(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-09
(54)【発明の名称】複雑に湾曲したガラス物品およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/035 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
C03B23/035
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566572
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 US2022025696
(87)【国際公開番号】W WO2022231933
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ダノー,ティエリー リュック アラン
(72)【発明者】
【氏名】デデュー,シリル レミ アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】プレシエ,ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】スコッタ,フェリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】タンギー,ローナン
(72)【発明者】
【氏名】ユィ,チャオ
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015AA13
4G015AB01
4G015AB03
4G015AB05
4G015AB10
(57)【要約】
複雑に湾曲したガラス物品およびその形成方法が、ここに記載されている。ここに記載されたガラス物品は、それに真空圧力を適用することによって、再成形されることがある。そのガラス物品は、第1の曲面および第2の曲面により画成される第1の展開不可能な湾曲形状を有する第1のガラス層を含むことがある。第1の曲面および第2の曲面の少なくとも一方は、60,000mm2以上の表面積を有する。そのガラス物品の厚さは、1000mm2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有することがある。展開不可能な湾曲形状は、第1の曲面と第2の曲面との間に配置された仮想中心面と、仮想面との間で測定される、3.0%以上の最大圧縮歪み形状パラメータを有することがある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再成形されたガラス物品であって、
第1の曲面および第2の曲面により画成された第1の展開不可能な湾曲形状を有する第1のガラス層、
を含み、
前記第1の曲面および前記第2の曲面の少なくとも一方は、60,000mm
2以上の表面積を有し、
前記第1の曲面に垂直な方向の該第1の曲面と前記第2の曲面との間の距離として測定される、前記第1のガラス層の厚さは、該第1の曲面上の1000mm
2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有し、
前記第1の展開不可能な湾曲形状は、3.0%以上の、前記第1の曲面と前記第2の曲面との間に配置された仮想中心面と、仮想面との間で測定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する、再成形されたガラス物品。
【請求項2】
前記湾曲形状が、絶対値で300ミリジオプター未満の前記厚さを通じて測定された屈折力歪みを有し、該屈折力歪みは、DIN 52305:1995にしたがって測定される、請求項1記載の再成形されたガラス物品。
【請求項3】
前記第1の曲面および前記第2の曲面の一方が、100mm
2の凸表面積当たり10未満のディンプルの測定可能ディンプル密度を有する凸曲面であり、測定可能なディンプルが1mm超の有効径を有する、請求項1または2記載の再成形されたガラス物品。
【請求項4】
(a)前記再成形されたガラス物品が、前記仮想面に平行に延在する第1の方向に測定される長さ(L)、および該仮想面に平行であり、該第1の方向に垂直に延在する第2の方向に測定される幅(W)を有し、
前記仮想中心面は、平均ガウス曲率κを有し、
である、または
(b)前記再成形されたガラス物品の外縁が、実質的に円形であり、該外縁に沿った2点間の最大距離を表す直径Dを有し、
前記仮想中心面は平均ガウス曲率κを有し、
0.0354*κ*D
2≧3.0%
である、
の一方である、請求項1または2記載の再成形されたガラス物品。
【請求項5】
前記第1のガラス層上に配置された第2のガラス層であって、第3の曲面および第4の曲面により画成された第2の展開不可能な湾曲形状を有する第2のガラス層、
をさらに含み、
前記第3の曲面および前記第4の曲面の少なくとも一方は、60,000mm
2以上の表面積を有し、
前記第1の曲面に垂直な方向の該第1の曲面と前記第2の曲面との間の距離として測定される、前記第2のガラス層の厚さは、該第1の曲面上の1000mm
2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有し、
前記第2の展開不可能な湾曲形状は、3.0%以上の、前記第3の曲面と前記第4の曲面との間に配置された第2の仮想中心面と、仮想面との間で測定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する、請求項1または2記載の再成形されたガラス物品。
【請求項6】
湾曲したガラス物品を形成する方法において、
第1のガラスシートを、真空キャビティを少なくとも部分的に画成する真空金型の上に配置する工程であって、該第1のガラスシートが、該真空金型の上面または該真空キャビティの周りに配置されたフレームと接触するように、該第1のガラスシートが該真空金型上に配置され、前記上面は、その中に形成された1つ以上の真空開口を含む、工程、
前記第1のガラスシートを再成形温度に加熱する工程、
前記第1のガラスシートの1つ以上の第1の部分が前記1つ以上の真空開口に引き込まれるように該1つ以上の真空開口に真空圧力を適用する工程、および
前記第1のガラスシートの第2の部分が前記真空キャビティに引き込まれるように該真空キャビティに真空圧力を適用する工程、
を含み、
前記1つ以上の真空開口が複数の真空開口を含み、前記ガラスシートの複数の第1の部分が前記複数の真空開口に引き込まれるように、該複数の真空開口に真空圧力が適用される、方法。
【請求項7】
前記上面が外周エッジを含み、
前記ガラスシートが周囲部分を含み、
前記ガラスシートが、前記周囲部分が前記外周エッジから外側に延在するように前記真空金型の上に配置され、
前記ガラスシートを前記再成形温度に加熱することにより、該ガラスシートの周囲部分が前記フレームの外周エッジの周りに折り曲がる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ガラスシートが、該ガラスシートを再成形する前に測定された厚さを有し、前記複数の真空開口が、有効径を有する貫通孔を含み、該複数の真空開口は、前記真空キャビティの周りに半径方向に間隔が空けられ、間隔距離だけ互いから間隔が空けられ、該間隔距離は、前記有効径以上かつ該有効径の3倍以下である、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
前記ガラスシートの前記第2の部分が、該ガラスシートの再成形前の初期厚さ(t1)および該ガラスシートの再成形後の最終厚さ(t2)を有し、t1/t2が1.1から2に及ぶ、請求項6または7記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、複数のガラスシートを前記真空金型の上に配置すると同時に、該複数のガラスシートを再成形する工程を含み、前記複数のガラスシートが、前記上面と接触した底部ガラス層および該底部ガラス層上に配置された上部ガラス層を、該底部ガラス層が該上部ガラス層と該上面との間に配置されるように含み、前記方法が、前記複数のガラスシートを前記真空金型の上に配置する前に、前記底部ガラス層に複数の真空ビアを形成する工程をさらに含み、
前記真空キャビティが、金型表面および該金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む金型により画成され、
前記金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、および該中央表面領域に隣接し、該第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域を含み、
前記方法は、前記加熱する工程および前記真空圧力を適用する工程の後、前記複数のガラスシートから過剰の材料を除去する工程をさらに含み、該除去する工程は、加熱中に、前記周囲表面領域と前記中央表面領域との間の境界に配置された該複数のガラス層の輪郭に沿って行われ、
前記加熱する工程および前記真空圧力を適用する工程の後、前記複数の真空ビアが前記周囲表面領域上の前記境界の外側に配置されるように、前記複数のガラスシートが前記金型上に配置され、前記複数の真空ビアが、前記加熱する工程および前記真空圧力を適用する工程の後、前記1つ以上の真空孔の内の1つを通じて延在する中心軸を有する、請求項6または7記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その各々の内容がここに全て引用される、2021年4月29日に出願された米国仮特許出願第63/181582号、2021年12月7日に出願された米国仮特許出願第63/286734号、2021年12月7日に出願された米国仮特許出願第63/286748号、および2022年3月2日に出願された米国仮特許出願第63/315558号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、様々な業界、例えば、家庭用電化製品、電気製品、輸送、建築、防衛、および医薬の業界に使用するための物品の真空成形に関する。詳しくは、本開示は、展開不可能な形状を有するガラス物品の真空成形および展開不可能な形状を有する結果としての真空成形されたガラス物品に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの製品は、三次元(3D)ガラス物品を備えている。物品のいくつかの例に、湾曲したLCDまたはLEDテレビ画面、スマートフォン、および窓を含む3Dガラス物品がある。製品の形状における革新により、望ましい耐引掻性および耐衝撃性と共に、優れた光学的性質を有するべきである3D部品、特に、ガラスから作られた3D部品の製造過程に新たな難題がもたらされた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、複雑な形状および望ましい光学的性質と機械的性質を有する3D物品、特に3Dガラス物品を製造する方法が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、真空圧力を使用した、材料のシート、特にガラスシートの再成形(reforming)に関する。ここに記載された真空再成形方法は、ガラスシートを、皺や破損箇所がなく、展開不可能な形状に再成形することができる。ここに記載された実施の形態では、真空気密シールを作り出し、再成形中にガラスシートを適所に保持するために真空圧力が利用される。再成形中にガラスシートを保持するために真空圧力を利用することによって、そのガラスシートは、再成形中、冷却中、および離型中に、自由に動き、変形することができる。ガラスシートのこの自由な動きにより、ガラスシートに望ましくない応力(光学的歪みやガラスの破損をもたらし得る)を導入せずに、ガラスシートを展開不可能な形状に再成形するのが容易になる。
【0006】
本出願の第1の態様(1)は、ガラスシートを再成形する方法において、真空キャビティ、およびその真空キャビティの周りに配置されたフレームを備え、1つ以上の真空開口が形成された上面を有する真空金型の上にガラスシートを配置する工程;ガラスシートを再成形温度に加熱する工程;ガラスシートの1つ以上の第1の部分が1つ以上の真空開口に引き込まれるようにその1つ以上の真空開口に真空圧力を適用する工程;およびガラスシートの第2の部分が真空キャビティに引き込まれるように真空キャビティに真空圧力を適用する工程を含む方法に関する。
【0007】
第2の態様(2)において、第1の態様(1)による上面は、外周エッジを含み得、ガラスシートは、フレームの外周エッジから外側に広がる外周部分を含み得る。
【0008】
第3の態様(3)において、第2の態様(2)によるガラスシートを再成形温度に加熱する工程により、ガラスシートの外周部分がフレームの外周エッジの周りに折り曲がり得る。
【0009】
第4の態様(4)において、第2の態様(2)または第3の態様(3)によるガラスシートは、第1の外周を含む外周形状を有し得、外周エッジは、第2の外周を含む形状を有し、第1の外周は第2の外周より大きい。
【0010】
第5の態様(5)において、態様(1)~(4)のいずれか1つによる1つ以上の真空開口は、複数の真空開口を含み得、ガラスシートの複数の第1の部分が複数の真空開口に引き込まれるように、真空圧力が複数の真空開口に適用される。
【0011】
第6の態様(6)において、第5の態様(5)によるガラスシートは、ガラスシートを再成形する前に測定された厚さを有し得、複数の真空開口は、有効径を有する貫通孔を含み、貫通孔の有効径は、ガラスシートの厚さより10から15倍大きい。
【0012】
第7の態様(7)において、第6の態様(6)によるガラスシートの厚さは、0.5ミリメートルから10ミリメートルに及び得、貫通孔の有効径は5ミリメートルから120ミリメートルに及び得る。
【0013】
第8の態様(8)において、第6の態様(6)によるガラスシートの厚さは、0.5ミリメートルから5ミリメートルに及び得、貫通孔の有効径は10ミリメートルから50ミリメートルに及び得る。
【0014】
第9の態様(9)において、態様(5)~(8)のいずれか1つによる複数の真空開口は、有効径を有する貫通孔を含み得、その複数の真空開口は、真空キャビティの周りに半径方向に間隔が空けられ、間隔距離だけ互いから間隔が空けられ、その間隔距離は、有効径以上かつ有効径の三倍以下である。
【0015】
第10の態様(10)において、態様(1)~(9)のいずれか1つによるガラスシートは、ガラスシートの再成形中に、フレームの上面に機械的に固定されていない。
【0016】
第11の態様(11)において、態様(1)~(10)のいずれか1つによるガラスシートの第2の部分は、ガラスシートの再成形前の初期厚さ(t1)およびガラスシートの再成形後の最終厚さ(t2)を有し得、ここで、t1/t2は1.1から2に及ぶ。
【0017】
第12の態様(12)において、態様(1)~(11)のいずれか1つによる方法で、真空キャビティに真空圧力が適用される前に、1つ以上の真空開口に真空圧力が適用され得る。
【0018】
第13の態様(13)において、態様(1)~(12)のいずれか1つによる方法で、第1の真空源により真空キャビティに真空圧力が適用され、第2の真空源により1つ以上の真空開口に真空圧力が適用される。
【0019】
第14の態様(14)において、態様(1)~(13)のいずれか1つによるフレームは、真空室を画成する真空箱に連結され得、真空キャビティは真空室内に配置された金型により画成される。
【0020】
第15の態様(15)において、態様(1)~(14)のいずれか1つによる真空キャビティは、金型表面およびその金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む金型により画成され得る。
【0021】
第16の態様(16)において、第15の態様(15)による金型表面は、グラファイト、窒化ホウ素、シリカスート、炭酸カルシウム、炭素スート、二硫化モリブデン、および二硫化タングステンからなる群より選択される材料から作ることができる。
【0022】
第17の態様(17)において、第15の態様(15)または第16の態様(16)による方法で、金型表面は、第1の熱膨張係数を有する第1の材料から作ることができ、ガラスシートは、第2の熱膨張係数を有する第2の材料から作ることができ、フレームの上面は、第3の熱膨張係数を有する第3の材料から作ることができ、第3の熱膨張係数は第2の熱膨張係数より大きく、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数より大きい。
【0023】
第18の態様(18)において、態様(15)~(17)のいずれか1つによる方法で、真空キャビティに真空圧力を適用することにより、ガラスシートの第2の部分が金型の金型表面に接触するまで引き寄せられる。
【0024】
第19の態様(19)において、態様(1)~(18)のいずれか1つによる再成形方法は、真空金型の上に複数のガラスシートを配置すると同時に、その複数のガラスシートを再成形する工程を含み得る。
【0025】
第20の態様(20)において、態様(1)~(19)のいずれか1つによるガラスシートは、上部ガラス層および底部ガラス層を含み得、前記方法は、ガラスシートを再成形した後に底部ガラス層を取り除く工程をさらに含む。
【0026】
第21の態様(21)において、第20の態様(20)による底部ガラス層は、エッチング過程を使用して取り除くことができる。
【0027】
本出願の第22の態様(22)は、ガラスシートを再成形するための装置において、真空キャビティ;真空キャビティの周りに配置され、上面を有する上部壁、および1つ以上の真空開口を含むフレームであって、各真空開口は、上部壁に形成された貫通孔および貫通孔より垂直下方に配置され、貫通孔の中心軸と交差する停止壁を含む、フレーム;および真空キャビティおよび1つ以上の真空開口と流体連通した1つ以上の真空下を備えた装置に関する。
【0028】
第23の態様(23)において、第22の態様(22)による貫通孔は、有効径を有し得、停止壁の上面は、ある深さだけ上部壁の上面から垂直に間隔が空けられ、その深さは有効径の半分以下である。
【0029】
第24の態様(24)において、第22の態様(22)または第23の態様(23)による1つ以上の真空源は、真空キャビティと流体連通した第1の真空源および1つ以上の真空孔と流体連通した第2の真空源を含み得る。
【0030】
第25の態様(25)において、態様(22)~(24)のいずれか1つによる1つ以上の真空開口は、真空キャビティの周りに半径方向に配置された複数の真空開口を含み得る。
【0031】
本出願の第26の態様(26)は、凸曲面および凹曲面により画成された展開不可能な湾曲形状を有する再成形されたガラス物品であって、その湾曲形状は、60,000mm2以上の凸表面積;凸曲面と凹曲面との間で測定される厚さ;100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性;および1%未満の最大圧縮歪みを有する、ガラス物品に関する。
【0032】
第27の態様(27)において、第26の態様(26)による湾曲形状は、絶対値で300ミリジオプター未満の厚さを通じて測定された屈折力歪み(optical power distortion)を有し得、その屈折力歪みは、DIN 52305:1995にしたがって測定される。
【0033】
本出願の第28の態様(28)は、ガラスシートを再成形するための装置において、金型表面およびその金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む真空キャビティと、その真空キャビティの周りに配置されたフレームであって、上面およびその上面に形成された複数の真空開口を有するフレームとを備えたモノリス真空金型;1つ以上の真空孔と流体連通した第1の真空源;および複数の真空開口と流体連通した第2の真空源を含む装置に関する。
【0034】
第29の態様(29)において、第28の態様(28)によるフレームは、上面に形成され、複数の真空開口と流体接続した通路をさらに含み得る。
【0035】
第30の態様(30)において、第29の態様(29)による通路は、各通路部分が上面に接続された上縁を有する、2つの隣接する真空開口を接続する複数の通路部分、および通路の上縁から底面まで延在する側壁を含み得、その側壁は、通路の底面に垂直な軸に対して測定された、5°から20°の範囲の傾斜度を有する。
【0036】
第31の態様(31)において、第29の態様(29)または第30の態様(30)による複数の真空開口の各々は底面を備えることがあり得、前記通路は、複数の真空開口の各々に広がる第1の部分および複数の真空開口の各々の底面より下に配置された第2の部分を含む。
【0037】
第32の態様(32)において、態様(28)~(31)のいずれか1つによる複数の真空開口は、上面に接続された上部周囲エッジおよびその上部周囲エッジから真空開口の底面まで延在する周囲側壁を含み得、その周囲側壁は、真空開口の底面に垂直な軸に対して測定された、5°から20°の範囲の傾斜度を有する。
【0038】
第33の態様(33)において、態様(28)~(32)のいずれか1つによるフレームの上面は、外周エッジおよびその外周エッジに位置する隆起部を含み得、その隆起部は、隆起部に直接隣接した上面の一部に対して測定された、0.3mmから2mmの範囲の高さを有する。
【0039】
第34の態様(34)において、態様(28)~(33)のいずれか1つによる金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、およびその中央表面領域に隣接し、第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域を含み得る。
【0040】
第35の態様(35)において、第34の態様(34)による第2の最大曲率半径は、第1の最大曲率半径より少なくとも5%小さいことがあり得る。
【0041】
第36の態様(36)において、第34の態様(34)または第35の態様(35)による中央表面領域は、60,000mm2以上の表面積を有し得る。
【0042】
第37の態様(37)において、態様(34)~(36)のいずれか1つによる金型表面は、その金型表面に形成され、中央表面領域を周囲表面領域から区分するスロットを含み得る。
【0043】
第38の態様(38)において、第37の態様(37)によるスロットは、1mmから4mmの範囲の幅および1mm以下の深さを有し得る。
【0044】
第39の態様(39)において、態様(34)~(38)のいずれか1つによる1つ以上の真空孔は、周囲表面領域に形成され得る。
【0045】
第40の態様(40)において、態様(34)~(39)のいずれか1つによる装置の中央表面領域に真空孔は形成されていない。
【0046】
第41の態様(41)において、態様(28)~(40)のいずれか1つによる金型表面は、隆起ディンプルおよび接触センサからなる群より選択される接触インジケータを含み得る。
【0047】
第42の態様(42)において、第41の態様(41)による金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、およびその中央表面領域に隣接し、第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域を含み得、接触インジケータは周囲表面領域に位置している。
【0048】
第43の態様(43)において、態様(28)~(42)のいずれか1つによる装置は、金型表面と反対の金型の底面と接触した冷却ブロックを含み得る。
【0049】
第44の態様(44)において、第43の態様(43)による金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、およびその中央表面領域に隣接し、第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域を含み得、冷却ブロックは、中央表面領域と反対の金型の底面と接触している。
【0050】
