IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲンキン,ドミトリー,ドミトリエヴィチの特許一覧 ▶ テトス,ジョージー,ヴィクトロヴィッチの特許一覧 ▶ テトス,ビクター,ヴェニアミノヴィッチの特許一覧

<>
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図1
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図2
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図3
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図4
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図5
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図6
  • 特表-腫瘍微小環境の免疫調節 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-08
(54)【発明の名称】腫瘍微小環境の免疫調節
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/46 20060101AFI20240426BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240426BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240426BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20240426BHJP
   A61P 5/38 20060101ALI20240426BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240426BHJP
【FI】
A61K38/46
A61P35/00
A61P37/04
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K39/395 U
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61P37/06
A61P25/00
A61P27/02
A61P29/00
A61P11/00
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/10
A61P13/12
A61P17/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P21/00
A61P7/06
A61P7/04
A61P9/00
A61P1/04
A61P5/14
A61P5/00
A61P5/38
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516552
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022030168
(87)【国際公開番号】W WO2022246139
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/191,551
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523441359
【氏名又は名称】ゲンキン,ドミトリー,ドミトリエヴィチ
(71)【出願人】
【識別番号】523440880
【氏名又は名称】テトス,ジョージー,ヴィクトロヴィッチ
(71)【出願人】
【識別番号】523440891
【氏名又は名称】テトス,ビクター,ヴェニアミノヴィッチ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ゲンキン,ドミトリー,ドミトリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】テトス,ジョージー,ヴィクトロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】テトス,ビクター,ヴェニアミノヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA44
4C084DC22
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA201
4C084ZA202
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA531
4C084ZA532
4C084ZA551
4C084ZA552
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA681
4C084ZA682
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZA961
4C084ZA962
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC351
4C084ZC352
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C087AA01
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC83
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA20
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA53
4C087ZA55
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC02
4C087ZC35
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、DNase酵素療法による複数の経路を介する免疫抑制性腫瘍細胞微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢の影響の予防のための方法に関する。有効量のデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素を、単独でまたは他の免疫調節剤と組み合わせて、投与することを含む、免疫抑制性腫瘍細胞微小環境の免疫調節のための方法。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の有効量を対象に投与することを含む癌を有する対象における免疫抑制性腫瘍細胞微小環境の免疫調節の方法。
【請求項2】
前記免疫調節が、免疫抑制性腫瘍細胞微小環境内の細胞障害性CD8 T細胞および/またはNK細胞および/またはCAR-T細胞による増加された腫瘍細胞殺傷を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の有効量を対象に投与することを含む癌を有する対象における腫瘍関連微生物叢の調節の方法。
【請求項4】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の有効量と第二の免疫調節物質を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における癌を処置する方法。
【請求項5】
前記DNase酵素の投与が、免疫抑制性腫瘍細胞微小環境における腫瘍関連マクロファージ(TAM)および/または腫瘍浸潤好中球(TIN)の数および/または活性を低減するのに効果的である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の免疫調節物質が、免疫チェックポイント調節物質である、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫チェックポイント調節物質が、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫チェックポイント調節物質が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、OX-40、PD-L1、またはPD-L2を特異的に結合する抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I、ヒトDNase-1-like 3(D1L3)、ヒトDNase-1-like 2(D1L2)、ヒトDNase-1-like 1(D1L1)、DNase X、DNase γ、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβ、およびカスパーゼ活性化DNase(CAD)から選択される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記DNase酵素が、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:3のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記DNase酵素が、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記DNase酵素が、DNase酵素タンパク質として投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記DNase酵素タンパク質が、少なくとも2日間静脈内に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記DNase酵素タンパク質が、少なくとも7日間静脈内に投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記DNase酵素タンパク質が、少なくとも14日間静脈内に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記DNase酵素タンパク質が、少なくとも16日間静脈内に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記DNase酵素タンパク質が、2または3または4週間ごとに1~2日間静脈内に投与され、処置の合計の長さが、2週間~50年である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記DNase酵素タンパク質が、2または3または4週間ごとに2~5日間静脈内に投与され、処置の合計の長さが、2週間~50年である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記DNase酵素タンパク質が、2または3または4週間ごとに7~14日間静脈内に投与され、処置の合計の長さが、2週間~50年である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記第二の免疫調節物質を投与する前の120時間~1時間に前記DNase酵素タンパク質を前記対象に投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記第二の免疫調節物質を投与した後の30分~2時間に前記DNase酵素タンパク質を前記対象に投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記第二の免疫調節物質を投与した後の2時間~360時間に前記DNase酵素タンパク質を前記対象に投与することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記DNase酵素タンパク質が、125~250μg/kg/日で投与される、請求項19~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記DNase酵素が、遺伝子療法ベクターによりコードされる、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記遺伝子療法ベクターが、前記対象に投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記遺伝子療法ベクターが、(i)カプシドタンパク質と(ii)前記DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである、請求項31または請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記プロモータが、肝臓特異的プロモータ、神経系特異的プロモータ、腸特異的プロモータ、肝臓特異的/神経系特異的タンデムプロモータ、および肝臓特異的/腸特異的タンデムプロモータから選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記プロモータが、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記AAVが、血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVLK03、AAVLK06、AAVLK12、AAV-KP1、AAV-F、AAVDJ、AAVhu37、AAVrh64R1、およびAnc80から選択される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記DNase酵素が、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞により発現され、かつ前記細胞が、前記対象に投与される、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記CARを発現する細胞または前記TCRを発現する細胞が、前記腫瘍の部位に直接投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞が、シングルターゲットまたはマルチターゲットである、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記CARが、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記DNase酵素の投与が、前記第二の免疫調節物質の使用に関連する1つまたは複数の免疫関連有害事象の重症度を低減するのに効果的である、請求項4~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記免疫関連有害事象が、サイトカイン放出症候群(CRS)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記1つまたは複数の免疫関連有害事象が、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、結膜炎、眼瞼炎、上強膜炎、強膜炎、網膜炎、肺炎、胸膜炎、サルコイド様肉芽腫、肝炎、膵炎、自己免疫性糖尿病、間質性腎炎、糸球体腎炎、急性腎障害(AKI)、皮膚発疹、掻痒症、白斑、DRESS、乾癬、スティーブン・ジョンソン症候群、関節痛、関節炎、筋炎、皮膚筋炎、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血栓性微小血管障害症、後天性血友病、血管炎、大腸炎、腸炎、胃炎、心筋炎、心膜炎、下垂体炎、甲状腺炎、副腎炎、脳炎、髄膜炎、多発神経炎、ギラン・バレー症候群、および亜急性炎症性ニューロパチーから選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記DNase酵素の投与が、前記対象における腫瘍微生物叢の内容および/または活性の変化をもたらす、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記腫瘍微生物叢が、アシドバクテリア門、アクチノバクテリア門、バクテロイデス門、クラミジア門、クリシオゲネス門、シアノバクテリア門、フィブロバクテル門、ファーミキューテス門、フソバクテリウム門、ゲンマティモナス門、レンティスファエラ門、プロテオバクテリア門、スピロヘータ門、シネルギステス門、テネリキューテス門、およびベルコミクロビウム門から選択される1種または複数の細菌分類群を含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記DNase酵素が、細胞療法の前に、細胞療法と共にまたは細胞療法の後に投与される、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞療法が、(i)キメラ抗原受容体(CAR)もしくはT細胞受容体(TCR)を含む細胞、および/または(ii)NK細胞、および/または(iii)CD8 T細胞を投与することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が、ヒトである、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素と、第二の免疫調節物質と、医薬的に許容できる担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項50】
