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特表2024-519302構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にするシステムおよび方法
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  • 特表-構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にするシステムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にするシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/62 20060101AFI20240501BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240501BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20240501BHJP
   G21G 4/08 20060101ALI20240501BHJP
   G21H 5/02 20060101ALI20240501BHJP
   G01T 7/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
G01N30/62 K
G01N30/88 A
G01N30/60 Q
G21G4/08 G
G21H5/02 C
G01T7/00 A
G01T7/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567080
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 TR2022050225
(87)【国際公開番号】W WO2022231545
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2021/007431
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523410517
【氏名又は名称】エジザージュバシュ モンロール ヌークリア ウルンラー サナイ ヴェ ティカレト アノニム シルケチ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】トゥンセル,メフメト・タン
(72)【発明者】
【氏名】ペリヴァン,ターシン
(72)【発明者】
【氏名】クチュクミディル,ハルン
(72)【発明者】
【氏名】コルフ,アイシル
(72)【発明者】
【氏名】チャクマク,ムスタファ
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188AA27
2G188CC00
2G188DD16
(57)【要約】
本発明は、構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にするシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、カラム(2)に沿って、カラム(2)内で移動する物質の位置および/または分布および/または移動速度、および/または物質がカラム(2)を出る時間、およびカラム出口(23)に達する物質のどの程度がどのくらいの放射能でカラム(2)を出始めるのかを決定することが可能であり、したがって、次のプロセスステップに進むための最適化および自動化を提供することが可能であるシステムおよび方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にするシステムであって、
前記放射性物質が通って移動する少なくとも1つのカラム(2)と、
前記カラム(2)内における前記放射性物質を検出することを可能にする少なくとも1つの放射能検出器(5)と、
前記放射能検出器(5)が前記カラム(2)に沿って移動することを可能にする少なくとも1つのアクチュエータ(31)と、
を備えることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記アクチュエータ(31)は、モータであることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記モータは、ステップモータまたはサーボモータであることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、少なくとも1つの回転シャフト(33)を備え、前記少なくとも1つの回転シャフト(33)は、前記アクチュエータ(31)の回転運動に応じて回転し、前記少なくとも1つの回転シャフト(33)上を前記放射能検出器(5)が移動することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、前記回転シャフト(33)が固定されることを可能にする少なくとも1つの第1の固定用部材(35)および少なくとも1つの第2の固定用部材(36)を備えることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記回転シャフト(33)は、少なくとも1つの第1の固定用部材(35)と少なくとも1つの第2の固定用部材(36)との間に位置決めされることを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記回転シャフト(33)がそれ自体の中心軸を中心に回転運動を自由に行うことができるように前記回転シャフト(33)が支持されることを可能にする少なくとも1つの軸受部材(351)を備えることを特徴とする、請求項4から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
