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特表2024-519212B7H4およびCD3に結合する二重特異性抗体を含む薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-09
(54)【発明の名称】B7H4およびCD3に結合する二重特異性抗体を含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240430BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240430BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240430BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 47/16 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240430BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240430BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240430BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20240430BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240430BHJP
   C07K 16/30 20060101ALN20240430BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/20
A61K47/16
A61K47/10
A61K9/08
A61K39/395 N
A61P35/00
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
C07K16/28
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568247
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022062518
(87)【国際公開番号】W WO2022234146
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,762
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】サーリン マーティン
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥルラフマン アブダラ
(72)【発明者】
【氏名】コー ジェシ
(72)【発明者】
【氏名】アバディー チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB13
4C076CC27
4C076DD08
4C076DD08E
4C076DD08F
4C076DD09
4C076DD09E
4C076DD09F
4C076DD38E
4C076DD38F
4C076DD49E
4C076DD49F
4C076DD51Z
4C076DD58E
4C076DD58F
4C076DD63E
4C076DD63F
4C076DD67E
4C076DD67F
4C076DD68E
4C076DD68F
4C076FF11
4C076FF15
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF63
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE01
4C085EE05
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、B7H4およびCD3に結合する抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形に関する。本発明はさらに、特にがん療法での、治療手順および診断手順のための該薬学的組成物および該単位剤形の使用も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む、抗体、
b)緩衝剤
を含み、
pHが4.0~8.0である、薬学的組成物。
【請求項2】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域およびヒトCD3に結合できる抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されている、かつ/またはヒト由来である、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項3】
pHが、4.5~6.5、例えば5.0~6.0、例えば5.2~5.5である、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
緩衝剤が、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項5】
c)非イオン性賦形剤、例えば糖または糖アルコール
をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
非イオン性賦形剤が、ソルビトール、スクロース、またはそれらの混合物より選択される、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
非イオン性賦形剤が、100~300mM、例えば125~250mM、好ましくは250mMの濃度で存在する、請求項5または6記載の薬学的組成物。
【請求項8】
d)界面活性剤
をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
界面活性剤が、モノオレイン酸グリセロール、塩化ベンゼトニウム、ドクサートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびトリカプリリン、塩化ベンザルコニウム、シトリミド(citrimide)、塩化セチルピリジニウムおよびリン脂質、αトコフェノール、モノオレイン酸グリセロール、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン(sorbintan)脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステラレート(sterarates)、ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステルスクロースパルミタート、ステアリン酸スクロース、トリカプリリンおよびTPGS、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
界面活性剤がポリソルベートであり、任意で、該ポリソルベートが、ポリソルベート20またはポリソルベート80、好ましくはポリソルベート80である、請求項8または9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
界面活性剤が、約0.005%~0.4%w/v、例えば約0.01~0.1%w/v、例えば約0.01~0.09%w/v、例えば約0.01~0.06%w/v、例えば約0.01~0.05%w/v、例えば0.02%w/vまたは0.03%w/vまたは0.04%w/vまたは0.05%w/v、好ましくは0.02%w/vの濃度で存在する、請求項8~10のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項12】
抗体の濃度が、0.5~100mg/ml、例えば1.0~50mg/ml、または例えば5~30mg/ml、例えば、5mg/ml、または6mg/ml、または7mg/ml、または8mg/ml、または9mg/ml、または10mg/ml、または11mg/ml、または12mg/ml、または13mg/ml、または14mg/ml、または15mg/ml、または16mg/ml、または17mg/ml、または18mg/ml、または19mg/ml、または20mg/ml、または21mg/ml、または22mg/ml、または23mg/ml、または24mg/ml、または25mg/ml、または26mg/ml、または27mg/ml、または28mg/ml、または29mg/ml、30mg/ml、31mg/ml、32mg/ml、33mg/ml、34mg/ml、35mg/ml、36mg/ml、37mg/ml、38mg/ml、39mg/ml、40mg/ml、41mg/ml、42mg/ml、43mg/ml、44mg/ml、45mg/ml、46mg/ml、47mg/ml、48mg/ml、49mg/ml、50mg/ml、51mg/ml、52mg/ml、53mg/ml、54mg/ml、55mg/ml、56mg/ml、57mg/ml、58mg/ml、59mg/ml、または例えば60mg/mlである、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
緩衝剤が、5~40mM、例えば10~30mM、好ましくは20mMの濃度で存在する、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項14】
水性組成物である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
a)5~50mg/mlの抗体、
b)10~20mMグルタマートまたはヒスチジン、
c)150~350mMソルビトールまたはスクロース、
d)ポリソルベート
を含み、
pHが5.0~6.0である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項16】
以下からなる群:
a)10~20mg/mlの抗体、b)20mMグルタマート、c)250mMソルビトール、d)0.02%w/vポリソルベート80を含む薬学的組成物であって、pHが5.1~5.3である、該薬学的組成物、および
a)10~20mg/mlの抗体、b)20mMヒスチジン、c)250mMスクロース、d)0.02%w/vポリソルベート80を含む薬学的組成物であって、pHが5.4~5.6である、該薬学的組成物
より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項17】
液体組成物である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項18】
静脈内用組成物である、および/または静脈内投与において使用するためのものである、請求項1~17のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項19】
2~8℃、例えば5℃の貯蔵温度で、少なくとも6ヶ月間、例えば少なくとも9ヶ月間または少なくとも12ヶ月間、医薬用途のために安定である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項20】
抗体が二重特異性抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項21】
抗体が二価抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項22】
CD3に結合する抗原結合領域が、以下:
SEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む、重鎖可変領域(VH);ならびに
SEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項23】
CD3に結合する抗原結合領域が、以下:
SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 21のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);ならびに
それぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項24】
CD3に結合する抗原結合領域が、以下:
SEQ ID NO: 17の配列、またはSEQ ID NO: 17の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);および
SEQ ID NO: 22の配列、またはSEQ ID NO: 22の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項25】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、以下:
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 40のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 47のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 54のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 69のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項26】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項27】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、以下:
a)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
b)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
c)それぞれSEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、およびSEQ ID NO: 39のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 41、DTS、およびSEQ ID NO: 42のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 48、YTS、およびSEQ ID NO: 49のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)それぞれSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、およびSEQ ID NO: 53のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 55、GAS、およびSEQ ID NO: 56のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;または
f)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
g)それぞれSEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、およびSEQ ID NO: 68のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 70、GAS、およびSEQ ID NO: 71のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項28】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、
それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項29】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、以下:
a)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項30】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項31】
抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が、
重鎖可変領域(VH)であって、CDR1がSEQ ID NO: 18のアミノ酸配列を含み、CDR2がSEQ ID NO: 19のアミノ酸配列を含み、およびCDR3がSEQ ID NO: 21のアミノ酸配列を含む、該重鎖可変領域(VH)、ならびに
軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1がSEQ ID NO: 23のアミノ酸配列を含み、CDR2がGTNのアミノ酸配列を含み、およびCDR3がSEQ ID NO: 24のアミノ酸配列を含む、該軽鎖可変領域(VL)
を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域が、
可変重鎖(VH)領域であって、SEQ ID NO: 26のアミノ酸配列を含み、CDR2がSEQ ID NO: 30のアミノ酸配列を含み、およびCDR3がSEQ ID NO: 28のアミノ酸配列を含む、該可変重鎖(VH)領域、ならびに
軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1がSEQ ID NO: 34のアミノ酸配列を含み、CDR2がGASのアミノ酸配列を含み、およびCDR3がSEQ ID NO: 35のアミノ酸配列を含む、該軽鎖可変領域(VL)
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項32】
抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)
を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項33】
抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が、SEQ ID NO: 17の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 22の可変軽鎖領域を含み、かつ
該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む、
前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項34】
B7H4に結合できる抗原結合領域がヒト由来である、かつ/または
CD3に結合できる抗原結合領域がヒト化されている、
前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項35】
抗体が、2つの重鎖定常領域(CH)および2つの軽鎖定常領域(CL)を含み、好ましくは、該2つの重鎖定常ドメインおよび該2つの軽鎖定常領域がヒトに由来する、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項36】
抗体が完全長抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項37】
抗体がIgG1アイソタイプのものである、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項38】
抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み、
ここで、該第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ
該第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、
ここで、該第1の重鎖および該第2の重鎖についての置換は、同じ位置に存在せず、これらのアミノ酸位置は、EU番号付与に基づいて番号付与されている、
前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項39】
ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置のアミノ酸が、第1の重鎖においてRであり、かつヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置のアミノ酸が、第2の重鎖においてLであるか、またはその逆である、請求項38記載の薬学的組成物。
【請求項40】
抗体が、第1の重鎖、および任意で第2の重鎖を含み、かつ該抗体が、同一の非改変抗体と比べて低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、該第1の重鎖、および存在する場合には該第2の重鎖が改変されている、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項41】
抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、EU番号付与に基づくヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸残基が、それぞれFおよびEである、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項42】
抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、EU番号付与に基づくヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置にあるアミノ酸残基が、Aである、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項43】
抗体が、ラムダ(λ)軽鎖およびカッパ(κ)軽鎖を含む;例えば、CD3に結合できる結合領域を含む重鎖およびラムダ軽鎖と、B7H4に結合できる結合領域を含む重鎖およびカッパ軽鎖とを有する、抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項44】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖がVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖がVL領域およびカッパ軽鎖定常領域を含み;かつヒトCD3に結合できる抗原結合領域が、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖がVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖がVL領域およびラムダ軽鎖定常領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項45】
一方のIgG1重鎖定常領域がSEQ ID NO: 60に定義されるとおりであり、かつ他方がSEQ ID NO: 61に定義されるとおりであり、およびカッパ軽鎖定常領域がSEQ ID NO: 63に定義されるとおりであり、かつラムダ軽鎖定常領域がSEQ ID NO: 64に定義されるとおりである、請求項44記載の薬学的組成物。
【請求項46】
SEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 61に定義されるIgG1重鎖定常領域において、末端リジンが欠失している、請求項45記載の薬学的組成物。
【請求項47】
抗体が、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはそのバイオシミラーである、前記請求項のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項48】
医薬として使用するための、請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項49】
疾患の治療のための方法において使用するための、請求項48記載の医薬として使用するための薬学的組成物。
【請求項50】
疾患ががんであり、任意で、該がんが、がん細胞におけるB7H4の発現を特徴とし、任意で、該がんが固形腫瘍である、請求項49記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項51】
がんが、肺がん、NSCLC(ADCまたはSQCC)、胃がん、膵臓がん、胆管がん、膀胱がん、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、および子宮がんからなる群より選択される、請求項50記載の使用のための薬学的組成物。
【請求項52】
疾患を治療する方法であって、その必要のある対象に、請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する段階を含む、該方法。
【請求項53】
対象においてがんを治療する方法であって、その必要のある対象に、該がんを治療するのに十分な期間、請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物を投与する段階を含む、該方法。
【請求項54】
がんの治療のための、請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物の使用。
【請求項55】
a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む、抗体であって、該抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されている、かつ/またはヒト由来である、5pg~1200mgの量の、該抗体、ならびに
b)好ましくは、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される、緩衝剤
を含み、
pHが、4.0~8.0、好ましくは4.5~6.5、より好ましくは5.0~6.0である、単位剤形。
【請求項56】
抗体が、請求項20~47のいずれか一項において定義されるとおりである、請求項55記載の単位剤形。
【請求項57】
抗体の量が20mg~1000mg、例えば200mg~600mg、例えば300mg~400mgである、請求項55または56記載の単位剤形。
【請求項58】
a)請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物、または請求項55~57のいずれか一項記載の単位剤形、
b)該薬学的組成物または該単位剤形のための入れ物、
c)希釈および/または使用のための説明書
を含む、キットオブパーツ。
【請求項59】
注射用水中で以下:
a)0.5~120mg/mlの抗体、および
b)緩衝剤
を混合する段階、ならびに
pHを4.0~8.0、好ましくは5.0~6.0に調整する段階
を含む、請求項1~47のいずれか一項記載の薬学的組成物を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、B7H4およびCD3に結合する二重特異性抗体を含む薬学的組成物および単位剤形、ならびにそのような薬学的組成物または単位剤形の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
緒言
B7H4(B7-H4、Vセットドメインを含むT細胞活性化阻害物質1、またはVTCN1)は、B7ファミリータンパク質のメンバーであり、このファミリーは、リンパ球上の受容体に結合する細胞表面タンパク質リガンドを含む。B7ファミリーは、免疫応答の調節において重要な役割を果たす。B7H4は、T細胞の活性化、増殖、サイトカイン産生、および細胞障害性活性を阻害することにより、T細胞媒介性免疫応答を負に調節する(Prasad et al., 2003, Immunity 18: 863-873(非特許文献1))。B7H4は、短い細胞内ドメインと、疎水性膜貫通ドメインと、4つの保存されたシステイン残基およびN結合型グリコシル化のための7つの部位が存在するIgV様ドメインおよびIgC様ドメインを有する細胞外ドメインとを含む、I型膜貫通型タンパク質である。(Sica et al., 2003, Immunity 18: 849-861(非特許文献2))。これまでに、B7H4に対する受容体は同定されていない。
【0003】
正常な成熟組織においてB7H4発現は非常に限定的であるのに対し、多数のがん組織中の腫瘍細胞においてB7H4発現が確認されている(Kaur and Janakiram, 2019, ESMO Open 4:e000554(非特許文献3))。がんにおいて、B7H4発現は、がんの進行期、予後不良、および患者の全生存率の低下と相関関係がある。
【0004】
したがって、がんの治療のためにB7H4を標的とすることが、提案されている(Podojil and Miller, Immunological Reviews, 2017: 276; 40-51(非特許文献4))。現在、B7H4に結合する抗体が、がん療法のために開発中である。例えば、FPA150は、B7H4を介したT細胞活性化抑制を弱め、かつ抗体依存性細胞障害性(ADCC)活性を示す、アフコシル化ヒト抗体である(Wainberg et al., 2019, Annals of Oncology 30, Suppl. 5, v489 (1198P)(非特許文献5))。現在、FPA150は、進行した固形腫瘍において、単独療法として、またはペムブロリズマブと組み合わせて、初期臨床試験中である。
【0005】
T細胞の標的をB7H4にする試みもまた、なされている。B7H4/CD3二重特異性単鎖抗体であるFab scFvは、マウス抗ヒトB7H4抗体およびマウス抗ヒトCD3抗体のFab断片および単鎖可変断片(scFv)の構造をベースとして作られた(Iizuka et al., 2019, Clin Cancer Res 25: 2925-2934(非特許文献6))。Smithらは、B7H4に特異的なキメラ抗原受容体(CAR)を有する操作されたT細胞を説明しており、これらはマウスにおいてB7H4陽性のヒト卵巣腫瘍異種移植片に対して抗腫瘍活性を示したが、多臓器リンパ球浸潤および致死毒性もまた示した(Smith et al. 2016, Molecular Therapy, Vol.24 Iss. 11 pp 1987-99(非特許文献7))。
【0006】
いくらか進歩はあったものの、ヒトでの使用のために有効かつ/または安全である、B7H4を標的とする抗体ベースのがん療法の開発が引き続き必要とされている。そのような療法において使用するための抗体の薬学的に許容される製剤もまた、必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Prasad et al., 2003, Immunity 18: 863-873
【非特許文献2】Sica et al., 2003, Immunity 18: 849-861
【非特許文献3】Kaur and Janakiram, 2019, ESMO Open 4:e000554
【非特許文献4】Podojil and Miller, Immunological Reviews, 2017: 276; 40-51
【非特許文献5】Wainberg et al., 2019, Annals of Oncology 30, Suppl. 5, v489 (1198P)
【非特許文献6】Iizuka et al., 2019, Clin Cancer Res 25: 2925-2934
【非特許文献7】Smith et al. 2016, Molecular Therapy, Vol.24 Iss. 11 pp 1987-99
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3ε(イプシロン)などのCD3に結合する抗原結合領域とを含む抗体を含む、新規な薬学的組成物を提供することである。さらなる目的は、製剤が広範囲の抗体濃度および/または温度にわたって安定である、抗体を含む薬学的組成物を提供することである。さらなる目的は、製剤が少なくとも3ヶ月、またはさらにより長い期間、例えば少なくとも6ヶ月もしくは少なくとも12ヶ月の期間にわたって安定である、抗体を含む薬学的組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、IV注入の場合に忍容性が良好である、抗体の薬学的製剤を提供することである。このような抗体の抗原結合領域は、例えば、FR1、FR2、FR3、およびFR4など、少なくともヒトフレームワーク領域を含む。すべてのフレームワーク領域がヒト由来であることが、最も好ましい。このような抗原結合領域は、ヒト化抗原結合領域および/またはヒト抗原結合領域である。これらの薬学的組成物は、B7H4発現細胞を特異的に標的とすることおよびT細胞の媒介によって死滅させることが望ましい病態の治療において、例えば、がんなどの病態において、有用である。好ましくは、該薬学的組成物は、例えば医学的治療においてヒトに使用するために適している。治療に適している可能性があるがんは、固形腫瘍である。例えばがん細胞における前記のB7H4発現およびT細胞媒介性死滅は、本発明によれば、例えば実施例12で示すように、MCF-7細胞などでの比較的低いB7H4発現から、SK-BR3細胞などでの比較的高いB7H4発現に及び得る。より好ましくは、このような二重特異性抗体は、Fc領域が存在する場合にはFc領域を不活性にする置換を、定常領域内に有する。好ましい態様において、本発明の薬学的組成物は、IV投与の両方に適している。
【0009】
第1の局面において、本発明は、a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体であって、該抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されているおよび/またはヒト由来である、該抗体、ならびにb)緩衝剤、を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが4.0~8.0、好ましくは4.5~6.5、最も好ましくは5.0~6.0である、該薬学的組成物を提供する。緩衝剤は、好ましくは、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択され、薬学的組成物は、好ましくは、非イオン性賦形剤をさらに含む。このような薬学的組成物は、抗体の驚くほど高い安定性、例えば熱安定性および貯蔵安定性、ならびに高度の溶解性を提供することが見出されている。
【0010】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3ε(イプシロン)などのCD3に結合できる抗原結合領域とを含む二重特異性抗体を含み、ここで、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 29、またはSEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域と、SEQ ID NO: 33のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域とを含み、かつ該CD3に結合できる抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 21のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH)と、それぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。好ましくは、CDR領域は、後述のIMGT法によって決定される。
【0011】
さらなる局面において、本発明による薬学的組成物は、医学的治療において使用するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-1】B7H4-B7H3キメラ分子を用いての、結合に関与するB7H4ドメインの決定。B7H4抗体のB7H4ドメイン特異性を、ヒトB7H4(I)、ヒトB7H4-B7H3キメラ分子であるB7H3-IgV/B7H4-IgC(II)もしくはB7H4-IgV/B7H3-IgC(III)、またはヒトB7H3(IV)を発現するようにトランスフェクトした細胞のパネルを用いて決定した。結合はフローサイトメトリーによって決定した。A=bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C4-FEAR;B=bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C3-FEAR;C=bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEAR;D=bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-FEAR;E=IgG1-B7H3-BRCA84D。
図1-2】図1-1の説明を参照。
図2】B7H4、B7H3、またはB7H4-B7H3キメラ分子へのB7H4抗体の結合。ヒトB7H4またはB7H4-B7H3キメラ分子であるB7H3-IgV/B7H4-IgCもしくはB7H4-IgV/B7H3-IgCを発現するように一過性にトランスフェクトしたHEK細胞に対する、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C2-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C3-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEARの結合を、フローサイトメトリーを用いて評価した。
図3A】ECD中にアラニン変異を有するB7H4バリアントへのB7H4抗体の結合。参照抗体と比較した変化倍率として、結合を表現した。変化倍率は、Log10(正規化gMFI[ala変異体]/正規化gMFI[wt])と定義した。結合の変化倍率が平均変化倍率-1.5×SDより小さい残基を「結合減少変異体」とみなした。結合変化倍率が正の値である残基は、参照抗体に対する結合が減少した残基である。x軸の下の数字は、アミノ酸位置を意味する。(A)C2を参照抗体としての、C1-N52Sについての結果。(B)C1-N52Sを参照抗体としての、C2についての結果。(C)C2を参照抗体としての、C3についての結果。
図3B図3Aの説明を参照。
図3C図3Aの説明を参照。
図4】ヒトB7H4およびカニクイザルB7H4へのB7H4抗体およびCD3×B7H4二重特異性抗体の結合。ヒトB7H4またはカニクイザルB7H4を一過性にトランスフェクトしたHEK-293F細胞に対する、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR(A)およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の結合を、フローサイトメトリーによって決定した。トランスフェクトされていないHEK-293F細胞(C)を陰性対照として使用した;これらについては、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの結合を示している。
図5】ウサギ、ラット、マウス、イヌ、およびブタに由来するB7H4へのB7H4抗体およびCD3×B7H4二重特異性抗体の結合。ウサギ、ラット、マウス、イヌ、またはブタに由来するB7H4を一過性にトランスフェクトしたHEK-293F細胞への、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR(A)およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の結合を、フローサイトメトリーによって決定した。トランスフェクトされていないHEK-293F細胞(C)を陰性対照として使用した;これらについては、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの結合を示している。
図6】様々な種に由来するB7H4を一過性にトランスフェクトしたHEK-293F細胞へのB7H4抗体の結合。ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、もしくはブタに由来するB7H4をトランスフェクトしたHEK-293F細胞またはトランスフェクトされていないHEK-293F細胞への、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR(A)、IgG1-B7H4-C3-FEAR(B)、IgG1-B7H4-C2-FEAR(C)、IgG1-B7H4-C4-FEAR(D)、およびIgG1-B7H4-C5-FEAR(E)の結合を、フローサイトメトリーによって決定した。IgG1-b12を、結合しない対照抗体として使用した(図示せず)。
図7】MCF-7細胞およびMDA-MB-468細胞へのIgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR(A)およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の結合。フローサイトメトリーによって結合を決定した。IgG1-b12(C)およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×b12-FEAR(D)を、結合しない対照抗体として使用した。
図8】NIH-OVCAR-3細胞、HCC1954細胞、およびHeLa細胞へのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(A)の結合。フローサイトメトリーによって結合を決定した。bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×b12-FEAR(B)を、結合しない対照抗体として使用した。
図9】SK-BR3細胞およびMDA-MB-486細胞へのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(A)およびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の結合。フローサイトメトリーによって結合を決定した。bsIgG1-huCD3-FEAL×b12-FEAR(C)およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×b12-FEAR(D)を、結合しない対照抗体として使用した。
図10】ホモ二量体型およびbsAb型の様々なB7H4抗体の、MDA-MB-486細胞およびHCC1954細胞への結合。IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR(Aホモ二量体)、IgG1-B7H4-C2-FEAR(Bホモ二量体)、IgG1-B7H4-C3-FEAR(Cホモ二量体)、IgG1-B7H4-C4-FEAR(Dホモ二量体)、IgG1-B7H4-C5-FEAR(Eホモ二量体)、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(A bsAb)、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEAR[MDA-MB-468]またはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C2-FEAR[HCC1954](B bsAb)、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C3-FEAR(C bsAb)、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEAR(D bsAb)、およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEAR(E bsAb)の結合をフローサイトメトリーによって決定した。bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×b12-FEAR(F bsAb)またはIgG1-b12-K409R(Fホモ二量体)を、結合しない対照抗体として使用した。
図11】様々なエフェクター対標的比(E:T)で精製T細胞をエフェクター細胞として用いて行う、CD3×B7H4二重特異性抗体による、SK-BR3細胞に対するT細胞媒介性細胞障害性のインビトロ誘導。bsIgG1-huCD3-FEAL×b12-FEARを、結合しない対照抗体として使用した。A=bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR;B=bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR;C=bsIgG1-huCD3-FEAL×b12-FEAR。
図12】異なるCD3アームを有するCD3×B7H4二重特異性抗体の存在下での、様々な腫瘍細胞株におけるT細胞媒介性細胞障害性のインビトロ誘導。bsIgG1-huCD3-FEAL×b12-FEARを、結合しない対照抗体として使用した。A=bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR;B=bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR;C=bsIgG1-huCD3-FEAL×b12-FEAR、D=bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×b12-FEAR。
