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特表2024-519388癌を治療するための医薬組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】癌を治療するための医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240501BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20240501BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240501BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K38/02
A61K31/506
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572181
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2022094725
(87)【国際公開番号】W WO2022247829
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】202110572563.8
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515329931
【氏名又は名称】ヒノバ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー ジン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー ウー
(72)【発明者】
【氏名】フオ ヨンシュー
(72)【発明者】
【氏名】リー シンハイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA20
4C084BA03
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC48
4C086GA07
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、癌を治療するための医薬組成物及びその使用を提供し、医学の領域に属する。本医薬組成物は、FAK阻害剤とCD44阻害剤によって構成される。本発明はさらに、癌を治療するためのFAK阻害剤とCD44阻害剤の併用を提供する。前記のCD44阻害剤とFAK阻害剤の併用は、相乗効果を発揮し、腫瘍に対する抑制効果を顕著に高め、毒性副作用を軽減し、腫瘍の薬剤耐性を克服し、癌の臨床治療によい選択肢を与える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FAK阻害剤とCD44阻害剤によって構成されることを特徴とする、
癌を治療するための医薬組成物。
【請求項2】
前記FAK阻害剤とCD44阻害剤の重量比が、1:10~10:1であることを特徴とする、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記FAK阻害剤が、Defactinib、CEP-28122、CEP-37440、TAE226、PF-562271、PF-431396、VS-4718、PF-573228、BI853520、IN10018、APG-2449のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、式Iで表される化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
上式で、R、Rが、それぞれ独立に水素、メチル基、三重水素化メチル基から選択される、
あるいは、前記FAK阻害剤が、
のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤が、
、Defactinib、IN10018のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記CD44阻害剤が、Angstrom6、PEP-1、AMC303、Anti-CD44 mAb H4C4、anti-CD44 mAb HI44a、anti-CD44 mAb IM7、anti-CD44 mAb KM201、RO5429083、RG7356、anti-CD44V6 mAb 2F10、anti-CD44V6 mAb U36、anti-CD44V6 mAb V6B3、anti-CD44V6 mAb VFF18、anti-CD44V6 mAb VFF4、anti-CD44V6 mAb VFF7のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、ポリペプチド若しくは抗体であり、
好ましくは、前記CD44阻害剤が、AMC303の化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、1:82~82:1であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~81:1であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記FAK阻害剤が、化合物
、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~81:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、Defactinib、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~27:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、IN10018、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、1:1であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
