(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】がん免疫療法のための投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240501BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240501BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240501BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240501BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240501BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240501BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240501BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240501BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20240501BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20240501BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
C12N15/62 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0783
C07K14/54
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
C12N15/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569939
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022028839
(87)【国際公開番号】W WO2022241036
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520438914
【氏名又は名称】ンカルタ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Nkarta, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ラジャンガム,カンヤ ラクシュミ
(72)【発明者】
【氏名】ハイレマス,ミノティ ムルゲシュ
(72)【発明者】
【氏名】トレイガー,ジェイムズ バーナビー
(72)【発明者】
【氏名】ショック,ディビット リチャード
(72)【発明者】
【氏名】エンズリー,アーロン ノービン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
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4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
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4C087NA05
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4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA03
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、細胞傷害性キメラ受容体を発現するように操作された免疫細胞、およびこのような細胞を投与するための種々の投薬レジメンに関する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、腫瘍細胞上のNKG2Dのリガンドを標的とするキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、がんは、血液がん、例えば、急性骨髄性白血病(例えば、再発/難治性急性骨髄性白血病)または骨髄異形成症候群である。いくつかの実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍、例えば、肝内胆管癌腫または他の肝腫瘍、例えば、大腸がんからの二次転移である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンであって、
第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞、第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞を含み、
第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、
第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、
第3の用量は、第2の用量から5~10日後に対象に投与され、
第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.0×10
9個のNK細胞を含み、
操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するキメラ受容体を発現するように操作され、
第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、
第1の投薬サイクルは、1つ以上の追加の投薬サイクルが続いてもよい、投薬レジメン。
【請求項2】
第1、第2、および第3の用量が、各々、約1.5×10
9個のNK細胞を含む、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項3】
投薬サイクルが、約14日~約35日である、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項4】
投薬サイクルが約21日である、請求項3に記載の投薬レジメン。
【請求項5】
投薬サイクルが約28日である、請求項3に記載の投薬レジメン。
【請求項6】
リンパ球枯渇プロセスが、少なくとも2用量のシクロホスファミドおよび少なくとも2用量のフルダラビンを含む、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項7】
リンパ球枯渇プロセスが、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の3日前に投与される、請求項6に記載の投薬レジメン。
【請求項8】
シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる、請求項7に記載の投薬レジメン。
【請求項9】
シクロホスファミドが約100~600mg/m
2の量で投与され、フルダラビンが約10~60mg/m
2の量で投与される、請求項6に記載の投薬レジメン。
【請求項10】
シクロホスファミドが約200~400mg/m
2の量で投与され、フルダラビンが約20~40mg/m
2の量で投与される、請求項9に記載の投薬レジメン。
【請求項11】
シクロホスファミドが約300mg/m
2で投与され、フルダラビンが約30mg/m
2で投与される、請求項10に記載の投薬レジメン。
【請求項12】
リンパ球枯渇プロセスが、少なくとも2用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)および少なくとも2用量のフルダラビンを含む、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項13】
リンパ球枯渇プロセスが、Ara-Cの5日間の1日用量およびフルダラビンの5日間の1日用量を含み、第1の用量のAra-Cおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の7日前に投与される、請求項12に記載の投薬レジメン。
【請求項14】
最終用量のAra-Cおよびフルダラビンと投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる、請求項13に記載の投薬レジメン。
【請求項15】
Ara-Cが、約0.5~10g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約10~60mg/m
2/日の量で投与される、請求項12に記載の投薬レジメン。
【請求項16】
Ara-Cが、約1~5g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約20~40mg/m
2/日の量で投与される、請求項15に記載の投薬レジメン。
【請求項17】
Ara-Cが、約2g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約30mg/m
2/日の量で投与される、請求項16に記載の投薬レジメン。
【請求項18】
第1および第2の用量の操作されたNK細胞は、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に対象に投与される、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項19】
がんが血液がんである、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項20】
がんが、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項19に記載の投薬レジメン。
【請求項21】
対象がR/R AMLを有し、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗白血病治療を受けていた、請求項20に記載の投薬レジメン。
【請求項22】
対象が、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有し、少なくとも1ラインであるが3ライン以下の以前の治療を受けていた、請求項20に記載の投薬レジメン。
【請求項23】
対象が、中間、高、または超高リスクMDSとして分類され、再発および/または難治性MDSを有する、請求項20に記載の投薬レジメン。
【請求項24】
対象が、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗MDS治療を受けていた、請求項23に記載の投薬レジメン。
【請求項25】
対象は、血液試料中の芽球が約5%未満である、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項26】
対象は、白血球数が25×10
9個WBC/L未満もしくはそれに等しい、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項27】
対象は、白血病性髄膜炎または既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示さず、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加を有しない、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項28】
がんが固形腫瘍である、請求項1に記載の投薬レジメン。
【請求項29】
がんが、肝内胆管癌腫、および大腸がんからの二次転移である肝腫瘍を含む肝腫瘍である、請求項28に記載の投薬レジメン。
【請求項30】
第1、第2、および第3の用量の操作されたNK細胞が、第1の時点から約21日以内に対象に投与される、請求項1~29のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項31】
第1、第2、および第3の用量の操作されたNK細胞が、第1の時点から約14日以内に対象に投与される、請求項1~30のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項32】
操作されたNK細胞が、配列番号33と少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされるキメラ受容体を発現する、請求項1~31のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項33】
操作されたNK細胞が、配列番号34と少なくとも95%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する、請求項1~32のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項34】
操作されたNK細胞が、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作される、請求項1~33のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項35】
mbIL15が、配列番号36および/または38と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項36】
操作されたNK細胞が、対象に対して同種である、前記請求項のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項37】
投薬レジメンが、芽球数の減少、血小板数の増加、および好中球数の増加のうちの1つ以上をもたらす、前記請求項のいずれか一項に記載の投薬レジメン。
【請求項38】
がんを処置するための方法であって、
少なくとも2用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇レジメンを有する対象に投与するステップであって、
投与されるフルダラビンの用量は約20~40mg/m
2/日の範囲であるステップと、
少なくとも第1、第2、および第3の遺伝子操作されたNK細胞を対象に投与するステップであって、
第1の用量の遺伝子操作されたNK細胞は、フルダラビンの最終用量後に対象に投与され、
第2の用量は第1の用量から6~8日後に対象に投与され、
第3の用量は第2の用量から6~8日後に対象に投与され、
第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.0×10
9個のNK細胞を含み、
操作されたNK細胞は、対象に対して同種であり、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するキメラ受容体を発現するように操作され、
第1の投薬サイクルは、1回以上の追加の投薬サイクルが続いてもよいステップと
を含む方法。
【請求項39】
第1、第2および第3の用量の各々が、少なくとも1.5×10
9個のNK細胞を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
リンパ球枯渇レジメンが、少なくとも2用量のシクロホスファミドをさらに含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
リンパ球枯渇レジメンが、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の3日前に投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる、請求項40~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
シクロホスファミドが、約100~600mg/m
2の量で投与され、フルダラビンが、約10~60mg/m
2の量で投与される、請求項40~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
シクロホスファミドが、約200~400mg/m
2の量で投与され、フルダラビンは、約20~40mg/m
2の量で投与される、請求項40~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
シクロホスファミドが、約300mg/m
2の量で投与され、フルダラビンが、約30mg/m
2の量で投与される、請求項40~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
リンパ球枯渇レジメンが、少なくとも2用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)をさらに含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項47】
リンパ球枯渇プロセスが、Ara-Cの5日間の1日用量およびフルダラビンの5日間の1日用量を含み、第1の用量のAra-Cおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の7日前に投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
最終用量のAra-Cおよびフルダラビンと投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる、請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
Ara-Cが、約0.5~10g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約10~60mg/m
2/日の量で投与される、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
Ara-Cが、約1~5g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約20~40mg/m
2/日の量で投与される、請求項46~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
Ara-Cが、約2g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約30mg/m
2/日の量で投与される、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
第1および第2の用量の操作されたNK細胞が、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に対象に投与される、請求項38~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
がんが、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)を含む、請求項38~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
R/R AMLもしくはMDSの状態の進行または退行に関連する少なくとも1つの測定基準を評価して、追加の投薬サイクルを投与するかどうかを決定することをさらに含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
対象が、再発および/または難治性急性骨髄性白血病を有し、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗白血病治療を受けていた、53または54に記載の方法。
【請求項56】
対象が、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有し、少なくとも1ラインであるが3ライン以下の以前の治療を受けていた、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
対象が、中間、高、または超高リスクMDSとして分類され、再発および/または難治性MDSを有する、請求項53または54に記載の方法。
【請求項58】
対象が、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗MDS治療を受けていた、請求項53~54または57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
対象は、血液試料中の芽球が約5%未満である、請求項38~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
対象が、25×10
9個のWBC/L未満またはそれに等しい白血球数を有する、請求項38~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
対象が、白血病性髄膜炎または既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示さず、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加を有しない、請求項38~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
投薬レジメンが、芽球数の減少、血小板数の増加、および/または好中球数の増加のうちの1つ以上をもたらす、請求項38~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
操作されたNK細胞が、配列番号34と少なくとも95%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する、請求項38~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも第1、第2、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞の投与によって、がんを処置するためのNKG2D受容体のリガンドを標的とするキメラ受容体を発現する操作されたNK細胞集団の使用であって、
第1の用量の遺伝子操作されたNK細胞は、少なくとも2用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇プロセスの最終用量後に対象に投与され、
第2の用量は、第1の用量から6~8日後に対象に投与され、
第3の用量は、第2の用量から6~8日後に対象に投与され、
第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.0×10
9個の操作されたNK細胞を含む、使用。
【請求項65】
第1、第2および第3の用量の各々が、少なくとも1.5×10
9個のNK細胞を含む、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
リンパ球枯渇レジメンが、少なくとも2用量のシクロホスファミドをさらに含む、請求項64または65に記載の使用。
【請求項67】
リンパ球枯渇レジメンが、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の3日前に投与される、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる、請求項66~67のいずれか一項に記載の使用。
【請求項69】
シクロホスファミドが、約100~600mg/m
2の量で投与され、フルダラビンが、約10~60mg/m
2の量で投与される、請求項66~68のいずれか一項に記載の使用。
【請求項70】
シクロホスファミドが、約200~400mg/m
2の量で投与され、フルダラビンが、約20~40mg/m
2の量で投与される、請求項66~69のいずれか一項に記載の使用。
【請求項71】
シクロホスファミドが約300mg/m
2で投与され、フルダラビンが約30mg/m
2で投与される、請求項66~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
リンパ球枯渇レジメンが、少なくとも2用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)をさらに含む、請求項64または65に記載の使用。
【請求項73】
リンパ球枯渇プロセスが、Ara-Cの5日間の1日用量およびフルダラビンの5日間の1日用量を含み、第1の用量のAra-Cおよびフルダラビンが、投薬サイクルの開始の7日前に投与される、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
最終用量のAra-Cおよびフルダラビンと投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる、請求項72または73に記載の使用。
【請求項75】
Ara-Cが、約0.5~10g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約10~60mg/m
2/日の量で投与される、請求項72~74のいずれか一項に記載の使用。
【請求項76】
Ara-Cが、約1~5g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが、約20~40mg/m
2/日の量で投与される、請求項72~75のいずれか一項に記載の使用。
【請求項77】
Ara-Cが約2g/m
2/日の量で投与され、フルダラビンが約30mg/m
2/日の量で投与される、請求項72~76のいずれか一項に記載の使用。
【請求項78】
第1および第2の用量の操作されたNK細胞が、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に対象に投与される、請求項64~77のいずれか一項に記載の使用。
【請求項79】
がんが、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項64~78のいずれか一項に記載の使用。
【請求項80】
