出願の意味において、シンカーカムにおける駆動バットの係合としても理解されるべきである。この場合、シンカーの一部である作用対の第1部分要素も動かされる。シンカーの編み運動における位置に応じて、作用対は、有利なことに、異なる態様で互いに協働することができる。例えば、作用対によって加えることができる力も、交互の編み運動と交互の態様で増加および/または減少することができる。本発明はまた、先行技術の編み装置において長い動作時間の後に必然的に得られ、製造される編み物の布帛の不均一性またはシンカーラインを悪化させる遊びが、本発明による措置によって補償または除去され得るという事実からも利益を得る。このようなシステムでは、摺動接点の領域において、磨耗のために運転時間が長くなるにつれて必然的に遊びが生じる。この遊びは、例えばシンカーラインなど、製造される編地における不均一性をもたらし得る。
【0008】
作用対によって加えることができる力も、シンカー長手方向(すなわち針キャリアの方向)にシンカーを上昇させるにつれて増加すると特に有利である。有利には、編み動作の段階において加えることができる力は、シンカーがその前端の方向(すなわち針キャリアの方向)においてシンカー長手方向に最も大きく持ち上げられたときに最大となる。有利には、この段階は、慣用の編物装置における編針が、その針長手方向前方において、そのステッチ形成手段の方向に方向性編物運動を実行し、ステッチが、編針のフックから、編針のジョーおよびラッチを介して、針シャンク上にスライドされる段階である。したがって、ステッチは押さえられ、シンカーはその押さえ位置に位置する。
【0009】
力の付与に関する作用対の最後の有利な特性から、力が少なくとも編み動作の評価できる段階(例えば、シンカーが押さえつけられている間、または編みサイクルの少なくとも20%の間)に作用することも有利であることが既に導かれる。
【0010】
部分要素の 少なくとも1つは、有利には、シンカー高さ方向に(例えば曲げによって)弾性変形可能であり、その結果、作用対の発揮可能な力をシンカー高さ方向にばね力の形態で与えることができる針とすることができる。有利なことに、このような針は、編み運動中に発揮可能な力の大きさを変えるために、編み運動中のシンカーの位置に応じて様々に強く弾性変形される。編みモードにおけるばね要素が、その長手方向伸長の最大50%にわたって第2部分要素と接触している場合、さらなる利点が得られる。第1部分要素も第2部分要素も針とすることができる。有利には、部分要素の一方は、実質的に剛性、すなわち弾力性がなく、針と協働する接触面である。例えば、針は接触面に支持することができる。このような接触面は、例えば、リングガイドの部分表面、針キャリアの部分表面、カム部品の部分表面、またはシンカーキャリアの部分表面とすることができる。有利には、接触面は、シンカー長手方向へのシンカーの編み運動中に針が接触面に押し付けられ、シンカー高さ方向に弾性変形させられるように配置される。このために必要なシンカーの編目移動方向への駆動力は、シンカーカムを介してシンカーに加えられる。有利な実施形態では、第1部分要素はシンカーの針であり、第2部分要素は編み装置の接触面である。代替的な実施形態では、第1部分要素はシンカーの接触面であり、第2部分要素は編み装置に割り当てられた針である。第1部分要素および第2部分要素の両方が針である場合、さらなる利点が得られる。有利には、作用対の第1部分要素および/または第2部分要素は(選択的に)1つのシンカーにのみ作用する。しかしながら、第1部分要素または第2部分要素は、同時に編み装置の複数のシンカーに機能的に接続されるように構成することもできる。作用対は、好ましくは、編む動きの少なくとも一段階の間、永久的に力を加えるが、力の大きさは変化し得る。そして、作用対は、シンカーシャンクが編み動作の方向に理想的に整列しているときに、シンカーに力を加えることができる。慣用のシンカーを用いた編みモードでは、その駆動バットおよび/またはその駆動バットと駆動領域との間に配置されたシャンクの部分領域を有するシンカーが、シンカー高さ方向においてシンカーカムに短時間支持されるシンカー運動が生じ得る。この場合、駆動バットとシンカーカムとの間にはシンカ高さ方向の力が短時間作用する。しかしながら、シンカーのシャンクの駆動バットまたはこの部分領域とシンカーカムとの組合せは、本特許出願の意味における作用対ではない。なぜなら、これらの組合せは、シンカー高さ方向への不所望な垂直方向のシンカー移動の場合にのみシンカー高さ方向の力を加えるだけであり、したがって、製造される編地におけるシンカーラインの形成を防止することができないからである。さらに、作用対の第1部分要素は、シンカーのステッチ形成領域、すなわち、ステッチ形成中に糸と接触するシンカーの領域ではない。それどころか、作用対の第1部分要素は、シンカーのステッチ形成領域で生じるステッチ形成力に対抗することができる作用対の第2部分要素との相互作用においてシンカーに力を加えるために、シンカーの通常のステッチ形成領域に加えてシンカーが有する特徴である。作用対は、例えば、磁石または電気的に制御されるアクチュエータ(例えば、ピエゾアクチュエータ、電磁アクチュエータ、または空気圧アクチュエータ)で構成することができる。シンカーと第1部分要素は一体であると有利であり、したがってシンカーと第1部分要素は1つの部品で構成される。この目的のために、例えば、シートから1つの部品として打ち抜くことができる。第1部分要素がシンカーに接合されると、さらなる利点が得られる。したがって、シンカーと第1部分要素は、好ましくは接合方法によって互いに取り外し不能に接合される、最初は別個の部品である。その後、第1部分要素は、例えばカシメ、溶接、はんだ付けなどの成形によってシンカーに接合することができる。有利には、第1部分要素は、残りのシンカーに積極的に接続される。この目的のために、第一の部分要素は、有利には、シンカーの結合点に積極的に係合する結合部から構成される。この連結点は、有利には、シンカーのシャンクに設けられた凹部であり、その輪郭は、シンカーの長手方向とシンカーの高さ方向とによってスパンされる平面において、第1部分要素の連結部の輪郭に対応し、シンカーの幅方向においてシャンクを貫通している。作用対によって加えることができる力によって、編み工程でシンカーに作用し、不均一なステッチ構造をもたらし得るステッチ形成力を打ち消すことができる。
