(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】合成受容体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240501BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/869 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240501BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240501BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240501BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240501BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240501BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240501BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240501BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240501BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240501BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240501BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240501BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240501BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240501BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20240501BHJP
A61K 31/4418 20060101ALI20240501BHJP
A61K 31/4465 20060101ALI20240501BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20240501BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20240501BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240501BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240501BHJP
C07D 211/70 20060101ALN20240501BHJP
C07D 211/46 20060101ALN20240501BHJP
C07D 401/04 20060101ALN20240501BHJP
C07D 451/06 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/705 ZNA
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K31/7088
A61K9/20
A61P43/00 121
A61P25/00
A61P25/04
A61P9/00
A61P25/08
A61K9/08
A61K9/72
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K31/135
A61K31/4418
A61K31/4465
A61K31/4545
A61K31/46
A61K48/00
A61K38/17
C07D211/70
C07D211/46
C07D401/04
C07D451/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569797
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2022062850
(87)【国際公開番号】W WO2022238513
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505367464
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クルマン,ディミトリ
(72)【発明者】
【氏名】リーブ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】オー デベニシュ,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】カセラー,テレサ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C063
4C076
4C084
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC17
4C063DD10
4C063EE01
4C076AA11
4C076AA36
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB31
4C084AA17
4C084AA20
4C084MA01
4C084MA02
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA35
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA06
4C084ZA08
4C084ZA36
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZC41
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA01
4C087MA02
4C087MA16
4C087MA35
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA57
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA60
4C087MA63
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA06
4C087NA15
4C087ZA01
4C087ZA06
4C087ZA08
4C087ZA36
4C087ZC41
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA05
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA11
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA55
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA77
4C206MA78
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA06
4C206ZA08
4C206ZA36
4C206ZC41
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA21
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(i)内因性活性化リガンドに対する応答性が低下し、(ii)抗ヒスタミン剤などの比較的良性な市販薬であり得る外因性作動薬によって活性化され得る、改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に関する。改変は、未改変GPCRを基準にした、特定のアミノ酸位置での変異を含む。本発明はまた、例えば、神経回路障害の治療における、改変GPCRの投与を含む使用方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)であって、
天然GPCRである親と比較して、
(i)内因性活性化リガンドに対する応答性が減少され、
(ii)外因性作動薬に対する応答性が保持又は増強され、
前記親GPCRと比較して、以下から選択される位置に、1つ、より好ましくは2つ、3つ、又は4つの改変を含み、
(i)85
(ii)416
(iii)120
(IV)123
加えて任意選択で、前記親GPCRと比較して、以下から選択される位置に、1つ以上の改変を含み、
(v)128
(vi)121
(vii)200
(viii)204
(viii)410
(vix)413
前記改変GPCRの前記アミノ酸位置は、配列番号1のアミノ酸配列に対応させて番号付けされる、改変GPCR。
***
【請求項2】
前記外因性作動薬は、ジフェンヒドラミン又はそのアナログである、請求項1に請求する改変GPCR。
【請求項3】
前記外因性作動薬は、表1(Table 1)又は表2(Table 2)から選択される、請求項1又は請求項2に請求する改変GPCR。
【請求項4】
前記外因性作動薬は、ジフェンヒドラミン、シプロヘプタジン、ジフェニルピラリン、デスロラタジン、ベンザトロピンから選択される、請求項1から3のいずれか一項に請求する改変GPCR。
***
【請求項5】
前記改変GPCRは、以下の位置に以下の残基を含む、請求項1から4のいずれか一項に請求する改変GPCR。
(a)113C又は113N、及び
(b)203G
【請求項6】
前記改変GPCRは、以下の位置に以下の置換のうち1つ以上を含む、請求項1から5のいずれか一項に請求する改変GPCR。
(a)Y113C又はY113N、及び
(b)A203G
【請求項7】
前記改変GPCRは、以下の位置に以下の残基のうち1つ以上を含む、請求項1から6のいずれか一項に請求する改変GPCR。
(i)85V又は85C
(ii)120I
(iii)416F
(iv)123C、123I、123T、又は123S
【請求項8】
前記改変GPCRは、以下の位置に以下の置換のうち1つ以上を含む、請求項1から7のいずれか一項に請求する改変GPCR。
(i)S85V又はS85C、最も好ましくはS85V
(ii)V120I
(iii)Y416F
(iv)L123C、L123I、L123T、又はL123S
【請求項9】
前記残基(a)及び(b)又は改変(a)及び(b)に加えて、前記改変GPCRは、(i);(i)及び(ii);(i)、(ii)、及び(iii);(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の残基又は置換を含む、請求項5から8のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項10】
前記改変GPCRは、以下の位置に以下の残基のうち1つ以上を含む、請求項1から9のいずれか一項に請求する改変GPCR。
(v)128I、128L、又は128V
(vi)121F
(vii)200T
(viii)204Y(viii)410V
(ix)413L
【請求項11】
前記改変GPCRは、以下の位置に以下の置換のうち1つ以上を含む、請求項1から10のいずれか一項に請求する改変GPCR。
(v)F128I、F128L、又はF128V
(vi)M121F
(vii)A200T
(viii)F204Y
(viii)I410V
(ix)W413L
【請求項12】
前記改変GPCRは、(v);(v)及び(vi)の残基又は置換を含む、請求項9に従属する請求項10から11のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項13】
前記改変GPCRは、Y113C+A203G+S85V+Y416Fを含む、請求項1から12のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項14】
前記改変GPCRは、Y113C+A203G+S85V+L123T+V120I+Y416Fを含む、請求項1から13のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項15】
前記GPCRは、Gi結合型GPCRである、請求項1から14のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項16】
(i)前記GPCRは、Gタンパク質を介してイオンチャネルに結合され、前記イオンチャネルが、任意選択で内向き整流性である、及び/又は、前記イオンチャネルが、任意選択でカリウムチャネルであり、好ましくはタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネルであり、及び/又は、(ii)前記GPCRは、Gq結合型又はGs結合型GPCRである、請求項1から15のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項17】
前記GPCRは、コリン作動性受容体ムスカリン性受容体(CHRM)、ヒスタミン受容体(HRH)、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体(HTR)、ドーパミン受容体(DRD)、アルファアドレナリン受容体(ADRA)、ベータアドレナリン受容体(β1-4アドレノセプタ)(ADRB)から選択される、請求項1から16のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項18】
前記GPCRは、CHRM4、CHRM3、CHRM1、CHRM2、CHRM5、HRH1、HRH2、HRH3、HRH4、5HTR-1A、5HTR-1B、5HTR-1D、5HTR-1E、5HTR-1F、5HTR-2A、5HTR-2B、5HTR-2C、5HTR-4、5HTR-5A、5HTR-6、5HTR-7、DRD-1、DRD-2、DRD-3、DRD-4、DRD-5、ADRA-1A、ADRA-1B、ADRA-1D、ADRA-2A、ADRA-2B、ADRA-2C、ADRB-1、ADRB-2、ADRB-3から選択される、請求項1から17のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項19】
前記GPCRは、表3において特定されたGPCRから選択される、請求項1から18のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項20】
前記改変GPCRは、表8の配列番号1-35のいずれか1つのその天然の親GPCRと少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項1から19のいずれか一項に請求する改変GPCR。
【請求項21】
前記改変GPCRは、前記改変を含む表3~6のいずれか1つに示される配列を含む、請求項1から20のいずれか一項に請求する改変GPCR。
***
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載の改変GPCRをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記核酸は、表8の配列番号36-70のいずれか1つのその天然の親GPCRと少なくとも70%の配列同一性を有する、請求項22に請求するポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項22又は請求項23に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項25】
ウイルスベクターである、請求項24に請求するベクター。
【請求項26】
アデノウイルスベクター及び/又はアデノ随伴ベクター(AAV)であり、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びそれらのハイブリッドからなる群より任意で選択される、請求項25に請求するベクター。
【請求項27】
ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである、請求項25に請求するベクター。
***
【請求項28】
前記改変GPCRをコードする前記核酸は、組織又は細胞特異的プロモーターに作動可能に連結されている、請求項25から27のいずれか一項に請求するベクター。
【請求項29】
前記プロモーターは、神経細胞種特異的プロモーターである、請求項28に請求するベクター。
【請求項30】
前記プロモーターは、CaMk2Aプロモーターである、請求項29に請求するベクター。
【請求項31】
請求項24から30のいずれか一項に記載のベクターを含む、又はそれでトランスフェクションされた、又はそれで形質転換された、宿主細胞。
【請求項32】
請求項1から21のいずれか一項に記載の改変GPCRを作製するためのプロセスであって、
(a)請求項24から30のいずれか一項に記載の前記発現ベクターで宿主細胞を安定的に形質転換することと、
(b)前記宿主細胞に好適な条件下で前記形質転換された宿主細胞を培養して、前記改変GPCRを作製することと、
(c)前記改変GPCRを任意選択で再生することとを含む、方法。
***
【請求項33】
親の改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に対する抗ヒスタミン剤である外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させる方法であって、前記親の改変GPCRは、以下の位置に改変された残基を含み、
(a)113、及び
(b)203
前記親の改変GPCRにおける1つ以上の更なる位置で更なる改変を行うことを含み、
前記親の改変GPCRの前記アミノ酸位置は、配列番号1の前記アミノ酸配列に対応させて番号付けされる、方法。
【請求項34】
(i)前記抗ヒスタミン剤は、請求項2から4のいずれか一項に定義される、及び/又は
(ii)前記更なる改変は、請求項7から13のいずれか一項に定義される、及び/又は
(iii)前記GPCRは、請求項14から21のいずれか一項に定義される、請求項33に請求する方法。
***
【請求項35】
外因性作動薬に対する応答性が改変された改変Gタンパク質共役受容体を作製するためのプロセスであって、親GPCRを、以下から選択される位置での2つ、3つ、又は4つの改変によって前記親GPCRに比較して改変することを含み、
(i)85
(ii)416
(iii)120
(IV)123
加えて任意選択で、前記親GPCRと比較して、以下から選択される位置に、1つ以上の改変を含み、
(v)128
(vi)121
(vii)200
(viii)204
(viii)410
(ix)413
前記改変GPCRの前記アミノ酸位置は、配列番号1の前記アミノ酸配列に対応させて番号付けされる、プロセス。
【請求項36】
前記外因性作動薬の効力及び/又は奏効性は、前記親GPCRと比較して前記改変GPCRにおいて増加する、請求項35に請求するプロセス。
【請求項37】
改変される前記親GPCRは、天然のGPCR由来であるが、請求項5又は請求項6に定義された前記残基又は置換を含む、請求項35又は請求項36に請求するプロセス。
【請求項38】
(i)前記外因性作動薬は、請求項2から4のいずれか一項に定義される、及び/又は
(ii)前記改変は、請求項7から14のいずれか一項に定義される、及び/又は
(iii)前記GPCRは、請求項15から21のいずれか一項に定義される、請求項35から37のいずれか一項に請求するプロセス。
***
【請求項39】
請求項32から38のいずれか一項に記載の前記プロセス又は方法によって得られた、又は得ることができる、改変GPCR。
***
【請求項40】
改変の使用であって、前記改変は、親の改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に導入された更なるアミノ酸改変であり、前記親の改変GPCRが、以下の位置に改変された残基を含み、
(a)113、及び
(b)203
抗ヒスタミン剤である外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させ、
前記改変GPCRの前記アミノ酸位置が、配列番号1の前記アミノ酸配列に対応させて番号付けされる、使用。
【請求項41】
(i)前記抗ヒスタミン剤は、請求項2から4のいずれか一項に定義される、及び/又は
(ii)前記更なる改変は、請求項7から14のいずれか一項に定義される、及び/又は
(iii)前記GPCRは、請求項15から21のいずれか一項に定義される、請求項40に請求する使用。
【請求項42】
前記改変又は更なる改変は、前記親GPCRをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド上で行われる、請求項33から41のいずれか一項に請求する方法、プロセス、又は使用。
【請求項43】
(i)前記親GPCRをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供するステップと、
(ii)前記アミノ酸の改変又は更なる改変をコードする前記コドンを改変するステップとを含む、請求項42に請求する方法、プロセス、又は使用。
【請求項44】
被験体又は生物の細胞内で、Gタンパク質の活性化を選択的に改変するか、又はGタンパク質を活性化する方法であって、
(i)請求項1から21のいずれか一項に定義された改変GPCRを前記細胞内で発現させるステップと、
(ii)前記発現された改変GPCRに対する作動薬を前記被験体又は生物に投与するステップとを含む、方法。
【請求項45】
前記被験体は、ヒト被験体である、請求項44に請求する方法。
【請求項46】
前記被験体又は生物は、非ヒト哺乳類、鳥類、魚類、爬虫類、又は両生類である、請求項44に請求する方法。
***
【請求項47】
前記細胞は、非興奮性細胞であり、任意選択で肝細胞である、請求項44から46のいずれか一項に請求する方法。
【請求項48】
前記細胞は、中枢神経系又は末梢神経系からのニューロン、筋細胞、内分泌細胞からなる前記リストから選択される興奮性細胞である、請求項44から46のいずれか一項に請求する方法。
【請求項49】
前記Gタンパク質の活性化は、任意選択的にニューロンである興奮性細胞の興奮性を変化させる、請求項48に請求する方法。
***
【請求項50】
任意選択で哺乳類のニューロンである興奮性細胞の前記興奮性を領域特異的及び時間特異的な方式で改変するための、請求項49に請求する方法であって、
(a)改変GPCRをコードする請求項22から30のいずれか一項に定義されたポリヌクレオチド又はベクターの有効量を前記被験体に投与するステップと、
(b)ステップ(a)の前記改変GPCRを発現させるステップと、
(c)前記発現された改変GPCRに対する前記外因性作動薬を前記哺乳類に投与するステップとを含む、方法。
【請求項51】
