(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】プロセスセンサに使用するための一体型湿式貯蔵を含むサニタリーシングルユースプロセス接続部
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20240501BHJP
G01N 27/28 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
G01N27/416 353Z
G01N27/28 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571892
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022030240
(87)【国際公開番号】W WO2022246188
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597115727
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ダーカー,アンドリュー・エス
(72)【発明者】
【氏名】ラッチ,タイレル・エル
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジンポー
(72)【発明者】
【氏名】アーメド,タウフィック
(72)【発明者】
【氏名】マクガイア,チャド・エム
(57)【要約】
単回使用プロセス流体感知システム用のプロセス流体コネクタ(204)が提供される。プロセス流体コネクタ(204)は、一対のプロセス流体接続部(300、302)を含み、各プロセス流体接続部(300、302)は、協働するプロセス流体継手に結合するように構成されている。プロセス流体導管部(301)は、各プロセス流体接続部(300、302)に動作可能に結合されている。センサ取り付けポート(308)は、プロセス流体導管部(301)に結合され、プロセス流体センサ(360)を受け入れて取り付けるように構成されている。開閉可能な流体チャンバー(312)は、プロセス流体導管(301)部分に結合され、プロセス流体センサ(360)の感知部品のための湿式貯蔵を提供するように構成される。プロセス流体コネクタを使用するプロセス流体感知システムも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シングルユースプロセス流体感知システムのためのプロセス流体コネクタであって、
一対のプロセス流体接続部であって、前記プロセス流体接続部のそれぞれが、協働するプロセス流体継手に結合するように構成される前記プロセス流体接続部と、
前記プロセス流体接続部のそれぞれに動作可能に結合されるプロセス流体導管部と、
前記プロセス流体導管部に結合され、プロセス流体センサを受け入れて取り付けるように構成されるセンサ取り付けポートと、及び
前記プロセス流体導管部に結合され、前記プロセス流体センサの感知コンポーネントのための湿式貯蔵を提供するように構成される格納可能な流体チャンバと、
を含む、プロセス流体コネクタ。
【請求項2】
前記流体チャンバが、ダウンストリームの前記プロセス流体コネクタの無菌プロセスバリアを破ることなく格納可能である請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項3】
格納可能な前記流体チャンバが、ユーザが作動可能な少なくとも1つの要素に動作可能に結合される請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項4】
ユーザが作動可能な少なくとも1つの前記要素が、格納可能な前記流体チャンバの対向する側面から延びる一対のウィングを含み、一対の前記ウィングが、格納可能な前記流体チャンバを貯蔵構成から動作構成に移行させるように構成される請求項3に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項5】
作動可能な少なくとも1つの前記要素に動作可能に結合された少なくとも1つのロック部材をさらに含み、少なくとも1つの前記ロック部材は、ユーザが作動可能な前記要素の変位を抑制するように構成される請求項4に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項6】
少なくとも1つの前記ロック部材は、一対のロックを含み、前記ロックのそれぞれは、他方の前記ロックとオフセットしており、ユーザが作動可能な前記要素の作動構成への変位を可能にする前に、一対の前記ロックの解除を必要とする請求項5に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項7】
