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特表2024-519386非言語コミュニケーションのためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】非言語コミュニケーションのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240501BHJP
   G06F 3/023 20060101ALI20240501BHJP
   G06F 3/04842 20220101ALI20240501BHJP
【FI】
G06F3/01 570
G06F3/023
G06F3/04842
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572080
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 IB2022054194
(87)【国際公開番号】W WO2022243779
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021000013235
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523437732
【氏名又は名称】ディーコ テクノロジーズ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】DICO TECHNOLOGIES S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Giosue’ Carducci,8,20123 Milano,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(72)【発明者】
【氏名】ベッラーニ,ジャコモ
【テーマコード(参考)】
5B020
5E555
【Fターム(参考)】
5B020HH21
5E555AA11
5E555BA04
5E555BB04
5E555BC17
5E555CA12
5E555CA44
5E555CB66
5E555CC03
5E555DB06
5E555DB41
5E555FA00
(57)【要約】
非言語コミュニケーションのためのコンピュータ実行可能な方法は、ユーザの少なくとも1つの非言語アクションを対応するコミュニケーションパラメータに一意に関連付けることによってマッピングすることによって実行される。次に、選択可能な少なくとも1つのテキスト要素を含むテキストコンテンツをグラフィカルインタフェースを介してユーザに供給し、この供給中に、ユーザの非言語アクションを継続的に取得する。取得した非言語アクションに一意に関連付けられたコミュニケーションパラメータに従って少なくとも1つのテキスト要素を処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非言語コミュニケーションのためのコンピュータ実行可能な方法であって、
- ユーザの少なくとも1つの非言語アクションを対応するコミュニケーションパラメータに一意に関連付けることによってマッピングするステップと、
- 選択可能な少なくとも1つのテキスト要素を含むテキストコンテンツをグラフィカルインタフェースを介して前記ユーザに供給するステップと、
- 前記テキストコンテンツの供給中に、前記ユーザの非言語アクションを継続的に取得し、前記取得した非言語アクションに一意に関連付けられた前記コミュニケーションパラメータに従って少なくとも1つのテキスト要素を処理するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記テキスト要素は、英数字、記号、単語、語句、グラフィック要素のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マッピングするステップは、複数のトレーニング手順から選択されたトレーニング手順を使用して実行され、前記ユーザの少なくとも1つの身体部位の不動および/または動作の状態は、それぞれのコミュニケーションパラメータに関連付けられている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のトレーニング手順は第1のトレーニング手順を含み、前記第1のトレーニング手順は、
- 少なくとも1つの身体部位の第1の動作状態をメインコマンドに対応するコミュニケーションパラメータと関連付けるステップと、
