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特表2024-519222NK細胞の凍結保存用組成物及びこれを含む凍結保存剤形{NK cell cryopreservation composition and cryopreservation formulation comprising the same}
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-09
(54)【発明の名称】NK細胞の凍結保存用組成物及びこれを含む凍結保存剤形{NK cell cryopreservation composition and cryopreservation formulation comprising the same}
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20240430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240430BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240430BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240430BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61P35/00
A61P37/02
A61P31/00
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570249
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 KR2022006901
(87)【国際公開番号】W WO2022240240
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0062683
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521126254
【氏名又は名称】ジーアイ・セル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GI CELL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】チャン ミョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン チョンピョ
(72)【発明者】
【氏名】コ ドンウ
(72)【発明者】
【氏名】ク ジョンボム
(72)【発明者】
【氏名】キム ドンファン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065BD12
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB63
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZB07
4C087ZB26
4C087ZB31
(57)【要約】
本発明は、NK細胞の凍結保存のための組成物及びNK細胞の凍結保存剤形に関し、本発明のNK細胞の凍結保存用組成物は、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)、HES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まない低濃度のDMSO条件でも、細胞の表面マーカーとNK細胞の脱顆粒能力が現在商用されている凍結保存用培地を使用した剤形と同等であるか、向上されたレベルを示すと同時に、より高い細胞収得率及び著しく優れたNK細胞のがん細胞殺傷能力を示す。特に、非特異的毒性で様々な副作用を示す従来の凍結保護剤を含まないか、低濃度で含み、非毒性の生体親和的な凍結保護剤に代替するため、別途の追加培養または注射溶液へのソリューションの交替がなくても、解凍後直ちに患者に投与が可能であり、薬学的剤形としても使用可能という利点がある。従って、非常に制限的な適応症の治療用途で使用されるNK細胞ベースの免疫治療剤の長期保管及び臨床的使用において非常に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むNK細胞の凍結保存用組成物:
(i) ベース溶液(base solution);
(ii) 血清アルブミン(serum albumin);
(iii) DMSO;及び
(iv) グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の凍結保護剤。
【請求項2】
前記ベース溶液は、ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩及びグルコン酸塩のいずれか一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項3】
前記ベース溶液のpHは、4.0~8.0であることを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項4】
前記ベース溶液のオスモル濃度は、200mOsm/L~400mOsm/Lであることを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項5】
前記DMSOは、0.001%(v/v)~10%(v/v)の最終濃度で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項6】
HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)またはHES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まないことを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項7】
前記血清アルブミンは、1%(w/v)~10%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項8】
前記凍結保護剤は、グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項9】
前記凍結保護剤は、グルコースであり、前記グルコースは、0.5%(w/v)~5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とする、請求項8に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項10】
前記凍結保護剤は、ポリエチレングリコールであり、前記ポリエチレングリコールは、400g/mol~20000g/molの平均分子量を有することを特徴とする、請求項8に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項11】
前記凍結保護剤は、ポリエチレングリコールであり、前記ポリエチレングリコールは、0.045%(w/v)~2.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とする、請求項8に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項12】
前記凍結保護剤は、トレハロースであり、前記トレハロースは、5%(w/v)~10%(w/v)の最終濃度で含まれる(include)ことを特徴とする、請求項8に記載のNK細胞の凍結保存用組成物。
【請求項13】
NK細胞;及び請求項1~12のいずれか一項に記載の凍結保存用組成物を含むNK細胞の凍結保存剤形。
【請求項14】
NK細胞を前記請求項1~12のいずれか一項に記載の凍結保存用組成物に懸濁し、NK細胞凍結保存剤形を製造する段階;及び
前記NK細胞凍結保存剤形を凍結させる段階を含むNK細胞の凍結保存方法。
【請求項15】
NK細胞;及び請求項1~12のいずれか一項に記載の凍結保存用組成物を含む免疫細胞治療剤。
【請求項16】
NK細胞;及び請求項1~12のいずれか一項に記載の凍結保存用組成物を含む、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用医薬組成物。
【請求項17】
請求項13に記載のNK細胞の凍結保存剤形を用いた、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞の凍結保存のための組成物及びNK細胞の凍結保存剤形に関し、さらに詳しくは、ベース溶液(Base solution);アルブミン(albumin);DMSO;及びグルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の凍結保護剤を含むか、好ましくは、これらからなるNK細胞の凍結保存用組成物、これを含むNK細胞の凍結保存剤形及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫治療法(immunotherapy)は、免疫システムの活性化または抑制を通じて疾患を治療する方法であり、このような免疫治療法は、生体由来の物質(サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、免疫エフェクター細胞等)を使用するため、生体親和的な特性を示し、従来の薬物より副作用が少なく、耐性を引き起こす可能性が少ないという利点がある(Expert Opinion on Biological Therapy. 1 (4): 641-53)。このうち、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)等のような免疫エフェクター細胞を処理して免疫システムを調節する免疫細胞治療法は、従来の治療法である化学薬品、放射線治療に比べて比較的に副作用が少なく、他の治療法と共に併用治療を行った場合、優れた効果を示すため、最近、重要性がさらに浮き彫りになっている。
【0003】
免疫細胞治療法は、患者またはドナーから抽出されたT細胞、NK細胞、樹状細胞等の免疫細胞を工学的な方法で細胞の機能を強化させ、培養を経て細胞数を増幅させ、再び患者に処理することで、がん細胞に特異免疫反応を発生させ、がん細胞の死滅を誘導する。この時、体外で免疫細胞を培養した後、再び患者に注入する過程が行われるため、「養子細胞移植(Adoptive Cell Transfer)」あるいは「養子免疫療法」という名称で呼ばれることもある(CANCER RESEARCH INSTITUTE, 2020-07-09, Adoptive Cell Therapy TIL, TCR, CAR T, AND NK CELL THERAPIES)。
【0004】
免疫細胞治療法において、T細胞を中心とするT細胞ベースの免疫細胞治療剤についての研究がこれまで最も活発に行われてきた。特に、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor, CAR)を発現するようにエンジニアリングされたCAR-T細胞は、MHCを介して抗原が細胞表面に提示されなくても、がん細胞特異的な攻撃が可能であるという点で利点がある。現在、Kymriah(登録商標)、Yescarta(登録商標)、Provenge(登録商標)等の様々なCAR-T細胞治療剤がFDA承認され、臨床で使用されている。しかし、現在までに開発されたCAR-T治療剤は、全てB細胞に発現するCD19というタンパク質を標的にし、B-細胞無形成症、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome, CRS)、及び神経毒性のような副作用を伴い、これにより急性リンパ性白血病及び大細胞型B細胞リンパ腫を除く、追加の臨床的適用が制限されている。
【0005】
NK細胞ベースの免疫細胞治療剤は、抗原前感作(pre-sensitization)やヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigen, HLA)マッチングなく、腫瘍を標的とすることができ、同種移植の場合、移植片対宿主病(GvHD)をほとんど引き起こさず、T細胞とは異なり、IL-3と顆粒球マクロファージ(granulocytemacrophage)群集刺激因子を分泌するため、サイトカイン放出症候群を引き起こす可能性が低い。また、NK細胞によって分泌されるPD-1レベルは非常に低く、固形腫瘍にも高い効果を示す。前記のように、NK細胞ベースの免疫細胞治療剤は、T細胞ベースの免疫細胞治療剤に比べて多くの利点を示し、従って、幅広い臨床的応用の潜在力を有する新しい免疫細胞治療剤として浮上している(Cancer Letters 472 (2020): 175-180; Frontiers in Immunology 10 (2019): 2683)。
【0006】