格納可能な前記流体チャンバが、既知のpHを有する緩衝液を含む請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項8】
一対の前記プロセス流体接続部のそれぞれが、サニタリーフランジを含む請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項9】
前記サニタリーフランジのそれぞれが、Oリングを受容するように構成されたOリング溝を含む請求項8に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項10】
エンドキャップと、
遠位端及び前記遠位端から間隔をおいた近位端で前記エンドキャップに取り付けられたシャフトと、及び
前記シャフトの前記近位端に取り付けられた固定位置ピストンであって、格納可能な前記流体チャンバの湿式貯蔵シリンダの内面と協働する大きさの直径を有する前記固定位置ピストンと、
をさらに含む、請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項11】
前記固定位置ピストンの外径に配置された少なくとも1つのOリングをさらに含む請求項10に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項12】
前記湿式貯蔵シリンダの外径に配置されたOリングをさらに備える請求項10に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項13】
格納可能な前記流体チャンバの可動部材が、前記プロセス流体導管部のプロセス流の流れから完全に摺動するように構成される請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項14】
一対の前記プロセス流体接続部の少なくとも1つが、ねじ接続部、フランジ接続部、バーブ接続部、アセティック接続部、オープンパイプ部、付属チューブ及び二次アダプタからなる群から選択される請求項1に記載のプロセス流体コネクタ。
【請求項15】
プロセス流体コネクタを備えるプロセス流体感知システムであって、
前記プロセス流体コネクタは、
一対のプロセス流体接続部であって、前記プロセス流体接続部のそれぞれが、協働するプロセス流体継手に結合するように構成される前記プロセス流体接続部と、
前記プロセス流体接続部のそれぞれに動作可能に結合されるプロセス流体導管部と、
前記プロセス流体導管部に結合され、プロセス流体センサを受け入れて取り付けるように構成されるセンサ取り付けポートと、
前記プロセス流体導管部に結合され、前記プロセス流体センサの感知コンポーネントのための湿式貯蔵を提供するように構成される格納可能な流体チャンバと、及び
前記プロセス流体コネクタのセンサ取り付けポートに取り付けられた固定位置アンペロメトリックプロセス流体センサであって、格納可能な前記流体チャンバ内の緩衝液内に配置された複数の感知素子を有する前記固定位置アンペロメトリックプロセス流体センサと、を含むプロセス流体感知システム。
【請求項16】
前記固定位置アンペロメトリックプロセス流体センサが、使用の時点で加圧されるように構成される請求項15に記載のプロセス流体感知システム。
【請求項17】
前記固定位置アンペロメトリックプロセス流体センサが、前記固定位置アンペロメトリックプロセス流体センサの基準電解液を加圧するために、手動で動作されるように構成される加圧機構を含む請求項16に記載のプロセス流体感知システム。
【請求項18】
前記加圧機構が、ばねで付勢されるピストンを含む請求項17に記載のプロセス流体感知システム。
【請求項19】
前記加圧機構が、前記加圧機構に係合するように構成された手動で動作可能なノブを含む請求項18に記載のプロセス流体感知システム。
【請求項20】
前記ノブは、前記基準電解液中に、ユーザが選択可能な量又は圧力を発生するように構成される請求項19に記載のプロセス流体感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
過去20年の間に、シングルユース又は使い捨てのバイオプロセシングシステムが、バイオ医薬品製造におけるステンレス鋼製システムに取って代わり、大きく飛躍している。ステンレス鋼製の機器で構築された従来のシステムとは対照的に、シングルユースシステムは、高度に設計されたポリマーに依存し、ガンマ線照射によって事前に滅菌される。エンドユーザにとっては、初期投資の削減、前洗浄、滅菌、バリデーションなどの複雑な工程の省略、工程回転時間の改善など、いくつかの大きな利点がある。この結果、シングルユースバイオプロセシングシステムは、初期の研究開発ラボから大規模な商業用医薬品製造まで、加速度的に採用されている。
【0002】
