(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】新規なデュアルヘルパープラスミド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20240426BHJP
C12N 15/64 20060101ALI20240426BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240426BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240426BHJP
【FI】
C12N15/113 100Z
C12N15/64 Z ZNA
C12N7/01
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573241
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 KR2022007553
(87)【国際公開番号】W WO2022250491
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0068364
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520288331
【氏名又は名称】ニューラクル ジェネティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジュ ソク
(72)【発明者】
【氏名】コン,フン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ユン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA23
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、組換えアデノ随伴ウイルス生産用デュアルヘルパープラスミドに関する。本発明のデュアルヘルパープラスミドを用いた二重形質感染方法は、伝統的なアデノ随伴ウイルス生産に用いられる三重形質感染方法と比較して、1)同時形質感染確率の増加、2)組換えアデノ随伴ウイルスの生産率増加、3)プラスミド生産及び精製にかかる費用及び時間減少などの長所から、遺伝子治療剤の効率的生産に有用に活用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子が順次に連結され、前記rep-cap遺伝子は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に時計回り方向に(5’から3’に)位置することを特徴とする、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミド。
【請求項2】
前記rep-cap遺伝子の5’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、前記rep-cap遺伝子の3’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結されることを特徴とする、請求項1に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項3】
E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子が順次に連結され、前記rep-cap遺伝子は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に反時計回り方向に(3’から5’に)位置することを特徴とする、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミド。
【請求項4】
前記rep-cap遺伝子の3’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、前記rep-cap遺伝子の5’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結されることを特徴とする、請求項3に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項5】
前記rep-cap遺伝子はrep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子の3’末端は前記cap遺伝子の5’末端に連結されることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項6】
前記E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子は、
図5Aの開裂地図(cleavage map)のように配列されたことを特徴とする、請求項1、2及び5のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項7】
前記E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子は、
図5Bの開裂地図のように配列されたことを特徴とする、請求項3~5のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項8】
前記rep遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(adeno-associated virus serotype2,AAV2)由来のrep2遺伝子を含むことを特徴とする、請求項5~7のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項9】
前記rep2遺伝子は、配列番号29に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項8に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項10】
前記cap遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2;cap2)、血清型5(AAV5;cap5)、血清型8(AAV8;cap8)、又は血清型9(AAV9;cap9)由来のcap遺伝子を含むことを特徴とする、請求項5~9のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項11】
前記cap遺伝子は、配列番号30、配列番号31、配列番号32又は配列番号33に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項10に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項12】
前記E2a遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のE2a遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項13】
前記E2a遺伝子は、配列番号34に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項12に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項14】
前記E4遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のE4遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項15】
前記E4遺伝子は、配列番号35に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項14に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項16】
前記VA RNA遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のVA RNA遺伝子を含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項17】
前記VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項16に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項18】
調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドであって、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含むことを特徴とするデュアルヘルパープラスミド:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号30に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【請求項19】
調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドであって、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含むことを特徴とするデュアルヘルパープラスミド:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号31に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【請求項20】
調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドであって、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含むことを特徴とするデュアルヘルパープラスミド:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号32に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【請求項21】
調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドであって、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含むことを特徴とするデュアルヘルパープラスミド:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号33に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【請求項22】
前記rep遺伝子及びcap遺伝子は、時計回り方向であることを特徴とする、請求項18~21のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項23】
前記rep遺伝子の5’末端が前記E2a遺伝子の5’末端に連結され、前記rep遺伝子の3’末端が前記cap遺伝子の5’末端に連結され、前記cap遺伝子の3’末端が前記VA RNA遺伝子の3’末端に連結されることを特徴とする、請求項22に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項24】
前記rep遺伝子及びcap遺伝子は、反時計回り方向であることを特徴とする、請求項18~21のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項25】
前記rep遺伝子の5’末端が前記VA RNA遺伝子の3’末端に連結され、前記rep遺伝子の3’末端が前記cap遺伝子の5’末端に連結され、前記cap遺伝子の3’末端が前記E2a遺伝子の5’末端に連結されることを特徴とする、請求項24に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項26】
抗生剤抵抗性遺伝子をさらに含むことを特徴とする、請求項1~25のいずれかに記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項27】
前記抗生剤抵抗性遺伝子は、アンピシリン抵抗性遺伝子、カナマイシン抵抗性遺伝子又は両方を含むことを特徴とする、請求項26に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項28】
前記アンピシリン抵抗性遺伝子は、配列番号37に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項27に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項29】
前記カナマイシン抵抗性遺伝子は、配列番号38に提示された配列を含むことを特徴とする、請求項27に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項30】
請求項1~27のいずれか一項のデュアルヘルパープラスミドを含む組成物。
【請求項31】
追加プラスミドをさらに含むことを特徴とする、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記追加プラスミドは、AAV構築物プラスミドであることを特徴とする、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記追加プラスミドは、下記を含むことを特徴とする、請求項31に記載の組成物:
(a)逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR);
(b)外来遺伝子;及び
(c)外来遺伝子に作動可能に連結された調節要素。
【請求項34】
前記調節要素は、プロモーター(promoter)、エンハンサー(enhancer)、エクソン(exon)配列、イントロン(intron)配列、スプライシング供与体(splicing donor)又は受容体(acceptor)配列、miRNA標的(target)配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節要素(woodchuck hepatitis virus posttranscriptional regulatory element,WPRE)配列、ポリアデニル化(polyadenylation,pA)配列又はこれらの任意の組合せを含むことを特徴とする、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記外来遺伝子は、野生型ポリペプチド又はその任意の変異体、融合タンパク質、抗体又はその抗原-結合断片、RNA-ベース分子又はその任意の組合せをエンコードすることを特徴とする、請求項30~34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
請求項1~29のいずれか一項のデュアルヘルパープラスミド又は請求項30~35のいずれか一項の組成物を含む細胞。
【請求項37】
第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を変形させる段階を含む組換えAAV生産方法であって、前記第1プラスミドは、請求項1~29のいずれか一項のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは、外来遺伝子を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
前記変形させる段階は、前記細胞を前記第1プラスミド及び第2プラスミドで形質感染させる段階を含むことを特徴とする、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記生産された組換えAAVを分離する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を変形させる段階を含む組換えAAVの生産収率を増加させる方法であって、前記第1プラスミドは、請求項1~29のいずれか一項のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは、外来遺伝子を含み、前記変形後生産された組換えAAVの量は、対照方法で生産された相応する量と比較して増加することを特徴とする方法。
【請求項41】
前記対照方法は、下記3種の別途のプラスミドを含むように該当の細胞を変形させる段階を含むことを特徴とする、請求項40に記載の方法:i)Repタンパク質及びCapタンパク質をエンコードする遺伝子を含むRep-Capプラスミド;ii)アデノウイルスのタンパク質(E2a、E4)及びVA RNAをエンコードする遺伝子を含むヘルパープラスミド;及び、iii)外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミド。
【請求項42】
前記生産された組換えAAVの量が、前記対照方法を用いて生産された相応する量と比較して、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍又は少なくとも約50倍増加したことを特徴とする、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
請求項40~62のいずれか一項の方法によって生産された組換えAAV。
【請求項44】
請求項43の組換えAAV及び薬剤学的に許容可能な賦形剤を含む薬剤学的剤形。
【請求項45】
請求項43の組換えAAV又は請求項44の薬剤学的剤形を対象体に投与する段階を含む、それを必要とする対象体において疾病又は障害を治療する方法。
【請求項46】
それを必要とする対象体の疾病又は障害治療用の請求項43の組換えAAV又は請求項44の薬剤学的剤形。
【請求項47】
それを必要とする対象体の疾病又は障害治療用薬剤の製造における請求項43の組換えAAV又は請求項44の薬剤学的剤形の用途。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、遺伝子伝達体である組換えAAV生産用の新規なデュアルヘルパープラスミドに関する。
【0002】
[背景技術]
アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus,AAV)は一本鎖DNAウイルスで、増殖のためにアデノウイルスなどの手助けが必要なヘルパー依存型パルボウイルス(helper-dependent parvoviruses)に属する。これは、ゲノムサイズが約4.7kbpである非病原性ウイルスであり、細胞性免疫反応を誘導しない。感染対象は血清型(serotype)によって大きく異なり、ウイルスは、非分裂(non-dividing)及び分裂(dividing)細胞に遺伝子を伝達することができる。特に、AAVによって伝達される遺伝子の発現は、生体内で長期間持続する[1-3]。
【0003】
一般に、組換えアデノ随伴ウイルスは、宿主細胞(例えば、HEK293細胞)の三重形質感染(triple transfection)によって生産される[4]。三重形質感染を用いた組換えAAV生産は、1)ITR(逆末端反復配列(inverted terminal repeats))で囲まれた遺伝子発現カセットを持つAAV構築物(construct)プラスミド、2)アデノ随伴ウイルスゲノムの複製に必要なRepタンパク質とウイルス粒子(virus particle)を構成するカプシド(capsid)タンパク質を提供する「Rep-Capプラスミド」、最後に、3)アデノ随伴ウイルスの生活環(life cycle)に役立つアデノウイルスのタンパク質(E2a、E4)及びRNA(VA RNA)を提供する「ヘルパー(helper)プラスミド」が必要である。この3種のプラスミドが、アデノウイルスのE1及びE3遺伝子を提供するHEK293細胞株などに形質感染されるとアデノ随伴ウイルスが生産される[5]。
【0004】
上述した3種のプラスミドが同時に形質感染された細胞でのみ組換えアデノ随伴ウイルスベクターが生産される。もし、2種のプラスミドを一つに合わせて二重形質感染(double transfection)をすると同時形質感染(co-transfection)の確率が高くなり、結果として組換えアデノ随伴ウイルスの生産率が高まるであろう[6,7]。また、組換えアデノ随伴ウイルスを生産する上で必要なプラスミドの数が3種から2種に減ると、プラスミドを生産及び精製するのにかかる時間と費用も節約されるであろう[8]。
【0005】
組換えアデノ随伴ウイルスベクターは、rep及びcap遺伝子を保有せず、アデノウイルス由来遺伝子を有していないため、生体内で複製不可である[9]。
【0006】
しかしながら、デュアルヘルパープラスミドを作る過程で、Rep-Capプラスミドとヘルパープラスミドとを合わせる方法によってプラスミド内のrep、cap、E2、E4、VA RNA遺伝子の相対的な位置が変わるが、これは、それぞれの遺伝子発現にそれぞれ異なる程度の影響を与えてしまい、生産性に及ぼす結果が非常に予測し難い。
【0007】
このため、組換えアデノ随伴ウイルスベクターの形質感染確率及びこれによる組換えアデノ随伴ウイルスの生産率を増加させるとともに、生産及び精製にかかる時間及び費用を低減するように考案された操作デュアルヘルパープラスミド及びその製造方法が切実に望まれている。
【0008】
[先行技術文献]
[非特許文献]
非特許文献1]BioDrugs.2017.31(4):317-334.Adeno-Associated Virus(AAV) as a Vector for Gene Therapy.M.F.Naso,B.Tomkowicz,W.L.Perry3rd,W.R.Strohl.
[非特許文献2]Expert Opin.Drug Saf.2002.1(1):79-91.Safety of Adeno-Associated Viral gene Therapy Vectors:A Current Evaluation.P.E.Monahan,K.Jooss,M.S.Sands.
[非特許文献3]Gene Ther.1996.3(8):658-68.Safety of single-dose administration of an adeno-associated virus(AAV)-CFTR vector in the primate lung.C.K.Conrad,S.S.Allen,S.A.Afione,T.C.Reynolds,S.E.Beck,M.Fee-Maki,X.Barrazza-Ortiz,R.Adams,F.B.Askin,B.J.Carter,W.B.Guggino,T.R.Flotte.
[非特許文献4]J.Virology.1998.72(3):2224-2232.Production of high-titer recombinant adeno-associated virus vectors in the absence of helper adenovirus.X.Xiao,J.Li,R.J.Samulski.
[非特許文献5]Viruses.2010.2(8):1681-1703.Adenoviral producer cells.I.Kovesdi and S.J.Hedley.
[非特許文献6]Hum.Gene Ther.1998.9(18):2745-2760.Novel tools for production and purification of recombinant adeno-associated virus vectors.D.Grimm,A.Kern,K.Rittner,J.A.Kleinschmidt.
[非特許文献7]Mol.Ther.2003.7(6):839-850.Helper virus-free,optically controllable,and two-plasmid-based production of adeno-associated virus vectors of serotypes 1 to 6.D.Grimm,M.A.Kay,J.A.Kleinschmidt.
[非特許文献8]Biores.Open Access.2020.9(1):219-228.Two-Plasmid Packaging System for Recombinant Adeno-Associated Virus.Q.Tang,A.M.Keeler,S.Zhang,Q.Su,Z.Lyu,Y.Cheng,G.Gao,T.R.Flotte.
[非特許文献9]Hum.Gene Ther.2017.28(11):1075-1086 Small But Increasingly Mighty:Latest Advances in AAV Vector Research,Design,and Evolution.D.Grimm,H.Buening.
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0009】
本発明は、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記E2a、E4及びVA RNA遺伝子は順次に連結され、前記rep-cap遺伝子は、、E2a遺伝子の5’末端及びVA RNA遺伝子の3’末端との間に時計回り方向に(5’から3’に)位置する。
【0010】
本発明は、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記E2a、E4及びVA RNA遺伝子は順次に連結され、前記rep-cap遺伝子は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に反時計回り方向に(3’から5’に)位置する。
【0011】
本発明は、調節要素(regulatory component)を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号30に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0012】
本発明は、調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号31に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0013】
本発明は、調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号32に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0014】
本発明は、調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号33に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0015】
本発明は、本発明のデュアルヘルパープラスミドを含む組成物を提供する。
【0016】
本発明は、本発明のデュアルヘルパープラスミド又は組成物を含む細胞を提供する。
【0017】
本発明は、第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を変形させる段階を含む組換えAAVを製造する方法を提供し、前記第1プラスミドは本発明のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは外来遺伝子(transgene)を含む。
【0018】
本発明は、第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を変形させる段階を含む組換えAAVの生産収率を増加させる方法を提供し、前記第1プラスミドは本発明のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは外来遺伝子を含み、前記変形後に生産された組換えAAVの量は、基準方法で生産された相応する量と比較して増加する。
【0019】
本発明は、本発明の方法によって生産された組換えAAVを提供する。
【0020】
本発明は、本発明の組換えAAV及び薬剤学的に許容可能な賦形剤を含む薬剤学的製剤を提供する。
【0021】
本発明は、本発明の組換えAAV又は薬剤学的製剤を対象体に投与する段階を含む、それを必要とする対象体において疾病又は障害を治療する方法を提供する。
【0022】
本発明は、それを必要とする対象体において疾病又は障害を治療するための薬物の製造における本発明の組換えAAV又は薬剤学的製剤の用途を提供する。
【0023】
[図面の簡単な説明]
[
図1]
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1Aは、三重形質感染のためのpHelper-NG構築物を概略的に示し、アデノウイルス血清型5のE2a、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1B及び
図1Cは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向(時計回り方向、5’->3’)にクローニングして製造したpHION8-BF構築物(
図1B)及び逆方向(反時計回り方向、3’->5’)にクローニングして製造したpHION8-BR構築物(
図1C)を概略的に示す。
図1D及び
図1Eは、E4遺伝子の開始部分に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-NF構築物(
図1D)及び逆方向にクローニングして製造したpHION8-NR構築物(
図1E)を概略的に示す。
図1Fは、VA RNA遺伝子の開始部分とE4遺伝子の末端部分との間に存在するAsiSI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-AF構築物を概略的に示す。
【0024】
[
図2]アデノ随伴ウイルスベクター血清型2(AAV2)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG2構築物の開裂地図を示す。pHelper-NGプラスミド内のE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を正方向に挿入してpHNG2構築物を製造した。
【0025】
[
図3]アデノ随伴ウイルスベクター血清型9(AAV9)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG9構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap9遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG9構築物を製造した。
【0026】
[
図4]アデノ随伴ウイルスベクター血清型5(AAV5)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG5K構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap5遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG5K構築物を製造した。
【0027】
[
図5]
図5A及び
図5Bは、pHNG及びpHNGR構築物の開裂地図を示す。
図5Aは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に正方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示し、
図5Bは、逆方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示す。
【0028】
[
図6]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【0029】
[
図7]浮遊細胞株(Expi293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【0030】
[
図8]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG2を用いた二重形質感染(Double)によるAAV2生産量増加の効果を観察した結果である。
【0031】
[
図9]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG9を用いた二重形質感染(Double)によるAAV9生産量増加の効果を観察した結果である。
【0032】
[
図10]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG5Kを用いた二重形質感染(Double)によるAAV5生産量増加の効果を観察した結果である。
【0033】
[
図11]三重形質感染(Triple)又はHelper-In-One構築物で二重形質感染(Double)して生産されたAAV8間の細胞形質導入(transduction)効率の同等性結果である。
【0034】
[
図12]三重形質感染(Triple)又はpHNG2構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV2間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【0035】
[
図13]三重形質感染(Triple)又はpHNG9構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV9間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【0036】
[発明を実施するための形態]
本発明は、組換えAAVを生産するための組成物及び方法、並びに疾患又は障害を治療するための前述のrAAVの用途に関する。本明細書に述べているように、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、複数の遺伝子(例えば、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子)を含む。本出願人は、特定構成で多重遺伝子を配列することによって、組換えAAV生産時に収率又は生産性が増加又は減少し得ることを確認した。本発明の他の側面は本出願全体にわたって提供される。
【0037】
I.定義
本発明全般にわたって用語「一つ」又は「一」は、当該エンティティのうち一つ以上を意味する。例えば、「一つのポリペプチド」は、一つ以上のポリペプチドを表すものと理解される。このように、用語「一つ」(又は、「一」)、「一つ以上」及び「少なくとも一つ」は、本明細書において相互互換的に使われてよい。
【0038】
また、本明細書で使われる「及び/又は」は、他のものがあるか又はない2つの明示された特徴又は構成要素のそれぞれの特定開示として見なされるべきである。したがって、本明細書において、「A及び/又はB」のような句において使われる用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むように意図される。同様に、「A、B及び/又はC」のような句において使われる用語「及び/又は」は、次のそれぞれの側面を含むように意図される:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0039】
数字又は一連の数字の前における「少なくとも」という用語は、「少なくとも」という用語に隣接した数字及び論理的に含まれ得る文脈において明確に全ての後続数字又は整数を含むものと理解される。例えば、核酸分子のヌクレオチド数は整数でなければならない。例えば、「21-ヌクレオチド核酸分子の少なくとも18個ヌクレオチド」は、18個、19個、20個又は21個ヌクレオチドが表示された特性を有するということを意味する。少なくとも一連の数字又は範囲の前にある場合に、「少なくとも」は、一連の数字又は範囲の各数字を修正し得るものと理解される。「少なくとも」は整数に限定されない(例えば、「少なくとも5%」は、有效数字の数を考慮せず、5.0%、5.1%、5.18%を含む。)。
【0040】
本明細書において、「含む」という用語で記述される場合に、「構成される」及び/又は「本質的に構成される」との用語で記述される類似の形態も提供されるものと理解される。
【0041】
特に断らない限り、本明細書に使われる全ての技術及び科学用語は、本発明に係る技術の分野における通常の技術者が一般に理解するものと同じ意味を有する。例えば、文献(The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;and Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Press)は、本明細書で使われる多数の用語の一般的な意味を当業者に提供する。
【0042】
単位、接頭辞及び記号は、SI(Systeme International de Unites)許容形式で表示される。数字範囲には、範囲を限定する数字が含まれる。特に表示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向へと左側から右側に記録される。本明細書に提供された題目は、明細書全体を参照して有し得る本発明の様々な側面の制限ではない。したがって、下記定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0043】
用語「約」は、本明細書において概略、凡そ、周辺又は領域を意味するもので使われる。「約」という用語が数値範囲と共に使われる場合に、これは、明示された数値の上下に境界を拡張して当該範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、例えば10%の変動によって、上又は下に(より高かい又は低い)明示された値の上下に数値を修正し得る。
【0044】
本明細書で使われる用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、AAV類型1、AAV類型2、AAV類型3(類型3A及び3Bを含む。)、AAV類型4、AAV類型5、AAV類型6、AAV類型7、AAV類型8、AAV類型9、AAV類型10、AAV類型11、AAV類型12、AAV類型13、AAVrh.74、ヘビAAV、鳥類AAV、ウシAAV、イヌ(canine)AAV、ウマ(equine)AAV、ヒツジ(ovine)AAV、ヤギAAV、エビAAV、これらののAAV血清型と系統物(Gao et al.(J.Virol.78:6381(2004)) and Moris et al.(Virol.33:375(2004))、及び現在知られている或いは後に発見される他のAAVを含むが、これに限定されない(例えば、文献(FIELDS et al.Virology 2,Chapter 69(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)参照)。一部の側面において、「AAV」は、公知のAAVの誘導体を含む。一部の側面において、「AAV」は、修正された又は人工のAAVを含む。
【0045】
用語「投与」、「投与する」及びその類義語は、組成物(例えば、本発明のデュアルヘルパープラスミドを用いて生産された組換えAAV伝達体ベクター)を、薬学的に許容可能な経路を通じて対象体に導入することを意味する。対象体に組成物を導入することは、腫瘍内(intratumorally)、経口、肺(pulmonarily)、鼻腔内(intranasally)、非経口(parentally)(静脈内(intavenously)、動脈内(intra-arterially)、筋肉内(intramuscularly)、腹腔内(intraperitoneally)又は皮下(subcutaneously))、直腸内(rectally)、リンパ内(intralymphatically)、脊髄腔内(intrathecally)、眼球周囲(periocularly)又は局所(topically)を含む任意の適切な経路による。投与は、自己投与と他人による投与が含まれる。適切な投与経路は、組成物又は作用剤が意図した機能を果たすようにする。例えば、適切な経路が静脈内である場合に、組成物又は作用剤を対象体の静脈に導入することによって組成物を投与する。
【0046】
本発明において、「抗生剤抵抗性遺伝子(antibiotic resistance gene)」とは、微生物が抗生剤に露出されても生存できるように薬物耐性を付与する目的でプラスミドに挿入された遺伝子を意味する。本出願に記載されているように、一部の側面において、クローニングを用いて所望のプラスミドを有する細胞をスクリーニングするために抗生剤抵抗性遺伝子をプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)に導入できる。本発明に有用な抗生剤抵抗性遺伝子の例は、アンピシリン(Ampicillin)、カナマイシン(Kanamycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、ゲンタマイシン(Gentamycin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、エリスロマイシン(Erythromycin)、バンコマイシン(Vancomycin)、ペニシリン(penicillin)、スペクチノマイシン(spectinomycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、スルファジアジン(Sulfadiazine)及びトリメトプリム(trimethoprim)抵抗性遺伝子を含むが、これに限定されない。
【0047】
また、本明細書に記述されているように、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、特定配向(orientation)/構成(configuration)でデュアルヘルパープラスミドと一緒に存在するrep遺伝子及びcap遺伝子を含む。一部の側面において、rep及びcap遺伝子は、「時計回り方向(clockwise direction)」、「正方向(forward direction)」又は「5’→3’」(例えば、
図5Aを参照)であり、これは、rep-cap遺伝子が、時計回り方向に、又は複製が始まる部位(5’)から複製が終る部位(3’)への方向に挿入又は含まれることを意味する。一部の側面において、rep及びcap遺伝子は、「反時計回り方向(counterclockwise direction)」、「逆方向(reverse direction)」又は「3’→5’」(例えば、
図5Bを参照)であり、これは、rep-cap遺伝子が、反時計回り方向に、又は複製が終わる部位(3’)から複製が始まる部位(5’)への方向に挿入又は含まれることを意味する。
【0048】
本明細書において、用語「rep遺伝子」は、一つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)をエンコードする遺伝子を意味し、前記ORFは、AAV Repタンパク質又はその変異体又は誘導体をエンコードする。このようなAAV Repタンパク質(又は、その変異体又は誘導体)は、AAVゲノム複製及び/又はAAVゲノムパッケージングに関与し、野生型rep遺伝子は、4種のRepタンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をエンコードする。特記しない限り、「rep遺伝子」は、野生型rep遺伝子、その誘導体及び同等な機能を有する人工rep遺伝子を含む。一部の側面において、rep遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2)に由来するrep2遺伝子であってよい。一部の側面において、rep2遺伝子は、配列番号29に提示された核酸配列を含む。
【0049】
本明細書において、用語「cap遺伝子」は、一つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)をエンコードする遺伝子を意味し、ORFは、AAV Cap構造タンパク質、又はその変異体又は誘導体をエンコードする。4個のタンパク質がcap遺伝子から翻訳される。そのうち、VP1、VP2、VP3タンパク質は、AAV粒子を構成する構造タンパク質であり、AAP(assembly-activating protein)は、構造タンパク質によるAAV粒子の形成(組立て)を促進する。特記しない限り、「cap遺伝子」は、野生型キャップ遺伝子、その誘導体及びこれと同等な機能を有する人工キャップ遺伝子を含む。一部の側面において、cap遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2;cap2)、血清型5(AAV5;cap5)、血清型8(AAV8;cap8)又は血清型9(AAV9;cap9)に由来するcap遺伝子である。一部の側面において、cap遺伝子は、配列番号30(cap2)、配列番号31(cap5)、配列番号32(cap8)又は配列番号33(cap9)に提示された核酸配列を含む。
【0050】
本明細書において、用語「E2a遺伝子」は、AAVのプロモーターを調節し、AAVゲノム複製を手伝い、Rep mRNAのスプライシングとカプシドmRNAの安定性(stability)の増大によるカプシドタンパク質の生産性増加に関与するアデノウイルスのタンパク質E2aをコードする遺伝子を意味する。特記しない限り、「E2a遺伝子」は、野生型E2a遺伝子、その誘導体及びこれと同等な機能を有する人工E2a遺伝子を含む。本発明の具体的な実施例において、前記E2a遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のE2a遺伝子である。一部の側面において、前記E2a遺伝子は、配列番号34に提示された核酸配列を含む。
【0051】