前記第二の免疫調節物質が、免疫チェックポイント調節物質である、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記免疫チェックポイント調節物質が、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記免疫チェックポイント調節物質が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項50または請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、OX-40、PD-L1、またはPD-L2を特異的に結合する抗体である、請求52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体である、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブである、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I、ヒトDNase-1-like 3(D1L3)、ヒトDNase-1-like 2(D1L2)、ヒトDNase-1-like 1(D1L1)、DNase X、DNase γ、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβ、およびカスパーゼ活性化DNase(CAD)から選択される、請求項49~56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項49~56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
前記DNase酵素が、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項49~56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:3のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記DNase酵素が、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む、請求項49~56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記DNase酵素が、DNase酵素タンパク質の形態で前記組成物中に存在する、請求項49~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記DNase酵素が、前記DNase酵素をコードする遺伝子療法ベクターの形態で前記組成物中に存在する、請求項49~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記遺伝子療法ベクターが、(i)カプシドタンパク質と(ii)前記DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記プロモータが、肝臓特異的プロモータ、神経系特異的プロモータ、腸特異的プロモータ、肝臓特異的/神経系特異的タンデムプロモータ、および肝臓特異的/腸特異的タンデムプロモータから選択される、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項67】
前記プロモータが、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である、請求項65に記載の医薬組成物。
【請求項68】
前記AAVが、血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVLK03、AAVLK06、AAVLK12、AAV-KP1、AAV-F、AAVDJ、AAVhu37、AAVrh64R1、およびAnc80から選択される、請求項65~67のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項69】
前記DNase酵素が、前記DNaseを発現しかつまたキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞の形態で前記組成物中に存在する、請求項49~62のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項70】
前記CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞が、シングルターゲットまたはマルチターゲットである、請求項69に記載の医薬組成物。
【請求項71】
前記CARが、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む、請求項69または請求項70に記載の医薬組成物。
【請求項72】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素と第二の免疫調節物質を含む医薬投与剤形。
【請求項73】
前記第二の免疫調節物質が、免疫チェックポイント調節物質である、請求項72に記載の医薬投与剤形。
【請求項74】
前記免疫チェックポイント調節物質が、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である、請求項73に記載の医薬投与剤形。
【請求項75】
前記免疫チェックポイント調節物質が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項73または請求項74に記載の医薬投与剤形。
【請求項76】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、OX-40、PD-L1、またはPD-L2を特異的に結合する抗体である、請求項75に記載の医薬投与剤形。
【請求項77】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体である、請求項75に記載の医薬投与剤形。
【請求項78】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される、請求項75に記載の医薬投与剤形。
【請求項79】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブである、請求項78に記載の医薬投与剤形。
【請求項80】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I、ヒトDNase-1-like 3(D1L3)、ヒトDNase-1-like 2(D1L2)、ヒトDNase-1-like 1(D1L1)、DNase X、DNase γ、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβ、およびカスパーゼ活性化DNase(CAD)から選択される、請求項72~79のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項81】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項72~79のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項82】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項81に記載の医薬投与剤形。
【請求項83】
前記DNase酵素が、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項72~79のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項84】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:3のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項83に記載の医薬投与剤形。
【請求項85】
前記DNase酵素が、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む、請求項72~79のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項86】
前記DNase酵素が、DNase酵素タンパク質の形態で前記投与剤形中に存在する、請求項72~85のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項87】
前記DNase酵素が、前記DNase酵素をコードする遺伝子療法ベクターの形態で前記投与剤形中に存在する、請求項72~85のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項88】
前記遺伝子療法ベクターが、(i)カプシドタンパク質と(ii)前記DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである、請求項87に記載の医薬投与剤形。
【請求項89】
前記プロモータが、肝臓特異的プロモータ、神経系特異的プロモータ、腸特異的プロモータ、肝臓特異的/神経系特異的タンデムプロモータ、および肝臓特異的/腸特異的タンデムプロモータから選択される、請求項88に記載の医薬投与剤形。
【請求項90】
前記プロモータが、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である、請求項88に記載の医薬投与剤形。
【請求項91】
前記AAVが、血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVLK03、AAVLK06、AAVLK12、AAV-KP1、AAV-F、AAVDJ、AAVhu37、AAVrh64R1、およびAnc80から選択される、請求項88~99のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項92】
前記DNase酵素が、前記DNaseを発現しかつまたキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞の形態で前記投与剤形中に存在する、請求項72~85のいずれか1項に記載の医薬投与剤形。
【請求項93】
前記CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞が、シングルターゲットまたはマルチターゲットである、請求項92に記載の医薬投与剤形。
【請求項94】
前記CARが、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む、請求項92または請求項93に記載の医薬投与剤形。
【請求項95】
デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素と、第二の免疫調節物質と、任意に使用説明書を含むキット。
【請求項96】
前記第二の免疫調節物質が、免疫チェックポイント調節物質である、請求項95に記載のキット。
【請求項97】
前記免疫チェックポイント調節物質が、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である、請求項96に記載のキット。
【請求項98】
前記免疫チェックポイント調節物質が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項96または請求項97に記載のキット。
【請求項99】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、OX-40、PD-L1、またはPD-L2を特異的に結合する抗体である、請求項98に記載のキット。
【請求項100】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体である、請求項98に記載のキット。
【請求項101】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される、請求項98に記載のキット。
【請求項102】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブである、請求項101に記載のキット。
【請求項103】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I、ヒトDNase-1-like 3(D1L3)、ヒトDNase-1-like 2(D1L2)、ヒトDNase-1-like 1(D1L1)、DNase X、DNase γ、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβ、およびカスパーゼ活性化DNase(CAD)から選択される、請求項95~102のいずれか1項に記載のキット。
【請求項104】
前記DNase酵素が、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項95~102のいずれか1項に記載のキット。
【請求項105】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項104に記載のキット。
【請求項106】
前記DNase酵素が、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項95~102のいずれか1項に記載のキット。
【請求項107】
前記DNase酵素が、SEQ ID NO:3のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項106に記載のキット。
【請求項108】
前記DNase酵素が、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む、請求項95~102のいずれか1項に記載のキット。
【請求項109】
前記DNase酵素が、DNase酵素タンパク質の形態で前記キット中に存在する、請求項95~108のいずれか1項に記載のキット。
【請求項110】
前記DNase酵素が、前記DNase酵素をコードする遺伝子療法ベクターの形態で前記キット中に存在する、請求項95~108のいずれか1項に記載のキット。
【請求項111】
前記遺伝子療法ベクターが、(i)カプシドタンパク質と(ii)前記DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである、請求項110に記載のキット。
【請求項112】
前記プロモータが、肝臓特異的プロモータ、神経系特異的プロモータ、腸特異的プロモータ、肝臓特異的/神経系特異的タンデムプロモータ、および肝臓特異的/腸特異的タンデムプロモータから選択される、請求項111に記載のキット。
【請求項113】
前記プロモータが、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である、請求項111に記載のキット。
【請求項114】
前記AAVが、血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVLK03、AAVLK06、AAVLK12、AAV-KP1、AAV-F、AAVDJ、AAVhu37、AAVrh64R1、およびAnc80から選択される、請求項111~113のいずれか1項に記載のキット。
【請求項115】
前記DNase酵素が、前記DNaseを発現しかつまたキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞の形態で前記キット中に存在する、請求項95~108のいずれか1項に記載のキット。
【請求項116】
前記CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞が、シングルターゲットまたはマルチターゲットである、請求項115に記載のキット。
【請求項117】
前記CARが、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む、請求項115または請求項116に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月21日出願の米国特許仮出願第63/191,551号の優先権を主張しており、この特許仮出願の開示は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、それは全体として参照により本明細書に組み入れられる。2022年5月19日に作成された上記ASCIIコピーは、252732_000038_SL.txtと命名され、14,097バイトのサイズである。
【0003】
発明の分野
本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素を用いる、異なる癌を有する患者における免疫抑制性腫瘍細胞微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢の影響の予防のための新しい方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
悪性腫瘍を有する患者は、健常な個体に比較して、血漿および血清中に高レベルの循環するセルフリーDNA(cfDNA)を有する(Fleischhacker,2007)。癌患者において、循環するcfDNAは、死滅する非腫瘍細胞、腫瘍細胞および好中球を起源とする。腫瘍は、癌患者において血栓形成促進性状態、悪液質および臓器不全の確立に寄与する好中球細胞外DNAトラップ(NETs)を放出させ易くする(Demmers,2012)。腫瘍を起源とするcfDNAは、転移および化学療法抵抗性の発生に寄与し得る(Garcia-Olmo,2013)。循環するcfDNAの量は、腫瘍の進行に伴って増加し(Sawyers,2008)、進行疾患および転移疾患を有する患者では最大レベルに達する(Butt,2008)。より多量の循環cfDNAは患者の生存率の低さと有意に相関することが、示されている(Schwarzenbach,2008)。
【0005】
本発明者らは、患者の循環中への高用量DNaseタンパク質の全身投与が、癌(例えば、癌腫、肉腫、リンパ腫、黒色腫;例えば、米国特許第7,612,032号;同第8,710,012号;同第9,248,166号を参照)、体細胞モザイクの発生(例えば、米国特許出願公開第20170056482号を参照)、および化学療法または放射線療法に関連する副作用(例えば、米国特許出願公開第20170100463号を参照)を含む、血中の増加されたレベルのcfDNAと関連する多数の疾患および状態の処置に有用であり得ることを、過去に実証した。これらの特許および特許出願の全ては、全体として参照により本明細書に組み入れられる。他の者たちがのちに、類似の影響を実証した(Wen,2013;Cederval,2015;Tohme,2016;Patutina,2011;Li,2015)。
