(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-09
(54)【発明の名称】ガレクチン標的の免疫療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240430BHJP
C12N 7/04 20060101ALI20240430BHJP
C12N 15/40 20060101ALI20240430BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240430BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240430BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240430BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240430BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240430BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240430BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240430BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240430BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240430BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240430BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240430BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240430BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240430BHJP
C07K 14/18 20060101ALN20240430BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N7/04 ZNA
C12N15/40
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61P37/04
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P37/06
A61P1/16
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K35/76
A61K39/12
C07K19/00
C07K14/18
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564484
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2022018610
(87)【国際公開番号】W WO2022225057
(87)【国際公開日】2022-10-27
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514207706
【氏名又は名称】ブイエルピー・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VLP Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】赤畑 渉
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065BA01
4B065BD15
4B065BD18
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA03
4C085BA61
4C085BB11
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087BC83
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA75
4C087ZB08
4C087ZB09
4C087ZB11
4C087ZB21
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA80
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA15
(57)【要約】
本開示は、ウイルス構造タンパク質およびガレクチンエピトープペプチドを含むウイルス様粒子、ならびにそれらを含む組成物またはワクチン、医学における、特に免疫療法におけるその使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファウイルスのウイルス構造タンパク質および少なくとも1つのガレクチン抗原を含むウイルス様粒子。
【請求項2】
前記ウイルス構造タンパク質がアルファウイルスに由来する、請求項1に記載のウイルス様粒子。
【請求項3】
前記ウイルス構造タンパク質がチクングニアウイルスまたはベネズエラウマ脳炎ウイルスに由来する、請求項2に記載のウイルス様粒子。
【請求項4】
前記ウイルス構造タンパク質が、カプシド、E1、E2、およびE3を含む、請求項3に記載のウイルス様粒子。
【請求項5】
前記ウイルス構造タンパク質が、チクングニアウイルス株37997もしくは株OPY-1、またはベネズエラウマ脳炎ウイルス株TC-83に由来する、請求項3に記載のウイルス様粒子。
【請求項6】
少なくとも1つのガレクチン抗原がエンベロープタンパク質E3に挿入されている、請求項1に記載のウイルス様粒子。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガレクチン抗原が、配列番号1もしくは配列番号2の残基321と残基326の間にもしくは配列番号1もしくは配列番号2の残基321および残基326に相当する残基の間、または、配列番号3の残基330と残基335の間にもしくは配列番号3の残基330および残基335に相当する残基の間に挿入されている、請求項5に記載のウイルス様粒子。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガレクチン抗原がガレクチン-1のペプチド断片である、請求項1に記載のウイルス様粒子。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガレクチン抗原が:
#5: SFVLNLGKDSNNLSLHFNPRFNAHGDANTIVSNSKDGGAWGTEQREAVFPFQPGS
#7: ANLTVKLPDGYEFKFPNRLNLEA
#12: SFVLNLGKDSNNLSLHFNPRFNAHGDANTIVSNTKEDGTWGTEHREPAFPFQPGS、および
#14: ADLTIKLPDGHEFKFPNRLNMEA
からなる群から選択される、請求項8に記載のウイルス様粒子。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガレクチン抗原がガレクチン-3のペプチド断片である、請求項1に記載のウイルス様粒子。
【請求項11】
前記少なくとも1つのガレクチン抗原が:
#17: ADNFSLHDALSGSGNPNPQGWPGAWGNQPA
#21: YPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGA
#22: YPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPSSGQPSATGAYPATGPYGA、および
#23: ADSFSLNDALAGSGNPNPQGYPGAWGNQPA
からなる群から選択される、請求項10に記載のウイルス様粒子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の前記ウイルス様粒子をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の前記核酸分子を含むベクターであって、
前記核酸分子に作動可能に連結されている発現制御配列を含んでもよい、
ベクター。
【請求項14】
(a)請求項1~11のいずれか一項に記載の前記ウイルス様粒子、請求項12に記載の前記核酸分子、および/または請求項13に記載の前記ベクター;ならびに
(b)医薬的に許容される担体、
を含む医薬組成物またはワクチン組成物。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の前記ウイルス様粒子、
請求項12に記載の前記核酸分子、および/または
請求項13に記載の前記ベクター
の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、
ガレクチン標的の免疫療法の方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載の前記ウイルス様粒子、請求項12に記載の前記核酸分子、および/または請求項13に記載の前記ベクターの使用であって、
がんもしくは炎症性疾患を処置もしくは予防する;
哺乳動物においてガレクチンに対する抗体を産生する;
免疫応答を調節する;
免疫賦活;
ガレクチン間の相互作用を阻害する;または
ガレクチン活性を阻害する、
免疫療法向けの医薬組成物またはキットの製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガレクチン標的の免疫療法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガレクチンは、β-ガラクトシドに対して高親和性を示すレクチンファミリーのメンバである。哺乳動物では、LGALS遺伝子によってコードされる約15のガレクチンが発見されてきたが、これらは連続的に付番されている。現在のところ、ヒトでは、ガレクチン-1、-2、-3、-4、-7、-7B、-8、-9、-9B、-9C、-10、-12、-13、-14および-16のみが特定されている。
【0003】
ガレクチン-1(Gal-1)は、N-アセチルラクトサミン(LacNAc;Galβ1-4GlcNAc)含有糖タンパク質または糖脂質に結合する動物レクチンの高度に保存されたファミリーのメンバである(非特許文献1:Barondes SH 1994)。Gal-1は、多数の腫瘍で著しく上方制御され、分泌される。高レベルのGal-1は、多数のがんの腫瘍攻撃性、転移、および低い生存率と関連する(非特許文献2:Astorgues-Xerri L 2014)。先の研究が説明したところは、Gal-1が、免疫抑制表現型に向けて、T細胞枯渇を誘導することによって、T細胞の生存を制限することによって、制御性T細胞の増殖を助けることによって、ナチュラルキラー細胞を非活性化することによっておよび骨髄細胞を極性化することによって、免疫回避プログラムを促進する新規な調節性チェックポイントとして浮上してきたこと、である(非特許文献3:Banh A 2011)。ガレクチン-1の発現は低酸素状態によって上方制御され、グリコシル化依存性のガレクチン-受容体相互作用が血管新生を制御する(非特許文献4:Rabinovich 2014)(非特許文献5:Xu-Yun Zhao 2010)。したがって、ガレクチン-グリカン相互作用を標的とすることで、抗腫瘍免疫を増強することおよび異常な血管新生を抑制することを同時に行うことにより、腫瘍の進行が妨げられる可能性がある(非特許文献6:Thijssen VL 2006)。
【0004】
がんの発生および予後の過程におけるガレクチンおよび/またはガレクチン結合複合糖質の本質的かつ多機能な役割に起因して、これらの分子間の相互作用をブロックする可能性のある様々な候補阻害剤が潜在的な抗がん薬として提案されてきた(非特許文献7:Lucile Astorgues-Xerri 2014)。現在のところ、最もよく知られたガレクチンアンタゴニストは、糖模倣薬であり、ガラクトシドの誘導体またはアナログであり、ガレクチンの正準な炭水化物結合部位を標的とする(非特許文献8:Koonce NA 2017)。ペプチドおよび抗体のGal-1阻害剤は、ガレクチン-受容体相互作用に拮抗するその能力についても報告されている(非特許文献9:Diego O. Croci 2012、非特許文献10:van der Schaft DW 2002)。
【0005】
ガレクチン-3(Gal-3)は、β-ガラクトシド含有複合糖質(糖タンパク質または糖脂質)に結合する、動物レクチンの高度に保存されたファミリーのメンバである(非特許文献11:M. A. Henderson NC 2006、非特許文献12:Mourad-Zeidan AA 2008)。Gal-3は、他のガレクチンファミリータンパク質の内で2つのドメインから構成される構造においてユニークである:炭水化物結合領域を含有するカルボキシル末端ドメインおよび炭水化物と非炭水化物リガンドを架橋する9個のアミノ酸のタンデムリピートから主に構成されるアミノ末端ドメインである(
図12A)(非特許文献13:Liu 1990、非特許文献1:Barondes SH 1994)。Gal-3は、単球、マクロファージおよび上皮細胞を始めとする種々のタイプの細胞によって、しかし主にマクロファージによって分泌される(非特許文献14:Reynolds 2005、非特許文献15:MacKinnon AC 2008)。分泌された細胞外Gal-3はホモ二量体または五量体を形成し、これは生物学的機能にとって重要である。ガレクチン-3のN末端ドメインは、タンパク質オリゴマーの形成に重要であることが実証されている(
図12B)(非特許文献13:Liu 1990、非特許文献16:Dumic J 2006、非特許文献17:Kuklinski S 1998、非特許文献18:Lepur A 2012)。放出されたタンパク質は細胞外分子として機能して、細胞を活性化し、細胞-細胞および細胞-ECMの相互作用を媒介し、種々のタイプの細胞の遊走を誘導し、T細胞受容体シグナル伝達を負に調節することができる(非特許文献19:Yang RY 1996)。Gal-3は、肺線維症、肝線維症、全身性硬化症および心筋線維症を始めとする線維性疾患および患者の種々のモデルで増加することが示された(非特許文献20:M. A. Henderson NC 2008、非特許文献21:Barman, et al. 2019、非特許文献22:Nishi Y 2007、非特許文献23:De Boer 2010)。このことが示唆するところは、Gal-3が組織線維症の重要なメディエーターであるとともに組織線維症の効果的な治療標的である可能性があること、である。現在のところ、治験的なガレクチン-3阻害剤の前臨床および臨床研究により、線維性障害に対する保護作用が示された(非特許文献24:Nikhil Hirani 2017、非特許文献25:Yu L 2013)。
【0006】
過去100~150年間の医学における主たる成功例の1つは、種々の感染症を標的とするワクチンである。ワクチンは、抗生物質と一緒に、ヒトの他のどの部分よりもヒトの健康にとってより重要であった可能性が高い。ワクチンが成功したことから、アレルギー、自己免疫、およびがんなどの非感染性疾患の処置にワクチン技術を使用することへの関心が高まっている。しかし、こういった疾患の標的は一般に自己抗原であり、このことが有効性に問題を引き起こす場合がある。非自己抗原の細菌、ウイルス、または寄生虫のタンパク質と比較して、自己抗原に対して強力な抗体応答を誘導することは、耐性機構のために相当に困難である(非特許文献26:Hellman 2008、非特許文献27:Falk Saupe 2015)。
【0007】
アルファウイルスは、トガウイルス(Togaviridae)科の遺伝的、構造的、および血清学的に関連した蚊が媒介する一連のウイルスを含む。アルファウイルスには、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズウイルス、ムカンボウイルス、ピクスナウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミドルバーグウイルス、チクングニアウイルス(CHIKV)、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、バーマ森林ウイルス、ゲタウイルス、サギヤマウイルス、ベバルウイルス、マヤロウイルス、ウナウイルス、アウラウイルス、ワタロアウイルス、ババンキウイルス、キジラガチウイルス、ハイランドJウイルス、フォートモーガンウイルス、ヌドゥムウイルス、およびバギークリークウイルスが含まれる。単一のウイルスタンパク質を含有する構造サブユニットであるカプシドは、正20面体ヌクレオカプシドでRNAゲノムと会合する。ビリオン中ではカプシドは、膜貫通タンパク質スパイクの規則的なアレイで覆われた脂質エンベロープに囲まれており、このスパイクのそれぞれが、2つの糖タンパク質E1とE2のヘテロダイマー複合体からなる。
【0008】
ウイルス様粒子(VLP)は、標準の天然ウイルスの組織化および立体構造を模倣するが、ウイルスゲノムを欠損している多タンパク質構造であり、したがって、より安全かつより安価なワクチン候補をもたらす可能性がある。ひと握りのVLPベースの予防ワクチンが現在のところ世界的には市販されている:GlaxoSmithKlineのEngerix(登録商標)(B型肝炎ウイルス)およびCervarix(登録商標)(ヒトパピローマウイルス)、ならびにMerck and Co.,Inc.のRecombivax HB(登録商標)(B型肝炎ウイルス)およびGardasil(登録商標)(ヒトパピローマウイルス)が、いくつかの例である。他のVLPベースのワクチンの候補は、臨床試験中であるかまたは前臨床評価が行われており、例えば、インフルエンザウイルス、パルボウイルス、ノーウォークウイルスおよび種々のキメラVLPである。前臨床試験でのそれらの成功にも関わらず、ほかの多数が小規模の基盤研究になおも限定されている。大規模なVLP生産の意義が、プロセス制御、監視化および最適化に関連して議論されている。主たる上流および下流の技術的課題が特定され、それに応じて議論されている。VLPベースのワクチンの成功した画期的新薬が、臨床試験の最新の結果および治療用または予防用ワクチン接種のいずれかに向けられたキメラVLPベースの技術における近年の発展と同時に簡潔に発表されている。
【0009】
これまでに、ヒトおよび他の動物に感染する30種を超える様々なウイルスに対するVLPベースのワクチンが生産されてきた。例としては、AAV(アデノ随伴ウイルス)、H5N3(トリインフルエンザ)、BFDV(セキセイインコ雛病ウイルス)、BTV(ブルータングウイルス)、エボラ、エンテロウイルス71、GHPV(ガチョウ出血性ポリオーマウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、HDV(δ型肝炎ウイルス)、HEV(E型肝炎ウイルス)、HIV、HPV(ヒトパピローマウイルス)、IBDV(伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス)、インフルエンザA型、インフルエンザA H1N1型、インフルエンザA H3N2型、JCポリオーマウイルス、マールブルグ(Margurg)、MS2、IPCV(インドラッカセイクランプウイルス)、NDV(ニューカッスル病ウイルス)、No(ノロウイルス)、Nv(ノーウォークウイルス)、PhMV(ホオズキモットルウイルス)、ポリオーマウイルス、PPV(ブタパルボウイルス)、RHDV(ウサギ出血病ウイルス)、ロタウイルス、SARS、SIV(サル免疫不全ウイルス)、SV40(サルウイルス40)、SVDV(ブタ水疱病ウイルス)等が挙げられる。(非特許文献28:Expert Rev. Vaccines 9(10), 1149-1176, 2010)。
【0010】
米国特許第9,353,353号(特許文献1)には、感染またはその少なくとも1つの症状に対して免疫を誘導する、チクングニアに対するワクチンまたは抗原性組成物を製剤化するのに有用である、1つまたは複数のチクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質を含む、ウイルス様粒子(VLP)が開示されている。米国特許第9,487,563号(特許文献2)には、アルファウイルスまたはフラビウイルスの改変ウイルス様粒子(VLP)とアルファウイルスおよびフラビウイルス媒介性疾患の予防または処置に使用するための、改変VLPの生産を増強する方法が開示されている。米国特許第9,249,191号(特許文献3)には、チクングニアウイルス(CHIKV)またはベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)のウイルス様粒子が開示されており、この場合、前記ウイルス様粒子は、E2エンベロープタンパク質に挿入されて融合タンパク質を形成する、少なくとも1つの抗原を含有する。米国特許第9,969,986号には、アルファウイルスのウイルス様粒子が開示されており、この場合、前記ウイルス様粒子は、エンベロープタンパク質E3を含むアルファウイルスのウイルス構造タンパク質を含み、前記エンベロープタンパク質E3は、そのフーリン切断部位に挿入された少なくとも1つの外来抗原を含有するように改変されている。引用された参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第9,353,353号
【特許文献2】米国特許第9,487,563号
【特許文献3】米国特許第9,249,191号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Barondes SH, Cooper DN, Gitt MA, Leffler H. 1994. "Galectins. Structure and function of a large family of animal lectins." J Biol Chem 269:20807-20810.
