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特表2024-519276バリアフィルムを製造するための方法およびバリアフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】バリアフィルムを製造するための方法およびバリアフィルム
(51)【国際特許分類】
   D21H 11/18 20060101AFI20240501BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20240501BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20240501BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240501BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
D21H11/18
D21H15/02
D21H19/20 B
B32B29/00
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562853
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 IB2022053477
(87)【国際公開番号】W WO2022219557
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2021/053154
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
(72)【発明者】
【氏名】リイティカイネン, カティア
(72)【発明者】
【氏名】ヘイスカネン, イスト
(72)【発明者】
【氏名】ノードストローム, トミー
(72)【発明者】
【氏名】カウッピ, アンナ
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AA01
3E086BA15
3E086BA35
3E086BB01
3E086DA08
4F100AJ03B
4F100AJ04A
4F100AK12B
4F100AK21B
4F100AK25B
4F100AL06B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CC00B
4F100CC00C
4F100DJ00A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ19A
4F100EJ86A
4F100EJ86C
4F100GB15
4F100JA13A
4F100JB09B
4F100JB09C
4F100JD02
4F100JD03
4F100JD04
4F100JM01B
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4F100YY00B
4F100YY00C
4L055AF46
4L055AG44
4L055AG63
4L055AG64
4L055AG71
4L055AG97
4L055AJ01
4L055BE08
4L055CF41
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA08
4L055EA10
4L055EA12
4L055EA14
4L055EA16
4L055EA19
4L055EA20
4L055EA23
4L055FA11
4L055GA05
(57)【要約】
本発明は、バリアフィルムを製造するための方法であって、-少なくとも70重量%の、70~95のSR値を有し、かつ乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1000万本の、0.2mm超の長さを有する繊維の含有量を有する高度に精製されたセルロースパルプを含む、水性懸濁液を提供することと;-ウェットウェブを形成することと;-脱水および/または乾燥して、基材を形成することと;-前記基材を少なくとも1つのソフトカレンダーニップでカレンダー加工することと;-前記基材にバリア性化学物質の少なくとも1つの第1の層を設けて、コーティングされた基材を形成することであり、各第1の層が0.5~5gsmのコート重量を有し、第1の層の全コート重量が≦8gsmである、コーティング済み基材を形成することと、-乾燥して、<50μmの厚さを有する前記バリアフィルムを形成することとを含む、方法に関する。本発明はまた、バリアフィルム、ポリマー層を有するバリアフィルム積層体、およびバリアフィルムを含む包装材料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルムを製造する方法であって、
-水性懸濁液の全乾燥重量を基準として少なくとも70重量%の高度に精製されたセルロースパルプを含む水性懸濁液を提供する工程であり、前記高度に精製されたセルロースパルプが、70~95°SRのショッパーリーグラー値を有し、前記高度に精製されたセルロースパルプが、乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1000万本の、0.2mm超の長さを有する繊維の含有量を有する、水性懸濁液を提供する工程と;
-前記水性懸濁液からウェットウェブを形成する工程と;
-前記ウェットウェブを脱水および/または乾燥して、第1の面および反対側の第2の面を有する基材を形成する工程と;
-第1のカレンダー加工工程において、少なくとも1つのソフトカレンダーニップで前記基材をカレンダー加工する工程であり、前記基材が、第1のカレンダー加工工程に入るときに1~25重量%の水分含有量を有する、前記基材をカレンダー加工する工程と;
-第1のコーティング工程において、前記基材に、以下の少なくとも1つの第1の層:
a)ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、多糖類もしくは変性多糖類、またはそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む水性溶液または分散体、あるいは
b)ラテックスを含む水性エマルション、あるいは
c)a)およびb)の組合せ、
を前記第1の面において設けて、コーティング済み基材を形成する工程であり、各第1の層が、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsmのコート重量を有し、第1の面の全コート重量が、乾燥重量として計算した場合に8gsm以下である、コーティング済み基材を形成する工程と、
-前記第1のカレンダー加工工程および前記第1のコーティング工程の後に、前記コーティング済み基材を乾燥させて、前記バリアフィルムを形成する工程であり、前記バリアフィルムが、50μm未満、好ましくは45μm未満、最も好ましくは40μm未満の厚さを有する、前記バリアフィルムを形成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のカレンダー加工工程が、前記第1のコーティング工程の前に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のコーティング工程が、前記第1のカレンダー加工工程の前に実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ソフトカレンダーニップが、ソフトロールおよびハードロールを含み、前記基材が、前記基材の前記第1の表面がハードロールに対して配置され、かつ前記基材の前記第2の表面がソフトロールに対して配置されるように、前記第1のカレンダー加工工程において前記ソフトロールと前記ハードロールとの間でカレンダー加工される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のカレンダー加工工程が、前記基材を少なくとも第1のソフトカレンダーニップおよび第2のソフトカレンダーニップでカレンダー加工することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
方法が、前記第1のコーティング工程の後に第2のカレンダー加工工程をさらに含み、前記第2のカレンダー加工工程が、前記コーティング済み基材を、ソフトカレンダー、ハードカレンダー、ベルトカレンダー、またはスーパーカレンダーから選択される少なくとも1つの第2のカレンダーでカレンダー加工することを含み、前記コーティング済み基材の前記乾燥が、前記第2のカレンダー加工工程の後に実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ウェットウェブを脱水および/または乾燥する前記工程で得られた基材のガーレーヒル多孔度値が、少なくとも20000秒/100mlである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が、第1のコーティング工程において、ポリビニルアルコールを含む水性溶液または分散体の少なくとも1つの第1の層が設けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基材が、第1のコーティング工程において、スチレン-アクリレートラテックスを含む水性エマルションの少なくとも1つの第1の層が設けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、第2のコーティング工程において、前記基材に、前記水性溶液もしくは分散体または前記水性エマルションのうちの少なくとも1つの第2の層を前記第2の面において設けることをさらに含み、各第2の層が、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsmのコート重量を有し、第1の面の前記少なくとも1つの第1の層の全コート重量が、乾燥重量として計算した場合に5gsm以下であり、第2の面の前記少なくとも1つの第2の層の全コート重量が、乾燥重量として計算した場合に5gsm以下であり、前記コーティング済み基材の前記乾燥が、前記第2のコーティング工程の後に実施される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基材が、第2のコーティング工程において、ポリビニルアルコールを含む水性溶液または分散体の少なくとも1つの第2の層が設けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基材が、第2のコーティング工程において、スチレン-アクリレートラテックスを含む水性エマルションの少なくとも1つの第2の層が設けられる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のコーティング工程および前記第2のコーティング工程が、本質的に同時に実施される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ウェットウェブを脱水および/または乾燥する前記工程において得られた前記基材が、600~950kg/mの密度を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
