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特表2024-519308光ファイバのモード帯域幅、色分散、および、スキューを測定するための周波数領域法およびそのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】光ファイバのモード帯域幅、色分散、および、スキューを測定するための周波数領域法およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G01M11/02 K
G01M11/02 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568046
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 US2022026308
(87)【国際公開番号】W WO2022235452
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,004
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/246,448
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シン
(72)【発明者】
【氏名】リー,カンメイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン-ジュン
(57)【要約】
本件の方法は、強度変調された光をモード調整器に通して伝送することで、1つ以上の発射条件でモード調整された強度変調光を生成する工程と、該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)に通して伝送することで、該FUTの複数のモードを励起する工程とを含んでいる。該方法は更に、該モード調整された強度変調光を該FUTにより変換して電気信号にする工程と、該電気信号に基づいて該FUTの複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、該測定された複素伝達関数CTF(f)に基づいて、1つ以上の発射条件と想定入力パルスから、数式
を利用して出力パルスを得る工程とを含んでいる。ここで、
は該出力パルスであり、
は関数
の逆フーリエ変換であり、
は、想定される入力パルスのフーリエ変換である。これに加えて、該方法は、
に基づいて該FUTのモード帯域幅を算定する工程を含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、
該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、該試験対象のマルチモード光ファイバの複数のモードを励起させる工程と
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により伝送された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、
該電気信号に基づいて該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、
該複素伝達関数CTF(f)に基づいて、1つ以上の発射条件と想定される入力パルスとから、次の等式を利用して出力パルスを取得する工程とを含んでおり、
【数1】
ここで、
は出力パルス、
は関数
の逆フーリエ変換、また、
は該想定される入力パルスのフーリエ変換であり、更に、
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)のモード帯域幅を
に基づいて算定する工程を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記複素伝達関数CFT(f)は次の等式を満たすように測定されるが、
【数2】
ここで、max(τ,…,τ)は前記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)を通過する前記強度変調された光の各モードに関連付けられた飛行時間であり、dtは周波数工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周波数工程dfは、次の等式を利用して、周波数スパンΔfおよびサンプリング場所の数(NOP)に関連づけられる、請求項2に記載の方法。
【数3】
【請求項4】
前記出力パルス
は、次の等式を利用して一組の発射条件から得られる複数の出力パルスの線形結合であり、
【数4】
ここで、
は第j番目のモード条件から得られるような時間の関数として測定されたj番目の出力パルスであり、
は第j番目の出力パルスに使用される重みである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モード調整器は動作波長のシングルモード・ファイバであるか、または、これと同等の、複数レンズを用いた光学系であり、前記シングルモード・ファイバは前記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の中心に対して一組の制御されたオフセット位置に配置され、複素伝達関数CTF(f)を測定する前記工程は該一組の制御されたオフセット位置で行われ、前記方法は更に、前記測定された複素伝達関数CTF(f)から出力パルスを取得する工程を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
10種類の実効モード帯域幅EMB重みに基づいて上記出力パルスを収集調整して10個のパルスにする工程と、該10種の重みの各々から該モード帯域幅を算定する工程を更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
次の等式を利用して前記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の前記モード帯域幅を算定する工程を更に含んでおり、
【数5】
ここで、
は伝達関数であり、
は想定される入力パルスのフーリエ変換に対する、該10個の収集調整されたパルスのフーリエ変換の割合である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
次の等式を利用して前記複素伝達関数CTF(f)を修正することで、変換複素伝達関数CTF’(f)を得る工程を更に含んでおり、
【数6】
ここで、CTF’(f)は変換された複素伝達関数、eはオイラー数、iは虚数単位、τはフーリエ・スペクトルの値、fは周波数である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
次の条件を満たし、
【数7】
ここで、fは前記複素伝達関数CTF(f)の測定における最小周波数、Δfは上記複素伝達関数CTF(f)の測定においてfが最大周波数となるような周波数スパン(Δf=f-f)であり、NOPはサンプリング場所の数であり、Iは整数である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
次の等式において、
【数8】
前記複素伝達関数CTF(f)を前記変換された複素伝達関数CTF’(f)で置き換えることで、次式を得る工程を更に含んでいる、
【数9】
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は800nmから1650nmの波長で作動する光ファイバから構成されている、請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが5km以上である、請求項1から請求項10のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は、合衆国法典第35巻第119条(米国特許法)基づき、2021年5月6日出願の米国特許仮出願第63/185,004号および2021年9月21日出願の米国特許仮出願第63/246,448号の優先権の利益を主張するものであり、斯かる出願の内容はその全体を、ここに引例に挙げることにより信頼して本明細書の一部を構成しているものとする。
【技術分野】
【0002】
本件開示は光ファイバに関するものであり、特に、周波数領域法を利用して、マルチモードのマルチコア光ファイバのモード帯域幅、色分散、および、スキューを測定する各種のシステムおよび方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
短波長VCSEL(垂直共振器型面発光レーザ)で使用されるマルチモード光ファイバは、短距離伝送・高データ式のネットワークの主要技術として浮上してきている。このようなネットワークの例としては、オフィスビルやデータセンターなどが挙げられる。シングルモード光ファイバは、マルチモード光ファイバよりもはるかに高いデータ速度と長い伝送長を達成することができる。しかし、シングルモード光ファイバを使用した短距離伝送・高データ式のネットワークは、ファイバをレーザ、スプライス、コネクタと結合する必要があるため、マルチモード光ファイバをVCSELと接続して使用する短距離伝送・高データ式のネットワークよりも高価なネットワークになってしまう。更に、シングルモード光ファイバで達成できる高いデータ速度と長い伝送長は、短距離伝送・高データ式のネットワークには必要ではない。従って、マルチモード光ファイバは、このような短距離伝送・高データ式のネットワークに効果的で低コストの光接続ソリューションを提供している。
【0004】
850nmで動作するマルチモード光ファイバは、現在、短距離伝送・高データ式のネットワークで使用される主要な光媒体である。このような光ファイバは、通常、850nmにおける最小帯域幅要件を課す「OM4」と呼ばれる業界標準の一連の要件を満たしている。しかし、最近の傾向では、マルチモード光ファイバを以前より長波長にしている。最近批准されたOM5業界標準要件では、953nm波長光における最小帯域幅要件を課している。旧来の850nmシステムとの互換性や波長分割多重機能が求められているせいで、OM5光ファイバはOM4の要件も満たす必要がある。そのため、OM5標準は、OM4標準の全要件に加えて、953nm波長光における追加の最小帯域幅要件を含んでいる。
【0005】
光ファイバの製造処理過程では、ファイバごとにばらつきが生じのは不可避であり、ファイバの性能に影響を及ぼすことがある。例えば、OM4光ファイバを製造するように設計された処理過程では、事実上OM4の要件を満たしているファイバが高収率で得られることはあるが、一部のファイバはこの要件を満たさない場合がある。そのため、各ファイバは販売前に、通常は測定され、出荷前にOM4仕様を満たしていることが検証されている。例えば、850nmにおける帯域幅測定により、ファイバがOM4要件を満たしていなくてもOM3要件は満たしていると判断される場合がある。850nmにおける帯域幅が測定されたことによりファイバがOM4要件を満たしていると検証された場合、その次の、953nmにおける帯域幅測定を実施することで、このファイバがOM5要件も満たしているか否かを判断することができる。
【0006】
850nmにおける実効モード帯域幅が4700MHz・kmであるマルチモード光ファイバは、検証によりOM4標準要件を満たすことが確認されている。これらのファイバは、850nmにおける実効モード帯域幅が同じでなければならず、953nmにおける実効モード帯域幅が2470MHz・kmとなることで、OM5標準要件を満たしていることが検証される必要もある。また、OM1、OM2、OM3などのような、上記以外のタイプの業界標準要件があり、実効モード帯域幅要件が互いに異なっていることにも留意するべきである。実効モード帯域幅は、850nmレーザまたは953nmレーザを使用してファイバ上での差動モード遅延測定すなわち「DMD」測定と呼ばれる業界標準測定を実施することによって決められる。
【0007】
更にまた、光ファイバのスキューが、各標準要件におけるファイバ性能に影響を及ぼす可能性がある。スキューとは、マルチコア光ファイバの多様なコアにおけるような、同期並列データ・チャネルにおけるファイバ・チャネル相互間の信号伝搬時間の差である。スキューが大きすぎると、データセンターで活用している際の複数の演算処理装置間の並列データ伝送などのような、コア相互間の光信号の時間遅延を最小限に抑える必要がある通信システムでマルチコア光ファイバを使用できなくなる恐れがある。これに加えて、過度のスキューは光信号の伝送エラーの原因となることがある
スキューに関連するのは色分散であり、これはファイバ性能におけるもう1つの重要な要素である。色分散とは、光信号がファイバに沿って移動する際の光信号の広がりのことである。色分散の影響は距離とともに蓄積され、ファイバを介して信号を伝送することができる距離を制約する恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件開示の各実施形態は周波数領域法を利用することで、マルチモード光ファイバのモード帯域幅を測定する。これに加えて、本件開示の各実施形態は周波数領域法を利用することで、マルチコア光ファイバのスキューおよび色分散も測定する。
【0009】
マルチモード光ファイバのモード帯域幅を測定する目的で広く利用されているDMD測定では、DMDベンチ台上機材を使用して、ファイバ・コア全体の多様な半径方向のオフセット部位に亘る時間領域で、ファイバの差動モード遅延を測定するが、各ファイバのモード帯域幅は、いくつかの想定レーザ発射条件を利用して算定される。このような測定は、高出力パルスレーザの使用に依存している。ただし、例えば、OM4標準のファイバを測定してから次にOM5標準のファイバを測定する場合、多様な波長相互間で切替えを行うことは、DMDベンチ台上機材では簡単ではない。更にまた、顧客によっては、特異的に調整されたモード帯域幅を有する特注誂えのファイバを必要とする場合もある。DMD測定を利用してこのように特注誂えのモード帯域幅を測定することは面倒な場合があり、場合によっては実行不可能である。例えば、DMDベンチ台上機材の高出力パルスレーザは1000nm未満に制限されているため、例えば1060nmなどのような波長を測定することはできない。