【非特許文献2】Astorgues-Xerri L, Riveiro ME, Tijeras-Raballand A, Serova M, Neuzillet C, Albert S, Raymond E, Faivre S. 2014. "Unraveling galectin-1 as a novel therapeutic target for cancer" Cancer Treat Rev. 40:307-19.
【非特許文献3】Banh A, Zhang J, Cao H, Bouley DM, Kwok S, Kong C, et al. 2011. "Tumor galectin-1 mediates tumor growth and metastasis through regulation of T-cell apoptosis" Cancer Res 71:4423-31.
【非特許文献4】Rabinovich, Mariana SalatinoEmail authorDiego O. CrociDiego J. LaderachDaniel CompagnoLucas GentiliniTomas Dalotto-MorenoL. Sebastian Dergan-DylonSantiago P. Mendez-HuergoMarta A. ToscanoJuan P. CerlianiGabriel A. 2014. "Regulation of Galectins by Hypoxia and Their Relevance in Angiogenesis: Strategies and Methods" Methods in Molecular Biology Galectins pp 293-304.
【非特許文献5】Xu-Yun Zhao, Ting-Ting Chen, Li Xia, Meng Guo, Ying Xu, Fei Yue, Yi Jiang, Guo-Qiang Chen, Ke-Wen Zhao. 2010. "Hypoxia inducible factor-1 mediates expression of galectin-1: the potential role in migration/invasion of colorectal cancer cells." Carcinogenesis 31(8); 1367-1375.
【非特許文献6】Thijssen VL, Postel R, Brandwijk RJ, Dings RP, Nesmelova I, Satijn S, Verhofstad N, Nakabeppu Y, Baum LG, Bakkers J, Mayo KH, Poirier F, Griffioen AW. 2006. "Galectin-1 is essential in tumor angiogenesis and is a target for antiangiogenesis therapy." Proc Natl Acad Sci U S A. 103(43):15975-80.
【非特許文献7】Lucile Astorgues-Xerri, Maria E. Riveiro, Annemilai Tijeras-Raballand, Maria Serova. 2014. "Unraveling galectin-1 as a novel therapeutic target for cancer." Cancer Treatment Reviews 307-319.
【非特許文献8】Koonce NA, Griffin RJ, Dings RPM. 2017. "Galectin-1 Inhibitor OTX008 Induces Tumor Vessel Normalization and Tumor Growth Inhibition in Human Head and Neck Squamous Cell Carcinoma Models." Int J Mol Sci. 9(18); 2671.
【非特許文献9】Diego O. Croci, Mariana Salatino, Natalia Rubinstein, Juan P. Cerliani, Lucas E. Cavallin, Howard J. Leung, Jing Ouyang, Juan M. Ilarregui, Marta A. Toscano, Carolina I. Domaica, Maria C. Croci, Margaret A. Shipp, Enrique A. Mesri, Adriana Albini, Gabriel. 2012. "Disrupting galectin-1 interactions with N-glycans suppresses hypoxia-driven angiogenesis and tumorigenesis in Kaposi’s sarcoma." J. Exp. Med 209:1985-2000.
【非特許文献10】van der Schaft DW, Dings RP, de Lussanet QG, van Eijk LI, Nap AW, Beets-Tan RG, Bouma-Ter Steege JC, Wagstaff J, Mayo KH, Griffioen AW. 2002. "The designer anti-angiogenic peptide anginex targets tumor endothelial cells and inhibits tumor growth in animal models." FASEB J. 16(14):1991-3.
【非特許文献11】Henderson NC, Mackinnon AC, Farnworth SL, Poirier F, Russo FP, Iredale JP, Haslett C, Simpson KJ, Sethi T. 2006. "Galectin-3 regulates myofibroblast activation and hepatic fibrosis." Proc Natl Acad Sci U S A 103(13):5060-5.
【非特許文献12】Mourad-Zeidan AA, Melnikova VO, Wang H, Raz A, and Bar-Eli M. 2008. "Expression profiling of Galectin-3-depleted melanoma cells reveals its major role in melanoma cell plasticity and vasculogenic mimicry." Am J Pathol 173:1839-1852.
【非特許文献13】Liu, T F. 1990. "Molecular biology of IgE-binding protein, IgE-binding factors, and IgE receptors." Crit Rev Immunol. 10(3):289-306.
【非特許文献14】Reynolds, HY. 2005. "Lung inflammation and fibrosis: an alveolar macrophage-centered perspective from the 1970s to 1980s." Am J Respir Crit Care Med 171:98-102.
【非特許文献15】MacKinnon AC, Farnworth SL, Hodkinson PS, Henderson NC, Atkinson KM, Leffler H, Nilsson UJ, Haslett C, Forbes SJ, and Sethi T. 2008. "Regulation of alternative macrophage activation by galectin-3." J Immunol 180:2650-2658.
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【非特許文献18】Lepur A, Salomonsson E, Nilsson UJ, Leffler H. 2012. "Ligand induced galectin-3 protein self-association." J Biol Chem 287:21751-21756.
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【非特許文献20】Henderson NC, Mackinnon AC, Farnworth SL, Kipari T, Haslett C, Iredale JP, Liu FT, Hughes J, Sethi T. 2008. "Galectin-3 expression and secretion links macrophages to the promotion of renal fibrosis." Am J Pathol. 172(2):288-98.
【非特許文献21】Barman, Scott A, Xueyi Li, Stephen Haigh, Dmitry Kondrikov, Keyvan Mahboubi, Zsuzsanna Bordan, and Stepp W David. 2019. "Galectin-3 is Expressed in Vascular Smooth Muscle Cells and Promotes Pulmonary Hypertension through changes in Proliferation, Apoptosis and Fibrosis." Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. Feb 6, Epub ahead of print.
【非特許文献22】Nishi Y, Sano H, Kawashima T, Okada T, Kuroda T, Kikkawa K, Kawashima S, Tanabe M, Goto T, Matsuzawa Y, Matsumura R, Tomioka H, Liu FT, Shirai K. 2007. "Galectin-3 regulates myofibroblast activation and hepatic fibrosis." Allergol Int. 56(1):57-65.
【非特許文献23】De Boer, R. A., Yu, L., and van Veldhuisen, D. J. 2010. "Galectin-3 in cardiac remodeling and heart failure." Curr. Heart Fail. Rep. 7, 1-8.
【非特許文献24】Nikhil Hirani, Alison Mackinnon , Lisa Nicol , Jeremy Walker , Paul Ford , Hans Schambye , Anders Pederson , Ulf Nilsson , Hakon Leffler , Tracy Thomas , Danielle Francombe , John Simpson , Michael Gibbons , Toby M. Maher. 2017. "TD139, A Novel Inhaled Galectin-3 Inhibitor for the Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis (IPF). Results from the First in (IPF) Patients Study." American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 195:A7560.
【非特許文献25】Yu L, Ruifrok WP, Meissner M, Bos EM, van Goor H, Sanjabi B, van der Harst P, Pitt B, Goldstein IJ, Koerts JA, et al. 2013. "Genetic and pharmacological inhibition of galectin-3 prevents cardiac remodeling by interfering with myocardial fibrogenesis." Circ Heart Fail 6:107-117.
【非特許文献26】Hellman, L. 2008. "Therapeutic vaccines against IgE-mediated allergies." Expert Rev Vaccines 7(2):193-208.
【非特許文献27】Falk Saupe, Elisabeth J. M. Huijbers, Tobias Hein, Julia Femel, Jessica Cedervall, Anna-Karin Olsson, and Lars Hellman. 2015. "Vaccines targeting self-antigens: mechanisms and efficacy-determining parameters." FASEB J 29(8):3253-62.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、ガレクチン標的の免疫療法に関する。
【0015】
第1の態様では、本開示は、ウイルス構造タンパク質および少なくとも1つのガレクチン抗原を含むウイルス様粒子を提供する。
【0016】
第2の態様では、本開示は、本出願の第1の態様で提供されるウイルス様粒子をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を提供する。
【0017】
第3の態様では、本開示は、第2の態様の核酸分子を含むベクターであって、核酸分子に作動可能に連結されている発現制御配列を含んでもよい、ベクターを提供する。
【0018】
第4の態様では、本開示は、(a)第1の態様のウイルス様粒子、第2の態様の核酸分子、および/または第3の態様のベクター;ならびに(b)医薬的に許容される担体、を含む医薬組成物またはワクチン組成物を提供する。
【0019】
第5の態様では、本開示は、第1の態様のウイルス様粒子、第2の態様の核酸分子、および/または第3の態様のベクターの有効量をそれを必要とする対象に投与することを含む、ガレクチン標的の免疫療法を提供する。本方法は、がん、炎症性疾患、および線維性疾患の処置または予防するのに有用とすることができる。対象において免疫応答を調節するための、対象を免疫賦活するための、非ヒト哺乳動物においてガレクチンに対する抗体を産生するための;対象の免疫応答を調節するための;対象における免疫賦活のための;対象においてガレクチン-グリカン相互作用を阻害するための;またはガレクチン活性を阻害するための、方法も提供される。
【0020】
第6の態様では、本開示は、第1の態様のウイルス様粒子、第2の態様の核酸分子、および/または第3の態様のベクターの使用であって、
対象において免疫応答を調節するための、対象を免疫賦活するための、非ヒト哺乳動物においてガレクチンに対する抗体を産生するための;対象において免疫応答を調節するための;対象における免疫賦活のための;対象においてガレクチン-グリカン相互作用を阻害するための、
免疫療法向けの医薬組成物またはキットの製造のための、使用を提供する。
【0021】
第6の態様では、本開示は、第1の態様のウイルス様粒子、第2の態様の核酸分子、および/または第3の態様のベクターの使用であって、
がんもしくは炎症性疾患を処置もしくは予防する;哺乳動物においてガレクチンに対する抗体を産生するための;免疫応答を調節するための;免疫賦活のための;ガレクチン-グリカン相互作用を阻害するための;またはガレクチン活性を阻害するための、
免疫療法向けの第4の態様の医薬組成物またはワクチン組成物の製造のための、使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】VEEV Gal-1 VLPの調製。各レーンは、左から右へ、それぞれ、Gal-1エピトープペプチド#5、#7、#12、および#14を担持するVEEV VLPである。右端は、抗原ペプチド無しの対照VLPである。
【
図2】[
図2A]ナイーブBALB/cマウスにおける、Gal-1エピトープペプチド#5~#10(ヒトに由来する)を担持するCHIKV-VLPの免疫原性。 [
図2B]ナイーブBALB/cマウスにおける、Gal-1エピトープペプチド#5(ヒトに由来する)および#12(マウスに由来する)を担持するCHIKV-VLPの免疫原性。
【
図3】[
図3A]Gal-1エピトープペプチドを担持するVEEV-VLPの発現。 [
