(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】液圧ブレーキ分配器
(51)【国際特許分類】
B60T 15/36 20060101AFI20240426BHJP
B62L 3/08 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
B60T15/36 Z
B62L3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573044
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 IB2022054899
(87)【国際公開番号】W WO2022249095
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021000013979
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243484
【氏名又は名称】ライカム・ドライブライン・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】RAICAM DRIVELINE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボナルド、サンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ストルーヴ、ベンジャミン チェットウッド
【テーマコード(参考)】
3D049
【Fターム(参考)】
3D049AA01
3D049BB16
3D049CC02
3D049HH15
3D049JJ02
3D049JJ05
3D049JJ06
3D049JJ07
3D049JJ08
3D049JJ09
3D049NN01
(57)【要約】
車両の第1のブレーキ制御に液圧的に接続可能な第1の入口(11)、車両の第2のブレーキ制御に液圧的に接続可能な第2の入口(16)、車両の第1のブレーキに液圧的に接続可能な第1の出口(12)、車両の第2のブレーキに液圧的に接続可能な第2の出口(17)、前記第1の入口(11)、及び、前記第1の出口(12)を直接的な流体連通に設定する第1の通路(13)、第1の内部空洞(14)との流体連通に前記第1の通路(13)を設定する分岐通路(22)、前記第1の内部空洞(14)内に配置され、及び、前記第2の入口(16)に送られるブレーキ液に応じて作動し、前記分岐通路(22)を通じた流体連通を遮断する切断バルブ(14、18、24)、を有する液圧ブレーキ分配器。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の第1のブレーキ制御に液圧的に接続可能な少なくとも1つの第1の入口(11)、
車両の第2のブレーキ制御に液圧的に接続可能な少なくとも1つの第2の入口(16)、
車両の第1のブレーキに液圧的に接続可能な第1の出口(12)、
車両の第2のブレーキに液圧的に接続可能な第2の出口(17)、
前記第1の入口(11)、及び、前記第1の出口(12)を直接的な流体連通に設定する第1の通路(13)、
第1の内部空洞(14)との流体連通に前記第1の通路(13)を設定する分岐通路(22)、
前記第1の内部空洞(14)内に配置され、及び、前記第2の入口(16)に送られるブレーキ液に応じて作動し、前記分岐通路(22)を通じた流体連通を遮断する切断バルブ(14、18、24)、
を有する液圧ブレーキ分配器。
【請求項2】
請求項1に記載の液圧ブレーキ分配器であって、
長手方向に延伸し、及び、前記第2の入口(16)に液圧的に接続された液圧切断室(24)を形成する端部を有する前記第1の内部空洞(14)、
前記第1の内部空洞(14)内に長手方向に受容され、及び、前記切断室(24)に向かって弾性的に付勢されるフローティング切断ピストン(18)、
少なくとも2つの内部通路(28、35)を介して前記第1の内部空洞と連通する第2の長手方向に延伸する内部空洞(15)であって、前記内部通路の第1のもの(35)を介して前記第1の内部空洞(14)に液圧的に接続される液圧作動室(36)を形成する第1の端部、及び、前記第2の出口(17)に液圧的に接続される第2の端部を有する前記第2の内部空洞、
前記内部通路の間の連通のための少なくとも1つの第2の連通通路(28、29)であって、前記切断室(24)と前記第2の内部空洞(15)との間の流体連通を提供し、及び、前記第1の内部通路(35)と前記第2の出口(17)との間の長手方向中間にある位置で、前記第2の内部空洞(15)に開口する前記連通通路、
液圧作動室(36)に向かって弾性的に付勢される、前記第2の内部空洞(15)内の少なくとも1つのフローティング・ピストン・バルブ要素(30)、
を有し、
前記切断ピストン(18)は、
前記分岐通路(22)と前記第1の通路(35)との間の前記第1の内部空洞(14)を通って、前記液圧作動室(36)へ流体連通することを許容する受動位置、及び、
前記切断室(24)が、前記第2の入口(16)に送られるブレーキ液によって加圧され、及び、前記切断ピストン(18)が前記分岐通路(22)を閉鎖する作動位置、
を有し、
前記ピストン・バルブ要素(30)は、
前記作動室(36)が、加圧されず、及び、前記ピストン・バルブ要素(30)が、前記第2の内部空洞(15)を通って、前記切断室(24)から前記第2の出力(17)までの前記連通通路(28)から流体連通することを許容する受動位置、及び、