【0010】
本件開示の各種の方法およびシステムは、モード帯域幅を測定する目的で周波数領域法を利用する。本件開示の各種の方法およびシステムは、多様な波長測定の相互間で容易に切替えを行うことができ、従来のDMD測定法よりも高い柔軟性を提供する。
【0011】
本件開示の周波数領域帯域幅測定法を利用して、条件達成のためのシステムがすでに構築されているレーザ発射条件または一連のレーザ発射条件から複素伝達関数を測定する。例えば、従来のDMD法と同様に、本件開示の各実施形態では、光はシングルモード・ファイバ(または、これと同等の仕組み)から発射される。更にまた、本件開示の各実施形態では、従来から使用されているDMDベンチ台上機材と同様に、一連の制御されたオフセットから複素伝達関数を測定する。それゆえに、本件開示の各実施形態は従来のDMD測定法と同じ最終結果を達成するが、周波数領域法を利用する。本件開示の各実施形態は、従来のDMDベンチで使用されているようなパルスレーザを使用せず、代わりに連続波レーザおよび強度変調器を使用する。有利なことに、周波数領域法は信号に対する感度が高いため、より長いファイバ長さに亘って果たされるが高出力レーザを必要とせずに、低いレーザ出力を使用して測定を行うことができる。
【0012】
本件開示は、マルチモード光ファイバのモード帯域幅を測定するシステムおよびそれに関連する方法を目的としている。
【0013】
更にまた、本件開示の方法およびシステムは周波数領域を使用することで、群遅延(飛行時間または伝搬時間とも呼ばれる)、各モードの色分散、および、マルチコア光ファイバのスキューを測定する。スキューと色分散とは、従来は、各コアの入力端で1つの光パルスを発射し、また、各コアの出力端でパルスを観測することにより、時間領域で測定されていた。しかし、このような従来の測定は時間がかかるうえに、大量の光出力を必要とする。以下に開示する周波数領域法をマルチコア・ファイバに適用することで、これらのファイバのスキューおよび色分散を判定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本件開示の各態様は、強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、該試験対象のマルチモード光ファイバの複数のモードを励起させる工程とを含んでいる方法を目的としている。この方法は更に、該試験対象のマルチモード光ファイバにより伝送された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、該電気信号に基づいて該試験対象のマルチモード光ファイバの複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、該試験対象のマルチモード光ファイバの複素伝達関数CTF(f)に基づいて、等式
【0015】
を利用して複数の発射条件と想定される入力パルスとから出力パルスを取得する工程とを含んでいる。ここで、
【0016】
は出力パルス、
【0017】
は関数
【0018】
の逆フーリエ変換、また、
【0019】
は該想定される入力パルスのフーリエ変換である。これに加えて、本件の方法は、
【0020】
に基づいて試験対象のマルチモード光ファイバのモード帯域幅を算定する工程を含んでいる。
【0021】
本件開示の各態様はまた、強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチコア光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、該試験対象のマルチコア光ファイバの複数のモードを励起させる工程とを含んでいる方法も目的としている。この方法は更に、該試験対象のマルチコア光ファイバにより送信された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、該電気信号に基づいて該試験対象のマルチコア光ファイバの複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、該複素伝達関数を利用して、該試験対象のマルチコア光ファイバのスキューと色分散のうちの少なくとも一方を算定する工程とを含んでいる。
【0022】
本件開示の各態様は、強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、該モード調整された強度変調光を試験対象の光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、複数のモードの該試験対象の光ファイバを励起させる工程とを含んでいる方法を目的としている。この方法は更に、該試験対象の光ファイバにより伝送された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、該電気信号に基づいて該試験対象の光ファイバの複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、該試験対象の光ファイバの複素伝達関数CTF(f)に基づいて、等式
【0023】
を利用して複数の発射条件と想定される入力パルスとから出力パルスを取得する工程とを含んでいるが、該等式では、
【0024】
は出力パルス、
【0025】
は関数
【0026】
の逆フーリエ変換、また、
【0027】
は該想定される入力パルスのフーリエ変換である。
【0028】
上記以外の特徴および利点は、以下の詳細な説明に明示されており、その一部は当業者には説明から明らかとなるであろうし、或いは、文章説明とその特許請求の範囲は元より添付の図面にも記載されている各実施形態を実施することにより認識されるであろう。前述の一般的な説明と以下の詳細な説明は両方とも単なる具体例であり、特許請求の範囲の本質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図しているものと理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
添付の各図面は、本明細書に組入れられており、明細書の一部を形成しているとともに、本件開示の実施形態を例示している。説明と併せることで、各図面は更に、本件開示の各実施形態の原理を説明するのに役立ち、関連技術の当業者がそれら実施形態を実施して使用することができるようにするのに役立つ。これらの図面は例示を意図したものであり、限定するものではない。本件開示は概ねこれらの実施形態の文脈で説明されているが、本件開示の範囲をこれらの特定の実施形態に限定することを意図するものではないものと理解するべきである。図面において、同一参照番号は、同一の要素または機能的に類似している要素を示している。
図1】本件開示の実施形態による、マルチモード光ファイバについて10種の重みとそれぞれに対応する発射オフセットの関係のグラフ。
図2】本件開示の実施形態による、モード帯域幅を測定する具体的なシステムを例示した図。
図3】本件開示の実施形態による、マルチモード光ファイバへの入力に基づいた具体的なモード例を例示した図。
図4】本件開示の実施形態による、モード帯域幅を測定する具体的な方法を例示した図。
図5A】本件開示の実施形態による、或る範囲のオフセットについて測定された複素伝達関数の大きさのグラフ。
図5B】本件開示の実施形態による、図5Aの測定された複素伝達関数に基づく差動モード遅延(DMD)測定のグラフ。
図5C】本件開示の実施形態による、図5BのDMD測定に基づき収集整理された10個の出力パルスのグラフ。
図5D】本件開示の実施形態による、図5Cの収集整理された10個の出力パルスに基づく伝達関数のグラフ。
図6A】1km長さのマルチモード光ファイバに850nm波長光で実施したDMD測定の比較を示した図。
図6B】1km長さのマルチモード光ファイバに850nm波長光で実施したDMD測定の比較を示した図。
図7A】5.634km長さのマルチモード光ファイバに1000nm波長光で実施したDMD測定の比較を示した図。
図7B】5.634km長さのマルチモード光ファイバに1000nm波長光で実施したDMD測定の比較を示した図。
図8A】5.634km長さのマルチモード光ファイバに1060nm波長光で実施したDMD測定を示した図。
図8B】17.1km長さのマルチモード光ファイバに850nm波長光で実施したDMD測定を示した図。
図9A】本件開示の実施形態による、具体的なマルチコア光ファイバの縦断面を例示した図。
図9B図9Aの光ファイバについて、出力パルスと時間に対する関係を示したグラフ。
図10A】本件開示の実施形態による、マルチコア光ファイバを介して伝搬してゆく具体例のパルスを例示した図。
図10B】本件開示の実施形態による、図10Aの伝搬パルスの伝達関数と周波数に対する関係を示したグラフ。
図11A】本件開示の実施形態による、具体例のマルチコア光ファイバの縦断面図。
図11B】本件開示の実施形態による、図11Aの光ファイバについて、伝達関数と周波数に対する関係を示したグラフ。
図11C】本件開示の実施形態による、図11Aの光ファイバについて、出力パルスと時間に対する関係を示したグラフ。
図12A】本件開示の実施形態による、光ファイバについて、出力パルスと時間に対する関係を示したグラフ。
図12B】本件開示の実施形態による、図12Aの光ファイバについて、飛行時間と波長に対する関係を示したグラフ。
図12C】本件開示の実施形態による、図12Aの光ファイバについて、色分散と波長に対する関係を示したグラフ。
図13】本件開示の実施形態による、具体的なコンピュータ・システムを例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで本件開示の各実施形態を、添付図面に例示されている同実施形態を参照しながら詳細に説明してゆくが、同一要素または機能的に類似している要素を示すのに同一参照番号を使用している。「一実施形態」、「或る種の実施形態」、「或る幾つかの実施形態」、「或る実施形態では」などへの言及は、説明されている実施形態が或る種の機能、構造、または、特徴を含んでいる場合があっても、全ての実施形態が必ずしもこの種の機能、構造、または、特徴を含んでいるとは限らないことを示している。更に、或る種の機能、構造、または、特徴が或る実施形態に関連して説明されている場合、それ以外の各実施形態との関連ではそのような機能、構造、または、特徴に影響して変わることは、そうと分かるように明言されているといないに関わらず、当業者の知識の範囲内であると考えられる。
【0031】
以下の各具体例は本件開示を例示するものではあっても、限定するものではない。当該技術分野で通常直面する多様な条件およびパラメータの、当業者にならば自明であるかもしれない別途の適切な修正および適用も、本件開示の真髄および範囲に入る。
【0032】
或る範囲の数値が最大値や最小値などと共に本明細書に記載されている場合、特殊な状況において別段の言明がない限り、当該範囲には、その端点と、当該範囲内の全ての整数および分数が含まれているものと解釈するべきである。特許請求の範囲は、範囲を定義している場合、列挙されたそれら特定の値に限定されるべしと解釈するべきではない。更に、量、濃度、または、それ以外の値またはパラメータが或る範囲、1つ以上の好ましい範囲、または、好ましい最高値と好ましい最低値の列挙として与えられている場合は、任意の最高範囲限度と任意の最低範囲限度とのどの1対から成るのであれ、または、好ましい最高値と好ましい最低値とのどの1対から成るのであれ、その全範囲を具体的に開示しており、それは、そのような対が別々に開示されているか否かとは無関係であると理解するべきである。最後に、或る範囲の値または端点を記載する際に「約・およそ・概ね(abоut)」という用語が使用されている場合、本件開示は言及されている特定の値または特定の端点を含むものと理解するべきである。或る範囲の数値または端点が「約」を言及していない場合、或る範囲の数値または端点は、2つの実施形態を含むものと解釈するべきである。すなわち、一方は「約」によって修飾されている実施形態、もう一方は「約」によって修飾されていなない実施形態である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、および、それ以外の量および特徴が厳密ではない、また、厳密である必要もないが、公差、換算率、丸め誤差、測定誤差、これら以外の当業者に周知の要因を反映して、所望に応じて近似値である場合もあれば、それより大きいかまたは小さくてもかまわないことを意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、「~を含む・~を備えている・~から構成される(cоmprise)」は、制限のないその場限りの句である。このその場限りの句「~を含む」等の前に列挙された要素は排他的ではない要素一覧であり、一覧に具体的に挙がっている要素に加えてもよい要素が存在することもある。
【0035】
本明細書で使用するような場合の「または・~か(оr)」という用語は包括的である。もっと詳しく言うと、「AまたはB・AかB」という語句は、「A、B、または、AとBの両方」を意味する。本明細書において排他的な「または・~か(оr)」とは、例えば、「AまたはBのいずれか」、「AかBの一方」などの用語であると指定される。
【0036】
要素またはコンポーネントを説明するための不定冠詞「或る・或る1つの・或る種の(a)」および「或る・或る1つの・或る種の(an)」は、1つまたは少なくとも1つのこれらの要素またはコンポーネントが存在していることを意味する。これらの冠詞は通常、修飾されている名詞が単数名詞であることを示すために使用されるが、本明細書で使用されるような場合、冠詞「或る・或る1つの・或る種の(a)」および「或る・或る1つの・或る種の(an)」は、特殊な実例において別段の言明がない限り、複数形も含む。同様に、本明細書で使用されるような定冠詞「その・該(the)」も、特殊な実例において別段の言明がない限り、修飾されている名詞が単数か複数であることを意味する。
【0037】