- 前記第1の動作状態とは異なる、前記少なくとも1つの身体部位の第2の動作状態を、セカンダリコマンドに対応するコミュニケーションパラメータと関連付けるステップと、を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の動作状態は、前記少なくとも1つの身体部位の不動状態である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記メインコマンドは、前記テキスト要素の選択コマンドに対応し、前記セカンダリコマンドは、前記テキスト要素の非選択コマンドに対応し、
- 前記テキストコンテンツの供給は、一連の個別のテキスト要素を供給することによって実行され、
- 前記少なくとも1つのテキスト要素を処理する前記ステップは、前記ユーザによって漸進的に選択された前記テキスト要素を並べて順序付けることによってテキストメッセージを構成することによって実行される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記テキスト要素の提供の順序はまた、前記テキストメッセージを形成するために並べて配置された前記テキスト要素に従って規定および/または変更される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記メインコマンドは肯定の応答に対応し、前記セカンダリコマンドは否定の応答に対応し、前記テキストコンテンツの供給は、一連のクエリを供給することによって実行される、請求項4または5に記載の方法。
【請求項9】
前記一連のクエリは決定木を規定し、前記一連のクエリが提供される順序は前記取得した入力に従って規定および/または変更される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数のトレーニング手順は第2のトレーニング手順を含み、前記第2のトレーニング手順は、
- 前記グラフィカルインタフェースの予め定められた位置に一連のマーカを表示するステップと、
- 前記グラフィカルインタフェース上にポインタを表示するステップと、
- 前記少なくとも1つの身体部位の動作状態を、ポインタの動きに対応するコミュニケーションパラメータと関連付けるステップと、を含む請求項3から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記テキストコンテンツの提供は、前記グラフィカルインタフェース上に複数のテキスト要素を表示することによって実行され、予め定められた期間にわたってテキスト要素上に前記ポインタが存在することにより、前記テキスト要素が選択され、前記少なくとも1つのテキスト要素を処理する前記ステップは、前記ユーザによって漸進的に選択された前記テキスト要素を整然と並べて配置することによってテキストメッセージを構成することによって実行される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ユーザに関する少なくとも1つのデータ要素が取得される起動ステップを含み、好ましくは、前記少なくとも1つのデータ要素は、年齢、性別、言語、前記ユーザの健康状態、前記グラフィカルインタフェースの前記ユーザに対する位置、および/または非言語アクションを取得するように構成された、または構成可能な1つまたは複数のセンサのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
非言語コミュニケーションのためのシステムであって、
- 請求項1から12のいずれかに記載の非言語コミュニケーション方法を実行するように構成された処理および演算ユニットと、
- 少なくとも前記テキストコンテンツを表示するように構成されたグラフィカルインタフェースと、
- 前記ユーザの非言語アクションを取得するために、前記ユーザの身体の前記少なくとも一部に関連付けることができる少なくとも1つのセンサと、を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コミュニケーションシステムおよび方法の技術分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、言葉で自分の考えを伝えることができない患者、例えば挿管されている患者または気管切開されている患者に対する医療/介護の分野で特に有利である、非言語コミュニケーションのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
他の人々と効果的にコミュニケーションする能力は、すべての個人にとって基本的なニーズである。
【0004】
しかしながら、障害は、幅広い状況で発生し得、そのようなコミュニケーションプロセスを不可能ではないにしても困難にし、したがって、相当な不便を引き起こす。
【0005】
例として、医療分野について特に言及するが、当該分野では、入院している人、または特定の医療処置および/または治療を受けている人が、周囲の人々、特に医療スタッフと言葉で自分の考えを伝えることが不可能であり得る。