【0011】
シンカーが、ステッチ形成手段とシャンクの前端部とを構成し、シャンクの長手方向延長部の10~50%、好ましくは25~40%を構成し、作用対の第1部分要素を含む起立領域からなる場合、さらなる利点が得られる。起伏領域は、編み立てモード時にシンカーキャリアからステッチ形成ツールに向かって長手方向に突出するシンカーの部分である。ステッチ形成力は、ステッチ形成手段、例えば押さえ縁のシンカー高さ方向に作用し、押さえまたは倒し時にステッチ形成手段に実質的に作用する。作用対によって加えることができる力は、これらのステッチ形成力を打ち消すことができる。ステッチ形成手段と作用対の第1部分要素の両方が引き上げ領域に配置される場合、短い力伝達経路がシンカー内部に得られ、特に有利である。
【0012】
第1部分要素(好ましくは針)が、シンカー長手方向においてシャンクの前端とは反対側にあるシャンクの後端に配置されていると有利である。有利には、シンカー長手方向における第1部分要素は、少なくとも部分的にシャンクと重なり、シンカー高さ方向においてシャンクから間隔を隔てた部分領域を有する。第1部分要素がシャンクの後端に配置されている場合、有利には、編みモードにおいてシンカーキャリアの部分領域と接触することができ、シンカーキャリアのこの部分領域は、作用対の第2部分要素とすることができる。特に、第1部分要素は、シャンクの後端に配置され、弾性的に変形するために接触面に支持される針とすることができる。接触面は、シンカーキャリアの一部とすることができ、作用対の第2部分要素を形成する。シンカーが、シャンクの後端部に配置され、シンカー高さ方向においてシャンクの隣接領域を越えて上方に突出する駆動バットを備え、第1部分要素、好ましくは針が、駆動バットと起伏領域との間のシンカー長手方向に配置されると、なお利点がある。有利には、第1部分要素はシンカーのシャンク上に配置される。そのとき、第1部分要素が、シンカーの高さ方向においてシャンクの周囲領域を越えて上方に突出していると特に有利である。第1部分要素が駆動バットと起立領域との間に配置されている場合、有利には、編立モードにおいてシンカーカムと接触しており、シンカーカムは、作用対で力を加えるために作用対の第2部分要素として機能することができる。
【0013】
シンカーが、シャンクのシンカー幅方向およびシンカー長手方向に沿う起伏領域に割り当てられ、シャンクのシンカー高さ方向における表面法線が、作用対によってシンカーに及ぼされ得る力と同じ方向を向く少なくとも1つの摺動面を含んでいると有利である。従って、摺動面はシンカー高さ方向において実質的に下方を向いている。有利には、摺動面の表面法線は、作用対によってシンカーに加えられる力と同じ方向を向く少なくとも1つの方向成分を有する。有利には、摺動面に隣接する領域では、シンカーはシンカー高さ方向に剛性であり、すなわち弾性変形可能ではない。従って、摺動面は、シンカーが針キャリア-または針キャリアに接続された部品-上に静止する静止部として機能し、シンカーの高さ方向における正確な位置決めを確実にすることができる。有利には、少なくとも1つの摺動面は、基本摺動面の構成要素とすることができる。しかしながら、少なくとも1つの基本摺動面は、基本摺動面とは別体であり、高さ方向において基本摺動面から離間していることもできる。有利には、シンカーは、好ましくはシンカーの長手方向および/またはシンカーの高さ方向において互いに離間している少なくとも2つの摺動面(例えば、基本摺動面および別の摺動面)からなる。
【0014】
また、少なくとも1つの摺動面が少なくとも部分的に(シンカー長手方向において)第1部分要素と重なるシンカーも有利である。したがって、摺動面の少なくとも部分的な領域は、シンカー長手方向において第1部分要素から離間していない。しかし、摺動面は、特にシンカー高さ方向において第1部分要素から離間させることができる。このようにして、シンカーの低い機械的負荷が得られ、恒久的に均一なステッチ構造を確保することができる。
【0015】
有利には、(押さえ縁の隣の)シンカーは、さらなるステッチ形成手段(好ましくは、完成したばかりの編地をノックオーバーするためのノックオーバーエッジ)を含む。押さえ縁が、さらなるステッチ形成手段(好ましくはノックオーバーエッジ)とともにシンカーにスロートを形成し、押さえ縁がシンカー高さ方向上方のスロートを区画し、ノックオーバーエッジがシンカー高さ方向下方のスロートを区画していると特に有利である。
【0016】
第1部分要素が脚を構成する針であると有利で ある。この脚部は、有利には、シャンクに切り込みを入れて形成するか、シャンクに凹部を画成することができる。この切り込みは、シンカーの長手方向およびシンカーの高さ方向に延長部を有する。針は、シンカー高さ方向に弾性的に弾力性があるか、弾性的に変形可能である。ばね要素は、繰り返し振動する負荷の下でも変形を受ける。有利にはばね要素は曲げばねとして設計される。有利には、ばね要素は板ばね(リーフスプリングまたはフラットスプリング)である。特に有利なのは、シンカー高さ方向のバネ剛性が100cN/mm、好ましくは200cN/mm~350cN/mmである針である。この場合、ばね剛性は、可能なばね移動量で20cN~100cNのシンカー高さ方向を向くバネ力を加えることができるほど大きい。特に有利なのは、少なくともその長手方向延長部の一点において、シンカー高さ方向の高さがシンカー幅方向の幅よりも大きいばね要素である。
【0017】
