(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】ナノワイヤネットワーク
(51)【国際特許分類】
B22F 9/30 20060101AFI20240501BHJP
C01B 32/977 20170101ALI20240501BHJP
B22F 1/054 20220101ALI20240501BHJP
C22C 28/00 20060101ALN20240501BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
B22F9/30 Z
C01B32/977
B22F1/054
C22C28/00 B
C22C12/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568441
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022062149
(87)【国際公開番号】W WO2022234014
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522188060
【氏名又は名称】フンダシオン、イムデア、マテリアレス
【氏名又は名称原語表記】FUNDACION IMDEA MATERIALES
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フアン、ホセ、ビラテラ、ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】リチャード、サンティアゴ、ショイフェレ
(72)【発明者】
【氏名】イサベル、ゴメス、パロス
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル、バスケス、プフロー
【テーマコード(参考)】
4G146
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4G146MA14
4G146MB04
4G146NA13
4G146NB05
4G146NB16
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4K017AA02
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4K017EK07
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4K018BA11
4K018BA20
4K018BB02
4K018BB05
4K018BC28
(57)【要約】
本発明は、ナノワイヤのネットワークを製造する方法に、前記方法によって得ることのできるナノワイヤのネットワークに、ネットワークを含む不織材料に、ネットワークを含む電極に、ナノワイヤのネットワークの使用に、および不織材料の使用に言及する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノワイヤのネットワークを製造する方法であって、
i.ガス流混合物を反応容器に供給するステップであって、前記ガス流混合物が、
- Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ni、Ta、Pt、Mo、W、N、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素を含む金属性触媒粒子と、を含み、
前記少なくとも1つの前駆体化合物が、少なくとも0.005のモル分率(xi)で前記ガス流混合物中に存在し、
前記反応容器内の温度が、1100℃から1600℃の範囲であり、
前記少なくとも1つの前駆体化合物が、前記反応容器内の温度下で分解し、前記金属性触媒粒子上で、好ましくは気相-液相-固相(VLS)法、および/または固相-液相-固相(SLS)法、および/または化学気相成長(CVD)法によって成長して、
ナノワイヤのネットワークを形成する、ステップを含み、
前記ナノワイヤのネットワークが、中実ナノワイヤ、中空ナノワイヤ、またはそれらの混合物を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(i)の前記ガス流混合物が、
(a)混合物を提供するステップであって、前記混合物が、
・ Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ni、Ta、Pt、Mo、W、N、Ni、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
・ Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、InおよびAlから選択される1つまたは複数の元素を含む金属性触媒粒子前駆体と、を含むステップと、
(b)前記混合物を前記反応容器に注入して、ステップ(i)の前記ガス流混合物を形成するステップと、
によって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記少なくとも1つの前駆体化合物が、Si、Ge、Pt、Mo、W、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、
- 前記金属性触媒粒子が、Au、Ag、Cu、Fe、Co、およびPtから選択される1つまたは複数の元素からなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの前駆体化合物がシランまたはシラン誘導体である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス流混合物がH
2を含む、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応容器内の温度が1200℃から1400℃の範囲である、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノワイヤのネットワークを回収する、詳細には、前記ナノワイヤのネットワークを紡糸し、かつボビンに巻き付けることによって回収する、さらなるステップ(ii)を含む、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノワイヤのネットワークのナノワイヤのアスペクト比が少なくとも300であり、本発明の前記ナノワイヤのネットワークが、前記ネットワークの総体積の少なくとも20%の体積のナノワイヤを含む、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法によって得られるナノワイヤのネットワーク。
【請求項9】
自立性である、請求項8に記載のナノワイヤのネットワーク。
【請求項10】
前記ナノワイヤの前記アスペクト比が少なくとも400であり、前記ナノワイヤの長さが少なくとも10ミクロンであり、前記ナノワイヤのネットワークのナノワイヤが中実の連続結晶質ナノワイヤであり、かつ本発明のナノワイヤのネットワークが、前記ネットワークの総体積の少なくとも22%の体積の結晶質ナノワイヤを含む、請求項8ないし9のいずれか一項に記載のナノワイヤのネットワーク。
【請求項11】
60%と97%の間の多孔率を有する、請求項8から10のいずれか一項に記載のナノワイヤのネットワーク。
【請求項12】
前記ナノワイヤが、Si、SiC、GeまたはSi
xGe
1-x、およびSiO
xからなり、0≦x≦1である、請求項8ないし11のいずれか一項に記載のナノワイヤのネットワーク。
【請求項13】
請求項8ないし12のいずれか一項に規定されるナノワイヤのネットワークの少なくとも2層を含む不織材料。
【請求項14】
請求項8ないし12のいずれか一項に記載のナノワイヤのネットワーク、または請求項13に記載の不織材料と、
電気的接続部または集電体と、
を備える、電極。
【請求項15】
請求項8ないし12のいずれか一項に記載のナノワイヤのネットワーク、または請求項13に記載の不織材料を、
- 電池、
- 電子デバイス、
- 伝熱材料、
- 生体適合性材料、または
- 放射線吸収材料
において使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤのネットワークの合成に関する。より詳細には、本発明は、ウェアラブル・エレクトロニクス、センサ、フレキシブル・バッテリなどの分野で使用されるナノワイヤネットワークを製造する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤから構成されるネットワークには、さらに大きな構成要素で作られた材料に勝る利点がある。概して、ナノワイヤは、そのナノスケール寸法に起因して機械的に可撓性であり、バルク材料と比較して欠陥の量が低減している。それらはまた、サイズが小さく一次元的な形態である結果、様々な光電子的特性を示す。その結果、ナノワイヤネットワークの特性のいくつかは、ナノワイヤの特性に依存する。よって、ナノワイヤの結晶性品質、形態、およびサイズ分布に対する高度な制御が必要とされている。
【0003】
国際公開第WO2011156019(A2)号には、IV族金属または半導体ナノワイヤの合成と、製造直後のままの状態のナノワイヤを巨視的な「布」に導入する工程が記載されている。これらは、リチウムイオン電池の電極など大量の材料を必要とするさまざまなマイクロ電子デバイスに使用できる自立性ナノワイヤネットワークである。ナノワイヤは、オートクレーブ反応器内の超臨界流体条件下で製造され、超臨界流体液体固体(SFLS)成長と称される。
【0004】