軸受部材(351)は、第1の固定用部材(35)に位置決めされることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記回転シャフト(33)の端のうちの一方は、前記回転シャフト(33)が前記回転運動を自由に行うことができるように前記軸受部材(351)内に支持されることを特徴とする、請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
前記軸受部材(351)は、ベアリングであることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記アクチュエータ(31)は、前記第2の固定用部材(36)内に位置決めされることを特徴とする、請求項5または6に記載のシステム。
【請求項12】
前記回転シャフト(33)の一端は、前記アクチュエータ(31)に接続されることを特徴とする、請求項4から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、少なくとも1つのカップリング(32)を備え、前記少なくとも1つのカップリング(32)は、前記アクチュエータ(31)と前記回転シャフト(33)との接続が達成されることを可能にするとともに、前記アクチュエータ(31)の前記回転運動が前記回転シャフト(33)に伝達されることを可能にすることを特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムは、少なくとも1つの検出器キャリア(4)を備え、前記少なくとも1つの検出器キャリア(4)に前記放射能検出器(5)が位置決めされ、前記少なくとも1つの検出器キャリア(4)とともに前記放射能検出器(5)が移動することを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
検出器キャリア(4)は、回転シャフト(33)が通ることになっているとともに支持されることになっている少なくとも1つの回転シャフト軸受(41)を有することを特徴とする、請求項4または14に記載のシステム。
【請求項16】
前記回転シャフト(33)は、歯付き構造を有することを特徴とする、請求項4または15に記載のシステム。
【請求項17】
回転シャフト軸受(41)は、歯付き構造を有することを特徴とする、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
前記回転シャフト(33)および前記回転シャフト軸受(41)は、前記回転シャフト軸受(41)ひいては前記検出器キャリア(4)が前記回転シャフト(33)の前記回転運動および回転方向に応じて前記回転シャフト(33)上を移動することを可能にする、合致する歯付き構造を有することを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムは、少なくとも1つの固定シャフト(34)を備え、前記少なくとも1つの固定シャフト(34)は、検出器キャリア(4)が回転運動を行うことなく単軸上のみを異なる方向に移動することを可能にすることを特徴とする、請求項14から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
固定シャフト(34)は、第1の固定用部材(35)と第2の固定用部材(36)との間に位置決めされることを特徴とする、請求項5または19に記載のシステム。
【請求項21】
検出器キャリア(4)は、前記固定シャフト(34)が通ることになっているとともに前記検出器キャリア(4)が前記固定シャフト(34)上を移動することを可能にする少なくとも1つの固定シャフト軸受(42)を備えることを特徴とする、請求項19または20に記載のシステム。
【請求項22】
固定シャフト(34)は、前記アクチュエータ(31)の回転運動に応じて回転する、歯付き構造を有する回転シャフト(33)が、歯付き構造を有する回転シャフト軸受(41)の内側で回転する場合、前記固定シャフト(34)が固定シャフト軸受(42)を通っているため、検出器キャリア(4)の回転を防ぎ、前記検出器キャリア(4)に、前記回転シャフト(33)の回転方向に応じて種々の方向に、第1の固定用部材(35)または第2の固定用部材(36)に近づく方向に、前記固定シャフト(34)の軸上を移動することを強制させる、固定シャフト(34)であることを特徴とする、請求項14から18または19から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記システムは、少なくとも1つの検出器コリメータ(51)を備え、前記少なくとも1つの検出器コリメータ(51)内に前記放射能検出器(5)が位置決めされることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記検出器コリメータ(51)は、2ピース構造を有することを特徴とする、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記検出器コリメータ(51)は、少なくとも1つの前コリメータ(52)と、少なくとも1つのコリメータカバー(53)とを含むことを特徴とする、請求項23または24に記載のシステム。