一方、免疫細胞治療剤は、生きた免疫細胞の活性にその効果が決定されるため、細胞の生存性、活性を維持しながらも長期間保管できる方法を開発することが臨床的適用において重要な要素の一つである。凍結保存(cryopreservation)は、生物、器官、組織、細胞等の生物学的構成物を保存する上で最も一般的に使用される方法である(Bioversity International, CATIE, IRD. p. 61)。ただし、凍結保存は、溶液による効果(solution effects)、細胞内/外の氷の結晶形成、及び脱水のような細胞に致命的な影響を及ぼす可能性があるため、細胞の効果的な保存のためには、冷凍方法及び凍結剤形についての開発が必須的に伴わなければならない。
【0007】
冷凍方法に関しては、1970年代に開発されたSPF(slow programmable freezing)法のような低速凍結方法が全世界的に使用されている(Fertility and Sterility. 93 (6): 1921-8)。また、免疫細胞治療剤の凍結保存において、細胞内/外の氷の結晶形成を防止するために、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール(glycerol)、HES(hydroxylethyl starch)のような凍結保護剤(Cryoprotectant)で細胞をコーティングする方法が使用される。
【0008】
しかし、このような凍結保護剤の使用は、ほとんど固有の毒性を示し、凍結過程で細胞内に濃縮されるため、免疫細胞治療剤に致命的であるか、追って患者に投与する場合に毒性を示すことがあるという研究結果が多数報告されている(PeerJ. 3: e1039)。特に、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びHES(hydroxyethyl starch)のような多数の凍結保護剤の場合、ヒト細胞に高い毒性を示すことが報告されている(Transfusion and Apheresis Science 46 (2012) 137-147)。従って、凍結保護剤を含む凍結保存剤形は、細胞生産及び保存工程に追加の工程及び関連費用を付加する。また、凍結防止剤単独では、細胞活性及び生存性の損失という問題が伴う。従って、免疫細胞治療剤の凍結保存のための溶液の組成において、毒性を示す添加物の濃度を最小化しつつ、今後の再構成時に免疫細胞治療剤の活性を維持できる凍結保存方法及び剤形の開発が要求される。
【0009】
免疫細胞治療剤は、その種類及び機能によって、発現分子、シグナル伝達体系、生産物質等が全く異なるため、免疫細胞治療剤の種類による合わせ型の凍結保存方法及び剤形の研究及び開発が必要である。しかし、最近までNK細胞ベースの免疫細胞治療剤は、培養及び分化の難しさ等で臨床への使用がT細胞ベースの免疫細胞治療剤に比べて研究及び投資が低調であったため、凍結保存方法及び剤形に対する報告が不足している。
【0010】
このような要求に応えて、PCT-US2020-050742は、NK細胞治療剤の凍結保存剤形を開示する。PCT-US2020-050742は、プラズマライトA、HSA、及びDMSOを含むNK細胞の凍結保存培地を開示するが、10%に該当する高濃度のDMSOを含むことを特徴とする。しかし、A. Stolzing等の報告(Transfusion and Apheresis Science 46 (2012) 137-147)及びRowley SD等の報告(Bone Marrow Transplant 2003;31(11):1043-51)のような多数の文献で、DMSOを10%以上の含量で含む凍結保存細胞を人体に注入する場合、毒性を示し、低濃度で含む場合に毒性の減少だけでなく、免疫細胞治療剤の治療効果がさらに向上できることが報告されている。また、10%以上のDMSOを含む免疫細胞治療剤の剤形は、吐き気、嘔吐、悪寒、心血管疾患のような比較的軽い副作用から(Anticancer Res 1998;18(6B):4705-8; Bone Marrow Transplant 2000;25(2):173-7; Transfusion 1991;31(2):138-41)、神経毒性及び神経浮腫のような深刻な副作用に至るまで(Cytotherapy 1999;1(6):439-46; Neurology 2007;68(11):859-61.)高い毒性を示す。
【0011】
このような背景技術の下、本発明者らは、新しいNK細胞治療剤の凍結剤形を開発するために鋭意努力した結果、毒性を示す凍結保護剤の濃度を減少させ、これを生体親和的物質に代替し、NK細胞の凍結保存用組成物及びこれを含む剤形を開発し、前記剤形でNK細胞治療剤を凍結保存後にも高い細胞収得率/生存率を示し、優れたがん細胞殺傷能力を示すことを確認し、本発明を完成した。
【0012】
本背景技術部分に記載の前記情報は、ひとえに本発明の背景に対する理解を向上させるためのものであり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって既に知られている先行技術を形成する情報を含まない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、NK細胞を効果的に凍結保存するためのNK細胞の凍結保存用組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、NK細胞の凍結保存剤形を提供することである。
【0015】
本発明のまた他の目的は、前記NK細胞の凍結保存用組成物を用いたNK細胞の凍結保存方法を提供することである。
【0016】
本発明のまた他の目的は、NK細胞及び前記凍結保存用組成物を含む細胞治療剤を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、NK細胞及び前記凍結保存用組成物を含む、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明は、以下を含むNK細胞の凍結保存用組成物を提供する:
(i) ベース溶液(base solution);
(ii) 血清アルブミン(serum albumin);
(iii) DMSO;及び
(iv) グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の凍結保護剤。
【0019】
本発明はまた、前記凍結保存用組成物のNK細胞の凍結保存剤形の製造のための用途を提供する。
【0020】
本発明はまた、NK細胞及び前記凍結保存用組成物を含むNK細胞の凍結保存剤形を提供する。
【0021】
本発明はまた、
(a) NK細胞を前記凍結保存用組成物に懸濁し、NK細胞凍結保存剤形を製造する段階;及び
(b) 前記NK細胞凍結保存剤形を凍結させる段階を含むNK細胞の凍結保存方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、NK細胞及び前記凍結保存用組成物を含む免疫細胞治療剤を提供する。
【0023】
本発明はまた、NK細胞及び前記凍結保存用組成物を含む、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用医薬組成物を提供する。
【0024】
本発明はまた、前記NK細胞の凍結保存剤形、免疫細胞治療剤または医薬組成物を用いた、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、前記NK細胞の凍結保存剤形または免疫細胞治療剤のがん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用医薬組成物の製造のための用途を提供する。
【0026】
本発明はまた、前記NK細胞の凍結保存剤形、免疫治療剤または医薬組成物のがん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】それぞれのNK細胞凍結保存剤形を4週間凍結保存し、解凍後の細胞収得率(A)及び生存率(B)を比較した結果である。各グループ別の実験回数は以下の通りである:比較例(n=12);候補群1-1(n=11);候補群1-2(n=2);候補群1-3(n=2);候補群2-1(n=10);候補群2-2(n=2);候補群3-1(n=9);候補群3-2(n=2)。
図2】それぞれの剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、NK細胞のナチュラルキラー細胞の活性または阻害を示す表面マーカーを確認した結果である。各グループ別の実験回数は以下の通りである:比較例(n=20);候補群1-1(n=16);候補群1-2(n=6);候補群1-3(n=3);候補群2-1(n=17);候補群2-2(n=3);候補群3-1(n=17);候補群3-2(n=3)。
図3】それぞれの剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、NK細胞のナチュラルキラー細胞毒性マーカー(脱顆粒マーカー)を確認した結果である。各グループ別の実験回数は以下の通りである:比較例(n=20);候補群1-1(n=16);候補群1-2(n=6);候補群1-3(n=3);候補群2-1(n=17);候補群2-2(n=3);候補群3-1(n=17);候補群3-2(n=3)。
図4】それぞれの剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、それぞれのE:T比で標的がん細胞(K562)に対する殺傷能力を確認した結果である。
図5】それぞれの剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、それぞれのE:T比で標的がん細胞(BT474)に対する殺傷能力を確認した結果である。
図6】それぞれの剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、それぞれのE:T比で標的がん細胞(MDA-MB-231)に対する殺傷能力を確認した結果である。
図7】様々な平均分子量及び濃度のPEGを含む剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、NK細胞の収率及び生存率を確認した結果である。
図8】様々な平均分子量及び濃度のPEGを含む剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、NK細胞の細胞表面マーカーを確認した結果である。
図9】様々な平均分子量及び濃度のPEGを含む剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、NK細胞の細胞毒性マーカーを確認した結果である。
図10】様々な平均分子量及び濃度のPEGを含む剤形で凍結保存されたNK細胞を解凍した後、NK細胞のがん細胞殺傷能力を確認した結果である。図10Aは、K562がん細胞に対する解凍されたNK細胞の殺傷能力を示し、図10Bは、DLD-1がん細胞に対する解凍されたNK細胞の殺傷能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
他に定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野における熟練した専門家により通常理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書で使用された命名法は、当該技術分野において周知であり、通常使用されるものである。
【0029】
本明細書に記載された濃度範囲において、「~」は両臨界範囲を含む(以上及び以下)という意味で使用され、両臨界範囲を含まない場合は、「超過」及び「未満」で濃度範囲を記載した。本明細書において、数値に使用される「約」は、通常の技術者によって記載された数値と実質的に同等の効果を示すことができると期待される範囲を含む意味で使用され、例えば、記載された数値の値の±20%、±10%、±5%等であり得るが、これらに制限されない。
【0030】
最近、NK細胞ベースの免疫細胞治療剤は、T細胞ベースの免疫細胞治療剤に比べて多くの利点を示し、従って、幅広い臨床的応用の潜在力を有する新しい免疫細胞治療剤として浮上している(Cancer Letters 472 (2020): 175-180; Frontiers in Immunology 10 (2019): 2683)。
【0031】
免疫細胞治療剤は、生きた免疫細胞の活性にその効果が決定されるため、細胞の生存性、活性を維持しながらも長期間保管できる方法を開発することが臨床的適用において重要な要素の一つであり、一般的な保管方法である凍結保存(cryopreservation)の場合、溶液による効果(solution effects)、細胞内/外の氷の結晶形成、及び脱水のような限界を克服するために凍結剤形に対する最適化が必須的に伴わなければならない。
【0032】