【0006】
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は現在、多数の癌で認可されている。しかし、単剤療法への報告された奏効率は、28~52%の範囲である(Darvin et al.,2018)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明は、癌の、特に免疫チェックポイント調節物質の単剤療法で効果的に処置されないそれらの癌の、新しくより効果的な処置のための当該技術分野での大きな要望に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の有効量を対象に投与することを含む、癌を有する対象における免疫抑制性腫瘍細胞微小環境の免疫調節の方法を提供する。幾つかの実施形態において、免疫調節は、免疫抑制性腫瘍細胞微小環境内の細胞障害性CD8 T細胞および/またはNK細胞および/またはCAR-T細胞による増加された腫瘍細胞殺傷を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の有効量を対象に投与することを含む、癌を有する対象における腫瘍関連微生物叢の調節の方法を提供する。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の有効量と第二の免疫調節物質を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における癌を処置する方法を提供する。
【0011】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素の投与は、免疫抑制性腫瘍細胞微小環境における腫瘍関連マクロファージ(TAM)および/または腫瘍浸潤好中球(TIN)の数および/または活性を低減するのに効果的である。
【0012】
第二の免疫調節物質を投与することを含む上記方法の幾つかの実施形態において、第二の免疫調節物質は、免疫チェックポイント調節物質である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント調節物質は、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント調節物質は、免疫チェックポイント阻害剤である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、OX-40、PD-L1、またはPD-L2を特異的に結合する抗体である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。
【0013】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I、ヒトDNase-1-like 3(D1L3)、ヒトDNase-1-like 2(D1L2)、ヒトDNase-1-like 1(D1L1)、DNase X、DNase γ、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβおよびカスパーゼ活性化DNase(CAD)から選択される。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、SEQ ID NO:3のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む。
【0014】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase酵素タンパク質として投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、少なくとも2日間、静脈内に投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、少なくとも7日間、静脈内に投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、少なくとも14日間、静脈内に投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、少なくとも16日間、静脈内に投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、2または3または4週間ごとに1~2日間、静脈内に投与され、処置の合計の長さは、2週間~50年である。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、2または3または4週間ごとに2~5日間、静脈内に投与され、処置の合計の長さは、2週間~50年である。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、2または3または4週間ごとに7~14日間、静脈内に投与され、処置の合計の長さは、2週間~50年である。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、125~250μg/kg/日で投与される。
【0015】
第二の免疫調節物質の投与を含む方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、第二の免疫調節物質の投与の120時間~1時間前に投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、第二の免疫調節物質の投与の30分~2時間後に投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、第二の免疫調節物質の投与の2時間~360時間後に投与される。
【0016】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、遺伝子療法ベクターによりコードされる。幾つかの実施形態において、上記遺伝子療法ベクターは、対象に投与される。幾つかの実施形態において、上記遺伝子療法ベクターは、(i)カプシドタンパク質と、(ii)DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸、を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである。幾つかの実施形態において、プロモータは、肝臓特異性プロモータ、神経系特異性プロモータ、腸特異性プロモータ、肝臓特異性/神経系特異性タンデムプロモータ、および肝臓特異性/腸特異性タンデムプロモータから選択される。幾つかの実施形態において、プロモータは、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である。幾つかの実施形態において、AAVは、血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVLK03、AAVLK06、AAVLK12、AAV-KP1、AAV-F、AAVDJ、AAVhu37、AAVrh64R1、およびAnc80から選択される。
【0017】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞により発現され、上記細胞が、対象に投与される。幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞は、腫瘍の部位に直接投与される。幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞は、シングルターゲットまたはマルチターゲットである。幾つかの実施形態において、CARは、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む。
【0018】
第二の免疫調節物質の使用を含む本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素の投与は、上記第二の免疫調節物質の使用に関連する1つまたは複数の免疫関連有害事象の重症度を低減するのに効果的である。幾つかの実施形態において、そのような免疫関連有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)である。幾つかの実施形態において、1つまたは複数の免疫関連有害事象は、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、結膜炎、眼瞼炎、上強膜炎、強膜炎、網膜炎、肺炎、胸膜炎、サルコイド様肉芽腫、肝炎、膵炎、自己免疫性糖尿病、間質性腎炎、糸球体腎炎、急性腎障害(AKI)、皮膚発疹、掻痒症、白斑、DRESS、乾癬、スティーブン・ジョンソン症候群、関節痛、関節炎、筋炎、皮膚筋炎、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血栓性微小血管障害症、後天性血友病、血管炎、大腸炎、腸炎、胃炎、心筋炎、心膜炎、下垂体炎、甲状腺炎、副腎炎、脳炎、髄膜炎、多発神経炎、ギラン・バレー症候群、および亜急性炎症性ニューロパチーから選択される。
【0019】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素の投与は、対象における腫瘍微生物叢の内容および/または活性の変化をもたらす。幾つかの実施形態において、腫瘍微生物叢は、アシドバクテリア門、アクチノバクテリア門、バクテロイデス門、クラミジア門、クリシオゲネス門、シアノバクテリア門、フィブロバクテル門、ファーミキューテス門、フソバクテリウム門、ゲンマティモナス門、レンティスファエラ門、プロテオバクテリア門、スピロヘータ門、シネルギステス門、テネリキューテス門、およびベルコミクロビウム門から選択される1種または複数の細菌分類群を含む。
【0020】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、細胞療法の前に、それと共に、またはその後に投与される。幾つかの実施形態において、細胞療法は、(i)キメラ抗原受容体(CAR)もしくはT細胞受容体(TCR)を含む細胞、および/または(ii)NK細胞、および/または(iii)CD8 T細胞、を投与することを含む。
【0021】
本発明の上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0022】
別の態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素と、第二の免疫調節物質と、医薬的に許容できる担体または賦形剤、を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
関係する態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素と、第二の免疫調節物質、を含む医薬投与剤形を提供する。
【0024】
更なる態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素と、第二の免疫調節物質と、任意に使用説明書、を含むキットを提供する。
【0025】
上記医薬組成物、投与剤形、およびキットのいずれかの幾つかの実施形態において、第二の免疫調節物質は、免疫チェックポイント調節物質である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント調節物質は、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント調節物質は、免疫チェックポイント阻害剤である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、OX-40、PD-L1、またはPD-L2を特異的に結合する抗体である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブである。
【0026】
上記医薬組成物、投与剤形、およびキットのいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase I、ヒトDNase-1-like 3(D1L3)、ヒトDNase-1-like 2(D1L2)、ヒトDNase-1-like 1(D1L1)、DNase X、DNase γ、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβおよびカスパーゼ活性化DNase(CAD)から選択される。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、SEQ ID NO:1と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、SEQ ID NO:3のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む。
【0027】
上記医薬組成物、投与剤形、およびキットのいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase酵素タンパク質の形態で存在する。
【0028】
上記医薬組成物、投与剤形、およびキットのいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、上記DNase酵素をコードする遺伝子療法ベクターの形態で存在する。幾つかの実施形態において、遺伝子療法ベクターは、(i)カプシドタンパク質と、(ii)DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸、を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである。幾つかの実施形態において、プロモータは、肝臓特異性プロモータ、神経系特異性プロモータ、腸特異性プロモータ、肝臓特異性/神経系特異性タンデムプロモータ、および肝臓特異性/腸特異性タンデムプロモータから選択される。幾つかの実施形態において、プロモータは、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である。幾つかの実施形態において、AAVは、血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAVLK03、AAVLK06、AAVLK12、AAV-KP1、AAV-F、AAVDJ、AAVhu37、AAVrh64R1、およびAnc80から選択される。
【0029】
上記医薬組成物、投与剤形、およびキットのいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、上記DNaseを発現しかつまたキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞の形態で存在する。幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞は、シングルターゲットまたはマルチターゲットである。幾つかの実施形態において、CARは、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む。
【0030】
本明細書に記載されるこれらのおよび他の態様は、以下の記載、特許請求の範囲および図面において当業者に明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】乳腺腺癌(MA)、大腸癌(CRC)、肺癌(LC)、膵臓腺癌(PDAC)のモデルでの(A)TAMおよび(B)TINに対するDNaseの影響。TAMおよびTIMの量は、各実験におけるPBS群(腫瘍中のCD45を100%として設定された、対照)の平均TAMおよびTIMと比較したパーセンテージとして正規化された。
図2】(A)TAMおよび(B)TINに対するDNase投与の異なる治療レジメンの影響。TAMおよびTIMの量は、各実験におけるPBS群(腫瘍中のCD45を100%として設定された、対照)の平均TAMおよびTIMと比較したパーセンテージとして正規化された。
図3】腫瘍移植後の異なる期間での(A)TAMおよび(B)TINに対するDNase投与の影響。TAMおよびTIMの量は、各実験におけるPBS群(腫瘍中のCD45を100%として設定された、対照)の平均TAMおよびTIMと比較したパーセンテージとして正規化された。
図4】腫瘍移植後の異なる期間でのチェックポイント阻害剤と組み合わせたDNase投与のTAMに対する影響。TAMの量は、各実験におけるPBS群(腫瘍中のCD45を100%として設定された、対照)の平均TAMと比較したパーセンテージとして正規化された。
図5】腫瘍微生物叢の腫瘍形成促進効果の調節に対するDNaseの役割。腫瘍サイズは、各実験における群1(100%として設定された対照)の平均サイズと比較したパーセンテージとして正規化された。
図6】DNaseは、腫瘍微小環境によるチェックポイント阻害剤活性の阻害を予防する。腫瘍サイズは、各実験における群1(100%として設定された対照)の平均サイズと比較したパーセンテージとして正規化された。
図7】DNaseは、チェックポイント阻害剤処置に関連する毒性を予防する。グラフは、AT3腫瘍を担持するC57BL/6マウスへのテスト物質の投与後の体重を示す。データポイントは、群平均体重を表す。エラーバーは、平均の標準誤差(SEM)を表す。抗CTLA4抗体およびF.ヌクレアタムの投与は、処置動物の体重の成長を停止させる。CTLA4抗体とF.ヌクレアタムの組合せは、集中的な体重減量をもたらす。DNase I処置は、抗CTLA4誘導および/またはF.ヌクレアタム誘導毒性を予防し、体重増加を救済する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、好中球により腫瘍微小環境の中へ追い出されるDNAおよびタンパク質の細胞外ネットワークである好中球細胞外トラップ(NETs)を標的にすることが、免疫チェックポイント療法への奏効率を改善し得る、という本発明者らの仮説に基づく。具体的に、本発明者らは、NET除去剤であるDNaseによる処置と免疫チェックポイント療法を組み合わせることにした。
【0033】
定義