R/R AMLもしくはMDSの状態の進行または退行に関連する少なくとも1つの測定基準を評価して、追加の投薬サイクルを投与するかどうかを決定することをさらに含む、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
対象が、再発および/または難治性急性骨髄性白血病を有し、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗白血病治療を受けていた、請求項79または80に記載の使用。
【請求項82】
対象が、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有し、少なくとも1ラインであるが3ライン以下の以前の治療を受けていた、請求項79~81のいずれか一項に記載の使用。
【請求項83】
対象が、中間、高、または非常に高リスクのMDSとして分類され、再発および/または難治性のMDSを有する、請求項79または80に記載の使用。
【請求項84】
対象が、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗MDS治療を受けていた、請求項79~80または83のいずれか一項に記載の使用。
【請求項85】
対象は、血液試料中の芽球が約5%未満である、請求項64~84のいずれか一項に記載の使用。
【請求項86】
対象が、25×10
9個のWBC/L未満またはそれに等しい白血球数を有する、請求項64~85のいずれか一項に記載の使用。
【請求項87】
対象が、白血病性髄膜炎もしくは既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示さず、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加を有しない、請求項64~86のいずれか一項に記載の使用。
【請求項88】
投薬レジメンが、芽球数の減少、血小板数の増加、および/または好中球数の増加のうちの1つ以上をもたらす、請求項64~87のいずれか一項に記載の使用。
【請求項89】
操作されたNK細胞が、配列番号34と少なくとも95%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する、請求項64~88のいずれか一項に記載の使用。
【請求項90】
連続する少なくとも3用量の遺伝子操作されたNK細胞を静脈内投与することによって、対象におけるがんを処置するためのNKG2D受容体のリガンドを標的とするキメラ受容体を発現する遺伝子操作されたNK細胞集団の使用であって、
第1の用量の遺伝子操作されたNK細胞は、第1の時点で対象に投与され、少なくとも1.0×10
9個の操作されたNK細胞を含み、
第2の用量は、第1の用量の6~8日後に対象に投与され、少なくとも1.0×10
9個の操作されたNK細胞を含み、
第3の用量は、第2の用量の6~8日後に対象に投与され、少なくとも1.0×10
9個の操作されたNK細胞を含み、
操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも95%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する、使用。
【請求項91】
第1、第2および第3の用量の各々が、少なくとも1.5×10
9個のNK細胞を含む、請求項90に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年5月13日に出願された米国仮特許出願第63/201,792号および2022年3月14日に出願された米国仮特許出願第63/269,316号の優先権の利益を主張し、各々の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本明細書に開示されるいくつかの実施形態は、がん免疫療法のために遺伝子操作された細胞を含む方法および組成物に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、がん免疫療法の成功を達成するために、細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作された細胞、および特定の投薬レジメンに従うこのような細胞の投与に関する。
【背景技術】
【0003】
種々のがんについて、およびがん性細胞を健常な細胞から特異的に区別するために用いることができるがん性細胞がどのような特性を有するかについてさらなる知識が得られるにつれて、がん性細胞の顕著な特徴を利用する治療薬が開発中である。操作された免疫細胞を用いる免疫療法は、がんを処置する1つのアプローチである。
【0004】
ASCIIテキストファイル中の情報の参照による組み込み
本出願は、同時に提出される次のASCIIテキストファイルに含まれる配列表を参照することにより組み込む:ファイル名:NKT.078WO_ST25.txt;2022年5月7日に作製され、サイズは27,762バイトである。
【発明の概要】
【0005】
免疫療法は、疾患の処置における新たな技術的進歩を提供し、免疫細胞は、疾患または損傷細胞を特異的に識別し反応する特定の標的化および/またはエフェクター分子を発現するように操作されている。これは、少なくとも部分的には、全ての細胞が影響を受ける化学療法などのより伝統的なアプローチとは対照的に、疾患または損傷細胞を特異的に標的化する可能性に起因する有望な進歩を示し、所望の転帰は、患者が生存するのに十分な健常な細胞が生存することである。1つの免疫療法アプローチは、目的の異常細胞の標的化された認識および破壊を達成するための免疫細胞におけるキメラ受容体の組換え発現である。
【0006】
いくつかの実施形態では、がん免疫療法のための、遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞集団であって、培養で拡大された複数のNK細胞を含み、複数のNK細胞は、NKG2D、リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含む細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される、遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞集団が本明細書に提供される。
【0007】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞、第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞を含み、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量から5~10日後に対象に投与され、第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.0×109個のNK細胞を含み、操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するキメラ受容体を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、追加用量が、ある投薬サイクル、例えば、第4、第5またはそれより多い用量に加えられ得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたNK細胞の少なくとも第1、第2、および第3の用量を対象に投与することを含む、がんを処置する方法が提供され、第2の用量は、第1の用量の6~8日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量の6~8日後に対象に投与され、第1の用量、第2の用量および第3の用量の各々は、少なくとも1.0×109個のNK細胞を含み、操作されたNK細胞は、対象に対して同種であり、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するキメラ受容体を発現するように操作される。
【0009】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたNK細胞の少なくとも第1、第2、および第3の用量の投与によって、がんを処置するためのNKG2D受容体のリガンドを標的とするキメラ受容体を発現する操作されたNK細胞集団の使用が提供され、第2の用量は、第1の用量の6~8日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量の6~8日後に対象に投与され、第1、第2、および第3の用量は、少なくとも1.0×109個の操作されたNK細胞を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の用量は、各々、約1.5×109個のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の用量は、各々、少なくとも1.5×109個のNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の投薬は、各々、より大きな細胞数、例えば、2×109個のNK細胞、3×109個のNK細胞、4×109個のNK細胞、5×109個のNK細胞、またはそれ以上、例えば1.5×109個のNK細胞を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、投薬サイクルは、約14日間から約35日間、例えば、約21日間または約28日間である。いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の用量の操作されたNK細胞は、第1の時点から約21日以内に対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の用量の操作されたNK細胞は、第1の時点から約14日以内に対象に投与される。
【0012】
一部の実施形態によれば、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始される。実施形態に応じて、第1の投薬サイクルの後に、1回以上の追加の投薬サイクル、例えば、2、3、4回またはそれ以上の追加サイクルが続いてもよい。追加のサイクルは、対象におけるがんの状態に応じて、例えば、進行または追加のがんの発生の場合に投与することができる。いくつかの実施形態では、対象が完全奏効(例えば、がんがない)を示す場合、追加のサイクルは必要ない。
【0013】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンおよび関連する方法および使用は、少なくとも2用量のフルダラビンを含むリンパ球枯渇レジメンを、がんを有する対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、少なくとも2用量のシクロホスファミドおよび少なくとも2用量のフルダラビンを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の3日前に投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約50~約1000mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約5~約100mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約100~約600mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約10~約60mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約200~約400mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約20~約40mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約300mg/m2(例えば、約250~350mg/m2)の量で投与され、フルダラビンは、約30mg/m2(例えば、約25~25mg/m2)の量で投与される。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、少なくとも2用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)および少なくとも2用量のフルダラビンを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、Ara-Cの5日間の1日用量およびフルダラビンの5日間の1日用量を含み、第1の用量のAra-Cおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の7日前に投与される。いくつかの実施形態では、最終用量のAra-Cおよびフルダラビンと投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約0.1~約20g/m2/日の量で投与され、フルダラビンは、約5~約100mg/m2/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約0.5~約10g/m2/日の量で投与され、フルダラビンは、約10~約60mg/m2/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約1~約5g/m2/日の量で投与され、フルダラビンは、約20~約40mg/m2/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約2g/m2/日(例えば、約1.5~2.5g/m2/日)の量で投与され、フルダラビンは、約30mg/m2/日(例えば、約25~35mg/m2/日)の量で投与される。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1および第2の用量の操作されたNK細胞は、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に対象に投与される。実施形態に応じて、シクロホスファミド、Ara-Cおよび/またはフルダラビンに加えて、またはその代わりに、例えば、ダウノルビシン(ダウノマイシン)もしくはイダルビシン、ミコフェノール酸モフェチル、および/またはベンダムスチンなどの他のリンパ球枯渇剤を使用することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンならびに関連する方法および使用は、がんが血液がんである対象を処置するように構成される。いくつかの実施形態では、がんは、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)である。いくつかの実施形態では、対象は、R/R AMLを有し、投薬レジメンの前に、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗白血病治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有し、投薬レジメンの前に、少なくとも1ラインであるが3ライン以下の以前の治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、中間、高、または非常に高リスクのMDSとして分類され、再発および/または難治性MDSを有する。いくつかの実施形態では、対象は、投薬レジメンの前に、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗MDS治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、投薬レジメンの前に、血液試料中の芽球が約5~10%未満、約5~8%未満、または約5%未満である。いくつかの実施形態では、対象は、投薬レジメンの前に、白血球数が30×109個未満もしくはそれに等しいWBC/L、28×109個未満もしくはそれに等しいWBC/L、または約25×109個未満もしくはそれに等しいWBC/Lである。いくつかの実施形態では、対象は、白血病性髄膜炎または既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示さず、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加を有しない。
【0016】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンならびに関連する方法および使用は、がんが固形腫瘍である対象を処置するように構成される。いくつかの実施形態では、がんは、肝内胆管癌腫、および大腸がんからの二次転移である肝腫瘍を含む肝腫瘍である。
【0017】
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされるキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞はまた、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号36および/または38と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、対象に対して同種である。いくつかの実施形態では、投薬レジメン、関連する方法および/または使用は、芽球細胞数の減少、血小板数の増加、および好中球数の増加のうちの1つ以上をもたらす。
【0018】
いくつかの実施形態では、連続する少なくとも3用量の遺伝子操作されたNK細胞を静脈内投与することによって、対象におけるがんを処置するためのNKG2D受容体のリガンドを標的とするキメラ受容体を発現する操作されたNK細胞の集団の使用が提供され、第1の用量の遺伝子操作されたNK細胞は、第1の時点で対象に投与され、少なくとも1.0×109個の遺伝子操作されたNK細胞を含み、第2の用量は、第1の用量から6~8日後に対象に投与され、少なくとも1.0×109個の遺伝子操作されたNK細胞を含み、第3の用量は、第2の用量から6~8日後に対象に投与され、少なくとも1.0×109個の遺伝子操作されたNK細胞を含み、第1の時点は、(i)シクロホスファミドが約300mg/m2の量で投与され、フルダラビンが約30mg/m2の量で投与される、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビン、または(ii)Ara-Cが約2g/m2/日の量で投与され、フルダラビンが約30mg/m2/日の量で投与される、5日間の1日用量のAra-Cおよび5日間の1日用量のフルダラビンのいずれかを含むリンパ球枯渇プロセスの終了から約2日後であり、操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも95%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.5×109個のNK細胞を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞、第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量から5~10日後に対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.5×109個のNK細胞(または50kg未満の対象については少なくとも3×107個/kg)を含み、操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含むキメラ受容体を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、OX40サブドメインおよびCD3ゼータサブドメインを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたNK細胞はまた、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現する。いくつかの実施形態では、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、1回以上の追加投薬サイクルが続いてもよい。
【0020】
また、本明細書では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたNK細胞、第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞を含み、第1の用量は、第1の時点で対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量から5~10日後に対象に投与され、第1、第2および第3の用量の各々は、1.5×109個のNK細胞を含み、少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するドメインを含むキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、第1の投薬サイクルは、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、1つ以上の追加の投薬サイクルが続いてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、投薬サイクルは、約14日~約35日である。いくつかの実施形態では、投薬サイクルは、約21日または約28日(21、22、23、24、25、26、27、または28日を含む)である。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、少なくとも2用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)および少なくとも2用量のフルダラビンを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、Ara-Cの3、4、または5日間の1日用量、およびフルダラビンの3、4、または5日間の1日用量を含み、第1の用量のAra-Cおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の5~7日前に投与される。いくつかの実施形態では、Ara-Cおよびフルダラビンの最終用量と投薬サイクルの開始の間に、1日、2日、または3日を経過させることができる。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約0.2~20g/m2/日(例えば、0.5~10g/m2/日)の量で投与され、フルダラビンは、約5~75mg/m2/日(例えば、10~60mg/m2/日)の量で投与される。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約1~5g/m2/日の量で投与され、フルダラビンは、約20~40mg/m2/日の量で投与される。いくつかの実施形態では、Ara-Cは、約2g/m2/日の量で投与され、フルダラビンは、約30mg/m2/日の量で投与される。
【0022】
いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、少なくとも2用量のシクロホスファミドおよび少なくとも2用量のフルダラビンを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の3日前に投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、1日、2日、または3日を経過させることができる。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約10~1000mg/m2(例えば、約100~600mg/m2)の量で投与され、フルダラビンは、約5~100mg/m2(約10~60mg/m3)の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約200~400mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約20~40mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約500mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約30mg/m2の量で投与される。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1および第2の用量の操作されたNK細胞は、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量の操作されたNK細胞は、第1の時点から約21日以内に対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量の操作されたNK細胞は、第1の時点から約14日以内に対象に投与される。
【0024】
さらに、少なくとも第1の投薬サイクルを含む投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、第1、第2、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞から構成され、操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含むキメラ受容体を発現するように操作され、第1の用量のサイクルは、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第3の用量は、第1の時点から11~16日後に対象に投与され、第1、第2、および第3の用量を組み合わせると、約40億個の操作されたNK細胞の投与をもたらす。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、各々、約1.5×109個のNK細胞を含む。
【0025】
