(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(54)【発明の名称】2つのTRAIL三量体を含むスーパーTRAIL分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240501BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240501BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240501BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240501BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240501BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240501BHJP
C07K 14/765 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240501BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240501BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61K38/17
A61P35/00
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C07K16/00
C07K14/765
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573077
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2022095472
(87)【国際公開番号】W WO2022247923
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/096498
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523444589
【氏名又は名称】ベイジン アンシンフエイド バイオテック. シーオー., エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】シングオ チャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ホン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA18
4C084CA53
4C084DA25
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA53
4H045BA55
4H045BA57
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA70
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒトTRAIL細胞外ドメインと、柔軟なリンカーと、N末端からC末端までの第2ヒトTRAIL細胞外ドメインとを含む融合タンパク質を示す。「スーパーTRAIL」と呼ばれるこの融合タンパク質は、溶液中に2つのTRAIL三量体を含む六量体を形成し、この融合タンパク質は、野生型ヒトTRAILと比較して、癌細胞においてアポトーシスを誘導する生物学的活性が大幅に向上している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ヒトTRAIL細胞外ドメインと、柔軟なリンカーと、N末端からC末端までの第2ヒトTRAIL細胞外ドメインとを含む融合ポリペプチドであって、前記融合ポリペプチドが、溶液中に2つのTRAIL三量体を含む六量体を形成する、融合ポリペプチド。
【請求項2】
前記融合ポリペプチドは、野生型ヒトTRAILと比較して、癌細胞においてアポトーシスを誘導する生物学的活性が大幅に向上している、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
前記融合ポリペプチドが、前記野生型ヒトTRAILと比較して改善されたインビボ血漿半減期を示す、請求項1又は2に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
前記第1ヒトTRAIL細胞外ドメイン及び前記第2ヒトTRAIL細胞外ドメインが、TRAIL残基114~281、TRAIL残基118~281、TRAIL残基119~281、TRAIL残基120~281、及びTRAIL残基122~281からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記第1TRAIL細胞外ドメイン及び前記第2TRAIL細胞外ドメインが同じであるか、又は異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記融合ポリペプチドが、配列番号2~11から選択されるアミノ酸配列を含むか、又はそれと少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