ナノワイヤの「パーコレーティング・ネットワーク」を作製する手法が報告されており、これは、基板上にエアロタキシ成長させたナノワイヤを分散させるスプレーノズルの使用を伴う(米国特許第US9574286B号明細書)。注目すべきことに、パーコレーティング・ネットワークを製造する工程は、後続の独立した製造ステップとして、合成の後にしか実行されない。さらに、米国特許第US9574286B号明細書からは、そうした方法が、それ自体で集積材料とみなされるための前提条件である自立性ナノワイヤ集合体につながる可能性があることは、明らかではない。
【0005】
ショーフェル等(Schaufele et al.)(Mater.Horiz.,2020,7,2978-2984)は、気相中で浮遊シリコンナノワイヤを連続的に製造し、巨視的なシートに集合させる経路を記載している。この方法は、金粒子のエアロゾルを用いる浮遊触媒化学気相成長法によって実行される。しかし、ナノワイヤはアスペクト比が高く、得られるシートは良好な機械的特性を兼ね備えているものの、この方法では、ナノワイヤだけでなく、ナノワイヤ集合体のバルク特性にとって有害である可能のある(準)球状粒子も製造されてしまう。よって、高アスペクト比のナノワイヤではなくこのようなナノ粒子が製造されることは、望ましくないことが多く、可能な限り避けるのが望ましい。
【0006】
要約すると、先行技術の限界をも克服する、良好な機械的特性を有するナノワイヤのネットワークを合成するワンステップの方法を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の発明者らは、良好な機械的特性、例えば曲げ時の良好な可撓性を有し、そしてナノワイヤにさらに大きな長さを持たせることでさらに高アスペクト比の前記ナノワイヤとするナノワイヤの自立性ネットワークを製造する、ワンステップの方法を見出した。可撓性でもあるナノワイヤの自立性ネットワークの発見は突破口であり、そのわけは、加工時の分散中に劣化および/またはナノワイヤの短化を生じるのが典型的である粉末または充填材としてではなく、エンジニアリング材料として、製造後のナノワイヤネットワークの操作が可能になるからである。さらに、本発明者らは、本発明の方法により、ナノワイヤのネットワークを大量かつ高速に製造することができ、有利には、前記方法により、ナノワイヤのネットワーク中のナノワイヤの割合が増加し、よって、他の構造、例えば準球状粒子の存在が著しく低減されることを観察している。
【0008】
この手法は、先行技術の現在の限界を解決することから、様々な技術分野におけるナノワイヤのネットワークの多種多様な応用にとって非常に重要である。加えて、本発明の方法は、エアロゾル技術に基づいており、その工程を高レベルに制御しつつ、規模を拡大して大量の製造物を製造できる可能性がある。
【0009】
よって、第1の態様では、本発明は、ナノワイヤのネットワークを製造する方法であって、
i.ガス流混合物を反応容器に供給するステップであって、ガス流混合物が、
- Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Ni、Se、Ta、Pt、Mo、W、N、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である、少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素を含む金属性触媒粒子と、を含み、
少なくとも1つの前駆体化合物が、少なくとも0.005のモル分率(xi)でガス流混合物中に存在し、
反応容器内の温度が、1100℃から1600℃の範囲であり、
少なくとも1つの前駆体化合物が、反応容器内の温度のもとで分解し、金属性触媒粒子上で、好ましくは気相-液相-固相(VLS)法、および/または固相-液相-固相(SLS)法、および/または化学気相成長(CVD)法によって成長して、
ナノワイヤのネットワークを形成するステップを含み、
ナノワイヤのネットワークが、中実ナノワイヤ、中空ナノワイヤ、またはそれらの混合物を含む、方法を対象とする。
【0010】
第2の態様では、本発明は、上記に規定されるとおりの方法によって得ることのできるナノワイヤのネットワークであって、ナノワイヤのネットワークのナノワイヤのアスペクト比(長さ/直径)が、少なくとも300であり、本発明のナノワイヤのネットワークが、ネットワークの総体積の少なくとも20%の体積のナノワイヤを含む、ナノワイヤのネットワークを対象とする。
【0011】
第3の態様では、本発明は、本発明のナノワイヤのネットワークの少なくとも2層を含む不織材料を対象とする。
【0012】
本発明の別の態様は、本発明のナノワイヤのネットワークであって、その詳細な実施形態のいずれかにおけるもの、または本発明の不織材料であって、その詳細な実施形態のいずれかにおけるものを含む電極と、電気的接続部または集電体とを対象とする。
【0013】
さらなる態様では、本発明は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは本発明の不織材料の、電池における、好ましくはリチウム電池における使用を対象とする。
【0014】
さらなる態様では、本発明は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは本発明の不織材料の、電子デバイスにおける、好ましくは光電子デバイスにおける使用を対象とする。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは本発明の不織材料の、伝熱材料、生体適合性材料における、または放射線吸収材料における使用を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、SiCナノワイヤを製造するための構成を示す。
【
図2】
図2は、(a)SiCナノワイヤの自立性ネットワークの画像、および(b)ナノワイヤネットワークの電子顕微鏡画像を示す。
【
図3】
図3は、(a)個々のSiCナノワイヤの透過型電子顕微鏡(TEM)顕微鏡写真、(b)結晶性SiCナノワイヤ電子回折パターン、および(c)SiCナノワイヤの直径の統計的分布を示す。
【
図4】
図4は、ナノワイヤネットワークのラマン分光法を示す。
【
図5】
図5は、SiCナノワイヤの粉末X線回折(XRD)パターン(右)を示す。
【
図6】
図6は、異なる温度、すなわち(a)1200℃、(b)1250℃、および(c)1300℃で得られたSiCナノワイヤネットワークのSEM顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語および科学用語は、当業者に共通して理解されているのと同一の意味を有する。本明細書で使用されるとおり、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないと指示しているのでない限り、複数形への言及をも含む。
【0018】
本発明は、ナノワイヤのネットワークを準備する方法、前記方法によって得ることのできるナノワイヤのネットワーク、ナノワイヤのネットワークを含む不織材料、本発明のナノワイヤのネットワークまたは不織材料を含む電極、ならびに本発明のナノワイヤのネットワークおよび本発明の不織材料の使用を対象とする。
【0019】
本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、高アスペクト比構造であり、この構造は、中実材料で作られてもよい、または中空であって(管形状を有して)もよいものである。一実施形態では、ナノワイヤは連続構造であり(多孔質でなく)、好ましくは中実の連続構造である。別の実施形態では、ナノワイヤは、その合成中に互いに接合することによって網状物を形成する。
【0020】
方法
第1の態様では、本発明は、ナノワイヤのネットワークを製造する方法であって、
i.ガス流混合物を反応容器に供給するステップであって、ガス流混合物が、
- Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ta、Pt、Mo、W、N、Ni、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である、少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素を含む金属性触媒粒子と、を含み、
少なくとも1つの前駆体化合物が、少なくとも0.005のモル分率(xi)でガス流混合物中に存在し、
反応容器内の温度が、1100℃から1600℃の範囲であり、
少なくとも1つの前駆体化合物が、反応容器内の温度のもとで分解し、金属性触媒粒子上で、好ましくは気相-液相-固相(VLS)法、および/または固相-液相-固相(SLS)法、および/または化学気相成長(CVD)法によって成長して、
ナノワイヤのネットワークを形成する、ステップを含み、
ナノワイヤのネットワークが、中実ナノワイヤ、中空ナノワイヤ、またはそれらの混合物を含む、方法を対象とする。
【0021】
ナノワイヤのネットワークを準備する方法は、ナノワイヤのネットワークを、繊維、糸、または布に変換するさらなるステップを含んでもよい。一実施形態では、ナノワイヤのネットワークを繊維、糸、または布に変換するステップは任意に、本発明の方法のステップ(i)と同時に実行される。
【0022】
詳細な実施形態では、ナノワイヤのネットワークを準備する方法は、ナノワイヤのネットワークを回収する、詳細には、ナノワイヤのネットワークを(任意に糸または布として)紡糸し、かつボビン上に巻きとることによってこれを行う、さらなるステップ(ii)を含む。