図13】B7H4発現レベルおよびT細胞媒介性腫瘍細胞死滅のIC50。(A)腫瘍細胞株におけるB7H4発現レベルの定量的フローサイトメトリー解析。個々の測定値(点)、幾何平均(棒)、および標準偏差(誤差棒)を示している。sABC=特異的抗体結合能力。(B)bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(I)またはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(II)の存在下での、様々な腫瘍細胞株に対するT細胞媒介性腫瘍細胞死滅のIC50。各点は、個々のT細胞ドナー(細胞株1つにつき4~6名のドナー)を用いて実施した実験を表し、横線は中央値を示す。B7H4発現レベルに基づいて、細胞株を順位付けしている。
図14A】T細胞と腫瘍細胞の共培養物における、B7H4二重特異性抗体によるT細胞活性化。(A)フローサイトメトリーによって決定した、様々なB7H4陽性腫瘍細胞株についてのbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(I)またはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(II)の存在下でのT細胞活性化(CD8+細胞上のCD69の比率(%))。(B)各標的細胞株についての、3~5名のドナーに由来するT細胞を用いるT細胞活性化のEC50。各点は、個々のT細胞ドナーを用いて実施した実験を表し、横線は幾何平均を示す。
図14B図14Aの説明を参照。
図15】bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(A)およびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の濃度がEC50、EC90、およびEC99の場合の、T細胞と腫瘍細胞の共培養物の上清中のIFNγ。3~4名のドナーに由来するT細胞を用い、マルチプレックスUプレックスアッセイによって決定した。個々の測定値(点)、幾何平均(横線)、および標準偏差(誤差棒)を示している。
図16】bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(A)またはbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の1回量のIV注入によって処置したカニクイザルの血漿中のIL-6レベルおよびMCP-1レベル。
図17-1】bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(A)またはbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(B)の1回のIV注入後の平均血漿中濃度-時間プロファイル。
図17-2】図17-1の説明を参照。
図18】様々な原発性固形腫瘍におけるB7H4 mRNA発現レベル。B7H4 mRNAレベルは、OmicsoftのTCGAデータベースから抽出し、Oncolandソフトウェアを用いて可視化した。B7H4 mRNA発現の中央値に基づいて適応症を順位付けしている。THYM=胸腺腫、UVM=ブドウ膜黒色腫、PCPG=褐色細胞腫および傍神経節腫、ACC=副腎皮質がん、MESO=中皮腫、SKCM=皮膚皮膚黒色腫、READ=直腸腺がん、COAD=結腸腺がん、GMB=多形性膠芽腫、SARC=肉腫、LIHC=肝臓肝細胞がん、LGG=脳の低悪性度神経膠腫、KIRC=腎臓腎明細胞がん、TGCT=精巣胚細胞腫瘍、KICH=嫌色素性腎細胞がん、STAD=胃腺がん、THCA=甲状腺がん、HNSC=頭頸部扁平上皮がん、PRAD=前立腺腺がん、LUAD=肺腺がん、ESCA=食道がん、CESC=子宮頸部扁平上皮がんおよび子宮頸管腺がん、KIRP=腎臓の乳頭状腎細胞がん、UCS=子宮がん肉腫、BLCA=膀胱尿路上皮がん、PAAD=膵臓腺がん、LUSC=肺扁平上皮がん、BRCA=浸潤性乳がん、UCEC=子宮体子宮内膜がん、OV=卵巣漿液性嚢胞腺がん、ならびにCHOL=胆管がん。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(表1)アミノ酸配列および核酸配列
【0014】
上記に挙げた表中のCDR領域(CDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにVH配列およびVL配列中の下線を引いた配列)は、IMGTに従ってアノテートされている(Lefranc MP. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999]およびBrochet X. Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008)を参照されたい)。上記の表で使用されているK405LおよびK409Rへのリファレンスは、(Kabat, E.A. et al., Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662,680,689 (1991)に記載されている)EUインデックス番号付与に基づいている。
【0015】
詳細な説明
定義
本明細書において使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらのいずれかの派生物を指すことが意図され、これらは、典型的な生理学的条件下および/または腫瘍特異的条件下で抗原に特異的に結合する能力を有し、その際の半減期は有意な期間、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、少なくとも約24時間もしくは24時間超、少なくとも約48時間もしくは48時間超、少なくとも約3日、4日、5日、6日、7日、もしくは7日超など、または機能的に定義された他の任意の適切な期間(例えば、抗原に結合する抗体に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強、および/もしくは調整するために十分な時間ならびに/または抗体が内部移行されるために十分な時間)である。抗体は、抗原と相互作用できる結合領域(もしくは本明細書において使用され得る結合ドメイン、どちらも同じ意味を有する)、または免疫グロブリン分子の重鎖と軽鎖の両方の可変領域を含む結合領域などを含む。抗体は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および補体系の成分、例えば補体活性化の古典的経路の第1成分であるC1qを含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る、抗体(Ab)の定常領域を含むことができる。
【0016】
本発明において、「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組換えDNA技術など任意の公知の技術によって提供される、抗原に特異的に結合する能力を保持している「抗体断片」または「その断片」(抗原結合断片)を含む。「抗体」という用語は、二重特異性抗体および/またはさらなる改変を有する抗体、例えば、その抗体-薬物コンジュゲートを含む。
【0017】
本発明によって定義される抗体は、本明細書の開示が特に限定されない限り、任意のアイソタイプを有することができる。
【0018】
完全長抗体の断片が抗体の抗原結合機能を果たし得ることが示されている。「抗体」という用語に包含される結合断片の例には、(i)Fab’断片またはFab断片、すなわち軽鎖可変ドメイン(VL)、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖定常領域(CL)ドメイン、および重鎖定常領域ドメイン1(CH1)ドメインからなる一価の断片、またはWO2007/059782に記載されている一価の抗体;(ii)F(ab')2断片、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片;(iii)VHドメインおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv) 抗体の1つのアームのVLドメインおよびVHドメインから本質的になるFv断片;(v) VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov;21(11):484-90)とも呼ばれるdAb断片(Ward et al., Nature 341, 544-546 (1989));(vi)ラクダ科抗体またはナノボディ(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、VL領域およびVH領域が対になって一価の分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)として公知。例えば、Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;5(1):111-24およびBird et al., Science 242, 423-426 (1988)を参照されたい)を形成している単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによってこれらを連結することが、組換え法を用いてできる。そのような単鎖抗体は、別段の注記のない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語に包含される。一般に、このような断片は抗体の意味の範囲に含まれるが、これらの断片は、集合的におよびそれぞれ独立に、本発明の独特な特徴であり、様々な生物学的特性および有用性を示す。本発明におけるこれらおよび他の有用な抗体断片は、本明細書においてさらに考察される。
【0019】
抗体は、様々なインビトロまたはエクスビボの発現系または生産系、例えば、組換えによって改変した宿主細胞、抗体をコードする核酸配列のインビトロでの転写および/または翻訳を助ける細胞抽出物を使用するハイブリドーマまたは系において産生させ、それらから回収することができる。多数の様々な抗体の集団、すなわち、本発明において定義される抗体は、前述の生産系において各抗体を別々に産生させ、かつその後、それらの抗体を混合することによって、または同じ生産系において数種類の抗体を産生させることによって、提供できることを理解すべきである。
【0020】
本明細書において使用される「免疫グロブリン重鎖」または「免疫グロブリンの重鎖」という用語は、免疫グロブリンの重鎖のうちの1つを指すことが意図される。重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)と免疫グロブリンのアイソタイプを定める重鎖定常領域(本明細書においてCHと略される)とから構成される。重鎖定常領域は、典型的には、3種のドメイン、すなわちCH1、CH2、およびCH3から構成される。本明細書において使用される「免疫グロブリン」という用語は、ポリペプチド鎖の2つのペア、すなわち低分子量の軽(L)鎖の1つのペアおよび重(H)鎖の1つのペアからなり、4本の鎖すべてがジスルフィド結合によって場合によっては相互に連結されている、構造的に関係のある糖タンパク質のクラスを指すことが意図される。免疫グロブリンの構造の特徴は、十分に明らかにされている(例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989)を参照されたい)。免疫グロブリンの構造内で、2本の重鎖は、いわゆる「ヒンジ領域」中のジスルフィド結合によって相互に連結されている。重鎖と同様に、各軽鎖は、典型的には、いくつかの領域、すなわち軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、典型的には、1種のドメイン、すなわちCLから構成される。さらに、VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存の程度が高い領域が間に割り込んでいる、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(または構造が明らかにされたループの配列および/もしくは形態が超可変性であり得る超可変性領域)にさらに細分することができる。VHおよびVLはそれぞれ、典型的には、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで次の順序で配列されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0021】
本明細書において使用される場合、「半分子」、「Fabアーム」、および「アーム」という用語は、1つの重鎖-軽鎖ペアを意味する。二重特異性抗体が、第1抗体「に由来する」半分子抗体と第2抗体「に由来する」半分子抗体とを含むと説明される場合、「に由来する」という用語は、その二重特異性抗体が、該第1抗体と該第2抗体のそれぞれに由来する半分子を任意の公知の方法によって組み換えて、結果として生じる二重特異性抗体をもたらすことによって作製されたことを示す。この文脈において、「組み換える」とは、何らかの特定の組換え方法によって限定されることを意図せず、したがって、例えば、半分子交換によって組み換えること、ならびに核酸レベルで組み換えることおよび/または同じ細胞中で2種の半分子を同時発現することを含めて、本明細書において後述する二重特異性抗体を作製するための方法のすべてを含む。
【0022】
本明細書において使用される「抗原結合領域」または「結合領域」という用語は、抗原に結合することができる、抗体の領域を意味する。抗原は、ポリペプチドなどの任意の分子であることができる。抗原は、例えば、細胞、細菌、またはウイルス粒子上で提示され得る。「抗原」および「標的」という用語は、文脈に矛盾しない限り、本発明において同義的に使用されてよい。「抗原結合領域」および「抗原結合部位」という用語は、文脈に矛盾しない限り、本発明において同義的に使用されてよい。
【0023】
「結合を妨害する」もしくは「抗体の結合を妨害すること」または「結合を交差妨害すること」もしくは「結合を交差妨害する」という用語は、特定の抗原に結合した1つの抗体が、同じ抗原への第2抗体の結合を妨げる状況を意味し、逆もまた同様である。他方の抗体がない場合、各抗体は、顕著な結合応答に基づいて判断される、抗原への結合能力を有するのに対し、他方の抗体が存在する場合には、これらの抗体のうちの一方は結合応答を欠く。一方の抗体が別の抗体の結合を妨害する能力は、例えば、本出願の実施例5およびAbdiche et al. (Abdiche YN, Malashock DS, Pinkerton A, Pons J. Exploring blocking assays using Octet, ProteOn, and Biacore biosensors. Anal Biochem. 2009; 386(2): 172-180)によって説明されているように、従来のサンドイッチエピトープビニングアッセイ形式のバイオレイヤー干渉法によって決定することができる。簡単に説明すると、サンドイッチエピトープビニングアッセイでは、溶液中の抗体を、固定した抗体を介して先に捕捉されているその特異的抗原への結合について調べる。本発明において、ある抗体が第2抗体の存在下でも抗原に結合することができる場合、該抗体は第2抗体の結合を妨害せず、逆もまた同様である。「結合を妨害する」および「抗体の結合を妨害すること」ならびに「結合を交差妨害すること」および「結合を交差妨害する」という用語は、文脈に矛盾しない限り、本発明において同義的に使用されてよい。別の抗体の結合を妨害すると表現される抗体は、標的への結合を得るために他の抗体と競合すると表現される場合もある。
【0024】
「KD」(M)という用語は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指し、kdをkaで割ることによって得られる。KDは、「結合親和性」と呼ぶこともできる。
【0025】
「kd」(sec-1)という用語は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値は、koff値またはオフレートとも呼ばれる。
【0026】
「ka」(M-1×sec-1)という用語は、本明細書において使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。この値は、kon値またはオンレートとも呼ばれる。
【0027】
本明細書において使用される「結合すること」という用語は、所定の抗原または標的への抗体の結合を意味し、その際、典型的には、抗体をリガンドとして用い抗原を分析物として用いるバイオレイヤー干渉法によって決定した場合に、1E-6Mもしくはそれ未満、例えば、5E-7Mもしくはそれ未満、1E-7Mもしくはそれ未満、例として5E-8Mもしくはそれ未満、例として1E-8Mもしくはそれ未満、例として5E-9Mもしくはそれ未満、または例として1E-9Mもしくはそれ未満のKDに相当する結合親和性を有し;かつ所定の抗原または近い関係にある抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合の親和性と比べて少なくとも10分の1、例として少なくとも100分の1、例として少なくとも1,000分の1、例として少なくとも10,000分の1、例えば少なくとも100,000分の1であるKDに相当する親和性で、所定の抗原に結合する。
【0028】
本明細書において使用される「B7H4」という用語は、B7H4と呼ばれるタンパク質を意味し、これは、B7-H4、Vセットドメインを含むT細胞活性化阻害物質1、またはVTCN1とも呼ばれる。B7H4は、B7ファミリータンパク質のメンバーであり、このファミリーは、リンパ球上の受容体に結合する細胞表面タンパク質リガンドを含む。B7H4は、短い細胞内ドメインと、疎水性膜貫通ドメインと、4つの保存されたシステイン残基およびN結合型グリコシル化のための7つの部位を有する、IgV様ドメインおよびIgC様ドメインを有する細胞外ドメインとを含む、I型膜貫通型タンパク質である。(Sica et al., 2003, Immunity 18: 849-861)。B7H4タンパク質は、様々な種に由来するものが公知であり、例えば、ヒト(ホモサピエンス(Homo sapiens)) B7H4(Uniprotアクセッション番号Q7Z7D3)、カニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)B7H4転写物1(Uniprotアクセッション番号A0A2K5U6P5)、イヌ(カニス・ファミリアリス)B7H4(Uniprotアクセッション番号F1P8R9)、ウサギ(アナウサギ)B7H4(Uniprotアクセッション番号G1TQE8)、ラット(ドブネズミ)B7H4(Uniprotアクセッション番号Q501W4)、マウス(ハツカネズミ)B7H4(Uniprotアクセッション番号Q7TSP5)、およびブタ(イノシシ)B7H4(Uniprotアクセッション番号F1SAY4)である。列挙したB7H4配列の天然バリアントが存在する場合がある。
【0029】
本明細書において使用される「CD3」という用語は、T細胞補助受容体タンパク質複合体の一部であり、4本の別個の鎖から構成される、ヒト分化クラスター3タンパク質を意味する。CD3は様々な種で発見されており、したがって、「CD3」という用語は、文脈に矛盾しない限り、ヒトCD3に限定されなくてよい。哺乳動物では、複合体は、CD3γ(ガンマ)鎖(ヒトCD3γ鎖 UniProtKB/Swiss-Prot番号P09693、またはカニクイザルCD3γ UniProtKB/Swiss-Prot番号Q95LI7)、CD3δ(デルタ)鎖(ヒトCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot番号P04234、またはカニクイザルCD3δ UniProtKB/Swiss-Prot番号Q95LI8)、2本のCD3ε(イプシロン)鎖(ヒトCD3ε:UniProtKB/Swiss-Prot番号P07766、この配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 13として組み入れられ、SEQ ID NO: 13中のアミノ酸残基1~22はシグナルペプチドに相当し、アミノ酸残基23~207は成熟CD3εポリペプチドに相当する;カニクイザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot番号Q95LI5;またはアカゲザルCD3ε UniProtKB/Swiss-Prot番号G7NCB9)、およびCD3ζ鎖(ゼータ)鎖(ヒトCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot番号P20963、カニクイザルCD3ζ UniProtKB/Swiss-Prot番号Q09TK0)を含む。これらの鎖は、T細胞受容体(TCR)として公知の分子と結合し、Tリンパ球中で活性化シグナルを生じさせる。TCRおよびCD3分子が合わさって、TCR複合体を構成する。
【0030】
「抗体結合領域」という用語は、抗体が結合するエピトープを含む、抗原の領域を意味する。抗体結合領域は、バイオレイヤー干渉法を用いるエピトープビニングによって、アラニンスキャンによって、またはドメインシャッフルアッセイ(抗原の領域が別の種のものと交換されている抗原構築物を用い、抗体が該抗原に依然として結合するか否かを判定する)によって、特定することができる。抗体との相互作用に関与している、抗体結合領域内のアミノ酸は、その抗原に結合している抗体を対象とする水素/重水素交換質量分析法および/または結晶構造解析によって特定することができる。
【0031】
「エピトープ」という用語は、抗体によって特異的に結合される抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸、糖側鎖、またはそれらの組合せなどの分子が表面で集まったものからなり、通常、特殊な三次元構造特徴ならびに特殊な電荷特徴を有している。コンフォメーショナルエピトープおよび非コンフォメーショナルエピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接的に関与しているアミノ酸残基および結合に直接的には関与していない他のアミノ酸残基、例えば、抗体が抗原に結合すると該抗体によって実質的に妨害されるかまたは覆われるアミノ酸残基(言い換えると、これらのアミノ酸残基は、特異的抗体の結合区域に含まれるかまたは近くに隣接している)を含んでよい。
【0032】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、または「mAb」などの用語は、単一の分子組成の抗体分子の調製物を意味し、典型的には、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。典型的には、モノクローナル抗体は、ただ1つの親細胞のクローンのみである同一細胞、例えば、ハイブリドーマまたは安定な細胞株などを用いて作製することができる。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を意味する。ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されたB細胞を含むハイブリドーマによって産生され得、該B細胞は、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックまたは染色体導入された非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られる。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトB細胞またはプラズマ細胞に由来してよい。モノクローナル抗体はまた、組換えによって改変した宿主細胞から、または抗体をコードする核酸配列のインビトロ転写および/もしくは翻訳を助ける細胞抽出物を使用する系から、産生させることもできる。
【0033】
本明細書において使用される「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、もしくはIgM)またはその任意のアロタイプ、例えば、IgG1m(za)およびIgG1m(f))を意味する。さらに、各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)軽鎖またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせることができる。
【0034】
本明細書において使用される場合、「完全長抗体」という用語は、重鎖および軽鎖の1つのペアまたは重鎖および軽鎖の2つの異なるペアを含む抗体(例えば、親抗体またはバリアント抗体)を意味し、各ペアは、そのアイソタイプの野生型抗体の重鎖-軽鎖ペア中に通常は見出されるような重鎖および軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインを含む。完全長バリアント抗体では、重鎖および軽鎖の定常ドメインおよび可変ドメインは、特に、完全長の親抗体または野生型抗体と比べた場合に抗体の機能特性を改変および/または改良するアミノ酸置換を含んでよい。本発明による完全長抗体は、(i)完全な重鎖配列および軽鎖配列を含む1つまたは複数の適切なベクターにCDR配列をクローニングする段階、ならびに(ii)適切な発現系において、重鎖配列および軽鎖配列を有する得られた適切なベクターを発現させる段階を含む方法によって作製することができる。CDR配列または完全な可変領域配列のいずれかから始める場合に完全長抗体を作製することは、当業者の知識の範囲内である。したがって、当業者は、本発明に従って完全長抗体を生成する方法を知っている。
【0035】
本明細書において使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメインと、ヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を有するように改変された非ヒト可変ドメインとを含む、遺伝子的に操作された非ヒト抗体を意味する。これは、一緒になって抗原結合部位を形成する非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を、同属のヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)に接ぎ合わせることによって実現することができる(概して、WO92/22653およびEP0629240を参照されたい)。親抗体の結合親和性および特異性を完全に復元するために、親抗体(すなわち非ヒト抗体)に由来するフレームワーク残基でヒトフレームワーク領域を置き換えること(復帰変異)が必要とされる場合がある。構造ホモロジーモデリングが、抗体の結合特性にとって重要であるフレームワーク領域中のアミノ酸残基を特定するのに役立つ場合がある。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、非ヒトアミノ酸配列への1つまたは複数のアミノ酸復帰変異を任意で含む主にヒト由来のフレームワーク領域、および全面的にヒト由来の定常領域を含み得る。任意で、必ずしも復帰変異ではない付加的なアミノ酸改変を適用して、好ましい特徴を有するヒト化抗体を得てよく、該好ましい特徴の例は、例えば、アミド分解を回避するため、「不活性なFc領域」を提供するため、および/または製造性を向上させるための改変を含むための、特定の有用な親和性および生化学的特性である。
【0036】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域およびフレームワーク領域、ならびにヒト免疫グロブリン定常ドメインに由来する定常ドメインを有する抗体を含むと意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的な変異誘発またはインビボでの体細胞変異によって導入される、変異、挿入、または欠失)を含んでよい。「ヒト抗体」は、ヒト、本明細書の実施例で説明するようなトランスジェニック動物、またはHISマウスなどにおいてヒト生殖系列免疫グロブリン配列から作製された、VH配列およびVL配列を組み入れることができる。このようなVH配列およびVL配列は、例えば、ヒト免疫グロブリン定常ドメインに由来する定常ドメインに融合された、ヒトVH配列およびヒトVL配列とみなされる。
【0037】
したがって、「ヒト抗体」は、操作された抗体であってよい。「ヒト抗体」は、例えば、アミド分解を回避するため、「不活性なFc領域」を提供するため、二重特異性抗体の生成を可能にするため、および/または製造性を向上させるための改変を含む、さらなる操作に供されていてもよい。ヒト抗体はまた、非ヒト細胞、例えばCHO細胞などにおいて作製されてもよい。しかし、「ヒト抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、マウスなど別の非ヒト種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に接ぎ合わされた抗体を含むことは意図されない。
【0038】
本明細書において使用される「Fc領域」という用語は、抗体の2本の重鎖のN末端からC末端の方向に、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含む領域を意味する。抗体のFc領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および補体系の成分を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0039】
本明細書において使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を意味する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、KabatによるKabat, E.A. et al., Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662,680,689 (1991)で説明されているEu番号付与に基づくアミノ酸216~230に対応する。しかし、ヒンジ領域は、本明細書において説明される他のサブタイプのうちのいずれかであってもよい。
【0040】
本明細書において使用される「CH1領域」または「CH1ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH1領域を意味する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH1領域は、Kabat(前掲書)で説明されているEu番号付与に基づくアミノ酸118~215に対応する。しかし、CH1領域はまた、本明細書において説明される他のサブタイプのうちのいずれかであってもよい。
【0041】
本明細書において使用される「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を意味する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、Kabat(前掲書)で説明されているEu番号付与に基づくアミノ酸231~340に対応する。しかし、CH2領域はまた、本明細書において説明される他のサブタイプのうちのいずれかであってもよい。
【0042】
本明細書において使用される「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を意味する。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、Kabat(前掲書)で説明されているEu番号付与に基づくアミノ酸341~447に対応する。しかし、CH3領域はまた、本明細書において説明される他のサブタイプのうちのいずれかであってもよい。
【0043】
「Fcを介したエフェクター機能」という用語は、本明細書において使用される場合、ポリペプチドまたは抗体が細胞膜上のその標的または抗原に結合した結果として生じる機能を意味すると意図され、ここで、このFcを介したエフェクター機能は、ポリペプチドまたは抗体のFc領域に帰すことができる。Fcを介したエフェクター機能の例には、(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(iii)補体依存性細胞障害性(CDC)、(iv)抗体依存性細胞媒介性細胞障害性(ADCC)、(v)Fc-γ受容体(FcgR)結合、(vi)抗体依存性の、FcγRを介した抗原架橋、(vii)抗体依存性細胞貪食(ADCP)、(viii)補体依存性細胞性細胞障害性(CDCC)、(ix)補体によって増強される細胞障害性、(x)オプソニン化した抗体によって媒介される、該抗体の補体受容体への結合、(xi)オプソニン化、および(xii)(i)~(xi)のいずれかの組合せが含まれる。
【0044】
本明細書において使用される「不活性」、「不活性な」、または「非活性化」という用語は、少なくとも、いかなるFcγRにも結合できないか、Fcを介したFcγR架橋を誘導できないか、もしくは個々の抗体の2つのFc領域を媒介とするFcγRを介した標的抗原の架橋を誘導できないか、またはC1qに結合することができない、Fc領域を意味する。その例は、本明細書において説明する定常ドメイン内部でのFEA置換である。抗体のFc領域の不活性は、単一特異性形態または二重特異性形態の抗体を用いて試験することができる。
【0045】
「完全長」という用語は、抗体との関連で使用される場合、その抗体が断片ではなく、天然において特定のアイソタイプについて通常は見出されるような、そのアイソタイプと対応するドメインすべて、例えば、IgG1抗体の場合にはVHドメイン、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、ヒンジドメイン、VLドメイン、およびCLドメインを含むことを示す。
【0046】
「一価抗体」という用語は、本発明において、ただ1つの抗原結合ドメイン(例えば、1つのFabアーム)を用いて抗原と相互作用できる抗体分子を意味する。二重特異性抗体という文脈において、「一価の抗体結合」とは、ただ1つの抗原結合ドメイン(例えば、1つのFabアーム)を用いる、1つの抗原への二重特異性抗体の結合を意味する。
【0047】
本発明における「単一特異性抗体」という用語は、1つの抗原、1つのエピトープのみへの結合特異性を有する抗体を意味する。抗体は、単一特異性の一価抗体(すなわち、ただ1つの抗原結合領域を有する)または単一特異性の二価抗体(例えば、2つの同一の抗原結合領域を有する抗体)であってよい。
【0048】
「二重特異性抗体」という用語は、異なるエピトープに結合する2つの抗原結合ドメイン、例えば、VH領域およびVL領域の2つの非同一ペア、2つの非同一Fabアーム、または非同一CDR領域を有する2つのFabアームを有する抗体を意味する。本発明において、二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する特異性を有する。このようなエピトープは、同じまたは異なる抗原上または標的上に存在してよい。異なる抗原上にエピトープが存在する場合、これらの抗原は、同じ細胞または異なる細胞、細胞型、もしくは構造体、例えば、細胞外マトリックスもしくは小胞および可溶性タンパク質の表面に存在してよい。したがって、二重特異性抗体は、複数の抗原、例えば2つの異なる細胞を架橋することができる場合がある。
【0049】
「二価抗体」という用語は、2つの同じ抗原上の2つの同じエピトープに結合するか、または同じもしくは異なる抗原上の2つの異なるエピトープに結合する、2つの抗原結合領域を有する抗体を意味する。したがって、二価抗体は、単一特異性抗体または二重特異性抗体であってよい。
【0050】
「アミノ酸」および「アミノ酸残基」という用語は、本明細書において同義的に使用されてよく、限定的であると理解されるべきではない。アミノ酸は、各アミノ酸に固有の側鎖(R基)と共に、アミン(-NH2)官能基およびカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物である。本発明において、アミノ酸は、構造および化学的特徴に基づいて分類され得る。したがって、アミノ酸のクラスは、下記の表の一方または両方に表すことができる。
【0051】
(表2)R基の構造および一般的な化学的特徴付けに基づく主な分類
【0052】
(表3)代替的な、アミノ酸残基の物理的および機能的分類
【0053】
あるアミノ酸の、別のアミノ酸への置換は、保存的置換または非保存的置換に分類され得る。本発明において、「保存的置換」は、同様の構造的特徴および/または化学的特徴を有する別のアミノ酸による、あるアミノ酸の置換、例えば、あるアミノ酸残基の、上記の2つの表のいずれかで定義される同じクラスの別のアミノ酸残基への置換である:例えば、ロイシンとイソロイシンはどちらも脂肪族の分枝疎水性物質であるため、ロイシンはイソロイシンで置換され得る。同様に、アスパラギン酸とグルタミン酸はどちらも小型の負に荷電した残基であるため、アスパラギン酸はグルタミン酸で置換され得る。
【0054】
本発明において、抗体における置換は、元のアミノ酸-位置-置換アミノ酸として示される。アミノ酸についての十分に認識されている命名法に関しては、コード「Xaa」または「X」を含む、3文字記号または1文字記号が、任意のアミノ酸残基を示すために使用される。したがって、XaaまたはXは、典型的には、20種の天然アミノ酸のいずれかを表す。本明細書において使用される「天然の」という用語は、以下のアミノ酸残基のうちのいずれか1つを指す:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、メチオニン、およびシステイン。
【0055】
したがって、記号「K409R」または「Lys409Arg」は、その抗体が、アミノ酸409位にアルギニンによるリジンの置換を含むことを意味する。所与の位置のアミノ酸の、他の任意のアミノ酸への置換は、元のアミノ酸-位置、または例えば「K409」と呼ばれる。元のアミノ酸および/または置換アミノ酸が、すべてではないが複数のアミノ酸を含み得る改変の場合、複数のアミノ酸は「,」または「/」によって隔てられてよい。例えば、アルギニン、アラニン、またはフェニルアラニンによる409位のリジンの置換は、「Lys409Arg,Ala,Phe」もしくは「Lys409Arg/Ala/Phe」または「K409R,A,F」もしくは「K409R/A/F」もしくは「R、A、またはFへのK409」である。このような記号表示は、本発明において同義的に使用されてよく、同じ意味および目的を有し得る。
【0056】
さらに、「置換」という用語は、任意の1つの天然アミノ酸もしくは他の19種の天然アミノ酸、または非天然アミノ酸などの他のアミノ酸への置換を包含する。例えば、409位のアミノ酸Kの置換は、以下の各置換を含む:409A、409C、409D、409E、409F、409G、409H、409I、409L、409M、409N、409Q、409R、409S、409T、409V、409W、409P、および409Y。話は変わるが、これは、記号表示409Xと同等であり、ここで、Xは、元のアミノ酸以外の任意のアミノ酸を表す。これらの置換はまた、K409A,K409Cなど、またはK409A,Cなど、またはK409A/C/などと表されてもよい。類推により、同じことが、本明細書において言及する各位置およびすべての位置に当てはまり、このような置換のいずれか1つを本明細書において具体的に含む。
【0057】
本発明による抗体はまた、アミノ酸残基の欠失も含んでよい。このような欠失は、「del」と表記されてよく、例えば、K409delと書くことを含む。したがって、このような態様の場合、アミノ酸配列から409位のリジンが欠失していた。
【0058】
「宿主細胞」という用語は、本明細書において使用される場合、発現ベクターなどの核酸が導入された細胞を意味すると意図される。このような用語は、特定の対象細胞だけを意味することが意図されるのではなく、そのような細胞の子孫も含み得ることを理解すべきである。いくつかの改変が、変異または環境の影響のいずれかの理由から、後続の世代において生じる場合があるため、このような子孫は、実際は、親細胞と同一でない場合があるが、それでもなお、本明細書において使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞には、例えば、CHO細胞、HEK-293細胞、Expi293F細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、およびリンパ球細胞などのトランスフェクトーマ、ならびに大腸菌(E. coli)などの原核細胞、ならびに植物細胞および真菌などの他の真核宿主が含まれる。
【0059】
「トランスフェクトーマ」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体または標的抗原を発現する組換え真核宿主細胞、例えば、CHO細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、HEK-293細胞、Expi293F細胞、植物細胞、または酵母細胞を含む真菌が含まれる。
【0060】
本発明の目的において、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン5.0.0以降のEMBOSSパッケージ(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)のNeedleプログラムで実行されるようなNeedleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)を用いて、参照される配列の全長にわたって決定される。使用されるパラメーターは、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換行列である。(-nobriefオプションを用いて得られる)「最長同一性」と名付けられたNeedleの出力は、同一性パーセントとして使用され、以下のように計算される:
(同一の残基×100)/(アライメントの全長-アライメント中のギャップ総数)
【0061】
類似残基の保持は、同様にまたは代わりに、類似性スコアを用いて決定することもでき、これは、BLASTプラグラム(例えば、標準設定BLOSUM62、オープンギャップ=11、および伸長ギャップ=1を用いる、NCBIから入手可能なBLAST 2.2.8)を用いて決定される。典型的には、適切なバリアントは、親配列または参照される配列に対して少なくとも約45%、例えば、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれより高い(例えば約99%)の類似性を示す。
【0062】
本明細書において使用される「内部移行される」または「内部移行」という用語は、本発明による抗体などの分子が細胞膜によって包み込まれ、細胞の内部へと導き入れられる生物学的プロセスを意味する。内部移行はまた、「エンドサイトーシス」と呼ばれる場合もある。
【0063】
CD3×B7H4を標的とする二重特異性抗体を含む薬学的組成物および単位剤形
第1の局面において、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物または単位剤形が提供され、ここで、該抗原結合領域は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該抗原結合領域は、ヒト可変領域および/またはヒト化可変領域である。例えば、一方の抗原結合領域が、ヒト重鎖可変領域およびヒト軽鎖可変領域を含んでよく、かつ他方の抗原結合領域が、ヒト化重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を含んでよい。あるいは、両方の抗原結合領域が、ヒト重鎖可変領域およびヒト軽鎖可変領域を含んでよく、または両方の抗原結合領域が、ヒト化重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を含んでよい。したがって、これに応じて、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物または単位剤形が提供され、ここで、該抗原結合領域は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、ヒトフレームワーク領域を含む。ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む、本明細書において説明される本発明による抗体はまた、本明細書において、例えばCD3×B7H4抗体と呼ばれる場合もある。
【0064】
このような抗体は、好ましくは、二重特異性抗体である。さらなる態様において、前述のこのような抗体は、例えば実施例で説明するように、がん細胞およびT細胞に結合することができる。選択され得るがん細胞は、ヒトB7H4を発現するがん細胞である、かつ/または固形腫瘍に由来するがん細胞である。このような抗体は、好ましくは、がん細胞のT細胞媒介性細胞死滅を誘導することができる。
【0065】
結合できるということは、実施例で示すように、以下のことを含むと理解される。すなわち、結合アッセイにおいて、抗体がその標的に結合することであり、これは、例えば、本明細書の図3および図4に示されるような典型的な結合曲線によって、または実施例3および実施例4において示されるように例えばバイオレイヤー干渉法を用いて結合親和性を決定することにより、示される。指定された標的に結合できない抗原結合領域は、例えば、その標的に対して検出不可能な結合親和性を有し、例えば、実施例3に示すような典型的なバイオレイヤー干渉法アッセイで使用される最高濃度において応答が0.05nmを下回る。いずれにしても、当業者は、抗原結合領域がその標的に結合できるか否かを判定する方法をよく知っている。
【0066】
第1の局面において、本発明は、
a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む、抗体であって、該抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されている、かつ/またはヒト由来である、該抗体、ならびに
b)緩衝剤
を含む薬学的組成物であって、
pHが4.0~8.0である、
該薬学的組成物に関する。
【0067】