従来、細胞内/外の氷の結晶形成等に対する凍結保護剤(cryoprotectant)として、高濃度(約8~10%(v/v)以上)のメチルスルホキシド(DMSO)、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)及びHES(hydroxyethyl starch)等が一般的に使用されてきた。しかし、前記の凍結保護剤物質は、固有の毒性を示し、凍結過程で細胞内に濃縮されるため、免疫細胞治療剤に致命的であるか、追って患者に投与する場合に毒性を示すことがあるという研究結果が多数報告されている(PeerJ. 3: e1039)。
【0033】
本発明の一実施例においては、固有の非特異的な毒性を有する凍結保護剤を生体親和的で非毒性の添加物質(グルコース、PEG及びトレハロース)に代替し、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)及びHES(hydroxyethyl starch)を含まない低濃度のDMSOを含むNK細胞の凍結保存用組成物を設計した。
【0034】
本発明の他の実施例において、様々な組成比で凍結保護剤(グルコース、PEG及び/またはトレハロース)を添加した後、細胞収得率/生存率、細胞表面マーカー及び毒性マーカー発現を比較した結果、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)及びHES(hydroxyethyl starch)を含まない低濃度のDMSOを使用したにもかかわらず、市販されている凍結保存用組成物より同等であるか、高いレベルの細胞生存率及びマーカー発現特性を示すことを確認し、細胞収得率及び標的がん細胞に対する殺傷能力は著しく上昇することを確認した。
【0035】
従って、本発明は、一観点において、以下を含むNK細胞の凍結保存用組成物に関する:
(i) ベース溶液(base solution);
(ii) アルブミン(serum albumin);
(iii) DMSO;及び
(iv) グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の追加の凍結保護剤。
【0036】
本発明の用語、「ベース溶液」とは、ヒトの血液または体液と類似の特性を有し、NK細胞に損傷を与えない溶液であり、好ましくは、本発明の凍結保存用組成物に最も大きな体積比率で含まれ、ベースとなる液体組成物を意味する。
【0037】
本発明において、前記ベース溶液は、ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩(及び/または乳酸塩)及びグルコン酸塩からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことを特徴とすることができる。
【0038】
本発明において、前記ベース溶液は、ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩及びグルコン酸塩のいずれか一つ以上を含むことを特徴とすることができ、好ましくは、ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩及びグルコン酸塩を含むことを特徴とすることができる。
【0039】
本発明において、前記ベース溶液は、NK細胞の活性及び生存性に否定的な影響を及ぼさないものであれば、前記開示された物質以外にも、追加の塩、糖、脂質、タンパク質等を含むことができる。
【0040】
本発明において、前記ベース溶液は、NK細胞の損傷を防ぐために、適切なpH及びオスモル濃度を有することを特徴とすることができ、好ましくは、ヒトの血漿または体液と類似のpH及びオスモル濃度(Osmolality)を有することを特徴とすることができる。
【0041】
本発明において、前記ベース溶液のpHは、約4.0~約8.0、好ましくは約6.0~約8.0、さらに好ましくは約7.0~約8.0、最も好ましくは約7.4であることを特徴とすることができる。
【0042】
本発明において、前記ベース溶液のオスモル濃度(Osmolality)は、約200mOsm/L~約400mOsm/L、好ましくは約250mOsm/L~約350mOsm/L、より好ましくは約280mOsm/L~約310mOsm/L、最も好ましくは約300mOsm/Lまたは約294mOsm/Lであることを特徴とすることができる。
【0043】
本発明において、前記ベース溶液は、市販されている樹液またはこの変形組成物を使用することができる。例えば、プラズマソリューションA(Plasma solution A)、プラズマ-ライト(例えば、プラズマ-ライトA、プラズマ-ライト148、プラズマ-ライト56等)、ハルトマン溶液(Hartmann's solution)、リンガー溶液(Ringer's solution)、約0.5%生理食塩水、ステロファンディン、またはこれらと類似の組成の溶液を使用することができ、好ましくは、プラズマソリューションAまたはプラズマ-ライト(例えば、プラズマ-ライトA、プラズマ-ライト148、プラズマ-ライト56等)であることを特徴とすることができる。
【0044】
本発明の実施例においては、以下の組成を有するプラズマソリューションAを使用し、本発明の実施例で製造されたNK細胞の凍結保存用組成物に含まれるプラズマソリューションAの組成は以下の通りである:
【0045】
本発明において、前記ベース溶液は、前記プラズマソリューションAのように、ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩、及びグルコン酸塩を含むことができる。
【0046】
本発明において、プラズマソリューションAに含まれる各成分の凍結保存用組成物内の最終濃度は、凍結保存用組成物に含まれるベースソリューションの分率(%(v/v))によって異なることがある。
【0047】
これにより、本発明の凍結保存用組成物のベース溶液が含むナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩、及びグルコン酸塩の最終濃度(%(w/v))は、好ましくは実施例で前記表の最終濃度の±20%、より好ましくは±10%であってよく、この場合でも、本発明の実施例で確認したものと実質的に同等の効果を期待することができることは、通常の技術者にとって自明であるといえる。
【0048】
本発明において、前記ベース溶液は、下記で記述する他の構成成分の好ましい組成比を除いた残りの組成分率を占めることを特徴とすることができる。
本発明において、前記凍結保存用組成物は、アルブミンを含むことを特徴とする。
【0049】
本発明の用語、「アルブミン」は、人体血漿に最も多く存在する主要タンパク質であり(約50~60%)、血漿浸透圧、栄養分及びイオン等の細胞内送達、免疫及びエネルギー代謝に関与する。
【0050】
本発明において、前記アルブミンは、血清アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミンであることを特徴とすることができる。
【0051】
本発明において、前記アルブミンは、約1%(w/v)~約10%(w/v)の最終濃度、好ましくは約2%(w/v)~約8%(w/v)、さらに好ましくは約3%(w/v)~約5%(w/v)、最も好ましくは約4%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0052】
本発明において、前記アルブミンは、これと類似の役割を果たす他のタンパク質で代替または組み合わせて含むことができる。アルブミンと類似の役割を果たすタンパク質としては、例えば、α-胎児タンパク質(α-fetoprotein)、ビタミンD結合タンパク質(vitamin D binding protein)等があるが、これらに制限されない。
【0053】
本発明において、前記組成物は、DMSOを含むことを特徴とする。
【0054】
本発明の用語、「DMSO(Dimethylsulfoxide)」は、硫化ジメチルを酸化して得る化合物であり、細胞の凍結保存において、細胞内/外の氷の結晶形成等から細胞を保護するための凍結保護剤(cryoprotectant)として最も多く使用される。しかし、様々な文献において、DMSOは、非特異的な細胞毒性により様々な細胞損傷を引き起こすことが報告されている(Transfusion and Apheresis Science 46 (2012) 137-147;及びBone Marrow Transplant 2003;31(11):1043-51等)。DMSOの細胞損傷の機構は、細胞内浸透圧の急速な増加、ミトコンドリアの損傷等によるものと報告されており、特に妊娠可能期の女性において、受精卵の着床異常を引き起こし、妊娠中の胎児の発達に深刻な損傷を引き起こす等、様々な副作用が報告されている(Theranostics (IF: 8.712))。また、DMSOと共に凍結保護剤として使用されるHEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)及びHES(Hydroxy Ethyl Starch)もまた、非特異的な細胞毒性を示すことが報告されている(Transfusion and Apheresis Science 46 (2012) 137-147)。約10%(v/v)のDMSOは、細胞に致命的な毒性を示すと報告されており、約5%(v/v)以下のDMSOを使用することが細胞に致命的でない可能性があると報告されている。
【0055】
従って、本発明の凍結保存用組成物は、低濃度のDMSOを含むことを特徴とすることができる。
【0056】
本発明において、前記DMSOは、約0.001%(v/v)以上、約10%(v/v)未満、好ましくは約0.005%(v/v)~約8%(v/v)、さらに好ましくは約0.1%(v/v)~約6%(v/v)、最も好ましくは約5%(v/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0057】
本発明において、前記凍結保存用組成物は、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)及び/またはHES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まないことを特徴とすることができる。
【0058】
従来の報告及び市販されている細胞の凍結保存用組成物の場合のように、十分な凍結保護効果のために一般的に使用されるDMSOの濃度は、約8~10%(v/v)以上である。本発明の培地組成物は、低濃度のDMSOを使用して有意な副作用及び毒性を示さないことを特徴とする。従って、十分な凍結保護効果のために追加の凍結保護剤を含むことを特徴とする。
【0059】
本発明は、グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の凍結保護剤を含むことを特徴とする。
【0060】
本発明において、前記凍結保護剤は、グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とすることができる。
【0061】
本発明において、前記ポリエチレングリコールは、約100g/mol~約20000g/molの平均分子量、好ましくは約200g/mol~約20000g/molの平均分子量、さらに好ましくは約400g/mol~約20000g/molの平均分子量、最も好ましくは約200g/mol、約400g/mol、約2000g/molまたは約20000g/molの平均分子量を有することを特徴とすることができる。
【0062】
本発明において、前記平均分子量は、凍結保存剤形に含まれるポリエチレングリコールの各分子が有する分子量の平均を意味する。
【0063】
本発明において、前記凍結保存剤形に含まれるポリエチレングリコールは、前記平均分子量を基準として、約±50%、好ましくは約±40%、より好ましくは約±30%、さらに好ましくは約±20%、最も好ましくは約±10%または約±5%の範囲の分子量を有することを特徴とすることができる。
【0064】
本発明において、前記凍結保護剤がグルコースである場合、約0.5%(w/v)~約5%(w/v)、好ましくは約1%(w/v)~約4%(w/v)、さらに好ましくは約1%(w/v)~約3%(w/v)、最も好ましくは約1.25%(w/v)~2.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0065】
本発明において、前記凍結保護剤がポリエチレングリコールである場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.04%(w/v)~約3%(w/v)、最も好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.225%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.625%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.045%(w/v)~約2.25%(w/v)、約0.225%(w/v)~約2.25%(w/v)、または約0.625%(w/v)~約2.25%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0066】
