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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】改善された免疫グロブリンI
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240426BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240426BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240426BHJP
【FI】
A61K47/68
A61P25/00
A61P25/18
A61P25/24
A61P29/00
A61P37/06
A61K51/00 200
A61K39/395
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573093
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 AU2022050503
(87)【国際公開番号】W WO2022246510
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】2021901567
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444855
【氏名又は名称】トランスマブ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーナ・ドゥブリェヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・キャンベル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA13
4C085EE01
4C085KA03
4C085KB92
4C085LL13
(57)【要約】
本開示は、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体、及びこれらの抗体コンジュゲートを脳に送達する方法に関する。これらの抗体コンジュゲートを含む組成物は、疾患を検出及び治療するのに有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペイロードをヒト対象の脳に送達する方法であって、前記方法が、前記対象に、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、前記抗体が、ヒト化IgGであり、
-配列番号1又は配列番号12に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含み、前記対象が、がんを有しない、方法。
【請求項2】
ペイロードをヒト対象の脳に送達する方法であって、前記方法が、前記対象に、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、前記抗体が、ヒト化IgGであり、
-配列番号1又は配列番号12に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含み、前記対象が、無傷の血液脳関門を有する、方法。
【請求項3】
前記抗体が、
(i)配列番号7若しくは配列番号17若しくは配列番号18若しくは配列番号19に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むV、及び配列番号8若しくは配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むV、又は
(ii)配列番号7に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むV、及び配列番号8に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むVを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、配列番号9に記載の配列を含む重鎖と、配列番号10に記載の配列を含む軽鎖と、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を含む薬学的組成物であって、前記抗体が、ヒト化IgGであり、配列番号1又は配列番号12に示されるCDR1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有するVと、配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有するVLと、を含む、薬学的組成物。
【請求項6】
前記抗体が、
(i)配列番号7若しくは配列番号17若しくは配列番号18若しくは配列番号19に示される配列を含むV、及び配列番号8若しくは配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16に示される配列を含むV、又は
(ii)配列番号7に示される配列を含むV、及び配列番号8に示される配列を含むVを含む、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法、又は請求項5若しくは6に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号7に示される配列を含むVと、配列番号8に示される配列を含むVと、を含む、請求項7に記載の方法又は組成物。
【請求項9】
前記ペイロードが、治療ペイロードである、請求項1~4又は7若しくは8のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記治療ペイロードが、前記対象の脳に影響する状態を治療する、請求項9に記載の方法又は組成物。
【請求項11】
前記状態が、神経障害、精神障害、又は神経変性障害である、請求項10に記載の方法又は組成物。
【請求項12】
前記治療ペイロードが、核酸、抗精神病薬、抗うつ薬、抗炎症薬、抗神経変性疾患剤、気分安定剤、及び免疫抑制剤からなる群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法又は組成物。
【請求項13】
前記ペイロードが、診断剤である、請求項1~4又は7若しくは8のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記診断剤が、放射性医薬品、イメージング剤、及びナノ粒子からなる群から選択される、請求項13に記載の方法又は組成物。
【請求項15】
ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、前記方法が、前記対象に、請求項7~12のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含み、前記対象が、がんを有しない、方法。
【請求項16】
対象の脳に影響する状態を治療するための医薬の製造における、請求項7~12のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記対象が、がんを有しない、使用。
【請求項17】
前記がんが、脳がんである、請求項1~4若しくは7~12のいずれか一項に記載の方法、又は請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記脳がんが、膠芽腫である、請求項15に記載の方法又は使用。
【請求項19】
前記対象の血液脳関門が、無傷である、請求項1~4、7~15、又は17若しくは18のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項16~18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
前記ペイロードが、核酸である、請求項1~4又は7若しくは8のいずれか一項に記載の方法、あるいは請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記抗体が、抗体-薬物コンジュゲートとして提供される、請求項1~4、7~15、若しくは17~20のいずれか一項に記載の方法、請求項5~14若しくは20のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項16~18のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性IgG抗DNA抗体、及びこれらの抗体コンジュゲートを脳に送達する方法に関する。本開示の抗体コンジュゲートを含む組成物は、ペイロードを脳に送達して、疾患を検出及び治療するのに有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
中枢神経系(CNS)を取り囲む保護内皮組織である血液脳関門(BBB)は、CNSへの高分子量治療及び診断剤(例えば、抗体)の全身性送達に対する主要な障害物である。BBBは、脳疾患のための新しい治療又は新しい神経イメージング剤の開発を困難にする。したがって、ペイロードを脳に送達するための新しい組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
驚くべきことに、本発明者らは、細胞透過性抗DNA抗体にコンジュゲートしたペイロードが、血液脳関門(BBB)を通過することができ、ペイロードを脳に送達することができることを特定した。したがって、第1の態様では、本開示は、ペイロードをヒト対象の脳に送達する方法であって、方法が、対象に、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、
-配列番号1又は配列番号12に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む、方法に関する。一例では、対象は、ヒトである。一例では、対象は、脳がんを有しない。一例では、対象は、膠芽腫を有しない。一例では、対象は、神経障害、精神障害、又は神経変性障害を有する。
【0004】
別の例では、対象は、無傷の血液脳関門を有する。したがって、別の例では、本開示は、ペイロードをヒト対象の脳に送達する方法であって、方法が、対象に、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、
-配列番号1又は配列番号12に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含み、対象が、無傷の血液脳関門を有する、方法を包含する。
【0005】
一例では、抗体は、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。
【0006】
別の例では、抗体は、
(i)配列番号7若しくは配列番号17若しくは配列番号18若しくは配列番号19に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むV、及び配列番号8若しくは配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むV、又は
(ii)配列番号7に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むV、及び配列番号8に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むVを含む。
【0007】
別の例では、抗体は、配列番号9に記載の配列を含む重鎖と、配列番号10に記載の配列を含む軽鎖と、を含む。
【0008】
本発明者らはまた、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性IgG抗DNA抗体を含む組成物を開発した。このような組成物は、BBBを通過することができ、ペイロードを脳に送達することができるため、特に有利である。したがって、別の例では、本開示は、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体であって、抗体が、IgGであり、配列番号1又は配列番号12に示されるCDR1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有するVと、配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有するVと、を含む、抗体に関する。一例では、抗体は、ヒト化されている。一例では、抗体は、薬学的組成物内で提供される。
