(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】アルカリスルホニルイミド塩を生成する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 21/093 20060101AFI20240501BHJP
C01B 21/086 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C01B21/093 Z
C01B21/086
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571740
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-17
(86)【国際出願番号】 EP2022062660
(87)【国際公開番号】W WO2022248215
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, エティエンヌ
(57)【要約】
本開示は、他の利用可能な方法と比較して、工業規模として且つ合理的なコストで高純度のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を生成する新しい方法に関する。前記方法は、ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩を塩化オニウムと反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミドのオニウム塩を生成する工程と、少なくとも1つの有機溶媒中でビス(クロロスルホニル)イミドのオニウム塩を無水フッ化水素と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を生成する工程と、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩をアルカリ塩と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を得る工程とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を生成する方法であって、
a)ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩を塩化オニウムと反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミドのオニウム塩(CSIのオニウム塩)を生成する工程であって、溶媒の非存在下又は工程a)に関わる反応混合物の総重量に基づいて5重量%未満の溶媒の存在下で溶融ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)中において実施される工程と、
b)少なくとも1つの有機溶媒中で前記CSIのオニウム塩を無水フッ化水素と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩)を生成する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程a)において、前記塩化オニウムは、塩化アンモニウム(NH
4Cl)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を生成する方法であって、
c)請求項1で得られた前記FSIのオニウム塩をアルカリ塩と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩(FSIのアルカリ塩)を得る工程
を含む方法。
【請求項4】
工程b)は、30℃と前記有機溶媒の沸点との間で変動する温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程b)は、減圧下で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、前記CSIのオニウム塩は、前記無水フッ化水素の添加前に前記有機溶媒に溶解される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、前記CSIのオニウム塩と前記無水液体/気体フッ化水素とのモル比は、0.001:1~20:1の範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、前記溶媒は、5,000ppm未満の水分含有量を有する無水有機溶媒である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)において、前記塩化アンモニウムNH
4Clは、粉末形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
工程a)において、前記塩化オニウムと前記ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)とのモル比は、0.001:1~20:1の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程c)における前記アルカリ塩は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水酸化物水和物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属塩化物、アルカリ金属フッ化物、アルカリ金属アルコキシド化合物、アルキルアルカリ金属化合物、アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ金属シュウ酸塩から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩(FSIのアルカリ金属塩)において、そのHF含有量は、滴定によって決定されて50ppm未満であることを特徴とするビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩(FSIのアルカリ金属塩)。
【請求項13】
電池電解質溶液における、請求項12に記載のFSIのアルカリ金属塩の使用。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の方法によって得ることができるビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩)。
【請求項15】
pH電極及び電位差計と組み合わせてNaOH水溶液を使用する滴定によって決定されて50ppm未満のHF含有量を有する、請求項14に記載のFSIのオニウム塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本出願は、2021年5月26日に欧州で出願された欧州特許出願公開第21305685.6号の優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を生成する方法に関する。より具体的には、本発明は、工業規模で経済的に実現可能であり、且つ高純度の生成物を提供する、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を生成する新しい方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
フルオロスルホニルイミド塩、特にビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)のリチウム塩は、電池電解質に有用な化合物である。LiFSIにつながる様々なプロセス、反応物及び中間体が特許文献に記載されている。
