(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】近視制御コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20240501BHJP
【FI】
G02C7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568409
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 US2022028120
(87)【国際公開番号】W WO2022236087
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】516046846
【氏名又は名称】オハイオ ステート イノベーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ トーマス
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BC03
(57)【要約】
第1の矯正パワー(球面又は球面円筒形)で視力を矯正するように構成された中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む、眼用デバイス(コンタクトレンズ)を使用して、近視制御を実行する例示的な方法及び装置が開示され、周辺領域は、第2の矯正パワーで視力を低矯正(又は過剰矯正)するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、複数の別個のファセット表面の各々は、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の矯正パワーで視力を矯正するように構成された中心領域と、前記中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む眼用デバイスを使用して、近視制御を実行するための方法であって、
前記周辺領域が、第2の矯正パワーで前記視力を調整するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、前記複数の別個のファセット表面の各々が、(i)前記中心領域の中心位置から前記眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)前記第1の方向に垂直な第2の方向の両方において変化するパワーを有する、方法。
【請求項2】
前記複数の別個のファセット表面が、同一であり、かつ互いに等しく半径方向に離間している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の別個のファセット表面が、表面プロファイルにおいてトーリックであり、かつ半径方向に細長く、各ファセット表面が、別のファセット表面から等しく半径方向に離間されている経線に位置している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の別個のファセット表面の各々が、前記第2の矯正パワーを提供するように構成されている矯正エリアを有し、前記矯正エリアが、周辺視野の領域について眼に矯正を提供するのに十分に大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の別個のファセット表面のうちの少なくとも1つが、球面形状の高さ輪郭を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の別個のファセット表面のうちの少なくとも1つが、球面円筒形、トーリック形、又は楕円形状の高さ輪郭を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の別個のファセット表面が、各々、同じ半径方向の位置に位置する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の別個のファセット表面のうちの1つ以上が、異なる半径方向の位置に位置する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第1の矯正パワーで視力を矯正するように構成された中心領域と、前記中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む、眼用デバイスであって、
前記周辺領域が、第2の矯正パワーで前記視力を調整するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、前記複数の別個のファセット表面の各々が、(i)前記中心領域の中心位置から前記眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)前記第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有する、眼用デバイス。
【請求項10】
前記複数の別個のファセット表面が、同一であり、かつ互いに等しく半径方向に離間している、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記複数の別個のファセット表面が、トーリック表面形状を有し、各ファセット表面が、別のファセット表面から等しく半径方向に離間されている経線に位置している、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記複数の別個のファセット表面の各々が、前記第2の矯正パワーを提供するように構成されている矯正エリアを有し、前記矯正エリアが、周辺視野の領域について眼に矯正を提供するのに十分に大きい、請求項9~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記複数の別個のファセット表面のうちの少なくとも1つが、球面形状の高さ輪郭を有する、請求項9~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数の別個のファセット表面の少なくとも1つが、トーリック表面形状又は楕円形の高さ輪郭を有する、請求項9~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の別個のファセット表面が、各々、高さ輪郭のセットを有し、最上部の輪郭が、各近くのファセットと同じ半径方向の位置に位置付けられた中心を有する、請求項9~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記複数の別個のファセット表面の1つ以上が、各々、セットされた高さ輪郭を有し、最上部の輪郭が、近くのファセットを有する異なる半径方向の位置に配置された中心を有する、請求項9~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
方法であって、
プロセッサによって、パラメータのセットを取得することと、
前記プロセッサによって、前記パラメータのセットを使用して、第1の矯正パワーで視力を矯正するように構成された中心領域と、前記中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む、眼用デバイスを生成することと、
前記周辺領域が、第2の矯正パワーで前記視力を調整するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、前記複数の別個のファセット表面の各々が、(i)前記中心領域の中心位置から前記眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)前記第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有し、
前記生成された眼用デバイスが、近視制御に使用される眼用デバイスを製造するために使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
本国際PCT出願は、2021年5月6日に出願された「Myopia Control Contact Lens」と題された米国仮特許出願第63/185,185号、及び2021年9月8日に出願された「Myopia Control Contact Lens」と題された米国仮特許出願第63/241,905号の優先権及び利益を主張し、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[技術分野]
【0002】
本開示は、眼用デバイス、具体的には、例えば、小児における近視の進行を遅延させるように構成されたコンタクトレンズなどの眼用デバイスに関する。
[背景技術]
【0003】