【0009】
一例では、薬学的組成物は、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を含み、抗体は、IgGであり、配列番号1に示されるCDR1、配列番号3又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号5に示されるCDR3を有するVと、配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有するVと、を含む。一例では、抗体は、ヒト化されている。
【0010】
一例では、抗体は、
(i)配列番号7若しくは配列番号17若しくは配列番号18若しくは配列番号19に示される配列を含むV、及び配列番号8若しくは配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16に示される配列を含むV、又は
(ii)配列番号7に示される配列を含むV、及び配列番号8に示される配列を含むVLを含む。したがって、別の例では、抗体抗体は、配列番号7に示される配列を含むVと、配列番号8に示される配列を含むVと、を含む。
【0011】
一例では、抗体は、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。
【0012】
一例では、ペイロードは、治療ペイロードである。一例では、ペイロードは、核酸である。
【0013】
一例では、治療ペイロードは、対象の脳に影響する状態を治療する。一例では、状態は、神経障害、精神障害、又は神経変性障害である。
【0014】
一例では、治療ペイロードは、抗体、核酸、抗精神病薬、抗うつ薬、抗炎症薬、抗神経変性疾患剤、気分安定剤、及び免疫抑制剤からなる群から選択される。一例では、抗体は、二重特異性抗体として提供される。
【0015】
一例では、ペイロードは、イメージング剤である。一例では、ペイロードは、診断剤である。一例では、ペイロードは、放射性標識されている。別の例では、ペイロードは、蛍光標識されている。
【0016】
一例では、診断剤は、放射性医薬品、イメージング剤、及びナノ粒子からなる群から選択される。
【0017】
本発明者の驚くべき知見に鑑みて、本開示は、一例では、対象の脳に影響する状態を治療する方法を包含する。したがって、一例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、方法が、対象に、本明細書に開示される抗体又は組成物を投与することを含む、方法に関する。一例では、対象は、がんを有しない。別の例では、対象は、無傷の血液脳関門を有する。一例では、対象は、脳がんを有しない。一例では、脳がんは、膠芽腫である。一例では、対象の血液脳関門は、無傷である。
【0018】
一例では、本開示の方法を実行するときに、抗体は、抗体-薬物コンジュゲートとして提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】1Aは、二量体scFvの構造を示し、1Bは、インタクトな抗体の構造図を示す。
図2】BBBを通過しペイロードを脳に送達する分子の能力(%ID/cc)を示す。関心領域(ROI)は、脳の上に描画され、結果は、ROIの体積に正規化された。125I-対照IgG(n=2);125I-DX1(n=3);125I-DX3(n=3)。統計:独立t検定(72及び96時間の時点)又は二元配置ANOVA(ダネット事後)、*p≦0.05、**p≦0.01。***p≦0.001。****p≦0.0001。データは、平均値+SEMとして提示される。
図3】脳、甲状腺、肺、腎臓、及び肝臓における分子の%ID/ccを示すグラフ。関心領域(ROI)は、腎臓、肝臓、肺、甲状腺、及び脳の上に描画された。結果は、ROI体積に正規化され、特定の組織タイプにおける放射能濃度として考えられ得る。
図4】注入線量の百分率(%ID)としての放射能取り込みを示すグラフ。関心領域(ROI)は、腎臓、肝臓、肺、甲状腺、及び脳の上に描画された。結果は、放射能の注入線量のみに正規化される。異なる組織タイプは、ROI体積が異なるため比較可能でない。
図5】非腫瘍無胸腺ヌードマウス及びU87 MG同所性腫瘍を保有する無胸腺ヌードマウスの脳からのエクスビボイメージングを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
配列表の鍵
配列番号1-DX3の重鎖CDR1
配列番号2-DX3の重鎖CDR2
配列番号3-DX3の重鎖CDR3
配列番号4-DX3の軽鎖CDR1
配列番号5-DX3の軽鎖CDR2
配列番号6-DX3の軽鎖CDR3
配列番号7-DX3の重鎖(V
配列番号8-DX3の軽鎖(V
配列番号9-DX3の完全重鎖
配列番号10-DX3の完全軽鎖
配列番号11-DX3の軽鎖CDR1バリアント
配列番号12-DX3の重鎖CDR1バリアント
配列番号13-DX3の重鎖CDR2バリアント
配列番号14-DX3バリアント1の軽鎖(V
配列番号15-DX3バリアント2の軽鎖(V
配列番号16-DX3バリアント3の軽鎖(V
配列番号17-DX3バリアント1の重鎖(V
配列番号18-DX3バリアント2の重鎖(V
配列番号19-DX3バリアント3の重鎖(V
配列番号20-ヒンジ配列
配列番号21-シグナル配列
【0021】
一般的な技法及び選択された定義
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、当該技術分野(例えば、分子生物学、生化学、抗体、単鎖可変断片などの抗体断片、及び臨床研究)の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有すると解釈される。
【0022】
「細胞透過性」という用語は、本開示の文脈において、生存哺乳類細胞の核内に輸送され、DNA(例えば、一本鎖及び/又は二本鎖DNA)に結合する抗DNA抗体を指すために使用される。一例では、本明細書に開示される細胞透過性抗体は、コンジュゲートしたペイロードを、BBBを通過して送達することが可能である限り、ペイロードにコンジュゲートした後に、必ずしもそれらの細胞透過性特性を維持する必要はない。
【0023】
「抗DNA抗体」という用語は、本開示の文脈において、DNAに結合することが可能である抗体を指すために使用される。一例では、本明細書に開示される抗DNA結合抗体は、コンジュゲートしたペイロードを、BBBを通過して送達することが可能である限り、ペイロードにコンジュゲートした後に、必ずしもそれらのDNA結合能力を維持する必要はない。
【0024】
「抗体」という用語は、本開示の文脈において、特定の抗原と免疫学的に反応性である免疫グロブリン分子を指すために使用され、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方を含む。この用語はまた、遺伝子操作された形態、例えば、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)を含む。
【0025】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、又は「全抗体」という用語は、互換的に使用されて、抗体の抗原結合断片とは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指す。具体的には、全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。一例では、全抗体は、Fc領域を含む。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそれらのアミノ酸配列バリアントであり得る。一例では、抗体は、IgGである。
【0026】
本明細書で使用される場合、「可変領域」とは、抗原に特異的に結合し、例えば、CDRのアミノ酸配列、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列と、フレームワーク領域(FR)と、を含む、本明細書で定義される抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を指す。例えば、可変領域は、3つ又は4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、及び任意選択で、FR4)を、3つのCDRと一緒に含む。Vとは、重鎖の可変領域を指す。Vとは、軽鎖の可変領域を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、「相補性決定領域」(同義語CDR、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)という用語は、抗体可変領域のアミノ酸残基であって、それらの存在が、特異的抗原結合に主に寄与する、アミノ酸残基を指す。各可変領域は、典型的には、CDR1、CDR2、及びCDR3として特定される3つのCDR領域を有する。一例では、CDR及びFRに割り当てられるアミノ酸位置は、(「Kabat番号付けシステム」又は「Kabat」とも本明細書で称されるKabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991に従って定義される。
【0028】
可変ドメインのための補正又は代替の番号付けシステムを含む他の慣行は、IMGT(Lefranc,et al.(2003),Dev Comp Immunol 27:55-77)、Chothia(Chothia C,Lesk AM(1987),J Mal Biol 196:901-917、Chothia,et al.(1989),Nature 342:877-883)、及びAHo(Honegger A,Pluckthun A(2001)J Mol Biol 309:657-670)を含む。便宜上、本開示の結合タンパク質の例はまた、IMGTに従って標識され得る。
【0029】
「フレームワーク領域」(同義語FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「定常領域」という用語は、可変領域以外の抗体の重鎖又は軽鎖の一部分を指す。重鎖において、定常領域は、概して、複数の定常ドメインと、ヒンジ領域と、を含み、例えば、IgG定常領域は、以下の連結された構成要素、定常重鎖C1と、リンカーと、C2と、C3と、を含む。重鎖において、定常領域は、Fcを含む。軽鎖において、定常領域は、概して、1つの定常ドメイン(CL1)を含む。例示的なヒンジ配列は、配列番号20に示される。
【0031】
(本明細書で互換的に使用され得る)「結晶性断片」又は「Fc」又は「Fc領域」又は「Fc部分」という用語は、少なくとも1つの定常ドメインを含み、(必ずしもではないが)概して、グリコシル化されており、補体カスケードの1つ以上のFc受容体及び/又は構成要素に結合することが可能である抗体の領域を指す。重鎖定常領域は、α、δ、ε、γ、又はμの5つのアイソタイプのうちのいずれかから選択され得る。例示的な重鎖定常領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、及びガンマ3(IgG3)、又はそれらのハイブリッドである。
【0032】
「定常ドメイン」は、抗体におけるドメインであって、その配列が、同じタイプの抗体/抗体、例えば、IgG又はIgM又はIgEにおいて高度に類似する、ドメインである。抗体の定常領域は、概して、複数の定常ドメインを含み、例えば、γ、α、又はδ重鎖の定常領域は、2つの定常ドメインを含む。
【0033】
「コンジュゲートした」という用語は、本開示の文脈において、別の化合物、例えば、治療化合物又は診断化合物にコンジュゲートした本開示の抗体を指すために使用される。したがって、一例では、本開示の抗体は、「コンジュゲートしている」。コンジュゲーションの性質は、本開示の抗体が、BBBを通過し、コンジュゲートしたペイロードを脳に送達するのに十分である限り、特に限定されない。
【0034】