「その場合・その際・ここでは(wherein)」という用語は、構造の一連の特徴の説明を導入するための、制限のないその場限りの句として使用される。
デカルト座標は、参照するためや図説を容易にするために一部の図面で使用されており、方向または配向に関して限定するものと解釈するべきではない。光ファイバの軸線方向をz方向とする。
【0038】
頭字語VCSELは「verticalcavitysurfaceemittinglaser(垂直共振器型面発光レーザ)」の頭字語である。
【0039】
本明細書で使用されるような「ファイバ」という用語は、光ファイバの略語である。
【0040】
座標rは動径座標であり、その場合、r=0がファイバの中心線に対応している。
【0041】
記号「μm」は「micrоn(マイクロン)」の短縮形として使われるが、1マイクロメートル、すなわち、1×10-6メートルである。
【0042】
記号「nm」は「nanоmeter(ナノメートル)」の短縮形として使われるが、1×10-9メートルである。
【0043】
本明細書で引用される何らかの範囲の両極限値は包括的であり、従って、特に指定がない限り、その範囲内に当然ある。
【0044】
「~を含んだ・~を備えた・~から構成された(cоmprising)」および「~を含む・~を備えている・~から構成される(cоmprise)」という用語は、例えば「AはBを含む」は、「AはBから成る(AcоnsistsоfB)」における「~からなる(cоnsisting)」の概念の特殊な一事例として含むものと解釈するべきである。
【0045】
材料についての群指数(または群屈折率)nという用語は、等式(1)を利用して、媒質中の光の真空速度cの群速度vに対する比率と定義される
【0046】
【数1】
【0047】
ここで、kは媒質中の波数(2π×n/波長)であり、ωは角周波数、nは屈折率である。群屈折率を算定するには、対象の波長での屈折率だけではなく、その周波数依存性も知っている必要がある。群屈折率は、媒質中を伝搬するパルスの時間遅延(τ)を算定するために使用されるが、この場合、
【0048】
であり、Lは媒質の長さである。
【0049】
「群遅延」という用語は、光信号がファイバの入力端から出力端まで通過する時間である。群遅延は飛行時間または伝搬時間としても周知であり、通例はナノ秒単位で測定される。
【0050】
「スキュー」という用語は、マルチコア光ファイバの2つ以上のコア内を伝搬する、同時に発射された信号間の群遅延の差と定義される。スキューは、コア間スキュー(ICS)とも呼ばれる。
【0051】
「帯域幅」という用語はBWで表され、この用語が本明細書で使用される場合は、マルチモード光ファイバのモード帯域幅のことである。本件開示の目的上、モード帯域幅は実効モード帯域幅でもあり、EMBとも表される。モード帯域幅は、MHz×kmまたはGHz×kmで測定される光ファイバの容量のことである。実施形態によっては、モード帯域幅は伝達関数から得ることができ、それは、ファイバのよる伝送が、変調周波数が0Hzに等しい時の伝送から6dB(20×log10(x)と定義される)だけ、または、10×log10(x)と定義される3dBだけ低下するときの変調周波数である場合もある。モード帯域幅は、ファイバの差動モード遅延(DMD)に関連しており、それによって示されることにも留意するべきである。実際には、規格で定義されているようなEMBはDMD測定により、EMBを求めるための各種計算を利用して計測される。マルチモードの光がマルチモード光ファイバを通って伝わる場合、低次モードはファイバの中心コア付近を進み、高次モードはコアの外側端に近いほうを進む。当該技術分野で周知のように、低次モードと高次モードはファイバ内を異なる速度で移動することができるが、DMDは多様なモード相互間の進行時間の差である。DMDが小さいほど、ファイバから分散する光が少なくなり、モード帯域幅が高くなる。マルチモード光ファイバのEMBを測定して算定するにあたり、次の規格を利用することができる。すなわち、光ファイバ検査手順FOTP‐220(米国電気通信工業会規格TIA‐455‐220‐A)、「マルチモード光ファイバの時間領域における差動モード遅延測定(DifferentialModeDelayMeasurementofMultimodeFiberintheTimeDomain)」2003年1月刊、および、国際電気標準会議IEC60793‐1‐413.0版光ファイバパート1-41測定方法とテスト手順―帯域幅。
【0052】
色分散とは、ファイバの材料分散、導波路分散、および、モード間分散の和のことである。シングルモード導波路ファイバの場合、モード間分散はゼロである。ゼロ分散波長(λ)とは、分散の値がゼロになる波長のことである。色分散勾配とは、波長に対する分散の変化率のことである。本明細書では、色分散と分散勾配は、それぞれps/(nm・km)とps/(nm・km)の単位で表される。
【0053】
先の2つの規格で説明したように、マルチモード光ファイバの場合、EMBは10種のEMB重み、または、出力により半径方向に重み付けされた10種の想定発射条件を使用して算定される。図1は、10種のEMB重みとそれぞれの対応する発射オフセットの関係のグラフを示している。
【0054】
従来、DMD測定は時間領域で行われ、マルチモード光ファイバの入力端で一連のオフセットrに亘って、例えば、1μm、2μm、…、27μmのオフセットや1μm、3μm、5μm、7μm、…、27μmのオフセットに亘って、入力パルスを発射する工程を含んでいる。次に、この一連のオフセットの出力パルスが等式(2)を使って測定される。一連のオフセットに亘って測定された出力パルスは、図1に示した10種のEMB重み
【0055】
に基づいて10個のパルスに収集整理されるが、
【0056】
【数2】
【0057】
ここでは、
【0058】
は各重みと関連付けられた、時間(t)の関数としての出力パルスである。次に、収集整理された10個のパルスの伝達関数を、10個の重み付けパルスのフーリエ変換と入力パルスのフーリエ変換の割合に基づいて算定する。この時点で、収集整理されたパルスのモード帯域幅を判定して、10種の重みに対応する10個の値のEMBと呼ぶことにする。10個のEMB値の最小値をminEMBと呼ぶ。EMB=1.13×minEMBと定義する。
【0059】
本件開示の各実施形態は、マルチモード・ファイバなどのような光ファイバの実効モード帯域幅(EMB)を判定する目的で、多様な発射条件から伝達関数を測定するシステム、特に、複素伝達関数を測定するシステムを含んでいる。本件開示の各実施形態はまた、マルチコア・ファイバなどのような光ファイバの色分散およびスキューを判定する目的で、多様な発射条件から伝達関数を測定するシステム、特に、複素伝達関数を測定するシステムを含んでいる。本件開示の目的上、伝達関数という用語は複素伝達関数の大きさのことでありであり、複素伝達関数という用語にはそれ以外の位相情報が含まれている。本明細書に開示されているマルチモード・ファイバは50μmのコア直径であるとよいが、62.5μmのコア直径であってもよく、或いは、これら以外の、例えば、30μm、70μn、80μm、100μmなどのような従来にはない直径を有していてもかまわない。マルチコア・ファイバはシングルモードの多数コアを有していてもよいが、例えば、2コア、4コア、8コアが、または、これより多数のコアでも、当該技術分野で周知であるような多様な幾何学的構成に配置されていてもかまわない。
【0060】
マルチモード・ファイバには多数のモード群があり、モード群ごとに多数のモードが存在する。850nm波長光における従来の50μm直径コアのマルチモード・ファイバ(OM2、OM3、または、OM4のような)については、一般に19種のモード群があり、そのようなファイバは90種を超える非縮退モードをサポートしている。本明細書に開示されている各システムは、周波数領域法を利用して、測定時波長または動作時波長でマルチモード・ファイバなどの光ファイバの伝達関数を測定する。
【0061】
図2は、或るいくつかの実施形態による、所与の発射条件における光ファイバの伝達関数および複素伝達関数を測定するシステムを例示している。例えば、システム100は、光源105、強度変調器110、電源115、ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120、モード調整器125、試験対象の光ファイバ(FUT)130、光受信器135(例えば、光検出器)、電算装置140などから構成されている。実施形態によっては、VNA120が、各周波数が周波数範囲に亘って掃引する無線周波数(RF)信号を生成することで強度変調器110を駆動し、光源105からの光を、FUT130に発射するのに適した強度変調された光信号に変換することができるようにしたものもある。光信号は更に、FUT130への発射前に、モード調整器125を通過するようにしてもよい。光信号は伝搬してFUT130を通過した後、光受信器により受信され、該光受信器が光信号を変換して電気信号に戻す。変換後の電気信号をVNA120によって解析することができる。例えば、VNA120は、光信号が周波数掃引の各周波数に亘ってどのように変化すなわち減衰したかを検出し、その結果、伝達関数を得る、すなわち、測定することができる。
【0062】
試験対象の光ファイバ(FUT)130としては、800nmと1650nmの間の波長、または、840nmと1100nmの間の波長で動作する光ファイバが挙げられる。実施形態によっては、FUT130が1260nmと1360nmの間の波長(例えば、約1310nm)、または、1400nmと1600nmの間の波長(例えば、約1550nm)で動作することができるものもある。これに加えて、FUT130は、ステップ型ファイバであってもよいし、屈折率分布型ファイバであってもよい。先に述べたように、FUT130はマルチモード光ファイバまたはマルチコア光ファイバであってもよい。
【0063】
実施形態によっては、光源105が、スーパールミネセントダイオード、選定された波長で光を発するよう構成されたレーザ源、波長可変レーザ、固定波長の分布帰還形(DFB)レーザなどのようなレーザであるものもある。例えば、光源105は、狭い線幅の(例えば、約0.05nm以下の)光源であってもよい。光源105は、強度変調器110によって変調される偏光を供与するよう構成されているとよい。これ以外の実施形態では、光源105は直接変調される垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)であって、強度変調器110がVCSEL105に内蔵されていることで強度変調された光を生成するようにしたものであってもよい。
【0064】
実施形態によっては、電算装置140(測定システム)がベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120および光源105に電気的に接続されていることで、光源105の動作を制御することができるようにしたものもある。実施形態によっては、電算装置140およびVNA120は、例えば図9に示されている具体例の電算装置のような電算装置であってもよい。
【0065】
実施形態によっては、強度変調器110が少なくとも2つのポートを備えていることで、一方のポートがDCバイアス制御電圧を受信し、他方のポートが周波数制御信号を受信するようにすることができるようにしたものもある。例えば、DCバイアス制御電圧を設定する電源115は第1の電気ポートに電気的に接続され、ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120は第2の電気ポートに電気的に接続されているとよい。強度変調器110により供与される変調周波数は、VNA120によって制御することができる。例えば、VNA120は周波数制御信号を強度変調器110に供与することで、周波数範囲に亘って変調周波数を掃引することができる。実施形態によっては、周波数範囲が10MHzと40GHzの間であるものもあれば、10MHzと30GHzの間、100MHzと20GHzの間、または、100MHzと15GHzの間であるものもある。周波数範囲は、ファイバの長さと測定されるモード帯域幅に応じて設定されるとよい。例えば、光ファイバが長ければ長いほど、高いほうの周波数部分が低くなければならない。また、測定する必要があるモード帯域幅が大きいほど、高いほうの周波数部分が高くなければならない。このように、VNA120からの周波数制御信号を使用して強度変調器110を制御することで、強度変調器110が光源105からの光を強度変調光に変換し、試験対象の光ファイバ(FUT)130への発射に適した強度変調光信号として使えるようにすることができる。実施形態によっては、強度変調器110はニオブ酸リチウムがベースの変調器であるとよい場合もある。
【0066】
実施形態によっては、強度変調器110からの強度変調光がモード調整器125に供与されるものもある。モード調整器125は、光の発射条件を変更するよう構成されているとよい。実施形態によっては、モード調整器125が市販の装置であってもよい場合がある。具体的な市場向けモード調整器125は、試験対象の光ファイバ(FUT)130を半径方向に横切るガウス光強度プロファイルを生成することができる。この種のマルチモードのモード調整器125により生じる発射条件は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)により生じる発射条件と同じである可能性がある。それ以外の各実施形態では、モード調整器125は、多様な種類のレーザおよび光学系に適した選定発射条件をもたらすよう設計された、特注誂えの装置であるとよい。例えば、モード調整器125はオフセットがベースのモード調整器であって、本質的に任意の発射条件をもたらすよう構成されていることで、光源とファイバとの間で起こり得る発射条件を再現することできるようになっているとよい。これ以外の各実施形態では、モード調整器125はレーザ動作波長のシングルモード・ファイバであってもよいし、または、シングルモード・ファイバにより生成されるようなシングルモード・スポットがあるのと同等の効果をもたらすシングルモード・光学系(レンズ群のような)であってもかまわない。例えば850nm波長光での測定の場合、シングルモード・ファイバのモード・フィールド直径は約5μmである。このようなシングルモード・ファイバの発射をDMD測定に利用して、シングルモード・ファイバをFUTの中心に対して一組の制御されたオフセット位置に配置する。測定は、一組の制御されたオフセット位置で行われる。50μmコア直径の従来のマルチモード・ファイバの場合、このオフセット群は1μm、3μm、5μm、…、27μm、または、1μm、2μm、3μm、4μm、…、27μmの値を全部含む。