他に断りがなければ、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通例どおり理解される意味と同じ意味を有する。
【0034】
単数形体の「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、他に明確に示されない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば「方法」への言及は、本明細書に記載された型、および/または本開示を読むことで当業者に明白となる型の1つまたは複数の方法および/またはステップを包含する。
【0035】
用語「約」または「およそ」は、値の統計学的に意義のある範囲内にあることを包含する。そのような範囲は、所与の値または範囲の一桁以内、好ましくは50%以内、より好ましくは20%以内、より好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内であり得る。用語「約」または「およそ」により包含される許容できる変動は、試験を受けている個々の系に依存し、かつ当業者に容易に認識され得る。
【0036】
用語「免疫抑制性の腫瘍細胞の微小環境」は、細胞障害性CD8 T細胞、NK細胞および/またはCAR-T細胞による腫瘍細胞殺傷を共同的に予防する腫瘍細胞内の非癌性常在性および浸潤性宿主細胞、分泌因子、ならびに細胞外マトリクスタンパク質を指す。
【0037】
用語「腫瘍関連微生物叢」は、腫瘍内に局在する微生物、その細胞内部分、およびそれらの代謝産物を指す。
【0038】
用語「細胞外DNA」、「セルフリーDNA」および「cfDNA」は、任意の体液および組織の中に見出される、細胞外小胞(例えば、エクソソームおよび微小胞)中のDNAを含む、細胞外DNA(例えば、真核生物の、ウイルスの、古細菌の、原核生物の、細胞内のまたは細胞外の寄生生物起源)を指すために互換的に用いられる。cfDNAは、これらの体液および組織の中に見出される細胞外小胞(例えば、エクソソームおよび微小胞)内のDNAを含む、血液、リンパ、肝臓、神経組織、脳脊髄液(CSF)、および/または腸で見出され得る。
【0039】
状況、障害または状態の用語「処置する」または「処置」は、(1)状況、障害または状態に苦しめられ得る、またはその素因があり得るが、状況、障害または状態の臨床症状または亜臨床症状をまだ経験していない、または示していない対象において発生する状況、障害または状態の少なくとも1つの臨床状態または潜在性の症状の出現を予防すること、遅延させること、またはその発生率および/もしくは出現の確率を低減すること;あるいは(2)状況、障害または状態を阻害すること、即ち、疾患またはその再発またはその少なくとも1種の臨床症状もしくは潜在性の症状の発生を停止させること、低減すること、または遅延させること、あるいは(3)疾患を緩和すること、即ち、状況、障害もしくは状態、または臨床症状もしくは潜在性の症状の少なくとも1つの軽減を引き起こすこと、を包含する。処置される対象への利益は、統計学的に有意であるか、または患者もしくは医師に少なくとも知覚できるかのどちらかである。
【0040】
用語「個体」、「対象」、「動物」、「患者」および「哺乳動物」は、ヒト、獣医学的動物(例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタなど)および疾患の実験動物モデル(例えば、マウス、ラット)を含む、哺乳動物を指すために互換的に用いられる。
【0041】
用量または量に適用される用語「効果的な」は、それを必要とする対象への投与時に所望の活性をもたらすのに充分である化合物または医薬組成物の量を指す。有効成分の組合わせが投与される場合、その組合わせの効果的な量は、個別に投与されるならば効果的であろう各成分の量を含んでも、または含まなくてもよいことに、留意されたい。必要とされる厳密な量は、対象の種、年齢および全身状態、処置される状態の重症度、用いられる個々の薬物または複数の薬物、投与様式、ならびに同様のものに応じて、対象ごとに変わるであろう。
【0042】
本明細書で用いられる、用量または量に適用される用語「治療的に有効な」は、それを必要とする対象への投与時に所望の活性をもたらすのに充分である化合物または医薬組成物の量を指す。有効成分の組合わせが投与される場合(例えば、DNaseと別の化合物の組合わせ)、その組合わせの有効な量は、個別に投与されるならば効果的であろう各成分の量を含んでも、または含まなくてもよいことに、留意されたい。
【0043】
本明細書で用いられる用語「プロモータ」は、1つまたは複数のコード配列の転写を制御するように機能し、かつコード配列の転写開始部位の転写の方向に関して上流に位置し、かつDNA依存性RNAポリメラーゼの結合部位と、転写開始部位と、転写因子結合部位、レプレッサ、および活性化因子タンパク質結合部位を含むが限定されない、任意の他のDNA配列と、プロモータからの転写の量を直接的または間接的に調節するように作用すると当業者に知られるヌクレオチドの任意の他の配列、の存在により構造的に同定される、核酸断片を指す。「組織特異的な」プロモータは、特異的な型の組織または細胞において優先的に活性であり得る。
【0044】
本明細書で用いられる用語「肝臓特異的な発現」は、肝臓における主な発現または排他的発現、即ち、他の組織および臓器よりも実質的に大きな程度の発現を指す。
【0045】
用語「肝臓特異的プロモータ」は、肝臓細胞(例えば、肝細胞)において主に、または排他的に活性であり、他の組織および臓器よりも実質的に大きな程度で肝臓内の転写を指導/開始するプロモータを指すために本明細書で用いられる。この文脈において、用語「主に」は、上記プロモータ駆動発現の少なくとも50%、より典型的には上記プロモータ駆動発現の少なくとも90%(上記プロモータ発現の100%など)が肝臓細胞で起こることを意味する。非肝臓発現に対する肝臓発現の比は、異なる肝臓特異的プロモータ間で変わり得る。幾つかの実施形態において、肝臓特異的プロモータは、個々の肝臓細胞型(例えば、肝細胞、クッパー細胞、内皮細胞ほか)において転写を優先的に指導/開始し得る。本発明の発現カセットにおいて有用な幾つかの肝臓特異的プロモータとしては、少なくとも1つの、典型的には複数の肝臓核因子結合部位が挙げられる。本発明の発現カセットにおいて有用な肝臓特異的プロモータは、構成型または誘導型プロモータであり得る。本発明の発現カセットにおいて有用な肝臓プロモータの幾つかの非限定的例としては、アルブミンプロモータ(Alb)、ヒトアルファ-1アンチトリプシン(hAAT)プロモータ、サイロキシン結合グロブリン(TBG)、アポリポプロテインE肝臓制御領域プロモータ、アポリポプロテインA-II(APOA2)プロモータ、セルピンペプチダーゼ阻害剤・クレードA・メンバー1(SERPINA1)(hAAT)プロモータ、チトクロムp450ファミリー3・サブファミリーAポリペプチド4(CYP3A4)プロモータ、マイクロRNA122(miR-122)プロモータ、肝臓特異性IGF-IIプロモータP1、ネズミトランスサイレチン(MTTR)プロモータ、アルファ-フェトプロテイン(AFP)プロモータ、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)プロモータ、アポリポプロテインH(ApoH)プロモータ、およびマウスプレアルブミン遺伝子プロモータ、が挙げられる。
【0046】
肝臓特異的プロモータの非限定的例としては、例えば、アルブミンプロモータ(Alb)、ヒトアルファ-1アンチトリプシン(hAAT)プロモータ、サイロキシン結合グロブリン(TBG)プロモータ、アポリポプロテインE肝臓制御領域プロモータ、アポリポプロテインA-II(APOA2)プロモータ、セルピンペプチダーゼ阻害剤・クレードA・メンバー1(SERPINA1)(hAAT)プロモータ、チトクロムp450ファミリー3・サブファミリーAポリペプチド4(CYP3A4)プロモータ、マイクロRNA122(miR-122)プロモータ、肝臓特異的IGF-IIプロモータP1、ネズミトランスサイレチン(MTTR)プロモータ、アルファ-フェトプロテイン(AFP)プロモータ、甲状腺ホルモン結合グロブリンプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼプロモータ、第VIII因子(FVIII)プロモータ、HBVベーシックコアプロモータ(BCP)およびPreS2プロモータ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)プロモータ、肝臓制御領域(HCR)-アポCIIハイブリッドプロモータ、マウスアルブミン遺伝子エンハンサ(Ealb)エレメントと組み合わせたAATプロモータ、低比重リポタンパク質プロモータ、ピルビン酸キナーゼプロモータ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼプロモータ、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)プロモータ、アポリポプロテインH(ApoH)プロモータ、トランスフェリンプロモータ、トランスサイレチンプロモータ、アルファ-フィブリノーゲンおよびベータ-フィブリノーゲンプロモータ、アルファ1-アンチキモトリプシンプロモータ、アルファ-2HS糖タンパク質プロモータ、ヘプトグロビンプロモータ、セルロプラスミンプロモータ、プラスミノーゲンプロモータ、補体タンパク質(例えば、Clq、Clr、C2、C3、C4、C5、C6、C8、C9、補体I因子、およびH因子)のプロモータ、C3補体活性化因子および[アルファ]1酸性糖タンパク質プロモータが挙げられる。追加的な組織特異的プロモータは、Tissue-Specific Promoter Database, TiProD(Nucleic Acids Research, J4:D104-D107(2006)に見出され得る。
【0047】
用語「神経系特異的プロモータ」は、神経系細胞において主に、または排他的に活性であり、他の組織および臓器よりも実質的に大きな程度で神経系(例えば、脳を含む、中枢神経系(CNS)および/または腸管神経系(ENS))での転写を指導/開始するプロモータを指すために本明細書で用いられる。この文脈において、用語「主に」は、上記プロモータ駆動発現の少なくとも50%、より典型的には上記プロモータ駆動発現の少なくとも90%(上記プロモータ発現の100%など)が神経系の細胞で起こることを意味する。非神経系発現に対する神経系発現の比は、異なる神経系特異的プロモータ間で変わり得る。幾つかの実施形態において、神経系特異的プロモータは、個々のCNSおよび/またはENS細胞型(例えば、神経細胞、グリア細胞[例えば、希突起膠細胞、星状細胞、上衣細胞、ミクログリア、シュワン細胞、衛星細胞]、腸管神経細胞、内在性求心性神経、介在ニューロン、運動ニューロンほか)において優先的に転写を指導/開始し得る。本発明の発現カセットにおいて有用な神経系特異的プロモータは、構成型または誘導型プロモータであり得る。本発明の発現カセットにおいて有用な神経系プロモータの幾つかの非限定的例としては、ミクログリア特異的プロモータ(例えば、F4/80、CD68、TMEM119、CX3CR1、CMV、およびIba1プロモータ)、骨髄特異的プロモータ(例えば、TTR、CD11b、およびc-fesプロモータ)、ニューロン特異性プロモータ(例えば、CMV、NSE、シナプシン[SynI、SynII]、CamKII、α-CaMKII、およびVGLUT1プロモータ)、ならびに他の神経およびグリア細胞(例えば、希突起膠細胞、星状細胞)型特異的プロモータ(例えば、グリア線維性酸性タンパク質[GFAP]プロモータ)が挙げられる。
【0048】
用語「腸特異的プロモータ」は、腸細胞において主に、または排他的に活性であり、他の組織および臓器よりも実質的に大きな程度で腸での転写を指導/開始するプロモータを指すために本明細書で用いられる。この文脈において、用語「主に」は、上記プロモータ駆動発現の少なくとも50%、より典型的には上記プロモータ駆動発現の少なくとも90%(上記プロモータ発現の100%など)が腸細胞で起こることを意味する。非腸発現に対する腸発現の比は、異なる腸特異的プロモータ間で変わり得る。幾つかの実施形態において、腸特異的プロモータは、個々の腸細胞型(例えば、腸細胞、杯細胞、腸内分泌細胞)において転写を優先的に指導/開始し得る。本発明の発現カセットにおいて有用な腸特異的プロモータは、構成型または誘導型プロモータであり得る。本発明の発現カセットにおいて有用な腸プロモータの幾つかの非限定的例としては、CB/CMV、GFAP、miCMV、CMV+I、tetO-CMV、β-アクチ-CMV(β-acti-CMV)、MUC2、ビリン、およびT3プロモータが挙げられる。
【0049】
幾つかの実施形態において、例えば、組織の標的化が、ウイルスカプシドタンパク質により媒介される場合、DNaseをコードする核酸は、効率的な全身発現を可能にするプロモータ(例えば、CMVプロモータ、ニワトリβ-アクチンプロモータ(CBA)、またはEF1aプロモータ)に動作可能に連結され得る。
【0050】
本発明の組成物に連結して用いられる語句「医薬的に許容できる」は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与された場合に、生理学的に許容でき、かつ不都合な反応を典型的には生じない、そのような組成物の分子実体および他の成分を指す。本明細書で用いられる用語「医薬的に許容できる」は、哺乳動物、より特にヒトにおける使用のために連邦政府もしくは州政府の規制当局により認可されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認識される薬局方に列挙されていることを意味する。
【0051】
本明細書で用いられる用語「ウイルスベクター」および「ウイルス構築物」は、1種または複数の異種ヌクレオチド配列(例えば、DNase酵素をコードするヌクレオチド配列)を含む組換えウイルス構築物を指す。幾つかの実施形態において、ウイルスベクターは、複製欠損である。幾つかの実施形態において、ウイルスの構造および非構造コード配列は、ウイルスベクター中に存在せず、プラスミドなどのベクターにより、またはパッケージング細胞株中に配列を安定に取り込むことによりトランスで(in trans)ウイルスベクター生成の間に提供される。ウイルスに応じて、ウイルスベクターは、カプシド(例えば、AAVベクター)および/または脂質エンベロープ(例えば、レンチウイルスベクター)内にパッケージされ得る。
【0052】
本発明によれば、当該技術分野の技能内の従来の薬理学および分子生物学を用いてもよい。そのような技術は、文献において完全に説明される。中でも、例えばSambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(本明細書では “Sambrook et al., 1989”);DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes IおよびII(d.N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis(MJ. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985));Transcription and Translation(B.D. Hames & S.J. Higgins, eds.(1984));Animal Cell Culture(R.I. Freshney, ed. (1986);Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,(1986));B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M. Ausubel et al.(eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.(1994)を参照されたい。
【0053】
発明の方法
一態様において、本発明は、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における腫瘍微小環境の免疫調節のおよび/または腫瘍微生物叢効果の予防の方法を提供する。別の態様において、本発明は、腫瘍微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢効果の予防を介して、免疫チェックポイント調節物質療法の免疫関連有害事象を含む有害事象の強度を低減する方法を提供する。
【0054】
一態様において、本発明は、DNase酵素の有効量を対象に投与することを含む、癌を有する対象における免疫抑制性腫瘍細胞微小環境の免疫調節の方法を提供する。
【0055】
別の態様において、本発明は、DNase酵素の有効量を対象に投与することを含む、癌を有する対象における腫瘍関連微生物叢の調節の方法を提供する。
【0056】
さらなる態様において、本発明は、DNase酵素の有効量と第二の免疫調節物質を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における癌を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、第二の免疫調節物質は、免疫チェックポイント調節物質である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント調節物質は、PD-1、CD28、CTLA-4、CD137、CD40、CD134(OX-40)、ICOS、KIR、LAGS、CD27、TIM-3、BTLA、GITR、TCR、4-1BB、TIGIT、CD96、CD226、KIR2DL、VISTA、HLLA2、TLIA、DNAM-1、CEACAM1、CD155、IDO、TGF-ベータ、IL-10、IL-2、IL-15、CSF-1、IL-6、アデノシンA2A受容体(A2AR)、およびそれらのリガンドから選択される免疫チェックポイント分子の調節物質である。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント調節物質は、免疫チェックポイント阻害剤である。有用な免疫チェックポイント阻害剤の非限定的例としては、例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、またはSIGLEC7に特異的に結合する抗体が挙げられる。幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、セミプリマブ、およびそれらの任意の組合わせから選択される。幾つかの実施形態において、DNase酵素の投与は、第二の免疫調節物質の使用に関連する1つまたは複数の免疫関連有害事象の重症度を低減するのに効果的である。幾つかの実施形態において、免疫関連有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)である。免疫関連有害事象の他の非限定的例としては、例えば、ブドウ膜炎、シェーグレン症候群、結膜炎、眼瞼炎、上強膜炎、強膜炎、網膜炎、肺炎、胸膜炎、サルコイド様肉芽腫、肝炎、膵炎、自己免疫性糖尿病、間質性腎炎、糸球体腎炎、急性腎障害(AKI)、皮膚発疹、掻痒症、白斑、DRESS、乾癬、スティーブン・ジョンソン症候群、関節痛、関節炎、筋炎、皮膚筋炎、貧血、好中球減少症、血小板減少症、血栓性微小血管障害症、後天性血友病、血管炎、大腸炎、腸炎、胃炎、心筋炎、心膜炎、下垂体炎、甲状腺炎、副腎炎、脳炎、髄膜炎、多発神経炎、ギラン・バレー症候群、および亜急性炎症性神経炎が挙げられる。