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率であって、候補配列におけるアミノ酸残基が、配列をアラインメントし、ギャップを導入して、必要な場合、最大パーセント配列同一性を達成した後に、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一であり、いずれの保存的置換も、配列同一性の一部として考慮されない、アミノ酸残基の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメントは、当業者の技能の範囲内である様々な方式で達成され得、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができ、これらのパラメータは、比較されている配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、抗体及び抗原の相互作用に関して、「結合する」という用語は、相互作用が、抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、一般的に抗原を認識しそれに結合するのではなく、特定の抗原構造を認識しそれに結合する。例えば、抗体が、エピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」及び抗体を含有する反応におけるエピトープ「A」(又は遊離の標識されていない「A」)を含有する分子の存在は、抗体に結合した標識された「A」の量を低減する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、抗体とDNAとの間の結合相互作用が、抗体によるDNAの検出に依存することを意味すると解釈される。したがって、抗体は、他の分子又は生物の混合物中に存在するときでも、DNAに優先的に結合するか、又はそれを認識する。
【0037】
一例では、抗体は、代替の抗原又は細胞と行うよりも、DNAと頻繁に、迅速に、大きい持続時間で、かつ/又は大きい親和性で反応又は会合する。また、例えば、DNAに特異的に結合する抗体は、第2の抗原に特異的に結合してもよく、又は特異的に結合しなくてもよいことが、この定義を読むことによって理解される。したがって、「特異的結合」は、別の抗原の排他的結合又は検出不能な結合を必ずしも必要としない。「特異的に結合する」という用語は、「選択的に結合する」と互換的に本明細書で使用され得る。概して、本明細書での結合への言及は、特異的結合を意味し、各用語は、他の用語への明示的な支持を提供すると理解される。特異的結合を決定するための方法は、当業者には明らかである。例えば、本開示の抗体は、DNA又は代替の抗原と接触する。次いで、DNA又は代替の抗原への抗体の結合が決定され、上記のように代替の抗原ではなくDNAに結合する抗体は、DNAに特異的に結合すると考えられる。
【0038】
本開示による抗体及びそれを含む組成物は、対象に、様々な徴候を治療するために投与され得る。「対象」、「患者」、又は「個体」などの用語は、文脈において、本開示で互換的に使用され得る用語である。一例では、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、イヌ若しくはネコなどの伴侶動物、又はウマ若しくはウシなどの家畜動物であり得る。一例では、対象は、ヒトである。例えば、対象は、成人であることができる。別の例では、対象は、小児であることができる。別の例では、対象は、青年であることができる。一例では、対象は、対象の脳に影響する状態を有する。例えば、対象は、神経障害、精神障害、又は神経変性障害を有し得る。対象の脳に影響する状態の好適な例としては、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病及びレビー体病などの認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、バッテン病、慢性外傷性脳症、うつ病、不安症、統合失調症、嗜癖行動、脳卒中、並びに感染性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、対象は、脳がんを有しない。一例では、脳がんは、膠芽腫である。別の例では、対象は、局在性脳組織損傷を有しない。別の例では、対象は、無傷の血液脳関門を有する。この例では、対象は、対象のBBBが無傷である限り、がんを有し得る。別の例では、対象は、対象の脳に影響する状態を診断するために神経イメージングを必要とする対象である。
【0039】
「血液脳関門」又は「BBB」とは、脳の実質内のシナプス結合を浸す、血液と間質液との間の主な界面を指す。BBBは、血液から脳内へのほとんどの薬物の侵入を防止する。BBBは、脳毛細血管内皮形質膜内の密着結合によって形成されており、非常に密着したバリアを作り、このバリアは、脳内への分子の輸送を制限し、尿素のような60Daの分子量の小さい分子の輸送でさえ制限する。BBBは、連続した2つの膜、すなわち、脳毛細血管内皮の管腔側及び反管腔側膜から構成されている。血行中の分子は、以下の2つの機構、(1)BBBを通過する脂質媒介性遊離拡散、又は(2)BBBを通過するキャリア又は受容体媒介性輸送のうちの1つを介して、脳の間質液にアクセスすることができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「無傷の血液脳関門」という用語は、完全性が損なわれていないBBB、又は「漏出性」でないBBBを指す。したがって、「無傷の血液脳関門」とはまた、抗体が透過することを可能にしないBBBを指すことができる。一例では、無傷の血液脳関門は、破壊されていない血液脳関門であって、通常、侵入から除外される分子が、血液から脳へ侵入することを可能にしない、血液脳関門である。したがって、無傷の血液脳関門は、選択的透過性を有する。一例では、「無傷の血液脳関門」とはまた、コンジュゲートしていない抗体が、BBBを通過して脳内に侵入することを可能にしないBBBを指すことができる。
【0041】
対照的に、漏出性BBBは、損なわれているBBBであって、通常、侵入から除外される分子が、上記の機構を介して侵入することを可能にする、BBBである。一例では、漏出性BBBは、脳毛細血管内皮形質膜内の密着結合における破壊によって特徴付けられる。BBB透過性を決定する方法は、当該技術分野において既知である。例えば、Csaba et al.,2021 Neuropathology and Applied Neurobiology,47,297-315は、BBB透過性を決定する手段としてのGPCRインターナリゼーションを記載しており、Nguyen et al,.2013 NeuroImage:Clinical,2,658-662は、BBB透過性を、初回通過灌流データを使用して推定する方法を開発した。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、臨床病態の経過中に治療されている個体又は細胞の自然経過を改変するように設計された臨床介入を指す。治療の望ましい効果は、疾患進行の速度の減少、疾患状態の寛解又は緩和、及び緩解又は改善された予後を含む。例えば、疾患と関連する1つ以上の症状が軽減又は排除される場合、個体は、「治療」に成功している。
【0043】
本明細書で使用される場合、「防止」という用語は、個体における疾患の発生又は再発に対する予防を提供することを含む。個体は、疾患を発症又は再発する素因又はリスクがあり得るが、依然として疾患又は再発と診断されていない。
【0044】
「治療」という用語は、本明細書の文脈において、疾患、病態、又は障害を治癒させる、寛解させる、又は安定化する意図を有する患者の医学的管理を指すために使用される。「治療」という用語は、能動的治療、すなわち、疾患、病態、又は障害の改善に特異的に向けられた治療を含み、また、原因的治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の原因の除去に向けられた治療を含む。加えて、「治療」という用語は、緩和的治療、すなわち、疾患、病態、又は障害の治癒ではなく、症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の発症を最小にするか、又は部分的に若しくは完全に阻害するように向けられた治療;及び支持的治療、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の改善に向けられた別の特定の療法を補足するために用いられる治療を含む。
【0045】
「有効量」とは、少なくとも、所望の治療的、予防的、診断的、又はそうでなければ情報的結果を達成するのに、必要な投与量及び期間で有効な量を指す。有効量は、1回以上の投与において提供され得る。本開示のいくつかの例では、「有効量」という用語は、以下に記載される疾患又は状態の治療を行うために必要な量を意味する。一例では、有効量は、対象の脳のイメージングに有効な量である。有効量は、治療される疾患又は状態に従って、また、体重、年齢、人種的背景、性別、健康、及び/又は身体状態、並びに治療されている対象に関連する他の要因に従って変動し得る。典型的には、有効量は、通例の治験及び実験を介して医師によって決定され得る比較的広い範囲(例えば、「投与量」範囲)内にある。有効量は、単回用量で、又は治療期間にわたって1回又は数回繰り返される用量で投与され得る。任意の特定の患者のための特定の用量レベルは、様々な要因に依存し、これらの要因は、用いられる特定の抗体の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、及び排泄速度、薬物組み合わせ、並びに療法を受けている特定の疾患の重症度を含むことが理解される。
【0046】
「治療有効量」は、少なくとも、特定の障害(例えば、神経変性疾患又は神経障害)の測定可能な改善をもたらすために必要とされる最小濃度である。本明細書での治療有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体において所望の応答を誘発する抗体の能力などの要因に従って変動し得る。治療有効量はまた、抗体の治療的に有益な効果が、その任意の毒性又は有害な効果よりもまさる量である。神経変性疾患の場合、治療有効量の抗体は、神経変性疾患及びニューロン死、疾患進行を阻害し得(すなわち、ある程度遅くし、いくつかの例では、停止する)、かつ/又は神経変性疾患と関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。神経変性療法については、インビボでの有効性は、例えば、生存期間、疾患進行までの時間(TTP)、応答率(RR)、応答期間、及び/又は生活の質を評価することによって測定され得る。
【0047】
細胞透過性抗DNA抗体
本開示は、ペイロードにコンジュゲートした抗体であって、抗体コンジュゲートが、BBBを通過して、ペイロードを脳に送達することが可能である、抗体に関する。一例では、抗体は、DNAに結合する。別の例では、抗体は、細胞透過性である。一例では、抗体は、DNAに結合し、細胞透過性である。一例では、抗体は、自己免疫疾患を有する対象又は動物に由来する自己抗体である。一例では、自己抗体は、全身性紅斑性狼瘡を有する対象又はその動物モデルに由来する。本明細書で使用される場合、「由来する」という用語は、以下で考察される方法などの組換え技法をもたらす本開示の抗体の組換え形態を包含する。例えば、全身性紅斑性狼瘡を有する対象又はその動物モデルからの自己抗体をコードする核酸配列は、組換え系において提供されて、抗体の組換え形態を産生することができる。
【0048】
一例では、本開示による抗体は、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。したがって、一例では、本開示は、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む、抗体であって、抗体が、ペイロードにコンジュゲートしている、抗体を包含する。このような抗体コンジュゲートは、BBBを通過することができ、それらのペイロードを対象の脳に送達することができることにおいて特に有用である。したがって、一例では、本開示は、配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む、抗体であって、抗体が、ペイロードにコンジュゲートしており、対象への投与後に、抗体が、血液脳関門を通過し、ペイロードを対象の脳に送達する、抗体を包含する。
【0049】
本発明者らはまた、上の参照例のCDRバリアントを特定した。したがって、別の例では、抗体は、配列番号1又は配列番号12に示されるCDR1、配列番号2又は配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有するVと、配列番号4又は配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。
【0050】
別の例では、抗体は、配列番号1に示されるCDR1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有するVと、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。
【0051】