【請求項26】
前記放射能検出器(5)は、前記前コリメータ(52)の中へ位置決めされることを特徴とする、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記前コリメータ(52)は、前記放射能検出器(5)が前記前コリメータ(52)の中へ位置決めされた後、前記コリメータカバー(53)によって閉じられるのに適した前コリメータ(52)であることを特徴とする、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記前コリメータ(52)は、少なくとも1つのコリメータ開口(54)を有することを特徴とする、請求項25から27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記前コリメータ(52)は、放射能検出器ケーブル(55)が通ることを可能にするための少なくとも1つのケーブルスペース(56)を有することを特徴とする、請求項25から28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記コリメータカバー(53)は、いかなる接続部材(6)も用いることなく前記前コリメータ(52)に固定されることを特徴とする、請求項25から29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
検出器コリメータ(51)は、検出器キャリア(4)が含むハウジング内に固定されることを特徴とする、請求項14または23から30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記検出器コリメータ(51)は、少なくとも1つの接続部材(6)によって前記検出器キャリア(4)に固定されることを特徴とする、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記検出器キャリア(4)におけるハウジングは、前記検出器コリメータ(51)が少なくとも1つの接続部材(6)によって前記検出器キャリア(4)における種々の位置に固定されることを可能にするハウジングであることを特徴とする、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前コリメータ(52)は、少なくとも1つの接続部材(6)によって前記検出器キャリア(4)に固定され、コリメータカバー(53)は、少なくとも1つの接続部材(6)によって前記検出器キャリア(4)に固定されることを特徴とする、請求項32または33に記載のシステム。
【請求項35】
前記検出器キャリア(4)は、放射能検出器ケーブル(55)が通ることができる少なくとも1つのケーブルスペース(56)を有することを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項36】
前記カラム(2)は、少なくとも1つのカラム本体(21)と、前記放射性物質が前記カラム本体(21)に入る少なくとも1つのカラム入口(22)と、前記放射性物質が前記カラム本体(21)を出る少なくとも1つのカラム出口(23)とを含むことを特徴する、請求項1から35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記カラム本体(21)は、前記カラム入口(22)の端および/または前記カラム出口(23)の端に少なくとも1つのプラグ(24)を含むことを特徴とする、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記プラグ(24)は、前記カラム本体(21)の内部の圧力に耐えることができるように少なくとも1つのカバー(25)により固定されることを特徴とする、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記システムは、前記カラム(2)、および/または回転シャフト(33)であって、前記回転シャフト(33)上を前記放射能検出器(5)が移動する前記回転シャフト(33)、および/または固定シャフト(34)が位置決めされる、少なくとも1つの台(1)を備えることを特徴とする、請求項4または19に記載のシステム。
【請求項40】
第2の固定用部材(36)は、台(1)に位置決めされることを特徴とする、請求項5または39に記載のシステム。
【請求項41】
前記カラム(2)、および/または前記回転シャフト(33)であって、前記回転シャフト(33)上を前記放射能検出器(5)が移動する前記回転シャフト(33)、および/または固定シャフト(34)は、前記カラム(2)からの前記放射能検出器(5)の距離が常に一定のままであるとともに前記放射能検出器(5)が前記カラム(2)をその全長にわたって走査することができるように前記台(1)に位置決めされることを特徴とする、請求項39または40に記載のシステム。