pHは4.5~6.5であることが好ましい。好ましい態様において、組成物のpHは5.0~6.5である。特に好ましい態様において、組成物のpHは5.0~6.0である。これらのpH範囲は、抗体の特に高い安定性、特に熱安定性をもたらすことが見出されている。また、本発明のpH範囲において、薬学的組成物は、抗体の高度の溶解性も提供する。
【0068】
好ましい態様において、緩衝剤は、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0069】
好ましい態様において、薬学的組成物は、c)非イオン性賦形剤をさらに含む。
【0070】
好ましい態様において、非イオン性賦形剤は、糖または糖アルコールである。
【0071】
ある態様において、非イオン性賦形剤は、ソルビトール、スクロース、またはそれらの混合物より選択される。好ましい態様において、非イオン性賦形剤は、ソルビトールである。
【0072】
好ましい態様において、非イオン性賦形剤は、100~300mM、例えば125~250mM、好ましくは250mMの濃度で存在する。好ましい態様において、非イオン性賦形剤はソルビトールであり、125~250mM、好ましくは250mMの濃度で存在する。
【0073】
好ましい態様において、薬学的組成物は、d)界面活性剤をさらに含む。
【0074】
いくつかの態様において、界面活性剤は、モノオレイン酸グリセロール、塩化ベンゼトニウム、ドクサートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびトリカプリリン、塩化ベンザルコニウム、シトリミド(citrimide)、塩化セチルピリジニウムおよびリン脂質、αトコフェノール、モノオレイン酸グリセロール、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン(sorbintan)脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステラレート(sterarates)、ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステルスクロースパルミタート、ステアリン酸スクロース、トリカプリリンおよびTPGS、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。
【0075】
ある態様において、界面活性剤は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80である。好ましい態様において、界面活性剤は、ポリソルベート80である。
【0076】
好ましい態様において、界面活性剤は、約0.005%~0.4%w/v、例えば約0.01~0.1%w/v、例えば約0.01~0.09%w/v、例えば約0.01~0.06%w/v、例えば約0.01~0.05%w/v、例えば0.02%w/vまたは0.03%w/vまたは0.04%w/vまたは0.05%w/v、好ましくは0.02%w/vの濃度で存在する。好ましい態様において、界面活性剤はポリソルベート80であり、薬学的製剤中に0.02%w/v~0.04%w/vで存在する。好ましくは、濃度は0.02%w/vである。
【0077】
好ましい態様において、抗体の濃度は、0.5~100mg/ml、例えば1.0~50mg/ml、または例えば5~30mg/ml、例えば、5mg/ml、または6mg/ml、または7mg/ml、または8mg/ml、または9mg/ml、または10mg/ml、または11mg/ml、または12mg/ml、または13mg/ml、または14mg/ml、または15mg/ml、または16mg/ml、または17mg/ml、または18mg/ml、または19mg/ml、または20mg/ml、または21mg/ml、または22mg/ml、または23mg/ml、または24mg/ml、または25mg/ml、または26mg/ml、または27mg/ml、または28mg/ml、または29mg/ml、30mg/ml、31mg/ml、32mg/ml、33mg/ml、34mg/ml、35mg/ml、36mg/ml、37mg/ml、38mg/ml、39mg/ml、40mg/ml、41mg/ml、42mg/ml、43mg/ml、44mg/ml、45mg/ml、46mg/ml、47mg/ml、48mg/ml、49mg/ml、50mg/ml、51mg/ml、52mg/ml、53mg/ml、54mg/ml、55mg/ml、56mg/ml、57mg/ml、58mg/ml、59mg/ml、または例えば60mg/mlである。最も好ましい濃度は、10~20mg/ml、例えば20mg/mlである。しかし、抗体は、10mg/mlで存在してもよい。別の態様において、抗体は15mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は25mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は30mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は35mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は40mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は45mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は50mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は55mg/mlで存在する。別の態様において、抗体は60mg/mlで存在する。
【0078】
好ましい態様において、緩衝剤は、5~40mM、例えば10~30mM、好ましくは20mMの濃度で存在する。好ましい態様において、バッファーは、pH5.1~5.3、例えばpH5.2の20mMグルタマートである。さらに別の好ましい態様において、バッファーは、pH5.7~5.9、例えばpH5.8の20mMヒスチジンである。
【0079】
好ましい態様において、薬学的組成物は、液体組成物である。好ましい態様において、薬学的組成物は、水性組成物である。
【0080】
好ましい態様において、薬学的組成物は、
a)5~50mg/mlの抗体、好ましくは5~25mg/mlの抗体、最も好ましくは10~20mg/mlの抗体、
b)10~20mMグルタマート、好ましくは15~20mMグルタマート、最も好ましくは20mMグルタマート、
c)150~350mMソルビトール、好ましくは200~300mMソルビトール、最も好ましくは250mMソルビトール、
d)ポリソルベート、好ましくはポリソルベート80、最も好ましくは0.02%w/vポリソルベート80
を含み、
ここで、該組成物のpHは5.0~6.0、好ましくは5.1~5.3である。
【0081】
好ましい態様において、薬学的組成物は、a)10~20mg/mlの抗体、b)20mMグルタマート、c)250mMソルビトール、d)0.02%w/vポリソルベート80を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが5.1~5.3である、該薬学的組成物、である。
【0082】
別の好ましい態様において、薬学的組成物は、a)10~20mg/mlの抗体、b)20mMヒスチジン、c)250mMソルビトール、d)0.02%w/vポリソルベート80を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが5.7~5.9である、該薬学的組成物、である。
【0083】
別の態様において、組成物は、静脈内用組成物であり、および/または該組成物は、静脈内投与において使用するためのものである。
【0084】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は重鎖可変領域(VH)を含み、CDR1はSEQ ID NO: 18に記載のものであり、CDR2はSEQ ID NO: 19に記載のものであり、およびCDR3はSEQ ID NO: 21に記載のものである。
【0085】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は軽鎖可変領域(VL)を含み、CDR1はSEQ ID NO: 23に記載のものであり、CDR2はGTNであり、およびCDR3はSEQ ID NO: 24に記載のものである。
【0086】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該B7H4に結合できる抗原結合領域は可変重鎖(VH)領域を含み、CDR1はSEQ ID NO: 26に記載のものであり、CDR2はSEQ ID NO: 30に記載のものであり、およびCDR3はSEQ ID NO: 28に記載のものである。
【0087】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該B7H4に結合できる抗原結合領域は軽鎖可変領域(VL)を含み、CDR1はSEQ ID NO: 34に記載のものであり、CDR2はGASであり、およびCDR3はSEQ ID NO: 35に記載のものである。
【0088】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
重鎖可変領域(VH)であって、CDR1がSEQ ID NO: 18に記載のものであり、CDR2がSEQ ID NO: 19に記載のものであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 21に記載のものである、該重鎖可変領域(VH)、ならびに
軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1がSEQ ID NO: 23に記載のものであり、CDR2がGTNであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 24に記載のものである、該軽鎖可変領域(VL)
を含み、
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
可変重鎖(VH)領域であって、CDR1がSEQ ID NO: 26に記載のものであり、CDR2がSEQ ID NO: 30に記載のものであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 28に記載のものである、該可変重鎖(VH)領域、ならびに
軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1がSEQ ID NO: 34に記載のものであり、CDR2がGASであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 35に記載のものである、該軽鎖可変領域(VL)
を含む。
【0089】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)
を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖(VL)領域
を含み、ここで、該CDR領域は、IMGTに従って番号を付与されてよい。
【0090】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)領域
を含む。
【0091】
好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつSEQ ID NO: 60のアミノ酸配列を含む定常重鎖領域(CH)およびSEQ ID NO: 64のアミノ酸配列を含む定常軽鎖領域(CL)をさらに含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29のアミノ酸配列を含む可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33のアミノ酸配列を含む可変軽鎖(VL)領域を含み、かつSEQ ID NO: 61のアミノ酸配列を含む定常重鎖領域(CH)およびSEQ ID NO: 63のアミノ酸配列を含む定常軽鎖領域(CL)をさらに含む。
【0092】
特に好ましい態様において、薬学的製剤の抗体は、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはそのバイオシミラーである。
【0093】
本発明はまた、医薬として使用するための、例えば、疾患の治療のための方法において使用するための、本明細書において定義される薬学的組成物にも関する。好ましい態様において、疾患はがんである。好ましい態様において、がんは、がん細胞におけるB7H4の発現を特徴とする。好ましくは、該B7H4の発現は、患者から得られたがん細胞において決定される。
【0094】
好ましい態様において、がんは固形腫瘍である。好ましくは、がんは、肺がん、NSCLC(ADCまたはSQCC)、胃がん、膵臓がん、胆管がん、膀胱がん、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、および子宮がんからなる群より選択される。
【0095】
別の局面において、本発明は、疾患を治療する方法であって、その必要のある対象に、本明細書において定義される薬学的組成物を投与する段階を含む、該方法に関する。好ましい態様において、該方法は、がんを治療するためのものである。いくつかの態様において、がんは、子宮がん肉腫(UCS)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、膵臓腺がん(PAAD)、肺扁平上皮がん(LUSC)、浸潤性乳がん(BRCA)、子宮体子宮内膜がん(UCEC)、卵巣漿液性嚢胞腺がん(OV)、および胆管がん(CHOL)からなる群より選択される。
【0096】
別の局面において、本発明は、対象においてがんを治療する方法であって、その必要のある対象に、該がんを治療するのに十分な期間、本発明の薬学的組成物を投与する段階を含む、該方法に関する。いくつかの実施態様において、該組成物は、静脈内投与される。
【0097】
別の局面において、本発明は、静脈内投与のための、本発明の薬学的組成物の使用に関する。好ましい態様において、使用は、がんを治療するためのものである。
【0098】
別の局面において、本発明は、
a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体であって、該抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されている、かつ/またはヒト由来である、5pg~120mgの量の、該抗体、ならびに
b)好ましくは、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される、緩衝剤、
を含む単位剤形であって、
pHが、4.0~8.0、好ましくは4.5~6.5、より好ましくは5.0~6.0である、
該単位剤形に関する。
【0099】
好ましくは、抗体の量は、40pg~8gである。いくつかの態様において、抗体の量は、40pg~60mg、例えば、40pg、50pg、100pg、150、160pg、170pg、180pg、190pg、200pg、250pg、300pg、350pg、400pg、450pg、500pg、600pg、700pg、800pg、900pg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、26mg、27mg、28mg、29mg、30mg、31mg、32mg、33mg、34mg、35mg、36mg、37mg、38mg、39mg、40mg、41mg、42mg、43mg、44mg、45mg、46mg、47mg、48mg、49mg、50mg、51mg、52mg、53mg、54mg、55mg、56mg、57mg、58mg、59mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1050mg、1100mg、1150mg、1200mg、1250mg、1300mg、1350mg、1400mg、1500mg、2000mg、3000mg、4000mg、5000mg、6000mg、または例えば7000mgである。
【0100】
別の好ましい態様において、単位剤形の総体積は20ml~200mlであり、該剤形は静脈内投与用である。
【0101】
好ましい態様において、単位剤形は、非イオン性賦形剤、好ましくは糖または糖アルコールを含む。好ましくは、非イオン性賦形剤は、ソルビトール、スクロース、またはそれらの混合物より選択される。有利な態様において、非イオン性賦形剤は、100~300mM、例えば125~250mM、好ましくは250mMの濃度で存在する。
【0102】
単位剤形がd)界面活性剤をさらに含むことが、好ましい。いくつかの態様において、界面活性剤は、モノオレイン酸グリセロール、塩化ベンゼトニウム、ドクサートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびトリカプリリン、塩化ベンザルコニウム、シトリミド、塩化セチルピリジニウムおよびリン脂質、αトコフェノール、モノオレイン酸グリセロール、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステラレート、ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステルスクロースパルミタート、ステアリン酸スクロース、トリカプリリンおよびTPGS、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。好ましい態様において、界面活性剤は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80、最も好ましくはポリソルベート80である。好ましい態様において、界面活性剤は、約0.005%~0.4%w/v、例えば約0.01~0.1%w/v、例えば約0.01~0.09%w/v、例えば約0.01~0.06%w/v、例えば約0.01~0.05%w/v、例えば0.02%w/vまたは0.03%w/vまたは0.04%w/vまたは0.05%w/v、好ましくは0.02%w/vの濃度で存在する。
【0103】
好ましい態様において、単位剤形中の抗体の濃度は、0.5~100mg/ml、例えば1.0~50mg/mlまたは例えば5~30mg/mlであり、例えば、5mg/ml、または6mg/ml、または7mg/ml、または8mg/ml、または9mg/ml、または10mg/ml、または11mg/ml、または12mg/ml、または13mg/ml、または14mg/ml、または15mg/ml、または16mg/ml、または17mg/ml、または18mg/ml、または19mg/ml、または20mg/ml、または21mg/ml、または22mg/ml、または23mg/ml、または24mg/ml、または25mg/ml、または26mg/ml、または27mg/ml、または28mg/ml、または29mg/ml、30mg/ml、31mg/ml、32mg/ml、33mg/ml、34mg/ml、35mg/ml、36mg/ml、37mg/ml、38mg/ml、39mg/ml、40mg/ml、41mg/ml、42mg/ml、43mg/ml、44mg/ml、45mg/ml、46mg/ml、47mg/ml、48mg/ml、49mg/ml、50mg/ml、51mg/ml、52mg/ml、53mg/ml、54mg/ml、55mg/ml、56mg/ml、57mg/ml、58mg/ml、59mg/ml、または例えば60mg/mlである。
【0104】
好ましい態様において、緩衝剤は、5~40mM、例えば10~30mM、好ましくは20mMの濃度で、単位剤形中に存在する。
【0105】
好ましい態様において、単位剤形は、液体単位剤形である。
【0106】
別の局面において、本発明は、対象においてがんを治療する方法であって、その必要のある対象に、該がんを治療するのに十分な期間、本発明の単位剤形を投与する段階を含む、該方法に関する。別の局面において、本発明は、がんの治療において使用するための本発明の単位剤形に関する。
【0107】
さらに別の局面において、本発明は、本発明の単位剤形または本発明の薬学的組成物を含む容器に関する。容器は、ガラスまたは1種もしくは複数種のポリマー材料でできていてよい。
【0108】
別の態様において、本発明は、
a)本発明の薬学的組成物または本発明のいずれかの単位剤形、b)該薬学的組成物または該単位剤形のための入れ物、ならびにc)希釈および/または使用のための説明書
を含む、キットオブパーツに関する。
【0109】
別の局面において、本発明は、
a)本発明の薬学的組成物または本発明のいずれかの単位剤形、b)希釈剤、c)該単位剤形のための入れ物、ならびにd)希釈および/または使用のための説明書
を含む、キットオブパーツに関する。
【0110】
別の局面において、本発明はキットオブパーツ、例えば、コンパニオン診断薬として使用するための/本明細書において定義される薬学的組成物を用いる治療に応答する性質を有している患者を患者集団内で同定するための、キットであって、本明細書において定義される薬学的組成物と、該キットを使用するための取扱説明書とを含む、該キットに関する。
【0111】
別の局面において、本発明は、本明細書において定義される薬学的組成物を調製する方法であって、a)0.5~120mg/mlの抗体およびb)緩衝剤を注射用水中で混合する段階、ならびにpHを4.0~8.0、好ましくは5.0~6.0に調整する段階を含む、該方法に関する。
【0112】
別の局面において、本発明は、本明細書において定義される単位剤形を調製する方法であって、
a)薬学的組成物を調製する前述の方法の段階によって、薬学的組成物を調製する段階、または本明細書において定義される薬学的組成物を提供する段階、b)希釈剤を提供する段階、およびc)所望の抗体濃度になるように、該薬学的組成物と該希釈剤を混合する段階
を含む、該方法に関する。
【0113】
別の局面において、本発明は、前述の方法のいずれかによって得ることが可能である、薬学的組成物または単位剤形に関する。
【0114】
二重特異性形態
本発明は、B7H4発現腫瘍細胞のT細胞媒介性死滅を効率的に促進する二重特異性CD3×B7H4抗体を含む、薬学的組成物または単位投与形態を提供する。個々の用途のために望ましい機能的特性に応じて、本発明によって提供される一連の抗体または抗原結合領域から、特定の抗原結合領域を選択することができる。二重特異性抗体の多くの様々な形態および用途が当技術分野において公知であり、Kontermann; Drug Discov Today, 2015 Jul;20(7):838-47およびMAbs, 2012 Mar-Apr;4(2):182-97に概説がある。本発明による二重特異性抗体は、任意の特定の二重特異性形態にもそれを作製する方法にも限定されなくてよい。
【0115】
本発明において使用され得る二重特異性抗体分子の例には、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一の抗体;(ii)例えば、追加されたペプチドリンカーによって縦に並んで連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する、単鎖抗体;(iii)各軽鎖および重鎖が、短いペプチド結合によって縦に並んだ2つの可変ドメインを含む、二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-IgTM) Molecule, In: Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010));(iv)化学的に結合させた二重特異性(Fab’)2断片;(v)各標的抗原に対して2つの結合部位を有する四価の二重特異性抗体を生じる、2つの単鎖ダイアボディの融合物である、Tandab;(vi)多価分子を生じる、scFvとダイアボディの組合せである、フレキシボディ;(vii)Fabに添加された場合に、異なるFab断片に連結された2つの同一のFab断片からなる三価の二重特異性結合タンパク質を生じることができる、プロテインキナーゼAにおける「二量体形成およびドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドックアンドロック」分子;(viii)例えば、ヒトFabアームの両方の末端に融合された2つのscFvを含む、いわゆるスコーピオン分子;ならびに(ix)ダイアボディが含まれる。
【0116】
1つの態様において、本発明の二重特異性抗体は、DuoBody(登録商標)としても知られる(WO2011131746 (Genmab)に記載されているような)管理されたFabアーム交換によって得られるダイアボディ、クロスボディ、または二重特異性抗体である。
【0117】
様々なクラスの二重特異性抗体の例には、(i)ヘテロ二量体化を強いる相補的CH3ドメインを有するIgG様分子;(ii)分子の2つの側面が、少なくとも2種の異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部分をそれぞれ含む、組換えIgG様デュアルターゲティング分子;(iii)完全長IgG抗体が、追加されたFab断片またはFab断片の一部分に融合されている、IgG融合分子;(iv)単鎖Fv分子または安定化されたダイアボディが、重鎖の定常ドメイン、Fc領域、またはそれらの一部分に融合されている、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が、一緒になるように融合され、重鎖の定常ドメイン、Fc領域、またはそれらの一部分に融合されている、Fab融合分子;ならびに(vi)異なる単鎖Fv分子もしくは異なるダイアボディまたは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が、互いに、または重鎖定常ドメイン、Fc領域、もしくはそれらの一部分に融合された別のタンパク質もしくは担体分子に融合されている、ScFvをベースとする抗体およびダイアボディをベースとする抗体ならびに重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0118】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例には、Triomab/クアドローマ分子(Trion Pharma/Fresenius Biotech; Roche、WO2011069104)、いわゆるノブイントゥーホール分子(Genentech、WO9850431)、CrossMAb(Roche、WO2011117329)および静電気的に組み合わせた分子(Amgen、EP1870459およびWO2009089004; Chugai、US201000155133; Oncomed、WO2010129304)、LUZ-Y分子(Genentech、Wranik et al. J. Biol. Chem. 2012, 287(52): 43331-9, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIGボディ分子およびPIGボディ分子(Pharmabcine、WO2010134666、WO2014081202)、鎖交換操作されたドメインボディ(SEEDbody)分子(EMD Serono、WO2007110205)、Biclonics分子(Merus、WO2013157953)、FcΔAdp分子(Regeneron、WO201015792)、二重特異性のIgG1分子およびIgG2分子(Pfizer/Rinat、WO11143545)、Azymetric骨格分子(Zymeworks/Merck、WO2012058768)、mAb-Fv分子(Xencor、WO2011028952)、二価の二重特異性抗体(WO2009080254)、ならびにDuoBody(登録商標)分子(Genmab A/S、WO2011131746)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0119】
組換えIgG様デュアルターゲティング分子の例には、デュアルターゲティング(DT)-Ig分子(WO2009058383)、ツーインワン抗体(Genentech; Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、架橋Mab(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star、WO2008003116)、ザイボディ分子(Zyngenia; LaFleur et al. MAbs. 2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通の軽鎖を用いるアプローチ(Crucell/Merus, US7,262,028)、κλボディ(NovImmune、WO2012023053)、およびCovXボディ(CovX/Pfizer; Doppalapudi, V.R., et al 2007. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17, 501-506.)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0120】
IgG融合分子の例には、二重可変ドメイン(DVD)-Ig分子(Abbott、US7,612,181)、二重ドメインダブルヘッド抗体(Unilever; Sanofi Aventis、WO20100226923)、IgG様二重特異性分子(ImClone/Eli Lilly、Lewis etal. Nat Biotechnol. 2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ; Dimasi et al. J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92)、ならびにBsAb分子(Zymogenetics、WO2010111625)、HERCULES分子(Biogen Idec、US007951918)、scFv融合分子(Novartis)、scFv融合分子(Changzhou Adam Biotech Inc、CN 102250246)、およびTvAb分子(Roche、WO2012025525、WO2012025530)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0121】
Fc融合分子の例には、ScFv/Fc融合物(Pearce et al., Biochem Mol Biol Int. 1997 Sep;42(6):1179-88)、SCORPION分子(Emergent BioSolutions/Trubion、Blankenship JW, et al. AACR 100th Annual meeting 2009 (Abstract # 5465); Zymogenetics/BMS、WO2010111625)、二重親和性リターゲティング技術(Fc-DART)分子(MacroGenics、WO2008157379、WO2010080538)、およびデュアル(ScFv)2-Fab分子(抗体医薬の国立調査センター(中国))が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0122】
Fab融合二重特異性抗体の例には、F(ab)2分子(Medarex/AMGEN; Deo et al J Immunol. 1998 Feb 15;160(4):1677-86.)、二重作用分子またはビス-Fab分子(Genentech, Bostrom, et al 2009. Science 323, 1610-1614.)、ドックアンドロック(DNL)分子(ImmunoMedics、WO2003074569、WO2005004809)、二価二重特異性分子(Biotecnol, Schoonjans, J Immunol. 2000 Dec 15;165(12):7050-7.)、およびFab-Fv分子(UCB-Celltech、WO 2009040562 A1)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0123】
ScFvをベースとする抗体、ダイアボディをベースとする抗体、およびドメイン抗体の例には、二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子(Micromet、WO2005061547)、タンデムダイアボディ分子(TandAb)(Affimed) Le Gall et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4):357-66.)、二重親和性リターゲティング技術(DART)分子(MacroGenics、WO2008157379、WO2010080538)、単鎖ダイアボディ分子(Lawrence, FEBS Lett. 1998 Apr 3;425(3):479-84)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics)、ヒト血清アルブミンScFv融合物(Merrimack、WO2010059315)、ならびにCOMBODY分子(Epigen Biotech、Zhu et al. Immunol Cell Biol. 2010 Aug;88(6):667-75.)、デュアルターゲティングナノボディ(Ablynx、Hmila et al., FASEB J. 2010)およびデュアルターゲティング重鎖のみのドメイン抗体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0124】
本発明の組成物に用いられる二重特異性抗体は、任意のアイソタイプのものであることができる。例示的なアイソタイプには、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4アイソタイプのいずれかが含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましくは、二重特異性抗体は、実施例において示すようにヒトIgG1アイソタイプのものになるように選択され得る。ヒト軽鎖定常領域のいずれか、すなわちカッパまたはラムダが使用され得る。1つの態様において、本発明の抗体の重鎖はどちらも、IgG1アイソタイプのものである。1つの態様において、二重特異性抗体の2本の重鎖は、それぞれIgG1アイソタイプおよびIgG4アイソタイプのものである。好ましくは、二重特異性抗体は、実施例において示すようにヒトIgG1アイソタイプのものになるように選択され得る。任意で、かつ好ましくは、選択されたアイソタイプの重鎖およびそのFc配列を、本明細書において説明するようにヒンジ領域および/またはCH3領域において改変して、二重特異性抗体の作製を可能にし、不活性を導入してもよい。
【0125】
1つの局面において、本発明の二重特異性抗体は、第1のCH3領域を含む第1のFc配列を有する第1の重鎖と、第2のCH3領域を含む第2のFc配列を有する第2の重鎖とを含むFc領域を含み、その際、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域とのヘテロ二量体相互作用が、該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列である。これらの相互作用およびそれらを実現できる方法に関するより詳細な内容は、参照により本明細書に組み入れられるWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)において提供されている。
【0126】
本明細書においてさらに説明するように、2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖からそれぞれが構成され、CH3領域中にごく少数のかなり保存的な(非対称的)変異を各抗体が含む、1つのB7H4抗体および1つのCD3抗体に基づいて、安定な二重特異性CD3×B7H4抗体を高収率で得ることができる。非対称的変異とは、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一ではない位置に1つまたは複数のアミノ酸置換を含むことを意味する。
【0127】
CD3に結合できる抗原結合領域
前述のとおり、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体の薬学的組成物または単位投与形態を提供する。さらに、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体の薬学的組成物であって、該CD3に結合できる抗原結合領域が、ヒトCD3ε(イプシロン)、例えば、SEQ ID NO: 13に指定されるヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる、抗体を提供する。このような抗原結合領域は、初代ヒトT細胞などのT細胞上に提示されるヒトCD3ε(イプシロン)に結合することができる。
【0128】
本発明による前記抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体であって、該CD3に結合する抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 16またはSEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに任意で、
SEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、抗体であってよい。
【0129】
CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域は、当技術分野において公知の方法を用いて、可変重鎖領域および可変軽鎖領域から特定することができる。可変重鎖領域および可変軽鎖領域に由来するCDR領域は、IMGTに従ってアノテートすることができる(Lefranc MP. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999およびBrochet X. Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008)を参照されたい)。したがって、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体であって、該CD3に結合する抗原結合領域が、
それぞれSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 20、またはSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 21のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む、重鎖可変領域(VH);ならびに任意で、
それぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む、該抗体もまた開示される。
【0130】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体であって、該CD3に結合する抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 16の配列、またはSEQ ID NO: 16の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);および任意で
SEQ ID NO: 22の配列、またはSEQ ID NO: 22の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む、該抗体もさらに開示される。
【0131】
ヒトCD3に結合できるこのような抗原結合領域は、概してWO2015001085およびWO2017009442で説明されている。ヒトCD3に結合できる別の抗原結合領域が、参照により本明細書に組み入れられるWO2015001085およびWO2017009442において開示され説明されており、本発明に従って抗体を作製するための基礎要素としてさらに企図され役立つことができる。
【0132】
本発明による前記抗体は、1~1000nMの範囲内である、ヒトCD3に結合する抗原結合領域とヒトCD3との平衡解離定数KDで、結合することができる。
【0133】
本発明による前記抗体は、1~100nMの範囲内、例えば5~100nMの範囲内、10~100nMの範囲内、1~80nMの範囲内、1~60nMの範囲内、1~40nMの範囲内、1~20nMの範囲内、5~80nMの範囲内、5~60nMの範囲内、5~40nMの範囲内、5~20nMの範囲内、10~80nMの範囲内、10~60nMの範囲内、10~40nMの範囲内、または10~20nMの範囲内である、ヒトCD3に結合する抗原結合領域とヒトCD3との平衡解離定数KDで、結合することができる。例示的かつ適切な抗原結合領域は、SEQ ID NO: 16の重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22の軽鎖可変領域(VL)領域を含む。このような可変領域は、概してWO2015001085において説明されていた。
【0134】
本発明の別の局面において、前記抗体は、SEQ ID NO: 16に示すVH配列およびSEQ ID NO: 22に示すVL配列を含む抗原結合領域を有する抗体よりも、ヒトCD3εに対する結合親和性が低く、好ましくは、該親和性は、少なくとも5分の1、例えば少なくとも10分の1、例えば少なくとも20分の1、少なくとも30分の1、少なくとも40分の1、少なくとも45分の1、または例えば少なくとも50分の1である。
【0135】
本発明の別の局面において、前記抗体は、200~1000nMの範囲内、例えば300~1000nMの範囲内、400~1000nMの範囲内、500~1000nMの範囲内、300~900nMの範囲内、400~900nMの範囲内、400~700nMの範囲内、500~900nMの範囲内、500~800nMの範囲内、500~700nMの範囲内、600~1000nMの範囲内、600~900nMの範囲内、600~800nMの範囲内、または例えば600~700nMの範囲内である、ヒトCD3に結合する抗原結合領域とヒトCD3抗原との平衡解離定数KDで、結合することができる。例示的かつ適切な抗原結合領域は、SEQ ID NO: 16またはSEQ ID NO: 17の重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22の軽鎖可変領域(VL)領域を含む。このような可変領域は、概してWO2017009442において説明されていた。
【0136】
結合親和性は、本明細書の実施例4において任意で説明するように、バイオレイヤー干渉法によって決定することができる。したがって、本明細書において定義されるヒトCD3に対する結合親和性を有する、本発明による抗体は、バイオレイヤー干渉法を用いて決定される結合親和性を有してよく、該バイオレイヤー干渉法は、以下の段階を含む:
I)1μg/mLの量の抗体を抗ヒトIgG Fc捕捉バイオセンサー上で600秒間、固定する段階;
II)1.40nM~1000nMの範囲の3倍希釈系列を用いて、ヒト組換え可溶性CD3ε(CD3E27-GSKa)(SEQ ID NO: 13の成熟タンパク質)の、1000秒の期間における結合および2000秒の期間における解離を決定する段階;
III)データを緩衝液対照(0nM)と関係づける段階。
【0137】
さらに、結合親和性は、単一特異性の二価抗体、例えば、完全長IgG1である抗体などの抗体を用いて決定してもよい。
【0138】
したがって、さらなる態様において、本発明による抗体は、
CD3に結合する抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む、本明細書において定義される重鎖可変(VH)領域を含み、該重鎖可変(VH)領域が、SEQ ID NO: 16に示される配列を含む重鎖可変(VH)領域と比べた場合、T31、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、これらの位置はSEQ ID NO: 16の配列に基づいて番号付与されており;かつ
野生型軽鎖可変(VL)領域が、それぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24に示されるCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む、
抗体である。
【0139】
具体的には、本発明による抗体は、CD3に結合する抗原結合領域が、本明細書において定義される重鎖可変(VH)領域中に、T31M、T31P、N57E、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、Y114Vからなる群より選択される置換を含む、抗体である。
【0140】
さらに、本発明による抗体は、CD3に結合する抗原結合領域が、アミノ酸31位にMもしくはP、またはアミノ酸57位にE、またはアミノ酸101位にGもしくはN、またはアミノ酸105位にP、またはアミノ酸110位にAもしくはG、またはアミノ酸114位にM、R、もしくはVを有する、本明細書において定義される重鎖可変領域を含み、該位置が、SEQ ID NO: 16に示される配列を有する重鎖可変(VH)領域のアミノ酸位置番号付与に対応している、抗体である。
【0141】
さらにまた、本発明による抗体は、本明細書において定義されるCD3に結合する抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2、およびCDR3が、SEQ ID NO: 16の配列のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べた場合に、合計で、多くとも1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換が、好ましくは、上記で定めたアミノ酸置換を含む、抗体である。