【0067】
実施形態によっては、変調光が、モード調整された強度変調光としてモード調整器125を出るものもある。モード調整された強度変調光の線幅は約0.1nm未満の場合もあれば、約0.075nm未満の場合もあり、0.05nm未満、0.025nm未満、0.01nm未満、0.005nm未満、または、0.001nm未満の場合もあり、線幅が光の光学スペクトルの幅(半値全幅すなわちFWHM)となっている。
【0068】
実施形態によっては、モード調整器125が試験対象の光ファイバFUT130に光学的に接続されていることで、モード調整された強度変調光が導波としての第1端を通ってFUT130に入り、第2端でFUT130から出るようにすることができるものもある。FUT130は長さが、例えば、約20km以下である場合があり、約15km以下である場合もあり、約10km以下、約5km以下、約2km以下、または、約1km以下であることもある。これに加えて、または、その代わりに、FUT130は長さが、例えば、約1km以上ある場合があり、約2km以上ある場合もあり、約5km以上、約10km以上、約15km以上、約17km以上、約20km以上、または、約24km以上あることもある。実施形態によっては、FUT130の長さが約2kmないし約20kmの範囲にあるものもあり、約4kmないし約18km、約6kmないし約16km、または、約8kmないし約14kmの範囲内である場合もある。或るいくつかの具体的な長さとしては、2.2km、4.4km、8.8km、17.6kmなどが挙げられる。
【0069】
実施形態によっては、試験対象の光ファイバ(FUT)130からの出力光が光受信器により検出されるものもあり、該光受信器は出力光信号を例えば電気信号に変換することができる。実施形態によっては、光受信器が、例えば、光検出器135であるとよい場合もある。実施形態によっては、電気信号を光検出器135内で、または、外部増幅器(図示せず)により線形増幅することができるものもある。次いで、この電気信号を垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)120に供与し、ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120により分析するとよい。例えば、実施形態によっては、VNA120がFUT130の複数対のモードに基づいて、FUT130の伝達関数を算定することができるものもある。
【0070】
図3は、時間領域の概念を利用したファイバ内の光の伝搬を例示している。この図により、時間領域の概念が本件開示の各実施形態で使用されている周波数領域の概念にどのように結び付けられているかを説明してゆく。マルチモード・ファイバは各々が多種のモードを導くことができ、励起されてモード群nの個々のモードなった光はτの時間遅延でファイバを通過する。更にまた、マルチコア・ファイバは各々が多種のモードを導くことができ、コアごとに別個のモードを導くようになっている。励起されてコア群nの個々のコアに入った光も、τの時間遅延でマルチコア・ファイバを通過する。励起されて各モードなり、各コアに入った光の量は、係数aで表すことができる。
【0071】
図3に描かれている図説の具体例では、n種類のモードが単一入力パルスとして光ファイバ内に同時に発射される。各モードの光は、互いに異なる伝搬定数で試験対象の光ファイバ(FUT)130を通って伝搬する。モード間の遅延が発生し、各モードの出力パルスが互いに異なる時間に検出されるが、τ、τ、および、τは飛行時間、または、発射時間に対するFUT130の出力端でのモード検出時間(モードごとのモード遅延時間とも呼ばれる)である。飛行時間の差は、光ファイバのスキューと呼ばれる。飛行時間はピコ秒(ps)単位で、または、ナノ秒(ns)単位で測定される(或いは、単位長に正規化される場合は、ピコ秒/毎メートル(ps/m)単位で、または、ナノ秒/毎キロメートル(ns/km)単位で測定される)。
【0072】
本明細書に開示されている具体例の各方法は、複素伝達関数(CTF)の測定に基づいている。それゆえ、複素伝達関数が最初に導出される。伝達関数の概念は周波数領域の処理に特化しているが、時間領域の表現を利用して導き出されている。本件開示全体を通して、入力信号は時間領域において
【0073】
で表され、周波数領域においては
【0074】
で表されるが、
【0075】

【0076】
のフーリエ変換であり、また、試験対象の光ファイバ(FUT)130の出力信号は、時間領域と周波数領域においてそれぞれ
【0077】

【0078】
によって表される。図3は、マルチモード・ファイバをFUT130として使用して測定された複素伝達関数の一例を概略的に示している。1個の入力パルスが発射してn種類のモードを持つマルチモード・ファイバに入れた場合、出力はn種類のモードの互いに異なる伝搬定数から生じるn個のパルスから成る。各モードの連続するモード遅延の詳細は、屈折率プロファイルで決まり、波長の一周期中に変動する可能性がある。入力パルスが時間領域では
【0079】
と表され、周波数領域では
【0080】
で表されると仮定すると、これは基本的に
【0081】
のフーリエ変換であり、時間領域での出力パルスは次式(3)を使用して算定される。
【0082】
【数3】
【0083】
ここで、τはFUT130の長さに亘るn番目のモードの飛行時間であり、aは励起されて各モードになった光の量である。
【0084】
それゆえに、周波数領域の出力パルスは等式(4)を利用して算定できる。
【0085】
【数4】
【0086】
次に、複素伝達関数CTFが等式(5)を利用して得られる。
【0087】
【数5】
【0088】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)120は、周波数領域計測器として機能するせいで、入力光パルスと出力光パルスを測定せずに伝達関数を、特に、複素伝達関数CTF(f)を測定する。完全な動作原理は、ジョエル・ピー・ダンスモア(JоelP.Dunsmore)著の「進んだベクトル・ネットワーク解析装置技術を利用したマイクロ波成分測定ハンドブック(HandbookofMicrowaveComponentMeeasurementswithAdvancedVNATechniques)」2012年ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(JohnWiley&Sons,Ltd.)刊の書籍中にて解説されており、その全体はここに引例に挙げることにより本明細書の一部を構成しているものとする。図2の設定を使って、ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120は、所与の発射条件に対するマルチモード・ファイバの伝達関数または複素伝達関数を測定する。
【0089】
この時点で、複素伝達関数CTF(f)が得られるが、周波数領域の情報に限定されている。時間領域の情報を取得するには、逆フーリエ変換が必要となる。しかし、CTF(f)からの周波数領域情報は、有限数のサンプリング場所を利用して取得した。それゆえに、周波数領域から時間領域に切り替えるときは、以下で更に説明するように、時間領域情報に(周波数領域情報のサンプリング場所の数が限られていることが原因の)偽信号や曖昧性がないことを保証するために等式(6)を満たしていなければならない。
【0090】
ナイキスト定理によれば、時間領域情報の偽信号や曖昧性を防ぐために、周波数工程dfは等式(6)の条件を満たしていなければならないが、ここでは、周波数工程dfとは、全周波数範囲に亘って時間領域で掃引する際の周波数増分のことである。
【0091】
【数6】
【0092】
ここで、(τ,…,τ)は各モードに関連付けられた飛行時間である。先に述べたように、飛行時間とは、特定のモードまたは特定のコアについて、信号がファイバに入った時間からファイバを出た時間までのことである。飛行時間は群遅延とも呼ばれる。等式(7)に示すように、周波数工程dfは、ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120が測定を行う周波数範囲である周波数スパンΔfと、周波数領域におけるサンプリング場所の数(NOP)とに基づいて決定される。
【0093】
【数7】
【0094】
一例として、長さが200mで群屈折率が約1.45のマルチモード・ファイバの場合、ファイバ内の飛行時間(信号がファイバに入ってからファイバを出るまでの時間)は約967nsである。それゆえに、10MHzないし8GHzの周波数スパンに亘って、時間領域情報にどんな偽信号を招くこともないようにするには、約15,473点のサンプリング場所数NOPが必要である。群屈折率が高くなるほど、ファイバを通過する各モード光の時間遅延が長くなり、従って、ファイバを通過する飛行時間が長くなることに留意するべきである。更にまた、ファイバを通過する飛行時間が長ければ長いほど、どのような偽信号も招くことがないようにするのにより多くのサンプリング場所数NOPが必要になる。
【0095】
先に述べたように、周波数領域情報から時間領域情報を取得するには、逆フーリエ変換が必要となる。逆フーリエ変換は、次のような、ベクトル
【0096】
からもう1つ別のベクトル
【0097】
に変換することで
【0098】
となるようにするとともに、これに呼応して、YからXへ変換して
【0099】
となるようにする逆フーリエ変換の各定義に基づいており、以下のように定義される。
【0100】
【数8】
【0101】
【数9】
【0102】
ここで、Nはベクトルの長さである。
【0103】
離散逆フーリエ変換を取得することにより、時間領域情報を、とりわけ、タイム工程dtだけ互いから分離された離散データ場所を含む時間領域情報を取得することができる。時間工程dtは、次の等式(10)により周波数スパンΔfに関係づけられる。
【0104】
【数10】
【0105】
所与の発射条件の出力パルスが、ここで、複素伝達関数CTF(f)に基づいて決定される。より詳細に述べると、等式(11)に示すように、複素伝達関数CTF(f)を入力パルスのフーリエ変換で乗算した積に逆フーリエ変換を実施することで、ファイバの出力パルスを得る。
【0106】
【数11】
【0107】
一具体例では、200m長さのマルチモード・ファイバに8GHzの周波数スパンΔfの場合、時間工程dtは125psであり、これでは時間領域情報を判定するには分解能が低すぎる。代わりに、1ピコ秒未満程度の解像度が必要である。時間領域の分解能を高めるために、複素伝達関数CTF(f)の周波数端をゼロで「埋める」ことで、複素伝達関数CTF(f)の周波数スパンΔfが増加させる。例えば、等式(10)に関して先に述べたように、周波数スパンを10倍だけ、100倍だけ、または、1000倍だけ増やしてCTF(f)をゼロで埋めることで、時間工程dtの分解能を高めることができる。実施形態によっては、初期周波数スパンがわずか8GHzのときには、周波数スパンが最大80GHzに達するものもあれば、800GHz、または、8000GHzに達するものもある。それゆえに、フーリエ変換を算定する際には、複素伝達関数CTF(f)を「埋めて」、複素伝達関数CTF(f)のデータ場所を追加する。例えば、上記の例では、複素伝達関数CTF(f)が100倍だけ「埋まった」場合、すなわち、周波数スパンが800GHzに達している場合、時間工程dtの分解能は100倍だけ増加することで、時間工程を1.25psにする。約10ps以下の時間工程dtで、時間領域情報を判定するのに十分な分解能を供与する。実施形態によっては、採用された時間工程dtは、約9ps以下であった場合もあれば、約8ps以下であったり、約7ps以下、約6ps以下、約5ps以下、または、約1ps以下であった場合もある。
【0108】
等式(6)の条件を満たしていない場合は、離散フーリエ変換が飛行時間を完全には分解できない。データがアンダーサンプリングされた結果、サンプリング場所数NOPが十分に大きくない場合は、離散フーリエ変換または逆フーリエ変換によりτの値を決定するときに曖昧性が生じる。フーリエ・スペクトルのピーク値τは等式(12)に示すような値をとることができる。
【0109】
【数12】
【0110】
ここで、kは整数、tは逆フーリエ変換後の各ピークの時間位置である。正確な飛行時間は、信号のから偽信号を除去するのに好適なkを見つけることにより判定することができる。これは、ファイバの飛行時間を推定し、等式(12)が推定値に最も近くなるときの整数kを見つけることにより行われる。飛行時間は、等式(6)を満たす十分なサンプリングで最も短いファイバ標本片を測定し、その値をもっと長いファイバ長に換算して飛行時間を決定することによっても取得することができる。しかし、周波数工程dfが等式(6)の条件を満たしている場合、そのような曖昧さは解消される。200m長さで群屈折率が約1.45のファイバの場合、飛行時間は約967ナノ秒である。10MHzないし8GHzの周波数スパンが選択された場合、必要かつ偽信号を招かずに済むサンプリング場所数NOPは約7727である。
【0111】
次に、モードの絶対遅延が大きいのが原因である高速振動項を解消することにより複素伝達関数CTF(f)を変換することで、変換複素伝達関数CTF’(f)を得るが、これは、元の複素伝達関数CFT(f)とは位相項の分だけ差があり、等式(13)に示すとおりである。
【0112】
【数13】
【0113】
ここで、eはオイラー数(2.71828にほぼ等しい数学定数)、iは虚数単位、τは試験対象の光ファイバ130の近似群遅延(以下で更に説明するように算定される)、fは周波数(以下に述べるように算定される)である。変換された複素伝達関数CTF’(f)は、修正された複素伝達関数または偽信号が除去された複素伝達関数とも呼ばれる。
