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特表2024-519324改善された半減期を有する改変FCRN結合フラグメント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】改善された半減期を有する改変FCRN結合フラグメント
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240501BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240501BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240501BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240501BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240501BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240501BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240501BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240501BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240501BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240501BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240501BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240501BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C07K16/00
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N7/01
C07K19/00
C07K16/46
C12N15/113 Z
C12N1/15
C12P21/02 C
A61K39/395 Y
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568728
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 US2022072205
(87)【国際公開番号】W WO2022241398
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】63/186,445
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】オガネシャン,バヘー ユニ
(72)【発明者】
【氏名】シャン,ルー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085BB11
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC01
4C085CC08
4C085CC22
4C085DD31
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA10
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA22
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は改善された半減期を有する改変FcRn結合フラグメント、具体的には前記改変FcRn結合フラグメントを含む融合タンパク質及びポリペプチド、並びに前記融合タンパク質を製造する方法、及び治療方法におけるそれらの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントを含む融合タンパク質であって、前記FcRn結合フラグメントは、
a.351位にF
b.354位にR、K、D、E、F、Y、P、G、L又はM
c.366位にR
d.395位にK
e.405位にR;及び
f.407位にE
を含む
(ここで、前記アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)
融合タンパク質。
【請求項2】
IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントを含むポリペプチドであって、前記FcRn結合フラグメントは、
a.351位にF
b.354位にR、K、D、E、F、Y、P、G、L又はM
c.366位にR
d.395位にK
e.405位にR;及び
f.407位にE
を含む
(ここで、前記アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)
ポリペプチド。
【請求項3】
IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントにコンジュゲートした非タンパク質剤を含む分子であって、前記FcRn結合フラグメントは、
a.351位にF
b.354位にR、K、D、E、F、Y、P、G、L又はM
c.366位にR
d.395位にK
e.405位にR;及び
f.407位にE
を含む
(ここで、前記アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)
分子。
【請求項4】
前記FcRn結合フラグメントは、354位にR、K、D又はE、任意選択によりD又はEを含む(ここで、前記アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)、請求項1に記載の融合タンパク質、請求項2に記載のポリペプチド又は請求項3に記載の分子。
【請求項5】
前記FcRn結合フラグメントは、354位にEを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項6】
前記FcRn結合フラグメントは、IgG分子の約216位のアミノ酸残基から約446位のアミノ酸残基までを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項7】
前記FcRn結合フラグメントは、IgG分子の約236位のアミノ酸残基から約446位のアミノ酸残基までを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項8】
前記IgG分子はIgG4である、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項9】
前記FcRn結合フラグメントは、半減期延長変異をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項10】
前記FcRn結合フラグメントは、252位にY、254位にT、及び256位にEを含む(ここで、番号付けは、EUインデックスに従う)、請求項9に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項11】
前記Fc領域は、以下のアミノ酸:
a.432位及び437位にC;
b.433位にS、H、R、P、T、K、A、M又はN;
c.434位にY、N、R、W、H、F、S、M又はT;
d.435位にH;及び
e.436位にL、Y、F、R、I、K、M、V、H、S又はT
を含む
(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、
請求項9に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項12】
前記FcRn結合フラグメントは、
a.434位にY、R、W、H又はF;及び
b.436位にL、R、I、K、M、V又はH
を含む
(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、
請求項11に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項13】
前記FcRn結合フラグメントは、以下のアミノ酸:
a.432位及び437位にC;
b.433位にS;
c.434位にY;
d.435位にH;及び
e.436位にL
を含む
(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、
請求項12に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項14】
前記FcRn結合フラグメントは438位にアミノ酸の欠失を含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、
請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項15】
前記FcRn結合フラグメントのQ438(EUインデックスによる番号付け)は欠失している、請求項1~13のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項16】
前記FcRn結合フラグメントは、437位の残基の直後に挿入されたEを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)、請求項1~15のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項17】
少なくとも1つ、例えば1つ又は2つの抗原結合ドメインを含む、請求項1、2、及び4~16のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項18】
2つの抗原結合ドメインを含む、請求項1、2、及び4~17のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項19】
第1の抗原結合ドメインは、前記FcRn結合フラグメントのN末端にある、請求項1、2、及び4~18のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項20】
第2の抗原結合ドメインは、前記FcRn結合フラグメントのC末端にある、請求項1、2、及び4~19のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項21】
各抗原結合ドメインは、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体及びscFvから独立して選択される、請求項1、2、及び4~20のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項22】
非IgGタンパク質ドメインを含む、請求項1、2、及び4~21のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項23】
前記非IgGドメインは、免疫修飾物質、受容体、ホルモン、酵素又は薬物である、請求項22に記載の融合タンパク質又はポリペプチド。
【請求項24】
前記非タンパク質剤は、核酸(例えば、DNA若しくはRNA)、脂質、糖脂質、多糖、薬物、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子又はレポーター基、例えば、蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物である、請求項1~16のいずれか一項に記載の分子。
【請求項25】
前記核酸は、DNA、RNA、siRNA、RNAi又はマイクロRNAである、請求項24に記載の分子。
【請求項26】
前記薬物は、細胞障害性剤、化学療法剤、抗腫瘍薬、血管新生阻害剤又はアポトーシス促進剤である、請求項24に記載の分子。
【請求項27】
前記FcRn結合フラグメントは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質、請求項2に記載のポリペプチド又は請求項3に記載の分子。
【請求項28】
請求項1、2、4~23及び27のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項29】
請求項28に記載の核酸を含むベクター。
【請求項30】
請求項28に記載の核酸又は請求項29に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項31】
請求項1~16のいずれか一項に記載の分子の前記FcRn結合フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸を含むベクター。
【請求項33】
請求項31に記載の核酸又は請求項32に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項34】
請求項30に記載の宿主細胞から前記融合タンパク質又はポリペプチドを発現させる工程、及び前記融合タンパク質又はポリペプチドを精製する工程を含む、請求項1~23又は27のいずれか一項に記載の融合タンパク質又はポリペプチドを生成する方法。
【請求項35】
請求項1~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子、薬学的に許容される担体及び希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項36】
治療に使用するための請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項35に記載の医薬組成物の、治療における使用。
【請求項38】
治療に使用するための、請求項1~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子。
【請求項39】
請求項1~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子の、治療における使用。
【請求項40】
請求項1~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子の、疾患の治療のための医薬の製造における使用。
【請求項41】