を有し、
前記液圧作動室(36)の加圧に応じて、前記第2の出口(17)に向かって少なくとも部分的に拡張される位置であって、当該位置では、前記第2の内部空洞(15)に摺接する前記ピストン・バルブ要素(30)のシーリング要素(48)の位置は、前記連通通路(28)と前記第2の出口(17)との間の長手方向の中間位置に配置され、前記シーリング要素(48)は、前記第2の内部空洞(15)を通って、前記切断室(24)から前記第2の出口(17)までの前記連通通路(28)から、直接的に、流体連通することを許容せず、及び、前記切断室(24)の加圧により、前記ピストン・バルブ要素(30)の少なくとも一部を、前記第2の出口(17)に向かって、さらに、移動させることができる、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項3】
請求項2に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記切断ピストン(18)は、前記切断ピストンに配置され、及び、前記第1の内部空洞(14)に摺接して作用する2つのシーリング・ガスケット(26a)の間に長手方向に沿って構成され、縮径を有する中間部(18a)を有し、縮径の前記中間部(18a)は、前記切断ピストン(18)の前記受動位置において、前記第1の通路(35)、及び、前記分岐通路(22)と流体連通する軸方向に延在する環状ギャップ(25)を、前記第1の内部空洞(14)とともに、規定する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項4】
請求項2、又は、請求項3に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記切断ピストン(18)は、凹部、又は、縮径を有する端部(18b)を有し、前記端部は、前記第1の内部空洞(14)の底壁(20)と対向し、及び、前記液圧切断室(14)の一部を形成する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記切断ピストン(18)は、前記第1の内部空洞(14)に摺接しながら作用し、及び、前記切断室(24)と、前記分岐通路(22)が開口するポート(23)と、の間の長手方向の中間の少なくとも1つの位置で、前記切断ピストン(18)に配置される少なくとも1つのシーリング・ガスケット(56、57)を有する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記切断室(24)は、2つの長手方向に離間した連通通路(28、29)を通って、前記第2の内部空洞(15)と液圧的に連通する、
油圧ブレーキ分配器。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第2の内部空洞(15)は、より小さい径を有する部分(15a)、及び、より大径を有する部分(15b)を有する二重径円筒空洞である、
油圧ブレーキ分配器。
【請求項8】
前記請求項のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ(30)は、
長手方向に相対的に移動できる2つの部品(31、32)としてデザインされ、
第1の半径方向内側、又は、中央側ピストン要素(31)、
前記第1のピストン要素(31)上に同軸的に、及び、望遠鏡方式でスライドできるように配置される第2の半径方向外側ピストン要素(32)、及び、
前記第1のピストン要素(31)と前記第2のピストン要素(32)との間で摺動接触封止作用を行う少なくとも1つの摺接シーリング要素(49)を有する、
油圧ブレーキ分配器。
【請求項9】
請求項8に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第1のピストン要素(31)は、凹部(38)、又は、縮径を有するピストンを形成する端面(37)を有し、当該端面は、前記第2の内部空洞(15)の底壁(34)に面しており、
前記凹部、又は、縮径を有する端部(38)は、前記油圧作動室(36)の一部を画定する、
油圧ブレーキ分配器。
【請求項10】
請求項8、又は、請求項9に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第1のピストン要素(31)は、大径を有する基部(39)、前記基部(39)に長手方向に対向し、及び、前記基部(39)よりも径、又は、横方向の寸法が小さいステム部(41)、並びに、前記ベース部(39)と前記ステム部(41)との間に中間径を有する中間部(40)を有する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項11】
請求項10に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第1のピストン要素(31)の前記基部(39)は、前記第2の内部空洞(15)に摺接する少なくとも1つのシーリング・ガスケット(44、45)を有する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項12】
請求項10、又は、請求項11に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第2のピストン要素(32)は、前記第1のピストン要素(31)の前記中間部(40)、及び、前記ステム部(41)が挿入され、及び、貫通する様々に形成される全体的に筒形状を有する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項13】