図3B]Gal-1タンパク質の3D構造。Gal-1エピトープペプチド#5および#12は、炭水化物認識ドメイン(CRD)近傍の4つのβシートS3、S4、S5、およびS6をコードする。 [
図3C]Gal-1タンパク質の3D構造。Gal-1ペプチド#7および#14は、同種親和的二量体化において重要である可能性があるF4およびF5のβシートをコードする。 [
図3D]Gal-1エピトープペプチド#5、#7、#12、および#14を担持するVEEV-VLPで免疫したマウス血清中の抗ヒトGal-1抗体力価。 [
図3E]Gal-1エピトープペプチド#5、#7、#12、および#14を担持するVEEV-VLPで免疫したマウス血清中の抗マウスGal-1抗体力価。 [
図3F]ヒトGal-1およびマウスGal-1に由来するGal-1エピトープペプチド間の比較。それらエピトープペプチド間で異なるアミノ酸には下線が引かれている。
【
図4】[
図4A]Gal-1エピトープペプチド#7および#12を担持するCHIKV-VLPで免疫したマウス血清中の抗マウスGal-1抗体力価。 [
図4B]Gal-1エピトープペプチド#7および#12を担持するVEEV-VLPで免疫したマウス血清中のCHIKVスパイクタンパク質に対する抗体力価。 [
図4C]Gal-1エピトープペプチド#12および#14を担持するCHIKV-VLPで免疫したマウス血清中の抗体の免疫グロブリンサブクラス。
【
図5】[
図5A]マウスにおける、ルイス肺癌に対するGal-1エピトープペプチド#7および#12を担持するCHIKV-VLPの効果。(対照) [
図5B]マウスにおける、ルイス肺癌に対するGal-1エピトープペプチド#7および#12を担持するCHIKV-VLPの効果。(対照VLP) [
図5C]マウスにおける、ルイス肺癌に対するGal-1エピトープペプチド#7および#12を担持するCHIKV-VLPの効果。(Gal-1 #7 VLP) [
図5D]マウスにおける、ルイス肺癌に対するGal-1エピトープペプチド#7および#12を担持するCHIKV-VLPの効果。(Gal-1 #12 VLP) [
図5E]各群のエンドポイントの腫瘍重量。対照群とVLP処置群との間には腫瘍容量(
図5A~D)および(
図5E)に統計学的に有意な差はなかったが、Gal-1 #12で処置したマウスの腫瘍増殖は他群の腫瘍増殖よりも遅かった。
【
図6】[
図6A]マウスHPV+頭頸部扁平上皮癌細胞モデルに対する、Gal-1エピトープペプチド#12および#14を担持するCHIKV-VLPの効果。Gal-1 #14VLPワクチンで処置したマウスの腫瘍増殖は対照の腫瘍増殖よりも遅かったが、いずれの群間でも統計学的に有意な差ではなかった。 [
図6B]マウスHPV+頭頸部扁平上皮癌細胞モデルのエンドポイント重量に対するGal-1エピトープペプチド#12および#14を担持するCHIKV-VLPの効果。
【
図7】Gal-3エピトープペプチド#17、#21、#22および#23ならびに対照VLPを担持するVEEV-VLPの分子サイズおよび純度。
【
図8】マウスにおける、Gal-3エピトープペプチド#17、#21、#22および#23を担持するVEEV-VLPの免疫原性。
【
図9】フローサイトメトリー解析。Gal-3エピトープペプチド#17および#22を担持するVLPで免疫したマウスからの血清を、細胞表面Gal-3への結合について解析した。
【
図10】Gal-3エピトープペプチド#17および#22を担持するVLPによってマウスで誘導された抗Gal-3抗体の中和能力。
【
図11】[
図11A]マウスSTAM非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルに対するGal-3エピトープペプチド#22および#23を担持するVLPの効果。(脂肪変性スコア) [
図11B]マウスSTAM非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルに対する、Gal-3エピトープペプチド#22および#23を担持するVLPの効果。(炎症スコア) [
図11C]マウスSTAM非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルに対する、Gal-3エピトープペプチド#22および#23を担持するVLPの効果。[風船様変性(Balloning)スコア]
【
図12】(A)ガレクチン-3タンパク質の構造はN末端ドメインから構成され、これは、セリン6(6)リン酸化部位を含有する12個のアミノ酸のN末端領域と100aa長のコラーゲン様反復配列とを有する。炭水化物認識ドメイン(CDR)130aaはC末端を含み、NWGRモチーフを含有する;(B)ガレクチン-3の五量体構造。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
「作用剤」とは、任意の小分子化合物、抗体、核酸分子、もしくはポリペプチド、またはそれらの断片を意味する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」という用語は、製剤中で特定の免疫原と組み合わせて使用される場合、結果として得られる免疫応答を増強、変更または改変することになる化合物を意味する。ある特定の実施形態では、アジュバントはVLPと組み合わせて使用される。他の実施形態では、アジュバントはDNAワクチンと組み合わせて使用される。免疫応答の改変には、抗体による免疫応答と細胞性免疫応答のいずれかまたは両方の特異性の強化または拡大が含まれる。免疫応答の改変とはまた、ある特定の抗原特異的な免疫応答を低下させることまたは抑制することを意味する場合もある。
【0025】
本明細書で使用される場合、「寛解させる」とは、疾患またはその症状の発生または進行を低下させる、抑制する、弱める、軽減する、阻止するまたは安定化させることを意味する。
【0026】
本明細書で使用される場合、「変更」とは、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列に関して特定の位置にてのアミノ酸またはヌクレオチドの変化を意味する。本明細書で使用される場合、変更には、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの特定の位置にてのアミノ酸またはヌクレオチドの置換、欠失、または挿入が含まれる。一部の実施形態では、アルファウイルスカプシドタンパク質核局在化シグナルの変更には、非荷電アミノ酸(例えば、アラニンもしくはアスパラギン、またはリジンもしくはアルギニンなどの塩基性荷電アミノ酸を除く任意のアミノ酸)による荷電アミノ酸(例えば、リジンまたはアルギニン)の置換が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アナログ」とは、同一ではないが、類似の機能的または構造的特性を有する分子を意味する。例えば、ポリペプチドアナログは、相当する天然に存在するポリペプチドの生物活性を保持するが、一方、天然に存在するポリペプチドと比べてアナログの機能を増強するある特定の生化学的改変を有する。このような生化学的改変は、例えば、リガンド結合を変更することなく、アナログのプロテアーゼ耐性、膜透過性、または半減期を高める可能性がある。アナログは非天然アミノ酸を含んでもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含有すること(containing)」および「有すること(having)」等は、米国特許法のそれらに帰する意味を有することができ、かつ、「含む(includes)」、「含むこと/含めて(including)」等を意味することができ;「から本質的になる(consisting essentially of)」または「本質的になる(consists essentially)」も同様に米国特許法に帰する意味を有するが、その用語はオープンエンドであり、したがって、記載されているものの基本的または新規な特徴が記載されているものを超える存在によって変更されない限り、記載されているものを超える存在を許容するが、先行技術の実施形態を除外する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「検出する」とは、検出されるべき検体の存在、不在または量を特定することを意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「疾患」とは、細胞、組織、または臓器の正常な機能を損傷するかまたは妨げるあらゆる状態または障害を意味する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「有効量」とは、未処置の患者と比べて疾患の症状を寛解させるのに必要とされる作用剤の量を意味する。疾患の予防または処置のために本発明を実践するのに使用される活性化合物の有効量は、投与様式、対象の年齢、体重、および全体的な健康に応じて変化する。最終的に、主治医または獣医が適当な量および投薬レジメンを決定することになる。かかる量を「有効」量と称する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「断片」とは、ポリペプチドまたは核酸分子の一部分を意味する。この一部分は、好ましくは、参照の核酸分子またはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含有する。断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、または100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、または1000個のヌクレオチドまたはアミノ酸を含有することができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリヌクレオチド」とは、本開示の核酸分子が由来する生命体の天然に存在するゲノムにおいてその遺伝子に隣接する遺伝子を含まない核酸分子(例えばDNA)を意味する。したがってこの用語には、例えば、ベクターに組み入れられている組換えDNA;自律的複製をするプラスミドもしくはウイルスに組み入れられている組換えDNA;または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み入れられている組換えDNA;または、他の配列から独立して分離された分子(例えば、cDNA、または、PCRや制限酵素消化により産生されたゲノムもしくはcDNAの断片)として存在する組換えDNAが含まれる。加えて、この用語には、DNA分子から転写されるRNA分子、ならびに追加のポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAが含まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「単離されたポリペプチド」とは、天然で当該ポリペプチドに付随する成分から分離された、本開示のポリペプチドを意味する。通常には、天然で当該ポリペプチドに付随するタンパク質および天然に存在する有機分子が重量で少なくとも60%無い場合に、そのポリペプチドは単離されていることになる。好ましくは、調製物とは、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%が、本開示のポリペプチドである。本開示の単離されたポリペプチドは、例えば、天然資源からの抽出によって、そのようなポリペプチドをコードする組換え核酸の発現によって、またはタンパク質を化学合成することによって、取得することができる。純度は、適当な任意の方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、またはHPLC分析によって測定することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「マーカー」とは、疾患または障害に関連する発現レベルまたは活性の変更を有する任意のタンパク質またはポリヌクレオチドを意味する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「作用剤を得ること」のように「得ること」には、当該作用剤を合成すること、購入すること、またはその他の方法で取得することが含まれる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「減少させる」とは、少なくとも10%、25%、50%、75%、または100%の負の変更を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「参照」とは、標準または対照の状態を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「参照配列」とは、配列比較用の基準として使用される規定された配列である。参照配列は、特定の配列のサブセットであっても全体であってもよい;例えば、完全長cDNA配列もしくは遺伝子配列のセグメントであってもよく、または完全なcDNA配列もしくは遺伝子配列であってもよい。ポリペプチドに関して、参照ポリペプチド配列の長さは概して、少なくとも約16個のアミノ酸、好ましくは少なくとも約20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約25個のアミノ酸、さらにより好ましくは約35個のアミノ酸、約50個のアミノ酸、または約100個のアミノ酸であろう。核酸に関して、参照核酸配列の長さは概して、少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約60個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも約75個のヌクレオチド、さらにより好ましくは約100個のヌクレオチドもしくは約300個のヌクレオチドまたはそれら付近もしくはそれらの間の任意の整数であろう。
【0040】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」とは、ポリペプチドまたはタンパク質を認識し結合するが、当該ポリペプチドまたはタンパク質を天然に含む試料、例えば、生体試料中の他の分子を実質的に認識および結合しない、化合物または抗体を意味する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、それらに限定されないが、ヒトまたはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコなどの非ヒト哺乳動物を含めて、哺乳動物を意味する。
【0042】
本明細書で提供される範囲は、当該範囲内の全ての値についての略記であると理解される。例えば、1~50という範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50からなる群からのあらゆる数、数の組合せ、または部分範囲を含むと理解される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置すること」、「処置」等の用語は、障害および/またはそれに関連する症状を軽減または寛解させることを指す。妨げられるものではないが、障害または状態を処置することは、障害、状態またはそれらに関連する症状が完全に解消されることを必要としないことが、理解されるであろう。
【0044】
具体的に明記されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「または」という用語は包括的であると理解される。
【0045】
具体的に明記されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0046】
具体的に明記されていないかまたは文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、本技術分野で通常許容される範囲内のものとして理解され、例えば、平均値の2標準偏差以内として理解される。約は、言及された値の10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、0.5%以内、0.1%以内、0.05%以内、または0.01%以内として理解することができる。文脈に明らかに反しない限り、本明細書で提供される全ての数値は約という用語によって修飾される。
【0047】
発明の詳細な説明