【0057】
本発明の方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素の投与は、対象における腫瘍微生物叢の内容および/または活性の変化をもたらす。幾つかの実施形態において、腫瘍微生物叢は、アシドバクテリア門、アクチノバクテリア門、バクテロイデス門、クラミジア門、クリシオゲネス門、シアノバクテリア門、フィブロバクテル門、ファーミキューテス門、フソバクテリウム門、ゲンマティモナス門、レンティスファエラ門、プロテオバクテリア門、スピロヘータ門、シネルギステス門、テネリキューテス門、およびベルコミクロビウム門から選択される1種または複数の細菌分類群を含む。
【0058】
一態様において、本発明は、それを必要とする対象における腫瘍微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢効果の予防の方法を提供し、腫瘍微生物叢は、細菌、真菌、ウイルスにより代表される。
【0059】
一態様において、本発明の態様は、腫瘍微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢効果の予防を介して、免疫チェックポイント調節物質療法の免疫関連有害事象を含む有害事象の強度を低減する方法を提供する。
【0060】
一態様において、本発明は、それを必要とする対象における腫瘍微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢効果の予防の方法を提供し、腫瘍微生物叢の細菌は、アシドバクテリア門、アクチノバクテリア門、バクテロイデス門、クラミジア門、クリシオゲネス門、シアノバクテリア門、フィブロバクテル門、ファーミキューテス門、フソバクテリウム門、ゲンマティモナス門、レンティスファエラ門、プロテオバクテリア門、スピロヘータ門、シネルギステス門、テネリキューテス門、および/またはベルコミクロビウム門由来である。
【0061】
一態様において、本発明は、それを必要とする対象における腫瘍微小環境の免疫調節および腫瘍微生物叢効果の予防の方法を提供し、腫瘍微生物叢の細菌は、フソバクテリウム門、腸内細菌目、および/またはバチルス目の代表である。
【0062】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素の投与は、免疫抑制性腫瘍細胞微小環境における腫瘍関連マクロファージ(TAM)および/または腫瘍浸潤好中球(TIN)の数および/または活性を低減するのに効果的である。
【0063】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase I、DNase X、DNase γ、DNase1L1、DNase1L2、DNase1L3、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβ、カスパーゼ活性化DNase(CAD)、エンドヌクレアーゼG(ENDOG)、グランザイムB(GZMB)、およびそれらの変異体または誘導体から選択される。
【0064】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase酵素タンパク質として投与される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、非経口投与される。
【0065】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase Iまたはその変異体もしくは誘導体である。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、アクチン結合部位に1つまたは複数の変異を含む。幾つかの実施形態において、アクチン結合部位中の1つまたは複数の変異は、Gln-9、Glu-13、Thr-14、His-44、Asp-53、Tyr-65、Val-66、Val-67、Glu-69、Asn-74、Ala-114、およびそれらの任意の組合わせでの変異から選択される。幾つかの実施形態において、アクチン結合部位中の変異の1つは、Ala-114での変異である。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異を含む。幾つかの実施形態において、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異は、Q9R、E13R、E13K、T14R、T14K、H44R、H44K、N74K、A114F、およびそれらの任意の組合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異は、Q9R、E13R、N74KおよびA114F、ならびにそれらの任意の組合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、変異Q9R、E13R、N74K、およびA114Fを含む。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、H44C、H44N、L45C、V48C、G49C、L52C、D53C、D53R、D53K、D53Y、D53A、N56C、D58S、D58T、Y65A、Y65E、Y65R、Y65C、V66N、V67E、V67K、V67C、E69R、E69C、A114C、A114R、H44N:T46S、D53R:Y65A、D53R:E69R、H44A:D53R:Y65A、H44A:Y65A:E69R、H64N:V66S、H64N:V66T、Y65N:V67S、Y65N:V67T、V66N:S68T、V67N:E69S、V67N:E69T、S68N:P70S、S68N:P70T、S94N:Y96S、S94N:Y96T、およびそれらの任意の組合わせからなる群から選択される1つまたは複数の変異を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I酵素と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase 1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0066】
DNase酵素タンパク質を用いる上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注に続いて少なくとも14日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注に続いて少なくとも16日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、それと共に、またはそれに続いて、少なくとも2日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、またはそれに続いて、少なくとも1日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注に続いて、少なくとも7日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、少なくとも7日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、またはそれに続いて、1日おきに少なくとも2日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、またはそれに続いて、1日おきに少なくとも5日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、またはそれに続いて、1日おきに少なくとも7日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注の前に、またはそれに続いて、1日おきに少なくとも14日間、静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、免疫チェックポイント調節物質の輸注前の合計2~7日または輸注後の合計2~7日の間欠的過程により静脈内に注射される。
【0067】
本発明の方法によるDNase酵素タンパク質の投与は、全身投与ならびに疾患部位への(例えば、原発腫瘍への)直接投与を含む、任意の適切な経路により実施され得る。有用な投与経路の非限定的例としては、静脈内(IV)、皮下(SC)、腹腔内(IP)、経口、および筋肉内が挙げられる。
【0068】
特定の実施形態において、DNase酵素タンパク質は、医薬的に許容できる担体または賦形剤と共に医薬組成物中で配合される。
【0069】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、遺伝子療法ベクターによりコードされる。幾つかの実施形態において、遺伝子療法ベクターは、対象に投与される。幾つかの実施形態において、遺伝子療法ベクターは、ウイルスベクターである。有用なウイルスベクターの非限定的例としては、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)、および肝臓指向性ウイルスベクター(例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)ベクター)が挙げられる。
【0070】
遺伝子療法ベクターを用いる上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、遺伝子療法ベクターは、(i)カプシドタンパク質と、(ii)DNase酵素をコードするヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモータを含む核酸、を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)発現ベクターである。本発明のAVV発現ベクターを開発するために用いられ得るAAV血清型の非限定的例としては、例えばAAV血清型1(AAV1)、AAV2、AAV3(3A型および3B型を含む)、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、AAV-LK03、AAV-LK06、AAV-LK-01-19、AAV-LK12、AAV-KP1、AAVKP2-KP11、AAV-F、AAVrh64R1、AAVhu37、Anc80、Anc80L65、AAV-DJ、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、およびそれらのキメラが挙げられる。幾つかの実施形態において、プロモータは、腫瘍発生組織または転移標的組織に特異的である。幾つかの実施形態において、プロモータは、肝臓特異的プロモータ、神経系特異的プロモータ、腸特異的プロモータ、肝臓特異的/神経系特異的タンデムプロモータ、および肝臓特異的/腸特異的タンデムプロモータから選択される。
【0071】
上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNase酵素は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞により発現され、上記細胞は、対象に投与される。幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞は、腫瘍の部位に直接投与される。幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞は、シングルターゲットまたはマルチターゲットである。幾つかの実施形態において、CARは、1つまたは複数の腫瘍抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む。上記方法のいずれかの幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞またはTCRを発現する細胞はさらに、免疫チェックポイント阻害分子を発現するように修飾される。幾つかの実施形態において、CARを発現する細胞は、CAR T細胞である。幾つかの実施形態において、CARは、(i)CD5、CD7,CD19、CD28、メソテリン、CD123、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRVIII、GD2、GD3、BCMA、TN AG、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44V6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13RA2、IL-11RA、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、葉酸受容体アルファ、FR-1、C-MET、EGFR/CD133、IL13Ra2、HER2、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gp100、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、TSHR、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸(Plysialic acid)、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-1a、MAGE-A1、レグルミン、HPV E6、E7、MAGE A1、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、P53、P53変異体、プロステイン(Prostein)、サバイビン、テロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、メランA/MART1、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、0Y-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸カルボシルエステラーゼ、およびmut hsp70-2から選択される腫瘍抗原;(ii)固形腫瘍に関連する抗原;(iii)メソテリン、EGFRvIII、GD2、CLDN6、Tn Ag、PSMA、CD97、TAG72、CD44v6、CEA、EPCAM、KIT、IL-13Ra2、レグルミン、CD171、PSCA、TARP、MAD-CT-1、ルイスY、CD24、葉酸受容体アルファ、葉酸受容体ベータ、ERBB、MUC1、EGFR、NCAM、PDGFR-ベータ、MAD-CT-2、Fos関連抗原、SSEA-4、好中球エラスターゼ、CAIX、HPV E6 E7、ML-IAP、NA17、ALK、アンドロゲン受容体ポリシアル酸、TRP-2、CYP1B1、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、精子タンパク質17、HMWMAA、ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン、AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、腸カルボキシルエステラーゼ、およびmut hsp70-2から選択される固形腫瘍関連抗原;(iv)中皮腫、肺癌、膵臓癌、食道腺癌、卵巣癌、乳癌、大腸癌、膀胱癌、またはそれらの任意の組合わせの中/表面に存在する固形腫瘍関連抗原;(v)血液癌に関連する腫瘍抗原;(vi)B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、および急性リンパ性白血病(ALL)を含む急性白血病;または慢性骨髄性白血病(CIVIL)および慢性リンパ性白血病(CLL)を含む1種もしくは複数の慢性白血病から選択される疾患に存在する腫瘍抗原;ならびに(vi)治療抵抗性癌に存在する腫瘍抗原、から選択される1種または複数の抗原への特異的結合が可能な抗原結合ドメインを含む。
【0072】
DNase酵素