前記外因性作動薬は、請求項2から4のいずれか一項に定義される、請求項44から50のいずれか一項に請求する方法。
【請求項52】
被験体における疾患又は障害を治療する方法であって、
(i)請求項1から21のいずれか一項に定義された改変GPCRを前記被験体の標的細胞又は器官中に発現させるステップと、
(ii)前記発現された改変GPCRに対する作動薬を前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
【請求項53】
被験体における疾患又は障害を治療する方法であって、
(a)改変GPCRをコードする請求項22から30のいずれか一項に定義されたポリヌクレオチド又はベクターの有効量を前記被験体に投与するステップと、
(b)前記被験体の標的細胞又は器官中に、ステップ(a)の前記改変GPCRを発現させるステップと、
(c)前記発現された改変GPCRに対する外因性作動薬を前記被験体に投与するステップとを含む、方法。
【請求項54】
前記ポリヌクレオチド又はベクターは、直接注入によって前記被験体に投与される、及び/又は、前記外因性作動薬は、請求項2から4のいずれか一項に定義される、請求項53に請求する方法。
【請求項55】
前記疾患又は障害は、神経系の疾患又は障害であり、前記改変GPCRは、中枢神経系又は末梢神経系において発現される、請求項52から54のいずれか一項に請求する方法。
【請求項56】
前記神経系の前記疾患又は障害は、神経回路障害である、請求項55に請求する方法。
【請求項57】
前記神経系の前記疾患又は障害は、精神神経障害又は神経変性疾患である、請求項55又は請求項56に請求する方法。
【請求項58】
前記疾患又は障害は、精神神経障害、神経変性疾患、慢性痛、脳血管障害(CVA)、脳卒中から選択される、請求項55から57のいずれか一項に請求する方法。
【請求項59】
前記疾患又は障害は、発作性障害である、請求項55から57のいずれか一項に請求する方法。
【請求項60】
前記改変GPCRが、前記患者の脳中の発作焦点のニューロンにおいて発現されて、前記改変GPCRの活性化は、前記発作焦点における前記ニューロンの興奮性を可逆的に変化させる、請求項59に請求する方法。
【請求項61】
前記改変受容体の活性化は、(i)前記発作焦点における興奮性ニューロンの興奮性及びそれによる神経伝達を可逆的に阻害するか、又は(ii)前記発作焦点において抑制性ニューロンを可逆的に興奮させる、請求項60に請求する方法。
【請求項62】
(i)前記発作性障害は、てんかんであり、任意選択で焦点性てんかん又は全般てんかんである、及び/又は
(ii)前記被験体は、薬剤耐性又は医学的に難治性のてんかんと診断されている、及び/又は
(iii)前記被験体は、抗てんかん薬による既存の治療下にあり、前記方法は、既存の治療を中断すること、又は薬物療法を低減することを可能にする目的を有する、及び/又は、
(iv)前記被験体は、持続性部分てんかんと診断されている、及び/又は
(v)前記外因性リガンドは、前記患者がてんかん性発作を患う前の前記被験体に投与される、及び/又は
(vi)前記外因性リガンドは、てんかん性発作中の前記被験体に投与される、及び/又は
(vii)前記外因性リガンドは、てんかん性発作を患った後の前記被験体に投与される、及び/又は
(viii)前記外因性リガンドは、前記ヒトがてんかん性発作を患う前30分以内、又は患った後24時間以内に前記被験体に投与される、及び/又は
(ix)前記外因性リガンドは、(i)自動化された発作検出メカニズムに一方に連結されたデバイスによって、又は(ii)EEG解析による予測された発作に応じて、の一方で自動的に前記被験体に投与される、及び/又は
(x)前記外因性リガンドは、前記発作性障害を治療するための1つ以上の他の薬剤との併用療法で投与される、請求項59から61のいずれか一項に請求する方法。
【請求項63】
前記疾患又は障害は、非中枢神経系障害及び非末梢神経系障害である、請求項52から54のいずれか一項に請求する方法。
【請求項64】
前記作動薬は、経口;静脈内又は筋肉内経路による非経口;皮下注射;舌下、バッカル、鼻腔内、直腸;吸入器又はネブライザを介して;目又は皮膚の局所;耳、くも膜下腔内、腟内、膀胱内からなるリストから選択される経路によって投与される、請求項52から63のいずれか一項に請求する方法。
***
【請求項64】
任意選択で請求項52から63のいずれか一項に定義された方法に従って、被験体における疾患又は障害の治療で使用するための、請求項22から30のいずれか一項に定義されたポリヌクレオチド又はベクター。
【請求項65】
任意選択で請求項52から63のいずれか一項に定義された方法に従って、被験体における疾患又は障害の前記治療で使用するための、請求項1から21のいずれか一項に定義された改変GPCR。
【請求項66】
請求項52から63のいずれか一項に定義された方法に従って、被験体における疾患又は障害の前記治療で使用するための、請求項2から4のいずれか一項に定義された外因性作動薬。
【請求項67】
発作性障害の治療方法において使用するための医薬品の調製における、請求項64から請求項66のいずれか一項に定義されたポリヌクレオチド又はベクター、及び/又は改変GPCR、及び/又は外因性作動薬の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、治療に使用するための合成Gタンパク質共役受容体、並びに、それに関連する方法及び材料に関する。
【背景技術】
【0002】
合成Gタンパク質共役受容体(GPCR)を使用する遺伝子治療は、神経回路の制御可能な操作を達成するために、外因性薬剤に対するニューロンの感受性を付与するのに大きな期待が持てる。例えば、抑制性ヒトM4(hM4)ムスカリン性受容体は、その内因性リガンドであるアセチルコリンに対して非感受性となるように変異されているが、抗精神病剤であるクロザピン及びオランザピンを含む一連の分子に対して感受性になっている。
【0003】
このように改変された受容体は、文献中ではDREADD(デザイナードラッグによって排他的に活性化されたデザイナー受容体)及びRASSL(合成リガンドにより単に活性化された受容体)と呼ばれている。
【0004】
実験動物の脳におけるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用したhM4 DREADD(hm4D)の発現は、忍容性が良好であり、外因性リガンドの非存在下では効果がない。
【0005】
国際特許出願公開第WO2015/136247号(ユーシーエルビジネスリミテッド)は、hM4由来DREADD(hM4D(Gi))が、齧歯類の脳のてんかん原性領域で発現されたとき、クロザピン、オランザピン又はクロザピン-N-酸化物、クロザピンの代謝物の投与において、発作をどのようにオンデマンドで抑制できたかを記載している。他のDREADDについても記載されている。
【0006】
国際特許出願公開第WO2018/045178A1号(ラトガーズ、州立大学)は、被験体の神経系の疾患又は障害の治療における使用に関する。
【0007】
国際特許出願公開第WO2018/175443号(ピッツバーグ大学-コモンウェルス高等教育システム)は、神経系関連の疾患又は障害の治療のための興奮性細胞又は分泌細胞で使用するための改変されたリガンド依存性イオンチャネルタンパク質に関する。
【0008】
技術における更なる開発は、Avaliani Nら、「DREADDs suppress seizure-like activity in a mouse model of pharmacoresistant epileptic brain tissue.」、Gene therapy 23.10(2016):760-766l;Evan Wicker及びPatrick A Forcelli、「Chemogenetic silencing of the midline and intralaminar thalamus blocks amygdala-kindled seizures.」、Experimental neurology 283(2016):404-412;Fredrik Berglind、My Andersson、Merab Kokaia、「Dynamic interaction of local and transhemispheric networks is necessary for progressive intensification of hippocampal seizures.」、Scientific reports 8.1(2018):1-15;Jana Desloovereら、「Long-term chemogenetic suppression of spontaneous seizures in a mouse model for temporal lobe epilepsy.」、Epilepsia、60.11(2019):2314-2324;Mikail Weston、「Olanzapine:a potent agonist at the hM4D (Gi) DREADD amenable to clinical translation of chemogenetics」、Science advances 5.4(2019):eaaw1567によって記載されている。
【0009】
それらの治療的有用性を考慮すると、当技術分野で公知のものとは異なる活性化特性を有する新規のDREADDを提供することによって、この分野で有用な技術的貢献が提供されることがわかる。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、公知のDREADDを活性化するために使用される薬剤が、状況においては最適下限であり得ることを観察した。例えば、オランザピン及びクロザピンは両方とも、それらの抗精神病効果に寄与する、ヒスタミン作動性、ムスカリン性、及びドーパミン作動性受容体を含む多数の薬理標的を有する。それらはいずれも、処方のみの薬である。
【0011】
オランザピンは比較的忍容性が高いが、軽度に鎮静性があり、軽度の体重増加、抗ムスカリン性副作用、好酸球増加症、及び性機能不全を伴う。クロザピンは加えて、てんかん誘発性であり得、頻繁な血液検査を必要とする白血球異常を伴うため、活性化リガンドとしての魅力が薄れる。
***
【0012】
本発明者らは、従来技術のDREADDで使用されていたものとは異なるタイプの薬剤によって活性化可能となるように、GPCR中の活性化特性を改変する残基を定義するべく、革新的なアプローチを使用した。これらの新たなDREADDは、抗ヒスタミン剤などの比較的良性の市販薬であるリガンドによって活性化され得る。
【0013】
非限定的な例として、発明者らは、hM4D(Gi)受容体中の残基を変更することで、忍容性の高い抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミンによって活性化され得るようにした。
【0014】
本発明者らは更に、相応して薬理を改変する他のGタンパク質共役受容体中の残基を特定した。
【0015】
これらの改変は、望ましい性質の組み合わせ、すなわち、関連する薬剤による比較的高い効力及び比較的高い奏効性、並びにリガンド非存在下における低い基底活性を提供する。市販薬によって活性化され得るこれらのデザイナー受容体は、本明細書において、純粋に簡潔さのために、「GRANPA」(非処方剤によって活性化されるGタンパク質共役受容体)と称される場合がある。
【0016】
GRANPAは、被験体の標的細胞、例えば、ニューロンにおいて、Gタンパク質媒介細胞応答に影響を与える、又はそれを誘発するために使用され得る。例えば、細胞集団は、GRANPAをコードするベクターで形質転換され得る。したがって、GRANPAは、広範囲の適応症、特に神経回路障害の治療に有用性を有する。
【0017】
より具体的には、以下に記載するように、本発明者らは更に、コリン作動性受容体としても公知のM4受容体(CHRM4)アセチルコリン受容体に由来するムスカリン性4型DREADD(hM4D)を、既知のY113C及びA203G置換の組み込みによって改変した。M4受容体の野生型アミノ酸配列を、配列番号1に示す。別段の記載がない限り、すべての番号付けは、このM4受容体配列を指す。
【0018】
hM4Dの広範な変異導入及び新規の「市販の」リガンドを用いた活性の様々なスクリーニングにより、有益な性質を付与するいくつかの新規の変異体が特定された。
【0019】
公知のDREADDと同様に、GRANPAにおいて、(i)内因性活性化リガンドに対する応答性が低下し、(ii)本明細書に記載されたタイプの、外因性作動薬(アゴニスト)に対する応答性が保持又は増強する。本明細書に記載の「応答性」は、リガンド又は外因性作動薬の効力(potency)及び/又は奏効性(efficacy)に関する。
【0020】
例えば、S85V及びY416Fにおいては、リガンドジフェンヒドラミンで効力が改善されたが、一方で、V120Iにおいては、奏効性が改善された。
【0021】
本明細書で使用される「効力」は、調査されたタンパク質に対する、最大効果の半分(EC50)に必要な薬物の濃度である。
【0022】
本明細書で使用される「奏効性」は、対照化合物と比較して、調査されたタンパク質に対する、薬剤で達成され得る最大効果(Emax)である。
【0023】
これらの変異の組み合わせは、(少なくとも)相加効果を有した。
これらの位置での変異、及び好ましい実施形態において、これらの特定の置換(S85V、Y416F、及びV120I)は、個別に及び組み合わされて、本発明の態様を構成している。
【0024】
好ましいhM4D GRANPAにおいては、S85V+Y113C+V120I+A203G+Y416Fが組み込まれている。
【0025】
有益な性質を付与する他の変異、例えば、L123T、L123C、L123S、L123V、又はL123I、F128I、F128L、又はF128V、M121F、A200T、F204Y、W413L、及びI410Vも、本明細書に記載されている。
【0026】
これらの位置での変異、及び好ましい実施形態において、これらの特定の置換も、個別に及び組み合わされて、本発明の態様を構成している。
【0027】
別段の記載がない限り、これらの新規の改変(すなわち、Y113C及びA203Gの変異を含まない)のいずれかは、本明細書において、簡潔さのために「本発明の改変」と称される場合がある。
【0028】
例えば、更に参照された好ましいhM4D GRANPAにおいては、L123TがS85V、Y416F、及び/又はV120Iと組み合わせて組み込まれている。
【0029】
hM4D由来のGRANPAは、Giアルファサブユニット(又は、Gi/G0、又はGiタンパク質)に結合され、Gタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネル(GIRK)を活性化する。
【0030】
上記のように、本発明者らは、他のGタンパク質共役受容体において対応する残基を特定し、したがってそれらの薬理も同様に改変し得る。したがって、本発明は、GPCRに広い適応性を有する。別段の記載がない限り、本発明の改変がM4受容体配列を参照して記載される場合は常に、開示は、本明細書で検討されたGPCR中の対応する改変について準用することが理解されるであろう。「対応する」位置及び改変の特定は、以下に詳細に記載され、したがって、そのような対応する改変はまた、「本発明の改変」であると理解されるべきである。
【0031】
したがって、本発明の一態様において、改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)が提供され、改変GPCRにおいては、
天然GPCRである親と比較して、
(i)内因性活性化リガンドに対する応答性が低下し、
(ii)外因性作動薬に対する応答性が保持又は増強し、
改変GPCRは、親GPCRと比較して、以下から選択される位置に、1つ、より好ましくは2つ、3つ、又は4つの改変を含み、
(i)85
(ii)416
(iii)120
(iv)123
加えて任意選択で、親GPCRと比較して、以下から選択される位置に、1つ以上の改変を含む。
(v)128
(vi)121
(vii)200
(viii)204
(viii)410
(vix)413
【0032】
本明細書中の全ての場合において(文脈に別段の要求がない限り)、改変GPCRに対して与えられるアミノ酸の位置は、配列番号1のアミノ酸配列に対応させて番号付けされる(すなわち、アミノ酸の位置は、配列番号1の番号付けに対応するものである)。以下でより詳細に記載されるように、実際のアミノ酸の番号付けはそれゆえ、配列番号1と比較して当のGPCRで異なってよい。
【0033】
上記で説明したように、改変GPCRは、以下の位置に以下の残基を含んでよい。
(a)113C又は113N、及び
(b)203G
【0034】
改変GPCRは、以下の位置に以下の置換の1つ以上を含んでよい。
(a)Y113C又はY113N、及び
(b)A203G
【0035】
改変GPCRは、以下の位置に以下の残基のうちの1つ以上を含んでよい。
(i)85V又は85C
(ii)120I
(iii)416F
(iv)123C、123I、123T、又は123S
【0036】
改変GPCRは、以下の位置に以下の置換の1つ以上を含んでよい。
(i)S85V又はS85C、最も好ましくはS85V
(ii)V120I
(iii)Y416F
(iv)L123C、L123I、L123T、又はL123S
【0037】
改変GPCRは、残基(a)及び(b)又は改変(a)及び(b)に加えて、上記(i);(i)及び(ii);(i)、(ii)、及び(iii);(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)の残基又は置換を含んでよい。
【0038】
上記の残基又は改変に加えて、改変GPCRは、以下の位置に以下の残基のうちの1つ以上を含んでよい。
(v)128I、128L、又は128V
(vi)121F
(vii)200T
(viii)204Y(viii)410V
(ix)413L
【0039】
改変GPCRは、以下の位置に以下の置換の1つ以上を含んでよい。
(v)F128I、F128L、又はF128V
(vi)M121F
(vii)A200T
(viii)F204Y
(viii)I410V
(ix)W413L
【0040】
一実施形態において、改変GPCRは、Y113C+A203G+S85V+L123T+V120I+Y416Fを含む。
【0041】
一実施形態において、改変GPCRは、Y113C+A203G+S85V+Y416Fを含む。
【0042】
いくつかの実施形態において、改変GPCRは、
Y113C+A203G、
Y113C+A203G+S85V+Y416F、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123T、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123T、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123C、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123C、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123S、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123S、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123I、
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123I、又は
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123V、を含む。
***
【0043】
別の態様において、親の改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に対する抗ヒスタミン剤である外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させる方法であって、親の改変GPCRは、以下の位置に改変された残基を含み、
(a)113、及び
(b)203
上記のような、親の改変GPCRにおける1つ以上の更なる位置で更なる改変を行うことを含み、
親の改変GPCRのアミノ酸位置は、配列番号1のアミノ酸配列に対応させて番号付けされる。
【0044】
一実施形態において、外因性作動薬(又は外因性リガンド)は、ジフェンヒドラミン又はそのアナログである。他の実施形態において、外因性作動薬又はリガンドは、表1(Table 1)又は表2(Table 2)から選択され、例えば、ジフェンヒドラミン、シプロヘプタジン、ジフェニルピラリン、デスロラタジン、ベンザトロピンから選択される。
***
【0045】
GPCR
本明細書で使用される「GPCR」は、そのナチュラルリガンドの結合及び受容体の活性化時に、細胞応答をもたらすGタンパク質媒介シグナルを伝達する受容体を意味する。GPCRは、進化的に関連したタンパク質の大きなファミリーを形成する(国際特許出願公開第WO97/035478号参照)。GPCRファミリーのメンバーであるタンパク質は構造的に関連しており、一般に、7つの推定膜貫通ドメインから構成される。
【0046】
https://www.addgene.org/guides/chemogenetics/(内容は、相互参照により本明細書に援用する)で説明されるように、GPCRは、真核生物における膜受容体の最大のグループであり、脳の中におけるシグナル伝達分子の最大のクラスである。GPCRは、光、ペプチド、糖、及び脂質を含む様々な細胞外シグナルを遮断し、シグナル伝達を細胞内Gタンパク質に中継し得る細胞表面受容体である。GPCRに結合する細胞内Gタンパク質は、3つのサブユニット、すなわちアルファ、ベータ、及びガンマサブユニットで構成される。静止状態では、ヘテロ三量体Gタンパク質はGPCRに結合し、特に、アルファサブユニットはその不活性の、GDP結合状態にある。シグナルがGPCRによって受け取られると、Gタンパク質を活性化する立体構造シフトを受け、GTPとGDPの交換を引き起こす。三量体Gタンパク質はここで、活性な、GTP結合アルファサブユニットとベータ-ガンマ二量体複合体の2つの部分に解離した後、両方とも横方向に拡散し(原形質膜に結合したまま)、他の膜タンパク質にシグナルを伝達し得る。
【0047】
活性化Gタンパク質は、他の様々なタンパク質にシグナル伝達し得、セカンドメッセンジャーの産生を活性化し得る。
【0048】