本開示では、ウイルス構造タンパク質およびガレクチン抗原を含むウイルス様粒子が提供される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ガレクチン抗原」という用語は、免疫系によって認識され得る、ならびに/または細胞性免疫応答を賦活するかつ/または抗原に特異的な抗体の産生を賦活する、ガレクチンタンパク質のいずれかに由来する任意の抗原構造を指す。ガレクチンエピトープペプチドは、天然に存在するガレクチンタンパク質の断片であってもよく、一部の改変を有する天然に存在するガレクチンタンパク質の断片であってもよい。天然に存在するガレクチンタンパク質は、ガレクチン-1(Gal-1)であってもガレクチン-3(Gal-3)であってもよい。ガレクチンタンパク質としては、ヒトガレクチンタンパク質であることが好ましく、とりわけヒトガレクチン-1タンパク質またはヒトガレクチン-3タンパク質であることが好ましい。一実施形態では、改変断片は、天然に存在するガレクチンタンパク質の断片と少なくとも80%、85%、90%、95%、または98%のアミノ酸配列同一性を有する。一実施形態では、改変ペプチド断片は、天然に存在するガレクチンタンパク質の断片に対して、アミノ酸のうちの多くても10%が欠失、置換および/または付加されている突然変異型である。
【0049】
天然に存在するヒトガレクチン-1およびヒトガレクチン-3のアミノ酸配列は以下のとおりである:ガレクチン-1[ヒト(Homo sapiens)]
MACGLVASNLNLKPGECLRVRGEVAPDAKSFVLNLGKDSNNLCLHFNPRFNAHGDANTIVCNSKDGGAWGTEQREAVFPFQPGSVAEVCITFDQANLTVKLPDGYEFKFPNRLNLEAINYMAADGDFKIKCVAFD(配列番号7)
【0050】
ガレクチン-3[ヒト](GenBank受託番号:AAB86584.1)
MADNFSLHDALSGSGNPNPQGWPGAWGNQPAGAGGYPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPSSGQPSATGAYPATGPYGAPAGPLIVPYNLPLPGGVVPRMLITILGTVKPNANRIALDFQRGNDVAFHFNPRFNENNRRVIVCNTKLDNNWGREERQSVFPFESGKPFKIQVLVEPDHFKVAVNDAHLLQYNHRVKKLNEISKLGISGDIDLTSASYTMI(配列番号8)
【0051】
ガレクチン抗原、すなわちガレクチンエピトープペプチドの例としては以下を挙げることができる:
Gal-1エピトープペプチド
#5: SFVLNLGKDSNNLSLHFNPRFNAHGDANTIVSNSKDGGAWGTEQREAVFPFQPGS(配列番号9)
#7: ANLTVKLPDGYEFKFPNRLNLEA(配列番号10)
#12: SFVLNLGKDSNNLSLHFNPRFNAHGDANTIVSNTKEDGTWGTEHREPAFPFQPGS(配列番号11)
#14: ADLTIKLPDGHEFKFPNRLNMEA(配列番号12)
【0052】
Gal-3エピトープペプチド
#17: ADNFSLHDALSGSGNPNPQGWPGAWGNQPA(配列番号13)
#21: YPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGA(配列番号14)
#22: YPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPSSGQPSATGAYPATGPYGA(配列番号15)
#23: ADSFSLNDALAGSGNPNPQGYPGAWGNQPA(配列番号16)
【0053】
Gal-1エピトープペプチド#5はヒトGal-1に由来する断片であり、#12はマウスGal-1に由来する相当する断片であり、この場合、野生型配列のシステインがセリンで置き換えられている(下線が引かれている)。Gal-1エピトープペプチド#7は野生型ヒトGal-1の断片であり、#14はマウス野生型Gal-1の相当する断片である。
【0054】
Gal-3エピトープペプチド#17は、ヒトN末端Gal-3エピトープペプチドからなる。Gal-3エピトープペプチド#21および22はヒトGal-3N末端反復配列エピトープペプチドからなり、#22は#21の反復配列よりも長い反復配列を有する。#23はマウスGal-3N末端ペプチドをコードする。
【0055】
本開示では、「アルファウイルス」とは、ウイルスのトガウイルス科に属するRNA含有ウイルスを指すこととする。例示的なトガウイルス科ウイルスとして、それらに限定されないが、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、エバーグレーズウイルス、ムカンボウイルス、ピクスナウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ミドルバーグウイルス、チクングニアウイルス(CHIKV)、オニョンニョンウイルス、ロスリバーウイルス、バーマ森林ウイルス、ゲタウイルス、サギヤマウイルス、ベバルウイルス、マヤロウイルス、ウナウイルス、アウラウイルス、ワタロアウイルス、ババンキウイルス、キジラガチウイルス、ハイランドJウイルス、フォートモーガンウイルス、ヌドゥムウイルス、バギークリークウイルス、オケルボウイルスが挙げられる。
【0056】
本出願により提供されるウイルス様粒子では、ウイルス構造タンパク質と抗原は、ウイルス構造タンパク質に存在する少なくとも1つの第1の付着部位および抗原に存在する少なくとも1つの第2の付着部位をとおして連結することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「第1の付着部位」および「第2の付着部位」それぞれは、2つ以上の物質が互いに連結する部位を指す。
【0058】
ウイルス構造タンパク質と抗原は、直接に融合されても、間接に融合されてもよい。一実施形態では、1つまたは2つのリンカーが、抗原のN末端残基とウイルス構造タンパク質との間に、および/または抗原のC末端残基とウイルス構造タンパク質との間に介在してもよい。
【0059】
抗原またはウイルス構造タンパク質を切断し、短いリンカーによって置き換えることができる。一部の実施形態では、抗原またはウイルス構造タンパク質は、1つまたは複数のペプチドリンカーを含む。典型的には、リンカーは、2個から25個までのアミノ酸(例えば2個、3個、4個、5個または6個のアミノ酸)からなる。通常、リンカーは、2個から15個までのアミノ酸の長さであるが、ある特定の状況では、リンカーは、単一グリシン(G)残基などの1個だけであってもよい。
【0060】
一実施形態では、ウイルス構造タンパク質をコードするポリヌクレオチドが抗原をコードするポリヌクレオチドと遺伝子的に融合されているような核酸分子が、宿主細胞[例えば、哺乳動物細胞(例えば、293F細胞)]内で発現され、その結果、第1の付着部位と、第2の付着部位はペプチド結合をとおして連結される。この場合、ウイルス構造タンパク質と抗原はペプチド結合をとおして連結される。この実施形態に関して、第1の付着部位および/または第2の付着部位は、元のタンパク質または抗原から遺伝子的に改変することができる。例えば、第1の付着部位は、SG、GS、SGG、GGSおよびSGSGを始めとするリンカーペプチドをとおしてタンパク質が抗原とコンジュゲートするように、ウイルス構造タンパク質から改変される。ウイルス構造タンパク質が抗原と化学的にコンジュゲートされる場合、第1の付着部位と第2の付着部位は、化合物である化学架橋リンカーをとおして連結することができる。架橋リンカーの例として、それらに限定されないが、SMPH、スルホ-MBS、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMPB、スルホ-SMCC、SVSB、SIAおよびPierce Chemical Companyから入手可能な他の架橋リンカーが挙げられる。
【0061】
アルファウイルスの好ましい例としては、チクングニアウイルスおよびベネズエラウマ脳炎ウイルスが挙げられる。チクングニアウイルスの例としては、チクングニアウイルス37997株およびOPY-1株が挙げられ得る。ベネズエラウマ脳炎ウイルスの例としては、ベネズエラウマ脳炎ウイルスTC-83株が挙げられ得る。
【0062】
ウイルス構造タンパク質には、カプシドタンパク質および/もしくはエンベロープタンパク質、その断片またはそれらの複合体が含まれ得る。したがって、本出願に使用されるウイルス構造タンパク質は、カプシドタンパク質および/もしくはエンベロープタンパク質ならびに/またはその断片もしくは誘導体を含むことができる。一実施形態では、本開示によって提供されるウイルス様粒子は、カプシド、E3、E2、およびE1の各タンパク質、ならびにガレクチン抗原を含む。
【0063】
好ましくは、抗原は、遺伝子工学によって作製される融合タンパク質として、チクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質に連結することができる。
【0064】
生理学的条件下では、E3をフーリン切断後にE2から解離させることができる。一実施形態では、E3に位置するフーリン切断部位を突然変異させて、フーリン部位が切断されるのを妨げることができる。例えば、抗原をフーリン切断部位に挿入して、フーリン切断部位中に突然変異を導入することができる。この実施形態では、提供されるウイルス様粒子は、カプシド、E3、E2、およびE1の各タンパク質からなるか、またはそれらを含むことができ、この場合、E3はE2に結合して単一タンパク質を形成し、抗原はE3領域に挿入される。例えば、本出願によって提供されるウイルス様粒子は、240のカプシド、240のE1タンパク質、240のタンパク質であって、このそれぞれにおいてE2がE3に結合し、抗原がE3領域のそれぞれに挿入されている240のタンパク質、をアセンブルすることによって形成することができる。
【0065】
本出願で使用されるチクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質は、天然に存在するウイルス構造タンパク質であってもその改変タンパク質であってもよい。改変タンパク質は、天然に存在するウイルス構造タンパク質の断片であってもよい。一実施形態では、改変タンパク質は、天然に存在するウイルスカプシドおよび/またはエンベロープタンパク質と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%のアミノ酸配列同一性を有する。一実施形態では、改変タンパク質は、天然に存在するウイルスカプシドおよび/またはエンベロープタンパク質に対して、アミノ酸のうちの多くても10%が欠失、置換および/または付加されている突然変異型である。例えば、K64AまたはK64N突然変異を、本出願で使用されるベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質のカプシドに導入することができる。
【0066】
例示的なチクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質配列は、Genbank受託番号ABX40006.1(配列番号1)で提供される。別の例示的なチクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質配列は、Genbank受託番号ABX40011.1(配列番号2)で提供される。
【0067】
例示的なベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質を配列番号3に示す。
【0068】
一実施形態では、第1の付着部位はアミノ基、好ましくはリジン残基のアミノ基を含むことができる。第2の付着部位は、スルフヒドリル基、好ましくはシステインのスルフヒドリル基を含むことができる。
【0069】
一実施形態では、チクングニアウイルス様粒子またはベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子を提供することができ、このウイルス様粒子は、チクングニアウイルスまたはベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質および少なくとも1つのガレクチン抗原を含み、この場合、少なくとも1つのガレクチン抗原はウイルス構造タンパク質のE3に挿入され、かつ、チクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質またはベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質とガレクチン抗原とが、融合タンパク質として発現する。ガレクチン抗原は、ウイルス構造タンパク質のE3に直接に挿入されても間接に挿入されてよい。
【0070】
チクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質に関して、配列番号1もしくは2のE3の322Rから325Rまでのフーリン切断部位(RKRR)、または、配列番号1もしくは2の322Rから325Rまでのフーリン部位(RKRR)に相当する部位の代わりに、少なくとも1つのガレクチン抗原を挿入することができる。例えば、チクングニアウイルスのウイルス構造タンパク質に関して、配列番号1もしくは2の321位にての残基Hと326位にての残基Sとの間に;配列番号1もしくは2の320位にてのPと326位にてのSの間に;または配列番号1もしくは2の319位にてのSと326位にてのSの間にまたは相当する部位に、少なくとも1つのガレクチン抗原が挿入される。VLP_CHI 0.56ベクターを、ガレクチン抗原が配列番号1または2の残基321と残基326の間に挿入されているチクングニアウイルス様粒子を調製するために使用することができる。ガレクチン抗原が、配列番号1または2の残基321と残基326の間に挿入される場合、本出願によって提供されるウイルス様粒子は、E2とE3の複合体、カプシドおよびE1を含むチクングニアウイルス様粒子とすることができるが、この場合、少なくとも1つのガレクチン抗原がE3領域に挿入される。
【0071】
ベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質に関して、配列番号3のE3の331Rから334Rまでのフーリン切断部位(RKRR)、または、配列番号3の331Rから334Rまでのフーリン切断部位に相当する部位の代わりに、少なくとも1つのガレクチン抗原を挿入することができる。例えば、ベネズエラウマ脳炎ウイルスのウイルス構造タンパク質に関して、配列番号3の330位にてのGと335位にてのSとの間に;配列番号3の329位にてのPと335位にてのSの間に;または配列番号3の328位にてのCと335位にてのSの間にまたは相当する部位に、少なくとも1つのガレクチン抗原が挿入される。VLP_VEEV 0.66ベクターを、抗原が配列番号3の残基330と残基335の間に挿入されているベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子を調製するために使用することができる。抗原が、配列番号3の残基330と残基335の間に挿入される場合、本出願によって提供されるウイルス様粒子は、E2とE3の複合体、カプシドおよびE1を含むベネズエラウマ脳炎ウイルス様粒子とすることができるが、この場合、少なくとも1つのガレクチン抗原はE3領域に挿入される。
【0072】
2つのタンパク質またはアミノ酸配列のアミノ酸位置に関して本明細書で使用される場合、「に相当する」という用語は、2つのタンパク質が標準的な配列アラインメント(例えば、BLASTpプログラムを使用して)に供される場合、第1の配列の特定のアミノ酸位置にてのアミノ酸残基が、第2のタンパク質の当該アミノ酸位置に一致するかまたはそれと合致することを指示して使用される。したがって、位置「A」および「B」にての残基が配列アラインメントにおいて互いに一致する場合、第1のタンパク質のアミノ酸位置「A」は、第2の配列のアミノ酸位置「B」に相当することになる。
【0073】
チクングニアウイルスならびにベネズエラウマ脳炎のウイルス構造タンパク質は、カプシド、E1、E2、6K、およびE3を含む。6Kはアセンブルのプロセスの過程で自然に切断され、VLPから除かれる。本明細書および特許請求の範囲において、「ウイルス構造タンパク質」とは、6Kを有するもののみならず、6Kが除かれた後のものも指す。
【0074】
実用的な例で使用されるCHIKVおよびVEEVの6K配列は以下のとおりである:
CHIKV OPY-1株、6K:配列番号1の749~809aa
atyqeaaiylwneqqplfwlqaliplaalivlcnclrllpcccktlaflavmsvgahtvsa(配列番号4)
CHIKV 37997株、6K:配列番号2の749~809aa
atyyeaaaylwneqqplfwlqaliplaalivlcnclkllpcccktlaflavmsigahtvsa(配列番号5)
VEEV TC-83株、6K:配列番号3の758~813aa
ettwesldhlwnnnqqmfwiqlliplaalivvtrllrcvccvvpflvmagaagaga
(配列番号6)
【0075】