本明細書で用いられる用語「デオキシリボヌクレアーゼ」および「DNase」は、DNAバックボーン中のホスホジエステル結合の加水分解性切断を触媒する任意の酵素を指すために用いられる。非常に様々なデオキシリボヌクレアーゼが、知られており、本発明の方法で用いられ得る。本発明の方法において有用なDNaseの非限定的例としては、例えば、DNase I(例えば、組換えヒトDNase I(rhDNase I)またはウシ膵臓DNase I)、DNase Iの類似体(例えば、DNase X、DNase γ、DNase1L1、DNase1L2、DNase 1L3など)、DNase II(例えば、DNase IIα、DNase IIβ)、カスパーゼ活性化DNase(CAD)、エンドヌクレアーゼG(ENDOG)、グランザイムB(GZMB)、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリン、アセチルコリンエステラーゼ、およびそれらの変異体または誘導体が挙げられる。また本発明により包含されるのは、長期の半減期を有するDNase酵素である(例えば、アルブミンおよび/もしくはFc融合物、またはアクチン結合部位の修飾によりアクチンへの結合を防御されたもの;例えば、Gibson et al., (1992) J. Immunol. Methods, 155, 249-256を参照)。DNase Iのアクチン結合部位は、例えば、以下の残基で変異され得る:組換えヒトDNase I(SEQ ID NO:1)のGln-9、Glu-13、Thr-14、His-44、Asp-53、Tyr-65、Val-66、Val-67、Glu-69、Asn-74、Ala-114。例えば、1つのヒトDNase I過反応性バリアントは、変異されたAla-114残基を含む。他の例示的変異としては、例えば、H44C、H44N、L45C、V48C、G49C、L52C、D53C、D53R、D53K、D53Y、D53A、N56C、D58S、D58T、Y65A、Y65E、Y65R、Y65C、V66N、V67E、V67K、V67C、E69R、E69C、A114C、A114R、H44N:T46S、D53R:Y65A、D53R:E69R、H44A:D53R:Y65A、H44A:Y65A:E69R、H64N:V66S、H64N:V66T、Y65N:V67S、Y65N:V67T、V66N:S68T、V67N:E69S、V67N:E69T、S68N:P70S、S68N:P70T、S94N:Y96S、S94N:Y96T(SEQ ID NO:1の配列中で)が挙げられる。また包含されるのは、上昇したDNase I活性を有するDNase I中の変異である。そのような変異の非限定的例は、例えば、組換え体ヒトDNase I(SEQ ID NO:1)のQ9R、E13R、E13K、T14R、T14K、H44R、H44K、N74K、およびA114Fである。例えば、1つの過反応性DNase I変異体は、Q9R、E13R、N74KおよびA114F変異の組合わせを含む。DNase Iは、ピリミジンヌクレオチドに隣接するホスホジエステル結合で優先的にDNAを切断し、3’位に遊離ヒドロキシル基を有する5’-リン酸末端ポリヌクレオチドを生じ、平均でテトラヌクレオチドを生成する。DNase Iは、一本鎖DNA、二本鎖DNA、およびクロマチンに作用する。
【0073】
幾つかの実施形態において、DNaseは、DNase Iまたはその変異体もしくは誘導体であってよい。
【0074】
幾つかの実施形態において、DNase Iは、ヒトDNase Iまたはその変異体もしくは誘導体であってよい。幾つかの実施形態において、DNase Iは、非限定的にげっ歯類(例えば、マウス)DNase Iまたはその変異体もしくは誘導体などの、非ヒトDNase Iまたはその変異体もしくは誘導体であってよい。
【0075】
幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I酵素と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I酵素(SEQ ID NO:1)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase I酵素変異体(SEQ ID NO:2)と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase1-like 3(D1L3)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase1-like 3(D1L3)酵素(SEQ ID NO:3)のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase1-like 2(D1L2)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase1-like 2(D1L2)酵素(SEQ ID NO:4)のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0078】
幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase1-like 1(D1L1)酵素のアミノ酸21~305と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase酵素は、ヒトDNase1-like 1(D1L1)酵素(SEQ ID NO:5)のアミノ酸21~305と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0079】
幾つかの実施形態において、DNaseは、アクチン結合部位に1つまたは複数の変異を含むDNase I変異体である。幾つかの実施形態において、アクチン結合部位中の1つまたは複数の変異は、Gln-9、Glu-13、Thr-14、His-44、Asp-53、Tyr-65、Val-66、Val-67、Glu-69、Asn-74、Ala-114、およびそれらの任意の組合わせでの変異から選択される。幾つかの実施形態において、アクチン結合部位中の変異の1つは、Ala-114での変異である。
【0080】
幾つかの実施形態において、DNaseは、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異を含むDNase I変異体である。幾つかの実施形態において、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異は、Q9R、E13R、E13K、T14R、T14K、H44R、H44K、N74K、A114F、およびそれらの任意の組合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異は、Q9R、E13R、N74KおよびA114Fからなる群から選択される。
【0081】
幾つかの実施形態において、DNaseは、H44C、H44N、L45C、V48C、G49C、L52C、D53C、D53R、D53K、D53Y、D53A、N56C、D58S、D58T、Y65A、Y65E、Y65R、Y65C、V66N、V67E、V67K、V67C、E69R、E69C、A114C、A114R、H44N:T46S、D53R:Y65A、D53R:E69R、H44A:D53R:Y65A、H44A:Y65A:E69R、H64N:V66S、H64N:V66T、Y65N:V67S、Y65N:V67T、V66N:S68T、V67N:E69S、V67N:E69T、S68N:P70S、S68N:P70T、S94N:Y96S、S94N:Y96T、およびそれらの任意の組合わせからなる群から選択される1つまたは複数の変異を含むDNase I変異体である。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、長期作用型のDNaseである。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、過反応性バリアント形態のDNaseである。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含む。
【0082】
幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、変異Q9R、E13R、N74KおよびA114Fを含む。
【0083】
幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、変異Q9R、E13R、N74KおよびA114Fを含む。
【0084】
本発明の方法のいずれかの幾つかの実施形態において、DNaseをコードする配列は、分泌シグナル配列を含む。幾つかの実施形態において、DNaseが組換えベクターとして投与される場合、上記分泌シグナル配列は、対象へのベクターの投与時に肝臓の門脈洞様血管の循環中への酵素の効果的分泌を媒介する。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、DNase I分泌シグナル配列、IL2分泌シグナル配列、アルブミン分泌シグナル配列、β-グルクロニダーゼ分泌シグナル配列、アルカリプロテアーゼ分泌シグナル配列、およびフィブロネクチン分泌シグナル配列からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MRGMKLLGALLALAALLQGAVS(SEQ ID NO:6)と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MRGMKLLGALLALAALLQGAVS(SEQ ID NO:6)を含む。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MRGMKLLGALLALAALLQGAVS(SEQ ID NO:6)からなる。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(SEQ ID NO:7)と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(SEQ ID NO:7)を含む。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MYRMQLLSCIALSLALVTNS(SEQ ID NO:7)からなる。
【0085】
幾つかの実施形態において、DNase酵素は、DNase I、DNase X、DNase γ、DNase1L1、DNase1L2、DNase1L3、DNaseII、DNaseIIα、DNaseIIβ、カスパーゼ活性化DNase(CAD)、エンドヌクレアーゼG(ENDOG)、グランザイムB(GZMB)、ホスホジエステラーゼI、ラクトフェリン、アセチルコリンエステラーゼ、およびそれらの変異体または誘導体からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、DNase活性を有する酵素は、DNase Iまたはその変異体もしくは誘導体である。幾つかの実施形態において、DNase Iは、ヒトDNase Iまたはその変異体もしくは誘導体である。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、アクチン結合部位に1つまたは複数の変異を含む。幾つかの実施形態において、アクチン結合部位中の1つまたは複数の変異は、Gln-9、Glu-13、Thr-14、His-44、Asp-53、Tyr-65、Val-66、Val-67、Glu-69、Asn-74、Ala-114、およびそれらの任意の組合わせでの変異から選択される。幾つかの実施形態において、アクチン結合部位中の変異の1つは、Ala-114での変異である。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異を含む。幾つかの実施形態において、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異は、Q9R、E13R、E13K、T14R、T14K、H44R、H44K、N74K、A114F、およびそれらの任意の組合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、DNase活性を上昇させる1つまたは複数の変異は、Q9R、E13R、N74KおよびA114F、ならびにそれらの任意の組合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、SEQ ID NO:2の配列と少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、変異Q9R、E13R、N74K、およびA114Fを含む。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、SEQ ID NO:2の配列を含む。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、SEQ ID NO:2の配列からなる。幾つかの実施形態において、DNase I変異体は、H44C、H44N、L45C、V48C、G49C、L52C、D53C、D53R、D53K、D53Y、D53A、N56C、D58S、D58T、Y65A、Y65E、Y65R、Y65C、V66N、V67E、V67K、V67C、E69R、E69C、A114C、A114R、H44N:T46S、D53R:Y65A、D53R:E69R、H44A:D53R:Y65A、H44A:Y65A:E69R、H64N:V66S、H64N:V66T、Y65N:V67S、Y65N:V67T、V66N:S68T、V67N:E69S、V67N:E69T、S68N:P70S、S68N:P70T、S94N:Y96S、S94N:Y96T、およびそれらの任意の組合わせからなる群から選択される1つまたは複数の変異を含む。幾つかの実施形態において、DNase活性を有する酵素は、(ii)アルブミンまたはFcまたはそれらの断片、(i)(ii)に連結されるDNase酵素またはその断片、を含む融合タンパク質である。幾つかの実施形態において、DNase活性を有する酵素をコードする配列は、分泌シグナル配列をコードする配列を含み、上記分泌シグナル配列は、酵素の効果的な分泌を媒介する。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、DNase I分泌シグナル配列、IL2分泌シグナル配列、アルブミン分泌シグナル配列、β-グルクロニダーゼ分泌シグナル配列、アルカリプロテアーゼ分泌シグナル配列、およびフィブロネクチン分泌シグナル配列からなる群から選択される。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MRGMKLLGALLALAALLQGAVS(SEQ ID NO:6)またはMYRMQLLSCIALSLALVTNS(SEQ ID NO:7)を含む。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MRGMKLLGALLALAALLQGAVS(SEQ ID NO:6)またはMYRMQLLSCIALSLALVTNS(SEQ ID NO:7)からなる。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、MRGMKLLGALLALAALLQGAVS(SEQ ID NO:6)の配列と少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列、またはMYRMQLLSCIALSLALVTNS(SEQ ID NO:7)の配列と少なくとも80%もしくは少なくとも85%もしくは少なくとも90%もしくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、配列MRYTGLMGTLLTLVNLLQLAGT(SEQ ID NO:8)からなる。幾つかの実施形態において、分泌シグナル配列は、MRYTGLMGTLLTLVNLLQLAGT(SEQ ID NO:8)の配列と少なくとも80%または少なくとも85%または少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0086】
本発明の方法によるDNase酵素の投与は、全身投与ならびに疾患部位への(例えば、原発腫瘍への)直接投与を含む、任意の適切な経路により実施され得る。有用な投与の経路の具体的な非限定的例としては、静脈内(IV)、皮下(SC)、腹腔内(IP)、経口、および筋肉内が挙げられる。
【0087】
本発明の方法において有用なDNase酵素タンパク質用量は、追加的治療のタイプ、患者の臨床歴およびDNaseへの応答、ならびに担当医の裁量に依存する。有用な投与量範囲の非限定的例は、0.005~100mg/kg/日または10~200000KU/kg/日、好ましくは0.05~50mg/kg/日または1000~100000Kunitz単位(KU)/kg/日、より好ましくは1.5~50mg/kg/日または3000~100000KU/kg/日、最も好ましくは10~50mg/kg/日または20000~100000KU/kg/日を含む。
【0088】
幾つかの実施形態において、DNase酵素タンパク質は、250μg/kg/日で静脈内に注射される。幾つかの実施形態において、デオキシリボヌクレアーゼ酵素タンパク質は、250μg/kg/日で少なくとも14日間、静脈内に注射される。
【0089】
DNase組成物および配合物
特定の実施形態において、DNase酵素タンパク質、DNase酵素をコードするベクターまたはDNase酵素を発現する細胞は、医薬的に許容できる担体または賦形剤と共に医薬組成物中に配合される。特定の実施形態において、そのような組成物はさらに、第二の免疫調節物質を含む。
【0090】
本発明の方法で用いられる配合物は、単位投与剤形で従来どおり提示されてよく、かつ当該技術分野で公知の方法により調製されてよい。単一投与剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、処置される宿主および個々の投与様式に応じて変わるであろう。単一投与剤形を生成するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は一般に、治療効果を生じる化合物の量であろう。
【0091】
一般に、配合物は、液体担体、または微粉化された固体担体、またはその両方と共に調製され得、その後、必要ならば、生成物を成形する。
【0092】