バイオ医薬品製造の多くのプロセスにおいて、pHは、重要なプロセスパラメーターである。アップストリームのバイオリアクターアプリケーションでは、培地培養のpHは、狭い生理学的範囲内で継続的にモニターされ、制御されており、この理想的なpH範囲からの逸脱は、生細胞濃度、タンパク質の生産性、品質に悪影響を及ぼす可能性がある。バイオ医薬品製造に使用される従来のpHセンサは、pH感度の高いガラス電極と、基準電極とを用いた電気化学的測定法に基づいている。その高い信頼性、正確性、安定性から、バイオテクノロジーや製薬業界では、実績のある技術である。
【0003】
しかしながら、従来のpHセンサは、従来のステンレス鋼製バイオリアクターシステムに適合するよう設計されているため、シングルユースシステムで使用する場合に、いくつかの重大な制限がある。第1に、従来のセンサは、エンドユーザがオートクレーブ、スチームインプレイス、クリーンインプレイスの手順で滅菌しなければならない。一般的に、ガンマ線照射滅菌プロセスには適合していない。ガンマ線照射は、感知コンポーネントを損傷し、望ましくない性能劣化を引き起こす可能性があるからである。満足のいく精度を確保するために、従来のpHセンサは、通常、エンドユーザが使用前に2点校正を行う必要があり、これは煩雑で、プロセスを複雑にしている。さらに、従来のpHセンサの貯蔵可能期間は、通常1年であり、これはpH感知ガラスが時間とともに老朽化し、センサ性能が低下するためである。残念ながら、センサの貯蔵寿命がより長くなることは必須条件である。なぜならば、センサは、プラスチック製のバイオリアクターバッグに取り付けられるか、又はダウンストリームのアプリケーションのためのチューブセットに入れられる可能性があり、貯蔵寿命がはるかに長くなることが予想されるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シングルユースプロセス流体感知システム用のプロセス流体コネクタが提供される。プロセス流体コネクタは、一対のプロセス流体接続部を含み、各プロセス流体接続部は、協働するプロセス流体継手に結合するように構成される。プロセス流体導管部は、各プロセス流体接続部に作動可能に結合される。センサ取り付けポートは、プロセス流体導管部に結合され、プロセス流体センサを受け入れて取り付けるように構成される。格納可能な流体チャンバは、プロセス流体導管部に結合され、プロセス流体センサの感知部品のための湿式貯蔵を提供するように構成される。プロセス流体コネクタを使用したプロセス流体感知システムも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】
図1Aは、貯蔵位置を示すpHセンサの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、動作位置を示すpHセンサの概略図である。
【
図2A】
図2Aは、内部基準が加圧されているOリングシールでの漏れを示すシングルユースpHセンサの拡大図である。
【
図2B】
図2Bは、内部基準が加圧されているOリングシールでの漏れを示すシングルユースpHセンサの拡大図である。
【
図3】
図3は、様々なセンサと様々な圧力におけるセンサのpH測定値を経時的に示したグラフである。
【
図4】
図4は、一実施形態によるプロセスチャンバと基準チャンバとの間にOリングがない固定位置センサを示す。
【
図5】
図5は、様々なプロセス圧力における経時的な様々なセンサ測定値を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による湿式センサ貯蔵チャンバを有するプロセス接続部の概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による湿式センサ貯蔵チャンバを有するプロセス接続部の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による湿式センサ貯蔵チャンバを有するプロセス接続部の概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る湿式貯蔵チャンバを有するプロセス接続部の分解図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るシングルユースpHダウンストリームpHセンサの概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る湿式貯蔵チャンバを有するプロセス接続部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