本明細書において、用語「E4遺伝子」は、AAVの生活環においてAAVゲノムの第二鎖(second-strand)の合成に関与し、AAVゲノムの複製を抑制する細胞内機序を担当するMRN(Mre11-Rad50-Nbs1)コンプレックス形成抑制によってAAVゲノムの複製を手伝うアデノウイルスのタンパク質E4をコードする遺伝子を意味する。特記しない限り、「E4遺伝子」は、野生型E4遺伝子、その誘導体及び同等な機能を有する人工E4遺伝子を含む。一部の側面において、E4遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来するE4遺伝子である。一部の側面において、E4遺伝子は、配列番号35に提示された核酸配列を含む。
【0052】
本明細書において、用語「VA RNA遺伝子」又は「VA RNA領域」は、AAVカプシドmRNAの安定性(stability)増加及び翻訳(translation)効率性を向上させ、Rep52タンパク質の分解防止を手伝うVA RNAを生産するVA領域を意味する。特記しない限り、「VA RNA遺伝子」は、野生型VA RNA遺伝子、その誘導体及び同等な機能を有する人工VA RNA遺伝子を含む。一部の側面において、VA RNA遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来するVA RNA遺伝子である。一部の側面において、VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された核酸配列を含む。
【0053】
本明細書において、用語「保存された(conserved)」は、それぞれ比較される2個以上の配列の同じ位置で変更されずに発生するポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列のヌクレオチド又はアミノ酸残基を意味する。相対的に保存されたヌクレオチド又はアミノ酸は、配列の他の箇所に現れるヌクレオチド又はアミノ酸に比べて、より関連した配列間に保存されたものである。
【0054】
本明細書において、用語「調節要素(control element)」は、作動可能に連結された核酸(例えば、外来遺伝子)の発現を調節(例えば、増加又は減少)する核酸配列を意味する。適切な調節要素の非制限的な例は、本発明の他のところで提供される。
【0055】
一部の側面において、2個以上の配列が互いに100%同一である場合に、「完全に保存された(completely conserved)」又は「同一である(identical)」ことを表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一である場合に、「高度に保存された(highly conserved)」と表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに約70%、約80%、約90%、約95%、約98%又は約99%同一である場合に、「高度に保存された」と表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一である場合に、「保存された(conserved)」と表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、又は約99%同一である場合に、「保存された(conserved)」と表す。配列の保存は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全長に適用されてもよく、その部分、領域又は特徴に適用されてもよい。
【0056】
本明細書において、用語「エンハンサー(enhancer)」は、向上した転写を提供できる配列を含み、一部の場合に、さらに他の制御配列に対するそれらの配向と独立して働き得るDNAの分節を意味する。エンハンサーは、プロモーター及び/又は他のエンハンサー要素と協力的に又は付加的に働き得る。
【0057】
用語「賦形剤(excipient)」及び「担体(carrier)」は、相互互換的に使われ、化合物、例えば外来遺伝子を含み、本明細書に提供されたデュアルヘルパープラスミドを用いて生産された組換えAAV伝達体ベクターの投与をより容易にするために薬剤学的組成物に添加される不活性物質を意味する。
【0058】
用語「エクソン(exon)」は、タンパク質をエンコードする核酸の限られた部分、又は事前処理された(又は、前駆体)RNAの一部がスプライシングによって除去された後、RNA分子の成熟した形態で表現される核酸配列を意味する。成熟したRNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)又はrRNA又はtRNAのような非暗号化RNAの機能的形態であってよい。
【0059】
用語「発現(expression)」は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えば、RNA又はポリペプチドを生産する過程を意味する。これは、メッセンジャーRNA(mRNA)へのポリヌクレオチドの転写及びポリペプチドへのmRNAの翻訳を含むが、これに限定されない。発現は、「遺伝子産物」又は「エンコードされたタンパク質」を生産する。本明細書で使われているように、遺伝子生成物は、例えば、遺伝子の転写によって生成されたRNAのような核酸であってよい。本明細書において、遺伝子産物は、転写体から翻訳される核酸又はポリペプチドであってよい。本明細書に記述された遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化又はスプライシングを有する核酸、又は翻訳後修飾、例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化、脂質の添加、他のタンパク質サブユニットとの結合又はタンパク質分解切断を有するポリペプチドを含む。
【0060】
本明細書において、用語「同一性(identity)」は、重合体分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的な単量体保存を意味する。追加修飾語がない「同一な(identical)」という用語と関連して、例えば、ポリヌクレオチドAがポリヌクレオチドBと同一であるということは、ポリヌクレオチド配列が100%同一であること(100%配列同一性)を意味する。例えば、「70%同一」のように2つの配列を記述することは、「70%配列同一性」を有するものを説明することと同一である。
【0061】
例えば、2個のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列のパーセント同一性の計算は、最適の比較目的のために2個の配列を整列することによって行われてよい(例えば、最適配列のために第1及び第2ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列のいずれか一方又は両方にギャップが導入されてよく、同一でない配列は比較目的で無視されてよい。)。特定の側面において、比較目的のために整列された配列の長さは、基準配列の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の参照配列長である。当該アミノ酸位置のアミノ酸又はポリヌクレオチドの場合、塩基を比較する。
【0062】
第一配列の位置が第二配列の当該位置と同じアミノ酸又はヌクレオチドによって占有されている場合に、分子は当該位置において同一である。2個の配列間のパーセント同一性は、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して配列によって共有される同じ位置の数の関数であり、これは、2個の配列の最適整列のために導入される必要がある。配列の比較及び2個の配列間のパーセント同一性の測定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。
【0063】
様々な配列(例えば、ポリヌクレオチド配列)を整列するために利用可能な適切なソフトウェアプログラムは、様々なソースから入手可能である。パーセント配列同一性を測定するための一つの適切なプログラムは、米国政府の国立生命工学情報センターBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)で利用可能なプログラムのBLAST製品群の一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムを用いて両シーケンス間の比較を行う。BLASTNは、核酸配列を比較するために用いられるのに対し、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために用いられる。他の適切なプログラムは、例えば、EMBOSS生物情報学プログラム製品群の一部であるNeedle、Stretcher、Water又はMatcherであり、www.ebi.ac.uk/Tools/psaのEuropean Bioinformatics Institute(EBI)でも使用可能である。
【0064】
配列整列は、MAFFT、Clustal(ClustalW,Clustal X又はClustal Omega)、MUSCLEなどのような当業界に公知の方法を用いて行われてよい。
【0065】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列と整列される単一ポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の様々な領域はそれぞれ、それら自身のパーセント配列同一性を有し得る。パーセント配列同一性値は、最も近似する10分の1に丸められる点に留意しなければならない。例えば、80.11、80.12、80.13及び80.14は80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さ値は常に整数である。
【0066】
一部の側面において、第2アミノ酸配列(又は、核酸配列)に対する第1アミノ酸配列(又は、核酸配列)のパーセント同一性(%ID)は、%ID=100x(Y/Z)と計算され、ここで、Yは、一番目及び二番目の配列の整列(肉眼検査又は特定配列整列プログラムによって整列される。)において全く同一であると記録されたアミノ酸残基(又は、核塩基)の数であり、Zは、二番目の配列にある残基の総数である。第1配列の長さが第2配列よりも長い場合に、第1配列と第2配列のパーセント同一性は、第1配列に対する第2配列のパーセント同一性よりも高いだろう。
【0067】
当業者は、パーセント配列同一性の計算のための配列整列の生成が1次配列データによって排他的に駆動される二元配列-配列比較に限定されないということが理解できよう。また、構造的データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能的データ(例えば、変異の位置)、又は系統発生学的データのような異種ソースからのデータと配列データを統合することによって配列整列が得られることが理解できよう。多重配列整列を得るために異種データを統合する適切なプログラムはT-Coffeeであり、www.tcoffee.orgで入手可能であり、代案として、例えば、EBIから入手可能である。また、配列パーセント同一性を計算するために用いられる最終整列は自動又は手動で選別可能であることが理解できよう。
【0068】
本明細書において、用語「分離された(isolated)」、「精製された(purified)」、「抽出された(extracted)」及びこれらの類義語は相互互換的に使われ、一つ以上の精製過程を経た本発明の所定の組成物、例えば、外来遺伝子及び非番駅核酸配列を含むポリヌクレオチドの製剤(preparation)の状態を意味する。一部の側面において、本明細書でいう分離又は精製は、本発明の組成物、例えば汚染物を含有するサンプルから本明細書に記述のポリヌクレオチドを除去、部分的除去(例えば、分画)する過程である。
【0069】
本明細書において、用語「連結された(linked)」は、それぞれ、第2アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列に共有又は非共有結合した第1アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を意味する。第1アミノ酸又はポリヌクレオチド配列は、第2アミノ酸又はポリヌクレオチド配列に直接連結されたり併置してよく、或いは、介在配列が第1配列を第2配列に共有的に連結してよい。用語「連結された」は、5’末端又は3’末端において第1ポリヌクレオチド配列と第2ポリヌクレオチド配列が融合していることを意味する他、全体第1ポリヌクレオチド配列(又は、第2ポリヌクレオチド配列)の二番目のポリヌクレオチド配列(又は、一番目のポリヌクレオチド配列)の任意の2つのヌクレオチドへの挿入も含む。第1ポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合又はリンカーによって第2ポリヌクレオチド配列に連結されてよい。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであってよい。
【0070】
用語「miRNA」、「miR」及び「microRNA」は相互互換的に使われ、RNAベース遺伝子調節に関与する真核生物に発見されるマイクロRNA分子を意味する。この用語は、前駆体から処理された一本鎖RNA分子を表すのに使われる。一部の側面において、また、用語「アンチセンスオリゴマー」は、本発明のマイクロRNA分子を記述するのに使われてよい。本発明と関連したmiRNAの名称及びその配列が本明細書に提供される。microRNAは不完全な塩基対によって標的mRNAを認識し結合して標的mRNAの不安定化又は翻訳抑制を誘導し、標的遺伝子発現を下方調節する。逆に、miRNA結合部位を含む分子(一般に、miRNAのシード領域に相補的な配列を含む分子)を用いてmiRNAを標的化することは、標的遺伝子の上方調節を引き起こすmiRNA-誘導翻訳抑制を減少又は抑制させることができる。
【0071】
「核酸(nucleic acid)」、「核酸分子(nucleic acid molecule)」、「ヌクレオチド配列(nucleotide sequence)」、「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」及びこれらの類義語は相互互換的に使われ、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチド配列を意味する。ポリヌクレオチドは、本明細書において5’から3’方向に提示される。本発明のポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)分子又はリボ核酸(RNA)分子であってよい。ヌクレオチド塩基は、本明細書において次のような単一文字コードで表示される:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)及びウラシル(U)。
【0072】
本明細書において、用語「作動的に連結された(operatively linked)」又は「作動可能に連結された(operably linked)」は、連結されたDNA配列が互いに隣接して所望の機能を行うことを意味する。例えば、プロモーターがコーディング配列(例えば、外来遺伝子)の転写を開始することに役立てる場合に、このようなプロモーターは、コーディング領域と作動的に連結されてよい。このような機能的関係が維持される限り、プロモーターとコーディング領域とが必ずしも隣接して位置する必要はない。
【0073】
「薬剤学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」、「薬剤学的に許容可能な賦形剤(pharmaceutically acceptable excipient)」及びこれらの類義語は、米国連邦政府の規制機関によって承認されたり、又はヒトを含む動物に対する使用に関して米国薬典に述べられた任意の製剤と対象体に対する組成物の投与を禁止し、投与された化合物の生物学的活性及び特性を妨害しない程度に好ましくない生理学的効果の生成を誘発しない任意の担体又は希釈剤を含む。これは、薬剤学的組成物を製造するのに有用であり、一般的に安全で且つ無毒性であり、好ましい賦形剤及び担体を含む。
【0074】
本明細書において、用語「薬剤学的組成物(pharmaceutical composition)」は、薬剤学的に許容可能な担体及び賦形剤のような一つ以上の他の化学成分と混合又は組合せされたり、若しくはそれに浮遊された本明細書に記述の一つ以上の組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞及び/又は組換えウイルス)を意味する。
【0075】
本明細書で使われる用語「プロモーター(promoter)」及び「プロモーター配列(promoter sequence)」は相互互換的に使われてよく、コーディング配列又は機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を意味する。一般に、コーディング配列はプロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、本来遺伝子(native gene)から全体的に由来可能であるか、自然から発見される様々なプロモーターに由来する様々な要素で構成されるか、ひいては合成DNAセグメントを含んでよい。様々なプロモーターが様々な組織又は細胞類型において、又は様々な発達段階において、又は様々な環境的又は生理学的条件に対する反応によって遺伝子の発現を指示できるということが当業者には理解される。総じて、大部分の細胞類型に遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「構成的プロモーター(constitutive promoter)」という。遺伝子を特定細胞類型において発現させるプロモーターは、通常、「細胞特異的プロモーター(cell-specific promoter)」又は「組織特異的プロモーター(tissue-specific promoter)」という。発達又は細胞分化の特定段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「発達特異的プロモーター(developmentally-specific promoters)」又は「細胞分化特異的プロモーター(cell differentiation-specific promoters)」という。プロモーターを誘導する作用剤、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の露出又は処理後に誘導されて遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「誘導性プロモーター(inducible promoters)」又は「調節可能なプロモーター(regulatory promoters)」を表す。また、総じて、調節配列の正確な境界が完全に定義されていないため、長さの異なるDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることが認識される。
【0076】
プロモーター配列は典型的に、転写開始部位によってその3’末端に結合し、背景から検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又は要素を含むように上向き(5’方向)に延長される。プロモーター配列内でRNAポリメラーゼの結合を担当するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)の他にも、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1とのマッピングによって便利に定義される。)が確認されるであろう。一部の側面において、本発明に使用可能なプロモーターは、組織特異的プロモーターを含む。
【0077】
本明細書において、用語「遺伝子調節領域(gene regulatory region)」又は「調節領域(regulatory region)」は、コーディング領域の上流(5’非コーディング配列)、内部又は下流(3’非コーディング配列)に位置しているヌクレオチド配列を意味し、関連したコーディング領域の転写、RNA処理、安定性又は翻訳に影響を及ぼす。調節領域は、プロモーター、翻訳リーダ配列(translation leader sequence)、イントロン(intron)、ポリアデニル化認識配列(polyadenylation recognition sequence)、RNA加工部位(processingサイト)、エフェクター結合部位又はステム-ループ構造(stem-loop structure)を含んでよい。コーディング領域が真核細胞で発現するように意図された場合に、ポリアデニル化信号及び転写終結配列は一般的にコーディング配列の3’に位置するであろう。
【0078】
一部の側面において、本明細書で提供される核酸組成物(例えば、発現構築物)は、一つ以上のコーディング領域と作動可能に関連付けられたプロモーター及び/又は他の発現(例えば、転写)調節要素を含んでよい。作動可能な関連付けにおいて、遺伝子産物に対するコーディング領域は、調節領域の影響又は制御下に遺伝子産物の発現を置く方式で一つ以上の調節領域と関連付けられる。例えば、プロモーター機能の誘導が、コーディング領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を誘導し、プロモーターとコーディング領域間の連結特性が、遺伝子産物の発現を指示するプロモーターの能力を妨害したり又は転写されるDNA鋳型の能力を妨害したりしてはいけない場合に、コーディング領域とプロモーターは「作動可能に関連付け(operably associated)」される。プロモーターに加え、他の発現調節要素、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結信号も、遺伝子産物発現を指示するコーディング領域と作動可能に関連付けられてよい。
【0079】
本明細書において、用語「外来遺伝子(transgene)」は、組換え発現構築物内にエンコードされた一つ以上のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域又はこのようなポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域の発現産物、ポリペプチド又は多重ポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド又は調節核酸(modulatory or regulatory nucleic acid)を意味する。一部の側面において、前記外来遺伝子は、対象体又は患者の身体内で持続的な発現を目的とする、特定疾患の治療用ペプチドをエンコードするヌクレオチド配列であってよい。一部の側面において、「作動的に連結された」又は「作動可能に連結された」とは、連結されるDNA配列が所望の機能を果たすように隣接して位置することを意味し、例えば、特定プロモーターがコーディング配列(例えば、外来遺伝子)の転写を開始することに役立てる場合に、このようなプロモーターはコーディング領域と作動的に連結されてよい。このような機能的関係が維持された限り、プロモーターとコーディング領域とが必ずしも隣接して位置する必要はない。
【0080】
本明細書において、用語「ベクター(vector)」又は「構築物(construct)」は、核酸又は遺伝子を挿入できる構築物を意味し、好ましくは、核酸配列を複製できる細胞への導入のために核酸配列を挿入できる伝達体を含む。核酸配列は、外生(exogenous)又は異種(heterologous)であってよい。核酸配列は外来遺伝子であってよい。構築物としては、プラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、AAV)を挙げることができるが、これに限定されない。当業者は標準的な組換え技術によって前記ベクター又は構築物を構築できる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc.,NY,1994)。
【0081】
本明細書において、用語「発現ベクター」又は「発現構築物」は、転写された遺伝子産物の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含むベクター又は構築物を意味する。一部の場合には、転写されたRNA分子がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。発現構築物には様々な調節要素(control element)が含まれてよい。転写及び翻訳を調節する調節配列に加え、ベクター及び発現ベクターには、さらに他の機能も提供するヌクレオチド配列も含まれてよい。
【0082】
本明細書において、用語「対象体(subject)」は、AAV(本願で提供された方法を用いて生成される。)又はこのようなAAVを含む組成物が投与される対象体を意味する。非制限的な例として、診断、治療又は療法が必要なヒト、家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験室動物(例えば、サル、ネズミ、マウス、ウサギ、ギニアピッグなど)が挙げられ、特にヒトである。本明細書に記載の方法は、ヒト治療及び獣医学適用の両方に適用可能である。
【0083】
本明細書において、「それを必要とする対象体(subject in need thereof)」は、本明細書に記述された組成物の投与から利益を得る対象体、例えば哺乳動物を含む。
【0084】
本明細書において、用語「治療的有効量(therapeutically effective amount)」は、所望の治療効果を示すのに十分な本発明の組成物(例えば、外来遺伝子及び非番駅核酸配列を含むポリヌクレオチド)を含む試薬又は薬剤学的化合物の量である。治療的有効量は、予防が療法と見なされ得ることから、「予防的有効量(prophylactically effective amount)」であってよい。
【0085】
本明細書において、用語「外来遺伝子(transgene)」は、組換え発現構築物又はポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域の発現産物、ポリペプチド又は多重ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は変調(modulatory)又は調節(regulatory)核酸を意味する。一部の側面において、前記外来遺伝子は、それが挿入(又は、形質導入)される細胞に対して異種であってよい(すなわち、細胞から自然的に発現しない。)。
【0086】
用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療している(treating)」は、例えば、疾病又は状態の重症度減少;疾病進行期間短縮;疾病又は状態と関連した一つ以上の症状の改善又は除去;疾病又は状態を必ずしも治療せず、疾病又は状態を持つ被験者に有益な効果を提供すること、を意味する。この用語は、また、疾病又は状態又はその症状の予防又は防止を含む。
【0087】
用語「上流(upstream)」は、基準ヌクレオチド配列に対して5’に位置するヌクレオチド配列を意味する。
【0088】
本明細書において、用語「ベクター(vector)」又は「構築物(construct)」は、核酸又は遺伝子が挿入され得る任意の運搬体を意味し、これは、複製可能な細胞への導入のために核酸配列が挿入され得る伝達運搬体のようなものである。核酸配列は、外生(exogenous)又は異種(heterologous)であってよい。核酸配列は外来遺伝子であってよい。構築物としては、プラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、AAV)を挙げることができるが、これに限定されない。当業者は、標準的な組換え技術によって前記ベクター又は構築物を構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc.,NY,1994)。本明細書において、用語「発現ベクター」又は「発現構築物」は、転写された遺伝子産物の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含むベクター又は構築物を意味する。一部の場合には、転写されたRNA分子がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。発現構築物には様々な調節要素(control element)が含まれてよい。転写及び翻訳を調節する調節配列に加え、ベクター及び発現ベクターにはさらに他の機能も提供するヌクレオチド配列も含まれてよい。
【0089】
ベクターは、ベクターが混入された細胞の選択又は識別のために提供する選択可能なマーカー又はレポーターをエンコードするように操作されてよい。選択可能なマーカー又はレポーターの発現は、ベクターに含まれた他のコーディング領域を包含及び発現する宿主細胞の識別及び/又は選択を可能にする。当業界に公知され、使用されている選別可能なマーカー遺伝子の例は、アンピシリン(ampicillin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、ゲンタマイシン(gentamycin)、カナマイシン(kanamycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、ビアラホス(bialaphos)除草剤(herbicide)、スルフォンアミド(sulfonamide)などに対する耐性を提供する遺伝子;及び表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などである。当該分野で公知され、使用されてているレポーターの例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択可能なマーカーはレポーターと考慮されてもよい。
【0090】
II.デュアルヘルパープラスミド
II.A.E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子、cap遺伝子
本発明の一部の側面は、デュアルヘルパープラスミドに関する。本明細書で立証されているように、このようなデュアルヘルパープラスミドは、(例えば、関心タンパク質をコードする外来遺伝子を含む)組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を生産するのに特に有用であり得る。
【0091】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、一本鎖DNAウイルスであり、且つヘルパー依存型ヒトパルボウイルスである。ゲノムサイズは約4.7kbpである。ゲノムのN末端は、ウイルス複製及びウイルス遺伝子発現に関与するrep遺伝子をエンコードし、C末端は、ウイルスのカプシドタンパク質を暗号化するcap遺伝子をエンコードする。約145塩基の逆末端反復配列(ITR)が両末端部位に挿入されている。T字状の構造を有する145bpサイズのITR(逆末端反復配列)は、ウイルス遺伝体複製時に複製原点の機能を果たし、1次的なパッケージング信号として作用する。ITRは、組換えAAV構築物を作る時に唯一に必要なcis-acting塩基配列であり、Repタンパク質の存在下ではエンハンサー活性を有するが、、Repタンパク質がない時には非常に弱い活性を有するので、組換えAAV構築物に外来遺伝子をクローニングする時に、それを考慮してエンハンサー、プロモーター、pAなどを適切に構成して発現構築物を作製する(RJ Samulski and N Muzyczka,Annu.Rev.Virolo.2014.1:427-451)。rep遺伝子からは4個のタンパク質が翻訳されるが、これらはその分子量によってrep78、rep68、rep52、rep40に区分され、AAV DNA複製に重要な働きをする。cap遺伝子からは4個のタンパク質が翻訳されるが、そのうち、VP1、VP2、VP3タンパク質はAAV粒子を構成する構造タンパク質であり、組立-活性化タンパク質(AAP,assembly-activating protein)は、前記構造タンパク質によるAAV粒子の形成を促進する。前記アデノ随伴ウイルスが効率的に複製されるためには、アデノウイルス或いはヘルペスシンプレックスウイルスのようなヘルパーウイルス(helper virus)に由来する一部のタンパク質及びRNAを必要とする(Muzyczka N.Curr Top Microbiol Immunol 158,97-129,1992)。
【0092】
本明細書において、用語「デュアルヘルパープラスミド(dual-helper plasmid)」は、細胞においてAAVを生成するための要件のうち2個以上を提供できるプラスミドを意味する。外来遺伝子を含む組換えAAVベクターを生産するためには、下記の構成要素が宿主細胞に提供される必要がある:(1)外来遺伝子、(2)rep及びcapタンパク質、及び(3)E2a、E4及びVA RNAタンパク質。本発明の他の所で記述されているように、伝統的な方法により、異なる要件が、3個の異なるプラスミド(すなわち、(1)ITR側面にある外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミド、(2)Rep-Capプラスミド、及び(3)ヘルパープラスミド)によって細胞に提供される。
【0093】
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に記載のデュアルヘルパープラスミドは、前述した要件(2)及び(3)を提供する。例えば、一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、rep遺伝子、cap遺伝子、E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む。
【0094】
本明細書で立証されているように、本明細書に記述のデュアルヘルパープラスミドは、前述した遺伝子を含む他にも、前記遺伝子はプラスミドにおいて特定構成で配列される。例えば、一部の側面において、E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子は、デュアルヘルパープラスミド内で順次に連結され、rep遺伝子及びcap遺伝子(本明細書では「rep-cap遺伝子」と言及される。)は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端とを時計回り方向に(5’から3’に)順次に連結する。より具体的には、一部の側面において、rep-cap遺伝子の5’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、rep-cap遺伝子の3’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結される。このようなデュアルヘルパープラスミドの非制限的な例は、
図5Aに提示されている。
【0095】
一部の側面において、E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子は順次に連結され、rep-cap遺伝子は反時計回り方向に(3’から5’に)E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に存在する。より具体的には、一部の側面において、rep-cap遺伝子の3’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、rep-cap遺伝子の5’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結される。このようなデュアルヘルパープラスミドの非制限的な例は、
図5Bに提示されている。
【0096】
本発明から明らかなように、一部の側面において、上述したそれぞれのE2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子はアデノウイルスに由来する。一部の側面において、cap遺伝子及びrep遺伝子は、同じAAV血清型に由来する。例えば、一部の側面において、cap遺伝子及びrep遺伝子はいずれもAAV2に由来する(例えば、実施例1-4に記述されたpUC-R2C2構築物を参照)。一部の側面において、cap遺伝子及びrep遺伝子は、様々な血清型を有するAAVに由来する。例えば、本明細書で立証されているように、一部の側面において、cap遺伝子は、AAV8(cap8又はその断片)に由来し、rep遺伝子はAAV2(rep2又はその断片)に由来する(例えば、実施例1-2に記述されたpUC-R2C8構築物を参照)。一部の側面において、cap遺伝子はAAV9(cap9又はその断片)に由来し、rep遺伝子はAAV2(rep2又はその断片)に由来する(例えば、実施例1-6に記述されたpUC-R2C9構築物を参照)。一部の側面において、cap遺伝子はAAV5(cap5又はその断片)に由来し、rep遺伝子はAAV2(rep2又はその断片)に由来する(例えば、実施例1-7に記述されたpUC-R2C5構築物を参照)。
【0097】
本発明で使用可能なAAVの類型又は血清型の非制限的な例は、AAVrh.lO(AAVrhlO)、AAV-DJ(AAVDJ)、AAV-DJ8(AAVDJ8)、AAV1、AAV2、AAV2G9、AAV3、AAV3a、AAV3b、AAV3-3、AAV4、AAV4-4、AAV5、AAV6、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、AAV7、AAV7.2、AAV8、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV16.3、AAV24.1、AAV27.3、AAV42.12、AAV42-lb、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAVl-7/rh.48、AAVl-8/rh.49、AAV2-15/rh.62、AAV2-3/rh.61、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-9/rh.52、AAV3-11/rh.53、AAV4-8/rl1.64、AAV4-9/rh.54、AAV4-19/rh.55、AAV5-3/rh.57、AAV5-22/rh.58、AAV7.3/hu.7、AAV16.8/hu.10、AAV16.12/hu.11、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV33.12/hu.l7、AAV33.4/hu.l5、AAV33.8/hu.l6、AAV52/hu.l9、AAV52.1/hu.20、AAV58.2/hu.25、AAVA3.3、AAV A3.4、AAVA3.5、AAV A3.7、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVF3、AAVF5、AAVH2、AAVrh.72、AAVhu.8、AAVrh.68、AAVrh.70、AAVpi.1、AAVpi.3、AAVpi.2、AAVrh.60、AAVrh.44、AAVrh.65、AAVrh.55、AAVrh.47、AAVrh.69、AAVrh.45、AAVrh.59、AAVhu.12、AAVH6、AAVLK03、AAVH-l/hu.1、AAVH-5/hu.3、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVN721-8/rh.43、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5Rl、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.13、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44Rl、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48Rl、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.14/9、AAVhu.t19、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.46、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.61、AAVrh.64、AAVrh.64Rl、AAVrh.64R2、AAVrh.67、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh8R、AAVrh8R A586R mutant、AAVrh8R R533A mutant、AAAV、BAAV、caprine AAV、bovine AAV、AAVhEl.1、AAVhErl.5、AAVhER1.14、AAVhErl.8、AAVhErl.16、AAVhErl.18、AAVhErl.35、AAVhErl.7、AAVhErl.36、AAVhEr2.29、AAVhEr2.4、AAVhEr2.16、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhER1.23、AAVhEr3.1、AAV2.5T、AAV-PAEC、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV- LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV- LK19、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAV- PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-2-pre-miRNA-101、AAV-8h、AAV-8b、AAV-h、AAV- b、AAV SM10-2、AAV Shuffle100-1、AAV Shuffle100-3、AAV Shuffle100-7、AAV Shuffle10-2、AAV Shuffle10-6、AAV Shuffle10-8、AAV Shuffle100-2、AAV SM10-1、AAV SM10-8、AAV SM100-3、AAV SM100-10、B P61AAV、B P62AAV、B P63AAV、AAVrh.50、AAVrh.43、AAVrh.62、AAVrh.48、AAVhu.19、AAVhu.11、AAVhu.53、AAV4-8/rh.64、AAVLG-9/hu.39、AAV54.5/hu.23、AAV54.2/hu.22、AAV54.7/hu.24、AAV54.1/hu.21、AAV54.4R/hu.27、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV128.1/hu.43、true type AAV(ttAAV)、UPENN AAV10、Japanese AAV10血清型、及びこれらの組合せを含む。
【0098】
一部の側面において、本発明に有用なアデノ随伴ウイルスの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、又はこれらの組合せを含む。したがって、一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV1に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV1に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV1に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV1に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV2に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV2に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV2に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV2に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV3に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV3に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV3に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV3に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV4に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV4に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV4に由来である。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV4に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV5に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV5に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV5に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV5に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV6に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV6に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV6に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV6に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV7に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV7に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV7に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV7に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV8に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV8に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV8に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV8に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV9に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV9に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV9に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV9に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAVrh10に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAVrh10に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAVrh10に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAVrh10に由来する。