タンパク質サブユニットはそれぞれ、異なる結合パートナーを有する異なるバージョンを有するため、機能する。哺乳類においては、5つのベータサブユニット、11のガンマサブユニット、及び20のアルファサブユニットが特定されている。これらのGタンパク質には、標的を活性化するものもあり、他のものは、阻害効果を有し得、Gタンパク質を構成するための様々なGタンパク質サブユニットの組み合わせによって、生物内のGタンパク質及びGPCRシグナル伝達の多様なレパートリーが生じる。例えば、アルファサブユニットαs(Gαs)は、アデニル酸シクラーゼを活性化して、共通のセカンドメッセンジャーの産生を引き起こす。ニューロンにおいては、cAMPの上昇はニューロン発火を活性化するが、平滑筋においては、cAMPの上昇は筋肉弛緩を引き起こす。あるいは、アルファサブユニットαi(Gαi)は、アデニル酸シクラーゼを阻害し、結果として、対立する効果(それぞれ、ニューロン阻害及び平滑筋収縮)を有し得る。異なるアルファサブユニットも、同様の表現型の結果を有し得る。例えば、アルファサブユニットαq(Gαq)も、平滑筋収縮を引き起こすが、ホスホリパーゼCの活性化を介してなる。したがって、Gタンパク質は、多様なシグナル伝達経路を活性化し得、様々な細胞応答に至り得る。
【0049】
本発明は、抑制性GPCR及び興奮性GPCRの両方に有用性がある。
【0050】
GPCRは、通常、1つのGタンパク質サブタイプを好むが、複数のサブタイプに結合することが可能である。例えば、ヒトムスカリン性受容体M1は、主にGαqを活性化するが、Gαi及びGαsの経路に結合することも示されている。しかしながら、ヒトムスカリン性受容体M3は、Gαqと結合することが示されているのみである。
【0051】
ニューロンにおけるDREADD及びそれらの活性の非限定的な例は、https://www.addgene.org/guides/chemogenetics/において与えられる。
【0052】
【0053】
GPCRがニューロンの興奮性、ひいては神経伝達を改変し得る別のメカニズムは、Gタンパク質を介したGタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネル(GIRK)への結合によるものである。ここで、Gタンパク質結合型の細胞応答は、したがって、膜過分極及びニューロン阻害である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「Gタンパク質共役細胞応答」は、GPCRによるリガンド結合時に発生する細胞応答又はシグナル伝達経路を意味する。本発明に関するそのようなタンパク質共役細胞応答は、ニューロンの興奮性、ひいては神経伝達を改変するものである。1つの応答は、阻害応答であり、リガンドによる受容体の活性化がシナプスのサイレンシング又は阻害を引き起こす。
【0055】
本明細書に記載されるように、本発明者は、アレスチンの動員、(cAMP産生を阻害する能力を検証するための)Giカスケード、及び(Kir3.1及びKir3.2のGIRKのGタンパク質依存性開口を試験するための)電気生理学アッセイを含む種々のアッセイを使用した。
【0056】
一実施形態において、GPCRは、Gi結合型GPCRである。
【0057】
一実施形態において、GPCRは、Gタンパク質を介してイオンチャネルに結合され、イオンチャネルが、任意選択で内向き整流性である、及び/又は、イオンチャネルが、任意選択でカリウムチャネルであり、好ましくはタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネルである。
【0058】
一実施形態において、GPCRは、Gq結合型又はGs結合型GPCRである
【0059】
一実施形態において、GPCRは、コリン作動性受容体ムスカリン性受容体(CHRM)、ヒスタミン受容体(HRH)、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体(HTR)、ドーパミン受容体(DRD)、アルファアドレナリン受容体(ADRA)、ベータアドレナリン受容体(β1-4アドレノセプタ)(ADRB)から選択される。
【0060】
一実施形態において、GPCRは、CHRM4、CHRM3、CHRM1、CHRM2、CHRM5、HRH1、HRH2、HRH3、HRH4、5HTR-1A、5HTR-1B、5HTR-1D、5HTR-1E、5HTR-1F、5HTR-2A、5HTR-2B、5HTR-2C、5HTR-4、5HTR-5A、5HTR-6、5HTR-7、DRD-1、DRD-2、DRD-3、DRD-4、DRD-5、ADRA-1A、ADRA-1B、ADRA-1D、ADRA-2A、ADRA-2B、ADRA-2C、ADRB-1、ADRB-2、ADRB-3から選択される。
【0061】
一実施形態において、GPCRは、以下の表3で特定されたGPCRから選択される。
***
【0062】
本発明が非hM4 GPCRで利用される場合、M4受容体(CHRM4)に対して番号付けされたものに「対応する」残基は、本明細書の開示に基づいて容易に特定され得る。
【0063】
実施例13は、本発明の変異の対応する位置を明示的に示すために、GPCRのアライメントを提供する。
【0064】
これらのGPCRにおける天然の残基は、参照番号付けに使用されたCHRM4に与えられたものと必ずしも同一でなくてもよいことが理解されるであろう。それにもかかわらず、アミン作動性GPCR間の高度な保存性(例えば、実施例13、
図23及び24参照)のため、本発明は、これらの他のGPCRに同様に適用され得る。
【0065】
例として、選択されたGPCRにおけるCHRM4のアミノ酸に対応する天然の残基は以下の通りである。
S85V:CHRM(S)、HRH3(C)、HRH4(S)。したがって、再び例として、HRH3における対応する置換は、C→Vである。対応する位置は、87である。したがって、これは、HRH3においてC87Vである。
V120I:CHRM(V)、HRH3(A)、HRH4(V)。したがって、例として、HRH3における対応する置換は、A→Iである。対応する位置は、122である。したがって、これは、A122Iである。
【0066】
更に、対応する位置及び天然の残基は、実施例13に列挙される。
***
【0067】
あるいは、本発明の任意の態様又は実施形態において、「Ballesteros-Weinstein番号付けシステム」は、「対応する」位置及び残基を特定するために使用されてよい。このクラスA GPCR残基番号付けシステム(Ballesteros JA、Weinstein H、「Integrated methods for the construction of three-dimensional models and computational probing of structure-function relations in G protein-coupled receptors.」、Methods in neurosciences. 1995;25:366-428)は、当技術分野で十分に理解され、2015年までに1100回を超える引用があった(Vignir Isbergら、「Generic GPCR residue numbers-aligning topology maps while minding the gaps.」、Trends in pharmacological sciences 36.1(2015):22-31参照)。
【0068】
簡単に言えば、Ballesteros-Weinstein番号付け方式は、GPCRの7回膜貫通型(TM)ヘリックスのそれぞれにおける高度に保存された残基の存在に基づく。これは、2つの数字からなり、第1の数字は、ヘリックスを示す1~7、第2の数字は、数字50のように定義された、最も保存された残基を基準にした残基位置を示す。例えば、5.42は、TM5に位置し、最も保存された残基であるPro5.50の8残基前に位置する残基を示す。
【0069】
このシステムを使用すると、CHRM4を参照して本明細書に記載される残基は、以下のBallesteros-Weinstein番号付けを有する。
S85-(2.57)
Y113-(3.33)
V120-(3.40)
M121-(3.41)
L123-(3.43)
F128-(3.48)
A200-(5.43)
A203-(5.46)
F204-(5.47)
I410-(6.45)
W413-(6.48)
Y416-(6.51)
***
【0070】
本発明のGRANPAは、それ自体が、DREADD又は天然のGPCRの機能的変異体であるが、本明細書に記載のGRANPA由来の更なる変異体が本発明で同様に採用され得ることを当業者は理解するであろう。
【0071】
例えば、GRANPAは、それにもかかわらず、それらの活性又は有用性に実質的に影響を及ぼさない(野生型を基準とした)更なる改変を含んでもよい。本発明によれば、薬剤における好ましい更なる変更は、「保存的な」又は「安全な」置換として一般に知られている。保存的なアミノ酸置換は、薬剤の構造及び生物学的機能を保存するために、化学的性質が十分に類似したアミノ酸との置換である。特に、挿入又は欠失が数個のアミノ酸、例えば、10未満、好ましくは5未満含むのみであり、薬剤の機能的確認に重要であるアミノ酸(例えば、作動薬結合ポケット)を除去したり置換したりしない場合、機能の変化なしに、アミノ酸の挿入及び欠失が上で定義された配列においても生じ得ることは明らかである。文献は、保存的アミノ酸置換の選択が、天然タンパク質の配列及び/又は構造の統計的及び物理化学的研究に基づいて実施され得る多くのモデルを提供する。このような場合、GRANPAは、例えば、ナチュラルリガンドではなく作動薬の存在下での標的細胞活性化など、上で定義された用語の性質を保持する。
【0072】
更に、遺伝コードの縮重により、任意の核酸配列が、それによってコードされる薬剤タンパク質の配列に実質的に影響を与えることなく、その機能的変異体を提供するために変化又は変更され得ることは明らかである。適切なヌクレオチド変異体は、配列内の同じアミノ酸をコードする異なるコドンの置換によって変更された配列を有する、したがってサイレント変化を生じるものである。
***
【0073】
GPCRの改変、及びGRANPAの発現は、従来の分子生物学技術(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)を通じて本開示に照らして、当業者によって行われ得る。例としてのベクター及びプロモーターは、以下に記載される。
【0074】
本発明の実施形態は更に、本明細書に記載のGRANPAをコードする核酸又は単離核酸を対象とする。更なる実施形態は、調節配列に作動可能に連結された、本明細書に記載の核酸又は単離核酸を含む発現ベクターを対象とする。
【0075】
また、更なる実施形態は、本明細書に記載の発現ベクター、又は本明細書に記載のGRANPAをコードする核酸を含む宿主細胞を対象とする。
【0076】
更なる別の実施形態は、GRANPAをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで宿主細胞を安定的に形質転換することと、形質転換された宿主細胞を適切な条件下で培養してGRANPAを作製することと、GRANPAを再生することとを含む、本明細書に記載のGRANPAを作製する方法を対象とする。
【0077】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、細菌細胞又は真菌細胞である。これらは、例えば、構造分析又は抗体を惹起するためのGRANPAタンパク質の作製に有用であり得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、哺乳類細胞(例えば本発明の方法によって治療される被験体)又は幹細胞である。この目的に適したベクターは、以下に記載される。
【0079】
GRANPAタンパク質の安定的な発現のために、適切な発現宿主は、エスケリキア属(例えば、大腸菌)、シュードモナス属(例えば、シュードモナス・フルオレッセンス又はシュードモナス・スタッツェレイ)、プロテウス属(例えば、ミラビリス変形菌)、ラルストニア属(例えば、ラルストニア・ユートロファ)、ストレプトマイセス属、ブドウ球菌属(例えば、スタフィロコッカス・カルノーサス)、ラクトコッカス属(例えば、ラクトコッカス・ラクチス)、又はバシラス属(枯草菌、バシラス・メガテリウム、バシラス・リケニフォルミスなど)を含む細菌の発現宿主属である。また、特に適したものは、出芽酵母、分裂酵母、ヤロウィア・リポリティカ、ハンセヌラ・ポリモルファ、クルイベロマイセス・ラクティス又はピキア・パストリスなどの酵母発現宿主である。
【0080】
また、マウス(例えば、NS0)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HEK、又はベビーハムスター腎臓(BHK)細胞系などの哺乳類の発現宿主も適している。昆虫細胞又はウイルス発現系(例えば、M13、T7ファージ、又はラムダなどのバクテリオファージ、又はバキュロウイルスなどのウイルス)などの他の真核宿主も、GRANPAなどの組換えポリペプチドを作製するのに適している。
***
【0081】
GRANPAは、それらが誘導される野生型参照GPCR又はDREADDに「実質的に類似」し得る変異体ポリペプチドであり、それらが誘導された参照GPCRと、少なくとも59%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0082】
例えば、それらは、表8で特定された配列番号1-35のポリペプチド配列のいずれか1つと実質的に類似していてよい。
【0083】
例えば、一実施形態において、改変GPCRは、表8の配列番号1-35のいずれか1つの天然の親GPCRと少なくとも70%の配列同一性を有する。
【0084】
改変GPCRは、上記改変を含む、表3~6のいずれか1つに示される配列を含んでよい。
【0085】
「変異体ポリヌクレオチド」という用語は、GRANPAをコードし、親ポリヌクレオチドと特定の程度の相同性/同一性を有する、又はストリンジェントな条件下で親ポリヌクレオチド又はその相補体にハイブリダイズする、ポリヌクレオチドをいう。例えば、変異体ポリヌクレオチドは、親ポリヌクレオチドと、少なくとも59%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%のヌクレオチド配列同一性を有する。
【0086】
例えば、それらは、表8で特定された配列番号36-70のポリヌクレオチド配列のいずれか1つと実質的に類似していてよい。
【0087】
例えば、本発明は、本明細書に記載の改変GPCRをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。
【0088】
核酸は、表8の配列番号36~70のいずれか1つのその天然の親GPCRと少なくとも70%の配列同一性を有してよい。
【0089】
異なるアミノ酸/ポリペプチド/核酸配列間の同一性の割合の計算は、以下のように実施され得る。まず、ClustalXプログラムによってマルチプルアライメントが生成される(ペアワイズパラメータ:ギャップオープニング10.0、ギャップ延長0.1、タンパク質マトリックスGonnet250、DNAマトリックスIUB;複数のパラメータ:ギャップオープニング10.0、ギャップ延長0.2、遅延発散配列30%、DNA遷移重量0.5、負のマトリックスオフ、タンパク質マトリックスGonnetシリーズ、DNA重量IUB;タンパク質ギャップパラメータ、残基特異的ペナルティオン、親水性ペナルティオン、親水性残基GPSNDQERK、ギャップ隔離距離4、エンドギャップ隔離オフ)。次いで、同一性の割合は、マルチプルアライメントから、(N/T)*100として計算され、ここで、Nは、2つの配列が同一の残基を共有する位置の数であり、Tは、比較された位置の総数である。あるいは、同一性の割合は、(N/S)*100として算出され得、Sは、比較対象であるより短い配列の長さである。アミノ酸/ポリペプチド/核酸配列は、新規に合成されてもよく、又は天然のアミノ酸/ポリペプチド/核酸配列、又はその誘導体であってもよい。
【0090】
外因性作動薬
上で説明されたように、発明者らは、抗ヒスタミン剤などの市販薬となり得る、従来技術のDREADDで使用されていたものとは異なるタイプの薬剤によって活性化可能となるように、Gタンパク質共役受容体(GPCR)中の活性化特性を改変する残基を定義するべく、革新的なアプローチを使用した。
【0091】
したがって、GRANPAは、外因性作動薬の存在によって活性化される。外因性作動薬(又は「薬剤」、リガンド、又は小分子、用語は一般に、本明細書中でほとんど同じ意味で使用される)は、GRANPAを発現する標的細胞に直接的又は間接的に送達され得るものである。投与様式は、以下により詳細に検討される。リガンドは、一般に標的細胞に存在しない、又は、GRANPAを活性化しない十分に低い基底濃度で存在するという点で、外因性である。
【0092】
GRANPAが発現され得る適切な標的細胞は、以下でより詳細に検討される。
【0093】
一実施形態において、標的細胞は脳内にあり、作動薬は、直接投与されるか、又は、受動的にもしくは能動輸送を介してのいずれかで血液脳関門を透過し得る。通常、血液脳関門を通過する分子は、ペプチド分子よりも荷電が少ない。合成薬物は、分子上の荷電基の数に応じて、血液脳関門を通過するようにも、通過しないようにもすることができる(例えば、Freidinger、1993、Prog.Drug Res.40:33-98参照)。より小さな分子、例えば、4000Da未満の分子も、血液脳関門を通過する可能性がより高い。
【0094】
リガンドは、自然の産物であってもよいが、好ましくは、リガンドは合成である、すなわち自然には発生しない。好ましいリガンドは、GRANPA活性化以外の最小限の又は良性の生物活性を有するものである。好ましくは、リガンドは、本明細書に記載の「市販の」薬剤、例えば、抗ヒスタミン剤又はその構造アナログである。本明細書に記載のこれらのリガンドのいずれかは、簡潔さのために「本発明の作動薬」と称される場合がある。
【0095】
1つの好ましいリガンドは、抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミン(DPH)である。これは、Nytol Original、Nytol One-a-Night、Sleepeaze、Benylin Chesty Coughs、Covonia Night Time Formula、及びHisterganを含む、英国で利用可能な軽度の鎮静性抗アレルギー又は抗乗り物酔い治療として使用されるいくつかの市販医薬品の有効成分又は構成要素として使用されてきた。米国では、他の人気ブランドの中でもベナドリル及びNytolとして販売されており、エキセドリン、Sudafed、モトリンPE、及びロビタシンNight Time Cough and Coldを含む他の多くの非処方医薬品の構成要素である。
【0096】
DPHは、DREADDのリガンドとしていくつかの利点を提供する。例えば:
(i)忍容性が高く、安全である。
(ii)その薬理は、よく知られており、H1拮抗薬として作用する濃度と、異なる受容体に作用する濃度との間で十分に分離されている。
(iii)乗り物酔いでの使用を含む軽度の鎮静剤として有効であるという事実は、それがヒトの中枢神経系に浸透することの確認である。
多くの天然のGPCRは、既存のDREADDで使用されるクロザピンと比較して、DPHに対して比較的低い結合親和性を示す。
【0097】
【0098】
本明細書に記載の改変は、DPH又は関連化合物の効力及び/又は奏効性を増強するために使用され得、それによって、それらを治療用GRANPAに対する有効な作動薬にする。
【0099】
代替リガンドは、以下から選択されてよい。
表1(Table 1)-ジフェンヒドラミンと化学的類似性を有する薬剤及びその塩の例
(-)-セチリジン、アルプラゾラム、アミトリプチリン、アモキサピン、アンタゾリン、ベンザトロピン、臭化ビベンゾニウム、ビペリデン、ブロマジン、ブロモジフェンヒドラミン、塩酸ブロモジフェンヒドラミン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、ブトルファノール、ブトリプチリン、カプトジアム、カルビノキサミン、マレイン酸カルビノキサミン、セチリジン、クロルシクリジン、クロルフェナミン、クロルフェノキサミン、シンナリジン、シノキサシン、クロミプラミン、クロペラスチン、シアメマジン、シクリジン、シクロベンザプリン、シクロペントレート、シクリミン、デメキシプチリン、デシプラミン、デスベンラファキシン、デクスブロムフェニラミン、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、クエン酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、臭化メチルジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、ドキセピン、ドキシラミン、エンブラミン、エメダスチン、フェルバメート、フェンジリン、フルコナゾール、フルメキサドール、フルナリジン、フルオレセイン、ホスフェニトイン、グリコピロレート、ヒドロキシジン、イミプラミン、レバロルファン、レボセチリジン、マジンドール、メクリジン、メピラミン、メキタジン、メトジラジン、メチキセン、ミアンセリン、モキサスチン、ネホパム、ノルトリプチリン、オランザピン、オルフェナドリン、クエン酸オルフェナドリン、塩酸オルフェナドリン、オキシトリプチリン、パロキセチン、ペルヘキシリン、フェニンダミン、フェニラミン、プロシクリジン、プロガビド、プロトリプチリン、ロトキサミン、トリヘキシフェニジル、トリミプラミン、トリペレナミン、トリプロリジン、チマゾリン。
【0100】
表2(Table 2)-他の抗ヒスタミン剤
アクリバスチン、アリメマジン、酒石酸アリメマジン、アンタゾリン、アステミゾール、アザタジン、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロマジン、ブロモジフェンヒドラミン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、カルビノキサミン、セチリジン、クロルシクリジン、クロロジフェンヒドラミン、クロロピラミン、クロルフェナミン、クロルフェニラミン、シンナリジン、クレマスチン、クロフェダノール、シクリジン、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デクスブロムフェニラミン、デクスクロルフェニラミン、マレイン酸デクスクロルフェニラミン、デキストロメトルファン、ジメンヒドリナート、マレイン酸ジメチンデン、ジメチンデン、ジフェニルピラリン、ドスレピン、ドキシラミン、エバスチン、エンブラミン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラタジン、メクリジン、メピラミン、ミルタザピン、ミゾラスチン、ナファゾリン、オロパタジン、オルフェナドリン、フェニンダミン、フェニラミン、フェニルプロパノールアミン、フェニルトロキサミン、ピゾチフェン、プロメタジン、プロピオマジン、プソイドエフェドリン、ピリラミン、クエチアピン、キフェナジン、ルパタジン、セルトラリン、テルフェナジン、トンジルアミン、トラゾドン、トリメプラジン、トリペレナミン、トリプロリジン、キシロメアゾリン。
***
【0101】
