(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】振動膜及びMEMSセンサ
(51)【国際特許分類】
H04R 7/04 20060101AFI20240501BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
H04R7/04
H04R19/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577225
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2022093423
(87)【国際公開番号】W WO2023206642
(87)【国際公開日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】202221018386.5
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】王 琳琳
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲転▼▲転▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲凱▼杰
(72)【発明者】
【氏名】石 正雨
(72)【発明者】
【氏名】阮 玉明
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 睿
【テーマコード(参考)】
5D016
5D021
【Fターム(参考)】
5D016AA03
5D016AA04
5D016BA01
5D016BA04
5D016BA05
5D016FA03
5D021CC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、振動膜及び当該振動膜を用いるMEMSセンサを提供する。
【解決手段】
前記振動膜は、矩形振動膜であり、振動膜は、振動膜本体部と、前記振動膜本体部の外側に設けられ且つ前記振動膜の4つの角部に位置する固定部と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部の方向へ凹んで形成された窪み部とを含み、前記固定部は、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイントを含む。本発明は、振動膜の有効感応面積及びMEMSセンサの音響性能を向上させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動膜であって、
前記振動膜は、矩形振動膜であり、前記振動膜は、振動膜本体部と、前記振動膜本体部の外側に設けられ且つ前記振動膜の4つの角部に位置する固定部と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部の方向へ凹んで形成された窪み部とを含み、前記固定部は、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイントを含むことを特徴とする振動膜。
【請求項2】
前記固定アンカーポイントは、2つあり、前記固定アンカーポイントは、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジの両端に対称的に設けられることを特徴とする請求項1に記載の振動膜。
【請求項3】
各角部における前記窪み部が振動膜の対角線に沿った深さは、前記矩形振動膜の対角線の長さの1/10を超えないことを特徴とする請求項1に記載の振動膜。
【請求項4】
前記固定アンカーポイントの数は、2つより大きく、前記固定アンカーポイントは、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って前記矩形振動膜の直線エッジまで延在することを特徴とする請求項1に記載の振動膜。
【請求項5】
前記振動膜は、前記窪み部の後方に設けられた円弧状の蛇腹部を含むことを特徴とする請求項1に記載の振動膜。
【請求項6】
前記蛇腹部は、等間隔で設けられた複数の同心円弧状突起部で構成されることを特徴とする請求項5に記載の振動膜。
【請求項7】
MEMSセンサであって、
前記MEMSセンサは、チャンバを有するベースと、前記ベースに固定された振動膜と、前記振動膜を覆うバックプレートとを含み、
前記振動膜は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の振動膜であることを特徴とするMEMSセンサ。
【請求項8】
前記バックプレートは、バックプレート本体部と、前記バックプレート本体部から折り曲げて延在して前記ベースに固定された支持部とを含むことを特徴とする請求項7に記載のMEMSセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動膜及び当該振動膜を用いるMEMSセンサに関し、特に振動膜上の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の発展に伴い、ユーザーは、携帯電話の通話品質に対する要求がますます高くなり、マイクロフォンは、携帯電話の音声ピックアップ装置として、その設計の良否が携帯電話の通話品質に直接影響する。
【0003】