【0006】
挿管されている、または気管切開されており、したがって、話すことができない集中治療室の患者のことを考える。
【0007】
この状況において、患者が基本的なニーズを表現するためだけでなく、より重要なこととして、単純なアラームの作動では十分に理解/解釈できないような特定の問題が発生する可能性があることを医療スタッフに知らせるために表現することを可能にする方法およびシステムの必要性は、さらに明白である。
【0008】
この目的のために、非言語入力を受信し、それをメッセージに変換して、それを通して患者が他の人々とコミュニケーションをとることができる装置がある。
【0009】
しかしながら、既知の装置には依然として欠点および非効率性があり、それらは実施を不満足なものにし、ユーザにとって使い勝手の悪いものにしている。
【0010】
特に、既知の装置は、単一の特定の非言語アクションを一意に識別するように構成されており、単一の特定の非言語アクションは単一のタイプのメッセージに一意に関連付けられるので、その動作において極めて柔軟性に欠け、したがって、個々の患者の特定のニーズに適応することができない。
【0011】
したがって、患者が装置によって識別可能な特定の且つ一意の非言語アクションを実行できない、または実行するのに困難を伴う場合、当該装置は実際には役に立たず、使用できない。
【発明の概要】
【0012】
これに関連して、本発明の基礎となる技術的課題は、従来技術の上述の欠点の少なくとも一部を克服する、非言語コミュニケーションのためのシステムおよび関連する方法を提案することである。
【0013】
特に、本発明の目的は、言葉で自分の考えを伝えることができない、またはそうすることに困難を伴う人、特に挿管されている患者または気管切開されている患者が、特に多用途な態様で同時に正確且つ効率的に、コミュニケーションの相手(second person)と非言語コミュニケーションすることを可能にできるシステムおよび方法を提供することである。
【0014】
特定された技術的課題および目的は、添付の特許請求の範囲の請求項の1つまたは複数に記載された技術的特徴を含むシステムおよび方法によって実質的に達成される。
【0015】
本発明によれば、非言語コミュニケーションのための方法、特にコンピュータ実行可能な方法が本明細書に示される。
【0016】
本方法は、ユーザの少なくとも1つの非言語アクションを対応するコミュニケーションパラメータに一意に関連付けることによってマッピングすることを含む。
【0017】
マッピングするステップが完了すると、アクションと各パラメータが一意に関連付けられ、テキストコンテンツがユーザに提供される。
【0018】
特に、テキストコンテンツはグラフィカルインタフェースを介して提供される。
【0019】
さらに、テキストコンテンツは、選択可能な少なくとも1つのテキスト要素を含む。
【0020】
このようなテキスト要素は、例えば、1つまたは複数の英数字、記号、単語、語句、グラフィック要素を含むことができる。
【0021】
テキストコンテンツの提供中、ユーザの非言語アクションは継続的に取得され、テキストコンテンツは、漸進的に取得される非言語アクションに一意に関連付けられたコミュニケーションパラメータに従って処理される。
【0022】
有利なことに、本明細書で提案される方法は、ユーザがより簡単に且つ容易に実行できるアクションにコミュニケーションパラメータを一致させることが可能であるので、予め指定された非言語アクションの検出に縛られるのではなく、マッピング手順のおかげで各ユーザに容易に適合させることができるので、幅広い状況に適用可能である。
【0023】
また、本発明の目的は、上述の方法を実行するためのシステムを提供することである。
【0024】
特に、本システムは、上で特定したステップ(マッピング、テキストコンテンツ提供、非言語アクションの取得)の実行を制御するように設計された処理ユニットを備える。
【0025】
本システムはさらに、ユーザに提供される少なくともテキストコンテンツを表示できるグラフィカルインタフェースを備える。
【0026】
また、ユーザの非言語アクションを取得するためにユーザの身体の少なくとも一部に関連付けることができる少なくとも1つのセンサがある。
【0027】
参照により本明細書に組み込まれる従属請求項は、本発明の種々の実施形態に対応する。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、非言語コミュニケーションのための方法およびシステムの好ましいが排他的ではない実施形態の以下の説明からより明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