【0099】
一部の側面において、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子はAAV2に由来する。AAV2 rep遺伝子に対する核酸配列は、配列番号29に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子は、配列番号29に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子は、配列番号29に記載された核酸配列を含む。
【0100】
一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9に由来する。
【0101】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV2に由来する。したがって、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、AAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV2に由来するcap遺伝子(cap2)を含む。AAV2 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号30に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号30に提示された配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号30に提示された核酸配列を含む。
【0102】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV5に由来する。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドはAAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV5に由来するcap遺伝子(cap5)を含む。AAV5 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号31に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドはE2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は配列番号31に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号31に提示された核酸配列を含む。
【0103】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV8に由来する。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、AAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV8に由来するcap遺伝子(cap8)を含む。AAV8 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号32に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号32に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号32に提示された核酸配列を含む。
【0104】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV9に由来する。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、AAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV9に由来するcap遺伝子(cap9)を含む。AAV9 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号33に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号33に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子、は配列番号33に提示された核酸配列を含む。
【0105】
一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E2a遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する。Ad5E2a遺伝子に対する核酸配列は、配列番号34に提示されている。したがって、一部の側面において、本発明に有用なデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E2a遺伝子は配列番号34に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E2a遺伝子は、配列番号34に提示された核酸配列を含む。
【0106】
一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E4遺伝子はアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する。Ad5 E4遺伝子に対する核酸配列は、配列番号35に提示されている。一部の側面において、本発明に有用なデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E4遺伝子は、配列番号35に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E4遺伝子は、配列番号35に提示された核酸配列を含む。
【0107】
一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記VA RNA遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する。Ad5 VA RNA遺伝子に対する核酸配列は、配列番号36に提示されている。一部の側面において、本発明に有用なデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子、及びcap遺伝子を含み、前記VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された核酸配列を含む。
【0108】
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に記述されたデュアルヘルパープラスミドは、同一のウイルス供給源又は多重のウイルス供給源に由来する遺伝子を含む。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV2に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号30);及び(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含む。一部の側面において、記載されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV5に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号31);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(配列番号29)を含む。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV8に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号32);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含む。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV9に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号33);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含む。
【0109】
本明細書に記述され、立証されているように、前述した遺伝子(例えば、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子)の一つ以上の配列は、本発明のデュアルヘルパープラスミドの特定特性を改善するのに役立ち得る。例えば、一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9に由来するcap遺伝子(例えば、それぞれ配列番号30、配列番号31、配列番号32又は配列番号33);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含み、前記rep遺伝子及びcap遺伝子は時計回り方向である。例えば、一部の側面において、rep遺伝子の5’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、rep遺伝子の3’末端はcapの5’末端に連結され、cap遺伝子の3’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結される(
図5A参照)。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9に由来するcap遺伝子(例えば、それぞれ配列番号30、配列番号31、配列番号32又は配列番号33);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含み、前記rep遺伝子及びcap遺伝子は反時計回り方向である。一部の側面において、rep遺伝子の5’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結され、rep遺伝子の3’末端はcap遺伝子の5’末端に連結され、cap遺伝子の3’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結される(
図5B参照)。
【0110】
本明細書に記述された特徴(例えば、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子の特定配列)に基づいて、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、下記の改善された特性のうち一つ以上を示す:1)宿主細胞が組換えAAVを生産するのに必要な全ての構成要素を有するように同時形質感染確率の増加、2)組換えアデノ随伴ウイルスの生産性の増加、3)プラスミド生産及び精製費用及び時間の減少。このような特性に関する追加開示は、本発明の他の所で提供される。
【0111】
II.B.追加特徴
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、組換えAAV生産に有用な一つ以上の追加特徴を含む。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、抗生剤抵抗性遺伝子をさらに含む。例えば、一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは選別マーカーをさらに含む。本明細書において、用語「選別マーカー(selection marker)」は、核酸配列が発現する細胞を識別するのに使用可能な任意の遺伝子を意味する。したがって、このような選別マーカーは、本明細書に記述されたデュアルヘルパープラスミドで形質感染後に、形質転換された細胞を確認し豊富にするのに用いられてよい。本発明と共に使用可能な選別マーカーは、当業界に公知された任意の適切な選別マーカーを含む。適切な選別マーカーの非制限的な例は、(i)抗生剤に対する抵抗性をエンコードする酵素(すなわち、「抗生剤抵抗性遺伝子」)、例えば、カナマイシン(kanamycin)、ネオマイシン(neomycin)、ピューロマイシン(puromycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、ブラストサイジン(blasticidin)又はゼオシン(zeocin);又は、(ii)蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)又は青色蛍光タンパク質(BFP)を含む。
【0112】
一部の側面において、選別マーカーは、抗生剤抵抗性遺伝子を含む。一部の側面において、抗生剤抵抗性遺伝子は、アンピシリン抵抗性遺伝子、カナマイシン抵抗性遺伝子、又は両方を含む。アンピシリン抵抗性遺伝子に対する核酸配列は、配列番号37に提示されている。カナマイシン抵抗性遺伝子に対する核酸配列は、配列番号38に提示されている。
【0113】
III.発現構築物
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に提供されたデュアルヘルパープラスミドは、例えば、組換えAAVを生成するとき、一つ以上の追加プラスミドと組み合わせて使用されてよい。一部の側面において、追加プラスミドは、組換え発現構築物、例えば、AAV構築物プラスミド(ここで「発現構築物」という。)を含む。発現構築物の例示的な側面が、下記に記述されている。
【0114】
III.A.外来遺伝子(例えば、ITRの側面に位置)
本発明の他の所でさらに記述されているように、一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含む。このような側面において、(例えば、生産される組換えAAVに導入される)外来遺伝子は、別個の発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド)によって提供されてよい。したがって、一部の側面において、発現構築物は外来遺伝子を含む。一部の側面において、外来遺伝子は、逆末端反復配列(ITR)の側面に位置する。本発明に有用な外来遺伝子は、外来遺伝子が細胞内に導入される時にポリペプチドに翻訳され得る限り、特に限定されない。したがって、任意の適切な関心外来遺伝子が本発明と共に使用されてよい。一部の側面において、外来遺伝子は、ポリペプチド(又は、その任意の変異体)、融合タンパク質、抗体又はその抗原結合断片、RNAベース分子(例えば、miRNA、shRNA、リボザイム、siRNA)、又はその任意の組合せをエンコードする。
【0115】
一部の側面において、外来遺伝子は、本明細書に記載されたような疾患又は障害の治療に有用なタンパク質をエンコードする。一部の側面において、外来遺伝子は、対象体又は患者の身体において持続した発現を目的に特定疾病に対する治療ペプチドをエンコードする。
【0116】
III.B.調節要素
一部の側面において、本発明のデュアルヘルパープラスミドと共に使用可能な発現構築物は、調節要素をさらに含む。一部の側面において、調節要素は、外来遺伝子に作動可能に連結される。
【0117】
したがって、一部の側面において、本明細書に記述された発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド)は、下記を含む:
(a)ITR(逆末端反復配列);
(b)外来遺伝子;及び
(c)外来遺伝子に作動可能に連結された調節要素。
【0118】
本発明に有用な調節要素は、エンハンサー(例えば、CMVエンハンサー)、プロモーター(例えば、CMVプロモーター、EF-1αプロモーター、β-アクチンプロモーター)、エクソン(例えば、エクソン1、エクソン2)、イントロン(例えば、イントロンA)、スプライシング供与体又は受容体配列、又はこれらの組合せが含まれる。一部の側面において、前記調節要素は、転写終結のための配列(例えば、ポリA)、外来遺伝子を安定的に発現させるための配列(例えば、WPRE配列)、外来遺伝子特異的免疫を減少させるための配列(例えば、miRNA標的配列)、又はこれらの組合せが含まれてよい。外来遺伝子及び調節要素に対する細部事項(ITR配列、エンハンサー配列、プロモーター配列、E1配列、スプライシング供与体配列、EF-1αイントロン又はスプライシング受容体を含むその断片配列、EF-1α E2配列、WPRE配列、miR配列、ポリ配列など)は、US2022/0010332A1から確認でき、その全文が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0119】
上述したように、一部の側面において、本発明に有用な発現構築物は、(i)外来遺伝子、及び(ii)外来遺伝子に作動可能に連結された調節要素を含み、前記調節要素は、下記の成分を含む:
1)CMVエンハンサー配列;
2)CMVプロモーター配列、EF-1αプロモーター配列又はニワトリβ-アクチンプロモーター配列;
3)CMV E1配列、EF-1α E1配列又はニワトリβ-アクチンE1配列;
4)スプライシング供与体配列;
5)EF-1αイントロン断片配列;及び
6)EF-1α E2配列。
【0120】
IV.ベクター
一部の側面において、本明細書に提供された任意のプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び/又は外来遺伝子を含む発現構築物)を含むベクターが本明細書に提供される。また、本明細書で提供されたプラスミドを用いて生産された組換えAAVが本明細書に提供される。本明細書において、このようなベクターは、宿主細胞及び治療的介入のための標的細胞での組換え発現に有用である。
【0121】
本発明から明らかなように、一部の側面において、本発明に有用なベクターは、AAVに由来する。AAVは、外来DNAを細胞に伝達するためのベクターシステムとして魅力的な独特の機能を有している。培養中の細胞のAAV感染は一般的に非細胞変性であり、ヒト及び他の動物の自然感染は、静か(silent)で且つ無症状である。しかも、AAVは、多くの様々な類型の哺乳動物細胞を感染させ、生体内で多くの様々な組織を標的化できる。また、AAVは、他の形態の遺伝子伝達体に比べて、より弱い免疫反応を促進し、非統合、エピソームベクターDNA(non-integrating,episomal vector DNA)に基づいて分裂及び停止細胞の両方で持続して発現し、遺伝子伝達体に対して特に魅力的なウイルスシステムとなる更なる利点を有する。また、AAVは、アデノウイルスを非活性化するために用いられる条件(56~65℃で数時間)を耐えるので、rAAVベースワクチンの低温保存の重要性が相対的に少ない。
【0122】
本発明に使用可能なアデノ随伴ウイルスの類型又は血清型の非制限的な例は、本発明の他の所で提供される。
【0123】
V.細胞
一部の側面において、本発明は、本明細書に記述されたプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現構築物)を含む細胞(ここで「変形された細胞」と呼ぶ。)を提供する。一部の側面において、細胞(例えば、宿主細胞)は、組換えAAVを生産するために、デュアルヘルパープラスミド及びAAV構成プラスミドで形質感染される。本明細書の一部の側面において、(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現構築物を含む)本発明の変形された細胞は、組換えAAV生産の一つ以上の側面を改善させることができる。例えば、一部の側面において、本明細書に提供された変形された細胞は、対照細胞と比較してより大きい収率で組換えAAVを生産することができる。一部の側面において、対照細胞は、次の3つの別個プラスミドを含むように変形された該当の細胞を含む:(1)rep遺伝子及びcap遺伝子を含む第1プラスミド(「rep-capプラスミド」);(2)E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む第2プラスミド(「ヘルパープラスミド」);及び(3)外来遺伝子を含む第3プラスミド。
【0124】
一部の側面において、対照細胞と比較して、(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現ベクターを含む)本発明の細胞は、生産された組換えAAVの量を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約100%以上増加させることができる。一部の側面において、対照細胞と比較して、本発明の細胞は、生産された組換えAAVの量を少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、又は少なくとも約100倍又はそれ以上増加させることができる。一部の側面において、(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現構築物を含むように変形された)本明細書に提供された細胞は、対照細胞と比較して生産及び/又は精製時間を減少させることができる。一部の側面において、対照細胞と比較して生産及び/又は精製時間は少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%又はそれ以上減少する。
【0125】
本発明から明らかなように、また、本明細書のプラスミドを用いて生産された組換えAAVを含むように変形(例えば、形質感染)された細胞が提供される。このような細胞は、例えば、本明細書に記述された外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質を生産するのに特に有用であり得る。任意の一つの理論にとらわれず、一部の側面において、細胞(例えば、宿主細胞)が本明細書に記述のプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び調節要素に作動可能に連結された外来遺伝子を含む発現構築物)で形質感染されるとき、生産された組換えAAVは個別プラスミドの一つ以上の特徴を含む。例えば、一部の側面において、生産された組換えAAVは、調節要素に作動可能に連結された外来遺伝子を含む。
【0126】
本明細書に記載されているように、一部の側面において、本明細書に記載された一つ以上の調節要素は、細胞において外来遺伝子によってコードされるタンパク質(「暗号化されたタンパク質」)の発現を向上させることができる。したがって、一部の側面において、(例えば、本明細書に記述された一つ以上の調節要素に作動可能に連結された外来遺伝子を含む組換えAAV伝達体ベクターで形質感染された)本明細書に記述された細胞は、対照細胞と比較して、エンコードされたタンパク質の発現をより多く増加させる。一部の側面において、対照細胞は、当該伝達体ベクターで形質感染されるが、本明細書に記述された調節要素のうち一つ以上が欠如している。
【0127】
一部の側面において、本明細書に記述された細胞は、試験管内で変形(例えば、形質感染)されて関心組成物を生産する。例えば、一部の側面において、細胞は、組換えAAVを生産するために、デュアルヘルパープラスミド及び発現構築物(例えば、本明細書に記載されたもの)で試験管内で形質感染される。一部の側面において、細胞は、組換え遺伝子伝達体ベクターで試験管内で形質感染され、外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質を生産する。一部の側面において、本明細書に記述された細胞は、生体内で(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAVが投与された対象体で)エンコードされたタンパク質を生産できる。一部の側面において、本明細書に記述された細胞は、試験管内及び生体内の両方において関心組成物(例えば、エンコードされたタンパク質)を生産することができる。
【0128】
本明細書に記載されているように、一部の側面において、本発明は、例えば、外来遺伝子発現のための組換え発現構築物で形質転換、形質導入又は形質感染された宿主細胞を提供する。本明細書において、用語「宿主細胞(host cell)」は、真核細胞及び原核細胞を含み、例えば、プラスミド又は発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド、Rep-Capプラスミド、ヘルパープラスミド、デュアルヘルパープラスミドなど)によってエンコードされる遺伝子が発現又は複製され得るように形質導入可能な有機体の細胞を意味する。一部の側面において、これは、分離された(真核)宿主細胞を意味する。本明細書において、用語「形質感染(transfection)」は、形質導入及び形質転換を含むように意図される。宿主細胞は、本明細書に記載された任意のプラスミド、構築物及び/又はベクターで形質感染、形質導入又は形質転換されてよい。これらの用語は、外因性核酸分子が宿主細胞内に伝達又は導入される過程を意味する。
【0129】
一部の側面において、宿主細胞は真核細胞である。一部の側面において、宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、トランスジェニック哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選ばれる。一部の側面において、宿主細胞は原核細胞である。一部の側面において、原核細胞はバクテリア細胞である。
【0130】
一部の側面において、本発明に有用な細胞(例えば、宿主細胞)は、昆虫細胞、哺乳動物細胞、又は両方を含む。一部の側面において、昆虫細胞は、Sf9細胞であってよい。一部の側面において、哺乳動物細胞は、HEK293細胞、HeLa細胞、ARPE-19細胞、RPE-1細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、Huh-7細胞、C8D1a細胞、Neuro2A細胞、CHO細胞、MES13細胞、BHK-21細胞、COS7細胞、COP5細胞、A549細胞、MCF-7細胞、HC70細胞、HCC1428細胞、BT-549細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、Capan-1細胞、Panc-1細胞、MIA PaCa-2細胞、SW480細胞、HCT166細胞、LoVo細胞、A172細胞、MKN-45細胞、MKN-74細胞、Kato-III細胞、NCI-N87細胞、HT-144細胞、SK-MEL-2細胞、SH-SY5Y細胞、C6細胞、HT-22細胞、PC-12細胞、NIH3T3細胞、又はこれらの組合せを含む。
【0131】
一部の側面において、本発明に有用な細胞は、ヒト細胞を含む。一部の側面において、ヒト細胞は、本明細書に記述の組換え遺伝子伝達体ベクターが投与される対象体の細胞である。一部の側面において、ヒト細胞は供与者(例えば、健康なヒト被験者)に由来する。
【0132】
VI.組成物
本発明は、また、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドを含む組成物に関する。本発明から明らかなように、一部の側面において、このような組成物は、追加のプラスミド、例えば、本明細書に記載された発現構築物(例えば、外来遺伝子発現のためのAAV構築物プラスミド)をさらに含む。本発明の他の所でも記述されているように、このような組成物は、組換えAAVを生産するのに有用であり得る。
【0133】
様々なプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)、構築物(例えば、発現構築物)、ベクター(例えば、組換えAAV伝達体ベクター)及び本明細書に開示された細胞(ここで「活性化合物(active compounds)」と呼ぶ。)は、投与に適合する薬剤学的組成物に含まれてよい。したがって、一部の側面において、本発明は、このような薬剤学的組成物に関する。例えば、一部の側面において、本発明は、本明細書に記述されたプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)を用いて生産された組換えAAVを含む薬剤学的組成物を提供する。
【0134】
一部の側面において、本明細書に記載された薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0135】
本発明に使用可能な薬剤学的に許容可能な担体は、剤形に一般に用いられるものを含む。このような薬剤学的に許容可能な担体の非制限的な例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶質セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、セルロ-ス、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル及びこれらの組合せを含むが、これに限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤及びこれらの組合せのような一つ以上の添加剤をさらに含んでよい。適切な薬剤学的に許容可能な担体及び製剤に関する追加細部事項は、文献(Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995))に説明されている。
【0136】
本発明の薬剤学的組成物は、意図した投与経路と互換するように剤形化される。このような投与経路の非制限的な例は、本発明の他の所で提供される。
【0137】
本明細書に記述された薬剤学的組成物は、単一投与又は多重投与の形態で提供されてよい。一部の側面において、本明細書で提供される薬剤学的組成物は、溶液(例えば、油性又は水性媒質中)、懸濁液、エマルジョン、抽出物、粉末、顆粒、錠剤又はカプセルの形態で剤形化される。一部の側面において、本明細書に記述された薬剤学的組成物を含む剤形は、分散剤、安定剤又は両方をさらに含んでよい。
【0138】
VII.キット
開示された様々なプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)、構築物(例えば、発現構築物)、ベクター(例えば、組換えAAV伝達体ベクター)、細胞及び組成物(例えば、薬剤学的組成物)のうち一つ以上を含むキットが本明細書に開示される。一部の側面において、キットは、使用説明書(例えば、前述したもののいずれか又はそれらの組合せをそれを必要とする対象体に投与するための説明書)を含む。
【0139】
本明細書において、用語「キット」及び「システム」は、様々なプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)、構築物(例えば、発現構築物)、ベクター(例えば、組換えAAV伝達体ベクター)、細胞、及び組成物(例えば、薬剤学的組成物)、又はそれらの任意の組合せのうち少なくとも一つ以上を表すように意図され、一部の側面において、一つ以上の他の類型の要素又は成分(例えば、他の類型の生化学的試薬、容器、販売のための包装、使用説明書など)と共に提供される。
【0140】
VIII.用途及び方法
VIII.A.AAV生産方法
本発明の特定の側面は、AAVを生産する方法に関する。より具体的には、一部の側面において、外来遺伝子を含む組換えAAVを生産する方法が本発明に提供される。一部の側面において、このような方法は、細胞(例えば、宿主細胞)をデュアルヘルパープラスミド(例えば、本明細書に記載されたもの)及び外来遺伝子を含む発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド)で形質感染させることを含む。一部の側面において、細胞は、デュアルヘルパープラスミド及び発現構築物で同時に形質感染される。一部の側面において、細胞は、デュアルヘルパープラスミド及び発現構築物で順次に形質感染される。特記しない限り、当業界に公知された任意の適切な形質感染方法が本発明と共に用いられてよい。
【0141】
一部の側面において、組換えAAVを生産する方法は、組換えAAVが生産されるように適切な条件下に形質感染された細胞を培養する段階をさらに含む。一部の側面において、前記方法は、生産された組換えAAVを回収する段階をさらに含む。
【0142】
本明細書に記述された組換えAAVを生産する方法は、明確な利点を提供する。本発明の他の所で記述されているように、AAVを生産するより伝統的な方法は、三重形質感染を必要とし、宿主細胞は、次の3種の個別プラスミドで形質感染される:i)Repタンパク質及びCapタンパク質をエンコードする遺伝子を含むRep-Capプラスミド;ii)アデノウイルスのタンパク質(E2a、E4)及びVA RNAをエンコードする遺伝子を含むヘルパープラスミド;及び、iii)外来遺伝子発現のためのAAV構築物プラスミド。前記組換えAAVは、細胞が上述の3種のプラスミドの全てによって成功的に形質感染された場合(すなわち、各遺伝子が吸収されて細胞の核に伝達された後、後続的に転写、細胞内で複製及び/又は翻訳された場合)にのみ生産される。関連した複雑性によって、三重形質感染を必要とするこのような方法は、低い収率、高費用及び/又はより労働集約的な結果を招くことがある。
【0143】
このような接近法と比較して、本明細書に提供された組換えAAVを生産する方法は、組換えAAVのより高い収率を得ることができる。一部の側面において、三重形質感染を必要とする方法(すなわち、「対照方法」)と比較して、本発明によって生産された組換えAAVの量は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%又はそれ以上増加する。一部の側面において、対照細胞と比較して、本発明の細胞は、生産された組換えAAVの量を少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、又は少なくとも約100倍以上増加させることができる。
【0144】
本発明の他の所で記述されているように、一部の側面において、本明細書に提供された組換えAAVを生産する方法は、生産及び/又は精製時間を減少させることができる。更なる利点は本発明の他の所で説明される。
【0145】
VIII.B.タンパク質生産方法
また、外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質(又は、ポリペプチド)を生産する方法が本明細書に開示される。一部の側面において、このような方法は、適切な条件下で(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV伝達体ベクターで形質感染された)本発明の細胞を培養する段階、及びエンコードされたタンパク質を回収する段階を含む。特定の側面において、外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質を生産する方法は、組換えAAVを、これを必要とする対象体に投与する段階を含む。
【0146】
VIII.C.治療用途
一部の側面において、本発明は、様々な治療適用のための本発明のデュアルヘルパープラスミドを用いて生産された組換えAAVの用途を提供する。
【0147】
例えば、一部の側面において、本発明は、外来遺伝子を含み、本明細書に記述されているように生成された組換えAAVを対象体に投与する段階を含む、それを必要とする対象体において疾病を治療する方法を提供する。一部の側面において、本明細書に提供された疾病を治療する方法は、(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV遺伝子伝達体ベクターで形質感染された)本明細書に記述された任意の変形された細胞をそれを必要とする対象体に投与する段階を含む。一部の側面において、本明細書に提供された疾病を治療する方法は、(例えば、本明細書に提供された組換えAAVを含む。)本明細書に記載された任意の薬剤学的組成物をそれを必要とする対象体に投与する段階を含む。本発明から明らかなように、前記方法は、例えば、外来遺伝子を変形させることによって任意の関心疾病を治療及び/又は予防するために用いられてよい。
【0148】
本発明によって予防、緩和又は治療される疾病は限定されず、薬物投与回数を減らすべき全ての疾病を含む。このような疾病の非制限的な例は、眼科疾患及び神経系疾患を含む。一部の側面において、前記眼科疾患は、糖尿病性網膜病症(diabetic retinopathy)、脈絡膜新生血管形成(choroidalneovascularization)、黄斑変性(macular degeneration)、網膜変性(retinaldegeneration)、黄斑浮腫(macular edema)、網膜浮腫(retinal edema)及び黄斑腫瘍(mascular tumentia)又はこれらの組合せを含む。一部の側面において、前記神経系疾患は、中枢神経系、末梢神経系又は両方に影響を及ぼす疾患を含む。神経系疾患の非制限的な例は、不安(anxiety)、うつ病(depression)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder,PTSD)、両極性障害(bipolar disorder)、注意力欠乏過剰行動障害(attention deficit hyperactivity disorder,ADHD)、自閉症(autism)、精神分裂症(schizophrenia)、神経病性疼痛(neuropathic pain)、緑内障(glaucoma)、中毒症(toxicosis)、蜘蛛膜嚢腫(arachnoid cyst)、緊張症(catatonia)、脳炎(encephalitis)、てんかん/発作(epilepsy/seizure)、閉じ込め症候群(locked-in syndrome)、髓膜炎(meningitis)、片頭痛(migraine)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、脊髄病症(myelopathy)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,ALS)、バッテン病(Batten disease)、トゥレット症候群(Tourette’s syndrome)、外傷性脳損傷(traumatic brain injury)、脳脊髓損傷(cerebrospinal injury)、脳卒中(stroke)、振戦(tremor)(本態性又はパーキンソン病)、筋緊張異常(dystonia)、指摘障害(intellectual disability)、脳腫瘍(brain tumor)又はこれらの組合せを含む。
【0149】
本発明の一部の側面は、外来遺伝子の連続的発現を達成できる遺伝子治療剤又は疾患を治療するためにこのような製剤を使用する方法に関する。
【0150】
本明細書に提供された遺伝子伝達体システム(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV)の使用は、医師、患者又は対象体の便宜のために薬物投与回数をだいぶ減少させ得る間隔で治療剤(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV)の投与を許容する。例えば、一部の側面において、治療剤は、約1週、約2週、約3週、約1ケ月、約2ケ月、約3ケ月、約4ケ月、約5ケ月、約6ケ月、約7ケ月、約8ケ月、約9ケ月、約10ケ月、約11ケ月又は約1年以上の間隔で投与されてよい。一部の側面において、その間隔は、約2~約3ケ月である。一部の側面において、その間隔は約6ケ月である。一部の側面において、その間隔は約1年である。一部の側面において、その間隔は、少なくとも約1年である。一部の側面において、患者の症状によって初期には約1~2週間隔で2~3回投与し、以後は、約2~3ケ月、約6ケ月、又は必要によって約1年以上の間隔で投与できる。
【0151】
投与(例えば、本明細書に記載された任意のAAV、細胞及び/又は薬剤学的組成物をそれを必要とする対象体に投与)段階を含む本明細書に提供された任意の方法において、治療剤は、対象体に経口又は非経口で投与されてよい。一部の側面において、治療剤(例えば、本明細書に記載された任意のAAV、細胞及び/又は薬剤学的組成物)は、非経口的に対象体に投与される。非経口投与の非制限的な例は、次を含む:静脈内注入、経皮投与、皮下注入、筋肉内注入、硝子体内注入(intravitreal injection)、網膜下注入(subretinal injection)、脈絡膜上腔注入(suprachoroidal injection)、点眼投与(eye drop administration)、脳室内注入(intracerebroventricular injection)、髄腔内注射(intrathecal injection)、羊膜内注入(intraamniotic injection)、動脈内注入(intraarterial injection)、関節腔内注入(intraarticular injection)、心臓内注入(intracardiac injection)、陰茎海綿体内注入(intracavernous injection)、脳内注入(intracerebral injection)、大槽注入(intracisternal injection)、冠動脈内注入(intracoronary injection)、頭蓋内注入(intracranial injection)、硬膜内注入(intradural injection)、硬膜外注入(epidural injection)、海馬内注入(intrahippocampal injection)、鼻腔内注入(intranasal injection)、骨腔内注入(intraosseous injection)、腹腔内注入(intraperitoneal injection)、胸腔内注入(intrapleural injection)、脊髄内注入(intraspinal injection)、胸腔内注入(intrathoracic injection)、胸腺内注入(intrathymic injection)、子宮内注入(intrauterine injection)、膣内注入(intravaginal injection)、心室内注入(intraventricular injection)、膀胱内注入(intravesical injection)、結膜下注入(subconjunctival injection)、腫瘍内注入(intratumoral injection)、局所注入、腹腔注入(intraperitoneal injection)及びこれらの組合せなど。
【0152】
当業者に明らかなように、治療剤(例えば、本発明の薬剤学的組成物)の適切な投与容量は、剤形方法、投与方式、年齢、体重、患者の性別、病理学的状態及び食餌、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応敏感度のような要因によって変わってよい。一部の側面において、治療剤(例えば、本発明の薬剤学的組成物)の1日投与容量は、約0.00001~100mg/kgである。
【0153】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。下記の実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されないということは、当業界における通常の知識を有する者に明らかであろう。
【0154】
実施例
材料及び方法
実施例1.三重形質感染用pUC-R2C2、5、8及び9構築物の製造
実施例1-1.pRC8構築物製造
pIDT-Cap8-Kan(Integrated DNA Technologies,USA)を鋳型にしてoligo #001/002組合せを用いて重合酵素連鎖反応(以下、PCR)を行うことによってcap8遺伝子断片を確保し、pRC6(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo#003/004組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーンDNA断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)(NEB,USA,Cat No.E2611)を用いて両DNA断片を連結することによってpRC8構築物を製造した。
【0155】
実施例1-2.pUC-R2C8構築物製造