本明細書に提供される投薬レジメンのいくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33と少なくとも約90%、95%、または98%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされるキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも約90%、95%、または98%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、NK細胞によって発現されるmbIL15は、配列番号36と少なくとも約90%、95%、または98%の配列同一性を有する。別の実施形態は、配列番号38と少なくとも95%の配列同一性を有するmbIL15を利用する。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、6~8日の間隔で投与され、第2および第3の用量は、6~8日の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、各用量は、1.5×109個のNK細胞を含み、第2の用量は、第1の用量の約7日後に投与され、第3の用量は、第2の用量の約7日後に投与される。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される投薬レジメンは、血液がんなどのがんの処置用である。いくつかの実施形態では、がんは、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)である。いくつかの実施形態では、対象は、R/R AMLを有し、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗白血病治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有し、少なくとも1ラインであるが3ライン以下の以前の治療を受けていた。一部の実施形態では、対象は、中間、高、または非常に高リスクのMDSとして分類されるのに適格であり、再発および/または難治性MDSを有する。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗MDS治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、血液試料中の芽球が約5%未満である。いくつかの実施形態では、対象は、25×109個のWBC/L未満またはそれに等しい白血球数を有する。いくつかの実施形態では、対象は、白血病性髄膜炎または既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示さず、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加を有しない。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される投薬レジメンは、固形腫瘍などのがんの処置用である。いくつかの実施形態では、がんは、肝内胆管癌腫、および大腸がんからの二次転移である肝腫瘍を含む肝腫瘍である。
【0029】
本明細書に提供される投薬レジメンのいくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、対象に対して同種である。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、芽球細胞数の減少、血小板数の増加、および好中球数の増加のうちの1つ以上をもたらす。
【0030】
いくつかの実施形態では、再発/難治性(R/R)急性骨髄異形成症候群(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)を処置するための投薬レジメンが提供され、少なくとも第1の投薬サイクルを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなり、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞、第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞を含み、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量から5~10日後に対象に投与され、第1、第2、および第3の用量の各々は、少なくとも1.5×109個のNK細胞を含み、操作されたNK細胞は、対象に対して同種であり、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合し、配列番号34と少なくとも約80%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現するように操作され、第1の投薬サイクルは、対象が少なくとも3用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)および少なくとも3用量のフルダラビンを受けた後に開始され、第1の投薬サイクルは、1回以上の追加の投薬サイクルが続いてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、再燃/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)を処置するための方法が提供され、少なくとも3用量のシトシンアラビノシド(Ara-C)および少なくとも3用量のフルダラビンを、R/R AMLまたはMDSを有する対象に投与することを含み、投与されるAra-Cの量は約1~5g/m2/日の範囲であり、投与されるフルダラビンの量は約20~40mg/m2/日の範囲であり、少なくとも第1、第2、および第3の用量の遺伝子操作されたNK細胞を対象に投与することを含み、第1の用量は、Ara-Cおよびフルダラビンの最終用量後に対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から6~8日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の用量から6~8日後に対象に投与され、第1、第2および第3の用量の各々は、少なくとも1.5×109個のNK細胞を含み、操作されたNK細胞は、対象に対して同種であり、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合し、配列番号34と少なくとも約80%の配列同一性を有するキメラ受容体を発現するように操作され、第1の投薬サイクルは、1回以上の追加の投薬サイクルが続いてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、R/R AMLもしくはMDSの状態の進行または退行に関連する少なくとも1つの測定基準を評価して、追加の投薬サイクルを投与するかどうかを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、再発および/または難治性急性骨髄性白血病を有し、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗白血病治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有し、少なくとも1ラインであるが3ライン以下の以前の治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、中間、高、または非常に高リスクのMDSとして分類されるのに適格であり、再発および/または難治性MDSを有する。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも1ラインであるが2ライン以下の以前の標準的な抗MDS治療を受けていた。いくつかの実施形態では、対象は、血液試料中の芽球が約5%未満であり、25×109個のWBC/L未満またはそれに等しい白血球数を有し、および/または白血病性髄膜炎もしくは既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示さず、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加を有しない。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、本明細書で提供される第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞、および第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞から構成され、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第1および第2の用量の各々は、少なくとも1.5×108個のNK細胞(または50kg未満の対象については少なくとも3×106個/kg)を含み、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、第1の投薬サイクルは、第2またはそれより多い投薬サイクルが続いてもよい。
【0034】
さらなる実施形態は、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンを提供し、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞および第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞からなり、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第1の用量および第2の用量は、少なくとも1.5×108個のNK細胞を含み、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、第1の投薬サイクルは、第2またはそれより多い投薬サイクルが続いてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、投薬サイクルは、約14日から約35日間、またはそれより長い間であり、対象は、適宜、投薬サイクルの終了時またはより遠い時点(例えば、継続的に)で、がんの少なくとも1つの測定基準に関して評価され、追加の投薬サイクルを開始すべきかどうかを決定する。いくつかの実施形態では、投薬サイクルは、約21日である。いくつかの実施形態では、投薬サイクルは、約28日である。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、第1および第2の用量の操作されたNK細胞は、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に対象に投与される。これは、有利には、操作されたNK細胞の集団数をまだ回復しておらず、および希釈していない対象の天然免疫細胞数に基づいて、より大きなエフェクター:標的細胞比を可能にする。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量の操作されたNK細胞は、第1の時点から約14~21日以内に対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量の操作されたNK細胞は、第1の時点から約14日以内に対象に投与される。
【0037】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞および第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞から構成され、第1の用量のサイクルは、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第1および第2の用量の各々は、少なくとも1.5×108個のNK細胞、または50kg未満の対象については少なくとも3×106個/kgを含み、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、第1の投薬サイクルの第2の用量は、対象の天然免疫細胞集団がリンパ球枯渇プロセスから回復する前に投与される。
【0038】
また、本明細書では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンであって、第1の投薬サイクルは、第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞および第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞から構成され、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、組み合わせて、第1および第2の用量は、約3億~約30億個の操作されたNK細胞の投与をもたらし、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、第1の投薬サイクルの第2の用量は、第1の時点の約14~21日以内に投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、各々、約1.5×108個のNK細胞を含み、第1および第2の用量は、各々、約4.5×108個のNK細胞を含み、または第1および第2の用量は、各々、約1.5×109個のNK細胞を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、標準的な化学療法リンパ球枯渇プロセスである。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、少なくとも2用量のシクロホスファミドおよび少なくとも2用量のフルダラビンを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の3日前に投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約100~600mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約10~60mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約200~400mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約20~40mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約300mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約30mg/m2の量で投与される。
【0040】
本明細書で提供される実施形態によれば、操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含むキメラ受容体を発現するように操作される投薬レジメンが提供される。いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、OX40サブドメインおよびCD3ゼータサブドメインを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子操作されたNK細胞はまた、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現する。
【0041】
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされるキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号36および/または38と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、少なくとも1.5×108個のNK細胞を含み、第1および第2の用量は、6~8日の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、1.5×108個のNK細胞を含み、第1および第2の投薬は、約7日間の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、少なくとも4.5×108個のNK細胞を含み、第1および第2の用量は、6~8日の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、4.5×108個のNK細胞を含み、第1および第2の投薬は、約7日間の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、少なくとも1.5×109個のNK細胞を含み、第1および第2の用量は、6~8日の間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1および第2の用量は、1.5×109個のNK細胞を含み、第1および第2の用量は、約7日間の間隔で投与される。
【0043】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、血液がんを処置するために構成される。いくつかの実施形態では、血液がんは、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、固形腫瘍を治療するために構成される。いくつかの実施形態では、がんは肝腫瘍である。いくつかの実施形態では、肝腫瘍は、肝内胆管癌腫である。いくつかの実施形態では、肝腫瘍は、大腸がんからの1つ以上の二次転移である。
【0045】
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、対象に対して同種である。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、芽球細胞数の減少、血小板数の増加、および好中球数の増加のうちの1つ以上をもたらす。
【0046】
いくつかの実施形態では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、少なくとも1用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞から構成され、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第1の用量は、少なくとも1×108個のNK細胞、または50kg未満の対象については2×106個/kgを含み、操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含むキメラ受容体を発現するように操作され、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、OX40サブドメインおよびCD3ゼータサブドメインを含み、遺伝子操作されたNK細胞はまた、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現し、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、第1の投薬サイクルは、その後の投薬サイクルが続いてもよい。
【0047】
また、本明細書では、少なくとも第1の投薬サイクルを含む、がん免疫療法のための投薬レジメンが提供され、第1の投薬サイクルは、少なくとも第1の用量の遺伝子操作されたナチュラルキラー(NK)細胞、第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞、および第2の用量の遺伝子操作されたNK細胞から構成され、第1の用量は、第1の時点でがん免疫療法を必要とする対象に投与され、第2の用量は、第1の時点から5~10日後に対象に投与され、第3の用量は、第2の時点から5~10日後に対象に投与され、第1、第2、および第3の用量の各々は、少なくとも1×108個のNK細胞、または50kg未満の対象については少なくとも2×106個/kgを含み、操作されたNK細胞の少なくとも一部は、ナチュラルキラー細胞群2D(NKG2D)のリガンドと結合するドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含むキメラ受容体を発現するように操作され、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、OX40サブドメインおよびCD3ゼータサブドメインを含み、遺伝子操作されたNK細胞はまた、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現し、第1の投薬サイクルは、天然免疫細胞数を減少させるために、対象がリンパ球枯渇プロセスを経た後に開始され、第1の投薬サイクルは、第2またはそれより多い投薬サイクルが続いてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、標準的な化学療法リンパ球枯渇プロセスである。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、少なくとも2用量のシクロホスファミドおよび少なくとも2用量のフルダラビンを含む。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇プロセスは、3用量のシクロホスファミドおよび3用量のフルダラビンを含み、第1の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の5日前に投与され、第2の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の4日前に投与され、第3の用量のシクロホスファミドおよびフルダラビンは、投薬サイクルの開始の3日前に投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドおよびフルダラビンの第3の用量と投薬サイクルの開始の間に、約2日間を経過させることができる。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約100~600mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約10~60mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約200~400mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約20~40mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミドは、約300mg/m2の量で投与され、フルダラビンは、約30mg/m2の量で投与される。
【0049】
いくつかの実施形態では、投薬サイクルは、約14~約28日の範囲であり、対象は、適宜、追加の投薬サイクルが正当化されるかどうかを決定するために、投薬サイクルの終了時または終了後に、がんの少なくとも1つの測定基準に関して評価される。
【0050】
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされるキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有するキメラ受容体を発現する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号36および/または38と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、1.0×108個のNK細胞であり、6~8日間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、約1.0×108個のNK細胞であり、約7日間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、約3×108個のNK細胞であり、6~8日間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、約3×108個のNK細胞であり、約7日間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、約1×109個のNK細胞であり、6~8日間隔で投与される。いくつかの実施形態では、第1、第2、および第3の用量は、約1×109個のNK細胞であり、約7日間隔で投与される。
【0052】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、血液がんの処置用である。いくつかの実施形態では、血液がんは、再発/難治性(R/R)急性骨髄性白血病(AML)または高リスク骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0053】
いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、固形腫瘍の処置用である。いくつかの実施形態では、がんは肝腫瘍である。いくつかの実施形態では、肝腫瘍は、肝内胆管癌腫である。いくつかの実施形態では、肝腫瘍は、大腸がんからの二次転移である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】
図1は、NKG2Dのリガンドの結合部分、およびmbIL15をコードする(受容体B)またはmbIL15をコードしない(受容体A)のいずれかを含む、細胞傷害性受容体コンストラクトをコードするポリヌクレオチドの非限定的な概略図を示す。
【
図2】
図2は、NKG2D受容体ドメイン(例えば、断片)およびmbIL15をコードする(受容体B)またはmbIL15をコードしない(受容体A)のいずれかを含む、細胞傷害性受容体コンストラクトをコードするポリヌクレオチドの非限定的な概略図を示す。
【
図3】
図3A~3Bは、本明細書に開示される実施形態による投薬サイクルの非限定的な概略図を示す。
図3Aは、3つの投薬事象を含む28日サイクルを示す。
図3Bは、2つの投薬事象を含む28日サイクルを示す。
【
図4】
図4A~4Bは、初期患者反応データを示す。
