(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】二重投影敵対的生成ネットワークを用いたペプチドベースのワクチン生成システム
(51)【国際特許分類】
G06N 3/094 20230101AFI20240501BHJP
G16B 40/20 20190101ALI20240501BHJP
G16B 15/30 20190101ALI20240501BHJP
【FI】
G06N3/094
G16B40/20
G16B15/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561302
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 US2022023264
(87)【国際公開番号】W WO2022216584
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504080663
【氏名又は名称】エヌイーシー ラボラトリーズ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】NEC Laboratories America, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ミン、 レンチャン
(72)【発明者】
【氏名】グラフ、 ペーター ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ハン、 リゴン
(57)【要約】
MHCタンパク質に対する新規の結合ペプチドを生成するための方法は、プロセッサ装置によって、結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とを含む訓練データを与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練する(430)ことを含む。GANの訓練目的には、生成されたペプチド配列をサンプリングされた結合ペプチド配列から偽物か本物かとして識別するために弁別器を反復的に更新することと、弁別器を欺くために生成器を反復的に更新することが含まれる。この訓練には、GANの訓練目的を最適化(440)しながら、結合クラスに対する2つの投影ベクトルを2つのクロスエントロピー損失で学習することが含まれる。第1の損失は、訓練データ中の結合ペプチド配列と非結合ペプチド配列とを弁別することである。第2の損失は、生成された結合ペプチド配列と訓練データ中の非結合ペプチド配列とを弁別することである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質に対する新規結合ペプチドを生成するための、コンピュータに実装された方法であって、
プロセッサ装置によって、結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とからなる訓練データを与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練する(430)ことであって、GAN訓練目的は、前記弁別器が、生成されたペプチド配列をサンプリングされた結合ペプチド配列から偽物または本物として識別するように反復的に更新されることと、前記生成器が、前記弁別器を欺くように反復的に更新されることと、
前記訓練が、2つのクロスエントロピー損失で結合クラスに対する2つの投影ベクトルを学習する間に前記GAN訓練目的を最適化すること(440)であって、前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第1の損失が、前記訓練データ中の結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別し、前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第2の損失が、生成された結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することとを含む方法。
【請求項2】
前記GANがワッサースタインGANである、請求項1に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項3】
前記訓練は、さらに、前記2つのクロスエントロピー損失を最小化するように焼戻しソフトマックスユニットを用いて前記生成器を更新することを含む、請求項1に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項4】
前記焼戻しソフトマックスユニットが、前記焼戻しソフトマックスユニットの陰的な温度制御のためのエントロピー正則化と共に採用される、請求項3に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項5】
前記生成器が、前記結合ペプチド配列の集合を受け取るための畳み込み層を含む、深層ニューラルネットワークである、請求項1に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項6】
前記GANは、前記訓練データから得られる多変量ガウス分布からサンプリングされた潜在コードベクトルに対して動作する、請求項1に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項7】
前記2つのクロスエントロピー損失は、二重分類器によって実装される、請求項1に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項8】
前記訓練されたGANを用いて、ユーザ指定の特性を有するペプチドベースのワクチンを生成することをさらに含む、請求項1に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項9】
前記ペプチドベースのワクチンがソフトマックス出力ユニットとして前記生成器から出力され、前記生成器が、入力ランダムノイズベクトルを受け取るための全結合層と、前記ソフトマックス出力ユニットを出力するための別の全結合層とを備える、請求項8に記載のコンピュータに実装された方法。
【請求項10】
主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質に対する新規の結合ペプチドを生成するためのコンピュータプログラム製品であって、該コンピュータプログラム製品は、具現化されたプログラム命令を有する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体を含み、該プログラム命令はコンピュータに、
前記コンピュータのプロセッサ装置によって、結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とからなる訓練データを与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練する(430)手順であって、GAN訓練目的は、前記弁別器が、生成されたペプチド配列をサンプリングされた陽性のペプチド配列から偽物または本物として識別するように反復的に更新されることと、前記生成器が、前記弁別器を欺くように反復的に更新されることとからなる手順と、