pUC57-WPRE(GenScript,USA)を鋳型にしてoligo #005/006組合せを用いてPCRを行うことによってプラスミドバックボーンを確保し、実施例1-1のpRC8構築物を鋳型にしてoligo #007/008を用いてPCRを行うことによってcap8遺伝子断片を、oligo #009/004を用いてrep2遺伝子断片をそれぞれ確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて、上で得た3つのDNA断片を連結することによってpUC-R2C8構築物を製造した。
【0156】
実施例1-3.pRC2構築物製造
pRC2-mi342(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo #007/010組合せを用いてPCRを行うことによってcap2遺伝子断片を確保し、pRC6(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo #003/004組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーン断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて両NA断片を連結することによってpRC2構築物を製造した。
【0157】
実施例1-4.pUC-R2C2構築物製造
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #011/012組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーン断片を確保したし、実施例1-3のpRC2構築物を鋳型にしてoligo #013/014組合せを用いてPCRを行うことによってcap2遺伝子断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて2 DNA断片を連結することによってpUC-R2C2構築物を製造した。
【0158】
実施例1-5.pRC9構築物製造
pIDT-Cap9-Kan(Integrated DNA Technologies,USA)を鋳型にしてoligo #001/015組合せを用いてPCRを行うことによってcap9遺伝子断片を確保し、pRC6(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo #003/004組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーン断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)(NEB,USA,Cat No.E2611)を用いて両DNA断片を連結することによってpRC9構築物を製造した。
【0159】
実施例1-6.pUC-R2C9構築物製造
pUC57-WPRE(GenScript,USA)を鋳型にしてoligo #005/006組合せを用いてPCRを行うことによってプラスミドバックボーンを確保し、実施例1-5のpRC9構築物を鋳型にしてoligo #007/008を用いてPCRを行うことによってcap9遺伝子断片を、実施例1-1のpRC8を鋳型にしてoligo #009/004を用いてrep2遺伝子断片をそれぞれ確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて、上で得た3つのDNA断片を連結することによってpUCR2C9構築物を製造した。
【0160】
実施例1-7.pUC-R2C5構築物製造
pUC57-WPRE(GenScript,USA)を鋳型にしてoligo #005/006組合せを用いてPCRを行うことによってプラスミドバックボーンを確保し、pRC5構築物(TakaraBio,Japan)を鋳型にしてoligo #008/009を用いてPCRを行うことによってrep2-cap5遺伝子断片を確保し、Gibson Assembly(登録商標)を用いて、上で得た両DNA断片を連結することによってpUC-R2C5構築物を製造した。
【0161】
実施例2.pHION8シリーズ構築物の製造
実施例2-1.pHelper-NG構築物製造
VA-E4-pUC(GeneScript,USA)とE2a-pUC57(GeneScript,USA)の両構築物に共通するSalI/BamHI部位に両構築物を結合する方法によってクローニングを行い、pHelper-NGを製造した(
図1A)。前記pHelper-NGは、アデノウイルス血清型5のE2a、E4及びVA RNA遺伝子を含む。
【0162】
実施例2-2.pHelper-NG構築物の様々な位置にrep2-cap8遺伝子挿入
実施例2-2-1.pHION8-BamHI-正方向又は逆方向(pHION8-BF又は-BR)クローニング
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #016/017組合せを用いてPCRを行うことによってrep2-cap8遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのBamHI部位に挿入した(
図1B及び
図1C)。
図1Bは、pHION8-BF構築物の模式図であり、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8遺伝子断片を時計回り方向である正方向(時計回り方向、5’->3’)に挿入して前記構築物を製造した。
図1Cは、pHION8-BR構築物の模式図であり、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を反時計回り方向である逆方向(反時計回り方向、3’->5’)に挿入して前記構築物を製造した。前記pHION8-BFはpHNG8と、pHION8-BRはpHNGR8と命名した。
【0163】
実施例2-2-2.pHION8-NotI-正方向又は-逆方向(pHION8-NF又は-NR)クローニング
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #018/019組合せを用いてPCRを行うことによってrep2-cap8遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのNotI部位に挿入した(
図1D及び
図1E)。
図1Dは、pHION8-NF構築物の模式図であり、E4遺伝子の開始部分とAmpR遺伝子の開始部分との間に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8遺伝子断片を時計回り方向である正方向に挿入し、前記構築物を製造した。
図1Eは、pHION8-NR構築物の模式図であり、E4遺伝子の開始部分とAmpR遺伝子の開始部分との間に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8遺伝子断片を反時計回り方向である逆方向に挿入し、前記構築物を製造した。
【0164】
実施例2-2-3.pHION8-AsiSI-正方向(pHION8-AF)クローニング
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #020/021組合せを用いてPCRを行うことによってrep2-cap8遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのVA RNA遺伝子とE4遺伝子との間におけるAsiSI部位に時計回り方向である正方向に挿入し、pHION8-AF構築物を製造した(
図1F)。
【0165】
実施例3.pHNG2、pHNG5K及びpHNG9構築物製造
実施例3-1.pHNG2構築物製造
実施例1-4のpUC-R2C2構築物を鋳型にしてoligo #016/017を用いてPCRを行うことによってrep2-cap2遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのBamHI部位に挿入して製造した構築物をpHNG2と命名した。
【0166】
図2は、pHNG2構築物の模式図であり、E2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を時計回り方向である正方向に挿入し、pHNG2構築物を製造した。
【0167】
実施例3-2.pHNG9構築物製造
実施例1-6のpUC-R2C9構築物を鋳型にしてoligo #016/#017を用いてPCRを行うことによってrep2-cap9遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのBamHI部位に挿入して製造した構築物をpHNG9と命名した。
図3は、pHNG9構築物の模式図であり、rep2-cap9遺伝子断片をE2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に存在するBamHI部位を用いて時計回り方向である正方向に挿入し、pHNG9構築物を製造した。
【0168】
実施例3-3.pHNG5K構築物製造
実施例3-3-1.pHelper-NG-Kan構築物製造
pMK-RQ-1-PM構築物(Geneart,Thermo Fisher Scientific,USA)を鋳型にしてoligo #018/019組合せを用いてPCRを行うことによってカナマイシン抵抗性遺伝子断片を確保し、実施例2-1のpHelper-NG構築物を鋳型にしてoligo #020/021を用いてPCRを行うことによってE4遺伝子断片を確保し、oligo #022/023を用いてPCRを行うことによってVA RNA遺伝子においてE2a遺伝子のN-端末断片を確保し、oligo #024/025を用いてPCRを行うことによってE2a遺伝子のC末端でオリジン(Origin)断片を確保した。Gibson Assembly(登録商標)を用いて前記4つのDNA断片を連結し、pHelper-NG-Kan構築物を製造した。
【0169】
実施例3-3-2.pHelper-NG-Kan構築物にrep2-cap5遺伝子挿入
実施例1-7のpUC-R2C5構築物を鋳型にしてoligo #016、#017を用いてPCRを行うことによってrep2-cap5遺伝子断片を確保し、実施例3-3-1で製造したpHelper-NG-KanのBamHI部位に挿入して製造した構築物をpHNG5Kと命名した(Kは、抗生剤抵抗性遺伝子であり、カナマイシン抵抗性遺伝子を用いていることを意味する。)。
図4は、pHNG5K構築物の模式図であり、rep2-cap5遺伝子断片を、E2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に存在するBamHI部位を用いて時計回り方向である正方向に挿入し、pHNG5K構築物を製造した。
【0170】
前記構築物を製造するために用いられたオリゴの配列を表1に提示する:
【0171】
【表1】
また、rep-cap遺伝子断片をE2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に正方向(時計回り方向、5’->3’)に挿入して製造した構築物を総称してpHNG(pHNG2、pHNG5(pHNG5Kを含む。)、pHNG8、pHNG9など)と命名し、逆方向(反時計回り方向、3’->5’)に挿入して製造した構築物を総称してpHNGR(pHNGR8など)と命名した。これらの開裂地図は、
図5A及び
図5Bに示す。
【0172】
実施例4.外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドの製造
外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドは、大韓民国特許出願第10-2020-0084038号に記載された方法によって製造した。具体的には、pUC57プラスミドに基づいて、AAVカプシドパッケージング(packaging)に必要な要素であるAAV2 ITR塩基配列が両側末端に存在し、その間にCMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、ハイブリッドイントロン、外来遺伝子としてeGFP遺伝子、WPRE配列、4つの反復のmiR142-3pターゲット配列、ウシ成長ホルモン(bovine growth hormone)のpA配列が含まれている形態で製造した。
【0173】
実施例5.塩基配列の確認
上記で製造した全ての構築物の塩基配列を塩基配列分析(DNA sequencing)(Bionics,Korea)によって確認した。
【0174】
実施例6.細胞培養
HEK293細胞株は、10% FBS(Fetal Bovine Serum,Gibco,USA,CatNo.16000-044)、1%ベニシリン-ストレプトマイシン(Gioco,USA,Cat No.15140-163)が含まれたMEM培地(Gibco,USA,Cat No.42360-032)を用いて5% CO2、37℃条件で湿潤培養した。Expi293細胞株は、1%ベニシリン-ストレプトマイシンが添加されたExpi293培地(Gibco,USA,Cat.No.A14351-01)を用いて8% CO2、37℃条件で250rpmで振りながら湿潤培養した。
【0175】
実施例7.形質感染
実施例7-1.AAV生産のための付着細胞の形質感染
形質感染のために、HEK293細胞株をDPBS(Gibco,USA,Cat No.14190-250)を用いて2回洗浄後にTrypsin-EDTA(Gibco,USA,Cat No.25200-114)を処理して培養皿から剥がして確保した後、150mm培養皿に2×107cell/dishで接種した。24時間培養後に、三重形質感染(triple transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHelper-NGプラスミド、pUC-R2C2、pUC-R2C8又はpUC-R2C9プラスミド、及び外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、500ulのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。二重形質感染(double transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHION8プラスミド、及び外部遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、500ulのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。そして、DNA総量の2倍のポリエチレンイミン(PEI,Polyscience,USA,Cat No.23966-1)を500ulのOpti-MEMに希釈させた後、直ちに2つの溶液を混ぜて形質感染溶液を製造した。常温で30分間反応させた後、総1mlの形質感染溶液を、HEK293細胞を培養していた培養皿に入れた。
【0176】
実施例7-2.AAV生産のための浮遊細胞の形質感染
AAV生産のために、1Lエルレンマイヤー(Erlenmeyer)培養フラスコにおいて6×108細胞を220mlのExpi293培地に接種した。安定化のために約3~4時間培養後に、三重形質感染(triple transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHelper-NGプラスミド、pUC-R2C2、pUC-R2C5, pUC-R2C8又はpUC-R2C9プラスミド、及び外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、10mlのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。二重形質感染(double transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHION8プラスミド、pHNG2プラスミド又はpHNG9プラスミドと、外部遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、10mlのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。そして、DNA総量の2倍のポリエチレンイミン(PEI,Polyscience,USA,Cat No.23966-1)を10mlのOpti-MEMに希釈させた後、直ちに2つの溶液を混ぜて形質感染溶液を製造した。常温で30分間反応させた後、培養フラスコに総20mlの形質感染溶液を入れた。
【0177】
実施例8.AAVの精製
実施例7-1又は実施例7-2の形質感染72時間後に、培養皿及び培養フラスコに500mMの濃度となるようにNaClを添加し、3時間反応させた。全ての培養液を回収して遠心分離によって残骸物(debris)を除去し、100kDaの分画分子量(molecular weight cut-off)気孔サイズを有するcentricon(VIVASPIN 20,100,000MWCO PES,Sartorius,Germany)を用いて4℃で4000rpmで上澄液が約200ul残るまで遠心分離を行った。その後、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含んでいる上澄液を回収し、実験に使用又は-80℃に保管した。
【0178】
実施例9.AAV力価の決定
実施例8で精製したAAVの力価を決定するためにqPCR(Bio-Rad,USA,CFX96)を行った。DNaseI反応緩衝液(New England Biolab,USA,M0303S)で1時間37℃でAAVにDNaseIを処理した。その後、DNaseIが処理された試料に、プロテアーゼK(Invitrogen,USA,Cat No.AM2548)を55℃で30分間処理し、続いて95℃で15分間反応させてプロテアーゼKを不活性化させた。準備した試料をqPCRの鋳型として使用し、AAV構築物プラスミド(7.4×108~7.4×104、10倍希釈)を使用して標準曲線を求め、陽性対照群として組換えアデノ随伴ウイルス2 Reference Standard Stock(rAAV2-RSS,ATCC,USA,CatNo.VR-1616)又は組換えアデノ随伴ウイルス8 Reference Standard Stock(rAAV8-RSS,ATCC,USA,Cat No.VR-1816)を使用した。力価決定のためのqPCRのために、2xSsoAdvanced Universal Probe Supermix(Bio-Rad,USA,Cat No.172-5282)とbGH poly A配列特異的プライマー(#026、#027)及びプローブ(#028)を使用した。qPCRは、95℃で10分変性(denaturation)後に、95℃で30秒、60℃で1分、を40回反復した。標準曲線と定量は、Bio-Rad CFXMaestro 1.1 software(Bio-Rad,USA)を用いて分析した。
【0179】
実施例10.試験管内アデノ随伴ウイルスベクターを用いた形質感染
アデノ随伴ウイルスベクターの形質感染のために、24ウェル培養プレートにウェル当たりに4×105のHEK293細胞を接種した。24時間後に、各ウェルにMG132(Sigma-Aldrich,USA,Cat No.M7449)を5uMの濃度で8時間処理した。AAV2では2,500 MOI(Multiplicity of Infection)で、AAV8及びAAV9では10,000 MOIで処理し、72時間培養した。
【0180】
実施例11.流細胞分析法を用いたeGFP遺伝子の発現強度測定
eGFPの発現は、流細胞分析(Beckman Coulter,USA,CytoFlex)によって測定した。形質感染72時間後に、DPBSで細胞を洗浄し、トリプシンで剥がした。1500rpmで5分間遠心分離して細胞を確保し、2% FBSが添加されたDPBSを500ul添加して細胞を再懸濁した。流細胞分析において、FSC vs SSCplotから単一細胞領域が区分付けられ、FL1-A(green)の発現レベルが測定された。全ての流細胞分析結果は、FlowJo software 10.5.3(Becton Dickinson & Company,USA)を用いて分析した。
【0181】
実施例12.統計的分析
全ての実験を3回以上反復した。2グループ間の比較はPrism software 8.1.1(GraphPad Software,Inc.,USA)を用いてスチューデントt-検定(Student’s t-test)によって、3グループ以上の比較は一元配置分散分析(one-way ANOVA)及びTukeyの多重比較検定(Tukey’s multiple comparisons test)によって比較した。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【0182】
実験結果
1.増加したAAV8生産量を示すヘルパー-イン-ワン(Helper-In-One)プラスミド構築物選定
1-1.付着細胞株(HEK293)において三重形質感染とpHION8シリーズを用いた二重形質感染によるAAV8生産量増加又は減少効果観察
二重形質感染に用いられる5種のHelper-In-Oneプラスミド構築物(pHION8シリーズ;pHION8-BF、pHION8-BR、pHION8-NF、pHION8-NR及びpHION8-AF)内の様々なrep2-cap8遺伝子の位置がAAV8生産量に及ぼす影響を付着細胞株(HEK293)においてテストした。三重形質感染方法によるAAV8の生産量を100%としたとき、二重形質感染時には、rep2-cap8遺伝子の位置によってAAV生産量において様々な結果が得られた。pHION8-BF構築物(pHNG8)を使用した場合に244.3%、pHION8-BR構築物(pHNGR8)を使用した場合に170.2%とAAV8生産量が増加した。pHION8-NF構築物を使用した場合に126.0%の生産量増加が見られるが、これは統計的に有意でなかった(p=0.82)。一方、pHION8-NR及びpHION8-AF構築物を使用した場合に、AAV8の生産量が却って減少した(62.4%(p=0.50)、71.7%(p=0.77))(
図6)。
【0183】
1-2.浮遊細胞株(Expi293)において三重形質感染とpHION8シリーズを用いた二重形質感染によるAAV8生産量増加又は減少効果
上の実験結果1-1と同じ実験を浮遊細胞(Expi293F)においてテストした。以前の付着細胞株と類似に、二重形質感染時にpHION8-BF構築物を使用した場合は、三重形質感染方法に比べて177.1%(p<0.001)、pHION8-BR構築物を使用した場合は173.1%(p<0.001)と、AAV8生産量が統計的に有意に増加した。しかし、pHION8-NF、pHION8-NR及びpHION8-AFなどの構築物を使用した場合に、40.9%、66.7%、43.1%レベルと、生産量減少が統計的に有意に確認された(
図7)。
【0184】
これらの結果は、デュアルヘルパープラスミド内でのrep2-cap8遺伝子の相対的位置及び方向によってAAVの生産量が決定され得ることを提示する。その後、二重形質感染のためのpHIONプラスミド内のBamHI部位に正方向(BF)にrep2-cap遺伝子が存在する構築物をpHNGと命名し、逆方向(BR)に存在する構築物をpHNGRと命名した。その後には、cap遺伝子が由来したアデノ随伴ウイルスの血清型を数字で表記した(pHION8-BF=pHNG8、pHION8-BR=pHNGR8)。
【0185】
2.付着細胞株(HEK293)において三重形質感染とpHNG2を用いた二重形質感染によるAAV2生産量増加
pHelper-NGプラスミド内のE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を正方向に挿入してpHNG2構築物を製造し、これを二重形質感染(double transfection)方法に使用した(
図2)。
【0186】
三重形質感染法とpHNG2を用いた二重形質感染法によるAAV2の生産を比較した結果、三重形質感染に比べて二重形質感染法においてAAV2生産量が279.6%(p<0.001)と有意に増加することを確認した(
図8)。このような結果は、上述のpHNG8による二重形質感染によるAAV8生産量増加と類似に、rep2-cap2遺伝子をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に位置させると二重形質感染によってAAV2の生産量を増加させ得ることを提示する。
【0187】
3.付着細胞株(HEK293)においてpHNG9を用いた二重形質感染によるAAV9生産量増加
二重形質感染(double transfection)のためにrep2-cap9遺伝子断片を、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングによってpHNG9構築物を製造した(
図3)。
【0188】
三重形質感染とpHNG9を用いた二重形質感染によるAAV9の生産を比較した結果、三重形質感染に比べて二重形質感染においてAAV9生産量が214.0%(p<0.001)と有意に増加することを確認した(
図9)。このような結果は、上述のpHNG8及びpHNG2による二重形質感染によるAAV8又はAAV2生産量増加と類似であった。結論的に、この結果は、アデノ随伴ウイルスの血清型9(AAV9)においてもrep2-cap9遺伝子をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に位置させると二重形質感染法によるAAVの生産量を増加させ得ることを提示する。
【0189】
4.付着細胞株(HEK293)においてpHNG5Kを用いた二重形質感染によるAAV5生産量増加
二重形質感染(double transfection)のためにRep2-Cap5遺伝子断片を、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて、正方向にクローニングを用いてpHNG5K構築物を製造した(
図4)。
【0190】
三重形質感染とpHNG5Kを用いた二重形質感染によるAAV5の生産を比較した結果、三重形質感染に比べて二重形質感染においてAAV5生産量が194.7%(p=0.002)と有意に増加することを確認した(
図10)。このような結果は、上記のpHNG8、pHNG2及びpHNG9による二重形質感染によるAAV8、AAV2又はAAV9生産量増加と類似であった。
【0191】
結論的に、この結果は、アデノ随伴ウイルスの血清型5(AAV5)においてもrep2-cap5遺伝子をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に位置させると二重形質感染法によるAAVの生産量を増加させ得ることを提示する。
【0192】
5.三重形質感染又は二重形質感染(pHNG8又はpHNGR8構築物)で生産したAAV8間の細胞形質導入(transduction)効率の同等性
三重形質感染によって生産したAAV8と、pHNG8及びpHNGR8を用いた二重形質感染によって生産したAAV8との細胞感染力及び遺伝子発現能力を比較した。製作したこれらのAAV8は、eGFPタンパク質を発現するように設計した。HEK293細胞株に10,000MOIの条件でAAV8を感染させ、72時間後に、流細胞分析を用いて細胞内eGFPの発現程度を測定した。その結果、三重形質感染を用いたAAV8と比較したとき、pHNG8及びpHNGR8を用いた二重形質感染によって生産されたAAV8はいずれも類似の細胞感染力(Triple:6.0%、pHNG8:5.4%、pHNGR8:5.7%)を示し、また、感染された細胞内でeGFP発現レベルも類似であること(pHNG8:93.4%、pHNGR8:94.6%)を確認した。以上の結果は、三重形質感染によって生産されたAAV8とpHNG8及びpHNGR8を用いた二重形質感染によって生産したAAV8の細胞感染力及び感染後の遺伝子発現能力には差異がないことを提示する(
図11)。
【0193】
6.三重形質感染又は二重形質感染(pHNG2)で生産したAAV2形質導入(transduction)効率の同等性
AAV2を用いて遺伝子を伝達する場合において、三重形質感染によって生産したAAV2とpHNG2を用いた二重形質感染によって生産したAAV2の細胞感染力及び遺伝子発現能力を比較した。製作したこれらのAAV2は、eGFPタンパク質を発現するように設計した。HEK293細胞株に2,500MOIの条件でAAV2を感染させ、72時間後に流細胞分析によって、eGFPを発現する細胞の割合及び細胞内eGFPの発現程度を測定した。その結果、三重形質感染によるAAV2と比較したとき、pHNG2を用いた二重形質感染によって生産されたAAV2は、細胞感染能力が少なくとも同等であったし(Triple:32.0%、BF:44.7%;p=0.38)、感染された細胞当たりeGFP発現レベルが同等であるか或いはやや高いこと(129.6%、p=0.02)を確認した。ただし、両方の場合とも統計的に有意な差異は見られなかった。以上の結果は、三重形質感染によって生産されたAAV2と対比して、pHNG2を用いた二重形質感染によって生産したAAV2の細胞感染力及び感染後の遺伝子発現能力が少なくとも同等であることを提示する(
図12)。
【0194】
7.三重形質感染又は二重形質感染(pHNG9)で生産したAAV9形質導入(transduction)効率の同等性
AAV9を用いて遺伝子を伝達する場合に、三重形質感染によって生産したAAV9とpHNG9を用いた二重形質感染によって生産したAAV9の細胞感染力及び遺伝子発現能力を比較した。製作したこれらのAAV9は、eGFPタンパク質を発現するように設計した。HEK293細胞株に10,000MOIの条件でAAV9を感染させ、72時間後に流細胞分析によって細胞内eGFPの発現程度を測定した。その結果、三重形質感染を用いたAAV9と比較したとき、pHNG9を用いた二重形質感染によって生産されたAAV9は類似のeGFP発現レベルを示すこと(90.9%、p=0.35)を確認した。以上の結果は、三重形質感染によって生産されたAAV9とpHNG9を用いた二重形質感染によって生産したAAV9の細胞感染力及び遺伝子発現能力には差異がないことを提示する(
図13)。
【0195】
以上、本発明の実施例について説明したが、該当技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を様々に修正及び変更可能であり、これも本発明の権利範囲内に含まれるといえよう。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【
図1A】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1Aは、三重形質感染のためのpHelper-NG構築物を概略的に示し、アデノウイルス血清型5のE2a、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む。
【
図1B】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1B及び
図1Cは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向(時計回り方向、5’->3’)にクローニングして製造したpHION8-BF構築物(
図1B)及び逆方向(反時計回り方向、3’->5’)にクローニングして製造したpHION8-BR構築物(
図1C)を概略的に示す。
【
図1C】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1B及び
図1Cは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向(時計回り方向、5’->3’)にクローニングして製造したpHION8-BF構築物(
図1B)及び逆方向(反時計回り方向、3’->5’)にクローニングして製造したpHION8-BR構築物(
図1C)を概略的に示す。
【
図1D】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1D及び
図1Eは、E4遺伝子の開始部分に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-NF構築物(
図1D)及び逆方向にクローニングして製造したpHION8-NR構築物(
図1E)を概略的に示す。
【
図1E】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1D及び
図1Eは、E4遺伝子の開始部分に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-NF構築物(
図1D)及び逆方向にクローニングして製造したpHION8-NR構築物(
図1E)を概略的に示す。
【
図1F】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1Fは、VA RNA遺伝子の開始部分とE4遺伝子の末端部分との間に存在するAsiSI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-AF構築物を概略的に示す。
【
図2】アデノ随伴ウイルスベクター血清型2(AAV2)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG2構築物の開裂地図を示す。pHelper-NGプラスミド内のE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を正方向に挿入してpHNG2構築物を製造した。
【
図3】アデノ随伴ウイルスベクター血清型9(AAV9)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG9構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap9遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG9構築物を製造した。
【
図4】アデノ随伴ウイルスベクター血清型5(AAV5)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG5K構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap5遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG5K構築物を製造した。
【
図5A】
図5A及び
図5Bは、pHNG及びpHNGR構築物の開裂地図を示す。
図5Aは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に正方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示す。
【
図5B】
図5A及び
図5Bは、pHNG及びpHNGR構築物の開裂地図を示す。
図5Bは、逆方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示す。
【
図6】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【
図7】浮遊細胞株(Expi293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【
図8】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG2を用いた二重形質感染(Double)によるAAV2生産量増加の効果を観察した結果である。
【
図9】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG9を用いた二重形質感染(Double)によるAAV9生産量増加の効果を観察した結果である。
【
図10】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG5Kを用いた二重形質感染(Double)によるAAV5生産量増加の効果を観察した結果である。
【
図11】三重形質感染(Triple)又はHelper-In-One構築物で二重形質感染(Double)して生産されたAAV8間の細胞形質導入(transduction)効率の同等性結果である。
【
図12】三重形質感染(Triple)又はpHNG2構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV2間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【
図13】三重形質感染(Triple)又はpHNG9構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV9間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子が順次に連結され、
(i)前記rep-cap遺伝子は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に時計回り方向に(5’から3’に)位置する
:または、
(ii)前記rep-cap遺伝子は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に反時計回り方向に(3’から5’に)位置することを特徴とする、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミド。
【請求項2】
前記rep-cap遺伝子の5’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、前記rep-cap遺伝子の3’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結されることを特徴とする、請求項1に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項3】
前記rep-cap遺伝子の3’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、前記rep-cap遺伝子の5’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結されることを特徴とする、請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項4】
前記rep-cap遺伝子はrep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子の3’末端は前記cap遺伝子の5’末端に連結されることを特徴とする、請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項5】
(i)前記rep遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(adeno-associated virus serotype2,AAV2)由来のrep2遺伝子を含む
:または、
(ii)前記cap遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2;cap2)、血清型5(AAV5;cap5)、血清型8(AAV8;cap8)、又は血清型9(AAV9;cap9)由来のcap遺伝子を含むことを特徴とする、請求項
4に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項6】
(i)前記E2a遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のE2a遺伝子を含む
:
(ii)前記E4遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のE4遺伝子を含む:または、
(iii)前記VA RNA遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のVA RNA遺伝子を含むことを特徴とする、請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミド。
【請求項7】
前記デュアルヘルパープラスミドは、下記を含むことを特徴とする
請求項1に記載のデュアルヘルパープラスミド:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号30
、配列番号31、配列番号32、または配列番号33に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【請求項8】
請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミドを含む組成物。
【請求項9】
追加プラスミドをさらに含むことを特徴とする、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
前記追加プラスミドは、AAV構築物プラスミドであることを特徴とする、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
前記追加プラスミドは、下記を含むことを特徴とする、請求項
9に記載の組成物:
(a)逆末端反復配列(inverted terminal repeat,ITR);
(b)外来遺伝子;及び
(c)外来遺伝子に作動可能に連結された調節要素。
【請求項12】
請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミド又は請求項
8に記載の組成物を含む
試験管内の細胞。
【請求項13】
第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を
試験管内で変形させる段階を含む組換えAAV生産方法であって、前記第1プラスミドは、請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは、外来遺伝子を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を
試験管内で変形させる段階を含む組換えAAVの生産収率を増加させる方法であって、前記第1プラスミドは、請求項
1に記載のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは、外来遺伝子を含み、前記変形後生産された組換えAAVの量は、対照方法で生産された相応する量と比較して増加することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項
13に記載の方法によって生産された組換えAAV。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、遺伝子伝達体である組換えAAV生産用の新規なデュアルヘルパープラスミドに関する。
【0002】
[背景技術]
アデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus,AAV)は一本鎖DNAウイルスで、増殖のためにアデノウイルスなどの手助けが必要なヘルパー依存型パルボウイルス(helper-dependent parvoviruses)に属する。これは、ゲノムサイズが約4.7kbpである非病原性ウイルスであり、細胞性免疫反応を誘導しない。感染対象は血清型(serotype)によって大きく異なり、ウイルスは、非分裂(non-dividing)及び分裂(dividing)細胞に遺伝子を伝達することができる。特に、AAVによって伝達される遺伝子の発現は、生体内で長期間持続する[1-3]。
【0003】
一般に、組換えアデノ随伴ウイルスは、宿主細胞(例えば、HEK293細胞)の三重形質感染(triple transfection)によって生産される[4]。三重形質感染を用いた組換えAAV生産は、1)ITR(逆末端反復配列(inverted terminal repeats))で囲まれた遺伝子発現カセットを持つAAV構築物(construct)プラスミド、2)アデノ随伴ウイルスゲノムの複製に必要なRepタンパク質とウイルス粒子(virus particle)を構成するカプシド(capsid)タンパク質を提供する「Rep-Capプラスミド」、最後に、3)アデノ随伴ウイルスの生活環(life cycle)に役立つアデノウイルスのタンパク質(E2a、E4)及びRNA(VA RNA)を提供する「ヘルパー(helper)プラスミド」が必要である。この3種のプラスミドが、アデノウイルスのE1及びE3遺伝子を提供するHEK293細胞株などに形質感染されるとアデノ随伴ウイルスが生産される[5]。
【0004】
上述した3種のプラスミドが同時に形質感染された細胞でのみ組換えアデノ随伴ウイルスベクターが生産される。もし、2種のプラスミドを一つに合わせて二重形質感染(double transfection)をすると同時形質感染(co-transfection)の確率が高くなり、結果として組換えアデノ随伴ウイルスの生産率が高まるであろう[6,7]。また、組換えアデノ随伴ウイルスを生産する上で必要なプラスミドの数が3種から2種に減ると、プラスミドを生産及び精製するのにかかる時間と費用も節約されるであろう[8]。
【0005】
組換えアデノ随伴ウイルスベクターは、rep及びcap遺伝子を保有せず、アデノウイルス由来遺伝子を有していないため、生体内で複製不可である[9]。
【0006】
しかしながら、デュアルヘルパープラスミドを作る過程で、Rep-Capプラスミドとヘルパープラスミドとを合わせる方法によってプラスミド内のrep、cap、E2、E4、VA RNA遺伝子の相対的な位置が変わるが、これは、それぞれの遺伝子発現にそれぞれ異なる程度の影響を与えてしまい、生産性に及ぼす結果が非常に予測し難い。
【0007】
このため、組換えアデノ随伴ウイルスベクターの形質感染確率及びこれによる組換えアデノ随伴ウイルスの生産率を増加させるとともに、生産及び精製にかかる時間及び費用を低減するように考案された操作デュアルヘルパープラスミド及びその製造方法が切実に望まれている。
【0008】
[先行技術文献]
[非特許文献]
非特許文献1]BioDrugs.2017.31(4):317-334.Adeno-Associated Virus(AAV) as a Vector for Gene Therapy.M.F.Naso,B.Tomkowicz,W.L.Perry3rd,W.R.Strohl.