【請求項42】
構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にする方法であって、以下のプロセスステップ、すなわち
前記放射性物質を特定のモル濃度の酸とともにカラム入口(22)を介してカラム(2)に充填するステップと、
カラム本体(21)の上部に、より具体的には前記カラム入口(22)の端に前記放射性物質を収集するステップと、
充填に用いた前記酸を、カラム出口(23)を介して廃液に導くステップと、
前記カラム入口(22)に導入された前記酸の前記モル濃度を変更し、したがって、分離されることを意図された充填された前記放射性物質が前記カラム(2)内で移動することを可能にするステップと、
前記移動の開始後に放射能検出器(5)を前記カラム本体(21)に沿って移動させるステップと、
走査プロセスを達成するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項43】
前記酸は、前記カラム(2)の内部に3~11barの範囲内の圧力をつくり出すように前記カラム(2)に通されることを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記カラム本体(21)に沿っての前記放射能検出器(5)の前記移動は、上から下方へ、より具体的には、前記カラム入口(22)の端から前記カラム出口(23)の端へ向かうことを特徴とする、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記カラム入口(22)に導入される前記酸の前記モル濃度を変更し、したがって、分離されることを意図された充填された前記放射性物質が前記カラム(2)内で移動することを可能にする前記ステップにおける移動は、前記カラム入口(22)の端から前記カラム出口(23)の端へ向かうことを特徴とする、請求項42から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記カラム本体(21)に沿っての前記放射能検出器(5)の前記移動の速度は、アクチュエータ(31)の回転速度に応じて調整されることを特徴とする、請求項42から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
走査は、連続的に行われ、換言すると、前記放射能検出器(5)は、停止することなく連続的に移動することを特徴とする、請求項42から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記放射能検出器(5)は、特定の距離にわたって移動した後、停止および待機し、放射能値が現在位置で読み取られると、前記放射能検出器(5)は特定の距離にわって再び移動し、別の読み取りプロセスを行うことを特徴とする、請求項42から46のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造内における放射性物質の位置および分布と、構造内における放射性物質の移動速度と、放射性物質が構造を出る時間とを決定することを可能にするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの放射性溶液の製造に関して、担体原子が添加されない方法により、すなわち、担体無添加(NCA)法により製造を行うことが好ましい。Lu-177放射標識溶液の製造もまたNCA法により製造される。Lu-177溶液の製造は最初に、1994年にBalasubramaniumによりイッテルビウムの中性子照射によって達成された。この方法では、Yb176が中性子捕獲反応によってYb177に変換し、形成されたYb177のベータ崩壊(半減期=1.9時間)の結果としてLu-177が形成する。高比放射能を有するLu-177は、このプロセスの結果として形成し、形成された製品は「担体無添加」Lu177と呼ばれる。製造方法はNCAであるが、その理由は、核np反応から生じる完成製品中に単一の担体(Lu-177)のみが形成するからである。しかしながら、完成製品は、化学的に類似した性質を有するマクロ量のイッテルビウム176および微量のルテチウム177を含んでいるため、また、イッテルビウム176は完成製品の薬種において制限されること、より重要には、薬物活性の観点から完成製品中に存在しないことが要求されるため、化学的分離が行われなければならない(Horwitz,A process for the separation of 177Lu from neutiron irradiated 176Yb targets,Applied Radiation and isotopes,63(2005)23-36)。この文献における基本情報に基づいて分離および精製システムが設計された。方法の主要な課題は、176Ybおよび177Luが化学的に類似した元素であるためこれらを分離することの必要性である。
【0003】