【0023】
一実施形態では、本発明の方法は、連続的な凝集方法である。
【0024】
本発明のナノワイヤのネットワークを製造する方法は、Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ta、Pt、Mo、W、N、Ni、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含む少なくとも1つの前駆体化合物を含む反応容器にガス流混合物を供給するステップ(i)を含み、少なくとも1つの前駆体化合物は、水素化物または有機金属化合物である。
【0025】
詳細な実施形態では、ガス流混合物は、H2を含む。詳細な実施形態では、ガス流混合物は、不活性ガス、詳細にはN2を含む。
【0026】
前駆体
本発明の方法のステップ(i)は、反応容器にガス流混合物を提供し、前記ガス流混合物は、少なくとも1つの前駆体化合物を含む。詳細な実施形態では、少なくとも1つの前駆体化合物は、本発明のナノワイヤネットワークを製造する反応(すなわち化学反応)に関与する化合物である。例えば、ヘキサメチルジシラン(HMDS)は、本発明の方法において使用される場合にSiCナノワイヤネットワークをもたらし得る前駆体化合物である。
【0027】
詳細な実施形態では、本発明の方法の少なくとも1つの前駆体化合物は、Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ta、Pt、Cu、Mo、W、およびTeから、好ましくは、Si、Ge、Cu、Zn、Ga、In、Se、Ta、Pt、Mo、W、およびTeから、詳細にはSi、Ge、In、Ga、Se、およびTeから、より詳細にはSi、Ge、In、およびGaから、さらに詳細にはSi、Ge、およびInから、さらにいっそう詳細にはSiおよびGeから、さらに詳細にはSiから選択される少なくとも1つの元素を含む。
【0028】
詳細な実施形態では、前駆体化合物の少なくとも1つの元素は、金属触媒粒子の1つまたは複数の元素とは異なる。
【0029】
詳細な実施形態では、少なくとも1つの前駆体化合物は、前駆体の混合物である。
【0030】
詳細な実施形態では、少なくとも1つの前駆体化合物は、1つの前駆体化合物である。
【0031】
少なくとも1つの前駆体化合物は、固体、液体の形態(すなわち、本発明の方法の第1のガス流中でエアロゾル化された)、またはガスの形態であってもよい。詳細な実施形態では、少なくとも1つの前駆体化合物は、液体またはガスの形態、好ましくは液体の形態である。
【0032】
詳細な実施形態では、本発明の方法の少なくとも1つの前駆体化合物は、金属水素化物または有機金属化合物である。好ましい実施形態では、本発明の方法の少なくとも1つの前駆体化合物は、金属水素化物である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、本発明の方法の少なくとも1つの前駆体化合物は、有機金属化合物である。
【0034】
本発明の文脈では、有機金属化合物は、金属元素またはメタロイド元素(ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、テルル、またはセレンなど)と、有機分子または官能基に属する炭素原子との間の少なくとも1つの結合を含む、当技術分野で公知の化学化合物である。
【0035】
本発明の前駆体には、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-sec-ブチル(トリメチルシリル)アミン、クロロペンタメチルジシラン、クロロペンタメチルジシラン、テトラメチルシラン、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラクロリド、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、SiH4、テトラメチルゲルマニウム、トリエチルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、テトラメチルゲルマニウム、トリブチルゲルマニウムヒドリド、トリエチルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、トリメチルインジウム(TMin)、トリメチルインジウム(TEIN)、トリメチルガリウム(TMG)、トリエチルガリウム(TEG)、ジメチルセレニド、テルルテトラクロリド、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリエチルアルミニウム(TEAl)、NH3、AsH3、およびPH3などの化合物、詳細には(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-sec-ブチル(トリメチルシリル)アミン、クロロペンタメチルジシラン、ヘキサメチルジシラン、テトラメチルシラン、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラクロリド、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、SiH4、テトラメチルゲルマニウム、トリエチルゲルマニウムヒドロリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、テトラメチルゲルマニウム、トリブチルゲルマニウムヒドリド、トリエチルゲルマニウムヒドリド、トリメチルインジウム(TMin)、トリメチルインジウム(TEIN)、トリメチルガリウム(TMG)、トリエチルガリウム(TEG)、ジメチルセレニド、テルルテトラクロリド、より詳細には(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-sec-ブチル(トリメチルシリル)アミン、クロロペンタメチルジシラン、テトラメチルシラン、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラクロリド、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、SiH4、テトラメチルゲルマニウム、トリエチルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、テトラメチルゲルマニウム、トリブチルゲルマニウムヒドリド、トリエチルゲルマニウムヒドリド、およびトリフェニルゲルマニウムヒドリド、さらに詳細にはSiH4、またはヘキサメチルジシランなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0036】
一実施形態では、少なくとも1つの前駆体は、シランまたはシラン誘導体であり、好ましくは、シラン誘導体であり、より好ましくは、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-sec-ブチル(トリメチルシリル)アミン、クロロペンタメチルジシラン、ヘキサメチルジシラン、テトラメチルシラン、またはそれらの混合物であり、より好ましくはヘキサメチルジシランである。
【0037】
詳細な実施形態では、ガス流混合物は、2つ以上の前駆体化合物を含む。詳細には、ガス流混合物は、第1の前駆体化合物および追加の前駆体化合物を含む。詳細な実施形態では、追加の前駆体化合物は、ナノワイヤネットワークのドーパントとして(主要な前駆体化合物よりも少量で)使用され得る。好適なドーパントは、ドーピングされるナノワイヤ材料に依存する。
【0038】
詳細な実施形態では、本発明の少なくとも1つの前駆体化合物は、少なくとも0.0010mol/hの流量で、好ましくは少なくとも0.0015mol/hの流量で、より好ましくは少なくとも0.0020mol/hで、さらにいっそう好ましくは約0.0025mol/hの流量で、本発明の反応容器に提供される。
【0039】
詳細な実施形態では、この方法は、不活性ガス、好ましくはN2を含む追加のガス流を添加または注入することを含む。
【0040】
より詳細な実施形態では、本発明の方法の追加のガス流は、H2をさらに含む。
【0041】
詳細な実施形態では、1種類のガスまたはガス混合物、好ましくはN2および/またはH2のみが本発明において使用される。
【0042】
触媒
本発明のナノワイヤのネットワークを準備する方法に提供されるガス流混合物は、金属性触媒粒子を含む。
【0043】
詳細な実施形態では、本発明の方法において使用される金属性触媒粒子は、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素を含み、詳細には、Au、Ag、Cu、Fe、Co、およびPtから選択される1つまたは複数の元素を含み、好ましくはFeを含む。金属性触媒粒子は、単一の元素、または2つ以上の元素の組み合わせ(例えば、合金)からなっていてもよい。金属性触媒粒子は、ガス流中に、固体粒子として、または液体粒子として、好ましくは固体粒子として存在してもよい。別の詳細な実施形態では、触媒粒子は、ガス流混合物中の金属前駆体、詳細には有機金属化合物、より詳細にはフェロセンの分解によって生成され得る。
【0044】
別の詳細な実施形態では、本発明の方法において使用される金属性触媒粒子は、ナノワイヤの成長を制御および/または強化するための、16族元素から選択される1つまたは複数の追加の元素をさらに含む。この追加の元素は詳細には、酸素、硫黄、セレン、テルル、およびポロニウムから選択され、より詳細にはS、Se、Te、およびOから選択される。
【0045】