近視制御は、多焦点コンタクトレンズ、角膜矯正レンズ、及び近視制御眼鏡の使用を介するものを含む、典型的には小児における近視の進行を遅延させるための特定の治療セットを説明する。近視制御措置は、典型的には、検眼医又は眼科医によって処方される。
【0004】
例えば、多焦点コンタクトは、一部の子供の近視の進行を遅延させるのに役立ち得ることが観察されている。ある研究では、日常的に多焦点レンズを装着した近視の子供は、同じ期間に通常のソフトコンタクトを装着した同様の近視の子供と比較して、子供の近視の進行が約50パーセント低減したことがわかった。
【0005】
多焦点コンタクトレンズは、典型的には、近視、遠視、及び/又は近合焦能力の正常な年齢喪失に起因する乱視などの屈折異常である老眼に対処する人々のために、全ての距離で明確な視力を提供するように設計されている。
【0006】
オルソケラトロジーレンズ(オルソk)は、近視を制御するために一晩装着することができるように取り付けられる、特別に設計されたガス透過性コンタクトレンズである。オルソkレンズの取り付けは、広範な専門知識を必要とする時間のかかるプロセスであり得る。世界的な「近視の流行」の認識が高まっており、多くの産業、保健、及び政府機関がその流行に対処している。
【0007】
近視制御を改善することには利点がある。
[発明の概要]
【0008】
第1の矯正パワー(球面又は球面円筒形)で視力を矯正するように構成された中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む眼用デバイス(例えば、コンタクトレンズ)を使用して近視制御を実行する例示的な方法及び装置が開示され、周辺領域が、第2の矯正パワーで視力を低矯正(又は過剰矯正)するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、複数の別個のファセット表面の各々が、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有する。また、近視制御コンタクトレンズを生成する方法も記載される。
【0009】
一態様では、第1の矯正パワー(球面又は球面円筒形)で視力を矯正するように構成された中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む眼用デバイス(コンタクトレンズ)を使用して近視制御を実行する方法であって、周辺領域が、第2の矯正パワーで視力を低矯正(又は過剰矯正)するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、複数の別個のファセット表面の各々が、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有する、方法が開示される。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面が、同一であり、かつ互いに等しく半径方向に離間している。
【0011】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面が、目に固有の周辺乱視の増加を補償するためにトーリックであり、各ファセット表面は、別のファセット表面から等しく半径方向に離間されている経線に位置している。
【0012】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の各々が、第2の矯正パワーを提供するように構成されている矯正エリアを有し、矯正エリアは、周辺視野の領域に近視性デフォーカスを提供するのに十分に大きい。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の少なくとも1つが、球面曲率又は半径方向対称曲率を有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の少なくとも1つが、球面円筒形曲率を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面が、各々、同じ半径方向の位置に位置する(すなわち、同じ半径方向の位置において中心を有する)。
【0016】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の1つ以上が、異なる半径方向の位置に位置する(すなわち、異なる半径方向の位置において中心を有する)。
【0017】
別の態様では、第1の矯正パワー(球面又は球面円筒形)で視力を矯正するように構成された中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む眼用デバイス(コンタクトレンズ)であって、周辺領域が、第2の矯正パワーで視力を低矯正(又は過剰矯正)するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、複数の別個のファセット表面の各々が、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有する、眼用デバイスが開示される。
【0018】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面が、同一であり、かつ互いに等しく半径方向に離間している。
【0019】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面が、半径方向に細長くされ、各ファセット表面が、別のファセット表面から等しく半径方向に離間されている経線に位置している。
【0020】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の各々が、第2の矯正パワーを提供するように構成されている矯正エリアを有し、矯正エリアは、周辺視野の領域に近視性デフォーカスを提供するのに十分に大きい。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の少なくとも1つが、球面曲率又は半径方向対称曲率を有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の少なくとも1つが、球面円筒形曲率を有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面が、各々、同じ半径方向の位置に位置する(すなわち、同じ半径方向の位置において中心を有する)。
【0024】
いくつかの実施形態では、複数の別個のファセット表面の1つ以上が、異なる半径方向の位置に位置する(すなわち、異なる半径方向の位置において中心を有する)。
【0025】
別の態様では、方法であって、プロセッサによって、パラメータのセットを取得することと、プロセッサによって、パラメータのセットを使用して、第1の矯正パワーで視力を矯正するように構成された中心領域と、中心領域を取り囲む周辺領域と、を含む眼用デバイスを生成することと、周辺領域が、第2の矯正パワーで視力を調整するように構成された複数の別個のファセット表面を含み、複数の別個のファセット表面の各々が、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有し、生成された眼用デバイスが、近視制御に使用される眼用デバイスを製造するために使用される、方法が開示される。
【0026】
当業者は、以下に記載される図面が例解のみを目的としていることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】例解的な実施形態による、例示的な近視制御眼用デバイスを示す。
【
図2A】例解的な実施形態による、
図1の近視制御コンタクトレンズの例示的なファセットレンズ構成を示す。
【
図2B】例解的な実施形態による、
図1の近視制御コンタクトレンズの例示的なファセットレンズ構成を示す。
【
図3A】例解的な実施形態による、
図1の近視制御コンタクトレンズの例示的なファセットレンズ構成を示す。
【
図3B】例解的な実施形態による、
図1の近視制御コンタクトレンズの例示的なファセットレンズ構成を示す。
【
図3C】例解的な実施形態による、
図1の近視制御コンタクトレンズの例示的なファセットレンズ構成を示す。
【
図4】例解的な実施形態による、
図2Aの近視制御眼用デバイスの例示的なサイズを示す。
【
図5】例解的な実施形態による、瞳孔に対する近視制御眼用デバイスの例示的な寸法を示す。
【
図6A】例解的な実施形態による、例示的な近視制御眼用デバイスの例示的な構成を例解する。
【
図6B】例解的な実施形態による、例示的な近視制御眼用デバイスの例示的な構成を例解する。
【
図6C】例解的な実施形態による、例示的な近視制御眼用デバイスの例示的な構成を例解する。
【
図6D】例解的な実施形態による、例示的な近視制御眼用デバイスの例示的な構成を例解する。
【
図6E】例解的な実施形態による、例示的な近視制御眼用デバイスの例示的な構成を例解する。
【