【0142】
抗体を含む薬学的製剤であって、該抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む、該薬学的製剤がさらに開示され、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、以下を含む:
SEQ ID NO: 17の配列、またはSEQ ID NO: 17の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);および任意で
SEQ ID NO: 22の配列、またはSEQ ID NO: 22の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)。
【0143】
B7H4に結合できる抗原結合領域
具体的には、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物または単位剤形であって、該ヒトB7H4がSEQ ID NO: 1のヒトB7H4である、該薬学的組成物または該単位剤形を提供する。好ましくは、本発明による抗体は、SEQ ID NO: 13に指定されるヒトCD3ε(イプシロン)に結合できる抗原結合領域と、SEQ ID NO: 1のヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とを含む。
【0144】
具体的には、本発明の組成物において使用される抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、ヒトB7H4の細胞外ドメインに結合することができる、抗体である。好ましくは、B7H4は、細胞、より好ましくはヒト細胞上で発現される。
【0145】
さらなる態様において、本発明の組成物において使用される抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、ヒトB7H4のIgC様定常領域に結合することができる、抗体である。別のさらなる態様において、本発明による抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、B7H3-IgV/B7H4-IgCに結合することができる、抗体である。B7H3-IgV/B7H4-IgCとは、B7H3 IgV様ドメインがB7H4 IgC様ドメインと融合している、ヒトB7H3とヒトB7H4の融合物を表し、これはSEQ ID NO: 11に対応している。B7H3-IgV/B7H4-IgCは、本明細書において実施例7で説明するような細胞によって発現される。さらに別のさらなる態様において、本発明による抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、B7H4-IgV/B7H3-IgCに結合できない、抗体である。B7H4-IgV/B7H3-IgCとは、B7H4 IgV様ドメインがB7H3 IgC様ドメインと融合している、ヒトB7H3とヒトB7H4の融合物を表し、これはSEQ ID NO: 10に対応している。B7H4-IgV/B7H3-IgCは、本明細書において実施例7で説明するような細胞によって発現される。
【0146】
本明細書において説明するように本発明に従って企図される、ヒトB7H4に結合できる適切な抗原結合領域は、以下を含む:
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 40のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 47のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 54のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 69のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域。
【0147】
好ましい態様において、本発明の薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を含み、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域を含む。
【0148】
CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域は、当技術分野において公知の方法を用いて、可変重鎖領域および可変軽鎖領域から特定することができる。可変重鎖領域および可変軽鎖領域に由来するCDR領域は、IMGTに従ってアノテートすることができる(Lefranc MP. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999およびBrochet X. Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008)を参照されたい)。したがって、本明細書において説明するように本発明に従って企図される、ヒトB7H4に結合できる適切な抗原結合領域は、以下を含む:
a)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
b)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
c)それぞれSEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、およびSEQ ID NO: 39のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 41、DTS、およびSEQ ID NO: 42のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 48、YTS、およびSEQ ID NO: 49のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)それぞれSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、およびSEQ ID NO: 53のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 55、GAS、およびSEQ ID NO: 56のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;または
f)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
g)それぞれSEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、およびSEQ ID NO: 68のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 70、GAS、およびSEQ ID NO: 71のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域。
【0149】
好ましい態様において、本発明の薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を含み、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域を含む。
【0150】
本明細書において説明するように本発明に従って企図される、ヒトB7H4に結合できるさらに別の適切な抗原結合領域は、以下を含む:
a)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域。
【0151】
好ましい態様において、本発明の薬学的製剤の抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を含み、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む。
【0152】
任意で、B7H4に結合する抗原結合領域は、以下の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域(VH)を含む:
a)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域。
【0153】
好ましい態様において、B7H4に結合する抗原結合領域は、SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域(VH)を含む。
【0154】
本発明による該抗体は、5E-7Mまたはそれより小さい、例えば1E-7Mまたはそれより小さいKD値に相当する結合親和性をヒトB7H4に対して有する、B7H4に結合できる抗原結合領域を有してよく、例えば、結合親和性は、5E-7~2E-10Mの範囲内、例えば、2E-7~1E-10Mまたは1E-7~5E-9Mの範囲内であるKD値に相当する。
【0155】
結合親和性は、本明細書の実施例3において任意で説明するように、バイオレイヤー干渉法によって決定することができる。したがって、本明細書において定義されるヒトB7H4に対する結合親和性を有する、本発明による抗体は、バイオレイヤー干渉法を用いて決定される結合親和性を有してよく、該バイオレイヤー干渉法は、以下の段階を含む:
I)1μg/mLの量の抗体を抗ヒトIgG Fc捕捉バイオセンサー上で600秒間、固定する段階;
II)1.56nM~100nMの範囲の2倍希釈系列を用いて、ヒト組換えHisタグ化B7H4タンパク質(Sino Biologicalカタログ番号10738-H08H;ヒトVTCN1(Uniprotアクセッション番号Q7Z7D3)(Phe29~Ala258)をコードするDNA配列の構築物から発現される、C末端にポリヒスチジンタグを有するタンパク質)の、300秒の期間における結合および1000秒の期間における解離を決定する段階;
III)データを緩衝液対照(0nM)と関係づける段階。
【0156】
さらに、結合親和性は、単一特異性の二価抗体、例えば、完全長IgG1である抗体などの抗体を用いて決定してもよい。
【0157】
さらなる態様において、ヒトB7H4に結合できる抗原領域を含む本発明による抗体が提供され、
ここで、抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域を含む抗体
を交差妨害することができ、かつ
該抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域を含む抗体;
SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域を含む抗体
を交差妨害することができない。
【0158】
さらに別の態様において、本発明による抗体は、ヒトB7H4に結合できる抗原領域を含み、
抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域を含む抗体;
SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域を含む抗体
を交差妨害することができ、かつ
該抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域を含む抗体
を含む抗体を交差妨害することができない。
【0159】
具体的には、「交差妨害」または本発明による抗体がB7H4への別の抗体の結合を妨害する能力は、B7H4に結合した第1抗体が、第1抗体に結合したB7H4への第2抗体の結合を妨害する能力と定義される。交差妨害は、実施例5で説明するアッセイを用いて、決定することができる。このような交差妨害はまた、例えば、以下の段階を含む手順で決定することもできる:
i)B7H4に結合する抗体を各試料が含む、試料のセットを提供する段階;
ii)該試料のセットに由来する20μg/mLの量の第1抗体をアミン反応性第2世代バイオセンサー(AR2G)上で600秒間、固定する段階;
iii)固定された抗体を有するARG2バイオセンサーにヒトB7H4(100nMのヒト組換えHisタグ化B7H4タンパク質(Sino Biologicalカタログ番号10738-H08H;ヒトVTCN1(Uniprotアクセッション番号Q7Z7D3)(Phe29~Ala258)をコードするDNA配列の構築物から発現される、C末端にポリヒスチジンタグを有するタンパク質)を添加する段階;
iv)該試料のセットに由来する10μg/mLの量の第2抗体について300秒間の結合を決定する段階。
【0160】
第2抗体が結合できない場合、第1抗体は第2抗体を交差妨害するとみなされる。当業者は、ある抗体が標的への別の抗体の結合を交差妨害する能力を決定するために適切な技術に精通していると考えられ、本出願は、結合の妨害および置き換えを決定するために適した手順を開示する。さらなる態様において、本明細書において説明する交差妨害は、実施例5で説明するように決定される。
【0161】
さらなる態様において、本発明による抗体は、前述の交差妨害特徴を備える、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を有し、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、B7H3-IgV/B7H4-IgC(SEQ ID NO: 11)に結合することができ、かつ任意で、B7H4-IgV/B7H3-IgC(SEQ ID NO: 10)に結合することができない。
【0162】
CD3抗原結合領域およびB7H4抗原結合領域の組合せ
本開示は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物または単位投与形態をさらに提供し、
ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 16のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 40のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 47のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 54のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 69のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む。
【0163】
やはりまた、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域は、当技術分野において公知の方法を用いて、可変重鎖領域および可変軽鎖領域から特定することができる。可変重鎖領域および可変軽鎖領域に由来するCDR領域は、IMGTに従ってアノテートすることができる(Lefranc MP. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999およびBrochet X. Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008)を参照されたい)。好ましい態様において、本発明の可変重鎖領域および可変軽鎖領域に由来するCDR領域は、IMGTに従ってアノテートされる。
【0164】
本開示は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形をさらに提供し、ここで、該CD3に結合できる抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 40のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 47のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 54のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 69のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む。
【0165】
好ましい態様において、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形を提供し、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む。
【0166】
また、本開示は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形をさらに提供し、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
それぞれSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 20のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);ならびにそれぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
a)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
b)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
c)それぞれSEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、およびSEQ ID NO: 39のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 41、DTS、およびSEQ ID NO: 42のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 48、YTS、およびSEQ ID NO: 49のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)それぞれSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、およびSEQ ID NO: 53のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 55、GAS、およびSEQ ID NO: 56のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;または
f)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
g)それぞれSEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、およびSEQ ID NO: 68のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 70、GAS、およびSEQ ID NO: 71のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域
を含む。
【0167】
本開示は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形をさらに提供し、ここで、該CD3に結合できる抗原結合領域は、
それぞれSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 21のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);ならびにそれぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
a)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
b)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
c)それぞれSEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、およびSEQ ID NO: 39のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 41、DTS、およびSEQ ID NO: 42のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 48、YTS、およびSEQ ID NO: 49のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)それぞれSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、およびSEQ ID NO: 53のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 55、GAS、およびSEQ ID NO: 56のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;または
f)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
g)それぞれSEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、およびSEQ ID NO: 68のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 70、GAS、およびSEQ ID NO: 71のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域
を含む。
【0168】
好ましい態様において、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形を提供し、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
それぞれSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 21のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);ならびにそれぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域を含む。
【0169】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形がさらに開示され、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 16の配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
a)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域
を有する重鎖可変領域および軽鎖可変領域(VH)を含む、B7H4に結合する抗原結合領域を含む。
【0170】
ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形がさらにまた開示され、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17の配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
a)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域
を有する、抗原に結合する重鎖可変領域および軽鎖可変領域(VH)を含む。
【0171】
好ましい態様において、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体を含む、薬学的組成物および単位剤形を提供し、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 17の配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22の配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域は、
SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む。
【0172】
さらなる態様において、このような二重特異性抗体では、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖はVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖はVL領域およびカッパ軽鎖定常領域を含み;かつヒトCD3に結合できる抗原結合領域は、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖はVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖はVL領域およびラムダ軽鎖定常領域を含む。より好ましくは、このようなCD3×B7H4二重特異性抗体では、一方のIgG1重鎖定常領域はSEQ ID NO: 60に定義されるとおりであり、かつ他方はSEQ ID NO: 61に定義されるとおりであり、かつカッパ軽鎖定常領域はSEQ ID NO: 63に定義されるとおりであり、かつラムダ軽鎖定常領域はSEQ ID NO: 64に定義されるとおりである。任意で、SEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 61に定義されるIgG1重鎖定常領域の末端リジンを欠失させることが可能であることが理解される。
【0173】
したがって、本発明の好ましい態様において、単位剤形の薬学的製剤のCD3×B7H4二重特異性抗体は、
CD3結合領域であって、
SEQ ID NO: 17の配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 22の配列を含む軽鎖可変領域(VL)、ならびにさらに、SEQ ID NO: 60に定義されるIgG1重鎖定常領域およびSEQ ID NO: 64に定義されるラムダ軽鎖定常領域を含む、該CD3結合領域と、
B7H4結合領域であって、
SEQ ID NO: 29の配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO: 33の配列を含む軽鎖可変領域(VL)、ならびにさらに、SEQ ID NO: 61に定義されるIgG1重鎖定常領域およびSEQ ID NO: 63に定義されるカッパ軽鎖定常領域を含む、該B7H4結合領域と、
を含み、
ここで、任意で、SEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 61に定義される該IgG1重鎖定常領域は、末端リジンが欠失していてよい。
【0174】
当業者に周知であるように、抗体の各抗原結合領域は、一般に、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ各可変領域は、3つのCDR配列、すなわち、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつ4つのフレームワーク配列、すなわち、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み得る。抗体の各抗原結合領域は、一般に、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み得、かつ各可変領域は、3つのCDR配列、すなわち、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3を含み、かつ4つのヒトフレームワーク配列、すなわち、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含み得る。好ましくは、この構造は、本発明による抗体中にも見出される。さらに、本発明による抗体は、2つの重鎖定常領域(CH)および2つの軽鎖定常領域(CL)を含み得る。定常領域の例は、概してSEQ ID NO: 57~64において提供される。
【0175】
特定の態様において、本発明の薬学的組成物または単位投与形態に用いられる抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖、例えば、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域をそれぞれが含む第1の重鎖および第2の重鎖を含む。安定なヘテロ二量体抗体は、CH3領域にごく少数の非対称的変異を含む2つのホモ二量体出発タンパク質に基づいて、例えば、WO 2008/119353およびWO 2011/131746において提供されるようないわゆるFabアーム交換によって高収率で得ることができる。したがって、本発明のいくつかの態様において、抗体は、ヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されている、第1の重鎖と、ヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されている、第2の重鎖とを含み、ここで、該第1の重鎖および該第2の重鎖についての置換は、同じ位置に存在せず、かつこれらのアミノ酸位置は、EU番号付与に基づいて番号付与されている。例えば、このような置換を有する定常ドメインは、概してSEQ ID NO: 58およびSEQ ID NO: 62において提供されており、このような置換を有していないSEQ ID NO: 57と比較することができる。
【0176】
本明細書において使用される「位置に対応するアミノ酸」という用語は、ヒトIgG1重鎖中のアミノ酸位置番号を意味する。他の免疫グロブリン中の対応するアミノ酸位置は、ヒトIgG1とのアライメントによって見つけることができる。別段の記載がない限り、または文脈と矛盾しない限り、定常領域配列のアミノ酸は、(Kabat, E.A. et al., 1991, Sequences of proteins of immunological interest. 5th Edition - US Department of Health and Human Services, NIH publication No. 91-3242, pp 662, 680, 689に記載されている)EUインデックス番号付与に従って本明細書において番号付与されている。したがって、別の配列中のアミノ酸またはセグメント「に対応する」ある配列中のアミノ酸またはセグメントとは、ALIGN、ClustalW、または類似物などの標準的な配列アライメントプログラムを典型的には既定の設定で用いた場合に他方のアミノ酸またはセグメントとアラインし、ヒトIgG1重鎖に対して少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の同一性を有するものである。配列または配列中のセグメントをアラインし、それによって本発明によるアミノ酸位置に対する配列中の対応位置を決定する方法は、当技術分野において周知であるとみなされている。
【0177】
特定の態様において、本発明は、抗体の薬学的組成物または単位投与形態を提供し、該抗体は、ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置のアミノ酸が、第1の重鎖においてRであり、かつヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置のアミノ酸が、第2の重鎖においてLであるか、またはその逆である。
【0178】
いくつかの態様において、本発明による抗体は、抗原結合領域に加えて、2つの重鎖のFc配列を有するFc領域も含む。第1のFc配列および第2のFc配列はそれぞれ、任意のヒトアイソタイプを含む、任意のアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgD、IgM、もしくはIgAアイソタイプ、または混合アイソタイプのものであってよい。好ましくは、Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプ、または混合アイソタイプ、例えばヒトIgG1アイソタイプである。いくつかの態様において、本発明による抗体は、完全長抗体であることが好ましく、最も好ましくは、IgG1タイプのものである。
【0179】
本発明による抗体は、該抗体を不活性抗体または非活性化抗体に変える改変をFc領域中に含んでよい。したがって、本明細書において開示される抗体において、改変されていない第1の重鎖および第2の重鎖を含むこと以外は同一である抗体と比べて低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を該抗体が誘導するように、一方または両方の重鎖を改変することができる。Fcを介したエフェクター機能は、Fcγ受容体に結合することによるか、C1qに結合することによるか、またはFcを介したFcγR架橋の誘導による、T細胞におけるFcを介したCD69発現(すなわち、CD3抗体を介したFcγ受容体依存性のCD3架橋の結果としてのCD69発現)を決定することによって評価することができる。具体的には、Fcを介したCD69発現が、野生型(未改変)抗体と比べて少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%減少するように重鎖定常配列を改変することができ、ここで、該Fcを介したCD69発現は、例えば、WO2015001085の実施例3に記載されているように、PBMCを用いる機能アッセイにおいて決定される。重鎖定常配列および軽鎖定常配列の改変はまた、該抗体へのC1qの結合の減少ももたらし得る。この減少は、未改変抗体と比べて、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または100%である場合があり、C1q結合はELISAによって決定することができる。さらに、未改変抗体と比べて、Fcを介したT細胞増殖の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも99%、または100%の減少を抗体がもたらすようにFc領域を改変することもでき、ここで、T細胞増殖は、PBMCを用いる機能アッセイで決定される。
【0180】
Fcを介したエフェクター機能をなくすためにIgG1アイソタイプ抗体の定常重鎖領域にアミノ酸置換およびその組合せが導入された、広範囲の様々な非活性化抗体形態が開発されている(例えば、Chiu et al., Antibodies 2019 Dec; 8(4): 55; Liu et al., Antibodies, 2020 Nov 17;9(4):64; 29(10):457-66; Shields et al., J Biol Chem,. 2001 Mar 2;276(9):6591-604)。
【0181】
例えばIgG1アイソタイプ抗体中の、改変することができるアミノ酸位置の例には、位置L234およびL235が含まれる。したがって、本発明による抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EU番号付与に基づくヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸残基が、それぞれFおよびEである、第1の重鎖および第2の重鎖を含んでよい。アミノ酸位置L234およびL235の改変に加えて、さらに別の位置を改変してもよいことが理解される。
【0182】
さらに、D265Aアミノ酸置換によって、すべてのFcγ受容体への結合を減らし、ADCCを防止することができる(Shields et al., 2001, J. Biol. Chem. (276):6591-604)。したがって、本発明による抗体は、第1の重鎖および第2の重鎖の両方において、EU番号付与に基づくヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置にあるアミノ酸残基がAである、第1の重鎖および第2の重鎖を含んでよい。本発明のさらなる態様は、第1の重鎖および第2の重鎖の少なくとも1つ、例えば両方において、ヒトIgG1重鎖中の位置L234、L235、およびD265に対応する位置のアミノ酸が、それぞれF、E、およびAである、抗体を提供する。本出願において、3つのアミノ酸置換L234F、L235E、およびD265Aの組合せ、ならびにそれに加えて、本明細書において上記に開示したK409R変異またはF405L変異を有する抗体は、それぞれ接尾辞「FEAR」または「FEAL」を付けて呼ぶことができる。
【0183】
野生型IgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 57として特定される。上記に開示した態様と一致して、本発明の抗体は、F405L置換を有するIgG1重鎖定常領域を含んでよく、かつSEQ ID NO: 58に示されるアミノ酸配列および/またはK409R置換を有するIgG1重鎖定常領域を有してよく、かつSEQ ID NO: 62に示されるアミノ酸配列を有してよい。
【0184】
L234F、L235E、およびD265A置換を有するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 59として特定される。L234F、L235E、D265A、およびF405L置換を有するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 60として特定される。L234F、L235E、D265A、およびK409R置換を有するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 61として特定される。
【0185】
SEQ ID NO: 57~62に挙げられる定常領域配列では、末端リジン(K)を記載しており、このような配列を本明細書の実施例のセクションで使用した。このリジンの起源は、これらのFc領域の由来元であるヒトで見出される天然配列である。細胞培養による組換え抗体生産の間に、内因性カルボキシペプチダーゼによるタンパク質分解によってこの末端リジンを切断することができ、その結果、同じ配列を有するがC末端リジンを欠く定常領域が生じる。抗体を製造する目的のために、リジンを含まない抗体が生産されるように、この末端リジンをコードするDNAを配列から取り除くことができる。例えば、CHOを用いる生産系で生産される抗体を用いる場合、末端リジンのプロセシングの程度が高いことが典型的であるため、末端リジンをコードするかまたはコードしないかいずれかの核酸配列から生産される抗体は、配列および機能の点では実質的に同一である(Dick, L.W. et al. Biotechnol. Bioeng. 2008;100: 1132-1143)。したがって、本明細書において挙げられるような末端リジンをコードもせず、有しもしない、本発明による抗体を作製できることが理解される。したがって、製造目的のために、末端リジンを有していない抗体を作製することができる。
【0186】
本発明は、抗体の薬学的組成物または単位投与形態をさらに提供し、該抗体は、
a)B7H4に結合できる抗原結合領域がヒト由来であり、かつ
b)CD3に結合できる抗原結合領域がヒト化されている。
【0187】
また、本発明は、抗体の薬学的組成物または単位投与形態をさらに提供し、該抗体は、
a)B7H4に結合できる抗原結合領域がヒト由来である、かつ/または
CD3に結合できる抗原結合領域がヒト化されている。
【0188】
本発明のいくつかの態様において、抗体は、カッパ(κ)軽鎖を含む。本発明の特定の態様の配列は二重特異性抗体に関係し、カッパ軽鎖は、上記に開示したB7H4抗体軽鎖のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む。
【0189】
本発明のさらなる態様において、抗体は、ラムダ(λ)軽鎖を含む。二重特異性抗体に関する本発明の特定の態様において、ラムダ軽鎖は、上記に開示したCD3抗体軽鎖のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列、特に、上記に開示した、CD3に対して低下した親和性を有するCD3抗体のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む。カッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 63として含まれ、ラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 64として含まれる。
【0190】
特定の態様において、抗体は、ラムダ(λ)軽鎖およびカッパ(κ)軽鎖を含み、例えば、CD3に結合できる結合領域を含む重鎖およびラムダ軽鎖と、B7H4に結合できる結合領域を含む重鎖およびカッパ軽鎖とを有する、抗体である。
【0191】
したがって、さらなる態様において、本明細書において定義される二重特異性抗体では、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖はVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖はVL領域およびカッパ軽鎖定常領域を含み;かつヒトCD3に結合できる抗原結合領域は、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖はVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖はVL領域およびラムダ軽鎖定常領域を含む。より好ましくは、前記二重特異性抗体では、一方のIgG1重鎖定常領域はSEQ ID NO: 60に定義されるとおりであり、かつ他方はSEQ ID NO: 61に定義されるとおりであり、かつカッパ軽鎖定常領域はSEQ ID NO: 63に定義されるとおりであり、かつラムダ軽鎖定常領域はSEQ ID NO: 64に定義されるとおりである。SEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 61に定義されるIgG1重鎖定常領域は、末端リジンが欠失していてよいことが理解される。
【0192】
結合、細胞障害性、およびT細胞活性化
ヒトCD3およびヒトB7H4に結合できる、本明細書において説明される抗体、例えば二重特異性抗体は、ヒトB7H4発現がん細胞にT細胞を有利に導き、それによってT細胞媒介性のがん細胞死滅を誘導することができる。実施例のセクションで示すように、低下したFc機能性または不活性なFc機能性をこのような抗体において有することにより、B7H4発現レベルが様々である広範囲のがんに対して効果的でありながら、安全かつ有効かつ能力が十分な抗体をヒト患者に投与することができる。
【0193】
前述したように、好ましくは、本発明による抗体は、Fcを介したエフェクター機能を欠いているか、またはFcを介したエフェクター機能が低下しており、かつさらに、該抗体は、
a)本明細書の実施例9および10で説明するように、B7H4発現ヒト腫瘍細胞に結合することができ、
b)本明細書の実施例11および12で説明するように分析される場合、例えば、精製したPBMCもしくはT細胞をエフェクター細胞として用いるときに、B7H4発現ヒト腫瘍細胞に対する濃度依存性細胞障害性を媒介することができ、
c)本明細書の実施例11および12で説明するように分析される場合、例えば、精製したPBMCもしくはT細胞をエフェクター細胞として用いるときに、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択される1種もしくは複数種のヒトB7H4発現腫瘍細胞株の濃度依存性細胞障害性を媒介することができ、
d)例えば、本明細書の実施例13で説明するように分析される場合、B7H4発現ヒト腫瘍細胞の存在下でT細胞をインビトロで活性化することができ、
e)例えば、本明細書の実施例13で説明するように分析される場合、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択される1種もしくは複数種のB7H4発現ヒト腫瘍細胞株の存在下でT細胞をインビトロで活性化することができ、
f)例えば、本明細書の実施例11および12で説明するように分析される場合、B7H4発現ヒト腫瘍細胞の細胞障害性を誘導することができ、かつ/または
g)例えば、本明細書の実施例11および実施例12で説明するように分析される場合、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択される1種もしくは複数種のB7H4発現ヒト腫瘍細胞株においてT細胞媒介性細胞障害性を誘導することができる。
【0194】
さらに、本発明による抗体は、Fcを介したエフェクター機能を欠いている場合があるか、またはFcを介したエフェクター機能が低下している場合があり、かつさらに、T細胞媒介性の細胞障害性抗体を誘導することができ、ここで、細胞障害性は、以下の段階を含むインビトロIC50アッセイで評価される:
i)健常ヒトドナーのバフィーコートから単離した末梢血単核細胞(PBMC)または精製したT細胞を提供する段階;
ii)MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択されるB7H4発現腫瘍細胞、例えばヒトB7H4発現腫瘍細胞株を提供する段階;
iii)PBMCまたは精製したT細胞を、B7H4発現腫瘍細胞の複数の試料と混合する段階であって、該PBMCに由来するT細胞または該精製したT細胞と選択された腫瘍細胞との数の比が8:1である、段階;
iv)選択されたヒトB7H4発現腫瘍細胞について、例えば0.0128ng/mL~10,000ng/mLの範囲の希釈系列の抗体を前記試料に供給する段階;ならびに
v)段階iv)で得られた試料を、例えば37℃で72時間インキュベーションする段階;ならびに続いて、
vi)B7H4発現腫瘍細胞の生存能力を評価する段階;
vii)各希釈試料について生細胞のパーセンテージを決定する段階;ならびに
viii)IC50を決定する段階。
【0195】
単離した末梢血単核細胞(PBMC)の代わりに、精製したT細胞を段階i)で提供してもよい。
【0196】