本出願の第45の態様(45)は、ガラスシートを再成形する方法において、ガラスシートの複数の第1の部分が真空金型の上面に形成された複数の真空開口の上に配置され、ガラスシートの第2の部分が真空金型の真空キャビティの上に配置されるように、態様(28)~(44)のいずれか1つによるモノリス真空金型の上にガラスシートを配置する工程;ガラスシートを再成形温度に加熱する工程;ガラスシートの複数の第1の部分が複数の真空開口に引き込まれるようにその複数の真空開口に真空圧力を適用する工程;およびガラスシートの第2の部分が真空キャビティに引き込まれるように真空キャビティに真空圧力を適用する工程を含む方法に関する。
【0051】
第46の態様(46)において、第45の態様(45)による真空金型のフレームは、上面に形成された通路を含み得、その通路は複数の真空開口に流体接続し、複数の真空開口に真空圧力を適用するすることにより、ガラスシートの第3の部分が通路に引き込まれる。
【0052】
第47の態様(47)において、第45の態様(45)または第46の態様(46)による真空金型の上面は、外周エッジを含み得、ガラスシートは、ガラスシートが真空金型の上に配置されたときに、フレームの外周エッジから外側に延在する複数の周囲部分を含み得る。
【0053】
第48の態様(48)において、第47の態様(47)による方法で、ガラスシートを再成形温度に加熱すると、ガラスシートの周囲部分がフレームの外周エッジの周りに折り曲がり得る。
【0054】
第49の態様(49)において、態様(45)~(48)のいずれか1つによるガラスシートは、そのガラスシートの再成形中に、フレームの上面に機械的に固定されていない。
【0055】
第50の態様(50)において、 態様(45)~(49)のいずれか1つによる方法で、真空キャビティに真空圧力が適用される前に、複数の真空開口に真空圧力が適用され得る。
【0056】
第51の態様(51)において、態様(45)~(50)のいずれか1つによる方法で、第1の真空源は、真空キャビティに真空圧力を適用することができ、第2の真空源は、1つ以上の真空開口に真空圧力を適用することができる。
【0057】
第52の態様(52)において、態様(45)~(51)のいずれか1つによる方法で真空キャビティに真空圧力を適用すると、ガラスシートの第2の部分が金型の金型表面に接触するまで引き寄せられ得る。
【0058】
第53の態様(53)において、態様(45)~(52)のいずれか1つによる金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、およびその中央表面領域に隣接し、第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有し得、その中央表面領域の表面温度は、再成形中に第1の最高温度を有し、周囲表面領域は、再成形中に第2の最高温度を有し、第1の最高温度は第2の最高温度より20℃から50℃低い。
【0059】
本出願の第54の態様(54)は、凸曲面および凹曲面により画成された展開不可能な湾曲形状を有する再成形されたガラス物品であって、その湾曲形状は、60,000mm2以上の凸表面積;凸曲面と凹曲面との間で測定される厚さ;100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性;1%未満の最大圧縮歪み;および測定可能なディンプルが1mm超の有効径を有する場合、100mm2の凸表面積当たり10未満のディンプルの凸曲面測定可能ディンプル密度を有する、再成形されたガラス物品に関する。
【0060】
第55の態様(55)において、第54の態様(54)による湾曲形状は、絶対値で300ミリジオプター未満の厚さを通じて測定された屈折力歪みを有し得、その屈折力歪みは、DIN 52305:1995にしたがって測定される。
【0061】
本開示の第56の態様(56)は、第1の曲面および第2の曲面により画成された第1の展開不可能な湾曲形状を有する第1のガラス層を含む、再成形されたガラス物品であって、第1の曲面および第2の曲面の少なくとも一方は、60,000mm2以上の表面積を有し;第1の曲面に垂直な方向の第1の曲面と第2の曲面との間の距離として測定される、第1のガラス層の厚さは、第1の曲面上の1000mm2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有し;第1の展開不可能な湾曲形状は、3.0%以上の、第1の曲面と第2の曲面との間に配置された仮想中心面と、仮想面との間で測定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する、再成形されたガラス物品に関する。
【0062】
本開示の第57の態様(57)は、湾曲形状が、絶対値で300ミリジオプター未満の厚さを通じて測定された屈折力歪みを有し、その屈折力歪みは、DIN 52305:1995にしたがって測定される、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0063】
本開示の第58の態様(58)は、第1の曲面および第2の曲面の一方が、100mm2の凸表面積当たり10未満のディンプルの測定可能ディンプル密度を有する凸曲面であり、測定可能なディンプルが1mm超の有効径を有する、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0064】
本開示の第59の態様(59)は、厚さが、第1の曲面上の1000mm2の表面積当たり±50マイクロメートルの均一性を有する、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0065】
本開示の第60の態様(60)は、最大圧縮歪み形状パラメータが5.0%以上である、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0066】
本開示の第61の態様(61)は、第1の曲面の全てに亘り測定された、厚さの平均値が、0.5mm以上かつ2.5mm以下である、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0067】
本開示の第62の態様(62)は、再成形されたガラス物品が、仮想面に平行に延在する第1の方向に測定される長さ(L)、および仮想面に平行であり、第1の方向に垂直に延在する第2の方向に測定される幅(W)を有し、仮想中心面は、平均ガウス曲率κを有し、
【0068】
である、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0069】
本開示の第63の態様(63)は、再成形されたガラス物品の外縁が、実質的に円形であり、その外縁に沿った2点間の最大距離を表す直径Dを有し、仮想中心面は、平均ガウス曲率κを有し、0.0354*κ*D2≧3.0%である、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0070】
本開示の第64の態様(64)は、第1のガラス層上に配置された第2のガラス層であって、第3の曲面および第4の曲面により画成された第2の展開不可能な湾曲形状を有する第2のガラス層をさらに含み、第3の曲面および第4の曲面の少なくとも一方は、60,000mm2以上の表面積を有し;第1の曲面に垂直な方向の第1の曲面と第2の曲面との間の距離として測定される、第2のガラス層の厚さは、第1の曲面上の1000mm2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有し;第2の展開不可能な湾曲形状は、3.0%以上の、第3の曲面と第4の曲面との間に配置された第2の仮想中心面と、仮想面との間で測定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する、第56の態様(56)による再成形されたガラス物品に関する。
【0071】
本開示の第65の態様(65)は、透過光学系を使用した三次元オプティカルスキャナで測定された、第1のガラス層と第2のガラス層との間の形状不一致が、第1の曲面の全てに亘り測定して、2.0mm以下である、第64の態様(64)による再成形されたガラス物品に関する。
【0072】
本開示の第66の態様(66)は、形状不一致が、第1の曲面の表面積の少なくとも80%に亘り1.0mm以下である、第65の態様(65)による再成形されたガラス物品に関する。
【0073】
本開示の第67の態様(67)は、第1のガラス層および第2のガラス層が同じ組成物から作られ、第1のガラス層および第2のガラス層の平均厚さが互いの2%以内にある、第64の態様(64)による再成形されたガラス物品に関する。
【0074】
本開示の第68の態様(68)は、第1のガラス層および第2のガラス層が、厚さ、組成および表面圧縮応力の少なくとも1つにおいて、互いと異なる、第64の態様(64)による再成形されたガラス物品に関する。
【0075】
本開示の第69の態様(69)は、湾曲したガラス物品を形成する方法において、第1のガラスシートを、真空キャビティを少なくとも部分的に画成する真空金型の上に配置する工程であって、その第1のガラスシートが、真空金型の上面または真空キャビティの周りに配置されたフレームと接触するように、第1のガラスシートが真空金型上に配置され、上面は、その中に形成された1つ以上の真空開口を含む、工程;第1のガラスシートを再成形温度に加熱する工程;第1のガラスシートの1つ以上の第1の部分が1つ以上の真空開口に引き込まれるようにその1つ以上の真空開口に真空圧力を適用する工程;および第1のガラスシートの第2の部分が真空キャビティに引き込まれるように真空キャビティに真空圧力を適用する工程を含む方法に関する。
【0076】
本開示の第70の態様(70)は、上面が外周エッジを含み、ガラスシートが周囲部分を含み、ガラスシートが、その周囲部分が外周エッジから外側に延在するように真空金型の上に配置され、ガラスシートを再成形温度に加熱することにより、ガラスシートの周囲部分がフレームの外周エッジの周りに折り曲がる、第69の態様(69)による方法に関する。
【0077】
本開示の第71の態様(71)は、1つ以上の真空開口が複数の真空開口を含み、ガラスシートの複数の第1の部分が複数の真空開口に引き込まれるように、複数の真空開口に真空圧力が適用される、第69の態様(69)による方法に関する。
【0078】
本開示の第72の態様(72)は、ガラスシートが、ガラスシートを再成形する前に測定された厚さを有し、複数の真空開口が、有効径を有する貫通孔を含み、貫通孔の有効径は、ガラスシートの厚さより10から15倍大きい、第71の態様(71)による方法に関する。
【0079】
本開示の第73の態様(73)は、ガラスシートの厚さが0.5ミリメートルから5ミリメートルに及び、貫通孔の有効径が10ミリメートルから50ミリメートルに及ぶ、第72の態様(72)による方法に関する。
【0080】
本開示の第74の態様(74)は、複数の真空開口が、有効径を有する貫通孔を含み、複数の真空開口は、真空キャビティの周りに半径方向に間隔が空けられ、間隔距離だけ互いから間隔が空けられ、その間隔距離は、有効径以上かつ有効径の3倍以下である、第72の態様(72)による方法に関する。
【0081】
本開示の第75の態様(75)は、ガラスシートの第2の部分が、ガラスシートの再成形前の初期厚さ(t1)およびガラスシートの再成形後の最終厚さ(t2)を有し、t1/t2が1.1から2に及ぶ、第69の態様(69)による方法に関する。
【0082】
本開示の第76の態様(76)は、真空キャビティに真空圧力が適用される前に、1つ以上の真空開口に真空圧力が適用される、第69の態様(69)による方法に関する。
【0083】
本開示の第77の態様(77)は、真空キャビティが、金型表面およびその金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む金型により画成され、その金型表面は、グラファイト、窒化ホウ素、シリカスート、炭酸カルシウム、炭素スート、二硫化モリブデン、および二硫化タングステンからなる群より選択される材料から作られる、第69の態様(69)による方法に関する。
【0084】
本開示の第78の態様(78)は、金型表面が、第1の熱膨張係数を有する第1の材料から作られ、ガラスシートが、第2の熱膨張係数を有する第2の材料から作られ、フレームの上面が、第3の熱膨張係数を有する第3の材料から作られ、第3の熱膨張係数は第2の熱膨張係数より大きく、第2の熱膨張係数は第1の熱膨張係数より大きい、第77の態様(77)による方法に関する。
【0085】
本開示の第79の態様(79)は、再成形方法が、複数のガラスシートを真空金型の上に配置すると同時に、その複数のガラスシートを再成形する工程を含む、第69の態様(69)による方法に関する。
【0086】
本開示の第80の態様(80)は、複数のガラスシートが、上面と接触した底部ガラス層および底部ガラス層上に配置された上部ガラス層を、底部ガラス層が上部ガラス層と上面との間に配置されるように含み、その方法が、複数のガラスシートを真空金型の上に配置する前に、底部ガラス層に複数の真空ビアを形成する工程をさらに含む、第79の態様(79)による方法に関する。
【0087】
本開示の第81の態様(81)は、真空キャビティが、金型表面およびその金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む金型により画成され、金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、およびその中央表面領域に隣接し、第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域を含み、前記方法は、加熱する工程および真空圧力を適用する工程の後、複数のガラスシートから過剰の材料を除去する工程をさらに含み、除去する工程は、加熱中に、周囲表面領域と中央表面領域との間の境界に配置された複数のガラス層の輪郭に沿って行われ、加熱する工程および真空圧力を適用する工程の後、複数の真空ビアが周囲表面領域上の境界の外側に配置されるように、複数のガラスシートが金型上に配置される、第80の態様(80)による方法に関する。
【0088】
本開示の第82の態様(82)は、複数の真空ビアが、加熱する工程および真空圧力を適用する工程の後、1つ以上の真空孔の内の1つを通じて延在する中心軸を有する、第81の態様(81)による方法に関する。
【0089】
本開示の第83の態様(83)は、ガラスシートを再成形するための装置において、金型表面およびその金型表面上に形成された1つ以上の真空孔を含む真空キャビティと、その真空キャビティの周りに配置されたフレームであって、上面およびその上面に形成された複数の真空開口を含むフレームとを備えたモノリス真空金型;1つ以上の真空孔と流体連通した第1の真空源;および複数の真空開口と流体連通した第2の真空源を含む装置に関する。
【0090】
本開示の第84の態様(84)は、フレームが、上面に形成され、複数の真空開口に流体接続した通路をさらに含む、第83の態様(83)による装置に関する。
【0091】
本開示の第85の態様(85)は、通路が、各通路部分が上面に接続された上縁を有する、2つの隣接する真空開口を接続する複数の通路部分、および通路の上縁から底面まで延在する側壁を含み、その側壁は、通路の底面に垂直な軸に対して測定された、5°から20°の範囲の傾斜度を有する、第84の態様(84)による装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
ここに組み込まれる添付図面は、本明細書の一部を構成し、本開示の実施の形態を示す。図面は、説明と共に、さらに、開示された実施の形態の原理を説明する働きをし、当業者が、開示された実施の形態を実施し、使用できるように働く。これらの図面は、限定ではなく、説明に役立つ意図がある。本開示は概して、これらの実施の形態に関して記載されているが、本開示の範囲をこれらの特定の実施の形態に限定する意図はないことを理解すべきである。図面において、同様の参照番号は、同一のまたは機能的に類似の要素を指す。
【
図1A】いくつかの実施の形態による、材料のシートを再成形するための装置を示す図
【
図1B】いくつかの実施の形態による、材料のシートを再成形するための装置を示す図
【
図2】いくつかの実施の形態による真空金型を示す図
【
図3A】いくつかの実施の形態による真空開口を示す図
【
図3B】いくつかの実施の形態による真空開口を示す図
【
図5A】いくつかの実施の形態による加熱プロファイルを示す図
【
図5B】いくつかの実施の形態による加熱プロファイルを示す図
【
図6A】いくつかの実施の形態による再成形されたガラスシートを示す図
【
図6B】いくつかの実施の形態による再成形されたガラス物品を示す図
【
図7】いくつかの実施の形態による多層ガラスシートを示す図
【
図8】いくつかの実施の形態による真空金型を示す図
【
図9A】いくつかの実施の形態による、断面線9’-9’に沿った
図8の真空金型の断面図
【
図10】いくつかの実施の形態による、断面線9’-9’に沿った
図8の真空金型の断面図
【
図11】いくつかの実施の形態による真空金型の底面図
【
図12】いくつかの実施の形態による材料のシートを再成形するための装置を示す図
【
図13】いくつかの実施の形態による、真空金型の上に配置された再成形されたガラスシートを示す図
【
図14】いくつかの実施の形態による、ここに記載された再成形技術により形成されたガラス物品の断面図
【
図15】いくつかの実施の形態による、真空金型上で再成形された後のガラス層の積層体の断面図
【
図16A】いくつかの実施の形態による、真空金型上で再成形される前に、その中に形成された真空ビアを有する底部ガラス層を含むガラス層の積層体の断面図
【
図16B】いくつかの実施の形態による、
図16Aに示された真空金型上での再成形後のガラス層の積層体の断面図
【
図17】いくつかの実施の形態による、ガラス層の積層体の同時成形により形成された積層板の断面図
【
図18】いくつかの実施の形態による、真空金型上でガラス層の積層体を同時成形する工程を含む、積層板を形成する方法の流れ図
【
図19】底部ガラス層が真空ビアを含んでいない、第1の例により同時成形された2つのガラス層の画像
【
図20】いくつかの実施の形態による、中に真空ビアを組み込んだ第2の例による底部ガラス層の画像
【
図21】いくつかの実施の形態による、第2の例による同時成形後の上部ガラス層と底部ガラス層との間の形状不一致測定の結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下の例は、本開示の限定ではなく、説明に役立つものである。当該技術分野で通常遭遇し、当業者に明白であろう、様々な条件およびパラメータの他の適切な変更および適応は、本開示の精神と範囲に含まれる。
【0094】
展開不可能な曲率を有するガラス物品は、展開不可能な曲率を有する透明表面が望ましい様々な用途に使用することができる。展開不可能な曲率を有するガラス物品は、所望の光学的性質および機械的性質を提供しつつ、所望の曲率も提供することができる。
【0095】
ここに用いられているように、「展開不可能な曲率」または「非ゼロガウス曲率」という用語は、紙を伸ばしたり、裂いたり、皺くちゃにしたりせずに、紙のシートを曲げることで形成できない交差半径を持つ曲率を意味する。例示の展開不可能な曲率としては、以下に限られないが、球面曲率、回転楕円面曲率(spheroid curvature)、部分回転楕円面曲率、および三次元サドル曲率(three-dimensional saddle curvatures)が挙げられる。「展開可能な曲率」または「ゼロガウス曲率」は、曲げのみで紙のシートに形成できる曲率を意味する。例示の展開可能な曲率としては、以下に限られないが、円筒曲率および円錐曲率が挙げられる。
【0096】
ここに記載された再成形過程により、展開不可能な曲率、適切な光学的性質、および適切な機械的性質を有するガラス物品の形成が容易になる。再成形過程では、展開不可能な湾曲形状を有する再成形されたガラス物品を作るために、真空成形技術が利用される。湾曲形状において厚さ均一性を維持し、ガラスの皺を避けつつ、展開不可能な湾曲形状を作ることができる。厚さ均一性を促進し、皺を避けることによって、所望の光学的性質と機械的性質を有する展開不可能な湾曲形状を形成することができる。さらに、厚さ均一性を促進し、皺を避けることによって、光学的または機械的欠陥を導入しつつ、大きい凸表面積(例えば、10,000mm2以上、20,000mm2以上、30,000mm2以上、または60,000mm2以上の表面積)を有する展開不可能な湾曲形状を作ることができる。
【0097】
フレーム上に垂下することによる従来の三次元再成形は、いくつかの用途にガラスを再成形することで知られている。しかしながら、従来の垂下技術を使用して、ガラスシートを、小半径、半径、曲線縁、および/または複雑な輪郭(例えば、展開不可能な形状)の組合せを有する湾曲形状に再成形することは難題である。従来の垂下技術を使用してこれらのタイプの湾曲形状を形成するには、ガラスの皺および/または機械的または光学的欠陥を有する再成形されたガラスを作る傾向にある機構の使用が必要となり得る。従来の垂下技術を使用した深いガウス三次元再成形により、その厚さ内で高レベルのガラスの変形(例えば、15%、20%、または30%の局所的な薄化)が生じ、このことは、光学的性質と機械的性質にとって問題となり得る。
【0098】
従来の垂下技術により、再成形されたガラス物品に高レベルの圧縮歪みも生じ得る。3D形状の複雑性のレベルは、成形部品のターゲット3D CAD(コンピュータ支援設計)から平らな部品に移行するのに必要な歪みによって決定することができる。これは、公知のモデル化ソフトウェアを使用するコンピュータモデリングによって得ることができる。典型的に、モデルは、引張歪みが要求される(材料のある程度の膨張が必要とされることを意味する)区域、および圧縮歪みが要求される(3D部品から平らな部品に移行するのにある程度の材料の絞り(material gathering)が必要とされることを意味する)他の区域を示すターゲット3D部品の歪みマップを決定することができる。平らなガラスの従来の再成形における高レベルの圧縮歪みにより、皺タイプの欠陥が生じ易い。それに関連して、高レベルの引張歪みでは、要求されるレベルの形成を生じるために、長い再成形時間、非常に低い材料粘度、または過剰に大きい力のいずれかが必要となるであろう。
【0099】
ここに記載された真空成形技術により、ガラスの皺または破損を生じずに、ここに記載された最大圧縮歪み形状パラメータで定量化されるように、複合曲率を有するガラス物品を作ることができる。ここに記載された真空成形技術は、展開不可能な湾曲形状を作るためにガラスの深いガウス変形中にガラスの皺を防ぐ1つ以上の側部保持機構を備えた真空金型を使用するガラスシートの真空再成形を含み得る。1つ以上の側部保持機構は、真空成形中にガラスシートを適所に保持しつつ、ガラスシートの自由な動きも促進しつつ、それゆえ、変形中の皺の形成を防ぐように設計された真空開口を含み得る。1つ以上の側部保持機構は、冷却および離型中に、再成形されたガラスシートの破損を防ぐのに役立つ自己解放保持機構であり得る。
【0100】
ここに記載された真空成形技術は、以下の有利な特徴の1つ以上を提示する。1つ以上の実施の形態において、真空圧力成形により、皺がなく、最終的な高度に展開不可能な三次元(3D)形状までガラスシートの累進的局所展開(progressive local expansion)が可能になる。1つ以上の実施の形態において、真空圧力成形により、著しい局所的な厚さ減少がなく、最終的な高度に展開不可能な3D形状までガラスシートの累進的局所展開が可能になる。1つ以上の実施の形態において、押込み金型と真空圧力成形との組合せにより、高レベルで最終形状が制御された、最終的な高度に展開不可能な3D形状までガラスシートの累進的局所展開が可能になる。1つ以上の実施の形態において、ガラス物品の片面は、真空成形中に触れられないままであり、それゆえ、欠陥の可能性を低下させることができる。1つ以上の実施の形態において、側部保持機構は、ガラスの揺動(bucking)(真空の漏れおよびガラスシートの不完全な再成形をもたらし得る)を防ぐことができる。1つ以上の実施の形態において、側部保持機構は、再成形中のガラスの滑り運動(再成形されたガラスの審美的性質と光学的性質に影響する擦り傷(scuffmark)をもたらし得る)を防ぐことができる。1つ以上の実施の形態において、多数のガラスシートを同時に再成形することができる。