請求項1~27のいずれか一項に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子、或いは請求項35に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要としている患者に投与することを含む治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は改善された半減期を有する改変FcRn結合フラグメント、具体的には前記改変FcRn結合フラグメントを含む融合タンパク質及びポリペプチド、並びに前記融合タンパク質を製造する方法、及び治療方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫グロブリンFc領域は、CH2及びCH3ドメインの2つのセットからなるホモ二量体であり、高い発現収率、単純化された精製プロセス及び長い血清半減期を有する2アームタンパク質融合体を生成するために利用されている。しかしながら、CH2及びCH3ドメインの1つのセットを有する単量体Fcを有する1アーム融合タンパク質を生成する試みは、FcRnに対する結合の弱さ又は部分的な単量体形成などの課題に悩まされることが多い。
【0003】
臨床にまで進んだFc融合タンパク質の一価バージョン(Alprolix-血液凝固第IX因子融合、Eloctate-第VIII因子融合)又は一価抗体(Onartuzumab-抗cMet 1アームmAb)は、結合又は「ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)」技術でヘテロ二量体を形成するように操作されたFc領域を利用する。これらは、他のヘテロ二量体Fc技術と共に、望ましくない鎖対合を除き、均一な融合タンパク質を得るために、ロバストな精製プロセスに依存する。製品開発を単純化することを目的とする代替アプローチを探索するために、相互作用を弱めることによって、又はFc中のCH3-CH3二量体界面にグリカンを付加して立体障害を生成することによって、CH2ドメイン及びCH3ドメインの1つのセットのみからなる単量体Fcモダリティを備えた融合タンパク質プラットフォームを操作することに多大な努力がなされてきた。これまでのところ、これらのアプローチのほとんどは、溶解性及び安定性、FcRn結合の喪失、又は均一性の欠如を含むいくつかの面で課題に直面している。加えて、以前に操作された単量体Fc分子の多くは、動的光散乱によって凝集の傾向を有することが観察され、ホモ二量体界面を弱めた後に単量体の立体構造を安定化させるという課題が強調された。操作された単量体Fcモダリティの中で、明らかな均一性及び安定性を有する結晶構造を有することが報告されているのは2つの分子のみである。これらのうちの1つは、CH3-CH3相互作用を遮断するグリコシル化部位の付加によって安定化されるモノマーである。もう1つは、以前の知見に基づいて合理的に設計されたIgG4ファージライブラリーに由来する単量体Fcである(非特許文献1)。しかしながら、第2のプラットフォームは高濃度でオリゴマー化する可能性があることが知られており、これは高濃度での送達を必要とする医薬製品に対するその有用性を損なう可能性がある。
【0004】
承認された生物学的治療薬の優先順位が高まっており、またそれらの投与方法や使用方法も拡大していることから、Fc融合タンパク質の一価バージョンのロバストなプラットフォームを開発することが依然として望まれている。例えば、遺伝子治療の適用及び吸入可能な製品は、いずれも生物学的治療モダリティの豊富な開発領域である。しかしながら、いずれも、治療薬をコードするDNAをパッケージングする能力、又は肺における有効な生体内分布のための最適なサイズに関して、サイズの制約を有する。さらに、モノクローナル抗体と同様の薬物動態学的又は薬力学的特性を有するより小さな分子を生成することは、一般に、商業的製造収率を高め、製品コストを低減するために魅力的である。
【0005】
したがって、Fc融合タンパク質の一価バージョンを提供する必要性が依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Shan et al(2016)PLoS ONE 11(8):e0160345
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、FcRn-CH3二量体化界面における改変がFcRn結合フラグメントの単量体化を改善するという驚くべき発見に関する。したがって、これらのFcRn結合フラグメントは、Fc領域に由来する一価のFcRn結合フラグメントを必要とする又は所望する融合タンパク質、ポリペプチド又はFcRn結合フラグメント-非タンパク質剤コンジュゲート(本明細書では「分子」と称する)において使用された場合、優れた開発可能性を有する。
【0008】
したがって、本開示は、IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントを含む融合タンパク質であって、FcRn結合フラグメントは、351位にフェニルアラニン(F);354位にアルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、プロリン(P)、グリシン(G)、ロイシン(L)又はメチオニン(M);366位にアルギニン(R);395位にリシン(K);405位にアルギニン(R);及び407位にグルタミン酸(E)を含む(ここで、アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)融合タンパク質を提供する。これらの各位置の野生型残基をこれらのアミノ酸で置換することにより、FcRn結合フラグメントの単量体安定性が改善されることがわかった。
【0009】
別の態様では、本開示は、IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントを少なくとも含むポリペプチドであって、FcRn結合フラグメントは、351位にフェニルアラニン(F);354位にアルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、プロリン(P)、グリシン(G)、ロイシン(L)又はメチオニン(M);366位にアルギニン(R);395位にリシン(K);405位にアルギニン(R);及び407位にグルタミン酸(E)を含む(ここで、アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)ポリペプチドを提供する。
【0010】
別の態様では、本開示は、IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントにコンジュゲートした非タンパク質剤を含む分子であって、FcRn結合フラグメントは、351位にフェニルアラニン(F);354位にアルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、プロリン(P)、グリシン(G)、ロイシン(L)又はメチオニン(M);366位にアルギニン(R);395位にリシン(K);405位にアルギニン(R);及び407位にグルタミン酸(E)を含む(ここで、アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)分子を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、前記融合タンパク質又はポリペプチド又は前記分子にコンジュゲートしたFcRn結合フラグメントをコードする核酸を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、前記核酸を含むベクターを提供する。
【0013】
別の態様では、本開示は、前記ベクター又は核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0014】
別の態様では、本開示は、前記融合タンパク質、前記分子で使用するためのFcRn結合フラグメントのポリペプチドを、前記宿主細胞から前記融合タンパク質、FcRn結合フラグメントのポリペプチドを発現させ、それから精製することによって製造する方法を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、治療に使用するための融合タンパク質、ポリペプチド又は分子を提供する。
【0016】
別の態様では、本開示は、疾患の治療のための医薬の製造における融合タンパク質、ポリペプチド又は分子の使用を提供する。
【0017】
別の態様では、本開示は、治療有効量の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子を、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[図1A]以前のファージライブラリーキャンペーンからの野生型IgG4、MFc1及びMFc2、MFc1 CH2ドメインにおけるYTE変異をCH3変異セットで置き換えたT1バリアント、並びにMFc3及びMFc4の最終配列におけるCH2及びCH3ドメインの配列アラインメントを示す。[図1B]T1の結晶構造を示す。[図1C]Thr350/Leu440及びGln355/Glu356において形成された水素結合の小セットを詳述する、T1の拡大図を示す。
図2】[図2A]残基S354を標的とする点変異バリアントのパネルの、野生型IgG4、T1及びT1-libにおけるCH2及びCH3ドメインの配列アラインメントを示す。[図2B]良好な均一性を有する約26~27kDaの分子量を示すT1点変異体を示す代表的なSEC-MALS分析を示す。[図2C]中程度に高い熱安定性を有するS354E及びS354Dを同定するためのT1精製変異体間のDSF比較を示す。
図3】非グリコシル化形態(N297D)の新しい単量体FcのMFc3の結晶構造を示す。MFc3(橙色)とMFc2(又はC4n)の以前に解析された構造(淡紫色)との重ね合わせは、両方が類似の単量体Fc構造を維持し、S354E変異がFc領域構造に顕著な変化を引き起こさなかったことを示す。設計通り、S354E変異のために、グルタミン酸側鎖は、T1において観察された任意の可能な二量体相互作用に突出ている。
図4】[図4A]MFc3(橙色)及びFcRn(青色)/β2-マクログロブリン(桃色)複合体の構造調査を示す。[図4B]MFc3(橙色)とFcRn(青)との間の結合界面を示す。水素結合は破線で示されている。[図4C]MFc4(緑色)及びFcRn(青色)/β2-マクログロブリン(桃色)複合体を示す。[図4D]MFc4(緑色)とFcRn(青)との間の結合界面を示す。水素結合は破線で示されている。[図4E]受容体結合界面に関与する各MFc残基の示差溶媒和エネルギーΔiG(kcal/mol)寄与を示すヒートマップである。より高い正の値は、単量体Fc結合表面からのより強い溶媒和効果を示す。
図5】[図5A]単量体Fcベースの一価二重特異性抗体の模式図を示す。[図5B]Fab-MFc1-scFv及びFab-MFc4-scFvのSEC-MALS分析であり、約100kDaの測定分子量を示し、多分散度は1.001である。[図5C]組換え抗原に対するFab部分及びscFv部分の両方からの予想結合活性を示すバイオレイヤー干渉法を用いた同時結合分析を示す。
図6】[図6A]単量体Fc-二重特異性抗体のインビボマウスPK分析である。hFcRnトランスジェニックマウス血清クリアランス曲線を、Fab及びFc領域の同時結合に基づいて、Fab-MFc1-scFv、Fab-MFc4-scFv、Fab-MFc1及びIgG1対照についてプロットする。[図6B]モデル201を用いた非コンパートメント解析によって決定されたPKパラメータを示す。AUCINF=0時間から無限大時間までの時間グラフに対する血漿中濃度の濃度-時間曲線下面積;CL=クリアランス;Cmax=ピーク濃度;t1/2=終末相半減期。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使用される場合、文脈上明白に他の意味で使用されている場合を除き、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、特別に、それらが言及する用語の複数形も包含するものとする。
【0020】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者により決定される場合の特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、その値がどのように測定又は決定されるかに一部依存する。特定の実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3又は4標準偏差内を意味する。特定の例では、「約」又は「およそ」という用語は、示された値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%又は0.05%内を意味する。「約」又は「およそ」という用語が一連の2つ以上の数値における最初の数値の前に来る場合は常に、「約」又は「およそ」という用語がその一連の数値のそれぞれに適用されると理解されたい。「約」がアミノ酸位置と併せて使用される場合、それは指定位置の1、2、3、4、5又は10アミノ酸以内を意味する。
【0021】
「アミノ酸欠失」又は「欠失した」は、親配列中に存在するアミノ酸残基を除去することを指す。親配列内のアミノ酸は、例えば、この分野で知られた組換え方法によって欠失され得る。したがって、「位置Xにおける欠失」への言及は、位置Xに存在するアミノ酸の欠失を指す。欠失パターンはスキーマAXに従って記載することができ、ここで、Aは位置Xに天然に存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Aは、欠失されたアミノ酸残基である。したがって、L234は、234位のロイシンアミノ酸(L)の欠失を指す。このような状況の下では、残基233及び235が、配列において、次にコードされる。
【0022】
「アミノ酸置換」又は「置換」という用語は、親配列内に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換することを指す。親配列内のアミノ酸は、例えば、化学的ペプチド合成を介して又は当該技術分野で知られた組換え方法によって置換され得る。したがって、「位置Xでの置換」又は「位置Xでの置換」への言及は、位置Xに存在するアミノ酸の他のアミノ酸残基による置換を指す。置換パターンはスキーマAXYに従って記載することができ、ここで、Aは、位置Xに天然に存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Aは置換アミノ酸残基である。したがって、L234Fは、234位のロイシンアミノ酸(L)のフェニルアラニン(F)による置換を指す。
【0023】