前記融合ポリペプチドが、PEG化、脂質化、又はグリコシル化によって修飾されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを含む融合タンパク質。
【請求項9】
前記融合タンパク質がIgG Fc又はHSA(ヒト血清アルブミン)を含む、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、又は請求項8若しくは9に記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド又は請求項8若しくは9に記載の融合タンパク質と、生理学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項12】
柔軟なリンカーを介して2つのTNFスーパーファミリーメンバー分子を連結して、TNFファミリーメンバーの2つの三量体の六量体を構成することを含む、より生物学的に強力なTNF(腫瘍壊死因子)スーパーファミリーメンバーを生成する方法。
【請求項13】
前記TNFファミリーメンバーが、TNF、4-1BBL、Fasリガンド、OX40L、CD40L、CD256、CD257、CD258及びGITRLからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌治療用の薬剤の製造における、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド又は請求項8若しくは9に記載の融合タンパク質の応用。
【請求項15】
前記癌が多発性骨髄腫又は肺癌である、請求項14に記載の応用。
【請求項16】
癌を治療する方法であって、治療を必要とする被験者に、治療有効量の請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、請求項8若しくは9に記載の融合タンパク質、又は請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項17】
前記癌が多発性骨髄腫又は肺癌である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
癌の治療に使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、請求項8若しくは9に記載の融合タンパク質、又は請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記癌が多発性骨髄腫又は肺癌である、請求項18に記載の使用するための融合ポリペプチド、融合タンパク質、又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月27日に出願されたPCT国際出願PCT/CN2021/096498の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、癌細胞においてアポトーシスを誘導する強力な生物学的活性を示す組換え融合タンパク質を開示する。この融合タンパク質は、複数の癌を治療するための生物学的製剤として利用することができる。
【背景技術】
【0003】
TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TNF-related apoptosis inducing ligand、TRAIL)遺伝子は、1995年にWileyらによって最初にクローニングされ、命名された[1]。1996年に同じ遺伝子がクローニングされ、Apo2Lと命名された[2]。ヒトTRAIL遺伝子は、細胞質尾部、膜貫通領域、及びN末端からC末端までの細胞外ドメインを含むタンパク質をコードする。TRAIL細胞外ドメインは、タンパク質分解的切断によって細胞膜から放出されることもある。完全長の膜結合型TRAILと可溶性TRAIL細胞外ドメインは両方とも、安定したホモ三量体を形成し、それらの受容体に結合して生物学的効果を発揮する。多数のインビボ及びインビトロ実験により、TRAILが多くの腫瘍細胞及び形質転換細胞のアポトーシスを選択的に誘導できることが示されている。腫瘍を有する動物に組換えTRAILタンパク質を適用すると、腫瘍細胞の増殖を大幅に阻害し、宿主に明らかな損傷を与えることなく腫瘍を退縮させることさえできる。
【0004】
TRAILは腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)スーパーファミリーに属し、TNF相同性細胞外ドメインを含むII型膜タンパク質であり、溶液中で安定なホモ三量体を形成する。TNFスーパーファミリーメンバーは、免疫応答や炎症だけでなく、増殖、分化、アポトーシス、及び胚形成も含む幅広い細胞機能を調節する。TNFスーパーファミリーには19のメンバーが含まれており、それらはTNF受容体スーパーファミリーメンバーに結合することによって機能する。
【0005】