脱水および/または乾燥の工程で得られた前記基材の坪量が、90g/m未満である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記第1のカレンダー加工工程の前に、前記基材を事前加湿する工程をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のカレンダー加工工程が、最大500kN/m、好ましくは20~250kN/mの線荷重を使用することを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のカレンダー加工工程が、前記少なくとも1つのソフトカレンダーニップにおいて50~250℃、好ましくは80~180℃の温度を使用することを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記バリアフィルムのコッブアンガー吸収値が、前記第1の面において1.5g/m(30秒)未満である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記高度に精製されたセルロースパルプが、L&W Fiber Tester Plusを使用して決定した場合、少なくとも15%の、0.2mm超の長さを有する繊維の長さ加重平均フィブリル面積を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
形成したウェットウェブが、1個または数個のヘッドボックスを用いて作製された単一または複数の層のウェブである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
バリアフィルム積層体を製造する方法であって、
-請求項1から21のいずれか一項に記載の方法を実施して、前記バリアフィルムを形成する工程と、
-前記バリアフィルムを少なくとも1つの追加ポリマー層と積層して、前記バリアフィルム積層体を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項23】
紙または板紙をベースとする包装材料積層体を製造する方法であって、
-請求項1から22のいずれか一項に記載の方法を実施して、前記バリアフィルムまたは前記バリアフィルム積層体を形成する工程と、
-前記バリアフィルムまたは前記バリアフィルム積層体を紙または板紙の基部材料と積層して、前記紙または板紙をベースとする包装材料積層体を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項24】
請求項1から21のいずれか一項に記載の方法によって得られるバリアフィルム。
【請求項25】
請求項22に記載の方法によって得られるバリアフィルム積層体。
【請求項26】
請求項23に記載の方法によって得られる、紙または板紙をベースとする包装材料積層体。
【請求項27】
コーティング済み基材を含むバリアフィルムであって、
前記基材が、少なくとも70重量%の高度に精製されたセルロースパルプを含み、前記高度に精製されたセルロースパルプが、70~95°SRのショッパーリーグラー値(°SR)を有し、前記高度に精製されたセルロースパルプが、乾燥重量を基準として1gあたりの繊維数が少なくとも1,000万本の、0.2mm超の長さを有する繊維の含有量を有し;
前記基材が、第1の面および反対側の第2の面を有し、
前記基材が、以下のものを含む少なくとも1つの第1の層:
d)ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、多糖類もしくは変性多糖類、またはそれらの組合せからなる群から選択されるポリマー、あるいは
e)ラテックス、あるいは
f)d)およびe)の組合せ
を第1の面に設けられ、各第1の層が、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsmのコート重量を有し、第1の面の全コート重量が、乾燥重量として計算した場合に8gsm以下であり;
バリアフィルムが、50μm未満、好ましくは45μm未満、最も好ましくは40μm未満の厚さを有し、
バリアフィルムが、50g/m/日未満、好ましくは35g/m/日未満の水蒸気透過度を有する、バリアフィルム。
【請求項28】
少なくとも1つの追加ポリマー層が積層された請求項27に記載のバリアフィルムを含むバリアフィルム積層体。
【請求項29】
紙または板紙の基部材料が積層された請求項27に記載のバリアフィルムまたは請求項28に記載のバリアフィルム積層体を含む、紙または板紙をベースとする包装材料。
【請求項30】
紙または板紙をベースとする包装材料における、請求項24または27に記載のバリアフィルムまたは請求項25または28に記載のバリアフィルム積層体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、良好なバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有し、薄く、コート重量が低いバリアフィルム、例えば紙または板紙をベースとする包装材料用のバリアフィルムを製造するための方法に関する。さらに、本開示は、バリアフィルム、バリアフィルム積層体、およびバリアフィルムまたはバリアフィルム積層体を含む紙または板紙をベースとする包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
高度に精製されたセルロース、ナノセルロース、またはミクロフィブリル化セルロース(MFC)を多量に含むフィルムを含む、セルロース繊維またはポリマーを含むバリアフィルム(セルロース系バリアフィルム)は、当技術分野において既知である。セルロース系バリアフィルムは、製造方法に応じて、特に有利な強度および/またはバリア特性を有することができ、同時に生分解性かつリサイクル可能(または再パルプ化可能)である。このようなバリアフィルムは、例えば包装材料の製造に使用することができ、紙または板紙材料の表面に積層またはその他の方法で設けることができる。包装材料にセルロース系バリアフィルムを使用すると、使用済み包装材料の再パルプ化およびリサイクルが容易になる。
【0003】
しかし、セルロース系バリアフィルムのバリア特性は、湿気または(より高い)相対湿度に敏感な場合がある。特に、このようなバリアフィルムのガスバリア特性は、熱帯条件または結露を生じさせる条件にさらされた場合など、高温および高湿で低下する傾向がある。
【0004】
高相対湿度における酸素、空気、水蒸気、および芳香に対するバリア特性を向上させるための多くの手法が調査され、記載されているが、提案されている解決策のほとんどは高価であり、工業規模での実施は困難である。
【0005】
例えば、高相対湿度におけるセルロース系バリアフィルムのガスバリア特性を向上させるために、コーティング、ラミネーション、および表面処理などの様々な化学的解決策が試験されてきた。
【0006】
しかし、セルロース系基材にコーティングおよび表面処理を施す場合、難題が生じることがある。セルロース系基材にコーティング剤として塗布されるバリア性化学物質は、通常、水性溶液、分散体、またはエマルションである。このような水性溶液、分散体、またはエマルションを薄いセルロース系ウェブまたは基材に塗布した場合、ウェブが破損したり、または寸法安定性の問題(湿潤時の膨張または乾燥時の収縮)が生じたりする可能性がある。これは、親水性基材への水の収着および浸透が、フィブリル、繊維、および添加剤の間の水素結合に影響を及ぼすためである。したがって、縦方向におけるウェブ張力制御が困難になる可能性がある。また、幅方向におけるウェブの取扱いが困難になる可能性もある。
【0007】
解決策の1つは、塗布する溶液または分散体の固形分を増加させることであるが、これはしばしばコート重量を増加させ、溶液の粘度を増大させる。一方、粘度が高いと、基材への応力が高くなり、しばしばコート重量を増加させる。
【0008】
別の解決策は、坪量が高いほど、繊維と繊維の結合が強くなるため、より強力な材料になることから、セルロース系ウェブまたは基材の坪量を増加させることである。しかし、坪量が高くなるということは、コストが高くなり、より高い乾燥能力が必要となり、排水(ウェブ形成)が遅くなり、リール直径が大きくなる(巻き取る(converting)とき、1リールあたりのメートル数が小さくなる)ことを意味する。坪量が高くなると、表面が粗くなる、かつ/またはピンホールが形成される可能性がある。
【0009】
ウェブの水感受性を低下させるさらなる解決策は、完成紙料に疎水化剤を添加することによってウェブの疎水性を高めることである。一方、疎水化剤の添加は、バリア特性に影響を及ぼす可能性があり、さらに巻き取るとき、特に高温で巻き取る場合に問題を引き起こす可能性がある。
【0010】
また、膨張/収縮の問題に対処するために、塗布ロールの使用またはコーティングと乾燥との間の時間の短縮など、機械的な解決策もある。
【0011】
これらの理由から、バリア性化学物質と基材との相互作用を制御し、その後十分なバリア特性を提供することは、特にコート重量が低い場合および薄い基材では困難である。
【0012】
したがって、これらの目的のためには、アルミニウム箔、および/または熱可塑性樹脂ポリマーなどのフィルム形成ポリマーが使用され、一般に、油またはグリースおよび/または芳香またはガス、例えば酸素などの浸透または拡散に関して十分な特性を提供する。アルミニウムまたはある種のフィルム形成ポリマーはまた、水蒸気バリアを強化する可能性があり、これは、高相対湿度条件下でのバリアおよび包装の機能性に、または包装された液体製品の蒸発の低減に重要である。
【0013】
しかし、アルミニウム箔、およびPVDCなどのある種のフィルム形成ポリマーを使用する際の問題の1つは、これらが環境問題を引き起こし、リサイクルプロセスで問題となる可能性があり、使用する量によっては材料がコンポスト化できなくなる可能性がある。
【0014】
したがって、水蒸気バリア特性などの良好なバリア特性を有するセルロース系バリアフィルム、例えば紙または板紙をベースとする包装材料用のセルロース系バリアフィルムを製造する方法には、依然として改善の余地がある。
【発明の概要】
【0015】
本発明の一目的は、バリアフィルム、例えば紙または板紙をベースとする包装材料用のバリアフィルムを製造するための改良された方法を提供することであり、このバリアフィルムは、水蒸気バリア特性などの良好なバリア特性を有し、この方法は、先行技術の方法の欠点の少なくともいくつかを除去または軽減する。
【0016】
本発明のさらなる一目的は、バリアフィルム、例えば紙または板紙をベースとする包装材料用のバリアフィルムを製造する方法を提供することであり、このバリアフィルムは、薄く、低いコート重量でコーティングされているが、アルミニウムもしくはプラスチックを使用する必要がなく、またはアルミニウムもしくはプラスチックでさらにコーティングされている場合でも、水蒸気バリア特性などの良好なバリア特性を依然として有して、良好なバリア特性に寄与する。
【0017】
前述の目的、ならびに本開示に照らして当業者によって実現されるであろう他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【0018】
本明細書に例示する第1の態様によれば、バリアフィルムを製造する方法であって、
-水性懸濁液の全乾燥重量を基準として少なくとも70重量%の高度に精製されたセルロースパルプを含む水性懸濁液を提供する工程であり、前記高度に精製されたセルロースパルプが、70~95°SRのショッパーリーグラー値(°SR)を有し、前記高度に精製されたセルロースパルプが、乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1000万本の、>0.2mmの長さを有する繊維の含有量を有する、水性懸濁液を提供する工程、