【0101】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された真空成形技術は、金型の真空キャビティを含み得、ガラスシートは、再成形中にその金型の表面に接触するまで引き寄せられる。この金型の表面は、再成形されたガラス上に欠陥を形成するのを防ぐために適合された付着防止材料からなり得る。いくつかの実施の形態において、そのガラスシートは、再成形中に金型の表面に接触するまで引き寄せられずに、再成形することができる。そのような実施の形態において、ガラスシートは、真空キャビティ内でガラスシートを「自由成形(free form)」するために、再成形過程の真空圧力、時間、および温度を制御することによって、再成形することができる。
【0102】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された真空成形技術は、多層ガラスシートを再成形するために使用することができる。多層ガラスシートは、第1のガラス組成物から形成された第1の層(例えば、上部層)および第2のガラス組成物から形成された第2の層(例えば、底部層)を備え得る。いくつかの実施の形態において、それらのガラス層の内の1つは、ガラスシートを再成形した後に除去される犠牲層であり得る。例えば、再成形中に金型表面と接触した多層ガラスシートの底部層は、再成形過程が完了した後に除去することができる。そのような実施の形態において、底部ガラス層を除去することにより、底部ガラス層に転写された金型表面上のどの欠陥も除去できるので、再成形されたガラス物品の表面品質を改善することができる。ある場合には、多層ガラスシートの1つの層を除去すると、研磨過程などの費用のかかる表面仕上げ過程を減らす、またはなくすことができる。いくつかの実施の形態において、多層ガラスシートの1つの層を除去するために、エッチング過程を使用することができる。
【0103】
いくつかの実施の形態において、ここに記載された真空成形技術は、モノリス付着防止真空金型を含み得る。このモノリス金型は、側部保持機構と共に、一体成形された金型キャビティとフレームを含む。
【0104】
いくつかの実施の形態において、真空金型は、真空成形後に再成形されたガラスシートの切断(例えば、レーザ切断)を容易にするように作られたスロットを含み得る。いくつかの実施の形態において、真空金型は、再成形中にガラスシートの温度を制御するために多数の温度帯を有する真空キャビティを含み得る。いくつかの実施の形態において、真空金型は、再成形されたガラスシートが金型表面と接触した場合に信号を送る1つ以上の接触インジケータを有する金型表面を含み得る。
【0105】
図1Aおよび1Bは、いくつかの実施の形態によるガラスシート200を再成形するための装置100を示す。
図1Aは、再成形前のガラスシート200を示す。
図1Bは、いくつかの実施の形態による、再成形後のガラスシート200を示す。
【0106】
ガラスシート200は、上面202、上面202と範囲にある底面204、および上面202と底面204との間で測定される初期厚さ206(すなわち、再成形前のガラスシート200の厚さ)を有する。ガラスシート200は、ガラスシート200の周囲形状を画成する周囲エッジ208も備える。
【0107】
いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の初期厚さ206は、部分的範囲を含む、0.5ミリメートル(mm)から10ミリメートルに及び得る。例えば、いくつかの実施の形態において、初期厚さ206は、0.5ミリメートルから10ミリメートル、0.5ミリメートルから5ミリメートル、0.5ミリメートルから2.5ミリメートル、2.5ミリメートルから5ミリメートル、2.5ミリメートルから10ミリメートル、または端点としてこれらの値のいずれか2つを有する範囲内に及び得る。実施の形態において、厚さ206は、0.1ミリメートルから10ミリメートル、0.2ミリメートルから10ミリメートル、0.3ミリメートルから10ミリメートル、0.4ミリメートルから10ミリメートル、0.5ミリメートルから10ミリメートル、0.6ミリメートルから10ミリメートル、0.7ミリメートルから10ミリメートル、0.8ミリメートルから10ミリメートル、0.9ミリメートルから10ミリメートル、1ミリメートルから10ミリメートル、1.1ミリメートルから10ミリメートル、1.2ミリメートルから10ミリメートル、1.4ミリメートルから10ミリメートル、1.5ミリメートルから10ミリメートル、1.6ミリメートルから10ミリメートル、1.8ミリメートルから10ミリメートル、2ミリメートルから10ミリメートル、2.1ミリメートルから10ミリメートル、2.5ミリメートルから10ミリメートル、3ミリメートルから10ミリメートル、4ミリメートルから10ミリメートル、5ミリメートルから10ミリメートル、0.1ミリメートルから9ミリメートル、0.1ミリメートルから8ミリメートル、0.1ミリメートルから7ミリメートル、0.1ミリメートルから6.5ミリメートル、0.1ミリメートルから6ミリメートル、0.1ミリメートルから5.5ミリメートル、0.1ミリメートルから5ミリメートル、0.5ミリメートルから4ミリメートル、0.7ミリメートルから3.6ミリメートル、0.7ミリメートルから3.3ミリメートル、0.7ミリメートルから2.1ミリメートル、0.7ミリメートルから1.6ミリメートルから、または0.7ミリメートルから1.1ミリメートル、もしくは端点としてこれらの値のいずれか2つを有する範囲内に及び得る。
【0108】
装置100は、その中でガラスシート200を再成形できる真空キャビティ112を有する真空金型110を備える。いくつかの実施の形態において、装置100は、1つ以上の真空源170を備え得る。真空源170は、例えば、真空ポンプであり得る。
【0109】
真空金型110は、真空キャビティ112の周りに配置されたフレーム130を備え得る。フレーム130は、上面134および1つ以上の真空開口140を有する上部壁132を備える。各真空開口140は、上部壁132に形成された貫通孔142を備える。貫通孔142は、フレーム130の上面134に形成され、上部壁132の厚さを通じて延在し得る。フレーム130の上面134は、上面134の外周形状を画成する外周エッジ136を有する。
【0110】
いくつかの実施の形態において、真空金型110は、真空キャビティ112の周りに配置された1つの真空開口140を備え得る。そのような実施の形態において、真空開口140は、真空キャビティ112の全てまたは一部の周りに配置された完全または部分環形状を有する貫通孔142を備え得る。いくつかの実施の形態において、真空金型110は、真空キャビティ112の周りに配置された複数の真空開口140を含み得る。
【0111】
1つ以上の真空源170は、その1つ以上の真空源170が、真空キャビティ112、1つ以上の真空開口140,またはその両方に真空圧力を適用できるように、真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140と流体連通している。
【0112】
いくつかの実施の形態において、装置100は、1つの真空源170aを備え得る。そのような実施の形態において、真空源170aは、真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140の両方に真空圧力を適用することができる。真空源170aは、真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140に同時に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、真空源170aは、真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140に連続して真空圧力を適用することができる。例えば、真空源170aは、最初に、1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用し、そして、1つ以上の真空開口140にまだ真空圧力を適用している間に、真空キャビティ112に真空圧力を適用することができる。真空管172aが、真空源170aを真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140に接続することができる。
【0113】
いくつかの実施の形態において、装置100は、真空キャビティ112と流体連通した第1の真空源170aおよび1つ以上の真空開口140と流体連通した第2の真空源170bを備え得る。そのような実施の形態において、第1の真空源170aは、1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用する第2の真空源170bから独立して、真空キャビティ112に真空圧力を適用することができる。第1の真空源170aおよび第2の真空源170bは、それぞれ、真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140に同時に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、第1の真空源170aは真空キャビティ112に真空圧力を適用することができ、連続して、第2の真空源170bは1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用することができる。例えば、第2の真空源170bは、最初に、1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用し、そして、第2の真空源170bが1つ以上の真空開口140に真空圧力をまだ適用している間に、第1の真空源170aが真空キャビティ112に真空圧力を適用することができる。
【0114】
第1の真空源170aおよび第2の真空源170bを含む実施の形態において、第1の真空管172aは第1の真空源170aを真空キャビティ112に接続することができ、第2の真空管172bは第2の真空源170bを1つ以上の真空開口140に接続することができる。いくつかの実施の形態において、第2の真空管172bは、1つ以上の真空開口140に真空圧力を供給するように作られた真空分配器174に接続され得る。
【0115】
いくつかの実施の形態において、装置100は、真空室162を画成する真空箱160を備え得る。そのような実施の形態において、フレーム130が真空箱160に連結され得る。真空箱160に連結されたフレーム130は、真空箱160と一体成形されても、1つ以上の機械的留め具(例えば、ボルトまたはネジ)により真空箱160に機械的に連結されてもよい。いくつかの実施の形態において、フレーム130は、真空箱160と一体成形されることがある。いくつかの実施の形態において、フレーム130は、真空箱160に機械的に連結された金型114の構成要素であることがある。いくつかの実施の形態において、フレーム130は、上面134および真空キャビティ112の上面113を正確に調節するように、真空キャビティ112に対して垂直に調節可能であり得る。
【0116】
いくつかの実施の形態において、真空キャビティ112は、真空室162内に配置された金型114により画成され得る。金型114は、金型表面116を備え、その金型表面116に形成された1つ以上の真空孔118を備え得る。真空孔118は、金型表面116から金型114を通じて金型114の底面120まで延在する貫通孔であり得る。真空孔118は、真空源170が真空孔118を介して真空キャビティ112に真空圧力を適用できるように1つ以上の真空源170と流体連通し得る。
【0117】
真空孔118は、再成形中にガラスシート200の底面204への影響を最小にするために、小さい直径を有し得る。いくつかの実施の形態において、真空孔118は、0.5ミリメートルから2ミリメートルに及ぶ直径を有し得る。
【0118】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空開口140は、真空箱160の真空室162と流体連通し得る。
【0119】
金型114を含む実施の形態において、ガラスシート200の第2の部分230は、再成形中に金型表面116に接触するまで引き寄せられ得る。例えば、
図1Bに示されるように、ガラスシート200の第2の部分230は、金型表面116に接触するまで引き寄せられ、それによって、第2の部分230が金型表面116の曲率をとることができる。
【0120】
いくつかの実施の形態において、真空キャビティ112は、金型114を含まないことがある。そのような実施の形態において、ガラスシート200は、真空キャビティ112内でガラスシート200の第2の部分230を「自由成形」するために、真空キャビティ112内の真空圧力、時間、および温度を制御することによって、再成形することができる。
【0121】
金型表面116は、再成形中にガラスシート200への接着に抵抗する材料から作ることができる。金型表面116の例示の材料としては、以下に限られないが、グラファイト、窒化ホウ素、シリカスート、炭酸カルシウム、炭素スート、耐火金属合金、二硫化モリブデン、または二硫化タングステンが挙げられる。いくつかの実施の形態において、金型114は、これらの材料のいずれから形成されてもよい。いくつかの実施の形態において、これらの材料のいずれで金型114を被覆して、金型表面116を画成してもよい。例えば、いくつかの実施の形態において、金型114は、金型表面116を画成するために二硫化モリブデンまたは二硫化タングステンで被覆された耐火金属合金から作ることができる。
【0122】
いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の底面204は、ガラスシート200の金型表面116への接着を防ぐのに役立ち、底面204上への金型に誘起する欠陥の導入を防ぐのに役立つ1つ以上の保護層で被覆することができる。例示の保護層が、ここに全て引用される、米国特許第10364175号明細書に記載されている。
【0123】
いくつかの実施の形態において、金型表面116、ガラスシート200、およびフレーム130の上面134の材料の熱膨張係数(CTE)を調整して、ガラスの接着を防ぎ、再成形中のガラスの滑りを防ぎ、冷却中の異なる収縮率の下でのガラスの破損を防ぐのに役立てることができる。それに加え、金型表面116、ガラスシート200、およびフレーム130の上面134の材料のCTEは、金型表面116および上面134の両方からのガラスシート200の自己解放を促進するように調整することができる。
【0124】
ここに用いられているように、熱膨張係数または「CTE」という用語は、20℃から300℃の温度範囲に亘り平均化されたガラス組成物の熱膨張係数を称する。特に明記のない限り、層のCTEは、10-7/℃の単位で表され、ASTM E228-11にしたがって押し棒式膨脹計を使用して決定される。
【0125】
いくつかの実施の形態において、金型表面116は、第1のCTEを有する第1の材料から作ることができ、ガラスシート200は、第2のCTEを有する第2の材料から作ることができ、フレーム130の上面134は、第3のCTEを有する第3の材料から作ることができる。第3のCTEは第2のCTEより大きいことがあり得、第2のCTEは第1のCTEより大きいことがあり得る。そのような実施の形態において、材料の収縮率の差により、破損せずに真空金型110からのガラスシート200の自己解放を促進させることができる。
【0126】
いくつかの実施の形態において、金型表面116の材料のCTEは、35×10-7/℃から45×10-7/℃に及び得る。
【0127】
いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の材料のCTEは、70×10-7/℃から85×10-7/℃に及び得る。
【0128】
いくつかの実施の形態において、フレーム130の上面134の材料のCTEは、110×10-7/℃から130×10-7/℃に及び得る。いくつかの実施の形態において、フレーム130の上面134の材料は、110×10-7/℃から130×10-7/℃に及ぶCTEを有する金属材料であり得る。
【0129】
いくつかの実施の形態において、フレーム130の上面134の材料のCTEは、170×10-7/℃から180×10-7/℃に及び得る。いくつかの実施の形態において、フレーム130の上面134の材料のCTEは、170×10-7/℃から180×10-7/℃に及ぶCTEを有するオーステナイト系ステンレス鋼であり得る。
【0130】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空開口140は、貫通孔142およびその貫通孔142の垂直下方に配置された停止壁150を含み得る。停止壁150は、ガラスシート200の第1の部分220が貫通孔142に引き込まれたときに、第1の部分220が停止壁150の上面154に接触するように、貫通孔142の垂直下方に配置することができる。いくつかの実施の形態において、停止壁150は、貫通孔142の垂直下方に配置することができ、貫通孔142の中心軸144と交差し得る。貫通孔142の中心軸144は、フレーム130の上面134に垂直な方向にある貫通孔142の幾何学的中心を通って延在する垂直軸である。
【0131】
図3Aおよび3Bは、いくつかの実施の形態による2つの例示の真空開口140の構造を示す。
図3Aは、貫通孔142と、フレーム130の上部壁132から貫通孔142の垂直下方の位置まで延在するレッジの形態にある停止壁150とを有する真空開口140を示す。
図3Bは、貫通孔142と、貫通孔142の垂直下方に位置する別個の壁の形態にある停止壁150とを有する真空開口140を示す。
【0132】
いくつかの実施の形態において、貫通孔142は有効径146を有し得、停止壁150の上面154は、深さ152だけ上部壁132の上面134から垂直に間隔が空けられている。そのような実施の形態において、深さ152は、有効径146の半分(1/2)以下であり得る。停止壁150の上面154を有効径146の半分(1/2)以下の深さ152に位置付けることによって、1つ以上の真空開口140は、ガラスシート200の第1の部分220が貫通孔142に引き込まれ過ぎるのを防ぐことができる。第1の部分220が貫通孔142に引き込まれ過ぎると、このことにより、ガラスが、冷却中および/または離型中に破損し得る。特に、有効径146の半分(1/2)以下の深さ152は、第1の部分220が、貫通孔142の有効径146より大きい有効径を有する形状に引き込まれるのを防ぐことができる。第1の部分220が引き込まれて、貫通孔142の有効径146より大きい有効径を有する形状になると、再成形されたガラスシートは、貫通孔142内に取り残され、それゆえ、冷却中および/または離型中に自由に動くことができなくなり、これにより、ガラスが破損し得る。
【0133】
ここに用いられているように、「有効径」という用語は、孔または開口のサイズを記述するために利用されるが、この用語は、孔または開口が円形の直径または形状を有することを必要とすると解釈されるべきではない。そうではなく、孔または開口は、非円形の形状を有してもよく、そのような実施の形態において、「有効径」という用語は、その形状の最大断面寸法を称する意図がある。例えば、楕円の断面形状を有する孔または開口の「有効径」は、楕円形状の長軸の長さであろう。孔または開口の深さに沿って変動する有効径を有する孔または開口については、有効径は最大有効径である。
【0134】
いくつかの実施の形態において、貫通孔142の有効径146は、部分的範囲を含む、5ミリメートルから120ミリメートルに及び得る。例えば、いくつかの実施の形態において、貫通孔142の有効径146は、5ミリメートルから120ミリメートル、5ミリメートルから100ミリメートル、5ミリメートルから50ミリメートル、5ミリメートルから30ミリメートル、5ミリメートルから10ミリメートル、10ミリメートルから30ミリメートル、10ミリメートルから50ミリメートル、10ミリメートルから100ミリメートル、10ミリメートルから120ミリメートル、または端点としてこれらの値の任意の2つを有する範囲内に及び得る。
【0135】
例えば、
図2に示されるような、いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空開口140は、真空キャビティ112の半径方向の周りに配置された複数の真空開口140を含み得る。いくつかの実施の形態において、真空キャビティ112の半径方向の周りに配置された複数の真空開口140は、間隔距離148だけ互いから間隔が空けられ得る。間隔距離148は、貫通孔142の有効径146以上かつ、貫通孔142の有効径146の3倍以下であり得る。この範囲内の間隔距離148は、ガラスシート200を、皺なく展開不可能な形状に再成形するのを促進することができる。
【0136】
いくつかの実施の形態において、貫通孔142のサイズは、ガラスシート200の初期厚さ206に基づいて選択することができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200は初期厚さ206を有し得、貫通孔142は、初期厚さ206より10から15倍大きい有効径146を有し得る。この初期厚さより10から15倍大きい有効径146により、過剰に高い真空圧力を適用せずに、ガラスシート200の第1の部分220を貫通孔に引き込むことが可能になる。
【0137】
例えば、いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の初期厚さ206は0.5ミリメートルから10ミリメートルに及び得、貫通孔142の有効径146は5ミリメートルから120ミリメートルに及び得る。別の例として、いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の初期厚さ206は0.5ミリメートルから5ミリメートルに及び得、貫通孔142の有効径146は10ミリメートルから50ミリメートルに及び得る。
【0138】
図4は、いくつかの実施の形態による、ガラスシート200を再成形する方法400を示す。特に明記のない限り、方法400の工程は、ここに述べられた順序で行われる必要はない。
【0139】
工程402で、ガラスシート200を真空金型110の上に置く。ガラスシート200を真空金型110の上に置いたときに、ガラスシート200が真空キャビティ112を覆い、ガラスシート200の底面204がフレーム130の上面134と直接接触するように、ガラスシートを位置決めすることができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200は、ガラスシート200の周囲部分240がフレーム130の外周エッジ136から外側に広がるように、真空金型110の上に配置することができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200は、周囲エッジ208により画成され、第1の外周を有する周囲形状を有し得、フレーム130の外周エッジ136は、第1の外周より小さい第2の外周を有する形状を有し得る。周囲エッジ208のより大きい外周により、ガラスシート200を真空金型110の上に置いたときに、周囲部分240がフレーム130の外周エッジ136から外側に広がることになり得る。
【0140】
いくつかの実施の形態において、工程402は、多数のガラスシート200を真空金型110の上に配置する工程を含み得る。複数のガラスシート200は、積層形態で真空金型110の上に配置することができる。そのような実施の形態において、方法400は、複数のガラスシート200を同時に再成形することができる。