本発明において、前記ポリエチレングリコールが約400g/molの平均分子量を有する場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、最も好ましくは約0.625%(w/v)~約2.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0067】
本発明において、前記ポリエチレングリコールが約4000g/molの平均分子量を有する場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、最も好ましくは約0.225%(w/v)~約2.25%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0068】
本発明において、前記ポリエチレングリコールが約20000g/molの平均分子量を有する場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、最も好ましくは約0.045%(w/v)~約2.25%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0069】
本発明において、前記凍結保護剤がトレハロースである場合、約0.5%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約1%(w/v)~約9%(w/v)、さらに好ましくは約1.7%(w/v)~約8.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0070】
本発明において、前記ヒト血清アルブミンは、約1%(w/v)~約10%(w/v)の最終濃度、好ましくは約2%(w/v)~約8%(w/v)、さらに好ましくは約3%(w/v)~約5%(w/v)、最も好ましくは約4%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0071】
本発明において、好ましくは、以下からなる(consist of)NK細胞の凍結保存用組成物であることを特徴とすることができる:
(i) ナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩及びグルコン酸塩からなるベース溶液(base solution);
(ii) ヒト血清アルブミン(Human serum albumin);
(iii) DMSO;及び
(iv) グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つ以上の凍結保護剤。
【0072】
本発明において、前記ベース溶液は、NK細胞の損傷を防ぐために、適切なpH及びオスモル濃度を有することを特徴とすることができ、好ましくは、ヒトの血漿または体液と類似のpH及びオスモル濃度(Osmolality)を有することを特徴とすることができる。
【0073】
本発明において、前記ベース溶液のpHは、約4.0~約8.0、好ましくは約6.0~約8.0、さらに好ましくは約7.0~約8.0、最も好ましくは約7.4であることを特徴とすることができる。
【0074】
本発明において、前記ベース溶液のオスモル濃度(Osmolality)は、約200mOsm/L~約400mOsm/L、好ましくは約250mOsm/L~約350mOsm/L、より好ましくは約280mOsm/L~約310mOsm/L、最も好ましくは約300mOsm/Lまたは約294mOsm/Lであることを特徴とすることができる。
【0075】
本発明において、前記ベース溶液は、市販されている樹液またはこの変形組成物を使用することができる。例えば、好ましくは、プラズマソリューションA、プラズマ-ライト(例えば、プラズマ-ライトA、プラズマ-ライト148、プラズマ-ライト56等)またはこれらに類似の組成の溶液を使用することができるが、これらに制限されない。
【0076】
本発明において、プラズマソリューションAに含まれる各成分の凍結保存用組成物内の最終濃度は、凍結保存用組成物に含まれるベースソリューションの分率(%(v/v))によって決定されることは、通常の技術者にとって自明であるといえる。これにより、本発明の凍結保存用組成物のベース溶液を構成するナトリウム、塩化物、カリウム、マグネシウム、酢酸塩、及びグルコン酸塩の最終濃度(%(w/v))は、好ましくは実施例で記載された各成分の最終濃度の±20%、より好ましくは±10%であってもよく、この場合でも、本発明の実施例で確認したものと実質的に同等の効果を期待することができる。
【0077】
本発明において、前記ヒト血清アルブミンは、約1%(w/v)~約10%(w/v)の最終濃度、好ましくは約2%(w/v)~約8%(w/v)、さらに好ましくは約3%(w/v)~約5%(w/v)、最も好ましくは約4%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0078】
本発明において、前記DMSOは、約0.001%(v/v)以上、約10%(v/v)未満、好ましくは約0.005%(v/v)~約8%(v/v)、さらに好ましくは約0.1%(v/v)~約6%(v/v)、最も好ましくは約5%(v/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0079】
本発明において、前記凍結保護剤は、グルコース、ポリエチレングリコール及びトレハロース(Trehalose)からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とすることができる。
【0080】
本発明において、凍結保護剤として様々な平均分子量を有するポリエチレングリコール、例えば、PEG-400、PEG-4000またはPEG-20000のポリエチレングリコールを様々な濃度で使用した凍結保存剤形を解凍後、NK細胞の収率及び生存率を確認した。
【0081】
本発明において、前記ポリエチレングリコールは、約100g/mol~約20000g/molの平均分子量、好ましくは約200g/mol~約20000g/molの平均分子量、さらに好ましくは約400g/mol~約20000g/molの平均分子量、最も好ましくは約200g/mol、約400g/mol、約2000g/molまたは約20000g/molの平均分子量を有することを特徴とすることができる。
【0082】
本発明において、前記平均分子量は、凍結保存剤形に含まれるポリエチレングリコールの各分子が有する分子量の平均を意味する。
【0083】
本発明において、前記凍結保存剤形に含まれるポリエチレングリコールは、前記平均分子量を基準として、約±50%、好ましくは約±40%、より好ましくは約±30%、さらに好ましくは約±20%、最も好ましくは約±10%または約±5%の範囲の分子量を有することを特徴とすることができる。
【0084】
本発明において、前記凍結保護剤がグルコースである場合、約0.5%(w/v)~約5%(w/v)、好ましくは約1%(w/v)~約4%(w/v)、さらに好ましくは約1%(w/v)~約3%(w/v)、最も好ましくは約1.25%(w/v)~約2.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0085】
本発明において、前記凍結保護剤がポリエチレングリコールである場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.04%(w/v)~約3%(w/v)、最も好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.225%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.625%(w/v)~約2.5%(w/v)、約0.045%(w/v)~約2.25%(w/v)、約0.225%(w/v)~約2.25%(w/v)、または約0.625%(w/v)~約2.25%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0086】
本発明において、前記ポリエチレングリコールが約400g/molの平均分子量を有する場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、最も好ましくは約0.625%(w/v)~約2.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0087】
本発明において、前記ポリエチレングリコールが約4000g/molの平均分子量を有する場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、最も好ましくは約0.225%(w/v)~約2.25%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0088】
本発明において、前記ポリエチレングリコールが約20000g/molの平均分子量を有する場合、約0.01%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約0.02%(w/v)~約6%(w/v)、さらに好ましくは約0.045%(w/v)~約2.5%(w/v)、最も好ましくは約0.045%(w/v)~約2.25%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0089】
本発明において、前記凍結保護剤がトレハロースである場合、約0.5%(w/v)~約10%(w/v)、好ましくは約1%(w/v)~約9%(w/v)、さらに好ましくは約1.7%(w/v)~8.5%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0090】
本発明において、前記ヒト血清アルブミンは、約1%(w/v)~約10%(w/v)の最終濃度、好ましくは約2%(w/v)~約8%(w/v)、さらに好ましくは約3%(w/v)~約5%(w/v)、最も好ましくは約4%(w/v)の最終濃度で含まれることを特徴とすることができる。
【0091】
本発明の一実施例で確認したように、本発明の実施例の候補群1-1~1-2、候補群2-1~2-2及び候補群3-1(表1)は、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)、HES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まない低濃度のDMSO条件でも、細胞の表面マーカー(図2)とNK細胞の脱顆粒能力(図3)が従来の凍結保存用培地(CS10)を使用した剤形と同じレベルを示すと同時に、より高い細胞収得率(図1、A)及び著しく優れたNK細胞の実際のがん細胞殺傷能力(図4図6)を示した。このうち、候補群2-1の場合、解凍時に最も高い収得率を示しながらも、高いがん細胞殺傷能力を安定的に示した。
【0092】
本発明は、他の観点において、NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物を含むNK細胞の凍結保存剤形に関する。
【0093】
本発明において、前記NK細胞の凍結保存剤形は、NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物の他にも、エネルギー源、その他のタンパク質等の追加成分を含むことができる。
【0094】
本発明の用語、「NK細胞」は、「ナチュラルキラー細胞(Natural killer cell)」と呼ばれ、先天性免疫の構成要素としてMHCに独立的な細胞死滅を誘導する。本発明において、前記NK細胞は、生物内に自然に存在するNK細胞だけでなく、遺伝子操作されたNK細胞(例えば、CAR-NK等)、NK細胞ベースの細胞治療剤を包括する広義の意味で使用される。前記NK細胞は、様々な表面マーカーによって識別することができる。例えば、前記NK細胞は、CD3(-)CD56(+)NK細胞であり得るが、これに制限されない。
【0095】
本観点において、前記凍結保存用組成物は、前記で記載のものと同じ特徴を共有することができる。
【0096】
本発明はまた他の観点において、
(a) NK細胞を前記凍結保存用組成物に懸濁し、NK細胞凍結保存剤形を製造する段階;及び
(b) 前記NK細胞凍結保存剤形を凍結させる段階を含むNK細胞の凍結保存方法に関する。
【0097】
本発明において、前記(a)段階は、NK細胞を約1×102cells/mL~約1×1013cells/mL、好ましくは約1×105cells/mL~1×109cells/mLの濃度に懸濁し、凍結保存剤形を製造することを特徴とすることができる。
【0098】
本発明において、前記(b)段階の「凍結」は、通常の方法によって行うことができる。例えば、前記「凍結」は、ガラス化凍結(vitrification)、緩慢凍結(slow freezing)等の方法で行われることを特徴とすることができるが、これらに制限されない。凍結において、本発明の凍結保存用組成物は、細胞内の氷の結晶形成を防止し、細胞を保護する機能を行うことができ、解凍後の細胞の収得率/生存率を著しく高めることができる。
【0099】