詳細な実施形態では、金属性触媒粒子は、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つの元素からなり、詳細にはAu、Ag、Cu、Fe、Co、およびPtから、好ましくはAu、Ag、Cu、Co、およびFeから、好ましくはAu、Co、またはFeから、好ましくはFeから選択される1つの元素からなる。
【0046】
詳細な実施形態では、金属性触媒粒子は、0.1nmと100nmの間の、好ましくは1nmと30nmの間の平均直径を有する。本発明の金属性触媒粒子の平均直径は、電子顕微鏡写真を用いて100個より多い金属性触媒粒子の直径を測定することによって得られた値の平均から、または微分型静電分級器(DMA)などの異なるエアロゾル測定技術から得られたサイズ分布から計算してもよい。
【0047】
さらに、金属性触媒粒子が電荷を持っていてもよいし、金属性触媒粒子に電荷を与えてもよい。
【0048】
金属性触媒粒子は、プラズマ生成装置、スパークチャージ生成装置、および/または熱エアロゾル生成装置などの、上流のエアロゾル生成装置によって生成されたエアロゾルの形態で反応容器に提供されてもよい。あるいは、金属性触媒粒子は、前駆体化合物、好ましくはガス状または液体状前駆体化合物を提供することによって、インサイチュで形成されてもよい。好ましい実施形態では、金属性触媒粒子は、金属性触媒粒子前駆体化合物として、好ましくは有機金属前駆体化合物として、さらに好ましくはフェロセンとして提供される。
【0049】
詳細な実施形態では、金属性触媒粒子前駆体化合物は、Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素、好ましくは、Au、Ag、Cu、Fe、Co、およびPtから選択される1つまたは複数の元素、好ましくはFeを含む。
【0050】
より詳細な実施形態では、金属性触媒粒子前駆体化合物は、本発明の少なくとも1つの前駆体化合物と混合され、反応容器に注入される。
【0051】
より詳細な実施形態では、ステップ(i)のガス流混合物は、以下の:
(a)混合物を提供するステップであって、混合物が、
・ Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素を含む金属性触媒粒子前駆体と、
・ Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ta、Pt、Mo、W、N、Ni、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、を含むステップと、
(b)混合物を反応容器に注入して、ステップ(i)のガス流混合物を形成し、より好ましくは、混合物がH2ガスと共に注入されるステップと、
によって生成される。
【0052】
詳細な実施形態では、ステップ(a)の混合物は液体であり、任意に、注入は、前記混合物を反応容器内に噴霧することによって生じる。詳細な実施形態では、ステップ(a)の混合物が反応容器に入ると、金属性触媒粒子前駆体は金属性触媒粒子に分解される。
【0053】
詳細な実施形態では、金属性触媒粒子および/または金属性触媒粒子前駆体は、少なくとも1×10-5g/hの、好ましくは少なくとも1×10-4g/hの、より好ましくは少なくとも1×10-3g/hの、さらに好ましくはより好ましくは1×10-3g/hと4×10-3g/hの間の、さらにいっそう好ましくは1.5×10-3g/hと3.5×10-3g/hの間の、さらにいっそう好ましくは2.0×10-3g/hと3.0×10-3g/hの間の流量で反応容器に入る。
【0054】
混合物用の手段を使用してもよい。必要であれば、圧力および流量を調整して、ガス流混合物の適切な混合を確実にするようにしてもよい可能性がある。
【0055】
詳細な実施形態では、ガス流混合物は、少なくとも60l/h、好ましくは少なくとも120l/hの流量で反応容器中を流れる。
【0056】
別の詳細な実施形態では、ガス流混合物は、500秒未満の、詳細には0.1秒と200秒の間の、より詳細には1秒と100秒の間の、さらに詳細には2秒と90秒の間の、好ましくは4秒と80秒の間の、反応容器中の滞留時間を有する。
【0057】
ガス流混合物に加えて、1つまたは複数のシース流を本発明の反応容器に導入してもよい。シース流は、窒素、水素などのガス、ヘリウムおよびアルゴンなどの希ガス、またはそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0058】
本発明の方法では、少なくとも1つの前駆体化合物は、少なくとも0.005のモル分率(xi)でガス流混合物中に存在する。
【0059】
詳細な実施形態では、少なくとも1つの前駆体化合物は、少なくとも0.006の、詳細には少なくとも0.01の、より詳細には少なくとも0.015の、さらに詳細には0.01と0.5の間の、好ましくは約0.02のモル分率でガス流混合物中に存在する。本発明の文脈では、モル分率は、ある構成成分の量(モル数で)を、全構成成分の総量(これもまたモル数表示されるもの)で除算したものとして表現される。
【0060】
詳細な実施形態では、本発明の少なくとも1つの前駆体化合物は、少なくとも0.1×10-4mol/lの濃度で、詳細には少なくとも1×10-4mol/lの濃度で、より詳細には少なくとも1.5×10-4mol/lの濃度で、さらに詳細には少なくとも2×10-4mol/lの濃度で、ガス流混合物中に存在する。
【0061】
詳細な実施形態では、ガス流混合物は、H2を含む。
【0062】
一実施形態では、ガス流混合物は、
- Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ni、Ta、Pt、Mo、W、N、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素からなる少なくとも1つの前駆体化合物を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つ前駆体混合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素からなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
を含む。
【0063】
一実施形態では、ガス流混合物は、
- Si、Ge、Pt、Mo、W、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素からなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
を含む。
【0064】
一実施形態では、ガス流混合物は、
- Si、Ge、Pt、W、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Pt、およびInから選択される1つまたは複数の元素からなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
を含む。
【0065】
好ましい実施形態では、ガス流混合物は、
- SiおよびGeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Feからなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
を含む。
【0066】
一実施形態では、本発明のガス流混合物は、
- Si、Ge、Cu、Zn、Cd、Ga、In、As、Se、Ni、Ta、Pt、Mo、W、N、O、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Ga、Co、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素からなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
からなる。
【0067】
一実施形態では、本発明のガス流混合物は、
- Si、Ge、Pt、Mo、W、Co、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Ni、Pt、In、およびAlから選択される1つまたは複数の元素からなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
からなる。
【0068】
一実施形態では、本発明のガス流混合物は、
- Si、Ge、Pt、W、Mn、Li、およびTeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Au、Ag、Cu、Fe、Pt、およびInから選択される1つまたは複数の元素からなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
からなる。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明のガス流混合物は、
- SiまたはGeから選択される少なくとも1つの元素を含み、水素化物または有機金属化合物である少なくとも1つの前駆体化合物と、
- Feからなる金属性触媒粒子と、
- 窒素、水素、および希ガスから選択される少なくとも1つのシースガスと、
からなる。
【0070】
反応容器
詳細な実施形態では、本発明の工程で使用される反応容器は、ガス反応容器、好ましくは円筒形反応容器、より好ましくはセラミック製または金属製の円筒形反応容器、さらに好ましくは管などのセラミック製の円筒形反応容器である。
【0071】
詳細な実施形態では、反応容器内部の温度は均一であり、細には反応器の管に沿って50度以内で均一であり、より詳細には高温ゾーンから80cmにわたって均一であり、詳細には高温ゾーンの30cm~50cmの間で均一である。