別の例では、抗体は、配列番号12に示されるCDR1、配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有するVと、配列番号11に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。上の参照例では、CDRは、少なくとも1つのアミノ酸置換に供される。別の例では、CDRは、少なくとも2つのアミノ酸置換に供される。別の例では、CDRは、少なくとも3つのアミノ酸置換に供される。一例では、置換は、CDR1内にある。別の例では、置換は、VのCDR1内にある。別の例では、置換は、VのCDR2内にある。別の例では、置換は、VのCDR2内にある。
【0052】
別の例では、抗体は、配列番号7に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0053】
別の例では、抗体は、配列番号17に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0054】
別の例では、抗体は、配列番号18に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0055】
別の例では、抗体は、配列番号19に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0056】
別の例では、抗体は、配列番号7に示される配列を含むVを含む。別の例では、抗体は、配列番号17に示される配列を含むVを含む。別の例では、抗体は、配列番号18に示される配列を含むVを含む。別の例では、抗体は、配列番号19に示される配列を含むVを含む。
【0057】
別の例では、抗体は、配列番号8に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVLを含む。
【0058】
別の例では、抗体は、配列番号14に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0059】
別の例では、抗体は、配列番号15に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0060】
別の例では、抗体は、配列番号16に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含むVを含む。
【0061】
別の例では、抗体は、配列番号8に示される配列を含むVを含む。別の例では、抗体は、配列番号14に示される配列を含むVを含む。別の例では、抗体は、配列番号15に示される配列を含むVを含む。別の例では、抗体は、配列番号16に示される配列を含むVを含む。
【0062】
別の例では、抗体は、配列番号9に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含む重鎖を含む。
【0063】
別の例では、抗体は、配列番号10に示される配列と少なくとも80%、又は少なくとも85%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも98.5%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.6%、又は少なくとも99.7%、又は少なくとも99.8%、又は少なくとも99.9%同一の配列を含む重鎖を含む。
【0064】
別の例では、本開示によるIgG抗DNA抗体は、配列番号9に記載の配列を含む重鎖と、配列番号10に記載の配列を含む軽鎖と、を含む。
【0065】
一例では、抗体は、IgGである。
【0066】
一例では、抗体は、モノクローナルである。モノクローナル抗体は、本開示によって企図される抗体の1つの例示的な形態である。「モノクローナル抗体」又は「MAb」という用語は、同じ抗原、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することが可能である均質な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源又は抗体が作製される様式に関して限定されることは意図されていない。
【0067】
一例では、本開示によって包含される抗体は、「ヒト化」され得る。一例では、CDRは、ヒト化されている。「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含み、レシピエント抗体において、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基は、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されている。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体及びインポートされたCDR又はフレームワーク配列において見出されない残基を含み得る。概して、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、これらの可変ドメインにおいて、CDR領域の全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。一例では、ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものを含む(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992))。
【0068】
一例では、本開示の抗体は、ペイロードを対象の脳に送達するために使用される。
【0069】
一例では、本開示の抗体は、抗体-薬物コンジュゲートとして提供される。このような抗体は、ペイロードを、がん細胞などの標的細胞に送達するように特異的に設計され得る。標的細胞の他の例としては、脳がんを有しない対象の脳内に位置する細胞が挙げられる。したがって、一例では、標的細胞は、ニューロンである。一例では、標的細胞は、グリア細胞である。一例では、標的細胞は、マイクログリア細胞である。別の例では、標的細胞は、周皮細胞である。一例では、標的細胞は、脳上皮細胞である。
【0070】
抗体産生
組換え体発現
一例では、抗体は、組換え体である。
【0071】
組換え抗体の場合、それをコードする核酸は、発現ベクター内にクローニングされ得、次いで、発現ベクターは、宿主細胞、例えば、E.coli細胞、酵母細胞、昆虫細胞、あるいは哺乳類細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、又はそうでなければ免疫グロブリン若しくは抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞内にトランスフェクトされる。
【0072】
好適な分子クローニング技法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Ausubel et al.,(編集者),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)、又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている。多種多様なクローニング及びインビトロ増幅方法が、組換え核酸の構築に好適である。組換え抗体を産生する方法はまた、当該技術分野で既知である。米国特許第4,816,567号又は米国特許第5,530,101号を参照されたい。
【0073】
単離後に、核酸は、更なるクローニング(DNAの増幅)のため、又は無細胞系若しくは細胞における発現のために、動作可能に挿入され、発現構築物又は発現ベクター内のプロモーターに連結される。したがって、本開示の別の例は、本開示の抗体をコードする単離された核酸と、1つ以上の追加のヌクレオチド配列と、を含む、発現構築物を提供する。好適には、発現構築物は、当該技術分野で理解されるプラスミド、バクテリオファージ、コスミド、酵母若しくは細菌人工染色体の形態であるか、又はそれらの遺伝的構成要素を含む。発現構築物は、細菌若しくは他の宿主細胞における単離された核酸の維持及び増殖、組換えDNA技術による操作、並びに/又は本開示の核酸若しくは抗体の発現に好適であり得る。
【0074】
細胞における発現のための多くのベクターが使用可能である。ベクター構成要素は、概して、シグナル配列(例えば、配列番号21)、抗体をコードする配列(例えば、本明細書で提供されるアミノ酸配列情報に由来する)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない。例示的なシグナル配列は、原核生物分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インベルターゼリーダー、α因子リーダー、又は酸ホスファターゼリーダー)、又は哺乳類分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)を含む。
【0075】
哺乳類細胞において活性な例示的なプロモーターは、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、核内低分子RNAプロモーター(U1a及びU1b)、αミオシン重鎖プロモーター、サルウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、βアクチンプロモーター;CMVエンハンサー/βアクチンプロモーター、あるいは免疫グロブリン若しくは抗体プロモーター又はその活性断片を含むハイブリッド調節エレメントを含む。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0076】
酵母細胞、例えば、Pichia pastoris、Saccharomyces cerevisiae、及びS.pombeを含む群から選択される酵母細胞における発現に好適な典型的なプロモーターは、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、又はTEF1プロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0077】
単離された核酸又はそれを含む発現構築物を、発現のための細胞内に導入するための手段は、当業者に既知である。所与の細胞のために使用される技法は、既知の成功した技法に依存する。組換えDNAを細胞内に導入するための手段は、とりわけ、例えば、lipofectamine(Gibco、MD,USA)及び/又はcellfectin(Gibco、MD,USA)を使用することによる、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポソームによって媒介されるトランスフェクション、例えば、DNAコーティングタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.、WI,USA)を使用することによる、PEG媒介性DNA取り込み、エレクトロポレーション、並びに微粒子銃を含む。
【0078】
抗体を産生するために使用される宿主細胞は、使用される細胞型に依存して、様々な培地中で培養され得る。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、(Sigma)、RPMl-1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、哺乳類細胞の培養に好適である。本明細書で考察される他の細胞型を培養するための培地は、当該技術分野で既知である。
【0079】
本開示はまた、本開示の抗体をコードする単離された核酸を提供することが、上記の説明から当業者には理解されよう。
【0080】
本開示はまた、発現構築物であって、プロモーターに動作可能に連結された、本開示の抗体の単離された核酸を含む、発現構築物を提供する。一例では、発現構築物は、発現ベクターである。
【0081】
一例では、本開示の発現構築物は、プロモーターに動作可能に連結された(例えば、Vを含む)ポリペプチドをコードする核酸と、プロモーターに動作可能に連結された(例えば、Vを含む)別のポリペプチドをコードする核酸と、を含む。
【0082】
本開示はまた、本開示による発現構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0083】
本開示はまた、本開示の抗体を発現する単離された細胞、又は抗体を発現するように遺伝子改変された組換え細胞を提供する。
【0084】
本開示による抗体を精製するための方法は、当該技術分野で既知であり、かつ/又はWO2019/018426に記載されている。