請求項10、又は、請求項11、又は、請求項12に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第2のピストン要素(32)は、前記第1のピストン要素(31)の軸方向中間部(40)に軸方向に摺動可能に配置される管状部(46)、及び、前記第2の内部空洞(15)に摺接して作用する前記シーリング要素(48)を有する頭部(47)を有する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項14】
請求項10~請求項13のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第2のピストン要素(32)は、前記第2のピストン要素(32)を通って長手方向に延伸し、並びに、肩部(52)によって結合される幅広部(50)、及び、幅狭部(51)を有する2重径中央通路(50、51)をする、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項15】
請求項10、及び、請求項14に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第1のピストン要素(31)の前記中間部(40)は、前記第2のピストン要素(32)の前記二重径中央通路の前記幅広部(50)に摺接して作用する前記シーリング要素(49)を担持する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項16】
請求項8~請求項15のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
圧縮ばね(33)は、前記第2のピストン要素(32)を、前記第1のピストン要素(31)に向かって、及び、前記液圧作動室(36)に向かって、長手方向に、付勢する、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項17】
請求項2~請求項7のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ(30)は、
前記第2の内部空洞(15)に摺接して作用し、及び、前記少なくとも部分的に延在する位置において、前記連通通路(28)と前記第2の出口(17)との間の長手方向の中間位置にある前記シーリング要素(48)、及び、
前記液圧作動室(36)に隣接する前記ピストン・バルブ・アクチュエータ(30)の一端で、前記第2の内部空洞(15)に摺接して作用する少なくとも1つのさらなるシーリング・ガスケット(44、45)、
を有する単一のピストン要素(31)から構成される、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項18】
請求項2~請求項17のいずれか1つに係る液圧ブレーキ分配器において、
前記2つの内部空洞(14、15)は、平行、かつ、連続している、
液圧ブレーキ分配器。
【請求項19】
請求項18に係る液圧ブレーキ分配器において、
前記第1の内部空洞(14)の前記切断ピストン(18)は、第1の方向に付勢されており、及び、前記第2の内部空洞(15)の前記ピストン・バルブ要素(30)は、前記第1の方向に平行、及び、対向する第2の方向に付勢されている、
液圧ブレーキ分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、排他的ではないが、特に、例えば、自転車、自動二輪車、及び、スクーターのためのコンバインド・ブレーキから利益を得られる二輪車のための液圧式ブレーキ分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪、及び、後輪の両方に、同時に、制動力を配分できる二輪車用のコンバインド(又は、インテグラル)・ブレーキ・システムが知られている。コンバインド・ブレーキ・システムでは、前、及び、後のブレーキ動作を、2つの別個の制御に割り当てる代わりに、2つの制御のうちの少なくとも1つは、前、及び、後のブレーキを同時に作動させることができる。
【0003】
特許文献CN102582759Bは、ブレーキ液のための2つの入口、及び、2つの出口を有する外側本体を有する油圧ブレーキ分配器を備えるコンバインド・ブレーキ・システム(又は、インテグラル・ブレーキ・システム)を開示する。2つの入口の各々は、関連するブレーキ制御と動作可能に関連付けられ、及び、2つの出口は、それぞれ、前輪のブレーキ、及び、後輪のブレーキ、それぞれに、流体連通して、接続される。円筒空洞が、アクチュエータの本体の内に形成されており、その空洞は、出口、及び、入口に連通している。円筒空洞の内壁に作用するシーリング・ガスケットを備える単一のピストンバルブ要素は、円筒空洞内で軸方向に移動可能である。2つのうちの第1のブレーキ制御の作動により、バルブが移動し、それに伴い、ブレーキ液が、前、及び、後のブレーキの両方へ、同時に、流れる。第2ブレーキ制御の作動により、ブレーキ液は、前、又は、後のいずれか一方のブレーキのみに向かって流れる。
【0004】