図7】レンズパラメータ及び光線トレーシング分析パラメータのセットを受信する、研究で用いられるグラフィカルユーザインターフェース800の一例を示す。
【
図8】例解的な実施形態による、近視制御眼用デバイスを生成及び評価するプロセスを示す。
【
図9A】例解的な実施形態による、多焦点レンズ設計と近視制御眼用デバイスとの比較図を示す。
【
図9B】例解的な実施形態による、多焦点レンズ設計と近視制御眼用デバイスとの比較図を示す。
【
図10A】例解的な実施形態による、
図9Aのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【
図10B】例解的な実施形態による、
図9Aのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【
図11A】例解的な実施形態による、近視性デフォーカスのモデリングの態様を示す。
【
図11B】例解的な実施形態による、近視性デフォーカスのモデリングの態様を示す。
【
図11C】例解的な実施形態による、近視性デフォーカスのモデリングの態様を示す。
【
図11D】例解的な実施形態による、近視性デフォーカスのモデリングの態様を示す。
【
図12A】例解的な実施形態による、
図9Bのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【
図12B】例解的な実施形態による、
図9Bのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【
図12C】例解的な実施形態による、
図9Bのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【
図12D】例解的な実施形態による、
図9Bのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【
図12E】例解的な実施形態による、
図9Bのレンズの光線トレーシングシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載の各特徴及び全ての特徴、並びにそのような特徴のうちの2つ以上の各々の組み合わせ及び全ての組み合わせは、そのような組み合わせに含まれる特徴が相互に矛盾しないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。
【0029】
様々な特許、特許出願、及び刊行物を含み得るいくつかの参考文献は、参考文献リストで引用され、本明細書に提供される本開示で考察される。このような参考文献の引用及び/又は考察は、本開示の説明を明確にするために提供され、いずれのこのような参考文献も、本明細書に記載される本開示のいずれの態様に対する「先行技術」であることを認めるものではない。表記の観点から、「[n]」は、リスト内のn番目の参照文献に対応する。本明細書に引用され考察される全ての参考文献は、それらの全体が、かつ各参考文献が参照により個々に組み込まれるのと同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
例示的な近視制御眼用デバイス
図1は、第1の矯正パワー(球面又は球面円筒形)で視力を矯正するように構成された中心領域102と、中心領域100を取り囲んで、環状ゾーン104内の視力を低矯正することによって中心窩を取り囲む環状ゾーン104内に近視性デフォーカスを生成する第2の矯正パワーを提供する複数のファセット表面106(本明細書ではセグメントとも称される)を含む周辺/環状領域104と、を含む、例示的な近視制御眼用デバイス100(近視制御コンタクトレンズ100aとして示される)を示す。複数の別個のファセット表面106の各々は、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向108a、及び(ii)第1の方向108aに垂直な第2の方向108bの両方で変化するパワーを有する。近視性デフォーカス(矢印110として示される)は、近視に関連する眼の成長(近視眼の成長方向112として示される)への停止シグナルを生成する。
【0031】
図1に示す例では、周辺領域104は、複数の個別ファセット表面106を有し、各々が、好ましくは均一にサイズ決定され、近傍ファセットに対して均一に離間して、集合的に、第2の矯正パワー又は第2の有効矯正パワーで視力を低矯正(過剰矯正と定義することもできる)するように近視性デフォーカスを生成する球面レンズ又は略球面の高さ輪郭を含む。代替的な実施形態では、球面レンズ又は略球面レンズの高さの輪郭は、近くのファセットと同じ有効パワーを有するが、サイズが異なる。特定の実施形態では、球面レンズ又は略球面レンズの高さの輪郭は、近くのファセットとは異なるパワーを有し、近くのファセットとは異なるパワーを生成する。
【0032】
近視は、光が網膜上の代わりにその前に合焦する眼の障害である。これにより、近隣物体が正常に見えるが、遠隔物体がぼやけて見える可能性がある。
図1に示す例では、光は、眼軸長さの伸長(「軸近視」とも称される)、並びに眼の1つ以上の屈折面、特に角膜の過剰又は増加した曲率(「曲率近視」とも称される)により、網膜116の前の位置114上で合焦する。いくつかの実施形態では、合焦の変化は、眼の屈折状態(「屈折性近視」とも称される)の変化に起因することができる。
【0033】
図1では、近視眼118の図は、正常眼120と同じサイズに正規化されて示されている。新生児の目は、典型的には約16.5ミリメートルの長さであり、典型的には幼い子供の場合約19mmに成長すると理解されたい。通常、成人(18~21歳)の目は、約24ミリメートルに成長する。例示的な近視制御眼用デバイス100は、患者の現在の眼のサイズに基づいて、小児に処方することができる。成人に処方するときに、同じ条件が当てはまる。
【0034】
例示的な方法及び装置では、近視性デフォーカスは、複数のファセット通して作成され、各々、眼用装置の環状領域を形成するくさび形状のセグメントによって定義される。セグメントは、(i)近くのファセットとのセクター区切り、(ii)中心光学ゾーンによって半径方向に、及び(iii)外側のファセット直径によって境界される。各ファセットは、レンズ表面に内側に延在するベースセグメント(例えば、最低の輪郭)を有し、高さを変化させて、典型的には中心光学ゾーンの高さよりも高い球面レンズ又は略球面レンズ輪郭のセットを形成する。いくつかの実施形態では、ファセットは、中心光学ゾーンと同じ又はそれ未満である最大高さを有し得る。ファセットは、中心領域102に対して別個(すなわち、異なる)矯正パワーを有し、眼の成長を遅延させるか、又は停止するための強力な停止シグナルを生成するようにサイズ決定され、したがって、近視の形成を妨げ、又は矯正する。球面レンズ又は略球面レンズのサイズは、いくつかの方式で定量化することができる。これらのファセットのサイズ、形状、及びエリアは、ファセットの数、中心光学ゾーンのサイズ、及びファセットの半径方向の範囲の特性である。
図2Aは、各ファセットが45度離れた経線によって境界される8つのファセットを有するレンズを示す。
図3Aは、各ファセットが60度離れた経線によって境界される6つのファセットを有するレンズを示す。半径方向に、ファセットは、中心光学ゾーン境界及びファセットの外側半径方向の境界によって境界される。ほとんどの事例では、ファセットのラジアン長さは、中心光学ゾーン境界から約2mm~6mmであり、各ファセットのエリアは、中心光学ゾーンのエリアと同様又は等しくあり得る。
図2Aに示す例では、各ファセットのエリアは、中心光学ゾーンのエリアに等しい。他の寸法は、中心光学ゾーンエリアに対するファセットエリアの比率を30%~150%をもたらす。この定量化によれば、定義された追加パワーでの眼用装置の中心領域に対する球面レンズ又は略球面レンズのエリアのサイズ(エリア)比は、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%(同じ)、約105%、約110%、約115%、約120%、約125%、約130%、約140%、約145%、及び約150%である(「約」は、r2.5%パーセントを指す)。いくつかの実施形態では、「約」は、r1%パーセントを指す。
【0035】
図1に示す例では、例示的な眼用装置100のファセット環状レンズ106は各々、経線の2つ以上の軸にパワーを有し、全ての経線において実質的により高い又は完全な停止シグナル強度を維持する。対照的に、例えば
図11に示すような従来の近視制御レンズは、1つの経線(例えば、放射状経線)に公称加算パワーを有する環状部を有し得、したがって、停止シグナルに寄与して近視関連成長を遅延させるか、又は停止する垂直経線にほとんど若しくは全くパワーを生成することができない。経線を横切るそのパワーの違いは、乱視を定義し、近視眼の成長への停止シグナルでより少ない強度を生成することができる。
【0036】