非言語コミュニケーションという用語は、関係する個人の少なくとも1人が話したり音を発したりする必要なしにメッセージまたは情報コンテンツを伝達できるコミュニケーション交換のあらゆる側面を含むタイプのコミュニケーションを意味することを意図している。
【0030】
特に、本方法は、コンピュータによって実行可能である、すなわち、全体として本方法を構成するステップの実行は、1つまたは複数の周辺機器を制御することによって本方法を実施するために必要な命令を記憶および実行できる1つまたは複数のコンピュータリソースによって制御および管理される。
【0031】
動作に関して、本方法の実行は、ユーザの少なくとも1つの非言語アクションがコミュニケーションパラメータに一意に関連付けられる最初のマッピングステップを含む。
【0032】
言い換えれば、ユーザによって実行可能な非言語アクションとそれぞれの異なるコミュニケーションパラメータとの間に一意の関連付けが生成される。
【0033】
一般に、「非言語アクション」という用語は、ユーザが実行でき且つユーザが話したり音を発したりする必要なしに、センサによって検出可能なあらゆるアクションを指すことを意図している。
【0034】
有利なことに、マッピング作業は、ユーザがより容易に実行できるアクションを、特定のパラメータであって、それを通してユーザがコミュニケーションできる特定のパラメータに関連付けることを可能にする。
【0035】
言い換えれば、本方法の動作は、ユーザの特定の要件および能力に従って調整され得、例えば臨床的症状の発展により、これらの要件および能力がたとえ変更されるべきであるとしても、本方法の正確な且つ効率的な実行を保証するためには、コミュニケーションパラメータを再マッピングし、それらをユーザの新しい状態に迅速に適応させるだけで十分である。
【0036】
さらに、マッピング手順は、ユーザが、本方法がどのように機能するかを徐々に学習することを可能にし、その動作を個人的に調整することを可能にする。
【0037】
マッピングが実行されると、すなわち、非言語アクションと特定のコミュニケーションパラメータとの対応が明確に且つ正確に規定されると、少なくとも1つの選択可能なテキスト要素を含むテキストコンテンツがユーザに提供される。
【0038】
ユーザは次に、コミュニケーションの相手、例えばユーザをケアする医療スタッフのメンバーによって受信され得るメッセージ、または例えば電子メールによって送信されるメッセージを構成するために、例えばグラフィカルインタフェース上に表示することによって、ユーザが選択可能な部分(少なくとも1つのテキスト要素)を含むテキストコンテンツを提供される。
【0039】
より詳細には、メッセージの構成は、テキストコンテンツの供給中に、ユーザによって実行された非言語アクションを継続的に取得することによって得られる。
【0040】
テキストコンテンツ、具体的には少なくとも1つのテキスト要素は次に、取得された非言語アクションに一意に関連付けられたコミュニケーションパラメータに従って処理される。
【0041】
言い換えれば、非言語アクションの実行は、メッセージの構成のための個々のテキスト要素を動作可能に選択することによってユーザがテキストコンテンツと相互作用することを可能にする。
【0042】
これらのテキスト要素は、英数字、記号、単語、語句、グラフィック要素の少なくとも1つを含むことができ、それによって、ユーザが選択できる幅広いコンテンツを提供し、はっきりと表現され、正確で且つ完全な態様でユーザがコミュニケーションすることを可能にする。
【0043】
より詳細には、マッピング作業は、複数の可能な別個の手順から選択されたトレーニング手順によって実行される。
【0044】
言い換えれば、本方法は、別個の異なるトレーニング手順の実装を含み、マッピングステップは、利用可能なトレーニング手順から選択された特定のトレーニング手順の実行を含む。
【0045】
具体的には、各トレーニング手順により、別個の特定のコミュニケーションパラメータを、ユーザの身体の少なくとも一部の不動および/または動作の特定の状態に一意に関連付けることが可能になる。
【0046】
したがって、マッピングは、様々な可能性の中から、ユーザの特定のニーズおよび運動能力/可能性に最も妥当で適切なトレーニング手順を選択することによって実行され得る。
【0047】
動作に関して、選択可能なトレーニング手順は、ユーザがより容易に動かせる身体部位(手、指、足、肩)を監視し、そのような特定の部位の動作/不動をそれぞれのコミュニケーションパラメータに関連付けることを含む。
【0048】
身体部位の動作は、実行されている特定のトレーニング手順に応じた詳細レベルで取得され得る。
【0049】
実際、以下で詳しく説明するように、一部のトレーニング手順は、ユーザがテキスト要素の選択/非選択の単純な二者択一の判断を表現できるコミュニケーションを目的としているが、他のトレーニング手順は、より複雑なメカニズムを持つメッセージを作成する可能性をもたらす。