重量比にしたがってFAK阻害剤とCD44阻害剤を取り、混合することができるステップを含むことを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物の調製方法。
【請求項8】
癌を治療するための薬物の調製における、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、
好ましくは、前記癌が、固形腫瘍、中皮腫、黒色腫、前立腺癌、乳癌、膠芽腫、脳腫瘍であり、
前記固形腫瘍に、中皮腫、膵臓癌、軟部組織腫瘍、転移性腫瘍、非固形癌、肉腫、腺癌、肺癌、乳癌、リンパ腫、胃腸管癌、泌尿生殖器系癌、前立腺癌、卵巣癌が含まれ、前記胃腸管癌に、結腸癌が含まれ、前記泌尿生殖器系癌に、腎臓、尿路上皮又は精巣腫瘍が含まれ、前記卵巣癌に、進行性卵巣癌が含まれ、
前記中皮腫に、神経線維腫、腎臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、KRAS変異非小細胞肺癌、肝臓癌、甲状腺癌、乳癌、神経系腫瘍、神経鞘腫、髄膜腫、神経腫、腺様嚢胞癌、上衣腫、上衣腫瘍、悪性胸膜腫瘍、悪性胸膜中皮腫、三連体腫、陰性乳癌、非血液悪性腫瘍、黒色腫、結腸直腸癌、白血病、腺癌、固形腫瘍が含まれ、
前記黒色腫に、局所進行性黒色腫、局所変異N-Ras誘発黒色腫、転移性悪性皮膚黒色腫が含まれ、前記結腸直腸癌に、転移性結腸直腸癌が含まれ、前記白血病に、急性骨髄性白血病が含まれ、前記腺癌に、腺癌が含まれ、前記固形腫瘍に、局所進行性固形腫瘍、転移性固形腫瘍、肝細胞癌が含まれ、
前記前立腺癌に、去勢抵抗性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌が含まれ、
前記脳腫瘍に、神経上皮組織腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣及び脈絡叢腫瘍、松果体腫瘍、神経細胞腫瘍、神経節細胞腫、神経芽細胞腫、低分化腫瘍、胎児性腫瘍、多形膠芽腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、悪性リンパ腫、脳血管腫瘍、奇形腫、頭蓋咽頭腫、血管奇形、毛細血管拡張、下垂体腫瘍、転移性腫瘍が含まれる、
使用。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物を有効成分とし、薬学的に許容可能な添加剤又は補助成分を加えて調整され、形成される製剤であることを特徴とする、
癌を治療するための医薬製剤。
【請求項10】
癌を治療するための併用薬であって、
同じ又は異なる規格の、同時又は別々に投与されるFAK阻害剤とCD44阻害剤、そして薬学的に許容可能な担体を含み、
好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤の重量比が、1:10~10:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、1:82~82:1であり、
より好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~81:1であることを特徴とする、
併用薬。
【請求項11】
前記FAK阻害剤が、Defactinib、CEP-28122、CEP-37440、TAE226、PF-562271、PF-431396、VS-4718、PF-573228、BI853520、IN10018、APG-2449のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、式Iで表される化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
上式で、R、Rが、それぞれ独立に水素、メチル基、三重水素化メチル基から選択される、
あるいは、前記FAK阻害剤が、
のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤が、
、Defactinib、IN10018のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
請求項10に記載の併用薬。
【請求項12】
前記CD44阻害剤が、Angstrom6、PEP-1、AMC303、Anti-CD44 mAb H4C4、anti-CD44 mAb HI44a、anti-CD44 mAb IM7、anti-CD44 mAb KM201、RO5429083、RG7356、anti-CD44V6 mAb 2F10、anti-CD44V6 mAb U36、anti-CD44V6 mAb V6B3、anti-CD44V6 mAb VFF18、anti-CD44V6 mAb VFF4、anti-CD44V6 mAb VFF7のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、ポリペプチド若しくは抗体であり、
好ましくは、前記CD44阻害剤が、AMC303の化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
請求項10に記載の併用薬。
【請求項13】
前記FAK阻害剤が、化合物
、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~81:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、Defactinib、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~27:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、IN10018、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、1:1であることを特徴とする、