-前記水性懸濁液からウェットウェブを形成する工程;
-前記ウェットウェブを脱水および/または乾燥して、第1の面および反対側の第2の面を有する基材を形成する工程;
-第1のカレンダー加工工程において、少なくとも1つのソフトカレンダーニップで前記基材をカレンダー加工する工程であり、前記基材が、第1のカレンダー加工工程に入るときに1~25重量%の水分含有量を有する、前記基材をカレンダー加工する工程;
-第1のコーティング工程において、前記基材に、以下の少なくとも1つの第1の層:
a)ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、多糖類もしくは変性多糖類、またはそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む水性溶液または分散体、あるいは
b)ラテックスを含む水性エマルション、あるいは
c)a)およびb)の組合せ、
を前記第1の面において設けて、コーティング済み基材を形成する工程であり、各第1の層が、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsmのコート重量を有し、第1の面の全コート重量が、乾燥重量として計算した場合に8gsm以下である、コーティング済み基材を形成する工程、
-前記第1のカレンダー加工工程および前記第1のコーティング工程の後に、前記コーティング済み基材を乾燥させて、前記バリアフィルムを形成する工程であり、前記バリアフィルムが、50μm未満、好ましくは45μm未満、最も好ましくは40μm未満の厚さを有する、前記バリアフィルムを形成する工程を含む、方法を提供する。
【0019】
驚くべきことに、基材を形成するために、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして、本明細書で規定する高度に精製されたセルロースパルプを少なくとも70重量%使用することによって、および第1のカレンダー加工工程において、少なくとも1つのソフトカレンダーニップで基材、ただし、この基材は第1のカレンダー加工工程に入るときに1~25重量%の水分含有量を有している、をカレンダー加工することによって、上記の群a)~c)から選択されるバリア性化学物質の水性溶液または分散体またはエマルションを使用した場合に基材の少なくとも片面に低いコート重量がもたらされ、少なくとも片面において良好なバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有する薄いバリアフィルムを得ることが可能であることが分かった。さらに、驚くべきことに、コーティングプロセスをソフトカレンダー加工後に施すと、コーティングプロセスの運転性を著しく向上させる可能性がある、すなわち、ウェブ破損の問題および寸法安定性の問題が著しく軽減される可能性があることが分かった。
【0020】
特に、驚くべきことに、基材を形成するために、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして少なくとも70重量%の高度に精製されたセルロースパルプの使用と組み合わせて、上記規定の基材を規定の水分含有量で1つのソフトカレンダーニップでカレンダー加工することが、基材の少なくとも片面に上記の群a)またはb)またはc)から選択されるバリア性化学物質の低いコート重量をもたらし、少なくとも片面において良好なバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有する薄いバリアフィルムを得ることを可能にするのに十分であり得ることが分かった。
【0021】
水性溶液、分散体、またはエマルションを薄いセルロース系ウェブまたは基材に塗布した場合、ウェブが破損したり、または寸法安定性の問題(湿潤時の膨張または乾燥時の収縮)が生じたりする可能性がある。これは、親水性基材への水の収着および浸透が、フィブリル、繊維、および添加剤の間の水素結合に影響を及ぼすためである。したがって、縦方向におけるウェブ張力制御が困難になる可能性がある。また、幅方向におけるウェブの取扱いが困難になる可能性もある。従来から知られている解決策の1つは、塗布する溶液の固形分を増加させることであるが、これはしばしばコート重量を増加させ、溶液の粘度を増大させる。一方、粘度が高いと、基材への応力が高くなり、しばしばコート重量を増加させる。従来から知られている別の解決策は、坪量が高いほど、繊維と繊維の結合が強くなるため、より強力な材料になることから、セルロース系ウェブまたは基材の坪量を増加させることである。しかし、嵩が高くなるということは、粗さが増大し、リール直径が大きくなる(巻き取るとき、1リールあたりのメートル数が小さくなる)ことを意味する。
【0022】
したがって、驚くべきことに、基材を形成するために、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして、本明細書で規定する高度に精製されたセルロースパルプを少なくとも70重量%使用することによって、および第1のカレンダー加工工程に入るときに1~25重量%の水分含有量で、第1のカレンダー加工工程において少なくとも1つのソフトカレンダーニップで基材をカレンダー加工することによって、上記の群a)もしくはb)もしくはc)から選択されるバリア性化学物質を使用する場合、塗布するバリア性化学物質溶液/分散体/エマルションのコーティング物を大量に使用すること、および/もしくはそれを高粘度(ここで、高粘度とは、例えばブルックフィールド回転粘度計で測定した場合、23℃で>5000mPasを意味する)で使用することを回避し、かつ/または良好なバリア特性、特に水蒸気バリア特性を有する薄いバリアフィルムを得るために、基材の坪量を増加させることを回避することが可能になることが分かった。ウェブ破損の問題および寸法安定性の問題を軽減するための特殊または複雑な機械的解決策を使用することも回避または制限することができる。さらなる利点は、コーティングの保持力が向上し、ウェブへの浸透が少なくなる可能性があることである。
【0023】
1~25重量%の水分含有量の基材をソフトカレンダー加工することは、カレンダー加工した面の緻密化が実現されて、好ましくは表面が詰まれ(close)、それによって、より高い被覆率で低いコート重量の使用が容易になる。さらに、1~25重量%の水分含有量の基材のソフトカレンダー加工による緻密化は、乾燥時のより良好な収縮プロファイル(収縮がより少なく、より均一)および/または湿潤時のより良好な膨張プロファイル(膨張がより少なく、より均一)を可能にすることもある。
【0024】
バリアフィルムという用語は、本明細書で使用する場合、一般に、気体および/または液体に対して透過性が低い、薄い連続シート形成材料を指す。パルプ懸濁液の組成物に応じて、フィルムはまた、例えば、成分または気体の流れを選択的に制御するための薄い紙、さらには膜と考えることができる。
【0025】
バリアフィルムはそのまま使用することもでき、または1つまたは複数の他の層と組み合わせることもできる。このフィルムは、例えば、紙または板紙をベースとする包装材料のバリア層として有用である。バリアフィルムはまた、グラシン、耐油紙、バリア紙、またはバイオプラスチックフィルムなどの基部を含む多層製品におけるバリア層であってもよく、またはバリア層を構成してもよい。あるいは、バリアフィルムは、液体包装用板紙などの多層シート内の少なくとも1層に含まれていてもよい。
【0026】
バリア性化学物質という用語は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つのバリア特性、例えば水蒸気バリア特性を向上させるために、基材にコーティングまたは表面処理として施される化学物質を指す。
【0027】
紙は、一般に、木材のパルプ、またはセルロース繊維を含む他の繊維状物質から薄いシート状に製造され、筆記、描画、もしくは印刷のために、または包装材料として使用される材料を指す。
【0028】
板紙は、一般に、箱およびその他のタイプの包装に使用されるセルロース繊維を含む、強くて厚い紙またはボール紙を指す。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白または未漂白、コーティングまたは未コーティングのいずれでもよく、様々な厚さで製造することができる。
【0029】
紙または板紙をベースとする包装材料は、主に、または全体が紙または板紙で形成された単一または複数の包装材料である。紙または板紙に加えて、紙または板紙をベースとする包装材料は、包装材料の性能および/または外観を向上させるように設計された追加の層またはコーティングを含むことができる。
【0030】
前述のように、本開示の第1の態様の方法は、全乾燥重量を基準にして少なくとも70重量%の高度に精製されたセルロースパルプを含む水性懸濁液を提供する工程を含む。セルロースパルプの精製または叩解は、セルロース繊維に所望の特性を付与するための、セルロース繊維の機械的な処理および改変を指す。
【0031】
第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプは、標準規格ISO 5267-1で測定した場合、70~95、好ましくは70~92の範囲、より好ましくは75~92の範囲、最も好ましくは75~90または80~90または85~90の範囲のショッパーリーグラー値(°SR)を有する。SR値は、追加の化学物質を含まないパルプに対して決定され、したがって、繊維はフィルム状に固化していない、または例えば角化を起こしていない。
【0032】
さらに、第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプは、乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1000万本、好ましくは乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1200万本、より好ましくは乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1500万本、さらにより好ましくは乾燥重量を基準として1gあたり繊維数が少なくとも1700万本の、0.2mm超の長さを有する繊維の含有量を有する。>0.2mmの長さを有する繊維の含有量は、例えば、L&W Fiber tester Plus(L&W/ABB)装置(本明細書では「Fiber Tester Plus」とも称する)を使用して決定することができる。例えば、繊維は、標準規格ISO16065-2に従って>0.2mmの繊維状粒子として定義することができる。
【0033】
さらに、いくつかの実施形態では、第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプは、少なくとも15%、好ましくは少なくとも17%、より好ましくは少なくとも20%の、>0.2mmの長さを有する繊維の平均フィブリル面積を有する。平均フィブリル面積は、L&W Fiber Tester Plus(L&W/ABB)装置を使用して、例えば、標準規格ISO16065-2に従って0.2mm超の長さの繊維状粒子を繊維と定義して決定される。「平均フィブリル面積」は、本明細書で使用する場合、長さ加重平均フィブリル面積を指す。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプは、≧250%、より好ましくは≧300%の保水(WRV)値を有する。さらに、WRV値は、好ましくは≦400%、より好ましくは≦380%または≦370%または≦350%である。いくつかの実施形態では、第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプは、250~400%、または250~380%、または250~350%、または300~350%のWRV値を有する。WRV値は、200メッシュワイヤを使用して、標準規格ISO23714によって決定することができる。