【0141】
工程404において、ガラスシート200を再成形温度に加熱する。装置100の1つ以上の熱源190でガラスシート200を再成形温度に加熱することができる。いくつかの実施の形態において、再成形温度は600℃から900℃に及び得る。例示の熱源190としては、対流加熱装置および赤外(IR)加熱装置が挙げられる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の温度を制御するのに役立つように、再成形中に遮熱板180をガラスシート200の上面202に配置することができる。
【0142】
いくつかの実施の形態において、工程404でガラスシート200を再成形温度に加熱することにより、重力下でガラスシート200の周囲部分240をフレーム130の外周エッジ136の周りに折り曲げることができる。外周エッジ136の周りに周囲部分240を折り曲げることは、再成形過程で真空圧力を適用する最中に、ガラスシート200を保持し、どのような横方向のガラスの動きも防ぐのに役立ち得る。このことにより、皺のない再成形されたガラス物品を作るために、ガラスシート200の第2の部分230の局所的な変形と伸長が制御される。
【0143】
いくつかの実施の形態において、工程404でガラスシート200を加熱すると、ガラスシート200の周囲部分240を90°未満の角度242で外周エッジ136の周りに折り曲げることができる。例えば、ガラスシート200の周囲部分240は、60°から85°に及ぶ角度242で外周エッジ136の周りに折り曲げることができる。いくつかの実施の形態において、フレーム130の周りの外周縁は、角度242が90°を超えるのを防ぐのに役立ち得る。
【0144】
工程406で、1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用することができる。工程406で1つ以上の真空開口140に適用される真空圧力は、ガラスシート200の1つ以上の第1の部分220を1つ以上の真空開口140に引き込むのに十分であり得る。複数の真空開口140を含む実施の形態において、複数の真空開口140に真空圧力を適用すると、ガラスシート200の複数の第1の部分220を複数の真空開口140に引き込むことができる。
【0145】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空開口140に適用される真空圧力は、0.1バール(10kPa)から0.3バール(30kPa)に及び得る。いくつかの実施の形態において、30秒から120秒に及ぶ時間に亘り、工程406で1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、5リットル毎分から20リットル毎分の速度で1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用することができる。
【0146】
工程406で適用される真空圧力は、ガラスシート200をフレーム130の上面134に封止し、それゆえ、ガラスシート200の第2の部分230の周囲に真空気密シールを作ることができる。それに加え、工程406で適用される真空圧力は、再成形過程で真空圧力を適用する最中に、ガラスシート200を保持し、どのような横方向のガラスの動きも防ぐのに役立ち得る。このことにより、皺のない再成形されたガラス物品を作るために、ガラスシート200の第2の部分230の局所的な変形と伸長が制御される。
【0147】
いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の上面202に加重リングを置いて、工程406の最中に気密シールを確実に作るのに役立つことができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の底面204は、工程406の最中に気密シールを確実に作るのに役立つように、フレーム130の上面134と密接に接触させることができる。
【0148】
真空圧力を利用して、再成形中にガラスシート200を適所に保持することにより、ガラスシート200の再成形中にガラスシート200をフレーム130の上面134に機械的に固定せずに、再成形過程を実施することができる。機械的固定をなくすことによって、加熱と冷却の最中にガラスシート200に与えられる応力を最小にすることができる。過剰な応力、例えば、ガラスとクランプ機構の界面で生じる機械的応力および/または熱応力により、加熱と冷却の最中に望ましくないガラスの変形および/またはガラスの破損が生じ得る。それに加え、再成形中にガラスシート200を保持するために真空圧力を使用すると、ガラスシート200を真空金型110から取り出すときにガラスに損傷を与え得る、機械的解放機構の必要をなくすことができる。ここに記載された1つ以上の真空開口140により、冷却と離型の最中にガラスシート200を自己解放することができ、それゆえ、ガラスに与えられる応力を最小にすることができる。
【0149】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空開口140に適用される真空圧力は、ガラスシート200の1つ以上の第1の部分220を、1つ以上の真空開口140の貫通孔142中に引き込むのに十分であり得る。いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空開口140に適用される真空圧力は、ガラスシート200の1つ以上の第1の部分220を貫通孔142中に引き込み、停止壁150の上面154と接触させるのに十分であり得る。
【0150】
工程408で、真空キャビティ112に真空圧力を適用することができる。真空キャビティ112に適用される真空圧力は、ガラスシート200の第2の部分230を真空キャビティ112に引き込むのに十分であり得る。
【0151】
いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ112に適用される真空圧力は、0.1バール(10kPa)から0.3バール(30kPa)に及び得る。いくつかの実施の形態において、30秒から120秒に及ぶ時間に亘り、真空キャビティ112に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、10リットル毎分から100リットル毎分の速度で真空キャビティ112に真空圧力を適用することができる。
【0152】
いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ112に真空圧力を適用する前に、工程406で1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用する。いくつかの実施の形態において、工程406および408は、真空キャビティ112に真空圧力を適用するのと同時に、1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用するように、同時に行うことができる。
【0153】
いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ112に真空圧力を適用すると、ガラスシート200の第2の部分230を、真空キャビティ112を画成する金型114の金型表面116に接触するまで引き寄せることができる。いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ112に真空圧力を適用すると、ガラスシート200の第2の部分230を真空キャビティ112に引き込むことができ、この第2の部分230を真空キャビティ112内で自由成形することができる。そのような実施の形態において、真空キャビティ112内の真空圧力、時間、および温度を制御することによって、第2の部分230は、金型の金型表面に接触するまで引き寄せられずに、真空キャビティ112内で再成形することができる。
【0154】
いくつかの実施の形態において、真空源を使用せずに、真空キャビティ112および/または1つ以上の真空開口140に真空圧力を適用することができる。そのような実施の形態において、再成形温度に達した後に、熱の印加を急停止することによって、真空圧力を適用することができる。このことは、真空キャビティ112および/または真空室162内の空気の急冷をもたらし、それゆえ、真空キャビティ112および/または真空室162内に著しい気体体積の収縮を生じることができる。この著しい気体体積の収縮により、ガラスシート200の1つ以上の第1の部分220を1つ以上の真空開口140に引き込む、および/またはガラスシートの第2の部分230を真空キャビティ112に引き込むことができる。
【0155】
いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の第2の部分230は、ガラスシート200を再成形する前の初期厚さ206(t1)およびガラスシートを再成形した後の最終厚さ207(t2)を有し得る。この厚さの差は、再成形中のガラスシートの変形の結果であり得る。いくつかの実施の形態において、最終厚さ207に対する初期厚さ206の比(t1/t2)は、1.1から2に及び得る。最終厚さに対する初期厚さの比(t1/t2)は、ガラスシート200が変形し、最終形状に伸長されたことを示す。ガラスのこの変形と伸長は、ガラスの吹き込み中にガラスがどれだけに成形されているかに似ている。ガラスを自由に変形させ、最終形状に伸長させることによって、ガラスに与えられる応力を最小にすることができ、このことは、転じて、ガラスの破損と皺を防ぐのに役立つ。
【0156】
工程408でガラスシート200を再成形した後、真空キャビティ112および1つ以上の真空開口140に適用された真空圧力を解除し、再成形されたガラスシートを工程412で徐冷温度に冷ますことができる。工程412では、再成形されたガラスシートは、再成形中に生じた内部残留応力を緩和するために、徐冷温度に保持することができる。
【0157】
徐冷後、再成形されたガラスシート(例えば、
図6Aに示された再成形されたガラスシート201)を工程414で室温まで冷却し、工程416で真空金型110から取り出すことができる。
【0158】
いくつかの実施の形態において、工程416でガラスシートを金型から取り出す工程は、真空管172aおよび/または真空管172bに1つ以上の窒素パルスを噴射する工程を含み得る。いくつかの実施の形態において、1つ以上の窒素パルスは、約600℃の温度および1012から1013ポアズの範囲の圧力を有する窒素ガスを含み得る。1つ以上の窒素パルスを含む実施の形態において、窒素パルスは、ガラスシートの離型を促進し、真空金型(再成形直後ではまだ高温であり得る)の酸化を抑制することができる。
【0159】
図5Aおよび5Bは、方法400の工程404~414の2つの例示の加熱プロファイルを示す。
図5Aは、静止型炉を使用して熱を印加するための加熱プロファイル500を示す。
図5Bは、動的ガラス焼き鈍し炉を使用して熱を印加するための加熱プロファイル550を示す。この動的ガラス焼き鈍し炉は、多数の連続した等温加熱ステーションを備え得、ガラスシートは、加熱中にその連続ステーションを連続して通過することができる。
【0160】
両方のプロファイル500および550において、ガラスシート200は、約780℃の再成形温度に加熱される。ガラスシート200は、ある期間に亘りその再成形温度に保持され、その最中に、1つ以上の真空開口140および真空キャビティ112に真空圧力が適用される。真空圧力下での再成形後、ガラスシート200は、約520℃の徐冷温度に冷却され、その温度に保持されて、ガラスシート200の徐冷が行われる。最終的に、徐冷後に、ガラスシート200は室温に冷却される。
【0161】
再成形されたガラスシート201を真空金型110から取り出した後、工程418で再成形されたガラスシート201から過剰のガラスシート材料を除去して、再成形されたガラス物品(例えば、
図6Bに示された再成形されたガラス物品250)を作ることができる。過剰のガラスシート材料を除去する工程は、第2の部分230で画成された再成形されたガラス物品250が残るように、再成形されたガラスシート201から周囲部分240と第1の部分220を除去する工程を含み得る。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料は、切断過程、例えば、レーザ切断過程または水ジェット切断過程を使用して除去することができる。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料は、機械的罫書きおよび罫書き線に沿ったガラスの割れを使用して、除去することができる。
【0162】
工程420において、再成形されたガラスシート201または再成形されたガラス物品250に1つ以上の再成形後の過程を行うことができる。再成形後の過程としては、以下に限られないが、研磨過程、イオン交換過程、エッチング過程、積層過程が挙げられる。再成形後の過程は、工程418の前または後で行うことができる。
【0163】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の再成形後の過程は、多層の再成形されたガラスシート201の一層を除去する工程を含み得る。
図7は、いくつかの実施の形態による多層ガラスシート200を示す。多層ガラスシート200は、ガラスシート200の上面202を画成する上部ガラス層203およびガラスシート200の底面204を画成する底部ガラス層205を備え得る。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の底部ガラス層205は、多層ガラスシート200を再成形した後に除去することができる。そのような実施の形態において、底部ガラス層205は、方法400を使用して製造された再成形されたガラス物品250のどの部分も画成しないことになる。
【0164】
いくつかの実施の形態において、底部ガラス層205は、エッチング過程を使用して除去することができる。エッチング過程に使用されるエッチング液は、以下に限られないが、硝酸、塩化水素酸(HCl)、またはリン酸などの酸を含み得る。フッ化水素(HF)酸、重フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、およびその混合物など、フッ素を含有するエッチング液も使用してよい。いくつかの実施の形態において、エッチング液は、フッ化水素酸を含むことがある。エッチング過程は、多層ガラスシート200にエッチング液を施して、底部ガラス層205を選択的に除去するためのどの適切な方法を含んでも差し支えない。適切なエッチング液施用過程としては、以下に限られないが、エッチング浴中に多層ガラスシート200を浸す工程、多層ガラスシート200上にエッチング液を噴霧する工程、またはその組合せが挙げられる。
【0165】
いくつかの実施の形態において、エッチング液は、部分的範囲を含む、合計で5体積%から60体積%の範囲の体積パーセント(体積%)で1種類以上の酸を含む水溶液であることがある。例えば、エッチング液は、5体積%から50体積%、5体積%から25体積%、5体積%から10体積%、10体積%から25体積%、10体積%から50体積%、10体積%から60体積%の合計体積パーセント、または端点を含む、端点としてこれらの値のいずれか2つを有する体積パーセントを有する1種類以上の酸を含むことがある。いくつかの実施の形態において、エッチングは、0℃から60℃に及ぶ温度で行われることがある。いくつかの実施の形態において、エッチングは、室温(23℃)で行われることがある。実施の形態において、底部ガラス層205は、エッチングで除去されず、その代わりに、上部ガラス層203に積層されて、ここに記載されたような、積層ガラス物品を形成することがある。
【0166】
図6Bは、いくつかの実施の形態による再成形されたガラス物品250を示す。再成形されたガラス物品250は、凸曲面および凹曲面で画成された展開不可能な湾曲形状を有する。凸曲面は、凸曲面を有するように再成形されたガラスシート200の底面204であり得る。凹曲面は、凹曲面を有するように再成形されたガラスシート200の上面202であり得る。再成形されたガラス物品250は、底面204と上面202を画成するいくつの凸面または凹面を含んでも差し支えない。再成形されたガラス物品250の最終厚さ207は、凸面と凹面との間で測定される。
【0167】
いくつかの実施の形態において、凸曲面と凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、10,000mm2以上、20,000mm2以上、30,000mm2以上、または60,000mm2以上の凸表面積および100mm当たり±xマイクロメートル(μm)の厚さ均一性を有し得る。100mm当たり±xマイクロメートルの厚さ均一性は、再成形されたガラス物品250の最大厚さ変動が、長さが100ミリメートルの曲面部分に沿ってxマイクロメートル以下であることを意味する。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、100mm当たり±25マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、100mm当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。
【0168】
いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2以上の凸表面積および100mm当たり±25マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から8m2(平方メートル)に及ぶ凸表面積および100mm当たり±25マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から6m2に及ぶ凸表面積および100mm当たり±25マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から3m2に及ぶ凸表面積および100mm当たり±25マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。
【0169】
いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2以上の凸表面積および100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から8m2(平方メートル)に及ぶ凸表面積および100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から6m2に及ぶ凸表面積および100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から3m2に及ぶ凸表面積および100mm当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。
【0170】
いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2以上の凸表面積および100mm当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から8m2(平方メートル)に及ぶ凸表面積および100mm当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から6m2に及ぶ凸表面積および100mm当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、60,000mm2から3m2に及ぶ凸表面積および100mm当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有し得る。
【0171】
いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、絶対値で300ミリジオプター未満の最終厚さ207を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、20ミリジオプターから300ミリジオプター(絶対値で)に及ぶ最終厚さ207を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、50ミリジオプターから300ミリジオプター(絶対値で)に及ぶ最終厚さ207を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。いくつかの実施の形態において、凸曲面および凹曲面で画成された再成形されたガラス物品250の湾曲形状は、100ミリジオプターから300ミリジオプター(絶対値で)に及ぶ最終厚さ207を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。湾曲形状の屈折力歪みは、DIN 52305:1995(「Determining the optical distortion and refractive power of safety glazing material for road vehicles」)にしたがって測定することができる。
【0172】
いくつかの実施の形態において、再成形されたガラス物品250の凸曲面204は、100mm2の凸表面積当たり10未満のディンプルの測定可能ディンプル密度を有し得る。ここに用いられているように、測定可能ディンプルは、凸曲面204上に形成され、1mmより大きい有効径を有する隆起または陥没ディンプルである。ここに用いられているように、測定可能ディンプルは、凸曲面204上に形成され、5mm以下の有効径を有する隆起または陥没ディンプルである。測定可能ディンプルは、ガラス物品の凸曲面204を透過した光の光学的歪みを測定することによって、特定することができる。測定データにノイズ・フィルタが適用された後の50ミリジオプター(mdpt)以上の光学的歪みは、測定可能ディンプルの存在を表し得る、または測定データにノイズ・フィルタが適用される前の100ミリジオプター(mdpt)以上の光学的歪みは、測定可能ディンプルの存在を表し得る。光学的歪みは、ガラス上の透過した光学的歪みを測定する装置を使用して測定することができる。例えば、光学的歪みは、ISRA Visionから入手できるLABSCAN-SCREENシステムを使用して測定することができる。測定可能ディンプル密度を評価する目的で、凸曲面204上の少なくとも1つの50,000mm2の表面積を分析し、存在する測定可能ディンプルの総数に基づいて、100mm2当たりの測定可能ディンプルの数を計算する。50,000mm2の表面積について100mm2当たりのディンプルの数の精度を確認するために、その50,000mm2の表面積内の5,000mm2の表面積を再分析することができ、5,000mm2の表面積中に存在する測定可能ディンプルの総数に基づいて、100mm2当たりのディンプルの数を計算する。
【0173】
方法400および装置100を、ガラスシートの再成形に関して先に記載してきたが、方法400および装置100は、プラスチックシートなどの他の材料を再成形するために使用することができる。例えば、方法400および装置100を使用して、ポリカーボネートシートを再成形することができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシートを再成形することができ、次いで、別の操作で、プラスチックシートを再成形することができ、再成形されたガラスシートと再成形されたプラスチックシートを積層することができる。
【0174】
図8は、いくつかの実施の形態による真空金型810を示す。真空金型810は金型814およびその中でガラスシート200を再成形することができる真空キャビティ812を備えることができる。真空キャビティ812は、金型表面816および金型表面816上に形成された1つ以上の真空孔818を備え得る。
【0175】
