(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】三環式誘導体化合物の結晶形及びその製造方法並びにそれを含む薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20240501BHJP
A61K 31/497 20060101ALN20240501BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240501BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
C07D487/04 147
C07D487/04 CSP
A61K31/497
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569892
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 KR2022007101
(87)【国際公開番号】W WO2022245125
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0064416
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520412305
【氏名又は名称】オンコニック セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】アン ジュンギ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB09
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形、前記クエン酸塩結晶形の製造方法、及び前記クエン酸塩結晶形の製造に有用に用いられる化学式1で表される三環式誘導体化合物の結晶形に関する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項2】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩は、無水物であることを特徴とする、請求項1に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項3】
前記クエン酸塩結晶形は、粉末XRDパターンにおいて10.01°、15.86°、19.62°及び26.58°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする、請求項2に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項4】
前記クエン酸塩結晶形は、粉末XRDパターンにおいて9.79°、20.10°及び21.71°の2θ(±0.2°)値をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項5】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩は、一水和物であることを特徴とする、請求項1に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項6】
前記クエン酸塩結晶形は、粉末XRDパターンにおいて6.94°、9.99°、16.57°、18.17°、23.68°、及び26.39°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする、請求項5に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項7】
前記クエン酸塩結晶形は、粉末XRDパターンにおいて11.89°、13.35°、15.07°、及び20.90°の2θ(±0.2°)値をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項8】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩は、二水和物であることを特徴とする、請求項1に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項9】
前記クエン酸塩結晶形は、粉末XRDパターンにおいて8.15°、10.96°、16.09°、21.47°、25.45°、及び26.86°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする、請求項8に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項10】
前記クエン酸塩結晶形は、粉末XRDパターンにおいて13.35°、18.73°、及び28.51°の2θ(±0.2°)値をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形。
【請求項11】
下記化学式1で表される三環式誘導体化合物の結晶形。
[化学式1]
【請求項12】
前記結晶形は、粉末XRDパターンにおいて7.88°、10.23°、15.16°、19.27°、22.79°及び23.94°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする、請求項11に記載の三環式誘導体化合物の結晶形。
【請求項13】
前記結晶形は、粉末XRDパターンにおいて7.95°、10.25°、13.25°、13.78°、21.12°、及び25.22°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする、請求項11に記載の三環式誘導体化合物の結晶形。
【請求項14】
(a)下記反応式1-1の化学式2の化合物と化学式3の化合物を反応させた後、結晶化工程を行い、化学式1の結晶化合物を得るステップ;及び
(b)前記化学式1の結晶化合物とクエン酸を有機溶媒及び水からなる群から選択される1種以上の溶媒で50~80℃で反応させるステップ;を含む、前記化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
[反応式1-1]
【請求項15】
(1)下記反応式1-2の化学式2'の化合物と化学式3'の化合物を反応させた後、結晶化工程を行い、化学式1の結晶化合物を得るステップ;及び
(2)前記化学式1の結晶化合物とクエン酸を有機溶媒及び水からなる群から選択される1種以上の溶媒で50~80℃で反応させるステップ;を含む前記化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
[反応式1-2]
【請求項16】
請求項14の(a)ステップ又は請求項15の(1)ステップの反応は、反応溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピペリドン(NMP)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される1種以上を用いることを特徴とする、請求項14又は15に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項17】
請求項14の(a)ステップ又は請求項15の(1)ステップの結晶化工程は、結晶化溶媒としてメタノール又は水を使用することを特徴とする、請求項16に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項18】
前記結晶形は、無水物又は水和物であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項19】
前記結晶形は無水物であり、前記無水物は、請求項14の(b)ステップ又は請求項15の(2)ステップにおいて、化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩を一水和物の結晶形態で製造した後、前記一水和物結晶を再び無水物結晶に変換して製造することを特徴とする、請求項18に記載の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項20】
請求項14の(b)ステップ又は請求項15の(2)ステップの溶媒としては、メタノールとエタノールの混合溶媒が使用され、これらの溶媒の使用により無水物結晶形を製造することを特徴とする、請求項14又は15に記載の化学式1の化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項21】