【0072】
詳細な実施形態では、反応容器内の温度は1100℃から1600℃の範囲であり、好ましくは温度は1150℃から1550℃の範囲であり、より好ましくは1200℃から1500℃の範囲であり、より好ましくは1250℃から1450℃の範囲であり、より好ましくは1260℃から1400℃の範囲であり、さらに好ましくは約1260、1270、1280、1290、1300、1310、1320、1330、1340、1350、1360、1370、または1380℃である。
【0073】
本発明の著者らは、少なくとも1100℃、そして最高1600℃の反応温度が、ナノワイヤのネットワーク中のナノワイヤの割合およびそのアスペクト比を著しく増加させることを観察した。加えて、前記温度の使用により準球状粒子の量が著しく減少することが観察された。実施例において提供された実験データから導き出せるとおり、本発明の方法は、さらに低い温度で実行された方法によって得られたものよりも著しく高い平均アスペクト比を有するナノワイヤを提供する。さらには、特に少なくとも1300℃の温度では、準球状粒子の存在がほとんど無視できることも観察することができる。
【0074】
さらに、前記温度で得られたナノワイヤネットワークは、より良好な機械的特性を有し、より堅牢であることが示されている。
【0075】
詳細な実施形態では、反応容器内の圧力は、500mbarから20000mbar(50000Paから2000000Pa)の間、好ましくは900mbarから3000mbar(90000Paから300000Pa)の間である。
【0076】
詳細な実施形態では、反応容器内の温度は、当技術分野で公知のいずれかの好適な加熱手段によって、好ましくは、プラズマ、アーク放電、抵抗加熱、熱線加熱、トーチ加熱、または火炎加熱手段によって、より好ましくは、抵抗加熱、熱線加熱、トーチ加熱、または火炎加熱手段によって、達せられる。
【0077】
ナノワイヤネットワークの成長
本発明の方法では、少なくとも1つの前駆体化合物は、反応容器内の温度条件のもとで分解し、金属性触媒粒子上で、気相-液相-固相(VLS)法および/または固相-液相-固相(SLS)法および/または化学気相成長(CVD)法によって成長して、ナノワイヤのネットワークを形成する。詳細な実施形態では、ナノワイヤは、ガス流混合物中にある間に成長する(すなわち、それらはエアロゾル化される)。詳細な実施形態では、少なくとも1つの前駆体化合物は、反応容器内の温度条件のもとで分解し、金属性触媒粒子上で、浮遊触媒化学気相成長(CVD)法によって成長して、ナノワイヤのネットワークを形成する。
【0078】
必要であれば、1つまたは複数のシース流を反応容器中に導入してもよい。詳細には、前記1つまたは複数のシース流を、ガス流混合物と反応容器の壁との間に導入してもよい。
【0079】
適切な前駆体化合物、ガス流、温度、圧力、および金属性触媒粒子を選択することによって、ナノワイヤを、それらの長手方向対称軸の軸方向、または半径方向、またはこれら2つの成長モードの組み合わせで成長させることができ、好ましくは、成長は、軸方向に生じ、より好ましくは、成長は、110方向に生じ、詳細にはSiナノワイヤの場合に生じる。
【0080】
ナノワイヤの成長は、金属性触媒粒子の表面上での少なくとも1つの前駆体化合物の触媒分解と、金属性触媒粒子の表面上でのナノワイヤの核形成とによって開始し得る。核形成後、ナノワイヤは、方向性のある成長をし、細長い対象物、すなわちナノワイヤを形成し得る。成長は、気相-液相-固相(VLS)法および/または固相-液相-固相(SLS)法および/または化学気相成長(CVD)法を通じて生じ得る。同時に、ナノワイヤは臨界濃度に達し、凝集して、反応容器中でナノワイヤのネットワークを形成する。よって、本発明の方法は、連続的な凝集方法である。好ましくは、ガス混合物は、金属性触媒粒子を担持して反応器を通じて流れ、ナノワイヤネットワークは、反応容器長を通じて流れる。
【0081】
一実施形態では、ナノワイヤのネットワークは、ナノチューブなどの中空ナノワイヤを含む。一実施形態では、ナノワイヤのネットワークは、中空の、そして中実ナノワイヤなどの非中空のナノワイヤを含む。別の実施形態では、ナノワイヤのネットワークは、ナノチューブなどの中空ナノワイヤからなる。
【0082】
本発明の文脈では、化学気相成長(CVD)法という表現は、1つまたは複数の揮発性前駆体化合物が、触媒表面上で反応および/または分解して、一次元構造、例えばナノワイヤを製造する工程として理解される。前記触媒粒子は、気相中に漂っていてもよく、一般に浮遊触媒と称される。前記粒子は、溶融状態または固体状態であってもよく、また、本明細書で上記したとおり、ナノワイヤの成長を制御および/または促進する追加の元素を含んでいてもよい。この追加の元素には、16族元素、例えばS、Se、Te、または酸素などが挙げられる。また、前記前駆体は、反応器の表面上で部分的に分解し得る。
【0083】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークを準備する方法は、少なくとも1×10-7というエアロゲル化パラメータ下で、詳細には少なくとも1×10-6というエアロゲル化パラメータ下で、より詳細には少なくとも2×10-6というエアロゲル化パラメータのもとで、実行される。
【0084】
本発明の文脈では、「エアロゲル化パラメータ」という表現は、ナノワイヤの平均アスペクト比(長さ/直径)と体積濃度(vc(ナノワイヤの体積/反応器の体積))の積として理解される。
【0085】
本発明の文脈では、「気相-液相-固相」(VLS)法という表現は、液体触媒粒子へのガス(すなわち気相上の少なくとも1つの前駆体化合物)の直接吸着により、化学気相成長から一次元構造、例えばナノワイヤを成長させる機構であり、この液体触媒粒子は、過飽和レベルまで急速に蒸気を吸着できる、そしてそこから、気液固界面で核形成シードから結晶成長を生じさせることのできるものである。
【0086】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤネットワークは、ガス流混合物中(反応容器中)に存在する間に形成され、詳細には、ナノワイヤを凝集させた(すなわち、ナノワイヤが、たがいの間で接合した、絡み合った、接続された、または融合した)ナノワイヤのネットワークが、本発明の反応容器の出口のところで得られる。
【0087】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、連続的な工程として生成される。あるいは、ナノワイヤのネットワークは、個別に生成されてもよい。好ましい実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、連続的に生成される。
【0088】
詳細な実施形態では、本発明の方法は、ナノワイヤのネットワークを回収するステップ(ii)をさらに含む。一実施形態では、回収するステップは基板上で実行され、好ましくは、基板はフィルタであり、より好ましくは真空フィルタである。より詳細な実施形態では、本発明の方法は、ナノワイヤのネットワークを緻密化するステップをさらに含み、好ましくは、溶媒または溶媒の混合物、より好ましくは有機溶媒または有機溶媒の混合物、さらに好ましくはアルコール基または芳香族基を含む溶媒または溶媒の混合物を使用することによって、さらにいっそう好ましくはアルコール類および/またはベンゼン誘導体、さらに好ましくはイソプロパノールおよび/またはキシレンを使用することによって、これを行う。
【0089】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、少なくとも0.01g/hの速度で、好ましくは少なくとも0.02g/hの速度で、より好ましくは少なくとも0.05g/hの速度で、さらに好ましくは約0.1g/hの速度で生成される。
【0090】
別の詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、0.01g/hと10g/hの間の速度で、好ましくは0.02g/hと5g/hの間の速度で、より好ましくは0.05g/hと1g/hで、さらに好ましくは0.09g/hと1g/hの間の速度で生成される。
【0091】
ナノワイヤのネットワーク
本発明の一態様は、本発明の方法であってその詳細な実施形態のいずれかにおけるものによって得ることのできるナノワイヤのネットワークであって、ナノワイヤのネットワークのナノワイヤの平均アスペクト比(長さ/直径)が少なくとも300であり、本発明のナノワイヤのネットワークが、ネットワークの総体積の少なくとも20%の体積のナノワイヤを含む、ナノワイヤのネットワークを対象とする。詳細な実施形態では、ネットワークの総体積は、ナノワイヤ、ナノ粒子、非晶質材料などのネットワークの構成成分の総体積を指す。
【0092】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、ナノワイヤネットワークの総体積の少なくとも22%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%の体積のナノワイヤを含む。
【0093】
詳細な実施形態では、ナノワイヤネットワークの総体積に対するナノワイヤ体積百分率は、20%と99%の間、好ましくは22%と98%の間である。
【0094】
より詳細には、本発明のナノワイヤのネットワークは、ネットワークの総体積に対して少なくとも50%の体積、好ましくは少なくとも60%の体積、より好ましくは少なくとも70%の体積、大幅に好ましくは少なくとも80%の体積、最も好ましくは少なくとも90%の体積のナノワイヤを含む。