「抗体」又は、は、最も広範な意味で用いられ、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、様々な抗体構造、例えば、以下に限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体フラグメントを包含する。免疫グロブリンG(IgG)などの免疫グロブリンは、抗体の一例である。抗体の「クラス」は、その重鎖が有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれa、8、E、y及び11と呼ばれる。
【0024】
「抗原結合フラグメント」は、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の一部を含む、インタクト抗体以外の分子を指す。抗体結合ドメインの例としては、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、線状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、及び抗原結合フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗原結合ドメインのレビューについては、Hudson et al. Nat.Med. 9:129-134(2003)を参照されたい。scFvフラグメントのレビューについては、例えば、Pluckthuen,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたい;また国際公開第93/16185号パンフレット、並びに米国特許第5,571,894号明細書及び同第5,587,458号明細書も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)フラグメントの考察については、米国特許第5,869,046号明細書を参照されたい。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントである。例えば、欧州特許第404,097号明細書;国際公開第1993/01161号パンフレット;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0025】
「EUインデックス」は、Kabat et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest,5thed.,1991 NIH Pub.No.91-3242(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる))のEUナンバリングインデックスを指す。本明細書に開示されるFcRn結合フラグメントのアミノ酸残基は、この番号付けシステムに従って番号付けされる。
【0026】
「Fab」は、VH-CH1及びVL-CL対合を含む抗体フラグメントを指す。この用語は、典型的には高い配列可変性に関連する配列領域の外側のFab内のアミノ酸置換、欠失又は挿入などの非カノニカル配バリアントを含むFabを包含する。例えば、Fabバリアントは、VH若しくはVLフレームワーク領域又はCH1若しくはCLドメインにおける非カノニカルアミノ酸又は配列変化を含むFabを含む。このような変化には、非カノニカルシステイン又は他の誘導体化可能なアミノ酸の存在が含まれ得、これは前記Fabバリアントを異種部分にコンジュゲートするために使用され得る。他のそのような変化には、非カノニカルポリペプチドリンカーの存在が含まれ、これは2つのドメイン間を共有結合的に架橋するポリペプチド配列である。例えば、Fabバリアントは、Fabが単一のポリペプチド鎖として発現され得るように、CH1ドメインをVLドメインに、又はCLドメインをVHドメインに共有結合させるリンカーポリペプチドを含み得る。
【0027】
「Fc領域」又は「Fcドメイン」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域である。それは抗原結合活性を有しないが、炭水化物部分と、FcRn受容体をはじめとする補体受容体及びFc受容体のための結合部位とを含有する(下記を参照)。Fc領域は、第2の定常ドメインCH2全体(EUインデックスによるヒトIgGの231~340の残基)及び第3の定常ドメインCH3(341~447の残基)を含む。ヒトIgG1 Fc領域の参照配列は、UniProtKBアクセッション番号P01857により見出すことができる。ヒトIgG4 Fc領域の参照配列は、UniProtKBアクセッション番号P01861により見出すことができる。
【0028】
「FcRn結合フラグメント」は、FcRn受容体に結合するFc領域の断片を指す。FcRn結合フラグメントは、FcRnへの結合に関与する重鎖CH2-CH3領域又はヒンジ-CH2-CH3領域の部分を含むことができる(Roopenian et al.,Nature Rev.Immunol.7:715-725(2007)を参照されたい。
【0029】
「FcRn受容体」又は「FcRn」は、ヒト若しくは霊長類胎盤、又は卵黄嚢(ウサギ)を通じた胎児への、及び小腸を通じた初乳から新生児への、母親IgGの移行に関与することが知られている、Fc受容体を指す(「n」は新生児を示す)。FcRnが、IgG分子に結合してそれらを血清中にリサイクルすることで、一定した血清IgGレベルの維持に関与することもまた知られている。天然に存在するIgG1、IgG2及びIgG4の分子に対するFcRnの結合は、厳密にはpH依存性であり、pH6で最適に結合する。IgG3は、435の位置に既知の変異を有し(すなわち、ヒトIgGは、ヒトIgG1、IgG2及びIgG4に見られるH435の代わりにR435を有する)、これはpH6での結合の低下をもたらし得る。FcRnは、分子量がそれぞれおよそ50kD及び15kDである2つのポリペプチドのヘテロ二量体を含む。50kDポリペプチドの細胞外ドメインは、主要組織適合性複合体(MHC)クラスIα鎖に関連し、15kDポリペプチドは、非多形性β-ミクログロブリン(β-m)であることが示された。FcRnはまた、胎盤及び新生児腸管に加えて、生物種全体にわたり様々な組織で、並びに様々なタイプの内皮細胞系で発現する。それはまた、成人の血管内皮、筋肉血管系及び肝類洞で発現し、内皮細胞がヒト及びマウスにおける血清IgGレベルの維持に最も関与している可能性があることが示唆される。
【0030】
「融合タンパク質」は、自然界では天然に連結しない第2のポリペプチドと連結する、第1のポリペプチドを含んでいるキメラポリペプチドを指す。融合タンパク質は、3つ以上のドメインを含み得る。
【0031】
「ヒンジFc領域」、「Fcヒンジ領域」、「ヒンジFcドメイン」、又は「Fcヒンジドメイン」という用語は、本明細書で使用される場合、互換的に使用され、Fc領域(EUインデックスによる番号付けで、231~447の残基)と、Fc領域のN末端から伸びるヒンジ領域(EUインデックスによる番号付けで、216~230の残基)とからなるIgG分子の領域を指す。
【0032】
「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェクトされ、又はファージミド又若しくはバクテリオファージで感染された特定の対象細胞、及びこのような細胞の子孫又は潜在的子孫を指す。このような細胞の子孫は、後続世代において、又は宿主細胞ゲノムへの核酸分子の組み込みにおいて生じ得る変異又は環境の影響のために、核酸分子でトランスフェクトされた親細胞と同一でなくてもよい。
【0033】
「連結した」、「融合した」又は「融合」は、互換的に使用される。これらの用語は、化学的結合又は組換え手段をはじめとする何らかの手段によって、2つ以上の要素又は成分を連結することを指す。
【0034】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくは塩基、及び/又はそれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0035】
「ScFv」は、抗体のVH/VLドメイン対合を含む抗体断片を指す。scFvは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを含む。scFvはまた、操作されたシステインなどの非カノニカルアミノ酸配列バリアントを含み得る。scFvは、ドメイン内ジスルフィド結合形成のための一対の操作されたシステインを含み得る。
【0036】
「対象」は、本発明の方法による治療が提供される動物、ヒト又は非ヒトを指す。獣医学的及び非獣医学的適用が企図される。この用語には、哺乳動物、例えば、ヒト、他の霊長類、ブタ、マウス及びラットなどのげっ歯類、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ及びヤギが含まれるが、これらに限定されない。典型的な対象には、ヒト、家畜、並びにネコ及びイヌなどの家庭用ペットが含まれる。好ましい対象はヒトである。
【0037】
「治療有効量」は、対象又は哺乳動物における疾患又は障害を「治療する」のに有効な融合タンパク質、ポリペプチド、分子、又はそれらの医薬組成物の量を指す。
【0038】
「治療すること」又は「治療」又は「治療する」は、(1)診断された病的状態又は障害を治癒し、遅延させ、症状を軽減させ、且つ/又は進行を食い止める治療手段、及び(2)標的の病的状態又は障害の進行を阻止し、且つ/又は遅延させる予防又は防止手段の両方を指す。したがって、治療が必要とされる者としては、障害を既に有する者;障害を有しやすい者;及び障害を予防すべき者が挙げられる。特定の態様では、患者が、疾患又は病態、例えばあるタイプの癌の完全な、部分的な又は一時的な寛解を示す場合、対象は、本開示の方法により疾患又は病態、例えば癌が良好に「治療」される。
【0039】
「ベクター」は、宿主細胞に1つ以上の目的の遺伝子又は配列を送達し、一部の態様では発現させる能力を有するコンストラクトを指す。ベクターの例としては、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤に会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
FcRN結合フラグメント
Fc領域は、抗体を介した様々な機能を促進する抗体の非抗原結合成分である。特定の機能の1つは、FcRn受容体と結合して抗体のリサイクルを促進し、抗体の半減期を調節することである。Fc領域とFcRnとの間のエンドソームpHでの高い親和性の結合は、酸性エンドソームからの抗体の輸送を促進して、リソソームでの抗体の分解を抑制する。
【0041】
本開示は、様々な治療方法の半減期を延長するために使用することができる、単量体形態で安定化されたFcRn結合フラグメントの開発に関する。このような強化は、Fc領域のFcRn-リサイクリング特性がモノマー形態で達成されることを可能にすることによって達成される。FcRn結合フラグメントを使用して融合タンパク質を作製し、FcRnリサイクリングから恩恵を受ける治療方法のレパートリーを拡大することができる。
【0042】
したがって、本開示は、IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントを提供する。FcRn結合フラグメントは、351位にF、354位にR、K、D、E、F、Y、P、G、L又はM、366位にR、395位にK、405位にR、及び407位にEを含む。アミノ酸の番号付けは、EUインデックスによる。
【0043】
実施例は、IgG分子のFc領域の野生型(wt)配列に対するこれらのアミノ酸置換が、FcRn結合フラグメントの単量体安定性を改善することを示す。wt抗体中のFc領域は、典型的には二量体形態で存在する。モノマー安定性の改善は、治療用タンパク質が単量体であることが望ましい融合タンパク質でFcRn結合フラグメントを利用する場合(例えば、遺伝子治療用途において、又は吸入による送達のために、パッキングサイズの制限又はエアロゾル化特性が、これらの経路を介する標準抗体の投与を妨げる場合)に有利である。融合タンパク質、ポリペプチド、又は非タンパク質剤へコンジュゲーとするためのFcRn結合フラグメントの発現及び精製はまた、第四級構造を有する治療用タンパク質を単離することと比較して、大規模製造における収率を改善し得る。
【0044】
一般に、配列中の指定された各位置のアミノ酸は非カノニカルであり、これは、それらが野生型Fc領域、特に野生型ヒトFc領域中の指定された位置に通常見出されないことを意味する。アミノ酸の改変(例えば、置換、欠失又は挿入)は、当業者によく知られた周知の標準的な遺伝子工学技術を使用して、配列に操作され得る。
【0045】
したがって、本開示は、IgG分子のFc領域のFcRn結合フラグメントを提供する。FcRn結合フラグメントは、以下のアミノ酸置換を含む:351位のF、354位のR、K、D、E、F、Y、P、G、L又はM、366位のR、395位のK、405位のR、及び407位のE。アミノ酸の番号付けは、EUインデックスによる。
【0046】
本明細書において別段の記載がない限り、Fc領域中の特定の位置における特定のアミノ酸(EUインデックスによる番号付け)への言及は、アミノ酸が天然配列と比較してその特定の位置における置換であることを意味する。
【0047】
いくつかの例において、FcRn結合フラグメントは、354位にR、K、D又はEを、任意選択によりD又はEにR、K、D又はEをさらに含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。実施例は、S354が高濃度でFcRn結合フラグメントの二量体化を補助することを示す。高濃度での高次種の形成は、皮下注射により高濃度溶液として投与される特定の治療薬にとって望ましくない場合がある。特定の治療では、治療効果を達成するために、比較的高い(例えば、300mgを超える)量の投与を必要とし得る。高い量は、注射容量を減少させるために高濃度製剤を必要とし得る。より多くの注射量は患者にとって一般に望ましくない。高濃度での高次種の形成は粘度を増加させる可能性があり、これは、製剤がプレフィルドシリンジなどの加圧デバイスから投与される場合に問題となり得る。さらに、より高次の種が製造プロセス中、例えば濾過又は分画中に失われる場合、高濃度でのより高い単量体純度は、生産収率を増加させ得る。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、354位にEをさらに含む。
【0048】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、約アミノ酸残基から、IgG分子の約216位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基までを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。残基216~447は、ヒンジ-Fc領域(EUインデックスに従って番号付けで、216~230の残基)及びFc領域(EUインデックスによる番号付けで、231~447の残基)を含む。