【0114】
ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120は、周波数範囲に亘って複素伝達関数CTF(f)を測定する。通例、最小開始周波数(f)は約10MHz(約0.01GHz)であり、最大周波数(f)は、VNA120の特定のモデルで許容される最高値(40GHz程度かそれ以上になる場合もあるが、VNAのモデル次第で決まる)に設定される。本件開示の各実施形態は、例えば、約1GHzから約30GHzの間の最大周波数fを採用する。周波数スパンΔfは、VNAが測定を実施する周波数範囲である(先に述べたとおり)とともに、最大周波数fと最小周波数fの差である(Δf=f-f)。サンプリングされて上記の等式(13)で採用された周波数は、等式(14)に従って算定される。
【0115】
【数14】
【0116】
ここで、fはサンプリングされた周波数、Δfは周波数スパン(Δf=f-f)、fは最小周波数、fは最大周波数、NOPはサンプリング場所の数、jはサンプリング場所のインデックスである(例えば、j=0,1,2,…,NOP-1)。
【0117】
式(13)の近似群遅延τは、等式(12)のτの最小値と最大値の間の値、またはτの最小値と最大値の所定の範囲内の値である。例えば、該所定の範囲とは、最小値および最大値の約2%以上である場合もあるし、約5%以上である場合もあるし、約7%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約40%以上、または、それより高率である場合もある。それゆえに、一実施形態では、該所定の範囲は約10%であって、τがτの最小値の約10%とτの最大値の約10%との間の範囲内となる。またそれ以外の各実施形態では、等式(13)の近似群遅延τは、全てのモードの最大τ値である。本明細書に開示されている全ての実施形態の中で、以下の条件を満足している場合は、τとτの全ての値についてナイキスト・サンプリング要件が満たされる。
【0118】
【数15】
【0119】
ここで、先に説明したように、dfは周波数工程である。
【0120】
ただし、等式(12)はフーリエ・スペクトル(特定のモードに関連付けられている)の各ピークに固有であることに留意するべきである。しかし、等式(13)のτは、試験対象の光ファイバFUT130の全てのモードで近似している。式(13)の近似群遅延τは、FUT130の長さとファイバ屈折率プロファイルとにより推定され、等式(16)に従って算定される
【0121】
【数16】
【0122】
ここで、kは整数、dfは周波数工程、tfは逆フーリエ変換後の各ピークのおおよその時間位置である。算定された近似群遅延τを等式(13)に適用することにより、変換された複素伝達関数CTF’(f)が得られる。
【0123】
実際には、ファイバ長情報またはファイバ屈折率プロファイル情報の僅かな誤差が原因で整数kを誤って選択した場合、近似群遅延τも誤って算定され、その後のデータ処理工程(例えば、変換された複素伝達関数CTF’(f)を算定する場合などのような)に更なる誤差を生じる結果となる恐れがある。ただし、最小周波数f、最大周波数f、および、サンプリング場所数NOPが次の等式(17)を満たしていれば、kの誤差を許容しながら正しい変換複素伝達関数CTF’(f)を得ることができる。等式(17)は次のとおりである。
【0124】
【数17】
【0125】
ここで、f、NOP、および、Δfは等式(14)に関して先に定義されており、Iは整数である(例えば、1,2,3,…など)。等式(17)の条件を満たすことにより、等式(13)の位相項
【0126】
はkの誤差の影響を受けなくなる(というのも、どのような誤差であれ、あれば単純に追加の2πが生じるため、位相項全体は変わらないから)。例えば、fが0.01GHzでfが10GHzの場合、NOPは1000になるよう選ぶことが出来るため、Iは整数1となり、従って、等式(17)の条件を満たす。もう1つ別の例として、fが0.01GHzでfが10GHzの場合、NOPは1999になるよう選ぶことが出来るため、Iは整数2となり、従って、等式(17)の条件を満たす。それ以外の各具体例では、fが0.01GHzでfが12GHzの場合、NOPは1200または2399になるよう選ぶことが出来るため、Iがそれぞれ整数1または2となる。
【0127】
実施形態によっては、変換された複素伝達関数CTF’(f)をゼロで「埋める」ことで、変換された複素伝達関数CTF’(f)の周波数スパンを増大させて、伝達関数CTF(f)に関して先に述べたたように、時間工程dtの分解能を十分なものにするものもある。
【0128】
次に、変換された複素伝達関数CTF’(f)に基づいて、所与の発射条件の出力パルスが決まる。より詳細に言うと、等式(18)に示すように、変換された複素伝達関数CTF’(f)を入力パルスのフーリエ変換で乗算した積に対して逆フーリエ変換を実施することで、ファイバの出力パルスが得られる。
【0129】
【数18】
【0130】
このように、等式(11)の伝達関数CTF(f)が変換された複素伝達関数CTF’(f)で置き換えられることで、式(18)が得られる。
【0131】
変換された複素伝達関数CTF’(f)を取得するための測定はベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120を使用して周波数領域で完了したのであったとしても、あたかも時間領域で測定が行われたかのように、完全に掃引した情報を取得することができる。周波数領域を得るために、入力パルスが仮想時間領域設定で想定されていることに注目するべきである。等式(18)と変換された複素伝達関数CTF’(f)を使用することにより、特定の発射条件下でファイバを通過した出力パルスは、あたかも実時間領域測定システムを使用したかのように判定される。実際の出力パルスと比較して、(変換された複素伝達関数CTF’(f)を使用して)算定された出力パルスは、パルスの全体的な形状を温存しているため、2個のパルス間の唯一の違いは、算定による出力パルスにおける時間推移のみとなる。取得される測定結果にこの時間推移が影響を及ぼすことは無く、というのも、異なるファイバモード相互間の相対的なモード遅延が興味の対象となる重要な特性だからである点に留意するべきである。
【0132】
出力パルスが決まると、出力パルスは、図1に示されている10種の実効モード帯域幅(EMB)重みに基づいて、また、等式(2)を利用して収集整理されて10個の出力パルスになる。実施形態によっては、収集整理された出力パルス
【0133】
は、等式(19)に示すように、一組の発射条件から得られる複数の出力パルスの線形結合である。
【0134】
【数19】
【0135】
ここで、
【0136】
は第j番目のモード条件から得られるような時間の関数として測定されたj番目の出力パルスであり、
【0137】
は第j番目の出力パルスに使用される重みである。次いで、マルチモード光ファイバのモード帯域幅が、収集調整された出力パルス
【0138】
に基づいて算定される。より詳細に言うと、モード帯域幅は、収集調整された出力パルス
【0139】
のフーリエ変換と想定される入力パルスのフーリエ変換の割合である伝達関数に基づいて算定される。具体的には、伝達関数は等式(20)を使用して算定される。
【0140】
【数20】
【0141】
ここで、
【0142】
は伝達関数であり、
【0143】
は想定される入力パルスのフーリエ変換に対する、収集調整された出力パルスのフーリエ変換の割合である。この割合は最初に計算され、次に対数軸に変換される。伝達関数は、EMB重みごとに算定されるか、または、一組のオフセットに由来するパルスの線形結合ごとに算定され、モード帯域幅を各伝達関数から抽出する。この抽出は、伝達関数の伝送がf=0の伝送レベルから3dbだけ低下するときの対応する周波数を見つけることにより実施される。これ以外の各実施形態では、抽出は、伝達関数の送信がf=0の伝送レベルから1.5dbだけ低下するときの対応する周波数を見つけることにより、尚且つ、この対応する周波数に√2の係数を乗算することにより実施される。この2番目の抽出方法は、例えば、伝達関数が3dbの低下を示さない場合に利用することができる。先に述べたように、伝達関数は、EMB重みごとに算定されるか、または、一組のオフセットに由来するパルスの線形結合ごとに算定される。それゆえに、伝達関数ごとに対応する周波数も決まる。実施形態によっては、等式(2)を参照しながら先に述べたように、実効モード帯域幅(EMB)は、対応する最低周波数に1.13を乗算することにより算定計算される(EMB=1.13×minEMBc)。
【0144】
図4は、本件開示の実施形態による具体的な処理過程400(工程401から工程407)を例示している。処理過程400の各工程により、時間時間プロセスと同様の形態で周波数領域プロセスが供与される。実施形態によっては、工程402は、アンダーサンプリングされた(等式(6)を満たしていない)データを用いて実行される。それ以外の各実施形態では、工程402は、十分にサンプリングされた(等式(6)を満たしている)データを用いて実行される。
【0145】
以下に、本件開示の各実施形態による、モード帯域幅を算定する態様を例示した具体例を示していく。この例では、長さ2725mで50μmコアのマルチモード・ファイバについて、モード帯域幅を波長953nmで測定した。入力パルスは、強度変調器を用いて実験的に生成したパルスであると想定し(図4の工程401)、パルス幅は約95psであった。次に、一組の制御されたオフセットから一組の複素伝達関数を測定した(図4の工程402)。この例では、制御されたオフセットrは1μm,2μm,3μm,…,26μmと変動し、各オフセットから複素伝達関数を得た。図5Aは、制御されたオフセットを使用して測定された複素伝達関数の大きさのグラフを描いている。次に、等式(12)および等式(13)を使用して、複素伝達関数を変換複素伝達関数に転換した(図4の工程403)。この例では、周波数スパンΔfは10MHzないし15GHzであり、サンプリング場所数NOPは2001で、7.495MHzの周波数工程dfをもたらした。それゆえに、この7.495MHzの周波数工程dfを等式(12)に採用して、τを算定した。更に、この例では、等式(12)に関して、フーリエ・スペクトルの最大ピークの位置に基づくtは60.23nsであり、符号は「-(マイナス)」、kは101であり、τ値13415.42nsがもたらされた。等式(12)からτ値を決めた後、この例では、τ値を等式(13)でτとして使用して、等式(6)の各サンプリング要件を満たすように、オフセットごとの変換複素伝達関数を判定した。更にまた、変換された複素伝達関数CTF’(f)をゼロで埋めることで、時間工程dtの分解能を向上させた。
【0146】
次に、変換された複素伝達関数CTF’(f)に基づいて等式(18)を使用して、発射端での出力パルスをオフセットごとに算定した(図4の工程404)。図5Bは、オフセットごとの複素伝達関数から算定された差動モード遅延(DMD)チャート(オフセットごとの出力パルス)を示している。ここで、測定された出力パルスは、10種類の実効モード帯域幅(EMB)重みに基づいて、式(19)を使用して収集調整されて10個のパルスになり(図4の工程405)、これを図5Cに示す。次に、この例では、等式(20)を参照しながら先に述べたように、10個の収集調整された出力パルスのフーリエ変換と、想定される入力パルスのフーリエ変換との割合を算定することにより、伝達関数を判定する(図4の工程406)。この例で算定された伝達関数を図5Dに示す。次に、各伝達関数からモード帯域幅を抽出した。この例では、図5Dに示すように、fが0GHzに等しいときの送信レベルから伝送が3dBだけ低下したときに(すなわち、図5Dの伝送における0dBから-3dBへの低下時)、伝達関数ごとの対応する周波数を見つけることにより抽出が実行された。例えば、重み1のオフセットに対応している図5Dの伝達関数の場合、伝達関数は2.343GHzの対応する周波数で0dBから-3dBに低下する。次に、ファイバの対応するモード帯域幅は、3dB周波数にファイバの長さを乗算することにより求められるが、この例では、長さは2.725kmである。(各重み付けオフセットに対応している)伝達関数ごとの結果を以下の表1に示す。表1の最小周波数値は4578MHz・kmである。次に、この最小周波数値に1.13を乗算することで、ファイバの実効モード帯域幅(EMB)が決まるが(図4の工程407)、1.13×4578=5173MHz・kmであると判定した。
【0147】
【表1】
【0148】
図6Aおよび図6Bは、850nm波長で測定された1km長さのマルチモードOM4ファイバについて、(本明細書で開示される実施形態による)周波数領域DMD法を使用した場合の実効モード帯域幅測定結果と時間領域DMD法を使用した場合の実効モード帯域幅測定結果との比較を提示している。より詳細に言うと、図6Aは周波数領域DMD法のグラフを提示しており、図6Bは時間領域DMD法のグラフを提示している。図6Aと6Bの比較で分かったのは、周波数領域DMD法と時間領域のDMD法が非常に類似した実効モード帯域幅測定結果をもたらすことである。
【0149】
以下の表2は、1000nmの波長の5.634km長さのマルチモード・ファイバについて、周波数領域DMD法を使用した場合の実効モード帯域幅測定結果と時間領域DMDベンチ(先に述べたような)から得られた結果との比較を提示している。その結果は図7Aおよび図7Bに示されているが、図7Aは周波数領域DMD法のグラフを提示しており、図7Bは時間領域DMDベンチのグラフを提示している。
【0150】
【表2】
【0151】
表2で分かるように、周波数領域DMD法利用か時間領域DMDベンチ利用のいずれかから得られた有効モード帯域幅測定結果は、示されている10個のEMBc値について非常によく似ている。2つの方法の値の差は、発射オフセット位置の差に起因する可能性がある。
【0152】
本明細書に開示される周波数領域DMD方法は波長測定にも利用することができ、従来の時間領域DMDベンチの波長測定よりも優れている。このように、本明細書に開示されている周波数領域DMD法は、新進的な長波長に最適化されたマルチモード・ファイバ用途に有用であることを立証することができる。以下の表3は、5.634km長さのマルチモード・ファイバの実効モード帯域幅を1060nmの波長で測定したその一例を提示している。