第1部分要素が針であり、シンカーが、針の最大弾性変形に達したときに制限要素が作用対の第2部分要素および/または針に突き当たるような方法で針の弾性変形を制限するのに適した制限要素からなる場合、さらなる利点が得られる。この制限要素は止めの役割を果たし、ばね要素が第2部品要素またはばね要素に衝突した際に、ばね要素のそれ以上の変形を防止する。有利なことに、針は剛性であり、したがって針のような弾力性はありません。特に有利なのは、シンカー高さ方向の剛性が、シンカー高さ方向の針のバネ剛性の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5倍である制限要素である。シンカー高さ方向の制限要素が少なくとも400cN/mm、好ましくは少なくとも1000cN/mmの剛性を有すると、さらなる利点が得られる。有利には、制限要素は、シンカーの前端部のシンカー長手方向におけるシンカーの上昇領域においてシャンクに隣接するアームである。有利には、針はシンカー長手方向で制限要素と重なる。このような制限要素は、過負荷、ひいてはばね要素の破損を防止する。同時に、作用対によってシンカーに加えられる力は制限される。
【0018】
また、脚部がシンカー高さ方向および/またはシンカー幅方向に少なくとも1つのテーパー部を有するシンカーも有利である。したがって、テーパー部は、脚部の隣接する領域よりもシンカー高さ方向の高さが小さく、かつ/またはシンカー幅方向の幅が小さい。有利なのは、シンカー高さ方向の高さがシンカー幅方向の幅よりも小さい脚部である。シンカー長手方向において、ガイド領域が前方に向かってテーパー領域に隣接し、このガイド領域がテーパー部よりもシンカー高さ方向において大きな高さを有し、作用対の第2部分要素(好ましくは針キャリアまたはリングガイドの接触面)と接触していると特に有利である。さらなる利点は、脚部の隣接面に対して30°より小さい角度をなす凹状凹部の少なくとも1つの出口に鋭利なエッジを有する汚れスクレーパーを備える脚部によってもたらされる。ダートスクレーパーにより、シンカーの作動領域における汚染物質(例えば繊維の磨耗)の捕集を減少させることができる。
【0019】
本発明の目的は、また、以下の特徴を有する編み装置によっても達成される。
- 針キャリア(好ましくは編み物用シリンダー)は、編みモードで少なくとも1本の編み針を運び、
- シンカーキャリア(好ましくはシンカーリング)は、編みモードにおいて少なくとも1つのシンカーを担持し、編みモードにおいて少なくとも1つの編針と協働し、シャンクが実質的にシンカー長手方向に延び、
- シンカーは、主にシンカー長手方向に延びるシャンクからなり、
- シャンクは、そのシンカー長手方向の前端部に、編み立てモードにおいて糸と接触し、ステッチ形成に関与する少なくとも1つのステッチ形成手段を有し、
- 少なくとも1つのステッチ形成手段が、完成したばかりの編地を押さえるための押さえ縁であり、
- 編み方法において、ステッチを押さえる際にステッチ形成力がシンカーの押え縁に作用し、この力がシンカー高さ方向に上向きに作用し、さらに、シンカー長手方向に対して垂直に延びるシンカー高さ方向に下向きに作用する力をシンカーに作用させることができる少なくとも1つの作用対が存在し、ここで、少なくとも1つの作用対は、少なくとも1つの第1部分要素、好ましくは針、および少なくとも1つの第2要素からなり、第1部分要素および/または第2部分要素は、好ましくは針であり、ステッチ形成力を補償するために、作用対の作用可能な力でシンカーを編み方向においてシンカー高さ方向に偏らせることができる。少なくとも1つの第1部分要素は少なくとも1つのシンカーの一部であり、少なくとも1つの第2部分要素は残りの編み装置の一部である。したがって、第2部分要素は、有利には、針キャリア、シンカーキャリアまたはシンカーカムの一部とすることができる。シンカーカムは通常、このような編み装置に存在するか、または本発明の各実施形態にこのようなシンカーカムを設けることが有利である。少なくとも1つのシンカーは、このようなシンカーカムに係合する。シンカーカムは、少なくとも1つのシンカーをシンカー長手方向に交互に編む動きに駆動するのに適している。
【0020】
従来の編み装置は、複数のシンカーを備えている。本発明によれば、個々のシンカーの第1部分要素は互いに機能的に接続されていない。それどころか、各シンカーには、割り当てられたシンカーと個別に協働する第1部分要素が割り当てられている。
【0021】
有利には、シンカーのシャンクは、少なくとも1つの基本摺動面を有し、この基本摺動面は、シンカー長手方向およびシンカー長手方向に対して横方向に延びるシャンクのシンカー幅方向に延び、シンカー長手方向およびシンカー幅方向に対して横方向に延びるそのシンカー高さ方向におけるシャンクの延長部は、下方に区切られ、シンカーが編みモードにおいてその上を摺動することができるように調整されている。有利には、作用対、すなわち第1部分要素と第2部分要素によって加えることができる力は、少なくとも1つのステッチ形成手段を構成するシンカーの起立領域と、シンカーのシャンクの長手方向延長部の5~30%、好ましくは10~20%を構成するシンカーのシャンクの前部領域とに作用する。第1部分要素、好ましくは針が、シンカーに連結されているか、またはシンカーと接触していると、特に有利である。本特許出願の前のセクションに記載されたシンカーのすべての特徴は、編み装置のシンカーにも有利である。有利には、針キャリアがカウンター要素を構成するか、またはカウンター要素に接続されている。カウンター要素が編みシリンダー、シンカーキャリアまたはシンカーカムのリングガイド上に配置されていると特に有利である。
【0022】