TRAILは、その受容体TRAIL-R1(DR4)及びTRAIL-R2(DR5)に結合して、TRAILホモ三量体の周囲に3つの受容体をクラスター化し、下流のシグナル伝達を開始することができる。DR5に対する抗体をTRAILと同時投与すると、おそらくTRAIL受容体クラスターが更に架橋されることにより、TRAILの活性が有意に増加することができることが報告されている[3]。更に、DTTの添加によりハイパーオリゴマー化されたTRAILは、インビトロで癌細胞を殺す活性が大幅に向上した[4]。本発明では、ヒトTRAIL細胞外ドメインと、柔軟なリンカーと、N末端からC末端までの第2ヒトTRAIL細胞外ドメインとを含む融合タンパク質が開示される。この融合タンパク質は、野生型ヒトTRAILと比較して、癌細胞におてアポトーシスを誘導する生物学的活性が大幅に向上しているため、この融合タンパク質を「スーパーTRAIL」と名付けた。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、第1ヒトTRAIL細胞外ドメインと、柔軟なリンカーと、N末端からC末端までの第2ヒトTRAIL細胞外ドメインとを含む融合ポリペプチドを提供し、融合ポリペプチドは、溶液中に2つのTRAIL三量体を含む六量体を形成し、融合ポリペプチドは、野生型ヒトTRAILと比較して、癌細胞においてアポトーシスを誘導する生物学的活性が大幅に向上している。
【0007】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、野生型ヒトTRAILと比較して改善されたインビボ血漿半減期を示す。
【0008】
いくつかの実施形態では、ヒトTRAIL細胞外ドメインは、TRAIL残基114~281、TRAIL残基118~281、TRAIL残基119~281、TRAIL残基120~281、又はTRAIL残基122~281から選択され得るが、これらに限定されない。また、第1TRAIL細胞外ドメイン及び第2TRAIL細胞外ドメインは同じであっても異なっていてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは、配列番号2~11から選択されるタンパク質配列を有する。
【0010】
別の態様では、本発明は、上記の融合ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、融合タンパク質には、融合ポリペプチドを含むIgG Fc融合タンパク質及び融合ポリペプチドを含むHSA(human serum albumin、ヒト血清アルブミン)融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
いくつかの実施形態では、融合ポリペプチドは任意の修飾ポリペプチドであってよく、修飾としては、PEG化、脂質化、及びグリコシル化が挙げられるが、これらに限定されない。修飾された融合ポリペプチドは、延長されたインビボ血漿半減期又は低下した免疫原性を示す可能性がある。
【0012】
別の態様では、本開示は、融合ポリペプチドに対して少なくとも90%の配列相同性であるアミノ配列を有するポリペプチドを提供する。
【0013】
別の態様では、本開示は、融合ポリペプチド又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0014】
別の態様では、本開示は、融合ポリペプチド又は融合タンパク質及び生理学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
別の態様では、本開示は、より生物学的に強力なTNF(腫瘍壊死因子)スーパーファミリーメンバーを生成する方法を開示し、この方法は、柔軟なリンカーを介して2つのTNFスーパーファミリーメンバー分子を連結して、TNFファミリーメンバーの2つの三量体の六量体を構成することを含む。TNFファミリーメンバーとしては、TNF、4-1BBL、Fasリガンド、OX40L、CD40L、CD256、CD257、CD258及びGITRLが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
別の態様では、本開示は、癌治療用の薬剤の製造における融合ポリペプチド又は融合タンパク質の応用を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫又は肺癌である。
【0018】
別の態様では、本開示は、癌を治療する方法を提供し、この方法は、治療を必要とする被験者に、治療有効量の融合ポリペプチド、融合タンパク質、又は医薬組成物を投与することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫又は肺癌である。本発明は、柔軟なリンカーによって連結された2つのヒトTRAIL細胞外ドメインを含む「スーパーTRAIL」分子を示す。組換えスーパーTRAILタンパク質は、野生型TRAILと比較して、癌細胞においてアポトーシスを誘導する活性が大幅に向上した。分子量が増加したため、スーパーTRAILタンパク質は、野生型TRAILと比較して、被験者に投与された場合に改善された薬物動態プロファイルを示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】スーパーTRAIL分子の概略図である。A)野生型TRAILホモ三量体。TRAILモノマーは、赤、緑、及び青の楕円で示されている。1つのモノマーのN末端とC末端が標識されている。B)スタッキングモデルを用いて形成された2つの三量体のTRAIL六量体を含むスーパーTRAIL分子。スーパーTRAILモノマーは2つのTRAIL細胞外ドメインを含み、赤、緑、及び青で示されている。このモデルでは、2つのTRAIL三量体は、3つの柔軟なリンカーを介して連結されており、2つの三量体は互いに重なって配置されている。したがって、2つの三量体は逆平行に配置されている。C)サイドバイサイドモデルによって折りたたまれた2つの三量体のTRAIL六量体を含むスーパーTRAIL分子。このモデルでは、2つのTRAIL三量体は1つの柔軟なリンカーを介して連結されており、2つの三量体は並んで配置されている。2つの三量体は平行に配置されている。