請求項14の(b)ステップ又は請求項15の(2)ステップの溶媒としては、メタノールと水の混合溶媒が使用され、これらの溶媒の使用により一水和物結晶形を製造することを特徴とする、請求項14又は15に記載の化学式1の化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項22】
請求項14の(b)ステップ又は請求項15の(2)ステップの溶媒としては、水が用いられ、このような溶媒の使用により二水和物結晶形を製造することを特徴とする、請求項14又は15に記載の化学式1の化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法。
【請求項23】
請求項1~13のいずれか1項に記載のクエン酸塩結晶形又は結晶形、及び1つ以上の薬剤学的に許容される担体又は希釈剤を含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月18日付韓国特許出願第10-2021-0064416号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れたPARP及びタンキラーゼ阻害活性を有する三環式誘導体化合物の新規塩結晶形、その製造方法、結晶形の変換及びそれを含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、PARP-1、PARP-2、PARP-3、PARP-4(vPARP)、PARP-5(Tankyrase-1、Tankyrase-2)、PARP-7、PARP-10等およそ17種のタンパク質で構成される[Curr Pharm Des., 13(9), 933-962, 2007]。これらは全てその触媒ドメインでは一定のレベルの相同性を示すが、細胞内で作用する機能は異なる[BioEssays., 26(8), 882-893, 2004]。
【0004】
PARP-1及びPARP-2の主な役割は、ADP-リボシル化によるDNA修復を容易にすることであり、多くのDNA修復タンパク質の数を調節することである。癌細胞のDNAが損傷するとPARPが活性化され、DNAの一本鎖破損を修復するため、様々なタイプの癌治療において抵抗を引き起こす可能性がある。したがって、PARP阻害剤を通じて抗癌効能を期待でき、特に、BRCA-1及びBRCA-2のようなDNAの二本鎖損傷修復因子を欠損した腫瘍の特異的死滅に有用であることが報告されており、DNA二本鎖損傷修復因子に異常がある乳癌、卵巣癌、前立腺癌など様々な癌種に対する患者オーダーメイドの抗癌剤として開発されている[Nature, 434, 913-916, 2005; Cancer Biology & Therapy, 4, 934-936, 2005]。
【0005】
また、PARP阻害剤は虚血性脳損傷を含む各種神経性疾患と心血管系(cardiovascular)疾患の治療に使用することができ、さらに、炎症性症状の治療にも有用である。最近では、糖尿病性神経障害(diabetic neuropathy)の治療にもPARP阻害剤の治療可能性が示唆されている[Diabetes. 54(12), 3435-3441, 2005]。
【0006】
一方、PARP-5であるタンキラーゼ-1、タンキラーゼ-2はWnt/β-catenin信号経路、DNA修復過程及び細胞周期に関連性の高い有糸分裂に関与することが知られている[Biochimica et Biophysica Acta, 1846, 201-205, 2014]。また、テロメア(telomere)の長さの陽性調節因子として機能する。したがって、タンキラーゼ-1、タンキラーゼ-2の阻害は、Wnt/β-catenin信号経路、DNA修復過程及びテロメア(telomere)の伸長を阻害し、PARP-1とは異なる機序で抗癌効果を示すことができる[Nature Reviews Drug Discovery, 11, 923-936, 2012]。
【0007】
国際公開特許WO2016-200101には、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性によって引き起こされる疾患の治療に使用できるPARP-1およびタンキラーゼ阻害剤である様々な三環式誘導体化合物が開示されている。これらの化合物は、free baseまたは1~3塩酸塩の形で製造され、大部分は塩酸塩形態である。本発明者らは、WO2016-200101で製造された化合物が医薬品として使用し難い程度に低い水溶解度を有しており、前記化合物を製造するために複数ステップの工程を経なければならないため、商業的な利用には望ましくないことを確認した。そこで、医薬品に適用可能な水溶解度を持ちながら、光安定性などの安定性が確保された新たな塩の結晶形及び商業的用途として使用可能な新たな製造方法を開発し、本発明を完成するに至った。本発明の製造方法は、反応完了後、追加の精製工程なしに高純度の化合物を安定した結晶形の形態で製造することができ、大量生産が可能であり、商業的に非常に有用な方法を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開特許 WO2016-200101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、優れたPARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2阻害活性を有する三環式誘導体化合物の新たな塩の結晶形、及びその効果的な製造方法を提供することである。
【0010】
これにより、従来技術の問題点、特に医薬品に適用できない低い水溶解度を解決し、純度を高めるために複数のステップの工程を経なければならない非効率性を改善すると同時に、生産後の分離・除去が困難な柔軟物質を減らすことを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的は、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩の結晶形を有効成分として含むPARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2の活性によって誘発される各種疾患の予防又は治療のための薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形
本発明は、下記化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形を提供する。
[化学式1]
【0013】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は無水物であってもよい。
無水物結晶形は、約1重量%以下の水分を含んでもよく、好ましくは0.5重量%以下を含んでもよい。
【0014】
前記無水物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて10.01°、15.86°、19.62°及び26.58°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする。
【0015】
また、前記無水物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて9.79°、20.10°、及び21.71°の2θ(±0.2°)値をさらに含んでもよい。
【0016】
さらに、前記無水物結晶形は実質的に下記
図7の形で示されるXRDパターンを示す。
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は一水和物であってもよい。
【0017】
一水和物結晶形は、約2.0~4.5重量%の範囲の水分を含んでもよく、好ましくは約3重量%程度を含んでもよい。
【0018】
前記一水和物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて6.94°、9.99°、16.57°、18.17°、23.68°及び26.39°の2θ(± 0.2°)値を含むことを特徴とする。
【0019】
また、前記一水和物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて11.89°、13.35°、15.07°、及び20.90°の2θ(±0.2°)値をさらに含んでもよい。
【0020】
さらに、前記クエン酸塩一水和物の結晶形は、実質的に下記
図10の形で示されるXRDパターンを示す。
【0021】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩は二水和物であってもよい。
