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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-09
(54)【発明の名称】溶剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20240430BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566948
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022021251
(87)【国際公開番号】W WO2022235343
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,104
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】エマーソン、ジリアン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】マッテウッチ、スコット ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ドーベル、ブライアン アール.
(72)【発明者】
【氏名】プラサード、ビクラム
(72)【発明者】
【氏名】セカラン、マネシュ ナドゥッパランビル
(72)【発明者】
【氏名】タッカー、クリストファー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴリン、クレイグ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】マリーン、アミラ エイ.
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA02
4F401AA08
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA15
4F401AA22
4F401AA24
4F401AA27
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA31
4F401CA41
4F401CA48
4F401CA49
4F401CB01
4F401DC04
4F401EA46
4F401EA59
4F401EA62
4F401EA72
4F401EA77
4F401EA79
4F401FA01Z
4F401FA06Z
4F401FA10Z
4F401FA20Z
(57)【要約】
接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための、(a)溶剤と、(b)水と、の水性混合物を含む、水性溶剤組成物(又は分離流体組成物)であって、水性混合物中の溶剤の分子量が、1,000g/mol未満であり、溶剤のハンセン可溶化度パラメータが、以下の範囲:(i)15MPa1/2~21MPa1/2の分散性構成成分、(ii)3MPa1/2~10.5MPa1/2の極性構成成分、及び(iii)2MPa1/2~18MPa1/2の水素結合構成成分であり、溶剤が、少なくとも1つの芳香族基を含有し、溶剤が、少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、接着剤が、水性混合物中に浸漬されると、少なくとも50重量%を超えて膨潤する、水性溶剤組成物;上記の水性混合物を使用して、接着剤を処理して、接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるためのプロセス;上記の水性混合物を使用して、接着剤を含有する多層包装、多層フィルム、又は多層物品を剥離するためのプロセス;上記の水性混合物を使用して接着剤を含有する多層包装、多層フィルム、又は多層物品をリサイクルするためのプロセス;並びに上記のリサイクルプロセスによって調製されたリサイクルされた包装、フィルム、又は物品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を膨潤、分解、又は完全に溶解させるための分離流体組成物であって、
(a)溶剤と、
(b)水と、の水性混合物を含み、
前記溶剤の分子量が、1,000g/mol未満であり、前記溶剤のハンセン可溶化度パラメータが、
(i)15Mpa1/2~21Mpa1/2の分散性構成成分、
(ii)3Mpa1/2~10.5Mpa1/2の極性構成成分、及び
(iii)2Mpa1/2~18Mpa1/2の水素結合構成成分を含み、
前記溶剤が、少なくとも1つの芳香族基を含有し、前記溶剤が、少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、前記水性混合物が接着剤と接触すると、前記水性混合物が、前記水性混合物中に存在する前記接着剤を、50重量パーセントを超えて膨潤させる、組成物。
【請求項2】
前記溶剤の前記少なくとも1つの芳香族基が、フェニル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記溶剤の前記少なくとも1つのヘテロ原子が、窒素原子又は酸素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
酵素、触媒、界面活性剤、pH調整剤、ポリマー、湿潤剤、キレート剤、レオロジー変性剤、腐食防止剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、構成成分(c)を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記接着剤が、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記溶剤が、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールフェニルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル、トリプロピレングリコールフェニルエーテル、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
接着剤を処理して、前記接着剤を膨潤、分解、又は完全に溶解させるためのプロセスであって、接着剤を請求項1に記載の溶剤組成物と接触させることを含む、プロセス。
【請求項8】
接着剤を含有する多層包装、多層フィルム、又は多層物品を剥離するためのプロセスであって、
(A)接着剤を含有する多層包装、多層フィルム、又は多層物品を提供する工程と、