前記訓練が、2つのクロスエントロピー損失で結合クラスに対する2つの投影ベクトルを学習する間に前記GAN訓練目的を最適化する(440)手順であって、前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第1の損失が、前記訓練データ中の結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別し、前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第2の損失が、生成された結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別する手順とを実行させるためにコンピュータによって実行可能である、コンピュータプログラム製品。
【請求項11】
前記GANは、ワッサースタインGANである、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項12】
前記訓練は、さらに、前記2つのクロスエントロピー損失を最小化するように焼戻しソフトマックスユニットを用いて前記生成器を更新することを含む、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
前記焼戻しソフトマックスユニットが、前記焼戻しソフトマックスユニットの陰的な温度制御のためのエントロピー正則化と共に採用される、請求項12に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
前記生成器が、前記結合ペプチド配列の集合を受け取るための畳み込み層を含む、深層ニューラルネットワークである、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項15】
前記GANは、前記訓練データから得られる多変量ガウス分布からサンプリングされた潜在コードベクトルに対して動作する、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記2つのクロスエントロピー損失は、二重分類器によって実装される、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記訓練されたGANを用いて、ユーザ指定の特性を有するペプチドベースのワクチンを生成することをさらに含む、請求項10に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記ペプチドベースのワクチンが、ソフトマックス出力ユニットとして前記生成器から出力され、前記生成器が、入力ランダムノイズベクトルを受け取るための全結合層と、前記ソフトマックス出力ユニットを出力するための別の全結合層とを備える、請求項17に記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質に対する新規結合ペプチドを生成するためのコンピュータ処理システムであって、
プログラムコードを記憶する記憶装置(140)と、
前記プログラムコードを実行するために、前記記憶装置に動作可能に結合されたプロセッサ装置(110)とを有し、前記プログラムコードは、
結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とからなる訓練データが与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練することであって、GAN訓練目的は、前記弁別器が、生成されたペプチド配列をサンプリングされた陽性の結合ペプチド配列から偽物または本物として識別するように反復的に更新され、前記生成器が、前記弁別器を欺くように反復的に更新されることからなることと、
訓練中、前記プロセッサ装置は、2つのクロスエントロピー損失で結合クラスに対する2つの投影ベクトルを学習しながら、前記GAN訓練目的を最適化する前記プログラムコードをさらに実行し、前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第1の損失が、前記訓練データ中の結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別し、前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第2の損失が、生成された結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することとを含むコンピュータ処理システム。
【請求項20】
前記プロセッサ装置は、さらに、結合ペプチドを非結合ペプチドから識別する分類器の性能を向上させるために、前記生成された陽性結合ペプチドを追加の陽性訓練データとして使用する前記プログラムコードを実行する、請求項18に記載のコンピュータ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本出願は、2021年4月5日に出願された米国仮特許出願第63/170,712号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
技術分野
本発明は、ペプチドベースのワクチン生成に関し、より詳細には、二重投影敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いたペプチドベースのワクチン生成システムに関する。
【0003】
関連技術の説明
ペプチド-主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質相互作用は、細胞媒介免疫、免疫応答の制御、移植拒絶反応において必須である。ペプチド-MHC結合予測のための効果的な計算手法は、臨床ペプチドワクチンの調査と設計とにおけるコストと時間を大幅に削減する。ペプチド-タンパク質結合予測のための効果的な計算手法は、臨床ペプチドワクチンの調査と設計とに大いに役立つ。これまでの計算システムは、MHCタンパク質と与えられたペプチドとの間の結合相互作用スコアを予測することに重点を置いているが、既存の正の結合ペプチドの例から、より多くの結合ペプチドを生成することはできない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の態様によれば、主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質に対する新規結合ペプチドを生成するための、コンピュータに実装された方法が提供される。この方法は、プロセッサ装置によって、結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とからなる訓練データを与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練することを含む。GAN訓練目的は、前記弁別器が、生成されたペプチド配列をサンプリングされた結合ペプチド配列から偽物または本物として識別するように反復的に更新されることと、前記生成器が、前記弁別器を欺くように反復的に更新されることとを含む。この訓練は、2つのクロスエントロピー損失で結合クラスに対する2つの投影ベクトルを学習する間に前記GAN訓練目的を最適化することを含む。前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第1の損失は、前記訓練データ中の結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することである。前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第2の損失は、生成された結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することである。