抽出クロマトグラフィー法によって、適切な溶媒中に溶解されている、非常に類似した化学的性質を有する2つ以上の放射性物質が分離される。放射性物質は、特定のモル濃度の酸とともにカラムに充填される。充填された物質をカラム内で進ませるために別のモル濃度を有する酸がカラムに通される。分離を受ける対象の物質は、直立したカラムに沿って上から下方へ特定の速度で移動する。カラムは、上記カラム内に使用される樹脂の性質に従って、カラムを通る放射性物質について位相差をつくり出すことにより、上記カラム内における放射性物質の移動をもたらす。カラム内における物質の移動速度と物質がカラムを出る時間とを知ることが、固相抽出の効率に影響する。固相抽出クロマトグラフィーに用いられる、現行の技術水準のデバイスにおいて、固定放射能検出器が使用されている。これらの検出器は、デバイスの物理的特性に応じて、カラムの入口もしくは出口またはカートリッジに位置決めされる。カラムまたはカートリッジの内部を移動する放射性物質は、カラム出口に達するのを待機し、検出器で読み取られた放射能(activity)値に応じて次のプロセスステップに進むことを可能にされる。ここでの課題は、物質が検出器の前に来るまで、物質の放射能の最大値と物質がカラム中に分布している範囲とを知ることができないことである。物質がカラム出口に達する前にこれらの値を知ることは、最適な地点で次のプロセスステップに進むとともに自動化によりプロセスを管理することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によるシステムおよび方法を用いれば、物質が検出器の前に来るまでカラムまたはカートリッジにおける放射能の位置および分布範囲を知ることができないという課題であって、固定検出器の使用によって引き起こされる課題が排除され、カラム内で移動する物質の位置および分布をカラムに沿って監視することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一目的は、カラム内で移動する物質の位置および/または分布および/またはカラムに沿った移動速度および/またはカラム退出時間を決定することが可能であるシステムおよび方法を開発することである。
【0006】
本発明の別の目的は、カラム出口に達する物質のどの程度がどのくらいの放射能でカラムを出始めるかを決定することが可能であるシステムおよび方法を開発することである。
【0007】
本発明の別の目的は、カラム出口に達する物質のどの程度がどのくらいの放射能でカラムを出始めるかを決定する可能性により、次のプロセスステップに進むための最適化および自動化が提供されるシステムおよび方法を開発することである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明によるシステムの等角投影図である。
図2】本発明によるシステムの別の等角投影図である。
図3】本発明によるシステムの断面図である。
図4】放射能検出器および検出器コリメータの断面図である。
図5】放射能検出器および検出器コリメータの分解図である。
図6】検出器キャリアに固定された状態にある放射能検出器および検出器コリメータの図である。
図7】検出器キャリアに固定された状態にある放射能検出器および検出器コリメータの断面図である。
図8】2つの接続部材により検出器キャリアに固定された状態にある放射能検出器および検出器コリメータの断面図である。
図9】カラム内での分離を受ける物質の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、構造内における放射性物質の挙動が決定されることを可能にするシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、カラム(2)に沿って、カラム(2)内で移動する物質の位置および/または分布および/または移動速度、および/または物質がカラム(2)を出る時間、およびカラム出口(23)に達する物質のどの程度がどのくらいの放射能でカラム(2)を出始めるのかを決定することが可能であり、したがって、次のプロセスステップに進むための最適化および自動化を提供することが可能であるシステムおよび方法に関する。
【0010】
本発明によるシステムは、その最も基本的な形態において、放射性物質が通って移動する少なくとも1つのカラム(2)と、カラム(2)内における放射性物質を検出することを可能にする少なくとも1つの放射能検出器(5)と、放射能検出器(5)がカラム(2)に沿って移動することを可能にする少なくとも1つのアクチュエータ(31)とを備える。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、アクチュエータ(31)は、モータである。より具体的には、アクチュエータ(31)は、ステップモータまたはサーボモータである。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、アクチュエータ(31)に依存する方式で回転する少なくとも1つの回転シャフト(33)を含み、放射能検出器(5)は、上記回転シャフト(33)上を移動する。回転シャフト(33)は、少なくとも1つの第1の固定用部材(35)と少なくとも1つの第2の固定用部材(36)との間に位置決めされる。本発明の好ましい実施形態は、回転シャフト(33)がそれ自体の中心軸を中心に自由に回転することを可能にする少なくとも1つの軸受部材(351)を含む。