非経口投与に適する医薬組成物は、1種または複数の医薬的に許容できる滅菌等張水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液もしくはエマルジョン、または使用直前に滅菌注射可能溶液もしくは分散液中に構成され得る滅菌粉末と組み合わせて、1種または複数の活性成分((i)DNase酵素タンパク質、DNase酵素をコードするベクターまたはDNase酵素を発現する細胞と、任意に、(ii)別の化合物[例えば、第二の免疫調節物質または別の抗癌性化合物])を含んでよく、それらは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、配合物を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含有してよい。本発明の医薬組成物中で用いられ得る適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および同様のものなど)、およびそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適正な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合に必要とされる粒度の維持により、および界面活性剤の使用により、維持され得る。
【0093】
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含有し得る。微生物の作用の予防が、様々な抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸、および同様のものの包含により確実にされてよい。また、糖、塩化ナトリウム、および同様のものなどの、等張剤を組成物中に含むことが、望ましいであろう。加えて、注射可能医薬形態の長期吸収が、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の包含によりもたらされてよい。
【0094】
注射可能なデポ型が、ポリアクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中で1種または複数の有効成分のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作製され得る。ポリマーに対する有効成分の比および用いられる個々のポリマーの性質に応じて、活性成分の放出の率が、制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(酸無水物)が挙げられる。デポ型注射可能配合物はまた、活性成分を、身体組織と適合性があるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することにより調製される。
【0095】
経口投与のための配合物は、カプセル、カシェ、丸薬、錠剤、粉末、顆粒の形態であってよく、または水性もしくは非水性液の中の溶液もしくは懸濁液(例えば、洗口液として、嚥下される組成物として、または浣腸として)として、または水中油もしくは油中水液体エマルジョン、および同様のものとして存在してよく、それぞれが、所定の量の1種または複数の活性成分を含有する。
【0096】
経口投与用の固体投与剤形(カプセル、錠剤、丸薬、糖剤、粉末、顆粒、および同様のもの)において、1種または複数の活性成分が、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/または以下のもののいずれかなどの、1種または複数の医薬的に許容できる担体と混合され得る:(1)スターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの、充填剤または増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアラビアゴムなどの、結合剤;(3)グリセロールなどの、保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの、崩壊剤;(5)パラフィンなどの、溶解遅延剤;(6)第四級アンモニウム化合物などの、吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの、湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイトクレイなどの、吸収剤;(9) タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの、滑沢剤;ならびに(10)着色剤。カプセル、錠剤および丸薬の場合、医薬組成物はまた、緩衝剤を含んでよい。類似のタイプの固体組成物もまた、ラクトースまたは乳糖ならびに、高分子量ポリエチレングリコールおよび同様のものなどの賦形剤を用いて、軟充填および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として用いられてよい。
【0097】
懸濁液は、1種または複数の有効成分に加えて、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにそれらの混合物などの懸濁剤を含有し得る。
【0098】
粉末およびスプレーは、1種または複数の有効成分に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有し得る。スプレーは追加で、クロロフルオロ炭化水素、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素などの、慣用される噴射剤を含有し得る。
【0099】
癌および他の処置
本発明の方法は、広範囲の癌に罹患した対象において用いられ得る。関連する癌の非限定的例としては、例えば、乳癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、移行上皮癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、腎臓癌、甲状腺癌、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、頭頸部癌、食道癌、胃癌、結腸癌、腸癌、大腸癌、直腸癌、膵臓癌、肝臓癌、胆管の癌、胆嚢の癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膣癌、子宮頸癌、膀胱癌、神経芽腫、肉腫、骨肉腫、悪性黒色腫、扁平上皮癌、原発性骨癌(例えば、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、アダマンチノーマ、巨細胞腫、コルドーマ)および続発性(転移性)骨癌の両方を含む骨癌、軟組織肉腫、基底細胞癌、脈管肉腫、血管肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨原性肉腫、脈管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、精巣癌、子宮癌、消化器癌、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、絨毛癌、セミノーマ、胎児癌、ウィルムス腫瘍、上皮癌、神経膠腫、神経膠芽腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、網膜芽細胞腫、髄様癌、胸腺腫、肉腫などが挙げられる。
【0100】
幾つかの実施形態において、本発明の処置方法は、DNase酵素および第二の免疫調節物質を投与することに加えて、非限定的に化学療法剤、放射線療法、細胞療法(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を含む細胞、NK細胞、CD8 T細胞ほか)、およびそれらの任意の組合わせを含む、追加的な抗癌剤および/または治療を施すこと、を含み得る。
【0101】
本発明の方法のいずれかの幾つかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0102】
実施例
本発明はまた、以下の実施例により説明されおよび実証される。しかし、これらのおよび本明細書のどこかでの実施例の使用は、例示に過ぎず、本発明の、またはいずれかの例証された用語の範囲および意味を限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書で記載される任意の特別な好ましい実施形態に限定されない。実際には、本発明の多くの改良および変更が、本明細書を読むことで当業者に明白となり得、そのような変更は、主旨または範囲において本発明から逸脱することなく行われ得る。それゆえ本発明は、添付の特許請求の範囲と、それらの特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲の用語によってのみ、限定される。
【0103】
実施例1.デオキシリボヌクレアーゼ酵素は、腫瘍組織内の腫瘍関連マクロファージ(TAM)および腫瘍浸潤好中球(TIN)の数を低減する
内部環境の条件に基づき、循環する単球は、成熟マクロファージを生じ、それらが腫瘍微小環境に動員されると、それらは腫瘍関連マクロファージ(TAM)に変換される。TAMは、腫瘍細胞を貪食する機能を欠くだけでなく、これらの腫瘍細胞が殺傷されることから回避するのを支援し、かつそれらが他の組織および臓器に伝播するのを支援する。腫瘍浸潤好中球(TIN)は、サイトカインおよびケモカインにより腫瘍微小環境中にエンゲージされる。TANは、DNA不安定性により、またはサイトカインおよび/もしくはケモカインの放出により、免疫抑制、腫瘍成長、血管形成および転移を刺激する。
【0104】
BALB/c乳腺腺癌、MC38結腸癌、ルイス肺癌(LL2)、およびネズミ膵臓腺癌(Panc2)の癌細胞株が、用いられた。RPMI 100μl中の3×10e6の乳腺腺癌、1×10e6のMC38細胞、3×10e5のLL2細胞、または2×10e5Panc2細胞が、6~8週齢の同系Balb/cまたはC57Bl/6雌マウスの乳房脂肪体中への皮下注射により投与された。
【0105】
腫瘍移植の6日後に、動物が、群(N=3)に無作為に割り付けられ、マウスあたり75μgのヒト組換えDNase IのIV注射により連日処置され、対照群は、同量のPBSを受けた。TAMおよびTINを単離するために、腫瘍が、抽出され、12U/mLコラーゲナーゼI(Sigma)、450U/mLコラーゲナーゼIV(Sigma)、および50U/ml DNase I(Kevet)で処置された。細胞片および死亡細胞が、密度勾配で除去された。TAMを精製するために、F4/80細胞が、追加的にMACS濃縮された(抗CD11bマイクロビーズを用いて)(Sigma)。
【0106】
DNaseによる処置後のTAMおよびTINの量が、相対的対照(100%と見なす)に対する%として、それぞれ、図1Aおよび1Bに示される。データは、DNase I酵素の連日のIV注射がTAMおよびTINの統計学的に有意な低減を提供することを、明確に実証する。
【0107】
実施例2.腫瘍組織内のTAMおよびTIN存在量に対するデオキシリボヌクレアーゼ酵素の異なる投与レジメンの影響
RPMI 100μl中の1×10e5のPanc2細胞が、6~8週齢の同系C57Bl/6雌マウスに皮下注射された。
【0108】
腫瘍移植の6日後に、動物は、群(N=3)に無作為に割り付けられた:
群1:非処置対照;
群2:7日間連日の1mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群3:14日間連日の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群4:7日間連日の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群5:2日間連日の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群6:3週間にわたり週に2日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群7:3週間のうち1週目および3週目に2日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射。
【0109】
TAMおよびTINを単離するために、腫瘍が、抽出され、12U/mLコラーゲナーゼI、450U/mLコラーゲナーゼIV、および50U/mL DNase Iで処置された。細胞片および死亡細胞が、密度勾配で除去された。TAMを精製するために、F4/80細胞が、追加的にMACS濃縮された(抗CD11bマイクロビーズを用いて)。
【0110】
TAMおよびTINの量が、それぞれ、図2Aおよび2Bに示される。
【0111】
驚くべきことに、DNase I投与の用いられたレジメンの全てが、TAMおよびTINの統計学的に有意な(p<0.05)低減を提供した。
【0112】
実施例3.腫瘍組織内のTAMおよびTIN存在量に対するデオキシリボヌクレアーゼ酵素療法の異なる時間の影響
RPMI 100μl中の3×10e6の乳腺腺癌細胞が、6~8週齢の同系Balb/c雌マウス中に皮下注射された。
【0113】
動物は、群(N=3)に無作為に割り付けられた:
群1:非処置対照;
群2:腫瘍移植後2日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群3:腫瘍移植後6日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群4:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群5:腫瘍移植後14日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群6:腫瘍移植後18日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
【0114】
TAMおよびTINを単離するために、腫瘍が、抽出され、12U/mLコラーゲナーゼI、450U/mLコラーゲナーゼIV、および50U/mL DNase Iで処置された。細胞片および死亡細胞が、密度勾配で除去された。TAMを精製するために、F4/80細胞が、追加的にMACS濃縮された(抗CD11bマイクロビーズを用いて)。
【0115】
TAMおよびTINの量が、それぞれ、図3Aおよび3Bに示される。
【0116】
予想外に、DNase Iの投与は、腫瘍発達の後期段階であっても、TAMおよびTINの統計学的に有意な(p<0.05)低減を提供した。
【0117】
実施例4.腫瘍組織内のTAMおよびTIN存在量に対する、デオキシリボヌクレアーゼ酵素療法を免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせることの影響
RPMI 100μl中の1×10e6のCT26またはMC38が、6~8週齢の雌マウス中に注射された。
【0118】
処置は、腫瘍移植後3日目または10日目に開始された。
【0119】
動物は、群(N=3)に無作為に割り付けられた:
群1:非処置対照;
群2:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとの2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群3:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群4:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとに合計21日間の抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射;
群5:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射;
群6:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとの抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射 + 腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群7:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとの抗マウスPD1抗体(BEO146、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射 + 腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群8:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとに合計21日間の抗マウスPD1抗体(BEO146、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射;
群9:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の抗マウスPD1抗体(BEO146、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射;
群10:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとの抗マウスPD1抗体(BEO146、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射 + 腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群11:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとの抗マウスPD1抗体(BEO146、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射 + 腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群12:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとに合計21日間の抗マウスOX-40抗体(BE0031、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射;
群13:腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとの抗マウスOX-40抗体(BE0031、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射 + 腫瘍移植後3日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射;