【0005】
本発明の他の態様によれば、主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質に対する新規の結合ペプチドを生成するためのコンピュータプログラム製品が提供される。このコンピュータプログラム製品は、具現化されたプログラム命令を有する非一過性のコンピュータ可読記憶媒体を含む。プログラム命令はコンピュータに方法を実行させる。その方法は、前記コンピュータのプロセッサ装置によって、結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とからなる訓練データを与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練する手順を含む。GAN訓練目的は、前記弁別器が、生成されたペプチド配列をサンプリングされた陽性のペプチド配列から偽物または本物として識別するように反復的に更新されることと、前記生成器が、前記弁別器を欺くように反復的に更新されることとを含む。その訓練は、2つのクロスエントロピー損失で結合クラスに対する2つの投影ベクトルを学習する間に前記GAN訓練目的を最適化することを含む。前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第1の損失は、前記訓練データ中の結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することである。前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第2の損失は、生成された結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することである。
【0006】
本発明の他の態様によれば、主要組織適合性複合体(MHC)タンパク質に対する新規結合ペプチドを生成するためのコンピュータ処理システムが提供される。コンピュータ処理システムは、プログラムコードを記憶する記憶装置を含む。コンピュータ処理システムは、さらに、プログラムコードを実行するために、前記記憶装置に動作可能に結合されたプロセッサ装置を有し、前記プログラムコードは、結合ペプチド配列の集合と非結合ペプチド配列の集合とからなる訓練データが与えられた結合ペプチド配列の集合に対して、生成器と弁別器とのみを有する敵対的生成ネットワークGANを訓練することを含む。GAN訓練目的は、前記弁別器が、生成されたペプチド配列をサンプリングされた陽性の結合ペプチド配列から偽物または本物として識別するように反復的に更新され、前記生成器が、前記弁別器を欺くように反復的に更新されることからなることとを含む。訓練中、前記プロセッサ装置は、2つのクロスエントロピー損失で結合クラスに対する2つの投影ベクトルを学習しながら、前記GAN訓練目的を最適化する前記プログラムコードをさらに実行する。前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第1の損失は、前記訓練データ中の結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することである。前記2つのクロスエントロピー損失のうちの第2の損失は、生成された結合ペプチド配列を前記訓練データ中の非結合ペプチド配列から弁別することである。
【0007】
これらおよび他の特徴および利点は、添付図面と関連して読まれる、その例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、以下の図を参照して、好ましい実施形態の以下の説明において詳細を提供する。
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による、例示的な演算装置を示すブロック図である。
【0010】
【
図2】本発明の一実施形態による、ペプチドと主要組織適合性複合体との結合を示すブロック図である。
【0011】
【
図3】本発明の一実施形態による、結合ペプチド配列を生成するための敵対的生成ネットワーク(GAN)のブロック図である。
【0012】
【
図4】本発明の実施形態による、ペプチドベースのワクチン生成のための例示的な方法を示すフロー図である。
【0013】
【
図5】本発明の実施形態による、ペプチドベースのワクチン生成のための例示的な推論方法を示すフロー図である。
【0014】
【
図6】本発明の実施形態による、例示的な弁別器を示すブロック図である。
【0015】
【
図7】本発明の実施形態による、例示的な特性予測装置を示すブロック図である。
【0016】
【
図8】本発明の実施形態による、例示的な生成器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態は、二重投影敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いたペプチドベースのワクチン生成システムに向けられている。
【0018】
本発明の実施形態は、GAN、例えばワッサースタイン(Wasserstein)GANを結合ペプチドに対してのみ訓練させ、同時に、実際の/生成された結合ペプチドと非結合ペプチドとを弁別する二重分類器の予測精度を最大化する。
【0019】
本発明の実施形態は、離散的なアミノ酸記号を持つペプチドを効果的に生成するために、エントロピー正則化で焼戻し(tempering)ソフトマックスユニットを採用している。
【0020】
本発明の実施形態は、MHC結合ペプチドと非結合ペプチドとの両方を含むデータセットに基づいて、MHCタンパク質に対する新規の結合ペプチドを生成するための新規の深層生成システムを提供する。従来のように、あらかじめ定義されたペプチドの集合の結合スコアを予測するのではなく、本発明のシステムは、MHC結合ペプチドに対して、デュアルクラスラベル投影と焼戻しソフトマックスユニットを持つ生成器とを用いて、「条件付き」敵対的生成ネットワーク(GAN)を訓練させる。
【0021】