【0049】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、約アミノ酸残基から、IgG分子の約231位のアミノ酸残基から約447位のアミノ酸残基までを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。
【0050】
特定の例では、FcRn結合フラグメントは、IgGのIgG4サブクラスに由来するが、所与の動物の他の任意のIgGサブクラスであってもよい。例えば、ヒトでは、IgGクラスには、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4が含まれる。特定の例では、FcRn結合フラグメントは、IgG4 Fc領域に由来する。
【0051】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、351位にF、354位にE、366位にR、395位にK、405位にR、及び407にEを含む(ここで、アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)。
【0052】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、以下のこれらのアミノ酸位置のそれぞれにおけるこれらのアミノ酸のそれぞれに関して、保存的アミノ酸置換を含み得る:351位のF、354位のE、366位のR、395位のK、405位のR、及び407のE(ここで、アミノ酸の番号付けはEUインデックスに従う)。
【0053】
これらのアミノ酸のそれぞれについての例示的な保存的アミノ酸置換は、以下の通りである。
【0054】
【表1】
【0055】
保存的置換は、所与のアミノ酸を、生化学的特性(例えば、電荷、疎水性及びサイズ)が類似している異なるアミノ酸に変化させる、タンパク質におけるアミノ酸置換である。したがって、当業者は、保存的アミノ酸置換が、単量体の形成及び半減期の改変に関して、本明細書に記載の最も例示的なFcRn結合フラグメントと同様の利益を生じることを期待し得る。当業者であれば、351位、354位、366位、395位、405位及び407位(EUインデックスによる番号付け)のうちの1つ以上に保存的アミノ酸置換を有するFcRn結合フラグメントを生成し、これらのバリアントが実施例に記載される実験を実施することによって、本明細書に開示される好ましいFcRn結合フラグメントと類似の特性(例えば、単量体安定性、FcRn結合能、半減期特性)を有するかどうかを試験することができる。
【0056】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、配列番号1に記載されるアミノ酸配列からなる。
【0057】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、半減期延長変異(例えば、アミノ酸の挿入、欠失又は置換)を含む。
【0058】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、300nM未満のヒトFcRnに対する平衡解離定数(K)を有する。実施例は、ヒトIgG1 Fc領域がpH6において、およそ300nMのKDでFcRnに結合することを示す。対照的に、操作されたFcRn結合フラグメントは、pH6.0において、実質的に改善されたKDでヒトFcRnに結合することができる。より低いpHでのより強い結合は、エンドソームからのリサイクリング傾向が天然配列を含むFcRn結合フラグメントと比較して改善され得ることを意味する。
【0059】
は、実施例に概説する技術を含む、当業者によく知られた様々な技術によって測定することができる。例えば、精製された組換えヒトFcRnへのFcRn結合フラグメントの結合は、バイオレイヤー干渉法によって測定することができる。バイオレイヤー干渉法は、Octet384装置(ForteBio、Menlo Park、CA)を用いて実施することができる。例えば、3mg/mLのウシ血清アルブミン、0.05%(vol/vol)及びTween20(1×Kinetics Buffer;ForteBio)を含むPBS緩衝液(pH7.4)又は100mM MES緩衝液(pH6.0)中の1μg/mLのビオチン化FcRnを、ストレプトアビジンバイオセンサー(ForteBio)で捕捉する。次いで、ロードされたバイオセンサーをアッセイ緩衝液で洗浄して結合していないタンパク質を除去し、続いて、所望のpHでの異なるFcバリアント又はFc融合構築物の連続希釈によって結合及び解離を測定する。その後、Octetソフトウェア(バージョン7.2)を用いて、データの1:1結合動態モデルに基づく非線形適合から動態パラメータ(kon及びkoff)と見かけのKを次式により算出する。
【数1】
【0060】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、少なくとも300nMのヒトFcRnに対する平衡解離定数(K)を有する。
【0061】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、ヒトFcRnに、pH6において、約1nM~約300nM(例えば、約1nM~約250nM、約1nM~約240nM、約1nM~約230nM、約1nM~約200nM、約1nM~約180nM、約1nM~約160nM、約1nM~約140nM、約1nM~約120nM、約1nM~約100nM、約1nM~約80nM、約1nM~約60nM、約1nM~約40nM、約1nM~約20nM、又は約1nM~約100nM)のKで結合する。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、pH6において、約1nM~約10nMのKでヒトFcRnに結合する。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、約1nM、約2nM、約3nM、約4nM、約5nM、約6nM、約7nM、約8nM、約9nM又は約10nMのKでヒトFcRnに結合する。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、pH6.0において、約5nMのKでヒトFcRnに結合する。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、pH6.0において、5nMのKでヒトFcRnに結合する。
【0062】
いくつかの例では、K値は、例えば、上記及び実施例に記載されるように、バイオレイヤー干渉法によって決定し得る。
【0063】
抗原結合ドメイン
特定の例では、本開示は、本明細書に開示されるFcRn結合フラグメントに共有結合した少なくとも1つの抗原結合ドメインを含む融合タンパク質を提供する。
【0064】
いくつかの例では、融合タンパク質又はポリペプチドは、複数の抗原結合ドメインを含む。
【0065】
いくつかの例では、融合タンパク質又はポリペプチドは、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの抗原結合ドメインを含む。
【0066】
いくつかの例では、融合タンパク質又はポリペプチドは、2つの抗原結合ドメインを含む。
【0067】
いくつかの例では、第1の抗原結合ドメインは、FcRn結合フラグメントのN末端にある。
【0068】
いくつかの例では、第2の抗原結合ドメインは、FcRn結合フラグメントのC末端にある。
【0069】
いくつかの例では、各抗原結合ドメインは、FcRn結合フラグメントのN末端にある。
【0070】
いくつかの例では、各抗原結合ドメインは、FcRn結合フラグメントのC末端にある。
【0071】
いくつかの例では、各抗原結合ドメインは、異なる抗原に特異的に結合する。
【0072】
いくつかの例では、各抗原結合ドメインは、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体又はscFvから独立して選択される。
【0073】
いくつかの例では、抗原結合断片はFabである。
【0074】
いくつかの例では、抗原結合断片はscFvである。
【0075】
いくつかの例では、融合タンパク質又はポリペプチドは、Fabである第1及び第2の抗原結合ドメインを含む。
【0076】
いくつかの例では、融合タンパク質又はポリペプチドは、scFvである第1及び第2の抗原結合ドメインを含む。
【0077】
いくつかの例では、融合タンパク質又はポリペプチドは、Fabである第1の抗原結合ドメイン及びscFvである第2の抗原結合ドメインを含む。
【0078】
実施例は、本明細書に開示されるFcRn結合フラグメントが二重特異性分子の生成に使用できることを示す。
【0079】
Fc領域バリアント
特定の例では、1つ以上のアミノ酸改変をFc領域内に導入し、それによりFc領域バリアントを生成することができる。次いで、このFc領域バリアントを、本明細書に開示されるFcRn結合フラグメントに組み込むことができる。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含み得る。
【0080】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、これを、インビボのFcRn結合フラグメントの半減期が重要であるが、特定のエフェクター機能(補体及びADCCなど)は不要又は有害である用途のための所望の候補にする、一部の、しかし全部ではないエフェクター機能を有する。インビトロ及び/又はインビボの細胞傷害性アッセイを実施して、CDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、この抗体にFcγR結合が欠如している(したがって、ADCC活性が欠如している可能性がある)が、FcRn結合能力は維持していることを確かなものにすることができる。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞はFcγRIIIAのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc. Nat’l Acad. Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom,I et al.,Proc. Nat’l Acad. Sci.USA 82:1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号明細書(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA;及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照されたい。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。或いは、又はさらに、対象分子のADCC活性をインビボで、例えばClynes et al.Proc. Nat’l Acad. Sci.USA 95:652-656(1998)で開示されるものなどの動物モデルで評価し得る。またC1q結合アッセイを行って、抗体がC1qに結合することができず、したがってCDC活性を欠いていることを確認することもできる。例えば、国際公開第2006/029879号パンフレット及び国際公開第2005/100402号パンフレット中のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol. Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びインビボクリアランス/半減期の決定は、当技術分野で知られた方法を用いて行うこともできる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照されたい)。
【0081】
いくつかの例では、FcRnへの結合を増加させるために、1つ又は複数のアミノ酸改変をFc領域に導入することができる。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、EUインデックスにより番号付けされた、以下の3つの変異を含む:M252Y、S254T、及びT256E(「YTE変異」)(米国特許第8,697,650号明細書;Dall’Acqua et al.,Journal of Biological Chemistry 281(33):23514-23524(2006)も参照されたい)。
【0082】
特定の例では、YTE変異は、天然(すなわち、非YTE変異体)FcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメントの血清中半減期を延長させる。いくつかの例では、YTE変異は、天然(すなわち、非YTE変異体)FcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメントの血清中半減期を2倍延長させる。いくつかの例では、YTE変異は、天然(すなわち、非YTE変異体)FcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメントの血清中半減期を3倍延長させる。いくつかの例では、YTE変異は、天然(すなわち、非YTE変異体)FcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメントの血清中半減期を4倍延長させる。いくつかの例では、YTE変異は、天然(すなわち、非YTE変異体)FcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメントの血清中半減期を少なくとも5倍延長させる。いくつかの例では、YTE変異は、天然(すなわち、非YTE変異体)FcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメントの血清中半減期を少なくとも10倍延長させる。例えば、米国特許第8,697,650号明細書を参照されたい;Dall’Acqua et al.,Journal of Biological Chemistry 281(33):23514-23524(2006)もまた参照されたい。