近年、いくつかの「近視制御」コンタクトレンズ設計が市販されている。これらのレンズは、比較臨床試験で評価されており、近視の進行が典型的に生じる年齢層、すなわち、8~18歳の年齢層において、近視の進行率、又は近視の進行率の低減を生成することが示されている。レビュー論文では、低減率は、平均で約45%であると報告されている(Walline JJ.Myopia Control:A Review.Eye and Contact Lens(2016).42:1,3-8.)近視低減効果を担うこれらのレンズの特徴は、周辺部における近視性デフォーカスであると考えられている。すなわち、これらのレンズは、「中心/取り囲み」設計を有し、レンズの中心は、遠見視力のために眼を完全に矯正する一方で、取り囲む領域は、通常、約2ディオプターで、「プラス」方向にパワーをシフトさせることによって、低矯正する。例えば、-3.00ディオプターの近視眼の場合、中心領域は、-3.00ディオプターの完全なパワーを有するであろう。環状の周囲領域は、およそ-1.00ディオプターのパワーを有する。その環状領域は、視野の偏心領域において「近視性デフォーカス」を表す。網膜の中心、すなわち中央窩の像は合焦されている一方で、近視の低矯正により取り囲むエリアの像はいくらか合焦されていない。動物及びヒトの研究は、周辺部におけるこの近視性デフォーカスが、長さの成長を停止するための「停止シグナル」を眼に提示し、短い眼の長さが近視眼の減少をもたらす可能性があるという証拠を提供する。
【0037】
これらの既存のレンズの潜在的な欠陥、又はこれらのレンズに対する機会の喪失は、環状の取り囲む領域では、その領域の光学パワーが非常に乱視する可能性があり、乱視が明確に合焦された像の形成を妨げる可能性があることである。1つの経線、すなわち放射状経線は、眼に近視性デフォーカスを提示するが、垂直経線は同じパワー変化を有しないため、近視性デフォーカスはほとんど又は全く提示しない可能性がある。本質的に、2つの主経線が完全な量の近視性デフォーカスを提示しないため、停止シグナルの強度が過度に消失する可能性がある。ここで、例示的な近視制御眼用デバイス100の複数の別個のファセット表面106の各々は、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向108a、及び(ii)第1の方向108aに垂直な第2の方向108bの両方で変化するパワーを有して、より大きな程度の近視性デフォーカスを提供する。
【0038】
例示的なファセットレンズ
図2A、
図2B、
図3A、
図3B、及び
図3Cは、例解的な実施形態による、
図1の近視制御コンタクトレンズの例示的なファセットレンズ構成を示す。
図2Aでは、近視制御眼用デバイス100の表面プロファイル(100bとして示す)は、中心窩を見るための中心光学ゾーン102(102aとして
図2Bに示す)と、複数の均一なサイズ及び均一に離間した球面ファセットで構成された環状領域106(106aとして示す)と、を含む。
図2Bに示す例では、中心光学ゾーン102aは、4mmの直径を有し、これは、そのエリアの事前定義されたパワーに対応する。環状領域におけるファセット106aは、レンズ中心204から約3.5mmの半径208である半径方向の位置202に示す中心を有する球面輪郭を有する。
図2Bに示す例では、ファセットは、ほとんどの実施形態では、レンズのベースライン曲率(220)に対して約-16μm~+4μm(スケール210を参照)の高さプロファイル218を有し、これは、9~10mm、例えば、9.5mmであり得る。ファセットの突出部分(212として示す)が、中心光学ゾーン102aのものと同様の高さ又はパワーを有することがファセットの様々な輪郭ごとに観察され得る。ファセット輪郭、ファセット部分212はまた、ファセット輪郭中心206を有する。スケール210及び等輪郭線ごとに示されるように、ファセット輪郭の高さは、より速く変化する周辺部と比較して、目立つ部分の近くでより相対的に安定している。断面
図224は、縮尺通りに描かれていない。
【0039】
ほとんどの実施形態では、レンズは、0.5mm~1mmのベースライン厚さ(222)を有することができるが、特定の患者に対して他のサイズ及び寸法が用いられ得る。実際、例示的な寸法及びファセットの数は単に例解的であり、例えば、本明細書に記載される比率又は寸法に従って、瞳孔サイズ及び他の眼の寸法に基づいて変化させることができる。
【0040】
図2A、
図2Bに示す例は、8つのファセットがある。
図3A、
図3Bに示す例は、6つのファセットがある。他の実施形態では、4~16個のファセット(例えば、106、106a)以上が実装され得る。ファセット(例えば、106、106a)の輪郭中心の中央又はピーク領域は、
図2A、
図2B、
図3A、
図3Bに関連して示され、記載されるのと同じ半径方向の位置に位置し得る。他の実施形態では、ファセット(例えば、106)の輪郭中心の中心又はピーク領域は、異なる半径方向の位置(図示せず)に位置し得る。更に他の実施形態では、レンズ設計は、第2の半径方向の位置に位置し、かつ第1の半径方向の位置におけるファセット間に位置する第2のファセットのセットを含むことができる(
図6Bを参照)。変形は、異なる設計の実施形態として用いられるか、又はいくつかの実施形態では、意図された収差を作成するために用いられ得る。
【0041】
図3A及び
図3Bは、6つのセグメント化された球面輪郭ファセット106bを含む別のファセットレンズ設計の表面プロファイルを示す。
図3Bでは、近視制御眼用デバイス100bの表面プロファイルは、中心窩を見るための中心光学ゾーン102aと、6つの均一なサイズ及び均一に離間したファセットで構成された環状領域106bとを含む。
図3Bに示す例では、中心光学ゾーン(中心窩を見るための)も直径4mmである。取り囲むファセットは、半径方向及び垂直経線で異なる曲率を有するファセットにより、形状が楕円形である高さ輪郭を有する。
【0042】
図3A及び
図3Bに示す例は、6つのファセットがある。他の実施形態では、4~16個以上のファセットが実装され得る。これらのファセットは、
図3A及び
図3Bに示すように、同じ半径方向の位置に位置し得る。他の実施形態では、ファセットは、異なる半径方向の位置に位置し得る。
【0043】
図2A及び
図2Bと同様に、
図3A及び
図3Bのファセットレンズ設計は、眼の成長に対する停止シグナルを生成するように構成されている。
図3A及び
図3Bの輪郭は、各ファセットの表面形状がトーリック、又は球面円筒形であるため、楕円形である。球面円筒形状は、近視性デフォーカスを生じさせ、周辺部における大部分の眼に典型的な増加する乱視を矯正することができる。ファセットレンズ設計106の各々は、(i)中心領域の中心位置から眼用デバイスの周辺まで半径方向に延在する第1の方向、及び(ii)第1の方向に垂直な第2の方向の両方で変化するパワーを有する。そうすることで、近視性デフォーカスの完全又はより大きい強度が全ての経線で維持される。寸法及びファセットの数は可変であるが、これらの特性は、典型的な瞳孔サイズ及び他の眼用寸法が与えられると、おそらく妥当な値である。
図3Bに示す例では、寸法は、事前定義された瞳孔サイズよりも約15%大きい、直径3.5mm(216として示す)の瞳孔を意図した設計のために示される。瞳孔は、照度の変化により、サイズが約20%変化し得ることに留意する。
【0044】
図3Cは、ファセットのセグメント境界の代替的な構成を示す。
図3Cでは、近視制御コンタクトレンズ100dは、ファセット又はセグメントの境界302が、レンズの中心204と交差する半径方向の線304に直線又は平行ではないファセット106(106cとして示す)を有する。
【0045】
図3Cはまた、事前定義された半径方向幅を有するファセット又はセグメント境界306を有する近視制御コンタクトレンズ100eの代替的な構成を示す。ファセット又はセグメント境界306は、例えば、製造可能性のための代替的な構成を提供し得る。
【0046】
図5は、瞳孔に関連する近視制御眼用デバイス100の例示的な寸法を示す。
図5Aでは、事前定義されたパワーによって定義される中心領域102aが、事前定義された瞳孔サイズ216に対して示される。
図5Aは、例示的な最小瞳孔サイズ502及び最大瞳孔サイズ504を含む、事前定義された瞳孔サイズ216に関連する瞳孔サイズの例示的な変動を示す。中心領域102aが、中心窩に矯正パワーを提供するために、患者の瞳孔サイズと同様に実質的にサイズ決定された特徴であることを観察することができる。いくつかの実施形態では、中心領域は、事前定義された瞳孔サイズの約80%~120%以内であるように指定することができる。代替的に、中心領域は、最大の事前定義された瞳孔サイズの80%~110%以内であるように指定することができる。近視制御眼用デバイスのファセット及び中央部分の直径は、例えば、視野にわたる像形成に重要な領域を囲むために、約10mmに制限され得る。実際のコンタクトレンズは、例えば、直径が16mmまで、より大きくなる。