(B)前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品中の前記接着剤を膨潤、分解、又は完全に溶解させるために、前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品を請求項1に記載の溶剤組成物と接触させる工程と、
(C)前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品を工程(B)の前記溶剤組成物中に所定の時間にわたって浸漬して、前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品の前記複数の層を剥離するか、又は剥離することを可能にする工程と、を含む、プロセス。
【請求項9】
前記浸漬工程(C)が、15℃~100℃の温度で、本質的に瞬間~72時間の間にわたって行われる、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
接着剤を含有する多層包装、多層フィルム、又は多層物品をリサイクルするためのプロセスであって、
(I)接着剤を含有する多層包装、多層フィルム、又は多層物品を提供する工程と、
(II)前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品中の前記接着剤を膨潤、分解、又は完全に溶解させるために、前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品を請求項1に記載の組成物と接触させる工程と、
(III)前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品を所定の時間にわたって浸漬して、前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品の前記複数の層を剥離するか、又は剥離することを可能にする工程と、
(IV)工程(III)からの前記多層包装、多層フィルム、又は多層物品の前記剥離された複数の層を回収する工程と、
(V)工程(IV)の前記回収された剥離された複数の層からリサイクル材料を形成する工程と、
(VI)別の異なる包装、フィルム、又は物品を形成する工程と、を含み、前記異なる包装、フィルム、又は物品の前記層のうちの少なくとも1つが、工程(V)のリサイクル材料を含有する、プロセス。
【請求項11】
接触工程(II)が、18℃~85℃の温度で行われる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記浸漬工程(III)が、20℃~100℃の温度で、0.005時間~28時間の間にわたって行われる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記接着剤が、ポリウレタン系接着剤、脂肪族イソシアネートで硬化されたヒドロキシル末端ポリエステル、脂肪族イソシアネートで硬化されたアクリルエマルジョン、及びこれらの混合物である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項10に記載のプロセスによって作製された、包装、フィルム、又は物品構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶剤組成物に関し、より具体的には、本発明は、接着剤を膨潤、分解、又は溶解させるための水性溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に発生するプラスチック廃棄物の量を低減する努力において、一般的に使い捨て用途に適用される多層包装及び多層フィルム(本明細書では「多層包装/フィルム」)の構成要素を再使用(リサイクル)することが所望される。しかしながら、多層包装/フィルムの複数の層は、典型的には、ポリマーの不適合性に起因して、直接リサイクルすることができない。不適合性の問題に対処するための1つのアプローチは、多層包装/フィルムの複数の層をリサイクルする前に、ポリマーに相溶化剤を添加することであった。しかしながら、各材料を単一の流れとして個々に回収するために層の各々を分離し、それによって、適合化された材料特性を損なうことなく、又は管理することなく、所望の用途において各流れを別々に再使用することができるようにすることが更により有利である。
【0003】
効果的なリサイクル方法を用い、多層包装/フィルムの不適合性層の再使用を達成するための別のアプローチは、多層包装/フィルムの複数の層をリサイクルプロセスに供する前に、多層包装/フィルムの複数の層を剥離することである。効果的な剥離手順は、多層包装/フィルムの複数の層を一緒に結合するために典型的に使用される接着剤を膨潤、分解、又は溶解させることを含む。多層包装/フィルム中に存在する接着剤を膨潤、分解、又は溶解させると、多層包装/フィルム中に存在する任意の不適合性層を適合性層から分離することができ、次いで適合性層を再使用のために回収することができる。したがって、多層包装/フィルムが適切な分離流体で処理されるとき、多層包装/フィルムの接着剤を実質的に膨潤、分解、又は溶解させるように機能する適切な分離流体が選択されなければならない。適切な分離流体を使用して、多層包装/フィルムの接着剤を膨潤、分解、又は溶解させる行為は、機械的撹拌下で多層包装/フィルムをより容易に剥離しやすくする。したがって、接着剤を膨潤、分解、又は完全に(すなわち、実質的に完全に)溶解させるための、溶剤と水との水性混合物を含む水性溶剤組成物などの適切な分離流体を提供することが所望される。
【0004】
これまで、様々な分離流体及び技法を使用して、多層材料をリサイクルするために多層材料(すなわち、2つ以上の層を有する材料)を処理してきた。例えば、国際公開第2019229235(A1)号は、不動態化剤を使用して多層材料をリサイクルするための分離流体、方法、及び装置を開示している。上記の参照文献は、多層包装の層を分離するための流体、並びに多層包装が少なくとも1つの金属層及び少なくとも1つの追加の層を含有するリサイクルプロセスにおけるそのような分離流体の使用を記載している。分離流体は、金属層を化学反応から保護するための不動態化剤を含有する。例えば、分離流体は、水、カルボン酸、カルボン酸塩、及び不動態化剤を含有する。分離流体中に存在する水混和性カルボン酸は、多層材料の剥離を引き起こす。しかしながら、上記の参照文献の分離流体は、多層包装の接着剤層を膨潤させて、多層包装の剥離を促進することを対象としない。更に、上記の参照文献に開示されているカルボン酸(酢酸)は、ポリウレタン系接着剤などの全ての接着剤を十分に膨潤させない。上記の参照文献に開示されている分離流体及び方法よりも少ない安全対策しか必要としない分離流体及び方法を提供することが望ましいであろう。