【0021】
【
図2】スーパーTRAIL分子は、溶液中で2つのTRAIL三量体の六量体を形成する。A)スーパーTRAIL AX-1611と野生型TRAILのゲル濾過プロファイル。精製したタンパク質を両方とも、ゲル濾過カラムSuperdex200にロードした。タンパク質標準品の分子量を矢印で示す。プロファイルから推定したAX-1611の見かけの分子量は約96kDであった。ゲル濾過クロマトグラフィーは、スーパーTRAIL AX-1611が6つのTRAIL細胞外ドメインを含む3つのモノマーを含むことを示した。縦軸はOD280の測定値を示し、横軸は溶出量(ml)を示す。B)スーパーTRAIL AX-1611のネガティブ染色電子顕微鏡研究。上部のパネルは、ネガティブ染色電子顕微鏡からの生の画像の1つを示す。ピーナッツ様粒子の一部を矢印で示す。下部のパネルは、ソフトウェアRelionを使用したネガティブ染色画像の2D分類からのトップピックを示す。C)スーパーTRAIL AX-1611の3D再構成。ヒトTRAILホモ三量体構造のうちの2つを、Relionによって生成されたAX-1611分子に適合させることができる。この構造では、2つのTRAIL三量体は、サイドバイサイドモデルを介して会合している可能性がある。2つのTRAIL三量体は、構造で明確に示されている単一の柔軟なリンカーによって連結されている。2つの三量体は構造内に平行に配置されている。AX-1611分子は、赤、緑、及び青で示されている(
図1Cと同様)3つのAX-1611モノマーを含む。
【0022】
【
図3】AX-1611のインビトロ生物学的活性。横軸はタンパク質濃度を示し、縦軸はMTSアッセイからのOD490を示す。A)マウスL929細胞においてアポトーシスを誘導するAX-1611及び野生型TRAIL(wtTRAIL)の生物学的活性。エラーバーは、3つの独立した実験の標準偏差を示す。B)ヒトH460細胞においてアポトーシスを誘導するAX-1611及び野生型TRAILの生物学的活性。C)ヒトRPMI-8226細胞においてアポトーシスを誘導するAX-1611及び野生型TRAILの生物学的活性。
【0023】
【
図4】スーパーTRAIL AX-1611及び野生型Trailのインビボ抗腫瘍活性。RPMI-8226異種移植片が確立されたヌードマウスに、AX-1611(2、10mg/kg/日、腹腔内投与)又は野生型Trail(10mg/kg/日、腹腔内投与)を連続10日間投与した(n=5/群)。示された結果は群平均(±S.D)である。横軸は最初の治療後の日数を示す。
【0024】
【
図5】スーパーTRAIL AX-1611及び野生型Trailのインビボ抗腫瘍活性。NCI-H460異種移植片が確立されたヌードマウスに、AX-1611(10mg/kg/日、腹腔内投与)又は野生型Trail(10mg/kg/日、腹腔内投与)又はPBSを連続10日間投与した(n=5/群)。示された結果は群平均(±S.D)である。横軸は最初の治療後の日数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明で使用される用語
冠詞「a」、「an」、及び「the」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ又は複数(即ち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0026】
「TRAIL」、「天然TRAIL」、「野生型TRAIL」又は「wtTRAIL」という用語は、TNF関連アポトーシス誘導リガンドを示す。TRAILには、Apo2L、CD253、又はTNFSF10などの別名がある。天然TRAILは溶液中でホモ三量体を形成する。ヒトTRAILの配列を配列番号1に示す。
【0027】
「柔軟なポリペプチドリンカー」という用語は、動きが柔軟であり、いかなる規則的で安定した二次及び三次タンパク質構造も形成しないアミノ酸配列を指す。「柔軟なポリペプチドリンカー」、「柔軟なリンカー」、「柔軟な非構造化ポリペプチド」、「柔軟な非構造化ポリペプチド配列」、及び「柔軟な非構造化リンカー」「柔軟な非構造化ポリペプチドリンカー」という用語は、本発明において同じ意味で使用される。
【0028】
本明細書における「IgG」という用語は、抗体免疫グロブリンGを指す。IgGタンパク質は、2つの同一の重鎖及び2つの同一の側鎖を含む。
【0029】
本明細書における「Fc部分」、「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、抗体IgG重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域が含まれる。IgG Fc領域は、ヒンジ領域、IgG CH2及びIgG CH3ドメインを含む。
【0030】
「EC50」という用語は、半数効果濃度としても知られ、半最大応答を与えるタンパク質又は薬物の濃度を指す。
【0031】
本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という語句は、被験者に投与するための治療用化合物の担持又は輸送に関与する薬学的に許容される物質、組成物又はビヒクル(液体又は固体の充填剤、希釈剤、担体、製造助剤(例えば、潤滑剤、タルクマグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸)、溶媒又はカプセル化材料など)を指す。各賦形剤は、製剤の他の成分と適合性があり、被験者に有害ではないという意味で「許容される」ものである必要がある。