第1部分要素および/または第2部分要素が、シンカー長手方向との傾斜角を囲む接触面を有すると有利である。接触面は、少なくとも、接触面を構成する部分要素と作用対を形成する編み動作の段階の間、作用対の部分要素と接触している。接触は、有利には、区切り接触、直線接触または広範囲接触とすることができる。特に、広範な接触は、2つの部分要素に対する均一な荷重分布を可能にし、したがって編装置の寿命を延ばす。接触面の傾斜角度は、シンカー長手方向に延びる少なくとも1つの位置において0度より大きい。有利には、接触面は、シンカー長手方向との傾斜角度を囲む少なくとも1つの部分面を有する。部分表面に隣接する領域では、接触表面はシンカー長手方向に延びることができ、すなわちシンカー長手方向との傾斜角度を囲まない。傾斜角度は、部分表面の異なる位置で異なることもできる。有利には、傾斜角度は部分表面のどの位置でも同じである。部分表面の傾斜角度が、シンカー長手方向の延長に沿って勾配を有する、すなわち(連続的に)部分表面の長手方向の延長に沿って増加または減少すると、特に有利である。部分表面に隣接する領域、特に、少なくとも2つの部分表面の間のシンカー長手方向に配置された領域において、接触表面は、有利には、シンカー長手方向に延びることができ、すなわち、シンカー長手方向との傾斜角度を有さない(傾斜角度がゼロである)。有利には、接触面は、シンカー長手方向と異なる傾斜角度を囲む少なくとも2つの部分面からなる。また、シンカー長手方向とシンカー高さ方向とによってスパンされるL-H平面に横たわる接触面のカットエッジ(または接触面の少なくとも部分面)が、シンカー幅方向に延びる中心軸に関して一定の半径を有すると有利である。通常、編み装置におけるシンカーは、シンカー長手方向に編み運動を行う。有利なことに、シンカーの編み運動中に傾斜した接触面と協働する2つの部分要素の少なくとも一方は、編み運動中に接触面に恒久的に接続されるために、シンカー高さ方向に持ち上げ運動を実行する。これは特に、この持ち上げ運動の結果としてバネ力を蓄積する針において有利である。有利には、接触面は、少なくともシンカー高さ方向の部分において、編みシリンダーまたはシンカーカムの下向き面である。
【0023】
接触面および/または接触面の部分面の傾斜角度が0.5~22度、好ましくは2~10度であれば、さらなる利点が得られる。前記選択範囲は、通常の寸法のシンカーを有する編物装置において特に有利であることが証明されている。
【0024】
有利には、編み装置内のシンカーは、その編み運動中に、作用対からシンカーに作用する力が異なる少なくとも2つの位置を採用することができる。少なくとも2つの位置において、シンカーはシンカー長手方向前方に異なる距離だけ持ち上げられる。有利には、作用対からシンカーに作用する力は、シンカーの第2の位置よりも第1の位置において大きく、第1の位置におけるシンカーは、第2の位置におけるよりもシンカー長手方向前方に持ち上げられる。シンカー長手方向前方とは、シンカーの前端が向いている方向であり、編み装置では、シンカーの前端は針キャリアの方向を向いている。第1部分要素および/または第2部分要素が針である場合、針は、シンカー高さ方向におけるこれら少なくとも2つの位置において、異なる量だけ弾性的に曲げられていると有利である。
【0025】
有利には、シンカーの押さえ込み位置における力は、40cN~100cNであるが、好ましくは50cN~70cNであり、押さえ込み位置におけるシンカーは、シンカー長手方向の最大幅だけ針キャリア方向前方に持ち上げられる。押さえ込み位置では、ステッチ形成要素を介してステッチ形成時にシンカーに作用するシンカー高さ方向上方に作用するステッチ形成力が通常最大となる。押さえ位置においてシンカー力が前記選択範囲にある場合、この位置においてシンカーのシンカー高さ方向上方へのラッキング運動、したがってステッチストレッチの不規則性が防止される。
【0026】
第1部分要素および/または第2部分要素が、シンカーの押さえ位置において最も強く弾性変形する針であると特に有利である。好ましくは、針は、シンカーの押さえ位置においてシンカー高さ方向に最も強く弾性変形する。
【0027】
第2部分要素がシンカーカムの一部であるか、またはシンカーカムに取り付けられている場合には、さらなる利点が得られる。この場合、第1部分要素が、駆動バットとシンカの上昇領域との間のシンカー長手方向においてシンカーのシャンク上に配置される針であると特に有利である。シンカーカムの一部であるかまたはシンカーカムに取り付けられている第2部分要素が、少なくとも編みモードの段階において針と接触する接触面であり、針が接触面との接触によりシンカー高さ方向に弾性変形するものであると有利である。
【0028】
また、本発明の目的は、以下の特徴を有する編み方法によっても達成される。
- 少なくとも1つの編針は、編針が(主に)針シャンクに沿って延びる針長手方向に沿って交互に移動する編み動作を実行し、
- 少なくとも1つのシンカーが、そのシャンクの長手方向(シンカーの長手方向)に沿って交互に移動する編み動作を実行し、
- シャンクは、そのシンカー長手方向の前端部に、編み立てモードにおいて糸と接触し、ステッチ形成に関与する少なくとも1つのステッチ形成手段を有し、
- 少なくとも1つのステッチ形成手段は、完成したばかりの編地を押さえるための押さえ縁であり、
- ステッチを押さえる際に、ステッチを形成する力がシンカーの押さえ縁に作用し、この力がシンカーの高さ方向の上方に作用し、加えて、少なくともその編み動作の段階の間、少なくとも1つのシンカーは、作用対の第1部分要素と第2部分要素との相互作用を介して、シンカー長手方向に対して垂直に延びるシンカー高さ方向において下向きの作用力に曝され、第1部分要素および/または第2部分要素は、好ましくは針であり、シンカーは、ステッチ形成力を補償するために、作用対の印加された力で、編み装置においてシンカー高さ方向にバイアスされる。第1部分要素および第2部分要素は、力を加えることができる作用対を形成するように互いに接続される。編針の編目運動は、編針の長手方向に行われるが、編針の変形または製造上の不正確さによって生じる他の空間方向の方向成分を有することもできる。シンカーの編目運動は、シンカー長手方向に進行するが、シンカーの変形または他の製造上の不正確さによって引き起こされる他の空間方向の方向成分を有することもできる。有利には、第2部分要素は、針キャリア、シンカーキャリアまたはシンカーカムに割り当てられる。
【0029】