したがって、抗体は、0.001~2μg/mlの範囲のIC50を有してよく、ここで、IC50は、以下の段階を含むインビトロ細胞障害性アッセイにおいて決定される:
i)健常ヒトドナーのバフィーコートから単離した末梢血単核細胞(PBMC)を提供する段階;
ii)MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、およびHCC1954からなる群より選択されるB7H4発現腫瘍細胞、例えばヒトB7H4発現腫瘍細胞株を提供する段階;
iii)PBMCを、B7H4発現腫瘍細胞の複数の試料と混合する段階であって、該PBMCに由来するT細胞と選択された腫瘍細胞との数の比が8:1である、段階;
iv)選択されたヒトB7H4発現腫瘍細胞について、例えば0.0128ng/mL~10,000ng/mLの範囲の希釈系列の抗体を前記試料に供給する段階;ならびに
v)段階iv)で得られた試料を、例えば37℃で72時間インキュベーションする段階;ならびに続いて、
vi)B7H4発現腫瘍細胞の生存能力を評価する段階;
vii)各希釈試料について生細胞のパーセンテージを決定する段階;ならびに
viii)IC50を決定する段階。
【0197】
したがって、抗体は、0.001~5μg/mlの範囲のIC50を有してよく、ここで、IC50は、以下の段階を含むインビトロ細胞障害性アッセイにおいて決定される:
i)健常ヒトドナーのバフィーコートから単離した末梢血単核細胞(PBMC)または精製したT細胞を提供する段階;
ii)MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択されるB7H4発現腫瘍細胞、例えばヒトB7H4発現腫瘍細胞株を提供する段階;
iii)PBMCまたは精製したT細胞を、B7H4発現腫瘍細胞の複数の試料と混合する段階であって、該PBMCに由来するT細胞または該精製したT細胞と選択された腫瘍細胞との数の比が8:1である、段階;
iv)選択されたヒトB7H4発現腫瘍細胞について、例えば0.0128ng/mL~10,000ng/mLの範囲の希釈系列の抗体を前記試料に供給する段階;ならびに
v)段階iv)で得られた試料を、例えば37℃で72時間インキュベーションする段階;ならびに続いて、
vi)B7H4発現腫瘍細胞の生存能力を評価する段階;
vii)各希釈試料について生細胞のパーセンテージを決定する段階;ならびに
viii)IC50を決定する段階。
【0198】
1つの態様において、本発明による抗体は、0.001~5μg/mlの範囲のIC50を有してよい。1つの態様において、本発明による抗体は、0.001~2μg/mlの範囲のIC50を有してよい。別の態様において、本発明による抗体は、0.001~0.03μg/mlの範囲のIC50を有してよい。さらに別の態様において、IC50は、0.05~2μg/mlの範囲であってよい。さらに別のさらなる態様において、IC50は、0.05~5μg/mlの範囲であってよい。IC50は、実施例12において説明するような方法を用いて決定することができる。
【0199】
さらなる態様において、本発明による抗体がT細胞活性化を媒介する能力が、以下の段階を含むインビトロアッセイにおいて決定される:
i)健常ヒトドナーのバフィーコートから単離した末梢血単核細胞(PBMC)を提供する段階;
ii)B7H4発現腫瘍細胞を提供する段階;
iii)PBMCとB7H4発現腫瘍細胞とを複数の試料中で混合する段階であって、PBMCと腫瘍細胞の数の比が8:1である、段階;
iv)例えば0.0128ng/mL~10,000ng/mLの範囲の希釈系列の抗体を、前記試料に供給する段階;および
v)試料を、例えば37℃で72時間インキュベーションする段階;および
vi)続いて、サイトカインを検出する段階。
【0200】
例えば検出され得る例示的なサイトカインは、例えば実施例13において説明されるようなIFN-γなどである。好ましくは、B7H4発現腫瘍細胞は、ヒトB7H4発現腫瘍、例えば原発腫瘍、またはMCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、およびHCC1954からなる群より選択される腫瘍細胞株である。
【0201】
B7H4抗体
【0202】
別の局面において、本発明は、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を含む抗体を含む、薬学的組成物または単位剤形であって、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
f)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;または
h)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
i)SEQ ID NO: 31の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
j)SEQ ID NO: 25のそれぞれの可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、重鎖(VH)可変領域および軽鎖(VH)可変領域を有する
を含み、
該薬学的組成物または単位剤形が緩衝剤をさらに含み、かつ
該組成物のpHが4.0~8.0である、
該薬学的組成物または単位剤形に関する。
【0203】
このような抗体は、CD3に結合する抗原結合領域を必ずしも含まない。このような抗体は、例えば、B7H4を検出するためのキットおよびアッセイにおいて有用な場合がある。このような抗体はまた、がんの治療においても有用な場合がある。したがって、このような抗体は、B7H4に結合する単一特異性抗体であってよい。このような抗体は、二価抗体であってよい。
【0204】
薬学的組成物または単位剤形のpHは、4.5~6.5であることが好ましい。好ましい態様において、薬学的組成物または単位剤形のpHは5.0~6.5である。特に好ましい態様において、薬学的組成物または単位剤形のpHは5.0~6.0である。好ましい態様において、緩衝剤は、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される。好ましい態様において、薬学的組成物は、c)非イオン性賦形剤をさらに含む。好ましい態様において、非イオン性賦形剤は、糖または糖アルコールである。好ましい態様において、非イオン性賦形剤は、ソルビトール、スクロース、またはそれらの混合物より選択される。好ましい態様において、非イオン性賦形剤は、100~300mM、例えば125~250mM、好ましくは250mMの濃度で存在する。好ましい態様において、薬学的組成物は、d)界面活性剤をさらに含む。好ましい態様において、界面活性剤は、ポリソルベート、好ましくはポリソルベート20またはポリソルベート80、最も好ましくはポリソルベート80である。好ましい態様において、界面活性剤は、約0.005%~0.4%w/v、例えば約0.01~0.1%w/v、例えば約0.01~0.09%w/v、例えば約0.01~0.06%w/v、例えば約0.01~0.05%w/v、例えば0.02%w/vまたは0.03%w/vまたは0.04%w/vまたは0.05%w/v、好ましくは0.02%w/vの濃度で存在する。本発明の第1の局面について前述した任意の特徴または態様は、本発明のこの局面にも同様に当てはまり得る。
【0205】
好ましくは、このような抗体は、ヒトIgG1定常領域である重鎖定常領域を含む抗体である。例えば、SEQ ID NO: 57~62に列挙される重鎖定常領域。好ましい軽鎖定常領域は、カッパ軽鎖、例えばSEQ ID NO: 63に挙げられるものである。
【0206】
1つの態様において、本明細書において提供される薬学的組成物または単位投与形態の抗体は、アミノ酸残基S151、V157、D158、Y159、E164、L166、W173、P175、P177、V179、W181、F199、M208、V210、T222、Y223、V240、E242、およびI245のうちの1つまたは複数を含む、ヒトB7H4上のエピトープまたは抗体結合領域に結合し得る;各アミノ酸残基の番号付与は、SEQ ID NO: 1におけるその位置を指している。さらなる態様において、本明細書において提供される抗体は、アミノ酸残基V157、D158、Y159、E164、L166のうちの1つまたは複数を含む、ヒトB7H4上のエピトープまたは抗体結合領域に結合し得る;各アミノ酸残基の番号付与は、SEQ ID NO: 1におけるその位置を指している。
【0207】
別の態様において、本明細書において提供される抗体は、アミノ酸残基S151、V157、D158、Y159、E164、L166、W173、P175、P177、V179、W181、F199、M208、V210、T222、Y223、V240、E242、およびI245を含む、ヒトB7H4上のエピトープまたは抗体結合領域に結合し得る;各アミノ酸残基の番号付与は、SEQ ID NO: 1におけるその位置を指している。さらなる態様において、本明細書において提供される抗体は、アミノ酸残基V157、D158、Y159、E164、L166を含む、ヒトB7H4上のエピトープまたは抗体結合領域に結合し得る;各アミノ酸残基の番号付与は、SEQ ID NO: 1におけるその位置を指している。
【0208】
本明細書の実施例7において提供される結果に基づき、理論に拘束されることを望むものではないが、これらのアミノ酸残基(すなわち、S151、V157、D158、Y159、E164、L166、W173、P175、P177、V179、W181、F199、M208、V210、T222、Y223、V240、E242、およびI245)のうちの任意の1つまたは複数が、例えば、抗体のCDR配列内のアミノ酸残基を用いる非共有結合的相互作用によるなどして、抗体の結合に直接的に関与しているという仮説が立てられる。
【0209】
エピトープまたは抗体結合領域によって含まれるアミノ酸残基、および任意で、結合に間接的に関与している1つまたは複数の付加的なアミノ酸残基は、SEQ ID NO: 1に示すアミノ酸配列を有するヒトB7H4またはSEQ ID NO: 1の細胞外ドメイン配列のアラニンスキャニングによって同定することができる。アラニンスキャニングは、具体的には、本明細書の実施例7において説明するかまたは本質的に説明するようにして、実施することができる。
【0210】
さらに、アラニンスキャニングは、以下の段階を含む手順によって実施することができる:
i)ヒトB7H4の細胞外ドメイン中のシステインおよびアラニン以外のアミノ酸残基が、個々にアラニンで置換されている変異ヒトB7H4ポリペプチドと、対応する野生型B7H4ポリペプチドとを、ヒト胎児由来腎臓細胞、例えばHEK293細胞において個々に発現させる段階であって、変異B7H4または野生型B7H4のそれぞれについて、40~60,000個の細胞、例えば50,000個の細胞を含む試料が提供されるように、発現させる段階;
ii)各試料中の細胞を20μlの抗体と共にインキュベーションし、ここで、該抗体は、1本の重鎖および1本の軽鎖からなり、例えば、mNeogreen標識などフローサイトメトリー解析のための適切な標識で標識されており、室温で1時間インキュベーションされ;続いて、FACS緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水[PBS;Lonza、カタログ番号BE17-517]+0.1%[w/v]BSA[Roche、カタログ番号10735086001]+0.02%[w/v]アジ化ナトリウム[NaN3;EMELCA Bioscience、カタログ番号41920044-3])で洗浄し;かつ各試料中の細胞をFACS緩衝液30μL中に再懸濁する段階;
iii)各試料について、細胞1個当たりの結合抗体の平均量を該試料中の生存能力がある単細胞集団の蛍光強度の幾何平均(gMFI)として決定し、かつ各試験抗体のデータを、下記の式を用いて、交差妨害しないB7H4特異的参照抗体の結合強度に対して正規化する段階:
式中、「aa位置」とは、アラニンに変異させた位置を指し、
抗体の結合の減少または増加を表すために、下記の式に基づいて、変化倍率またはZスコアが計算される:
ここで、アミノ酸をアラニンで置換した際に、特定の抗体による結合の減少も増加も起こらないアミノ酸位置は、「0」という結果を与え、結合の増加は、「>0」をもたらし、結合の減少は「<0」をもたらし、かつ結合変化倍率が平均変化倍率-1.5×SDより小さい(SDは、特定の試験抗体を対象とした4回の独立した実験から算出された変化倍率の標準偏差である)B7H4アミノ酸残基のみを、「結合減少変異体」とみなし、かつ特定のB7H4変異体に対する参照抗体のgMFIが、平均gMFI-2.5×(対照Abの平均gMFIのSD)より小さい場合、データを解析から除外した。
【0211】
さらに、このような抗体はまた、B7H4に結合できる抗原結合領域に加えて、別の抗原結合領域を含む、二重特異性抗体であってもよい。このような別の抗原結合領域は、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域であってよい。ヒトCD3に結合できるこのような抗原結合領域は、本明細書において説明され開示される、CD3に結合できる抗原結合領域であってよい。
【0212】
さらなる態様において、本発明の薬学的組成物または単位投与形態は二重特異性抗体を含み、ここで、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域は、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖はVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖はVL領域およびカッパ軽鎖定常領域を含み;かつヒトCD3に結合できる抗原結合領域は、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖はVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖はVL領域およびラムダ軽鎖定常領域を含む。より好ましくは、このような二重特異性抗体では、一方のIgG1重鎖定常領域はSEQ ID NO: 60に定義されるとおりであり、かつ他方はSEQ ID NO: 61に定義されるとおりであり、かつカッパ軽鎖定常領域はSEQ ID NO: 63に定義されるとおりであり、かつラムダ軽鎖定常領域はSEQ ID NO: 64に定義されるとおりである。任意で、SEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 61に定義されるIgG1重鎖定常領域の末端リジンを欠失させることが可能であることが理解される。
【0213】
本発明の薬学的組成物または単位投与形態における著しく好ましい二重特異性抗体は、実施例のセクションにおいて説明され使用されるとおりであり、BsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARと呼ばれる。
【0214】
したがって、好ましい態様において、以下を含むヒトCD3およびヒトB7H4に結合できる二重特異性抗体を含む薬学的組成物または単位投与形態が提供される:
-ヒトCD3に結合できる結合領域を含む第1の重鎖および第1の軽鎖であって、該第1の重鎖が、SEQ ID NO: 17によって定められる重鎖可変領域と本明細書において定義されるヒトIgG1重鎖定常領域とを含み、かつ該第1の軽鎖が、SEQ ID NO: 22によって定められる軽鎖可変領域とヒトラムダ軽鎖定常領域とを含む、第1の重鎖および第1の軽鎖;ならびに
-ヒトB7H4に結合できる結合領域を含む第2の重鎖および第2の軽鎖であって、該第2の重鎖が、SEQ ID NO: 29によって定められる重鎖可変領域と本明細書において定義されるヒトIgG1重鎖定常領域とを含み、かつ該第2の軽鎖が、SEQ ID NO: 33によって定められる軽鎖可変領域とヒトカッパ軽鎖定常領域とを含む、第2の重鎖および第2の軽鎖。
【0215】
本明細書において定義されるヒトIgG1重鎖定常領域が、本明細書において定義される置換(例えばFEAR/FEAL)などを含んでよいことが理解される。ヒトIgG1重鎖定常領域は、末端リジン(K)が欠失していてよいこともまた、理解される。
【0216】
さらなる好ましい態様において、以下を含むヒトCD3およびヒトB7H4に結合できる二重特異性抗体を含む薬学的組成物または単位投与形態が提供される:
-ヒトCD3に結合できる結合領域を含む第1の重鎖および第1の軽鎖であって、該第1の重鎖が、SEQ ID NO: 17によって定められる重鎖可変領域とSEQ ID NO: 60によって定められる重鎖定常領域とを含み、かつ該第1の軽鎖が、SEQ ID NO: 22によって定められる軽鎖可変領域とSEQ ID NO: 64によって定められる軽鎖定常領域とを含む、第1の重鎖および第1の軽鎖;ならびに
-ヒトB7H4に結合できる結合領域を含む第2の重鎖および第2の軽鎖であって、該第2の重鎖が、SEQ ID NO: 29によって定められる重鎖可変領域とSEQ ID NO: 61によって定められる重鎖定常領域とを含み、かつ該第2の軽鎖が、SEQ ID NO: 33によって定められる軽鎖可変領域とSEQ ID NO: 63によって定められる軽鎖定常領域とを含む、第2の重鎖および第2の軽鎖。
【0217】
同様に、ヒトIgG1重鎖定常領域は、末端リジン(K)が欠失していてよいことも理解される。
【0218】
さらに別のさらなる好ましい態様において、以下を含むヒトCD3およびヒトB7H4に結合できる二重特異性抗体を含む薬学的組成物または単位投与形態が提供される:
-ヒトCD3に結合できる結合領域を含む第1の重鎖および第1の軽鎖であって、該第1の重鎖が、SEQ ID NO: 17によって定められる重鎖可変領域とSEQ ID NO: 60によって定められる重鎖定常領域とからなり、かつ該第1の軽鎖が、SEQ ID NO: 22によって定められる軽鎖可変領域とSEQ ID NO: 64によって定められる軽鎖定常領域とからなる、第1の重鎖および第1の軽鎖;ならびに
-ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を含む第2の重鎖および第2の軽鎖であって、該第2の重鎖が、SEQ ID NO: 29によって定められる重鎖可変領域とSEQ ID NO: 61によって定められる重鎖定常領域とからなり、かつ該第2の軽鎖が、SEQ ID NO: 33によって定められる軽鎖可変領域とSEQ ID NO: 63によって定められる軽鎖定常領域とからなる、第2の重鎖および第2の軽鎖。
【0219】
別のさらなる好ましい態様において、以下を含むヒトCD3およびヒトB7H4に結合できる二重特異性抗体を含む薬学的組成物または単位投与形態が提供される:
-ヒトCD3に結合できる結合領域を含む第1の重鎖および第1の軽鎖であって、該第1の重鎖が、SEQ ID NO: 17によって定められる重鎖可変領域と、末端リジン(K)が欠失している、SEQ ID NO: 60によって定められる重鎖定常領域とからなり、かつ該第1の軽鎖が、SEQ ID NO: 22によって定められる軽鎖可変領域とSEQ ID NO: 64によって定められる軽鎖定常領域とからなる、第1の重鎖および第1の軽鎖;ならびに
-ヒトB7H4に結合できる結合領域を含む第2の重鎖および第2の軽鎖であって、該第2の重鎖が、SEQ ID NO: 29によって定められる重鎖可変領域と、末端リジン(K)が欠失している、SEQ ID NO: 61によって定められる重鎖定常領域とからなり、かつ該第2の軽鎖が、SEQ ID NO: 33によって定められる軽鎖可変領域とSEQ ID NO: 63によって定められる軽鎖定常領域とからなる、第2の重鎖および第2の軽鎖。
【0220】
二重特異性抗体を調製する方法
ハイブリッドハイブリドーマ法および化学的連結法などの従来の方法(Marvin and Zhu (2005) Acta Pharmacol Sin 26:649)を、本発明の二重特異性抗体を調製する際に使用することができる。異なる重鎖および軽鎖からなる2種の抗体を宿主細胞において同時発現させると、所望の二重特異性抗体に加えて、生じ得る抗体産物の混合物が生じ、次いで、例えばアフィニティークロマトグラフィーまたは同様の方法によって、所望の二重特異性抗体を単離することができる。
【0221】
様々な抗体構築物を同時発現する際に機能的な二重特異性産物の形成を促進する戦略もまた、使用することができ、例えば、Lindhofer et al. (1995 J Immunol 155:219)によって説明されている方法である。異なる抗体を産生するラットおよびマウスのハイブリドーマを融合すると、種によって拘束される優先的な重鎖/軽鎖対形成が原因で、限定された数のヘテロ二量体タンパク質が生じる。ホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成を促進する別の戦略は、第1の重鎖ポリペプチド表面に隆起が導入され、対応する窪みが第2の重鎖ポリペプチドに導入され、その結果、これら2つの重鎖の境界面で隆起が窪みの中におさまって、ヘテロ二量体形成を促進しホモ二量体形成を妨げることができる、「ノブイントゥーホール」戦略である。「隆起」は、第1のポリペプチドの境界面に由来する小型のアミノ酸側鎖を、より大型の側鎖で置換することによって作られる。大型アミノ酸側鎖をより小型のもので置換することによって、隆起と同一または類似したサイズの補填的「窪み」が、第2のポリペプチドの境界面に作り出される(米国特許第5,731,168号)。EP1870459(Chugai)およびWO 2009089004(Amgen)は、宿主細胞において異なる抗体ドメインを同時発現させた際にヘテロ二量体形成を促進するための他の戦略を説明している。これらの方法では、両方のCH3ドメインにおいてCH3-CH3境界面を構成する1つまたは複数の残基が、荷電アミノ酸で置換され、その結果、ホモ二量体形成が静電気的に不都合になり、ヘテロ二量体化が静電気的に好都合になる。WO2007110205(Merck)では、IgAおよびIgGのCH3ドメインの違いを利用してヘテロ二量体化を促進する、さらに別の戦略を説明している。
【0222】
二重特異性抗体を作製するための別のインビトロ方法が、WO2008119353(Genmab)に記載されており、この方法では、二重特異性抗体は、還元条件下でインキュベーションすると2つの単一特異性IgG4抗体またはIgG4様抗体の間で起こる、「Fabアーム」または「半分子」交換(重鎖と結合した軽鎖の取り替え)によって形成される。結果として生じる生産物は、互いに異なる配列を含み得る2つのFabアームを有する二重特異性抗体である。
【0223】
本発明の二重特異性CD3×B7H4抗体を調製するための好ましい方法には、下記の段階を含む、WO2011131746およびWO13060867(Genmab)に記載されている方法が含まれる:
a)第1のCH3領域を含むFc領域を含む第1抗体を提供する段階;
b)第2のCH3領域を含む第2のFc領域を含む第2抗体を提供する段階;
ここで、該第1抗体はCD3抗体であり、かつ該第2抗体はB7H4抗体であるか、またはその逆であり;
該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の配列は互いに異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域とのヘテロ二量体相互作用が、該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列である;
c)還元条件下で、該第1抗体を該第2抗体と共にインキュベーションする段階;ならびに
d)二重特異性CD3×B7H4抗体を取得する段階。
【0224】
1つの態様において、第1抗体は第2抗体と共に、ヒンジ領域中のシステインにジスルフィド結合異性化を起こさせるのに十分な還元条件下でインキュベーションされ、その際、結果として生じるヘテロ二量体抗体における第1抗体と第2抗体とのヘテロ二量体相互作用は、37℃で24時間後に、0.5mM GSHでFabアーム交換が起こらないようなものである。
【0225】
理論に制限されるわけではないが、段階c)において、親抗体のヒンジ領域中の重鎖ジスルフィド結合が還元され、結果として生じるシステインが、その後、(もともとは、異なる特異性を有している)別の親抗体分子のシステイン残基と重鎖間ジスルフィド結合を形成することができる。この方法の1つの態様において、段階c)の還元条件は、還元剤、例えば2-メルカプトエチルアミン(2-MEA)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、L-システイン、およびβ-メルカプト-エタノールからなる群より選択される還元剤、好ましくは、2-メルカプトエチルアミン、ジチオトレイトール、およびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加を含む。さらなる態様において、段階c)は、例えば、脱塩等によって還元剤を除去することによって、非還元性または還元性が弱くなるように条件を戻す段階を含む。
【0226】
この方法のために、本明細書において説明されるCD3抗体およびB7H4抗体のいずれかを使用することができる。特定の態様において、CD3抗体およびB7H4抗体はそれぞれ、本明細書において説明される二重特異性CD3×B7H4抗体を取得するために、選択され得る。
【0227】
この方法の1つの態様において、第1抗体および/または第2抗体は、完全長抗体である。
【0228】
第1抗体および第2抗体のFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4を非限定的に含む、任意のアイソタイプのものであってよい。この方法の1つの態様において、第1抗体と第2抗体の両方のFc領域は、IgG1アイソタイプのものである。別の態様において、これらの抗体のFc領域のうちの一方はIgG1アイソタイプのものであり、他方はIgG4アイソタイプのものである。後者の態様において、結果として生じる二重特異性抗体は、IgG1のFc領域およびIgG4のFc領域を含み、したがって、エフェクター機能の活性化に関して興味深い中間的特性を有し得る。
【0229】
さらなる態様において、抗体の出発タンパク質のうちの1つは、プロテインAに結合しないように操作されており、したがって、生産物にプロテインAカラムを通過させることによって、ホモ二量体の出発タンパク質からヘテロ二量体タンパク質を分離することが可能になる。
【0230】
前述したように、ホモ二量体の出発抗体の第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列は異なり、該第1のCH3領域と該第2のCH3領域とのヘテロ二量体相互作用が該第1のCH3領域および該第2のCH3領域の各ホモ二量体相互作用より強くなるような配列である。これらの相互作用およびそれらを実現できる方法に関するより詳細な内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO2011131746およびWO2013060867(Genmab)において提供されている。
【0231】
具体的には、安定な二重特異性CD3×B7H4抗体を、それぞれCD3およびB7H4に結合し、かつCH3領域中にごく少数のかなり保存的な非対称的変異を含む2つのホモ二量体の出発抗体に基づく本発明の上記の方法を用いて、高収率で得ることができる。非対称的変異とは、第1のCH3領域および第2のCH3領域の配列が、同一ではない位置にアミノ酸置換を含むことを意味する。
【0232】
態様において、B7H4とCD3の両方に結合できる本発明による抗体を作製するための方法であって、以下の段階を含む方法が提供される:
a)B7H4に結合できる抗体を提供する段階であって、該抗体が、本明細書において定義されるB7H4に結合できる抗原結合領域を含む、段階;
b)CD3に結合できる抗体を提供する段階であって、該抗体が、本明細書において定義されるCD3に結合できる抗原結合領域を含む、段階;
c)ヒンジ領域中のシステインにジスルフィド結合異性化を起こさせるのに十分な還元条件下で、該B7H4に結合できる抗体を該CD3に結合できる抗体と共にインキュベーションする段階;ならびに
d)B7H4およびCD3に結合できる抗体を取得する段階。
【0233】
このような方法において、B7H4および/またはCD3に結合できる抗体を提供する段階は、以下の段階を含んでよい
-1つまたは複数の該抗体を作製するための、発現ベクターを含む細胞を提供する段階;および
-該細胞に、1つまたは複数の該抗体を産生させる段階;ならびに続いて、
-1つまたは複数の該抗体を取得し、それによって1つまたは複数の該抗体を提供する段階。
【0234】
好ましくは、抗体が、本発明の薬学的組成物または単位投与形態中の薬学的に許容される担体中に含まれる。本発明の薬学的組成物は、B7H4とCD3の両方を標的とする、本発明の二重特異性抗体を含んでよい。薬学的組成物はまた、B7H4を標的とする抗体も含んでよい。薬学的組成物はまた、B7H4を標的とする抗体および/または本発明による二重特異性抗体を含む、抗体の組合せを含んでよい。
【0235】
本発明による薬学的組成物は、好ましくは、医薬として使用するためのものである。本発明による薬学的組成物は、好ましくは、疾患の治療において使用するためのものである。本発明の二重特異性抗体は、いくつかの目的のために使用され得る。特に、本発明の二重特異性抗体は、転移がんおよび難治性がんを含む様々な形態のがんの治療のために使用され得る。好ましくは、がんは、固形腫瘍型のものであり得る。
【0236】
特に、本発明による二重特異性抗体は、B7H4発現細胞を特異的に標的とすることおよびT細胞の媒介によってそれらを死滅させることが望ましい治療状況において有用である場合がある。
【0237】
1つの態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の薬学的組成物の二重特異性B7H4×CD3抗体の投与を含む、対象においてがんを治療するための方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、治療的有効量の本発明の二重特異性抗体の投与を含む、B7H4発現細胞に関係する障害を対象において治療するための方法を提供する。
【0238】
別の態様において、本発明は、治療的有効量の、ヒトB7H4に結合できる本発明の抗体の投与を含む、対象においてがんを治療するための方法を提供する。さらなる態様において、本発明は、治療的有効量の、ヒトB7H4に結合できる本発明の単一特異性抗体の投与を含む、B7H4発現細胞に関係する障害を対象において治療するための方法を提供する。
【0239】
前述したように、本発明による方法および使用において企図され得る適切な疾患は、がんである。最も好ましくは、該がんは、B7H4の発現を特徴とする。がんにおけるB7H4発現は、PCR、免疫染色、またはFACS解析などの当技術分野において公知の方法を用いることにより、すなわち、B7H4転写物および/またはB7H4タンパク質の発現を検出することにより、容易に決定することができる。ヒトB7H4に結合できる本明細書において説明される抗体は、例えば、免疫染色および/またはFACS解析などで使用され得る。
【0240】
B7H4を発現し得るがんには、乳がん、子宮/子宮内膜がん、子宮がん肉腫がん、卵巣がん、子宮頸がん、非小細胞肺がん(扁平上皮がんおよび腺がん)、頭頸部扁平上皮がん、膀胱がん、食道がん、胆管がん、膵臓がん、胃がん、腎臓がん、および前立腺がんが含まれる。
【0241】
B7H4を発現し得るがんには、胃のがん、胆管がん、膀胱がん、非小細胞肺がん(特に、扁平上皮NSCLC)、膵臓がん、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん(トリプルネガティブ乳がんを含む)、卵巣がん、および子宮がんなどのがんが含まれる。好ましい可能性があるがんのタイプは、子宮がん肉腫(UCS)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、膵臓腺がん(PAAD)、肺扁平上皮がん(LUSC)、浸潤性乳がん(BRCA)、子宮体子宮内膜がん(UCEC)、卵巣漿液性嚢胞腺がん(OV)、および胆管がん(CHOL)より選択されるがんである。
【0242】
さらなる態様において、がんと診断された患者は、がん細胞におけるB7H4発現についての評価に供されてよく、かつB7H4が検出される場合、B7H4は低度から高度の範囲であってよく、このような患者は、本発明による抗体を用いる治療のために選択され得る。胃のがん、胆管がん、膀胱がん、非小細胞肺がん(特に、扁平上皮NSCLC)、膵臓がん、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん(トリプルネガティブ乳がんを含む)、卵巣がん、または子宮がんを有していると診断された患者は、このような試験に供されてよい。さらなる態様において、子宮がん肉腫(UCS)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、膵臓腺がん(PAAD)、肺扁平上皮がん(LUSC)、浸潤性乳がん(BRCA)、子宮体子宮内膜がん(UCEC)、卵巣漿液性嚢胞腺がん(OV)、または胆管がん(CHOL)を有すると診断されている患者は、このような試験に供されてよい。しかし、治療のために患者を選択する際にこのような評価を含めることは、必ずしも必要条件ではない場合がある。
【0243】
キット
本発明はさらに、上記に開示した抗体を含む薬学的組成物または単位投与形態を含む、キットオブパーツ、例えば、コンパニオン診断薬として使用するための/本明細書において上記に定義した抗体または本明細書において上記に定義した免疫コンジュゲートもしくは抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を用いる治療に応答する性質を有している患者を、患者集団内で同定するための、あるいは患者の治療において使用された場合に該抗体または免疫コンジュゲートもしくはADCの有効性または抗腫瘍活性を予測するための、キットであって、上記に開示した抗体と、該キットを使用するための取扱説明書を含む、キットも提供する。
【0244】
キットオブパーツ、例えば、コンパニオン診断薬として使用するための/請求項1~55のいずれか一項記載の抗体を用いる治療に応答する性質を有している患者を患者集団内で同定するための、キットであって、請求項1~55のいずれか一項記載の抗体と、該キットを使用するための取扱説明書を含む、キット。
【0245】
したがって、1つの局面において、本発明は、本明細書において定義される二重特異性CD3×B7H4抗体または本明細書において定義されるB7H4抗体を含む診断用組成物、およびその使用に関する。
【0246】
別の局面において、本発明は、患者に由来する試料においてCD3発現細胞とB7H4発現細胞との架橋を検出するためのキットであって、以下を含むキットに関する
i)本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の二重特異性抗体;および
ii)該キットを使用するための取扱説明書。
【0247】
1つの態様において、本発明は、二重特異性CD3×B7H4抗体と、B7H4発現細胞とCD3発現細胞との架橋を検出するための1種または複数種の試薬とを含む容器を含む、がんを診断するためのキットを提供する。試薬には、例えば、蛍光性タグ、酵素的タグ、または他の検出可能なタグが含まれ得る。試薬にはまた、二次抗体もしくは三次抗体、または可視化できる生成物をもたらす酵素反応のための試薬も含まれ得る。
【0248】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の二重特異性抗体を投与した場合に、患者に由来する試料においてCD3発現細胞とB7H4発現細胞との架橋が起こるかどうかを検出するための方法であって、以下の段階を含む方法に関する:
(i)二重特異性抗体とCD3発現細胞およびB7H4発現細胞との複合体形成を可能にする条件下で、試料を、本明細書において開示される態様のいずれか1つに記載の二重特異性抗体と接触させる段階;ならびに
(ii)複合体が形成されたかどうかを解析する段階。
【0249】
発明の具体的な態様
1. a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域と、ヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む、抗体であって、該抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されている、かつ/またはヒト由来である、該抗体、ならびに
b)緩衝剤
を含み、
pHが4.0~8.0である、薬学的組成物。
【0250】
2. 組成物のpHが4.5~6.5である、態様1記載の薬学的組成物。
【0251】
3. 組成物のpHが5.0~6.0である、態様1記載の薬学的組成物。
【0252】
4. 緩衝剤が、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0253】
5. c)非イオン性賦形剤をさらに含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0254】
6. 非イオン性賦形剤が糖または糖アルコールである、態様5記載の薬学的組成物。
【0255】
7. 非イオン性賦形剤が、ソルビトール、スクロース、またはそれらの混合物より選択される、態様5または6記載の薬学的組成物。
【0256】
8. 非イオン性賦形剤が、100~300mM、例えば125~250mM、好ましくは250mMの濃度で存在する、態様5~7のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0257】
9. d)界面活性剤をさらに含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0258】
10. 界面活性剤が、モノオレイン酸グリセロール、塩化ベンゼトニウム、ドクサートナトリウム、リン脂質、ポリエチレンアルキルエーテル、ラウリル硫酸ナトリウムおよびトリカプリリン、塩化ベンザルコニウム、シトリミド、塩化セチルピリジニウムおよびリン脂質、αトコフェノール、モノオレイン酸グリセロール、ミリスチルアルコール、リン脂質、ポロクサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビンタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステラレート、ヒドロキシステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシルグリセリド、ポリソルベート、ジラウリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ソルビタンエステルスクロースパルミタート、ステアリン酸スクロース、トリカプリリンおよびTPGS、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、態様9記載の薬学的組成物。
【0259】
11. 界面活性剤がポリソルベートである、態様9または10記載の薬学的組成物。
【0260】
12. ポリソルベートが、ポリソルベート20またはポリソルベート80、好ましくはポリソルベート80である、態様11記載の薬学的組成物。
【0261】
13. 界面活性剤が、約0.005%~0.4%w/v、例えば約0.01~0.1%w/v、例えば約0.01~0.09%w/v、例えば約0.01~0.06%w/v、例えば約0.01~0.05%w/v、例えば0.02%w/vまたは0.03%w/vまたは0.04%w/vまたは0.05%w/v、好ましくは0.02%w/vの濃度で存在する、態様9~12のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0262】
14. 抗体の濃度が、0.5~100mg/ml、例えば1.0~50mg/ml、または例えば5~30mg/ml、例えば、5mg/ml、または6mg/ml、または7mg/ml、または8mg/ml、または9mg/ml、または10mg/ml、または11mg/ml、または12mg/ml、または13mg/ml、または14mg/ml、または15mg/ml、または16mg/ml、または17mg/ml、または18mg/ml、または19mg/ml、または20mg/ml、または21mg/ml、または22mg/ml、または23mg/ml、または24mg/ml、または25mg/ml、または26mg/ml、または27mg/ml、または28mg/ml、または29mg/ml、30mg/ml、31mg/ml、32mg/ml、33mg/ml、34mg/ml、35mg/ml、36mg/ml、37mg/ml、38mg/ml、39mg/ml、40mg/ml、41mg/ml、42mg/ml、43mg/ml、44mg/ml、45mg/ml、46mg/ml、47mg/ml、48mg/ml、49mg/ml、50mg/ml、51mg/ml、52mg/ml、53mg/ml、54mg/ml、55mg/ml、56mg/ml、57mg/ml、58mg/ml、59mg/ml、または例えば60mg/mlである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0263】
15. 緩衝剤が、5~40mM、例えば10~30mM、好ましくは20mMの濃度で存在する、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0264】
16. 水性組成物である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0265】
17. a)5~50mg/mlの抗体、
b)10~20mMのグルタマートまたはヒスチジン、
c)150~350mMのソルビトールまたはスクロース、
d)ポリソルベート
を含み、
pHが5.0~6.0である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0266】
18. 以下からなる群より選択される、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
a)10~20mg/mlの抗体、b)20mMグルタマート、c)250mMソルビトール、d)0.02%w/vポリソルベート80を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが5.1~5.3である、該薬学的組成物、および
a)10~20mg/mlの抗体、b)20mMヒスチジン、c)250mMスクロース、d)0.02%w/vポリソルベート80を含む薬学的組成物であって、該組成物のpHが5.4~5.6である、該薬学的組成物。
【0267】
19. 液体組成物である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0268】
20. 静脈内用組成物である、および/または静脈内投与において使用するためのものである、任意の態様1~19に記載の薬学的組成物。
【0269】
21. がんの治療において使用するためのものである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0270】
22. 単位剤形の状態である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0271】
23. 2~8℃、例えば5℃の貯蔵温度で、少なくとも6ヶ月間、例えば少なくとも9ヶ月間または少なくとも12ヶ月間、医薬用途のために安定である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0272】
24. 抗体が二重特異性抗体である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0273】
25. 抗体が、がん細胞およびT細胞に結合することができる、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0274】
26. がん細胞がヒトB7H4を発現する、態様25記載の薬学的組成物。
【0275】
27. がん細胞が固形腫瘍のものである、態様25または26記載の薬学的組成物。
【0276】
28. 抗体が、T細胞媒介性細胞死滅を誘導することができる、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0277】
29. CD3に結合できる抗原結合領域が、SEQ ID NO: 13に指定されるヒトCD3ε(イプシロン)などのヒトCD3ε(イプシロン)に結合できる、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0278】
30. CD3に結合する抗原結合領域が以下を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
SEQ ID NO: 16またはSEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む、重鎖可変領域(VH);
ならびに
SEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む、軽鎖可変領域(VL)。
【0279】
31. CD3に結合する抗原結合領域が以下を含む、態様1~29のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
それぞれSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 20、またはSEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、およびSEQ ID NO: 21のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域(VH);
ならびに
それぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24のCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0280】
32. CD3に結合する抗原結合領域が以下を含む、態様1~29のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
SEQ ID NO: 17の配列、またはSEQ ID NO: 17の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、重鎖可変領域(VH);
および
SEQ ID NO: 22の配列、またはSEQ ID NO: 22の配列に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、もしくは少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する配列を含む、軽鎖可変領域(VL)。
【0281】
33. CD3に結合する抗原結合領域とCD3との解離平衡定数KDが、1~100nMの範囲内、例えば5~100nMの範囲内、10~100nMの範囲内、1~80nMの範囲内、1~60nMの範囲内、1~40nMの範囲内、1~20nMの範囲内、5~80nMの範囲内、5~60nMの範囲内、5~40nMの範囲内、5~20nMの範囲内、10~80nMの範囲内、10~60nMの範囲内、10~40nMの範囲内、または例えば10~20nMの範囲内である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0282】
34. 抗体が、SEQ ID NO: 16に示されるVH配列およびSEQ ID NO: 22に示されるVL配列を含む抗原結合領域を有する抗体よりも、ヒトCD3εに対する結合親和性が低く、好ましくは、該親和性が、少なくとも5分の1、例えば少なくとも10分の1、例えば少なくとも20分の1、少なくとも30分の1、少なくとも40分の1、少なくとも45分の1、または例えば少なくとも50分の1である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0283】
35. CD3に結合する抗原結合領域が、200~1000nMの範囲内、例えば300~1000nMの範囲内、400~1000nMの範囲内、500~1000nMの範囲内、300~900nMの範囲内、400~900nMの範囲内、400~700nMの範囲内、500~900nMの範囲内、500~800nMの範囲内、500~700nMの範囲内、600~1000nMの範囲内、600~900nMの範囲内、600~800nMの範囲内、または例えば600~700nMの範囲内である平衡解離定数KDを有する、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0284】
36. CD3に結合する抗原結合領域が、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変(VH)領域を含み、
該重鎖可変(VH)領域が、SEQ ID NO: 16に示される配列を含む重鎖可変(VH)領域と比べた場合、T31、N57、H101、G105、S110、およびY114からなる群より選択される位置にアミノ酸置換を有し、これらの位置はSEQ ID NO: 16の配列に基づいて番号付与されており;かつ
野生型軽鎖可変(VL)領域が、それぞれSEQ ID NO: 23、GTN、およびSEQ ID NO: 24に示されるCDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含む、
前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0285】
37. CD3に結合する抗原結合領域が、重鎖可変(VH)領域中に、T31M、T31P、N57E、H101G、H101N、G105P、S110A、S110G、Y114M、Y114R、Y114Vからなる群より選択される置換を含む、態様36記載の薬学的組成物。
【0286】
38. CD3に結合する抗原結合領域の重鎖可変(VH)領域のCDR1、CDR2、およびCDR3が、SEQ ID NO: 16の配列のCDR1、CDR2、およびCDR3と比べた場合に、合計で、多くとも1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸置換を含み、該アミノ酸置換が、好ましくは、態様36または態様37に定義されたアミノ酸置換を含む、態様30~32のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0287】
39. ヒトB7H4がSEQ ID NO: 1のヒトB7H4である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0288】
40. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、ヒトB7H4の細胞外ドメインに結合することができる、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0289】
41. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、ヒトB7H4のIgC様定常領域に結合することができる、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0290】
42. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、SEQ ID NO: 11の配列を有するB7H3-IgV/B7H4-IgCに結合することができる、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0291】
43. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、SEQ ID NO: 10の配列を有するB7H4-IgV/B7H3-IgCに結合することができない、態様42記載の薬学的組成物。
【0292】
44. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が以下を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 40のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 47のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 54のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 31のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 69のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域。
【0293】
45. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が以下を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
a)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
b)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
c)それぞれSEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、およびSEQ ID NO: 39のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 41、DTS、およびSEQ ID NO: 42のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、およびSEQ ID NO: 46のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 48、YTS、およびSEQ ID NO: 49のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)それぞれSEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、およびSEQ ID NO: 53のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 55、GAS、およびSEQ ID NO: 56のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;または
f)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
g)それぞれSEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、およびSEQ ID NO: 68のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 70、GAS、およびSEQ ID NO: 71のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域。
【0294】
46. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が以下を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
a)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
c)SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域;
d)SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;
g)SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域。
【0295】
47. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、5E-7Mまたはそれより小さい、例えば1E-7Mまたはそれより小さいKD値に相当する結合親和性を有し、例えば、5E-7~2E-10Mの範囲内である、例えば、2E-7~1E-10Mまたは1E-7~5E-9Mの範囲内であるKD値に相当する結合親和性を有する、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0296】
48. 結合親和性が、本明細書の実施例3に任意で示されるバイオレイヤー干渉法によって決定される、態様47記載の薬学的組成物。
【0297】
49. 結合親和性が、以下の段階:
I)1μg/mLの量の抗体を、抗ヒトIgG Fc捕捉バイオセンサー上で600秒間、固定する段階;
II)1.56nM~100nMの範囲の2倍希釈系列を用いて、ヒト組換えHisタグ化B7H4タンパク質(Sino Biologicalカタログ番号10738-H08H;ヒトVTCN1(Uniprotアクセッション番号Q7Z7D3)(Phe29~Ala258)をコードするDNA配列の構築物から発現される、C末端にポリヒスチジンタグを有するタンパク質)の、300秒の期間における結合および1000秒の期間における解離を決定する段階;
III)データを緩衝液対照(0nM)と関係づける段階
を含むバイオレイヤー干渉法を用いて決定される、
態様47または態様48記載の薬学的組成物。
【0298】
50. 結合親和性が、単一特異性の二価抗体である前記態様のいずれか1つで定義される抗体、例えば、完全長IgG1である抗体を用いて決定される、態様47~49のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0299】
51. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原領域を含み、
該抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域を含む抗体
を交差妨害することができ、かつ
該抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域を含む抗体;
SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域を含む抗体
を交差妨害することができない、
前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0300】
52. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原領域を含み、
該抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 43の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 47の可変軽鎖領域を含む抗体;
SEQ ID NO: 50の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 54の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 65の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 69の可変軽鎖領域を含む抗体
を交差妨害することができ、かつ
該抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域を含む抗体;ならびに
SEQ ID NO: 36の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 40の可変軽鎖領域を含む抗体
を含む抗体を交差妨害することができない、
前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0301】
53. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、SEQ ID NO: 11のB7H3-IgV/B7H4-IgCに結合することができ、かつ任意で、SEQ ID NO: 10のB7H4-IgV/B7H3-IgCに結合することができない、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0302】
54. 各抗原結合領域が、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ各可変領域が、3つのCDR配列、すなわち、それぞれCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびに4つのフレームワーク配列、すなわち、それぞれFR1、FR2、FR3、およびFR4を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0303】
55. B7H4に結合できる抗原結合領域がヒト由来であり、かつCD3に結合できる抗原結合領域がヒト化されている、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0304】
56. B7H4に結合できる抗原結合領域がヒト由来である、かつ/またはCD3に結合できる抗原結合領域がヒト化されている、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0305】
57. 抗体が、2つの重鎖定常領域(CH)および2つの軽鎖定常領域(CL)を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0306】
58. 2つの重鎖定常ドメインおよび2つの軽鎖定常領域がヒトに由来する、態様57記載の薬学的組成物。
【0307】
59. 抗体が完全長抗体である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0308】
60. 抗体がIgG1アイソタイプのものである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0309】
61. 抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および第2の重鎖のそれぞれが、少なくともヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域を含み、ここで、該第1の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、かつ該第2の重鎖において、ヒトIgG1重鎖中のT366、L368、K370、D399、F405、Y407、およびK409からなる群より選択される位置に対応する位置にあるアミノ酸のうちの少なくとも1つが置換されており、ここで、該第1の重鎖および該第2の重鎖についての置換は、同じ位置に存在せず、これらのアミノ酸位置は、EU番号付与に基づいて番号付与されている、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0310】
62. ヒトIgG1重鎖中のK409に対応する位置のアミノ酸が、第1の重鎖においてRであり、かつヒトIgG1重鎖中のF405に対応する位置のアミノ酸が、第2の重鎖においてLであるか、またはその逆である、態様61記載の薬学的組成物。
【0311】
63. 抗体が、第1の重鎖、および任意で第2の重鎖を含み、かつ該抗体が、同一の非改変抗体と比べて低い程度で、Fcを介したエフェクター機能を誘導するように、該第1の重鎖、および存在する場合には該第2の重鎖が改変されている、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0312】
64. 抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、EU番号付与に基づくヒトIgG1重鎖中の位置L234およびL235に対応する位置にあるアミノ酸残基が、それぞれFおよびEである、態様63記載の薬学的組成物。
【0313】
65. 抗体が、第1の重鎖および第2の重鎖を含み、該第1の重鎖および該第2の重鎖の両方において、EU番号付与に基づくヒトIgG1重鎖中の位置D265に対応する位置にあるアミノ酸残基が、Aである、態様63または態様64記載の薬学的組成物。
【0314】
66. 抗体がカッパ(κ)軽鎖を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0315】
67. 抗体がラムダ(λ)軽鎖を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0316】
68. 抗体が、ラムダ(λ)軽鎖およびカッパ(κ)軽鎖を含む;例えば、CD3に結合できる結合領域を含む重鎖およびラムダ軽鎖と、B7H4に結合できる結合領域を含む重鎖およびカッパ軽鎖とを有する、抗体である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0317】
69. ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖がVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖がVL領域およびカッパ軽鎖定常領域を含み;かつヒトCD3に結合できる抗原結合領域が、重鎖および軽鎖に含まれ、該重鎖がVH領域およびIgG1重鎖定常領域を含み、かつ該軽鎖がVL領域およびラムダ軽鎖定常領域を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0318】
70. 一方のIgG1重鎖定常領域がSEQ ID NO: 60に定義されるとおりであり、かつ他方がSEQ ID NO: 61に定義されるとおりであり、およびカッパ軽鎖定常領域がSEQ ID NO: 63に定義されるとおりであり、かつラムダ軽鎖定常領域がSEQ ID NO: 64に定義されるとおりである、態様69記載の薬学的組成物。
【0319】
71. SEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 61に定義されるIgG1重鎖定常領域において、末端リジンが欠失している、態様70記載の薬学的組成物。
【0320】
72. 抗体が、Fcを介したエフェクター機能を欠いているか、またはFcを介したエフェクター機能が低下しており、かつ該抗体が、
a)本明細書の実施例9および10で説明するようなB7H4発現ヒト腫瘍細胞に結合することができ、
b)本明細書の実施例11および12で説明するように分析される場合、例えば、PBMCもしくはT細胞をエフェクター細胞として用いるときに、B7H4発現ヒト腫瘍細胞において濃度依存性細胞障害性を媒介し、
c)本明細書の実施例11および12で説明するように分析される場合、例えば、PBMCもしくはT細胞をエフェクター細胞として用いるときに、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択される1種もしくは複数種のヒトB7H4発現腫瘍細胞株において濃度依存性細胞障害性を媒介することができ、
d)例えば、本明細書の実施例13で説明するように分析される場合、B7H4発現ヒト腫瘍細胞の存在下でT細胞をインビトロで活性化することができ、
e)例えば、本明細書の実施例13で説明するように分析される場合、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択される1種もしくは複数種のB7H4発現ヒト腫瘍細胞株の存在下でT細胞をインビトロで活性化することができ、
f)例えば、本明細書の実施例11および12で説明するように分析される場合、B7H4発現ヒト腫瘍細胞の細胞障害性を誘導することができ、かつ/または、
g)例えば、本明細書の実施例11および実施例12で説明するように分析される場合、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択される1種もしくは複数種のB7H4発現ヒト腫瘍細胞株においてT細胞媒介性細胞障害性を誘導することができる、
前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0321】
73. 抗体が、0.001~5μg/mlの範囲のIC50を有し、ここで、IC50が、以下の段階:
i)健常ヒトドナーのバフィーコートから単離した末梢血単核細胞(PBMC)または精製したT細胞を提供する段階;
ii)B7H4発現腫瘍細胞を提供する段階;
iii)PBMCまたは精製したT細胞と、MCF-7、MDA-MB-468、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650からなる群より選択されるヒトB7H4発現腫瘍細胞株とを、複数の試料中で混合する段階であって、該PBMCに由来するT細胞または精製したT細胞と、選択された腫瘍細胞との数の比が、8:1である、段階;
iv)例えば0.0128ng/mL~10,000ng/mLの範囲の希釈系列の該抗体を、該試料に供給する段階;ならびに
v)該試料を、例えば37℃で72時間、インキュベーションする段階;続いて、
vi)該B7H4発現腫瘍細胞の生存能力を評価する段階;
vii)各希釈試料について生細胞のパーセンテージを決定する段階;ならびに
viii)IC50を決定する段階
を含むインビトロ細胞障害性アッセイにおいて決定される、
前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0322】
74. IC50が、0.001~0.03μg/mlの範囲である、態様73記載の薬学的組成物。
【0323】
75. IC50が、0.05~5μg/mlの範囲である、態様73記載の薬学的組成物。
【0324】
76. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域を含み、該ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域が、以下を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物:
a)SEQ ID NO: 25のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
b)SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域;
c)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
d)それぞれSEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 30、およびSEQ ID NO: 28のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにそれぞれSEQ ID NO: 34、GAS、およびSEQ ID NO: 35のCDR1、CDR2、およびCDR3を含む可変軽鎖領域;
e)SEQ ID NO: 25の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域;または
f)SEQ ID NO: 29の可変重鎖(VH)領域およびSEQ ID NO: 33の可変軽鎖領域。
【0325】
77. 抗体が二価抗体である、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0326】
78. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が重鎖可変領域(VH)を含み、CDR1がSEQ ID NO: 18に記載のものであり、CDR2がSEQ ID NO: 19に記載のものであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 21に記載のものである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0327】
79. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が軽鎖可変領域(VL)を含み、CDR1がSEQ ID NO: 23に記載のものであり、CDR2がGTNであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 24に記載のものである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0328】
80. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該B7H4に結合できる抗原結合領域が可変重鎖(VH)領域を含み、CDR1がSEQ ID NO: 26に記載のものであり、CDR2がSEQ ID NO: 30に記載のものであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 28に記載のものである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0329】
81. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該B7H4に結合できる抗原結合領域が軽鎖可変領域(VL)を含み、CDR1がSEQ ID NO: 34に記載のものであり、CDR2がGASであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 35に記載のものである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0330】
82. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が、
重鎖可変領域(VH)であって、CDR1がSEQ ID NO: 18に記載のものであり、CDR2がSEQ ID NO: 19に記載のものであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 21に記載のものである、該重鎖可変領域(VH)、ならびに
軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1がSEQ ID NO: 23に記載のものであり、CDR2がGTNであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 24に記載のものである、該重鎖可変領域(VH)
を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域が、
可変重鎖(VH)領域であって、CDR1がSEQ ID NO: 26に記載のものであり、CDR2がSEQ ID NO: 30に記載のものであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 28に記載のものである、該可変重鎖(VH)領域、ならびに
軽鎖可変領域(VL)であって、CDR1がSEQ ID NO: 34に記載のものであり、CDR2がGASであり、およびCDR3がSEQ ID NO: 35に記載のものである、該軽鎖可変領域(VL)
を含む、
前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0331】
83. 抗体が、ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含み、ここで、該CD3に結合する抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 17のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにSEQ ID NO: 22のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、かつ
該B7H4に結合できる抗原結合領域が、
SEQ ID NO: 29のCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変重鎖(VH)領域、ならびにSEQ ID NO: 33のそれぞれCDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域を含む可変軽鎖領域
を含む、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0332】
84. 抗体がbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはそのバイオシミラーである、前記態様のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0333】
85. 医薬として使用するための、態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0334】
86. 疾患の治療のための方法において使用するための、態様85記載の医薬として使用するための薬学的組成物。
【0335】
87. 疾患ががんである、態様86記載の使用のための薬学的組成物。
【0336】
88. がんが、がん細胞におけるB7H4の発現を特徴とする、態様87記載の使用のための薬学的組成物。
【0337】
89. B7H4の発現が、患者から得られたがん細胞において決定される、態様88記載の使用のための薬学的組成物。
【0338】
90. がんが固形腫瘍である、態様87~89記載の使用のための薬学的組成物。
【0339】
91. がんが、肺がん、NSCLC(ADCまたはSQCC)、胃がん、膵臓がん、胆管がん、膀胱がん、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん、卵巣がん、および子宮がんからなる群より選択される、態様87~90のいずれか1つに記載の使用のための薬学的組成物。
【0340】
92. 疾患を治療する方法であって、その必要のある対象に、態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与する段階を含む、該方法。
【0341】
93. がんを治療するためのものである、態様92記載の方法。
【0342】
94. がんが、子宮がん肉腫(UCS)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、膵臓腺がん(PAAD)、肺扁平上皮がん(LUSC)、浸潤性乳がん(BRCA)、子宮体子宮内膜がん(UCEC)、卵巣漿液性嚢胞腺がん(OV)、および胆管がん(CHOL)からなる群より選択される、態様93記載の方法。
【0343】
95. 対象においてがんを治療する方法であって、その必要のある対象に、該がんを治療するのに十分な期間、態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与する段階を含む、該方法。
【0344】
96. 組成物が静脈内投与される、態様95記載の方法。
【0345】
97. がんの治療のための、態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物の使用。
【0346】
98. 態様1~84または97のいずれか1つに記載の薬学的組成物の使用であって、静脈内投与のためのものである、該使用。
【0347】
99. a)ヒトB7H4に結合できる抗原結合領域とヒトCD3に結合できる抗原結合領域とを含む抗体であって、該抗原結合領域が、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、該重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、ヒト化されている、かつ/またはヒト由来である、5pg~1200mgの量の、該抗体、ならびに
b)好ましくは、ヒスチジン、グルタマート、およびそれらの混合物からなる群より選択される、緩衝剤、
を含み、
pHが、4.0~8.0、好ましくは4.5~6.5、より好ましくは5.0~6.0である、単位剤形。
【0348】
100. 抗体が、態様24~84のいずれか1つにおいて定義される、態様99記載の単位剤形。
【0349】
101. 抗体の量が20mg~1000mgである、態様99または100記載の単位剤形。
【0350】
102. 抗体の量が、40mg~1000mg、例えば、40mg、50mg、100mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、600mg、700mg、800mg、900mg、または例えば1gである、態様99~101のいずれか1つに記載の単位剤形。
【0351】
103. 総体積が20ml~200mlであり、剤形が静脈内投与用である、態様99~102のいずれか1つに記載の単位剤形。
【0352】
104. 対象においてがんを治療する方法であって、その必要のある対象に、該がんを治療するのに十分な期間、態様99~103のいずれか1つに記載の単位剤形を投与する段階を含む、該方法。
【0353】
105. がんの治療において使用するための、態様99~103のいずれか1つに記載の単位剤形。
【0354】
106. 態様99~103のいずれか1つに記載の単位剤形または態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物を含む、容器。
【0355】
107.
a)態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物または態様99~103のいずれか1つに記載の単位剤形、
b)該薬学的組成物または該単位剤形のための入れ物、
c)希釈および/または使用のための説明書
を含む、キットオブパーツ:。
【0356】
108.
a)態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物または態様99~103のいずれか1つに記載の単位剤形、
b)希釈剤、
c)該単位剤形のための入れ物、ならびに
d)希釈および/または使用のための説明書
を含む、キットオブパーツ。
【0357】
109. コンパニオン診断薬として使用するための/態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物を用いる治療に応答する性質を有している患者を患者集団内で同定するための、キットであって、態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物と、該キットを使用するための取扱説明書とを含む、該キット
などの、キットオブパーツ。
【0358】
110. 以下:
a)0.5~120mg/mlの抗体、および
b)緩衝剤
を注射用水中で混合する段階、ならびに
pHを4.0~8.0、好ましくは5.0~6.0に調整する段階
を含む、態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物を調製する方法。
【0359】
111. 以下:
a)態様110記載の方法の段階によって、薬学的組成物を調製する段階、または態様1~84のいずれか1つに記載の薬学的組成物を提供する段階;
b)希釈剤を提供する段階;
c)所望の抗体濃度になるように、該薬学的組成物と該希釈剤を混合する段階
を含む、態様99~103のいずれか1つに記載の単位剤形を調製する方法。
【0360】
112. 態様110または111記載の方法のいずれかによって得ることが可能である、薬学的組成物または単位剤形。
【実施例
【0361】
本発明は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに例示される。
【0362】
実施例1 B7H4抗体の作製およびスクリーニング材料
B7H4構築物の発現
様々な完全長B7H4バリアントをコードする構築物を作製した:ヒト(ホモサピエンス)B7H4(Uniprotアクセッション番号Q7Z7D3)、カニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)B7H4転写物1(Uniprotアクセッション番号A0A2K5U6P5)、イヌ(カニス・ファミリアリス)B7H4(Uniprotアクセッション番号F1P8R9)、ウサギ(アナウサギ)B7H4(Uniprotアクセッション番号G1TQE8)、ラット(ドブネズミ)B7H4(Uniprotアクセッション番号Q501W4)、マウス(ハツカネズミ)B7H4(Uniprotアクセッション番号Q7TSP5)、およびブタ(イノシシ)B7H4(Uniprotアクセッション番号F1SAY4)(表1を参照されたい)。
【0363】
さらに、C末端のHisタグおよびCタグを有する、ヒトIgG1 Fcドメインに融合された細胞外ドメイン(ヒトB7H4のECD(Uniprotアクセッション番号Q7Z7D3のアミノ酸25~259))(B7H4ECD-FcHisC)(SEQ ID NO: 12)のための構築物も作製した。SEQ ID NO: 1において、アミノ酸残基1~24はシグナルペプチドであり、したがって、成熟B7H4ECD-FcHisCタンパク質は、SEQ ID NO: 1のアミノ酸残基25~259に相当する。
【0364】
構築物は、クローニングのために適切な制限部位および最適なコザック(GCCGCCACC)配列を含んだ(Kozak, M., Gene 1999;234(2):187-208)。完全長B7H4構築物およびB7H4のECDの構築物を、pSB、すなわち、CMVプロモーターおよびHSV-TKポリAシグナルからなる発現カセットの両側にあるSleeping Beauty末端逆位配列を含む哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。
【0365】
完全長B7H4バリアントを一過性に発現するHEK-293F細胞株の作製
Freestyle(商標)293-F(浮遊増殖および既知組成Freestyle培地に順応させたHEK-293サブクローン[HEK-293F])細胞をInvitrogenから入手し(カタログ番号R790-07)、製造業者の取扱説明書に従って293フェクチン(Invitrogen、カタログ番号12347-019)を用いて、前記の構築物をトランスフェクトした。
【0366】
Hisタグ化B7H4の精製
B7H4ECD-FcHisCを、製造業者によって説明されているように本質的にExpi293F発現プラットフォーム(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA、カタログ番号A14527)を用いて発現させた。
【0367】
Hisタグにより、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーNi-NTAを用いる精製が可能になる。Hisタグ化タンパク質はカラム材料に強く結合するのに対し、培養上清中に存在する他のタンパク質は、結合しないか、またはHisタグ化タンパク質よりも弱く結合し、通過画分に溶出する。弱く結合したタンパク質を除去するために、カラムを洗浄した。次いで、Ni2+へのHisの結合と競合するイミダゾール含有緩衝液を用いて、強く結合したHisタグ化タンパク質を溶出させた。脱塩カラムを用いるバッファー交換によって、溶出剤を除去した。
【0368】
免疫化
OmniRat(登録商標)動物(全面的にヒトイディオタイプを有する多様な抗体レパートリーを発現するトランスジェニックラット;Ligand Pharmaceuticals Inc., San Diego, USA)を免疫化した。免疫化は、両後肢の踵関節に、等体積のアジュバント(Sigmaアジュバント系(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA、カタログ番号S6322)またはCFA、すなわち完全フロイントアジュバント(1回目の注射)およびIFA、すなわち不完全フロイントアジュバント(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA、カタログ番号F5881/F5506)(以降の注射)と混合したPBSに50μgのB7H4ECD-FcHisCを加えたものを皮下注射し(週に2回、7週間)、続いて、アジュバントを含まないPBSに加えた抗原を皮下注射して最終追加免疫を行うことによって行った。
【0369】
抗体作製
最終追加免疫後3日目に、免疫化した動物から得たリンパ節細胞を、標準手順に従ってマウスミエローマSP2.0細胞と融合させた。B7H4特異的抗体を産生するハイブリドーマに由来するRNAを抽出し、製造業者の取扱説明書に従ってSMART RACE cDNA増幅キット(Clontech)を用いて、100ngの全RNAから5’-RACE-相補的DNA(cDNA)を調製した。VHコード領域およびVLコード領域をPCRによって増幅し、ライゲーション非依存性クローニング(Aslanidis, C. and P.J. de Jong, Nucleic Acids Res 1990;18(20): 6069-74)によって、p33G1f発現ベクター、p33カッパ発現ベクター、およびp33ラムダ発現ベクター(それぞれ、コドン最適化したヒトIgG1m(f)定常ドメイン、ヒトカッパ定常ドメイン、およびヒトラムダ定常ドメインを有する、pcDNA3.3ベースのベクター)に直接的にインフレームクローニングした。これらの発現ベクターに由来する可変ドメインを配列決定し、IMGT定義(Lefranc MP. et al., Nucleic Acids Research, 27, 209-212, 1999および Brochet X. Nucl. Acids Res. 36, W503-508 (2008))に従ってCDRにアノテーションを付与した。正確なオープンリーディングフレーム(ORF)を有するクローンを発現させ、抗原への結合に関して試験した。抗原特異的スクリーニングアッセイを実施した後、重鎖および軽鎖の可変領域の配列を遺伝子合成し、次のアミノ酸変異、すなわちL234F、L235E、D265A、およびK409R(FEAR)を含む(ここで、アミノ酸位置番号は、Eu番号付与に従っている(SEQ ID NO: 60に対応する))ヒトIgG1重鎖を含む発現ベクター中に、およびヒトカッパ軽鎖またはヒトラムダ軽鎖を含む発現ベクター中に、クローニングした。抗体の一部について、可変ドメイン中に点変異を有するバリアントを作製して、望まれないジスルフィド架橋形成をもたらす可能性が潜在的にあるシステイン残基を除去するか、またはアスパラギンをセリンもしくは生殖系列残基に置換して潜在的なN結合型グリコシル化部位を除去した。例えば、C1の重鎖および軽鎖の可変領域配列から、CDR2中の置換に相当するN52S置換を有するバリアントを作った(表1、SEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 29を参照されたい)。別のバリアントは、N52Q置換を有することができる(SEQ ID NO: 31)。
【0370】
抗原特異的なスクリーニングアッセイ