請求項10~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
癌を治療するための薬物の調製における、FAK阻害剤とCD44阻薬剤の併用であって、
好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤の重量比が、1:10~10:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、1:82~82:1であり、
より好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~81:1である、
併用。
【請求項15】
前記FAK阻害剤が、Defactinib、CEP-28122、CEP-37440、TAE226、PF-562271、PF-431396、VS-4718、PF-573228、BI853520、IN10018、APG-2449のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、式Iで表される化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
上式で、R、Rが、それぞれ独立に水素、メチル基、三重水素化メチル基から選択される、
あるいは、前記FAK阻害剤が、
のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤が、
、Defactinib、IN10018のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記CD44阻害剤が、Angstrom6、PEP-1、AMC303、Anti-CD44 mAb H4C4、anti-CD44 mAb HI44a、anti-CD44 mAb IM7、anti-CD44 mAb KM201、RO5429083、RG7356、anti-CD44V6 mAb 2F10、anti-CD44V6 mAb U36、anti-CD44V6 mAb V6B3、anti-CD44V6 mAb VFF18、anti-CD44V6 mAb VFF4、anti-CD44V6 mAb VFF7のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、ポリペプチド若しくは抗体であり、
好ましくは、前記CD44阻害剤が、AMC303の化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であることを特徴とする、
請求項14に記載の使用。
【請求項17】
前記FAK阻害剤が、化合物
、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~81:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、Defactinib、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、0.4~27:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤が、IN10018、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤が、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比が、1:1であることを特徴とする、
請求項14~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記癌が、固形腫瘍、中皮腫、黒色腫、前立腺癌、乳癌、膠芽腫、脳腫瘍であり、
前記固形腫瘍に、中皮腫、膵臓癌、軟部組織腫瘍、転移性腫瘍、非固形癌、肉腫、腺癌、肺癌、乳癌、リンパ腫、胃腸管癌、泌尿生殖器系癌、前立腺癌、卵巣癌が含まれ、前記胃腸管癌に、結腸癌が含まれ、前記泌尿生殖器系癌に、腎臓、尿路上皮又は精巣腫瘍が含まれ、前記卵巣癌に、進行性卵巣癌が含まれ、
前記中皮腫に、神経線維腫、腎臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、KRAS変異非小細胞肺癌、肝臓癌、甲状腺癌、乳癌、神経系腫瘍、神経鞘腫、髄膜腫、神経腫、腺様嚢胞癌、上衣腫、上衣腫瘍、悪性胸膜腫瘍、悪性胸膜中皮腫、三連体腫、陰性乳癌、非血液悪性腫瘍、黒色腫、結腸直腸癌、白血病、腺癌、固形腫瘍が含まれ、
前記黒色腫に、局所進行性黒色腫、局所変異N-Ras誘発黒色腫、転移性悪性皮膚黒色腫が含まれ、前記結腸直腸癌に、転移性結腸直腸癌が含まれ、前記白血病に、急性骨髄性白血病が含まれ、前記腺癌に、腺癌が含まれ、前記固形腫瘍に、局所進行性固形腫瘍、転移性固形腫瘍、肝細胞癌が含まれ、
前記前立腺癌に、去勢抵抗性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌が含まれ、
前記脳腫瘍に、神経上皮組織腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣及び脈絡叢腫瘍、松果体腫瘍、神経細胞腫瘍、神経節細胞腫、神経芽細胞腫、低分化腫瘍、胎児性腫瘍、多形膠芽腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、悪性リンパ腫、脳血管腫瘍、奇形腫、頭蓋咽頭腫、血管奇形、毛細血管拡張、下垂体腫瘍、転移性腫瘍が含まれることを特徴とする、