【0005】
国際公開第2003104315(A1)号は、包装のために使用される多層フィルムの層を分離するためのプロセスを開示している。上記の参照文献は、加熱された有機溶剤、酸、又は水浴を使用する大気圧分離を記載している。分離は、上記の参照文献に記載されているように、浴の異なる段階における密度/浮選によって行われる。上記の参照文献は、接着剤の可溶化のための可溶化度パラメータ要件(ヒルデブランド)を更に考察している。
【0006】
上記の参照文献はまた、溶剤、酸、及び水を使用して接着剤(例えば、ポリウレタン接着剤及びポリビニルアルコール接着剤)の接着機能を除去することによって、多層フィルムの層を分離することを開示している。溶剤としては、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、キシレン、アセトン、及び四塩化炭素が挙げられ、酸としては、酢酸などのプロトン性カルボン酸が挙げられる。上記の参照文献はまた、1.7ヒルデブランド未満の差を有する接着剤可溶化度パラメータに近い可溶化度パラメータを開示している。国際公開第2003104315(A1)号に開示されている分離は、接着剤の凝集エネルギー密度(cohesive energy density、CED)に基づいており、当該技術分野において既知のこと、すなわち、温度を上昇させながら接着剤を加熱することが接着剤のCEDを低下させ、接着剤の可溶化を改善することを適用している。
【0007】
したがって、国際公開第2003104315(A1)号の焦点は、100%有機溶剤浴の使用を対象としており、可溶化度パラメータが接着剤の溶解を完全に駆動することを開示している。上記の参照文献に開示されている分離流体及び方法ほど複雑ではない分離流体及び方法を提供することが望ましいであろう。非水性分離流体、例えば、上記の参照文献において言及されているものは、追加の安全性の懸念を有するため、非水性分離流体(例えば、有機溶剤)を置き換えるために水性分離流体を提供することがまた望ましいであろう。更に、接着剤の膨潤、分解、及び/又は溶解をもたらすことができる特定の化学部分を有する溶剤を含む水性分離流体を提供することが望ましいであろう。
【0008】
米国特許出願公開第2017/0096540(A1)号は、硬化した熱硬化性樹脂の分解の前に、硬化した熱硬化性樹脂材料の膨潤前処理を実行するための方法及び流体配合物を開示している。上記の参照文献に開示されている熱硬化性樹脂としては、エポキシ、ポリウレタン、炭素繊維強化プラスチックなどが挙げられる。膨潤前処理のための流体配合物は、界面活性剤と混合された酸(例えば、酢酸)を含有する。上記の参照文献では、水は分離流体配合物中に含まれておらず、すなわち、酸と界面活性剤との混合物のみが分離流体配合物中に存在している。上記の参照文献は、酢酸と界面活性剤との混合物が接着剤の分解/膨潤を誘発することを開示している。しかしながら、酢酸は、全てのタイプの接着剤、特にポリウレタン系接着剤を膨潤させるには不十分である。更に、上記の参照文献に開示されている界面活性剤は、全てのタイプの接着剤、特にポリウレタン系接着剤の膨潤を提供しない。したがって、水性分離流体(例えば、水性溶剤組成物)が、接着剤、特にポリウレタン系接着剤の膨潤、分解、及び/又は溶解をもたらすことができる特定の化学部分を有する溶剤を含む、水性分離流体及び方法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施形態は、ポリウレタン系接着剤などの接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に(すなわち、実質的に完全に)溶解させるための(a)溶剤と、(b)水と、の水性混合物を含む、分離流体組成物を対象とする。
【0010】
他の実施形態では、本発明の分離流体組成物中に存在する溶剤は、1つの一般的な実施形態では、1,000g/mol未満の分子量、及び所定のハンセン可溶化度パラメータを有する。溶剤のハンセン可溶化度パラメータは、例えば、C.M.Hansen’s Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook,Second Edition,CRC Press,2007に記載されている。例えば、本発明の水性溶剤組成物は、以下の範囲の所定のハンセン可溶化度パラメータを有する:(i)一般的な実施形態では、15MPa1/2~21MPa1/2の範囲の分散性構成成分、(ii)一般的な実施形態では、3MPa1/2~10.5MPa1/2の範囲の極性構成成分、及び(iii)一般的な実施形態では、2MPa1/2~18MPa1/2の範囲の水素結合構成成分。
【0011】
更に他の実施形態では、溶剤は、少なくとも1つの芳香族基、及び溶剤の化学構造中に少なくとも1つのヘテロ原子を含有し、その結果、そのような化学部分は、接着剤の膨潤、分解、及び/又は溶解をもたらすことができる。
【0012】
なおも他の実施形態では、接着剤は、接着剤が本発明の水性混合物(分離流体組成物)で処理されるとき、少なくとも50重量%を超えて膨潤する。「処理する」とは、接着剤の少なくとも一部が、水性混合物に曝露されるか、又は水性混合物と接触することを意味する。
【0013】
なお更に他の実施形態では、本発明の分離流体組成物を調製するために有用な溶剤は、1つの一般的な実施形態では、1,000g/mol未満の分子量を有し、(i)少なくとも1つの芳香族基と、(ii)少なくとも1つ以上のヘテロ原子と、を含む。
【0014】
本発明の別の実施形態は、多層包装、多層フィルム、又は多層物品(本明細書では「多層包装/フィルム/物品」)の構造中に存在する、ポリウレタン系接着剤などの接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための上記の水性溶剤組成物の使用を対象とする。
【0015】
更に別の実施形態では、本発明は、(I)接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品を提供する工程と、(II)多層包装/フィルム/物品中に存在する接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるために、多層包装/フィルム/物品を水性溶剤混合物と接触させる工程と、(III)多層包装/フィルム/物品が水性溶剤混合物と接触しているときに、多層包装/フィルム/物品を剥離するか又はその剥離を可能にして、多層包装/フィルム/物品の複数の層を分離する工程と、(IV)工程(III)からの多層包装/フィルム/物品の剥離された複数の層を回収する工程と、(V)工程(IV)の回収された剥離された複数の層からリサイクル材料を形成する工程と、(VI)リサイクル材料から別の異なる包装、フィルム、又は物品を形成する工程と、を含む、接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品をリサイクルするためのプロセスを対象とする。