特許文献CN102745293Aは、ブレーキ液のための2つの出口、及び、2つの入口に連通する円筒状空洞を形成する外側本体を有する油圧ブレーキ分配器を有するコンバインド・ブレーキ・システムを開示する。空洞内で軸方向に整列され、及び、軸方向に移動可能な2つの別個のバルブ要素は、円筒空洞内に、軸方向に移動できるように、配置されている。バルブ要素に、円筒空洞の内壁に作用するシーリング・ガスケットが、提供される。2つのうちの第1のブレーキ制御の作動により、ブレーキ液は、2つのピストンバルブ要素の間の中間位置に配置される入口から、円筒空洞内に、流れる。第1のブレーキ制御の作動により、両方のピストンバルブ要素が移動し、それに伴い、ブレーキ液が、前、及び、後のブレーキの両方に向かって、同時に、流れる。第2のブレーキ制御の作動により、ブレーキ液は、前、又は、後のいずれか一方のブレーキのみに向かって流れる。
【0005】
現在知られているブレーキ分配器は、以下の欠点を有する。制動中に、ユーザが、ブレーキングを分配する制御のうちの1つを既に作動させ、その後、第1と同時に、第2の制御を作動させ始めている場合、第1の制御は、第2の制御の動作によって誘起される過圧によってトリガーされる油圧パルスを取得し、そのパルスは、ライダーが第1の制御を行うのとは逆に、第1の制御を、解除位置に向けて戻す傾向がある。つまり、他方のブレーキ制御レバーが引っ張られるときに、既に引っ張られている制御レバーが、開く傾向があるため、ユーザは、第1の作動されたブレーキが解除される感覚を感じる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、上記の欠点に影響されない液圧分配器を提供することである。
【0007】
本発明の一態様によれば、請求項1に規定される特徴を有する液圧ブレーキ分配器によって、以下でより理解されるであろう、上記、及び、その他の目的、及び、利点が、達成される。分配器の好ましい実施形態は、従属請求項に規定される。
【0008】
一態様によれば、本発明は、車両の第1のブレーキ制御に液圧的に接続可能な少なくとも1つの第1の入口、車両の第2のブレーキ制御に液圧的に接続可能な少なくとも1つの第2の入口、車両の第1のブレーキに液圧的に接続可能な第1の出口、車両の第2のブレーキに液圧的に接続可能な第2の出口、前記第1の入口、及び、前記第1の出口を直接的な流体連通に設定する第1の通路、第1の内部空洞との流体連通に前記第1の通路を設定する分岐通路、前記第1の内部空洞内に配置され、及び、前記第2の入口に送られるブレーキ液に応じて作動し、前記分岐通路を通じた流体連通を遮断する切断バルブ、を有する液圧ブレーキ分配器を提供する。
【0009】
さらなる態様によれば、
車両の第1のブレーキ制御に液圧的に接続可能な少なくとも1つの第1の入口、
車両の第2のブレーキ制御に液圧的に接続可能な少なくとも1つの第2の入口、
車両の第1のブレーキに液圧的に接続可能な第1の出口、
車両の第2のブレーキに液圧的に接続可能な第2の出口、
長手方向に延伸し、及び、前記第2の入口に液圧的に接続された液圧切断室を形成する端部を有する前記第1の内部空洞、
前記第1の内部空洞内に長手方向に受容され、及び、前記切断室に向かって弾性的に付勢される浮動切断ピストン、
前記第1の入口、及び、前記第1の出口を直接的な流体連通に設定する第1の通路、
第1の内部空洞との流体連通に前記第1の通路を設定する分岐通路、
少なくとも2つの内部通路を介して前記第1の内部空洞と連通する第2の長手方向に延伸する内部空洞であって、前記内部通路の第1のものを介して前記第1の内部空洞に液圧的に接続される液圧作動室を形成する第1の端部、及び、前記第2の出口に液圧的に接続される第2の端部を有する前記第2の内部空洞、
前記内部通路の間の連通のための少なくとも1つの第2の連通通路であって、前記切断室と前記第2の内部空洞との間の流体連通を提供し、及び、前記第1の内部通路と前記第2の出口との間の長手方向中間にある位置で、前記第2の内部空洞に開口する前記連通通路、
液圧作動室に向かって弾性的に付勢される、前記第2の内部空洞内の少なくとも1つのフローティング・ピストン・バルブ要素、
を有し、
前記切断ピストンは、
前記分岐通路と前記第1の通路との間の前記第1の内部空洞を通って、前記液圧作動室へ流体連通することを許容する受動位置、及び、
前記切断室が、前記第2の入口に送られるブレーキ液によって加圧され、及び、前記切断ピストンが前記分岐通路を閉鎖する作動位置、
を有し、
前記ピストン・バルブ要素は、
前記作動室が、加圧されず、及び、前記ピストン・バルブ要素が、前記第2の内部空洞を通って、前記切断室から前記第2の出力までの前記連通通路から流体連通することを許容する受動位置、及び、
を有し、
前記液圧作動室の加圧に応じて、前記第2の出口に向かって少なくとも部分的に拡張される位置であって、当該位置では、前記第2の内部空洞に摺接する前記ピストン・バルブ要素のシーリング要素の位置は、前記連通通路と前記第2の出口との間の長手方向の中間位置に配置され、前記シーリング要素は、前記第2の内部空洞を通って、前記切断室から前記第2の出口までの前記連通通路から、直接的に、流体連通することを許容せず、及び、前記切断室の加圧により、前記ピストン・バルブ要素の少なくとも一部を、前記第2の出口に向かって、さらに、移動させることができる、
液圧ブレーキ分配器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明に係る油圧ブレーキ分配器のいくつかの好ましい、しかしながら限定されない、実施形態を、以下の添付図面を参照して、説明する。
【0011】
図1、及び、
図2は、本発明の一実施形態に係る液圧ブレーキ分配器の異なる角度からの斜視図である。