【0035】
第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプは、所望のショッパーリーグラー値および>0.2mmの長さを有する繊維の含有量、ならびに任意選択で所望の平均フィブリル面積およびWRV値を達成するために、当技術分野で既知の方法を使用して多くの様々な方法で製造することができる。
【0036】
前述のように、第1の態様の方法において使用する水性懸濁液は、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、少なくとも85重量%または少なくとも90重量%の高度に精製されたセルロースパルプを含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして70~99重量%の範囲、より好ましくは75~99重量%の範囲、最も好ましくは80~99重量%または85~99重量%または90~99重量%の範囲の高度に精製されたセルロースパルプを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、高度に精製されたセルロースパルプに加えて、1種または複数種のさらなるセルロースパルプ画分をさらに含み、この1種または複数種のさらなるセルロースパルプ画分は、高度に精製されたセルロースパルプとは異なる精製度に精製されているか、または高度に精製されたセルロースパルプと共精製されている。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、標準規格ISO5267-1によって決定される≦50°SR、例えば15~50°SRまたは20~40°SRなどのショッパーリーグラー値を有する中程度に精製されたセルロースパルプのさらなるセルロースパルプ画分、および/または標準繊維のさらなる画分を含む。水性懸濁液は、高度に精製されたセルロースパルプおよびさらなるセルロースパルプ画分の全乾燥重量を基準にして(すなわち、水性懸濁液中の繊維の全量の全乾燥重量に対して)、例えば、1~30重量%、より好ましくは2~30重量%、最も好ましくは5~30重量%のさらなるセルロースパルプ画分を含んでもよい。
【0038】
標準繊維とは、製紙用の従来の長さおよびフィブリル化の標準的なパルプ繊維を意味する。標準繊維としては、機械パルプ、熱化学パルプ、硫酸塩(クラフト)もしくは亜硫酸塩パルプなどの化学パルプ、溶解パルプ、再生繊維、オルガノソルブパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、またはそれらの組合せを挙げることができる。標準繊維に、代替的または追加的にセミケミカルパルプを含めてもよい。パルプは、漂白されていても、または未漂白であってもよい。標準繊維は、木材由来(例えば、広葉樹もしくは針葉樹)、またはわら、竹などを含む農業資源などの植物繊維でもよい。
【0039】
標準繊維は、標準規格ISO5267-1によって決定した場合に15~50゜SRの範囲、より好ましくは18~40゜SRの範囲の叩解度、すなわちショッパーリーグラー値を有することができる。標準繊維は、好ましくは、クラフトパルプなどの化学パルプである。
【0040】
標準繊維は、懸濁液中で1mm~5mm、より好ましくは2~4mmの範囲の平均長さを有してよい。
【0041】
第1の態様の方法において使用する高度に精製されたセルロースパルプおよび任意選択の中程度に精製されたセルロースパルプは、例えば、5-95、10-90、15-95、20-80、または25-75(針葉樹の重量%-広葉樹の重量%)など、針葉樹もしくは広葉樹またはそれらの混合物から製造することができる。それはまた、微生物源、小麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、またはその他の非木材繊維源から作製することができる。また、破れた紙または再生紙からも製造することができる。例えば、高度に精製されたセルロースパルプは、機械パルプ、熱化学パルプ、硫酸塩(クラフト)もしくは亜硫酸塩パルプなどの化学パルプ、溶解パルプ、オルガノソルブパルプ、またはケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、あるいはそれらの組合せから製造することができる。好ましくは、セルロース繊維材料は、クラフトパルプなどの化学パルプである。パルプは、好ましくは、当技術分野で既知の方法に従って脱リグニンおよび加工される。好ましい繊維源の1つは、ECFまたはTCF漂白クラフトパルプである。
【0042】
水性懸濁液は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含んでよい。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして≦10重量%、好ましくは≦8重量%、より好ましくは≦5重量%のMFCを含む。いくつかの実施形態では、水性懸濁液は、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして1~10重量%、または1~8重量%、または1~5重量%のMFCを含む。
【0043】
本特許出願の文脈において、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、20nm~1000nmの幅または直径を有するセルロース粒子、繊維、またはフィブリルを意味するものとする。
【0044】
MFCを製造するには、シングルパスまたはマルチパス精製、予備加水分解とそれに続くフィブリルの精製または高剪断分解または遊離など、様々な方法が存在する。MFCの製造をエネルギー効率が良く持続可能なものにするためには、通常、1つまたは複数の前処理工程が必要である。したがって、MFCを製造するときに使用されるパルプのセルロース繊維は、天然のものでもよく、または例えばヘミセルロースもしくはリグニンの量を低減するために酵素的もしくは化学的に前処理されたものでもよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に変性されていてもよく、この場合、セルロース分子は、元のセルロースに見られるものとは異なる(またはそれ以上の)官能基を含有する。このような基としては、とりわけ、カルボキシメチル(CM)、アルデヒド、および/もしくはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化、例えば「TEMPO」により得られるセルロース)、または第四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が挙げられる。上記の方法のいずれかで変性または酸化した後、繊維をMFCに分解することが容易になる。
【0045】
MFCは、広葉樹繊維または針葉樹繊維の両方の木材セルロース繊維から製造することができる。それはまた、微生物源、小麦わらパルプ、竹、バガスなどの農業繊維、またはその他の非木材繊維源から作製することができる。それは、バージン繊維からのパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ、および/または熱機械パルプを含めたパルプから製造することができる。また、破れた紙または再生紙からも作製することができる。
【0046】
水性懸濁液は、高度に精製されたセルロースパルプおよび任意選択のさらなるパルプ画分に加えて、充填剤、顔料、湿潤強度化学物質、保持化学物質、架橋剤、軟化剤または可塑剤、接着プライマー、湿潤剤、殺生物剤、光学染料、着色剤、蛍光増白剤、脱泡化学物質、AKD、ASAなどの疎水化化学物質、ワックス、樹脂、ベントナイト、ステアリン酸塩、ウェットエンドデンプン、シリカ、沈降炭酸カルシウム、カチオン性多糖類など、従来のいずれの製紙用添加剤または化学物質も含んでよい。したがって、これらの添加剤または化学物質は、最終製品フィルムに特定の特性を付与するため、および/またはフィルムの製造を容易にするために添加されるプロセス化学物質またはフィルム性能化学物質であり得る。好ましくは、水性懸濁液は、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして20重量%以下、より好ましくは10重量%以下の添加剤を含む。例えば、水性懸濁液は、水性懸濁液の全乾燥重量を基準にして1~20重量%または1~10重量%の添加剤を含んでよい。
【0047】
前述したように、第1の態様の方法は、水性懸濁液からウェットウェブを形成する工程を含む。ウェットウェブは、例えば、製紙プロセス、または少なくとも改変製紙プロセスなどのウェットレイド技術によって形成することができる。これらのプロセスには、ワイヤ上でのウェットワイヤ形成が含まれ得る。好ましくは、ウェットウェブは、多孔質ワイヤなどの多孔質支持体上に形成される。
【0048】
ワイヤ形成技術では、パルプ懸濁液を多孔質表面上に供給し、脱水して、繊維状のウェットウェブを形成する。好適な多孔質表面は、例えば、抄紙機の多孔質ワイヤである。次いで、ウェットウェブを、例えば抄紙機の乾燥部で乾燥および/またはさらに脱水して、基材を形成する。
【0049】
したがって、ウェットウェブは、長網抄紙機などの抄紙機、またはツインフォーマーもしくはハイブリッドフォーマーなどの他の形成タイプで形成することができる。ウェブは、1個または数個のヘッドボックスで作製された単一もしくは複数の層(layer)のウェブ、または単一もしくは複数の層(ply)のウェブであり得る。
【0050】
前述のように、第1の態様の方法は、ウェットウェブを脱水および/または乾燥して、第1の面および反対側の第2の面(すなわち、第1の面とは反対側を向いている第2の面)を有する基材を形成する工程を含む。脱水および/または乾燥は、プレス脱水、熱風乾燥、高温もしくは温熱のシリンダーもしくは金属ベルトとの接触、照射乾燥、または真空を介した乾燥など、任意の従来技術によって行うことができる。
【0051】
ウェットウェブをウェットレイド法によって形成する場合、多孔質ワイヤ上に形成されたウェットウェブは、ワイヤを介して脱水され、任意選択で、その後のプレス部でのプレス脱水によっても脱水される。
【0052】
いくつかの実施形態では、脱水および/または乾燥の工程(すなわち、第1のカレンダー加工工程および第1のコーティング工程の前)で得られた基材は、600~950kg/m、好ましくは650~900kg/m、最も好ましくは700~850kg/mの密度を有する。したがって、いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程に入るとき、600~950kg/m、好ましくは650~900kg/m、最も好ましくは700~850kg/mの密度を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、脱水および/または乾燥の工程(すなわち、第1のカレンダー加工工程および第1のコーティング工程の前)で得られた基材の坪量は、90g/m未満、より好ましくは80g/m未満、最も好ましくは75g/m未満または70g/m未満または65g/m未満または40g/m未満であるが、15g/m超である。