【0095】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、ネットワークの総重量に対して少なくとも22wt%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも40%のナノワイヤを含む。
【0096】
詳細な実施形態では、ナノワイヤネットワークの総重量に対するナノワイヤの重量百分率は、20%と99%の間、好ましくは22%と98%の間である。
【0097】
より詳細には、本発明のナノワイヤのネットワークは、ネットワークの総重量に対して少なくとも50wt%、ネットワークの総体積に対して好ましくは少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、大幅に好ましくは少なくとも80wt%、最も好ましくは少なくとも90wt%のナノワイヤを含む。
【0098】
別の好ましい実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、結晶質ナノワイヤである。
【0099】
ネットワークの総体積に対する結晶質ナノワイヤの体積百分率は、ナノワイヤの寄与が他の材料から分離される可能性がある当技術分野で公知の方法を使用して、電子顕微鏡写真の画像解析から計算してもよい。例えば、ネットワークの総有効体積に対する結晶質ナノワイヤの体積分率は、相当数の電子顕微鏡写真から得られる、ナノワイヤが占める投影面積(ANW)と、非晶質粒子などのネットワークの他の材料が占める投影面積(AOM)とから計算してもよい。次いで、体積分率を体積%に変換してもよい。加えて、ネットワークの総重量に対する結晶質ナノワイヤの重量%は、当技術分野で公知であるとおり、材料の密度を使用して、体積%の値から計算してもよい。
【0100】
本発明の文脈では、結晶質ナノワイヤは、組織化された結晶構造を有するナノワイヤとして理解される。詳細な実施形態では、結晶質ナノワイヤは、結晶構造として、ナノワイヤの総重量の少なくとも80wt%、好ましくは90wt%より多く、より好ましくは95wt%より多く、さらに好ましくは97wt%より多く、さらに好ましくは99、99.5、または99.9wt%より多くを含む。
【0101】
詳細な実施形態では、結晶質ナノワイヤは、
- ナノワイヤの総重量の80wt%と99.9wt%の間の結晶質材料と、
- ナノワイヤの総重量の0.01wt%と20wt%の間の非晶質材料と、からなり、ナノワイヤの総重量は100wt%である。
【0102】
詳細な実施形態では、結晶質ナノワイヤは、
- ナノワイヤの総重量の90wt%と99.9wt%の間の結晶質材料と、
- ナノワイヤの総重量の0.01wt%と10wt%の間の非晶質材料と、からなり、ナノワイヤの総重量は100wt%である。
【0103】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、ネットワークを形成し、好ましくは、ナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、互いの間で機械的に接合しており、絡み合っており、接続されており、または噛み合っており、好ましくは絡み合っており、接続されており、より好ましくは互いの間で絡み合いが形成される。一実施形態では、ナノワイヤのネットワークは、ナノワイヤの凝集体を含む。
【0104】
詳細な実施形態では、ナノワイヤのネットワークは、自立性である。本発明の文脈では、「自立性」という用語は、他の物体または構造、例えば基板によって支持されていない構造を指す。一実施形態では、ナノワイヤのネットワークは、追加のマトリクスまたは結合剤などの追加の相を含まない。
【0105】
詳細な実施形態では、本発明のネットワークのナノワイヤは凝集しており、詳細には強く凝集しており、詳細にはそれらは、ファンデルワールス力、永久双極子、水素結合、および/または共有結合、絡み合い、ならびに他の形態の機械的な噛み合いなどの二次的な力によって強く凝集している。強く凝集することによって、本発明の文脈では、材料が中実物体を形成すること、そしてネットワークを含むナノワイヤが、超音波処理、攪拌、切断、または類似の方法に頼らなければ容易に分散させることができないことが示唆される。
【0106】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、連続的なネットワークである。本発明の文脈では、連続的なネットワークは、パーコレートしたネットワークとして理解される。
【0107】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、エアロゲル、すなわち低密度の、好ましくは10-2g/cm3未満の、好ましくは10-3g/cm3未満の、より好ましくは10-4g/cm3未満の、より好ましくは10-5g/cm3未満の中実材料である。詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、少なくとも0.001g/cm3の、詳細には少なくとも0.01g/cm3の密度を有する。
【0108】
より詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは緻密化され、詳細には、機械的方法、溶媒添加の方法、電磁気的方法、または類似の方法によって、これがなされる。
【0109】
詳細な実施形態では、本発明のネットワークのナノワイヤは、少なくとも300の、さらに好ましくは350の、さらに好ましくは400の平均アスペクト比(長さ/直径)を有する。
【0110】
より詳細な実施形態では、本発明のネットワークのナノワイヤは、300と2000の間の、好ましくは350と2000の間の、より好ましくは400と1800の間の、さらに好ましくは500から1800の間の、そしてさらにいっそう好ましくは1000から1800の間の平均アスペクト比(長さ/直径)を有する。
【0111】
アスペクト比を決定する方法は、電子顕微鏡で得られた電子顕微鏡写真の画像解析を使用する。これらの顕微鏡写真から、ナノワイヤの直径(φ)と長さ(L)を決定することが可能であり、したがって、ナノワイヤのアスペクト比は、以下の:
【数1】
から計算することができる。
【0112】
本発明のネットワークのナノワイヤの平均アスペクト比は、相当数の(100本より多い)ナノワイヤの寸法を測定することによって得られた値の平均から計算してもよい。よって、平均アスペクト比は、以下の式によって決定することができ、
【数2】
ここで、s
iは、測定されたナノワイヤのアスペクト比であり、N
NWは解析されたナノワイヤの数である。
【0113】
詳細な実施形態では、本発明のネットワークのナノワイヤの平均長は、少なくとも1ミクロン、詳細には少なくとも2ミクロン、好ましくは少なくとも3、4、5、6、7、8、または9ミクロン、より好ましくは少なくとも10ミクロンである。詳細な実施形態では、本発明のネットワークのナノワイヤの平均長は、1ミクロンと40ミクロンの間、より詳細には1ミクロンと30ミクロンの間、好ましくは2ミクロンと20ミクロンの間、より好ましくは3ミクロンと15ミクロンの間である。別の好ましい実施形態では、本発明のネットワークのナノワイヤの平均長さは、10ミクロンと40ミクロンの間である。本発明のネットワークのナノワイヤの平均長は、電子顕微鏡法を用いて100本より多いナノワイヤの長さを測定することによって得られた値の平均から計算してもよい。
【0114】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、99.9%未満、詳細には99%未満、より詳細には97%未満、さらに詳細には約96%の多孔率を有する。
【0115】
別の詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、90.0%未満の多孔率を有する。
【0116】
代替実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、99.9%と30%の間の、詳細には50%と98%の間の、より詳細には60%と97%の間の、さらに詳細には約96%の多孔率を有する。
【0117】
ナノワイヤのネットワークの多孔率は、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、光学顕微鏡および/または電子顕微鏡観察により通常試料の体積を決定しその重量を重量測定して、測定されており、次いで多孔率は、当技術分野で公知の、ナノワイヤと同一の材料のモノリシック結晶の理論密度との比較により計算される。
【0118】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、GaAs、InP、GaP、GaxIn1-xAsyP1-y、AlxGa1-xAsyP1-y、GaSb、GaxIn1-xAsySb1-y、GaN、InN、AlN、AlzGaxIn1-x-zN、Si、SiC、GeまたはSixGe1-x、SiOx、TiOx、ZnOx、CdS、Tax、MoSy、WSy、MoTey、TaSey、NbSey、NiTey、BN、BizTey、BP、Cu、Pt、CoOx、MnOx、CuOx、LixMnyO、LixNiyMnzO、およびNixから選択される少なくとも1つの材料を含み、0≦x≧1、0≦y≧1、および0≦z≧1であり、好ましくは、Si、SiC、GeまたはSixGe1-x、およびSiOxを含み、0≦x≧1であり、さらに好ましくは、Si、GeまたはSixGe1-x、およびSiOxを含み、0≦x≧1であり、より好ましくはSiまたはGeを含み、さらに好ましくは、Siを含む。詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、コーティング、好ましくは、無機コーティングまたは炭素コーティングをさらに含む。