【0050】
したがって、非言語アクション、具体的には身体の少なくとも一部を動かすアクションは、アクション自体の単純な実行/非実行の関数としてだけでなく、例として動作の範囲、方向および速度を含む複数のパラメータの関数としても測定および特徴付け可能である。
【0051】
したがって、有利なことに、トレーニング手順は、ユーザの特定のコミュニケーションニーズおよびユーザの運動能力に従って一意に選択することもできる。
【0052】
実際、肯定または否定の応答の単純な作成でコミュニケーションが解決できる場合、より単純で即時性の高いトレーニング手順を実行することが可能であり、または、より自由度の高いコミュニケーションをユーザに提供する必要がある場合、より複雑なトレーニング手順を実行することが可能である。
【0053】
この場合も、ユーザのニーズが時間の経過とともに変化する場合、状況に最も適したものをその都度選択することによってトレーニング手順を繰り返すだけで十分である。
【0054】
可能なトレーニング手順は、本明細書の目的のために「第1のトレーニング手順」として識別される。
【0055】
このようなトレーニング手順は、身体の少なくとも一部の第1の動作状態をメインコマンドに対応するコミュニケーションパラメータに関連付け、身体の少なくとも一部(好ましくは、必ずしもそうではないが、同一の身体部位)の第2の動作状態であって、第1の動作状態とは異なる第2の動作状態をセカンダリコマンドに対応するコミュニケーションパラメータに関連付けることによって実行される。
【0056】
有利なことに、第1の動作状態は、少なくとも1つの身体部位の不動状態であり得、このようにして、トレーニングおよびその後のコミュニケーションステップのためにユーザが行わなければならない労力を軽減する。
【0057】
このようなマッピングは、(後述する)適切なセンサで身体部位を監視している間、身体部位を動かさない、または最も都合の良い態様で当該身体部位を使用するようにユーザに指示し且つセンサによって別々に検出された信号をメインコマンドおよびセカンダリコマンドに関連付けることによって調整することができる。
【0058】
このようなトレーニング手順によって規定された状況では、メインコマンドはテキスト要素選択コマンドであり得、セカンダリコマンドはテキスト要素非選択コマンドであり得、テキストコンテンツの提供は、一連の個別のテキスト要素を表示することによって実行される。
【0059】
各要素について、ユーザの非言語アクション(すなわち、メインコマンドまたはセカンダリコマンドとトレーニング中に一意に関連付けられた身体部位の動作または非動作)が予め定められた時間間隔で取得され、それに応じて、対応するテキスト要素を選択するかどうかの決定が行われる。
【0060】
したがって、本方法は、ユーザによって漸進的に選択されたテキスト要素を並べて整然と配置することによってテキストメッセージを構成するようにテキスト要素を処理することを含む。
【0061】
言い換えれば、一連のテキスト要素がユーザに表示され、それらの各々は、メッセージの作成が完了するまで、メインの選択コマンドに対応する第1の動作状態によってユーザによって選択されるか、またはセカンダリの非選択コマンドに対応する第2の動作状態によってユーザによって破棄され得る。
【0062】
動作に関して、次に、本方法は、一連のテキスト要素を生成し、入力であって、それに従って関心のある要素が選択される入力を測定することによって実行される。
【0063】
これに関連して、テキスト要素は、好ましくは、単語または語句が形成されるまで、ユーザに順次表示され、ユーザによって個別に選択または破棄される文字を含んでもよい。
【0064】
テキスト要素の提供は、正確に且つ事前に定義された順序で実行することができ、または以前に選択したテキスト要素に従って動的に管理することもできる。
【0065】
言い換えれば、テキスト要素の提供順序も、テキストメッセージを形成するために漸進的に並べて配置されるテキスト要素に従って定義および/または変更される。
【0066】
したがって、ユーザが特定の文字列を選択する場合、そのような文字列は、表示され且つ次に選択処理にかけられる次の文字を決定するために考慮される。
【0067】
有利なことに、上述のトレーニングモードを使用して様々なコミュニケーションモード/方法を提供することもできる。
【0068】
言い換えれば、これまで説明したトレーニング手順により、患者のメッセージがテキスト要素との二項相互作用に応じて組み立てられ、定義され、または関数として決定できるあらゆるコミュニケーション状況で使用できるテキスト要素の選択の二項選択モードを一般的に定義することが可能になる。
【0069】
このような二項プロセスは、有利なことに、選択/非選択の概念だけでなく、肯定/否定の応答の概念とも関連付けることができる。