請求項14~16のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の領域に属し、特に癌を治療するための医薬組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌とは通常、すべての悪性腫瘍を指し、細胞分化と増殖の異常、成長の制御喪失、浸潤性、転移性などの生物学的特徴を持つ。毎年、多くの人々が各種の癌で死亡しており、人類の生存を深刻に脅かしている。現在のところ、腫瘍の臨床治療は、依然として手術と化学療法薬が中心であるが、21世紀に入って、分子標的薬による治療がますます重要な役割を果たすようになってきている。従来の細胞毒性薬と比較すると、分子標的薬は、正常細胞とは異なる腫瘍細胞の特徴を標的とすることによって、盲目的攻撃から標的攻撃に変化し、正常な器官・組織への毒性副作用を軽減しながら、強力な抗腫瘍作用を発揮し、これによって、患者の生活の質が改善し、癌治療薬の研究開発において注目を集めている。
【0003】
CD44は、細胞表面膜貫通糖タンパク質であり、主に不均一接着、つまり腫瘍細胞と宿主細胞・宿主マトリックスの接着に関与しており、不均一接着は、腫瘍細胞の浸潤や転移において促進作用を発揮する。≪Anti-CD44 antibodies inhibit both mTORC1 and mTORC2: a new rationale supporting CD44-induced AML differentiation therapy≫(Merzaban, J, S, et al. Leukemia: Official Journal of the Leukemia Society of America, Leukemia Research Fund, U.K., 2016.)の文献は、抗体によってCD44を阻害すると、癌細胞の異常な成長に関与する2つの主要な経路であるPI3K(ホスファチジルイノシトール3キナーゼ)経路とmTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)経路の発現が低下する可能性があることを発見した。そのため、CD44阻害剤は、癌の治療への応用が期待される。CD44阻害剤は、良好な抵癌活性を示すが、臨床試験では比較的高い毒性副作用があることがわかっている(≪CD44V6-targeted imaging of head and neck squamous cell carcinoma: antibody-based approaches≫,≪Hyaluronic acid targeting of CD44 for cancer therapy: from receptor biology to nanomedicine≫)。
【0004】
焦点接着キナーゼ(focal adhesion kinase、FAK)は、非受容体型チロシンキナーゼであり、重要な細胞骨格タンパク質で、様々なシグナル経路の要の分子である。FAKは、腫瘍の発生、発達、遊走、浸潤の各段階において重要な作用を有する。現在、FAKは、腫瘍治療の潜在的な標的とみなされており、FAK阻害剤は、リガンドとしてATPと競合してFAK受容体結合部位に結合し、FAKを介した成長・増殖シグナル経路の情報伝達を遮断することができ、悪性腫瘍細胞は成長・増殖が抑制され、高用量では細胞死にすら至る。しかしながら、FAK阻害剤には、毒性副作用が大きいという問題もある。さらに、研究が進むにつれて、FAKが癌の進行において発揮する生物学的作用は複雑であり、その癌治療効果が不確かであることもわかってきている。
【0005】
また、癌を治療する過程で、薬剤耐性の問題は常に大きな問題となっている。癌細胞の薬剤耐性をどのように克服するかというのは、癌の治療研究における難点の一つである。今のところ、CD44阻害剤とFAK阻害剤を組み合わせた癌治療薬の調製はまだ見当たらず、癌治療効果があるかどうか、毒性副作用が軽減されるかどうか、癌細胞の薬剤耐性を克服できるかどうかということについては、さらなる研究が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、癌を治療するための医薬組成物及びその使用を提供することである。
【0007】
本発明は、FAK阻害剤とCD44阻害剤によって構成される、癌を治療するための医薬組成物を提供する。
【0008】
さらに、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤の重量比は、1:10~10:1である。
【0009】
さらに、前記FAK阻害剤は、Defactinib、CEP-28122、CEP-37440、TAE226、PF-562271、PF-431396、VS-4718、PF-573228、BI853520、IN10018、APG-2449のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、式Iで表される化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
上式で、R、Rは、それぞれ独立に水素、メチル基、三重水素化メチル基から選択される、
あるいは、前記FAK阻害剤は、
のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤は、
、Defactinib、IN10018のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である。
【0010】
さらに、前記CD44阻害剤は、Angstrom6、PEP-1、AMC303、Anti-CD44 mAb H4C4、anti-CD44 mAb HI44a、anti-CD44 mAb IM7、anti-CD44 mAb KM201、RO5429083、RG7356、anti-CD44V6 mAb 2F10、anti-CD44V6 mAb U36、anti-CD44V6 mAb V6B3、anti-CD44V6 mAb VFF18、anti-CD44V6 mAb VFF4、anti-CD44V6 mAb VFF7のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、ポリペプチド若しくは抗体であり、