図4Aは、処置前および3用量レジメン後の対象における芽球数の変化を示す。
図4Bは、3用量レジメン中およびその後の例示的な対象におけるNK細胞数の痕跡を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本明細書に提供される方法および組成物の一部の実施形態は、免疫療法における使用のための操作された免疫細胞およびその組み合わせに関する。いくつかの実施形態では、操作された細胞は、例えば、細胞傷害性誘導性受容体複合体を発現するために、複数の方法で操作される。本明細書で使用される場合、用語「細胞傷害性受容体複合体」は、その通常の意味を与えられるものとし、(特に断らない限り)、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラ受容体(NKG2Dキメラ受容体の場合、活性化キメラ受容体とも呼ばれる)に言及するものとする。いくつかの実施形態では、細胞は、さらに、非腫瘍組織および/または他の治療細胞に対する細胞の反応性の修飾を達成するように操作される。
【0056】
用語「抗がん効果」とは、限定されないが、腫瘍容量の低下、がん細胞数の低下、転移数の低下、平均寿命の増加、がん細胞増殖の低下、がん細胞生存の低下、および/またはがん性状態に関連する種々の生理学的症状の軽快を含む、種々の手段によって発現し得る生物学的効果を指す。
【0057】
細胞型
本明細書に提供される方法および組成物の一部の実施形態は、免疫細胞などの細胞を指す例えば、NK細胞またはT細胞などの免疫細胞は、NKG2Dリガンド指向性キメラ受容体などのキメラ受容体を含むように操作され得るか、または本明細書に記載されるように、上記キメラ受容体をコードする核酸を含むように操作され得る。さらなる実施形態は、本明細書に開示されるNKG2Dキメラ受容体複合体などの別の細胞傷害性受容体複合体を発現させるために、第2のセットの細胞を操作することに関する。
【0058】
伝統的な抗がん療法は、外科的アプローチ、放射線療法、化学療法、またはこれらの方法の組み合わせに依存していた。研究によってある種のがんのメカニズムの一部についての理解が深まるにつれて、この知見は標的化されたがん治療法の開発に利用された。標的療法は、がん細胞、またはがんの増殖を支持する細胞(血管細胞など)に見出される特定の遺伝子またはタンパク質を標的とする特定の薬物を用いて、がん細胞の増殖を抑制または阻止するがん処置である。より最近では、遺伝子工学によって、免疫系の特定の側面を利用してがんと戦うアプローチを開発することが可能になってきた。いくつか場合では、患者自身の免疫細胞を修飾して、その患者のがんタイプを特異的に根絶する。以下により詳細に記載されるように、T細胞、ナチュラルキラー(NK細胞)、またはそれらの組み合わせなどの種々のタイプの免疫細胞を使用することができる。
【0059】
また、がん免疫療法を容易にするために、標的結合部分(例えば、がん細胞により発現されるリガンドの細胞外結合部)および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含むキメラ受容体をコードするポリヌクレオチド、ポリペプチド、およびベクターが本明細書において提供される。例えば、一部の実施形態は、がんへの免疫細胞の標的化を促進し、がん細胞に細胞傷害効果を及ぼすために、とりわけ、腫瘍マーカー、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6に対する指向性を有するNKG2D細胞外ドメインを含む活性化キメラ受容体をコードするポリヌクレオチド、ポリペプチド、またはベクターを含む。また、このようなキメラ受容体を発現する操作された免疫細胞(例えば、NK細胞および/またはT細胞)が提供される。また、本明細書には、いくつかの実施形態では、2つ以上のサブドメイン、例えば、第1および第2のリガンド結合受容体および細胞傷害性シグナル伝達複合体を含む細胞外ドメインを含むコンストラクトをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチド、およびベクターが提供される。また、このような二重特異性コンストラクトを発現する操作された免疫細胞(例えば、NK細胞および/またはT細胞)(いくつかの実施形態では、第1および第2のリガンド結合ドメインは、同じリガンドを標的とする)が提供される。がんを処置する方法、およびがん免疫療法のためのこのような細胞の他の使用もまた、本明細書に提供される。
【0060】
免疫療法のための操作された細胞
いくつかの実施形態では、免疫系の細胞は、腫瘍細胞などの標的細胞に対して増大した細胞傷害効果を有するように操作される。例えば、免疫系の細胞は、本明細書に記載されるように、腫瘍指向性キメラ受容体および/または腫瘍指向性CARを含むように操作され得る。いくつかの実施形態では、白血球(white blood cell)または白血球(leukocyte)は、それらの本来の機能は、異常な細胞の増殖および感染症に対して身体を防御することであるため使用される。ヒト免疫系において特定の役割を果たす種々のタイプの白血球が存在し、したがって、本明細書に開示される細胞の操作のための好ましい出発点である。白血球には、顆粒球および無顆粒球(それぞれ細胞質中の顆粒の存在または非存在)がある。顆粒球には、好塩基球、好酸球、好中球、および肥満細胞が含まれる。無顆粒球には、リンパ球および単球が含まれる。以下の細胞または他の、明細書に記載される細胞などの細胞は、キメラ抗原受容体、例えば、NKG2Dリガンド指向性キメラ受容体、またはキメラ受容体をコードする核酸を含むように操作することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、膜結合インターロイキン15(mbIL15)ドメインを共発現するように操作されてもよい。以下により詳細に検討されるように、いくつかの実施形態では、治療細胞を、さらに、遺伝的に修飾して、細胞傷害性および/または細胞の持続性を増大させる。いくつかの実施形態では、遺伝子修飾は、治療細胞の効力の減少または寿命の短縮を引き起こす腫瘍微小環境から発するシグナルに抵抗する細胞の能力を増大させる。
【0061】
免疫療法のための単球
単球は白血球の亜型である。単球は、マクロファージおよび骨髄系樹状細胞に分化することができる。単球は適応免疫系と関連しており、食作用、抗原提示、サイトカイン産生の主要な機能を担っている。食作用とは、細胞物質、または細胞全体を取り込んだ後、取り込まれた細胞物質を消化して破壊するプロセスである。いくつかの実施形態では、単球は、本明細書に開示されるように、1つ以上のさらなる操作された細胞と関連して使用される。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、腫瘍細胞上のリガンド、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)、および適宜膜結合インターロイキン15(mbIL15)ドメインを標的化する活性化キメラ受容体を発現するように操作された単球に関する。
【0062】
免疫療法のためのリンパ球
リンパ球は、白血球の他の一次サブタイプであり、T細胞(細胞媒介性、細胞傷害性適応免疫)、ナチュラルキラー細胞(細胞媒介性、細胞傷害性先天性免疫)、およびB細胞(体液性、抗体駆動性適応免疫)を含む。B細胞は、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従って操作されるが、いくつかの実施形態はまた、操作されたT細胞または操作されたNK細胞(T細胞とNK細胞の混合物が、一部の実施形態では、同じドナー由来または異なるドナー由来のいずれかで使用される)に関連する。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、腫瘍細胞上のリガンド、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)、および適宜膜結合インターロイキン15(mbIL15)ドメインを標的化する活性化キメラ受容体を発現するように操作されたリンパ球に関する。
【0063】
免疫療法のためのT細胞
T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体の存在に基づいて、他のリンパ球サブタイプ(例えば、B細胞またはNK細胞)と区別することができる。T細胞は、エフェクターT細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、記憶T細胞、調節性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連不変T細胞およびガンマデルタT細胞を含む種々のサブタイプに分けられる。一部の実施形態では、特異的サブタイプのT細胞を操作する。一部の実施形態では、T細胞サブタイプの混合プールを操作する。一部の実施形態では、本明細書に開示される細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作されるT細胞タイプの特異的選択は存在しない。いくつかの実施形態では、サイトカイン刺激の使用などの特異的技術を使用して、特異的マーカープロファイルを有するT細胞の拡大/収集を増大させる。例えば、いくつかの実施形態では、特定のヒトT細胞、例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞の活性化は、刺激分子としてのCD3および/またはCD28の使用によって達成される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞傷害性受容体複合体および/またはホーミング部分を発現するT細胞の治療上有効量を投与することを含む、がんまたは感染症を処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、操作されたT細胞は自己細胞であり、一方、一部の実施形態では、T細胞は同種異系細胞である。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、腫瘍細胞上のリガンドを標的化する活性化キメラ受容体、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)、および適宜膜結合インターロイキン15(mbIL15)共刺激ドメインを発現するように操作されたT細胞に関する。
【0064】
免疫療法のためのNK細胞
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるように、細胞傷害性受容体複合体および/またはホーミング部分を発現する治療上有効量のナチュラルキラー(NK)細胞を投与することを含む、がんまたは感染症を処置または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は自家細胞であり、一方、いくつかの実施形態では、NK細胞は同種異系細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞の天然の細胞傷害性ポテンシャルが比較的高いため、NK細胞が好ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された細胞が、NK細胞の細胞傷害活性をさらに上方制御することができ、標的細胞(例えば、腫瘍または他の疾患細胞)に対してさらに効果的な活性をもたらすことが予想外に有益である。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、腫瘍細胞上のリガンドを標的とする活性化キメラ受容体、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)、および適宜膜結合インターロイキン15(mbIL15)ドメインを発現するように操作されたNK細胞に関する。いくつかの実施形態では、不死化NK細胞が使用され、本明細書に開示されるように、操作に供される。いくつかの実施形態では、NK細胞は、細胞株NK-92に由来する。NK-92細胞はNK細胞に由来するが、活性化受容体の大部分を保持しながら、正常なNK細胞によって示される主要な抑制性受容体を欠いている。インターフェロン-γ(IFNγ)、グランザイムB、および/またはパーフォリン産生の上方制御を可能にする、特定のさらなる阻害性受容体、例えば、SMAD3をサイレンシングするように操作されたNK-92細胞に関連して本明細書に記載されるNK-92細胞のいくつかの実施形態。NK-92細胞株に関するさらなる情報は、国際公開第1998/49268号および米国特許出願公開第2002-0068044号に開示され、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。NK-92細胞は、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される他の細胞型のうちの1つ以上と組み合わせて使用される。例えば、一実施形態では、NK-92細胞は、本明細書に開示されるNK細胞と組み合わせて使用される。追加の実施形態では、NK-92細胞は、本明細書に開示されるT細胞と組み合わせて使用される。
【0065】
がん免疫療法のための造血幹細胞
一部の実施形態では、造血幹細胞(HSC)は、本明細書に開示される免疫療法の方法において使用される。いくつかの実施形態では、細胞は、ホーミング部分および/または細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。HSCは、いくつかの実施形態では、長期間の血球産生のために生着するそれらの能力を利用するために使用され、例えば、がんの寛解と戦うために、標的化された抗がんエフェクター細胞の持続的な供給源をもたらし得る。いくつかの実施形態では、この継続的な産生は、例えば、腫瘍微小環境による他の細胞型のアネルギーまたは消耗を相殺するのを助ける。いくつかの実施形態では、同種異系HSCが使用されるが、一方、いくつかの実施形態では、自家HSCが使用される。いくつかの実施形態では、HSCは、本明細書に開示される1つ以上のさらなる操作された細胞型と組み合わせて使用される。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、腫瘍細胞上のリガンドを標的とする活性化キメラ受容体、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)を発現するように操作された造血幹細胞に関するものであり、場合により、膜結合インターロイキン15(mbIL15)ドメインを含む。
【0066】
誘導性多能性幹細胞
一部の実施形態では、人工多能性幹細胞(iPSC)は、本明細書に開示される免疫療法の方法において使用される。iPSCを使用して、いくつかの実施形態では、限定されないが、同一の遺伝子修飾を選択された同一の部位に含むiPSCまたはより分化程度の低い細胞の分化を介して、1つまたはいくつかの遺伝子修飾を選択された部位に含む、CD34細胞、造血内皮細胞、HSC(造血幹細胞および造血前駆細胞)、造血性多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、およびB細胞を含む非万能性細胞に分化し、誘導するそれらの能力を利用する。いくつかの実施形態では、iPSCは、iPSC由来のNKまたはT細胞を生成するために使用される。いくつかの実施形態では、細胞は、ホーミング部分および/または細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、iPSCは、本明細書に開示される1つ以上の追加の操作された細胞型と組み合わせて使用される。本明細書に開示される方法および組成物のいくつかの実施形態は、腫瘍細胞上のリガンドを標的とする活性化キメラ受容体、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)、および場合により膜結合インターロイキン15(mbIL15)共刺激ドメインを発現するように操作された人工多能性幹細胞に関する。
【0067】
細胞外ドメイン(腫瘍結合因子)
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、本明細書に記載されるように、腫瘍結合ドメイン(抗原結合タンパク質または抗原結合ドメインとも呼ばれる)を含む細胞外ドメインを含むキメラ受容体に関する。本明細書に記載される組成物および方法のいくつかの実施形態は、本明細書に記載されるように、腫瘍細胞によって発現されるリガンドに結合するリガンド結合ドメインを含む細胞外ドメインを含むキメラ受容体(活性化キメラ受容体とも呼ばれる)に関する。リガンド結合ドメインは、実施形態に依存して、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6(とりわけ)を標的化する。
【0068】
いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、抗体、抗体断片、scFv、Fv、Fab、(Fab’)2、単一ドメイン抗体(SDAB)、vHもしくはvLドメイン、ラクダVHHドメイン、または非免疫グロブリン足場、例えば、DARPIN、アフィボディ、アフィリン、アドネクチン、アフィチン、レペボディ、フィノマー、アルファボディ、アビマー、アトリマー、センチリン、プロネクチン、アンチカリン、クニッツドメイン、アルマジロリピートタンパク質、自己抗原、受容体またはリガンドの野生型もしくは非野生型配列に由来するかまたはそれを含む。一部の実施形態では、腫瘍結合ドメインは、1を超える抗原結合ドメインを含む。
【0069】
抗原結合タンパク質
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質が提供される。本明細書で使用される場合、用語「抗原結合タンパク質」は、その通常の意味が与えられるものとし、また、抗原に結合する抗原結合断片、および、適宜、抗原結合断片が抗原への抗原結合タンパク質の結合を促進する立体構造をとることを可能にする足場またはフレームワーク部分を含むタンパク質をも指すものとする。一部の実施形態では、抗原は、がん抗原またはその断片である。一部の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体由来の少なくとも1つのCDRを含む。一部の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体の重鎖由来の、または抗原に結合する抗体の軽鎖由来の3つのすべてのCDRを含む。さらに一部の実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体(重鎖由来の3つおよび軽鎖由来の3つ)由来の6つのすべてのCDRを含む。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、抗原に結合する抗体由来の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのCDRを含み、いくつかの実施形態では、CDRは、重鎖および/または軽鎖CDRの任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態における抗原結合断片は、抗体断片である。
【0070】
抗原結合タンパク質の非限定的な例としては、抗体、抗体断片(例えば、抗体の抗原結合断片)、抗体誘導体、および抗体類似体が挙げられる。さらなる具体的な例としては、限定されないが、一本鎖可変断片(scFv)、ナノボディ(例えば、ラクダ重鎖抗体のVHドメイン;VHH断片)、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片、および相補性決定領域(CDR)断片が挙げられる。これらの分子は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、またはブタ、イヌ、またはラクダなどの任意の哺乳動物源に由来することができる。抗体断片は、無傷の(例えば、天然の)抗体と標的抗原の結合について競合し得、断片は、無傷の抗体の修飾(例えば、酵素的または化学的切断)または組換えDNA技術もしくはペプチド合成を用いてデノボ合成され得る。抗原結合タンパク質は、例えば、移植されたCDRまたはCDR誘導体を有する代替のタンパク質骨格または人工足場を含むことができる。このような足場は、限定されないが、例えば、抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された突然変異を含む抗体由来足場、ならびに、例えば、生体適合性ポリマーを含む完全に合成された足場を含む。さらに、ペプチド抗体模倣物(「PAM」)、ならびに足場としてフィブロネクチン成分を利用する抗体模倣物に基づく足場を使用することができる。
【0071】
一部の実施形態では、抗原結合タンパク質は、単一のポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖に組み込まれた1つ以上の抗体断片を含む。例えば、抗原結合タンパク質は、限定されないが、ダイアボディ;細胞内抗体;ドメイン抗体(単一のVLもしくはVHドメイン、またはペプチドリンカーによって接続された2つ以上のVHドメイン);マキシボディ(maxibody)(Fc領域に融合した2つのscFv);トリアボディ;テトラボディ;ミニボディ(CH3ドメインに融合したscFv);ペプチボディ(Fc領域に結合した1つ以上のペプチド);線状抗体(相補的な軽鎖ポリペプチドとともに1対の抗原結合領域を形成する1対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1));小モジュラー免疫医薬;および免疫グロブリン融合タンパク質(例えば、IgG-scFv、IgG-Fab、2scFv-IgG、4scFv-IgG、VH-IgG、IgG-VH、およびFab-scFv-Fc)を含むことができる。
【0072】
一部の実施形態では、抗原結合タンパク質は、免疫グロブリンの構造を有する。本明細書で使用される場合、用語「免疫グロブリン」は、その通常の意味が与えられ、また、四量体分子を指すものとし、各四量体は2つの同一のポリペプチド鎖対を含み、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を画定する。
【0073】
軽鎖および重鎖内では、可変領域(V)および定常領域(C)は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、無傷の免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように抗体結合部位を形成する。
【0074】
免疫グロブリン鎖は、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって接続された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般的構造を示す。N末端からC末端まで、軽鎖と重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。
【0075】
ヒトの軽鎖はカッパ軽鎖およびラムダ軽鎖に分類される。抗体「軽鎖」とは、抗体分子中にそれらの天然に存在する立体構造で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。カッパ(K)およびラムダ(λ)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端まで、単一免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)および単一免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン(CL)を含むポリペプチドを含み得る。
【0076】
重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびイプシロン(ε)に分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、IgEとして定義する。抗体「重鎖」とは、その天然に存在する立体構造で抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち、より大きいものを指し、通常、抗体が属するクラスを決定する。重鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端に、単一免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン1(CH1)、免疫グロブリンヒンジ領域、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン2(CH2)、免疫グロブリン重鎖定常ドメイン3(CH3)、および、適宜免疫グロブリン重鎖定常ドメイン4(CH4)を含むポリペプチドを含み得る。
【0077】
IgGクラスは、サブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4にさらに分けられる。IgAクラスは、サブクラス、すなわちIgA1およびIgA2にさらに分けられる。IgMは、限定されないが、IgM1およびIgM2を含むサブクラスを有する。IgG、IgA、およびIgD抗体の重鎖は、3つのドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有し、IgMおよびIgE抗体の重鎖は、4つのドメイン(CH1、CH2、CH3、およびCH4)を有する。免疫グロブリン重鎖定常ドメインは、サブタイプを含む任意の免疫グロブリンアイソタイプ由来であり得る。抗体鎖は、CLドメインとCH1ドメイン間(例えば、軽鎖と重鎖間)、および抗体重鎖のヒンジ領域間のポリペプチド間ジスルフィド結合を介して互いに連結される。
【0078】