軸受部材(351)は好ましくは、第1の固定用部材(35)に固定され、回転シャフト(33)の端のうちの一方が、回転シャフト(33)が回転運動を自由に行うことができるようにこの軸受部材(351)内に支持される。上記軸受部材(351)は好ましくは、ベアリングである。回転シャフト(33)の他端は、第2の固定用部材(36)に位置決めされているアクチュエータ(31)に固定される。本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つのカップリング(32)を含み、カップリング(32)は、アクチュエータ(31)と回転シャフト(33)との接続をもたらし、アクチュエータ(31)の回転運動が回転シャフト(33)に伝達されることを可能にする。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの検出器キャリア(4)を含み、検出器キャリア(4)に放射能検出器(5)が位置決めされ、検出器キャリア(4)とともに上記放射能検出器(5)が移動する。この実施形態では、検出器キャリア(4)は、回転シャフト(33)が通ることになっているとともに支持されることになっている少なくとも1つの回転シャフト軸受(41)を有する。本発明の好ましい実施形態では、回転シャフト(33)は、歯付き構造を有する。検出器キャリア(4)に位置付けられた回転シャフト軸受(41)もまた、歯付き構造を有する。回転シャフト(33)および回転シャフト軸受(41)は、回転シャフト軸受(41)ひいては検出器キャリア(4)が回転シャフト(33)の回転運動および回転方向に応じて回転シャフト(33)上を移動することを可能にするために、合致する歯付き構造を有する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの固定シャフト(34)を含み、固定シャフト(34)は、検出器キャリア(4)が回転運動を行うことなく単軸上のみを異なる方向に移動することを可能にする。上記固定シャフト(34)は、第1の固定用部材(35)と第2の固定用部材(36)との間に位置決めされる。本発明のこの実施形態では、検出器キャリア(4)は、固定シャフト(34)が通ることになっているとともに検出器キャリア(4)が固定シャフト(34)上を移動することを可能にする少なくとも1つの固定シャフト軸受(42)を含む。このように、アクチュエータ(31)の回転運動に応じて回転する、歯付き構造を有する回転シャフト(33)は、歯付き構造を有する回転シャフト軸受(41)の内側で回転し、検出器キャリア(4)が固定シャフト軸受(42)によって固定シャフト(34)に固定されているため、検出器キャリア(4)ひいては回転シャフト軸受(41)は、回転することができず、回転シャフト(33)の歯付き構造および回転シャフト軸受(41)の歯付き構造により、検出器キャリア(4)は、回転シャフト(33)の回転方向に応じて種々の方向に、第1の固定用部材(35)または第2の固定用部材(36)に近づく方向に、固定シャフト(34)上を移動する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの検出器コリメータ(51)を有し、少なくとも1つの検出器コリメータ(51)内に放射能検出器(5)が位置決めされる。検出器コリメータ(51)は好ましくは、2ピース構造を有する。この実施形態では、検出器コリメータ(51)は、少なくとも1つの前コリメータ(52)と、少なくとも1つのコリメータカバー(53)とを含む。放射能検出器(5)は、前コリメータ(52)の中へ位置決めされ、コリメータカバー(53)が閉じると固定される。前コリメータ(52)は少なくとも1つのコリメータ開口(54)を有する。前コリメータ(52)は、放射能検出器ケーブル(55)が通ることを可能にするための少なくとも1つのケーブルスペース(56)をさらに有する。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、コリメータカバー(53)は、任意の接続部材(6)を用いることなく前コリメータ(52)に固定される。その結果、前コリメータ(52)およびコリメータカバー(53)は、放射能検出器(5)を交換することが必要とされる場合および/または異なるサイズのコリメータ開口(54)を有する前コリメータ(52)を使用することが必要とされる場合に容易に分離することができる。
【0017】
検出器コリメータ(51)は、検出器キャリア(4)におけるハウジング内に固定され、したがって、検出器キャリア(4)とともに移動することを可能にされる。カラム(2)からのコリメータ開口(54)の距離は、放射能検出器(5)が確実な放射能読み取りを行うことができる重要なパラメータである。カラム(2)を通る物質の放射能が高い場合、放射能検出器(5)は飽和状態になり得る。この状態が起こることを防ぐために、コリメータ開口(54)の直径を減少させる必要があるか、または放射能検出器(5)を移動させてカラム(2)から離す必要がある。この理由から、検出器コリメータ(51)は、検出器キャリア(4)におけるハウジング内の種々の位置に固定され得ることが望まれる。このため、少なくとも1つの、好ましくは1つよりも多くの接続部材(6)が、検出器コリメータ(51)を検出器キャリア(4)に固定するために用いられる。検出器キャリア(4)に、1つよりも多くの接続部材(6)の軸受が存在し、検出器コリメータ(51)が検出器キャリア(4)における所望の位置にもたらされると、適切な接続部材(6)の軸受の中へ位置決めされた接続部材(6)によって固定作用が達成される。好ましい実施形態では、前コリメータ(52)は、少なくとも1つの接続部材(6)によって検出器キャリア(4)に固定され、コリメータカバー(53)は、少なくとも1つの接続部材(6)によって検出器キャリア(4)に固定される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、検出器キャリア(4)は、放射能検出器ケーブル(55)が通ることができる少なくとも1つのケーブルスペース(56)を有する。