真空金型810は、真空キャビティ812の周りに配置されたフレーム830も備え得る。フレーム830は、上面834および上面834に形成された複数の真空開口840を有する上部壁832を備える。フレーム830の上面834は、上面834の周囲形状を画成する外周エッジ836を有し得る。
【0176】
真空開口840は、底面842、フレーム830の上面834に接続された上部周囲エッジ843、および上部周囲エッジ843から真空開口840の底面842まで延在する周囲側壁844を備え得る。いくつかの実施の形態において、周囲側壁844は、真空開口840の底面842に垂直な軸に対して測定して5°(度)から20°(度)の範囲の傾斜度892を有し得る。5°から20°の範囲の傾斜度892は、再成形されたガラスシート201の金型810からの離型を容易にすることができる。
【0177】
いくつかの実施の形態において、真空開口840は、部分的範囲を含む、10mmから30mmの範囲の上部周囲エッジ843で画成される有効径846を有し得る。例えば、いくつかの実施の形態において、有効径846は、10mmから30mm、10mmから25mm、10mmから20mm、15mmから30mm、または20mmから30mm、もしくは端点としてこれらの値のいずれか2つを有する範囲内に及び得る。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200は初期厚さ206を有し得、真空開口840は、初期厚さ206より10から15倍大きい有効径846を有し得る。
【0178】
いくつかの実施の形態において、真空開口840は、フレーム830の上面834と真空開口840の底面842との間で測定される深さ847を有し得る。いくつかの実施の形態において、深さ847は、部分的範囲を含む、0.5mmから2.5mmに及び得る。例えば、いくつかの実施の形態において、深さ847は、0.5mmから2.5mm、1mmから2.5mm、1.5mmから2.5mm、0.5mmから2mm、または0.5mmから1.5mm、もしくは端点としてこれらの値のいずれか2つを有する範囲内に及び得る。
【0179】
いくつかの実施の形態において、真空金型810は、真空キャビティ812およびフレーム830を有するモノリス真空金型であり得る。そのような実施の形態において、真空キャビティ812およびフレーム830は、一体成形することができる。いくつかの実施の形態において、真空キャビティ812およびフレーム830は、一体成形し、同じ材料から製造することができる。いくつかの実施の形態において、真空キャビティ812およびフレーム830は、一体成形し、グラファイトから製造することができる。モノリスの一体成形された真空金型は、冷却中に金型および/または再成形されたガラスシートの破損を抑制する、または防ぐことのできる一貫したCTEを有し得る。
【0180】
1つ以上の真空源170が、真空キャビティ812、1つ以上の真空開口840、またはその両方に真空圧力を適用できるように、1つ以上の真空源170は真空キャビティ812および1つ以上の真空開口840に流体連通し得る。いくつかの実施の形態において、真空源170aは、真空キャビティ812および1つ以上の真空開口840に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、真空源170aは、真空キャビティ812および1つ以上の真空開口840に同時に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、真空源170aは、真空キャビティ812および1つ以上の真空開口840に連続して真空圧力を適用することができる。例えば、真空源170aは、最初に、1つ以上の真空開口840に真空圧力を適用し、そして、1つ以上の真空開口840にまだ真空圧力を適用している間に、真空キャビティ812に真空圧力を適用することができる。真空管172aが、真空源170aを真空キャビティ812および1つ以上の真空開口840に接続することができる。
【0181】
いくつかの実施の形態において、第1の真空源170aは真空キャビティ812の真空孔818と流体連通し得、第2の真空源170bは、1つ以上の真空開口840と流体連通し得る。そのような実施の形態において、第1の真空源170aは、1つ以上の真空開口840に真空圧力を適用する第2の真空源170bとは関係なく、真空キャビティ812に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、第1の真空源170aおよび第2の真空源170bは、それぞれ、真空キャビティ812および1つ以上の真空開口840に同時に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、第1の真空源170aは真空キャビティ812に真空圧力を適用することができ、連続して、第2の真空源170bは1つ以上の真空開口840に真空圧力を適用することができる。例えば、第2の真空源170bは、最初に、1つ以上の真空開口840に真空圧力を適用することができ、第2の真空源170bが1つ以上の真空開口840に真空圧力をまだ適用している間に、第1の真空源170aが真空キャビティ812に真空圧力を適用することができる。
【0182】
第1の真空源170aおよび第2の真空源170bを含む実施の形態において、第1の真空管172aは第1の真空源170aを真空キャビティ812に接続することができ、第2の真空管172bは第2の真空源170bを1つ以上の真空開口840に接続することができる。いくつかの実施の形態において、第1の真空管172aおよび/または第2の真空管172bは、金型810上に形成された真空接続部176で金型810に連結することができる。
【0183】
真空孔818は、金型表面816から金型814を通じて金型814の底面820まで延在する貫通孔であり得る。真空孔818は、真空源170が真空孔818を通じて真空キャビティ812に真空圧力を適用するできるように、1つ以上の真空源170に流体連通し得る。
【0184】
真空孔818は、再成形中にガラスシート200の底面204に対する影響を最小にするために小さい直径を有し得る。いくつかの実施の形態において、真空孔818は、0.5ミリメートルから2ミリメートルに及ぶ直径を有し得る。
【0185】
いくつかの実施の形態において、フレーム830は、上面834に形成され、複数の真空開口840に流体接続した通路850を備え得る。そのような実施の形態において、通路850は、隣接した2つの真空開口840を接続する複数の通路部分852を含み得る。各通路部分852は、フレーム830の上面834に接続した上縁853および上縁853から通路850の底面855まで延在する側壁854を含み得る。いくつかの実施の形態において、側壁854は、通路850の底面855に垂直な軸に対して測定して5°(度)から20°(度)の範囲の傾斜度890を有し得る。5°から20°の範囲の傾斜度890は、再成形されたガラスシート201の金型810からの離型を容易にすることができる。
【0186】
いくつかの実施の形態において、通路850は、複数の真空開口840の各々を通って延在する第1の部分856および複数の真空開口840の各々の底面842の下に配置された第2の部分857を含み得る。そのような実施の形態において、第2の部分857は、真空開口840の内の1つに引き込まれたガラスシート200の第2の部分230が第1の部分856内の空気の流れを遮断した場合に、各真空開口840に真空圧力を適用するのを促進することができる。
【0187】
いくつかの実施の形態において、フレーム830の上面834は、フレーム830の外周エッジ836に配置された隆起部837を含み得る。いくつかの実施の形態において、隆起部837は、隆起部837に直接隣接した上面834の一部に対して測定された0.3mmから2mmの範囲の高さ838を有し得る。いくつかの実施の形態において、隆起部837の高さ838は、真空金型810を使用して再成形されたガラスシート200の初期厚さ206に合わせることができる。いくつかの実施の形態において、高さ838は、初期厚さ206の30%から50%の範囲にあり得る。フレーム830の外周エッジ836にある隆起部837は、再成形中に、ガラスシート200の底面204とフレーム830の上面834との間に真空気密シールを作るのを容易にすることができ、このことにより、再成形過程において真空圧力を適用している最中に、どのような横方向のガラスの動きも防ぐことができる。
【0188】
例えば、
図13に示されるように、ガラスシート200を再成形温度に加熱することにより、ガラスシート200の周囲部分240を重力下でフレーム830の外周エッジ836で隆起部837の周りに折り曲げることができる。外周エッジ836で隆起部837の周りに周囲部分240を折り曲げることは、再成形過程において真空圧力を適応している最中に、ガラスシート200を保持し、どのような横方向のガラスの動きも防ぐのに役立ち得る。
【0189】
いくつかの実施の形態において、金型表面816は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域822および中央表面領域822と隣接し、第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域824を含み得る。いくつかの実施の形態において、第2の最大曲率半径は、第1の最大曲率半径より少なくとも5%小さいことがあり得る。
【0190】
いくつかの実施の形態において、中央表面領域822は、再成形されたガラス物品250の所望の再成形形状を有する金型表面116の領域であり得る。言い換えると、中央表面領域822は、再成形されたガラス物品250の凸曲面204の凸表面曲率とぴったり合う凹表面曲率を有し得る。そのような実施の形態において、ガラスシート200の第2の部分230は、金型表面816の中央表面領域822に接触するまで引き寄せられ、それによって、第2の部分230が中央表面領域822の曲率をとることができる。
【0191】
中央表面領域822の第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域824を含む実施の形態において、領域822および824の形状は、再成形過程中にガラスシート200を中央表面領域822に接触するまで引き寄せるのを促進することができる。周囲表面領域824により小さい(より鋭い)曲率半径を位置付けることによって、再成形中に金型表面816に接触するまで引き寄せられるべきガラス物品の最後の部分は周囲表面領域824内にあり得る。ガラスシート200を中央表面領域822に接触するまで引き寄せることを確実にすることは、まず第一に、再成形過程中に再成形されたガラス物品250の凸曲面204と、中央表面領域822との間の完全な接触を確実にするのに役立ち得、このことは、凸曲面204を所望の形状に確実に形作るのに役立ち得る。
【0192】
いくつかの実施の形態において、真空金型810の1つ以上の真空孔818を金型表面116の周囲表面領域824に形成することができる。いくつかの実施の形態において、金型810には、中央表面領域822に真空孔818が形成され得ない。中央表面領域822に真空孔818を位置付けないことによって、中央表面領域822上でのガラスシートの再成形中に真空孔818により導入されるいずれの潜在的な欠陥も避けることができる。これらの潜在的な欠陥を避けることによって、再成形されたガラス物品250の凸曲面204上のこれらの欠陥を除去するための費用のかかる仕上げ工程を回避することができる。
【0193】
いくつかの実施の形態において、中央表面領域822は60,000mm2以上の表面積を有し得る。いくつかの実施の形態において、中央表面領域822は、60,000mm2から8m2に及ぶ表面積を有し得る。いくつかの実施の形態において、中央表面領域822は、60,000mm2から6m2に及ぶ表面積を有し得る。いくつかの実施の形態において、中央表面領域822は、60,000mm2から3m2に及ぶ表面積を有し得る。
【0194】
いくつかの実施の形態において、真空金型810は、金型表面116に形成され、中央表面領域822を周囲表面領域824から区分するスロット826を含み得る。スロットは、再成形されたガラス物品250の一部が、再成形中にスロット826に引き込まれないようなサイズであり得る。いくつかの実施の形態において、1つ以上の真空孔818をスロット826に形成することができる。
【0195】
金型表面816に形成されたスロット826は、再成形されたガラスシート201が金型表面816と接触しているときに、スロット826の上に位置付けられた再成形されたガラスシート201の部分に所望の表面特性および/または光学的性質を与えることができる。スロット826の上に位置付けられた再成形されたガラスシート201の部分は、金型表面816と直接的には接触しないことになる。したがって、金型表面816に与えられる潜在的な光学的欠陥および/または表面欠陥は、スロット826の上に位置付けられた再成形されたガラスシート201の部分に存在しないことになる。その光学的欠陥および/または表面欠陥は、再成形されたガラスシート201をレーザ切断するために使用されるレーザビームを乱したり散乱させたりし得るので、そのような光学的欠陥および/または表面欠陥がないことにより、スロット826に沿った再成形されたガラスシート201のレーザ切断が促進され得る。これらの光学的欠陥および/または表面欠陥の存在をなくすことにより、再成形されたガラスシート201をレーザ切断する精度および効率を最大化することができる。
【0196】
いくつかの実施の形態において、スロット826は、1mmから4mmの範囲の幅827を有し得る。いくつかの実施の形態において、スロット826の幅827は、真空金型810を使用して再成形されるガラスシート200の初期厚さ206に合わせることができる。いくつかの実施の形態において、スロット826の幅827は、初期厚さ206の200%から300%の範囲にあり得る。いくつかの実施の形態において、スロット826の幅827は、初期厚さ206の100%から300%の範囲にあり得る。いくつかの実施の形態において、スロット826の幅827は、初期厚さ206の100%から200%の範囲にあり得る。ここに記載されたような範囲内にあるスロット幅は、再成形されたガラスシート201の部分が再成形中にスロット826に引き込まれないように十分に小さいことがあり得る。
【0197】
いくつかの実施の形態において、スロット826は1mm以下の深さを有し得る。いくつかの実施の形態において、スロット826は、スロットの幅827の30%から50%の範囲の深さを有し得る。いくつかの実施の形態において、スロット826は、20マイクロメートルから1mmに及ぶ深さを有し得る。
【0198】
いくつかの実施の形態において、金型表面816は接触インジケータ828を含み得る。接触インジケータ828は、例えば、隆起ディンプルまたは接触センサであり得る。接触インジケータ828を含む実施の形態において、接触インジケータ828は、再成形されたガラスシート201が金型表面116と接触していることを示す信号を提供することができる。この信号を提供することによって、接触インジケータ828は、再成形されたガラス物品250の反復可能な真空成形を確実にするのに役立ち、真空キャビティ812内の真空圧力の過剰な適用(金型表面816と接触した再成形されたガラス物品の部分に望ましくない光学的性質および/または表面特性を導入し得る)を防ぐのに役立つことができる。いくつかの実施の形態において、接触インジケータ828は、周囲表面領域824上の金型表面816に位置付けることができる。
【0199】
例えば、
図11に示されるような、いくつかの実施の形態において、真空金型810は、金型表面816と反対にある真空金型810の底面820と接触した冷却ブロック880を含み得る。いくつかの実施の形態において、冷却ブロック880は、冷却剤を循環させるための回路を含み得る。そのような実施の形態において、冷却ブロック880は、冷却剤入口882および冷却剤出口884を備え得る。冷却ブロック880用の例示の冷却剤としては、以下に限られないが、空気および水があげられる。いくつかの実施の形態において、冷却水の流れは、直径が6から8mmの冷却管について、1mm当たり3から10リットルに及び得る。いくつかの実施の形態において、冷却ブロック880は、それに加え、またはそれに代えて、ヒートシンクまたは冷却リブを含み得る。いくつかの実施の形態において、冷却ブロック880は、金型表面816の中央表面領域822と反対にある真空金型810の底面820と接触し得る。冷却ブロック880は、再成形中に金型表面816の温度を局所的に低下させることができる。そのような温度の局所的低下は、再成形されたガラスシート201の凸曲面204が金型表面816と接触しているときに、機械的欠陥または熱欠陥の形成を防ぐのに役立ち得る。
【0200】
例えば、
図12に示されるような、いくつかの実施の形態において、真空金型810は、真空箱860内に配置することができる。いくつかの実施の形態において、真空箱860は、再成形中にガラスシート200上の対応する周囲部分240を支持し、係合するためのウイング862を備え得る。ウイング862と対応する周囲部分240との間の係合は、再成形過程において真空圧力を適用している最中にガラスシート200を保持し、どのような横方向のガラスの動きも防ぐのに役立ち得る。これによりガラスシート200の第2の部分230の局所的変形と伸長の制御を促進して、皺のない再成形されたガラス物品が作られる。いくつかの実施の形態において、ウイング862は、真空箱860の垂直壁に対して10°から30°の角度になり得る。
【0201】
真空金型810は、真空金型110と同様に方法400を使用して、ガラス物品を再成形するために使用することができる。工程402で、ガラスシート200の複数の第1の部分220が複数の真空開口840の上に配置され、ガラスシート200の第2の部分230が真空キャビティ812の上に配置されるように、ガラスシート200を真空金型810の上に配置することができる。ガラスシート200が真空金型810の上に配置されたときに、ガラスシート200が真空キャビティ812を覆い、ガラスシート200の底面204がフレーム830の上面834と直接接触するように、ガラスシート200を位置付けることができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の周囲部分240がフレーム830の外周エッジ836から外側に延在するように、ガラスシート200を真空金型810の上に配置することができる。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200は、周囲エッジ208で画成され、第1の周囲を有する周囲形状を有し得、フレーム830の外周エッジ836は、第1の周囲より小さい第2の周囲を有する形状を有し得る。周囲エッジ208の周囲がより大きいことにより、ガラスシート200が真空金型810の上に配置されたときに、周囲部分240がフレーム830の外周エッジ836から外側に広がることになり得る。
【0202】
いくつかの実施の形態において、工程402は、多数のガラスシート200を真空金型810の上に配置する工程を含み得る。複数のガラスシート200は、積層形態で真空金型810の上に配置することができる。そのような実施の形態において、方法400は、金型810を使用して、複数のガラスシート200を同時に再成形することができる。
【0203】
工程404で、ガラスシート200を再成形温度に加熱する。いくつかの実施の形態において、再成形温度は600℃から900℃に及び得る。いくつかの実施の形態において、ガラスシート200の温度の制御に役立つように、再成形中に、遮熱板180をガラスシート200の上面202に配置することができる。
【0204】
いくつかの実施の形態において、工程404でガラスシート200を再成形温度に加熱することにより、ガラスシート200の周囲部分240を重力下でフレーム830の外周エッジ836の周りに折り曲げることができる。いくつかの実施の形態において、工程404でガラスシート200を再成形温度に加熱することにより、ガラスシート200の周囲部分240を重力下でフレーム830の外周エッジ836で隆起部837の周りに折り曲げることができる。周囲部分240の折り曲げは、再成形過程において真空圧力を適用している最中に、ガラスシート200を保持し、どのような横方向のガラスの動きも防ぐのに役立ち得る。
【0205】
いくつかの実施の形態において、工程404でガラスシート200を加熱することにより、ガラスシート200の周囲部分240を90°未満の角度242で外周エッジ836の周りに折り曲げることができる。例えば、ガラスシート200の周囲部分240は、60°から85°に及ぶ角度242で外周エッジ836の周りに折り曲げることができる。いくつかの実施の形態において、隆起部837は、角度242が90°を超えるのを防ぐのに役立ち得る。
【0206】
工程406で、真空開口840に真空圧力を適用することができる。工程406で真空開口840に適用される真空圧力は、ガラスシート200の第1の部分220を真空開口840に引き込むのに十分であり得る。いくつかの実施の形態において、真空開口840に適用される真空圧力は、0.1バール(10kPa)から0.3バール(30kPa)に及び得る。いくつかの実施の形態において、真空開口840に適用される真空圧力は、20ミリバール(2kPa)から100ミリバール(10kPa)に及び得る。いくつかの実施の形態において、真空圧力は、30秒から120秒に及ぶ時間に亘り、工程406で真空開口840に適用することができる。いくつかの実施の形態において、真空圧力は、5リットル毎分から20リットル毎分の速度で真空開口840に適用することができる。いくつかの実施の形態において、工程406で真空開口840に適用される真空圧力は、真空金型810の通路850にガラスシート200の第3の部分を引き込むことができる。
【0207】
工程406で適用される真空圧力により、ガラスシート200をフレーム830の上面834に封止し、それによって、ガラスシート200の第2の部分230の周囲に真空気密シールを作ることができる。それに加え、工程406で適用される真空圧力は、再成形過程において真空圧力を適用している最中に、ガラスシート200を保持し、どのような横方向のガラスの動きも防ぐのに役立ち得る。このことにより、ガラスシート200の第2の部分230の局所的変形および伸長の制御を促進して、皺のない再成形されたガラス物品が作られる。
【0208】
再成形中にガラスシート200を適所に保持するために真空圧力を利用することによって、ガラスシート200の再成形中にガラスシート200をフレーム830の上面834に機械的に固定せずに、再成形過程を行うことができる。機械的な固定をなくすことにより、加熱と冷却の最中にガラスシート200に与えられる応力を最小にすることができる。過剰な応力、例えば、ガラスとクランプ機構の界面で生じる機械的応力および/または熱応力により、加熱と冷却の最中に望ましくないガラスの変形および/またはガラスの破損が生じ得る。それに加え、再成形中にガラスシート200を保持するために真空圧力を使用すると、ガラスシート200を真空金型810から取り出すときにガラスに損傷を与え得る、機械的解放機構の必要をなくすことができる。真空開口840により、冷却と離型の最中にガラスシート200を自己解放することができ、それゆえ、ガラスに与えられる応力を最小にすることができる。
【0209】
工程408で、真空キャビティ812に真空圧力を適用することができる。真空キャビティ812に適用される真空圧力は、ガラスシート200の第2の部分230を真空キャビティ812に引き込むのに十分であり得る。
【0210】
いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ812に適用される真空圧力は、0.1バール(10kPa)から0.3バール(30kPa)に及び得る。いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ812に適用される真空圧力は、10ミリバール(1kPa)から50ミリバール(5kPa)に及び得る。いくつかの実施の形態において、30秒から120秒に及ぶ時間に亘り、真空キャビティ812に真空圧力を適用することができる。いくつかの実施の形態において、10リットル毎分から100リットル毎分の速度で真空キャビティ812に真空圧力を適用することができる。