【0083】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、エフェクター機能を低下させるために変異される。いくつかの例では、エフェクター機能が低下したFcRn結合フラグメントは、EUインデックスにより番号付けされたFc領域の238、265、269、270、297、327及び329の残基のうちの1つ以上の置換を有するものを含む(米国特許第6,737,056号明細書)。このような変異FcRn結合フラグメントは、EUインデックスにより番号付けされた265位、269位、270位、297位及び327位のアミノ酸のうちの2つ以上に置換を有するもの、例えば、EUインデックスにより番号付けされた265及び297の残基のアラニンへの置換(すなわち、EU番号付けによるD265A及びN297A)を有する、いわゆる「DANA」Fc領域変異体を含む(米国特許第7,332,581号明細書)。特定の例では、FcRn結合フラグメントは、以下の2つのアミノ酸置換を含む:D265A及びN297A。特定の例では、FcRn結合フラグメントは、以下の2つのアミノ酸置換からなる:D265A及びN297A。
【0084】
特定の例では、329位のプロリン(EUインデックスによる番号付け)(P329)は、グリシン若しくはアルギニン、又はFcのP329とFcgRIIIのトリプトファン残基W87及びW110との間に形成されるFc/Fcγ受容体界面内のプロリンサンドイッチを破壊するのに十分な大きさのアミノ酸残基で置換される(Sondermann et al.:Nature 406,267-273(20 July 2000))。さらなる例では、FcRn結合フラグメントにおける少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、全てEUインデックスによる番号付けで、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D、又はP331Sであり、さらに別の例では、前記少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換は、ヒトIgG1のFc領域のL234A及びL235Aであるか、又はヒトIgG4のFc領域のS228P及びL235Eである(米国特許第8,969,526号明細書)。
【0085】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、FcRnへのFc領域の結合を改善する、米国特許出願公開第2005/0014934A1号明細書に記載される1つ以上の置換を含む。このようなFcRn結合フラグメントとしては、ECインデックスによる番号付けで、Fc領域残基の 238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434の1つ以上に置換を有するもの、例えばFc領域の残基434、の置換を有する者が挙げられる(米国特許第7,371,826号明細書)。Fc領域バリアントの他の例に関するDuncan & Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;及び国際公開第94/29351号パンフレットも参照されたい。
【0086】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、FcRnへの結合を調節する、国際公開第2015/175874号パンフレット(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のHis435ループ変異を含む。実施例は、His435ループ変異が、EUインデックスにより番号付けで432~437位に天然アミノ酸残基を含むFcRn結合フラグメントと比較して、FcRn結合フラグメント血清中半減期を延長することを示す。
【0087】
いくつかの例では、Fc領域は、以下の置換を含む:432位のC;残基433のH、R、P、T、K、S、A、M又はN;残基434のY、N、R、W、H、F、S、M又はT;残基435のH;残基436のL、Y、F、R、I、K、M、V、H、S又はT;及び残基437のC。いくつかの例では、改変FcRn結合フラグメントのインビボ半減期は、天然(すなわち、非YTE変異体)のFcRn結合フラグメントより増大する。生理活性分子のインビボ半減期の増大には、例えば、ワクチン、受動的免疫療法、及びその他の治療及び予防法において、これらの分子の投与量及び/又は投与頻度の減少を含む多くの利点がある。
【0088】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントバリアントは、以下の置換を含む:432位のC;残基433のS、H、R、P、T、K、A、M又はN;残基434のY、R、W、H又はF;残基435のH;残基436のL、R、I、K、M、V又はH;及び残基437のC(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントは、以下を含む:432位のC;433位のS;434位のW又はY;435位のH;436位のL、及び437位のC(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントバリアントは、432位にC;433位にS、434位にY;435位にH;436位にL及び437位にCを含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。国際公開第2015/175874号パンフレット及び本開示の実施例は、変異のこの特定の組合せが、FcRnへのFc領域のpH依存性結合を増加させ、pH依存性のFcRn媒介リサイクリングを増加させ、それによって半減期を改善することを示す。
【0089】
いくつかの例では、FcRn結合フラグメントバリアントは、EUインデックスによる番号付けで438位にアミノ酸の欠失を含む。実施例は、驚くべきことに、配列からこのアミノ酸を欠失させることにより、開発可能性プロファイルを含まずに、少なくとも同等の半減期延長特性を有するFcRn結合フラグメントが生成されることを示す。いくつかの例では、FcRn結合フラグメントはQ438の欠失を含む(ここで、番号付けはEUインデックスに従う)。
【0090】
治療の方法
本明細書に開示される融合タンパク質、ポリペプチド又は分子は、治療の方法、例えば癌を治療する方法において使用され得る。治療を必要としている対象に、治療有効量の本明細書に開示される融合タンパク質、ポリペプチド又は分子を投与することを含む、治療方法もまた提供される。実際の投与量、並びに投与の速度及び時間的経過は、治療されるものの性質及び重症度に依存する。治療の処方箋、例えば投与量に関する決定は、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内にある。
【0091】
核酸
本開示は、本明細書に開示される融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。これらのポリヌクレオチドは、RNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAにはcDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAが含まれ、またDNAは二本鎖であっても一本鎖であってもよく、一本鎖の場合、コード鎖であっても非コード鎖(アンチセンス鎖)であってもよい。特定の例では、DNAは、天然には存在しない組換え融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントを生成するために使用されるcDNAである。
【0092】
特定の例では、ポリヌクレオチドは単離されている。特定の例では、ポリヌクレオチドは実質的に純粋である。特定の例では、ポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現及び分泌を補助するポリヌクレオチド(天然又は異種)に同じリーディングフレーム内で融合した成熟ポリペプチドのコード配列(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)を含む。リーダー配列を有するポリペプチドはプレタンパク質であり、成熟形態のポリペプチドを形成するため宿主細胞によって切断されるリーダー配列を有することができる。いくつかの態様では、ポリヌクレオチドは、特定の宿主細胞のためのコドン使用を最適化するように改変される。
【0093】
特定の態様では、ポリヌクレオチドは、同一リーディングフレーム内で、例えば、コードされるポリペプチドの精製を可能にする異種性マーカー配列に融合された、融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントをコードする配列を含む。例えば、マーカー配列は、pQE-9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグであってもよく、それにより細菌宿主の場合にマーカーに融合した成熟ポリペプチドの精製が提供され、又はマーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)を使用するときには、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するヘマグルチニン(HA)タグであってもよい。
【0094】
ポリヌクレオチドは、コード領域、非コード領域、又はその双方に、改変を含有し得る。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、又は欠失を生じさせるが、コードされるポリペプチドの特性又は活性を変化させない変化を含む。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドバリアントは、遺伝子コードの縮重によるサイレント置換によって作製される。ポリヌクレオチドバリアントはまた、例えば、特定の宿主のためにコドン発現を最適化する(ヒトmRNA中のコドンを大腸菌(E.coli)などの細菌宿主にとって好ましいものに変更する)ためなどの多様な理由から、生成され得る。
【0095】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞も提供される。(合成、部位特異的変異誘発又は別の方法による)構築時、目的の特定の単離ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を、発現ベクターに挿入し、所望の宿主中でのタンパク質発現に適した発現制御配列に作動可能に連結させ得る。適切なアセンブリは、ヌクレオチドシーケンシング、制限マッピング、及び好適な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。当該技術分野においてよく知られているように、宿主におけるトランスフェクトした遺伝子の高い発現レベルを達成するためには、その遺伝子を、選択の発現宿主で機能する転写及び翻訳発現制御配列に作動可能に連結しなければならない。
【0096】
特定の例では、組換え発現ベクターは、本明細書に開示される融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントをコードするDNAを増幅及び発現させるために使用される。組換え発現ベクターは、複製可能なDNAコンストラクトであり、これは、例えば、哺乳動物、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来する好適な転写又は翻訳調節エレメントに作動可能に連結した融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントのポリペプチド鎖をコードする、合成又はcDNA由来のDNA断片を有する。転写単位は、一般に、以下にさらに詳細に記載するように、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する遺伝エレメント、例えば転写プロモーター又はエンハンサーと、(2)mRNAに転写され且つタンパク質に翻訳される構造又はコード配列と、(3)適切な転写及び翻訳の開始及び終止配列との集合を含む。このような調節エレメントとして、転写を制御するオペレーター配列が挙げることができる。多種多様な発現宿主/ベクターの組合せを利用可能である。真核宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、及びサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、既知の細菌プラスミド、例えば、pCR1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体などの大腸菌(E.coli)由来のプラスミド、より広範な宿主プラスミド、例えばM13、及び繊維状一本鎖DNAファージが挙げられる。
【0097】
本明細書に開示される融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントの発現に好適な宿主細胞としては、適切プロモーターの制御下にある、原核生物、酵母、昆虫又はより高等な真核細胞が挙げられる。原核生物としては、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、大腸菌(E.coli)又は桿菌が挙げられる。高等真核細胞としては、以下に記載の哺乳動物起源の樹立細胞株が挙げられる。無細胞翻訳系も用いることができる。細菌、真菌、酵母及び哺乳動物の細胞宿主との使用に適したクローニングベクター及び発現ベクターは、Pouwels et al.(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,N.Y.,1985)に記載されており、この関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。抗体生成を含むタンパク質生成の方法に関するさらなる情報は、例えば、米国特許出願公開第2008/0187954号明細書、米国特許題.6,413,746号明細書及び同第6,660,501号明細書、並びに国際公開第04/009823号パンフレットにおいて見出すことができ、これらの各文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0098】
形質転換宿主により産生された融合タンパク質、ポリペプチド又は分子のFcRn結合フラグメントは、任意の好適な方法によって精製することができる。このような標準的方法としては、クロマトグラフィー法(例えば、イオン交換、アフィニティー、及びサイズカラムクロマトグラフィー法)、遠心分離法、溶解度差法、又は任意の他の標準的タンパク質精製技術による方法が挙げられる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に付着させて、適切なアフィニティーカラムに通過させることによる容易な精製が可能となり得る。単離されたタンパク質はまた、タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学などの技術を使用して物理的に特徴付けることができる。