GRANPAが、その対応する天然のGPCRによるナチュラルリガンドの結合を基準として、減少した、好ましくは実質的に減少した、より好ましくは実質的に排除された、選択されたナチュラルリガンドに対する結合を示すという点で、本明細書で使用されるGRANPAは、それらの対応する天然のGPCR対して改変されることが理解される。したがって、GRANPA活性は、選択されたナチュラルリガンド(例えば、アセチルコリン)の自然な変動によって比較的影響を受けない。好ましくは、選択されたナチュラルリガンドのGRANPA結合は、少なくとも5倍、好ましくは10倍、より好ましくは50倍、更により好ましくは75倍減少され、GRANPAの対応する天然のGタンパク質共役受容体による結合を基準として100倍以上減少し得る。
【0102】
GRANPAは、選択されたナチュラルリガンドの結合親和性に対する、合成リガンド(例えば、上記の抗ヒスタミン剤又は他の薬剤)結合親和性の比によっても特徴付けられ得る。好ましくは、本発明のGRANPAは、選択されたナチュラルリガンド結合に対する高い合成リガンド結合の比を示し、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、好ましくは少なくとも1.0、より好ましくは少なくとも5、更に好ましくは10、更により好ましくは100以上の合成リガンド:選択されたナチュラルリガンド結合比を示す。
【0103】
好ましくは、GRANPAは、天然のGタンパク質共役受容体の合成リガンド:選択されたナチュラルリガンド結合比よりも、2倍大きい、好ましくは5倍大きい、より好ましくは10倍大きい、更に好ましくは50~100倍大きい結合比を示す。
【0104】
GRANPAは、選択されたナチュラルリガンドへの露出による活性化レベルに対する、合成リガンドへの露出による活性化のレベルの比(「活性化率」)によっても特徴付けられ得る。活性化レベルは、本明細書の実施例に記載されるように測定され得る。好ましくは、本発明のGRANPAは、選択されたナチュラルリガンド活性化に対する合成リガンド活性化の比を示し、少なくとも0.8、好ましくは少なくとも1.0、より好ましくは少なくとも5、更に好ましくは10、更により好ましくは100以上の合成リガンド:選択されたナチュラルリガンド活性化率を示す。好ましくは、GRANPAは、天然のGタンパク質共役受容体の合成分子リガンド:選択されたナチュラルリガンド活性化率よりも、2倍大きい、好ましくは5倍大きい、より好ましくは10倍大きい、更に好ましくは50~100倍大きい活性化率を示す。
***
【0105】
本発明は、本明細書に記載の本発明のアミノ酸改変のうち1つ以上で、ペプチド又はそれをコードする核酸を改変することによって、変異体又は改変GPCRを作製する方法を提供する。これらは、(抗ヒスタミン剤などの)外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させるために使用され得る。
【0106】
本発明は、本明細書に記載のGRANPAを、それをコードする核酸からの発現によって作製する方法を提供する。
【0107】
本発明は、改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に対する(抗ヒスタミン剤などの)外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させる方法であって、
改変GPCRが、以下の位置に改変された残基を含み、
(a)113、及び
(b)203
改変GPCRにおける1つ以上の更なる位置で、本発明の追加の改変を行うことを含む方法を提供する。そのような方法は、通常、それをコードする核酸の改変によって実施され得る。
【0108】
本発明は、新規の技術的効果を達成するための、本明細書に記載の本発明の変形の使用を提供する。そのような改変は、改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に導入された1つ以上のアミノ酸であり、改変GPCRは、以下の位置に改変された残基を含み、
(a)113、及び
(b)203
(抗ヒスタミン剤などの)外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させる。この使用は、それをコードする核酸の改変を含み得る。
【0109】
したがって、一態様において、外因性作動薬に対する応答性が改変された改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)を作製するためのプロセスであって、親GPCRを、以下から選択される位置での2つ、3つ、又は4つの改変によって親GPCRに比較して改変することを含み、
(i)85
(ii)416
(iii)120
(IV)123
加えて任意選択で、親GPCRと比較して、以下から選択される位置に、1つ以上の改変を含み、
(v)128
(vi)121
(vii)200
(viii)204
(viii)410
(ix)413
改変GPCRのアミノ酸位置は、配列番号1のアミノ酸配列に対応させて番号付けされる、プロセスが提供される。
【0110】
このプロセスは、親GPCRと比較して、改変GPCRにおける外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を改善するためであってよい。
【0111】
改変される親GPCRは、上記の(例えば、113及び/又は203での)特定の残基又は置換を含む天然GPCRに由来してもよい。
【0112】
本明細書に記載のプロセス又は方法によって得られた、又は得ることができる改変GPCRも提供される。
【0113】
本発明の別の態様は、抗ヒスタミン剤などの外因性作動薬の効力及び/又は奏効性を増加させるための、本明細書に記載の改変の使用を提供し、この改変は、親の改変Gタンパク質共役受容体(GPCR)に導入された更なるアミノ酸改変である。親の改変GPCRは、以下の位置、(a)113及び(b)203に改変された残基を含み、改変GPCRのアミノ酸位置は、配列番号1のアミノ酸配列に対応させて番号付けされる。
【0114】
有用性及び使用方法
一態様において、本発明は、被験体又は生物の細胞において、Gタンパク質の活性化を選択的に改変する、又はGタンパク質を活性化する方法であって、
(i)細胞内でGRANPAを発現させるステップと、
(ii)発現されたGRANPAに対する本発明の作動薬を被験体又は生物に投与するステップとを含む、方法を提供する。
【0115】
GRANPAは、通常、作動薬の投与前に細胞内で発現される。そのような方法は、領域及び時間特異的な方式で細胞におけるGタンパク質の活性化を変化させるために使用され得る。
【0116】
したがって、被験体又は生物は、方法の実施前に、ポリヌクレオチドを前もって投与されていてもよい。それらの場合、異種GRANPAをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが、被験体又は生物の細胞内にすでに存在する。
【0117】
次いで、活性化されると、Gタンパク質は、例えば、細胞、組織、被験体、又は生物の興奮性又は他の特徴に影響を与え得る、更なるシグナル伝達経路及び細胞プロセス又は応答を阻害又は刺激し得る(Gαs、Gαi、及びGαqタンパク質、並びに、上記対応する改変GPCRの議論を参照)。
【0118】
被験体又は生物
哺乳類は、ヒト被験体であってよい。
【0119】
哺乳類は、非ヒト哺乳類、例えば、齧歯類(例えば、マウス、ラット)又は霊長類などの試験動物であってもよい。哺乳類は、遺伝子組換え哺乳類であってもよい。
【0120】
被験体又は生物は、鳥類、魚類、爬虫類、又は両生類であってもよい。
【0121】
そのような試験動物(ヒトではない)は、本発明の更なる態様を構成する。
【0122】
標的細胞種
本明細書に記載されるように、方法は、多種多様な標的細胞種で有用性があり、発現(例えば、細胞特異的発現)及び投与の方法又は様式は、被験体及び所望の標的細胞種に応じて採用される。
【0123】
好ましくは、細胞は、中枢神経系又は末梢神経系のニューロン、横紋筋及び平滑筋を含む筋細胞、又は内分泌細胞などの「興奮性細胞」である。
【0124】
GRANPAは、hM3D(Gq)が以前にこのように使用されていたため、自律神経系及び心臓の操作に有用性があり得る(Agulhon C、Boyt KM、Xie AX、Friocourt F、Roth BL、McCarthy KD、「Modulation of the autonomic nervous system and behaviour by acute glial cell Gq protein-coupled receptor activation in vivo.」、J Physiol.2013 Nov 15;591.22:5599-609、doi:10.1113/jphysiol.2013.261289、Epub 2013 Sep 16、PMID:24042499、PMCID:PMC3853498;Kaiser E、Tian Q、Wagner M、Barth M、Xian W、Schroeder L、Ruppenthal S、Kaestner L、Boehm U、Wartenberg P、Lu H、McMillin SM、Bone DBJ、Wess J、Lipp P、「DREADD technology reveals major impact of Gq signalling on cardiac electrophysiology.」、Cardiovasc Res.2019 May 1;115(6):1052-1066、doi:10.1093/cvr/cvy251、PMID:30321287、PMCID:PMC6736079)。
【0125】
GRANPAは、膵臓のアルファ細胞を操作するためにhM4D(Gi)が以前にこのように使用されているため、膵機能を変化させるのに有用性があり得る(Zhu L、Dattaroy D、Pham J、Wang L、Barella LF、Cui Y、Wilkins KJ、Roth BL、Hochgeschwender U、Matschinsky FM、Kaestner KH、Doliba NM、Wess J、「Intra-islet glucagon signaling is critical for maintaining glucose homeostasis.」、JCI Insight.2019 Apr 23;5(10):e127994、doi:10.1172/jci.insight.127994、PMID:31012868、PMCID:PMC6542600)。
【0126】
他の実施形態において、細胞は、「非興奮性」細胞、例えば、肝細胞である。例えば、肝細胞におけるhM4D(Gi)の活性化は、グルコース制御を悪化させ、肝細胞におけるGiの欠失は、グルコース制御を改善すると考えられている(Rossi M、Zhu L、McMillin SM、Pydi SP、Jain S、Wang L、Cui Y、Lee RJ、Cohen AH、Kaneto H、Birnbaum MJ、Ma Y、Rotman Y、Liu J、Cyphert TJ、Finkel T、McGuinness OP、Wess J、Hepatic Gi signaling regulates whole-body glucose homeostasis.、J Clin Invest.2018 Feb 1;128(2):746-759、doi:10.1172/JCI94505、Epub 2018 Jan 16、PMID:29337301、PMCID:PMC5785257)。したがって、Gs連結型GRANPAは、グルコース制御の改善に有用性があり得る。
***
【0127】
本発明の一態様において、哺乳類の中枢神経系(例えば、脳)におけるニューロンの興奮性を領域及び時間特異的な方式で選択的に改変する方法であって、
a.GRANPAをコードする核酸配列を含む有効量のポリヌクレオチドを被験体に投与するステップと、
b.GRANPAに対する作動薬の投与前に、ステップ(a)のGRANPAを発現させるステップと、
c.発現されたGRANPAに対する作動薬を被験体に投与するステップとを含む、方法が提供される。
【0128】
上記で説明したように、好ましい実施形態において、上記GRANPAの活性化は、被験体の神経系のニューロンの興奮性を変化させる。
【0129】
通常、GRANPAは、中枢神経系(脳又は脊髄)で発現される。この目的に適したベクター及びプロモーターは、以下に記載される。
【0130】
GRANPAの活性化は、興奮性ニューロンによる神経伝達を阻害し得るか、又は抑制性ニューロンを活性化し得る。抑制性ニューロンの活性化は、シナプスのサイレンシング又は阻害などの抑制性応答をもたらし得る。
【0131】
他の実施形態において、GRANPAの活性化は、興奮性ニューロンを活性化し得る。
【0132】
他の実施形態において、GRANPAの活性化は、興奮性ニューロンを阻害し得る。
【0133】
他の実施形態において、GRANPAの活性化は、抑制性ニューロンを阻害し得る。
【0134】
したがって、一態様において、本発明は、哺乳類の中枢神経系(例えば、脳)におけるニューロンの興奮性を領域及び時間特異的な方式で選択的に改変する方法であって、被験体において、
(i)GRANPAに対する作動薬の投与前に、GRANPAを発現させるステップと、
(ii)発現されたGRANPAに対する本発明の作動薬を被験体に投与するステップとを含む、方法を提供する。
【0135】
投与様式
外因性作動薬は、それによってGRANPAを含む標的細胞に分布されるのであれば、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって投与され得る。
【0136】
非限定的な投与経路には、以下が含まれる。
a)経口
b)静脈内又は筋肉内経路による、非経口
c)皮下注射(例えば、痛み、吐き気、又は不安の緩和にGRANPAが使用される緩和ケアにおいて好まれ得る)
d)舌下、バッカル、鼻腔内、直腸、迅速な吸収のため、成人又は子供の急性発作の治療におけるベンゾジアゼピン類に使用される経路(例えば、直腸のジアゼパム、バッカル又は鼻のミダゾラム)
e)吸入器又は噴霧器を介して(慢性閉塞性気道疾患、嚢胞性繊維症、肺気腫、細気管支炎、又は気管支拡張症の治療において好まれ得る、COADの治療に使用されるベータ2アドレナリン作動薬であるサルブタモールとの類似性から)
f)局所:目、緑内障などの眼疾患の治療に好まれ得る、開放隅角緑内障の治療に使用されるチモロール(アルファ2アドレナリン作動薬)点眼剤との類似性から
g)局所:皮膚(経皮)、神経因性疼痛の治療に使用される局所クロニジンゲル(アルファ2アドレナリン作動薬)との類似性から
h)他の局所経路:耳、くも膜下腔内、腟内、膀胱内
【0137】
全身投与様式が好ましい場合がある。
【0138】
外因性作動薬は、当技術分野で公知の方法に従って、投与経路に採用され得る。例えば、ジフェンヒドラミンの経口、注射可能、及び局所の処方は、当技術分野で公知である。
***
【0139】
本明細書に記載の新規GRANPAは、例えば、神経系の幅広い疾患又は障害、例えば、神経回路障害の遺伝子治療に有用性があり得る。これらには、精神神経障害、神経変性疾患、慢性痛、脳血管障害(CVA)、又は脳卒中が含まれる。GRANPAが有用性を示し得る疾患の例は、以下に示される。
【0140】
特定の実施形態において、GRANPAは、hM4D(Gi)(ヒトM4ムスカリン性コリン作動性Gi結合型DREADD)に基づく。特定の実施形態において、DREADDは、本明細書に記載の本発明の改変を含む、ヒトムスカリン性アセチルコリン受容体M4である。
【0141】
非限定的な例として、(例えば、Gi結合型受容体による興奮性ニューロンの阻害、又は抑制性ニューロンの活性化による)活性化神経伝達の制御された抑制は、てんかん、並びに、片頭痛、群発頭痛、三叉神経痛、ヘルペス後神経痛、発作性運動障害、及び単極性又は双極性の情動障害などの異常な細胞活性のエピソードにより特徴付けられた他の疾患において有用性がある。
【0142】
特定の実施形態において、GRANPAは、Gqと結合している。特定の実施形態において、GRANPAは、本明細書に記載の発明の変形を含む、Gq結合型ヒトM3ムスカリン性受容体(hM3Dq)に基づいている(例えば、Alexanderら、(2009)Neuron 63(1):27-39;Armbrusterら、(2007)Proc. Natl. Acad. Set、104(12):5163-5168参照)。
【0143】
興奮性(例えば、Gs結合型及びGq結合型)GPCRの活性化は、パーキンソン病、及び、いくつかの神経回路が不活発であると考えられる他の疾患などの他の精神健康障害において有用であり得る。
***
【0144】
本発明の一態様において、被験体において疾患又は障害を治療する方法であって、
(i)GRANPAを被験体の標的細胞又は器官中に発現させるステップと、
(ii)発現されたGRANPAに対する作動薬を被験体に投与するステップとを含む、方法が提供される。
【0145】
本発明の一態様において、被験体において疾患又は障害を治療する方法であって、
(a)例えば、GRANPAをコードする本明細書に記載のポリヌクレオチド又はベクターを有効量、直接注入によって被験体に投与するステップと、
(b)被験体の標的細胞又は器官中に、ステップ(a)のGRANPAを発現させるステップと、
(c)発現されたGRANPAに対する外因性作動薬を被験体に投与するステップとを含む、方法が提供される。
【0146】
本発明の一態様において、被験体において神経系の疾患又は障害を治療する方法であって、
a.GRANPAをコードする核酸配列を含む有効量のポリヌクレオチドを被験体に投与するステップと、
b.GRANPAに対する作動薬の投与前に、ステップ(a)のGRANPAを発現させるステップと、
c.発現されたGRANPAに対する作動薬を被験体に投与するステップとを含む、方法が提供される。
【0147】
上記で説明したように、通常、GRANPAは、中枢神経系(脳又は脊髄)において発現される。
【0148】
一態様において、被験体において神経系の疾患又は障害を治療する方法であって、
(i)GRANPAに対する作動薬の投与前に、GRANPAを発現させるステップと、
(ii)発現されたGRANPAに対する作動薬を被験体に投与するステップとを含む、方法が提供される。
***
【0149】
国際特許出願公開第WO2015/136247号で説明されるように、DREADDの使用によって、治療効果の微調整が潜在的に可能になるため、正常な脳機能への標的外効果を最小限にして回路機能の最適な調節が達成され得る。治療は、ウイルスベクターが導入される脳領域とその領域内の細胞種の両方を標的とすることができるため、リガンドが送達される際の効果を効果的に局所化することができる。リガンドなしでは、脳機能への任意の効果を期待できないであろう。したがって、療法は、標的が限定され、時間的にも限定される。しかしながら、主要な抑制性DREADD hM4D(Gi)は、活性化リガンドの副作用プロファイルによって限定される。
【0150】
したがって、一態様において、上記障害に苦しんでいる患者において、発作性障害を治療する方法であって、
(a)GRANPAが患者の脳における発作焦点の発現されたニューロンである、GRANPAをコードするベクターを患者に投与することと、
(b)外因性作動薬を患者に投与することとを含み、
それによって、患者の脳における作動薬の存在が、GRANPAを活性化し、
GRANPAの活性化が、発作焦点におけるニューロンの興奮性を可逆的に変化させる、方法が提供される。
【0151】
上記障害を患っている患者において発作性障害を治療する方法であって、
患者は、GRANPAをコードするベクターを以前に投与されており、GRANPAは、患者の脳における発作焦点の発現されたニューロンであり、
外因性作動薬を患者に投与することを含み、
それによって、患者の脳における作動薬の存在が、GRANPAを活性化し、
GRANPAの活性化が、発作焦点におけるニューロンの興奮性を可逆的に変化させる、方法が提供される。
【0152】
本発明の文脈において、GRANPAは、上記疾患を患っている被験体において発作性障害を治療するために使用され得る。このような治療において、患者の脳における作動薬の存在は、GRANPAを活性化し、それによって発作焦点のニューロンの興奮性を可逆的に変化させる、好ましくは阻害する。
【0153】
例えば、GRANPAの活性化は、(i)発作焦点における興奮性ニューロンの興奮性及びそれによる神経伝達を可逆的に阻害するか、又は(ii)発作焦点において抑制性ニューロンを可逆的に興奮させる。
【0154】
好ましい実施形態において、発作性障害は、てんかん、例えば、特発性、症候性、及び原因不明のてんかんである。本明細書に記載の方法は、てんかん原性活性を抑える、又は遮断するために使用されてよい。これらの方法は、それを必要とする患者の脳又は神経組織で発作閾値を上昇させること、又は患者の脳細胞のてんかん突発を減少させるために使用され得る。
【0155】
本発明の化学-遺伝学の組み合わせ(化学遺伝学的として知られる)方法は、領域及び時間特異的な方式で発作の抑制を介しててんかんの治療に使用され得る。
【0156】
一実施形態において、てんかんは、全般てんかんである。抑制性介在ニューロンのサイレンシングによって発作が悪化し得ることは報告されており(Wicker、Evan及びPatrick A. Forcelli、「Chemogenetic silencing of the midline and intralaminar thalamus blocks amygdala-kindled seizures.」、Experimental neurology 283 (2016):404-412)、他の操作(視床皮質興奮性細胞のサイレンシング)によってオンデマンドのけいれん抑制が達成されることを示唆している。
一実施形態において、てんかんは、ヒト焦点性てんかんである。
【0157】
患者は、脳の新皮質の単一領域に影響を与える、明確な焦点性てんかんであると診断された者でよい。焦点性てんかんは、例えば、発達異常、又は以下の脳卒中、腫瘍、穿通性脳損傷もしくは感染から発生し得る。
【0158】
しかしながら、本発明は、複数の特定された場所に直接注入することによって、複数のてんかん焦点を同時に治療するために使用されてもよい。
【0159】
患者は、薬剤耐性又は医学的に難治性のてんかんであると診断された者でもよいが、これは、抗てんかん薬の適切な投与にもかかわらず、てんかんの発作が継続することを意味する。
【0160】
患者は、抗てんかん薬による既存の治療下にある者であってもよく、この方法は、既存の治療を中断すること、又は薬物療法を減らすことを目的としている。
【0161】
患者は、持続性部分てんかんであると診断されている者でもよい。
【0162】
本発明の治療は、(例えば、カリウムチャネルの過剰発現によって達成され得るような)ニューロンの興奮性の永続的な低下が望ましくない場合、例えば、正常な脳機能にとってリスクが高すぎるため、特に有用である。てんかん原性領域が言語又は運動機能を担う皮質領域にある場合でも、リガンドが投与されるときを除いて、これらの機能に影響を及ぼさないであろう。難治性の焦点性てんかんの患者は、これを許容可能な副作用であると考える可能性が高い。
【0163】