二水和物結晶形は、約5.0~7.5重量%の範囲の水分を含んでもよく、好ましくは約5.7重量%程度を含んでもよい。前記二水和物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて8.15°、10.96°、16.09°、21.47°、25.45°、及び26.86°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする。
【0022】
また、前記二水和物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて13.35°、18.73°、及び28.51°の2θ(±0.2°)値をさらに含んでもよい。
【0023】
さらに、前記クエン酸塩二水和物の結晶形は、実質的に下記
図13の形で示されるXRDパターンを示す。
【0024】
本発明の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は光安定性チャンバーにおいて、
25℃、湿度60%の条件で、光量35WのUVを総照射量が200 wattとなるように照射した後の純度が95%以上、好ましくは96%以上に維持される特徴を有してもよい。
【0025】
また、25℃、湿度60%の条件で、光量35k Luxの可視光線を総照射量が1200k luxとなるように照射した後の純度が95%以上、好ましくは96%以上に維持される特徴を有してもよい。
【0026】
すなわち、本発明の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、従来の塩酸塩等と比較して非常に優れた光安定性を提供する。
【0027】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、HPLC分析において、RT 43分(min)~45分(min)で柔軟物質ピーク面積(%)が0.05%未満、より好ましくはRT 43 min~45 minで柔軟物質ピークが観察されない(存在しない)特徴を有してもよい。
【0028】
また、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、HPLC分析において、RT 48 min~50 minで柔軟物質ピーク面積(%)が0.15%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満、さらに好ましくは0.015%未満、最も好ましくは柔軟物質ピークが観察されない(存在しない)特徴を有してもよい。
【0029】
また、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、HPLC分析において、RT 43 min~45 min及びRT 48 min~50 minで柔軟物質ピークが観察されない(存在しない)特徴を有してもよい。
【0030】
前記においてRT 48 min~50 minで発生する柔軟物質は下記化学構造式を有する。
【0031】
前記柔軟物質は生産後の分離除去が難しく、人体に有害であるため、基準以上に発生した場合、安全性確認試験を追加で行わなければならない。したがって、製造工程で前記柔軟物質を減少させることは非常に重要である。
【0032】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、純度が99.6%以上の特徴を有してもよい。
また、長期保管条件(温度25±2℃、湿度60±5%で保管)で3ヶ月保管時、純度が99.6%以上の特徴を有してもよい。また、6ヶ月保管時、純度が99.5%以上、好ましくは99.55%以上の特徴を有してもよい。また、12ヶ月保管時、純度が99.7%以上の特徴を有してもよい。また、24ヶ月保管時、純度が99.7%以上の特徴を有してもよい。また、36ヶ月保管時、純度が99.7%以上の特徴を有してもよい。
【0033】
また、長期保管条件(温度25±2℃、湿度60±5%で保管)で9ヶ月以上保管時に初期と比較して純度が低下しない特徴を有してもよい。
【0034】
また、加速保管条件(温度40±2℃、湿度75±5%で保管)で3ヶ月保管時に純度が99.6%以上であり、6ヶ月保管時に純度が99.5%以上の特徴を有してもよい。
【0035】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、長期保管条件(温度25±2℃、湿度60±5%で保管)で3ヶ月保管後のHPLC分析において、柔軟物質ピーク面積(%)が0.30%以下であり、より好ましくは0.29%以下である特徴を有してもよい。また、6ヶ月保管後のHPLC分析において、柔軟物質ピーク面積(%)が0.32%以下であり、より好ましくは0.30%以下である特徴を有してもよい。また、12ヶ月保管後のHPLC分析において、柔軟物質ピーク面積(%)が0.32%以下、好ましくは0.30%以下である特徴を有してもよい。また、24ヶ月保管後のHPLC分析において、柔軟物質ピーク面積(%)が0.35%以下である特徴を有してもよい。また、36ヶ月保管後のHPLC分析において、柔軟物質ピーク面積(%)が0.32%以下である特徴を有してもよい。
【0036】
前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、加速保管条件(温度40±2℃、湿度75±5%で保管)で3ヶ月保管後のHPLC分析において、柔軟物質ピーク面積(%)が0.35%以下であり、より好ましくは0.25%以下である特徴を有してもよい。また、6ヶ月保管後のHPLC分析で柔軟物質ピーク面積(%)が0.33%以下であり、より好ましくは0.30%以下である特徴を有してもよい。
【0037】
三環式誘導体化合物の結晶形
また、本発明は
下記化学式1で表される三環式誘導体化合物の結晶形を提供する。
[化学式1]
【0038】
前記化学式1の三環式誘導体化合物(free base)は、生体内でPARP及びタンキラーゼ阻害剤の効力を示す有効成分であり、その酸付加塩であるクエン酸塩結晶形の製造中間体としても非常に有用である。
【0039】
前記三環式誘導体化合物の結晶形は無水物であってもよい。
無水物結晶形は、約1重量%以下の水分を含んでもよく、好ましくは0.5重量%以下を含むことを特徴とする。
【0040】
前記三環式誘導体化合物の結晶形は、粉末XRDパターンにおいて7.88°、10.23°、15.16°、19.27°、22.79°及び23.94°の2θ(± 0.2°)値を含むことを特徴とする。
【0041】
また、前記三環式誘導体化合物の結晶形は、粉末XRDパターンにおいて13.89°、15.78°、18.05°、及び19.51°の2θ(±0.2°)値をさらに含んでもよい。
【0042】
さらに、前記三環式誘導体化合物の結晶形は、実質的に下記
図1の形で示されるXRDパターンを示す。
前記三環式誘導体化合物の結晶形は二水和物であってもよい。
【0043】
二水和物結晶形は、約7.0~9.5重量%の範囲の水分を含んでもよく、好ましくは約8.3重量%程度を含むことを特徴とする。
【0044】
前記二水和物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて7.95°、10.25°、13.25°、13.78°、21.12°、25.22°の2θ(±0.2°)値を含むことを特徴とする。
【0045】
また、前記二水和物結晶形は、粉末XRDパターンにおいて11.93°、12.50°、15.98°、19.12°、22.80°、26.72°の2θ(±0.2°)値をさらに含んでもよい。
【0046】
さらに、前記二水和物結晶形は、実質的に下記
図4の形で示されるXRDパターンを示す。
【0047】
三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法
<第1方法>
本発明は、下記反応式1-1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、優れた収率及び純度を提供し、製造工程の簡素化によって製造効率も顕著に向上させる特徴を有する。
【0048】
本発明の前記化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、次のステップを含めて製造してもよい。
【0049】
(a)下記反応式1-1の化学式2の化合物と化学式3の化合物を反応させた後、結晶化工程を行い、化学式1の結晶化合物を得るステップ;及び
(b)前記化学式1の結晶化合物とクエン酸を有機溶媒及び水からなる群から選択される1種以上の溶媒で、50~80℃で反応させるステップ。
[反応式1-1]
【0050】
以下、前記製造方法をステップ別に詳細に説明する。
<(a)ステップ>
前記(a)ステップでの反応は、ピリジン、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミンなどの有機アミンまたは炭酸カリウムなどの塩基の存在下で行われてもよい。
【0051】