好ましくは、前記CD44阻害剤は、AMC303の化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である。
【0011】
さらに、前記FAK阻害剤とCD阻害剤のモル比は、1:82~82:1であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤とCD阻害剤のモル比は、0.4~81:1である。
【0012】
さらに、前記FAK阻害剤は、化合物
、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~81:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、Defactinib、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~27:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、IN10018、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、1:1である。
【0013】
本発明はさらに、重量比にしたがってFAK阻害剤とCD44阻害剤を取り、混合することができるステップを含む、前記医薬組成物の調製方法を提供する。
【0014】
本発明はさらに、癌を治療するための薬物の調製における、前記医薬組成物の使用を提供し、
好ましくは、前記癌は、固形腫瘍、中皮腫、黒色腫、前立腺癌、乳癌、膠芽腫、脳腫瘍であり、
前記固形腫瘍には、中皮腫、膵臓癌、軟部組織腫瘍、転移性腫瘍、非固形癌、肉腫、腺癌、肺癌、乳癌、リンパ腫、胃腸管癌、泌尿生殖器系癌、前立腺癌、卵巣癌が含まれ、前記胃腸管癌には、結腸癌が含まれ、前記泌尿生殖器系癌には、腎臓、尿路上皮又は精巣腫瘍が含まれ、前記卵巣癌には、進行性卵巣癌が含まれ、
前記中皮腫には、神経線維腫、腎臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、KRAS変異非小細胞肺癌、肝臓癌、甲状腺癌、乳癌、神経系腫瘍、神経鞘腫、髄膜腫、神経腫、腺様嚢胞癌、上衣腫、上衣腫瘍、悪性胸膜腫瘍、悪性胸膜中皮腫、三連体腫、陰性乳癌、非血液悪性腫瘍、黒色腫、結腸直腸癌、白血病、腺癌、固形腫瘍が含まれ、
前記黒色腫には、局所進行性黒色腫、局所変異N-Ras誘発黒色腫、転移性悪性皮膚黒色腫が含まれ、前記結腸直腸癌には、転移性結腸直腸癌が含まれ、前記白血病には、急性骨髄性白血病が含まれ、前記腺癌には、腺癌が含まれ、前記固形腫瘍には、局所進行性固形腫瘍、転移性固形腫瘍、肝細胞癌が含まれ、
前記前立腺癌には、去勢抵抗性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌が含まれ、
前記脳腫瘍には、神経上皮組織腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣及び脈絡叢腫瘍、松果体腫瘍、神経細胞腫瘍、神経節細胞腫、神経芽細胞腫、低分化腫瘍、胎児性腫瘍、多形膠芽腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、悪性リンパ腫、脳血管腫瘍、奇形腫、頭蓋咽頭腫、血管奇形、毛細血管拡張、下垂体腫瘍、転移性腫瘍が含まれる。
【0015】
本発明はさらに、前記医薬組成物を有効成分とし、薬学的に許容可能な添加剤又は補助成分を加えて調整され、形成される製剤である、癌を治療するための医薬製剤を提供する。
【0016】
本発明はさらに、癌を治療するための併用薬を提供し、この併用薬は、同じ又は異なる規格の、同時又は別々に投与されるFAK阻害剤とCD44阻害剤、そして薬学的に許容可能な担体を含み、
好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤の重量比は、1:10~10:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、1:82~82:1であり、
より好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~81:1である。
【0017】
さらに、前記FAK阻害剤は、Defactinib、CEP-28122、CEP-37440、TAE226、PF-562271、PF-431396、VS-4718、PF-573228、BI853520、IN10018、APG-2449のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、式Iで表される化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
上式で、R、Rは、それぞれ独立に水素、メチル基、三重水素化メチル基から選択される、
あるいは、前記FAK阻害剤は、
のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤は、
、Defactinib、IN10018のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である。
【0018】
さらに、前記CD44阻害剤は、Angstrom6、PEP-1、AMC303、Anti-CD44 mAb H4C4、anti-CD44 mAb HI44a、anti-CD44 mAb IM7、anti-CD44 mAb KM201、RO5429083、RG7356、anti-CD44V6 mAb 2F10、anti-CD44V6 mAb U36、anti-CD44V6 mAb V6B3、anti-CD44V6 mAb VFF18、anti-CD44V6 mAb VFF4、anti-CD44V6 mAb VFF7のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、ポリペプチド若しくは抗体であり、