[非特許文献2]Expert Opin.Drug Saf.2002.1(1):79-91.Safety of Adeno-Associated Viral gene Therapy Vectors:A Current Evaluation.P.E.Monahan,K.Jooss,M.S.Sands.
[非特許文献3]Gene Ther.1996.3(8):658-68.Safety of single-dose administration of an adeno-associated virus(AAV)-CFTR vector in the primate lung.C.K.Conrad,S.S.Allen,S.A.Afione,T.C.Reynolds,S.E.Beck,M.Fee-Maki,X.Barrazza-Ortiz,R.Adams,F.B.Askin,B.J.Carter,W.B.Guggino,T.R.Flotte.
[非特許文献4]J.Virology.1998.72(3):2224-2232.Production of high-titer recombinant adeno-associated virus vectors in the absence of helper adenovirus.X.Xiao,J.Li,R.J.Samulski.
[非特許文献5]Viruses.2010.2(8):1681-1703.Adenoviral producer cells.I.Kovesdi and S.J.Hedley.
[非特許文献6]Hum.Gene Ther.1998.9(18):2745-2760.Novel tools for production and purification of recombinant adeno-associated virus vectors.D.Grimm,A.Kern,K.Rittner,J.A.Kleinschmidt.
[非特許文献7]Mol.Ther.2003.7(6):839-850.Helper virus-free,optically controllable,and two-plasmid-based production of adeno-associated virus vectors of serotypes 1 to 6.D.Grimm,M.A.Kay,J.A.Kleinschmidt.
[非特許文献8]Biores.Open Access.2020.9(1):219-228.Two-Plasmid Packaging System for Recombinant Adeno-Associated Virus.Q.Tang,A.M.Keeler,S.Zhang,Q.Su,Z.Lyu,Y.Cheng,G.Gao,T.R.Flotte.
[非特許文献9]Hum.Gene Ther.2017.28(11):1075-1086 Small But Increasingly Mighty:Latest Advances in AAV Vector Research,Design,and Evolution.D.Grimm,H.Buening.
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0009】
本発明は、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記E2a、E4及びVA RNA遺伝子は順次に連結され、前記rep-cap遺伝子は、、E2a遺伝子の5’末端及びVA RNA遺伝子の3’末端との間に時計回り方向に(5’から3’に)位置する。
【0010】
本発明は、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子及びrep-cap遺伝子を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記E2a、E4及びVA RNA遺伝子は順次に連結され、前記rep-cap遺伝子は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に反時計回り方向に(3’から5’に)位置する。
【0011】
本発明は、調節要素(regulatory component)を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号30に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0012】
本発明は、調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号31に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0013】
本発明は、調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号32に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0014】
本発明は、調節要素を含むデュアルヘルパープラスミドを提供し、前記調節要素は、(5’から3’に)下記を含む:
(i)配列番号34に提示された配列を含むE2a遺伝子;
(ii)配列番号35に提示された配列を含むE4遺伝子;
(iii)配列番号36に提示された配列を含むVA RNA遺伝子;
(iv)配列番号33に提示された配列を含むcap遺伝子;及び
(v)配列番号29に提示された配列を含むrep遺伝子。
【0015】
本発明は、本発明のデュアルヘルパープラスミドを含む組成物を提供する。
【0016】
本発明は、本発明のデュアルヘルパープラスミド又は組成物を含む細胞を提供する。
【0017】
本発明は、第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を変形させる段階を含む組換えAAVを製造する方法を提供し、前記第1プラスミドは本発明のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは外来遺伝子(transgene)を含む。
【0018】
本発明は、第1プラスミド及び第2プラスミドを含むように細胞を変形させる段階を含む組換えAAVの生産収率を増加させる方法を提供し、前記第1プラスミドは本発明のデュアルヘルパープラスミドであり、前記第2プラスミドは外来遺伝子を含み、前記変形後に生産された組換えAAVの量は、基準方法で生産された相応する量と比較して増加する。
【0019】
本発明は、本発明の方法によって生産された組換えAAVを提供する。
【0020】
本発明は、本発明の組換えAAV及び薬剤学的に許容可能な賦形剤を含む薬剤学的製剤を提供する。
【0021】
本発明は、本発明の組換えAAV又は薬剤学的製剤を対象体に投与する段階を含む、それを必要とする対象体において疾病又は障害を治療する方法を提供する。
【0022】
本発明は、それを必要とする対象体において疾病又は障害を治療するための薬物の製造における本発明の組換えAAV又は薬剤学的製剤の用途を提供する。
【0023】
[図面の簡単な説明]
[
図1]
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1Aは、三重形質感染のためのpHelper-NG構築物を概略的に示し、アデノウイルス血清型5のE2a、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1B及び
図1Cは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向(時計回り方向、5’->3’)にクローニングして製造したpHION8-BF構築物(
図1B)及び逆方向(反時計回り方向、3’->5’)にクローニングして製造したpHION8-BR構築物(
図1C)を概略的に示す。
図1D及び
図1Eは、E4遺伝子の開始部分に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-NF構築物(
図1D)及び逆方向にクローニングして製造したpHION8-NR構築物(
図1E)を概略的に示す。
図1Fは、VA RNA遺伝子の開始部分とE4遺伝子の末端部分との間に存在するAsiSI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-AF構築物を概略的に示す。
【0024】
[
図2]アデノ随伴ウイルスベクター血清型2(AAV2)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG2構築物の開裂地図を示す。pHelper-NGプラスミド内のE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を正方向に挿入してpHNG2構築物を製造した。
【0025】
[
図3]アデノ随伴ウイルスベクター血清型9(AAV9)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG9構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap9遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG9構築物を製造した。
【0026】
[
図4]アデノ随伴ウイルスベクター血清型5(AAV5)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG5K構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap5遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG5K構築物を製造した。
【0027】
[
図5]
図5A及び
図5Bは、pHNG及びpHNGR構築物の開裂地図を示す。
図5Aは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に正方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示し、
図5Bは、逆方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示す。
【0028】
[
図6]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【0029】
[
図7]浮遊細胞株(Expi293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【0030】
[
図8]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG2を用いた二重形質感染(Double)によるAAV2生産量増加の効果を観察した結果である。
【0031】
[
図9]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG9を用いた二重形質感染(Double)によるAAV9生産量増加の効果を観察した結果である。
【0032】
[
図10]付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG5Kを用いた二重形質感染(Double)によるAAV5生産量増加の効果を観察した結果である。
【0033】
[
図11]三重形質感染(Triple)又はHelper-In-One構築物で二重形質感染(Double)して生産されたAAV8間の細胞形質導入(transduction)効率の同等性結果である。
【0034】
[
図12]三重形質感染(Triple)又はpHNG2構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV2間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【0035】
[
図13]三重形質感染(Triple)又はpHNG9構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV9間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【0036】
[発明を実施するための形態]
本発明は、組換えAAVを生産するための組成物及び方法、並びに疾患又は障害を治療するための前述のrAAVの用途に関する。本明細書に述べているように、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、複数の遺伝子(例えば、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子)を含む。本出願人は、特定構成で多重遺伝子を配列することによって、組換えAAV生産時に収率又は生産性が増加又は減少し得ることを確認した。本発明の他の側面は本出願全体にわたって提供される。
【0037】
I.定義
本発明全般にわたって用語「一つ」又は「一」は、当該エンティティのうち一つ以上を意味する。例えば、「一つのポリペプチド」は、一つ以上のポリペプチドを表すものと理解される。このように、用語「一つ」(又は、「一」)、「一つ以上」及び「少なくとも一つ」は、本明細書において相互互換的に使われてよい。
【0038】
また、本明細書で使われる「及び/又は」は、他のものがあるか又はない2つの明示された特徴又は構成要素のそれぞれの特定開示として見なされるべきである。したがって、本明細書において、「A及び/又はB」のような句において使われる用語「及び/又は」は、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)及び「B」(単独)を含むように意図される。同様に、「A、B及び/又はC」のような句において使われる用語「及び/又は」は、次のそれぞれの側面を含むように意図される:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)。
【0039】
数字又は一連の数字の前における「少なくとも」という用語は、「少なくとも」という用語に隣接した数字及び論理的に含まれ得る文脈において明確に全ての後続数字又は整数を含むものと理解される。例えば、核酸分子のヌクレオチド数は整数でなければならない。例えば、「21-ヌクレオチド核酸分子の少なくとも18個ヌクレオチド」は、18個、19個、20個又は21個ヌクレオチドが表示された特性を有するということを意味する。少なくとも一連の数字又は範囲の前にある場合に、「少なくとも」は、一連の数字又は範囲の各数字を修正し得るものと理解される。「少なくとも」は整数に限定されない(例えば、「少なくとも5%」は、有效数字の数を考慮せず、5.0%、5.1%、5.18%を含む。)。
【0040】
本明細書において、「含む」という用語で記述される場合に、「構成される」及び/又は「本質的に構成される」との用語で記述される類似の形態も提供されるものと理解される。
【0041】
特に断らない限り、本明細書に使われる全ての技術及び科学用語は、本発明に係る技術の分野における通常の技術者が一般に理解するものと同じ意味を有する。例えば、文献(The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;and Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Press)は、本明細書で使われる多数の用語の一般的な意味を当業者に提供する。
【0042】
単位、接頭辞及び記号は、SI(Systeme International de Unites)許容形式で表示される。数字範囲には、範囲を限定する数字が含まれる。特に表示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向へと左側から右側に記録される。本明細書に提供された題目は、明細書全体を参照して有し得る本発明の様々な側面の制限ではない。したがって、下記定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0043】
用語「約」は、本明細書において概略、凡そ、周辺又は領域を意味するもので使われる。「約」という用語が数値範囲と共に使われる場合に、これは、明示された数値の上下に境界を拡張して当該範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、例えば10%の変動によって、上又は下に(より高かい又は低い)明示された値の上下に数値を修正し得る。
【0044】
本明細書で使われる用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)は、AAV類型1、AAV類型2、AAV類型3(類型3A及び3Bを含む。)、AAV類型4、AAV類型5、AAV類型6、AAV類型7、AAV類型8、AAV類型9、AAV類型10、AAV類型11、AAV類型12、AAV類型13、AAVrh.74、ヘビAAV、鳥類AAV、ウシAAV、イヌ(canine)AAV、ウマ(equine)AAV、ヒツジ(ovine)AAV、ヤギAAV、エビAAV、これらののAAV血清型と系統物(Gao et al.(J.Virol.78:6381(2004)) and Moris et al.(Virol.33:375(2004))、及び現在知られている或いは後に発見される他のAAVを含むが、これに限定されない(例えば、文献(FIELDS et al.Virology 2,Chapter 69(4th ed.,Lippincott-Raven Publishers)参照)。一部の側面において、「AAV」は、公知のAAVの誘導体を含む。一部の側面において、「AAV」は、修正された又は人工のAAVを含む。
【0045】
用語「投与」、「投与する」及びその類義語は、組成物(例えば、本発明のデュアルヘルパープラスミドを用いて生産された組換えAAV伝達体ベクター)を、薬学的に許容可能な経路を通じて対象体に導入することを意味する。対象体に組成物を導入することは、腫瘍内(intratumorally)、経口、肺(pulmonarily)、鼻腔内(intranasally)、非経口(parentally)(静脈内(intavenously)、動脈内(intra-arterially)、筋肉内(intramuscularly)、腹腔内(intraperitoneally)又は皮下(subcutaneously))、直腸内(rectally)、リンパ内(intralymphatically)、脊髄腔内(intrathecally)、眼球周囲(periocularly)又は局所(topically)を含む任意の適切な経路による。投与は、自己投与と他人による投与が含まれる。適切な投与経路は、組成物又は作用剤が意図した機能を果たすようにする。例えば、適切な経路が静脈内である場合に、組成物又は作用剤を対象体の静脈に導入することによって組成物を投与する。
【0046】
本発明において、「抗生剤抵抗性遺伝子(antibiotic resistance gene)」とは、微生物が抗生剤に露出されても生存できるように薬物耐性を付与する目的でプラスミドに挿入された遺伝子を意味する。本出願に記載されているように、一部の側面において、クローニングを用いて所望のプラスミドを有する細胞をスクリーニングするために抗生剤抵抗性遺伝子をプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)に導入できる。本発明に有用な抗生剤抵抗性遺伝子の例は、アンピシリン(Ampicillin)、カナマイシン(Kanamycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、ゲンタマイシン(Gentamycin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、エリスロマイシン(Erythromycin)、バンコマイシン(Vancomycin)、ペニシリン(penicillin)、スペクチノマイシン(spectinomycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、スルファジアジン(Sulfadiazine)及びトリメトプリム(trimethoprim)抵抗性遺伝子を含むが、これに限定されない。
【0047】
また、本明細書に記述されているように、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、特定配向(orientation)/構成(configuration)でデュアルヘルパープラスミドと一緒に存在するrep遺伝子及びcap遺伝子を含む。一部の側面において、rep及びcap遺伝子は、「時計回り方向(clockwise direction)」、「正方向(forward direction)」又は「5’→3’」(例えば、
図5Aを参照)であり、これは、rep-cap遺伝子が、時計回り方向に、又は複製が始まる部位(5’)から複製が終る部位(3’)への方向に挿入又は含まれることを意味する。一部の側面において、rep及びcap遺伝子は、「反時計回り方向(counterclockwise direction)」、「逆方向(reverse direction)」又は「3’→5’」(例えば、
図5Bを参照)であり、これは、rep-cap遺伝子が、反時計回り方向に、又は複製が終わる部位(3’)から複製が始まる部位(5’)への方向に挿入又は含まれることを意味する。
【0048】
本明細書において、用語「rep遺伝子」は、一つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)をエンコードする遺伝子を意味し、前記ORFは、AAV Repタンパク質又はその変異体又は誘導体をエンコードする。このようなAAV Repタンパク質(又は、その変異体又は誘導体)は、AAVゲノム複製及び/又はAAVゲノムパッケージングに関与し、野生型rep遺伝子は、4種のRepタンパク質Rep78、Rep68、Rep52及びRep40をエンコードする。特記しない限り、「rep遺伝子」は、野生型rep遺伝子、その誘導体及び同等な機能を有する人工rep遺伝子を含む。一部の側面において、rep遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2)に由来するrep2遺伝子であってよい。一部の側面において、rep2遺伝子は、配列番号29に提示された核酸配列を含む。
【0049】
本明細書において、用語「cap遺伝子」は、一つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)をエンコードする遺伝子を意味し、ORFは、AAV Cap構造タンパク質、又はその変異体又は誘導体をエンコードする。4個のタンパク質がcap遺伝子から翻訳される。そのうち、VP1、VP2、VP3タンパク質は、AAV粒子を構成する構造タンパク質であり、AAP(assembly-activating protein)は、構造タンパク質によるAAV粒子の形成(組立て)を促進する。特記しない限り、「cap遺伝子」は、野生型キャップ遺伝子、その誘導体及びこれと同等な機能を有する人工キャップ遺伝子を含む。一部の側面において、cap遺伝子は、アデノ随伴ウイルス血清型2(AAV2;cap2)、血清型5(AAV5;cap5)、血清型8(AAV8;cap8)又は血清型9(AAV9;cap9)に由来するcap遺伝子である。一部の側面において、cap遺伝子は、配列番号30(cap2)、配列番号31(cap5)、配列番号32(cap8)又は配列番号33(cap9)に提示された核酸配列を含む。
【0050】
本明細書において、用語「E2a遺伝子」は、AAVのプロモーターを調節し、AAVゲノム複製を手伝い、Rep mRNAのスプライシングとカプシドmRNAの安定性(stability)の増大によるカプシドタンパク質の生産性増加に関与するアデノウイルスのタンパク質E2aをコードする遺伝子を意味する。特記しない限り、「E2a遺伝子」は、野生型E2a遺伝子、その誘導体及びこれと同等な機能を有する人工E2a遺伝子を含む。本発明の具体的な実施例において、前記E2a遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)由来のE2a遺伝子である。一部の側面において、前記E2a遺伝子は、配列番号34に提示された核酸配列を含む。
【0051】
本明細書において、用語「E4遺伝子」は、AAVの生活環においてAAVゲノムの第二鎖(second-strand)の合成に関与し、AAVゲノムの複製を抑制する細胞内機序を担当するMRN(Mre11-Rad50-Nbs1)コンプレックス形成抑制によってAAVゲノムの複製を手伝うアデノウイルスのタンパク質E4をコードする遺伝子を意味する。特記しない限り、「E4遺伝子」は、野生型E4遺伝子、その誘導体及び同等な機能を有する人工E4遺伝子を含む。一部の側面において、E4遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来するE4遺伝子である。一部の側面において、E4遺伝子は、配列番号35に提示された核酸配列を含む。
【0052】
本明細書において、用語「VA RNA遺伝子」又は「VA RNA領域」は、AAVカプシドmRNAの安定性(stability)増加及び翻訳(translation)効率性を向上させ、Rep52タンパク質の分解防止を手伝うVA RNAを生産するVA領域を意味する。特記しない限り、「VA RNA遺伝子」は、野生型VA RNA遺伝子、その誘導体及び同等な機能を有する人工VA RNA遺伝子を含む。一部の側面において、VA RNA遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来するVA RNA遺伝子である。一部の側面において、VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された核酸配列を含む。
【0053】
本明細書において、用語「保存された(conserved)」は、それぞれ比較される2個以上の配列の同じ位置で変更されずに発生するポリヌクレオチド配列又はポリペプチド配列のヌクレオチド又はアミノ酸残基を意味する。相対的に保存されたヌクレオチド又はアミノ酸は、配列の他の箇所に現れるヌクレオチド又はアミノ酸に比べて、より関連した配列間に保存されたものである。
【0054】
本明細書において、用語「調節要素(control element)」は、作動可能に連結された核酸(例えば、外来遺伝子)の発現を調節(例えば、増加又は減少)する核酸配列を意味する。適切な調節要素の非制限的な例は、本発明の他のところで提供される。
【0055】
一部の側面において、2個以上の配列が互いに100%同一である場合に、「完全に保存された(completely conserved)」又は「同一である(identical)」ことを表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一である場合に、「高度に保存された(highly conserved)」と表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに約70%、約80%、約90%、約95%、約98%又は約99%同一である場合に、「高度に保存された」と表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一である場合に、「保存された(conserved)」と表す。一部の側面において、2個以上の配列が互いに約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約98%、又は約99%同一である場合に、「保存された(conserved)」と表す。配列の保存は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全長に適用されてもよく、その部分、領域又は特徴に適用されてもよい。
【0056】
本明細書において、用語「エンハンサー(enhancer)」は、向上した転写を提供できる配列を含み、一部の場合に、さらに他の制御配列に対するそれらの配向と独立して働き得るDNAの分節を意味する。エンハンサーは、プロモーター及び/又は他のエンハンサー要素と協力的に又は付加的に働き得る。
【0057】
用語「賦形剤(excipient)」及び「担体(carrier)」は、相互互換的に使われ、化合物、例えば外来遺伝子を含み、本明細書に提供されたデュアルヘルパープラスミドを用いて生産された組換えAAV伝達体ベクターの投与をより容易にするために薬剤学的組成物に添加される不活性物質を意味する。
【0058】
用語「エクソン(exon)」は、タンパク質をエンコードする核酸の限られた部分、又は事前処理された(又は、前駆体)RNAの一部がスプライシングによって除去された後、RNA分子の成熟した形態で表現される核酸配列を意味する。成熟したRNA分子は、メッセンジャーRNA(mRNA)又はrRNA又はtRNAのような非暗号化RNAの機能的形態であってよい。
【0059】
用語「発現(expression)」は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えば、RNA又はポリペプチドを生産する過程を意味する。これは、メッセンジャーRNA(mRNA)へのポリヌクレオチドの転写及びポリペプチドへのmRNAの翻訳を含むが、これに限定されない。発現は、「遺伝子産物」又は「エンコードされたタンパク質」を生産する。本明細書で使われているように、遺伝子生成物は、例えば、遺伝子の転写によって生成されたRNAのような核酸であってよい。本明細書において、遺伝子産物は、転写体から翻訳される核酸又はポリペプチドであってよい。本明細書に記述された遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化又はスプライシングを有する核酸、又は翻訳後修飾、例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化、脂質の添加、他のタンパク質サブユニットとの結合又はタンパク質分解切断を有するポリペプチドを含む。
【0060】
本明細書において、用語「同一性(identity)」は、重合体分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子間の全体的な単量体保存を意味する。追加修飾語がない「同一な(identical)」という用語と関連して、例えば、ポリヌクレオチドAがポリヌクレオチドBと同一であるということは、ポリヌクレオチド配列が100%同一であること(100%配列同一性)を意味する。例えば、「70%同一」のように2つの配列を記述することは、「70%配列同一性」を有するものを説明することと同一である。
【0061】
例えば、2個のポリペプチド又はポリヌクレオチド配列のパーセント同一性の計算は、最適の比較目的のために2個の配列を整列することによって行われてよい(例えば、最適配列のために第1及び第2ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列のいずれか一方又は両方にギャップが導入されてよく、同一でない配列は比較目的で無視されてよい。)。特定の側面において、比較目的のために整列された配列の長さは、基準配列の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%の参照配列長である。当該アミノ酸位置のアミノ酸又はポリヌクレオチドの場合、塩基を比較する。
【0062】
第一配列の位置が第二配列の当該位置と同じアミノ酸又はヌクレオチドによって占有されている場合に、分子は当該位置において同一である。2個の配列間のパーセント同一性は、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して配列によって共有される同じ位置の数の関数であり、これは、2個の配列の最適整列のために導入される必要がある。配列の比較及び2個の配列間のパーセント同一性の測定は、数学的アルゴリズムを用いて達成できる。
【0063】
様々な配列(例えば、ポリヌクレオチド配列)を整列するために利用可能な適切なソフトウェアプログラムは、様々なソースから入手可能である。パーセント配列同一性を測定するための一つの適切なプログラムは、米国政府の国立生命工学情報センターBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)で利用可能なプログラムのBLAST製品群の一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTN又はBLASTPアルゴリズムを用いて両シーケンス間の比較を行う。BLASTNは、核酸配列を比較するために用いられるのに対し、BLASTPはアミノ酸配列を比較するために用いられる。他の適切なプログラムは、例えば、EMBOSS生物情報学プログラム製品群の一部であるNeedle、Stretcher、Water又はMatcherであり、www.ebi.ac.uk/Tools/psaのEuropean Bioinformatics Institute(EBI)でも使用可能である。
【0064】
配列整列は、MAFFT、Clustal(ClustalW,Clustal X又はClustal Omega)、MUSCLEなどのような当業界に公知の方法を用いて行われてよい。
【0065】
ポリヌクレオチド又はポリペプチド参照配列と整列される単一ポリヌクレオチド又はポリペプチド標的配列内の様々な領域はそれぞれ、それら自身のパーセント配列同一性を有し得る。パーセント配列同一性値は、最も近似する10分の1に丸められる点に留意しなければならない。例えば、80.11、80.12、80.13及び80.14は80.1に切り捨てられ、80.15、80.16、80.17、80.18及び80.19は80.2に切り上げられる。また、長さ値は常に整数である。
【0066】
一部の側面において、第2アミノ酸配列(又は、核酸配列)に対する第1アミノ酸配列(又は、核酸配列)のパーセント同一性(%ID)は、%ID=100x(Y/Z)と計算され、ここで、Yは、一番目及び二番目の配列の整列(肉眼検査又は特定配列整列プログラムによって整列される。)において全く同一であると記録されたアミノ酸残基(又は、核塩基)の数であり、Zは、二番目の配列にある残基の総数である。第1配列の長さが第2配列よりも長い場合に、第1配列と第2配列のパーセント同一性は、第1配列に対する第2配列のパーセント同一性よりも高いだろう。
【0067】
当業者は、パーセント配列同一性の計算のための配列整列の生成が1次配列データによって排他的に駆動される二元配列-配列比較に限定されないということが理解できよう。また、構造的データ(例えば、結晶学的タンパク質構造)、機能的データ(例えば、変異の位置)、又は系統発生学的データのような異種ソースからのデータと配列データを統合することによって配列整列が得られることが理解できよう。多重配列整列を得るために異種データを統合する適切なプログラムはT-Coffeeであり、www.tcoffee.orgで入手可能であり、代案として、例えば、EBIから入手可能である。また、配列パーセント同一性を計算するために用いられる最終整列は自動又は手動で選別可能であることが理解できよう。
【0068】
本明細書において、用語「分離された(isolated)」、「精製された(purified)」、「抽出された(extracted)」及びこれらの類義語は相互互換的に使われ、一つ以上の精製過程を経た本発明の所定の組成物、例えば、外来遺伝子及び非番駅核酸配列を含むポリヌクレオチドの製剤(preparation)の状態を意味する。一部の側面において、本明細書でいう分離又は精製は、本発明の組成物、例えば汚染物を含有するサンプルから本明細書に記述のポリヌクレオチドを除去、部分的除去(例えば、分画)する過程である。
【0069】
本明細書において、用語「連結された(linked)」は、それぞれ、第2アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列に共有又は非共有結合した第1アミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列を意味する。第1アミノ酸又はポリヌクレオチド配列は、第2アミノ酸又はポリヌクレオチド配列に直接連結されたり併置してよく、或いは、介在配列が第1配列を第2配列に共有的に連結してよい。用語「連結された」は、5’末端又は3’末端において第1ポリヌクレオチド配列と第2ポリヌクレオチド配列が融合していることを意味する他、全体第1ポリヌクレオチド配列(又は、第2ポリヌクレオチド配列)の二番目のポリヌクレオチド配列(又は、一番目のポリヌクレオチド配列)の任意の2つのヌクレオチドへの挿入も含む。第1ポリヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合又はリンカーによって第2ポリヌクレオチド配列に連結されてよい。リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドであってよい。
【0070】
用語「miRNA」、「miR」及び「microRNA」は相互互換的に使われ、RNAベース遺伝子調節に関与する真核生物に発見されるマイクロRNA分子を意味する。この用語は、前駆体から処理された一本鎖RNA分子を表すのに使われる。一部の側面において、また、用語「アンチセンスオリゴマー」は、本発明のマイクロRNA分子を記述するのに使われてよい。本発明と関連したmiRNAの名称及びその配列が本明細書に提供される。microRNAは不完全な塩基対によって標的mRNAを認識し結合して標的mRNAの不安定化又は翻訳抑制を誘導し、標的遺伝子発現を下方調節する。逆に、miRNA結合部位を含む分子(一般に、miRNAのシード領域に相補的な配列を含む分子)を用いてmiRNAを標的化することは、標的遺伝子の上方調節を引き起こすmiRNA-誘導翻訳抑制を減少又は抑制させることができる。
【0071】
「核酸(nucleic acid)」、「核酸分子(nucleic acid molecule)」、「ヌクレオチド配列(nucleotide sequence)」、「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」及びこれらの類義語は相互互換的に使われ、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチド配列を意味する。ポリヌクレオチドは、本明細書において5’から3’方向に提示される。本発明のポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)分子又はリボ核酸(RNA)分子であってよい。ヌクレオチド塩基は、本明細書において次のような単一文字コードで表示される:アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)及びウラシル(U)。