【0153】
【表3】
【0154】
長さが17.6kmである長尺のマルチモード・ファイバの実効モード帯域幅を周波数領域DMD法を使用して測定することで、この方法が長いファイバで機能することを立証した。ファイバの伝搬損失は38.7db、減衰は2.2db/kmであった。約13dBm(20mW)のレーザ出力は元より、光検出器の後に利得27dBの電気低ノイズ増幅器も使用して、信号を更に増幅した。この設定は、長いファイバを測定するのに十分な電力を供給するために採用された。その結果を以下の表4および図8Bに示す。
【0155】
【表4】
【0156】
先に述べたように、本明細書に開示されている各種の方法およびシステムは、マルチコア光ファイバのスキューおよび色分散を算定する目的にも利用することができる。前段までに開示した方法と同様に、複素伝達関数CTF(f)を、最初に時間領域表現を使用して導出する。より詳細に言うと、先に述べたように、等式(3)、等式(4)、および、等式(5)を使用してCTF(f)を導き出す。この時点で、やはり先に述べたように、CTF(f)は周波数領域情報に限られており、CTF(f)の逆フーリエ変換を計算する。ただし、周波数領域から時間領域に切り替える場合は、(周波数領域情報のサンプリング場所の数が限られているせいで)時間領域情報に偽信号や曖昧性が生じていないのを確保するために、上記の等式(6)を満たしている必要がある。具体例として、長さが200mで群屈折率が約1.45であるマルチコア・ファイバの場合、ファイバを通過する飛行時間(信号がファイバに入ってからファイバを出るまでの時間)は約967nsである。それゆえに、時間領域情報に偽信号を招かないようにするには、10MHzないし8GHzの周波数スパンに亘って約15,473カ所のサンプリング場所数(NOP)が要件となる。
【0157】
前段までに開示した方法に継続して準じてゆくと、周波数領域情報から時間領域情報を取得する目的で、等式(8)および等式(9)を利用することになる。等式(8)および等式(9)を用いて離散逆フーリエ変換を取得した後、時間領域情報を、とりわけ、タイム工程dtだけ互いから分離された離散データ場所を含む時間領域情報を取得することができる。時間工程dtは、等式(10)で先に述べたように、周波数スパンΔfに関係している。
【0158】
これも先に述べたが、複素伝達関数CTF(f)の高周波数端をゼロで埋めることで、複素伝達関数CTF(f)の周波数スパンΔfを増大させる。例えば、周波数スパンを10倍だけ、100倍だけ、または、1000倍だけ増やすことによりCTF(f)をゼロで埋めることで、時間工程dtの分解能を高めることができる。
【0159】
次に、各モードの絶対遅延が大きいのが原因である高速振動項を解消することにより複素伝達関数CTF(f)を変換することで、変換複素伝達関数CTF’(f)を得ることができるが、これは等式(13)で先に示したとおりである。上記の等式(18)を用いて、出力パルス
【0160】
を変換された複素伝達関数CTF’(f)から判定する。マルチコア・ファイバの各コアのスキューは、出力パルス
【0161】
のグラフからすることができる。より詳細に言うと、各コアを通過する飛行時間は、出力パルス
【0162】
のグラフの各ピーク値によって示されている。次に、出力パルス
【0163】
のグラフの各ピーク値の差を算定することにより、スキューが判定される。
【0164】
ただし、データをアンダーサンプリングして、上記の等式(6)を満たしていない場合でも依然として、等式(12)説明したように、フーリエ・スペクトルの各ピーク値τの差を判定することにより、スキューを決めることができる。FUT130が所与の長さである場合、等式(12)の整数kは、モデル化により、または、もっと短いファイバ片に由来する飛行時間を利用することにより決めることができる。
【0165】
色分散(CD)は、等式(21)を用いて波長範囲に亘って算定されるとよい。
【0166】
【数21】
【0167】
ここで、τは群遅延であり、dτ/dλは波長λに亘る群遅延の一次導関数である。前段までに開示した、スキューおよび色分散を算定するための各方法は、2つ以上のコアを有するマルチコア・ファイバに関して利用することができる。実施形態によっては、マルチコア・ファイバが4つ以上のコアを有しているものもあれば、6つ以上のコアを有しているものもあり、8つ以上のコア、または、10つ以上のコアを有している場合もある。以下に提示してゆくのは、本明細書に開示されている各方法を採用することで、4つのコアを有しているマルチコア光ファイバのスキューを判定する例である。ファイバ500の縦断面を図9Aに提示にした。
【0168】
ファイバ500の長さは14326mである。波長が1550nmである光をファイバ500の4つのコアすべてに発射することで、ファイバのスキューを測定した。本明細書に開示されている方法を利用することにより、ファイバ500の複素伝達関数CTF(f)を判定した。
【0169】
時間領域情報を回復するために、等式(12)の時間位置tは-94.2758nsであると判定され、等式(12)の整数kは353であると決まり、等式(12)の符号は「-(マイナス)」であり、更に、等式(10)の時間工程dtは200.2002nsと判定されたが、その結果生じたピーク値τは70576.3949nsであった。この例では、ピーク値τを等式(13)のτとして用いた。このように、この値τを等式(13)に代入して、偽信号の除去を実行するとともに、変換された複素伝達関数CTF’(f)を取得した。等式(18)を利用して、出力パルス
【0170】
を判定したが、そのグラフを図9Bに示す。4つのコアの飛行時間は、70576.127ns、70576.361ns、70577.770ns、および、70577.885nsであると判定されたが、これらは、出力パルス
【0171】
のグラフの各ピーク値に対応している。次に、飛行時間の差を算定することにより(すなわち、各ピーク値の差を算定することにより)、スキュー値を判定した。図9Bに示すように、ファイバ500のスキュー値は、(i)234ps、(ii)1409ps、および、(iii)115psであると判定された。
【0172】
本明細書に開示されている各種の方法およびシステムには、マルチコア光ファイバのスキューを算定するための第2の実施形態も含まれる。この第2の実施形態では、マルチコア光ファイバは2つのコアを有している。このように、第2の実施形態は、2つのコアを有するマルチコア・ファイバのスキューを測定するための簡略版をもたらしている。
【0173】
この第2の実施形態では、コアが2つしかないため、上記の等式(5)のモード数nは2である。2種類のモードについての等式(5)を等式(22)として以下に示す。
【0174】
【数22】
【0175】
複素伝達関数CTF(f)は線形軸である。それゆえに、伝達関数TFの大きさは、複素伝達関数CTF(f)の大きさの対数軸またはlоg軸(対数軸で|CTF(f)|と定義される)を判定することにより算定される。対数軸は伝達関数TFのdB電力レベルを取得する目的で算定されることに留意するべきであるが、これは以下の等式(23)を利用して得られる。
【0176】
【数23】
【0177】
ここで、cはa/aに等しい相対出力比であるが、その場合、aには特定の発射条件で励起されて第1モードになった光の量であり、aは特定の発射条件で励起されて第2モードになった光の量であり、fは周波数(Hz)、Δτは第1モードの飛行時間(τ)と第2モードの飛行時間(τ)の差であり、|τ-τ|(単位psで測定した)に等しく、dは測定システムの光損失(単位dBeで測定した)の2倍に等しく、光損失は測定システムの入力時出力と出力時出力の差である。
【0178】
次に、等式(23)の伝達関数TFを、例えば図10Aおよび図10Bに示されているようにグラフ表示する。より詳細に言うと、図10Aは、2個のパルスの各々がマルチコア光ファイバのコアを通って伝搬するグラフを示しており、図10Bは、伝達関数TFの結果として得られるグラフを示している。2種類のモード間の飛行時間の差Δτ(マルチコア・ファイバにはコアが2つしかないため、この実施形態ではスキューに等しい)は、最初の振動周期における周波数の半分の逆数に等しい(Δτ=(1/2)(f))が、これは図10Bのグラフにおける最初の一時的下落である。このように、この第2の実施形態は、2つ以下のコアを有するマルチコア・ファイバのスキューを見つけるための簡略化された方法をもたらしている。
【0179】
以下に示すのは、2つのコアを有しており長さが1100mの具体例のマルチコア光ファイバ600を用いて、本明細書に開示されている第2のスキュー法を採用した例である。ファイバ600の縦断面を図11Aに示す。波長が1310nmである光をファイバ600の両方のコアに入射して、ファイバのスキューを測定した。ファイバ600の伝達関数TFのグラフを図11Bに示す。最初の振動周期の周波数は0.55945GHzに定められている。飛行時間の差Δτ(スキュー)は、この最初の振動周期の周波数の半分の逆数に等しく、この例では893psに等しくなる(1/GHzが1000psに等しいことに注意)。
【0180】
ファイバ600のスキューも、前段までに開示した第1のスキュー実施形態を利用して判定した。第1の実施形態を利用すると、等式(12)の時間位置tは9.616nsであると判定され、等式(12)の整数kは27と決まり、等式(12)の符号は「+(プラス)」であり、等式(10)の時間工程dtは200.2002nsと判定され、その結果として生じるピーク値τは5415.0214nsとなった。この例では、ピーク値τを等式(13)τとして用いた。このようにして、値τを等式(13)に代入することで偽信号の除去を実行するとともに、変換された複素伝達関数CTF’(f)を取得する。等式(18)を用いて、出力パルス
【0181】
を判定し、そのグラフを図11Cに示している。2つのコアの飛行時間は5414.123nsおよび5415.019nsであると判定されるが、これらは出力パルス
【0182】
のピーク値に対応している。次に、各飛行時間の差を算定することにより(すなわち、各ピーク値の差を計算することにより)スキュー値を判定した。図11Cに示すように、ファイバ600のスキュー値は892.8psと決まるが、これは(先に開示した)第2の実施形態を使用して求めたスキュー値に非常に近い。
【0183】
もう1つ別の実施形態では、本明細書に開示されている各実施形態を利用して、2×2構成を有するマルチコア光ファイバについて色分散を算定された。マルチコア光ファイバの各コアは標準シングルモードのファイバ・コアであり、そのモード・フィールド径は1310nm波長で8.25μm、1550nm波長で10.02μmであった。コア相互の間隔は約41.16μmであった。出荷用スプール上に置いた状態で、ファイバ長は3104mであった。光源を使用して、マルチコア光ファイバから約300μm離れた過剰充填状態のマルチモード・ファイバを介して1260nm波長の光をマルチコア光ファイバに発射し、光ビームが発散して4つのコアすべてに到達できるようにした。過剰充填状態のマルチモード・ファイバとマルチコア光ファイバとの間に空隙を設け、また、マルチコア光ファイバと受信器との間に空隙を設けた。各コアへのアクセスにファンイン装置もファンアウト装置も使用しなかったが、これにより実験設定と測定手順が大幅に簡素化された。過剰装填状態のマルチモード・ファイバからの光はその光出力が-6.75dBmであったが、受信器に到達する出力は-32.4dBmであった。マルチコア光ファイバの各コアに結合される光の量が少ないにもかかわらず、ベクトル・ネットワーク解析装置(VNA)120が高感度であるせいで、それでも光を検出することができた。
【0184】
図12Aは、適切に偽信号を除去しながら複素伝達関数CTF(f)の実部の逆フーリエ変換を実行することから得られる偽信号を除去した時間信号から算定された、1310nm波長における出力パルス
【0185】
のグラフを示している(上記の等式(12)、等式(13)、および、等式(18)を持ちた)。図12A
【0186】
を計算する場合、等式(12)の符号は「-(マイナス)」であったため、逆フーリエ変換からの時間シーケンスは最初は逆の順序になっていた。適切な偽信号除去により、時間シーケンスが並べ直しされた。図12Aに示すように、グラフのピーク値は各コアの飛行時間に対応している。本明細書に開示されている各実施形態を利用すると、4つのコアの各々の飛行時間は、1260nmから1360nmまでのOバンド全体にわたって回復された。しかしながら、本明細書に開示されている各実施形態はOバンドの波長範囲に限定されないことに留意するべきである。例えば、Cバンド(1530nmないし1565nm)やLバンド(1565nmないし1625nm)などのような他の波長範囲が利用されてもかまわない。
【0187】
図12Bは、Oバンド全体に亘るマルチコア光ファイバの各コアの飛行時間のグラフを示している。飛行時間の差を算定することにより(すなわち、図12Aの各ピーク値の差を計算することにより)スキュー値を判定した。図12Bに示すように、スキューは、コア1とコア4の間で最大となる。更にまた、スキューは、Oバンド全体に亘ってコア相互間で大部分は一定である。
【0188】
次に、上記の等式(21)を用いて、マルチコア光ファイバの色分散を判定した。より詳細に言うと、等式(21)の飛行時間τ(群遅延とも呼ばれる)は、図12Bのピーク値に対応しており、等式(21)の波長範囲はOバンド波長を超えていた。しかしながら、先に述べたように、これ以外の波長範囲が使用されてもよい。その結果を図12Cに示すが、同図は、4つのコアの色分散勾配が約0.083ps/(nm・km)であることを示している。更にまた、4つのコアは1324nmないし1326nmの範囲のゼロ分散波長であることが判明した。これらの結果は、市販の色分散機器(Perkin Elmer500)から得られた測定結果で確認済みである。
【0189】