好ましくは、前記CD44阻害剤は、AMC303の化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である。
【0019】
さらに、前記FAK阻害剤は、化合物
、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤と前記CD44阻害剤のモル比は、0.4~81:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、Defactinib、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~27:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、IN10018、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、1:1である。
【0020】
本発明はさらに、癌を治療するための薬物の調製における、FAK阻害剤とCD44阻薬剤の併用を提供し、
好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤の重量比は、1:10~10:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、1:82~82:1であり、
より好ましくは、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~81:1である。
【0021】
さらに、前記FAK阻害剤は、Defactinib、CEP-28122、CEP-37440、TAE226、PF-562271、PF-431396、VS-4718、PF-573228、BI853520、IN10018、APG-2449のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、式Iで表される化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
上式で、R、Rは、それぞれ独立に水素、メチル基、三重水素化メチル基から選択される、
あるいは、前記FAK阻害剤は、
のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、
好ましくは、前記FAK阻害剤は、
、Defactinib、IN10018のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である。
【0022】
さらに、前記CD44阻害剤は、Angstrom6、PEP-1、AMC303、Anti-CD44 mAb H4C4、anti-CD44 mAb HI44a、anti-CD44 mAb IM7、anti-CD44 mAb KM201、RO5429083、RG7356、anti-CD44V6 mAb 2F10、anti-CD44V6 mAb U36、anti-CD44V6 mAb V6B3、anti-CD44V6 mAb VFF18、anti-CD44V6 mAb VFF4、anti-CD44V6 mAb VFF7のいずれかの化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物、溶媒和物、ポリペプチド若しくは抗体であり、
好ましくは、前記CD44阻害剤は、AMC303の化合物、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物である。
【0023】
さらに、前記FAK阻害剤は、化合物
、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~81:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、Defactinib、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、0.4~27:1である、
あるいは、前記FAK阻害剤は、IN10018、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記CD44阻害剤は、AMC303、又はその光学異性体、互変異性体、塩、プロドラッグ、水和物若しくは溶媒和物であり、前記FAK阻害剤とCD44阻害剤のモル比は、1:1である。
【0024】
さらに、前記癌は、固形腫瘍、中皮腫、黒色腫、前立腺癌、乳癌、膠芽腫、脳腫瘍であり、
前記固形腫瘍には、中皮腫、膵臓癌、軟部組織腫瘍、転移性腫瘍、非固形癌、肉腫、腺癌、肺癌、乳癌、リンパ腫、胃腸管癌、泌尿生殖器系癌、前立腺癌、卵巣癌が含まれ、前記胃腸管癌には、結腸癌が含まれ、前記泌尿生殖器系癌には、腎臓、尿路上皮又は精巣腫瘍が含まれ、前記卵巣癌には、進行性卵巣癌が含まれ、
前記中皮腫には、神経線維腫、腎臓癌、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、KRAS変異非小細胞肺癌、肝臓癌、甲状腺癌、乳癌、神経系腫瘍、神経鞘腫、髄膜腫、神経腫、腺様嚢胞癌、上衣腫、上衣腫瘍、悪性胸膜腫瘍、悪性胸膜中皮腫、三連体腫、陰性乳癌、非血液悪性腫瘍、黒色腫、結腸直腸癌、白血病、腺癌、固形腫瘍が含まれ、
前記黒色腫には、局所進行性黒色腫、局所変異N-Ras誘発黒色腫、転移性悪性皮膚黒色腫が含まれ、前記結腸直腸癌には、転移性結腸直腸癌が含まれ、前記白血病には、急性骨髄性白血病が含まれ、前記腺癌には、腺癌が含まれ、前記固形腫瘍には、局所進行性固形腫瘍、転移性固形腫瘍、肝細胞癌が含まれ、
前記前立腺癌には、去勢抵抗性前立腺癌、転移性去勢抵抗性前立腺癌が含まれ、