群14:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の抗マウスOX-40抗体(BE0031、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射;
群15:腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとの抗マウスOX-40抗体(BE0031、InVivoMAb、200μg/用量)のIV注射 + 腫瘍移植後10日目から開始して3日ごとに合計21日間の2mg/kg用量でのヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)のIV注射。
【0120】
TAMが、以前に記載されたとおり腫瘍から抽出された。TAMおよびTINの量が、図4に示される。
【0121】
単独で用いられる場合、チェックポイント阻害剤は、腫瘍進行の初期段階で腫瘍部位のTAM存在量を統計学的に有意に減少させたが、それらが疾患のより進行した段階で用いられた場合(腫瘍移植の10日後の動物で用いられた場合)、減少させることができなかった。予想外に、DNase Iと組み合わされると、免疫チェックポイント阻害剤は、TAMを有意に(p<0.05)低減し続けた。
【0122】
実施例5.腫瘍微生物叢に対するDNase酵素の異なる型の影響
フソバクテリウム・ヌクレアタム(F.ヌクレアタム)は、ヒト大腸癌(CRC)、乳癌ならびに処置転帰および腫瘍免疫抑制環境の不良に関連する幾つかの他の癌において多く存在することが近年になり見出された口腔内嫌気性菌である。F.ヌクレアタムの接種は、腫瘍定着を導き、腫瘍浸潤T細胞の蓄積を抑制し、腫瘍成長および転移進行を促進する。例えば、Kostic et al., Cell host & microbe, 2013, 14(2):207-15;Van der Merwe et al., Immunology Letters, 2021,232:60-66を参照されたい。
【0123】
F.ヌクレアタム(ATCC 25586)が、5%ヒツジ赤血球を補充されたコロンビア寒天上、37℃、5%COで嫌気的に培養された。乳癌細胞株AT3(ATCC)が、6~8週齢のC57BL/6の乳房脂肪体中に注射された。動物は、群(N=3)に無作為に割り付けられた。試験終了日24日目。
群1:非処置対照;
群2:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射された;
群3:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、腫瘍F.ヌクレアタム移植後2、3、4、6および7日目に、動物が10mg/kgメトロニダゾールで処置された。
群4:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量のヒト組換えDNase I酵素(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)で処置された;
群5:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量の変異体DNase I酵素(Kevelt AS)(SEQ ID NO:2)で処置された;
群6:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量のDNase I-like 3(Human Microbiology Institute、米国NY州)(SEQ ID NO:3)で処置された;
群7:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1および4日目に与えられた2mg/kg用量のDNase I-like 3(SEQ ID NO:3)で処置された;
群8:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量のDNase I-like 2(Human Microbiology Institute、米国NY州)(SEQ ID NO:4)で処置された;
群9:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量のDNase I-like 1(Kevelt AS)(SEQ ID NO:5)で処置された。
【0124】
腫瘍体積が、カリパスで測定され、楕円体式を利用して推定された。データが、図5に示される。データは、異なる型のヒト組換えDNase I酵素のIV注射がF.ヌクレアタムに惹起された腫瘍成長の統計学的に有意な(p<0.05)予防を提供し、かつF.ヌクレアタムの腫瘍形成促進効果を予防したことを、明確に示す。
【0125】
試験終了日に、腫瘍組織中のF.ヌクレアタムの存在が、腫瘍ホモジネートを栄養培地に播種し、嫌気的条件で37℃で48時間インキュベートすることにより確認された。成長を与えた腫瘍組織およびコロニーの両方の追加的PCR解析が、実行された。データが、表1に示される。
【表1】
【0126】
データは、DNaseが腫瘍においてF.ヌクレアタムの量を変化させなかったことおよびこれらの状況において抗菌活性を持たないことを、明確に示す。予想外に、DNase Iは、F.ヌクレアタムのpro腫瘍原性効果を有意に阻害した。この試験では、DNase I投与のレジメンは、結果にほとんど影響せず、様々なタイプのDNaseが同等に働いた。
【0127】
実施例6.免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍活性に対する腫瘍微生物叢の影響
F.ヌクレアタムATCC 25586が、5%ヒツジ赤血球を補充されたコロンビア寒天上、37℃、5%COで嫌気的に培養された。乳癌細胞株AT3が、18~22g体重の6~8週齢C57BL/6マウスの乳房脂肪体中に注射された。動物は、群(N=5)に無作為に割り付けられた。試験は、21日目に終了された。
群1:非処置対照;
群2:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射された;
群3:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、腫瘍F.ヌクレアタム移植後2、3、4、5、6、7日目に、動物が10mg/kgメトロニダゾール(Sigma)で処置された。
群4:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量のヒト組換えDNase I(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)で処置された;
群5:抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)を2日ごとに注射された;
群6:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射から開始して2日ごとに与えられた抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)で処置された;
群7:細菌注射後1日目から開始して3日ごとに2mg/kg用量のヒト組換えDNase I(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)で処置され、細菌注射後から開始して2日ごとに与えられた抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)で処置された;
群8:7.5×10e7のF.ヌクレアタム ATCC23726を注射され、細菌注射後1日目から開始して3日ごとに与えられた2mg/kg用量のヒト組換えDNase I(Kevelt AS;SEQ ID NO:1)で処置され、細菌注射後から開始して2日ごとに与えられた抗マウスCTLA-4抗体(BEO164、InVivoMAb、200μg/用量)で処置された。
【0128】
腫瘍体積が、カリパスで測定され、楕円体式を利用して推定された。データが、図6に示される。
【0129】
試験終了日に、腫瘍組織中のF.ヌクレアタムの存在が、腫瘍ホモジネートを栄養培地に播種し、嫌気的条件で37℃で48時間インキュベートすることにより確認された。成長を与えた腫瘍組織およびコロニーの両方の追加的PCR解析が、実行された。データが、表2に示される。
【表2】
【0130】
データは、F.ヌクレアタムが免疫チェックポイント阻害剤である抗CTLA-4抗体の抗癌活性を有意に阻害したことを実証する。予想外に、チェックポイント阻害剤とDNase I酵素による組合わされた処置は、F.ヌクレアタムの癌形成促進活性および抗癌免疫活性を軽減したが(p<0.05)、この微生物の生存率に影響しなかった。
【0131】
この試験から得られた別の予測されなかった知見は、F.ヌクレアタムが抗CTLA-4抗体チェックポイント阻害剤処置の毒性効果を上昇させたこと、およびこのチェックポイント阻害剤とDNase Iによる組合わされた処置が、F.ヌクレアタム誘導毒性およびCTLA-4抗体誘導毒性を軽減したこと、であった。具体的には、図7に示されるとおり、抗CTLA4抗体(3mg/kg)またはF.ヌクレアタム(7.5×10e7)の投与は、処置動物の体重の成長を個別に停止させ、抗CTLA4抗体とF.ヌクレアタムの組み合わせは、集中的な体重減量を導き、およびDNase I処置(2mg/kgで)は、抗CTLA4抗体誘導および/またはF.ヌクレアタム誘導毒性を予防し体重増加をもたらした。
【0132】
配列
SEQ ID NO:1- 成熟野生型(WT)ヒトDNase I(分泌シグナル配列なし;Genbankアクセション番号4AWN_A):
LKIAAFNIQTFGETKMSNATLVSYIVQILSRYDIALVQEVRDSHLTAVGKLLDNLNQDAPDTYHYVVSEPLGRNSYKERYLFVYRPDQVSAVDSYYYDDGCEPCGNDTFNREPAIVRFFSRFTEVREFAIVPLHAAPGDAVAEIDALYDVYLDVQEKWGLEDVMLMGDFNAGCSYVRPSQWSSIRLWTSPTFQWLIPDSADTTATPTHCAYDRIVVAGMLLRGAVVPDSALPFNFQAAYGLSDQLAQAISDHYPVEVMLK
SEQ ID NO:2 - 成熟ヒトDNAse I変異体(分泌シグナル配列をなし);SEQ ID NO:1に比較して変異した残基が太字および下線で示されている:
LKIAAFNIRTFGRTKMSNATLVSYIVQILSRYDIALVQEVRDSHLTAVGKLLDNLNQDAPDTYHYVVSEPLGRKSYKERYLFVYRPDQVSAVDSYYYDDGCEPCGNDTFNREPFIVRFFSRFTEVREFAIVPLHAAPGDAVAEIDALYDVYLDVQEKWGLEDVMLMGDFNAGCSYVRPSQWSSIRLWTSPTFQWLIPDSADTTATPTHCAYDRIVVAGMLLRGAVVPDSALPFNFQAAYGLSDQLAQAISDHYPVEVMLK
SEQ ID NO:3 - ヒトDNase-1-like 3
MSRELAPLLLLLLSIHSALAMRICSFNVRSFGESKQEDKNAMDVIVKVIKRCDIILVMEI
KDSNNRICPILMEKLNRNSRRGITYNYVISSRLGRNTYKEQYAFLYKEKLVSVKRSYHYHDYQDGDADVFSREPFVVWFQSPHTAVKDFVIIPLHTTPETSVKEIDELVEVYTDVKHRWKAENFIFMGDFNAGCSYVPKKAWKNIRLRTDPRFVWLIGDQEDTTVKKSTNCAYDRIVLRGQEIVSSVVPKSNSVFDFQKAYKLTEEEALDVSDHFPVEFKLQSSRAFTNSKKSVTLRKKTKSKRS
SEQ ID NO:4 - ヒトDNase-1-like 2
MGGPRALLAALWALEAAGTAALRIGAFNIQSFGDSKVSDPACGSIIAKILAGYDLALVQEVRDPDLSAVSALMEQINSVSEHEYSFVSSQPLGRDQYKEMYLFVYRKDAVSVVDTYLYPDPEDVFSREPFVVKFSAPGTGERAPPLPSRRALTPPPLPAAAQNLVLIPLHAAPHQAVAEIDALYDVYLDVIDKWGTDDMLFLGDFNADCSYVRAQDWAAIRLRSSEVFKWLIPDSADTTVGNSDCAYDRIVACGARLRRSLKPQSATVHDFQEEFGLDQTQALAISDHFPVEVTLKFHR
SEQ ID NO:5 - ヒトDNase-1-like 1
MHYPTALLFLILANGAQAFRICAFNAQRLTLAKVAREQVMDTLVRILARCDIMVLQEVVDSSGSAIPLLLRELNRFDGSGPYSTLSSPQLGRSTYMETYVYFYRSHKTQVLSSYVYNDEDDVFAREPFVAQFSLPSNVLPSLVLVPLHTTPKAVEKELNALYDVFLEVSQHWQSKDVILLGDFNADCASLTKKRLDKLELRTEPGFHWVIADGEDTTVRASTHCTYDRVVLHGERCRSLLHTAAAFDFPTSFQLTEEEALNISDHYPVEVELKLSQAHSVQPLSLTVLLLLSLLSPQLCPAA
【0133】
参考資料:
Song, L. et al., “NLRP3 Inflammasome in Neurological Diseases, from Functions to Therapies” Front. Cell. Neurosci., 2017, Vol. 11, No. 63.
Fleischhacker M. et al., “Circulating nucleic acids(CNAs) and cancer: a survey” Biochim biophys Acta, 2007, 1775(1): 181-232.
Demers, M. at al., “Cancers predispose neutrophils to release extracellular DNA traps that contribute to cancer-associated thrombosis” PNAS, 2012, 109(32):13076-13081.
Garcia-Olmo D.C. and Garcia-Olmo, D. “Biological role of cell-free nucleic acids in cancer: the theory of genometastasis” Crit Rev Oncolog., 2013, 18:153-161.
Sawyers 2008 C.L., “The cancer biomarker problem” Nature, 2008, 452(7187):548-552.
Butt A.N. et al. Overview of circulating nucleic acids in plasma/serum. Ann. N.Y. Acad. Sci., 2008, 1137:236-242.
Schwarzenbach H. et al., “Detection and monitoring of cell-free DNA in blood of patients with colorectal cancer” Ann. N.Y. Acad. Sci., 2008, 1137:190-196.
Zenaro E, et al., Neutrophils promote Alzheimer’s disease-like pathology and cognitive decline via LFA-1 integrin. Nat Rev Nephrol., 2015, Author manuscript; available in PMC 2017 Jul 14.
Fushi, W. et al., “Extracellular DNA in Pancreatic Cancer Promotes Cell Invasion and Metastasis” Cancer Res., 2013, 73:4256-4266.
Tohme, S. et al., “Neutrophil Extracellular Traps Promote the Development and Progression of Liver Metastases after Surgical Stress” Cancer Res., 2016, 76(6): 1367-1380.
Patutina, O. et al., Inhibition of metastasis development by daily administration of ultralow doses of RNase A and DNase I. Biochimie., 2011, 93(4): 689-96.
Dan Li, DNase I Treatment Reduces GVHD in Mice. Biology of Blood and Marrow Transplantation, Volume 21, Issue 2, Page S339.
Darvin, P. et al., “Immune checkpoint inhibitors: recent progress and potential biomarkers” Experimental & molecular medicine, 2018, 50(12):1-1.
【0134】
本発明は、本明細書に記載された具体的実施形態により範囲を限定されない。実際に、本明細書に記載された改良に加えて、本明細書の様々な改良が、前述の記載から当業者に明白となろう。そのような改良は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0135】
本明細書に引用された全ての特許、特許出願、発行物、検査法、文献、および他の材料は、この明細書に物理的に存在するかの如く、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024519190000001.app
【国際調査報告】