MHCと相互作用する結合ペプチド配列と非結合ペプチド配列との両方を含むデータセットが与えられた場合、本発明の実施形態では、生成器と弁別器とを含むワッサースタインGAN(WGAN)を結合ペプチド配列に対してのみ訓練する。生成器は深層ニューラルネットワークであり、サンプリングされた潜在コードベクトルzを標準的な多変量単位分散ガウス分布から、各列がアミノ酸に対応するペプチド特徴表現行列へ変換する。弁別器は、標準的なWGANと同様にスカラーを出力する入力表現層と出力層の間に畳み込み層と全結合層とを持つ深層ニューラルネットワークである。弁別器のパラメータは、生成されたペプチド配列と訓練セットの結合ペプチド配列とを識別するために更新される。生成器のパラメータは、弁別器を欺くために更新される。本明細書で使用する「深層」とは、1つ以上の隠れ層を持つことを指す。
【0022】
図1は、本発明の実施形態による、例示的な演算装置100を示すブロック図である。演算装置100は、二重投影敵対的ネットワーク(GAN)を用いてペプチドベースのワクチン生成を行うように構成されている。
【0023】
演算装置100は、限定されないが、コンピュータ、サーバ、ラックベースのサーバ、ブレードサーバ、ワークステーション、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレットコンピュータ、モバイル演算装置、ウェアラブル演算装置、ネットワーク機器、ウェブ機器、分散演算システム、プロセッサベースのシステム、および/または利用者電子装置など、本書に記載される機能を実行できる任意のタイプの計算またはコンピュータ装置として具現化することができる。さらにまたは代替的に、演算装置100は、1つまたは複数のコンピュートスレッド、メモリスレッド、または他のラック、スレッド、演算シャーシ、または物理的に分解された演算装置の他の構成要素として具現化されてもよい。
図1に示すように、演算装置100は、例示的に、プロセッサ110、入力/出力サブシステム120、メモリ130、データ記憶装置140、および通信サブシステム150、および/またはサーバまたは同様の演算装置に一般的に見られる他の構成要素およびデバイスを含んでいる。もちろん、演算装置100は、他の実施形態において、サーバコンピュータに一般的に見られるような他のまたは追加の構成要素(例えば、様々な入力/出力デバイス)を含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、例示的な構成要素の1つ以上が、別の構成要素に組み込まれるか、さもなければ、別の構成要素の一部を形成することができる。例えば、メモリ130、またはその一部は、いくつかの実施形態において、プロセッサ110に組み込まれてもよい。
【0024】
プロセッサ110は、本明細書に記載された機能を実行することができる任意のタイプのプロセッサとして具現化することができる。プロセッサ110は、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ、中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、シングルまたはマルチコアプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ、またはその他のプロセッサやプロセスシング/制御回路として具現化されてもよい。
【0025】
メモリ130は、本明細書に記載された機能を実行することができる任意のタイプの揮発性または不揮発性メモリまたははデータストレージとして具現化され得る。動作中、メモリ130は、オペレーティングシステム、アプリケーション、プログラム、ライブラリ、およびドライバなど、演算装置100の動作中に使用される様々なデータおよびソフトウェアを格納することができる。メモリ130は、I/Oサブシステム120を介してプロセッサ110と通信可能に結合され、プロセッサ110メモリ130、および演算装置100の他の構成要素との入出力動作を容易にするための回路および/または構成要素として具現化され得る。例えば、I/Oサブシステム120は、メモリコントローラハブ、入力/出力制御ハブ、プラットフォームコントローラハブ、集積制御回路、ファームウェアデバイス、通信リンク(例えば、ポイントツーポイントリンク、バスリンク、ワイヤ、ケーブル、ライトガイド、プリント回路基板トレースなど)および/または、入力/出力操作を容易にするための他の構成要素およびサブシステムとして具現化されてもよく、さもなければ、これらを含んでいても良い。いくつかの実施形態では、I/Oサブシステム120は、システムオンチップ(SOC)の一部を形成し、プロセッサ110、メモリ130、および演算装置100の他の構成要素と共に、単一の集積回路チップに組み込まれてもよい。
【0026】
データ記憶装置140は、例えば、メモリ装置および回路、メモリカード、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、または他のデータ記憶装置など、データの短期または長期記憶用に構成された任意のタイプの装置またはデバイスとして具現化することができる。データ記憶装置140は、二重投影敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いたペプチドベースのワクチン生成のためのプログラムコードを格納することができる。演算装置100の通信サブシステム150は、ネットワークを介して演算装置100と他のリモート装置との間の通信を可能にすることができる、任意のネットワークインターフェースコントローラまたは他の通信回路、装置、またはその集合体として具現されることができる。通信サブシステム150は、任意の1つ以上の通信技術(例えば、有線または無線通信)および関連するプロトコル(例えば、イーサネット、InfiniBand(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、WiMAX(登録商標)など)を使用してそのような通信を実現するように構成され得る。
【0027】
図示のように、演算装置100は、1つ以上の周辺装置160も含むことができる。周辺装置160は、任意の数の追加の入出力装置、インタフェース装置、および/または他の周辺装置を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、周辺装置160は、ディスプレイ、タッチスクリーン、グラフィック回路、キーボード、マウス、スピーカシステム、マイク、ネットワークインタフェース、および/または他の入力/出力装置、インタフェース装置、および/または周辺装置を含むことができる。
【0028】
もちろん、演算装置100は、当業者が容易に思いつくように、他の要素(図示せず)を含むこともでき、また、特定の要素を省略することもできる。例えば、様々な他の入力装置および/または出力装置は、当業者によって容易に理解されるように、同じものの特定の実装に依存して、演算装置100に含まれることが可能である。例えば、様々なタイプの無線および/または有線の入力および/または出力装置を使用することができる。さらに、プロセッサ、コントローラ、メモリなどを追加して、様々な構成で利用することも可能である。処理システム100のこれらおよび他の変形例は、本明細書に提供される本発明の教示を考慮すれば、当業者によって容易に企図されるものである。