【0012】
図3~
図8は、本発明の一実施形態に係る液圧ブレーキ分配器を、種々の動作条件で、示す概略縦断面図である。
【0013】
図9~
図11は、本発明の他の実施形態に係る液圧ブレーキ分配器を、種々の動作条件で、示す概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【発明の詳細な説明】
【0014】
図1~
図3を最初に参照すると、符号10は、全体として、液圧ブレーキ分配器の本体を示す。本体10は、複数の内部空洞が形成された硬質材料、例えば、アルミニウム合金、から形成され、本体10には、複数の内部空洞、入口、及び、出口と、並びに、それらの間の連通のための内部通路が形成される。
【0015】
第1の入口11は、第1のブレーキ・ポンプ(図示せず)に、液圧的に、接続され、及び、関連する第1の制御(図示せず)によって作動され得る。自転車において、この第1の制御は、典型的には、ハンドルバーの左側に取り付けられた制御レバーであってもよい。第1の出口12は、車両の第1のブレーキ、典型的には、前輪のブレーキ・キャリパに、油圧的に、接続され得る。
【0016】
第1の入口11、及び、第1の出口12は、第1の入口11、及び、第1の出口12、それぞれに、接続される2つの部分13a、及び、13bを有する第1の内部通路13によって、互いに、直接的に、接続される。この直接的な液圧連通により、第1の制御の作動時に、前輪のブレーキを直接的に作動させることができる。
【0017】
2つの相互に連通する内部空洞14、15は、本体10に、形成されており、第1の空洞14は、この例では、単一の直径の円筒形状を有しており、及び、第2の円筒形状の内部空洞は、この例では、より小さい直径を有する部分15a、及び、より大きい直径を有する部分15bを有する2重の直径を有している。
【0018】
第2の入口16は、第2のブレーキ・ポンプ(図示せず)に、液圧的に、接続され、及び、関連する第2の制御(図示せず)によって作動され得る。自転車では、第2の制御は、ハンドルの右側に取り付けられた制御レバーであってもよい。第2の出口17は、車両の第2のブレーキ、典型的には、後輪のブレーキ・キャリパに、油圧的に、接続され得る。
【0019】
ブレーキ分配器は、第1のブレーキの作動をブレーキシステムの残りから、選択的に、遮断するように意図される切断バルブ(又は、遮断バルブ)を内蔵しており、これにより、第1ブレーキの制御を、第2の制御の動作に応答しないようにする。
【0020】
第1、及び、第2のブレーキ、並びに、第1、及び、第2の制御について、「前」、及び、「後ろ」の用語は、車両、例えば、自転車、のブレーキ分配器への適用に限定されない、と介するべきである。以下の説明を読むことから明らかになるように、直接的に、液圧式に接続されている第1の入口、及び、第1の出口は、第1の入口及び第1の出口は、交換されてもよい出口12に接続される第1のブレーキ制御、及び、第1の入口11に接続される第1のブレーキによって、交換され得る。
【0021】
切断バルブは、第1の内部空洞14内で軸方向に移動可能な切断バルブ、又は、ピストン要素18によって形成される。圧縮ばね19は、第2の入口16に連通する通路21が開口する第1の内部空洞14の底壁20に向かって、切断ピストン18を、弾性的に、付勢する。
【0022】
この文脈では、本明細書に記載されているピストン要素が伸張し、及び、移動する方向を参照するために、「軸方向」、又は、「長手方向」、及び、「横方向」、又は、「半径方向」のような位置、及び、配置を示す用語は、理解される。「上流側」、又は、「下流側」のような用語は、ブレーキ制御のうちの1つによって作動される流体の流れの方向を参照するために、理解される。
【0023】
第1の内部通路13に連通する分岐通路22は、第1の内部通路13(ひいては、第1の入口11、及び、第1の出口12)と第1の内部空洞14との間で流体連通を確立する。分岐通路22は、底壁20と圧縮ばね19との間の長手方向の中間位置に配置されるポート23によって、第1の内部空洞に開口している。
【0024】
第1の内部空洞14は、底壁20を有し、及び、底壁20に対向する切断ピストン18の側面と共に、液圧切断室24(
図5に最もよく見られる)を形成する端部を有する。
【0025】
液圧切断室24は、通路21によって、第2の入口16と流体連通しており、及び、切断ピストン18を圧縮ばね19の弾性動作に抗して移動させるブレーキ液の第2の入口16からの送出の結果として、拡張され得る。
【0026】
切断ピストン18は、凹部、又は、縮径部を有する端部18bであって、当該端部は、底壁20に対向して液圧切断室24の一部を形成することが好ましい。
【0027】
切断ピストン18は、縮径を有する中間部18aを有し、当該中間部18aは、第1の内部空洞14の円筒壁と共に、軸方向に延びる環状ギャップ25を規定する。環状ギャップ25は、切断ピストン18上に配置され、及び、第1の内部空洞14に摺接するように作用する2つのシーリング・ガスケット26、27の間の長手方向にある。
【0028】
第1の内部空洞14に摺接する1つ、又は、2つのさらなるシーリング・ガスケット56、57は、分岐通路22のポート23と切断室24との間の長手方向の位置で、切断ピストン18に配置されている。
【0029】
以下で説明するように、切断バルブは、ライダーが、既に第1の制御が作動しているときに、導入時に説明したような、その後の第2の制御の動作を感じない効果を有している。