【0119】
別の詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、GaAs、InP、GaP、GaxIn1-xAsyP1-y、AlxGa1-xAsyP1-y、GaSb、GaxIn1-xAsySb1-y、GaN、InN、AlN、AlzGaxIn1-x-zN、Si、SiC、GeまたはSixGe1-x、SiOx、TiOx、ZnOx、CdS、Tax、MoSy、WSy、MoTey、TaSey、NbSey、NiTey、BN、BizTey、BP、Cu、Pt、CoOx、MnOx、CuOx、LixMnyO、LixNiyMnzO、およびNixから選択される少なくとも1つの材料からなり、0≦x≧1、0≦y≧1、および0≦z≧1であり、好ましくは、Si、SiC、GeまたはSixGe1-x、およびSiOxからなり、0≦x≧1であり、より好ましくは、Si、SiC、およびGeから選択される少なくとも1つの材料からなり、さらに好ましくは、SiまたはSiCからなる。別の詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、Si、SiC、およびGeから選択される少なくとも1つの材料と、コーティング、好ましくは無機コーティングまたは炭素コーティングとからなる。
【0120】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、少なくとも0.01g/cm3の、詳細には少なくとも0.05g/cm3の、より詳細には少なくとも0.075g/cm3の、さらに詳細には少なくとも0.080g/cm3好ましくは少なくとも0.150g/cm3の、より好ましくは少なくとも0.200g/cm3の、さらに好ましくは約0.128g/cm3の体積密度を有する。
【0121】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、0.01g/cm3と0.20g/cm3の間の、詳細には0.07g/cm3と0.30g/cm3の間の体積密度を有する。本発明のナノワイヤのネットワークの体積密度は、当該技術分野で公知のいずれかの実験技術から計算してもよく、詳細にはそれは、ナノワイヤのネットワークの試料の面積密度および厚さから決定される。
【0122】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、絡み合っており、好ましくは、物理的に絡み合っている。
【0123】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、ナノワイヤを含むネットワークである。詳細な実施形態では、ネットワークを形成するナノワイヤは、同一または異なる特性を有することができる。より詳細な実施形態では、ネットワーク中に含まれるナノワイヤは、異なる組成および/またはアスペクト比を有する。
【0124】
詳細な実施形態では、ナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、中空であり(すなわち、それらはナノチューブであり)、好ましくは、それらは、ナノチューブである。より詳細な実施形態では、中空ナノワイヤは、Si、SiC、GeまたはSixGe1-x、およびSiOxを含み、0≦x≧1であり、より好ましくはSi、SiC、GeまたはSixGe1-x、およびSiOx、好ましくはSi、またはSiCから選択される少なくとも1つの材料からなり、さらに好ましくはSiCからなる。
【0125】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、本発明の方法で使用される金属性触媒粒子をさらに含む。
【0126】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、コーティング、詳細には無機コーティングまたは炭素コーティング、より好ましくは炭素コーティングをさらに含む。
【0127】
別の詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、気相工程、液相工程、アニーリング工程、または放射線照射工程によって化学的に機能化させることができる。詳細な実施形態では、ナノワイヤの化学的機能化は、合成工程において、または追加のステップにおいて実行される。
【0128】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、標識用またはマーキング用の元素または化合物をさらに含み、前記標識用の元素または化合物により、ナノワイヤの追跡可能性が得られる。詳細な実施形態では、ナノワイヤの標識またはマーキングは、合成工程の最中に、または前記合成の後、追加のステップにおいて実行される。
【0129】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、整列しているものが圧倒的である。
【0130】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、ナノワイヤを整列させるために、練条、伸長される、または電磁的もしくは電気化学的方法に供される。
【0131】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、粒子、好ましくは非晶質粒子、より好ましくは非晶質球状粒子をさらに含む。
【0132】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは結晶質であり、好ましくは、ナノワイヤは単結晶によって形成され、より好ましくは、ナノワイヤのネットワークのナノワイヤは単結晶で連続した、より好ましくは、SiCの、さらに好ましくは、SiCの立方晶相および/または六方晶相のナノワイヤである。
【0133】
一実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、結晶相および非晶質相を含み、好ましくは、結晶相が、ネットワークの総重量に対して少なくとも25wt%または40wt%で、より好ましくは少なくとも50wt%で、さらに好ましくは少なくとも60wt%で存在し、さらに好ましくは、結晶相が、結晶質ナノワイヤを含み、非晶質相が非晶質粒子、好ましくは非晶質球状粒子を含む。
【0134】
一実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、ネットワークの総重量に対して少なくとも25wt%の、好ましくは少なくとも30wt%の、より好ましくは少なくとも40wt%の結晶質ナノワイヤを含む。
【0135】
ナノワイヤの結晶性は、X線回折分析(XRD)とラマン分光法によって決定することができる。
【0136】
別の詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、ナノワイヤからなる。
【0137】
一実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、少なくとも0.05J/gの、好ましくは0.1J/gと0.5J/gの間の破断エネルギー値を有する。破断エネルギー値は、当技術分野で公知のとおりの従来の機械的試験装置を用いた、ナノワイヤのネットワーク試料の機械的引張り試験によって測定されている。
【0138】
一実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークは、0.5MPa/SGを超える、好ましくは0.8MPa/SGを超える、より好ましくは1MPa/SGを超える比引張り強度を有する。詳細には、比引張り強度の値は、MPa/SGの単位であり、SGは、g/cm3の単位での、ナノワイヤのネットワークの密度と数値的に等価な比重を意味する。比引張り強度は、当技術分野で公知のいずれかの引張り試験技術によって測定してもよく、例えば、テクステクノ社ファビマット(Textechno Favimat)引張り試験機を用いて、10%/分の歪み速度で、そして好ましくは5mmのゲージ長で、ナノワイヤのネットワークの試料の機械的引張り測定によって測定してもよい。
【0139】
不織材料
本発明に別の態様では、本発明は、本発明のナノワイヤのネットワークの少なくとも2層を含む不織材料を対象とする。詳細な実施形態では、2層のそれぞれは、少なくとも0.1ミクロン、好ましくは0.5ミクロン、より好ましくは少なくとも1ミクロンの厚さを有する。
【0140】
別の詳細な実施形態では、本発明の不織材料は、不織布、好ましくは、一方向性の不織布である。
【0141】
別の詳細な実施形態では、本発明の不織材料のナノワイヤのネットワークのナノワイヤは、単一方向に、好ましくは単一の平行方向に配向している。
【0142】
別の詳細な実施形態では、本発明の不織材料は、ナノワイヤのネットワークのナノワイヤが単一方向に、好ましくは単一の平行方向に配向している、不織布である。
【0143】
別の詳細な実施形態では、本発明の不織材料は、糸である。
【0144】
別の詳細な実施形態では、本発明の不織材料は、ナノワイヤの表面化学的性質を修飾する気相工程、液相工程、アニーリング工程、または放射線照射工程によって、化学的に機能化させることができる。
【0145】
詳細な実施形態では、本発明の不織材料は、結合剤または顔料などの添加剤をさらに含む。
