(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】本態性振戦を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/44 20060101AFI20240501BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240501BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240501BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
A61K31/44
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572555
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022072510
(87)【国際公開番号】W WO2022251812
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517169735
【氏名又は名称】カビオン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Cavion, Inc.
【住所又は居所原語表記】600 East Water Street, Suite E, Charlottesville, VA 22902, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】リー,マーガレット エス.
(72)【発明者】
【氏名】バラディ,ミシェル ギルバート
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、それを必要とする個体において運動障害を処置する方法であって、個体に経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする個体において運動障害を処置する方法であって、
a)前記個体に第1の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、前記第1の用量が約5mgのCX-8998を含み、1週目の各日に1日1回(QD)、前記個体に経口投与されるステップ;
b)前記個体に第2の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、前記第2の用量が約10mgのCX-8998を含み、2週目の各日に1日1回(QD)、前記個体に経口投与されるステップ;ならびに、
c)任意で、前記個体に第3の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、前記第3の用量が約20mgのCX-8998を含み、3週目の各日に1日1回(QD)、前記個体に経口投与されるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
a)1週目の各日に1日1回(QD)、前記第1の用量を前記個体に投与するステップ;
b)2週目の各日に1日1回(QD)、前記第2の用量を前記個体に投与するステップ;および
c)2週目に投与される最後の用量に続く期間、1日1回(QD)、前記個体への前記10mgのCX-8998の前記投与を維持するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)1週目の各日に1日1回(QD)、前記第1の用量を前記個体に投与するステップ;
b)2週目の各日に1日1回(QD)、前記第2の用量を前記個体に投与するステップ;
c)3週目の各日に1日1回(QD)、前記第3の用量を前記個体に投与するステップ;および
d)3週目に投与される最後の用量に続く期間、1日1回(QD)、前記個体への前記20mgのCX-8998の前記投与を維持するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)1週目の各日に1日1回(QD)、前記第1の用量を前記個体に投与するステップ;
b)2週目の各日に1日1回(QD)、前記第2の用量を前記個体に投与するステップ;
c)3週目の各日に1日1回(QD)、前記第3の用量を前記個体に投与するステップ;および
d)前記個体に第4の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、前記第4の用量が約30mgのCX-8998を含み、4週目の各日に1日1回(QD)、前記個体に経口投与されるステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
4週目に投与される最後の用量に続く期間、1日1回(QD)、前記個体への前記30mgのCX-8998の前記投与を維持するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記期間が、少なくとも1~4週間、6か月間、または1年以上の期間である、請求項2、3または5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記個体が、前記第1の用量を投与した後、2週目の最終日までに重度の有害事象(AE)を経験しておらず、前記有害事象が、頭痛、頭部ふらふら感、浮動性めまい、傾眠、嗜眠、集中力低下、ありありとした夢、多幸気分、高揚状態、観念の競合、幻視、および失神からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記個体が、前記第1の用量を投与した後、2週目の最終日までに軽度の有害事象(AE)、中程度のAEを経験する、またはAEを経験しない、請求項3または7に記載の方法。
【請求項9】
前記個体が、前記第1の用量を投与した後、3週目の最終日までに重度の有害事象(AE)を経験しておらず、前記有害事象が、頭痛、頭部ふらふら感、浮動性めまい、傾眠、嗜眠、集中力低下、ありありとした夢、多幸気分、高揚状態、観念の競合、幻視、および失神からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記個体が、前記第1の用量を投与した後、3週目の最終日までに軽度の有害事象(AE)、中程度のAEを経験する、またはAEを経験しない、請求項4または9に記載の方法。
【請求項11】
前記運動障害が、本態性振戦、てんかん、またはパーキンソン病である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個体が中程度から重度の本態性振戦と診断されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記個体が重度の本態性振戦と診断されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記個体が成人である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記経口剤形が絶食状態で前記個体に投与される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記経口剤形が、朝または起床後約4時間以内に前記個体に投与される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月24日に出願された米国仮特許出願第63/192,535号の利益および優先権を主張し、その開示はその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本態性振戦(ET)は、成人での全ての運動障害の中で最も頻発している。2010年のメタ分析において、Louis et al. (1998 Movement Disorders. 13(1):5-10)では、研究を通して統計学的に有意である異種性を伴う(I2=99%、p<0.001)、0.9%であるプールした有病率(全年齢)と推定された。65歳以上の成人での有病率は、4.6%であると推定された(Louis and Ferreira, 2010 Mov Disord. 25(5):534-541)。ETでは平均余命は短くならないが、自宅や職場での日常生活動作(ADL、例えば筆記および食事)を行う患者の能力へのその影響が、生活の質、社会的相互作用、および精神状態に負の影響を及ぼす(Lorenz et al., 2006 Mov Disord. 21(8):1114-1118;Louis et al., 2015 Parkinsonism Relat Disord. 21(7):729-735;George et al., 1994 Psychosomatics. 35(6):520-523;および、Zesiewicz et al., 2011 Neurology. 77(19):1752-1755)。ETが単一症状の障害ではないことはますます認識されている(Bermejo-Pareja, 2011 Nature Reviews Neurology. 7(5):273-282)。認知機能への効果は不均一であり、注意力、遂行機能、言語流暢性、空間視覚の機能、記憶力、および作動記憶での障害を含む(Bermejo-Pareja et al., 2012 “V. Cognitive Features of Essential Tremor: A Review of the Clinical Aspects and Possible Mechanistic Underpinnings,” pages 2:02-74-541-1 in Tremor and Other Hyperkinetic Movements (Louis, ed.) 2012)。睡眠障害および疲労はまた、それらの年齢一致対照よりETの患者で一般的である(Chandran et al., 2012 Acta Neurol Scand. 125:332-7)。本態性振戦は、典型的に経時的に悪化し、一部の人々では重症となり得る。多くの日常生活動作に影響を及ぼし、社会的な困惑、病的恐怖、うつおよび不安の源であり得る重大な能力障害である。