【0072】
本明細書において、用語「作動的に連結された(operatively linked)」又は「作動可能に連結された(operably linked)」は、連結されたDNA配列が互いに隣接して所望の機能を行うことを意味する。例えば、プロモーターがコーディング配列(例えば、外来遺伝子)の転写を開始することに役立てる場合に、このようなプロモーターは、コーディング領域と作動的に連結されてよい。このような機能的関係が維持される限り、プロモーターとコーディング領域とが必ずしも隣接して位置する必要はない。
【0073】
「薬剤学的に許容可能な担体(pharmaceutically acceptable carrier)」、「薬剤学的に許容可能な賦形剤(pharmaceutically acceptable excipient)」及びこれらの類義語は、米国連邦政府の規制機関によって承認されたり、又はヒトを含む動物に対する使用に関して米国薬典に述べられた任意の製剤と対象体に対する組成物の投与を禁止し、投与された化合物の生物学的活性及び特性を妨害しない程度に好ましくない生理学的効果の生成を誘発しない任意の担体又は希釈剤を含む。これは、薬剤学的組成物を製造するのに有用であり、一般的に安全で且つ無毒性であり、好ましい賦形剤及び担体を含む。
【0074】
本明細書において、用語「薬剤学的組成物(pharmaceutical composition)」は、薬剤学的に許容可能な担体及び賦形剤のような一つ以上の他の化学成分と混合又は組合せされたり、若しくはそれに浮遊された本明細書に記述の一つ以上の組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞及び/又は組換えウイルス)を意味する。
【0075】
本明細書で使われる用語「プロモーター(promoter)」及び「プロモーター配列(promoter sequence)」は相互互換的に使われてよく、コーディング配列又は機能的RNAの発現を制御できるDNA配列を意味する。一般に、コーディング配列はプロモーター配列の3’に位置する。プロモーターは、本来遺伝子(native gene)から全体的に由来可能であるか、自然から発見される様々なプロモーターに由来する様々な要素で構成されるか、ひいては合成DNAセグメントを含んでよい。様々なプロモーターが様々な組織又は細胞類型において、又は様々な発達段階において、又は様々な環境的又は生理学的条件に対する反応によって遺伝子の発現を指示できるということが当業者には理解される。総じて、大部分の細胞類型に遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「構成的プロモーター(constitutive promoter)」という。遺伝子を特定細胞類型において発現させるプロモーターは、通常、「細胞特異的プロモーター(cell-specific promoter)」又は「組織特異的プロモーター(tissue-specific promoter)」という。発達又は細胞分化の特定段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「発達特異的プロモーター(developmentally-specific promoters)」又は「細胞分化特異的プロモーター(cell differentiation-specific promoters)」という。プロモーターを誘導する作用剤、生物学的分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の露出又は処理後に誘導されて遺伝子を発現させるプロモーターは、通常、「誘導性プロモーター(inducible promoters)」又は「調節可能なプロモーター(regulatory promoters)」を表す。また、総じて、調節配列の正確な境界が完全に定義されていないため、長さの異なるDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることが認識される。
【0076】
プロモーター配列は典型的に、転写開始部位によってその3’末端に結合し、背景から検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又は要素を含むように上向き(5’方向)に延長される。プロモーター配列内でRNAポリメラーゼの結合を担当するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)の他にも、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1とのマッピングによって便利に定義される。)が確認されるであろう。一部の側面において、本発明に使用可能なプロモーターは、組織特異的プロモーターを含む。
【0077】
本明細書において、用語「遺伝子調節領域(gene regulatory region)」又は「調節領域(regulatory region)」は、コーディング領域の上流(5’非コーディング配列)、内部又は下流(3’非コーディング配列)に位置しているヌクレオチド配列を意味し、関連したコーディング領域の転写、RNA処理、安定性又は翻訳に影響を及ぼす。調節領域は、プロモーター、翻訳リーダ配列(translation leader sequence)、イントロン(intron)、ポリアデニル化認識配列(polyadenylation recognition sequence)、RNA加工部位(processingサイト)、エフェクター結合部位又はステム-ループ構造(stem-loop structure)を含んでよい。コーディング領域が真核細胞で発現するように意図された場合に、ポリアデニル化信号及び転写終結配列は一般的にコーディング配列の3’に位置するであろう。
【0078】
一部の側面において、本明細書で提供される核酸組成物(例えば、発現構築物)は、一つ以上のコーディング領域と作動可能に関連付けられたプロモーター及び/又は他の発現(例えば、転写)調節要素を含んでよい。作動可能な関連付けにおいて、遺伝子産物に対するコーディング領域は、調節領域の影響又は制御下に遺伝子産物の発現を置く方式で一つ以上の調節領域と関連付けられる。例えば、プロモーター機能の誘導が、コーディング領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を誘導し、プロモーターとコーディング領域間の連結特性が、遺伝子産物の発現を指示するプロモーターの能力を妨害したり又は転写されるDNA鋳型の能力を妨害したりしてはいけない場合に、コーディング領域とプロモーターは「作動可能に関連付け(operably associated)」される。プロモーターに加え、他の発現調節要素、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結信号も、遺伝子産物発現を指示するコーディング領域と作動可能に関連付けられてよい。
【0079】
本明細書において、用語「外来遺伝子(transgene)」は、組換え発現構築物内にエンコードされた一つ以上のポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域又はこのようなポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域の発現産物、ポリペプチド又は多重ポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチド又は調節核酸(modulatory or regulatory nucleic acid)を意味する。一部の側面において、前記外来遺伝子は、対象体又は患者の身体内で持続的な発現を目的とする、特定疾患の治療用ペプチドをエンコードするヌクレオチド配列であってよい。一部の側面において、「作動的に連結された」又は「作動可能に連結された」とは、連結されるDNA配列が所望の機能を果たすように隣接して位置することを意味し、例えば、特定プロモーターがコーディング配列(例えば、外来遺伝子)の転写を開始することに役立てる場合に、このようなプロモーターはコーディング領域と作動的に連結されてよい。このような機能的関係が維持された限り、プロモーターとコーディング領域とが必ずしも隣接して位置する必要はない。
【0080】
本明細書において、用語「ベクター(vector)」又は「構築物(construct)」は、核酸又は遺伝子を挿入できる構築物を意味し、好ましくは、核酸配列を複製できる細胞への導入のために核酸配列を挿入できる伝達体を含む。核酸配列は、外生(exogenous)又は異種(heterologous)であってよい。核酸配列は外来遺伝子であってよい。構築物としては、プラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、AAV)を挙げることができるが、これに限定されない。当業者は標準的な組換え技術によって前記ベクター又は構築物を構築できる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc.,NY,1994)。
【0081】
本明細書において、用語「発現ベクター」又は「発現構築物」は、転写された遺伝子産物の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含むベクター又は構築物を意味する。一部の場合には、転写されたRNA分子がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。発現構築物には様々な調節要素(control element)が含まれてよい。転写及び翻訳を調節する調節配列に加え、ベクター及び発現ベクターには、さらに他の機能も提供するヌクレオチド配列も含まれてよい。
【0082】
本明細書において、用語「対象体(subject)」は、AAV(本願で提供された方法を用いて生成される。)又はこのようなAAVを含む組成物が投与される対象体を意味する。非制限的な例として、診断、治療又は療法が必要なヒト、家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験室動物(例えば、サル、ネズミ、マウス、ウサギ、ギニアピッグなど)が挙げられ、特にヒトである。本明細書に記載の方法は、ヒト治療及び獣医学適用の両方に適用可能である。
【0083】
本明細書において、「それを必要とする対象体(subject in need thereof)」は、本明細書に記述された組成物の投与から利益を得る対象体、例えば哺乳動物を含む。
【0084】
本明細書において、用語「治療的有効量(therapeutically effective amount)」は、所望の治療効果を示すのに十分な本発明の組成物(例えば、外来遺伝子及び非番駅核酸配列を含むポリヌクレオチド)を含む試薬又は薬剤学的化合物の量である。治療的有効量は、予防が療法と見なされ得ることから、「予防的有効量(prophylactically effective amount)」であってよい。
【0085】
本明細書において、用語「外来遺伝子(transgene)」は、組換え発現構築物又はポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域の発現産物、ポリペプチド又は多重ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又は変調(modulatory)又は調節(regulatory)核酸を意味する。一部の側面において、前記外来遺伝子は、それが挿入(又は、形質導入)される細胞に対して異種であってよい(すなわち、細胞から自然的に発現しない。)。
【0086】
用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」又は「治療している(treating)」は、例えば、疾病又は状態の重症度減少;疾病進行期間短縮;疾病又は状態と関連した一つ以上の症状の改善又は除去;疾病又は状態を必ずしも治療せず、疾病又は状態を持つ被験者に有益な効果を提供すること、を意味する。この用語は、また、疾病又は状態又はその症状の予防又は防止を含む。
【0087】
用語「上流(upstream)」は、基準ヌクレオチド配列に対して5’に位置するヌクレオチド配列を意味する。
【0088】
本明細書において、用語「ベクター(vector)」又は「構築物(construct)」は、核酸又は遺伝子が挿入され得る任意の運搬体を意味し、これは、複製可能な細胞への導入のために核酸配列が挿入され得る伝達運搬体のようなものである。核酸配列は、外生(exogenous)又は異種(heterologous)であってよい。核酸配列は外来遺伝子であってよい。構築物としては、プラスミド、コスミド及びウイルス(例えば、AAV)を挙げることができるが、これに限定されない。当業者は、標準的な組換え技術によって前記ベクター又は構築物を構築することができる(Maniatis,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988;及びAusubel et al.,In:Current Protocols in Molecular Biology,John,Wiley & Sons,Inc.,NY,1994)。本明細書において、用語「発現ベクター」又は「発現構築物」は、転写された遺伝子産物の少なくとも一部をコードするヌクレオチド配列を含むベクター又は構築物を意味する。一部の場合には、転写されたRNA分子がタンパク質、ポリペプチド又はペプチドに翻訳される。発現構築物には様々な調節要素(control element)が含まれてよい。転写及び翻訳を調節する調節配列に加え、ベクター及び発現ベクターにはさらに他の機能も提供するヌクレオチド配列も含まれてよい。
【0089】
ベクターは、ベクターが混入された細胞の選択又は識別のために提供する選択可能なマーカー又はレポーターをエンコードするように操作されてよい。選択可能なマーカー又はレポーターの発現は、ベクターに含まれた他のコーディング領域を包含及び発現する宿主細胞の識別及び/又は選択を可能にする。当業界に公知され、使用されている選別可能なマーカー遺伝子の例は、アンピシリン(ampicillin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、ゲンタマイシン(gentamycin)、カナマイシン(kanamycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、ビアラホス(bialaphos)除草剤(herbicide)、スルフォンアミド(sulfonamide)などに対する耐性を提供する遺伝子;及び表現型マーカーとして用いられる遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などである。当該分野で公知され、使用されてているレポーターの例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択可能なマーカーはレポーターと考慮されてもよい。
【0090】
II.デュアルヘルパープラスミド
II.A.E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子、cap遺伝子
本発明の一部の側面は、デュアルヘルパープラスミドに関する。本明細書で立証されているように、このようなデュアルヘルパープラスミドは、(例えば、関心タンパク質をコードする外来遺伝子を含む)組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)を生産するのに特に有用であり得る。
【0091】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、一本鎖DNAウイルスであり、且つヘルパー依存型ヒトパルボウイルスである。ゲノムサイズは約4.7kbpである。ゲノムのN末端は、ウイルス複製及びウイルス遺伝子発現に関与するrep遺伝子をエンコードし、C末端は、ウイルスのカプシドタンパク質を暗号化するcap遺伝子をエンコードする。約145塩基の逆末端反復配列(ITR)が両末端部位に挿入されている。T字状の構造を有する145bpサイズのITR(逆末端反復配列)は、ウイルス遺伝体複製時に複製原点の機能を果たし、1次的なパッケージング信号として作用する。ITRは、組換えAAV構築物を作る時に唯一に必要なcis-acting塩基配列であり、Repタンパク質の存在下ではエンハンサー活性を有するが、、Repタンパク質がない時には非常に弱い活性を有するので、組換えAAV構築物に外来遺伝子をクローニングする時に、それを考慮してエンハンサー、プロモーター、pAなどを適切に構成して発現構築物を作製する(RJ Samulski and N Muzyczka,Annu.Rev.Virolo.2014.1:427-451)。rep遺伝子からは4個のタンパク質が翻訳されるが、これらはその分子量によってrep78、rep68、rep52、rep40に区分され、AAV DNA複製に重要な働きをする。cap遺伝子からは4個のタンパク質が翻訳されるが、そのうち、VP1、VP2、VP3タンパク質はAAV粒子を構成する構造タンパク質であり、組立-活性化タンパク質(AAP,assembly-activating protein)は、前記構造タンパク質によるAAV粒子の形成を促進する。前記アデノ随伴ウイルスが効率的に複製されるためには、アデノウイルス或いはヘルペスシンプレックスウイルスのようなヘルパーウイルス(helper virus)に由来する一部のタンパク質及びRNAを必要とする(Muzyczka N.Curr Top Microbiol Immunol 158,97-129,1992)。
【0092】
本明細書において、用語「デュアルヘルパープラスミド(dual-helper plasmid)」は、細胞においてAAVを生成するための要件のうち2個以上を提供できるプラスミドを意味する。外来遺伝子を含む組換えAAVベクターを生産するためには、下記の構成要素が宿主細胞に提供される必要がある:(1)外来遺伝子、(2)rep及びcapタンパク質、及び(3)E2a、E4及びVA RNAタンパク質。本発明の他の所で記述されているように、伝統的な方法により、異なる要件が、3個の異なるプラスミド(すなわち、(1)ITR側面にある外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミド、(2)Rep-Capプラスミド、及び(3)ヘルパープラスミド)によって細胞に提供される。
【0093】
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に記載のデュアルヘルパープラスミドは、前述した要件(2)及び(3)を提供する。例えば、一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、rep遺伝子、cap遺伝子、E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む。
【0094】
本明細書で立証されているように、本明細書に記述のデュアルヘルパープラスミドは、前述した遺伝子を含む他にも、前記遺伝子はプラスミドにおいて特定構成で配列される。例えば、一部の側面において、E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子は、デュアルヘルパープラスミド内で順次に連結され、rep遺伝子及びcap遺伝子(本明細書では「rep-cap遺伝子」と言及される。)は、E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端とを時計回り方向に(5’から3’に)順次に連結する。より具体的には、一部の側面において、rep-cap遺伝子の5’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、rep-cap遺伝子の3’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結される。このようなデュアルヘルパープラスミドの非制限的な例は、
図5Aに提示されている。
【0095】
一部の側面において、E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子は順次に連結され、rep-cap遺伝子は反時計回り方向に(3’から5’に)E2a遺伝子の5’末端とVA RNA遺伝子の3’末端との間に存在する。より具体的には、一部の側面において、rep-cap遺伝子の3’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、rep-cap遺伝子の5’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結される。このようなデュアルヘルパープラスミドの非制限的な例は、
図5Bに提示されている。
【0096】
本発明から明らかなように、一部の側面において、上述したそれぞれのE2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子はアデノウイルスに由来する。一部の側面において、cap遺伝子及びrep遺伝子は、同じAAV血清型に由来する。例えば、一部の側面において、cap遺伝子及びrep遺伝子はいずれもAAV2に由来する(例えば、実施例1-4に記述されたpUC-R2C2構築物を参照)。一部の側面において、cap遺伝子及びrep遺伝子は、様々な血清型を有するAAVに由来する。例えば、本明細書で立証されているように、一部の側面において、cap遺伝子は、AAV8(cap8又はその断片)に由来し、rep遺伝子はAAV2(rep2又はその断片)に由来する(例えば、実施例1-2に記述されたpUC-R2C8構築物を参照)。一部の側面において、cap遺伝子はAAV9(cap9又はその断片)に由来し、rep遺伝子はAAV2(rep2又はその断片)に由来する(例えば、実施例1-6に記述されたpUC-R2C9構築物を参照)。一部の側面において、cap遺伝子はAAV5(cap5又はその断片)に由来し、rep遺伝子はAAV2(rep2又はその断片)に由来する(例えば、実施例1-7に記述されたpUC-R2C5構築物を参照)。
【0097】
本発明で使用可能なAAVの類型又は血清型の非制限的な例は、AAVrh.10(AAVrh10)、AAV-DJ(AAVDJ)、AAV-DJ8(AAVDJ8)、AAV1、AAV2、AAV2G9、AAV3、AAV3a、AAV3b、AAV3-3、AAV4、AAV4-4、AAV5、AAV6、AAV6.1、AAV6.2、AAV6.1.2、AAV7、AAV7.2、AAV8、AAV9、AAV9.11、AAV9.13、AAV9.16、AAV9.24、AAV9.45、AAV9.47、AAV9.61、AAV9.68、AAV9.84、AAV9.9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV16.3、AAV24.1、AAV27.3、AAV42.12、AAV42-lb、AAV42-2、AAV42-3a、AAV42-3b、AAV42-4、AAV42-5a、AAV42-5b、AAV42-6b、AAV42-8、AAV42-10、AAV42-11、AAV42-12、AAV42-13、AAV42-15、AAV42-aa、AAV43-1、AAV43-12、AAV43-20、AAV43-21、AAV43-23、AAV43-25、AAV43-5、AAV44.1、AAV44.2、AAV44.5、AAV223.1、AAV223.2、AAV223.4、AAV223.5、AAV223.6、AAV223.7、AAVl-7/rh.48、AAVl-8/rh.49、AAV2-15/rh.62、AAV2-3/rh.61、AAV2-4/rh.50、AAV2-5/rh.51、AAV3.1/hu.6、AAV3.1/hu.9、AAV3-9/rh.52、AAV3-11/rh.53、AAV4-8/rl1.64、AAV4-9/rh.54、AAV4-19/rh.55、AAV5-3/rh.57、AAV5-22/rh.58、AAV7.3/hu.7、AAV16.8/hu.10、AAV16.12/hu.11、AAV29.3/bb.1、AAV29.5/bb.2、AAV106.1/hu.37、AAV114.3/hu.40、AAV127.2/hu.41、AAV127.5/hu.42、AAV128.3/hu.44、AAV130.4/hu.48、AAV145.1/hu.53、AAV145.5/hu.54、AAV145.6/hu.55、AAV161.10/hu.60、AAV161.6/hu.61、AAV33.12/hu.l7、AAV33.4/hu.l5、AAV33.8/hu.l6、AAV52/hu.l9、AAV52.1/hu.20、AAV58.2/hu.25、AAVA3.3、AAV A3.4、AAVA3.5、AAV A3.7、AAVC1、AAVC2、AAVC5、AAVF3、AAVF5、AAVH2、AAVrh.72、AAVhu.8、AAVrh.68、AAVrh.70、AAVpi.1、AAVpi.3、AAVpi.2、AAVrh.60、AAVrh.44、AAVrh.65、AAVrh.55、AAVrh.47、AAVrh.69、AAVrh.45、AAVrh.59、AAVhu.12、AAVH6、AAVLK03、AAVH-l/hu.1、AAVH-5/hu.3、AAVLG-10/rh.40、AAVLG-4/rh.38、AAVLG-9/hu.39、AAVN721-8/rh.43、AAVCh.5、AAVCh.5R1、AAVcy.2、AAVcy.3、AAVcy.4、AAVcy.5、AAVCy.5Rl、AAVCy.5R2、AAVCy.5R3、AAVCy.5R4、AAVcy.6、AAVhu.1、AAVhu.2、AAVhu.3、AAVhu.4、AAVhu.5、AAVhu.6、AAVhu.7、AAVhu.9、AAVhu.10、AAVhu.11、AAVhu.13、AAVhu.15、AAVhu.16、AAVhu.17、AAVhu.18、AAVhu.20、AAVhu.21、AAVhu.22、AAVhu.23.2、AAVhu.24、AAVhu.25、AAVhu.27、AAVhu.28、AAVhu.29、AAVhu.29R、AAVhu.31、AAVhu.32、AAVhu.34、AAVhu.35、AAVhu.37、AAVhu.39、AAVhu.40、AAVhu.41、AAVhu.42、AAVhu.43、AAVhu.44、AAVhu.44Rl、AAVhu.44R2、AAVhu.44R3、AAVhu.45、AAVhu.46、AAVhu.47、AAVhu.48、AAVhu.48Rl、AAVhu.48R2、AAVhu.48R3、AAVhu.49、AAVhu.51、AAVhu.52、AAVhu.54、AAVhu.55、AAVhu.56、AAVhu.57、AAVhu.58、AAVhu.60、AAVhu.61、AAVhu.63、AAVhu.64、AAVhu.66、AAVhu.67、AAVhu.14/9、AAVhu.t19、AAVrh.2、AAVrh.2R、AAVrh.8、AAVrh.8R、AAVrh.12、AAVrh.13、AAVrh.13R、AAVrh.14、AAVrh.17、AAVrh.18、AAVrh.19、AAVrh.20、AAVrh.21、AAVrh.22、AAVrh.23、AAVrh.24、AAVrh.25、AAVrh.31、AAVrh.32、AAVrh.33、AAVrh.34、AAVrh.35、AAVrh.36、AAVrh.37、AAVrh.37R2、AAVrh.38、AAVrh.39、AAVrh.40、AAVrh.46、AAVrh.48、AAVrh.48.1、AAVrh.48.1.2、AAVrh.48.2、AAVrh.49、AAVrh.51、AAVrh.52、AAVrh.53、AAVrh.54、AAVrh.56、AAVrh.57、AAVrh.58、AAVrh.61、AAVrh.64、AAVrh.64Rl、AAVrh.64R2、AAVrh.67、AAVrh.73、AAVrh.74、AAVrh8R、AAVrh8R A586R mutant、AAVrh8R R533A mutant、AAAV、BAAV、caprine AAV、bovine AAV、AAVhEl.1、AAVhErl.5、AAVhER1.14、AAVhErl.8、AAVhErl.16、AAVhErl.18、AAVhErl.35、AAVhErl.7、AAVhErl.36、AAVhEr2.29、AAVhEr2.4、AAVhEr2.16、AAVhEr2.30、AAVhEr2.31、AAVhEr2.36、AAVhER1.23、AAVhEr3.1、AAV2.5T、AAV-PAEC、AAV-LK01、AAV-LK02、AAV-LK03、AAV-LK04、AAV-LK05、AAV- LK06、AAV-LK07、AAV-LK08、AAV-LK09、AAV-LK10、AAV-LK11、AAV-LK12、AAV-LK13、AAV-LK14、AAV-LK15、AAV-LK16、AAV-LK17、AAV-LK18、AAV- LK19、AAV-PAEC2、AAV-PAEC4、AAV-PAEC6、AAV-PAEC7、AAV-PAEC8、AAV- PAEC11、AAV-PAEC12、AAV-2-pre-miRNA-101、AAV-8h、AAV-8b、AAV-h、AAV- b、AAV SM10-2、AAV Shuffle100-1、AAV Shuffle100-3、AAV Shuffle100-7、AAV Shuffle10-2、AAV Shuffle10-6、AAV Shuffle10-8、AAV Shuffle100-2、AAV SM10-1、AAV SM10-8、AAV SM100-3、AAV SM100-10、B P61AAV、B P62AAV、B P63AAV、AAVrh.50、AAVrh.43、AAVrh.62、AAVrh.48、AAVhu.19、AAVhu.11、AAVhu.53、AAV4-8/rh.64、AAVLG-9/hu.39、AAV54.5/hu.23、AAV54.2/hu.22、AAV54.7/hu.24、AAV54.1/hu.21、AAV54.4R/hu.27、AAV46.2/hu.28、AAV46.6/hu.29、AAV128.1/hu.43、true type AAV(ttAAV)、UPENN AAV10、Japanese AAV10血清型、及びこれらの組合せを含む。
【0098】
一部の側面において、本発明に有用なアデノ随伴ウイルスの血清型は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、又はこれらの組合せを含む。したがって、一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV1に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV1に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV1に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV1に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV2に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV2に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV2に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV2に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV3に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV3に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV3に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV3に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV4に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV4に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV4に由来である。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV4に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV5に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV5に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV5に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV5に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV6に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV6に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV6に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV6に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV7に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV7に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV7に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV7に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV8に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV8に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV8に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV8に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAV9に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAV9に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAV9に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAV9に由来する。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドの多重遺伝子のうち一つ以上は、AAVrh10に由来する。例えば、一部の側面において、rep遺伝子はAAVrh10に由来する。一部の側面において、cap遺伝子はAAVrh10に由来する。一部の側面において、rep遺伝子及びcap遺伝子はいずれもAAVrh10に由来する。
【0099】
一部の側面において、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子はAAV2に由来する。AAV2 rep遺伝子に対する核酸配列は、配列番号29に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子は、配列番号29に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記rep遺伝子は、配列番号29に記載された核酸配列を含む。
【0100】
一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9に由来する。
【0101】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV2に由来する。したがって、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、AAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV2に由来するcap遺伝子(cap2)を含む。AAV2 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号30に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号30に提示された配列に少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号30に提示された核酸配列を含む。
【0102】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV5に由来する。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドはAAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV5に由来するcap遺伝子(cap5)を含む。AAV5 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号31に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドはE2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は配列番号31に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号31に提示された核酸配列を含む。
【0103】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV8に由来する。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、AAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV8に由来するcap遺伝子(cap8)を含む。AAV8 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号32に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号32に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号32に提示された核酸配列を含む。