【0085】
ペイロード/コンジュゲート
本開示の抗体は、ペイロードにコンジュゲートしている。抗体は、ペイロードに直接又は間接的に結合することができる(例えば、間接的結合の場合、リンカーを含むことができる)。一例では、ペイロードは、化合物である。一例では、ペイロードは、小分子である。一例では、ペイロードは、治療である。一例では、ペイロードは、イメージング剤である。一例では、ペイロードは、薬物である。一例では、抗体は、抗体-薬物コンジュゲートとして提供される。
【0086】
好適なペイロードの例としては、放射性同位体(例えば、ヨウ素125、ヨウ素131、イットリウム90、又はインジウム111)、検出可能な標識(例えば、フルオロフォア、又は蛍光ナノ結晶若しくは量子ドット)、治療化合物、コロイド(例えば、金)、毒素(例えば、リシン又は破傷風トキソイド)、核酸、ペプチド(例えば、血清アルブミン結合ペプチド)、タンパク質(例えば、抗体又は血清アルブミンの抗原結合ドメインを含むタンパク質)、対象における化合物の半減期を増加させる薬剤(例えば、この活性を有するポリエチレングリコール又は他の水溶性ポリマー)、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
一例では、ペイロードは、核酸である。例示的な核酸は、DNA(例えば、相補DNA(cDNA)、ゲノムDNA(gDNA))、RNA(例えば、メッセージRNA(mRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子阻害RNA(siRNA)、リボソームRNA(rRNA)、tRNA、マイクロRNA、DNA又はRNA類似体(例えば、塩基類似体、糖類似体、及び/又は非天然骨格などを含有するもの)、RNA/DNAハイブリッド、及びポリアミド核酸(PNA)を含み、それらの全ては、一本鎖又は二本鎖形態であることができる。一例では、核酸は、単離されている。本明細書で使用される場合、「単離された核酸」という用語は、ヒトの介入を介して自然状態から改変又は除去された核酸を意味する。別の例示的な核酸は、オリゴヌクレオチドである。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」という用語は、低DNA又はRNA分子を意味する。オリゴヌクレオチドは、配列特異的な様式で、それらのそれぞれの相補的オリゴヌクレオチド、DNA、又はRNAに容易に結合して、二重鎖を形成する。一例では、オリゴヌクレオチドは、阻害オリゴヌクレオチドである。一例では、「阻害オリゴヌクレオチド」という用語は、1つ以上のタンパク質の産生、発現又は生物学的活性を低減する任意のオリゴヌクレオチドを指す。例えば、阻害オリゴヌクレオチドは、リボソームにおけるタンパク質へのmRNAの翻訳に干渉することができる。別の例では、阻害オリゴヌクレオチドは、標的遺伝子又はmRNAに結合する(それとハイブリダイズする)のに、1つ以上のタンパク質をコードする遺伝子又はmRNAのいずれかに十分に相補的であることができ、それによって、標的タンパク質の発現又は生物学的活性を低減する。別の例では、阻害オリゴヌクレオチドは、タンパク質をコードしない細胞内核酸の生物学的活性を阻害する。例えば、阻害オリゴヌクレオチドは、非コードRNAの生物学的活性を阻害することができる。例示的な阻害オリゴヌクレオチドは、単離された又は合成のアンチセンスRNA又はDNA、siRNA又はsiDNA、miRNA、miRNA模倣物、shRNA又はDNA、及びキメラアンチセンスDNA又はRNAを含む。
【0088】
一例では、ペイロードは、別の抗体である。
【0089】
一例では、ペイロードは、治療ペイロードである。提供される組成物及び方法における使用、例えば、提供される抗体へのコンジュゲーションのための使用に好適な治療剤は、鎮痛薬、麻酔薬、興奮薬、コルチコステロイド、抗コリン剤、抗コリンエステラーゼ、抗けいれん薬、抗腫瘍剤、アロステリック阻害剤、タンパク同化ステロイド、抗リウマチ剤、心理療法剤、神経遮断剤、抗炎症剤、駆虫薬、抗生物質、抗凝固薬、抗真菌薬、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤、ドーパミン作用薬、血液作用剤、免疫剤、ムスカリン作用薬、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、増殖因子、核酸、抗体、及びホルモンからなる群から選択される治療剤を含むが、これらに限定されない。一例では、治療剤は、抗体、核酸、抗精神病薬、抗うつ薬、抗炎症薬、抗神経変性疾患剤、気分安定剤、及び免疫抑制剤からなる群から選択される。一例では、治療剤は、抗体である。一例では、抗体は、二重特異性抗体として提供され得る。一例では、治療剤は、核酸である。薬剤及び投与量の選択は、治療されている所与の疾患に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。一例では、治療ペイロードは、対象の脳に影響する状態を治療する。
【0090】
一例では、本開示の抗体は、抗体-薬物コンジュゲートとして提供される。抗体-薬物コンジュゲートは、脳細胞又はがん細胞などの標的細胞に標的され得る。一例では、薬物は、細胞傷害性薬剤である。細胞傷害性薬剤は、化学療法剤、放射線療法剤、及び免疫毒素剤を含むが、これらに限定されない。一例では、薬物は、治療剤である。治療剤の例は、上記のものである。
【0091】
治療ペイロードの性質は、治療されている徴候によって影響されることが、当業者には理解されよう。例示的な徴候は、以下で考察される。
【0092】
別の例では、ペイロードは、診断剤である。一例では、診断剤は、放射性医薬品、イメージング剤、及びナノ粒子からなる群から選択される。一例では、診断剤は、イメージング剤である。イメージング剤及びそれらの使用は既知である。任意選択で、イメージング剤は、「検出可能な部分」であり、検出可能な部分は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、又は他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識は、32P、蛍光染料、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、又はハプテン、及び、例えば、放射性標識を、標的ペプチドと特異的に反応性であるペプチド又は抗体内に組み込むことによって検出可能にされ得るタンパク質又は他の実体を含む。抗体を標識にコンジュゲートさせるための当該技術分野で既知の任意の方法が、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques 1996,Academic Press,Inc.,San Diegoに記載されている方法を使用して、用いられ得る。検出可能な部分は、ガンマエミッター、ベータエミッター、及びアルファエミッター、ガンマエミッター、陽電子エミッター、X線エミッター、並びに蛍光エミッターからなる群から選択され得る。好適な蛍光化合物は、フルオレセインナトリウム、フルオレセインイソチオシアネート、フィコエリトリン、及びTexas Redスルホニルクロリド、アロフィコシアニン(APC)、Cy5-PE、CY7-APC、Alexa Fluor、及びCascade yellowを含む。一例では、イメージング剤は、放射性標識されたペイロードである。別の例では、イメージング剤は、蛍光ペイロードである。また、診断/イメージングペイロードの性質は、用途によって影響されることが、当業者には理解されよう。
【0093】
検出可能な部分は、組織化学的技法、ELISA様アッセイ、共焦点顕微鏡法、蛍光検出、細胞選別方法、核磁気共鳴、放射免疫シンチグラフィ、X線撮影法、陽電子放出断層撮影法、コンピュータ体軸断層撮影法、磁気共鳴イメージング、及び超音波法を使用して視覚化され得る。
【0094】
薬剤又は他の小分子医薬品を抗体に結合させるための方法は、周知であり、二官能性化学リンカー、例えば、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート;スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート;4-スクシンイミジル-オキシカルボニル--(2-ピリジルジチオ)トルエン;スルホスクシンイミジル-6-[α-メチル-∀-(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノエート;N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート;スクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロプリオンアミド]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート;3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS-(2-チオピリジル)-L-システインなどの使用を含むことができる。更なる二官能性連結分子は、例えば、米国特許第5,349,066号、同第5,618,528号、同第4,569,789号、同第4,952,394号、及び同第5,137,877号で考察されている。
【0095】
抗体配列は、当該技術分野で既知の方法を使用して、活性剤又は担体に結合させることができ、これらの方法は、化学コンジュゲーション、酵素コンジュゲーション、カルボジイミドコンジュゲーション、エステル化、過ヨウ素酸ナトリウム酸化、続いて、還元アルキル化、及びグルタルアルデヒド架橋を含むが、これらに限定されない(Goldman et al.(1997)Cancer Res.57:1447-1451、Cheng(1996)Hum.Gene Ther.7:275-282、Neri et al.(1997)Nat.Biotechnol.15:1271-1275、Nabel(1997)Vectors for Gene Therapy.In Current Protocols in Human Genetics,John Wiley&Sons,New York、Park et al.(1997)Adv.Pharmacol.40:399-435、Pasqualini et al.(1997)Nat.Biotechnol.15:542-546、Bauminger&Wilchek(1980)Meth.Enzymol.70:151-159、米国特許第6,071,890号、及び欧州特許第0439095号)。コンジュゲーションは、化学的手段又は酵素的手段を介し得る。
【0096】
ペイロードは、アミノ酸残基、二重スルフィド結合、グリカンにコンジュゲートし得る。例えば、ペイロードは、リジン残基、アミン基、システイン残基、又は新しい操作されたアミノ酸にコンジュゲートし得る。一例では、ペイロードは、チロシンにコンジュゲートしている。一例では、ペイロードは、リジンにコンジュゲートしている。一例では、ペイロードは、リジンにコンジュゲートしており、DNAへの抗体親和性は、コンジュゲーション後に低減する。一例では、ペイロードは、リジンにコンジュゲートしており、抗体は、コンジュゲーション後にDNAに実質的に結合しない。
【0097】
リンカーは、切断可能であってもよく、又は切断不可能であってもよい。高度に安定したリンカーは、血行中に残るペイロードの量を低減することができ、したがって、安全性プロファイルを改善し、ペイロードのうちのより多くが標的細胞に到達することを確実にする。リンカーは、ジスルフィド、ヒドラゾン、若しくはペプチド(切断可能)、又はチオエーテル(切断不可能)を含む化学モチーフに基づくことができ、標的細胞への活性剤の分布及び送達を制御することができる。切断可能及び切断不可能なタイプのリンカーは、前臨床及び臨床治験において安全であることが証明されている(例えば、カテプシンによって切断可能な酵素感受性リンカーを含むブレンツキシマブベドチン、及び安定した切断不可能なリンカーを含むトラスツズマブエムタンシンを参照されたい)。特定の実施形態では、リンカーは、エドマン分解によって切断可能なペプチドリンカーである(Bachor,et al.,Molecular diversity,17(3):605-11(2013))。
【0098】