免疫化した動物の血清、またはハイブリドーマおよびトランスフェクトーマの培養上清中のB7H4抗体の存在を、均一系結合アッセイで決定した。完全長B7H4バリアントを発現させるために作った構築物を一過性にトランスフェクトされた、ヒトB7H4、カニクイザルB7H4、もしくはマウスB7H4を発現するHEK-293F細胞、またはHEK-293F野生型細胞(陰性対照)に対する抗体の結合について、試料を解析した。これらの細胞に試料を添加して、抗体をB7H4に結合させた。その後、適切な蛍光性コンジュゲート(AffiniPureヤギ抗ラットIgG(H+L) Alexa Fluor(登録商標)647;Jackson ImmunoResearch、カタログ番号112-605-143;AffiniPureヤギ抗ヒトIgG Fcガンマ-Alexa Fluor(登録商標)647;Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-605-098)を用いて、抗体結合を検出した。抗体の骨格に応じて、細胞(2.5×105細胞/ml)を、ヤギ抗ヒトAffiniPureヤギ抗ヒトIgG Fcガンマ-Alexa Fluor(登録商標)647(0.2μg/ml;Jackson ImmunoResearch Laboratories、109-605-098)またはAffiniPureヤギ抗ラットIgG(H+L) Alexa Fluor(登録商標)647(0.2μg/ml;Jackson ImmunoResearch、112-605-143)と混合した。試験抗体および対照抗体の系列希釈物(2倍希釈工程による0.003~3μg/mLの範囲)を調製し、2μlの抗体希釈物を、1536ウェルプレート(Greiner、カタログ番号789866)に入れた5μlの細胞/コンジュゲート混合物に添加した。プレートを室温で9時間インキュベーションし、その後、ImageXpress Velosレーザー走査型サイトメーター(Molecular Devices, LLC, Sunnyvale, CA, USA)を用いて蛍光強度を決定し、全蛍光量を読取り値として使用した。計数値が50より大きく、計数値×蛍光強度が陰性対照より少なくとも3倍大きい場合、試料を陽性とした。
【0371】
B7H4抗体パネル作製の結果
作製されたハイブリドーマ193種のうちの176種から、重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列を成功裡に得た。試験した351組の重鎖/軽鎖組合せのうちで、98組が、前述のヒトB7H4をトランスフェクトされたHEK-293F細胞を用いる抗原スクリーニングアッセイにおいて結合を示した。次の35種の抗体を選択した:元の配列を有する26種および可変ドメインに点変異を導入したバリアント9種。(CD3二重特異性物質としての)一価結合抗体および(IgG1分子としての)二価結合抗体として抗体を作製し、後述するように腫瘍細胞への結合に関して試験した。作製されたパネルに由来する抗体のうちで、抗体B7H4-C1およびそのバリアントB7H4-C1-N52Sのみが、後述するように腫瘍細胞に結合する抗体を与えた。これらの対応するVH抗体可変ドメインコード配列およびVL抗体可変ドメインコード配列は表1に記載している。
【0372】
さらなるB7H4抗体
実施例において、以下の文献で以前に記載されている可変ドメインを含む、B7H4に特異的なさらなる抗体を使用した:WO2014159835に記載されているもの(その中でSEQ ID NO: 38およびSEQ ID NO: 35として参照されている)であって、本明細書においてB7H4-C2に対応し、これらの可変ドメインの関連配列は本明細書の表1に記載されており、SEQ ID NO: 43およびSEQ ID NO: 47が含まれる、もの;WO2014159835に記載されているもの(その中でSEQ ID NO: 56およびSEQ ID NO: 55として参照されている)であって、本明細書においてB7H4-C3に対応し、これらの可変ドメインの関連配列は本明細書の表1に記載されており、SEQ ID NO: 36およびSEQ ID NO: 40が含まれる、もの;WO2009073533に記載されているもの(その中でSEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 7として参照されている)であって、本明細書においてB7H4-C4に対応し、これらの可変ドメインの関連配列は本明細書の表1に記載されており、SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 54が含まれる、もの;ならびにUS20190085080A1に記載されているものであって、本明細書においてB7H4-C5に対応し、これらの可変ドメインの関連配列は本明細書の表1に記載されており、SEQ ID NO: 65およびSEQ ID NO: 69が含まれる、もの。これらの対応するVH抗体可変ドメインコード配列およびVL抗体可変ドメインコード配列を合成し、コドン最適化したヒトIgG1m(f)定常ドメインおよびヒトカッパ定常ドメインもしくはヒトラムダ定常ドメインまたはそれらのバリアントを有するpcDNA3.3ベースのベクターにクローニングして、単一特異性抗体および二重特異性抗体を作製した。抗体IgG1-B7H4-CX-FEALを参照する場合、これは、B7H4-CX可変領域を有し、IgG1アイソタイプのものであり、かつ重鎖の定常領域中にアミノ酸置換L234F、L235E、D265A、およびF409Rを有する抗体を表す。
【0373】
IgG1-b12抗体
抗体b12、すなわちHIV-1 gp120特異的抗体(Barbas, CF. J Mol Biol. 1993 Apr 5; 230(3):812-23)を、陰性対照IgG1として、または対照二重特異性物質の非結合対照Fabアームとして、いくつかの実施例で使用した。この対照抗体のためのコドン最適化した抗体コード配列を合成し、コドン最適化したヒトIgG1m(f)定常ドメインおよびヒトカッパ定常ドメインまたはそれらのバリアントを有するpcDNA3.3ベースのベクターにクローニングした。可変重鎖(VH)領域の配列および可変軽鎖(VL)領域の配列は、それぞれSEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO:15として本明細書に含まれる。
【0374】
実施例2 CD3×B7H4二重特異性抗体を作製するためのヒト化CD3抗体
ヒト化抗体IgG1-huCD3-H1L1(その可変重鎖領域配列および可変軽鎖領域配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 22に記載されている)の作製は、WO2015/001085の実施例1で説明されている。IgG1-huCD3-H1L1は、本明細書において「IgG1-huCD3」と呼ばれる。抗体IgG1-huCD3-H1L1-FEALは、本明細書において後述するように、管理されたFabアーム交換による二重特異性抗体の作製を可能にするアミノ酸置換(F405L)に加えて、Fcドメイン中に3つのアミノ酸置換(L234F、L235E、D265A)を有する、そのバリアントである。このような変異は、該変異が導入される抗体の標的結合に影響を与えないことが示されている(例えば、US 2015/0337049およびEngelberts et al., 2020, EBioMedicine 52: 102625を参照されたい)。
【0375】
ヒト化抗体IgG1-huCD3-H1L1-H101G(その可変重鎖領域配列および可変軽鎖領域配列は、本明細書においてSEQ ID NO: 17およびSEQ ID NO: 22に記載されている)の作製は、WO2017/009442の実施例2で説明されている。IgG1-huCD3-H1L1-H101Gは、「IgG1-huCD3-H101G」と呼ばれる。このバリアントは、可変重鎖領域配列中に置換H101Gを含み(SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 17を比較されたい)、かつIgG1-huCD3-H1L1と同じ軽鎖を有する。抗体IgG1-huCD3-H101G-FEALは、アミノ酸置換L234F、L235E、D265A、およびF405Lを有する、このバリアントである。
【0376】
実施例3 バイオレイヤー干渉法を用いるB7H4結合親和性の決定
B7H4抗体の標的結合親和性を、Octet HTX装置(ForteBio)において非標識バイオレイヤー干渉法(BLI)によって決定した。実験は、30℃、1,000RPMで振盪しながら実施した。最初に、ヒトB7H4およびマウスB7H4に対するIgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、およびIgG1-B7H4-C4-FEARの親和性を、BLIを用いて決定した。抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサー(ForteBio、カタログ番号18-5060)を、10mMグリシン(Sigma-Aldrich、カタログ番号15527)緩衝液、pH1.7に5秒間曝露することによって前準備し、続いて、試料希釈剤(ForteBio、カタログ番号18-1048)中で5秒間、中和した。両方の段階を2回繰り返した。次に、AHCセンサーに抗体(試料希釈剤中、1μg/mL)を600秒間添加した。試料希釈剤中でのベースライン測定(100秒)の後、ヒトB7H4(Sino Biological、カタログ番号10738-H08H-100)またはマウスB7H4(R&D Systems、カタログ番号2154-B7-050)の結合(300秒)および解離(1,000秒)を、試料希釈剤中での2倍希釈工程により、それぞれ濃度範囲1.56~100nM(0.04~2.68μg/mL)および5.9~375nM(0.16~10μg/mL)のヒトB7H4およびマウスB7H4を用いて決定した。アミノ酸配列に基づく(ECD-Hisタグ化分子としての)ヒトB7H4およびマウスB7H4の理論上の分子量(それぞれ26.8kDaおよび26.6kDa)を計算のために使用した。各抗体について、抗原の代わりに試料希釈剤と共にインキュベーションした参照センサーを使用した。10mMグリシン緩衝液、pH1.7に5秒間曝露し、続いて、試料希釈剤中で5秒間中和することによってAHCセンサーを再生し、両方の段階を2回繰り返した。続いて、動態測定の次のサイクルのために、センサーに再び抗体を添加した。
【0377】
データ取得ソフトウェアv9.0.0.49d(ForteBio)を用いてデータを獲得し、データ解析ソフトウェアv9.0.0.12(ForteBio)によって解析した。参照センサーを差し引くことによって、抗体ごとにデータトレースを補正した。Y軸をベースラインの最後の10秒に合わせ、解離に対する段階間補正アライメントおよびSavitzky-Golayフィルタリングを適用した。応答が0.05nm未満であるデータトレースは、解析から除外した。それぞれ300秒および200秒に設定された、結合時間および解離時間についての対象となる時間枠を用いて、1:1 Global Fullフィットモデルによってデータを当てはめた。
【0378】
第2の実験では、ヒトB7H4およびマウスB7H4に対するIgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、IgG1-B7H4-C4-FEAR、およびIgG1-B7H4-C5-FEARの親和性を、BLIを用いて決定した。この実験は、いくつかの小さな例外はあるが、前述のようにして実施した。前準備段階は5回繰り返した。ヒトB7H4またはマウスB7H4の結合(200秒)および解離(1,000秒)は、希釈剤中での2倍希釈工程により濃度範囲0.78~800nMを用いて決定した。データ取得ソフトウェアv12.0.1.8(ForteBio)を用いてデータを獲得し、データ解析ソフトウェアv12.0.1.2(ForteBio)によって解析した。結合時間についての対象となる時間枠200秒および解離時間についての対象となる時間枠200秒を用いて、1:1 Global Fullフィットモデルによってデータを当てはめた。ただし、1,000秒の解離時間を使用したIgG1-B7H4-C2-FEARは除いた。解離時間は、R2値、曲線の目視検査、および解離段階時の少なくとも5%のシグナル減衰に基づいて選択した。100nMを超える抗原濃度を用いて作成したデータトレースは、親和性が50nMを下回る抗体を対象とする解析から除外した。
【0379】
さらに、カニクイザルB7H4に対する親和性もBLIによって決定した。第1の実験において、カニクイザルB7H4に対するbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C3-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEARの親和性を決定した。アミン反応性第2世代(AR2G)バイオセンサー(ForteBio、カタログ番号18-5092)を、20mM EDC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩)(ForteBio、カタログ番号18-1033)および10mM s-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩)(ForteBio、カタログ番号18-1067)と300秒間反応させることによって活性化した。活性化したセンサーに、10mM酢酸ナトリウム、pH4.0(ForteBio、カタログ番号18-1068)に溶かした10μg/mLの組換えhIgG1 Fc-タグ化カニクイザルB7H4(Creative BioMart、カタログ番号VTCN1-1517R)を600秒間添加し、1Mエタノールアミン、pH 8.5(ForteBio、カタログ番号18-1071)で300秒間、反応を停止した。試料希釈剤中でのベースライン測定(300秒;ForteBio、カタログ番号18-1048)の後、(表8に示す)CD3×B7H4二重特異性抗体による機能的に一価のB7H4結合についての結合(100秒)および解離(1,000秒)を、試料希釈剤中での2倍希釈工程により濃度範囲0.23~15μg/mL(1.56~100nM)を用いて決定した。これらの抗体の分子量150kDaを、計算のために使用した。各抗体について、抗体の代わりに試料希釈剤と共にインキュベーションした参照センサーを使用した。
【0380】
データ取得ソフトウェアv9.0.0.49d(ForteBio)を用いてデータを獲得し、データ解析ソフトウェアv9.0.0.12(ForteBio)によって解析した。参照センサーを差し引くことによって、抗体ごとにデータトレースを補正した。Y軸をベースラインの最後の10秒に合わせ、解離に対する段階間補正アライメントおよびSavitzky-Golayフィルタリングを適用した。応答が0.05nm未満であるデータトレースは、解析から除外した。それぞれ100秒および200秒に設定された、結合時間および解離時間についての対象となる時間枠を用いて、1:1 Global Fullフィットモデルによってデータを当てはめた。
【0381】
カニクイザルB7H4に対するB7H4抗体の親和性を決定するための第2の実験において、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEARの親和性を決定した。この実験は、いくつかの小さな例外はあるが、前述のようにして実施した。試料希釈剤中での600秒のベースライン決定の後、(表9に示す)CD3×B7H4二重特異性抗体による機能的に一価のB7H4結合についての結合(200秒)および解離(1,000秒)を、試料希釈剤中での2倍希釈工程により濃度範囲約0.1~116μg/mL(0.78~800nM)を用いて決定した。各抗体の固有分子量(約145kDa)を、計算のために使用した。データ取得ソフトウェアv12(ForteBio)を用いてデータを獲得し、データ解析ソフトウェアv12(ForteBio)によって解析した。応答が0.03nm未満であるデータトレースは、解析から除外した。結合時間および解離時間についての対象となる時間枠200秒を用いて、1:1 Global Fullフィットモデルによってデータを当てはめた。解離時間は、R2値、曲線の目視検査、および解離段階時の少なくとも5%のシグナル減衰に基づいて選択した。200nMを上回る抗体濃度を用いて作成したデートレースは、50nMを下回る親和性を有する抗体を対象とする解析から除外した。決定された結果はすべて、少なくとも0.98のR2を示した。
【0382】
「KD」(M)は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指し、kdをkaで割ることによって得られる。「kd」(sec-1)は、抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。kdは、koff値またはオフレートと呼ばれることもある。「ka」(M-1×sec-1)は、抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。kaは、kon値またはオンレートと呼ばれることもある。
【0383】
表4および表5は、第1の実験および第2の実験の結果を示しており、これらの実験では、ヒトB7H4に対する、表に示した抗体の結合速度定数ka(1/Ms)、解離速度定数kd(1/s)、および平衡解離定数KD(M)をバイオレイヤー干渉法によって決定した。
【0384】
(表4)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、ヒトB7H4細胞外ドメインへの抗体の結合親和性。ND=未決定。
【0385】
(表5)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、ヒトB7H4細胞外ドメインへの抗体の結合親和性。
13回の実験を平均した結果を示している。
【0386】
表6および表7は、2回の実験の結果を示しており、これらの実験では、マウスB7H4に対する、表に示した抗体のka(1/Ms)、kd(1/s)、およびKD(M)をバイオレイヤー干渉法によって決定した。
【0387】
(表6)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、マウスB7H4細胞外ドメインへの抗体の結合親和性。ND=未決定。-=結合なし(使用した最高濃度における応答が0.05nm未満)。
【0388】
(表7)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、マウスB7H4細胞外ドメインへの抗体の結合親和性。-=結合なし(使用した最高濃度における応答が0.05nm未満)。
【0389】
表8および表9は、2回の実験の結果を示しており、これらの実験では、カニクイザルB7H4に対する、表に示した抗体のka(1/Ms)、kd(1/s)、およびKD(M)をバイオレイヤー干渉法によって決定した。
【0390】
(表8)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、カニクイザルB7H4細胞外ドメインへの機能的に一価の抗体の結合親和性。
【0391】
(表9)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、カニクイザルB7H4細胞外ドメインへの機能的に一価の抗体の結合親和性。
a3回の実験を平均した結果を示している。
b厳密な品質管理であるR2閾値0.98を満たさなかった。
【0392】
実施例4 バイオレイヤー干渉法を用いる、CD3結合親和性の決定
IgG1-huCD3-FEALおよびIgG1-huCD3-H101G-FEALの結合親和性を、WO2017/009442の実施例7で説明されているようにして決定した。
【0393】
要するに、組換え可溶性CD3ε(CD3E27-GSKa)(SEQ ID NO: 13の成熟タンパク質)に対する、IgG1-huCD3-FEAL型の選択されたCD3抗体の結合親和性を、ForteBio Octet HTX(ForteBio)においてバイオレイヤー干渉法を用いて決定した。抗ヒトFc捕捉バイオセンサー(ForteBio、カタログ番号18-5060)にhIgG(1μg/mL)を600秒間添加した。ベースライン測定(200秒)の後、CD3E27-GSKaの結合(1000秒)および解離(2000秒)を、3倍希釈工程(試料希釈剤、ForteBio、カタログ番号18-5028)によりCD3E27-GSKa濃度範囲27.11μg/mL~0.04μg/mL(1000nM~1.4nM)を用いて決定した。計算には、アミノ酸配列に基づくCD3E27-GSKaの理論上の分子量、すなわち27.11kDaを使用した。実験は、30℃、1000rpmで振盪しながら実施した。各抗体を、少なくとも2回の独立した実験において試験した。結合時間1000秒および解離時間100秒で、1:1モデルおよびグローバルフルフィットを用いて、ForteBioデータ解析ソフトウェアv8.1によってデータを解析した。参照曲線(抗体をバイオセンサー上に載せ、試料希釈剤のみを用いて決定)を差し引くことによって、データトレースを補正した。Y軸をベースラインの最後の10秒に合わせ、段階間補正およびSavitzky-Golayフィルタリングを適用した。応答が0.05nm未満であるデータトレースは、解析から除外した。
【0394】
表10は、バイオレイヤー干渉法によって決定した、組換えCD3εに対する結合速度定数ka(1/Ms)、解離速度定数kd(1/s)、および平衡解離定数KD(M)を示す。IgG1-huCD3-FEALは、IgG1-huCD3-H101G-FEAL(KD:683nM)と比べて相対的に高い(KD:15nM)、組換えCD3εに対する結合親和性を示した。
【0395】
(表10)非標識バイオレイヤー干渉法によって決定した、組換えCD3εへの単一特異性二価CD3抗体の結合親和性
【0396】
実施例5 バイオレイヤー干渉法によって決定した、B7H4抗体の交差妨害
従来のサンドイッチ型の抗体交差妨害解析(エピトープビニング)を、Octet HTX装置(ForteBio)においてBLIを用いて実施した。IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、およびIgG1-B7H4-C4-FEARを用いる第1の交差妨害実験を、1,000RPMで振盪しながら30℃で実施した。
【0397】
アミン反応性第2世代(AR2G)バイオセンサー(ForteBio、カタログ番号18-5092)を、20mM EDC(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N′-エチルカルボジイミド塩酸塩)(Sigma-Aldrich、カタログ番号03449)および10mM s-NHS(N-ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩)(Sigma-Aldrich、カタログ番号56485)の溶液を用いて300秒間活性化した。活性化したAR2Gセンサーに、10mM酢酸ナトリウム、pH6.0(ForteBio、カタログ番号18-1070)に溶かした20μg/mLの第1抗体を600秒間添加し、1Mエタノールアミン、pH8.5(ForteBio、カタログ番号18-1071)で300秒間、反応を停止した。試料希釈剤中でのベースライン測定(50秒;ForteBio、カタログ番号18-1048)の後、固定化した抗体を含むAR2Gバイオセンサーに、ヒトB7H4(試料希釈剤中で希釈した100nMまたは2.68μg/mL;Sino Biological、カタログ番号10738-H08H)を300秒間添加した。アミノ酸配列に基づくヒトB7H4の理論上の分子量(26.8kDa)を計算のために使用した。第2抗体(試料希釈剤中10μg/mL)の結合(300秒)を決定した。10mMグリシン(Riedel-de Haen、カタログ番号15527)緩衝液、pH2.5に5秒間曝露し、続いて、試料希釈剤中で5秒間中和することによってセンサーを再生した。両方の段階を2回繰り返した。続いてベースライン段階から始めて、固定化した第1抗体を含むセンサーを再び使用した。
【0398】
データ取得ソフトウェアv9.0.0.49d(ForteBio)を用いてデータを獲得し、データ解析HTソフトウェアv10.0.17(ForteBio)によって解析した。固定化した第1抗体からのB7H4の解離に対する補正を施すために、参照曲線(第2抗体の代わりに試料希釈剤)を差し引くことによって、データトレースを補正した。Y軸を結合段階の開始時に合わせ、Savitzky-Golayフィルタリングを適用した。第2抗体の補正した結合応答をマトリックスフォーマットで表した。通常、0.05nmを上回る応答を非交差妨害抗体とみなし、一方、0.05nmを下回る応答を、妨害しあう抗体ペアであるとみなした。
【0399】
交差妨害実験を、IgG1-B7H4-C5-FEARも含めるために繰り返し、軽微な改変を加えたうえで、前述のようにして実施した。実験は、22℃、1,000RPMで振盪しながら実施した。データ取得ソフトウェアv12.0.1.8(ForteBio)を用いてデータを獲得し、データ解析HTソフトウェアv12.0.1.55(ForteBio)によって解析した。通常、0.1nmを上回る応答を非交差妨害抗体とみなし、一方、0.1nmを下回る応答を、妨害しあう抗体ペアであるとみなした。
【0400】
抗体IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、IgG1-B7H4-C4-FEAR、およびIgG1-B7H4-C2-FEARを対象として、最初の交差妨害実験一式を実施した。これらの結果を表11にまとめて示す。IgG1-B7H4-C5-FEARも含めるために、第2の交差妨害実験一式を実施した。これらの結果を表12にまとめて示す。1つめの縦列は、固定化された抗体を示す;1つめの横列は、溶液中の抗体(上記で「第2抗体」と呼ばれる)を示す。溶液中の抗体の補正した結合応答を示している。抗体の交差妨害を濃い灰色で示しており、妨害しあわない抗体組合せは印をつけていない(無色の背景)。IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、およびIgG1-B7H4-C5-FEARは互いに交差妨害し、IgG1-B7H4-C4-FEARおよびIgG1-B7H4-C2-FEARとは交差妨害せず、逆もまた同様であることを示している。
【0401】
(表11)バイオレイヤー干渉法を用いる、第1の抗体交差妨害実験。
1つめの縦列は、固定化された抗体を示し、1つめの横列は、溶液中の抗体を示す。溶液中の抗体の補正した結合応答を示している。抗体の交差妨害を濃い灰色で示しており、妨害しあわない抗体組合せは印をつけていない(無色の背景)。
【0402】
(表12)バイオレイヤー干渉法を用いる、第2の抗体交差妨害実験。
1つめの縦列は、固定化された抗体を示し、1つめの横列は、溶液中の抗体を示す。溶液中の抗体の補正した結合応答を示している。抗体の交差妨害を濃い灰色で示しており、妨害しあわない抗体組合せは印をつけていない(無色の背景)。
【0403】
実施例6 2-MEAによって誘導されるFabアーム交換による、二重特異性抗体の作製
DuoBody(登録商標)プラットフォーム技術、すなわち、WO2011147986、WO2011131746、およびWO2013060867(Genmab)ならびにLabrijn et al. (Labrijn et al., PNAS 2013, 110: 5145-50; Gramer et al., MAbs 2013, 5: 962- 973)に記載されている、2-MEAによって誘導されるFabアーム交換を用いて、二重特異性抗体をインビトロで作製した。この方法による二重特異性抗体の生産を可能にするために、CH3ドメイン中に特定の点変異を有する次のIgG1分子を作製した:一方の親IgG1抗体中にF405L変異(すなわち、本出願におけるCD3抗体)、他方の親IgG1抗体中にK409R変異(すなわち、本出願におけるB7H4抗体またはHIV-1 gp120特異的な対照抗体)。これらの変異に加えて、親IgG1抗体は、置換L234F、L235E、D265A(FEA)も含んだ。
【0404】
二重特異性抗体を作製するために、等質量の2種の親抗体を、PBS緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水;8.7mM HPO4 2-、1.8mM H2PO4 -、163.9mM Na+、140.3mM Cl-、pH7.4)中で混合した。2-メルカプトエチルアミン-HCl(2-MEA)を最終濃度が75mMになるまで添加し、反応混合物を31℃で5時間インキュベーションした。鎖間ジスルフィド結合の再酸化およびインタクトな二重特異性抗体の形成を可能にするために、分子量カットオフ値10kDaのSlide-A-Lyzerキャリッジ(Thermo Fisher Scientific)を製造業者のプロトコールに従って用いてPBS緩衝液中に透析することによって、2-MEAを除去した。
【0405】
以下の抗体を実施例において使用した。
B7H4抗体
IgG1-B7H4-C1-FEAR(SEQ ID NO: 25およびSEQ ID NO: 33に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
IgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR(SEQ ID NO: 29およびSEQ ID NO: 33に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
IgG1-B7H4-C2-FEAR(SEQ ID NO: 43およびSEQ ID NO: 47に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
IgG1-B7H4-C3-FEAR(SEQ ID NO: 36およびSEQ ID NO: 40に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
IgG1-B7H4-C4-FEAR(SEQ ID NO: 50およびSEQ ID NO: 54に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
IgG1-B7H4-C5-FEAR(SEQ ID NO: 65およびSEQ ID NO: 69に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
アノテーションIgG1は、IgG1アイソタイプの完全長抗体が作られたことを示し、アノテーションFEARは、重鎖定常領域がアミノ酸置換L234F、L235E、D265A、およびK409Rを含み、かつ軽鎖定常領域がカッパ型のものであった(それぞれSEQ ID NO: 61およびSEQ ID NO: 63)ことを示す。
【0406】
CD3抗体
IgG1-huCD3-FEAL(SEQ ID NO: 16およびSEQ ID NO: 22に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
IgG1-huCD3-H101G-FEAL(SEQ ID NO: 17およびSEQ ID NO: 22に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
アノテーションIgG1は、IgG1アイソタイプの完全長抗体が作られたことを示し、アノテーションFEALは、重鎖定常領域がアミノ酸置換L234F、L235E、D265A、およびF405Lを含み、かつ軽鎖定常領域がラムダ型のものであった(それぞれSEQ ID NO: 60およびSEQ ID NO: 64)ことを示す。
【0407】
対照抗体
IgG1-b12-K409R(SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 15に記載されているVH配列およびVL配列を有する)。
アノテーションIgG1は、IgG1アイソタイプの完全長抗体が作られたことを示し、アノテーションK409Rは、重鎖定常領域がアミノ酸置換K409Rを含み、かつ軽鎖定常領域がカッパ型のものであった(それぞれSEQ ID NO: 62およびSEQ ID NO: 63)ことを示す。
【0408】
二重特異性抗体
前述のCD3抗体およびB7H4抗体を組み合わせて、ヒトCD3に結合できる1つの抗原結合領域およびB7H4に結合できるもう1つの抗原結合領域を有する二重特異性抗体を作製することにより、アイソタイプIgG1の二重特異性抗体を提供した。これをbsIgG1とアノテートする。
bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-FEAR
bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR
bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEAR
bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C3-FEAR
bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C4-FEAR
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C2-FEAR
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C3-FEAR
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEAR
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEAR
bsIgG1-huCD3-FEAL×b12-FEAR(SEQ ID NO: 14およびSEQ ID NO: 15に記載されているVH配列およびVL配列を有するb12アームの場合)
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×b12-FEAR
【0409】
実施例7 B7H4-B7H3キメラ分子およびB7H4アラニンスキャニングライブラリーを用いる、結合に関与しているB7H4ドメインおよび機能的エピトープの決定
エンドポイント解析によるB7H4-B7H3キメラ分子を用いるドメインマッピング
B7H4抗体のB7H4ドメイン特異性を、ヒトB7H4、ヒトB7H3(細胞外ドメイン中に十分なアミノ酸配列差異を有する、構造的に類似したタンパク質)、または2種の異なるヒトB7H4-B7H3キメラ分子を発現するようにトランスフェクトした細胞のパネルを用いて決定した。ヒトB7H4、ヒトB7H3(Uniprotアクセッション番号Q5ZPR3-1;SEQ ID NO: 9)、またはB7H3のIgVドメインおよびB7H4のIgCドメインを含むキメラ分子(B7H3-IgV/B7H4-IgC;SEQ ID NO: 11)、またはB7H4のIgVドメインおよびB7H3のIgCドメインを含むキメラ分子(B7H4-IgV/B7H3-IgC;SEQ ID NO: 10)をコードする発現構築物を調製した。HEK細胞を一過性にトランスフェクトして、これらの構築物を発現させた。
【0410】
PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(FACS緩衝液)50μLに溶かした抗体の段階希釈物(3倍希釈工程により0.0046~10μg/mLの範囲)を入れたポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、カタログ番号650101)中で、細胞(3×104細胞/ウェル)を4℃で30分間、インキュベーションした。FACS緩衝液中で2回洗浄した後、細胞を4℃で30分間、二次抗体と共にインキュベーションした。二次抗体として、R-フィコエリトリン(PE)結合型ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2(染色緩衝液中1:500;Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA、カタログ番号109-116-098)を使用した。次に、細胞をFACS緩衝液中で2回洗浄し、FACS緩衝液20μL中に再懸濁し、iQueスクリーナー(Intellicyt Corporation, USA)によって解析した。10μg/mLのbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C4-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C3-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEARの結合を、10μg/mLの以下の物質の結合についての平均蛍光強度(MFI)パーセントとして決定した。
・IgG1-B7H3-BRCA84D(WO2011109400において抗体BRCA84Dについて説明されているCDR配列を有する、前述のようにして作製したB7H3特異的IgG1抗体)の、B7H3発現細胞への結合、
・bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C4-FEARの、B7H3-IgV/B7H4-IgC発現細胞への結合、
・bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEARの、B7H4-IgV/B7H3-IgC発現細胞への結合、
・およびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C3-FEARの、B7H4発現細胞への結合。
【0411】
図1は、B7H4のIgCドメインがbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C4-FEARの結合に関与していること、B7H4のIgCドメインおよびIgVドメインの両方がbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C3-FEARの結合に関与していること、ならびにB7H4の少なくともIgVドメインがbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEARの結合に関与していることを示す。bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEARを作り出すために使用した可変ドメインが由来するC2抗体に関して、該C2抗体がIgVドメインに結合することが説明されている;図1のデータは、IgCドメインもまた結合に関与していることを示す(WO2014159835およびLeong et al 2015, Mol. Pharmaceutics 12, 1717-1729)。
【0412】
完全な用量反応曲線の解析を用いる、B7H4-B7H3キメラ分子を使用したドメインマッピング
さらなる実験を実施して、完全な用量反応曲線の解析によって、B7H4抗体のB7H4ドメイン特異性をより詳細に調査した。これらの実験では、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEARのドメイン特異性も決定した。ヒトB7H4またはB7H4-B7H3キメラ分子であるB7H3-IgV/B7H4-IgCもしくはB7H4-IgV/B7H3-IgCを発現するように一過性にトランスフェクトしたHEK細胞への、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C2-FEAR、bsIgG1-huCD-H101G-FEAL×B7H4-C3-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEARの段階希釈物(3倍希釈工程により0.014~30μg/mL)の結合を、前述したようにして決定した。図2は用量反応曲線を示しており、アラニンスキャニングライブラリー実験の調査結果に合致して、B7H4のIgCドメインがbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの結合に関与していることを示している。さらに、IgVドメインは、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C2-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEAR、およびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEARの結合に関与しており、一方、bsIgG1-huCD3-H101GFEAL×B7H4-C3-FEARの結合にはIgCドメインおよびIgVドメインの両方が関与していると思われる。
【0413】
B7H4アラニンスキャニングライブラリーを用いる、B7H4抗体の結合に対するB7H4アミノ酸残基の寄与の決定
ライブラリー設計
ヒトB7H4の細胞外ドメイン中の、アラニンまたはシステインを含む位置以外のアミノ酸残基すべてを個々にアラニンに変異させた、ヒトB7H4(Uniprot Q7Z7D3-1)単一残基アラニンライブラリーを合成した(GeneArt)。システインは、抗原の構造破壊の可能性を最小化するために、変異させなかった。このライブラリーを、CMV/TK-ポリA発現カセット、Amp耐性遺伝子、およびpBR322複製起点を含むpMAC発現ベクター中にクローニングした。
【0414】
ライブラリーの作製およびスクリーニング
抗体C1-N52S、C2、およびC3を、mNeonGreenタグを用いて、WO2007059782に記載されているような組換え一価抗体として作製した。野生型B7H4およびアラニン変異体を、製造業者の取扱説明書(Thermo Scientific)に従ってFreeStyle HEK293細胞において個別に発現させた。トランスフェクション後1日目に、細胞を回収した。約50,000個の細胞を、関心対象のmNeoGreen標識抗体20μLと共にインキュベーションした。細胞を室温で1時間インキュベーションした。続いて、FACS緩衝液150μLを添加し、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄した。細胞を新しいFACS緩衝液30μL中に再懸濁し、iQueスクリーナー(Intellicyt Corporation, USA)を用いてフローサイトメトリーによって解析した。
【0415】
実験全体を2つ1組で2回実施した。
【0416】
データ解析
試料ごとに、細胞当たりの抗体結合の平均を、ゲートをかけられていない細胞集団の蛍光強度(gMFI)の幾何平均として決定した。gMFIは、B7H4変異体に対する抗体の親和性および細胞当たりのB7H4変異体の発現レベルの影響を受ける。個々のアラニン変異が変異B7H4の表面発現レベルに影響を与え得るため、各B7H4変異体全般の発現の違いを補正するために、下記の式を用いて、交差妨害しないB7H4特異的参照抗体の結合強度に対してデータを正規化した。
式中、C2をC1-N52SおよびC3に対する参照抗体として使用し、C1-N52SをC2に対する参照抗体として使用し、かつ「aa位置」は、B7H4の特定のala変異体または野生型(wt)B7H4のいずれかを指す。
【0417】
抗体の結合の減少または増加を変化倍率の線形目盛上に表すために、下記の計算を使用した。
【0418】
結合の増加は、大半の場合、個々のala変異体に対する参照抗体の結合が減少したことに起因する。
【0419】
これらの計算において、アミノ酸をアラニンで置換した際に、特定の抗体による結合の減少も増加もないアミノ酸位置は、「0」という結果を与え、結合の増加は「>0」という結果になり、結合の減少は「<0」という結果になる。試料の多様性に対する補正を施すために、結合の変化倍率が平均変化倍率-1.5×SDより小さい(SDは、特定の試験抗体を対象とした4回の独立した実験から算出された変化倍率の標準偏差である)B7H4アミノ酸残基のみを「結合減少変異体」とみなした。
【0420】
特定のB7H4変異体に対する参照抗体のgMFIが、平均gMFI-2.5×(平均gMFI対照AbのSD)より小さい場合、データを解析から除外した(これらのB7H4変異体については発現レベルが十分でないと想定した)。
【0421】
図3は、ECD中にala変異を有するB7H4バリアントに対するB7H4抗体の結合の変化倍率を示し、結合の変化倍率が平均変化倍率-1.5×SDより小さかったアミノ酸残基にアノテーションを付している。変化倍率は、図3においてZスコアとして示している。これらの結果から、以下のことが示される:
・抗体C1-N52Sの結合が、ヒトB7H4のIgCドメイン中に存在する、アミノ酸S151、V157、D158、Y159、E164、L166、W173、P175、P177、V179、W181、F199、M208、V210、T222、Y223、V240、E242、およびI245に少なくとも依存していること、
・抗体C2の結合が、ヒトB7H4のIgV中に存在する、アミノ酸R98、G99、R116、K118、N119、およびD124に少なくとも依存していること、ならびに
・抗体C3の結合が、ヒトB7H4のIgCドメイン中に存在する、アミノ酸N156、E164、V217、およびR248に少なくとも依存していること、ならびに
・抗体C1-N52S、C2、およびC3が、B7H4上の異なる機能的エピトープを認識すること。
【0422】
実施例8 様々な種に由来するB7H4へのB7H4単一特異性抗体およびCD3×B7H4二重特異性抗体の結合
最初に、ヒトB7H4またはカニクイザル(マカカ・ファシキュラリス)B7H4を一過性にトランスフェクトしたHEK-293F細胞に対する二重特異性CD3×B7H4抗体および単一特異性B7H4抗体の結合を、フローサイトメトリーによって解析した。トランスフェクトされていないHEK-293F細胞を陰性対照として使用した;これらの細胞は(また)CD3を発現しないことを確認した。
【0423】
PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(染色緩衝液)100μLに溶かした抗体の段階希釈物(4倍希釈工程により0.000458~30μg/mLの範囲)を入れたポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one、カタログ番号650180)中で、細胞(3×104細胞/ウェル)を4℃で30分間、インキュベーションした。実験は、技術的デュプリケートで実施した。染色緩衝液中で2回洗浄した後、細胞を4℃で30分間、二次抗体50μL中でインキュベーションした。二次抗体として、R-フィコエリトリン(PE)結合型ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)2(FACS緩衝液中1:500;Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc., West Grove, PA、カタログ番号109-116-098)を使用した。細胞を染色緩衝液中で2回洗浄し、Topro-3(1:10,000希釈)を含むFACS緩衝液30μL中に再懸濁し、iQueスクリーナー(Intellicyt Corporation, USA)によって解析した。GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、結合曲線を非線形回帰(可変勾配を有するシグモイド用量反応)によって解析した。