【0016】
本発明の目的は、多層包装/フィルム/物品の層を剥離するための新規の効果的な分離流体組成物を提供することである。本発明の別の目的は、発生して環境中に導入されるプラスチック廃棄物の量を低減するのを助けるために、多層包装/フィルム/物品の剥離された層をリサイクルするための新規の効果的なプロセスを提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では温度は、摂氏温度(℃)である。
【0018】
本明細書では「室温(Room temperature、RT)」及び「周囲温度」は、別途指定しない限り、20℃~26℃の温度を意味する。
【0019】
接着剤ストリップに関する「膨潤」、「分解」、又は「溶解」という用語は、本明細書では、分離流体組成物中に接着剤ストリップを浸漬した後に接着剤の50重量%超の質量変化を提供するための接着剤による溶剤の取り込みを意味し、それによって、接着剤ストリップがばらばらになることなく、取り扱うことができないか、又は、分離流体組成物への接着剤ストリップの分子組み込みが起こるように接着剤ストリップの機械的完全性を低減させる。
【0020】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除するように意図するものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求される全ての組成物は、特に反対の記載がない限り、ポリマーであるか又はその他であるかによらず、任意の追加の添加剤、アジュバント又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の構成成分、工程、又は手順を除く。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、並びに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は複数形の使用を含み、その逆もまた同様である。
【0021】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値及び上限値を含む、下限値から上限値までの全ての値を含む。明示的な値を含有する範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などを含む)。
【0022】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略称は、文脈から別途明確に指示されない限り、以下の意味を有する。「=」は、「等しい」又は「と等しい」を意味し、「<」は、「未満」を意味し、「>」は、「よりも大きい」を意味し、「≦」は、「以下」を意味し、「≧」は、「以上」を意味し、「@」は、「において」を意味し、「MT」=メートルトン、g=グラム、mg=ミリグラム、kg=キログラム、L=リットル、mL=ミリリットル、g/L=1リットル当たりのグラム、「g/cm」又は「g/cc」=1立方センチメートル当たりのグラム、「kg/m=1立方メートル当たりのキログラム、ppm=重量百万分率、pbw=重量部、rpm=1分間当たりの回転数、m=メートル、mm=ミリメートル、cm=センチメートル、μm=ミクロン、min=分、s=秒、ms=ミリ秒、hr=時、Pa=パスカル、MPa=メガパスカル、Pa-s=パスカル秒、mPa-s=ミリパスカル秒、g/mol=1モル当たりのグラム、g/eq=1等価量当たりのグラム、M=数平均分子量、M=重量平均分子量、pts=重量部、1/s又は秒-1=秒の逆数[s-1]、℃=摂氏温度、psig=1平方インチ当たりのポンド、kPa=キロパスカル、%=パーセント、vol%=体積パーセント、mol%=モルパーセント、及びwt%=重量パーセント。
【0023】
別途明記されない限り、全てのパーセンテージ、部、比などの量は、重量によって定義される。例えば、本明細書に記載した全てのパーセンテージは、別途指示されない限り、重量パーセンテージ(重量%)である。
【0024】
本発明の具体的な実施形態が、本明細書の以下に記載される。これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、当業者に本発明の主題の範囲を完全に伝えるように提供される。
【0025】
本発明の1つの目的は、多層包装/フィルム/物品などの物品を調製する際に使用される接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための溶剤組成物を生成することである。例えば、本発明の一実施形態では、溶剤組成物は、(a)溶剤と、(b)水などの希釈剤と、(c)任意の他の所望の任意選択的な構成成分との水性混合物を含む。本発明の水性溶剤組成物は、接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させることができる。水性溶剤組成物中に存在する溶剤の特性としては、例えば、(1)一実施形態では、1,000g/mol未満、別の実施形態では、500g/mol未満、更に別の実施形態では、355g/mol未満の分子量、(2)以下の範囲のハンセン可溶化度パラメータ:(i)15MPa1/2~21MPa1/2の範囲の分散性構成成分、(ii)3MPa1/2~10.5MPa1/2の範囲の極性構成成分、及び(iii)2MPa1/2~18MPa1/2の範囲の水素結合構成成分、並びに(3)以下の化学成分:(i)少なくとも1つの芳香族基及び(ii)少なくとも1つ以上のヘテロ原子が挙げられる。水性溶剤組成物は、接着剤の少なくとも効果的な膨潤を有益に提供する。例えば、膨潤は、1つの一般的な実施形態では、50重量%以上である。
【0026】
一般的な実施形態では、本発明において使用される溶剤は、少なくとも1つの芳香族基及び少なくとも1つのヘテロ原子を含有する溶剤材料であり得る。「ヘテロ原子」という用語は、本明細書中で使用される場合、炭素原子でも水素原子でもない任意の原子を含む。例えば、本発明において有用な好ましいヘテロ原子としては、ケイ素、フッ素、塩素、酸素、窒素、ホウ素、臭素、及びリンが挙げられる。好ましい実施形態では、ヘテロ原子は、窒素又は酸素を含む。ヘテロ原子を含み、かつ溶剤分子の一部であり得る、官能基の非限定的な例としては、アミン、アルコール、エステル、エーテル、及びアルデヒドが挙げられる。