【0099】
別の態様では、本開示は、本明細書で定義される融合タンパク質、ポリペプチド又はFcRn結合フラグメントを作製する方法を提供する。本方法は、(i)351、354、366、395、405及び407のアミノ酸位置のコドンを、本明細書に記載の各位置のアミノ酸をコードするコドンで置換することによって、FcRn結合フラグメントをコードする核酸配列の変異を誘発させる工程を含む。アミノ酸位置の番号付けは、EUインデックスに従う。この方法は、変異誘発された核酸配列を発現させる工程;及び発現された融合タンパク質、ポリペプチド又はFcRn結合フラグメントを単離する工程をさらに含む。
【0100】
いくつかの例では、本方法は、本明細書に開示されるように、FcRn結合フラグメントを非タンパク質剤と反応させて分子を形成するさらなる工程を含む。
【0101】
医薬組成物
本開示は、本明細書に記載の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子を含む組成物、特に、本開示の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子、及び医薬賦形剤、希釈剤又は担体を含む医薬組成物(又は診断組成物)に及ぶ。
【0102】
組成物は、通常、薬学的に許容される担体を通常含む無菌医薬組成物の一部として供給される。本発明の医薬組成物は、ワクチン製剤に関連して、薬学的に許容可能なアジュバントをさらに含み得る。
【0103】
本開示はまた、前記組成物を調製する方法、例えば、本開示の分子、例えば、本開示の加水分解された分子を、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体の1種以上を添加し、一緒に混合することを含む、医薬又は診断組成物の調製に及ぶ。
【0104】
本開示の融合タンパク質、ポリペプチド又は分子は、医薬又は診断組成物中の唯一の活性成分であっても他の活性成分を伴ってもよい。
【0105】
医薬組成物は、好適には、治療有効量の本開示による融合タンパク質、ポリペプチド又は分子を含む。治療有効量は最初に、細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常げっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ若しくは霊長類で、推定することができる。また、動物モデルを使用して適切な濃度範囲及び投与経路を決定することもできる。次いで、このような情報を使用して、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定することができる。
【0106】
組成物は、患者に単独で投与することができ、又は他の薬剤、薬物若しくはホルモンと組合せて(例えば、同時に、連続的に若しくは別個に)投与することができる。
【0107】
薬学的に許容される担体は、それ自体、組成物を受ける個体に有害な抗体の生成を誘導すべきでなく、また毒性であるべきでもない。
【0108】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水などの液体をさらに含有し得る。湿潤剤及び乳化剤又はpH緩衝物質などの助剤物質が、そのような組成物中に含まれてもよい。このような担体により、医薬組成物を、患者による摂取のために、錠剤、丸薬、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤及び懸濁液として製剤化することができる。
【0109】
好適な投与形態としては、非経口投与に好適な形態、例えば、注射又は注入によるもの、例えば、ボーラス注射又は連続注入によるものが挙げられる。製品が注射又は注入用である場合、それは懸濁液、溶液又はエマルションの形態をとり得、配合剤、例えば懸濁化剤、保存剤、安定剤及び/又は分散剤を含有し得る。或いは、本開示の分子は、使用前に適切な無菌の液体で再構成する乾燥形態であり得る。
【0110】
本開示による配合物においては、好適には、最終配合物のpHは、融合タンパク質、ポリペプチド又は分子の等電点の値と類似せず、例えば、配合物のpHが7である場合、8~9以上のpIが適切であり得る。
【0111】
本発明の医薬組成物は、以下に限定されるものではないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)(例えば、国際公開第98/20734号パンフレットを参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む、任意の数の経路により投与することができる。皮下噴射器を使用して本発明の医薬組成物を投与することもできる。典型的には、治療組成物は、注射剤として、溶液又は懸濁液として調製することができる。注射前の液体ビヒクル中の溶液又は懸濁液に好適な固体形態を調製することもできる。
【0112】
組成物の直接送達は、一般に、注射、皮下、腹腔内、静脈内若しくは筋肉内送達により達成することができ、又は組織の間質腔に送達される。組成物はまた、病変に投与することもできる。投薬治療は、単回用量スケジュール又は複数回用量スケジュールであり得る。
【0113】
薬学的に許容される担体の詳細な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company,N.J.1991)において入手可能である。
【実施例
【0114】
実施例1
創薬の分野では、疾患生物学及び抗体技術の両面での画期的な進歩と共に、パラダイムシフト抗体と抗体誘導体治療薬の開発が著しく進んでいる。1,2免疫腫瘍学における研究の進歩と、新規の二重特異性及び多重特異性ターゲティングプラットフォームの開発との間の相乗効果は、癌治療における最新の成功を推進するための多くの有望な可能性を生み出している。3-7臨床的有効性を達成しながら毒性を最小限にすることの重要性は、免疫グロブリンG(IgG)又はフラグメント結晶化可能(Fc)融合タンパク質のデフォルトの二価フォーマットから標的化価を微調整する必要性を強調している。証拠の増加は、非特異的細胞死滅、サイトカイン放出、並びに望ましくない受容体架橋を減少させ、受容体アゴニズム及び輸送を改善するために、一価のターゲティングアームを有する二重特異性及び多重特異性フォーマットが必要であることを示している。8-11T細胞エンゲージャー又はナチュラルキラー(NK)細胞エンゲージャー、例えば、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTe)、二重親和性再ターゲティングタンパク質(DART)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、及び三重特異性キラー細胞エンゲージャー(TriKE)は、一価の二重特異性及び多重特異性ターゲティングで臨床的に有望であることが示されているが、半減期が短いという欠点がある。ヘテロ二量体Fc工学は、二重特異性及び多重特異性標的化のための正しい鎖対合に導くことができるノブ・イン・ホール、CrossmAb及びDuetmAbなどの技術の開発によって、これらのエンゲージャーの半減期を延長することを可能にした。11-13
【0115】
「調整可能である」血清中半減期を有する立体配座的に安定な単量体Fc抗体フラグメントの生成に成功すれば、抗体及びFc融合治療薬の新たな可能性を開くことになるであろう。米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)から承認を受けた180を超える治療用タンパク質の多くは、活性で長く持続する融合タンパク質に適合する可能性を有する。14-18免疫-細胞エンゲージャー、抗体-薬物コンジュゲート、免疫サイトカイン融合体、及び他の治療用タンパク質は、活性の増強及び毒性の低減のために、単一特異性及び多重特異性の両方の形式で一価のターゲティングを提供するようにオーダーデザイン(tailor-designed)することができる。CH2及びCH3ドメインの1つのセットとして定義される単量体Fcを操作するためのこれまでの努力は、CH3-CH3二量体界面で破壊すべき広範な相互作用のために困難であることがわかっている。高濃度では、多くの変異体で単量体-二量体平衡が観察されている。19,20操作された単量体Fcモダリティの中で、明白な均一性及び安定性を有する結晶構造を有することが報告されているのは2つの分子のみである。13,21これらのうちの1つは、CH3-CH3相互作用を遮断するグリコシル化部位の付加によって安定化される単量体である。21本発明者らのグループによって生成されたもう1つは、以前の知見に基づいて合理的に設計されたIgG4ファージライブラリーに由来する単量体Fcである。13
【0116】
タンパク質治療薬の次の波のための単量体Fcプラットフォームの適用を拡大するために、本発明者らは、この努力の相互に関連した次の3つの重要な側面に取り組むことにした:(1)調節可能な血清中半減期、(2)一価の二重特異性分子の多様な構築、及び(3)胎児性Fc受容体(FcRn)とFcバリアントとの相互作用の容易な構造調査。pH依存性Fc-FcRn相互作用は、抗体及びその誘導体の血清中半減期の延長に関与する重要な因子である。FcRnは抗体分子を利用し、酸性エンドソーム小胞を通してそれらを運び、リソソーム分解からそれらを保護し、中性pHでの弱い結合のために細胞外にそれらを放出する。22,23単量体Fcバリアントは、二量体結合力の喪失により、FcRnへの見かけの結合が減少することが予想され観察される。13,21以前、本発明者らは、YTE(M252Y/S254T/T256E)変異をファージライブラリーテンプレート設計に組み込むことによって、FcRn結合の喪失を回避した。得られた単量体Fc分子は、YTEを含まないその対応物と比較して、FcRn結合親和性の10倍を超える改善をもたらした。13,24
【0117】
本研究では、以前に組に込んだYTE変異により達成されたものを超える半減期延長の改変に適応可能な単量体Fc分子を操作するための構造誘導方法を報告する。これは、CH2-CH3ドメインの1つのコピーのみでインビボでの血清中半減期を有意に改善することができることを示す最初の概念実証単量体二重特異性分子設計である。FcRnとのこれらの単量体Fc分子の共結晶構造により、他の半減期延長を構築するための基礎として役立ち得る界面の詳細が明らかになった。
【0118】
結果
構造的洞察に基づくCH3-CH3界面の破壊。以前の研究では、本発明者らは、Fc二量体界面の破壊を完全に安定化させるためのCH3ドメインにおける一組の変異を含む合理的に設計されたIgG4ファージライブラリーから、単量体FcバリアントC4(MFc1という名称に変更)を生成した(図1a)。YTE以外の半減期延長変異を有するこれらの二量体破壊変異の適合性を拡張するために、本発明者らは、単量体Fc配列のCH2ドメインにおけるYTE変異を、残基432~438付近のCH3における新たな半減期改変変異のセットで置き換えることによって、試験バリアントT1を用いた取り組みを開始した。この変異セットは、以下の2つの基準に適合したために選択された。第1に、新たな変異セットは、YTE変異よりもFcRn結合をより改善し得ることを示す以前のファージライブラリーキャンペーンの知見に基づいて、半減期をさらに延長させる方法を探求するのに役立つであろう。25第2に、この変異セットの広範な性質は、Fc二量体化界面における破壊を維持する単量体Fcの能力に関する「ストレス試験」になろう。
【0119】
本発明者らは、T1の結晶構造を解明し、二量体IgG4 Fcの結晶構造と、単量体FcのMFc2(又は、YTE変異を有さないC4n;PDB ID:5HVW)の以前に解明された構造と共に解析した。13MFc2及びIgG4 FcのCH3ドメイン(PDB ID:4C54)を、それぞれCα原子上に約0.7及び0.5Åの二乗平均平方根偏差(RMSD)を有するT1と重ね合わせた(MFc2構造中に人工鎖交換を形成する最後の11残基を除外する場合)。CH3ドメインの高度の類似性にもかかわらず、T1は予想外にホモ二量体の形成を示した(図1b)。しかしながら、二量体界面は、野生型IgG4のものと大きく異なっていた。アミノ酸Thr350/Leu440及びGln355/Glu356を含む水素結合の小さなセットが鎖間に形成され、単量体Fc形成の破れの可能性が示された(図1c)。MFc2と重ね合わされた新たに形成されたT1二量体界面を調べると、MFc2における変異の1つ、すなわちArg366がその側鎖において位置をシフトしていることが観察された。このシフトは、各鎖からのPhe351が「到達」し、疎水性スタッキング相互作用を形成することを可能にした。さらに、Arg366変異は二量体を安定化させる新たな水素結合をほとんど確立しなかった(図1c)。構造の詳細な検討から、本発明者らは、Arg366シフトはSer354側鎖上に空間が存在することにより部分的に可能になったと推論した。解析方法は比較的良好に挙動するT1タンパク質を示したが、結晶構造は、二量体界面の広範な破壊にもかかわらず、高タンパク質濃度では操作されたFcが二量体形成に関与し得る可能性が残っていることを示唆する。
【0120】
構造に基づく工学並びに結合及び生物物理学的特性の特徴付け。T1結晶構造において観察された新たに形成された相互作用は、より適応可能な単量体Fc分子を構築する機会を作り出した。T1二量体界面の構造検査(図1c)から、354位のセリンをより大きな側鎖を有するアミノ酸で置換することにより、Phe351が関与する疎水性相互作用の道を開くのをArg366側鎖が妨げる可能性があると考えられた。この置換はまた、結果として生じる水素結合形成を妨げる可能性がある。興味深いことに、Ser354は、本発明者らの最初のモノマーFc構築物であるMFc1がSer354以外の全ての標的位置に変異を生成していたにもかかわらず、元のファージライブラリーテンプレートにおいて、界面の変異位置の1つとして選ばれていた(図1a)13したがって、本発明者らは、より大きな側鎖を導入するか静電反発を導入するかによってモノマー形成が完全に安定化されるかどうかを調べるために、354位の改良変異の小パネルを設計した。354位に荷電残基(R、K、D、E)と嵩高い極性及び非極性の残基(F、Y、P、Q、L、M)による置換を含むT1バリアント(T1-lib)を構築し(図2a)、続いてプロテインAアフィニティークロマトグラフィーで精製した。SEC-MALS分析により、ほとんど全てのT1-lib改良バリアントが単量体であることを明らかになった(図2b)。
【0121】