【0032】
「有効量」又は「治療有効量」という用語は、有益な結果又は所望の結果をもたらすのに十分な薬剤の量を指す。治療有効量は、治療される被験者及び疾患状態、被験者の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与方法などのうちの1つ以上に応じて変化し得るが、これは、当業者であれば容易に決定することができる。具体的な用量は、従うべき投与計画、他の治療薬と組み合わせて投与するか否か、投与のタイミング、画像化すべき組織、及びそれを運ぶ物理的送達システムのうちの1つ以上に応じて変化し得る。
【0033】
「被験者」という用語には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば哺乳類、及び非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類などの非哺乳類が含まれる。特に断りのない限り、「患者」又は「被験者」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0034】
本明細書で使用される「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指し、又は説明する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫、及び肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例としては、扁平上皮癌、肺腺癌、頭部/頸部扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、多発性骨髄腫、消化管(管)癌、直腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、前立腺癌、甲状腺癌、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓癌、多形性膠芽腫、骨癌、ユーイング肉腫、子宮頸癌、脳腫瘍、胃癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、子宮癌、卵巣癌、及び頭頸部癌が挙げられる。
【0035】
2つ以上のペプチドの文脈における「配列同一性」という用語は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって最大の一致を達成した後、参照ペプチド又は抗体配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当技術分野の技術の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めて、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。特定の実施形態では、配列同一性は、BLASTソフトウェアを通じて取得され、このソフトウェアは、ワールドワイドウェブ(ncbi.nlm.nih.gov)で公的に入手可能であり、デフォルトのパラメータを有する。
【0036】
生物学的に強力なスーパーTRAIL分子の設計
TRAILホモ三量体は、3つのTRAIL受容体を結合させることによってアポトーシスシグナル伝達経路を開始する。説得力のあるデータは、TRAIL受容体DR4又はDR5の高次オリゴマー化がアポトーシスに対するより強力なシグナルを生成する可能性があることを示している。本発明では、本発明者らは、ヒトTRAIL細胞外ドメインと、柔軟なリンカーと、N末端からC末端までの第2ヒトTRAIL細胞外ドメインとを含むスーパーTRAILタンパク質を設計した。各TRAILモノマーは安定した三量体を形成するため、3つのスーパーTRAILポリペプチド鎖は、同時に折りたたまれて2つの連結されたTRAIL三量体になる。スーパーTRAIL分子は、スタッキングモデル又はサイドバイサイドモデルのいずれかを使用して形成された2つの三量体のTRAIL六量体を含む場合がある(
図1)。スーパーTRAILタンパク質内では、2つのTRAIL細胞外ドメイン間の柔軟なリンカーは、タンパク質を正しく折りたたむための十分な柔軟性を提供する可能性がある。本発明者らは、スーパーTRAILが6つのTRAIL受容体と同時に相互作用することにより、アポトーシスを誘導する強力な生物学的活性を示す可能性があると推論した。
【0037】
スーパーTRAIL分子は、溶液中で2つのTRAIL三量体の六量体を形成する
本発明のいくつかの実施形態では、本発明者らは、ヒトTRAIL残基114~281と、5つのグリシン残基のリンカーと、ヒトTRAIL残基122~281とを含むスーパーTRAIL分子AX-1611を生成した。スーパーTRAIL AX-1611の配列を配列番号2に示す。組換えスーパーTRAIL AX-1611を発現させ、均一になるまで精製した。精製したAX-1611をゲル濾過カラムsuperdex200にロードし、溶出プロファイルから推定したAX-1611の見かけの分子量は約96kDであった(
図2)。各AX-1611モノマーについて計算した分子量は38kDであるため、AX-1611分子は3つのモノマーを含む可能性がある。各AX-1611モノマーは2つのTRAIL細胞外ドメインで構成されているため、AX-1611分子は6つのTRAIL細胞外ドメインを含む可能性がある。