切断不可能なリンカーは、活性剤を、細胞又は標的微小環境内に保持することができる。結果として、抗体、リンカー、及び活性剤全体は、標的細胞に侵入し、標的細胞において、抗体は、アミノ酸のレベルに分解される。抗体のアミノ酸と、リンカーと、活性剤との得られた複合体は、活性薬物となる。対照的に、切断可能なリンカーは、標的細胞又は微小環境において、酵素によって触媒され、活性剤を放出する。切断された後に、ペイロードは、標的細胞から脱出することができ、隣接する細胞を攻撃することができる(「バイスタンダー死滅」とも称される)。開示される結合タンパク質の場合、リンカーの切断は、抗体自体及びそのペイロードの2つの活性剤をもたらすことができ、これらの活性剤は、標的細胞又は微小環境において異なる作用機構を有することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の分子が、活性剤と切断部位との間にある。他の考慮事項は、部位特異的コンジュゲーション(TDC)(Axup,Proceedings of the National Academy of Sciences,109(40):16101-6(2012)、並びにコンジュゲーション技法、例えば、安定性及び治療指数を改善することができる、Lyon,et al.,Bioconjugate Chem.,32(10):1059-1062(2014)、及びKolodych,et al.,Bioconjugate Chem.,26(2):197-200(2015)に記載されているもの、並びにα放出イムノコンジュゲート(Wulbrand,et al.,Multhoff,Gabriele,ed.,PLoS ONE.8(5):e64730(2013))を含む。
【0100】
一例では、抗体は、ナノ粒子又は微粒子にコンジュゲートしている(例えば、Kogan et al.,Nanomedicine(Lond).2:287-306,2007で概観されるように)。ナノ粒子は、金属ナノ粒子であり得る。粒子は、ポリマー粒子、リポソーム、ミセル、マイクロバブル、並びに当該技術分野で既知の他の担体及び送達ビヒクルであることができる。
【0101】
送達ビヒクルがポリマー粒子である場合、結合タンパク質は、粒子に直接結合してもよく、又はポリマー内に組み込まれている脂肪酸などのアダプター要素に直接結合してもよい。リガンドは、粒子の表面上にかつ結合するリガンド上に存在する官能性化学基(カルボン酸、アルデヒド、アミン、スルフヒドリル、及びヒドロキシル)を介して、ポリマー粒子の表面に結合し得る。官能性は、粒子及びリガンドをホモ又はヘテロ二官能性架橋剤で架橋することによって、粒子調製後に導入され得る。この手順は、好適な化学及びあるクラスの架橋剤(以下で更に詳細に考察されるCDT、EDAC、グルタルアルデヒドなど)、又はリガンドを調製後の粒子表面の化学修飾を介して粒子表面に結合する任意の他の架橋剤を使用してもよい。
【0102】
抗体はまた、ポリマー粒子と相互作用するアダプター要素を介して、ポリマー粒子に間接的に結合し得る。アダプター要素は、少なくとも2つの方式で、ポリマー粒子に結合し得る。第1の方式は、マイクロ及びナノ粒子の調製中であり、例えば、マイクロ粒子のエマルション調製中に、官能性化学基を有する安定剤を組み込むことによるものである。例えば、脂肪酸、疎水性又は両親媒性ペプチド及びポリペプチドなどのアダプター要素は、エマルション調製中に粒子内に挿入され得る。第2の実施形態では、アダプター要素は、脂肪酸又は脂質などの両親媒性分子であり得、両親媒性分子は、粒子表面に受動的に吸着及び接着し得、それによって、結合タンパク質への接続のための官能性末端基を導入する。アダプター要素は、様々な相互作用を介して、マイクロ及びナノ粒子と会合し得、これらの相互作用は、疎水性相互作用、静電相互作用、及び共有結合を含むが、これらに限定されない。
【0103】
好適なポリマーは、エチルセルロース、及び他の自然又は合成セルロース誘導体を含む。また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレンオキシドなどの水性環境においてゆっくり溶解しゲルを形成するポリマーが、粒子のための材料として好適であり得る。他のポリマーは、ポリ無水物、ポリ(エステル無水物)、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシブトレート(PHB)及びそれらのコポリマー、ポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)及びそれらのコポリマー、ポリカプロラクトン及びそれらのコポリマー、並びにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0104】
本開示の抗体にコンジュゲートすることができるいくつかの例示的な化合物は、表1に列挙される。
【表1】
【0105】
上記の例の一態様では、抗体コンジュゲートは、コンジュゲートしたペイロードを脳に送達するために使用され得る。
【0106】
一例では、本開示の抗体は、ナノ粒子にコンジュゲートしていない。
【0107】
ペイロードを送達する方法
本開示の方法は、ペイロードを、ヒト対象などの対象の脳に送達することを包含する。本明細書で使用される場合、「送達」という用語は、血液から脳へのBBBの密着結合を通過するペイロードの移送を指す。移送されるペイロードの量は、投与された用量の百分率/脳の体積(%ID/cc)として、又は投与された用量の百分率として測定され得る。したがって、一例では、送達されるペイロードの量は、対象に投与された用量の約0.2%、又は約0.3%、又は約0.4%、又は約0.5%、又は約0.6%、又は約0.7%、又は約0.8%、又は約0.9%、又は約1%である。したがって、一例では、送達されるペイロードの量は、対象に投与された用量の約0.4%である。別の例では、送達されるペイロードの量は、対象に投与された用量の約0.5%である。別の例では、送達されるペイロードの量は、対象に投与された用量の0.3%~0.6%である。別の例では、送達されるペイロードの量は、約0.2%ID/cc、又は約0.3%ID/cc、約又は0.4%ID/cc、又は約0.5%ID/cc、又は約0.6%ID/cc、又は約0.7%ID/cc、又は約0.8%ID/cc、又は約0.9%ID/cc、又は約1%ID/cc、又は約1.2%ID/cc、又は約1.3%ID/cc、又は約1.4%ID/cc、又は約1.5%ID/cc、又は約1.6%ID/cc、又は約1.7%ID/cc、又は約1.8%ID/cc、又は約1.9%ID/cc、又は約2%ID/ccである。したがって、一例では、送達されるペイロードの量は、約0.3%ID/ccである。別の例では、送達されるペイロードの量は、対象に投与された用量の約0.5%ID/ccである。別の例では、送達されるペイロードの量は、対象に投与された用量の0.2%~0.6%ID/ccである。
【0108】
ペイロードは、投与後に脳内に保持され得る。保持されるペイロードの量は、投与の数時間後の投与された用量の百分率/脳の体積(%ID/cc)として、又は投与の数時間後の投与された用量の百分率として測定され得る。一例では、ペイロードは、脳内に、投与後最大約1時間、又は約2時間、又は約3時間、又は約6時間、又は約9時間、又は約12時間、又は約15時間、又は約18時間、又は約21時間、又は約24時間、又は約30時間、又は約36時間、又は約42時間、又は約48時間、又は約60時間、又は約72時間、又は約96時間、又は約120時間保持され得る。別の例では、ペイロードは、脳内に、投与後最大約1日間、又は約2日間、又は約3日間、又は約4日間、又は約5日間保持され得る。したがって、一例では、ペイロードは、最大96時間保持され得る。別の例では、ペイロードは、最大24時間保持され得る。別の例では、ペイロードは、最大6時間保持され得る。別の例では、ペイロードは、最大2時間保持され得る。
【0109】
本開示の送達方法は、本明細書に開示される抗体を投与することによって、ペイロードをヒト対象の脳に送達することを包含する。例えば、本開示の方法は、対象に、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含むことができ、抗体は、
-配列番号1(GFTFSNYGMH)に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2(YISSGSSTIYYADSVKG)に示されるCDR2、及び配列番号3(ARRGLLLDY)に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4(RASKTVSTSSYSYMH)に示されるCDR1、配列番号5(YASYLES)に示されるCDR2、及び配列番号6(QHSREFPWT)に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含む。別の例では、対象は、無傷の血液脳関門を有する。一例では、抗体は、ヒト化されている。一例では、抗体は、IgGである。一例では、対象のBBBにおける密着結合は、無傷である。一例では、本開示の抗体が、対照分子(例えば、典型的には、BBBを通過することから遮断される分子)に対して、BBBをより効率的に(例えば、より多くの量で)通過するときに、対象のBBBは、無傷である。一例では、対象は、がんを有しない。一例では、対象は、脳がんを有しない。これらの例では、対象は、ヒトであることができる。一例では、対象のBBBの完全性は、本開示の抗体又は組成物を投与する前に評価される。
【0110】
組成物
本開示は、ペイロードにコンジュゲートした本開示の抗体を含む薬学的組成物を提供する。様々な抗体及びペイロードは、上で考察されるものである。例えば、組成物は、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を含むことができ、抗体は、ヒト化IgGであり、配列番号1に示されるCDR1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有するVと、配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有するVと、を含む。
【0111】
別の例では、本開示は、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を含む薬学的組成物であって、抗体が、ヒト化IgGであり、
(i)配列番号7に示される配列を含むVと、
(ii)配列番号8に示される配列を含むVと、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0112】
組成物はまた、抗体の投与のための薬学的に許容される担体又はアジュバントを含有することができる。いくつかの実施形態では、担体は、ヒトにおける使用のために薬学的に許容される。担体又はアジュバントは、それ自体が、組成物を受容する個体に有害な抗体の産生を誘導すべきなく、毒性であるべきでない。好適な担体は、大きいゆっくり代謝される巨大分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アムモ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子であることができる。
【0113】
薬学的に許容される塩、例えば、鉱酸塩、例えば、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ホスフェート、及びサルフェート、又は有機酸の塩、例えば、アセテート、プロピオネート、マロネート、及びベンゾエートが使用され得る。
【0114】
治療組成物内の薬学的に許容される担体は、液体、例えば、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールを追加で含有することができる。加えて、補助物質、例えば、湿潤若しくは乳化剤、又はpH緩衝物質が、このような組成物内に存在し得る。
【0115】
本開示の主題の組成物は、組成物の調製及び投与を容易にするための担体を更に含むことができる。任意の好適な送達ビヒクル又は担体が、使用され得、マイクロカプセル、例えば、マイクロスフェア又はナノスフェア(Manome et al.(1994)Cancer Res 54:5408-5413、Saltzman&Fung(1997)Adv Drug Deliv Rev 26:209-230)、グリコサミノグリカン(米国特許第6,106,866号)、脂肪酸(米国特許第5,994,392号)、脂肪エマルション(米国特許第5,651,991号)、脂質又は脂質誘導体(米国特許第5,786,387号)、コラーゲン(米国特許第5,922,356号)、多糖又はその誘導体(米国特許第5,688,931号)、ナノ懸濁液(米国特許第5,858,410号)、ポリマーミセル又はコンジュゲート(Goldman et al.(1997)Cancer Res 57:1447-1451、並びに米国特許第4,551,482号、同第5,714,166号、同第5,510,103号、同第5,490,840号、及び同第5,855,900号)、及びポリソーム(米国特許第5,922,545)を含むが、これらに限定されない。