【0146】
使用
本発明の別の態様は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは本発明の不織材料の、電子デバイスにおける、好ましくは光電子デバイスにおける使用を対象とする。
【0147】
本発明の別の態様は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは不織材料の、伝熱材料における、好ましくは伝熱材料としての使用を対象とする。
【0148】
本発明の別の態様は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは不織材料の、放射線吸収材料における、好ましくは放射線吸収材料としての使用を対象とする。
【0149】
本発明の別の態様は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは不織材料の、生体適合性材料における、好ましくは生体適合性材料としての使用を対象とする。
【0150】
本発明の別の態様は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは本発明の不織材料の、電池における、好ましくはリチウム電池における使用を対象とする。一実施形態では、本発明は、本発明のナノワイヤのネットワークまたは本発明の不織材料の、電池における、好ましくはリチウム電池における、詳細には、電池の電極、セパレータ、および/または集電体における、好ましくは電極における使用を対象とする。
【0151】
電極
本発明の別の態様は、
(a)本発明のナノワイヤのネットワークであってその詳細な実施形態のいずれかにおけるもの、または本発明の不織材料であってその詳細な実施形態のいずれかにおけるものと、
(b)電気的接続部または集電体であって、好ましくは導電性ワイヤまたは導電性集電体を含み、詳細にはワイヤまたは集電体とナノワイヤのネットワークとが電気的に接続されている、電気的接続部または集電体と、
を含む電極を対象とする。
【0152】
詳細な実施形態では、本発明のナノワイヤのネットワークであってその詳細な実施形態のいずれかにおけるもの、または本発明の不織材料であってその詳細な実施形態のいずれかにおけるものは、少なくとも導電性化合物で、好ましくは、少なくとも炭素系導電性化合物で、より好ましくは、カーボンブラックなどの導電性炭素で、被覆される。
【0153】
一実施形態では、電極は、
(a)本発明のナノワイヤのネットワークであってその詳細な実施形態いずれかにおけるもの、または本発明の不織材料であってその詳細な実施形態のいずれかにおけるものであり、任意にコーティングされた、より好ましくは、少なくとも導電性化合物でコーティングされた、好ましくは、炭素系導電性化合物でコーティングされた、より好ましくは、カーボンブラックなどの導電性炭素でコーティングされたものと、
(b)電気的接続部または集電体であって、好ましくは導電性ワイヤまたは導電性集電体、詳細には、ワイヤまたは集電体とナノワイヤのネットワークが電気的に接続されている電気的接続部または集電体と、からなる。
【0154】
より詳細な実施形態では、電極はカソードである。
【0155】
本発明の著者らは、ナノワイヤネットワークによって付与される機械的特性のおかげで、電極における補強添加剤(例えば、ポリマー結合剤)の使用がいらなくなり、従来使用されてきた溶媒または他の形態の分散物の必要なしにそのような電極を処理または一体化する方法が可能になることに気付いている。加えて、本発明の著者らは、本発明の電極が性能の向上を示すことを観察した。
【実施例】
【0156】
本発明は、本発明の範囲をいかなる場合でも限定することはない以下の実施例によって、例示される。
【0157】
実施例
実施例1.SiCナノワイヤネットワークの合成と特性評価
金属触媒としてFe、SiC前駆体としてヘキサメチルジシラン(HMDS)を用い、異なる温度(1200℃、1250℃、1300℃)で、気液固法(VLS)機構を通じ、縦型の浮遊触媒化学気相成長(FCCVD)反応器においてSiCナノワイヤネットワークを合成した。
【0158】
まず、液体HMDSにフェロセンを飽和(≒16mg/ml)するまで加えた。フェロセンとHMDSの混合物を、縦型の浮遊触媒化学気相(FCCV)反応器の上部に位置するインジェクタを通じ0.5ml/hの流量で導入した。注入系は毛細管内に存在し、周囲のH2の流れは60ml/minであった。
【0159】
反応器管(Mullite 660、φ=7cm)を、不活性雰囲気中、H
2雰囲気を3lpmのH
2の一定流量に維持した状態で、所望の反応温度(1200℃、1250℃、または1300℃)に保った(
図1参照)。
【0160】
フェロセンとHMDSの混合物が反応ゾーンに入ると、エアロゾルが形成され、鉄粒子が生成された。鉄粒子は凝集して、触媒ナノ粒子のエアロゾルを形成した。鉄触媒ナノ粒子は前駆体の分解に関与し、前駆体蒸気からの過飽和とその後の1Dナノワイヤの押し出しによって1Dナノワイヤの成長を担った。
【0161】
次いで、ナノワイヤの青みがかったエアロゲルが形成された。前記エアロゲルを、反応器内で、自立性SiCナノワイヤネットワーク(
図2および
図3参照)として回収した。得られたナノワイヤネットワークのナノワイヤの結晶性を、X線回折分析(XRD)およびラマン分光法(
図4および
図5)によって特性評価した。詳細には、
図4において分析されたナノワイヤネットワークのラマンスペクトルは、SiCのラマンモードを示しており、試料が、他のSiまたはCを含有する材料ではなく主にSiCでできていることを示している。さらに、
図5のXRDパターンは、得られたナノワイヤネットワークが、高度に結晶質であって主にSiCの立方晶相および/または六方晶相で形成されていることを示している。加えて、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)から収集されたデータから、ナノワイヤの寸法(長さおよび直径)およびネットワーク特性を、多数回の測定(50回より多い)によって統計的に調べた。
【0162】
SiCナノワイヤネットワークを高温(1100℃より高い)で合成することには、2つの利点、すなわちネットワークのナノワイヤの選択的変換比の増大と、アスペクト比の増大が、同時に存在する。選択的変換比は、前駆体からナノワイヤ(準球状粒子、非晶質粒子、およびナノワイヤとは異なる他の材料)への変換比を指す。
【0163】
図6は、異なる温度、(a)1200℃、(b)1250℃、(c)1300℃で得られたSiCナノワイヤネットワークのSEM顕微鏡写真を示す。これらの画像から、50本より多いナノワイヤの寸法を測定することによって得られた値の平均からナノワイヤの平均アスペクト比を計算したが、これには以下の:
【数3】
を適用し、ここで、s
iは、測定されたナノワイヤのアスペクト比であり、N
NWは、解析されたナノワイヤの数である。
【0164】
上で説明したとおり、各ナノワイヤのアスペクト比は、以下の式:
【数4】
に従って測定され、ここで、(φ)および(L)はそれぞれ、ナノワイヤの直径およびナノワイヤの長さである。
【0165】
さらに、反応のナノワイヤ製造物とナノ粒子製造物の両方を考慮した平均アスペクト比も決定した。これにより、望ましくない低アスペクト比の準球状粒子の量を知ることができる。この実効的なアスペクト比を、総数平均アスペクト比と名付け、これは以下の:
【数5】
により決定することができ、ここで、s
iは、ナノワイヤのアスペクト比、N
NWは、ナノワイヤの数、N
NPは、ナノ粒子の数である。
【0166】
加えて、使用した合成温度に対して、ナノワイヤネットワークの総体積に対する結晶質ナノワイヤの体積百分率も測定した。
【0167】
ナノワイヤネットワーク構成成分の総体積に対する結晶質ナノワイヤ体積百分率は、ナノワイヤが準球状粒子や他の非晶質材料と区別できる、統計的に有意な数の電子顕微鏡写真(顕微鏡技術で撮影されたもの)の画像解析から算出した。
【0168】
比較のため、Siナノワイヤは、ショーフェル等(Schaufele et al.)(Mater.Horiz.,2020,7,2978-2984)に記載された方法に従い、650℃と720℃でも準備した。以下の表Iは、本発明の方法、およびショーフェルらによって記載された方法によって得られたナノワイヤの、上で説明したとおりに決定された長さ、平均アスペクト比(S
NW)、およびS
TOTAL値、ならびに結晶質ナノワイヤ体積分率を示す。
【表1】
【0169】
その結果、少なくとも1100℃の反応温度で、試料中のナノワイヤの割合とその長さが著しく増加し、よって、より高いアスペクト比のナノワイヤが得られることが示された。さらに、総数平均アスペクト比から導き出されたとおり、望ましくない低アスペクト比の準球状粒子の量が著しく減少した。加えて、高温で得られたナノワイヤネットワークは、より良好な機械的特性を有し、より堅牢であった。
【0170】
実施例2
本発明のナノワイヤネットワークを含む電極および電池を開発する。実施例1のナノワイヤネットワークは、カーボンの導電層で被覆される。次に、カーボンコーティングを施したナノワイヤネットワークを金属集電体に貼り付け、電極を形成する。次いで、この電極をセパレータ、カソード、電解液とともに筐体内に組み込んで、完全な単電池を形成する。
【0171】
電解液の性能は、半電池(すなわち電極としてリチウムを使用)において、定電流充放電サイクル下での通常の電気化学測定によって評価される。同じ電流密度で測定した場合、市販のグラファイト電極と比較して本発明の電極では、より高い面容量(mAh/cm2)が観察される。
【国際調査報告】