【0030】
第2の内部空洞15は、
図3~8の実施形態では、長手方向に相対移動可能な2つの部分31、32を有するダブル・ピストンとして設計されている、少なくとも1つのフローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30を、軸方向に移動可能に、収容している。
【0031】
第2の内部空洞15は、車両の第2のブレーキ(後方ブレーキ)に、液圧的に、接続され得る第2の出口17と、直接的に、連通している。
【0032】
切断室24は、2つの長手方向に離間した入口ポート28、29を介して、第2のブレーキの作動のために、第2の内部空洞15と、液圧的に、連通する。
【0033】
圧縮ばね33は、第2の液圧室15に提供され、当該圧縮ばねは、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30を、第2の内部空洞15の底壁34に向けて、弾性的に、付勢する。第2の内部空洞15は、底壁34を有し、及び、底壁34に面するフローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30の側面とともに、フローティング・ピストン・アクチュエータ30を作動させるための空洞36を形成する。通路35は、第2の内部空洞15内の液圧作動室36と流体連通する第1の内部空洞14内に環状ギャップ25を設定する。
【0034】
図3~
図8に示す実施形態では、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30は、第1の内部、又は、中央ピストン要素31、及び、外側に同軸的に取り付けられ、及び、第1のピストン要素21上を伸縮可能に摺動可能な第2の外側ピストン要素32を有している。
【0035】
第1のピストン要素31は、第2の内部空洞15の底壁34に面する端面37を有している。端面37は、液圧作動室36の一部を形成する、凹部38、又は、縮径を有する部分、を形成することが好ましい。
【0036】
第1のピストン要素31は、大径を有するベース部39、軸方向にベース部に対向し、及び、ベース部39よりも小さい径、又は、横方向寸法を有するステム部41、及び、 ベース部39とステム部41との間に中間径を有する中間部40を有している。2つの径方向肩部42、43が、ベース部、中間部、及び、ステム部の間に、形成されている。
【0037】
ベース部は、第2の内部空洞15の小径部分15aに摺接する少なくとも1つ(この例では、2つ)のシーリング・ガスケット44、45を有している。
【0038】
第2のピストン要素32は、第1のピストン要素31の中間部40、及び、ステム部41が通過する、変化する一方、全体的には管形状を有している。第2のピストン要素32は、第1のピストン要素31の軸方向中間部40に軸方向に摺動可能に取り付けられる管状部46、及び、第2の内部空洞15の小径部分15bに摺接するシーリング・ガスケット48を有する頭部47を形成する。
【0039】
二重径中央通路50、51は、第2のピストン要素32を通って、長手方向に延伸し、及び、肩部52によって結合される横方向に広い部分50、及び、横方向に狭い部分51を有している(
図7)。
【0040】
第1の、及び、第2のピストン要素は、摺接シール要素49によって、互いに、密封結合されている。
【0041】
図3~
図8の例示的な実施形態では、第1のピストン要素の中間部40は、第2のピストン要素32の管状部46に形成される円筒形空洞50に摺接して作用するシーリング・ガスケット49を有している。
【0042】
フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30の作動室36は、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30にまとめて取り付けられるシール要素44、46、48、49によって、第2の出口17に対して、液圧的に密封される。
【0043】
本明細書に示される実施形態では、ブレーキ分配器の寸法を最適化するために、2つの内部空洞14、15は、平行に、及び、隣接して存在し、並びに、平行に、及び、かつ逆方向に付勢されるそれぞれのピストン要素を有している。
【0044】
ブレーキ分配器は、
図3に示される休止位置を有している。切断ピストン18は、ばね19が緩んでいる格納、及び、非作動位置にある。切断ピストン18は、第1の筒状空洞14の底壁20に当接しており、及び、分岐通路22のポート23は、環状ギャップ25と流体連通している。環状ギャップ25は、通路35を通って液圧室36と流体連通している。フローティング・ピストン・バルブ要素30は、非作動、及び、格納位置にある。圧縮ばね33は、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30を第2の内部空洞15の底壁34に向けて弾性的に付勢し、圧縮ばね33は、 径方向肩部42、及び、52の間の当接によって、第1のピストン要素31を、第2の内部空洞15の底壁34に向けて、付勢する。
【0045】
図3の休止位置から、ユーザが第1のブレーキ制御を作動させると、その制御は、ブレーキ液を、ブレーキ分配器の第1の入口11に、送る。流入流体の第1の部分は、第1のブレーキを直接的に作動させるために、通路13a、13bを通って、直接的に、第1の出口12に、通り抜ける。第1の出口11に流入する流体の第2部分は、分岐22に通り抜け、ポート23を通って、切断ピストン18を移動することなく、切断ピストン18の周囲の環状ギャップ25に通り抜け、そして、液圧室36の基部に到達し、2つのピストン要素31、32の両方を、右方向に向かって、圧縮ばね33の作用に対抗して、押圧する(