【0054】
好ましくは、第1のカレンダー加工工程および/または第1のコーティング工程は、脱水および/または乾燥の工程の後にオンラインで実施される。しかし、第1のカレンダー加工工程および/または第1のコーティング工程は、脱水および/または乾燥の工程とは異なる機械および/または場所で実施することができる(すなわち、第1のカレンダー加工工程および/または第1のコーティング工程は、オフラインで実施することができる)。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記ウェットウェブを脱水および/または乾燥する前記工程において(すなわち、脱水および/または乾燥する前記工程を実施した後に)得られる基材のガーレーヒル多孔度値は、少なくとも20000秒/100ml、典型的には少なくとも25000秒/100ml、または少なくとも30000秒/100mlである。ガーレーヒル値は、標準的な方法ISO5636-5を使用して決定することができ、最大値は42300秒/100mlである。他の装置は他の最大値を有し、他の標準を使用してもよい。
【0056】
前述のように、第1の態様の方法は、第1のカレンダー加工工程において、少なくとも1つのソフトカレンダーニップで基材をカレンダー加工することを含む。
【0057】
用語「ソフトカレンダー」(または「ソフトニップカレンダー」)は、本明細書では、2つのニップロールのうちの少なくとも1つにソフトロールカバーを有するカレンダーを意味することを意図している。したがって、2つのロールのうちの1つがソフトロールで、もう1つのロールがハードロールでよい(ハードロールは任意選択で加熱される)。あるいは、両方のロールがソフトロールでもよい。
【0058】
用語「ソフトカレンダーニップ」は、本明細書では、ソフトロールとハードロールの間、または2つのソフトロールの間にあるカレンダーのニップを意味することを意図している。ソフトカレンダーニップは、ソフトカレンダーまたはマルチニップカレンダーで構成することができる。
【0059】
用語「ハードカレンダーニップ」は、本明細書では、2つのニップロールとして2つのハードロールを有するカレンダーのニップを意味することを意図している。ハードカレンダーニップは、ハードカレンダーまたはマルチニップカレンダーに含まれてもよい。ハードカレンダーニップは、機械カレンダーニップでもよい。
【0060】
第1のカレンダー加工工程において、基材を、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを含む1つのソフトカレンダーニップでカレンダー加工することができる。あるいは、第1のカレンダー加工工程において、基材を、2つのソフトロールを含む1つのソフトカレンダーニップでカレンダー加工することができる。さらに別法として、第1のカレンダー加工工程において、基材を、2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工することができ、ここでは、すべてのソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを含む。さらなる代替法では、第1のカレンダー加工工程において、基材を、2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工することができ、ここでは、すべてのソフトカレンダーニップは、2つのソフトロールを含む。別の代替法では、第1のカレンダー加工工程において、基材を、2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工することができ、ここでは、2つ以上のソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを有する1つまたは複数のソフトカレンダーニップ、ならびに2つのソフトロールを有する1つまたは複数のソフトカレンダーニップによって構成されている。
【0061】
1つのソフトカレンダーニップを含むいくつかの実施形態では、ソフトカレンダーニップは、ソフトロールおよびハードロールを含み、ここでは、ソフトロールまたはハードロールは、基材の第1の面に対して配置することができる。好ましくは、これらの実施形態では、ハードロールは、基材の第1の面に対して配置される。
【0062】
2つ以上のソフトカレンダーニップを含むいくつかの実施形態では、すべてのソフトカレンダーニップは、ソフトロールおよびハードロールを含む。次いで、少なくとも1つのハードロールは、基材の第1の面に対して配置することができる。あるいは、すべてのハードロールは、基材の第1の面に対して配置される。
【0063】
好ましくは、第1のカレンダー加工工程の少なくとも1つのソフトカレンダーニップの少なくとも1つのハードロールは、基材の第1の面に対して配置される。
【0064】
前述のように、基材の水分含有量は、第1のカレンダー加工工程に入るとき、例えば、第1のソフトカレンダーニップに入るときなど、1~25重量%、好ましくは2~20重量%、より好ましくは3~15重量%である。
【0065】
第1のカレンダー加工工程における基材の前述の水分含有量は、脱水および/または乾燥の工程において提供され得る、または本質的に提供され得る。あるいは、方法は、第1のカレンダー加工工程の前に基材を事前加湿する工程をさらに含んでよい。また、第1のカレンダー加工工程中に加湿することも可能である。事前加湿は、化学物質の有無にかかわらず、蒸気または水を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、1~15g/m、好ましくは2~10g/m、最も好ましくは2.5~8g/mの蒸気または水を加える。いくつかの実施形態では、蒸気または水を用いた事前加湿中に、温度を少なくとも10℃、または少なくとも20℃上昇させることができる。これにより、基材は、カレンダー加工中に可塑化および再構築しやすくなる可能性がある。
【0066】
前述のように、第1の態様の方法は、第1のコーティング工程において、基材に、以下の少なくとも1つの第1の層:
a)ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、多糖類もしくは変性多糖類、またはそれらの組合せからなる群から選択されるポリマーを含む水性溶液または分散体、あるいは
b)ラテックスを含む水性エマルション、あるいは
c)a)およびb)の組合せ
を第1の面において設けて、コーティング済み基材を形成することを含む。
【0067】
したがって、第1のコーティング工程において、基材に、上記の群a)またはb)またはc)から選択されるバリア性化学物質の水性溶液/分散体/エマルションの1つまたは複数の第1の層を設ける。各第1の層は、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsm、より好ましくは1~2.5gsmのコート重量を有する。第1の面の1つまたは複数の第1の層の全コート重量は、乾燥重量として計算した場合に8gsm以下、好ましくは6gsm以下、最も好ましくは5gsm以下である。
【0068】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法は、第2のコーティング工程において、前記基材に、上記の群a)から選択される水性溶液もしくは分散体、または上記の群b)から選択される水性エマルション、または上記の群c)の組合せのうちの少なくとも1つの第2の層を第2の面において設けることをさらに含む。各第2の層は、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsm、より好ましくは1~2.5gsmのコート重量を有する。これらの実施形態では、第1の面の少なくとも1つの第1の層の全コート重量は、乾燥重量として計算した場合に5gsm以下であり、第2の面の少なくとも1つの第2の層の全コート重量は、乾燥重量として計算した場合に5gsm以下である。
【0069】
各第1の層は、連続的でも非連続的でもよく、基材の第1の面の様々な位置において厚さが同じでも異なっていてもよい。
【0070】
各第2の層は、連続的でも非連続的でもよく、基材の第2の面の様々な位置において厚さが同じでも異なっていてもよい。
【0071】
例えば、非連続層は、少なくとも60%または70%または80%の基材の被覆度を有することができる。
【0072】
第1の層および第2の層は、接触または非接触コーティング法によって施すことができる。有用なコーティング方法の例としては、ロッドコーティング、カーテンコーティング、フィルムプレスコーティング、キャストコーティング、トランスファーコーティング、サイズプレスコーティング、フレキソコーティング、ゲートロールコーティング、ツインロールHSMコーティング、短期滞留時間ブレードコーティングなどのブレードコーティング、ジェットアプリケーターコーティング、スプレーコーティング、グラビアコーティング、またはリバースグラビアコーティングが挙げられるが、それらに限らない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの層は、発泡体の形態で施される。
【0073】
上記の群a)のポリビニルアルコール(PVOH)は、単一タイプのPVOHでもよく、または例えば加水分解度もしくは粘度が異なる2つ以上のタイプのPVOHの混合物を含んでもよい。PVOHは、例えば、80~99mol%の範囲、好ましくは85~99mol%の範囲の加水分解度を有することができる。さらに、PVOHは、好ましくは、20℃のDIN53015/JIS K6726における4%水溶液(添加剤を含まず、pHを変化させないもの、すなわち、例えば蒸留水に分散および溶解させたときに得られるもの)において5mPa×秒超の粘度を有することができる。有用な製品の例は、例えば、クラレポバール15-99、ポバール4-98、ポバール6-98、ポバール10-98、ポバール20-98、ポバール30-98、もしくはポバール56-98、またはこれらの混合物である。加水分解の少ないグレードからは、ポバール4-88、ポバール6-88、ポバール8-88、ポバール18-88、ポバール22-88、または例えばポバール49-88が好ましい。PVOHはまた、エチレン基などのアルキル置換基、カルボン酸基などのアニオン性基、またはカチオン性基もしくはシラノール基などの他の官能基で修飾することができる。PVOHは、洗浄されていてもよく、または低灰分含有グレードのものでもよい。
【0074】
上記の群a)の多糖類は、例えばデンプンでよい。
【0075】
上記の群a)の変性多糖類は、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、またはメチルセルロースなどの変性セルロース、あるいはヒドロキシアルキル化デンプン、シアノエチル化デンプン、カチオン性もしくはアニオン性デンプン、またはデンプンエーテルもしくはデンプンエステルなどの変性デンプンでよい。変性セルロースの別の例は、カルボキシメチルセルロースナトリウムである。いくつかの好ましい変性デンプンとしては、ヒドロキシプロピル化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン、ジアルデヒドデンプン、およびカルボキシメチル化デンプンが挙げられる。
【0076】