【0116】
本発明の組成物は、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を含み得る。好適な製剤は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、殺菌抗生物質、及び製剤を意図されたレシピエントの体液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性滅菌注射溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性滅菌懸濁液を含む。製剤は、単位用量又は複数回用量容器、例えば、密封アンプル及びバイアルにおいて提示され得、滅菌液体担体、例えば、注射用水を使用直前に添加することのみを必要とする凍結又はフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵され得る。いくつかの例示的な成分は、0.1~10mg/ml、約2.0mg/mlの範囲のSDS、及び/又は10~100mg/ml、いくつかの実施形態では、約30mg/mlの範囲のマンニトール若しくは別の糖、及び/又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。当該技術分野で従来の任意の他の薬剤が、目的の製剤のタイプを考慮して使用され得る。いくつかの例では、担体は、薬学的に許容される。いくつかの例では、担体は、ヒトにおける使用のために薬学的に許容される。
【0117】
本開示の組成物は、5.5~8.5、好ましくは、6~8、より好ましくは、約7のpHを有することができる。pHは、緩衝液の使用によって維持され得る。組成物は、滅菌及び/又はパイロジェンフリーであることができる。組成物は、ヒトに対して等張であることができる。本開示の主題の組成物は、密封容器において供給され得る。
【0118】
組成物は、有効量の本明細書に記載される1つ以上の抗体を含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、所望の疾患若しくは状態を治療する、寛解させる、若しくは防止するか、又は検出可能な治療効果を示すのに十分である量を含んでもよい。治療効果はまた、身体的症状における低減を含む。任意の特定の対象のための正確な有効量は、対象のサイズ及び健康、状態の性質及び程度、並びに投与のために選択される治療薬又は治療薬の組み合わせに依存する。所与の状況のための有効量は、当業者によって実施される通例の実験によって決定される。
【0119】
本発明の組成物は、投与方法に依存して、様々な単位剤形で投与され得る。典型的な抗体薬学的組成物についての投与量は、当業者に周知である。このような投与量は、典型的には、本質的に助言的であり、特定の治療状況又は患者の許容度に依存して調整される。これを達成するのに適切な抗体量は、「治療有効用量」として定義される。この使用に有効な投与計画及び量、すなわち、「投薬レジメン」は、様々な要因に依存し、これらの要因は、疾患又は状態の段階、疾患又は状態の重症度、患者の健康の全般的な状態、患者の身体状態、年齢、薬学的製剤、及び活性剤の濃度などを含む。患者のための投与レジメンの計算において、投与様式もまた考慮される。投与レジメンはまた、薬物動態、すなわち、薬学的組成物の吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、及びクリアランスなどが考慮されなければならない。例えば、最新のRemington’s、Egleton,Peptides 18:1431-1439,1997、Langer,Science 249:1527-1533,1990を参照されたい。
【0120】
投与経路は、注射、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内を含むが、これらに限定されない。一例では、抗体は、静脈内投与を介して送達される。別の例では、抗体は、皮下投与を介して送達される。別の例では、抗体は、注射を介して送達される。別の例では、抗体は、注入を介して送達される。
【0121】
組成物は、単回用量治療又は複数回用量治療において、対象の年齢、体重、及び状態、使用される特定の抗体製剤、並びに投与経路に適切なスケジュール及び期間にわたって投与され得る。
【0122】
治療、診断、又は監視される状態
本開示の方法は、治療、予防、イメージング及び診断、又は様々な状態を包含する。一例では、状態は、神経障害である。神経障害の例としては、運動ニューロン疾患、アルツハイマー病及びレビー体病などの認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、バッテン病、慢性外傷性脳症、うつ病、不安症、統合失調症、嗜癖行動、脳卒中、並びに感染性疾患が挙げられる。一例では、神経障害は、認知症である。一例では、神経障害は、アルツハイマー病である。
【0123】
治療の方法及び予防の方法
本開示の抗体が、BBBを通過することができ、ペイロードを脳に送達することができることを示す本発明者らによる知見に鑑みて、様々な治療及び予防用途が企図される。一例では、本開示は、治療又は予防の方法であって、それを必要としている対象に、本明細書に記載される抗体又は組成物を投与することを含む、方法を包含する。一例では、対象は、神経障害を有する。
【0124】
したがって、一例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、方法が、対象に、本明細書に開示される抗体又は組成物を投与することを含み、対象が、がんを有しない、方法を提供する。
【0125】
別の例では、本開示は、対象の脳に影響する状態を治療するための医薬の製造における、本明細書に開示される抗体又は組成物の使用であって、対象が、がんを有しない、使用を提供する。
【0126】
別の例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、方法が、対象に、本明細書に開示される抗体又は組成物を投与することを含み、対象が、無傷の血液脳関門を有する、方法を提供する。
【0127】
別の例では、本開示は、対象の脳に影響する状態を治療するための医薬の製造における、本明細書に開示される抗体又は組成物の使用であって、対象が、無傷の血液脳関門を有する、使用を提供する。
【0128】
一例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、
-配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含み、対象が、がんを有しない、方法を提供する。
【0129】
別の例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性IgG抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、
-配列番号1に示される相補性決定領域(CDR)1、配列番号2に示されるCDR2、及び配列番号3に示されるCDR3を有する重鎖可変領域(V)と、
-配列番号4に示されるCDR1、配列番号5に示されるCDR2、及び配列番号6に示されるCDR3を有する軽鎖可変領域(V)と、を含み、対象が、無傷の血液脳関門を有する、方法を提供する。
【0130】
一例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、
(i)配列番号7に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むVと、
(ii)配列番号8に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むVと、を含み、対象が、がんを有しない、方法を提供する。
【0131】
別の例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、
(i)配列番号7に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むVと、
(ii)配列番号8に示される配列と少なくとも90%同一の配列を含むVと、を含み、対象が、無傷の血液脳関門を有する、方法を提供する。
【0132】
別の例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、配列番号9に記載の配列を含む重鎖と、配列番号10に記載の配列を含む軽鎖と、を含み、対象が、がんを有しない、方法を提供する。
【0133】
別の例では、本開示は、ヒト対象の脳に影響する状態を治療する方法であって、ペイロードにコンジュゲートした細胞透過性抗DNA抗体を投与することを含み、抗体が、ヒト化IgGであり、配列番号9に記載の配列を含む重鎖と、配列番号10に記載の配列を含む軽鎖と、を含み、対象が、無傷の血液脳関門を有する、方法を提供する。
【0134】
様々な例では、本明細書に開示される抗体及び組成物は、対象の脳に影響する状態を治療するための医薬の製造において使用され得、対象は、がんを有しない。
【0135】
イメージング及び診断
一例では、本開示の抗体は、神経変性疾患、組織損傷、傷害、感染、又は虚血の1つ以上の部位を検出するために利用される。典型的には、このような方法を必要としている対象に、診断イメージング又は核医学技法を使用して検出可能である薬剤などのペイロードにコンジュゲートした本明細書に開示される有効量抗体を投与することと、薬剤を検出することと、を含む、このような方法。診断イメージング又は核医学技法は、例えば、PET-CT、骨スキャン、MRI、CT、心エコー法、超音波、及びX線であることができる。一例では、イメージングは、本明細書に開示される神経状態における診断及び/又は監視について情報的である。
【実施例
【0136】
実施例1-抗DNA結合タンパク質
DX1及びDX3は、3E10に由来し、ヒト化されている抗DNA結合タンパク質である。DX1及びDX3は、配列番号9に示されるCDR1、配列番号10示されるCDR2、及び配列番号11に示されるCDR3を有するVH配列と、配列番号12に示されるCDR1、配列番号13に示されるCDR2、及び配列番号14に示されるCDR3を有する配列VLと、を含む。
【0137】
DX1(図1A)は、2つのユニットから構成された(sc-FV)分子であり、2つのユニットは各々、リンカーを介してVHドメインに連結されたVLドメインを含む。DX3は、完全長IgG分子である(図1B)。
【0138】
実施例2-放射性標識
DX1、DX3、及び対照IgGを、Pierceプレコーティングされたヨウ素化チューブ(Thermo Fisher Scientific)を使用して、製造業者の説明書(“Direct method for Iodination”、MAN0016379 Rev.A.0、Thermo Scientific)に従って、チロシン残基にコンジュゲートさせることによって、ヨウ素125ペイロードで放射性標識した。
【0139】
簡潔には、必要とされる放射能及び抗体(例えば、500mCi(18.5MBq)/100μgのタンパク質、最小1mg/ml)を、中性緩衝液中でヨウ素化チューブに添加し、時折穏やかに混合しながら15分間反応させた。100~150μlの体積を、最適な標識のために使用した。反応を、混合物をヨウ素化チューブから除去することによって停止させた。過剰なヨウ素を、遠心濾過Amicon(登録商標)Ultra-4,10kDaカットオフ(Sigma Alrich)で除去し、続いて、PBSで洗浄した。
【0140】
収率に依存して、最終体積を、約100MBq/mlに調整した。放射化学純度を、インスタント薄層クロマトグラフィーで、85%のMeOHを移動相として使用して決定した。放射性標識されたタンパク質は、Rf=0を有する。加えて、ヨウ素化抗体の試料もまた、ラジオHPLC(Agilent Infinity II,1260)、並びにUV検出器(280nm)及びPosiramラジオディテクタ(Lablogic)で分析した。サイズ排除カラムSEC-2000(Phenomenex)を、30℃に設定し、移動相は、0.1Mのリン酸ナトリウムpH6.8であった。標識された抗体を、放射線化学純度、及び凝集又は分解について分析した。
【0141】
標識収率
-DX1は、98.4%であり、精製からの回収率は、94.5%であった。標識後の計算された比活性は、455.0MBq/mgであった。