「アップストリーム」のバイオリアクターバッグの制限に対処するため、特に、シングルユースバイオリアクターアプリケーション用にpHセンサが開発された。このセンサのコンセプトは、エマソン(登録商標)オートメーションソリューションズのローズマウント(登録商標)グループから市販されている550pHシングルユースセンサの基礎となっている。このシングルユースpHセンサは、ガンマ線照射滅菌に対応しており、シングルユースバイオリアクターバッグに取り付けて、1つのアセンブリを形成することができる。独自の貯蔵用緩衝液を組み込むことで、センサは、エンドユーザによる2点校正を必要とせず、この貯蔵用緩衝液を使用して1点標準化することができる。さらに重要なことは、貯蔵用緩衝液がpH電極及び基準電極に接触しているため、センサが貯蔵されている間、湿った新鮮な状態を保つことができる。この湿式貯蔵により、高精度、高感度、高安定性を含む卓越したセンサ性能とともに、2年間の貯蔵可能期間の延長を実現した。エージングしていない試作品、1年エージングした試作品、2年エージングした試作品を用いた厳密なリアルタイムテストにより、2年貯蔵後もセンサの性能が劣化することなく高いレベルを維持していることが実証された。
【0007】
図1Aは、貯蔵位置を示すpHセンサの概略図である。一例では、
図1Aに示すpHセンサは、550pHシングルユースセンサである。センサ100は、バイオリアクターバッグのようなプロセスに係合するように構成された遠位端102と、計器類に結合するように構成された電気コネクタ106を有する近位端104と、を有する断面で一般的に示される。pHセンサの中には、pHを示す電流を発生するアンペロメトリックなものもある。電位差センサのような他のタイプのセンサは、プロセス変数を示す電位を発生することがある。本明細書で使用するプロセスセンサは、プロセス変数によって変化する電気的特性を持つあらゆるセンサを含むことを意図している。
【0008】
図1Aに示されるように、センサ100は、プロセスプランジャ108がロック部材110から離間している貯蔵位置形態で提供される。貯蔵形態にあるとき、pH感知ガラス電極112は、緩衝液で満たされている貯蔵チャンバ114内に維持される。
図1Aに見られるように、基準電極116が電解液118内に設けられており、この電解液118は、基準接点120を介して、プロセスに電気的に結合するように構成されている。センサ100は、貯蔵と、動作直前の校正との両方のために、貯蔵位置に維持される。これは、貯蔵チャンバ114内の緩衝液が既知のpHを有し、電極112でpHを測定し、測定値を緩衝液の既知のpHと比較することにより、センサを校正、又は他の方法で特徴付けることができるからである。
【0009】
図1Bは、動作位置を示すpHセンサ100の概略図である。
図1Bと
図1Aとを対比すると、プロセスプランジャ108が、ロック部材110に近接するように摺動されたことがわかる。この摺動運動により、端部122が側壁124から延び、pHガラス電極112がプロセス126に曝される。見てわかるように、基準接点120もまた、プロセス126に曝される。このように、貯蔵位置から動作位置への摺動運動は、湿式貯蔵チャンバ114をプロセス126に曝す。
図1Bに示す構成では、センサ100は、生物反応液、細胞培養液、マッシュなどのプロセス流体のpHを感知するために使用されることがある。
【0010】
図1A及び
図1Bに示すように、摺動運動は、Oリング128、130及び132によって促進される。これらのOリングは、電解液と緩衝液とが貯蔵構成で密閉された配置に維持され、動作位置の間、電解液がプロセスから密閉されたままであることを保証する。図示されたセンサは、プロセスコネクタ内で軸方向に移動され、起動時にプロセス内に移動される別個の貯蔵チャンバ及び摺動センサアセンブリを介して、pHガラス及び基準接点のための湿式貯蔵を提供する。摺動センサアセンブリは、低いプロセス圧力で信頼性の高い測定を提供する。プロセスコネクタスリーブは、プロセス媒体に対して固定されたままであり、プロセスに挿入される際にセンサが移動する。
【0011】
バイオリアクターバッグ内で細胞培養プロセスが完了した後、培地は、プロセスのダウンストリームパートに移される。ここで培地は、60psi程度の高圧で、小さなラインサイズのチューブアセンブリ内の濾過段階を経て押し出される。ダウンストリームのチューブアセンブリ又は「チューブセット」は、予め組み立てられ、装備され、滅菌されたアセンブリとして提供される。これらの製薬用アセンブリの全ての内表面の無菌性を維持することが最も重要である。さらに、これらのチューブセットの貯蔵可能期間は、アップストリーム/インバッグシングルユースアセンブリと同様に、2年間である。ダウンストリームのプロセス条件は、アップストリームのプロセス条件と大きく異なるが、ダウンストリームのアセンブリもまた、アップストリームのアセンブリと同様に、2年間の貯蔵後も完全な機能を維持することが期待される。特に、pHセンサの場合、湿式pHガラスと基準接続部との貯蔵により、この貯蔵期間を達成することができる。
【0012】