前記反応温度は特に限定されないが、一般的に冷温乃至加温下で行ってもよく、好ましくは常温から加温下で行う。
【0052】
特に、前記(a)ステップにおいて、反応溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピペリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などから選択される1種以上を使用してもよく、これらの溶媒を使用する場合、従来の有機溶媒を使用する場合と比較して、反応時間を大幅に短縮させ(反応時間24時間から6時間に短縮)、還流攪拌が不要で、柔軟物質の減少により追加再結晶及びクロマトグラフィーなどの追加工程が不要であるため、工程を大幅に簡素化する効果が提供される。
【0053】
前記(a)ステップの結晶化工程において、結晶化溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン及び水の中から選択される1種以上を使用してもよい。前記水としては、精製水または蒸留水を使用してもよい。
【0054】
特に、前記結晶化溶媒として水を使用する場合、再結晶などの追加工程なしに高収率・高純度の結晶を製造することができ、工程を大幅に簡素化することができるため、大量合成工程に適する。
【0055】
さらに、前記(a)ステップにおいて、反応溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を使用し、結晶化溶媒として水を使用する場合には、より優れた効果が提供される。すなわち、再結晶などの追加工程なしに高収率・高純度の結晶を製造することができ、工程を大幅に簡素化することができるため、大量合成工程に適する。
【0056】
前記(a)ステップの反応は、35~55℃で行ってもよく、結晶化工程後には、濾過工程をさらに行ってもよい。特に、本発明の前記(a)ステップは、再結晶化などが不要なほど優れた純度を提供する特徴を有する。
【0057】
<(b)ステップ>
前記製造方法により製造される三環式誘導体化合物のクエン酸塩は、無水物または水和物であってもよく、前記水和物は一水和物または二水和物であってもよい。
【0058】
前記(b)ステップの溶媒のうち、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、アセトニトリル、ブタノール、プロパノール及びテトラヒドロフランの中から選択される1種以上を使用してもよい。
【0059】
本発明の全体において、水としては、精製水または蒸留水を使用してもよい。
前記製造方法によって製造される三環式誘導体化合物のクエン酸塩は、結晶形で製造してもよく、クエン酸無水物結晶形である場合、前記(b)ステップにおいて、溶媒としては、前記にて記載された溶媒のうち、有機溶媒を使用してもよく、好ましくはメタノールとエタノールの混合溶媒を使用してもよい。この時、前記混合溶媒でメタノールとエタノールは1:9~9:1の体積比で混合して使用してもよく、好ましくは4:9~2:7の体積比で使用してもよい。
【0060】
また、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩が一水和物である場合、前記(b)ステップにおいて、溶媒としては、前記にて記載された有機溶媒と水を1:9~9:1の体積比で混合して使用してもよく、好ましくはメタノールと水の混合溶媒を使用してもよい。この時、前記混合溶媒でメタノールと水は3:7~7:3の体積比で使用してもよい。
【0061】
また、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩が二水和物である場合は、前記(b)ステップにおいて、溶媒として前記にて記載された有機溶媒と水を2:8~0:10の体積比で混合して使用してもよく、水を使用することが好ましい場合がある。
【0062】
前記(b)ステップの反応が完了した後、反応結果物に対して濾過過程をさらに行ってもよい。この時、別途の再結晶化、クロマトグラフィーなどの追加工程がなくても、反応終了後に濾過、乾燥すれば、優れた純度及び収率で結晶形状態の化合物を得ることができる。
【0063】
<第2方法>
本発明は、下記反応式1-2で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法を提供する。本発明の製造方法は、優れた収率及び純度を提供し、製造工程の簡素化によって製造効率も顕著に向上させる特徴を有する。
【0064】
本発明の前記化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、次のステップを含めて製造することができる。
【0065】
(1)下記反応式1-2の化学式2'の化合物と化学式3'の化合物を反応させた後、結晶化工程を行い、化学式1の結晶化合物を得るステップ;及び
(2)前記化学式1の結晶化合物とクエン酸を有機溶媒及び水からなる群から選択される1種以上の溶媒で、50~80℃で反応させるステップ。
[反応式1-2]
【0066】
前記(1)ステップ及び(2)ステップは、変更された出発物質を使用したことを除いては、前述した第1方法の(a)ステップ及び(b)ステップと同様に行ってもよい。
【0067】
一方、前記第1方法又は第2方法において、三環式誘導体化合物のクエン酸塩の結晶形を無水物として製造する場合、前記無水物は、前記(b)ステップまたは(2)ステップにおいて、化学式1で表される三環式誘導体化合物にクエン酸塩を付加して無水物結晶形にすることもできるが、下記反応式2に示すように、化学式1の化合物をクエン酸塩一水和物の結晶形態に製造した後、前記水和物結晶を再び無水物結晶に転換して製造してもよい。
【0068】
【0069】
前記反応式2で一水和物を無水物に転換する工程は、一水和物を有機溶媒または有機溶媒と水の混合溶媒中で、50~80℃の温度で反応させて行ってもよい。このとき、濾過過程をさらに行ってもよい。
【0070】
このとき、前記有機溶媒としては、エタノール、アセトン、イソプロパノール、アセトニトリル、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランの中から選択される1種以上を使用してもよい。
【0071】
また、前記混合溶媒を使用する場合、少量の水が含まれることにより、残留溶媒レベルを減少させる有利な効果を提供することができる。
【0072】
前記混合溶媒に含まれる水は、一水和物100重量部を基準として2~15重量部、好ましくは4~8重量部で使用してもよい。前記水が2重量部未満で含まれる場合、前記のような効果が得られ難く、15重量部を超える場合、無水物転換が行われない場合があるため、好ましくない。
【0073】
このようにクエン酸塩水和物からクエン酸塩無水物を製造する場合、水和物から無水物への結晶形転換過程で柔軟物質がさらに除去される効果が得られるため、より優れた純度の化合物を得ることができる。
【0074】
本発明の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形の製造方法において、
前記(a)ステップの反応は、還流工程を行わずに行ってもよく、前記(a)ステップで結晶化工程後、再結晶工程をさらに行わなくてもよく、前記(a)ステップで結晶化工程後、カラムクロマトグラフィー精製工程を行わなくてもよい。
【0075】
本発明の製造方法によれば、前記還流工程、再結晶工程、およびカラムクロマトグラフィー精製工程を全て行わずとも、優れた収率および純度を提供し、製造工程数も大幅に減らすことができる。
【0076】
前記製造方法において、前記反応式1-1の化学式2の化合物は、
(a)下記反応式3-1の化学式4の化合物に有機溶媒を添加した後、塩酸を反応させるステップ;
(b)前記反応物に有機溶媒と水を1:1~1:3の体積比で添加するステップ;及び
(c)前記(b)ステップの反応物のpHを8~10に調整した後、濾過するステップ;を含めて製造することができる。
[反応式3-1]
【0077】
前記化合物4において、Proは、アリール基、ベンジル基、ベンジルオキシメチル基、パラメトキシベンジル基(PMB)及びメトキシメチル基(MOM)からなる群から選択される保護基であってもよく、好ましくはメトキシメチル基であってもよい。
【0078】
前記(a)ステップ及び(b)ステップにおいて、有機溶媒としては、エタノール、アセトン、イソプロパノール、アセトニトリル、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランの中から選択される1種以上を使用してもよい。
【0079】
前記(c)ステップでのpH調節は塩基を使用して行ってもよく、前記塩基としては、NaOH、KOH、K2CO3、Na2CO3、NaHCO3などからなる群から選択される1種以上を使用してもよい。