-DX3は、96.3%であり、精製からの回収率は、79.6%であった。計算された比活性は、445.2MBq/mgであった。
-IgG対照は、98.8%であり、精製からの回収率は、28.8%であった。計算された比活性は、443.4MBq/mgであった。
【0142】
実施例3-脳へのペイロード送達の評価
DX1、DX3、及びIgG対照を、無傷の血液脳関門を有する健常マウスに静脈内投与し、脳へのペイロード送達を、各事例において評価した(図2)。脳へのペイロード送達を、放射能を投与の2時間、6時間、24時間、48時間、72時間、及び96時間後に監視することによって測定した。また、甲状腺、左右の肺、左右の腎臓、及び肝臓へのペイロード送達を、これらの時点で評価した(図3及び4)。
【0143】
放射能取り込みを、動物をイソフルラン(4~5%の誘導、1.5~2%の維持)及びキャリアガスとしての酸素富化空気(3~600mL/分)で麻酔することによって測定した。動物を、SPECT/CTスキャナ(NanoSPECT/CT Plus、Mediso)に移送した。3匹のマウスのイメージングを同時に行い、3DヘリカルSPECTイメージングを、体全体について60分間にわたって実行した。
【0144】
SPECTスキャン後に、解剖学的参照についての同じ座標からのヘリカルCT(180回の投射、55kVp、750msの曝露時間)を実行した。動物の温度及び呼吸を、監視し(SA Instruments Inc.、NY,USA)、イメージングプロセス中に、それぞれ、+37℃及び70~100bpmで維持した。
【0145】
1立方センチメートル当たりの注入線量の百分率(%ID/cc)としての脳内の放射能取り込みを、PMODソフトウェアv3.7(PMOD technologies、Zurich,Switzerland)を使用して定量化した。関心領域(ROI)を、腎臓、肝臓、肺、及び任意選択で他の予期されないホットスポットの上に描画した。
【0146】
結果
図2に示されるように、DX1(2時間=1%ID/cc)及びDX3(2時間=1.6%ID/cc)の両方は、対照IgG(2時間=0.5%ID/cc)よりも、脳への放射性標識されたペイロードの送達において有意に有効であった。驚くべきことに、DX3は、そのより大きいサイズにもかかわらず、2時間の時点で、DX1よりも、血液脳関門を通過し、放射性標識されたペイロードを脳に送達することにおいて有意に有効であった。図2に示されるように、DX3は、DX1よりも1.5倍多くのペイロードを送達し、これは、DX3のIgG構造が、DX1のより小さいFv構造と比較して、脳へのペイロード送達を有意に増強することを示唆した。DX3の改善されたペイロード送達能力は、24時間の時点で更により顕著であり、DX1又はIgG対照のいずれかよりも10倍多くのDX3が、脳内で保持された。
【0147】
予期せずに、本発明者らはまた、DX3ペイロードが、脳内で、DX1及びIgG対照ペイロードの両方よりもはるかに長く持続し、DX3についての増加した放射能が、投与の最大96時間後まで観察されることを特定した(図2)。対照的に、最小放射能が、脳内で、DX1又はIgG対照の投与の48時間後に検出された(図2)。これは、血液脳関門を通過するDX3の改善された能力がまた、脳内のペイロードの長期のバイオアバラビリティと関連することを示唆するため、特に有利な知見である。
【0148】
興味深いことに、IgG対照に対してDX1及びDX3の両方の改善されたペイロード送達能力は、脳に制限されるように現れ、送達における有意な改善は、評価された他の臓器において認められなかった(図4及び5)。これらのデータは、DX1及びDX3が、血液脳関門を通過し脳を標的とすることを明らかに優先し、この特徴が、典型的には、抗体と関連しないことに鑑みて、これらを使用してペイロードをこの臓器に送達することにおける潜在的な有用性を更に強調する。
【0149】
実施例4-脳へのペイロード送達の評価(II)
無胸腺ヌードマウス及び同所性膠芽腫腫瘍モードを保有する無胸腺ヌードマウスの血液脳関門を通過する、Alexa647で標識されたDX1及びAlexa647で標識されたDX3の能力を評価した。
【0150】
腫瘍細胞の調製
細胞株U87 MGを、Syngeneインビトロ細胞バンク(一次供給源-ATCC-U87 MG-HTB-14)から回収し、増殖させ、細胞注射のために以下の詳細で使用した。
【表2】
【0151】
90%以上の生存率を有するU87 MG(ヒト膠芽腫)細胞を、研究のために選択した。7μLのPBS中に懸濁させた約2×10個の細胞を、細胞注射のために1マウス当たり使用した。無胸腺ヌードマウスに、U87 MG細胞(1マウス当たり約2×10個の細胞)を頭蓋内に注射した。
【0152】
細胞の頭蓋内注射
個別換気ケージ(IVC)内に収納された雌性無胸腺ヌードFoxn1nuマウスを、研究のために使用した。U87 MG細胞株を、細胞を動物の線条体(脳)内に頭蓋内に注射することによって、動物内で増殖させた。脳内直交性膠芽腫注射を、脳定位固定装置を使用して実行した。無胸腺ヌードマウスを、塩酸ケタミン及びキシラジン(100mg/kg+10mg/kg;腹腔内)を使用して麻酔した。麻酔の深度を、足指をつまむことによって確認し、動物を、脳定位固定フレーム内に配置した。手術領域を、ポビドンヨード及びsteriliumで殺菌し、1~1.5cmの切開を作って、頭蓋骨を露出させた。頭蓋骨の表面を清浄化し、次いで、その表面に、過酸化水素の希釈溶液を塗布した。小さい穿頭孔を、吻側からブレグマまで1mm(前側から後側)及び右側まで2mm(中央から側)、マイクロドリルを使用して作った。7μLのPBS中のU87 MG細胞を収容するHamiltonシリンジを、穿頭孔内に、必要とされる深さ(背腹側3mm)までゆっくり下げた。細胞を、脳定位固定インジェクタを使用して、1μL/分の速度で注射し、シリンジを、更に4分間適所に放置した。注射の完了後に、部位を、穏やか清浄化し、乾燥させ、ボーンワックスを、頭蓋骨に適用して、穿頭孔を閉じた。皮膚を(縫合糸-5メートル-VICRYL SUTURE(ポリグラチン910)、サイズ5-0)で縫合し、ポビドンヨード軟膏の薄層を、皮膚上に適用した。動物を、回復ケージに移し、加熱パッド上で覚醒させた。動物を、更に30分間監視し、その後、動物のホームケージに移送した。合計で、26匹のマウスを、4つのバッチにおいて細胞注射のために使用した。
【0153】
ランダム化
非腫瘍保有健常活動性マウスを、群I及びIIのために選択した。動物を、体重(平均体重
【数1】
24g)に基づく1群当たり7匹のマウス(3+2+2)を考慮して、別個にランダム化した。類似して、U87 MG細胞注射マウス(n=26)を、群III及びIVへのランダム化のために使用した。細胞注射の14~19日後に、14匹のマウスを、神経学的スコアリングに基づいて選択し、同所性膠芽腫保有処置群(群III及びIV)としての2つの群にランダム化し、体重(平均体重
【数2】
24g)に基づく1群当たり7匹のマウス(3+2+2)を維持した。ランダム化後に、投薬を、体重に基づいて、10mL/kgの用量体積として開始した。
【0154】
用量製剤及び投与経路
以下の用量製剤を、投薬日に使用した。
【表3】
【0155】
イメージング
投薬後に、In-vivo Xtreme(Bruker)を使用するインビボイメージングを、0、1、4、12、24、48、72、及び96時間の時点で実施した。4時間(n=2)、24時間(n=2)、及び96時間(n=3)での実験期間の終了時に、選択された動物からの採血を実施し、動物を安楽死させた。脳、肝臓、腎臓、肺及び脾臓、骨格筋(例えば、腓腹筋、脛骨、ヒラメ筋正常)組織を、エクスビボイメージングのために収集し、シグナル強度を測定した。
【0156】
血液及び脳(PKプロファイリング)
4時間(n=2)、24時間(n=2)、及び96時間(n=3)での実験期間の終了時に、選択された動物からの採血を実施した。40μLの血液試料を、160μLのHBSE(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA pH7.4)溶液と混合し、4000rpmで15分間遠心分離し、上清を、PKプロファイリングのために処理した。脳を、採取し、瞬間凍結させた。更なるPK分析を、血漿及び脳(瞬間凍結)試料において実行した。
【0157】
結果
このイメージング研究において、静脈内投与された、Alexa fluor 647で標識された20mg/kgの用量の試験化合物DX1(S1)及び50mg/kgの用量の試験化合物DX3(S9)を、正常な無胸腺ヌードマウス(非腫瘍保有)及びU87 MG(ヒト膠芽腫)腫瘍を保有する無胸腺ヌードマウスの両方における薬物生体内分布及び血液脳関門(BBB)の通過について評価した。Alexa fluor 647は、リジン残基を介してDX1及びDX3にコンジュゲートしていた。非腫瘍保有動物を、体重に基づいて、各群において7匹のマウス(3+2+2)として、群I及び群IIの2つの群に別個にランダム化した。類似して、U87 MG同所性腫瘍保有動物を、神経学的スコアリング(歩行、整合、探索行動、四肢力、体位、反射、及びグルーミング)に基づいて選択し、体重(1群当たり平均体重
【数3】
24g)に基づいて、各群において7匹のマウス(3+2+2)として、群III及びIVの2つの群に別個にランダム化した。
【0158】
Alexa fluor 647で標識された単回用量のDX1(S1)(20mg/kg)を、群I(非腫瘍保有無胸腺ヌードマウス-DX1)及び群III(同所性膠芽腫保有ヌードマウス-DX1)に静脈内投与した。類似して、Alexa fluor 647で標識された50mg/kgの用量のDX3(S9)を、群II(非腫瘍保有無胸腺ヌードマウス-DX3)及びIV(同所性膠芽腫保有ヌードマウス-DX3)に静脈内投与した。
【0159】
イメージング最適化を、空のバイアル、並びにAlexa fluorで標識されたDX1(S1)及びDX3(S9)を収容するバイアルで実行した。正常なマウス及び神経膠腫を保有するマウスを、最適化のために使用した。バックグラウンドシグナル強度は、650nmの励起、700nmの発光、10秒の露光において観察されなかった。同じパラメータを、好適であると考え、インビボ及びエクスビボイメージングのために使用した。全ての動物を、各時点での背側及び腹側の両方からのインビボイメージングのために使用した。4時間(n=2)、24時間(n=2)、及び96時間(n=3)の特定の時点でのインビボイメージング後に、動物を人道的に安楽死させ、エクスビボイメージングを、脳、腎臓、肝臓、肺、骨格筋、及び脾臓などの臓器について実行した。
【0160】
静脈内投与された、Alexa fluor 647で標識された20mg/kgのDX1(S1)及び50mg/kgのDX3(S9)の試験化合物の両方は、非腫瘍保有無胸腺ヌードマウス及び同所性U87 MG保有無胸腺ヌードマウスにおける生体内分布及びBBBの通過について評価されたときに十分に許容された。
【0161】
エクスビボイメージング(図5)は、Alexa fluor 674で標識されたDX3が、非腫瘍保有無胸腺ヌードマウス及び同所性U87 MG保有無胸腺ヌードマウスの脳内で検出され得ることを示す。これは、DX3が無傷の血液脳関門を通過することができることを示唆するため、特に有利な知見である。上記の知見をまとめると、本実施例は、BBBを通過する様々なペイロードの細胞透過性抗DNA抗体媒介性輸送についての一般的な概念を支持する。
【0162】
多数の変形及び/又は修正が、広範に記載される本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示される本開示になされ得ることが、当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、全ての点において例示であり限定ではないと考えられるべきである。
【0163】
上で考察される全ての刊行物は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、又は物品などの任意の考察は、本開示についての文脈を提供する目的のためのみである。これらの事項のうちのいずれか又は全てが、従来技術の基礎の一部を形成すること、又は本出願の各請求項の優先日の前に存在するように本開示に関連する分野における技術常識であったことを認めるものとして解釈されるべきでない。
【0164】
本出願は、2021年5月25日に出願されたAU2021901567の優先権を主張し、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024519169000001.app
【国際調査報告】