本明細書で提供される核酸分子には、本開示のポリペプチドまたはその断片をコードする任意の核酸分子が含まれる。このような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、通常には実質的な同一性を呈することになる。内因性配列と「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは二本鎖核酸分子の少なくとも1つの鎖とハイブリダイズすることが通常にはできる。本開示の方法において有用な核酸分子には、本開示のポリペプチドまたはその断片をコードする任意の核酸分子が含まれる。このような核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、通常には実質的な同一性を呈することになる。内因性配列と「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは二本鎖核酸分子の少なくとも1つの鎖とハイブリダイズすることが通常にはできる。「ハイブリダイズする」とは、種々のストリンジェンシー条件下で、相補性ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載の遺伝子)どうしの間またはその一部どうしの間で二本鎖分子を形成する対を意味する。(例えば、Wahl, G. M. and S. L. Berger (1987) Methods Enzymol. 152:399;Kimmel, A. R. (1987) Methods Enzymol. 152:507を参照されたい)。
【0076】
例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、約750mM未満のNaClおよび75mMクエン酸三ナトリウム、好ましくは約500mM未満のNaClおよび50mMクエン酸三ナトリウム、より好ましくは約250mM未満のNaClおよび25mMクエン酸三ナトリウムとなる。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えばホルムアミドの非存在下で得ることができ、一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%ホルムアミド、より好ましくは少なくとも約50%ホルムアミドの存在下で得ることができる。ストリンジェントな温度条件には、通常、少なくとも約30℃の、より好ましくは少なくとも約37℃の、最も好ましくは少なくとも約42℃の温度が含まれることになる。ハイブリダイゼーションの時間、界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、および担体DNAの含入または排除などの種々の追加のパラメーターは、当業者であればよく知られている。必要に応じてこれら種々の条件を組み合わせることによって、種々のレベルのストリンジェンシーが達成される。好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、30℃で、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウムおよび1%SDS中で行われることになる。より好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、37℃で、500mM NaCl、50mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミドおよび変性サケ精子DNA(ssDNA)100μg/ml中で行われることになる。最も好ましい実施形態では、ハイブリダイゼーションは、42℃で、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミドおよびssDNA 200μg/ml中で行われることになる。これらの条件の有用な変形形態は、当業者であれば容易に明らかであろう。
【0077】
ほとんどの用途では、ハイブリダイゼーションに続く洗浄工程もまた、ストリンジェンシーが異なることになる。洗浄ストリンジェンシーの条件は、塩濃度によっておよび温度によって定義することができる。上のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度を低下させることによってまたは温度を上昇させることによって高めることができる。例えば、洗浄工程のためのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mM未満のNaClおよび3mMクエン酸三ナトリウム、最も好ましくは約15mM未満のNaClおよび1.5mMクエン酸三ナトリウムとなる。洗浄工程のためのストリンジェントな温度条件には、通常、少なくとも約25℃の、より好ましくは少なくとも約42℃の、さらにより好ましくは少なくとも約68℃の温度が含まれることになる。好ましい実施形態では、洗浄工程は、25℃で、30mM NaCl、3mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中で行われることになる。より好ましい実施形態では、洗浄工程は、42℃で、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中で行われることになる。より好ましい実施形態では、洗浄工程は、68℃で、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDS中で行われることになる。
【0078】
これらの条件の追加の変形形態は、当業者であれば容易に明らかとなるであろう。ハイブリダイゼーション技法は、当業者であればよく知られており、例えば、Benton and Davis (Science 196:180, 1977);Grunstein and Hogness (Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961, 1975);Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001);Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York);およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。「実質的に同一である」とは、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか1つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか1つ)と少なくとも50%の同一性を呈するポリペプチドまたは核酸分子を意味する。好ましくは、そのような配列は、比較のために使用される配列とアミノ酸レベルまたは核酸にて少なくとも60%、より好ましくは80%または85%、より好ましくは90%、95%または99%も同一である。
【0079】
配列同一性は通常、配列解析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue、Madison、Wis.53705、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。かかるソフトウェアによって、相同性の程度を種々の置換、欠失、および/または他の改変に割り当てることにより同一または類似の配列を整合させる。保存的置換には通常、以下の群内の置換が含まれる:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。同一性の程度を決定する例示的なアプローチでは、BLASTプログラムを使用することができ、この場合、e<”3>とe<”100>との間の確率スコアによって、密接に関連した配列が指示される。
【0080】
本明細書における可変基の任意の定義における化学基のリストの記載は、リストされた基の任意の単一の基または組合せとしてのその可変基の定義を含む。本明細書における可変基または態様に関する実施形態の記載は、任意の単一の実施形態としてのまたは任意の他の実施形態もしくはその一部と組み合わせられた、その実施形態を含む。
【0081】
本明細書で提供される任意の組成物または方法は、本明細書で提供される他の組成物および方法のいずれかの1つまたは複数と組み合わせることができる。
【0082】
本開示の一部の実施形態では、タンパク質は、サイレント置換、付加または欠失を生じるがコードされたタンパク質の特性もしくは活性または当該タンパク質が作製される方法を変更しない変更を含有する突然変異を含むことができる。様々な理由のために、例えば特定の宿主に対してコドン発現を最適化するために、ヌクレオチド変異型を造り出すことができるが、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2005/0118191号を参照されたい。
【0083】
加えて、ヌクレオチドを配列決定して、正しいコード領域がクローニングされたがこれは不要な突然変異をまったく含有しないことを確実にすることができる。上記ヌクレオチドを、任意の細胞中で発現させるための発現ベクター(例えばバキュロウイルス)へとサブクローニングすることができる。当業者であれば、種々のサブクローニング方法が利用できかつ可能であることを理解するであろう。
【0084】
単離された核酸は実質的に精製されているとすることができるが、そうである必要はない。例えば、クローニングベクターまたは発現ベクター内で単離されている核酸は、それが存在する細胞内においてわずかな割合の物質のみを含む場合があるという点で、純粋ではない。そのような核酸は、その用語が本明細書で使用される場合、単離されているが、なぜなら、当業者に知られている標準技法によって容易に操作可能であるからである。
【0085】
ポリペプチドの発現
一般に、アルファウイルスのウイルス構造タンパク質および少なくとも1つのガレクチン(gelactin)抗原を含むVLPは、適切な発現媒体中で、ポリペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片の全部または一部で適切な宿主細胞を形質転換することによって作製することができる。
【0086】
分子生物学分野の当業者であれば、多種多様な発現系のいずれかを使用して、組換えタンパク質を提供することができることを理解するであろう。使用される正確な宿主細胞は、本開示にとって重要ではない。本開示のポリペプチドは、原核性宿主[例えば、大腸菌(E.coli)]中または真核性宿主[例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、昆虫細胞、例えば、Sf21細胞、または哺乳動物細胞、例えば、NIH 3T3、HeLa、COSの各細胞]中で産生させることができる。このような細胞は、広範囲の供給源(例えば、American Type Culture Collection、Rockland、MD;また、例えば、Ausubel et al.、上掲も参照されたい)から入手可能である。昆虫細胞の非限定的な例は、ツマジロクサヨトウ.(Spodoptera frugiperda)(Sf)細胞、例えば、Sf9、Sf21、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)細胞、例えば、High Five細胞、ならびにショウジョウバエ属(Drosophila)S2細胞である。真菌(酵母を含めて)宿主細胞の例は、S.セレビシエ、クルイベロミセス・ラクティス[Kluyveromyces lactis(K.lactis)]、C.アルビカンス(C.albicans)およびC.グラブラータ(C.glabrata)を始めとするカンジダ属(Candida)の種、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、シゾサッカロミセス・ポンベ[Shizosaccharomyces pombe(S.pombe)]、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ならびにヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)である。哺乳動物細胞の例は、COS細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、マウスL細胞、LNCaP細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、アフリカミドリザル細胞、CV1細胞、HeLa細胞、MDCK細胞、Vero細胞およびHep-2細胞である。アフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵巣細胞または両生類起源の他の細胞もまた、使用することができる。原核生物宿主細胞には、細菌細胞、例えば、大腸菌、枯草菌(B.subtilis)、およびマイコバクテリウムが含まれる。
【0087】
前記タンパク質をクローニングする方法は当技術分野で既知である。例えば、特定のアルファウイルスのウイルス構造タンパク質、例えばCHIKVまたはVEEVのウイルス構造タンパク質をコードする遺伝子は、前記ウイルスを感染させておいた細胞から抽出されたポリアデニル化mRNAからRT-PCRによって単離することができる。生成する産物の遺伝子は、DNAインサートとしてベクターにクローニングすることができる。「ベクター」という用語は、手段であって、これによって核酸を生物体間、細胞間、または細胞成分間で伝播および/または導入することができる手段を指す。ベクターには、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、人工染色体等が含まれ、それらは自律的に複製するかまたは宿主細胞の染色体に統合することができる。ベクターはまた、ネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同一鎖内のDNAとRNAの両方から構成されるポリヌクレオチド、ポリ-リジンコンジュゲートDNAまたはRNA、ペプチドコンジュゲートDNAまたはRNA、リポソームコンジュゲートDNA等とすることができるが、それらは自律的に複製しない。多くの、全てではないが、一般的な実施形態では、本発明のベクターはプラスミドまたはバクミドである。
【0088】
本開示は、VLPの形成をもたらす細胞において発現させることができる発現ベクターにクローニングされた、キメラ分子を含めて、タンパク質をコードするヌクレオチドをさらに提供する。「発現ベクター」とは、その中に組み込まれた核酸の発現ならびに複製を促進することができる、プラスミドなどのベクターである。
【0089】
通常には、発現される核酸分子は、プロモーターおよび/またはエンハンサーに「作動可能に連結され」ており、プロモーターおよび/またはエンハンサーによる転写調節制御の支配下にある。
【0090】
本開示のポリペプチドの生成向けに様々な発現系が存在する。かかるポリペプチドを生成するのに有用な発現ベクターとして、限定されないが、染色体、エピソーム、およびウイルス由来の各ベクター、例えば、細菌プラスミドに由来する、バクテリオファージに由来する、トランスポゾンに由来する、酵母エピソームに由来する、挿入エレメントに由来する、酵母染色体エレメントに由来する、バキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスに由来する各ベクター、ならびにそれらの組合せに由来するベクターが挙げられる。
【0091】
本明細書で提供されるコンストラクトおよび/またはベクターは、本明細書に記載のエンベロープタンパク質もしくはカプシドタンパク質またはその一部を含めて、構造タンパク質をコードするアルファウイルスポリヌクレオチドを含む。ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス、またはレトロウイルスの各ベクターとすることができる。ヌクレオチドを含むコンストラクトおよび/またはベクターは、非限定的な例であるが、CMVプロモーター、ファージラムダPLプロモーター、大腸菌lac、phoAおよびtacプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーターなどの、適当なプロモーターに作動可能に連結されていることが求められる。他の適切なプロモーターは、宿主細胞および/または所望の発現率に応じて当業者に知られている。発現コンストラクトは、転写開始、終結のための部位、および転写領域では、翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含有する。コンストラクトによって発現される転写産物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるポリペプチドの始めに翻訳開始コドンおよび翻訳されるポリペプチドの末端に適当に配列される終止コドンを含む。