現在では携帯電話に広く応用されたマイクロフォンは、MEMSマイクロフォンであり、本発明に関連するMEMSセンサは、ベースと、振動膜とバックプレートとからなるコンデンサシステムとを含み、振動膜とバックプレートは、対向し且つ間隔を隔てて設けられる。振動膜が音波の作用で振動するため、振動膜とバックプレートとの間の距離が変化し、更にコンデンサシステムの容量も変化し、それにより音波信号が電気信号に変換される。しかし、振動膜の固定方式として、一般的に振動膜の外側部分全体をベースに貼り合わせて固定するため、振動膜の感応領域が減っており、MEMSセンサの音響性能が低くなってしまった。
【0004】
したがって、上記技術的課題を解決する新たな振動膜及び当該振動膜を用いるMEMSセンサを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有効感応領域の面積を増加させる振動膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、振動膜を提供し、前記振動膜は、矩形振動膜であり、前記振動膜は、振動膜本体部と、前記振動膜本体部の外側に設けられ且つ前記振動膜の4つの角部に位置する固定部と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部の方向へ凹んで形成された窪み部とを含み、前記固定部は、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイントを含む。
【0007】
好ましくは、前記固定アンカーポイントは、2つあり、前記固定アンカーポイントは、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジの両端に対称的に設けられる。
【0008】
好ましくは、各角部における前記窪み部が振動膜の対角線に沿った深さは、前記矩形振動膜の対角線の長さの1/10を超えない。
【0009】
好ましくは、前記固定アンカーポイントの数は、2つより大きく、前記固定アンカーポイントは、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って前記矩形振動膜の直線エッジまで延在する。
【0010】
好ましくは、前記振動膜は、前記窪み部の後方に設けられた円弧状の蛇腹部を含む。
【0011】
好ましくは、前記蛇腹部は、等間隔で設けられた複数の同心円弧状突起部で構成される。
【0012】
本発明は、更にMEMSセンサを提供し、前記MEMSセンサは、チャンバを有するベースと、前記ベースに固定された振動膜と、前記振動膜を覆うバックプレートとを含み、前記振動膜は、矩形振動膜であり、前記振動膜は、振動膜本体部と、前記振動膜本体部の外側に設けられ且つ前記振動膜の4つの角部に位置する固定部と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部の方向へ凹んで形成された窪み部とを含み、前記固定部は、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイントを含む。
【0013】
好ましくは、前記バックプレートは、バックプレート本体部及び前記バックプレート本体部から折り曲げて延在して前記ベースに固定された支持部を含む。
【発明の効果】
【0014】
関連技術に比べて、本発明は、MEMSセンサに用いられる振動膜を提供し、前記振動膜は、矩形振動膜であり、前記振動膜は、振動膜本体部と、前記振動膜本体部の外側に設けられ且つ前記振動膜の4つの角部に位置する固定部と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部の方向へ凹んで形成された窪み部とを含み、前記固定部は、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイントを含む。本発明は、主に振動膜の振動膜本体部の外側に固定アンカーポイントを設けることにより、振動膜全体が固定アンカーポイントにより固定されるため、振動膜の有効感応面積を増大させ、それによりMEMSセンサの音響性能を向上させるという目的を達成する。
【0015】
本発明の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は、単に本発明のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、更にこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るMEMSセンサの立体構造概略図である。
【
図3】
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【
図5】本発明に係る別の振動膜の立体構造概略図である。
【
図6】従来の技術におけるセンサ中のベース及び振動膜の平面図である。
【
図7】従来の技術における別のセンサ中のベース及び振動膜の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
説明すべきものとして、本発明の実施例における全ての方向性指示(例えば上、下、左、右、前、後、内、外、頂部、底部…)は、ある特定の姿勢(例えば図面に示す)での各部材の間の相対的な位置関係等を解釈するために用いられ、当該特定の姿勢が変化すると、当該方向性指示もそれに応じて変化する。
【0018】
なお、素子が他の素子に「固定」又は「設けられる」と呼ばれるとき、当該素子は、他の素子に直接存在し、又は、同時に仲介素子が存在し得る。素子が別の素子に「接続」されていると呼ばれる場合、当該素子は、別の素子に直接接続され、又は同時に仲介素子が存在し得る。
【0019】