【0080】
また、前記製造方法において、前記反応式1-2の化学式2'の化合物は、
(1)下記反応式3-2の化学式4の化合物に有機溶媒を添加した後、塩酸を反応させるステップ;及び
(2)前記反応終了後、反応液に塩酸水溶液を添加し、濾過するステップ;を含めて製造することができる。
[反応式3-2]
【0081】
前記(1)ステップでの反応は75~85℃で行ってもよい。また、前記反応は1~4時間、好ましくは2~3時間行ってもよく、このとき、攪拌も一緒に行ってもよい。
【0082】
前記(2)ステップでの塩酸水溶液の添加は、反応液を冷却した後に行ってもよく、前記冷却温度は10~40℃であってもよい。好ましくは15~25℃であってもよい。
【0083】
前記塩酸水溶液は、塩酸の体積濃度が5~25%、好ましくは10~20%であるものを使用してもよい。前記塩酸水溶液は、出発物質100重量部を基準として0.1~6.5重量部、好ましくは1.5~4.5重量部で添加してもよい。
【0084】
前記(1)ステップでの有機溶媒としては、エタノール、アセトン、イソプロパノール、アセトニトリル、プロパノール、ブタノール、酢酸エチル、およびテトラヒドロフランの中から選択される1種以上を使用してもよい。
【0085】
前記(2)ステップの後、洗浄は、好ましくはイソプロピルアルコール、精製水などから選択される1種以上を使用してもよい。
【0086】
三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形を含む薬学的組成物、その用途、およびそれを用いた治療方法
本発明は、下記化学式1で表される三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形を有効成分として含むPARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2活性によって引き起こされる疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0087】
【0088】
前記PARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2活性によって引き起こされる疾患としては、神経病理性疼痛、癲癇、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、統合失調症、慢性または急性疼痛、虚血性脳損傷、低酸素症後の神経細胞喪失、外傷及び神経損傷、神経変性疾患、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、心血管組織損傷、冠状動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、心臓性ショックなどの心血管系疾患、糖尿病性神経障害、骨関節炎、骨粗鬆症または癌等が含まれてもよい。
【0089】
本発明の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼの活性を抑制することにより、PARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2活性によって引き起こされる疾患、特に神経病理性疼痛、神経変性疾患、心血管系疾患、糖尿病性神経障害、炎症性疾患、骨粗鬆症または癌の予防又は治療に有用である。
【0090】
前記癌は、進行性固形癌、再発性固形癌、または転移性固形癌の形であってもよい。前記固形癌は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌、進行性卵巣癌、高度漿液性卵巣癌(卵管癌または原発性腹膜癌を含む)、原発癌である卵巣癌から転移した転移癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌であってもよいが、これらに限定されない。
【0091】
本発明の三環式誘導体化合物のクエン酸塩を含む組成物は、それぞれ通常の方法に従って、錠剤、酸剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、内服液剤、乳剤、シロップなどの経口型剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射用液の形で剤形化して使用されてもよい。
【0092】
本発明による薬学的組成物は、1つ以上の薬剤学的に許容される担体、1つ以上の賦形剤及び/又は希釈剤をさらに含んでもよい。
【0093】
薬剤学的に許容される担体の非限定的な例としては、固形物及び/又は液相物、例えば、エタノール、グリセロール、水などが含まれる。当該治療組成物中の担体の量は、治療組成物又は治療学的組合物の総重量を基準として、約5~約99重量%の範囲であってもよい。薬剤学的に許容される適切な賦形剤及び希釈剤の非制限的な例としては、非毒性の相溶性充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、防腐剤、湿潤剤、増量剤、酸化防止剤、潤滑剤、香味剤、増粘剤、着色剤、界面活性剤、乳化剤、懸濁剤などが含まれる。これらの賦形剤及び希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱物油等が挙げられるが、これらに限定されず、他の薬剤学的に許容可能な全ての担体、賦形剤及び希釈剤が使用できることは当業者にとって自明である。
【0094】
本発明の薬学的組成物において、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、治療学的有効量または予防学的有効量で含有される。本発明による三環式誘導体化合物のクエン酸塩の好ましい投与量は、患者の状態および体重、疾患の重症度、薬物形態、投与経路および期間によって異なるが、当業者によって適宜選択されてもよい。しかし、望ましい効果のために、本発明の三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、0.0001mg~1000mg、0.01mg~500mg、0.1mg~300mg、1mg~200mg、50mg~200mgの量を1日1回乃至数回に分けて投与してもよい。本発明の組成物のうち、前記化学式1の化合物は、全体組成物の総重量に対して0.0001~50重量%の含量で配合されてもよい。
【0095】
また、本発明は、PARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2の活性によって引き起こされる各種疾患の予防又は治療用薬剤の製造のための前記三環式誘導体化合物の結晶形、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形、または前記薬学的組成物の用途を提供する。
【0096】
さらに、本発明は、前記三環式誘導体化合物の結晶形、前記三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形、または前記薬学的組成物を有効量で動物に投与することを含む、前述した疾患を有する動物の治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0097】
本発明による三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、PARP-1、タンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2の活性阻害効果が優れており、神経病理性疼痛、神経変性疾患、心血管系疾患、糖尿病性神経障害、炎症性疾患、骨粗鬆症または癌の予防又は治療に有用である。
【0098】
また、本発明による三環式誘導体化合物のクエン酸塩結晶形は、純度、溶解度、安定性が改善し、薬学的剤形の製造を容易にし、保存安定性を向上させる効果を提供する。
【0099】
本発明の製造方法は、優れた収率及び純度の化合物を提供し、製造工程の簡素化により製造効率を顕著に向上させ、大量生産が可能でありながら、商業的に非常に有用な方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】実施例1で製造された化学式1の化合物(無水物)のXRD分析ピークを示したグラフである。
【
図2】実施例1で製造された化学式1の化合物(無水物)のDSC分析吸熱ピークを示したグラフである。
【
図3】実施例1で製造された化学式1の化合物(無水物)のTGA分析結果を示したグラフである。
【
図4】実施例1-4で製造された化学式1の化合物(二水和物)のXRD分析ピークを示したグラフである。
【
図5】実施例1-4で製造された化学式1の化合物(二水和物)のDSC分析吸熱ピークを示したグラフである。
【