【0029】
本明細書で採用されるように、「ハードウェアプロセッササブシステム」または「ハードウェアプロセッサ」という用語は、1つ以上の特定のタスクを実行するために協働するプロセッサ、メモリ(RAM、キャッシュなどを含む)、ソフトウェア(メモリ管理ソフトウェアを含む)またはそれらの組み合わせを指すことができる。有用な実施形態では、ハードウェアプロセッササブシステムは、1つまたは複数のデータ処理要素(例えば、論理回路、処理回路、命令実行デバイスなど)を含むことができる。1つまたは複数のデータ処理要素は、中央処理ユニット、画像処理ユニットおよび/または別個のプロセッサまたはコンピューティング要素ベースのコントローラ(たとえば、論理ゲートなど)に含めることができる。ハードウェアプロセッササブシステムは、1つ以上のオンボードメモリ(例えば、キャッシュ、専用メモリアレイ、読み出し専用メモリなど)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ハードウェアプロセッササブシステムは、オンボードまたはオフボードにすることができるか、またはハードウェアプロセッササブシステム(例えば、ROM、RAM、基本入出力システム(BIOS)など)によって使用するために専用にすることができる1つ以上のメモリを含むことができる。
【0030】
ある実施形態では、ハードウェアプロセッササブシステムは、1つ以上のソフトウェア要素を含むことができ、実行することができる。1つ以上のソフトウェア要素は、特定の結果を達成するために、オペレーティングシステムおよび/または1つ以上のアプリケーションおよび/または特定のコードを含むことができる。
【0031】
他の実施形態では、ハードウェアプロセッササブシステムは、指定された結果を達成するために1つまたは複数の電子処理機能を実行する専用の専用回路を含むことができる。そのような回路は、1つまたは複数のアプリケーション専用集積回路(ASIC)、FPGAおよび/またはPLAを含むことができる。
【0032】
ハードウェアプロセッササブシステムのこれらおよび他の変形もまた、本発明の実施形態に従って企図される。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態による、ペプチド-MHCタンパク質結合を示すブロック図である。ペプチド202はMHCタンパク質204と結合しているように示されており、図の相補的な二次元界面は、これらの三次元構造の相補的な形状を示唆している。MHCタンパク質204は細胞表面206に付着している可能性がある。
【0034】
MHCは、免疫系が使用する細胞表面タンパク質をコード化するDNA鎖上の領域である。MHC分子は免疫系で使用され、白血球と他の細胞との相互作用に寄与する。例えば、MHCタンパク質は移植を行う際の臓器の適合性に影響を与えるし、ワクチンの製造にも重要である。
【0035】
一方、ペプチドはタンパク質の一部である。病原体がMHCタンパク質に認識されるペプチドを提示すると、免疫系は病原体を破壊する反応を引き起こす。このように、MHCタンパク質と結合するペプチド構造を見つけることで、病原体そのものを体内に持ち込むことなく、免疫反応を意図的に引き起こすことができる。特に、MHCタンパク質204とよく結合する既存のペプチドが与えられた場合、新規のペプチド202は、所望の特性および属性に従って自動的に特定され得る。
【0036】
図3は、本発明の実施形態による、例示的なGAN300を示すブロック図である。生成器302は、訓練データセット候補を生成し、弁別器304は、生成された候補と、提供された訓練データセット301からの真のサンプルとの間の識別を試みる。エンコーダ303は、訓練データセットの配列を埋め込み空間のベクトルに変換する。エンコーダは、ブロック置換または事前に訓練されたアミノ酸埋め込みスキームを使用して、アミノ酸配列を、例えば、行列の各列がアミノ酸に対応する特徴表現行列に変換しても良い。エンコーダ303および生成器302は、弁別器を欺くために一緒に訓練されることがある。
【0037】
生成器302は、弁別器804のエラーレートを増加させるように訓練され、一方、弁別器304は、生成された候補を特定する際のエラーレートを減少させるように訓練される。訓練器306は、損失関数を用いて生成器302と弁別器304との訓練を行う。ワッサースタインGANでは、損失関数はワッサースタイン計量に基づくことがある。
【0038】
ペプチド生成の文脈では、訓練データセット301は、MHCと相互作用する結合ペプチド配列と非結合ペプチド配列との両方を含むことができる。生成器302は、サンプリングされた潜在コードベクトルzを多変量単位分散ガウス分布とサンプリングされた結合クラスラベル(例えば、「結合」は1、「非結合」は0)とから各列がアミノ酸に対応するペプチド特徴表現行列に変換する深層ニューラルネットワークであっても良い。
【0039】
弁別器304は、入力表現層とスカラー値を出力する出力層との間に畳み込み層と全結合層とを持つ深層ニューラルネットワークでも良い。弁別器304のパラメータは、生成されたペプチド配列と訓練データセット301中のサンプリングされたペプチド配列とを識別するように更新することができる。生成器302のパラメータは、弁別器804を欺くために更新される。
【0040】
二重投影GANは、各クラス(例えば、「結合」「非結合」)に対して2つのクロスエントロピー損失を持つ2つの投影ベクトルを同時に学習するために使用されても良い。これは、生成されたデータ例とそれに関連するラベルとの間の相互情報を最大化することと等価であり、一方の損失は、訓練データ中の実際の結合/非結合ペプチドと、訓練データ中の実際の非結合/非結合ペプチドとを識別し、他方の損失は、生成された結合/非結合ペプチドと、生成された非結合/非結合ペプチドとを識別する。生成器302は、各クラスについてこれら2つのクロスエントロピー損失を最小化するように更新されても良い。
【0041】
非負のスカラー重みλ(x)は、2つのクロスエントロピー損失と関連する各データ点xについて学習され、弁別器損失のバランスをとる。λ(x)の大きな値にペナルティを課すために、-0.5log(λ(x))のペナルティ項を追加しても良い。データとラベルとのペアは結合分布P
XYから引かれる
【数1】
と表すことができ、xはペプチド配列、yはラベルである。生成器302は、ラベルを条件とする正準分布からサンプルz~P
zを実データ分布と一致するように変換するように訓練され、実分布はPと表記され、生成された分布はQと表記される。弁別器304は、結合分布P
XYおよびQ
xyから引かれるサンプルを識別することを学習する。
【0042】
弁別器と生成器との損失項は、以下の目的のように書くことができる。
【数2】
ここで、
【数3】
は活性化、
【数4】
は活性化前の弁別器の出力である。活性化関数は
【数5】