【0092】
発現ベクターは少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましいであろう。かかるマーカーには、真核細胞培養のためのジヒドロ葉酸レダクターゼ、G418またはネオマイシンの耐性、ならびに大腸菌および他の細菌において培養するためのテトラサイクリン、カナマイシンまたはアンピシリンの各耐性遺伝子が含まれる。ベクターのうちで好ましいのは、バキュロウイルス、ポックスウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アビポックスウイルス、カナリア痘ウイルス、鶏痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス、豚痘ウイルス等)、アデノウイルス(例えば、イヌアデノウイルス)、ヘルペスウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスベクターである。本開示とともに使用することができる他のベクターは、細菌において使用するためのベクターを含み、これは、pQE70、pQE60およびpQE-9、pBluescriptベクター、Phagescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A、ptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5を含む。好ましい真核生物ベクターのうちには、pFastBacl、pWINEO、pSV2CAT、pOG44、pXTlおよびpSG、pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVLがある。他の適切なベクターは当業者にとって容易に明らかになるであろう。
【0093】
組み換えコンストラクトを、調製および使用して、真核細胞および/または原核細胞へとトランスフェクトする、感染させるかまたはトランスフォームすることができ、かつ、それらへと本明細書に記載のものを含めてウイルスタンパク質を発現させることができる。したがって、本開示は、宿主細胞であって、カプシド、E3、E2、6K、およびElもしくはそれらの部分を含めて、アルファウイルスのウイルス構造遺伝子、ならびに/または上記の任意のキメラ分子をコードする核酸を含有するとともに、カプシド、E3、E2、6K、およびElもしくはそれらの部分を含めて、アルファウイルスのウイルス構造遺伝子、ならびに/または上記の任意のキメラ分子の発現を、VLPの形成を行うことができる条件下で前記宿主細胞において可能とする、あるベクター(または複数のベクター)を含む、宿主細胞を提供する。
【0094】
一実施形態では、前記ベクターは組換えバキュロウイルスである。別の実施形態では、前記組換えバキュロウイルスを昆虫細胞にトランスフェクトする。好ましい実施形態では、前記細胞は昆虫細胞である。別の実施形態では、前記昆虫細胞はSf9細胞である。
【0095】
別の実施形態では、前記ベクターおよび/または宿主細胞は、記載されるカプシド、E3、E2、6K、およびE1、またはそれらの一部を含めて、アルファウイルス遺伝子をコードするヌクレオチドを含む。
【0096】
別の実施形態では、前記ベクターおよび/または宿主細胞は、本明細書に記載のアルファウイルスカプシド、E3、E2、6K、およびE1、またはそれらの一部から本質的になる。さらなる実施形態では、前記ベクターおよび/または宿主細胞は、本明細書に記載の、カプシド、E3、E2、6K、およびE1、またはそれらの一部を含むアルファウイルスタンパク質からなる。これらのベクターおよび/または宿主細胞は、本明細書に記載の、アルファウイルスコア、E3、E2、6K、およびE1、またはそれらの一部を含有し、cellulVLProteins、バキュロウイルスタンパク質、脂質、炭水化物等などの追加の細胞成分を含有してもよい。
【0097】
ポリペプチド産生向けの特定の一細菌発現系は大腸菌pET発現系(Novagen、Inc.、Madison、Wis)である。この発現系によれば、ポリペプチドをコードするDNAを、発現を可能とするように設計された方向でpETベクターに挿入する。かかるポリペプチドをコードする遺伝子はT7調節シグナルの制御下にあるので、ポリペプチドの発現は宿主細胞におけるT7 RNAポリメラーゼの発現を誘導することによって行われる。このことは通常には、IPTG誘導に応答してT7 RNAポリメラーゼを発現する宿主株を使用して行われる。いったん産生されると、組換えポリペプチドは次いで、当技術分野において既知の標準法、例えば、本明細書に記載の方法に従って単離される。
【0098】
ポリペプチド産生用の別の細菌発現系はpGEX発現系(Pharmacia)である。このシステムは、融合タンパク質としての遺伝子または遺伝子断片を高レベルで発現し、この場合、機能性遺伝子産物を迅速に精製および回収できるように設計されているGST遺伝子融合システムを用いる。目的のポリペプチドは、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)由来のグルタチオンSタンパク質転移酵素のカルボキシル基末端に融合され、そして、Glutathione Sepharose 4Bを使用するアフィニティークロマトグラフィーにより細菌溶解物から容易に精製される。融合タンパク質は、穏和な条件下でグルタチオンを用いる溶出により回収することができる。融合タンパク質からのグルタチオンS転移酵素ドメインの切断は、このドメイン上流の部位特異的プロテアーゼの認識部位が存在することにより促進される。例えば、pGEX-2Tプラスミドで発現するタンパク質はトロンビンにより切断することができる;pGEX-3Xで発現するものは因子Xaにより切断することができる。
【0099】
医薬組成物および投与
本開示は、本明細書に記載のVLPを含む医薬組成物を特徴とする。本明細書で有用な医薬組成物は、適切な任意の希釈剤または賦形剤を含めて、医薬的に許容される担体であって、組成物を受ける脊椎動物にとって有害な免疫応答の生成をそれ自体誘導しないあらゆる医薬品が含まれるとともに過度の毒性なしで投与することができる担体と、本開示のVLPとを含有する。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される」という用語は、哺乳動物での、より具体的にはヒトでの使用について、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認済みであること、または米国薬局方、欧州薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。これらの組成物は、脊椎動物において防御免疫応答を誘導するためのワクチンおよび/または抗原組成物として有用とすることができる。
【0100】
医薬的に許容される担体には、それらに限定されないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、滅菌等張性水性緩衝剤、およびこれらの組合せが含まれる。医薬的に許容される担体、希釈剤、およびその他の賦形剤に関する徹底した考察は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.N.J.現行版)に発表されている。製剤は投与の様式に適することが求められる。好ましい実施形態では、製剤は、ヒトへの投与に適するものであり、滅菌されており、非微粒子状であり、かつ/または非発熱性であることが好ましい。
【0101】
所望であれば、組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤も含有することができる。組成物は、再構成に適した凍結乾燥粉末などの固体の形態、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、ピル、カプセル剤、持続放出製剤、または散剤とすることができる。経口用製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等などの標準の担体を含んでもよい。
【0102】
ある特定の実施形態では、VLP組成物は、例えば、VLP組成物の量および濃度を表示する密閉容器中で、液体形態で供給される。
【0103】
好ましくは、液体形態のVLP組成物は、密閉容器の少なくとも約50μg/ml、より好ましくは少なくとも約100μg/ml、少なくとも約200μg/ml、少なくとも500μg/ml、または少なくとも1mg/mlで供給される。
【0104】
代替的に、ワクチン製剤は、点滴、大粒子エアロゾル(約10ミクロン超)もしくは上気道への噴霧または小粒子エアロゾル(10ミクロン未満)もしくは下気道への噴霧のいずれかによって、鼻腔内に投与される。上記のデリバリー経路のいずれもが免疫応答をもたらすが、一方で、鼻腔内投与によれば、アルファウイルス、例えば、CHIKVまたはVEEVを含めて、多くのウイルスの侵入部位で粘膜免疫を誘発するという付加的な利点が付与される。
【0105】
したがって、本開示はまた、哺乳動物への感染またはその少なくとも1つの症状に対する免疫を誘導するワクチンまたは抗原性組成物を製剤化する方法であって、前記製剤に有効用量のVLP、例えば、アルファウイルス(例えば、CHIKVまたはVEEV)を添加することを含む、方法も含む。
【0106】
ある特定の場合では、単回用量での免疫の賦活が好ましいが、しかし、追加の投薬量を同じまたは異なる経路によって投与して、所望の効果を達成することもできる。新生児および幼児では、例えば、十分なレベルの免疫を誘発するために複数回の投与が必要とされる場合がある。投与は、十分なレベルまたは防御を維持するために必要に応じて、小児期全体をとおして間隔をおいて継続してもよい。
【0107】
同様に、例えば、医療従事者、デイケア従事者、低年齢小児の家族メンバ、高齢者、および心肺機能または免疫系が損なわれた個人などの、反復性または重篤な感染に特にかかりやすい成人は、防御免疫応答を確立し、および/または維持するために複数の免疫を必要とする場合がある。誘導された免疫のレベルを、例えば、中和分泌抗体および血清抗体の量を測定することによってモニタリングし、必要に応じて、投薬量を調節してまたはワクチン接種を繰り返して、所望のレベルの防御を誘発および維持することができる。
【0108】
医薬製剤の投薬量は、例えば、予防的もしくは治療的免疫応答を誘発するのに有効な用量を最初に特定することによって、例えば、ウイルス特異的免疫グロブリンの血清力価を測定することによって、または血清試料もしくは尿試料もしくは粘膜分泌物中の抗体の阻害率を測定することによって、当業者であれば、容易に決定することができる。前記投薬量は動物試験から決定することができる。ワクチンの有効性を研究するために使用される動物の非限定的なリストには、モルモット、ハムスター、フェレット、チンチラ、マウスおよびコットンラット、ならびに非ヒト霊長類が含まれる。ほとんどの動物は感染病原体に対する自然宿主ではないが、それでも疾患の種々の態様の研究に役立つことができる。例えば、上記動物のいずれかに、ワクチン候補、例えば、本開示のVLPを投薬して、誘導された免疫応答を部分的に特徴付けること、および/または任意の中和抗体が産生されているかどうかを判定することができる。例えば、マウスは小型であり、その低コストであることより研究者はラージスケールで研究を実行することができるので、多数の研究がマウスモデルにおいて実行されてきた。
【0109】
加えて、ヒト臨床研究を、ヒトのための好ましい有効用量を決定するために当業者によって実施することができる。そのような臨床研究はルーチンであり、当技術分野においてよく知られている。用いられるべき正確な用量はまた、投与経路に依存することになる。有効用量は、インビトロ(in vitro)または動物試験システムから導き出される用量-応答曲線から外挿することができる。
【0110】
また、当技術分野においてよく知られているように、特定の組成物の免疫原性は、アジュバントとして知られる、免疫応答の非特異的賦活剤の使用によって増強することができる。アジュバントは、未知の抗原に対する免疫の全般的な高まりを促進するために経験的に使用されてきた。免疫プロトコルでは、長年にわたって応答を賦活するためにアジュバントが使用されており、したがって、アジュバントは当業者によく知られている。いくつかのアジュバントは、抗原が提示される様式に影響を及ぼす。例えば、免疫応答は、タンパク質抗原がミョウバンによって沈殿する場合、高まる。抗原の乳化もまた、抗原提示の期間を延長する。あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Vogel et al., "A Compendium of Vaccine Adjuvants and Excipients (2nd Edition)"に記載の任意のアジュバントの包含は、本発明の範囲内で想定される。
【0111】
例示的なアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント[死菌結核菌(Mycobacterium tuberculosis)を含有する免疫応答の非特異的賦活剤]、不完全フロイントアジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられる。他のアジュバントは、GMCSP、BCG、水酸化アルミニウム、thur-MDPおよびnor-MDPなどのMDP化合物、CGP(MTP-PE)、リピドA、およびモノホスホリルリピドA(MPL)を含む。2%スクアレン/Tween-80エマルション中の、細菌から抽出された3つの成分、MPL、トレハロースジミコール酸(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を含有するRIBIもまた、企図される。MF-59、Novasomes(登録商標)、MHC抗原もまた、使用することができる。
【0112】
本開示のVLPはまた、「免疫賦活剤」と製剤化することができる。それらは、免疫系の応答を高めるための身体自身の化学的メッセンジャー(サイトカイン)である。免疫賦活剤には、限定されないが、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13)などの、免疫賦活活性、免疫増強活性、および炎症促進活性を有する種々のサイトカイン、リンホカインおよびケモカイン;増殖因子[例えば、顆粒球マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF)];およびマクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1;B7.2等などの他の免疫賦活分子が含まれる。免疫賦活分子は、VLPと同じ製剤中で投与してもよく、または別々に投与してもよい。タンパク質またはタンパク質をコードする発現ベクターのいずれかを、免疫賦活作用を生成するために投与することができる。したがって、一実施形態では、本開示は、アジュバントおよび/または免疫賦活剤を含む抗原製剤およびワクチン製剤を含む。
【0113】
本開示によれば、組成物は、
がんもしくは肝臓の繊維症を始めとする炎症性疾患を処置もしくは予防する;
哺乳動物においてガレクチンに対する抗体を産生する;
対照において免疫応答を調節する;
対照における免疫賦活;
ガレクチンとガレクチン受容体の間の相互作用を阻害する;または
ガレクチン活性を阻害する、
免疫療法にとって有用である。
【0114】
本組成物によって処置することができるがんの例としては、それらに限定されないが、頭頸部がん、肺がん、非小細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚または眼内の悪性黒色腫、黒色腫、乳がん、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、結腸がん、十二指腸がん、肛門がん、胃がん、肝臓がん、精巣がん、卵管がん、子宮体がんおよび子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部肉腫、尿道がん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓がんまたは尿管がん、前立腺がん、腎盂のがん、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによるがんを始めとする環境誘発性がん、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。
【0115】
とりわけ、少なくとも1つのガレクチン抗原が、下のGal-1エピトープペプチド#5、#7、#12または#14、とりわけGal-1エピトープペプチド#5または#7などのガレクチン-1エピトープペプチドである場合、本開示により提供されるVLPは、肺がんなどのがん、およびHPV感染によって引き起こされる疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。