【0047】
また、環状領域及びそこに位置する対応するファセットが、眼の解剖学的構造に関連して、本明細書に記載されるように、実質的にサイズ決定された特徴であり、近視性デフォーカス矯正パワーを提供することも観察することができる。直径、例えば、1mm~2mm以下を有するより小さいファセットサイズは、それらのサイズと関連するピンホール効果により、減少した近視性デフォーカス効果を生成し得る。
【0048】
上記のように、例示的な近視制御眼用デバイス100は、患者の現在の眼のサイズに基づいて、小児に処方することができる。成人にデバイスを処方するときに、同じ条件が当てはまる。
図4は、例解的な実施形態による、
図2Aの近視制御眼用デバイス100の例示的なサイズを示す。
図4に示すように、近視制御眼用デバイス100(402として示す)は、コンタクトレンズの端部まで延在するようにサイズ決定されるファセットを含む。この例では、レンズサイズは、約10mm~14mmで変化することが示されている。いくつかの実施形態では、サイズは、10mmよりも小さくすることができる。いくつかの実施形態では、サイズは、本明細書に記載されるように、14mmよりも大きくすることができる。また、
図4に示すように、近視制御眼用デバイス100(404として示す)は、コンタクトレンズの事前定義された半径方向の位置まで延在するようにサイズ決定されるファセットを含む。
図4に示す例では、デバイス404は、デバイス402と同じ全体寸法を有する必要があることが示されるが、ファセットは、その全体寸法よりも2mm小さくサイズ決定されている。本明細書に記載される近視制御眼用デバイスのいずれも、402ごとにコンタクトレンズの端部まで、又は404ごとに事前定義された半径方向の位置まで延在するように構成され得ると理解されたい。
【0049】
近視制御眼用デバイスの例示的な構成
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、及び
図6Eは、例示的な実施形態による、例解的な近視眼制御眼用デバイス100の例示的な構成を例解する。
図6Aでは、
図2Aの近視制御眼用デバイス100(600aとして示す)は、中心直径パラメータ(光学ゾーン直径、中心(mm)「Center Oz」パラメータ602とも称される)及び関連するパワー604(高さが変化する)、ファセットセグメントの数(「#Segs」606とも称される)及び関連するパワー608(高さが変化する)、ファセットセグメントの中心とデバイス中心との間の半径長さ(セグメントの光学中心までの距離「OC Dist」610とも称される)、レンズのベースパワー(612)、レンズサイズ(mm)(614)によって定義されるように示される。
【0050】
一例では、近視制御眼用デバイス100(600bとして示す)は、デバイス600aのものと同じ半径方向の長さパラメータで構成されているが、ファセットサイズが低減された状態で構成されて示されている。図では、ファセットの輪郭620は、中心領域とほぼ同じ高さを有する。
【0051】
別の例では、近視制御眼用デバイス100(600cとして示す)は、デバイス600aのものと比較して、より大きい半径方向の長さパラメータを有するファセット輪郭を有するファセットで構成されて示されている。図では、ファセットの輪郭は、中心領域とほぼ同じ高さを有する。
【0052】
別の例では、近視制御眼用デバイス100(600dとして示す)は、デバイス600aと同じ半径方向の長さパラメータを有するが、より高いファセット輪郭を有するファセット輪郭を有するファセットで構成されて示されている。図では、ファセットの輪郭は、中心領域とほぼ同じ高さを有する。
【0053】
図6Bでは、近視制御眼用デバイス100(600eとして示す)は、デバイス600dのものと同じ半径方向の長さパラメータ及びファセット高さで構成されて示されているが、ファセットの数が「8」~「7」に減少されている。この図では、ファセットの輪郭は、中心領域と同じ高さを有する。
【0054】
図6Cでは、近視制御眼用デバイス600aは、一次ファセットセグメント(例えば、106)及び二次ファセットセグメント622のセットで構成された(デバイス600fを介して)示されている。一次ファセットセグメント及び二次ファセット622の各々は、輪郭620及び624を介して示される別々のピークを有する。図では、一次ファセット106の輪郭620は、中心領域の輪郭620とほぼ同じ高さであるが、しかしながら、輪郭620及び622の高さは、同じである必要はない。
図6Cは、一次ファセットセグメント(例えば、106)及び二次ファセットセグメント622でも構成された第2の近視制御眼用デバイス600gを示す。ここで、第2のファセットセグメント622は各々、第1のファセットセグメント106よりも大きいエリアを有する。
図6Dでは、デバイス600h及び600iを介して、異なる高さプロファイルの6つの対称形状の楕円形ファセット輪郭を有する2つの異なるファセット輪郭構成を有するように調整された近視制御眼用デバイス600aが示されている。すなわち、楕円形ファセット輪郭は、半径方向経線及び垂直経線において異なる曲率を有する表面の高さ輪郭である。
【0055】
図6Eでは、近視制御眼用デバイス600aは、デバイス600j、600k、600lを介して、非対称形状の楕円形のファセット高さ輪郭を有することが示されている。実際、対称形状の楕円形ファセットに加えて、例示的な近視制御眼用デバイス100は、非対称形状の楕円形ファセットを有するようにパラメトリックに定義され得る。非対称形状の楕円形ファセット高さ輪郭(例えば、デバイス600j、600k、600lの)を使用して、所望される場合に、収差を導入することができる。
【0056】
実験結果及び例
近視制御眼用デバイス100のシミュレーションを介して評価するための研究を行った。この研究は、例えば、
図2A及び
図3Aに示すように、Walline JJ.[6]に記載されるような別の多焦点レンズ設計に関連して、近視制御眼用デバイス100を評価した。
図9Aは、2つの設計の各々の斜視
図900a、900bを示す。
図10A及び
図10Bは、
図9Aのレンズについての光線トレーシングのシミュレーション結果を示す。
図9Bは、別の多焦点レンズ設計900c及び別の近視制御眼用デバイス900dを示す。
図12A~
図12Eは、
図9Bのレンズについての光線トレーシングのシミュレーション結果を示す。
【0057】
シミュレーション方法論:カスタムアプリケーションは、Matlabを介して、パラメータのセットに対して多焦点レンズ設計及び近視制御眼用デバイス(例えば、100)を生成するために開発された。カスタムアプリケーションは、近視制御眼用デバイス100の三次元プロファイルに対して、Matlabグラフィカルユーザインターフェースを介してパラメータを受信し、異なるレンズ構成の近視性デフォーカス性能を評価するために使用され得る異なる視認条件下で像特性を出力するために光線トレーシングに関連する分析を実行するように構成された。CODE V(Synosysによって製造される)及びOpenStudio(Zemaxによって製造される)を含む他の光線トレーシングソフトウェア及び分析は、近視制御眼用デバイスを評価又は生成するために使用され得る。
【0058】
Matlabシミュレーションは、(i)後続の計算に必要な変数の作成及び初期化、(ii)レンズ表面の生成、(iii)光線トレーシング分析の実行、並びに(iv)網膜像のプロットの生成を含む一連のステップを通じて実行された。コンタクトレンズは、角膜表面、前表面及び後表面を有する結晶性レンズ、並びに網膜の4つの表面からなるモデル眼に配置される。
【0059】
レンズパラメータ及び変数(808)。
図7は、レンズパラメータ及び光線トレーシング分析パラメータのセットを受信する、研究で用いられるグラフィカルユーザインターフェース700の一例を示す。インターフェースは、
図6Aに関連して記載されるパラメータ(例えば、602、604、606、608、610、612、614)を含み得る。
図7Aに示す例では、インターフェース700は、均一なサイズ及び均一に離間した球面ファセット(例えば、106)を有する近視制御眼用デバイス(例えば、100a)のパラメータ、並びに光線トレーシング評価のパラメータを含んだ。
【0060】
レンズパラメータのリストを表1に要約し、光線トレーシング評価のリストを表2に要約する。
【表1】
【表2】
【0061】
図8は、例解的な実施形態による、近視制御眼用デバイスを生成及び評価するプロセス800を示す。この研究では、シミュレーションは、最初にGUI(例えば、700)から808特徴パラメータを取得する。
【0062】