【0003】
CX-8998は、ファーストインクラスのT型カルシウムチャネルアンタゴニストであり、本態性振戦に対して現在開発されている最も進歩した後期段階の小分子である。CX-8998は、米国にわたる25施設で行われた95名の本態性振戦の患者のT-CALM(振戦-Cav3調整)概念実証の第二相二重盲検、プラセボ対照臨床試験で評価された。患者を2つの処置アームの1つに無作為化し、プラセボまたはCX-8998のいずれかを投与した。研究者が評価した本態性振戦評定評価尺度(The Essential Tremor Rating Assessment Scale)(TETRAS)パフォーマンスサブスケール(P=0.017)、TETRAS-日常生活動作能力(TETRAS-ADL;P=0.049)、TETRAS総合スコア(P=0.007)および改善の臨床総合所見(Clinician Global Impression of Improvement)(P=0.001)を含む、いくつかの臨床測定にわたる著しい改善が、CX-8998で処置した本態性振戦の患者で観察された(Papapetropoulos et al. presented at: 2019 American Academy of Neurology Annual Meeting, Philadelphia, PA)。
【発明の概要】
【0004】
本明細書で提供されるのは、運動障害を処置する方法である。様々な実施形態が本明細書で考察される。例えば、実施形態1では、提供されるのは、それを必要とする個体において運動障害を処置する方法であって、a)個体に第1の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、第1の用量が約5mgのCX-8998を含み、1週目の各日に1日1回(QD)、個体に経口投与されるステップ;b)個体に第2の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、第2の用量が約10mgのCX-8998を含み、2週目の各日に1日1回(QD)、個体に経口投与されるステップ;ならびに、c)任意で、個体に第3の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、第3の用量が約20mgのCX-8998を含み、3週目の各日に1日1回(QD)、個体に経口投与されるステップを含む、方法である。
【0005】
実施形態2:a)1週目の各日に1日1回(QD)、第1の用量を個体に投与するステップ;b)2週目の各日に1日1回(QD)、第2の用量を個体に投与するステップ;およびc)2週目に投与される最後の用量に続く期間、1日1回(QD)、個体への10mgのCX-8998の投与を維持するステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0006】
実施形態3:a)1週目の各日に1日1回(QD)、第1の用量を個体に投与するステップ;b)2週目の各日に1日1回(QD)、第2の用量を個体に投与するステップ;c)3週目の各日に1日1回(QD)、第3の用量を個体に投与するステップ;およびd)3週目に投与される最後の用量に続く期間、1日1回(QD)、個体への20mgのCX-8998の投与を維持するステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0007】
実施形態4:a)1週目の各日に1日1回(QD)、第1の用量を個体に投与するステップ;b)2週目の各日に1日1回(QD)、第2の用量を個体に投与するステップ;c)3週目の各日に1日1回(QD)、第3の用量を個体に投与するステップ;およびd)個体に第4の用量の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与し、第4の用量が約30mgのCX-8998を含み、4週目の各日に1日1回(QD)、個体に経口投与されるステップを含む、実施形態1に記載の方法。
【0008】
実施形態5:4週目に投与される最後の用量に続く期間、1日1回(QD)、個体への30mgのCX-8998の投与を維持するステップを含む、実施形態4に記載の方法。
【0009】
実施形態6:期間が、少なくとも1~4週間、6か月間、または1年以上の期間である、実施形態2、3、または5のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0010】
実施形態7:個体が、第1の用量を投与した後、2週目の最終日までに重度の有害事象(AE)を経験しておらず、有害事象が、頭痛、頭部ふらふら感、浮動性めまい、傾眠、嗜眠、集中力低下、ありありとした夢、多幸気分、高揚状態、観念の競合、幻視、および失神からなる群から選択される、実施形態3に記載の方法。
【0011】
実施形態8:個体が、第1の用量を投与した後、2週目の最終日までに軽度の有害事象(AE)、中程度のAEを経験する、またはAEを経験しない、実施形態3または7に記載の方法。
【0012】
実施形態9:個体が、第1の用量を投与した後、3週目の最終日までに重度の有害事象(AE)を経験しておらず、有害事象が、頭痛、頭部ふらふら感、浮動性めまい、傾眠、嗜眠、集中力低下、ありありとした夢、多幸気分、高揚状態、観念の競合、幻視、および失神からなる群から選択される、実施形態4に記載の方法。
【0013】
実施形態10:個体が、第1の用量を投与した後、3週目の最終日までに軽度の有害事象(AE)、中程度のAEを経験する、またはAEを経験しない、実施形態4または9に記載の方法。
【0014】
実施形態11:運動障害が、本態性振戦、てんかん、またはパーキンソン病である、実施形態1~10のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0015】
実施形態12:個体が中程度から重度の本態性振戦と診断されている、実施形態1~11のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0016】
実施形態13:個体が重度の本態性振戦と診断されている、実施形態1~12のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0017】
実施形態14:個体が成人である、実施形態1~13のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0018】
実施形態15:経口剤形が絶食状態で個体に投与される、実施形態1~14のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【0019】
実施形態16:経口剤形が、朝または起床後約4時間以内に個体に投与される、実施形態1~15のいずれか1つの実施形態に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置すること」は、有益または所望の臨床結果を得るための手法である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、生物学的または他の意味で望ましくない材料でないことを意味し、例えば、材料は、任意に著しく望ましくない生物学的効果を引き起こさない、または含有される組成物の他の成分のいずれかを伴う有害な方法で相互作用せずに、患者に投与される医薬組成物に組み込まれ得る。薬学的に許容される担体または添加剤は、好ましくは、毒物学の必要とされる基準および製造検査を満たす、ならびに/または、米国食品医薬品局で定められた不活性成分ガイドに含まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「経口剤形」とは、経口投与に好適な任意の製剤を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「個体」とは、処置を必要とする哺乳動物(例えばヒト)を指す。「個体」、「参加者」および「患者」は、本明細書で互換的に使用される。用語「成人」とは、18歳以上の個体を指す。ある特定の実施形態では、個体は、高齢者、例えば65歳以上である。用語「若年」とは、12歳から18歳未満の個体を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、所望の治療転帰を生じるのに十分な化合物または併用療法の量を指す。当該技術分野で理解される通り、治療有効量は1つまたは複数の用量であり得る、すなわち、単一用量または複数用量が所望の処置エンドポイントを達成するために必要とされ得る。