T1-libバリアントの中で最も安定なモノマーを選択するために、本発明者らは、疎水性(T)残基の曝露の関数として熱変性を評価するための直交スクリーニングツールとして確立された示差走査蛍光測定(DSF)を使用した。32,33T1-libバリアントにおける熱変性をモニターし、疎水性曝露の転移温度Tの変化を観察した。特に、アミノ酸置換のタイプは、酸性残基(Glu及びAsp)が塩基性残基(Arg及びLys)よりも最大3℃高い転移温度を生じたため、T順位に影響を及ぼした(図2c)。
【0122】
S354Eを有する単量体Fc構造(MFc3及びMFc4)の構造及び特性。SEC-MALS及びDSFの結果に基づいて、S354E変異を選択し、MFcプラットフォームの一般的な適用性を探索した。最初に、元の単量体Fc構築物との適合性を確認するために、結晶構造確認のために、MFc1のS354E点変異体であるMFc3を、その非グリコシル化バリアント(N297D)と共に作製した(図1a)。非グリコシル化MFc3タンパク質の結晶は容易に成長し、2.4Åに回折した。解明された構造は、MFc3分子が高タンパク質濃度で単量体状態を維持することを示した(図3)。MFc2について以前に発表された単量体Fc構造との重ね合わせは、S354E変異がFcのCH2又はCH3ドメインの構造に大きな変化を引き起こさなかったことを示した。13R405側鎖位置のわずかな変化は別として、MFc1における二量体破壊的変異の他の全ての元のセットは互いにほぼ完全に整列した。重要なことに、この結晶構造は、設計通り、354位のグルタミン酸側鎖置換が実際に突出し、T1において観察された相互作用の種類を破壊することを示した。
【0123】
FcRn媒介循環半減期を調節するために一組の単量体Fcバリアントを構築するという本発明者らの目標に従い、本発明者らは、本発明者らの単量体Fc分子とのFcRnの相互作用の機能的及び構造的特徴付けに焦点を当てた。組換えFcRn結合解析を用いて、本発明者らは、MFc3がMFc1と有意に異なり、およそ300nMの平衡解離定数(K)を示すことを見出した(表A)。この知見は、S354E置換がFcRnとの相互作用を変化させないことを示唆した。この結合様式を確認するために、MFc3/FcRn複合体を低pHで調製し、続いて精製及び結晶化し、回折データを2.6Åの分解能で収集した(図4a)。比較のために利用可能な最も近いFc-FcRn複合体構造は、本発明者らのグループが解明した、3.8Åでヒト血清アルブミンと複合体を形成してヒトFcRnに結合したヒトIgG1 Fc(YTEセットの変異を有する)からなるものであった(PDB ID:4N0U)。292つの界面の比較は、相互作用の様式がほぼ同じであり、電子密度マップ中の側鎖の分解の差から生じた可能性が最も高いわずかな差を有することを示した。Fc-FcRn相互作用のこの構造的及び機能的不変性は、S354E変異がFcRn界面から20Å以上離れているために予想された。
【0124】
表A.組換え1:1結合フォーマットにおける単量体FcバリアントのヒトFcRnへの平衡結合
【0125】
【表2】
【0126】
S354E変異が実際にT1を単量体状態にするために使用することができるかどうかを評価するために、FcRnと複合体を形成したT1-S354E(MFc4)を結晶化させた(図4b)。解析したMFc4/FcRn複合体構造は、MFc4が実際に単量体であることを示した。MFc3/FcRn及びMFc4/FcRn複合体の結晶化条件の探索が独立して行われたという事実にもかかわらず、結晶は同じ条件から成長し、ほぼ同一のセルパラメータ及び空間群を示した。以前の研究から予想されるように、MFc3からMFc4への配列変化は、300nMから5nMへの組換えFcRn結合親和性の有意な増加をもたらした(表A)25これらの分子では、pH依存性FcRn結合が観察され、pH6から中性pHへの変化で結合は約50倍の減少を示した(データは示さず)。MFc4/FcRn及びMFc3/FcRn複合体の全体的な構造は、3,700個の非水素原子上に0.35ÅのRMSDで重なり合い、高度の類似性を示唆する。MFc3/FcRn複合体とMFc4/FcRn複合体の構造を比較した図は、Fc-FcRn相互作用の明確な詳細を明らかにし、FcRn結合で観察された違いの構造的説明を提供した。MFc4に新たに導入されたTyr434及びLeu436は、界面面積を500Åからほぼ600Åに増加させる一方、相互作用にいくらかの疎水性を加えた(図4c、4d)。Fc/FcRn界面における疎水性に寄与するものであることが知られていたFcRn中の残基Leu135は、29MFc4中のTyr434及びLeu436の存在により関与していた。
【0127】
PDBePISA分析を用いて、示差溶媒和エネルギーヒートマップを用いて、MFc3/FcRnとMFc4/FcRnの結合ポケットにおける個々の残基からのエネルギー寄与を捕捉した(図4e)。結合界面の程度の測定として、示差溶媒和エネルギー計算は、溶媒にアクセスできなくなる構造の表面の部分を反映する。30,31MFc4からの結合界面への最も強い寄与因子は、MFc3中の残基Ile253及びThr254とは対照的に、Ile253、Tyr434、及びLeu436であることがわかった。全溶媒和エネルギー変化はMFc4で5.09kcal/molであり、MFc3よりも著しく強い疎水性相互作用を示し、全ΔiGは3.14kcal/molであった(図4e)。比較として、他の利用可能なヒトYTE IgG1 Fc-FcRn複合体のみについて同じ計算を行ったところ、2.67kcal/molの類似のΔiGを見出し、これは、結合親和性測定と一致した。
【0128】
MFc4/FcRn複合体構造はまた、野生型ヒトFc/FcRn相互作用への構造的洞察を提供したが、これは2つの理由でこれまで利用可能ではなかった。第1に、野生型ヒトFc/FcRn相互作用は比較的弱く、複合体の精製を不可能ではないにしても困難にする。第2に、二量体Fcの結晶化傾向(したがって、「結晶化可能な断片」という名称)が非常に高いので、ほとんどの試みは、Fcのみを含む結晶をもたらす(未公開データ)。本発明者らの安定な単量体Fc変異体が利用可能になる前に、本発明者らは、FcとFcRnとの間の親和性を改善するためにラットFc又はFcYTEに依拠し、Fc結晶格子形成を破壊するためにアルブミンと共に、結晶形成のための結合状態の滞留時間を増加させなければならなかった。29FcRnとのMFc3及びMFc4構造複合体の助けを借り、それらの2つの遠位セットの変異を用いることにより、野生型結合界面とそれらの変異セットとの間のより良好な理解を得ることが可能になった。例えば、YTE(M252Y/S254T/T256E)変異が存在する残基252、254及び256付近の野生型界面では、界面溶媒和エネルギーマップは、Met252がFcRn界面に中程度の寄与しか有さず、Thr256は実際には関与していないことを示した(図4e)。252-254-256ループからの最も有意なFcRn相互作用は、Ser254によって提供された。この分析はまた、YTEの変異セットがFcとFcRnとの間の親和性を改善することができる理由、及びそのS254T置換が最も強い寄与を示した理由を説明する。
【0129】
モノマー二重特異性分子の構築。これらの単量体Fc分子は、一価の二重標的化Fc融合タンパク質を設計するための構成要素として容易に使用することができる。以前、本発明者らは、オナルツズマブFab-MFc1融合タンパク質を生成するためにMFc1バリアントを使用した。8,13本研究では、本発明者らは、単量体Fc構築物を用いて一価の二重特異性ターゲティング分子の最初の例を設計した。単一プラスミド構築により、本発明者らはプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)を標的とする抗体のC末端一本鎖可変フラグメント(scFv)と共に、オナルツズマブ由来の同じFabドメインをMFc1又はMFc4のN末端に結合させた(図5a)。構築物を、HEK293懸濁培養物中での一時的発現のためにトランスフェクトし(発現力価約90mg/L)、その後、タンパク質を一段階プロテインA精製で精製した。SEC-MALS分析は、タンパク質が単分散であり、100kDaの予想分子量を有することを示唆した(図5b)。単量体二重特異性分子の二重標的化活性を、Octetプラットフォームでサンドイッチ形式で確認した(図5c)。二重特異性分子はまた、pH6で、それらの対応するFcRn結合を、Fcドメイン単独の結合の2~3倍で維持した。
【0130】
次世代単量体Fcによるインビボ半減期の改善。本発明者らは、MFc1と比較して、MFc4バリアントにおけるインビトロFcRn結合の有意な改善を達成した。また、本発明者らは、この改善がインビボでの血清中半減期の延長につながるかどうかを評価したいと考えた。典型的な腎臓濾過クリアランスサイズ(約60kDa)をはるかに上回る分子量(100kDa)を有する、新たに生成されたFab-MFc4-scFv及びFab-MFc1-scFvは、34FcRn結合のインビボ半減期を改善することの意味を評価するための理想的な分子である。本発明者らは、ヘミ接合ヒトFcRn(TG276)トランスジェニックマウスにおけるインビボ薬物動態(PK)研究を行った。このマウスモデルは、Fc変異及び約18時間の血清中半減期を有する標準IgG1からのヒトFcRn結合に対する実証可能なPKへの影響を反映する、よく研究されたモデルである。13,25,35マウスに2.5mg/kgの融合タンパク質を投与し、血清タンパク質濃度を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)により測定した。Fab-MFc4-scFv二重特異性タンパク質は、Fab-MFc1-scFvよりも高い血清レベルを有した(図6a)。PKパラメータを分析し、決定したところ、Fab-MFc4-scFvのクリアランス速度及び終末相半減期は、Fab-MFc1-scFvのクリアランス速度及び終末相半減期よりも有意に大きく、ほぼ2倍であった。これは、より強いMFc4媒介ヒトFcRn結合が、MFc1と比較して、血清タンパク質リサイクリングの増強に寄与することを示す。予想どおり、分子サイズの増加は、Fab-MFc1から二重特異性分子Fab-MFc1-scFvへのクリアランスの減少に寄与した。
【0131】
考察
単量体Fcに基づく一価抗体又は融合タンパク質は、拡張されたクラスのタンパク質治療薬にIgG様血清特性を付与する可能性を有する。安定な単量体Fcの操作の成功に続いて、我々はいくつかの重要な特性を達成するために、MFcプラットフォームの有用性を構築し拡大するための挑戦に取り組んだ。
【0132】
第1に、本発明者らは、さらなる半減期延長の可能性を含む、半減期調整のための代替Fc変異を含む、より普遍的な単量体Fc分子を確立したいと考えた。第2に、本発明者らは、MFcプラットフォームが実際に単量体状態を維持し、二重特異性分子ターゲティング、免疫腫瘍学及び受容体媒介性トランスサイトーシスを含む新規な治療用途を可能にする所望のターゲティング戦略に対して安定であり得ることを示そうと考えた。4-7,9単量体Fcの周りに構築された一価の二重特異性薬物フォーマットは、エフェクター機能の完全なアブレーション、並びに毒性及びオフターゲットシンクの低減、T細胞及び他の免疫細胞エンゲージャーに最適な設計特徴の利点を提供し得る。最後に、本発明者らは、将来の単量体Fc設計の開発を可能にする計算アプローチを検証することを目的とした。これらの目標を達成するために、構造誘導分子設計の力を利用することを試みた。
【0133】
本発明者らは、以前に、MFc1におけるYTE変異がFcRn結合親和性を改善して、結合親和力の低下を相殺することができることを示した。13以前のFcファージライブラリー及び工学的研究からのアウトプットに基づいて、本発明者らは、pH6.0でのFcRn結合の有望な増強を伴う変異セットT1(図1)を特定した。これにより、CH2ドメインからのYTE変異とは対照的に、CH3ドメインにおける半減期変異に対する単量体安定化変異の適応性を評価するための理想的なテストケースが提供された。
【0134】
T1タンパク質の結晶構造は、操作されたFcが高タンパク質濃度で新たに充填された二量体形成に関与する可能性があることを示唆した。本発明者らはこの新たな形態のFc二量体化に対する新たな半減期延長変異セットによる直接的な寄与を見出さなかったが、本発明者らはこれらの変異がタイトパッキング条件下で誘導された二量体化を可能にする役割を果たすと考える。この二量体界面の綿密な検討は、354位の残基の側鎖を拡大するための我々の合理的な設計を導いた。セリン残基を置換する一連の変異から、優れた熱安定性プロファイルに基づいてグルタミン酸を選択した(図2)。溶液分析法及び結晶学を用いて、本発明者らは、S354Eが単量体Fc構造を維持することができ、グルタミン酸側鎖が設計どおりに突出していることを示した(図3)。単量体Fc構造に対するS354Eの適応性及び活性の確認は、MFc3及びMFc4が単量体状態を維持し、FcRnとの広範な係合を維持した場合に共結晶構造において観察された(図4a、4c)。これにより、Fc-FcRn界面を調べるために共結晶構造を容易に生成することができ、それらの結合相互作用に定量可能な差異が存在することが初めて実証された。結合界面の示差溶媒和エネルギー計算を用いて、本発明者らは、MFc4における拡張された疎水性相互作用に起因するFcRn結合の増強を定量することができた(図4b~e)。
【0135】
可変FcRn結合能力を有する単量体Fc分子の利用可能性により、一価の二重特異性分子ターゲティングを構築するためのMFcプラットフォームの使用を検証することが可能になった。本発明者らは、実証可能なモノマー立体配座純度及び二重標的化活性を有するMFc1及びMFc4の両方を有するFab-MFc-scFv分子を作製した。腎臓濾過カットオフを十分に上回る分子サイズでは、これらの分子はFcRn結合の改善からのインビボ薬物動態学的結果を評価するのに十分に適している。本発明者らは、Fab-MFc4-scFv二重特異性分子が、Fab-MFc1-scFvよりも高く、標準IgG1抗体の血清レベルに近い血清レベルを維持することを見出した。これらの結果はまた、これらのMFc構築物が調整可能な血清タンパク質リサイクリングに寄与することができ、治療の進歩を支援する次の波の技術を開発するための多用途の二重特異性プラットフォームを提供することができることを示す。
【0136】
Fc二量体の破壊によるCH3ドメインの曝露は、新たな現象ではない。IgG4骨格は、二量体-単量体平衡の間でFcを交互にするIgG4分子のFab-アーム交換の容易な係合のために、本発明者らのMFcプラットフォームに選択された。36さらに、強力且つ特異的な免疫応答を開始するために、T細胞エピトープは、抗原提示細胞によってプロセシングされ、提示される必要がある。37新たに導入された変異が新規のT細胞エピトープを形成し得るという懸念を緩和するために、MFc1及びMFc4における単量体形成変異周辺のインシリコT細胞エピトープ予測を行った。本発明者らは、これらの変異について全体的に低い予測結合率を観察し、より低い免疫原性リスクを示した。38