前記脳腫瘍には、神経上皮組織腫瘍、神経膠腫、星細胞腫、乏突起神経膠腫、上衣及び脈絡叢腫瘍、松果体腫瘍、神経細胞腫瘍、神経節細胞腫、神経芽細胞腫、低分化腫瘍、胎児性腫瘍、多形膠芽腫、髄芽腫、神経鞘腫、髄膜腫、悪性リンパ腫、脳血管腫瘍、奇形腫、頭蓋咽頭腫、血管奇形、毛細血管拡張、下垂体腫瘍、転移性腫瘍が含まれる。
【0025】
本発明のCD44阻害剤とFAK阻害剤の併用は、相乗効果を発揮し、腫瘍に対する抑制効果を顕著に高め、毒性副作用を軽減し、腫瘍の薬剤耐性を克服し、癌の臨床治療によい選択肢を与える。
【0026】
明らかなことであるが、本発明の上記の内容に基づき、当領域の通常の技術知識と慣用手段に従い、本発明の上記の基本的な技術思想から逸脱しないという前提の下で、さらにその他の様々な改良、置き換え又は変更を行うことが可能である。
【0027】
以下では、実施例という形の具体的な実施方式で、本発明の上記の内容についてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の上記の主題の範囲が以下の実施例に限定されると解釈してはならない。本発明の上記の内容に基づいて実現される技術はすべて、本発明の範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】A549細胞における化合物25とAMC303の併用の生存率の棒グラフである。
図2】A549細胞におけるDefactinibとAMC303の併用の生存率の棒グラフである。
図3】A549細胞における化合物25、Defactinib又はIN10018とAMC303との併用のスクラッチアッセイの図である。
図4】A549細胞における化合物25、Defactinib又はIN10018とAMC303との併用のスクラッチアッセイの統計図である。
図5】SW620細胞における化合物25とAMC303の併用の生存率の棒グラフである。
図6】SW620細胞におけるDefactinibとAMC303の併用の生存率の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の具体的な実施方式で用いる原料及び設備はすべて、すでに知られている生産物であり、市販されている生産物を購入することによって得られる。
【0030】
本発明の実施例では、化合物25の構造は
であり、出願番号201910373081.2の特許に記された方法にしたがって調整される。Defactinibは、市販されているFAK阻害剤である。AMC303は、amcure GmbHによって開発されたCD44v6阻害剤であり、購入して得られる。IN10018は、FAK阻害剤であり、購入して得られる。
【0031】
実施例1.本発明の医薬組成物の癌細胞増殖抑制効果
1.実験方法
対数増殖期の非小細胞肺癌A549細胞を採取し、1.0×10細胞/ウェルの濃度で、96ウェル培養プレートに播種した。37℃、CO濃度5%、飽和湿度の条件のインキュベーター内で24時間インキュベーションした。24時間インキュベーションした後、薬物のFAK阻害剤(化合物25又はDefactinib)及びCD44阻害剤(AMC303)を、順に96ウェルプレートに加えた。薬物と同体積の10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640細胞培養液を、陰性対照ウェルに加えた。
【0032】
化合物25の濃度は、0μM、0.123μM、0.370μM、1.111μM、3.333μM及び10μMである。
【0033】
Defactinibの濃度は、0μM、0.123μM、0.370μM、1.111μM、3.333μM及び10μMである。
【0034】
AMC303の濃度は、0μM、0.002μM、0.005μM、0.014μM、0.041μM、0.123μM、0.370μM、1.111μM、3.333μM及び10μMである。
【0035】
薬物を加えていっしょに6日間インキュベーションした後、各ウェルにCCK-8 10μLを加え、2.5時間培養を続けた。マイクロプレートリーダーで、各ウェルの波長450nmにおける吸光度値(OD)を測定した。公式にしたがって、細胞増殖抑制率を計算した。抑制率(%)=(1-薬物添加ウェルのOD値/対照ウェルのOD値)×100%。そして、q=Ea+b/(E+E-E・E)薬物併用指数にしたがって、判定を行った。q値の判定基準は、表1の通りである。
【0036】
【表1】
【0037】
2.実験結果
(1)化合物25とAMC303の併用(化合物25&AMC303)
化合物25とAMC303の併用の結果は、図1の通りである。図1からわかるように、化合物25とAMC303のモル比が81:1の時に、化合物25とAMC303の併用は、A549細胞の増殖抑制に相乗効果を示し、非小細胞肺癌の相乗的治療に利用できる。
【0038】
(2)DefactinibとAMC303の併用(Defactinib&AMC303)
DefactinibとAMC303の併用の結果は、図2の通りである。図2からわかるように、DefactinibとAMC303のモル比が27:1の時に、DefactinibとAMC303の併用は、A549細胞の増殖抑制に相乗効果を示し、非小細胞肺癌の相乗的治療に利用できる。
【0039】
上記の実施例は、非小細胞肺癌を治療するための併用薬を提供するものであるが、実験結果は、FAK阻害剤(化合物25又はDefactinib)とCD44阻害剤AMC303の併用が、非小細胞肺癌細胞の成長・増殖を顕著に抑制でき、その抗癌効果が、FAK阻害剤(化合物25又はDefactinib)及びCD44阻害剤AMC303の単独使用より明らかに優れ、相乗効果を持つことを示している。本発明の併用薬は、非小細胞肺癌の治療領域において臨床応用が非常に期待される。
【0040】
実施例2.本発明の医薬組成物の癌細胞遊走抑制効果
1.実験方法