【0025】
本明細書において「約」が付いた値またはパラメータに対する言及は、値またはパラメータそれ自体を目的とする変形例を含む(そして記載する)。
【0026】
単数形「a」、「or」および「the」は、別段文脈で明らかに示されない限り、複数の言及を含む。
【0027】
用語「含む(comprise)」または変形例、例えば「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」は、記述した要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を包含するが、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または要素、整数もしくはステップの群を排除しないことを示唆すると理解される。本明細書に記載される実施形態は、態様「からなること」および/または態様「から本質的になること」を含む。
【0028】
CX-8998
CX-8998は、MK-8998とも呼ばれるが、全ての3つのCav3アイソフォームに対する低いナノモル力価および他のイオンチャネル標的に対する100倍超の選択性を示す高選択的電圧活性化カルシウムチャネル(Cav)アンタゴニストである。CX-8998の遊離塩基は、構造式:
【0029】
【化1】
を有する、(R)-2-(4-イソプロピルフェニル)-N-(1-(5-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ピリジン-2-イル)エチル)アセトアミドとして化学的に記載される。CX-8998は、「Pyridyl Amide T-type Calcium Channel Antagonists」という表題の米国特許第7875636B2号明細書に開示され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。CX-8998の説明およびCX-8998を作製する方法は、例えば上記参照の特許のコラム39における実施例16で見出すことができる。
【0030】
CX-8998は、非臨床的なモデルにおいて振戦、欠神発作および疼痛を用量依存的に軽減することが示されており;例えば、Papapetropoulos et al. Neurology 2018;90 (15 Suppl)を参照し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。CX-8998は、本態性振戦の処置および欠神発作を伴う全身のてんかん性症候群の処置に対する臨床評価が行われている(例えば、NCT03101241およびNCT03406702を参照)。
【0031】
CX-8998は、塩の形態、例えばCX-8998塩酸塩であり得る。CX-8998塩酸塩は、オフホワイト色の結晶性粉末であり、その無水物は0.1%wt/wt%の水を含有する。CX-8998塩酸塩の分子式は、416.875g/molの分子量であるC20H24F3N2O2Clである。一部の実施形態では、CX-8998は、塩基の形態(例えばCX-8998遊離塩基)である。一部の実施形態では、CX-8998は、塩の形態(例えばCX-8998塩酸塩)である。一部の実施形態では、CX-8998は、多形体の形態で、またはCX-8998の構造異性体の形態(例えばCX-8998互変異性体)で重水素化される。
【0032】
即時放出成分および制御放出成分を含む経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩は、「Treating Essential Tremor Using (R)-2-(4-Isopropylphenyl)-N-(1-(5-(2,2,2-Trifluoroethoxy)Pyridine-2-yl)Ethyl)Acetamide」という表題の米国特許出願第17/282,730号明細書に開示され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。経口剤形の説明および経口剤形を作製する方法は、例えば163頁10~11行目、実施例26~29、31および33において調節放出のプロトタイプ製剤2で見出すことができ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
方法
それを必要とする個体において運動障害を処置する方法であって、個体に経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法は、本明細書に提供される。処置を達成するために、CX-8998の増加する量(例えばCX-8998の1つまたは複数の用量)は、滴定期間(例えば1週間、2週間、3週間、1か月間、1.5か月間、2か月間など)、個体に与えられ得る。滴定期間に増加する量のCX-8998を個体に投与することにより、処置で、有害事象(例えば、浮動性めまい、頭痛、多幸症、失神など)の重症度、頻度、および/または期間の低減を達成し得る。CX-8998(例えばCX-8998遊離塩基)の最適用量(例えば10、15、20、25、30、35、40、45、50mgなど)は、滴定期間の完了により達成し得る。最適用量は、1つまたは複数の要因、例えば運動障害の重症度、有害事象の重症度、有害事象の頻度、有害事象の期間などに基づいて決定することができる。加えて、処置は、投与される最後の用量(例えば滴定期間に投与される最後の用量)に続く一定期間(例えば1~4週間、2か月間、3か月間、6か月間、または1年以上)、CX-8998(例えば最適用量)の投与を維持することを含み得る。
【0034】
滴定期間
一部の実施形態では、処置は、滴定期間にわたって、1つまたは複数の用量(例えば第1の用量、第2の用量、第3の用量、第4の用量、第5の用量など)の経口剤形のCX-8998または薬学的に許容されるその塩を個体に投与することを含む。滴定期間は、1つまたは複数の投与期間(例えば、第1の投与期間、第2の投与期間、第3の投与期間、第4の投与期間、第5の投与期間など)を含み得る。1つまたは複数の用量は、1つまたは複数の投与期間に1日1回(QD)、個体に経口投与され得る。例えば、第1の用量は、第1の投与期間の各日に1日1回、個体に経口投与され得る。第2の用量は、第2の投与期間の各日に1日1回、個体に経口投与され得る。第3の用量は、第3の投与期間の各日に1日1回、個体に経口投与され得る。第4の用量は、第4の投与期間の各日に1日1回、個体に経口投与され得る。第5の用量は、第5の投与期間の各日に1日1回、個体に経口投与され得る。
【0035】
一部の実施形態では、1つまたは複数の用量は、CX-8998の増加する量である(例えば、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量より多い)。例えば、第1の用量は、少なくとも2mg(例えば2、3、4、5、6、7、8mgなど)のCX-8998を含み得る。第2の用量は、少なくとも3mg(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16mgなど)のCX-8998を含み得る。第3の用量は、少なくとも4mg(例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、28、30、32、35mgなど)のCX-8998を含み得る。第4の用量は、少なくとも5mg(例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、28、30、32、35、40、45、50mgなど)のCX-8998を含み得る。第5の用量は、少なくとも6mg(例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、25、28、30、32、35、40、45、50、55、60mgなど)のCX-8998を含み得る。
【0036】
一部の実施形態では、その後の用量(例えば第2、第3、第4または第5の用量)でのCX-8998の量は、事前の用量(例えば第1、第2、第3または第4の用量)のいずれか1つでのCX-8998の量より少なくとも2mg(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mgなど)多い。一部の実施形態では、その後の用量(例えば第2の用量)でのCX-8998の量は、事前の用量(例えば第1の用量)のいずれか1つでのCX-8998の量より5mg多い。一部の実施形態では、その後の用量(例えば第3または第4の用量)でのCX-8998の量は、事前の用量(例えば第2または第3の用量)のいずれか1つでのCX-8998の量より10mg多い。