でも良い。この活性化関数により、最適弁別器のロジットは2通りに分解できる。
【数6】
【0043】
投影弁別器の論理は次のように導かれる。
【数7】
ここで、φ(・)は画像埋め込み関数、v
yはクラスyの埋め込み、ψは残差項を集める。v
yという項は、実クラス埋め込みと生成クラス埋め込みとの差として表すことができる。
【数8】
【0044】
したがって、投影弁別器は、パラメータ
【数9】
と
【数10】
とを単一のv
yに結びつけることができる。埋め込みを結びつけることで、より単純な処理である、カテゴリ判定境界を学習する問題を、各クラスの相対的な翻訳ベクトルを学習することに変えることができる。一般性を損なうことなく、項ψ(・)は線形関数v
ψであると仮定しても良い。ソフトプラス関数は、ReLU=max(0,・)で近似することができ、x
+とx
-とが誤って分類された場合に大きな損失が発生する。このように、学習はステップを交互に繰り返すことで行うことができる。
弁別器:(v
y+v
ψ)を(φ(x
+)-φ(x
-))に合わせる。
生成器:φ(x
-)を(v
y+v
ψ)に沿って移動させる。
パラメータを結びつけることで、GANはラベルマッチングを明示的に強制することなく、Q(x|y)をP(x|y)に整合させながら、直接データマッチングを実行することができる。
【0045】
項v
yは、基礎となる
【数11】
と
【数12】
との差を回復する必要があるが、その性質を明示的に強制するために、クラス埋め込みを分離し、V
pとV
qとをそれぞれ条件付き分布p(y|x)とq(y|x)とを学習するために用いても良い。これはソフトマックス関数で行うことができ、クロスエントロピー損失は次のように表すことができる。
【数13】
ここで、pとqとは実/生成結合ペプチドを用いた条件付き分布または損失関数に対応し、
【数14】
と
【数15】
とはそれぞれ実サンプルと生成サンプルの埋め込みを表し、φ(・)は埋め込み関数、ψ(・)は残差項を集め、x
+~P
Xとx
-~Q
Xは実配列と生成配列(PおよびQはそれぞれの実配列と生成分布)、yはデータラベルである。分類器V
pおよびV
qは、それぞれ実データと生成データとで学習される。弁別器損失
【数16】
および生成器損失
【数17】
は上記のように訓練される。
【数18】
と
【数19】
とはともにパラメータV
pを含み、
【数20】
と
【数21】
とはともにV
qを含む。
【0046】
データ照合およびラベル照合は、モデルによって重み付けされても良い。2つの損失の間にゲートを追加しても良い。
【数22】
λの定義がシステムの挙動を変える。変異体は、指数関数的減衰、スカラー値、償却モデルを含む。例えば、λは減衰係数
【数23】
として定義することができ、tは訓練反復であり、Tは訓練反復の最大数である。
【0047】
スカラー値の実施形態では、λ≧0が学習可能なパラメータであり、1として初期化される場合、λ>0である限り、クラス分離を強制することができる。ペナルティ項が使われることもある。
【数24】
【0048】
償却された実施形態では、償却された同相確率重みが各データポイントについて学習されても良い。λ(x)≧0の項は、サンプルごとの重みを生み出すxの関数となる。ペナルティを加えることもできる。損失項がミニバッチ期待値の非線形性を含む場合、どのようなタイプの線形化も適用できる。
【0049】
ソフトマックスは生成器302の最後の出力層で使用され、エントロピー正則化は焼戻しソフトマックスユニットの温度を陰的に制御するために使用される。前方経路では、「結合」または「非結合」のラベルを持つ離散アミノ酸配列(例えば、ペプチド)を出力するために、ストレートスルー推定器を使用しても良い。後方経路では、継続勾配の計算を容易にするために温度を使用しても良い。訓練の初期には、より均一なアミノ酸放出確率分布を促すために、エントロピー正則化のペナルティ係数を小さく設定することができる。訓練の後半では、より大きなペナルティ係数をエントロピー正則化に使用し、より多くのピークを持つアミノ酸放出確率分布を推奨しても良い。
【0050】
重み付きフレームワークで弁別器304および生成器302を更新する他に、入力ペプチド配列xを潜在埋め込みコード空間zにマッピングするようにエンコーダを訓練しても良い。入力ペプチド配列の集約された潜在コードは、カーネル最大平均不一致正則化項を最小化することによって、多変量単位分散ガウス分布に従うように強制することができる。各埋め込みコードzは、元のペプチド配列xを再構築するために生成器802に供給され、エンコーダおよび生成器802は、再構築誤差としてクロスエントロピー損失を最小化することによって更新され得る。
【0051】
訓練中、m個の結合ペプチド配列は、訓練セット301からランダムにサンプリングされる。m個のペプチドの潜在コードの凸状の組み合わせは、ランダムにサンプリングされた係数を用いて計算され得る。ここで、2≦m≦Kであり、Kはユーザ指定のハイパーパラメーターである。凸状の組み合わせは、重みの合計が1に等しい、正の重みを持つ線形結合であっても良い。生成器302は結合ペプチドを生成し、エンコーダおよび生成器302は、結合クラスの分類器q(y|x)が生成されたペプチドを正しく分類し、弁別器304が実データとして分類するように更新される。
【0052】
図4は、本発明の実施形態による、ペプチドベースのワクチン生成のための例示的な方法400を示すフロー図である。
【0053】
ブロック410で、陽性および陰性結合ペプチド配列のデータセットを受け取る。
【0054】
ステップ420で、各ペプチド配列を、各列がアミノ酸に対応する特徴表現行列に変換する。例えば、一実施形態では、ブロック置換行列(BLOSUM)符号化ベクトルまたは事前に訓練されたアミノ酸埋め込みベクトルのいずれかを使用することができる。また、ブロック420では、各入力ペプチド配列を表すために、アミノ酸のBLOSUM符号化ベクトルまたは事前に訓練された埋め込みベクトルを連結する。
【0055】
ブロック430では、結合ペプチド配列に対してのみワッサースタイン敵対的生成ネットワーク(WGAN)を訓練する。この訓練では、弁別器を更新して、生成ペプチド配列を訓練データからサンプリングされた陽性ペプチド配列から区別し、生成器を更新して弁別器を欺く。
【0056】
ブロック440では、ブロック430の訓練中に、2つのクロスエントロピー損失(P2GAN)を持つ結合クラスのための2つの投影ベクトルを学習しながら、WGAN目的を最適化する。損失の1つは、訓練データ中の本当の結合ペプチドと訓練データ中の非結合ペプチドとを識別することである。もう1つの損失は、生成された結合ペプチドと訓練データ中の非結合ペプチドとを識別するためのものである。また、ブロック430の訓練の間に、2つの損失を最小化するために、焼戻しソフトマックス出力ユニットで生成器を更新する。
【0057】
次に、ブロック440についてさらに説明する。
【0058】