【0004】
LiFSIにつながる公知の中間体の1つは、アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NH4FSI)である。いくつかの特許文献は、特に、フッ素化剤によるビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)のフッ素化の第1の工程と、次いでLiFSI生成物をもたらす、それに続くNH4FSIのリチウム化の第2の工程によるLiFSIの調製について記載している。
【0005】
特に、国際公開第2017/090877A1号パンフレット(CLS)は、(1)溶媒中でビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)をフッ素化試薬と反応させ、続いてアルカリ試薬で処理することにより、NH4FSIを生成する工程と、(2)NH4FSIをリチウム塩基と反応させる工程とを含む、LiFSIを生成する方法を記載している。
【0006】
この文献によれば、NH4FSI中間体は、溶媒中でフッ素化剤を用いてCSIHをフッ素化し、続いて生成物を沈殿させるためにアルカリ試薬で処理することによって直接得られる。
【0007】
本発明の目的は、国際公開第2017/090877A1号パンフレットに記載の方法と比べて追加の工程を用いて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩)、特にNH4FSIを調製するための代替経路を提供することであるが、このような経路は、CSIの中間体オニウム塩、特にNH4CSIが高純度であり、他の中間体及び最終生成物の純度並びにプロセス全体の効率にプラスの影響を与えるという利点をもたらす。
【0008】
国際公開第2015/158979A1号パンフレット(Arkema)は、NH4FSI中間体を含む、式(III)R2-(SO2)-NX-(SO2)-Fのフルオロ化合物を調製する代替プロセスを記載しており、前記プロセスは、(a)式(II)R1-(SO2)-NX-(SO2)-Clのクロロ化合物を得る第1の工程であって、式(I)R0-(SO2)-NH2のスルファミドと、亜硫酸及び塩素化剤との反応を含む第1の工程と、(b)式(III)のフルオロ化合物を得る第2の工程であって、少なくとも1つの有機溶媒中で式(II)のクロロ化合物を無水フッ化水素酸HFと反応させる第2の工程とを含む。
【0009】
国際公開第2019/229361A1号パンフレット(Arkema)も、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩F-(SO2)-NLi-(SO2)-Fを生成する同様のプロセスを記載しており、これは、スルファミン酸HO-(SO2)-NH2を反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミドCl-(SO2)-NH-(SO2)-Clを生成する第1の工程と、任意選択的に、少なくとも1つの有機溶媒SO1中において、無水HFを用いてビス(クロロスルホニル)イミドCl-(SO2)-NH-(SO2)-Clをフッ素化する第2の工程とを伴い、前記工程は、耐食性のある材料M3で作られた反応器内又は耐食性のある材料M2で作られた表面層でコーティングされた材料M1で作られた基層を含む反応器内で実施される。
【0010】
国際公開第2020/099527号パンフレット(Solvay SA)は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を生成する方法を開示しており、この方法は、a)ビス(クロロスルホニル)イミド又はその塩をフッ化アンモニウムと反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を生成する工程と、b)少なくとも1つの沈殿溶媒を添加し、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を分離することによって結晶化する工程と、c)結晶化したビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩をアルカリ塩と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を得る工程とを含む。好ましくは、プロセスの最後にフッ化アンモニウムが使用され、アンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミドが得られる。本記載で詳述され、実施例に示されるように、工程a)は、溶媒中で実施される。
【0011】
欧州特許第2674395号明細書(Nippon Soda Co.,Ltd.)は、アンモニウムN-(クロロスルホニル)-N-(フルオロスルホニル)イミドをフッ化水素と反応させて、アンモニウムN,N-ジ(フルオロスルホニル)イミドを得ることを開示している。
【0012】
欧州特許第3203570号明細書(Nippon Shokubai Co.,Ltd.)は、フルオロスルホニルイミド塩及び溶媒を含む電解質溶液材料を生成する方法を開示しており、これは、フルオロスルホニルイミド塩及び電解質溶液溶媒を含む溶液を減圧及び/又は加熱して、フルオロスルホニルイミド塩生成溶媒を揮発させることを特徴とする。
【0013】
本発明の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩、特にNH4FS)の調製及び次いでビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩(FSIのアルカリ塩、特にLiFSI)の調製の代替経路を提供することであり、このような経路は、工業規模で実施可能であり、且つ高純度のビス(フルオロスルホニル)イミド生成物を提供する。特に、本発明の方法の重要な部分(即ち工程a)、第1の工程)は、反応物を分散させるように作用する溶融反応生成物、例えば溶融HCSIの存在下及び溶媒の非存在下(又は非常に限られた量の溶媒の存在下)で実施される。CSIの中間体オニウム塩は、溶媒の非存在下で溶融状態において調製されるため、溶融反応生成物(例えば、HCSIなど)と溶媒との間に副反応が生じる可能性がもはやなく、以下の生成物の純度にプラスの影響を与え、特にFSIのオニウム塩及びFSIのアルカリ金属塩の純度にプラスの影響を与える。更に、このような代替経路は、反応副生成物(例えば、HClガス)を特別な分離/精製工程なしで価値設定することができ、加えて、CSIのオニウム塩の調製工程が吸熱熱平衡を示す(重要なHClガスの発生による)という更なる利点をもたらし、これにより従来技術で記載されたプロセスと比較して工程及び全体のプロセスがより安全になる。
【発明の概要】
【0014】
本出願では、
- 「...~...に含まれる」という表現は、限界値を含むものとして理解されるべきであり、
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本発明の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素又は成分が、列挙された要素又は成分のリストに含まれ、且つ/又はリストから選択されると言われる場合、本明細書で明示的に想定される関連する実施形態では、要素又は成分は、個々の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであり得るか、又は明示的に列挙された要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からも選択され得、要素又は成分のリストに列挙されたいかなる要素又は成分もこのようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり、