【0037】
一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量より少なくとも20%(例えば、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100%)多い。一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量より50%多い。例えば、その後の用量は、事前の用量のいずれか1つが10mgである場合、15mgであり得;その後の用量は、事前の用量のいずれか1つが20mgである場合、30mgであり得る。
【0038】
一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量の少なくとも1.5倍(例えば、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6倍など)である。一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量の2倍である。例えば、その後の用量は、事前の用量のいずれか1つが10mgである場合、20mgであり得る。一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量の3倍である。例えば、その後の用量は、事前の用量のいずれか1つが10mgである場合、30mgであり得る。一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量の4倍である。例えば、その後の用量は、事前の用量のいずれか1つが5mgである場合、20mgであり得る。一部の実施形態では、その後の用量でのCX-8998の量は、事前の用量のいずれか1つでのCX-8998の量の6倍である。例えば、その後の用量は、事前の用量のいずれか1つが5mgである場合、30mgであり得る。
【0039】
一部の実施形態では、1つまたは複数の用量の各々は、CX-8998の1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個など)の単位用量を含む。一部の実施形態では、単位用量は、少なくとも約2mg(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mgなど)のCX-8998を含む。一部の実施形態では、第1の用量は、少なくとも1つの単位用量のCX-8998を含有する。一部の実施形態では、第2の用量は、少なくとも2個(例えば2、3、4、5個など)の単位用量のCX-8998を含有する。一部の実施形態では、第3の用量は、少なくとも3個(例えば3、4、5、6、7個など)の単位用量のCX-8998を含有する。一部の実施形態では、第4の用量は、少なくとも4個(例えば、4、5、6、7、8個など)の単位用量のCX-8998を含有する。一部の実施形態では、第5の用量は、少なくとも5個(例えば5、6、7、8、9個など)の単位用量のCX-8998を含有する。
【0040】
一部の実施形態では、1つまたは複数の単位用量の各々でのCX-8998の量は、同じであり得る、または異なり得る。例えば、第2の用量(または第3、第4もしくは第5の用量)の約20mgのCX-8998は、4つの5mgの単位用量(4×5mg)、または1つの10mgの単位用量および2つの5mgの単位用量(1×10mg+2×5mg)、または1つの5mgの単位用量および1つの15mgの単位用量(1×5mg+1×15mg)を含み得る。一部の実施形態では、第2の用量(または第3、第4もしくは第5の用量)は2つ以上の単位用量を含み、2つ以上の単位用量は同じ量のCX-8998を含む。一部の実施形態では、第2の用量(または第3、第4もしくは第5の用量)は2つ以上の単位用量を含み、2つ以上の単位用量は異なる量のCX-8998を含む。
【0041】
一部の実施形態では、1つまたは複数の投与期間は連続して開始される。例えば、第2の投与期間は、第1の投与期間で投与される最後の用量に続いて開始され得る。任意の第3の投与期間は、第2の投与期間で投与される最後の用量に続いて開始され得る。任意の第4の投与期間は、第3の投与期間で投与される最後の用量に続いて開始され得る。任意の第5の投与期間は、第4の投与期間で投与される最後の用量に続いて開始され得る。
【0042】
一部の実施形態では、各投与期間は、少なくとも3日間(例えば少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間、または少なくとも1週間、2週間もしくは3週間など)を別々に含む。一部の実施形態では、各投与期間は7日間または1週間を含む。一部の実施形態では、滴定期間は、少なくとも2個(例えば、2、3、4、5、6、7、8個など)の投与期間を含む。一部の実施形態では、滴定期間は、少なくとも7日間または1週間(例えば、1.5週間、14日間または2週間、2.5週間、21日間または3週間、3.5週間、28日間または4週間、4.5週間、35日間または5週間、5.5週間、42日間または6週間など)を含む。一部の実施形態では、滴定期間は少なくとも14日間または2週間を含む。一部の実施形態では、滴定期間は少なくとも21日間または3週間を含む。一部の実施形態では、滴定期間は1か月未満、約1か月、または少なくとも1か月であり得る。
【0043】
最適用量は、滴定期間に投与される用量(例えば、第1、第2、第3、第4または第5の用量)のいずれか1つであり得る。一部の実施形態では、最適用量は第1の用量である。一部の実施形態では、最適用量は第2の用量である。一部の実施形態では、最適用量は第3の用量である。一部の実施形態では、最適用量は第4の用量である。一部の実施形態では、最適用量は第5の用量である。一部の実施形態では、最適用量は、滴定期間に与えられる最大用量である。一部の実施形態では、最適用量は、CX-8998の少なくとも5mg(例えば、5、6、7、8、9、10mgなど)である。一部の実施形態では、最適用量は、CX-8998の少なくとも約10mg(例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mgなど)である。一部の実施形態では、最適用量は、少なくとも約20mg(例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30mgなど)である。一部の実施形態では、最適用量は、少なくとも30mg(例えば30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50など)である。一部の実施形態では、最適用量は10mgである。一部の実施形態では、最適用量は20mgである。一部の実施形態では、最適用量は30mgである。
【0044】
一部の実施形態では、処置は、最後の用量に続く期間、CX-8998の投与を維持することを含む。最後の用量は、第1、第2、第3、第4または第5の投与期間で投与される最後の用量であり得る。最後の用量は最適用量であり得る。最後の用量は最大用量であり得る。最後の用量に続く期間は、1~4週間、2か月間、3か月間、6か月間、または1年以上であり得る。
【0045】
運動障害
一部の実施形態では、処置は運動障害の予防に効果的である。例えば、処置は、運動障害に対する素因があり得るが、運動障害の病状または徴候をまだ経験または提示していない個体において運動障害を予防することを含み得る。一部の実施形態では、処置は運動障害を阻害するのに効果的である。例えば、処置は、運動障害の病状または徴候を経験または提示している個体において運動障害を阻害すること(すなわち、病状および/または徴候の発症をさらに停止すること)を含み得る。一部の実施形態では、処置は運動障害を改善するのに効果的である。例えば、処置は、運動障害の病状または徴候を経験または提示している個体において運動障害を改善すること(すなわち、病状および/または徴候を反転すること)、例えば運動障害の重症度を低減すること、または運動障害の1つもしくは複数の症状を軽減もしくは改善することを含み得る。
【0046】
一部の実施形態では、処置は、個体において運動障害の1つまたは複数の症状を軽減または回避するのに効果的である。運動障害の症状の例として、限定されないが、振戦(例えば律動性振戦)、不安定歩行(例えば運動失調)、ジストニア運動、すくみ(動作緩慢)、チック、痙縮、他のジスキネジア運動、痙攣発作、疼痛、知覚問題、精神医学的症状、認知障害、聴覚障害、および気分の変化が挙げられる。一部の実施形態では、処置は、個体において振戦を軽減または回避するのに効果的である。振戦として、本態性振戦、パーキンソン振戦、ジストニア振戦、小脳性振戦、心因性振戦、起立時振戦、および生理的振戦が挙げられるが、限定されない。振戦は、任意の適切な種類の振戦(例えば家族性振戦、動作時振戦、姿勢時振戦、運動性振戦、および/または安静時振戦)であり得る。振戦は、哺乳動物の任意の適切な部分(例えば個体の身体の手、頭部、声、腕、指、脚、顎および他の部分)に影響を及ぼし得る。一部の実施形態では、処置は、個体の上肢において振戦を軽減または回避するのに効果的である。