一部の実施形態では、抗原結合タンパク質は抗体である。用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質またはポリペプチド配列を指す。抗体は、モノクローナル、またはポリクローナル、多重または一本鎖、または無傷の免疫グロブリンであり得、天然供給源または組換え供給源に由来し得る。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であり得る。抗体は、「ヒト化」、「キメラ」または非ヒトであり得る。抗体は、任意のアイソタイプの無傷の免疫グロブリンを含み得、例えば、キメラ、ヒト化、ヒト、および二重特異性抗体を含む。無傷抗体は、一般的に、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む。抗体配列は、単一の種からのみ誘導することができ、または「キメラ」であり得、すなわち、抗体の異なる部分は、以下にさらに記載するように、2つの異なる種に由来することができる。他に指示がない限り、用語「抗体」はまた、2つの実質的に全長の重鎖および2つの実質的に全長の軽鎖を含む抗体を含むが、ただし、抗体が2つの全長の軽鎖および重鎖で構成される抗体と同じかまたは類似した結合および/または機能を保持することを条件とする。例えば、重鎖および/または軽鎖のN末端および/またはC末端における1、2、3、4または5個のアミノ酸残基の置換、挿入または欠失を有する抗体は定義に含まれるが、抗体が2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含む抗体と同じかまたは類似した結合および/または機能を保持することを条件とする。抗体の例としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、および合成抗体が挙げられる。一部の実施形態では、モノクローナルおよびポリクローナル抗体が提供される。本明細書で使用される場合、用語「ポリクローナル抗体」は、その通常の意味が与えられるものとし、また、組成および結合特異性において典型的に広く変化する抗体集団を指すものとする。本明細書で使用される場合、用語「モノクローナル抗体」(「mAb」)は、その通常の意味が与えられるものとし、また、同一の配列を有する抗体集団の1つ以上を指すものとする。モノクローナル抗体は、抗原上の特定のエピトープで抗原に結合する。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体の断片または抗原結合断片である。用語「抗体断片」は、抗原のエピトープと特異的に相互作用する(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布により)能力を保持する抗体の少なくとも1つの部分を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv断片、scFv抗体断片、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VHおよびCHIドメインからなるFd断片、線状抗体、sdAb(vLまたはvHのいずれか)などの一重ドメイン抗体、ラクダvHHドメイン、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片などの抗体断片から形成される多重特異性抗体、および抗体の単離されたCDRまたは他のエピトープ結合断片が挙げられる。抗原結合断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NARおよびbis-scFv(例えば、Hollinger and Hudson, Nature Biotechnology 23: 1126-1136, 2005を参照されたい)に組み込むことができる。抗原結合断片はまた、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドに基づく足場に移植することもできる(例えば、フィブロネクチンポリペプチドミニボディを記載する米国特許第6,703,199号を参照されたい)。抗体断片は、がん抗原(例えば、CD19)への特異的抗原結合を付与するのに十分な免疫グロブリンの少なくとも1つのCDRを含むFab、Fab’、F(ab’)2、および/またはFv断片を含み得る。抗体断片は、組換えDNA技術によって、または無傷抗体の酵素的もしくは化学的切断によって生成され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、Fab断片が提供される。Fab断片は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインを有する一価断片であり;F(ab’)2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する二価断片であり;Fd断片は、VHおよびCH1ドメインを有し;Fv断片は、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインを有し;ならびにdAb断片は、VHドメイン、VLドメイン、またはVHもしくはVLドメインの抗原結合断片を有する。いくつかの実施形態では、これらの抗体断片は、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、マキシボディ、ミニボディ、体内抗体、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NARおよびビス-scFvに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載されるように、少なくとも1つのCDRを含む。
【0081】
本明細書には、いくつかの実施形態では、一本鎖可変断片も提供される。本明細書で使用される場合、用語「一本鎖可変断片」(「scFv」)は、その通常の意味を与えられるものとし、また、リンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介してVLおよびVH領域が接続されて連続タンパク質鎖を形成する融合タンパク質を指すものとし、リンカーは、タンパク質鎖がそれ自身で折り返し、一価抗原結合部位を形成するのに十分な長さである。明瞭にすることを目的として、他に指示がない限り、「一本鎖可変断片」は、本明細書中で定義される抗体または抗体断片ではない。ダイアボディは、2つのポリペプチド鎖を含む二価抗体であり、各ポリペプチド鎖は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を減少させるかまたは許容しないように構成されたリンカーによって接続されたVHおよびVLドメインを含み、したがって、各ドメインが別のポリペプチド鎖上の相補的ドメインと対合することを可能にする。いくつかの実施形態によれば、ダイアボディの2つのポリペプチド鎖が同一である場合、それらの対合から生じるダイアボディは、2つの同一の抗原結合部位を有する。異なる配列を有するポリペプチド鎖を用いて、2つの異なる抗原結合部位を有するダイアボディを作製することができる。同様に、トリボディおよびテトラボディは、それぞれ3つおよび4つのポリペプチド鎖を含む抗体であり、それぞれ、3つおよび4つの抗原結合部位を形成するが、これらは同じであるかまたは異なることができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、1つ以上のCDRを含む。本明細書で使用される場合、用語「CDR」は、その通常の意味を与えられるものとし、抗体可変配列内の相補性決定領域(「最小認識単位」または「超可変領域」とも呼ばれる)も指すものとする。CDRは、抗原結合タンパク質が目的の特定の抗原に特異的に結合することを可能にする。3つの重鎖可変領域CDR(CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3)および3つの軽鎖可変領域CDR(CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3)がある。2つの鎖の各々におけるCDRは、典型的には、フレームワーク領域によって整列され、標的タンパク質上の特定のエピトープまたはドメインに特異的に結合する構造を形成する。N末端からC末端に、天然に存在する軽鎖および重鎖可変領域はともに、典型的には、これらのエレメントの以下の順序:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4に一致する。重鎖可変領域については、その順序は、典型的には、N末端からC末端にFW-H1、CDR-H1、FW-H2、CDR-H2、FW-H3、CDR-H3、およびFW-H4である。軽鎖可変領域については、その順序は、典型的には、N末端からC末端にFW-L1、CDR-L1、FW-L2、CDR-L2、FW-L3、CDR-L3、FW-L4である。これらのドメインの各々において位置を占めるアミノ酸に番号を付ける番号付けシステムが考案されている。この番号付けシステムは、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (1987 and 1991, NIH, Bethesda, MD)またはChothia & Lesk, 1987, J. Mol. Biol. 196:901-917; Chothia et al., 1989, Nature 342:878-883に定義される。所定の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域(FR)は、このシステムを用いて同定され得る。免疫グロブリン鎖中のアミノ酸の他の番号付けシステムには、IMGT(登録商標)(the international ImMunoGeneTics information system; Lefranc et al, Dev. Comp. Immunol. 29:185-203; 2005)、およびAHo (Honegger and Pluckthun, J. Mol. Biol. 309(3):657-670; 2001)が含まれる。本明細書に開示される結合ドメインは、これらのシステムのいずれかに従って定義されるCDRを利用することができる。1を超えるCDRを含有する任意の所与の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、extended、IMGT、Paratome、AbM、および/もしくは立体配座定義のいずれか、または上記のいずれかの組み合わせに従って定義することができる。任意のCDRは、別々にまたは可変ドメインのコンテキスト内で、これらの番号付けシステムのいずれかの下で、適宜、当業者によって解釈され得る。1つ以上のCDRを、共有結合的または非共有結合的に分子に組み込んで、それを抗原結合タンパク質とすることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書において提供される抗原結合タンパク質は、より大きなポリペプチド鎖の一部として1つ以上のCDR(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、1つ以上のCDR(複数可)を別のポリペプチド鎖に共有結合的に連結する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質には、1つ以上のCDRが非共有結合的に組み込まれる。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、生体適合性フレームワーク構造に組み込まれた、本明細書に記載されるCDRの少なくとも1つを含み得る。いくつかの実施形態では、生体適合性フレームワーク構造は、局在化表面領域において抗原(例えば、CDR、可変領域など)に結合するアミノ酸の1つ以上の配列を提示することができる、立体構造的に安定な構造支持体、またはフレームワーク、または足場を形成するのに十分なポリペプチドまたはその一部を含む。このような構造は、天然に存在するポリペプチドもしくはポリペプチド「折り畳み」(構造モチーフ)であり得るか、または天然に存在するポリペプチドもしくは折り畳みに対して、アミノ酸の付加、欠失および/もしくは置換などの1つ以上の修飾を有し得る。実施形態に応じて、足場は、ヒト、非ヒト霊長類または他の哺乳動物、他の脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌もしくはウイルスなどの種々の異なる種(または1を超える種)のポリペプチドから誘導することができる。
【0084】
実施形態に応じて、生体適合性フレームワーク構造は、免疫グロブリンドメイン以外のタンパク質足場または骨格に基づく。一部のこのような実施形態では、これらのフレームワーク構造は、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルジノスタチン、チトクロームb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI-D1、Zドメインおよび/またはテンダミスタトドメインに基づく。
【0085】
いくつかの実施形態では、1を超える結合部位を有する抗原結合タンパク質もまた提供される。いくつかの実施形態では、結合部位は互いに同一であるが、いくつかの実施形態では、結合部位は互いに異なる。例えば、抗体は、典型的には、2つの同一の結合部位を有し、一方、「二重特異性」または「二機能的」抗体は、2つの異なる結合部位を有する。二重特異性抗原結合タンパク質または抗体の2つの結合部位は、同一または異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、これは、二重特異性キメラ抗原受容体が、操作された細胞に、複数の腫瘍マーカーを標的化する能力を付与することができるため、特に有利である。例えば、とりわけ、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6およびさらなる腫瘍マーカー、例えば、CD70、CD123、CD19、Her2、メソテリン、クラウジン6、BCMA、EGFR、または本明細書に開示されるかもしくは腫瘍特異的抗原または腫瘍関連抗原として当該技術分野において認識される任意の他のマーカーには、二重特異性抗体が結合し得る。
【0086】
腫瘍リガンドに結合するナチュラルキラーグループドメイン
いくつかの実施形態では、NK細胞などの操作された免疫細胞は、腫瘍細胞を認識し、破壊するそれらの能力のために利用される。NK細胞は、細胞表面に抑制性受容体と活性化受容体の両方を発現する。抑制性受容体は、健常細胞の表面に発現する自己分子と結合し(したがって、「自己」細胞に対する免疫応答を妨げる)、一方、活性化受容体は、腫瘍細胞などの異常な細胞上に発現するリガンドと結合する。抑制性受容体活性化と活性化受容体活性化の間のバランスが活性化受容体に有利な場合、NK細胞活性化が起こり、標的(例えば、腫瘍)細胞が溶解する。
【0087】
ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)は、細胞上に発現される種々のリガンドを認識するNK細胞活性化受容体である。種々のNKG2Dリガンドの表面発現は、一般的に健常細胞では低いが、例えば、悪性形質転換によって上方制御される。NKG2Dによって認識されるリガンドの非限定的な例としては、限定されないが、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、およびULBP6、ならびにNK細胞の細胞溶解または細胞傷害性機能を制御する標的細胞上に発現される他の分子が挙げられる。いくつかの実施形態では、T細胞は、1つ以上の腫瘍リガンドに結合し、T細胞を活性化するために、細胞外ドメインを発現するように操作される。例えば、いくつかの実施形態では、T細胞は、結合因子/活性化部分としてNKG2D受容体を発現するように操作される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される操作された細胞は、NKG2ファミリーの別のメンバー、例えば、NKG2A、NKG2C、および/またはNKG2Eを発現するように操作される。一部の実施形態では、このような受容体の組み合わせが操作される。さらに、いくつかの実施形態では、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)などの他の受容体が発現される。
【0088】
いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍細胞(例えば、肝細胞)の表面上のリガンドを認識するための細胞外成分としての全長NKG2Dを含む細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。一実施形態では、全長NKG2Dは、配列番号27の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、全長NKG2D、またはその機能的断片は、ヒトNKG2Dである。本開示の方法および組成物において使用するためのキメラ受容体に関するさらなる情報は、PCT特許公開第2018/183385号に記載され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞は、腫瘍細胞または他の疾患細胞の表面上のリガンドを認識するための細胞外成分としてのNKG2Dの機能的断片を含む細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作される。一実施形態では、NKG2Dの機能的断片は、配列番号25の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、NKG2Dの断片は、完全長野生型NKG2Dと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、断片は、配列番号25からの1つ以上のさらなる突然変異を有することができるが、リガンド結合機能を保持するか、またはいくつかの実施形態では、増大したリガンド結合機能を有する。いくつかの実施形態では、NKG2Dの機能的断片は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、NKG2D断片は、二量体、三量体、または他のコンカテマーフォーマットとして提供され、このような実施形態は、増大したリガンド結合活性を提供する。いくつかの実施形態では、NKG2D断片をコードする配列は、完全または部分的に最適化されたコドンであってもよい。一実施形態では、コドンを最適化されたNKG2D断片をコードする配列は、配列番号28の配列を含む。いくつかの実施形態によれば、有利には、機能的断片は、その天然の膜貫通ドメインまたは細胞内ドメインを欠いているが、NKG2Dのリガンドに結合するその能力、ならびにリガンド結合時に活性化シグナルを伝達する能力を保持する。このような断片のさらなる利点は、NKG2Dを細胞膜に局在化させるためにDAP10を発現させる必要がないことである。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるポリペプチドよってコードされる細胞傷害性受容体複合体は、DAP10を含まない。いくつかの実施形態では、NKまたはT細胞などの免疫細胞(例えば、本明細書に開示される実施形態に従って操作された非同種反応性T細胞)は、例えば、CD70、CD19、CD123、Her2、メソテリン、クラウジン6、BCMA、EGFR、およびNKG2Dリガンド、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、および/またはULBP6を標的化する1つ以上のキメラ受容体を発現するように操作される。このような細胞は、いくつかの実施形態では、mbIL15も同時に発現する。
【0090】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、二量体化するように構成される。二量体化は、実施形態に応じて、ホモ二量体またはヘテロ二量体を含み得る。いくつかの実施形態では、二量体化は、細胞傷害性受容体複合体(したがって、受容体を発現するNK細胞)によるリガンド認識の改善をもたらし、有害な毒性効果の減少(または欠如)をもたらす。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、内部二量体、または1つ以上の成分サブユニットの反復を採用する。例えば、いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体複合体は、第2のNKG2D細胞外ドメインに結合した第1のNKG2D細胞外ドメイン、および膜貫通/シグナル伝達領域(または別個のシグナル伝達領域とともに別個の膜貫通領域)を含み得てもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、種々のドメイン/サブドメインは、リンカー、例えば、使用されるGS3リンカー(配列番号15および16、それぞれヌクレオチドおよびタンパク質)(またはGSnリンカー)によって分離される。本明細書に開示される種々の実施形態に従って使用される他のリンカーは、限定されないが、配列番号17、19、21または23によってコードされるものを含む。いくつかの実施形態では、他のリンカーは、配列番号18、20、22、24のうちの1つのペプチド配列を含む。これは、受容体複合体の発現、安定性、および/または機能性を増大させることができるポリヌクレオチドに沿って、受容体複合体の種々の成分部分を分離する可能性を提供する。
【0092】
細胞傷害性シグナル伝達複合体
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、キメラ受容体、例えば、細胞傷害性シグナル伝達複合体を含む、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、および/またはULBP6などのNKG2Dリガンドに対する指向性を有するキメラ受容体に関する。本明細書に開示されるように、いくつかの実施形態によれば、提供される細胞傷害性受容体複合体は、標的細胞の表面上のリガンドに結合する細胞外ドメイン(複数可)上で細胞傷害性シグナル伝達カスケードを開始する1つ以上の膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞傷害性シグナル伝達複合体は、少なくとも1つの膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激ドメイン、および/または少なくとも1つのシグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、1を超える成分部分は、所定のドメインを構成する-例えば、共刺激ドメインは2つのサブドメインを含むことができる。さらに、一部の実施形態では、ドメインは、複数の機能を果たすことができ、例えば、膜貫通ドメインは、シグナル伝達機能を提供するのに役立つことができる。
【0094】
膜貫通ドメイン
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、膜貫通ドメインを含むキメラ受容体(例えば、腫瘍抗原指向性CARおよび/またはリガンド指向性キメラ受容体)に関する。一部の実施形態は、NKG2Dまたは別の膜貫通タンパク質からの膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインが採用されるいくつかの実施形態では、採用される膜貫通タンパク質の部分は、その正常な膜貫通ドメインの少なくとも一部を保持する。
【0095】
しかしながら、いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞とNK細胞の両方に通常発現される膜貫通糖タンパク質であるCD8の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8αを含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、「ヒンジ」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、CD8αの「ヒンジ」は、配列番号1の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジは切断または修飾され、配列番号1の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD8αの「ヒンジ」は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD8αは、配列番号2の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように切断または修飾することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8α膜貫通領域を含む。いくつかの実施形態では、CD8α膜貫通ドメインは、配列番号3の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジは切断されるかまたは修飾され、配列番号3の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD8α膜貫通ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD8αヒンジは切断されるかまたは修飾され、配列番号4の配列を有するCD8αと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0097】