【0070】
言い換えれば、第1のトレーニング手順は、それぞれ、メインコマンドを否定/肯定の応答に対応するコミュニケーションパラメータに関連付け、セカンダリコマンドを肯定/否定の応答に対応するコミュニケーションパラメータに関連付けることによって実行することができる。
【0071】
したがって、第1のトレーニング手順は、代替的または追加的に、メインコマンドを肯定的な応答に関連付けることによって実行されてもよい。
【0072】
同時に、セカンダリコマンドは代わりに否定的な応答に関連付けられる。
【0073】
先ほど定義した状況では、テキストコンテンツの提供は、一連のクエリ、特に一連の選択応答形式のクエリ、すなわち、はい、または、いいえの二者択一応答で応答することができる一連のクエリを提供することによって、実行することができる。
【0074】
ユーザの非言語アクションは次に、クエリごとに取得され、このクエリに対する応答は、実行された特定の動作に応じて、肯定または否定として決定される。
【0075】
好ましくは、一連のクエリは決定木を規定し、クエリが提供される順序は、取得された入力に従って規定および/または変更される。
【0076】
言い換えれば、本方法は、クエリの提示順序(したがって、ユーザに提供されるクエリの内容)が非言語コミュニケーションを通じてユーザによって与えられた応答に従って決定される、相互に接続されたクエリのツリーまたはネットワークを提供することによって実行される。
【0077】
このような手順は、一般的な質問から始めて、ユーザが伝えたいメッセージまたはユーザが表現したいニーズが特定されるまで、徐々に質問を絞り込んで指定することによって、ユーザのニーズまたはユーザが伝えたいメッセージを迅速に定義することを可能にするという点で特に効率的である。
【0078】
有利なことに、一連のクエリの終わりに達すると、すなわち、伝えられるメッセージが特定されると、本方法は、(一般に適用可能であるが、この状況において特に有用な態様である)検証ステップであって、決定木から得られる結論が正しいか否かをユーザに問う検証ステップを含んでもよい。
【0079】
さらなるトレーニング手順は、本明細書の目的のために「第2のトレーニング手順」として特定される。
【0080】
このようなトレーニング手順は、グラフィカルインタフェース上の事前定義された位置に一連のマーカを表示することによって実行される。
【0081】
一連のマーカとともにポインタも表示され、少なくとも1つの身体部位の動作状態は、ポインタの動きに対応するコミュニケーションパラメータに関連付けられる。
【0082】
言い換えれば、ポインタの動きは、少なくとも1つの身体部位の動作と一意に関連付けることによって調整される。
【0083】
具体的には、そのようなマッピングは、身体部位をセンサで監視しながら当該身体部位を動かすようにユーザに指示し、検出された動作をポインタの動きと関連付けることによって調整することができる。
【0084】
これに関連して、非言語アクションの取得は、少なくとも1つの身体部位の動作/不動の識別に限定されず、動作の方向および範囲に特に注目して、例えば上記のパラメータの1つまたは複数を識別することによって、特定の動作を詳細に識別する。
【0085】
このようなトレーニング手順によって定義された状況において、テキストコンテンツの提供は、有利なことに、グラフィカルインタフェース上に複数のテキスト要素を表示することによって、実行され得る。
【0086】
好ましくは、キーボードを形成するように配置された英数字を含む複数のグラフィック要素が表示される。
【0087】
有利なことに、1つまたは複数の単語および/または語句も、好ましくはキーボードの隣、例えばその上に表示することができる。
【0088】
これらの単語および/または語句は表示することもできるので、ユーザ自身が以前に選択した英数字および/または単語に従って、または事前定義されたリストに従って、ユーザに提案することができる。
【0089】
動作に関して、予め定められた期間にわたってテキスト要素上にポインタが存在することにより、当該テキスト要素が選択される。
【0090】
言い換えれば、非言語アクションはポインタを動かしたときに取得され、特定のテキスト要素上にポインタが持続することにより、当該特定のテキスト要素が選択される。
【0091】
したがって、本方法は、テキスト要素を処理し、ユーザによって漸進的に選択されたテキスト要素を並べて整然と配置することによってテキストメッセージを構成することを含む。
【0092】
したがって、本方法は、ユーザのメッセージを構成するために組み立てられるテキスト要素を漸進的に識別および選択するためにカーソルを移動できるようにすることによって実行される。
【0093】
一般に、上記のトレーニング手順は他の目的にも使用できる。
【0094】