上記の群b)のラテックスは、スチレン-ブタジエンラテックス、スチレン-アクリレートラテックス、アクリレートラテックス、酢酸ビニルラテックス、酢酸ビニル-アクリレートラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリルラテックス、スチレン-アクリレート-アクリロニトリルラテックス、スチレン-ブタジエン-アクリレート-アクリロニトリルラテックス、スチレン-無水マレイン酸ラテックス、スチレン-アクリレート-無水マレイン酸ラテックス、またはこれらのラテックスの混合物を含む群から選択することができる。ラテックスは、好ましくは、スチレン-ブタジエン(SB)ラテックスもしくはスチレン-アクリレート(SA)ラテックス、またはこれらのラテックスの混合物である。ラテックスは、バイオベース、すなわち、バイオベースのスチレン-アクリレートまたはスチレン-ブタジエンラテックスなどのバイオマスに由来するものでもよい。バイオベースのラテックスは、同様の性能を提供することができ、二酸化炭素排出量を改善する。いくつかの実施形態では、ラテックスは、スチレン-ブタジエン(SB)ラテックス、スチレン-アクリレート(SA)ラテックス、またはそれらの混合物から選択される。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング工程において、基材に、ポリビニルアルコールを含む水性溶液または分散体の少なくとも1つの第1の層を設ける。いくつかの実施形態では、第2のコーティング工程において、基材に、ポリビニルアルコールを含む水性溶液または分散体の少なくとも1つの第2の層を設ける。
【0078】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング工程において、基材に、スチレン-アクリレートラテックスを含む水性エマルションの少なくとも1つの第1の層を設ける。いくつかの実施形態では、第2のコーティング工程において、基材に、スチレン-アクリレートラテックスを含む水性エマルションの少なくとも1つの第2の層を設ける。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1のカレンダー加工工程は、第1のコーティング工程の前に実施される。
【0080】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において1つのソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、ソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを含み、ソフトロールまたはハードロールは、基材の第1の面に対して配置され、第1のコーティング工程は、第1のカレンダー加工工程の後に実施される。したがって、これらの実施形態では、基材の第1の面は、第1のカレンダー加工工程においてソフトロールまたはハードロールに対して配置され、その後、カレンダー加工された第1の面に、第1のコーティング工程において少なくとも1つの第1の層を設ける。好ましくは、ハードロールは、基材の第1面に対して配置される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、または第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してもよい。
【0081】
驚くべきことに、第1のコーティング工程の前に第1のカレンダー加工工程を実施しても、良好なバリア特性を有する薄いバリアフィルムを得ることが可能であることが分かった。特に、驚くべきことに、基材がバリア性化学物質の塗布前に(ソフト)カレンダー加工されているにもかかわらず、上記の群a)またはb)またはc)からのバリア性化学物質を供給した場合、基材の厚さの増加が小さいことが分かった。
【0082】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において1つまたは複数のソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、各ソフトカレンダーニップは、2つのソフトロールを含み、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の後に実施される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、または第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、各ソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを含み、少なくとも1つのソフトカレンダーニップのハードロールは、基材の第1の面に対して配置され、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の後に実施される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、または第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、2つ以上のソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを有する1つまたは複数のソフトカレンダーニップ、ならびに2つのソフトロールを有する1つまたは複数のソフトカレンダーニップによって構成され、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の後に実施される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、または第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してもよい。
【0085】
第1のカレンダー加工工程が第1のコーティング工程の前に実施される諸実施形態では、方法は、第1のコーティング工程の後に第2のカレンダー加工工程をさらに含んでよい。第2のカレンダー加工工程は、コーティング済み基材を、ソフトカレンダー、ハード/機械カレンダー、スーパーカレンダー、シューニップカレンダー、金属ベルトカレンダー、およびマルチニップカレンダーから選択される少なくとも1つの第2のカレンダーでカレンダー加工することを含んでよい。マルチニップカレンダーは、例えば、ヤヌスカレンダー、オプティロードカレンダー、またはプロソフトカレンダーでよい。第2のカレンダーはまた、ウェットスタックカレンダー、ブレーカースタックカレンダー、またはフリクションカレンダーなどの特殊なカレンダーでもよい。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してよい。あるいは、第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後で実施してもよいが、第2のカレンダー加工工程の前に実施してもよい。さらに別法として、第2のコーティング工程は、第2のカレンダー加工工程の後に実施してもよい。
【0086】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の前に実施される。任意選択で、これらの実施形態は、第1のカレンダー加工工程の後に第2のカレンダー加工工程を含んでよく、ここでは、第2のカレンダー加工工程は、コーティング済み基材を、上記の第2のカレンダーの群から選択される少なくとも1つの第2のカレンダーでカレンダー加工することを含んでよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において1つのソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、ソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを含み、ソフトロールまたはハードロールは、基材の第1の面に対して配置され、第1のコーティング工程は、第1のカレンダー加工工程の前に実施される。したがって、これらの実施形態では、基材の第1の面は、第1のコーティング工程において少なくとも1つの層で提供され、コーティングされた第1の面は、その後、第1のカレンダー加工工程においてソフトロールまたはハードロールに対して配置される。好ましくは、ハードロールは、基材の第1の面に対して配置される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してよい。あるいは、第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、第1のカレンダー加工工程の前または後に実施してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において1つまたは複数のソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、各ソフトカレンダーニップは、2つのソフトロールを含み、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の前に実施される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してよい。あるいは、第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、第1のカレンダー加工工程の前または後に実施してもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、各ソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを含み、少なくとも1つのソフトカレンダーニップのハードロールは、基材の第1の面に対して配置され、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の前に実施される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してよい。あるいは、第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、第1のカレンダー加工工程の前または後に実施してもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程において2つ以上のソフトカレンダーニップでカレンダー加工され、ここでは、2つ以上のソフトカレンダーニップは、1つのソフトロールおよび1つのハードロールを有する1つまたは複数のソフトカレンダーニップ、ならびに2つのソフトロールを有する1つまたは複数のソフトカレンダーニップによって構成され、第1のコーティング工程は、前記第1のカレンダー加工工程の前に実施される。これらの実施形態は、任意選択で、基材が第2の面に少なくとも1つの第2の層が設けられる前述の第2のコーティング工程を含んでもよい。第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程と本質的に同時に実施してよい。あるいは、第2のコーティング工程は、第1のコーティング工程の後に実施してもよく、または第1のカレンダー加工工程の前または後に実施してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、第1の態様の方法は、第1のカレンダー加工工程の前に、事前カレンダー加工工程を含む。事前カレンダー加工工程は、例えば、ハードカレンダーニップで実施することができる。