ダウンストリーム工程で見られる高いプロセス圧力は、従来のpHセンサに問題を引き起こす可能性がある。このような高い圧力に対処するためのいくつかのアプローチには、内部基準電解液を加圧することが含まれる。しかし、いくつかのpHセンサの湿式貯蔵メカニズムは、内部基準加圧に適合していない。例えば、内部基準加圧の下では、摺動運動を可能にするシール128、130、132のようなOリングシール(
図1Bに示す)は、内部基準電解液が漏れるリーク経路となり得ることが実証されている。
【0013】
図2A及び
図2Bは、内部基準チャンバが加圧されたときのOリングシール142での漏れを示す、シングルユースpHセンサの拡大図である。図示されているように、センサの電解液は、Oリングシール142を通過し、測定チャンバ/環境に押し出される。この結果、pHセンサは、特に、センサが内部基準圧力より低い外部プロセス圧力に晒された場合に、予測できない信号スパイク又はドリフトを伴う不安定な挙動を示す可能性がある。
【0014】
図3は、様々なセンサ及び様々な圧力における経時的なセンサpH測定値を示すグラフである。
図3に示された値は、30psi未満のプロセス圧力で、不規則な値が発生する可能性があることを示している。
【0015】
本明細書に記載される実施形態は、一般に、市販のアップストリームのpHセンサの限界、及びそのような限界のメカニズムに対する理解から生じている。より詳細には、ダウンストリームのpH感知に対応するためには、ダウンストリームのプロセス溶液が、時には60PSIもの高圧であっても、プロセス溶液への電解液の小流量が確保されるように、基準電解液が加圧されることが重要である。しかし、Oリングを使用し、貯蔵構成と動作構成との間の摺動機能に対応する既知のpH感知構造で、単に基準電解液を加圧するだけでは、使い捨ての衛生的な産業で要求される貯蔵期間要件を満たさない可能性がある。
【0016】
この問題を解決するために、摺動式基準チャンバは、ダウンストリームのpHセンサのプロセスへのOリング接続がない固定式構成に置き換えられる。
【0017】
図4は、一実施形態による、プロセスチャンバと基準チャンバとの間にOリングがない位置pHセンサ200の固定部分を示す。
図4に示すように、pHセンサ200の一部は、プロセスコネクタ204に螺合するpHセンサ素子202を含む。ダウンストリームのpHセンサシステムとして、プロセスコネクタ204は、バイオリアクターシステムのホース又はチューブセットに結合することができる。センサ200は、ガラスpH電極212及び基準接点220を含む。参照符号250で示すように、固体高分子基準チャンバハウジング252は、基準電解液254を収容するために採用される。一例では、高分子ハウジング252は、プラスチックで形成される。図示された例では、pHセンサ素子202は、
図1A及び
図1Bのセンサ100のような、貯蔵構成と動作構成との間で切り替えるための摺動可能な動きに対応しないという点で、固定位置pHセンサである。その代わりに、センサ202は、ねじインターフェース256でプロセスコネクタ204に螺合され、プロセスコネクタ204の開口部258内の基準接点220とpHガラス電極212との位置は固定される。Oリング接続をなくした後、測定値は、劇的に改善される。
【0018】
図5は、様々なプロセス圧力における経時的な様々なセンサ測定値を示すグラフである。
図5に示された試験結果は、60psiの内部基準圧力を有するpHセンサに基づくものであり、Oリングシールは、固体エポキシシールに置き換えられている。
図5は、10~90psiのプロセス圧力にわたって観察された、非常に安定した一貫したpH値を示している。
図3と
図5とを対比すると、Oリングシールをなくしたことにより、加圧プロセスとの相互作用において、pHセンサが著しく改善されることがわかる。しかしながら、シールの変更は、新たな湿式貯蔵機構の必要性につながる。
【0019】
プロセス圧力が高い場合、摺動式Oリングシールを採用したいくつかの既知のシングルユースpHセンサの貯蔵チャンバは機能しない。安定した測定値を提供するためには、基準チャンバをプロセスから分離するOリングをなくす必要がある。このセンサの内部プランジャアセンブリの摺動性こそが、湿式貯蔵能力を提供するものであるため、湿式貯蔵を可能にする新しい方法が必要である。
【0020】
図6~
図8は、本発明の実施形態による湿式センサ貯蔵チャンバを有するプロセス接続部の概略図である。
【0021】
図6は、本発明の実施形態によるシングルユースpH感知システムのためのプロセスコネクタの概略斜視図である。図示された例は、センサが取り付けられ、センサのプロセス端を囲むことができ、密封された湿式貯蔵チャンバを提供する摺動チューブを有する特殊なプロセス接続部である。プロセスコネクタ204は、一般に、一対のプロセス流体接続部300及び302を含む。