訓練中(ブロック430)、本発明は、2つのクロスエントロピー損失を伴う結合クラスの2つの投影ベクトルを同時に学習する。一方は、訓練データ中の実際の結合ペプチドと訓練データ中の非結合ペプチドとを識別するためのものであり、他方は、生成された結合ペプチドと訓練データ中の非結合ペプチドとを識別するためのものである。また訓練中(ブロック430)、本発明はこれら2つのクロスエントロピー損失を最小化するように生成器を更新する。したがって、結合ペプチド生成のためのモデルは「二重投影GAN」、略して「P2GAN」と呼ばれる。
【0059】
本発明の1つ以上の実施形態は、ペプチド生成器の最後の出力層に焼戻しソフトマックスユニットを採用し、エントロピー正則化を使用して、これらの焼戻しソフトマックスユニットの温度を陰的に制御する。前方経路では、離散的な結合ペプチドを直接出力するためにストレートスルー推定器が使用され、後方経路では、連続的な勾配計算を容易にするためにこれらの温度が使用される。訓練の初期には、より均一なアミノ酸放出確率分布を促すために、エントロピー正則化のペナルティ係数を小さく設定する。訓練の後期段階では、エントロピー正則化に大きなペナルティ係数を設定し、よりやせ衰えたなアミノ酸放出確率分布を奨励する。
【0060】
図5は、本発明の実施形態による、ペプチドベースのワクチン生成のための例示的な推論方法400を示すフロー図である。
【0061】
ブロック510では、単位分散多変量ガウス分布から潜在ベクトルzをサンプリングする。
【0062】
ブロック520で、サンプリングされた潜在ベクトルzを深層ニューラルネットワーク生成器に入力する。
【0063】
ブロック530において、深層ニューラルネットワーク生成器が、サンプリングされた潜在ベクトルzを多変量ガウス分布から変換することによって、ユーザ指定の結合特性(例えば、強い結合親和性および溶出)を有する新規のペプチド配列を生成する。
【0064】
ブロック530の結果に基づいてワクチンを投与することができる。
【0065】
図6は、本発明の実施形態による、例示的な弁別器600を示すブロック図である。弁別器600は、
図3の弁別器304であり得る。
【0066】
弁別器600は、アミノ酸埋め込み601を有する入力ペプチド配列行列を受け取り、畳み込み層611、全結合層612、および本物/偽物配列を出力する出力層613を含む。入力ペプチド配列行列はd×nの行列であり、nは入力ペプチドの長さ(例えば、ほとんどのMHCクラスI正結合ペプチドではn=9)、dはアミノ酸埋め込みベクトルのユーザ指定の次元数であり、行列のi番目の列は入力ペプチド配列中のi番目のアミノ酸の埋め込みベクトルに対応する。
【0067】
図7は、本発明の実施形態による、例示的な特性予測装置700を示すブロック図である。
【0068】
特性予測装置700は、アミノ酸埋め込み701を持つ入力ペプチド配列行列を受け取り、畳み込み層711、全結合層712、および結合親和性を出力する出力層713を含む。入力ペプチド配列行列はd×nの行列であり、nは入力ペプチドの長さ(例えば、ほとんどのMHCクラスI結合ペプチドではn=9)、dはアミノ酸埋め込みベクトルのユーザ指定の次元数であり、行列のi番目の列は入力ペプチド配列中のi番目のアミノ酸の埋め込みベクトルに対応する。
【0069】
図8は、本発明の実施形態による、例示的な生成器800を示すブロック図である。弁別器800は、
図3の弁別器302であり得る。
【0070】
生成器800は、入力ランダムノイズベクトルz801を受け取り、全結合層811と、ソフトマックス出力ユニット813を出力する出力層812を含む。ソフトマックス出力ユニット813はペプチド配列814に連結される。具体的には、長さnのペプチド配列を生成するために、各ユニットがペプチド配列の位置に対応するn個の出力ソフトマックスユニットを用意する。各ソフトマックスユニットは、20個のアミノ酸の放出確率を示す20個の確率の和を1として出力する。理想的には、正の結合ペプチド配列の位置iに対応するソフトマックスユニットiにおいて、グラウンドトゥルースアミノ酸の放出確率は1に近く、このソフトマックスユニットの他の19個の放出確率はすべて0に近いはずである。
【0071】
本発明は、任意の可能な技術的詳細レベルの統合において、システム、方法、および/またはコンピュータプログラム製品であり得る。コンピュータプログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させるためのコンピュータ可読プログラム命令をその上に有するコンピュータ可読記憶媒体(または媒体)を含むことができる。
【0072】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行装置によって使用される命令を保持および記憶することができる有形装置とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁記憶装置、半導体記憶装置、またはこれらの任意の適切な組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストには、以下のものが含まれる。ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードなどの機械的に符号化された装置、またはその上に記録された命令を有する溝内の隆起構造、および前述の任意の適切な組み合わせ。本明細書で使用するコンピュータ可読記憶媒体は、電波やその他の自由に伝搬する電磁波、導波管やその他の伝送媒体を伝搬する電磁波(例えば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)、電線を介して伝送される電気信号など、一過性の信号そのものであると解釈されるものではない。
【0073】
本明細書で説明するコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読記憶媒体から、またはネットワーク、例えばインターネット、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワークおよび/またはワイヤレスネットワークを介して外部コンピュータまたは外部記憶装置に、それぞれの演算/処理装置にダウンロードすることができる。ネットワークは、銅線伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピュータ、および/またはエッジサーバで構成される。各演算/処理装置のネットワークアダプタカードまたはネットワークインタフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受信し、各演算/処理装置内のコンピュータ可読記憶媒体に格納するために、コンピュータ可読プログラム命令を転送する。
【0074】