【0104】
一部の側面において、cap遺伝子はAAV9に由来する。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、AAV2に由来するrep遺伝子(rep2)及びAAV9に由来するcap遺伝子(cap9)を含む。AAV9 cap遺伝子に対する核酸配列は、配列番号33に提示されている。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子は、配列番号33に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記cap遺伝子、は配列番号33に提示された核酸配列を含む。
【0105】
一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E2a遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する。Ad5E2a遺伝子に対する核酸配列は、配列番号34に提示されている。したがって、一部の側面において、本発明に有用なデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E2a遺伝子は配列番号34に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E2a遺伝子は、配列番号34に提示された核酸配列を含む。
【0106】
一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E4遺伝子はアデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する。Ad5 E4遺伝子に対する核酸配列は、配列番号35に提示されている。一部の側面において、本発明に有用なデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E4遺伝子は、配列番号35に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記E4遺伝子は、配列番号35に提示された核酸配列を含む。
【0107】
一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記VA RNA遺伝子は、アデノウイルス血清型5(Ad5)に由来する。Ad5 VA RNA遺伝子に対する核酸配列は、配列番号36に提示されている。一部の側面において、本発明に有用なデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子、及びcap遺伝子を含み、前記VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含み、前記VA RNA遺伝子は、配列番号36に提示された核酸配列を含む。
【0108】
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に記述されたデュアルヘルパープラスミドは、同一のウイルス供給源又は多重のウイルス供給源に由来する遺伝子を含む。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV2に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号30);及び(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含む。一部の側面において、記載されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV5に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号31);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(配列番号29)を含む。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV8に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号32);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含む。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV9に由来するcap遺伝子(例えば、配列番号33);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含む。
【0109】
本明細書に記述され、立証されているように、前述した遺伝子(例えば、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子)の一つ以上の配列は、本発明のデュアルヘルパープラスミドの特定特性を改善するのに役立ち得る。例えば、一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9に由来するcap遺伝子(例えば、それぞれ配列番号30、配列番号31、配列番号32又は配列番号33);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含み、前記rep遺伝子及びcap遺伝子は時計回り方向である。例えば、一部の側面において、rep遺伝子の5’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結され、rep遺伝子の3’末端はcapの5’末端に連結され、cap遺伝子の3’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結される(
図5A参照)。一部の側面において、記述されたデュアルヘルパープラスミドは、(i)Ad5に由来するE2a遺伝子(例えば、配列番号34);(ii)Ad5に由来するE4遺伝子(例えば、配列番号35);(iii)Ad5に由来するVA RNA遺伝子(例えば、配列番号36)、(iv)AAV2、AAV5、AAV8又はAAV9に由来するcap遺伝子(例えば、それぞれ配列番号30、配列番号31、配列番号32又は配列番号33);及び、(v)AAV2に由来するrep遺伝子(例えば、配列番号29)を含み、前記rep遺伝子及びcap遺伝子は反時計回り方向である。一部の側面において、rep遺伝子の5’末端はVA RNA遺伝子の3’末端に連結され、rep遺伝子の3’末端はcap遺伝子の5’末端に連結され、cap遺伝子の3’末端はE2a遺伝子の5’末端に連結される(
図5B参照)。
【0110】
本明細書に記述された特徴(例えば、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子の特定配列)に基づいて、本発明のデュアルヘルパープラスミドは、下記の改善された特性のうち一つ以上を示す:1)宿主細胞が組換えAAVを生産するのに必要な全ての構成要素を有するように同時形質感染確率の増加、2)組換えアデノ随伴ウイルスの生産性の増加、3)プラスミド生産及び精製費用及び時間の減少。このような特性に関する追加開示は、本発明の他の所で提供される。
【0111】
II.B.追加特徴
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、組換えAAV生産に有用な一つ以上の追加特徴を含む。例えば、一部の側面において、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドは、抗生剤抵抗性遺伝子をさらに含む。例えば、一部の側面において、デュアルヘルパープラスミドは選別マーカーをさらに含む。本明細書において、用語「選別マーカー(selection marker)」は、核酸配列が発現する細胞を識別するのに使用可能な任意の遺伝子を意味する。したがって、このような選別マーカーは、本明細書に記述されたデュアルヘルパープラスミドで形質感染後に、形質転換された細胞を確認し豊富にするのに用いられてよい。本発明と共に使用可能な選別マーカーは、当業界に公知された任意の適切な選別マーカーを含む。適切な選別マーカーの非制限的な例は、(i)抗生剤に対する抵抗性をエンコードする酵素(すなわち、「抗生剤抵抗性遺伝子」)、例えば、カナマイシン(kanamycin)、ネオマイシン(neomycin)、ピューロマイシン(puromycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、ブラストサイジン(blasticidin)又はゼオシン(zeocin);又は、(ii)蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)又は青色蛍光タンパク質(BFP)を含む。
【0112】
一部の側面において、選別マーカーは、抗生剤抵抗性遺伝子を含む。一部の側面において、抗生剤抵抗性遺伝子は、アンピシリン抵抗性遺伝子、カナマイシン抵抗性遺伝子、又は両方を含む。アンピシリン抵抗性遺伝子に対する核酸配列は、配列番号37に提示されている。カナマイシン抵抗性遺伝子に対する核酸配列は、配列番号38に提示されている。
【0113】
III.発現構築物
本発明から明らかなように、一部の側面において、本明細書に提供されたデュアルヘルパープラスミドは、例えば、組換えAAVを生成するとき、一つ以上の追加プラスミドと組み合わせて使用されてよい。一部の側面において、追加プラスミドは、組換え発現構築物、例えば、AAV構築物プラスミド(ここで「発現構築物」という。)を含む。発現構築物の例示的な側面が、下記に記述されている。
【0114】
III.A.外来遺伝子(例えば、ITRの側面に位置)
本発明の他の所でさらに記述されているように、一部の側面において、本明細書で提供されるデュアルヘルパープラスミドは、E2a遺伝子、E4遺伝子、VA RNA遺伝子、rep遺伝子及びcap遺伝子を含む。このような側面において、(例えば、生産される組換えAAVに導入される)外来遺伝子は、別個の発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド)によって提供されてよい。したがって、一部の側面において、発現構築物は外来遺伝子を含む。一部の側面において、外来遺伝子は、逆末端反復配列(ITR)の側面に位置する。本発明に有用な外来遺伝子は、外来遺伝子が細胞内に導入される時にポリペプチドに翻訳され得る限り、特に限定されない。したがって、任意の適切な関心外来遺伝子が本発明と共に使用されてよい。一部の側面において、外来遺伝子は、ポリペプチド(又は、その任意の変異体)、融合タンパク質、抗体又はその抗原結合断片、RNAベース分子(例えば、miRNA、shRNA、リボザイム、siRNA)、又はその任意の組合せをエンコードする。
【0115】
一部の側面において、外来遺伝子は、本明細書に記載されたような疾患又は障害の治療に有用なタンパク質をエンコードする。一部の側面において、外来遺伝子は、対象体又は患者の身体において持続した発現を目的に特定疾病に対する治療ペプチドをエンコードする。
【0116】
III.B.調節要素
一部の側面において、本発明のデュアルヘルパープラスミドと共に使用可能な発現構築物は、調節要素をさらに含む。一部の側面において、調節要素は、外来遺伝子に作動可能に連結される。
【0117】
したがって、一部の側面において、本明細書に記述された発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド)は、下記を含む:
(a)ITR(逆末端反復配列);
(b)外来遺伝子;及び
(c)外来遺伝子に作動可能に連結された調節要素。
【0118】
本発明に有用な調節要素は、エンハンサー(例えば、CMVエンハンサー)、プロモーター(例えば、CMVプロモーター、EF-1αプロモーター、β-アクチンプロモーター)、エクソン(例えば、エクソン1、エクソン2)、イントロン(例えば、イントロンA)、スプライシング供与体又は受容体配列、又はこれらの組合せが含まれる。一部の側面において、前記調節要素は、転写終結のための配列(例えば、ポリA)、外来遺伝子を安定的に発現させるための配列(例えば、WPRE配列)、外来遺伝子特異的免疫を減少させるための配列(例えば、miRNA標的配列)、又はこれらの組合せが含まれてよい。外来遺伝子及び調節要素に対する細部事項(ITR配列、エンハンサー配列、プロモーター配列、E1配列、スプライシング供与体配列、EF-1αイントロン又はスプライシング受容体を含むその断片配列、EF-1α E2配列、WPRE配列、miR配列、ポリ配列など)は、US2022/0010332A1から確認でき、その全文が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0119】
上述したように、一部の側面において、本発明に有用な発現構築物は、(i)外来遺伝子、及び(ii)外来遺伝子に作動可能に連結された調節要素を含み、前記調節要素は、下記の成分を含む:
1)CMVエンハンサー配列;
2)CMVプロモーター配列、EF-1αプロモーター配列又はニワトリβ-アクチンプロモーター配列;
3)CMV E1配列、EF-1α E1配列又はニワトリβ-アクチンE1配列;
4)スプライシング供与体配列;
5)EF-1αイントロン断片配列;及び
6)EF-1α E2配列。
【0120】
IV.ベクター
一部の側面において、本明細書に提供された任意のプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び/又は外来遺伝子を含む発現構築物)を含むベクターが本明細書に提供される。また、本明細書で提供されたプラスミドを用いて生産された組換えAAVが本明細書に提供される。本明細書において、このようなベクターは、宿主細胞及び治療的介入のための標的細胞での組換え発現に有用である。
【0121】
本発明から明らかなように、一部の側面において、本発明に有用なベクターは、AAVに由来する。AAVは、外来DNAを細胞に伝達するためのベクターシステムとして魅力的な独特の機能を有している。培養中の細胞のAAV感染は一般的に非細胞変性であり、ヒト及び他の動物の自然感染は、静か(silent)で且つ無症状である。しかも、AAVは、多くの様々な類型の哺乳動物細胞を感染させ、生体内で多くの様々な組織を標的化できる。また、AAVは、他の形態の遺伝子伝達体に比べて、より弱い免疫反応を促進し、非統合、エピソームベクターDNA(non-integrating,episomal vector DNA)に基づいて分裂及び停止細胞の両方で持続して発現し、遺伝子伝達体に対して特に魅力的なウイルスシステムとなる更なる利点を有する。また、AAVは、アデノウイルスを非活性化するために用いられる条件(56~65℃で数時間)を耐えるので、rAAVベースワクチンの低温保存の重要性が相対的に少ない。
【0122】
本発明に使用可能なアデノ随伴ウイルスの類型又は血清型の非制限的な例は、本発明の他の所で提供される。
【0123】
V.細胞
一部の側面において、本発明は、本明細書に記述されたプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現構築物)を含む細胞(ここで「変形された細胞」と呼ぶ。)を提供する。一部の側面において、細胞(例えば、宿主細胞)は、組換えAAVを生産するために、デュアルヘルパープラスミド及びAAV構成プラスミドで形質感染される。本明細書の一部の側面において、(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現構築物を含む)本発明の変形された細胞は、組換えAAV生産の一つ以上の側面を改善させることができる。例えば、一部の側面において、本明細書に提供された変形された細胞は、対照細胞と比較してより大きい収率で組換えAAVを生産することができる。一部の側面において、対照細胞は、次の3つの別個プラスミドを含むように変形された該当の細胞を含む:(1)rep遺伝子及びcap遺伝子を含む第1プラスミド(「rep-capプラスミド」);(2)E2a遺伝子、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む第2プラスミド(「ヘルパープラスミド」);及び(3)外来遺伝子を含む第3プラスミド。
【0124】
一部の側面において、対照細胞と比較して、(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現ベクターを含む)本発明の細胞は、生産された組換えAAVの量を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約100%以上増加させることができる。一部の側面において、対照細胞と比較して、本発明の細胞は、生産された組換えAAVの量を少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、又は少なくとも約100倍又はそれ以上増加させることができる。一部の側面において、(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び外来遺伝子を含む発現構築物を含むように変形された)本明細書に提供された細胞は、対照細胞と比較して生産及び/又は精製時間を減少させることができる。一部の側面において、対照細胞と比較して生産及び/又は精製時間は少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%又はそれ以上減少する。
【0125】
本発明から明らかなように、また、本明細書のプラスミドを用いて生産された組換えAAVを含むように変形(例えば、形質感染)された細胞が提供される。このような細胞は、例えば、本明細書に記述された外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質を生産するのに特に有用であり得る。任意の一つの理論にとらわれず、一部の側面において、細胞(例えば、宿主細胞)が本明細書に記述のプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド及び調節要素に作動可能に連結された外来遺伝子を含む発現構築物)で形質感染されるとき、生産された組換えAAVは個別プラスミドの一つ以上の特徴を含む。例えば、一部の側面において、生産された組換えAAVは、調節要素に作動可能に連結された外来遺伝子を含む。
【0126】
本明細書に記載されているように、一部の側面において、本明細書に記載された一つ以上の調節要素は、細胞において外来遺伝子によってコードされるタンパク質(「暗号化されたタンパク質」)の発現を向上させることができる。したがって、一部の側面において、(例えば、本明細書に記述された一つ以上の調節要素に作動可能に連結された外来遺伝子を含む組換えAAV伝達体ベクターで形質感染された)本明細書に記述された細胞は、対照細胞と比較して、エンコードされたタンパク質の発現をより多く増加させる。一部の側面において、対照細胞は、当該伝達体ベクターで形質感染されるが、本明細書に記述された調節要素のうち一つ以上が欠如している。
【0127】
一部の側面において、本明細書に記述された細胞は、試験管内で変形(例えば、形質感染)されて関心組成物を生産する。例えば、一部の側面において、細胞は、組換えAAVを生産するために、デュアルヘルパープラスミド及び発現構築物(例えば、本明細書に記載されたもの)で試験管内で形質感染される。一部の側面において、細胞は、組換え遺伝子伝達体ベクターで試験管内で形質感染され、外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質を生産する。一部の側面において、本明細書に記述された細胞は、生体内で(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAVが投与された対象体で)エンコードされたタンパク質を生産できる。一部の側面において、本明細書に記述された細胞は、試験管内及び生体内の両方において関心組成物(例えば、エンコードされたタンパク質)を生産することができる。
【0128】
本明細書に記載されているように、一部の側面において、本発明は、例えば、外来遺伝子発現のための組換え発現構築物で形質転換、形質導入又は形質感染された宿主細胞を提供する。本明細書において、用語「宿主細胞(host cell)」は、真核細胞及び原核細胞を含み、例えば、プラスミド又は発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド、Rep-Capプラスミド、ヘルパープラスミド、デュアルヘルパープラスミドなど)によってエンコードされる遺伝子が発現又は複製され得るように形質導入可能な有機体の細胞を意味する。一部の側面において、これは、分離された(真核)宿主細胞を意味する。本明細書において、用語「形質感染(transfection)」は、形質導入及び形質転換を含むように意図される。宿主細胞は、本明細書に記載された任意のプラスミド、構築物及び/又はベクターで形質感染、形質導入又は形質転換されてよい。これらの用語は、外因性核酸分子が宿主細胞内に伝達又は導入される過程を意味する。
【0129】
一部の側面において、宿主細胞は真核細胞である。一部の側面において、宿主細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、トランスジェニック哺乳動物細胞及び植物細胞からなる群から選ばれる。一部の側面において、宿主細胞は原核細胞である。一部の側面において、原核細胞はバクテリア細胞である。
【0130】
一部の側面において、本発明に有用な細胞(例えば、宿主細胞)は、昆虫細胞、哺乳動物細胞、又は両方を含む。一部の側面において、昆虫細胞は、Sf9細胞であってよい。一部の側面において、哺乳動物細胞は、HEK293細胞、HeLa細胞、ARPE-19細胞、RPE-1細胞、HepG2細胞、Hep3B細胞、Huh-7細胞、C8D1a細胞、Neuro2A細胞、CHO細胞、MES13細胞、BHK-21細胞、COS7細胞、COP5細胞、A549細胞、MCF-7細胞、HC70細胞、HCC1428細胞、BT-549細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、Capan-1細胞、Panc-1細胞、MIA PaCa-2細胞、SW480細胞、HCT166細胞、LoVo細胞、A172細胞、MKN-45細胞、MKN-74細胞、Kato-III細胞、NCI-N87細胞、HT-144細胞、SK-MEL-2細胞、SH-SY5Y細胞、C6細胞、HT-22細胞、PC-12細胞、NIH3T3細胞、又はこれらの組合せを含む。
【0131】
一部の側面において、本発明に有用な細胞は、ヒト細胞を含む。一部の側面において、ヒト細胞は、本明細書に記述の組換え遺伝子伝達体ベクターが投与される対象体の細胞である。一部の側面において、ヒト細胞は供与者(例えば、健康なヒト被験者)に由来する。
【0132】
VI.組成物
本発明は、また、本明細書に記載されたデュアルヘルパープラスミドを含む組成物に関する。本発明から明らかなように、一部の側面において、このような組成物は、追加のプラスミド、例えば、本明細書に記載された発現構築物(例えば、外来遺伝子発現のためのAAV構築物プラスミド)をさらに含む。本発明の他の所でも記述されているように、このような組成物は、組換えAAVを生産するのに有用であり得る。
【0133】
様々なプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)、構築物(例えば、発現構築物)、ベクター(例えば、組換えAAV伝達体ベクター)及び本明細書に開示された細胞(ここで「活性化合物(active compounds)」と呼ぶ。)は、投与に適合する薬剤学的組成物に含まれてよい。したがって、一部の側面において、本発明は、このような薬剤学的組成物に関する。例えば、一部の側面において、本発明は、本明細書に記述されたプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)を用いて生産された組換えAAVを含む薬剤学的組成物を提供する。
【0134】
一部の側面において、本明細書に記載された薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0135】
本発明に使用可能な薬剤学的に許容可能な担体は、剤形に一般に用いられるものを含む。このような薬剤学的に許容可能な担体の非制限的な例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶質セルロ-ス、ポリビニルピロリドン、セルロ-ス、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイル及びこれらの組合せを含むが、これに限定されない。本発明の薬剤学的組成物は、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤及びこれらの組合せのような一つ以上の添加剤をさらに含んでよい。適切な薬剤学的に許容可能な担体及び製剤に関する追加細部事項は、文献(Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995))に説明されている。
【0136】
本発明の薬剤学的組成物は、意図した投与経路と互換するように剤形化される。このような投与経路の非制限的な例は、本発明の他の所で提供される。
【0137】
本明細書に記述された薬剤学的組成物は、単一投与又は多重投与の形態で提供されてよい。一部の側面において、本明細書で提供される薬剤学的組成物は、溶液(例えば、油性又は水性媒質中)、懸濁液、エマルジョン、抽出物、粉末、顆粒、錠剤又はカプセルの形態で剤形化される。一部の側面において、本明細書に記述された薬剤学的組成物を含む剤形は、分散剤、安定剤又は両方をさらに含んでよい。
【0138】
VII.キット
開示された様々なプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)、構築物(例えば、発現構築物)、ベクター(例えば、組換えAAV伝達体ベクター)、細胞及び組成物(例えば、薬剤学的組成物)のうち一つ以上を含むキットが本明細書に開示される。一部の側面において、キットは、使用説明書(例えば、前述したもののいずれか又はそれらの組合せをそれを必要とする対象体に投与するための説明書)を含む。
【0139】
本明細書において、用語「キット」及び「システム」は、様々なプラスミド(例えば、デュアルヘルパープラスミド)、構築物(例えば、発現構築物)、ベクター(例えば、組換えAAV伝達体ベクター)、細胞、及び組成物(例えば、薬剤学的組成物)、又はそれらの任意の組合せのうち少なくとも一つ以上を表すように意図され、一部の側面において、一つ以上の他の類型の要素又は成分(例えば、他の類型の生化学的試薬、容器、販売のための包装、使用説明書など)と共に提供される。
【0140】
VIII.用途及び方法
VIII.A.AAV生産方法
本発明の特定の側面は、AAVを生産する方法に関する。より具体的には、一部の側面において、外来遺伝子を含む組換えAAVを生産する方法が本発明に提供される。一部の側面において、このような方法は、細胞(例えば、宿主細胞)をデュアルヘルパープラスミド(例えば、本明細書に記載されたもの)及び外来遺伝子を含む発現構築物(例えば、AAV構築物プラスミド)で形質感染させることを含む。一部の側面において、細胞は、デュアルヘルパープラスミド及び発現構築物で同時に形質感染される。一部の側面において、細胞は、デュアルヘルパープラスミド及び発現構築物で順次に形質感染される。特記しない限り、当業界に公知された任意の適切な形質感染方法が本発明と共に用いられてよい。
【0141】
一部の側面において、組換えAAVを生産する方法は、組換えAAVが生産されるように適切な条件下に形質感染された細胞を培養する段階をさらに含む。一部の側面において、前記方法は、生産された組換えAAVを回収する段階をさらに含む。
【0142】
本明細書に記述された組換えAAVを生産する方法は、明確な利点を提供する。本発明の他の所で記述されているように、AAVを生産するより伝統的な方法は、三重形質感染を必要とし、宿主細胞は、次の3種の個別プラスミドで形質感染される:i)Repタンパク質及びCapタンパク質をエンコードする遺伝子を含むRep-Capプラスミド;ii)アデノウイルスのタンパク質(E2a、E4)及びVA RNAをエンコードする遺伝子を含むヘルパープラスミド;及び、iii)外来遺伝子発現のためのAAV構築物プラスミド。前記組換えAAVは、細胞が上述の3種のプラスミドの全てによって成功的に形質感染された場合(すなわち、各遺伝子が吸収されて細胞の核に伝達された後、後続的に転写、細胞内で複製及び/又は翻訳された場合)にのみ生産される。関連した複雑性によって、三重形質感染を必要とするこのような方法は、低い収率、高費用及び/又はより労働集約的な結果を招くことがある。
【0143】
このような接近法と比較して、本明細書に提供された組換えAAVを生産する方法は、組換えAAVのより高い収率を得ることができる。一部の側面において、三重形質感染を必要とする方法(すなわち、「対照方法」)と比較して、本発明によって生産された組換えAAVの量は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%又はそれ以上増加する。一部の側面において、対照細胞と比較して、本発明の細胞は、生産された組換えAAVの量を少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約75倍、又は少なくとも約100倍以上増加させることができる。
【0144】
本発明の他の所で記述されているように、一部の側面において、本明細書に提供された組換えAAVを生産する方法は、生産及び/又は精製時間を減少させることができる。更なる利点は本発明の他の所で説明される。
【0145】
VIII.B.タンパク質生産方法
また、外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質(又は、ポリペプチド)を生産する方法が本明細書に開示される。一部の側面において、このような方法は、適切な条件下で(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV伝達体ベクターで形質感染された)本発明の細胞を培養する段階、及びエンコードされたタンパク質を回収する段階を含む。特定の側面において、外来遺伝子によってエンコードされるタンパク質を生産する方法は、組換えAAVを、これを必要とする対象体に投与する段階を含む。
【0146】
VIII.C.治療用途
一部の側面において、本発明は、様々な治療適用のための本発明のデュアルヘルパープラスミドを用いて生産された組換えAAVの用途を提供する。
【0147】
例えば、一部の側面において、本発明は、外来遺伝子を含み、本明細書に記述されているように生成された組換えAAVを対象体に投与する段階を含む、それを必要とする対象体において疾病を治療する方法を提供する。一部の側面において、本明細書に提供された疾病を治療する方法は、(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV遺伝子伝達体ベクターで形質感染された)本明細書に記述された任意の変形された細胞をそれを必要とする対象体に投与する段階を含む。一部の側面において、本明細書に提供された疾病を治療する方法は、(例えば、本明細書に提供された組換えAAVを含む。)本明細書に記載された任意の薬剤学的組成物をそれを必要とする対象体に投与する段階を含む。本発明から明らかなように、前記方法は、例えば、外来遺伝子を変形させることによって任意の関心疾病を治療及び/又は予防するために用いられてよい。
【0148】
本発明によって予防、緩和又は治療される疾病は限定されず、薬物投与回数を減らすべき全ての疾病を含む。このような疾病の非制限的な例は、眼科疾患及び神経系疾患を含む。一部の側面において、前記眼科疾患は、糖尿病性網膜病症(diabetic retinopathy)、脈絡膜新生血管形成(choroidalneovascularization)、黄斑変性(macular degeneration)、網膜変性(retinaldegeneration)、黄斑浮腫(macular edema)、網膜浮腫(retinal edema)及び黄斑腫瘍(mascular tumentia)又はこれらの組合せを含む。一部の側面において、前記神経系疾患は、中枢神経系、末梢神経系又は両方に影響を及ぼす疾患を含む。神経系疾患の非制限的な例は、不安(anxiety)、うつ病(depression)、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder,PTSD)、両極性障害(bipolar disorder)、注意力欠乏過剰行動障害(attention deficit hyperactivity disorder,ADHD)、自閉症(autism)、精神分裂症(schizophrenia)、神経病性疼痛(neuropathic pain)、緑内障(glaucoma)、中毒症(toxicosis)、蜘蛛膜嚢腫(arachnoid cyst)、緊張症(catatonia)、脳炎(encephalitis)、てんかん/発作(epilepsy/seizure)、閉じ込め症候群(locked-in syndrome)、髓膜炎(meningitis)、片頭痛(migraine)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、脊髄病症(myelopathy)、アルツハイマー病(Alzheimer’s disease)、ハンチントン病(Huntington’s disease)、パーキンソン病(Parkinson’s disease)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis,ALS)、バッテン病(Batten disease)、トゥレット症候群(Tourette’s syndrome)、外傷性脳損傷(traumatic brain injury)、脳脊髓損傷(cerebrospinal injury)、脳卒中(stroke)、振戦(tremor)(本態性又はパーキンソン病)、筋緊張異常(dystonia)、指摘障害(intellectual disability)、脳腫瘍(brain tumor)又はこれらの組合せを含む。
【0149】
本発明の一部の側面は、外来遺伝子の連続的発現を達成できる遺伝子治療剤又は疾患を治療するためにこのような製剤を使用する方法に関する。
【0150】
本明細書に提供された遺伝子伝達体システム(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV)の使用は、医師、患者又は対象体の便宜のために薬物投与回数をだいぶ減少させ得る間隔で治療剤(例えば、外来遺伝子を含む組換えAAV)の投与を許容する。例えば、一部の側面において、治療剤は、約1週、約2週、約3週、約1ケ月、約2ケ月、約3ケ月、約4ケ月、約5ケ月、約6ケ月、約7ケ月、約8ケ月、約9ケ月、約10ケ月、約11ケ月又は約1年以上の間隔で投与されてよい。一部の側面において、その間隔は、約2~約3ケ月である。一部の側面において、その間隔は約6ケ月である。一部の側面において、その間隔は約1年である。一部の側面において、その間隔は、少なくとも約1年である。一部の側面において、患者の症状によって初期には約1~2週間隔で2~3回投与し、以後は、約2~3ケ月、約6ケ月、又は必要によって約1年以上の間隔で投与できる。
【0151】
投与(例えば、本明細書に記載された任意のAAV、細胞及び/又は薬剤学的組成物をそれを必要とする対象体に投与)段階を含む本明細書に提供された任意の方法において、治療剤は、対象体に経口又は非経口で投与されてよい。一部の側面において、治療剤(例えば、本明細書に記載された任意のAAV、細胞及び/又は薬剤学的組成物)は、非経口的に対象体に投与される。非経口投与の非制限的な例は、次を含む:静脈内注入、経皮投与、皮下注入、筋肉内注入、硝子体内注入(intravitreal injection)、網膜下注入(subretinal injection)、脈絡膜上腔注入(suprachoroidal injection)、点眼投与(eye drop administration)、脳室内注入(intracerebroventricular injection)、髄腔内注射(intrathecal injection)、羊膜内注入(intraamniotic injection)、動脈内注入(intraarterial injection)、関節腔内注入(intraarticular injection)、心臓内注入(intracardiac injection)、陰茎海綿体内注入(intracavernous injection)、脳内注入(intracerebral injection)、大槽注入(intracisternal injection)、冠動脈内注入(intracoronary injection)、頭蓋内注入(intracranial injection)、硬膜内注入(intradural injection)、硬膜外注入(epidural injection)、海馬内注入(intrahippocampal injection)、鼻腔内注入(intranasal injection)、骨腔内注入(intraosseous injection)、腹腔内注入(intraperitoneal injection)、胸腔内注入(intrapleural injection)、脊髄内注入(intraspinal injection)、胸腔内注入(intrathoracic injection)、胸腺内注入(intrathymic injection)、子宮内注入(intrauterine injection)、膣内注入(intravaginal injection)、心室内注入(intraventricular injection)、膀胱内注入(intravesical injection)、結膜下注入(subconjunctival injection)、腫瘍内注入(intratumoral injection)、局所注入、腹腔注入(intraperitoneal injection)及びこれらの組合せなど。
【0152】