【0038】
精製したAX-1611をネガティブ染色電子顕微鏡で更に調べた。ネガティブ染色画像は、多くのAX-1611分子がピーナッツ様粒子として現れていることを示した(
図2)。ソフトウェアRelionを使用したネガティブ染色画像の3D再構成により、解像度~25ÅでのAX-1611の分子形状が得られた。ヒトTRAILホモ三量体構造のうちの2つを、RelionによってAX-1611分子にうまく適合させることができる。この構造は、AX-1611内の2つのTRAIL三量体が単一の柔軟なリンカーによって連結されていることを明確に示す(
図2)。この構造では、3つのAX-1611モノマーを2つのTRAIL三量体に折りたたむことができ、2つのTRAIL三量体はサイドバイサイドモデルを介して会合している。AX-1611内の2つのTRAIL三量体は、(逆平行ではなく)平行に整列しているため、スーパーTRAILは6つのTRAIL受容体と都合よく相互作用することができる。生化学的及び生物物理学的データは、スーパーTRAIL AX-1611が、サイドバイサイドモデルを使用して2つの三量体に配置されたTRAIL細胞外ドメインの六量体を含むことを示す。
【0039】
スーパーTRAILは、野生型TRAILと比較して、癌細胞においてアポトーシスを誘導する活性が大幅に向上している
本発明者らは、複数の細胞株でアポトーシスを誘導するスーパーTRAIL AX-1611のインビトロ生物学的活性を調べた。マウスL929細胞株は、TRAIL活性を試験するための標準細胞として利用されている。スーパーTRAIL AX-1611は、野生型TRAILと比較して、L929細胞でアポトーシスを誘導する活性が約30倍向上した(
図3)。ヒト肺癌細胞株H460及びヒト多発性骨髄腫細胞株RPMI-8226においても、スーパーTRAIL AX-1611は野生型TRAILと比較してはるかに強い活性を示した(
図3)。また、本発明者らは、腫瘍細胞異種移植モデルを使用して、スーパーTRAIL AX-1611のインビボ抗腫瘍活性を調べた。RPMI-8226異種移植モデルでは、AX-1611による治療は、顕著な腫瘍退縮をもたらすことができる。データは、AX-1611が2mg/kgの用量であっても、10mg/kgの用量の野生型TRAILよりも腫瘍抑制においてより強力であることを明確に示した(
図4)。NCI-H460異種移植モデルのデータは、AX-1611が野生型TRAILよりもはるかに強力な抗腫瘍活性を示すことを示した(
図5)。本発明者らは、スーパーTRAILが2つのTRAIL三量体の六量体を含み、スーパーTRAIL分子が6つのTRAIL受容体に同時に結合できると推論する。したがって、スーパーTRAILの多価性により、野生型TRAILホモ三量体よりも優れた生物学的活性が得られる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明者らは、野生型TRAILと比較して、癌性細胞においてアポトーシスを誘導する活性が大幅に向上したスーパーTRAIL分子を生成した。スーパーTRAILは、抗体又はDTTなどの他の架橋試薬を添加することなく、それ自体で強力な活性を示す。更に、スーパーTRAIL分子には野生型TRAIL配列のみが含まれており、他の外来配列は含まれていない。これにより、スーパーTRAILをヒトに投与すると、その免疫原性が低下する可能性がある。IgG Fcと一本鎖TRAIL融合タンパク質が生成されており、野生型TRAILよりも優れた活性を有する可能性がある[5]。データは、スーパーTRAIL AX-1611が、Fc一本鎖TRAIL融合タンパク質と比較して、L929細胞においてアポトーシスを誘導する約5~10倍強力な活性を示すことを示した。本発明者らは、スーパーTRAIL分子が、TRAIL受容体と相互作用してアポトーシスを誘導するのに十分な位置にある2つのTRAIL三量体を含むと推論する。これは、他の融合タンパク質に比べてスーパーTRAILに利点をもたらす可能性がある。
【0041】
スーパーTRAIL配列中の柔軟なリンカー
スーパーTRAILタンパク質配列では、柔軟なポリペプチドリンカーを利用して2つのTRAIL細胞外ドメインを連結する。本発明のいくつかの実施形態では、融合タンパク質中の柔軟なポリペプチドリンカーは、グリシン残基及びセリン残基が豊富である。柔軟なポリペプチドリンカー配列では、G、S、E、A、P、及びTのアミノ酸残基の合計は、一次配列の90%以上を構成する可能性がある。また、柔軟なポリペプチド配列は、GORアルゴリズムによって決定したところ、90%を超える非構造化ランダムコイル構造を有する。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態では、柔軟なリンカーは、(G5S)n、(G4S)n、(G3S)n、(G2S)n、(GS)n、(G2S2)n、(G3S3)n、(GS3)nを含む配列を含む可能性があり、ここで、nは整数である。柔軟なリンカーは、0~100個のアミノ酸残基を含んでもよい。
【0043】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、柔軟なリンカーは5~20個のアミノ酸残基を含んでもよい。本発明者らは、柔軟なリンカー長が5~15個のアミノ酸残基の範囲である多数のスーパーTRAIL分子を構築した。これらのスーパーTRAIL分子の配列を配列番号3~10に示す。これらのスーパーTRAIL分子はすべて、L929細胞株を使用して測定したところ、アポトーシスを誘導する生物学的活性を示した(表1)。