いくつかの実施形態では一緒になって、CD8ヒンジ/膜貫通複合体は、配列番号13の核酸配列よってコードされる。いくつかの実施形態では、CD8ヒンジ/膜貫通複合体は切断されるかまたは修飾され、配列番号13の配列を有するCD8ヒンジ/膜貫通複合体と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD8ヒンジ/膜貫通複合体は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD8ヒンジ/膜貫通複合ヒンジは切断されるかまたは修飾され、配列番号14の配列を有するCD8ヒンジ/膜貫通複合体と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0098】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインまたはその断片を含む。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列番号30のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメイン複合体ヒンジは切断されるかまたは修飾され、配列番号30の配列を有するCD28膜貫通ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0099】
共刺激ドメイン
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、共刺激ドメインを含むキメラ受容体(例えば、腫瘍抗原指向性CARおよび/または腫瘍リガンド指向性キメラ受容体)に関する。さらに、いくつかの実施形態では、種々の膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン(および膜貫通/シグナル伝達ドメインの組み合わせ)、追加の共活性化分子を提供することができる。これらは、例えば、免疫細胞の活性をさらに増大させる特定の分子であり得る。サイトカインは、一部の実施形態において使用され得る。例えば、非限定的な例として、IL-2および/またはIL-15などの特定のインターロイキンが使用される。一部の実施形態では、治療のための免疫細胞は、分泌型のような分子を発現するように操作される。さらなる実施形態では、このような共刺激ドメインは、自己分泌刺激分子として(または隣接する細胞へのパラクリン刺激因子としてさえも)作用する膜結合性であるように操作される。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるNK細胞は、インターロイキン15(IL15、IL-15)を発現するように操作される。一部の実施形態では、IL15は、本明細書に開示されるCARのいずれか1つを含むコンストラクト上の別個のカセットから発現される。一部の実施形態では、IL15は、本明細書に開示されるCARのいずれか1つと同じカセットで発現され、場合により、切断部位、例えば、タンパク質分解切断部位またはT2A、P2A、E2A、もしくはF2A自己切断ペプチド切断部位によって分離される。一部の実施形態では、IL15は、膜結合IL15(mbIL15)である。一部の実施形態では、mbIL15は、ヒト天然IL15配列などの天然IL15配列、および少なくとも1つの膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、天然IL15配列は、配列番号11と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する配列によってコードされる。一部の実施形態では、天然IL15配列は、配列番号12と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するペプチド配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの膜貫通ドメインは、CD8膜貫通ドメインを含む。一部の実施形態では、mbIL15は、リーダー配列および/またはヒンジ配列などの追加の成分を含み得る。一部の実施形態では、リーダー配列はCD8リーダー配列である。一部の実施形態では、ヒンジ配列はCD8ヒンジ配列である。
【0101】
一部の実施形態では、腫瘍抗原指向性CARおよび/または腫瘍リガンド指向性キメラ受容体は、1つ以上の細胞質プロテアーゼ切断部位をコードするポリヌクレオチドによってコードされる。このような部位は、細胞質プロテアーゼによって認識され、切断され、ポリヌクレオチドによってコードされる受容体の種々の成分部分の分離(および別々の発現)をもたらすことができる。一部の実施形態では、腫瘍抗原指向性CARおよび/または腫瘍リガンド指向性キメラ受容体は、1つ以上の自己切断ペプチド、例えば、T2A切断部位、P2A切断部位、E2A切断部位、および/またはF2A切断部位をコードするポリヌクレオチドによってコードされる。結果として、実施形態に応じて、操作された細胞傷害性受容体複合体の種々の構成部分は、単一のベクターまたは複数のベクターによりNK細胞またはT細胞にデリバリーされ得る。したがって、図に概略的に示されるように、コンストラクトは、単一のポリヌクレオチドよってコードされ得るが、切断部位も含み、そのため、コンストラクトの下流要素は、別個のタンパク質として細胞により発現される(IL-15を有する一部の実施形態における場合のように)。いくつかの実施形態では、T2A切断部位が使用される。いくつかの実施形態では、T2A切断部位は、配列番号9の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、T2A切断部位は、配列番号9の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように切断されるかまたは修飾され得る。いくつかの実施形態では、T2A切断部位は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、T2A切断部位は切断されるかまたは修飾され、配列番号10の配列を有するT2A切断部位と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、NK細胞は、膜結合インターロイキン15(mbIL15)を発現するように操作される。このような実施形態では、NK上のmbIL15発現は、NK細胞の増殖および/または寿命を増大させることによって、操作されたNK細胞の細胞傷害効果を増大させる。いくつかの実施形態では、mbIL15は、CARと同じポリヌクレオチドによってコードされる。一部の実施形態では、mbIL15は、配列番号11の配列を含むポリヌクレオチド、および膜貫通ドメインをコードする配列によってコードされる。一部の実施形態では、mbIL15は、膜貫通ドメインのアミノ酸配列に機能的に結合した配列番号12のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号1188の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号1188の配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように、切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号1189のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、mbIL15は切断または修飾され、配列番号1189の配列を有するmbIL15と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。膜結合IL15配列は、PCT公開第2018/183385号および同第2020/056045号において探索され、それらの各々は、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれ、膜結合IL15配列に関連する。
【0103】
シグナル伝達ドメイン
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体(例えば、腫瘍抗原指向性CARおよび/または腫瘍リガンド指向性キメラ受容体)に関する。例えば、本明細書に開示されるいくつかの実施形態に従って操作された免疫細胞は、CD3 T細胞受容体複合体(またはその断片)の少なくとも1つのサブユニットを含み得る。いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、CD3ゼータは、配列番号7の核酸配列よってコードされる。いくつかの実施形態では、CD3ゼータは、配列番号7の配列を有するCD3ゼータと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように切断されるかまたは修飾され得る。いくつかの実施形態では、CD3ゼータドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD3ゼータドメインは切断されるかまたは修飾され、配列番号8の配列を有するCD3ゼータドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0104】
いくつかの実施形態では、予期せぬ増大したシグナル伝達は、その活性が相乗的に作用する複数のシグナル伝達ドメインの使用によって達成される。例えば、いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、OX40ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、OX40ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、OX40細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号5の核酸配列を有する。いくつかの実施形態では、OX40細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号5の配列を有するOX40と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように切断されるかまたは修飾され得る。いくつかの実施形態では、OX40細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、OX40細胞内シグナル伝達ドメインは切断されるかまたは修飾され、配列番号6の配列を有するOX40細胞内シグナル伝達ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、OX40は、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、OX40は、1つ以上の他のドメインとともに使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、OX40およびCD3ゼータの組み合わせが使用される。さらなる例として、いくつかの実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCDゼータの組み合わせが使用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインは、4-1BBドメインを含む。いくつかの実施形態では、4-1BBドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、4-1BBドメインは、配列番号29の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、4-1BBドメインは、配列番号29の配列を有する4-1-BBドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号30のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインは、切断されるかまたは修飾され、配列番号30の配列を有する4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、4-1BBは、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、4-1BBは、1つ以上の他のドメインとともに使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、4-1BBとCD3ゼータとの組み合わせが使用される。さらなる例として、いくつかの実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCD3ゼータの組み合わせが使用される。
【0106】
いくつかの実施形態では、シグナル伝達ドメインはCD28ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CD28ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメインである。いくつかの実施形態では、CD28細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号31の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、CD28細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号32の配列を有するCD28細胞内シグナル伝達ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有するように切断または修飾することができる。いくつかの実施形態では、CD28細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号32のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD28細胞内シグナル伝達ドメインは切断または修飾され、配列番号32の配列を有するCD28細胞内シグナル伝達ドメインと少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、CD28は、コンストラクトにおける唯一の膜貫通/シグナル伝達ドメインとして使用されるが、いくつかの実施形態では、CD28は、1つ以上の他のドメインとともに使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、CD28およびCD3ゼータの組み合わせが使用される。さらなる例として、いくつかの実施形態では、CD28、OX40、4-1BB、および/またはCD3ゼータの組み合わせが使用される。
【0107】
細胞傷害性受容体複合体コンストラクト
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、キメラ受容体、例えば、NKG2Dのリガンドを標的化する活性化キメラ受容体(ACR)に関する。遺伝子修飾された非同種反応性T細胞および/またはNK細胞などの免疫細胞におけるこれらの細胞傷害性受容体複合体の発現は、がん性細胞などの特定の標的細胞の標的化および破壊を可能にする。このような細胞傷害性受容体複合体の非限定的な例は、以下でより詳細に検討される。
【0108】
いくつかの実施形態では、腫瘍結合剤/CD8ヒンジ-CD8TM/OX40/CD3ゼータキメラ受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図1、キメラ受容体Aを参照されたい)。ポリヌクレオチドは、NKG2Dリガンド結合部分、CD8aヒンジ、CD8a膜貫通ドメイン、OX40ドメイン、CD3ゼータドメインを含むかまたはそれらから構成される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、さらに、本明細書に記載されるように、2A切断部位、およびmbIL-15ドメインをコードする(単一のポリヌクレオチドが受容体とmbIL15の両方をコードするポリヌクレオチド構造を表す、
図1、キメラ受容体Bを参照されたい)。いくつかの実施形態では、この受容体複合体は、本明細書に開示される配列の組み合わせから得られた配列を含む核酸分子によってコードされるか、または本明細書に開示される配列の組み合わせから得られたアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、コード核酸配列またはアミノ酸配列は、構成部分の例として本明細書に含まれるものなどの本明細書に記載される1つ以上の配列番号に従う配列を含む。いくつかの実施形態では、コード核酸配列またはアミノ酸配列は、本明細書に記載される1つ以上の配列番号の組み合わせから生じる配列と少なくとも約90%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性、相同性、および/または機能的同等性を共有する配列を含む。開示された配列の特定の配列変化、伸長、および/または切断は、例えば、クローニング(例えば、制限部位の作製のための)の容易さまたは効率の結果として、配列を組み合わせる場合に生じ得ることが承認されるものである。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、本明細書に提供される配列番号のうちの1つ以上の配列、またはその部分(例えば、mbIL15配列および/もしくは自己切断ペプチド配列を除く部分)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上、または前述のパーセンテージのいずれか2つによって定義される範囲の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、NKG2D/CD8aヒンジ/CD8a膜貫通ドメイン/OX40/CD3ゼータ活性化キメラ受容体複合体をコードするポリヌクレオチドが提供される(
図2、NKG2D ACR Aを参照されたい)。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように、NKG2D受容体のリガンド、CD8αヒンジ、CD8a膜貫通ドメイン、OX40ドメイン、およびCD3ゼータドメインと結合することができるNKG2D受容体の断片を含むかまたはそれらから構成される。いくつかの実施形態では、この受容体複合体は、配列番号33の核酸配列を含む核酸分子によってコードされる。さらに別の実施形態では、このキメラ受容体は、配列番号34のアミノ酸配列によってコードされる。一部の実施形態では、キメラ受容体の配列は、配列番号32または33と異なることができるが、実施形態に依存して、配列番号33または34と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のままである。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、配列番号33または34と異なることができるが、キメラ受容体は、NK細胞活性化および/または細胞傷害性機能を保持するか、またはいくつかの実施形態ではそれらを増大させている。さらに、いくつかの実施形態では、このコンストラクトは、配列番号35または37によってコードされるmbIL15(
図2、NKG2D ACR B、単一のポリヌクレオチドが受容体とmbIL15の両方をコードするポリヌクレオチド構造を表す)などのmbIL15と共発現されてもよい。いくつかの実施形態では、mbIL15は、配列番号36または38のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、mbIL15の配列は、配列番号36または38と異なることができるが、実施形態に依存して、配列番号36または38と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一のままである。
【0110】
本開示の方法および組成物において使用するためのキメラ受容体に関するさらなる情報は、2018年3月27日に出願されたPCT特許公開第2018/183385号に見出すことができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
処置方法
いくつかの実施形態は、本明細書に開示されているように、キメラ抗原受容体および/または活性化キメラ受容体を含む細胞または免疫細胞を用いて、がんを処置し、軽快させ、阻害し、または予防する方法に関する。一部の実施形態では、方法は、がんを処置または予防することを含む。一部の実施形態では、方法は、本明細書に記載されるように、腫瘍指向性キメラ抗原受容体および/または腫瘍指向性キメラ受容体を発現する、治療上有効量の免疫細胞を投与することを含む。このように処置され得るがんのタイプの例は、本明細書に記載される。
【0112】
対象におけるがんを処置する方法が、本明細書において開示される。一部の実施形態では、本方法は、本明細書に開示されるNKG2Dリガンド結合ドメインのいずれか1つ、本明細書に開示されるキメラ受容体のいずれか1つ、または本明細書に開示される細胞のいずれか1つ、またはそれらのいずれかの組み合わせを対象に投与することを含む。
【0113】
特定の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞(複数可)を用いた対象の処置は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を達成し、例えば、(i)疾患またはそれに関連する症状の重症度の減少または軽快;(ii)疾患に関連する症状の持続期間の減少;(iii)疾患またはそれに関連する症状の進行に対する保護;(iv)疾患またはそれに関連する症状の退行;(v)疾患に関連する症状の発生または発症に対する保護;(vi)疾患に関連する症状の再発に対する保護;(vii)対象の入院の減少;(viii)入院期間の減少;(ix)疾患を有する対象の生存の増加;(x)疾患に関連する症状の数の減少;(xi)別の治療法の予防効果または治療効果の強化、改善、補足、補完、または増強が含まれる。有利には、本明細書に開示される非同種反応性の操作されたT細胞は、上記のうちの1つ以上をさらに増大させる。投与は、限定されないが、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、肝内、腹腔内、および/または患部組織への局所デリバリーなどの種々の経路によることができる。
【0114】
また、本明細書に開示されるNKG2Dリガンド結合ドメインのいずれか1つ、本明細書に開示されるキメラ受容体のいずれか1つ、本明細書に開示される細胞のいずれか1つ、またはがんの処置のためのそれらの任意の組み合わせの使用が本明細書に開示される。
【0115】
また、本明細書に開示されるNKG2Dリガンド結合ドメインのいずれか1つ、本明細書に開示されるキメラ受容体のいずれか1つ、本明細書に開示される細胞のいずれか1つ、またはがんの処置のための薬剤の製造におけるそれらの任意の組み合わせの使用が本明細書に開示される。
【0116】
投与および用量
本明細書では、がんを有する対象を処置する方法であって、本明細書に開示される細胞傷害性受容体複合体を発現するように操作された免疫細胞(例えば、NK細胞および/またはT細胞)を含む組成物を対象に投与することを含む方法がさらに提供される。例えば、本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、がん患者を処置するための、腫瘍指向性キメラ抗原受容体および/もしくは腫瘍指向性キメラ受容体の使用、または腫瘍指向性キメラ抗原受容体および/もしくは腫瘍指向性キメラ受容体を発現する細胞の使用に関する。がんを処置するためのこのような操作された免疫細胞の使用もまた提供される。
【0117】
特定の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞(複数可)を用いた対象の処置は、以下の効果のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上を達成し、例えば、(i)疾患またはそれに関連する症状の重症度の減少または軽快;(ii)疾患に関連する症状の持続期間の減少;(iii)疾患またはそれに関連する症状の進行に対する保護;(iv)疾患またはそれに関連する症状の退行;(v)疾患に関連する症状の発生または発症に対する保護;(vi)疾患に関連する症状の再発に対する保護;(vii)対象の入院の減少;(viii)入院期間の減少;(ix)疾患を有する対象の生存の増加;(x)疾患に関連する症状の数の減少;(xi)別の治療法の予防効果または治療効果の強化、改善、補足、補完、または増強が含まれる。これらの比較の各々は、例えば、本明細書に開示されるコンストラクトを発現しない細胞を用いた、疾患に対する細胞ベースの免疫療法を含む、疾患に対する異なる療法に対するものである。有利には、本明細書に開示される非同種反応性の操作されたT細胞は、上記のうちの1つ以上をさらに増大させる。
【0118】
投薬は、種々の経路、例えば、限定されないが、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、肝内、腹腔内、および/または患部組織への局所送達によって行うことができる。本明細書に記載されるキメラ受容体複合体を発現するように操作された細胞(特に、NK細胞および/またはT細胞)は、注射、例えば、ボーラス注射または注入によって非経口投薬のために製剤化することができる。
【0119】
NKおよび/またはT細胞などの免疫細胞の用量は、所与の対象について、それらの体重、疾患タイプおよび状態、および処置の所望の攻撃性に基づいて容易に決定することができるが、実施形態に応じて、約105細胞/kg~約1012細胞/kg(例えば、105~107、107~1010、1010~1012、およびその中の重複範囲)の範囲である。一実施形態では、用量漸増レジメンが使用される。いくつかの実施形態では、NKおよび/またはT細胞などの様々な免疫細胞が、例えば、約1×106細胞/kg~約1×108細胞/kgの間で投与される。
【0120】
いくつかの実施形態では、1×108個のNK細胞は、28日サイクル全体で3回投与される(50kg未満の対象に対して2×106個/kg)。いくつかの実施形態では、3×108個のNK細胞は、28日サイクル全体で3回投与される。いくつかの実施形態では、1×109個のNK細胞は、28日サイクル全体で3回投薬される。
【0121】
いくつかの実施形態では、1.5×108個のNK細胞は、28日サイクル全体で2回投与される(50kg未満の対象に対して3×106個/kg)。いくつかの実施形態では、4.5×108個のNK細胞は、28日サイクル全体で2回投与される。いくつかの実施形態では、1.5×109個のNK細胞が、28日サイクル全体で2回投与される。