【0137】
治癒的治療の最終的な成功は、免疫及び翻訳科学の深い理解と併せて、効力対毒性、及び血清中半減期対組織浸透のバランスに対処するための多くの共同努力に依拠するであろう。MFcプラットフォームは、IgG様血清特性を模倣しながら、任意の望ましくないFc受容体媒介性細胞毒性及びオフターゲットシンクを回避するための一価の二重特異的ターゲティングモチーフを提示する能力及び柔軟性を有することから、免疫細胞エンゲージャーの探索をさらに拡大するタイムリーな可能性を提供する。
【0138】
方法
倫理の表明。これらの研究において動物の使用を必要とするプロトコル(MI-13-0012)は、AstraZenecaの動物実験委員会によってレビュー、承認され、米国農務省(U.S.Department of Agriculture)の動物福祉基準、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals及び実験動物ケア評価認証協会(Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)に準拠する。
【0139】
抗体のクローニング、発現及び精製。全ての抗体位置は、可変ドメインについてのKabat番号付け規則、及びCH2-CH3ドメインについてのEU番号付け規則に従って列挙されている。41,42全ての化学物質は分析グレードのものであった。オリゴヌクレオチドは、Eurofins MWG Operon(Louisville、KY)から購入した。mAb-Jをコードするプラスミドは、Takara Bio(Mountain View、CA)製のIn-Fusion HDクローニングキットを用いて作製し、可変重鎖及び可変軽鎖配列を社内IgG1哺乳動物発現ベクターにコード化した。点変異は、QuikChange Multi Lightning変異誘発キット(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を用いて、部位特異的変異誘発によって導入した。
【0140】
バリアントは、293Fectinトランスフェクション試薬(Life Technologies、Carlsbad、CA)を用いて、ヒト胎児腎臓細胞株HEK293FTに一過性にトランスフェクトした。細胞は、FreeStyle 293-F発現培地(Life Technologies)で増殖させた。発現した抗体は、HiTrapプロテインAカラム(GE Healthcare Life Sciences、Marlborough、MA)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって細胞上清から精製した。抗体をPierce IgG溶出バッファ(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)で溶出し、1Mトリス、pH8.0で中和した。抗体をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2に透析した。全ての抗体についての単量体含量は、分析SECによって95%超であると決定された。
【0141】
SEC-MALS及び分析用超遠心分離。1mg/mL以上の濃度の精製されたFcクローン及び融合タンパク質を、1100 HPLC装置(Agilent、Santa Clara、CA)により、室温で、総容積14mLのTSK-GEL G2000SWXLカラム(Tosoh Biosciences、Tokyo、Japan)を用いて、SECにより分析した。試料を、1mL/minの流量で20分間、PBS中均一濃度で溶出した。溶出したタンパク質を、波長280nmの紫外線吸光度で検出した。データ分析は、ChemStationソフトウェア(バージョンA.02.10)を用いて行った。カラム較正は、10~500kDaの範囲の一連の分子量標準(Bio-Rad、Hercules、CA)を用いて行った。インラインSEC-MALSを実施した。試料測定は、Optilab Rex屈折計(Wyatt Technologies、Santa Barbara、CA)を備えたDawn Heleos II MALSで行った。定義されたクロマトグラフィーピーク内の各タンパク質の分子量を、Astra、バージョン6.1(Wyatt Technologies)を用いて計算した。
【0142】
分析用超遠心分離分析では、試料及び参照バッファを、Epon中心ピースを有する12mmのダブルセクターセルに装填し、次いで、20℃に設定されたOptima XL-I遠心分離機(Beckman-Coulter、Indianapolis、IN)を用いて、50,000rpmでの超遠心分離のためにAn-50 Tiローターに配置した。走査2~160について280nmで収集された沈降データをSedfitソフトウェア(バージョン16.1c)で分析して、c(s)分布を生成した。43,44部分比容を0.73mL/gに設定した。PBSの溶液濃度及び粘性値は、Sednterpプログラム(バージョン20130813)からの計算値を用いて、それぞれ1.00523g/mL及び1.019mPa・sに設定した。45スウェドベリの式に基づいて、分子量27kDaの単量体Fcは、摩擦比を1.3~1.8(球状から拡張形状)と仮定して、1.7~2.4S(スウェドベリ単位)の沈降係数を有すると予想される。
【0143】
結晶化、データ収集及び構造決定。結晶化の前に、プロテインAで精製したT1、MFc3及びMFc4を、pH8の25mMトリス-HCl緩衝液で平衡化したQ HP5mLプレパックカラム(GE Healthcare Life Sciences)でのイオン交換クロマトグラフィーによってさらに精製し、25mMトリス-HCl、pH8、及び100mM NaClで予め平衡化したSuperdex 200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare Life Sciences)を用いて、SECによりさらに精製した。回収後の組換えヘテロ二量体FcRnの培養培地を、IgG Sepharoseカラム(GE Healthcare Life Sciences)でアフィニティー精製用にpH調整した。FcRnをQ HPカラム(GE Healthcare Life Sciences)で精製した後、pH5.2の30mM酢酸ナトリウム緩衝液中に透析し、1%モル欠損のFcRnでMFc3及びMFc4と複合体を形成させ、この複合体を30mM酢酸ナトリウム、pH5.2、及び100mM NaClで平衡化した同じSuperdex 200カラムを用いてSECにより精製した。複合体組成を、SDS PAGEによって確認した。
【0144】
全てのタンパク質及びタンパク質複合体の初期結晶化試験を、20℃でシッティングドロップ蒸気拡散法により行った。結晶化液滴を、96ウェル結晶化プレート(Intelli-plate 102-0001-20;Art Robbins Instruments、Sunnyvale、CA)に、Phoenixロボット(Art Robbins Instruments)によって分注し、等容量のタンパク質及びリザーバー緩衝液から構成した。T1及びMFc3を単独で結晶化させるために、市販のスクリーン(Hampton Research、Aliso Viejo、CA;Molecular Dimensions、Suffolk、UK)を使用した。FcRn複合体タンパク質の結晶化のために、本発明者らは、市販のスクリーニングに含まれる低pH条件の組合せからなる新しいスクリーニングを作製した。以下の結晶化溶液から、吊り下げ液滴形式で結晶化最適化工程において回折品質の結晶を成長させた:T1:0.01M硫酸亜鉛七水和物;0.1Mモルホリンエタンスルホン酸(MES)一水和物、pH6.5、及び25%(w/v)PEG 550 MME、タンパク質濃度5.5mg/mL。MFc4/FcRn複合体:0.2M塩化マグネシウム六水和物、1Mヨウ化ナトリウム、0.1M MES、pH6、及び20%PEG6000、タンパク質濃度6.35mg/mL。MFc3/FcRn複合体:0.2M塩化マグネシウム六水和物、30%1,5-ジアミノペンタン二塩酸塩、0.1M MES、pH6、及び20%PEG6000、タンパク質濃度6mg/mL。MFc3の結晶を、元のシッティングドロッププレートから、0.8%麻酔用アルカロイド(2w/v%塩酸リドカイン一水和物、2w/v%プロカイン塩酸塩、2w/v%塩酸プロパラカイン、2w/v%テトラカイン塩酸塩)、0.1M MOPS(酸)及びナトリウムHEPES pH7.5、並びに沈殿物の50v/v%ミックス(40v/v%エチレングリコール、20w/v%PEG8000)、タンパク質濃度7mg/mLからなる条件から、直接収集した。X線分析のために収集した全ての結晶を、液体窒素中に浸漬することによってフラッシュ冷却した。Pilatus 6M PAD検出器(Paul Scherer Institute、Villigen、スイス)を備えたStanford Synchrotron Radiation LightsourceのビームラインBL9-2上の単結晶から、180°の振動範囲、0.5°の増分、及び1画像あたり0.8秒の露光で回折データを収集した。XDSプログラムを用いて回折データを処理した。46全ての結晶学的計算を、CCP4ソフトウェアスイート(バージョン7.0)を用いて行った。47分子置換手順は、Molrepプログラムを用いて行った。48Refmac5で構造微調整を行い、「O」プログラムでモデル調整を行った49,50構造を含む図は、PyMOL(Schroedinger,New York,NY)を用いて作成した。
【0145】
Octet結合分析。単量体Fc及びその融合タンパク質の社内精製組換えヒトFcRnへの結合測定は、Octet384装置(ForteBio、Menlo Park、CA)でバイオレイヤー干渉法によって行った。3mg/mLのウシ血清アルブミン、0.05%(vol/vol)及びTween20(1×Kinetics Buffer;ForteBio)を含むPBS緩衝液(pH7.4)又は100mM MES緩衝液(pH6.0)中の1μg/mLのビオチン化FcRnを、ストレプトアビジンバイオセンサー(ForteBio)で捕捉した。ロードされたバイオセンサーをアッセイ緩衝液で洗浄して、結合していないタンパク質を除去し、続いて、異なるFcバリアント又はFc融合構築物の連続希釈によって結合及び解離を測定した。Octetソフトウェア(バージョン7.2)を用いて、データの1:1結合動態モデルに基づく非線形適合から動態パラメータ(kon及びkoff)と見かけの親和性(K)を次式により算出する。
【数2】
【0146】
組換え抗原タンパク質に対するFab-MFc-scFv分子の同時結合測定も行った。ビオチン化cMetタンパク質を、1×Kinetics Bufferを用い、PBS緩衝液(pH7.2)中のストレプトアビジンバイオセンサー(ForteBio)で5μg/mLで捕捉した。結合工程は300nMのFab-MFc-scFvを緩衝液対照と共に含み、続いて、抗原2に緩衝液対照と共に結合した。
【0147】
hFcRnトランスジェニックマウスにおけるインビボPK。本研究で使用されるヒトFcRnトランスジェニックマウスは、マウスFcRn欠損B6.129X1-Fcgrttm1Dcr/DcrJ及びヒトFcRn cDNAトランスジェニック系統B6.Cg-Fcgrttm1Dcr Tg(CAG-FCGRT)276Dcr/DcrJのF1交配である。性別をマッチさせた(6~16週齢)マウスに、0日目に2.5mg/kg単量体Fc融合タンパク質のボーラス静脈内用量が投与された。1つのタンパク質あたり8匹のマウスを使用し、2群のマウス(A群及びB群)を別の時点で採血した。血液サンプルは、2~3週間試験全体を通じて異なる時点で、毛管ピペットを使用して眼窩後方神経叢から得た。全ての動物は、試験全体を通して健康なままであった。定量的ELISAを使用して、試験抗体の血清濃度をモニターした。簡単に述べると、96ウェルプレートを2μg/mLのcMet細胞外ドメインでコーティングした。5μg/mLのcMetでコーティングされたプレートを、4℃で一晩インキュベートし、PBS-Tween中の3%ウシ血清アルブミンでブロックし、次いで、異なる時点で希釈血清試料と共にインキュベートした。1:10希釈のヤギ抗ヒトFc特異的西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove、PA)を検出のために使用した。製造業者の指示に従って、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン基質(KPL、Gaithersburg、MD)による発色後に、450nmにおける吸光度を測定した。各抗体バリアントについて標準曲線を作成した。標準曲線の直線部分をPrism(バージョン6;GraphPadソフトウェア、La Jolla、CA)で作成し、次いで、血清試料中のヒト抗cMet融合タンパク質を定量するために使用した。Phoenix 64 WinNonlin 6.3(Pharsight、Mountain View、CA)を用いて非コンパートメントPKデータ分析を行った。最大観察ピーク血漿濃度を、WinNonlinを用いて観察データを検査することによって決定した。終末相消失半減期を、式ln(2)/λz(式中、λzは少なくとも最後の3つの時点の線形回帰によって決定される、自然対数濃度-時間曲線の終末部分の勾配である)を用いて決定した。全身曝露を、線形/対数台形則を用いて、投与開始から最後の測定可能な濃度までの血漿濃度対時間グラフ(AUClast)の曲線下面積(AUC)を計算することによって決定した。時間0から無限大までの血漿濃度対時間グラフのAUC(AUC)を、以下のように計算した:AUClast+Clast/λz(式中、Clastは最後の定量可能な濃度である)。クリアランス(CL)は用量/AUCによって計算し、定常状態分布容積は、以下のように計算した:(AUMC×CL)/AUC(式中、AUMCは、無限大に外挿させた最初の瞬間からのAUCである)。PKパラメータは統計的に要約し、平均値として示した。
【0148】
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【0149】
配列
mFc4(配列番号1)
【化1】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
【配列表】
2024519324000001.app
【国際調査報告】