【0211】
いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ812に真空圧力を適用する前に、工程406で真空開口840に真空圧力を適用する。いくつかの実施の形態において、真空キャビティ812に真空圧力が適用されるのと同時に、真空開口840に真空圧力が適用されるように、工程406および408を同時に行うことができる。
【0212】
いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ812に真空圧力を適用することにより、ガラスシート200の第2の部分230を、真空キャビティ812を画成する金型表面816に接触するまで引き寄せることができる。いくつかの実施の形態において、工程408で真空キャビティ812に真空圧力を適用することにより、ガラスシート200の第2の部分230を真空キャビティ812に引き込むことができ、第2の部分230は真空キャビティ812内で自由成形することができる。そのような実施の形態において、第2の部分230は、真空キャビティ812内の真空圧力、時間、および温度を制御することによって、金型の金型表面に接触するまで引き寄せられずに、真空キャビティ112内で再成形することができる。
【0213】
いくつかの実施の形態において、真空源を使用せずに、真空キャビティ812および/または真空開口840に真空圧力を適用することができる。そのような実施の形態において、真空圧力は、再成形温度に到達した後、熱の印加を急停止することによって、適用することができる。これにより、真空キャビティ112および/または通路850内の空気を急冷し、よって、真空キャビティ812および通路850内に著しい気体体積の収縮を生じることができる。この著しい気体体積の収縮により、ガラスシート200の1つ以上の第1の部分220を真空開口840に引き込むことができるおよび/またはガラスシートの第2の部分230を真空キャビティ812に引き込むことができる。
【0214】
工程408でガラスシート200を再成形した後、真空キャビティ812および真空開口840に適用された真空圧力を解放し、再成形されたガラスシートを工程412で徐冷温度に冷ますことができる。工程412で、再成形されたガラスシートを徐冷温度に保持して、再成形中に生じた内部残留応力を緩和することができる。
【0215】
徐冷後、再成形されたガラスシート(例えば、
図6Aに示された再成形されたガラスシート201)を工程414で室温に冷却し、工程416で真空金型810から取り出すことができる。
【0216】
いくつかの実施の形態において、工程416でガラスシートを金型から取り出す工程は、真空管172aおよび/または真空管172bに1つ以上の窒素パルスを噴射する工程を含み得る。いくつかの実施の形態において、1つ以上の窒素パルスは、約600℃の温度および1012から1013ポアズの範囲の圧力を有する窒素ガスを含み得る。1つ以上の窒素パルスを含む実施の形態において、窒素パルスは、ガラスシートの離型を促進し、真空金型(再成形直後ではまだ高温であり得る)の酸化を抑制することができる。いくつかの実施の形態において、工程416でガラスシートを金型810から取り出す工程は、1つ以上の窒素パルスをスロット826に噴射する工程を含み得る。
【0217】
中央表面領域822および周囲表面領域824を有する金型表面816を含むいくつかの実施の形態において、中央表面領域822の表面温度は、再成形中に第1の最高温度を有するように制御することができ、周囲表面領域824の表面温度は、再成形中に第2の最高温度を有するように制御することができる。いくつかの実施の形態において、1つ以上の冷却ブロック880は、中央表面領域822および/または周囲表面領域824の細孔表面温度を制御するために利用することができる。いくつかの実施の形態において、第1の最高温度は、第2の最高温度より20℃から50℃低いことがあり得る。いくつかの実施の形態において、第1の最高温度は、第2の最高温度より20℃から150℃低いことがあり得る。いくつかの実施の形態において、第1の最高温度は、第2の最高温度より50℃から150℃低いことがあり得る。
【0218】
再成形されたガラスシート201を真空金型810から取り出した後、工程418で再成形されたガラスシート201から過剰のガラスシート材料を除去して、再成形されたガラス物品(例えば、
図6Bに示された再成形されたガラス物品250)を作ることができる。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料を除去する工程は、第2の部分230により画成された再成形されたガラス物品250が残るように、再成形されたガラスシート201から周囲部分240および第1の部分220を除去する工程を含み得る。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料を除去する工程は、中央表面領域822の外側に形成された再成形されたガラスシート201の全ての部分を除去する工程を含み得る。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料を除去する工程は、切断過程、例えば、レーザ切断過程または水ジェット切断過程を使用して、除去することができる。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料は、機械的な罫書きおよび罫書き線に沿ったガラスの割れを使用して除去することができる。いくつかの実施の形態において、過剰のガラスシート材料を除去する工程は、再成形中にスロット826の上に位置漬けられた再成形されたガラスシート201の部分に沿って再成形されたガラスシート201を切断する工程を含み得る。
【0219】
ここに用いられているように、「ガラス」という用語は、ガラスおよびガラスセラミックを含む、ガラスから少なくとも部分的に製造されたどの材料も含むことを意味する。「ガラスセラミック」は、ガラスの制御された結晶化により製造される材料を含む。実施の形態において、ガラスセラミックは、約30%から約90%の結晶化度を有する。使用されることのあるガラスセラミック系の非限定例に、Li2O×Al2O3×nSiO2(すなわち、LAS系)、MgO×Al2O3×nSiO2(すなわち、MAS系)、およびZnO×Al2O3×nSiO2(すなわち、ZAS系)がある。
【0220】
ここに記載された実施の形態は、以下の情報を考慮してさらに理解されるであろう。
【0221】
図14は、例示の実施の形態による、ここに記載された方法により製造された再成形されたガラス物品1400および仮想面1402の断面図を概略示している。実施の形態において、仮想面1402は、ガラス物品1400の湾曲形状の複雑性を決定するためのシミュレーション中に、矢印1414で示されるように、ガラス物品1400により画成された仮想中心面1412に含まれる点が移されることのある仮想面を表す。ここに記載された再成形技術は、ある既存の加熱成形技術よりも複雑性の高いガラス物品を製造することができ、そのガラス物品1400は、高い厚さ均一性および比較的低レベルの光学的歪みを有益に示す。
【0222】
図から分かるように、ガラス物品1400は、第1の曲面1404、第2の曲面1406、および第1の曲面1404と第2の曲面1406との間に延在する厚さ1408を有する。実施の形態において、第1の曲面1404と第2の曲面1406は、ガラス物品1400の展開不可能な湾曲形状を画成する。実施の形態において、厚さ1408は、第1の主面1404に垂直に延在する方向1410に沿った第1の曲面1404と第2の曲面1406との間の距離を表す。図から分かるように、厚さ1408が測定される方向1410は、展開不可能な湾曲形状を考慮すると、第1の曲面1404上の位置の関数として変動することがある。実施の形態において、厚さ1408は、第1の曲面1404上の特定の点から測定される、第1の曲面1404から第2の曲面1406までの最小距離に相当することがある。実施の形態において、厚さ1408は、0.25ミリメートルから10ミリメートル、0.5ミリメートルから5ミリメートル、0.5ミリメートルから2.5ミリメートル、2.5ミリメートルから5ミリメートル、2.5ミリメートルから10ミリメートル、または端点としてこれらの値のいずれか2つを有する範囲内に及び得る。実施の形態において、厚さ1408は、0.1ミリメートルから10ミリメートル、0.2ミリメートルから10ミリメートル、0.3ミリメートルから10ミリメートル、0.4ミリメートルから10ミリメートル、0.5ミリメートルから10ミリメートル、0.6ミリメートルから10ミリメートル、0.7ミリメートルから10ミリメートル、0.8ミリメートルから10ミリメートル、0.9ミリメートルから10ミリメートル、1ミリメートルから10ミリメートル、1.1ミリメートルから10ミリメートル、1.2ミリメートルから10ミリメートル、1.4ミリメートルから10ミリメートル、1.5ミリメートルから10ミリメートル、1.6ミリメートルから10ミリメートル、1.8ミリメートルから10ミリメートル、2ミリメートルから10ミリメートル、2.1ミリメートルから10ミリメートル、2.5ミリメートルから10ミリメートル、3ミリメートルから10ミリメートル、4ミリメートルから10ミリメートル、5ミリメートルから10ミリメートル、0.1ミリメートルから9ミリメートル、0.1ミリメートルから8ミリメートル、0.1ミリメートルから7ミリメートル、0.1ミリメートルから6.5ミリメートル、0.1ミリメートルから6ミリメートル、0.1ミリメートルから5.5ミリメートル、0.1ミリメートルから5ミリメートル、0.5ミリメートルから4ミリメートル、0.7ミリメートルから3.6ミリメートル、0.7ミリメートルから3.3ミリメートル、0.7ミリメートルから2.1ミリメートル、0.7ミリメートルから1.6ミリメートル、または0.7ミリメートルから1.1ミリメートル、もしくは端点としてこれらの値のいずれか2つを有する範囲内に及び得る。
【0223】
厚さ1408を測定したときに得られる値は、第1の曲面1404上の位置に応じて変わることがある。ここに記載されたように、ここに記載された深絞り型真空成形法は、第1の曲面1404全体に亘り実質的に均一な厚さ1408を促進する。例えば、第1の曲面1404の表面積の特定の1000mm2部分で、厚さ1408の複数の測定値(例えば、10の測定値)が得られた場合、その測定値は全て、互いの150μm以内にあることがある(例えば、得られた値の最大値と最小値との間の差が150μm以下であるように)。すなわち、ガラス物品1400の厚さ均一性は、第1の曲面1404上の表面積の特定の1000mm2当たり±75マイクロメートルであることがある。実施の形態において、ガラス物品1400の厚さ均一性は、第1の曲面1404上の表面積の特定の10000mm2当たり±75マイクロメートルであることがある。実施の形態において、その厚さ均一性は、第1の曲面1404上の表面積の特定の1000mm2当たり±50マイクロメートルである。実施の形態において、その厚さ均一性は、第1の曲面1404上の表面積の特定の1000mm2当たり±25マイクロメートルである。
【0224】
実施の形態において、第1の曲面1404および第2の曲面1406の少なくとも一方は、60,000mm2から6m2の範囲の表面積および1000mm2当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有する。実施の形態において、第1の曲面1404および第2の曲面1406の少なくとも一方は、60,000mm2から6m2の範囲の表面積および10000mm2当たり±75マイクロメートルの厚さ均一性を有する。実施の形態において、第1の曲面1404および第2の曲面1406の少なくとも一方は、60,000mm2から6m2の範囲の表面積および10000mm2当たり±50マイクロメートルの厚さ均一性を有する。実施の形態において、第1の曲面1404および第2の曲面1406の少なくとも一方は、60,000mm2から6m2の範囲の表面積および10000mm2当たり±25マイクロメートルの厚さ均一性を有する。
【0225】
実施の形態において、第1の曲面1404と第2の曲面1406により画成される展開不可能な湾曲形状は、ガラス物品1400の仮想中心面1412と仮想面1402により規定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する。この最大圧縮歪み形状パラメータは、皺や他の著しい厚さ変動を導入せずに、ここに記載された過程が平らなガラスシートを再成形できる形状の複雑性を表す。最大圧縮歪み形状パラメータは、主に、仮想中心面1412とその寸法(例えば、指定された座標系における長さと幅)に関連するガウス曲率の関数である。ガラスの厚さは、最大圧縮歪み形状パラメータにわずかな影響を与えるが、その影響は取るに足らない。
【0226】
最大圧縮歪み形状パラメータは、仮想中心面1412を仮想ガラスシートとしてシミュレーションすることによって、計算することができる。仮想ガラスシートの性質は、実際のガラス物品1400(ここに記載された方法により物理的に製造された)の性質と関係ないことがある。一例では、仮想ガラスシートは、0.7mmの厚さ、71.7GPaのヤング率、および0.21のポアソン比、並びに2440kg/m3の密度を有する。仮想ガラスシートは、市販の有限要素解析器に関連する三角形または四角形シェル要素(またはその組合せ)に離散化される。実施の形態において、Ansys(登録商標)Mechanical(商標)を使用して最大圧縮歪み形状パラメータを計算し、ここで、仮想中心面1412はSHELL181要素を使用して離散化される(メッシュ発生においてフィラーとして使用される場合を除いて、縮退三角形オプションの使用を避ける)。詳しくは、仮想ガラスシート(最初に仮想中心面1412の形状を有する)が仮想面1402の平面形状を有するように平らにされたときに仮想ガラスシートに存在するであろう歪みについてシミュレーションが行われる。コマンドスクリプトを使用して、シミュレーションのノード偏位に関連する境界条件を指定する(例えば、仮想ガラスシートを平らにするために仮想面1402を規定する)。その境界条件は、仮想ガラスシートの剛体運動も阻むことがある(例えば、仮想面1402を仮想中心面1412の一部の接線であるように指定することによって)。各シェル要素に関連するノードは、ノードの各々が仮想面1402上に位置付けられるまで、矢印1414に沿って動かされる(例えば、シミュレーションされた平板化されたガラスシートの長さと幅が、シミュレーションされている初期ガラス物品1400のものと同じであるように、各ノードのxまたはy座標を変えずに、ノードの各々のz座標は、境界条件で確立された座標系においてゼロ設定される)。有限要素解析は、非線形解析を含む陰解法を使用して行われる。縦方向の主歪み(major principle strain)の最大値が、ここに記載された最大圧縮歪み形状パラメータである。シェル要素に関連するメッシュサイズは、収束解を保証するために、0.5mm以下である。
【0227】
仮想中心面1412は、ガラス物品1400の中心平面を表す面である。仮想中心面1412上の各点は、その点で仮想中心面1412に垂直に延在する方向に沿って第1の曲面1404と第2の曲面1406から等距離にある。
【0228】
特定の既存の真空成形法は、欠陥や厚さが相当変動せずには、1%または2%より大きい最大圧縮歪みパラメータを持つ展開不可能な形状を有するガラス物品を製造できないであろう。対照的に、ここに記載された深絞り型真空成形法は、平らなガラスシートを、3.0%以上(例えば、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上)の最大圧縮歪み形状パラメータを持つ展開不可能な形状を画成する曲面を有する湾曲ガラス物品に再成形することができる。1つ以上の実施の形態において、湾曲ガラス物品は、そのような最大圧縮歪み形状パラメータの範囲を持つ展開不可能な形状を画成する曲面を有しつつ、それでも、その部分の表面積の少なくとも1000mm2当たり±75μm(例えば、±50μm、±25μm)の厚さ均一性を示す。
【0229】
実施の形態において、ガラス物品1400に関連する最大圧縮歪み形状パラメータは、そのガラス物品が、実質的に平行六面体形状である外面を有する場合(またはガラス物品の外面の大半が10mより大きい曲率半径を有する場合)、以下の方程式を使用して近似できる:
【0230】
【0231】
式中、κは、仮想中心面1412の平均ガウス曲率であり、lは、仮想ガラスシートがシミュレーションされて平坦化される平らなガラスシートの長さであり、wはその平らなガラスシートの幅である(各定数の単位は、結果がmm/mの単位で得られるようなものであり、これは、mm/mで表される数値結果を10で割ることによって、パーセントに変換できる)。ガラス物品が実質的に円形を有する場合(またはガラス物品の外面の大半が10m未満の曲率半径を有する場合)、最大圧縮歪み形状パラメータは、以下の関係式に基づいて数学的に近似できる:
【0232】
【0233】
式中、Dは、仮想ガラスシートが平坦化される円形ガラスプレートの直径である。方程式(1)および(2)の定数に関連する単位は、方程式(1)および(2)の出力がmm/mの単位であるように設定される(その出力を10で割ることによってパーセントに変換できる)。
【0234】
実施の形態において、再成形されたガラス物品1400の湾曲形状は、絶対値で300ミリジオプター未満の厚さ1408を通じて測定される屈折力歪みを有し得る。いくつかの実施の形態において、再成形されたガラス物品1400の湾曲形状は、20ミリジオプターから300ミリジオプター(絶対値で)に及ぶ厚さ1408を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。いくつかの実施の形態において、再成形されたガラス物品1400の湾曲形状は、50ミリジオプターから300ミリジオプター(絶対値で)に及ぶ厚さ1408を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。いくつかの実施の形態において、再成形されたガラス物品1400の湾曲形状は、100ミリジオプターから300ミリジオプター(絶対値で)に及ぶ厚さ1408を通じて測定された屈折力歪みを有し得る。湾曲形状の屈折力歪みは、DIN 52305:1995(「Determining the optical distortion and refractive power of safety glazing material for road vehicles」)にしたがって測定することができる。
【0235】
いくつかの実施の形態において、再成形されたガラス物品1400の第1の曲面1404は、100mm2の凸表面積当たり10未満のディンプルの測定可能ディンプル密度を有し得る。ここに用いられているように、測定可能ディンプルは、第1の曲面1404上に形成され、1mm超の有効径を有する隆起または陥没ディンプルである。測定可能ディンプルは、ガラス物品1400の第1の曲面1404を透過した光の光学的歪みを測定することによって、特定することができる。測定データにノイズ・フィルタが適用された後の50以上のミリジオプター(mdpt)の光学的歪みは、測定可能ディンプルの存在を表し得る、または測定データにノイズ・フィルタが適用される前の100以上のミリジオプター(mdpt)の光学的歪みは、測定可能ディンプルの存在を表し得る。光学的歪みは、ガラス上に透過した光学的歪みを測定する装置を使用して測定することができる。例えば、光学的歪みは、ISRA Visionから入手できるLABSCAN-SCREENシステムを使用して測定することができる。測定可能ディンプル密度を評価する目的で、第1の曲面1404上の少なくとも1つの50,000mm2の表面積を分析し、存在する測定可能ディンプルの総数に基づいて、100mm2当たり測定可能ディンプルの数を計算する。50,000mm2の表面積について100mm2当たりのディンプルの数の精度を確認するために、その50,000mm2の表面積の中の5,000mm2の表面積を再分析することができ、5,000mm2の表面積中に存在する測定可能ディンプルの総数に基づいて、100mm2当たりのディンプルの数を計算する。
【0236】
認識されるように、ガラス物品1400は様々な形状を有することがあり、ガラス物品1400の特定の形状は、特に制限的ではない。例えば、実施の形態において、ガラス物品1400の外周形状は、仮想面1402に平行に延在する第1の方向に延在する長さ(L)および仮想面1402に平行に延在し、第1の方向に垂直に延在する第2の方向に延在する幅(W)を有し得る。この長さ(L)と幅(W)は、それぞれ、第1と第2の方向におけるガラス物品1400の最大寸法を表すことがある。実施の形態において、ガラス物品1400の外周エッジは、実質的に平行六面体形状(例えば、長方形)であることがある。実施の形態において、ガラス物品1400の外周エッジは、実質的に円形の形状(例えば、外周エッジの大半が10m未満の曲率半径を有するように)であり、外周エッジ上の2点間の最大距離を表す直径(D)を有することがある。
【0237】
ここに記載された深絞り型真空成形技術は、ガラスシートの各々が、
図14に示されたガラス物品に関して記載されたような、複雑な湾曲形状を有するように、多数のガラスシートを共成形(例えば、共造形、共垂下、共加圧)するために使用されることもある。多数のガラスシートを共成形することは、形状が互いに一致するガラスシートの成形を同時に有益に促進し、高品質の積層板コンポーネント(例えば、フロントガラス、サイドウィンドウ、安全ガラス、または互いに積層された複数のガラスシートを備えた任意の他のコンポーネント)の形成が容易になる。ここに記載された深絞り型真空成形技術は、極端なガウス3D形状(例えば、湾曲したガラス基板の1つ以上が、3.0%以上の最大圧縮歪み形状パラメータを有するような)を有するガラス物品を形成する場合に特に有益であろう。
【0238】
図7に関して、2つのガラス層が、ここに記載された技術により共成形のためにお互いに重ねて配置された場合、上部ガラス層203(例えば、
図1Aおよび1Bに関してここに記載された金型表面116からより遠いガラス層)は、特に、再成形後に、最小の曲率半径(または最高レベルのガウス曲率)を有するように再成形された区域において、再成形中に底部ガラス層205に適切に従わず、2つのガラス層の間で著しい形状偏差がもたらされることがある。そのような形状偏差は、複数のガラス層を含む積層板の性能に悪影響を与えることがある(例えば、著しい光学的歪みを導入することにより、または積層中にガラス層の間に配置された接着剤または高分子中間層によるガラス層間の結合強度を損なうことにより)。特に、底部ガラス層205が上部ガラス層203への真空圧力の印加を阻害し、それらに適用される真空圧力に差を生じることが分かった。そのような真空圧力の差は、上部ガラス層203と底部ガラス層205との間にエアポケットの形成をもたらすことが分かった。
【0239】
図15は、ここに記載された方法により金型1506上で再成形された上部ガラス層1502および底部ガラス層1504を備えた積層体1500の断面図を概略示している。図示された実施の形態において、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は、再成形前に、同じ厚さと組成を有する。上部ガラス層1502は、第1の主面1519および第2の主面1520を有するのが示されている。底部ガラス層1504は、第1の主面1524および第2の主面1525を有するのが示されている。実施の形態において、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は、ここに記載されたガラスシート200と似た構造を有する。上部ガラス層1502が、厚さおよび組成の少なくとも一方が底部ガラス層1504と異なる実施の形態も考えられる。そのような実施の形態において、上部ガラス層1502としてより堅いガラス層(所定の再成形温度で粘度および厚さに基づいて曲げに最も抵抗性であるガラスである)を有することが有益であろう。