【0122】
いくつかの実施形態では、1.5×109個のNK細胞が、28日サイクル全体で3回投与される(50kg未満の対象に対して3×107個/kg)。いくつかの実施形態では、3×109個のNK細胞が、28日サイクル全体で3回投与される。いくつかの実施形態では、1.5×1010個のNK細胞が、28日サイクル全体で3回投薬される。いくつかの実施形態では、少なくとも4.5×109個のNK細胞が、サイクル全体で投薬される。
【0123】
いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞の投与は、1つ以上の予備的処置によって先行される。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞の投与は、リンパ球枯渇によって先行される。いくつかの実施形態では、化学療法剤の組み合わせが、リンパ球枯渇のために使用される。いくつかの実施形態では、単一の化学療法剤がリンパ球枯渇のために使用される。いくつかの実施形態では、化学療法剤の組み合わせが使用される場合、異なるメカニズムを有する薬剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、異なるクラスの薬剤が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、代謝拮抗剤が使用される。いくつかの実施形態では、代謝拮抗剤は、細胞複製を阻害および/または予防する。いくつかの実施形態では、代謝拮抗剤は、DNA複製を破壊する改変ヌクレオチドであり、急速に分裂する腫瘍細胞(AMLまたは骨髄異形成症候群(MDS)におけるものなど)を標的化するのに効果的である。いくつかの実施形態では、シトシンアラビノシド(Ara-C)が使用される。いくつかの実施形態では、約0.2~約10g/m2のAra-Cの用量が投与され、約0.2g/m2、約0.5g/m2、約1.0g/m2、約1.5g/m2、約2.0g/m2、約2.5g/m2、約3.0g/m2、約3.5g/m2、約4.0g/m2、約5.0g/m2、約6.0g/m2、約7.0g/m2、約8.0g/m2、約9.0g/m2、約10.0g/m2、約10.5g/m2、またはこれらの間の任意の用量が含まれる。いくつかの実施形態では、Ara-Cの用量は、少なくとも約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約7日間、毎日与えられる。いくつかの実施形態では、必要であれば、用量を分割し、例えば、1日2回与えることができる。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、Ara-Cと組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、代謝拮抗剤でもある。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、DNAポリメラーゼアルファ、リボヌクレオチドレダクターゼおよび/またはDNAプライマーゼのうちの1つ以上を阻害し、したがって、DNA合成を阻害する。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、フルダラビンである。いくつかの実施形態では、約5.0mg/m2~約200mg/m2のフルダラビンの用量が投与され、約5.0mg/m2、約10.0mg/m2、約15.0mg/m2、約20.0mg/m2、約25.0mg/m2、約30.0mg/m2、約35.0mg/m2、約40.0mg/m2、約45.0mg/m2、約50.0mg/m2、約60.0mg/m2、約70.0mg/m2、約80.0mg/m2、約90.0mg/m2、約100.0mg/m2、約125.0mg/m2、約150.0mg/m2、約175.0mg/m2、約200.0mg/m2の用量、またはこれらの間の任意の用量が含まれる。いくつかの実施形態では、フルダラビンの用量は、少なくとも約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約7日間、毎日与えられる。いくつかの実施形態では、必要であれば、用量を分割し、例えば、1日2回与えることができる。いくつかの実施形態では、フルダラビンとAra-Cの組み合わせは、約20mg/m2~40mg/m2のフルダラビンの1日用量、および約1.5g/m2~2.5g/m2のAra-Cの1日用量とともに使用される。いくつかの実施形態では、フルダラビンとAra-C(または本明細書に開示される任意の他の薬剤または複数の薬剤)の組み合わせは、少なくとも約5日間投与され、投与は、操作されたNK細胞の第1の投薬の約7日前(例えば、第-7日~-3日)に開始される。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇は、操作されたNK細胞の投薬前の-5日目に開始される。いくつかの実施形態では、この組み合わせは、リンパ球枯渇レジメンとしてだけでなく、(操作されたNK細胞に加えて)抗がん剤としても有利に機能する。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇レジメンは、操作されたNK細胞と相乗的に作用して、がん性細胞の効果減少および/または除去を提供する。
【0124】
特定の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞またはその組成物の用量は、毎日、隔日、2日ごと、数日ごと、3日ごと、週1回、週2回、週3回、または2週間ごとに1回、対象に投与される。他の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞またはその組成物の2、3または4用量は、毎日、2日ごと、3日ごと、週1回、または2週間ごとに1回、対象に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞またはその組成物の用量は、2日間、3日間、5日間、7日間、14日間、または21日間投与される。特定の実施形態では、本明細書に記載される遺伝子操作された細胞またはその組成物の用量は、1か月、1.5か月、2か月、2.5か月、3か月、4か月、5か月、6か月またはそれ以上投与される。
【0125】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に開示されるように、遺伝子操作された細胞の投与前に、少なくとも1回リンパ球枯渇に供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の用量の操作された細胞が投与される前に、リンパ球枯渇が行われる。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇に続いて、本明細書に開示されるように、少なくとも2用量の操作された細胞を含む投薬サイクルが使用され、2用量を一定の時間間隔で分離する。いくつかの実施形態では、時間間隔は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21日、またはそれ以上である(最後の投与から正確な時間間隔をマークする時間を含む時間間隔、例えば、84時間または3.5日を含む)。いくつかの実施形態では、投薬サイクル自体は、約14、21、28、35、42日またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、3用量は、互いに約1週間の間隔を置いて投与される。いくつかの実施形態では、2用量は、互いに約1週間の間隔を置いて投与される。いくつかの実施形態では、対象は、サイクルの0日目に第1の用量を受け、サイクルの7日目に第2の用量を受け、サイクルの14日目に第3の用量を受ける。いくつかのこのような実施形態では、28日サイクルが、28日目に評価された主要転帰尺度とともに使用される(例えば、
図3Aを参照されたい)。いくつかの実施形態では、対象は、サイクルの0日目に第1の用量を受け、サイクルの7日目に第2の用量を受ける。いくつかのこのような実施形態では、28日サイクルが、28日目に評価された主要転帰尺度とともに使用される(例えば、
図3Bを参照されたい)。いくつかの実施形態では、リンパ球枯渇は、その後の投薬サイクルが必要とされる場合(例えば、対象がさらなる処置を必要とする場合)、各投薬サイクルの開始前に行われる。例えば、いくつかの実施形態では、対象は、リンパ球枯渇を経て、サイクルに従って複数の用量の操作された細胞を受け、サイクル時間の終わりに評価され、必要と思われる場合、第2のリンパ球枯渇を経て、続いて第2の投薬サイクルを受ける。いくつかの実施形態では、フルダラビン/シクロホスファミドは、リンパ球枯渇を達成するために使用される。いくつかの実施形態では、シクロホスファミド(300mg/m
2)およびフルダラビン(30mg/m
2)を3日間、毎日投与する。実施形態に応じて、異なる濃度を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、500mg/m
2のシクロホスファミドの用量がフルダラビンとともに使用される。複数の投薬サイクルが使用されるこのような実施形態では、第1および第2の投薬サイクルは同じである必要はない(例えば、第1のサイクルは2用量を有してもよく、第2のサイクルは3用量を使用する)。対象に応じて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、またはそれ以上の投薬サイクルが行われる。
【0126】
実施形態に依存して、種々のタイプのがんを処置することができる。いくつかの実施形態では、処置されるがんは、急性骨髄性白血病(AML)である。いくつかの実施形態では、処置されるがんは、骨髄異形成症候群である。いくつかの実施形態では、肝細胞癌腫が処置される。いくつかの実施形態では、肝内胆管癌腫または他の肝腫瘍、例えば、大腸がんからの二次転移が、処置される。本明細書において提供されるさらなる実施形態は、がんの以下の非制限的な例の処置または予防を含み、限定されないが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)副腎皮質がん腫、カポジ肉腫、リンパ腫、胃腸がん、虫垂がん、中枢神経系がん、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍(限定されないが、例えば、星状細胞腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、神経膠芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽腫、上衣腫、髄芽腫、髄芽腫)、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、頸部がん、結腸がん、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、乳管がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、腎細胞がん、白血病、口腔がん、鼻咽頭がん、肝臓がん、肺がん(限定されないが、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)および小細胞肺がん)、膵臓がん、腸がん、リンパ腫、黒色腫、眼がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、下垂体がん、子宮がん、および膣がんが含まれる。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書には、配列番号1~38(または配列番号1~38のうちの2つ以上の組み合わせ)のそれぞれの核酸またはアミノ酸配列と比較して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%(およびその範囲)の配列同一性および/または相同性を有し、それぞれの配列番号1~38(または配列番号1~38のうちの2つ以上の組み合わせ)と比較して、限定されないが、(i)増大した増殖、(ii)増大した活性化、(iii)核酸およびアミノ酸配列よってコードされる受容体を有するNK細胞が結合するリガンドを提示する細胞に対する増大した細胞傷害活性、(iv)増大した腫瘍または感染部位へのホーミング、(v)減少した標的外の細胞傷害効果、(vi)増大した免疫刺激性サイトカインおよびケモカイン(限定されないが、IFNg、TNFa、IL-22、CCL3、CCL4、およびCCL5を含む)の増大した分泌、(vii)さらなる先天性および適応性免疫応答を刺激する増大した能力、および(vii)それらの組み合わせを含む機能のうちの1つ以上も示す核酸およびアミノ酸配列もまた提供される。
【0128】
さらに、いくつかの実施形態では、核酸コードの縮重を主要因としながら、本明細書に開示される核酸のいずれかに対応するアミノ酸配列が提供される。さらに、本明細書に明示的に開示されたものとは異なるが、機能的類似性または同等性を有する配列(核酸またはアミノ酸のいずれか)もまた、本開示の範囲内で企図される。上記には、突然変異、切断、置換、または他のタイプの修飾が含まれる。
【0129】
いくつかの実施形態では、開示された細胞傷害性受容体複合体をコードするポリヌクレオチドはmRNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドはDNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、細胞傷害性受容体複合体の発現のために少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結される。
【0130】
さらに、いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供されるポリヌクレオチドのいずれかをコードするポリヌクレオチドを含むベクターが提供され、細胞傷害性受容体複合体の発現のために、ポリヌクレオチドが少なくとも1つの調節エレメントに作動可能に連結されてもよいベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ベクターはレトロウイルスである。
【0131】
さらに、本明細書では、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、または細胞傷害性受容体複合体を含む、操作された免疫細胞(例えば、NKおよび/またはT細胞)が提供される。さらに、本明細書では、操作された免疫細胞(例えば、NK細胞および/または操作されたT細胞)の混合物を含む組成物が提供され、各集団は、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、ベクター、または細胞傷害性受容体複合体を含む。
【0132】
がんの種類
本明細書に記載される組成物および方法の一部の実施形態は、腫瘍指向性キメラ抗原受容体および/または腫瘍指向性キメラ受容体を含む免疫細胞を、がんを有する患者に投与することに関する。本明細書において提供される種々の実施形態は、以下のがんの非限定的な例の処置または予防を含む。がんの例としては、限定されないが、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、副腎皮質がん腫、カポジ肉腫、リンパ腫、胃腸がん、虫垂がん、中枢神経系がん、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍(限定されないが、例えば、星状細胞腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽腫、上衣腫、髄芽腫、髄芽腫)、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、頸部がん、結腸がん、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、乳管がん、子宮内膜がん、食道がん、胃がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、腎細胞がん、白血病、口腔がん、鼻咽頭がん、肝臓がん、肺がん(限定されないが、例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)および小細胞肺がん)、膵臓がん、腸がん、リンパ腫、黒色腫、眼がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、下垂体がん、子宮がん、および膣がんが挙げられる。
【0133】
がん標的
本明細書に記載される組成物および方法のいくつかの実施形態は、がん抗原を標的化するキメラ受容体、例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、ULBP4、ULBP5、および/またはULBP6を含む免疫細胞に関する。標的抗原のさらなる非限定的な例には、CD70、CD5、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS1(CD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319、および19A24とも呼ばれる);TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟(BCMA);CD38;DLL3;Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)CD138;前立腺特異的膜抗原(PSMA);チロシンキナーゼ3(FLT3)のようなFms;KREMEN2(クリングル含有膜貫通タンパク質2)、ALPPL2、クラウジン4、クラウジン6、C型レクチン様分子-1(CLL-1またはCLECL1);CD33;上皮細胞増殖因子受容体変異体III(EGFRviii);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3(aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(l-4)bDGlcp(l-l)Cer););Tn抗原((TnAg)または(GalNAca-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);チロシンキナーゼ3(FLT3)のようなFms;腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;造血前駆細胞ではなく急性白血病またはリンパ腫で発現するグリコシル化CD43エピトープ、非造血がんで発現するグリコシル化CD43エピトープ、がん胎児性抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Ra2またはCD213A2);メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-IIRa);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21(テスチシンまたはPRSS21);血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ(FRaまたはFR1);葉酸受容体ベータ(FRb);受容体チロシンプロテインキナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面関連(MUC1);上皮細胞増殖因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ;前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2突然変異(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様増殖因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAIX);プロテアソーム(プロソーム、マクロパイン)サブユニット、ベータ型、9(LMP2);糖タンパク質100(gp100);ブレークポイントクラスター領域(BCR)とアベルソンマウス白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ1(Abl)(bcr-abl)からなるオンコジーン融合タンパク質;チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDClalp(l-4)bDGlcp(l-l)Cer);トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R);クラウジン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);染色体Xオープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミド(GloboH)の六糖部分;乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パネキシン3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ES0-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);染色体12pに位置するETS転座変異体遺伝子6(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1);アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie2);メラノーマがん精巣抗原-1(MAD-CT-1);メラノーマがん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53突然変異体;プロステイン;スルビビン;テロメラーゼ;前立腺がん腫瘍抗原-1(PCT A-lまたはガレクチン8)、T細胞1によって認識されるメラノーマ抗原(MelanAまたはMARTI);ラット肉腫(Ras)突然変異体;ヒトテロメラーゼ;逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通型プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17);ペアードボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;v-mycトリ骨髄細胞腫ウイルス性オンコジーン神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);シトクロムP450 IB1(CYPIB1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORISまたはBrother of the Regulator oflmprinted Sites)、T細胞3によって認識される扁平上皮がん抗原(SART3);ペアードボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);キナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2);終末糖化産物受容体(RAGE-1);腎ユビキタス1(RU1);腎ユビキタス2(RU2);レグマイン;ヒトパピローマウイルスE6(HPVE6);ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7);腸カルボキシルエステラーゼ;熱ショックタンパク質70-2突然変異(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFc断片(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLLl)、MPL、ビオチン、c-MYCエピトープTag、CD34、LAMP1、TROP2、GFRアルファ4、CDH17、CDH6、NYBR1、CDH19、CD200R、Slea(CA19.9;シアリルルイス抗原);フコシル-GM1、PTK7、gpNMB、CDH1-CD324、DLL3、CD276/B7H3、ILl lRa、IL13Ra2、CD179b-IGLll、TCRガンマ-デルタ、NKG2D、CD32(FCGR2A)、Tn ag、Tim1-/HVCR1、CSF2RA(GM-CSFR-アルファ)、TGFベータR2、Lews Ag、TCR-ベータ鎖、TCR-ベータ2鎖、TCR-ガンマ鎖、TCR-デルタ鎖、FITC、黄体形成ホルモン受容体(LHR)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、ゴナドトロピンホルモン受容体(CGHRまたはGR)、CCR4、GD3、SLAMF6、SLAMF4、HIV1エンベロープ糖タンパク質、HTLV1-Tax、CMV pp65、EBV-EBNA3c、KSHV K8.1、KSHV-gH、インフルエンザAヘマグルチニン(HA)、GAD、PDL1、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体、デスモグレイン1(Dsgl)に対する自己抗体、HLA、HLA-A、HLA-A2、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、HLA-G、IgE、CD99、Ras G12V、組織因子1(TF1)、AFP、GPRC5D、クラウジン8.2(CLD18A2またはCLDN18A.2))、P-糖タンパク質、STEAP1、Liv1、ネクチン-4、Cripto、gpA33、BST1/CD157、低コンダクタンスクロライドチャネル、およびTNT抗体によって認識される抗原が含まれる。
【実施例】
【0134】
以下は、下記に開示される実施例において使用される実験方法および材料の非限定的な記載である。
[実施例1]
【0135】
NK細胞免疫療法のための初回投薬レジメン