本発明の用語、「ガラス化凍結(vitrification)」とは、細胞を冷却することにより、ガラス化することを意味する(Nature. 313 (6003): 573-5; Cryo Letters. 25 (4): 241-54)。ガラス化凍結は、氷の結晶の形成なく、凍結保存が可能な利点がある。前記ガラス化凍結は、数分~数時間以内に最終到達温度まで冷却させる比較的に温度の急激な低下を通じて行うことができる。前記ガラス化凍結は、通常の方法で行うことができ、最終到達温度及び温度の低下速度は、細胞の種類、凍結保存剤形等により、当業界によく知られている方法によって計算することができる(G. Allahbadia et al., Vitrification in Assisted Reproduction, (c) Springer India 2015)。例えば、前記ガラス化凍結は、本発明の凍結保存用組成物に細胞を懸濁させて凍結保存剤形を製造し、CRF(controlled rate freezing)のような装備を用いて数分~数時間以内の速度で温度を低下させて最終到達温度に到達すると、凍結された細胞を窒素タンクに保管することを特徴とすることができるが、これに制限されない。
【0100】
本発明の用語、「緩慢凍結(slow freezingまたはslow cooling)」とは、比較的ゆっくりと温度を低下させ、細胞をゆっくりと凍結させる方法を意味し、遅いプログラム可能な凍結(slow programmable freezing)と同じ意味で相互互換的に使用することができる。前記緩慢凍結は、数時間~数十時間の間、最終到達温度まで冷却させる比較的遅い温度の低下を通じて行うことができる。前記緩慢凍結は、通常の方法で行うことができ、最終到達温度及び温度の低下速度は、細胞の種類、凍結保存剤形等に応じて、当業界によく知られている方法によって計算することができる。例えば、本発明の凍結保存用組成物に細胞を懸濁させて凍結保存剤形を製造し、前記凍結保存剤形が入ったバイアルをイソプロピルアルコールが入った冷凍用コンテナボックスに入れ、超低温冷凍庫で数時間~数十時間の間、温度を一定に下げ細胞を凍結させて行うことができるが、これに制限されない。
【0101】
本発明は、人体に毒性及び副作用を示すHES及び/またはHEPES等の凍結保護剤を含まず、人体に有害でないレベルの低濃度DMSOを凍結保護剤として含み、生体親和的で非毒性である凍結保護剤の配合により、NK細胞の高い生存率/収得率と共に、標的がん細胞に対する殺傷能力の著しい向上を示すようにする。有毒性凍結保護剤の最小化により、本発明の凍結保存用組成物及びNK細胞を含む剤形は、別途の追加工程または処理がなくても対象に投与され、対象からNK細胞治療剤の意図した効果を示すことができる。
【0102】
従って、本発明は、また他の観点において、本発明はまた、NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物を含む免疫細胞治療剤を提供する。
【0103】
本発明の用語、「免疫細胞治療剤」とは、投与された対象の免疫システムを直接/間接的に活性化させるか、細胞の直接的な効果を通じて疾患を治療する免疫療法に使用される製剤として、患者、同種または異種の対象から抽出された免疫細胞または工学的にエンジニアリングされた免疫細胞を含む治療剤を意味する。
【0104】
本発明において、前記免疫細胞治療剤は、凍結保存された本発明のNK凍結保存剤形を解凍した後に使用することを特徴とすることができる。
【0105】
本発明の用語、「解凍(Thawing)」とは、凍結保存された細胞を溶かして再活性化することを意味する。本発明において、前記解凍は、当業界に知られている通常の方法で行うことができる。例えば、約37℃に予め温められたウォーターバスに凍結保存された免疫細胞治療剤が入った容器を約1時間以上浸漬して行うことができるが、これに制限されず、細胞の種類、凍結保存剤型、容量等によって温度、解凍時間を調節することができる。
【0106】
特に、本発明の免疫細胞治療剤は、生体に毒性を示すことが知られている凍結保護剤であるHEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)、HES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まず、従来知られている凍結保存用組成物より著しく低い低濃度のDMSOを含むため、別途の有害性凍結保護剤の除去手順がなくても、直ちに使用できることを特徴とすることができる。
【0107】
本発明において、前記免疫細胞治療剤は、解凍後、直ちに使用できる(Ready to use)ことを特徴とすることができる。
【0108】
本発明の用語、「直ちに使用できる(Ready to use)」とは、解凍後、別途の希釈/濃縮、再可溶化(reconstitution)または再水和(rehydration)過程なく、薬学的に有効な濃度で直ちに使用/投与可能であることを意味する。
【0109】
本発明の免疫細胞治療剤は、直ちに使用できる形態であるため(ready to use)、使用者の利便性が高まるだけでなく、希釈/濃縮または再可溶化(reconstitution)または再水和(rehydration)過程で発生し得るエラー等による活性偏差、汚染等を防止することができるという利点がある。
【0110】
本発明において、前記免疫細胞治療剤は、医学的または薬学的に有効な濃度でNK細胞を含むことができる。例えば、前記免疫細胞治療剤は、NK細胞を1x102~1x1013cells/mL、好ましくは1x105~1x109cells/mLの最終濃度で含むことを特徴とすることができる。
【0111】
本発明は、また他の観点において、NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物を含む、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用医薬組成物に関する。
【0112】
本発明において、前記医薬組成物は、本発明のNK凍結保存剤形を解凍した後、使用または投与されることを特徴とすることができる。
【0113】
本発明において、前記医薬組成物は、解凍後、直ちに使用できる(Ready to use)ことを特徴とすることができる。
【0114】
本発明において、前記医薬組成物は、NK細胞を1×102~1×1013cells/mL、好ましくは1×105~1×109cells/mLの最終濃度で含むことを特徴とすることができる。
【0115】
本発明において、前記NK細胞は、生物内に自然に存在するNK細胞だけでなく、遺伝子操作されたNK細胞(例えば、CAR-NK等)、NK細胞ベースの細胞治療剤を包括する広義の意味で使用される。前記NK細胞は、様々な表面マーカーによって識別することができる。例えば、前記NK細胞は、CD3(-)CD56(+)NK細胞であり得るが、これに制限されない。
【0116】
本発明は、また他の観点において、前記医薬組成物を投与する段階を含む、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療方法に関する。
【0117】
本発明は、また他の観点において、本発明のNK細胞の凍結保存剤形、免疫細胞治療剤または医薬組成物を用いた、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療方法に関する。
【0118】
本発明において、本発明のNK細胞の凍結保存剤形、免疫細胞治療剤または医薬組成物は、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療を目的として対象に投与されることを特徴とすることができる。
【0119】
本発明において、本発明のNK細胞の凍結保存剤形、免疫細胞治療剤または医薬組成物は、解凍後、直ちに使用できる(Ready to use)ことを特徴とすることができる。
【0120】
本発明は、また他の観点において、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用医薬組成物の製造のための本発明のNK細胞の凍結保存剤形、免疫細胞治療剤または医薬組成物の凍結保存剤形の使用に関する。
【0121】
本発明は、また他の観点において、本発明のNK細胞の凍結保存剤形、免疫細胞治療剤または医薬組成物の凍結保存剤形のがん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用途に関する。
【0122】
本発明は、また他の観点において、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療のための前記NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物の用途に関する。
【0123】
本発明は、また他の観点において、がん、免疫疾患または感染性疾患の予防または治療用医薬組成物の製造のための前記NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物の使用に関する。
【0124】
本発明において、用語「がん」とは、「腫瘍」と同じ意味で使用され、本発明による予防または治療用医薬組成物は、固形がん(solid cancer)及び血液がんを含む全種類のがんに適用可能である。固形がんとは、血液がんとは異なり、臓器(organ)で塊を成し形成されたがんを意味し、ほとんどの臓器で発生するがんがこれに該当する。本発明による免疫治療剤または医薬組成物を用いて治療可能ながんは、特に限定されず、胃がん、肝臓がん、肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、リンパ腫等を含むことができるが、これらに制限されない。
【0125】
本発明において、「免疫疾患」とは、非正常的な免疫反応によって発生する疾患であり、例えば、自己免疫疾患、移植拒絶または関節炎であることを特徴とすることができるが、これらに制限されない。前記自己免疫疾患は、例えば、クローン病、エリテマトーデス、アトピー、リウマチ性関節炎、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、1型糖尿病、ループス、慢性疲労症候群、線維筋痛症、甲状腺機能低下症と甲状腺機能亢進症、強皮症、ベーチェット病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、メニエール症候群(Meniere's syndrome)、ギラン-バレー症候群(Guilian-Barre syndrome)、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、白斑症、子宮内膜症、乾癬、全身性強皮症、喘息または潰瘍性大腸炎であり得るが、これらに制限されない。前記移植拒絶は、同種移植拒絶反応(allograft rejection)または移植片対宿主病(GVHD)であり得る。
【0126】
本発明において、「感染性疾患」とは、ウイルスまたは病原菌の感染によって発生する疾患であり、呼吸器及び血液、皮膚接触等を通じて伝染して感染する可能性のある疾患を全て含む概念である。このような感染性疾患の非制限的な例としては、B型及びC型肝炎、ヒトパピローマウイルス(human papilloma virus; HPV)感染、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)感染、ウイルス性呼吸器疾患、インフルエンザ等があるが、これらに制限されない。
【0127】
本発明の用語、「予防」とは、本発明の予防または治療用医薬組成物の投与により、がん、免疫疾患または感染性疾患を抑制させるか、進行を遅延させるあらゆる行為を意味し、「治療」とは、がん、免疫疾患または感染性疾患の発展の抑制、症状の軽減または除去を意味する。
【0128】
本発明による予防または治療用医薬組成物は、薬学的に有効な量のNK細胞を単独で含むか、一つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含むことができる。前記において、薬学的に有効な量とは、がん、免疫疾患または感染性疾患の症状を予防、改善及び治療するのに十分な量を意味する。
【0129】
前記「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常、胃腸障害、めまい等のようなアレルギー反応またはこれと類似の反応を引き起こさないことを意味する。前記担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油を挙げることができる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等をさらに含むことができる。
【0130】
また、本発明の予防または治療用医薬組成物は、前記NK細胞及び本発明の凍結保存用組成物と共に、がん、免疫疾患または感染性疾患の治療効果を有する公知の有効成分を1種以上含むことができる。
【0131】