図6】実施例1-4で製造された化学式1の化合物(二水和物)のTGA分析結果を示したグラフである。
【
図7】実施例2で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(無水物)のXRD分析ピークを示したグラフである。
【
図8】実施例2で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(無水物)のDSC分析吸熱ピークを示したグラフである。
【
図9】実施例2で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(無水物)のTGA分析結果を示したグラフである。
【
図10】実施例3で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(一水和物)のXRD分析ピークを示したグラフである。
【
図11】実施例3で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(一水和物)のDSC分析吸熱ピークを示したグラフである。
【
図12】実施例3で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(一水和物)のTGA分析結果を示したグラフである。
【
図13】実施例4で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(二水和物)のXRD分析ピークを示したグラフである。
【
図14】実施例4で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(二水和物)のDSC分析吸熱ピークを示したグラフである。
【
図15】実施例4で製造された化学式1の化合物のクエン酸塩(二水和物)のTGA分析結果を示したグラフである。
【
図16】本発明の化学式1の化合物のクエン酸塩無水物結晶形と従来の薬物のPARP-1酵素阻害活性を測定して示したグラフである。
【
図17】本発明の化学式1の化合物のクエン酸塩無水物と従来の薬物のタンキラーゼ-1酵素阻害活性を測定して示したグラフである。
【
図18】本発明の化学式1の化合物のクエン酸塩無水物と従来の薬物のタンキラーゼ-2酵素阻害活性を測定して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、あくまでも本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業者にとって自明である。
【実施例】
【0102】
【0103】
前記化合物5(4.5kg、15.37mol)にエタノール46.7Lを加えた後、c-HCl(5.3L、61.48mol)を加えた。2時間還流攪拌し、反応終了を確認した後、冷却してエタノール16Lと精製水29.4Lを加えた。6N NaOH水溶液でpH 8~10に調整した後、濾過して化合物2(3.46kg、収率84.4%)を得た。
【0104】
【0105】
前記化合物5(681.3g、2.33mol)にイソプロパノール(6813mL)を加えた後、c-HCl(970g、9.32mol)を加えた。75~85℃で2~3時間攪拌した。反応終了を確認した後、冷却して6N-HCl水溶液を添加した。生成した固体を濾過して化合物2'(600g、収率85.1%)を得た。
【0106】
実施例1:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルの合成(Free form)
(1) 実施例1-1
【0107】
前記化合物2(6.5kg、24.37mol)及び化合物3(5.73kg、30.46mol)にDMF(65L)を加えた。トリエチルアミン(2.71kg、26.8mol)を加え、45~50℃で5時間攪拌した。反応終了を確認した後に冷却し、メタノール(130L)を加えて結晶化した。生成した固体を濾過した。ウェット固体にメタノール65Lを加え、1.5時間還流攪拌した。冷却後、濾過して化合物1(7.34kg、収率75.2%)を得た。
【0108】
【0109】
前記化合物2(10g、37.49mmol)及び化合物3(8.47g、44.99mmol)にDMF(100mL)を加えた。トリエチルアミン(5.75g、41.24mmol)を加え、38~42℃で6時間攪拌した。反応終了を確認した後に冷却し、精製水(100mL)を加えて結晶化した。生成した固体を濾過して化合物1(13.99g、収率93%)を得た。
【0110】
【0111】
前記化合物3`(750.34g、2.87mol)にDMF(9.96L)を加えた後、トリエチルアミン(1097g、10.84mol)を加え、2時間攪拌した。化合物2`(664.3g、2.19mol)を添加し、45~50℃で5.5時間攪拌した。反応終了を確認した後に冷却し、精製水(19.93L)を加えて結晶化した。生成した固体を濾過して化合物1の無水結晶(788.41g、収率89.9%)を得た。
【0112】
(4) 実施例1-4
実施例1-1~1-3で製造した化合物1(100g、249.7mmol)をDMAC(1.6L)、THF(1.6L)混合溶媒に投入した後、45~55℃で攪拌して溶解させた。濾過後、精製水(3.2L)を添加し、0~10℃に冷却した。同温度で攪拌し、濾過する工程を経て化合物1の二水和物結晶を得た。
【0113】
実施例1-1~1-3で製造された化合物1は、
図1~
図3に示すように、XRD (X-Ray Diffraction)分析で2θ値が7.88°、10.23°、13.89°、15.16°、15.78°、18.05°、19.27°、19.51°、22.79°及び23.94°のピークを示し(
図1)、DSC(Differential Scanning Calorimetry)分析の吸熱ピークが272℃で表れたことが確認された(
図2)。 また、TGA(Thermogravimetric Analysis)分析の結果、初期に質量減少が表れないことから無水結晶形であることが確認された(
図3)。
【0114】
前記実施例1-4でさらに製造した化合物1の二水和物結晶は、XRD(X-Ray Diffraction)分析で2θ値が7.95°、10.25°、13.25°、13.78°、21.12°、25.22°のピークを示し(
図4)、DSC(Differential Scanning Calorimetry)分析の吸熱ピークが117℃及び272℃で表れたことが確認された(
図5)。また、TGA(Thermogravimetric Analysis)分析の結果、94℃付近で約7.7%の質量減少が生じたことから、二水和物であることが確認された(
図6)。
【0115】
実施例2:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩無水物の合成
(1) 実施例2-1
【0116】
クエン酸(690.8g、3.59mol)にエタノール(7.2L)、メタノール(2.4L)を加えた。前記実施例1で製造した化合物1(960g、2.39mol)を添加し、65~70℃で2時間攪拌した。常温に冷却後、濾過した。ウェット固体にメタノール(7.2L)を加え、2時間還流攪拌した。冷却後濾過して目的化合物(1.31kg、92%)を得た。
【0117】
【0118】
下記実施例3で製造された6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩(一水和物)(4.7kg、7.7mol)にエタノール(15.5L)、アセトン(15.5L)、イソプロパノール(15.5L)を加えた。55℃に昇温後、55~70℃で4時間攪拌した。25℃以下に冷却後、30分間攪拌した。生成した固体を濾過して目的化合物の結晶形(4.39kg、収率96.3%)を得た。
【0119】
【0120】
下記実施例3で製造した6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩(一水和物)(500g、0.82mol)にエタノール(2.5L)、アセトン(2.5L)、イソプロパノール(2.5L)を加え、精製水(20mL)を加えた。55℃に昇温後、55~75℃で4時間攪拌した。25℃以下に冷却後、30分間攪拌した。生成した固体を濾過して目的化合物の結晶形(470g、収率96.7%)を得た。
【0121】
前記化学式1のクエン酸塩無水物結晶化合物は、
図7~
図9に示すように、XRD分析で2θ値が9.79°、10.01°、15.86°、19.62°、20.10°、21.71°及び26.58のピークを示し(
図7)、DSC分析の吸熱ピークが230℃及び270℃で表れた(
図8)。また、TGA分析の結果、初期に質量減少が表れないことから、無水物であることが確認された(
図9)。
【0122】