【0092】
前述のように、第1の態様の方法は、第1のカレンダー加工工程および第1のコーティング工程の後に、コーティング済み基材を乾燥させて、バリアフィルムを形成する工程を含む。1つまたは複数のさらなるカレンダー加工工程(前述の第2のカレンダー加工工程など)および/または1つまたは複数のさらなるコーティング工程(前述の第2のコーティング工程など)を含む諸実施形態では、乾燥工程は、さらなるカレンダー加工工程およびさらなるコーティング工程の後に実施される。好ましくは、乾燥は、フィルム形成を容易にするために、基材の温度が>80℃、好ましくは>85℃になるように実施される。
【0093】
形成されたバリアフィルムは、50μm未満、好ましくは45μm未満、最も好ましくは40μm未満または38μm未満または35μm未満または32μm未満、ただし15μm超の厚さを有する。厚さは、ISO534に従って決定することができる。形成されたバリアフィルム(すなわち、コーティングおよび乾燥の後の基材)の坪量は、20~90g/m、好ましくは25~80g/m、最も好ましくは28~65g/mであり得る。坪量は、ISO536に従って決定することができる。いくつかの実施形態では、形成されたバリアフィルムの坪量は、20~90g/m、好ましくは25~80g/m、最も好ましくは28~65g/mであり得、コーティング坪量と基材坪量との比は、40g/m未満の坪量を有するバリアフィルムの場合、0.8:100~30:100、より好ましくは1:100~15:100であり得、40g/m以上の坪量を有するバリアフィルムの場合、0.6:100~25:100、より好ましくは1:100~12:100であり得る。
【0094】
コーティング済み基材を乾燥させる工程は、例えば、熱風、IR放射、またはそれらの組合せを使用して実施することができる。コーティング済み基材はまた、例えば、シリンダー乾燥装置、ヤンキー乾燥機、シングルティア乾燥機、蒸気乾燥機、空気衝突乾燥機、インパルス乾燥装置、マイクロ波乾燥装置、コンデベルト、ベルトニップ乾燥機、通気乾燥機(TAD)からなる群から選択される接触式または非接触式乾燥機でさらに乾燥および硬化させることができる。あるいは、乾燥工程は、例えば熱風および/または照射乾燥機をカレンダーと組み合わせることによって、カレンダー内で実施することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、第1のカレンダー加工工程は、最大500kN/m、好ましくは20~250kN/mの線荷重を使用することを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、第1のカレンダー加工工程は、少なくとも1つのソフトカレンダーニップにおいて50~250℃、好ましくは80~180℃の温度で実施される。ソフトカレンダーニップのロールは、温度が同じでも異なっていてもよい。ソフトカレンダーニップのソフトロールは、加熱されないことが多いが、実行中に温まる。
【0097】
いくつかの実施形態では、機械速度は、少なくとも50m/分、好ましくは少なくとも100m/分、より好ましくは150または200または250または300または400または500m/分、最も好ましくは少なくとも550m/分であるが、1700m/分未満である。
【0098】
いくつかの実施形態では、得られたバリアフィルムのコッブアンガー(Cobb Unger)吸収値は、コーティングされた面に関して(すなわち、両面をコーティングする諸実施形態では第1の面および第2の面に関して)、1.5g/m(30秒)未満、好ましくは1.4または1.3または1.2または1.1g/m(30秒)未満である。コッブアンガーは、SCAN-P37:77に従って決定される。
【0099】
いくつかの実施形態では、得られたバリアフィルムは、相対湿度50%および23℃で標準規格ASTM F1249に従って測定した場合、50g/m/日未満、好ましくは35g/m/日未満、より好ましくは20g/m/日未満、最も好ましくは15g/m/日未満、さらにより好ましくは10g/m/日未満の水蒸気透過度(WVTR)(コーティングされた面に関して)を有する。
【0100】
いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程の前に、>2μmまたは>3μmまたは>4μmのPPS粗さを有する。いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程の後に、>1μm、ただし<5μmのPPS粗さを有する。いくつかの実施形態では、基材は、第1のカレンダー加工工程および第1のコーティング工程の後に、>1μm、ただし<5μmのPPS粗さを有する。PPS(1.0MPa)平滑度は、ISO8791-4で決定される。
【0101】
いくつかの実施形態では、バリアフィルムは、相対湿度50%および23℃で標準規格ASTM D-3985に従って測定した場合、500cc/m/日未満、好ましくは250cc/m/日未満、より好ましくは100cc/m/日未満、さらにより好ましくは50cc/m/日未満の酸素透過速度(OTR)(コーティングされた面に関して)を有する。
【0102】
本発明のバリアフィルムは、通常、グリースおよび油に対して良好な耐性を示す。バリアフィルムの耐グリース性は、標準規格ISO16532-2に従ったKIT試験によって評価される。この試験では、ヒマシ油、トルエン、およびヘプタンの一連の混合物を使用する。溶媒に対する油の比が減少すると、粘度および表面張力も低下して、連続混合に耐えることがより困難になる。性能は、15秒後にフィルムシートが黒くならない最も大きい番号の溶液で評価される。不具合を引き起こさず紙の表面に残存する最大番号の溶液(最もアグレッシブ)が、「キット評価(kit rating)」(最大12)として報告される。いくつかの実施形態では、バリアフィルムのKIT値は、標準規格ISO16532-2に従って測定した場合、少なくとも10、好ましくは12である。
【0103】
液体包装用板紙などの包装材料におけるバリア層としてのアルミニウム箔およびポリオレフィンフィルムを、使用済み包装材料の再パルプ化およびリサイクルを容易にする代替物で置き換えるための解決策の改善が求められている。本発明のバリアフィルムは、有利なことに、バイオベースの材料から、好ましくはセルロースベースの材料からほぼ完全に製造することができ、それにより、バリアフィルムを含む、使用済みの紙および板紙ベースの包装材料の再パルプ化およびリサイクルが容易になる。また、コーティングの量を最小限にすることによって(すなわち、本開示に従って低いコート重量の使用を可能にすることによって)、ベースウェブの一部としてリサイクルおよび再使用がより容易なバリアフィルムが提供される。
【0104】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様の方法によって得られるバリアフィルムを提供する。
【0105】
しかし、本発明のバリアフィルムはまた、熱可塑性樹脂ポリマー層などの1つまたは複数のポリマー層とともに積層体として利用することができる。
【0106】
本開示の第3の態様によれば、第1の態様による方法によって得られるバリアフィルムを含むバリアフィルム積層体、例えば紙または板紙をベースとする包装材料用のバリアフィルム積層体を製造する方法であって、
-第1の態様による方法を実施して、前記バリアフィルムを形成する工程と、
-バリアフィルムを少なくとも1つの追加ポリマー層と積層して、前記バリアフィルム積層体を形成する工程と
を含む、方法を提供する。
【0107】
例えば、1つまたは複数の追加ポリマー層は、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HD-PE)、低密度ポリエチレン(LD-PE)、ポリプロピレン、低密度ポリプロピレン(LD-PP)、二軸延伸ポリプロピレン(BO-PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの任意の好適なポリオレフィン、または当業者によって容易に選択され得るそれらの混合物もしくは変性物によって構成することができる。1つまたは複数の追加ポリマー層はまた、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)などの、バイオ由来またはリサイクル可能および/またはコンポスト化可能な変形物によって構成することができる。追加ポリマー層は、一般に紙もしくは板紙をベースとする包装材料で通常使用される熱可塑性ポリマー、または特に液体包装用板紙で使用されるポリマーのいずれかを含んでもよい。ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)は、液体包装用板紙に使用される最も一般的かつ多用途なポリマーである。
【0108】
追加ポリマー層は、例えば、押出コーティング、フィルムコーティング、または分散コーティングによって設けることができる。押出コーティングは、溶融したプラスチック材料を基材に塗布して、非常に薄く滑らかで均一な層を形成する工程である。コーティングは、押し出されたプラスチック自体によって形成することもでき、または溶融したプラスチックを接着剤として使用して、固体プラスチックフィルムを基材上に積層することもできる。押出コーティングに使用される一般的なプラスチック樹脂には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)がある。
【0109】
この積層構造は、さらに優れたバリア特性を提供することができ、生分解性および/またはコンポスト化可能および/または再パルプ化可能であり得る。一実施形態では、本発明によるバリアフィルムは、タイ層の有無にかかわらず、ポリエチレンの2つの層の間など、2つのコーティング層の間に設けることができる。
【0110】
各追加ポリマー層の坪量は、好ましくは6~40g/m、より好ましくは8~30g/m、最も好ましくは10~25g/mである。
【0111】
例えば1つまたは複数のPE層を含むいくつかの実施形態では、得られたバリアフィルム積層体は、相対湿度50%および23℃で標準規格ASTM F1249に従って測定した場合、5g/m/日未満、好ましくは4g/m/日未満、より好ましくは3g/m/日未満の水蒸気透過度(WVTR)(コーティングされた面に関して)を有する。
【0112】
本開示の第4の態様によれば、第3の態様の方法によって得られるバリアフィルム積層体を提供する。
【0113】
本開示の第5の態様によれば、紙または板紙をベースとする包装材料積層体を製造する方法であって、
-第1の態様による方法を実施してバリアフィルムを形成する工程、または第3の態様による方法を実施してバリアフィルム積層体を形成する工程と、
-バリアフィルムまたはバリアフィルム積層体を、紙または板紙をベースとする基部材料と積層して、前記紙または板紙をベースとする包装材料積層体を形成する工程と
を含む、方法を提供する。
【0114】
紙または板紙をベースとする包装材料に使用される紙または板紙基部層は、20~500g/mの範囲、好ましくは80~400g/mの範囲の坪量を有することができる。
【0115】
本開示の第6の態様によれば、第5の態様による方法によって得られる紙または板紙をベースとする包装材料積層体を提供する。
【0116】
バリアフィルムまたはバリアフィルム積層体はまた、自立型パウチまたは袋などの柔軟な包装材料の一部とすることができる。バリアフィルムまたはバリアフィルム積層体は、箱、袋、ラッピングフィルム、カップ、容器、トレイ、ボトルなど、あらゆるタイプの包装に組み込むことができる。