本発明は、側頭葉てんかん及び焦点性新皮質てんかんなどの、焦点性の発症を特徴とする発作性障害に特に有用であるが、より全般的な形態のてんかんに、特に二次治療の指示として適用されてもよい。これらの場合、送達の標的は、状態に応じて適切に選択される。例えば、視床に対して両側的に送達されてもよい。したがって、本発明が適用され得る他の障害には、乳児けいれん、ミオクローヌス性発作及び「小運動」発作、並びに、強直間代性発作及び複雑部分発作が含まれる。
【0164】
更に、本発明は、原則として、いくつかの状況において、てんかん原性回路を「リセット」することを目的として、一定の期間ニューロンの興奮性の連続的な変化を引き起こすことによって予防的に使用されてよく、リガンドの投与よりも長く続く発作の持続的な減少をもたらす。
【0165】
したがって、本発明の異なる実施形態において、
(i)発作性障害は、てんかんであり、任意選択で焦点性てんかん又は全般てんかんである、及び/又は
(ii)被験体は、薬剤耐性又は医学的に難治性のてんかんと診断されている、及び/又は
(iii)被験体は、抗てんかん薬による既存の治療下にあり、方法は、既存の治療を中断すること、又は薬物療法を低減することを可能にする目的を有する、及び/又は、
(iv)被験体は、持続性部分てんかんと診断されている、及び/又は
(v)外因性リガンドは、患者がてんかん性発作を患う前の被験体に投与される、及び/又は
(vi)外因性リガンドは、てんかん性発作中の被験体に投与される、及び/又は
(vii)外因性リガンドは、てんかん性発作を患った後の被験体に投与される、及び/又は
(viii)外因性リガンドは、ヒトがてんかん性発作を患う前30分以内、又は患った後24時間以内に被験体に投与される、及び/又は
(ix)外因性リガンドは、(i)自動化された発作検出メカニズムに一方に連結されたデバイスによって、又は(ii)EEG解析による予測された発作に応じて、の一方で自動的に被験体に投与される、及び/又は
(x)外因性リガンドは、発作性障害を治療するための1つ以上の他の薬剤との併用療法で投与される。
***
【0166】
ジフェンヒドラミンの過剰投与の研究においては、最も一般的な有害事象は頻脈、幻覚、傾眠、激越、及び散瞳であり、発作の発生は、はるかに低いと結論付けられた(Palmerら、2019、https://doi.org/10.1080/15563650.2019.1609683)。発作閾値を低下させる効果は、他の抗ヒスタミン薬と同様にまれな副作用であるが、一般に、抗ムスカリン性効果に関連すると考えられている。我々の薬理学的研究は、ジフェンヒドラミンが、ムスカリン性受容体を遮断するよりも低い濃度で、GRANPAを活性化することを示唆している。
***
【0167】
上で検討された疾患に加えて、DREADD(及び、ひいてはGRANPA)は、他の障害において可能性を有する。例えば、齧歯類モデルにおいて、DREADDは、ニューロン活性を制御して、パーキンソン病6、ダウン症候群7、及び自閉症10のように多様な状態において疾患表現型を改善する能力を示した。また、DREADD型のアプローチは、中毒11,12、睡眠13、攻撃性14、呼吸15、及び摂食16-18のような多様な行動を調整する。DREADDはまた、学習記憶を強化及び沈黙させ、人工的な記憶を作成するために使用されてきた19-21。
【0168】
当技術分野において示唆されたDREADD型の治療法の他の中枢神経系への適用としては、精神刺激薬(Fergusonら、2011)及びエタノール(Pleilら、2015)の乱用、うつ病(Urbanら、2015)、心的外傷後ストレス障害(Zhuら、2014)、難治性発作(Katzelら、2014)、及び他の多くの障害(English及びRoth、2015)を含む。
【0169】
DREADDが神経系に与える効果が十分に確立されていることに加えて、多くの研究では、他の器官にDREADDを使用した潜在的な治療戦略も特定されている。DREADDによって治療されるこのような疾患/障害の動物モデルとしては、糖尿病(Jain、Sら、「Chronic activation of a designer G(q)-coupled receptor improves β cell function」、J Clin Invest.2013;123:1750-1762)、代謝障害(Li、Jら、「A novel experimental strategy to assess the metabolic effects of selective activation of a G(q)-coupled receptor in hepatocytes in vivo」、Endocrinology 2013;154:3539-3551)、炎症性障害(Park、Jら、「Synthetic control of mammalian-cell motility by engineering chemotaxis to an orthogonal bioinert chemical signal」、Proc Natl Acad Sci USA 2014;111:5896-5901)、及び呼吸器障害(Curado、Tら、「DREADD approach to sleep disordered breathing」、Am J Respir Crit Care Med.、印刷前10.1164/rccm.202002-0321OC)が含まれるが、これらに限定されない。
【0170】
治療上の利益のためにGRANPAによって操作され得る標的回路の具体例は、神経学的及び精神神経的な回路障害の前臨床モデルを使用した以下の研究に記載されている。
・痛み(Weirら、PMID:28969375)
・痙縮及び脊髄損傷(Asbothら、PMID:29556028、Chenら、PMID:30033363)
・パーキンソン病、ジストニア、舞踏病、ハンチントン病(Assaf及びSchiller、PMID:30536778)
・アルツハイマー病及び前頭側頭変性症(Rorabaughら、PMID:29053824、Yuanら、PMID:26758850)
・筋萎縮性側索硬化症(Khademullahら、PMID:32203578、Alamiら、PMID:32900826)
・注意欠陥/多動性障害、強迫性障害、衝動制御障害、トゥレット症候群、及び自閉症スペクトラム障害(Rapanelliら、PMID:28584117)
・統合失調症(Boekhoudtら、PMID:27712862、Katzelら、PMID:33178010、Katzel及びKullmann、「統合失調症における創薬のための光遺伝学的及び化学遺伝学的ツール(Optogenetic and Chemogenetic Tools for Drug Discovery in Schizophrenia)」、https://doi.org/10.1039/9781782622499-00234)
・大うつ病性障害、双極性障害(Biselliら、PMID:31633833、Muirら、PMID:30555161)
・不安及び全般性不安障害(Hirschbergら、PMID:29027903、Jiangら、PMID:29410218)
・不眠症及び睡眠障害(Sasakiら、PMID:21647372)
・拒食症、過食症、及びその他の摂食障害(Krashes、NBK453150、Xuら、PMID:29670283)
【0171】
本発明の他の実施形態において、疾患又は障害は、非中枢神経系及び/又は非末梢神経系の障害である。
【0172】
ベクター
上記で説明したように、本発明のGRANPAは、通常、生体内で発現されて、それらの医学的利益を提供する。これは、GRANPAをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドの使用によって達成され、適切なプロモーターに作動可能に連結されている。通常は、ポリヌクレオチドは、例えば、中枢神経系ニューロン又は他の興奮性細胞における細胞特異的な発現を支配する転写制御要素の転写制御下で、GRANPAをコードするオープンリーディングフレームを含む遺伝子コンストラクトの形態であるか、又はその中に含まれる。
【0173】
標的中枢神経系ニューロンとしては、脳幹、後脳、中脳、又は前脳の興奮性又は抑制性細胞集団を含むがこれらに限定されない、後角細胞及び/又は脳細胞などの脊髄細胞が挙げられる。
【0174】
本明細書に記載の任意の態様によるGRANPAをコードする核酸を細胞又は患者に送達する方法において、核酸は、遺伝子療法の分野における当業者によって認識されるように、任意の有用な方法によって、任意の有用な形で送達され得る。核酸は、リポソーム、例えば、カチオン性リポソーム、又はナノ粒子などの、例えば、限定するものではないが、コロイド状薬物送達方法によって堆積した、プラスミド、又は組換えウイルスゲノムの一部などのネイキッド核酸であってよく、広く知られているとおりである。
【0175】
一般に、当業者は、組換え遺伝子発現のためのベクターを構築し、プロトコルを設計することが十分可能である。適切なベクターは、上記の本発明の要素に加えて、プロモーター配列、ターミネータ断片、ポリアデニル化配列、マーカ遺伝子、及び必要に応じて他の配列を含む適切な調節配列を含んで、選択又は構築され得る。更なる詳細については、例えば、Molecular Cloning:a Laboratory Manual、第2版、Sambrookら、1989、Cold Spring Harbor Laboratory Press、又はCurrent Protocols in Molecular Biology、第2版、Ausubelら編、John Wiley及びSons(1995、及び定期的に補足)を参照。
【0176】
例えば、ポリヌクレオチドは、GRANPAをコードする核酸配列、及び任意選択で3’非翻訳領域に作動可能に連結されたプロモーターを含むウイルスベクターの形であるか、又はその中に含まれ得る。
【0177】
本発明によれば、様々なベクターのいずれかを使用して、GRANPA発現細胞を作製し得る。本発明の治療における使用のためのベクターは、生体内の遺伝子治療プロトコルに適している。ベクターは、安定な組み込みベクター又は安定な非組み込みベクターであってよい。好ましいベクターは、レンチウイルスベクター又はAAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターなどのウイルスベクターである。
【0178】
これら両方のタイプのウイルスベクターの使用は、遺伝子治療の分野でよく知られている。単なる例として、国際特許出願公開第WO2008/011381号は、被験体において受容体を発現させるためのこれら及び他のベクターの使用について記載している。AAV及びレンチウイルスベクターの調製及び特徴のその記述に関して、その出願の内容は、参照により具体的に本明細書に援用する。
【0179】
簡単に言えば、国際特許出願公開第WO2008/011381号に記載されるように、AAVは欠損性パルボウイルスであり、多くの細胞種に感染し得、ヒトに非病原性であるため、好ましいベクターである。AAVタイプのベクターは、約4~5kbを輸送し得、野生型AAVは、染色体19に安定に挿入することが知られている。
別のタイプのAAVベクターは、異種遺伝子(ここでは、GRANPA)に作動可能に連結された細胞特異的発現を指示するプロモーターを含む少なくとも1つのカセットに隣接する1対の末端逆位反復配列(ITR)を含む。更なる情報は、米国特許第6,261,834号に見られる。AAVベクターは、国際特許出願公開第WO2018/175443号において検討されている。
【0180】
ウイルスベクターは当技術分野でよく知られており、例えば、Viralgen、Parque Cientifico y Tecnologico de Gipuzkoa、Paseo Mikeletegi 83、20009 San Sebastian、Spainから市販されている。
【0181】
レンチウイルスベクターは、特別なタイプのレトロウイルスベクターであり、通常、感染のための長い潜伏期間を有することを特徴とする。更に、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染し得る。レンチウイルスベクターは、ウイルスのレンチウイルスファミリーからのウイルスの核酸骨格に基づく。通常、レンチウイルスベクターは、SIV及びHIVなどのレンチウイルスの5’及び3’LTR領域を含む。レンチウイルスベクターはまた、通常、SIV及びHIVなどのレンチウイルスのRev応答配列(RRE)を含む。レンチウイルスベクターの例としては、Dull、Tら、「A Third-generation lentivirus vector with a conditional packaging system」、J.Virol 72(11):8463-71(1998)にあるものが挙げられる。
***
【0182】
本明細書に記載のベクターは、当技術分野で知られている様々なアクセス方法で標的細胞に局所的に送達され得る。
【0183】
例えば、核酸を含むリポソーム又はナノ粒子は、特定のニューロン組織内又はそれに隣接するなどの所望の部位に注入され得る。他の態様において、組換えウイルス粒子(伝達粒子)は、特定のニューロン組織内もしくはそれに隣接する、又はそれを標的とするなどの、所望の部位に送達、例えば、注入される。核酸は、標的ニューロンにおけるGRANPAの十分な発現を確立するために、1回又は1回より多く注入されてよい。
【0184】
特に送達は、直接間質注入、バーホール開頭、及び定位注入などの公知の方法を使用した脳への直接注入を介したものであり得る(例えば、「Stereotactic and Functional Neurosurgery」、編集者:Nikkhah及びPinsker、Acta Neurochirurgica Supplement、117巻、2013を参照)。
【0185】
発作性障害の治療のために、注入は、(例えば、焦点性てんかんにおいて)定義された発作焦点に、又はより一般的には、他の発作疾患において過活動が疑われる脳の領域に標的化される。
【0186】
ベクターは、永久的な形質転換をもたらすために使用されてもよく、又は脳内で一時的に発現されるだけでもよい。
【0187】
したがって、一実施形態において、上記の本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターが提供される。ベクターは、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクター及び/又はアデノ随伴ベクター(AAV)であってよく、任意選択で、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、及びそれらのハイブリッドからなる群より任意で選択される。あるいは、ベクターは、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターであってよい。
***
【0188】
好ましくは、DNAコンストラクトは、標的細胞内でGRANPAをコードするDNAの発現を容易にするためのプロモーターを含む。
【0189】
プロモーターは、遺伝子治療に適した当技術分野で知られた任意のものでよい。例えば、Papadakis E.D.ら、「Promoters and control elements:designing expression cassettes for gene therapy」、Current gene therapy、4.1(2004):89-113、及びJoshi CR、Labhasetwar V、Ghorpade A、「Destination Brain:the Past、Present、and Future of Therapeutic Gene Delivery.」、J Neuroimmune Pharmacol. 2017;12(1):51-83を参照。プロモーターは、天然のヌクレオチド配列、又はエンハンサなどの他の調節要素と最小プロモーター配列との合成の組み合わせであってよい。一般に使用されるプロモーターとして、hSyn、mdl,CBA、Ef1a、TH、CMV、mDlx5/6、DRD2、Drd1aが挙げられる。
【0190】
しかしながら、特異性は、例えば、組織又は領域特異的プロモーターを使用して、受容体の局所及び細胞種特異的発現によってのみ達成され得る。
【0191】
例えば、プロモーターは、後角ニューロン、脊髄細胞、又は脳細胞などの中枢神経系ニューロンにおいて、又は抑制性ニューロン又は神経細胞において細胞特異的な発現を指示し得る。
【0192】
特定の細胞内の上記GRANPAの有用な又は治療的な有効量の作製に十分な程度の遺伝子の、それらの細胞における遺伝子発現を引き起こすが、使用、例えば、治療的使用の文脈において他の場所では無意味な発現を引き起こす場合、プロモーターは、特定の細胞(例えば、興奮性細胞又は分泌細胞)に「特異的」である。
【0193】
一例は、前脳において比較的特異的に発現を駆動する、Camk2a(アルファCaMキナーゼII遺伝子)プロモーターである。例えば、Sakuradaら、(2005)「Neuronal cell type-specific promoter of the alpha CaM kinase II gene is activated by Zic2、a Zic family zinc finger protein.」、Neurosci Res. 2005 Nov;53(3):323-30、Epub 2005 Sep 12を参照。
【0194】
他の神経細胞種特異的プロモーターには、NSEプロモーター(Liu Hら、Journal of Neuroscience、23(18):7143-54、2003)、チロシンヒドロキシラーゼプロモーター(Kessler MAら、Brain Research.Molecular Brain Research、112(l-2):8-23、2003)、ミエリン塩基性タンパク質プロモーター(Kessler MAら、Biochemical&Biophysical Research Communications、288(4):809-18、2001)、グリア繊維性酸性タンパク質プロモーター(Nolte Cら、GLIA、33(l):72-86、2001)、ニューロフィラメント遺伝子(重鎖、中鎖、軽鎖)プロモーター(Yaworsky PJら、Journal of Biological Chemistry. 272(40):25112-20、1997)が含まれる。(これらの全ては、少なくともプロモーターの配列及び関連配列については、参照により本明細書に援用する。) NSEプロモーターは、Peel ALら、Gene Therapy 4(1):16-24、1997に開示されている(配列番号69)(pTR-NT3myc、Powell Gene Therapy Center、University of Florida、Gainesville FL)。更に適切なプロモーターは、シナプシン1プロモーターである(Kuglerら、「Human synapsin 1 gene promoter confers highly neuron-specific long-term transgene expression from an adenoviral vector in the adult rat brain depending on the transduced area.」、Gene Ther. 2003 Feb:10(4):337-47参照)。更に適切なプロモーターは、ミクログリアで発現されるcd68プロモーターである。一般的な発現に適したプロモーターには、EF1aプロモーター又はCAGプロモーターが含まれる。
【0195】
一実施形態において、GRANPAをコードするベクターは、これらのプロモーターのいずれかを含み得る。
【0196】
一実施形態において、改変GPCRをコードする核酸は、組織又は細胞特異的プロモーター、例えば、神経細胞種特異的プロモーターに作動可能に連結されている。一実施形態において、プロモーターは、CaMk2Aプロモーターである。
【0197】
更に別の実施形態において、ニューロン特異的プロモーターは、プレプロタキキニン-1プロモーター(TAC-1)である。
***
【0198】
リガンドは単独で使用(例えば、投与)されることが可能であるが、例えば、薬学的に許容される担体又は希釈剤を用いて、組成物又は配合物として存在することが好ましいことが多い。
【0199】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又はその他の問題又は合併症を伴わず、合理的な利益/リスク比に応じて、当人(例えば、ヒト)における被験体の組織と接触して使用するのに適した、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。各担体、希釈剤、賦形剤などもまた、配合物の他の成分と適合性であるという意味で「許容可能」でなければならない。
【0200】
いくつかの実施形態において、組成物は、本明細書に記載のリガンド、及び薬学的に許容可能な担体、希釈剤、もしくは賦形剤を含む、又は主成分とする、又は唯一の活性成分としてなる、医薬組成物(例えば、製剤、調剤薬、医薬品)である。
【0201】
国際特許出願公開第WO2008/096268号に記載されているように、GRANPAのウイルス送達を採用する遺伝子治療の実施形態において、単位用量は、投与されているウイルス粒子の用量で算出されてよい。ウイルス用量には、特定の数のウイルス粒子又はプラーク形成単位(pfu)が含まれる。AAVを含む実施形態の場合、特定の単位用量は、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、もしくは1014pfu又はベクターゲノムを含む。感染欠損粒子の存在により、粒子用量は、幾分より高くなり得る(10~100倍)。
【0202】
一実施形態において、ベクターは、5×1011vg/mlの懸濁液500マイクロリットル(=2.5×1011ウイルスゲノム)として注射される。
***
【0203】
疾患の治療においてGRANPAと共に使用されるリガンドの場合、半減期、並びに他の薬物動態及び薬力学的パラメータに基づいて、適切な投与量が利用され得る。例えば、DPHの場合、約9時間までの半減期に基づくと、1日3~4回での服用を意味するのが好ましいであろう。H1及びGRANPAでの同等の親和性に基づく典型的な用量は、成人で約25~50mg(経口)を1日3~4回であり得る。しかしながら、医師の裁量に基づいて、他の用量も想定される。
【0204】
剤形は、持続放出又は遅放出(例えば、Krowczynski、Laezek、「Extended-release dosage forms」、CRC press、2020参照)、又は即時放出性形態(例えば、Nyol、Sandeep、及びM.M.Gupta、「Immediate drug release dosage form:A review」、Journal of Drug Delivery and Therapeutics、3.2(2013)参照)であってよい。
【0205】
一実施形態において、ジフェンヒドラミンは、分割用量で1日あたり50-100mgで投与される。
***
【0206】
いくつかの実施形態において、本発明の方法又は治療は、症候性又は疾患の改善を問わず、他の治療法と組み合わせてよい。