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び均等物を含む。
【0015】
本発明の第1の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を生成する方法であって、
a)ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)を塩化オニウムと反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミドのオニウム塩(CSIのオニウム塩)を生成する工程であって、溶媒の非存在下又は工程a)に関わる反応混合物の総重量に基づいて5重量%未満の溶媒の存在下で溶融ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)中において実施される工程と、
b)少なくとも1つの有機溶媒中でCSIのオニウム塩を無水フッ化水素と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩)を生成する工程と、
c)FSIのオニウム塩をアルカリ塩と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩(FSIのアルカリ塩)を得る工程と
を含む方法である。
【0016】
本発明の方法は、従来技術に記載されているNH4Fフッ素化手法と比較して、重大な固体廃棄物の形成なしに、CSIの中間体オニウム塩、特にNH4CSIが溶融状態でのその調製プロセスにより高純度を示し、従って直接フッ素化して、FSI、特にNH4FSIのオニウム塩を形成することができるという主な理由により有利である。
【0017】
本発明による方法の工程a)は、ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)を塩化オニウムと反応させて、CSIのオニウム塩を生成することを含む。この工程a)は、溶媒及び希釈剤の非存在下で溶融状態において行われる。より正確には、この方法は、ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)の溶融塩、例えば溶融HCSI中において実施され、反応物を分散させるように作用し、工程a)に関わる反応物が接して反応することができる。重要なことに、本発明の方法の工程a)は、溶媒なしの工程である。換言すれば、工程a)の反応中に反応混合物に溶媒/希釈剤が全く添加されず、代わりに非常に少量の溶媒/希釈剤が添加される。第1に、溶媒を除去する工程が工業プロセスの複雑さを増大させるだけでなく、その全体のコストも増大させることから、これは、有利である。第2に、実際に使用できるのは、無水溶媒(ppm範囲の残留水量が特徴)のみであるため、典型的にはこのようなプロセスで使用する前に溶媒を処理する必要があり、加えて、ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)の固有の反応性は、このような化学工程で考慮される様々な溶媒の存在下で望ましくない副反応を引き起こす可能性があり、これにより予期しない溶媒の副生成物の形成につながる可能性がある。通常、最終的なビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩(FSIのアルカリ塩)から(とりわけ)これらの不純物を除去するために、プロセスの後続の工程で重要な努力が必要となる。
【0018】
本発明に関連して、「溶媒」という用語は、以下の3つ、1/反応の開始から終了まで存在し、場合によりプロセス中に添加されること、2/プロセス中に変化しない、換言すれば、含まれる反応物に対して非反応性であること、及び3/反応生成物がその純粋な形態である場合、プロセスの最後に除去する必要があることの累積的な特性を示す化合物を意味することを意図する。この定義の範囲内に入る溶媒の例を以下に示す。明確にするために、本発明のプロセスで使用される溶融ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)は、上記の「溶媒」の定義に該当しない。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、本明細書に記載の方法の工程a)は、非常に少量の溶媒、工程a)に関わる反応混合物の総重量に基づいて即ち5重量%未満の量の溶媒の存在下で実施される。好ましくは、この実施形態によれば、溶媒の量は、工程a)に関わる反応混合物の総重量に基づいて4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量%未満、0.01重量%未満又は0.001重量%未満である。反応混合物の総重量は、反応物の重量及び溶融ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)の重量を加えることによって得られる。
【0020】
このようなプロセスで典型的に使用される溶媒は、よく知られているか文献に広く記載されている。このような溶媒は、非プロトン性、例えば極性の非プロトン性溶媒であり得、
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、及び
- シアノ、ニトロ、クロロ又はアルキル置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン
からなる群から選択され得る。
【0021】
典型的には、このようなプロセスを実施するために使用される有機溶媒は、例えば、背景セクションに記載されている文献でのように、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択され得る。
【0022】
工程a)によれば、反応物(又は反応性実体)を添加する前に、溶融状態(液体状態とも呼ばれる)であるようにある量のビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)、例えばHCSIをその融解温度Tm(I)よりも高く加熱する。次いで、粉末形態又は液体形態であり得る反応物は、反応混合物に添加され、反応させて、例えばNH4CSIなどの対応するビス(クロロスルホニル)イミドのオニウム塩(CSIのオニウム塩)を生成する。これは、このような反応生成物、即ちビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)の量が工程a)の過程で増加することを意味する。換言すれば、溶融反応生成物は、反応物を分散させ、それらが接して反応するための媒体を提供するために使用される。従って、本発明によれば、工程a)を行うのに溶媒が必要ない。これは、高純度のCSIのオニウム塩、例えば高純度のNH4CSIを得るために反応後にこのような溶媒を除去する必要がないため、全体の生成プロセスが大幅に簡素化されるため、有利である。これは、溶媒の水を除去するための追加の工程が必要ないという追加の利点を提示する。
【0023】
工程a)では、ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)が原料として使用される。それは、式:
(Cl-SO2-N--SO2-Cl)X+
で表され得、式中、Xは、H、Li、Na、K及びCsからなる群からの1つを表す。
【0024】
好ましい実施形態によれば、Xは、Hを表し、これは、原料が式:
Cl-SO2-NH-SO2-Cl(HCSI)
のビス(クロロスルホニル)イミドであることを意味する。
【0025】