【0116】
少なくとも1つのガレクチン抗原が、下のGal-3エピトープペプチド#17、#21、#22または#23、とりわけGal-3エピトープペプチド#17、#21または#22などのガレクチン-3エピトープペプチドである場合、本開示により提供されるVLPは、それらに限定されないが、肺線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を始めとする肝臓線維症、全身性硬化症および心筋線維症を始めとする線維症に関連する疾患または状態を処置または予防するために使用することができる。
【0117】
本出願は以下の実施例を参照して詳細に記載されるが、それらは本出願の範囲を限定することを意図するものではない。
[実施例1]
【0118】
Gal-1 VLPの調製
材料および方法
ガレクチン-1(Gal-1)ワクチンエピトープを、ヒトおよびマウスのGal-1タンパク質のアミノ酸配列と3D構造を使用することによって設計した(表1)。
表1において、エピトープペプチド#5~#10はヒトgal-1の断片であり、エピトープペプチド#12および#14はマウスgal-1タンパク質の断片である。Gal-1エピトープペプチドをタンパク質粒子の表面上で提示するために、チクングニアウイルス(CHIKV)またはベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)のウイルス構造タンパク質のE3領域をGal-1エピトープペプチドで改変した。エピトープペプチドを、CHIKVについては配列番号2の321位にてのHと326位にてのSとの間に、VEEVについては配列番号3の330位にてのGと335位にてのSの間に、リンカーSGG(N末端)およびGGS(C末端)をとおして融合した。
【0119】
哺乳動物発現ベクター、pCHIKV-Gal-1またはpVEEV Gal-1のプラスミドDNAベクターの生成の場合、Gal-1エピトープペプチド配列(gBlocks、IDT)の合成dsDNA断片を、pCHIKVベクターまたはpVEEVベクター内のCHIKV E3エンベロープタンパク質DNAの特定の位置に挿入した。Gal-1エピトープペプチドの挿入が全くないpCHIKVベクターまたはpVEEVベクターを、対照VLP発現ベクターとして使用した。
【0120】
【0121】
FreeStyle 293F細胞(Thermo Fisher Scientific、#R790-07)を、振盪インキュベーター(INFORS HT)を使用して、8%CO2の存在下、37℃でFreeStyle 293 Expression培地(Thermo Fisher Scientific、#12338-018)を含む懸濁液中で培養した。293F細胞に、pCHIKV Gal-1 #7、#12または対照プラスミドDNA発現ベクターを、PEI(ポリエチレンイミン、Polysciences、#23966)により、DNA 0.8μg/106個の細胞、DNA:PEI=1:3、および1.25×106個の細胞/培養培地1mLの条件で、トランスフェクトした。培養上清を、トランスフェクションの4日後に回収し、遠心分離(3,000rpm、10分間)によって、これに続いて0.45μm PESメンブレンフィルターシステム(VWR #10040-470)での濾過によって、清澄化した。Gal-1 VLPの生成を、ウサギ抗CHIKV抗血清(VLP Therapeutics)またはマウス抗VEEV血清(ATCC)および種特異的HRP標識二次抗体を使用することによって、精製または濃縮まったく無しで、濾過した培養上清のウェスタンブロット分析によって確認した。
【0122】
Gal-1 VLPの精製および濃縮の場合、VLP含有培養上清をOptiPrep(60%w/v)(Iodixanol、Accurate Chemical、#AN1114542)1.5mL上へと重ね、SW-28ローター(Beckman)で52,000×gで1.5時間遠心分離した。界面の上に1.5mLを残すように上清を取り除いた後、2つの層を混合し、NVT100ローター(Beckman)で360,000×gで2.5時間遠心分離して、密度勾配を形成した。
【0123】
粗VLPを収集し、HiPrep 16/60 Sephacryl S-500 HRカラム(GE、#28-9356-06)を備えたBiologicDuo-Flow FPLCシステム(Bio-Rad)およびリン酸緩衝食塩水(PBS)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。VLPを含有する画分をAmicon Ultra-15遠心フィルターユニット(EMD Millipore、#UFC910024)によって濃縮し、0.20μmのPESメンブレンを通して濾過した。
【0124】
総タンパク質濃度を、製造業者の取扱説明書に従ってBCA Protein Assay(Pierce、#23225)によって測定した。VLP試料の純度を、SDS-PAGE分析(Any kD Mini-PROTEAN TGX Precast Protein Gel、Bio-Rad、#456-9035)、これに続いて、QC Colloidal Coomassie Stain(Bio-Rad、#1610803)を使用するクマシー色素ベースの染色によって確認した。スクロースおよびEDTAを、それぞれ最終濃度250mMおよび5mMへとVLP溶液に添加した。Gal-1 VLP試料のタンパク質濃度を0.4mg/mLに調整し、-80℃で保存した。
【0125】
293F細胞(10ml)を、表示のGal-1エピトープをコードするプラスミド10ugでVEEV VLPへとトランスフェクトした。上清を回収し、ウェスタンブロッティングを実施して、抗VEEVマウス血清を検出した(1:1000希釈)。上清中でGal-1エピトープペプチド#5、#7、#12、#14を担持するVLPの発現が確認された(
図1)。
[実施例2]
【0126】
マウス免疫原性の研究
材料および方法
免疫試料の調製の場合、VLP溶液を解凍し、2%Alhydrogelアジュバント(10mg/mlのアルミニウム、Brenntag、#250-843261、バッチ#5014)と1:1(v/v)で混合した。マウス(8週齢の雌性、BALB/c、Envigo)に、0.05mL中の10ug(タンパク質)を大腿部に筋肉内で1日目、4日目、および8日目に、注射した。自己抗原に対する抗体力価に及ぼすペプチド-VLP融合タンパク質の効果を評価するために、Alhydrogelアジュバントとともに完全長組換えヒトまたはマウスのGal-1タンパク質(Sino Bioscience)10ugを、対照として異なる2つの群のマウスに注射した。血液試料を、0日目および15日目に顎下静脈を介して、29日目に心臓穿刺により採取した。動物の取り扱い、免疫、採血、血清の調製は、動物実験委員会のガイドラインに準じてSmithers Avanza Toxicology Service(Gaithersburg、MD)で実行した。全血試料をSerum Separation Tube(Greiner、#450472)に採取し、1,200×gで5分間遠心分離して血清を分離した。採取血清は解析まで-20度で保存した。
【0127】
ELISAアッセイ
Gal-1特異的血清抗体力価を間接ELISAによって決定した。免疫アッセイプレート(Thermo Fisher Scientific、Maxisorp、#442404)を、組換えヒトまたはマウスのガレクチン-1タンパク質(Sino Bioscience、#10290-HNAEおよび#50100-MNAE)のPBS 100μL(500ng/mL)で4度で一晩コーティングした。TBS-Tでリンス後、ウェルをブロッキング緩衝剤(TBS-T中の5%スキムミルク)350μLで室温で1時間ブロックした。ウェルをTBS-Tで3回洗浄した。マウス血清を1:50に希釈し、ブロッキング緩衝剤で最終希釈率1:781,250へと1:5でさらに連続希釈した。希釈血清をコーティングウェル中で室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBS-T 400μLで5回洗浄し、HRP標識抗マウスIgG+M+A抗体(Thermo Fisher、#PA1-84388)とともに室温で30分間さらにインキュベートした。プレートウェルをTBS-Tで5回洗浄し、HRP基質(SureBlue TMB 1-Component Microwell Peroxidase Substrate、Sera Care、#5120-0076)100μLとともにインキュベートした。反応を停止溶液(1M H2SO4)100μLで停止させ、マイクロプレートリーダー(Synergy/HTX、BioTek)によって450nmの吸光度を測定した。データを、Microsoft Excel(Microsoft)およびGraphPad Prism 8.0(GraphPad Software)を使用して解析した。エンドポイント力価は、標準偏差値3つ分をプラスしたブランク値よりも高い吸光度測定値を生じる、より高い血清希釈として定義した。
【0128】
免疫血清中の抗Gal-1抗体の免疫グロブリンクラスおよびサブクラスを、間接ELISAおよびサブクラス特異的二次抗体パネルによって決定した。免疫アッセイプレートを、組換えマウスガレクチン-1タンパク質(Sino Bioscience、#50100-MNAE)のPBS 100μL(500ng/mL)で4度で一晩コーティングした。TBS-Tでリンス後、ウェルをブロッキング緩衝剤(TBS-T中の5%スキムミルク)350μLで室温で1時間ブロックした。ウェルをTBS-Tで3回洗浄した。マウス血清をブロッキング緩衝剤で1:1000に希釈した。各希釈血清を異なる8つのGal-1コーティングウェルに移し、室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBS-T 400μLで5回洗浄し、HRP標識抗マウスIgサブクラス特異的抗体のMouse Typer Sub Isotyping Panel(Bio-Rad、#172-2055)とともに室温で30分間、さらにインキュベートした。プレートウェルをTBS-Tで5回洗浄し、HRP基質(SureBlue(商標)TMB 1-Component Microwell Peroxidase Substrate、Sera Care、#5120-0076)100μLとともにインキュベートした。反応を停止溶液100μLで停止させ、マイクロプレートリーダーによって450nmの吸光度を測定した。
【0129】
結果
Gal-1ペプチド断片のスクリーニング(表1に記載)により、本発明者らは、CHIKVウイルス様粒子プラットフォームとの抗ヒトGal-1抗体の組合わせを誘導する有望な2つのGal-1ワクチン候補#5および#7を特定した(
図2A)。ナイーブBALB/cマウスにおけるGal-1 VLPの免疫原性を、それぞれマウスGal-1およびヒトGal-1についてELISAによって測定した。第1の注射の4週間後、Gal-1 VLPで免疫したマウスにおいて抗ヒトおよび抗マウスのガレクチン-1抗体が誘導された。マウスモデルにおける概念実証研究の場合、ヒトGal-1に由来するGal-1 VLP #5のペプチド配列をマウスGal-1配列で改変し、Gal-1 VLP #12を得た。Gal-1 #5VLPで免疫した血清によるrhGal-1の結合は、rmGal-1結合にまさって優先性があった(
図2B)。他方、Gal-1 #12 VLPで免疫した血清によるrmGal-1の結合は、rhGal-1結合にまさって優先性があった。
【0130】
Gal-1 VLPの効率的生成にあたって、VLPの起源をチクングニアウイルス(CHIKV)からベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)に変更した。4つのGal-1 VEEV VLP(表1、#5、#7、#12および#14)および対照VEEV VLPを始めとする異なる計5つの粒子を調製した。Gal-1 VLPおよび対照VLPの分子サイズと純度を、変性条件下でSDS-PAGEによって分析した(
図3A)。VLP全試料が理論上の分子量と一致し、純度は90%を超えていた。50~75kDaの間のタンパク質バンドは、Gal-1ペプチドとウイルス構造タンパク質の融合タンパク質である。分子量は挿入されたGal-1ペプチドの長さに応じて変化する。マウスに、水酸化アルミニウムアジュバントとともにGal-1 VLPタンパク質10μgを週に3回筋肉内注射した。免疫の4週間後、ヒトまたはマウスGal-1に特異的な抗Gal-1抗体力価をそれぞれELISAによって決定した。4つのGal-1ペプチドコンジュゲートのVLP分子#5、7、12、および14はマウスにおいて抗マウスGal-1抗体を誘導したが、組換えマウスGal-1タンパク質は誘導しなかった(
図3D、E)。Gal-1 #5と#7とは異なるヒトGal-1エピトープ配列ペプチドであり、これらのペプチドを担持するVLPは抗ヒトGal-1抗体を誘導した。Gal-1 VLP #12と#14とは異なるマウスGal-1エピトープペプチドであり、これらのペプチドを担持するVLPは抗マウスGal-1抗体を効率的に誘導した(
図3E)。Gal-1ペプチド#5および#12は、炭水化物認識ドメイン(CRD)近傍の4つのβシートS3、S4、S5、およびS6をコードする(
図3B)。Gal-1ペプチド#7および#14は、同種親和的二量体化において重要である可能性があるF4およびF5のβシートをコードする(
図3C)。VLPタンパク質ナノ粒子上に提示されたウイルス由来タンパク質との自己タンパク質のキメラ抗原は、自己タンパク質に対する免疫寛容を破壊し、効率的に抗体産生を賦活する。Gal-1タンパク質は種間で高度に保存されているが(
図3F)、異なる種由来のGal-1エピトープペプチドで免疫した血清は、ヒトまたはマウスの選択的抗Gal-1抗体を誘導した(
図3E)。Gal-1 VLPワクチンは、自己タンパク質に対する液性免疫応答を効果的に賦活することができた。
[実施例3]
【0131】
インビボ(in vivo)腫瘍モデル
材料および方法
動物の取り扱い、免疫、採血、腫瘍接種、腫瘍測定および血清の調製は、動物実験委員会のガイドラインに準じて、Moores Cancer Center University of California、San Diego(La Jolla、CA)の、Pathology and Medicineの教授、Judith Varner博士の監督の下で実行した。腫瘍サイズを週に2回測定した。腫瘍容量はD×d2/2として算出した(式中、D=最長直径およびd=最短直径)。41日目にマウスを屠殺し、血液および腫瘍組織を採取した。エンドポイント腫瘍重量を測定した。研究で収集したすべてのデータを、Microsoft ExcelおよびGraphPad Prismによって解析した。
【0132】
LLCモデル
C57BL6(雌性、8週齢)マウスに、1:1(v/v)にての2%AlhydrogelアジュバントとともにCHIKV Gal-1ウイルス様粒子ワクチン10μgを1、4、および8日目に3回、筋肉内注射により免疫した(n=8)。対照マウスに、2%Alhydrogelを含むPBSを注射した。15日目に、血液200μlを腫瘍接種前に各動物から採取した。血液は血漿として処理され、-20度で保存した。マウスに、無血清PBS中のルイス肺癌細胞(1×106個の細胞/100μL)を脇腹で皮下(s.c.)に曝露した。
【0133】
MEER HPVモデル
C57BL6(雌性、8週齢)マウスに、1:1(v/v)にての2%AlhydrogelアジュバントとともにVEEV Gal-1のウイルス様粒子ワクチン10μgを1、4、および8日目に3回、ならびに15日目以降は毎週、筋肉内注射により免疫した。対照マウスに、2%Alhydrogelを含む対照VEEV VLPワクチンを注射した。15日目に、血液200μlを腫瘍接種前に各動物から採取した。血液は血漿として処理され、-20度で保存した。マウスに、無血清PBS中のMEER HPV+細胞(1×106個の細胞/100μL)を脇腹で皮下(s.c.)に曝露した。
【0134】
結果
がん治療に対するGal-1 VLPワクチンの効果を肺がんのマウスモデルで調べた。C57BL6マウスを、腫瘍接種の2週間前に対照VLPまたはGal-1 VLPで予備免疫した。抗マウスGal-1抗体力価はELISAにより決定した。(
図4A)。ウイルスタンパク質に対する抗体力価も免疫の参照として調べた(
図4B)。Gal-1 VLPを受けたマウスは、異なるマウス系統で先に観察されたように、抗マウスGal-1抗体を産生した。異なる2つのGal-1 VLPで免疫したマウスは、IgG2a抗マウスGal-1抗体を優先的に発現した(
図4C)。
【0135】