前記実施例2-2及び実施例2-3の方法は、水和物から無水物に変換される過程で柔軟物質がさらに除去される効果が表れ、より高純度の無水結晶形化合物を得ることができた。
【0123】
実施例3:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩一水和物の合成
【0124】
前記実施例1で製造した化合物1(7.34kg、18.32mol)にメタノール(25.7L)、精製水(25.7L)を加えた。クエン酸(5.28kg、27.49mol)をメタノールと精製水の1:1混合溶液(22L)に溶解した後、添加した。15~25℃で30分攪拌した後、60℃に昇温し、60~70℃で2時間攪拌した。常温に冷却後、濾過して目的化合物(10.7kg、95.8%)を得た。
【0125】
前記化学式1のクエン酸塩一水和物結晶化合物は、
図10~
図12に示すように、XRD分析で2θ値が6.94°、9.99°、11.89°、13.35°、15.07°、16.57°、18.17°、20.90°、23.68°及び26.39であるピークを示し(
図10)、DSC分析の吸熱ピークが120℃及び193℃で表れた(
図11)。また、TGA分析の結果、80~120℃で約2.4%の質量減少が表れたことから、一水和物であることが確認された(
図12)。
【0126】
前記製造方法は、反応が完了すると目的化合物が結晶形で得られる。したがって、純度を高めるための再結晶または残留溶媒を減らすための追加工程は不要である。
【0127】
実施例4:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルクエン酸塩二水和物の合成
【0128】
前記実施例1で製造した化合物1(6g、15mmol)に精製水(42mL)を加えた。精製水(18mL)にクエン酸(3.6g、22.5mmol)を溶解して添加した。常温で30分攪拌した後、60℃に昇温し、60~65℃で1.5時間攪拌した。常温に冷却した後、濾過して目的化合物(8.45g、収率97.8%)を得た。
【0129】
前記化学式1のクエン酸塩二水和物結晶化合物は、
図13~
図15に示すように、XRD分析で2θ値が8.15°、10.96°、13.35°、16.09°、18.73°、21.47°、25.45°、26.86°及び28.51°のピークを示し(
図13)、DSC分析の吸熱ピークが140℃、176℃及び266℃で表れた(
図14)。 また、TGA分析の結果、100~150℃で約5.6%の質量減少が表れたことから二水和物であることが確認された(
図15)。
【0130】
比較例1:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリルの合成(Free form)
(1) 比較合成例 1-1
【0131】
前記化合物2(2.56kg、9.6mol)及び化合物3(1.98kg、10.56mol)にメタノール35.8Lを加えた。トリエチルアミン(2.67L、19.2mol)を加え、24時間還流攪拌した。反応終了の確認後、DMAC(38.4L)、THF(38.4L)を加え、昇温して溶解させた。溶解液に活性炭を加えて攪拌した。濾過後、精製水に滴加して結晶化し、濾過した。
【0132】
ウェット固体にDMAC、THFを加えて溶解後再結晶して化合物1(2.93kg, 71.1%)を得た。(1ステップ)
その後、柔軟物質の除去のためにさらに精製工程を行い、クリーンな化合物1(1.59kg、収率39%)を得た。(2ステップ)
【0133】
【0134】
前記化合物5にメタノールを加えた後、6-(ピペラジン-1-イル)ニコチノニトリルとトリエチルアミンを加えた。80℃で24時間攪拌して反応終了の確認後、反応液を濃縮した。その後、ジクロロメタンで抽出し、有機溶媒層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:9)で精製し、前記反応式のような化合物(収率:75%)を得た。
【0135】
【0136】
ステップaで製造した化合物をジクロロメタンに溶解した後、トリフルオロ酢酸を加え、還流冷却器を使用して24時間加熱した。反応終了の確認後、ジクロロメタンで抽出し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液中で、もう一度ジクロロメタンで抽出した。無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を減圧濃縮して得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=1:9)で精製し、化学式1の化合物(収率:65%)を得た。
【0137】
比較例2:6-{4-[(5-オキソ-1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロベンゾ[h][1,6]ナフチリジン-8-イル)メチル]ピペラジン-1-イル}ニコチノニトリル二塩酸塩の合成
【0138】
前記比較合成例1-2で得られた化合物1をメタノールに溶解した後、1.25M塩酸メタノール溶液を加え、12時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧濃縮した後、酢酸エチルで固体を濾過して前記化合物1の二塩酸塩(収率:95%)を得た。
【0139】
分析方法:水分量、DSC、TGA、及びXRD分析
本発明に記載された水分量、DSC、TGA、及びXRD分析は以下の方法で行った。
(1) 水分量の測定
水分量の測定は、870KF Titrino Plus(Metrohm)カールフィッシャー水分測定装置を用いて測定した。
【0140】
(2) DSC分析
DSC分析は30℃から250~350℃でDSC 8000(PerkinElmer)分析器で行った。0.5~2mgの試料をアルミニウムDSCパンに秤量し、穿孔されたアルミニウム蓋で非密閉式に密封した後、試料を10℃/minのスキャン速度で30℃から250~350℃まで加熱し、生成された熱流反応をモニタリングした。
【0141】
(3) TGA分析
TGA分析は30~900℃でTGA 8000(PerkinElmer)分析器で行った。0.5~2mgの試料をCeramic Crucibleに秤量し、試料を5℃/minのスキャン速度で30℃から900℃まで加熱して生成された質量減少をモニタリングした。
【0142】
(4) XRD分析
XRD分析は2°2θから40°2θまでD8 Focus(Bruker ASX)分析器で行った。サンプル表面が滑らかで、サンプルホルダーの平面上にくるように、約100mgのサンプルをプラスチック製のサンプルホルダーに軽く圧着した後、以下の条件で測定した。
【0143】
<分析条件>
アノード材料(Ka):Cu Ka(1.5406A);スキャン範囲:2~40度;ジェネレータ設定:40mA、40kV;スキャン速度:10度/min;発散スリットサイズ:0.6mm;温度:25℃; ステップサイズ:0.02度2θ;回転:使用
【0144】
実験例1:柔軟物質の分析
HPLC(製品名:Agilent 1100、製造社:Agilent)を用いて、前記実施例及び比較例で製造された化合物に含まれる柔軟物質の量を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0145】
<HPLC操作条件>
検出器:UV検出器(検出波長:220nm)
カラム : Watchers 100 ODS-P, 4.6 X 250mm, 5μm またはこれと同等のカラム
温度 : 25℃付近の一定温度
移動相A:リン酸二水素アンモニウム11.503gを1000mLの水に溶かして濾過後に脱気して製造、移動相B:アセトニトリル
移動相濃度勾配:
【0146】
【表1】
希釈液:移動相Aとアセトニトリルを5:5で混合して使用
流速:1.0mL/分、注入量:10.0μL、分析時間:90分
*検液調製:検体10mgを希釈液50mLに溶かして使用
【0147】
【0148】
前記実験の結果、本発明の実施例によって製造された化合物1のクエン酸塩結晶形の場合、全体の製造過程を通じて再結晶過程を全く行わなかったにもかかわらず、主要な柔軟物質が顕著に減少したり、検出されないことが確認された。
【0149】
HPLC分析時に保持時間(Retention time)49分付近で出てくる柔軟物質は、前記化学式2及び化学式3、又は化学式5及び化学式3のカップリング工程が過剰反応してできた物質と予測され、生産後の分離除去が難しいため、製造工程で前記柔軟物質を減らすことは非常に重要である。
【0150】
【0151】
実験例2:水への溶解度の測定
化合物1の付加塩の水に対する溶解度を測定し、その結果を下記表4に示した。
具体的には、シェイクフラスク(Shake-flask)に過剰量の化合物と溶媒(水1mL中10mM)を入れ、24時間振った後、UPLCを用いて定量分析した。