この好ましい実施形態によれば、工程a)は、ビス(クロロスルホニル)イミド(HCSI)を溶媒の非存在下で塩化オニウムと反応させて、CSIのオニウム塩を生成することを含む。更により好ましくは、この好ましい工程a)で使用される塩化オニウムは、塩化アンモニウム(NH4Cl)である。この更により好ましい実施形態によれば、工程a)は、HCSIをNH4Clと反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミドのアンモニウム塩(NH4CSI)を生成することを含む。この場合、溶媒の非存在下において、反応は、HClが無水ガスとして媒体から放出されるようなものであり、これは、非常に有利である。任意選択的に、減圧の使用は、塩化オニウムの添加中又は塩化オニウムの添加完了後にHClの放出を促進することが考えられ得る。
【0026】
HCSIは、市販されている供給源から得られる可能性があるか、又は例えば、
- クロロスルホニルイソシアネートClSO2NCOをクロロスルホン酸ClSO2OHと反応させることにより、
- 塩化シアンCNClを無水硫酸SO3及びクロロスルホン酸ClSO2OHと反応させることにより、
- スルファミン酸NH2SO2OHを塩化チオニルSOCl2及びクロロスルホン酸ClSO2OHと反応させることにより、
公知の方法によって生成され得る。
【0027】
HCSIは、いわゆるイソシアネート経路又はスルファミン酸経路のいずれかによって調製され得る。後者の場合、使用されるスルファミン酸は、任意選択的に、粉砕され、真空下で乾燥されて、その含水量を減らし、変換速度を加速し、これにより反応時間を大幅に短縮することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、工程a)で使用される塩化オニウム、例えばNH4Clは、その水分含有量が2,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満又は更に10ppm未満である。
【0029】
別の実施形態では、工程a)は、ビス(クロロスルホニル)イミドの塩(Cl-SO2-N--SO2-Cl)X+を塩化アンモニウム(NH4Cl)と反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミド(NH4CSI)のアンモニウム塩を生成することを含み、式中、Xは、Li、Na、K及びCsからなる群から選択される。
【0030】
本発明による方法の工程b)は、工程a)のCSIのオニウム塩を少なくとも1つの有機溶媒中で無水フッ化水素(HF)と反応させて、FSIのオニウム塩を生成することを含む。
【0031】
本発明によれば、フッ化水素は、無水である。水分含有量は、好ましくは、5,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満又は更に50ppm未満であり得る。
【0032】
フッ化水素HFは、好ましくは、気体の形態で反応媒体中に導入される。代わりに、それは、液体の形態で反応に導入され得る。
【0033】
工程b)で使用されるフッ化水素の量は、ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)1モル当たり好ましくは1~10当量、より好ましくは1~7当量、更により好ましくは2~5当量に含まれる。
【0034】
工程b)は、以下からなる群から選択され得る有機溶媒中で実施される:
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、
- シアノ、ニトロ、クロロ又はアルキル置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン。
【0035】
好ましい実施形態によれば、有機溶媒は、無水である。水分含有量は、好ましくは、5,000ppm未満、1,000ppm未満、500ppm未満、100ppm未満又は更に50ppm未満であり得る。
【0036】
本発明によれば、工程b)前又は工程b)において、無水フッ化水素の添加前にCSIのオニウム塩を有機溶媒に溶解又は懸濁することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、工程b)は、30℃と有機溶媒の沸点との間で変動する温度で行われる。例えば、工程b)は、30℃~100℃、好ましくは50℃~90℃又は70℃~80℃の温度で実施され得る。
【0038】
工程b)は、大気圧で行われるか又は減圧下で行われ得る。いくつかの実施形態では、工程b)は、減圧下で行われる。例えば、工程b)は、0~1013ミリバール又は0~500ミリバール、好ましくは0~200ミリバール、より好ましくは0~50ミリバールで変動する圧力で行われ得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、工程b)は、工程a)のCSIのアンモニウム塩を少なくとも1つの有機溶媒中で無水フッ化水素と反応させて、FSIのアンモニウム塩を生成することを含む。
【0040】
無水HFをフッ素化剤として使用する場合、フッ素化反応によりHClが形成されるが、その大部分は、例えば、中性ガス(窒素、ヘリウム又はアルゴンなど)を散布することにより、反応媒体から(過剰のHFと同様に)脱気することができる。散布されたHF/HCl混合物は、更にリサイクルすることができる。
【0041】
工程b)後の反応媒体中のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩の濃度は、10重量%~95重量%、例えば30重量%~80重量%又は40重量%~70重量%に含まれ得る。
【0042】
工程b)後、しかし工程c)前に、本発明による方法は、塩基性化合物を反応媒体に添加することを含む工程を含み得る。この任意選択的な工程は、リチウム化前の部分的にフッ素化されたオニウム塩の中和に対応する。この任意選択的な工程に従って使用することができる塩基性化合物は、固体、純粋な液体、水溶液又は有機溶液又はガスであり得る。塩基性化合物は、ガス状アンモニア、アンモニア水、アミン、アルカリ又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、ステアリン酸塩、パルミチン酸塩、プロピオン酸塩又はシュウ酸塩からなる群から選択され得る。アミンの中でも、脂肪族アミン(エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びトリブチルアミンなど)、アルキレンジアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミンなど)、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンなど)、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン(ベンジルアミン及びメタキシレンジアミンなど)、これらのアミンのエチレンオキシド付加物、ホルムアミジン、グアニジン、アミジン及び複素環式アミン(ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、ピリミジン、ピロール、イミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、ピリジン及びインドールなど)を含む任意のタイプのアミンが好都合であり得る。塩基性化合物は、好ましくは、ガス状アンモニア又はアンモニア水である。
【0043】
この任意選択的な中和工程で添加される塩基性化合物の量は、中和されるオニウム塩の量に基づいて好ましくは0.1~10当量、好ましくは0.5~5当量、より好ましくは0.5~3当量である。