【0027】
溶剤の少なくとも1つの芳香族基は、例えば、少なくとも5員環を有する芳香族を含む。5員環の例としては、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、これらの縮合環、及びこれらの混合物が挙げられる。6員環の例としては、ベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、これらの縮合環、及びこれらの混合物が挙げられる。7員環の例としては、ボレピン、トロポン、これらの縮合環、及びこれらの混合物が挙げられる。9員環の例としては、アゾニン、これらの縮合環、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
本発明において有用な溶剤の非限定的な例としては、以下のうちの1つ以上からなる群から選択される溶剤が挙げられ得る:ベンジルアミン;ベンジルアルコール;フタル酸ジエチル;ブチロフェノン;グアイアコール;フタル酸ジメチル;フタル酸ブチルベンジル;アニリン;ベンズアルデヒド;m-クレゾール、o-クレゾール、p-クレゾール、プロピレングリコールモノフェニルエーテル;エチレングリコールフェニルエーテル;ジエチレングリコールフェニルエーテル;ジプロピレングリコールフェニルエーテル;トリエチレングリコールフェニルエーテル;トリプロピレングリコールフェニルエーテル;2-フェノキシエタノール;アニソール;安息香酸メチル;安息香酸エチル;安息香酸プロピル;サリチル酸n-ブチル;サリチル酸メチル;n-ベンジルピロリドン;2-フェニルエタノール;4-エチルフェノール;酢酸ベンジル;安息香酸ブチル;エチルフェニルエーテル;2,3-ベンゾフラン;p-フルオロアニソール;4-(トリフルオロメチル)アセトフェノン;1,3-ベンゾジオキソール;2-クロロ-5-メチルフェノール;クロロフェノール;アセチルサリチル酸;コニフェリルアルコール;オイゲノール;メチル-p-トルエート;2,6-ジメチルフェノール;1,2-ジメトキシベンゼン;2,4-ジメチルアニリン;3,4-ジメチルフェノール;1-クロロ-4-エトキシベンゼン;2,6-ジメトキシフェノール;塩化ベンゾイル;トルエンジイソシアネート;o-トルイジン;2-5ジフルオロニトロベンゼン;2-メトキシアニリン;ベンゾフェノン; スチレンオキシド;n-メチルアニリン;4-クロロアニソール;4-クロロベンジルアルコール;4-フルオロプロピオフェノン;酢酸フェニル;ヨードベンゼン;メトキシアニリン;及びこれらの混合物。
【0029】
好ましい実施形態では、溶剤は、例えば、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールフェニルエーテル、及びこれらの混合物を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本発明において有用な溶剤は、市販の溶剤製品から選択され得る。例えば、溶剤組成物を形成するために使用される溶剤は、DOWANOL(商標)EPh、DOWANOL(商標)PPh、DOWANOL(商標)DiEPh、DOWANOL(商標)DiPPh、DOWANOL(商標)TriPPh、DOWANOL(商標)TriEPh(全てDow Inc.から入手可能)、並びにこれらの混合物であり得る。
【0031】
水性溶剤組成物で使用される溶剤の濃度は、1つの一般的な実施形態では、0.1重量%~50重量%、別の実施形態では、1重量%~49重量%である。50重量%を超えると、混合物は、もはや水性溶剤配合物とはみなされない。
【0032】
本発明の水性溶剤配合物で使用される溶剤は、いくつかの有利な特性及び利益を有する。例えば、溶剤は、1つの一般的な実施形態では、1,000g/mol未満、別の実施形態では、500g/mol未満、更に別の実施形態では、355g/mol未満の分子量を有する。他の実施形態では、溶剤の分子量は、別の実施形態では、20g/mol~290g/mol、更に別の実施形態では、60g/mol~250g/molであり得る。
【0033】
溶剤のハンセン可溶化度パラメータは、例えば、以下を含む:(i)分散性構成成分、(ii)極性構成成分、及び(iii)水素結合構成成分。
【0034】
分散性構成成分である構成成分(i)の範囲の例としては、一実施形態では、15MPa1/2~21MPa1/2、別の実施形態では、15.5MPa1/2~20.5MPa1/2、更に別の実施形態では、16MPa1/2~20MPa1/2が挙げられる。
【0035】
極性構成成分である構成成分(ii)の範囲の例としては、一実施形態では、3MPa1/2~10.5MPa1/2、別の実施形態では、3.5MPa1/2~10MPa1/2、更に別の実施形態では、4MPa1/2~9.7MPa1/2が挙げられる。
【0036】
水素結合構成成分である構成成分(iii)の範囲の例としては、一実施形態では、2MPa1/2~18MPa1/2、別の実施形態では、2.5MPa1/2~17.5MPa1/2、更に別の実施形態では、3MPa1/2~17MPa1/2が挙げられる。
【0037】
1つの好ましい実施形態では、本発明において有用な希釈剤は、脱イオン水などの水である。水は、任意の所望される源から供給され得る。
【0038】
本発明の水性溶剤配合物を形成するために組成物中で使用される水の量は、1つの一般的な実施形態では、1重量%~99.99重量%、別の実施形態では、50重量%~99.9重量%、更に別の実施形態では、51重量%~99重量%である。
【0039】
本発明の水性溶剤組成物は、1つの一般的な実施形態では、2つの構成成分(a)及び(b)を含むが、水性溶剤組成物は、本発明の水性溶剤組成物の優れた利益/特性/性能を維持しながら、特定の機能の性能を可能にするために、多種多様な任意選択的な添加剤とともに配合され得る。構成成分(c)である任意選択的な構成成分は、溶剤組成物の構成成分(a)に添加され得るか、又は任意選択的な構成成分は、溶剤組成物の構成成分(b)に添加され得るか、又は任意選択的な構成成分は、構成成分(a)及び(b)を一緒に混合する前に、溶剤組成物の構成成分(a)及び(b)の両方に添加され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、水性溶剤配合物において有用な構成成分(c)である任意選択的な添加剤の例としては、酵素、触媒、界面活性剤、pH調整剤、ポリマー、湿潤剤、キレート剤、レオロジー変性剤、腐食防止剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