【0240】
金型1506は、その上部壁1509に形成された複数の真空開口1508および金型表面1511と金型1506の底面1512との間に延在する複数の真空孔1510を含むのが示されている。実施の形態において、金型1506の様々な構成要素が、明瞭さと議論を目的として、省かれているという了解の下で、金型1506は、概して、
図8~9Bに関してここに記載された真空金型810と同じ構造と機能を有する(例えば、真空開口1508は、概して、真空開口840と同じ構造と機能を有し、真空孔1510は、概して、真空孔818と同じ構造と機能をを有するように)。
【0241】
図示された実施の形態において、複数の真空孔1510の一部は、金型表面1511の周囲表面領域1516(例えば、積層体1500の外側エッジに近接して)に配置されており、一方で、複数の真空孔1510の別の部分は、金型表面1511の中央表面領域1514に配置されている。ここに記載されたような実施の形態において、中央表面領域1514は、概して、完成した再成形されたガラス物品のものに相当し、周囲表面領域1516のものより大きい最小曲率半径を有する湾曲形状を有することがある。周囲表面領域1516と接触または重複する(例えば、金型表面1511に垂直に延在する方向に)積層体1500の部分は、再成形後に積層体1500から切断され、廃棄される(すなわち、最終ガラス物品には含まれない)ことがある。実施の形態において、金型1506は、結果として得られる再成形されたガラス物品における表面均一性を促進するために、中央表面領域1514内にどのような真空孔も含まない。
【0242】
実施の形態において、上部ガラス層1502を底部ガラス層1504に接触させて保持するために、追加の保持器(図示せず)が使用される。真空開口1508からの負の真空圧力は上部ガラス層1502のエッジには適用されないので、保持器が必要である。保持器は、底部ガラス層1504に接触するように上部ガラス層1502に力を印加することができる。実施の形態において、保持器は、重力が上部ガラス層1502を底部ガラス層1504に接触させて保持するように、上部ガラス層1502上に積層体1500の周囲に配置された1つ以上の重り(例えば、アルミナロッド)を含むことがある。他の機械的保持器(例えば、クリップ、空気圧)が考えられ、本開示の範囲に含まれる。
【0243】
再成形中、上部ガラス層1502と底部ガラス層1504との間にエアポケットが形成されて、上部ガラス層1502の第2の主面1520と底部ガラス層1504の第1の主面1524との間に間隙1518(特定の点で金型表面1511に垂直に延在する方向に測定される)が生じることが分かった。詳しくは、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504が、組成と厚さが同一である場合、上部ガラス層1502は、概して、金型表面1511の周囲表面領域1516で底部ガラス層1504にしたがうが、間隙1518は、比較的大きい大きさのガウス曲率を有する金型表面1511の区域(実施の形態において、中央表面領域1514内に位置することがある)で10から30mmの値に到達することが分かった。間隙1518が10mmを超える最大値を有する場合、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504のその後の積層が妨げられることがある(例えば、剥離が生じる可能性がある)。
【0244】
先に鑑みて、本出願人は、上部ガラス層1502と底部ガラス層1504との間の形状の不一致を減少させるために、再成形前に積層体1500に行うことができる改良を見出した。
図16Aおよび16Bは、それぞれ、金型1506内での再成形の前と後の、
図15に関してここに記載された積層体1500の改良版を概略示している。
図16Aに示されるように、積層体1500は、底部ガラス層1504が、その全厚を貫通する(例えば、第1の主面1524から第2の主面1525まで、
図15参照)複数の真空ビア1600を含み、よって、金型表面1511の側から見た場合、上部ガラス層1502の部分が露出されるという点で改良されている。本出願人は、真空ビア1600の存在により、上部ガラス層1502と底部ガラス層1504との間にエアポケットが形成されるのが有益に妨げられ、それによって、上部ガラス層1502に負の真空圧力を直接適用できることを見出した。真空ビア1600は、再成形中に上部ガラス層1502が底部ガラス層1504に接触するように引き寄せられ、真空ビア1600を含まない実施の形態と比べて、上部ガラス層1502と底部ガラス層1504との間の形状不一致を低下させるのを促進する。
【0245】
真空ビア1600の数、配列、およびサイズは、形成されているガラス物品の形状、並びに上部ガラス層1502および底部ガラス層1504の厚さと組成に応じて異なるであろう。実施の形態において、複数の真空ビア1600は、形状が円形であり、1.0mm以上かつ5.0mm以下(例えば、2.0mm以上かつ4.0mm以下)の直径を有する。実施の形態において、底部ガラス層1504は少なくとも2つの真空ビアを含む。実験により、深絞り型真空成形中にエアポケットを防ぐために、2、3、または4つの真空ビアで十分であろうことが示されたが、それより多い数の真空ビアを含む実施の形態が考えられ、本開示の範囲に含まれる。一般に、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504の表面積が大きいほど、形成される最終部品の周囲(例えば、中央表面領域1514と周囲表面領域1516との間の境界に沿った)の均一性が高くなる。複数の真空ビア1600の1つ以上が、物品の最後に形成された区域、または最も深い再成形された区域(中央表面領域1514と重複していることがある)に配置された実施の形態も考えられるが、このことは、特定の用途には必要ない。
【0246】
実施の形態において、真空ビア1600は、再成形後、真空ビア1600が金型表面1511の周囲表面領域1516上に配置されるように、底部ガラス層1504に位置付けられる。すなわち、真空ビア1600は、再成形後、その真空ビアが中央表面領域1514と周囲表面領域1516との間の境界の半径方向外側に位置付けられるように、底部ガラス層1504に位置付けられることがある。実施の形態において、真空ビアは、中央表面領域1514と周囲表面領域1516との間の境界にできるだけ近いが、それでも、その境界の周囲表面側に位置付けられる。ここに記載されるように、再成形後、積層体1500は、中央表面領域1514と重複する(金型表面1511に垂直に延在する方向に)積層体1500の部分のみが最終ガラス物品に含まれるように、中央表面領域1514と周囲表面領域1516との間の境界で、適切な技術を使用して切断されることがある。それゆえ、中央表面領域1514と周囲表面領域1516との間の境界にできるだけ近く真空ビアを設けることにより、積層体1500の中央部分が曝される真空圧力を最大にすることができ、それでも、最終ガラス物品から真空ビアが排除される。そのような構成は、上部ガラス層1502と底部ガラス層1504との間の形状不一致を減少させる一方で、真空ビア1600の形成による、最終ガラス物品に対する悪影響を防ぐのに役立つ。
【0247】
実施の形態において、真空ビア1600は、中央表面領域1514の周囲に均一に分布しないように、底部ガラス層1504に位置付けられる。すなわち、真空ビア1600は、中央表面領域1514の周囲に不均一に分布することがある。例えば、実施の形態において、真空ビア1600は、比較的高いガウス曲率を有する中央表面領域1514の区域に近接して位置付けられる。実施の形態において、真空ビア1600は2対で配置されることがあり、各対は、ガウス曲率で極大を有する、再成形後の金型表面1511上の点に近接して位置付けられる。各対の境界上の位置は、各対における真空ビアの中心を接続する線の中点と、ガウス曲率の極大との間の距離を最小にするように選択されることがある。ここに記載されるように、そのような最大ガウス曲率の点で、上部ガラス層1502は、特に、底部ガラス層1504の垂下に従わないようである。真空ビア1600のそのような配置は、それらの点に比較的均一な真空圧力の分布を与えて、上部ガラス層1502の曲げを促進することができる。
【0248】
図16Aに示されたような実施の形態において、真空ビア1600は、積層体1500が金型1506上に配置されたときに、真空ビアが真空孔1510からずれるように底部ガラス層1504内に位置付けられる。真空ビア1600の各々は、再成形前に、底部ガラス層1504の第1の主面1524および第2の主面1525(
図15参照)と垂直な方向1606に延在する中心軸1602を有することがある。
図16Aに示された例では、真空ビア1600は、積層体1500が再成形のために金型1506上に配置されたときに、真空ビア1600の各々の中心軸1602が真空孔1510の関連する1つからずれるように位置付けられている。実施の形態において、真空ビア1600の各々は、再成形前に第1の主面1524および第2の主面1525に平行に延在する方向1608に真空孔1510の最も近いものから距離1604だけずれることがある。
図16Bに示されるように、ずれの距離1604は、再成形後に、真空ビア1600の各々の中心軸1602が真空孔1510の内の1つを通って延在するようなものであることがある。それゆえ、距離1604は、真空孔1510の各々に近接する金型表面1511の形状に応じて異なるであろう。そのような構成により、負の真空圧力が上部ガラス層1502に適用される障害が有益に減少する。真空孔1510の内の1つを通って延在する真空ビア1600の各々に関連する中心軸1602のために、上部ガラス層1502に適用される負圧が、再成形過程の終わりに近づくにつれて最大となり、上部ガラス層1502を底部ガラス層1504の曲率に一致させるのを促進することができる。複数の真空ビア1600は、周囲表面領域1516内で最大のガウス曲率を有する金型表面1511の区域に隣接して位置付けることができる。実施の形態において、真空ビア1600は、各対の各真空ビアにおける中心軸1602(各真空ビア1600内の位置にある)が、再成形前に真空孔1510の内の1つから等距離にあるように対で配置されている。
【0249】
図17は、複雑に湾曲した形状を有し、間に厚さのある第二面1714により与えられる少なくとも1つの凹面と反対の第一面1712により与えられる少なくとも1つの凸面を有する、第1の基板1710を含む積層板1700を概略示している。この積層板は、複雑に湾曲した第2の基板1730も含む。1つ以上の実施の形態において、第2の基板1730は冷間成形されることがある。第2の基板1730は、間に厚さのある、第四面1734により与えられる少なくとも1つの凹面と反対の第三面1732により与えられる少なくとも1つの凸面を有する。
図17に示されるように、第1の基板1710と第2の基板1730との間に中間層1720が配置されることがある。実施の形態において、中間層1720は、少なくとも、積層板の第二面1714と第三面1732に貼り付けられている。実施の形態において、中間層1720は、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、イオノマー、ポリ塩化ビニル共重合体および熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群より選択される材料から作られる。中間層1720の厚さは、約0.3mmから約2mmの範囲にあることがある。
【0250】
実施の形態において、第1の基板1710および第2の基板1730は、同じ組成物から形成され、互いに実質的に同程度(例えば、互いの2%以内)の平均厚さを有する。実施の形態において、第1の基板と第2の基板1710および1730は、厚さ、組成、および表面圧縮応力の少なくとも1つが互いに異なる。例えば、実施の形態において、第1の基板1710は、第1のガラス組成物(例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス)から作られ、第1の厚さを有し、第2の基板1730は、第2のガラス組成物(例えば、アルカリアルミノケイ酸塩組成物、ソーダ石灰組成物)から作られ、第2の厚さを有する。第1のガラス組成物は第2のガラス組成物と異なることがあり、第1の厚さは第2の厚さより大きい(例えば、第2の厚さの少なくとも1.5倍、第2の厚さの少なくとも2.0倍、第2の厚さの少なくとも2.5倍、第2の厚さの少なくとも3.0倍)ことがある。第1のガラス基板は、第2のガラス基板の表面圧縮応力と異なる表面圧縮応力を有することがある(第1のガラス基板と第2のガラス基板の各々の凹面で測定される)。1つ以上の実施の形態において、表面圧縮応力の差は、第2のガラス基板を冷間成形することによって生じる。例えば、第2のガラス基板の凹面の表面圧縮応力は、第1のガラス基板の凹面の表面圧縮応力より大きいことがある。第1の基板と第2の基板1710および1730は、ここに全て引用される、米国特許第10450215号明細書に記載された厚さ/組成の組合せのいずれを有してもよい。積層板1700は、自動車用板ガラスを形成することがあり、潜在的に、米国特許第10450215号明細書に記載された用途のいずれに使用されてもよい。
【0251】
実施の形態において、積層板1700の第1の基板1710および第2の基板1730の各々は、ここに記載された再成形過程により形成されることがある。例えば、実施の形態において、第1の基板1710および第2の基板1730の各々は、
図4および/または
図8~13に関してここに記載された方法400により個別に再成形される。第1の基板1710および第2の基板1730の各々は、展開不可能な湾曲形状を有し、ここに記載された厚さ均一性要件を満たすことがある。実施の形態において、第1と第2の基板1710および1730の各々は、複雑に湾曲した形状を有し、
図14に関してここに記載されたガラス物品1400に関してここに記載された厚さ均一性要件を満たすことがある。例えば、第1の基板1710および第2の基板1730の各々は、3.0%以上の最大圧縮歪み形状パラメータ(例えば、有限要素解析で決定される、または式(1)で近似される)を有し、1000mm
2の表面積当たり±75μmの厚さ均一性を有する。
【0252】
実施の形態において、第1の基板1710および第2の基板1730は、
図16に関してここに記載された積層体1500と構造が類似の積層体を形成することにより、再成形される。例えば、第1の基板1710および第2の基板1730の一方が、
図15の上部ガラス層1502に対応することがあり、一方で、第1の基板1710および第2の基板1730の他方が、
図15の底部ガラス層1504に対応することがある。底部ガラス層1504に対応する第1の基板1710および第2の基板1730の一方は、再成形中に真空ビアを含むことがあり、これらは、積層板1700に組み込まれる前に、続いて除去される。
【0253】
真空ビアを含むここに記載された共成形過程は、積層板の内面が比較的低い形状不一致を有することを有益に促進することがある。すなわち、第1の基板1710の第二面1714および第2の基板1730の第一面1732は、互いに実質的に対応して、中間層1720を介して第1と第2の基板1710および1730の互いへの結合を促進することがある。実施の形態において、第1と第2の基板1710および1730の間の形状不一致は、適切な三次元レーザスキャナを使用して第二面1714と第一面1732を走査し、面1714と1732の各々の対応する位置が互いにどれだけ異なるかを決定することによって測定することができる。第1と第2の基板1710および1730の形状間の不一致が大きいほど、第1の基板1710と第2の基板1730との間の間隙が目標値から増減する傾向にある。実施の形態において、ここに記載された共成形過程の結果として、第1と第2の基板1710および1730の間の形状不一致は、第一面1712または第二面1734の全体に亘り測定したときに、2.0mm以下の大きさを有する。この形状不一致は、独国、ブラウンシュヴァイク所在のGOM GmbHにより供給されるATOS Triple Scanなどの適切な三次元オプティカルスキャナを使用して測定することができる。実施の形態において、第1と第2の基板の間の形状不一致の大きさは、第一面1712または第二面1734の全表面積の少なくとも80%(例えば、少なくとも90%)に亘り1.0mm以下である。
【0254】
図18は、本開示の例示の実施の形態による、複雑な展開不可能な形状を有するガラス積層板を製造する方法1800の流れ図を示す。方法1800は、各々が複雑な展開不可能な湾曲形状を有する、2つ以上のガラス層のガラス積層板を形成するために使用されることがある。一例では、方法1800は、
図17に関してここに記載された積層板1700を製造するために使用されることがある。方法1800は、ガラス層間の形状不一致が比較的低い積層板の形成を有益に促進することがあり、一方で、ガラス層は、複雑な展開不可能な湾曲形状を有し、それでも、比較的均一な厚さ分布を有するように再成形される。方法1800は、既存の共成形方法で製造できない、光学的歪みが比較的低い複雑な形状を有する積層板を製造するために使用されることがある。方法1800の以下の記載は、
図16Aに示された底部ガラス層1504を使用して、積層板1700の第1の基板1710を形成し、上部ガラス層1502を使用して第2の基板1730を形成する例を称するために
図15~17における様々な構成要素を称することになる。方法1800はこの例に限定されず、様々な組合せが考えられ、本開示の範囲に含まれることを理解すべきである。
【0255】
ブロック1802で、ガラス層が提供される。
図16Aを参照すると、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は、厚さと組成に関して、特に限定されない。実施の形態において、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は同じ組成(例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス)および厚さを有し、一方で、他の実施の形態において、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は、厚さと組成の少なくとも一方で、互いに異なることがある。上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は、再成形後、上部ガラス層1502および底部ガラス層1504の各々の少なくとも1つの主面が、60,000mm
2以上の表面積を有するように形成されることがある。上部ガラス層1502および底部ガラス層1504は、どの適切な過程(例えば、ダウンドロー法、フロート法)を使用して製造されても、供給業者から購入されてもよい。実施の形態において、3つ以上の層を有する積層板を形成するのを促進するために、3つ以上のガラス層が設けられる。
【0256】
ブロック1804で、1つ以上の底部ガラス層に真空ビアが形成される。実施の形態において、真空ビアは、上部ガラス層を除いて、ブロック1802で提供されたガラス層の各々に形成される。一例として
図15~16Bに関してここに記載された積層体1500を使用して、底部ガラス層1504に真空ビア1600が形成される。ここに記載されたように、真空ビア1600は、最終製品の属性へのどのような影響も避けるために、最終的な積層板に組み込むべき目標中央区域に外側に配置されることがある。例えば、
図16Aおよび16Bに関してここに記載された例では、真空ビア1600は、所望の最終製品の表面に対応する形状を有する金型表面1511の中央表面領域1514の境界にできるだけ近く配列される。実施の形態において、真空ビア1600は、底部ガラス層1504に不均一に分布している。真空ビア1600は、ガラス層の間にエアポケットが形成されるのを防ぐのを促進するために、最大のガウス曲率を有する金型表面1511の区域に近接して優先的に配置されることがある。
【0257】
実施の形態において、底部ガラス層の各々に、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い真空ビアが形成される。実施の形態において、底部ガラス層の各々に2から4の真空ビアが形成される。ガウス曲率が比較的高い多数の点を有する金型表面1511を含む実施の形態では、より多い数の真空ビアの形成が必要であろうという考えの下で、形成される真空ビアの数は、積層板の所望の形状に依存するであろう。実施の形態において、真空ビアは、円形の形状であり、1.0mmから5.0mmに及ぶ直径(例えば、2.0mm以上かつ4.0mm以下の直径)を有する。真空ビアのサイズ、数、および分布は、ガラス層の構造と組成、並びに金型表面1511の曲率に応じて様々であろう。
【0258】
真空ビア1600は、どの適切な技術で形成されてもよい。実施の形態において、真空ビア1600はダイヤモンドドリルを使用して形成される。そのような実施の形態において、ガラス層に欠陥(例えば、亀裂)が形成されるのを防ぐために、比較的低い回転速度(例えば、400rpm以上かつ1000rpm以下)が好ましい。傷の形成を防ぐために、ドリルと接触するガラスの表面に適切な冷却剤(例えば、水)が施されることもある。実施の形態において、レーザ穴開けを使用して、真空ビア1600を形成することがある。
【0259】
まだ
図18を参照すると、ブロック1806で、ガラス層の少なくとも1つ(ガラス層間)に付着防止剤が施される。再成形温度に加熱されるときに、適切な付着防止剤により、ガラス層が互いに付着するのを防ぐ。適切な付着防止剤としては、以下に限られないが、窒化ホウ素、ケイ酸カルシウム、炭素スート、またはその組合せが挙げられる。実施の形態において、付着防止剤は、再成形中に互いに接触することになるガラス層の表面に施される。一例として
図16Aおよび16Bの積層体1500を使用するときに、第2の主面1520と第1の主面1524の両方に付着防止剤が施されることがある。
【0260】
ブロック1808で、適切な真空金型上にガラス層が積ねられる。真空金型は、ここに記載された金型のいずれを含んでもよく、適切な真空キャビティ内に配置されることがある。
図15~16Bに関してここに記載されたように、積層体1500を形成し、積層体1500のエッジが金型1506の上部壁1509を超えて広がるように金型1506上に位置付けられることがある。積層体1500は、再成形過程中に真空孔1510と真空ビア1600との間のアライメントを促進するために、真空ビアが真空孔1510からずれるように位置付けられることがある。すなわち、積層体1500を金型1506上に位置付ける工程は、真空孔1510の関連するものとの真空ビア1600の各々の間の所望のアライメント(または初期位置決め)を促進するために積層体1500を横方向に位置決めすることを含むことがある。
【0261】
ブロック1810で、積層体1500を再成形する。実施の形態において、積層体1500の再成形は、