【0044】
この任意選択的な中和工程中、温度は、0℃~100℃、15℃~60℃又は20℃~40℃で変動し得る。任意選択的な中和工程は、工程b)と同じ温度で実施され得る。
【0045】
工程b)後、しかし工程c)前に、本発明による方法は、FSIのオニウム塩を結晶化することを含む工程を含み得る。
【0046】
このような任意選択的な結晶化反応は、工程b)後に得られる反応媒体中において実施され得る。代わりに、この方法は、典型的には、反応媒体の有機溶媒の一部を蒸発させることにより、加熱、減圧又はその両方によって反応媒体内のFSIのオニウム塩を濃縮することを含む更なる工程を含み得る。一実施形態によれば、濃縮工程は、0℃~120℃、好ましくは5℃~80℃、より好ましくは10℃~70℃に含まれる温度での溶媒の蒸留を含み得る。圧力は、溶媒の性質に応じて、典型的には大気圧~10-2ミリバール、好ましくは1ミリバール~500ミリバール、より好ましくは5ミリバール~100ミリバールで調整することができる。蒸留は、当業者に公知の任意の典型的な手段により、連続プロセス方式又は不連続/バッチ方式において、例えば連続バッチ方式の溶媒蒸発、バッチ式蒸留、ショートパスの連続フロー蒸留又は薄膜蒸発装置などで行うことができる。
【0047】
オニウム塩の任意選択的な結晶化は、少なくとも1つの沈殿溶媒を添加することによって得ることができる。少なくとも1つの沈殿溶媒は、塩を含む反応混合物に添加される。沈殿溶媒は、反応混合物の有機溶媒への溶解性が高く、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩に対して貧溶媒である有機溶媒の中から選択することが好ましい場合がある。前記沈殿溶媒は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム及び四塩化炭素などのハロゲン化溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及びトルエンなどの置換芳香族炭化水素溶媒並びにシクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン及びIsopar(商標)などのアルカン溶媒からなる群から選択され得る。沈澱溶媒は、好ましくは、ジクロロメタン及びジクロロエタンから選択され得る。沈澱溶媒と反応混合物の有機溶媒との間の体積比は、0.1~50、好ましくは0.2~20、より好ましくは0.5~15、更により好ましくは1~10に含まれ得る。任意選択的に、反応混合物の総重量に基づいて0.01重量%~20重量%、好ましくは0.1重量%~10重量%、より好ましくは1重量%~5重量%であり得る含有量において、沈殿溶媒を添加する前に水を反応混合物に添加することができる。
【0048】
加えて、塩を含む反応混合物の温度は、溶媒沸点~-20℃、例えば70℃~-10℃、例えば30℃~0℃に含まれる値まで低下され得る。温度を下げる間、圧力を一定に保つことが好ましい場合がある。しかしながら、圧力を同時に下げることは、排除されない。これにより、反応混合物の有機溶媒の一部が蒸発する可能性がある。圧力は、大気圧~10-2ミリバール、好ましくは1ミリバール~500ミリバール、より好ましくは5ミリバール~100ミリバールに含まれる値まで下げることができる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、この方法は、塩を含む反応混合物の温度を低下させることなく、沈殿溶媒の添加が実施される工程b)前にオニウム塩を結晶化する工程を含む。別の実施形態によれば、この方法は、塩を含む反応混合物の温度を低下させながら、沈殿溶媒の添加が実施される工程b)前にオニウム塩を結晶化する工程を含む。沈殿溶媒は、好ましくは、最初に添加され、その後、温度が下げられる。しかしながら、他の方法で進めること又は2つの行為を同時に行うことを除外するものではない。
【0050】
工程b)後、しかし工程c)前に、本発明による方法は、分離工程を含み得る。この任意選択的な分離工程は、当業者に知られている任意の典型的な分離手段、例えば濾過(例えば、加圧下又は真空下)又はデカンテーションによって実施することができる。濾過媒体のメッシュサイズは、例えば、2μm以下、0.45μm以下又は0.22μm以下であり得る。分離された生成物は、適切な溶媒で1回又は複数回洗浄され得る。結晶化工程及び分離工程は、1回実施され得るか、又は分離された結晶化塩の純度を改善するために、必要に応じて2回以上繰り返され得る。このような中間分離工程は、上述した任意選択的な中和工程後、工程c)前に実施され得る。
【0051】
工程b)後、しかし工程c)前に、本発明による方法は、FSIのオニウム塩を乾燥する工程、例えばFSIのアンモニウム塩を乾燥する工程を含み得る。例えば、分離された結晶化した塩を乾燥させて、純粋な乾燥生成物を得る。乾燥工程は、典型的には、減圧下において、及び/又は加熱により、及び/又は不活性ガス流、典型的には窒素流により、当業者に公知の任意の手段によって実施され得る。
【0052】
本発明による方法の工程b)の最後に得られるFSIのオニウム塩は、高純度を示すことを特徴とし、このオニウム塩は、好ましくは、ビス(フルオロスルホニル)イミド(NH4FSI)のアンモニウム塩である。
【0053】
本発明による方法の工程c)は、工程b)から得られるFSIのオニウム塩をアルカリ塩と反応させて、FSIのアルカリ塩を得ることを含む。
【0054】
工程b)後に得られるFSIのオニウム塩は、次いで、更なる反応に再び関与する。実際、本発明による方法は、FSIのアルカリ塩を得るために、FSIのオニウム塩をアルカリ塩と反応させることを含む工程c)を含む。
【0055】
アルカリ塩がリチウムイオンを伴う場合、工程c)は、リチウム化工程に対応する。工程c)は、有利には、ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)をもたらす。
【0056】
工程b)後に得られるFSIのオニウム塩は、そのまま使用することができるか、又は溶媒に可溶化して使用することができる。一実施形態によれば、FSIのオニウム塩は、非プロトン性有機溶媒、好ましくは以下から選択され得る有機溶媒に可溶化される:
- 環状及び非環状カーボネート、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、
- 環状及び非環状エステル、例えばガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸プロピル、酢酸ブチル、
- 環状及び非環状エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、
- アミド化合物、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルオキサゾリジノン、
- スルホキシド及びスルホン化合物、例えばスルホラン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、
- シアノ、ニトロ、クロロ又はアルキル置換アルカン又は芳香族炭化水素、例えばアセトニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン。
【0057】
好ましい実施形態によれば、溶媒は、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、バレロニトリル及びアセトニトリルからなる群から選択される。
【0058】