力が、好ましくは少なくとも1つのステッチ形成手段の方向に向けられたシンカーの編目移動の段階の間、少なくとも増加すると、さらなる利点が得られる。第1部分要素および/または第2部分要素が針である場合、針は、有利には、シンカーの上昇に伴って、シンカーの編目移動の少なくともこの段階の間、シンカー高さ方向にますます強く弾性変形する。
【0030】
また有利には、第1部分要素および/または第2部分要素が、高さ方向に弾性を有する針であり、この針が、シンカーの長手方向におけるシンカーの編み運動を通じて、およびシンカーの高さ方向における第1部分要素または第2部分要素との接触を通じて、シンカーの高さ方向にばね力を発揮するように弾性変形される編み方法である。有利には、針でない部分要素は、シンカーの編み動作中に針が摺動する接触面を有する。有利には、針は接触面に常時接触している。接触面が針キャリア、好ましくは編みシリンダー、シンカーキャリアまたはシンカーカムに割り当てられると特に有利である。有利な実施形態では、第1部分要素はシンカー上の針であり、第2部分要素は、シンカーの編み動作中に針が摺動する接触面である。さらに有利な実施形態では、第1部分要素はシンカー上の接触面であり、第2部分要素はシンカーの編み動作中に接触面に沿って摺動する針である。さらに有利な実施形態では、第1部分要素も第2部分要素も、シンカーの編み動作中に互いに摺動する針である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、針キャリア15、編み針16、シンカーキャリア17およびシンカー1を備えた編み装置14を示し図であり、シンカー1は針22から構成されている。
【
図2】
図2は、
図1の詳細Aを示す図であり、反力要素18は、シンカー長手方向Lとの傾斜角を囲む針キャリア15上に配置された接触面31である。
【
図3】
図3は、針キャリア15とシンカー1が、押さえ縁、摺動面9、針22、および制限要素38が配置された引き上げ領域8にある様子を示す図である。
【
図4】
図4は、針キャリア15とシンカー1を示す図であり、
図4のシンカー1に加えて、ノックオーバーエッジ24と第2摺動面9から構成されている。
【
図5】
図5は、テーパー部13を有する脚部11からなる針22を備えたシンカー1を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5の針キャリア15とシンカー1とを一緒に編みモードで示す図であり、針22はシンカー高さ方向Hに弾性変形している。
【
図7】
図7は、針キャリア15と針22を備えたシンカー1を示す図であり、針22はシンカー1に正方向に接続された単一部品である。
【
図8】
図8は、ばね要素22を備えたシンカー1を示す図であり、このばね要素22は、汚れスクレーパー25と、シンカー1に機能的に接続された針キャリア15とから構成される。
【
図9】
図9は、第1部分表面43と第2部分表面44からなる接触面31を備えた
図8の針キャリア15を示す図である。
【
図10】
図10は、長手方向Lにおいてシャンク2の後端側に配置される針からなるシンカー1を備えた編み装置14を示す図である。
【
図11】
図11は、駆動バット28と起伏領域8との間に長手方向Lに配置される針22からなるシンカー1を備えた編み装置14を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、針キャリア15、シンカーキャリア17、シンカーカム33およびシンカー1からなる編み装置14を示している。シンカー1は、実質的にシンカー長手方向Lに延び、シンカーキャリア17の溝21内に配置されるシャンク2を有する。押さえ縁10の形をしたステッチ形成手段13と、針22の形をした作用対の第1部分要素6とが、シンカー1のシンカー長手方向Lの前端に配置されており、針キャリア15は、針シャンク23が針長手方向Nに延びる編み針16を担持している。この例示的な実施形態では、針長手方向Nは、実質的にシンカー高さ方向Hを向いており、したがってシンカー長手方向Lに対して垂直に延びている。本発明による教示の他の例示的な実施形態では、針長手方向Nは、シンカー長手方向Lと90度未満または90度より大きい角度を囲むこともできる。本発明による教示は、針長手方向Nとシンカー長手方向Lとの間のすべての実現可能な角度で有利に適用することができる。シンカー1は、その基本摺動面4でシンカーキャリア17上に載り、シンカー長手方向Lの交互の編み動作の間、シンカーカム33によって駆動されるシンカーキャリア17上を行ったり来たり摺動することができる。このシンカー1の編み動作の間、針22は、作用対の第2部分要素18、この場合は針キャリア15の接触面31に接触している。編み装置14の他の構成要素に対するシンカー長手方向Lの編み運動中のシンカー1の位置は、上昇36で詳細に説明することができ、上昇36は、シンカーキャリア17の端部37からのシンカー長手方向Lにおけるシンカー1の前側19の距離である。
【0033】
図2は、
図1の詳細部Aを示している。接触面31は、シンカー1のシンカー長手方向Lへの編目移動中に針22が接触面31との接触によって弾性的に変形し、シンカー高さ方向Hを向く力7がシンカー1に作用するように、シンカー長手方向Lに対して傾斜角度20だけ傾斜している。このために必要なシンカー長手方向Lに作用する駆動力は、シンカーカム33がシンカー1に作用させる。接触面31の傾斜角20の結果、針22は、シンカー1の上昇36が増加するにつれてシンカー高さ方向Hにますます強く弾性変形し、その結果、作用対は、シンカー1の上昇36が増加するにつれて増加する力7をシンカー1に及ぼす。力7は針22と接触面31の接触点に作用する。力7はシンカー1の接触面31に対して垂直に作用する。したがって、力7は、シンカー長手方向Lを向く長手方向成分26と、シンカー高さ方向Hを向く高さ方向成分27とを有し、高さ方向成分27は長手方向成分26よりも大きい。力7により、シンカー1はシンカー高さ方向Hの下方に押され、編む動きの間、その摺動面9で針キャリア15の上側に静止する。