【0047】
一部の実施形態では、処置は、個体において運動障害(例えば本態性振戦)の重症度および/または運動障害の症状を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント以上軽減するのに効果的である。任意の適切な方法は、運動障害の重症度および/または運動障害の症状を評価するのに使用することができる。一部の実施形態では、運動障害の重症度および/または運動障害の症状は、1つまたは複数の全体的な機能測定を評価することを含み得る。一部の実施形態では、運動障害の重症度および/または運動障害の症状は、1つまたは複数の特異的な機能測定を評価することを含み得る。運動障害の重症度および/または運動障害の症状を評価するのに使用することができる方法の例として、限定されないが、日常生活動作能力の測定(例えばTETRASを使用して測定)、改善の臨床総合所見(例えばCGI-Iを使用して測定)、変化の患者総合所見(例えばPGICを使用して測定)、振戦特異的目標達成度(例えばGASを使用して測定)、生活の質(例えばQUEST振戦薬満足度サブ項目を使用して測定)、ならびにアルキメデス螺旋(例えばTETRAS-PSサブ項目でペンと紙を使用して測定、および/またはiMotorのようなタブレットおよびスタイラスを使用してデジタルで測定)が挙げられる。
【0048】
運動障害の重症度および/または運動障害の症状を評価する方法は、例えばElble et al, 2013 Movement Disorders, 28 1793;Fahn et al. “Clinical rating Scale for Tremor,” p. 225-34 In: Jankovik J and Tolosa E. Parkinson’s Disease and Movement Disorders. 1988 Baltimore-Milnich: Urban & Schwarzenberg;および、Haubenberger et al, 2016 Movement Disorders, 31, No. 9;Fahn et al. Recent Developments in Parkinson’s Disease, Vol 2. Florham Park, NJ. Macmillan Health Care Information 1987, pp 153-163 and 293-304;ウェブサイトaan.com/Guidelines/home/GuidelineDetail/492で利用可能なもののような米国神経学会による本態性振戦に対する処置ガイドライン;およびウェブサイトmovementdisorders.org/MDS-Files1/Resources/PDFs/TreatmentsforMotorSymptomsofPD-2018.pdfで利用可能なもののような米国神経学会によるパーキンソン病に対する処置ガイドラインに記載される。
【0049】
本態性振戦
一部の実施形態では、運動障害は本態性振戦または本態性振戦プラスである。本態性振戦および本態性振戦プラスは、国際パーキンソン病の振戦および運動障害学会での作業部会からの振戦の分類についての運動障害学会(MDS)合意報告書(Bhatia 2018)にしたがって診断され得る。例えば、本態性振戦に対する基準は、以下の1つまたは複数を含み得る:1.両側上肢動作時振戦の孤立性振戦症候群;2.少なくとも3年の期間;3.他の部位(例えば頭部、声または下肢)での振戦の有無;および4.ジストニア、運動失調またはパーキンソニズムのような他の神経学的徴候がないこと。本態性振戦プラスは、ETの特徴、ならびにつぎ足歩行障害、疑わしいジストニアの不自然な姿勢、記憶障害、または追加の症候群の分類および診断を行うのに十分ではない有意性不明の他の軽度の神経学的徴候のような詳細不明の有意性の追加の神経学的徴候を伴う振戦を含み得る。安静時の振戦を伴うETは、本態性振戦プラスとして分類され得る。本態性振戦および本態性振戦プラスに対する除外基準は、以下の1つまたは複数を含み得る:孤立性限局性振戦(例えば声または頭部)、12Hzより高い周波数を伴う起立時振戦、タスクおよび位置特異的振戦、ならびに突然発症および階段的悪化。
【0050】
一部の実施形態では、処置を必要とする個体は、軽度の本態性振戦と診断される。一部の実施形態では、処置を必要とする個体は、中程度から重度の本態性振戦と診断される。一部の実施形態では、処置を必要とする個体は、重度の本態性振戦と診断される。一部の実施形態では、処置を必要とする個体は、以下の1つまたは複数を満たす:TETRAS-ADLで22以上のスコア、TETRAS-PSの項目6および7の合計で5より高いスコア、ならびに機能する能力に対して少なくとも中程度のCGI-S尺度。一部の実施形態では、処置を必要とする個体は、以下の全てを満たす:TETRAS-ADLで22以上のスコア、TETRAS-PSの項目6および7の合計で5より高いスコア、ならびに機能する能力に対して少なくとも中程度のCGI-S尺度。
【0051】
一部の実施形態では、個体はヒトである。一部の実施形態では、個体は若年である。一部の実施形態では、個体は成人である。一部の実施形態では、個体は高齢の成人である。一部の実施形態では、個体は女性である。一部の実施形態では、個体は男性である。
【0052】
有効性評価
一部の実施形態では、処置の有効性は、振戦研究グループ本態性振戦評定評価尺度(TETRAS)により評価され得る。振戦研究グループは、最初、2008年にTETRASで出版された(Elble 2008)。TETRASは、12項目の日常生活動作能力(ADL)サブスケール、および9項目の性能サブスケール(PS)からなる。TETRASは、ペンと紙以外の装置を必要としないETの迅速な臨床評価として開発された。一部の実施形態では、処置の有効性は、振戦研究グループ本態性振戦評定評価尺度-日常生活動作能力(TETRAS-ADL)サブスケールにより評価され得る。TETRAS-ADLサブスケールは、訓練を受けた面接者により行われる日常の機能への振戦の影響の患者が評価した尺度である。TETRAS-ADLは、活動により評価される患者の機能、例えば飲食、包帯および個人衛生、物品の運搬、ならびにより細かい運動技能が、振戦にどのように影響されたかを直接測定する(Elble 2012)。ADLサブスケールは、飲食、包帯および個人衛生、物品の運搬、ならびに細かい運動技能を含む、振戦の評価のために先に開発された尺度(Fahn 1993;Louis 2000;Bain 1993)で評価された項目の多くを含む。TETRAS-ADLの各項目は、0~4の尺度で評価され、0は正常な活動を表し、4は重篤な異常を表す。個々のスコアの合計は、全体のスコアを提供し、その範囲は0~48である。TETRAS-ADLは、表面的妥当性を有し、予備的に実証された試験-再試験信頼度を有し、TETRAS-PSと高い関連性がある(Elble 2012;Elble 2016)。T-CALM試験においてCX-8998処置に伴う変化に対する感受性も実証されている。一部の実施形態では、処置は、TETRAS-ADLサブスケールでの改善を達成するのに効果的である。
【0053】
一部の実施形態では、処置の有効性は、変化の臨床総合所見(Clinical Global Impression of Change)(CGI-C)により評価され得る。CGI-Cは、5点リッカート型評定尺度であり、臨床薬治験で有効性を評価するのに広く使用される評価である。CGI-Cは、臨床医が評価するが、機能する患者の能力での変化を特異的に評価し、TETRAS-ADLで表される患者の展望を補足する。訓練を受けた評価者としての研究者は、1(より改善)から5(より悪化)の範囲である5点尺度でのベースラインからの参加者の状態の重症度での任意の変化のその所見を評価する。研究者の評定は、ETによる機能するその能力での参加者の変化に焦点を当てる。一部の実施形態では、処置は、CGI-Cでの改善を達成するのに効果的である。
【0054】
一部の実施形態では、処置の有効性は、振戦研究グループ本態性振戦評定評価尺度-性能サブスケール(TETRAS-PS)により評価され得る。TETRAS-PSは、頭部、顔面、声、四肢および体幹における振戦を定量化する。TETRAS-PSは、処置に伴う変化に対する感受性を実証している臨床評定尺度であり、振戦の感受性を評価する運動障害学会(MDS)の作業部会により奨励されている(Elble 2013)。TETRAS-PSでの各項目は、0.5点の増分を可能にする上肢振戦の採点を含む、0~4の評定尺度で評価される。特異的な振幅範囲(センチメートルで測定)は、振戦評定を定義する。評価者は、最初、振戦の最大振幅を推定し、次いで対応する評定を割り当てる。個々の評定スコアの合計は、全体の性能スコアを提供し、その範囲は0~64である。TETRAS-PSの実施はおよそ10分間かかる。TETRAS-PSは、試験-再試験信頼度および変化に対する感受性の両方を実証しており(Elble 2012;試験CX-8998-CLN2-001[T-CALM])、MDSにより振戦の重症度尺度として「推奨される」評定をもたらした(Elble 2013)。