対数増殖期の非小細胞肺癌A549細胞を採取し、1.0×10細胞/ウェルの濃度で、12ウェル培養プレートに播種した。37℃、CO濃度5%、飽和湿度の条件のインキュベーター内で24時間インキュベーションした。12ウェルプレート内の細胞に引っ掻き傷(1ウェルあたり3つの引っ掻き傷)をつけ、引っ掻き傷をつけた後、培地を吸引して捨て、PBSで一通り洗浄して、浮遊細胞を除去した。FAK阻害剤(化合物25、Defactinib又はIN10018)及びCD44(AMC303)阻害剤を、順に12ウェルプレートに加えた。薬物はすべて、HFG 20ng/mlを含む無血清のRPMI 1640細胞培養液を用いて調製した。薬物と同体積の無血清のRPMI 1640細胞培養液(HGF 20ng/mlを含む)を、陰性対照ウェルに加えた。
【0041】
化合物25の濃度は、0.4μM、
Defactinibの濃度は、0.4μM、
IN10018の濃度は、1μM、
AMC303の濃度は、1μMである。
【0042】
4つの薬物(化合物25、Defactinib、IN10018、AMC303)を単独で加え、又は化合物25とAMC303を同時に加え(化合物25&AMC303、化合物25の濃度は0.4μM、AMC303の濃度は1μM)、又はDefactinibとAMC303を同時に加え(Defactinib&AMC303、Defactinibの濃度は0.4μM、AMC303の濃度は1μM)、又はIN10018とAMC303を同時に加え(IN10018&AMC303、IN10018の濃度は1μM、AMC303の濃度は1μM)、24時間インキュベーションした後、培地を吸引して捨て、PBSで一通り洗浄して、浮遊細胞を除去し、顕微鏡で細胞の遊走の様子を観察し、接眼レンズの倍率10×、対物レンズの倍率10×で、写真を撮影した(0時間と24時間の両方で写真の撮影が必要)。Image Jを用いて画像を処理し、細胞遊走率を分析した。遊走率の計算式は、遊走率(%)=[引っ掻き傷面積(0時間)-引っ掻き傷面積(48時間)/引っ掻き傷面積(0時間)]×100%。
【0043】
遊走率を用いてPrism統計で棒グラフを作成し、t検定を行った。p<0.05の場合に、有意差ありとした。
【0044】
2.実験結果
細胞の遊走の結果は、図3~4及び表2の通りである。
【0045】
【表2】
【0046】
図3~4及び表2からわかるように、FAK阻害剤(化合物25、Defactinib又はIN10018)とCD44阻害剤AMC303の併用は、非小細胞肺癌細胞の遊走を顕著に抑制でき、その抗癌効果は、FAK阻害剤(化合物25、Defactinib又はIN10018)及びCD44阻害剤AMC303の単独使用より明らかに優れ、相乗効果を持つ。本発明の併用薬は、非小細胞肺癌の治療領域において臨床応用が非常に期待される。
【0047】
実施例3.本発明の医薬組成物の癌細胞増殖抑制効果
1.実験方法
対数増殖期の結腸直腸癌SW620細胞を採取し、1.0×10細胞/ウェルの濃度で、96ウェル培養プレートに播種した。37℃、CO濃度5%、飽和湿度の条件のインキュベーター内で24時間インキュベーションした。24時間インキュベーションした後、薬物のFAK阻害剤(化合物25又はDefactinib)及びCD44阻害剤(AMC303)を、順に96ウェルプレートに加えた。薬物と同体積の10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640細胞培養液を、陰性対照ウェルに加えた。
【0048】
化合物25の濃度は、0μM、0.123μM、0.370μM、1.111μM、3.333μM及び10μMである。
【0049】
Defactinibの濃度は、0μM、0.123μM、0.370μM、1.111μM、3.333μM及び10μMである。
【0050】
AMC303の濃度は、0μM、0.002μM、0.005μM、0.014μM、0.041μM、0.123μM、0.370μM、1.111μM、3.333μM及び10μMである。
【0051】
薬物を加えていっしょに6日間インキュベーションした後、各ウェルにCCK-8 10μLを加え、2.5時間培養を続けた。マイクロプレートリーダーで、各ウェルの波長450nmにおける吸光度値(OD)を測定した。公式にしたがって、細胞増殖抑制率を計算した。抑制率(%)=(1-薬物添加ウェルのOD値/対照ウェルのOD値)×100%。そして、q=Ea+b/(E+E-E・E)薬物併用指数にしたがって、判定を行った。q値の判定基準は、表3の通りである。
【0052】
【表3】
【0053】
2.実験結果
(1)化合物25とAMC303の併用(化合物25&AMC303)
化合物25とAMC303の併用の結果は、図5の通りである。図5からわかるように、化合物25とAMC303のモル比が81:1の時に、化合物25とAMC303の併用は、SW620細胞の増殖抑制に相乗効果を示し、結腸直腸癌の相乗的治療に利用できる。
【0054】
(2)DefactinibとAMC303の併用(Defactinib&AMC303)
DefactinibとAMC303の併用の結果は、図6の通りである。図6からわかるように、DefactinibとAMC303のモル比が1:1の時に、DefactinibとAMC303の併用は、SW620細胞の増殖抑制に相乗効果を示し、結腸直腸癌の相乗的治療に利用できる。
【0055】
上記の実施例は、結腸直腸癌を治療するための併用薬を提供するものであるが、実験結果は、FAK阻害剤(化合物25又はDefactinib)とCD44阻害剤AMC303の併用が、結腸直腸癌細胞の成長・増殖を顕著に抑制でき、その抗癌効果が、FAK阻害剤(化合物25又はDefactinib)及びCD44阻害剤AMC303の単独使用より明らかに優れ、相乗効果を持つことを示している。本発明の併用薬は、結腸直腸癌の治療領域において臨床応用が非常に期待される。
【0056】
まとめると、本発明は、CD44阻害剤とFAK阻害剤の併用が、相乗効果を発揮し、腫瘍に対する抑制効果を顕著に高め、腫瘍の薬剤耐性を克服し、癌の臨床治療によい選択肢を与えることを発見した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】