【0207】
「治療」という用語は、組み合わせ治療及び療法を含み、2つ以上の治療又は療法が、例えば、連続して又は同時に組み合わせられる。
【0208】
例えば、本明細書に記載の化合物による治療を、1つ以上の(例えば、1、2、3、4つの)他の薬剤又は療法と組み合わせることが有益であり得る。
【0209】
共治療の適切な例は、本明細書の開示に基づいて当業者に知られるであろう。通常、共治療は、治療される個体の診断を条件に、本明細書に記載の疾患の治療において治療効果を与え得ると考えられる、当技術分野で知られている任意のものであり得る。例えば、てんかんは、根底にある病因を直接治療することによって時に改善され得るが、異常放電と発作を抑制するフェニトイン、ガバペンチン、ラモトリギン、レベチラセタム、カルバマゼピン、及びクロバザム、並びにトピラマートなどの抗けいれん薬が従来の治療の主力である(Rho及びSankar、1999、Epilepsia 40:1471-1483)。
【0210】
特定の組み合わせは、医師の裁量によるもので、医師は、彼らの共通の一般的知識及び、熟練した医療実践者に公知な投与レジメンを使用して投与量も選択する。
【0211】
薬剤(すなわち、GRANPA及びリガンド、並びに1つ以上の他の薬剤)は、同時に又は連続して投与されてよく、個々に変動する用量スケジュールで且つ異なる経路を介して投与されてよい。例えば、連続して投与される場合、薬剤は、密な間隔で(例えば、5-10分の期間にわたって)、又はより長い間隔で(例えば、1、2、3、4時間以上の間隔をあけて、又は必要な場合は更に長い間隔をあけて)投与され得、正確な投与量レジメンは、治療剤の性質に応じる。
***
【0212】
本発明の態様が、GRANPA、又はGRANPAをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド、及び/又は作動薬の使用によって疾患又は障害を治療する方法を含む場合、以下も提供される。
(i)そのような方法において使用するための、GRANPA、又はGRANPAをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のベクター)、及び/又は作動薬、
(ii)そのような治療のための医薬品の調製における、GRANPA、又はGRANPAをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド(例えば、本明細書に記載のベクター)、及び/又は作動薬の使用。
***
【0213】
本発明はまた、上記障害を患っている患者の発作性障害の治療方法における使用のための、GRANPAをコードするベクター、及び上記受容体に対する外因性作動薬を提供し、この治療は、
(a)GRANPAが、患者の脳の発作焦点のニューロンにおいて発現される、ベクターを患者に投与することと、
(b)外因性作動薬を患者に投与することとを含み、
それによって、患者の脳における作動薬の存在が、GRANPAを活性化し、
GRANPAの活性化が、発作焦点におけるニューロンの興奮性を可逆的に変化させる、方法が提供される。
【0214】
本発明はまた、上記障害を患っている患者の発作性障害の治療方法における使用のための、GRANPAをコードするベクターを提供し、この治療は、
(a)GRANPAが、患者の脳の発作焦点のニューロンにおいて発現される、ベクターを患者に投与することと、
(b)外因性作動薬を患者に投与することとを含み、
それによって、患者の脳における作動薬の存在が、GRANPAを活性化し、
GRANPAの活性化が、発作焦点におけるニューロンの興奮性を可逆的に変化させる。
【0215】
本発明はまた、上記障害を患っている患者の発作性障害の治療方法における使用のための外因性作動薬を提供し、この治療は、
(a)患者の脳の発作焦点のニューロンにおいて発現されるGRANPAをコードするベクターを患者に投与することと、
(b)外因性作動薬を患者に投与することとを含み、
それによって、患者の脳における作動薬の存在が、GRANPAを活性化し、
GRANPAの活性化が、発作焦点におけるニューロンの興奮性を可逆的に変化させる。
【0216】
本発明はまた、上記障害を患っている患者の発作性障害の治療方法における使用のための外因性作動薬を提供し、
患者には、GRANPAをコードするベクターが以前に投与されており、GRANPAは、患者の脳の発作焦点のニューロンにおいて発現され、
この治療は、外因性作動薬を患者に投与することを含み、
それによって、患者の脳における作動薬の存在が、GRANPAを活性化し、
それによって、GRANPAの活性化は、発作焦点におけるニューロンの興奮性を可逆的に変化させる。
【0217】
本発明はまた、発作性障害を治療するこれらの方法における使用のために定義されたベクター及び/又は作動薬を提供する。
【0218】
本発明はまた、本明細書に記載の治療又は治療の方法における使用のための医薬品の調製における、本明細書に記載のGRANPA及び/又はベクター及び/又はポリヌクレオチド及び/又は作動薬の使用を提供する。
***
【0219】
本発明はまた、ウイルスベクター、プロモーター、及びGRANPAを含むが、それらに限定されない1つ以上の構成要素を備えたキットを提供する。薬学的に許容される担体及びGRANPA作動薬を含むが、それらに限定されない1つ以上の追加の構成要素も共に検討される。
【0220】
ウイルスベクター、プロモーター、GRANPA組成物、及び/又はGRANPA作動薬は、純粋な組成物として、又は薬学的に許容される担体と組み合わせて、薬学的組成物中に配合され得る。
【0221】
キットはまた、本明細書に記載の方法における使用説明書とともに、プライマ、緩衝液、及びプローブを含んでよい。
【0222】
一実施形態において、キットは、一方の容器中に、ウイルスベクター、プロモーター、本発明のGRANPAの組成物、又はその薬学的組成物を含み、別の容器中(例えば、滅菌されたガラス又はプラスチックのバイアル中)に、GRANPA作動薬又はその薬学的組成物を含む。
【0223】
キットは、被験体への非経口投与のための薬学的組成物を含む場合、そのような投与を行うためのデバイスを含み得る。例えば、キットは、1つ以上の皮下注射針又は他の注入デバイスを含み得る。
【0224】
一般的な表現
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、ペプチド結合を介して連結された複数のアミノ酸を含む分子をいう。「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、交換可能に使用される。タンパク質は、任意選択で、機能を追加するために改変(例えば、グリコシル化、リン酸化、アシル化、ファルネシル化、プレニル化、及びスルホン化)され得る。アミノ酸残基について従来の1文字又は3文字のコードが使用され、アミノ酸配列は、標準的なアミノ末端からカルボキシ末端への方向(すなわち、N→C)で表示される。
【0225】
「ポリヌクレオチド」という用語は、DNA、RNA、ヘテロ二重鎖、及びポリペプチドをコードし得る合成分子を包含する。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、化学的改変を有してもよい。「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、交換可能に使用される。遺伝コードが縮重であるため、特定のアミノ酸をコードするために、1を超えるコドンが使用されてもよく、本組成物及び方法は、特定のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する。別段の指示がない限り、核酸配列は、5’から3’への方向で表示される。
【0226】
本明細書で使用される場合、「野生型」、「天然の」、又は「参照」という用語は、自然界に見られるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。ポリペプチドに関して、この用語は、1つ以上のアミノ酸位置に人為的な置換、挿入、又は欠失を含まない自然発生のポリペプチドを指す。ポリヌクレオチドに関する用語は、1つ以上のヌクレオシドにおける人為的な置換、挿入、又は欠失を含まない自然発生のポリヌクレオチドを指す。しかしながら、野生型又は天然又は参照ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、自然発生のポリヌクレオチドに限定されず、そのポリペプチドをコードする任意のポリヌクレオチドを包含することに留意されたい。
【0227】
「に由来する」という用語は、「から始まった」、「から得られた」、「から得ることができる」、「から単離された」、及び「から作られた」という用語を包含し、一般に、ある特定の材料が、別の特定の材料に由来する、又は、(「参照」又は「親」と称され得る)別の特定の材料を参照して説明され得る特徴を有することを示す。本明細書のGRANPAは、従来技術の野生型GPCR又はDREADDであり得る、参照配列又は親配列に由来する。
【0228】
「ハイブリダイゼーション」という用語は、当技術分野で知られているように、核酸の鎖が塩基対形成を介して相補鎖と接合するプロセスをいう。「ハイブリダイゼーション条件」という用語は、ハイブリダイゼーション反応が行われる条件をいう。これらの条件は、通常、ハイブリダイゼーションが測定される条件の「ストリンジェンシー」の程度によって分類される。ストリンジェンシーの程度は、例えば、核酸結合複合体又はプローブの融解温度(Tm)に基づき得る。例えば、「最大ストリンジェンシー」は、通常、約Tm-5℃(プローブのTmより5℃下)で生じ、Tmの約5-10℃下で「高ストリンジェンシー」、プローブのTmの約10-20℃下で「中間のストリンジェンシー」、Tmの約20-25℃下で「低ストリンジェンシー」が生じる。代替的又は追加的に、ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーション及び/又は1つ以上のストリンジェンシー洗浄の塩又はイオン強度条件に基づき得る。例えば、6X生理食塩水クエン酸ナトリウム(SSC)=非常に低いストリンジェンシー、3X SSC=低~中間のストリンジェンシー、1X SSC=中間ストリンジェンシー、及び0.5X SSC=高ストリンジェンシーである。機能的に、最大ストリンジェンシー条件は、ハイブリダイゼーションプローブと厳密な同一性又は厳密に近い同一性を有する核酸配列を特定するために使用されてよく、一方、プローブと約80%以上の配列同一性を有する核酸配列を特定するために、高いストリンジェンシー条件が使用される。高い選択性を必要とする用途の場合、通常、比較的ストリンジェントな条件を使用してハイブリッドを形成するのに使用されることが望ましい(例えば、比較的低い塩及び/又は高温条件が使用される)。
【0229】
少なくとも2つの核酸又はポリペプチドの文脈における「実質的に類似の」及び「実質的に同一の」という用語は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドが、親配列もしくは参照配列に対して少なくとも約60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列、又は、機能を追加することなく現在のタイプを回避するためだけに行われたアミノ酸の置換、挿入、欠失、又は改変を含む配列のいずれかを含むことを意味する。
【0230】
「発現ベクター」という用語は、特定のポリペプチドをコードするDNA配列を含み、適切な宿主においてポリペプチドの発現に影響を与え得る適切な制御配列に作動可能に連結された、DNAコンストラクトをいう。このような制御配列は、転写をもたらすためのプロモーター、かかる転写を制御するための任意選択のオペレータ配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の停止を制御する配列を含む。ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、又は単に潜在的なゲノムインサートであってもよい。適切な宿主に形質転換されると、ベクターは、宿主ゲノムとは独立して複製して機能し得る、又は場合によっては、ゲノム自体に統合され得る。
【0231】
「組換え」という用語は、コード配列を変異させて、変更されたポリペプチドを作製する、コード配列を別の遺伝子のそれに融合する、遺伝子を異なるプロモーターの制御下に置く、異種生物内で遺伝子を発現させる、減少又は上昇させた濃度で遺伝子を発現させる、自然な発現プロファイルとは異なるやり方で条件的又は構成的に遺伝子を発現させるなどによって、その配列又は発現の特徴を変更させるために改変した遺伝物質(すなわち、核酸、それがコードするポリペプチド、並びにこのようなポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞)をいう。一般に、組換えの核酸、ポリペプチド、及びそれに基づく細胞は、人によって操作されているため、自然界で見られる関連の核酸、ポリペプチド、及び細胞と同一ではない。
【0232】
「受容体リガンド結合」、「リガンド結合」、及び「結合」は、本明細書において交換可能に使用され、受容体(例えば、天然のGPCR又はGRANPA)とリガンド(例えば、ナチュラルリガンド、(例えば、ペプチドリガンド)又は合成リガンド(例えば、合成小分子リガンド))の間の物理的相互作用を意味する。リガンド結合は、当技術分野で公知の様々な方法(例えば、放射性標識リガンドとの結合の検出)によって測定され得る。
【0233】
「シグナル伝達」は、リガンド結合の結果として(例えば、合成リガンドがGRANPAに結合した結果として)の生化学的又は生理的応答の発生を意味する。
【0234】
「受容体活性化」、「GRANPA活性化」、及び「GPCR活性化」は、Gタンパク質媒介シグナル伝達、及びGタンパク質媒介シグナル伝達に関連する生理的又は生化学的応答を誘導する方式での、受容体へのリガンド(例えば、ナチュラルリガンド又は合成リガンド)の結合を意味する。活性化は、Gタンパク質関連シグナルに関連する生体シグナルを測定する(例えば、本明細書に記載の電気生理学又は他のアッセイを使用する)ことによって測定され得る。
【0235】
「標的化細胞活性化」及び「標的細胞活性化」は、本明細書において交換可能に使用され、標的細胞における特定のGタンパク質媒介性の生理応答のGRANPA媒介性の活性化を意味し、GRANPA媒介性の活性化は、GRANPAへの合成小分子の結合によって発生する。本明細書で使用される場合、細胞活性化には、シナプスのサイレンシング又は阻害などの阻害応答、並びに抑制細胞及び刺激細胞の両方におけるGタンパク質の活性化が含まれる(が、これに限定されない)。
【0236】
「ナチュラルリガンド」、及び「自然発生のリガンド」、及び「内因性リガンド」は、本明細書において交換可能に使用され、哺乳類宿主に内因性生体分子を意味し、この生体分子は、天然GPCRに結合してGタンパク質結合型細胞応答を誘発する。一例は、アセチルコリンである。
【0237】
「合成小分子」、「合成小分子リガンド」、「合成リガンド」、及び「合成作動薬」等は、本明細書において交換可能に使用され、GPCR又は改変GPCR(すなわち、GRANPA)の膜貫通ドメイン内に結合得、受容体の活性化及び受容体媒介応答を促進し得る。
【0238】
「トランスフェクションする」、「トランスフェクション」、「トランスフェクションされた」などの用語は、このような場合、ニューロン又はケラチノサイトなどの真核細胞への遺伝子の導入をいい、例えば、組換えAAV、アデノウイルス(Ad)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、又は任意の他の適用可能なウイルス媒介遺伝子導入プラットフォームの使用による、ウイルス媒介遺伝子導入である「形質導入」を含む。
【0239】
「形質転換」は、新たなDNA(すなわち、細胞に外因性のDNA)の組み込み後に細胞に誘導される一過性又は永久的な遺伝子変化を意味する。細胞が哺乳類細胞である場合、永久的な遺伝子変化は、一般に、細胞のゲノムへのDNAの導入によって達成される。
【0240】
「プロモーター」は、作動可能に連結されたDNA配列の転写を指示するのに十分な最小限のDNA配列を意味する。「プロモーター」はまた、細胞種特異的、組織特異的、又は外部シグナルもしくは薬剤によって誘導可能に、制御可能なプロモーター依存性遺伝子発現に十分なそれらのプロモーター要素を包含することを意味し、そのような要素は、天然遺伝子の5’又は3’領域に位置し得る。
【0241】
「被験体」は、ヒト又は動物、例えば、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、サル、チンパンジー、ネコ、イヌ、ウマ、ヤギ、モルモット、及びトリを含む脊椎動物又は哺乳類であり得る。被験体は「患者」であってよい。
【0242】
状態の治療の文脈で本明細書において使用される、用語「治療」は、一般に、ヒトであろうと動物であろうと(例えば、脊椎動物適用において)例えば、状態の進行の抑制といった、いくつかの所望の治療効果が達成される治療及び療法に関し、進行率の減少(生存延長)、進行率の停止、状態の後退、状態の改善、及び状態の治癒を含む。
【0243】
本明細書で使用される「治療上有効な量」という用語は、所望の治療レジメンに従って投与された場合の合理的な利益/リスク比に相応して、いくつかの所望の治療効果をもたらすために有効である、本発明の化合物、又は、化合物を含む材料、組成物もしくは剤形の量に関する。
【0244】
本発明は、予防手段も含んで「治療すること」が理解される、治療も包含する。予防治療は、「予防有効量」を利用し、これは、本明細書で使用される場合、所望の治療レジメンに従って投与された場合の合理的な利益/リスク比に相応して、いくつかの所望の治療効果をもたらすために有効である、薬剤の量に関する。
【0245】
本明細書の文脈における「予防」は、完全な成功、すなわち、完全な保護又は完全な防止を規定するものと理解されるべきではない。むしろ、本文脈における予防は、症候性の状態を遅らせ、緩和し、又は回避するのを補助することによって健康を維持することを目的として、その症状の検出に先立って実施される手段をいう。
***
【0246】
薬剤を採用する治療方法が本明細書に記載されている場合は常に、関連疾患を治療するための医薬品の製造における使用のための薬剤と同様に、その方法における使用のための薬剤もまた記載されることが理解されよう。
【0247】
組成物が本明細書に記載されている場合は常に、関連疾患を治療するための医薬品の製造における使用のための組成物と同様に、本明細書に記載の治療方法(予防方法を含む)で使用される同じ組成物も想定されることが理解されよう。
【0248】
本発明及び本発明が関連する最新技術を、より完全に説明及び開示するために、多数の特許及び刊行物が本明細書において引用される。これらの参考文献は、各々、個々の参考文献が参照により援用することが具体的及び個別に示されたのと同様の範囲で、その全体を参照により本開示に援用する。
【0249】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書全体を通じて、文脈から別段の求めがない限り、単語「comprise」、並びに「comprises」及び「comprising」などの変形は、記載された整数、又はステップ、又は整数もしくはステップのグループを含むが、他の任意の整数、又はステップ、又は整数もしくはステップのグループを除外することではないことを意味すると理解されるであろう。
【0250】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の表現「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「薬剤学的担体(a pharmaceutical carrier)」への言及は、2つ以上のそのような担体の混合物等を含む。
【0251】
範囲は、本明細書において、しばしば、1つの特定の値「約」から、及び/又は別の特定の値「約」までとして表現される。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して、値が近似として表現される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。
【0252】
本明細書の任意のサブタイトルは、便宜上のみに含まれており、決して本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0253】
本発明は、ここで、以下の非限定的な図及び実施例を参照して更に説明される。当業者は、これらに照らして、本発明の他の実施形態を想起するであろう。
【0254】
本明細書で引用されたすべての参考文献の開示は、当業者によって本発明を実施するために使用され得るのと同様に、相互参照によって具体的に本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【
図1】A)ジフェンヒドラミン(DPH、青)とイペロキソ(オレンジ、PDBエントリ4MQS(Kruse,Ringら、2013)(M2ムスカリン性受容体に結合したイペロキソ))の結合様式の比較は、チロシンがイペロキソとの疎水性相互作用に関与しているが、DPHと衝突することを示唆している。B)メチセルギド(赤スティック)の(点線の円で強調された)メチル基は、活性5-HT2B立体構造においてA225(金色スティック)と衝突するが(金、PDBエントリ6DRY(McCorvyら、Nat.Struct.Mol.Biol.2018、25、787-796、https://doi.org/10.1038/s41594-018-0116-7))、A225G変異体(緑、PDBエントリ6DRZ(McCorvyら、Nat.Struct.Mol.Biol.2018、25、787-796、https://doi.org/10.1038/s41594-018-0116-7))では適合する。結合部位の視認性を向上させるために、残基180-198及び残基132-138は示されていないことに留意されたい。
【
図2】A)DPHによる野生型hM4(WT CHRM4)の活性化。A203Nではなく、A203Gと組み合わせたY113Cは、DPHを拮抗薬から低効力の作動薬に変換する。B)Y113Nは、Y113Cを置換し得るが、他のいくつかのY113置換は、効力を実質的に変化させることなく、DPH奏効性を減少させる。C)更に他のY113C置換は、DPH依存性活性化を無効にする。参考までに、二重変異体A203G+Y113C(Armbrusterら、2007によって最初に報告されたhM4D)は、青で示されている。
【
図3】S85は、活性(左)立体構造において、D112、Y443、及び、S116と相互作用ネットワークに関与しており、不活性(右)立体構造において、D112及びY443と相互作用ネットワークに関与している。
【
図4】A203G+Y113Cと組み合わせたDPH依存性活性化に及ぼすS85変異の効果。二重変異体A203G+Y113Cは、比較のために青で示されている。
【