【0055】
一部の実施形態では、処置の有効性は、TETRAS-PSでの項目6および7の合計により評価され得る。TETRAS-PSの項目6(アルキメデス螺旋を描写)および項目7(手書き)は、性能への上肢の振戦の影響を評価するので、機能的なタスクでの上肢の振戦の影響の客観的測定値を表す。その両方とも、0(正常)から4(重度)の評定尺度で評価される。アルキメデス螺旋は、左右両方の手で試験されるが、手書きは利き手のみで評価される。TETRAS-PS項目6および7の合計は、0~12の範囲のスコアを提供する。アルキメデス螺旋および手書きのタスクは、TETRASを超えて振戦の評定尺度で頻繁に利用される、数十年間、振戦の患者の日常の検査と一体化されており(Bain 1993;Fahn 1993;Louis 2001)、処置に伴う変化に対する感受性を実証している(Calzetti 1982;Haubenberger 2011;Hopfner 2015;Koller 1986;Shill 2004;TolosaおよびLoewenson 1975)。一部の実施形態では、処置は、TETRAS-PSでの項目6および7の合計での改善を達成するのに効果的である。
【0056】
一部の実施形態では、処置の有効性は、本態性振戦質問票(QUEST)での生活の質により評価され得る。本態性振戦質問票(QUEST)での生活の質は、健康に関連する生活の質でのETの影響を特異的に評価するために開発された(Troster 2005)。QUESTは、5つのサブスケール(身体的、心理社会的、コミュニケーション、趣味/レジャー、および作業/財務)ならびに総合スコア、ならびに振戦制御および薬の副作用を伴う性的機能および満足度に関する追加の3項目を含む30項目の質問票である。初期レポートは、その信頼性および妥当性の予備的な支持を提供する。内部整合性は、サブスケールおよび総合スコアの4つに対して非常に良好から優秀であり、作業/財務サブスケールに対して中程度に高度であった(Troster 2005)。QUESTはまた、ETに対する深部脳刺激を伴う変化に対する感受性も実証している(Sandvik 2012)。
【0057】
一部の実施形態では、処置の有効性は、変化の患者総合所見(PGI-C)により評価され得る。PGI-Cは、5点リッカート型評定尺度であり、臨床薬治験で有効性を評価するのに広く使用される評価である。参加者は、1(より改善)から5(より悪化)の範囲である5点尺度でのベースラインからのその状態での変化を評価する。参加者の評定は、ETによる機能するその能力での変化に焦点を当てる。
【0058】
一部の実施形態では、処置の有効性は、重症度の臨床総合所見(Clinical Global Impression of Severity)(CGI-S)により評価され得る。重症度の臨床総合所見(CGI-S)は、参加者のETの重症度を評価するために医療責任者により評価される。重症度評価は、ETによる機能する参加者の能力を評価する。CGI-Cは、5点リッカート型評定尺度であり、疾病の重症度を評価するのに広く使用される臨床精神薬理学的治験での評価である。研究者が完了したこの評価の応答は、1(制限なし)から5(重度)の範囲である。研究者は、参加者の現在の能力の重症度の研究者の所見を評価する。
【0059】
一部の実施形態では、処置の有効性は、36項目短縮型健康調査バージョン2(36-item Short Form Health Survey Version 2)により評価することができる。36項目短縮型健康調査バージョン2(SF-36v2)は、36個の質問を含む多目的の短縮版健康調査である。機能健康および幸福感スコア、ならびに精神測定ベースの身体的および精神的健康の概要の測定ならびに嗜好ベースの健康有用性の指数の8尺度のプロファイルを得る(HaysおよびStewart 1992;WareおよびSherbourne 1992)。
【0060】
一部の実施形態では、処置の有効性は、本態性振戦機能障害評価(Essential Tremor Embarrassment Assessment)により評価され得る。本態性振戦機能障害評価(ETEA)は、振戦に関連する14項目の評価する機能障害を含有する医療提供者または研究者により投与される患者が評価した質問票である。参加者は、14項目の各々に対する簡単な応答(不一致または一致)を提供し、その合計では、初期スコア(スコアA、範囲=0~14)が得られる。次いで、参加者は、不一致(0)から強く一致(5)の範囲である0~5点リッカート型尺度に対する各質問へのより微妙な応答を提供する。微妙な応答の合計では、第2のスコア(スコアB、範囲=0~70)が得られる。簡単な応答および微妙な応答の両方のより高いスコアはより大きな機能障害を示す。ETEAは、振戦の専門家および患者の両方からの入力に基づいて作成されており、その後、高い内部整合性が実証された場合、ETの患者75名を確認した(Traub 2010)。ETEAはまた、ETの患者における処置を伴う変化に対する感受性も実証している(Kreisler 2019)。
【0061】
有害事象
一部の実施形態では、処置は、1つまたは複数の有害事象の重症度、頻度および/または期間を軽減するのに効果的である。有害事象(AE)は、処置を要する(treatment-emergent)有害事象であり得るまたはあり得ない。一部の実施形態では、AEは、試験介入に関連していると考えられるか否かに関わらず、試験介入の使用に時間的に関連する臨床試験の参加者において任意の有害な医学的発生である。したがって、AEは、試験介入の使用に時間的に関連する任意の好ましくなく予想外の徴候(異常な検査所見を含む)、症状、または疾患(新しいもしくは悪化した)であり得る。AEは以下を含み得る:1)研究者の医学的で科学的な判断において臨床的に有意と考えられた(すなわち、基礎疾患の進行と関係せずに)、ベースラインから悪化しているものを含む、任意の異常な臨床検査結果(血液学、臨床化学もしくは検尿)または他の安全性評価(例えばECG、放射線スキャン、バイタルサインの測定);2)状態の頻度および/または強度の増大のいずれかを含む、慢性または断続性の先行状態の増悪;3)試験の開始前に存在している可能性がある場合でも、試験介入の投与後に検出または診断される新しい状態;4)薬物-薬物相互作用の疑いのある徴候、症状または臨床的後遺症;5)試験介入または併用薬のいずれかの過剰用量の疑いのある徴候、症状または臨床的後遺症。過剰用量それ自体は、自殺/自傷の意志で行われた可能性のある意図的な過剰用量でない限り、AE/SAEとして報告されない。このような過剰用量は、後遺症に関わらず報告しなければならない。「有効性の欠如」または「期待された薬理作用の失敗」それ自体は、AEまたはSAEとして報告されない。
【0062】
一部の実施形態では、1つまたは複数の有害事象は処置を要する有害事象である。全ての処置を要する有害事象は、器官別大分類および基本語を含む国際医薬用語集(MedDRA)バージョン20に符号化され、処置群による頻度の表に提示されている。有害事象は、最大重症度、薬物関連有害事象、重大な有害事象および試験中止をもたらす有害事象で特徴付けられる。有害事象として、浮動性めまい、頭痛、多幸症、注意力障害、錯感覚、幻覚、不眠症、口内乾燥、味覚障害(dysguesia)、感覚鈍麻、傾眠、嗜眠、睡眠障害、悪心、嘔吐、静座不能、意識レベルの低下、失神、記憶障害、不安、落ち着きのなさ、疲労、易刺激性、便秘、耳鳴、食欲不振、情緒障害、性的不能症、複視、眼振、傾眠状態、麻疹様皮疹、顆粒球減少症、無顆粒球症、赤血球形成不全、形成不全、または任意のその組合せが挙げられるが、限定されない。
【0063】
一部の実施形態では、1つまたは複数の有害事象は、神経系障害(例えば浮動性めまい、頭痛、注意力障害、味覚障害、錯感覚、傾眠、感覚鈍麻など)、精神障害(例えば多幸気分、不眠症、異常な夢、幻覚など)、胃腸障害(例えば口内乾燥、悪心、嘔吐など)、感染症および寄生虫症(例えば尿路感染症)、または耳および迷路器官の障害(例えば耳鳴)である。
【0064】
一部の実施形態では、処置は、1つまたは複数の重度な有害事象の発生を回避するのに効果的である。有害事象の強度は、軽度(例えば無症候性または軽度の症状;臨床または診断観察のみ)、中程度(例えば最小限、局所的または非侵襲的介入を示す;年齢相応の手段的日常生活動作能力[ADL]の制限)、重度(例えば重度、または医学的に著しいが、直ちに致命的ではない;入院または入院の延長を示す;不能状態;セルフケアADLの制限)、致命的(例えば致命的な影響;緊急介入を示す)、および致死的(例えば有害事象関連死)を含み得る。
【0065】