本発明の予防または治療用医薬組成物は、投与後に活性成分の迅速、持続または遅延した放出を提供することができるように、当業界で公知の方法を使用して剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質ゼラチンカプセル、滅菌注射溶液、滅菌粉末の形態であり得る。
【0132】
本発明の予防または治療用医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈または筋肉を含む複数の経路を通じて投与することができ、活性成分の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び患者の重症度等の様々な因子に応じて適切に選択することができ、本発明による予防または治療用医薬組成物は、がん、免疫疾患または感染性疾患の症状を予防、改善または治療する効果を有する公知の化合物と並行して投与することができる。
【0133】
以下、実施例を通じて、本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、ひとえに本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0134】
実施例1:PBMC由来CD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞の準備及び培養
実施例1-1:ナチュラルキラー細胞の準備
CD3(-)細胞を収得するために、PBMC(peripheral blood mononuclear cell, Zen-Bio. Inc, NC 27709, USA, Cat#: SER-PBMC-200-F)をADAM-MC2自動細胞計数機(NanoEnTek, Cosmogenetech co, Ltd.購入)を用いて細胞数を測定した。計数されたPBMCを新しいチューブに移した後、300×g、4℃の温度で10分間遠心分離した。
【0135】
CliniMACS PBS/EDTAバッファー(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany, Cat#: 200-070-029)に0.5%(v/v) HSA(human serum albumin)と1mM濃度のEDTAを加えたCliniMACSバッファー(pH 7.2)を製造し、遠心分離を終えた前記PBMC細胞に対して1×107細胞数あたり80μLのCliniMACSバッファーと20μLのCD3磁性ビーズ(Miltenyi biotech, 130-050-101)を処理して細胞ペレットを懸濁した後、4℃の温度で15分間反応させた。洗浄のために10mL MACSバッファーを入れて340×g、4℃の温度で10分間遠心分離した後、上層液を捨て、細胞ペレットを0.5mLのCliniMACSバッファーに再懸濁した。LDカラム(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany, Cat#: 130-042-901)にまず2mLのMACSバッファーを流した後、前記細胞再懸濁液を流し、LDカラムを通過して出てくるCD3(-)細胞を収得した。この時、LDカラム内に残っている細胞が十分に分離されるように2mLのCliniMACSバッファーを3回流してCD3(-)細胞を収得した後、新しいチューブに入れて340×g、4℃の温度で10分間遠心分離した。その後、上層液を除去した後、1×107個の細胞数あたり80μLのMACSバッファーと20μLのCD56磁性ビーズ(Miltenyi biotech, Cat#: 130-050-401)を入れ、4℃の温度で15分間反応させた。洗浄のために10mL CliniMACSバッファーを入れて340×g、4℃の温度で10分間遠心分離した後、上層液を捨て、0.5mLのCliniMACSバッファーに細胞ペレットを再懸濁した。LSカラム(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany, Cat#: 130-042-901) にまず3mLのCliniMACSバッファーを流した後、前記細胞懸濁液を流した。この時、LSカラム内に残っている細胞が十分に分離されるように2mLのCliniMACSバッファーを3回流した。その後、LSカラムを磁性スタンド(Magnet stand)で分離した後、5mLのCliniMACSバッファーを入れ、ピストンで圧力をかけてCD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞を収得した。
【0136】
前記で収得したCD3(-)CD56(+)ナチュラルキラー細胞を新しいチューブに入れて340×g、4℃の温度で10分間遠心分離した後、上層液を除去し、培養培地に懸濁させて細胞計数機を用いて細胞数を測定した。
【0137】
実施例1-2:ナチュラルキラー細胞培養
NK Cell Activation/Expansion Kit (Cat#: 130-112-968) (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)内のNK活性化ビーズを製造するために100μL CD335 (NKp46)-ビオチン+100μL CD2-ビオチンを1.5mLマイクロチューブに入れ混合した後、500μL抗-ビオチンMACSiBead粒子を入れ混合した後、300μL MACSバッファーを入れ、マイクロチューブローテーターを用いて2~8℃で2時間混合した。CD3(-)CD56(+)細胞数を考慮し、1x106cellsあたり5μL NK活性化ビーズを新しいチューブに移した後、1mL NK MACS培地(Cat#: 130-094-483) (Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)を入れて300×gで5分間遠心分離する。上層液除去後に使用するNK MACs培地(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany, Cat#: 130-094-483) を106NK cellsあたり5μL基準で追加してNK活性化ビーズを溶く。(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany, Cat#: 130-094-483)に5%ヒトAB血清(MILAN Analytica AG, Rheinfelden, Switzerland Cat#: 000084)が添加された培地でGI-101(GICELL Inc) 50nM/mLの存在下でナチュラルキラー細胞を21日間培養した。
【0138】
実施例2:NK細胞凍結保存用組成物の製造及び凍結保存
実施例2-1:NK細胞凍結保存用組成物の製造
凍結保存用組成物を製造するために、50%(v/v)のプラズマソリューションA Inj.(HK inno.N)、5%(v/v)のDMSO(Avantor, CAT# 9033-04-01)、20%(v/v)のアルブミンInj.(GC Biopharma)を順に混合して表1の基本組成を準備した。その後、追加の凍結保護剤として、グルコース(JW中外製薬)、PEG400(Polyethylene Glycol 400 (USP-NF, BP, Ph. Eur. pure, pharma grade, PanReac AppiliChem, CAT# 142436)、トレハロース(Trehalose, Spectrum, CAT# T9601)を表1に記載の最終濃度となるように添加した。この時、追加の凍結保護剤の容量(Volume)は、全体の組成物の25%になるようにプラズマソリューションA Inj.に希釈して使用した。対照群としては、商業的に購入可能な凍結保存用組成物であるCS10培地(表2)を使用した。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
実施例 2-2:NK細胞の凍結保存
実施例1で製造されたNK細胞を前記NK細胞凍結保存用組成物に1x106cells/mLになるように懸濁し、NK細胞の凍結剤形を製造し、バイアルに1mlずつ分注して1日間超低温冷凍庫に保管した後、LN2に移動して凍結保存した。
【0142】
実施例3:解凍後の凍結剤形候補群別の収率及び生存率の確認
4週間凍結保存されたNK細胞の生存細胞数及び生存率は、ADAM cell counter Accustain kit(DigitalBio)を使用し、メーカーのマニュアルに従って行い測定した。
【0143】
具体的には、凍結されたNK細胞を解凍した後、1x106cell/mLの濃度になるようにPBSで希釈し、14μLずつ底が丸い96ウェルプレートの二つのウェルにそれぞれ分注した。培養した細胞を計数し、二つのウェルのうち一つには総細胞数を測定することができるT溶液(solution)14μLを添加して希釈された細胞と混ぜた後、このうち14μLを取り、計数機チップ(chip)のTパネルに入れた。一方、死んだ細胞数を測定することができるN溶液をもう一つのウェルに14μL添加して希釈された細胞と混ぜた後、このうち14μLを取り、計数機チップのNパネルに入れた。前記チップをADAM計数機に挿入し、生存細胞数を測定し、その結果を図1に示した。
【0144】
実施例1により、4週間凍結されたNK細胞の生存細胞数及び生存率を確認した結果、図1に示すように、対照群(CS10)を使用した凍結剤形で凍結保管されたNK細胞を基準とした時、表1の候補群を使用した凍結剤形は、概ね同等レベルの細胞収得率及び生存率を示すことを確認した。この中でも、候補群1-2~1-3、候補群2-1~2-2及び候補群3-2を添加した候補群の収率が高い傾向を示し、PEGを安定化剤として含む候補群2-1は、最も優れた収率を示した。
【0145】
実施例4:凍結保存されたNK細胞の表面マーカーの確認
8種の凍結剤形を使用し、凍結されたナチュラルキラー細胞をそれぞれNK MACS培地(NK MACS medium, Miltenyi)10mLに溶き、1,300rpmの条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、NK MACS培地10mLを入れてペレットを懸濁した。
【0146】
PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mLポリミキシンB(PolymyxinB)、100U/mLペニシリン(Penicillin)、100μg/mLストレプトマイシン(Streptomycin)、1mMピルビン酸ナトリウム(Sodium pyruvate)を添加し、FACSバッファーを製造した。その後、細胞計数機を用いて2×106cells/mLになるようにFACSバッファーで希釈した。96ウェルプレートに希釈した細胞溶液を100μLずつ入れ、1,300rpm条件で5分間遠心分離し、上層液を除去し、FACSバッファー200μLを入れてペレットを溶いた。1,300rpm条件で5分間遠心分離し、200X Fcブロック(Biolegend, San Diego, CA, USA)溶液をFACSバッファーに1X濃度に製造したFcブロッキング溶液(Fc blocking solution)50μLを各ウェル(well)に入れ、氷に10分間放置した。
【0147】
FITCが標識された抗-ヒトCD3抗体(FITC anti-human CD3 Antibody (Clone UCHT1))、PE-Cy7が標識された抗-ヒトCD56抗体(PE/Cyanine7 anti-human CD56 (NCAM) Antibody (Clone 5.1H11))、BV421が標識された抗-ヒトCD14抗体(Brilliant Violet 421TM anti-human CD14 Antibody (Clone 63D3))、BV480が標識された抗-ヒトCD19抗体(BV480 Mouse Anti-Human CD19 (Clone SJ25C1))、PEが標識された抗-ヒトCD16抗体(PE anti-human CD16 Antibody (Clone 3G8))、BV711が標識された抗-ヒトNKp46抗体(Brilliant Violet 711TM anti-human CD335 (NKp46) Antibody (Clone 9E2))、BV650が標識された抗-ヒトNKG2D抗体(BD HorizonTM BV650 Mouse Anti-Human CD314 (NKG2D) (Clone 1D11))、BV605が標識された抗-ヒトNKG2C抗体(BV605 Mouse Anti-Human CD159c (NKG2C) (Clone 134591))、BV785が標識された抗-ヒトCXCR3抗体(Brilliant Violet 785TM anti-human CD183 (CXCR3) Antibody (Clone EH12.2H7))、PEが標識された抗-ヒトCCR5抗体(PE anti-human CD195 (CCR5) Antibody (Clone J418F1))及びBV650が標識された抗-ヒトDNAM-1抗体(BD OptiBuildTM BV650 Mouse Anti-Human CD226 (Clone DX11))を50μL FACSバッファーと共に各ウェル(well)に入れ、20分間4℃の温度で反応させた後、FACSバッファーを100μL入れ、1,300rpmで5分間遠心分離した。この時、蛍光が同じマーカーはパネルを分離して染色を行った。使用された培地及びバッファー等の材料は表3に羅列し、マーカー及び抗体情報は下記の表4に羅列した。