レンズ表面生成(810、812)。研究で使用されるMatlabシミュレーションは、「Dist Power」パラメータを通じて事前定義された遠見視力についての矯正を提供するように構成された所与の直径の近視制御眼用デバイス(例えば、100)用のレンズ表面を生成するように構成された。シミュレーションは、最初に2Dレンズプロファイルを生成する。高さプロファイルzが追加されたファセット及び中心光学ゾーンは、サイズ[200,200,1]及び[250,250,1]のマトリックス[x,y,z](「Z matrix」)として、(x,y)位置のセットについて最初に確立された。マトリックスサイズ200×200及び250×250は、シミュレーションに十分であることが判明したが、レンズを製造するときには、より高い解像度を使用するべきである。
【0063】
次に、シミュレーションは、2Dレンズ表面を「# of Segs」パラメータを通じてセグメントの数にセグメント化/分割し、「Seg Add」パラメータを通じて離間した球面ファセットの追加のパワーを定義する。シミュレーションは、「OC Dist」パラメータに基づいて、これらのセグメントの各セグメントの光学中心を定義する。
【0064】
次に、Matlabシミュレーションは、高さプロファイルzが追加されたファセットと中心光学ゾーンをラッピングすることによって3D凸レンズを作成し、Zマトリックスを介して、事前定義されたMatlab関数を使用して角膜モデルにする-パネル818を参照。ラッピングは、当初球面座標で指定されていた方位角、半径方向の距離、及び仰角を含むレンズの厚さをとり、プロット動作を介して球面座標から直交座標にレンズの厚さを変換することによって実行された。シミュレーションでは、Matlab輪郭演算子を使用して、「Zマトリックス」のアイソラインを含む3D輪郭プロットを作成した。レンズ用のベースライン曲率は、レンズ材料の事前定義された屈折率値に基づいて確立された。シミュレーションは、光線トレーシング評価用に後表面を用いた。3D凸レンズの前表面は、ベース凸部から延在する追加の凸形状を含む。
【0065】
セグ高さ輪郭の楕円形は、異なる曲率を有するセグの2つの主経線の結果であった。このトーリック形状、したがって楕円形の輪郭を使用して、「Astig Design」パラメータによって定義された視野角で目の周辺乱視を矯正した。周辺乱視は、光学系としての眼の特性である。
【0066】
比較分析を提供するために、シミュレーションはまた、MiSightコンタクトレンズの第2のレンズ表面を生成した。コンタクトレンズは、同じ光学ゾーン直径及びベースカーブを含む、近視制御眼用デバイスと同じグローバルパラメータを用いた。シミュレーションは、「Ring Add」パラメータを通じて追加パワーの2つの同心円リングを追加した。
【0067】
光線トレーシング分析(814、816)。このシミュレーションは、角膜表面、前表面結晶表面、後結晶表面、及び網膜表面を含むコンタクトレンズモデルを用いた。光線トレーシング分析(814)を角膜表面の外側の位置で初期化し、「# of Rays parameters」に対応する光線のセットが「Target Type」パラメータによって定義された標的モデルを介して送信された。
【0068】
各光線は、遠隔標的に由来し、標的から眼までの距離を横断し、コンタクトレンズ表面で屈折し、次いで、コンタクトレンズ/角膜界面で屈折する。角膜から瞳孔までの距離を横断し、瞳孔を通過した後、水晶体の前表面で屈折し、水晶体の厚さを横断し、眼の水晶体の後表面で屈折した。次いで、各光線が網膜まで並進され、光線が網膜と交差する位置が集合的に網膜像を形成した。既定の数の光線が蓄積されるまで、個々の光線がトレースされた。デフォルトの標的文字「E」(824として示される)は、25,000のランダムに位置付けられた点を含む。各点は、最終的に網膜に落ちる一連の並進と屈折を受ける1つの光線の出発点を表していた。
【0069】
トレーシングを実行するために、各表面における各光線は、4×1アレイに配置された4つの数で表された。このアレイの最初の2つの要素は、ラジアンでの光線の水平及び垂直傾斜であった。2番目の2つの要素は、メートル単位での光線の水平及び垂直位置であった。各表面において、光線は、4×4屈折マトリックスによって「屈折」した。各4×1光線マトリックスにこの屈折マトリックスを掛けた結果、新しい4×1アレイ、すなわち、その光線がその屈折面を去ったときの新しい光線パラメータがもたらされた。各表面において、光線方向は変化したが、位置は変化しなかった。表面間では、光線が介在する空間を横断し、4×1の光線マトリックスは、新しい表面に到達すると、4×1の光線アレイに4×4の「並進」マトリックスを掛けることによって見出された。1つの面から次の面への各並進で、光線の位置は変化したが、それらの斜面は変化していなかった。この一連の交互の並進及び屈折は、この光線トレーシング方法を構成した。
【0070】
パネル826は、25,000の光線が通過し、開口ストップ、すなわち、眼の瞳孔を通過するコンタクトレンズ上の位置を示す。この特定の例では、25°の周辺視野角が使用された。6つの周辺セグメントは、この例で使用される6つの追加セグメントの境界を表した。
【0071】
同じ光線トレーシング手順が、第2の同心円リング設計(パネル828を介して示す)で実行された。
【0072】
次いで、シミュレーションは、光線トレーシング分析から生成された像を出力した(816)。パネル830、832は、コンタクトレンズ表面に到達すると眼の瞳孔を横断するセットされた光線を示す。レンズのハッチングされた領域は、追加されたパワーの同心円リング領域を示す。パネル830、832において、黒いドットは、コンタクトレンズの「距離」パワー領域を通過するものである。青いドットは、各レンズの「追加」部分を通過する光線である。
【0073】
図8に示す例では、2つの像830、832は、水平周辺視野において25°で配置された文字「E」についてのものである。左の像は、同心円リング設計によって生成され、右の像は、ファセット設計によって生成された。黒いドットで構成された像は、コンタクトレンズの遠見視力部分によって形成された像である。青いドットは、コンタクトレンズの「追加」部分によって形成された像である。黒い像は、両方とも各レンズの距離部分によって形成されるため、ほぼ同一である。眼の周辺乱視が各レンズの遠隔合焦領域で矯正されないため、両方ともぼやけている。2つのレンズの追加領域の合焦特性がかなり異なるため、青いドットによって形成される像は異なる。ファセットレンズの追加されたセグメントは、セグメントの全ての経線において完全な追加パワーを有するため、右の像の青いドットで構成される像は、より分散され、すなわち、よりぼやけている。左側の同心円リングレンズは、リングの半径方向の経線にパワーを加えているが、垂直方向の経線にはパワーを加えておらず、その結果、像のぼやけが少なくなる。本質的に、この同心円リングレンズは、ファセットレンズよりも少ない近視性デフォーカスを生成する。
【0074】
パネル830、832及びパネル834、836において像を生成する条件は、硝子体深度においてのみ異なった。パネル834、836において、網膜は、各レンズの公称+2.00D追加パワーの焦点面と一致するように眼内で前方に移動されている。黒いドットによって、すなわち各レンズの遠見領域によって形成された像は、網膜が遠見焦点面から前方に移動されたためにぼかされる。青いドットで構成された像は、左の像と右の像ではかなり異なる:すなわち、ファセット設計(右)は、これらの追加されたセグメントが全ての経線にパワーを追加し、この短い眼でより鮮明な合焦を生成するため、より明確に合焦される。同心レンズからの像は、全ての経絡に完全な追加パワーを持っているわけではないため、像は全ての経線で合焦されているわけではない。ファセット設計は、合焦されたものと合焦されていないものとの間により鮮明な区別を作成することが観察された。すなわち、ファセットレンズは、合焦されていない像(長い目の場合)からより明確に合焦された像(短い目の場合)への顕著な移行を示す。眼の成長を支配する停止シグナル仮説と一致して、ファセットレンズは、眼の成長に対するより強い停止シグナルを生成する。
【0075】
球面ファセットを有する近視制御眼用デバイス:
図9Aでは、9.5mmのベース曲率半径を有するレンズについて、レンズ(900a、900b)の全体的な曲率を示す。それぞれの環状特徴(すなわち、中心から取り囲むエリアへのパワーの変化)は、実際の差が小さすぎて拡大なしで見ることができないため、環状ゾーンにおける特徴を示すために50倍に拡大される。
【0076】
図10A及び
図10Bは、例えば、近視制御眼用デバイス100のシミュレーション結果を示す。
図10Aでは、0°(まっすぐ前方)、10°、20°、及び30°を含む4つの異なる視野角(偏心)でレンズ900a及び900bの両方によって形成された網膜像の例が示されている。上の行1002は、眼の瞳孔にも入るレンズを通る光線の入射点を示す。真ん中の行1004は、従来の設計(例えば、デバイス900a)の網膜像を示し、下の行1006は、ファセット設計(例えば、デバイス900b)の網膜像を示す。