実際、そのような手順により、ユーザが、自身が実行できる特定の動作を対応するポインタの動きと関連付けることが可能となり、それによって、必ずしもメッセージを構成することだけを目的とするのではなく、例えば、本明細書で説明される方法が実行されているコンピュータの1つまたは複数の機能を制御するためにも、そのようなポインタの動きによって操作できるあらゆるシステムの動作をユーザが制御することが可能となる。
【0095】
有利なことに、本方法は、特定のトレーニング手順の、したがってコミュニケーションモードの選択を制御するために使用できる一連のユーザ関連の情報要素を取得する起動ステップも備えることができ、これはまた、ユーザの臨床像を考慮する場合に、より効率的である。
【0096】
特に、起動ステップは、ユーザに関する少なくとも1つのデータ要素を取得し、好ましくは、そのようなデータ要素は、年齢、性別、言語、健康状態、グラフィカルインタフェースのユーザに対する位置、および/または非言語アクションを取得するように構成された、または構成可能な1つまたは複数のセンサ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0097】
言い換えれば、ユーザの健康状態に関する情報と、ユーザに対するシステムの位置に特に注意を払って本方法を実行するシステムに関する情報と、が取得される。
【0098】
有利なことに、本発明は、ユーザの特定のニーズに容易に且つ効率的に適合させることができる非言語コミュニケーションのための方法をユーザに提供することによって、従来技術で報告された欠点を克服して提案された目的を達成する。
【0099】
本発明はまた、上述の技術的特徴の1つまたは複数を有する方法を実行するために特に構成された非言語コミュニケーションシステムに関する。
【0100】
構造的に、そのようなシステムは、非言語コミュニケーション方法の1つまたは複数のステップを実行するように構成されたコンピュータ、またはいずれにしてもコンピュータリソースを規定するか、規定するのに寄与する処理および演算ユニットを備える。
【0101】
一般に、処理および演算ユニットは、システムの追加コンポーネントを本方法に従って動作させるために、その動作を制御し、命令し、管理するように構成される。
【0102】
本システムはまた、少なくともテキストコンテンツを表示するように構成され且つ処理および演算ユニットに接続されるグラフィカルインタフェースを含む。
【0103】
有利なことに、グラフィカルインタフェースは、さらなる情報およびグラフィカルコンテンツを表示することもできる。
【0104】
詳細には、グラフィカルインタフェースは、タッチスクリーンなどのスクリーンを備えたモニタまたは携帯端末、例えばスマートフォン、タブレット、コンピュータによって規定される。
【0105】
本システムは、ユーザの非言語アクションを取得するためにユーザの身体の少なくとも一部と関連付けることができる少なくとも1つのセンサも備える。
【0106】
非限定的な例として、そのようなセンサは、加速度センサ、ジャイロセンサ、または磁気センサであってもよく、または加速度センサ、ジャイロセンサまたは磁気センサを含んでもよく、または、本システムは、同タイプまたは異なるタイプに属する複数のセンサを含んでもよい。
【0107】
有利なことに、本システムは、ユーザのコミュニケーション可能性をさらに最適化することを可能にする複数の周辺機器とインタフェースすることができる。
【0108】
例えば、本システムは、可聴および/または光学インジケータを備えてもよい、または可聴および/または光学インジケータと処理および演算ユニットを介して接続されてもよく、可聴および/または光学インジケータは、例えば、テキスト要素を選択する上記概説したものと同等の選択手順を用いて、ユーザによって作動させることができる。
【0109】
言い換えれば、テキスト要素は1つまたは複数のテキスト要素を含んでもよく、その選択によりそれぞれのインジケータが有効化される。
【0110】
このようにして、言葉でコミュニケーションできないユーザでも、アラームを作動させて他の人々(医療従事者など)に緊急事態を知らせることができる。
【0111】
本システムはまた、リモート端末/データベース(例えば、コンピューティングクラウド)とインタフェースでき、ユーザが構成したメッセージをリモートで送信し、リモートコミュニケーションを確立することを可能にする。
【0112】
この側面はまた、後で分析できるデータ/情報の収集および記憶を可能にする。
【0113】
本システムはまた、ホームオートメーション装置とインタフェースでき、テキスト要素は、1つまたは複数のテキスト要素であって、その選択が1つまたは複数のこれらの装置の作動、またはいずれの場合も1つまたは複数の装置の動作の制御を引き起こす1つまたは複数のテキスト要素を備え得る。
【国際調査報告】