図4に関してここに記載された方法400により行われる。積層体1500は、積層体1500を形成するのに使用されるガラスの粘度曲線に応じて、適切な加熱速度(例えば、毎分2℃、毎分3℃、毎分4℃、毎分5℃)で再成形温度に加熱されることがある。ガラス層がソーダ石灰ガラスから形成された実施の形態において、再成形温度は、710℃以上かつ750℃以下(例えば、730℃)であることがある。ガラス層がアルミノケイ酸塩ガラスから形成された実施の形態において、再成形温度は、760℃以上かつ800℃以下(例えば、780℃)であることがある。積層体1500は、安定化期間(例えば、3分と15分の間、3分と6分の間)に亘り再成形温度に維持されることがあり、底部ガラス層1504が金型表面1511に一致し、上部ガラス層1502が底部ガラス層1504に一致するまで、ガラス層の再造形を促進するために、安定化期間の終わり頃に(例えば、安定化期間の最後の30秒から最後の90秒の間)、金型1506の真空開口1508および真空孔1510に真空圧力が適用される。次に、積層体1500を、安定化期間より長い徐冷期間に亘り徐冷温度(例えば、500℃以上かつ550℃以下)で徐冷することがある。積層体1500は、その後、適切な冷却速度(例えば、毎分2℃、毎分3℃、毎分4℃、毎分5℃)で室温に冷却されることがある。実施の形態において、再成形中に積層体1500が経る熱サイクルは、
図5Aおよび5Bに関してここに記載された形態のいずれかをとることがある。
【0262】
ブロック1812で、積層体1500は真空金型1506から取り出され、ガラス層が分離される。分離は、付着防止剤により容易になる。ブロック1814で、各ガラス層から過剰なガラス材料が除去される。過剰な材料の除去は、ここに記載された方法400の工程418に関して記載された技術など、どの適切な技術を使用して行われてもよい。過剰な材料の除去により、ガラス層の各々から再成形されたガラス物品(例えば、
図6Bに示された再成形されたガラス物品250と類似の)が形成されるであろう。上部ガラス層1502および底部ガラス層1504の各々が、ここに記載されたガラスシート200の形態を取る実施の形態において、過剰なガラスシート材料を除去する工程は、第2の部分230により画成された再成形されたガラス物品250が残るように、再成形されたガラスシート201から周囲部分240と第1の部分220を除去する工程を含み得る(
図6Aおよび6B参照)。実施の形態において、過剰なガラスシート材料は、切断過程、例えば、レーザ切断過程、または水ジェット切断過程を使用して除去することができる。実施の形態において、過剰なガラスシート材料は、機械的罫書きおよび罫書き線に沿ったガラスの割りを使用して除去することができる。
【0263】
ブロック1816で、ガラス層に後処理が行われ、ガラス層は互いに積層される。実施の形態において、後処理は、ガラス層の各々がその用途に望ましい特徴を有するような、研磨過程、イオン交換過程、エッチング過程、またはその組合せの使用を含むことができる。次に、ガラス層は、どの適切な積層過程を使用して、適切な中間層材料と積層してもよく、そのガラス層は、用途に応じて要望通りに配列される。
【実施例】
【0264】
本開示の実施の形態は、以下の実施例を考慮すれば、さらに理解されるであろう。
【0265】
ガラス層の積層体を共成形する第1の例は、底部ガラス層に真空ビアを形成せずに行った。第1の例では、組成と厚さが同一(2.0mmのソーダ石灰ガラス)の2つのガラス層を、
図12に関してここに記載された構造を有する真空金型810の上に重ねた。これらのガラス層の間に窒化ホウ素付着防止層を施した。この積層体の上部に加重リムを置いて、上面834(
図10参照)でのシールの形成を促進させた。積層体を毎分4℃の速度で780℃の再成形温度に加熱する、
図5Aに示された熱サイクルにしたがって、積層体を加熱した。積層体を5分の安定化期間に亘り再成形温度に維持した。安定化期間の最後の30秒から90秒の間に、真空開口840と真空孔818に0.1から0.3バール(10から30kPa)の真空圧力を適用して、再成形を促進した。その後、積層体を520℃の徐冷温度に冷却し、20分間に亘り徐冷温度に維持し、最後に、5℃/分の冷却速度で室温に冷却した。
図19は、再成形後の積層体1900の画像を示す。14mmほどの大きい間隙が積層体の内面間に観察され、比較的大きい形状偏差を示した。そのような大きい形状偏差のために、ガラス層が、既存の過程を使用して互いに積層できなくなるであろう。
【0266】
第2の例は、底部ガラス層が真空ビアを含むように改良されたことを除いて、第1の例と同じであった。
図20は、複数の真空ビア2002が中に形成された底部層2000を示す。真空ビア2002は、円形の形状であり、3.0mmの直径を有するようにダイヤモンドドリルによって形成された。図から分かるように、真空ビア2002は、最終的なガラス物品(例えば、積層板)に組み込まれることが望ましい、底部層2000の中央部分2006、およびガラス物品が再成形された後に廃棄されることがある、ガラス層の周囲部分2008を分離する境界2004に近接して位置付けられた。実施の形態において、境界2004は、底部層2000が積層板に組み込まれる前に、ここに記載された方法のいずれかを使用して底部層2000がそれに沿って切断される線を表すことがある。真空ビア2002は、金型810上の最大ガウス曲率の位置に近接して二対で配列されている。真空ビア2002は、再成形後に真空孔818と揃うように、
図16A~16Bに関して記載されたようにも位置付けられた。
【0267】
再成形後、形状不一致の特徴付けのために、オプティカルスキャナを使用して、積層体を走査した。その結果が
図21に示されている。図から分かるように、境界2004の内側の区域の大半で(区域の約90%)、形状不一致は1.0mm未満である。境界2004内部の区域の全てに亘り、形状不一致は2.0mm未満であった。そのような低い形状不一致は、既存の積層過程に適合する。これらの結果は、積層板製造中にガラス層を共成形するのに適した、ここに記載された再成形方法を使用した、形状不一致を低下させる上でのここに記載された真空ビアの有効性を実証するものである。
【0268】
様々な実施の形態をここに記載してきたが、それらは、限定ではなく、例として提示されている。ここに提示された教示および手引きに基づいて、適応および改変は、開示された実施の形態の同等物の意味および範囲内にあることが意図されていることが明白であろう。したがって、本開示の精神および範囲から逸脱せずに、形態および詳細の様々な変更を、ここに開示された実施の形態に行えることが当業者に明白であろう。ここに提示された実施の形態の要素は、必ずしも、相互排他的ではなく、当業者に認識されるであろうように、様々な状況にかなうために置き換えてもよい。
【0269】
本開示の実施の形態は、同一のまたは機能的に類似の要素を示すために、同様の参照番号が使用されている、添付図面に示されるように、実施の形態に関連して、ここに詳しく記載されている。「1つの実施の形態」、「ある実施の形態」、「いくつかの実施の形態」、「特定の実施の形態において」などへの言及は、記載された実施の形態が、特定の特徴、構造または特性を含むが、全ての実施の形態が、必ずしも、その特定の特徴、構造、または特性を含まなくてもよいことを示す。さらに、そのような句は、必ずしも、同じ実施の形態を称するものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、ある実施の形態に関連して記載されている場合、明白に記載されていようとなかろうと、他の実施の形態に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識に含まれることが考えられる。
【0270】
実施例は、本開示を限定するものではなく、説明に役立つものである。当該分野で通常遭遇し、当業者に明白であろう様々な条件およびパラメータの他の適切な改変および適用は、本開示の精神および範囲に含まれる。
【0271】
要素または構成要素を記載するための不定冠詞「a」および「an」は、これらの要素または構成要素の1つまたは複数が存在することを意味する。これらの冠詞は、従来は、修飾された名詞が単数名詞であることを表すために使用されるが、ここに用いられているように、これらの冠詞「a」および「an」は、具体例で他に特に述べられていない限り、複数も含む。同様に、ここに用いられている「the」という定冠詞は、重ねて、具体例で他に特に述べられていない限り、修飾された名詞が単数でも複数でもよいことも表す。
【0272】
ここに用いられている方向を示す用語-例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部、内側、外側-は、描かれている図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0273】
請求項に使用されているように、「含む(comprising)」は、制約のない移行句である。移行句「含む」の前に挙げられた要素のリストは、非排他的なリストであり、よって、他の要素も、そのリストに具体的に挙げられたものに加えて、存在してもよい。請求項に使用されているように、「から実質的になる(consisting essentially of)」または「から実質的に構成される(composed essentially of)」は、材料の組成を指定された材料およびその材料の基本的特徴および新規の特徴に実質的に影響しないものに限定する。請求項に使用されているように、「からなる(consisting of)」または「から完全に構成される(composed entirely of)」は、材料の組成を指定された材料に限定し、指定されていないどの材料も排除する。
【0274】
上限値と下限値を含む数値の範囲がここに列挙されている場合、特定の状況において他に述べられていない限り、その範囲は、その端点、およびその範囲内の全ての整数と分数を含むことが意図されている。特許請求の範囲は、範囲を定義する場合、列挙された特定の値に限定されることは、意図されていない。さらに、量、濃度、もしくは他の値またはパラメータが、範囲、1つ以上の好ましい範囲、または好ましい上限値と好ましい下限値のリストとして与えられている場合、これは、任意の上限または好ましい値と、任意の下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を、そのような対が独立して開示されていようとなかろうと、具体的に開示しているものと理解されるものとする。最後に、「約」という用語が、範囲の値または端点を記載する上で使用されている場合、その開示は、言及されている特定の値または端点を含むと理解されるべきである。範囲の数値または端点に「約」が付いているか否かにかかわらず、範囲の数値または端点が、「約」で修飾されたものと、「約」で修飾されていないものとの2つの実施の形態を含むことが意図されている。
【0275】
ここに用いられているように、「約」という用語は、述べられた値の±5%以内の値を称する。例えば、約3MPaは、2.85MPaと3.15MPaとの間のどの値も含み得る。
【0276】
本実施の形態は、その特定の機能と関係の実施を説明する機能的構成要素を用いて先に記載されてきた。これらの機能的構成要素の境界は、記載の便宜上、ここに自由裁量で定義されている。その特定の機能と関係が適切に遂行される限り、代わりの境界を定義することができる。
【0277】
ここに使用した用語または専門用語は、限定ではなく、説明の目的のためであることが理解されよう。本開示の広さと範囲は、上述した例示の実施の形態のいずれによっても限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその等価物にしたがって定義されるべきである。
【0278】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0279】
実施形態1
再成形されたガラス物品であって、
第1の曲面および第2の曲面により画成された第1の展開不可能な湾曲形状を有する第1のガラス層、
を含み、
前記第1の曲面および前記第2の曲面の少なくとも一方は、60,000mm2以上の表面積を有し、
前記第1の曲面に垂直な方向の該第1の曲面と前記第2の曲面との間の距離として測定される、前記第1のガラス層の厚さは、該第1の曲面上の1000mm2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有し、
前記第1の展開不可能な湾曲形状は、3.0%以上の、前記第1の曲面と前記第2の曲面との間に配置された仮想中心面と、仮想面との間で測定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する、再成形されたガラス物品。
【0280】
実施形態2
前記湾曲形状が、絶対値で300ミリジオプター未満の前記厚さを通じて測定された屈折力歪みを有し、該屈折力歪みは、DIN 52305:1995にしたがって測定される、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0281】
実施形態3
前記第1の曲面および前記第2の曲面の一方が、100mm2の凸表面積当たり10未満のディンプルの測定可能ディンプル密度を有する凸曲面であり、測定可能なディンプルが1mm超の有効径を有する、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0282】
実施形態4
前記厚さが、前記第1の曲面上の1000mm2の表面積当たり±50マイクロメートルの均一性を有する、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0283】
実施形態5
前記最大圧縮歪み形状パラメータが5.0%以上である、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0284】
実施形態6
前記第1の曲面の全てに亘り測定された、前記厚さの平均値が、0.5mm以上かつ2.5mm以下である、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0285】
実施形態7
前記再成形されたガラス物品が、前記仮想面に平行に延在する第1の方向に測定される長さ(L)、および該仮想面に平行であり、該第1の方向に垂直に延在する第2の方向に測定される幅(W)を有し、
前記仮想中心面は、平均ガウス曲率κを有し、
【0286】
である、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0287】
実施形態8
前記再成形されたガラス物品の外縁が、実質的に円形であり、該外縁に沿った2点間の最大距離を表す直径Dを有し、
前記仮想中心面は平均ガウス曲率κを有し、
0.0354*κ*D2≧3.0%
である、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0288】
実施形態9
前記第1のガラス層上に配置された第2のガラス層であって、第3の曲面および第4の曲面により画成された第2の展開不可能な湾曲形状を有する第2のガラス層、
をさらに含み、
前記第3の曲面および前記第4の曲面の少なくとも一方は、60,000mm2以上の表面積を有し、
前記第1の曲面に垂直な方向の該第1の曲面と前記第2の曲面との間の距離として測定される、前記第2のガラス層の厚さは、該第1の曲面上の1000mm2の表面積当たり±75マイクロメートルの均一性を有し、
前記第2の展開不可能な湾曲形状は、3.0%以上の、前記第3の曲面と前記第4の曲面との間に配置された第2の仮想中心面と、仮想面との間で測定される、最大圧縮歪み形状パラメータを有する、実施形態1に記載の再成形されたガラス物品。
【0289】
実施形態10
透過光学系を使用した三次元オプティカルスキャナで測定された、前記第1のガラス層と前記第2のガラス層との間の形状不一致が、前記第1の曲面の全てに亘り測定して、2.0mm以下である、実施形態9に記載の再成形されたガラス物品。
【0290】
実施形態11
前記形状不一致が、前記第1の曲面の表面積の少なくとも80%に亘り1.0mm以下である、実施形態10に記載の再成形されたガラス物品。
【0291】
実施形態12
前記第1のガラス層および前記第2のガラス層が同じ組成物から作られ、該第1のガラス層および該第2のガラス層の平均厚さが互いの2%以内にある、実施形態9に記載の再成形されたガラス物品。
【0292】
実施形態13
前記第1のガラス層および前記第2のガラス層が、厚さ、組成および表面圧縮応力の少なくとも1つにおいて、互いと異なる、実施形態9に記載の再成形されたガラス物品。
【0293】
実施形態14
湾曲したガラス物品を形成する方法において、
第1のガラスシートを、真空キャビティを少なくとも部分的に画成する真空金型の上に配置する工程であって、該第1のガラスシートが、該真空金型の上面または該真空キャビティの周りに配置されたフレームと接触するように、該第1のガラスシートが該真空金型上に配置され、前記上面は、その中に形成された1つ以上の真空開口を含む、工程、
前記第1のガラスシートを再成形温度に加熱する工程、
前記第1のガラスシートの1つ以上の第1の部分が前記1つ以上の真空開口に引き込まれるように該1つ以上の真空開口に真空圧力を適用する工程、および
前記第1のガラスシートの第2の部分が前記真空キャビティに引き込まれるように該真空キャビティに真空圧力を適用する工程、
を含む方法。
【0294】
実施形態15
前記上面が外周エッジを含み、
前記ガラスシートが周囲部分を含み、
前記ガラスシートが、前記周囲部分が前記外周エッジから外側に延在するように前記真空金型の上に配置され、
前記ガラスシートを前記再成形温度に加熱することにより、該ガラスシートの周囲部分が前記フレームの外周エッジの周りに折り曲がる、実施形態14に記載の方法。
【0295】
実施形態16
前記1つ以上の真空開口が複数の真空開口を含み、前記ガラスシートの複数の第1の部分が前記複数の真空開口に引き込まれるように、該複数の真空開口に真空圧力が適用される、実施形態14に記載の方法。
【0296】
実施形態17
前記ガラスシートが、該ガラスシートを再成形する前に測定された厚さを有し、前記複数の真空開口が、有効径を有する貫通孔を含み、該貫通孔の有効径は、該ガラスシートの厚さより10から15倍大きい、実施形態16に記載の方法。
【0297】
実施形態18
前記ガラスシートの厚さが0.5ミリメートルから5ミリメートルに及び、前記貫通孔の有効径が10ミリメートルから50ミリメートルに及ぶ、実施形態17に記載の方法。
【0298】
実施形態19
前記複数の真空開口が、有効径を有する貫通孔を含み、該複数の真空開口は、前記真空キャビティの周りに半径方向に間隔が空けられ、間隔距離だけ互いから間隔が空けられ、該間隔距離は、前記有効径以上かつ該有効径の3倍以下である、実施形態17に記載の方法。
【0299】
実施形態20
前記ガラスシートの前記第2の部分が、該ガラスシートの再成形前の初期厚さ(t1)および該ガラスシートの再成形後の最終厚さ(t2)を有し、t1/t2が1.1から2に及ぶ、実施形態14に記載の方法。
【0300】
実施形態21
前記真空キャビティに真空圧力が適用される前に、前記1つ以上の真空開口に真空圧力が適用される、実施形態14に記載の方法。
【0301】
実施形態22
前記真空キャビティが、金型表面および該金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む金型により画成され、
前記金型表面は、グラファイト、窒化ホウ素、シリカスート、炭酸カルシウム、炭素スート、二硫化モリブデン、および二硫化タングステンからなる群より選択される材料から作られる、実施形態14に記載の方法。
【0302】
実施形態23
前記金型表面が、第1の熱膨張係数を有する第1の材料から作られ、
前記ガラスシートが、第2の熱膨張係数を有する第2の材料から作られ、
前記フレームの上面が、第3の熱膨張係数を有する第3の材料から作られ、
前記第3の熱膨張係数は前記第2の熱膨張係数より大きく、
前記第2の熱膨張係数は前記第1の熱膨張係数より大きい、実施形態22に記載の方法。
【0303】
実施形態24
前記方法が、複数のガラスシートを前記真空金型の上に配置すると同時に、該複数のガラスシートを再成形する工程を含む、実施形態14に記載の方法。
【0304】
実施形態25
前記複数のガラスシートが、前記上面と接触した底部ガラス層および該底部ガラス層上に配置された上部ガラス層を、該底部ガラス層が該上部ガラス層と該上面との間に配置されるように含み、
前記方法が、前記複数のガラスシートを前記真空金型の上に配置する前に、前記底部ガラス層に複数の真空ビアを形成する工程をさらに含む、実施形態24に記載の方法。
【0305】
実施形態26
前記真空キャビティが、金型表面および該金型表面に形成された1つ以上の真空孔を含む金型により画成され、
前記金型表面は、第1の最大曲率半径を有する中央表面領域、および該中央表面領域に隣接し、該第1の最大曲率半径より小さい第2の最大曲率半径を有する周囲表面領域を含み、
前記方法は、前記加熱する工程および前記真空圧力を適用する工程の後、前記複数のガラスシートから過剰の材料を除去する工程をさらに含み、該除去する工程は、加熱中に、前記周囲表面領域と前記中央表面領域との間の境界に配置された該複数のガラス層の輪郭に沿って行われ、
前記加熱する工程および前記真空圧力を適用する工程の後、前記複数の真空ビアが前記周囲表面領域上の前記境界の外側に配置されるように、前記複数のガラスシートが前記金型上に配置される、実施形態25に記載の方法。
【0306】
実施形態27
前記複数の真空ビアが、前記加熱する工程および前記真空圧力を適用する工程の後、前記1つ以上の真空孔の内の1つを通じて延在する中心軸を有する、実施形態26に記載の方法。
【0307】
実施形態28
ガラスシートを再成形するための装置において、
モノリス真空金型であって、
金型表面および該金型表面上に形成された1つ以上の真空孔を含む真空キャビティと、
前記真空キャビティの周りに配置されたフレームであって、上面および該上面に形成された複数の真空開口を含むフレームと、
を備えたモノリス真空金型、
前記1つ以上の真空孔と流体連通した第1の真空源、および
前記複数の真空開口と流体連通した第2の真空源、
を含む装置。
【0308】
実施形態29
前記フレームが、前記上面に形成され、前記複数の真空開口に流体接続した通路をさらに含む、実施形態28に記載の装置。
【0309】
実施形態30
前記通路が、各通路部分が前記上面に接続された上縁を有する、2つの隣接する真空開口を接続する複数の通路部分、および該通路の該上縁から底面まで延在する側壁を含み、該側壁は、該通路の底面に垂直な軸に対して測定された、5°から20°の範囲の傾斜度を有する、実施形態29に記載の装置。
【符号の説明】
【0310】
100 再成形装置
110、810 真空金型
112、812 真空キャビティ
114、814、1506 金型
116、816、1511 金型表面
118、818、1510 真空孔
130、830 フレーム
132、832 上部壁
134、834 フレームの上面
136、836 フレームの外周エッジ
140、840 真空開口
142 貫通孔
146 貫通孔の有効径
148 間隔距離
150 停止壁
152 深さ
160 真空箱
162 真空室
170、170a、170b 真空源
200 再成形前のガラスシート
202 上面
203、1502 上部ガラス層
204 底面
205、1504 底部ガラス層
206 初期厚さ
208 周囲エッジ
220 第1の部分
230 第2の部分
240 周囲部分
250、1400 再成形されたガラス物品
822、1514 中央表面領域
824、1516 周囲表面領域
826 スロット
828 接触インジケータ
837 隆起部
842 底面
844 周囲側壁
850 通路
852 通路部分
854 側壁
853 上縁
855 通路の底面
856 通路の第1の部分
857 通路の第2の部分
880 冷却ブロック
882 冷却剤入口
884 冷却剤出口
1402 仮想面
1404 第1の曲面
1406 第2の曲面
1408 厚さ
1412 仮想中心面
1500、1900 積層体
1518 間隙
1519 上部ガラス層の第1の主面
1520 上部ガラス層の第2の主面
1524 底部ガラス層の第1の主面
1525 底部ガラス層の第2の主面
1600、2002 真空ビア
1700 積層板
1710 第1の基板
1712 第一面
1714 第二面
1720 中間層
1730 第2の基板
1732 第三面
1734 第四面
2000 底部層
2004 境界
2006 底部層の中央部分
【国際調査報告】