図5】Y416は、オランザピンとの水素結合相互作用に関与するが(左パネル)、疎水性DPHフェニル環の結合との適合性が低い極性結合部位を作成する(右パネル)。Y416F変異は、この領域の結合部位を疎水性にする。
【
図6】A)A203G+Y113Cとの組み合わせにおけるDPH依存性活性化に対するY416変異の効果。二重変異体A203G+Y113Cは、参照のために青で示されている。B)A203G+Y113Cと同様に、S85Vと組み合わせたY416Fの効果。
【
図7】hM4D(Gi)に結合したオランザピン(緑)及びDPH(青)の整列モデルは、Ileのメチル基が、DPHに欠落している、オランザピンのメチル基の欠失を補うことを示唆する。
【
図8】A)A203G+Y113Cとの組み合わせにおけるDPH依存性活性化に対するV120変異の効果。二重変異体A203G+Y113Cは、参照のために青で示されている。B)V120Iはまた、
図6に記載されるY113C+A203G+S85V+Y416Fとの組み合わせでDPHの奏効性を増加させる。参考までに、コンストラクトY113C+A203G+S85V+Y416Fは、緑で示されている。
【
図9】L123の変異は、活性立体構造に存在する相互作用のネットワークを安定化し得るが(左パネル)、不活性立体構造においては形成され得ない(右パネル、PDBエントリ5DSG(チオトロピウムに結合したhM4)(Thalら、Nature 2016、531:335-340、DOI:10.1038/nature17188))。
【
図10】A)A203G+Y113Cとの組み合わせにおけるDPH依存性活性化に対するL123変異の効果。二重変異体A203G+Y113Cは、参照のために青で示されている。B)L123変異体の追加は、追加のコンストラクトにおいても、DPHの奏効性/効力の増加をもたらす。参照のために、コンストラクトY113C+A203G+S85V+Y416Fは、緑で示され、コンストラクトY113C+A203G+S85V+Y416F+V120Iは、赤で示されている。
【
図11】F128変異体の追加は、追加のコンストラクトにおいても、DPHの奏効性/効力の増加をもたらす。参照のために、コンストラクトY113C+A203G+S85V+Y416Fは、緑で示され、二重変異体A203G+Y113Cは、青で示されている。
【
図12】M121F変異体の追加は、DPHの効力の増加をもたらす。参照のために、二重変異体A203G+Y113Cを青で示す。
【
図13】A200T変異は、N417との水素結合を導入するため、受容体の活性立体構造を安定化する。
【
図14】A200T変異体の追加は、DPHの効力の増加をもたらす。参照のために、二重変異体A203G+Y113Cを青で示す。
【
図15】F204Y変異は、T414との新しい水素結合を導入するため、受容体の活性立体構造を安定化する。
【
図16】F204Y変異体の追加は、DPHの効力の増加をもたらす。参照のために、二重変異体A203G+Y113Cを青で示す。
【
図17A】W413L変異体の追加は、DPHの効力の増加をもたらす。参照のために、二重変異体A203G+Y113Cを青で示す。
【
図17B】I410V変異体の追加は、DPHの奏効性の増加をもたらす。参照のために、二重変異体A203G+Y113Cを青で示す。
【
図18】GloSensorアッセイで測定したhM4D(Gi)(Y113C+A203G)のGi結合型活性。変異S85V、V120I、及びY416Fの追加は、DPHのEC50を1.4μMから3.7nMにシフトする。
【
図19】GloSensorアッセイで測定したhM4D(Gi)(Y113C+A203G)及び変異体のGi結合型活性。
【
図20】hM4D(Gi)及び変異体は、GloSensorアッセイを使用して基底cAMP濃度への影響を試験した。
【
図21】hM4D(Gi)活性化の電気生理学に基づくスクリーニング。A)左:Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123Tを発現する細胞において、作動薬の適用あり(+DPH、100nM、下部)及びなし(ベースライン、上部)におけるKir3.1及びKir3.2の電流の代表的なトレース。中央:保持電圧に対してプロットされた、左パネルのグレー領域によって示される時間中に測定された平均電流。赤い線は、0と+50mVの間の線形フィットから得られた膜の漏れコンダクタンスの計算を示している。右:負の電位における電流への線形フィット(青)と共に、リークを差し引いたKir3.1/Kir3.2を介した電流。電流電圧相関の傾斜(k)を、変異体活性化の後続の分析に使用した。B)左:DPHは、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F及びY113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123T変異体の両方に対して、強力な作動薬として作用する。右:Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F及びY113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123T変異体のEC50(nM)。C)作動薬の適用がない場合、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F変異体は、GFPのみのトランスフェクション及びY113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123T変異体と比較して、著しい基底活性を示す(GFP対Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F p=0.008、GFP対Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123T p=0.777、ボンフェローニ事後検定を含む一元配置分散分析)。D)
図10Bとは対照的に、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123T変異体は、Kir3.1及びKir3.2活性化(p=0.513、対応のないt検定)において、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416Fよりも低いDPH奏効性を示さない。
【
図22】他の薬剤は、活性化リガンドとして使用され得る。A)他の薬剤は、通常、DPHと比較して弱いhM4D(Gi)の活性化を示す。B)それらの効力及び/又は奏効性は、変異S85V、V120I、及びY416Fの追加時に改善される。
【
図23】近縁のGPCRファミリーメンバーのアライメントは、高い構造保存性を示す。全ての構造のアラインメント(a)、及びCHRM4(赤、PDBエントリ5DSG(Thalら、Nature 2016、531:335-340))の(b)CHRM2(橙、PDBエントリ5ZKC(Sunoら、Nat Chem Biol 2018、14:1150-1158))、(c)ADRB2(シアン、PDBエントリ3PDS(Rosenbaumら、Nature 2011、469:236-240))、(d)HRH1(青、PDBエントリ3RZE(Shimamuraら、Nature 2011、475:65-70))とのペアワイズアラインメント。ジフェンヒドラミンと共結晶化されたリガンドであるドキセピンとの間の構造的類似性が高いことに留意されたい。(e)DRD3(紫、PDBエントリ3PBL(Chienら、Science 2010、330:1091-1095))及び(f)HTR2A(ダークブルー、PDBエントリ6A93(Kimuraら、Nat Struct Mol Biol 2019、26:121-128))図及びRMSD値は、PyMOL分子グラフィックスシステムバージョン1.8.0.0(Schroedinger,LLC)のデフォルトのアライメント関数を使用して得られている。
【
図24】CHRM4(赤、PDBエントリ5DSG(Thalら、Nature 2016、531:335-340))と、(a)CHRM2(橙、PDBエントリ5ZKC(Sunoら、Nat Chem Biol 2018、14:1150-1158))、(b)ADRB2(シアン、PDBエントリ3PDS(Rosenbaumら、Nature 2011、469:236-240))、(c)HRH1(青、PDBエントリ3RZE(Shimamuraら、Nature 2011、475:65-70))、(d)DRD3(紫、PDBエントリ3PBL(Chienら、Science 2010、330:1091-1095))、及び(e)5-HT2A(ダークブルー、PDBエントリ6A93(Kimuraら、Nat Struct Mol Biol 2019、26:121-128))との間のGRANPA残基の比較。残基は、CHRM4(太字)、並びに、CHRM3(a)、ADRB2(b)、HRH1(c)、DRD3(d)、及びHTR2A(e)の番号付けに従って表記される。L119W及びM164W変異体は、DRD3(PDBエントリ6PBL)及びHTR2A(PDBエントリ6A93)の結晶化コンストラクトに導入されていることに留意されたい。これらは、PyMOLバージョン1.8.0.0を使用して、野生型残基に戻して変異させている。
【
図25】生体内でのジフェンヒドラミンによるGRANPA活性化は行動を変化させる。
【実施例】
【0256】
方法
hM4D(Gi) DREADDと関連のベータアドレナリン受容体及びヒスタミン受容体との比較について、PDBエントリ3PDS(Rosenbaum、Zhangら、2011)(不可逆的な作動薬と複合したベータ2アドレナリン受容体)及び3RZE(Shimamura、Shiroishiら、2011)(ドキセピンと複合したH1ヒスタミン受容体)は、Westonら(Weston、Kasererら、2019)において報告されたオランザピン-DREADDモデルとアラインメントされ、PyMOLバージョン0.99rc6(2014)を使用して手動で詳しく調べられた。
【0257】
未加工のジフェンヒドラミン(DPH)-DREADD結合モデルは、KNIMEバージョン4.0.0(Berthold、Cebronら、2007)のRDKit Open 3Dアラインメントノードを使用して、DPHをオランザピン結合ポーズにアライメントさせることによって生成された(Masson、Ellisら、1992、Young、Fongら、2014)。精密化のために、ねじれ角が調整され、UCSF-Chimera1.13.1(Pettersen、Goddardら、2004)にてモデルが最小化された。DPH-DREADDモデルは、チオトロピウムと複合したM4ムスカリン性受容体とアライメントされて(PDBエントリ5DSG(Thal、Sunら、2016)、活性状態及び不活性状態を比較し、構造はPyMOLバージョン1.8.0.0を使用して手動で分析された(Hausser、2014)。CHRM4の非コンセンサスアミノ酸を識別するためのモノアミン神経伝達物質受容体のポリペプチドアライメントは、MEGA Xバージョン10.1.811を使用して実施された。
【0258】
変異体の作製
Gi結合型ヒトムスカリン性受容体「hM4D(Gi)」は、経口的に生物学的利用可能性があり、通常不活性な、クロザピンの代謝物である、クロザピンN酸化物(CNO)に感受性になっている。この改変GPCRは、以下の変異を含む。Y113C/A203G。
【0259】
改変受容体hM4D(Gi)は、最初は、B.N.Armbruster、X.Li、M.H.Pausch、S.Herlitze、B.L.Roth、“Evolving the lock to fit the key to create a family of G protein-coupled receptors potently activated by an inert ligand”、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.104、5163-5168(2007)において記載された。それらの著者は、ムスカリン性ACh受容体(mAChR)DREADDのファミリーを作るために利用された、定義されたリガンド特異性を有するGPCRを生成するための一般的で検証済みでバイアスのないアプローチを説明している。これらDREADDの調製及び特徴のその記述に関して、その刊行物の内容は、参照により具体的に本明細書に援用する。
【0260】
ヒトM4 DREADDの調製はまた、V.Nawaratne、K.Leach、N.Suratman、R.E.Loiacono、C.C.Felder、B.N.Armbruster、及びA.Christopoulos、(2008).“New insights into the function of M4 muscarinic acetylcholine receptors gained using a novel allosteric modulator and a DREADD(designer receptor exclusively activated by a designer drug)”.Molecular pharmacology、74(4)、1119-1131において説明されている。
【0261】
hM4D(Gi)をコードするプラスミドは、Addgene(Cambridge、MA02139)から、plasmid45548:pcDNA5/FRT-HA-hM4D(Gi)として市販されている(http://www.addgene.org/45548/)。
【0262】
hM3Dqをコードするプラスミドも、Addgeneから市販されている(https://www.addgene.org/44361/)。この受容体は、パーラピン(27)に感受性である。
【0263】
DNAの操作は、従来の分子生物学技術(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)によって、又は製造元のプロトコルに従って市販のキットで行われた。部位特異的突然変異を、QuikChange II XL kit(Agilent)を使用して行った。Q5部位特異的突然変異及びHi-Fiアセンブリキット(New England Biolabs)を使用して、DNAの他の改変を行った。Monarch plasmid miniprep(New England Biolabs)又はNucleoBond Xtra midi kits(Thermo Fisher)を使用して、プラスミドDNAを精製した。Nanodrop 1000(Thermo Fisher)を使用した吸収分光光度法によってDNAを定量化し、Source BioScience Limited(UK)によるサンガー配列決定を受けた。
【0264】
置換は以下の通りであった。
253-255 - S85: TCC
V - GTT/GTC/GTA/GTG
337-339 - Y113 TAC
C - TGT/TGC
N - AAT/AAC
358-360 - V120 GTC
I - ATT/ATC/ATA
361-363 - M121 ATG
F - TTT/TTC
367-369 - L123 CTT
C - TGT/TGC
I - ATT/ATC/ACA
S - TCT/TCC/TCA/TCG/AGT/AGC
T - ACT/ACC/ACA/ACG
V - GTT/GTC/GTA/GTG
382-384 - F128 TTT
I - ATT/ATC/ATA
L - TTA/TTG/CTT/CTC/CTA/CTG
V - GTT/GTC/GTA/GTG
598-600 - A200 GCC
T - ACT/ACC/ACA/ACG
607-609 - A203 GCC
G - GGT/GGC/GGA/GGG
610-612 - F204 TTC
Y - TAT/TAC
1228-1230 - I410 ATC
V - GTT/GTC/GTA/GTG
1237-1239 - W413 TGG
L - TTA/TTG/CTT/CTC/CTA/CTG
1246-1248 - Y416 TAC
F - TTT/TTC
【0265】
細胞培養及びアッセイ
すべての哺乳類細胞は、DMEM(37℃及び5%CO2の10%FBSプラス関連抗生物質)中で維持された。選択された変異体を、Quikchange mutagenesis(Agilent)を介してCHRM4-Tango(Addgene#66251)に組み込み、DNAを、Monarch mini-又はmidi-prep kits(New England Biolabs)を介して得た。コンストラクトDNA4μgを、turbofect(Thermo Fisher)12μLを含むoptimem(Thermo Fisher)400μLと混合し、完全培地4mL中において、T25フラスコ内の70%のコンフルエントなHTLA細胞(tTA依存性ルシフェラーゼレポーター及びベータアレスチン2-TEV融合遺伝子を安定的に発現するHEK293細胞種)12,13にトランスフェクションした。2日後、細胞をクエン酸食塩水で剥離し、異なる濃度の薬剤を含むoptimem(Thermo Fisher)40μLが入った白色1/2面積96ウェルプレートに移動した。細胞を一晩静置し、GloMax/Glo溶解用緩衝液(1:1、Promega)40μLを直接添加して溶解した後、ウェルあたり1秒積算で、FlexStation3(Molecular Devices)上で発光を計数した。
【0266】
GloSensor cAMPアッセイを使用して、選択変異体の結果を確認した。ここで、コンストラクトDNAは、22Fレポータープラスミド(Promega)と共に、上記のturbofectを有するT25フラスコ内のHEK-293T細胞に1:1でコトランスフェクションされた。翌日、細胞をクエン酸食塩水で剥離し、optimem(Thermo Fisher)100μLが入った白色1/2面積96ウェルプレートに移動した。1日後、培地を除去し、細胞をHBSS(20mM HEPES,pH7.4)100μLで洗浄した後、続いてHBSS中の5%GloSensor試薬40μLを添加した。1時間インキュベーションした後、HBSS中の様々な濃度の薬剤10μLを各ウェルに添加した。ウェルあたりの1秒積算で、FlexStation3で、発光を15分間計数した後、終濃度が200nMになるようにHBSS中のイソプレナリン10μLを添加した。プレートを再び15分間読み取った。
【0267】
Gi依存性Kir3.1/3.2のGi活性化の電気生理学的な確認のために、変異体をhM4D(Gi)-プラスミド(Addgene#45548)に挿入した。上記のトランスフェクション後、Gi依存性Kir3.1/3.2の活性化は、Westonら3に記載されたように、全細胞パッチクランプ技術を使用して定量化した。
【0268】
方法についての参考文献
1. Rosenbaum, D.M., et al. Structure and function of an irreversible agonist-β2 adrenoceptor complex. Nature 469, 236-240 (2011).
2. Shimamura, T., et al. Structure of the human histamine H1 receptor complex with doxepin. Nature 475, 65-70 (2011).
3. Weston, M., et al. Olanzapine: A potent agonist at the hM4D(Gi) DREADD amenable to clinical translation of chemogenetics. Science Advances 5, eaaw1567 (2019).
4. The, P.O.N.E.S. Correction: Targeting Photoreceptors via Intravitreal Delivery Using Novel, Capsid-Mutated AAV Vectors. PloS one 9, e110030 (2014).
5. Young, D., et al. Adenosine kinase, glutamine synthetase and EAAT2 as gene therapy targets for temporal lobe epilepsy. Gene therapy (2014).
6. Masson, N., Ellis, M., Goodbourn, S. & Lee, K.A. Cyclic AMP response element-binding protein and the catalytic subunit of protein kinase A are present in F9 embryonal carcinoma cells but are unable to activate the somatostatin promoter. Molecular and cellular biology 12, 1096-1106 (1992).
7. Berthold, M.R., et al. KNIME: The Konstanz Information Miner. in Studies in Classification, Data Analysis, and Knowledge Organization (GfKL 2007) (Springer, 2007).
8. Pettersen, E.F., et al. UCSF Chimera-A visualization system for exploratory research and analysis. Journal of Computational Chemistry 25, 1605-1612 (2004).
9. Thal, D.M., et al. Crystal structures of the M1 and M4 muscarinic acetylcholine receptors. Nature 531, 335-340 (2016).
10. Hausser, M. Optogenetics: the age of light. Nature methods 11, 1012-1014 (2014).
11. Kumar, S., et al. MEGA X: Molecular Evolutionary Genetics Analysis across computing platforms. Molecular Biology and Evolution 35, 1547-1549 (2018).
12. Barnea, G, et al. The genetic design of signaling cascades to record receptor activation. Proc Natl Acad Sci U S A.105, 64-69 (2008).
13. Kroeze, W.K., et al. PRESTO-Tango as an open-source resource for interrogation of the druggable human GPCRome. Nat Struct Mol Biol 22, 362-369 (2015).