図6に示される例では、プロセス接続部300は入口であり、プロセス接続部302は出口である。図示されるように、プロセス流体接続部300、302のそれぞれは、一般に、一実施形態では、対応するサニタリーフランジへのシールを容易にするためのOリング306も含み得るサニタリーフランジである、フランジ304を含む。プロセス流体導管部301は、プロセス流体接続部300、302の間に介在され、プロセス流体接続部300、302を共に流体的に結合する。
図6に示される実施形態は、一対のフランジ接続部を含むが、接続部は、同じタイプの接続部である必要はない。接続部は、限定されるものではないが、ねじ接続部、フランジ接続部(図示のとおり)、バーブ接続部、無菌接続部、開放管部、付属チューブ、及び二次アダプタを含む様々な形態をとることができる。
【0022】
センサ取り付けポート308は、プロセス流体接続部300と302との間に流体的に介在している。センサ取り付けポート308は、
図4に示されているような固定位置pHセンサを受け入れ、取り付けるように構成されている。一実施形態では、センサ取り付けポート308は、固定位置pHセンサの外部ねじ山に螺合する内部ねじ山310を含む。プロセスコネクタ204は、貯蔵構成と動作構成の両方を有する。
図6に示すように、プロセスコネクタ204は、湿式貯蔵シリンダ312が閉鎖位置にある貯蔵構成にある。この構成では、センサ取り付けポート308に結合される固定位置pHセンサのpHセンサ素子は、プロセス流体の流れから隔離される。さらに、既知のpHを有する緩衝液が湿式貯蔵シリンダ312内に供給され(後の図により詳細に示される)、pHセンサを湿式貯蔵に維持し、また動作前に1点校正を提供する。
【0023】
図6に示すように、プロセスコネクタ204は、1つ以上の作動可能部材314、316を含む。図示された例では、作動可能部材314、316は、対向して延びる一対のウィングであり、湿式貯蔵シリンダ312の長手方向の軸から実質的に垂直に延びる。さらに、プロセスコネクタ204は、1つ以上の湿式貯蔵チャンバ位置ロック320、322も含む。これらのロック320、322は、作動可能部材314、316に対する不注意な下方への圧力が、作動可能部材314、316の下方への移動又は作動をもたらすことがないようにし、これにより、pH感知要素がプロセス流体に曝されることになる。
【0024】
図7は、センサポート308内の固定位置pHセンサ360と係合したプロセスコネクタ204の正面図であり、プロセスセンサ204は、閉位置にある。この構成において、湿式貯蔵シリンダ312は、領域330を通って流れるプロセス流体からpH感知素子212及び基準接点220(図式的に円として図示されている)を隔離する。
【0025】
図6及び
図7に示すように、この貯蔵チャンバは、pHセンサのpHガラス及び基準接点のための湿式貯蔵を提供する。組み立てられたシステムは、固定位置のpHセンサ、センサに対向する固定位置のピストン、及び可動円筒部材で構成される。可動部材は、プロセス流の流れから完全に摺動し、デッドフローボリュームを最小限に抑えます。可動部材を固定部材にシールするための様々なOリングと共に、このソリューションは、最小限の流れ障害で、自己完結型の湿式pHセンサ貯蔵を提供する。このアセンブリ全体は、OEMでチューブセットに接続し、ガンマ線滅菌することができる。
【0026】
図8は、作動位置に移行されたプロセス流体コネクタ204の斜視図である。
図8に示されるように、湿式貯蔵チャンバ位置ロック320、322のそれぞれは、矢印340、342によってそれぞれ示される方向に、それぞれの位置から移動されている。湿式貯蔵チャンバ位置ロック320、322が外された状態で、ウィング314、318は、肩部344に近接した位置から底部346まで全面的に並進することができる。このとき、湿式貯蔵シリンダ312も軸方向に下降し、pHガラス電極212と基準接点220とが、導管348内のプロセス流体に曝される。
【0027】
図9は、本発明の一実施形態による、シングルユースサニタリーpH感知システムのためのプロセス流体コネクタの分解図である。プロセスコネクタ403は、入口304及び出口302を備える本体400を含む。本体400はまた、図示の例では、固定位置pHセンサを受容するための内部ねじ部を備えるセンサポート308を含む。本体400はまた、カラー404に螺合するように構成された下部外部ねじ部402を含む。カラー404は、そこから下方に延びる一対の円形側壁部406、408を含む。円形側壁部406、408のそれぞれは、システムが組み立てられたときにエンドキャップ412と係合するように構成された係合特徴部410を含む。プロセスコネクタ403は、一対の湿式貯蔵チャンバ位置ロック320、322を有するように図示されている。位置ロック320、322のそれぞれは、ユーザによる把持を容易にするハンドル部分414を含む。さらに、位置ロック320、322のそれぞれは、好ましくは、そこから内側に延びるクリップ416を含む。