工程c)後に得られるFSIのアルカリ塩は、アルカリ金属塩、好ましくはリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である。好ましくは、アルカリ金属塩は、リチウム塩であり、本発明による方法によって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩(LiFSI)である。
【0059】
アルカリ塩の例としては、アルカリ水酸化物、アルカリ水酸化物水和物、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、アルカリ塩化物、アルカリフッ化物、アルコキシド化合物、アルキルアルカリ化合物、アルカリ酢酸塩及びアルカリシュウ酸塩が挙げられる。好ましくは、アルカリ水酸化物又はアルカリ水酸化物水和物は、工程c)で使用される。アルカリ金属塩がリチウム塩である場合、リチウム塩は、水酸化リチウムLiOH、水酸化リチウム水和物LiOH.H2O、炭酸リチウムLi2CO3、炭酸水素リチウムLiHCO3、塩化リチウムLiCl、フッ化リチウムLiF、CH3Oli及びEtOLiなどのアルコキシド化合物、EtLi、BuLi及びt-BuLiなどのアルキルリチウム化合物、酢酸リチウムCH3COOLi並びにシュウ酸リチウムLi2C2O4からなる群から選択され得る。好ましくは、水酸化リチウムLiOH又は水酸化リチウム水和物LiOH・H2Oが工程c)で使用される。
【0060】
アルカリ塩は、固体、純粋な液体又は水溶液若しくは有機溶液として工程c)で添加され得る。
【0061】
工程c)で使用されるFSIのオニウム塩に対するアルカリ塩のモル比は、0.2:1~10:1、0.5:1~5:1又は0.9:1~2:1で変動し得る。
【0062】
工程c)は、0℃~50℃、例えば15℃~35℃の温度、好ましくはほぼ室温で実施され得る。
【0063】
工程c)は、大気圧又は大気圧未満若しくは大気圧超、例えば5ミリバール~1.5バール、好ましくは5ミリバール~100ミリバールで実施され得る。
【0064】
工程c)後に更なる追加の工程が実施され得る。例えば、本発明による方法は、工程c)後に分離工程を含み得る。工程b)後に得られるオニウム塩に関して上述したように、この任意選択的な分離工程は、当業者に知られている任意の典型的な分離手段、例えば濾過(例えば、加圧下又は真空下)又はデカンテーションによって行われ得る。別の例として、本発明による方法は、反応媒体を不活性ガス流と接触させてアンモニアを除去する追加の工程を含み得る。
【0065】
工程(c)で使用されるアルカリ塩が水溶液である場合、反応媒体は、二相(水性/有機)溶液であり得る。この場合、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩を回収するために、この方法は、その間に水相が除去され、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩が有機相中に回収される相分離工程を含み得る。追加の工程は、濾過、濃縮、抽出、再結晶、クロマトグラフィーによる精製、乾燥及び/又は配合を含み得る。
【0066】
溶媒及び反応物を含む、本発明による方法で使用される全ての原材料は、好ましくは、非常に高い純度基準を示すことができる。好ましくは、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Cr、Ni、Znなどの金属成分の含有量は、10ppm未満、より好ましくは5ppm未満又は2ppm未満である。
【0067】
本発明による方法のいくつかの工程又は全ての工程は、反応媒体の腐食に耐えることができる装置で有利に実施される。この目的のために、材料は、Hastelloy(登録商標)ブランドで販売される、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、炭素及びタングステンに基づく合金又は名称Inconel(登録商標)若しくはMonel(商標)で販売される、銅及び/若しくはモリブデンが添加されているニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より特にHastelloy C276又はInconel 600、625若しくは718合金などの耐腐食性である反応媒体と接触する部分のために選択される。オーステナイト鋼、より特に304、304L、316又は316Lステンレス鋼などのステンレス鋼も選択され得る。多くとも22重量%、好ましくは6重量%~20重量%、より好ましくは8重量%~14重量%のニッケル含有量を有する鋼が使用される。304及び304L鋼のニッケル含有量は、8重量%~12重量%で変動し、316及び316L鋼のニッケル含有量は、10重量%~14重量%で変動する。より特に、316L鋼が選択される。反応媒体の腐食に対して耐性があるポリマー化合物からなるか又はそれでコーティングされた装置も使用され得る。特に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン又はテフロン)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)などの材料が挙げられ得る。ガラス装置も使用され得る。均等な材料を使用することは、本発明の範囲外ではないであろう。反応媒体と接触するのに好適であり得る他の材料として、黒鉛誘導体も挙げられ得る。濾過用の材料は、使用される媒体に適合していなければならない。フッ素化ポリマー(PTFE、PFA)、ロードされたフッ素化ポリマー(Viton(商標))並びにポリエステル(PET)、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、綿及び他の適合性材料を使用することができる。
【0068】
本発明の第2の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ金属塩(FSIのアルカリ金属塩)である。このような塩は、例えば、本発明の方法によって得ることができる。本明細書に記載の方法は、工程b)において、特に生成物が電解質などの電池用組成物に組み込まれることが意図される場合、生成物に非常に有害となる可能性があるフッ化水素(HF)を伴なう。従って、最終生成物中のこのようなフッ化水素の残留含有量を可能な限り最小限に抑えることが非常に重要である。
【0069】
本発明者らは、本発明のプロセスによって得られるFSIのアルカリ金属塩中のHF含有量が、例えば、pH電極及び電位差計と組み合わせてNaOH水溶液を使用する滴定(又は酸塩基滴定)によって決定されて50ppm未満に低減され得ることを示すことができた。従って、本発明のFSIのアルカリ金属塩は、そのHF含有量が50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満又は更に10ppm未満であることを特徴とする。
【0070】
本発明のFSIのアルカリ塩は、以下の特徴の少なくとも1つ(好ましくは全て)を有利に示す:
- 19F NMRによって決定されて少なくとも98重量%、例えば、99重量%~100重量%又は99.50~100%の純度、
- GC(代わりにヘッドスペースGC)によって決定されて20重量%未満、10重量%未満、1重量%未満、好ましくは0重量%~1重量%の溶媒含有量、
- 例えば、グローブボックス内で行われるカールフィッシャー水滴定によって決定されて500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満又は更に20ppm未満の水分含有量。
【0071】
本発明のFSIのアルカリ塩は、以下の特徴の少なくとも1つ(好ましくは全て)を有利に示す:
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満又はより好ましくは2ppm未満の塩化物(Cl-)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは40ppm未満、より好ましくは30ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F-)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満又はより好ましくは2ppm未満の硫酸塩(SO4
2-)含有量。
【0072】
フッ化物及び塩化物の含有量は、例えば、イオン選択電極(又はISE)を使用した銀滴定による滴定によって測定することができる。代わりに、硫酸塩含有量は、イオンクロマトグラフィー又は比濁法によって測定することができる。
【0073】
好ましくは、それは、以下の金属元素の含有量の少なくとも1つ(好ましくは全て)を示すことができる:
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の鉄(Fe)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のクロム(Cr)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のニッケル(Ni)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のマンガン(Mg)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のナトリウム(Na)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のカリウム(K)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の(Pb)含有量。
【0074】
元素不純物含有量は、例えば、ICP-AES(誘導結合プラズマ)によって測定することができ、より具体的には、Na含有量は、AAS(原子吸光分光法)によって測定することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本発明のFSIのアルカリ塩は、アルカリ金属塩、好ましくはビス(フルオロスルホニル)イミド、Li+(FSO2)2N-(LiFSI)のリチウム塩である。ビス(フルオロスルホニル)イミドのリチウム塩は、以下の不純物プロファイルによって特徴付けられ得る:
- 19F NMRによって決定されて少なくとも99.90重量%の、99.90重量%~100重量%で変動する純度、及び
- カールフィッシャー水滴定によって決定されて50ppm未満の水分含有量。
【0076】
本発明の第3の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のオニウム塩を生成する方法であって、
a)ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)を塩化オニウムと反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミドのオニウム塩(CSIのオニウム塩)を生成する工程であって、溶媒の非存在下又は工程a)に関わる反応混合物の総重量に基づいて5重量%未満の溶媒の存在下で溶融ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)中において実施される工程と、
b)少なくとも1つの有機溶媒中でCSIのオニウム塩を無水フッ化水素と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩)を生成する工程と
を含む方法である。
【0077】
本発明のこの態様によれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩、例えばNH4FSIが調製され、単離される。このような塩を生成する方法は、少なくとも2つの工程、即ち工程a)及びb)を含み、これは、本発明の第1の目的で記載された方法の工程a)及び工程b)に対応する。これらの2つの工程に関して行われた開示は、全て本発明の第3の目的に記載された方法に適用される。
【0078】
本発明によれば、FSIのオニウム塩、例えばFSIのアンモニウム塩を生成する方法は、上述のように追加の工程を含み得る。例えば、この方法は、以下の追加の工程の1つ以上を含み得る:
- オニウム塩の中和又は沈殿に対応する塩基性化合物を反応媒体に添加する工程、
- ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を結晶化する工程又は例えば異なる条件下でオニウム塩を結晶化する複数の工程、
- 例えば、濾過(例えば、加圧下又は真空下)又はデカンテーションによる分離の工程、
- ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩を乾燥する工程、例えばビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩を乾燥する工程。
【0079】
好ましくは、本発明のFSIのオニウム塩を生成する方法は、工程a)において、塩化オニウムが塩化アンモニウムNH4Clである、FSIのアンモニウム塩を生成する方法である。この場合、本発明の方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(NH4FSI)のアンモニウム塩を生成する方法であり、
a)ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)を塩化アンモニウムと反応させて、ビス(クロロスルホニル)イミド(NH4CSI)のアンモニウム塩を生成する工程であって、溶媒の非存在下又は工程a)に関わる反応混合物の総重量に基づいて5重量%未満の溶媒の存在下で溶融ビス(クロロスルホニル)イミド(又はその塩)中において実施される工程と、
b)少なくとも1つの有機溶媒中でNH4CSIを無水フッ化水素と反応させて、ビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩(FSIのオニウム塩)を生成する工程と
を含む。
【0080】
本発明の第4の目的は、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のオニウム塩である。このような塩は、例えば、本発明の方法によって得ることができる。本明細書に記載の方法は、工程b)において、特に生成物が電解質などの電池用組成物に組み込まれることが意図される場合、生成物に非常に有害となる可能性があるフッ化水素(HF)を伴う。従って、最終生成物中のこのようなフッ化水素の残留含有量を可能な限り最小限に抑えることが非常に重要である。本発明者らは、本発明のプロセスによって得られるビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩中のHF含有量が、例えば、pH電極及び電位差計と組み合わせてNaOH水溶液を使用する滴定(又は酸塩基滴定)によって決定されて50ppm未満に低減され得ることを示すことができた。従って、本発明のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩は、そのHF含有量が50ppm未満、40ppm未満、30ppm未満、20ppm未満又は更に10ppm未満であることを特徴とする。
【0081】
本発明のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩は、以下の特徴の少なくとも1つ(好ましくは全て)を有利に示す:
- 19F NMRによって決定されて少なくとも98重量%、例えば99重量%~100重量%又は99.50~100%の純度、
- GCによって決定されて20重量%未満、10重量%未満、1重量%未満、好ましくは0重量%~1重量%の溶媒含有量、
- 例えば、カールフィッシャー水滴定によって決定されて500ppm未満、100ppm未満、50ppm未満又は更に20ppm未満の水分含有量。
【0082】
本発明のFSIのオニウム塩は、以下の特徴の少なくとも1つ(好ましくは全て)を有利に示す:
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満又はより好ましくは2ppm未満の塩化物(Cl-)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは40ppm未満、より好ましくは30ppm未満、より好ましくは20ppm未満のフッ化物(F-)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満又はより好ましくは2ppm未満の硫酸塩(SO42-)含有量。
【0083】
フッ化物及び塩化物の含有量は、イオン選択電極(又はISE)を使用したアルゲントメトリーによる滴定によって測定できる。硫酸塩含有量は、イオンクロマトグラフィー又は比濁法によって測定できる。
【0084】
好ましくは、それは、以下の金属元素の含有量の少なくとも1つ(好ましくは全て)を示すことができる:
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の鉄(Fe)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のクロム(Cr)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のニッケル(Ni)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の亜鉛(Zn)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の銅(Cu)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のマンガン(Mg)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のナトリウム(Na)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満のカリウム(K)含有量、
- 100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の(Pb)含有量。
【0085】
元素不純物含有量は、ICP-AES(誘導結合プラズマ)によって測定でき、より具体的には、Na含有量は、AAS(原子吸光分光法)によって測定できる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本発明のビス(フルオロスルホニル)イミドのオニウム塩は、ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩である。ビス(フルオロスルホニル)イミドのアンモニウム塩は、以下の不純物プロファイルによって特徴付けられ得る:
- 19F NMRによって決定されて少なくとも99.90重量%の、99.90重量%~100重量%で変動する純度、及び
- カールフィッシャー水滴定によって決定されて50ppm未満の水分含有量。
【0087】
本発明の第5の態様は、電池用電解質における、上述のビス(フルオロスルホニル)イミドのアルカリ塩、好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの使用である。この電解質は、その後、それ自体公知の方法において、カソードとアノードとの間に配置することにより、電池又は電池セルの製造に使用することができる。
【0088】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願及び刊行物の開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0089】
ここで、本開示を以下の実施例を参照してより詳細に記載するが、それらの目的は、例示的であるにすぎず、本開示の範囲を限定することを意図しない。
【0090】
実施例1:ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩の形成
工程a)-ビス(クロロスルホニル)イミドアンモニウム塩の形成
3口の250mLガラスフラスコに温度計、機械撹拌4羽根シャフト及びスクリュー型固体添加ヘッドを備え付け、フラスコを、PTFEチュービングを介してKOH-スクラバーに接続した。システムは、使用前に30分間にわたってアルゴンでフラッシュされた。ビス(クロロスルホニル)イミド(52.6g、243ミリモル)をグローブボックス内で溶解し、アルゴン下でカニューレを介してフラスコに移し、次いで約50℃に予熱した。無水塩化アンモニウム(13g、243ミリモル)を固体投入スクリュー型ガラス装置に入れ、アルゴン除去及び一定の撹拌下で0.5時間かけて徐々に添加した。添加が完了した後、固体粒子が残らなくなりガス発生が止まるまで、スラリーを激しく撹拌しながら60℃で1時間加熱し、次いで75~80℃で2時間加熱した。HClをKOH-スクラバー中で中和し、塩素含有量をイオンクロマトグラフィーによって回復した。ビス(クロロスルホニル)イミドアンモニウム塩を単離し(55.6g、収率>99%)、次いで機械撹拌下、25℃で15分間かけて1,4-ジオキサン(150g)に溶解した。得られたビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩の溶液をそのまま次の工程で使用した。
【0091】
工程b)-ビス(フルオロスルホニル)イミドアンモニウム塩の形成:ビス(クロロスルホニル)イミドアンモニウム塩のフッ素化
1,4-ジオキサン(250g)中のビス(クロロスルホニル)イミドアンモニウム塩(55.6g)の予め調製した混合物をアルゴン下において、磁気的に結合された4羽根撹拌シャフト及び4つのバッフルを備えたハステロイ(Hastelloy)0.5Lオートクレーブに導入した。無水HF(24g、5当量)を撹拌下において室温で1時間かけて徐々に系に導入した。圧力は、6時間かけて増加し、安定させた。18時間後、過剰のHFを窒素で12時間かけて除去し、次いで混合物をアルゴン下で濾過した。固体の粗製NH4FSI(45.3g、95%)を室温で12時間かけて乾燥させ、19F NMRによって分析し、>99%の純度が示された。
【0092】
実施例2:ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩の形成
実施例1から得られた乾燥固体29.7gを酢酸ブチル300gに可溶化した。25重量%のLiOH・H2O水溶液6.9gを添加した。得られた二相混合物を室温で5時間にわたって撹拌し、次いでデカンテーションした。有機相を回収し、減圧(0.1バール)下、60℃で薄膜蒸発装置に入れた。得られたリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の純度は、99.99重量%を超え、HF(残留酸性度)含有量は、5ppm未満であり、塩素とフッ素の含有量は、20ppm未満であり、金属元素の含有量は、5ppm未満であり、SO4
2-及びFSO3
-などの不純物は、検出されなかった(検出限界)。LiFSIの総収率は、90%であった(最初に導入されたNH4FSIに基づく)。
【国際調査報告】