【0034】
図3は、針キャリア15と、シャンク2がシンカー長手方向Lに延びるシンカー1の例示的な実施形態を示し、シンカー長手方向Lの前端5において、シャンク2は押さえ縁10の形態のステッチ形成手段3を有する。編みモードでは、押さえ縁10を有するシンカー1は、編み針が針長手方向上方へ編み運動を行う間、編み針の針シャンク上のステッチを押さえることができる。前端5と押さえ縁10とからなるシンカー1の上昇領域8には、針22の形をした作用対の第1部分要素6が設けられている。針22は、2つの異なる状態で示されている。連続線による輪郭は、完全に無負荷の状態、すなわち非変形状態の針22を示している。これは編み装置の外側での針の状態に対応する。また、輪郭は、部分的に描かれた針キャリア15の前に位置しているかのように示されているが、当然ながらそのようなことはない。
【0035】
一方、破線による輪郭は、シンカーが最大に上昇した動作位置にある針22を示している。従って、針22はシンカー高さ方向Hに弾性的に変形している。針は、少なくとも編物装置における編物運動の段階の間、この状態、すなわちこの作動位置を占める。この例示的な実施形態では、第2部分要素18は、ばね要素22が編み動作中に接触する針キャリア15の接触面31からなり、ばね要素22がシンカー高さ方向Hに弾性変形するように配置されている。接触面31は、シンカー長手方向L(シンカーキャリアの方向)におけるその後端部に部分面39を有し、この部分面はシンカー長手方向Lとの傾斜角度を囲んでいる。この場合、この傾斜角度は、L-H平面に位置する部分面39の切断縁が各点で中心軸41を中心とする同一の半径40を有するように、シンカー長手方向Lにおける部分面39の長手方向の延長に沿って変化し、したがって切断縁は部分的に円形である。制限要素38は接触面31と接触しており、シンカー1のシンカー高さ方向Hへのそれ以上の上方移動を阻止するので、針22は
図3に示す弾性変形状態を超えてそれ以上弾性変形することができない。したがって、制限要素は針22の変形経路を制限する。したがって、破線で示された状態では、ばね要素22は動作時に経験する最大変形にすでに達している状態にある。弾性変形の結果、この場合、力7は作用対によってシンカー1に加えられる。破線で示した針22の最大変形状態では、この力7は最大(他の作動状態よりも大きい)である。シンカー長手方向Lにおけるその後端32において、シャンク2は駆動バット28を有する。編みモードにおける駆動バット28は、シンカー1を編み運動に駆動するためにシンカーカムと係合するのに適しており、編み運動は実質的にシンカー長手方向Lに走る交互運動である。より明確にするため、シンカーカムとシンカーキャリアは図示していない。摺動面9は、基本摺動面4の一部であり、シンカー長手方向Lにおいて針22と重なっている。当該面は、シンカー高さ方向Hにおいて、作用対によってシンカー1に及ぼされ得る力7と同じ方向を向いている。摺動面9の表面法線もこの方向を向いている。
編み装置では、針キャリア15による摺動面9との接触を通じて、作用対によって加えられる力7を支持することが可能である。
【0036】
図4は、針キャリア15とシンカー1のさらなる例示的な実施形態を示す。ここでも、針22は2つの異なる状態で示されている。連続線による輪郭(ここでも、切断された針キャリア15の前の「前景」にある)は、完全に負荷がかかっていない状態、すなわち変形していない状態の針22を示している。これは、編み装置の外側におけるばね要素の状態に相当する。
【0037】
一方、破線による輪郭は、針22がシンカー高さ方向Hに弾性的に変形している作動位置における針22を示している。この状態は、少なくとも編み装置における編み運動の段階の間、針によって採用される。
図3からのシンカー1とは対照的に、部分表面39は部分的に円形ではなく、シンカー長手方向Lにおけるその長手方向延在の各点でシンカー長手方向Lと同一の大きな傾斜角度を囲む-したがって部分表面39はシンカー長手方向Lと角度を囲む平坦な表面である。
図3からのシンカー1の特徴に加えて、シンカー1はさらに、ノックオーバーエッジ24、制限要素38、およびシンカー1の起伏領域8に配置される別の摺動面9の形態のステッチ形成手段3を有する。ノックオーバーエッジ24は、編みモードで製造された編み布地を倒して、これを編み針から解放するのに適している。押さえ縁10とノックオーバーエッジ24は一緒になって、シンカー1の上昇領域8に配置されるスロート34を形成する。摺動面9は針キャリア15の上側にあり、シンカー1をその上昇領域8においてシンカー高さ方向Hに整列させ、これにより、作用対6、18によってシンカー1に加えられる力7の結果として、前記シンカーが針キャリア15の上側に押し付けられる。
図3の場合と同様に、針22は、弾性的に変形した状態で破線によって示されている。この状態では、編みモード中のシンカーの位置の結果として到達し得る弾性変形が最大に達している。この場合、制限要素38は接触面31(第2部分要素18)に突き当たり、その結果、針22の描かれた弾性変形状態(破線の輪郭)を超える針22のさらなる変形を防止する。このような制限要素38がなければ、ばね要素22は高すぎる負荷ピークの下で塑性変形して破損する可能性があり、そのような場合、編み作業をエラーなく継続するためにはシンカー全体を交換しなければならない。
【0038】