【0044】
【0045】
スーパーTRAIL配列内のTRAIL細胞外ドメイン
ヒトTRAILの細胞外ドメインは、UniprotデータベースによりTRAIL残基39~281であると推定した。TRAIL(114~281)は癌細胞においてアポトーシスを誘導するのに効果的であることが報告されている[3]。TRAIL(95~281)、TRAIL(118~281)、TRAIL(119~281)及びTRAIL(120~281)などの他の構築物はすべて、アポトーシスを誘導するために生物学的に活性である。本発明では、TRAIL細胞外ドメインは、アポトーシスを誘導するために生物学的に活性であるヒトTRAIL残基39~281の範囲の任意の断片から選択されてもよい。
【0046】
本発明では、本発明者らは、ヒトTRAIL細胞外ドメインと、柔軟なリンカーと、N末端からC末端までの第2ヒトTRAIL細胞外ドメインとを含むスーパーTRAILを生成する。本発明のいくつかの実施形態では、スーパーTRAIL配列内の2つのTRAIL細胞外ドメインは同一であってもよい(配列番号11)。本発明のいくつかの実施形態では、スーパーTRAIL内の2つのTRAIL細胞外ドメインは異なる(配列番号2~10)。当業者であれば、柔軟なリンカーによって連結された2つのヒトTRAIL細胞外ドメインの様々な設計が本発明の範囲に含まれることを理解できるであろう。
【0047】
スーパーTRAILの修飾
インビボ血漿半減期を延長したり、目的のタンパク質の免疫原性を低下させたりするために、PEG化、脂質化、及びグリコシル化などの多くのタンパク質修飾方法が開発されている。当業者であれば、PEG化、脂質化及びグリコシル化を含むがこれらに限定されないスーパーTRAIL分子のあらゆる修飾が本発明の範囲内であることを理解できるであろう。
【0048】
IgG Fc又はHSA(ヒト血清アルブミン)とのタンパク質融合により、目的のタンパク質のインビボ半減期が大幅に延長される可能性がある。スーパーTRAILを含むIgG Fc融合タンパク質、スーパーTRAILを含むHSA(ヒト血清アルブミン)融合タンパク質を含むがこれらに限定されないあらゆる融合タンパク質も、本発明の開示された範囲内である。
【0049】
実施例
本明細書に記載される実施例は、以下の実験が実施されたすべての実験又は唯一の実験であることを示すことを意図したものではない。使用された数値(例えば、量、温度など)の正確性を確保するために努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差及び偏差を考慮すべきである。
【0050】
実施例1。スーパーTRAIL AX-1611の構築
本実施例では、本発明者らは、ヒトTRAIL残基114~281と、5つのグリシン残基の柔軟なリンカーと、ヒトTRAIL残基122~281とを含むスーパーTRAIL分子AX-1611を構築した。スーパーTRAIL AX-1611の配列を配列番号2に示す。
【0051】
AX-1611配列をコードする遺伝子をコドン最適化し、合成した。組換えAX-1611は、細菌発現系又は哺乳類発現系のいずれかを使用して産生することができる。組換えAX-1611を発現させ、均一になるまで精製した。
【0052】
AX-1611のオリゴマー化状態を分析するために、精製したAX-1611をPBS緩衝液中のゲル濾過カラムsuperdex200にロードした。溶出プロファイルから推定したAX-1611の見かけの分子量は約96kDであった(
図2)。各AX-1611モノマーについて計算した分子量は38kDであるため、AX-1611分子は3つのモノマーを含む可能性がある。各AX-1611モノマーは2つのTRAIL細胞外ドメインで構成されているため、AX-1611分子は6つのTRAIL細胞外ドメインを含む可能性がある。
【0053】
ヒト野生型TRAIL残基114~281を発現させ、精製して、対照として使用した。
【0054】
実施例2。ネガティブ染色電子顕微鏡によるAX-1611の構造研究
精製したAX-1611をネガティブ染色電子顕微鏡で更に調べた。ネガティブ染色画像は、多くのAX-1611分子がピーナッツ様粒子として現れていることを示した(
図2)。ソフトウェアRelionによるネガティブ染色画像の2D分類により、2つのドットの粒子による明確なクラスが得られた(
図2)。選択した1509個の粒子の平均化による3D再構成により、解像度~25ÅでのAX-1611の分子形状が得られた。Relionを使用することによって、2つのヒトTRAILホモ三量体をAX-1611構造にうまく適合させることができる。電子顕微鏡から得られたAX-1611の構造は、2つのTRAIL三量体がサイドバイサイドモデルによって会合していることを明確に示した。構造が示すように、2つのTRAIL三量体は1つのリンカーによって連結されている。2つのTRAIL三量体は平行に並んでいる。
【0055】
実施例3。スーパーTRAIL分子のインビトロ活性
マウスL9292細胞株を使用してアポトーシスを誘導するスーパーTRAIL AX-1611のインビトロ生物学的活性を調べた。L929細胞を、5%CO
2インキュベーター内で10%FCSを補充したDMEM培地中で培養した。1x10