本明細書においてより詳細に検討されるように、特定のがんタイプは、上昇した様式で選択されたマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体コンストラクトは、所与のがんを特異的に標的化するために、本明細書に開示される配列に従って生成される。例えば、多くのがんは、上昇したレベルのNKG2D受容体のリガンドを発現する。したがって、上記で詳細に検討したように、いくつかの実施形態では、NKG2D-リガンド指向性の細胞傷害性受容体コンストラクトが提供される。いくつかの実施形態では、これらのコンストラクトをコードするポリヌクレオチドは、mbIL15をバイシストロン性に発現するように操作される。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、このようなコンストラクトを発現する細胞の有効性を評価するために試験される。いくつかの実施形態では、コンストラクトを発現するように操作された細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、既製の(非血縁ドナーに由来する)同種の操作されたNK細胞であり、ハプロ適合血縁ドナー由来の操作されたNK細胞の適合用量と比較される。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33(配列番号33の縮重またはコドン最適化バージョンを含む)によってコードされる細胞傷害性受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34のアミノ酸配列を含む細胞傷害性受容体、および配列番号36または38のアミノ酸配列を含むmbIL15を発現する。
【0136】
投薬レジメンは、28日間の投薬サイクルにおいて3回投与される3用量の操作されたNK細胞を評価するように設計される。投薬サイクルの前に、対象がリンパ球枯渇(シクロホスファミド(300mg/m2)およびフルダラビン(30mg/m2)を-5日目、-4日目、および-3日目を用いる)を経てコンディショニング段階が行われる。0日目に、対象は、第1の、異なる3用量:1×108個のNK細胞(50kg未満の対象では2×106個/kg)、3×108個NK細胞、または1×109個のNK細胞のうちの1つを受ける。用量2は7日目に投与され、用量3は14日目に投与される。28日目に、転帰尺度を評価する。
【0137】
主要評価項目には、以下が含まれる:(1)処置に関連する有害事象の発現率、性質、および重症度が評価される。有害事象は、臨床的に重要な臨床検査値の異常、症状または疾患を含むあらゆる好ましくない意図しない徴候である。これは、NK細胞の最終用量から30日後に測定されるべきであり、および(2)NK細胞の用量制限毒性(DLT)を経験した対象の比率。DLTはサイクル1中に発現し、治験実施計画書に規定された基準を満たす処置に起因する有害事象として定義する。これは、第1の用量のNK細胞から28日後に測定するべきである。
【0138】
副次転帰尺度には、以下が含まれる:(1)循環する操作されたNK細胞の最大量から50%減少に要する時間として測定されたNK細胞半減期の評価。これは、第1の用量のNK細胞から28日後に測定されるべきである。(2)投薬後、3か月ごとに末梢血中の操作されたNK細胞の量を測定して、持続性を決定することによる、NK細胞の持続時間。これは、NK細胞の最終用量後の最大2年間測定される;(3)操作されたNK細胞に対する抗体について測定される血清試料を介した、操作されたNK細胞に対する宿主免疫応答の評価。これは、最終用量のNK細胞から最大2年間測定される;(4)完全および部分奏効が得られた対象のパーセンテージを測定することによる、操作されたNK細胞に対する客観的な奏効率。AML対象は、最新のELN基準(Doehner 2017)に基づいて、操作されたNK細胞の抗腫瘍活性について評価される。MDS患者は、MDSを伴うIWG基準(Cheson 2006)に基づいて、操作されたNK細胞の抗腫瘍活性について評価される。これは、第1の用量の操作されたNK細胞から28日後に測定され、最終用量から最大2年後まで追跡される。
【0139】
研究は最低用量から開始し、33%未満の毒性で用量がレジメンをクリアした場合は、次に高い用量を研究する。
【0140】
NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する3用量の操作されたNK細胞の投与は、好ましい忍容性を示し、限定された有害事象を示すと考えられる。NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する3用量の操作されたNK細胞の投薬はまた、限定されたDLTをもたらすと考えられる。NK細胞は、延長された半減期および持続期間の延長を示すと考えられる。NK細胞は、限定された宿主免疫応答および臨床的に意味のある客観的な奏効率(例えば、腫瘍負荷の低下)を誘導すると考えられる。
[実施例2]
【0141】
NK細胞免疫療法のための第2の投薬レジメン
本明細書においてより詳細に検討されるように、特定のがんタイプは、上昇した様式で選択されたマーカーを発現する。いくつかの実施形態では、細胞傷害性受容体コンストラクトは、所与のがんを特異的に標的化するために、本明細書に開示される配列に従って生成される。例えば、多くのがんは、上昇したレベルのNKG2D受容体のリガンドを発現する。したがって、上記で詳細に検討したように、いくつかの実施形態では、NKG2D-リガンド指向性の細胞傷害性受容体コンストラクトが提供される。いくつかの実施形態では、これらのコンストラクトをコードするポリヌクレオチドは、mbIL15をバイシストロン性に発現するように操作される。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、このようなコンストラクトを発現する細胞の有効性を評価するために試験される。いくつかの実施形態では、コンストラクトを発現するように操作された細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、既製の(非血縁ドナーに由来する)同種の操作されたNK細胞であり、ハプロ適合血縁ドナー由来の操作されたNK細胞の適合用量と比較される。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33(配列番号33の縮重またはコドン最適化バージョンを含む)によってコードされる細胞傷害性受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34のアミノ酸配列を含む細胞傷害性受容体、および配列番号36または38のアミノ酸配列を含むmbIL15を発現する。
【0142】
投薬レジメンは、28日間の投薬サイクルにおいて2回投与される、異なる3用量の操作されたNK細胞を評価するように設計される。投薬サイクルの前に、対象がリンパ球枯渇(シクロホスファミド(300mg/m2)およびフルダラビン(30mg/m2)を-5日目、-4日目、および-3日目を用いる)を経てコンディショニング段階が行われる。0日目に、対象は、第1の、異なる3用量:1.5×108個のNK細胞(50kg未満の対象では3×106個/kg)、4.5×108個NK細胞、または1.5×109個のNK細胞のうちの1つを受ける。用量2は7日目に投与される。28日目に転帰尺度を評価する。
【0143】
主要評価項目には、以下が含まれる:(1)処置に関連する有害事象の発現率、性質、および重症度が評価される。有害事象は、臨床的に重要な臨床検査値の異常、症状または疾患を含むあらゆる好ましくない意図しない徴候である。これは、NK細胞の最終用量から30日後に測定されるべきであり、および(2)NK細胞の用量制限毒性(DLT)を経験した対象の比率。DLTはサイクル1中に発現し、治験実施計画書に規定された基準を満たす処置に起因する有害事象として定義する。これは、第1の用量のNK細胞から28日後に測定するべきである。
【0144】
副次転帰尺度には、以下が含まれる:(1)循環する操作されたNK細胞の最大量から50%減少に要する時間として測定されたNK細胞半減期の評価。これは、第1の用量のNK細胞から28日後に測定されるべきである。(2)投薬後、3か月ごとに末梢血中の操作されたNK細胞の量を測定して、持続性を決定することによる、NK細胞の持続時間。これは、NK細胞の最終用量後の最大2年間測定される;(3)操作されたNK細胞に対する抗体について測定される血清試料を介した、操作されたNK細胞に対する宿主免疫応答の評価。これは、最終用量のNK細胞から最大2年間測定される;(4)完全および部分奏効が得られた対象のパーセンテージを測定することによる、操作されたNK細胞に対する客観的な奏効率。AML対象は、最新のELN基準(Doehner 2017)に基づいて、操作されたNK細胞の抗腫瘍活性について評価される。MDS患者は、MDSを伴うIWG基準(Cheson 2006)に基づいて、操作されたNK細胞の抗腫瘍活性について評価される。これは、第1の用量の操作されたNK細胞から28日後に測定され、最終用量から最大2年後まで追跡される。
【0145】
研究は最低用量から開始し、33%未満の毒性で用量がレジメンをクリアした場合は、次に高い用量を研究する。
【0146】
NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する3用量の操作されたNK細胞の投薬は、好ましい忍容性を示し、限定された有害事象を示すと考えられる。NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する3用量の操作されたNK細胞の投薬はまた、限定されたDLTをもたらすと考えられる。NK細胞は、延長された半減期および持続期間の延長を示すと考えられる。NK細胞は、限定された宿主免疫応答および臨床的に意味のある客観的奏効率(例えば、腫瘍負荷の低下)を誘導すると考えられる。
【0147】
また、2回用量サイクルは3回用量サイクルと比較して転帰を改善すると考えられる。理論に拘束されることなく、2用量サイクルにおける操作されたNK細胞のより大きな初期負荷は、より大きなエフェクター:標的細胞比を可能にする。研究は、宿主NK細胞集団が、Flu/Cyリンパ球枯渇の約14~21日後に回復し始めることを実証している。これは、注入された同種細胞が同時に除去される可能性がある。これにより、注入された同種細胞の除去の同時クリアリングをもたらす。したがって、2用量サイクルは、リンパ球枯渇後ウィンドウにおいて投与される最大数の操作された細胞の送達を可能にし、増強された治療結果をもたらす。
[実施例3]
【0148】
NK細胞免疫療法のための第3の投薬レジメン
本明細書においてより詳細に検討されるように、特定のがんタイプは、NKG2D受容体のリガンドなどの上昇した様式で選択されたマーカーを発現する。したがって、上記で詳細に検討したように、いくつかの実施形態では、NKG2D-リガンド指向性の細胞傷害性受容体コンストラクトが提供される。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、このようなコンストラクトを発現する細胞の有効性を評価するために試験される。いくつかの実施形態では、コンストラクトを発現するように操作された細胞は、NK細胞である。いくつかの実施形態では、NK細胞は、既製の(非血縁ドナーに由来する)同種の操作されたNK細胞であり、ハプロ適合血縁ドナー由来の操作されたNK細胞の適合用量と比較されてもよい。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号33(配列番号33の縮重またはコドンを最適化されたバージョンを含む)に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチドによってコードされる細胞傷害性受容体を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたNK細胞は、配列番号34と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む細胞傷害性受容体を発現する。いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、NK細胞)はまた、配列番号36または38と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むmbIL15を発現するように操作される。
【0149】
いくつかの実施形態では、NK細胞免疫療法レジメンを受ける患者は、再発および/または難治性急性骨髄性白血病(標準ヨーロッパ白血病ネット(ELN)基準に従う)を有する。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1であるがせいぜい3、好ましくはせいぜい2ラインの従来の標準的な抗白血病治療を受けていた。いくつかの実施形態では、微小残存疾患(例えば、芽球が約5%未満)を伴う完全寛解の対象は、NK細胞免疫療法レジメンを受けることができる。いくつかの実施形態では、患者は、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)-突然変異型および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)1/2-突然変異型疾患を有していることができ、少なくとも1つの以前のそれぞれの標的療法を受けていたが、せいぜい最大4、好ましくはせいぜい3ラインの以前の治療を受けていることができる。いくつかの実施形態では、患者は、白血球数が25×109個のWBC/L以下である。いくつかの実施形態では、患者は、白血病性髄膜炎または既知の活動性中枢神経系疾患の証拠を示し、および/または芽球が20,000個/μLを超えるかまたはそれに等しい末梢白血球増加(または患者が少なくとも1サイクルの処置を完了することを妨げる急速進行性疾患の他の証拠)を有する場合、NK細胞免疫療法レジメンを受けない。
【0150】
いくつかの実施形態では、NK細胞免疫療法レジメンを受ける患者は、世界保健機関分類および改訂国際予後スコアリングシステムに従って、中間、高、または非常に高リスクのMDSとして分類され、再発および/または難治性のMDSを有する。いくつかの実施形態では、患者は、少なくとも1つであるが、せいぜい3つ、好ましくはせいぜい2つの以前の標準的な抗MDS治療を受けていた。
【0151】
投薬レジメンは、28日間の投薬サイクル内に投与される3用量の操作されたNK細胞を含むように設計される。投薬サイクルの前に、対象がリンパ球枯渇(シトシンアラビノシド(Ara-C)(2.0g/m2/日)およびフルダラビン(30mg/m2/日)を-7日目、-6日目、-5日目、-4日目、および-3日目に用いる)を経てコンディショニング段階が行われる。0日目に、NKG2D、さらにmbIL15のキメラ受容体標的化リガンドを発現するように操作されたNK細胞の第1の3用量を対象に投薬する。各用量は1.5×109個のNK細胞である。用量2は7日目に投与され、用量3は14日目に投与される。28日目に転帰尺度を評価する。
【0152】
主要評価項目には、以下が含まれる:(1)処置に関連する有害事象の発現率、性質、および重症度が評価される。有害事象は、臨床的に重要な臨床検査値の異常、症状または疾患を含むあらゆる好ましくない意図しない徴候である。これは、NK細胞の最終用量から30日後に測定されるべきであり、および(2)NK細胞の用量制限毒性(DLT)を経験した対象の比率。DLTはサイクル1中に発現し、治験実施計画書に規定された基準を満たす処置に起因する有害事象として定義する。これは、第1の用量のNK細胞から28日後に測定するべきである。
【0153】
副次転帰尺度には、以下が含まれる:(1)循環する操作されたNK細胞の最大量から50%減少に要する時間として測定されたNK細胞半減期の評価。これは、第1の用量のNK細胞から28日後に測定されるべきである。(2)投薬後、3か月ごとに末梢血中の操作されたNK細胞の量を測定して、持続性を決定することによる、NK細胞の持続時間。これは、NK細胞の最終用量後の最大2年間測定される;(3)操作されたNK細胞に対する抗体について測定される血清試料を介した、操作されたNK細胞に対する宿主免疫応答の評価。これは、最終用量のNK細胞から最大2年間測定される;(4)完全および部分奏効が得られた対象のパーセンテージを測定することによる、操作されたNK細胞に対する客観的な奏効率。AML対象は、最新のELN基準(Doehner 2017)に基づいて、操作されたNK細胞の抗腫瘍活性について評価される。MDS患者は、MDSを伴うIWG基準(Cheson 2006)に基づいて、操作されたNK細胞の抗腫瘍活性について評価される。これは、第1の用量の操作されたNK細胞から28日後に測定され、最終用量から最大2年後まで追跡される。
【0154】
NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する、3用量の操作されたNK細胞の投与は、好ましい忍容性を示し、限定された有害事象を示すと考えられる。また、NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する3用量の操作されたNK細胞の投薬は、限定されたDLTをもたらすと考えられる。NK細胞は、延長された半減期および持続期間の延長を示すと考えられる。NK細胞は、限定された宿主免疫応答および臨床的に意味のある客観的な奏効率(例えば、腫瘍負荷の低下)を誘導すると考えられる。Ara-Cとフルダラビンを用いたリンパ球枯渇の組み合わせは、リンパ球枯渇と抗腫瘍効果の組み合わせ効果により、操作されたNK細胞の抗がん効果をさらに増強すると考えられる。
[実施例4]
【0155】
3用量の投薬レジメンからの予備的転帰
対象は、上記で検討したように実施例1または実施例3のいずれかに従って処置された。さらなる対象は、0日目、7日目、および14日目の各々において、1億個または3億個のいずれかの操作されたNK細胞の3用量を受けた(この投薬サイクルは、実施例1または3で開示されている)。実施形態に応じて、代替の投薬/タイミングを使用することができる。対象の年齢中央値は60歳であり、AMLと診断された対象は17例、MDSと診断された対象は4例であった。診断からの期間の中央値は13か月であった。ベースラインの芽球パーセンテージの中央値は27%であり、15例の対象の好中球数(ANC)は1×109細胞/L未満であった。実施例1または実施例3のいずれかに従って処置された対象の多くは、1つ以上の異なる治療で前処置されていて、および/またはAMLもしくはMDSのいずれかの再発が多発していた。処置を受けた対象のうち、受けた前治療の回数の中央値は3回の前治療であった。AML患者のうち、各患者はBCL-2阻害剤化合物で以前に処置されていた。4人の患者(AMLであっても、またはMDSであっても)が以前に同種細胞移植を受けていた。
【0156】
検討したように、対象は、リンパ球枯渇(シクロホスファミド(300mg/m
2)およびフルダラビン(30mg/m
2)を用いる;-5日目、-4日目、-3日目)に供された。対象は、NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する、3用量の操作されたNK細胞を受けた。転帰を28日目に測定した。NKG2Dリガンドを標的とし、またmbIL15を発現するキメラ受容体コンストラクトを発現する、3用量の操作されたNK細胞は、投薬された対象全体で、試験された各用量レベルで良好な忍容性を示した。用量制限毒性は観察されなかった。リンパ球枯渇および基礎疾患と一致する骨髄抑制および感染が検出され、最も一般的な高グレードの反応を示した。有利には、いずれの用量でもCAR T様毒性は観察されなかった。サイトカイン放出症候群、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)もしくは他の神経毒性、または移植片対宿主病を経験した対象はいなかった。4用量のいずれのNK細胞も受けた対象の全奏効率は60%を超えた。3用量の各々で1億個または3億個の細胞を受けた患者は、ほぼ70%の全奏効率(完全奏効;血液学的回復不良を伴う完全奏効;形態学的無白血病状態;または部分奏効)を示した。各投薬時点で1×10
9個または1.5×10
9個の細胞のいずれかを3用量受けた患者では、60%が完全奏効を示し、完全奏効例3例中2例では微小残存腫瘍陰性(例えば、治療後に疾患は検出されなかった)であった。
図4Aは、ベースライン(第1の用量前の対象からの直近の芽球数)からの芽球数の変化を示す。明らかなように、用量にかかわらず、芽球数が減少する顕著な傾向がある。上述のように、1.0/1.5×10
9個の細胞を受けた対象のうち3例に完全奏効が認められ、そのうちの1例は微小残存腫瘍陽性であることが観察され、2例は微小残存腫瘍陰性であることが観察された。AML(IDH1突然変異)と診断された1例の対象(68歳男性)は、ベースライン時に芽球が8%(形態別)であり、芽球が25%(FISHによる)であった4ラインの以前の治療に抵抗性を示した。投薬サイクルの後(非限定的な例として、0日目、7日目および14日目に1.0×10
9個の操作されたNK細胞であった)。
図4Bは、この対象についての、操作されたNK細胞(操作されたNK細胞DNAの測定による)の経時的な検出のグラフを示す。3用量(点線)の各投薬後、操作されたNK細胞が血液中に検出された。投与された細胞は、20日目までに予想されるNK細胞様の薬物動態プロファイルおよびクリアランスを示した。第1のサイクル後、対象は完全奏効を示し、微小残存腫瘍陰性であることが観察された。該対象の骨髄の観察は正常細胞表現型を示した。操作されたNK細胞は、軽微な血液学的影響として貧血、好中球減少および血小板数減少を伴うが、忍容性が良好であった。6か月の追跡調査時に、対象は、統合的な造血細胞移植を経て、完全奏効を維持した。これらの初期データは、NKG2D標的キメラ受容体を発現し、mbIL15を発現する操作されたNK細胞が、特に本明細書の実施形態で提供されるような3用量のレジメンで患者に投薬された場合、安全であり、有効ながん免疫療法剤であることを実証する。
【0157】
上記に開示された実施形態の特定の特徴および態様の種々の組み合わせまたはサブ組み合わせを作製することができ、さらに、1つ以上の発明の範囲内に入ることができると企図される。さらに、実施形態に関連する任意の特定の特徴、態様、方法、性質、特性、品質、属性、要素などの本明細書における開示は、本明細書に記載する他の全ての実施形態において使用することができる。したがって、開示された実施形態の種々の特徴および態様は、開示された発明の種々のモードを形成するために、互いに組み合わせることができるかまたは互いに置き換えることができることを理解するべきである。したがって、本明細書に開示される本発明の範囲は、上記された特定の開示された実施形態によって制限されるべきではないことが意図される。さらに、本発明は種々の修飾、および代替形態に感受性が高いが、その具体例を図面に示し、本明細書において詳細に説明する。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されるものではなく、逆に、本発明は、記載された種々の実施形態および添付の請求の範囲の精神および範囲内に入る全ての修飾、均等物および代替物をカバーするものであることが理解されるべきである。本明細書に開示される任意の方法は、示される順序で行われる必要はない。本明細書に開示される方法は、実施者によって取られる特定の行為を含むが、しかしながら、それらは、明示的にまたは黙示的に、それらの行為の第三者の指示を含むこともできる。さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本開示がまたそれによってマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識する。
【0158】
本明細書に開示される範囲はまた、任意のおよび全ての重複、サブ範囲、およびそれらの組み合わせを包含する。「最大(up to)」、「少なくとも」、「より大きい」、「より少ない」、「間」などの用語は、示された数字を含む。「約」または「ほぼ」などの用語の前にある数字は、示された数字を含む。例えば、「約90%」は、「90%」を含む。一部の実施形態では、少なくとも95%の配列同一性または相同性は、参照配列に対する96%、97%、98%、99%、および100%の配列同一性または相同性を含む。さらに、配列がヌクレオチドまたはアミノ酸配列を「含む」として開示される場合、このような参照文献はまた、他に指示がない限り、配列が、示された配列「を含む」、「からなる」、または「から本質的になる」ことを含むものとする。本明細書で使用される任意のタイトルまたは小見出しは、組織目的であり、本明細書に開示される実施形態の範囲を制限するために使用されるべきではない。
【0159】
配列
いくつかの実施形態では、核酸コードの縮重を主要因としながら、本明細書に開示される核酸のいずれかに対応するアミノ酸配列(および/または添付の配列表に含まれる)が提供される。さらに、本明細書に明示的に開示される配列(および/または添付の配列リストに含まれる)とは異なるが、機能的類似性または同等性を有する配列(核酸またはアミノ酸のいずれか)もまた本開示の範囲内で企図される。上記には、突然変異体、切断、置換、コドン最適化、または他のタイプの修飾が含まれる。
【0160】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態に従って、配列のいずれかを使用することができるか、または本明細書に開示される配列(および/または添付の配列表に含まれる)のいずれかの切断または突然変異形態を使用することができ、任意の組み合わせで使用することができる。
【0161】
電子フォーマットによる配列表を本明細書に添付して提出することができる。配列表に提供される配列のいくつかは、天然に存在しない断片または天然に存在する配列を含む他の配列の一部であることにより、人工配列として指定することができる。配列表に提供される配列のいくつかは、ヒト化抗体配列などの異なる起源由来の配列の組み合わせであることにより、人工配列として指定することができる。
【配列表】
【国際調査報告】