使用される場合に水性溶剤配合物に添加するのに有用な構成成分(c)である任意選択的な添加剤の量は、一般に、水性溶剤配合物中の構成成分の総重量に基づいて、一実施形態では、0重量%~約11重量%、別の実施形態では、0.01重量%~15重量%、更に別の実施形態では、4.6重量%~10.5重量%の範囲であり得る。
【0042】
本発明で使用される水性溶剤配合物は、接着剤を処理するために使用される場合、いくつかの有利な特性及び利益を有する。例えば、本発明の水性溶剤組成物は、接着剤を膨潤、分解、及び/又は溶解させるように有利に機能する。水性溶剤組成物の膨潤性能は、重量分析によって測定される、接着剤の有効膨潤のパーセンテージに基づく。例えば、本発明の水性溶剤組成物で接着剤を処理することによる接着剤の有効膨潤は、一実施形態では、≧50重量%、別の実施形態では、≧100重量%、更に別の実施形態では、≧200重量%である。
【0043】
場合によっては、接着剤片は、完全溶解若しくは部分溶解のいずれかを受け、ここでは、接着剤ストリップは、より小さい化学的サブユニットに分解され、溶剤混合物中に可溶化されるか、又は接着剤片は、機械的劣化を受け、ここでは、接着剤がばらばらになることなく、接着剤ストリップを取り扱うことができない。
【0044】
水性溶剤組成物の剥離性能は、除去が部分的又は実質的に完了している、少なくとも1つのフィルム基材層の自発的又は機械的除去によって測定される、2つ以上の層を含有する包装/フィルムの少なくとも1つのフィルム基材層の分離に基づいている。この実施形態では、多層フィルム中の1つ以上の層は、多層フィルム中にある他の層から完全に又は部分的に剥離することが観察されてもよく、多層フィルムは、接着剤が水性溶剤組成物での処理に曝露されたときに、剥離された層の表面面積の少なくとも10%、好ましくは剥離された層の表面面積の50%、最も好ましくは剥離された層の表面面積の100%にわたって多層フィルムの他の構成成分との化学的又は物理的接触がない剥離された層を構成する。
【0045】
一般的な実施形態では、本発明の水性溶剤組成物で処理することができる接着剤は、様々な接着剤を含む。本発明の水性溶剤組成物で処理することができる接着剤の非限定的な例としては、以下のうちの1つ以上からなる群から選択される接着剤が挙げられ得る:ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、及びこれらの混合物。本発明の分離流体によって処理可能な接着剤のうちのいくつかの例としては、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル、エポキシ、天然ゴム、ポリオレフィン及びオレフィンコポリマー、エチレン酢酸ビニル、シリコーン、デンプン、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明において有用な接着剤は、本質的に架橋され得るか、又は熱可塑性であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態では、上記の2つ以上の異なるタイプの接着剤が、単一の多層包装/フィルム/物品中に存在し得る。本発明の水性溶剤組成物は、上記の2つ以上の異なるタイプの接着剤を含有するそのような多層包装/フィルム/物品を処理するために効果的に使用することができることが企図される。
【0047】
様々な異なるタイプの接着剤が、本発明の水性溶剤組成物で処理することができ、好ましい実施形態では、ポリウレタン系接着剤が、本発明の水性溶剤組成物(すなわち、分離流体配合物混合物)で処理されるが、これは、これまで(1)ポリウレタン系接着剤が、ポリマーフィルムの複数の層を一緒に接着して、多層包装/フィルム/物品複合構造体を形成するために一般的に使用されており、かつ(2)ポリウレタン系接着剤は、多層包装/フィルム/物品構造体から除去するのが非常に困難であることが分かっているためである。本発明の水性溶剤組成物は、多層包装/フィルム/物品複合構造体からの接着剤の除去問題を解決し、特に、多層包装/フィルム/物品複合構造体の層は、ポリウレタン系接着剤で一緒に結合される。
【0048】
本発明の別の実施形態は、接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるために接着剤を処理するためのプロセスを含み、接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるのに十分な時間、接着剤を上記の本発明の水性溶剤混合物組成物と接触させる工程を含む。
【0049】
接着剤を本発明の水性溶剤混合物組成物と接触させる時間は、可能な限り速くすることができ、すなわち、接着剤の膨潤、分解、及び/又は完全な溶解は、瞬時に又は数秒で起こり得る。一般に、接着剤の効果的な膨潤、分解、及び/又は完全な溶解は、接着剤が水性溶剤混合物組成物(本発明の分離流体)で処理される場合、1つの一般的な実施形態では、0.005時間~72時間、別の実施形態では、0.01時間~72時間、更に別の実施形態では、0.05時間~72時間、なおも別の実施形態では、0.1時間~72時間、もっと更に別の実施形態では、0.5時間~48時間、もっとなおも別の実施形態では、1時間~28時間で起こり得る。
【0050】
接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための本発明のプロセスの接触工程は、一実施形態では、15℃~100℃、別の実施形態では、18℃~85℃、更に別の実施形態では、20℃~70℃の温度で行われる。
【0051】
上記の本発明のプロセスの利点のうちの1つは、本プロセスの接触工程が、当該技術分野で既知の従来のプロセス及び装置によって行われ得ることである。例えば、接触工程は、静的混合又は高せん断混合条件下で行われ得る。1つの好ましい実施形態では、接触工程は、混合しながら実行される。他の実施形態では、剥離後に、密度分離、凝集、又は溶解などの物理的分離を含む様々な分離方法を使用して、剥離された層を回収することができる。
【0052】
本発明の更に別の実施形態は、多層包装/フィルム/物品を剥離するためのプロセスに関する。一般に、接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品を剥離するためプロセスは、
(A)接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品を提供する工程と、
(B)多層包装/フィルム/物品中の接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるために、多層包装/フィルム/物品を水性溶剤混合物と接触させる工程と、