【0019】
本発明の範囲内で述べるカラム(2)は、少なくとも1つのカラム本体(21)と、放射性物質がカラム本体(21)に入る少なくとも1つのカラム入口(22)と、放射性物質がカラム本体(21)を出る少なくとも1つのカラム出口(23)とを含む。少なくとも1つのプラグ(24)が、カラム本体(21)のカラム入口(22)の端および/またはカラム出口(23)の端に位置付けられる。上記プラグ(24)は、カラム本体(21)の内部の圧力に耐えることができるように少なくとも1つのカバー(25)により固定される。上記カバー(25)は好ましくは、歯付きカバー(25)である。
【0020】
本発明の好ましい実施形態は、カラム(2)、および/または回転シャフト(33)であって、回転シャフト(33)上を放射能検出器(5)が移動する回転シャフト(33)、および/または固定シャフト(34)が位置決めされる、少なくとも1つの台(1)を含む。上記実施形態では、固定シャフト(34)および回転シャフト(33)は、台(1)に固定されている第2の固定用部材(36)内に位置決めされる。カラム(2)、回転シャフト(33)および固定シャフト(34)は、カラム(2)からの放射能検出器(5)の距離が常に一定のままであるとともに上記放射能検出器(5)がカラム(2)をその全長にわたって走査することができるように位置決めされる。
【0021】
本発明による方法は、以下のプロセスステップ、すなわち
放射性物質を特定のモル濃度の酸とともにカラム入口(22)を介してカラム(2)に充填するステップと、
カラム本体(21)の上部に、より具体的にはカラム入口(22)に放射性物質を収集するステップと、
充填に用いた酸を、カラム出口(23)を介して廃液に導くステップと、
カラム入口(22)に導入された酸のモル濃度を変更し、したがって、分離されることを意図された充填された放射性物質がカラム(2)内で移動することを可能にするステップと、
上記移動の開始後に放射能検出器(5)をカラム本体(21)に沿って移動させるとともに走査プロセスを達成するステップと、
を含む。
【0022】
カラム(2)に通される酸は、カラム(2)の内部に3~11barの範囲内の圧力をつくり出す。
【0023】
カラム本体(21)に沿っての放射能検出器(5)の移動は、上から下方へ、より具体的には、カラム入口(22)の端からカラム出口(23)の端へ向かう。
【0024】
カラム入口(22)に導入される酸のモル濃度を変更し、したがって、分離されることを意図された充填された放射性物質がカラム(2)内で移動することを可能にするステップにおける移動は、カラム入口(22)の端からカラム出口(23)の端へ向かう。
【0025】
カラム本体(21)に沿っての放射能検出器(5)の移動の速度は、アクチュエータ(31)の回転速度に応じて調整される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、走査は、連続的に行われ、換言すると、放射能検出器(5)は、連続的に移動する。別の好ましい実施形態では、放射能検出器(5)は、特定の距離にわたって移動した後、停止および待機し、放射能値が現在位置で読み取られると、放射能検出器(5)は特定の距離にわって再び移動し、別の読み取りプロセスが行われる。
【0027】
行われた走査の結果、放射性物質がカラム(2)内でどの範囲まで分散されているかについての情報と、カラム(2)内での放射性物質の位置とが、放射能-距離グラフ上で見てとることが可能となる。図9に示すグラフのゾーンAおよびBは、カラム(9)内で分離されている放射性物質の分布を示す。ゾーンAからゾーンBへの遷移点が予め分かっているため、遷移ゾーンがカラム(2)の出口に達すると自動制御により次のプロセスステップに進むことが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 台
2 カラム
21 カラム本体
22 カラム入口
23 カラム出口
24 プラグ
25 カバー
31 アクチュエータ
32 カップリング
33 回転シャフト
34 固定シャフト
35 第1の固定用部材
351 軸受部材
36 第2の固定用部材
4 検出器キャリア
41 回転シャフト軸受
42 固定シャフト軸受
5 放射能検出器
51 検出器コリメータ
52 前コリメータ
53 コリメータカバー
54 コリメータ開口
55 検出器ケーブル
56 ケーブルスペース
6 接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】