ルイス肺癌細胞を15日目に皮下接種し、腫瘍増殖をモニタリングした。対照群とVLP処置群との間に腫瘍容量(
図5A~D)およびエンドポイント腫瘍重量(
図5E)に統計学的に有意な差はなかったが、Gal-1 #12で処置したマウスの腫瘍増殖は他の群の腫瘍増殖よりも遅かった。
【0136】
マウスHPV+頭頸部扁平上皮(Square)癌細胞モデルに対するGal-1ワクチンの効果を調べた。Gal-1 #14VLPワクチンで処置したマウスの腫瘍増殖は、対照の腫瘍増殖よりも遅かったが、いずれの群間でも統計学的に有意な差はなかった(
図6Aおよび6B)。
[実施例4]
【0137】
Gal-3抗原を有するVLPの調製
材料および方法
ガレクチン3(Gal-3)エピトープペプチドを、ヒトおよびマウスのGal-3タンパク質のタンパク質のアミノ酸配列ならびに3D構造を使用することによって設計した(表2)。哺乳動物発現ベクター、pVEEV Gal-3プラスミドDNAベクターの生成の場合、Gal-3エピトープペプチド配列(gBlocks、IDT)の合成dsDNA断片を、pVEEVベクター内のVEEV E3エンベロープタンパク質をコードするDNAの特定の位置に挿入した(330位にてのGと335位にてのSの間)。Gal-1エピトープペプチドの挿入が全くないpVEEVベクターを対照VLP発現ベクターとして使用した。
【0138】
FreeStyle 293F細胞(Thermo Fisher Scientific、#R790-07)を、振盪インキュベーターを使用して、8%CO2で、37℃でFreeStyle 293 Expression培地(Thermo Fisher Scientific、#12338-018)を含む懸濁液中で培養した。293F細胞に、pVEEV Gal-3 VLPまたは対照プラスミドDNA発現ベクターを、PEI(ポリエチレンイミン、Polysciences、#23966)により、DNA 0.8μg/106個の細胞、DNA:PEI=1:3(w/w)、および1.25×106個の細胞/培養培地1mLの条件で、トランスフェクトした。培養上清を、トランスフェクションの4日後に回収し、遠心分離(3,000rpm、10分間)によって、これに続いて0.45μm PESメンブレンフィルターシステム(VWR #10040-470)での濾過によって、清澄化した。
【0139】
VLP含有培養上清をOptiPrep(60%w/v)(Iodixanol、Accurate Chemical、#AN1114542)1.5mL上へと重ね、SW-28ローター(Beckmann)で52,000×gで1.5時間遠心分離した。界面の上に1.5mLを残すように上清を取り除いた後、2つの層を混合して50%OptiPrep溶液を作製し、NVT100ローター(Beckman)で360,000×gで2.5時間遠心分離して密度勾配を形成した。
【0140】
粗VLPを収集し、HiPrep 16/60 Sephacryl S-500 HRカラム(GE、#28-9356-06)を備えたBiologic Duo-Flow FPLCシステム(Bio-Rad)およびリン酸緩衝食塩水(PBS)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。VLPを含有する画分をAmicon Ultra-15遠心フィルターユニット(EMD Millipore、#UFC910024)によって濃縮し、0.20μmのPESメンブレンを通して濾過した。
【0141】
総タンパク質濃度を、製造業者の取扱説明書に従ってBCA Protein Assay(Pierce、#23225)によって測定した。VLP試料の純度を、SDS-PAGE分析(Any kD Mini-PROTEAN TGX Precast Protein Gel、Bio-Rad、#456-9035)、これに続いて、QC Colloidal Coomassie Stain(Bio-Rad、#1610803)を使用するクマシー色素ベースの染色によって確認した。スクロースおよびEDTAを、それぞれ最終濃度250mMおよび5mMへとVLP溶液に添加した。VLP試料のタンパク質濃度を0.4mg/mLに調整し、-80℃で保存した。
【0142】
【表2】
Gal-3エピトープペプチドを含むVEEV VLPおよび対照VEEV VLPの分子サイズと純度を、変性条件下でSDS-PAGEによって分析した(
図7)。VLP全試料が理論上の分子量と一致し、純度は90%を超えていた。50~75kDaの間のタンパク質バンドは、VEEVウイルス構造タンパク質との融合タンパク質Gal-3ペプチドであり、サイズの変形形態はペプチドの長さ次第である。
[実施例5]
【0143】
マウス免疫原性研究
材料および方法
免疫試料の調製の場合、VLP溶液を解凍し、Alhydrogelアジュバント(10mg/mlのアルミニウム、Brenntag、#250-843261、バッチ#5014)と1:1(v/v)で混合した。マウス(8週齢の雌性、BALB/c、Envigo)に、0.05mL中の10ug(タンパク質)を大腿部に筋肉内で1日目、4日目、および8日目に、注射した。血液試料を、0日目および15日目に顎下静脈を介して、29日目に心臓穿刺により採取した。動物の取り扱い、免疫、採血、血清の調製は、動物実験委員会のガイドラインに準じて、Smithers Avanza Toxicology Service(Gaithersburg、MD)で実行した。全血試料をSerum Separation Tube(Greiner、#450472)に採取し、1,200×gで5分間遠心分離して血清を分離した。採取血清は解析まで-20度で保存した。
【0144】
ELISAアッセイ
Gal-3特異的血清抗体力価を間接ELISAによって決定した。免疫アッセイプレート(Thermo Fisher Scientific、Maxisorp、#442404)を、組換えヒトまたはマウスのガレクチン-3タンパク質(GA3-H5129、AcroBioscience and #599806、Biolegend)のPBS 100uL(500ng/mL)で4度で一晩コーティングした。TBS-Tでリンス後、ウェルをブロッキング緩衝剤(TBS-T中の5%スキムミルク)350uLで室温で1時間ブロックした。ウェルをTBS-Tで3回洗浄した。マウス血清を1:50に希釈し、ブロッキング緩衝剤で最終希釈率1:781,250へと1:5でさらに連続希釈した。希釈血清をコーティングウェル中で室温で1時間インキュベートした。ウェルをTBS-T 400uLで5回洗浄し、HRP標識抗マウスIgG+M+A抗体(Thermo Fisher、#PA1-84388)とともに室温で30分間さらにインキュベートした。プレートウェルをTBS-Tで5回洗浄し、HRP基質(SureBlue(商標)TMB 1-Component Microwell Peroxidase Substrate、Sera Care、#5120-0076)100uLとともにインキュベートした。反応を停止溶液100uLで停止させ、マイクロプレートリーダー(Synergy/HTX、BioTek)によって450nmの吸光度を測定した。データを、Microsoft Excel(Microsoft)およびGraphPad Prism 8.0(GraphPad Software)を使用して解析した。マウス血清のエンドポイント力価は、そのODがアッセイ対照+対照の3×SDよりも高い最高の希釈によって決定した。
【0145】
結果
ナイーブBALB/cマウスにおけるGal-3 VLPの免疫原性を、ELISAによって決定した。第1の注射の4週間後、Gal-3 VLPで免疫したマウス血清中の抗ヒトおよび抗マウスのガレクチン-3抗体を、組換えマウスまたはヒトのGal-3タンパク質を使用して解析した。結果を
図8に示す。Gal-3 VLP #17はヒトN末端Gal-3エピトープペプチドからなり、抗マウスGal-3よりも多くの抗ヒトGal-3抗体を誘導した。対照的に、Gal-3 VLP #23は、マウスGal-3N末端ペプチドをコードし、抗ヒトGal-3抗体よりも多くの抗マウスGal-3抗体を誘導した。Gal-3 VLP #21および22はヒトGal-3N末端反復配列エピトープペプチドからなり、#22は#21の反復配列よりも長い反復配列を有する。
[実施例6]
【0146】
細胞表面Gal-3に結合する血清抗体のフローサイトメトリー解析
材料および方法
293F細胞(FreeStyle 293培養培地中で2×106個の細胞/mL)を組換えヒトガレクチン-3(30μg/mL)とともに室温で30分間インキュベートした。細胞を遠心沈殿させ、細胞培養培地で2回洗浄した。ペレット化した細胞をFC染色緩衝剤(PBS中5%FBS)に再懸濁し、100μLを96ウェルV底プレートに移した。プレートを800×gで遠心分離して細胞をペレット化し、上清を廃棄した。5匹のマウスの血清をプールし、FC染色緩衝剤を用いて1:250で希釈した。希釈血清を、Gal-3処理の有り無し両方で、ペレット化した細胞を有するウェルに添加した。細胞をピペッティングにより再懸濁し、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を沈殿させ、FC染色緩衝剤に再懸濁して細胞を洗浄した。洗浄工程を2回繰り返し、細胞をAlexa 488標識ヤギ抗マウスIgG+M抗体(Invitrogen、1:500倍希釈)に再懸濁し、遮光して室温で30分間インキュベートする。細胞をFC染色緩衝剤で2回洗浄した。細胞をFC染色緩衝剤200μLに再懸濁し、フローサイトメーター(Attune Acoustic Focusing Flow Cytometer、Thermo Fisher)によって解析した。
【0147】
結果
細胞表面Gal-3タンパク質への抗Gal-3抗体の認識および結合についてフローサイトメトリー解析によって調べた。293F細胞におけるGal-3タンパク質の内因性発現は、ウェスタンブロッティング分析によっては検出可能ではなかった。293F細胞の単一細胞懸濁液を組換えヒトGal-3タンパク質とともにインキュベートし、次いで3回洗浄して未結合のタンパク質を取り除いた。Gal-3 VLP免疫の血清をブロッキング緩衝剤で希釈し、これに蛍光標識抗マウスIgG+Mが続いた。対照VLPで免疫したマウス血清を対照として使用した。Gal-3 #17および#22で免疫したマウスの血清は両方とも、Gal-3処理細胞に結合した。(
図9)
[実施例7]
【0148】
プルダウンアッセイ
材料および方法
免疫マウス血清20μL、マウス抗Gal-3モノクローナル抗体(cl.B2C10、Santa Cruz)20μg、またはマウス対照IgG(Biolegend)20μgをPBSで1mLに希釈し、Protein G magnetic beads(GenScript)40μLとともにローテーター上で室温で1時間インキュベートした。ビーズを磁気ラック上でPBSで3回洗浄する。コーティング磁気ビーズを、50mMラクトースの存在下または非存在下で組換えヒトGal-3溶液(2ug/mL)1mLに再懸濁し、ローテーター上で室温で1時間インキュベートした。次いで、ビーズをPBSで3回洗浄し、2-メルカプトエタノール含有の1×Laemmli SDS-PAGE試料緩衝剤50μLとともに煮沸した。試料をSDS-PAGEにより分離させ、PVDFメンブレンに転写した。Gal-3タンパク質を、抗Gal-3モノクローナル抗体(cl.Gal397、BioLegend)およびHRP標識抗マウスIgGを用いてプローブした。メンブレンをClarity Western ECL Substrate(Bio-Rad)とともにインキュベートし、ChemiDoc XRS+イメージングシステム(Bio-Rad)によって画像をとらえた。
【0149】
結果
Gal-3 VLPワクチンにより誘導された抗Gal-3抗体の中和能をプルダウンアッセイによって調べた。溶液中の浮遊組換えGal-3タンパク質を、プロテインG磁気ビーズに連結した抗Gal-3抗体によって捕捉した。Gal-3タンパク質は、モノクローナルGal-3抗体B2C10およびGal-3 VLPワクチン接種マウス由来の抗血清でプルダウンされたが、対照VLPにおいてはプルダウンされなかった。Gal-3 VLPは、Gal-3タンパク質の膜結合型および浮遊型を認識する高力価抗Gal-3抗体を効果的に誘導した。(
図10)
[実施例8]
【0150】
マウスNASHモデル
材料および方法
C57BL/6マウス(妊娠14日の雌性)を日本エスエルシー株式会社(日本)から入手した。研究で使用する動物は全て、動物使用に関する日本薬学協会ガイドラインに準じて収容し維持した。動物については、温度(23±2℃)、湿度(45±10%)、照明(12時間の人工の明暗サイクル;8:00から20:00まで明)および換気の制御条件下で、SPF施設内で飼育した。
【0151】
NASHについては、生後2日でストレプトゾトシン(STZ、Sigma-Aldrich、米国)200μgの溶液の単回皮下注射および4週齢後に高脂肪飼料(HFD、57kcal%脂肪、Cat#HFD32、日本クレア株式会社、日本)を給餌することによって25匹の雄性マウスにおいて誘導した。Gal-3 VLP、対照VLPおよびビヒクルを50μL/1体の容量で筋肉内(大腿)投与した。注射の脚を毎回変更して、局所的炎症を回避した。生存、臨床徴候および挙動を毎日モニタリングした。処置前に体重を記録した。マウスを、各投与の約60分後に毒性、瀕死状態および死亡の顕著な臨床徴候について観察した。動物を、イソフルラン麻酔(Pfizer Inc.)下で、直接心臓穿刺による放血によって9週齢で屠殺した。
【0152】
血清試料については、非絶食の血液を、顔面静脈から抗凝固剤無しの血清セパレートチューブに15日目(6週齢)に採取した。採取血液を4℃、3,500×gで5分間遠心分離した。上清20μLを採取し、生化学用に-80℃で保存した。血清ALTレベルを、FUJI DRI-CHEM 7000(富士フイルム株式会社、日本)により測定した。HE染色については、切片を、ブアン液で前固定した肝臓組織のパラフィンブロックから切り出し、Lillie-Mayer’s Hematoxylin(武藤化学株式会社、日本)およびエオシン溶液(富士フイルム和光純薬株式会社)で染色した。統計学的解析を、Bonferroni Multiple Comparison Test on GraphPad Prism 6(GraphPad Software Inc.、米国)を使用して実施した。P値<0.05を統計学的に有意であるとした。傾向(trend)または傾向(tendency)については、片側t検定がP値<0.1を返した場合に想定した。結果は平均値±SDとして表した。
【0153】
結果
Gal-3 VLPワクチンによるGal-3阻害の効果を、マウスSTAM非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルで調べた。STZで処置され、高脂肪食を給餌されたマウスは、6~8週齢で非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)およびNASHを発生する。対照またはGal-3 VLPで処置されたマウスは、4週齢で開始し、最初の週で3回、次いで8週齢まで毎週、合計6回の注射であった。
【0154】
任意の2つの群間で観察された、体重変化、エンドポイントの肝臓重量および腎臓重量において有意な差はなかった。群5の1匹のマウスが研究日23に死亡しているのが見出されたが、これは事故死と思われ、処置の毒性とは関係ない。研究のエンドポイントに、肝臓損傷の一般的なマーカーとして血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルを測定した。研究ラットのALTレベルは正常レベルのそれ(17.5~30.2U/L)(Johnson-Delaney 1996)よりも高い。いずれの群間でもALTに有意な差はなかった。NASH疾患の進行に対するGal-3ワクチンの効果を評価するために、Kleinerの基準に従ってNAFLD活性スコア(NAS)を算出した(Kleiner, et al. 2005)。脂肪変性、小葉の炎症、および肝細胞の風船様変性におけるNASについて、異なる3つの要素評価がある(表3、
図11A~C)。NASHモデルでの研究からのH&E染色肝臓切片をスコア化し解析した(表4)。ビヒクル群からの肝臓切片は、微小胞および大胞の脂肪の沈着、肝細胞の風船様変性、および炎症性細胞の浸潤を呈した。対照VLP群およびGal-3 #23 VLP群のNASは、ビヒクル群と比較して低下する傾向があった(
図11、表4)。とりわけ肝細胞において、風船様変性スコアは、VLPワクチンにより低下した。参加したいずれの群間でも、総NASスコアには統計学的に有意な差はなかったが、対照VLPまたはGal-3ワクチンで処置した群において風船様変性スコアがより低い傾向が観察された。
【0155】
【0156】
【配列表】
【国際調査報告】