本件開示の各実施形態による色分散測定は、非常に低い光出力を用いて4つのコアに対して同時に実施された。これにより、従来の方法に優る大きな利点をもたらし、比較的簡単かつ迅速な方法で測定を完了できるようになる。
【0190】
先に述べたサーバーやモジュールは各々が、電算装置上のソフトウェア、ファームウェア、または、ハードウェアの状態で実装される。電算装置としては、パーソナル・コンピュータ、タブレット、携帯電話などのような移動体装置、ワークステーション、組込み式システム、ゲーム・コンソール、テレビ装置、ボックス型家庭用通信端末、または、何であれこれら以外の電算装置が挙げられるが、これらに限定されない。更にまた、電算装置としては、プロセッサと持続性メモリなどのような記憶装置とが設けられて命令を実行および記憶する装置が挙げられるが、これに限定されない。記憶装置は、データおよびプログラム命令を持続的な態様で目に見える形に具体化することができる。ソフトウェアには、1つ以上のアプリケーションとオペレーティング・システムが含まれる場合があります。ハードウェアには、プロセッサ、メモリ、グラフィカル・ユーザ・インターフェイス表示装置などが含まれるが、これらに限定されない。電算装置は、複数のプロセッサと複数の共有メモリコンポーネントまたは個別のメモリコンポーネントを備えている場合もある。例えば、電算装置は、クラスタ化されたまたは分散されたコンピューティング環境またはサーバーファームの一部または全体であってもよい。
【0191】
多様な実施形態が、例えば、図13に示されたコンピュータ・システム900などのような1つ以上の周知のコンピュータ・システムを使用して実装される。1つ以上のコンピュータ・システム900を使用することで、例えば、本明細書で説明される実施形態のいずれか1つは元より、それらの各種組合せや部分組合せを実現することができる。
【0192】
コンピュータ・システム900は、演算処理装置904などのような1つ以上のプロセッサ(中央処理装置またはCPUとも呼ばれる)を含んでいるとよい。演算処理装置904は、通信インフラまたはバス906に接続されている。
【0193】
コンピュータ・システム900には、モニタ、キーボード、ポインティング・デバイスなどのようなユーザ入出力デバイス903も含まれていてもよいが、これらはユーザ入出力インターフェイス902(1つ以上)により通信インフラ906と通信することができる。
【0194】
演算処理装置904のうちの1つ以上がグラフィックス処理ユニット(GPU)である場合もある。一実施形態では、GPUは、各種の数理集約型アプリケーションを処理するように設計された特殊な電子回路であるプロセッサであってもよい。GPUは、コンピュータ・グラフィックス・アプリケーション、画像、ビデオなどに共通する数理集約型データなどのような大きなデータ・ブロックの並列処理に効率的な並列構造を備えている場合がある。
【0195】
コンピュータ・システム900はまた、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)などのような主記憶装置すなわち一次記憶装置908を含んでいるとよい。主記憶装置908は、1レベル以上のキャッシュを含んでいるとよい。主記憶装置908には、制御論理(すなわち、コンピュータ・ソフトウェア)、データ、または、その両方が保存されているとよい。
【0196】
コンピュータ・システム900はまた、1つ以上の二次記憶装置または二次メモリ910を備えていることもある。二次記憶装置910は、例えば、ハードディスク・ドライブ912、着脱自在記憶装置または着脱自在記憶ドライブ914、もしくは、その両方を備えていてもよい。着脱自在記憶ドライブ914は、フロッピーディスクであってもよいし、ドライブ、磁気テープ・ドライブ、コンパクト・ディスク・ドライブ、光学式記憶装置、テープ・バックアップ装置、それ以外の記憶装置または記憶ドライブ、または、これらは各種組合せであってもかまわない。
【0197】
着脱自在記憶ドライブ914は、着脱自在記憶装置918と対話することができる。着脱自在記憶装置918は、コンピュータ・ソフトウェア(制御論理)、データ、またはその両方が保存されたコンピュータ使用可能な記憶装置またはコンピュータが読み取れる記憶装置を備えていてもよい。着脱自在記憶装置918はフロッピーディスクであってもよいし、磁気テープ、コンパクト・ディスク、DVD、光記憶ディスク、何であれそれ以外のコンピュータ・データ記憶装置、または、これらの各種組合せであってもかまわない。着脱自在記憶ドライブ914は、着脱自在記憶装置918からの読取り、そこへの書込み、または、その両方を行うことができる。
【0198】
二次記憶装置910は、コンピュータ・プログラム、それ以外の各種命令、データ、または、これらの各種組合せにコンピュータ・システム900がアクセスできるようにするための上記以外の手段、装置、コンポーネント、媒介物、または、これら以外のアクセス手段を含んでいてもよい。そのような手段、装置、コンポーネント、媒介物、または、これら以外のアクセス手段としては、具体的には、着脱自在記憶装置922とインターフェイス920が挙げられる。着脱自在記憶装置922とインターフェイス920の具体例としては、プログラム・カートリッジとカートリッジ・インターフェイス(ビデオゲーム装置に見られるものなど)、着脱自在メモリ・チップ(例えば、EPROMまたはPROM)とこれに関連するソケット、メモリ・スティックとUSBポート、メモリ・カードとこれに関連するメモリ・カード・スロット、何であれこれら以外の着脱自在装置とこれに関連するインターフェイス、または、上記の各種組合せがある。
【0199】
コンピュータ・システム900は、通信インターフェイスまたはネットワーク・インターフェイス924を更に含んでいてもよい。通信インターフェイス924は、各種の外部デバイス、外部ネットワーク、外部実体など(個別的にも集合的にも参照番号928で参照される)の任意の組合せとコンピュータ・システム900が通信して対話できるようにすることができる。例えば、通信インターフェイス924は、コンピュータ・システム900が通信経路926を介して各種の外部装置または遠隔装置928と通信することができるようにするとよいが、該通信経路は有線または無線(もしくは、これらの組合せ)であればよく、LAN、WAN、インターネットなどの任意の組合せを含んでいることがある。制御論理、データ、または、その両方を、通信経路926を介してコンピュータ・システム900に送信し、そこから受信することができる。
【0200】
コンピュータ・システム900は、幾つか具体例を挙げるがそれらに限らず、携帯情報端末(PDA)、デスクトップ・ワークステーション、ラップトップ・コンピュータまたはノートブック・コンピュータ、ネットブック、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチまたはそれ以外のウェアラブル機器、家庭電化品、IоTの一部、組込み式システム、これらの各種組合せなどのうちいずれであってもよい。
【0201】
コンピュータ・システム900は、リモート型または分散型のクラウド・コンピューティング・ソリューションなどのような、但し、これらに限らないが、任意の配信パラダイムにより任意のアプリケーション、データ、または、その両方にアクセスしたりホストとして利用したりするクライアントまたはサーバーである場合もあるし、ローカル式ソフトウェアまたは自社運用式ソフトウェア(「自社運用式」クラウドベースのソリューション)であってもよいし、「サービス型」モデル(例えば、サービス型コンテンツ(CaaS)、サービス型デジタル・コンテンツ(DCaaS)、サービス型ソフトウェア(SaaS)、サービス型管理ソフトウェア(MSaaS)、サービス型プラットフォーム(PaaS)、サービス型デスクトップ(DaaS)、サービス型フレームワーク(FaaS)、サービス型バックエンド(BaaS)、サービス型モバイル・バックエンド(MBaaS)、サービス型インフラ(IaaS)など)であってもよいし、或いは、上記の各具体例の任意の組合せやそれら以外のサービスまたは配信パラダイムから成るハイブリッド・モデルであってもかまわない。
【0202】
コンピュータ・システム900における適用可能なデータ構造、ファイル・フォーマット、および、スキーマはどれも、次に挙げる標準に由来し、すなわち、JavaScriptのオブジェクト表記法に由来するデータの記述方式(JSON)、拡張マークアップ言語(XML)、もう1つ別のマークアップ言語(YAML)、拡張ハイパー・テキスト・マークアップ言語(XHTML)、無線マークアップ言語(WML)、MessagePack、XMLユーザ・インターフェイス言語(XUL)、これらに限定されないで、これら以外の機能的に類似した各種の表現の、単独か、または、これらの各種組合せのいずれかに由来する。これに代わる例として、独自のデータ構造、フォーマット、または、スキーマを、単独か、または、周知の各種標準すなわちオープン標準と組み合わせて使用してもかまわない。
【0203】
実施形態によっては、制御論理(ソフトウェア)が保存されている、コンピュータが利用可能または読み取り可能な有形の持続的媒体を備えている有形の持続的な装置または製品のことを、説明文中でコンピュータ・プログラム製品またはプログラム記憶装置と呼称している場合がある。そのような装置・製品としては、コンピュータ・システム900、主記憶装置908、二次記憶装置910、着脱自在記憶装置918、着脱自在記憶装置922などは元より、何であれ上記の組合せを具体化している有形製品が挙げられるが、これらに限定されない。このような制御論理は、1つ以上のデータ処理装置(コンピュータ・システム900などのような)によって実行されると、そのようなデータ処理装置を本明細書に記載されているとおりに作動させることができる。
【0204】
本件開示に含まれている教示に基づいて、図9に例示されているもの以外の各種のデータ処理装置、コンピュータ・システム、コンピュータ・アーキテクチャ、または、これらの各種組合せを使用して本件開示の各実施形態を実施して使用する方法が当業者には明らかとなるであろう。特に、各実施形態は、本明細書に記載されているもの以外のソフトウェア、ハードウェア実施形態、オペレーティング・システム、または、これらの各種組合せと協働して作用が可能となる。
【0205】
多様な実施形態を本明細書で説明してきたが、それらは具体例として提示されてきたにすぎず、限定するものではない。各種の改変および修正は、本明細書に提示された教示および指針に基づいて、開示された各実施形態の均等物の意味および範囲内にあるものと解釈するべきであるのは明らかである。従って、本件開示の真髄および範囲から逸脱することなく、本明細書に開示されている各実施形態に対して形態および細部に多様な変更を加えることができることは当業者には明らかとなるであろう。本明細書に提示されている実施形態の各要素は、必ずしも相互に排他的であるわけではなく、当業者なら正しく理解するだろうが、さまざまなニーズを満たすために互いに置換えが効く。
【0206】
本明細書で使用される表現または用語は説明を目的としたものであり、限定を目的とするものではないことを理解するべきである。本件開示の幅および範囲は、上述の具体例の実施形態のいずれによっても限定されるべきではなく、特許請求の範囲およびその均等物に従ってのみ定義されるべきである。
【0207】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0208】
実施形態1
本件の方法は、
強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、
該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、該試験対象のマルチモード光ファイバの複数のモードを励起させる工程と
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により伝送された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、
該電気信号に基づいて該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、
該複素伝達関数CTF(f)に基づいて、1つ以上の発射条件と想定される入力パルスとから、次の等式を利用して出力パルスを取得する工程とを含んでおり、
【0209】
【数24】
【0210】
ここで、
【0211】
は出力パルス、
【0212】
は関数
【0213】
の逆フーリエ変換、また、
【0214】
は該想定される入力パルスのフーリエ変換であり、該方法は更に、
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)のモード帯域幅を
【0215】
に基づいて算定する工程を含んでいる。
【0216】
実施形態2
実施形態1の方法において、上記複素伝達関数CFT(f)は次の等式を満たすように測定されるが、
【0217】
【数25】
【0218】
ここで、max(τ,…,τ)は上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)を通過する上記強度変調された光の各モードに関連付けられた飛行時間であり、dtは周波数工程である。
【0219】
実施形態3
実施形態2の方法において、上記周波数工程dfは、次の等式を利用して、周波数スパンΔfおよびサンプリング場所の数(NOP)に関連づけられる。
【0220】
【数26】
【0221】
実施形態4
実施形態1から実施形態3のいずれか1つの方法において、上記出力パルス
【0222】
は、次の等式を利用して一組の発射条件から得られる複数の出力パルスの線形結合であり、
【0223】
【数27】
【0224】
ここで、
【0225】
は第j番目のモード条件から得られるような時間の関数として測定されたj番目の出力パルスであり、
【0226】
は第j番目の出力パルスに使用される重みである。
【0227】
実施形態5
実施形態1から実施形態4のいずれか1つの方法において、上記モード調整器は動作波長のシングルモード・ファイバであるか、または、これと同等の、複数レンズを用いた光学系である。
【0228】
実施形態6