図5は、シャンク2、押さえ縁10、ノックオーバーエッジ24および基本摺動面4を有するシンカー1のさらなる例示的な実施形態を示す。シンカー1の隆起領域8は、摺動面9と、針22の形態の第1部分要素6とを包含する。切り込み12は、シンカー長手方向Lとシンカー高さ方向Hに延び、シンカー1を幅方向Bに完全に貫通している。脚部11は、シンカー高さ方向Hにテーパーを付けられたテーパー部13から構成されている。テーパー部13により、針22のばね剛性は、作用対の第2部分要素18との相互作用において、編み工程に必要なばね力が確立されるように低減され得る。本発明による教示のすべての例示的な実施形態について、テーパー部13の脚部11が幅方向Bにテーパー状であると有利であり、長手方向Lにおいて前方に向かってガイド領域35がテーパー部13に隣接している。ガイド領域35は、テーパー部13よりもシンカー高さ方向Hにおいて大きな高さを有し、シンカー高さ方向Hにおいて明確な寸法42だけ摺動面9から離間している。ガイド領域35は、編みモードにおいて編み装置の部品、例えば針キャリアと接触し、作用対の第2部分要素18、例えば接触面に沿って針22を案内するのに適している。
【0039】
動作モードを説明するために、
図5のシンカー1を針キャリア15と共に
図6に示す。シンカー長手方向Lへのシンカーの編み動作中、シンカー1は針キャリア15上を行ったり来たりする。この場合、シンカー1はその摺動面9で針キャリア15上を摺動する。針キャリア15は、シンカー1の針22と接触する接触面31を有する第2部分要素18からなる。第2部分要素18は、シンカー高さ方向Hにおけるシンカー1の切り込み12の空き寸法42(
図5参照)よりも、シンカー高さ方向Hにおける断面の高さが大きい。したがって、針22は、シンカー1の編み運動中、シンカー高さ方向Hにおける対要素18の接触面31との接触によって弾性変形する。この場合、接触面31に垂直な接触領域では、力7がシンカー1に作用し、この力7はシンカー1をシンカー高さ方向Hの下方に「押圧」し、その結果、編みモード中にシンカー1が針キャリア15の上側の摺動面9に永久的に静止することを保証する。さらに、接触面31は、それぞれがシンカー長手方向Lに対して傾斜角度を囲む第1部分面43と第2部分面44とからなり、第1部分面43とシンカー長手方向Lとの間の第1傾斜角度45は、第2部分面44とシンカー長手方向Lとの間の第2傾斜角度46よりも大きい。従って、シンカー1のシンカー長手方向Lにおける前方(針キャリア15の方向)への引き上げ動作の間、以下に説明する力7の力挙動が得られる:シンカー1の完全に引き込まれた状態(シンカーは、その編み動作の間、シンカー長手方向において最大量だけ後方に向かって引き込まれる)において、シンカー1は最初、針2と接触しておらず、力7は印加されない。シンカー1の上昇運動中に、針22は第1部分表面43と接触し、第1傾斜角度45を有する第1部分表面43の傾斜プロファイルの結果として弾性変形され、接触面31と針22からなる作用対によって力7が加えられ、この力は、針22がシンカー長手方向Lにおいて第1部分表面43と第2部分表面44との間を延びる接触面31の部分と接触するまで、シンカー1の上昇の増加に伴って増加する。 針22がこの部分に接触している間、印加される力7は一定で最大である(通常の編みモードにおける最大力)。シンカー1の上昇を続けると、ばね要素22は第2部分表面44に接触し、シンカー1の上昇に伴う傾斜角度46の傾斜プロファイルの結果、付勢力7は再び減少する。
【0040】
図7は、針キャリア15と、シャンク2、押さえ縁10、ノックオーバーエッジ24、基本摺動面4および摺動面9を有するシンカー1のさらなる例示的な実施形態を示す。針22の形をした付勢要素6は、シンカー1のシャンク2に接合方法で接続された単一部品である。
図3および
図4の場合と同様に、針22は2つの異なる状態で示されている:連続線による輪郭は、完全に無負荷、すなわち非変形状態の針22(部分的に描かれた針キャリア15の前の「前景」にある)を示している。これは編み装置の外側のばね要素の状態に相当する。一方、破線による輪郭は、ばね要素22がシンカー高さ方向Hに弾性変形している作動位置におけるばね要素22を示している。この状態、すなわちこの作動位置は、編み装置における編み運動の少なくとも一段階の間、ばね要素によって採用される。針22は、シャンク2の結合点30に積極的に係合する結合部29を含んでいる。連結点30は、シンカー1のシャンク2に設けられた凹部であり、その輪郭は、シンカー長手方向Lとシンカー高さ方向HとによってスパンされるL-H平面において、針22の連結部29の輪郭に対応し、シャンク2をシンカー幅方向Bに貫通している。針22は、針キャリア15の接触面31と接触しており、この接触面31と作用対を形成し、この作用対は、編みモードにおいてシンカーにシンカー高さ方向Hに下向きの力7を加える。 この場合、針22は弾性的に変形する(破線の輪郭)。
図4に示したシンカー1とは対照的に、制限要素38は接触面31に接触していない。破線で示された弾性変形状態を超えるばね要素22の更なる弾性変形が可能である。針22の更なる弾性変形中、この例示的な実施形態における針22は、その最大弾性変形状態に到達すると、その先端で制限要素38に接触する。この接触の結果、針22の更なる変形は制限要素38の助けによって阻止される。
【0041】
図8は、シャンク2、押さえ縁10、ノックオーバーエッジ24、基本摺動面4、摺動面9、およびテーパー部13を有する脚部11からなる針22を備えたシンカー1のさらなる例示的な実施形態を示している。
図3、
図4、
図7の場合と同様に、針22は2つの異なる状態で示されている。連続線による輪郭は、完全に無負荷の状態、すなわち非変形状態の針22を示している。これは編み装置の外でのばね要素の状態に相当する。この状態でもばね要素22は前景に示されており、この図では針キャリア15を部分的に隠している。一方、破線によるばね要素22の輪郭は、ばね要素22がシンカー高さ方向Hに弾性変形する動作位置にあるばね要素2を示す。ばね要素22は、シンカー1のシャンク2に設けられた切り込み12によって形成されている。脚部11には、汚れスクレーパー25が配置されており、この汚れスクレーパー25は、例えば繊維残渣や埃など、編みモードにおいて針22の領域に蓄積し得る汚れを放出するのに適している。汚れ掻き出し部は、脚部11に設けられた凹状の凹部であり、脚部11の長手方向Lの少なくとも一部を片側で区切っている。したがって、汚れスクレーパー25は、長手方向Lにおいて片側が開いている。編み立てモードでは、シンカー1のこの設計は、それ以外の動作モードでは、