【0077】
各設計及び偏心(1008~1022)について、光線トレーシング分析によって生成された反転「E」は、中心光学ゾーンが2つのレンズについて同一であるために、同じ像品質を有する可能性が高いことが観察され得る。偏心が増加すると(1010~1014、1018~1022)、光の大部分は、取り囲む領域を通ってレンズを横断する。取り囲む領域(例えば、104)は異なるパワーを有するため、主像(1008、1016)と比較して点の「クラウド」の表現を有する合焦されていない像(1010~1014、1018~1022)を形成する。
【0078】
光線トレーシング分析は、2つのレンズ設計(900a、900b)間で異なるクラウドパターンを生成することが観察され得る。
図10Bは、20°の視野角1024についてのレンズ900a、900bと、50cm(取り囲む環の+2.00D「追加」パワーに対応する)に配置された標的との間のクラウドパターンの差を示す。従来のレンズ評価(1026)で見られるように、標的「E」は、明確な合焦に達しない。環状領域の非点収差のため、どのような視認距離に対しても明確な像が形成されない。ファセットレンズの場合、反転Eの明確な像が像内に示され、全ての経線が完全に追加されたパワー(例えば、+2.00Dの追加パワー)を有するため、明確に合焦される。全ての経線がその完全なパワーを有するため、眼の成長に対するはるかに強い停止シグナルが作成される。この設計タイプのレンズは、設計された既存のレンズよりも近視制御レンズとしてはるかに有効である可能性がある。
【0079】
近視のデフォーカスと眼の成長に関する考察:過去数十年にわたって、多くの動物及びヒトの研究は、眼の屈折発達が眼の光学的矯正によって影響を受けるという証拠を提供してきた[1,2]。活発な眼の成長の期間中の多焦点コンタクトレンズを用いる眼の矯正は、その眼の屈折発達を修正することができることが観察されている[2~5]。この観察を説明するいくつかの仮説が提案されている[6]。有力な仮説は、周辺網膜が眼の成長を調節する際に重要な役割を果たしているということである。眼は、「正視化」と呼ばれるプロセスを最小限に抑えるために、自身の成長を支配する傾向がある。
【0080】
正視は、遠く離れた無限遠にある物体が鮮明に合焦されており、水晶体がニュートラル又はリラックスした状態にある視覚状態である。正常な眼の状態は、角膜と眼の水晶体の屈折力と眼の軸方向の長さのバランスが取れたときに達成され、これは、網膜に正確に光線を合焦させ、完璧な視力がもたらされる。正視化は、正視に向かう眼の発達である。
【0081】
例えば、短すぎる眼に生じる周辺遠視性デフォーカスは、眼の成長を促進し、遠視を減少させる。同様に、周辺近視性デフォーカスは、長すぎる眼に生じる(本明細書では近視性デフォーカスとも称される)が、眼の成長を遅らせ、近視の進行を遅延させる可能性がある。中心窩と比較して、周辺網膜は中心窩よりもエリアが非常に大きいため、屈折異常に不釣り合いな影響を及ぼすと仮定されている。周辺網膜は、より低密度の光受容体及びより低い視覚解像度を有するにもかかわらず、非常に大きい周辺網膜エリアが、眼の正視化プロセスを支配する。
【0082】
図11A~
図11Dは、例解的な実施形態による、近視性デフォーカスのモデリングの態様を示す。具体的には、
図11Aは、偏心の関数としての錐体光受容体密度を例解している[7]。平均したヒトの網膜にはおおまかに合計600万個の錐体があり、中心窩のピーク密度は10万個錐体/mm
2を上回る。偏心があると、円錐密度は急速に低減する一方で、網膜エリアは増加する。
図11Aは、中心窩からのいくつかの所与の半径内の錐体の総数の割合を示している。例えば、全ての錐体の約57%が中心窩から10度超にある。
【0083】
末梢性近視性デフォーカスが近視の進行を妨げる様式の正確な生理学的メカニズムは、依然として進行中の研究のトピックである。しかしながら、錐体の大部分は中心窩の外側にあるため、例示的な近視制御眼用デバイス100は、網膜にわたる光受容体の所望の分布に光を眼内に合焦させるという効果をもたらすように正視化を促進するように構成されている。マウス研究[8]では、桿体が正視化に関与しているという証拠があり、したがって、例示的な近視制御眼用デバイス100は、この基礎となる科学的仮定の中で近視制御を改善することもできる。桿体が正視化のプロセスに関与する場合、桿体が中心窩にも存在せず、中心窩から約20度でそれらの最高密度に達する可能性があるため、錐体光受容体のそれと同様の効果が、例示的な近視制御眼用デバイス100によって生成され得る。
【0084】
この正視化の理論は、特に近視の進行を防ぐように設計された屈折矯正戦略の開発につながっている。これらのアプローチは、近視が典型的に発達する眼の成長の段階中に小児に使用される周辺近視性デフォーカスを送達するように設計されている。これらの矯正の一部には眼鏡レンズの設計[9]に関与する一方で、ほとんどのアプローチはコンタクトレンズの設計である。これらの設計は、一般に回転対称であり、異なるパワーの1つ以上の同心リングを有する。「中心距離」レンズは、レンズの中心領域を通る中央窩(すなわち、視覚の中心)での距離に対して完全な屈折矯正を提供する。増加した「プラス」矯正パワーの1つ以上の環状領域内のその中心領域を取り囲む。そのプラスパワーは、周辺網膜に近視性デフォーカスを生成する可能性がある。近視性デフォーカスはまた、遠隔物体の像が網膜の前の最良の焦点にあることを意味し、長さが成長を停止させるための眼に対する「停止シグナル」を表すことができる。同様の効果は、オルソケラトロジー、又は「オルソK」と呼ばれる近視低減への臨床的アプローチで生じる。オルソKでは、中心角膜に物理的に接触して平坦化する一晩のコンタクトレンズが装着され、取り囲む角膜を急勾配にすることをもたらす。これは、中心距離二焦点コンタクトレンズ[10,11]と同様の光学プロファイルを生成することができる。即効性は、近視の低減であるが、眼の成長を遅延させるという長期的な効果も見出されており、周辺近視性デフォーカスを介した近視制御の考え方と一致する結果である。
【0085】
図11Bは、角膜(及びコンタクトレンズ)の周辺領域が、最終的に周辺網膜に当たる光を屈折させる動作を例解している。
図11Bは、眼の角膜及び虹彩/瞳孔を示し、光線の束がその角膜によって屈折し、眼の瞳孔に入っている。
図11Bはまた、角膜が約4mm瞳孔の前方にあるため、周辺視野からの光線が角膜の周辺領域によって屈折することを示している。
【0086】
コンタクトレンズ又はオルソKのいずれかによって周辺近視性デフォーカスを生成する両方のプロセスは、近視の進行を遅延させることが示されている。停止シグナルの強度は、近視性デフォーカスの大きさにも関連していることが示されている[12]。光線トレーシング分析を通じて、例示的な近視制御眼用デバイス100と同心円リング設計との間の違いは、網膜周辺部におけるレンズによって形成される網膜像の品質であることが観察され得る。従来の環状リング設計では、半径方向の経線に沿ってディオプトリパワーが増加するが、垂直経線にはパワーがほとんど又は全く増加しない。それは乱視的なディオプトリパワーを生み出す。実際、停止シグナル強度の観点からは、そのパワーは、環状領域の両方の主経線で増加したディオプトリパワーが発生した場合のパワーの半分にすぎない。
【0087】
多焦点コンタクトレンズ設計は、全ての経線においてパワーが完全なパワーである環状領域を実装する。
図9B(デバイス900c)は、このタイプの設計の1つの可能な実装、すなわち、6つの取り囲むゾーンは各々、全ての経絡において追加のプラスパワーを有するレンズ様ファセットからなることを示す。この実装では、これらのゾーンはまた、典型的な眼に存在する斜め乱視を補償する[13]。その結果、これらの領域はトーリック曲率を有する。このタイプの設計は、全ての経線においてプラスパワーを有し、全ての経線において近視性デフォーカスを生成し、したがって、眼の成長へのより強い停止シグナルを生成する。例解されているのは、このレンズ設計の多くの変形例のうちの1つ、すなわち、例えば、ファセットの数、中心光学ゾーンのサイズ、ファセットの光学中心までの距離、及びファセットの追加されたパワーは、全て選択可能であるものである。
【0088】
図11C及び
図11Dは、各々、追加のシミュレート網膜像を例解し、同心円リング設計と、例示的な近視制御眼用デバイスとの比較として結果を示す。