【0152】
<使用装備及び条件>
装備名:Acquity UPLC(Waters)
カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 1.7um X 2.1mm X 50mm
波長:226, 276, 310nm(PDA detector)
カラム温度:40℃、サンプル温度:25℃、注入量: 5ul
移動相及び濃度勾配
【0153】
【0154】
化合物をDMSOに溶かしてUPLCで測定した後、検量線(calibration curve)を描く。
シェイクフラスク(Shake-flask)法で飽和させた化合物を濾過後UPLCで測定し、検量線(calibration curve)に代入して濃度を計算する。
【0155】
【0156】
前記実験の結果、本発明の化合物1のクエン酸塩結晶無水物の場合、他の塩と比較して水への溶解度が顕著に優れていることが確認された。
【0157】
実験例3:化合物1の付加塩の安定性確認
前記実施例及び比較例で製造した化合物1の付加塩結晶の安定性を確認し、その結果を下記表5に示した。
【0158】
温度、湿度及び光条件による実験は、安定性チャンバーにそれぞれの条件で保管した後、HPLCで純度を確認する方法で実施した。
【0159】
<紫外線200ワット(UV 200 watt)照射>
各試料をペトリ皿に薄く広がるように入れた後、光安定性試験チャンバー(CARON 6542-2)を使用して、25℃、湿度60%の条件下で、光量35Wの紫外線(UV)を総照射量が200 ワット(watt)になるように照射して安定性を評価した。
【0160】
<可視光線1200kルクス(Visible 1200k lux)照射>
各試料をペトリ皿に薄く広がるように入れた後、光安定性試験チャンバー(CARON 6542-2)を使用して、25℃、湿度60%の条件下で、光量35kルクス(Lux)の可視光線を総照射量が1200kルクス(lux)になるように照射して安定性を評価した。
【0161】
【0162】
前記実験の結果、化合物1の二塩酸塩及びクエン酸塩無水物の両方とも温湿度に対して安定していることが分かった。しかし、二塩酸塩は紫外線200ワット(UV200 watt)及び可視光線1200kルクス(Visible1200k lux)で光安定性に著しく劣ることが分かった。光安定性が低い場合、日光だけでなく室内照明によっても保管安定性が低下し、純度が低下する可能性があるため、原料を遮光保管するなど管理に注意が必要である。このように安定性を確認した結果、化合物1のクエン酸塩が最も適していることが確認された。
【0163】
実験例4:塩の融点の確認
前記実施例で製造したクエン酸塩化合物の融点をB-454(BUCHI)融点測定器を用いて測定し、その結果を下記表6に示した。
【0164】
【0165】
前記実験の結果、本発明のクエン酸塩の結晶形はいずれも医薬品原料として十分に高い融点を有することが確認された。
【0166】
実験例5:様々な溶媒に対する溶解度測定
前記実施例で製造した結晶化合物の様々な溶媒に対する溶解度を測定し、その結果を下記表7に示した。
具体的には、試料0.1gを正確に計量し、各溶媒に入れ、15~25℃で5分ごとに30秒間強く振って混ぜ、30分以内に溶ける量を測定した。
【0167】
【0168】
実験例6:化合物1のクエン酸塩無水物と一水和物の純度及び安定性評価
本発明の実施例2で製造したクエン酸塩結晶無水物と実施例3で製造したクエン酸塩結晶一水和物の純度及び安定性を評価し、その結果を下記表8及び表9に示した。
【0169】
下記表で加速保管条件は温度40±2℃、湿度75±5%で安定性試験を行い、長期保管条件は温度25±2℃、湿度60±5%で純度及び安定性試験を行った。実験結果は、HPLC(製品名:agilent 1290、製造社:Agilent)を使用して前記実験例1と同じ条件下で測定した。
【0170】
【0171】
【0172】
実験例7:ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ[PARP-1]の酵素阻害試験
本発明の化学式1の化合物のクエン酸塩結晶無水物(実施例2)及び化学式1の化合物の塩酸塩結晶無水物(比較例2)のPARP-1酵素阻害活性は、BPS Bioscience社から購入したキット(cat.80551)を用いて次のように検定した。
【0173】
ヒストンをBPS Bioscienceのキット(kit)から提供された96ウェルプレートにコーティングし、16時間4℃で放置した。その後、プレートをPBST(7.5mM Na2HPO4, 2.5mM NaH2PO4, 145mM NaCl, 0.05% Tween 20, pH 7.4)で4回洗浄した後、非特異的反応を防ぐためにブロッキングバッファ(BPS Bioscienceのキットから提供)を添加して25℃で1時間放置した。
1時間放置後、プレートをPBSTで再び4回洗浄し、様々な濃度の実施例2及び比較例2の化合物をPARP-1酵素(50 ng/well)とアッセイ混合物(assay mixture)と活性(activated)DNAを含む反応液に入れ、25℃で1時間反応させた。
1時間後に各ウェルをPBSTで4回洗浄し、PARP酵素によるリボシル化の量を測定するためにストレプトアビジン結合ペルオキシダーゼ(streptavidin-linked peroxidase) (Strep-HRP、1:50希釈)を添加して25℃で30分間反応させた。
プレートをPBSTで4回洗浄した後、最終的にHRP化学発光(chemiluminescent)基質を加えて反応させた。各酵素によって形成されたヒストンリボシル化の量は、Synergy H4 Hybrid Multi-Mode Microplate Reader (登録商標 BioTek Instruments, Inc., USA)を用いて定量化した。
本発明の化合物に対してそれぞれの濃度別に得られた結果は2つのウェルで得られた平均値であり、結果分析はSigmaPlot 10 (Systat Software Inc., USA)を使用して化合物のIC50値を計算した。
【0174】
対照化合物としては、代表的なPARP阻害剤であるAZD-2281(オラパリブ(Olaparib))を使用した。
前記実験結果は下記表10に示し、
図16にグラフで示した。
【0175】
【0176】
実験例8:タンキラーゼ-1、2の酵素阻害試験
本発明の化学式1の化合物のクエン酸塩結晶無水物(実施例2)および化学式1の化合物の塩酸塩結晶無水物(比較例2)のタンキラーゼ-1又はタンキラーゼ-2酵素阻害活性は、BPS Bioscience社から購入したキット(cat.80573、80578)を使用して次の通り検定した。
【0177】
ヒストンをBPS Bioscienceのキットから提供された96ウェルプレートにコーティングし、16時間4℃で放置した。その後、プレートをPBST (7.5mM Na2HPO4, 2.5mM NaH2PO4, 145mM NaCl, 0.05% Tween 20, pH 7.4)で4回洗浄した後、非特異的反応を防ぐためにブロッキングバッファ(BPS Bioscienceのキットから提供)を添加して25℃で1時間放置した。1時間放置後、プレートをPBSTで再び4回洗浄し、様々な濃度の実施例の化合物をタンキラーゼ-1酵素(40 ng/well)またはタンキラーゼ-2酵素(15 ng/well)とアッセイ混合物を含む反応液に入れ、25℃で1時間反応させた。
1時間後に各ウェルをPBSTで4回洗浄し、PARP酵素によるリボシル化の量を測定するためにストレプトアビジン結合ペルオキシダーゼ(Strep-HRP、1:50希釈)を添加して25℃で30分間反応させた。
プレートをPBSTで4回洗浄した後、最終的にHRP化学発光基質を加えて反応させた。各酵素によって形成されたヒストンリボシル化の量は、Synergy H4 Hybrid Multi-Mode Microplate Reader (登録商標 BioTek Instruments, Inc., USA)を用いて定量化した。
本発明の化合物に対してそれぞれの濃度別に得られた結果は2つのウェルで得られた平均値であり、結果分析はSigmaPlot 10 (Systat Software Inc., USA)を使用して化合物のIC50値を計算した。
【0178】
対照化合物としては、代表的なタンキラーゼ阻害剤(inhibitor)であるXAV-939及びPARP阻害剤として開発されたが、タンキラーゼ抑制にも効能がよいと知られているBMN-673(タラゾパリブ(Talazoparib))を使用した。
前記実験結果は下記表11~12に示し、
図17及び
図18にグラフで示した。
【0179】
【0180】
【国際調査報告】