図9に示すように、各クリップ416は、好ましくは、位置ロック全体の幅のほぼ半分の幅418を有する。したがって、対向する位置ロック320、322がシャフト420に係合するとき、位置ロック320、322によって阻害される運動量は、2つの幅418である。
【0028】
プロセスコネクタ403は、一対のウィング314、316に結合された湿式貯蔵シリンダ312を含む。さらに、Oリング422は、Oリング溝424内に配置されるように構成され、プロセスコネクタが貯蔵構成にあるとき、pH感知要素をプロセスから隔離するのに役立つ。
【0029】
プロセスコネクタ403はまた、端部428と、上方に延びる一対の円形側壁部430、432とを有する下部ハウジング426を含む。さらに、シャフト420が、端部428の中央に取り付けられている。シャフト420は、固定ピストン端434に取り付けられる端部を含む。一例では、固定ピストン端434は、ピストン端434をシャフト420に取り付けるために、シャフト420の外部にねじ切りされた部分に係合するねじ切りされた開口部を含む。ピストン端434は、湿式貯蔵シリンダ312の内面440に対してシールする1つ以上のOリングシール436、438を含む。
【0030】
図10は、本発明の実施形態によるシングルユース、サニタリー、pH感知システムの斜視図である。
図10は、センサポート308に結合された固定位置センサ500を示す。図示されているように、ウィング314、316は、エンドキャップ412から離間しており、したがって、プロセスコネクタ204は、貯蔵位置にある。固定位置pHセンサ502は、センサポート308から上方に延びる円筒形側壁504を含む。センサ500はまた、ユースポイント圧力アプリケーター508を収容する傾斜側壁506を含む。ユースポイント圧力アプリケーター508は、ダウンストリームのアプリケーションをサポートするために、pH感知システムの動作の直前に基準電極を加圧するために使用される。一実施形態では、加圧は、60PSIのような、基準電解液内に予め選択された圧力を発生させるため、単に、ばねを利用した機構の解放であってもよい。他の例では、ユースポイント圧力アプリケーターは、基準電解液内にユーザが選択可能なレベルの圧力を発生させることができるねじ式アプリケーターのような調節可能なものであってもよい。いずれにせよ、ユースポイントアプリケーターの利用は、システムが非加圧状態で貯蔵され、そして、動作の直前に加圧されることを可能にする。
【0031】
図11は、本発明の実施形態によるシングルユースサニタリーダウンストリームpH測定システムの断面図である。
図10は、貯蔵構成にあるシステムを示すが、
図11は、動作構成にあるシステムを示す。したがって、ウィング314及び316は、並進され、又は他の方法でエンドキャップ412まで変位され、これによって、pH感知素子212及び基準接点220が、プロセス流体通路258と流体連通することを可能にする引込位置に、湿式貯蔵シリンダ312を摺動させている。さらに、
図11は、基準接点220に近接して配置された基準電極520を示している。基準加圧機構508は、参照符号524で示される方向に移動可能な、その中に配置されたプランジャ522を有するように図示されている。矢印524の方向へのプランジャ522の移動は、基準電解液内に圧力を発生させる。プランジャは、ノブ526(
図10に示す)をひねることによって解放することができる。さらに、基準電解液内で所望の圧力が得られるまでノブ526を回転させることにより、圧力を選択することができる。
【0032】
湿式pHガラス貯蔵は、シングルユース用途にとって重要である。なぜなら、延長された(2年間の)貯蔵可能期間は、アップストリームのバッグ製造業者だけでなく、ダウンストリームのチューブセット製造業者にとっても必要な条件だからである。本明細書に開示される実施形態は、今日のシングルユースのダウンストリーム市場の要件を満たすシングルユースpHソリューションを提供すると考えられる。
図10及び
図11を参照すると、湿式貯蔵チャンバの作動は、いくつかの方法で行うことができる。一例では、円筒状部材を手で固定センサから軸方向に引き離す。(
図11参照)。別の例では、ユーザが、固定センサが取り付けられている側と同じ側から円筒を押したり引いたりする。好ましくは、湿式貯蔵チャンバの作動は、ダウンストリームのプロセス流体コネクタの無菌プロセスバリアを破ることなく行われる。
【0033】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明したが、当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部において変更が可能であることを認識するであろう。
【国際調査報告】