【0148】
【表3】
【0149】
【表4】
【0150】
上層液を除去し、200μL FACSバッファーを入れて懸濁した後、1,300rpm条件で5分間遠心分離した後、200μL FACSバッファーに再懸濁した。フローサイトメトリー(Cytek(登録商標)Aurora, Cytek, Fremont, CA, USA)を用いて細胞の表現型を確認した。
【0151】
その結果、図2のように、対照群(CS10)と表1の各候補群1-1~3-2剤形で凍結保存されたNK細胞のナチュラルキラー細胞の活性または阻害を示す表面マーカーの発現率が同等のレベルで示されることを確認した。
【0152】
実施例5:凍結保存されたNK細胞の細胞毒性マーカーの確認
8種の凍結剤形を使用し、凍結保存されたNK細胞をそれぞれNK MACS培地(NK MACS medium, Miltenyi)10mLに溶き、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、NK MACS培地10mLを入れてペレットを溶いた。
【0153】
PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mLポリミキシンB(PolymyxinB)、100U/mLペニシリン(Penicillin)、100μg/mLストレプトマイシン(Streptomycin)、1mMピルビン酸ナトリウム(Sodium pyruvate)を添加し、FACSバッファーを製造した。その後、細胞計数機を用いて2×106cells/mLになるようにNK MACS培地で希釈した。96ウェルプレートに希釈した細胞溶液を100μLずつ入れ、NK MACS培地に500X刺激カクテル (eBioscienceTM Cell Stimulation Cocktail (plus protein transport inhibitors) (500X))を2Xの濃度に希釈した。製造した刺激溶液を各ウェルに100μLずつ入れ、37℃、5%CO2培養器で4時間培養した。
【0154】
4時間培養後、1,300rpm条件で5分間遠心分離し、上層液を除去し、FACSバッファー200μLを入れてペレットを溶いた。1,300rpm条件で5分間遠心分離し、200X Fcブロック(Biolegend, San Diego, CA, USA)溶液をFACSバッファーに1X濃度に製造したFcブロッキング溶液(Fc blocking solution)50μLを各ウェルに入れ、氷に10分間置いた。
【0155】
PerCPが標識された抗-ヒトCD3抗体(PerCP anti-human CD3 Antibody (Clone HIT3a))、APC-Cy7が標識された抗-ヒトCD56抗体(APC/Cyanine7 anti-human CD56 (NCAM) Antibody (Clone 5.1H11))、BV421が標識された抗-ヒトTim-3抗体(Brilliant Violet 421TM anti-human CD366 (Tim-3) Antibody (Clone F38-2E2))、BV785が標識された抗-ヒトCD16抗体(Brilliant Violet 785TM anti-human CD16 Antibody (Clone 3G8)) 及びPEが標識された抗-ヒトPD-1抗体(PE anti-human CD279 (PD-1) Antibody (Clone A17188B)) を50μL FACSバッファーと共に各ウェルに入れ、20分間4℃の温度で反応させた後、100μL FACSバッファーを入れ、1,300rpmで5分間遠心分離した。
【0156】
上層液を除去し、200μL FACSバッファーを入れて懸濁した後、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、100μL BD Cytofix/CytopermTM固定・透過処理液で懸濁した後、氷に30分間置いた。
【0157】
BD Perm/WashTMバッファーをDWに1X濃度に希釈して30分反応後、製造したウォッシュバッファーを各ウェルに100μLずつ入れ、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、200μLウォッシュバッファーを入れ、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。
【0158】
FITCが標識された抗-ヒトIFN-γ抗体(FITC anti-human IFN-γ Antibody (Clone 4S.B3))、PE-Cy7が標識された抗-ヒトグランザイムB抗体(PE/Cyanine7 anti-human/mouse Granzyme B Recombinant Antibody (Clone QA16A02))及びAPCが標識された抗-ヒトパーフォリン抗体(APC anti-human Perforin Antibody (Clone B-D48))を100μLウォッシュバッファーと共に各ウェルに入れ、20分間4℃の温度で反応させた後、100μLウォッシュバッファーを入れ、1,300rpmで5分間遠心分離した。
【0159】
上層液を除去し、200μLウォッシュバッファーを入れて懸濁した後、1,300rpm条件で5分間遠心分離した後、200μL FACSバッファーに再懸濁した。フローサイトメトリー(Cytek(登録商標)Aurora, Cytek, Fremont, CA, USA)を用いて細胞の毒性マーカーの発現を確認した。
【0160】
使用された培地及びバッファー等の材料は表5に羅列し、使用されたマーカー及び抗体情報は下記の表6に羅列した。
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
その結果、図3に示すように、比較例(CS10)と表2の各候補群1-1~3-2剤形で凍結保存されたNK細胞は、脱顆粒物質として知られるIFN-γ、パーフォリン、グランザイムBが同等のレベルで示されることを確認した。
【0164】
実施例6:凍結保存されたNK細胞のがん細胞殺傷能力の確認
実施例5で使用された材料の情報は下記の表7の通りである。
【表7】
【0165】
実施例6-1:ターゲット細胞(Target Cell)の準備
ターゲット細胞(K562、BT474、MDA-MB-231)を収得した後、1,300rpm 5分間遠心分離した後、RPMI 1640培地(Welgene、LM011-01)に1x106cells/mLの濃度で懸濁した。準備した1x106cellsのターゲット細胞あたり30uLのCalcein-AMを入れて染色した。光を遮断してインキュベーター(37℃、5% CO2)で1時間培養した後、10mLのRPMI 1640培地で2回洗浄した。上層液を捨て、RPMI 1640培地で懸濁し、1x105cells/mLの濃度でターゲット細胞懸濁液を製造した。
【0166】
実施例6-2:エフェクター細胞(Effector Cell)の準備
各凍結保存剤形で4週間凍結されたNK細胞を5x106個収得し、1,300rpm、10分間遠心分離した後、RPMI 1640培地(Welgene, LM011-01)に1x106cells/mLの濃度で懸濁した。表8に示された比率でE:T比(10:1、3:1、1:1、0.3:1)に合わせて96-ウェル-プレートに分注した。NK細胞がないウェルにRPMI 1640培地100uLを入れて「Spontaneous Value」を作製し、2% Triton X-100/DPBS 100uLを入れて「Maximum Value」とする。また、RPMI 1640培地200uLを入れて「MM」とした。
【0167】
【表8】
【0168】
実施例6-3:共培養
実施例6-1の染色されたターゲット細胞を6-2で準備した96-ウェル-プレートに100uLずつ分注し、光を遮断して4時間37℃、5%CO2条件で共培養した。共培養後、2000rpm 3分間遠心分離した後、100uLの上層液を収得し、新しいフラットボトム96-ウェル-プレートに分注し、485nm、535nmの波長で蛍光を測定した(図4~6)。
【0169】
その結果、図4図6に示すように、NK細胞のがん細胞殺傷能力は、グルコースを添加した候補群1-1、PEGを添加した候補群2-1及びトレハロースを添加した候補群3-1を凍結剤形で用いたNK細胞で、対照群(CS10)に対して有意に向上したがん細胞殺害能力を示すことを確認した。ターゲット細胞によって能率は多少の差を示したが、全体的に類似した傾向を示し、本発明の候補群の凍結剤形で凍結保存されたNK細胞のがん細胞殺傷能力が著しく優れていることを確認した。
【0170】
前記実施例の結果を総合すると、本発明の候補群1-1~1-2、候補群2-1~2-2及び候補群3-1は、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)、HES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まない低濃度のDMSO条件でも、細胞の表面マーカー(図2)とNK細胞の脱顆粒能力(図3)が従来の凍結保存用培地(CS10)を使用した剤形と同じレベルを示すと同時に、より高い細胞収得率(図1、A)及び著しく優れたNK細胞の実際のがん細胞殺傷能力(図4図6)を示した。このうち、候補群2-1の場合、解凍時に最も高い収得率を示しながらも、高いがん細胞殺傷能力を安定的に示した。
【0171】
実施例7:PEG分子量別NK細胞凍結保存用組成物の製造及び凍結保存
実施例7-1:NK細胞凍結保存用組成物の製造
凍結保存用組成物を製造するために、50%(v/v)のプラズマソリューションA Inj.(HK inno.N)、5%(v/v)のDMSO(Avantor, CAT# 9033-04-01)、20%(v/v)のアルブミンInj.(GC Biopharma)を順に混合して表1の基本組成を準備した。その後、追加の凍結保護剤としてPEG400(Polyethylene Glycol 400 (USP-NF, BP, Ph. Eur. pure, pharma grade, PanReac AppiliChem, CAT# 142436)、PEG4000(Sigma, CAT#81242)、PEG20000(Sigma, CAT#81275)を表1に記載された最終濃度となるように添加した。この時、追加した凍結保護剤の容量(Volume)は、全体の組成物の25%になるようにプラズマソリューションA Inj.に希釈して使用した。対照群としては、比較例2のようにPEGを添加せず、基本組成成分のみを含む組成物を使用した。
【0172】
【表9】
【0173】
実施例7-2:NK細胞の凍結保存
実施例1で製造されたNK細胞を前記NK細胞凍結保存用組成物に1x106cells/mLになるように懸濁し、NK細胞の凍結剤形を製造し、バイアルに1mlずつ分注して1日間超低温冷凍庫に保管した後、LN2に移動して凍結保存した。
【0174】
実施例8:解凍後のPEG分子量別凍結保存用組成物の収率及び生存率の確認
2週間凍結されたNK細胞の生存細胞数及び生存率は、ADAM cell counter Accustain kit(DigitalBio)を使用し、メーカーのマニュアルに従って行い測定した。
【0175】
具体的には、凍結されたNK細胞を解凍した後、1x106cell/mLの濃度となるようにPBSで希釈し、13μLずつ底が丸い96ウェルプレートの二つのウェルにそれぞれ分注した。培養した細胞を計数し、二つのウェルのうち一つには総細胞数を測定することができるT溶液(solution)13μLを添加して希釈された細胞と混ぜた後、このうち13μLを取り、計数機チップ(chip)のTパネルに入れた。一方、死んだ細胞数を測定することができるN溶液をもう一つのウェルに13μL添加して希釈された細胞と混ぜた後、このうち13μLを取り、計数機チップのNパネルに入れた。
【0176】
前記チップをADAM計数機に挿入し、生存細胞数を測定し、その結果を図7に示した。図7の結果によると、解凍後の候補群2-3~2-7と比較例2の収率及び生存率(viability)は同等のレベルであることが確認された。
【0177】
実施例9:PEG分子量別凍結保存用組成物のNK細胞の表面マーカーの確認
表9の6種の凍結剤形を使用して凍結されたナチュラルキラー細胞をそれぞれNK MACS培地(NK MACS medium, Miltenyi)10mLに溶き、1,300rpmの条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、NK MACS培地10mLを入れてペレットを懸濁した。
【0178】
PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mLポリミキシンB(PolymyxinB)、100U/mLペニシリン(Penicillin)、100μg/mLストレプトマイシン(Streptomycin)、1mMピルビン酸ナトリウム(Sodium pyruvate)を添加し、FACSバッファーを製造した。その後、細胞計数機を用いて2×106cells/mLになるようにFACSバッファーで希釈した。96ウェルプレートに希釈した細胞溶液を100μLずつ入れ、1,300rpm条件で5分間遠心分離し、上層液を除去し、FACSバッファー200μLを入れてペレットを溶いた。1,300rpm条件で5分間遠心分離し、200X Fcブロック(Biolegend, San Diego, CA, USA)溶液をFACSバッファーに1X濃度に製造したFcブロッキング溶液(Fc blocking solution)50μLを各ウェル(well)に入れ、氷に10分間放置した。
【0179】
PerCPが標識された抗-ヒトCD3抗体(PerCP anti-human CD3 Antibody (Clone HIT3a))、PE-Cy7が標識された抗-ヒトCD56抗体(PE-CyTM7 Mouse Anti-Human CD56 (NCAM-1) (Clone B159))、Alexa Fluor(登録商標) 700が標識された抗-ヒトCD14抗体(Alexa Fluor(登録商標) 700 Mouse Anti-Human CD14 (Clone M5E2))、BV786が標識された抗-ヒトCD19抗体(BV786 Mouse Anti-Human CD19 (Clone SJ25C1))、APC-H7が標識された抗-ヒトCD16抗体(APC-H7 Mouse Anti-Human CD16 (Clone 3G8))、BV711が標識された抗-ヒトNKp46抗体(Brilliant Violet 711TM anti-human CD335 (NKp46) Antibody (Clone 9E2))、PE-CF594が標識された抗-ヒトNKG2D抗体(PE-CF594 Mouse Anti-Human CD314 (NKG2D) (Clone 1D11))、BV421が標識された抗-ヒトNKG2C抗体(BV421 Mouse Anti-Human CD159c (NKG2C) (Clone 134591))、BV605が標識された抗-ヒトCXCR3抗体(BV605 Mouse Anti-Human CD183 (Clone 1C6/CXCR3))、APCが標識された抗-ヒトCCR5抗体(APC Mouse Anti-Human CD195 (Clone 3A9))、Alexa Fluor(登録商標) 647 が標識された抗-ヒト DNAM-1 抗体(Alexa Fluor(登録商標) 647 Mouse Anti-Human CD226 (Clone DX11))を50μL FACSバッファーと共に各ウェルに入れ、20分間4℃の温度で反応させた後、100μL FACSバッファーを入れ、1,300rpmで5分間遠心分離した。この時、蛍光が同じマーカーは、パネルを分離して染色を行った。使用された培地及びバッファー等の材料は表10に羅列し、マーカー及び抗体情報は下記の表11に羅列した。
【0180】
【表10】
【0181】
【表11】
【0182】
上層液を除去し、200μL FACSバッファーを入れて懸濁した後、1,300rpm条件で5分間遠心分離した後、200μL FACSバッファーに再懸濁した。フローサイトメトリー(Cytek(登録商標)Aurora, Cytek, Fremont, CA, USA)を用いて細胞の表現型を確認した。
その結果、図8のように、候補群2-3~2-7と比較例2の細胞表面マーカーの発現様相は同等のレベルを示すことが確認された。
【0183】
実施例10:PEG分子量別凍結保存用組成物のNK細胞の細胞毒性マーカーの確認
表9の6種の凍結保護剤を使用して凍結されたナチュラルキラー細胞をそれぞれNK MACS培地(NK MACS medium, Miltenyi)10mLに溶き、1,300rpmの条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、NK MACS培地10mLを入れてペレットを溶いた。
【0184】
PBSに3%(v/v)FBS、10mM EDTA、20mM HEPES、10μg/mLポリミキシンB(PolymyxinB)、100U/mLペニシリン(Penicillin)、100μg/mLストレプトマイシン(Streptomycin)、1mMピルビン酸ナトリウム(Sodium pyruvate)を添加し、FACSバッファーを製造した。その後、細胞計数機を用いて2×106cells/mLになるようにNK MACS培地で希釈した。96ウェルプレートに希釈した細胞溶液を100μLずつ入れ、NK MACS培地に500X刺激カクテル(eBioscienceTM Cell Stimulation Cocktail (plus protein transport inhibitors) (500X))を2Xの濃度に希釈した。製造した刺激溶液を各ウェルに100μLずつ入れ、37℃、5%CO2培養器で4時間培養した。
【0185】
4時間培養後、1,300rpm条件で5分間遠心分離し、上層液を除去し、FACSバッファー200μLを入れてペレットを溶いた。1,300rpm 条件で5分間遠心分離し、200X Fcブロック(Biolegend, San Diego, CA, USA)溶液をFACSバッファーに1X濃度に製造したFcブロッキング溶液(Fc blocking solution)50μLを各ウェルに入れ、氷に10分間置いた。
【0186】
PerCPが標識された抗-ヒトCD3抗体(PerCP anti-human CD3 Antibody (Clone HIT3a))、APC-Cy7が標識された抗-ヒトCD56抗体(APC/Cyanine7 anti-human CD56 (NCAM) Antibody (Clone 5.1H11))、BV421が標識された抗-ヒトTim-3抗体(Brilliant Violet 421TM anti-human CD366 (Tim-3) Antibody (Clone F38-2E2))、BV785が標識された抗-ヒトCD16抗体(Brilliant Violet 785TM anti-human CD16 Antibody (Clone 3G8))及びPEが標識された抗-ヒトPD-1抗体(PE anti-human CD279 (PD-1) Antibody (Clone A17188B))を50μL FACSバッファーと共に各ウェルに入れ、20分間4℃の温度で反応させた後、100μL FACSバッファーを入れ、1,300rpmで5分間遠心分離した。
【0187】
上層液を除去し、200μL FACSバッファーを入れて懸濁した後、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、100μL BD Cytofix/CytopermTM固定・透過処理液で懸濁した後、氷に30分間置いた。
【0188】
BD Perm/WashTMバッファーをDWに1X濃度に希釈して30分反応後、製造したウォッシュバッファーを各ウェルに100μLずつ入れ、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。上層液を除去し、200μLウォッシュバッファーを入れ、1,300rpm条件で5分間遠心分離した。
【0189】
FITCが標識された抗-ヒトIFN-γ抗体(FITC anti-human IFN-γ Antibody (Clone 4S.B3))、PE-Cy7が標識された抗-ヒトグランザイムB抗体(PE/Cyanine7 anti-human/mouse Granzyme B Recombinant Antibody (Clone QA16A02))及びAPCが標識された抗-ヒトパーフォリン抗体(APC anti-human Perforin Antibody (Clone B-D48))を100μLウォッシュバッファーと共に各ウェルに入れ、20分間4℃の温度で反応させた後、100μLウォッシュバッファーを入れ、1,300rpmで5分間遠心分離した。
【0190】
上層液を除去し、200μLウォッシュバッファーを入れて懸濁した後、1,300rpm条件で5分間遠心分離した後、200μL FACSバッファーに再懸濁した。フローサイトメトリー(Cytek(登録商標)Aurora, Cytek, Fremont, CA, USA)を用いて細胞の毒性マーカーの発現を確認した。
【0191】
使用された培地及びバッファー等の材料は表12に羅列し、使用されたマーカー及び抗体情報は下記の表13に羅列した。
【0192】
【表12】
【0193】
【表13】
【0194】
その結果、図9のように、候補群2-3~2-7と比較例2の細胞毒性マーカーの発現様相は同等のレベルを示すことが確認された。
【0195】
実施例11:PEG分子量別凍結保存用組成物のNK細胞のがん細胞殺傷能力の確認
実施例11で使用された材料の情報は下記の表14の通りである。
【表14】
【0196】
実施例11-1:ターゲット細胞(Target Cell)の準備
ターゲット細胞(K562, DLD-1)を収得した後、1,300rpm 5分間遠心分離した後、RPMI 1640培地(Welgene, LM011-01)に1x106cells/mLの濃度で懸濁した。準備した1x106cellsのターゲット細胞あたり30uLのCalcein-AMを入れて染色した。光を遮断してインキュベーター(37℃, 5%CO2)で1時間培養した後、10mLのRPMI 1640培地で2回洗浄した。上層液を捨て、RPMI 1640培地で懸濁し、1x105cells/mLの濃度でターゲット細胞懸濁液を製造した。
【0197】
実施例11-2:エフェクター細胞(Effector Cell)の準備
各凍結保存剤形で4週間凍結されたNK細胞を5x106個収得し、1,300rpm、10分間遠心分離した後、RPMI 1640培地(Welgene, LM011-01)に1x106cells/mLの濃度で懸濁した。表15に示した比率でE:T比(10:1、3:1、1:1、0.3:1)に合わせて96-ウェル-プレートに分注した。NK細胞がないウェルにRPMI 1640培地100uLを入れて「Spontaneous Value」を作製し、2% Triton X-100/DPBS 100uLを入れて「Maximum Value」とする。一ウェルあたりRPMI 1640培地100uLと2% Triton X-100/DPBS 100uLを3回繰り返して入れ、これを「MT」とする。また、RPMI 1640培地200uLを入れて「MM」とした。
【0198】
【表15】
【0199】
実施例11-3:共培養
実施例11-1の染色されたターゲット細胞を11-2で準備した96-ウェル-プレートに100uLずつ分注し、光を遮断して4時間37℃、5%CO2条件で共培養した。共培養後、2000rpm 3分間遠心分離した後、100uLの上層液を収得し、新しいフラットボトム96-ウェル-プレートに分注し、485nm、535nmの波長で蛍光を測定した。
【0200】
その結果、図10のように、候補群2-3~2-7は、解凍後、NK細胞のがん細胞殺傷能力が回復したことを確認することができたが、比較例2は、細胞表面マーカーまたは細胞毒性マーカーが候補群2-3~2-7と同等のレベルであるにもかかわらず、がん細胞に対する実質的な殺傷活動能力が回復していないことを確認することができた。結果的に、候補群2-3~2-7が含まれた凍結用組成物のPEGは、解凍後、NK細胞のがん細胞殺傷能力を回復させる効果を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明のNK細胞の凍結保存用組成物は、HEPES(Hydroxyethyl piperazine Ethane Sulfonicacid)、HES(Hydroxy Ethyl Starch)を含まない低濃度のDMSO条件でも、細胞の表面マーカーとNK細胞の脱顆粒能力が現在商用されている凍結保存用培地を使用した剤形と同等であるか、向上されたレベルを示すと同時に、より高い細胞収得率及び著しく優れたNK細胞のがん細胞殺傷能力を示す。特に、非特異的毒性で様々な副作用を示す従来の凍結保護剤を含まないか、低濃度で含み、非毒性の生体親和的な凍結保護剤に代替するため、別途の追加培養または注射溶液へのソリューションの交替がなくても、解凍後直ちに患者に投与が可能であり、薬学的剤形としても使用可能という利点がある。従って、非常に制限的な適応症の治療用途で使用されるNK細胞ベースの免疫治療剤の長期保管及び臨床的使用において非常に有用である。
【0202】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施態様に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されない点は明らかであろう。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
【国際調査報告】