(C)多層包装/フィルム/物品を水性溶剤混合物中に所定の時間にわたって浸漬して、多層包装/フィルム/物品の複数の層を剥離するか、又は剥離することを可能にする工程と、を含む。
【0053】
接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品は、任意の包装、フィルム、又は物品、より具体的には、様々な包装材料及び製品を製造するための包装用途において使用される多層包装/フィルム/物品であり得る。例えば、典型的な多層包装/フィルム/物品は、食品包装のため、化粧品包装のため、及び電子装置包装のために使用され得る。他の用途としては、工業用途、消費財包装用途、及び医薬用途が挙げられる。
【0054】
広範な実施形態では、多層包装/フィルム/物品の複数の層は、ポリオレフィン、極性ポリマー、金属、及びこれらの混合物からなる群から選択される2つ以上の基材などの様々なフィルム基材から作製され得る。例えば、フィルム基材としては、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)フィルム、二軸配向PP(biaxially oriented PP、BOPP)フィルム、配向ポリエチレン(oriented polyethylene、OPE)、二軸配向ポリプロピレン(biaxially oriented polyethylene、BOPE)、EVOH、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリオレフィンエラストマー、ポリスチレン(polystyrene、PS)及びその誘導体コポリマー、アルミニウム、セルロース(例えば、紙、板紙、繊維板、及び厚紙を含む)、及びこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0055】
一般に、多層包装/フィルム/物品中の接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための本発明のプロセスの接触工程(B)は、以下のプロセス条件を使用して行われ得る:一実施形態では、15℃~100℃の温度、別の実施形態では、18℃~85℃、更に別の実施形態では、20℃~70℃。
【0056】
一般に、多層包装/フィルム/物品中の接着剤を効果的に膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための本発明のプロセスの浸漬工程(C)の時間は、一実施形態では、0.005時間~72時間、別の実施形態では、0.5時間~48時間、更に別の実施形態では、1時間~28時間である。
【0057】
本発明のプロセスの利点のうちの1つは、上記の本発明のプロセスの工程が、当該技術分野で既知のいくつかの従来のプロセス及び装置によって行われ得ることである。
【0058】
本発明の更に他の実施形態は、接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品をリサイクルするためのプロセスに関する。一般に、接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品をリサイクルするためプロセスは、
(I)接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品を提供する工程と、
(II)多層包装/フィルム/物品中の接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるために、多層包装/フィルム/物品を水性溶剤混合物と接触させる工程と、
(III)多層包装/フィルム/物品を水性溶剤混合物中に所定の時間にわたって浸漬して、多層包装/フィルム/物品の複数の層を剥離するか、又は剥離することを可能にする工程と、
(IV)工程(III)からの多層包装/フィルム/物品の剥離された複数の層を回収する工程と、
(V)工程(IV)の回収された剥離された複数の層からリサイクル材料を形成する工程と、
(VI)工程(V)のリサイクル材料から別の異なる包装、フィルム、又は物品を形成する工程であって、包装、フィルム、又は物品が多層構造体又は非多層構造体である、形成する工程と、を含む。
【0059】
一般に、多層包装/フィルム/物品中の接着剤を膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための本発明のプロセスの接触工程(II)は、以下のプロセス条件を使用して行われ得る:一実施形態では、15℃~100℃の温度、別の実施形態では、18℃~85℃、更に別の実施形態では、20℃~70℃。
【0060】
一般に、多層包装/フィルム/物品中の接着剤を効果的に膨潤、分解、及び/又は完全に溶解させるための本発明のプロセスの浸漬工程(III)の時間は、一実施形態では、0.005時間~72時間、別の実施形態では、0.5時間~48時間、更に別の実施形態では、1時間~28時間である。
【0061】
多層包装/フィルム/物品の剥離された複数の層を回収するための上記プロセスの工程(IV)は、例えば、密度分離、凝集、又は溶解を含む物理的分離を用いて行われ得る。回収工程(IV)は、例えば、混合タンク中、一連のタンク中、又は連続混合プロセス中で実行され得る。工程(IV)からの回収された剥離された複数の層は、工程(V)で使用されて、リサイクル材料を形成する、すなわち、回収された剥離された複数の層は、再使用又はリサイクルされて、工程(V)でその後の異なる包装、フィルム、又は物品を形成するために使用することができるリサイクル材料を形成する。工程(V)は、溶融及び押出によって行われ得る。溶融及び押出プロセスを使用して、工程(VI)でペレットから新しい包装、フィルム、又は物品を作り出す前に、工程(V)でペレットが形成され得る。代替的に、新しい包装、フィルム、又は物品は、工程(IV)の回収された剥離された複数の層から直接形成され得る。溶融及び押出プロセスは、一軸スクリュー又は二軸スクリュー押出機などの当業者に既知の従来の装置を使用して実行され得る。
【0062】
工程(V)で形成されるリサイクル材料としては、例えば、ペレット、単層又は多層フィルム、単層又は多層ラミネート、包装材料、成形製品、及びリサイクルの技術分野で一般的に実施される他の材料とのブレンドが挙げられる。
【0063】
工程(V)のリサイクル材料から形成される工程(VI)の物品としては、例えば、ペレット、単層又は多層フィルム、単層又は多層ラミネート、包装材料、成形製品、及び押出物、熱成形可能材料などが挙げられ得る。
【0064】