図11Cは、25度の視野角で25分の弧角サイズの星の標的の網膜上の像を示す。標的は光学的無限遠にあり、眼は、中心光学ゾーンのパワーとの距離について矯正される。左パネル及び右パネルは、それぞれ、同心リング及びファセット設計によって形成される像である。各々において、黒いドットで構成される像は、距離矯正された光学ゾーンによって形成される像である。距離矯正ゾーンでは眼の周辺乱視が矯正されていないため、両方ともいくらかぼやけている。青いドットで構成される像は、プラスパワーを有する環状領域によって形成された標的の像である。これらの領域は近視性デフォーカスを提供するため、それらの像はぼやけているが、デフォーカスの量は左パネルと右パネルの間でいくらか異なる:すなわち、右側のデフォーカス像(青いドット)の広がりは、左側のものよりも約2倍大きく、ファセット設計による近視性デフォーカスのより大きい大きさを示している。追加的に、レンズの近距離領域と遠見領域とによって屈折する光の割合に差がある。この視野角では、ファセット設計では、光の35%が、環状設計では約32%であるのに比較して、レンズの「追加」部分を通過する。
【0089】
図11Dは、像平面(すなわち、網膜)が前方に移動して、追加されたプラスパワーの公称像平面と一致する、同じ2つのレンズを例解する。この場合、それは+2.00Dの追加されたパワーである。青いドットで構成された像を比較すると、ファセット設計は、はるかに鮮明に合焦した像を生成することがわかる。これは、眼の成長に対する停止シグナルの強度の別の態様である。標的距離が遠隔から近隣までわたるため、周辺網膜では、合焦されたもの(より長い目の長さ)と合焦されていないもの(より短い目の長さ)の区別がはるかに明確である。この合焦されている像と合焦されていない像の区別は、周辺近視性デフォーカスが眼の成長に影響を及ぼすという理解に従って、ファセット設計がより強い停止シグナルを眼に提示するという期待につながるであろう。
【0090】
対称形状の楕円形ファセットを有する近視制御眼用デバイス:
図9Bは、従来の多焦点レンズ900c及び例示的な近視制御眼用デバイス100(900dとして示す)の図を示す。レンズ900cは、増加したプラスパワーを提供するために、2つの同心リングを含む。中心領域は、第2の同心リングと同様に、完全な距離屈折矯正を提供する。追加されたパワーを有するリングは、周辺網膜に近視性デフォーカスを提供する。水平線によって遮断されたレンズのプロファイル上に示すクロス902は、追加されたパワーの完全な量を有する。垂直線は、曲率において未変化であり得、したがって、有効的にパワーは増加しない。レンズ900cの結果は、乱視パワーであり、パワーの公称増加の半分にすぎない平均(又は球面等価)パワーである。
【0091】
図12A~
図12Eは、
図3Bの近視制御眼用デバイス100b(900cとして示す)のシミュレーション光線トレーシング結果と、
図9Aの従来のレンズ設計900aの光線トレーシング結果を介した近視性デフォーカス態様を示す。
図12B、
図12D、及び
図12Eは、2つのレンズ(100b及び900b)について、25°偏心(視野角のオフセット)、35°偏心率、及び中心窩視力での光線トレーシングの結果を示す。
【0092】
図9Aの近視制御眼用デバイス900bの結果と同様に、反転された「E」は、再び、中心光学ゾーンが2つのレンズについて同一であるという事実により、同じ像品質を有する。
図12B及び
図12Dでは、2リング設計(1208、1212)の光線トレース1204のものと比較して、より大きな割合の光が近視眼制御眼用デバイス900b(1206、1210を参照)の取り囲む領域を通ってレンズを横断することが観察され得る。ファセット106と関連する取り囲む領域は異なるパワーを有するため、それは、主像の上部分、下部分、及び右部分1218への点の「クラウド」として図面に見られる合焦されていない像を形成する。対照的に、リング設計の考察された関連する乱視のために、明確な像は、光線トレース結果1204及び1212内の視認距離に対して形成されない。ファセットレンズ結果1202について、像が明確に合焦されていることが観察され得る。明確な合焦は、眼の成長に対するはるかに強い停止シグナルを構成する。したがって、近視制御眼用デバイス900bは、近視制御レンズとしてはるかに有効であり得る。
【0093】
図12Cでは、
図12Aのセグメント化されたファセットレンズ設計100b及び
図2の従来のレンズ設計の両方が、
図12Bとしての25°の視野角のオフセット及び60°のレンズ回転に供される。1206における
図12Cの像品質は、
図12Bの1202とほぼ同一であり、セグメント化されたファセットレンズ106が回転に対して寛容であることを示す。
【0094】
本開示の例示的な実施形態は、いくつかの事例では本明細書に詳細に説明されるが、他の実施形態が企図されることを理解されたい。したがって、本開示は、その範囲が、以下の説明に記載される、又は図面に例解される構成要素の構成及び配置の詳細に限定されることを意図するものではない。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方式で実施又は実行されることが可能である。
【0095】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数参照を含むことにも留意されたい。範囲は、本明細書において「約」又は「5おおまかに」1つの特定の値から、及び/又は「約」又は「おおまかに」別の特定の値までとして本明細書に表現され得る。このような範囲が表現されるときに、他の例示的な実施形態は1つの特定の値、及び/又は他の特定の値を含む。
【0096】
「備える(comprising)」、「含有する(containing)」又は「含む(including)」によって、少なくとも名前の化合物、元素、粒子、又は方法ステップが、組成物、物品又は方法内に存在するが、他のこのような化合物、材料、粒子、方法ステップが、名前のついたものと同じ機能を有するとしても、他の化合物、材料、粒子、方法ステップの存在を排除しないことを意味する。
【0097】
例示的な実施形態を記載する際に、専門用語は、明確にするために頼りにされる。各用語は、当業者によって理解されるようなその最も広い意味を企図し、同様の目的を達成するために同様の様式で動作する全ての技術的均等物を含むことが意図される。方法の1つ以上のステップの言及が、明示的に識別されたこれらのステップ間に追加の方法ステップ又は介在する方法ステップの存在を排除しないことも理解されよう。方法のステップは、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されるものとは異なる順序で実行され得る。同様に、デバイス又はシステム内の1つ以上の構成要素の言及が、明示的に識別されたそれらの構成要素間の追加の構成要素又は介在する構成要素の存在を排除しないことも理解されよう。
【0098】
本明細書で考察されるように、「対象」は、任意の適用可能なヒト、動物、若しくは他の生物、生体若しくは死体、又は他の生物学的若しくは分子構造若しくは化学的環境であり得、対象の特定の構成要素、例えば、対象の特定の組織又は流体(例えば、生体の対象の身体の特定のエリア内のヒト組織)に関連し得、これは、本明細書で「対象のエリア」又は「対象の領域」と称される対象の特定の位置にあり得る。
【0099】
本明細書で考察される場合、対象はヒト又は任意の動物であり得ると理解されたい。動物は、哺乳動物、獣医動物、家畜動物又はペット型動物などを含むが、これらに限定されない、様々な任意の適用可能なタイプであり得ることを理解されたい。一例として、動物は、ヒト(例えば、ラット、イヌ、ブタ、サル)などと同様の特定の特徴を有するように具体的に選択された実験動物であり得る。対象は、例えば、任意の適用可能なヒト患者であり得ることを理解されたい。
【0100】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、おおまかに、領域内、おおよそ、又はその周りを意味する。「約」という用語が数値範囲に併せて使用されるときに、それは、記載された数値の上及び下の境界を拡張することによってその範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、別途記載されない限り、本明細書では、記載された値を10%の分散で上回る、及び下回る数値を修正するために使用される。
【0101】
同様に、エンドポイントによって本明細書に列挙される数値範囲は、その範囲内に含まれるサブ範囲を含む(例えば、1~5は、1~1.5、1.5~2、2~2.75、2.75~3、3~3.90、3.90~4、4~4.24、4.24~5、2~5、3~5、1~4、及び2~4を含む)。その全ての数及び分数が「約」という用語によって修飾されると推定されることも理解されたい。
【0102】
以下及び本明細書を通して列挙される以下の特許、出願、及び刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
参考文献
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【国際調査報告】