【0424】
図4は、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの両方が、ヒトB7H4またはカニクイザルB7H4を発現する細胞に結合したことを示す。
【0425】
次に、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、またはブタに由来するB7H4を一過性にトランスフェクトしたHEK-293F細胞に対する結合を、前述したようにして決定した。図5は、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARが、イヌ、ウサギ、ラット、およびマウスに由来するB7H4に様々な程度で結合したことを示す;それぞれについて、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの見かけの親和性(EC50)は、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEARのものより小さかった。bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARはブタB7H4に結合できなかったのに対し、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEARは、試験したうちの最高抗体濃度でのみ、弱い結合を示した。
【0426】
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびIgG1-B7H4-C1-N52S-FEARのヒトB7H4およびカニクイザルB7H4への結合についてのEC50は、似通った範囲にあった。
【0427】
同様の研究を実施して、様々な種(ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、およびブタ)に由来するB7H4へのIgG1-B7H4-C1-052S-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、IgG1-B7H4-C4-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、およびIgG1-B7H4-C5-FEARの結合を比較した。図6は、ヒトB7H4またはカニクイザルB7H4をトランスフェクトしたHEK細胞への結合が、試験した抗体間で似ていたことを示す。ウサギB7H4およびイヌB7H4を発現する細胞を用いた場合も、同様の結果が得られた。しかし、マウスB7H4へのIgG1-B7H4-C1-N52S-FEARの結合は、IgG1-B7H4-C3-FEAR、IgG1-B7H4-C4-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、およびIgG1-B7H4-C5-FEARの結合と比べて弱いと思われた。このことは、実施例3の結果と一致している。また、ラットB7H4へのgG1-B7H4-C1-N52S-FEARおよびIgG1-B7H4-C3-FEARの結合は、IgG1-B7H4-C4-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、およびIgG1-B7H4-C5-FEARと比べて弱いと思われた。さらに、IgG1-B7H4-C4-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、およびIgG1-B7H4-C5-FEARはブタB7H4に結合したが、IgG1-B7H4-C1-052S-FEARの結合は非常に弱く、試験したうちの最高抗体濃度でのみ現れた。ブタB7H4へのIgG1-B7H4-C3-FEARの結合は検出不可能であった。
【0428】
実施例9 B7H4発現ヒト腫瘍細胞株へのB7H4単一特異性抗体およびCD3×B7H4二重特異性抗体の結合
B7H4発現ヒト腫瘍細胞株MCF-7(乳腺がん;ATCCカタログ番号HTB-22)、MDA-MB-468(乳腺がん;ATCC、カタログ番号HTB-132)、およびSK-BR3(乳腺がん;ATCCカタログ番号HTB-30)へのIgG1-B7H4-C1-N52S-FEARならびに/またはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよび/もしくはbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの結合、ならびにB7H4発現ヒト腫瘍細胞株NIH-OVCAR-3(卵巣腺がん;ATCC、カタログ番号HTB-161)またはHCC1954(乳管がん;ATCC、カタログ番号CRL-2338)へのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの結合を決定した。さらに、MDA-MB-468細胞およびHCC1954細胞へのIgG1-B7H4-C1-N52S-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR、IgG1-B7H4-C2-FEAR、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C2-FEARもしくはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C2-FEAR、IgG1-B7H4-C3-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C3-FEAR、IgG1-B7H4-C4-FEAR、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C4-FEAR、IgG1-B7H4-C5-FEAR、および/またはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C5-FEARの結合も決定した。典型的には、固形腫瘍細胞株はCD3を発現しない。陰性対照として、検出可能なB7H4発現を示さない腫瘍細胞株HeLa(子宮頸腺がん;ATCC、カタログ番号CCL-2)を使用した。前述のフローサイトメトリーによって、結合を解析した。
【0429】
図7は、IgG1-B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARがMCF-7細胞およびMDA-MB-468細胞に対して同程度の用量依存的結合を示し、最大結合レベルが同程度であったことを示す。
【0430】
図8は、NIH-OVCAR-3細胞およびHCC1954細胞へのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの用量依存的結合ならびにB7H4非発現細胞株HeLaへの検出可能な結合がないことを示す。
【0431】
B7H4発現腫瘍細胞へのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの結合を、MDA-MB-486細胞およびSK-BR3細胞を用いて比較した。図9は、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARがこれらの細胞に対して同程度の用量依存的結合を示し、最大結合レベルが同程度であったことを示す。
【0432】
図10は、ホモ二量体型または二重特異性抗体型のC1-N52S、C2、C3、C4、およびC5 B7H4抗体の、MDA-MB-468細胞およびHCC1954 細胞への用量依存的結合を示す。C4およびC5をベースとする抗体が、最も効率的な結合を示し、C1-N52SおよびC2をベースとする抗体が、中程度の結合効率を示し、C3をベースとする抗体が、最も低い結合効率を示した。最大結合は、C1-N52S、C2、C4、およびC5をベースとする抗体間では同程度であったが、C3をベースとする抗体では低レベルであった。
【0433】
実施例10 原発腫瘍細胞に対するB7H4抗体の結合
卵巣がん患者に由来する原発腫瘍細胞をDiscovery Life Sciences(Huntsville, AL, USA;患者ID 110045042)から得た。腫瘍細胞へのIgG1-B7H4-C1-N52S-FEARの結合をフローサイトメトリーによって評価した:細胞をポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greinerbio-one、カタログ番号650180)に2×104細胞/ウェルで播種し、遠心分離し、PBS中で1:1000希釈した50μlの固定可能な生死判別染色剤FVS-BV510(BD Biosciences、カタログ番号564406)と共に、4℃で30分間インキュベーションした。染色緩衝液中で洗浄後、FITC標識したIgG1-B7H4-C1-N52S-FEARならびにCD3特異的抗体(EF450標識;eBioscience、カタログ番号48-0037-42)、CD45特異的抗体(BV786標識;Biolegend、カタログ番号304048)、CD14特異的抗体(PE-Cy7標識;BD Biosciences、カタログ番号557742)、CD86特異的抗体(PerCP-Cy5.5標識;Biolegend、カタログ番号305420)、CD163特異的抗体(APC-Cy7標識;Biolegend、カタログ番号333622)、およびEpCAM特異的抗体(AF700標識;R&D Systems、カタログ番号FAB9601N)のパネルと共に、4℃で30分間、細胞をインキュベーションした。洗浄後、細胞を染色緩衝液中に再懸濁し、FACS Fortessa (BD Biosciences)を用いて解析した。散乱FSC/SSCに基づいて単細胞にゲートをかけ、FVS-BV510陽性細胞を除外することによって生細胞を同定した。腫瘍細胞はEpCAM陽性細胞として同定した。
【0434】
フローサイトメトリー解析により、IgG1-B7H4-N52S-FEARは、卵巣がん試料の解離させた腫瘍細胞の懸濁液のうちでEpCAM陽性の生存腫瘍細胞には結合するが単球にもT細胞にも結合しないことが示された。
【0435】
実施例11 様々なエフェクター対標的比で精製T細胞をエフェクター細胞として用いる、CD3×B7H4二重特異性抗体による、T細胞媒介性細胞障害性のインビトロ誘導
二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの存在下でのT細胞媒介性腫瘍細胞死滅の効率を明らかにするために、標的細胞としてのB7H4陽性腫瘍細胞株およびエフェクター細胞としての精製T細胞を様々なエフェクター対標的細胞(E:T)比で用いて、インビトロ細胞障害性アッセイを実施した。
【0436】
T細胞は、健常ヒトドナーのバフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)から取得し、製造業者の取扱説明書に従ってRosetteSep(商標)ヒトT細胞濃縮カクテル(Stemcell Technologies, France、カタログ番号15061)を用いて単離した。SK-BR3細胞(16,000細胞/ウェル)を平底96ウェルプレート(Greiner-bio-one, The Netherlands、カタログ番号655180)に播種し、37℃で4時間放置して接着させた。2:1、4:1、または8:1のエフェクター対標的(E:T)比で、T細胞を腫瘍細胞に加えた。bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの段階希釈物を添加し(10,000~0.0128 ng/mLの範囲の最終濃度;5倍希釈)、プレートを37℃で72時間インキュベーションした。プレートをPBSで3回洗浄し、37℃で4時間、細胞を150μl/ウェルの10% alamarBlue(登録商標)溶液(Invitrogen、カタログ番号DAL1100)と共にインキュベーションした。細胞障害性についての陽性対照として、細胞を16μg/mLフェニルアルシンオキシド(PAO;Sigma-Aldrich、カタログ番号P3075;ジメチルスルホキシド[DMSO;Sigma-Adrich、カタログ番号D2438]中に溶解)と共にインキュベーションした。腫瘍細胞培養物の、したがって生存腫瘍細胞の代謝活性の指標であるAlamarBlue蛍光を、EnVisionプレートリーダー(PerkinElmer)において615nm(OD615)で決定した。PAOで処理した腫瘍細胞試料の吸光度を0%生存能力に設定し、未処理の腫瘍細胞試料の吸光度を100%生存能力に設定した。「生細胞率(%)」を以下のようにして計算した。
生細胞率(%)=([試料の吸光度-PAOで処理した標的細胞の吸光度]/[未処理標的細胞の吸光度-PAOで処理した標的細胞の吸光度])×100
【0437】
GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、非線形回帰解析(可変勾配を有するシグモイド用量反応)によって用量反応曲線を作成しIC50値を決定した。
【0438】
図11は、どのE:T比においてもT細胞媒介性細胞障害性が観察され、8:1のE:T比において最大腫瘍細胞死滅(生存腫瘍細胞が10%未満)が観察されたことを示す。
【0439】
実施例12 CD3×B7H4二重特異性抗体による、様々な腫瘍細胞株における細胞障害性のインビトロ誘導およびB7H4発現レベルとの相関
様々なB7H4発現腫瘍細胞株を対象とする、二重特異性抗体bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARによるT細胞媒介性死滅を、8:1のE:T比を用いて、前述のインビトロ細胞障害性アッセイで決定した。次の細胞株を使用した:MCF-7、MDA-MB-486、SK-BR3、NIH-OVCAR-3、HCC1954、およびNCI-H1650。(後述するように、T細胞活性化およびサイトカイン放出を決定するための)洗浄およびalamarBlueインキュベーションの前に、各インキュベーションから、T細胞を含む上清150μLをU底96ウェル培養プレート(CellStar、カタログ番号650180)に移した。
【0440】
これらの腫瘍細胞株を対象として、B7H4を検出するためにbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARを用いて、製造業者の取扱説明書に従って定量的フローサイトメトリー(ヒトIgGキャリブレーター、BioCytex)を行うことにより、B7H4発現を定量した。
【0441】
図12は、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの両方が、MCF-7細胞、MDA-MB-486細胞、SK-BR3細胞、NIH-OVCAR-3細胞、およびHCC1954細胞において、用量依存的なT細胞媒介性細胞障害性をインビトロで誘導したことを示す。両方のbsAbバリアントの場合に最大細胞障害性活性(<10%生存腫瘍細胞)が達成されたが、これは、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARと比較してbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの方が低濃度で起こった(表13)。
【0442】
bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの場合もbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの場合も(図13B)、腫瘍細胞溶解とB7H4発現レベルの間に有意な関係は観察されなかった(図13A)。図13Bは、各細胞株を対象としてbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの存在下で行った、4~6名のドナーに由来するT細胞を用いるT細胞媒介性死滅のIC50を示す。細胞株をB7H4発現レベルの最も低いものから最も高いものへの順番で並べている。これは、広範囲のB7H4発現レベルにわたってT細胞媒介性死滅が起こることが可能であることを意味する。
【0443】
表13では、5種の細胞株および4名のドナーから構成されるパネルから得た結果をまとめて示している。
【0444】
(表13)CD3×B7H4二重特異性抗体による、様々な腫瘍細胞株における細胞障害性のインビトロ誘導。
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARはまた、試験したNCI-H1650 NSCLC細胞株に対するT細胞媒介性の細胞障害性を用量依存的に誘導した。
【0445】
実施例13 B7H4陽性腫瘍細胞の存在下での、CD3×B7H4二重特異性抗体によるT細胞活性化およびサイトカイン産生のインビトロ誘導
実施例12で説明したインビトロのT細胞媒介性細胞障害性実験の間に採取した上清を入れたU底96ウェル培養プレートを4℃で3分間遠心分離(300×g)し、その後、サイトカイン産生決定のために75μLの上清を新しいプレートに移し、T細胞活性化を評価するためにT細胞を保存した(後述)。製造業者の取扱説明書に従って、マルチプレックスUプレックスアッセイ(MeSo Scale Discovery, USA、カタログ番号K15049K)によってサイトカイン産生を解析した。
【0446】
T細胞マーカーCD3(1:200;eBioscience、クローンOKT3、eFluor450にコンジュゲートされたもの)、CD4(1:50;eBioscience、クローンOKT4、APC-eFluor780にコンジュゲートされたもの)、CD8(1:100;Biolegend、クローンRPA-T8、AF700にコンジュゲートされたもの)、およびT細胞活性化マーカーCD69(1:50;BD Biosciences、クローンAB2439、APCにコンジュゲートされたもの)、CD25(1:50; eBioscience、クローンBC96、PE-Cy7にコンジュゲートされたもの)、およびCD279/PD1(1:50;Biolegend、クローンEH12.2H7、BV605にコンジュゲートされたもの)についてT細胞を染色した。Ultracompビーズによる単一染色試料(5μL;Invitrogen、カタログ番号01-2222-42)を含め、フローサイトメーターのコンペンセーション調整のために使用した。4℃で30分間インキュベーションした後、プレートを、PBS/0.1%BSA/0.02%アジド(染色緩衝液)で3回洗浄した。細胞を染色緩衝液120μL中に再懸濁し、FACS Fortessa(BD Biosciences)を用いて解析した。FlowJo(BD Biosciences)を用いてデータを処理した。
【0447】
GraphPad Prism V7.02ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、非線形回帰解析(可変勾配を有するシグモイド用量反応)によって用量反応曲線、EC50値、EC90値、およびEC99値を算出した。
【0448】
図14Aは、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの存在下での、B7H4陽性腫瘍細胞株に対するT細胞活性化を示し、該T細胞活性化は、CD8+T細胞表面の活性化マーカーCD69の発現(フローサイトメトリーによって決定される)によって明らかになる。図14Bは、各腫瘍細胞株を対象とする、3~4名のドナーに由来するT細胞を用いるT細胞活性化のEC50を示す。
【0449】
全般的にみて、CD8+T細胞の部分集合(最も高い抗体濃度において約20~50%)が、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの存在下で活性化された状態になった。bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARによって誘導されるT細胞活性化は、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARによって誘導されるものよりも高濃度で起こることが通常であった(図14A)。どちらの二重特異性抗体の場合も、T細胞活性化のEC50は、使用した標的細胞株およびドナーによって異なっていた(図14B)。
【0450】
腫瘍細胞-T細胞培養物の上清中でのサイトカイン産生をMesoscale Discovery Uプレックスマルチプレックス ELISAによって評価した。4名のドナーに由来するT細胞を用いて細胞株パネルの全体にわたって解析した10種のサイトカインのうちで、サイトカインレベルの有意な上昇は、IFN-γおよびIL-8(>2000pg/ml)について主に観察された。IL-4、IL-6、およびIL-13は、ずっと低いレベル(<500pg/ml)に調節され、IL-1β、IL-2、IL-10、IL-12p70、およびTNFαのレベルは通常、50pg/ml未満であった。IFN-γの変化が堅調かつ一貫して検出されたこと、およびIFN-γが、サイトカイン放出症候群患者の血清中で増加している中心的サイトカインのうちの1つであることを理由として、このサイトカインのデータを示している。
【0451】
図15は、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの存在下で腫瘍細胞の50%、90%、および99%においてT細胞媒介性細胞障害性を誘導した抗体濃度(それぞれEC50、EC90、EC99)での、細胞株1つ当たり少なくとも3名の解析されたドナーに由来するT細胞を用いた場合の、T細胞-腫瘍細胞共培養物の上清中のIFN-γレベルを示す。サイトカイン産生レベルは、ドナーおよび標的腫瘍細胞株によって異なった。それでもなお、同レベル(%)の腫瘍細胞死滅を誘導した抗体濃度において、サイトカイン産生レベルは、T細胞-腫瘍細胞共培養物をbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARに曝露した後のレベルと比べて、該共培養物をbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARに曝露した後の方が低いことが通常であった。したがって、同レベルの腫瘍細胞死滅において、bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARとのインキュベーションは、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの場合よりも少ないサイトカイン産生をもたらした。
【0452】
実施例14 カニクイザルにおけるCD3×B7H4二重特異性抗体の非臨床安全性試験
非ヒト霊長類(カニクイザル、マカカ・ファシキュラリス、モーリシャス産)でのbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの非臨床的安全性プロファイルは、Citoxlab(France)において評価された。bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARおよびbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARのCD3アームの種特異性に基づき、かつさらに、ヒトB7H4およびカニクイザルB7H4へのB7H4アームの結合が同様であること、ならびにさらなる薬理学的知見を理由として、カニクイザルを、非臨床的安全性試験のための唯一の適切な種とみなした。これらの試験は、動物衛生規則(科学的な目的のために使用される動物の保護に関する2010年9月22日付の理事会指令第2010/63/EU号および2013年2月1日付のフランスデクレ第2013-118号)に従って実施した。
【0453】
これらの試験の目標は、CD3×B7H4二重特異性抗体の潜在的な毒性および毒物動態を明らかにすることであった。本明細書では、毒物動態学および血漿中サイトカインレベルの決定の結果のみを説明している。
【0454】
2つの別々の試験で、静脈内(IV)注入により0.1mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、または10mg/kgのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARまたはbsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(1つの用量につき1匹の雌動物)を単回投与して動物を処置した。注入日を試験の1日目として示した。毒物動態学的プロファイルおよび血漿サイトカインレベルを評価するために、投与前に2回、ならびに投与後0.5時間目、2時間目、4時間目、12時間目、24時間目、および48時間目に、かつこれに加えて、毒物動態学のために、投与後168時間目、336時間目、および504時間目に、血液試料を採取した。
【0455】
サイトカインレベル
Luminex xMAP技術を用いて、サイトカインレベル(IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、TNF、IL-12p70、IL-15、およびCCL2/MCP1)について血漿試料を解析した。
【0456】
図16に示すように、カニクイザルへのBsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの投与は、血漿サイトカインレベルのほんの小さな変化しかもたらさず、このことは試験化合物に無関係とみなされたのに対し、bsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARの投与は、IL-6レベルおよびMCP-1レベルの用量依存的上昇をもたらした。
【0457】
二重特異性BsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARによる処置後に生じた、BsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR抗体の場合と比べて低いサイトカインレベルは、臨床の場で利点をもたらし得る。
【0458】
毒物動態学
CD3×B7H4二重特異性物質の血漿中濃度を、一般的なIgG PK ECLIA法を用いて決定した。静脈内注入注射という投与経路と整合性が取れるノンコンパートメントアプローチを用いてCertara Phoenix WinNonlin薬物動態学ソフトウェアバージョン8.1を使用して、毒物動態パラメーターを推定した。図17は、両方のCD3×B7H4二重特異性抗体の毒物動態プロファイルが、投与後7日目まで著しく似ており、どちらも用量に関係した血漿曝露を示したことを示す。
【0459】
薬物動態モデル化演習を行って、CD3親和性が低いBsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARバリアントによって必要とされる臨床用量範囲の予測値が持続不可能に高いかどうかを評価した。カニクイザルでの観察結果の情報に基づくPKモデルを使用した。インビトロで観察されたT細胞媒介性細胞死滅についてのEC50~EC90と等しい1週平均血漿曝露を引き起こすと予想される臨床用量範囲を導き出した。得られた用量範囲は実現可能とみなされ、この性質は、一方のタイプの二重特異性抗体を他方の二重特異性抗体より優先する(BsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR対BsIgG1-huCD3-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR)根拠を演繹的に与えなかった。
【0460】
実施例15 様々なヒトがん適応症におけるB7H4発現
B7H4 mRNAレベルをOmicsoftのTCGAデータベースから抽出し、Oncolandソフトウェア(Qiagen, USA)を用いて可視化した。
【0461】
図18は、発現の中央値に基づいて順位付けした、一連の原発性固形腫瘍におけるB7H4 mRNA発現レベルを示す。mRNA発現は、幅広いがん適応症において認められ、各適応症内でばらつきがあり、最も高い発現中央値は子宮がん肉腫(UCS)、膀胱尿路上皮がん(BLCA)、膵臓腺がん(PAAD)、肺扁平上皮がん(LUSC)、浸潤性乳がん(BRCA)、子宮体子宮内膜がん(UCEC)、卵巣漿液性嚢胞腺がん(OV)、および胆管がん(CHOL)で認められた。
【0462】
結腸がん、肺がん(小細胞肺がん(SCLC)、および非小細胞肺がん(NSCLC))、胃がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸部がん、頭頸部がん、乳がん(トリプルネガティブ乳がん(TNBC)を含む)、卵巣がん、食道がん、腎臓がん、前立腺がん、ならびに子宮がんおよび胆管がんにおけるB7H4タンパク質発現を、組織マイクロアレイ(TMA;すべてBioMaxから購入)における免疫組織化学的検査(IHC)によって解析した。染色前に、新しく切断したTMA切片(5μm)を脱パラフィンし、標的賦活化溶液pH9(DAKO、S2367;97℃で30分、60分間放冷)と共にインキュベーションした。B7H4 IHCは、LabVision自動染色装置プラットフォームにおいて市販のウサギ抗ヒトB7-H4モノクローナル抗体(クローンD1M8I、14572番、Cell Signaling Technologies)を最適希釈率(1:25;最終濃度2.6μg/mL)で30分間(室温)用いて実施した。続いて、切片を抗ウサギIgGポリマー(Envision(商標)FLEX+ウサギ(DAKO、S2022))と共にインキュベーションし、洗浄し、かつDAKO液体DAB+基質-クロモゲン系(DAKO、K3468)と共にインキュベーションした。ヘマトキシリン(DAKO、S3301)を用いて、有核細胞を検出した。(腫瘍の関心対象領域(ROI)を特定するための)サイトケラチンIHCは、OptiView検出を用いるVentana Benchmarkにおいて、マウス抗サイトケラチン抗体ミックス(クローンAE1/AE3)を用いて実施した。サイトケラチンをDABで可視化し、初期設定Ventana試薬を用いて核をヘマトキシリンで対比染色した。染色されたTMA切片をAxioScan(Zeiss)において倍率20倍でデジタル化した。最初に、手動スコアリングを実施して、平均B7H4染色強度(陰性-低度-中度-高度)およびB7H4陽性腫瘍細胞が10%より多い腫瘍中心部のパーセンテージを明らかにした。
【0463】
続いて、自動スコアリングを実施した。腫瘍ROIは、B7H4について染色されたTMA切片に隣接したTMA切片の表面のサイトケラチンマスクを用いて、画定した。腫瘍ROIにおけるB7H4染色強度を定量し(陰性、弱い(1)、中度(2)、またはひも(3))、B7H4パーセンテージ陽性腫瘍細胞のパーセンテージ(範囲0~100%)を、HALO画像解析ソフトウェアを用いて決定した。各適応症について、B7H4陽性腫瘍細胞が10%より多い腫瘍中心部のパーセンテージを決定した。
【0464】
表14は、BioMax TMAのIHC解析によって明らかにしたB7H4タンパク質発現を示す。結腸がん、前立腺がん、腎臓がん、および小細胞肺がんの試料において、まったくない~非常に低いB7H4発現が認められた。他の適応症に由来する試料におけるB7H4発現は様々であり、B7H4発現の段階的な増大が、胃がん、膵臓がん、胆管がん、食道がん、膀胱がん、非小細胞肺がん(特に、扁平上皮NSCLC)、子宮頸がん、頭頸部がん、乳がん(トリプルネガティブ乳がん[TNBC]および非TNBC)、卵巣がん、ならびに子宮がんにおいて見出された。
【0465】
(表14)BioMax TMAのIHC解析によって決定したB7H4タンパク質発現。ND=未決定。
【0466】
実施例16 様々なpH値における熱安定性およびコロイド安定性
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(20mg/mL)の様々な製剤を、表15に示されるように、4.0~8.0のpH範囲にわたる一連の緩衝剤(アセタート、グルタマート、スクシナート、シトラート、ヒスチジン、ホスファート、およびトリス)を用いて、種々のpH値で調製した。
【0467】
(表15)様々なpH値を有する試験製剤
【0468】
示差走査蛍光測定法(DSF)を実施して、pHおよびバッファーの各組合せが抗体の熱安定性に与える効果を決定した。DSF解析では、20~95℃の熱上昇を利用してタンパク質のアンフォールディングを誘導し、熱応力を増大させる過程における試料の蛍光プロファイルを測定することによって熱状態遷移を評価する。内部蛍光プロファイルの明確な変化が観察される場合、立体構造状態の遷移が明らかにされ得る。この明確な変化は、主に、立体構造の変更に起因する疎水性芳香族残基(例えばトリプトファン)の周囲の局所的化学環境の変化に起因する。データは、蛍光発光の平均波長である重心平均(BCM)を各温度で比較することによって報告される。アンフォールディングが原因で芳香族残基が露出されるにつれて、蛍光発光のエネルギーが減少する傾向がある。これにより、BCMが増加してノイズ変動を超える温度で認められる最低アンフォールディング温度(T開始)、およびBCM対温度曲線において変曲点が生じる箇所で認められる融解温度値(Tm)の測定が可能になる。
【0469】
静的光散乱(SLS)測定値を266nmおよび473nmで決定して、タンパク質コロイド安定性を評価する。試料を照射するために使用されるレーザー光からの静的光散乱の強度は、入射波長と同じ桁の大きさである粒子の存在に比例する。
したがって、この解析は、温度上昇の間のタンパク質凝集に高感度である。静的光散乱は、小さな凝集粒子径を検出するためには266nmで測定し、大きな凝集化学種を検出するためには473nmで測定する。タンパク質が凝集し始める温度である凝集開始温度(T凝集)を、これらのデータから決定する。これらのデータは、カウント強度の大きな変化に基づいて、最も上手く解析される。すなわち、カウントが多いことは、タンパク質凝集体がまとまることによって、より多くの光が散乱させられたことを示す。段階的な温度上昇の間に起こるSLSカウントの変化は、典型的には、顕著なタンパク質凝集に帰され、SLSカウントの最小限の変化は、部分的凝集に帰され、温度上昇の間にSLSカウントの変化がないことは、ごくわずかなタンパク質凝集であることを示す。SLS解析は、Notebook Method NB9828p9、示差走査蛍光測定法、静的光散乱、およびキャピラリーを用いる動的光散乱を使用して実施した。
【0470】
表16で示されているように、pHに相関するT開始およびTmの両方の傾向を認めることができ、pHが高いほど、熱安定性が高まる傾向がある。pH5.0およびそれより高いpHでは、ほとんどの製剤がT開始≒50℃または50℃超を示したことから、比較的安定なベース製剤であることが示された。pHおよびT開始値を比較することにより、pHが高いほど、タンパク質のアンフォールディングを誘導するためにより多くの熱エネルギーが必要とされ、そしてこの傾向が、Tm値およびT開始値の両方が頭うちになる約pH6.5まで続くことが、明らかである。低いpHは、表面にあり溶媒に接近可能なアミノ酸側鎖の電荷、すなわちAsp(pK=3.9)、Glu(pK=4.2)、およびHis(pK=6.0)、を変化させて、タンパク質の天然のフォールディングを不安定化する静電的相互作用の誘導および妨害をもたらす可能性がある。SLS T凝集値を、それぞれ266nmおよび473nmである2つの入射波長において記録し、DSFと同時に、20℃から95℃への温度上昇中に測定した。これにより、各製剤中の抗体のタンパク質凝集およびコロイド安定性についての性質の解析が可能になった。どちらの波長の場合も、差異が観察され、pHが高いほど高いT凝集を有する傾向があった;表16を参照されたい。
【0471】
(表16)DSFおよびSLSの結果
【0472】
全般的にみて、DSFデータは、5.0より低いpH値が、50℃(この値を超えると有利さは失われていく)より低いT開始値を伴うことを示す。SLSから得られたT凝集値は、アセタート、グルタマート、スクシナート、およびヒスチジンを含む製剤(また、6.5以下のpH範囲に対応する)が、他の緩衝系と比べて、凝集傾向が低く、より高温で凝集が開始したことを示す。また、高いpH値は脱アミドと相関する傾向があることから、5.0~6.5のpH範囲が特に好ましいことが示唆される。
【0473】
実施例17 付加的な賦形剤を用いた場合の熱安定性およびコロイド安定性
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(20mg/mL)の様々な製剤を、様々なpH(pH=5.0のグルタマート、pH=5.5のスクシナート、pH=5.5のヒスチジン、およびpH=6.0のヒスチジン)ならびに種々の賦形剤のセット(NaCl、アルギニン、ソルビトール、およびスクロース)を用いて調製した。表17を参照されたい。
【0474】
(表17)種々のバッファー、pH値、および賦形剤を用いた試験製剤
【0475】
示差走査蛍光測定法(DSF)および静的光散乱(SLS)の測定を、上記の実施例16で説明したようにして実施した。下記の表18に要約されるように、荷電賦形剤(アルギニンおよびNaCl;製剤A、B、E、F、I、J、M、N)を含む製剤は、非イオン性賦形剤(ソルビトール、スクロース)を含むそれらの各対応物と比べて、T開始およびTmの両方について、低い値を示した。
【0476】
(表18)DSFおよびSLSの結果
【0477】
同様に、SLSによって明らかにされるように、非イオン性賦形剤は、より低い程度の凝集を266nmにおいて示し、473nmにおいて凝集は検出されなかった(ただし、スクシナートベースの製剤を除く)。全体として、非イオン性賦形剤を含む製剤は優れた熱安定性を示し、試験された製剤のうちで、緩衝剤のランクはヒスチジン、グルタマート、およびスクシナートの順であった。
【0478】
実施例18 様々な製剤の溶解性、熱安定性、コロイド安定性
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(20mg/mL)の様々な製剤を、下記の表19に従って調製した。
【0479】
(表19)種々のバッファー、pH値、および賦形剤を用いた試験製剤
【0480】
表19の製剤を動的光散乱(DLS)によって評価して、サイズおよびサイズ均一性を測定した。
【0481】
これらのデータを表20にまとめて示す。平均流体力学的直径は、6.4nm(20mMグルタマート、250mMソルビトール、pH5.0)~19.6nm(20mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH6.0)の範囲であった。モノマーの流体力学的直径は、5.3nm(20mMグルタマート、250mMソルビトール、pH5.0)~13.1(20mMスクシナート、150mM NaCl、pH5.5)の範囲であった。平均多分散性指数(PDI)値は、0.06(20mMヒスチジン、125ソルビトール、75mM NaCl、pH5.5)~2.79(20mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH6.0)の範囲であった。モノマーの%PDは19.6%~31.4%の範囲であったことから、比較的低い多分散性が示された。
【0482】
(表20)DLSの結果
【0483】
上位5つの平均PDI値のうちの4つが、最も低いpHおよび最も高いpH(pH5.0およびpH6.0)をそれぞれ有する4つの製剤においても認められたことから、pH値が抗体の溶解性において重要な役割を果たすことが示された。
【0484】
示差走査蛍光測定法(DSF)および静的光散乱(SLS)の測定を、上記の実施例16で説明したようにして実施した。これらの結果を表21にまとめて示す。
【0485】
(表21)DSFおよびSLSの結果
【0486】
T開始値およびTm値を比較すると、非荷電賦形剤であるスクロースおよびソルビトールは安定性を向上させる傾向がある。SLSに関しては、非荷電賦形剤およびグルタマートまたはヒスチジンのいずれかを含む全ての製剤が、スクシナートをベースとし荷電賦形剤を含む製剤と比べて、473nmにおいては凝集を示さず、266nmにおいては非常に小さい相対的規模の凝集を示すことが明らかである。
【0487】
DSF測定の結果に加えて、これらのデータは、熱的に安定化させる賦形剤としてのスクロースおよびソルビトールの役割をさらに裏付ける。非イオン性賦形剤およびグルタマートまたはヒスチジンのいずれかを含む製剤は、溶解性研究の始めから終わりまで、全体的により良好な特徴付けプロファイルを示した。さらに、賦形剤としてソルビトールまたはスクロースを含む、ヒスチジンおよびグルタマートによって緩衝化された製剤は、試料調製段階中に最も速い交換速度および濃縮速度を示したことから、非イオン性賦形剤が抗体の可溶化において役割を果たすことが示唆された。
【0488】
実施例19 様々な薬学的組成物の貯蔵安定性
bsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR(20mg/mL)の合計36種の製剤を調製し、4週間にわたって、2種の保管条件、すなわち、それぞれ5±3℃および40±2℃/75±5%RH、に供した。この実験で調製した製剤を、表22に示している。
【0489】
(表22)種々の緩衝剤、pH値、賦形剤、およびポリソルベート80を用いた試験製剤
【0490】
両方の条件(5±3℃および40±2℃/75±5%RH)について、4週間の時点の試料の純度をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した。これらのデータを表23にまとめて示す。
【0491】
(表23)種々の条件下で4週間貯蔵した後の不純物
【0492】
5±3℃の条件では、純度は、98.5%~99.2%の狭い範囲を示した。40±2℃/75±5%RHの条件では、より広い範囲である94.3%~98.6%の純度が観察された。製剤21(20mMヒスチジン、250mMソルビトール、pH5.5)を除いて、賦形剤として250mMソルビトールまたはスクロースを含む製剤が、2種の条件間の差が最も小さかった。
【0493】
これらの製剤において、より高い純度は、賦形剤の群内のより低いpHと相関する傾向が観察されている。ソルビトールをベースとする製剤もまた、スクロース製剤よりもわずかに優れており、グルタマートをベースとする製剤とヒスチジンをベースとする製剤の両方が、スクシナートをベースとする対応物よりも上手くいった。
【0494】
実施例20 2種の好ましい薬学的組成物の貯蔵安定性
本実施例の目的は、2つの別個の製剤(20mMグルタマート、250mMソルビトール、0.02%PS80、pH5.2、および20mMヒスチジン、250mMスクロース、0.02%PS80、pH5.5)中の20mg/mLのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARについて、3ヶ月、6ヶ月、および12ヶ月の安定性を調査することである。これらの製剤は、それぞれ、上記の表22の製剤6および製剤25である。
【0495】
該2種の製剤の試料を調製するために、ある体積量のbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEAR抗体を、製剤用緩衝液(20mMグルタマート、250mMソルビトール、0.02%PS80、pH5.2または20mMヒスチジン、250mMスクロース、0.02%PS80、pH5.5)中に、試料体積に対して最低でも40倍の緩衝液を用いて、室温で透析した。透析後、pHは、製剤6の場合は5.2±0.1であることを、および製剤25の場合は5.5であることが確認された。材料の濃度を20±2mg/mLに調整し、PS80を最終濃度が0.02%になるように補充し、最後に、層流フード内で0.22μmのPVDFフィルターに通してろ過した。これらの試料を2mL容のI型ガラスバイアルに1mLの体積まで別々に詰め、最長12ヶ月間、安定条件下に置いた。
【0496】
製剤が入っているバイアルを、-75℃で12ヶ月間、ならびに5℃、25℃/60%RH、および40℃/75%RHで6ヶ月間、立てた状態で貯蔵した。最初の時点(T0)は、5回の凍結/解凍サイクル、48時間の撹拌(対照を含む)、または典型的な貯蔵条件(5℃)で予備処理した別個の試料を含んだ。試料の安定性を解析した。これらの結果を表24に要約する。
【0497】
(表24)種々の条件下で3ヶ月、6ヶ月、および12ヶ月貯蔵した後の安定性
【0498】
全体として、どちらの製剤も、初期(リリース)試料または各対照と比べた場合、5回凍結/解凍条件および48時間撹拌条件において最小限の変化を示した。さらに、どちらの製剤も、-75℃で12ヶ月間貯蔵された場合および5℃で6ヶ月間貯蔵された場合に、製品安定性の最小限の変化を示し、25℃/60%RHで6ヶ月間貯蔵された場合には、それらの場合よりも少し大きな変化を示した。
【0499】
SECデータは、40℃において製剤6が製剤25よりわずかに良好であり、全不純物は、製剤6の場合に15.7%であり、製剤25の場合に16.9%であることを示す。
【0500】
全体として、これらの結果は、20mg/mLのbsIgG1-huCD3-H101G-FEAL×B7H4-C1-N52S-FEARが、20mMグルタマート、250mMソルビトール、0.02%PS80、pH5.2、または20mMヒスチジン、250mMスクロース、0.02%PS80、pH5.5を用いた場合に、所定の条件下で最長12ヶ月間、安定であることを実証した。
図1-1】
図1-2】
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18
【配列表】
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【国際調査報告】