当業者に明らかなように、治療剤(例えば、本発明の薬剤学的組成物)の適切な投与容量は、剤形方法、投与方式、年齢、体重、患者の性別、病理学的状態及び食餌、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応敏感度のような要因によって変わってよい。一部の側面において、治療剤(例えば、本発明の薬剤学的組成物)の1日投与容量は、約0.00001~100mg/kgである。
【0153】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。下記の実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されないということは、当業界における通常の知識を有する者に明らかであろう。
【0154】
実施例
材料及び方法
実施例1.三重形質感染用pUC-R2C2、5、8及び9構築物の製造
実施例1-1.pRC8構築物製造
pIDT-Cap8-Kan(Integrated DNA Technologies,USA)を鋳型にしてoligo #001/002組合せを用いて重合酵素連鎖反応(以下、PCR)を行うことによってcap8遺伝子断片を確保し、pRC6(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo#003/004組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーンDNA断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)(NEB,USA,Cat No.E2611)を用いて両DNA断片を連結することによってpRC8構築物を製造した。
【0155】
実施例1-2.pUC-R2C8構築物製造
pUC57-WPRE(GenScript,USA)を鋳型にしてoligo #005/006組合せを用いてPCRを行うことによってプラスミドバックボーンを確保し、実施例1-1のpRC8構築物を鋳型にしてoligo #007/008を用いてPCRを行うことによってcap8遺伝子断片を、oligo #009/004を用いてrep2遺伝子断片をそれぞれ確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて、上で得た3つのDNA断片を連結することによってpUC-R2C8構築物を製造した。
【0156】
実施例1-3.pRC2構築物製造
pRC2-mi342(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo #007/010組合せを用いてPCRを行うことによってcap2遺伝子断片を確保し、pRC6(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo #003/004組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーン断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて両NA断片を連結することによってpRC2構築物を製造した。
【0157】
実施例1-4.pUC-R2C2構築物製造
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #011/012組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーン断片を確保したし、実施例1-3のpRC2構築物を鋳型にしてoligo #013/014組合せを用いてPCRを行うことによってcap2遺伝子断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて2 DNA断片を連結することによってpUC-R2C2構築物を製造した。
【0158】
実施例1-5.pRC9構築物製造
pIDT-Cap9-Kan(Integrated DNA Technologies,USA)を鋳型にしてoligo #001/015組合せを用いてPCRを行うことによってcap9遺伝子断片を確保し、pRC6(Takara Bio,Japan)を鋳型にしてoligo #003/004組合せを用いてPCRを行うことによって、rep2遺伝子を含むプラスミドバックボーン断片を確保したし、Gibson Assembly(登録商標)(NEB,USA,Cat No.E2611)を用いて両DNA断片を連結することによってpRC9構築物を製造した。
【0159】
実施例1-6.pUC-R2C9構築物製造
pUC57-WPRE(GenScript,USA)を鋳型にしてoligo #005/006組合せを用いてPCRを行うことによってプラスミドバックボーンを確保し、実施例1-5のpRC9構築物を鋳型にしてoligo #007/008を用いてPCRを行うことによってcap9遺伝子断片を、実施例1-1のpRC8を鋳型にしてoligo #009/004を用いてrep2遺伝子断片をそれぞれ確保したし、Gibson Assembly(登録商標)を用いて、上で得た3つのDNA断片を連結することによってpUCR2C9構築物を製造した。
【0160】
実施例1-7.pUC-R2C5構築物製造
pUC57-WPRE(GenScript,USA)を鋳型にしてoligo #005/006組合せを用いてPCRを行うことによってプラスミドバックボーンを確保し、pRC5構築物(TakaraBio,Japan)を鋳型にしてoligo #008/009を用いてPCRを行うことによってrep2-cap5遺伝子断片を確保し、Gibson Assembly(登録商標)を用いて、上で得た両DNA断片を連結することによってpUC-R2C5構築物を製造した。
【0161】
実施例2.pHION8シリーズ構築物の製造
実施例2-1.pHelper-NG構築物製造
VA-E4-pUC(GeneScript,USA)とE2a-pUC57(GeneScript,USA)の両構築物に共通するSalI/BamHI部位に両構築物を結合する方法によってクローニングを行い、pHelper-NGを製造した(
図1A)。前記pHelper-NGは、アデノウイルス血清型5のE2a、E4及びVA RNA遺伝子を含む。
【0162】
実施例2-2.pHelper-NG構築物の様々な位置にrep2-cap8遺伝子挿入
実施例2-2-1.pHION8-BamHI-正方向又は逆方向(pHION8-BF又は-BR)クローニング
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #016/017組合せを用いてPCRを行うことによってrep2-cap8遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのBamHI部位に挿入した(
図1B及び
図1C)。
図1Bは、pHION8-BF構築物の模式図であり、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8遺伝子断片を時計回り方向である正方向(時計回り方向、5’->3’)に挿入して前記構築物を製造した。
図1Cは、pHION8-BR構築物の模式図であり、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を反時計回り方向である逆方向(反時計回り方向、3’->5’)に挿入して前記構築物を製造した。前記pHION8-BFはpHNG8と、pHION8-BRはpHNGR8と命名した。
【0163】
実施例2-2-2.pHION8-NotI-正方向又は-逆方向(pHION8-NF又は-NR)クローニング
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #018/019組合せを用いてPCRを行うことによってrep2-cap8遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのNotI部位に挿入した(
図1D及び
図1E)。
図1Dは、pHION8-NF構築物の模式図であり、E4遺伝子の開始部分とAmpR遺伝子の開始部分との間に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8遺伝子断片を時計回り方向である正方向に挿入し、前記構築物を製造した。
図1Eは、pHION8-NR構築物の模式図であり、E4遺伝子の開始部分とAmpR遺伝子の開始部分との間に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8遺伝子断片を反時計回り方向である逆方向に挿入し、前記構築物を製造した。
【0164】
実施例2-2-3.pHION8-AsiSI-正方向(pHION8-AF)クローニング
実施例1-2のpUC-R2C8構築物を鋳型にしてoligo #020/021組合せを用いてPCRを行うことによってrep2-cap8遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのVA RNA遺伝子とE4遺伝子との間におけるAsiSI部位に時計回り方向である正方向に挿入し、pHION8-AF構築物を製造した(
図1F)。
【0165】
実施例3.pHNG2、pHNG5K及びpHNG9構築物製造
実施例3-1.pHNG2構築物製造
実施例1-4のpUC-R2C2構築物を鋳型にしてoligo #016/017を用いてPCRを行うことによってrep2-cap2遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのBamHI部位に挿入して製造した構築物をpHNG2と命名した。
【0166】
図2は、pHNG2構築物の模式図であり、E2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を時計回り方向である正方向に挿入し、pHNG2構築物を製造した。
【0167】
実施例3-2.pHNG9構築物製造
実施例1-6のpUC-R2C9構築物を鋳型にしてoligo #016/#017を用いてPCRを行うことによってrep2-cap9遺伝子断片を確保し、実施例2-1で製造したpHelper-NGのBamHI部位に挿入して製造した構築物をpHNG9と命名した。
図3は、pHNG9構築物の模式図であり、rep2-cap9遺伝子断片をE2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に存在するBamHI部位を用いて時計回り方向である正方向に挿入し、pHNG9構築物を製造した。
【0168】
実施例3-3.pHNG5K構築物製造
実施例3-3-1.pHelper-NG-Kan構築物製造
pMK-RQ-1-PM構築物(Geneart,Thermo Fisher Scientific,USA)を鋳型にしてoligo #018/019組合せを用いてPCRを行うことによってカナマイシン抵抗性遺伝子断片を確保し、実施例2-1のpHelper-NG構築物を鋳型にしてoligo #020/021を用いてPCRを行うことによってE4遺伝子断片を確保し、oligo #022/023を用いてPCRを行うことによってVA RNA遺伝子においてE2a遺伝子のN-端末断片を確保し、oligo #024/025を用いてPCRを行うことによってE2a遺伝子のC末端でオリジン(Origin)断片を確保した。Gibson Assembly(登録商標)を用いて前記4つのDNA断片を連結し、pHelper-NG-Kan構築物を製造した。
【0169】
実施例3-3-2.pHelper-NG-Kan構築物にrep2-cap5遺伝子挿入
実施例1-7のpUC-R2C5構築物を鋳型にしてoligo #016、#017を用いてPCRを行うことによってrep2-cap5遺伝子断片を確保し、実施例3-3-1で製造したpHelper-NG-KanのBamHI部位に挿入して製造した構築物をpHNG5Kと命名した(Kは、抗生剤抵抗性遺伝子であり、カナマイシン抵抗性遺伝子を用いていることを意味する。)。
図4は、pHNG5K構築物の模式図であり、rep2-cap5遺伝子断片を、E2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に存在するBamHI部位を用いて時計回り方向である正方向に挿入し、pHNG5K構築物を製造した。
【0170】
前記構築物を製造するために用いられたオリゴの配列を表1に提示する:
【0171】
【表1】
また、rep-cap遺伝子断片をE2a遺伝子とVA RNA遺伝子との間に正方向(時計回り方向、5’->3’)に挿入して製造した構築物を総称してpHNG(pHNG2、pHNG5(pHNG5Kを含む。)、pHNG8、pHNG9など)と命名し、逆方向(反時計回り方向、3’->5’)に挿入して製造した構築物を総称してpHNGR(pHNGR8など)と命名した。これらの開裂地図は、
図5A及び
図5Bに示す。
【0172】
実施例4.外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドの製造
外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドは、大韓民国特許出願第10-2020-0084038号に記載された方法によって製造した。具体的には、pUC57プラスミドに基づいて、AAVカプシドパッケージング(packaging)に必要な要素であるAAV2 ITR塩基配列が両側末端に存在し、その間にCMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチンプロモーター、ハイブリッドイントロン、外来遺伝子としてeGFP遺伝子、WPRE配列、4つの反復のmiR142-3pターゲット配列、ウシ成長ホルモン(bovine growth hormone)のpA配列が含まれている形態で製造した。
【0173】
実施例5.塩基配列の確認
上記で製造した全ての構築物の塩基配列を塩基配列分析(DNA sequencing)(Bionics,Korea)によって確認した。
【0174】
実施例6.細胞培養
HEK293細胞株は、10% FBS(Fetal Bovine Serum,Gibco,USA,CatNo.16000-044)、1%ベニシリン-ストレプトマイシン(Gioco,USA,Cat No.15140-163)が含まれたMEM培地(Gibco,USA,Cat No.42360-032)を用いて5% CO2、37℃条件で湿潤培養した。Expi293細胞株は、1%ベニシリン-ストレプトマイシンが添加されたExpi293培地(Gibco,USA,Cat.No.A14351-01)を用いて8% CO2、37℃条件で250rpmで振りながら湿潤培養した。
【0175】
実施例7.形質感染
実施例7-1.AAV生産のための付着細胞の形質感染
形質感染のために、HEK293細胞株をDPBS(Gibco,USA,Cat No.14190-250)を用いて2回洗浄後にTrypsin-EDTA(Gibco,USA,Cat No.25200-114)を処理して培養皿から剥がして確保した後、150mm培養皿に2×107cell/dishで接種した。24時間培養後に、三重形質感染(triple transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHelper-NGプラスミド、pUC-R2C2、pUC-R2C8又はpUC-R2C9プラスミド、及び外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、500ulのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。二重形質感染(double transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHION8プラスミド、及び外部遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、500ulのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。そして、DNA総量の2倍のポリエチレンイミン(PEI,Polyscience,USA,Cat No.23966-1)を500ulのOpti-MEMに希釈させた後、直ちに2つの溶液を混ぜて形質感染溶液を製造した。常温で30分間反応させた後、総1mlの形質感染溶液を、HEK293細胞を培養していた培養皿に入れた。
【0176】
実施例7-2.AAV生産のための浮遊細胞の形質感染
AAV生産のために、1Lエルレンマイヤー(Erlenmeyer)培養フラスコにおいて6×108細胞を220mlのExpi293培地に接種した。安定化のために約3~4時間培養後に、三重形質感染(triple transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHelper-NGプラスミド、pUC-R2C2、pUC-R2C5, pUC-R2C8又はpUC-R2C9プラスミド、及び外来遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、10mlのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。二重形質感染(double transfection)時には、それぞれ3.73pmoleの、pHION8プラスミド、pHNG2プラスミド又はpHNG9プラスミドと、外部遺伝子を含むAAV構築物プラスミドを、10mlのOpti-MEM(Gibco,USA,Cat No.51985-034)に溶かした。そして、DNA総量の2倍のポリエチレンイミン(PEI,Polyscience,USA,Cat No.23966-1)を10mlのOpti-MEMに希釈させた後、直ちに2つの溶液を混ぜて形質感染溶液を製造した。常温で30分間反応させた後、培養フラスコに総20mlの形質感染溶液を入れた。
【0177】
実施例8.AAVの精製
実施例7-1又は実施例7-2の形質感染72時間後に、培養皿及び培養フラスコに500mMの濃度となるようにNaClを添加し、3時間反応させた。全ての培養液を回収して遠心分離によって残骸物(debris)を除去し、100kDaの分画分子量(molecular weight cut-off)気孔サイズを有するcentricon(VIVASPIN 20,100,000MWCO PES,Sartorius,Germany)を用いて4℃で4000rpmで上澄液が約200ul残るまで遠心分離を行った。その後、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含んでいる上澄液を回収し、実験に使用又は-80℃に保管した。
【0178】
実施例9.AAV力価の決定
実施例8で精製したAAVの力価を決定するためにqPCR(Bio-Rad,USA,CFX96)を行った。DNaseI反応緩衝液(New England Biolab,USA,M0303S)で1時間37℃でAAVにDNaseIを処理した。その後、DNaseIが処理された試料に、プロテアーゼK(Invitrogen,USA,Cat No.AM2548)を55℃で30分間処理し、続いて95℃で15分間反応させてプロテアーゼKを不活性化させた。準備した試料をqPCRの鋳型として使用し、AAV構築物プラスミド(7.4×108~7.4×104、10倍希釈)を使用して標準曲線を求め、陽性対照群として組換えアデノ随伴ウイルス2 Reference Standard Stock(rAAV2-RSS,ATCC,USA,CatNo.VR-1616)又は組換えアデノ随伴ウイルス8 Reference Standard Stock(rAAV8-RSS,ATCC,USA,Cat No.VR-1816)を使用した。力価決定のためのqPCRのために、2xSsoAdvanced Universal Probe Supermix(Bio-Rad,USA,Cat No.172-5282)とbGH poly A配列特異的プライマー(#026、#027)及びプローブ(#028)を使用した。qPCRは、95℃で10分変性(denaturation)後に、95℃で30秒、60℃で1分、を40回反復した。標準曲線と定量は、Bio-Rad CFXMaestro 1.1 software(Bio-Rad,USA)を用いて分析した。
【0179】
実施例10.試験管内アデノ随伴ウイルスベクターを用いた形質感染
アデノ随伴ウイルスベクターの形質感染のために、24ウェル培養プレートにウェル当たりに4×105のHEK293細胞を接種した。24時間後に、各ウェルにMG132(Sigma-Aldrich,USA,Cat No.M7449)を5uMの濃度で8時間処理した。AAV2では2,500 MOI(Multiplicity of Infection)で、AAV8及びAAV9では10,000 MOIで処理し、72時間培養した。
【0180】
実施例11.流細胞分析法を用いたeGFP遺伝子の発現強度測定
eGFPの発現は、流細胞分析(Beckman Coulter,USA,CytoFlex)によって測定した。形質感染72時間後に、DPBSで細胞を洗浄し、トリプシンで剥がした。1500rpmで5分間遠心分離して細胞を確保し、2% FBSが添加されたDPBSを500ul添加して細胞を再懸濁した。流細胞分析において、FSC vs SSCplotから単一細胞領域が区分付けられ、FL1-A(green)の発現レベルが測定された。全ての流細胞分析結果は、FlowJo software 10.5.3(Becton Dickinson & Company,USA)を用いて分析した。
【0181】
実施例12.統計的分析
全ての実験を3回以上反復した。2グループ間の比較はPrism software 8.1.1(GraphPad Software,Inc.,USA)を用いてスチューデントt-検定(Student’s t-test)によって、3グループ以上の比較は一元配置分散分析(one-way ANOVA)及びTukeyの多重比較検定(Tukey’s multiple comparisons test)によって比較した。*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.001を示す。
【0182】
実験結果
1.増加したAAV8生産量を示すヘルパー-イン-ワン(Helper-In-One)プラスミド構築物選定
1-1.付着細胞株(HEK293)において三重形質感染とpHION8シリーズを用いた二重形質感染によるAAV8生産量増加又は減少効果観察
二重形質感染に用いられる5種のHelper-In-Oneプラスミド構築物(pHION8シリーズ;pHION8-BF、pHION8-BR、pHION8-NF、pHION8-NR及びpHION8-AF)内の様々なrep2-cap8遺伝子の位置がAAV8生産量に及ぼす影響を付着細胞株(HEK293)においてテストした。三重形質感染方法によるAAV8の生産量を100%としたとき、二重形質感染時には、rep2-cap8遺伝子の位置によってAAV生産量において様々な結果が得られた。pHION8-BF構築物(pHNG8)を使用した場合に244.3%、pHION8-BR構築物(pHNGR8)を使用した場合に170.2%とAAV8生産量が増加した。pHION8-NF構築物を使用した場合に126.0%の生産量増加が見られるが、これは統計的に有意でなかった(p=0.82)。一方、pHION8-NR及びpHION8-AF構築物を使用した場合に、AAV8の生産量が却って減少した(62.4%(p=0.50)、71.7%(p=0.77))(
図6)。
【0183】
1-2.浮遊細胞株(Expi293)において三重形質感染とpHION8シリーズを用いた二重形質感染によるAAV8生産量増加又は減少効果
上の実験結果1-1と同じ実験を浮遊細胞(Expi293F)においてテストした。以前の付着細胞株と類似に、二重形質感染時にpHION8-BF構築物を使用した場合は、三重形質感染方法に比べて177.1%(p<0.001)、pHION8-BR構築物を使用した場合は173.1%(p<0.001)と、AAV8生産量が統計的に有意に増加した。しかし、pHION8-NF、pHION8-NR及びpHION8-AFなどの構築物を使用した場合に、40.9%、66.7%、43.1%レベルと、生産量減少が統計的に有意に確認された(
図7)。
【0184】
これらの結果は、デュアルヘルパープラスミド内でのrep2-cap8遺伝子の相対的位置及び方向によってAAVの生産量が決定され得ることを提示する。その後、二重形質感染のためのpHIONプラスミド内のBamHI部位に正方向(BF)にrep2-cap遺伝子が存在する構築物をpHNGと命名し、逆方向(BR)に存在する構築物をpHNGRと命名した。その後には、cap遺伝子が由来したアデノ随伴ウイルスの血清型を数字で表記した(pHION8-BF=pHNG8、pHION8-BR=pHNGR8)。
【0185】
2.付着細胞株(HEK293)において三重形質感染とpHNG2を用いた二重形質感染によるAAV2生産量増加
pHelper-NGプラスミド内のE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を正方向に挿入してpHNG2構築物を製造し、これを二重形質感染(double transfection)方法に使用した(
図2)。
【0186】
三重形質感染法とpHNG2を用いた二重形質感染法によるAAV2の生産を比較した結果、三重形質感染に比べて二重形質感染法においてAAV2生産量が279.6%(p<0.001)と有意に増加することを確認した(
図8)。このような結果は、上述のpHNG8による二重形質感染によるAAV8生産量増加と類似に、rep2-cap2遺伝子をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に位置させると二重形質感染によってAAV2の生産量を増加させ得ることを提示する。
【0187】
3.付着細胞株(HEK293)においてpHNG9を用いた二重形質感染によるAAV9生産量増加
二重形質感染(double transfection)のためにrep2-cap9遺伝子断片を、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングによってpHNG9構築物を製造した(
図3)。
【0188】
三重形質感染とpHNG9を用いた二重形質感染によるAAV9の生産を比較した結果、三重形質感染に比べて二重形質感染においてAAV9生産量が214.0%(p<0.001)と有意に増加することを確認した(
図9)。このような結果は、上述のpHNG8及びpHNG2による二重形質感染によるAAV8又はAAV2生産量増加と類似であった。結論的に、この結果は、アデノ随伴ウイルスの血清型9(AAV9)においてもrep2-cap9遺伝子をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に位置させると二重形質感染法によるAAVの生産量を増加させ得ることを提示する。
【0189】
4.付着細胞株(HEK293)においてpHNG5Kを用いた二重形質感染によるAAV5生産量増加
二重形質感染(double transfection)のためにRep2-Cap5遺伝子断片を、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて、正方向にクローニングを用いてpHNG5K構築物を製造した(
図4)。
【0190】
三重形質感染とpHNG5Kを用いた二重形質感染によるAAV5の生産を比較した結果、三重形質感染に比べて二重形質感染においてAAV5生産量が194.7%(p=0.002)と有意に増加することを確認した(
図10)。このような結果は、上記のpHNG8、pHNG2及びpHNG9による二重形質感染によるAAV8、AAV2又はAAV9生産量増加と類似であった。
【0191】
結論的に、この結果は、アデノ随伴ウイルスの血清型5(AAV5)においてもrep2-cap5遺伝子をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に位置させると二重形質感染法によるAAVの生産量を増加させ得ることを提示する。
【0192】
5.三重形質感染又は二重形質感染(pHNG8又はpHNGR8構築物)で生産したAAV8間の細胞形質導入(transduction)効率の同等性
三重形質感染によって生産したAAV8と、pHNG8及びpHNGR8を用いた二重形質感染によって生産したAAV8との細胞感染力及び遺伝子発現能力を比較した。製作したこれらのAAV8は、eGFPタンパク質を発現するように設計した。HEK293細胞株に10,000MOIの条件でAAV8を感染させ、72時間後に、流細胞分析を用いて細胞内eGFPの発現程度を測定した。その結果、三重形質感染を用いたAAV8と比較したとき、pHNG8及びpHNGR8を用いた二重形質感染によって生産されたAAV8はいずれも類似の細胞感染力(Triple:6.0%、pHNG8:5.4%、pHNGR8:5.7%)を示し、また、感染された細胞内でeGFP発現レベルも類似であること(pHNG8:93.4%、pHNGR8:94.6%)を確認した。以上の結果は、三重形質感染によって生産されたAAV8とpHNG8及びpHNGR8を用いた二重形質感染によって生産したAAV8の細胞感染力及び感染後の遺伝子発現能力には差異がないことを提示する(
図11)。
【0193】
6.三重形質感染又は二重形質感染(pHNG2)で生産したAAV2形質導入(transduction)効率の同等性
AAV2を用いて遺伝子を伝達する場合において、三重形質感染によって生産したAAV2とpHNG2を用いた二重形質感染によって生産したAAV2の細胞感染力及び遺伝子発現能力を比較した。製作したこれらのAAV2は、eGFPタンパク質を発現するように設計した。HEK293細胞株に2,500MOIの条件でAAV2を感染させ、72時間後に流細胞分析によって、eGFPを発現する細胞の割合及び細胞内eGFPの発現程度を測定した。その結果、三重形質感染によるAAV2と比較したとき、pHNG2を用いた二重形質感染によって生産されたAAV2は、細胞感染能力が少なくとも同等であったし(Triple:32.0%、BF:44.7%;p=0.38)、感染された細胞当たりeGFP発現レベルが同等であるか或いはやや高いこと(129.6%、p=0.02)を確認した。ただし、両方の場合とも統計的に有意な差異は見られなかった。以上の結果は、三重形質感染によって生産されたAAV2と対比して、pHNG2を用いた二重形質感染によって生産したAAV2の細胞感染力及び感染後の遺伝子発現能力が少なくとも同等であることを提示する(
図12)。
【0194】
7.三重形質感染又は二重形質感染(pHNG9)で生産したAAV9形質導入(transduction)効率の同等性
AAV9を用いて遺伝子を伝達する場合に、三重形質感染によって生産したAAV9とpHNG9を用いた二重形質感染によって生産したAAV9の細胞感染力及び遺伝子発現能力を比較した。製作したこれらのAAV9は、eGFPタンパク質を発現するように設計した。HEK293細胞株に10,000MOIの条件でAAV9を感染させ、72時間後に流細胞分析によって細胞内eGFPの発現程度を測定した。その結果、三重形質感染を用いたAAV9と比較したとき、pHNG9を用いた二重形質感染によって生産されたAAV9は類似のeGFP発現レベルを示すこと(90.9%、p=0.35)を確認した。以上の結果は、三重形質感染によって生産されたAAV9とpHNG9を用いた二重形質感染によって生産したAAV9の細胞感染力及び遺伝子発現能力には差異がないことを提示する(
図13)。
【0195】
以上、本発明の実施例について説明したが、該当技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想から逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などによって本発明を様々に修正及び変更可能であり、これも本発明の権利範囲内に含まれるといえよう。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【
図1A】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1Aは、三重形質感染のためのpHelper-NG構築物を概略的に示し、アデノウイルス血清型5のE2a、E4遺伝子及びVA RNA遺伝子を含む。
【
図1B】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1B及び
図1Cは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向(時計回り方向、5’->3’)にクローニングして製造したpHION8-BF構築物(
図1B)及び逆方向(反時計回り方向、3’->5’)にクローニングして製造したpHION8-BR構築物(
図1C)を概略的に示す。
【
図1C】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1B及び
図1Cは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向(時計回り方向、5’->3’)にクローニングして製造したpHION8-BF構築物(
図1B)及び逆方向(反時計回り方向、3’->5’)にクローニングして製造したpHION8-BR構築物(
図1C)を概略的に示す。
【
図1D】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1D及び
図1Eは、E4遺伝子の開始部分に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-NF構築物(
図1D)及び逆方向にクローニングして製造したpHION8-NR構築物(
図1E)を概略的に示す。
【
図1E】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1D及び
図1Eは、E4遺伝子の開始部分に存在するNotI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-NF構築物(
図1D)及び逆方向にクローニングして製造したpHION8-NR構築物(
図1E)を概略的に示す。
【
図1F】
図1A~
図1Fは、本発明者らによって製造されたアデノ随伴ウイルスベクター血清型8(AAV8)を生産するためのpHelper-NG及びHelper-In-One構築物(pHION8シリーズ)の開裂地図を示す。
図1B~
図1Fは、5個のHelper-In-One-NGプラスミド(pHION8)構築物を概略的に示し、これは、rep2-cap8遺伝子断片をpHelper-NG構築物の様々な領域に挿入して製造されたデュアルヘルパープラスミドである。
図1Fは、VA RNA遺伝子の開始部分とE4遺伝子の末端部分との間に存在するAsiSI部位を用いてrep2-cap8構築物を正方向にクローニングして製造したpHION8-AF構築物を概略的に示す。
【
図2】アデノ随伴ウイルスベクター血清型2(AAV2)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG2構築物の開裂地図を示す。pHelper-NGプラスミド内のE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いてrep2-cap2遺伝子断片を正方向に挿入してpHNG2構築物を製造した。
【
図3】アデノ随伴ウイルスベクター血清型9(AAV9)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG9構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap9遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG9構築物を製造した。
【
図4】アデノ随伴ウイルスベクター血清型5(AAV5)生産用デュアルヘルパープラスミドであるpHNG5K構築物の開裂地図を示す。二重形質感染のためにrep2-cap5遺伝子断片をE2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に存在するBamHI部位を用いて正方向にクローニングしてpHNG5K構築物を製造した。
【
図5A】
図5A及び
図5Bは、pHNG及びpHNGR構築物の開裂地図を示す。
図5Aは、E2a遺伝子の開始部分とVA RNA遺伝子の末端部分との間に正方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示す。
【
図5B】
図5A及び
図5Bは、pHNG及びpHNGR構築物の開裂地図を示す。
図5Bは、逆方向に挿入されたrep-cap遺伝子断片を示す。
【
図6】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【
図7】浮遊細胞株(Expi293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHION8シリーズを用いた二重形質感染(Double)によるAAV8生産量の増加又は減少の効果を観察した結果である。
【
図8】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG2を用いた二重形質感染(Double)によるAAV2生産量増加の効果を観察した結果である。
【
図9】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG9を用いた二重形質感染(Double)によるAAV9生産量増加の効果を観察した結果である。
【
図10】付着細胞株(HEK293)において、三重形質感染(Triple)と対比して、pHNG5Kを用いた二重形質感染(Double)によるAAV5生産量増加の効果を観察した結果である。
【
図11】三重形質感染(Triple)又はHelper-In-One構築物で二重形質感染(Double)して生産されたAAV8間の細胞形質導入(transduction)効率の同等性結果である。
【
図12】三重形質感染(Triple)又はpHNG2構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV2間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【
図13】三重形質感染(Triple)又はpHNG9構築物を用いた二重形質感染(Double)によって生産されたAAV9間の細胞形質導入効率の同等性結果である。
【国際調査報告】