実施形態5の方法において、上記シングルモード・ファイバは上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の中心に対して一組の制御されたオフセット位置に配置され、複素伝達関数CTF(f)を測定する上記工程は該一組の制御されたオフセット位置で行われ、上記方法は更に、上記測定された複素伝達関数CTF(f)から出力パルスを取得する工程を含んでいる。
【0229】
実施形態7
実施形態6の方法は更に、10種類の実効モード帯域幅EMB重みに基づいて上記出力パルスを収集調整して10個のパルスにする工程と、該10種の重みの各々から該モード帯域幅を算定する工程を含んでいる。
【0230】
実施形態8
実施形態7の方法は更に、次の等式を利用して上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の上記モード帯域幅を算定する工程を更に含んでおり、
【0231】
【数28】
【0232】
ここで、
【0233】
は伝達関数であり、
【0234】
は想定される入力パルスのフーリエ変換に対する、該10個の収集調整されたパルスのフーリエ変換の割合である。
【0235】
実施形態9
実施形態1から実施形態8のいずれか1つの方法は更に、次の等式を利用して上記複素伝達関数CTF(f)を修正することで、変換複素伝達関数CTF’(f)を得る工程を更に含んでおり、
【0236】
【数29】
【0237】
ここで、CTF’(f)は変換された複素伝達関数、eはオイラー数、iは虚数単位、τはフーリエ・スペクトルの値、fは周波数である。
【0238】
実施10
実施形態9の方法において、τは上記フーリエ・スペクトルのピーク値の位置である。
【0239】
実施形態11
実施形態9の方法において、τはτの最小値と最大値の間の値であり、τは次の等式を用いて算定され、
【0240】
【数30】
【0241】
ここで、kは整数、dfは周波数工程、tは上記逆フーリエ変換後の各ピークの時間位置である。
【0242】
実施形態12
実施形態9の方法において、次の条件を満たし、
【0243】
【数31】
【0244】
ここで、fは上記複素伝達関数CTF(f)の測定における最小周波数、Δfは上記複素伝達関数CTF(f)の測定においてfが最大周波数となるような周波数スパン(Δf=f-f)であり、NOPはサンプリング場所の数であり、Iは整数である。
【0245】
実施形態13
実施形態9の方法は更に、次の等式において、
【0246】
【数32】
【0247】
上記複素伝達関数CTF(f)を上記変換された複素伝達関数CTF’(f)で置き換えることで、次式を得る工程を更に含んでいる。
【0248】
【数33】
【0249】
実施形態14
実施形態13の方法は更に、上記複素伝達関数CTF(f)の周波数スパンまたは上記変換された複素伝達関数CTF’(f)の周波数スパンを増大させることで、10ピコ秒(ps)未満の時間分解能を得る工程を含んでいる。
【0250】
実施形態15
実施形態9の方法において、上記複素伝達関数CTF(f)は、次の等式を満たすように測定され、
【0251】
【数34】
【0252】
ここで、τ,…,τは上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)を通過する上記強度変調光の各モードに関連付けられた飛行時間であり、dfは周波数工程である。
【0253】
実施形態16
実施形態1から実施形態15のいずれか1つの方法において、上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は800nmから1650nmの波長で作動する光ファイバから構成されている。
【0254】
実施形態17
実施形態1から実施形態16のいずれか1つの方法において、上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが5km以上である。
【0255】
実施形態18
実施形態17の方法において、上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが15km以上である。
【0256】
実施形態19
実施形態18の方法において、上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが17km以上である。
【0257】
実施形態20
実施形態1から実施形態19のいずれか1つの方法は更に、上記モード調整された強度変調光をレーザ光源から伝送する工程を含んでいる。
【0258】
実施形態21
実施形態1から実施形態20のいずれか1つの方法において、上記モード調整された強度変調光の線幅は0.1nm未満である。
【0259】
実施形態22
実施形態21の方法において、上記モード調整された強度変調光の線幅は0.05nm未満である。
【0260】
実施形態23
実施形態22の方法において、上記モード調整された強度変調光の線幅は0.01nm未満である。
【0261】
実施形態24
実施形態1から実施形態23のいずれか1つの方法において、上記入力パルスは未測定であった。
【0262】
実施形態25
本件の方法は、
強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、
該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の複数のコアを励起させる工程と
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により伝送された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、
該電気信号に基づいて該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、
該複素伝達関数CTF(f)を用いて、該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)のスキューと色分散のうち少なくとも一方を算定する工程とを含んでいる。
【0263】
実施形態26
実施形態25の方法は更に、
上記複素伝達関数CTF(f)に基づいて、1つ以上の発射条件と想定される入力パルスとから、次の等式を利用して出力パルスを取得する工程とを含んでおり、
【0264】
【数35】
【0265】
ここで、
【0266】
は出力パルス、
【0267】
は関数
【0268】
の逆フーリエ変換、また、
【0269】
は該想定される入力パルスのフーリエ変換であり、該方法は更に、
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)のスキューと色分散のうち少なくとも一方を
【0270】
に基づいて算定する工程を含んでいる。
【0271】
実施形態27
実施形態26の方法において、上記複素伝達関数CFT(f)は次の等式を満たすように測定されるが、
【0272】
【数36】
【0273】
ここで、max(τ,…,τ)は上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)を通過する上記強度変調された光の各モードに関連付けられた飛行時間であり、dtは周波数工程である。
【0274】
実施形態28
実施形態27の方法において、上記周波数工程dfは、次の等式を利用して、周波数スパンΔfおよびサンプリング場所の数(NOP)に関連づけられる。
【0275】
【数37】
【0276】
実施形態29
実施形態26の方法は更に、次の等式を利用して上記複素伝達関数CTF(f)を修正することで、変換複素伝達関数CTF’(f)を得る工程を更に含んでおり、
【0277】
【数38】
【0278】
ここで、CTF’(f)は変換された複素伝達関数、eはオイラー数、iは虚数単位、τはフーリエ・スペクトルの値、fは周波数である。
【0279】
実施形態30
実施形態29の方法において、τは上記フーリエ・スペクトルのピーク値の位置である。
【0280】
実施形態31
実施形態29の方法において、τはτの最小値と最大値の間の値であり、τは次の等式を用いて算定され、
【0281】
【数39】
【0282】
ここで、kは整数、dfは周波数工程、tは上記逆フーリエ変換後の各ピークの時間位置である。
【0283】
実施形態32
実施形態29の方法において、次の条件を満たし、
【0284】
【数40】
【0285】
ここで、fは上記複素伝達関数CTF(f)の測定における最小周波数、Δfは上記複素伝達関数CTF(f)の測定においてfが最大周波数となるような周波数スパン(Δf=f-f)であり、NOPはサンプリング場所の数であり、Iは整数である。
【0286】
実施形態33
実施形態29の方法は更に、次の等式において、
【0287】
【数41】
【0288】
上記複素伝達関数CTF(f)を上記変換された複素伝達関数CTF’(f)で置き換えることで、次式を得る工程を更に含んでいる。
【0289】
【数42】
【0290】
実施形態34
実施形態29の方法において、上記複素伝達関数CTF(f)は、次の等式を満たすように測定され、
【0291】
【数43】
【0292】
ここで、τ,…,τは上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)を通過する上記強度変調光の各モードに関連付けられた飛行時間であり、dfは周波数工程である。
【0293】
実施形態35
実施形態25から実施形態34のいずれか1つの方法において、上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は2つのコアまたはそれより多数のコアを備えている。
【0294】
実施形態36
実施形態35の方法は更に、次の等式を用いて伝達関数(TF)を算定する工程を更に含んでおり、
【0295】
【数44】
【0296】
ここで、cはa/aに等しい相対出力比であるが、その場合、aには特定の発射条件で励起されて第1モードになった光の量であり、aは特定の発射条件で励起されて第2モードになった光の量であり、fは周波数(Hz)、Δτは第1モードの飛行時間(τ)と第2モードの飛行時間(τ)の差であり、|τ-τ|(単位ps)に等しく、dは測定システムの光損失(単位dBe)の2倍に等しく、光損失は該測定システムの入力時出力と出力時出力の差である。
【0297】
実施形態37
実施形態36の方法は更に、スキューを算定する工程を含んでおり、上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の上記スキューは、伝達関数(TF)の時間に対するグラフにおける最初の振動期間の周波数の半分に等しい。
【0298】
実施形態38
実施形態25から実施形態37のいずれか1つの方法は更に、次の等式を用いて色分散を算定する工程を含んでおり、
【0299】
【数45】
【0300】
ここで、τは群遅延であり、dτ/dλは波長λに亘る該群遅延の一次導関数である。
【0301】
実施形態39
実施形態25から実施形態38のいずれか1つの方法において、上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は800nmから1650nmの波長で作動する光ファイバから構成されている。
【0302】
実施形態40
実施形態25から実施形態39のいずれか1つの方法において、上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが5km以上である。
【0303】
実施形態41
実施形態40の方法において、上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが15km以上である。
【0304】
実施形態42
実施形態41の方法において、上記上記試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)は長さが17km以上である。
【0305】
実施形態43
本件の方法は、
強度変調された光をモード調整器にかけてから伝送することで、モード調整された強度変調光を1つ以上の発射条件で生成する工程と、
該モード調整された強度変調光を試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により動作波長で伝送することで、該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の複数のモードを励起させる工程と
該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)により伝送された該モード調整された強度変調光を電気信号に変換する工程と、
該電気信号に基づいて該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の複素伝達関数CTF(f)を測定する工程と、
上記測定された複素伝達関数CTF(f)に基づいて、1つ以上の発射条件と想定される入力パルスとから、次の等式を利用して出力パルスを取得する工程とを含んでおり、
【0306】
【数46】
【0307】
ここで、
【0308】
は出力パルス、
【0309】
は関数
【0310】
の逆フーリエ変換、また、
【0311】
は該想定される入力パルスのフーリエ変換である。
【0312】
実施形態44
実施形態43の方法は更に、該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)のモード帯域幅を
【0313】
に基づいて算定する工程を含んでいる。
【0314】
実施形態45
実施形態43の方法は更に、該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)のスキューを
【0315】
に基づいて算定する工程を含んでいる。
【0316】
実施形態46
実施形態43の方法は更に、該試験対象のマルチモード光ファイバ(FUT)の色分散を
【0317】
に基づいて算定する工程を含んでいる。
【符号の説明】
【0318】
500 マルチコア光ファイバ
600 マルチコア光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
【国際調査報告】