4個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに入れた。24時間後、様々な濃度のAX-1611を各ウェルに添加した。1μg/mlのアクチノマイシンDも各ウェルに添加した。実験では野生型TRAILを対照として使用した。24時間後、L929細胞の生存率をMTSアッセイ(Promega)によって測定することができる。データフィッティングを使用して、AX-1611のEC50は0.85ng/mlであると算出し、野生型TRAILのEC50は32ng/mlであると推定した(
図3)。L929細胞を使用して測定した他のスーパーTRAIL分子のEC50値を表1に示した。
【0056】
ヒト癌細胞においてアポトーシスを誘導するAX-1611の能力も試験した。ヒト肺癌細胞株H460及びヒト多発性骨髄腫細胞株RPMI-8226を、5%CO
2インキュベーター内で10%FCSを補充したDMEM培地中で培養した。5000個の細胞を96ウェルプレートの各ウェルに入れた。24時間後、様々な濃度のAX-1611を各ウェルに添加した。実験では野生型TRAILを対照として使用した。24時間後、MTSアッセイを使用して細胞の生存率を測定することができる。H460及びRPMI-8226に対するAX-1611のEC50値は、それぞれ54.7ng/ml及び15.4ng/mlと測定した。一方、H460及びRPMI-8226に対する野生型TRAILのEC50値は、それぞれ1400及び270ng/mlと推定した(
図3)。
【0057】
実施例4:スーパーTRAIL AX-1611のインビボ抗腫瘍活性
スーパーTRAIL AX-1611の抗腫瘍活性を、RPMI-8226異種移植モデルを担持するマウスを使用して調べた。合計10
7個のRPMI-8226細胞を雌B-NDGマウス(5~8週齢、5匹/群)の右脇腹に皮下注射した。腫瘍のサイズを、キャリパーで腫瘍の長さ(a)と幅(b)を測定することによって監視し、腫瘍体積を式0.5×a×b
2で計算した。腫瘍体積が約160mm
3に達したときに治療を開始した。AX-1611を2つの異なる用量(2mg/kg及び10mg/kg)で1日1回、10日間腹腔内投与した。対照マウスには、10mg/kgの用量で野生型TRAILを注射した。AX-1611による治療は、いずれの用量でも顕著な腫瘍退縮をもたらすことができる。データは、AX-1611が2mg/kgの用量であっても、10mg/kgの用量の野生型TRAILよりも腫瘍抑制においてより強力であることを明確に示した(
図4)。
【0058】
スーパーTRAIL AX-1611の抗腫瘍活性も、NCI-H460異種移植モデルを使用して分析した。合計2x10
6個のNCI-H460細胞を雌B-NDGマウス(5~8週齢、5匹/群)の右脇腹に皮下注射した。腫瘍のサイズを、キャリパーで腫瘍の長さ(a)と幅(b)を測定することによって監視し、腫瘍体積を式0.5×a×b
2で計算した。腫瘍体積が約100mm
3に達したときに治療を開始した。AX-1611を10mg/kgの用量で1日1回、10日間腹腔内投与した。対照マウスには、10mg/kgの用量でそれぞれPBS及び野生型TRAILを注射した。データは、AX-1611が、NCI-H460異種移植モデルを担持するマウスにおいて野生型TRAILよりもはるかに強力な抗腫瘍活性を示すことを示した(
図5)。
【0059】
以下に列挙するのは、本明細書で言及されたいくつかのアミノ酸配列である。
【表2】
【0060】
参考文献
1. Wiley, S.R., et al., Identification and characterization of a new member of the TNF family that induces apoptosis. Immunity, 1995. 3 (6) : p. 673-82.
2. Pitti, R.M., et al., Induction of apoptosis by Apo-2 ligand, a new member of the tumor necrosis factor cytokine family. J Biol Chem, 1996. 271 (22) : p. 12687-90.
3. Graves, J.D., et al., Apo2L/TRAIL and the death receptor 5 agonist antibody AMG 655 cooperate to promote receptor clustering and antitumor activity. Cancer Cell, 2014. 26 (2) : p. 177-89.
4. Kim, S.H., et al., Death induction by recombinant native TRAIL and its prevention by a caspase 9 inhibitor in primary human esophageal epithelial cells. J Biol Chem, 2004. 279 (38) : p. 40044-52.
5. Hutt, M., et al., Superior Properties of Fc-comprising scTRAIL Fusion Proteins. Mol Cancer Ther, 2017.16 (12) : p. 2792-2802.
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】