図5または
図6のシンカー1と実質的に同じである。
【0042】
編み立てモードでは、シンカー1は針キャリア15と機能的に連通している。
図8の針キャリア15は、
図9に拡大して示されており、シンカー1は含まれていない。針キャリア15は、接触面31からなる第2部分要素18からなる。編みモード中、針22は凹面31と作用対を形成し、これによって力7をシンカー1に加えることができる。この目的のために、ばね要素22は編みモードにおいて弾性的に変形することができ、ばね要素22が接触面31に接触して弾性的に変形している状態は、
図8において破線で示されている。接触面31は、第1部分面43と第2部分面44とからなり、第2部分面44は、シンカー長手方向Lにおいて第1部分面43の後方に引き上げ方向(シンカー1から針キャリア15の方向に見たとき)に続いている。
図8の図において、第2部分表面は、この無負荷状態(連続線による輪郭)において、針22の背後に隠されて示されており、第2部分表面44の隠されている端部は、破線によって示されている。 しかし、第二部分表面44の正確な輪郭は
図9に明確に示されている。第1部分表面43はシンカー長手方向Lに対して第1傾斜角度45を囲み、第2部分表面44はシンカー長手方向Lに対して第2傾斜角度46を囲み、第1傾斜角度45は第2傾斜角度46よりも大きい。このようにして、編み作業中、シンカー1の上昇運動の開始時に作用対によって加えることができる力7は、針22と第1部分表面43との接触により、最初に実質的に増大する。さらに進むと、力7はシンカー1の上昇の増加に伴い、針22と第二部分表面44との接触でさらに増加する。しかしながら、第2部分表面44の小さい第2傾斜角度46の結果として、力7は、降雨運動の初期における第1部分表面45(大きい第1傾斜角度45)との接触時よりも強く増加しない。その結果、可能な限り大きな力7が、引き上げ動作の早い時点で、引き上げ動作中にシンカー1を安定させ、正確に位置決めするために加えられるが、引き上げ動作の遅い時点で不必要に大きな力7を生じさせることはない。
【0043】
図10は、針キャリア15、シンカーカム33、およびシンカー1を運ぶシンカーキャリア17を備えた編み装置14のさらなる例示的な実施形態を示している。より明瞭にするために、編み針16は図示されていない。シンカー1は、実質的にシンカー長手方向Lに延びるシャンク2を有し、押さえ縁10の形態のステッチ形成手段3が、シンカー長手方向Lにおけるその前端5に配置され、長手方向Lと反対の方向におけるその後端32において、シャンク2は、針22の形態の作用対の第1部分要素6を有する。針22は、シンカーキャリア17に割り当てられている第2部分要素18と接触している。針22と第2部分要素18は、力7をシンカー1に加えることができる作用対を形成する。先に説明した例示的な実施形態と同様に、針22は、この目的のために編みモードにおいて弾性的に変形させることができる。摺動面9は基本摺動面4の一部であり、シンカー1がシンカー高さ方向に整列するように、力7によってシンカーキャリア17の上側に押し付けられる。
【0044】
図11は、針キャリア15と、シンカー1を運ぶシンカーキャリア17とを備えた編み装置4の別の例示的な実施形態を示している。この場合、シンカー1はシンカーキャリア17の溝21に配置されている。より明確にするため、編み針16は図示されていない。シンカー1は、押さえ縁10の形態のステッチ形成手段3を構成する起伏領域8を有する。シンカー長手方向Lにおいて前端5とは反対側の後端32において、シャンク2は、編み装置14のシンカーカム33と係合する駆動バット28を有する。この目的のために、駆動バット28は、シンカー高さ方向Hにおいてシャンク2の隣接領域を越えて上方に突出しており、シンカーカム33は、駆動バット28との接触を介してシンカー1をシンカー長手方向Lの編み動作に駆動することができ、これにより、シンカー1は、シンカーキャリア17上でその基本摺動面4とシンカー長手方向Lに往復摺動することができる。駆動バット28と起伏領域8との間のシンカー長手方向Lに位置するのは、シャンク2上の針22の形態の第1部分要素6であり、この針22は、シンカー高さ方向Hにおいてシャンク2の隣接領域を越えて上方に突出している。例示的な実施形態では、第2部分要素18は、シンカー長手方向Lに平坦で、シンカー高さ方向Hに剛性のある接触面である。針22と接触面31は、作用対を形成し、この作用対によって、力7がシンカー1にシンカー高さ方向Hの下方に加えられる。摺動面9は基本摺動面4の一部であり、力7によってシンカー1がシンカー高さ方向Hに整列するようにシンカーキャリア17の上側に押し付けられる。
【符号の説明】
【0045】
1:シンカー
2:シンカー(1)のシャンク
3:ステッチ形成手段
4:基本摺動面
5:シャンク(2)の前端
6:作用対の第1部分要素
7:力
8:引き上げ領域
9:摺動面
10:押さえ縁
11:脚部
12:シャンク(2)の切り込み
13:テーパー部
14:編み機
15:針キャリア
16:編み針
17:シンカーキャリア
18:作用対の第2部要素
19:シンカー(1)の前側
20:傾斜角度
21:溝
22:ばね要素
23:編み針(16)のシャンク
24:ノックオーバーエッジ
25:ダートスクレーパー
26:力(7)の縦方向成分
27:力(7)の高さ成分
28:シンカー(1)の駆動バット
29:結合部
30:結合点
31:接触面
32:シャンク(2)後端
33:シンカーカム
34:スロート
35:ガイド領域
36:上昇
37:シンカーキャリア(17)の端
38:制限要素
39:接触面(31)の一部
40:半径
41:中心軸
42:空き寸法
43:接触面(31)の第1部分の表面
44:接触面(31)の第2部分の表面
45:第1傾斜角度
46:第2傾斜角度
B:シンカー幅方向
H:シンカー高さ方向
L:シンカー長手方向
N:針長手方向
【国際調査報告】