【0269】
実施例1:Y113及びA203変異の効果の構造的基礎
これらは、Armbrusterら、PNAS 2007、104、5163-5168によって報告された本来の残基である。
【0270】
提案された作用メカニズムは以下の通りである。
Y113C:内因性作動薬であるアセチルコリンと比較して、より大きな分子を活性の立体構造に結合させ得る空間を作る。また、内因性リガンド又は同様のサイズの他の作動薬(イペロキソなど)への疎水性接触が失われるため、結合が阻害される(
図1A)。
A203G:受容体活性化時のヘリックス5の動きを阻害する、立体バルクを除去することによって、拮抗薬を作動薬に転換する。セロトニン作動性HTR2B受容体において対応するA225G変異は、拮抗薬メチセルジドを部分作動薬に転換するが、作動薬メチルエルゴノビンの効力又は奏効性に実質的に影響を及ぼさない(McCorvyら、Nat.Struct.Mol.Biol.、2018、25、787-796、
https://doi.org/10.1038/s41594-018-0116-7)。
図1Bは、メチセルジドのメチル基が活性HTR2B立体構造においてA225とどのように衝突するかを強調するが、A225G変異体と適合性がある。
【0271】
実験結果を
図2に示す。A203Gが作動薬活性を提供すると結論付けることができる。
【0272】
Y113は、C及びNへの、より低いレベルでA及びVへの、並びに、ある程度でT、Q、及びSへの変異を忍容する。
【0273】
実施例2:位置85での変異の効果
提案された作用メカニズムは以下の通りである。
S85V:
図3に示すように、これは、活性(
図3左)の立体構造においてD112,Y443、及びS116、並びに、不活性(
図3右)の立体構造においてD112及びY442を含む水素結合ネットワークの一部である。リガンドが結合すると、D112のカルボキシ基は異なる回転異性体をとる。S85V変異における疎水性の導入は、不活性状態のD112回転異性体と適合しないが、D112活性立体構造回転異性体のCベータ原子と疎水性接触を形成するため、活性立体構造を安定化し得る。
【0274】
実験結果を
図4に示す。S85V及びS85Cは、DPH効力を増加させる(Y416Fとの組み合わせにおいても、以下を参照)。しかしながら、S85V及びS85Cはともに奏効性を低下させる。
【0275】
実施例3:位置416での変異の効果
提案された作用メカニズムは以下の通りである。
Y416F:
図5に示されるように、これは、そうでなければ、DPHの疎水性フェニル環に近接する、OH基の極性を除去する。OH基との相互作用は、OH基がオランザピンのベンゾジアゼピン-窒素の水素結合に潜在的に関与していたため、オランザピンで忍容された(これは、Westonら、2019、Sci Adv.、2019 Apr 17;5(4):eaaw1567において、hM4D(Gi)の完全作動薬であると示された)。不可逆的作動薬と複合したベータ2アドレナリン受容体の結晶構造との比較がされ得る(3PDS;Rosenbaumら、Nature 2011、469:236-240)。
【0276】
実験結果を
図6に示す。Y416Fは、DPHの効力を増加させ、S85Vと組み合わせたY416Fは、更に効力を増加させる。
【0277】
実施例4:位置120での変異の効果
提案された作用メカニズムは以下の通りである。
V120I:
図7に示すように、この変異は、結合部位の空間をよりよく「埋め」得るため、疎水性接触を増加させる。Valと比較したIleの追加のメチル基は、オランザピン-メチル基の欠失を補償する。残基3.40及びTM6上でのその接触の重要性は、M2受容体のNMR分光学的研究で説明されている(Xuら、Molecular Cell、2019、75:53-65)。
【0278】
実験結果を
図8に示す。V120I変異は、DPHの奏効性を高める。
【0279】
実施例5:位置123での変異の効果
提案された作用メカニズムは以下の通りである。
L123T/S:
図9に示すように、この改変は、受容体の活性化時に形成された相互作用のネットワークを安定化し得るが、不活性な立体構造においては欠いている。
【0280】
実験結果を
図10に示す。L123の変異は、DPHの効力及び/又は奏効性を増加させる。他のL123の置換のいくつかは、構成的に活性な受容体に至る。
図10Bは、Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120Iと比較して、Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123TでのDPHの奏効性がより低いことを示唆する。しかしながら、このアッセイは、βアレスチンの動員を測定し、より低い奏効性は、GIRK(Kir3.1及びKir3.2)コンダクタンスのG
β/γ依存性活性化を測定するアッセイにおいて明らかであることに留意されたい(
図21D)。したがって、これは、Gタンパク質シグナル伝達を維持しつつ、βアレスチンの動員の減少を示す。
【0281】
実施例6:位置128での変異の効果
図11に示すように、Yへではなく、I、L、又はVへのF128の変異は、DPHの奏効性及び/又は効力を増加させる。
【0282】
実施例7:位置121での変異の効果
図12に示すように、Lへではなく、FへのM121の変異は、DPHの効力を増加させる。
【0283】
実施例8:位置200及び204での変異の効果
提案された作用メカニズムは以下の通りである。
A200T:
図13に示すように、この改変は、水素結合をN417に導入し、新しい疎水性接触を潜在的に導入することによって、受容体の活性の立体構造を明らかに安定化させる。
【0284】
実験結果を
図14に示す。G又はSへではなく、TへのA200の変異は、効果が小さく、奏効性を減少させるというコストを伴うものの、DPHの効力を増加させる。
【0285】
位置204に関連して、提案された作用メカニズムは、以下の通りである:
F204Y:
図15に示すように、この改変は、水素結合をT414に導入することによって、受容体の活性の立体構造を明らかに安定化させる。
【0286】
実験結果を
図16に示す。Hへではなく、YへのF204の変異は、DPHの効力を増加させる。
【0287】
実施例9:位置413での変異の効果
図17Aに示すように、W413Lの変異は、奏効性を減少させるという代償はあるが、DPHの効力を増加させる。
【0288】
図17Bに示すように、I410V変異体は、DPHの奏効性の増加をもたらす。
【0289】
実施例10:代替リガンドの提供
代替のリガンドは、2つの異なる研究戦略によって提供された。
検索戦略1は、化学的類似性に基づいており、以下を含む。
a)Swiss Similarityウェブサーバを使用したShape-ITによってジフェンヒドラミンと類似する承認された薬剤(http://www.swisssimilarity.ch/;Zoete V.、Daina,A.、Bovigny C.、及びMichielin、O.、SwissSimilarity:A Web Tool for Low to Ultra High Throughput Ligand-Based Virtual Screening.、J.Chem.Inf.Model.、2016、56(8)、1399-1404.)。
b)DataWarrior及びFragFPを使用してジフェンヒドラミンに対して0.5の類似性を有する化合物(Thomas Sander、Joel Freyss、Modest von Korff、Christian Rufener、DataWarrior:An Open-Source Program For Chemistry Aware Data Visualization And Analysis.、J Chem Inf Model、2015、55、460-473、doi 10.1021/ci500588j)。
c)ChEMBLウェブサーバを使用してジフェンヒドラミンに対して0.5の類似性を有する承認された薬剤(https://www.ebi.ac.uk/chembl/;A.Gaulton、L.Bellis、J.Chambers、M.Davies、A.Hersey、Y.Light、S.McGlinchey、R.Akhtar、A.P.Bento、B.Al-Lazikani、D.Michalovich、及びJ.P.Overington、(2012)、「ChEMBL:A Large-scale Bioactivity Database For Chemical Biology and Drug Discovery」、Nucleic Acids Res.、Database Issue、40 D1100-1107.、DOI:10.1093/nar/gkr777、PMID:21948594;A.P.Bento、A.Gaulton、A.Hersey、L.J.Bellis、J.Chambers、M.Davies、F.A.Kruger、Y.Light、L.Mak、S.McGlinchey、M.Nowotka、G.Papadatos、R.Santos及びJ.P.Overington、(2014)、「The ChEMBL bioactivity database: an update」、Nucleic Acids Res.、Database Issue、42 1083-1090.、DOI:10.1093/nar/gkt103、PMID:24214965)。
【0290】
結果を表1(Table 1)に列挙する。
【0291】
検索戦略2は、機能的、ひいては構造的な類似性に基づいており、以下を含む。
2.) GRANPAに結合する抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン)であることが期待され得る承認された抗ヒスタミン剤。
【0292】
結果を表2(Table 2)に列挙する。
【0293】
実施例11:異なるアッセイによるGRANPA変異の更なる分析
図18は、cAMP産生を阻害する能力を検証するために使用された、GiカスケードのGloSensorアッセイによって測定された本発明の変異の組み合わせを示す。
【0294】
図19は、hM4D(Gi)(Y113C+A203G)のGi結合型活性の結果、及びGloSensorアッセイで測定された変異体を示す。S85V+Y416F±V120I±L123(T/C/S/I/V)の追加により、DPHによる活性化の効力が増加した。データは、20μMのDPHで処理された対照hM4D(Gi)と比較した、光出力によって測定されるcAMPの阻害の割合として正規化された。コンストラクトのEC50及びスパンは以下の通りである。
Y113C+A203G(717nM;94%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F(1.50nM;116%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I(1.80nM;111%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123T(0.949nM;129%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123T(0.956nM;129%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123C(0.366nM;115%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123C(0.252nM;101%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123S(0.528nM;83%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123S(0.321nM;110%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123I(1.41nM;98%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+V120I+L123I(0.880nM;119%)
Y113C+A203G+S85V+Y416F+L123V(1.15nM;109%)
【0295】
図20は、GloSensorアッセイを使用して基底cAMP濃度への影響を試験された、hM4D(Gi)及び変異体の結果を示す。データは、hM4D(Gi)(Y113C+A203G)に対して正規化された。薬物治療を行わなかった基底発光の減少は、構成的活性の増加を示す。Y113C+A203G(100%)は、Y113C+A203G+S85V+Y416F(93%)及びY113C+A203G+S85V+Y416F+V120I(95%)と有意に異ならず、一方で他の変異体の組み合わせは異なった(One-way ANOVA,P<0.05)。
【0296】
図21は、Kir3.1及びKir3.2のGタンパク質結合型内向き整流性カリウムチャネル(GIRK)のG
β/γ依存性の増強を試験する電気生理学アッセイの結果を示す。
【0297】
GIRKアッセイは、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F及びY113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123Tの両方がDPHによって強力に活性化されていることを確認している。対照的に、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123Tは、
図10Bのβ-アレスチンアッセイデータにおいてより少ない動員を示した。しかしながら、それらはGIRKアッセイにおいて同様の奏効性を示すが、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123Tではなく、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416Fは、ある程度の基底活性を示す。
【0298】
したがって、Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123Tが好ましいGRANPAである。
【0299】
実施例12:他の活性化リガンド
図22は、他の抗ヒスタミン剤及び抗ムスカリン剤を含む他の薬剤が活性化リガンドとして使用され得、特にそれらの効力及び/又は奏効性が、例えば、S85V、V120I、及びY416Fなどの本発明の改変の使用によって改善され得ることを確認している。
【0300】
実施例13-好ましい実施形態の概要及びアミノ酸配列対応番号付け
参照のmAChR4番号付けを、括弧内にはBallesteros-Weinstein番号付けを示す。
本来のDREADD:
Y113-C/N (3.33)
A203-G (5.46)
実質的にDPHの効力/奏効性が増加した変異:
S85-V (2.57)
V120-I (3.40)
L123-C/I/S/T/V (3.43)
F128-I/L/V (3.48)
Y416-F (6.51)
DPH効力が実質的な増加でない:
M121-F (3.41)
A200-T (5.43)
F204-Y (5.47)
I410-V (6.45)
W413-L (6.48)
【0301】
近縁のGPCRファミリーメンバーのアライメントは、高い構造保存性を示しており(
図23)、CHRM4で特定された残基は、他のアミン作動性GPCRでの対応する残基に容易にアライメントされ得る(
図24)。
【0302】
他のアミン作動性GPCRにおける対応する残基を以下に示す。FASTAペプチド配列のアライメントは、MEGA X 10.1.8(Kumar S.ら、「MEGA X:Molecular Evolutionary Genetics Analysis across computing platforms」、Molecular Biology and Evolution 35、1547-1549(2018))を使用して、MUSCLEアルゴリズム(標準設定:Gap Open=-2.9、Gap Extent=0.0、Hydrophobicity Multiplier=1.2、Max Iterations=16、Cluster Method=UPGMA、Min Diag Length=24)で行われた。
【0303】
実施例14-生体内でのジフェンヒドラミンによるGRANPA活性化は行動を変化させる
hCaMKIIプロモーター(タイタ:6.7×10∧14vg/mL)の下でGRANPA(Y113C+A203G+S85V+V120I+Y416F+L123T)を発現する、AAV9カプシドにより偽型化した組換えアデノ随伴ウイルスを、麻酔下のマウスの右の黒質(容積:300ナノリットル)に注射した。3週間後、マウスは、単独で、又はジフェンヒドラミン(1mg/kg)と一緒に、自発運動を増強するアンフェタミン(3mg/kg)の腹膜内注入を受けた。次に、マシンビジョンツールを使用して、全身の左及び右への回転を計数した。ジフェンヒドラミンによって、左回転の有意な増加に至った(n=9、p=0.037、スチューデント対応有りt検定、
図25)。
【0304】
【0305】
ACM4 S85(残基2.57)は、ACM1 S78、ACM2 S76、ACM3 S121、ACM5 S83、HRH3 C87、HRH4 S68、ADA2B I65に対応する。
【0306】
【0307】
ACM4 V120(残基3.40)は、ACM1 V113、ACM2 V111、ACM3 V156、ACM5 V118、HRH3 A122、HRH4 V102に対応する。
【0308】
ACM4 M121(残基3.41)は、ACM1 M114、ACM2 M112、ACM3 M157、ACM5 M119、HRH1 F116、HRH2 L108、HRH3 F123、HRH4 Y103、5HT1F L112、5HT1E L111、5HT1D L127、5HT1B L138、5HT5A W130、5HT7 M171、5HT1A L125、5HT2A M164、DRD3 L119、DRD2 L123、DRD4 F124、ADA1B L134、ADA1D L185、ADA1A M115、ADA2B V101、ADA2A V137、ADA2C V140、5HT6 L115、5HT2B M144、5HT2C M143、DRD1B L129、DRD1A L112、5HT4 F109、ADRB3 E126、ADRB1 E147、ADRB2 E122に対応する。
【0309】
ACM4 L123(残基3.43)は、ACM1 L116、ACM2 L114、ACM3 L159、ACM5 L121、HRH1 V118、HRH2 L110、HRH3 I125、HRH4 I105、5HT1F L114、5HT1E L113、5HT1D L129、5HT1B L140、5HT5A V132、5HT7 L173、5HT1A L127、5HT2A L166、DRD3 L121、DRD2 L125、DRD4 L126、ADA1B L136、ADA1D L187、ADA1A L117、ADA2B L103、ADA2A L139、ADA2C L142、5HT6 L117、5HT2B L146、5HT2C L145、DRD1B L131、DRD1A L114、5HT4 L111、ADRB3 L128、ADRB1 L149、ADRB2 L124に対応する。
【0310】
ACM4 F128(残基3.48)は、ACM1 F121、ACM2 F119、ACM3 F164、ACM5 F126、HRH1 I123、HRH2 L115、HRH3 Y130、HRH4 Y110、5HT1F L119、5HT1E L118、5HT1D L134、5HT1B L145、5HT5A L137、5HT7 I178、5HT1A L132、5HT2A L171、DRD3 I126、DRD2 I130、 DRD4 V131、ADA1B I141、ADA1D V192、ADA1A I122、ADA2B L108、ADA2A L144、ADA2C L147、5HT6 L122、5HT2B V151、5HT2C L150、DRD1B V136、DRD1A V119、5HT4 L116、ADRB3 V133、ADRB1 L154、ADRB2 V129に対応する。
【0311】
【0312】
ACM4 A200(残基5.43)は、ACM1 A193、ACM2 A191、ACM3 A236、ACM5 A198、HRH1 A195、HRH2 G187、HRH3 S203、HRH4 S179、5HT2A S239、DRD3 S193、DRD2 S194、DRD4 S197、ADA1B S208、ADA1D S259、ADA1A A189、ADA2B S177、ADA2A C216、ADA2C C215、5HT6 S193、5HT2B S222、5HT2C S219、DRD1B S230、DRD1A S199、5HT4 S197、ADRB3 S209、ADRB1 S229、ADRB2 S204に対応する。
【0313】
ACM4 F204(残基5.47)は、ACM1 F197、ACM2 F195、ACM3 F240、ACM5 F202、HRH1 F199、HRH2 F191、HRH3 F207、HRH4 F183、5HT1F F190、5HT1E F191、5HT1D F206、5HT1B F217、5HT5A 209、5HT7 248、5HT1A F204、5HT2A F243、DRD3 F197、DRD2 F198、 DRD4 F201、ADA1B F212、ADA1D F263、ADA1A F193、ADA2B F181、ADA2A F220、ADA2C F219、5HT6 F197、5HT2B F226、5HT2C F223、DRD1B F234、DRD1A F203、5HT4 F201、ADRB3 F213、ADRB1 F233、ADRB2 F208に対応する。
【0314】
【0315】
ACM4 I410(残基6.45)は、ACM1 I375、ACM2 I397、ACM3 I501、ACM5 I452、HRH1 I425、HRH2 I244、HRH3 G368、HRH4 A313、5HT1E I301、5HT1D I311、5HT1B I324、5HT7 T337、5HT1A I355、DRD3 I339、DRD2 I383、DRD4 L356、ADA1B I304、5HT6 F278、5HT2B L334、5HT2C L321、5HT4 C269、ADRB3 T302、ADRB1 T334、ADRB2 T283に対応する。
【0316】
ACM4 W413(残基6.48)は、ACM1 W378、ACM2 W400、ACM3 W504、ACM5 W455、HRH1 W428、HRH2 W247、HRH3 W371、HRH4 W316、5HT1F W306、5HT1E W304、5HT1D W314、5HT1B W327、5HT5A W298、5HT7 W340、5HT1A W358、5HT2A W336、DRD3 W342、DRD2 W386、DRD4 W359、ADA1B W307、ADA1D W361、ADA1A W285、ADA2B W384、ADA2A W402、ADA2C W395、5HT6 W281、5HT2B W337、5HT2C W324、DRD1B W309、DRD1A W285、5HT4 W272、ADRB3 W305、ADRB1 W337、ADRB2 W286に対応する。
【0317】
ACM4 Y416(残基6.51)は、ACM1 Y381、ACM2 Y403、ACM3 Y507、ACM5 Y458、HRH1 Y431、HRH2 Y250、HRH3 Y374、HRH4 Y319に対応する。
【0318】
【0319】
【0320】
参考文献
Berthold, M. R., N. Cebron, F. Dill, T. R. Gabriel, T. Kotter, T. Meinl, P. Ohl, C. Sieb, K. Thiel and B. Wiswedel (2007). KNIME: The Konstanz Information Miner. Studies in Classification, Data Analysis, and Knowledge Organization (GfKL 2007), Springer.
Hausser, M. (2014). "Optogenetics: the age of light." Nat Methods 11(10): 1012-1014.
Kruse, A. C., A. M. Ring, A. Manglik, J. Hu, K. Hu, K. Eitel, H. Hubner, E. Pardon, C. Valant, P. M. Sexton, A. Christopoulos, C. C. Felder, P. Gmeiner, J. Steyaert, W. I. Weis, K. C. Garcia, J. Wess and B. K. Kobilka (2013). "Activation and allosteric modulation of a muscarinic acetylcholine receptor." Nature 504(7478): 101-106.
Masson, N., M. Ellis, S. Goodbourn and K. A. Lee (1992). "Cyclic AMP response element-binding protein and the catalytic subunit of protein kinase A are present in F9 embryonal carcinoma cells but are unable to activate the somatostatin promoter." Mol Cell Biol 12(3): 1096-1106.
Pettersen, E. F., T. D. Goddard, C. C. Huang, G. S. Couch, D. M. Greenblatt, E. C. Meng and T. E. Ferrin (2004). "UCSF Chimera-A visualization system for exploratory research and analysis." Journal of Computational Chemistry 25(13): 1605-1612.
Rosenbaum, D. M., C. Zhang, J. A. Lyons, R. Holl, D. Aragao, D. H. Arlow, S. G. F. Rasmussen, H.-J. Choi, B. T. DeVree, R. K. Sunahara, P. S. Chae, S. H. Gellman, R. O. Dror, D. E. Shaw, W. I. Weis, M. Caffrey, P. Gmeiner and B. K. Kobilka (2011). "Structure and function of an irreversible agonist-β2 adrenoceptor complex." Nature 469(7329): 236-240.
Shimamura, T., M. Shiroishi, S. Weyand, H. Tsujimoto, G. Winter, V. Katritch, R. Abagyan, V. Cherezov, W. Liu, G. W. Han, T. Kobayashi, R. C. Stevens and S. Iwata (2011). "Structure of the human histamine H1 receptor complex with doxepin." Nature 475(7354): 65-70.
Thal, D. M., B. Sun, D. Feng, V. Nawaratne, K. Leach, C. C. Felder, M. G. Bures, D. A. Evans, W. I. Weis, P. Bachhawat, T. S. Kobilka, P. M. Sexton, B. K. Kobilka and A. Christopoulos (2016). "Crystal structures of the M1 and M4 muscarinic acetylcholine receptors." Nature 531(7594): 335-340.
The, P. O. N. E. S. (2014). "Correction: Targeting Photoreceptors via Intravitreal Delivery Using Novel, Capsid-Mutated AAV Vectors." PLoS One 9(9): e110030.
Weston, M., T. Kaserer, A. Wu, A. Mouravlev, J. C. Carpenter, A. Snowball, S. Knauss, M. von Schimmelmann, M. J. During, G. Lignani, S. Schorge, D. Young, D. M. Kullmann and A. Lieb (2019). "Olanzapine: A potent agonist at the hM4D(Gi) DREADD amenable to clinical translation of chemogenetics." Science Advances 5(4): eaaw1567.
Young, D., D. M. Fong, P. A. Lawlor, A. Wu, A. Mouravlev, M. McRae, M. Glass, M. Dragunow and M. J. During (2014). "Adenosine kinase, glutamine synthetase and EAAT2 as gene therapy targets for temporal lobe epilepsy." Gene Ther.
【配列表】
【国際調査報告】