本発明の動作を実行するためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、または、SMALLTALK(登録商標)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかであっても良い。コンピュータ可読プログラム命令は、完全にユーザのコンピュータ上で実行しても良いし、一部はユーザのコンピュータ上で実行しても良いし、スタンドアロンソフトウェアパッケージとして実行しても良いし、一部はユーザのコンピュータ上で実行し、一部はリモートコンピュータ上で実行しても良いし、完全にリモートコンピュータまたはサーバ上で実行しても良い。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続することができ、接続は外部のコンピュータに(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)行うことができる。いくつかの実施形態では、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはプログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、本発明の態様を実行するために、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用してコンピュータ可読プログラム命令を実行し、電子回路をパーソナライズしても良い。
【0075】
本発明の態様を、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して本明細書で説明する。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、ならびにフローチャート図および/またはブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータ可読プログラム命令によって実施できることが理解されよう。
【0076】
これらのコンピュータ可読プログラム命令は、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサに提供され、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図ブロックまたはブロックに指定された機能/動作を実施するための手段を作成するように、機械を生成することができる。これらのコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、プログラマブルデータ処理装置、および/または他の装置に特定の態様で機能するように指示することができるコンピュータ可読記憶媒体に格納することもでき、そのように、その中に格納された命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャートおよび/またはブロック図ブロックまたはブロックで指定された機能/動作の態様を実施する命令を含む製造品を構成する。
【0077】
コンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、または他の装置にロードして、コンピュータ、他のプログラマブルな装置、または他の装置上で実行される命令が、フローチャートおよび/またはブロック図のブロックまたはブロックで指定された機能/動作を実施するように、コンピュータ実装プロセスを生成するための一連の動作ステップをコンピュータ、他のプログラマブルな装置、または他の装置上で実行させることもできる。
【0078】
図中のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装のアーキテクチャ、機能性、および動作を示している。これに関して、フローチャートまたはブロック図の各ブロックは、モジュール、セグメント、または命令の一部を表すことがあり、これらは、指定された論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能命令から構成される。いくつかの代替実施形態では、ブロックに記載された機能は、図に記載された順序から外れて発生する可能性がある。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には実質的に同時に実行されることもあれば、関係する機能によっては、ブロックが逆の順序で実行されることもある。また、ブロック図および/またはフローチャート図の各ブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、または特別な目的のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する、特別な目的のハードウェアベースのシステムによって実装できることに留意されたい。
【0079】
明細書において、本発明の「一実施形態」または「一実施形態」、およびその他の変形例への言及は、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、特性などが、本発明の少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の各所に現れる「一実施形態において」または「一実施形態において」という表現、および他の任意の変形は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0080】
例えば「A/B」の場合、「Aおよび/またはB」、「AとBとの少なくとも1つ」のような、以下の「/」、「および/または」、「少なくとも1つ」のいずれかの使用は、第1のリストされた選択肢(A)のみの選択、または第2のリストされた選択肢(B)のみの選択、または両方の選択肢(AおよびB)の選択を包含すると意図していると理解されよう。さらなる例として、「A、B、および/またはC」および「A、B、およびCの少なくとも1つ」の場合、かかる表現は、第1のリストされた選択肢(A)のみの選択、または第2のリストされた選択肢(B)のみの選択、または第3のリストされた選択肢(C)のみの選択、または第1および第2のリストされた選択肢(AおよびB)のみの選択、第1および第3のリストされた選択肢(AおよびC)のみの選択、第2および第3のリストされた選択肢(BおよびC)のみの選択、または3つすべての選択肢(AおよびBおよびC)の選択を包含すると意図されている。このことは、この技術および関連技術における通常の知識を有する者であれば容易に理解できるように、記載された項目の数だけ拡張することができる。
【0081】
上記は、あらゆる点で例示的かつ例示的であるが、制限的なものではないと理解され、ここに開示された発明の範囲は、詳細な説明からではなく、特許法によって許される全幅に従って解釈された請求項から決定されるものである。本明細書に示され説明された実施形態は、本発明の例示に過ぎず、当業者は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、様々な修正を実施することができることを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、様々な他の特徴の組み合わせを実施することができる。このように、特許法が要求する詳細さと特殊性をもって本発明の側面を説明したが、特許状によって請求され、保護されることを望むものは、添付の特許請求の範囲に記載されているとおりである。
【国際調査報告】