一部の実施形態では、個体は、第1の投与期間の終了時に重度の有害事象を経験していない。一部の実施形態では、個体は、第2の投与期間の終了時に重度の有害事象を経験していない。一部の実施形態では、個体は、第3の投与期間の終了時に重度の有害事象を経験していない。一部の実施形態では、個体は、第4の投与期間の終了時に重度の有害事象を経験していない。一部の実施形態では、個体は、第5の投与期間の終了時に重度の有害事象を経験していない。
【0066】
投与
一部の実施形態では、経口剤形は、1日1回(QD)、個体に投与される。1日1回の投与は、同時に(例えば1分以内に)または連続して(例えば1分以上5分以内で)1つまたは複数の単位用量を投与することを含み得る。例えば、第5の用量が6つの単位用量を含む場合、各単位用量は5mgのCX-8998であるが、第5の用量の1日1回投与は、各単位用量が別々に投与されるか否かに関わらず、5分以内に6つの単位用量の全てを投与することを含む。
【0067】
一部の実施形態では、経口剤形は、絶食状態で個体に投与される。例えば、個体は、投与前の少なくとも4時間(例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12時間)、絶食し得る。一部の実施形態では、経口剤形は、食事なしで個体に投与される。一部の実施形態では、経口剤形は、食事と共に個体に投与される。一部の実施形態では、経口剤形は、朝(例えば、およそ午前6時からおよそ正午までの任意の時間)、個体に投与される。一部の実施形態では、経口剤形は、起床後の約4時間以内(例えば約4、3、2、または1時間以内)、個体に投与される。
【0068】
他の投与経路もまた使用されるが、これは、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内または胸膜内)および経皮の投与経路を含むが、限定されない。
【実施例】
【0069】
[実施例1]
中程度から重度の本態性振戦を伴う成人の処置においてCX-8998の安全性および有効性を評価する2b相試験
本試験は、国際パーキンソン病の振戦およびMDSでの作業部会からの振戦の分類についての運動障害学会(MDS)合意報告書により定義される、本態性振戦の成人参加者の処置に対して、CX-8998の安全性および有効性の12週間の二重盲検、プラセボ対照、無作為化、平行群、多施設試験である。
【0070】
各参加者に対する試験の全期間はおよそ21週間である。スクリーニング期間、最大7週間の期間にわたるが、全ての参加者は、適格性に対して評価し、任意に禁止された薬をウォッシュアウトする。参加者は、再スクリーニングが医療監視者により承認された場合は一度再スクリーニングすることは可能である。本試験に対して適格である参加者は、1:1:1:1の比で無作為化して、12週間の二重盲検処置期間、10、20、または30mgの1日1回用量のCX-8998またはプラセボを受けた。無作為化は、ベースライン訪問で評価したTETRAS-ADLスコア(27以下および27超)で層別化する。CX-8998は、12週間、空腹の朝に1日1回経口投与される。
【0071】
投薬は、以下の通り滴定する:10mg/日の用量に無作為化した参加者は、最初1日目から7日目に5mg/日を投与し、8日目に10mg/日の投与を開始する;20mg/日の用量に無作為化した参加者は、最初1日目から7日目に5mg/日を投与し、8日目から14日目に10mg/日を投与し、15日目に20mg/日の投与を開始する;30mg/日の用量に無作為化した参加者は、最初1日目から7日目に5mg/日を投与し、8日目から14日目に10mg/日を投与し、15日目から21日目に20mg/日を投与し、22日目に30mg/日の投与を開始する。一旦、参加者がこれらの所定の固定用量に達すると、計画された12週間の処置期間の残りの期間、その用量を継続する。用量調節は許可されない。CX-8998のこれらの所定の固定用量に耐えることができない参加者は、本試験を中断する。
【0072】
標的とする患者集団は、中程度から重度のETの参加者である。本試験の本態性振戦の重症度レベルは、患者が評価した(振戦研究グループ本態性振戦評定評価尺度[TETRAS]-日常生活動作能力[TETRAS-ADL])、臨床医が評価した(重症度の臨床総合所見[CGI-S])、および能力障害の客観的測定値(TETRAS-性能サブスケール[PS]項目6および7)での適格性基準により定義される。
【0073】
本試験に対する主要エンドポイントは、訓練を受けた面接者により行われる日常の機能への振戦の影響の患者が評価した尺度である、TETRAS-ADLサブスケールである。TETRAS-ADLは、活動により評価される患者の機能、例えば飲食、包帯および個人衛生、物品の運搬、ならびに細かい運動技能が、振戦にどのように影響されたかを直接測定する。重要な副次的なエンドポイントは、変化の臨床総合所見(CGI-C)、ならびにTETRAS-PSでの項目6および7の合計である。CGI-Cは、機能する患者の能力での変化を特異的に評価し、TETRAS-ADLで表される患者の展望を十分に補足する。
【0074】
試験集団
包含基準は、以下を含む:1.参加者は、インフォームドコンセントを記入する際、18~80歳(両端を含む)でなければならない;2.国際パーキンソン病の振戦および運動障害学会での作業部会からの振戦の分類についてのMDS合意報告書(Bhatia 2018)によるET(ETプラスを含む)で診断され、登録判定委員会(Enrollment Adjudication Committee)(EAC;10.1.5節参照)で中心的に検討された参加者;3.参加者は、以下の全てで決定されるスクリーニングおよびベースラインの両方での訪問で振戦に関連する中程度から重度の能力障害を有する:a.TETRAS-ADLでの22以上のスコア;b.TETRAS-PSで項目6および7の合計での5より高いスコア(注:TETRAS-PSは現場で盲検での訓練を受けた評価者により評価される);ならびにc.機能する患者の能力に対して少なくとも中程度のCGI-S評定。スクリーニング訪問時に振戦評価に影響を及ぼし得るあらゆる禁止薬(例えば振戦の処置用の薬または振戦を生じさせる可能性がある薬)を摂取している参加者は、第2のスクリーニング訪問(スクリーニング訪問2)のために診療所を再訪しなければならない。これらの参加者に対して、適格性を決定するのに使用されるスクリーニングTETRAS-ADL、TETRAS-PS項目6および7、ならびにCGI-S評価を、参加者が薬をウォッシュアウトする後にスクリーニング訪問2で行う。
【0075】
4.性別および避妊/バリア要件:参加者は男性または女性であり得る。男性参加者は、試験介入期間および試験介入の最後の用量の後の少なくとも30日間、以下に同意する場合に参加するのに適格である:a.精子の提供を控える、ならびにb.以下の2つの要件のいずれか1つを満たす:i)彼らの好ましく通常の生活スタイルとしての異性間性交から禁欲し(長期で永続的にわたる禁欲)、禁欲を維持することに同意する;または、ii)以下の詳述する避妊/バリアを使用することに同意しなければならない:現在妊娠していない妊娠可能な女性(WOCBP)と性交を行う場合、1年当たり1%未満の失敗率を伴う追加の効果が高い避妊法の女性パートナーの使用と共に男性コンドームを使用することに同意する;別の人への射精の移動を可能にするあらゆる行動を行う場合、男性コンドームを使用することに同意する。女性参加者は、妊娠または授乳中ではない場合に参加するのに適格であり、以下の条件の1つが当てはまる:妊娠不可能な女性(WONCBP)である;または、WOCBPであり、試験介入期間および試験介入の最後の用量の後の少なくとも30日間、1%未満の失敗率を伴う追加の効果が高い避妊法を使用する。研究者は、試験介入の第1の用量と関連して避妊法の失敗の可能性(例えば不履行、最近開始)を評価しなければならない。WOCBPは、試験介入の第1の用量の前のスクリーニングおよびベースライン訪問で、感受性の高い妊娠検査(局所調節で必要とされる尿または血清)で陰性でなければならない。尿検査が陰性として確認できない場合(例えば曖昧な結果)、血清妊娠検査が必要である。このような場合、参加者は、血清妊娠検査が陽性である場合、参加から排除しなければならない。研究者は、病歴、月経暦および最近の性的行動の再検討を責任を持って実行して、初期に未検出の妊娠の女性を包含するリスクを低減する。5.参加者は記入済みインフォームドコンセントを提出できなければならない;ならびに、6.参加者は試験デザインスケジュールおよび他の要件に準拠する意志があり、準拠できなければならない。
【0076】