本発明のプロセスの利点のうちの1つは、上記の本発明のプロセスの工程が、当該技術分野で既知のいくつかの従来のプロセス及び装置を使用して行われ得ることである。
【0065】
所望であれば、追加の任意選択的な工程が、接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品を剥離するために上記のプロセスにおいて使用され得る。例えば、好ましい実施形態では、接触工程は、静的混合又は高せん断混合条件などの混合を用いて実行され得る。加えて、分離された材料は、追加の水洗浄、乾燥プロセス、追加の選別などを含むリサイクルプロセスを助けるための追加の工程を受け得る。押出工程はまた、追加の材料との配合又は溶融濾過プロセスの使用を含み得る。
【0066】
1つの好ましい実施形態では、水性溶剤混合物は、多層包装/フィルム/物品構造体中に存在する接着剤を効果的に膨潤、分解、及び/又は溶解させるのに十分な時間、多層包装/フィルム/物品構造体を水性溶剤混合物で処理することによって、接着剤を含有する多層包装/フィルム/物品構造体を剥離するために使用される。特に、本発明の溶剤混合物は、不適合性層を含有する多層包装/フィルム/物品構造体を剥離するのに有用である。
【0067】
上記の処理プロセスは、多層包装/フィルム/物品構造体をリサイクルすることが環境の利益のためにプラスチック廃棄物の量を低減するために所望される場合に非常に有用である。
【実施例
【0068】
以下の本発明の実施例(本発明の実施例)及び比較実施例(比較実施例)(まとめて「実施例」とする)は、本発明の特徴を更に詳細に説明するために本明細書で提示されるが、特許請求の範囲を限定するものとして明示的にも暗示的にも解釈されることを意図しない。本発明の実施例はアラビア数字によって特定され、比較実施例はアルファベット文字によって表される。以下の実験で、本明細書に記載の組成物の実施形態の性能を分析した。特に指示しない限り、全ての部及びパーセンテージは、総重量に基づく重量による。
【0069】
実施例で使用する溶剤及び接着剤を表1に記載する。
【0070】
【表1】
【0071】
配合物及び接着剤を調製するための一般的な手順
表Iに記載の溶剤を希釈剤と混合して、希釈剤中10重量%の溶剤(例えば、3.6gのDI水[希釈剤]中0.4gのDOWANOL(商標)EPh[溶剤])を形成することによって、溶剤混合物の試料を調製する。
【0072】
表Iに記載の接着剤1又は接着剤2を有する接着剤フィルムを、以下の寸法:約1cm×2cmを有するストリップに切断する。実施例で使用する接着剤フィルムストリップの切断片の各々は、以下の接着剤濃度を含有する:接着剤1について:0.01g~0.08g、及び接着剤2について:0.01g~0.5g。
【0073】
試験するための一般的な手順
接着剤ストリップを化学天秤で予め秤量する。接着剤ストリップを予め秤量した後、接着剤ストリップを、清浄な乾燥撹拌棒(V&P 773D-9)を含有する7.5ミリリットル(mL)バイアル(Qorpack、GLC-000986)に入れる。次いで、4ミリリットル(mL)の溶剤混合物(例えば、水中10重量%のDOWANOL(商標)EPh)をバイアルに添加し、バイアルに蓋をする。バイアルを特定の温度でExtended Core Module(XCM、Unchained labs)上に置き、モジュールを300回転/分(revolutions per minute、rpm)で5時間~6時間撹拌するように設定する。接着剤ストリップを、溶剤混合物中にストリップを最初に浸した後、24時間~28時間の間にわたって浸漬する。試料接着剤を溶剤混合物中に浸漬した後、試料接着剤フィルムストリップをピンセットでバイアルから除去し、ペーパータオルを使用して軽くたたいて、ストリップの表面から過剰な水分を除去し、化学天秤で再秤量する。
【0074】
結果
表II及び表IIIは、測定及び記録されたフィルムストリップ/接着剤の特性を記載する。本発明に従って実質的な接着剤膨潤を主張するために、試料接着剤ストリップは、以下のうちの1つを示すことが必要である:(1)少なくとも50%の重量増加、(2)完全な溶解、又は(3)試料接着剤片が、接着剤片がばらばらになることなく、ピンセットを使用して取り扱うことができないことを意味する機械的完全性の喪失。表II及び表IIIにおける「溶解した」という用語は、試料接着剤片がその機械的完全性を喪失したことか、又は試料接着剤片が完全に若しくは実質的に完全に溶解したことを意味する。
【0075】
表II及びIIIに記載の実施例の結果は、必要な化学部分とともに溶剤の特定の可溶化度空間範囲の使用を教示し、これは新規である。更に、実施例の結果は、酸カルボキシレート(酢酸)が本発明の接着剤樹脂の膨潤剤として機能しないことを教示している。
【0076】
【表2】

表IIに関する留意事項 HSP値は以下から得られた:https://www.stevenabbott.co.uk/practical-solubility/hsp-basics.php
HSP値は以下から得られた:https://www.dow.com/content/dam/dcc/documents/en-us/catalog-selguide/327/327-00001-01-dow-oxygenated-solvents-selection-guide.pdf
HSP値は以下から得られた:HSPiP 5th Edition
HSP値は以下から得られた:Brandrup,et al.(1999; 2005),Polymer Handbook(4th Edition),Table8.Solubility Parameters of Solvents in Increasing Order ofδ,John Wiley&Sons.
【0077】
【表3】

表IIIに関する留意事項 HSP値は以下から得られた:https: //www.stevenabbott.co.uk/practical-solubility/hsp-basics.php
HSP値は以下から得られた:https: //www.dow.com/content/dam/dcc/documents/en-us/catalog-selguide/327/327-00001-01-dow-oxygenated-solvents-selection-guide.pdf
HSP値は以下から得られた:HSPiP 5th Edition
HSP値は以下から得られた:Brandrup,et al.(1999; 2005),Polymer Handbook(4th Edition),Table8.Solubility Parameters of Solvents in Increasing Order ofδ,John Wiley&Sons.
【国際調査報告】