図4)。
【0046】
ブレーキ液が液圧作動室36内に送られることに応答するピストン要素31、32の前進運動は、第2の内部空洞15の部分15b内のブレーキ液のために利用できる容積を減少し、また、加圧されたブレーキ液を、第2の出口17から第2のブレーキに向けて送る原因となる。
【0047】
なお、第1の制御から送られるブレーキ液は、第2のブレーキに到達するブレーキ液とは別体であり、第2ブレーキには到達しないことに留意されたい。事実、分岐22に流入するブレーキ液は、第2の出口17に到達することなく、液圧室36に収容され続ける。
【0048】
さらに、第1の内部空洞を通過するブレーキ液は、分岐通路22から作動室36への経路において、切断ピストン18を移動する原因にはならないことに留意されたい。
【0049】
2つのピストン要素31、32の完全に伸張した位置(
図4)を、長手方向に調整可能な端部停止要素53によって、例えば、ねじ継手54によって、決定できる。最も伸長した位置では、ステム部41の端部は、端部停止要素53に当接する。
【0050】
いくつかの実施形態では、制動の配分を、端部停止要素53の位置を調整し、フローティング環状ピストン要素30が第2の内部空洞15の底壁34に対して長手方向にブロックされる位置に、端部停止要素53を進めることによって、選択的に、抑制できる(
図8)。この動作モードでは、第1の入口11へのブレーキ液の導入によって、流体が分岐22を通って移動することなく、通路13を通って第1の出口12に、直接的に、通り抜ける。
【0051】
異なる径を有する2つの部分を有するように第2の内部空洞15を生成することを任意に選択することによって、第2ブレーキに送られるブレーキ液の割合を調整できる。第2の内部空洞の第2の部分15bを、第1のブレーキ制御からブレーキ液を受容する第1の部分15aの対応する空洞の直径よりも大きい直径を有するように寸法付けすることによって、予め定められる量のブレーキ液が、第2の液圧空洞の左側部15aに導入され、これにより、フローティング・ピストン・バルブ要素30の移動の結果により、第2の空洞の右側、及び、より幅広の部分15bから、第2のブレーキに向かう、より多くのブレーキ液の流出の原因となる。言い換えれば、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30の上流側に、より少ない量のブレーキ液が導入されると、ピストンバルブアクチュエータの下流側に、より多くの量のブレーキ液が移動する。第2の空洞の第1の部分15aに対する第2の部分の径が大きいほど、第1のブレーキ制御が作動した結果、第2のブレーキに付与される制動力の強さが大きくなる。
【0052】
図示されないいくつかの実施形態では、
図3~
図8に示される実施形態に代えて、第2の内部空洞15が、単一の直径を有してもよい。他の異なる実施形態(図示せず)では、第2の内部空洞は、第2の出口17が開口する第2の部分においてより小さい径、及び、第1の入口11からブレーキ液を受容する第1部分においてより大きい径を有する部分を有してもよい。
【0053】
使用者が第2のブレーキ(リアブレーキ)を作動させる第2のブレーキ制御のみを作動させると、第2の入口16を通って分配器に導入されるブレーキ液は、分配器を通って、そして、第2のブレーキに向かって第2の出口に流れる。特に、第2の入口16からのブレーキ液は、第1の内部空洞14の切断室24に到達し、切断ピストンを休止位置(
図3)から作動位置(
図5)に移動させ、したがって、入口ポート28を通って、第2の内部空洞の部分15b内に、そして、そこから第2の出口17まで、第2のブレーキに向かって通過する。切断ピストン18に設けられるシーリング・ガスケット56、57は、切断室24のブレーキ液が分岐通路22、ひいては、第1の出口12、及び、第1の入口11に到達することを防止する。切断バルブは、第2の入口における第1の出口12の流体連通を排除するので、第2ブレーキ制御のみを作動させ、また、第1のブレーキ制御も作動させないことは、第2ブレーキのみ作動をもたらす。
【0054】
なお、切断ピストン18のシーリング・ガスケット56、57が、流体が切断室24から第1の入口11に通過することを防止するため、第2のブレーキ制御のみの作動によっては、使用者は、第1の制御を感じない。使用者が、依然として、第2のブレーキ制御を作動させている間の第1のブレーキ制御のあらゆる作動は、結果的に、ブレーキ液を、第1の入口11から、直接的に、及び、通路13を通って第1のブレーキに向かって、第1の出口12にのみに、送るが、切断ピストン18のガスケット27(
図5)が分岐通路22と液圧室36に通じる通路35との間に配置されるため、さらに、ブレーキ液を、第2の出口へ送る原因とはならない。
【0055】
図6、及び、
図7を参照しながら、典型的には、主として、フロントブレーキを制御する第1のブレーキ制御において、まず動作し、そして、続いて、第2ブレーキ制御を作動させるときの油圧分配器の動きを、記述する。第1の制御を作動させることによって、流体は、第1の入口11から第1の出口12に、直接的に、通過し、また、この流れは、区画される。流れは、分岐通路22を通って、部分的に迂回され、切断ピストン18の周囲の環状ギャップ25に流れ、そして、通路35を通って、したがって、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30の液圧作動室36に到達する。