【0117】
本開示の第7の態様によれば、コーティング済み基材を含むバリアフィルムを提供し、
ここでは、前記基材は、少なくとも70重量%の高度に精製されたセルロースパルプを含み、前記高度に精製されたセルロースパルプは、70~95°SRのショッパーリーグラー値(°SR)を有し、前記高度に精製されたセルロースパルプは、乾燥重量を基準として1gあたりの繊維数が少なくとも1,000万本の、>0.2mmの長さを有する繊維の含有量を有し、基材は、第1の面および第2の反対側面を有し、
前記基材は、以下のものを含む少なくとも1つの第1の層:
d)ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、多糖類もしくは変性多糖類、またはそれらの組合せからなる群から選択されるポリマー、あるいは
e)ラテックス、あるいは
f)d)およびe)の組合せ、
を第1の面に設けられ、各第1の層は、乾燥重量として計算した場合に0.5~5gsm、好ましくは0.5~3gsmのコート重量を有し、第1の面の全コート重量は、乾燥重量として計算した場合に8gsm以下であり;
バリアフィルムは、50μm未満、好ましくは45μm未満、最も好ましくは40μm未満の厚さを有し、
バリアフィルムは、相対湿度50%および23℃で標準規格ASTM F1249に従って測定した場合、50g/m/日未満、好ましくは35g/m/日未満、より好ましくは20g/m/日未満、最も好ましくは15g/m/日未満、さらにより好ましくは10g/m/日の水蒸気透過度を有する。
【0118】
バリアフィルムは、第1の態様の方法を参照して上で説明したようにさらに定義することができる。
【0119】
本開示の第8の態様によれば、少なくとも1つの追加ポリマー層が積層された第7の態様によるバリアフィルムを含むバリアフィルム積層体を提供する。
【0120】
本開示の第9の態様によれば、紙または板紙の基部材料が積層された第7の態様によるバリアフィルムまたは第8の態様によるバリアフィルム積層体を含む、紙または板紙をベースとする包装材料を提供する。
【0121】
本開示の第10の態様によれば、紙または板紙をベースとする包装材料における、第2の態様もしくは第7の態様によるバリアフィルム、または第4の態様もしくは第8の態様によるバリアフィルム積層体の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0122】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、当業者には他の修正および変形が明らかになるであろう。しかし、そのような他の修正および変形が、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく実施できることは明らかであろう。
【実施例
【0123】
方法
以下の実施例では、次の測定方法を使用した:
・水蒸気透過度(WVTR)は、相対湿度50%および23℃で標準規格ASTM F1249に従って測定した
・酸素透過度(OTR)は、相対湿度50%および23℃で標準規格ASTM D-3985に従って測定した
・坪量は、ISO536に従って決定した
・PPS(1.0MPa)平滑度は、ISO8791-4に従って決定した
・透気度(ガーレーヒル、G-H)値は、ISO5636-5に従って測定した。装置による最大値は、42300秒/100mlであった
・ベントセン平滑度は、ISO8791-2に従って決定した
・KIT値は、標準規格ISO16532-2に従って測定した
・ショッパーリーグラー値(°SR)は、標準規格ISO5267-1に従って測定した
・不透明度C/2°+UVおよび不透明度D65/10°+UVは、ISO2471に従って測定した
・厚さ(単一シート)は、ISO534に従って決定した
・コッブ600(600秒)は、ISO535に従って決定した
・コッブアンガー30秒は、SCAN-P37:77に従って決定した
・>0.2mmの長さを有する繊維の含有量は、L&W Fiber tester Plus装置(L&W/ABB)を使用して決定した。0.100gの既知の試料重量を使用し、>0.2mmの長さを有する繊維の含有量(1gあたり繊維数100万本)を次式を使用して計算した:1gあたり繊維数100万本=(試料中の繊維数)/(試料重量)/1000000=(特性ID3141)/特性ID3136)/1000000
・平均フィブリル面積は、標準規格ISO16065-2に従って>0.2mmの長い繊維状粒子として繊維を定義して、L&W Fiber Tester Plus装置(L&W/ABB)を使用して決定した。「平均フィブリル面積」は、本明細書で使用する場合、長さ加重平均フィブリル面積を意味する。
・保水値(WRV)は、標準規格ISO23714により、200メッシュのワイヤを使用して決定した。
【0124】
「ts」はおもて面を意味し、「bs」は裏面を意味する
【0125】
結果を以下の表1および表2に示す。
【0126】
例1(比較)
市販のスーパーカレンダー(SC)紙を、さらなるカレンダー加工もコーティングも行わずに使用した。この製品はバリア特性を有さないが、PPS1.0の平滑度値が非常に低い。
【0127】
例2(比較)
例1の市販のSC紙を、アニロックスロールを備えた2つのコーティングステーションを使用する、中間乾燥を伴った印刷機(フレキソグラフィ)を使用して、PVOH(ポバール15-99)をコーティングした。推定全乾燥コート重量は、1.7gsmであった。結果は、透過性およびWVTRは大幅に改善されたが、耐グリース性(KIT)は低いままであることを示している。OTR値は測定できなかった。
【0128】
例3(比較)
これは、漂白クラフトパルプから作製された70重量%の高度に精製されたパルプおよび30重量%のわずかに精製されたパルプ(°SR<30)を含む基部フィルム(基準試料)である。高度に精製されたパルプは、92~94°SRのSR値を有した。>0.2mmの長さを有する繊維の量は、繊維1gあたり1500万本をわずかに超え、>0.2mmの長さを有する繊維の平均フィブリル面積は、高度に精製されたパルプでは約25%であった。高度に精製されたパルプのWRVは約380%、70~30%混合物のWRVは約300%であった。前述のパルプ混合物を使用して、湿式成形部とそれに続くプレスおよび乾燥部を含む長網抄紙機を使用して基部フィルムを製造した。例1で使用した市販のグレードと比較すると、試料は比較的厚みがある。精製済み繊維の量が多いにもかかわらず、PPS平滑度は比較的高い。油およびグリース(KIT)バリア特性ならびに透気度レベル(ガーレーヒル)は良好であったが、酸素バリア特性(OTR)は悪く、コッブアンガー値は比較的高かった。
【0129】
例4(比較)
これは、例3で使用した対応する基部フィルムであるが、11ニップ構成を使用して140℃/300kNmでスーパーカレンダー加工した。嵩は、不透明度と同様に著しく減少した。しかし、耐グリース性(KIT)は12から6に変化した。圧力は200~500kNmの間、温度は110~150℃の間、速度は200~500m/分の間でさらに変化させたが、油およびグリースバリア特性またはPPS平滑性に大きな変化は見られなかった。カレンダー加工前に蒸気(約5g/m)を使用して、実証実験を実施した。
【0130】
例5
この場合、例3で使用した基部フィルムを、2ニップ構成(ハード-ハード+ハード-ソフト)を使用して、120℃および180kN/mで速度200m/分でソフトカレンダー加工した。水分含有量は、カレンダー加工において約4~5%であった。カレンダリングニップの前に、運転性を向上させるためにウェブを蒸気処理した。この場合、嵩の大幅な減少が見られたが、スーパーカレンダーの方が基材の緻密化において効率が良いはずであることから、これは驚くべきことである。さらに興味深いのは、不透明度の低下である。グリースバリア性(KIT)は非常に良好なレベルであるが、OTRは不合格であり、WVTRは比較的高い。
【0131】
例6
この場合、例5によるハードニップ、ソフトニップカレンダー加工された試料の片面を、PVOH(ポバール15-99)を用いてより平滑な面(ハードロール)に1.5gsmのコート重量でコーティングした。低いコート量にもかかわらず、厚さは約15%しか変化しなかった。しかし、コッブアンガー値は非常に低く、これは表面が非常に緻密であることを示している。また、WVTR値(コーティングされた面)も非常に低く(14)、低いコート重量にもかかわらず、コーティングがバリア特性をもたらしていることが確認された。
【0132】
例7(比較)
例3に記載したのと同じ設定に従って、70%の高度に精製されたパルプを使用してフルスケール機で新しい基部フィルムを製造した。坪量は、31.4g/mであった。
【0133】
例8(比較)
最初に、例7で作製した基部フィルムを、メタリングサイズプレスおよび12重量%PVOH(ポバール15-99)溶液を使用して120m/分でコーティングした。基材は、2.1gsmのコート重量を目標に片面コーティングした。得られたバリア特性(G-H、KIT、およびWVTR)は、OTRを除いて良好であった。
【0134】
例9
例8で得られた試料を、120℃および120kN/mでさらにソフトカレンダー加工(ハードーハード+ハード-ソフトニップ、すなわち、2ニップ構成)した。水分含有量は、カレンダー加工において約4~5%であった。例6と比較すると、おもて面と裏面のPPS平滑度の差はより明白であったが、平滑度および粗さの大幅な低減が得られた。さらに、例えばコッブアンガーは例6と同じレベルにはなく、これは、ソフトニップを含む2ニップカレンダー加工の使用はコーティング前が好ましいことを意味している。
【0135】
例10
例5からの試料をPE押出コーティング(約25gsm)した。PEを平滑面の上に押出コーティングした。WVTR値(コーティングされた面)は改善されたが、OTRレベルは比較的高かった。
【0136】
例11
例6からの試料を、すなわち、PVOH層の上に、PE押出コーティング(約25gsm)した。WVTR値(コーティングされた面)は、OTR特性と同様に著しく改善された。
【0137】
例12
例8からの試料を、すなわち、PVOH層の上に、PE押出コーティング(約25gsm)した。WVTR値(コーティングされた面)は、OTR特性と同様に著しく改善された。
【0138】
例13
例9からの試料を、2ニップカレンダー加工したPVOH層の上にPE押出コーティング(約25gsm)した。WVTR値(コーティングされた面)は、OTR特性と同様に著しく改善された。
【0139】
例14
高度に精製されたパルプを70%含む例3の基材を110℃でソフトカレンダー加工(ハード-ハード+ハード-ソフト)し、次いで、フレキソ印刷機を使用してアニロックスで平滑面(おもて面)をコーティングした。水分含有量は、カレンダー加工において約4~5%であった。コート重量は、2層(合計3gsm)で塗布されたスチレン-アクリレートラテックス(S/A)ラテックス約3gsmであった。各コーティングステーションの後、試料をIR乾燥機で乾燥させた(表面温度>85℃)。
【0140】
例15(比較)
例14で使用したのと同じ基材を、11ニップ構成を使用してスーパーカレンダー加工した。S/Aエマルションは、2つのアニロックスステーションを備えたフレキソ印刷機を使用して塗布した。塗布量は、片面において、すなわち、2層で塗布されたS/Aラテックス合計約3gsmであった。結果は、例14の方がバリア特性が改善され、特にWVTR値が良好であることを示している。
【国際調査報告】