以下本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確で、完全に説明し、明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例だけであり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当該分野の当業者が創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0020】
図1~5に示すように、本発明に関わるMEMSセンサ100は、電子デバイスに用いることができ、前記MEMSセンサ100は、チャンバ10を有するベース1と、前記ベース1に固定された振動膜2と、前記振動膜2を覆うバックプレート3とを含む。
【0021】
前記チャンバ10は、前記ベース1を貫通して設けられる。
【0022】
前記振動膜2は、矩形振動膜であり、前記振動膜2は、振動膜本体部21と、前記振動膜本体部21の外側に設けられ且つ前記振動膜2の4つの角部に位置する固定部22と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部21の方向へ凹んで形成された窪み部23とを含み、前記固定部22は、前記振動膜2における前記窪み部23が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイント220を含む。
図4に示すように、当該実施例における各角部での前記固定アンカーポイント220は、2つあってもよく、前記固定アンカーポイント220は、前記振動膜2における前記窪み部23が形成されたエッジの両端に対称的に設けられる。当然のことながら、前記固定アンカーポイント220の数は、2つより大きくてもよく、
図5に示すように、各角部での前記固定アンカーポイント220は、前記振動膜2における前記窪み部23が形成されたエッジに沿って前記矩形振動膜の直線エッジまで延在し、当該
図4に示す実施例において、振動膜2全体の固定アンカーポイント220の数は、6つあり、他の実施例において、実際の需要に応じて、例えば、異なる振動膜の剛性需要に応じて固定アンカーポイントの数、サイズの大きさ及び分布の位置を調整してもよい。
【0023】
各角部における前記窪み部23が振動膜の対角線に沿った深さは、前記矩形振動膜の対角線の長さの1/10を超えない。前記振動膜2は、前記窪み部23の後方に設けられた円弧状の蛇腹部24を含み、前記蛇腹部24は、等間隔で設けられた複数の同心円弧状突起部240で構成される。前記固定アンカーポイント220は、前記振動膜2における前記窪み部23が形成されたエッジに沿って前記矩形振動膜の直線エッジまで延在し、且つ前記蛇腹部24まで延在しない。
【0024】
図4に示すように、本発明のセンサは、全体寸法が1mm×1mmの正方形に設けることを例とし、その辺長Xが1mmであり、本発明の振動膜が窪み部及び固定アンカーポイントを設けることにより固定されるため、前記振動膜の有効感応領域面積aが振動膜全体の面積の68%に達することができる。従来の技術における2種類の振動膜を例とし、
図6を参照して、第一種の従来技術のセンサ中のベース及び振動膜の平面図であり、センサは、振動膜4を含み、振動膜4も正方形振動膜であり、全体のセンサの辺長は、Yであり、振動膜4は、本体部41、本体部41の外側に設けられ且つ振動膜の4つの角部の位置に設けられた複数の延在部42、及び、延在部42の端部に設けられた固定部43を含み、当該センサは、全体のサイズが1mm×1mmであるように設けられた場合、すなわち辺長Yが1mmであり、その振動膜の有効感応領域面積bは、振動膜全体の面積の45%までしか達成できない。なお、
図7を参照して、第二種の従来技術のセンサにおけるベース及び振動膜の平面図であり、振動膜5は、円形振動膜であり、センサは、正方形であり、辺長は、Zであり、振動膜5は、本体部51、本体部51の外側に設けられて延在する複数の延在部52、及び、延在部52の端部に設けられた固定部53を含み、当該センサは、全体のサイズが1mm×1mmであるように設けられた場合、すなわち外フレームの辺長Zが1mmであり、その振動膜の有効感応領域面積cは、振動膜全体の面積の44%までしか達成できない。
【0025】
以上から分かるように、本発明は、振動膜の有効感応領域面積を最大限に利用することができ、それによりセンサの感度を向上させる。
【0026】
前記バックプレート3には、それを貫通する複数の貫通孔30が開設され、前記バックプレート3は、バックプレート本体部31と、前記バックプレート本体部31から折り曲げて延在して前記ベース1に固定された支持部32とを含む。前記バックプレート本体部31と支持部32は、収容空間を囲み、前記振動膜2は、前記収容空間に収容される。
【0027】
関連技術に比べて、本発明は、MEMSセンサに用いられる振動膜を提供し、前記振動膜は、矩形振動膜であり、前記振動膜は、振動膜本体部と、前記振動膜本体部の外側に設けられ且つ前記振動膜の4つの角部に位置する固定部と、前記矩形振動膜の4つの角部が前記振動膜本体部の方向へ凹んで形成された窪み部とを含み、前記固定部は、前記振動膜における前記窪み部が形成されたエッジに沿って設けられた少なくとも2つの固定アンカーポイントを含む。本発明は、主に振動膜の振動膜本体部の外側に固定アンカーポイントを設けることにより、振動膜全体が固定アンカーポイントにより固定されるため、振動膜の有効感応面積を増大させ、それによりMEMSセンサの音響性能を向上させるという目的を達成する。
【0028】
上述したのは、本発明の実施形態に過ぎない。なお、当業者にとって、本発明の創造的構想から逸脱することなく、更に改善することができるが、これらの改善は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【国際調査報告】