【0056】
フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30の2つの内側、及び、外側ピストン要素31、32は、ばね33に対抗し、第2の内部空洞15から、二重ピストンの下流側、第2のブレーキまでの中に含まれる第1の量のブレーキ液の流れを引き起こしながら、内側ピストン要素がストッパ53に達するまで、一体として、右側に移動される(
図6)。圧縮ばね33は、部分的にのみ、圧縮される。したがって、この第1のブレーキ段階では、第2のブレーキは、第1の制御によってのみ作動される。なお、(
図6)フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30の下流側(右方)への移動は、外側ピストン要素31のガスケット48を2つの連通ポート28、29に交差させ、これにより、ブレーキ液が切断室24から第2の出口17に向けて、直接的に、通過することを防止する。
【0057】
使用者が第2の制御(
図7)も作動すると、第2のブレーキのキャリパが、以下に説明する、更なる圧力パルスを受けるため、第2のブレーキに作用する制動力が、増加する。第2の入口16から導入されるブレーキ液は、第1の内部空洞14の切断室24に到達し、切断ピストン18を休止位置(
図6)から作動位置(
図7)に移動する。切断ピストン18のガスケット56、57は、切断室24と分岐通路22との間で、長手方向に、配置され、その結果、第1の入口11、及び、その上流側の第1制御は、切断室24内の加圧の影響を受けない。その結果、使用者は、既に作動している第1の制御において、最初に作動した後に作動する第2の制御の作動を感じない。
【0058】
ブレーキ液は、切断室24から連通ポート28、29を通って、外側ピストン32のガスケット48よりも上流側の第2の内部空洞15内、及び、その周りを通過し、その結果、望遠鏡方式で、第1のピストン要素31を滑る第2の外側ピストン要素32のさらなる移動を引き起こし、さらい、ばね33を圧縮し、そして、第2の出口17、及び、第2のブレーキへ向かうブレーキ液の圧力のさらなる増加を引き起こす。これにより、第1の制御の作動によって、既に、作動し、及び、被告されている制動力に加えて、第2のブレーキに作用する付加的な制動力が付与される。
【0059】
使用者が、第2のブレーキ制御に代えて、作動し、また、その後、第2のブレーキ制御と同時に第1のブレーキ制御も作動させ始めると、分配器は、非複合制動モードに応じて、2つのブレーキ動作を独立させる。第2の制御の作動に起因する制動動作は、第2の入口16から第2の出口17まで、第2ブレーキに、直接的に、送られ、切断室24、及び、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30よりも下流側の第2の液圧空洞の部分15bを通過するブレーキ液に影響する。切断室24の加圧により、切断ピストン18を左方に移動し、続いて、分岐通路22を閉鎖させる。したがって、第1の入口11へのその後の加圧されたブレーキ液の流れは、第2の制御の作動とは独立した制動モードに応じて、流体を、第1の入口11から、通路13を通って、第1の出口12まで、直接的に、通過させる。
【0060】
代替の実施形態では、
図9~
図11に示すように、フローティング・ピストン・バルブ・アクチュエータ30は、単一のピストン要素から構成される。この要素は、休止位置(
図9)から、使用者が第1のブレーキ制御(
図10)を作動させたときの液圧室36の拡張の結果としての第1の前進動作、及び、使用者が第2のブレーキ制御の作動も開始したときの第2の追加的な前進動作(
図11)を実行する。
【0061】
理解され得るように、第2の制御に作用することに起因する第2のブレーキ(例えば、後輪のブレーキ)の制動動作は、切断バルブの作用が、第1の入口から第1の出口への直接的な流れのみを許容するため、第1の制御を作動させる使用者の手に知覚できない場合がある。
【0062】
なお、第1の入口、及び、第1の出口として本明細書に示される接続は、第1のブレーキ制御、及び、第1のブレーキ、それぞれ記載されているように、相互交換可能に接続されてもよいし、又は、その逆であってもよいことに留意されたい。
【0063】
さらに、第1のブレーキはフロント・ブレーキであり、また、独立のブレーキである上述の代替の動作モードによれば、分配器の接続は、逆であってもよい。接続に関するこの代替モードによれば、第1の出口は、液圧的に、リア・ブレーキに接続され、また、第2の出口は、フロント・ブレーキに接続される。これにより、分配器は、第1の制御が作動すると、後輪のみを制動させ、また、第2の制御が作動すると、前、及び、後輪を複合的に制動させ、この動作モードでは、 後輪は、独立の車輪である。
【0064】
ブレーキ分配器の様々な態様、及び、実施形態を説明し、各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。さらに、実施形態、及び、構成の詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく、非限定的な例として、純粋に説明、及び、例示されたものに対して、特許請求の範囲に規定されているように、広く変更されてもよい。
【国際調査報告】