除外基準は、以下を含む:医学的状態:1.妊娠、授乳もしくは泌乳している、または試験期間もしくは試験完了の90日以内に妊娠する予定がある女性参加者;2.パーキンソン病もしくは非定型型パーキンソニズムの特徴;心因性振戦;ジストニア、ミオクローヌスもしくは運動失調の臨床的に有意である症状もしくは徴候;ET以外の小脳性疾患;外傷性脳損傷;アルコール乱用もしくは離脱譫妄;水銀中毒;甲状腺機能亢進症;褐色細胞腫;ETの発症前の3か月以内の頭部外傷もしくは脳血管疾患;多発性硬化症;研究者の意見では臨床的に有意である多発ニューロパチー、または;脆弱X症候群の家族歴もしくは診断を含むが限定されない、研究者または中央の審査担当者(適用可能な場合)の意見で参加者の振戦を引き起こすまたは説明することができる、他の医学的または神経学的状態の病歴または現在の証拠が知られている;3.研究者の意見では転倒のリスクがあると考えられる;4.モントリオール認知評価(MoCA;スコア<23)により定義される重度の認知障害のスクリーニングの証拠を有する、または研究者の意見では、試験手順もしくはインフォームドコンセントを提供する能力の完了を妨げる認知障害を有する;5.任意の急性的に不安定な医学的状態、基底細胞癌以外の悪性病変もしくは切除した非侵襲性皮膚有棘細胞癌の病歴もしくは存在、または参加者の安全性に影響を及ぼし得るもしくは試験の有効性、安全性もしくはPK評価に干渉し得る手術歴;または研究者の判断ごとに治験を完了する能力;6.胃腸疾患(以前の肥満バイパス手術を含む)、肝疾患(正常値の上限[ULN]の2倍以上のアラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]もしくはアスパルテートアミノトランスフェラーゼ[AST]を含む)、または腎疾患(総ビリルビン≧1.5ULN)、または研究者の意見では薬物の吸収、分布、代謝もしくは排出に干渉し得る任意の他の状態の病歴または存在;7.以下を含むが、限定されない、スクリーニング時の著しい心血管疾患の存在:過去1年以内の心筋梗塞;不安定狭心症;症状性うっ血性心不全(米国心臓病学会/アメリカ心臓協会ステージCもしくはD);過去1年以内の血管再生手順;自動化埋め込み型電気細動除去器もしくは薬療法を必要とする心室性不整脈;制御されていない高血圧症、もしくは収縮期血圧≧155mmHgもしくは拡張期血圧≧95mmHg(ベースラインでの三重評価の平均に基づく);スクリーニングもしくはベースラインでの三重評価の平均に基づく、研究者の評価ごとの臨床的に有意であるECG異常、もしくは男性では450ミリ秒超、女性では470ミリ秒超のフリデリシア補正QT間隔(QTcF);または、研究者の意見では試験において参加者の安全が脅かされ得る心血管疾患もしくは任意の著しい心臓血管状態の任意の病歴;8.双極性および関連障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害、または精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)基準にしたがう他の精神障害の病歴または存在;9.C-SSRSでの項目4または5に対して陽性応答により示される具体的自殺念慮の存在による病歴(過去24か月以内)、または自殺企図の任意の病歴から決定される現在の自殺リスク;DSM-5基準にしたがう現在または過去(1年以内)の大うつ病エピソード。安定して処置しているうつ病の参加者は、研究者または処置する医療従事者の判断ごとに許可され、抗うつ剤の処置は、スクリーニング前の少なくとも6か月間安定させなければならず、試験期間は安定を維持する;10.DSM-5基準にしたがう物質使用障害(アルコールを含む)の病歴(スクリーニング時、過去2年以内)もしくは存在、既知の薬物依存、またはアルコールもしくは物質乱用に関連する傷害のための処置の模索。ニコチン使用障害は振戦に影響を及ぼす場合に排除される。
【0077】
除外基準はまた、以前の療法/併用療法を含む:11.以前の磁気共鳴(MR)で誘導する焦点式超音波、外科的介入(例えば深部脳刺激、視床切除術、ガンマナイフ視床切除術)、または処置期間に振戦の処置用のデバイスの使用を控えることができないこと;12.スクリーニング前の6か月以内、または試験中の任意の時間での使用を計画している、ボツリヌス毒素注射;13.スクリーニング(適用可能である場合スクリーニング訪問1もしくは2)での振戦の評価の前の2週間以内もしくは5半減期(どちらか長い方)に、または試験中の任意の時間での使用を計画している、振戦の評価に影響を及ぼし得る任意の薬で、以下を含む薬での処置:a.これらの薬が非振戦適用で利用されていない限り(例えば高血圧症に処方されるプロプラノロールは可能)、振戦の処置用の薬。カンナビノイド(CBDを含む)の使用は、スクリーニング時または試験期間にわたって娯楽としても医学的にも認められない(注:スクリーニング時のプリミドンの場合、処置はスクリーニング訪問2の前に少なくとも4週間中止しなければならない);b.振戦を生じ得るまたは振戦の評価に干渉し得る薬。注:睡眠または不安を改善する睡眠薬または抗不安薬であるベンゾジアゼピンの定期的な使用は、試験全体を通して定期的に安定した用量で使用し続ける限り認められる;14.ベースラインの前に少なくとも4週間中止することができない、または試験中の任意の時間での使用を計画している、CYP3A4またはCYP2C9の誘導剤であることが公知の処方もしくは非処方薬または他の製品の使用;15.ベースラインの前の2週間以内または5半減期(どちらか長い方)に中止することができない、または試験中の任意の時間での使用を計画している、CYP3A4またはCYP2C9の強いまたは中程度の阻害剤として公知の処方もしくは非処方薬または他の製品(例えばグレープフルーツ、グレープフルーツジュースもしくはセビリアオレンジ)の使用;16.ベースラインの前の2週間中止することができない、または試験中の任意の時間での使用を計画している、プロトンポンプ阻害剤およびヒスタミン-2受容体アンタゴニストの使用(制酸剤の不定期な使用は許されるが、制酸剤は試験介入から少なくとも4時間離して摂取しなければならない);17.振戦を生じさせ得る、または試験訪問日での振戦の評価に干渉し得る薬/物質、例えば、限定されないが、刺激剤、うっ血除去剤、ベータ-アゴニスト気管支拡張剤、およびアルコールの使用を控えることができないこと。カフェインを消費するまたはタバコを使用する参加者は、診療日には彼らの通常の量のカフェインまたはタバコを摂取しなければならない。
【0078】
除外基準は以下も含む:18.ベースライン訪問の前の30日もしくは5半減期(どちらか長い方)に治験薬を摂取、または試験中に治験薬の使用を計画(試験介入以外);19.以前のCX-8998(以前はMK-8998として公知)の臨床試験での任意の試験介入を受けた;20.ベースラインでの三重起立評価の平均で観察される、または参加者は起立性低血圧の症状であったという研究者の意見で、血圧の低下(すなわち、収縮期血圧≧20mmHgもしくは拡張期血圧≧10mmHgの低下)、または心拍数の上昇(すなわち、1分当たり30拍超);21.研究者により臨床的に有意であると考えられる臨床検査範囲外のスクリーニング時の臨床検査値(臨床化学、血液学および検尿)(注:スクリーニング臨床検査は1回繰り返すことができる);22.許可された処方薬の使用(例えば除外基準13bに概説するベンゾジアゼピン)と説明しない限り、乱用薬物(例えばフェンシクリジン[PCP]、コカイン、カンナビノイド、アヘン剤、バルビツレート、アンフェタミン、メサドン、またはMDMA[エクスタシー])に対するスクリーニングで尿中薬物スクリーニング陽性。陽性結果の解釈が曖昧である、または酌量できる状況が存在する場合、研究者および医療監視者が承認する場合には繰返し尿中薬物スクリーニングを行うことができる。23.1日当たり3単位超のアルコールの定期的な使用(除外基準17も参照)。アルコールの単位は、12液量オンス(350mL)グラスのビール(5体積%のアルコール)、5液量オンス(150mL)グラスのワイン(12体積%のアルコール)、または1.5液量オンス(44mL)グラスの蒸留酒(40体積%のアルコール)として定義される;24.400mg/日より多いカフェインまたは1日に4カップより多いコーヒーの定期的な消費;25.試験介入製剤またはプラセボ中のあらゆる成分に対するアレルギーまたは感受性;26.研究者または医療監視者が本試験に好適ではない参加者と判断する任意の他の状態および/または状況。
【0079】
[実施例2]
CX-8998の調節放出した形態の製剤
一実験では、CX-8998塩酸塩を含有する製剤は、表1に示される通りである。重量パーセント(%w/w)は10mgの単位用量に基づいている。CX-8998の調節放出(MR)製剤は、即時放出(IR)成分および遅延放出成分(DR)を有する。CX-8998の遅延放出は、即時放出コアでのpH=6(MR1もしくはMR1’)またはpH=7(MR2)で溶解することを標的とするpH感受性のコーティングの塗布により達成される。
【0080】
【0081】
他の実施形態
本出願は、様々な発行された特許、公開特許出願、学術論文および他の出版物を参照し、その各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
前述は、本開示のある特定の非限定の実施形態について記載している。当業者は、この記載に対する様々な変更および修飾が、以下の特許請求の範囲に定義されるように、本開示の精神または範囲から逸脱せずに作製され得ることを理解する。
【国際調査報告】